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ラブ「雨ばっかでつまんないなー」 せつな「そう?私は好きよ」 ラブ「どうしてさー。遊びに行けないしダンス練習だって出来ないじゃん!」 せつな「ふふ。相変わらず子供なんだから。」 ラブ「へ?」 せつな「こうして二人っきりになれるじゃない。」 ラブ「あ…」
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わたしには全てが夢に思えた。その光景を目の当たりにして、正常にいれるはずがなかった。 せつなさん・・・、いや、イースが近づいて来た目的はわたしたちを倒す事だったから。 わたしたちは愛と平和を守るための戦士、――プリキュア―― 美希ちゃんとわたしも応戦しようと身構える。 けれどラブちゃんはそれを拒否して。 「これは・・・、あたしたちの戦い・・・。」 プリキュアとして戦ってきた仲間。それ以前に幼馴染み、そして親友。何でも話せる仲。 けれど、あんな顔したラブちゃんを見るのは初めてだった。 何かを決意しているような殺気だったあの感じを。 隣では美希ちゃんが俯いて唇を噛み締めていた。いつも凛と構えていた美希ちゃんとは まるで似つかない表情。今にも泣きそうなその顔を、わたしは今でも覚えている。 そして、目の前で繰り広げられる残酷なシーン。あんなに仲良かった二人が戦っている。 夢なら早く覚めて!とずっと心の中で叫んでた。だって・・・ ――美希ちゃんが悲しんでるから―― 美希ちゃんはラブちゃんを好きだったんだよ?ずっと近くにいたからわたしにはわかるの。 だけど、ラブちゃんは美希ちゃんの言葉を振り切ってせつなさんとの運命を選んだ。 そう。ラブちゃんはせつなさんを愛しているのよね。 苦悩の戦いが一旦幕を閉じ、ラブちゃんの家へ戻るわたしたちに笑顔は無かった。 もちろん、ラブちゃんが落ち込んでるのは心配だったけれど、わたしはそれ以上に美希ちゃんが落ち込んでいるように思えた。 見ていて辛かったし、胸が苦しかった。 思わずわたしは泣きそうになる。それを察知した美希ちゃんはわたしを見てウインクを投げかける。 いつものサインだ・・・。 ラブちゃんを励ます時はわたしに。 わたしを励ます時はラブちゃんに。 「しっかりしなさい!」 ラブちゃんとわたしは一人っ子。いつも美希ちゃんはわたしたちのお姉さんだった。 だけどホントは嫌だった・・・。 〝わたしだけ〟のお姉さんでいて欲しかった。 だから二人でいれる時はほんとに幸せだった。美希ちゃんを独り占めに出来るって。 気が付いた時には、それがわたしの初恋=片思いになっていて。 けれど、3人でいる時もわたしは幸せだった。ラブちゃんはいつも優しくしてくれる。 美希ちゃんがいなければ、わたしはラブちゃんに恋してたはずだから・・・。 都合良過ぎるのかな?わたしって。 美希ちゃんは優しくラブちゃんを抱きしめていた。今も昔も変わらぬ温かさで。 羨ましかった。 ラブちゃんにも幸せになって欲しい。ラブちゃんが苦しむのもわたしは嫌だから・・・。 「話し合えばきっと分かり合えるって私、信じてる!」 一瞬、美希ちゃんの表情が曇ったのをわたしは見逃さなかった。 それでも心配なんだよね。美希ちゃんも苦しいんだよね。 再び、泣きそうになる自分を落ち着かせる。 美希ちゃん、今度はわたしが温もりを伝えたい。あなたのお姉さんになってあげたい・・・。 「そんなに強がらなくてもいいんだよ?」と。 神様、どうかラブちゃんと美希ちゃんとせつなさんを幸せにしてあげて下さい。 そして、いつかわたしも・・・
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1 夕陽で赤く染まった室内に湿った荒い息遣いと濡れた音が響く。 ごく普通の居心地の良さそうなリビング。けど、その真ん中に据えられた ソファーの上ではとても普通とは言えない光景か繰り広げられていた。 絡み合うのは二人の少女。一人は着衣をこれでもかと言わんばかりに乱され、 喘ぎながら咽び泣いている。 その上に全裸の少女が覆い被さり、下になった少女の全身をまさぐっている。 せつなが着ていたのは生成りのシャツワンピース。そのボタンを腹まで外され 胸元も露にはだけられ、白いブラはずり上げられ乳房を剥き出しにされている。 スカートは腰の上までたくしあげられ、片方の足をソファーの背に、もう片方は 床に落とされこれ以上は無理なくらい足を開げさせられている。 ラブはその足の間に顔を埋め、無心に舌を使う。 ピチャピチャと犬が水を舐める様な音をたて、ガクガクと腰を震わせる せつなを押さえ付けながら攻め立てる。 「はあっ……はあっ…、ふぅっ…んん!」 ラブの舌が動く度に足首に下着が絡んだままの足がピクピクと揺れる。 せつなはラブの湿ったままの髪を力無く引っ張りながら、 ただひたすら気の狂いそうな性感に耐えていた。 2 ラビリンスにいた頃のせつなは、最前線で働く為の戦闘要員だった。 幼い頃から己を律し、鍛え、学び、一切の欲望を排除した生活を送っていた。 性的な知識が無いわけではないが、それは人間の体の構造を学ぶ上での 一行程であり、生殖の為のものであり、まだ年若く、しかも戦士として いつ出撃命令が出るか分からない自分には無縁のものだった。 仮に後に遺伝子を残す為に妊娠・出産を命じられる事はあったとしても そんな事はその時になればお膳立てが整っているはずで、自分はただ 言われた通りにするだけの事だった。 だから何も知らなかった。他人の手が、唇が触れるとどうなってしまうのか。 真摯な眼で見つめられ、抱きすくめられたら動けなくなってしまう事を。 ラブの冷えきった唇に自分の唇を塞がれた時、せつなは反射的に 相手をはね除けそうになった。 でも、ラブの眼を見てしまった。ほんの数センチ先にあるラブの瞳。 鏡の様に静かなのに、その奥に狂おしい程の思いを押し込めていた。 どんなに欲しても与えられない。身を捩る程に渇望しても 決して自分には手に入らない。 苦しくて苦しくて、だからそんな思いは最初から感じて無いんだ、そんなもの 欲しがる自分なんて存在しないんだと自分を騙し。 けど時折暴れ出す心を御し切れなくて…。 そう、かつての自分だ。 逃げちゃいけない。そう思った。ここで少しでも拒否する仕草を見せれば ラブの心には取り返しのつかないヒビが入ってしまう。 体から一切の力が抜けた。 (ラブ…大丈夫よ…。) 貴女は私とは違う。どんな闇と向き合っても染まってしまったりしない。 それに、ちゃんと伝えなければならない。 貴女が心から望んでいるモノ。それは決して手の届かないモノではないのだ…と言う事を。 3 ラブは無抵抗なせつなの体を恣に貪る。まだ14歳の少女に愛撫の仕方など 分かるはずもない。 ただ同じ体を持った同性。どこをどうすればどんなふうに感じるかは分かる。 慣れないうちは敏感な部分への強い刺激は快感より苦痛の方が大きいと言う事も。 ラブはわざと敏感な部分を執拗にいじくり、弄ぶ。 せつなの反応を見れば、乏しい自慰の経験しかない自分よりも遥かに 性的な経験がないように感じられる。 もしかしたら、一度も自分で触れた事すらないのかも知れないと思った。 乳首に歯を立てる度に大きく背を反らせ、陰核の柔皮を無理やり捲り 中の突起を強く吸えば、啜り泣きどころではない悲鳴に近い泣き声をあげる。 ぴったりと閉じた膣に無理やり二本の指を捻り込む。指を押し出そうとするかのように きつくすぼまった肉が蠕動する。 「あっ…あっ…あぁっ。……いっ…つぅ……。」 指が深く埋まって行くにつれ、せつなはか細く泣き、目尻に涙が溜まっていく。 (痛いんだろうな。) ラブはそう思いながらも指を根元まで納め、内壁を広げるようにグニグニと 動かす。 ラブ自身も自分を慰める時に、こんなに深く指を入れた事はない。 せつなにとってもこの行為が苦痛でしかない事くらいわかる。 唇を抉じ開けるように舌で口腔内を蹂躙する。柔らかな下唇に 歯を立てると、ラブの中に鉄の香りが滲む。 指で中を犯しながら、膨れた外側の突起を捏ねる。 せつなの体が跳ね、塞いだ唇の隙間からくぐもった呻き声が漏れる。 「…ぅふ……んぅっ…んくっ…」 せつなの痙攣がある程度治まると、ラブは唇を解放し、ゆっくりと指を引き抜いた。 ぬらぬらと光る指を見ると体液に薄赤い色が混じり、下敷き になっているワンピースにも同じ色の染みが出来ている。 それが破瓜の血になるのか、それとも乱暴な挿入で粘膜が傷付けられて 出たのかはわからない。 でも、相当苦しい思いをさせただろう事は想像が付く。 (こう言うのでも処女を奪っちゃった事になるのかな……) ラブは暗い喜びを感じている自分に苦笑した。 せつなはここまでされても抵抗の片鱗すら見せない。 『イヤ。』『やめて。』と無意識に口をついて出そうな言葉すら口にしない。 ただ、涙を流しながら責め苦のようなラブの愛撫に打ち震えている。 4 「どうして?」 せつなは最初、自分が無意識に言ってしまったのかと思った。 でも、その言葉を発したのはラブの方。 霞む眼をそろそろと上げるとラブが見下ろしていた。 「ねぇ、どうして、せつな?嫌じゃないの?嫌でしょ?こんなの。」 確かにせつなならラブを跳ね返す事くらい訳はない。 プリキュア状態ならともかく、生身なら身体能力も体力も せつなの方が遥かに勝っている。 (あたし、同情されてるの?可哀想って思われてる?) もしそうなら惨め過ぎる。罵倒されても、軽蔑されても仕方がない。 でも憐れまれるのは嫌だ。どこまでも自分本位だとは分かってる。 それでも…… 「それともなに?せつな、こう言うの好きなの?気持ちよくなっちゃったの?」 恐らくラブは下卑た笑いを浮かべたつもりだったんだろう。 でも、せつなには、それは泣きたいのを堪えて顔をくしゃくしゃにしてる 小さな子供にしか見えなくて…。 「だって、ラブが泣いてるから。」 いつか、どこかで聞いたような台詞だ。あなたの心が泣き叫んでる……。 辛くて、苦しくて、どうしようもない……いっそすべてを壊してしまいたい程に。 「…なに?……それ。」 やっぱり同情されてるの?ラブが本当に泣きそうになった時、 「泣かないで……。」 ラブの頭はせつなの胸に抱き込まれた。 「私…ラブが好きよ…。」 私は、上手く伝えられるだろうか……。 5 ラブはせつなの胸に顔を埋めたまま、動けない。 せつなの言った言葉…。 『好きよ』確かにせつなはそう言った。反射的に心が歓喜に震える。 ずっとずっと、欲しくて堪らなかったことば。 でも……、それは……。 「…違うでしょ?違うよ!!せつなが言ってるのと、あたしのは……!」 全然違うんだよ。 分かってた。今のせつなはあたしの言う事なら何でも聞きかねない。 どんな事でも、ラブが望むなら…と。 でも、そんなものは違う。欲しかったものじゃない。 ここまで酷い事をして、それなのにせつなは好きと言ってくれて。 でも、違う。どこまで自分勝手なんだと思う。 せつなの身も心もこれ以上無いほど傷付けて、それでも満足できない。 一体、どうなれば満足なんだろう。 「…そうね。違うのかも知れない。」 頭の上から柔らかい声が降ってくる。 さっきの自分の言葉への返事。違うと言ったのは自分なのに ずきりと痛みが走る。 一瞬、体を強張らせたラブの髪をせつなは優しく撫でる。 「でも、…私、分からないんだもの。……だって、」 誰かを大切に思ったのも、誰かに大切にされたのも、誰かを好きになったのも、 ラブが初めてだから。 私には何もなかった。守りたいものも、愛しいものも。 空っぽの心。『メビウス』と言う偶像にその空白を埋める事を求め、 渇いてひび割れた水差しに、溜まるはずもない水を注ぎ続けていた。 メビウス様の為に メビウス様の為に メビウス様の為に ラブと出逢い、ラブと触れ合い、いつの間にかひび割れは消えていた。 少しずつ、心に溜まっていく何か。 それが何なのか、今も表す言葉を私は持たない。 でも、これだけは分かる。こんな気持ちはラブに対してしか生まれない。 盲目的に誓っていた忠誠とは違う。 ただ依存の対象が代わっただけだと言われるかも知れない。 そうかも知れない。もしそう言われても、私には明確な反論は出来ないかも知れない。 でも私はもう決めてる。ラブしかいらない。 この先、例えどんな出会いがあってもラブ以上に大切な人は出来ない。 ラブが最初で最後の、一番大切で愛しい人。 仲間、家族、友達…。今の私には大好きな人が沢山できた。 決してラブ以外の人がどうでもいいわけじゃない。 その人達を守る為にも、私は命懸けになれる。 でも、その人達全てを合わせても、ラブ一人にはかなわない。 6 せつなは拙くことばを綴る。 どう言えば分かってもらえる? どうすれば伝わるんだろう。 ラブには知られてはいけないと思ってた。友達でいなきゃ。家族にならなきゃ。 ラブがいないとダメだと思われたくない。ラブに依存しきってると思われたくない。 ラブにはラブの世界があるんだから、邪魔しちゃいけない。 自分だけ、見て欲しいなんて、絶対に、言えない……。 だって重すぎるもの。人ひとりの心を丸ごと被せられるなんて。 ラブは分かってない。どんなに私がラブを好きか。 ラブが想像するよりも、ずっと、ずっと…。 隠しちゃいけなかったのかな。鈍い私はラブが追いつめられてるのに ちっとも気付かなかった。 いつもラブは自分の事より、人の事で怒って、泣いて。 昔からそうだったって聞いてる。 だから、ラブは多分泣いてしまうだろう。 せつなに酷い事をした。 せつなを傷付けた。 そして、それ以上に自分を傷付けてしまうかもしれない。 ごめんね、ラブ。本当にごめん。 ……もどかしい……。 どんなことばでも伝えきれる気がしない。私のことばはどうしてこんなに拙いんだろう。 せつなは全身で強く強く、ラブを抱き締める。 極度の緊張と過度な刺激に晒された体はミシミシと軋み、力が入らない。 それでも強く。ラブを丸ごと体の中に包み込めるように。 「分かってないのはラブの方なんだからね!」 last 「……っう…うわ、うわああああーーん!!」 ラブは突然、子供のように声をあげて泣き始めた。 「…っごめ……ごめっ…なさっ…!…… ごめんっ…なさ…い! ひっく…ぅえ、せっ…、せつなっ…せつなぁ……せつな………」 「うん……、ラブ…」 「ホ…っトに……ホントに、ごめんなさい!」 「……うん……」 優しく優しく頭を撫でられ、きつく体を抱き締められ、どのくらい泣いただろう。 涙と共に凍えた塊が溶け出していく。冷えきった体をせつなが暖めてくれる。 溶け出した塊も全部は無くならないかも知れない。 一度向き合ってしまった剥き出しの欲望は、 そうそう簡単には自分を解放してくれないかも知れない。 でも、きっと大丈夫。せつながいるもの。 醜い欲望も身勝手な独占欲も全部はせつなが受け止め、洗い流してくれた。 ごめんなさい、せつな。謝っても傷付けてしまった事は取り返せない。 でも、もう傷付けたりしないから。あたしもせつなを丸ごと包み込みたいから。 身を起こしたせつなは、少し震える唇で羽根のように軽くて優しいキスをくれた。 「ラブは、言ってくれないの?」 「……?」 「私はちゃんと言ったのに。ラブは言ってくれない、どして?」 「……あ………」 いたずらっぽく微笑むせつな。言われてやっと気がついた。 あたし、一度もちゃんと言ってないや。 あたしは一つ大きく深呼吸して… 「あたしは、せつなが大好きです。世界で、一番、せつなが好き。」 今度はあたしからキスを送る。できる限り優しく、でも、 せつながくれたキスよりはちょっぴり深く。 2-403はおまけです
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「せつなとね、付き合うことになったの」 今まで本を読んでいた彼女がふいに顔をあげてそう言った。今日は暑いわねとでも言うように。だから私の頭はその言葉を処理することができなかった。 「へ?」 「告白したら返事もらえたの」 私は口に半分頬張っていたドーナツをぽとりと落とす。蒼い瞳がそのドーナツを追い、行儀が悪いわねと苦笑した。 私はハッとして表情を作る。 「びっくりしちゃった。美希ちゃんとせつなちゃんが付き合ってるなんて」 「うん。ずっと好きだったから」 「そうなんだ。いつから付き合ってるの?」 「3週間くらい前。ごめん……黙ってて」 「ううん、女の子同士だしそりゃあ、すぐすぐ言えないよね」 驚いて、でも味方だよと彼女を安心させるように言葉を紡ぐ。 スラスラと出てくる心にもない言葉たちに気づかず、彼女は照れ臭そうにありがとうと言った。 その笑顔に、私のどろどろと濁る心に少しだけ光が差し込んだ。 3週間前。 ああ この間二人で遊びに行った時にはもう恋人だったのか。 彼女が自身の趣味とは違うアクセサリーを見ていた時に気づくべきだっただろうか。 無理に決まってる。 あの時、彼女にゲーセンでぬいぐるみを取ってもらっただけで一日中幸せな気持ちだったのだから。 「やっぱり祈里とラブには言わなきゃって思って。昨日せつなと話してね、せつなはラブに伝えてると思う」 こういう時だけ「祈里」。それでも嬉しいと感じてしまう。 「電話で」 「ん?」 「昨日せつなちゃんと」 「ああ、せつな泊まったの」 きょとんと、私の質問の意図がわからない彼女が首を傾げた。慌てて私は話題を変える。 昨日の夜メールしてた時には、彼女の隣には黒髪の美少女がいて。私のメールの内容といえば、動物の話、学校の話、彼女を褒める内容。 滑稽過ぎて笑えてしまう。 「ラブちゃんも驚いてるかな」 「多分。あの……あたしたちその、まだキ、キス、しかしてないから」 私の先ほどの質問を誤解したらしい彼女は、クールな見た目とは裏腹に、吃ってそんなことを言い出した。彼女がそんな風にやるとツンデレに見えてしまうのは私だけだろうか。 「キス、したんだ」 「あ!?や、その、うん」 余計な情報を与えた彼女に、私はもう少しで阿呆と怒鳴るところだった。 「美希ちゃんってさ、初恋だよね?」 「あ、そうかも」 小さい頃からその容姿と大人びた物腰で告白されることが多かった彼女。誰一人として振り向かせたものはいないけれど。 その彼女を振り向かせ告白までさせる人が現れるとは。 「初恋って実らないって言うのにね」 悪戯っ子のように笑って嫌みに聞こえないように。彼女は案の定からかわれたと思い、もぅと頬を膨らませた。 「叶ったんだからいいの」 「せつなちゃんに女王様は扱えるかな」 「女王って誰よ」 そんな風に形容したけど、ほんとは女王様とは程遠い。 見た目はクールビューティで澄ましてみえるのに、蓋を開ければ、頑張り屋で優しくてフェミニスト。 完璧じゃないところが可愛くて仕方ない。 「もう。ブッキーも好きな人とかいたら応援するから」 「ほんと?」 「うん」 ありがとう そう言葉をかけて私は微笑む。 カランとコップの中の氷が小さく音をたてた。 「そろそろ、帰りましょう」 「そうだね」 彼女が立ち上がり鞄を手にした。私は立ち上がった瞬間よろけてしまう。思った以上に脚にきていた。 「わっ、大丈夫?」 ふわりと抱きとめられ、私はきゅっと制服を掴む。 「ブッキー、大丈夫?」 「ん、へーき」 俯き続ける私を彼女が覗こうとして………… んちゅ 「応援しなくていいから」 ドンッと身体を押して私は走る。 きっと彼女は呆然としているだろう。 好きだから ずっと好きだったから 「くっ、ひく、ばぁか……」 流れる涙を拭うことすら忘れて、私は走り続けた。 END
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ブッキーの家に向かう途中、偶然彼女を見つけた。 ちょうどよかったと思って、声をかけようと近づくと、彼女が何かを見ていることに気づいた。 目線の先には、仲良く並んで歩くラブとせつなの姿があった。 どうやら買い物帰りらしく、大きな袋を2人で持っている。 突然、強い風が吹いた。 思わず目を閉じる。 目を開けると、ブッキーがうつむいて、涙をぬぐうような動きをしているのが見えた。 どうしたんだろう。 少し考えて、はっとした。 もしかしたら、ブッキーはあの2人のどちらかが好きなのではないか。 根拠は全くなかった。 でも、なぜかあたしはそう思い込んでしまった。 そして、振り返ったブッキーの目が少し赤くなっているのを見て、確信した。 ブッキーと目が合う。 きっとこんなところを自分に見られて気まずい思いをしているに違いない。 この場を和ませるために、とりあえずあたしは笑顔を作った。 うまく笑えているだろうか。 ブッキーが何か言おうとする。 あたしは、それをさっと手で制して言った。 「何も言わなくていいのよ、ブッキー。あなたの気持ちはよくわかったわ。それで、ラブとせつな、どっちなの?」 「え?」 面食らったようなブッキーを見て、しまった、と思った。 何でこんなことを聞いてしまったんだろう。 傷ついている親友に対して、好奇心丸出しの質問をするなんて、最低だ。 「ご、ごめんなさい。あたしとしたことがデリカシーに欠けてたわ。 でも、相談ならいつでも乗るから、一人で抱え込まないでね。それじゃ」 早口でそれだけ言うと、気まずい沈黙が落ちる前に、あたしはすばやく元来た道を引き返した。 ほとんど逃げるように自分の部屋まで戻ると、あたしはベッドに倒れこんだ。 頭がぼーっとする。 ブッキーがあの2人のどちらかを好きだと考えると、なぜか胸が苦しくなった。 ふと見ると、手には、くしゃくしゃになったチケットが握られていた。 あぁ、と声が漏れる。 あたしはこれを持って、ブッキーのことを映画に誘いにいこうとしたのだ。 メールでもよかったのだが、これに託けて彼女に会いたかった。 4人じゃなくて、2人だけで出かけたい。 最近よくそう思うようになった。 4人で遊んだあと、ラブとせつなが帰って、2人になることはあったけれど、それだけでは足りない。 もっともっと、ブッキーと話したい。 でも、改まって2人だけでどこかに行こうというのも不自然な気がして、 というよりも、なんだか気恥ずかしくて、なかなか言い出せずにいた。 そんなとき、テレビで映画のCMをしているのを見た。 ブッキーが好きそうな動物映画だ。 これだ、と思って、すぐにチケットを買いに走った。 知り合いからもらったことにして、それとなくブッキーを誘おう。 あたしは、2枚のチケットが入った封筒をぎゅっと胸に抱いた。 せっかくの機会なんだから、完璧に準備をして、楽しもう、と思った。 映画に行って、それからどうしよう。 あーでもない、こーでもないと何日もかけて、プランを作った。 下見もしたし、着ていく服だって新しく買った。 うん、あたし完璧。 つぶやいてみる。そうすると、本当にその計画がうまくいく気がしてうきうきした。 そのときのことを思い出して、余計にやるせなくなった。 あれこれと必死に考えていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。 あんなに準備をしたのに、誘うことすらできないなんて。 完璧には程遠いわ、と自嘲気味に笑う。 笑っているのに、涙があふれた。 それを拭おうともせずに、あたしはじっとうずくまっていた。 腰のリンクルンが鳴る。 あたしはのろのろと起き上がると、リンクルンを手に取った。 ブッキーからのメールだった。 その名前を見ただけで、息が詰まって、また涙が出そうになる。 話したいことがあるから、今から会えないか。 簡潔にいうと、そんな内容だった。 たしかに相談しろとは言ったが、いくらなんでもはやすぎるだろう。 ブッキーは意外とせっかちなのだろうか。 それとも、急を要する事態にでも陥っているのだろうか。 どっちにしても、先ほどのことに対しては怒っていないようで、あたしは胸をなでおろした。 はっきり言って、今は相談など受ける気分ではなかった。 しかし、自分から言い出した手前、むげに断るわけにもいかない。 仕方なく、ブッキーに家に来るように伝えた。 急いで顔を洗って、くしゃくしゃになってしまった服を着替える。 適当に部屋を片付けていると、ブッキーがやってきた。 部屋に招き入れて、座ってもらう。 「ちょっと待ってて、何か飲み物持ってくるから」 難しい顔をしているブッキーを残し、部屋を出る。 これは相当深刻そうだ、とあたしはため息をついた。 同時に、こんなにもブッキーに想われている誰かさんは幸せものだとも思う。 紅茶を淹れながら、考える。 ブッキーが好きなのは、誰なのだろう。ラブか、それともせつなか。 そして、それを聞いたとき自分はどう思うだろうか。 ブッキーの口から、この人が好きだと言われたら、どうするだろう。 ダメだ、と思った。 堪えられない。 ブッキーが苦しげに恋心を吐露するのを、自分は冷静に聞いていられないだろう。 やっと気がついた。 あたしはブッキーが好きなのだ。 自覚してしまったからには、のんきに悩み相談なんか受けている場合ではない。 このままでは、ブッキーに好きな人がいることを知ってしまう。 相談を受けてしまったら、あたしはブッキーの恋を応援すると言ってしまいそうだった。 しかし、そう言ったが最後、あたしはこの想いを伝えることができなくなるのだ。 断られることはわかっている。 だけど、何も言わないまま失恋するのはごめんだった。 それ以上に、自分の気持ちを隠したまま、彼女の恋の相談役を演じるのは無理だと思った。 ブッキーが話し始める前に、伝えよう。 あたしはそう決心すると、カップを持った。 紅茶はすっかり冷めていた。 長々と悩みすぎたな、とあたしは苦笑して、紅茶を淹れなおす。 でも、また冷めてしまうかもしれない。 紅茶を飲む前に、あたしはブッキーに伝えなければならないことがあるから。 部屋に戻ると、ぱっとブッキーがこちらを見た。 紅茶がのったトレイをテーブルにおいて、ブッキーの正面に座る。 待ちかねたようにブッキーが口を開いた。 「あのね、美希ちゃん、さっきのことなんだけど」 「待って。それより先にブッキーに聞いて欲しいことがあるの」 そう言うと、ブッキーは素直にうなずいた。 あたしはそれを確認して、話し始める。 「あたし、ブッキーが」 そこまで言って、突然怖くなった。 続きを口にしたら、ブッキーと友達でいられなくなるかもしれない。 もし、そうなったとしても、言わずに後悔するよりはましだ。 そう言い聞かせて、自分を奮い立たせる。 「ブッキーが好き」 呆然とブッキーがあたしの顔を見つめる。 あたしは、言い訳するように付け足した。 「ブッキーに好きな人がいるのはわかってるわ。 でも、いや、だからこそ伝えないといけないと思って。それだけよ」 ブッキーの顔を見るのが怖くて、目をそらした。 部屋が静まりかえる。 おそるおそる見ると、ブッキーが耳まで真っ赤にしてうつむいていた。 「ブッキー?」 声をかけると、はじかれたように顔を上げた。 そしてブッキーは意を決したようにぐっとあごを引くと、あたしをしっかりと見据える。 「わ、わたしも美希ちゃんが好き!」 今度はあたしが呆然とする番だった。 わけがわからない。 ブッキーは、ラブかせつなが好きなんじゃなかったのか。 それとも、今のは友達として好きという事なのだろうか。 それにしては真剣すぎるような気もするが、ブッキーはまじめだから、絶対ないとは言い切れない。 「それって、友達としてってことよね。 ブッキーはちゃんと他に好きな人いるんでしょ?」 「え?」 「だから、さっきラブとせつな見て泣いてたじゃない。 あれって2人が仲良くしてるから嫉妬してたんじゃないの?」 「あのね、そのことなんだけど……」 言いにくそうに、ブッキーが上目遣いにあたしを見る。 「あれは、目にごみが入っただけなの。 ラブちゃんとせつなちゃんに声をかけようとしてて……あのとき風が吹いたでしょ。 美希ちゃん誤解してるみたいだったから、言わなきゃいけないと思って……」 あまりにも馬鹿馬鹿しくて、あたしは言葉を失った。 そんなできすぎた話、信じられるわけがない。 けれど、ブッキーは大まじめな顔で、じっとこちらを見ている。 その目を見て、嘘じゃないと思った。 嘘みたいな話だけど、あたしはブッキーを信じる。 それならば、あたしとブッキーは両思いということになるのだろうか。 両思いだなんて夢みたいで、感動的だけれど、 失恋を覚悟していただけに、なんだか拍子抜けしてしまった。 「何よそれ。焦って告白までしちゃったあたしが馬鹿みたい」 言いながら、笑ってしまった。 でも、おかげでブッキーと両思いだってわかったんだから、よかったのかもしれない。 「ねえ、ブッキー。それで、あたしのことは友達としての好きなの? それとも、違った好きなの?まだ答え聞いてないわよ」 すでにわかったも同然だったが、あたしは意地悪く聞いた。 もう一度、ちゃんと聞きたかった。 なかなか答えようとしないブッキーに、じりじりと近づく。 「その、美希ちゃんのと同じ好き、よ」 頬を染めながら、たどたどしく言うブッキーを思わず抱きしめた。 小さくて、やわらかくて、あたたかい。 ぎゅっと力を込めると、腕の中にすっぽりとおさまっているブッキーがくすぐったそうに身じろぎした。 「もっと言って」 耳元に口を寄せて、甘くささやく。 ブッキーの腕がするりと背中に回されて、あたしを包む。 さらに身体が密着して、鼓動が高まる。 「美希ちゃん、好き」 ぴくりと身体がはねた。 うっとりするほど、甘美な響きだった。 吐息が耳にかかって、ゾクゾクする。 「あたしも、好き」 かろうじてそれだけ言うと、あたしはブッキーから身体を離した。 ずっとこうしていたかったが、これ以上続けると、 どうにかなってしまうのではないかと思った。 「紅茶、冷めちゃったわね」 それを聞いて、思い出したようにブッキーがカップを持つ。 冷めた紅茶に口をつけて、ブッキーはおいしい、と笑った。 そんなはずはない。 ためしにあたしも一口飲んでみると、香りが飛んでしまっていて、苦かった。 お世辞にもおいしいとは言えない。 「全然おいしくないじゃない。無理しなくていいわよ」 「美希ちゃんがわたしのために淹れてくれたんだから、おいしくないわけないわ」 にっこり笑うブッキーに目を奪われる。 ばか、と心の中でつぶやいた。 そんなことを言われたら、もっと好きになってしまう。 恥ずかしくなって目をそらすと、ベッドの枕が目に留まった。 そういえば、と枕の下に映画のチケットを隠したことを思い出す。 もう心配することはない。 強がらずに、ちゃんと誘おう。 でも、その前に、 「おかわり、どうかしら」 空になったカップを受け取って、 とびっきりおいしく淹れてみせるわ、とあたしは微笑んだ。
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「せつ……な……」 また、せつなを呼ぶ自分の声で目覚める。 時々見る、まったく同じ夢。 せつながあたしから離れて、遠くへ行ってしまう夢。 それは夢なんかじゃなかった。まごうことのない、現実。 あたしは確かにそれを受け入れたんだ。 お互いがんばろうねって、笑いもした。 けどそれは、ふり。受け入れた、ふり。 頭では理解していても、心では納得ができないでいる。 あたしはせつなを想う。夏になった今も、なお。 「ラブ、おはよ」 「おはよ、由美」 「放課後、昨日言ってたケーキ屋さんにみんなで行くの。七夕スペシャルパフェ。ラブも行くでしょ?」 「そうだね」 「蒼乃さんや山吹さんも誘う?」 「どーかな、ふたりとも忙しそうだから」 「そっか、残念だね」 予鈴を合図に、あたし達は席に着く。 あたしは授業に没頭する。 この春、著しく成績が下がって、お母さんは学校から呼び出しを受けた。 けど、お母さんは何も言わなかった。それが、かえって辛くて、あたしはお母さんに八つ当たりをした。 そんなあたしに、お母さんは言った。 「ラブ、せっちゃんの所に行きたいなら、構わないのよ」 「えっ……」 あたしは言葉を失った。 「ラブの気持ちくらいわかるわ。これでもあなたの母親だもの。 けど、約束して。いつかせっちゃんとまた会える日のために、自分を磨いておいてほしいの。 あなた達が再会した時、せっちゃんがもっとラブを好きになるように」 お母さん、ありがと。あたし、ちゃんとするよ。 いつか、せつなと一緒に居られるようなあたしになるために。 それからだ。あたしの成績はぐんぐん伸び、気づけば勉強が面白くなっていた。 せつなと暮らしていた頃の特訓で、基礎は叩き込まれていたらしい。 両親や先生だけでなく、美希たんやブッキーにも誉められた。 それでも、相変わらず夢は見た。 離ればなれになったばかりの頃は、毎晩のように見ていた夢。 回数こそ減ってはいたが、時々思い出したように定期的に見てしまう。 まるで彼女の居ない現実を、目の当たりにさせるかのように。 せつなの夢を見た日は、なかなか寝付けない。 朝の夢の残滓を引きずるように、ベッドの中で悶々とする。 せつなの声を、指を、舌を、あたしの身体は痛いくらいに覚えてる。 今夜もそうだった。 あたしは、パジャマにそっと触れる。 せつなのとおそろいの、ピンクのパジャマの中に、優しく手を差し入れた。 これは、せつなの指。 胸の突起を転がす。物足りない。唾で指を湿らせ、もう一度つまびいた。 これは、せつなの舌。 「ふ……」 愛しい人を思い出し、声がもれる。 胸への刺激は続けながら、もう片方の手を下着の中に差し入れる。 熱い潤いを感じ、塗り広げていく。中心に息づいた芯を、中指で左右に押しながら揺さぶる。 快感が全身に伝わってゆく。 「せつなっ!せつなあっ!」 何度も腰が跳ね上がり、あたしは果てた。 せつなを感じ、せつなをなぞる行為に夢中になった。 だから、気づかなかった。一瞬、赤い光が部屋を満たしたことに。 「はあ……はあ……」 まだ息の荒いあたしの脚に遠慮がちに触れる、誰かの細い指。 余韻に震えるあたしに生まれる、驚きと戸惑い。 その指は、ぴんと突っ張るように伸ばしていたあたしの脚を開く。 暗闇であたしの中心を探り当て、忍び込む。 馴染みのある感覚。この感じ、あたしのここは覚えてる。 愛しい指は、ノックするように抜き差しを繰り返した。 「ううっ、あん!あん!」 声を押し殺し、啼く。叫ぶ。大きくなる確信。沸き上がる歓喜。こぼれ落ち、シーツに染み込む涙。暗かった世界は、真っ白になった。 ぐったりしたあたしに、せつなはキスの雨を降らせる。 「帰ってくるなら連絡してよ……」 「恥ずかしいラブの姿を見たかったから」 「もう!」 「ふふ、驚かせた?ごめんなさい。けど連絡はできなくて。何故かメールも電話も繋がらないの。今、原因を調査中」 「今日は休暇?初めてだね、会いに来てくれるの」 「ええ。今日だけは絶対帰るって、行く前から決めてたから。ウエスターやサウラーも呆れてたけど」 せつなは楽しそうに笑った。 たくさん話した。せつなの仕事、ラビリンスの様子。 復興を最優先にするために、リンクルンを鍵のかかる場所にしまいこみ、その鍵をサウラーに管理してもらっていたこと。 復興が一段落し、いざリンクルンを取り出してみると、電話もメールもできなくなっていた。 けど、せつなはがんばれた。 七夕には帰る。あたしに会いに。そう決めていたから。 そして……。一人寝の夜のこと。あたしを想い、せつなもひとりで苦しんでいたんだ。 あたし達って、似た者同士なのかな。 「これからもっと忙しくなるの。でも、必ずまた来るわ」 「あたし、せつなが」 「待って。わたしに言わせて。いつか、いつか大人になって、ラブが自由にどこにでも行けるようになったら……ラビリンスに来てほしいの!」 「……」 「返事は?」 「……ずるい」 「何が?」 「あたしが先に言うつもりだったのになー。いつかラビリンスに、せつなの側に行かせてほしいって」 「ラブ……約束よ?」 「もちろん!せつなの側がいい。せつなの側じゃなきゃ、いやなの」 抱きしめたせつなから、想いがあふれてる。たぶん、あたしからも。 たとえ住む場所は離れてても、心は離れない。 誓いの口づけ。七夕の夜に、将来を誓い合う恋人たちのシルエット。 織姫と彦星も、きっと天の川から見てる。 あたしはこの夜を、一生忘れない。
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「おやすみなさい、ラブ」 部屋に戻りカーテンを閉める。電気を消す。 訪れる静かな暗闇。 かつては私の心の象徴だった闇も、今は、こんなに優しく温かい。 ラブが選んでくれたパジャマと枕。 おかあさんが干してくれたんだろう。布団がぽかぽか温かく良い匂いがする。 愛情に満ちた部屋。調度品の一つ一つが語りかけてくる。 ――幸せになりなさい――って。 名も無き少女時代、ただ震えて泣き叫ぶばかりの毎日。 私はここにいるわ。 誰か気がついて! 誰か私を――私を見て! ただ抱きしめて欲しかった。必要だと言って欲しかった。 ひとりきりで生きていくには、私の心は――弱すぎた。 どうしても必要なのに、手に入らないのなら、憎むしかないじゃい。 悲しくて、苦しくて、辛いのなら、考えるのをやめるしかないじゃない。 「我が名はイース! ラビリンス総統メビウス様が僕」 不安を忠誠に、寂しさを憎しみに変えて戦い続けた日々。 信じていた。いつか、きっと、お前が必要だって、そう言ってもらえると信じていた。 結局与えられたのは、凄まじい苦痛と、苦悩と、孤独なままの死。 アカルンがくれた新しい命と、そして知る本当の絶望。 何も持っていなかった私が、唯一持っていたもの。持っていたはずだったもの。 無垢な心と、人を愛する資格。それすら失ってしまったこと。 あるはずのない希望の光。その先にあなたが居た。 生きる資格も、優しくされる資格もない私に、溢れるばかりの愛情や喜びを与えてくれた。 ラブ、あなたが好き。 あなたに出会えてよかった。 とても感謝してるの。そして、愛しているわ。 「せつな、いいね?」 「ええ、もう大丈夫よ。何があっても後悔はしないから」 緊張した面持ちで話す私に微笑みかける。そんなに固くならなくてもいいよ。寂しさをまた一 つ埋めるだけだからって。 恥ずかしさに震えている、薄明かりに照らされたラブの裸身。 引き締まって張りがあって、生命力に満ち溢れていて。そして、美しかった。 ラブも怖いんだ。恥ずかしいんだ。そして不安なんだ。 本当に、こんなことをしていいのかって。 ラブの覚悟を感じる。 分かち合うつもりなんだ。私の寂しさも苦しみも。自分がこれから掴んでいく喜びも幸せも何 もかも。 一緒に生きていこうって。一緒に幸せを掴もうって。これはそのための儀式。 「せつな。綺麗だよ」 自分の容姿に興味を持ったことなんて無かった。でも今は感謝しよう。ラブにそう言ってもら える姿に生まれたことに。 優しさと思いやりに満ちた眼差しで見つめられる。体から力が抜け、ラブの体に吸い寄せられ る。 ラブの瞳が迫ってくる。均整の取れた美しい顔。ラブの匂いは太陽の香り。 おかしいわね、太陽に匂いなんてない、でもそう感じるの。 唇が触れ合う。それだけで体に電流が走る。 何度目かのキス。そこから伝わる想い。 愛してる――愛してる――大好きだよ――いっしょに幸せになろうねって。 ラブの舌が唇を割って入ってくる。そっと差し出した私の舌と絡み合う。繋がっていく。 二人の想いが溶けていく。 夢中になって求め合った。何かに急かされるように。足りない、足りない、まだ足りないのっ て。 互いの肌を頬でなぞる。滑らかさを確かめる。匂いに浸る。体温を感じあう。 指で、舌で、敏感な部分を刺激しあう。 「せつな。心臓の音、すごく激しくなってる。ドクン、ドクンって」 「ラブだってよ。ずっとこうして聞いていたいくらいに」 ラブの唇が私の胸の先を捉えた。吸って、歯で軽く転がして、もう片胸をつまんだり、爪で軽 く引っかいたりした。 「うっくっ、つぅぅ――――あっ、あっ、んん~~くぅぅ」 行き場の無い快楽が蓄積し、切なさと共に苦しみに変わる。その手前でラブは動きを止める。 荒れる呼吸を静めながら、今度は私が責める。同じように。優しく、奏でるように。 「あっ、いぃ、せつなっ、そこっ、うっ、あっ、あ、あっ」 精一杯膨らんだラブの小さな突起。唇で引っ張り、舌で嬲り、指で弾く。その都度、ラブの体 はしなり、仰け反り、悶える。 ラブの体はラブのもの。本来はラブが意識し、動かすもの。 今は私が動かしている。私の意志がラブの中に入りこんでいる。互いの意識が交じり合い、結 び合い、一つになる。 私の体はラブのもの。ラブの体は私のもの。 もっと繋がりたい。もっとくっつきたい。溶け合って一つになりたい。二度と寂しさなんて感 じないくらいに。 知識なんて無い。テクニックなんてあるはずもない。 でも互いに同じ年の女の子。感じた場所をすぐに相手の体に返す。伝え合う。 喘ぎ声が漏れる。体に眠る本能が呼び起こされる。夢中になって感じた。感じさせた。 もっと、もっとって。 空気は冷えているのに、体はどんどん熱を帯びる。その熱を奪い合うかのように激しく求め合 った。 まるで――そう。まるで、どっちが相手のことをより好きか――競い合っているみたいに。 ラブの真剣な視線に、一瞬我に返る。 「ねえ、せつな。あれから――自分で――した?」 「えっ、ええっ――――。そんなこと、しないわ」 この前教えてもらったこと。それは……自分ですること。 女の子の体は、刺激を繰り返すほどに敏感になっていく。感じやすくなって、昇り詰めやすく なるんだってこと。 でも、私はできなかった。自分の中の何かを汚してしまうような気がして。裏切ってしまうよ うな気がして……。 私の体はラブのもの。だから、ラブだけが自由にしていいんだって。 「しょうがないな、せつなってば」 「ごめんなさい……」 怒られてしゅんとなる。また迷惑をかけてしまったのかもしれない。一緒に感じようって約束 したのに。 「大丈夫だよ。だけど、荒療治するよ?」 「うっ、うん、頑張るわ」 ラブの体が私の体を滑るように下がっていく。ベッドから落ちるんじゃないかってくらいに。 「何をするの?」 「せつなの、大事なところにキスをするんだよ」 「えっ、嫌っ、ダメよっ! それはダメ、嫌っ、汚いもの!」 ラブが構わず舌をすべらせる。下腹部からあそこに向けて。 嫌悪感と恐怖感で気が変になりそうになる。 嫌っ――嫌っ!――やめてっ! 私がっ――私がラブを汚しちゃう! おへそから走った舌は、私の大事な部分を避けるようにふとももに下りていく。そこだって、 濡れていたはずだ……。 再び上がり、焦らすように、また下りていく。 羞恥で顔が、意識が真っ赤に染まる。頭を、体を振って懸命に逃げようとする。 ダメッ、やめてっ、それだけはダメッ。抵抗したい気持ちと、しちゃいけない義務感。 意識の葛藤とは裏腹に、期待を込めて秘部は蜜を溢れさせ、まだかまだかと待ち構える。 ついにラブが動いた。割れ目の下の部分から、溢れる蜜を吸い取るように動く。 丁寧に丁寧に舐めていく。 『つぅぅ――むぅぅ――いやっ! あっ、あっ、あん、あん、あん』 「柔らかいね、せつな。こんなに……柔らかいんだね、女の子のここって」 優しく、丁寧に、だけど容赦なく私を責める。指でぴっちり閉じたつぼみを開き、舌を差し入 れてくる。 与えられる快楽だけでも壮絶なのに、私のあそこがラブの口を汚している。そう考えると、罪 悪感が更に私を苦しめる。 「もうっ、もういいっ、やめて、ラブ。もういいの、もういいからっ」 私の嘆きに反応するように、さらにラブは激しく舌を動かした。割れ目の上に到達して包皮を めくり、核を舐めた。 上から下に。あるいは押し込むように。咥えるように。 全身に何かが走る。今まで感じてきた電流のような、そんな生優しいものじゃなくて。 真っ白な閃光。あるいは槍のような、巨大な何かが私を串刺しにする。 まぶたの裏が眩い光にあてられたかのようにチカチカする。 もう何をしているのか、何をうめいているのかも認識できない。 全身を溶かされて舐められてるような気がした。快楽と呼ぶには激しすぎる衝撃。 頭がおかしくなり自分が壊れてしまう気がした。 突然、上空に放り出されたような感覚に襲われる。次の瞬間には奈落の底に落下していく。 巨大な快楽の嵐の通過に、体が狂ったように痙攣し、あそこはビクンビクンと勝手に動いてい る。 「どうだった?」 ほんの一瞬だけど、意識を失っていたのかもしれない。気がついたら心配そうに私を見つめる ラブがいた。 「今のがね、イクってことだよ。ごめんね、無理させちゃって。びっくりしたよね」 優しくラブが私を抱き寄せてくる。私の髪を、頭を撫でてくれる。 「今夜はもう、このくらいにしておく?」 ラブの瞳に吸い込まれそうになる。優しい目。私の幸せへの願いに満ち溢れていた。 それに安心して、やっと状況が理解できた。 ラブは、イッたことのない私のために、あんなことをしてくれたんだ。 一緒に感じようって約束したのに。 「大丈夫よ、ラブ。まだ頑張れるわ。今度は一緒に、そう約束したもの」 「うん、そうだね、そうだったよね」 力の入らない体に鞭を打ってラブを愛でた。敏感になった肌がこすれあうだけで喘ぎ声がこぼ れる。 そしてラブが動いた! 自分のあそこを私のあそこにくっつけるようにして位置を合わせる。 お互いにまだほとんど生えてもいない。濡れてやわらかくなった剥き出しの粘膜がこすれあう。 胸の先が互いにぶつかり合い、倒しあい、固く尖る。 ひだがひだを割り、複雑な形の秘肉が刺激しあい、想像を絶する快楽を生み出した。 「うぅ、くぅぅ、いぃ、くぅ。ラブぅ、ダメっ、もうダメッ!」 「せつなっ、あん、あっ、あん、あっ、あっ、うぅ~~~~!」 何も考えられない。ただ迫り来る快楽に身を任せる。ただ一つ確かなこと、それは私がラブの 腕の中に居ること。 体が震える、自分の意志と関わらず。 来る! 快楽の槍に全身を突き上げられ、投げ出され、突き落とされる。 ハァ――ハァ――ハァ――ハァ 荒い呼吸が、静まり返った部屋に響き渡る。 でも、落ちた先にはラブがいた。いつだって側に居てくれる。私の――大好きな人。 ラブの体も震えていた。痙攣していた。お互いの震えを抑えるかのように、力の入らない体で 抱きしめあった。 「どう……だった、せつな。良かった?」 「馬鹿――――もう、疲れたわよ」 二人で笑いあった。そして、初めて肌を合わせた時のように、全身を寄せあって寝ることにし た。 心地よい疲れと充実感。愛しい人の火照った体に包まれた、これまでの人生で最も幸せな眠り だった。 「おはよう、せつなっ!」 「おはよう、ラブ」 手を繋いで登校した。肩や頬を寄せ合うことが多くなった。見つめあう時間が増えた。 これまでと少しだけ違った毎日の訪れ。 「どうしたのラブ、せつな。なんだか様子がおかしいわよ」 「いつも本当に仲が良いよね、うらやましくなっちゃう」 美希やブッキーにもからかわれた。本当のことはもちろん内緒だけど。 「ねえ、ラブ。私たちって恋人同士になったってことかしら?」 「そうだね。でも、せつなの思うように考えてくれたらいいんだよ」 「私の思うように?」 「愛し合ったと思ってくれてもいいし、いけない遊びだったと思ってもいいんだよ。 あたしの、あたしたちの想いを伝えあっただけ。せつなは何も失ってないんだからね!」 なら、私の答えは一つしかない。真っ直ぐ見つめて、言葉をつむいだ。 「私はラブが好き。愛してるわ。ずっと一緒に居たいの」 「あたしもせつなが好き。せつながいいんだ。もちろんずっと一緒だよ」 ラブの最高の笑顔を心に刻みながら思った。 私はもう寂しくない。 愛している。愛してくれる人がいる。 手を取りあって、生きて行きたいと思える人がいる。 本当にずっと――いっしょに居られたらいいのにね。 先のことはわからない。だから、今を精一杯生きよう。そして愛していこう。 私は心の中でそう誓った。 避2-176へ
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せつなの声。 せつなの仕草。 せつなの笑顔。 そして、せつなの涙。 あたしが失ってしまったもの―――――大切にしていたもの。 せつなと過ごす時間。それは温かくて、愛しくて、儚いもの。 これ以上ないと思っていた、あたしの幸せの価値観を塗り替えてしまったもの。 チュン――チュン――チュン 小鳥のさえずりに耳を澄ます。今朝は目覚ましのお世話にならなかった。 軽く背伸びをして元気に飛び起きた。 軽やかに身支度を整えて、朝食を済ませ、学校に向かう。 「おはよう、せつな。今日も頑張ろうね」 せつなの写真に向かって語りかける。 「おっはよ~~美希たん、ブッキー。まったね~」 最近張り切ってるねって? また明るくなったねって? そりゃそうだよ。いいことがあったんだもの。 もう、あたしの胸につけられた印は消えちゃった。 理想すら超えた未来のせつなも、鮮明には思い出せなくなってきている。 唇の跡、写真に撮れば良かったかな。絵が書けたなら、せつなの姿を残したかったな。 でも、いいんだ。 もう、あたしは明日に希望が持てるから。 明日に繋がる未来に、再び会える日が来ることを信じられるから。 ねえ、せつな。せつなは今、何をしているの? きっと、誰かのために、精一杯頑張ってるんだよね。 ときどき、寂しくて泣いてるのかな。あたしもそうなんだ。 でも、今なら思えるよ。 引き裂かれた日々だって、宝物にできるって。 会えない時間が、二人の想いを育てられるって。 だから今は貯めようね。 寂しい気持ち。会いたい気持ち。大好きだって気持ち。 大人になったせつなは、とても綺麗だったよ。優しかったよ。素敵だったよ。 だから、あたしも魅力的な女性になるんだ。 せつなが大人になったあたしと出会った時、想像以上だって思ってもらえるように。 せつなの明日と未来に、希望を持ってもらえるように。 大人になったせつなと、共に歩めるあたしであるために。 あたし、精一杯がんばるよ。
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「うわぁ、やっぱりお正月は人が多いよねっ!この神社にこんなに人がいるところなんて、お正月以外には見たことないよ~。」 「こら、ラブ。そんなにはしゃがないの!ここに初詣に来るのは、初めてじゃないんだから。」 「だって、美希たん。いつもは家族で来るから、三人で来るのは初めてだよぉ。あ!綿あめの屋台が出てる!」 「ラブちゃん、まずはお参りをしてからね。ほら、あそこで手を洗って。」 はしゃぎまくるラブを、呆れた顔でたしなめる美希。苦笑しながら、準備良くコートのポケットからハンカチとお賽銭用の小銭を取り出す祈里。 中学一年生の三人は、初めて三人だけで、地元の神社に初詣にやって来た。 三人それぞれに何事かを一心に祈ってから、お正月だけは開く社務所で、お守りや破魔矢を見る。そのうちラブが、おみくじを引こうと言い出した。 「せーのっ!」 神社の境内の隅で、三人同時に自分のおみくじを開く。 「やったっ!あたし大吉!」 「あ、ラブちゃんも?わたしも!」 嬉しそうに声を上げる二人に、美希は目を丸くする。彼女の手の中にあるおみくじは・・・これまた大吉。三人引いて三人とも大吉なんて、この神社のおみくじには大吉しか入っていないのか?しかし、一瞬浮かんだその疑問は、あちこちから聞こえてくる声で、すぐに打ち消された。 「お母さん、吉だって。これって、いいの?悪いの?」 「お前、中吉か。いいなぁ。俺なんて末吉だよ~。」 (別に、みんながみんな大吉ってわけじゃないのね。とすると、やっぱりアタシたちって、今年は揃いも揃って、それだけ運がいいってことなのかな・・・。) 「どしたの?美希たん。」 「ひょっとして、あんまり良くなかった?」 心配そうなラブと祈里の顔に、美希はハッと我に返る。 「そ、そんなことないわよ!アタシも大吉だったわ。」 「えーっ、その割りに反応遅かったけどぉ?ちょっと見せて!」 いつになく疑わしげなラブに、美希はしぶしぶ、手に持ったおみくじを見せる。 「うはぁ、ホントだ!凄いね。今年は三人揃って、幸せゲットだね!」 打って変わって底抜けの明るさを放つラブの声に、美希もようやく笑顔になる。が、今度はやけに得意そうな声が聞こえてきて、再び顔が引きつってきた。 「なになに?勉学!怠り無く精進せよ。うーん、まぁ頑張れってことだよねっ、美希たん。失せ物、って何?なくし物?えーっと、遅かれど出る。良かったね!それから・・・いえ・・・いえうつり?北は凶。あ、北の方に引越ししちゃダメなんだって。やっぱり寒いってイメージだからかなぁ。それからぁ、れんあい・・・」 「ちょっと、ラブ!なに人のおみくじ勝手に読んでるのよっ!アタシ別に何もなくしたりしてないから。それに、勝手に人を引越しさせるんじゃないわよっ!」 美希は自分のおみくじを引っ込めて、代わりにラブのおみくじを強引に三人の目に触れさせる。 「ほらぁ、ラブのだって、いろいろ書いてあるじゃない。勉学、ただひたすら精進せよ。これって、とにかく必死で頑張らないと知りませんよ、って意味なんじゃないのぉ?」 「ええっ、美希たん。そんな殺生なぁ!」 「まだあるわよ。争い事。勝ち難し、退くが利。」 「ど、どういう意味?」 「えっと、喧嘩したって勝てなくて怪我をするだけだから、意地になって何度も向かって行ったりしないで、さっさと逃げなさい、って意味ね。」 「とほほ・・・。ブッキー、こんな短い言葉なのに、意味はそんなに長いのぉ?」 「それからぁ、待ち人は・・・」 ラブの泣き顔にいたずらっぽく微笑んでいた祈里が、その次の美希の言葉を聞いて、急に驚いた顔をして自分のおみくじを見た。 「わたしのも・・・。待ち人って、良いとされている方角はラブちゃんと一緒。しかも、必ず来るって。」 「えっ?アタシのは・・・多少遅かれど来る。あっ、方角は二人と一緒だわ。」 さすがにここで三人、顔を見合わせる。 「全員・・・同じ方向から待ち人がやって来るのかな。」 「まさか、三人揃って?あ、でも美希ちゃんは「遅かれど来る」なんだから、一緒には来ないのかしら。」 「え~・・・どうしてアタシだけ遅いのかしら。失せ物も、遅かれど、って書いてあるし。」 「美希たん、なくし物なんて無いって言ってたじゃん。」 「そ、そうだけど、書いてあったら気になるじゃない!」 ひとしきり騒いだ後で、改めて顔を見合わせる三人。 「でもさぁ、何だか不思議だよね!揃って大吉だっただけじゃなくて、こんなところに共通点があるなんて。」 「そんな呑気なこと言って~。ラブのが一番意味深じゃない。心して待て、なぁんてさ。」 無邪気な笑顔を見せるラブに、わざとらしく真面目な顔を作ってみせてから、美希はさっきから気になっていたことを、祈里に質問してみた。 「ねぇ、ブッキー。そもそも『待ち人』って何?待っている人、っていう意味?」 さすがに即答は難しかったのか、祈里は鞄の中から小さな辞書を取り出す。 「えーっと・・・『待ち人』っていうのは、『何らかの意味で、来て欲しい、会いたいという出会い全般に関する人のこと。自分の運命を導く人。運命の相手。』だって。」 「運命の相手って・・・ひょっとして、彼氏とか!?」 「か、彼氏って、美希ちゃん・・・。今年中に彼氏ができるなんて、二人はともかく、女子校のわたしには絶対無理だから!」 「あはは、冗談よ、冗談。そもそも『恋愛』っていう項目が別にあるんだから、そうとは限らないんじゃない?」 心なしか饒舌になっている美希と、いつになく顔が赤くなっている祈里。そんな二人をよそに、ラブは目をキラキラさせる。 「運命の人かぁ。きっとあたしたちそれぞれにとって、すっごく大切な、すっごく素敵な人だよね。どんな人なんだろう・・・。なんか、そんな人が現れるのかもって思っただけで、今年も幸せゲットって感じ。」 ラブの言葉に、美希も祈里も顔を見合わせて、ニコリと微笑んだ。 「そうね。アタシたちの運勢、今年は完璧だもの。」 「うん。きっと素敵な年になるって、わたし、信じてる。」 ☆ ☆ ☆ あれから二年。 「穏やかなお正月になって良かったわね。」 慌ただしい昨日までとは、空気まで違って感じられる元日の朝。美希はにこやかに、傍らの親友を見やる。 「ええ、ホントに。」 同じくにこやかに答える祈里は、山吹色を基調にした可愛らしい着物姿。かく言う美希は、遠目には黒に見えそうな濃紺の地に、大ぶりの花模様をあしらった着物を大人っぽく着こなしている。 二人が向かっている先は、四ツ葉町にある、あの神社だ。 「それにしても、あの神社に揃って晴れ着でお参りに行ったら、きっと目立つわね。」 ちょっと肩をすくめてみせる美希に、祈里は相変わらずのんびりとした口調で返す。 「だって、今日は特別だもの。美希ちゃん、ちゃんとアレ、持ってきた?」 「もちろん。ちゃんと『失せ物』にならずに仕舞ってあったわよ。」 美希と祈里は、互いに小さな細長い紙片を手にして、笑い合った。 あの神社に、みんなでお礼参りに行こう。そう言い出したのはラブだ。 去年もみんなで初詣に行ったものの、戦いやその後のダンス大会やら様々なごたごたで、三人ともあのおみくじのことは、きれいさっぱり忘れていた。 今年はぜひともみんなでお参りに行って、ちゃんとお礼を言って来よう。そして、三人のおみくじを神社の木に結んでこよう。そう提案したラブの気持ちは、そのままみんなの気持ちでもあった。 「あ、来たわ。」 向こうから、二人の少女が小走りで近づいてくる。 淡い桃色の地に小花を散らした可憐な着物を着たラブと、もう一人。 エンジ色に金の縫い取りが入ったあでやかな着物姿で、着物に負けないくらい晴れやかな笑みを浮かべている少女は――。 三人のおみくじに共通して書かれていた方角を示す文字をその名に持った、三人の大事な、『待ち人』だった。 ~終~
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メビウス統治下のラビリンスに、祝日というものはなかった。一日にある程度の休憩時間は存在したけれど、それも全くの自由というものではなかった。 復興にあたって、祝日を設けることを提案したのは、あのウエスターだった。彼はインフィニティを探すという名目で、相当に散策を楽しんだからだろうか。まとまった時間を作り、旅行することを人々に勧めた。 その結果、恐らくウエスターの思惑とは違った形に事は進んだ。ラビリンスの人々は祝日を使って、被害を与えてきたパラレルワールドに出向いた。そうして、これまでラビリンスが行ってきた罪を、真摯に見つめ直し、これからどうすべきかを、一人ひとりが考えるようになった。 娯楽として旅行を楽しむという、ウエスターの発想は、娯楽を知らないラビリンス人には、まだ理解できなかったのだろう。突然手に入れた時間に使い道を見出せず、途方に暮れていた。 せっかく設けた祝日に、パラレルワールドを見て回ることを提案したのは私だ。これからのラビリンスは、全てをメビウスのせいにして、過去のことにするわけにはいかない。メビウスの罪を償うのは、残されたラビリンスの人々なのだから。 パラレルワールドとの交渉では、サウラーが活躍している。口が立ち、人心掌握も得意で、群を抜いて外交に向いているのだ。彼が関わったパラレルワールドの安定率は高い。とはいえ、この能力でこれまでに、随分と制圧してきたことを思えば、複雑だとも呟いていた。 最初の頃は、私もそれなりに動いていたけれど、男尊女卑の文明が多いという事実を受けて、この手の活動は少なくしている。 ウエスターと私は、主に内政に携わっている。ウエスターは公の場に顔を出しては、人々と草の根の交流を図っている。そう、例えるならミユキさんのような、そういった存在になってしまった。老若男女問わず、人気者になっている。これが彼の才能だったのか。今、ラビリンスに一番必要な存在かもしれない。不思議なものだ。 私はと言えば、インフラなどの社会整備、政治体制や治安維持などを考えては、暫定会議で議論に参加したり、現場視察したり、そんなところ。どうも、私には裏方が向いていると思う。 過去のラビリンスについての資料は、メビウスに抹消され、参考にできない。そのため、地球を始め、パラレルワールドの体制を参考にしている。 メビウスの体制も、確かに効率的ではあっただろう。でも、人間は機械ではないから。プリキュアがきっかけとなり、メビウス体制が崩壊したのは間違いないけれど、人々に溜まっていた疑問や我慢、そしてメビウス自体の限界もあったのだろう。 こんなことを追想しているのは、あれからもうすぐ一年になるからだろうか。あちらはクリスマスシーズン、四ツ葉町も着飾っていることだろう。 クリスマスは元々、宗教から来ているもので、ラビリンスには適さない。それでも、これまで家族関係も希薄だったラビリンスの人々のため、家族と過ごす時間を大切にしよう、という目的の祝日は設けられた。 日本のように、異性と過ごす日というのができるのは、まだ先の話だろう。 ラビリンスで作った暦と、地球の暦は異なるから、双方の休日が重なるのは、月に一日から三日ぐらいだ。その時には、できるだけ桃園家で過ごすようにしている。 アカルンのおかげで、ラビリンスからでも、リンクルン同士で連絡できるのはありがたい。クローバーが揃うことも少なくない。 今度のクリスマスに、ラブ、美希、ブッキーの3人は、集まってパーティーすることを決めている。 結局、クローバー4人とも、彼氏といえる存在はいない。それに、そのことを気にも留めていないのだ。 以前、その話になったことがあるけれど、想像できないだの、欲しいと思わないだの。年頃の娘としてどうなのかと、笑いあったものだ。 私もクリスマスパーティに誘われた。もちろん行きたいけれど、ラビリンスの方は休日ではないから、ひとまず保留にしておいた。 その後、私はクリスマスを挟む仕事を頼まれた。私がその返答に一瞬の迷いを覚えた時、その場に居たサウラーが、変わりに引き受けてくれた。 その時に、もっと正直になってもいい、などと言われ、お見通しのようで悔しいやら、頼もしい仲間がいてしあわせに思うやらだった。 また、サウラーから話を聞いたウエスターは、お土産にクリスマス限定ドーナツを要求してきた。 何故か彼は、ここのところ引っ張りだこで忙しいようだ。人気者は辛いだなんて、全く辛そうに見えない顔で笑いながら言っていた。流石に、体力に自信があるだけはある。ウエスターが疲労困憊したなんて話、聞いたことが無いもの。 サウラーとウエスターには、おみやげ兼クリスマスプレゼントに、何かあちらで探してこよう。ドーナツとは別にね。 クリスマスに私は、ラビリンスの写真をラブたちに見せようと思う。ラビリンスに戻った笑顔で、ラブたちも笑顔になるはずだから。 ああ、どうしよう。お母さん。私、もう十分に、しあわせになっているわ。 それでも、過去の自分がどうしても許せない。だから、より多くの人をしあわせにできるように、精一杯、頑張ろう。 撒いてしまった不幸の何倍も、しあわせを届けよう。しあわせのプリキュア、それが私の使命なのだから。 クリスマスは、ラブたちに、しあわせを届けたい。 といっても、きっと私のほうが、ずっとしあわせになるのだろうけれど。 Fin.