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データ 習得技 レベル タマゴ・その他 マシン データ ポケモン タイプ1 タイプ2 特性1 特性2 夢特性 HP 攻撃 防御 特功 特防 素早 合計 チルット ノーマル ひこう しぜんかいふく ノーてんき 45 40 60 40 75 50 310 チルタリス ドラゴン ひこう しぜんかいふく ノーてんき 75 70 90 70 105 80 490 進化条件 チルットLv.35→チルタリス 習得技 レベル レベル技 技名 習得レベル チルット チルタリス りゅうのはどう - 進化時 ついばむ - Lv.1 つつく Lv.1 なきごえ Lv.1 チャームボイス Lv.4 Lv.1 しろいきり Lv.8 Lv.1 みだれづき Lv.12 りんしょう Lv.16 りゅうのいぶき Lv.20 しんぴのまもり Lv.24 うたう Lv.28 コットンガード Lv.32 とっしん Lv.36 Lv.38 ムーンフォース Lv.40 Lv.44 ほろびのうた Lv.44 Lv.50 ゴッドバード - Lv.56 タマゴ・その他 技名 種類 くろいきり タマゴ フェザーダンス タマゴ おどろかす タマゴ はねやすめ タマゴ おいかぜ タマゴ ドラゴンダイブ タマゴ きりばらい タマゴ マシン マシン技 No. 技名 習得可否 チルット チルタリス 001 とっしん 〇 〇 004 こうそくいどう 〇 〇 007 まもる 〇 〇 014 アクロバット 〇 〇 018 どろぼう 〇 〇 019 チャームボイス 〇 〇 020 くさわけ 〇 〇 024 ほのおのうず 〇 025 からげんき 〇 〇 027 つばめがえし 〇 〇 028 じならし 〇 032 スピードスター 〇 〇 047 こらえる 〇 〇 049 にほんばれ 〇 〇 050 あまごい 〇 〇 052 ゆきげしき 〇 066 のしかかり 〇 〇 070 ねごと 〇 〇 078 ドラゴンクロー 〇 079 マジカルシャイン 〇 〇 085 ねむる 〇 〇 097 そらをとぶ 〇 〇 100 りゅうのまい 〇 103 みがわり 〇 〇 107 おにび 〇 113 おいかぜ 〇 〇 115 りゅうのはどう 〇 〇 117 ハイパーボイス 〇 〇 118 ねっぷう 〇 〇 125 かえんほうしゃ 〇 127 じゃれつく 〇 〇 130 てだすけ 〇 〇 135 れいとうビーム 〇 〇 141 だいもんじ 〇 149 じしん 〇 152 ギガインパクト 〇 156 げきりん 〇 160 ぼうふう 〇 〇 163 はかいこうせん 〇 164 ブレイブバード 〇 〇 168 ソーラービーム 〇 〇 169 りゅうせいぐん 〇 171 テラバースト 〇 〇
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ヌルット・フィスト アンコモン 水 4 呪文 ■シールドトリガー ■相手のパワー3000以下のクリーチャーを1体選び、持ち主の山札の1番上に置く。 (F)オザーッス! 作者:アポロヌス 代理作成:まじまん グシャットフィストの水文明版。 評価
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ルット・コラッジ 種族 アカズキン 性別 男子 年齢 11歳 職業 ** 一人称 俺 二人称 お前 ●詳細 ごくごく普通の男の子、だけど家族いない。全員黒犬に殺された。 自分も殺される所を若い番人さんが助けてくれてそのままその番人さんに育てられる。 なのでここまで育ててくれた番人さんのため色々頑張ってます。 ちなみにその番人さんはルットが11歳の誕生日に亡くなった ※随時更新
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製作者 エルバッキー パイロットアイコン オリジナルサポートセンター それも私だ氏製作『OSC_0000_0070.bmp』 ユニットアイコン オリジナルサポートセンター それも私だ氏製作『OSC_0000_1055U.bmp』 基本設定 名前:裁藤 朱峰(さいとう すみれ) 性別:女性 年齢:17歳 生年月日、星座、血液型:8月4日生まれ ふたご座 B型 身長:170cm 体重:57kg スリーサイズ:B 86 W 58 H 85 一人称:あたし 二人称:基本は名字呼び捨て、父親は「おとさん」 鈴衣紬は「つむぎん」天巻景織子は「キョーコ」 学園 R女学園高等部2-Ⅰ 所属 R女学園特殊洋裁研究会『A・R(ア・ル)モード』会計 家族構成 父(バツイチ)、弟 R女学園特殊洋裁研究会『A・R(ア・ル)モード』所属。 『ズバッと決定、ズバッと実行』を信条とするしっかり者で、 A・Rモードの経理や運営、交渉事を主に担当する実質的責任者。 先の信条に違わず竹を割ったような性格と よく気が回ることでクラスメイトやモード会員から慕われている。 中等部でR女学園に進学したが、鈴衣紬とは クルセイド学園初等部からの付き合い。 趣味はメガネコレクション。(後述の能力に関する レンズの加工はA・Rモードで行っている) 備考:鈴衣紬からの呼称『さーちゃん』 能力 視界範囲の物質、生物のエネルギーの流れを見る能力 風水で言うところの『龍脈』に近い物が 有機物、無機物問わず見える能力。 遮蔽物の中や壁の向こうにいる相手のエネルギーは見えない。 彼女にとって肉眼での人間は血管や神経、脳波に生体電流、 能力者の場合は能力の波動と、その全てが収束された エネルギーの流れの塊に見えてしまう。 『いつもそれを見るのは気持ち悪いし、疲れる』という理由で 特注品のエネルギーの流れがない度なしメガネを常にかけている。 透明でも『遮蔽物を挟んだ先の物は見えない』という特性のため、 このメガネがあれば彼女の視界はごく普通の人間と変わらないものとなる。 なお、エネルギーの流れはどこかの高校生が見える死の線のように 見える流れそのものに害があるわけではない。 フェイティア 『AAA(ノーネーム)』 石突き部分が鉄球になっている三節槍。 なんとなく名前が思いつかなかったので この呼び方に落ち着いたらしい。朱峰の能力単体では、 エネルギーの流れが『見えるだけ』だったが、 AAAはこの能力に呼応した 『エネルギーの流れに関与する能力』を持っている。 その用途は様々で、主に朱峰は AAAを接点に大地のエネルギーを体力回復に使ったり、 地面の流脈に槍内部に蓄積させたエネルギーを打ち込み、 間欠泉のような衝撃波や地震攻撃を得意としている。 朱峰の持っているフェイティアがフェイティアだけに、 ライカ=ユグードは手合わせしたくも避けたくもある 微妙な存在になっている。 参戦シナリオ一覧 ※確認したものを明記しています。 欠けがあった場合、ご自由に追加してください ■『風鈴の旋律』 ■『鵯』 ■『スーツアクター羽賀』 ■『SRC学園のオ』(非戦闘キャラ)(公開停止中) ■使用傾向: やや戦闘要員寄り。 パイロット、ユニットデータ 裁藤朱峰 朱峰, すみれ, 女性, 人間, AAAA, 140 特殊能力 不屈, 1 切り払いLv1, 1, Lv2, 5, Lv3, 18, Lv4, 24 151, 125, 151, 127, 168, 149, 強気 SP, 60, ド根性, 1, 鉄壁, 8, 熱血, 14, 必中, 27, 見極め, 34, 鼓舞, 47 OSC_0000_0070.bmp, -.mid 裁藤朱峰 裁藤朱峰, さいとうすみれ, (人間(裁藤朱峰専用)), 1, 2 陸, 3, M, 5500, 160 特殊能力 装甲強化Lv1=非表示 110 !気力Lv2 (地上) 装甲強化Lv2=非表示 120 !気力Lv3 (地上) 装甲強化Lv3=非表示 130 !気力Lv4 (地上) 装甲強化Lv4=非表示 140 !気力Lv5 (地上) 装甲強化Lv5=非表示 150 (地上) 装甲強化Lv0.5=非表示 110 !気力Lv2 (水中) 装甲強化Lv1=非表示 120 !気力Lv3 (水中) 装甲強化Lv1.5=非表示 130 !気力Lv4 (水中) 装甲強化Lv2=非表示 140 !気力Lv5 (水中) 装甲強化Lv2.5=非表示 150 (水中) HP回復Lv1 (地上) HP回復Lv0.5 (水中) ダミー特殊能力名=フラーヴォ=リヴレーア 気力110以上で地上にいる場合に発動。;気力が10上がるごとに、装甲が100(水中では50)づつ上昇。 性別=女性 攻撃属性=夢 夢=解説 夢干渉 現実世界と意識世界の狭間に存在するモノをとらえる攻撃。 4900, 190, 800, 65 BABB, OSC_0000_1055U.bmp フェローゾ=フルット, 800, 1, 2, +0, -, -, -, AABA, +0, 格突P スピガ=ラーマ, 1100, 1, 3, -10, -, 5, -, AABA, +0, 地 AAA, 1400, 1, 1, +10, -, -, -, AABA, +0, 武JL1 アッソルート=ランツェ, 1900, 1, 2, +5, -, 30, 110, AABA, +0, 格地突JL1P === フラーヴォ=プロテッツォ, 解説=大地のエネルギーを引き出す 変身=裁藤朱峰(ハイパー), 0, -, -, 130, AL2 (地上) 裁藤朱峰(ハイパー) 裁藤朱峰, さいとうすみれ, (人間(裁藤朱峰専用)), 1, 2 陸, 3, M, 7000, 160 特殊能力 装甲強化Lv1=非表示 110 !気力Lv2 (地上) 装甲強化Lv2=非表示 120 !気力Lv3 (地上) 装甲強化Lv3=非表示 130 !気力Lv4 (地上) 装甲強化Lv4=非表示 140 !気力Lv5 (地上) 装甲強化Lv5=非表示 150 (地上) 装甲強化Lv0.5=非表示 110 !気力Lv2 (水中) 装甲強化Lv1=非表示 120 !気力Lv3 (水中) 装甲強化Lv1.5=非表示 130 !気力Lv4 (水中) 装甲強化Lv2=非表示 140 !気力Lv5 (水中) 装甲強化Lv2.5=非表示 150 (水中) HP回復Lv2 (地上) HP回復Lv1 (水中) ブースト=フラーヴォ=プロテッツォ ノーマルモード=裁藤朱峰 3 消耗なし ダミー特殊能力名=フラーヴォ=リヴレーア 気力が110以上で地上にいる場合に発動;気力が10上がるごとに、装甲が100(水中では50)づつ上昇 性別=女性 攻撃属性=夢地 夢=解説 夢干渉 現実世界と意識世界の狭間に存在するモノをとらえる攻撃。 4900, 190, 1000, 65 BABB, OSC_0000_1055U.bmp フラーヴォ=スピラーレ, 1600, 1, 3, +0, -, 90, -, -AA-, -10, 格M全AL3R変 AAA, 1600, 1, 1, +15, -, -, -, AABA, +0, 武JL1 アッソルート=ランツェ, 2200, 1, 1, +15, -, 50, -, AABA, +15, 突JL1変 メッセージデータ 裁藤朱峰 回避, はい、残念 回避, 素直なのは好きよ? ぶっちゃけ手の内が読めるし 回避, うわ、ノーコンにも程があるわ 回避, 気合入ってないのに当たるほど、人よくないわよ。.入ってたらなおの事だけど 回避, はい、お客さんのお帰りはあちらー。とっとと出てけ ダメージ小, んー、よくがんばった方? ダメージ小, ……蚊だってもちっと根性入ってるわよ? ダメージ小, 特洋研やってりゃこれくらいのケガは当たり前よ ダメージ小, 遊んでんじゃないわよ、空気読みなさいっての! ダメージ小, 当たって感激した? んじゃ速攻治すから ダメージ中, ちょっと、こちとら女の子よ?.少しは加減する配慮っての持ちなさいっての! ダメージ中, すぐ治るって事と痛くないってのは.パッと見似てる様で全然違うわねー ダメージ中, あたしもつむぎん同様、.自分の作った服汚されたら怒るタイプなんだけど? ダメージ中, もうトサカ来た、身ぐるみ剥いででも.この服の修繕代あんたから取っちゃるわ! ダメージ大, しょ、正直今の状況って、自力で帰って.自腹で服の修繕できるだけでもラッキー、ってとこ? ダメージ大, 三途の川でおとさんが手ー振ってるのが…….っていやいや、まだ死んでないし ダメージ大, ああもう、ジッとしてちゃやられるでしょ!.立ちなさいよあたしの体! ダメージ大, いいわ、こっちも覚悟キメたわよ。.あんたに大穴開けて、大の字で笑ってぶっ倒れる! 破壊, こんなボロボロの様見たら、おとさん泣くなぁ…… 破壊, あっちゃー……しくじったわ 脱出, あたしは何とか歩けるから。あとよろしくね 射程外, 思ったより長くないし、あたしが突っ込むしかないわね 射程外, びろーんと槍伸ばせりゃ届くかな…….って、夢見てんなーあたしー 攻撃, こちとら特洋研メンバー、なめたら痛い目見るわよ! 攻撃, 戦意を向けて来る相手にゃ、戦意で返す。.それがあたしの流儀! 攻撃, はい先陣切った! 一同あたしに続いて突撃! 攻撃, それじゃ行くわよAAA(ノーネーム)! 攻撃, はい、素直に道開ける道開ける!.ボサッとしてたら大穴空けるわよ! 攻撃(対ライカ=ユグード), 矛と盾ときたらぶつけてみたいのが人の性だけど…… 攻撃(対ライカ=ユグード), あー、お互い泣きを見ないうちに.今日はノーコンテストってのは、ダメ? 攻撃(対峰山裕介), はーい、ミッチー!.今日も元気にチェンジシルエットしてる? 攻撃(対峰山裕介), チェンジシルエットは30分が限度、.なら持久戦の一手かな……;ウソだけど 攻撃(対来瀬来課), おー、マジックミラー眼鏡?.いいじゃんいいじゃん、それどこで売ってたん? 攻撃(対神河千鳥), ストップ、電波の関与は範疇外…….てかあたしの人格保証はされてんのよね? 攻撃(対リースリング), ま、落ち着くトコに落ち着いたって感じか…… 攻撃(対姫宮留美), ソロバン勘定だけが取り柄か、確かめてみる? 攻撃(対空耳カオス), おホメいただきコーエーです、ついでに。.特洋研ルールその1『働かざるもの着るべからず』 かけ声, こちとら特洋研メンバー、なめたら痛い目見るわよ! かけ声, 戦意を向けて来る相手にゃ、戦意で返す。.それがあたしの流儀! かけ声, はい先陣切った! 一同あたしに続いて突撃! かけ声, それじゃ行くわよAAA(ノーネーム)! かけ声, はい、素直に道開ける道開ける!.ボサッとしてたら大穴空けるわよ! かけ声(対ライカ=ユグード), 矛と盾ときたらぶつけてみたいのが人の性だけど…… かけ声(対ライカ=ユグード), あー、お互い泣きを見ないうちに.今日はノーコンテストってのは、ダメ? かけ声(対峰山裕介), はーい、ミッチー!.今日も元気にチェンジシルエットしてる? かけ声(対峰山裕介), チェンジシルエットは30分が限度、.なら持久戦の一手かな……;ウソだけど かけ声(対来瀬来課), おー、マジックミラー眼鏡?.いいじゃんいいじゃん、それどこで売ってたん? かけ声(対神河千鳥), ストップ、電波の関与は範疇外…….てかあたしの人格保証はされてんのよね? かけ声(対リースリング), ま、落ち着くトコに落ち着いたって感じか…… かけ声(対姫宮留美), ソロバン勘定だけが取り柄か、確かめてみる? かけ声(対空耳カオス), おホメいただきコーエーです、ついでに。.特洋研ルールその1『働かざるもの着るべからず』 フラーヴォ=スピラーレ, 人工島のこの島で地震が起こる理由…….そいつは何を隠そう、このあたし! フラーヴォ=スピラーレ, はい、大地震警報発令! 発生1秒前! フラーヴォ=スピラーレ(とどめ), かなり派手にやっちゃったし、しばらくは正攻法かー フラーヴォ=スピラーレ(とどめ), ……うわ、目ぇ疲れた アッソルート=ランツェ, エネルギー、全・開! .突き破れ! あたしのフェイティア!! アッソルート=ランツェ, こいつはあたしの取っておき、一度放てば――;鋼も骨も、まとめてブチ抜く!! アッソルート=ランツェ, 最後まで立っていられたら褒めたげるわよ!. アッソルート=ランツェ!! アッソルート=ランツェ, あんたの顔も見飽きたね!;取っておきで行くわよ、アッソルート=ランツェ!! フラーヴォ=プロテッツォ, ここらで一気にケリつけるわよ! 戦闘アニメデータ 裁藤朱峰 フェローゾ=フルット(準備), パイク;三節棍 Reload(4).wav フェローゾ=フルット(攻撃), 振り下ろし フェローゾ=フルット(命中), ダメージ フラーヴォ=スピラーレ(準備), パイク フラーヴォ=スピラーレ(攻撃), 斬撃 Bazooka.wav;MAP地震 FastGun.wav フラーヴォ=スピラーレ(命中), ダメージ スピガ=ラーマ(準備), パイク スピガ=ラーマ(攻撃), 斬撃;気斬 橙 スピガ=ラーマ(命中), 気斬 橙 AAA, パイク アッソルート=ランツェ(準備), フェイスアップ;パイク;粒子集中 橙 アッソルート=ランツェ(攻撃), 光槍突撃 橙 アッソルート=ランツェ(命中), 光槍突撃 橙 フラーヴォ=プロテッツォ, 粒子集中 橙 裁藤朱峰(ハイパー) アッソルート=ランツェ(準備), @戦闘アニメ_ロックオン攻撃;フェイスアップ;パイク;粒子集中 橙 アッソルート=ランツェ(攻撃), スーパータックル 橙 AntiAirMissile.wav アッソルート=ランツェ(命中), スーパータックル 橙 Bazooka.wav;5;爆発 アッソルート=ランツェ(とどめ), 貫通穴
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この物語には以下の要素が含まれます 詐欺聖女 詐欺少女 詐欺幼女 以上の要素が気になる人はプラウザのバックを押してね。 そうじゃない人はゆっくりしていってね! 【スタッフルームにて】 バリバリー 『打ち上げ用』と書かれたビールの箱が本来よりも三時間以上早く開けられる。 「一番酒はまかせろー」 犯人の名はミスターカナディアン。今大会参加者カナディアンガールの師匠であり、 選手入場時に黒服に連れ去らわれた彼は、その後裏方として試合会場にカスタム修斗を 出現させたり会場内カメラのチェックの仕事を与えられていたのだが、絶賛サボり中。 「ぷっはー!一年ぶりの本物のビールだぜ。ビアガーデンの余りをろ過して水を足したのとは 断然違うこの味、カナディアンガールが来てくれて本当に良かったなあ~」 「勝手に飲んでいいのか?」 不意に後ろから声がかけられる。 「げぇー!スタッフさん!」 黒いTシャツ、胸元にネームプレート、顔はファングッズ店で売られている稲荷仮面風マスクで 隠したスタッフが仁王立ちでミスターカナディアンを見つめていた。 「い、いやー違うんですよ。実は最近アムステラがこういった大会にちょっかいを出しているって 極秘情報を得てましてですね、これは毒見とかそういうので・・・ん、ちょっと待て、 あんたスタッフじゃねーな」 「何故分かった?」 「ここのスタッフさんなら俺が言い訳する暇も無く机に顔面叩き付けているはずなんだよ。 それがミスターカナディアンという存在に対する当たり前の反応だ。誰だよテメエ」 「この大会にちょっかいを出しに来たアムステラの者だ」 「ざけんな、大方選手のストーカーか泥棒だろ。丁度いい、お前をぶっ倒してそのついでに ビールの件もお前に押し付けてやるぜ!!」 ミスターカナディアンは左頬の内側を歯で強く噛みしめる。ガリッという音と共に何かを飲み込むと 顔の表面がうねり、太い血管が全身に浮き上がって来る。 「覚悟しとけ、今の俺はブライアンにも勝てる状態だ」 「噂通りのビッグマウスだな。だが、一応は戦う価値があるかもしれん」 (戦闘が開始されました。両者のステータスを表示します) キャラクター名:ミスターカナディアン 機体及びクラス:選手ではないので無し 属性:混沌・悪 筋力:AA 敏捷:B 体力:AA 技術:D 判断力:E 精神力:E 『スキル』 ガチ・即・薬!:口内に埋め込んだドーピングカプセル(ギリギリ合法)を噛み砕き筋力と体力を爆発的に増加させる。 本人がガチと認めた勝負でのみ使用可能。 ビッグマウス:タリーナに伝授した偽装の上位版、自分の全ステータスを筋力と同値だと錯覚させるブラフ。 獅子舞:噛みつきを主体とした喧嘩殺法のブラフ。躊躇なく相手の肉体を食いちぎる意志を見せる事で 相手の精神力に大きなマイナス補正を与える。マスコミが怖いからリアルでそんな事は出来ない。 蜂の一刺し:ノックアウトされても一度だけ根性で生き残り、先行入力していた攻撃系コマンドがあれば それを隠して死んだふりをして待ち構える。相手が近づいて来た際にこちらがまだ戦える事に気付いていない場合、 防御無視の全力打撃を叩きこむファックユーなスキル。 『プロフィール』 本名ジャン・ハマー。高校卒業後プロレスの門を叩きミスターカナディアンとしてデビュー。 それから二十年いい加減な人生を送り今に至る。自分を売り込む為にブライアンをライバルと呼んでいるが ほとんど相手にされていない。裏方の仕事をサボっている最中に偽稲荷仮面と出会い戦闘開始。 キャラクター名:偽稲荷仮面 機体及びクラス:選手ではないので無し 属性:不明 筋力他全能力値不明 『スキル』 隠者:情報と武術の収集に特化した存在。多数の戦闘スタイルを持ち、相手と状況によって使い分ける為 ある程度戦うまでは初対面で真の実力を把握するのは困難である。 また、技量もしくは判断力が自分より低い相手のブラフ系スキルを打ち消す事が可能。 ???:詳細不明 ???:詳細不明 『プロフィール』 スタッフの服と売店の稲荷仮面風お面で変装しスタッフルームに乗り込んで来た男。 ミスターカナディアンに正体を見破られてやむなく戦闘。だが、最初から彼と戦いたかった様にも見えるが・・・? 怪 傑 ミ ル ッ ト の 挑 戦 第 五 話 『犯 人 発 見』 これはスーパーエージェントであるドリスが修斗大会にこっそり混ざった アムステラ軍人を見つけ出し成敗する物語であーる! ◇◇◇ 【黒騎士無残】 根堀、草薙、葉落、上中下表裏あらゆる角度から斬撃。 五分間の濃厚な攻防、観客も他の選手も気づいてしまった。 ここだけが半ガチの勝負になってしまっている。 マルーの攻撃の全ては本気で相手をKOしようとしていた。 最早認めざるを得ない、二足歩行のマルーは強い。 「塵と灰、この剣にて全てを払わん。薪割」 大きく振りかぶり上段から一気に振り下ろす。 技のネーミングや斬撃の勢いからいってもこれがマルーの最大の一撃だろう。 「ホォイ!」 その最大の一撃を、キャベスは爺3マイルドの指二本で止めてみせた。 それと同時に終了のゴング。 結局マルーのライフが一つ減るだけで勝負は終了した。 最早認めざるを得ない、二足歩行のマルーは強い。 そして、それを遊びながら圧倒するキャベスは もうどう表現していいのか分からないぐらい強い。 「こ、これは凄い!シャコの視力の良さをどう表現したらいいのか 人類には説明出来ないのと同様に、キャベスの強さは説明出来ない~!」 「あの防御の動きはホントに何なのよ!柔道とも古武術ともちょっと違うわ」 遠藤達もついに解説完全放棄。ただ攻撃を凌ぎきっているだけの光景だったのにこれだけの強さを 見せつける事が出来るキャベス。その強さの秘密はリングにいるキャベス以外の五人にも 観客にも理解出来なかった。その技術はこの星で生まれたものではなかったからだ。 「うん、準備運動としてはこんなもんじゃろうな」 「爺さん、真面目に。マルーを倒すなら、ちゃんと倒しきるよ。ホォイとか観客に失礼」 「いやー、ちょっとな。お主がその剣術に執着してるのと同様、ワシも強い奴の気配がすると こうやって探らずにはいられんかったのよ。しかし、お前さんの方はハズレじゃったか」 「どーいう話」 「こっちの話(はぁと)。全く、ややこしい気配放ちおってからに。じゃが発展途上の若者の なりふり構わない姿、久々に悪くない気分じゃったわい。しっかし最後の方の技、随分完成度が低かったぞ。 練習をサボっておったのか?」 「・・・」 キャベスがリングを降りた後、マルーもそれに続き、逃げる様に迷宮に向かった。 そしてキャベスは皆の元に行き作戦会議。 「んー、なーんか忘れとった気がするんじゃが。まあ思い出せんなら重要な事じゃないんじゃろ」 ◇◇◇ 【事件解決?】 「ああーっと、ここでゴング~!怪傑ミルット対稲荷仮面は激しい寝技の攻防の末、 双方ノーポイントに終わりました。良くぞ耐え抜いた怪傑ミルット!」 時間一杯ユールとの情報交換に尽力し、タイの情報部との橋渡しをしたミルット。 リングを降りた彼女の耳元から通信が聞こえてくる。マスクの裏から直接内耳へと 声を飛ばしてきたのは情報局の局長だった。 「ミルット良くやった。君のおかげでタイの情報局と調査内容を相互補完でき、犯人が見つかった」 「ひゅーほほほ、犯人って、この大会の中にアムステラとの繋がりがあった人物がいたって事?」 「まあこの大会に参加している人物と言えるかは微妙な話なんだが・・・、 五木ジョージにアムステラとの繋がりの疑惑が見つかった」 「マジでっ!?」 アメリカ情報局の得た情報によれば、五木は中国にいた時に上海蟹の鎧を着た老人から 武術を習っていたらしい。そしてその老人が五木を売り出す一方で修斗ファイト業界を 自分の新たな縄張りとしようとしていたという。 「そしてタイ情報局の調査によると、ブラッククロスの幹部が最近亡くなり、彼は『上海蟹のワン』と呼ばれていたらしい」 「なるほど、ウチの情報局の調査済みの部分と足すと、間違いなく五木をプッシュしていた所がクロね」 「ああ、という訳でキッチリ犯人が存在し見つかってしまった。後の調査は我々だけで十分だから、 君は大会を見に来た観客を喜ばす事に集中してくれたまえ。それでは」 通信が切れるとユールが近づいて来て耳打ちする。 「信じられん話だが、犯人が存在した。五木ジョージがそうらしい」 「ひゅーほほほ、丁度私もその話を聞かされたばっかりよ」 「映画の様にはいかなかったか」 「そうね、五木がクロで他の選手との繋がりの情報が無かった以上、残りのメンバーが アムステラと繋がっているケースなんて天文学的確率だからね。お互いこの大会を楽しみましょ」 ユールと別れ、第二回稲荷対策緊急会議に参加する。 ヒールサイドのユールとマルー、そして迷宮で待機しているタリーナを除いたメンバーに混じり座ると いきなりジェーンから肩をガッシリ抱かれた。 「良くやったわね怪傑ミルット、それでこそこの私が見込んだファイターよ!この調子で優勝してね」 「はい?」 「あっ、最初の話し合いの時あんたはいないんだったわ。えっとね、もしあなたが稲荷に対抗できる ぐらいに使えるやつだったら私達の全ライフを譲って優勝してもらう事にしたのよ。 そして、あなたは見事稲荷仮面相手にノーダメージでやり過ごした!おめでとうチャンピョン!」 「はー、そーですか」 ミルットはモニターに表示されている現在のポイントランキングを見ながら、その計画が上手くいくのか確かめる。 稲荷仮面3ポイント マルー2ポイント、残りライフ2 キャベス1ポイント(マルーのライフブレイク) ミルット0ポイント ゲッパー0ポイント、残りライフ2 ジェーン0ポイント、残りライフ1 カナディアンガール0ポイント、残りライフ1、待ちぼうけ状態 一回戦とは打って変わってライフ消耗の少ない戦いになっていた。 「7ポイント獲得した時点で優勝なのよね。ジェーンさんとゲッパーさんとキャベスさんを倒して6ポイント。 タリーナちゃんもこの作戦は話してあるのよね?」 「ええ、それからマルーにもキャベスさんを通して作戦を話をしてあるわ。でしょ?」 「おう、忘れとったわい!!」 「おいこら爺!マルーと同じリングになった奴が説明するって迷宮突入前に言っただろ!」 「ひゅーほほほ、それはピンチねー(心底どうでもいい)」 ユール(稲荷仮面)が敵ではない事及びこの先の戦いでは空気読んでくれそうな事を知っているミルットは 生暖かい目で彼らのパニックを見守っていた。もう稲荷仮面の事は心配しなくていいと 言ってしまいたいが、一応は任務に関わる事だ。適当に話を合わせる事にする。 「ひゅーほほほ、とにかくこれから先の勝負で私の快進撃って事でいいのよね?」 「ええ、稲荷と同格という証明は先の勝負で為されたから遠慮なく稲荷以外をぶっ飛ばして。 あ、マルーとぶつかったら説明よろしく」 「はいはい」 作戦タイム終了。ミルットは迷宮を適当に駆け抜ける。もうここを突破するのも三回目だし 彼女の記憶能力を持ってすれば容易くゴールまでの最短ルートを目指せる。 対戦相手が誰でも勝ちを譲ってもらえるという余裕もあり、真っ先にカプセルに乗り込むことが出来た。 ミルットのリングインから一分程、小柄なスク水の人物がカプセルに乗って降って来た。 体重が軽いからだろう、カプセルはリングの上で数回跳ねた後に停止する。 「ゲッパー!俺・参上!」 サザエさんのオープニングのごとく、カプセルを上下に割った後、上半分を持ったまま腰を振るゲッパー。 ◇◇◇ 【事件は終わって無いのか?】 「うっわ、あざとい」 「俺だって必死なんだ、男の娘レスラー枠は簡単には渡さねえぞ後輩ども」 「ひゅーほほほ、人の事を勝手に同類にしないでちょうだい」 「嘘付け、その胸は人工モノだろ。俺には分かるんだ。少なくとも胸だけで数百万は整形に使ってるな」 桁が違うわい!ワイのオッパイはもっと高級じゃわい!と反論するわけにもいかない。機密的に考えて。 ミルットはぐぬぬと本音を押し殺し表情を歪ませながら自分の今言える範囲で反論するしかない。 もちろん二人とも観客には聞こえない様に配慮はしている。 「豊胸してるからってそれだけで男扱いは酷くないかしら?」 「胸以外にも骨格とか姿勢とかが、女らし過ぎるんだよなーお前ら。俺は故郷が年齢性別不詳の奴ばっかだから そういうのには自然と気が付くんだ。まあタニヤマさんが女子選手として扱ってるから、俺も試合中は その設定に従うけど」 「設定とか関係なく女として生まれたわよ。今も生物学的に、えっと、うん、遺伝子検査すれば ちゃんと女性判定でますから」 言える範囲で脳をフル回転させながらゲッパーの誤解をなんとかしようとするミルット。 だがその時、今の会話からおかしな事に気付いた。 「ゲッパーさん、さっき『後輩ども』とか『お前ら』とか言わなかった?」 「言ったけど?」 「タリーナちゃんまでさりげに女装者扱いかい!」 「いや、普通にあいつ男だろ?お前と同年代の。お前も気付いていて黙ってるもんだと思ってたけど」 「貴方の目、くすんでいるわ」 タリーナのこれまでの印象を思い返すミルット。どー考えても、間違ってここに来てしまった 可哀想な少女でしかない。だが、ゲッパーが嘘をついてる様にも思えない。 (ミルットォー、ブレインバックスキャンー!) 解説しよう、ミルットブレインバックスキャンとは脳内にストックされた記憶を正確に思い返し 情報を獲得するという、一般人でもできそうで中々できない奥義である。 ミルットが本気で過去に出会った人物を思い出す時、そこに一切思い出補正は働かず 電脳パゥワーでありのままの情報が出力されるのだ。 (うーむ、どのシーン思い返しても不幸な少女ね。脳内映像を鮮明にし首元をアップにしても 喉仏無かったし。でも念の為に、ミルットアルティメットブレインバックスキャンだオラー!) 解説しよう、ミルットアルティメットブレインバックスキャンとは何か。 まずはミルットアルティメットスキャンについて説明せねばなるまい。 出会った相手の外見のデータを元に全身図を再現し、それに床の状態やら流れてきた体臭やらから 体重・スリーサイズ・性経験・人種など様々な情報を取得する外道奥義、 それがミルットアルティメットスキャンだ。そしてそれを脳内にある観察記録を元にして 再現するのがミルットアルティメットブレインバックスキャンだ。 他人のプライバシーに関わる上に一回の使用毎に体内電力をめがっさ消費し、さらに 知りたくない事を知ってしまうミルット本人の精神もかなり摩耗するので、普段はオフにしている。 そんなミルットのスパイ活動究極奥義の一つ、それがミルットアルティメットスキャン及び ミルットアルティメットブレインバックスキャンなのだ。 (ふん、ふんふんふん、なるほどなるほど、えっ嘘ーん!) 控室で会った時の情報と一回戦開始前の選手入場の時の情報を検査対象に設定しタリーナの 肉体データを可能な限り取得していくと信じられない結果が測定された。 身長とスリーサイズこそ欧米女性の平均以内だが、体重は男性のそれであり、 骨密度と筋密度は平均的男性すら大きく上回っている。 だが、最後に取得した情報は性別の事なぞどうでも良くさせる程のとんでもなさを発していた。 (控室でタリーナちゃんがボロ泣きした時に流れ出た体液を分析した結果、 推定二十代の男性、そして高確率で地球人ではないですってぇー!!) 涙目でミルットを盾にしてマルーから隠れた時か、それともペーパータオルで思いっきり 鼻をかんだ時か、とにかくミルットの体表にはタリーナの体液が付着しており、 それが貴重な情報源となってしまっていた。かがくのちからってすげー! (取りあえずマスクの下の通信機能オーン!) タリーナが宇宙人かもしれないという新たな情報を伝える為マスクのスイッチを入れる。 「どうしたミルット」 「緊急情報ー!さっきたまたまタリーナの鼻水を使って遺伝子検査したら宇宙人かもしれない件!」 「何・・・だと・・・?彼女には五木とも中国マフィアとも繋がりが見つからなかったが」 「あ、後多分タリーナ男です」 「ぶべらぁ!ふむ、遺伝子検査が間違っている可能性も高いが一応タイの情報部にもこの情報は伝達する。 だが、現在我々は五木周辺の追い込みに人員の大半を使っているからタリーナがシロかクロかは 我々の側では大会終了までは判別できないだろう」 「ひゅーほほほ、私自身の手で決定的な証拠見つけろって事ですね。了解」 通信を切ると隣のリングで「どっひゃー」と言いながらユールが飛び上がっていた。 タリーナの件があちらにも伝わったのだろう。 「しんどい、・・・色んな意味でしんどい。仕事って無事終わったと思って帰る準備してる時に 残業頼まれた時が一番しんどいのよね。今、まさにそんな感じよ」 「ど、どうした?そんなにタリーナが男だった事がショックなのか?」 「うん、まあ色々とね」 既に犯人グループは五木の関係者で確定していて、無事解決と思った先にこれである。 しかも状況から考えて、仮にタリーナがアムステラ側だとしてもここに来るメリットがまるで分からない。 ミルットアルティメットブレインバックスキャンの際にこれまでのタリーナの発言を体内の嘘発見グラフに かけてもみたのだが、控室で発した言葉に嘘はほとんど無いという結果になっていた。 タリーナは本当にここに無理やり連れてこられている。だが、ゲッパーの見立てではタリーナは女装者で データ解析の結果はインナーマッスルが桁違いに凄い宇宙人と出ている。 もう訳が分からない。だが悩みの元凶となった目の前のスク水男に怒りが沸々と湧いてくる。 この怒りの感情だけは間違いなく本物だ。 「ひゅーほほほ、あんたが余計な事言わなきゃ色々悩まずにすんだのに」 「どうした、まだ何もしてないのに急に随分老けこんだ様に見えるんだが」 「黙れ詐欺幼女。取りあえず私をオカマ扱いした事を謝りなさい」 「わかったわかった、そうやって突然カリカリする所とかお前は間違いなく女だよ。 最初はタリーナとセットの女装キャラとか思ったがただの整形美女だったか」 「タリーナちゃん、いえタリーナくんかしら。まあどっちでもいいわ。 アレは大人しくしてるからテキトーに隙を突いて無力化した後に身体に聞くとして」 「あん?タリーナみたいなの好みなのか?んじゃあ俺もストライクゾーンなのかー!? は、はじめてだから優しくしてね」 二人以上の技が繋がり連続した一つの技となる事がある。これを『連携』という!! だが一人の行動でもそれが極めて短時間に連続して繰り出された場合『連携』する事もある!! アトランタ・ゲッパーの合成術、悪口オーバードライブ発動! 女装かと思った+老けこんだな+カリカリしてる+整形だよな+俺が好みか 一人特殊五連携・NGワード地雷原ロードローラー走破 「まずはこのライフ2ポイントをボコボコにする!」 ミルットの目に炎が点灯した。 勝ちが確定しているこの戦い、遠慮なくストレス発散する事にした。 ◇◇◇ 【使命感】 『お前修行さぼっとったじゃろ』。キャベスの最後の言葉がマルーの胸を抉り続ける。 「ぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ」 後悔と共に嗚咽をもらしながらマルーは走る。 初めてバヌからルガー式騎士剣術を教わった時、マルーはそれが何よりも大切なものだと感じていた。 字も上手くない、音楽も苦手、演劇もさっぱり分からない自分でも、この剣術なら習得出来る。 成長したこの孤児院を出ても、剣を振るう度に家族を思い出せる。 マルーが剣を嫌いになったのはバヌが剣術を教える目的に気付いた時だった。 具体的に何を企んでいたかは当時のマルーには知る事は出来なかったが、このまま剣を学び続けたら 反社会的な活動に参加させられるというのは直感的に分かってしまった。 自分の兄や父が犯罪を行おうとしているのを知ったマルーは共犯になる事も止める事もせず、 他人事だと思い、責任から逃げ出した。剣の練習をサボり続け、自分には向いていなかったのだと 周囲にアピールし続ける。「もうやる気が無いのなら剣術はいい。就職訓練していろ」 そうバヌから言われるのに時間は掛からなかった。サボっている間に基本動作以外の多くが抜け落ち、 孤児院を出る前に一度だけ試合した時は、才能が無いと言われていたマシューにすら勝てなくなっていた。 自分の身を守って何が悪い。養父が悪事に踏み切るとは限らないし、実行に移しても世界の警察や軍隊が 止めてくれる。その考えは結果を見れば決して間違いでは無かった。マルーは不運にも借金まみれの傭兵だが こうして生き続け、ルガーが負った罪も法的には彼に悪影響を及ぼさない。 しかし再び剣を持たされた今、あの時の選択の後悔が一気に押し寄せてきた。 女優になりたいと願った少女がいた。彼女の主演映画の為に曲を作りたいという兄貴分がいた。 レツゴーエルフちゃんシリーズを愛する小さな同志がいた。 もし、マルーが剣術を全て習得しバヌよりも強くなってバヌとルガーを半殺しにしてでも説得すれば 家族は無事でいられたのではないだろうか。 「何が剣技をこの身に刻むよ。実際にやってみたらイメージの半分も出来なかった。 マルーはどうすればよかった。これから、一体どうすればいい・・・」 返事などどこからも来るわけがない。それでもマルーは救いを求め問わずにはいられなかった。 「苦しくても、それでも背負い、そして強くなればいいんです」 「なんか返事きた!」 壁から聞き覚えのある声が解答。次の瞬間、壁から手が伸びてきて物凄い力でマルーを内部に引きずり込んだ。 「っ・・・ここは?」 マルーが引きずり込まれた先はソファーがありモニターがあり、テーブルにはオニギリが置いてあった。 「待ちぼうけ状態になった選手が発生した時に開放される休憩ルームです。ちょっと壁をずらして マルーさんのルート側に道を作らせていただきました」 マルーを引きずり込んだ人物、タリーナが疑問に答える。 「それ、反則じゃないの?」 「セイヤッ!」 タリーナが壁を威勢よく押すとマルーの入って来た隙間がピッタリと閉じる。 「これで後は私が本来の出口から出て行けばバレません。マルーさん、取りあえずそこ座って」 「あ、うん」 タリーナの豹変ぶりにこれまでの自分の悩みが一旦全部ぶっ飛んでしまったマルーは大人しく従う。 マルーの知ってるタリーナはこんなじゃなかった。もっとこう、自然に警戒を解いてしまう様な弱弱しさがあった。 しかし今のタリーナはどうだ。まるで別人。壁をずらした怪力もそうだが、対峙しているだけで精神を 削ってくる武人の気を放っている。 「勝負見ましたよ、最後の奥義完成度低かったですね。原因は分かってますか?」 「うん、あの技覚える前に修行やめてたからよ。でも、もう教えてくれる人はいないしこのまま 騙し騙し使っていくつもりよ」 「そんなんじゃダメです!そんなだからマルカスなんて言われるですよ!」 タリーナはメモの書かれた紙束をマルーに手渡す。そこにはマルーの剣術の改善点がびっしりと 書き込まれていた。 「三回戦は休んでこれを読んで正しい剣術を頭に叩き込んでください。いいですね、直弟子という意味では マルーさんがその剣術の最後の使い手なんです。決して間違った型を残してはいけません」 「タリーナ、なんで」 マルーのこの『なんで』は様々な疑問を含んでいた。 なんで自分にこうも親切なのか。 なんで最初強者のふりをした弱者なんてめんどくさい演技していたのか。 なんで面倒な事をしてまで弱者で通したかったはずなのに弱者のふりをした超強者の正体を隠そうとしてないのか。 なんでマルカスというあだ名を知っているのか。 「使命だからです。正しき武術を後世に伝え、それを正しく進化させる事が私に流れる血の宿命だからです」 「ちょっと何言ってるの」 「家族の事は悔やまないで下さい。彼らの死の責任は私にあります。君はただ、彼らの生きた証を伝える事に 集中して下さい。それじゃあ行ってきます、そのオニギリここにあった炊飯器のお米で私が握ったんで よかったら食べて下さい」 正規の出口から去っていくタリーナの背と渡されたメモを繰り返し見つめているうちにタリーナの姿は 見えなくなってしまっていた。 「わけがわからないよ」 オニギリは食べやすい大きさだった。 ◇◇◇ 【過去からの因縁】 「随分遅かったのう」 最後のカプセルがリングに落下するのを見ながらキャベスは呟く。 既にミルット対ゲッパー、そして稲荷仮面対ジェーンは確定しており このカプセルから出てくる相手がキャベスの相手になる。 「さーて、順当にいけばカナディアンガールじゃが、アレが試合放棄するならマルーと二連戦か。 こいよ、タリーナ。お前には聞きたい事が色々あるんじゃ」 カプセルが開き、中から出てきたのはマルーでは無かった。キャベスの望みは叶った。 だが、観客が知るカナディアンガールですらなかった。 「ふう、よいしょっと」 割れたカプセルからゆっくりと降りてきた人物。シャツとスパッツは間違いなくタリーナの着ていたもの。 だが、衣服はサイズがあっておらずパッツンパッツンになってしまっている。 タリーナと顔つきの似た、だが体格が決定的に違う二十代の男がタリーナと同じ衣装をを着ていた。 右手にはヘッドホンが握られており、露出した耳は長くとがっていた。 読者の皆は知っている、そう彼こそが快王。彼こそがトワイスだ。 参加者ではない謎の男の登場に会場全体がざわつく。 「うわっ、何あれ変態・・・?」 ゲッパーがトワイスの格好にドン引きしている一方でミルットは別の意味で驚愕していた。 タリーナが男であると言ったゲッパー本人は情報が足らずまだ気づいていないが、 ゲッパー及び稲荷仮面からの情報と自分自身の分析能力を全て揃えているミルットは いち早くその正体に気付いた。 タリーナが少女に化けた宇宙人というトンデモない仮定が正解でそいつが変装を解いたとしたら ちょうどこんな見た目になるほずだ。 そして変装を解いたという事は、もう大人しくしてはいられない状況になったと考えるべき。 もし、彼の口から「自分はルルミー同様に地球人に喧嘩売りに来たアムステラ人」という類の 言葉が漏れたらその瞬間大会は終わってしまう。 ミルットはトワイスとキャベスのいるリングまで走り、一瞬遅れてユールもミルットと同じ様にリングに向かう。 ミルットが走り出したのと長い耳を見て、彼もあの人物が危険である可能性に気付いたのだろう。 リングに上がり込むなりミルットはスタンガン、ユールはハイキックの適正距離まで近づき停止する。 「お前ら二人とも、自分の試合はどうしたんじゃ」 「ひゅーほほほ、知らない奴が来たから誰か確認するのは当然でしょ?」 「わしゃ別にこの男が相手でもええんじゃが」 「ご老人よ、そうはいかない。私だって大会参加資格を持ってここに来ているのだ。 聞かせてくれないか見知らぬ人よ。カナディアンガールはどこに?そして君は誰だ?」 質問しながらもいつでも蹴れる様にユールは呼吸を整える。 男が「アムステラ人」と言おうとしたなら「アム」までで蹴り倒し、ただの乱入した不審者として片づける。 それはミルットも同じ考えだった。 二人は男の返事を待つ。彼が自分がアムステラ人だと言う瞬間、それが彼の最後の言葉になる。 「そうだな、まずは自己紹介だ。私は・・・」 トワイスはゆっくりと語りだす。 「私は今から五百年以上前、谷山金五郎の儀式に巻き込まれた一人の戦士だ」 「谷山?」 「金五郎?」 言葉の意味が分からずしばしポカーンとするミルットとユール。 「ほれ、大会開催時にタニヤマがゆーとった御先祖様」 横からキャベスが二人に助言する。 「ああ、あの。ひゅーほほほ、えっとそれでその500歳以上にしてはお若いですね」 「谷山金五郎の不完全な儀式により私は偽りの不死を与えられた。見たまえこの耳を、 私は男とも女ともつかぬ人外の肉体となり、人目を避けながら時を待ったのだ。 谷山の子孫に儀式の情報を与え、いつか完全な儀式がこの場で行われる時を待ち続けた。 そして、私はカナディアンガールというリングネームを使い大会に参加した」 「何故今になって正体を現したのかね?」 「君のせいだよ稲荷仮面。過去の儀式を知るものがいるかもしれないから女の肉体で参加したが あの格好では全力が出せなくてね。私はどうしても優勝して真の不老不死を手にせねばならんのだ。 そして完全な不死となった私は谷山一族への復讐を果たし、そして世界を支配する」 グッとガッツポーズと共に邪悪な笑みを浮かべるトワイス。 その姿にミルットとユールはただ睨み付けるしか出来なかった。 「そういう訳だ。私はカナディアンガールと同一存在である以上は参加資格があり 優勝して願いを叶える権利も持っている。私の野望を止めたくば修斗ファイトで勝ってみせろ」 「くっ、だったら私達は自分の試合に戻るわ。行くわよユ・・・稲荷仮面!」 「いいのか?」 「こいつは今の所『まだ何の問題も起こして無い』のよ!『儀式を逸脱した戦闘行為』があったり 『タニヤマ氏から参加資格なしと言われた』のならともかく、今の所は大会のルールでこいつを 敗退させるしか道はないわ」 「・・・そうだな」 この大会には国家規模の企業グループがバックについている。 「大会盛り上がってる所悪いけど、この人証拠なんてないけどアムステラっぽいから確保ね」なんてしたら アメリカとタイの情報部が凄い勢いで傾く事必至。 トワイスがこのタイミングで正体を明かしつつ大会を続行させる為に知恵を絞ったのは 結果としてミルットとユールの魔の手から彼を救ったのだった。 ミルット達が自分のリングに戻ってから大会は一時中断され、トワイスの参加資格についての審議が行われた。 数分後、マイクを持ったタニヤマ氏が会場に現れ審議結果を発表する。 「えー、君。今はカナディアンガールではなく何と呼べばいいのかね」 「只の戦士だった頃はトワイスと名乗っていた」 「ではトワイスくん。君の参加を認めよう。だが、カナディアンガールの成績を引き継ぎ ライフ1かつポイント0でキャベスが最初の対戦相手だ」 「問題ない、元優勝者の力を見せてやろう」 そういう事になった。 こうしてトワイスは設定的には『タリーナという架空の少女に化けていたラスボス』として 一般人の推察的には『使い物にならないタリーナを引っ込めて出てきたリザーバー』として参戦してしまった。 ミルットとユールは頭を抱えた。 (このオッサン、トワイスって奴の考えた設定に乗っかっちゃったー!台本通りって顔してがるー!) (面白ければ細かい事はいいのかあの人は!いや、もしかしたらタニヤマ氏こそがアムステラ側なのか?) ジェーンとゲッパーはようやく展開に頭が追いつき、そして喜んだ。 (絶対悪登場で稲荷やキャベスが優勝しても問題ない展開キター!) (どうせライフ1で相手がキャベスなら即死間違いないぜー!) キャベスは相変わらずマイペースだ。 「そんじゃやろうか、若いの」 「私は設定年齢500歳オーバーなのだが?」 「口だけならワシだって設定年齢数百歳って言えるわい」 マルーはモニターを見ながら首をかしげていた。 「タリーナどこいったの?あの人どこから出てきたのよ?タニヤマさんが用意したラスボス枠のファイター?」 そしてトワイスはここまでの流れを振り返っていた。 (思えば色々トラブルだらけだった。この三日間、私は・・・) 時は三日前にさかのぼる。 晶烈華・改の調整の為に休暇を貰っていたトワイスはある目的の為カナダにいた。 これから笑いの神に翻弄されとんでもないミラクルを連発する事も知らずに。 戻る (続く)
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この作品には以下の要素が含まれています。 イデオン ボーボボ リーダー伝たけし 以上の要素が気になる人はプラウザのバックを押してね それ以外の人はゆっくりしていってね! 【凶骨豆知識】 凶骨人とは戦闘民族であり、特徴的な頭部と頑強な肉体、そして知識欲を併せ持った存在である。 だが、現当主トワイスの外見に凶骨人の特徴が表れていない様に何事にも例外は存在する。 これまでタイトルコール前のこのコーナーではケブレ家の事情に合わせて凶骨人の特徴について 語ってきたが、今回はレアケースについて話そう。 ◇◇◇ 「申し訳ありませんが、ギャスディン様は出禁となっております」 またか、とギャスディンは思った。これで7軒連続で出禁である。 前回来た時は何の問題も無かったのに突然どうしたというのだろうか。 ギャスディンは休暇をとるといつも決まって夜の街に飛び込んでいた。 気前がいい自分は店側からも評判がいいと思っていた。 だが、今日は突然の出禁連発である。何かあったのだろうが全く身に覚えが無い。 飲みすぎて記憶を失うといった事も今迄無かったし、戦場とは違い夜の街のギャスディンは 紳士キャラで通してきた。まさか、自分の頭の形が生理的に受け付けられなかったのだろうか、 そんな事まで考えて歩いていると8軒目の前に到着した。 いつもなら何軒かハジゴした後の締めに使う店だが、今日はこの店が最初の遊び場になるのかもしれなかった。 いつもの蛮勇はどこへやら、恐る恐る店の入り口から中を覗き込む。 呼び込みをやっている店主と目が合った。 「あー、今やってるのか?」 「え、ええ。でも只今女の子全員手が空いてなくて」 見え見えの嘘である。だが、直接帰れと言わないだけ今迄の店よりは親切とも言える。 ギャスディンの何が悪いのかは分からないままだったが。 今日はもう家に帰ろうと思ったその時、ギャスディンの背に聞きなれた女の声がかけられた。 「ギャスはんおひさしぶりやね」 「グレモリーちゃん!出て来たら危ないって!」 「何言うてはるの、お客様に失礼やん。ギャスはん、今日は私だけしか相手出来る子おらへんけど」 「そうだな。店主、グレモリーを指名したいのだが」 「ですが・・・その・・・、分かりました。何かあれば至急連絡下さい。グレモリーちゃん!よろしくね!」 冷や汗をべっとりとかきながら店主は事務室に逃げて行った。 グレモリーとギャスディンは階段を上り、最上階の個室へと入る。 「ギャスはん、さっきはうちのが失礼しました」 「いや、いい。グレモリー、窓を開けてくれないか?」 「それじゃあ窓開けたらお酒とカルタ遊びの準備しておきます」 ギャスディンはこの店のこの部屋から見る夜景が好きだった。 夜遊びの終わりにこの店でグレモリーと遊びながら夜景を楽しむ事で戦場の疲れを癒していた。 だが、今日はその夜景に不純物が存在した。 「・・・あれは、そうか、そういう事か」 ギャスディンは理解した。自分が他の店で出禁になっていた事も、グレモリー以外の店の子が 自分を腫れものを見るかのような目をしていた事も、全てに納得の行く答えが夜景の中に存在していた。 そこからのギャスディンの行動は早かった。まずは電話でトワイスを呼ぶ。 「もしもし、兄上今日は随分早いですね」 「いいから私のいる所にすぐ来い。お前に大人の遊びを教えてやる」 「今オーデッドが道場に来ていて」 「一緒に連れてこい。金は払ってあるから心配するな」 「えっ」 トワイスの返事を待たず電話を切り、今度は懐から角笛を取り出し吹き鳴らす。 『BGM:モンスターハンター・メインテーマ』 数十秒後、バッサバッサと空を飛び、窓の外に現れた存在、鳥か?飛行機か?いや、ギャスディンの妹だ! 「兄上ー!呼ばれて飛び出てジョカ参上!」 ジョカは夜道を歩かない。空を飛ぶのはお腹がすくけど、足の小指を車にぶつけて以来、夜は公道を使わない。 「もー!何で夜の街に私なんて呼ぶの!兄上の女遊びの送迎とか嫌だって言ったじゃない!」 「緊急事態だ。ジョカよ、あっちの方のアレが見えるか?」 「・・・あー。大体は分かったかも」 ジョカも事の次第を理解したのを確認するとギャスディンは窓から飛び降り、ジョカが口でキャッチする。 「すまんグレモリー、急用が出来た。もうすぐ弟とその友人が来るから彼らと遊んでやってくれ」 「はいな」 ギャスディンの事情にもジョカの存在にもグレモリーは動じない。肝が太いだけでなく、 物事の真実を見抜き冷静に対処できる女だった。グレモリーが軍に欲しい、というか自分の副官に欲しい。 そういう思いがギャスディンに生まれていたが、今優先すべき事は自分がこの街で出禁をされ続けた元凶を なんとかする事だ。グレモリーの勧誘なら後でいくらでもできる。 「角度よーし!距離よーし、障害物なーし!撃てーい!」 「クェエエエエエエエ!!!!!!!!!!!」 ジョカの歯の隙間から炎を纏ったギャスディンが発射される。 ターボメェェェン!(空気を切る音) 「妹はん、アレ大丈夫なんです?」 「戦闘機や私に耐えられる衝撃に兄上が耐えられないなんて事はない、多分ね」 「いえ、ギャスはんやのうて、地面にいる人や物の心配しとるんですけど」 「発射後一秒内に音速以下に減速しているから、多分大丈夫かなと」 きちんと安全確認してから撃ったのだ。約一名を除いて被害は存在しなかった。 「ルプギャーー!!!!」 約一名の被害者、つまり犯人の悲鳴が響いた。 夜の街でフルチンでナンパをしていた酔っ払いにギャスディンの頭突きが直撃する。 その酔っ払いはギャスディンと同じ様な頭部をしており、身長と年齢を覗けば 結構共通点が存在していた。だが、彼は戦闘民族凶骨人ではない。 長々と語ってきたが、冒頭で言った例外の話にここでようやく繋げる事が出来る。 全ての凶骨人の外見がハゲの長頭だけではない(例:トワイス)。 そして、ハゲで長頭のアムステラ人が全て凶骨人というわけでもない(例:こいつ)。 もしかしたら凶骨人の血が僅かなりに混じっているかもしれないが、少なくとも 純血の凶骨人ではないし、里から出て家庭を持った混血の一族のリストにも存在はしていない。 この街の常連となっているハゲで長頭はギャスディン一人だけだった。 そこにこのハゲがやってきて色々悪さをしていた結果、無名のハゲの行いが ギャスディンの所業として伝わってしまっていたのだった。 偽物もこの状況が自分に有利に働いていると気づき、ギャスディンの名を騙ってセクハラを繰り返していた。 「滅びよ・・・」 「ルプギャー!」 素手で行われるあらゆる暴力が犯人を襲う。ジョカが止めに行くまでに当てた打撃の数100、 絞めが100、投げが100、呪言や体内ガスといった裏技が100、分類不能の複合技が100、 その全てが被り無しの別種の技だった。 「女を泣かせるなど下種の極み、それも私の名を使ってとはな。 良い事を教えてやろう。己を磨けば女の方から喜んで寄ってくるぞ」 「兄上、犯人にはそのセリフ聞こえてない。気絶してるから、いや、死んでるかも」 「『てかげん』したから問題ない。というか、何故誰も偽物だと気づかんのだ!! この街の連中はグレモリー以外見る目が全くないな!」 「兄上の事を財布としか思ってなかったのでしょうね」 この日以来、ギャスディンは店のハシゴをせず、自分を信用してくれたグレモリーのいる店だけに 通う様になった。そしてたっぷりとお仕置きされた偽物は・・・。 「ルプア、ルプア、ルプアー!」 なんか軍で出世していた。己の欲望の命じるまま突撃とハイエナを使い分け生き延び続け偉くなっていた。 「他人の威光じゃなくって俺自身の権力をナンパの武器にするならどこからも文句は言わせねーぜ! オラァ、しゃぶれよ!」 ギャスディンが生きていたら「違う、そうじゃない」とツッコミを入れていた事間違いなしだろう。 怪 傑 ミ ル ッ ト の 挑 戦 エ ピ ロ ー グ『7 人 の 帰 還』 これはスーパーエージェントであるドリスが修斗大会にこっそり混ざった アムステラ軍人を見つけ出し成敗しちゃった物語であーる! ◇◇◇ 『7位』 「アトランタ・ゲッパーの突撃ワンダホ~。全世界ロリータファンの味方ゲッパーの 本日のお邪魔先はこちら、ジャジャン!PG隊だぜ!」 大会から一週間、ぶっちぎりビリで終わったゲッパーだったが元々負け役として参加していたので 仕事へのダメージは皆無だった。今日も彼はリング外の仕事で以前通りに活躍中である。 「PG隊の皆さんこんにちわ~って何やってるんだ?」 「見てわかんねえか?・・・修羅場だ」 隊の中では新人のはずのアナンドが指揮をとり、全員で机に向かって戦っていた。 彼女らの机の上には企画書とカードイラストが所せましと置かれている。 「ゲッパラリーン!穴ん堂先生ー、まーだカードデザインの仕事続いていたのかよ。大会は先週終わったぜ」 「五木のカードは没になって、優勝者のカードをレジェンドカードとして書き直せって言われたんだよ!」 大会終了後、五木ジョージの所属するジムから彼の一年間の休業が発表された。 スポンサーの違法行為が原因だが、世間には稲荷仮面にやられた傷が重傷だったからという事になっている。 「ほーほー、で、こいつが優勝者のレジェンドカードか。なーるほーどねー、優勝の瞬間をよく再現してるぜ。 という訳でゲッパーの突撃ワンダホーでした~」 レジェンドカードの内容発表はラストにて! ◇◇◇ 『6位』 「ごめん、負けちゃた。できれば稲荷に勝ってもうちょっとだけ上の順位になりたかったんだけど・・・」 日本拳法道場の仲間達の前でジェーンは頭を下げる。ローマ大会終了後、ジェーンも五木程ではないが 社会的ダメージを受けていた。出演予定の番組は半減し、化粧品CMへの起用も見送られた。 そして彼女の人気と収入の減少はそのままこの道場の経営状態に影響を与える事になる。 「ホントにごめん・・・」 「気にすんな姫ちゃん」 「そうだよ!俺達は龍之介と姫ちゃんに頼りすぎてた。一回大舞台で負けたぐらい気にするな!」 師範代達が泣きそうなジェーンを慰めていると道場の扉がガラリと開き、 しばらく見なかった顔が現れた。 「龍之介!」 「試合見たぞ」 近藤龍之介、ルルミー事件でかませ犬として扱われ、悪い意味で時の人となった後、 道場にほとんど来なかった男が再び帰って来ていた。 「姫子、奴らは強かったか?」 「ええ、理不尽なまでにね。だから私達は強くならなきゃいけない。アンタも付き合いなさい」 「そうだな。今度は俺達が理不尽を叩きつける側になってやろう」 強さとは我儘を通す事なり。修斗ファイトの世界に理不尽な乱入者がいるならば、それよりも強くならねばならない。 ジェーン☆乙姫は再び我儘女王として君臨するが為、仲間達と共に研磨する。 ◇◇◇ 『5位』 「グガーグガー」 鼻水を膨らませイビキを書きながらキャベスビンタが稲荷4号をぶっ飛ばす。 「グガー」 キャベスキックが稲荷6号の鳩尾に入り意識を飛ばしかける。 「このジジイ本当に寝てるの!?くっそー、タイ国のエージェントを倒せばトワイスちゃん様と影長さんの 脱出ルート完成と思ったのに、最後にとんでもないアクシデントが待っていたよ」 「グーチェがんばれ~」 「稲荷3号と呼べっての!ってヤバッ」 「グガー」 キャベスラリアートをギリギリでかわす稲荷3号。 大会終了間際、影狼隊メンバーとグーチェ達ロイヤルナイツ六魔人は稲荷仮面に扮して影長達の脱出ルートを 切り開いていたのだが、そこでこの鼻ちょうちんプー状態のアビス・キャベスと出くわしたのだった。 「グガー」 キャベスソバット!稲荷8号がダウンする。 「グガガー」 キャベス膝カックン!稲荷9号が転倒し足の激痛に悶える。 「グーガー!」 キャベスマハジオンガ!スタンガンの電圧に稲荷1号がKOされる。 「このままじゃあミイラ取りがミイラ状態になっちまうね・・・、ミュ、じゃなくって稲荷2号何やってるの!」 「うへへへへ、何って睡眠薬入りのビールの残りを部屋内にぶちまけてるんでさぁ! キャベスが何者か分かんねーけど、眠りかけならダメージで気絶させるよりこっちの方が有効かなってーみたいな?」 「その作戦乗った!5号も協力して!」 稲荷2号と3号と5号は部屋中に睡眠薬入りビールの中身をまき散らす。 「グガ?・・・グガーグガー」 久しぶりにいい運動をしたという満足げな顔でキャベスは完全に眠りについた。 稲荷仮面軍団はギリギリで全滅する危機を脱した。そこに丁度、元祖稲荷仮面がトワイスを抱きかかえて到着した。 「隊長、お疲れ様です。脱出の障害は無事排除しました」 稲荷1号と8号を助け起こしながら5号が元祖稲荷仮面に説明する。 「お前達は大丈夫か」 「自分達で歩ける程度には動けます」 「よし、それでは脱出するとしよう」 「グガーグガー」 「こら稲荷2号!あんたが寝てどーするのよ!」 10人前後の稲荷仮面が逃げていく中、キャベスは幸せそうな顔で寝ていた。 「むにゃむにゃ、久しぶりに楽しい奴らと喧嘩できたわい。おめーらまとめてこいやー・・・ 本気のワシを見せちゃるから・・・グガー」 まだ余力あったのかよこのジジイ! ◇◇◇ 『4位』 咄嗟の判断だった。すんげー雑に放たれたKAIKETUサンダーボルトの範囲が下手すると 観客まで空き込みかねないと考えたトワイスは、ミルットの最後っ屁を全身で受け止めた。 「うおおおおおおおお!!!!!!!!!」 (注:彼はヒールでラスボスです) 限界がきていた機体は完全に崩れ落ち、爆発と感電のショックをまともに受けバラバラになった機体から 転がり落ち倒れるトワイスをミルットが高笑いして見下ろしている。 「ひゅーほほほ!ひゅーほほほ!なんか知らんが勝手に当たりに行ってくれたわ。びくとりー!」 (注:彼女はヒロインです) その時、どこか近くで聞いた事の無い効果音が流れてきた。 『あああ~~祭りだ、祭りだ~~~』 「こ、この音は・・・演歌!?」 ミルットが聞いた事の無い効果音。それは稲荷仮面が演歌花道の緊急脱機能を使った時の音だった。 立ち上がれないトワイスを稲荷仮面が駆けつけ抱き上げる。 キャベスがそうだった様に大会のルールでは試合中に機体を降りたら当然リタイア扱いである。 「終了ー!なんという事でしょう、優勝は・・・稲荷仮面の手に転がり込む寸前だった優勝は いまここで消滅!彼の戦いは終了してしまったのです!」 「後は任せておけ。ゆっくり休みたまえ快王」 その言葉に甘え、稲荷仮面に抱かれながらトワイスは会場を去った。 それから一週間後・・・、 「後ろから師匠が突き上げてくる。激しい腰の動きはドーピング力によるものなのか」 「ルルミー、せめて全年齢版をプレイしてくれないか、それが駄目ならせめて好感度マックスイベントを わざわざ私の前で音読するのをやめて欲しいんだが」 「バーロー、こちとら地球全土に藤宮流開祖の恥ずかしいポエム流されたんだぞ!ばかきらいさいてー」 「すまない、アレは本当に悪かったから!あの時はああするしかなかったから!!」 トワイス、というか彼の演じていたタリーナ及びトワイスというキャラが大ブレイクしていた。 トワイス本人が大会終了後に姿を消した事を良い事に勝手に色々とタイアップ企画が実行されていた。 ルルミーがやっている『500年王国アイリス』もその一つだ。 魔物に国を滅ぼされ命からがら逃げだした王女タリーが参謀トライスや共に逃げ落ちた部下や 道中で仲間にした者達と共に力を蓄え国を取り返しに行くというやたらこった設定のタワーディフェンスゲームである。 名前は多少変えてあるが、どう見ても実在の修斗ファイターをモデルにしていた。 ルルミーが読み上げているのはタリー姫に武術を教えたカナディン兵士長の好感度マックスイベント、 このゲームは戦場で得た酒を男キャラと飲み交わして好感度を上げていき、最高値に達すると姫との夜のイベントとなるのだ。 この他にもレツゴーエルフちゃん復刻版発売決定、レツゴーカナダちゃん修スポで四コマ連載開始、 大会中の映像を使って運動靴や化粧品のCMにまでタリーナ(トワイス)が出演していた。 要はジェーン☆乙姫と五木ジョージの商品価値が下がった分がまとめてこっちに来てしまったのだ。 「うぐぐ、どうしてこんな事に」 「そんなに嫌ならタニヤマの所に殴り込みに行ってやめさせればいいだろ」 「契約では一年間は肖像権はあっちにあるんだ、ブームが去るのを待つしかあるまい」 「本当に律儀だなお前。あ、そういやお前なんでポエム読んだの?」 「何故かあの老人にはあれが効く気がしたんだ。実際効いた」 「んな訳ねーだろ!大方トワイスと張り合ってじーさんがスタミナ切れしたんだろ」 トワイスはキャベスが凄い人物だと必死に説明したが、ルルミーは聞く耳持たず延々と タリーナ関連商品の恥ずかしいセリフを音読し続けた。 上手く説得すればキャベスの正体に一気に近づくチャンスだったのだが完全に間が悪かった。 「すっげー!トワイスみろよ!攻略Wikiでタリー姫がとんでもないあだ名で呼ばれてるぞ」 「どんな?」 「全年齢版では『酒豪姫』、18禁版では『便所姫』って書いてある!」 「・・・」 「そんで来週のアップデートで参謀トライスが戦闘員として参戦決定! つまり本人同士のセックスが解禁だ!武者震いがするのう! おいこらトワイス、何気持ち悪い事してんだよてめーは」 「・・・びえええええええん!!!」 「ガハハ、トワイスが壊れた。いい気味だ!」 駆けつけたレンヤが二人をまとめてビンタするまでルルミーの馬鹿笑いとトワイスの号泣は続いた。 ◇◇◇ 【3位】 トワイスが機体を大破させて失格、ミルットは虫の息、マルーも追い詰められていた。 普通に行けば優勝が手に入るはずだった稲荷仮面はトワイスが敗北した直後、突然機体を降り失格処分となった。 「終了ー!なんという事でしょう、優勝は・・・稲荷仮面の手に転がり込む寸前だった優勝は いまここで消滅!彼の戦いは終了してしまったのです!」 予想外の展開に会場がざわつく中、稲荷仮面はマイクを手にし観客に対し語りかける。 「会場の諸君、見ての通りトワイスは敗れた。そしてこれは私の役目が終わった事も意味する」 稲荷仮面は狐の面を取りマスクの下の顔を見せる。 会場からは悲鳴が飛ぶ。 そこには肉の無い骸骨の顔があったからだ。 もちろんこれもお面である。そんなお面いつ用意したとツッコミたいトワイスだったが、 稲荷仮面からそのまま寝てて欲しいと言われたので黙っている事にした。 「見ての通り私は生きた人間ではない。トワイスと同じ時代を戦った戦士の亡霊、 それがこの私稲荷仮面の正体だ」 そうだったのかとマルーは思った。稲荷仮面の仮面の意味も五木を降ろしてまで 彼を出場させた意味もこれで上手く繋がる。 そんなわけあるかとミルットは思った。だが、ここで嘘つけ!とか言うとこの大会がぶっ壊れてしまう。 この流れを止めるアドリブ力はスーパーエージェントスキルでは対応していなかった。 そして、この二人の沈黙がその後の流れを決定づけた。 「私はトワイスの魂を送らねばならない、この大会はこの時代の戦士達で争ってくれ」 「ひゅほ!?ちょ、ちょっと」 「さらばだ」 目を閉じたままのトワイスを抱きかかえ、堂々と稲荷仮面は脱出する。 そのまま控室を通り、脱出路を切り開いていた仲間達と合流し裏口から出て行った。 そして五日後、当然の事ながら影狼隊の隊長さんはアムステラ軍からお叱りを受けていた。 今回の事件の発端はトワイスで、隊長は事態を無事に収める為に動いていたともとれるが 今迄が今迄なので、それにトワイスはルルミーからの言葉責めでとっくにグロッキーなので お前が悪いという事になった。 現在隊長は稲荷仮面の格好でリングに立たされている。 目の前には擬人化したゴキブリの様な全身タイツを着込んだ大男がタックルの構えをしている。 リングサイドには修道女の格好をした少女がおり、二人に指示を出す。 「よし、両者位置についたな。ではぶちかませシアン」 「へーい」 「・・・タイム」 「どうしたのだ影狼隊の?」 「軍上層部に今回の件を報告する為に再現映像を作る、そういう話だったな?」 「ああ」 「二つ確認したい事がある。まず、何故本件と関係無い国教騎士団がこの仕事を?」 「オスカー将軍に『そこの君いい肉体してますね、再現ドラマの大男役してみませんか?』とシアンがスカウトされてな」 「美味い肉とワインだった。将軍っていつもあんなの食ってるのか」 「なるほど、それともう一つ確認したいのだが、私は別に五木ジョージとは戦闘していない。だから」 「嘘をつくな、大会参加の為に最初に戦った相手が五木ジョージだと記録にしっかり残っている」 「んじゃ行きまーす。ちゃんとカウンターで撃退頼むぞ。どりゃあああああ!」 ドドドドドドドドドドド! 「待て、君達ちゃんと報告書を読んでないだろう」 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!! 「非常に複雑な流れなのだが、あれはユールという地球人がやった事で私は五木のタックルを攻略してないし、 キックでカウンターとるなんて多分出来ない」 ドドドドドッドドドドドドドドドドドドオオオドドドドオドオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!! 「それに君の力は見た感じ五木よりもはるかに上に感じるのだが。ああ、そうかオスカー将軍は私に釘を刺す為に君を」 バギッ! 「ぎゃっふーん」 ギューン! 「コラー!これじゃあ再現にならないでーはーなーいーーーかーーーーーー!」 クレイオの文句をドップラー効果で聞きながら隊長は窓を突き破り飛んでいった。 ◇◇◇ 【2位】 「さあ過去の亡霊は去り、戦場に残ったのはトワイスとの戦いで残ったベビーのミルットと」 「稲荷仮面との戦いでボロボロになったヒールのマルーですね」 「『善玉』のミルットと『悪玉』のマルー、一体どっちが勝つのでしょうフェミリアさん?」 「観客の皆さん、二人はもう動くのもやっとです応援してあげて下さい。それ、ミールット!ミールット!」 フェミリアの声援に合わせて観客も徐々に声を張り上げて応援し始める。 「ミールット!ミールット!ミールット!」 「ミールット!ミールット!ミールット!」 人々の声援を受けミルットは立ち上がる。 こんな声援受けたらトワイスと稲荷仮面を追跡できねえじゃねえかと思いながらヤケクソ気味に突撃する。 「ひゅーほほほ!こうなったら最後までやったるわ!後の事は会場内で警備している人達に任せる!」 警備してる人達はとっくに全滅し、障害となるのは半分寝た状態のキャベスのみになっているという事実を この時ミルットはまだ知らなかった。彼女は悪くない、タイミング的に知る事など出来なかった。 「ミールット!ミールット!ミールット!」 「ミールット!ミールット!ミールット!」 今迄この大会の流れを全く理解できないでいたマルー、だがこうなればもう彼も悟ってしまう。 (静か、遠藤さん達の誘導でマルーを応援する声が全く聞こえなくなったよ。ああ、そうか) 「ミルットォーファイナルエルボー!」 (ボスが大会前に言った通りだ。マルーは絶対に勝っちゃいけないんだ) 「ミルットォーアグラツイスト!」 (機体はこっちの方がだいぶマシな状態、だったらマルーは) 「ミルットォークロスライダースープレックス!」 (説得力のある負けを演じなきゃいけないよ。相手の猛ラッシュを受け切って) 「ミルットォーピーチボンバー!」 (こっちも相手にダメージならない程度に反撃して) 「ミルットォーストライクスリャー!」 (そしてヒールとして倒される) そして次の日の社長室。 「五木とジェーンは残念だったが、奴らに付いていたスポンサーはほぼそのままタリーナに移ってくれた。 興行としては大成功と言えるだろう。マルー、お前も良くやったな」 「・・・うん」 優勝したミルットと三位の稲荷仮面はあの大会限りのゲストでマルーは大ヒールだ。 そうなればCM等の話はタリーナの所に流れていく。タリーナも既に修斗ファイト界には存在しないが、 その肖像権と大会の映像記録は残っており様々なメディアに利用されている。 タニヤマが持っている権利は一年で消えるが、あのタリーナのキャラクター性ならその一年で莫大な 利益を稼ぎ出すだろう。 そんな訳で、大会終了後もマルーの評価は変わらなかった。だがマルーの表情がいつもと違うのはそれが 理由ではない。 「どうしたマルー、昨日の試合でアバラでも折れたか?」 「ううん、怪我は大した事ないよ。ボス、マルーは自分の名前について考えていたのよ。 このマルーの名前、マルー・ロディムという名前の持つ意味。昨日マルーが完全にヒールだったのは、 デビュー時のキャラ付けもあったけど、一番の理由はマルーがマルー・ロディムだったからよ」 「そうだな、プロレス的にはこの悪名はありがたいが、お前には辛いかもしれんな。 修斗ファイトを止めたくなったのなら俺は止めんぞ」 「違うよボス。マルーは傭兵として『マルー・ロディム』の名は信頼が取れないと思った。 レスリングは続ける。でも傭兵のマルーは終わりにしたい」 プロレスの場でさえああなのである。ローマ襲撃実行犯の家族である事を証明してしまう マルーのフルネームは傭兵として致命的なのは間違い無い。 「借金はどうするんだ。傭兵をやらんと絶対に返せんし、傭兵の仕事はお前の意思で辞められるもんじゃないだろ」 「傭兵はやめない、マルーはやめる。リングネームとしてのマルーは残す。えっとつまり」 「傭兵として別の登録名を使いたい、そういう事か?」 マルーは頷く。 「それなら問題ないな。本名を伏せて活動している傭兵も前例が無い訳じゃねえし、お前の状況なら ジョンもオッケーしてくれるだろう。それじゃあBランク昇格に合わせて申請しておけ。 えっーと登録用紙がこの部屋にあったハズだ」 「ボス・・・ありがとうございます」 マルーは登録用紙を受け取り目を通す。そして目を見開く。 「あのボス、この『異名申請料金』って」 「登録してある本名とは別に傭兵名を管理しなきゃならんだろ?その分会社に負担を掛ける訳だから お前が金を払う義務が生じるのは当然だろ」 「高いよ!ゼロがむっちゃ並んでるよ!」 「文句はジョンに言ってくれ。ああ、もちろんBランク昇格時の各種登録料はこれとは別に発生するからな。 戦闘シミュエーター年間フリーパス代、中隊長講座テキスト代、専属メカニック指名代、その他もろもろで ざっとお値段はこちらだ」 マルーの目玉がスポポーンと飛び出る。今迄の仕事で稼いで少しずつ減らした借金がスタート時点まで 戻ってしまう程の金額が電卓に表示されていた。 オシリスの傭兵は借金を完済すれば自由になれるが成功者はいない。 その理由の一つをマルーが知った瞬間だった。 ◇◇◇ 【1位】 「長き戦いは終わった、かつての戦いの犠牲となった戦士の魂も救済され、此度の儀式は 完全な形で決着となった。そう、願いを叶える権利を得た戦士がここにいる! 最速の英雄を操りし女、怪傑ミルットよ!さあ機体から降りて願いを言うがよい!」 会場の清掃と安全確認が終わった後の表彰式。7位から順に呼ばれ観客の前でコメントをしていき ついに優勝者であるミルットがタニヤマに呼ばれた。 なお、3位と4位は来なかったがそういう演出だと思われ観客からは不審には思われなかった。 「ひゅーほほほ、当然の結果よ」 演出の為、決着後もマシンに乗ったまま会場に残っていたミルットが機体から降りてポーズを決める。 「ミルッと登場!」 たゆんとオッパイが揺れる。 「ミルッと優勝!」 ふゆんとアフロが揺れる。 「ミルッと・・・え?」 観客がアフロに気付いて大爆笑。ミルットも自分の頭に両手を置き髪型の変化に気付く。 「な、なんじゃあこりゃー!!」 KAIKETTUサンダーボルトの影響か、ミルットの頭は見事にボンバヘッしていた。 「さあ、願いを言うがよい優勝者!」 「え、えーっと、腕のいい美容院でストパーしてもらいたいです」 帰還後、ミルットからドリス・ミラーへと戻った彼女は真っ直ぐ情報局の局長に飛びかかった。 常識的に考えれば人の頭は爆発の衝撃を受けてもアフロにはならない。このアフロ化の原因は 自分が勝手に改造されたのだとドリスは結論づけた。 ブライアンがしがみついて止めなければ鉄腕パンチが局長の顔面をへこませていただろう。 「優勝おめでとう怪傑ボンバヘッ・ミルット」 「黙れオッサン、首から上は勝手に置き換えるなってあれほど言ったのに、何してくれるんじゃい!」 「落ち着いて、ドリス」 ガラッ 「そのアフロはサイボーグ化の影響じゃないわ。地毛のままだから」 局長デスクの引き出しが開き、ドリスのパートナー、特殊兵器開発局のエンジニアであるエランが ドラえもんのごとく登場アンド説明。 「エラン!今迄どこにいたのよ。もう最終回よ」 「貴女にどつかれる可能性を考慮して今迄この引き出しに隠れていたのよ。トイレはボトルで済ませたわ」 「だったらどつかれる様な事すんな。で、つまりはこのアフロはアンタのせいって事でいいのね」 「ええ、生身の顔を守る手段としてこっそり貴女の使っているコンディショナーに耐ショックシリコーンを 混入しておいたの。爆破の衝撃や熱を受けると髪が広がって顔の火傷とかを防ぐのだけど、 無事に上手く行ったみたいね」 「それはありがとう。でもこのアフロどうするのよ!鏡見る度にチカーロの奴を思いだしちゃうじゃない!」 「ストパーで直るわ」 「マジでっ!?」 後日、ストレートパーマで完全に元通りの外見になったドリスの元にブライアン経由で 携帯ゲーム『ガメラ&アルーガ』のカードデータが届いた。 「優勝者のカードが出来たからミルットさんにデータを渡して下さい、だとよ」 「へー」 コロッセオウィナー・ミルット(第一段階) 『ミルット登場!さあこの大会をエロかっこよく優勝しちゃうわよん!もちづきくんを宿したこの ミルットXに敵はないわ!』 コロッセオウィナー・ミルット(第二段階) 『くっ・・・稲荷仮面とやら中々やるじゃない。このまま私のバックを取って酷い事するんでしょ、 エロ同人みたいに!穴ん堂のエロ同人みたいに!涙がでちゃう、女の子だもん!』 コロッセオウィナー・ミルット(第三段階) 『ひゅーほほほ!過去の負け犬がでしゃばってるんじゃないわよ!このミルット様の覇道を 邪魔する奴はKAIKETUサンダーボルトでお仕置きよー!!』 【爆発頭】コロッセオウィナー・ミルット(最終進化) 『んぎゃー!私のキューティクルがボンバヘッしていらっしゃるー!?え、願い? ストパーが上手な美容院紹介して下さい』 「屈しニャい!ピユラこのやろう!」 ガシャーン! 「あ、コラ!俺のスマホ床に叩き付けるな!」 「私こんなんじゃない!再現率0パーセントよ!プンスカプーン」 「いや、良く出来てると思うぞ。大会中のお前さん、こんぐらいはっちゃけてた」 「マジでっ!?」 こうしてドリスの潜入活動は大成功に終わった。え?影長さん達逃がしちゃったじゃないかって? やだなー、このミッションの本命はオシリスグループの活動とアムステラのラインを確認する事ですよお客さん。 修斗大会そのものに関してはほぼシロなのが分かったついでにブラッククロスの裏金ラインの一つを 潰せたのだから大成功に決まってるじゃないですかー。 つまりは、概ねめでたしめでたしという事なのです。 「ゲッパー、俺はいつも通りだぜ」 「仕方ない事だけどGM減ったわね」 「概ね満足じゃいグガー」 「びええええええん!」 「うわーうわーうわー(エコー)」 「また借金が増えたよ・・・」 「チカーロみたいな頭になったのを全世界中継された・・・」 めでたしめでたし 怪傑ミルットの挑戦・完
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(カバー裏の表紙と背表紙の枷井) ・・・タレント養成学校「テアトルアカデミー」のタレントオーディション広告より ATプロダクション所属のタレント・脇知弘からか 収録話 15ごんぼZ(連載では26話)/ゾンビと補正と水中戦 (「陸上戦でも誰にも敗けん!!」戯れる八尾と能見) ・・・サンライズ制作のロボットアニメ「機動戦士ガンダム」第29話「ジャブローに散る!」より ズゴックの高速戦闘でジムが一瞬で破壊されるシーンから 16ごんぼZ(連載では24話)/ラーメンと早食いと阿鼻叫喚 (カラーページのイラストが削除) ・・・連載時は「いきいきごんぼ」であったため、登場人物紹介では吏毘堂の年齢が14歳だが、司会者に13歳と紹介されている 17ごんぼZ(連載では27話)/ショーと休日と遊園地 (カラーページのイラストが削除) 18ごんぼZ(連載では28話)/ワナとなわとびとダイエット ・・・クラスが「1-5」から「2-5」に変更 19ごんぼZ(連載では29話)/早起きと占いとプログラム 20ごんぼZ(連載では30話)/放課後と難易度と七不思議 21ごんぼZ(連載では31話)/知識とホックと引き上手 22ごんぼZ(連載では32話)/モールと迷子とドリンクバー 23ごんぼZ(連載では33話)/修行と自販機と審判の日 (おまけコマの漫画「狂闘先生」⑪) ・・・石黒正数のギャグ漫画「木曜日のフルット」より 作中の漫画家・白川先生が連載の漫画から 表紙には主人公の賀馬先生と宿敵・鉄仮面番長が確認できる 24ごんぼZ(連載では34話)/牛車と養殖とタイムカプセル 25ごんぼZ(連載では35話)/上履きと犯人と一蓮托生 26ごんぼZ(連載では36話)/電気と銭湯とドッヂボール 27ごんぼZ(連載ではZ2話)/暗号と淡白と独立国家 28ごんぼZ(連載ではZ3話)/ターボと裏とヌートリア 29ごんぼZ(連載ではZ4話)/成績と徹夜としわっしわ
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怪盗ミルット 最終話 『ミルット対偽ミルット!』 (前回までのあらすじ) 政権交代こそが最大の景気回復策と信じたミルットは、ギガン党党首にして 現総理の百文字に勝負を挑み彼のハンドレッドマニフェストを破壊する。 その帰り道、今まで中立の立場だったヘンリーが突如立ちふさがった。 彼の正体はグラップラーポリスの潜入捜査官だったのだ。 今までずっと百文字総理の不正暴露の為に自分が利用されたと知りヘンリーと 最後の勝負をするミルット。ミルットとヘンリー、お互いの全てを知るが為 この勝負は決着がつかないかに思えた。だがわいせつ罪の刑期を全うしシャバに 戻ってきたカーフィル=レイスの援護によりミルットはヘンリーを退ける。 その後怪傑ミルットはいずこかへと姿を消し、サーメットは本人の知らぬ所で ミルットと同一人物であると勝手に確信されていた。 ここは喫茶店兼ゲームショップチカーロ。閉店後の店内で店長のチカーロと 店員達が一枚のビラを机に広げ眺めていた。 「カラクリシティ・第16回三狩リア(サンガリア)大会。この大会に出て優秀な成績を 納めればこの店も大繁盛間違いないわ」 「俺達で挑めば楽勝ォ!ヒヒヒッ、大会参加者達が俺達の手の上で踊る様ァ、 サイッコウの快感が生まれるだろうぜぇ!」 【三狩リア】 年に一度行われているグラップラー達の戦いの祭典。 グラップラー同士の私闘は現在法律で禁じられており、この大会は彼らにとって 貴重なガス抜きの機会となっている。 (もちろん法律を無視して暴れる奴も、逆に戦いを嫌い大会に参加しないグラップラーも 一部には存在する) その名の通り三対三での乱戦方式となっているが1チームに付き最大5人まで 登録可能であり、対戦ごとに参戦する3人は自由に入れ替えられるが勝負中の 入れ替えは認められていない。 「あのチカーロ様、やっぱり私も行かなきゃならないですか?ヘブン状態っ」 もじもじしているサーメットの膝に拳銃型ライターがファイアーされる。 「当然よ。アクート君とゲッツアーだけじゃあ対応しきれない所もあるからねえ。 あんたもそろそろ喫茶店の一員として必要なスキルは得ているはずよ」 「わ、わかりまひた。でましゅ~。というか今回は断る気なかったんですけど」 「じゃあ焼かれたくて戸惑ったフリしてたの?」 「はい!!!!!!」 ライターで炙られた膝をさすりながら恍惚の表情で了承するサーメット。 グラップラー関連ではこれまで大抵ロクな目に会ってこなかったので尻ごみ していたのだが、思い返してみれば今自分が仕事を続けていられるのもその グラップラー達のおかげなのである。 特に怪傑ミルットという名のグラップラー、直接会ってはいないのだが クビの危機の度に彼女の名前が挙がり、そして結果的に彼女に助けられてきた。 怪傑ミルットはイベントとグラップラーに惹かれ出現するという。 この大会に行けば会えるのではないか、そう考えたサーメットはこれに行かないはずは 無かった。 大会当日、カラクリシティの会場は今年も満員。グラップラー同士の戦いを安全な 場所から見たいと言う一般人、三人のメンバーを集められず今年は見学と応援だけの グラップラー達、なんかブームっぽいので恋人同伴で見に来たリア充ども、 そしてグラップラー発掘の為に目を光らせるグラップラー営利団体のお偉いさん。 「皆さんお待たせ致しました!」 会場中央、マイクを持った青年に老若男女の視線が集まる。 「本年度大会の司会役、ヘンリー=ウィリアム=クレイトンです。これより 全選手の入場式を行いますので拍手お願いしたします」 読者の皆様ご存じヘンリー。怪傑ミルット全話に登場しその度に肩書の変わる謎の 男だったがグラップラーポリスの潜入捜査官だと判明したのは記憶に新しい。 (怪傑ミルット第19話『風を斬る者、その正体』参照) 「全選手入場!」 鳴り響く拍手の音、最初に現れたのは警察官の服を着たグラップラーポリスのチーム。 「まずは我らが正義の集団、グラップラーポリス隊! 今年はリヒャルト警部が率いる精鋭五人が民間のグラップラーに立ち向かう! プロフェッショナルの威厳を見せつけられるのでしょうか?」 リヒャルト警部は射撃テストでいつもダミーの的ごと撃ってしまうので 未だC級グラップラー待遇の給料であるがその破壊力はS級に匹敵する。 ミルットがあの第14話『グラップルギルティ』における一騎打ちで 彼に勝てたのは単純に運が良かった事と周りの建物のせいでリヒャルトが本気を 出せなかった事にある。 今回の大会では観客席はバリアーに守られておりリヒャルトを阻むものは何も無い。 「続きましてチーム老人会!今大会断トツ最年長平均年齢のグラップラー達、 何やら皆もよく知るあの人もいますが今回は贔屓一切なし!一選手として対応致します!」 シワと加齢臭の目立つ熟練のグラップラー5人が歩を進める。 その先頭を歩く巨漢の男は日本国元総理大臣百文字その人だった。 第18話『ギガン党破壊指令』にて自らの百のマニフェストがミルットによって 完膚なきまでに破壊され政界を去った彼だったがどうやら案外元気だったみたいだ。 元プロレスラーである彼にはやはり背広よりもリングコスチュームが良く似合う。 「カラクリオーチーム、規定人数下限の3名での出場ですが何気に今回の 下馬評では本命との声もあるバランスチームです。 荒沢シン君には僕と立ち位置変わって欲しい」 カラクリオーチームの荒沢シンが入場すると拍手を押しのけ女子の声援が飛ぶ。 第6話『ミルットパワー不発!?最大の危機』でミルットの痴女力を相殺した 彼のラッキースケベパワーは健在。対戦相手は実力勝負以前にまずはこの力に 耐えなければならないだろう。 「ガンダーラ一行、ガンダーラ青年とその愛人たちというそのまんまのチーム!」 第2話『ガンダーラ教の聖女』ではカードゲームが上手いだけのニートだった ガンダーラがミルットに敗れる事によって得た後天性グラップラーとして蘇った。 第10話『帰って来たデュエルキング』でも全が未知数だった彼の真の力は一体 どの様なものだろうか。 「セクハラ魔王カーフィル率いるチーム爆炎の申し子!大会中も性犯罪は禁止、 カーフィル氏が暴走しだい失格となり得るのがこのチームの問題点ですね」 第3話『砂漠の暴虐王』ラストでミルットに負けじと全裸になって見せて、 なぜか自分だけ逮捕される羽目になったカーフィル。しかしよく考えると 作中唯一ミルットが全く読む事が出来なかった相手でもある。 果たしてこのチーム戦ではどう動くのか、やっぱり女を脱がすのか。 「技巧派5人組サンキスト一家に続いては七組目イケテル怪盗倶楽部! 怪盗ロビン、一体何者なんだ―!?」 第16話『怪傑×怪盗』にてミルットと共闘した義賊ロビン、作中では 正体不明とされているがバレバレだ。でも言わないであげるのが優しさ。 「最後を飾るは今や有名喫茶店!僕も週二で通っているチカーロの面々です、 もちろん看板娘のサーメットさんも参戦しています!」 喫茶店チカーロのカンバンを前後に貼り付けたサンドイッチマン状態で入場して来た サーメットに一斉に浴びせられるミルットコール。 やっぱり、何か知らない内にミルットの正体が自分と言う事になっていた。 それはまあ予想内なのだが―、 (この大会ミルット絶対出ると思ったけれどそんな事無かった、ショック!) 全8チームどこを見てもミルットはいない。これでは自分とミルットが同時に存在し 同一性を否定するという目的が達成できない。 「ミールット、ミールット!」 「ミールット、ミールット!」 「ほら、あんたに声援送られてるわよ。手ぐらい振っておきなさいな」 「私怪傑ミルットじゃないです。というかミルットがどんな格好かも知らないんです」 「これまでの状況証拠の全部が同一人物だって示してるんだ。諦めなミルちゃん」 「身内にも信じてもらえない!逆に快感かも!」 サーメットは覚悟を決めた。こーなったらサーメット=ミルノートとして この大会で大活躍してやる。怪傑ミルットがいかなる痴女かは知った事じゃねー。 だが第12話『バーサーカーサーメット』でグラップラーとして目覚めた自分、 そしてやはりグラップラーだったチカーロ達、そしていつも裏口で残飯を漁っていた 腐れ縁のG、皆と一緒に精いっぱいのサーメットを見せつけてやる。 そして、怪傑ミルットの記憶をサーメット=ミルノートで塗りつぶしてやる。 「皆さん電光掲示板をご覧ください!こちらが対戦表です! メンバー一覧と共にご覧ください!」 『第一試合 グラップラーポリス隊対ビッグボンバーズ』 グラップラーポリス隊 リヒャルト=クラウス(改造グラップラー・シューター) レンヤ(グラップラー) シャルル=ド=サンジェルマン(グラップラー) ウォルフガング=エイベルシュタイン(グラップラー) ソニア=アリストン(ランサー) ビッグボンバーズ サンキスト=マスカット(グラップラー) サンキスト=ハニーレモン(グラップラー) サンキスト=ストロベリー(グラップラー) サンキスト=トゥマートゥー(グラップラー) サンキスト=ピーチアップル(グラップラー) 『第二試合 爆炎の申し子対ガンダーラ一行』 爆炎の申し子 カーフィル=レイス(マジシャンとグラップラーのハイブリッド) ガブリエッラ=P=アンジュ(ヒーラー) フェルディナンド=サルディーニ(セイバー) ブライアン=バーンズ(シューター) サンダーボルト=ジョー(グラップラー) ガンダーラ一行 ガンダーラ(属性不明) 聖女達(マジシャン×3) アナンド(デュエリストという名の一般人) 『第三試合イケテル怪盗倶楽部対老人会』 イケテル怪盗倶楽部 怪盗ロビン(セイバー) ファントム=オーガ(アサシン) ブラック小林(グラップラー) 名無しのエリート兵(フミコミスト) ジークフリート=フォン=ラビット(マスコット) 老人会 ジ=ハンドレッド(改造グラップラー) レディ=ミイラ(改造グラップラー?・マシーナリー) テッシン(校長先生) 美崎歌(体育教師) アビス=キャベス(グラップラー) 『第4試合カラクリオーチーム対喫茶店チカーロ』 カラクリオーチーム 荒沢シン(セイバー) 立花槇絵(ギャンブラー) レオンハルト=ハーディー(シューター) 喫茶店チカーロ チカーロ(グラップラー) アクート(グラップラー) ゲッツアー(シューター) ドゥール=ゲバール(ゴキブリ) サーメット=ミルノート(怪傑ミルット) 組み合わせ決定後の控室、ある者は猛り、ある者は震え、そしてある者というか 主人公は抗議の声を上げていた。 「私だけクラス名が間違ってる!私ミルットじゃないですってば!」 「何を言うか、オヌシが他人だと偽ろうともこのワシの超聴力はごまかせんぞミルットよ」 「このお爺ちゃんボケてるー!カーフィルさん!カーフィルさんは私が ミルットじゃないって分かりますよね」 「んーむ、ちょっとオマタ開いてくれないとカー兄さんには真偽は分からないなあ」 「コイツに期待した私がバカでした!」 「なあっ、助けてくれよ怪傑ミルット!俺グラップラーでも何でもないんだよ! フェミリアさんに騙されて連れてこられただけなんだ。いつもの様にミルッと怪傑して 助けてくれよ、バクシーシバクシーシ!」 「黙れクソガキ、私は違うって言ってるでしょ」 「ミルット、ちょっと静かにしてなさいな。最初の試合が始まるわよ」 身内にもかばわれずミルット扱いされるサーメットも彼女をミルットと断定し 話しかける強敵(とも)達も礼義よくベンチに腰掛け室内のテレビで 『グラップラーポリス隊対ビッグボンバーズ』の戦いの始まりを見る事にする。 「さあ間もなく第一試合開始の予定時刻となりますが…、控室を出たはずの ビッグボンバーズが到着しません!これはどういう事でしょうか?」 「ひゅーほほほ!ひゅーほほほほ!」 「こ、この声は!」 ヘンリーは知っている、否彼だけではない。百文字がカーフィルがシンが 怪盗ロビンが、サーメット以外の全員がこの声を知っている。 「サンキスト一家の今年の運命はあけお○こで大凶よん!ミルット登場ミルット解決!」 上空から血まみれのサンキストのマスクが舞い落ちてその直後5つの影が 会場に着地する。 「グラップラーポリス達の相手はこのミルット軍団がやってあげるわ!」 「ゲェーつ、これは大ハプニングです。第一試合はグラップラーポリス隊と ミルット軍団に変更となりました!!」 ミルット軍団 怪傑ミルット(改造グラップラー・マシーナリー) 狩村宗茂(ライダー) スコット=ランドー(グラップラー) ミステリアスパートナー1号 ミステリアスパートナー2号 怪傑ミルット登場 参戦に大いに沸く選手と観客。 が、しばらくして重大な矛盾に全員が気付く。 (あれ?ミルットって喫茶店チカーロのサーメットだよね?) そう、ミルットは既にこの大会に参加しているではないか。 控室カメラに映るサーメットと目の前のミルットを交互に確認する人々。 「全くわからん!ラーメンマンとラーメンマンランボーのごとく瓜二つだ」 「一体どっちが本物のミルットなんだ!?」 「全然似てないじゃないか!お前らいいかげんにしろっ!」 サーメットの怒りが有頂天だ!! 怪傑ミルット・完! あとがき というわけで怪傑ミルットはこれにて全20話で終了。 1峠のイナヅマ 2ガンダーラ教の聖女 3砂漠の暴虐王 4オブジダン・ド・ミテモ・メガドラ 5101匹はいぬれちゃん 6ミルットパワー不発!?最大の危機 7G退治大作戦 8これがボルティ殺法だ!ホワッチャホワッチャホウワッチャー! 9大羅ブレイク工業ミルットカッターDA DA DA! 10帰ってきたデュエルキング 11ゴーリキーの通信進化 12バーサーカーサーメット 13オロチとフジミヤのアホの子大決戦 14グラップルギルティ 15再萌えトーナメント 16怪傑×怪盗 17ファ~~ ファ? ファ~~~~~~ 18ギガン党破壊指令 19風を斬る者・その正体 20(最終話)ミルット対偽ミルット! うーみゅ、振り返って見ると3~19話までがあっという間でどんな内容だったか イマイチ思い出せない。 でも私の個人的ベスト回は第12話ですね。(皆さんのベスト回は何話目かな?) 今までオープニングとエンティングしか登場していなかったサーメットが ついにメインを張り文字通り主役の座をゲットした回です。 それ以降ミルットと同等以上に活躍させてきたけれど最終話では結局また サーメットはミルットに振り回されてますね。うまくいかないものだ。 ではまた次回作がありましたらそれでお会いしましょう~。
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この物語はカラクリオー本編に沿った作品です。よって、 喫茶店チカーロはありません。 ヘンリーは謎のジャッジマンじゃありません。 ガンダーラはロボです。 ミルットの中の人は真面目です。 以上の要素が気になる人はプラウザのバックを押してね! そうじゃない人はゆっくりしていってね! 【インタビュー ウィズ エリザベート】 いつの事でしたっけねえ・・・。90を過ぎると昔の事とか思い出すのも大変でして。 ああ、思い出しました。演武大会のすぐ後ですよ。 アレス君が決勝で戦ってたトワイス快王を私の所に連れてきましてね、ついこの間まであんなに可愛かった子が 快王になったと思ったら立派な姿で私の前に現れて・・・、ええ、教えてあげられる技術は全部教えてあげましたよ。 トワイス快王に技を教える期間は一カ月という約束だったのですが、二十日目にはもう 教えられる分の剣技全てを習得してしまいました。後の10日は二人でお茶を飲んだりアレス君を交えて 演武を行ったりしていましたよ。 私が知る中であれ程他者の技術を習得するのが早いのは二人だけです。 そうですね、あの『彼』はやり方こそ違えど、その一点においてはトワイス快王といい勝負だと思いますよ。 その彼の名前ですか?いえ、それがちょっと思い出せなくてねえ。 皆は『隊長さん』と呼んでたものですから・・・。 怪 傑 ミ ル ッ ト の 挑 戦 第 二 話 『全 選 手 入 場 』 これはスーパーエージェントであるドリスが修斗大会にこっそり混ざった アムステラ軍人を見つけ出し成敗する物語であーる! ◇◇◇ 【ミルット対???】 『BGM:メタルマックスシリーズよりお尋ね者との戦い』 1ターン目 ミルット:ミルットぱんち(筋力AAA) ???:腕がらめ(技術A) ミルットは頭に血が上っている!(判断力B→E) 「ひゅーほほほ!しねえ!」 ミルットは大振りのパンチを真っ直ぐに放つ、が、その行動は完全に読まれていた。 ミルットは潜入と工作のエキスパートだが白兵においては並である、ましてや何も考えずに 殴りかかってしまった、相手の正体にも気づかないままに! 「甘いですよー」 ガキッ パンチが胸に触れる寸前に身をひねって、伸びきった腕をつかみそのまま自身の体重を利用して 可動域とは逆の方向に押す。完成された技術による腕がらめが決まった。一本である。 「はい、終了・・・」 パコッ 「え?」 腕がらめが決まったと思ったその時、ミルットの腕が自分から外れる。 スキル『アイアンボディ』の附属効果発動!人体を破壊する為の関節技は無効化される! 「ひゅーほほほ!残念でしたー!ミルットアームは360度回転可能、しかも自在に切り離し可能よーん!」 「あ~しまった」 2ターン目 ミルット:ミルットスタンガン(敏捷AAA) ???:防御姿勢 ???はミルットの腕を持ったままで両手が使えない!ミルットは冷静さを取り戻した。 「ここは一旦距離を取って、っと」 「ひゅーほほほ!遅いっ!」 外れた右腕を盾にして相手が下がろうとした所にミルットの左手が迫る。 突如その左手の指先から紐付きの針が飛び出し、相手のぽっちゃりした腹部に浅く刺さった! バリバリバリバリバリ 「んぎゃー!がくっ」 体内の高圧電源を利用したミルットスタンガン!常人なら一発でノックアウトだ。 「ひゅーほほほ!びくとりー!」 右腕を回収し、高笑いと共に勝利のポーズを決めるミルット。 この勝負ミルットの勝利で決着となった。 だが、そのミルットの頭部にゲンコツが落とされる。 「なーにがびくとりー!だ!」 ゴンッ 「ぎゃふん!ひゅーほほほ、首から上は自前なんだから殴らないで」 「そこ殴らないと俺が痛いだけだからな」 振り返らずともわかる。この声とパンチ力、それは紛れもなく奴さ。 「コーブラー」 「コブラじゃねえよ!」 様子を見に来たブライアンだ。 「ハーイ、チンチンブラブラブライアン大尉、お元気ー?」 「色々言いたいが、まずはもうちょいエロステンション抑え目で演じてくれ。お前が本番で戦うリングは 小さい子も沢山いるんだ」 「おっけ」 「で、だ。なんだその服は」 ブライアンは乳首と股間がギリギリ隠れる布地を指さす、ちょっとでもずれたら放送できない部分が 見えてしまう衣装、さっきの戦いでやはりちょっとずれていた。 「アウトー!完全にアウトー!本番もそんなんで戦う気か」 「何よ、この倒れてる人がデザインして原案はブライアン大尉でしょ?私そんなに悪くないわよ」 「よく考えたらそうだな。おいコラ、スガタ!起きろ」 ブライアンが倒れている女性の腹肉をつねるとイタイイタイと言いながら目を覚ます。 「もー、痛いじゃないですかー」 「いくらなんでもこの衣装はやりすぎだろ」 「あー、やっぱりこっちの方が良かったですかー」 スガタと呼ばれた女性は懐からたたまれた衣装の入ったビニール袋を取り出す。 その衣装はデザインこそ今ミルットが着ているのと同じだが布地が三割増しになってる分見た目が三割マシだ。 「ひゅーほほほ、あるのなら最初からそっち出しなさいよ。って、スガタってあのオードリー・スガタ!?」 ミルットここでようやく対戦相手の正体に気付く。ブライアンの友人でインドの古武術家のスガタ元中尉。 腹回り以外は概ね特徴が一致している。 「世界格闘大会でカナディアンを秒殺してムエタイ王を投げ飛ばしたあのスガタさん?」 「そのスガタさんですよー。ムエタイ王の蹴り足をつかんで投げたはいいが、 その時逆に手首破壊されてレフェリーストップで二回戦敗退になったスガタさんですよー」 「そうだ、引退してるとはいえ今でも一線級の格闘家にお前は勝った。お茶の間では見せれない戦い方でな」 ブライアンの言葉にようやく自分の戦い方のマズさを理解したミルット。 修斗大会の選手として潜入する以上、サイボーグである事は極力隠さねばならない。 ましてや、腕を意図的に外たり指先からスタンガンとかプロレス用修斗で再現できるはずもない。 「こっちの衣装に着替えてから、やり直し。な?」 「はーい」 「ハイハイ」 そんな訳で数分後。着替えたミルットとスガタは再び練習用リングに立つ。 「よし、始め!」 カァァアン! ブライアンがゴングを慣らすと同時にミルットが右パンチを繰り出す。 1ターン目 ミルット:ミルットぱんち(筋力A) スガタ:腕がらめ(技術A) ミルットは人間及び修斗の限界を超えた戦いを禁止されている! 「必殺、ミルットぷぁぁあんち!」 「芸が無いですねー」 「ひゅーほほほ、しょうがないじゃない!手足切り離すの禁止、握力120キロ以上禁止、背筋力1トン以上禁止、 人体に存在しない武器を使うの禁止、手足伸ばすの禁止、これでどうやって戦えばいいのか教えてもらいたいわ」 「じゃあ教えてあげますよー」 ガキッ ミルットが繰り出したパンチを数センチでかわして、スガタは伸びきった腕を自分の両腕と絡ませて引く。 ここまでは一戦目と同じ状態だ。違うのは腕を切り離して脱出できない事のみ。 「ひゅーほほほ、でもよく考えたら腕を捻られても痛くもなんてもないわ」 「あははー、困りましたねー。じゃあこれならどうですかー」 スガタは腕がらめから腕ひしぎに技を派生させた! スガタはミルットの腕を離さずに後ろに向かって倒れこむ。ミルットは突如重心をずらされ抵抗する間も無く スガタに被さる様に倒れこむ。 2ターン目 ミルット:マウント狙い(技術E) スガタ:ダブルアームロック(技術A) (あ、これってテレビでよく言っているマウント状態に持っていけるのかも) なんて、甘い事考えながらミルットの身体はマットに近づく。右腕の自由が効かないので 自然と左腕でマットに手を付きバランスを取ろうとする。 (さあ、上から殴りまくるわよ) ガキン 「はい確保」 「あ」 左腕をマットに付いた直後、その腕も絡めとられる。両腕を引っ張られた状態でバランスを崩したミルットは ダウンを防ぐため必死で両膝をマットに食い込ませながら耐えるが、既にスガタの決め技の射程圏内にあった。 「これで、おしまいですねー」 ムギュウウ! 「ふんがっ!」 左右から肉感的な太ももがミルットの顔面を挟み込む! スガタの決め技の一つ、ダブルアームロックだ! 「ふんがあああああ」 「痛くても腕外したらダメですよー、あ、もう腕切り離しても完全に顔挟んだから脱出できないですねー」 「ギブーギブー!」 「よし、そこまで!これから本番前日まで俺達がみっちり仕込んでやるからな」 「あはー、よろしくー」 「ひゅーほほほ、こんなん私向きの仕事じゃないわよ!局長のバカー!」 こうして、ミルットはリングでの戦闘をみっちりと仕込まれたのだった。 ◇◇◇ 【修羅場だアナンド】 所変わってここはPG隊の事務室。フェミリアがバチカン、スガタがアメリカに出かけている現在、 副長のイメルダがこの場を任されていた。そのイメルダもまた重要な任務に就いている。 国防?そうではない。それはインド軍の仕事だ。 彼女とその部下達は今、 「アナンド君、これペン入れ終わったからチェックして!」 修羅場にいた。 きっかけはコンテナーガだった。昔食っていく為に絵を書いていた事があるアナンドがコンテナーガの胴体に 萌えキャラのデザインをして限定販売車として売り出した所、スガタ隊長の夫であるベルン・スガタを通して タニヤマ氏にアナンドの絵が伝わり、「今度ローマでやる修斗大会の選手達をアプリゲーのカードにしたいんだけど イラストお願いできるかな?」との依頼をよく考えずにオッケーしてしまった事が悲劇の始まりだった。 選手の写真を元にアナンドがカードイラストと設定を作り、タニヤマ氏にファックスしてオッケーを貰う。 これを七人分作れば終わりという簡単な仕事だと思っていたが・・・。 「どーもタニヤマです。悪いんだけど稲荷仮面ってキャラを追加でお願いします。 締切は他のカードイラストと同じで」 「タニヤマです。稲荷仮面に負けて参加出来なくなった五木のカードだけど、このままだと 大会の流れと矛盾出るから設定変えてもらえないかな?」 「タニタマです。ごめんねー、カナディアン枠の選手まだ決まってないんですよ~。 なので若手とベテランの男女のカード4枚分作っておいてくれないかな」 「タニヤマです。カナディアンガールのイメージが前に作ってもらった若手女子のとだいぶ違うから 改めてお願いしていいですかねえー。締切は三日後の大会当日までで」 そんな感じにどんどんスケジュールが過密になっていき、アナンド一人の手で負える仕事では無くなっていった。 この仕事がコケて困るのはアナンドだけではない。PG隊の信用、そしてカードを楽しみにしているゲーマー達の為、 「タニヤマくたばれ」を合言葉にPG隊全メンバーが協力して仕事に参加していった。 アナンドがイラスト原案を考え、整備士のマニが下書きし、女性隊員達がペン入れをしてアナンドの所に戻し、 色を塗り設定を添えてファックス。タニヤマ氏の返事を待つ間に次のカードの作業に取り掛かる。 もう完全に事務所は漫画スタジオと同じ状態になっていた。 「皆ー、ファックスが届いたッス!【捲土重来】ルーキーカナディアンガールのイラストオッケー出ました!」 アナンドの言葉に全員が笑みを浮かべ机に倒れこむ。もう全員限界まで来ていた。 「あ、またファックスッス。えーと、カナデイアンガールをやられ役にした大会ルール紹介漫画を2ページ」 「「「「「「タニヤマくたばれー!!!!!!!!!!!!!」」」」」」 全員の声がハモり気力を振り絞る。だが、いくら振り絞っても限界は弱いものから順番に訪れる。 「モウダメダ・・・」 「ああっ、俺を除いたら唯一線を引けるマニっつあんが倒れた!」 「アナンド君、他の皆も手が動かないわ。こんな仕事断りなさい。カードの仕事は終わったんでしょ?」 「いや、まだ一つだけ手は残されてるぜ!これは使いたく無かったんだが」 アナンドはそう言い、自分用のロッカーへと向かう。数分後戻って来た時にはその手には一冊の同人誌が握られていた。 「レツゴーエルフちゃん7巻、この同人の内容はエルフの格闘家が闘技場で魔物にリョナられるという内容。 ここから使えるコマをトレスすれば一時間で2ページ漫画は完成する」 「著作権の問題はいいの?」 「ああ、隠していたかったんだが・・・、俺がこの同人誌の作者だ」 PG隊員達はこれ程頼りがいのあるアナンドを見るのは初めてだった。 が、それはそうとしてドン引きした。 後日行われたハイパーコロッセオの観戦者には以下の記念品が送られた。 アプリゲーム『ガメラ&アルーガ』の限定カードのデータ8種 【演歌花道】アーツマスター・ジョージ(レジェンド) 【晴々愉快】スターライトオトヒメ(SSレア) 【簒奪者】ミステリアスマスク・イナリ(SSレア) 【老菜】ムラサキキャベス(Sレア) 【暴剣】ヒューマンモード・マルー(Sレア) 【怪女】レディコマンド・ミルット(ハイレア) 【捲土重来】ルーキーカナディアンガール(ハイレア) 【中年妖精】スーパーパー・ゲッパー(ノーマル) ハイパーコロッセオのルール紹介短編漫画『レツゴーカナダちゃん』つきパンフレット この記念品目当てで入場した観客も多くいた。 だが、この記念品を作る為に締切に追われた人達の戦いを知るものは僅かである。 ◇◇◇ 【レツゴーカナダちゃん、信じていた師匠がクズだったせいで・・・ひぎぃー!】 「最初だ、最初が肝心だ。私がそこそこ強いと印象つけ、それからカナディ師匠の技は全部伝授された事をアッピル。 それにはこの第一印象が大事。私はけっこー強い、私はけっこー強い、私はけっこー強い、よっしゃー!」 気合いを入れてから選手控室のドアを勢いよく開ける。 「失礼します!大会参加者のカナダから来たタリーナ、リングネームはカナディアンガールです!」 挨拶と共に控室の面々を見渡す。 日朝ヒーローっぽいマスクをした老人。 フルフェイスヘルメットの男。 スク水の子供。 学生用ブレザー着た女性。 SM女王様。 そして最後に狐面の男を確認したところでタリーナの顔が硬直する。 「あ・・・」 動きが止まる事数秒、部屋の全員がタリーナに気付く。 「ぜ、前座の芸人さん達ですか?私部屋間違えました?」 「いや、あっている」 狐面の男がタリーナの言葉を否定しスペースを空ける。 タリーナは恐る恐る控室に入る。その様子を狐面の男がじろじろと見つめてくる。何かを見定めようとしている様だ。 (こ、怖い!何この人!中身は誰なんですか?!それと何この集団!) タニヤマとカナディアンにスカウトされ強制的に大会に参加させられたのが三日前。 移動時間を除くと実質二日。トレーニングの合間に参加させられる大会の情報を与えられる度 タリーナは驚くばかりだった。世界の主要国で生放送される大会の参加者、それの7人の内の一人が ついさっき出会ったばかりの修斗素人の自分。あんたら頭おかしいだろと突っ込んだら、 世界一豪華な短期レッスンだぞ喜べというカナディアンの返事。人生で二度と体験できない幸運ですよ、 大丈夫ブック通りにやれば怪我もしませんとタニヤマ氏にも強引に説得されやって来たらこの面子。 繰り返し言おう、タリーナの準備時間は二日ちょい。大会全体の流れしか教えてもらえず、 対戦相手の情報なんて名前以外ほとんど入ってこなかった。 「えっと、貴方が稲荷仮面さんですか。一般参加枠代表の」 「ああ、そしてどうやらこの大会メンツから狙われてるらしい」 参加者全員が揃っている中、稲荷仮面は悪びれもせずにそう言い放った。 「ブックに書いてあっただろう?私を優勝させない為に六人が協力する様にと。君にも期待しているよ」 「うわ、何様ですか。そして中身は誰なんですか」 「私に勝ったら教えてやってもいい。さあ、君もあっちで行われている作戦タイムに参加してくるといい」 稲荷仮面がいる横で堂々と行われている稲荷仮面打倒の為の作戦会議。 酷い光景だと思っているとSMの女王様がチョイチョイと手を振り、タリーナも輪に入ってくるように勧めてきた。 「良く来たのう!ワシは対稲荷仮面用人型決戦兵器、アビス・キャベス!」 「私は今大会の優勝を義務付けられているコスプレイヤー、ジェーン☆乙姫!」 「抜かずに八時間の記録を持つ・・・抜か八!」 「一回の射精で1リットルのザーメンを出すガロン塚本!」 「マルー・ロディム。ブラッククロス傘下で育てられたヒール担当」 「真面目にやりなさいそこの二人!」 スパココーン! ジェーンのチョップがふざけた自己紹介した二名の頭を叩く。 「ひゅーほほほ、抜か八あらため怪傑ミルット。カナディちゃんと同じルーキーよん」 「おー痛て、ガロン塚本改めアトランタ・ゲッパーだぜ。こん中じゃ一番の古株だ」 全員の名前と顔を一致させたタリーナ。その顔は蒼白になりガタガタ震えていた。 「どした?さっきの俺の自己紹介滑った?スマンスマン、セクハラに感じたなら謝る」 「違います、何でっ」 「何で?」 「何でブラッククロスの人とかが堂々といるんですかー!」 タリーナは涙目で素早くサイドステップ。マルーから見えない様にミルットを盾にしてしゃがみ込む。 「おまわりさーん!こっちです、ブラッククロスがここにいますー!」 「もちつけ!こいつがブラッククロスってのはちょっと違うから!」 「んーと確かマルー君のお父さんが半月前にバチカンでテロした主犯じゃったよな」 「・・・そうだ」 「事実でもちょっと黙ってなさい、そこのジジイとメット!」 「到着して早々にブラッククロスとその仲間達に囲まれる私、大ピンチー!うわーん!」 完全ボロ泣き状態のタリーナをジェーンとゲッパーの二人で何とかなだめる。 マルーの事は育った場所のオーナーが裏企業の人だっただけだからと5回ほど繰り返し説明した頃に ようやく落ち着いたので、タリーナを加えた六人で改めて作戦会議を再開する。 「えー、俺達はそこの椅子に座っている稲荷仮面、大会のパンフには何度も目を通してるくせに 台本には全く手垢の付いてないKYの優勝を阻止する為に手を組むわけだ。オッケー?」 「ばひ、おっげーでず(ハイ、オッケーです)」 トイレから持ってきたペーパータオルで鼻をズビーとかみながら同盟に了解するタリーナ。 「よっしゃ、それじゃあタリーナちゃんは何がどんだけ出来る?まずはそれを教えてもらわんとどーにもなんねー」 「そういう質問を待ってました!実は皆さんをあっと驚かすアイテムを持って来てるんですよ」 タリーナはギターケースを開く、ケース内にはギターを入れるスペースとは別に小物入れとして使える隙間があり、 そこに入れておいたポーチから数個のアイテムを取り出す。 「じゃーん、これぞカナディ師匠から受け取ったリングで必ずウケを取れる四種の神器です!」 タリーナが取り出した四種の神器を見て稲荷仮面ぶっ倒し同盟の顔が・・・曇った。 ヘルメット被っているマルーやマスクレスラーのキャベスやミルットの表情は分かり難いが、 ゲッパーとジェーンの顔は明らかに呆れかえっている。 「あ、あれ?なんか皆さんのノリが微妙に悪い気が?えっとですね、まずこの白く細長い物体ですが 実はこれTボーンステーキの骨なんですよ!これをビスケットみたいにサクサクっと」 「いや、ビスケットだろそれ」 「そっちのは飴で作った釘、そのでっかいのはチョコで作ったヤシの実でしょ?」 「そんでその風船は膨らますと子豚の丸焼きになる訳じゃな?それに噛みついて割れば一瞬で食べた様に見える」 「何で皆さん私がやろうとしている事とそのトリックを先に言えるんですかー!?」 「ひゅーほほほ、ミスターカナディアンのハッタリなんて、みーんな見飽きてるのよ」 「流石にそれには騙されない」 「ズガビーン!」 タリーナはその場にがくりと崩れ去る。カナディアンがパフォーマンスで使うアイテム、その全てが イミテーションである事は最早観客ですら知っていた。彼はタリーナが持ってきた四種の神器以外にも、 腹に刺すと先端が引っ込むステッキとか撮影した動物が1トンぐらいに見えるカメラ等を駆使して ブライアンと並ぶ大物を演じてきた。 「役に立たないものつかまされたー!うわーん、レッスン料の二倍も払って購入したのにー!」 「逆に聞きたい、お前カナディの弟子に志願するぐらいなのに何でカナディがペテン野郎って知らなかったんだよ!?」 「私レッスン生募集のチラシをコンビニのゴミ箱で拾って興味本意で行っただけなんです。 ギターとか作詞とかダンスとか色んな事に手を出してみたい年頃な私は、パフォーマンス教室という単語に惹かれて ジムに向かい、そのままタニヤマさんに釣り上げられました」 「そっかー、タニヤマさんの口車に乗せられちゃったタイプかー。どうするゲッパー? この子が稲荷仮面と当たったらこの子自身も大会も酷い事になるわよ」 「そうならない様に組み合わせを練り直すしかねーなー」 ベテラン二名が全員の経験や大会規定をまとめた用紙とにらめっこしながら、あーでもないこーでもないと悩み出す。 「ひゅーほほほ、おトイレ行って来ていいかしら?」 「行って来い行って来い」 「タリーナちゃんをどこに配置するかちょっと時間がかかりそうだから、当分はいなくていいわよ。 全く・・・ミルットさんよりはマシなのが来るといいなーって期待してたのに」 「ひゅーほほほ、れっつシーシー!」 ひらりと身をひるがえしミルットはトイレへと向かった。 ◇◇◇ 【犯人考察】 洗面台の横に置いてあるペーパータオルを十数枚鷲づかみにしてミルットは個室に入る。 便座に腰かけ、マスクを外しミルットはドリスへと戻った。マスクの下、生身の顔は汗でびっしょり濡れていた。 (いやいやいやいや、怪しすぎでしょあいつら!!) あいつらというのはもろちん稲荷仮面とマルーの事である。 (私が怪傑ミルットとして参戦する事が決まってからちょっと後、信頼できるスジからの情報が入った。 『バーで大蛇毒砲氏が狐面のアムステラ人と手合せした』と、そして大会に飛びこむが如く参加した 正体不明の稲荷仮面。どう考えても怪しさマキシマムトマトです。本当に、本当にありがとうございました) (マルーってのも大概よ!というかあのメットの中本当にあのマルーと同一人物なの!? レベンネ事件の祝勝パーティの記事に載っていた名前と一緒だけど、とても記事の紹介にあった通りの 借金背負ったアホの子とは思えないオーラ放ってるんですけど!後、ブラッククロスの忌み子という設定を 軽々受け入れるなー!タリーナちゃんの反応はすごく正しい!任務がなければ同意してやりたい!) 大会参加者の中にアムステラ軍との繋がりがある人物がいるのは宝くじぐらいの確率と考えていた。 実際に行ってみたら一等プラス前後賞らしきクジが落ちていた。 まさにアメリカンドリーム、いや、バチカンの奇跡と言うべきか。 今の所は稲荷仮面とマルーに繋がりは見えないから、アムステラ側がいるとしたらどちらか片方だけという可能性が高い。 が、ぶっちゃけどっちもすんごくアムステラ側っぽく見える。 稲荷仮面>マルー>>キャベス>タリーナ>ジェーン=ゲッパー 今の所のドリスの考える怪しさ順位はこんな感じだ。 稲荷仮面とマルーが『今の時点で一人犯人を選べと言われたら二択に絞られるレベル』 キャベスが『あるとしてもマルーの1000分の1以下の確率レベル』 タリーナが『バカミス系かバトル系ラノベなら犯人の立ち位置、つまり現実ならまずないレベル』 ジェーンとゲッパーが『アムステラ戦争以前から身元が割れているのでまず疑わなくてもいい、というか この二人がアムステラ側だとしたら、自分ではなく外部から調査している味方が先に正体に気付く事になるレベル』 (まああの二人がむっちゃ怪しいのは確かだけど、今の状況で「貴方アムステラ軍人ぽいからミルットスタンガンで逮捕デース」 なんて出来ないわよね。私に出来るのは決定的証拠を見つけてから即座に相手の機体を壊すか奪うかする事。 その為には大会で最後まで機体に乗り続ける事が必要。目立たず、しかし勝ち続けるのがベスト) ドリスはペーパータオルで顔をこすりながら頭を落ち着ける。 (落ち着け私。一番確率が高い答えは『参加者の中にアムステラ関係者はいない』よ。 今回のミッションのメインは私じゃない、それを忘れず慎重にいかないと) 汗を拭き取りマスクをつけてミルットへと変身する。 ペーパータオルをトイレに流し(水溶性の紙だから問題ない)、控室に戻ろうとすると トイレの入り口で、足元に小さく折りたたまれたペーパータオルが落ちているのを発見した。 「ひゅーほほほ、落としちゃったのかしら?でも私はこんなたたみ方しなーい」 拾い上げて開いてみると、マジックペンで簡素な文が書かれてあった。 「えーと何々、『余・計・な・事・は・す・る・な』か。 ひゅーほほほ!ひゅーほっほほほほほほほ!ひゅーほほほ!! マジでっ!?」 犯人はこの中にいないという前提で動こうと決めた途端にこれである。 ◇◇◇ 【大会開催】 スタジアムの全照明が落とされ、中央のスポットライトが闇の中に立つ男を映し出す。 「皆さんこんにちは。この大会の開催者タニヤマです。 既に知っていると思いますが、私がこの大会を開いたのは我が先祖谷山金五郎の悲願を叶える為です」 そういう設定である。谷山金五郎という人物はタニヤマの家系には存在しない架空の人物である。 「室町時代後期の冒険者であった金五郎はオランダの貿易船に乗り込みヨーロッパ各地を旅しました。 そして見つけたのです!あらゆる願いを叶える聖地を!そう、それがこのハイパーコロッセオなのです!」 そういう設定である。このスタジアムが建てられたのは21世紀中期で日本が室町だった頃は普通の村だった。 「だがっ、谷山金五郎は願いを叶える事は出来なかった!条件が満たせなかったのです! 英雄の力を持った七人の闘士が必要だったのです!七人の闘士がこのハイパーコロッセオで戦う事で 霊力が満たされ、最後に残った最強の闘士がその願いを叶えるのです!先祖の願いを叶える為、 私は闘士達を集めました!例え私自身が願いを叶えらえれなくても、見届けたいのです、伝説の結末を!」 そういう設定である。子供達はタニヤマさんかっけーと思い、大人達は修斗ファイト見れるなら何でもいいと思い、 重度のプロレスマニアは今日のタニヤマの設定気合い入ってんなーブックにも期待してるぜと思った。 「お待たせしました!それではハイパーコロッセオを戦い抜く七人の英雄の入場です!」 タニヤマを照らしてしたスポットライトが消え、会場内が闇に包まれる。 しばらくして選手入場口がライトで照らされて選手が一人ずつ入って来た。 『BGM:oath sign(FateZeroオープニング曲)』 「それではっ、ここから先はタニヤマ氏に代わり我々が実況役をさせていただきます! メイン実況は私、おなじみ遠藤一郎。そしてゲスト解説者はなんと!この人が来てくれるとは思いませんでした! ガネーシャモーターズグループ消防車両及び営業車両部門イメージキャラクター、 皆さんには詐欺聖女と言った方が分かりやすいでしょう、フェミリア・ハーゼンさんです!」 「誰が詐欺聖女よ。サティちゃんを見に来た帰りにこのイベントに寄ってくれたお客様、こんにちはー」 「それではさっそく一人目の紹介と行きましょう、ブライアン推薦枠より怪傑ミルットの入場だぁ!」 最初に入って来たのは御存知主人公ミルット。スキップしながら投げキッス振りまく痴女に観客はヒューヒューと歓声をあげる。 「怪傑ミルットは米軍のどっかの部隊に所属しているという以外全く正体不明の新人です」 「うむ、怪傑ミルットは私が育てた様なものです(キリッ)」 「またまたー、適当な事言ってんじゃねーぞフェミリア。さあ次に入場するのは毎度お馴染みゲッパーだ!」 ダッシュで一気にスタジアム中央まで走り、スク水の食い込みを直す。一部のファンからイイゾーと歓声。 「相変わらずあざとい奴ですな。きっと生まれた環境のせいであんなあざとくなったんですよ。そう思いませんか詐欺聖女?」 「いや、私あの人と同郷なんだけど」 「知ってて聞いたんだよ。三番手、お馴染みのゲッパーに続いて来たのは・・・カナディアンガールだ!」 ミスターカナディアンにボデイスラムの体勢で担がれながら入場し、自分の立ち位置に来た所で 地面に叩き付けられたタリーナはフラフラと立ち上がりスパッツの食い込みを直す。 観客席が爆笑の渦に包まれる中、ミスターカナディアンは黒服に引っ張られて退場していった。 「えー、大変見苦しいものがカメラに映った事をお詫びします」 「さっきのってミスターカナディアンよね?あの国辱戦士と呼ばれた」 「そんな奴知りません。カナディアンガールのスパッツの食い込み直しですが、アレ多分ゲッパーに伝授されましたねー。 ゲッパーはお気に入りの新人には食い込み直しで男のハートをつかむコツを教えてるそうですよ」 「今度私もアンドレに試してみようかしら」 「ハイ今のは聞かなかった事にします。四人目アビス・キャベスがやって来たぞてめーら!」 歩きながらキャベツの葉を剥いていくが如く、重ねていたマスクを一枚ずつ脱いでいくキャベス。 最終的にはムラサキキャベツをモチーフにしたと思われるマスクが現れた。 「まーたマスクの種類増やしたのかあのジジイは。さてフェミリア、今回の入場順は観客から取った 優勝者予想アンケートの順位と同じなのは知ってたかな?」 「優勝予想投票は七位ミルット、六位ゲッパー、五位カナディアンガール、あら本当だわ」 「キャベスはタニヤマ氏一押しで実際むっちゃ強い。ですが今大会は長丁場で特殊ルールだから 老体には不利と読んだファンが多かったみたいですね。と、言うわけでこっから先は優勝候補と予想されている 三人の入場だ!まずは優勝予想投票三位、マルー・ロディム!」 マルーが入場すると同時に観客の間に衝撃が走る。二本足で入場するのも顔をフルフェイスで隠しているのも初めての事だった。 「暴獣マルー、今回は初の人間形態で入場だぁ!鎖も無いし服も着ています!」 「今迄どんな扱い受けてたのよ!?」 「おのれマルー、こないだのイベント課金しまくったのにお前倒せなかったぞ!金返せコノヤロー! ガメラ&アルーガのプレイヤーの気持ちを代表して言う、お前は今大会酷い目にあって負けろ!」 「遠藤さん落ち着いて!」 「・・・ハッ、私は一体?それでは次の入場は稲荷仮面です」 「今度は落ち着きすぎ!」 稲荷仮面の入場と共にブーイングがおこる。五木の参戦と優勝に期待していたファンがそれだけいたという事だ。 稲荷仮面も一応正式な手順に則って代表枠を勝ち抜いたのだが、プロレスの観客とはこういうものなのである。 「嫌われてますね稲荷仮面、ある意味マルー以上のヒールです」 「でも予想投票二位って事は実力の評価も高いわけよね」 「そんな事はありません、大多数は稲荷仮面の優勝は期待してませんよ。さあトリを飾るはこの人! 優勝予想投票で堂々の第一位!二位の稲荷仮面と三倍の差をつけた圧倒的優勝候補筆頭! マルーも稲荷もお前がぶっ飛ばしてくれ!ジェーン☆乙姫の入場だー!!!」 ジェーンがブレザーで踊る、選手入場曲の終了と同時にブレザーを脱ぎ捨てリング用レオタード姿で 観客に手を振ると溢れんばかりの姫コールがいつまでも続いた。 「来た、メイン姫来た!これで勝つる!」 「いいの?こんなエコ贔屓まみれの実況」 「時と場合によりオッケー!そして今日はオッケーな時と場合なのです!姫ー!うおー!ヒメェー!」 「これって彼女の実力じゃなく、単純に人気で票が集まっただけな気がするんだけど」 ◇◇◇ 【大波乱の幕開け】 「英雄の力を受け継ぐ七人の闘士、そして観客の皆さん、しばらくそのままお待ちください。 危険ですので絶対ぃぃぃに動かないでください!!」 ゴゴゴゴゴゴゴ 重低音を響かせながらスタジアム内部が変形していく。僅か三分足らずでスタジアム上空に吊るされた 多数の修斗ファイト用の巨大リングが、壁際には7つの門が出現していた。かがくのちからってすげー! 「さあ時は来た、空中に浮かぶあのリングに辿り着く方法はただ一つ、そこの門を通り迷宮を突破する事のみ。 闘士達よ各自好きな門を通り空中のリングへとたどり着くのだ。空中にあるリングは闘士が二人揃った時点で 地上に降下し、観客が見守る中で修斗ファイトを行うのだ。これを繰り返し霊力を極限にまで高めたものが 願いを叶えるのだぁー!」 「詳しいルールはパンフレット参照よ」 表紙にデフォルメされたカナディアンガールが書かれた漫画付きパンフレット『レツゴーカナダちゃん』には 以下の様に書かれている。 まずは生身でダンジョンを走りぬけ!ゴールの転送装置で空中のリングにワープするんだ! リングそれぞれに二名がワープ完了しだい勝負がスタート!余ったやつはまちぼうけだ! リングが地上に落下したら各自のカスタム修斗に乗り込みバトル! バトルは五分間!修斗にはライフが設定してあって一定ダメージごとにライフが1減るぞ! そして相手のライフを1減らした闘士は霊力ポイントを1ポイント入手するんだ! 修斗の持ちライフは3!大会中は一切回復しない!つまり3ダウンで失格になり退場だ! また、二試合続けて迷宮突破に失敗し、まちぼうけ二連発になったアホも参加資格無しとされ失格だ! 闘士が最後の一人になる、あるいは誰かが霊力ポイントを7ポイント溜めた時点で終了だ! 闘士達は7人の英雄にちなんだ『クラス』に就いていて、闘士ごとに有利不利があるぞ! さらにリングもそれぞれ多彩なギミックに凝っていて組み合わせが決まるまで観客にもタニヤマにも何が起こるかわからない! カァァァァァン!! スタートの合図としてゴングが鳴らされる。それと同時に全員迷いなく扉の方に向かってダッシュ。 「皆、分かってるわね」 ジェーンが観客には聞こえないぐらいの声で並走するメンバーに呼びかける。 この迷宮による抽選システム、一見誰と誰がぶつかるか分からない様になっているが、 一戦目に稲荷仮面とキャベスを対戦させるという目的の為、7つの扉のうち両端だけはどんな風に迷宮を進んでも 高確率で端同士で戦う事になる様に設計してある。 なので稲荷仮面が入る扉を両端のどちらかにする為、中央付近を稲荷仮面を除く皆でブロックし全力疾走する。 これで対戦カードをほぼ確実にする事ができるはずだったが・・・。 「悪いな、せっかくだから私はこの赤の扉を選ぶ」 何か仕掛けがあると気づいた稲荷仮面は隣を走るマルーの身体を押しのけ、左から二番目の扉に入ってしまう。 ちなみに扉は別に赤くはない。 「アアーッ!!!」 閉じてしまった扉をガンガンと叩き自分もそこを通ろうとするマルーだったが、同じ扉を選ぶ事は出来ない。 「マルー、別の扉から入れーっ」 稲荷仮面を入れる予定だった左端の扉をゲッパーが通過し、マルーは一番最後に残った中央の扉を通る。 一戦目からまちぼうけは嫌だとばかりに全力疾走し、マルーは迷宮を短時間で突破。 ゴール存在する巨大カプセルに入ってボタンを押すと逆バンジーの要領で一気に空中のリングの一つに飛ばされた。 「オワーーっ!」 ゆで的な展開に対して、ゆで的な悲鳴で応えカプセルごとリングイン。 着地の衝撃で割れたカプセルから脱出するとゆっくりとリングが降下していく。 「遅かったわね、フッ、ブラッククロスの忌み子マルーか。私の栄光への初戦に相応しい相手じゃない」 「ジェーンか」 マルーとジェーンが乗ったリングが地上に着いた時、既に他の二つのリングではにらみ合いが始っていた。 それを見たマルーは自分が最後だった事に気付く。 「なんじゃい、稲荷仮面じゃないんかいな」 「そうそう、だから一戦目だけ本気出していいという約束は無しの方向でお願い、な?」 「んー、どうしよっかのー」 やはり端の扉同士がぶつかりやすくなっているらしい。キャベスの相手はゲッパーだった。 「さあ、君の操兵を見せてもらおう」 「え?えっとソーセージはフライパンで炒めてケチャップいっぱいかけたのが好きです」 稲荷仮面の相手がタリーナである事を確認し、ジェーンとゲッパーは心の中で大パニックに陥った。 (稲荷仮面無傷で一戦目勝利確定来ちゃったー!) (タリーナ、せめてライフ全部取られるなよ) タリーナの心配をしつつも、ベテラン勢は気持ちを切り替え目の前の相手に挑む。 「それじゃ始めましょうか。英雄降臨!」 ジェーンがレオタードの中から奇妙に捻じ曲がった金属片を取り出し叫ぶと、他の五人も それぞれ衣装から金属片を取り出して「英雄降臨」と叫んだ。 解説しよう!今大会ではこうやって自分の修斗を呼ぶ設定なのだ! 全員のシャウトが確認されると同時に照明の光量が最大になる。 観客からは眩しくてリング周辺が見えなくなる隙にリング下の床が開き各選手の修斗が出現する。 照明の光量が元通りになると、あたかも魔術的な方法でロボが出現した様に観客には映った。 「今日の私は気分最高、晴々愉快!さあ宇宙人でもタイムトラベラーでもまだ見ぬ武術の使い手でも かかってらっしゃい!行くわよ、この身に宿るは最優の英雄『くにおくん』、スターライト・オーバー・スターダム!」 (ステータスが更新されました) キャラクター名:ジェーン☆乙姫 機体名:SOS(スターライト・オーバー・スターダム) 属性:混沌・中庸 クラス:くにおくん 筋力:C 敏捷:B 体力:D 技術:C 判断力:B 精神力:B 『クラス特性』 くにおくん:最優の英雄。熱血硬派な魂は蹴りの速度を大幅に向上させる。 また、試合数が進むほど全能力にプラス補正がかかる。 『スキル』 スターダム:僅差の判定を確率で覆す。人気者の彼女は観客だけではなくレフェリーやスタッフも 味方につけている。際どい状況では対戦相手の不利になる様なジャッジが下されるだろう。 日本拳法:見た目こそ派手だがただの道化ではない、キッチリと武術を身に着けているのだ。 打撃系の攻防に僅かに補正がかかる。 『プロフィール』 タニヤマ氏推薦枠から出場する選手の一人であり、コスプレ入場と堅実な戦いで人気を得てきた女格闘家。 デビュー当時はそのパフォーマンスで叩かれていたが、バトルもコスプレも妥協を許さず続け、 タニヤマ氏の助言もありファン達と和解した。以降は着実に人気を上げながら、過去の自分の様な問題児への 制裁もリング上で行っている。五木が消えた今、今大会優勝の道が一気に見えて来た。 第一戦の相手はマルー。ルール上、お互い力を温存して稲荷仮面に備えるのが最適解なのだが それをマルーが理解してくれているかが今二番目の不安要素。 一番の不安はタリーナが稲荷仮面にストレート負けをくらうだろう事だ。 「お、オオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!最狂の英雄『ごだいくん』の魂よ、魔修と共に!」 (ステータスが更新されました) キャラクター名:マルー・ロディム 機体名:魔修(ましゅう) 属性:混沌・狂 クラス:ごだいくん 筋力:C 敏捷:C 体力:B 技術:D 判断力:E 精神力:- 『クラス特性』 ごだいくん:最狂の英雄。棒術完全特化型の英雄であり、棒状の武器を持った時限定で能力極限までアップ。 『スキル』 旧ローマ剣術:養父ルガーから教わった剣術。あまり得意ではないのだが、上から与えらえた 設定上、大会中に一定の間刀剣類を装備してアッピルする義務が生じている。 戦闘ステージに剣状の武器があった場合優先して入手しに行く。 暴獣:修斗ファイターになった初期に与えられた設定。マイクパフォーマンスも 格闘もロクに出来なかったマルーは獣の様な男というキャラクターを演じる事で試合を乗り切っていた。 四脚タイプの機体に乗る事でステータスアップ。だが、この大会は全員人型で参加だ。意味ねえ! 『プロフィール』 ダン・ブライ推薦枠から出場する選手であり、『現役傭兵かつ修斗ファイター』 『億の借金を持つ男』という異色の経歴を持つ。今大会からは『ブラッククロス傘下で育てられた』という 設定が加わり完全にヒール一色のキャラとなってしまった。なお、ガメラとアルーガ主役のアプリゲームで ボスキャラを務めた事もあり、入場時には課金ユーザー達からのブーイングが定番となっている。 一戦目の相手はジェーン。だが控室でもその心を誰にも開かず、稲荷仮面打倒の為の動きが出来るか不安視されている。 「かっかっかっ、ワシの英雄?なんつーの、最善ってやつ?なあ『りゅういちくん』、爺3マイルドとゆこうぞ」 (ステータスが更新されました) キャラクター名:アビス・キャベス 機体名:爺3マイルド(じじいすりーまいるど) 属性:混沌・中庸 クラス:りゅういちくん 筋力:すげえ 敏捷:やべえ 体力:ぱねえ 技術:えげつねえ 判断力:おっかねえ 精神力:ありえねえ 『クラス特性』 りゅういちくん:最善の英雄。全ての能力に大きく補正がかかりキック力が特に伸びる。 が、後半の補正が付いた状態のくにおくんには全体的に一歩劣る。 『スキル』 元祖藤宮流:打撃に大きく偏ったルルミーやギャランのそれとは違い、剛と柔をほぼ半々で混在させた武術。 日本の合気に近い動きが多いがその破壊力はあらゆる武術と桁違いである。ハッキリ言おう、彼には勝てない。 任意のタイミングで発動しバトルに勝利する事ができる。 タニヤマ土下座スペシャル:プロモーターからの必死のお願いにより、対戦相手といい勝負をしているフリをする。 但し、稲荷仮面もしくは彼がガチでやりたいと思った相手の時、もしくは約束を忘れちゃった時は発動しない。 『プロフィール』 タニヤマ氏推薦枠その2。その正体はカラクリオー作品内最強候補の一人にして最年長候補でもあるあのお方。 タニヤマ氏にとっても、ドリスにとってもイベントの成功とこの老人の機嫌はほぼイコールで結ばれてしまう。 なんか今大会マスクマンやたら多いな。一戦目で稲荷仮面と戦えなくて、ちょっとご機嫌ななめ。 「この大会は単純な戦闘力で勝てる様には出来てねえ!最悪の英雄『やまだくん』とザ・マーリンが教えてやるよ!」 (スタータスが更新されました) キャラクター名:アトランタ・ゲッパー 機体名:ザ・マーリン 属性:中立・中庸 クラス:やまだくん 筋力:E 敏捷:C 体力:E 技術:C 判断力:C 精神力:C 『クラス特性』 やまだくん:最悪の英雄。能力補正はないが疑似感応型の特徴を持っておりリング上の武器を操作できる。 『スキル』 湖の魔術師:水泳とヨガを組み合わせた特殊な戦い方の達人。水中戦に突入した時 一切のマイナス補正を受けず、ステータスが『技術:A』に変化、さらに ウォーターマグナム等の限定技が使用可能になる。 『プロフィール』 ラジオ番組の人気投票枠で参戦した選手。だが、基本的に運営側の指示に従って行動している。 大会を引っ掻き回すイロモノという立ち位置を確保しながら、稲荷仮面・キャベス・マルーの三人が 優勝しない様に冷静に戦況を見極めようとしている。頑張れ、超頑張れ。 って言ってる側から大ピンチだよ!相手がキャベスだ、どうする? 「最大の英雄『にしむらくん』、そして演歌花道。私にどの程度馴染むのか試させてもらうぞ」 (ステータスが更新されました) キャラクター名:稲荷仮面 機体名:演歌花道(えんかのはなみち) 属性:中立・中庸 クラス:にしむらくん 筋力:B 敏捷:A 体力:B 技術:A 判断力:C 精神力:A 『クラス特性』 にしむらくん:最大の英雄。パンチ力と耐久力が激増しチャージパンチを放つ事も可能だが試合毎に弱体化していく。 『スキル』 ???:彼の持つ格闘技術。今の所そのルーツは明らかにされてないが、 多大な時間をかけた鍛錬から導き出されるその動きは速くそして読みづらい。 対人戦時に相手の判断力をワンランクダウンさせるが、修斗に乗っている時はその多くが使用不可。 『プロフィール』 プロ・アマ混在の一般予選枠からの出場者。勝ち抜け候補と思われていた五木の存在を利用し 目立たないままあっさりと予選を突破する。どこのジムに所属しているのか、後ろ盾は誰なのか、 誰もそれを知らない。ただ分かっているのは顔のマスクが日本のお稲荷さんがモデルだという点のみ。 大会でどんな修斗に乗りたいか聞いても答えなかったので、五木の機体を奪って参戦したという設定になった。 そしてクラス特性を見てもらえばわかると思うが、大会運営は本気で彼の優勝を阻止しに来ている。 「どんな人でも一度は師匠と決めたんです。最硬の英雄「んじょも」とロッキングフェスで最後まで戦い恩返しです!」 (ステータスが更新されました) キャラクター名:タリーナ・ホーマー(カナディアンガール) 機体名:ロッキングフェス 属性:秩序・善 クラス:んじょも 筋力:E 敏捷:E 体力:D 技術:D 判断力:B 精神力:豆腐 『クラス特性』 んじょも:最硬の英雄。特殊な技もステアップも無いがひたすら固く相当ダメージを受けないとライフが減らない。 『スキル』 偽装:本来のそれとは全く違うキャラシートが表示される。現在はミスターカナディアンとタニヤマの 演出により一流のオールラウンダーとして振る舞う事を・・・強いられてるんだ! 一定の戦闘かコミュを得る事でこの下に隠されたステータス等を見る事ができるだろう。 という訳でカナディ達によって上書きされた偽ステがすっとんだ結果がこちらである。 にわか:修斗経験なんてない、消防訓練でPGに一回乗った程度である。 修斗での戦いであらゆるステータスがダウンする。経験を得るにつれダウン幅は減少する。 『プロフィール』 国辱戦士ミスターカナディアン最後の弟子であり、彼に推薦されハイパーコロッセオに参加したんだ! 彼の使える技は全部できると豪語してるのさ!目指すは捲土重来!でもステロイドだけは勘弁な! 「帰りたい・・・ギター弁償して・・・」 あー、わかったわかった。もっといいギターをタニヤマさんが買ってくれるからミステリアスな強者の演技してくれ! ほら、な? こうして覚悟を決めたのだったが控室でさっそくカナディとタニヤマさんによってつけられた箔はバリバリと剥がされ しかも初戦の相手は稲荷仮面。逃げろタリーナ、息の続く限り。 「ひゅーほほほ!迷ったわ」 (ステータスが更新されましたが見せません) 怪傑ミルット、まちぼうけポイント獲得。次回も対戦相手がいなかった場合失格。 戻る (続く)
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怪盗ミルット 第二話 『ガンダーラ教の聖女』 50人弱の団体客が来てから一週間が経過した。 「すみませーん、ドラドラのびっくり鍋まだですかー?」 「わびさびサンドくださーい」 「おい、デュエルしろよ」 「はいはーい、お待ちおー!」 走り屋達の口コミ力はネット全盛の今でもあなどれないものだった。 店の外装や店員の姿やメニューの怪しさとは裏腹に料理はちゃんとしている、 元傭兵のサバイバル料理が安くて美味い店だという評判は瞬く間に広がり、 いつも暇にしていたアクートとサーメットはそれぞれの仕事にフル回転していた。 「ミルちゃん、この皿1番テーブルもってけ」 「はい、かしこまりました!」 尻を向けたままのアクートから皿を受け取りてきぱきと動くサーメット。 案ずるより産むがやすしとはよく言ったモノ。 何百回もの実践が接客をだいぶマシなレベルにしていた。 「ミルちゃん、会計済んだら魔法カードパック補充しておいてくれな」 「あのアクートさん」 「言いたい事は分かるが今は働け」 そして閉店後、サーメットは二人に問いただす。 「チカーロ様、アクートさん。今朝店に来たら喫茶店の半分のスペースが カードショップになってました。これはどういう事ですか?」 「昨日貴女が帰った後にゲッツアーが一晩でやってくれたのよ」 「うわゲッツアーさんすんげ。いや、手段じゃなくて目的の方を教えて頂きたいのですが」 「前からお客こなくて赤字続きだったでしょ?だから兼業する事になったのよ。 幸い私もアクートも準備は十分だったから何の問題もナッシン」 「私何も聞いてないんですけど」 「だってお前ここ辞めるかと思ってたし。店長に炙られる度に泣いてたじゃねえか」 「あれは…正直快感です」 「貴女の感想は聞いてないわ。どっちにしろ今日喫茶店の接客は良かったけれど カードショップの方での対応はダメダメね」 せっかく店が倒産の危機を逃れたのに再びクビの危機が近いサーメット。 今までのG退治と接客に加え突如カードゲーム店員としてのスキルも身に付けないと ならなくなった。 だが―、 「うう…、全然分かんない。破壊とリリースってどこが違うの!?」 帰宅後サーメットは喫茶店チカーロで扱う事になったカードゲーム『KDR』の ルールブックに目を通すがさっぱり分からなかった。 KDR 正式名は「カラクリオーデュエルロボッツ」プレイヤー達には『デュエル』の略称で 呼ばれる事が多い。戦闘員を召喚したり魔法や罠カードを使い攻撃と防御を行い、 相手ライフを削り0以下にするか全てのカードを使いきらせるかあるいはその他の 条件を達成すれば勝利となる。 ルールが複雑、というか効果が曖昧なカードが結構あり初心者は混乱する事が結構ある。 元ネタは人気少年漫画「空繰王」の中で勝負に使われたカードゲーム。 「この仕打ち、チカーロ様は遠まわしに私にこの仕事辞めろって言っているのだろうか」 多分そうだサーメット。 「語り手にまで見捨てられた、もう駄目だ」 その日の夜、ここは喫茶店チカーロがある場所から一駅離れた大型カードショップ。 このカードショップでは毎月KDRの大会が開かれており、今日がその日だった。 「これで終わりです。羅甲パワードでダイレクトアタック」 「くっ!」 「ヘンリー選手を破りガンダーラ選手4連勝!今月も王位は動かず!!」 「私は負けません、なぜなら私は誰よりもこのゲームを知っていますからね」 鎧を着た大男はデュエルに勝利し得意げに笑う。 「この私、ガンダーラはいわゆるニートのレッテルを貼られている! 家の中ではいつも働かずゴロゴロし、仕事が無いなら実家の寺を告げと怒られる日々、 まともな恋愛もした事もないのに幼女と合体したいといつも夢見る駄目人間という奴だ! おまけにハッピーターンの食べ過ぎで砂岩の様になった肌、鎧武者のコスプレして この店に入る度に歩く仏像と言われる始末。だが、このKDRが私を変えた!! このゲームで勝ち続ける私は賞金でウハウハな日々、おまけに念願の幼女に モテモテな日々もゲットできたというわけだ!さあ私と合体しようではないか愛しの ガンダーラガールズ達よ!!」 ジョジョな長ゼリフを言いきると同時にガンダーラの取り巻きが駆け寄ってくる。 「ガンダーラ様、私に勝利の抱擁を!」 「サティ(旧)、今日も君は美しいね」 最初に飛び込んだロリをしっかりと抱きしめる。 「ガンダーラ様、サティもぎゅってする!」 「サティ(新)、今日も君はかわいらしいね」 二番目のロリのダイビングを背中で受け止める。 「ガンダーラ様、あ、あの私も…」 「サティ(違)、お前はそれ以上よるな」 三番目にいそいそと近づいたノットロリな女性に痰を吐きかける。 ガンダーラ、この男徹底してロリだった。 「ガンダーラさま~ん、私をあ・げ・る?」 「サティ(誰)、…本当に誰ですか?」 「ひゅーほほほ!よくぞ気付いたわね、そう私は貴方の取り巻きじゃあないわ! ミルット登場、ミルット解決!怪傑ミルーット!」 ガンダーラガールズに混じり一人明らかに人種レベルで別人がいた。 「ああっ、あの時のミルットと名乗った痴女ロボさん」 「痴女ゆーな」 たまたまこの大会に参加していたヘンリーが彼女の正体に気付く。 「今度は何してるんです?」 「いい所だからちょっと黙っていてねヘンリー君」 そう言ってからミルットはガンダーラをビシリと指さす。 「デュエルの帝王ガンダーラ。このカードショップ以外にも様々な大会で 向かう所敵無しの賞金稼ぎ。成程噂通り大した面の皮の厚さね、でも― 日本じゃあ二番目ね」 ミルットは不敵に笑う。 「ほほう、では一番は?」 ミルットはチッチッチと指を振り、クィッと親指で自分を示す。 「貴方が日本一だと、ははあなるほど。そんな事言われたら受けて立つしかないじゃないですか」 自分の優勝が確定した後に突如アポ無しでやって来たミルットの挑発に軽々と乗る、 それはガンダーラにとって何の得にもならない事である。 だが―『デュエリスト』はいつ誰の挑戦からも逃げない!!!!! 【デュエリスト】 デュエルに魂を掛ける真の戦士。ちなみにグラップラーとは何の関係も無い。 「それではこの勝負は僕、ヘンリー=ウィリアム=クレイトンがジャッジをさせて 頂きます。店員さんは公式戦の後片付けで手があいてませんので。 両者準備はよろしいですか?」 「ええ」 「バッチグーよ」 「それでは…デュエル!」 【先行:ガンダーラ デッキ名『サンド パワード』】 【後攻:怪傑ミルット デッキ名『サント シュート』】 (注)これよりしばらくの間いつもとは違う【遊戯王的ノリ】でストーリーが描かれます。 なお二人のデッキはいわゆるガチデッキではなくアニメ遊戯王に近い魅せるテーマデッキ で構成されております。 『1ターン目』 (奇数ターンは先行のガンダーラ偶数では後攻のミルットがプレイングする) ガンダーラ「互いに手札を5枚ドローしゲーム開始!そして私のターン! カードをドローし、羅甲重装型を攻撃表示で召喚。さらに支援兵力PGを 守備表示で特殊召喚し、この2体のモンスターでシンクロ召喚! レベル4羅甲重装型とレベル1PGを墓地に送り―、 宇宙の果てからやって来た!ロリを乗せてやって来た!ロリ・イン・ザ・大巨人! アーキタイプガンダーラ!!」 羅甲重装型 火属性・帝国族 効果モンスター 攻撃力1800 防御力1400 レベル4 このカードが戦闘をした結果相手プレイヤーにダメージを与えた時 相手フィールドの魔法・罠カード一枚を破壊することができる。 支援兵力PG 水属性・連合族 チューナー 攻撃力100 防御力100 レベル1 自分フィールドに表表示のモンスターがいる場合、このカードを表側守備表示で 特殊召喚する事ができる。自分のフィールドにこのカード以外のモンスターがいない時 このカードは表示形式を変更できない。 アーキタイプガンダーラ 地属性・プレゼンター族 シンクロモンスター 攻撃力2100 防御力2000 レベル5 召喚条件チューナー+チューナー以外のモンスター一体 このカードは相手のターンに戦闘を仕掛けられた時、このカードの攻撃力は ダメージステップ終了までの間400アップする。 このカードはこのカードを対象とする魔法・罠・効果モンスターの効果によっては 破壊されない。 ガンダーラ「そしてカード2枚を魔法・罠フィールドにセットしてターンエンドです!」 ガンダーラ:ライフ8000、手札2枚、魔法罠カード2枚、モンスター1体。 ミルット:ライフ8000、手札5枚、自分のターンが来てないからフィールドは空。 サティ(新)「しょっぱなから大物が出た!よく見るガンダーラ様の勝ちパターンダヨ! 私初心者だからどれぐらい有利なのかわからないけれど多分有利なんだよねこれ?」 サティ(旧)「そうね、ATガンダーラを倒すには攻撃力2500以上のモンスターで アタックするか全体破壊型の魔法・罠カードを使わないといけない」 サティ(違)「もし、シンクロ等の方法で次の相手のターンに強力なモンスターを召喚しても あの伏せカードで返り討ちにするはずよ」 『2ターン目』 ミルット「私のターンね?一枚ドロー、ライフを1000払い魔法カード 秘密基地の停電事故を発動!このターンの終わりまで貴方は伏せカードを発動できないわ」 ガンダーラ「…っ」 ミルット「さらに魔法カード二つの顔を持つ黒兎!ATガンダーラを指定、 ATガンダーラは裏守備表示に変更、最後にサントトゥオーノを召喚! バトルフェイズ、サントトゥオーノで裏守備のATガンダーラに攻撃。 サントトゥオーノは裏守備状態のモンスターと戦闘する場合ダメージ計算を行わず 相手を破壊するわ!」 ガンダーラ「わ、私のメインカードが何もできずに…。しかし黒兎の効果で私は一枚 ドローさせてもらいますよ」 秘密基地の停電事故 魔法カード ライフを1000支払う。このカードを使用したターンのエイドフェイズまでの間 相手はセットした状態の魔法・罠カードを使用できない。 二つの顔を持つ黒兎 魔法カード フィールドに存在するモンスターを一体指定する。そのモンスターが表側表示ならば そのカードを裏側守備表示にする。そのモンスターが裏側守備表示ならばそのカードを 攻撃表示にする。この効果でカードの表示が変わった時相手はカードを一枚ドローする。 サントトゥオーノ 風属性・連合族 効果モンスター 攻撃力1600 防御力1600 レベル4 このカードが裏守備状態のモンスターと戦闘する場合、ダメージステップを 介さずそのカードを破壊する。 ミルット「ターンエンド!」 ガンダーラ:ライフ8000、手札3枚、魔法罠カード2枚、モンスターなし。 ミルット:ライフ7000、手札3枚、魔法罠セットなし、モンスター1体。 サティ(新)「切り札が何も出来ずに下級モンスターに倒されちゃったよ! でもアーキタイプガンダーラって破壊効果が効かないんじゃなかったけ?」 サティ(旧)「モンスター効果は裏守備じゃあ発動できないからね、これはしょうがないわ。 ええ、決してアーキタイプガンダーラが弱いわけじゃないのよ」 サティ(新)「でもあっけなくやられたのは事実だよね?」 サティ(旧)「…」 『3ターン目』 ガンダーラ「私のターン、カードを一枚ドローしフィールド魔法カード港ステージを発動! さらに前ターンで伏せておいたトラップカードを発動、狙撃する執事によって 相手フィールドの一番防御の低いモンスターを破壊します、しかし相手にモンスターが 一体しかいないので対象はもちろんそのサントトゥオーノ!」 ミルット「ちぃっ、フィールドがガラ空きになっちゃたわね」 ガンダーラ「もちろんこれで終わりではありません、港ステージの効果で手札から 玉鱗を特殊召喚!玉鱗が召喚された時、私はデッキから攻撃力2000以下のモンスターを 手札に加える事ができる!」 ミルット「攻撃力2000、そして港ステージ。…!」 ガンダーラ「そう、私が選んだのはこのカード。このターンはまだ通常召喚の権利を 使っていなかったのでそのまま玉鱗をリリースし召喚! ガンダーラに乗りたい?無理無理、だって私1000年間ロリ待ってたんだもん。 あんたはこっち乗ってガンダーラのサポートしてろ、ラクシュミーΩ!!」 港ステージ フィールド魔法カード このカードは「海」としても扱う。自分のターンごとに一回だけ手札から4レベル以下の 水属性モンスターを一体特殊召喚できる。 狙撃する執事 罠カード 相手フィールドモンスターの中で一番防御力が低い一体を破壊する。 この罠効果はカウンター罠で無効化できない。 玉鱗 水属性・帝国族 効果モンスター 攻撃力1200防御力1500 レベル3 このカードが通常召喚・特殊召喚・反転召喚に成功した時デッキから攻撃力2000以下の 水属性モンスター一体を手札に加える事ができる。 ラクシュミーΩ 水属性・連合族 効果モンスター 攻撃力2000 防御力700 レベル5 フィールドが海ステージの場合このカードは以下の効果を得る。 このカードは2回攻撃ができる。 ガンダーラ「バトルフェイズ、ラクシュミーΩで2回直接攻撃し4000ダメージ! ターンエンド!」 ガンダーラ:ライフ8000、手札3枚、魔法罠カード1枚、モンスター1体。 ミルット:ライフ3000、手札3枚、魔法罠セットなし、モンスターなし。 フィールド:港ステージ サティ(違)「ガンダーラ様のメインアタッカーが出たわね。これで相手の痴女の ライフは半分を切ったけど、はあ…」 サティ(旧)「どうしたの(違)お姉ちゃん?」 サティ(違)「あの召喚時の口上もうちょっとなんとかならないのかしら」 サティ(新)「リリースが必要な上級のくせに攻撃力2000しかないから あれぐらいでいいんじゃないの?下手すると次の相手のターンで下級モンスターに倒されちゃうしね」 サティ(旧)「だ、大丈夫よ。最近は効果を使ったモンスター戦が主流だから2000の下級 モンスターはめったにデッキに入ってないわ」 サティ(新)「ふーん、だったらいいけど」 『ターン4』 ミルット「正直厳しい状況よね。このドローでいいカードが引けないと…」 ガンダーラ「そんな事いってもドロー力は上がりませんよ」 ミルット「でも引いちゃった。私は今引いたドリス姉さんのジャック!を発動、 ライフを半分払いそのラクシュミーΩのコントロールを奪うわ?」 ガンダーラ「なにい!?」 ミルット「そして魔法カードヘタリアの汚名返上。墓地のサントトゥオーノを 復活、そしてサントネビアを通常召喚。バトル!3体でダイレクトアタック!」 ガンダーラ「それを全部喰らってはまずいですね。しかたありません、 罠カードツナミ・サンダーボルト発動!対象は私のフィールド魔法!」 ミルット「あらら、フィールドが無くなってラクシュミーが一回攻撃に戻っちゃたわね。 じゃあそのまま全員で殴ってと」 ガンダーラ「2000+1600+1700=5300のダメージ。私のライフは2700残りましたね」 ミルット「このカードを伏せてターンエンド」 ドリス姉さんのジャック! 速攻魔法カード ライフを半分払う。相手フィールドの表表示モンスター一体のコントロールを得る。 ヘタリアの汚名返上 魔法カード 墓地からサントと名の付くモンスター一体を特殊召喚する。 サントネビア 風属性・連合族 通常モンスター 攻撃力1700 防御力1100 レベル4 鋭い突きと切り札の飛び道具で敵を倒す騎士。 ツナミ・サンダーボルト 罠カード 自分、または相手の魔法・罠カードを1枚選び破壊する。 ガンダーラ:ライフ2700 手札3枚 フィールドガラ空き ミルット:ライフ1500 手札0 モンスター3体(Ω・サントコンビ) 魔法・罠1枚 サティ(新)「うん、ラクシュミーΩは倒されなかったね。でも裏切るなんて思わなかった、 見事な悪女だよねー」 サティ(違)「し、しかたないじゃない。そういうルールなんだし」 サティ(新)「アーキタイプもラクシュミーもダメダメだね。やっぱりガンダーラ様の 切り札と言えるのはあのカードだけなんだよ」 サティ(旧)「サティ(新)ちょっと」 サティ(違)「先輩、落ち付いてください。相手は子供です」 ヘンリー「そこ、デュエル中は静かに」 『ターン5』 ガンダーラ「そろそろ決めたい所ですね…ドロー…条件が揃いました! 魔法カード千年の儀式!手札のモンスターカード2枚を捨てて最上級モンスター 召喚!1000年の眠りの果て―、目が覚めたのはお前の為だジークロリ! ロリっ子大好き守護神ガンダーラァァァァァァ!!!!!!!」 ミルット「き、来ちゃったの?ガンダーラ!さすがチャンピョン、凄い引きね」 ガンダーラ「フフフ、ガンダーラが召喚された時相手フィールドのカードを3枚まで 破壊できます。指定するのはその伏せた魔法・罠フィールドのカードとラクシュミーΩ、 そしてサントネビア!音撃破壊、ブッダボイス!」 千年の儀式 儀式魔法カード 手札から合計8レベルになるようにモンスターを捨てる。 手札から守護神ガンダーラを特殊召喚する。 守護神ガンダーラ 地属性・連合族 儀式モンスター 攻撃力3100 防御力3000 レベル8 このカードは儀式カードの効果以外で通常召喚・特殊召喚できない。 このカードが特殊召喚に成功した時相手フィールドのカードを3枚まで破壊できる。 この効果は無効化できない。また、このカードの特殊召喚に成功した時このカードに マジックカウンターを一つ乗せる(最大一つまで)。 このカードが魔法・罠により破壊の対象になった時 マジックカウンター一つを除去する事で破壊を無効化する事ができる。 サティ(新)「伏せカードと攻撃力の高いモンスターが破壊された!これで痴女を守るのは 攻撃力1600のモンスター一体だね」 サティ(旧)「ガンダーラの攻撃力は3100、差分の1500のダメージでぴったりトドメね」 サティ(違)「相手の罠が心配だったけれどこのカードは一度だけ罠・魔法では 破壊できないし相手は伏せカードを使うそぶりも見せなかったわ」 ガンダーラ「さあこれで終わりです!ガンダーラでサントトゥオーノに攻撃!」 ミルット「何勘違いしてるの?まだ貴方のバトルフェイズは開始してないわ」 ガンダーラ「ひょ?」 ミルット「貴方が破壊した伏せカードは神父の不意打ち!」 神父の不意打ち 罠カード このカードはモンスターの破壊効果によって破壊された時に効果を発動し、 破壊効果を発動したモンスターの元々の攻撃力分のダメージをそのモンスターの 持ち主に与える。 ミルット「よってガンダーラの攻撃力分の3100ダメージを受ける!」 ガンダーラ「ば、ばかなぁぁぁぁぁぁ」 ヘンリー「それまで!ライフが0以下になった事により勝者怪傑ミルット!!」 こうして、カード大会終了後の乱入者対チャンピョンのエキシビジョンは幕を閉じた。 正式参加ではないミルットには賞品は出ず、この敗北がガンダーラの権威を失墜する事 にもならなかった。だが、彼女の華麗なプレイングとそのエロいコスチュームに惹かれ デュエル終了後、参加者達が彼女の元に集まり次々と質問していく。 「イヒヒヒィ、痴女ぉ俺様にオパーイ揉ませろ!」 「ミルットさん、峠でカリームと戦ったミルットさんですよね?」 「普段大会で見ないカード中心のプレイですがこのデッキのメインは何ですか?」 「というかどこにいけばお姉さんにあえますか?」 ミルットはチッチッチと指を振り、 「皆さん、落ち付いて。一度に全部は答えられないわ。それにもう夜も遅いし そろそろ帰らせてもらうわね。ただ一つだけ言える事があるわ」 ミルットは親指でクイッと自分では無く店の外、隣町の方を指す。 「こないだ隣町の商店街にもカード屋が出来たのよ。喫茶店チカーロって所でね、 そこが私のオ・ス・ス・メ? じゃあね、バーイ」 人波をかきわけ立ち去って行くミルット。彼女のトリコになったデュエリスト達は シークレットペニスの状態のまま喫茶店チカーロの名を反芻していた。 そして次の日、あれから徹夜してなんとかゲームルールを暗記したサーメットは―、 「ミルちゃん、そっちのデュエルが終わったら次は4番テーブルの相手してやってくれ」 「アクートさん厨房の仕事はいつやればいいですかー!」 「今日はアクートさんがウェイトレスも兼業しますから、サーメットはデュエルの 相手だけに集中しなさい」 「はーい!」 その日一日むっちゃ忙しかった。来た客来た客全員がサーメットを指定してデュエルを 申し込んできたのだ。 客の間からは口ぐちに、 「このミルって昨日のと何かちがわなくね?」 「きっと10連勝ぐらいすれば真の姿を現すんだよ」 「あの、やっぱり貴女が怪傑ミルットなのでしょうか?」 「頑張ってねこの店のミルさん。私も応援しているわ?」 などなど、サーメットには意味がよくわからない事を話している。 まあ、こうして自分がこの店のお客様に必要とされているという事はクビの心配は 当分しなくていいという事である。チカーロもアクートも趣味に生きる男だが それ以前に利益追求に貪欲な二人である。これならおいそれと自分をクビにするとは 言えないだろうと思い胸を撫で下ろす。 場面は変わって隣町の路地裏にて、三人の聖女がにらみ合っていた。 「サティ(新)、あんたがガンダーラ様に勧めたカードのせいでどこの馬の骨とも分からない 痴女に負けちゃったじゃないの」 「負けたのは、二人が勧めたカードのせいじゃないの?ガンダーラ様はいっつもサティに 言っていたヨ。あの二人の年増がしつこくて困るって」 「何を言ってるの?ガンダーラ様は私のデータ管理こそこれからのデュエルに 必要だと言っていた。ルールもちゃんと理解していないバカガキと戦術の古い 女にはもううんざりって言っていたわ」 「ふうん、流石に詐欺師は嘘がお得意ね。ガンダーラ様は最初から、 そうデュエルスペースで会ったその時から私だけを真のパートナーだといつも言っていた。 あなた達なんて所詮は取り巻き程度の存在なのよ」 互いに毒を吐き合う三人、今まで溜まっていたのが昨日の敗戦がきっかけで吹き出したのだ。 壁際では小さくなったガンダーラが居心地の悪さに耐えきれずこっそりと逃げ出そうと している。 「「「ガンダーラ様!?」」」 「は、ハイ」 しかし逃げられなかった。聖女からは逃げられない。 「「「誰が好きなのですか?」」」 「え、えーっと」 追いつめられたガンダーラ。今まで調子のって二人きりの時に色々適当に言っていた ツケを払う時が来たのだ。だが、ガンダーラは謝る気も誰か一人を選ぶ気も全くない。 この場を何とか切り抜けようと彼はとんでも無い事を言い出す。 「三人の中で一番強い子が好きだ。私はデュエリストだからね。だからこの喧嘩は―」 デュエルで決着をつけようと言おうとした。だが一番強い子という言葉に反応した三人 の背後に巨人の影が現れる。 「し、しまったぁ!こうなってはもう私では止められない!!」 デュエリストとは所詮はゲーマー、実際にモンスターを召喚する事は出来ない。 ならば彼女達は何者か、答えは一つしかない。 彼女らは三人ともが――グラップラーなのである!! 【マジシャン】 自然に働きかけ魔術を使用するグラップラークラス。その破壊力は他の追随を許さないが 接近戦能力が皆無かつ味方を巻き込みかねない大技ばかりで小回りがきかないという 欠点を持つ為活躍する戦場が限られる。マジシャンには各人事に得意な属性があり、 一つの属性を極めた者はマスターと呼ばれる。 このクラスのグラップラーは感情の起伏が激しく熱情と冷静を併せ持つ人物が多い。 また、改造グラップラーの割合の低さもあって彼らはこう呼ばれる事もある。 『最も人間に近いが最も関わりたくないグラップラー』と。 「クレイゴーレム!まずはその礼儀のなってないガキを全力で潰しなさい!」 「ミストゴーレム!最善を尽くし何としても勝利の道を駆けるのよ!」 「ガイアゴーレム!二人纏めて押しつぶしちゃえ!」 己が主人の命令に応え、召喚された三体のゴーレムは咆哮をあげる。 グラップラーではないガンダーラは自分に集中する視線が無くなったのを チャンスとばかりに脱兎のごとく逃げ出す。 この日、三人の戦いは熾烈を極め匿名の通報によってグラップラーポリスが 到着するまで続いた。本編とは何の関係もないので勝敗についてはここには 書き記さない。 ミルット「今回の最強カードはこちら!サントスパーダ!」 サントスパーダ 風属性・連合族 融合モンスター 攻撃力2600 防御力1800 レベル7 召喚条件サントと名の付くモンスター×2 相手フィールドに帝国族モンスターがいないとき、このカードは 相手プレイヤーに直接攻撃ができる。 ミルット「不意打ち上等が信条のサントスパーダ!条件を整えれば相手の壁を 無視して大ダメージを与えられるわ!さーて、次もミルッと解決よん」 『次回予告』 「ひょーほほほ、私はミルーット。あけお○こで大凶よーん!」 「待ちなさい、偽物!皆騙されないで、本物の私はこっちよ!」 ミルットが二人!?果たして偽物の正体は? 「○○○○、大した演技力ね…でもそれは二番目」 「いいえ、二番目はあなた。一番は―」 互いにクイッと自分を親指で差すミルット。 次回怪傑ミルット第三話「ミルット対ミルット?」 お楽しみに! 戻る 続く