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safari、Firefox、iOS12以降で正常に表示されます(他のブラウザはスマホ用Emojiに対応していないものがあります) ★2巻 名前 コメント 地下3階 ≪黄金城の城内≫ 【第8話キャベツ煮】ゴーレム畑の新鮮野菜ランチ 04日目昼食 🥗🥒🥕🥔👨🌾 💩 登場する魔物: 料理: 世界観・シナリオ等 センシが3体のゴーレムを野菜畑にしていた!スコップだけで圧勝する。その生態と維持方法。 チェコの首都プラハにあるヨゼフォフ地区がゴーレム伝説の発祥の地であり 現在も教会の屋根裏にゴーレムが封印されているとされる -- 名無しさん (2021-05-04 23 45 49) ユダヤ教の聖典「タムルード」によれば最初の人間アダムは土から作られたゴーレムである 16世紀に神聖ローマ皇帝ルドルフ2世がユダヤ人を守る兵隊として自我の無いゴーレムを再現したと信じられていて この話を真に受けてナチスドイツがプラハの教会を捜索した 現在は19世紀にドイツで作られた創作話とされている ユダヤ哲学の思想家イェフダ・レーヴ・ベン・ベザレルのゴーレムに関する論文は現在の先端人工知能論の基礎となっている -- 名無しさん (2021-05-05 00 00 53) 名前 コメント 【第9話オーク】盗れたて野菜と鶏のキャベツ煮略奪パンとご一緒に 04日目夕食 🍞🥗🥒🥕🥔 登場する魔物: 料理: 世界観・シナリオ等 名前 コメント 【第10話おやつ】天然(ハート)美味しい宝虫のおやつ♪※カブルーPTと遭遇① 05日目間食 👦🏾️🐶👑💎📿💍 食 登場する魔物: 料理: 世界観・シナリオ等 名前 コメント 【第11話ソルベ】厄除け祈願!徐霊ソルベ(天然♪無国籍風聖水) 05日目間食 🧟👻🍧 登場する魔物: 料理:ソルベ 世界観・シナリオ等 全滅の危機。センシが聖水を作り幽霊を撃退する。 名前 コメント 【第12話宮廷料理】無し(絵画回)※狂乱初登場!! 05日目夕食 🖼🍴🍽🎨 登場する魔物: 料理: 世界観・シナリオ等 名前 コメント 【第13話塩茹で】茹でミミック 05日目夜食 📦🦀 料理: 世界観・シナリオ等 チルチャック回。シーフの知識を活かし、武器なし地の利のみで巨大ミミックを仕留める 地下4階≪地底湖≫ 名前 コメント 【第14話ケルピー】 🐎🧼 登場する魔物: 料理: 世界観・シナリオ等 名前 コメント
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「・・・・・・・・・・・・・・。」 リゾット・ネエロが朝起きると、彼の姿は中学生くらいの少年になっていた。某ザムザよりはいい状況である。 だが、この程度で彼は動揺しない。そんな事いったらスタンド使いと戦えないのだ。 元の姿に比べて遥かに低い身長、まだ少女とそんなに変わらない筋肉がようやくつき始めた程度の身体。 今でこそ見事な体格のリゾットだが、子供の頃はそうでもないらしい。 多分その手の人間には堪らないだろう。 瞳も、メタリカの影響を受けない通常の目である。 とりあえず、一番この事態に驚かなさそうな、ソルベの部屋に向かう。 服はズボンも何もかも見事にぶかぶかであり、とりあえず大きめのパーカーを被る。 何処からどう見ても見事なショタだった。多分メローネとかと廊下で遭遇したらやばい。 そんな事を考えながら、彼はソルベの部屋へと向かう。 「・・・・声も、見事に高いな。」 ふと呟いてそんな事を考える。 そしてリゾットがソルベの部屋の前までくると、ギシギシ、と何かの揺れるような音。 「?」 次の瞬間、ドタンバタンと、中で何かが暴れるような物音がし始めた。 リゾットは思わず今の状態にも構わず扉を思いっきり開けた。 「どうした?!ソルベ!!」 すると、何やらソルベの部屋の中を、縦横無尽に猫のような猿のようなものが跳び回っている。 「そいつ捕まえてくれ!!」 次の瞬間、リゾットに気づいたそれは思いっきり飛び掛ってきた。 「ぎゃうっ!!」 それは見事にリゾットと激突し、もみくちゃになって床に転がる。 「うぐ・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・まさか・・・・・。」 そこにいたのは、茶色い髪の小学校低学年程度の少年・・・おそらくジェラートと思わしき人物だった。 「おー、助かったぜ・・・・ってお前・・・・まさかリゾットか?!」 そこにいたのは、20歳くらいの青年の姿になったソルベだった。 普段に比べて、多少若いせいか目つきと声が柔らかい。 「・・・・・何故お前はその程度ですんでいる。」 「いやー、俺の体質だって。お前だって知ってるだろ?付き合い長いんだからよ。」 思わず、リゾットが不満そうに言うと、ソルベはぶんぶんと手を振りながら答えた。 「で・・・・、これはジェラートか?」 リゾットが自分にぶつかってきた小さい子供を指す。 「間違いないな。俺がこいつ拾ったのもこれくらいの年だったから、見間違えるはずはねぇ。」 くるくると目を回して、ぶかぶかのパジャマの上着だけ着ている子供ジェラートをソルベが抱きかかえる。 「行き成りこんな姿になったから混乱しちまったらしくてなぁ、さっきまで暴れてて大変だったぜ。」 ぽんぽん、とソルベは抱きかかえたジェラートの背を叩く。 「・・・・・この調子だと・・・・。」 「嫌な予感しかしねぇな・・・・・・・。」 そして、リゾットは全員の部屋を回る。 イルーゾォの部屋では、黒髪の少年が寝ぼけて鏡に半身をつっこんで寝ていた。 プロシュートの部屋では、金髪の美少年が必死にスタンドを出そうとしていた。 ギアッチョの部屋では、レティがくせっけ髪の少年を抱きしめてほお擦りしていた。少年はキレそうだった。 ホルマジオの部屋では、高校生くらいになったホルマジオが、とりあえず煙草を吸って落ち着こうとしていた。 メローネの部屋では、少女のような少年が楽しそうに自分のすがたを鏡に映していた。 ペッシの部屋では、小さな子供がわんわんと泣いていた。 「いやーん!!かわいーい!!」 「レティ!!いいかげんにしろよ!はなせよ!!」 ギアッチョは、がっしりと自分を掴んでいるレティから必死に逃れようとするが、離れない。 かれこれ二時間はこうしているかもしれない、そろそろギアッチョも限界だろう。 そんな様子をみて、ため息をつく美女が一人。 「あらあら・・、あなた達もなのね。」 すっかり小さくなった暗殺チームを見て八雲紫はため息をついた。 「あなた達『も』・・・と言う事は?」 リゾットが紫を見上げながら、聞き返す。 ちなみに服は、先ほど大して体格の変わっていないホルマジオとソルベに買いに言ってもらった。○ニクロである。 「こう言う事よ。」 そう言って紫は、三つ、スキマを開いた。 そこをリゾットはまず片方を覗き込む。 「まりさー!!だめよ!!りんのすけさんは私とあそぶの!!」 「こーりんはわたしのだぜれいむ!!」 「ふ・・二人とも、三人で遊ぼう・・・ね?」 そこには、幼くなった白黒魔法使いと、楽園の素敵な巫女の面倒を見る香霖堂店主が。 そしてもう片方のスキマを覗く。 「すわこ様・・・、かなこ様・・・、ここはどこですか・・・?おとうさんは・・?」 「お・・落ち着きなさい早苗!!」 「だ・・大丈夫よ・・・・・。」 「うわぁぁぁぁん!おとうさぁぁぁぁぁん!!」 わんわんと泣き出す、小さな早苗。 そして最後のスキマを、リゾットは覗いた。 「きゃははははは!!時よとまれー!!」 「さ・・・・咲夜!!時を止めていたずらするのはやめなさい!!」 「お・・・お姉さま危ない!!ナイフが!!」 「くっ・・・美鈴バリアァァァァァ!!」 「ギャァァァァァァ!!」 時を止めながら、ナイフで悪戯するちっこい咲夜さんに苦戦悪党するレミリア、フラン、美鈴。 ちなみに図書館は図書館で大変なのだが、ここは割愛する。 その様子に、リゾットは思わず冷や汗を流した。 「と・・とりあず、特殊な能力を持った子供達はここに集めたほうが面倒を見やすいだろう。 チームの中にも生まれつきのスタンド使いが何人かいる。纏めた方が面倒も見やすいしな・・・・・・・。」 「そうね、霊夢がこうなった以上、私が異変を解決するわ。このままじゃ博麗大結界も危ないし。 ・・・まー、大体永遠亭とか天狗とかそこら辺でしょうけど。」 そう言って紫がため息をつく。 「藍と橙を置いていくわ。その身長じゃいつもと勝手が違って生活しにくいし、あなたは今スタンドが使えないでしょう? あとあなた達の知り合いにも何人か話をつけておくわ。了解してくれれば応援に来てくれるかもしれないわ。」 「・・・・すまない、何から何まで世話になりっぱなしだな。」 「気にしなくていいのよ、今回は幻想郷に関わる事だから私の義務みたいな物だし・・・。 それに今のあなたは子供なんだからそんな事気にせずお姉さんに任せてなさい。」 申し訳なさそうに言うリゾットに、紫はその頭を撫でる。 「・・・おばさんだろ、ゆかりは。」 ボソッと呟いたプロシュート少年は、次の瞬間スキマに放り込まれた。 「うー。あー。ぎゃ。」 「リゾットー、ジェラートがなに言ってるか分からないー。」 自分のの服の裾を引っ張る幼児ジェラートに困り果て、メローネはリゾットの服の裾を同じように掴む。 「あぁ、メローネ。ジェラートは特殊な環境にいたせいでこの頃はまだ話せないんだ。 ドルチに通訳してもらえ、今のジェラートは半分動物みたいなものだから、何を言っているか分かるだろう。」 「おいっ!リゾット!レティがいねーぞ!!」 今度はサイズの合わない眼鏡をかけた、ギアッチョがリゾットの裾を引っ張る。 「レティなら書類を届けに言ってもらってる。お前達がこんな状態だからな。じきに帰ってくるから我慢しろ。」 そう言ってリゾットは、メローネとギアッチョの頭を撫でる。 その回答に、ギアッチョはしぶしぶその場を離れ、メローネはドルチを探しにその場を去った。 「ちょっとあんた!わたしをりんのすけさんの所にかえしなさいよ!!」 「リゾットー、なんかさっきからアリスが人形でいっしょにあそぼうってしつこいんだぜ。」 すると次は、てこてこと赤白の幼女と黒白の少女がリゾットの元へとくる。 「霊夢、霖之助は香霖堂の店主だ。お前達がずっといては商売が出来ないだろう? 魔理沙、アリスはあんまりにお前がかわいいから一緒に遊びたいんだろう。遊んであげろ。」 そう言われて、幼い霊夢はうぅーと唸ってその場を離れ、小さい魔理沙は褒められて上機嫌なのか、アリスの下へと向かっていった。 「・・・・・慣れているな。」 その様子を見た藍が、思わず呟く。 するとリゾットはそちらを振り向き、ため息をついた。 「・・・・この年のくらいは、従兄弟の子供の面倒を良く見ていたんだ。」 しかもどうやら彼女が死ぬ前の姿らしく、子供に対するトラウマもない。 それが少し、リゾットには悲しかった。 「まぁ、藍やアリスが来てくれたからな。おかげで子守が大分楽になった。」 アリスは得意の人形で、家事をやってくれたり、人形劇で子供達を遊ばせたりしている。 「リゾット、お茶はまだ?」 「・・・・・さらに困った事にも人物もいるが。」 そう言って優雅に座っているのはレミリアである。 彼女は咲夜がいなくなり、統率を失った妖精メイドに嫌気がさし、咲夜を連れてくるついでにここにいると言い出したのだ。 まぁ、彼女の妹であるフランが、子供達に混じって遊びだしたのも原因だろうが。 「・・・まぁ、強力な妖怪がいてくれれば、安全だからな。」 そんな事を呟きながら、リゾットは紅茶を入れる準備をしようとする。 「すまないレミリア。うちにはTバックしかお茶はないんだがそれでもいいか?」 「・・・はぁ?何よそれ。買ってきなさい。」 レミリアはリゾットにそう命令する。 リゾットもフランのことで色々と迷惑をかけているので逆らえない。 「・・・すまない藍。紅茶を買いに人里に行ってくれないか?俺のこの姿じゃ危険なのでな。」 「あぁ、何なら橙を使いに行かせよう。橙なら人里の人間達もよく知っているからな。」 そう言うと、藍は子供達とスマブラをやっていた橙を呼ぶ。 「・・・・・・・・・・はぁ。」 幼い外見に合わない、深いため息をリゾットはついた。 目次へ 続き
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* ネツァク 種族:古代竜 性別:男性 年齢:? 髪の色:緑 瞳の色:緑 肌の色:白 「ソルベちゃん、アレがヤバい」 古代竜の一柱、緑のネツァク。名前と設定だけ公式。 ルディオン山脈北東部に、ひっそりと自らの領域を作りだしている。普段は人間形態を取っており、洞窟の奥にひっそりと居を構えている。古代竜であるためかなりの力を持っており、世界の動きにはユグドラシルを利用しながら、常にアンテナを張り巡らせている。だが、制約により直接的に手を下すことは出来ないため、何者かが助けを求めてきた際には、試練と言う形で課題を出し、それを突破した者に力を貸すことにしている。 上記のように書くとまともに見えるが、その実態は重度の引き籠りニートである。部屋には大量のゴミ袋が置かれており、饐えたようなニオイが満ちている。また、会話に主語はおろか述語を抜かすことも多いため、何を言っているのか解らないことが多い。故に、お世話役であるソルベが通訳する羽目になる。
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保険会社の健全性を図る指標のひとつ。 ソルベンシーマージン比率が200%を超えていれば一応は安全とされますが、 かつて200%を超えている保険会社があったので絶対に安全とはいえません。 あくまで指標のひとつとして活用してください
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更新日 2015-02-16 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 冥界の宝具! 2月16日(月)メンテナンス終了後 ~ 3月11日(水)メンテナンスまで ※メンテナンス時間は、別途「お知らせ」にてご案内します。 新しい「ガチャ」がピコット王国に登場! そこから生まれ出るのはナント!初登場となるレアリティ★6の武器だ! 記念すべき最初の「武器ガチャ」は歴代の王に引き継がれる“極王”の名を持つ武器と、冥界の人ならざる者が鍛え、 深淵なる力が宿りし武器で“冥炎剣ブレイズ”、“冥氷杖ソルベ”が登場だ! 冥炎剣ブレイズには炎属性多段攻撃スキル「ラピッドファイア」、冥氷杖ソルベには氷属性3連撃スキル「アイスメテオ」の、属性効果を持つ特別なスキルが新登場! さらに強力な★4、★5の武器もラインナップに揃い踏み! この機会に新たな力を宿した武器を手に入れよう! 期間限定で登場する武器はこれだ! 画像 名前 imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 冥炎剣ブレイズ imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 冥氷杖ソルベ imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 極王剣シナロア imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 極王爪ルーカン imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 極王斧カイオワ imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 極王槌バンジェンス imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 極王弩マイザー imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 極王杖ベリス imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 極王輪リベレート
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前回の異変で大きな怪我を負った暗殺チーム一同は、しばらく働くのは無理と判断され家で療養生活をする事となった。 ボロボロだったリゾットも、大怪我を追ったギアッチョとイルーゾォも、地獄の医療施設できちんとした治療を受けた。 しかし比較的怪我のなかったメンバーは、数日の休みを置いてから普通に仕事に戻ることとなった・・・・が。 そのまま普通に仕事・・・とはいかなかった。その日の朝、突然映姫が家に突撃してきたのだった。 そしてそのまま、出勤は無しになり許されず一同はお説教を受けることになったのだ。 当然、寝たきりのギアッチョ、突然呼び出されアリスの下へ行っているイルーゾォ、動けないリゾット以外のメンツが、説教を受けることとなる。 数時間も続く長い説教、精神的にも、体力的にも一同は限界に追い込まれていた。 「まったく・・・、勝手な行動をした上大怪我をして・・・・・・始めに言ったでしょう!!命をないがしろにしてはいけないと!! アレは何も他の命だけではなく自身の命も含まれているのですよ?!それに妖怪相手に大暴れして・・・正当防衛とは過剰に傷つけすぎではありませんか?!」 一同がどんなに全身ボロボロだろうが気にせず、映姫の説教はつづく。 しかも全員、慣れない正座を強制され、足がもう限界である。 チラッと、横にいる ソルベは仕方がなく、最後の手段を発動することにした。 「あー・・・、映姫さま。すみません。」 「何ですかソルベ!!まだ話は終わってませんよ!!」 怒り狂う映姫だが、ソルベは話を続ける。 「いやー、そろそろ昼飯の時間だなーって思いまして・・・。」 「何を言っているのです?!ふざけ・・・。」 激昂する映姫に対して、ソルベはへらへらとした笑いを浮かべて対応する。 「いやね、俺達はいいんですけど・・・・何せリゾットが。」 それを聞いて、映姫の表情が変わったのを一同が見逃さなかった。 「・・・リーダー、昨日食欲がないって、何も食べなかったよね。」 すかさず、ジェラートが追い討ちをかける。 「あぁ、せっかく早苗が作ってきてくれたのになぁ。わざわざ不慣れなリゾット作ってくれて。」 メローネがすかさずサポートし、その言葉の意味を強化する。 「点滴うってると確かに腹は減らないが、このままじゃ怪我が治る前に身体壊すんじゃねぇか?あいつ。」 プロシュートがあえて他人事のことのように、言う。 「それに・・・、リーダー、それでも仕事しようとしてますぜ?」 ペッシが真っ正直に言う、これは紛れもない事実である。 「リーダーである自分が仕事をサボって映姫さまに迷惑をかけるわけには行かないってよぉ。」 ホルマジオが、止めを刺した。 数秒間、映姫は固まるとすぐさま居間を飛び出していた。 その隙に、一同は財布と鍵を持ち、とっとと家から退散していった。 暗いくらい森の中、一軒の家が立っていた。 その周りでは、かわいらしい人形達が、洗濯物を干したり、花に水をやっている。 しかし、人形だけではない。その家のなかには、少女と男がいた。 「・・・ったく、怪我人を無理やり連れ出して・・・何するつもりだよ?」 残った腕で頬杖をつきながら、だるそうにイルーゾォは言う。 実際に体調は悪いのだろう、腕が一本無くしているのだから。 血もまだまだ足りないのか、血色の悪い彼の肌がさらに青白い。 「仕方ないでしょ・・・・、あんたの家までいろいろ持っていくのは大変なんだから。」 そう言ってアリスは、イルーゾォの座っているソファの横の机に、魔導書やら薬品やら、様々な物を置いていく。 そして、最後に人間の腕・・・いや、精巧に作られた、義手があった。 「あんたのこれ作るのに、毎日徹夜したんだから・・・・・・。」 そう言ってアリスはため息とつく。 その顔には疲労と同時に達成感が浮かんでいた。 「無理すんなよ・・・、腕の一本くらいなくても・・・・。」 フラフラとした様子のアリスに、思わずイルーゾォはそう零す。 「何言ってるのよ馬鹿!!大体あんたの為じゃないんだから!!腕が一本ないあんたを見るのが私が嫌なだけよ!!」 疲労のせいで頭が回らないのか、アリスは滅茶苦茶な事を言っていた。 だが、それでもイルーゾォは、アリスが自分の為にそれほどしてくれたのが、嬉しかった。 「・・・・何ニヤついてんのよ。」 どうやら笑ってしまったらしく、アリスはイルーゾォを見て怪訝な顔をする。 「別に・・・、昨日見たお笑いを思い出しただけだよ。」 そう言ってイルーゾォは自分の笑いを誤魔化した。 「ふーん・・・、ま、いいわ。義手をつけるから動かないでよ。」 アリスはそう言い、イルーゾォの服に手をかける。 「お・・・・おいアリス!!」 イルーゾォはその行為に、顔を真っ赤にして大慌てする。 「何よ、別に見られて恥ずかしいほど立派な身体してないでしょあんた。」 「ひでぇ!!」 「・・・腕一つじゃ脱ぎにくいでしょ、ほらばんざーいってしなさい。」 イルーゾォはしぶしぶ両腕を上げ、アリスに身を任せた。 上着を脱がされ、薄い胸板が晒される。 そこには、先ほどの事件で負ったであろう怪我の跡やあざが浮かんでいた。 「痛くないの?」 アリスはそう呟いて、その傷跡を撫でる。 その仕草に、イルーゾォは高鳴る心臓を必死に押さえる。 「別に、こんなの昔から普通だし。今回は軽い方だよ。」 冷静を装って、淡々とイルーゾォはアリスに告げた。 そう・・・と呟いて、アリスは机においてある器具に手を伸ばした。 アリスはイルーゾォの切れた腕に巻かれた包帯を外す。 そして自分の作った義手を、そこにはめる。 「―――、・・・・・。」 そしてぶつぶつと呪文を呟きながら、義手とイルーゾォの腕のつなぎ目に、指で文字を書いていく。 「っ・・・・!!」 イルーゾォはないはずの腕が痛み始めるのを感じた。 「かなり痛いから我慢しなさいね。」 「は・・・っ!!早く言え・・・っ!!」 脳に直接響く痛みに、イルーゾォは悲鳴を押し殺す。 噛んだ唇からは、血がにじみ出ていた。 「行くわよっ!!しっかり気を持ちなさい!!」 アリスの手から、眩しい白い光が送り込まれる。 それに反応し、ルーンなどの魔術文字が義手に浮かび上がる。 「ぐああっ!!・・・・っ・・。」 全身を食いちぎられるような痛みに、ついにイルーゾォは気を失ってしまった。 「・・っ!!イルーゾォ!!」 アリスは大慌てでイルーゾォの様子を見るが呼吸もしているし心臓も動いている。 アリスは人形を操り、気を失っているイルーゾォに毛布をかける。 そして、その隣にちょこん、とアリスは座る。 家の中には、家事をする人形達の音しか、しない。 隣に座るイルーゾォの体温を感じながら、アリスが思い出すのは先ほど言ったイルーゾォの言葉だった。 『別に、こんなの昔から普通だし。今回は軽い方だよ。』 「そう言えば、私あんたの事何も知らないのね。」 誰に言うとでもなく、アリスはぽつり、と呟いた。 「はい、ギアッチョ。あーん。」 笑顔でレティがギアッチョに食べ物を差し出す。 「・・・・・・・・・・・。」 それを見て、ギアッチョは何のリアクションも起こさない。 普通ならここで大いに照れて、見事なツンデレっぷりを発揮するはずである。 だが、ギアッチョは無表情にその光景を見つめていた。 部屋の温度は、レティが苦痛であろうほどに暑い。 何故なら、レティの隣にはコンロにかけられた土鍋があるからだ。 中身は、地獄鴉も泣いて逃げ出すあつあつおでんである。 ぐつぐつと音を立てて沸騰しているそれは、間違いなく南極条約違反ものだった。 「・・・・・・なぁ、あつあつおでんって病人に食わせる物だったか?」 「あら、ギアッチョ。これはおでんじゃないわ。関東炊きよ。」 「メローネの持ってる漫画みたいなこと言ってんじゃねぇよ!!クソッ!クソッ!!」 キレるギアッチョにお構いなく、レティはその顔におでんを押し付ける。 ちなみに具はたまごである。味はしっかり染みており、適度な温度で食べればとても美味しいだろう。 だが、それは今や凶器と化していた。 灼熱のつゆにより高温に温められたそれは湯気を放ちながらギアッチョに迫っていた。 「はい、ギアッチョ。あーーん。」 「っ・・・・。」 スタンドを発動させて玉子をさまそうとも考えたが、どうやらスタンドパワーを根こそぎレティに取られているらしい。 周りの空気は、一向に冷たくならなかった。 「・・・・・レティ、大体何そんな怒ってんだよ・・・。」 ギアッチョの言葉に、さらにレティは怒りを募らせる。 どんどん、周りの空気の温度が冷たくなっていく。 「何怒ってるかですって・・・・・・・・?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・と、大気を震わせる音が、部屋に響き渡った。 「無茶してこんな大怪我して・・・・・!!これじゃ私がいる意味がまるでないじゃない・・・・!!」 バキィッ!!と、レティの持っていた箸が砕け散る。 「もしまたこんな大怪我してみなさい・・・・・!!氷付けにして保管しちゃうんだから!!」 そう言ったレティの目には、涙が浮かんでいた。 それを見て、思わずギアッチョもギョッとする。 「な・・・・泣くなよ!!もうこんなヘマしねえからよ・・・・!!」 「本当・・・・?」 目元を赤くしたレティを見て、ギアッチョはうなづく。 「あぁ、約束するって!!」 そう言ってギアッチョは、必死に、泣くレティをなだめ続けた。 妖怪の中には、店を営む物がいる。 人間とは違い、それほど彼らに物質的な欲はないがお金はあるに越したことはないからだ。 そんな店の中に、夜雀の屋台がある。 彼女の名前はミスティア・ローレライ。普段は人間にちょっかいを出すたちの悪い妖怪なのだが、店を出しているときはそうではない。 店の女将として、人間にも負けずに今日も頑張っている。 そのおかげか、彼女の店には常連も多い。 今日来た二人のお客は、最近また出来た常連のお客だった。 「っつぁー・・・・、マジやばかったな今回はマジで・・・・・・。」 そうぼやいて、プロシュートはヤツメウナギの蒲焼を齧る。 適度に油の落とされたうなぎはしつこくなく、甘辛いたれとよく合っていた。 プロシュートの隣では、同じようにペッシがウナギに舌鼓をうっていた。 「兄貴、もう一杯頼んでも言いですかい?」 「おー、飲め飲め。今日はいくら頼んでもいいぞ。」 「へい!女将さん!もう一杯!!」 「はーい。」 和服を着たミスティアが、一升瓶を開け、ペッシのグラスに日本酒を注ぐ。 「それにしても、今回は大変だったのねぇ。まぁ、私みたいな一妖怪には関係ないけど。」 そういいながら、ミスティアは鰻を焼き始める。 「おいおい、人事だと思って勝って言うなよ?お得意様が減るんだぜ?」 「そうは言っても幻想郷ではそれほど珍しいことじゃないからね。まぁ、最近は人食い妖怪も減ったけど。」 彼女は妖怪の中では若い方だが、人間よりは長く生きている。 意外と聞き上手なこともあいまってか、彼女は中々貫禄のある女将だった。 「ん・・・・・・、もうこんな時間か。」 ふとプロシュートが腕時計を見てみると、既に飲み始めてから三時間はたっていた。 明日は普通に仕事に行かなければならないのだ、深酒は良くない。 グラスに残った日本酒を、ぐいーっと一気に飲み干す。 「あぁー・・・、前にも日本酒は飲んだことがあったが、あんまりその時はうまくなかったな。」 「それはイタリアだったからじゃないですかい?やっぱりその土地で食べたり飲んだりすると、大分違いますからね。」 何倍も日本酒を飲みながらも、平然としているプロシュートに対し、ペッシの顔は赤い。 「こんくらいで酔うなんてお前もまだまだだなぁ、ペッシ。またこりゃ特訓が必要だなぁ。」 「ひっ・・・・!!勘弁してください兄貴!!」 ケラケラと笑うプロシュートに、情けない声を上げるペッシ。 「ちょっと!お勘定!!」 そのまま立ち去ろうとした二人に、ミスティアは声をかける。 振り向いて、プロシュートは一言こういった。 「つけておいてくれ、八雲紫に。」 「おい、ジェラート・・・まだか?」 「待って・・・・・、もうちょっと。」 ソルベとジェラートの二人は、妖怪の山をテクテクと歩いていた。 ジェラートは何やらノートにずっと何かを書きこんでおり、ソルベは何やら大きいバッグを肩から提げている。 「うん・・・・、ここは終わった。でも、まだ上の方にあるみたい。ソルベ、新しいノート頂戴。」 ジェラートはソルベの方を振り向かずに、ノートを渡す。 ソルベはそれを鞄に仕舞い、鞄の中からあらたなノートを取り出す。 鞄の中には、ぎっしりと同じノートが詰められており、真ん中の色違いのノートで使用済みのものと未使用のノートが分けられていた。 「・・・ほらよ。」 「ありがと。」 この状態になったジェラートがどうにもならない事は、ソルベは分かっている。 今のジェラートは、スタンドが発現した状態である。 だが、肝心のスタンドビジョンがどこにあるからソルベにもまったく分からなかった。 ジェラートのスタンドは、複数の能力を持つスタンドである。 バオーの能力も関係しているのだろうか、成長が早く、反則的な能力を持つ。 だが、その一方で能力を使うのに制限や条件も多数多い。 「あー・・・、何で幻想郷はこんなに『曲』が多いのさ・・・・・。しかもオリジナルばっかだから後が大変だ・・・。」 そうぼやきながらも、ジェラートのペンは止まらない。 そのノートは、五線譜の書いてある音楽用のノートだった。 ジェラートは淀みなく、そこに音符や記号を書き入れていく。 「よしっ!これでここは終わり!!」 そう言ってジェラートは、筆を止める。 そして、一番曲の始めのページにこう書き入れた。 『厄神様の通り道』 「で?ジェラート。山はこれで終わりか?」 うんざりした調子で、ソルベはジェラートに聞く。 家を出て数時間、ジェラートはずっとこの調子だったのだ。 スタンドが再び出せるようになってはしゃいでいるのにしても、付き合わされる自分はたまったものではない。 だが、そんなソルベの元に、不幸の元が降りてきてしまった。 「あやややや、お二人とも、どうしたのですか?」 「げぇっ!!射命丸!!」 ソルベは思わず情けない声を上げる。 彼らは他のメンバーより長く幻想郷にいたため、この記者の事は良く知っていた。 だが、ソルベは別に、彼女に記事にされることを恐れたわけではない。 「君・・・・・・・。」 ゆらり、とジェラートが動く。 「はい・・・・っ?!」 次の瞬間、文はジェラートの顔が、異常に自分に近づいている事に気がついた。 童顔とも言える甘いマスクが、ずいっと彼女の目の前に広がっている。 人工的な色をしたジェラートの瞳が、彼女の瞳をまっすぐ捕らえていた。 幻想郷の少女にはよくある事だが、男性への耐性のない文は、思いっきり動揺してしまう。 「ソルベ、確保。」 だが、それが油断を生んでしまった。 ジェラートの言葉を受けて、ソルベが見事な動きで彼女の背後を取る。 「悪いな。」 そして、トンッと優しく文の背中に掌を押し付ける。 次の瞬間、文の全身から、力が抜けた。 「なっ・・・!!」 もちろん、文はすぐさま抵抗しようとする。 力が抜けていようが彼女は妖怪である、人間二人くらいたやすく始末できる、と思ったからだ。 だが、それは間違いだった。 「おーっと、無理に動くんじゃねぇよ。」 ソルベは彼女の身体に波紋を流した後、すぐさま彼女の両手を後ろで拘束する。 そしてその喉元に、ナイフをつきつけた。 「な・・・なんですか!!私はレーションも持ってませんし何の情報もありません!!」 突然の仕打ちに、文は混乱して訳のわからないことを口走る。 「俺だって別にダンボールに潜りたかったりツチノコを食べたりはしねーよ。ただ、ちょーっと時間が欲しいだけだ。」 そう言って、ソルベはため息をつく。 人が既に文を拘束している間にも、ジェラートはノートに曲を書き始めているようだった。 「ソルベ!!しばらくそのままでね!!この子七曲も持ってる!!」 そう言ってジェラートは一心不乱にペンを滑らせる。 その様子を、呆気に取られながら文は見ていた。 「・・・・いや、マジでわりぃな。後で取材に協力してやるから悪く思わないでくれ。」 「は・・・はぁ・・・・・。」 拘束しながらも本気で謝るソルベに、文は戸惑いの声を上げた。 「いやさぁ、この間魔理沙の奴の『曲』を採譜してた時にあんまり曲数が多いから時間がかかったんで逃げられちまってよ。 それでジェラートの奴、とにかく『静かにさせて採譜する』って思ったらしくて・・・・・・・。」 そう言って、ソルベはため息をつく。 「あ・・・、あの・・・、話がつかめないのですが・・・・・。」 「・・・・今やってるのはこいつのスタンドの能力を使うのに必要な作業でな・・・・。 ま、あんまり困らない範囲でならあんたに多少能力を教えてやるから、記事にでもしてくれや。」 「は・・・はい・・・・・・。」 マイペースなソルベとジェラートにとまどいながら、しばらく文はそのまま二人に拘束されたままになっていた。 そして、一同の見事に策略に乗せられ、映姫はリゾットの部屋の前まで来ていた。 「こ・・・ここがリゾットの部屋・・・・。」 ごくり、と映姫は喉を鳴らす。 どんな部屋なのだろう、地味だろうか? シンプル?意外と何かのポスターとか貼ってあるとか? こんこん、と乙女な期待と不安で胸を膨らませながら扉を叩いた。 「はいー?どなたさまですかー?映姫様が来たって・・・・・・。」 だが、中から足音とともに聞こえてくる女性の声。 扉を開けて出てきたのは、エプロンをつけた緑色の髪の少女、東風谷早苗だった。 どうみても奥様は女子高生です、本当にありがとうございました。 「キシャーーーーーーーーっ!!!」 「え?!えっ?!わ・・・私何かしましたか?!」 行き成り映姫に威嚇されて、早苗はビクッと怯える。 「うがーーーー!!キシャァァァァァッ!!」 威嚇を続ける映姫に早苗は困り果て・・・・・・。 「藍さーん!!慧音さーん!!助けてくださーい!!」 さなえは たすけをよんだ!! リゾットのよめB があらわれた!! リゾットのよめC があらわれた!! やまだは めのまえが まっくらになった!! 「さなえちゃんどうしたのー?」 「誰かきたのかー?」 だが、次の瞬間聞こえた子供の声に、映姫はハッとする。 「あぁ、皆ごめんね。行き成り閻魔様が来たからびっくりしちゃって・・・・。」 そう言った早苗の後ろには、たくさんの子供達がいた。 よくよく見てみると、それは人間の里の子供達だった。 「ほら、皆閻魔様に挨拶しろ!」 慧音にそう言われて、子供達はいっせいにこんにちはーと元気に挨拶をした。 「あ・・・、はい、こんにちは。」 子供達に挨拶をされ、映姫は優しく微笑みながら挨拶を返した。 「すみません、この子達がどうしてもリゾットに会いたいと・・・・・。」 慧音はそう言って、映姫に頭を下げる。 とうのリゾットは怪我人だというのに、ベッドの上に横たわって子供達人数分の林檎を切っていた。 藍もその横で、それを手伝っている。 「・・・・・ところで、あなたと式神は何をしているのですか?」 出来るだけ殺気を抑えながら、映姫は早苗に質問する。 「あ!はい!!私と藍さんはリゾットさんがこんな状態なんで家事をお手伝いしてるんです!!二人とも時間が空いたときだけですけど・・・・・・・・。」 ぐっと拳を握って早苗はそう言う。 やられた、これは日々閻魔として毎日出勤している自分には出来ない事だ。 「そ・・・、それは良い事ですね・・・・・。」 「はい!!困ったときはお互い様ですから!!」 しかも早苗は邪気はゼロらしい、本気の笑顔が眩しい。 (ま・・・まけては駄目です映姫!!ここは出来る上司としての威厳を・・・・!!) 「リゾット、調子はどうですか?」 「映姫様。」 「リゾットせんせー!!うさぎちょうだーい!!」 「私もー!!」 うさぎさん林檎を求める子供達にもみくちゃにされながら、リゾットはいつもの調子で答える。 「・・・・先に林檎を配りなさい。」 「・・・・ありがとうございます・・・・こら大吉、小雪の林檎を取るな。夢太、お前は二個目だろう。一人一個だ。」 どうやらリゾットにお見舞いの林檎を持ってきたが、皆で食べる事にしたらしい。 「はい、閻魔様もどうぞ!」 「あ・・ありがとうございます。」 子供に進められて、映姫も林檎を齧る。 リゾットはどうしてこんなことになっているのか説明する。 「この林檎藍が持ってきてくれました。幻想郷ではもう林檎の時期は過ぎていますから子供達が欲しがってしまって・・・・。」 それでリゾットと藍は大慌てでうさぎりんごを量産していたらしい。 怪我人だというのに相変わらず苦労しているようである。 「あのー?そろそろいいかしらー?」 突然、空間にスキマが開く。 そこから、顔を出したのはスキマ妖怪、八雲紫だった。 「・・・・あぁ、すまない。世話になったな。」 慧音は素直に、紫に礼を言う。 おそらく、子供達を山の中腹にあるここまで連れてきたのは彼女なのだろう。 「おや、珍しく善行をつんでいるようですね。」 「げっ・・!!あ・・・・、あら映姫様、おほほほほほ。」 映姫の姿を見つけ、紫は思わず呻くが、すぐに態度を改める。 そんな紫を、映姫はジト目でみていた。 「ほ・・ほら皆ー、かえりましょー?藍!行くわよ!!」 「あ・・・ちょ・・紫様?!」 紫はおお慌てで、その場から退散する。 「さ!皆!!リゾット先生もお前らの相手して疲れただろうから、帰るぞ。」 「えー。」 「けーね先生のケチー!!」 慧音は文句を言う子供達を、慧音は一人一人ひっつかみ、紫のスキマに放り込んでいく。 そして最後の一人を放り込み、ふう、とため息を付いた。 「それではリゾット。早く復帰して、また歴史の話を聞かせてくださいね?」 先ほどとうって変わって優雅な仕草で微笑み、慧音はスキマに潜っていった。 「ほら、藍!!」 「あぁー・・・、そんな殺生なぁ~!!」 涙目になりながら藍も、一刻もこの場から離れたい紫の手によって無理やりスキマに引きずり込まれた。 こうして、リゾットの部屋には早苗と映姫が残された。 だが。 「あ・・・・!!そろそろ戻らないと加奈子様に怒られちゃう・・!!」 ポケットから携帯電話を取り出し、時刻を確認した早苗が、途端に慌てだす。 エプロンを大急ぎで脱ぎ、鞄の中に詰め込む。 「り・・リゾットさん!!すいません!失礼します!!」 そう言って、早苗は大慌てで窓から飛び立った。 「早苗!!今度からはちゃんと玄関から出て行ってくれ!」 リゾットは平然とした様子で、それだけを去っていく早苗に注意した。 そして部屋には、リゾットと映姫だけが残された。 「やれやれ・・・・。」 そうリゾットはため息を付いて、ベッドに身体を預ける。 「まったく、騒がしいですね。」 「あぁ・・・、すみません。そこの椅子に腰掛けて下さい。」 苦笑いをする映姫に、リゾットは憂鬱な表情で彼女に勧めた。 彼の顔に浮かぶ疲労は、怪我による物だけではないだろう。 だが、変化が一つあった。 「リゾット・・・・・?子供に囲まれて、大丈夫でしたか?」 「はい、どうやら何とかなったようです。やはり、疲れますが。」 大量の子供にもみくちゃにされたと言うのに、リゾットは疲労しただけで、汗も流しておらず、動悸もなかった。 それを聞いて、映姫は母親のような優しい笑みを浮かべる。 「頑張りましたね、リゾット。」 「何というか・・・・、あれですね。ショック療法・・・でしょうか?」 どこか的外れなリゾットの言葉に、ふふっと思わず映姫は笑ってしまう。 微笑んだまま、映姫は会話を続ける。 「この調子だと、プロシュート達も相当心配したのでしょうね?」 「はい、意識が戻るなりプロシュートに説教されるわジェラートが泣きながら謝ってくるわメローネが何故かナース服で登場するわ・・・・。」 どうやら相当カオスな状態だったらしい。思い出した瞬間リゾットの顔にさらに疲労が浮かんだ。 「まぁ、今回は自分も無茶しすぎたので、しょうがないこと・・・です・・・・・・。」 映姫がふとリゾットの顔を見てみると、彼は疲労のせいか、どこか眠そうにうとうとしていた。 上司の手前、寝るわけには行かないと思って耐えていたのだろうが疲れ果てているのだろう。 もう限界らしく、必死に眠気と格闘しているのがすぐに分かった。 「・・・リゾット、怪我人なのだから無理しないで寝ても構わないのですよ?」 「しかし・・・・・・。」 「寝ないとお説教を始めてしまうかもしれませんよ?」 「・・・・・・ではお言葉に甘えて。」 映姫にそういわれて、リゾットは掛け布団にもぐった。 そしてしばらくすると、リゾットの寝息が、聞こえてきた。 「・・・・・・・・・・・。」 映姫はそぉっと、立ち上がり、足音を殺してリゾットに近づく。 リゾットはすっかり安心しきって気が抜けているのか、映姫が近づいてきてもまったく反応しない。 しっかり寝ているのを確認し、映姫は布団を少しずらし、リゾットの顔を覗き込んだ。 そこには、まるで少年のように邪気のない、リゾットの寝顔があった。 「・・・・・・・・・。」 映姫は無言で携帯を取り出し、シャッターオンをオフにし、連写モードでリゾットの寝顔を取る。 某ゲームだったら間違いなくフェイタルショットだろうという具合、見事なショットだった。 「ふふ・・・・・、ふふ・・・・・。うふふふふふ・・・・・・・・。」 怪しい笑いを浮かべる映姫。 池袋辺りの中古同人ショップで血眼で中古同人誌を漁ってるみたいな笑みだった。 「待ちうけに・・いや、バレてはいけません・・・・・。パソコンに取り込んで壁紙に・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・・・。」 その頃、メローネは紅魔館の図書館に非難していた。 魔導書の製作をしているパチュリーの向かいで、ぼんやりとノートPCの画面を眺めている。 他のメンバーは、幻想郷の外だったり人里だったりと色々なところに非難していた。 仕事?今日は休む。 「・・・・・どうしたの、複雑な顔をして。」 不思議な香りのするインクの羽ペンで文字を書きながら、パチュリーはメローネに質問する。 「・・・・・いや、リーダーの部屋に仕掛けたカメラが・・・・・・。」 そう言いかけて、メローネははっとする。 どうやら、相当ぼんやりしていたらしい。 新型の超小型カメラとマイクが手に入ったので、せっかく皆の部屋に仕掛けたと言うのに、ばれたらしょうがない。 「・・・・イルーゾォの着替えシーンのムービーあげるから許して。」 「何でイルーゾォなの?」 「何だかんだ言ってあいつ怒ることは怒るけど、殴ったりはしてこないから。まぁ、マジでキレると一番性質が悪いんだけどね、そこまでいかないから。」 「だいたいわかった。」 パチュリーは、何となく暗殺チームのヒエラルキーを理解した、イルーゾォはへタレ、ぱちぇわかった。 「イケナイ!しきさいばんちょう・・・って感じだなぁ・・・。本当に探したらそう言う名前の同人誌ありそう・・。 あ、ちなみに皆はロリっ子映姫様と、ムチムチ黒ストッキング大人映姫様どっちがいい?」 「誰に話しかけてるのよ?あの閻魔は男だったら割かし典型的な受けキャラよね。」 メローネの言葉にパチュリーは突っ込みポジションなのか、ボケポジションなのかよく分からない発言をした。 こうしてメローネは、対映姫様用の強力なカードを手に入れたとかなんとか。 そして、最後に、この男は。 「うぉー・・・・、もふもふだー。」 そう言いながらホルマジオは、幸せそうに先ほどホームセンターで買ってきた高い猫缶を開ける。 「満足したら帰れよー。」 文句を言いながらも、美味しそうに猫缶を頬張る橙。 ホルマジオはマヨイガで、橙の眷属の猫にふるぬっこにされていた。 前へ 目次へ 次へ
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暗い闇の中、血の匂いがその狭い空間に広がっていた。 「ハァッ・・・・ハァッ・・・・・。」 リゾットは荒い息をつきながら、その空間に立っていた。 彼の身体はあちこちが食いちぎられており、骨が見えかけている部分さえある。 身体に対するダメージはほとんどないが、四肢はボロボロだった。 立てるのが不思議な程、彼はダメージを喰らっていた。 (暗殺者失格だな・・・・、仕留められないとは・・・。いや、むしろ人としては失格の方がいいのか・・・・?) ぼんやりとした頭でリゾットは思考する。 (それにしても・・・、紫達はまだか・・?) 少なくとも、自分が気を失う前には来て欲しい、とリゾットは思う。 『クッ・・・、まだ死なんのか・・・・。』 だが、妖怪もリゾットの攻撃に消耗しているのか、霞のようなその姿は、消えかかっている。 「どうした化け物・・・・、もう仕舞いか・・・・・?」 そう言って、リゾットはニヤリと笑う。 既に余裕などないのだが、不思議とリゾットの心は落ち着いていた。 その様子に、反対に妖怪の心に焦りが生まれる。 まるで自分に言い聞かせるように妖怪はリゾットに告げた。 『抜かせ・・・、既に貴様は満身創痍・・・。このまま放っておいても死ぬだろう。 私は呼吸は必要にない上、貴様が死んだらその肉体を喰らえば多少は回復する。味は不味いだがな。』 そう言って、クックックッと妖怪は笑う。 だが、リゾットはその様子を、鼻で笑った。 「ふん・・・・、そんな事を言えるのは貴様が幻想郷を知らないからだ。」 『何?』 リゾットは妖怪に返すかのように、フッと再び笑う。 「いいか?ここでは『異変を起こした妖怪は、人間に退治される。』それがここのルールだ。」 『何を言う、人間ごときに俺が倒せると思うか?』 それを聞いて、リゾットの瞳が妖怪を捉える。 その目には、瀕死とは思えない意志が見て取れた。 「倒せるさ。人間は、神も自然も滅ぼすんだ、化け物なんて滅ぼすのは簡単だろう?」 『馬鹿にしおって・・・・・・。』 どうやら、目の前の妖怪は自分に留めを指すことを決めたらしい。 リゾットもまっすぐ妖怪を見返す。 『うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』 だが、次の瞬間、リゾットが作った鉄の扉が破壊された。 氷の塊から降り、椛、ソルベ、ジェラートは地面で休んでいた。 二人はよほど疲れたのか、地面に寝転がり寝ている。 「?!」 突然、カッとジェラートの目が突然開く。 そして、ガバッと勢いよく起き上がった。 「ぐあっ?!」 おきがった拍子にジェラートの頭が、彼を抱きかかえていたソルベの顎に突撃する。 そして、キョロキョロと、辺りを見渡す。 ドンッとソルベを突き飛ばし、立ち上がった。 「ジェラート殿?!」 驚いた椛が、叫ぶがジェラートはそれを意に介さず辺りを見渡し続ける。 「聞こえる・・・・、匂う・・・・・・。」 そして、辺りを見渡す代わりに自分の掌を見つめた。 「戻った・・・・、全部!!全部!!」 そう言って、ジェラートははしゃぐ。 椛はその様子を呆然と見ており、ソルベはジェラートに手荒く扱われてのびている。 「あ・・・あの、ジェラート殿?戻ったとは・・・?」 すると、ようやく椛に気づいたのか、ジェラートはそちらの方を向いた。 「戻ったんだよ!!俺のスタンドが!!戻ってきたんだ!!」 そう言ってジェラートは満面の笑みを浮かべながら、椛に抱きつく。 「な!!ジェラート殿っ!!」 思わず、椛は大慌てして取り乱す。 ジェラートはそのまま椛を抱きかかえ、くるくると回り始めた。 「あはははははっ!!やったぁっ!!やったぁっ!!」 騒ぐジェラートに、おろおろとする椛。 そんな五月蝿さに、ソルベも目を覚ました。 「ジェラート!!気がついて・・・・。」 「ソルベ!!あれ出して!!」 心配するソルべに、ジェラートは椛を抱きかかえたまま、詰め寄る。 「は・・・・?」 「あれだよあれ!持ってるんでしょ?!」 ジェラートに物凄い勢いで迫られて、ソルベは彼に指定された物を胸のポケットから取り出した。 「ほ・・・ほらよ・・・。」 ソルベの手から放り投げられたのは、携帯音楽プレイヤーだった。 ジェラートは椛を地面に下ろし、それを受け取り、弄る。 「よし・・・、よし・・・!!いける!!」 そのジェラートの様子をソルベはしばらくぼうっと見ていたが、ハッとしてすぐに気を持ち直す。 「お・・・・、おい、まさか・・・・・!!」 「うん!スタンドが・・・・『サウンド・ガーデン』が戻ってきたんだ!!」 「バオーは?」 「落ち着いてる・・・・・、全然制御出来てる・・・・・。」 そう言って、ジェラートは満足げに、自分の手のひらを眺める。 「・・・・じゃあ、今の全員の状況も分かるか?」 「任せといて!!」 次の瞬間、ジェラートは高く高く跳躍し、そのまま森の木のてっ辺に掴まる。 「な・・・・・っ、ソルベ殿・・・・?ジェラート殿のあれは・・・?」 空を飛ぶ能力を使っている訳ではない、あれは純粋な運動能力だ。 それを聞いて、ソルベは椛に説明を始めた。 「・・・・元々、ジェラートはバオーの為に作られた人間だ。 つまり、ジェラートの身体とバオーの相性は、一寸の狂いも無くぴったりだった。 だが、俺とジェラートがこの肉体を与えられたとき、ほんの僅かな差異が生まれた。 どんな方法で俺達を生き返らせたかしらねぇが、その時、バオーも一緒によみがえった。 だが、その時ジェラートとバオーの身体に僅かな違いが生まれた。 それによって、相性が大きく変動しちまったんだ。 まぁ、それと『殺し』をしてなかったストレスも、あって制御できなかったんだ。 もちろん、今までも制御できなかった事はある、だが奴のスタンドで制御できたんだ。 今回は、万々歳だな。どういう理屈かわかんねえがスタンドも復活したし、いいだろ。」 長い説明に疲れたのか、ソルベはごろんっと地面に寝転がった。 一方、ジェラートは木の上に居た。 彼は感じ取る、その鋭敏な感覚で、仲間達の状態を。 「プロシュートとペッシは・・・・動いてないけど心臓の音・・・寝てるのかな? ギアッチョは血の流れが少し弱い・・・・でも大丈夫っぽいな。近くにホルマジオと・・・この止まった空気みたいなのはレティ? イルーゾォは・・・・相当重症みたいだけど・・・近くに誰かいるな?小柄な・・・女の子二人?アリスちゃんと魔理沙ちゃんだなぁ。 仲間達の状態をジェラートは『匂い』で感じ取る。 そして、まったく行方の分からないリゾットの居場所を、感じ取ろうとする。 だが、リゾットの気配は感じ取れない。この世界から、リゾットがすっぱり切り取られたようだった。 「・・・あからさまだな。」 しかしジェラートは気づいた。はっきりと分かる。 一部分だけ、すっぽりと『匂い』の分からない地域があるのだ。 視覚でも見えるし、嗅覚も、聴覚でもそこの部分は感じ取れるが・・・バオーの特殊な感覚は誤魔化せない。 「ソルベ!!リゾットのいる場所が分かった!!」 木の上から、ジェラートはソルべに叫ぶ。 それを聞いて、ソルベは飛び起きる。 「何処だ?!」 「それが・・・・方向はわかるんだけど、具体的な位置は・・・・・・。」 すると、椛が会話に入ってくる。 「ジェラート殿、それはどちらの方向でござるか?」 「あっちの方!!」 そう言ってジェラートは、指で気配が遮断された方向を指す。 「そうでござるか、ところでそれは幻術の類かどうか、分かるでござるか?」 椛の言葉に、ジェラートはしばらくんーっと考え込んだあと、首を振った。 「何ていうか・・・・、俺は詳しくないけど多分他の感覚は違和感がなかったから・・・何ていうか、そこがよく分かんなくなる奴じゃない? そこに行こうとか、そこにたまたま入っちゃうと、自然と外に出ちゃう感じだと思う。」 必死に無い語彙から、自分が感じ取った感覚を、ジェラートは説明しようとする。 だが、何となく椛は理解したらしい。 頷いて身体を浮かせ、空高く舞い上がった。 「ならば拙者の能力ならば・・・・・。」 椛は瞳を閉じ、精神を集中させる。 千里をも見渡す、彼女の能力が発揮される。 冷たい風が、彼女のほおを流れていった。 その風に促がされるように、カッと椛は瞼を開く。 彼女の視界は、森の木々を潜り、川を飛び越し、はるか彼方にたどり着く。 「あちらの方向で・・・・相当な数の人間の子供を隠せる場所・・・・。」 椛は風の速さで、周囲の様子を探っていく。 すると、森の中の目立たない位置にある洞窟を見つけた。 その中は暗く、視界で中の状況を捉えるのは難しいだろう。 「おそらく・・・・、ここだな。」 見当をつけ、椛はふわり、と地面に降りたった。 そして、椛はずっこけた。 「ソルベー、みんなの居場所分かったんだからスタンドで連絡してよー。」 「だーかーらー、駄目だって。誰かさんのせいでてこずって、スタンドパワーぜーんぶ使いきっちまったからな。」 「何だよー、それくらしか役に立たないのにさー。」 いきなり、二人はイチャついていたからだ。 「ソルベ殿!ジェラート殿!!」 椛はその二人の様子に、思わず叫んでしまう。 すると平然としてジェラートと答えた。 「心配しなくても大丈夫だよ、全員ボロボロだけど無事だから。」 「しかし・・・・・・。」 不満げな椛に、ジェラートは笑いかける。 「さっきね、全員の近くで変な風に空気が揺れたのを感じたんだ。真っ二つに割れて、突然別の空気がなだれ込む動き。」 椛はジェラートの言葉に小首をかしげた。 「イルーゾォ・・・ッ!!イルーゾォ!!」 自分を呼ぶ声と、上から落ちてくる雫に、イルーゾォはゆっくりと目を開いた。 そこには、見慣れた顔が、見慣れない表情でイルーゾォの顔を見ていた。 「アリス・・・・?何泣いてんだよ?」 瞳をぎゅっと閉じて、顔をくしゃくしゃにして泣いていたアリスは、その声にハッとして目を開ける。 「イルーゾォ?!気づいたの?!」 「大丈夫か?!」 気づかなかったが、魔理沙もいたらしい。 アリスと共に、イルーゾォの顔を覗き込んでいた。 「あぁ・・、俺気を失っちまったのか・・・・。」 そう言ってイルーゾォは起き上がろうとする・・・・が。 「ぐぅっ?!」 身体に走る鋭い痛みに、イルーゾォは悲鳴をあげた。 「動かないで!!腕が一本なくなってるし、血もたくさん無くなってるのよ!!」 アリスは泣いたまま、起き上がろうとするイルーゾォを抑える。 「傷口は一応薬を塗っておいたぜ。まぁ、私の薬だから永琳ほどの効果はないがな。」 そう言われてイルーゾォは自分の身体を見ると、血まみれだった上着は脱がされ、包帯などで治療されていた。 「ほら、あとこれを飲んでくれ。」 そう言って魔理沙は、丸薬と水の入った水筒を見せる。 「これ何だ?」 「霧雨印の増血剤だ。ほら、飲ませてやるから口を開け。」 魔理沙はそう言って、無理やりイルーゾォに薬を飲ませる。 「ん・・・んぅっ!!」 それを何とか飲み込み、イルーゾォは息をつく。 「う・・・・苦い・・・・な・・・。」 そう言って、イルーゾォは顔をしかめる。 「我慢しなさい!!馬鹿!!」 アリスは涙を堪えながら、イルーゾォを叱る。 だが、再び、顔をくしゃくしゃにして、泣き出した。 「もう・・・っ!!何やってんのよへタレのくせに!人間のくせに!イルーゾォの癖に!!」 泣きながら、アリスはイルーゾォの胸のぽかぽかと殴る。 「ちょ・・・アリス怪我人に・・・・・・。」 「うるさいわね馬鹿!!もう黙ってなさい!!」 「あ・・アリス!落ち着けよ!!イルーゾォマジでやばいって!!」 すっかり騒いでいる三人は、気づかなかった。 背後に迫る、空間に出来たスキマに。 ブオンと奇妙な音が、空気を振るわせる。 ジェラート達の頭の上には、リボンで結んだ奇妙な空間の切れ目が現れた。 「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」」 するとそこから、ぼとぼとっと大量の人間が落ちてくる。 下の方にはたいした怪我をしていない面々が、上の方には大怪我をした面々が。 スキマから現れたのは、暗殺チームとその他の面々だった。 「あ、皆来たー。」 のんびりとした調子でジェラートが落ちてきた一同に言う。 「お・・・おめぇ・・・・・・、紫・・・。集めてくれたのはいいがもう少し優しく落とせ!!」 一番下に下敷きなったプロシュートが、呻きながらスキマを開いた諜報人を呼ぶ。 「我が侭言わないで頂戴!私だって大変なんだから!!」 そう言って、一同が出てきたから隙間から、紫のドレスを風になびかせた、八雲紫が現れた。 しかしその髪はボサボサであり、ドレスの裾も汚れている。 その姿は普段の余裕に満ちた彼女からは想像できないものだった。 「はぁ・・・、結界を破るのだけでもうヘトヘトよ・・・。」 そう言って、紫は深いため息をつく。 その顔からは、疲労が見て取れた。 「ほら、あなた達も組み体操してないで降りなさい。」 そう言って紫は、積み重なった一同を、怪我した面々はそーっと、大した傷の無い面々をぽいっと降ろしていく。 「イルーゾォ!!ギアッチョ!!」 ジェラートは慌てて、重症の二人の元へ走っていく。 その際、思いっきりソルベを突き飛ばした時は気になっていないようだ。 「ごめん!!本当にごめん!!」 そして、その二人の前で頭を大地に撃ちつけるように、思いっきり土下座した。 その様子を見て、ギアッチョはイラついたように、イルーゾォは暗い瞳でジェラートを見る。 「まったくだぜ!!ったく・・・・・。まぁ、首に鉄がブッ指すよりマシだがな。」 「ドロドロに解かされるよりはマシだけどな・・・・、お前腕一本だぞ?臓器がどれくらいか相場は知ってんだろ?だったら腕一本てさぁ・・・。」 燃え盛る炎のようなギアッチョの怒りと底なし沼のようなイルーゾォの怒りをぶつけられてすっかり萎縮していた。 ジェラートは思いっきり萎縮してしまい、幽香に睨まれたリグルのようになっている。多分お嬢様のガードみたいな感じで萎縮してる。 「ったく・・・、大したことねえだろ腕の一本や二本。」 「兄貴・・・、そんなこと言えるのは兄貴だけですぜ。」 そんな二人の様子を見てため息をつくプロシュートに、ペッシがため息をつく。 「なっ!こーゆー時俺のスタンドは役立つんだよ!!」 「むぅ・・・、まぁ認めざるを得ないな・・・。」 ホルマジオは、嬉しそうにメローネに話しかける。 自分がほとんど無傷だったのを、メローネに自慢しているらしい。 「ふあぁぁ・・・・、いっぱい動いたから眠くなっちゃった・・・・・。」 フランはふわぁ、と大きなあくびをする。 「そろそろ朝だしね。・・・・皆無事で良かったわ・・・・・。」 レティはギアッチョが無事で安心したのか、ニコニコとしている。 「あたいお腹すいた・・・。」 「わたしも・・・。」 チルノと大妖精は、食べれるはずだったおやつにありつけず、お腹が空いてしまったようだ。 ほのぼのとした空気が、一同の間に流れる。 「「「何和んでるかぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」 次の瞬間、ほのぼのとしていた一同に弾幕が降りかかる。 「「「「のうわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」 それらの弾幕をかするもの、あたるもの、安置の場所にとっとと非難する物、あっという間に辺りは弾幕地獄になった。 それは開きっぱなしだったスキマから飛び出てきた藍と早苗、それに慧音の弾幕だった。 「何やってるんですか!!まだリゾットが戦っているんですよ?!」 「リゾットさん、きっと今頃大変な事に・・・・・敵の妖怪に変な事されるとか!!」 「リゾットが死んでしまったら私の生徒達も悲しむ!!何より私が・・・・・。」 行き成り飛び出てきた三人はがぁーっと一同に捲し上げる。 弾幕を喰らってさらに、ボロボロだった一同はさらにボロボロになった。 「そ・・・そうでござる!!リゾット殿が現在何処にいるか、目星がついたでござるよ!!」 椛はスクッと立ち上がり、叫ぶ。 弾幕を避け切れなかったため、先ほどよりもかなりボロボロになってしまっていて恰好がつかないが。 「あら、居場所なんてもう分かってるわよ。」 あっさりと紫に言われてコケッと思わず椛はずっこける。 せっかくカッコよく決めたのに、やはり大妖怪には敵わないようだ。 「ただ、その結界がひどく強力なのよ・・・・・・。力の大半を使い果たした私がその結界を打ち砕くのでは遅すぎ・・・・。」 そう紫が言おうとした瞬間。 「・・・・・?あんた達、こんな所に大集合して何やってんのよ?」 はるか上空から、一同に声がかけられる。 闇の中で存在を主張する、赤と白の衣装。 その髪は夜より黒く、重力に捕らわれることなく、ふわりふわりと浮いている。 「霊夢!!」 魔理沙は思わず、その友人の名前を呼んだ。 「・・・・何だか見かけない顔ばかりね・・・・。」 少し機嫌悪そうにそんな事をいいながら、博麗の巫女はふわりと地面に降り立った。 背中には、なにやら重そうな物を背負っている。 よく見ると、上にかけられた黒い布から、銀色の髪が見えている。 「リゾット!!」 その正体にいち早く気づいたソルベが、霊夢に駆け寄った。 他の動けるチームの面々もリゾットの元に大急ぎで駆け寄る。 「わりぃな嬢ちゃん・・・、そいつはうちの身内だ。手間掛けさせたな。」 「そうなの?じゃあ早く連れ帰りなさい。大怪我してたから、一応応急処置はしたわ。」 謝るソルベに、霊夢は淡々とした様子でリゾットを渡す。 「メローネ!運ぶぞ!!」 「りょーかい。」 そう言って、メローネとソルベは、そぉっとリゾットを運ぶ。 よく見ると、霊夢の服には、包帯かた染み出たリゾットの血がついていた。 「悪いな・・・、服は弁償させてもらうわ。」 ホルマジオが、霊夢に謝る。 すると、霊夢はませた様子でそれに答える。 「別にいいわよ。どうせまた霖之助さんに作ってもらえばいいんだから。」 霊夢はそう言うなりふんわりと再び空を飛ぶ。 「あら、もう行くの?」 紫は、宙に浮いた霊夢に声をかける。 「まぁね、今回の異変の結界は厄介だったけど、妖怪自体は大したこと無かったわ。・・・・・そうだ、あんたに渡そうと思ってたのよ。」 そう言って霊夢は、紫に小瓶を放り投げた。 紫は少し慌てた様子で、その小瓶を受け取る。 その小瓶には、蓋の部分を覆うようにお札が貼られていた。 「今回の異変の妖怪。私じゃ退治しきれないから、封印しておいたの。あんたに任せるわ。」 そして霊夢はんーっと伸びをし、あくびをする。 「あー・・、まったく。もうそろそろ夜が明けちゃうじゃない・・・。てこずらせてくれたわ。じゃあね。紫。」 それだけ言い残して、そのまま霊夢は、博麗神社へと帰ってしまった。 すると、リゾットの治療をしていた魔理沙が、ふと呟いた。 「・・・なーんかさ。」 その言葉に、治療の手伝いをしていたホルマジオが答える。 「どうしたよ?」 魔理沙ははぁっとため息をついた。 「事情は分からないけどよ、この怪我から見てリゾットの大将、相当ねばって戦ったんだと思うぜ。 なのに霊夢にあっさり手柄奪われちゃうのは・・・・・何かなぁ・・・・?」 魔理沙の不満げな言葉に、同じようにリゾットを治療していた早苗が頷く。 「そうです!!リゾットさん一生懸命に頑張ったのに・・・・・。」 「おいおいおい・・・・、早苗。てめえは何にも分かってねぇなぁ。」 そんな早苗に、プロシュートが声をかけてきた。 紫にスキマで出してもらったのか、お気に入りの煙草を吸いながら、早苗を見下ろしている。 「こいつはな、任務を成功させる為なら命張れる男だ。こいつだけじゃない俺達は全員そうだ。」 そう言って、プロシュートは煙を吐く。 「リゾットは、多分相手と自分の能力の相性が悪いと自覚した瞬間、時間を稼ぐことを決めたんだろうな。 腕がもげようが、足が取れようが・・・・・どんなにみっともなくとも、時間を稼ぐ。 そうすりゃ誰かが、確実にそこへ来てくれる状況だったからな。それが任務を果たすのに一番確実だ。 そう判断したから、こいつはこんな怪我をしてんだ。哀れまれる理由はねえよ。」 プロシュートの言葉に、魔理沙は神妙な、早苗は複雑そうな顔をする。 「ま、何はともあれ、これで・・・・全部解決ってことか?」 藍に治療の術をかけられながら、ギアッチョが疲れたため息をつく。 その傍では、レティが心配そうに治療の様子を見ていた。 「・・・・事後処理を考えなければな。」 憂鬱そうに、普段結界の管理をしている藍が答える。 「大丈夫です藍様!私もお手伝いします!!」 橙はペットショップとドルチの治療をしながら、胸を張りながら藍に言った。 「・・・妖怪の山も、揺れそうですな・・・・。」 おそらく、当事者として自分に待ち受けているであろう後々の事を考えて、椛も憂鬱そうな顔をする。 「俺、絶対映姫さまに怒られるよ・・・・。頑張ったつもりけど多分絶対一人くらい殺しちゃってるし・・・・・。 しばらく地獄行きかな・・・?それとも・・・・・・・・。」 「ジェラートは大丈夫だろ・・・、不可抗力だし。それより俺達の方が・・・。」 ジェラートは怒り狂った映姫を想像しビクビクと怯え、ペッシこれから待ち受けるであろう説教に頭を抱えた。 「もう!!今度心配させたらあんたを蝋人形にするわよ!!」 「分かってる・・分かってるって・・・・。」 まだ泣きながら怒っているアリスの頭を、イルーゾォは困ったような顔をしながら撫でつづける。 「メローネ・・・、眠くなっちゃった・・・・。」 「あたいも・・・・眠い・・・。」 「チルノちゃん、フランちゃん・・・寝たら迷惑・・・・でも・・私も眠い・・・。」 「寝ちゃいなよ。家には俺達がちゃんと送っていくからさ。ベイビィ・フェイス、日傘。」 『はい、メローネ。』 うとうとしているフラン達に身体を預けられて、メローネは苦笑する。 ベイビィ・フェイスは朝日が昇ってきたときの為に、フラン用の日傘に変身する。 「はぁー、疲れた!!色々ありすぎてすっげぇ疲れた!!」 おそらく今日一番色々としたであろうソルベは、疲れを誤魔化すように叫ぶ。 「私は一足先に人里に戻らせてもらう。皆が心配しているだろうからな。」 慧音は、紫にそう告げた。 既に日が昇り始めたせいか、彼女の角と尻尾はなくなっていた。 「あら・・・、リゾットが心配じゃないの?」 「・・・・・意地悪なことを言わないうな。」 ニヤニヤしながら言う紫を、慧音は恨めしそうに見る。 そして、そのまま何かを振り切るように、一気に人里の方向へと飛び立った。 「ま、今日は働きついでに全員スキマで送ってあげるわ。それくらいはまだ出来るからね。」 紫の言葉に、一同が歓声を上げる。 既に、空は白み始めていた。 そんなばら色になる空を背景に、一同を見ている二人の影。 「あややややや・・・・・、随分大変みたいだったですねぇ。」 「そうね。」 その影は、天狗の新聞記者 射命丸文と、厄神 鍵山雛だった。 「さて、私は行くわ。」 くるり、と一回点して雛は空に浮く。 「いいんですか?」 「いいのよ。彼らは厄・・穢れの塊のようだから、少し気になっていたのだけど心配なさそうだわ。 だったら私の役目は、あの妖怪に触れて厄を受け取ってしまった子供達の厄を引き受ける事。」 そう言って、厄神はくるりくるりと舞うように、人間の里の方へと飛んでいった。 一人になり、素の口調に戻り、文はため息をつく。 「はぁ・・、私も多分事後処理で厄介なことになるわね。」 だが、彼女は笑った。 「ま、それでもこの大スクープは独り占めだからいいか。」 文は笑いながら、パシャッとシャッターを切る。 その写真には、ボロボロになった一同の和やかな時間が閉じ込められた。 前へ 目次へ 次へ
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サブ・ゼロの使い魔 第二章 傅く者と裏切る者 ――また、あの夢だった。古びた部屋にいる、誰かになった自分の夢。 だが、今回はいつもと違った。ルイズがその夢を知覚したと同時に、全ての霧はざあっという音と共に消え去り――そしてその瞬間、ルイズは部屋にいる男達のことをまるで遥か昔から知っているように理解していた。 後ろのソファに座って仲良く話している二人・・・ソルベとジェラート。 椅子に座ってテーブルの上の変な物体を叩いている男・・・メローネ。 椅子の背に手を置いて彼の肩越しにそれを覗き込んでいるのは、イルーゾォ。 立ったまま壁に背を預けて本を読んでいるリゾットは、たまにこちらを見てはやれやれといった顔をしている。 そして先ほどから二人して自分に怒鳴り続けているのはホルマジオとプロシュート。 二人がかりの説教を喰らっている自分は・・・そう、ギアッチョだった。 「ギアッチョッ!何度言ったら分かるんだてめーッ!!」 プロシュートが上半身を乗り出して怒鳴っている。 「しょーがねーなぁぁぁ これで何冊目だっつーんだよギアッチョさんよォォ」 右手に持った本だったものの残骸をバンバンと叩きながらホルマジオもプロシュートに加勢するが、当のギアッチョはどこ吹く風で受け流す。 ・・・というか全く聞いていない。 「何で3ページで打ち切りになるんだよォォォ~~~ッ!! ナメてんのかオレをッ!!クソッ!クソッ!!まそっぷって何だ!バカにしやがって!!」 イルーゾォが呆れた顔でプロシュート達を見る。 「だから言ったじゃあないか・・・ギアッチョにだけは物を貸すなってよォー」 「そのくらい諦めるんだな オレなんてパソコンを破壊されてるんだぜ」 同じく顔を上げたメローネはそう言って首を振った。ソルベとジェラートはそんな彼らをニヤニヤ笑いながら眺めている。 「外野は黙ってろッ!今日という今日は許さねぇぜギアッチョ!」 「仲間に対する敬意ってもんが足りねーんじゃあねーか?オイ」 プロシュート達の怒りは全く収まらないようだった。 「やれやれ・・・ お前達・・・その辺にしておけ そんなことをいくら言おうがギアッチョには通じないことぐらい知っているだろう」 パタンと本を閉じて、リゾットがリーダーらしく彼らを制止する。 プロシュートとホルマジオは「甘いぜリゾット」という視線を彼に向けるが、リゾットが続けて「ギアッチョ、お前は弁償しておけ」と言ったのを聞いてとりあえずその場は収めることにした。ギアッチョはその言葉に不満げな表情で財布を出し―― ――場面が飛んだ。 ギアッチョの前には古びた扉がある。決まったリズムでそれを叩くと、少ししてから軋んだ音を立てて扉が開いた。 「仕事は終わったぜ、リゾット」 扉を開けたリゾットにそう報告して、ギアッチョは中に入る。 彼に続いてメローネが入ってきたのを確認して、リゾットは彼らにねぎらいの言葉をかけた。 「・・・ま、今回もくだらねー仕事だったがよォォ どうせやるならもう少し面白みのあるやつを回してもらいてぇもんだ」 とギアッチョが言えば、 「簡単なのに越したことはないさ・・・ こんなはした金で命を捨てたくはないからな」 タッグを組んでいたメローネがそう答える。ギアッチョはフンと鼻を鳴らすとどっかりと椅子に腰を落とした。 と、ウヒャヒャヒャヒャという聞き慣れた笑い声が場に響き、ギアッチョ達は声を発した男に目を向ける。 ホルマジオはイルーゾォと机を挟んで向かい合っていた。 二人の横にはプロシュートが陣取り、奥のソファには相変わらずソルベとジェラートが座っている。 そして彼ら全員の視線が集まっているのは、テーブルの上にあるチェス盤だった。 ホルマジオは盤からイルーゾォに視線を移して言い放つ。 「チェックメイトだ オレの勝ちだぜイルーゾォ!」 「バ・・・バカな・・・ただのポーンなんかにィィィ!」 イルーゾォが信じられないという顔で叫ぶ。 「クハハハハハハッ!分かってねェーなァァ チェスって奴をよォォー! 駒の強さなんてもんは所詮ここの使い方一つだぜェェ~」 ホルマジオは人差し指で自分の頭をトントンと叩きながら言った。 「クッ・・・クソッ!再戦だ!もう一度やらせろ!」 「ダメだね ほら!とっとと賭け金をよこしなよイルーゾォよォ~!」 イルーゾォの願いをホルマジオはあっさり跳ね除けた。イルーゾォはしばらくの間「再戦の拒否は許可しないィィィー!」等と叫んでいたが、結局彼のスタンド、リトル・フィートにガッシリ押さえ込まれて財布から二割増しで金を抜き取られていた。 「やれやれ どきなイルーゾォ オレが仇をとってやるよ・・・なぁに、ボードゲームは得意なんだぜ」 メローネが自信たっぷりに椅子に座り、 速攻で敗北した。 部屋の隅で頭を抱えているメローネを尻目にギアッチョが挑み、敗北。プロシュートが挑み、敗北。ソルベが挑みジェラートが挑み・・・ 敗北。敗北。敗北。 「てめーイカサマやってんじゃねーだろーなァァーー!!」 「何逆ギレしてんだオイ!しょぉぉがねーなァァアァ!」 度重なる敗北についにギアッチョがブチ切れた。 その瞬間、今がチャンスとばかりにプロシュートがホルマジオを蹴っ飛ばし、そのスキにソルベとジェラートが彼に飛び掛り、イルーゾォが一瞬でその財布を奪い取り、メローネが皆の取り分を計算して分配した。 「ちょっ・・・何やってんだてめーらァァァ!!」 「うるせェェェ!勝負になるかボケッ!!」 七人はギャーギャーと騒ぎ続け、リゾットはそれをいつものことだというような眼で見つめていた。 そしてもう一人、ギアッチョの眼を通してルイズもまた彼らを見つめている。 喧嘩ばかりしているが、ルイズの眼には彼らはとても楽しそうに見えた。 常に四面楚歌で命のやり取りをしているからこそ、きっと彼らは死よりも強い絆で結ばれているのだろう。 バカ騒ぎを続ける彼らを、ルイズの心は羨ましそうに見つめていた。 そうしてルイズの夢はいくつもの場面を映し出す。しかしその内容は、徐々に不穏の色を帯びて来た。 場面が過ぎる度に、自分達の理不尽な待遇に、彼らのボスに対する不満は高まって行くのだった。 そして幾度目かの場面転換の後――ついにそれは起こった。 ドンドンドンドンドンドンッ!!! アジトの扉が猛烈に叩かれる。中で待機をしていたギアッチョとメローネ、そしてリゾットとプロシュートは一斉にスタンドを発現させた。 「おいッ!!開けろ・・・!!大変なんだよ!!ジェラートが殺されたッ!!」 「リゾットッ!!オレだ、ホルマジオだッ!!早くここを開けろォォォ!!」 決められたノックをしないことにリゾット達は不審を抱いていたが、その声はどう聞いてもイルーゾォとホルマジオだ。そして彼らが口にした言葉は、彼らにとってこれ以上なく衝撃的なものだった。 プロシュートのザ・グレイトフル・デッドを使って扉を開ける。最初に転がり込んできたイルーゾォの襟首を、ギアッチョが強引に掴んで引き上げた。 「てめーイルーゾォ!!タチの悪い冗談はやめろッ!!」 ギアッチョが人を殺しかねない剣幕で怒鳴る。しかしイルーゾォは苦渋に満ちた顔で答えた。 「嘘じゃない・・・!!『罰』と書かれた紙を身体に貼り付けて・・・ッ!!」 サイレントの魔法がかかったかのように、その場は静まり返った。 ――・・・そんな・・・嘘・・・ ルイズは崩れ落ちそうになった。勿論、今はリプレイされるギアッチョの幻に宿るただの意識である彼女には不可能なことであったが。 ギアッチョの仲間は、リーダーを除き全てが死んだ・・・それは理解しているはずだった。 しかしギアッチョを通して幾つもの場面を共有した今、ルイズに彼らの死を無関心に眺めることなど出来るはずがない。 だがそんな彼女の気持ちなど一顧だにせず、場面は無情に進んで行く。 ジェラートは自宅のソファで、恐怖に顔を引き攣らせて絶命していた。 「ジェラート・・・おいジェラートッ!!」 プロシュートがジェラートを揺さぶる。リゾットは彼の肩を掴んでそれを止めた。 「やめろ・・・プロシュート ・・・ジェラートはもう死んでいる」 「クソッたれがッ!!」 プロシュートは怒りを吐き捨てて立ち上がった。逆にメローネは、その場にがっくりと膝を落とす。 「・・・ボスだ・・・ボスの正体を探ったことがバレて・・・・・・」 ギアッチョは唇を噛んで怒りを耐えていた。ギリギリと音がするほど噛まれた唇からは、彼らの心を代弁するかのように血が流れている。 「・・・ホルマジオ イルーゾォ ソルベはどこだ?」 リゾットが二人に向き直るが、彼らは俯いたまま黙って首を横に振った。 「クソッ・・・!お前達・・・ソルベを探せ!!」 リゾットは焦燥感も露に叫んだ。 そして場面はまた一つ飛ぶ。 ギアッチョ達はアジトに集合していた。彼らの足元の床には、七十サント四方程の箱が数えて三十六個転がっている。 その箱にはガラスのケースに額縁を嵌めたようなものが入っていて、その中に何か気持ちの悪いものが、 ――・・・そんな 彼らは最後の一つまで開封して、やっとそれが何かに気付いた。 ――やめて ・・・いや、解ってはいたが・・・気付かない振りをしていた。彼らが送られてきた順にそれらを並べてみると、 ――お願いだからもうやめて・・・! 三十六個に斬り分けられた、輪切りのソルベが、 ――あぁあぁああああああぁああああッ!!! ルイズはいっそ気絶してしまえたらどんなに楽だろうかと思った。 しかし今はただギアッチョを通して彼の過去を見ている「意識」だけの状態であるルイズには、気絶どころか顔を覆うことも背けることも出来ず・・・彼らの為にただ涙を流すことすら出来なかった。 しかし、眼前の場面は冷徹なまでに滞りなく流れ続ける。自分達を嘲笑うかのように警告の道具としてソルベを惨殺したボスに、誰もが怒りを必死に押し殺す中―― バギャアッ!!! ギアッチョの我慢は限界を超えた。 「あの野郎ォオオォオォォオオーーーーーーーーーーーッ!!!!」 テーブルを叩き割り、ギアッチョは天地が割れんばかりの声で叫んだ。 「殺すッ!!!オレが殺してやるッ!!!」 額縁を梱包していた箱を踏み破りながら、ギアッチョは悪鬼の如き凶相で扉へと向かう。 プロシュートが「早まるんじゃあねぇ!」と手を伸ばすが、ギアッチョは彼に眼も向けずにその手を払いのけた。 しかし、その先でギアッチョの足がピタリと止まる。扉の前に、リゾットが立ちふさがっていた。 「どけよ・・・リゾット!!」 怒りに沸き立つギアッチョの双眸がリゾットを射抜く。しかしリゾットは充血した両眼でギアッチョの視線を真っ向から受け止めた。 「リーダーとして・・・ギアッチョ、お前を行かせるわけにはいかない」 「何故だッ!!」 ギアッチョは激昂して叫ぶ。 「ええ!?オレ達は一体何年屈辱に耐えてきた!?命を賭けて組織の敵を排除し続けてよォォーー・・・オレ達は文字通りパッショーネに命を捧げてきたッ!!いつか忠誠が報われる日が来ると信じてなァァ!! それが何なんだこのザマはッ!!オレ達の誇りだけじゃあ飽き足らず、ボスの野郎はソルベとジェラートを無惨に殺し・・・そしてその死まで侮辱したッ!!ここまでされてよォォォー!!一体いつまで耐え続けろっつーんだッ!!」 ギアッチョは怒りに任せてまくし立てた。 「落ち着けギアッチョ・・・! オレは・・・いや、オレ達の誰一人としてこの状況を受け入れている者はいない・・・ だが耐えるんだ!」 リゾットはそう言うと、ギアッチョが何かを言う前に続ける。 「ボスの正体を探ろうとしたんだ・・・オレ達が関わっていようがいまいが、ボスは既に・・・間違いなくオレ達を監視下に置いているはずだ そんな状態で一体何が出来る・・・?刺し違えるどころか、ボスに辿り着くことすら出来ないだろう」 ギアッチョはぐっと言葉を詰まらせる。 「今は伏して耐えるんだ・・・ ボスを倒す『チャンス』が来るまで!」 リゾットの眼は『覚悟』している者の眼だった。ギアッチョは壁を一発猛烈な音を立てて殴りつけると、その拳を震わせながら収めた。 ルイズは今度こそギアッチョの気持ちを理解した。彼女の耳には、食堂でギアッチョが叫んだ言葉が木霊していた。 『オレ達の命は安かねェんだッ!!!』 これだけの言葉に、一体どれほどの無念が込められていたのだろう。 ルイズにはもう結末が分かっている。リゾットの部下は、全員が死亡する。 ならば例え彼がボスに打ち勝ったとしても、一体その勝利にはどれほどの意味があるのだろうか? 仲間を失くし、ボスを殺して生きる目的までも失ってしまったならば、リゾットはもはや一人で生きていけるのだろうか。 そして、殆ど全ての仲間を失って唯一人生きながらえてしまったギアッチョは? 己が立っていた足場を失い、拠り所にしていた支えも失い――彼は一体何を思って生きているのだろうか。彼は自分を命の恩人だと言う。だけどそれは本心からのものなのだろうか?自分はギアッチョに、ただ終わることすら許されない痛みを与え続けているだけなのではないか―― ルイズには何も解らない。ただひたすら辛く、そして悲しかった。
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野郎!ソルベを輪切りなんて 人として 正直どうよこれ ものすごく鳥肌たった ボスを殺せばこんな仕事 しなくてすむ はっはっ命かけて ナワバリ派手に奪お 待った!ボスに娘いる?(なぁになぁに 良さそうな情報) だって葬式に来ない これは狙うべきでしょ(はいよはいよはいよ! しょおがねぇなああ!) ソルベとジェラートを 返してよね ボスに殺されたんだ みんな怒り爆発 全力で裏切る(死ね!) 探してがむしゃらに ボスへの道 少し近付いたかな? ブチャラティがどうした オレはオレの覚悟 とほ~ん ヤツらに負けちゃった? だけどめげない 次の奴行ってこい なんとしてでも 仕留めるぞ でも考えてみるとね うちのチーム 血の気が多い奴ばっか 落ち着く必要があるね やっだー! 残りのおこづかい(副業のほう もうすぐ給料) はっふー! やっぱり殺そう 今すぐにでもボスを! (ペッシペッシペッシ!『ブッ殺した』なら使ってもいいッ!) 次々チームメンバー さよならです ひとりでもがんばるよ 可能性はあるさ 諦めない限り(そんなもん?) サルディニア そこに行けばいい? ボスの故郷ってマジ? ブチャラティがいるなんて これは当たりかもな 待った待って待っとけって! オイオイ おまえ二重人格? だってらってメッタリカ! ロォォド 時間が消失 (エアロスミス行け! ひとりではレなねえ!) 飛ばした時間 返してよね そしたら当たってたかも? 隠したつもりだけど 顔見ちゃったからね(すぐ死ね!) 鉄分は戻したりしない そのまま死んでゆけ これが俺にできる 最期の悪あがき
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「と、言うわけで今日から皆さんに英吉利の言葉を教えてくれる、リゾット先生です。」 「リゾット・ネエロだ。宜しく頼む。」 「リゾット先生は外から来た人間で、今では閻魔様の所で働いている方。 悪い事をすると、閻魔さまに報告されてしまいますから、きちんといい子にしているんですよ?」 「「「「「はーい!」」」」」 慧音に釘を刺されて、子供達は元気よく声をあげた。 そして、リゾットの授業が始まった。 「まず、日本語と英語の文字が違うのは・・・・・・・。」 「メローネ、どうだリゾットは。」 ずっと画面を見続けているメローネにギアッチョがコーヒーを持ってくる。 「うーん、授業も結構普通に続けてるし、大丈夫っぽいけど・・・・・。 微妙に黒板の文字が普段より汚いから、緊張してるなぁ。」 メローネがモニター越しに、リゾットの細かい変化から、彼の心境を読み取る。 良い母親を見極めるための技能は、別に女性だけに限った話ではない。 彼は人間・・・いや、人の形をした生物なら細かい動作から、その意思を殆ど読み取れるだろう。 「まぁ、感情に関してならジェラートの野生の感が一番だと思うけどな。 “におい”とか言うので殺気の数から、非戦闘員と戦闘員の違いまではっきり分かるのはどんな原理なんだか。」 そう言ってメローネは、ギアッチョの持ってきたコーヒーに口をつけた。 「あ、ストロベリー入ってる?」 「おうよ、こっちだとフレーバーシロップ売ってないから、プロシュートの奴に頼んで八雲紫に色目使ってもらって手に入れたんだぜ?」 「勿体無いよなぁ、こんなに美味しいのに。」 「前、レティに勧めたら凄い嫌な顔されたぜ。」 そう言って二人は再び、モニターに顔を向けた。 「先生、この言葉はどうしてこういう意味なんですか?」 「それは『お休み』と言う意味だが、「good」と言うのは良い、と言う意味の形容詞だ。 『夜』と言う意味、「night」と合わせて「良い夜を。」つまり夜の時間を、眠りをと言う事、意訳して「お休み」と言う意味だ。」 リゾットはいつも道りの淡々とした口調だが、子供にも分かりやすいように丁寧に説明していく。 「日本人が英語を覚えるに当たって、問題なのは文法・・つまりそれぞれの単語の並べ方だ。 あまり難しい事は慧音先生に習っていないから簡単に説明すると・・、そうだな。 英語などのヨーロッパの言葉は、その結論から、大事な単語から並べる、と考えてくれればいい。」 そう言ってリゾットは黒板に説明を書いていく。 「まず、日本語でも英語でも主語・・・つまり行動を行う人物は・・・。」 すると、突然ゴーンゴーンと言う音が聞こえる。人間の里で時刻を知らせる、寺の鐘である。 「・・・・今日の授業は、ここまでだ。時折、抜き打ちで試験をするから復習するように!」 リゾットはそう言ってチョークを置く。 「きりーつ」 そう、学級委員の位地にいるであろう、少年が言う。 そして、生徒が一斉に立つ。 「きおつけー。れーい。」 「「「「「「ありがとうございましたー」」」」」」 そう言って子供達は授業が終わった喜びで、次々に外に出て行く。 「リゾットせんせー!また明日ー!!」 「あぁ、また明日。」 そうして、最後の子供が教室を出て行った。 そして子供の気配が完全になくなると、リゾットはその場にしゃがみこんだ。 息が急に荒くなり、心臓の音が大きく聞こえる、俯いた顔は苦しそうに歪んでいた。 「情けない・・・・・・・。」 そう呟いて、リゾットは立ち上がる。 余ったプリントや、授業進行を書いたノートをまとめ、教室を出ようと扉を開けた。 そして、廊下に出るとちょうど慧音がこちらに向かってきていた。 「リゾットさん、お疲れ様でした。」 そう言って慧音はててててて、と駆け寄ってきた。 「あの子達、ご迷惑はかけなかったでしょうか?」 「大丈夫だ。貴方以外に教えてもらうのが初めてだったので、緊張したのだろう。」 二人は並んで、廊下を歩いて慧音の居住スペースまで向かう。 「日本では授業が午後もあると聞いたが、こちらはどうなんだ?」 「幻想郷でも授業は午前だけです。家の手伝いがある子が多いですから。」 世間話をしながら、二人は話す。 「それにしても、教え方が随分うまいですね。とっても分かりやすかったですよ。」 時折、リゾットの授業の様子を覗き込んでいた慧音が彼を褒めた。 「・・・・・・俺の部下には、まともに学校に行けなかった奴がそれなりにいるんでな。そいつらにも英語を教えていたんだ。」 あの子供達のように素直ではない部下どもに、任務の為に必死に英語を教え込んでいた時のことを思い出す。 「何せ長時間集中して人の話を聞くという事自体に耐えられないのか、寝るわ、キレるわ、スタンドを発動して逃げ出すわ・・。」 ぶつぶつぶつぶつとリゾットの精神が暗黒面に沈んで行く。 「あ・・あの・・・・。お弁当お持ちでしたら、今日の反省会もかねてこの後一緒にお昼はどうですか?」 「・・・っ!!そ・・・そうだな・・・、お言葉に甘えよう。」 慧音の声に意識を取り戻したのか、リゾットはワンテンポ遅れてから、慧音の言葉に反応した。 「・・・・・・・いいなー、リゾット。美人とランチだって。」 「・・・・・何でわざわざ俺の方を見ながら言うんだよ・・・・・。」 「ギアッチョも勝ち組だから。」 すっかりコーヒーも飲み終わり、二人は談笑しながらモニターを見続けていた。 「お前だってその気になれば女くらいいくらでもひっかけてこれるだろ?」 「映姫様うるさいんだよ、そういうの。幻想郷の子は古臭い考えの子を多いから、一回やっただけで結婚しろとか言われそうだし。」 そう言ってメローネは、ため息をついた。 「いいよなぁ、皆美人と知り合いになってさぁ。俺なんて収穫は幼女と腐女子だぜ? まぁ、確かにリアルプ○ンセスメーカーするのは楽しいけど、成長しないらしいしー。」 つまんないよなー、といってメローネはベイビィ・フェイスの蓋をたたく。 「そういや、最近全然連絡とってねぇな。お前とあのガキ。」 「いやね、ハロウィンの時に仕事であんまり構って上げられなくて拗ねちゃってるみたい。 でも、チルノが最近こっそり遊んでくれてるみたいだから、寂しくないと思うけど。」 「寂しいのは、むしろお前だろ。」 ギアッチョの指摘に、うっとメローネは言葉を詰まらせた。 珍しくからかう方に回れたのが嬉しいのか、ギアッチョはニヤニヤと笑いながら言う。 「おーおー、天下の変態暗殺者がたったガキ一人に寂しいねぇー・・。」 「う・・うるさい!!そういうアンタこそレティに頭上がらないくせに!!どうせ夜は使い魔プレ・・・・・。」 「ブチ壊れろぉぉぉぉぉ!!」 それから十二分後、氷付けにされたメローネはお昼が出来たと呼びに来たホルマジオに救出された。 ここは慧音の寺子屋についている彼女の居住スペース。 ハロウィンの日にリゾットが運び込まれたのもここだった。 「はい、どうぞ。」 「すまない。」 畳にちゃぶ台と言う、いかにも日本的な部屋で、リゾットと慧音は昼食を取っていた。 慧音は熱い緑茶を、リゾットに渡す。 「それにしても・・・ずいぶん美味しそうですね・・・・・。」 リゾットの弁当箱を覗き込み、慧音が思わずつばを飲み込んだ。 そこにはビーフとスライスオニオンのサンドイッチや、いわゆるBLTサンド、さらに普通のタマゴサンドなどなど。 様々な種類のサンドイッチが所狭しと、しかし決してお互いを押しつぶさないように詰め込まれていた。 「今日の朝食当番は・・・イルーゾォか。こっちに来てからあいつは随分料理のレパートリーが増えたな・・・。」 おそらく、今付き合っている彼女の影響だろう、とリゾットは結論付けた。 「食べてみるか?あまり美味くはないかもしれないが・・・・。」 「いいんですか?・・・・・というか駄目ですよ!せっかく作ってくれたのにそう言う事言っちゃ!!」 「・・・・・食べてみれば分かる。」 そういわれて、慧音はビーフとスライスオニオンのサンドイッチを一つ取り出す。 「・・・頂きます。」 そう言って慧音はサンドイッチを一口かじった。 そしてよく噛み、飲み込んだ。 慧音はそして、一言。 「・・・・・っ!!普通だ!!」 驚愕の表情で、慧音はそういった。 「そうだ、普通なんだ・・・・。」 リゾットは何やら深刻そうに俯く。 そう、イルーゾォには決定的な謎の欠点がある。それは、『どんな料理を作っても「普通」としか感想を言わせない程度の能力』である。 「お・・・美味しそうなのに。普通に美味しそうなのに・・・・・。」 「食べると普通としか言えないんだ・・・・・・・。」 何となく、二人の空気が暗くなる。 「へーっくし!!」 イルーゾォが、思いっきりくしゃみをした。 「どうしたのよ?イルーゾォ。ほら、それより魔導書のそこの文章を早く解釈しなさい。」 アリスがトントンと、魔導書のコピーの一部にマーカーで線を引く。 「風邪かなぁ・・・・・・。昨日結構遅くまで仕事やってたから・・・。」 そんな事を呟きながら、イルーゾォは再びラテン語の辞書を開いた。 「あ・・・!そうだ!私もお昼用におにぎりとお味噌汁を今朝に作ってたんですよ!いま暖めてますから良かったらそれと半分こにしませんか?」 「あ・・あぁ、お言葉に甘えるとしよう。」 そして、リゾットと慧音の穏やかなランチタイムが始まった。 リゾットが穏やかな時間を過ごしている同時刻、暗殺チームの何名かは、森の中を進んでいた。 そこは、妖怪の山の麓に広がる広大な森である。 「ここにも妖力反応なし・・・か。」 そう呟いたのは、なにやら奇妙な形をした計器を持ったソルベだった。 「ったく、何でこう言うときに機動力のあるギアッチョがいねぇんだよ・・・ま、こんな森の中じゃスケートは無理だな。」 ソルベの肩に、ふわり・・・と青白い蝶、彼のスタンドが止まる。 そして彼の周りを取り囲むように、次々にバタフライが現れる。 それらは全て、ソルベが持っていたのと同じ計器を持っている。 「それにしても、半径2km全部反応なしか・・・・。本当にこの機械動くのか?」 彼が調査してるのは、近頃ここら辺に外からやってきて住みついたと言う、『魂』を食べる妖怪である。 別にソルベはそいつの事はどうとも思わないし、食われる魂にしてもよっぽど間抜けな奴だと思ってるから同情はしない。 だがしかし、今の勤め先にとって魂を食われるというのは、お客を殺されると言う事である。 あの世もこの世も不景気な中、出来るだけ財源を確保したいのだろう。 「・・まぁ、俺達もお金なくて雇えなくなったから地獄行きーってなる訳にはいかねぇからなぁ。」 そう言ってソルベはスタンド達から計器を回収する。 すると、無数の蝶の中の二体が、彼の耳元に飛んでくる。 腹にあたる部分についている赤いランプがチカチカと点滅した、別のバタフライと通信している証だ。 「プロシュート、ペッシ、お前らの方も、何もなかったか?・・そうか。ジェラートと合流したらそっちに向かう。休憩したらさらに上の方を見てみる。 そこら辺は河童の勢力範囲だが、時々機械に関して色々教えてやってるから俺とジェラートの名前出せば多分分かるさ。 ま、閻魔様直属の死神だって分かればこの幻想郷で逆らえる奴はそうそういねぇよ。川を汚さないようにしろよ。」 そう言ってソルベはスタンドを解除する。 使い慣れたスタンドだとはいえ、この数を完璧に制御するのは気がいるのだ。 「ソルベ・・・・・・・・。」 何かを引きずるような音と共に、彼に何者かが彼に近づいてくる。 その音を聞いて、ソルベはため息をついた。 「やっぱ限界だったか・・・・、ジェラート。」 そう言って彼が後ろを振り向くと、そこには血まみれになったジェラートがいた。 だが、彼には外傷は一切なく、その手にはずたずたになった、一体の妖怪が掴まれていた。 「うん、だって全然こっちに来てから殺してなかったし、殺しちゃいけなかったからさ。 もみちゃんや美鈴と戦ってごまかしてたつもりだけど、ごめん、無理だった。限界だったっぽい。」 まるで感情の篭ってない様子で、ジェラートはドサッと妖怪を落とした。 「・・・一応、永琳先生に頼み込んで記憶を消す薬と、治す薬は貰ってあるぜ。」 ソルベはそう言って、鞄の中から二つのピルケースを取り出した。 「ありがとう、と言うか永琳先生、よく出してくれたね。」 「興味あるんだろ、地球の科学がどんなもん作り出しちまったかよ。」 そう言ってソルベは妖怪の口に、無理やり薬を突っ込んだ ジェラートは、相変わらず無表情のままである。 「ほら、ジェラート。着替え、あとこれ。」 ソルベはジェラートに、上着と携帯音楽プレーヤーを渡す。 「プロシュート達と合流する前に、落ち着けとけよ。」 「うん。」 そう言って、ジェラートは耳にヘッドホンをつけた。 前へ 目次へ 次へ