約 439,876 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/442.html
トリステイン魔法学院。 ここでは毎年恒例、使い魔召喚の儀式が行われていた。 普通なら何事もなく終わるはずだった。 しかしッ!今年はそうはいかなかったッ! 学院創立以来の問題児ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールッ! 成績優秀ッ!素行良好ッ!されど魔法を使えば即爆発ッ! 付いたあだ名は『ゼロのルイズ』! そんな彼女の召喚である。何が起こるか誰だって見物したいだろう。おれだってしたい。 しかし彼らの予想を遙かに超えることを彼女はしでかしたのだッ! なんとッ!よりによってッ!何の取り柄もないッ!『平民』を召喚したのだッ! 「こいつ平民を召喚したぞ!しかもあの格好は・・・変態だッ!」 「さすがゼロのルイズ!変態を召喚するなんて!」 「そこに痺れない憧れないィーー!」 ルイズと呼ばれた少女は必死に言い返す。 「なによ!ちょっと間違えただけじゃない!」 「どこがちょっとだ!」 この喧噪の中、男が動いたのに気付くものはいなかった。 彼の名はメローネといった。 職業は『暗殺者』 もちろんただの暗殺者ではない。 彼には『スタンド』と呼ばれる能力があった。 能力の名は『ベイビィ・フェイス』 パソコンに寄生し物体をバラバラにし、組み替える能力。 さらに、女性の体を媒体とし、『息子』を作り上げる能力もある。 言うことは聞かないが、教育すればある程度制御でき、万が一やられても自分は無事。 さらに成長した別の『息子』が標的を殺す。 まさに暗殺のためにあるような能力。 欠点はあるがほとんど無敵。 彼は自らの能力に酔っていた。 しかし、彼は死んだ。 気にもとめていなかった『新入り』の能力によって。 死んだはずだった・・・ 目を開けると、そこには青空が広がっていた。 「なんだ・・・?俺は死んだはず・・・?」 周りを見るとローブのようなものを着た群衆。 そして、言い合いをしている少女と中年。 「地獄・・・ではないな。明るすぎる。 だとしたら天国・・・?まさかな。」 彼は暗殺者だ。天国なぞ死んでもいけまい。 そんなことを考えているうち、少女が近づいてきた。心なしか顔が赤い。 「あ、あんた、感謝しなさいよね・・・。貴族にこんな事されるなんて・・・。普通は一生ないんだからっ!!」 少女はそういうとなにやらつぶやきだした。 「おい、なにを言って・・・」 その瞬間少女の唇が彼の唇をふさいだ。 「なっ、何をするだァー!いっ、いきなりキスなんてッ!」 その瞬間、彼の左手に激しい痛みが走った! 「なっ、これはッ!が、ぐわアァァァァァァァァァァァ」 そのとき彼の左手には『使い魔のルーン』が刻みつけられていた! 「ミスタ・コルベール。終わりました。」 顔を赤くしながら少女が言うとコルベールと呼ばれたオッサンはその『使い魔』を見て 「ふむ。珍しい形のルーンですね。それでは皆さん、教室に戻りましょうか」 すると、彼らの体が宙に浮いたのだ! 「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」 「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」 メローネは呆然と見ていることしかできなかった。 そして視線は少女に向いた。 「おい!なんなんだあれは!というかおまえは誰だ!むしろここはどこだ!」 「うるさいわねぇ・・・。まあいいわ。 ここはハルキゲニア大陸トリステイン魔法学院。あんたはなぜか召喚されたの。 そしてわたしはルイズ。あなたのご主人様ね。」 「な、なにを言っている!?全く意味がわからん!ディ・モールト(とっても)意味不明だッ!」 「あーもぅ!詳しい説明は後でしてあげるからさっさと帰るわよ!」 そう言い残すとルイズは歩いていった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/692.html
トリスティン魔法学園のとある教室。 そこに2つの人影入ると、それまで雑談していた生徒達が一斉に好奇の視線を向ける。 朝食を終えたルイズと育郎である。 二人を確認するとくすくすと笑い出す生徒達を、無視して席に座ろうとするルイズに 一人の生徒が声をかける。 「あらルイズ、貴方本当に平民が使い魔なのね」 燃えるような赤い髪に豊満な肉体、褐色の肌を持つその生徒を、ルイズは苦々しく見た。 「キュルケ…なによ、何か用なの?」 「用事って程じゃないわよ、貴方の噂の使い魔を見たくてね。へ~」 そういって育郎をじろじろと見る。 「中々いい男じゃない…でも、やっぱり使い魔って言ったらこういうのじゃないと」 キュルケの横から、真っ赤な巨大トカゲがのっそりと身を乗り出してくる。 「これって、サラマンダーじゃない…」 「そうよー、火トカゲよー。見てこの尻尾!」 悔しげにサラマンダーを見ながら、キュルケの自慢話を聞くルイズを横目に、一人育郎は 眼の前のサラマンダーと、周りにいる使い魔たちを感心して見ていた。 (本当に漫画やゲームの世界だな…あれはキメラ、いやマンティコアだっけ?) 「ルイズ…あの浮いている目玉はなんて言うんだい?」 「鈴木土下座衛門って…ちょっとあんた、恥ずかしいからキョロキョロしないでよ!」 「いいじゃない。貴方、私の使い魔はどう?素敵でしょ」 と言われても、育郎にサラマンダーの良し悪しなど判るはずもない。 大きさを褒めるべきなんだろうか? それとも色? そういえば昔、沙羅曼蛇ってゲームがあったっけ? 小学校で同じクラスになった花京院君はゲームが上手かったな… 禁止と言っても毒ガスを放つドイツ超人を必ず使うから嫌われてたっけ 彼は今どうしているのだろう? 「はいはい、みなさん席に座って」 そうこう考えてるうちに先生が入ってきたようだ。 助かったと思い、席に座ろうとするが「使い魔は椅子に座っちゃ駄目!」とルイズに 言われた為、仕方なく教室の後ろの壁に背を預ける。 ふくよかな頬から優しい印象を受けるミセス・シュヴルーズは土の魔法の先生らしい。 授業は始めてと言う事もあって、実にわかりやすい。 (それにしても…火、水、土、風はわかるけど虚無か) 属性の説明を聞きながら育郎は考える。 失われた属性と言われる虚無。 他の事柄は、それこそ漫画やゲームの知識のままだが、虚無と言うのは異質に感じる。 「では…ミス・ヴァリエール、この石を『錬金』で金属に変えてみてください」 その声で考えを中断して、ルイズの方を見る。 するといつも元気なルイズが、困ったようにもじもじしているではないか。 周りの様子もおかしい。 「なんて事だッ!『ゼロのルイズ』に魔法を使わせる事になってしまったッ! ラ・ヴァリエール家が生み出した、恐るべき暴発兵器『ゼロのルイズ』をッ!」 「『ゼロのルイズ』に魔法を使わせることは核爆発させる事と同じだッ!」 等と叫ぶ生徒もいれば、急いで机の下に隠れる生徒もいる。キュルケも顔面蒼白だ。 それとは対照的に、前に出たルイズににっこりと微笑むミセス・シュヴルーズ。 「ミス・ヴァリエールッ! あなたは必ず錬金を成功できるッ!もっと!もっと! 石ころを金属に変えれるとおもいなさいッ!空気を吸って吐くことのように! HBの鉛筆をベキッ!とへし折ることと同じようにッ!出来て当然と思うのですッ! 大切なのは『認識』することですッ! 魔法を操ると言う事は、出来て当然と思う精神力なのですッ!」 ミセス・シュヴルーズのアドバイスに意を決して杖を掲げる、ルイズ。 精一杯頑張っていますと、全身からオーラを出すルイズを見て、育郎は思わず微笑んだ。 そしてルイズが勢いよく杖を振り下ろした次の瞬間…机の上の石ころが爆発した。 ルイズは自分の魔法の失敗で生まれた爆風を受けながら考えていた。 またやってしまった…また失敗してしまった… そして自分につけられた二つ名を嫌でも思い出す。 ゼロのルイズ 魔法の成功率ゼロ 落ちこぼれの証 泣きたくなるほど情けなくなるが、彼女の人一倍高いプライドがそれを許さなかった。 とりあえず何かを言って誤魔化さなければならない。 失敗しちゃった(テヘ) 等と言うわけにはいかないのだ。何か良い言葉は無いか… また、つまらぬ物を爆発させてしまった… こんなのはどうだろう? いいぞ、なんかそこはかとなく格好良い気がする。 意を決して口を開こうとした時、誰かが自分を揺さぶっている事に気付いた。 「ルイズ、大丈夫かッ!?」 「はえ?」 「よかった…怪我はない………先生!先生、大丈夫ですか!?」 ルイズに大した怪我が無い事を確認した育郎が、今度はミセス・シュヴルーズを介抱する。 「おお…一体何が…」 「わかりません…急に爆発が起きて…」 「そんな!ミス・ヴァリエールは?生徒達は大丈夫ですか!?」 「ええ、心配ありません。みんな無事です」 「ああ…よかった…本当に良かった…」 安心して泣き崩れるミセス・シュヴルーズ。 その光景を呆然としながらみつめる生徒達とルイズ。 「君、お医者さんか保険の先生を!」 「あ、うん…」 普段なら「平民如きが貴族に命令するんじゃない!」と怒るところだが、 状況についていけないその少年は素直に従う。 「な…なにこれ?彼は何をしているの!?」 キュルケが信じられないと言うようにつぶやく。 「いや、これが『普通』なんだ…」 「え?」 誰と無く言った言葉に、医務室から先生を連れてきた少年が答える 「僕達も最初はああだった…でもいつのまにか慣れてしまったんだ… 彼は、僕達に忘れていた大切な何かを思い出させてくれたんだよ…」 「ていうかあなた誰?」 「な!?マリコルヌ!風上のマリコルヌだよ!去年も一緒だったろ!?」 「そうだっけ?」 「ひどい!?」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2169.html
その日、朝の肌寒さのせいか、ルイズは早くから目を覚ましてしまった。 ルイズは腕から茨を伸ばして窓を閉じつつ、布団を茨でかけなおす。 一通り用事が終わると、茨はその場でフッ…と消えた。 ルイズにしか見ることのできない『茨の冠』は、文字通りルイズの手足となっていた。 ルイズが使い魔を召喚した日、誰にもその存在が確認できないことから、皆がルイズを馬鹿にした。 それだけならまだしも、コルベール先生ですらルイズを疑ったのだ。 だが、『私にしか見えない茨の冠を被ったら、私の腕から私にしか見えない茨が生えました』なんて言えるものだろうか。 って言うか、言った、力説した。 最終的に、オールド・オスマンが直接ルイズの腕を確かめて、やっとルイズが使い魔を召喚したのだと結論づけられた。 確認の方法は簡単で、水桶の中に砂を敷き詰め、茨をそこに這わせただけだった。 それをオールド・オスマンが触れて確認し、ルイズは落第を免れたのだが…困ったのはその後。 ルイズの腕から生える透明な茨は、視認がほぼ不可能であり、言わば悪用し放題なのだ。「まぁ~、ヴァリエール家の娘が悪用するはずはないじゃろうなぁ~」 と、ルイズのプライドを刺激して、悪用しないよう警告したが、それも苦肉の柵。 オールド・オスマンは、ディティクトマジックでも認識できないルイズの使い魔に、頭を悩ませていた。 そしてルイズ自身も頭を悩ませていた。 この使い魔のせいで、ルイズはある人物に付き纏われることになったのだ。 「ヴァリエール、いるー?」 コンコン、とノックの音が響くが、ルイズは気づかない。 「ちょっと、ヴァリエールー?」 ルイズの部屋をノックしていたのはキュルケだった。 本来は禁止されている『アンロック』の魔法で鍵を開けると、ルイズの部屋にずかずかと乗り込み、ルイズの布団を引っぺがした。 「ふえっ、らり?」(え、なに?) 「まだ寝てるの?朝食の時間になるわよ」 「ふわ…って、ツェルプストー、なんで人の部屋に勝手に入ってるのよ」 「あら、あんたを起こしてあげたんじゃない、感謝してほしいぐらいよ」 キュルケがルイズの手を掴むと、おもむろにルイズの手を頬にすりよせる、俗に言う頬ずりって奴だ。 「ちょちょちょちょちょちょっと!なにしてんの!」 「あら、つれないわねえ…ね、あの触手、ちょっとだけ出してよ」 「イヤよ!触手じゃなくて茨よ!い・ば・ら!」 「何よもう、触った感じじゃ、太さといい固さといい…何よりも何本もあるなんてのが素晴らしいじゃない!」 「とっとと出て行け色ボケ女ぁ!」 ルイズが枕を投げ、続いて腕から伸びる茨を使って手当たり次第に部屋の中のものを投げる。 たまらずキュルケが退散し、廊下を走って逃げていった。 ルイズは部屋で、朝から息を切らせてしまい、疲れている様子。 「…ハァ、ハァ…、なんでこの茨、妙に太くて棘が丸っこいのよ…これじゃまるで(検閲)じゃない…」 (※アニメ版です) キュルケに茨の形状を知られて以来、毎朝毎朝こんな調子だった。 「それに、こいつは触手じゃなくて『ハーミット・パープル』なんだから…もう」 ルイズは愚痴を言いつつ服を着替え、食堂へと足を進めた。 朝食を終えて授業の時間、コルベール先生の授業は独特で、火の魔法講義と言うよりは、火の利用法講義だった。 火単体の能力より、火と水、火と土、火と風…火を媒介とした利用法を考案し、発表している。 火の魔法に自信を持っているキュルケは、それが不満らしいが、火が生活のあらゆる面で活用されているという話には喜びを見せていた。 タバサという生徒は少し特殊で、攻撃や攪乱に役立ちそうなものに関心を寄せている。 彼女はいつも本ばかりを読んでいる上に、キュルケの友達ということもあって、なかなか人が寄りつかない。 ルイズも本来なら、彼女のことなど気にも留めていなかっただろう。 だが、彼女には、ルイズを共感させる何かがあった。 最初は偶然だった。 ルイズのことを「魔法成功率ゼロのルイズ」と馬鹿にしたマリコルヌの首を、ちょっとだけハーミット・パープルで締めてやろうと思ったのだ。 マリコルヌに気づかれぬよう、首と頭にハーミット・パープルを這わせると、ルイズの頭に何かが伝わってきた。 『ミス・ロングビル…ボンテージ着てたらどんな感じだろう…』 「はあ?」 突拍子もない思考に、ルイズは思わず呆れた声を出してしまった。 「ミス・ヴァリエール、どうしましたか?」 「あ、いえ、なんでもありません」 授業を担当している教師、ミスタ・コルベールに注意され、ルイズは慌てた。 しばらく待ち、再度ハーミット・パープルでマリコルヌの頭に触れると、また同じように声のような何かが伝わってきた。 『あのメイド、おっぱい大きかったなあ』 「………」 思わず、ルイズは惚けた顔をしてマリコルヌの方を見てしまう。 マリコルヌがルイズの視線に気づいたので、慌ててルイズは正面を向いた。 正面を向きつつもハーミット・パープルは解除せず、マリコルヌの思考を聞く。 『なんだろ…もしかしてヴァリエールの奴、俺に気があるのかな!?でもあんなゼロの乳じゃな…』 とりあえずマリコルヌの首を一瞬で締め上げてから、ハーミット・パープルの『能力』を他でも確かめようと、違う生徒達の頭にも這わせてみた。 その結果、ハーミット・パープルは『人間の思考を読める』ということが解った。 ついでに、ルイズは意外なことまで知ってしまい、一日の授業が終わった後で自己嫌悪に陥ってしまった。 キュルケは、ルイズを馬鹿にするとき、軽い気持ちで馬鹿にしているが、心配するときは本気で心配している。 言うなれば、裏表がなく正直な奴だった。 ただ自分に言い寄ってくる男に対しては、ものすごい軽い気持ちで接しているようだ。 次に教室では目立たないタバサという少女の思考も読んでみた。 まずタバサというのは偽名、本来ならシャルロットと名乗りガリアの王女様になるところだったが、叔父の策略で父は殺され母は自分の身代わりとなって毒の犠牲に。 しかも母は、タバサを危険な任務に行かせるために、生かされている状態…つまり人質だった。 トリステイン魔法学院には、身分を隠して生活するため、また毒の解毒法を探すために図書室を利用しているのだとか。 他にも何人もの生徒の心を読んでみたが、ルイズはタバサ以上の苦しみを見つけられなかった。 ただ一人匹敵すると言えば、コルベール先生だろうか。 彼は昔、任務とはいえ一つの村の人間をすべて焼き殺し、その贖罪として火を平和的に利用するための研究をしているらしい。 ご丁寧なことに、殺した人の数はしっかり記憶していた。 そんな重たい思考を探ってしまい、ルイズはは自己嫌悪に陥ってしまったのだ。 「みんな、苦しんでるんのね…」 ベッドに寝そべり、天井を見上げつつルイズが呟く。 「ゼロって呼ばれてる私だけど、家族がみんな無事だし、ちい姉さまも病気がちだけど、生きてる」 思い出すのは、タバサ…シャルロットの思考。 「私より辛い思いしている人なんて、沢山居るんだ…」 ルイズは姉の姿を思い出す。 ちいねえさま「カトレア」は、魔法こそ優秀だが身体が弱く、ルイズのように外を飛び回ることも出来なかった。 タバサの母は心を病み、人形を娘だと思いこんでいる。 その身に負っている症状の違いこそあるものの、明日からタバサと同じように図書館に通ってみようと思うルイズだった。 図書館にて、ルイズはまた一つ別の発見をした。 トリステイン魔法学院の図書室『フェニアのライブラリー』の蔵書数はものすごく、案内図を見ても迷ってしまう。 案内図を見て、人体を治療する魔法薬について書かれた本を探そうとしたが、それだけでも1000を超えている。 姉の身体を治療する薬についても調べたいが、ここはタバサを優先しようとした。 「精神を治す魔法薬って、どの本なのかしら…もう、多すぎて解らないわよ」 片っ端から読むには多すぎる、どれか一つに絞りたい。 ルイズがそう考えた途端、右手から飛び出たハーミット・パープルが、しゅるしゅると伸びていった。 「?」 ハーミット・パープルの伸びた先には、本棚の案内図があった。 よく見ると、ハーミット・パープルは『エルフ』の棚の『上から二段目』の『右端』を指している。 「なによ、こんな高いの、レビテーションが使えないと取りに行けないじゃない」 ルイズが愚痴る。 「って、よく考えたらハーミット・パープルで取ればいいのよね…ちゃんと取れるかしら?」 しゅるしゅるとルイズにしか聞こえない音を立てて、ハーミット・パープルが本を取ってくる。 よく見るとその本は大判で、ルイズが持つには少し大きいように思えたが、不思議なことにハーミット・パープルが持つとほとんど重さを感じなかった。 「…便利ね」 これがハーミット・パープルが持つ能力の一つ、『探知』だった。 ハーミット・パープルが持ってきた本は、かなり古ぼけており、エルフの伝承について書かれている本だった。 おとぎ話のような書き方がされており、資料的価値は非常に薄いように思えたが、目次のある部分に驚くべき記述があった。 『精霊魔法』の項目を見ていくと『呪い』という中項目があり、更にその中に『生ける屍』と書かれていたのだ。 そのページを開くと、古い文字でびっしりと毒薬について書かれていた。 古い始祖ブリミルの伝承本で使われる文字と同一だったので、ルイズはかろうじて読むことができたが、難しい文字のため、ついつい小声で音読してしまった。 「エルフ…用いる魔法薬は、水の秘薬が頭脳に停滞し、精神を混乱状態で安定させる……」 難しい文字を読むため、いつになく本に集中していたルイズは、背後を通りかかった人物の気配に気づかない。 「この毒は、意識を朦朧とさせるだけでなく、認識をすり替える…人形を我が子だと思いこむ母、オークを美しい女性だと思いこむあわれな男…など、後世では呪いなどとも呼ばれる……」 「見せて」 「うきゃっ!?」 ルイズは背後から聞こえてきた声に驚き、おもわず叫び声を上げてしまった。 振り向くと、そこにはタバサがいた。 タバサはルイズが読んでいた本をのぞき込み、指でなぞりつつ内容を確かめていく。 ルイズは椅子に座ったままだ。 鬼気迫る雰囲気でページをめくるタバサに声をかけようと思ったが、怖くて無理っぽい。 本を机に置き直して、タバサが呟く。 「…始祖ブリミルの直径第一子時代のエルフに関する本、ブリミル降臨以前の精霊同士の関連図がある本」 「え?」 「なんでもない」 ルイズは思う。 もしかして、タバサは母親を助ける手段を思いついたのではないか? それか、具体的な手がかりを見つけようとしているのではないか? 「本は返す」 そう言って立ち去ろうとするタバサを、ルイズが呼び止めた。 「待って、古代ルーン文字に関する本と…始祖ブリミルの降臨以前の、ええと…そうそう、精霊の本よね、ちょっと待って」 ルイズが右手を上げて、小声で呟く。 「……ハーミット・パープル、言ったとおりの本よ、探してきなさい!」 右手から伸びた茨が図書館中をはい回り、本を一冊一冊確かめていく。 その間、ルイズの頭にはものすごい情報が流れ込んできた。 図書館にある本のタイトルや主旨が頭の中に流れ込んでくるのだ。 ルイズの意識が、精神力の尽きたメイジが無理矢理魔法を行使するかのように朦朧としてきた頃、ハーミット・パープルがいくつかの本をルイズの元へと届けた。 「…これが、多分、あなたの読みたがっ…て…る…本……」 バタン、と音を立てて、ルイズは机に突っ伏してしまった。 ルイズを心配したタバサが、ルイズの顔をのぞき込むと、ルイズはよだれを垂らして寝ていた。 ルイズの持ってきた本は、まさしくタバサの探し求めたものであり、そこには母に使われた毒と、その解毒方法を解読するには十分だった。 「一個借り」 タバサは、もう一人の友人にしたように、その不器用な言葉で感謝を表した。 なお、その翌日、ルイズは二日の謹慎を食らい、自室で自習に励んでいた。 『フェニアのライブラリー』には教師しか閲覧を許されない書棚がある。 ハーミット・パープルは、そこから本を持ち出してしまったのだ。 「もう、閲覧禁止の棚から持ってくるなんて、もうちょっと気を利かせてよね!」 自分の腕から生える茨に文句を言う。 しかし、その表情はどこか嬉しそうだった。 ハーミット・パープルは実体化、半実体化ができる。 これを利用すれば『アンロック』を使わずに鍵を開けることができ、しかも、壁を突き抜けてその向こう側を探すという驚くべきことまでやってのけるのだ。 自分の腕から生えた使い魔が、驚くべき能力を持っているとわかり、ルイズはかつてない程に満足していた。 もう一つは、タバサの母を治療する糸口が見つかったという事。 ルイズにとって、苦しんでいる身内が救われるのは、我が事のように嬉しいのだ。 左腕からハーミット・パープルを出現させると、ルイズはそのうち一本を右手に持って、話しかける。 「ね、これからもよろしくね、ハーミット・パープル」 すると、ハーミット・パープルがルイズの机からペンを取り、紙に文字を書いていった。 「何?何を書いたの?」 『ハッピー うれぴー よろぴくねー!』 意外とファンキーな奴じゃない。 と、ルイズは思った。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/339.html
気がつくと、ここに立っていた。 自分の周りを覆う煙が晴れ、視界が広がる。 抜けるような青空の下、草原の中。 周りを見渡すと、奇妙な一団が自分を見ている。 「アンタ誰?」 声がして気がつく。 小さくて気付かなかったが、ピンク色の髪をした少女が目の前に居た。 「ここはどこだ?」 「ルイズ、平民なんか召喚してどうするんだ?」 「ゼロのルイズは失敗の仕方も一味違うねぇ!」 周囲の笑いと反対に、目の前の少女は声を荒げる。 「ち、ちょっと間違っただけよ!」 しかし、笑いは収まらないばかりか、いっそう大きくなる。 「おい、ここはどこなんだ?」 再び、少女に問いかける。 「うう、うるさいわねぇ平民の分際で! 質問に質問で返すなって言葉を知らないわけ!?」 「質問?」 「そうよ! 一体アンタ誰なのよ!!」 笑われて腹を立てているのか、少女はヒステリックにがなりたてる。 「オレか? 俺の名前は……」 ん? 「……オレは誰だ?」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/744.html
ルイズが起こした爆煙が晴れると……そこには一本の剣が突き立っていた 「見ろよ! 『ゼロ』のルイズは剣を喚び出したぞ!」 「凄いな……負の意味で」 「いや、インテリジェンスソードの可能性も…」 周囲からの嘲笑を右から左へ聞き流し、剣を手にとってみる ルイズの頭の中に、誰かが語りかけてくる ──わたしの名はアヌビス…おまえはわたしの本体になるのだ…… (あんた…インテリジェンスソード……?) ──おまえは達人になった…誰よりも強い剣の達人だ…… ──私を使って殺すのだ…… ピシィィィン 「チクショオオオオ! くらえギーシュ! 必殺エクスプロージョン・スラッシュ!」 「さあ来いヴァリエール! 僕は実はモンモランシー一筋だぞオオ!」 ザン! 「グアアアア! こ、このトリステインの種馬と呼ばれるギーシュ・ド・グラモンが…『ゼロ』のルイズに… バ…バカなアアアアアア」 「ギーシュがやられた…」 「フフ…所詮ギーシュはドットクラス… 『ゼロ』のルイズに負けるとはメイジの面汚しね…」 「くらええええ!」 ズサ 「グアアアアアアア」 「やった…ツェルプストーとついでにタバサを倒したわ… そしてこの間学院に侵入した泥棒・『土くれ』のフーケを倒せば、もうあたしをバカにする奴はいなくなる!」 「よく来たわねミス・ヴァリエール…待っていたわ…」 「オスマン学院長の秘書のミス・ロングビルが『土くれ』のフーケだったの…! それにこの魔力は…トライアングルクラス…!」 「ミス・ヴァリエール…戦う前に一つ言っておくわ。私が盗んだ『破壊の杖』だけど、私には使い方が分からなかったの」 「な、何ですって!?」 「だから学院の宝物庫に戻しておいたわ。あとは私を倒すだけね、フフ…」 ゴゴゴゴ… 「上等よ…あたしも一つ言っておくことがあるわ あたしの魔法が失敗して爆発ばかりなのは『虚無』の属性に関係があるような気がしていたけど、別にそんなことはなかったわ!」 「あらそう」 「ウオオオいくぞオオオ!」 「来なさい小娘!」 ルイズの魔法が世界を救うと信じて…! ご愛読ありがとうございました!
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/478.html
「私の生み出した『バオー』よ、もう間に合わん…爆発はここまで来る… フフフフ…わしとお前が死ねば…ドレスの研究も終わりだ…」 鍾乳石が突き刺さった老人が、血を吐きながら言葉を発する。 5 4 3 その後ろでカウントダウンの声が響いている。 「この神秘的な洞窟こそわしらの墓場に相応しかろう!」 2 さらばバオー! さらば少年よ! 1 0(ゼロ)!! 辺りが光に包まれ、それと同時に洞窟が崩れていき、凄まじい勢いで水が打ち寄せてくるのを感じる。 意識が遠くなっていく、おそらくこのまま自分は死ぬのだろう。 スミレは無事逃げ出してくれたのだろうか? そう考えた次の瞬間、彼の意識は閉ざされた。 そして次に彼が目を開けた時、ピンク色の髪をした少女に唇を奪われていた。 な、なにをするだァーッ! 混乱のあまりそう叫びそうになるが、突如焼け付くような痛みを感じ、彼はうずくまった。 「くっ、これは!?い、いけない!」 痛みそのものではなく、それがもたらす『変化』を恐れ、思わずそう叫ぶ。 「だ、大丈夫よ、『使い魔のルーン』が刻まれているだけだから」 いきなり彼が目を覚ました事に驚いたのか、彼のただならぬ雰囲気を察したのか、 先程の少女が恐る恐る彼に話しかける。そしてその言葉通り、程なく痛みは治まった。 何とか平静さを取り戻した彼がまず最初に考えたのは、自分はドレス、またはそれと同じような組織によって 助けられた、いや、モルモットとして捕らえられたのではないか?という事であった。 辺りを見回してみると、奇妙な生物が何匹かいる、漫画やゲームのモンスターそっくりな生き物達。尋常ではない。 だが、次の瞬間疑問も沸き起こる。周りにいる人間の服装の奇抜さにである。 もし彼らが研究員なら、白衣を身に着けているだろうし、自分を警戒しての戦闘員にも見えない。 そもそも自分が何であるかを知っていれば、開け放たれた外で目覚めさせる事などしないだろう。 (それにしても…) どうにも周りの人間は、自分を、いや自分の横にいる少女を嘲笑っているような感じである。 「これがッ!これがッ!これがゼロのルイズだッ!」 「な、何てことだ!一日一日、ゼロのルイズは確実に進化しているんだ!」 マイナス…ルイズはあと数日でマイナスになるぞ!お、おそろしい!」 等という言葉も聞こえ、ますます状況がわからなくなる。 彼女は機嫌が悪かった。 ご機嫌斜めだった。 それもそうである、初めて魔法に、しかも一生を左右するサモン・サーヴァントに成功したと思ったら、 平民が召喚されてしまったのである。 しかもその平民に、貴族である自分のファーストキスを捧げてしまったという現実! あと、いきなり起き上がったその平民に、そう平民にちょっとビビってしまったという事も。 メルヘンだッ! ファンタジーだッ! こんな体験できる奴は他にいねーッ! 等とポジティブに考える事など出来よう筈もない。 教官のミスタ・コルベールがルーンを見て珍しいなどと言うものだから、ちょっと期待したが、 あとは特に何を言うという事もなかった。 「はぁ…なんで私が平民なんかを…」 飛行魔法で校舎に戻っていく教官と級友を見送りながら、ルイズはため息をついた。 「君、これはいったい!?あの人たちは!?」 何かを叫んでいる自分の使い魔…認めなければならないだろう、『自分の使い魔』にむかって口を開く。 「あんた、名前は?」 「え?」 「だから名前はなんて言うのよ!?」 貴族の質問にさっさと答えないとは、どうやら頭の回転も悪いらしい…と、益々憂鬱になる。 「育郎…橋沢育郎…」 困った顔でそう自分の名を告げる平民を見て、彼女は「変な名前」と思いながら、再びため息をつくのであった。 しかし彼女はまだ気付いていない、『彼ら』が最強の生命力を持った使い魔であることを! 「なんだかものすごく嫌な予感がするわ…」 一方そのころ、超能力ではなく女の勘で、橋沢育郎が助けた少女スミレは、人知れず不機嫌になっていた。 To be continued…… 戻る
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/353.html
ゼロの使い魔への道-1 『ギーシュ危機一髪 その1』 『ギーシュ危機一髪 その2』 『ギーシュ危機一髪 その3』 『キュルケ怒りの鉄拳 その1』 『キュルケ怒りの鉄拳 その2』 『キュルケ怒りの鉄拳 その3』 『燃えよドラゴンズ・ドリーム その1』 『燃えよドラゴンズ・ドリーム その2』
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/381.html
++第三話 ゼロのルイズ①++ 花京院典明が目覚めて、初めて目にしたものは昨晩ルイズが投げてよこした下着だった。 横に転がっているそれから視線を外し、起き上がる。 隣にあるベッドではルイズが寝気を立てている。子供らしい、あどけない寝顔だ。 「やっぱり夢じゃないのか」 心のどこかで期待していたことに裏切られる。やはり現実だった。 学生服の乱れを直し、花京院はルイズを起こしにかかった。 肩を叩いてみるが、起きない。 今度は枕を取ってみるが、起きない。 毛布をはいだところで、ようやくルイズが目覚めた。 「な、なに! なにごと!」 「朝だ。ルイズ」 「はえ? そ、そう……って誰よあんた!」 ルイズは寝ぼけた声で怒鳴った。顔がふにゃふにゃで、まだ眠そうだ。 「花京院典明。君の使い魔だ」 「使い魔? ああ、使い魔ね。昨日召喚したんだっけ」 ルイズは起き上がると、あくびをした。それから花京院に命じる。 「服」 椅子にかかった制服をルイズの側に置いた。 だるそうに寝巻きを脱ぎ始めるルイズに背中を向ける。 「下着」 「自分で取らないのかい?」 「なんで取る必要があるのよー」 寝起きのせいか間延びした声で反論する。 ここでもめるのも面倒なので、素直に従うことにした。 「そこのー、クローゼットのー、一番下の引き出しに入ってる」 下着を適当に取り出し、後ろに放り投げた。 ごそごそとルイズが着替える音がした後、 「服着せて」 「それも僕が?」 「あたりまえでしょ」 花京院はややうつむき加減で振り向く。 彼も一応思春期の少年である。多少なりともそういう情はある。 さすがに直視するのには抵抗があったのだが……ルイズの身体を見て、すぐに元の表情に戻った。 ルイズの身体はまだまだ未発達だった。いくら下着姿だといっても、女らしい膨らみが全然ないので、焦ることも意識することもない。 着替えを手伝っているうちに、少女の着替えを手伝っているのか、少年の着替えを手伝っているのかさえ曖昧になってきた。 最後にマントの紐を締め、着替えは終了した。 ルイズと部屋を出ると、丁度隣の部屋のドアも開いた。 似たような木のドアが開き、現れたのは燃えるような赤い髪の少女だった。 ルイズより背が高く、花京院より若干低めの身長で、むせるような色気を放っている。 ブラウスのボタンを上から二つ外し、胸元を覗かせている。褐色の肌はいかにも健康そうだった。 身長、肌の色、雰囲気、胸の大きさ……、全てがルイズと対照的だった。 彼女はルイズを見ると、にやっと笑った。 「おはよう。ルイズ」 ルイズは顔をしかめ、嫌そうに挨拶を返した。 「おはよう。キュルケ」 「あなたの使い魔って、それ?」 ルイズがうつむいて黙り込むと、キュルケはそれを肯定と受け取ったようだ。 「あっはっは! 『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出すなんてあなたらしいわ。さすがはゼロのルイズ」 ……ゼロ? 花京院がルイズに目をやると、ルイズの白い頬は朱に染まっていた。 「うるさいわね」 「あたしも昨日召喚したのよ。誰かさんと違って一発で成功だったけど」 「あっそ」 「どうせ召喚するならこういうのがいいわよねぇ~。フレイムー」 キュルケがそう声で呼びかけると、キュルケの部屋からのそのそと赤い何かが這い出てきた。 それは巨大なトカゲだった。全身真っ赤で、尻尾の先には小さな炎が灯っている。 むんとした熱気に、花京院は顔の前で手を振った。 「それは……?」 「もしかして、あなた、火トカゲを見るのは初めて?」 「ああ、初めてだ。しかし、鎖につながなくて大丈夫なのかい?」 「平気よ。あたしから命令しない限り襲ったりしないわ」 キュルケは顎に手をそえ、色っぽく首を傾げる。 悔しそうにトカゲを見ていたルイズは聞いた。 「これってサラマンダー?」 ルイズの顔を見て、キュルケは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。 「そうよー。火トカゲよー。しかも見てよこの尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダー。 とても値段なんかつかないわよ」 「そりゃよかったわね」 「素敵でしょ。あたしの属性にぴったり」 誇らしげに胸を張るキュルケに対抗してルイズも胸を張るが、全く勝負にならない。 ルイズをからかうのに満足したようで、キュルケは花京院に目を向けた。 「あなた、お名前は?」 「花京院典明」 「カキョウイン? 変な名前ね。ふーん」 キュルケは品定めするように花京院を見つめる。 「まあいいわ。じゃあ、お先に失礼」 赤い髪をかきあげ、さっそうとキュルケは歩き去っていった。 キュルケがいなくなると、ルイズは小さな肩を震わせた。 短い付き合いでも花京院はルイズの状態がわかった。 怒っているのだ。 「くやしー! なによあの女! 自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって! ああもう! それなのに私はあんただし!」 「気にしなければいいじゃないか」 「そういう問題じゃないの! メイジの実力を見るには使い魔を見ろって言われてるぐらいなのよ! それなのに……ああもう!」 大げさにうなだれるルイズ。 それを呆れながら眺めて、ふと思い出した。 「ところで、『ゼロ』って君のあだなかい?」 ぴくん、とルイズの肩が上がった。 怒りと不安がないまぜになったような表情を浮かべている。 「な、なんであんたがそれを?」 「さっき彼女が言ってたじゃないか」 「ああ、そうだったわね。ゼロはただのあだなよ」 「でも、どうして?」 「あんたが知らなくてもいいことよ」 急に突き放すような口調でルイズは言った。 頭は悪くは無さそうだったので、身長とか胸のことだろうな、と見当をつけた。 怒らせる必要もないので、その話題はそこで終わらせることにする。 「それより、今からどこへ行くんだ?」 「朝食を食べに行くのよ」 マントをなびかせながらルイズは歩き始めた。 To be continued→
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/81.html
起き上がった男から名前を聞き出そうとルイズがため息混じり男に問う 「はぁ・・・何で平民なんか・・・あんた名前は?」 「・・・・・ザ・グレイトフル・デッドッ!!」 「ザ・グレイトフル・デッド?・・・変な名前」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ だが、プロシュートがその名を叫んだ瞬間周辺の空気が変わる。 しかし、今の時点でその微妙な違いに気付くものはいない。 「ふぅ~ん、これがゼロの使い魔か」 「平民の割りに妙な格好してるな」 と、プロシュートを近くに見に生徒が数人こっちにやってきた。 「ちょっと俺にもよく見せてくれよォ~~~」 「あ?こんな近くで見えないってお前何時から近眼になったんだ?」 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ 「だからさぁぁぁぁよく見えないんだよぉぉぉぉ目がかすんでよく見えないんだよぉぉぉぉぉぉ」 「ひ、ひぃぃぃ、一体どうなって・・・・」 「俺の髪がぁぁぁぁぁぁどんどん抜けていくよぉぉぉぉぉぉ」 「こ・・・これは皆・・・・『と・・・年をとっている!!』」 この場で唯一老化していないルイズがコルベールの方へ振り向く。 しかし、その瞳に映ったものは枯れ木のように朽ち果てていく教師の姿ッ! (まさか・・・まさかこれはあの男がやってる事なの!?) まだ比較的老化が進んでいない生徒達が半狂乱になりながら召喚したばかりの使い魔に命ずるッ! 「あ・・・あの平民を攻撃しろぉぉぉぉサラマンダーーーーー!!」 だが、その召喚したての使い魔は動かない。 いや、動きたくても動けない。 何故ならサラマンダーもスデに老化しきって死に掛けの状態だったからだッ! 彼らがグレイトフル・デッドの高い熱を持つ生物程老化が早いという 性質を知っていればサラマンダーをけしかける事も無かっただろうが彼らにはそれを知る由もない。 そして、サラマンダーという高熱を持つ生き物を呼び寄せた事によりその周辺の老化速度が一層早くなるッ! 「おおごおおおおおおおっ」 その阿鼻叫喚とも言える状況をプロシュートは『養豚場の豚』を見るかのような冷静な目で見ている。 だが、すぐさまその状況における異変を見つける。 (何だ・・・?あの女、何故オレのグレイトフル・デッドの能力下にありながら老化しやがらねぇ!?) 男女の違いで体温の上昇差を区別し老化の速度に違いが出るグレイトフル・デッドとはいえ全く老化がないというのはプロシュートにとってはありえない事だった。 (氷を持ってるわけでもねぇ・・・・それに、この快晴で氷一つ持ってたとこで老化が止まるはずがねぇ!) ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ 明確な殺意を持ちプロシュートがルイズに近付いていった。 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/876.html
「ふんふんふーん♪」 食堂で食後の紅茶を楽しむ少女、ゼロのルイズはご機嫌だった。 今日のデザートは彼女の好きなクックベリーパイなのだ! なにやら食堂の一角が騒がしくなっている気もするが、彼女にとって今は誰にも 邪魔されたくない至高の時間なのである。 使い魔がそっちの方に行ったような気もしたが、当然無視した。 「まったく、あの馬鹿ったら…」 食堂で食後の紅茶を楽しむ少女、香水のモンモランシーは先日の事を思い出して 不機嫌になっていた。 「ギーシュ、ポケットから壜が落ちたぞ」 「おお!その香水はモンモランシーのものじゃないか!」 「つまりギーシュ、お前はモンモランシーと付き合っている。そうだな?」 「ち、違う!彼女の名誉の為に…ケ、ケティこれはその… ヒィ!も、モンモランシー!?違う、違うんだ!」 「ヘイ!ケティ、マスク狩りの時間だ!」 「OKモンモランシー!」 「クロス!」「ボンバー!」 「ウギャー!キン○マ―ン!」 「すまないギーシュ!僕が壜を拾わなければ…」 「いいんだ…それより、誰か僕の顔を見て笑っていやしないか?」 「誰にも…誰にも笑わせはしない…」 「ありがとう…マルコメミソ」 「マリコルヌ!風上のマリコルヌだよ!?」 つまりは、付き合ってる男に二股かけられたのである。 気位の高い彼女には、とてもとても許容しがたい出来事であった。 気位が高くなくても許容できない話だと思うが。 それでも謝られると許したくなってくるのが、余計に腹が立ってくるというかなんというか。 「どうぞ」 そんなことを考えていると、メイドがデザートを机に持ってくる。 当然貴族である彼女が『ありがとう』等と、平民に一々礼を言うわけも無く、 配った彼女を見ようともしないでクックベリーパイを口に運ぶ。 「…ちょっと、そこの貴方」 「え、私ですか?」 ケーキを配ったメイドが、貴族に呼び止められた事に当惑して立ち止まる。 「これ…どういう事?」 シエスタはこれ以上ないというぐらい脅えていた。 目の前の貴族、学生といえど魔法を操り、平民である自分にとって絶対的な存在が 自分に怒りをぶつけているのである。 「申し訳ございません!どうか、どうかお許しください!」 体の震えが止まらない。 「お許しください、ですって? 貴族である私の口に、平民である貴方の髪の毛を入れておいてお許しください?」 「お願いします、どうかお許しを!」 涙が溢れてくる。 平民の自分が貴族に粗相をして唯ですむはずが無い。 周りを見ても、他のメイドは見てみぬフリをし、貴族は何事かと一度は見るものの、 平民が貴族から罰を受けているとわかれば、あとは特に関心をしめさない。 助けなど望むべくも無いのだ。 シエスタにとって不幸だったのは、モンモランシーの機嫌が悪かった事だ。 そうでなければ怒りこそすれ、基本的に野蛮な事を嫌う彼女が『お仕置き』を する事もなかっただろう。 「覚悟はいいかしら?」 魔法の杖を取り出し、残酷に告げる。 「どうか…」 脅えるメイドに、嗜虐心をそそられたモンモランシーが杖を振ると、 メイドの頭上から水が降り注いだ。 「あら、似合ってるじゃない?」 ずぶ濡れになった姿を見て、にっこりと微笑むモンモランシーの姿に、 シエスタは更なる恐怖を覚える。この程度で済むはずが無いのだ。 「あぁ……ぁ……」 「さあ、次は…」 魔法を繰り出そうと杖を振り上げた瞬間、誰かがその腕を掴んだ。 「やめないか!」 育郎が食堂での騒ぎに気付き、駆け寄って見た物は、杖を振り上げる女生徒の前で、 先日世話になったシエスタがずぶ濡れになって震える姿だった。 「な、何よ貴方!?平民が気安く貴族にさわらないでよ!」 女性が抗議の声をあげるが、無視して育郎が尋ねる。 「君は何をやっているんだ!?」 「ハァ?この子の持ってきたデザートにね、髪の毛が入ってたのよ。 粗相をしたメイドにお仕置きして何が悪いのよ?」 「な!?そんな事で…」 「さっさと離しなさいよ!」 モンモランシーが、呆然とする育郎の腕を振り払おうとするが、 掴まれた腕はまったく動かない。 「彼女に謝るんだ」 静かに、だが強い意志を持って育郎の口から出た言葉を、モンモランシーは 鼻で笑って拒否する。 「謝る?何で貴族の私が平民に謝らなきゃいけないの? それに悪いのはこの子の方じゃない」 「君が怒るのもわからないわけじゃない…でもこれはやりすぎだ!」 「な、なによ…」 なんだなんだと、周りの生徒が2人のやり取りに気付く。 「おい、平民が何やってるんだ!」 「あれは…ゼロのルイズの使い魔じゃないか?」 「主人が主人なら使い魔も使い魔だな…」 周りの生徒が騒ぎ出した事により、少し弱気になったモンモランシーが勢いを取り戻す。 「さあ、早く手をはなしなさい!」 しかし育郎は手をはなそうとはせず、モンモランシーを見据える。 「彼女に謝るんだ…」 な…なんなのこいつ!? 生徒達に囲まれても、まったく物怖じせずに自分を見る育郎に、モンモランシーは 恐怖とまではいかないが、言いようのない不安を感じていた。その時、 「君!今すぐその汚い手を、僕の愛するモンモランシーからはなすんだ! さもなくば、このギーシュ・ド・グラモンが相手になってやろう!」 ギーシュは先日の事を謝る為に、愛するモンモランシーを探していた。 ポケットには今月の小遣いの大半をはたいて買った指輪が入っている。 「これを精一杯の愛の言葉と共に渡せば、彼女もきっと許してくれるに違いないさ」 彼は女の子が好きで、特にかわいい女の子が好きで、さらに女好きの家系という 環境で育ち、あとちょっと頭が弱かったりするため、つい二股なんてしてしまったが、 それでもなんのかんの言って、モンモランシーが一番好きなのである。 「モンモランシーならまだ食堂にいたわよ」 彼女の友人の言葉に従って食堂に行って見れば、なんとモンモランシーが平民、 ゼロのルイズが呼び出した使い魔に凄まれているではないか! 当然の如く、彼は愛するモンモランシーを助ける、というよりは相手が平民なので、 どちらかというと彼女にいい格好を見せる為に、前に出たのであった。 「ああ、ギーシュ!」 そんな思惑も見事に的中したようで、不安になっていた彼女が元気を取り戻す。 「聞こえなかったのか?手をはなすんだ…」 彼なりの凄みを効かせて育郎に薔薇の形をした杖を向ける。 「ほ、ほら早くはなしなさいよ。痛いじゃないのよ!」 「あ、すまない」 やっと手をはなした育郎を見て、モンモランシーは先程の不安を思い出し、怒りに震えた。 この平民にどんな罰を与えてやろうか? 平民が貴族に向かって生意気な目を向けてきたのだ… そうだ!ギーシュのゴーレムを使って痛めつけてやろう! 「まったく、貴方にも躾が必要なようね、ギーシュ!」 「ああ、任せてくれたまえ、モンモランシー…」 「とにかく、シエスタさんに謝るんだ」 「そう、このメイドにあやまって」 「ふっ、何がなんだかよくわかんないけど…すまないね、君」 「は、はぁ…」 「………って違うわよ!ギーシュ、貴方も何言うとおりにしてるの!?」 「え、でも君が謝れって?」 「貴族の僕たちが、何故平民なんかに頭を下げなきゃいけないんだ?」 事の経緯を聞いたギーシュがやれやれと首を振る。 「そうよ!大体平民の貴方が私に気安く触れるなんて…」 「そうだ、僕の愛しいモンモランシーになんてことをするんだ? だいたい、そのメイドが悪いんだろう?」 「…だからと言って、ここまでする事は無いだろう」 育郎が呆然とするシエスタを快方する。 うーん、なんだか変なことになってきたぞ? ギーシュの予定では、今頃は格好よく現れた自分がこの平民を叩きのめし、 モンモランシーからお礼のキスでも貰っているはずなのである。 それがこの平民と来たら訳のわからない事を言って、予定とは違う方向に 話が向かっている。 そういえば何で僕がメイドに頭を下げてるんだ?思い出したら腹が立ってきた。 モンモランシーも機嫌が悪くなってるし…よし、ここで一つ良いとこを見せよう! 「モンモランシー…彼の言うとおり謝ってあげてもいいんじゃないか?」 「な、何を言ってるのよギーシュ!」 先日の一撃で頭のどこかが壊れてしまったのかと、驚きながらギーシュを見る。 「ただし、僕に勝ったらだ………『決闘』だよ!!」 オオーッ!と周りから歓声が上がる。 「『決闘』?」 「そうだよ、正々堂々戦い、負けたほうが勝った方のいう事を聞く。どうだい?」 「そんな!?」 おどろく育郎を、脅えているととったギーシュは、調子に乗ってさらに続けた 「貴族から『決闘』を申し込まれたんだ、まさか断るは言わないよな? いや、所詮『ゼロのルイズ』の使い魔…主人同様出来損ないなら、 臆病風に吹かれてもしかたあるまい…」 その言葉に周りの生徒達から笑いが起こる。 「…わかった、受けよう」 「そんな!?育郎さん駄目です!」 育郎が女生徒を止めた時、シエスタの目には彼がおとぎ話の勇者の如く映った。 物語のなかから出てきた英雄が自分を救いにきてくれたのかと。 しかし、時が立つにつれ怖くなってきた。育郎はただの平民なのだ、 それが貴族と『決闘』だなんて…自分のせいで育郎が殺されてしまうかも知れない、 そう思うと先程より強い恐怖が襲ってくる。 「イクローさん、相手はメイジなんですよ!?殺されちゃいます!」 「殺される…だって!?」 驚いた育郎の顔を見ると胸の中が罪悪感でいっぱいになる。 もっとも、育郎が驚いたのは、生命の危険を感じたからではないのだが。 「僕はヴェストリの広場で待っている…逃げるなよ?」 ギーシュがそう言ってモンモランシーと一緒に去っていく。 「私が…私が悪いんです…だからイクローさんがこんな事を…」 ついには泣き出してしまうシエスタ。 「いいんだ…大丈夫だから」 「何が大丈夫なのよ!」 いつの間にか現れたルイズが育郎を怒鳴りつける。 「あんたどういうつもりなのよ、貴族と『決闘』だなんて!? ちょっと馬鹿力だからって調子に乗らないでよ…ほら、一緒に謝ってあげるから」 「それは出来ない…」 「なんでよ!?いい、メイジに平民は絶対に勝てないの! 心配しなくても、誰もあんたを臆病者なんて言わないわよ…」 「…違う」 「な、何が違うのよ…」 育郎にとって臆病者と呼ばれることなど、どうという事は無かった。 シエスタの事もあったが、逃げればルイズも馬鹿にされてしまう、 それが彼に『決闘』を受ける決心をさせたのだ。 「シエスタさん、彼の言っていた広場はどこですか?」 「駄目!?駄目です!」 涙を流しながら必死で止めようとするシエスタをなだめながら、 育郎は近くにいた生徒に広場の場所を聞く。 「何やってるのよ!?やめなさいって言ってるでしょ、ご主人様の命令なのよ!?」 「…それはできない」 「………もう知らない!ギーシュの馬鹿にボコボコにされればいいのよ!!」 走り去るルイズの後姿を見送り、シエスタを他のメイドに任せてから、 育郎は広場に向かった。 果たして、僕はあの力を使わずにすむのか? そう考えながら… 「何か俺忘れられてねーか?いらない子認定されてね!?」 そのころデルフリンガーは言いようの無い不安を感じ、思考がネガティブになっていた。