約 439,944 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1576.html
なんとか決闘のやり直しにこぎつけたモット伯だが、その心は重く沈んでいた。 まず勝っても負けても、あのおっぱいメイドを手放さなければならないのだ。 ミス・ロングビルが立会人としている以上、この男を殺しても、約束を無かった事に することは出来ない。 さらにはもし、この平民に負けでもしたら… その話が広がれば、貴族としての名誉が地に堕ちるどころの話ではないだろう。 にしてもこいつ…危ない秘薬でも使っているのか? 先程のこの平民の速さは尋常ではなかった。 さらにここは食堂だが、決闘を行うという事で、机や椅子を片付けるよう命じた おかげで、障害物になるような物はほとんどない。本来ならこちらが有利に なりそうな状況なのだが、下手に魔法を避けられでもしたら、次の瞬間自分の杖が、 先程と同じように弾き飛ばされかねない。 癪に障るが、本気になる必要があるようだな! この私の名誉と!そしてめぐるめくおっぱい性活の為にッ! 理由はどうあれ、トライアングルメイジ、波濤のモットはその力の全てを使い、 眼前の敵を倒す事を誓ったのだッ! 「相棒、狒々親爺がいっぱしのいくさ人の顔になりやがったぜ…」 デルフの言葉通り、モット伯の雰囲気が変わった事に育郎は気付く。 「わかった、気をつける…」 油断していないのなら、先程のように奇襲は通用しないだろう。 「それでは二人とも、用意はいいですね?」 部屋の端と端に立った育郎とモット伯が互いに頷き、杖と剣をそれぞれ引き抜く。 それにあわせてミス・ロングビルは巻き込まれないよう、部屋の隅に向かう。 「始めてください!」 その声と供に、育郎がモット伯に向かって走る。 先程とは違い距離があり、相手も警戒しているので奇襲とは行かないだろうが、 もとより離れた相手への攻撃方法があるわけではない。相手の攻撃魔法を避け、 次の魔法を行う前に杖を叩き落す、育郎はまさしく先程モット伯が警戒した 通りの戦法を取ろうとした。しかし 「なんだって!?」 突如モット伯の手前に水の壁が現れ、育郎が思わず立ち止まる。 よし、立ち止まってくれた… モット伯が心の中で安堵の声をあげる。 実はこの水の壁はあまり厚くない。火の系統の魔法なら大抵のものは防げるだけの 魔力は込めてあるが、物理攻撃には対してはそれほど強い防御効果は無いのだ。 大人一人の突進で十分に突き破れるだろう。だがこの平民、見たところそれほど 戦いになれているようには見えない、この事に気付かない可能性は十分あると モット伯は考えたのだ。 「『波濤』のモットの真髄、とくと見るがよい!」 叫びと供にモット伯が杖を振ると、水の壁が崩れ、生き物の如く蠢く蛇にも似た 水流を作り出し、己の傍らに控えさせる。 「ゆけ!」 モット伯の命に応じ、水が一直線に育郎に向かって飛んでゆく。 「相棒!俺でぶったぎっちまえ!!」 どこか嬉しそうなデルフの声に従い剣を振る、しかし 剣が振り下ろされる前に、水流は2つに別れ、そのまま育郎の背後でもう一度一つに つながり、水流は育郎を中心とした円を描いた。 「チェックメイトだ!」 その声を合図に、円となった水流が、育郎を捕らえるべく急激に縮まった。 「何だと!?」 今度はモット伯が驚愕の声をあげ、天上を見やる。 水流が育郎を捕らえるかと思われたその瞬間、育郎は飛び上がり、そのまま天上に 備え付けられたシャンデリアに捕まったのだ。 「危なかった…」 「安心するのはまだ早いみたいだぜ、相棒!」 シャンデリアにぶら下がった育郎に向けて、再び水流が襲い掛かる、しかし紙一重で それをかわし、床に降り立った。 「まいったな…」 「ああ、あのおっさん、おもったより…やる!」 デルフの声を聞きながらも襲い掛かる水流を避ける。そのままモット伯に接近 しようとするが、そうはさせじと、避けた水流がすぐに後ろから襲い掛かろうと するため、なかなか攻勢に移れない。しかもモット伯は先程から水流を操る魔法しか 使っていないため、魔力を温存したまま戦っているのだ。 「持久戦もきつそうだな、段々良い攻めなってやがる…」 しゃがんで背後からの水流を避けた育郎に、デルフリンガーが声をかける。 「ああ、それにさっきみたいに動きを『変化』されるかもしれない」 立つ間もなく襲い掛かる水流を転がって避け、その勢いを利用して起き上がる。 にしても野郎…俺様に斬られない様に水を操ってやがる… 口に出して言ったのはやっぱまずかったかなー? さすがにデルフの能力に気付いているわけではないが、デルフの声に何かあると 感じたモット伯は、攻撃する時は、なるべく剣から離れた場所を狙っている。 故に一見モット伯が優勢に見える状態になっていた、だが 思ったよりしぶとい! だが焦るわけにはいかん! 『急いては胸を揉み損じる』! オールド・オスマンもそう言っていたではないか! モット伯は自分がそれほど有利だとは考えていなかった。 そもそも相手は自分の剣と会話をするほど余裕があるのだ。勝利を焦り、攻撃を 雑にするわけにはいかない。確実な勝利の為に、もう少し時間を稼ぐ必要がある。 そう考えながら水流を操っていると、後ろからの水流を避けた育郎が、方向を 変じようとする水流に向かって跳びかかる。剣で斬られると警戒したモット伯は、 水流に方向変換を命じる。 「しまった!」 しかし、そのまま育郎は水流自体にぶち当たりにいった! 自分に向かって水流が襲い掛かるのでないなら、そのまま突っ切る事が出来る。 その考えは正しく、水は育郎の体当たりによって半分ほどはじけぶ。 「もらった!」 勢いを殺さず、そのままモット伯に迫る。しかしその時、窮地に立たされた筈の モット伯が、顔に僅かな笑みが浮かべて杖を振る。 「いや、礼を言わせて貰おう。時間を稼ぐ必要もなくなったよ!」 「相棒、下だ!」 「何だって!?」 足元から突如現れた氷の槍が、顔面に向けて飛んでくるのを何とか避ける。 「ありがとうデルフ」 「いいって事よ。にしてもどういう事だ?今のはウィンディアイシクル! あれだけ離れた場所に氷の槍を作り出すなんざ、トライアングルにゃ…」 デルフの疑問にモット伯が勝利を確信した声で答える。 「足元を良く見ることだ」 「うう、こ…これは…ッ!」 見れば何時の間にか、水がそこかしこに散らばっているでは無いか。どれも普通なら すぐに絨毯に染み込んでしまいそうな程の量でしかないと言うのに。 「気付かなかったのか?私の操る水が少しずつ小さくなっていた事を… そうだ、攻撃しながらばら撒いておいたのだよ、私の魔力が込められた水を! そしてッ! お前の突撃によりさらに水がちらばった事で、私の勝利が決定した…」 目の前に光景に、育郎の顔が青くなる。 モット伯が杖を振ると、ちらばった無数の水滴が一斉に氷の槍へと姿を変えたのだ。 「さて、お前がすばやいと言っても、これだけの攻撃をはたして避けられるかな?」 どうする!? これだけの数、全てを避ける事はできない!デルフで切り払うのも無理だ! 自分の周りを囲む氷槍を見回すと、育郎の目にあるものが映った。 そうだ!しかし間に合うか!? いや、やるんだッ!やるしかないッ! 「逃げても無駄だッ!」 先程のように、シャンデリアにむかって飛び上がった育郎に向けて、モット伯が 生み出した氷の槍全てを発射する。 「盾にでもするつもりか?しかしこれだけの数、全てを防ぐ事はかなわんぞッ!」 モット伯が叫んだ次の瞬間、全ての氷の槍が育郎に襲い掛かり、ミス・ロングビルが 誰にも気付かれずに小さくガッツポーズをとった。 「なんだと!?そんな馬鹿な!」 モット伯が驚愕の声をあげる。 所々服が切り裂かれている場所はあったが、天井からぶらさがる育郎には目立った 傷は無かった。しかしそれだけではない、育郎の右手にデルフの代わりに握られていた ものこそ、モット伯が最も驚かされたものだった。 それはシャンデリアだった。 そう、根元からへし折ったシャンデリアで、育郎は氷槍を全て叩き落としたのだッ! 育郎は右手一本でシャンデリアを振り回し、そして左手一本でそれを支えていた器具 をつかみ、自分の体重とシャンデリアを支えているのだ。 「嘘だ…そんな…」 モット伯床にへたり込む。先程の魔法で精神力は全て使ってしまった。 もう自分には戦う術は無い。 「ま、まいった!」 シャンデリアを手から離し、床に降り立った育郎にモット伯爵は降参の声をあげた。 「すまないデルフ」 床に落ちたデルフをひろいながら、声をかける育郎。 「イインダヨアイボウ。キニスンナ、オレハダイジョウブダカラ」 「で、デルフ?」 「ウン、ダイジョウブ。キットツギガアルサ」 「次?」 「アイボウハキニシナクテモイイヨ。ホント、ナンデモナイカラ」 「そ、そうかい?」 「ウン、ナンデモナインダ。ハハハハハハハハハ」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1791.html
「…何も問題はありません。健康そのものです」 「本当か?本当なのか!?」 カトレアを診断した主治医に、ヴァリエール公が詰め寄る。 「はい…薬を使った形跡すら感じられません」 力なく首を振る主治医の姿に、がっくりと肩を落とす公爵。 「あらあら、心配しなくても私はほら、こんな事も出来るようになりましたわ!」 グオン 「「座ったままの姿勢でジャンプを!?」」 育郎の治療を受けてすぐに、カトレアはルイズが止めるのも聞かずに、 その健康体がどれ程のものかを試しだした。 「ブラボー!おお、ブラボー!」と叫びながら突如浮き上がったり、 「かけよトロンベ!」と叫びながら自分の愛馬で屋敷中を走り回ったり、 その他諸々、その様はミス・アンチェインとでも呼びたくなるほどだった。 「何故…こうなってしまったのだ?」 「病が裏返ったとしか…」 「…なんだそれは?」 「今まで掛かっていた負荷がなくなり、急激に身体が活性化したのと合わさって」 「まあ…何はともあれ、カトレアの身体は治ったのです。 この際些細な事は気にしないでおきましょう」 溜息をつきつつ、二人の背後にいたヴァリエール公爵夫人がつげる。 「些細な事…か?」 ヴァリエール公の呟きを無視して、夫人はカトレアに向き直る。 「カトレア、貴方も元気になって嬉しいのはわかりますが、貴族たる者が そのようにはしゃぐなど…みっともないとは思わないのですか?」 カトレアは手を口に当て、あらあらと言いながら頭を下げる。 「ごめんなさいお母様。身体があんまりにも軽くなったものですから、 心まで軽くなったみたいで。不思議ですわね」 そう言ってケラケラと笑うカトレアに、つい再び溜息がでてしまう。 「あ…あの、お父様、ちいねえさまは?」 声のほうを見ると、部屋の外で待っているよう言われたルイズが、カトレアが 心配だったのだろう、堪えきれずに部屋に入ってきていた。 「こら、ルイズ!待ってなさいと言われたでしょう」 同じように廊下で待っていたエレオノールが、ルイズを連れ出そうとするが、 それをヴァリエール公が制する。 「かまわん、エレオノール。ルイズ、心配しなくとも異常は見当たらんそうだ」 「あれで…ですか?」 エレオノールが見ている方に視線を向けると、カトレアが部屋に追いてあった ワインをグラスに注いでいた。ただコルクぬきが見つからなかったのか、ビンの 底に指を刺して穴を開け、そこから注いでいる。 「カトレア!」 その時公爵夫人の凛とした声が部屋に響き、部屋にいる全員の身が硬くなった。 「…なんでしょう?」 部屋の中にいる人間全員が、緊張した面持ちでカトレアと公爵夫人を見る。 「…行儀が悪いですよ」 「それもそうですね」 「あー…なんだ、よくぞ我が娘カトレアを…その…治療してくれた。感謝する」 口ごもりながらも、ヴァリエール公が育郎に感謝の言葉をかける。 「は、はぁ…」 対する育郎は、どこかすまなさそうな顔をしている。 「ほら、もっと堂々としてなさいよ。治ったんだからいいんじゃない。 ルイズも、ほら。だいたいこういう事言うのは、貴女の役割でしょ?」 キュルケが育郎と、いろいろと疲れた表情をするルイズに声をかける。 「どう見ても病気には見えない」 「うん…まあ、そうなんだけどね」 タバサの言葉に頷くが、やはりどこか釈然としない表情をするルイズ。 「ああ、俺様も長い事生きてるけど、あれほどの「アンタは黙ってなさい!」 …わーったよ」 「その…ごめん」 「い、いいのよイクロー。あんたが謝らなくても」 「何をコソコソと話しているのかな!?」 「い、いえ。なんでもありませんわお父さま!」 焦る娘の様子に今日16度目になる溜息をつき、とにかく今回の事はこれで 良しとしよう。そう自分を無理やり納得させる。 「ルイズ、とにかく今日は友人といっしょにゆっくりとしていきなさい。 久しぶりに家族がそろったのだ。カトレア達も積もる話もある事だろう」 「えっとお父様…今日は日帰りのつもりだったので、休みの届けをだしては」 ルイズの言葉に笑いながら答える公爵。 「なに、一日授業を休むぐらいどうという事は…」 背後からの凄まじいプレッシャーに、言葉が止まるヴァリエール公。 「あなた…」 そのプレッシャーの発生源。己の妻の声に、ヴァリエール公の背筋が凍る。 「あるな!うむ!やはり無断で授業を休むなど言語道断!」 「あら…久しぶりにルイズと一緒に寝ようかと思ってましたのに」 娘の不満げな声に、溜息をつきながら公爵夫人が口を開く。 「…夕食ぐらいはとって行きなさい。エレオノール、カトレア、食事の準備が 整うまでルイズと一緒にいていやりなさい」 「わかりましたわ、お母様」 「は、はぁ…母様がそう言うなら。ほら、貴方達こっちにきなさい」 ルイズ達とともに、部屋を出ようとしたカトレアが、ふと何かに気付いた様子で ヴァリエール公の方に振り向く。 「そうですわ!」 「な、なんだカトレア?」 少し驚いた様子の公爵に、いつものような無邪気な笑顔でカトレアは告げた。 「お友達も学校があるからしかたないとして、あの使い魔さんだけでも 泊めていってはどうかしら?」 「は?」 「ルイズの話も聞きたいし、それに私を治してくれたお礼もしたいですし」 「お、お礼…ど、どういう意味だカトレア!?」 「そんなに凄かったの!?」 「ちょっと、なにやってんのよキュルケ!?」 突如現れたキュルケに続いて、ルイズと呆れた顔をしたエレオノールが 再び部屋に入ってくる。 「貴方達なにやってるのよ…お父様、どうかしたのですか?」 「あ、うむ。カトレアがそこの使い魔だけでも泊めてはどうかと言ってな。 まったくどういうつもりなのか…」 「へ?イクローを?なんで?」 「だって貴女が魔法学院でなにをしているか、使い魔さんに話を聞きたいし」 「凄かったのね…」 じゅるり 「キュルケ?」 再び溜息をついて、何か言ってやりなさいとエレオノールを見るヴァリエール公。 「……別に、かまわないでしょう」 「エレオノール、お前まで!?カリーヌ!」 最後の頼みと、妻に視線を向ける。 「カトレアを治したのは事実です。 平民とはいえ、それなりの待遇でもてなすべきでは?」 「わかった…ルイズ、お前もそれでいいかい?」 「あ、はい」 どうにも釈然としないといった表情のルイズだが、納得できないのは公爵自身 も同じである。カトレアはともかくとして、何故エレオノールまで? その時、公爵の頭にある考えが浮かんだ。 「まさか…いや、しかし…」 「どうかなされたのですか、あなた?」 「い、いや…なんでもない」
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1130.html
「乙女はお姉さまに恋してる」の高島一子 ゼロのイチコ01 ゼロのイチコ02 ゼロのイチコ03 ゼロのイチコ04 ゼロのイチコ05 ゼロのイチコ06 ゼロのイチコ07
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1880.html
サーレーの眼の前では有り得ない光景が広がっていた。 (さっきまで俺はカプリ島に居たはずなのになあ。) サーレーの眼の前では何やら広場で人が集まっている さっきからサーレーやサーレーの前にいるブロンドの少女を凝視しており目立つ事に抵抗のあるサーレーは一種の不快感を覚えた。 (何なんだ、この場所は。俺はカプリ島でスタンド攻撃に会ったはずじゃあ・・・。) 「ねえ、あんた。」 サーレーの目の前にいたブロンドの少女がサーレーに話しかける。 何だか不機嫌そうだ。 (俺、何かしたかぁ?) サーレーが呑気にそう考えていると長―――――い沈黙がさっきの少女の一言でいっぺんに、堰を切った潮流の様に口々に何かを喋りだし、中には少女に対する嘲笑の聞こえてきた。 「「「「ワハハハハハッハハハハハッハハ!!!!」」」」」 「まさか平民を呼び出すとは、流石ゼロのルイズ!」 「最高にハイってやつだアアアアァァァァ!!!」 「クセー!!ゼロ以下の臭いがプンプンするぜ!!」 何か吸血鬼と顔に傷が有る男が見える。頭痛い。 何なんだよ。 「コルベール先生!サモン・サーヴァントのやり直しを要求します!」 「しかし、規則ではあなたはこの青年と契約しなくては・・・。」 「平民と契約するなんて聞いたことありません!!」 (サモン・サーヴァントって何だ?) するとサーレーの目の前にスタンドと思しき生き物が眼の中に入ってきた。 注意 こいつらは本来サモン・サーヴァントで呼ばれた使い魔なのですが、サーレーは頭に銃弾+見たことの無いものによるショックで混乱しています。 サーレーの頭の中に不吉な何かが過ぎった。 (まさか!ここがうわさに聞いたパッショーネのスタンド養成施設!!) 噂によればパッショーネにはポルポがいなくなった時のためにスタンド使いの養成施設が有るとか無いとか聞いたことが有る! そしてあの小娘は俺にサモン・サーヴァントとか言うスタンドで俺を呼び出して・・・・。 注意 このサーレー、頭に銃弾を受けてかなり頭がキテマス。 こういうところに裏切り者を呼び出してギャングなら教えることは一つ! そう!始末の仕方!! (こ、殺される!) ルイズの態度と周りの状況をキチンと見ればそうでない事など一目瞭然なのだが・・・。 「しかし、ミス・ヴァリエール。君の使い魔が逃げてしまっては、やり直ししようにも出来ないのだが。」 「え、ええ!?」 「ヴァリエールの使い魔がにげたー!!」 皆がサーレーの方を向くとサーレーはもう既に200メートル近く走りきった後だった。 『第一話 サーレーのトリステン逃避行』 (殺される!何か知らんけど殺される!!) やっぱりこのサーレー、脳にめり込んだ銃弾が脳に結構なダメージを残しているようです。 サーレーは広場の近くにあった森に一直線に走っていった。 伊達にギャングで荒事をかたずけているだけあって、体力には自信がある! 400メートルほど走ったところで一本の木にぶち当たった。 「よし、ここなら良いな・・・。クラフトワーク!!」 サーレーはクラフトワークに木の枝を掴ませそのまま本体ごと登っていった。 な、何なのよ!あの男、何か幽霊みたいなものに自分をつかませて木に登って行ったわ! 「お、おいアイツ空に浮いているぞ!」 私の近くの生徒が指を私の使い魔(仮)に向けて慌てていた。 「もしかしてアイツ、メイジか!?」 まさか皆あの幽霊が見えていない? 「何をしているのですか!ミス・ヴァリエール!追いますよ!」 コルベール先生が少し遠い所で叫んだ。 マジで勘弁してよ、このコッパゲ! 一方、逃げているサーレーは・・・。 「・・・これでヨシッと。」 木のテッペンで木の葉を何枚か集めるとそこから立ち上がりもう一人の自分の名を呼んだ。 「クラフトワ―――――――ク!」 そして木の葉を空中にまく。 「この木の葉を『固定』しろ!!」 するとさっきまで空を舞っていた木の葉がイキナリ、テープの一時停止を押したみたいに止る。 「よし、これで逃げる準備は整ったな。」 サーレーはその木の葉を使って器用に向こう側の木に乗り移った。 そしてまた、さっきの要領で木のテッペンに登り・・・というのを繰り返して行っていた。 「このままイタリアに帰るウウウウウ!!」 まだ別世界だということが分かっていないイチャッテル、ハイなサーレーなのであった。 「WWWWWRRRRRRRRRRYYYYYYYYYYYYY!!!」 そうしていると後ろが何やら騒がしい。そう思って後ろを向いてみると大量のフライで空を飛んでいるメイジたちが追ってきていた。 「おい!あそこにいたぞ!!」 「な、何ぃいいいいい!!木の上で隠れたのに何でこっちの居場所が割れてんだァァァ!!!」 あんたが大声出したからだろうが・・・。 コルベール先生や他の生徒たちはフライで飛んで言った。 私はフライを使っても爆発して失敗する。 そういって皆、私を馬鹿にする。 ここまで来て今度は平民を使い魔として呼び出し(しかも何か叫んでる変人!)しかも逃げられる! こんなのってアリ!? もういやよ・・・。 ルイズは力なくその場にへたれこんだ。 「うおお!?」 サーレーの目の前に火球と突風が舞う。 メイジたちがサーレーに攻撃を始めていた。 「S・H・I・T!飛び回りやがって!攻撃が当てられねえじゃねえか!!」 嘗めやがって! 俺のクラフトワークは火炎とか風とかは『固定』の範囲外だ。 その上、木の葉の安定しない小さな足場が邪魔でしょうがない! 「・・・ちッ。一旦地面に退避するか。」 地面の上での白兵戦はクラフトワークの得意分野だ。 地面でなら固定化はたやすく行える。 流石にこの木の数だ。何とか白兵戦に持ち込めるはず・・・・。 そう思っているとイキナリまた横から火の玉が飛んできた。 「チッ!面倒だ!」 サーレーは手に持っていた葉っぱを火の玉に向けて無造作に投げ、固定化する。 火の玉はサーレーの木の葉に掛けられた固定化のパワーと相殺しあい宙で爆発して消えた。 「あなた、さっきも見ていたけどメイジなの?」 サーレーに火の玉を放った赤い髪の女性のほうを見る。 「ああ?なんだ、そりゃ。食いものか?」 「あんた!メイジを知らないの!?」 「知ら、んな!」 サーレーは後ろからの氷の矢を避けるとすれ違いざまに『固定』を掛ける。 サーレーが後ろを見るとそこには12歳~14歳くらいの青い髪の少女が自分の身長より大きい杖を構えていた。 「こんなガキまで・・・。」 「ファイヤーボール!!」 後ろでさっきの赤い髪の女の声がする。 「なに!クラフトワ―ク!!」 サーレーは木の葉から飛び降りると氷の矢の固定化を解除する。 火の玉と氷の矢は空中で相殺される。 「皆さん!殺してはなりません!止めるだけです!!」 そういう声が聞こえたがサーレーはもうすでに地面に落ちて行っていた。 ルイズは遠巻きで森の中を走りながら謎の男と生徒たちの攻防を見ていた。 謎の男は謎の無詠唱の魔法で氷や土の魔法を止め、それをうまく利用し火や風の魔法を相殺していた。 使い魔とは一種のメイジのステータスだ。あれだけの使い魔を呼び出した自分はすごいんだ。 もう誰にも馬鹿にされない。 ルイズの中には一種の希望が見出されていた。 (もしかしたら私はもうゼロじゃないのかもしれない・・・。) すると謎の男が地面に落ちてきた。 高い場所から落ちたのにうまく着地し、また戦闘態勢を整える。 「オラオラァ!もう終わりか!?アア!?」 もしかしてこのあたりで・・・あ、いたいた。 ルイズは近くでゴーレムの用意をしていたギーシュを見つける。 「ギーシュ!!」 「ん?ああ、ミス・ヴァリエールか君の使い魔。いったいなんだい。」 「どうでも良いから!あたしにレビテーションをかけて。」 「はあ?」「早く!!」 ルイズは鬼気迫る表情で叫んだ。 「まだまだァ!」 サーレーはクラフトワークの拳で風や土の魔法を弾きつつ、逃げ道を探していた。 するとサーレーの視界に何やら宙に舞っている少女が見えた。 「いい、ギーシュ!しっかり飛ばすのよ!」 「正気かい!?」 「大丈夫!何とかする。」 何かやばい気がする・・・まさか・・・。 「いいわ!やって!」 「ええい!もうドウにでもなれェ!!」 金髪のガキが造花のようなものを俺に振った。 するとあのブロンドのガキが俺に向かってきた。 しかも飛んで、猛スピードで! 「うおおお!!」 ごちん! ブロンドのガキと俺の頭がド派手に火花を散らした。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4509.html
注)本SSは『HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました』スレに掲載された作品です。 ここはトリステイン魔法学院。トリステイン王国の、全寮制メイジ養成機関だ。 メイジが用いる魔法には、火・水・風・土の四系統がある。 そして扱える系統が増えるにつれ、ドット(1系統のみ)、ライン(2系統)、トライアングル(3系統)、スクウェア(4系統全て)の使い手と呼ばれる。 火の系統の使い手 『微熱』キュルケ 水の系統の使い手 『香水』モンモランシー 風の系統の使い手 『雪風』タバサ 土の系統の使い手 『青銅』ギーシュ ――――そして彼女は―――― 少女は憂鬱だった。 今日は、今年晴れて二年生へと進級した者達の、「使い魔召喚の儀」。つまりは「サモンサーヴァント」が行われる日だ。 使い魔は、メイジにとって、「目」であり「足」であり「盾」でもある。よってこの召喚の儀も、必然的に重要なものとなる。 彼女の名は、ルイズ。「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 名門公爵家、ヴァリエール家の三女。 本来なら、おいそれと話しかけることも出来ないほどの身分だが、今彼女は、朝からずっと周囲の生徒から皮肉を浴びせられている。 「おい『ゼロ』のルイズ!お前本当にやるのか?間違っても俺達を爆発に巻き込むんじゃないぞ~」 「ダメもとでやってみたら、もしかしたら成功するかもしれないぞ?原形をとどめてたらいいけどなぁ!はははは!!」 (はぁ・・どうしてこんな目に・・・) この罵詈雑言は、なにも今日に限ってのことではない。理由は一つ。 彼女が「魔法の使えないメイジ」だからである。 彼女は有名貴族の出でありながら、これまで一度も魔法が成功したことはないのだ。 ゆえに『ゼロ』。「ゼロのルイズ」だ。 「ルイズ~ごきげんようー」 怪しげな微笑を伴なって現れた、ルイズと対照的の豊満な肉体を持つこの女性の名は、キュルケ。 火の系統を得意とする、トライアングルメイジだ。 「あぁあんたね・・いったいなんの用?」 ぶっきらぼうに返すルイズ。キュルケとはいわゆる、犬猿の仲だ。出来れば早々に退散したいと思っていた。 「あらつれないわねぇ。今日はいよいよ召喚の日じゃない。あなたにはいったいどんな素敵な使い魔が現れるのかしらねぇ~。くすくす・・・」 「・・・・・言いすぎ・・・」 キュルケの横に立つ、青い髪の少女が言う。 だが、他人に哀れまれるなど、ルイズのプライドが許さなかった。 「・・・見てなさい・・・。絶対にあなたたちより高貴で!美しくて!そして強力な使い魔を召喚してみせるんだから!!!」 「おいおい。ルイズが吹いたぞ」 「ははは召喚の時間が楽しみだな、ゼロのルイズ」 負けてなるものか。ルイズは胸に固くそう誓った。 もともとプライドの高い少女である。このようなことを言われて、黙っていられるわけがないのだ。 そして召喚の時・・・ キュルケはサラマンダーを、タバサはなんと風竜を召喚した。 「おいルイズ。次はお前の番だぞ。どうせ何も召喚できないだろうけどな」 (どうしよう・・これで成功しなかったら・・・) ルイズがそう苦悩する中でも、野次はとびつづける。 (・・・みてなさい・・!) 詠唱が始まる 「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!」 (・・・・お願い・・・!!) 「私は心より求め、訴える! 我が導きに、応えなさい!!」 すると突如、少女のまわりで、本来召喚の儀式では起こりえるはずのない爆発が起きた。 人々が驚き叫び、逃げ惑う 体中に纏う頑強な鎧 腰に携えた長剣 真黒の長髪 真紅のマント 爆発によって巻き起こった粉塵が晴れたとき そこにいたのは 一人の男だった (に・・人間!?どうして・・・そんな・・・) 片膝をついたその男は、鎧やマントを身に纏ってはいるが、杖を持っていなく、剣しか所有していないように見える。 おそらく、裕福な平民なのだろう。 だが次の瞬間、ルイズは自分の浅はかさを後悔した。 「お・・おい!ルイズが平民を召喚したぞ!!」 「は・・・ははは流石ゼロのルイズだ!やることが違うな!!!」 とりあえず差し迫る害がないと判断すると、途端に周りがざわめき始める。 「ねぇタバサ。いったいどういうことかしら、これ」 「・・・危険」 「え?どういうこと?タバサ」 今この場で、自分たちがどういう状況にあるのかを把握出来ているのは三人。 タバサとコルベール。 そしてルイズだけだ。 (・・まずい・・・!!あの男は・・危険だ!!) これまで数多の死線を越えてきたコルベールだが、そんな彼でさえ、体中の細胞が警告を発している。 ただ一つ「逃げろ!!!」と。 「あ・・あなた・・いったい誰・・・?」 生まれて初めて感じる、言いようのない恐怖を感じながらも、少女は言った。 貴族としてのプライドが、この場から逃げ出すことを許さなかったのだ。 『彼』もまた困惑していた。 自分は完全に消滅したはずなのだ。 なぜ生きている?そしてここはどこだ? 目の前に広がるこの光景は何だ? 彼自身、何故そう言ったのかはわからない。 もはや捨てた名だ。 だが彼はゆっくりと。しかしハッキリとこう答えた。 「Wladislaus Drakulya」 そして続けてこう言った。 「アーカードだ」
https://w.atwiki.jp/hinoriewiki/pages/21.html
編集 ゼロの使い魔 異世界ハルケギニアに「使い魔」として召喚されてしまった高校生・平賀才人(サイト)が巻き込まれる 「恋」と「冒険」、「ご主人様」と「使い魔」のアンビバレントでハイブリットなファンタジーロマン。 才人を異世界に召喚したのは、可愛いけれど魔法の才能ゼロのご主人様・ルイズ。 突然、目の前に現れた謎の高慢な美少女に戸惑う才人に、彼女は契約だと言って、いきなり唇を重ねてくる・・・! すると彼の手の甲に不思議な文字が浮かび、才人はルイズの使い魔となってしまうのだが・・・?! 全寮制トリステイン魔法学院を舞台に、ご主人様となった美少女魔法使いルイズに、罵られ、なじられ、そして愛される(?) そんな使い魔・才人の愛と勇気と屈辱に満ちたドキドキの学園生活が始まることに・・・。 異世界で巻き起こる波乱に満ちた異文化交流の中、果たしてゼロのルイズと才人の運命は、 どのような展開を見せるのだろうか・・・!? ルイズ 釘宮理恵 平賀才人 日野聡 ゼロの使い魔シリーズ第1期 放送期間:2006年7月 - 2006年9月 ゼロの使い魔 オフィシャルサイト 原作:ライトノベル(MF文庫J 著者:ヤマグチノボル イラスト:兎塚エイジ) 放送前キャストコメントhttp //www.zero-tsukaima.com/zero/special/index_interview_060630.html http //www.animate.tv/news/detail.php?id=atv060622d 最終回キャストコメントhttp //www.zero-tsukaima.com/zero/special/index_interview_060830.html ゼロの使い魔 DVD全6巻 発売日 タイトル 2006年09月22日 ゼロの使い魔 Vol.1 2006年10月25日 ゼロの使い魔 Vol.2 2006年11月24日 ゼロの使い魔 Vol.3 2006年12月22日 ゼロの使い魔 Vol.4 2007年01月25日 ゼロの使い魔 Vol.5 2007年02月23日 ゼロの使い魔 Vol.6 オーディオコメンタリーはなし キャラクターCD 発売日 タイトル トークONCD出演者 2006年09月06日 ゼロの使い魔 キャラクターCD1 ルイズ 才人編 ルイズ役 釘宮理恵サイト役 日野聡タバサ役 猪口有佳 2006年09月06日 ゼロの使い魔 キャラクターCD2 ギーシュ モンモランシー編 ギーシュ役 櫻井孝宏モンモランシー役 高橋美佐子アンリエッタ役 川澄綾子 2006年09月21日 ゼロの使い魔 キャラクターCD3 タバサ キュルケ編 2006年09月21日 ゼロの使い魔 キャラクターCD4 シエスタ アンリエッタ編 内容はキャラソン、ミニ・ドラマ、トーク(トークは1、2のみ) DVD-BOX ゼロの使い魔 第1シリーズ DVD-BOX2009年3月6日発売 特典に「ゼロの使い魔 on the radio」~ア、アンタのためだけにラジオをやる訳じゃないんだから!~(録り下ろしラジオCD)
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2263.html
「ほほう、東方産の品々をコレクションしとる貴族か。 君にそんな知り合いがおったとはのう」 「昔請け負った生徒が、そんな話をしていたのを思い出して。 彼の祖父がずいぶんと熱を上げていたとか。 なんでも本当に東方産なのか、よくわからない品も多いそうです」 コルベールの言葉にうなずくオスマン氏。 「そりゃ好都合じゃな。少年の求める掘り出し物がその中にあるかもしれん」 「では早速準備を…明後日にもイクロー君を連れて出発する事にします」 「あー、ちょっと待ちたまえ」 急いで学園長室を出て行こうとするコルベールを、オスマン氏が呼び止める。 「なんでしょう?」 育郎から聞かされた異世界の優れた技術の品を見てみたいのだろう、いますぐに でも出発したそうな様子の、コルベールに告げる。 「一緒にミス・ロングビルも連れて行ってもらえんかの」 「それはかまいませんが…何故ミス・ロングビルも?」 確かにミス・ロングビルは事情を知る数少ない人間の一人であるが、今回 わざわざ一緒に出かける必要があるとは思えない。 「ふむ…今のわしの格好を見て、君はどうおもったかね?」 そう言われ、ロープで縛りあげられ、天井から吊り下げられているオスマン氏を 改めて眺める。 「今度は何をしたんですか?」 「実はのう…今日転んだふりをして、ついにミス・ロングビルの胸を触って みたんじゃよ!」 そのときの感触を思い出してか、至福の笑みを浮かべるオスマン氏。 「…いいかげんにしないと、本当に訴えられますよ?」 「どいつもこいつも、たかが秘書とのスキンシップではないか。 そんな大げさに騒ぎ立てる程の事では」 「それはスキンシップではなくセクハラと言うんです!まったく…」 そこでコルベールがある事に気づく。 「それだけのことをして、よくその程度ですみましたね…」 縛りあげられたオスマンに、他にダメージは見当たらない。 「そうじゃ、いつもならちっとモートソグニルで下着を覗こうとするだけで、 容赦のない虐待を加えるてくるんじゃが」 「虐待…それは自業自得なんじゃ」 コルベールの言葉を無視してオスマン氏が続ける。 「なにか悩み事でもあるのか、今日は朝から沈み込んでいての。 胸をさわったのも元気づけるつもりだったんじゃが。 それでかるく少年と旅行でもして気分転換を…と思っての」 「なるほど、そう言う事なら急いで準備を」 珍しく気の利いた事をするオスマン氏に感心しながら、コルベールが部屋を出る。 「ああ、そうじゃ。来週にはフリッグの舞踏会があるから、それまでには 帰ってくるようにするんじゃぞ」 「フリッグの舞踏会?」 育郎が料理を切り分ける手を止め、キュルケに問い返す。 「そ、来週のユルの曜日に開かれる舞踏会。ルイズから聞いてない?」 首を振ってルイズを見る。 「そういえばそんなのもあったわね…」 使い魔召喚からいろいろありすぎて、すっかりそんなイベントの事等忘れていた。 「あらあら、せっかくの舞踏会を忘れるなんて… でも貴女にとって、今回のは特にどうでもいい事かもね」 「ど、どういう意味よ…」 わざとらしいため息をついた後、意味深な笑顔を浮かべるキュルケに、 嫌な予感がしながらも、ルイズが聞き返す。 「あら、フリッグの舞踏会の伝説も忘れたの?舞踏会で」 「フリッグの舞踏会で一緒に踊ったカップルは、必ず結ばれるんだ!!」 「…ギーシュどっから生えてきたの?」 キュルケが振り向くと、いつの間に近寄ってきたのか、ギーシュがポーズを つけて立っていた。 「ま、そういう事、ロマンチ」 「ロマンチックだろ?もちろん僕と一緒に踊るのはモンモランシーさ!」 「ちょギーシュ!大きな声で言わないでよ。恥ずかしいじゃない…」 「………」 ギーシュの背後から、やはりいつものようにモンモランシーが現れる。 「ああ、モンモランシー…僕と踊るのはそんなに恥ずかしいのかい?」 「そ、そんなわけないじゃない。だからその…もう…ばか」 いつものようにいちゃいちゃするギーシュ達に、やはりいつものように彼女の いない生徒達からの敵意の視線が突き刺さるが、当然いつものように二人は そのような事に気づかず、幸せ空間を作り出している。 「まぁ…そういう事なの。ルイズには縁のない話でしょ?」 「そ、そんな事ないわよ…」 否定はしてみるものの、その声は小さい。 ルイズはこれまでの学生生活の中で、これといった浮いた話ができるような 体験がさっぱりなかったのだ。 ちなみに去年のフリッグの舞踏会では、ルイズは失敗魔法で壊れた教室の 後片付けを命じられて、参加できなかった。 「そんな事あるんでしょ?まぁ…そのぺったんこの胸じゃしょうがないわね」 「な、なんですってぇ!」 机に手を叩きつけ、勢いよくルイズが立ちあがる。 「ちょっとむむむむむむ胸が大きいからっていい気にならないでよ! だ、だいたいあんたこそ、最近男が寄り付いてないみたいじゃない」 確かにそれまで食事中であろうとも、常に周りに群がっていた男子生徒の姿が、 今はさっぱり見当たらない。 キュルケが食事のたびにタバサをつれて、育郎の周りの開いている席に 座るようになったからだ。 「あら、そういえばそうね」 指摘されたキュルがすんなりと認める。 「ほらみなさい!」 だがキュルケは意に介した様子も泣く、立ち上がり、遠巻きに眺める生徒達に むかって振り返り、芝居じみた口調でこう言った。 「私をフリッグの舞踏会でお誘いくださる殿方はおりませんこと? 最近さびしい夜が続いてて…誰か慰めてくださる方はいないかしら」 「こんな女のどこがいいのよ…」 「豊かな胸は女の器量の証明なのよ」 舞踏会の相手を2桁ほど集めたキュルケを、ルイズは苦々しげに見つめる。 「…そ、そうよ!タバサはどうなのよ!私より小さいじゃない!」 先ほどまでの騒ぎも我関せずと、黙々と食事をつづけるタバサを指差す。 「あら、タバサは可愛いからいいのよ。それにこれから大きくなるかも しれないじゃない。ね、育郎?」 「え?あ、いや…」 いきなり話を振られて戸惑う育郎に、ルイズが自信なさげに問いかける。 「や、やっぱり男の人って胸が大きいほうがいいの?」 「い、いやそんな事ないよ」 育郎の答えに自信を持ったルイズが、キュルケに向き直りふんぞり返る。 「ほらみなさいよ!大事なのは胸じゃないのよ」 「…ちょっとギーシュ。ほらいつまでいちゃいちゃしてるの。 ちょっと聞きたい事があるんだけど」 「なんだいキュルケ?」 「あなた胸は大きい娘と小さい娘、どっちが良い?」 「もちろん大きいほうさ!」 親指をたてながら、とてもいい笑顔で答えるギーシュ。 ちなみにモンモランシーはあまり大きいほうではない。 というかちょっと小さめである。 「ちょっとギーシュ…話があるんだけど」 「なんだいモンモランシー?」 「こっちに来て」 ギーシュが物陰に連れ込まれ、ほどなくして彼の悲鳴が食堂にこだました。 「ま、胸のことはもう良いわ。それよりイクロー、あなた誰と踊る気なの?」 「え、僕が?」 ごく普通の家庭に生まれ育った育郎にとって、舞踏会等と言われても、いまいち 現実味を感じられるものではない。ましてやそれに自分が参加するなんて事を、 彼はさっぱり考えていなかった。 「僕はいいよ」 「「えーなんで!?」」 しかしルイズとキュルケにとっては、それは意外な答えである。 「いや、だって僕が参加したら迷惑だろうし…」 周りを見回すと、あいもかわらずこみ合った食堂において、見事に異質な 空白地帯を作り出している。 「そんなの気にしなくても良いじゃない」 「ルイズの言うとおりよ。ほら、タバサも貴方と踊りたいって」 タバサを見ると、あいもかわらず無表情で食事を取り続けている。 「いや、でも踊りとか、僕にはよくわからないし」 「え、それは本当かい!?」 モンモランシーの折檻から開放されたギーシュが、ボロボロになりながら 驚きの声を上げる。 「ああ、そういうのはちょっと縁がなかったというか…」 「そうなのかい?平民達が、君の事を貴族とか言ってたからてっきり」 「いや、僕は貴族なんかじゃ…」 「うーん、貴族じゃなくて上級だったかな?」 「………」 何が上級で、何の貴族なのか非常に気にはなったが、あえてそれを確かめる 気にはなれない育郎であった。 「なんなら後で僕が簡単なレッスンでもしようか?」 「いいよ、なんだか恥ずかしいし」 「そうかい?まあ確かに男同士でダンスってのもちょっと…」 「それじゃタバサ、貴方がレッスンしてあげたらどう?」 「タバサじゃ背が合わなくてやりにくいんじゃないの?」 至極もっともな意見を言うモンモランシー。 「しょうがないわね…それじゃ主人の私が」 「貴方も大して変わんないじゃない」 「………じゃあ、イクローに聞きましょう。誰に教わりたい?」 「え?」 舞踏会に出ると一言も言ってないのに、いつのまにか参加するのは決定した 事になっている流れに戸惑う育郎に声がかかる。 「おお、イクロー君!」 呼ばれた方を向くと、ミスタ・コルベールが手を振っているのが見えた。 走ってきたのか、汗のてかりで通常の3倍光り輝いている。 「どうかしたんですか、コルベール先生?」 「ああ、食事中かね。なら後で私の部屋に来てくれないかね?話があるんだが」 「いえ、もう僕は食べ終わりましたから。ルイズ、ちょっと行って来るね」 「ええ、それじゃあとで」 二人が食堂から出て行くのを見送った後、ギーシュ達がミスタ・コルベールが 育郎になんの話だろうと、他愛ない会話をする中、タバサだけがそれまで 一人黙っていたキュルケの呟きを聞いた。 「ごめん…やっぱりこれはないわ」 「何が?」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1922.html
「はい?」 エレオノールの言葉に世にもマヌケな声をあげてしまう育郎。 「だから、私の胸をもうちょっと大きくできないか聞いてるのよ!」 エレオノールは、いわば才色兼備を地で行く女性である。 魔法の腕は言うに及ばず、学問を良く修め、若くしてアカデミーの研究者として その非凡な才を発揮している。容姿に関しても、特殊な趣味の人間でもない限り、 彼女が美しくないと言う者はいないだろう。 無論、それは生まれついての才だけでなく、彼女自身の努力によるものも大きく、 それゆえに揺ぎ無い自信と誇りを培っていた。 だからこそ、とある事を成せぬ理由が 『 結 婚 で き な い 』 のが何故か、彼女にはわからなかった。 ただ単に性格が半端なくきついからだけなのだが、残念ながら彼女はその事に 気付いていない。 己を完璧とまでは言わずとも、そこらの淑女になど劣らぬという自負もある エレオノールにとって、同年代の友人たちが次々と結婚していくなか、一人 取り残されるという現状は耐え難いものであった。 そんなエレオノールであるが、唯一つ、己自身欠点と認めている部分があった。 胸が小さい事である。 どっちかというと、胸がないと言った方が正しい。 となれば、『胸を大きくして』と言うよりも『胸をあるようにしてほしい』と 言う方が正しい表現な気もするが、どうでも良い事なので放っておこう。 と言う事で、バーガンディ伯爵との婚約を解消されたエレオノール嬢にとって、 婚約解消の原因、とまではいわずとも、この…機能的な胸がもうちょっとこう… なんとかなっていたら、なんとかなったのではないかなぁ、そう考えたのである。 もちろん彼女自身も努力をしなかったわけではない。数々の豊胸グッズや 民間治療?を試してきたのだが…当然の事ながら失敗を積み重ねていた。 さすがのエレオノールも諦めかけていたその時、彼女の目の前に長年身体の 弱かった妹を、非常識なまでに健康にした医者が現れたのである。 この男ならなんとかしてくれるのではないかと、一縷の希望を胸に秘め、 婚約解消の傷心の中、エレオノールは恥を忍んで、忍びきれないので酒の力で 勢いをつけて育郎の部屋までやってきたのである。 「あの…そういうのはちょっと…」 が、即座にその希望は潰えた。 「う、嘘おっしゃい!この私の言う事が聞けないって言うの!?」 エレオノールが赤い顔をさらに真っ赤にして育郎につかみかかる。 「別にカトレアぐらいにしろって言ってるわけじゃないのよ!? ちょっと!ほんのちょっとでいいから!」 「お、落ち着いてくださいエレオノールさん! ほら、随分と飲んでるみたいですし」 「それがどうしたのよ!?しらふでこんな事頼めるわきゃないでしょ!」 「むう、やはり駄目だったか…」 扉の前で聞き耳を立てていたヴァリエール公爵が、エレオノールの大声に思わず そう呟いてしまう。一瞬『やはり』とか考えるのは親として如何な物か? と思ったが、それは平民が貴族に言い寄られて恐れ多いから、と無理やり 思うことにする。 「さて、どうするか」 このまま部屋に入っては、下手をすればプライドを傷つけられたエレオノールが あの平民の首の一つでもしめている光景を拝む事になりかねない。そうなれば 責任をとらすどころか、我が娘の凶行を必死で止めねばならなくなる。 となれば暫く様子をうかがう方が良いだろう。もしかすると耐えられず部屋から 逃げ出す平民を捕らえる事ができるかも知れない、そうなればこっちのものだ、 無理やり責任を取らせばよい。 しかし問題がないわけではない。 下手をすればエレオノールが怒りのあまり、あの平民を半殺しどころか全殺しに してしまう可能性も否定できないのだ。 「まあ、その時は無かった事にするか」 「落ち着きましたか?」 育郎はつかみかかるエレオノールを、なんとかなだめて、椅子に座らせることに 成功させていた。 「ええ、落ち着いたわ。だからどうして私の頼みが聞けないか答えなさい」 「いや…そんなこと言われても」 むしろどうして自分が胸を大きくできると確信しているのか、逆に聞きたい ぐらいなのだ。そんな事言われても困る。 「言えないなら私の胸を大きくしなさい」 「………」 どうやら酔いと執念とか渇望とか、なんかそんな物が混ざり合って思考が おかしくなっているようだ。 「そもそもなんでそんなに…その…」 『必死なんですか?』という言葉が出掛かるが、なんとか飲み込む。 「大きくしたいんですか?」 「なんで…ですって?」 ゆらりと幽鬼の如く立ち上がるエレオノール。 「あの…エレオノールさん?」 「そもそも男が胸の大きい娘が好きなせいでしょうが! あんな脂肪の塊の何処がいいのよ!何処のがいいのよ! なんで私には無いのよ!ちくしょう!」 迫り来る拳を見ながら育郎は、『何処の世界でも酔っ払いはたちの悪いものなん だなぁ』などと、何処か諦めながら考えたのだった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1739.html
「そういえば聞いてなかったけど…ルイズ、あなたは何しに実家に行くの?」 ワインを飲みながらキュルケがルイズに問いかける。 「それは…その…」 ハシバミ草のサラダを食べるタバサを見ながら、どこか後ろめたそうな声で答える。 「私のお姉さまが病気がちで…」 「ふ~ん…でイクローに治してもらおうってわけね」 朝食をとってすぐ、育郎達はルイズの実家に向かうべく出発し、昼過ぎには領地に つくことが出来た。ヴァリエールの領地は広いとはいえ、竜ならすぐの距離である。 しかし、そこで軽く食事をしたいというキュルケの提案があった。 「だってずっとシルフィードの背中でお腹が空いたじゃないの。 ヴァリエールの屋敷についても、すぐに食事というわけにはいかないでしょ?」 まったくその通りで、さらには自分もお腹がなり始めていたいたので、ルイズは 文句を言いながらも賛成し、近くの旅籠で休む事にしたのだ。 「うん…」 「なによ、ひょっとしてタバサのお母様が治らなかったから遠慮してるの? そんな事タバサは気にしないから安心しなさいな。ね、タバサ?」 その言葉に、変わらぬ調子でハシバミ草を食べ続けるタバサが頷く。 「ほらね。イクローもそんな顔してないで。 まったく治らなかったわけじゃないんでしょ? 出発した時に、ベルスランもあんなにお礼を言ってたじゃない」 「そうだな…すまないキュルケ、気を使わせて」 「いいのよ。だいいち、沈んだ顔で食事してもおいしくないじゃない」 そう言って笑うキュルケのおかげで、その場の雰囲気がやわらぐ。 「にしても公爵家ってだけあって、娘っ子の家はずいぶんてーしたもんみたいだな」 傍に立てかけてあるデルフが呟くと周りから歓声が挙がった。 「おおー、さすがルイズ様がお連れなさった方だ。喋る剣をお持ちだなんて」 「貴族でねえって言ってらしたが、さぞかし名のある方にちげえねえ!」 「お連れの貴族様も名のある方だろうに、さすがルイズ様だあ」 等と、ルイズが来たと知って集まってきた村人達が騒ぎ出す。 「そうだね」 軽く周りを見回しながら、育郎がデルフの言葉に同意する。 「あら、そうかしら?」 「………」 対するキュルケとタバサはごく当然と言う顔をしている。 育郎はその事に感心するが、自分も最近は似たような状況で食事をしているためか、 以前なら気後れするような状況でも、自分が普通に食事している事に気付く。 シエスタをモット伯から助け出してからというもの、貴族からはあいかわらず恐れ られてはいるが、育郎は平民の間で、まるで英雄のような扱いを受けるように なっていた。それもシエスタのおかげなのだろうが、逆にそのシエスタのおかげで 困っているとも言えるのだ。 「俺は感動したぜ!初めて知った人の愛、その優しさに目覚めて、裏切り者の名を 受けて、全てを捨てて魔王に戦いを挑むなんてよ! 俺の料理が食いたくなったらいつでも言ってくれ!」 とはコック長のマルトーである。 どうやらどんどん話が大きくなっていったらしい。 このような状況に慣れ始めているのは、色々とまずいのではないかと育郎が考えて いると、外にいる村人達がにわかに騒ぎだした。耳を傾けてみると、竜だの お嬢様等という単語が聞こえてくる。どういうことかと思っていると、いきなり ドアが勢いよく開き、そこから金髪の女性が旅籠に入ってきた。 「え、エレオノールお姉さま!ど、どうしてここに?お仕事でいないはずじゃ?」 ルイズの言葉を無視して、金髪の女性はルイズに歩み寄り、その頬をつねる。 「その言い方だと、私がここにいたら悪いみたいじゃないちびルイズ!?」 「ひてゃい!わ、わりゅくないでしゅ!」 頬を引っ張られながら弁解するルイズ。 「気を利かせた村人が、貴女がここに着いたと知らせたのよ。 それで休みを取ってた私が、竜に乗って迎えに来たってわけ。わかった?」 「わかりまひた!ひゃからちゅねらにゃいでおねーひゃま!」 「ねえ、この人が貴女のお姉さんなの?」 二人の様子にあっけにとられながらも、キュルケが口を開く。 「病気にはとても見えないんだけど…ひょっとして小さいのを治すの? ああ、それは貴女も一緒か、さすが姉妹ね」 そう言って、ルイズがエレオノール姉さまと呼ぶ女性の胸を指差す。 なるほど、見ればその胸は遠慮しがちというか、自己主張が薄いと言うか、ルイズ と同じタイプのスタンドというか、ぶっちゃけ小さかった。というか無かった。 「遺伝」 タバサのとって置きの駄目押しの言葉で、周囲の空気が完全に凍りついた。 「あ、あんたらね!?」 ルイズが怒りの声を上げようとしたその瞬間、姉の声がルイズの耳に届く。 「ルイズ…」 「ひゃ、ひゃい!」 酷く冷えた自分の姉の声に脅えるルイズ。 「ねえ、ルイズ…貴女のお友達は随分と面白い人たちみたいね? よければお名前を教えてくださらない?」 そう言って視線をキュルケたちに向ける。そのあまりの迫力に、近くに立っていた 村人が腰を抜かすが、キュルケは涼しい顔でその視線を受け止める。 ちなみにタバサは、ハシバミ草のサラダのおかわりを要求した。 にやりとキュルケは笑い、馬鹿丁寧なしぐさで礼をする。 「これはこれはご丁寧に。名乗るほどではありませんが、キュルケ・アウグスタ・ フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーと申します」 ツェルプストーという単語、ヴァリエール家の宿敵を意味する名に、エレオノールの 迫力に圧されていた村人達がざわめく。 「つぇるぷすと~?おちび!どういうこと!? 何であなたがツェルプストーの人間と友達なの!?」 「と、友達なんかじゃ」 「だまらっしゃい!」 「ひゃん!ひゃめ、いでゃいいでゃい!」 「ふう。まったくこの子は、昔っから心配ばかりかけて」 「うぅ…まだひりひりする…」 思いっきりつねられた頬をさするルイズを横目に、エレオノールは改めてキュルケ 達に向き直る。 「それで…カトレアを治療するメイジはどっちなの?そっちの小さい子?」 タバサが首を振る。 「じゃあ、やっぱりツェルプストーの方なのね…じゃなけりゃルイズだって、 ツェルプストーをヴァリエール家に招くなんて」 「あら、私でもないわよ」 「じゃあ誰よ?」 タバサとキュルケが育郎を指差す。 「………ねえルイズ?」 「な、なんですかお姉さま?」 「彼、マントもつけてなければ、杖も持ってないようだけど…」 「そ、そうですね」 「私にはどうしてもメイジに見えないのだけれども…気のせいなのかしら?」 「いえ、その…気のせいじゃないでいだだだだだだだ!!!」 再び頬をつねりながら、エレオノールが怒鳴る。 「おちび、あなた何考えてるの!カトレアは水のスクエアに診て貰っても駄目 だったのよ?平民の医者なんかが治せるわけないでしょ!!本当にこの子は…」 「あの、お姉さんそれぐらいで…ルイズもずいぶん痛がってますし、そんなに つねったら跡が残るかもしれないじゃないですか?」 「貴女は黙ってなさい!まったく平民が気軽に貴族に話しかけるなんて… でも一理あるわね…跡が残らないように、反対側の頬をつねる事にするわ」 「いや、そうじゃなくて…」 止めようとする育郎を無視して、ルイズに折檻を続ける。 「残念ながらイクローは唯の平民じゃないわよ」 頬をつねりながら、キュルケを見るエレオノール。 「どういう事かしら、ツェルプストー?」 敵意の篭った目でキュルケを見つめるエレオノールの傍で、ルイズが身体が固まる。 「彼はね、東方の亜じ」 「ちょおおおおっとキュルケ!貴女に話があるんだけれども!」 「あ、こらルイズ!」 エレオノールから強引に逃れ、後が恐いが、とにかくキュルケの首根っこを捕まえ、 部屋の隅に連れてゆく。 「ちょっと何するのよルイズ!」 当然の如く抗議の声をあげるキュルケに、ルイズが回りに聞かれないように、 小さな声で伝える。 「イクローが、その…亜人だって事は内緒にしといて!?」 「なんでよ?」 「エレオノールお姉さまはアカデミーの研究員なの!」 「ああ…そういう事」 アカデミーと言えば、人体実験も辞さないと噂される研究機関である。確かにそんな 人間が、珍しい東方の亜人のことを知れば、当のイクローは唯ではすまないだろう。 「何?東方の医者とでもいうの?」 「そそそそうなんです、お姉さま!ね、キュルケ?」 「まあ、そういう事」 「東方…ねぇ」 育郎に疑わしげな目を向けるエレオノール。 確かに東方といえば、エルフが治める地である。その地の技術は、あらゆる点で ハルケギニアのどの国よりも優れていると言われている。 「その話、本当なの?」 「え?あ、はい、そうです」 しかし、それ故に東方産と偽って詐欺等を行う輩が存在するのである。 実際エレオノール自身、『東方から来た!』等と言う謳い文句の豊胸グッズに 7回ほど騙されている。ちなみにルイズは、まだ2回騙されただけである。 「あら、イクローが嘘をついてるとでも? ご心配なく、彼はこの子の使い魔なんですもの」 疑わしげな視線を育郎に向けるエレオノールに、キュルケが答える。 「はぁ?平民が使い魔ぁ?」 またつねられてはたまらないと、ルイズが続ける。 「そうなのお姉さま!ほら、イクロー。使い魔のルーンを見せて」 言われたとおりに左手のルーンを見せると、やっとエレオノールも納得した。 「まったく…使い魔が平民だなんて…」 溜息をつきながらそう呟く姉に、ほっと胸をなでおろすルイズ。 「そういえば、お姉さまはどうして休みを?やっぱりちい姉さまが心配で?」 蒸し返されても困るので、話題を変えようと話を振る。 「まあ、それもあるんだけど…ちょっとね」 何処か嬉しそうなエレオノール。 「そういえば昨日、どこぞの貴族様がエレオノール様と一緒に、 お屋敷に向かったって聞いたぞ」 「そういえば少し前に、エレオノール様が婚約なされたって話があったよな?」 「おお、という事は公爵様に挨拶に来られたにちげえねえ」 村人達の言葉に、やあねぇだの、もうそんな話が広まってるの、等と言いながらも まんざらでもなさそうな様子のエレオノール。 「ご婚約おめでとうございます、エレオノール姉さま」 「ありがとう、ルイズ」 素直に礼を言う姉に驚愕しながらも、これで今日はもうつねられる事はないと 安堵するルイズ。 「それで、その婚約者はどのような方ですの?」 問いかけるキュルケの顔は、酷く楽しそうな顔だったのだが、幸せを味わっている エレオノールはそのことに気付かない。 「バーガンディ伯爵さまは…」 嬉しそうに婚約者の話をしだすエレオノール。 「ねえ、キュルケ…あんたひょっとして」 「なーに、ルイズ?」 「変なこと考えてないでしょうね?」 「別に」 「…ならいいけど」 「いい男だったら手を出そうかなって考えてるだけよ。 ヴァリエールから恋人を奪うのは、ツェルプストーの伝統だし」 「あんたねえ、絶対やめてよね!」 そのころ話題のバーガンディ伯爵は。 「申し訳ありません…この婚約はなかった事に!」 婚約解消のため、ヴァリエール公爵に頭を下げていた。 「エレオノールに何か至らぬところでもあったかな?」 白くなりはじめた口ひげを揺らし、渋みがかかったバリトンで伯爵に問いかける。 「いえ…そんな…」 モノクルをはめた目の、鋭い眼光に脅えながら答える。 「エレオノールは素晴らしい女性です!気高く、そして美しい。しかし…」 一旦言葉を区切って、伯爵が言葉を続ける。 「もう………限界なのです!」 苦渋の顔でそう答えるバーガンディ伯爵をから目を離し、隣に立つ、 長年ラ・ヴァリール家の執事を務めてきたジェロームに視線を移す。 「………」 無言で首を振るジェロームを見てから、公爵はおもむろに立ち上がり、 頭を下げたままの伯爵に歩み寄った。 「バーガンディ伯爵…」 公爵の言葉に、ビクリと身体を震わせる伯爵。 今の彼の行動は、天下のラ・ヴァリエール公爵家の名誉に泥を塗る行為なのだ。 「…いままで良く頑張ってくれた!」 「へ?」 しかし、怒りの言葉を待ち受けるバーガンディ伯爵の耳に届いたのは、 意外にもねぎらいの言葉だった。 「まったくエレオノールのあの性格はいったい誰に似たのやら…なあ、ジェローム」 「それは私の口からはとても…」 「いえ、あの…」 「うむ、それもそうだな。わしとて気軽に言えん!」 「ご理解していただきありがたく存じます」 「その、ですから」 「おお、これはすまなかった伯爵。ジェローム、竜の用意を。 エレオノール達が帰ってくる前に出発できるよう急がせろ」 「はい、承知いたしました」 そう言って、部屋から出て行くジェロームを見送ってから、バーガンディ伯爵が 恐る恐る公爵に問いかける 「……その、良いのですか?」 「しかたあるまい…無理をして一緒になってもな…無理をしなくとも、たまに きつい時があるのだから…いや、ごくまれにだ。あれも丸くなったし。 そもそもわしはそういう事にならないよう、いつも気をつけておるしな! いや、普段は素晴らしいのだよ。勘違いをしてはいかんぞ」 「は、はぁ…」 いまいちよくわからないが、とにかく助かった事に安堵する伯爵であった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1630.html
唐突だがトリスティン魔法学院の風呂について説明しよう。 貴族が入る風呂は大理石でできた、ローマ風呂のような作りで、香水が混ぜられた 湯が張られた豪華なものある。もちろんライオンの口から湯が出ている。 「ギャーたべられるー!」 と、湯が止まっている時に、マリコルヌがふざけて頭を入れたところ、キレイに ハマって抜けなくなった事もある。 ちなみに湯が出てきて、窒息しそうになるまでマリコルヌは放置されていた。 さらに女子風呂は特別仕様で、対覗き用に各種魔法によって厳重に守られている。 その威力は凄まじく、年に4回はオールド・オスマンが磔になっている程だ。 対して学院内で働く平民用の共同風呂は、掘っ立て小屋のような作りのサウナ風呂だ。 汗を流し、体が温まったら、外にでて水を浴び、汗を流す簡素な物である。 さて、異世界から来た育郎は、いったいどうしているのか? 「また酷くなっている…」 育郎が自分の腕を見てつぶやく。そこはただれたようになっているだけでなく、 変身したときのように、青く変色していた。 「………」 そのまま無言で顔をなでる。 一見して、腕のような変化は無いように見えるが、その感触は普通のものではない。 「相棒、気にすんなっても無理があるけどよ…まあなんだ、それでも気にすんな」 そんな育郎を見かねて、木に立てかけられたデルフが声をかける。 誰かに自分の体の変化を見られるのを嫌った育郎は、学院の外、人気のない泉を 探し出し、風呂に入る代わりに、そこで2、3日に一度水浴びをするのだった。 「ありがとう、デルフ…」 「いや、俺ももうちっとマシな事言えりゃ良かったんだが…」 重苦しい沈黙に、辺りがつつまれる。 なんとかなんねえかなこの空気 そりゃ無理もねえけどよ… はぁ、俺が剣じゃなかったら、相棒にもう少し良い事言えるんかね? つっても槍だったらろくな事は言えねーな にしても、なんてくれーんだ… こーんな良い天気なのによ。 空も青いし、小鳥もさえずってるし、竜もバッサバッサと… 「って竜だと!?」 「あ…あれは!」 育郎が空を仰ぎ見、空を飛ぶ巨体を確認する。 「きゅいきゅい!見つけたのね!」 それはタバサの使い魔、シルフィードだった。 「だからわたし、その吸血鬼に言ってやったの! 『オーノーなの!貴方もう駄目なの!逆にお仕置きされちまってるの!』って!」 「ほー吸血鬼を手玉に取るなんざ、あのちびっ子大した奴だったんだな」 「吸血鬼か…そんなのがいるなんて、なんだか恐いな」 「「それはない」の!」 「そ、そう言われても…」 「それでね、それでね、その後お姉さまが…」 無邪気に話し続けるシルフィードのおかげで、先程までの重苦しい空気も、どこかに おいやられてしまった。 韻竜という希少な種族ゆえ、人前で喋る事を主人から硬く禁じられているのだが、 おしゃべりが大好きなシルフィードには、それはとても辛い事なのだ。 今日も授業中、特にやることもないので学院の空を飛んでいたのだが、そんな時に 育郎が学院の外に出ていく所を偶然発見し、後をつけたのだ。途中で森に入った 育郎を見失ったりもしたが、こうやって無事一人と一振りを見つけ、おしゃべりに 興じる事ができたと言うわけである。 「シルフィードは本当にタバサが好きなんだね」 「そうなの!わたしお姉さま大好き!きゅいきゅい!」 水につかったまま会話を続ける育郎に、シルフィードは嬉しそうに身をゆすらせる。 「お姉さまはもの知りだし、とっても優しいし、それに私に名前をくださったの! 素敵な名前!シルフィード!にんげんたちの名前!」 「そりゃ人間の名前じゃなくて、風の妖精の名前じゃなかったか?」 「そ、そうなの!大昔の妖精の名前なの!ちょっと忘れてただけなのね!」 間違いを指摘されてあせったのか、翼をバサバサと動かしてわめく。 「竜たちの名前では『イルククゥ』。そよ風って意味なの!」 「そよ風…ねぇ?」 シルフィードが翼を動かしたせで巻き起こった、突風のような風を受けながら、 デルフがつぶやく。 「優しそうな名前だね」 「きゅい!ありがとう!貴方も変な名前だけど、私好きよ?」 「変って言うな!」 「いいよデルフ。好きって言ってくれてるんだし」 ホラ見なさい、と言わんばかりに胸をそらすシルフィード。 「やれやれ、あんま調子づかせるのはどーかと思うがね」 そう言いながらも、その声はどこか楽しげである。 シルフィードのあまりの無邪気さが、暗く沈んでいた空気を吹き飛ばしたのだ。 決して口には出さないが、デルフはシルフィードに感謝していた。 「お黙りなのね!イクローさまが良いっていってるの!」 その言葉に、おもわず苦笑するイクロー。 「『様』なんてつけなくてもいいよ。照れくさいし」 首をかしげるシルフィード。 「きゅい?にんげんは『さま』って呼ばれるほうが嬉しいんじゃなかったの? あ、イクローはにんげんじゃなくて悪魔さんだったのね!」 「だから違うって!」 ところで、その頃シルフィードの主人たるタバサは、つまらないと評判の、 ミスタ・ギトーの授業を受けていた。 なにかにつれ、自分の『風』の系統を最強だと語るギトーだが、今日もいつも通り、 黒板の前で風最強論を熱く語っている。こうなると中々授業にはもどらない。 本でも読もうかと思ったが、ふと少し前にシルフィードが学院の外に向かって 飛んでいくのが、窓から見えたことを思い出した。まだまだミスタ・ギトーの 無駄話は続きそうなので、彼女は自分の使い魔が何をしているのか知る為に、 滅多にしない感覚の共有を行い、そして… 「ちょ、ちょっとタバサ!どうしたのよ、鼻血でてるわよ!?」 キュルケがタバサの異変に気付いて声をかける。 よく見れば、タバサの顔は真っ赤になっているではないか。 「む、どうしたのかね、ミス・ツェルプストー?」 騒ぐキュルケに、ギトーが自慢話を中断する。 「あの、ミス・タバサが急に鼻血を、それに顔も真っ赤で」 「ふむ、何か悪い病気かもしれんな…しかたない、ミス・ツェルプストー! ミス・タバサを医務室に連れていってあげなさい」 その言葉にしたがって、キュルケがタバサを立たせて教室から出ようとする。 「大丈夫タバサ?」 どこか呆然としているタバサを気遣うキュルケに、彼女は一言、こう答えた。 「………キノコ」 「は?」 思い出して欲しい、育郎は水浴びをしていた。 さらにシルフィードは人ではないため、ついそのままの状態で話していた事を… そして、タバサが感覚の共有を行った時、ちょうど育郎は着替えようと、 泉から出ようとしているところだったのだッ! これは偶然の事故である! 彼女に、そして育郎にも罪はないのだッ! 「………キノコ」 「本当に大丈夫なのタバサ?」 自分の息子を見られたことなど、露ほども知らない育郎は、そろそろ学院に帰ろうと 身支度を整えたところだった。 「きゅい?もう帰っちゃうの?もっとおしゃべりしたいのに…」 シルフィードが寂しそうな声を出す。 「それじゃあ、また今度僕がここに来る時についてきたら良いよ」 「本当!うれしい!」 きゅいきゅいとはしゃぐシルフィードの姿を見ると、自然と笑みがこぼれてしまう。 「そうだ!お礼に面白いもの見せてあげるのね! 本当はあんまり好きじゃないけど…イクローには特別に見せてあげるの!」 「面白いもの?」 「ひょっとして先住魔法か?」 デルフの言葉に、ちょっと怒ったような調子で言い返す。 「『先住』なんて言い方はしないのね。精霊の力! わたしたちはそれをちょっと借りてるだけなのね」 そう言って、ちょこんとその場に座り、呪文を唱え始めた。 メイジの唱えるルーンとは違う、口語に近い呪文の調べ。 「我を纏いし風よ。我の姿を変えよ」 呪文を唱え終わった途端、風がシルフィードの巨体にまとわりつき、青い渦となる。 「う、うわ!」 そして渦が消えた時、シルフィードの姿は、どこかタバサに似た感じのする、 青い髪の二十歳程の美しい女性の姿になっていた。 『変化』 詠唱者の姿形を変える、高度な呪文である。 「う~~~~~やっぱり二本足ってぐらぐらするから嫌い!」 どこか頼りなさげに立ち上がる、竜からいきなり人間の姿になったので、上手く 動けないのだ。とにかくよく見てもらおうと、育郎の方に向き直るシルフィード。 「きゅい?」 しかし育郎は手で目を覆っている。 「どうしたのね?せっかく変身したのに」 「い、いや…その…」 それも仕方が無いだろう、いやむしろこの場合育郎を褒めるべきかもしれない。 『変化』の魔法の効果は自分自身だけ。 つまり変身したシルフィードは、服をきていないのだ! これが! これが! これが全裸だ! 「あいかわらずてーしたもんだ」 「きゅい!もっと褒めるの!イクローさんも褒めて!」 そう言って育郎に近づこうとするが、まだ人間の姿になれていないため、 その足取りは頼りない。 「おいおい、随分フラフラしてるが大丈夫か?」 「きゅい!大丈わわわわ!」 「え?」 足をもつれさせたシルフィードが、育郎を巻き込みながら倒れこんだ。 「いたたた…やっぱりこの姿嫌い!」 「し、シルフィード!は、はやくどいて!」 「きゅい?」 育郎は地面に仰向けに寝ている状態で、その上にシルフィード倒れこんでいる。 おかげで育郎は、シルフィードが変身した姿とはいえ、そのなかなかに豊満な胸の 感触を十二分に味わっているのだ! さらに! 起き上がろうとするも、うまく身体を動かせない為、胸がこう… 上下左右に縦横無尽な感じなのである! 「よかったな、相棒喜んでるぞ」 「で、デルフ!」 「本当!嬉しい!」 「シルフィード!抱きつくのはちょっと!?」 「モット伯、これが秘伝の型じゃ!よく見るが良い 無! 貧! 微! 普! 美! 巨! 爆! 魔! この八つの型を忘れるでない!」 「おお!見えますぞオールドオスマン!それぞれの型があらわす胸が!」 育郎が邪心なく胸の感触を味わっているさなか、邪心まみれの二人はエアおっぱいの 鍛錬に全力を傾けていた。 「しかし忘れるでない!この八つの型にこだわる必要はないのじゃ! なぜならおっぱいの可能性は無限大! 重要なのは己のイマジネーション! 想像力が新たな可能性を切り開く! 見よ、これがワシが編み出した第九の型………虚!」 「虚…無をさらに下回る領域とは…いや、これは潜みしものの胎動!?」 「さすがモット伯、虚をもう理解できるとは…」 念のために言っておくが、二人は正気である。 安心して欲しい! 「よいか、わしが次に教える事は、基本にして最も重要な『敬意を払う』事! 敬意を払って次の段階に進むのじゃ!それがレッスン4!」 ただし、ある意味病気である事は否定できない!