約 579,052 件
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/177.html
連載&シリーズもの ◆AQLOv83XcMさん un titled1 un titled2 un titled3 un titled4 完結済 ◆JbyYzEg8Isさん とまどい-前編 とまどい-後編 悪徳の町-前編 悪徳の町-後編 違う世界-前編 違う世界-後編 祈り-前編 祈り-後編 いつか-前編 いつか-後編 ひとりじゃない-前編 ひとりじゃない-後編 誓い-前編 誓い-後編 赤-前編 赤-後編 勝手-前編 勝手-後編 秘密1 秘密2 不安-前編 不安-後編 強さ-前編 強さ-後編 小さな手-前編 小さな手-後編 呼ぶ声-前編 呼ぶ声-後編 お仕置き 小ネタ的なもの ほしかったもの-前編 ほしかったもの-後編 そして-前編 そして-後編 暖かい世界-ゼシカ編 暖かい世界-ククール編『そして』の前編と後編の間の話 月を照らす光 味方 -祝福の瞳1 祝福の瞳2『味方』の続編的なもの ずっと二人で-前編 ずっと二人で-後編 完結済 ◆8-104さん 暴走ククゼシカ視点 暴走クク2ククール視点 懊悩ククゼシ暴走ククその後 懊悩ククゼシ・続 懊悩ククゼシ・続続 完結済 ◆9-786 さん猫化シリーズ関連作品 ぬくもりの正体1 ぬくもりの正体2 ぬくもりの正体3 完結済 ◆10-122さん もしも君が死んだら 前編 もしも君が死んだら 後編 メロメロン 完結済 ◆7-857さん●アーンの定義 -アーンの定義-姉妹編 アーンの定義*兄弟編 アーンの定義 アーンの定義~朝食編~
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/118.html
ククゼシスレ4 ~小ネタ~ 4-小ネタ1(25さん) 4-小ネタ2(◆JbyYzEg8Isさん) ~SS~ 進歩(◆JbyYzEg8Isさん) 君を見てる(◆JbyYzEg8Isさん) 約束(◆JbyYzEg8Isさん) 味方(◆JbyYzEg8Isさん) 理不尽(◆JbyYzEg8Isさん) 呪われしゼシカ戦(154さん) 杖と闇と仲間と呪われしゼシカ戦(154さん) 蒼紅の十字(271さん) ククゼシスレ5 ~小ネタ~ 5-小ネタ1(276さん) FF12発売時に 5-小ネタ2(281さん) ~SS~ 手綱(◆JSHQKXZ7pEさん) わかってない-前編 わかってない-後編(◆JbyYzEg8Isさん)
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/231.html
~ドニの酒場~ 「で、ゼシカは?」 ………ホラ来た。オレは内心で舌打ちした。 思ったより斬り込んでくるのが早かったな。そういえば最初から今日のエイトは珍しく機嫌が悪そうだった。 横でひたすら喰って飲んでたヤンガスも、おっという感じでさりげなくこちらの会話に耳を向けている。 「さぁ?ゼシカに用ならリーザス行った方が早いぜ」 「彼女に用じゃなくてククールに用があるからわざわざここまで来たんだろ」 「なんだよ、用って」 「だからゼシカは?って聞いてる」 エイトは手に持ったカップをドンと乱暴にテーブルに置いた。 「ゼシカのこと、ククールは、どうしたいんだよ?」 「なんだよいきなり野暮な質問だな。そんなのお前に話す義理はないね」 「大いにある」 どうやらいつもの適当な調子では交わせそうにない、エイトの怒りのオーラ。…なんだってんだよ。 「ククールがどんな考えや目的をもって旅をしてるのかは、わかってるつもりだよ。 たまにリーザスに帰って、顔を見せてるのも知ってる。 放置して音沙汰なし、なんてことになってないだけ、ククールにしては偉いと思うよ」 …オレをどんな男だと思ってんだよ… 「聞きたいのはそこから先。わかるよね? ぼくの言いたいこと」 「………そんなのこっちが聞きたいくらいだ」 ふて腐れたように酒に口をつける。途端、エイトの拳が脳天をどついた。 「いってぇな!!」 「甘えたこと言うな!いい加減はっきりしたらどうだよ、いつまでフラフラしてるつもりだよ!?」 「いいんだよ!いつ終わるかもわからない旅なんだって、最初にアイツにも話してあるんだから!!」 「そういう意味じゃない。いつまで彼女を”不安に”させたまんまなんだって言ってるんだ!!」 オレはグッと息を詰まらせた。 久々にマジ切れしたエイトに、ヤンガスがハラハラとこっちを見ている。 次第に、勝手に大きなため息がもれた。力が抜け、椅子の背に全身でもたれかかる。 そろそろ、気勢張るのに疲れてきた。 …彼女を不安にさせている。その自覚はある。わかってて、わかってないフリをしている。 だからってどうしようもないんだ。今すぐどうにかできる問題じゃない。中途半端なオレが、今 2人に関わる大事な決断を下しても、結局全て中途半端な結末になるのは目に見えてる。 お互いわかってた。だから2人で納得して、あの日オレはゼシカのそばを離れて旅に出たんだ。 「……なんでお前がそこまで必死なんだよ」 少し落ち着いたらしいエイトも肩を下ろし、見慣れた表情で眉をしかめた。 「………泣くんだよ」 「えっ…」 思わず身を乗り出すと、 「ゼシカじゃなくて。…………うちの、奥さんが」 意外な言葉にあっけにとられ、次の瞬間頬がピクリとひきつった。 ちょっと顔を赤らめるな、エイト。なんでいきなり惚気られてんだ、オレ。 「……ミーティアが………かわいそうだって言って、泣くんだ。ゼシカがかわいそうだって。 あの2人仲がいいし、よく一緒にお茶したりしてるからゼシカも話すんだよ、色々と」 いろいろ? 「…旅立って…たまに前触れなく帰ってきて。2人で会って、話して、抱きしめて、キスして」 え、ちょ、そんなことまでしゃべってんのアイツ? 「次の日にはまた、どこへ行くとも言わず旅に出る。ずっとそれの繰り返しだって」 「そうなるって話はついてんの、ゼシカとは。今さらそれが不満だって言われても…」 「不満なんて言わないよ、ゼシカは。ただ不安なんだよ」 ふいに彼女の笑顔が脳裏に浮かんだ。 「…………ゼシカも泣いてるよ、きっと」 オレを見送る時の、寂しげで儚い、あの笑顔が。 ………バカみたいよね、今さらだわ。アイツも絶対言うでしょうね、今さらだって。だから言わないの。 不安、なのは、アイツじゃなくって。………私自身。 ………私、ククールに大切にされてて、いいのかなって。アイツのこと、変な風に縛り付けてるんじゃ ないかって。私はククールの側にいていいのかなって、最近すごく思うのよ…。 ………………ちょっとずつ、ね。間隔が、空いてるんだ。…会いにきてくれる間隔が。 ほんの少しずつよ?だから…単なる偶然かもしれないんだけど。考えすぎかもって、思うんだけど。 そりゃ旅先で色んなことあるだろうし、きっちり定期的に会いにきてくれるなんて無理なのは わかってるのよ?でも…もしかしてククールは、私に会うのが辛いのかしらって。 本当はもう振り切ってしまいたいのに、私がリーザスで、まるで”待ってる”みたいに彼を迎えるから、 アイツ、来ざるを得ないのかもって。…あの性格だから。放っておけないのよ。 ……もうアイツに愛されてないのかな、って思った時、すごく辛かったの。死にそうになったわ。 その時ね、ものすごく強い欲求が私の中に生まれたのよ。 …………私、ククールに愛されたいって。すごくすごく、愛されたいって、思ったの。 そうしてね、気付いたことがあるの。 私は…今まで本当に何もわかってなかった。私は、本当に恵まれていた。今まで、こんなに 愛されたいと願ったことなんてなかったの。だっていつでも誰かが私を愛してくれていたし、 それは望まなくても手に入るものだったから。 随分前にね…どうして私のこと信じてくれないの、って聞いた時。アイツ、こう言ったのよ。 ”信じられないのはオレ自身なんだ”って。私はその意味をわかってるつもりでいたけど、 それはつもりでしかなかったんだわ。今になってやっとわかったのよ。 …自分を信じられない意味。臆病になる理由。 こんな無知で鈍感な私を、ククールは本当に愛してくれていたのかしら。 ククールの苦しみや哀しみや孤独の深さをちっとも理解できていなかった私を、 彼は本当に大切に思ってくれていたのかしら。…信じられないのよ、全部。 愛されることを望むのが、こんなに怖いなんて。 愛されたいと願うことが、こんなに不安なんて。 私、知らなかった………。 旅立つ日ね。 リーザス村の入り口で、アイツ、「じゃ、行ってくる」とだけ言ったの。 私も「うん、気を付けてね」としか言わなかった。 ………”待ってろ”なんて、一言も告げられてないのよ。 私はルーラを使えないし、キメラの翼も”ククールのいるところ”なんて言ったって、 連れて行ってはくれないし。 ………私にできることって、ここで、リーザス村で、じっと彼が来るのをただ願うことだけなの。 もしかしたらもう鬱陶しいだけの存在の私に、それでも会いにきてくれるかしらって、 ただただ願って、祈ることだけなの。 ………それを不安だって思うのは………わがままかなぁ。ねぇ、ミーティア姫…。 「………ミーティア、泣くんだ。”私のことを思って、ゼシカさんは気丈に振る舞われるんです。 でも私にはわかる。彼女はきっと、誰も見てないところでたくさん泣いているんです”って」 エイトの非難のこもったまなざし。 「大切な人を曖昧な態度で縛り付けておいて、挙げ句愛されてないかもと不安にさせるなんて。 いかにもプレイボーイ然としてはいるけど、ぼくは最低だと思う」 会いに行くのをためらっていたわけじゃない。間隔が空いてるなんて、意識したこともなかった。 ………でも確かに以前みたいに、会いたい、って思ったら即ルーラで彼女の元へ行くということが できなくなっていた。オレの中にもある色々な不安。ドロドロした感情。そういうものを、 彼女に悟られるのが怖かったからだ。今日はいいや。明日にしよう。そんな風に、逃げていた。 ………そんなオレの考えがアイツに伝わらないわけなかったんだ。 彼女は賢い。ただ会いに来る頻度だけでオレの想いを疑ったわけじゃないだろう。 オレに愛されてないんじゃないかと不安に震える彼女が、かわいそうで愛しくて、胸が締め付けられた。 痛む心を押し隠すように、オレは半ば自棄になって言い返した。 「…あのなぁ。じゃあどうしろって言うんだよ、いつか必ず帰るからずっとここで待っててくれなんて そのいつかがわからないのに、そんな適当なこと言えるわけないだろ!?」 「言えばいいんでガスよ」 突然ヤンガスが場にそぐわないのんきな声で振り向いた。 「約束の一つも、すればいいんでガス。それで女は安心するもんでガスよ」 「そうだね」 エイトもにっこり笑って頷く。 「そんな大層な話がしたいんじゃないよ。今すぐ旅やめて腰落ち着けろなんて言うつもりもない。 ただ、安心させてあげてほしいんだよ。約束、なんでもいいよ。ククールお得意の誓いでもいい。 ちゃんと気持ちを伝えて、見えないけどちゃんと約束で繋がってるんだって、言ってあげて」 「…………オイ、あのな、いきなりそんな…」 頭が混乱してきた。ちょっと待て、どうしろって言うんだ。 というかなんでこのオレがエイトどころかヤンガスにまで女の扱い方をレクチャーされてるのか。 「なんだよ、ククールともあろう者が約束の一つや二つ。そもそもキミ、彼女と出会った瞬間から 強引な約束してたじゃないか」 「そうでガス。ごちゃごちゃ考えずドーンとかましてこいでゲス!」 「待て待て待て!勝手に話を進めるな!大体だな、オレはオレなりにちゃんと」 「…そろそろ限界かもしれないでゲスねぇ…」 またも突然、ヤンガスが遠い目で呟いた。 「…何がだよ」 「…うちのゲルダでガス。”女を不安にさせて泣かして知らん顔なんざ、男の風上にもおけねぇ、 今度会ったらはかいのてっきゅうでぶっ潰してやる!!!!”…って息巻いてたもんで」 ………………あの女盗賊が憤怒の表情で地面を踏みならしているところが容易に想像できた。 つーか………………………………おい、今、”うちの”ゲルダ、っつった? 「今から行っといでよククール。今ならまだゼシカ起きてるだろ?」 「………何を言やいいんだよ…」 「思ったままでいいんじゃない?これだけはゼシカに誓える、約束できるってこと」 そう言われて、すぐに浮かんだ言葉は確かにある。だがそれを言ったところで、何か変わるだろうか? オレの想いすら、疑心暗鬼に陥って疑ってしまっている彼女を。そんなありきたりな一言で、 何もかも解決できるものだろうか。まず謝って、それから… …………脅えてるのか、オレは。また、信じられないでいるのか、ゼシカにこんなにも愛されている オレ自身を、信じられないなんて、なんて贅沢者なんだ、お前は。 ふいに頭の中に張りつめていたものが途切れて、オレはふっと笑った。 もういい。今はただ会って、その涙を拭ってやりたい。 立ち上がりマントを翻すと、いつも通りのヨユーの笑みを浮かべてエイトとヤンガスを振り返る。 「ちょっと行って、マイハニーの不安を溶かしてくる。悪いが今夜は戻らないから、勘定頼んだぜ」 支度をするオレの背中に、エイトがゆっくりと声をかけた。 「…あのね、ククール。ゼシカは、待てと言われればいつまででも待てる人だよ。それが必要なことならね。 でも、必要がないと判断したら自分から飛び出すことのできる、強くて賢い人だ。それはキミが 一番よくわかってるだろ。だから彼女を縛るかもしれないなんて、悩むことはないよ。 ていうかそれって単なる自惚れ屋さん。約束なんて、ちょっとした心の支えでいいんだから」 さっすが兄貴でゲス、と騒ぐヤンガスの声を背中に聞きながら、オレはルーラで彼女の元へと飛んだ。 本当はなんて言おうか、まだ迷っている。 でもきっと、愛しいあの顔を見れば、本当に伝えたいことは自然に口から出てくるはずだ。
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/408.html
前回のカリスマッチョで散々ククのお腹を撫で回したゼシカにククールが 「………あのよー。こんだけ人の腹好きに触ってんだから、後でゼシカも触らせてくれよ」と言ってみたら 「うん、いいーわよ」とあっさりOKされっちゃったよの流れ。 ↑の別バージョン ククールのターン※微エロ注意
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/173.html
味方と繋がる話 「ゼシカはこのアルバート家の大切な跡取りです。その結婚相手には、この家を一緒に守っていけるしっかりした方を望むのは当然のこと。何度いらしても無駄です、お引き取りください」 ゼシカとの付き合いの許可を求めて、こうしてアルバート家に訪れるようになってから三カ月になる。 オレを嫌ってるアローザさんの神経を逆なでしないように、リーザス村には住まずにベルガラックのギャリング邸に住み込んで用心棒のマネごとをしてる。 ゼシカにはずっと寂しい思いをさせてたから、三日と開けずに会いに来るようにしてるけど、アローザさんはなかなか態度を緩めてはくれない。 「ごめんね、頭の固いお母さんで。本当にわからずやなんだから」 そして、こんな風に憤慨してるゼシカの頭を冷やすために、ポルトリンクとの間にある海辺を一緒に歩くのも、もう何十回目になるか。 「二言めには『アルバート家、アルバート家』って。お母さんは私自身よりも、アルバート家の方が大事なのよ。跡取りとしての私しか必要じゃないんだわ。もうたくさんよ」 初めから覚悟してたこととはいえ、オレが原因でゼシカをこんなふうに苦しめてることは、結構辛い。 「そんなことないさ。ゼシカ自身を大事に思ってるに決まってるだろ。考えすぎだ」 「だったら、少しは私の意志を尊重してくれたっていいじゃない。ククールは頭に来ないの? こんな風に追い返されるの37回目なのよ?」 「ゼシカ、そんなの数えてんのか。だったら30回目あたりで言ってくれりゃあ良かったのに。そしたら記念ディナーにでも、お誘いしたのにな」 「何バカなこと言ってんのよ。私は少しは怒りなさいって言ってるの。これだけ足しげく通ってるんだから、少しは話を聞いてくれたっていいじゃない。いつも家訓がどうのってうるさいくせに、こんな失礼な事ってないわよ」 ゼシカがいつもこうやって怒ってるから、オレまで怒ると収拾つかなくなりそうで、却って頭が冷える・・・なんて言ったら、ますます怒るんだろうな。 「失礼だと思ったことはないんだよ。追い返されるにしても、とりあえず会ってはくれるし。ゼシカの意志だって、それなりに尊重されてると思うぜ? その証拠に今だってこうして二人きりでいられるだろ? 会うこと自体、邪魔されてるわけじゃないんだからな」 これはゼシカの頭にますます血が昇るだろうから言わないけど、オレにはどうしても貴族や金持ちへの偏見があって、『財産目当て』とか『手切れ金いくら欲しい』とかの類いの言葉を一度くらいは浴びせられるんじゃないかと覚悟してた。 でもアローザさんはただ『気に入らないから認めない』としか言わない。 はっきりしてて、気持ちいいくらいだ。そういう所はゼシカとそっくりだと思う。似た者同士だから、ぶつかっちまってケンカになるんだろうな、この母娘は。 「私が誰と会おうと、お母さんに止める権利なんてないわよ。これ以上わからずやでいるつもりなら、いつでも家を出てやるわ」 「だから、それはダメだって。オレは何だかんだ言っても、母親が心配で家に戻っちまうようなゼシカが好きなんだから、無理すんなよ」 「無理してんのは、そっちじゃない。どうしてそうやって我慢するの?」 そう言われても、オレは無理や我慢をしてるつもりはないんだよな。 駆け落ちみたいな形で連れ出したりしたら、ゼシカはもう家には戻れなくなる。 オレにはもう親はいない。生まれた家だって残ってない。 だからこそ、それをゼシカから奪うようなマネだけは絶対にしたくないんだ。 それにリーザス村にとっても、ゼシカは大事な存在だ。村の中を歩いてる時でも、行き交う人たちは皆が笑顔でゼシカに挨拶していく。 ついでにオレにも『あんたも懲りないね』とか『頑張れよ』とか『しっかりやれ』とか声をかけてくれる。おまけに『うまくいかないからって浮気するなよ』なんて、よけいなお世話だと思うことまで言ってくれるヤツもいる。 それを思うと、どうして自分がリーザス村で暮らすなんて無理だと思い込んだのかと、笑えてくる。 ドニの町でもベルガラックでも、リーザス村でだって、付き合ってみたら住んでる人間なんて、どこでもたいして変わらない。修道院みたいな特殊なところでさえ暮らせてたのに、リーザス村では無理だなんて、そんなことバカなことあるわけないのにな。 でも・・・。 どうしてなんだろう。こうして真っすぐにオレを見てくれるゼシカが好きなはずなのに。 時々・・・本当に時々なんだけど、その瞳から目をそらしたくなってしまうのは。 そうしなきゃならないような後ろめたいことなんて、もう何一つないはずなのに。 リーザス村に戻ると、今日も見回りに励んでるポルクとマルクが走ってきた。 「ククール兄ちゃん、今日もまたダメだったのか?」 「おう、どうやらこれで37回目らしい。そうだな、これが50回目になったら、記念にお前らもベルガラックに遊びに連れてってやるよ。カジノは十年早いけど、にぎやかな街だからそれなりに楽しいぞ。それともオークニスで雪遊びの方がいいか?」 「・・・ククール兄ちゃん、そうやって平気なふりしなくていいんだぞ。少なくともオイラたちはゼシカ姉ちゃんとククール兄ちゃんの味方だからさ」 「うん。無理することないと思う」 「バーカ。お前らみたいなガキに心配してもらわなきゃならないほど落ちぶれちゃいねえよ。それより今日は時間があるから、稽古つけてやるよ。抜きな」 二人とも毎日、村中走り回ってて足腰は鍛えられてるし、サーベルトに基礎は教わってたおかげで筋はいいから、こうして剣を教えてやるのは結構楽しい。 それにしても、こいつらに『ククール兄ちゃん』て呼ばれると、自分でもおかしくなるくらい胸がときめくんだよな。 親がまだ生きてた頃、遊び相手がいなかったオレは弟が欲しいと思ってたことを思い出す。でもそう言うと母さんは困ったような顔をしてたっけ。 あの頃の何も知らなかったオレには、その表情の意味なんてわからなかった。ちょっと悪いことしたと思う。そりゃあ困るよな、『兄ならいる』なんて言うわけにもいかなかっただろうしな。 陽が落ちかかり暗くなるギリギリ前に、ゼシカを屋敷まで送っていく。アルバート家は夜になると家人でも出入り禁止になるから、その辺りは気をつけないと面倒なことになる。 ゼシカが家の中に入るのを見届け、ベルガラックに戻ろうとルーラの呪文を唱えようとした時、目の端に何かおかしな光が映った。 東の方角、リーザス像の塔がある方だ。 気のせいだろうとは思う。たぶん木が揺れた時の光の加減だ。この村の中から、あの塔を見ることは出来ない。距離がありすぎるし、木が邪魔にもなってる。 でも何だ? 何かが起こる前のような、この胸騒ぎは。こういう感覚になる時は、たいていロクなことにならない。面倒に巻き込まれる前兆だ。 ・・・違う方向からなら、絶対無視するんだがな。世話になったリーザス像様の様子を見にいかないってわけにはいかないよな。 この塔には何度も昇ってるし、出てくる魔物も雑魚ばかりだけど、賊が潜んでないかと全部のフロアを確認しながらだと、それなりに時間はかかる。最上階のリーザス像まで着く頃にはすっかり夜も更けていた。 とりあえずどこにも異常はなかった。あの極悪宝漁りコンビ、エイトとヤンガスの通った跡に、めぼしい宝なんて残ってるはずないし、リーザス像の瞳に埋め込められてたクラン・スピネルも、今はもう無い。像本体を盗んでいく根性のある盗賊もいないだろう。 気の迷いだってわかってたはずなのに、とんだむだ足だ。オレらしくもない。 ・・・やっぱりゼシカたちが言ってたように、少しはまいってんだろうか。 アローザさんに嫌われてるのは、初めからわかってた。そのことでゼシカを板挟みにしてしまうことも、予想はできてた。何もかも覚悟した上で、ゼシカと一緒にリーザス村で生きていくと決めたはずだった。 でも一つだけ、全く予測できなかったことがあった。 オレの死んだクソ親父が昔、未亡人になりたてのアローザさんをしつこく口説いて怒らせてたってことだ。その親父の面影を強く残してるってことが、オレを嫌う理由の一つにもなっている。 もちろんオレ自身の悪い評判と相俟ってのことではあるけど、あれだけはどうしても少しキツくなる。 オレを通して、もうこの世にはいない親父を憎む目。あの目がどうしても思い出させる。 十年以上もの間、ずっと向けられていた瞳。 最後まで向き合えないままに別れてしまい、今どうしているのかもわからない、あいつのことを・・・。 塔を出ようと踵を返した時、ここに来たのはこれに呼ばれてたんだってことがわかった。 塔の上から流れ落ちてくる水が、窓枠のようなものを形作って、階段の横に見覚えのあるものを浮かび上がらせていた。 月影の窓。願いの丘とトロデーン城で見たのと同じものだ。 ・・・開けるしかねぇんだろうな。今までの経験で、こういう現象には逆らっても無駄だってことは学習済みだ。少なくともイシュマウリは敵じゃないことはわかってるしな。 そう思って扉に手を触れようとした瞬間、向こう側から目を開けていられないような眩い光が溢れ出す。そしてようやく光が収まり目を開けると、初めからそこにいたかのように、月影のハープを手にしたイシュマウリがすました顔して立っていた。 いろんな事態を想定して、どんな場面に出くわしてもなるべく動揺を見せないようにと努めてきたが、世の中は本当に予想もつかないことに満ちている。この入り口が向こうから開くなんて、アリなのかよ。 「・・・久しぶり。その節はいろいろ世話になったな。船は有効に使わせてもらったよ」 イシュマウリが何も言ってこないもんだから間がもたなくて、とりあえず挨拶しておく。 「でも、何でまたオレの前に現れたりしたんだ? 願いを叶えてくれるのは一度限りなんだろ? 二度でも特例だろうに、三度目なんてのは反則なんじゃねえの? 第一、それ以前にオレには叶えてほしい願い事なんてないぜ」 イシュマウリはハープをつま弾き始める。 「確かに、この月影の窓が人の子の願いを叶える為に開くのは、生涯にただ一度きり。それを二度開き、願いを叶えたのは全てこの時のため。月の世界より願いを運び、この私の手で扉を開くため。古の時代よりこの地を見守りし美しい像。どうかその願いを聞き届けておくれ」 ハープが奏でる曲が次第に大きくなっていく。ラリホーとメダパニを一度にかけられたように意識が遠のき、頭の働きが鈍って上下の区別もつかなくなる。 ああ、絶対こうなるとは思ってたよ。面倒に巻き込まれてロクなことにならないってな。わかってたのに油断した。 せめてイシュマウリに『お前の演奏、モグラ以下』と一言くらい悪態吐いてやりたかったが、そんな猶予は与えてもらえず、ハープの音が一際大きくなったのを感じた直後、完全に目の前が真っ暗になった。 あー、気持ちわりぃ。 頭いてぇし、耳鳴りするし、吐き気もする。口の中がジョリジョリいってるし、波音らしきものも聞こえるから、海岸ってとこだな。世界がグルグル回ってる気がして、目を開ける気にならない。 イシュマウリのヤロウ、有無を言わさずやってくれるもんだぜ。 あいつの言葉を要約すると、こういうことか。 『一回だけなら願いをタダで叶えてやるけど、二回目からは有料。その時の分の取り立てに来た』と。 いいさ、それは。タダより高いもんは無い。世の中はギブアンドテイク。アスカンタの王に恩を売れたことも、船が手に入ったことも、無駄じゃなかった。返せというなら借りは返す。ただそれだけのことだ。 だけど何をすればいいかを教えてもらうぐらいは、当然の権利だと思うんだがな。 地面が揺れるような爆音が響き、慌てて飛び起きる。いざ起き上がってみると、頭痛も吐き気も耳鳴りも無くなってた。 イシュマウリに文句つけてる場合じゃなかった。ちょっと呑気に生きてると、すぐに緊張感がなくなる。我ながら困ったもんだな。 爆音がした方に目を向けると、月明かりの中、数十匹の魔物と、岩を背にそれを一人で迎えうってる人影が目に入った。 再び爆音。襲われてる人間の方が、イオナズンを放った音だ。加勢しようにも、迂闊に近づけばオレまでふっとばされそうだ。 だけどこの最高位の爆発呪文でも、魔物たちの数は全く減ってない。それどころかその中の何匹かが、反撃のイオナズンを放った。その呪文は光のカベに反射し、呪文を唱えた相手に跳ね返される。マホカンタの効果だ。 こんな高度な呪文の応酬の中でオレの出る幕があるのかどうか怪しいが、見ぬフリするわけにもいかない。とりあえず自分にマホカンタをかけておく。 魔法は無効だと知った魔物たちが、武器を振り上げるのが見えた。ここから一気に詰めるのは、無理な距離だ。 「バギクロス!」 風の呪文の中では最高位の呪文だが、これだけの数の魔物を一度に切り裂くのは無理だ。 でも新手の存在が牽制にはなったようで、魔物は再び少し遠巻きになる。そのスキにオレは襲われてた人間の隣に駆け寄った。 「大丈夫か? オレは回復呪文なら大抵使える。必要があるなら言ってくれ」 「あ、ありがとう。助かるわ」 その声を聞いて思わず敵から目をそらし、声の主の顔を見てしまう。 女!? 男装してるが間違いなく、うら若き乙女。それもかなりの美女だ。 だけど驚いてる場合でもない。魔物の種族を確認すると、アークデーモンやデスプリースト、リザードファッツなんていう、力も体力も有り余ってるようなヤツばかりだ。ほとんど無傷なヤツも結構いる。 防具と言えるものも身につけず、レイピア一本でやり合うにはキツい相手だが、レディのピンチとなると、やる気は五割増しくらいにはなる。 「バイキルト!」 隣の美女が筋力増強の呪文をオレに唱えてくれる。だけどマホカンタがかかった状態だから当然のごとく、その呪文は術者本人に跳ね返った。 「あいたた、いたたたた!」 攻撃魔法が跳ね返ったわけでもないのに、その女性はいきなり腹をおさえて苦しみだした。 だけど今は治してやってる余裕はない。魔物たちが距離を詰めだし、襲いかかるタイミングを見計らってる。 ここは大技使って、最短時間で仕留めるしかない。 意識を集中して剣先に魔力を送り込み、地面に突き立てた。 魔法の力を呼び水に、雷が地面を這い上がり、突き立てた剣に到達する。沸き上がった地獄の雷、ジゴスパークを解放した。 さすがに、この顔触れを一発では仕留められない。間髪入れずに、もう一発放つ。それでようやく、残ってた魔物もあらかた倒すことができた。 だけど一匹残しちまった。この輪郭としぶとさはボストロールか。 頭上にこんぼうが振り上げられる。剣を地面に突き立てたままのこの状態じゃあ、とどめはさせない。死なないように防御するしかない。 だが、その必要はなかった。その次の瞬間、ボストロールの首は胴体とキレイにお別れしたからだ。 ついさっきまで苦しそうにうずくまっていた女性が、晴れやかな顔で剣を鞘に収めた。伝説の剣、人間世界最強の剣とも言われてるメタルキングの剣だった。 「危ないところをありがとう。今の技すごいわね。初めて見たわ、あんなの」 「いや、こちらこそ。おかげで無傷で済んだ。それより、どこかケガしてたんじゃないのか?」 「ああ、違うのよ。バイキルトのせいで、お腹の子がビックリしちゃったみたい。あなたも人が悪いわね。マホカンタかけてあるならあるって言ってよ」 思いっきり背中を叩かれた。思わずムセそうになる。信じられねぇバカ力。ボストロールの首を一撃で切り落とした剣の腕といい、女にしとくのがもったいない。 ・・・それよりお腹の子って・・・妊婦!? 思わず腹の辺りをマジマジと見てしまう。 「まだ五カ月だから、そんなに目立たないわよ。でもさっきは本当に死ぬかと思ったわ。あ、私のことはリズって呼んで」 死ぬなんて、少しも思ってなかったとしか思えない調子で、高らかに笑ってる。 ゼシカのことも逞しいとは思ってたけど、この女性は更に上を行ってるな。 ゼシカ並の魔法に、オレより強いかもしれない剣技。大体、あれだけ大量の魔物が一度に現れるのを見たのは初めてだった。この女性を狙ってのことだとしたら、ただごとじゃない。 でも、オレの心をより大きく占めていたのは別のことだった。 「オレはククールだ。・・・あんた、一度どこかで会ったことなかったか?」 夜中だけど月明かりがやけに明るいせいで、彼女の姿がはっきりと見てとれる。流れるような稲穂色の髪と春の若葉のような明るい碧の瞳。どうも見覚えがある気がする。こんな美人に会ったことがあるなら忘れるはずがないんだけど、どうしても思い出せない。 「やだ、それって口説き文句?」 言われてみて、ちょっと恥ずかしくなる。確かにベタな口説き文句に聞こえなくもない。 「ないわよ、会ったことなんて。こんな絶世の美男子に、一度でも会ったことがあるなら忘れたりするわけないじゃない」 もう一発、バカ力で叩かれた。やっぱり声にも聞き覚えがあるような気がするんだけどな。 当面の魔物は全部倒したとはいえ、こんな時間に妊婦を一人で放り出すわけにもいかないんで、家まで送っていくことにした。 切り立った崖を左手、海岸線を右手に見ながら、道らしきもののない草の上を歩く。この辺りにはリズとその旦那以外の人間は誰も住んでないから、道なんてものは無いらしい。当然店屋もないから、全てを自給自足で賄ってる。 こんな時間に外をうろついてたのは、まんげつ草を詰むためだそうだ。まんげつ草は普段は雑草と見分けがつかないが、満月の夜にだけ花を咲かせるから、自生してるのを集めるには、こういう夜に探す方が効率がいいからだ。 何でも彼女の遠いご先祖とやらが、魔物の恨みを買うようなことをして、そのせいで魔物に狙われることも少なくないから、今夜のようなことは慣れっこなんだと、笑い話にならない話を笑いながら口にする。 「今のうちに少しでも多くああいう魔物を倒しておけば、それだけ私の子供たちを狙う魔物の数は減るでしょう? 出来ることなら、この子が生まれる前に全滅させたいくらいよ」 魔物の恨みを買うってことは、ご先祖とやらのしたことはむしろ善行なんだろうけど、オレだったらきっと、とばっちりくらわせやがってって恨むだろうな。 開けた草原に出たところで、進路を右に取る。 何だろう。辺りの風景に見覚えはないのに、道も目印もないこの場所で曲がることが自然に感じる。 今日はいろいろと、おかしいなことばかりだ。 やたらとマルチェロのことを思い出したり、ゼシカたちがやけに心配してきたり、知らないはずの人物や場所に覚えがあったり。 イシュマウリに問答無用で飛ばされたってのが、何よりも極めつけだけどな。 祝福の瞳2
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/203.html
329 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/08/21(火) 00 21 26 ID Q8OjqrnL0 坊主は筋金入りのマザコンという 330 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/08/23(木) 21 56 33 ID dQPSyXtT0 ククール似でマザコンってすごく想像しにくいな。 普通の家庭で育ったらああいう性格じゃないだろうし もういっそゼシカ似の娘とククール似の娘の姉妹でもいい気がしてきた。 331 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/08/24(金) 00 53 48 ID K0Ez9Pq+0 ククールの心労が半端ないっスよそれ 個人的には誰似でもいいけど、ママにべったりでむしろ父親からママを護ろうとする 生意気なクソガキ希望。我が息子と真剣にママを取り合うバカ親父w 332 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/08/24(金) 01 09 51 ID MxNUeOuP0 ベッドに入ってくんずほぐれつしてる2人の間に 「ずるいずるい~ボクも~!!」と入りたがるとか。w 334 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/08/26(日) 01 33 38 ID SThTwL2m0 332 クク「おまっ、バカヤロッ!出てけ!ここからは大人の時間だっっ!!」 ゼシ「何言ってんのよ。一人で寂しかったの?いいわよ、今日は一緒に寝ようか」 坊主「うんっ!ママだいすき~(ムギュ~」 ゼシ「ほら、狭いから向こう行ってよあなた」 クク「~~~~っっぐぐぐ…っ」 坊主「パパ暑いからあっちいってー」 クク「…わざとだな?お前わざとなんだろ?なぁ」 ゼシ「うるさいわよ、メラっっ!!!」 クク「ギャーーー」 こんな感じですかわかりまry 338 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/09/01(土) 00 16 15 ID kyrCD+sM0 323を読んで、自分はこんなの思いついてしまった 子「パパはなんで女神様のおムコさんをやめてママと結婚したの~?」 ク「だってなぁー…女神様相手じゃ…ヤレな…っっっっててててていぢぢぢぢぢぢぢ なななななにすんだよくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」…」 ゼ「ちょっと!子供たちの前でまたくだらない事教えて…!」 ク「いでぇ、いでぇよ~~…放して~……ふがががが…」 -------------------子供達の見守る中引きずられて退散-------------------- すんません厳しい残暑で頭がイカレたのかもしれません。 339 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/09/03(月) 20 35 18 ID STWcwElm0 334といい338といい結婚しても生傷絶えないな、ククは。 二人の魔法が両方使える子供が生まれたら恐ろしい。 子供のいたずらでメラゾーマ級のメラ当てられそうw 340 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/09/04(火) 07 23 07 ID IVDzmugD0 ゼシカに加えて、姑(ゼシカママン)の目も光ってるよな。 ケコーン前の素行が素行だけに、…うちのゼシカを泣かせてないでしょーね?みたいな。 ああ、苦労するねクーさん… 341 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/09/07(金) 12 36 12 ID hLdsGcfDO 322GJ!いいねぇ。そういうの好きだ。 なんつーかドラクエでアローザほど姑が似合うキャラはいないかもな。w 個人的にククールに似た娘とゼシカに似た息子が見てみたい。 どっちに似ても美形だよなぁ。 342 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/09/09(日) 12 46 58 ID T4O5ssp50 341 居酒屋に入り浸って男達を色仕掛けで引っ掛けてる娘…イヤンw 343 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/09/10(月) 03 20 52 ID /FMJMfv5O 323-324、GJです! 可愛い娘さんだなぁ。 ちなみに自分は、容姿も髪型も性格もゼシカにそっくりなのに、なぜか胸だけが似なくて華奢な貧乳の女の子をイメージしました。 魔法は母親譲りだけど、ムチスキルの代わりに、女だてらに父親譲りの弓の腕前を持ってたりしたらカッコいいなあ、とか勝手に想像。 自分の中ではずっと、二人の間の子どもはククールそっくりの男の子がいいと思ってたけど、 322を読んだらゼシカ似の女の子とククール似の男の子の双子もいいなと思ったり。
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/146.html
『ゼシカもうれしいだろ? どうだ? 兄のカタキを討った感想は?』 あの時のククールの言葉が、カンにさわったの。 『そのまま夢を見続けていれば良いものを。我が名は暗黒神ラプソーン。我の手足となって働くことを、光栄に思うが良い』 薪の爆ぜる音で目を覚ました。 夢を見ているのか、現実なのか、しばらく頭がハッキリしない。 指を動かして確かめる。大丈夫、自分の意志で動く。私はもう解放されたんだ。 そう、覚えてる。私たちは杖を持った黒犬を追いかけるために、昨日リブルアーチを出発して、そしてここで野営をした。 身体を起こすと、もう空が白んでいた。私の見張り番の時間じゃないの? 「もう起きたのか? まだやすんでていいんだぞ」 ククールが火の番をしていた。 「やすんでていいって、見張り番、私でしょう? どうして起こしてくれなかったの?」 「ゼシカはまだ本調子じゃないだろ。いいから横になってろよ、疲れてるみたいだぞ」 「・・・そんなに私、足手まとい? 邪魔なら邪魔ってハッキリ言ってよ! わかってるわ、ただのお荷物なんだって。私なんて必要じゃないのよ!」 「落ち着け、ゼシカ」 ククールが私のそばまできて、声を落として言った。そうだ、まだ他の皆は眠ってるのに、こんな大声出すなんて、どうかしてる。 「気に障ったんなら悪かった。ごめん、勝手なことして。でもゼシカの身体が心配だったんだ。それだけだ、わかってくれ」 「ごめん、なさい」 わかってる。私を気遣ってくれたってことぐらい。 「いいよ、気にするな。あんなことの後だからな、気も立つさ」 ・・・皆が私に優しくしてくれる。 私が操られたのは、杖の由来を知らなかったトロデ王のせいだ、なんて笑い話のように言う。誰も、一言だって、私を責めない。 優しくされればされるほど、罪の意識が大きくなる。どうすればいいのか、わからなくなる。もしかして、私はまだ囚われているんだろうか。 きっとそうだ。そうでなければ、こんな卑怯な自分を許せるはずがないもの。 「ゼシカ。何を抱え込んでるんだ?」 心臓が跳ねた。 ククールは怖い。勘の鋭い人だから。いつもそう、見透かされてる。 「話せば気が楽になることもあるかもしれないぞ? まあ、無理にとはいわないけど」 お願い、それ以上は訊かないで。そうでなければ、私はもうここにはいられなくなってしまう。 「・・・やっぱりダメだな。受け売りは」 ククールが、私の両肩をつかんだ。 「無理でもなんでも、話してみろ。何に苦しんでる? まだ何か不安があるのか?」 ・・・逃げ出してしまいたい。でも、彼の真剣な視線から目をそらせない。全てを映し出す湖のような瞳。私の心の醜さを、隠してなんておけないと思い知らせてるんだろうか。 やっぱり許されないんだ。あんなことをしてしまって、元通りになんて、なれるはずがないんだわ。 「・・・私、みんなを殺そうとした」 「それは仕方ないだろ? ゼシカは操られてただけなんだから」 そう、私は確かに操られていた。でも、それ『だけ』じゃない。 「違うの。私、自分の意志で、みんなのことを殺そうとしてた」 暗黒神は、人の心の闇に付け込んで、負の部分を増幅させて宿主に命令をきかせる。でも逆に言うと、宿主の意志に完全に反することには、従わせられないということ。 「あいつ、ラプソーンは初め、サーベルト兄さんの姿で私の心に入り込んだの。そして、七賢者の血筋を全て絶てば、死の呪いが解けて生き返ることが出来るって、そう言った。 私、信じちゃったのよ。兄さんの言葉を疑うなんて、考えられなかった。邪魔する人は許せなかった。だから、みんなとも戦ったの。あれは私の意志でもあったのよ」 「・・・人の弱みにつけこみやがって・・・」 ククールが苦い顔で吐き捨てるように呟いた。私の気持ちを考えてくれてるんだってわかる。私には、そんなふうに思ってもらう資格なんて無いのに。 「・・・だって私、初めから、みんなのことを憎む気持ちがあったから」 これを言ってしまったら、もう終わり。もう元には戻れない。 「エイトやヤンガスに対して、ずっと思ってた。どうして、もっと早くリーザス村に来てくれなかったのって。そうしたら、サーベルト兄さんは殺されずに済んでたかもしれないのにって」 関所が通れなかったんだって知ってる。でも思わずにはいられなかった。ドルマゲスの存在をもっと早く知ることが出来ていたら、兄さんを一人でリーザス像の塔に行かせたりはしなかったのに。 「ククールの事も憎らしかった。敵討ちが終わって自由だって、嬉しそうだったから。私は少しも嬉しくなかったのに・・・。自分だけ楽になってるんだと思ったら、私だけおいてけぼりにされたみたいで悲しかった。どうしようもなく憎くなったの。 その上、兄さんを生き返らせる邪魔なんて、させないって思った。だから戦ったのよ」 最低だ、私! それなのに何食わぬ顔して、また皆の仲間に戻ろうとした。そんな資格あるわけないのに。優しさにつけこんで甘えた。私だって暗黒神と同じなんだ・・・。 「ゼシカは強いな」 ククールからの答えは全く予想外のものだった。 「オレだったら、そんなこと、とても打ち明けられない。ゼシカは立派だよ。正直でまっすぐだ。確かにあの時のオレには気遣いが足りなかった。認めるよ、ごめんな」 ・・・皮肉でもイヤミでもない、本心からの言葉だとわかる。軽蔑されると思ったのに、あんまり優しい言葉で返され、体中の力が抜ける。 「お、おい、大丈夫か?」 心配そうな声。支えてくれる腕。これは現実? それとも、まだ夢を見ているの? 自分に都合のいい幻想にすがっているだけ? 皆と戦ってる途中でようやく気がついた。あの優しかった兄さんが、仲間と戦うなんてひどいこと、私にさせるはずがないって。でも、その時にはもう遅かった。 もう完全に身体は支配されていて、指の一本さえ自分の意志ではどうにもならなかった。 何てバカだったの。その時まで、私は気づいてさえいなかった。自分の身体が自分の意志とは関係のないところで動いていたことに。 ずっと兄さんの姿に化けていた暗黒神の話ばかり聞いていて、どうやってリブルアーチまで行ったのかも、何も覚えていなかった。 もっと早くそのことに気づいていたら、抵抗出来ていたかもしれない。自分の身体を取り戻せていたかもしれないのに。 「本性を現したあいつは言ったわ。『そのまま夢を見続ければ良いものを』って。私は現実から逃げて、兄さんの幻想にすがってしまったのよ。 こんな私がどうやって、暗黒神なんてものに勝てるっていうの? 無理に決まってるじゃない。もうイヤなのよ、なにもかも! もう離して! ほっといてよ!」 それでもククールの腕は緩まない。 「ほっとけるわけないだろ。誰だって、そんなにキレイな部分だけで生きてるわけじゃないんだ。人を憎んだりなんて誰でもする。そんなことで悩む必要なんてない」 「何よ、ククールなんて私のこと、仲間とも思ってくれてないくせに! わかってるのよ、信じてくれてないって。それなのに、こんな時だけ優しいフリしないでよ!」 ・・・ひどい言葉。私は、心配してくれる人に、こんなことを言える人間だったんだ。 ククールの腕が、私から離れた。 当然よね。あんなこと言われれば、誰だっていやになるわ。 ・・・終わったんだ。もう私には何もない。目的も仲間も失ってしまった。リーザス村にだって帰れない。こんな私に兄さんのお墓の前に立つ資格はないもの。 「ゼシカの言う通りだ」 ククールの意外な言葉に、私は思わず顔を上げる。 「わかってる、オレがどれだけゼシカにひどいことしてきたか。本音を隠して、自分の心に壁を作って、ゼシカのことは突き放してきた。それなのに優しいフリだけされるってことが、どんなに寂しいか、考えることもしなかった。本当にすまなかったと思ってる。許してほしい」 優しすぎる言葉に思わず、涙がこぼれた。ダメ、ここで泣くのはズルい。 ククールは手袋を外して、私の前に手を差し出した。 「覚えてないかもしれないけど、リブルアーチでゼシカが受けた傷は、ほとんど全部オレがやった。痛い思いさせてすまなかった、そのことも合わせて償いをさせてほしい。望むことを言ってくれ、どんなことでもする。この手も、身体も、全部そのために使う」 やめて。これ以上優しくされたら、私きっとまた、それにつけこんでしまう。 「お願い、もう、これ以上、優しくしないで。私に構わないで」 「却下。もっと、ちゃんとしてほしいことを言え。言いたいことがあるなら、いくらでも聞く。行きたいところがあるなら連れていく。したいことがあるなら手は貸す。何でもいいんだ、望んでくれ」 望み・・・。そんなものを持つことが許されるの? やらなくちゃいけないことはある。だけど、また逃げ出すかもしれないのよ、私。 でも・・・差し出されているのは左手。ククールの大事な利き腕。いつも武器をとって戦う手。それを私の望むことのために使うと言ってくれている。 伝わってくる。決して中途半端な覚悟で、この手を差し伸べてくれてるんじゃないって。 もしも、この手に何かを望むことが許されるなら、それはたった一つしかない。 少しも揺らがず待っていてくれる手を、私は震える両手で握り締めた。 「・・・私、必ず杖を破壊する。どんなことをしても、ラプソーンは止めてみせる」 堪えきれず、涙が溢れてくる。でも、言わなくちゃ、最後まで。 「・・・でも、私は弱いから・・・一人じゃ怖いの。自信がない。だから・・・どうかお願い。そのために・・・私に力を貸してください・・・」 私の両手に、更にククールの右手が添えられた。 「わかった・・・。やるべきことは決まったんだ。後はそれに向かって進めばいいだけだ。・・・もう、何も心配しなくていいからな」 優しくて、力強い言葉。私に前に進むための力をくれる。大丈夫、私また、戦える。 「・・・ごめんなさい、さっきはひどいこと言って。あんなこと言うつもりなかったの。許して」 ククールは優しく笑いかけてくれる。 「いや、ほんとのことだからな。ゼシカが許してくれるのなら良かった。あんまりさ、真面目に考えすぎるのは、どうかと思うぜ? オレも結構、心の中で他人に悪態つきまくるし、人の弱み見て安心したりもするし、人間なんて多分、そんなもんでしかねえんだからさ」 ・・・嘲りの言葉のようだけど、違う。とっても優しい言葉に聞こえる。 そんなものでしかないから、人は許しあうんだって。自分自身のことも許してやれって。そう言ってくれてるのよね、きっと。 「ありがとう、ククール。あなたのおかげで私、救われた。もう大丈夫、逃げたりしない。みんなが起きたら、ちゃんと謝って、お願いするわ。こんな私でも仲間でいさせてくださいって」 ククールは私の手を一瞬だけ強く握って、それから手を緩めた。 私も握り締めていた手をほどいて、涙を拭う。 「その必要ないぜ、ゼシカ。ちょっと待ってな」 手袋をはめ直したククールは、大きく息を吸い込んだ。 「おい、お前ら! いつまでもタヌキ寝入りしてんじゃねえぞ!」 ・・・タヌキ寝入り? エイトとヤンガスがバツが悪そうに起き上がる。ミーティア姫も身体を起こし、トロデ王は馬車から出てきた。 「うそ、みんな起きてたの? ・・・いつから?」 私の問いに答えたのはククールだった。 「少なくともエイトとヤンガスは、ゼシカが最初に怒鳴った時から起きてたぜ。姫様もな。トロデ王も似たようなもんだろ」 じゃあ、全部聞かれてたの? 私が何を思っていたのかも? うろたえてる私に、ククールが囁いた。 「答えはもう出てる。言ったろ? 何も心配しなくていいって」 エイトが静かに微笑んで頷きかけてくれる。ヤンガスは目を真っ赤にして鼻を鳴らしている。ミーティア姫が、私の顔に頬を擦り寄せてきた。そしてトロデ王が私の手を取る。 「今回のことも、お前の兄のことも、全て杖を管理しきれなかったワシの責任じゃ。いろいろ辛い思いをさせて、すまなかった。許しておくれ」 涙で目の前が霞む。 ・・・ああ、私、本当に戻ってこられたんだ。この優しい人たちの中に。 「ありがとう、みんな・・・本当に、ごめんなさい」 「ゼシカ、謝ってなんかやる必要ないぜ。どう思う? ゼシカが泣いてんのに、こいつら全員寝たフリ決め込んでたんだぜ。最低だろ? こんなもんなんだって、人間なんて」 ククールが場の雰囲気をぶち壊すようなことを言って、みんなに睨まれる。 ・・・どうしてこの人こうなんだろう。素直じゃないにも程があるわ。 なぜだか、とってもおかしくなって、思わず私は吹き出してしまった。 エイトも、ヤンガスも、トロデ王も、みんなちょっと顔を見合わせて、その後同じように笑い出した。 初めは戸惑った顔していたククールも、最後はやっぱり仕方がないって感じで笑ってくれた。 不思議ね。ついさっきまで、また笑えるようになる時がくるなんて思ってもみなかったのに。そうね、きっと人間なんて、こんなものなのね。 ありがとう、ククール。あなたが差し伸べてくれた手が、思い出させてくれたの。 都合のいい夢なんかより、現実の方がずっと温かいんだってこと。だから私、戦える。 前に進むことを,あの手の温かさに誓う。 そうすればきっと、どんなことにも私は負けない。 <終> 誓い-前編
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/54.html
SS&小ネタ集 作者別 ククゼシスレ1 投下された順 ククゼシスレ2 投下された順2 ククゼシスレ3 投下された順3 ククゼシスレ4&5 投下された順4&5 ククゼシスレ6 投下された順6 ククゼシスレ7 投下された順7 ククゼシスレ8 投下された順8 ククゼシスレ9 投下された順9 ククゼシスレ10 投下された順10 連載&シリーズもの 長編 外部スレ作品 スライムスレ作品(24さん) - - -
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/143.html
ドルマゲス、強さを増したのは、てめえだけだとは思わねえ方がいいぜ。 確かに感じる。オレの中に芽生えた新しい力を。 でも、その力を使うための肝心のものが不足中だ。 「MPを補給するまで防御に専念しててくれ!」 皆に指示を出し、まほうのせいすいを振り撒く。 回復したMPはベホマに換算すると5発分。ダメだ、まだ足りない。 頭上に小さな影が落ちる。慌ててよけると、中の液体が肩口に降り注いだ。その場所から魔力が沸き立つ。まほうのせいすいだ。更にMPが回復する。 十分な量ではないにせよ、ギリギリどうにかなりそうだ。 ビンが飛んできた方向を見ると、エイトが苦笑いしていた。目測誤ったな、このヤロウ。もうちょっとで頭に当たるところだぜ、後で覚えてろよ。ちゃんと礼はしてやるから、必ず生きて帰ろうぜ。 なんて、気を抜いてる場合じゃなかった。ドルマゲスの攻撃をモロにくらっちまった。続けて、羽根の雨が降り注ぐ。冗談じゃねえぞ、こんな時に倒れてられるか。 「ホイミ!」 ドスの聞いた声と共に、癒しの光が体に染みとおる。ヤンガスか。ニカッと笑いかけてくる。 ヤンガス、お前、ドルマゲスに直接恨みがないことに引け目を感じるって言ってたよな。バカ言ってんじゃねえよ。自分に直接関係ないことなのに、ただエイトのためだけに、こんな戦いに身を投じる。カッコ良すぎるじゃねえか。お前は最高にイイ男だよ。 光の衣が体を覆う。今度はゼシカのフバーハだ。 防御してろって言ったのに、どいつもこいつも、しょうがねえな。 まあ、仕方ねえか、指示だしは本来、エイトの役目だもんな。 羽根の雨で全員傷ついている。新呪文の初披露にはもってこいだぜ。 この土壇場になってこの力を目覚めてさせてくれるとは、神様もたまには粋なことをしてくれる。勝利の女神様もオレにホレたか? ここはしっかりキメてやるか。 「ベホマラー!」 全員を包むことの出来る癒しの光。さっきの羽で受けた傷は全て塞がっていく。 「待たせたな、これから先の回復は全部任せてくれ。新生ククールさんのお披露目だ」 エイトが頷いた。手にした剣を握り直し、ドルマゲスに斬りつける。 ありがとよリーダー、信じてくれて。期待には必ず応えてみせるからな。 不思議だな。この旅に出たばかりの頃、正直、ドルマゲスに勝てる気がしてなかった。なのに今はサッパリ負ける気がしねえ。 どうしてだか、教えてやろうか? ドルマゲスのおじさん。 答えは簡単だ。4対1で負けてたら、みっともねえだろう? どんなに大きな力を手にいれても、お前は結局独りぼっちだった。可哀想にな。同情するぜ。 だけど、オディロ院長を殺したことだけは許せない。そのカタだけはつけさせてもらう。お前はやっぱり、ここで死ぬんだ。 ドルマゲスの攻撃は緩まない。オレは回復に手一杯だ。 本当なら、院長の仇に一撃くらいはくらわしてやりたかったが、まあいい。オレにとっての雪辱は誰も死なせないこと。ここにいる全員の命を守りきってみせることだ。トドメはゼシカにでも譲ってやるか。敵討ちって動機は一緒だしな。 「ゼシカ! 悪いけど回復で手が空かねえ! オレの分まで、キツイの一発、ぶちかましてやってくれ!」 ゼシカはオレの方を向いた。こんな時まで相手の目を見ることを忘れない。おまけに命懸けの戦いの真っ最中だってのに、可愛らしく微笑んで頷いてきた。こんな女、二人といないな。 「任せといて!」 ゼシカはテンションを上げた。 厳しい攻撃が続く。全員、立ってるのがやっとだ。オレも最後のベホマラーを放つ。もうMPは残っていない。 ゼシカがその手に火球を生み出す。見た目には大きくないが、意識の全てを集中した魔力の固まりだ。それがドルマゲスに向けて投げ付けられた。先刻エイトが付けた刀傷に入り込み、炎がその傷口を引き裂く。 そして、ヤツは崩れ落ち、砕けて灰になった。 見事にトドメを刺し、敵討ちを終えたゼシカは、すっかり沈んじまってる。さっきまでのハイテンションはどこへやらだ。 ホントに自分の感情に素直だよな。ちょっと羨ましくもなる。 ドルマゲスを倒したら一人で旅に出て、二度と会うことも無いなんて思ってたけど、たまにいきなり会いに行って、驚かしてみようかなんて思ったりもする。珍しい土産なんか、持っていったりして。 きっとその時も、素直な感情を表すだろうから、反応が楽しみだ。連絡ぐらいしろって、怒鳴られる可能性が一番高そうだけどな。 だけどもし、少しでも嬉しそうにしてくれたなら・・・。 ・・・そういうのも、きっと悪くないよな。 <終> ひとりじゃない-前編
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/39.html
ククール――― 聖堂騎士団のクセして女を口説くわポーカーではイカサマするわ。 サーベルト兄さんとは正反対で。私の大嫌いなタイプ。 でも・・・時折見せる無邪気な笑顔に心が奪われることがある。 それも女を落とすための術なんだと思ってた。でも違う。 彼は私にだけそんな顔を見せてくれる。なぜかそれがすごくうれしい。 「私どうしちゃんたんだろう・・・。」 「俺に恋してるからさ。」 「ク、ククール!!?何でここにいるのよ!?」 「何って・・・ゼシカちゃんがじーっとこっちを見てくるから・・・」 「見、見てないわよ!!」 「フフ、可愛いな。ゼシカは。」 ほら、また。その笑顔。 「ふだんからそーゆー顔してればなぁ・・・」 「ん?なんか言ったか?」 「別に・・・」 旅は始まったばかり・・・