約 579,030 件
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/135.html
呪いによって、一晩で廃墟と化したトロデーン城。 茨に覆われた城の中は、想像していたよりも凄惨な光景だった。 思わず手を合わせ、祈ってしまう。そして、すぐに気づく。これは違うと。 「別に祈ったからって、なんかこいつらが助かるわけでもねえよなあ。オレの気休めさ」 祈りの姿勢をとることで、そこにある現実から目をそむけただけだ。 この城の人間はまだ生きてる。ドルマゲスを倒して呪いを解けば、助けることができるかもしれないんだ。 祈ってるヒマがあったら、一刻でも早く船を手に入れて、あの道化師野郎を追うことだ。 ふと気づくと、ゼシカがオレの事を見ていた。何となく不思議そうな顔をして。 「どうしたんだ?」 「いえ、珍しいもの見ちゃったと思って」 素で失礼だな、この女。 「オレはこれでも僧侶だぜ? 祈る姿が珍しいわけないだろ」 「そもそも僧侶に見えないのよ」 ここまでズケズケ言われると、むしろ小気味良さまで感じる。クセになりそうだ。 「そうだな、オレも自覚してる。こんな見目麗しい僧侶なんて、確かにいないよな」 「勝手に言ってなさいよ」 呆れ声で返された。 ゼシカの良いところは、とりあえず何らかのリアクションはしてくれるとこだよな。完全に無視されるのは、結構寂しいものがあるからな。 「バカに付き合ってたら、日が暮れちゃうわ。サッサと行くわよ」 そう言って、先に進むゼシカだけど、いつもに比べて歩くペースが遅い気がする。妙に足元、気にしてるっていうか・・・。 「ゼシカ。もしかして、茨が怖いのか?」 「ち、違うわよ!」 ムキになって否定された。図星か。 「手でも、ひいてやろうか?」 意地悪半分、親切半分で申し出てみる。 「いりません。だって、別に怖くないもの」 やっぱりな。まあ、それでこそゼシカか。なんて、思ったすぐ後だった。 呪いをかけられた兵士に手を伸ばしたエイトに向かって、ゼシカが放った一言。 「ねえ、気をつけて。イバラには、なるべく触らないように。だって・・・怖いわ」 おい、ちょっと待て! さっき言ったことと、えらく違わねえか? 何が『怖いわ』だ。エイトに対してだけ、しおらしくなりがって! いっつもそうだ。オレに対しては『バカ』の一言で片付けることも、エイトが相手だと態度が変わる。 ゼシカが裏表のあるタイプなら、まあ気にもならないんだが、表しか無いのにあれだけ差別されると、さすがに傷つくぞ。 そのまま好感度の差ってことになるからな。 いいけどよ、別に。男に免疫の無いお嬢様に本気になられても厄介だ。だから、本気では口説かない。ちょっと仲良くなって、楽しい付き合いができればいいと思ってるだけだ。 泥臭い旅だ。野郎ばかりでムサ苦しいより、華があった方がいいに決まってる。 それが、戦闘では強くて、度胸もあって、目の保養にもなるなら、申し分ない。 今のところ、ゼシカは全部クリアしてる。 だから、女性には辛いだろうなって部分は、できるだけフォローしてやろうと思ってるのに、ああもそっけなくされると、やる気なくす。 やっと図書室に着いたけど、かったるくて、探し物なんてする気おきねえ。 エイトにも、つい八つ当たりしちまう。 「オレはこのへんを探すから、お前は残り全部を担当な。じゃ、そういう事で」 ・・・ゼシカがオレを睨んでる。顔が可愛いから、怖くねえよ。 ヤンガスやトロデ王は、顔は可愛くねえけど、まあ、こいつらに睨まれるのも怖くない。 一番怖いのは、実はエイトなんだよな。温厚そうな顔して、容赦ない。 あんまりバカ言うと『剣の稽古』と称して、シメられる。 普通稽古で、かえん斬りとか、ドラゴン斬りとか、してくるか? 時々、本気で殺されると思うことがある。 しょうがねえ。棚の上の方はオレしか届かねえだろうし、知性もあるから本探しは要領いい方だ。手伝ってやるよ。・・・別にシメられるのが怖いわけじゃないからな。 でもまあ、何だかんだいったってエイトはいい奴だしな。ゼシカが好きになるのは、わかる気がする。免疫ないくせに、男を見る目があるよ。 うまくいくといいな、ゼシカ。オレも影ながら、応援してやるからさ。 せいぜい頑張れよ。 祈り-後編
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/111.html
カラン… 最後の小石が落ちてきて、背中に当たった。 その刺激で我に返り、ゼシカはガバッと起きあがる。 ダンジョンそのものにガタが来ていたのだろう、慎重に進んでいたつもりなのに… 「ククールっ!?」 『下』から小さな呻きが上がり、慌ててどける。 目が合うと、彼が笑ったような気がした。 「ちょっ、怪我はっ!? ねぇっ!!」 「あー…、ずいぶん穴が小さく見えんな…、ここ、最下層じゃね…?」 心配するゼシカに対して、異様にのんきな返事が返ってくる。 「このままゼシカちゃんと二人っきりで…ってのも、悪かねーよな…」 のんきだが、…どこか虚ろな声。 「ほんと大丈夫なのっ!?」 ゼシカは悲鳴を上げた。 「エイト!!!! ちょっとエイト!! どこなの! 早く! ククールがっ!!!」 悲鳴が崩れかけたダンジョンに響く。 「………。」 沈黙があった後、転がっていたククールがむくっと起きあがった。 「大丈夫だっつーの…」 めっちゃふてくされた彼は、手早くベホマを唱えると、立ち上がりまた上を見上げた。
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/84.html
季節は夏、それはバカンスである。 鏡の前に無防備に座ったゼシカは、その両手にそれぞれ色違いの小さな布キレを持っていた。 それはよく見ると、紐やらレースやらが付いている水着だということがわかる。 彼女は鏡にそれを宛がったり、覗き込んだり、真剣な顔つきで審美しているようだ。 そこでノックの音がするが、ゼシカは全く気が付かない。 「うっす、もう着替えたか?」 ノックから少し経ってククールが扉を開けて入ってきた。ゼシカに用事があるらしい。 「それがまだなのよ」 彼女はククールが部屋に入ってきてから一度も鏡から目をそらしていない。 「そうか、手が空いてたら日焼け止め塗ってもらおうと思ったんだ。ほら、オレの美しい身体が焼けたら困るだろ?」 「んーどっちにしよう…」 彼女はまだ吟味しているようで、その言葉はすっかり耳に届いていないようだ。 「水着が決まらないのか」 無視に耐えかねゼシカの顔をひょいと覗き込むと、ククールはその手から水着をすっと抜いた。 もう!と抗議の声が聞こえるが、曖昧に返しておく。 「どうかな、スポーツ系の可愛いのと、ちっちゃい感じのビキニなんだけど」 どうやらコメントを求めているようだ。 「どっちがスポーツでどっちがちっちゃいんだ??」 ククールもいくら女性に詳しくてもこの見分けは付かなかった。 「紐が付いてるのがビキニの方なの」 ゼシカはククールの右手に下がっていた黒い布を引く。 正直、露出が高ければ高いほど嬉しいのだが。この両者には布の面積に差異はなさそうだ。 どんな格好で泳いで欲しいだろうか。彼はそれを考えて結論を導き出そうとする。数秒経つ。 「そうだな………髪ブラか手ブラなんてどうかな」 ククールは布を手から下げつつ真面目な顔で言った。 「か…みぶら…? こっ、この馬鹿男お!!!」 肩を強かに打たれたククールは少しよろめく。 「あーもう早く決めないと日が暮れるぅ~」 どうやら癖のようだが、ゼシカは頭を抱えるとき結った髪の付け根を掴む。 そのまま頭を揺らす動作は子供っぽくてかわいいなあ、とぼんやり見ているククールだった。 それはバカンス、そしてロマンスである。
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/310.html
18 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 17 52 04 ID w+1e7e1R0 さっきちょっと思ったんだけど ククはカリスマ度が上がるたびに逆にモテなくなりそう カリスマが邪魔をしてみてるだけで幸せ~な女の子が増え誰も近づいてこない 逆にゼシカはお色気度が上がるたびに周りの男共を虜にするのさ そんな可哀相なククが見たいwww 19 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 19 22 55 ID /+lXtxwRO 18 いいねそれ! お互いにまだ恋愛感情がなくカリスマスキル&お色気スキルが低い時は ククは色んな女を侍らせ潔癖頑固なゼシカをお子様扱い。 だけどスキル上昇と共に次第にククは近寄りがたい圧倒的なオーラで 女の子達が気軽に近寄ってきてくれなくなった一方で お色気スキルを磨いたゼシカを狙う男共の駆除に 日々追われすっかり身も心もくたくたなクク 20 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/24(金) 21 52 31 ID qGrZ7Fuz0 18-19 ククはそれまでもずっとモテている自覚があって ゼシカの方はお色気スキル高めた後もモテている事に気づかず そのせいで余計ククが悩むはめになったりしているのを希望! 21 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/25(土) 00 46 08 ID psSnyoPH0 スキルはあくまで戦闘手段として考えているゼシカは、気にせずバンバンお色気を振りまく そのあまりの躊躇のなさにああぁぁ~~~もう~~~~~!!!!!!と頭を抱えるククール(内心) 一方カリスマを上げすぎた為、ククが通ったあとに失神する女子多発 しかしその頃にはゼシカにすっかりハマってしまっているので、 そんな色男的においしい状況もどうでもいいっていうか目に入ってないクク ゼシカ「町中大迷惑じゃないの…無駄にバカリスマ振りまくのやめなさいよ」 ククール「お前に言われたくねぇよ!無駄にお色気振りまくのやめろっつってんだろ!」 ゼシカ「はぁ?!振りまいてなんかないわよ!!あなたと一緒にしないで!!」 ククール(あ゛ぁぁ~~~~ッッ!!!!この自覚のなさが手に負えねぇええええ) 22 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/25(土) 02 04 22 ID qhiovKehO 21 いいねえいいねえww カリスマとお色気の夫婦漫才コンビ最高すぎるw ククールとゼシカが通った後の街並みって面白い風景が広がっていそうだw 一度ククがあまりに無防備すぎるゼシカにマジキレして 「お前自分がどんだけ男惑わせているのか、ちったあ自覚しろや!!」と ムリヤリ押し倒して強引にキスしようとしてしまえばいいよ。 そんでこんがりウェルダンに………なったらさすがに可哀想すぎるかw 23 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/25(土) 21 29 41 ID VMAO9kLq0 「お前自分がどんだけ男惑わせているのか、ちったあ自覚しろや!!」の後に キス直前に我に返ったククが慌てて弁解開始 「ゼ…ゼシカ?悪い、こんな事するつもりじゃ…。頼むから泣かないでくれ。 いやホント俺が悪かった……って、やめろ…! 落ち着け、落ち着くんだゼシカ、ここは屋内火気厳禁。そのメラ引っ込めろ。 メラは…ってますます火でかくなってね?え?メラ………メラミ? …じゃない!」 「メラゾーマ!!!!!」 シリアス甘甘な展開も好きなのに どうしてもギャグ方面に妄想してしまうこの脳が憎い 24 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/26(日) 01 04 37 ID PpobI4Zs0 23 ククwwwwwシリアスこのスレでほとんど見ないのはなんでだろうねwww 思ったんだけど、それでもククはゼシカの魔法と武器さえ封じれば好き放題できるとは考えないのかね それぐらい本気で抵抗できないようにしてちょいと男の力で怖がらせれば、思い知るだろうとかさ …なんてな。できるわけないことは重々承知ですよ、ククさんや 25 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/26(日) 02 06 21 ID EjenoGiy0 一応騎士ですから 一応僧侶ですから 一応紳士ですから 26 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/10/26(日) 19 19 39 ID 4P5pTufy0 自分の場合他の人の考えたシリアスを見るのは楽しいけど 自分の考えたシリアスを投下ってのはなかなか恥ずかしいw 24 ククはゼシカの魔法と武器さえ封じれば好き放題できるとは考えないのかね 頭の中を過ぎることは何度かあるだろう、多分 だけどメラ怖さにではなくゼシカ愛しさにできないそんな男心w 25 全部一応w
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/134.html
あー、あせった。 ほんとに、ゼシカといると、一瞬でも気が抜けないな。 あそこでいきなり怒鳴りだすとは思わなかった。 思えば、初めて会った時から、やることがメチャクチャだったよな。 問答無用でバケツの水ぶちまけるわ、屋内でメラぶっぱなそうとするわ、もしあの時止めてなかったら、火事になってたかな? 反射神経のいいオレで良かった。 『ごめんなさい。もうよけいなこと言わないわ』 宿屋まで送っていったゼシカの声は、悲しげだった。今頃は泣いてるかもしれない。 でも、オレじゃあ慰められない。悲しませてるのは、他ならぬオレだからな。 正直、マルチェロの言葉で、あそこまでショック受けられるとは思ってなかった。 オレのために、あんなふうに怒ってくれるってのも、想像つかなかった。 ・・・ゼシカの言いたいことが全く理解できないわけじゃない。 領主の息子に生まれて『ぼっちゃん』なんて呼ばれてたって、両親に死なれた時のオレは金も家もない、ただのガキだった。そんなオレに対して、誰ひとり手をさしのべてはくれなかった。 別に恨んじゃいないさ。皆、自分たちが生きていくのに精一杯だ。 オディロ院長みたいな慈善家が近くにいたんだし、野垂れ死にされる心配はないと思ってたんだろう。 ・・・それでもそうだな。カッコ悪い話だが、一つだけ時々考えちまうのは、もしもあの日、誰かがオレの手を引いて、修道院まで送り届けてくれていたら、オレはこんなふうにマルチェロに対して、遠慮はしないで済んでたかもしれないってことか。 今ほど凶暴ではなかったけど、魔物が出るかもしれない道をガキが一人で歩くのは、やっぱりおっかなくて。やっと辿り着いた修道院は、辛気臭くて不気味に見えて。温厚な顔をして歩いてる修道士たちには、オレの姿なんか目に入らないみたいで。 だから、きっと、すがっちまったんだろう。初めてさしのべられた、その手に。十年経った今でも、忘れられない呪縛のように。 我ながら運が悪いよな。せめてオディロ院長に先に会えていたなら、また人生違ってただろうに。 ・・・こんなこと、今更考えても仕方ねえよな。 『お嬢様』なんて、ついバカにしたみたいに言っちまうけど、ゼシカのように幸せに育ってきた人間は嫌いじゃない。 そういう人間にしか持てない優しさってのがあるのも知ってる。実際、祈りを捧げに行ってた金持ちの家の中には、本当に打算も見返りもかけひきも、何にもなく親切にしてくれた人たちもいた。まあ、金はあっても、心が貧しい連中の方が圧倒的に多かったのは確かなんだけどな。 オレがドニの町で気楽に過ごせるのは、辛気臭い気分を持ち込まずにいられるからだ。誰も後ろ側を見ようとしない。こっちが見せたいと思う部分だけを素直に見てくれる。 別に観察眼や洞察力がないわけじゃなく、その方が楽な付き合いだっていうのを、お互い承知してるからだ。 でも、ゼシカにはそれは嘘の世界に見えるんだろうな。 わかるさ。もし両親に死なれたばかりの頃のオレが、今のゼシカの前に現れたとしたら、絶対放ってはおかないだろうって。親身になって面倒みてくれるだろうってことはな。 でも、それはありえないことだし、ゼシカみたいに全てにまっすぐ立ち向かえるほど強い人間ばかりじゃない。 オレだってそう。弱い人間だ。 兄貴の憎しみを理不尽だと思って、憎しみで返そうと思ったこともあったさ。 でも無理だった。 一番初めに、悪い人間じゃないってのを知ってしまったせいも、もちろんあるけど。 オレにはそれだけのエネルギーが無かった。 修道院の暮らしってのは結構忙しくて、勉強にお祈り、魔法や武術の稽古、生活すること、それと息抜き。それらを全部こなした上で、更に人を憎むなんて疲れるマネ、オレにはできなかった。そういう意味では兄貴はたいしたもんだ。尊敬しそうだ。 酒場に戻ると、エイトとヤンガスの姿が無かった。行き違いにでもなったか。 「ここにいた、バンダナとコワモテは?」 一応、マスターに確認する。 「お酒と料理を持って、町の外で待ってるお連れさんの所へ行くって言ってましたよ。中で飲めばいいのに、おかしなお連れさんですね」 トロデ王と姫様のところか。あいつらもマメだね。 「ククール、あんたずいぶん酒癖の悪いコと一緒に旅してるんだね。あのコだろ? 前にここでバケツの水ぶちまけてたの」 記憶力いいな、おばちゃん。結構前の話なのに。いや、あれはシラフでやってた・・・とは言わない方がいいな。 酒癖か・・・。そういえば、ゼシカにしては、結構飲んでたよな。 大丈夫だろうか・・・急に心配になってきた。 「おばちゃん、今日はホントにゴメン。マスターも。今度来た時は静かに飲むようにするから。おやすみ」 女の子たちが引き止めてきたが、簡単にあしらって宿屋に戻る。 そっと、客室に入る。小さな宿屋だ、大部屋しかなく、四人一緒の部屋に泊まってる。でも、たいていそうか。ゼシカが個室を要求したことなんて、一度もない。 それどころか、野宿に対しても、一切文句は言わない。お嬢様育ちなのに根性がある。 育ちがいいからか寝相も良く、寝乱れた姿なんてのも見せてくれたことがないのが残念なところだが・・・。 ゼシカはもう、寝息をたてていた。泣かれてなくて、ホッとする。 疲れてるんだろうな。いくら優れた魔法使いだからって、体力的にはやっぱり女の子だ。オレたちと一緒にするのは可哀想すぎる。 ・・・思えばさっき、なんであんなにはっきりと突き放してしまったんだろう。 いつものように軽口叩いて『体で慰めてくれ』とでも言っておけば、ゼシカも呆れてそれ以上は何も言ってこなかっただろうに。 ゼシカが、あんまりまっすぐぶつかってくるから、オレもついまともに受け止めちまう。 本音を晒すなんて意味のないことだって、わかってるのに。 オレとゼシカの共通点はたった一つ、敵討ちの相手が同じ奴ってことだけだ。ドルマゲスの野郎がいなければ、お互いに知ることもない存在だった。 だから、ヤツを倒したら、そこでお別れだ。その後は会うこともないだろう。 なるべく嫌な部分は見せずに、思い出の中で美化できる程度の関係ってやつが望ましい。 何となくわかる。ゼシカはオレといると、見なくていいものを見てしまって傷つくことになるって。 今日のことがいい例だ。あの程度のことでショック受けてたら、とてもじゃないが神経が持たない。見て見ぬふりできるタイプなら良かったんだが、ゼシカはそうじゃない。 今日は色々失敗しちまった。 ごめんな、ゼシカ。オレなんかのことで、悲しい思いさせちまって。 わかってるさ、棲む世界が違うってこと。それさえ忘れなければ問題ない。 大丈夫・・・明日からはまた元通りだ。 <終> 違う世界-前編
https://w.atwiki.jp/chaos-server/pages/84.html
ドラゴンクエストシリーズより ゼシカ 天使のレオタードVerです。 公開予定日 2/17日
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/139.html
油断した。こんなに近くに人がいるのに、気づきもしないで寝てるなんて、オレとしたことが、たるんでる。 でも、なんかスッキリしてるな。これもエイトのおかげか。 あいつに剣の稽古に付き合えって言われたときは、またシメられるのかって思ったんだよな。サヴェッラで暴言吐きすぎたのは自覚してるから。 そもそも、寄り道しようって言い出したのもオレなんだ。自分で墓穴掘っただけなのに、他人に当たる筋合いはなかったんだよな。 でも、今日はいつもとは感じが違った。 無茶な剣技は一切出さずに、ただ普通に撃ち合うだけ。心なしか、力加減もしてくれてた気がする。いつもだったら、あのバカ力と撃ち合った後は手が痺れるんだが、今日は何ともなかった。 マルチェロの奴にイヤミ言われまくったオレを励ますためにってところなのかな。 汗くさいのは好きじゃねえが、適度に体動かして、いい天気で日差しも暖かくて、柄にもなくこんな甲板なんかで熟睡しちまった。 その上、意外なオマケに、目が覚めたらすぐに、絵になる美女の姿がそこにあったと。 悪くなかった。 「てっきり、オレの寝顔に見とれてるのかと思ったら、本に夢中とは、ゼシカは色気がないよな」 なんとなくテレくさくて、つい軽口たたいちまう。 「あんたの寝顔のどこに、見とれる要素があるっていうのよ」 いつ聞いても、ゼシカの反撃には容赦がない。 「おいおいゼシカ、美意識大丈夫か? このオレの美貌は、あのマルチェロでさえ認めてくれてたんだぜ?」 「・・・そうなの?」 「そ、顔とイカサマだけが取り柄ってな」 ああ、くそっ。わざわざ自分からムカつくこと思い出してんじゃねえよ。 「あんたねえ! いい加減にしなさいよ!」 いきなりゼシカに怒鳴られて、オレは面食らった。 「それがほめ言葉じゃないことぐらい、自分でもわかってんでしょう? こっちが反応に困るようなこと言ってんじゃないわよ。それとも何? 慰めてほしいわけ? だったら素直にそう言いなさい!」 ・・・見事だな。その通りだ。 「わかった、悪かったよ」 オレが素直に謝るもんだから、今度はゼシカが拍子抜けした顔してる。 確かにみっともねえよな、オレ。トロデーン城でエイトの境遇を聞いてから、特にそう感じるようになった。 あいつも、ガキの頃から食うために仕事しなくちゃいけなくて。回りに大勢の人がいても、それは家族ってのとは少し違ってて。 それでも自分にとって大切な、守るべき存在が、ちゃんといてくれてたっていうのに。 ・・・いざという時に、それを守ることが出来なかった。 まあ、エイトの場合は取り返しがつかないわけじゃないにせよ、無力さを感じたことには変わりないはずだ。それでも、あいつはスネたりせずに、いつでも穏やかにしている。孤独や不安なんか感じさせずにまっすぐ立っている。 それに比べると、オレはカッコ悪いよな。少し改めるか。 「仕方ないわね」 ゼシカが溜め息を吐いた。 「あんたの取り柄は、顔やイカサマなんかじゃないと思うわ。明日までに何か探して見つけといてあげる。だから、あんまり自分を傷つけること、言わないでよ。ホントに反応に困っちゃうんだから」 「・・・探すって、何を?」 「だから、あんたの取り柄をよ」 ちょっと、待て。 「私、今日料理当番なの、もう行くわね」 ゼシカは自分の言葉の意味に気づかず、行ってしまった。 おい、探してくれなきゃ、咄嗟に出てこねえのかよ。ある意味、マルチェロよりキツいこと言ってるぞ! 一つでいいから、即答してくれよ、頼むから! エイトは本当に優しいヤツだよな。 もうすぐ夜が明ける。 見張りに立っていたオレは、起き出してきたエイトの姿を目に止めた。馬姫様に水をやり、ブラシをかけてやっている。馬っていうのは、睡眠時間が短い生き物だ。寂しい思いをさせないように、エイトのヤツもできるだけ早起きして、一緒にいてやるようにしてるんだろう。 「こら、ちゃんと見張ってなさいよ。何よそ見してるの?」 もう交替の時間か。ゼシカが上がってきた。 「何見てたの?」 オレの隣に来て、下をのぞき込んでる。 「エイトと姫様? 二人がどうかしたの?」 「いや、別に? ただ見てただけさ。キレイな光景を見るのは好きなんだ。滅多に見られるもんじゃないからな」 ゼシカはオレの顔をまじまじと見つめて、それから口を開いた。 「それよ、あんたの取り柄」 「はあ?」 オレは訳がわからなかった。 「本当にキレイなものが何か、ちゃんとわかるってこと。ククールって、宝石とか、立派な像とかには興味示さないでしょう? でも、思いやりとか優しさとか信頼とか、そういうものをキレイだと感じることが出来る。それって、とっても素敵なことだと思うわ」 ・・・なんでこいつは、こんな恥ずかしくなるようなセリフを、真顔でサラッと言えるんだよ。 ちくしょう、ゼシカの顔がまともに見られない。 ほんとはさっき目が覚めた時、ゼシカの姿に見とれてたのはオレの方だ。 美人だからとか、そういうことじゃなくて。 穏やかな空間っていうか。優しい気持ちがそこにあるって、感じることが出来て。だから眠れたんだ、きっと。何も心配することなく。 頼っていい相手が、そばにいることがわかってて。無意識のうちに安心してたんだ。 ゼシカ、説明もしてないのにオレが何を指してキレイと言ったか、わかったんだろう? オレに対して取り柄だって言ってくれたものは、ゼシカはとっくの昔に、当たり前に持ってたってことだ。いつでもまっすぐ、相手の目を見て話すってのも、オレには真似できないところだ。とても敵わない。完敗だ。 ・・・負けてらんねえよな。いい頃合いだ。オレもここらで自分を変えてみるか。 今のオレにはまだ無理だけど、いつか胸を張って、こいつらのことを『仲間』だと言える日を、迎えることが出来るように。 <終> いつか-前編
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/185.html
91 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/03/01(木) 00 05 52 ID WWKdAlzE0 3月ですよ。 ククールだったらホワイトデーは一体何をするんだろうか。 92 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/03/01(木) 01 02 57 ID /UZlmUX20 ゼシカが「失敗したからあんたにやるわ!」と言ってくれたチョコ(本当は100個ぐらい 作った中で唯一のまだ食べられるシロモノ。それでもまだ人外魔境な味)に対して、 「あんなに美味しいものをもらったんだから今日はゼシカの願い事をいくつでも叶えるよ」 …くらいしか思い浮かばん 93 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/03/01(木) 02 02 23 ID YjRwDTEJ0 「躯で返す」と迫ってゼシカにメラゾーマされる。 …くらいしか思い浮かばん。 94 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/03/01(木) 14 40 05 ID KGq1AEen0 エッチな動機で『エッチな下着』をプレゼントするが、ゼシカには普通に防着と思われて喜ばれ、 公衆の面前で装備されてしまって複雑な気持ちのククール…。 …くらいしか思い浮かばん。 …こわれとるな、自分。 95 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/03/01(木) 22 23 19 ID Vlaq8v1j0 93 「そういう仲」になってれば、メラゾーマする必要ないんでは… 94 これぐらいの壊れ具合ならどんどんw それゼシカらしくて良すぎ。でもククール止めに入れやw 96 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/03/02(金) 01 12 14 ID lEL8KL7Q0 なんか素直に花束とかで顔真っ赤になりそうだけどなーゼシカ 個人的にはお兄ちゃん宛のチョコがククール宛の10倍くらいなのがいいわ お兄ちゃんに勝てないククw 97 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/03/02(金) 12 45 26 ID 10MfMFfhO しかし兄さんに勝てない悔しさもありながらも、 ゼシカにこれまで悪い虫がつかなかったのは兄さんのおかげだと思うと 感謝のしどころだよなーと思えてくる彼であった。 98 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/03/03(土) 00 07 36 ID 4MGRmFrD0 そのおかげでゼシカの「はじめて」はオレが頂けた(過去形)わけだし… と思いだしながらニヤニヤする彼であった。 99 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2007/03/03(土) 22 03 23 ID mUjxFpWF0 日テレの「シャル・ウィ・ダンス?」を見て、時々そんな2人を想像してる自分…
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/341.html
二人きりになれる場所、と思い浮かべて咄嗟にルーラで飛んだ先は、願いの丘の頂上だった。 なんとなく一瞬だけ頭がぼうっとして、すぐに我に返り両腕に抱き抱えたものをそっと下ろした。 華やかな曲線を描いて広がるボリュームのある白いドレスがフワリと舞う。 たった今、他の男の目の前から強奪してきた、美しい花嫁。 もう少しで他の男のものになるところだった、オレの惚れた女。 ―――いきなり、ほっぺたに衝撃が走った。 「バカッッッッ!!!!!!!!!!!」 肩を怒らせてオレをまっすぐに睨みつける、その目、その怒号、頬の痛みさえ。 全てが強烈に愛しくて、どれだけ自分が彼女に飢えていたのか思い知った。 「…バカ!!アンタなんか最低だわ!!なんなの?!なにしにきたのよ!! アンタなんかダイキライ!!ダイッッキライよ!!!!ククールなんか…」 そして見えないフリをしていた想いや欲望はたちまち箍を外され溢れ出る。 オレはわめくゼシカを問答無用で腕の中にキツく閉じ込めた。 暴れても離さない。絶対にもう離さない。 「――-オレ以外の男になんか絶対やらない」 言葉は知らないうちに口から漏れ出た。 ずっと、どうしても認めることができなかった欲望。 ゼシカのそばにいたいということ。できることならオレだけが永遠に、彼女のそばに。 ただそれだけの望み。小さな幸福。――-でも多分オレには行き過ぎた願い。 だから、諦めた。そのつもりだった。諦められたと思っていた。 でもいつだって心の奥底で、オレはずっと焦燥に耐えていた。 こんな事態になるまでそれに気づかないフリをしてきたのは、怖かったからだ。 望むことが。幸福が。手に入れて、失うことが。赦されているということが、怖かった。 でも、ずっと、失ってばかりで、失うことに怯え、手に入れることを恐れてきた自分が、 生きていくうちでたった一つだけ何かを手に入れられるのなら。 ――――――それはどうしても、ゼシカがよかったんだ。 「…ッ、いまさらナニよ…ッ!!今さら…っ…わたしが…っ」 「ごめん」 「わたしがどれだけ……ッッ」 「ごめんゼシカ。待たせてごめん。ゼシカ」 「わたしがどれだけ待ったと思ってるのよ……ッッ…バカ…!!!!」 全てを諦めたのは彼女も同じだったろう。オレはあまりに彼女を待たせすぎた。 これでいいのだと己に言い聞かせた時もある。自分の幸福を諦めても、それがゼシカの幸福になるのならと。 そんなわけないのを、知っていたくせに。 オレのために身につけたわけではないウェディングドレス。他の男のために着飾られた姿。 施された、普段はほとんどしない化粧、結いあげられた髪。 なぜ、彼女を手放せると一瞬でも考えたのかわからない。 他の男のものになってもいいだなどと、なぜ思ったのかもうわからない。 絶対に嫌だ。死んでも誰にも渡したくない。ゼシカはオレだけのものだと、実感したい。 「――-ンぅ…ッ」 突然あごを掬い上げ交わされた噛みつくような口付けに、ゼシカは苦しそうに眉をしぼった。 はじめてじゃない。でも、こんなに欲望を一切隠さずぶつけたキスなんてしたことはない。 ゼシカの手がオレの胸に当てられる。それを機に、オレ達は互いの身体を密着させ、 さらに深く口付けを交わした。お互い息を紡ぐのが必死なぐらいに、ひたすらに激しく、気の済むまで。 ―――風が。 花嫁のヴェールを空に飛ばす。 長く熱いキスはゼシカの足をふらつかせ、支えようと背中に腕を回したものの そのままオレ達は草の上に倒れこんだ。 上気した頬。荒い息。明らかに何かに飢えている瞳。彼女の目に映るオレも同じだろう。 感情の渦に言葉が追い付かず、本能のままに身体ばかりが彼女を求める。 今度は触れるだけのキスをして、暴走しそうな指先を押さえつけ、オレは大切な言葉をようやく告げた。 「―――-愛してる」 ゼシカの瞳から溢れ出た涙をすべて舐めとり、止まらない嗚咽を再び激しい口付けで飲み込んだ。 全てはこれから。でもオレは、もう逃げない。
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/91.html
ある朝、目覚めたら恋をしていた。 といっても、天使が耳元でラッパを吹くとか、エロスの弓で胸を打ち抜かれるとか、劇的な衝撃があって唐突に恋をしたわけではなく、私の恋はゆっくりと時間をかけて育てられたものだ。 つまり自分の気持ちを認めざるを得なくなった―――これは恋心だと自覚をしたのが今朝だったというだけわけだ。 朝の支度をしようと、鏡を覗き込んでみたら、普段よりも格段に色ツヤのよい顔がそこにあった。 窓辺から見下ろす新しい光に満ちあふれた世界は美しく、何故か感傷的になっている私の瞳はつい、潤んでしまう。 ククールの事を考えると、甘くて苦い想いで息苦しくて―――でも幸福で。 ついにきた。これが私の恋の自覚症状。 宿の帳場に行くとエイトとヤンガスがいた。二人は既に出発の準備も済んでるみたいで、お茶しながら寛いでいた。 「ククールは?」 エイトに尋ねると、 「また寝坊」 とそっけない返事が返って来た。 彼らはククールを起こすのに飽き飽きしているらしく、仕方なく私が起こしに行く事にした。 彼の部屋に入る。 っていうか……。何この人、枕なんか抱いちゃって。変な男。 でも日頃のすれた態度とのギャップに胸がきゅんとなる。 朝の光を受けて、銀の髪はけぶるよう。長いまつげは羽根のよう。今さらだけれど、この人は本当にきれい。 あまりにも安らかなその寝顔に起こす事が躊躇われる。が、心を鬼にして肩を軽く揺さぶり、名前を呼ぼうとする。 「ククー…、わあっ!!」 呼び掛けたその声は、言葉にはならなかった。ククールによって腕をつかまれてベッドに引きずりこまれてしまったので。 顔を胸元に押しつけられて、僅かな汗の匂いが鼻先を掠め、頭の中が真っ白になる。 耳の上でくつくつと喉を鳴らせているのにはっと我にかえって、思わずその腕を振り払い、容赦ない平手打ちを食らわせた。 ククールは打たれた頬を押さえながらのっそりと起き上がる。 「いてぇ……、なんて暴力的な起こし方なんだ」 「何すンのよ!」 「見惚れてたくせに」 いけしゃあしゃあと言ってのけるククールは、私の手のひらに発生した炎を見て、顔色を変える。 「げっ……、ごめんなさい!すみません!!」 平謝りする様子が阿呆らしくてとりあえず炎を手の中に収めると、ククールはほっと一息ついて挨拶してきた。 「おはよ」 「……おはよう」 髪をかきあげるククールをあらためて見ると、髪はくしゃくしゃ、寝巻はしわくちゃ、仕草はフニャフニャ。 カッコ悪い……。 でも……。 可愛い……。 アバタもエクボってこーゆー事かぁ、なるほどね……って、何だそりゃー!! やばい。なんだかドキドキしてきた。とてもじゃないけど、ククールを真っすぐに見ていられない。 「早く支度しなさいよ!みんな待ってんだからね!」 バンッ!! 扉を必要以上に勢いよく開けると、言い捨ててその場から逃げた。 ある朝、いつものように寝坊したら、ゼシカに叩き起こされた。 とりあえず身なりを整えようと鏡を覗き込んでみたら、ゼシカに打たれた左の頬が赤くなっていた。 女の子に叩かれた位ではオレ様の美形力が衰えるはずもないが……おぼこ娘め、なんだあの位で。 頬を掻きながら思う……絶対見惚れてると思ったんだけどな。ゼシカもとうとうオレの魅力に気付いたかと。 容姿端麗、八面玲瓏、なーんてね。 ガキの頃から呪文のように言われ続けてきた言葉。 あんまり周りが言うもんだから、オレ自身もそーなんだなぁなんて思うようになっていた。 でもゼシカにはそんな武器は全く通用しなくて、口説いても口説いても、ちっともなびきやしない。 恐ろしくブラコンで、美人のクセに浮いたエピソードの一つも持ってやしない。 ……恋愛回路あるんだろうか。それすらも疑わしい。まぁ、くじけないで頑張るけどね。 好きなんだぜ?ハニー。いつの日か、目覚めた時に枕の代わりに君がいるといいんだけどな。 宿の帳場に行くと全員揃っていて、早速まじめなエイト君に毎度お馴染みの説教を食らう。 面倒臭くて話し半分にそれを聞きつつ視線を彷徨わせていると、ヤンガスのでっかい図体の向うのゼシカと目が合った。 ザマーミロ、というような顔で『あかんべ』を送ってきたので、ゼシカの専売特許『投げキッス』で応戦してやった。 いや、深い意味はなかったんだけどね……。 するとゼシカはこれ以上赤くなれないだろうという位赤くなって下を向いてしまった。 様子がおかしいので、ギャーギャーうるさいエイトを無視してゼシカの近くに寄ってみる。 「ゼシカ?」 「………。」 「おーい?ゼシカさん?」 話し掛けてもだんまりを決め込んでいるので、その肩に手を置こうとした……その時、 「触らないでよーーーーーっ!!」 ゼシカはネコ見た鼠のように、ものスゴイ勢いで飛びずさると一声叫んで一目散に外へと逃げてしまった。 取り残されたオレは、宙に浮いたまま行き場のなくなった手を気まずくぶらぶらさせる。 なんなんだろう……? 女の子の事は知り尽くしているつもりだけれど、あの子の事はわからない。 茫然としているオレをエイトとヤンガスがしたり顔で見ていた。