約 578,997 件
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/465.html
ククールが宿の一階に降りてくると、エイトとヤンガスが受付前に設けられたソファに腰掛けてまったりしていた。「…やぁ、ククール」エイトが、気の抜けた笑みで手を挙げる。彼らも疲労に満ちた顔をしている。ククールは苦笑した。「…おう」「ゼシカ、落ち着いた?」「なんとかな」「それはよかった」ソファに深々と座り込んで、ふぅ、と息をつく。ククールもその横に座った。「……ったく、俺の寿命50年分は返せってんだ」ヤンガスが不機嫌に呟き、エイトも同調してうんうんと頷く。しかし本当に疲れているのだろう、それ以上ククールを責める声は聞こえてこなかった。それよりも、安堵のほうが勝っているようだ。ククールも重ねて謝ることしかできなかった。そして彼らの想いが、やっぱりくすぐったかった。ククールが彼らの前に姿を現した時、大騒ぎのあとひとしきり小突かれ、殴られ、罵倒されて、それでもあのトロデやヤンガスやエイトが目に涙を浮かべているのを見て、ククールは謝罪と感謝と、ことの経緯を伝えようとした。しかしすぐに「そんなことはどうでもいい」と耳を疑うようなことを言われ、そして「すぐゼシカのところに行け」と強引に促されたのだった。今、ククールは改めて奈落に落ちてからの数日間のことを説明し、本当に死にかけたと笑った。「笑いごとじゃないよほんと…。体は?大丈夫?」「あぁ、助けられてからどっかの神父が回復してくれたみてぇでさ。全快じゃないけどケガもねぇよ」「ちゃんと休んでないんだろ?」「いや、しばらくあっちで休ませてもらったから。自分にホイミできるくらいには休んだ」「腹はへってねぇんでげすかい」「断食状態だったからいきなり食べると良くないってんで、軽いもんだけ食わせてくれたから 今は減ってねぇな。多分明日には食欲も元に戻るんだろうぜ」あっけらかんと話すククールに(それはわざとなのかもしれなかったが)、仲間たちは心底脱力し、笑った。「…まったく…。その調子だと、ゼシカに殴られたんじゃないの?」「――え、いや。…………アイツ泣きっぱなしで、それどころじゃ」照れ隠しなのかあさっての方向を向きながらボソボソ呟くククールに、エイトとヤンガスが顔を見合わせる。「…泣いてた?ククールがいなかった間、ぼくたちゼシカが泣いてるの見たことなかったよ」「……え?だって、あんなボロボロ…」その時、階段を転げ落ちるように降りてくる騒がしい足音が響いて、3人はビクリとそちらを振り返った。階段の手すりにすがるようにして、今にも倒れそうな足どりで、ゼシカがそこにいた。最後の段差を降りたところでドサリと床に座り込むのを、ククールが驚いて駆け寄る。すぐにゼシカの指がククールの腕を強く掴んだ。「――よかっ、た…っ、ククール…ッ」ゼシカは精いっぱいの笑顔でククールを見上げながらしがみついた。「…ッや、やっぱり、ゆめだったって、…おも…」悲壮な笑顔はたちまち歪み、あっというまに両の目から大粒の涙を流し始める。ククールはようやくしまった、と軽率だった自分に舌打ちした。反省するが、遅い。「わ、悪かったゼシカ。ごめんな、置いてって悪かった」「…っや、だ、もう…っやだぁ…っ」うわぁぁと泣き声をあげるゼシカと同時に、内心でうわあああと大焦りの悲鳴を上げながら必死で彼女を抱きしめあやそうとするククールの背中に、「……まさかククール、黙って置いてきたの…?」信じられない、と呆れを通り越して軽蔑すら感じさせる冷たい声が突き刺さる。「ち、ちが…っ、黙ってつーか、寝てたから!」「…………それ、余計サイテーだよ」「えええ」再び仲間たちに追いやられ、ククールはゼシカを抱き上げて追いたてられるように部屋に戻った。エイトとヤンガスは肺も吐き出さんばかりの巨大なため息をつく。「……なんであんなに世話かかるの、あの2人」「げす」しかし突然に訪れる死の別れに比べればあまりにも平和すぎるくだらない問題に、2人とも諦めたように苦笑した。 *ゼシカをベッドの上に座らせる頃には、ククールも自分のしでかしたことのマズさに気づいていた。それは彼女の立場になって鑑みればすぐにわかることだったのに。「ゼシカ…ごめん」渡されたタオルで涙を拭きながら、ゼシカはようやくおずおずとククールと目を合わす。気を抜けばまた泣いてしまいそうなのを堪えながら、真っ赤になってしまった目でククールを見つめる。ククールは彼女の前に跪いて見上げながら、その視線に答えるように冷たい頬に両手を添えた。「…オレが悪かった」「ッ、ち、ちがうの…私、ご、ごめんなさい…今、ほんとに…ダメなの…ごめん…」「もうどこにも行かないから」そう告げられた途端、ゼシカはくっ、とのどを詰まらせ、涙を飲みこむ。「…ごめん、なさい…私…今、変だから…」「ずっと心配してくれてたんだろ?」ゼシカは大きな瞳を見開いて、それからゆっくりと頷きながらまぶたを閉じた。頬に触れているククールの手に涙が伝う。「…私、自分でもどうしようもないくらい、動揺しちゃって、本当に、もう、ずっと、ずっと…」ゼシカは消えそうな声で、啼きながら話す。「…もし、このままククールが帰ってこなかったら、って…もう、会えなかったら、って…考えて、死にそうになった…こんなのもうイヤだって、ずっと叫んでた…」ククールは痛々しげに目を細めた。…そうだ、自分はゼシカのトラウマを抉るような真似をしてしまったんだ…「こんなに、こんなに、ククールが大切だったなんて、思わなかったの。大切だったけど、こんなにも苦しいなんて、思わなかったの…」「…オレもだよ」「…ククールも…?」「助け出されるまで、ゼシカのことしか考えてなかった。もしもう会えないなら、なんであの時こうしておかなかったんだとか、ああ言っておかなかったんだとか、後悔ばっかりで死にそうだった」「…私もよ」再びゼシカは涙が抑えられなくなり、肩を震わせながら頬を包む彼の手に自分の手を重ねた。「…何回も、何回も…、ッ…、ククールが帰ってくる幻ばっかり見えた…声が聞こえて、慌てて振り向いても、誰も、いないの…ッ…必死で探しても、どこにも…」「オレは幻じゃない。絶対にもう消えたりしない」「…ッ、だ、から、さっき、起きたら、ククールがいなくて、私…ッ」倒れこむように声をあげて泣き出した身体を抱きながら、ククールもそのままベッドに腰掛けた。―――幻ではなく今度こそ本当に帰ってきたのだと思ったはずの相手が、目覚めたときそこにいなかったら、どんな気持ちがするだろう?暗闇で一人目を覚ましたゼシカは、どんな思いでオレの姿を探したんだろう。ゼシカは、魂のよりどころになるほどに大切だった人を、過去に一度失っている。その時の喪失感は、彼女の中に思ったよりずっとずっと深く根付いていたんだろう。そして自分が思っていた以上に、オレは彼女に必要とされていたんだと、思い知った。自分が彼の人と同じだけ想われているなんて自惚れはしないけれど、それでも、絶対に、自分は彼女を一人にするべきではなかった。ずっとずっと、抱きしめていてやるべきだったんだ…腕の中で震える身体を、ククールはもう手加減などできず強く強く抱きしめる。この腕は幻想なんかじゃないのだと、彼女にわからせるために。再びゼシカが泣きやみ、しばらくの間心地よい静寂の中で2人抱き合っていた。しかしふいに部屋の隅に置いてあったランプの灯が消え、薄暗かった室内は唐突に暗闇になってしまった。タイミングの悪いことで、などとボヤキながらククールが火を灯すために立ち上がろうとすると、ゼシカが慌てて彼の腕を掴み、ぐいっと引っ張ったのだ。「…?どうした?」「えっ…」当の本人もびっくりしたように、掴んだばかりの腕を離す。そしてなぜか顔を赤く染めて俯いてしまった彼女を、ククールは無言でじぃっと観察するように見つめたあと、少しの罪悪感を覚えながらもこっそり苦笑してしまう。ほんの数歩だけの距離を、さっさとランプに火をつけて戻ってくる。再びベッドに座ったと同時に、ゼシカがククールの胸に飛びつき、ポスリと顔をうずめた。想像以上に直球だったので、ククールは目を丸くする。「…ゼシカ?」「……………ごめんね」それだけをシャツ越しに小さく囁いて、ゼシカは押し黙ってしまった。その一言で、困惑がありありと伝わる。多分、本人にも今の自分の行動が制御できていないんだろう。嬉しいのだが、やはりどうにも慣れなくて、こそばゆい。ククールは複雑な表情を浮かべつつ、(……まいったな)心の中で照れ隠しに近いため息をついた。自分の行動が制御できそうにないのは、こっちもだ。そして色々なものをごまかすために、わざとふざけた調子で声を上げる。「ゼシカ。オレ、そろそろ風呂に入りたいんだけどなぁ」「え」「オレが出るまで、一人で待っててくれる?」意地悪な瞳でのぞきこまれ、ゼシカはククールをちょっぴりにらみ返した。…わかってるくせに、という非難。「離してくれないと、風呂入れねぇ」にっこり笑ってそう言われても、ゼシカはその手を頑固に離さない。怒ったように言い返す。「…イヤよ」「ふーん、ゼシカちゃん大胆。じゃあ手繋いで一緒に入ろうか」「んな…っっ!!」もちろんククールはゼシカをからかい、緊張を和らげるためにそう言ってみたのだが…。咄嗟に怒って顔をあげたゼシカの顔が、真っ赤になり、怒りから、歯を食いしばり、悔しそうに、そして泣きそうに変わるのを目の前で見つめながら、ククールは心底焦る羽目になった。いつもなら間違いなく殴られたり燃やされたりするような発言を、はっきりと否定も拒否もしないまま、相変わらずククールの胸にしがみついてうつむいてしまったゼシカ…。このままククールが沈黙を保ち続ければ、そのうち、きっとおそらく多分、かなりの確率でゼシカはククールのふざけた申し出を受け入れてしまうような気が、ものすごくした。その反応は想定外にもほどがある。あのゼシカに“そんな”決意をさせてしまうほど、彼女は怯えているのだ。ククールは焦りに焦った。そして猛烈に後悔し、すぐさま震える身体をぎゅっと抱きしめた。「ウソ。ごめん。疲れてるし、もう今日は風呂に入る気なんかねぇよ」「…っ、べつに、わたしは」「だから一緒に入るのは、また今度な」「…ぅ…もう…バカ…」ゼシカも、彼の言葉が自分を気遣ったものであることに気づいている。抱きしめるだけじゃなくて、ちゃんと抱きしめられても、それでも不安で胸が震えて。彼に触れていないと、目の前で幻と消えてしまうのではないかという強迫観念が自分でも理解できないほど、胸を締め付ける。羞恥心もなげうって彼にしがみついても、その不安は心のどこかに澱のようにこべりついていて、底が知れない。―――どうしてこんなにも不安なのか。「…ごめん、ね…。……バカみたい…ククールは、…ここに、いるのに」「ああ。…ここにいるよ」ククールのあたたかい言葉が逆にいたたまれない。ゼシカは情けない自分を恥じどうにかしなければと思うのだが、やっぱり掴んだ手を離せない。これ以上ククールを困らせたくないのに、彼をどうにかして繋ぎとめておかないと何をしでかすかわからない自分が、怖かった。…だけどククールの腕は、何もかもをわかってくれているように、優しい。いつまでも抱き合っていられればいいのだろうけど、そうもいかない。ククールはこの数日ほとんど寝ていないという彼女の体調が気になった。「…お前、もう寝ないと。全然寝てないんだろ?」「……」「ゼシカ?」顔をのぞきこむ。途端にゼシカは顔を赤らめ、彼の腕の中でさらに小さくなり、ボソボソと囁くように言った。「……一つだけ、お願い…きいて」この状況での「おねがい」がなんなのかなんて、ククールにわからないはずもない。「あぁ」「……ッ、……今日だけ、だから……。…ぃ、一緒に寝て…おねがい」予想通りの返答にククールは苦笑するしかない。なんて無邪気で、大胆なことだ。ゼシカは己の不甲斐なさに泣きそうになる。「私、私、今日はもう、ほんとにダメ…ごめんなさい…ほんとに…ごめんね、バカみたい…」「いいよ。ただしオレも男だから、何が起こってもいいっていう覚悟はできてるんだよな?」あえてそんな風に言ってくれる予定調和のセリフにも、いつものように威勢よく返せない。「……覚悟なんて、ない…。…でも、それでも」―― 一人で寝るなんて耐えられない。ククールの胸に顔を押し付け、ゼシカは心の底から呟く。「おねがい…今夜だけだから。…明日になったら、ちゃんとするから…」「…ウソだよ。なんにもしない。お前が安心できるなら、明日だってあさってだって一緒に寝るよ」「…うん…」夜着にも着替えず靴だけを放り出して、ククールはまずゼシカをベッドに横たえふとんをかけた。不埒な思考を完全にシャットアウトしてから、自分もその横に寝そべり、ふとんにもぐりこむ。不安そうに見上げてくるゼシカの前髪を枕にひじをついて弄びつつ、優しく微笑む。「どこにも行かないから。…おやすみ」「ククールは…?」「なんかゼシカの寝顔見てからじゃねぇと、眠れそうにない感じ」そんな風に苦笑して見せて、彼女がなるべく早く眠るようにと促す。しかしそれは本心だった。ゼシカは頬を染める。そして躊躇したのち、小さな囁き声で言った。「…もうひとつだけおねがい、きいてくれる?」「…いいよ」「………ホイミ、して」意外な申し出にククールは目を見開いた。ゼシカがそっとククールの手を取り自分のあたたかくやわらかい胸に押しつける。見つめてくる信頼と甘えに満ちた瞳に、思いもかけない言葉が自然とククールの口をついで出た。「………じゃあ、オレのおねがいも、きいてくれる?」「え?…うん」「キスしていい?」今度はゼシカが目を丸くした。そして一気に全身を赤く染めた。胸の上で重ねた手の平から伝わる鼓動が、どんどん速くなっていく。ゼシカは、肯定も否定もできず動揺した。ククールは返事を待たずに、彼女のあごに手をかける。鼻先を触れ合わせて、少しだけ覚悟する時間を与えてから、ゼシカが何かを言いかけた瞬間に口唇をふさいだ。上下の口唇を丸ごとふさいで、何度も何度も角度を変えて、優しく噛んで、舌先で舐める…はじめは戸惑ってククールの身体を押し返していたゼシカの指が、しだいに力を無くしていった。そして口唇を合わせたまま唱えられた回復呪文が、ゼシカの全身を覚えのある心地よいあたたかさで包みこむと、まるで彼の口唇から癒しの力が流れ込んできたような錯覚に陥り、ゼシカは恍惚とした。気づけばなぜか、一筋の涙が頬を伝い落ちていった。「…ゼシカ?」「……やっぱり、ククールだ。……本当に、ククールなんだね…」ゼシカが新たな涙を流しながら艶やかに微笑む。ようやく実感できた、ククールは帰ってきたんだ、と。「もう…きっと大丈夫。不安になんかならない。でも、ね、やっぱり今日だけは…」「…あぁ。このまま手を繋いで一緒に寝て、明日の朝も、繋いだまま一緒に起きような」ゼシカはいつのまにか握られていた手を握り返して、頷く。おいで、と広げられた胸の中におずおずと顔をうずめて、ゼシカは安堵の息をつく。ククールも、ただ優しく交わしただけの口付けですっかり満たされてしまい、この状況にも関わらず、もはやなんの葛藤も欲望もわいてこなかった。ゼシカが、ククールがここにいることをやっと信じられたように、ククールも今頃になってようやく、ゼシカを抱きしめてここに生きていられることを実感し、その事実に心から喜びを感じた。そばにいられるだけでいいと思っていた自分たちは、それが間違いだったのだと気付いた。いつ何があったっておかしくない。ましてや自分たちは世界の敵を討ち取ろうとしている。後悔しないように、いつだって心の内を素直に相手に伝えておかなければいけない。きっと他の人には簡単なそれが、自分たちには一番難しいんだと、わかってはいるけれど。明日になったら、伝えよう。素直に。ただ、素直に。だから、繋いだ手に力を込める。「―――離すなよ?」「―――離さないでね?」2人同時に口にして、驚いて見つめあい、それから小さくクスクスと笑った。明日になったら、伝えよう。二度と後悔しないように。―――あなたが好きだと。 もしも君が死んだら 前編
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/276.html
14 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/22(火) 23 03 17 ID nLtL3eebO ククールの添い寝してやるはゼシカが100%断る事を前提とした発言だろうけど、 もしゼシカが断らずに「本当に?ありがとう、よろしく頼むわ」とか言ってたら どうなっていたんだろう… 15 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/22(火) 23 40 23 ID VyxK+EJn0 そのゼシカは間違いなくお色気MAX 16 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/22(火) 23 42 42 ID 8dq0O0U+0 物凄く動揺し混乱するククールの姿が目に浮かぶw 17 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/23(水) 01 54 14 ID baJfU3nj0 もしくは自分のお色気にまだ目覚めてないまっさらなゼシカ(←4コマネタ) ゼシカ(そうね…せっかくククールが気を使ってくれてるんだし。 やっぱりこの女神様なんだか怖いもの、例えククールでも、 誰かがそばにいてくれた方が安心して寝付けそうよね) 「本当に?ありがとう、よろしく頼むわ(にっこり)」 ククール(…ってコイツわかってねぇぇぇぇぇえええええ!!!!!!!!) もちろん冗談でも手なんか出せるわけもなく、本当に「ただの添い寝」をし 子供のように安心して眠る彼女を前にひたすら悶々とした時間を過ごした色男だった 18 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/23(水) 08 49 19 ID c83otLYg0 バニータソなら間違いなく手をだすくせにゼシカだと絶対手を出せないんだろコノヤロw 本当に好きな女には簡単に手を出せない男の性分というヤツですね、わかります 20 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/23(水) 11 41 13 ID JWJv0F7aO 17 身悶えたwww きっとゼシカの穏やかな寝顔を見ながら そのあまりの無防備さに(男として意識されていないのか)と悲しくなったり、 (でも出会った当初を思えば大した進歩だ)と自分を慰め、 何度と手を出しそうになる度に思い止まり 自分の理性の強さに感心するを繰り返すに違いない。 次の日のククールは寝不足でふらついているんだろうなw 21 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/23(水) 19 55 48 ID cLePMhSCO ゼシカ…なんという生殺しw ゼシカが身じろいだり寝言が漏れる度に心搏数が上がるクク… 22 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/23(水) 20 33 11 ID yCzouiUZ0 ゼシカを抱き枕にして寝たら面白いのにねぇ。 27 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/23(水) 23 12 56 ID iy8agNeG0 17 百戦錬磨(恐らく)なククがゼシカ相手には 途端にどうすればいいか分からなくなるシチュはいいなw 自分から口説いておいていざゼシカに誘いに乗られと 喜ぶよりも焦りまくるという… 22 それは…w ゼシカをきつく抱きしめて熟睡するククールと、 「信じられられない…っ!この男、人をなんだと思っているの? もう…、離しなさいよ!私はあんたの抱き枕じゃないんだから~~~」と 必死の抵抗を試みるゼシカとか… ククゼシよりもゼシクク風味 28 19[sage]2008/04/23(水) 23 40 26 ID FnmF7aCxO 真面目でお堅い性格のゼシカが、どうして胸を強調する服を好んで着てたり胸が大きい事を自慢してたりするんだろう、と不思議に思って考えた事があるんだけど、 ゼシカは純粋に「女性のふくよかな身体は美しい」と考えてるんじゃなかろうか、という考えに至った。 天才彫刻家の血を引いてるわけだし、女性の身体を「いやらしい」と考えずに「美しいもの」と考えてるんじゃないかな~と。 だけどククールから見ると、その無自覚さが危なっかしいというか、無自覚だからこそほのかな色気を感じるというか。 ゼシカが、異性から見たら自分は性的な対象であるって事に、頭ではなく感性で気付いた時が「お色気に気付いた」時なんじゃないかと、ふと思った。 29 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/24(木) 00 11 43 ID tPmZMb6B0 ナイス考察! 30 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/24(木) 02 44 20 ID 7bBKWCCT0 27 ククールの寝姿と言えば抱き枕でしょう。 それしか頭に浮かばないw 31 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/24(木) 12 44 02 ID TFNOIdPi0 30 ギャリング邸でのアレですね、わかります 32 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/24(木) 19 48 26 ID XE4Be3lEO ゼシカはククール専属抱き枕 33 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/24(木) 20 27 14 ID m1JX2DAf0 27 それ最高…死ぬ……… 32 それククゼシラーの心の標語決定な たれ幕に書いてビルの上から掲げてもいいですか? 34 名前が無い@ただの名無しのようだ[sage]2008/04/24(木) 21 35 33 ID GrrxIdHmO ゼシカを抱き枕に熟睡するクク…かと思いきや実は一睡もできず、 ゼシカの手前寝たふりをしているものの必死に欲望と理性との闘いを繰り広げている。 天国のような幸せと地獄のような苦しみを同時に味わうククール。
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/437.html
ゼシカに想いを告げて、それにゼシカが応えてくれて…、そしてその後すぐに2人の新たな関係による甘い生活が始まるはずだった。俺が魔物に呪いをかけられ猫の姿になってからあっという間に2ヶ月程経った。かつて一緒に旅をした一風変わった外見の王と姫君がかけられていたような強力な呪いではない。雑魚モンスターに油断しているところをやられちまったんだ、俺としたことが。本当ならこんな呪いとっくに解いて真っ先にゼシカに会いに行っているはずだった。 と こ ろ が だ。俺は事態を甘く見すぎていた。通常なら裏の世界とも流通している酒場などをさくさく回ってちょいちょいっと情報収集、この程度の呪いなんて3日もあればスッキリおさらばしていたところだろう。だけどこの姿になってまず参ったことは 「ニャ~」しか喋れねえ!!!当然呪文も使えない。猫の手ってのは思いのほか不便なもので、物もちゃんと掴むこともできないし字を書くことだってできやしない。1度インクを直接手につけてそのまま紙に文字を書こうとしたら、不思議な事に古代文明の絵文字をふやけさせた様な文字しか書けなくなっていた。歪な魚に虫に鳥のような形のものが、紙の上に羅列されていく。これは所謂猫文字というやつか?せっかく磨いたレイピアの腕も今はスキル0よりも酷い状態だ。そもそも剣が持てないからな。俺は他人に己の状況を伝達する手段を失ってしまった。まさか壮絶な呪い主と戦い撃ち滅ぼした事もある身で、それに遥かに劣る微弱な呪いによってこんなに苦労するはめになるとはな。馬の姿に変えられた姫君。それよりももっと酷い化け物の姿に変えられた王様。思えばその時は城全体が大規模な呪いをかけられ、化け物の姿になっていてもトロデ王は人語を話せ、事情を全て知っている付き人のエイトが一緒にいたわけだ。今の俺は誰から見てもただの猫でしかなく、そして俺が呪いでこんな事になっているのなんて俺しかしらない。はっきり言って絶望的だった。それでもとりあえずなんとか呪いを解こうと、猫の姿のままで色々と奮闘してみたものだ。呪いを解く方法を探すために様々な場所に赴いた。ルーラが使えない状態での町巡りは想像以上にきつく何度も音を上げそうになったが、その度に俺の気持ちを受け入れてくれた時のゼシカの姿が浮かんできて俺を奮い立たせた。熱っぽく揺らめく瞳いっぱいに溜めた涙を溢れさせないように堪えながら、「うれしい」と微笑んでくれたゼシカ。その瞬間のゼシカが今まで見てきた中で1番綺麗に見え、胸が熱くなった。まっすぐ向けられた飾り気のない笑顔が、これほどまでに心を震わすものだったなんて始めて知った。──待っててくれゼシカ。絶対にこの間抜けな呪いを解いてお前のことを迎えにいくから。そう決心を固め僅かでも弱気になった己を叱咤する。それの繰り返しだった。猫の姿だと魔物が襲ってこないから、戦闘せずにいられた事がせめてもの救いだったね。呪いが解けるまでゼシカとは会わないつもりでいた。例え会ったところで、猫の正体が俺である事を知らせる術がないからな。だけど港でポルトリンクに向かう船を見つけた時にいても経ってもいられなくなった。思わず船の積荷の影に隠れ船の中に忍び込み、船がその地へ着くのを待っていた。──そうだ、一目見るだけでいい。ゼシカの姿を一目だけ。 そしたらまた呪いを解くための旅に戻ろう。 ポルトリンクに着いたらリーザス村まで走って、そこで何一つ変わりないゼシカの姿を遠目に見届けてるだけ。船の中で身を潜めている間ずっと自分に言い聞かせていた。船がポルトリンクにつき陸地に降り立った時、俺は目を疑った。船着場のベンチに座るよく見知った姿。ゼシカが、なぜここに。船から降りてくる乗客一人一人を確認するように動く視線。誰かを待っている?…俺を…?いや、ゼシカは俺が会いに行くときはルーラで直接村に行くと思っている。ポルトリンクに着いた船から俺が降りてくるなんて考えたりしないはずだ。だったらこんなところで、誰を待っている…?ぎくりと心臓が跳ねた。一瞬ゼシカの瞳に光る雫が見えた気がした。だけどそれは気のせいで、ゼシカは涙を浮かべてなどいなかった。それでも切なげな表情は今にも泣き出しそうに見え、どこか痛々しかった。ゼシカがおもむろに俯きぎゅっと手を握り締める様子が目に入ってきた。「…ナーン」「…あら…猫」気がついたらゼシカの足元に擦り寄り、鳴いていた。寂しそうな笑顔を浮かべ俺を抱き上げたゼシカが暫く猫の俺を凝視する。どこか遠い目をしたまま唇が、「ククール…」俺の名前を紡いだ。ああ、やっぱり俺の事を待っていたんだ。ゼシカはここで、ルーラでいとも簡単にリーザス村まで飛んでこれるはずの俺をずっと、ポルトリンクでたった一人で待ち続けてくれていたんだ。「ニャーゴ…」そうだよ、ゼシカ。俺だよ。待たせてごめん、ゼシカ。俺、ククールだ。ゼシカの元に来たんだ。約束通りとはいえないけど、時間かかったけど、こんな姿だけど、戻ってきたんだ、ゼシカ。俺の前だと泣くのをぐっと堪える事が多かったゼシカの頬に、一筋の涙が伝った。「…びっくりした…。あなた…ククールみたいだわ。 まったく…私も重症ね。あいつのせいでいい迷惑だわ」違う、俺がククールなんだよ。泣かないで、ゼシカ。泣くな。本当なら今すぐゼシカを思いっきり抱きしめて、その涙を拭ってやりたいのに。あまりの歯痒さにどうにかなってしまいそうだ。俺はここにいるのに。伝わらない。俺が猫なんかになってしまったばかりに。何もできない。ただゼシカを泣かせる事しかできない。ゼシカ、ごめん…俺、君だけを守る騎士失格だ…。俺は本気で馬鹿なのかもしれない。ゼシカに猫の俺の存在を認識させてしまった。ゼシカは猫の俺に“クク”という呼び名をつけて、しきりに「ククールみたい」と笑う。ある夜、ゼシカが夢に魘され目を覚ました時に、胸元に眠る俺を見て抱きしめながら安心したように息を吐いた事がある。「ね…、ククは…ククールみたいに突然いなくなったり…しなよね?」か細い声で呟いた言葉に俺は答える事ができなかった。代わりにゼシカの頬をそっと舐めた。“ククール”を失い不安定な状態のゼシカが、今度は“クク”を失ったらどうなってしまうんだろう…。人間に戻るまでゼシカに会わないと決めていたのに、我慢できずに中途半端に関わってしまった自分を俺自身が呪ってやりたい。もっともっと強力で、強烈な呪いで。ゼシカが“ククール”の事を想って泣く度に俺は心臓がつぶれてしまうんじゃないかというくらいに胸が締め付けられた。知らなかった。ゼシカって泣き虫だったんだな。俺が一緒に旅している間何があっても全く泣かなかったゼシカが、“クク”である俺の前だどこんな風に泣くのか。今までどれだけ一人で耐えてきたのだろう。俺はどれだけゼシカをたった一人で泣かせてしまっていたのだろう。エイト達が一度だけゼシカの泣く姿を見たと言っていた。大切な兄が死んでしまった時。それ以来ゼシカは一度も泣いていないと言っていた。でも違ったんだな。ゼシカは泣かないんじゃなくて、泣く時は誰もいない所で小さな体をさらに小さく縮め、誰にも気づかれないように泣いていたんだ…。クソッ、何をやってたんだ俺は…。人間の俺がゼシカの傍にいられない分も、猫の俺はできる限りゼシカといようと必死だった。本当は何としてでも真っ先に呪いを解く事がゼシカのためになるのかもしれない。けれどいつ元に戻れるか分からないのに、今ここでゼシカの前から消える訳にはいかない。せめてゼシカが“ククール”を想って泣かなくなるまでゼシカの傍にいたい。ゼシカの胸元に滑り込み頬すりすりする。すると顔をほんのり赤くして「もう、私嫁入り前なのよ!」と可愛く怒るゼシカ。ゼシカが入浴する時についていって首筋や背中をぺろりと舐める。くすぐったがって、怒ったような困ったような顔で慌てて止めるゼシカ。可愛い。キスができない代わりに唇をぺろぺろ舐める。「ククールみたい…」と言いながら俺をぎゅっとするゼシカ。可愛い。可愛い。泣き顔も悪くないけど、やっぱりゼシカはこんな風に笑ったり照れたり怒ったりしている方がずっといいよ。ゼシカが泣かないためなら俺は何だってする。ずっと傍にいる。だからもう泣くなよ、ゼシカ。戻ったのは突然だった。いつものようにゼシカの胸元に潜り込んで心地よい眠りについた所までは間違いなく俺は“クク”だった。目が覚める。いつも通り俺を圧迫するゼシカの胸…違う。いつもだったら頭全体を覆っている温もりと弾力が今は頬の辺りにしか感じない。耳はいつも通り剥き出しになっているのに何故か違和感があった。頭のてっぺんじゃなくて、頬の後ろの方にある…?鳥の鳴き声も風の音も今日は随分と落ち着いていて耳障りが良い。ゼシカの胸元に窮屈に収まっているはずの俺の身体が、今はゼシカから大分はみ出してしまっている。…これはゼシカの足か?ゼシカの足が、俺の足に当たっている…?いつもなら毛を通して伝わるゼシカの体温がダイレクトに俺の肌を伝わる。このすべらかな肌を、いつもは半分以上も堪能できていなかったことを今更思い知る。…猫の時はこういう事への感覚が麻痺しちまっていたみてーだな。そう思うのと同時に状況を全て理解した。俺は今、人間の姿であると。どうやら魔物のかけた呪いは時間が経てば自然に効力がなくなるものだったらしい。戻るために必死になっていた日々は何だったんだろうとか、そんな事はもはやどうでもいい。それよりいったん自分の姿に気づいてしまうと意識はどんどんゼシカの方へ向いていく。──なんだこれ、くらくらする。猫の時、ゼシカの反応が可愛くて色々いたずらしちまったけどこんなにエロイ気分にはならなかった。ゼシカと素肌を合わせているだけの事がこんなに刺激的だったなんて。女の感触なんてよく知っているはずなのに、まるで生まれて始めて味わうような強烈な感覚。ヤバイ。このままじゃ俺、暴走しちまう。早く、ゼシカから離れないと…。行動を起こそうとした時に、俺と密着したままのゼシカの身体がぴくりと動いた。「…うん……クク……重いよ…」「…ああ…わり…」思わず普通に返事をしてしまった。寝ぼけているのかゼシカはそのまま俺の顔を抱え込み、胸に自ら押し付けるようにさらに強く抱きしめた。………………これじゃ離れられねえ。俺のお姫さまには困ったものだ。どうやっても俺の事を放すつもりはないらしい。諦めに似た気持ちと、それを上回る熱い感情が沸きあがりそのままゼシカを抱きしめかえす。俺の腕が余るくらいの小さな背中。その華奢な抱き心地に愛おしさが込み上げてくる。顔を包んでくれている柔らかな胸も申し分ないが、できれば見つめあい、唇を合わせたい。ぺろぺろ舐めるのはもう卒業だ。ふと頭を抱える腕の力が緩んだと思ったら、頭にキスが降ってくる。猫の時は“クク”を通して“ククール”を見ているんだと思っていたが、今更ながら“クク”自身も相当愛されていた事に気づく。なんだよ俺、人間だろうが猫だろうが、どっちにしろゼシカにめちゃくちゃ想われてるんじゃん!そう思ったら嬉しくて、さっきまでのエロイ気持ちはどこかへ飛んでしまった。もちろん今もゼシカに対しそういった類の劣情がないとは言えないが、今はそんな事よりもこの穏やかな一時を大切にしたい。この後の事はとりあえずゼシカがちゃんと目を覚ました時に考えよう。
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/502.html
住人の萌え語りの流れから 見られている。ひたすら見られている。ゼシカはとうとう隣に座るククールを振り向く。「~~~いい加減にしなさいよッ!!」「だってゼシカが本当に可愛いから」「それはもういいわよッ早く朝ごはん食べなさいってばッ!!」「可愛すぎて目が逸らせない」「逸らせて」「嫌だね」呆れと、羞恥で、ゼシカは目をつぶり押し黙る。頭痛がしそうだわ、と呟く。それでも頬は赤い。このバカはテーブルについてから、朝食にまったく手を付けていないのだ。向かいにはとっくに朝食を終えて、音を立ててコーヒーを啜るエイトとヤンガスが。2人とも何も言わないのが余計に嫌だ。死んだ魚のような目で遠くを見ないでほしい。「……ククール。時間がないの。さっさとご飯食べて」「いらねぇよ。お前見てると胸いっぱいで苦しいんだ」「苦しいなら見なけりゃいいでしょうがっ」「恋は苦しいものさ」ついにゼシカはおでこに手を当ててうつむいてしまう。どうしたらいいのだろう、この浮かれポンチを。「……」ゼシカは考え、決心する。ふいに顔をあげてククールの目線と真っ向から向かい合うと、「わかったわ、好きにしなさい。私も好きにするから」そう言って、ククールの前に用意された朝食に、フォークを豪快に突き刺した。ずいっと突き出されるそれに、ククールが軽く身を引く。ゼシカの気の強い瞳。断固として曲げない時の少しわがままな表情。言われたとおりにそれを間近にじっと見つめて、ククールはますます相好を崩して呟く。「…かーわいい」その途端開いた口の中に押し込まれるフォーク。ククールはごく自然にそれを咀嚼しながら、さらにニヤけた顔でゼシカを見つめ続ける。ゼシカは次から次へと彼の口に朝食を詰め込むことに専念した。だって目が合えば、こちらが負けることはわかっていたから。ゼシカの差し出す山盛りのフォークを躊躇なくパクリとくわえるククールは、必死で目を逸らし続けるカワイイ恋人の赤い頬が愛しくて仕方なかった。なんとか全てを食べさせたゼシカは、はあっと疲労に近いため息をつく。「やっと食べたわね…まったく、子供じゃないんだから…」そう言いかけたゼシカの腕を、ククールが強引に引っ張り思い切り顔を近づけた。「まだ食べ終わってないぜ」「な、なんでよ…ちゃんと全部…」「見てるだけじゃ、我慢できない」一気に顔を真っ赤にさせたゼシカの頬に口付けながら、「ちゃんと残さず食べなきゃ…」ククールの口唇が、ゼシカの口唇を丸ごと食べた。仲間の鉄拳制裁がくだるまでの間、2人はおいしい朝食をむさぼったのだった。
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/249.html
【サザンビーク・宿屋内部】ゼシカ離脱直後 ククール「案外 ひとりで リーザス村に 帰っちまったのかもな。 なにも言わずに 出てったのは 別れが つらいからとかさ……。 うーん ゼシカにかぎって そんなの あるわけないか。」 【サザンビーク・城下町&城内部】リブルアーチに行く前 ククール「やっぱゼシカが オレらになにも言わずに 出てくわけねーよな。 ったく 世話かけやがって。 カタキ討ちがすめば オレは ひとりで 旅に出る予定だったんだが……。 ゼシカを 探し出すまで 一緒にいてやるとすっかな。」 ヤンガス「宿屋で待ってれば ひょっこり 帰ってくるんじゃねえでげすか? ククール「いや それはないだろ。 いくら なんでも 不可解すぎる。」 ヤンガス「やっぱ むさい男ばっかの パーティーが イヤになったとか……。」 ククール「安心しろ。このオレがいるかぎり 断じて それはない!」 【フィールド】ブルアーチに行く前 ククール「喜びも つかのまか……。 もう ちぃとばかし 勝利の美酒に 酔いしれていたかったんだがな。 ゼシカのせいで せっかくの 酔いも きれいさっぱり さめちまったぜ。」 【トラペッタ&リーザス村&ポルトリンク&ドニの町&マイエラ修道院&アスカンタ城】リブルアーチに行く前 ククール「あちこち 考えなしに探すより ゼシカのいなくなった サザンビークで 聞き込みをすべきだと思うぜ。 探し回るのは 聞き込みのあとでも おそくはないだろうよ。」 ククール「いなくなって初めて ゼシカの ありがたみってもんが じわじわと 身にしみてくるぜ。」 ヤンガス「まったくでがすなぁ。 あの胸は反則でがすよ。」 ククール「オレも初めて見たときは 胸に水風船でも 入れてんのかと 見まちがったくらいだからな。」 【隠者の家・内部】ドルマゲスを倒した後 ククール「ドルマゲスを倒せたのも ここの じいさんのおかげだから ひと言 礼を言いたい気持ちも 分かるぜ。 だけど 今はゼシカの足取りを 追うことに 全力をつくそうぜ。」 【フィールド・リブルアーチ周辺】リブルアーチに行く前 ククール「もともと この旅に さほど やる気があったってわけでも ないんだが…… ゼシカが いなくなったんじゃ テンションが 下がりっぱなしだ。 はっきり言って もうマイナスだな。」 【リブルアーチ】ハワードに宝石を取ってくるよう依頼された後 ククール「クラン・スピネルなあ? とにかく そいつを手に入れるまで がんばってみるとするか? 今じゃ オレたちとゼシカとの 接点は あのハワードって おっさんしか なくなっちまったわけだしな。」 【オークニスへのトンネル】呪われしゼシカと闘う前 ククール「オレとしては これ以上 むさい男どもだけで 行動するのは 遠慮したいんだがな……。 このまま 新しい土地に行くなんて それこそ ゴメンだ。 早く ゼシカを 助けに戻ろうぜ!」 ククール「今 この先に 用はないだろ? ゼシカのことも 気になるし 寄り道は 後にしてくれよ。」 【リーザス村】ハワードに宝石を取ってくるよう依頼された後 ククール「ここが ゼシカの出身地? でも 残念ながら ここには ゼシカは いなさそうだぜ。 ……なんで そんなことが わかるかって? う~~~~~ん………………。 ……勘かな。」 【ベルガラック】 ククール「これは カンなんだが ゼシカは これまで訪れた町には いないような気がするんだ。 どうしてだって 聞かれても カンとしか 言いようがねえんだけどよ。」 ククール「なんだなんだ ゼシカよりも カジノが気になるだなんて 主人公って 案外 冷たいヤツだったんだな。」 【フィールド・リーザス村周辺&ポルトリンク周辺】ライドンに会った後 ククール「オレたちが 次に何を するべきか 主人公には ばっちり わかってるみたいだな。 さあ 行こうぜ。1秒でも早く ゼシカを 魔の手から救ってやらなきゃな。」 【リーザス像の塔】宝石入手後 ククール「さあ 次を急がないと 怖い怖いゼシカちゃんが あのデブを 殺っちまうかもしれないぜ?」 【フィールド・リブルアーチ周辺&リーザス村周辺&ポルトリンク周辺】チェルスいじめイベント後 ククール「正直な話 オレだって ゼシカが からんでなきゃ あんな デブと関わるのは ごめんなんだがな。」 【リブルアーチ】呪われしゼシカと戦う前 ククール「……今度ばかりは ヘタしたら 戦ってでも ゼシカを 止めなきゃならないのかもな。 ……よしっ! 覚悟を決めたぜ!」 【リブルアーチ】呪われしゼシカに負けたことがある状態 ククール「……油断したわけじゃねえが あのゼシカは 外見だけじゃなくて 中身も ずいぶん ちがうみたいだな。 ちっ! レディと戦うのに 本気 出さなきゃならないとは まったく 情けないこったぜっ!」 【フィールド・リブルアーチ周辺&リーザス村周辺&ポルトリンク周辺】ハワードが結界を作り始めた後 ククール「このまま ゼシカを 暴走させたまま 放置すれば きっと ゼシカは いずれ滅びる。 止めるなら 今しかない! 主人公 抜かるなよ!」
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/313.html
栄えている街とはいえ、大通りを外れた裏路地はやっぱり人通りもないし、いい雰囲気ではない。 でも宿屋までの道はこっちが近道だから、と、ゼシカはその薄暗い路地を足早に歩いていた。 ―――何気なく視線を上げた瞬間、狭い道の先に立ちはだかる人影にギクリとして立ち止まる。 どんな明るい街にだって、悪い連中は必ずいる。陽も落ちて、しかもここは民家とは離れたさびれた路地裏。 声を上げても誰にも聞こえないかもしれない。どうしよう、ゼシカは焦った。どうしてこんな時に限って。 影が、無言でザッと足音を立てて近付き、反射的に身体がビクッと震えた。 さらに一歩。ゼシカの足も、それと同時に後ろにさがる。しかし恐怖が先に立ち、逃げ出すことすらできない。 凍り付いたように動けなくなったゼシカをよそに、影は最後の一歩を大きく踏み出しゼシカの目前に迫った。 「………………ククール?」 呆然とその名を口にする。ろくな明かりのない路地ではその赤い制服が漆黒に見えて逆に恐怖心を煽ったが、 近くで確認すれば見間違えるはずもない、それはククールだった。一応は、ゼシカにとっての騎士である。 ゼシカははーーっと大きな息をはいた。 「驚かさないでよもう…心臓止まるかと思ったじゃない」 怒るより安堵が先にきて、文句を言いながらも胸をなで下ろす。 と、下げた視線の先、ククールの左手に握られたレイピアを見てぎょっとする。 ―――血が。 「なに…どうしたの?モンスターでもいたの?」 怪訝な顔で尋ねるゼシカに、ククールは薄い笑みを浮かべたまま あぁ、と呟いてレイピアをヒュッと空中で切った。 小さく飛散する血痕を気にもせず、それを鞘に戻す。ゼシカは不穏なものを感じて無言で彼を見上げた。 「…別に?」 ククールは笑ったままだ。 なんだろう…何か、変だ。このタイミングでククールが現れてくれて、これ以上の安心はないはずなのに。 未だに不安感が去らないのは。 ゼシカは理由のわからない居心地の悪さに耐えきれなくなり、意を決してククールの脇を通り抜けようとした。 「………何もないなら帰りましょう。いつまでもこんな―――」 しかし言いかけた言葉と同時に、ゼシカの足が突然止まった。 ククールがゼシカの腕を捕らえ、両肩を押さえてあっと言う間に壁際に押しつけたからだ。 余りにもいきなりすぎて声も出ないゼシカ。微笑を崩すことのないククール。 しばらくそのままで、お互い身じろぎひとつしなかった。 見慣れているはずの彼の笑みが、今のゼシカには凄味をたたえた悪魔の笑みに見える。ゼシカの喉がゴクリと鳴った。 「………………ゼシカ」 「………………ゃ、やだ、なにクク―――」 「お前武器は?」 え?と声がもれる。脈絡のない問いに、震えそうな声をなんとか抑えてゼシカは答える。 「武器…は、置いてきた、わ。宿に」 「ふぅん」 自分で聞いておきながらどうでもいいような返事を返したと思ったら、何の前ぶれもなくいきなりククールは ゼシカの口唇を奪った。しかもなんの気遣いも優しさも技巧もない、力任せの強引な。 あまりの衝撃に一瞬頭が真っ白になっていたゼシカは、ハッと我に帰り渾身の力をこめて彼の頬を張った。 「―――なにす………!!!!」 「メラしねぇんだ」 沸騰しそうな怒りをサラリと流して、ククールはからかうようにそう言った。ゼシカが目を見張る。 彼の言いたいことが見え、わなわな、と拳が震えた。バカにされているんだ。 「………おあいにく様。MPなら少しは残ってるわ、―――アンタみたいな男を撃退するためにね!!」 怒りの余り抑えつけられた肩を引きはがして、ゼシカは指に炎を灯した。 一発のメラくらいならまだ撃てる。間近で黒焦げにしてやる。 しかし、その時ククールが素早く唱えた呪文は。 向けられた手の平がかすかな光を放ったと思った瞬間、ゼシカの炎はたちまち消滅した。 そして、なぜか凄まじい脱力感がゼシカを襲う。支えをなくしてフラ、と倒れかけたところを、 再びククールに捕らえられてしまう。今度は両手首を押さえられ、両足の間に下半身を挟まれる形で。 さっきよりももっと身体を密着させられて、ゼシカは怒りと羞恥で顔を赤く染めた。 「…ッ、なんなのよ…ッ、離しなさいよ!!」 なんて力なんだろう。いつものヘラヘラした、そしてフェミニストな彼からは想像もつかないほど、 容赦なくギリギリとこめられる力。まるで憎まれているようだ、とすら思う。 ゼシカが藻掻くのを楽しんでいるかのようなククールの表情に、ゼシカの心にまた不安が蘇ってくる。 ―――やっぱり、いつもとちがう。 「………ゼシカちゃん、思いっきし力こめてさっきのビンタ?」 ククールが耳元でおかしそうに囁く。 「全然痛くねぇよ、ゼシカ」 「………ッククール!!」 ついにゼシカは弱音をもらすように彼の名を叫んだ。どうしちゃったの?しかしククールは薄笑いをやめない。 「武器もなくて、女の細腕で殴ったってあんな程度で、おまけに頼みの綱の魔法も…取られちまったしなぁ?」 ハッと気付く。さっきかけられた魔法は、あれは…マホトラだ。わずかに残しておいたMPを吸い取られたのだ。 ―――どうしてそんなことするの? どうしてそんなことまで。 ゼシカの瞳に今度こそはっきりと恐怖が浮かぶ。そして脅えが。 途端、ククールの手が、折れそうな強さでゼシカの手首を強く握った。 「―――何フラフラしてんだよこんな所で!?武器も持たねぇで何やってんだよお前は!?!?」 まさに堰を切ったように。 ククールの秘められていた怒りが一気にゼシカにぶつけられる。ゼシカは驚きすぎて声も出ない。 「…オレは前から言ってるよな、てめぇの無自覚さ自覚しろってさ。もっと用心して警戒しろって。 世の中には腕の立つ奴も、ある程度魔法が使える奴も、呆れるくらい悪知恵の働く奴もいくらでもいるんだよ」 ますます強められる手の力に、ゼシカは本気で顔を歪める。 「なのにコレかよ。なんでそうなんだよ。馬鹿かお前は。オレがどんだけ」 「…ッ、………クク…」 ククールの本心を知っても、ゼシカの胸から不安はぬぐい去れなかった。 いつもとちがう。その感覚だけは今も感じている。ククールが、追いつめられているみたいに余裕がない。 だって、だって、来てくれたじゃない。そうでしょ?だからもういいじゃない。 なのにどうしてそんなに怒るの? そう、彼はものすごく怒っている。今まで見たことがないレベルで、本気で。 ゼシカの鎖骨あたりに額をつけ、脱力して凭れかかっているのに手首を拘束する力だけは強くなる一方で… とにかく、ごめんなさい、とか細い声を出すことしかできなかった。確かに悪いのは自分だ。 しかし次の瞬間肩に走った痛みに、ゼシカは小さく悲鳴を上げた。そしてそのまま強く吸われる感触。 肩口を噛まれ、そして跡をつけられたのだ。 混乱するばかりのゼシカの耳に直接、ククールの低い低い囁きが注ぎ込まれる。 「―――オレを、知らない男だと思えよ。そうしたらわかるだろ?自分の愚かさが」 それはゾッとするほどに甘い声で。 全身に鳥肌が立った。 獰猛な目をした彼の背後に、突き刺すような光を放つ満月が、異様な大きさで存在している。 もうゼシカには、今自分を蹂躙しようとしている目の前の男が、まさに見知らぬ暴漢にしか見えなかった。
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/238.html
本日は過酷な旅の、束の間の休息日。 トロデ王は三角谷へピュア・ギガンデスを嗜みに、エイトは姫様と共にふしぎな泉へ、 ヤンガスは久々にパルミドへ寄り、知り合いに顔を見せに行くという。 「ククールとゼシカはどうする?」 「わたしは部屋でのんびりするわ。おいしい紅茶とお菓子でも買って。読みたい本もあるし」 「そうだな、街でレイピア研ぎに出そうと思ってる。あとは適当にブラブラして、 気が向いたら酒場でも行くかな。ベルガラック戻って久々にカジノ三昧ってのもいいか」 「わかった。ぼくは泉か、泉のおじいさんの家にお邪魔してるから、何かあったらそこに来て」 みなが了解、とうなづく。 では解散じゃ!とのトロデ王の浮き足だったかけ声で、ぞろぞろと動き出す一行。 外に出ようとしたエイトが扉の手前で思い出したように振り返り、 「そうそう。君たち、ケンカしないでね。君たちのケンカは必ず物が壊れるんだから。仲良くね」 にっこり。 ククールとゼシカが唖然としている間に、扉はパタンと閉じられてしまった。 「…やっぱエイトってヤな奴だなぁ」 頭をかきながら、さほど困った風でもなくククールがぼやく。 「なにがよ?私はほんとに今日は、部屋でゆっくり過ごそうと思ってるんだからね」 「オレと?」 「ひっ、ひとりでよっ!!」 「へー。オレにいちにち会えない日なんてそうそうないけど、寂しくて泣いちゃったりしない?」 余裕たっぷりの笑みで、ゼシカの顔をのぞきこむ。 「へ い き ですッ!!」 顔を真っ赤にして肩を怒らせる彼女をクックッと笑いながら、 「OK。まぁどっちにしろ、オレも本当に鍛冶屋には行くつもりだからさ。 …じゃあ今日はここでお別れか。久々の休日、せっかく2人きりで過ごせるのに残念だな」 後半部分をいかにも切なそうに告げると、途端にゼシカの顔がわずかに曇った。 「べ、別に…絶対、離れていたいってわけじゃないけど…」 「ひとりがいいんだろ?」 「そんなこと言ってないじゃない!」 ゼシカが困ったように反論する。計画通りの展開に、ククールはたちまち上機嫌だ。 「じゃあ、用事がすんだら、ゼシカに会いに来ていい?」 ゼシカは照れているのをごまかすために、不機嫌な表情で小さくうなづくしかなかった。 「………何よ。寂しくて泣いちゃうのはククールの方じゃないの」 「正解」 ゆるむ頬を隠しきれず、ククールはゼシカのおでこに、行ってきますのキスをした。 街での用事に思ったより時間がかかり、再びククールがゼシカの部屋の扉をノックしたのは それから何時間も経ってからだった。 「ゼシカ?」 応答が聞こえたような聞こえなかったような。居眠りでもしているのかとそっと扉を開くと、 ゼシカはソファに深く腰掛けて、文庫本を熱心に読みふけっていた。 帰ってきたククールにも反応無しだ。当然不満顔でククールはゼシカの隣に腰かける。 「ただいま」 「…あ、うん」 ただいまに対してあ、うん、はないだろうと、ますます眉間にしわをよせる。 「おい、もう本読むなよ」 「…うん」 「ゼーシーカー」 「…うん、ちょっと待って」 今目が離せないところで…などと呟きながらページをめくるゼシカが何を言っても 聞こえないほど熱中しているのは、いかにも女の子の好きそうなラブロマンス小説。 すぐ傍で、香りさえ伝わる距離にいながら、目線すら交わせないこの状況はなんだ。 どんな焦らしプレイだよ。オレは待てを命じられた犬か。ご主人様には絶対服従か。 大体目の前に本物の君だけの騎士がいるのに、紙の上の王子様の方がいいってのかよ? 本を取り上げることは簡単だが、そうすれば確実にケンカになる。せっかくの2人きりの午後を 台無しにしたくはなかったし、エイトに釘を指されている以上、それは避けたかった。 …となれば? 何気なく本に添えていた右手をふと取られた。 ちらりと視線をやると、ククールがゼシカの指の一本一本を確かめるように触ったり、 爪の先を撫でるようにして遊んでいる。 一瞬上目遣いの視線がこちらを挑むように見つめたが、すぐに伏せられた。 特になにも思わず(それよりも本の続きが気になって)、右手をククールの好きにさせて、 ゼシカは再び本に視線を戻した。 …………途端。 「…ッ、ちょ…」 妙な感触に思わず見返ると、まるで誓いを立てる騎士のように、ククールが ゼシカの手の甲に口付けている。思わず引っ込めようとする手は強く掴まれ、赤らんだ顔で 言葉に詰まるゼシカにおかまいなしで、ククールは何度も何度も口づけを繰り返す。 そのうち手の平を返され、そこにも幾度となくキスを降らせる。 たまりかねてキツく名を呼ぶと、ククールは手の平に口づけたままニヤリと笑った。 その笑みにムッとして、ゼシカはすぐに視線を本に戻す。表情を平静に保ち、 ククールのセクハラまがいの”作戦”を、完璧に無視しようと決めたらしかった。 キスの嵐は指先の全て、爪先のひとつひとつに行き渡っていた。 明らかに情より欲が滲み出ている、熱く狂おしく重ねられ続ける口付け。 湿った口唇と、湿った吐息。手の側面から手首にまでも口唇を辿らせる。 単なる愛おしむ行為を越えて、もはや愛撫といってよかった。そしてそれは完全にわざとだ。 冗談交じりの品のないジョークやスキンシップには目をつり上げて激怒するくせに、 ククールの”本気モード”には、途端に絶対的に逆らえなくなってしまう彼女を知っている。 そしてやはりククールの”本気”に当てられて、怒ることも拒むこともできず硬直してしまったゼシカ。 必死で動揺を隠そうと視線を泳がせ、はやる鼓動を抑えようとするので精一杯で。 「!」 ふいに中指の関節をカリ、と甘噛みされた。 強張っていたゼシカの表情が弱々しいものに変わるのを、ククールは指を口に含んだままじっと見ている。 「…クク…」 漏れ出た艶っぽい呟きをあえて無視し、細い指先をゆっくりと口内にくわえ入れたところで、 ついにゼシカがバサリと本を手許に落とした。 「…………もうやめて。降参」 思いきってククールを振り返り、ゼシカはこれ以上ないくらい赤く染まった顔でそう告げた。 名残惜しむように指先にチュッと口づけると、ようやくゼシカの右手を解放する。 作戦成功。ククールは勝利の笑みを満面に浮かべ、一言。 「かまって♪」 「………もうッ、ほんっっと!」 ゼシカは呆れるしかなくて、でもさっきまでの”本気”の雰囲気なんてもう少しも感じさせない、 子供のように無邪気に笑うククールが可愛く思えて仕方なくて、まだ熱い右手を彼の頬に当てた。 「甘えんぼ!!」 勢いのままにおでこにキス。 ククールが幸せそうに声をあげて笑うので、ゼシカは頬をふくらませてプイと顔を背けた。 「散歩でも行こうか」 「うん」 「どこがいい?」 「どこでもいいわ」 ククールの左手が、今度は優しく、ゼシカの右手を握った。
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/464.html
ククールが死んだ―――そんな知らせが届いたのは、彼がゴルドに発った翌日のことだった。「…ゼシカ、とりあえず僕たちは起きてるから。何か知らせが入ったらすぐに知らせるから、君はちゃんと寝るんだよ」小さな部屋の真ん中で椅子にぽつんと腰かけ、テーブルに重ねた手を乗せたまま身じろぎひとつしないゼシカに、エイトは小さくため息をつくしかなかった。すぐに闇が訪れて、この部屋は真っ暗になるだろう。エイトはランプに火を点けて、扉を閉めた。―――ゼシカの瞳には、何も映っていなかった。マルチェロとの戦いの後。しばらくの間、ククールは心を整理する時間を必要とした。仕方のないことだった。時だけがすべてを解決すると本人も仲間たちもすでに知っていたから、時折上の空になる自分に苦笑したり、仲間にさりげなく背中を叩いてもらったりしながら、少しずつククールは最後の決戦に挑むための気概を取り戻し始めていた。そしてその間、彼のそばにずっと寄り添えたのは、唯一ゼシカだけだった。ククールが望んだわけではない。ゼシカもそれを強要したわけではない。頻繁に言葉を交わすことも、特別に触れ合うこともなく、ただ、そばにいた。ただの仲間ではなく、ましてや恋人同士なんかじゃ決してない。かけがえのない存在。今はただそれだけで、2人は満足だった。「…あんな大惨事起こしやがって、あの…馬鹿」ククールが無表情に呟いたのをゼシカは聞く。「…どれだけの人が犠牲になったと思ってんだ…」ゼシカはそっと彼に近寄り、テーブルの前から彼の顔をのぞきこんだ。「行ってみたら?ゴルドに」「…なんで?」「今でもたくさんの人がケガに苦しんでるのよ。アンタの回復魔法、こういう時にこそ使うべきなんじゃないの?」目からうろこが落ちたように、ククールは彼女の顔をまじまじと見つめた。「気分転換にもなるでしょ。行って、あの人がしでかしたこと、もう一度しっかり心に刻み込んでくればいいわ。 …二度と後悔しないように、ね」次の日、ククールはエイトに決戦までの日をもう少しだけ伸ばしてほしいと頼み、ゴルドに向かった。ゼシカは共に行かなかった。お互いそんなやり取りもせず。「若くて可愛い女の子だけじゃなくて、ちゃんと老若男女分け隔てなく治療するのよ」「おっと、釘刺されといてよかったぜ。まさしくそれが目的になるとこだった。さすがゼシカ」「バカ。……いってらっしゃい。アンタも、十分気をつけてね」「あぁ。行ってくる」それだけのそっけない別れ。それだけで全てが通じ合っていた。ゴルドで突然地盤が裂け、その場にいたククールが裂け目に飲み込まれた――そんな知らせが入ってきた一行は真相を確かめるためすぐに現地に向かったが、危険すぎるためゴルド一帯はすでに全面立ち入り禁止になっており、関係者のエイト達も例外なく締め出された。ただ、回復魔法でケガ人を癒し続けていたククールという青年が巨大な大地の裂け目に落ちたというのは事実であり、捜索救出に全力をあげている…ということだけしか知らされなかった。もちろん反発――とくにゼシカはとにかく中に入れろと本気で抗議したが、これ以上“犠牲者”を増やすわけにはいかないと、相手も絶対に譲らなかった。仲間達には、それ以上どうすることもできなかった。自ら確かめることも助けに行くこともできないのなら、あとは無事を祈るしかない。「絶対にそんなのウソよ、アイツのことだもの生きてるにきまってるわ、そのうち何事もなかったようにひょっこり帰ってきて、へらへら笑って適当に謝るのよ、あぁもう中に入れたら私が直接行って探してきてやるのに!そして思いっきり殴ってやるんだから、ホント世話ばっかりかけて…ッ!!」ずっと、ずっと、飽きることなくククールの悪口を言い続けながら、ゼシカはゴルドの壊れた入口に張られたバリケードの前から動かなかった。何時間も居座り続け、陽が落ちてきた頃にはゼシカはもう一言も発さず、拳を握りしめてじっと地面をみつめるばかりだった。エイト達が半ば強引に彼女を宿に連れ帰る時、周囲のヤジ馬たちは口々に、落ちた青年の生還は絶望的だろうと囁きあっていた――その日から、長い長い数日が過ぎた。ただ待ち続けることの辛さに、全員が精神の限界を感じ始めていた。中でも。「…ゼシカが、このままじゃもたないよ。薬でも飲ませて無理やりにでも眠らせないと」「ほとんど飲まず食わずでろくに寝もしねぇんじゃあ、あんな細っこい身体すぐにイカレちまいやすぜ…」エイトとヤンガスはため息をつく。何もできないというのはこうも苦しいものか。それは、彼女に対しても同じだった。エイトは血が出るほどに拳を握りしめ、床を見つめて呟く。「――…死体もないんじゃ、信じられるわけないだろ…バカククール…!!」信じられないのではなく、信じたくない。彼は絶対に生きていると信じられるのは、今ここに彼の姿がないからこそ。それだけの根拠のない希望にすがるしかないのだ。大地の裂け目に落ちたとすれば、亡きがらなど見つかるわけはない…エイトは消しても消しても浮かんでくるその思考を打ち消し、じっと扉を見つめた。今にも「ひょっこりと」あの銀髪の色男が帰ってきそうな気がして。 *柄にもなく緊張しながら、ゼシカがいると言われた部屋の扉をコンコンと叩く。返事はない。もう一度だけ叩いてしばらく待ち、静かに扉を開いた。あまりにも暗い部屋。今夜は月すら出ていない。窓と家具の形がぼんやりとわかる程度で、人の気配すら感じられない。本当にいるのだろうか?「…ゼシカ?」緊張のためか妙にかすれた声が出る。手探りでランプを見つけ出し火を点けると、ようやく室内が見渡せた。…ゼシカは、居た。窓際の椅子に座り、テーブルに突っ伏して身動ぎ一つしないで。眠っているわけじゃないのは、どこも弛緩していない身体の線を見れば一目瞭然だった。こわばった細い肩。交差した腕に食い込む震える指。テーブルの隅には追いやられた食事。いつもの元気なツインテールではなく、乱れた長い髪が机上に広がっていた。さっきの呼びかけは聞こえなかったのだろうか。「………ゼシカ」反応は、ない。足音を立てるのもなぜかはばかられ、躊躇しながらも、ゆっくりゆっくりと、彼女の背後に立つ。「……ゼシカ」今度はもう少しはっきりと、本人に対して呼びかける。彼女が伏せた頭を小さく横に振った気がした。…聞こえている。「ゼシカ…ごめん。心配かけた」もっと近寄り少しかがんでみるが、やっぱりゼシカは顔を上げない。「…なぁ、怒ってんのか?謝るから、顔、見せてくれよ…」急激に不安になり懇願するように告げると、今度こそゼシカは大きく首を振ってますます小さく身を縮こませ、己の腕の中に顔を埋めた。決して顔をあげようとはしない。途方に暮れ、しゃがみこみ床に膝をついて、うつ伏せたままの彼女を見上げた。―――意を決し、剥き出しの細い肩に手を伸ばす。どうしてこんなに緊張するのか自分でもわからない。きっと、彼女が今にもバラバラに壊れてしまいそうに見えるからだ…指先が、肩に触れた。冷たく冷え切った肩。ゼシカが確かにピクリと反応する。「ゼシカ」祈りを込めて名を呼びながら、勢いのままに力を込めて肩を揺すった。―――その瞬間。ガバッ!!と。唐突に顔をあげたゼシカの目と、彼の目が間近でぶつかった。「―――――ッ…。……わるい。驚かせたか…?」「…………」慌てて肩から手をどけ、目を見開いて無表情に自分を見つめるゼシカを見つめ返す。ゼシカは妙なほどじっと、ひざまずき自分を見上げる彼の顔を凝視した。やたらと長く感じられる沈黙が過ぎて、やがてゼシカがポツリと言葉を落とした。「……………………ク…ル?」「…あぁ。ちゃんと帰ってきたぜ」「……ククー…ル…?」「ごめんな。心配かけたよな。でもなんとか、生きてるからさ、この通り」「…………ぅ、そ」「ウソじゃねぇよ」ゼシカの目に映る“ククール”が、困ったように笑う。そしてゼシカに向かって大きく腕を広げた。「なんなら、抱きついて確かめてみる?オレならいつでも大歓げ――…うわっ!」その言葉を待たず、ゼシカは椅子から飛び降りるようにククールの頭に抱きついた。ククールは尻もちをつきながらほとんど押し倒されるような態勢で、ゼシカの身体を受け止める。小さな身体は冷たかった。そして震えていた。ゼシカはククールの胸に顔をうずめて、彼の名を何度も呼ぶ。そしてククールはそのひとつひとつに答えた。やがて叫びは嗚咽に変わり、涙がククールのシャツをまたたくまに濡らしていく。「…っひ、あ、く、ククール…ッ、クク、クク…ッ!!ううぅうぅ…っ!…うわぁああ…っ!!」「ゼシカ…ごめん、ゼシカ…ごめんな。…ごめんな…」彼女の激しい嘆きに驚きながら、それをこの上なく嬉しく感じ、ククールは思いのままに力を込めれば今にも壊れてしまいそうな小さく細いその身体を、できうる限りの優しさで抱きしめた。冷たい床に座り込んだまま、2人は気のすむまでそうして抱き合い、お互いの存在を確かめあっていた。 *少しゼシカが落ち着いたのを確かめて、ククールは彼女の頬に手をかけて顔を上げようとした。しかし、ゼシカはかたくなにククールの胸に顔を押し付けたまま、シャツを握る指を離そうとしない。「…ゼシカさん。顔、見たいんですけど」困ったように言ってみるが、思った通り無言で顔を横に振るばかりだ。そりゃあまぁ、これだけ泣きじゃくったわけだから、ひどい顔であることは確かだろう。無理強いはすまい。ゼシカのかすれた声がくぐもってククールの耳にかろうじて届く。「……ほんと、に、…帰ってきたの…?」「あぁ。ここにいるのは正真正銘本物のカリスマ騎士ククール様だぜ?」「ほんとに…?」「ほんと」「……」何がそんなに不安なのか。ゼシカはククールの背中に腕を回してぎゅっと力を込める。ククールは、さっきからあまりに意外なゼシカの行動に思わず赤面してしまう。普段の彼女からはとても想像できない、まるで小さな子供のようだ。しかしそれほどに心配させてしまったのかと思うとたまらず、ククールは彼女の丸い後頭部を優しく撫でた。「もう安心していいから…本当にごめんな…」また、胸の中で小さな嗚咽が聞こえ始める。そしてそれが聞こえなくなった頃、ククールが少し身体を離してみると、ゼシカは彼に抱きついたまま眠っていた。もしかしたら、気が抜けて気を失ったに近いのかもしれない。それくらい彼女の顔は疲れていた…「……ごめんな、ゼシカ」胸が痛み、心から謝罪して、軽い身体を静かに抱きあげベッドに寝かせる。かわいそうに。ろくに食べもせず、眠れもしなかったのだろうと容易に想像がついた。こんなにも想われていることが、ククールには歯がゆかった。信じられない気持ちだった。それでも、彼女の存在を神に感謝せずにはいられなかった。―――ふと、ゼシカの握りしめられた手の中に鈍く光るものを見つける。そっと指を開かせると、そこにあったのは“騎士団の指輪”だった。ククールは苦しみにも似た表情で指輪ごとその手を握った。何も、言葉にできなかった。広がる赤い髪をなでつけ、前髪をよけると、おでこにキスをする。頬に残る涙の跡が痛々しくて、そこにも口唇を這わせ、塩味のするそれを…舐めとる。深く考えないまま口唇にも口付けようとして、ハッと留まった。(…どさくさにまぎれて)自分自身にあきれ、どうせキスするなら起きてる時がいい、と言い訳して、ククールは立ちあがった。これ以上こうしていたら、無防備に眠る彼女に何をしでかすかわかったもんじゃない。置いていくのは少し躊躇したが、ククールは引かれる後ろ髪を振り切って、静かに部屋を出た。 もしも君が死んだら 後編
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/42.html
「ねぇ・・・リブルアーチでは本当にゴメン・・・」 「別に大丈夫だよ?」 「ゼシカ姉ちゃんは悪くないでがす!。」 「過去のことは気にするなよ。」 皆の言葉にゼシカはほっと胸を下ろす。 「そうそう、ゼシカがいないときのククールはまるで別人じゃったのう。」 えっ・・・・・? 「そうでかすよ。何度話しかけても返事はしないし。ほら、宿に泊まってみんなで夕食を食べてるときは まるで手が動いていなかったでがす。あんまり反応がないからククールの兄貴のサラダとスープは全部あっしが 食べちまったでがすよ。」 「あっ僕ククールが独り言で「ゼシカ・・・」って言ってたの聞いたよ?」 「お、おい!!?てめえ余計なこと言うんじゃねえよ!!」 ククールは顔を赤らめながら言う。 「余計じゃないよ~僕はククールがどれだけゼシカを心配してたか教えてあげ・・・」 「うるせぇ!!これ以上言ったらパルミドで馬姫さんが誘拐されたときお前がどんな様子だったか・・」 「あぁ!!?それは言わないで!! 」 「言ってやる。お前ゼシカの前で俺の事言ったんだからな。」 「だめーーー!!」 「「あーあ・・・」」 ヤンガスとゼシカは口をそろえて言う。 「確かに姫様がいないときのエイトの変わり様はすごかったわね。」 「あれも傑作だったでがす!!」 ククール・・・そんなに私のこと心配してくれてたんだ・・・ 「あれっ?ゼシカの姉ちゃん顔が赤いでがすよ?」 「そ、そんなことないわよ!!」 でもヤンガスに言われたとおり、ゼシカは自分の頬がすごくあついことを知っていた。 ホント、最近の私って変だわ・・・
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/77.html
何処となく様子のおかしいククールを、トロデ王とヤンガスに任せて、 エイトは林の中に足を踏み入れゼシカを捜した。 程無くして大樹の下に膝を抱えて座り込むゼシカを見つけ、 エイトはおそるおそる声を掛けた。 「…ゼシカ?」 ピク、と怯えたように細い肩が震えて、涙に濡れた顔が振り返った。 「…エイ、ト…」 しゃくりあげるように名前を呼ぶ声に耐え切れずに、 エイトは小走りでゼシカの前に駆け寄り、その肩を優しく支えるように触れる。 号泣という感じでは無く、 ポロポロと大粒の涙を零しながら静かにゼシカは泣いていた。 「どうしたの、ゼシカ?……ククールと、何か、あった?」 ククールの名前を出すことに躊躇いながらも、顔を覗き込むようにして、 出来るだけ静かな声で問い掛ける。 落ちて来る涙を手の甲で押さえながら、ゼシカが力無く横に首を振った。 「…何でも、ないの。何でも…」 自分に言い聞かせるような声でそう繰り返す様子に、エイトは軽く息を吐いた。 それからゼシカの背中をポン、と軽く叩いて その横に並ぶようにして地面に腰を下ろす。 「…わかったよ。じゃあ、ゼシカが泣き止むまでここにいるから」 柔らかく受け止めてくれるようなその台詞に、ゼシカは一度目を見開いたあと、 堪えきれなくなって嗚咽を零した。 「サーベルト兄さん…」 ゼシカの脳裏に忘れられない面影が過ぎる。 エイトの仕草や態度、言葉はサーベルト兄さんのものと良く似ていて、 時々ふと優しかった兄さんを思い出させる。 こんな時、あの人だったらどう言ってくれただろう。 自分はどうすれば良いのか、何て助言をくれるのだろう。 答えは出る筈も無い。 それでも、サーベルトのことも相俟ってゼシカは声をあげて泣いた。 「ゼシカが走っていっちまいましたが…何かあったでガスか?」 「これ。あまり仲間同士喧嘩しあうでない。 お前もエイトを見習ったらどうじゃ?」 膝を抱えるようにして黙り込む姿を見下ろして、 ヤンガスとトロデ王が好き好きに口にする言葉を、 ククールは黙り込んで聞いていた。 らしくないククールの様子に、二人は言葉を止め怪訝そうに顔を見合わせる。 「さては痴話喧嘩じゃな」 ズバリ、と言いたそうな仕草でトロデ王が短い指でククールを差して言い切る。 その横でヤンガスがその通りと言わんばかりに、無言でうんうん頷いている。 「……痴話喧嘩にもならねえんだよ」 一拍の間を置いて、ククールが力無く答えた後大袈裟に溜め息を零す。 その様子は明らかに落胆した色が含まれていて、 ヤンガスとトロデ王は再度顔を見合わせたあと、同じ方向に首を傾げた。 「何言ってるでやんすか。 何だかんだ言ってゼシカと仲良くやってるでがしょう?」 「そうじゃ、そうじゃ。ゼシカも最近では満更ではない様子ではないか」 息ピッタリな様子で話し掛けて来る二人を、 ククールは追い払うように顔の近くで手を振る。 「気の所為だよ。だいたいあいつは、エイトが好きなんだ」 その言葉に二人同時に驚き、目を見開いたあと顔を見合わせ、 トロデ王が何も言わず自分を指差し、 ヤンガスがそれに頷いて視線をククールに戻した。 「のう、ククール。ゼシカがそう言ったのか?」 トロデ王が小さい身体で一生懸命ククールの顔を覗き込みながら聞く。 「…直接言った訳じゃないけどな。 あの態度見てりゃあ誰だってわかるだろ」 首を振りながら投げ遣りにククールが答える。 その返答にトロデ王は首を傾げた。 「じゃが、わしらが見てる限りではゼシカはお前が好きそうじゃぞ?」 わしら、とトロデ王は横にいるヤンガスを指差し、 ヤンガスもそれに答えるようにコクコクと二度頷く。 「冗談!…オレはちゃんとゼシカに聞いたんだぜ? そしたらあいつ、何も言わずに逃げたんだよ」 先程ゼシカが逃げ込んだ林を指差して、 幾分怒ったような調子でククールは簡単に説明する。 トロデ王は怪訝そうに顔を顰め、助けるを求めるようにヤンガスを見た。 「アッシが思うに、ゼシカの姉ちゃんは恥ずかしかったんじゃないでげすか?」 トロデ王の跡を継ぐようにヤンガスが遠慮がちな口調で言う。 「馬鹿言え。恥ずかしいからって普通逃げるか?」 「逃げるじゃろ。女子なんてそんなもんじゃ。のう?」 同意を求めるようにトロデ王はヤンガスを見て、 ヤンガスもまたそれに頷いて見せた。 「ああ、もう。お前らと話してたら一人で悩んでるのが馬鹿みたいだぜ。 ちょっと行ってくる」 ククールは煩わしそうに手を横に振りながらも、 立ち上がりゼシカの後を追うように林の中へと駆けて行った。 ゼシカの口からしっかりとエイトが好きだと、 オレの気持ちには応えられないと言う返答が聞ければ、 すっぱり諦めも付くだろうと言う僅かな希望を胸に抱いて。 颯爽と林の中に姿を消してしまうククールの後ろ姿を、 満足げに見送ったあと、トロデ王が溜め息と共に呟きを零した。 「はあ…若いもんは羨ましいのう。 わしもあんな初々しい恋がしてみたいわい」 「おっさんはもう年だから無理だと思うでげすが」 「うるさい!お前だって充分なおっさんではないか」 「おっさんにおっさんって言われる筋合いはないでガスよ!」 以下延々と子供じみた仕草や言葉で、 ぎゃーぎゃーと言い合いをする二人とは少し離れた位置、 馬の姿に戻ったミーティアが、微笑ましげに見つめていた。 「……さっき、さ。あいつにいきなり聞かれたのよ。 エイトのことが好きなのか、って。…私、驚いちゃって…だって、あんな、 あいつのあんな真剣な顔、初めて見たし…」 エイトがゼシカを追いかけて林に入ってから数分後、漸く泣き止んだゼシカは、 時折戸惑うように言葉を止めながらも、先程のこと説明していた。 それを頷きながら真剣な表情で聞き入るエイト。 「…あいつ、きっと何か誤解してるのよ。 私がエイトを好きだ、なんて…」 そうでしょう?と同意を求める声を掛けようと顔をあげて、 エイトを見た所でゼシカは言葉に詰まった。 動作に合わせて揺れる髪先を指で弄りながら、顔を僅かに伏せる。 「ごめんなさい。 別にあなたのことが嫌いだって言ってるんじゃないの…寧ろ、私は…」 ゼシカが言葉を切り、恥ずかしそうにエイトを見つめる。 何を言いたいのか察しかねて、 エイトは首を軽く傾げてゼシカを見つめ返した。 その時、遅れてゼシカを追って来たククールが 意図せずに近くの茂みをガサリと揺らした。 ククールの視界には何か言いたげに見つめあう二人の姿が映る。 チクリ、とククールの胸に針で刺されたような痛みが走る。 まさか…と思いながらも、 思わず立ち止まってその様子をジッと眺めてしまう。 「私は、エイトのこと好きよ」 数秒の沈黙のあと、ゼシカは重い口を開いた。 漸く何を言わんとしているかわかったエイトは、表情を緩めて頷きを返す。 「僕もゼシカのことは好きだよ」 その台詞にゼシカの顔も嬉しそうに綻ぶ。 一連の出来事をタイミング悪く見てしまったククールは 絶望した気持ちでその場に立ち竦んだ。 「………失恋決定、じゃねえか…。馬鹿馬鹿しくて、泣けもしねえよ…」 痛む胸を押さえるように胸元の服をギュッと掌の中に握り込んで、 掠れた声で小さく小さく呟く。 「雨でも降れば、良いのに…」 期待を篭めて見あげた空は、それを裏切るように眩しい位の晴天だった。 太陽の光が反射してククールの蒼い瞳に突き刺さる。 泣きそうに顔を歪めて、 ククールは何時までもその場所に一人立ち竦んでいた。 un titled1 un titled3 un titled4