約 1,352,477 件
https://w.atwiki.jp/tamichan/
スパム送りたいんでチーム入ってください ship5 ロビー35で 適当に周ります。 TAだったり、ボス周回だったり、マルチぐるぐるだったり。 (恐らく殆どTAです。) ※チームメンバー募集中です! キャラ検索にて 愁貝ひより 又は tamiyo; に ウィスパーお願いします。(不在時は友録申請で><) キリト煽ってごめん - ナスのお化け 2014-05-13 12 43 22 たみよ;って人かわいい! - 名無しさん 2014-05-15 01 33 40 たけのこって人かわいい! - 名無しさん 2014-05-15 11 12 45 おしっこのおしっこ美味い! - 名無しさん 2014-05-16 15 44 20 サイコ北アああああああああああああああああああああ - 名無しさん 2014-05-19 13 50 54 サイコ北アああああああああああああああああああああ - 名無しさん 2014-05-19 13 50 55 さぼさんぼさっとしてないでログインしてください、さぼっちゃだめですよ - 名無しさん 2014-05-20 22 08 44 剣道やってる人に聞きます。この剣どう? - 名無しさん 2014-05-24 18 22 16 テロなんかに負けんどう・・・・ - 名無しさん 2014-05-24 18 27 27 たみちゃんち崩壊 - 名無しさん 2014-12-22 05 45 47 スターバースト・ストリームッッッッッ! - 名無しさん 2015-01-15 01 49 38 名前
https://w.atwiki.jp/guide/pages/569.html
2007月8月29日から30日にかけてスパム判定の強化調整を行わせていただいております。 万が一、通常投稿で判定される場合、状況を添えて@ウィキあてにメールでお問い合わせください。 では今後ともよろしくお願いいたします。
https://w.atwiki.jp/singekiserver/pages/4.html
進撃サーバーはマインクラフトというゲームのマルチで「進撃の巨人」の世界を再現するという企画です。 参加するにはhamachiという物を導入しなければなりません。たまにポート開放しています。参加したい方はskypeでコンタクトして ください。skypeIDは後ほど説明します。また、hamachiID、serverIDもです。 見学でも、本気でプレイしたい人でも大感激です!ぜひぜひ来てください。 注意事項 MOD導入:フックショット[152 61]、TitanMod&TitanAPI ver1.5.2.0.0.2、TheTitan0.1.2 MC1.5.2_Forge7.8.0.716 skypeID siranui1217 hamachiID 進撃サーバー1から12 PW:aiba1217 serverID 25.54.43.104
https://w.atwiki.jp/guide/pages/414.html
@wikiでは各々のwikiでのスパム対策とあわせて@wiki共通スパム対策を行っておりますが、 @wiki共通スパム対策の強化のためスパム報告を募集しております。 詳しくはこちらをご覧ください
https://w.atwiki.jp/soldeirt/pages/13.html
惑星憲法について ・このページでは惑星ソルダート憲法を記載しています。プレイヤーの皆様は必ず読んでください。 更新履歴 2010/1/6:惑星ソルダート憲法制定・発布 前提条件 ・当ゲームのプレイヤーは全員が「@パーティII説明書」、「惑星ソルダート解説書」を熟読し、理解しているものとする。 ・当ゲームで生じた不利益について「ヴァルテイン」は一切の責任を負わないものとし、自己責任とする。 ・管理者は告知無しにデータの改変を行うことができる。 (緊急メンテナンス等) 第一章 GM-G(運営グループ:星政者) ・第一項・管理者 管理者は惑星ソルダートに対して全権限を保持。 管理者はヴァルテインで固定されており、臨時を除き代行はない。 ・第二項・副管理者 副管理者は惑星ソルダートに対して一部権限を保持。 副管理者はノコーナ、ジェラストで固定されており、臨時を除き変更はない。 ・第三項・GM(ゲームマスター) GMは惑星ソルダートのイベントに対し一部権限を保持。 GMは惑星ソルダートの人事問題に対し一部権限を保持。 GMはGM-Gが選定する。 選定され、任命を受諾したGMは義務を果たさねばならない。 臨時を除き変更はない。 第四章 各コンテンツ規約 ・第一項・コンテンツ規約 コンテンツ規約とはゲーム内におけるコンテンツ(ゲーム・オークション等)でのルールです。 以下のコンテンツ規約を違反した場合、次章の第二項に倣って処罰を取らせていただきます。 ・第二項・チャット規約 以下の内容を内部チャット欄へ書き込む事を禁止する。 ※外部掲示板、チャット等では特定のスレッド、PMのみ例外とする。 「次回イベント内容」 「隠し武器・防具・道具」 「自分・他人の個人情報」 「RMT等の取引関係」 第三章 基本的罪法(星罪法) ・第一項・星罪法の適用 星罪とは「惑星ソルダート」における犯罪の事を指す。 星罪を犯した者は何らかの処罰を受ける必要がある。(場合によっては例外も有り) ・第二項・星罪一覧・罪級 ●SS級星罪 違法・危険タグ使用罪:ゲームやゲームバランスの崩壊を促すタグ(例: xmp /xmp )やサイトクロススクリプティングを行った場合 迷惑行為目的参加罪:荒らし等の迷惑行為を目的に参加したとみなされた場合 データ侵入罪:何らかの方法により他のプレイヤーのデータに侵入した場合 個人情報流出罪:他のプレイヤーの個人情報を流出させてしまった場合。尚、過失であっても適応される 迷惑行為参加罪:迷惑行為(迷惑メール・荒らし・無許可アイテム送信等)を目的に参加したとみなされた場合。 ●S級星罪 脅迫罪:他のプレイヤーに脅迫行為を行った場合 中傷罪:他のプレイヤーを中傷した場合 コンテンツ規約違反罪:前章記載のコンテンツ規約に反した場合 著作権侵害罪:他人の著作物を本人の許可なく自分の著作物と偽った場合(告訴されない限りは刑罰対象にはならない) ●A級星罪 迷惑行為罪:迷惑メール・荒らし・無許可アイテム送信を行った場合(無許可アイテム送信は受信者が告訴しない限りは刑罰対象にはならない) ●B級星罪 超過侮辱罪:他のプレイヤーを複数回侮辱した場合 ●C級星罪 侮辱罪:他のプレイヤーを侮辱した場合 ・第三項・各罪級への処罰・対処 ●SS級星罪:キャラクター削除後、アクセス拒否。危険人物一覧表に詳細を記載。 ●S級星罪:キャラクター削除後、一時的にアクセスを禁止。 ●A級星罪:キャラクターデータ再弱化(ステータス・武具・アイテム・ギルド所属籍を抹消) ●B級星罪:ゲーム内通貨・所持品・SP・ギルド所属籍を抹消 ●C級星罪:厳重注意 ※厳重注意を三回以上受けている場合、次に星罪を犯した場合A級星罪とみなします。 ※同じ級の星罪二度以上犯した場合、次からの星罪は罪級をひとつあげて処罰をします。 ※過失・情状酌量の余地がある場合、処罰の軽減も考えます。
https://w.atwiki.jp/yudetamago_soko/pages/213.html
54巻 > 第153話 第153話 「すべてを知る者の出現!!」 掲載期間:2015年12月14日~2015年12月20日 AAを貼る場合上段のメニュー→「編集」→「このページを編集」。 AAの前に #aa{{ を、AAの後ろに }} をつけてください。 コラを載せる場合上段のメニュー→「編集」→「このページにファイルをアップロード」。 アップロード後に「編集」→「このページを編集」し、 #ref(添付ファイル名) または #ref(ファイルのURL) を記入してください。 染まってしまった
https://w.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/320.html
すべて、撃ち貫くのみ ◆VvWRRU0SzU 「あれは……キョウスケ中尉か。あの人は、今さら……!」 カミーユの見上げた空を、紅き隼が駆け抜ける。 ただ見上げるだけの自分をあざ笑うかのように、その軌跡はぶれることはない。 向かう先は異形の機体。 閃く砲火に我に返る。そうだ、呆けている場合じゃない。ベガを殺したあの男を……! 半壊した基地を走りだす。格納庫はさほど離れていない。 ユーゼスも、キョウスケも、クワトロのことも。すべては頭から抜け落ちる。あのふざけた理由で悪意をばら撒く男を、倒す。 「許さない……絶対に、許すものかッ! お前は、生きてちゃいけないんだ!」 やがて、半壊した格納庫へと辿り着く。粉塵で汚れこそすれ、VF-22Sは健在だった。 小型ということもあり、横のローズセラヴィーの影に隠れていたことが幸いしたのだろう。 その、ベガの乗機は―――右半身が丸々溶け消えていた。まるで、主の後を追うように…… また、怒りがこみ上げる。その熱を抑えないまま、カミーユはバルキリーへと乗り込む。 空でキョウスケが戦っている。だが、援護に行くのではない――― 「俺が、お前を討つ! バーナード・ワイズマンッ!」 咆哮とともに、蒼穹に向けて飛び立った。 □ 「バーナード・ワイズマン……敵の名前など、知るべきではないな」 ファルケンは目視で敵機を確認できる距離に入った。 先程の黒い機体ではないが、こちらもやはり特機。つくづく相性の悪いパイロットだと独りごちる。 眼下の基地はもはや廃墟と言う方が正しい有様だ。管制塔や倉庫など僅か残った施設がかろうじてここが先刻まで基地であったことを連想させる。 カミーユとベガ、そしてユーゼスがどうなったかはわからないが、今は敵機の制圧が最優先だ。 「その機体……またあんたか!」 「今度は見逃がさん。ここで貴様がしたことのツケを払ってもらう……!」 相変わらず全周波数帯に向けて発信される声に、だが呟きで返す。 ここに来てキョウスケに語ることはない。あるのはただ、この状況を招いたこの男、ユーゼス、そして己への怒り。 オクスタンライフルを乱射しつつ最大加速で接近する。 敵機には見た限り銃器に類する武装はないが、特機を見た目で判断するのは愚策だ。 動く前に仕留めると、一気に距離を詰める。 「く、来るなッ! 何か、何か武器は……!?」 狼狽に満ちた声が聞こえるが、容赦するつもりはない。 ブーストハンマーをセット。すれ違いざまにコックピットと思しき胸部中央へ撃ち放つ。 「うああああああああッ!」 だが完全な素人でもないらしい新兵は、腕を掲げて鉄球を防いだ。と同時に敵機が発光、その腕にある爪が展開、赤熱した。 膨大なエネルギーを纏った爪は、ファルケンの装甲など容易く引き裂くだろう。 接近戦は不得手だというのに……つくづく分が悪い、と苦笑する。 テスラ・ドライブの出力を上げ、再度加速する。 倍以上の全長だ、接近しての小回りはこちらに分がある。唯一勝っている機動力で掻き回すしかない。 敵機が再度光を放つ。今度は全身の突起に熱が集まり、本体からパージ……射出された。 飛び来る6つの鋭刃。ファルケンは後退しつつスプリットミサイルを放ち迎撃する。 「チッ、あのサイズでは一発でも受ければ命取りか。どうする……!?」 ミサイルで撃墜しきれない刃は回避あるいは力場を纏わせた翼で斬り払った。詰めた距離は開き、敵機からは再び刃状のパーツが確認できた。 破壊できず回収された刃はともかく、どうやら自己再生機能まで備えているようだ。 これがアルトあるいはアルトの後継機なら刃の中に強引に突っ込むことも可能だが、射撃兵装がメインのファルケン、そして自分の技量では攻撃を避けつつ前進するのは難しい。 何度突っ込んでもハンマーの射程まで到達できず、押し返される。 さすがに二度目の交戦だ、こちらの手の内は知られているらしい。射撃は不得手、接近されなければ致命打はない、と。 どうする、と手をあぐねている内、レーダーが新たな反応を捕らえる。眼下の基地からの反応だ。 見る間にその反応は接近してきた。どうやら戦闘機、向かう先は交戦中の特機だ。 二機を同時に視界に収めるべく移動しようとするも、その戦闘機は凄まじいスピードで突っ込んできた。 それはキョウスケの知っている機体だ。カミーユが乗っていたはずの可変戦闘機。 傍らを駆け抜けた戦闘機、特機はやはり敵と認識したか再び、刃……ブーメランを放った。 舞い踊るブーメランの中に、しかし戦闘機は減速せず飛び込んだ。 キョウスケなら後退を選ぶ場面、戦闘機はまるで軌道を読んでいたかのようにロールし、刃をすり抜けていく。 前面から迫る刃は機銃で迎撃し、囲まれれば脚部―――ガウォーク形態といったか―――を振り回し強引に軌道を変える。 瞬きをする間に戦闘機、いやバルキリーは敵機を至近距離に捕らえた。 人型へと変形し、ガンポッド、ミサイルを一斉発射するバルキリー。決まった、とキョウスケが思った瞬間。 「イグニション! うわあああああああッ!」 特機の胸部に凄まじいエネルギーが集中する。閃光は巨大な火球となり、眼前のバルキリーへと放たれる。 バルキリーの攻撃を呑み込み、誘爆させ、火球は突き進む。寸でのところでバルキリーはファイターへ変形、一気に上昇して回避した。 回避された火球は減衰する様子も見せず地平線の彼方へと消えていった。どれだけの出力で放たれたか想像もできない。 臆した様子など微塵も見せず再び飛び込もうとするバルキリー、だがその鼻先をキョウスケが抑える。 「バルキリー、応答しろ。こちらはキョウスケ・ナンブ。誰が乗っている?」 通信を送るも、返答がない。キョウスケは再度試みる。 「応答しろ、バルキリー。カミーユが乗っているのか?」 「うるさい……うるさい! 邪魔をしないで下さいよッ!」 ようやく返ってきた少年の声は怒りに満ちていて、基地で取り返しのつかないことが起こったのだと確信させた。 「あいつはベガさんを殺したんですよ! 帰る場所があった、待っている人がいた! なのに虫ケラのように踏みにじった! 許せない……許せるものかッ!」 それきり、通信は途切れた。ファルケンを跳ね飛ばさんばかりの勢いで躱し、敵機へと踊りかかっていく。 ベガが死んだ。後悔、そして怒り。だがそれよりもまずいな、とキョウスケは焦燥する。今のカミーユは冷静さを欠いている。 持前のセンスと技量、そして機体性能のおかげでなんとか被弾していないものの、地力で勝る敵手、いつか直撃を受けるだろう。 フォローしようにもカミーユの動きは直感的すぎてこちらでも掴めず、迂闊に飛び込めば同士討ちになりかねない。 これがエクセレンなら何も言わずとも合わせられるキョウスケだが、さすがに昨日今日会ったばかりのカミーユの呼吸はわからない。 援護すら難しいか……と歯噛みしていると、通信が入る。カミーユかと思ったがそうではない。基地の管制塔からだ。 「キョウスケ・ナンブ、聞こえるか? こちらはユーゼスだ。応答を願う」 「ユーゼス……生きていたか。貴様には聞きたいことが山ほどあるぞ」 「心得ているよ、だがそれはあの機体を無力化してからにしてくれ。いつまた地上を攻撃されるかわからん」 「言われずとも……何、無力化だと?」 「時間がないので詳しくは言えんが、あの機体には高度な人工知能が搭載されている。破壊されるわけにはいかんのだよ」 モニターの中でユーゼスは首輪を指で叩く。解析に必要、と言いたいのだろう。 「簡単に言ってくれるな。破壊ですら難しいぞ」 「君が一度下した相手だろう? 同じことをもう一度やってくれと言っているのさ」 抑揚のない声ではあるが、キョウスケには暗にお前の不手際だ、と言っているように思えた。 「……俺の責任であることは認めよう。だが貴様にもその一端はある。落とし前はつけてもらうぞ」 「構わんよ。私もできる限りの協力はする。しばし時間を稼げ。直に私も出る」 通信は途切れた。信用などできるはずもないが、それでも今はやつの手が必要だ。 時間を稼ぐ。不本意だが、意志の疎通のできていないカミーユとでは敵機の撃破は困難。仕方ないと無理やりに自分を納得させた。 カミーユは相変わらずブレーキが壊れた車のようにがむしゃらに攻撃を仕掛けている。 援護するには敵機だけでなくカミーユの動きも念頭に入れて動かねばならない。 「俺がフォローする側、か。エクセレン、お前の気持ちが少しだがわかった気がするよ」 突っ込み専門だったアルト、その隙をいつでもカバーしてくれたヴァイス。 やってみれば難儀なことだ、と呟いて、ファルケンを加速させた。 □ 「始まったか」 基地を臨む森の中でも砲火の煌めきは確認できた。派手に撃ち合っているようで、五感の鈍ったアキトにも戦の匂いは感じ取れた。 あの寡黙な男は勝つだろうか? いずれ消すべきとは考えていても、もしここで彼が敗れれば今度は自分が危うくなる。 もし発見されれば薬を飲まざるを得ないだろう。それでもこの機体では、勝てる見込みは薄いように思えたが。 「万が一のこともある……離脱する準備はしておくか」 できるだけ長距離を移動できるようにブースターを調整する。小回りは効かずとも瞬発力ならこの機体は中々のものだ。 タイミングさえ誤らなければ撤退は可能。薬をいつでも服用できるよう、一錠をビンから出して懐へ入れる。 準備が終わり、改めて戦場へ目を向ける。紅い隼は接近に手間取っているようで、大型の敵機に近づいては離れてを繰り返している。 状況は不利……撤退を第一に考え始めた時。不意に暗号通信が入った。 「アルトアイゼンのパイロット、応答しろ。位置は把握している。1分以内に応答がなければ敵と判断し砲撃を開始する」 位置を掴まれていることよりも、ピンポイントでこのアルトに通信を送られたことに狼狽した。 発信源は基地、管制塔だった。 なるほど基地の目と言えるレーダーを統制する管制塔なら隠れていたアルトを発見できたのも頷ける。 だが何故この機体固有の周波数を知っているのか。 (いや、こいつは『アルトアイゼン』と言った。キョウスケ・ナンブと同じく、この機体を知っているものか……!) 以前にこの機体に乗っていたのなら固有周波数も知っていて当然だ。そして、アルトには砲撃に対応する装備がないことも。 この距離では当たることはそうないだろうが、存在を喧伝されるのはまずい。誰がどう見ても高機動機のファルケンより鈍重そうなアルトの方が狙いやすいだろう。 まず数を減らすとばかりに狙われてはかなわない。しぶしぶ、通信に応じる。 「こちらはアルトアイゼン、……テンカワ・アキトだ」 偽名を使うかとも考えたが、機体が変わっているのだ。もし知った顔に会ったとき、ガイの名前を名乗り続けていてはむしろ不審がられる。 「テンカワ・アキト……私はユーゼス・ゴッツォという者だ。いくつか聞きたいことがあるが、構わんかな?」 「俺はキョウスケ・ナンブに連れられてきた。戦う気はない」 「ふむ、中尉にか……よろしい、敵ではないと判断しよう。では何故中尉を援護しないのかね? こちらから確認する限り、アルトに大きな損傷は見受けられないが。 ああ、先に言っておくが私は出られる機体がない。あの特機に全て破壊されたのでな、お前はどうだなどと聞いてくれるなよ」 敵ではないと言いつつも、声には微塵も友好的な成分は含まれていない。 「……問題があるのは、俺自身だ。身体に障害を持っている」 一方的に手札を晒すことに憤りを感じるが、主導権はもはや相手にある。ここはやり過ごすしかない。 「障害……ね。その割にはその機体、戦闘を経験したかのような有様だな? 本当に戦えないのかね?」 と、声の調子が変わる。感情を感じさせない人形の声から、蛇のような禍々しい気配へと。 「それは、」 「私の考えはこうだ。君は『戦えない』のではなく『戦わない』。何故なら戦える時間あるいは機会に限りがあるから。 そしてそれは補えるものでなく、故に自分が直接襲われるような事態でもなければ戦闘は極力控えたい。……違うかね?」 抗弁を遮られ、続けざまに放たれた言葉はまさに今のアキトの現状そのままだった。 なんとか否定しようとするも、口を開く前にまたも先手を打たれる。 「加えて言うならその機体、アルトアイゼン。実は私に支給された機体もそれでね。どうして君が乗っているのか、答えられるか?」 「同じ機体が支給されたのだろう。あれだけ参加者がいたのなら同一の機体があってもおかしくはない」 「なるほど、おかしくはないな。だがそれを言うには機体に問題があるぞ? 一度乗った身から言わせてもらえばアルトアイゼンは決して使いやすい機体ではない。 装甲と引き換えにした機動性、実弾のみで固められ、射出型のクレイモアやステークといった癖の強い兵装。突進力こそあるものの最悪と言ってもいいほどの機体バランス。 たとえ首輪が操縦方法を示すとはいえ、そのような扱い辛い機体ばかりでは殺し合いなど促進しない。私が主催者なら二機も支給することは有り得んな」 即座に返ってきた声は確信に満ちていて。 「……そうそう、私はこの基地や市街地を探索したが放置されている機体や資材はなかった。 また補給も行ったが、補給されるのは失った弾薬とエネルギー系のみ。 損傷部位は補修されず、故にこの会場での修理は応急処置程度しか行えず欠落した部位はそのものが消滅した場合修復は不可能だ。私の機体でいえば左腕だな。 だがそのアルトアイゼンにはさしたる損傷はなく、カラーリングも異なる。 つまりその機体と私に支給された機体は別物? ……いいや違うな。その機体は間違いなく私に支給されたアルトアイゼンだ」 口を挟む暇などなかった。この男、僅かな情報から一気にこちらの核心へと迫ってくる。これ以上情報を与えるのはまずい。 「……矛盾しているぞ。修復が不可能ならば、何故この機体には左腕がある。この左腕こそが違う機体であることの証拠だろう」 「そう、証拠だ。私はその機体に乗っていた時、一度戦闘を行ってな。左腕以外にも損傷を受けた部位がある。君の機体、まったく同じ箇所にその損傷がある。これはどう説明するつもりかね?」 あの少女、完璧には修復しなかったのか―――思考が弾ける。 突き付けられた言葉は刃のようだった。銃火を交えないまでも、これはたしかにこの男とアキトとの戦いだ。 迂闊なことは言えない。主催者と接触したことを知られてはならない、絶対に。 損傷とやらは気になるが、ここで大きな反応を返しては相手の思うつぼだ。 「……そんなものはどうとでも言える。貴様が言っていることがハッタリで、俺から情報を引き出そうとしているということもありえるだろう」 とはいえ、有効な返し方も思いつかない。なんとか煙に巻くしかない。まさか主催者が修復してくれた、などという突拍子もない考えには至らないだろうと願って。 だが。 「その機体の本来のパイロット、君を連れてきたキョウスケ・ナンブだ。彼はあの主催者を一度撃破しているそうだ」 「……それがどうした」 「自らを葬った男とその乗機。何らかの思い入れがあってもおかしくはないな。特にあのアルフィミィとかいう小娘、キョウスケ・ナンブとは深い関わりがあるように見えた」 「だからそれが」 急に見当違いのことを言い出した男に困惑する。言葉を続けようとしたとき、凄まじい悪寒が全身を走り抜けた。 「戦えないパイロットと使えなくなった機体。そんな者がどうやって戦闘を切り抜けた? 簡単だ、誰かの助力があった。では誰だ? 仲間、違うな。君の念は孤独なものだ。他者を拒み、孤独であろうとするものだ。なら考えられる可能性は一つ……」 一拍置いて。 「……貴様ッ! 主催者と接触し、機体を修復され、何らかの取引をした……そうだなッ!?」 語気も荒くに断言された。 ……なんだこいつは。今さらながらにアキトは恐怖を覚えた。この男は危険だ。これ以上話すべきでは――― 「……っと、失礼。少し熱くなったようだ……。とは言え、今の推論、間違ってはいないと思うがどうかね?」 唐突に重苦しいプレッシャーが消える。どうといわれても答えようはない。もし答えたら―――いや、あの少女は特に秘密にしろとは言わなかった。 今も首輪を通して聞いているだろうが、特に制止される様子もない。ばれても困らないということだろうか。 どう答えたものかと思案していると。 「……まあ、答えにくいものであろうな。私も少し急ぎ過ぎたようだ、この件は後で話すとして……本題に入ろう。 私は上空で交戦中の特機を確保したい。キョウスケ・ナンブは腕は確かだが、機体性能に差がありすぎる。彼一人では困難だろう。 一人でも多くの手が欲しいのだが……協力する気はないかね?」 先程とは打って変わった内容だった。後で、がいつかはわからないが、こいつは確実に殺さねばならない。今ここを離れるわけにはいかなくなった。 「……この機体では大した援護はできん」 もはや戦えることが前提となっているが、この男相手に隠し通すのは難しいと思えた。どのみち、生き残るのがまず最優先だ。敵機の排除に異論はない。 「それについては問題ない。ここにはアルトより強力な特機が一機ある。協力してくれるなら君に譲り渡そう」 「貴様、さっきは機体はないと」 「信用できないのはお互いさまということだ。むしろ厚意と思ってもらいたいな。その機体よりは優勝が狙いやすいはずだ」 優勝、と言った。どこまで見透かされているのか…… 「……俺が優勝するつもりだと知った上で、誘っているのか」 「もちろんだとも。別に青臭い正義感で仲間になれと言っているわけではない。この場を切り抜ける最善手を打っているだけだ」 どうするか。この男はいずれ殺すにしろ、今この場にいるのは自分たちだけではない。 特機、そしてキョウスケ・ナンブが――― ―――キョウスケ・ナンブが戦っている。そうだ、今なら――― ふと思いつく。この状況下なら。そしてこの男なら。 「……条件がある」 「なんだね?」 「キョウスケ・ナンブを殺す。それだけだ」 そう、これはチャンスだ。あの腕が立ち、油断しない男も戦闘中なら、それも味方からなら。……討つのは容易い。 普通ならキョウスケの仲間というこの男に言っても承諾などするはずがない、だが――― 「……いいだろう。特機を確保後であれば、キョウスケ・ナンブの殺害を許可する」 やはり、乗ってきた。この男には仲間意識などなく、あるのは徹底した合理性だ。 「随分、軽く決めるのだな。仲間なのだろう?」 「すでに聞くべきことは聞いた。腕は惜しいが飼い慣らせない狼など傍に置いておくメリットはない」 声には一切の感傷がない。本当に、必要ないから切り捨てる、それだけだというように。 「君がどうしてキョウスケ・ナンブを殺すのか興味はあるが……まあ後でおいおい聞くとしよう。この地点に来たまえ。君の機体が置いてある」 座標が転送され、通信が途切れた。 現在位置からでは2分ほどの距離―――薬を飲めば、だが。歩くのもやっとというこの体で油断ならないユーゼスなる男の前に出向くのは危険…… 躊躇なく、薬を噛み砕いた。身体を覆う倦怠感が掻き消える。 蒼いアルトが弾かれたように発進する。上空からでも確認できるだろうが……今のキョウスケにそんな余裕はないだろう。 もちろん、急ぐに越したことはない。目標地点が見えたところで身体を固定するハーネスを解き、いつでも降りられるようにする。 辿り着いた場所には、大型の特機があった。マントを纏う漆黒の体躯、鋭い刃を生やした腕、ピエロの仮面をつけた頭部。 たしかにアルトよりよほど強力なのは見て取れる。それにこの色、禍々しさ―――復讐者たる自分にはお似合いだ。 周辺にユーゼスはおらず、訝しりながらもアルトを降りた。 「ブラックゲッター」。操縦席に座ったとたん流れ込んできた情報はこの機体の名称を告げていた。 ゲッター線なるエネルギーで駆動し、インベーダーを駆逐するゲッターロボ、その一機。 だが首輪は同時に炉心の異常をも告げていた。動くことはできるが、炉心から直接エネルギーを供給するゲッタービームの使用は不可、と。 機体をチェックしていると、不意に通信が入った。 「どうかね、ブラックゲッターの乗り心地は? 接近戦用の特機だ、アルトに乗っていた君なら使いこなせるだろう」 「ふざけるな。この機体、炉心に異常がある。まともに動くのかすら怪しいものだ」 「何、使えないのはゲッタービームだけだ。格闘戦なら問題なくこなせる。その辺に武器も転がっているはずだ」 辺りを見渡せば、そこには一振りの巨大な戦斧。アルトでは振り回せない大きさだが、この機体なら。 「一応、応急処置は済ませてある。突然機体が爆散するなどということはないから安心したまえ」 「……信用できるものか」 「それはそちらの自由だ。……さて、言っておくべきことがいくつかある。 まずあの特機は破壊せず無力化すること。まあ自己修復機能もある、破壊するつもりで攻撃して構わんがな。コックピットを直接つぶしてくれれば助かる。 次にあの戦闘機……確認できるか?」 ユーゼスの言葉で上空を見やる。たしかにそこには一機、青い戦闘機が飛んでいた。 自分に最初に支給されたYF-21によく似た機体だ。同型、あるいは後継機だろうか。 「確認した。あれは敵か?」 「いや、こちら側の人間だ。カミーユ・ビダンという少年が乗っている」 「……そうか、で?」 「それだけだ。何をしろと言うつもりはないよ」 ……殺しても構わない。言いたいことはそういうことだろう。 「……了解した。もういいか」 「いや、もう一つ。君は基地に保護したことにする。キョウスケ・ナンブは勘が鋭い、気付かれては面倒だ。 ブラックゲッターには私が乗っていることにしておけ。通信は私に転送されるように細工しておいた。君は敵機の制圧に専念してくれ」 その意見には賛成だ。了解、と返し通信を切る。 薬を飲んでおよそ5分。残り25分で敵機の制圧、キョウスケ・ナンブ、カミーユ・ビダン……そしてユーゼス・ゴッツォの殺害。 厳しいが、やれなくはない。この乱戦だ、何が起きても不思議はない―――殺意を仮面の下に押し込み、アキトは、黒いゲッターは飛び立った。 □ 「キョウスケ・ナンブ。援護する」 その声は唐突に響いた。 特機とカミーユ、その双方に注意を配り神経をすり減らしていたキョウスケは新たな反応に気づかなかった自分に毒づいた。 基地から上昇してきた機体、あれは最初に交戦した黒い特機。目前の敵手が最初に乗っていた機体。 ユーゼスは大破したと言っていたが……やはり、ブラフだったようだ。 問い詰めることが増えたなと思いつつ、その考えを頭から追い出す。今考えることではない。 ともあれ、これで三機。あの黒い特機―――ブラックゲッターと言うらしい―――の攻撃力なら、敵機に致命打を与えることも可能だろう……通常なら。 ファルケンが示すブラックゲッターのデータは依然交戦した時とは比べ物にならないほど低い数値を示している。 「ユーゼス、話は後で聞く。その機体、戦えるのか」 「格闘戦はこなせるが、残念ながら最大の打撃力であるビームは使用できん」 「チッ、当てにならんやつだ……!」 「そう言ってくれるな。今、もう一機の起動準備を並行して進めている。ローズセラヴィーだ、知っているだろう。あれの砲撃なら十二分だ」 「……ベガは死んだと聞いた。誰が動かすんだ」 「それも私だ。複雑な戦闘は不可能だが、狙った地点を砲撃するだけなら遠隔操作とあらかじめ組んでおいたプログラムで行える。 チャージまでの時間を稼げ。あとは私の支持するタイミングで一斉攻撃を仕掛ける」 「いいだろう……乗ってやる。どれくらいかかるんだ」 「月の子の射出は終了した。チャージまで2分というところだ」 基地の上空、交戦空域より更に上。二機の小型デバイスが上昇していくのが見える。 ある程度まで上昇したデバイスは停止し、展開した。 「この世界では雷雲などそうそう望むべくもない……そのあたりを主催者も考慮していたようだ。 月の子の周辺の空間が歪曲している。どこからかエネルギーが転送されてきているようだな」 「理屈はどうでもいい。2分だな?」 「ああ。だが時間を稼ぐだけでは足らん。確実に命中させるために足を止めろ」 「無茶を言う……しくじるなよ、ユーゼス」 「お互いにな」 2分。暴走するカミーユはともかく、自分とブラックゲッターでなんとか敵機の推進装置を破壊するしかないだろう。 「カミーユ、聞け。黒い特機にはユーゼスガ乗っている。今は撃つな。 そして2分以内に敵機の移動力を奪う。成功しようがしまいが、合図したら敵機から距離を取れ。巻き添えを食らうぞ」 返事はないとわかってはいたが、言っておかなければ本当に巻き込みかねない。 ブラックゲッターが突進していく。機体特性からしてファルケンは援護に徹するべきだ。 射撃は苦手と言っている場合ではない……ファルケンもライフルを放ちつつ飛び込んでいった。 □ 「また増えた!? しかもあれは……ブラックゲッター! まだ動いたのかよ!」 メディウス・ロクスの中、バーニィは必死に機体を制御していた。 もともとこの機体は複座だ。一人が操縦を、一人が機体のエネルギー管理を担当し、十全の力を発揮する。 ゼクス・マーキスのような優れた技量のパイロットやユーゼス・ゴッツォのように操縦・管制を同時にこなせる者なら一人でも支障はないが、新兵上がりであるバーニィには荷が重すぎた。 AI1とかいう人工知能もサポートしてくれてはいるが、その方面に知識のないバーニィでは有効にAI1を活用することもできない。 機体性能でなんとか紅い機体を寄せ付けずにいたら、新たに参戦してきた戦闘機は手に負えないくらい速く、そして先読みされているかと思うほどに攻撃が当たらない。 幸い火力は低いものの、時折り肉薄してはバリアを纏う拳を撃ち込んでくる。あれがまともにコックピットへ当たればさすがに死ぬだろう。 死を遠ざけようとしつつも止めてほしいと願う……矛盾だとわかってはいても止められない。 自分はどうしたいのか。この場をどのような形で切り抜けたいのか、それすらもわからない。 ただ目前に迫る死を回避しようと、それだけを想い操縦桿を握る。 やがて、火器が尽きたか戦闘機は接近戦を果敢に挑んでくるようになった。 こちらの距離だ、攻撃を―――おかしい、紅い機体の援護がない。先程までの、効果が少ないとはいえ牽制の意味はあった砲撃が止んでいる。 咄嗟にレーダーを見れば、いた。少し距離を取って、二機―――二機? そして、ブラックゲッターまで戦線に加わった。余裕の体で作戦会議でもしていたのだろうか。 戦闘機が、そしてブラックゲッターが凄まじいスピードで向かってくる。その後ろを固めるのは紅い機体。 四機が交錯する。 紅い機体は後ろからライフルを連射するも、命中率は低い。射撃は不得手という勘は当たっていたようだ。 意識をブラックゲッターと戦闘機に集中する。より危険なのはこの二機だ。 ブラックゲッターが斧を振り回す。スパイラル・ファングで受け止めるも、その隙に戦闘機が殴りかかってきた。 コックピットを守るために肩で受ける。光を纏った拳は小型機とは思えないパワーで肩の装甲を吹き飛ばした。 後退しなければ……後ろに紅い機体。回り込まれた。至近距離でハンマー。 背面に直撃。弾け飛ぶメディウス・ロクス。 もうダメだ―――と諦めが頭をもたげる。降伏しよう、と誰かが囁き、受け入れられるはずがない、とまた別の誰かが否定する。 前にも後ろにも進めない……でも。 基地の惨状を目に焼き付ける。あそこには人がいたはずだ。そして、何人かは死んだはずだ――― ここで引くことはできない。何のために引き金を引いたのか。自分がここで折れれば、そのために死んだ人は何なのか。 そうだ、もう後戻りはできない。全力で戦うことしか、できることはない。 態勢を整える。ブーストに損傷、機動力が67%に低下―――まだやれる! 「イグニション……!」 エネルギー全開。 この機体の膨大な出力を全て攻撃に回す。敵機はどれも一騎当千のパイロット揃いだ、一機ずつでは埒が開かない。 すべて同時に撃墜すべく、AI1が指し示す最善の攻撃プランを実行する。 「ヘブン・アクセレレイション! 行けぇぇぇええええええええええッ!」 虚空に穴が穿たれ、そこから全てを溶かす無明の闇が溢れ出す。メディウス・ロクスを除き、あらゆるものがその中心点に向けて引き寄せられていく。 紅い機体、青い戦闘機、ブラックゲッター……接近していたその全てが射程に入った。 本来は後部座席で制御するべき兵装なのか、収束率が低い。それでも三機の動きは止まった。 引力から離脱するべく三機は全力でブースターを吹かしている。だが一向に機体は動かない。 元より一手で倒しきれるとはバーニィも思っていない。必要だったのは三機を一度に狙える状況だ。 「ライアット・ブーメラン……行けよぉッ!」 都合6つのブーメランを解き放つ。一機につき二本、それぞれ違う軌道で射出。 どの機体も動かない―――勝ったッ! ―――そう思った瞬間、機体に衝撃が走った。 見る間にコックピットをレッドランプが埋め尽くす。何が起こったんだ……と、AI1に確認する。 【高密度指向性エネルギー体の衝突。右脚部及び右腕部消滅、出力43%に低下】 映し出されたのは無機質な文字の群れだが、バーニィに絶望を植え付けるには十分だった。 地上、右半身が破壊されている大型の赤い機体。その機体がいま、巨大な砲身を向けていた。どうやらあれで砲撃を喰らったらしい。 まだ生き残ってる人がいたのか、と後悔と同時、安堵が込み上げる。次の瞬間それどころじゃないと思い直すも、被害は甚大だ。 見れば、敵機たちも健在だった。 ブラックゲッター、そして紅い機体にはライアット・ブーメランが多少なりとも損傷を与えたようで、両機ともに武装を取り落としている。 赤い機体はライフル、ブラックゲッターは斧。 戦闘機は驚いたことに全くの無傷だった。あの状況でも躱してのけたらしく、まさか噂のニュータイプか、なんて考えが頭をよぎる。 仕留めそこなったのは痛いが、敵もあれが切り札だったようだ。そのためにわざわざ接近戦を挑み、動きを止めたのだろう。 眼下の機体から感知できるエネルギーはゼロに近い。もうあの砲撃はないと判断し、ここは逃げるべきかと撤退を視野に入れる。 どうやら人的被害は最小に留まったようだ。自分のやったことが正当化されるわけではないが、その事実はバーニィの心をいくらか慰めた。 もはや気負うこともなく、冷静に戦場を見れば……上空に何か反応がある。確認しようとした刹那、その反応が膨大なエネルギーを打ち出した。 向かう先は地上の大型機……その巨砲。 「あの装置はエネルギーをチャージするものか……!? くそっ! チャージなんてさせるものか!」 もう一機の装置へとターミナス・ブレイザーを放つ。結果を確認もせず、今度は地上へ。 生き残った人には悪いが、あの大砲だけは破壊しなければ逃げることも難しい。 その瞬間、バーニィは勝つことよりも逃げることを優先し、一瞬だけ、対峙していたはずの三機の存在を忘れた。 それはすなわち『油断』であり、敵対していたパイロット達からすればどうしようもなくわかりやすい『隙』だった。 一秒。黒の機体が傍らを駆け抜ける。 メディウス・ロクスの左腕が宙に舞う。 二秒。紅の機体がハンマーを振り下ろす。 メディウス・ロクスの右腕が付け根から粉砕された。 三秒。ようやく振り返ったバーニィが見た物は。 パイロットの怒りをそのまま形にしたかのような、蒼い炎。 スロー再生のようにコックピットへ、そこにいる自分へ向けて突き進んでくるそれを見つめ、思う。 ―――ごめんな、アル……クリス。俺はもう、帰れない――― 言葉に出したかどうか。それを確かめる間もなく、バーナード・ワイズマンはこの世界から消え去った。 →すべて、撃ち貫くのみ(ver.IF)(2)
https://w.atwiki.jp/forsale-lawyer/pages/189.html
虎ノ門(難波大助)事件の真相その二 -実説大逆事件三代記(第三回)- 山崎今朝彌 前号でわかるとおり、難波大助が大正十二年十二月廿七日虎の門でステツキ銃を以て皇太子を狙げきし充分死刑に値する大逆罪を犯した事実は明瞭で、いつでも判決を下せるわけだが実際はそうかんたんにいかない。刑事事件としても、背後関係共犯のうむ、犯罪の遠因近因動機、素性経歴、健康精神状態、思想関係等を調べねばならず、調べるには予しん判事、裁判長、裁判官、弁護人等をきめねばならず、又虎の門事件真相記としては右の他少くとも事件が社会運動に及ぼしたえいきよう、政界に与えた波紋、事件に対する当時の世論風評、サテワ公判模様から又種々雑多の後日談まで、しかし私は今統制されて毎号一回二十五枚のワク内に立つてる。筆綱怪々疎にして細大もらすは当然である。で私はどうせかき落しさうな事柄から逐次思いだし心付くままに、ごくかんたんになるべく多くにわたつてかいてみる。なんぞ事の軽重をとはんやだ。 共犯は全然なかつた むりにかいてもくさいのは梅田与一とゆう友人ぐらいのもので、これも悪く解釈してステツキ銃ほしさではるばる東京まで大助の跡を追つたにすぎない。善意に解釈すればこれ位友人の身の上を心配する例は世間にザラにある。第六号にかいた、私の処へよこしたハガキや手紙は月日や拘禁期間の関係で、どうも梅田君の出したものでない。(なお第六号には、そのハガキの差出人がナンバ大助となつているがこれも大助は小助の誤植だ、小助とあつたから私はイタヅラと思い相手にしなかつたのだ)当局でもコレはと思う処は全力をあげて叩いてみたが埃り一つ出なかつた。 国体論責任論 背後とか共犯とかの関係がなかつたセイか、震災だん圧継続中の故か又は左よく運動の地下潜入期中だつたのか、幸徳事件直後のような社会運動圧迫はなかつたが、口は禍の門で身からでたサビとは云え国体論にしばられ山本内閣は総辞職で崩かいした。震災のドサクサであれほど無辜無告の大衆を虐殺しても恬として誰も責任をとる者がなかつたのに、何たる一人のでん下が仮令けがはなかつたとはいえ、内閣が総じ職総監署長等が懲戒免官とならざるをえなかつた処に日本の国体が存する。吉田内閣と雖もイカにインフレを興し際限なく物価を上げ一部ヤミもうけインフレ太りを除く国民大衆を極度のキガ圏内に追ひ込みガシさせようと、たとえ又ゼネストが実現し国家機能と産業遂行が停止しようと、範を前例にとり金輪際総じ職などしないであろう、但し天地がてん倒し陛下がび行民情視察で殺人電車にのり、仮令けがなかつたとしても、苦しかつたとかこわかつたとか一言のミコトノリでもあればこれは別勘定となる。コレが日本のお国柄だ。 事件に関する若干のメモ 兇行が大正十二年十二月廿七日午前十時四十分で即日起訴、予審判事は沼義雄、予審終結が翌大正十三年八月中、第一回の公判開廷が同年十一月一日、裁判長は大審院長横田秀雄公判立会検事は検事総長小山松吉、弁ゴ人は今村力三郎、花井卓造、岩田宙三、松谷与二郎の官選の四弁護士、しかし横田博士は刑事事件は不慣れの理由、花井博士は何かの都合で一切を今村氏に任かせきりと記憶する。又松谷君は後に私選を買つて出て裁判所を手古づらせ官選で妥協したもの、公判は勿論ぼう聴禁止で一回で了り検事はむろん死刑を求めた。判決言渡しが十一月十三日(判決言渡の公判は傍聴禁止する事はできない)でもとより死刑、翌十四日には死刑執行命令があり、その翌十五日午前九時に執行十三分で絶命、その死体は翌々十七日午后五時南綾瀬共同墓地すなわち当時の東京府南足立郡綾瀬村綾瀬彌五郎新田の共同墓地に文字通り密葬された。 死刑スピード執行の理由 調べにも取扱いも評判のよかつた横田裁判長は、大助の境遇に同情し何とか悔悟転向の恰好をつけて、大助を死刑より減一等の特赦恩赦に浴せしめようと工作し、村松介石を派遣したり今村弁ご士や松谷弁ご士を頼んだりして説得大いに努めた。そのかいあつてか大助は公判廷で共産主義を捨てるわけにはいかないが、主義正面の敵でもない皇室に対して大逆不敬を敢てしたのは悪かつた事を認める。その点で国民にも謝罪する。当の皇太子にもおわびするとでた。で判決にもこれを援用して、 ひ告人は公判の最後に於て自己の行いはその抱かいする主義のためにはなお正当なりと思考するも、皇室は無産者に対し直接に圧迫をなすものに非れは独だん一時たりとも又たんに手段のためなりとも皇室を敵としたるは軽卒たるを免れず。共産主義者は必ずしも暴力革命を実現せんとする者に非ず、只権力階級の挑戦に因り已むを得ず、暴力に訴うるものにすぎず、故に皇室は共産主義正面の敵に非ず、若夫権力階級にして皇室を私し之を無産者の圧迫に利用するが如きことあらんか、共産主義者は皇室を敵となすに至るべきも畢竟共産主義者の欲する所は彼の英国に学ばんとするにありて、決してロ国に倣はんとするものに非ずと陳述したり、是ひ告人の犯罪動機に関する信念につき若干の反省を伝え稍悔愧の情を示すものなりというべし。 とかかげ、司法省でもこれを 自分は独断を以てけい卒にも皇太子でん下に危害を加うるに至りたるはちう心いかんにたえず、又自分の親を始め兄弟姉妹及び友人等に対し今日の如く大なる迷わくを及ぼすべきことを事前に察知したらんには、本件の如き暴挙を敢行することをさけたるべし、茲に自分の行為のため直接間接に迷わくを被りたる天下一切の人々に誠心誠意謝罪の意を表す。 と文飾して天下に公表し、一意特赦減刑の態勢を調えていた。 革命萬歳を三唱す ところが判決言渡日に判決文朗読が了つてから、半時間もかかつた言渡を神妙に静聴していた大助は例の無表情の顔をくるりと傍聴席に向け両手を高く挙げて大声で、日本無産労働者日本共産党萬歳、ロシア社会主義ソビエツト共和国萬歳、共産党インターナシヨナル萬歳、と萬歳を三唱した。この萬歳三唱は松谷弁ご士のように、薄々知つて減刑を予期していた大助が素人の悲しさで死刑の宣告後、特赦で一等を減じ無き懲役、それから有期にも仮出獄にもなるのだという事を知らず、助命をあきらめ本音を掲げたと解すべきか又は今村弁ご士と同じく、大助は官憲の無産者階級に対する横ぼう暴虐に憤激し死を以てその報復を決心しその死を華々しく飾るために最も人目を引き宣伝効果百パーセントの皇室を最高責任者として狙つたものだが、父兄に対する世人の以外の圧迫に驚き煩もんの結果、その迫害をかん和するため共産主義と皇室とは両立せざるものにあらず、従つて皇室は無産者を圧迫する側に立たざる限り共産主義正面の敵にあらずとの理論をあみだし、故に皇室に対して危害を加える不敬行為を敢てしたるは自分の過ちなり、之れを皇室及天下に謝すと公判廷で陳述し、三唱の萬歳は言渡日の翌十四日大助が私(今村弁ご士)に弁護した如く最初より捨てなかつた主義の事で皇室や天下に謝罪した事とは矛盾するものでも両立せざるものでもない。加之私(大助)は明日の法廷で罪を天下に謝すと一言しなお傍聴人にも一言したかつたので看守長さんに相談したら、最早弁論が終結したのだから判決言渡後には何も言はぬがよいと申されたので止めたのですとの談話より察すると、皇室に対する罪に対しては大助に悔悟反省の気分意思十分ありたりと説明すべきかは別として、人の生命を的にコンナ奴殺して了えと軽々に官僚判断を下すべきでない事は勿論である。しかしこれを伝えきいた時の司法大臣は短気軽卒ガムシヤラ横紙破りの横田千之助、前に出した宣伝ビラの手前もありエー面倒と誰に相談するでも何を確かめるでもなく、気走つたまま一方には萬歳三唱の新聞差止め一方には即時の死刑執行命令書となつたものである。 大助、摂政殺意の動機 犯罪の動機は大切であるが私は前々回第六号でほぼその大略を尽くし、今回も亦所所にその片りんをみせているからこれを略し、その素性経歴家庭人物及びその思想の変遷等を慨述したいと思う。それは刑事記録を参考にかいた松谷弁ご士の世界犯罪そう書第一巻思想犯罪編の難波大助大逆事件に詳記されてるが、同じ記録からできた大審院特別刑事部(大審院には常に刑事部が四、五あつて三審として上告事件を扱つてるが、大逆事件は一審で終審として特別に部を作り、審理判決することになつてる)の当の判決はよりよくかんたんに要領よくココ向きにできてるから多少の加除訂正をしてここに引用する。 大助の生ひ立ち ひ告人大助は本年廿六才歴史上由緒ある難波家に生れ嘗て県会議員衆議員たりし難波作之進の四男にして祖先なんば伝兵衛は秀吉の有名なる高松城水攻めの時毛利方へ城将清水七左衛門と共に水中に切腹し果てたる清水家家老七人組の一人、曾祖父覃庵は維新の際国事に尽したるの故を以て特に明治天皇陛下に拝謁を賜はり歿后正五位を贈与され、ひ告人の父作之進も亦皇室尊崇の念篤くひ告人はげん格なる父とじ愛深きトク子とのくんとうをうけて人となり、よく父母に任え難波の伝とう的精神を体し皇室中心主義を奉じその中学時代たる大正六七年頃は書を雑誌武侠世界によせ乃木将軍死后我国の上下ふか軽調に流れ世界無比の皇室をほうたいする我帝国はきたいにひんするものとして大に之れをこうがいし、大元帥陛下のとうすいし玉う軍隊に入営するを以て臣民の光栄とし、徴兵きひ者を不忠なりと論じたることあり、又当時大阪朝日新聞が皇室のそんげんぼうとくに関する記事を掲載したるさい同新聞を攻げきし、父と共にその不読不買を知人間に奔走かんゆうしたることありて臣民の大義を守り過る所なかりしが、ひ告人はさきに大正六年二月慈母を失いその境遇に変化を来したるため苦学自ら立たんことを決意し、東京に走りたる以来東西各地に転学流寓し再三上京して、あるいは中学検定試験に志し、あるいは高等学校入学試験に応じたのも終にその志をえず大正十年に及べり、しかしてその間父より支給せらるる学資頗る薄く常に父より倹素を旨とすべきことを命ぜられ、やむなく自炊をなし又は新聞配達に従事して自給を計りきう乏を忍び具さに辛苦をなめたる為、大正八年偶々四谷区谷町のろうあいなる一室に起居して通学をなすに当り親しく附近の貧民窟を目げきし、これを自己のひ境に比して生活のかんなんを覚るに従い漸次思想の変化を来したり。 共産主義に共鳴す 悠も世界大戦の後をうけロ独の帝政ほうかいしソビエツト政府の組織せらるるあり又欧米民主々義の風潮、我国にびまんしたためにひ告人の精神に多大のしげきを与え、ここに我国建国の歴史に疑念をはさみ皇室に対するひ告人の信念に動ようを生ずるに至れり、大正九年第四十二議会の開会せらるるや当時ひ告人は衆議院の傍聴席にありてその混乱せる議場の醜体をみ議員に対する尊敬の念を失い又普通選挙反対の演説をきき我国の政治家が頑迷にして民衆の利害に意を用いざるものとして大に之れを憤がいし、痛く議会政策の非なるを感じ同年五月帰省したるに時偶々総選挙にあたり確固たる主義政見を有せざる父作之進が単に家名のため候補に立ち、巨額の冗費をなす事を吝まざるをみて、自分に対する父の節倹の訓戒はもとこれ一片の虚言にすぎずとなし、父に対して大なる反感をいだきこえて大正十年に至り雑誌改造解放、社会主義に関する著書ロ国の小説等をたん読し又社会主義的傾向を有する朋友に交はるに及び、社会主義思想が漸くひ告人の脳裡に浸潤するに至れり、当時ひ告人は極僅少なる月給をうけ勉学の傍再び新聞配達を業とし父の代議士たる地位と自己の労働者たる境遇とを対比し又兄の正太郎義人が皆最高教育を受けたるに反し(一人の兄は夭死す)自己のみ普通義務教育のみにて打切らんとしたる父の措置に想到し益々反感の度を高め、私有財産制度及び家族制度を呪詛し、又大正十年発禁となりたる雑誌改造の四月号に掲載されたる断片と題する河上肇博士の文章をよみてロ国のテロリストに同情しテロリストの行動痛烈にしてロ国の革命は此等の徒に負う所大なりとして大にこれに共鳴し、次ぐ同年四月中幸徳事件の判決を掲載したる当時の新聞をよみ、その罰を残忍なりとし、深く幸徳一派の心事を憐むと共に彼等と主義を同うする者の何等なす処なきを卑怯なりとして憤慨し、決死の覚悟を以て自ら暴力即時遂行者たらんとするの意を決するに至れり、その後幾千となく社会主義の講演会に赴き警さつ官が弁士に片言隻句を発せしめず即時解散を命じたるを見て直接行動の他なしと思惟し、又自ら実施せる労働生活に考えて多数窮民救済のため速に社会の状態を変革するの要ありとなし学生生活を止め専心社会運動に従事せんとしたるに父兄より痛切なる訓戒を受け、陽にこれに服して大正十一年四月以来早稲田高等学院に入学したるも、平常学課を怠り好んで社会問題の講演会に出席し傍ら暴力社会主義者及び無政府主義者の著作をたん読し益々社会変革は暴力によるの外なしとの信念を固め、その思想愈々悪化するに及びひ告人は断然学生々活を廃し労働者となつて自ら労働者解放運動の一兵卒となり主義のため死すの意を決し大正十二年二月退学して深川区富川町所在の木賃宿に移り下層労働に従事したるに労働の牢苦生活の困憊深く心肝にてつし、有産者に対する忿憤反抗の情を増進激越ならしめたり、同年五月病を得て帰省し父兄の言に服して兄を生家に駐めたるもひ告人の思想却て一そうの険悪を加え、無自覚なる労働者を指導して多数の団結を組織し政権をかく得して無産者独裁の制をとるの要ありとなし、遂に共産主義に共鳴し更にマルクスの共産主義宣言を熟読して益々その信念を強うするに至れり。 殺意を決す その間屢々東京に往復し大正十二年九月の大震災に際し官憲のとれる措置を快とせず速に徹底せる行動に出ずるに如かずと思惟し暴力遂行の計画を決然敢行せんとし畏くも皇室と共産思想とは両立せずと妄断し言論によるもその効果少しとなし皇族に対し危害を加えて共産主義者の決意を示し因て以て一面においては現時我国において主義宣伝に関し言論の自由を許さず労働組合をも公認せず銃剣を以て自由思想に対する権力階級者と戦い、権力階級者及び資本家が皇室を奉ようし、労働者及び社会運動家に加うるに圧迫を除去して無産者の危急を防救すべく、他面においては大震災に当りむこの労働者社会主義者を殺りくしたる軍隊官憲並に反動団体の暴状に対し、その反省を促し、なお進んでは現に我国の無産者間にほうはいたる皇室中心主義の信念を放きせしめんことを目的とし、同志に図ることなく独りその事に当るを萬全の策なりとし、その機を窺いいたる処同年十一月中父作之進はひ告の心気を転ぜしめんがため銃猟を許すやひ告人は家に杖銃のあるを憶いこれを使用して不逞の意思をとげんと欲し(下略) まるで取締当局に対する裁判所の抗議警告文で裁判官としては又特に当時としては随分思いきつた判決文だというところに価値がある。大助は父が恰度議会開会で上京中留守にこの杖銃と妹安喜子(当時十八才末妹彌代子十四才)をおどして得た卅円の路金とを持て十二月二十二日上京の途につき柳井津で梅田与一京都で岡陽造等親友と別れを惜しみ数日を費しこの間に友人へ身元証明的の絶交状数通と新聞社及び信頼するに足ると認めた記者等に七通の敢行理由書類似の公開状を認め、二十七日早朝新橋駅着そこで前記の書面を投函し遣い残した三十何銭かの身軽になり単身虎門に入つたが遂に皇子をえず、前述詳記の如く正邪判明悪は亡び善は栄えて目出たし目出たしの大団円で大尾-。 <以上は、山崎今朝弥氏が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正した。旧漢字は適宜新漢字に直した。> <底本は、『雑誌真相復刻版(第1巻)』(三一書房、1980年)、底本の親本は、『真相』(人民社)第9号(1947年5月)13頁>
https://w.atwiki.jp/fadv/pages/2556.html
絶対聖域 刑事花房京子 題名:絶対聖域 刑事 花房京子 作者:香納諒一 発行:光文社 2023.7.30 初版 価格:¥1,700 本作には二つの際立った特徴がある。『刑事コロンボ』を代表格とする、いわば犯罪者の側から語ってしまう倒叙ものであること。これは花房京子シリーズに課せられたシリーズとしての約束ごと。シリーズ読者であればそこにこそ期待するわくわく感が最初から期待させられる。 もう一つの特徴は、本作に限っては全編刑務所を舞台にしていること。それも刑務所の祭典として一般公開されるばかりか女性歌手までがステージに上がって美声を披露してくれるという特別な日を事件にあてがっていることである。 事件そのものは、早い段階で読者の目に曝される。殺意がどこにあるのか? コアとなる部分は既にオープンになってはいるものの、なぜこの殺人者がこの被害者をターゲットに選んだのか? は当面謎というかたちで我らがヒロイン花房京子の捜査がスタートする。殺人が実行されたのは、刑務所の祭典のさなか。映像化した作品も観てみたくなるようなある意味スケール感のあるプロットである。 読者の目の前に曝された殺人事件の裏側を読み解くのが、そもそも本作の推理小説としての醍醐味なのだが、いくつかミスリードを誘う伏線なども仕掛けられていてなかなか一筋縄ではゆかない。刑務所という一種のアニマルファームが舞台であるからこそのカオスがあり、それを律する職業に携わる者たちの規律の重要さは決して軽くないように見える。 例によって花房京子の眼のつけどころこそ物語の鍵であり、そこに気づいてゆく真犯人の苦渋が読者目線での読みどころにもなってしまうのは、倒叙ミステリーの構図そのものである。 ちなみに少し前にぼくはアンデシュ・ルースルンド『三年間の陥穽』のレビューをネットにあげたのだが、レビューした作品は小児性愛犯罪の世界的ネットワークを根絶せんとする警察官と潜入捜査官の物語であった。本書『絶対聖域』では、小児性愛犯罪が殺人の重要なファクターとして描かれている。世界でも日本でも、一般社会の中に隠れた異常性愛による犠牲者が存在することを、またも垣間見せられる。こうした異常者は犯罪を犯すそのこと以上に、むしろ異常性を隠蔽することに心血を注ぐ。どちらの作品でもそうした傾向が見られたことに、現代の隠された罪の情景を見せられた想いである。 花房京子が暴く真実は相当に痛い。倒叙型ミステリーとしての形だからこそ書けたであろう犯人側の苦悩の深さが痛いのだ。被害者側の屍が曝される場所と本作タイトルとの関わり方を読者としては想像してゆきたい。 さて本書の一番の個性だが、それは作品の舞台となる刑務所そのものであろう。刑務所の地図が冒頭に示され、読者は公開当日の一般客の目線で刑務所のなかに足を運び入れる。そちらの面白さも格別なのが本書の特徴なので、改めて刑務所のそのような祭典についてネットで調べてみた。 ちなみに東京拘置所(旧小菅刑務所)では、コロナ前には「矯正展」という形で受刑者の作品展示と、刑務所棟の外観見学のみが行われていたようである。ちなみにコロナ後に開催される2023年12月に実施される矯正展は、東京国際フォーラムで実施されるそうだ。本書を読んだ後では相当に残念な場所であるように思う。拘置所見学という機会は、今のところ残念ながら失われてしまっているようである。刑務所や拘置所を見学したことのある方、興味のある方は、本書でしっかりその雰囲気を味わって頂きたいと思う。入所された経歴をお持ちの方はもちろん別として。 (2023.07.22)
https://w.atwiki.jp/animerowa-2nd/pages/572.html
すべては穴掘りシモンとの邂逅から始まる ◆LXe12sNRSs 夢を現実に描きかえる力は、あるのだろうか。 「久しぶりじゃねえか。生きてる内に、またおまえの顔を拝めるとはな」 愚にもつかないことだが、いつもそう思う。 「一番驚いているのは、おそらく私だろう。これは、夢を現実化する一歩だ」 悪夢……それを傍から見ている自分がいる。 「夢ね……さて、おまえが突き破ったのはどんな岩盤だ? たいそう硬かったんだろうな」 見るたびに、飽かず鮮明な感情が溢れてくる。 「ああ、私の力では砕くことすら叶わぬ、強固すぎる殻だ。故の夢、見ることしか叶わん」 沸き立つ、自分を取り巻く全てへの、怒り。 「じゃあ、なんでおまえはここにいる? どうして俺の前に姿を現した?」 それらを砕き尽くさんとする、渇望と闘志。 「質問がしたかった。私と拳を交え、自分は自分であることを自覚し、銀河を救ったおまえに」 そして、なによりも深く暗い、悲願の悦び。 「おまえは、あれで幸せだったか?」 あるいは、解放と自由よりも大きな、悦び。 「……ハッ、ガハハハハハハハハハハハハハハ!」 痛いほどに胸躍らせる、大きすぎる、悦び。 「それが、答えというわけか」 悪夢の中、溢れるのは、苦悶ではなかった。 「参考には、なったか? ――どうせなら、酒でも飲み交わしたかったんだがな」 悪夢の中、満たされている気持ちは、悦び。 「訪れることのない機会だ」 決して果たされることのない、悲願の悦び。 「礼を言う。これで私が取るべき道は決まった――さらばだ、シモン」 だからこその、悪夢。 ◇ ◇ ◇ 青の惑星、地球より遠く離れて幾光年。 砂と土、岩と嵐が地をならす荒野の星にて、その小事は起こっていた。 小高い岩山の頂上、望遠鏡を用いずとも肉眼のみで視認できるその事態を、傍観する者は二人。 小柄な体をマントで覆った黒い髪の女性と、彼女の比較対象としてはこの上ないほど大柄な女性。 前者の名をメリル・ストライフ、後者の名をミリィ・トンプソンと言う。 ベルナルデリ保険協会の外交員たる彼女らが、この事件を目撃したのは偶然と言う他ない。 あの『人間台風』が起こす災害を知る二人にとっては、よほどの惨事でもなければ瞠目することなどないのだが、 「どうなっているんでしょうか、先輩」 「私に聞かれても困りますわ……」 視線の遥か先で起こっている事態は、『よほどの惨事』というレベルをゆうに超えていた。 殴り合い、銃撃戦、市街破壊、天変地異……どれと比較することも適わない。 あれはそう、例えるならばファンタジーだ。 睡眠下で見るような夢の物語、そう解釈するのが一番自然であり、それしかありえない。 メリルとミリィの二人は互いの頬をつねってみるが、ただヒリヒリとした痛みが込み上げてくるだけだった。 「どどどどどうしましょうせんぱ~い!?」 「だから、私に訊かれて、も……」 泣きながら困惑するミリィに、メリルは自身も精一杯と主張しようとするが、寸前で言葉が途切れた。 そのまま血走った双眸が塞がれていき、体はぐらんぐらんと揺れ、パタリ、と倒れてしまう。 相方の急な失神に疑問符を浮かべるミリィは、事態の把握が追いつくよりも先に、猛烈な睡魔に襲われた。 そしてメリルとまったく同じ段階を踏み、二人並んで地に伏した。 こうして、たった二人の傍観者は消えたわけだが……そこには一言、幼い声が残る。 「おやすみなさい、なのですよ」 ◇ ◇ ◇ メリルとミリィが目にしていた光景、それは一言で説明するならば、『戦闘行為』だった。 とはいえ、彼女らの日常からしてみればそんなのは茶飯事だ。困惑の種となったは、その規模である。 「――ぬぅ、バカな!?」 まずは、そのスケール。 これは直接的に、戦闘に参加する闘争者の『大きさ』を意味する。 2メートルを越えれば人間としては巨漢とされるが、この惑星でもその常識は当てはまる。 が、これはそんな生易しいレベルの話ではなかった。 ――戦いを繰り広げているのは、身の丈数十、いや数百メートルはあろうかと思われる巨人。 全身は白を基調とし、両肩は鋭く尖った刃のよう。特徴的なのは、胴体と頭部だろうか。 巨人の胴は、言うならば顔面。 人体でいうところの胸部に凶悪な双眸があしらわれ、腹部には鮫のような歯が浮かんでいる。 その顔のような胴体の頂、双眸の間の眉間部分には、もう一つの顔があった。 この時点で、人体の構造が破綻している。それもそのはず、闘争者たる巨人は人間ではなかった。 いや、それどころか生物ですらない。巨人の正体は兵器。単に人の形を模しただけの、兵器なのである。 「このビャコウのアルカイドグレイヴを軽くいなすだと……? ありえん、ありえんぞ!」 それは、『ガンメン』と呼ばれる顔型戦闘兵器。 中枢部に備えられたコクピットに搭乗することによって起動可能となる、いわゆるロボット兵器の一種だった。 このビャコウは、ガンメンの中でも特別なカスタマイズが施された数少ない強化型である。 搭乗者は、螺旋四天王が一人『怒涛のチミルフ』。二つ名のとおりの、豪快なる武人だった。 そのチミルフが、ビャコウの内部から驚嘆の怒声を漏らす。 愛機を駆り出しての闘争、そこで直面した異常事態に、チミルフは激しく憤っていた。 「ありえんのだ……人間ごときが、たった一人で! ガンメン相手に――」 「――ごとき、か。悪いが、それはおまえの認識不足だ」 ビャコウに取り付けられた拡声器を通しての声が、反響して響き渡る。 大音量で唱えられるチミルフの憤慨、しかし答えた相手の声は、清く静か。 見かけには穏やかだが、実は内面に激しい熱情を含んだ、痛烈なる言霊を投げつける。 「降参しろなどとは言わん。その悪趣味な機動兵器ごと……貴様を斬るッ!」 確固たる攻撃の意志を言葉に宿し――ビャコウと対峙する女騎士は、剣を握りなおした。 「レヴァンティン!」 ――西洋風の騎士甲冑が包むは、厳格たる女性の肢体。一本に束ねられた桃色の長髪が、風に舞う。 『Jawohl!』 ――女騎士の握る剣が、機械音声で応える。重厚な可動音を鳴らし、柄の辺りから薬莢のようなものを排出した。 「ありえん! ありえんありえんありえんありえんありえんありえん!」 女騎士の名はシグナム――守護騎士ヴォルケンリッターが一人、烈火の将シグナム。 剣の名はレヴァンティン――アームドデバイス、炎の魔剣レヴァンティン。 「ありえんのだっ、ニンゲンンンンンンン!!」 空中に浮遊し、上段の構えを取るシグナム。対してビャコウを駆るチミルフは、巨体を生かし突進を仕掛ける。 体格差は歴然。軽く触れるだけで、脆弱な人体など轢死に追い込める。それだけのパワーが、ガンメンにはあった。 ガンメンと対等に戦い――それどころかガンメンを圧倒するなど、人間にできるはずがない。チミルフはそう信じていた。 しかし結果から言って、それは妄信に過ぎなかった。 ビャコウの周囲に散乱する機械の残骸……破壊の限りを尽くされたチミルフの部下たちが、それを物語っている。 残ったガンメンはビャコウともう一体のみ。将であるチミルフの率いていた軍は、もはや壊滅寸前だった。 そしてこの瞬間、寸前ですらなくなる。待つのは、壊滅のみ。 「紫電一閃!」 遥か上空から、縦一文字に振り下ろされる紅蓮の刃。 それはもはや、剣技と呼べる範疇を越えていた。 たとえるならばそう、魔法のような斬撃。 燃え上がる軌跡が、標的を分断した。 半面が二つ、盛大に爆散する。 怒涛のチミルフは、ここに敗れた。 ◇ ◇ ◇ 「チミルフッ!!」 怒涛のチミルフ対シグナムの一戦――その場から数百メートルほど離れた地点。 ここでも、人間対ガンメンの闘争が繰り広げられていた。 「馬鹿な……おまえたちは、本当にニンゲンなのか!?」 叫ぶ女の声は、ビャコウと同じ顔を模した巨大兵器――ガンメンの中から。 その形態は、白色の巨大サソリ。セイルーンと呼ばれるガンメンの、変形した姿だ。 チミルフと同じく、搭乗者たる四天王の一人が、女声によって憤りを零す。 「なめるんじゃないよおおおおおおお!!!」 その名、『流麗のアディーネ』。サソリの尾を持つ女性型の獣人である。 性格は残忍にして苛烈。チミルフのような武人ではないが、戦闘技術は他の獣人よりも秀でている。 しかし彼女もまた、チミルフと同様に、 「――あたしらは、いま気が立ってんだ。あんま怒らせないほうがいいぜオバサン」 人間を前にして、劣勢を強いられていた。 アディーネ駆るセイルーンが相対するのは、鮮やかな赤いスカート。 炎のような紅い髪を、うさぎのマスコットで三つ編みに纏め上げ、滞空するその姿。 どう見ても子供としか思えない体型から放たれるは、異様なほどの覇気だった。 「特に――アイツを怒らせるとこえーぞ。いや、もう手遅れかもしんねーけどな」 小生意気な言動を口にする少女の名はヴィータ――守護騎士ヴォルケンリッターが一人、鉄槌の騎士ヴィータ。 手にする巨大な鉄槌の名は――アームドデバイス、鉄の伯爵グラーフアイゼン。 さらに、その背後。 ヴィータの後方数百メートルほどの距離から、中空で構え、射撃体勢を取る人物がいる。 その、女性と呼ぶには幼く、少女と呼ぶには凛々しすぎる容貌。 リボンで纏めたツインテールに、白の法衣を身に纏う清楚可憐な姿は――ひどく、怒りに満ちていた。 「なんだ……この反応は!? ニンゲンが出せるものじゃないぞ……これは!」 アディーネの憤慨など聞き流し、ひたすらに段階を踏む、女の名は――高町なのは。 時空管理局本局武装隊及び航空戦技教導隊所属、戦技教導官。 機動六課前線フォワード部隊スターズ分隊隊長。 不屈のエース・オブ・エース。 背負う肩書きは数あれど、今の彼女を示す言葉はただ一つ。 ――管理局の白い悪魔。 「――全力、全開ッ」 両腕で砲身のように支え持つ杖――デバイス、レイジングハート・エクセリオンに魔力が集中する。 シグナム、そしてヴィータに共通して、なのはたちが武器として用いる概念――それが、魔法。 「スターライト……ブレイカァー!!」 なのはが持つ杖から、破壊の熱量を伴った閃光が迸る。 それは、アディーネにとっては極光の射手。 太陽が押し寄せてくるような光景を前に、既に半壊状態にあったセイルーンが取れる手立てはなく。 「……そんな、そんなそんなそんなそんなそんなそんなそんな……馬鹿なああああああああああ!!」 アディーネは搭乗するガンメン諸共、光に飲み込まれた。 ◇ ◇ ◇ 極光が止み、事態の一部始終を遠方から眺めていた少女が、呟く。 「ひゃあ~、今日のはまた一段と……すごいです!」 発せられる声は幼く無邪気、しかしよく通る、女児のもの。 否、彼女に年齢という概念はなく、体のサイズで言えば、児童とは比較にならないほど、小さい。 宙を、妖精が舞っていた。 銀色の長髪を靡かせて、形作る体型は少女のそれ。 外見そのままの少女を縮小したような、神秘的な可愛らしさを持つ小人。 名をリインフォースⅡ――なのはたちと同じく『機動六課』に組する、ユニゾンデバイスと呼ばれる種の生命体だった。 『はい、おつかれさま。こっちは終わったよ。リイン、そっちはどや?』 「はいです。結界の維持は良好、ちょっと逃げ遅れちゃった現地民が二名ほどいましたけれど、眠ってもらったです」 『的確な処置やね。状況が状況やし、なるべく表沙汰にはしたくない。引き続き任務の継続頼むで』 「了解ですっ」 通信機器をなんら用いず、どこかの誰かとやり取りを交わすリイン。 彼女が浮かぶ真下には、先ほどの二人組、メリルとミリィがすやすやと寝息を立てている。 これが今回リインに与えられた任務。 なのはたちが獣人の軍勢と戦う間、この惑星の民間人が立ち入らぬよう見張ることだった。 「さーて、これで今回のお仕事も終わりですかね~。なにか手がかりがつかめるといいんですけど……」 「それは無理だな」 「へ!?」 宙を漂っていたリインの身が、ピンと張り詰める。 突如として響いてきたのは、聞き覚えのない男声。 振り向いてみると、声の主はすぐ背後の断崖に腰掛けていた。 「技術力という点では申し分ないが、おまえたちには決定的に足りないものがある。それは……まあいい。いずれ気づくことだろう」 「あ、あの、どちら様ですか!? どうして、というかいつの間に!?」 動転するリインを一瞥し、金髪オールバックの髪型に、クラシックなスーツを着込んだ男はフッと笑う。 一見すれば、第97管理外世界……『地球』のアメリカ人に該当する容姿。 明らかに、地球から遠く離れたこの惑星に、魔法で形成した結界内にいるはずがない人物。 「おもしろいものを見せてもらったので、一つ忠告しておいてやろう。無駄なことはやめておけ。待ち人は素直に家で待つべきだ」 金髪の男はリインにそういい残し、断崖の下へ飛び降りてしまった。 慌ててその姿を追うリインだったが、断崖の下を覗いたときにはもう、男の姿も反応も、どこかへ消え失せていた。 首を傾げ、直面したミステリーについて頭を悩ませるリイン。 その傍らで、先ほどの続報だろう、新たな通信が入った。 「あ、はいっ。こちら――え? ちょっと、どういうことですかそれ?」 男の存在も手伝って、より混乱した素振りを見せつけるリイン。 仲間から入った思わぬ情報が、事態の混迷化を物語っていた。 「……今回の敵対組織が……破壊した機動兵器の残骸ごと、跡形もなく消失した……?」 耳にした事実を反芻し、リインは呆然と空中を彷徨っていた。 ◇ ◇ ◇ ×× ××××年 ×月×日 深夜 ミッドチルダ南駐屯地内A73区画『機動六課隊舎』 この日、時空管理局機動六課所属の隊員、スバルナ・カジマ二等陸士、ティアナ・ランスター二等陸士、 エリオ・モンディアル三等陸士、キャロ・ル・ルシエ三等陸士が一斉に失踪するという事件が起こった。 残された手がかりは何もなく、ロストロギアが関与した誘拐事件ではという声も挙がったが、捜査は難航。 そして某日、八神はやて二等陸佐率いる六課フォワード陣は、顔の形をした謎の機動兵器と戦闘に陥る。 未確認の勢力、理由不明の襲撃から此度の事件に関連性ありと断定されたが、戦闘直後、思わぬ事態が起こった。 殲滅した敵勢力の全てが、跡形もなく、転移反応も残さず消失したのである。 その後、謎の顔型機動兵器の目撃情報はなく、捜査は現在も難航している。 ◇ ◇ ◇ ×× 1931年 1月2日 正午 闇酒場『蜂の巣』 「……あれ、ロニーさん。どこかへ出かけていたんですか?」 「……フィーロか。いや、なに、大したことじゃないさ。ちょっと酒泥棒を探しに……な」 「酒泥棒? ああ、それよりも見てくださいよこれ、邪魔くさいったらありゃしない」 「これは……ドミノ倒しか。楽しそうだな。俺も混ぜてくれ」 「ロニーさんまでですかー!? マルティージョ・ファミリー総出でドミノ倒しなんて、他の組の奴らに見られたら……」 「大丈夫だ。そのときは俺がそいつらを始末する」 「真剣な目で怖いこと言わないでください。ってか、これじゃ俺がメシ食えないじゃないですか」 「だったらフィーロも手伝えよー! この楽しみを共有しようぜ!」 「フィーロもドミノを倒すドミニストの仲間入りだねっ!」 「ま、マイザーさぁぁん」 「いやぁ、案外、こういうのも楽しいと思いますよ?」 「……それでも『この世界は』回る……か。ふっ、まあいい」 ◇ ◇ ◇ ×× ××××年 ×月×日 夕刻 時空管理局本局 「……ねえ、フェイトは『ifの世界』って信じる?」 「if……もしもの世界、っていうやつかな?」 「そ。もしかしたらこうなったかもしれない……人間誰しも、思うときはあるでしょ?」 「……それは」 「たとえば、私たちにとってはあの事件」 「けど、それは」 「わかってるわよ。それは言ってもしょうがない。私も過去を蒸し返すためにこんな話題を出したわけじゃない」 「……もしもボックスって、覚えてる?」 「ああ、たしかそんなのもあったわね」 「私たちは並行世界という横のラインを行き来して、彼らは時間軸という縦のラインを行き来できた」 「じゃあ、私の言うifの世界は……斜めのラインと言ったところかしら?」 「彼らの世界の科学は、四次元の世界をどこまで解明したんだろうって……ときどき思うの」 「あー……ま、それも今さらよね。私とフェイトの知る範囲は、横のラインに位置するんだし」 「私たちの活動に支障はない。たしかにそうなんだけど……どうして、突然こんな話を?」 「……夢を見たのよ」 「夢?」 「そ、夢。あの馬鹿げたゲームによく似た催しが、別の面子で開催されてる夢」 「ははっ……予知夢、とかじゃないよね?」 「それこそまさかだわっ。思い出したくもないけど……そこには、既に死んだ人もいたもの」 「……もし、傍観者じゃなくて、当事者としてその場にいたら?」 「んなもん、決まってるでしょ。ぶち壊す。フェイトだって」 「うん。それはもちろん」 「あんなの、人生で二度も経験するものじゃないわ……ねぇ、フェイト」 「そうだね、凛」 ◇ ◇ ◇ もしも。 もしも、あそこで違う選択肢を選んでいたら。 あの選択をする場面で、二通りの運命に分岐していたとしたら。 選ばなかったほうの運命は、ifの世界として、どこかに存在しているのだろうか。 「それは、タイムスリップなどというやり方では到底辿り着けぬ境地かもしれないな」 時間の関係を縦に、 次元の関係を横に、 if世界の関係を斜めとして。 「境界線を跨ぐことができる者は……はたしているのか、という話だ」 枝分かれする運命の存在。 世界としての差別化。 行き交うことなど夢のまた夢。 技術を超越した、途方のない幻想。 「と、私は思うのだが……アーサー、おまえはどう思う?」 「んなー?」 「……猫に聞いても無駄か。はてさてルルーシュ、おまえはどこに旅立ったんだろうな。 縦か、横か、それともまさか本当に……いや、まさかな。どう思う――マリアンヌ?」 ◇ ◇ ◇ 戸惑う者。 「なんだあ? 欠席か今日?」 「うん……アニタちゃんがお休みだなんて珍しいよね」 「あら、アニタさんは風邪かなにか?」 「連絡がないんだって。なんか心配……」 「ズル休みじゃねぇの?」 「……違う、と思う。なんだかよくわからないけど、違う、そう……」 探求する者。 「よーし、完成だー! これでミーくんたちの居場所がわかるぞ!」 「さすがだよ博士! こんな短期間でもうクロちゃんたちの居場所がわかる装置を発明するだなんて!」 「やったー! これでクロちゃんたちが見つかるのね!」 「ああそのとおりだ! 待ってておくれミーくん、今ゴーくんが助けにいくからね~」 翻弄される者。 「キャンチョメくん……君が私のところに来た理由は見当がついている。フォルゴレくんの失踪先についてだろう?」 「わぁ、話が早いやナゾナゾ博士! フォルゴレがショウから帰ってこないんだ。博士なら居場所がわかるだろ?」 「もちろんだとも。なにせ私はナゾナゾ博士。なんでも知ってる不思議な博士だからね」 「じゃあさっそく教えてよ! フォルゴレはどこにいるんだい?」 「フォルゴレ君は……魔界にいる!」 「ええ~!? そ、それは本当かい?」 「ウ・ソ」 変わらぬ者。 「おはらっきー! さーて始まりましたらっきー☆ちゃんねるも、ついに××回目ー! 司会は……」 「おはらっきー! 司会はご存知、小神あきら様と、アシスタントの白石みのるで……」 「ああン!? 白石テメー被ってんじゃねーよ! 何回このパターン繰り返してんだテメーはよぉああン!?」 絶望する者。 「ママ~!? どこへ行ったのママァ~!」 「なぁ、ママなしでどうやって生きてくんだ? 俺たち」 「ママがいなくちゃ俺たちやっていけねぇ~よぉ」 「泣くなよおまえら! それでも空賊か!?」 「そうだよな……俺たちがくよくよしてちゃ、天国のママに……」 「死んだって決めつけるなよ! 死んでねぇよ! ママは、ママはきっとどこかで生きて」 「うっ、うっ、うっ……うわああああんママあああああああ」 ……此度の実験における代価は、残された世界に住む関係者等の変質。 感情、人生、世界の明暗、多岐に渡る変化。 それがまた、新たなifを生む。 ◇ ◇ ◇ ×× ××××年 ×月×日 午後7時頃 螺旋王の居城 「ええい、なんなんだいあれは!」 「憤っているな、アディーネ」 「当たり前じゃないか! あんなのがニンゲンだって? 認めない、あたしは認めないよッ!」 和式にも洋式にも属さぬ、独特な形状を保った螺旋の回廊を、二人の男女が歩く。 左目に眼帯をした、サソリ尾の目立つ女――アディーネ。 ゴリラの巨躯を、武骨な鎧で覆った武人――チミルフ。 闘争から帰還した彼女らは、螺旋王へ報告する道中で、愚痴を零すように先の顛末を掘り返していた。 「今回の実験を行うにあたって、並行世界の話は聞いた。だが、あれはなんだい!? ニンゲンが宙を浮き、生身でガンメンを破壊する……並行世界ってのには、あんなのがゴロゴロいるってのかい!?」 「……俺とて信じられん。が、信じるしかないのだろう。どちらせにせよ、俺は敵を叩き潰すだけだ」 「あんたはそれでいいだろうがね、あたしゃ腑に落ちないのさ! 気づいたかい? あそこには……実験参加者の一人であるはずのニンゲン、『八神はやて』が紛れていたんだよ!?」 アディーネとチミルフが異世界に渡り、機動六課なる組織を襲撃したのは、螺旋王の指令によるものだった。 実験を阻む可能性がある。殲滅せよ。譲り受けた言葉はただそれのみ。 結果は惨敗。しかし、螺旋王が事前に準備しておいた転移装置のおかげで、アディーネたちは無事帰還することができた。 これも全て螺旋王の目論見どおりなのか。もし機動六課が――非殺傷設定などというシステムを武器に取り込んでいなかったとしたら。 今頃は、螺旋王四天王たる二人も土の中だったろう。 「……見間違い、ではないのか?」 「螺旋王が集めたニンゲン共は全員記憶している。あれは間違いなく……小一時間前に、実験会場で死んだ八神はやてだ!」 アディーネは知っている。局所的にだが、実験会場でどのような戦が行われているのか。 そして先の第三放送でも、八神はやての名は呼ばれていた。 そう、確かに実験に参加し、死んだニンゲンのはずだ。 なのになぜ、あの場に八神はやてが存在していたのか。 「死んだはずのニンゲンが……いや、同姓同名のニンゲンが二人いる、か。俺にはさっぱりわからんな」 「あたしもさ。そもそも、螺旋王が言う並行世界とやらもよくわからない話だ。 いったい螺旋王は、どうやってあんな物騒なニンゲンどもを集めたんだい?」 「……わからんよ。で済ませられる段階ではないのかもしれぬな……もはや」 アディーネとチミルフは向かう。螺旋王の玉座へ。 「そろそろ、頃合どきかね」 「ああ。確かめてみようじゃないか。螺旋王の、真意とやらを」 ◇ ◇ ◇ 時系列順に読む Back 第三回放送、あるいは Next ロージェノムは螺旋の王として配下の疑問に答える 210 第三回放送、あるいは ロージェノム 外伝 ロージェノムは螺旋の王として配下の疑問に答える 097 第一回放送 流麗のアディーネ 外伝 ロージェノムは螺旋の王として配下の疑問に答える 097 第一回放送 怒涛のチミルフ 外伝 ロージェノムは螺旋の王として配下の疑問に答える 235 幻想のアヴァタール(後編) ロニー・スキアート 242 罪歌 阿鼻叫喚の狂った舞台(後編)