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コマンド 竜剣
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サンダーストーム/Cobra Command 敵機が現れたらカーソルを合わせて攻撃、障害物が接近すると方向指示に従ってレバーを入力するというシューティング要素を織り交ぜたLDゲーム。 レバーの入力タイミングはシビアではありませんが、方向指示が消えるまで入れっぱなしにしておかないとミスとなってしまいます。 ギリギリまで迫ってくる敵機や迫力のある爆破シーンはLDゲームならではでしょう。 【通信販売】 サンダーストーム for Windows/X68030/60 サンダースト-ム ロードブラスター ○プレステ版 サンダーストーム ロードブラスター ○サターン版 サンダーストームFX MCD 【メガドライブ】
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近衛兵団メサイア大隊第45期メサイア操縦適正者候補生。 それが自分達の地位であるにもかかわらず、まともに最初からいえたのは、10名いる候補生の中でただ一人だ。 泉美奈代(いずみ・みなよ) 父は近衛騎士。 母は生命保険会社のセールスウーマン。 高給な割に危険な職業としては帝国随一。当然、市井の生命保険なんて加入できるはずもない近衛騎士の父と、その生命保険の販売を生業とする母がどうやって知り合ったのか、そして、何故結婚したのか、美奈代は娘として本気で不思議がっている。 しかし、その答えを知っている二人はこの世にはいない。 美奈代が3つの時、母が交通事故で他界し、父も美奈代が高校に入学する前に戦死。 父が遺してくれた遺族年金と、騎士の体だけが、今の美奈代に残った全てだ。 騎士とは、かつて甲冑に身を包み、馬に乗っていた職種ではない。 一種の人種だ。 常人とは比べ物にならない身体能力を持ち、素手の一撃は鉄板を貫通、跳躍すれば数十メートルを余裕で飛び越す。 走れば時速数百キロ。動体視力は弾丸すら見切る。 まさに“非常識”な能力を持つ者。 それが、騎士だ。 ―――美奈代は騎士になったのだから、軍で困らないように躾てやる。 その血が目覚めたある日、子供に対する接し方をついに理解することが出来なかった父は美奈代にそう言った。 躾はすなわち、唯一の父親とのコミュニケーションでもあり、それ故に美奈代も耐えたし、すぐに慣れた。 その結果として、身に付けた厳格な軍人としての振るまいから、周囲に「泉は軍人になるしかない」と見られるまでになるのに、時間は必要なかったし、採用担当の近衛士官から、訓練生として美奈代を採用する旨を伝えても、周囲からはそれが当然だと思われた。 騎士は力。 力こそが全て。 戦う道具。 それが騎士……。 軍隊や警察といった、国家が管理する暴力装置に属すことが認められなければ、騎士は騎士としての立つ瀬を失う。 立つ瀬のない騎士は騎士ではない。 ただの人間? 否。 ただの人間以下となる。 騎士。 その名故の羨望の裏返しとして、社会からはじき出され、蔑まれ、待っているのは、まっとうな生活も、最後ですら期待できない暗黒の日々。 そこに、騎士個人の夢も希望も、考慮はされない。 騎士は選ぶ存在ではない。 選ばれる存在なのだ。 美奈代はそれに表だって異議を唱えなかった。 ただ、騎士としての将来を命じられた瞬間、将来への漠然とした夢を捨てただけだ。 「泉美奈代候補生、出頭いたしました」 美奈代が養成校正門で、衛兵に申告したのは、高校卒業の10日後のこと。 家族の遺品をすべて片づけ、位牌を寺に預け、住み慣れたマンションを引き払ったことで、もう、美奈代に戻るところはない。 すでに母はなく、出征ばかりの父という環境のせいで、美奈代は家族としての居場所を失うことに、何の抵抗すら感じらなかった。 軍隊生活に必要な物資はすべて軍で用意してくれる。 軍隊に入る兵隊の持ち物は、身一つでたくさんだ。 父の言葉通りというわけでもないだろうが、あれこれ処分しつくした美奈代がこの時に持っていたのは、家族の写真と着替えをのぞけば、入営に必要な書類一式。 不思議とただそれだけだった。 案内役の兵に連れられ、美奈代は訓練生用の宿舎に入った。 古ぼけた3階建ての、どこにでもありそうなマンション。 宿舎を初めて見た時の、美奈代の印象はそんなものだった。 割り当てられた部屋は一人部屋。 パイプベッドと、高校で使っていたのと同じ古ぼけた机が一つ。 小さな棚。 それだけが調度品の殺風景な部屋だが、それまで育ってきた美奈代の部屋と比べても、そんなに遜色はない気がした。 とことん、軍隊生活をしてきたということか。 ベッドの上にバッグを放り出した美奈代は、ふとそんなことを思い、そして自嘲した。 本物の軍隊なら、私はまだカラ付きのヒヨコ以下なんだぞ? そう思うからだ。 教官兼上官は父。 その小さな軍隊で、私は育ってきた。 そう言うのは簡単―――いや、簡単すぎる。 第一、それが本物の軍隊で通用すると、本気で思っているのか? 誰かが気を利かせてくれたのだろう。 開かれた窓からは春の風が暖かな空気を運んでくる。 そして――― 「……あれか」 窓の向こう。 そこに立つのは、一体の神像。 違う。 メサイアだ。 「総合展示以来だな―――生で見るのは」 メサイア――― 全高25メートル以上を誇る人類最強の人型魔法兵器。 その前にはいかなる通常兵器も無意味。 歴史に初めて登場したのは、1945年に終結した赤色戦争から奇跡的、驚異的な復興を遂げ、世界支配を狙うまでに発展したアメリカ合衆国と、ユーラシア大陸の覇権を狙うロシア、そして中華思想を掲げる中華帝国による連合軍との代理戦争となった第一次ベトナム動乱。 米軍の兵器と物量に押された連合軍が繰り出した最強最悪のジョーカー。 それが、メサイア。 ロシア軍呼称MDROM-11スターリン。 「鋼鉄の人」を意味するその名が、メサイアという存在を、如実に表現していた。 そして、メサイアは戦場に立った。 投入されたメサイアは、わずか4騎。 目的は―――破壊と恐怖を人類に刻みつけること。 後にそう語られる程、4騎は、戦場を地獄に変えてしまった。 たった4騎を阻止するもに支払った血の代償は、およそ10万とも20万ともされる。 たった4騎のメサイア―――後に“黙示録の4騎士”と呼ばれる―――により戦線は逆転どころか、ベトナムから米軍を駆逐する寸前までに陥らせたのだ。 そして、米軍を、住民どころか友軍を巻き添えにした新開発の兵器―――反応弾―――を使用せざるを得ない所まで追い込んだ、まさに恐怖の申し子。 それが、メサイア。 魔法動力源として利用される魔晶石(ましょうせき)を用いたエンジンから供給される、莫大なエネルギーで稼動する現代魔法技術のある種の結晶。 人類が夢見た、万能兵器。 開発が完成だとさえされる最強兵器。 ある人は言う。 “メサイアは、人類の英知の結晶である”と―――。 人類に平安と安寧を保証するべき魔法技術が生み出した破壊のための英知。 その結晶たるメサイア。 またある人は言う。 “メサイアは、人類が産み出した神である”と―――。 陸海空、戦域を選ばず、敵対する全てを薙ぎ払うために存在する最強の神。 戦場の救世主―――メサイア。 破壊の神―――メサイア。 美奈代は窓に歩み寄った。 アイドル状態なのか、魔晶石エンジンから発せられる、独特なメカニカルノイズ混じりの音は聞こえてこない。 「戦闘機動時に、耳栓なしで近づくと鼓膜がダメになるんだったな」 ふと、父から聞いた言葉を思い出し、美奈代は苦笑しながら窓にもたれかかると頬杖をついた。 聞こえてくるのは、エンジン音ではなく、静かなヴァイオリンの音色。 風が奇妙な音を運んでくるのに気づいたのは、その時だ。 「……ヴァイオリン?」 間違いない。 音楽といえば軍歌しか知らないという美奈代にも、楽器の音の区別くらいは出来る。 曲なんてわかりはしない。 ただ聞き入るだけで不思議な安堵感に包まれる、そんな演奏だった。 軍楽隊の練習でもあるんだろうか? 音の出所を知りたくて、窓から顔を出した美奈代だが、窓の外に人気はない。 「……となりの部屋?」 そう。 美奈代には、隣の部屋からヴァイオリンの演奏が聞こえてきたことだけはわかった。 その日の午後。 美奈代が訓練生と顔を合わせたのは、この時が初めてだった。 場所は被服配給所。 「……」 美奈代は言葉を失った。 メサイア乗りの卵達というからには、どんないかめしい連中かと思っていたら……。 「えーっ!?双葉ぁ!私、バストいくつだっけ?」 「お姉!それってケンカ売っているの!?」 「ふむ……82と見た」 「あははっ!ミサちん正解!」 「光葉!」 一瞬、どこの女子校かと思ったのも無理はないと美奈代は思った。 配給所の前で列を作るのは自分より絶対に年下……というより、中学生でも通るか心配な女の子三姉妹。反対に、その保護者とも思えるほど大人びた女。 そして……。 「ここだここ!」 よく響く大声に思わず振り返ると、ポニーテールの女の子が、長い髪の女の子の手を引っ張って走ってきた。 「ほらぁ!やっぱりこっちでしょう!?」 「さ、さつきさん……ズルい」 どうやらかなり走ったらしい。二人とも息が切れていた。 「わ、私、こっちって最初から……」 「ははっ!気にしない気にしないっ!」 こんな連中と一緒では先が思いやられる。 ため息一つ、美奈代は列に並んだ。 配給を受けた後、 「お……重い」 部屋に戻る美奈代の前をよろけながら歩くのは、先程遅れてきた髪の長い少女だった。 無理もない。 ずしりと手にくる重さを感じながら、美奈代はそう思った。 被服。 一言でそういわれたが、受け取ったものは生活に必要なほとんどの全て。 制服、訓練用の戦闘服、半長靴、短靴、雑嚢、背嚢、すいとう、飯盒、個人用天幕、携帯エンピ、ポンチョ、防寒服、手袋などなど……。 その中でも、とにかく重いのが、パイロット用の戦闘装備。 この一式だけで総重量は30キロ近くある。 30キロが自分の体重の何割かを考えて、美奈代は少しだけブルーな気分になった。 「あっ!あっ……きゃーっ!」 目の前でついに女の子がバランスを崩して倒れた。 廊下に新品の装備がバラバラに散らばった。 ふうっ。 美奈代は半泣きになって物をかき集める女の子の手助けをした。 「大丈夫か?」 「す、スミマセン……」 「あまり、重い物を持ったことはないみたいだな」 「剣の訓練だけは祖父から受けてましたけど……ヴァイオリンやってたから、指を大切にしろっていわれて」 「ヴァイオリン?……軍楽隊にでも?」 「訓練終えたら軍楽隊に回してもらえるって聞いたから入ったんですけど……」 「?ああ、さっき演奏していたのは君か」 「は、はい……あの、ご迷惑でしたか?」 心配そうに自分を見つめる女の子の顔を見た美奈代は思った。 綺麗な子だ。 美奈代はそう思った。 今まで見た中で一番綺麗な子だと。 美奈代は知らずに相手の顔を見つめていた。 「あの?」 「あ、ああ!すまない!ぼうっとしていた!」 「?はぁ……」 首を傾げる女の子に、美奈代は言った。 「私は泉美奈代だ」 「あ、はい。私、風間祷子(かざま・とうこ)です」 「音楽は素人だけど、見事な演奏だったと思う。風間、では、物品を部屋に戻そう。次は、身体検査だ」 「はい」 「……」 「……」 「……」 医務室に集まった全員が凍り付いたのは、はっきりいって無理もない。 身体検査。 呼び名はいい。 身長、体重、胸診検査、レントゲン、血圧、血液検査。 神城という名の三姉妹は血液検査の採血で大泣きしていたが、その三姉妹すら、次の検査項目を前に立ち止まっている。 検査はそれぞれ衝立によって仕切られた部屋で行われ、それぞれの衝立には検査項目が貼り付けられているのだが――― 「こ、これ……ホンキ?」 「……じゃないの?」 ギョウ虫検査 性病検査 残り二つの検査内容を示す張り紙には、そう書かれていた。 「あ、あたし……パス」 ポニーテールの女の子、早瀬が赤面しながら手を軽く振った。 「そうもいかないだろう」 美奈代はそれを止めた。 「義務なんだ」 「じゃ、じゃあ、あんた行きなさいよ」 「そ……それは」 美奈代も女の子だ。 この検査だけは勘弁して欲しいというのが、女の子としての美奈代の本音だ。 「ふむ……私が検査してやろうか?」 そう言ったのは宗像だ。 「あんた、看護婦だったの?」 「いや。個人的なシュミだ」 「……」 「何をしている!」 突然の罵声に驚いた全員の視線が背後に集中する。 「男子は全て終わったぞ!?」 そう怒鳴るのは、髪を背中で束ねた女性士官。 胸のネームプレートには「二宮」と書かれていた。 階級章は中佐。 年の頃は30前で中佐だから、かなりの実力者なんだろう、美奈代はそう思った。 「で、でもぉ……」 神城三姉妹はおずおずと抗議するが、 「でもも明後日もない!」と二宮に怒られた。 「そうです!」 誰も来ないことにしびれを切らせたのだろう、マスクをした看護婦が衝立の向こうから顔を出した。 「さぁ!男子はあっさり終わりましたよ?」 「都築っち、喜んだよね?お尻になんかされて」 「俺にエクスカリバーを!みたいな?ふむ。似合うな」 「神城双葉候補生!宗像理沙候補生!」 二宮に名を呼ばれた二人が無意識に直立不動の姿勢をとる。 「何をくだらないことを!生徒隊長は誰か!?」 「まだ、決めていません」 美奈代の一言を受け、二宮は美奈代に言った。 「よし。貴様なれ」 「はっ?」 「生徒隊長を先頭に番号順に続け!」 「あのぉ……この検査って、何をするんですか?」 検査が遅れ、ようやくみんなに合流した祷子が不思議そうに訊ねた。 「なに」 二宮は楽しそうにニヤリと笑っていった。 「楽しくて気持ちのいいことだ」 「まぁ。それなら」 祷子は、ポンッと手を叩いて言った。 「まず、教官から楽しんでいただかなくては」 「なっ!?」 二宮が青くなった。 「わ、私は―――」 「まぁまぁ。二宮さん」 手に検査用の太めのガラス棒を持つ看護婦がガシッ!と二宮の肩を掴んだ。 「教官として手本を示すのも面白いですよ?」 「ま、待て!私はまだお嫁入り前で―――ヒッ!?」 「はい二宮さん?下着脱がしますから、お尻付きだしてくださいね?検査しますから」 「だ、だから!いやぁ!」 衝立の向こうに引きずられていった二宮が暴れている物音がして、ポイポイと宙を舞って美奈代達の前に舞い降りたのは……。 「さすが教官」 生徒達が、衝立に引っかかるソレを前に感心したように言った。 「オトナだねぇ……」 「うん。こんなシルクの高級下着を普段から身につけているとは……」 「オトナだ」 「うん」 「見るなぁ!……い、いや!そんな太いの入らない!痛ぁぁぁぁいっ!!」 衝立の向こうから聞こえた教官の悲鳴。 それは、すぐ後に、全員があげた悲鳴でもあったが……。 「と……とにかく」 何故かお尻をさすりながら教壇に立った二宮は、威厳を示すように居並ぶ候補生達に言った。 「私が貴様等、第45期候補生の指導責任者を命じられた二宮真理中佐だ」 寸分の油断もなく着込まれた軍服といい、立ち姿といい、典型的な職業軍人を連想させる二宮の口調こそ厳しいが、声色はむしろ心優しい女性のそれだった。 「貴様等ヒヨコが一人前になるよう、厳しく躾るつもりだ。情け容赦という言葉を、我々教官が知るとは最初から思うな」 「……」 美奈代達は黙って二宮の言葉に聞き入る。 ここは軍隊だ。下手なことすれば殴られる程度では済まない。その程度のことは、皆わかっているのだ。 「―――よろしい。そして、私の横に立つのが、副責任者の長野大尉。他にも教官はいるが、今から貴様等の父親は長野大尉だ。そう思え」 40代だろう。中肉中背、やや薄目の白髪が目立つ、いかつい中年男が美奈代達を一瞥する。 教官として、二宮より迫力があるのはやむを得ないだろう。 「ここでの生活に入る前に、貴様等に辞令を手渡す。各自、他の者の名前を覚えておけ。呼ばれた者は一人ずつ前へ。―――泉美奈代」 「はい」 「―――近衛兵団メサイア大隊第45期メサイア操縦適正者候補生に任命する」 「はい」 美奈代は辞令を受け取った。 「次―――宗像理沙候補生」 「はい」 先程、神城三姉妹と一緒にいた大人びた女性が立ち上がった。 中性的な顔立ちはかなりの美女といえるし、立ち振る舞いも洗練されている。 「とても同い年とは思えない」というのが、美奈代の感想だ。 「神城一葉(かみしろ・かずは)」 「あ、はい」 「神城双葉(かみしろ・ふたば)」 「は、はい」 「神城光葉(かみしろ・みつは)」 髪型が違わなければ絶対に区別出来ない小学生のような小柄な三姉妹が順番に辞令を受け取った。 「柏美晴(かしわ・みはる)」 「は、はい」 メガネをかけた大人しそうな女の子が立ち上がって辞令を受け取る。 緊張しているのか、その体は気の毒なほど震えていた。 「都築真(つづき・しん)」 「ウス」 顔はいいし、背は高いし、引き締まった筋肉質という男が立ち上がった。 顔だけなら気になるタイプだが、ふんどりかえった態度からして、決して素行がいいとはいえない。 美奈代は一言「気に入らない」と口の中だけで呟いた。 「山崎大輔(やまざき・だいすけ)」 「はい」 ノッソリ。 その言葉がしっくり来るほど、彼は巨大だった。 身長は優に2メートルは越えているだろう。 ゴツい顔立ちに全身筋肉といわんばかりのマッチョ。神城達から「フランケン」と呼ばれた男が二宮に近づく。 「ありがとうございます」 山崎は辞令を受け取ると、二宮に頭を下げた。礼節の点からすれば、都築とは雲泥の差だ。立ち振る舞いも、むしろ彼が大人しいタイプの人間だと告げている。 「早瀬さつき」 「はい」 はきはきとした返事と共に、ポニーテールの女が立ち上がった。 ボーイッシュな印象が強い、体育会系な女。 それが美奈代の印象だ。 「風間祷子」 「はい」 最後に立ち上がったのは、髪の長い美女だ。 恐ろしくおっとりとした印象のある返事といい、流れるような歩き方といい、どこか普通ではない印象を、美奈代はぬぐうことが出来ない。 「以上だ。同じ富士学校に44期で入った連中と違い、貴様等には特別な式典もなく申し訳ないが、貴様等は……」 全員を着席させ、そう言い始めた二宮はちょっと言い淀んだ後、続けた。 「特殊なのだ」 「?」 「貴様等のメサイア操縦適格者としてのランクは平均でAA。これほどの高レベルとなると、通常カリキュラムでは不十分だ。したがって、カリキュラムはすべて貴様等向けの特別なものとなる。何がどうなるかについては、その身で味わってもらう」 その身で。 そこを力説した二宮は口元をゆるめた。 「―――地獄へようこそ」
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メサイアの動力源。 Lクラス魔晶石エンジン。 魔晶石を動力とする、Lクラスに分類される魔晶石エンジンが魔法擬似生命体である「精霊体」を産み出すことはこの世界では常識。 そして、精霊体の自我は、MC(メサイア・コントローラー)の命じる内容を理解出来、かつ、メサイアの全てを管理出来る、一種のコンピューターとして機能するに留められるのが普通だ。 兵器として、いや、道具として当たり前のことなのだが――― それを真っ向から否定してのける国がある。 それが、大日本帝国。 つまり、皇室近衛兵団だ。 少なくとも、美奈代は、そう、教えられていた。 「……」 スピーカーからの二宮の指示が響く雛鎧(すうがい)のコクピットで、美奈代は顔を引きつらせていた。 どうして? 何故? スピーカー越しの教官からの指示が、耳に入らない。 耳にはいるのは、自分の心からの問いかけだけ。 何故? それだけだ。 「……」 「……」 興味深そうに自分を見つめてくる二つの瞳。 それを前にして、他に湧いてくる言葉なんて、ない。 小さな女の子が、操縦者を守る最終装甲を兼ねたモニターカウルにちょこんと座って、自分を見つめているのだから、無理もない。 「ね、ねぇ」 美奈代はようやくのことで女の子に語りかけた。 年の頃は4歳くらい。 大きな目とやわらかそうなほっぺた。 幼稚園児の着るような白いスモック。 「?」 小首を傾げる愛らしい仕草。 どう見ても、メサイアという兵器の中にいるべき存在じゃない。 大体――― 「あなた……どこから入ってきたの?」 閉鎖された狭いコクピット内に、例え子供といえど、潜んでいられる場所なんてない。 違う。 美奈代の目には、少女が突然、目の前に現れたように見えた。 「?」 少女は、意味がわからないらしく、また小首を傾げた。 「泉候補生」 島教官が言った。 「あいさつ位しておけ」 「あ、あの―――」 「ああ……貴様等は、まだ精霊体に会ったことがなかったな」 「精霊体?これが、そうなんですか?」 「これじゃないもんっ!」 女の子は、頬を膨らませて言った。 「私は“さくら”だよ!?」 びっくりして声を失った美奈代に、教官がフォローするように言った。 「近衛が、メサイアや飛行艦の魔晶石エンジンに、疑似人格を持たせているのは習ったな?」 「は、はい」 美奈代はテキスト通りに答えた。 「魔晶石エンジンは、命令を兵器に伝達させるだけでは精霊体の本来持つ力が存分に発揮されることはない。疑似人格を与えることで眠っているパワーを引き出す事が出来る」 「50点だ」 教官の評価は厳しい。 「共に戦うパートナーとして疑似人格を位置づけ、自発的な協力を受けることで、人類には引き出すことが出来ない、魔晶石の眠れる力を引き出させるのが、最大の狙いだ」 ―――それを言う前に点数つけないでよ。 と、美奈代は内心でそう毒づいた。 「さて―――」 教官は言った。 「“さくら”?状況は?」 「はぁい!」 少女は手を挙げて、自信満々に答えた。 「ママに聞いてください!」 「―――殴るぞ?」 作戦命令。 それを完全に聞き逃した美奈代は、周囲に合わせる形でメサイアを動かすハメになった。 どんな命令が下されているのか、まるでわからない。 「命令はすでに伝達された」 恐る恐る訊ねた教官からは、後頭部へのバーの直撃と、そんな返事しかもらえなかった。 「さくら……ちゃん?」 「“さくら”、黙っていろ」 教官からそうクギを刺された精霊体―――“さくら”は、救難信号を送る美奈代を、気の毒そうな顔で見るだけだ。 「牧野中尉……どうした?」 先程から、何の報告もしてこないMC(メサイア・コントローラー)に教官は問いかけた。 普通ならそろそろ、何か情報があってもいい頃だ。 「島教官、騎体バランスに気をつけてください」 「バランス?―――こっちでは何も感知していない。動作も問題ない」 「騎体総重量が予定と異なっているんです」 「何?何か積んだか?―――どれくらいだ?」 「予定重量より、4tも」 牧野の言葉を遮るように、“さくら”は顔を真っ赤にして怒鳴った。 「わたし、そんなに太ってない!」 「4トンって、太る太らないの問題じゃないと思う……」 という美奈代の呟きは正しい。 「あのなぁ。“さくら”」 教官は、怒る“さくら”をなんとかなだめようとして失敗した。 ばかぁっ! チビっ! 飲んべえ! 貧乳! ……。 コクピット内では、唖然とする美奈代を後目に、教官と女の子の怒鳴り合いが続く。 それは親子喧嘩というより、子供同士のケンカだ。 「あの……私、どうすればいいんですか?」 「命令通りに動けばいい!おい、このチンチクリン!」 「鏡見れば!?」 「いい加減にしなさいっ!」 コクピットを制圧したのは、MCL(メサイア・コントローラー・ルーム)にいる牧野中尉の一喝だ。 「何をやってるんですか!」で、始まった説教が二人の動きを封じるコクピット。 美奈代は外に助けを求めるように、モニターの外を見た。 他の騎はすでに移動を開始している。 肩のナンバーから、斜め前方を移動中なのが宗像騎だと知った美奈代は、そっと宗像騎との通話を試みた。 『ん?どうした?』 通信はクリア。HUD(ヘッドアップ・ディスプレー)の片隅に設置された通信モニターに、宗像の顔が映し出される。 美奈代は小声で訊ねた。 「宗像、すまんが」 『どうした?』 「後ろのノイズは無視してくれ。どんな命令を受けている?」 『―――右端の戦況確認ボタン一つでわかることだぞ?』 「あっ」 基本的なミスに気づいた美奈代は、赤面しつつボタンを押した。 「スマン……このまま前進、前方に潜む敵を撃破」 『典型的なお役所命令だな』 「成る程?」 しかし、そこで美奈代はひっかかった。 「風間はどうなる!」 そう。 風間の乗るメサイアは単座騎。 教官なんて乗っていない。 戦闘に巻き込まれれば最悪――― 『私も心配だ』 宗像は真顔で頷いた。 『私のスイートハートがなぶり者にされるようなことがあれば……そう考えただけで―――』 「考えただけで?」 『濡れてくる』 背筋が寒くなる美奈代の前で、モニターの宗像は身をよじらせた。 『ああ―――たまらん』 「……もう少し、普通に考えていいぞ?」 『私はめい一杯、普通だ―――それと』 宗像は言った。 『直撃一回で12時間のメシ抜きだ』 「へ?」 『砲弾だ』 「実弾か!?」 『砲撃は前哨戦ってことだな。メサイアの装甲の前には無意味だが、どっちにしても我々を嬲るつもりだろうさ』 「第一分隊は、訓練校を代表するエリートだぞ?」 美奈代は、まるで宗像に抗議するように言った。 「そのエリートが、我々のような女を嬲るというのか?」 『こういう時だけ、女を出すのは、女の狡さだ―――そうだ』 「誰が言った?」 『染谷』 「……」 『あいつ、面白いぞ?』 「……」 宗像は、美奈代の顔が曇ったことに気づかないまま続けた。 『隊長のツラ被っている時は冷血漢を装っているが……いや、それがないと馬鹿正直というか、単なる世間知らずというか……』 宗像は、からかうように、モニターの向こうで肩をすくめた。 『どっかの誰かと同じだ』 「……随分、よく知っているな」 『最近、よく話すからな―――知っているか?あいつ、仕事以外では、かなりの口べただぞ?』 「……そうか」 『―――どうした?』 「……宗像、お前」 美奈代は、楽しげに染谷のことを話す宗像に、 「お前、染谷とつき合っているのか?」 そう、訊ねた。 訊ねた途端、胸がちくりと痛んだ。 毅然とした態度で分隊を指揮する染谷は、凛々しさでは他分隊の男子候補生からも定評がある。 将来を渇望されるエリートの卵。 そう言われれば、美奈代はすぐに染谷の顔を思い出す。 美奈代は、分隊の指揮に自信を失いかけた時、染谷の顔をすぐに思い出すことにしていた。 ―――こういう時、染谷候補生ならどうしていたか。 美奈代は、いつだって、そう自問自答して問題を乗り越えてきた。 染谷は、美奈代にとっていつだって分隊長としての理想であり、尊敬や憧憬の対象である。 だから、いつでもその姿を追い求めていた。 追い求めていたからこそ、同期の女性候補生達の中では、彼の魅力を自分が一番分かっていると、美奈代はそう思っている。 それが、どういう気持ちか、美奈代はもう自覚しているのだ。 自分がその自覚を口にする資格がないという思いこみと共に。 その自覚を胸に、美奈代はモニターの向こうの宗像の顔を見る。 宗像美沙。 それは、宝塚スターで十二分に通用する美貌の持ち主だ。 自分のような平凡な顔ではない。 凛々しい染谷のような男の横に立つのは、こういう美人こそ相応しいんだろう。 そう思うと、美奈代はとても惨めな気分になった。 『あのな……どうしてそうなる?』 宗像はあきれ顔というより、むしろ心底嫌がった顔だ。 『私がどうしてあいつと?』 「えっ?ち、違うのか?」 『話せばつき合っているというのか?小学生かお前は』 「だ、だけど……」 『少なくとも、あいつの意中は私ではない。むしろ、私にその相手のことを教えてもらうために、私に接触した』 「あ、ああっ!」 美奈代はポンッ。と手を叩いた。 「風間か!」 『お前……どうして』 「な、何だ?早瀬か、それとも柏だったか!?」 『どうしてお前は自分のことになるとこうも鈍い』 「わ、私が何だと?」 「いずれ分かる」 クックックッ。 美奈代はレシーバー越しのその音が、宗像の笑い声だとようやく気づいた。 「宗像―――楽しそうだな」 『ん?』 「状況を楽しんでいるようにも見える」 宗像は、心底楽しそうに答えた。 『そうだ。―――全ては、怯えるためのものじゃない。楽しむためものだ』 「だけど」 『とりあえず、今は第一分隊との勝負に全力を注ごう。泉は染谷を相手に楽しめ』 「わ、私がか?」 『分隊長同士で戦って、分隊長に仕留められれば、染谷も分隊長としてのメンツが立つ。メサイア戦の後は』 「後は?」 『染谷騎のコクピットに潜り込め―――優しくしてもらえ?』 「どういう意味だっ!?」 『泉が女になっている間に私はゴミ相手だ』 「だからっ!」 『事故に見せかけてあいつら何人殺せるか、とっても楽しみだ』 戦術モニター上に反応が出たのはそれからすぐのことだ。 「おっ。連中来たな」 美奈代達の移動先に立つメサイアのコクピットの中。恩田がやや上擦った声で言った。「染谷さん。レーダーに反応有。第七分隊、来ましたっ!」 「あん時の恨み晴らしてやる。宗像は俺が殺るっ!手を出すなっ!」 恩田の息巻いた声が通信機に響く。 「少しは落ち着け」 恩田騎の隣に立つメサイアを駆る染谷の冷え切った声に、皆が黙った。 「もう少し、様子を見ろ。相手は初めて歩いているんだ」 「で、ですけど」 恩田はせわしなくコクピットの計器類に目をやる。 「お、俺達だって、単騎操縦はまだ10時間も」 「戦闘機動は単独で出来ると豪語していただろう?」 染谷は楽しげに言った。 「勝てるよ。恩田、あの時の仇を忘れたか?」 「う―――討ちたいです」 「なら、もう少し待ってくれ」 「何かあるんですか?」 「……サプライズは用意してある」 染谷は楽しげに頷いた。 美奈代達が移動を開始して10分後。 そろそろ、演習地は山から森へと景色を変えようとしていた。 ピーッ コクピットに警告音が鳴ったのはその時だった。 「?」 「何の音だ?」 教官の質問に、美奈代は答えた。 「実体弾の飛来警告です!」 後頭部に見えない手を展開しつつ、美奈代は答えた。 「有効範囲は?」 「約30キロ!」 「どうする?」 「移動、もしくは―――っ!!」 ドドンッ! 爆発音が雛鎧を揺るがしたのは、まさにその時だった。 ガンッ! 美奈代は後頭部の痛みに気を失いそうになった。 「このバカもんっ!」 教官が怒鳴る。 「いちいち答えてるヒマがあるなら、さっさと動かんかっ!」 「も、申し訳……」 こぼれる涙を堪えながら、美奈代は騎体の状況を確かめた。 雛鎧は、とっさに片膝をついてバランスをとりつつ、シールドで頭部をガードする姿勢をとっていた。 教官が自分から瞬時にコントロールを奪い、とった姿勢であることは、美奈代にはわかる。 「砲撃の後、どうするっ!」 「戦闘態勢に」 雛鎧を立ち上げようとして、美奈代は騎体が動かないことに気づいた。 「―――えっ!?」 コントロールユニットを操作するが、騎が全く動こうとしない。 「“さくら”!どうしたの!?」 思わず怒鳴る美奈代に、“さくら”は半分、泣き顔で言った。 「腰が抜けましたぁ……」 「このバカっ!」 「バカもんっ!」 ガンッ! 美奈代の後頭部を再びレバーがどついた。 「“さくら”!こんなことは山ほど経験してるはずだ!」 ガンッ! ガンッ! ガンッ! 教官が怒鳴るたびに、美奈代の後頭部に激痛が走る。 「いい加減にしてくださいっ!」 美奈代はたまらずに怒鳴った。 「ここは自分ではなく、“さくら”を叱ってください!」 「叱ってるだろうが!」 「レバーを押さないで下さいっ!」 「クセだ、気にするな!」 ガンッ! 「ううっ……」 「泉候補生」 「グスッ……はい?」 「12時間、メシ抜き確定だ」 「そんなぁ!」 軍隊の数少ない楽しみ。 それは、メシと睡眠。 冗談抜きでそういうものなのだ。 それを取り上げられた美奈代は泣き顔で叫んだ。 「あんまりですっ!」 「あーあ。俺達はこの後、屋台のおでんで打ち上げだぁ」 教官は晴れ晴れした声だ。 「屋台のおでんって、おいしいんですか?」 さくらは興味津々で訊ねた。 「ああ。あれで一杯は最高だな」 「私も食べたいですぅ」 「ど、どうやって?」 「―――はぅぅぅぅっ」 『泉』 モニターに宗像が映る。 『状況、わかってるな?』 「状況?」 『……泉』 タダでさえ低い宗像の声のトーンが落ちた。 『後でシメるぞ』 「すまんっ!」 美奈代は戦況モニターを開いた。 周辺の地形図と自分達の現在位置が映し出される。 全騎が、今は無事。 そして――― 「丘陵の向こうに10騎」 『それだけじゃない』 それは、初めて聞く宗像の声。 宗像は緊張していた。 『教官達が状況を変えた』 「状況を?」 戦況モニターの上。 そこに映し出された最新情報にようやく気づいた美奈代は、我が目を疑った。 「被弾により―――教官全員戦死!?」 思わず振り返った美奈代は、後ろで知らん顔を決め込んでいる教官の顔を見た。 「い―――」 生きている! そう叫びそうになった。 それはあくまで仮定の話。 現実ではない。 「パパ―――死んじゃったの?」 “さくら”が心底嬉しそうな顔で美奈代に訊ねた。 「い、一応、そういうことになっている」 「やったぁ!」 ガンッ! 美奈代は、バーの一撃をモロに喰らった。 「な―――」 美奈代はその痛みを忘れたように怒鳴った。 「何考えてるんだ!ウチの教官共は!」 ガンッ! 「―――“さくら”っ!」 「は、はいっ!」 「これ以上バー使ったら、後ろを射出しろ!射出確認後、ML(マジックレーザー)で狙撃!」 美奈代の目は本気だ。 「殺せっ!」 「いいんですか!?」 “さくら”は美奈代の命令に、目を輝かせた。 「いいっ!」 ピクッ バーに手をかけたものの、躊躇しているのが、後頭部の感触でわかる。 「例え教官といえど、死人から殴られるいわれはないっ!」 「―――あーあ。お姉ちゃん、ブチギレ」 “さくら”は青くなったり赤くなったり忙しい教官に言った。 「パパが悪い」 「……何もしてない」 「しないから悪い」 「―――ったく」 美奈代はブチブチと言い続けた。 「初の実騎訓練だぞ?普通なら歩行だの基礎的なことやるべきだ。シミュレーションと現実のギャップを」 『泉っ!』 今度は早瀬からだ。 『何してるんだよ!早くどうするか決めてよ!』 「―――えっ?」 『命令、読んでないの!?』 『私達は、自力であの敵を撃破しなくちゃいけないの!美奈代が隊長よ!?』 「なっ!?」 『美奈代さん』 美晴だ。 『しくじったら、コスプレ接待どころか、48時間のメシ抜き。卒業までの外出止めですよ?』 「死ねというのか!」 『それはそれで言い過ぎだけど……』 「―――数はこっちの方が上だ!」 美奈代は言った。 「1対3で行く!1騎に対して3騎!それなら最悪五分まで!」 「1分にもならん」 後ろの教官が、ぽつりとそう言った。 「パーティを組め!」 美奈代はそれを無視した。 「弱いのはわかってる!」 そして、怒鳴った。 「弱者こそが強者を倒すことが出来る唯一の存在だ!無様でいい、格好悪くていいから、勝ってメシ喰ってフロ入って寝るぞっ!」 美奈代は周囲が驚くほど張りあるのある声で作戦を告げた。 「第一分隊は、染谷候補生一人で成り立っている!彼さえいなければ、プライドばかりの烏合の衆に過ぎない!他の連中には目もくれるな!」 「そ、それでいいの!?」 「いいっ!私と宗像で前衛!美晴と早瀬で中衛!風間、後方で待機!」 『えっ?』 祷子が驚いた顔をモニターに映した。 『いいんですか?』 「危険な時は支援に回れ!―――いいかっ!」 美奈代は気合いを込めて怒鳴った。 「教官達は気にするな!ここで我々がダメになれば、候補生を無駄死にさせたとして、教官達の年金をパーに出来るっ!」 ギクッ! 後ろからそんな音がした。 それを無視した美奈代は続けた。 「降格に減俸、それが理由の家庭崩壊!」 ギクッ! 「全部無視しろっ!教官は無視だっ!どうせ我々の金じゃないっ!」 ギクッ! 「日頃の恨みを晴らせっ!―――中尉、染谷騎はどれかわかりますか!?」 「マーカー、C騎です」 MC(メサイアコントローラー)の牧野中尉から声が入る。 「他騎同様、第一種装備の「幻龍」です」 MDIJα-015「幻龍」 近衛騎士団のメサイアの代名詞。 雛鎧のベースとなった「角龍」の後継騎。旗騎「水龍」の流れも加わり、パワー・装甲。共に「角龍」より格段に上。 性能では――― 「指揮官騎の信号発信中」 『律儀なのか誘っているのかわからないが……間違いなく、そいつが染谷騎だ』 宗像は言った。 『あのお山の大将がいなければ、あとは烏合の衆に過ぎない』 「……わかった。“さくら”」 美奈代はコントロールユニットを握りしめながら訊ねた。 「いける?」 無意識に自分の口から出た言葉に、美奈代は頷いた。 そうだ。 行くしかない! 美奈代はそう決意した。 勝てるはずはない。 それは明らかだ。 だが、 いつだって、 どんな時だって、 絶対勝てるなんて、誰にも言えないんだから。 勝てないんじゃない。 負けないんじゃない。 私は、違う!私達は、やることをやるんだ! 「はいっ!―――“マスター”!」 “さくら”は目を輝かせ、楽しげに言った。 「いざとなったら私をかついで逃げて下さい!」 「自重何百トンあると思ってる!」 「ううっ。ヒドい!。女の子に体重の話するなんて……こんな色白のカワイイ女の子に……」 「色白って―――ペンキだろうが」 やりとりを聞いていた教官がポツリとそう言ったのを、“さくら”は聞き逃さなかった。 「ペンキだなんて、ひどいです!TP-45W特殊ペイントです!。ワックスだってかかってます。全身のお化粧代だけで、パパの○○ハダシ、ミジメすぎる薄給よりかかってるんですよ!?」 「ちくしょぉぉぉっ!」 その一言に、教官はキレた。 「それでオレは家族4人養ってんだ! 長女は予備校生で二度目の大学受験! 次女は中学、長男は幼稚園だ! おれの悲哀を……家族のために身を粉にしているオヤジの悲哀を……!! ぬがぁぁぁっ!! リーマンナメんじゃねぇぞっ! このクソガキぃぃぃっ!」 「わーんっ!児童虐待で通報してやるぅ!」 「……」 いい所まで行っていたのに。 そう思った美奈代は、決意を再計算した。 「前衛2騎で血路を開く、それでいいなっ!?」 結局、やるしかない。 再計算はそう結論づけた。 『待て』 止めたのは都築だ。 『全騎、回線を隊内へクローズ』 「都築?」 『3騎同時なんて教官達はとうにお見通しだ』 「だから―――」 『だから』 どこか楽しげに都築は言った。 『予想もしないほど、卑劣に行くんだよ―――俺達は殺し合いをしてるんだ。オリンピックに行くわけじゃねぇ』 「卑劣?」 『ああ―――』 都築は作戦を話した。 『クックッ……成る程?』 聞き終えた宗像が喉を鳴らして笑った。 『それはいい』 『こら都築っ!』 都築の後ろで教官が怒鳴るが、 『スミマセン。死人は発言しないでください。規則ですから』 『都築っち!』 一葉は興奮気味だ。 『それならなんとかなるかも!』 『だろう?』 『で、ですけど』 山崎はどこか不安げだ。 『相手は歴戦。しかもメサイアは弾丸すら避ける』 『こっちも同じだ!』 都築は怒鳴った。 『歴戦かどうかより、歩き回れるかを心配するんだ!バランスはMCにサポートを頼め。MCが使えなければ自爆装置作動させてやればいい!』 『ロマンですね』 『風間、わかってるな』 『ふふっ……自爆はロマンです』 『で、誰がやるのよ?』 早瀬も興奮気味だ。 『決まってる』 美奈代は言った。 『ここから一気に敵前300まで疾走。その中で最もバランスがいい者がやれ。各自、そこまででメサイアに慣れろ』 『たった2キロの疾走でメサイアに慣れろぉ?』 早瀬のため息混じりの声を否定する者はいない。 だが、状況が状況だ。 『やるしかないよねぇ』 「早瀬、そうだ」 『じゃ!』 双葉が言った。 『美奈代っちと都築っちのカップルの発案、早速実行っ!』 「よしっ!』 美奈代は騎を動かしかけて、そのコトに気づいた。 「まっ、待て双葉っ!何だそのカップルってのは!」 『あーっ!美奈代っち顔真っ赤!』 「光葉!う、うるさいっ!」 『とにかく行くぞっ!』 都築は怒鳴った。 「敵、射撃開始!」 『メシ抜きは御免だぞ!』 「―――“さくら”っ!」 「バランスに注意して!―――全ウェポン、セフティ解除!各部コンバットモード引き上げ!マスターフレーム、オン!各部同調良好!―――行けるよっ!」 “さくら”の報告に力強く頷いた美奈代は雛鎧を前進させた。 10騎のメサイアが、大地を蹴った。 敵―――第一分隊3騎の陣形は、典型的なくさび形陣形だ。 B C A ↑ ↑ ↑ ●● ●● ●● ● ● ● ● 【注:ABC=敵騎 ●友軍騎】 前面に展開する敵を相手に、3騎が臨機応変に対処するためには、横一列に仲良く並ぶ事自体がありえない。 だが、それこそが、今回の参謀役である都築のねらい目だった。 美奈代達は、3騎一組で突入を開始した。 前方に2騎。後方に1騎。 前方の2騎は剣を抜刀していない。 あくまで楯を前にするだけだ。 コクピット内部は慣性制御が効いているため、振動をほとんど感じないが、走るたびに巨大な針葉樹の枝が揺れ、葉や残雪が落ちていく。 『敵前方、200メートル!』 「いくぞっ!」 美奈代は、コントロールユニットを操作して、隣の柏騎から何かを受け取り、同時に柏騎が美奈代の騎から何かを受け取った。 そして――― 「あいつら、何を考えている?」 二宮は戦況モニターから視線を外さずに首を傾げた。 前衛2騎がぴったりと寄り添うように疾走する。 しかも、抜刀していない。 あれでは戦えない。 せいぜいが、 「シールドアタックでもかけるつもりか?」 二宮は各騎のステータスモニターに視線を移した。 シールドアタックとは、文字通り、剣の代わりにシールドで相手を殴りつけ、エッジで斬りつける技のこと。破壊力のわりにメサイアの関節パーツに負荷がかかるため、ほとんどの場合、緊急用とか、最後のあがきに使われるような技だ。 ステータスモニターに映し出される各騎の状況はグリーン。 使用されている兵装が赤く表示されるモニター上で、実際に赤く表示されているのは、10騎のうちわずか3騎。 「剣でやりあっても勝てないと判断したのか?」 情けない! 二宮がそう言いかけた時。 9騎が動いた。 ● ● ● ● ● ● B C A ● ● ● ● 【注:ABC=敵騎 ●友軍騎】 逆楔陣を形成していた3パーティのうち2つが大きく迂回、楔形陣形をとる敵の背後に回り、敵を包囲する形をとったのだ。 「典型的なパターンか……」 何をしてくれるのかと期待していた二宮は、軽く失望した。 これで全騎同時突入。シールドで敵を押しつつ、後方の1騎で仕留める。 そういうことだ。 二宮は残念そうに呟いた。 「そんなもの、何度経験したと思っている……」 「何だあいつ等?」 B騎担当の恩田は、それでも候補生達の展開の速さに感心していた。 もしかしたら、俺より操縦が上手いかも。 立ち上げるだけで四苦八苦した頃を思い出し、恩田は、慌ててその考えを否定した。 メサイア初乗騎だというのに、やや荒削りだが、それでも自分の手足のようにメサイアを操っている。 そんなのは偶然に、そう、偶然に過ぎないんだ! 何しろ、俺達はエリート候補生の部隊なんだぞ!? あんなドン亀部隊とは違うんだ! 「そ、染谷さん、どうします?」 「やらせて見せよう」 染谷は楽しげに言った。 「どんな楽しいマネをしてくれるんだろうね」 染谷は、美奈代達の突撃を前にしても、泰然自若とした様子を崩さない。 「前方雛鎧2騎、展開」 「ん?」 MCからの報告。 彼の騎の前で、シールドを押し立ててくる2騎が左右に割れた。 ● ● C ● 【注:C=敵騎 ●友軍騎】 「どういう?」 染谷達には、その意味がわからない。 このままでは、シールドで自分を押し込むことは出来ない。 むしろ2騎が自分達を無視しているようにさえ思える。 (戦術も知らない女のお遊戯か?) 染谷は横を抜けようとする候補生騎2騎を何もせずに見送ることに決めた。 左右に分かれ、一斉に攻撃してくることもありうるが、そうなればなったでいくらでも対処の方法はある。 「子供の頃からシミュレーターをゲーム代わりにしてきた僕に勝てるかな?……どれ」 モニターの向こうで、雛鎧が左腕でシールドを構えつつ。何故か右腕が何かを操作するように軽く上下した。 その何でもない動きが、彼の騎士としての本能をして、彼に何かを警告した。 危険だ! 「何?―――ぐっ!?」 ビィィンッ! 騎が後ろに押されたのは、その瞬間だった。 すさまじい力が幻龍にかかっている。 だが、本来、その力をかけるべき2騎はすでに後方に下がっている。 「なんだっ!?」 何か、見えない力に引き倒されそうになる自騎を何とか立て直そうとするが、騎体を後退させなければどうしようもない。 その彼の目の前に、剣を構えた雛鎧が襲いかかってきた。 「何をしたっ!?」 「ワイヤーだと!?」 二宮がそれに気づいたのは、武装情報ではなく、偶然に装備情報に赤い点滅を見つけたからだ。 擱座したメサイアの回収等に用いるために、メサイアにはワイヤーが取り付けられている。 点滅は、そのワイヤーが展開していることを告げていた。 それで二宮は、奇妙な形で押される敵騎に何が起きたか理解できた。 「成る程?」 力業だが、損害を少なくできる点で加点ものだ。 敵はワイヤーを切断するか、ワイヤーから逃れるために後退を余儀なくされる。 それこそが、候補生達のねらい目なのだ。 「ここまでは褒めてやるべきか」 短時間でこういう作戦を展開するには、臨機応変の発案と、身内で連携できる信頼関係がなければならない。 それを彼女らは現実にやっている。 二宮は、端から見れば気色が悪いほど顔を緩めているのに気づいていない。 「うん―――さすが私の教え子だ♪」 その二宮に、背後に立っていた別な教官の声がかかった。 その声は呆れていた。 「ここまでですよ」 「やった!」 美奈代は歓喜の声を上げた。 美奈代と美晴、前衛2騎でワイヤーを二重に持ち、下からすくい上げる要領で敵騎の腰にワイヤーを押しつけ、後方に押しやる。 狼狽し、後退する敵に対し、余裕を与えることなく、一気に剣の一撃を加える。 それが美晴の発案だ。 敵騎は完全に押され、バランスを崩している。 その敵騎に今、早瀬が襲いかかった。 その敵騎に今、都築が襲いかかった。 「行けっ、都築っ!」 美奈代は思わずそう言ってしまった。 が――― ガンッ! 「―――えっ?」 その鈍い音と同時に、宙を舞ったのは、 幻龍に突き技を喰らわそうとした雛鎧。 都築騎だ。 ドォォォォンッ―――!! 吹き飛ばされ、宙を舞った都築騎が地面に叩き付けられるまでが、もどかしいほどゆっくりとしていたように、美奈代には思えてならない。 「―――都築っ!」 美奈代の悲鳴に近い叫びの後、各騎から報告が入った。 『都築っちがやられた!』 『フランケンもだ!』 宗像は無事だ。 「神城っ!そっちは!」 『こっちは全騎無事!』 長女の一葉が答えた。 『紙一重で光葉が避けた!』 「よくやった!―――間合いをとれ!」 雛鎧を後退させながら、美奈代はちらと都築騎を見た。 大地に大の字になって倒れる都築騎はぴくりとも動かない。 「―――折角、惚れ直してやったのに」 ああもあっさりと吹き飛ばされるヤツがあるか! 美奈代が、都築騎の生命反応があることを確認した時だ。 「“マスター!”」 “さくら”が悲鳴に近い声を上げた。 「敵、動いたよ!」 「なっ!?」
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ファースト・オーダー ストームトルーパー 商品画像 情報 登場作品:スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒 定価:5,400円 発売日:2015年12月18日(金) 再販日: 商品全高:約150mm S.H.Figuarts スター・ウォーズ スペシャルページ 付属品 手首:×4(右×2、左×2) 武器:ブラスター・ライフル その他:無し キャラクター概要 商品解説 良い点 悪い点 不具合情報 関連商品 ファースト・オーダー ストームトルーパー(ヘビーガンナー) オビ=ワン・ケノービ(EpisodeⅠ) ダース・モール バトル・ドロイド クローン・トルーパー フェイズ1 ダース・ベイダー ストームトルーパー ルーク・スカイウォーカー(A NEW HOPE) ルーク・スカイウォーカー(Episode Ⅵ) ハン・ソロ(A NEW HOPE) スカウト・トルーパー&スピーダー・バイク カイロ・レン カイロ・レン (THE FORCE AWAKENS) シャドウトルーパー キャプテン・ファズマ ファースト・オーダー ストームトルーパー(シールド&バトンセット) K-2SO ストーム・トルーパー(ROUGE ONE) デス・トルーパー ホバータンク・コマンダー スカリフ・ストームトルーパー コメント 名前 コメント
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草案 登場人物 ウィンディ:ウェンディ・フッド 名前ネタ ムチュール:サンディ・カーヴァー 使い手のネネとの声繋がり ニャース:ポール・フッド 使い手のテツヤとの声繋がり ケーシィ:リベッツ・ケイシー 名前ネタ -- (ユリス) 2015-11-01 10 11 33
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(火闇)(コスト6)(パワー6000) (クリーチャー)(ソニック・コマンド/イニシャルズXX) ■自分の禁断またはフィールドがあれば、このクリーチャーの召喚コスト3下げる。 ■クリーチャーが攻撃する時、ブロッカーを1体破壊する。この攻撃の終わりに、このクリーチャーを破壊する。 ■ブロッカー ■スピードアタッカー 選択肢 投票 壊れ (0) 即戦力 (0) 優秀 (0) 微妙 (0) コメント 名前 コメント
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祷子の駆る10号騎が、突然の移動命令を受けたのは、美奈代達がワイヤー攻撃を開始した直後。 祷子には、それに従った。 指定されたのは、3キロほど先の山の中。 警戒態勢のまま、山中を移動しろ。 命令はそれだけ。 後衛になったから、教官達が別任務でメサイアに慣れさせようとしているんだ。 祷子はそう思っていた。 だから、祷子はブースト移動で山中に分け入った。 祷子を待っていたのは、葉を落とした木々を、まだ分厚い雪が覆う世界。 その自然美に祷子が見とれ、この世界にふさわしい曲名を考えていた時のことだ。 警告と共に、水城中尉が放った怒鳴り声が、祷子を幻想から現実に引き戻した。 「レーダー使用不能!各センサーオールダウン!」 「えっ?」 「警戒してください!」 「何の演習ですか?」 「実戦です!」 祷子は目の前の計器類を見た。 確かに、それまで機能していたはずのレーダーや、外部状況を知らせるセンサー情報を表示するディスプレーが軒並みブラックアウトしていた。 それさえ、祷子は演習だと思っていた。 実戦。 そう言われても、何の実感もわかない。 「“弥生”!オール・センサー、コンバットモード!全武装安全装置解除(オールウェポンズフリー)!」 「はいっ!」 「RT-01よりHQ、状況レッド。繰り返します!状況レッド!」 緊迫した水城中尉の声。 それまで会話していた時ののんびりした感じはない。 “弥生”も同様だ。 何かが起きた。 祷子が、ようやくそう認識出来たのは、“弥生”の目を見たからだ。 “弥生”の、エモノに襲いかかる猟犬のような目。 その眼差しが、無意識に祷子をそうさせたのかもしれない。 「HQ、応答を!こちら―――」 グンッ! 騎体が動いた。 システムが処理しきれなかったGにより、水城中尉は危うく舌を噛みそうになった。 「なっ!?」 呆然とする彼女に、祷子が怒鳴った。 「中尉!あれは何ですか!?」 モニターの向こうに、“それ”は存在していた。 白い毛並みを持つ四つ足の獣。 狼だと、祷子は思った。 一方、中尉が問題としたのは、そのサイズ。 メサイアよりやや小柄。 子供とセントバーナードくらいの違いしかない。 つまり――― 普通ならあり得ないサイズなのだ。 「妖魔です」 水城中尉は“妖魔”という“あり得ない存在”を前に、祷子に告げた。 「あれが、あなたのエモノです」 「あれを―――倒せと?」 「そうです」 「……」 「怖いのはわかりますが」 「いえ。そうじゃなくて」 恐る恐る、祷子は言った。 「それって、動物虐待では?」 「……」 「?」 突然、中尉が黙ったので、祷子は彼女の機嫌を損ねたかと心配した。 「ち、中尉?」 「し、心配いりません」 MCLで中尉が精神安定剤をがぶ飲みしていたことを、祷子は知らない。 「あれは地球上では“動物”ではありませんから」 「はい?」 「詳しい説明は、“あれ”を倒してくれたらしてあげます」 「事前ではダメですか?」 「その前に―――死にますよ?」 祷子は周囲を見回して青くなった。 モニターの向こう。 “妖魔”は、すでに祷子達を囲んでいた。 ピーッ! 「ちっ!」 舌打ち一つ。 祷子は騎体を急速後退した。 ガァァァッ! それまで祷子のいた場所を、得体の知れないバケモノの顎が襲う。 顎の力がどの程度かはわからない。 ただ、さすがに囓られたい顎ではなかった。 「最近の映画は出来がいいですね」 額を汗が流れるのを感じながら、祷子は呟いた。 「本当、スゴい」 「いえ。コレ絶対、映画じゃないですから」 そう突っ込むのは、MCの水城中尉だ。 「じゃ、ゲーム?」 「―――現実よ。げ・ん・じ・つ」 背後からの“妖魔”の一撃を、騎体を急旋回(スピン)させて祷子は凌いだ。 「とにかく、撃破して下さい」 「で、ですけど」 祷子はメサイアを回避させはする。 だが、未だに剣に手をかけようとさせない。 「か、かわいそうじゃないですか」 その弱々しい声に、中尉は怒鳴った。 「何がですかっ!」 「だって!」 祷子は必死に反論した。 「ただ、ここにいるだけなんでしょう!?実害があったわけじゃ!」 「あってからじゃ遅いんです!」 祷子はメサイアを微妙に後退させて、前後からの攻撃をかわした。 「あんなのが町に出たらどれほど死人が出るか!」 「やってみなきゃ!」 「知りたいのは犠牲者の数っ!?」 「あの子達が町に出るかどうかですっ!」 「4年前に出てる!」 中尉は言った。 「4年前のグリーンランド戦線で―――」 苦虫を噛み潰したような声で、中尉は続けた。 「私の兄の仇よ……」 「お兄さまの?」 「グリーランド戦線に派遣されていた兄は、あの妖魔の奇襲を受けて、メサイアごと挽肉にされた」 「……」 「私は、今回の敵が“あれ”だと聞かされたから、こうして志願して来たの」 「で、でも」 「そうね」 中尉のため息が、祷子の耳にも届いた。 「……風間候補生。この質問に答えられる?こいつらは、わかってる限り、生肉が主食」 「……」 モニターの向こうで、“妖魔”がこちらを睨んでいる。 グウァァァァッ! その咆哮が祷子の耳に心理的な恐怖心を植え付ける。 「この周辺で、こいつらの胃袋を満足させられる数を誇る生物は―――人間だけよ」 「!!」 「近くの集落まで約2キロ。あいつらは、そこの住民をご飯にしたくて、ここまで移動してきたとしたら?それを阻止出来るのが、あなただけだとしたら?」 祷子はコントロールユニットを握りしめた。 それが、祷子の答えだ。 「“弥生”ちゃん」 「はい」 心配そうに祷子を見つめるのは、“さくら”同様、年端もいかない女の子だ。 「―――いけますか?」 「はいっ!」 ギインッ! ついに祷子騎が剣を抜いた。 放たれる剣という殺意。 妖魔も、それで祷子騎が敵と認識したのだろう。 ギァォォォォォォッ グォゥゥゥゥゥッ 咆哮を上げながら祷子騎に襲いかかってきた。 ズンッ! 祷子が狙いを定めたのは、正面から飛びかかってきた一匹。 体を滑らせるように移動した祷子騎は、すれ違い様の一撃で、その首を切断してのけた。 首を失った妖魔がもんどり打って地面に叩き付けられた。 「やるぅっ!」 それを感知した“弥生”が歓声を上げた。 「お姉ちゃん、スゴい!」 「……戦車並の装甲を誇る相手を一撃で?」 「“弥生”ちゃん!」 祷子が怒鳴った。 「敵の数は!?」 「約10!―――違っ!雪の中に伏せてる!数、現状15!」 「報告より多い!」 中尉が焦った声を上げた。 「HQ!敵は増大している!増援を!」 「10時と4時から来るよっ!」 “弥生”の警告に、祷子は敏感に応じた。 ザンッ! 一匹の胴を、すれ違い様、シールドで切断し、 ズシャッ! もう一匹の脳天に剣の切っ先を突き立てる。 ―――ズズンッ 祷子の前で、二匹が力無く地面に落ちた。 「やれるっ!」 兄のあだを討てる中尉は興奮気味だ。 「すごいわっ!」 本当にそう思う。 妖魔――― 時にメサイアでさえ一撃で粉砕する文字通りのモンスターを、この騎は苦もなく粉砕していく。 本来の性能もあるだろうが、それを引き出しているのは、間違いなく――― 「こ―――」 中尉は、レシーバーに、何かが入ってることに気づいた。 「?」 ブツブツブツ…… 何を言っているのか、最初わからなかった。 それが言葉だと、 祷子の声だと、ようやくわかる始末だった。 「候補生?」 「……」 中尉の言葉に、祷子は応えない。 ただ――― “弥生”の声にのみ、祷子は鋭敏に答えた。 「7時から1匹!」 ブンッ! 逆手に持った剣が妖魔の喉を貫いた。 「11時、2時―――6時からも!」 剣を手にしたメサイアが急旋回。 一気に3匹を血祭りにあげた。 「……心は則ち、神明(かみとかみと)の本主(もとのあるじ)たり」 それが、祝詞だと、中尉にはわからない。 「心神(わがたましい)を傷(いた)ましむること莫(なか)れ」 ただ、祷子はメサイアを駆り、目の前の敵を殺し尽くそうとした。 間近に接近し、隙を狙う一匹に襲いかかり、その頭を粉砕した。 間合いをとろうという二匹を短刀を投げつけて仕留めた。 「……諸(もろもろ)の法(のり)は影(かげ)と像(かたち)の如し」 一瞬、背後に潜んでいた妖魔の目が光った。 次の瞬間――― ビンッ! 弦を弾いたような音と共に光が放たれ、雪山の一角が吹き飛んだ。 「“マスター”!」 “弥生”が怒鳴った。 「敵はマジックレーザーを使いますっ!他にも反応多数!」 「候補生!増援が来るっ!」 祷子は回答の代わりに動いた。 敵のマジックレーザー発射の直前、騎体を跳躍させ、同士討ちさせたのだ。 雪に覆われた世界を吹き飛ばす災禍の中、地面に降り立った祷子騎は、狼狽する敵に襲いかかった。 「……清(きよ)く潔(いさぎよ)ければ仮(かり)にも穢(けが)るること無(な)し」 ついに数匹が逃亡にかかった。 祷子騎は、瞬間移動に近い動きで、その前に回りこむ。 「説(こと)を取(と)らば得(う)べからず 皆(みな)花(はな)よりぞ木実(このみ)とは生(な)る」 妖魔達の死骸が最後の光芒と共に消え去る中。 祷子騎は何事もなかったかのように立ちつくしていた。 「無上(むじょう)霊宝(れいほう) 神道(しんとう)加持」 祷子の言葉が、静かにコクピットに流れた。 「いーち!にーぃ!」 候補生達が並んで腕立て伏せにいそしむ中、長野教官が怒鳴り声を上げた。 「このバカ共っ!誰がここまでやれと言った!」 その背後では、擱座した騎がベルゲ・メサイア(メサイア回収騎)による回収作業を受けている。 雛鎧の被害は惨憺たるものだった。 両足切断の騎に始まり、大規模修理を意味するC整備どころか、完全分解整備を意味するD整備が必要な騎が約半数。 おかげで、整備部隊が候補生達に憎悪どころか殺意に近い視線を送ってくる。 「柏っ!」 「はいっ!」 「突撃の呼吸が滅茶苦茶だからああなるんだ!」 ゲンッ! 教官の竹刀が美晴の背中に叩き付けられた。 「作戦を立案しながら、一番の所でコケおって!貴様、●●ついてんのか!?ああっ!?」「もっていませんっ!教官!」 竹刀の痛みは戦闘服がカバーしてくれる。 美晴は腕立てを続行した。 「同じ事ぁ!誰に言えるかわかってんな!?―――宗像っ!」 「はい」 「返事が小さいっ!貴様も!」 「私もついてませんっ!」 「やかましいっ!」 「―――まぁ。対メサイアに限定して、何人かは、戦力になるでしょう」 二宮の横で候補生達を眺める騎士が言った。 よく通る声が耳に心地よい。 「さすが、隊長の子供達です」 「よせ」 二宮は苦笑しながら言った。 「私は既に、ここの教官に過ぎない」 「もったいない」 「護衛隊(ガーズ)の後釜はお前だ」 その言葉に、騎士は複雑に口元を歪めた。 整った顔立ちとアップにまとめたレタスグリーンの髪。 高い背もあって、知的な美人と言って差し支えない。 「何しろ」 二宮は、視線を教え子からメサイアへと向けた。 「私の子供はヤンチャだからな」 「はっ?」 「セオリーなんて関係ない。おかげでこの騒ぎだ―――それより」 二宮の前で、祷子の騎が止まった。 祷子が、ようやく帰投を許可されたのだ。 野戦整備用のハンガーキャリアが騎に横付けされ、整備兵や一目で開発局スタッフとわかる連中が騎体のあちこちを調べ始めている。 「月城。この騎については、何か聞かされているのか?」 「RT-01について、ですか?」 「RT-01?」 「機密騎です。詳しくは自分も知らされていませんが」 月城と呼ばれた騎士は、少し考えてから、 「水龍後継騎の一派生騎と、整備兵の噂は耳にしています」 「……βタイプだそうだな」 「はい」 対メサイア戦用、つまり、普通の目的で開発されたのがαタイプ。 対するβタイプとは――― 「実験用騎を、何のために?そんなに雛鎧が不足しているとは聞いていない」 そう。 メサイアの開発・研究用に特別開発されたのが、βタイプ。 決して、実戦に用いられない。 騎士達は、そう説明されているし、世論もそれを疑っていない。 訝しげな視線をメサイアに送る二宮の前で、後藤達が、ハンガーキャリアに乗って、コクピットから出てきた祷子達の前に降り立った。 会話はここでは聞こえないが、気になる。 「あれは、完全な意味では実験騎ではありません」 ちょっと意外。 そんな顔で、月城が答えた。 「実験騎では、ない?」 「……定義が難しいのですが」 「わかるように説明してくれ」 「はっ……」 月城は、困った顔で言った。 「先程申し上げた通り、あれは総隊旗騎にして天皇騎たる水龍後継騎として開発されました。そして」 「……」 「水龍は……対メサイア戦用に開発されたものではありません」 「ん?」 二宮は眉をひそめた。 「総隊旗騎が実験騎だと?」 「違います。あれは、完成したβタイプ。対妖魔戦用メサイアです」 「……妖魔」 後藤の言葉が、二宮の脳裏をよぎった。 「つまり、βタイプメサイアの真実とは、対妖魔戦用メサイアのことで」 「……月城」 「はっ」 「そこまで知っているということは、だ」 じろっ。 二宮の眼光が、月城を射抜いた。 「貴様……全て知っていて、ここに来たな?」 「命令です」 月城は負けじと二宮に視線を送った。 「我が内親王護衛隊―――“レイナ・ガーズ”は、本演習にサポートとして参加。訓練機の実戦演習指導に当たること。ただし、演習指導は表面的なものであり、本来任務は、索敵機器を搭載した訓練機を攪乱。演習区域を広範囲に移動させ、“目標”を索敵・殲滅することでした」 「目標?―――それが妖魔か?」 「はい。ここ一帯での活動が確認されていました」 「それを探し出すにしろ、演習なら問題はない。公式に作戦行動としては、事態まで公にせざるを得ない」 「その通りです。大尉」 「面白くないな。一歩間違えれば候補生達は妖魔とやらのエジキになるところだ」 「任務です」 「それだけか?」 「それだけです」 「―――月城」 「はっ」 「貴様……最も大切なことを、隠していないか?」 「はっ?」 二宮は、指を二つ、月城の前に出した。 「一つ―――貴様等、“レイナ・ガーズ”は麗菜殿下護衛が任務であり、妖魔相手の作戦に出る部隊ではない―――何があった?どこから命令を受けた? 二つ―――その妖魔とやらがそこらに簡単に出るとは思えない。この一帯―――今回の、この急な演習にも関わらず、何も騒ぎになっていない。何故だ?ここに、何があるんだ?」 「……」 月城は、ぐっ。と黙ってしまった。 それは、月城が真相を知っている証明。 「月城」 「……一教官に、告げて良い内容ではありません」 月城は、敬礼すると、部下と共に踵を返し、二宮の前から姿を消した。 「……成る程?」 苦笑する二宮は、その態度で、全てを覚った。 「ったく……とんだ騒ぎになったわね」 雛鎧のコクピットに戻った美奈代は、騎体をブースト移動させながらぼやいた。 「12時間のご飯抜きは解除されないし」 「仕方ないです」 牧野中尉が気の毒そうに言った。 「みんな、そうやって一人前になるんですよ?」 「中尉も経験が?」 「私は最高72時間です……最後は医務室に担ぎ込まれましたけど」 「それって虐待」 騎体が地面に着地。再びブースターを吹かし、雛鎧は跳んだ。 「でも」 クスクス。 牧野中尉は、吹き出した。 「騎体大破の責任で、教官達も今回はいろいろ大変みたいです」 「大変?」 「とりあえず、今夜のおでん屋はなしとか」 美奈代は、吐き捨てるように言った。 「―――いい気味です」 モニター越しに映し出される景色が変わった。 美しい雪景色が、黒く焦げた一帯へと。 「ここで―――風間が?」 「はい」 ピッ 牧野中尉によって、美奈代の前のモニターに情報が映し出された。 「“戦狼(せんろう)”級妖魔。サイズはM。主要な武器は牙と爪―――そしてML(マジック・レーザー)」 「それが、15体」 なぎ倒された木々。 えぐれた大地。 死骸こそないが、ここで何があったかは子供でもわかる。 「そうです。風間候補生は15体1の勝負に完全勝利されたのです」 「……信じられない。というか、そんなに弱いのですか?そいつら。20メートルの体格で」 「南米戦線ではかなりの犠牲を強いられています」 「……」 雛鎧が着地。 ブースト移動をかけた。 「それにしても」 美奈代は周囲を見回した。 「その戦域を飛び越えてシールドが飛んでいったなんて―――“さくら”の馬鹿力」 「ちがうもんっ!」 “さくら”が怒鳴る。 「マスターがバカなんだもんっ!」 「こらっ!」 美奈代が怒鳴ろうとした時、 ピーッ! 警告音が鳴り響いた。 「候補生っ!」 「しまっ!」 グンッと来る落下の感覚。 ドンッ! 満足な準備もなく地面に落下したせいで、システムが処理しきれなかった衝撃が、美奈代の尾てい骨をモロに直撃した。 「……い……っ!」 尾てい骨から走った痛みが脳天を貫き、美奈代が固まった。 「あーあ。マスターのバカ」 その顔の前で、“さくら”が呆れた顔を見せる。 「……」 美奈代は口をパクパクさせるのが精一杯だ。 「痔になった?お尻割れた?」 「か……こ……」 「染谷さんとのこと思い出して感じちゃった?」 パカンッ! 美奈代のゲンコツが“さくら”の頭を直撃した。 「痛いっ!」 「誰があんなオトコと!」 「したんでしょ?お尻で」 「してないっ!」 「えーっ!?染谷さん奥手!」 “さくら”がびっくりした顔になった。 「まだ手を出してもらってないの!?」 「あ、あんなオトコに興味はないっ!」 美奈代が怒鳴った瞬間。 『HQより1号騎』 司令部から通信が入った。 二宮だった。 「こちら1号騎、泉候補生!」 『痴話喧嘩を回線開放のままやるな!筒抜けだ!』 「―――!!」 美奈代の顔が爆発したように赤くなった。 「も、申し訳」 うつむく美奈代の横で、“さくら”がやーいやーいとはやし立てる。 『それより、シールドは発見出来たのか?』 「す、すぐ近くだと」 美奈代は慌てて周囲を見回した。 シールドの落下予測地点のすぐ間近を目指してジャンプしたのだ。 視界に入るはずだが――― 「マスター、あったよ?」 “さくら”が指をさした先。 木々をなぎ倒し、地面に突き刺さっている白い金属物。 それは確かに、シールドだった。 「ホッ。……こちら1号騎。HQ、シールドを発見。現在位置、日村―――」 「マスターぁ」 “さくら”がそっと美奈代に抱きついた。 「ん?」 抱きつく“さくら”の体が小刻みに震えている。 怯えているのだ。 「どうした?“さくら”」 「は、早く帰ろう?シールドなんて放っておいて」 「そうもいかん」 美奈代はシールドに近づき、無造作に地面に突き刺さるそれを引き抜いた。 「っ!!」 “さくら”が息を飲んだのを、美奈代は確かに見た。 「何がそんなに怖いんだ?“さくら”」 「だ、だって―――」 ガタガタ震える“さくら”は答えた。 「地面から―――何かが出てる」 「HQより1号騎MC、牧野中尉」 『こちらHQ』 「シールド落下地点。センサー異常。測定限界越えました―――データ転送します」 『HQより1号騎。現状のまま待機せよ』 「?」 「グスッ……マスターぁ」 どういうことだ? 美奈代は首を傾げた。 妖魔。 センサーの異常。 “さくら”の怯え。 ここに、何があるというのだ? 美奈代は、シールドがめり込んで陥没しただけの、何の変哲もない穴を、じっと見つめた。 長野県大字日村。 美奈代には、その地名だけしか理解できるものがなかった。
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この世の地獄。 美奈代達は、それがここだとことあるごとに思い知らされた。 入営してからの毎日。 一言、地獄で全てが語りきれる日々。 訓練訓練訓練ついでに座学座学座学。 敬礼の仕方から銃火器の取り扱い、そして難解を極めるメサイアの理論まで、詰め込みすぎのカリキュラムに追われる日々は、他の言葉では表現できるはずはない。 その中で、候補生達は自然と3つのタイプに分類出来るようになっていった。 肉体派 頭脳派 ハイブリット派 前者は、座学より肉体を使う訓練が得意で、理屈より直感がモノを言うタイプ。 都築真、早瀬さつき、神城三姉妹がこのタイプ。 教官達に言わせると、脳みそ筋肉の「バカ共」だ。 中者は肉体派の正反対。 柏美晴や、意外だが山崎大輔がこのタイプだ。 そして、ハイブリット派。 ……これはさらに二つに分かれる。 肉体と頭脳の程度がバランスよく配分された優等生タイプ。 宗像と泉の二人は、この典型例だ。 そして――― 生きてることそのものが、何かの冗談。 そこまでこき下ろされるほど、肉体・頭脳共に徹底したレベルで欠落しているとレッテルを貼られるタイプ。 役立たずともいう。 本気なのか、それとも単に手抜きしているのか? それは本人のみが知る所だが、それでも、周囲はそう見なす存在。 それが、風間祷子だ。 「も……もう、ダメ」 そう言ってその場にひっくり返ったのは、頭脳派の柏美晴だった。 肉体訓練の昇華を示すべく行われた行軍訓練。 30キロの戦闘装備を着用して武装し、50キロ先の目的地までひたすら歩き続ける訓練は、18歳の女の子に、それが、超人的肉体と反射能力を誇る騎士とはいえ、かなりの負担を強いている。 柏美晴は、理系高校に在学中、ずっとマンガに入れ込んでいたという、自他共に認めるインドア派。 自宅の薙刀道場の鍛錬で鍛えてはいたが、その子に、大の男でさえへたばるとされる行軍訓練はキツすぎる。 無理もない。 誰もがそう思いつつ、それでも言わざるを得ない。 「しっかりしてよ!」 「そうだ!みんな頑張ってるんだぞ!?」 肉体派からは叱責が飛ぶが、 「そ……そうは……言われても」 美晴は絶え絶えの息の下で苦しげに文句を言った。 「わ、私……こんなに歩いたこと自体が初めてだよ……」 そう言って、美晴は手にした自動小銃を何とか体の上からどかそうともがいた。 鉄板すら撃ち抜く腕力を誇る騎士が、わずか5キロにも満たない鉄のカタマリを動かすことすら出来ない。 それが、美晴の体力の消耗度を如実に示していた。 「泉」 水筒のキャップを外しながら、宗像が美奈代に言った。 「美晴は限界だ。これ以上の行軍の継続は」 「……」 美奈代は全員を見回した。 若干18歳の女の子が30キロ近い装備を身につけて50キロの行軍。 入営以来、シゴキそのものの肉体的訓練を受けているとはいえ、騎士の体を持つとはいえ、その過酷さは一々口にする必要すらない。 「やむを得ない」 美奈代は言った。 「ここで15分の小休止をとる」 ズシャッ! 途端に全員がその場にへたり込む。 そんな仲間達に、美奈代は容赦なく言った。 「早瀬、私と共に警戒に立て」 「えーっ!?」 さつきが悲鳴に近い声を上げたのも無理はない。 さつきも脚が立たないのだ。 そんなさつきに美奈代は容赦がなかった。 「体育系だったんだろう?それくらいやれ。それとも、柏にかわってもらうか?」 「ううっ……男子がいるでしょう!?男子が!」 「あれはもう斥候に出てもらっている。山崎は使えるが―――都築は使えん」 「あらあら?あのフランケンがお好みでしたか?」 「私は外見に惑わされたりはしない―――柏」 「……」 美晴は弱々しい顔で眼だけを美奈代に向けた。 そんな美晴の前で膝を折った美奈代が、タオルで汗に濡れた美晴の顔をぬぐった。 「もう少しだ。病院送りはそれまで待て―――みんなのために」 美晴は黙って頷いた。 「宗像、水を」 「ああ」 そういうと、宗像は水筒の水をあおった。 「ち……ちょっと理沙ちん?」 一葉が恐る恐る訊ねた。 「まさか……口移し?」 コクン。 宗像は口に水を含んだまま、頷いた。 「ま、待って!」 美晴が慌てて体を起こしたものだから―――。 「宗像ぁ……覚えてなさいよぉ?」 恨めしそうに宗像を睨む美晴のヘルメットの下の髪はびしょぬれだ。 「動けそうになかったから、やってあげようと思っただけだ」 宗像は、しれっと言い放った。 「大体、なんだ?歩けるじゃないか」 「ふ……ふざけないでよ」 美晴は銃を杖代わりにしてよろめきながら歩いている。 「これ、歩いているって言わない」 「祷子を見ろ。ああやって先方に立って歩いているじゃないか」 美佐子は部隊の前方を歩く祷子の姿を見ながら言った。 「不平不満も言わずに頑張っている。あいつも肉体訓練の最終過程だということはわかっているんだな」 「……あのボンクラちゃんがねぇ」 ボンクラちゃん。 何かある度に、教官が罵声として「このボンクラぁ!」と祷子を呼ぶので、周囲も祷子のことをそう呼ぶようになっていた。 「なかなか、根性はあるようだな」 祷子の失態の度、部隊として責任をとらされ、その隊長として辛い思いをしてきただけに、危険が潜む前衛として自ら進んで立つ祷子の姿に、美奈代も感慨深げに見入っていたのだが――― パタッ 突然、祷子が倒れた。 「!?」 後方にいた美奈代達は、一斉に伏せる。 「か、風間?」 返事はない。 もし、模擬弾が発射され、祷子がそれに当たったなら、いくらなんでもそろそろ銃声が聞こえてもいいはずだ。 それが、聞こえない。 「手裏剣、投擲ナイフの類かもしれない」 宗像の言葉に、美奈代は黙って頷くが、 「まさか!行軍演習でしょ?いくらなんでもそこまでは」 さつきが否定を口にした。 「私達を殺す気?」 「ここまで歩かされること自体……私達を殺すつもりだよ」 美晴はそう言うしかない。 「演習用麻酔弾の可能性が高い」 宗像は、さつきの意見にそう答えた。 演習用麻酔弾――― この世界の軍隊や警察では広く用いられる特殊な魔法処理がされた弾丸。 命中すると麻酔をかがされたように気絶するため、そう麻酔弾と呼ばれている。 隊長として、美奈代はその可能性を否定するわけにはいかない。 だから、皆に命じた。 「各員、戦闘態勢」 美奈代は、20メートルほど先にある大岩を指さした。 「―――風間を救出後、そこの岩の影に隠れる」 「了解」 「かかれっ!」 美奈代達は一斉に駆け出した。 「あんた、いい加減にしなさいよ!」 数分後、祷子は全員の前で正座させられていた。 「疲れていたにしても、眠りながら行軍して、コケてもなお眠り続けるって、あんたどういう神経してるのよ!」 美晴が怒るのも無理はない。 余計な体力を使ってまで助けに言ったのに、祷子はその場でグーグー眠っていたのだから、怒るなというほうが無理だ。 「……返す言葉もございません」 うなだれる祷子は、未だにどこか眠そうだ。 「はぁっ……祷子!?帰ったら、全員に酒保でおごりだからね!」 「あっ!私サイダーがいい!」 「アイス!」 「あんパン!」 「私は風間と一晩でいいぞ?」 「宗像……ホント、あんたと同室だけはしたくないわ」 「ん?私は気持ちいいのが好きなだけだが?」 「もういい」 美奈代は渋い顔で言った。 「風間、懲罰として柏の装備を持て。準備が終わったら斥候へ伝令に走れ」 「は……はぃぃ」 「声が小さいっ!」 「はいっ!」 「早瀬、宗像。柏のバックパックを風間のバックパックの上にくくりつけろ」 「ほ、本気?―――ボンクラちゃんが死ぬわよ?」 驚くさつきに、美奈代は冷たく言い放った。 「風間はバテてはいない」 驚く美晴に美奈代は言った。 「単に寝不足なだけだ―――違うか?」 ばつが悪そうに頷く祷子は、バックパックのハーネスを締め直した。 眠いのは本当だけど――― 祷子は肩に食い込むバックパックの重さに耐えながら走った。 パイロット用の戦闘装備といえば、要するには甲冑のことだ。 祷子の全身には、すでに100キロ近い、つまり、祷子に言わせれば祷子二人分の体重+十数キロ(?)の重さがかかっている。 それでも祷子は歩き続けられる。 それは騎士としての肉体の産物以外の何者でもない。 美奈代さんはスゴイ。 祷子はそう思う。 美奈代は気丈に振る舞ってはいるが、もう脚が限界に来ているのは、その引きずり方からして明らかだ。 祷子が見る限り、美奈代は最も体力がない。 あるのは根性だけだ。 だから、真っ先に脱落するのは美奈代だと、祷子はそう思っていた。 ところが美奈代は持ち前の根性だけで歩き続け、周囲への配慮も欠かさない。 祷子に美晴のバックパックを持たせたのも、最も体力が残っていることを、美奈代が見抜いていたからだと、祷子は理解していた。 祷子のこの体力は、幼い頃から続けさせられた剣術修行の賜だ。 祖父に育てられた祷子は、可愛がられると同時に、厳しく育てられた。 神社の巫女の修行の一環としてあったのが剣術修行。 巫女として、山頂にある神社へ朝夕のお務めに行かされていたのも、足腰の訓練になっていたと、今では実感としてわかる。 吹奏楽部に入り、ヴァイオリン奏者として名を馳せた後も続けた日課。 それが祷子の体力につながっていた。 あっ。いた。 森の出口付近。 倒木の影に隠れるようにして向こうを見る二人の兵士が、こちらを見ると手を挙げてくれた。 「お疲れさまです」 「風間さん、どうしたんですか?その荷物」 驚いたという顔で祷子を見る巨人―――山崎が言った。 「この行軍です。足腰、大丈夫ですか?」 「ええ。平気です。ありがとう」 「どっちにしても、疲れたでしょう?懲罰でなければ代わりますよ……はいこれ」 美晴の装備を受け取った山崎がそっと取り出したのは、野苺(のいちご)だ。 「さっき、そこで見つけたんです。酸味が体力回復につながりますよ?」 「ありがとうございます」 にこりと笑って野苺を受け取る祷子に、山崎は照れた笑顔を浮かべる。 「おーお。アツイねぇ。大輔ちゃん」 「つ、都築さん!」 「くすっ。後続がもう体力的に限界です。これがあれば」 「はい。全員一個ずつなら、間に合いますね」 「あっ、それで伝令です。前方に障害はないか」 「ありません。ただし、無線で警告が入っています」 「警告?」 「前方でメサイアの運用訓練中。模擬戦闘も組み込まれているため、事故発生防止に留意せよ。とのことです」 山崎は、そう言って背中の無線機を、その太い指でつついた。 「了解……後方の部隊は無線機を持っていません。伝令、走ります」 「いや……それは必要ないでしょう」 山崎はそう言って、祷子が走ってきた先を見た。 つられて見た祷子の眼に、こちらに向かってくる一団の姿が見えた。 「このバケモノ」 ポツリとそう言ったのは美晴だ。 「あんた、この装備で走れるって、どういう存在よ」 「ははっ……小さい頃から重い物担いで山道歩いていたから、慣れちゃっているんですよね」 「へぇ?所で美奈代。いつまでここに?」 「喜べ」 無線機と地図を相手にする美奈代が言った。 「ここで待機の命令が出た。前方でメサイアの訓練が始まっている」 「へぇ!?」 そう言って身を乗り出したのは光葉だ。 「見たい!」 「見ることは出来なくても、音は聞こえているだろう?」 「へっ?」 両耳に手をやる光葉だけでなく、居合わせた全員が耳を澄ませた。 ズーン ズーン ガーン 鉄を叩く機械が遠くで動いているような音が、森の小鳥たちの声に紛れてその耳に届く。 「あれが、そうなの?」 「そうだ」 一葉に美奈代は言った。 「二宮教官によると、MDIJα-015「幻龍(げんりゅう)」だ」 「幻龍?えっと……あの近衛の標準メサイア?」 「そうだ。いずれ我々が乗る騎体でもある」 美奈代は、眩しそうな眼で、見えないメサイアに思いを馳せた。 「不敗のメサイア。かつて父が駆り、命がけでその名誉を守り抜いた、誇るべき騎だ」 「私達が、それに乗る」 「そのために、私達はここにいるんだ」 美奈代の言葉に、皆が頷いた、次の瞬間だ。 ガギィィン 遠くで鈍い、奇妙な音がした。 いままでとは全く違う音。 それを、祷子は聞き逃さなかった。 「伏せてぇっ!」 祷子がとっさに叫ぶ。 “誰かに伏せろと言われれば伏せろ”と教えられている美奈代達は、その場に伏せた。 ドンッ! 凄まじい音 振動 そして、凄まじいまでの土砂と衝撃が、祷子達を襲った。 「な、何だっ!?」 それまで見えていたのは、広大な演習地ののどかなまでの光景。 それが、何か白い物体で隠されていた。 「……メサイアのシールド?」 あちこち傷だらけになった白い金属物。 それは、間違いなくメサイアのシールドそのものだ。 「ケガはないか!?総員番号!」 一瞬、シールドの制式番号、重量等のデータを思い浮かべていた美奈代は、慌てて全員の安否に動く。 全員いる。 被害はない。 「山崎、待機地点約50メートル地点にS45シールドが落下したと教官に報告!」 「はいっ!」 「宗像、スモークを!こちらの存在を知らせる!」 「了解!」 ピンッ 宗像は、歯で安全ピンを抜いた発煙手榴弾を前方へ向けて投げつけたが……。 「だめっ!―――来るっ」 そう叫んだ祷子の声に、 「何が来る」 というんだ? その美奈代の声は誰の耳にも聞こえなかった。 激震 鼓膜がどうにかなったんじゃないかと疑いたくなるような音。 それらが空気の壁となって全員をはじき飛ばしたからだ。 「……」 「……」 誰も、誰の安全も確かめない。 ただ、目の前の光景に呆然と見入るだけだ。 彼女達の目の前に現れたモノ。 それは、純白の甲冑を身に纏った巨大すぎる騎士。 メサイア。 その重厚にして華美な装甲のライン 気高いまでの雰囲気 単なる兵器と呼ぶには、あまりに美しすぎる存在が、目の前で戦いを繰り広げる。 「これが……メサイア」 誰かが呆けたような声で言った。 「スゴイ……」 全長25メートル以上。 魔法により稼働する世界最強の兵器。 自分達の目標。 それを間近で見つめること自体が、全身の震えにも似た興奮と感動を引き起こす。 「泉っ!」 宗像が叫ばなければ、美奈代はいつまでもメサイアに見入っていたろう。 力任せに肩を掴まれ、揺すられることで、美奈代は現実に引き戻された。 「危険だ!一端、ここを離れるんだ!」 「えっ?」 「相手はこっちに気づいていない!」 「そ、そうね―――全員傾聴!これから500メートル、一気に下がるぞ!」 「了解!」 美奈代の号令は、一瞬だけ遅かった。 対峙するメサイアの一撃を剣で止めたメサイア。 自重100トンを軽く越える重量物同士の激突は、新たな衝撃となって、美奈代達を襲った。 「きゃあっ!?」 「走れぇっ!」 その衝撃を受け、まともにはじき飛ばされた面々は、それでもなお、走り出す。 転んだ双葉と光葉を山崎が両脇に抱きかかえて進むのを前に見ながら、美奈代は走る。 だが――― 「ぐっ!?」 突然、足を取られて、美奈代は転んだ。 木の根に足を取られたのだ。 派手に転び、それでもなお立ち上がろうとしたが、足が言うことを聞かない。 ひねったか!? くそっ! こんなところで! 痛む足をかばうように立ち上がろうとした、次の瞬間。 世界が暗くなった。 「えっ?」 上を向いた美奈代の目に映し出されたのは、自分めがけて振り下ろされるメサイアの足の裏。 滑り止めに走るスリットや、ボルトの穴まで綺麗に見えるほどの近さで―――。 美奈代は声が出なかった。 悲鳴すら口から出ては来ない。 ただ、呆然と、自分に襲い来るモノを見つめること。 それが、美奈代に出来る全てだった。 グンッ! 死ぬ時は、横から衝撃が来る。 美奈代はそう思った。 そう思って、自分の死を覚悟した。 「大丈夫か!?」 張りのある男の声がして、激しく揺すぶられた美奈代は、自分がまだ生きていることを知った。 「……」 あまりのことに呆然とする美奈代の頬を、誰かが叩いた。 「しっかりしろよ!」 それは、美奈代の父の顔だった。 「おとう……さん?」 「はぁっ!?誰がだ!」 さらに一撃。 我に返った美奈代は、自分を叩いたのが、都築だと知った。 「都築?」 「やっと正気になったか」 都築はほっとした顔で言った。 「頼むぜ隊長さんよぉ。あんなところでコケるなよなぁ」 「都築っち。カッコよかったぁ!」 一葉が興奮気味にわめく。 美奈代が見ると、自分の周囲には訓練生全員がいた。 全員無事。 それが例えようもない安心感となって美奈代を包んだ。 「逃げてる最中に、コケた美奈代っち助けに危険省みないで飛び込んでいくんだもん!」 つまり、自分を助けたのは都築ということになる。 「そうか……済まなかったな。都築」 「何」 都築は立ち上がって美奈代から離れようとした。 「おーお!赤くなって」 宗像のからかいに都築がムキになって答えた。 「ち、違うわ!」 「じゃあ」 美奈代の足の応急処置をしていた祷子が言った。 「もう隊長、歩けないのですから、都築さんに負ぶってもらいましょう」 「なっ!?」 「なにっ!?」 都築と美奈代双方が驚いた。 「ほら。もう、私達の中で隊長かついで歩ける人、いませんし、都築さん、元気いっぱいみたいですから」 「おお。それなら」 宗像は、美奈代のバックパックどころか、上半身のパイロットスーツを手早く脱がしてしまった。 ちなみにスーツの下はTシャツ一枚だ。 「装備を軽くしてやろう。山崎、都築の方もな」 「了解です」 「や、やめろ山崎!」 「ったく」 ぶつくさ言いながら美奈代を担ぐのは都築だ。 「隊長ぉ。とんだ災難だぜ?こりゃ」 「すまん」 「ホントだ」 情けない。と思いながら、美奈代は都築にもたれかかった。 不意に、都築の汗の匂いを感じる。 「重く……ないか?」 「重い」 「き、貴様っ!女めがけて!」 「いててっ!隊長、歩けるんじゃないか!?」 「うるさいっ!背負っていけっ!」 「そうですよぉ」 横を歩く祷子が言った。 「隊長、足をくじいてるんですから」 「そうそう。それにノーブラだ」 「なっ!?」 「へぇ?隊長、そうなんだぁ」 「都築君?私の計略に感謝したまえ?」 宗像が意地悪い口調で言った。 「バスト85センチはなかなかだろう?クックックッ」 「これから、お前のことを悪魔と呼んでやる」 「褒め言葉だな」 「あーっ。都築っち。思いっきり前屈みだぁ」 「うるさいっ!」 美奈代は赤面しつつも、都築の背中に不思議な安堵感を感じていた。
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各ジョブの詳細などは、↓のメニューからご確認下さい。 能力者について能力者の成長一般技能アビリティ一覧表アビリティ一覧表2アビリティ一覧表3アビリティ一覧表4アビリティ用語解説魔剣士ファイアフォックス青龍拳士符術士水練忍者魔弾術士白燐蟲使い霊媒士フリッカースペードゾンビハンターヘリオン月のエアライダー土蜘蛛鋏角衆土蜘蛛の巫女牙道忍者フリッカークラブフランケンシュタインの花嫁コミックマスターナイトメア適合者クルースニク除霊建築士貴種ヴァンパイア従属種ヴァンパイア黒燐蟲使い雪女ブロッケンシルフィード呪言士ヤドリギ使い白虎拳士妖狐ファンガス共生者フリッカーハートゴーストチェイサー科学人間サンダーバード太陽のエアライダー巡礼士処刑人書道使いルナエンプレスカースブレイドフリッカーダイヤストームブリンガー ストームブリンガーについて 降り注ぐシルバーレインをその身に受け、戦い続ける「嵐をもたらす者」。それがストームブリンガーです。 嵐に由来する現象を操り、雨を浴びてその身を癒す彼らは、シルバーレインの申し子です。 修正値 気魄 術式 神秘 +1 +1 -2 ※武器表 分類 装備 Ini 気魄 術式 神秘 ボーナス 鉄傘 両手 0.525 1.65 0.97 0.525 シールド スラッシュギター 片手 1.00 1.80 2.00 1.00 七支刀 片手 1.00 2.00 1.00 1.80 浄玻璃鏡 片手 1.05 0.60 1.425 1.20 シールド 破魔の勾玉 頭 2.66 0.138 0.45 1.52 射撃(神秘) ※アビリティ表 属性 名称 段階 威力 射程 効果 制限 命中 回数 CP 本業 優しい雨 自分 ×∞ 0 神秘 鏡雨転身 基本 神攻+58(回復) 自分 移動アップ 援護 ◆ ×4×8×12 90135180 改 神攻+72(回復) ◆◆ ×4×8×12 180270360 奥義 神攻+87(回復) ◆◆◆ ×4×8×12 270405540 気魄 天雨豪流 基本 14固定 20m視界内(選択) 追撃吹き飛ばし!JCなし 限界 ◆ ×4×8×12 96144192 改 17固定 ◆◆ ×4×8×12 192288384 奥義 21固定 ◆◆◆ ×4×8×12 288432576 術式 致命電光 基本 術攻+4 20m直線(選択) 追撃JCなし 限界 ▲ ×4×8×12 81121162 改 術攻+5 ▲▲ ×4×8×12 162243324 奥義 術攻+6 ▲▲▲ ×4×8×12 243364486 ※真アビリティ表 属性 名称 段階 威力 射程 効果 制限 命中 回数 CP 神秘 天秤の加護 基本 70固定(回復) 20m全周(選択) 気術神攻極小アップ ガードアップ移動アップ幸運度チェック3回JCなし 武器援護 ◆ × 1 × 2 × 3 234351468 改 87固定(回復) ◆◆ × 1 × 2 × 3 468702936 奥義 105固定(回復) ◆◆◆ × 1 × 2 × 3 70210531404 気魄 混沌嵐撃 基本 Lv+68(ダメージor回復) 20m全周(選択) HP吸収JCなし 限界 ◆ × 1 × 2 × 3 300450600 改 Lv+85(ダメージor回復) ◆◆ × 1 × 2 × 3 6009001200 奥義 Lv+102(ダメージor回復) ◆◆◆ × 1 × 2 × 3 90013501800 術式 竜神爆火雷 基本 術攻+142 20m直線(選択) 追撃超魔炎JCなし 限界 ▲ × 1 × 2 × 3 435652870 改 術攻+177 ▲▲ × 1 × 2 × 3 87013051740 奥義 術攻+213 ▲▲▲ × 1 × 2 × 3 130519572610 本業能力:優しい雨 雨の中で10分間休息する事で、HPが完全に回復します。 ただし、戦闘不能の場合は回復しません。 鏡雨転身(通常のみ) 詠唱銀:7320 「ミラーロード」。自分の上に降らせた雨で、異空間でつながった2枚の水鏡を生み出すアビリティです。 水鏡をくぐることで自分のHPを回復すると同時に、「移動アップ」の効果を得ます。 天雨豪流(通常のみ) 詠唱銀:8400 「ヘヴンリィ・レイン・プレッシャー」。強大な水流を撃ち出し、20m視界内の対象全てにダメージを与えるアビリティです。 「追撃」と「吹き飛ばし」の効果を持ちます。 致命電光(通常のみ) 詠唱銀:5100 「クリティカルライトニング」。破壊をもたらす電光で、20m直線上の対象全てにダメージを与えるアビリティです。 「追撃」の効果を持ちます。 天秤の加護(真のみ) 詠唱銀:54820 「バランス・オブ・ザ・ワールド」。世界のつりあいを保つ天秤にアクセスし、その恩寵を得て味方の士気を鼓舞するアビリティです。 半径20m以内の対象全員の「気魄/術式/神秘」の攻撃力を少しだけ上昇させると同時にHPを回復させ、ガードアップ、移動アップの効果を与え、さらに幸運度チェックを「3回」行わせます。 ただし、このアビリティは少ない回数しか使えません。 混沌嵐撃(真のみ) 詠唱銀:94120 「カオス・ストーム・ブラスター」。凄まじい「混沌の嵐」を巻き起こし、半径20m以内の敵全ての生命力を奪うアビリティです。 「混沌の嵐」は全ての敵にダメージを与えると同時にHPを吸収し、自らのHPを回復し、さらに、全ての仲間のHPを僅かに回復します。 ただし、このアビリティは少ない回数しか使えず、このアビリティで一般人からHPを吸収することはできません。 竜神爆火雷(真のみ) 詠唱銀:197400 「ドラゴニック・パニッシュメント」。右手から炎を、左手から電光をほとばしらせ、20m以内の一点で衝突させることで、全てを滅ぼす爆発を発生させるアビリティです。 発生した爆発は爆発範囲内の全ての対象にダメージを与えると同時に、超魔炎のバッドステータスを与えます。 また、追撃の効果を持ちます。ただし、このアビリティは少ない回数しか使えません。