約 870,598 件
https://w.atwiki.jp/mangawiki/pages/20.html
スケッチブック(小箱とたん) ウィキペディアへのリンク 表現論的視点 スケッチブックは萌え漫画なのか?(漫画読もうぜ) キャラクター論的視点 レビュー記事のタイトル(サイト名) 社会論的視点 レビュー記事のタイトル(サイト名) 漫画産業論的視点 レビュー記事のタイトル(サイト名) その他視点 レビュー記事のタイトル(サイト名)
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1320.html
ケイレイ様が書き始められたマリエスの母国での隠密作戦に触発されて書き始めた、ゼニア共和国が「黒の二」対抗で開発を進めてきた機神「ラインの黄金」とその乗り手である魔導騎士「ラインの乙女」をめぐるスケッチの始まりである。これからどうストーリーをシェアしてゆくかは、互い次第ということで。 どこまでも青い空を吹く風はからりと乾いていて、なびく黒髪を手の平で押さえたイリシアは、目の前に広がる緑野の鮮やかさに目を奪われたままであった。 少女は、かつてはるか昔に侵攻してきた魔族が数百年にわたり逼塞しているシェオル半島を中原とへだたせている、カズムス山脈の北西のグニタヘイズ高原にある都市ヴァリンスヘイからはるばる旅をしてきた身である。街は高地地帯だけあって雲が低くたれこめ、朝夕には靄がかかる。木々は深く生い茂り、昼であっても視界は昏い。 だが、今イリシアの目前に広がるミレトスの沃野は活き活きとした色彩にいろどられており、生命の躍動する息吹すら肌で感じられるような土地であった。 「綺麗だねー」 呆然と立ちすくんでいるようにも見えるイリシアの隣に立った濃い目の茶色の髪を左右の側頭部でまとめた少女が、八重歯をのぞかせて一言そう呟いて屈託無さげに笑った。切れ長の眼を細めて笑う少女の微笑みはまるで悪戯好きな猫を思わせるもので、まとめられた二本の髪が風になびいていても両手を腰に当てたまま気にする様子もない。 「国が割れて相争っているようには見えません」 「人間なんてそんな程度のもんだって。「神々の頂」から下界を見下ろすって、こんな感じかも」 「カンパネラは、時々浮世離れした事を言いますよね?」 「これでも感傷に浸っているんだってば。ほら、あたしら下界に降りるのって初めてじゃん? イリシアあんただって浮かれてるでしょ」 イリシアの腰に手を回したカンパネラは、そのままぎゅっと抱き寄せると彼女の頬に自分の頬をすり寄せた。ツインテールの少女はしばらくそうやってスキンシップを楽しむと、不意に身体を離して後ろに身体を回した。 「で、あんたはどうなの? キルクルシア」 「……別に」 振り返ったイリシアの視線の先には、豊かで癖の強い黒髪を無造作に伸ばした少女が、その切れ長の吊り目を細めて仏頂面で立っている。キルクルシアと呼ばれた少女は、抱きつこうとするカンパネラを適当にいなしつつ、だが視線だけは目前の緑野から離そうとはしない。 キルクルシアは、イリシアが初めて出会った頃からあまり感情を表に出さない娘であった。三人がヴァリンスヘイに送り出される事になったと告げられた時も、三人の「血筋上の親」と紹介された女性達と会った時にも、今のように仏頂面のまま黙っていた。 だからといって、彼女がカンパネラにまとわりつかれることを嫌がっているという様子を見せたことはなかった。 カンパネラいわく「一匹狼気取っているけど、狼って群れで生きているじゃん」ということらしい。たった三人だけでも、群れは群れということだそうだ。 「小休止は終わりだ。ほら、ボーっとしてねーで隊列に戻れ、小娘ども」 「小娘じゃないわよ。あんたと歳、そんなに変わんないじゃん」 「そういう言い草が小娘だっつってんの。お前らさっさとブルカかぶって顔隠せ。「古人」が生身さらしてんじゃねーぞ、オラ」 見たところ二十台半ばの青年が、その三白眼をすがめて三人に注意を飛ばした。イリシアは「判りました」と答えて小走りに街道上の隊列に向かい、キルクルシアはフッと鼻を鳴らしてすたすたと早歩きでその場を離れ、カンパネラは「はーい」と答えはしたものの、ぱっと飛び上がって器用にも青年の肩に乗っかる。 「ちょ、おまっ、重いっつーの!」 「小娘だから重くないもーん。ほら、しゅっぱーつ」 カンパネラは、青年の短く切られた茶色の髪に左手を添えて右手で前方を指差した。長身で体格のよい彼は、仕方が無いという風に軽く舌打ちすると少女の両足を支えつつ隊列へ向かって歩き出した。 「お前、俺達がここに何しに来たか判ってんだろーな?」 「「試し斬り」でしょ? ぱぱっと何機かやっつけて」 「それだけじゃねぇよ。機体の不具合を見つけてつぶすんだよ。そこんとこ勘違いすんなよ?」 「はーい」 四人が向かう街道上の隊列には、多数の荷馬車に混じって二機の機装甲が膝をついている。そして二機とも見る者が見ればそれと判る逸品であり、彼らが只者ではないという事が明らかであった。まして神殿諸国ならば「神殿」が独占し貴人へと献ずる「古人」を三人も連れているなど、並ならぬことである。 「ちょっとお兄さん。わたしを無視して二人だけで仲良くしないで下さい」 「いつ俺がこいつと仲良くしたっつーの」 色々と御満悦な様子のカンパネラを肩車した青年の袖を、いつの間にか傍に来ていたイリシアがつまんで引っ張る。ちょっとむくれた感じに頬を膨らませている姿は、見た目相応の少女にしか見えない。そんな彼女をなだめるでも突き放すでもなく、少し歩く早さを落とした青年は、ぶっきらぼうにそう答えた。 そして、そんな三人から付かず離れずの位置を黙ってキルクルシアが歩いている。 「アンドレア・モラシーニ」 「おう、キルクルシア、なんだ?」 「馴れ合いは楽しいか?」 「……相変わらずお前は言葉を選ぶのが下手だな」 「黙れ」 キルクルシアに名前で呼ばれた青年は、腹を立てるでもなし、そう軽くいなす。 その言葉に軽く殺気を飛ばしてくるキルクルシアを無視し、彼は変わらぬ歩調で歩いて行った。 イリシア達が向かっている先は、十年以上も前に「帝國」との戦争に敗北した王国であり、今は弱まった王権のせいで内紛が絶えないでいる紛争地帯であった。諸神殿や諸侯らが自分の勢力圏を守って、時に争い、時に共同して、自分の利益を追求している。つまり、いくらでも傭兵の雇われ口があるということであり、また色々と後ろ暗い真似をするのに都合の良い場所ということであった。 「あんどれあー」 「おう」 「旗印とか立てないのー?」 カンパネラが天幕の中に敷かれた毛織物の上に寝転がって足をぱたぱたと上下させつつ、書き物をしているアンドレアの背中に声をかけた。 「立てねーよ、そんなもん。俺達は傭兵やりに来たんじゃねーから」 「……共和国親衛隊の騎士が傭兵など、「十人委員会」に処罰されるからな」 「当然それも違う」 にぃ、と嗤ってそう茶化したキルクルシアの言葉にアンドレアは軽い突っ込みを入れ、紙の上にぱらぱらと砂をまいてインクを吸わせる。 「それは、まあいいです。それでお兄さん、わたし達はいつ出撃するんですか?」 「今手頃な相手を探してる。あせんなよ、待つのも仕事のうちだっつーの。お前ら、これが最初の実戦なんだから、気合入れていけよ」 「それも判りました」 天幕の端っこで両足を抱えて座っているイリシアが、退屈そうな表情で横から話に入った。 今四人が天幕を張っているのは、王国の中央を流れる川にほど近い丘陵地帯のふもとである。街道整備に手が回らない現状、河川や水路が物流の要となっている。当然、舟溜まりとなる町や村は諸勢力にとっては確保するべき重要拠点となる。そしてそういう町や村は、自衛のために諸勢力の庇護下に入って守備のための兵力を派遣してもらうか、自ら傭兵を雇って自衛することとなる。 「……中原から流れてきた傭兵騎士団が街道を通るっつう情報が入ってる。規模にもよっけど、そいつら相手に一発カマして色々確かめる」 「わたし達の実力とかですか?」 「そんだけじゃねーよ。機体の仕上がり、工部の作業量、装備の出来具合、確かめなきゃなんねーことなんて、いくらでもあんだよ」 「そうですか。……それで、「帝國」が騎士を送り込んできたら、やはり戦うのですか?」 抱えている膝をぎゅっと抱きしめたイリシアが、少し硬い声でそう言葉を続けた。少女の言葉に、カンパネラもキルクルシアも口をつぐむ。 インクの乾いた書類を手早くまとめたアンドレアは、不機嫌そうにその太くて濃い眉を寄せた。 「お前らが「帝都」神殿本社所属の神聖騎士だっつーのは、こっちもよく理解しているってーの。向こうが「帝國」の旗を掲げているってんなら、手はださねーよ。だけどな、互いに身分偽装しているっつーなら話は別だ。そん時はこっちも気合入れてゆくぜ」 少女達を天幕に残したまま、書類を抱えて外に出たアンドレアは、いくつも並べられた天幕のうち最も大きなそれに入っていった。 「騎士モラシーニ、入ります」 「入れ」 がらがらとした声で出された許しを受けて、アンドレアはその天幕の中に入った。中には彼よりもさらに二回りは分厚い身体をした中年の眼鏡をかけた男が、机に向かって書類に目を通している。男は一度眼鏡越しに彼の事を見ると、一言「楽にしろ」とだけ口にしてまた書類に視線を落とした。 「彼女らの様子はどうだ?」 「緊張していますが、悪くはありません。最初は適当に弱い相手にぶつけて経験を積ませれば、次からはさらに上手くやれるでしょう。勝利の気持ちよさに逆らえる騎士はいません」 「そうか。ならば都合の良い相手がいる。キオスの町の太守が雇った傭兵騎士がこの先の舟溜まりの守備につくために移動している。機装甲一機に機卒三台というところだ。これを強襲する」 書類に一通り目を通し終えたのか、男は手元の書類をまとめて机の脇にのけると、地図を一枚広げて一点を指先で突いた。アンドレアは地図に視線を落とすと、軽く目をすがめた。 「ここの丘陵が奇襲にもってこいですね。町から適度に遠いですし、退路の確保も楽そうです」 「ではそこで相手を攻撃する。最初に出撃させるのは誰にする?」 「カンパネラが一番調子が良さそうです」 「では「ヴェルグンデ」を出撃させる。「ラインの黄金」の整備は順調だ。明日中に最後の微調整を終わらせろ」 「判りました」 陽に焼けた浅黒い肌をした男の命令に、アンドレアは背筋を伸ばして敬礼した。 天幕を出たアンドレアは、そのまま少女らの天幕に真っ直ぐ戻ろうとはせず、機装甲工部らが機体の整備を行っている作業場に足を向けた。 そこには昼間隊列に混じっていた二機の他に、真白いほっそりとした、しかし発する気配は二機を圧倒する機体が整備を受けていた。 「よう、進捗状況はどうだ?」 「はっ! 明日の朝第五刻には三機とも仕上がります」 「そうか。出撃がある。そのつもりで仕上げてくれ」 「判りました!」 機装甲工部らの報告を受けたアンドレアは、真白い機体を見上げて軽く頭をかいて呟いた。 「機神「ラインの黄金」の初陣かよ。「帝國」の「黒の二」を上回らねーとなんねーっつうのがきついんだけどな」
https://w.atwiki.jp/projectdiva_ac/pages/1152.html
これはレベル8中クラスかな?(予想) -- (緑茶) 2012-12-11 16 45 39 個人的にラス殺しだった…まぁ割と素直な譜面かと -- (名無しさん) 2012-12-18 14 48 45 miraiと同じく原曲まま。曲の長さはMSSさんに並ぶ -- (名無しさん) 2012-12-18 15 38 14 1番サビ終了後とかアウトロの交互ってまさか24分だったりするの? -- (名無しさん) 2012-12-18 18 30 38 あれは間違いなく24分。イヤイヤより速いよ -- (名無しさん) 2012-12-18 19 45 14 ミクとリンでだいぶ歌い方が違うけど,リンちゃんでやった方が譜面どおり歌ってくれるかなと思った。 -- (名無しさん) 2012-12-18 21 04 54 N=503、H=585 -- (名無しさん) 2012-12-18 22 05 13 交互は24分だったのかー。16分で叩いても一応繋がるっぽい? -- (名無しさん) 2012-12-19 10 41 33 詐称はないと思うよ 普通に☆8の強がクリアできてれば譜面見切れる ソースは俺 -- (名無しさん) 2012-12-19 20 51 37 詐称だな。追加前まで☆8残パフェ5曲(全部エクセ)だったけどラストのWRONGプギャーで閉店した ソースは俺w -- (名無しさん) 2012-12-19 21 04 25 ↑3ちなみにつながらないぜ。最後の1個が無反応WORST扱い→次の8分がSADで拾われてライフごっそり減る -- (名無しさん) 2012-12-19 21 05 42 ↑更にたち悪いことに餡蜜したらWRONG扱いだしな パフェ取るまでのリザはWRONGとSADしかなかった -- (名無しさん) 2012-12-19 21 10 08 ↑2俺完全それだわ ラストはほとんどつながらないで完走した時はライフが1/4くらいしかない -- (名無しさん) 2012-12-20 04 53 17 曲知らなかったから“それっぽく”叩いたら案の定ピチューンしたorz -- (名無しさん) 2012-12-20 18 19 55 例の4連打の部分 -- (名無しさん) 2012-12-20 21 28 27 ターンタタ タタタタン タッタ の部分は、●○○○○○●○○●○○●●●●○○●○○●○○ いやいやbpm170のときの3連打が17打/秒で、これは17.4打/秒。因みに激唱は13.33/秒 -- (名無しさん) 2012-12-20 21 31 56 初見でやってみたら連打は確かにキツかった あとはそうでもなかった -- (名無しさん) 2012-12-20 23 52 47 問題の交互部分は、感覚的にはmagnetやさどっちの32分に近い。同じやり方でほぼ繋がってる。 -- (名無しさん) 2012-12-21 02 55 50 EX初見だと配置に惑わされるけど、慣れれば速い交互連打。ただHOLD取りながらは至難の業だわコレ -- (名無しさん) 2012-12-22 00 47 45 4回目で何とか無事にスタダ、その後なかなかエクセに乗らない。やはり連打が繋がらないと駄目なのか。 -- (名無しさん) 2012-12-22 22 09 46 この曲のモジュールをミク蝶でやると二番の辺りで胸が物凄くちらちら見えてやばいwww谷間も確認できるし -- (名無しさん) 2012-12-27 09 55 26 初めてやった時は16分で交互打ってたから最後の4連打めが判定されずにそのままずれてライフギリなことが多かったけどようやくパフェった -- (名無しさん) 2013-01-01 08 51 45 「24分の距離を16分で表示してる」ってよく言われてるけど、よく見てみるとちゃんと24分表記になってるね。分からない人はSEGAの罠にまんまと引っかかってる。 -- (名無しさん) 2013-01-01 11 15 40 ↑確かに、16分表記だったら5連打になるはず。 -- (名無しさん) 2013-01-06 15 40 15 ↑1,2 いや、16分表記になってる。他の曲の16分表記と比べるとよくわかると思うから。 -- (名無しさん) 2013-01-08 20 26 07 正解は「24分よりは広く、16分より狭い」動画キャプって64ドット単位でグリッドライン引いてみれば分かるよ。たぶん24分配置だと重なりすぎてマーカーの種類が判別しにくいからだと思う。 -- (名無しさん) 2013-01-12 00 48 04 ↑ 16分よりちょい狭いのね。まあ実際に24分表記だったら見辛くて仕方ないだろうからね。 -- (名無しさん) 2013-01-12 02 52 34 24分表記にしたら見辛いと思うなら24分連打にしなければいい話だろがよぉぉぉぉぉ…(泣) -- (名無しさん) 2013-01-13 23 28 49 そもそも24分連打の要素が元曲に全く無いんだよね。元曲にそういう要素があるなら24分でも32分でも好きに入れろと思うけど。 -- (名無しさん) 2013-01-15 00 34 39 ↑ でも曲に合ってるし、この譜面結構気に入ってるんだけどな。やっぱ24分苦手な人多いのか。 -- (名無しさん) 2013-01-15 12 09 24 ↑2 ボーカル無いんだし伴奏よく聞こうぜ 難しくなるのがいやだっていうのはわかる -- (名無しさん) 2013-01-15 20 25 40 SAFEとかSADばかりでなかなか交互繋がらないと思ったら16分じゃなかったのね…紛らわしい 個人的にあそこは4連じゃなくて16分の3連でよかったのに -- (名無しさん) 2013-02-11 16 35 27 もー追加日から毎日のようにやってるのにパフェれん こいつだけで3万は飛んだぞ・・ -- (名無しさん) 2013-04-28 19 19 28 ↑の人ではありませんがやーっとパフェしましたー(´∇`)好きな曲・譜面なので嬉しいです -- (名無しさん) 2013-07-08 19 45 54 FTにて曲選択後にタッチスライダーを緑の(黄色の)部分を押し続けると、歌唱ボーカルのみミク(リン)になります。 -- (名無しさん) 2013-12-20 04 11 52 やっぱり高速4連打を早く叩きすぎるとFINE連発8分に繋がるとこでSAFE・・・「タカタカッ」と叩くと遅すぎたのか遅FINE・・・(´・ω・`) -- (虹音キョウ) 2014-03-30 11 35 22 mirai2ではトコトン(ボタンで)PERFECT取れた、が、何故にarcadeは☆9という難易度なのでしょうか? arcade怖い・・・ -- (秋奈多二梅雨) 2015-04-27 16 37 57
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1319.html
まる一ヵ月半ぶりの更新である。何故にこんなにも難産であったのか自分でもよく判らない。とりあえずこれで大北方戦争戦後のアイデシア達について書けるようになったということで。 まさか、との驚愕が最初にあった。タイミングは完璧だった。その切っ先は完璧に相手をとらえていた。だが真紅の機体を操るヴェストラは、ただの一閃で罠を喰い破り、ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲンの駆る「黒の二」と長剣一振りで対等に戦っている。ゲッツ隊長は「黒の龍神」を預けられている「帝國」最強格の騎士の一人。その彼を相手に格下の機体で対等に打ち合えるなどあり得ぬはずのことであった。 ゲッツ隊長の策は単純であるが故に確実に成功するはずのものであった。水の系統の魔道を使えるアイデシアが、魔力を込めた矢をヴェストラ将軍の足元に射て地面を泥濘と化さしめ足を止める。そしてゲッツ隊長が切りつける直前に地面を氷結させ将軍をその場にくぎつけにする。動けなくなった敵は、得物の間合いの差ゆえに隊長の大剣によって粉砕される、はずであった。 だがヴェストラ将軍は、地面が氷結した瞬間、長剣で地面を打ち割って跳びすさり死地を脱出したのである。 アイデシアは、ゲッツ隊長とヴェストラ将軍の一騎打ちに割って入れるかと目前の光景に見入り、すぐにその考えをふり捨てた。両者の剣戟は目には映れど見ることすらかなわない。ならば今ここで未熟な自分が切り込んだとて、それはゲッツ隊長の邪魔をするだけに終わろう。そう意識を切り替え周囲に視線を走らせれば、いつのまに展開したのかゴーラ帝国軍の機装甲が四〇余り戦列を組んで前進してくる。そして彼女の後ろには、わずか五百の帝國軍歩兵と二〇余りの「緑の三」と「白の三」が方陣を組んでいるばかりである。そして方陣の中央には第七軍団の軍旗がひるがえり、軍団長であるクァルトゥス・ブリタニクス・ドルースス将軍が馬上毅然とした態度で敵軍を見据えていた。 「将軍!、軍団長がそのように命を危険にさらすべきではありませぬ!」 「軍団長の命がかえりみられない時もある。今がその時だ」 「黒の二」によって拡大された知覚によってブリタニクス・ドルースス将軍とその副官のやりとりを「聞いた」アイデシアは、一度目をとじて覚悟を決めると僚機であるシャルルに向かって指示を出した。 『右翼は私が抑える。左翼は任せる』 『任せられたよ。そうだ、約束してよ。今夜の特配のお酒、晩御飯のお肉と交換しようよ。ボクがお酒を貰うから』 『……人を子ども扱いするでない。だが約束したぞ? 肉は半分でかまわぬがな』 『あはは。それでもいいよ。じゃあ後でね』 いつもと変わらぬ声色で笑ったシャルルに安心を覚えると同時に苦笑を浮かべ、アイデシアは左手の弓と右腰の矢櫃を棄て、左腰に佩いた大段平を抜き放った。そして三歩前に進むと呼吸とともに魔力を全身に循環させてから刀身に集め、切っ先を地面に突き立てた。「黒の二」から膨大な量の魔力が地面に流し込まれ、彼女の後ろに幅二〇呎長さ三〇〇呎のぬかるみが現れた。 これで敵はアイデシアの後ろに回りこむのも、アイデシアを無視して味方の方陣に数にものをいわせて切り込むのも難しくなったはず。そしてあえて背水の陣を敷いた彼女は一度大きく息をすうと、下腹に力をこめて大音声にて呼ばわった。 『我が名はアイデシア・ケイロニウス・イリュリア! 「帝國」の近衛騎士にしてケイロニウス・イリュリア公の妹姫なり! ゴーラの騎士達よ、この首獲って己が勲となすがよい!!』 ゴーラ帝国軍の機装甲戦列に向けて大段平を付きつけ叫んだアイデシアは、心中にて姉に詫びと別れの言葉を呟くと、刃を外側に刀身を寝かせて左肩に担ぎ敵の戦列に向けて「黒の二」を疾走させた。 ゴーラ帝国軍の騎士達は、さすがヴェストラ将軍直属だけあって豪の者達ばかりであった。咆哮をあげ斬りこんだ「黒の二」を盾を並べて正面から迎えうとうとする。そのまま突っ込むかとみせかけ、アイデシアは敵前にて機体を前のめりにし、踏み込んだ右足を体重をかけて全身を跳ね上げるように伸ばすと、水の魔道にて刀身を氷結させた大段平にて数枚の盾を横薙ぎに斬り払った。剃刀のごとく鋭く金剛石のごとく硬い刃は、まるで薄紙を切るがごとくに並べられた盾を両断し、正面の二機にいたっては左腕すら斬り飛ばされる有様であった。 アイデシアは、振りぬいた大段平を追うように機体を右側に滑らせると刀身を引き寄せ、刃を上向きに立てて左手で下から支えるように右肩の上まで持ち上げた。そのまま、ついと敵を誘い込むように後ろに三歩ずり下がる。だが敵もさるもの、左腕を失った二機を後ろに下げると、一〇機ばかりが戦列を離れて右へと回りこんでゆく。彼女が視界を広げて「見る」に、敵は方陣の各面に一〇機づつの機装甲をあて、包囲を固めた様子である。しかるに対峙する味方は、方陣各面に剽機装甲「緑の三」が四機づつに頂点に軽駆逐機装甲「白の三」が二機づつ。どうやら敵は、歩兵の到着を待って攻め寄せるつもりの様子で、一糸乱れぬ戦列に戦意が充溢しているのがひしひしと感じられるくらいである。 『「帝國」は高家が姫の戦乙女ぶり、まずはしかと見届けた。一対一にてゴーラの騎士に敗北はなし。我はアンディション家はヒューゴの息子フレドリク。その首貰い受けようぞ』 『ゴーラにては名高き騎士とお見受けする。この身も累代東方魔族より『帝國』を守護し続けてきた家に連なる者。ゆめたやすく討ち取れるとは思われぬことだ』 『言うたな。ならばゴーラ騎士の勇猛を見届けてから天上におもむくがよい!』 ごう、と吼えた騎士フレデリクは、青の地にところどころを黄色で飾った重機装甲にて戦列の前に進み出ると、盾を前にかざし長剣を高々とかかげて「黒の二」に向かって一歩踏み込んでくる。 その誘いに乗るようにあえて右側に一歩踏み込んだアイデシアは、水平に寝かせた大段平を右肩の上に構え、騎士フレドリクが突き入れてくる長剣にタイミングを合わせるように切っ先を打ち込んだ。長剣の切っ先は彼女の「黒の二」の肩部装甲をかすめ、大段平の切っ先は敵の冑をわずかに削るに終わる。そのまま寝かせた刃を右薙ぎ払おうとしたところで、相手が下げていた盾の縁が「黒の二」の腹部にしたたかに叩きつけられる。 その衝撃に視界を揺らされながらも、わずかに退くだけで耐えたアイデシアは、流れた大段平を手元に引き寄せ八相に構えた。 『……なんと硬い装甲よ』 『……………』 盾を叩きつけて体勢を崩させるつもりが、逆にたたらを踏まさせられるはめになった騎士フレドリクは、呆れたようにそう感嘆し盾を構えた。 アイデシアの「黒の二」は、彼女の魔力を増幅させた氷結魔術によって装甲が強化されており、生半可な攻撃は通らなくなっている。漆黒の機体の表面にうっすらと霜が張っており、その姿はある種の幻想的な美しささえ感じさせた。 二機は互いに切っ先を揺らしながらじりじりと左右に機体を動かし、相手の隙をうかがう。そして、先に仕掛けたのはアイデシアの方であった。 八相から振り下ろし、逆風に切り上げ、袈裟に斬りつけ、逆袈裟に振り上げる。右薙ぎ、左薙ぎと大段平の切っ先が構えられた盾の斬り痕を残し、刺突が盾をうがつ。その猛攻を盾をつかっていなしそらし、時に長剣をもってカウンターを入れることで致命的な一打は放たせない。 明らかに戦士としての技量は騎士フレデリクの方が上であったが、いかんせん機体の性能が格段に違った。彼の打突は幾度となくアイデシアの「黒の二」に当たっていたが、しかし魔術強化されたその十二斤野砲の直射にすら耐えられる装甲を貫くには足りないでいた。かといって装甲の隙間を狙おうにも、彼女は魔導は「空」相に覚醒した魔導騎士である。穿ちくる切っ先を己の機体の装甲のどこで受けるか「観測する」ことで、致命的な一撃を食らわぬ体捌きをなしえるくらいの実力はある。 十数合を打ち合って埒があかぬと焦ったのか、騎士フレデリクが弾かれた長剣を引き際に盾を「黒の二」の顔面に打ち込もうとしたその瞬間、アイデシアは機体をかがませて間一髪盾の下にくぐりこむと、大段平を一閃させて踏み込まれた敵の左足の膝を両断した。そのままバランスを崩し倒れる機体の喉元に切っ先を突き入れる。 『我アイデシア・ケイロニウス・イリュリア! ゴーラの騎士フレデリクを討てり!!』 アイデシアの勝どきに背中の帝國軍の将兵は歓声を上げ、目前のゴーラの騎士らは怒りに猛る咆哮を上げた。 アイデシアと騎士フレデリクの一騎打ちの間に、ゴーラ軍は帝國軍の方陣の包囲を完全なものとしており、さらには千に届こうかという歩兵が機装甲の後ろに戦列を組み終えている。 『ゴーラの騎士達よ! かの御敵討ち取って恥辱をそそぐべし!!』 指揮官の怒声に咆哮を上げたゴーラ軍の機装甲らが、なだれを打って帝國軍の方陣に襲い掛かった。 それからあとの乱戦の中、アイデシアは無我夢中で剣を振るった。泥濘を背後に後ろから襲われるのだけは避け、致命的な一撃以外は装甲で受けてしのぐ。無理して敵を撃破するよりも、敵の攻撃を避け逸らすことにつとめ、とにかく一機でも多くの敵を自身に引き付ける。 そうして護りを固めたのが功を奏したのであろう。機体全体が切り傷に埋め尽くされ、アイデシア自身の気力も体力も魔力も尽き果てつつあった頃合、右後方より「帝國万歳!!」のかけ声とともに無数の剽機装甲と騎兵が戦場になだれこんできた。 『どれほどの数の差であろうと! 今日の私は魔王すら凌駕する存在だ!!』 剽機装甲らの先頭に立つ「緑の三」の乗り手の騎士が、嬉々として長剣を振るい次々とゴーラ軍の機装甲を屠ってゆく。自機の周囲に倒した機装甲や吹き飛ばした部品で足の踏み場もない有様の中、アイデシアは精も魂も尽き果てた様子で帝國軍の機甲騎兵集団がゴーラ軍を追い散らしてゆくのを眺めていた。 「……生き残ったのか」 呆然と呟いたアイデシアの声は誰にもとどかず、ただ彼女の「黒の二」の操縦槽の中に響いただけであった。
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1017.html
二年ぶりにして、ようやく完結した。もし楽しみにしていて下さった方がいらしたら、まことに申し訳ない限りである。そして、エウセピアが、何故か階段を登るように突如成長してしまった。なんというか、想定外であったし、唐突感はいなめない。まあ、そこは追々考えてゆくものとする。 その日のユリウス・マクシムス帝都屋敷での晩餐は、メルツェデシアとともにフェルヌスをホストとしてエウセピアがもてなされる形で進められた。 エウセピアが通された食堂は、精霊銀と緋色の綺羅で飾られた精緻な彫刻のほどこされた大理石の柱が多数並び、その合間にユスティニアヌス帝時代末期から隆盛し始めた強調派の名画が飾られていて、そして天井から複雑な紋様と形状の透明硝子を組み合わせた灯篭が部屋全体を柔らかな魔道光で照らしていた。ユリウス一門の家色である緋色の地に金糸で刺繍された絨毯や椅子は、彼女の目にはあまりにも豪奢で重々しく、足を踏み入れることすらためらわさせるものがあった。 「初めてともなれば、呑まれるのも仕方が無いか」 「貴方もそうでしたわね。この子は修道院育ち、こういう場には慣れておりませんもの」 「ははは。確かにお前の言う通りだ」 エウセピアは、メルツェデシアに手を引かれて真白いテーブルクロスも目に鮮やかな食卓につき、使用人に引かれた椅子にそっと腰を下ろした。普段樫の木の椅子に座布団を敷いて座っている彼女には、柔らかく、しかししっかりと腰や背を支えてくれる椅子の座り心地は、それだけで驚くほどのものがあった。そんな少女の様子を見て、夫妻は穏やかに笑っている。 晩餐の最初は食前酒である。白葡萄を発泡させた軽い口当たりのもので、ほとんどアルコールを口にしたことのないエウセピアに気を遣ったものであった。 「旧き良きユリウスに」 フェルヌスが細長いグラスをかかげるのに合わせてエウセピアもグラスを持ち上げた。そしてそっと唇をつけて一口含んでみる。 わずかな酸味とアルコールの苦味と、泡の刺激。そしてそれらがかもし出す軽いが深い口当たりに、エウセピアは、どう反応したらよいのか判らず、そのまま酒精を嚥下した。口直しのチーズをメルツェデシアに勧められ、一つ口に入れて、そのクリームのような味わいに目を白黒させる。彼女にとってチーズとは、固く酸味の強い噛み砕かねばならぬものであって、舌の上で溶けてゆくものではない。 「時には美味い食事もよいものだよ。もっとも、毎日だとその美味さに慣れてしまって楽しむことができなくなるがな」 まるで紙の様に薄い白磁の皿に載せられて出てきた前菜は、甜菜の葉を地に酢漬けの野菜を盛ったものであった。精霊銀のナイフとフォークで野菜を葉でくるみ、口に運ぶ。軽く茹でてアクを抜いてある葉は、歯ごたえがあって、そして酢漬け野菜とよく調和した味わいであった。 「聞くところによれば「学院」の食事は軍隊式だそうだな。贅沢に慣れきった子供らには節制を知る良い機会であろうし、食べられれば十分という子供らにとっては腹を満たすだけではなく味を楽しむことを覚える良い機会だろう」 続いて、サワークリームが浮かべられた黄金色に透き通ったスープが供される。エウセピアは、一口それを含んで、その深い味わいに驚いた。学院で出される諸々を一緒くたに煮込んだそれとは全く別物の、軽やかで鮮やかな味わいのものである。口直しのパンも、真白く柔らかく、まるでお菓子のようであった。 「満腹は眠りを誘うが、ひもじさはさもしさを誘う。ともに勉学の敵だな。この案配が難しいところだよ」 魚料理は、白ワインで鱸を蒸してクリームソースを和えたもので、そして幾種類もの香草の味わいの調和が、淡白な白身に味わい深さを与えている。魚料理といえばニシンの酢漬けくらいしか口にしたことのないエウセピアにとっては、白身魚の身そのものの味わいというものは、生まれて初めての経験であった。 「育ち盛りにとっては、肉を口にできるとできないとでは身体の作りが変わってくるからな。かといって肉のみでは贅肉がつくばかりで困る」 最初の肉料理は、子牛の肉をたっぷりのバターと香辛料で焼いたもので、ナイフを入れた瞬間に肉汁があふれ出し、ソースと混じって香ばしい匂いが香ってくる。肉質はまるでバターのように柔らかく、まさに舌の上でとろけるかのようであった。 「頭を使うと、やたらと甘いものが欲しくなる。だからといてヴァレニエばかり舐めるのもいかんな。あれはあくまでお茶請けだよ」 口直しの冷菓は、柚子練りをシャーベットにしたものである。さっぱりとした柑橘類の味が脂にまみれた舌に心地よい。 「よく学ばせ、よく遊ばせる。頭も身体も一緒に使わさせてこそだな。どちらか片方だけでは、埋もれた才能を十二分に咲かせられんだろう」 次の肉料理は、燻した鴨肉に葡萄酢のソースを絡めサワークリームを添えたもので、鴨の濃い味わいをよく寝かせた葡萄酢と新鮮なサワークリームが一層深くしていた。家禽の肉といえば、筋張ったぱさぱさのものしか口にしたことがなかったエウセピアにとっては、柔らかくもしっかりとした歯ごたえの鴨肉の味わいは何度噛んでも飽きることのないものであった。 「一つの味では料理としては物足りんのと同じ様に、得意とするものが一つしかない人間はつまらんな。いかに多くの要素を調和させて、その時その場において己を演出してみせるか、だ」 そして出された野菜料理は、ジャガイモ、キュウリ、ニンジン、蕪の酢漬け、固ゆで卵、蟹の白身、その他の野菜を、卵黄と葡萄酢とオリーブオイルと香料を使ったソースで和えたもので、油濃いながらさっぱりとした食感のものであった。 「健全な肉体に健全な精神。この二つを備えることは中々難しくてな。だからこその教育なわけだ」 晩餐の最後に出されたのは、摘み取ったばかりの新鮮なイチゴを使ったケーキであった。お椀状のクッキーの皮の中にイチゴとカスタードを詰めて焼き、よく冷やしたものである。 エウセピアは、初めて食べる贅を凝らした料理に満腹し、そして、申し訳なく思った。一生涯、このような贅をこらした料理を食べる機会の無い子も「学院」には少なくない。そして、自分がこのような贅沢を許される身だとは到底思えない。 やはり自分には修道院こそが落ち着く。 そんなエウセピアの思いを知ってか知らずにか、最後のお茶を飲み干したフェルヌスは、少女を自分の書斎へと誘った。 エウセピアは、男性と二人きりで一つ部屋にいた経験がない。だから、フェルヌスの書斎からメルツェデシアが退室した時、心細さに思わず夫人のことをじっと見つめてしまった。男性というものは、彼女にとって完全に未知なる存在である。だからこそ心にわきあがる恐怖に、ぎゅっと制服の裾をつかんで耐えるしかできなかった。 そんなエウセピアの様子に、フェルヌスは軽く笑って応接椅子を勧め、香りつけにブランデーをわずかに足した紅茶を淹れて彼女の前に置いた。そして自分も少女の前に腰を下ろし、たっぷりとブランデーを注いだ紅茶を口にした。 「男と二人きりになるのは初めてか。まあ、おいおい慣れてくれればよいさ」 「はい」 白磁の茶碗を手にとって口をつけ、酒精の深い芳香に驚きつつも喉をうるおす。気がついてみれば、緊張のせいか喉が渇ききっていた。 「カトゥルス・ルキウス家の娘から手紙を貰った。お前が迷路の中に閉じ込められているかの様に辛そうだ、とあったよ」 フェルヌスに告げられた事実に、エウセピアは驚愕に目をみひらいた。まさかウェーラがそこまで心配してくれていたとは。 感極まったエウセピアは、制服の裾を握る手を震わせ、そしてうつむいたままぽろぽろと涙をこぼした。 ひとしきり泣いてから落ち着いた頃合を見計らって、フェルヌスはエウセピアにハンケチを差し出した。 「良い友人を得たな」 「……はい」 差し出されたハンケチで涙をぬぐったエウセピアは、不思議と軽い心持ちで笑顔を浮かべることができた。 そんな彼女の表情にあわせるように深い微笑みを浮かべたフェルヌスは、腰をずらして上半身を応接椅子の背もたれに預け、ずいぶんとくつろいだ様子となった。 「そういえば、901重機のエイビシアからも話を聞いたよ。難儀しているそうだな」 「……………」 その言葉にエウセピアの顔から表情が消える。 だがフェルヌスは、そんな彼女を見てもくつろいだ姿を崩さず、穏やかな口調で話を続けた。 「気構えもできぬうちに軍隊に放り込まれれば、誰でもそうなるさ。本来ならば半年一年かけて兵隊としての心構えを育てるのだからな。まあ、お前はよくやっている方だと思うよ」 一兵卒から帝國元帥にまで登りつめたフェルヌスの言葉は、エウセピアの予想だにしていなかったものであった。少女にとって今の自分の体たらくは、お世辞にも良くやっているなどとは言えない。事実、教練に行くことも禁止され、休養を命ぜられている有様なのだ。叱られこそすれ、良くやっているなどと言われるわけがない。 「休養を命ぜられたことを恥じているようだな」 「……はい」 「人間、風邪もひけば、腹も下す。それを無理に働かせたところで、身体を壊して倒れるのがオチでな。そうなっては元も子もない。エイビシアは、お前に無理をさせ過ぎたのだろうよ。まあ、兵隊を教育するのは中々に難しくてな。そこの案配は古参の従士が心得ているものだが、なまじ相手が古人だからと、自分達だけでなんとかしようとしたのだろうな。兵卒従士の時期が短かった連中がよくやるミスさ」 「そうなのですか?」 「ああ。本来ならば助教に古参の従士をつけんといかんのだが、教育方針やら機密保持やらで全部を士官だけでやろうとしたための失敗だな。新兵の尻を蹴飛ばし、無理をやらせ、正しく憎まれるのは助教役の従士の役割だ。教官役の士官は、一歩引いたところから学生を見守っていて、それぞれに合わせた形に指導方針を立て、助教に任せるのが仕事さ。少なくとも騎士見習いを育てるならば、そうやるべきだな」 フェルヌスの話は、エウセピアにとっては初めて聞くもので、そしてなんとなく納得のゆく内容であった。プロヴィウシアやナタリアは、厳しい教官であったが、それでも学生らが内心で頼り懐く事ができる相手であった。少なくともエウセピアには、二人の厳しさを憎むようなことはできそうにない。 「そこら辺はきちんと正すように話は通しておいたよ。お前の調子が戻って復帰する頃には、教官役の騎士と助教役の従士が配属されて、あるべき形で教育が始められるはずだ」 「……………」 「そんな驚いた顔をするな。これでも元帥だからな、それくらいの事はできるさ」 「……ありがとうございます」 エウセピアはこれまで全く忘れていたが、メルツェデシアの夫は、帝國元帥にして、南方辺境公であり、元老院院内総務を勤める、つまり「帝國」の中枢で枢要な任についている重鎮なのである。実はそのつもりになれば、できぬことはまず無いほどの権力を有していた。 深く頭を下げたエウセピアの姿に微笑みを浮かべると、フェルヌスは話を続けた。 「まあ、それはそれとして、聡いお前のことだ。自分が何故調子を崩したのか、気がついているのだろう?」 「……はい」 「ここまで話を振っておいてなんだ、辞めたければ近衛騎士なんぞ辞めてしまってかまわんのだよ」 「!?」 「そんなに驚くことか? 修道院暮らししか知らぬ小娘を、古人だ、機神に選ばれた、と軍隊に放り込んでしごくのは、普通に考えればおかしくはないかな? 軍務は、貴族の義務だが、同時に権利でもある。後備の兵卒くらいならばともかく、強制されて騎士をやるというのは道理に合わん」 「ですが、……私が近衛騎士になったから、多くの一門の方が貴族の地位に戻れたのでは……」 「陛下に剣を向けておいて、帝國諸侯を名乗れられると思うことの方がおかしかろうよ。まあ、大赦の勅旨は下されたし、廃された家も爵位を戻していただけたからな。ここでお前が近衛騎士を辞めたところで、誰にも文句は言わせんよ。それくらいの力は持っているつもりさ」 「……………」 エウセピアは、これまで自分を支えていた何かが、がらがらと音を立てて崩れてゆくような心もちとなっていた。これまで自分には他に選択肢はないと、そう言い聞かせてがんばってきたのは何のためであったのか。 「「学院」で勉強を続けたいのであれば、心配することはない。エウリュネス導師は道理をわきまえられた方だ。修道院に戻りたいというのなら、どこか適当なところを探させよう。お前はうちの娘だ。それくらいのわがままを言ってもかまわんよ」 「……私は」 「うむ」 「私は、私には、仲間がいます」 これまで信じていたものが壊れた世界で、エウセピアは、ただ一つ残ったものを心に浮かべていた。 そんな彼女の様子を見てとったフェルヌスは、穏やかな表情でうなずいて話の続きをうながした。 「……私は、その人のそばにいたい。その人の友人でいたい。……私は、私でいたい」 「そうか」 「私は、逃げません」 「そうか」 エウセピアの言葉にフェルヌスは、居ずまいを正して正面から彼女の目を見つめた。少女は、その重い視線をしっかりと受け止め、眼をそらそうとはしなかった。 「どうやら、俺は一つ間違っていたようだ。お前も立派な兵隊になっていたのだな」 退出したエウセピアと入れ替わるようにしてメルツェデシアが書斎に入ってきた。フェルヌスは、応接椅子に座ってブランデーを口にしながら、少し寂しそうな表情で微笑んだ。 「そのような顔をなさらないで」 「……娘に甘えられる機会を逸したのだよ。それを残念に思わない男親はいないさ」 多少拗ねの混じった夫の言葉に、メルツェデシアは微笑んで隣に腰を下ろした。 「お忘れかもしれませんが、あの子は、自分の意思で軍人になることを選んだのですよ」 「そういえばそうだったな。まあ、なんだ、あの華奢で痛々しい娘が、随分と肝が据わったものだ。喜んでよいやら、寂しがってよいやら」 「見守ってあげましょう。それが私達にできることですもの」 夫の節くれだった大きな手に自分の手を重ね、メルツェデシアはそう微笑んだ。 「カトゥルス・ルキウス家の娘には大きな借りができたな。まったく、どれだけの利子をつけて返せばいいのか見当もつかん」 妻の心遣いに照れたように呟くと、フェルヌスはカップの中のブランデーを一気に煽った。 「あの子は、今日はどうすると?」 「もう「学院」に戻るそうです」 ユリウス・マクシムス家の馬車に乗ったエウセピアは、背筋を伸ばし、軽く目を閉じていた。 メルツェデシアに「学院」に戻ると言ったが、その前にやらなければならない事があった。それを為すための決心を、自分の心の中で確固たるものに固めてゆく。 それを思うと、お腹のあたりの辛いのがとても酷くなる。 だが、もうそれに負けることはない。最初からこうすればよかった、と、今になってはそう思う。自分の弱さが、臆病さが、多くの人に迷惑をかけ、心配をかけた。だが、それも今日で終わらせる。 「お嬢様、到着いたしました」 「はい。……ありがとうございます」 御者に声をかけられ目をひらいたエウセピアは、自分で扉を開けて馬車から降りた。 目前には衛兵が立哨していて、そして銃剣をつけた小銃の銃口を自分に向け、誰何してくる。 「第765教育隊所属エウセピア学生。教育隊長にお話するべきことがあって参りました」 夜の座学が終わり、無名は、フェイトと別れて自室へと営舎の廊下を一人歩いていた。 独立近衛第901重機甲兵大隊は、その主力を皇宮に駐屯させており、この駐屯地はあくまで支援業務を行うための場所となってしまっている。そのため当然のこととして、営舎に居住する兵士の数は少ないものとなる。無名が寝起きしている営舎は騎士用のものであり、実質的に住まっているのはフェイトと二人きりといってよい有様であった。 だから、見知った気配を感じ、その中に明らかな敵意がこめられているのを確認して、無名は、ようやくその時がきたことを理解した。 彼女の面には、知らずのうちに笑みが浮かび、歪められた口から犬歯がむき出しとなる。 腰に差した短刀を抜き、軽く目を閉じて魔力を循環させる。 再度開かれた瞳は、青を基調とした虹色の光彩にいろどられ輝いていた。 廊下に差し込む月の蒼い光が、暗い影を落としている。 その闇の中でエウセピアは、左手で腹を掴みつつも、じっと彼女が来るのを待っていた。 彼女が来ないという可能性を、エウセピアは全く考えていなかった。むしろ彼女はずっと待っていたのではないかと、今になっては思う。 今ならば、友人が言ったことも理解できる気がする。彼女は他に言葉を知らないのだ。だから、彼女に判る言葉で理解させないといけない。悪いのは自分だ。今の今までずっとこんな簡単なことに気がつけなかったのだから。 どれほど待ったのだろう。ほんの一瞬であったような気もするし、一晩中待っていたような気もする。こつこつという足音とともに、ぞわりと背筋を怖気立たせる気配が近づいてくるのが判る。それにあわせて、お腹の辛いのが一層酷くなってゆく。 だがエウセピアは、歯を食いしばり、全身に魔力を循環させて、その時を待った。 そして、彼女は、来た。 暗闇の中に、青い双眸が魔力を帯びて昏く輝いている。 圧倒的な、絶対的な、殺意と歓喜が、重圧となってエウセピアを押し潰し、跪かせようとする。 怖い。 恐い。 畏い。 エウセピアの脳裏が、怯え一色に塗りつぶされてゆく。 悲鳴すら上げることすらできない。 背筋をべっとりとした脂汗がつたい、手の平が震えるのを止められない。 心が折れそうになるのを、必死になって支える。 今となっては、たった一つの寄る辺となった友のことを思い、心を支える。 今ここで逃げてしまえば、もう言い訳はできない。 二度と戦う事はできない。 そして、二度と逃げるつもりもない。 強い。 そう、コワイのだ。 だから、叫んだ。 吼えた。 なんでもいい、声帯を震わせ、気を放ち、重圧をはねのけられればいい。 ぎちり。 奥歯を噛み鳴らし、拳を握る。 視線に力をこめて、青い双眸をにらみ返す。 息を整え、下半身に力を入れ、両足で踏んばる。 ぞわり、と、心の中から何かが目覚める。 黒く、昏いそれが、鎌首を持ち上げ、声をあげる。 「がああああああああああああああああッッ!!」 吼えた。 吼えた。 吼えた。 暗闇の中で、青い双眸が、咆哮に合わせてにぃと嗤う。 嬉しそうだ。 楽しそうだ。 こんなにも待ち望んでいたのか。 こんなにも待ち望まれていたのか。 済まなかったと思う。 悪かったと思う。 ならば、付き合おう。 とことんまで付き合おう。 どちらかの命尽き果てるまで。 放たれた氷槍は九つ。どれか一つでも命中すれば、相手を貫き、内側から凍らせ、絶命させる必殺の攻撃である。 だが無名は、それを避けた。 ゆらりと、まるで踊るかのように身体を舞わせ、エウセピアの放った氷槍をことごとく避けてのけた。 そのまま、するりとエウセピアの懐に入ってこようとする無名を、氷壁を張って防ごうとする。 だが、張られた氷壁は、短刀の一閃によって胡散霧消し ただの魔力のもやへと変わり消え去る。 つるりと床を滑るようにして近づいてくる無名を前に、必死の思いで考える。 直接の攻撃は効かない。避けられるか「殺され」る。 ならば、凍らせる。この廊下の空間ごと、凍らせる。 だが、その思考の間に無名は、自身の間合いに入っていた。 気がつけば跳び来る彼女の短刀の切っ先に、思わず我を忘れて身を縮こまらせて廊下に転がる。振るわれた一閃が自分の長髪をいくらかなりとも断ち切り、宙に舞わせる。 「いいいいいいいいいいッッ!!」 悲鳴とも叫びともつかぬ声をあげて吼えたエウセピアは、無様に床の上に転がったまま、自分の周囲全ての空間を一瞬で氷点下へと凍らせた。 だが、その時には、無名はすでに彼女の視界から消え去っていた。 エウセピアは、そのまま壁に当たるまで床を転がり続け、なんとか無名の姿を捉えようとした。 ごつんと壁に身体がぶつかり、動きが止まる。と、同時に、ひやりとした気配を首筋に感じ、散らせた冷気を氷礫に変えて四方八方に飛ばす。その反射的な攻撃に刃筋を逸らされたのか、さっと黒い影がエウセピアの横を飛び去り、首筋にさらりとした痛みを残していった。 黒い影が浮かべている青い光は、喜びに満ちて輝いている。 じくりと痛む首筋に指をはわせたエウセピアは、文字通り紙一重で頚動脈を断たれずに済んだことを知った。 この場所では勝てない。 この場所では、無名を捉えられない。 ならば。 指先が傷をはった一瞬で、彼我の実力差を理解したエウセピアは、無名が跳ぶその瞬間に、建物の外から廊下全てを氷槍で掃射した。 当直士官室でエウセピアのことを待っていたナタリアは、振って湧いた諸々の問題について頭を悩ませていた。 先日の帝國元帥ユリウス・マクシムス南方辺境公の突然の訪問と、学生の教育についての質疑応答の結果の現体制の不備について指摘を受けて、彼女らは指導方針の一からの見直しを余儀なくされている。教育責任者のプロヴィウシアは、急ぎシルディール元帥の下へと飛んでゆき、今頃爾後の方針変更について会議をもっているはずである。ユリウス・マクシムス元帥に同行していたキュリロス機甲兵総監の苦虫を噛み潰したような表情が、自分達がどれだけ大きなヘマをやらかしたのか如実に物語っていた。いかに自分達がシルディール元帥直属の部隊とはいえ、軍事参議会常任議員にして、「帝國」政府の予算と決算を審議する権限を有する元老院の事務一般の総責任者である院内総務を相手にしては、機密をたてに突っぱねるなど匂わすことすらできはしない。 とりあえず副帝レイヒルフトの元にまで話が回っていないことだけが明るい材料である。まだ自分達の首は皮一枚でつながっている。これまでは機密保持を優先して変則的な体制でやってきていたが、さすがにそのやり方を変更しなくてはならないことをナタリアは心の底から理解していた。 かといって、正規の教育体制を組むためには、十分な能力と経験と実績と持ち、かつ機密保持について信用できる騎士と従士をかき集めなくてはならない。そして、そんな貴重な古参兵を差し出してくれそうなお人好しの部隊など、今の人員不足に苦しむ帝國軍には絶対に存在しないことも彼女は理解していた。 とりあえず当たれるだけの伝を当たり、これまでの「貸し」を回収し、借りれるだけの「借り」を作らねばならない。プロヴィウシアと二人合わせても、765教育隊と、来年度編成される766教育隊の分の教官と助教を集められるか、全く見積もりが立たない。こういう時にシルディール元帥の人望の無さが仇となる。魔導の導師ならば一山いくらで集められても、経験豊かで信用できる教官と助教を必要な数だけ揃えては貰えない。 ナタリアが頭を抱えてうんうんうなっているその時、屋外からなじみのある魔力の波動を感知した。 何事かと思い、士官当直室の窓を開けてみれば、営舎の方でエウセピアが誰かと戦っている。「観る」事が苦手なナタリアですら、はっきりと判る程の膨大な魔力の奔流である。 即座に機神「黒の龍神」召喚の神具である軍刀を引っ掴むと、ナタリアは「光」相の流れを作り、夜空へと跳び上がった。 営舎の廊下を文字通り粉砕したエウセピアは、そのまま外へと転がり出て、自らの周囲を冷気と氷礫を高速で周回させて防御に充てていた。 無名の動きは素早く、とてもエウセピアの目では追いきれない。ならば、できる限り広い範囲を自らの魔力で埋め尽くし、相手を捉えねばならない。閉鎖された空間では、無名の上下左右関係無い自由な動きに翻弄されるだけである。ならば、足場の無い広い空間でこの身を餌に彼女の攻撃を誘うしか他に方法がなかった。 自分のいかなる攻撃も、無名には通用しない。例え機装甲すら打ち砕く一撃であっても、彼女ならば「殺す」ことができる。 エウセピアは、あらためて自分が対峙している相手の滅茶苦茶さ加減を思い知らされていた。もはや後は無い。ここで無名を倒すか、自分が殺されるか、二つに一つである。 だからこそ、覚悟は終わっている。わずかな甘えもためらいも、無名相手では死に直結する。 死ぬのは恐い。 死ぬのは嫌だ。 なんとしても生き残り、そしてもう一度彼女に会いに行く。 その想いだけが、今の絶体絶命の状況でエウセピアを支えていた。 そのぎりぎりに張り詰められた緊張の先で、無名が動いた。 エウセピアの巡らす冷気の奔流に直接突っ込んでくるような真似はしない。魔力の流れを適切に読み、そのわずかな隙間を斬りこじ開け、その身を滑り込ませてくる。 捉えたと思った次の瞬間には、次の隙間にその身を滑り込ませている。とてもではないが、捉えてからの攻撃では間に合わない。 そして、その動きを先読みすることもできはしない。 自分の全身をわし掴みにする死の恐怖と戦いつつ、エウセピアは、唯一の勝機となる一瞬を待ち続けた。 そして、双眸を殺気に青く輝かせている無名が、エウセピアにあと一歩というところまで近づいた瞬間、彼女へと向けて両手を突き出した。 持ってゆけ。 この両手を持ってゆけ。 だが、その瞬間を、私は待っている。 その瞬間、私の血潮がお前を凍らせる。 持ってゆかねば、この両手から放たれる冷気が私ごとお前を凍らせる。 その時どちらが生きているかは運次第。 さあ、来い。 私は待っている。 だが、その瞬間はこなかった。 営舎へと虚空を跳んだナタリアは、瞬時に軍刀を抜き放ち、「黒の龍神」を召喚できる体勢のまま営舎の屋根へと着地した。 その彼女の眼下では、営庭を冷気で薙ぎ払うエウセピアと、その冷気の流れに隙間をこじ開けて突進する無名の姿があった。二人の間には、紛れも無い本物の殺気が交わされている。誰がどう見ても、二人が殺しあっている事に相違はない。 エウセピアが魔力を篭めた両手を突き出し、無名が必殺の一閃を放ったその瞬間、ナタリアは刹那の間に「光」「闇」両相の二重螺旋の流れを構築し終わっていた。そのまま二人の古人を絡めとり、螺旋状に旋回させて空中高く放り上げる。 並みの人間ならば、それだけで気を失っていてもおかしくはない加速度をつけて吹き飛ばされた二人は、そのまま放物線を描いてナタリアの前に落下してきた。 「きゃああああああああっっ!?」 「うわああああああああっっ!?」 何が起きたのか判らないまま悲鳴を上げて落ちてきた二人をナタリアは、二重螺旋の流れで手荒く受け止め、そのまま自分の前に転がした。 そして、呆然としたまま硬直している二人に向けて、ナタリアは、本気で怒声を浴びせた。 「貴様らッ、何をしているかッ!!」 ひっ、と息を呑んだ二人は、ぎろりと睨みつけるナタリアを前にして、がたがたと震えながら抱き合っているしかできなかった。 「どうやら我々は、お前達を甘やかし過ぎたらしい」 殺気に爛々と輝くナタリアの紫色の瞳にねめつけられ、エウセピアと無名は、泥まみれ氷まみれで直立不動の姿勢のままだらだらと脂汗を垂らしている。 二人を当直士官室へと文字通り窓から放り込み、自らも室内に降り立ったナタリアは、二人に気をつけの姿勢をとらせ、自分はゆっくりと二人の前を行き来している。二人とも、ナタリアに叱られ、怒鳴られたことはあっても、本気で怒り狂っている彼女を見るのは初めてだけに、何をどうしたらよいのか全く思考が働いていない状態にあった。 「お前達に各種戦技を教導したのは、仲間内で殺し合いをさせるためではない」 かつかつと軍靴の踵が床に打ちつけられる音が、士官当直室内に響く。 「二人とも喜べ。その有り余った元気を存分に奮う機会を呉れてやろう。丁度教育体制の刷新が検討されているところだ。お前達が泣いたり笑ったりできなくなるくらいみっちりとしごいてやる。どうだ、嬉しいだろう? なにしろ営舎を半壊させ、営庭をほっくり返すほど元気が有り余っているのだからな」 かつん、と、踵を鳴らして二人の前で足を止めたナタリアが、肉食獣が舌なめずりするような微笑を浮かべて宣言した。 「二人とも、これから朝から朝まで付きっ切りで教導してやろう。そうだ二人とも、「学院」の新年度まで、ここで、だ。当然、勉強も私が見てやる。嬉しいだろう? 新年度には二人そろって御学友、というわけだ」 ナタリアに散々怒られた後、エウセピアと無名の二人は、軍医の診察を受け、身体を綺麗にして服を着替えてから、営倉に叩き込まれた。 半べそをかいている二人は、すえた臭いのする薄くて固い毛布を身体にぐるぐる巻きにまきつけて藁布団の寝台に横になった。すんすんと鼻を鳴らしつつ、背中を向けて横になっている無名に、エウセピアは、自分はどうして彼女相手にここまで思いつめていたのだろう、と、今更ながらに思った。 ナタリアに怒られて泣きべそをかく無名なんて、エウセピアの想像の範疇の外の存在である。彼女は、もっと恐ろしく、傲岸不遜で、理不尽な存在であったはずだ。こんな子供みたいに縮こまっている無名なんて、無名のはずがない。 「お前が悪いんだ」 あげく、こんな滅茶苦茶なことを言ってくる。 さすがにむかっ腹が立ったエウセピアは、怒気を含ませた声で言い返した。 「私は悪くありません」 「お前が悪いんだ」 「悪いのは貴女です」 「悪いのはお前だ」 もう子供の喧嘩である。ほんのついさっきまでの、あの恐怖と死の具現であったような彼女は、もういない。いるのは、子供みたいに駄々をこねる少女である。 「私の何が悪いんです」 「お前が弱いから悪いんだ」 「……………」 理解できない。無名が何を言っているのか、エウセピアには理解できない。 エウセピアは、自分が未熟であることを理解している。いや、理解させられた。瞬時に広域を制圧できる自分を、ただ魔眼と体術のみで殺せる無名を前にすれば、己の技量がどの程度か嫌というほど自覚できる。 だが、自分が弱いから悪いという理屈が判らない。 クラウディアなら、無名が何を言おうとしているのか、判るのだろうか。多分判るのだろう。だからこの少女は、あれほどまでにクラウディアに懐いているのに違いない。 「私の何が悪いのです」 「逃げただろ」 逃げた? いつ? エウセピアは、必死になってこれまでの無名との関わりを思い出そうとした。だが思い出されるのは、自分がひたすら彼女に怯えていた日々のことだけである。だが、彼女が言いたいのは、そういう事ではあるまい。 「私がいつ逃げたのです」 「前」 「だから、いつ」 「俺がにらんでから、ずっと逃げていただろ」 思い出した。無名がクラウディアに絡んでいて、それを止めようとして殺気を浴びせられた時。そう、確かにあの時から、ずっとエウセピアは彼女を避けていた。本当に恐かったのだ。あの時の無名は。 「……………」 「お前が逃げなければ、あいつは怒ったりしなかったんだ」 ああ、そうか。そういうことか。 ようやくエウセピアは納得がいった。 そう、余りにも簡単で単純なことで、そして自分が未熟だったから、判らなかったこと。 駄目だ、もう怒れない。こんな子供を相手に本気で怒るなんて、もう自分にはできない。 「そんなに、寂しかったのですか」 「……………」 「クラウディアに会えなくて、そんなに淋しかったのですか」 ぐるぐる巻きの毛布にもぐりこんでしまって、もう無名の頭すら見えない。だからこそ、彼女の本当の気持ちをついたということがエウセピアにも判った。何故なら、自分も寂しかったから。クラウディアにおいてゆかれそうで、本当に辛かったから。 それでもまだ自分は、彼女の傍に居られた。「学院」では同室で、教育隊では一緒で。でも無名は違う。どんなに会いたくでも、会えるのは三日に一度、午後のわずかな時間だけ。まして二人きりで甘えられるのは、ほんの一瞬の間。 エウセピアは、別の意味で腹が立ってきた。そんなに寂しいのなら、言えばよかったのだ。自分は寂しい、と。 「「学院」に入学しなさい」 「判っている」 「約束です」 「……判った」 ああ、もう本当に腹の立つ。 なんて可愛いのだ、この子は。 それからエウセピアと無名の二人には、独立親衛第501重機甲兵大隊から派遣されてきた従士長が一人づつ付き、日中は軍人としての所作を叩き込まれ、体力の錬成に努めさせられ、日が落ちてからはナタリアにつききりで座学を叩き込まれた。 従士長らの罵倒は、修道院育ちのエウセピアがびっくりし、泣きたくなるほど酷いもので、彼女は何度も便所で泣きはらす羽目になった。そしてナタリアの座学もそれは厳しいもので、詰め込められる限りのものを頭に詰め込む事が要求され、教範から古典まで徹底的に暗記させられ復唱させられた。覚えろと命ぜられたことを覚えられず、徹底的にしぼられ涙ぐむ無名の姿は当たり前になってしまっていて、もはや、かつてエウセピアが怯えた彼女の面影は全く感じられなくなっていた。 「気をぉつけッ!!」 ヴォレヌス従士長の掛け声に身体が即座に反応し、エウセピアと無名とフェイトの三人は、その場で直立不動の姿勢をとった。 営庭は、あの後二人がかりでならされ踏み固められさせられ、今ではあの激闘があったことは全くわからなくなってしまっている。春の日差しは暖かく、ちらほらと見える青葉が目を楽しませてくれる。 「教育隊長殿に対し、敬礼ッ!!」 三人同時に拳を握りしめた右腕を地面と水平になるように上げ、拳を左胸に打ちつける。 三人の少女が為した敬礼に、悠然と答礼したナタリアが、ヴォレヌス従士長に向けて軽く肯いた。 「直れッ! 傾聴!!」 「三人とも楽にしてよろしい。本日をもって第765教育隊所属エウセピア学生、フェイト学生、無名学生は、営所を「学院」第一高等部寄宿舎に移動し、士官教程基礎教養部を受講するものとする。騎士は、部隊の骨幹をなすものであり、その重責を自覚し、使命に対する強い信念を養い、徳操をみがき識見及び技能の向上を図り、体力及び気力を充実し、部下と苦楽をともにし常に率先垂範に努めるとともに、部下の人格を尊重し、部下をして積極的にその服務に精進させなければならない。特に近衛騎士たるは、皇帝陛下の藩屏として帝國軍人の模範となるべきを自覚し、騎士として相応しきを振舞わねばならない。そのつもりをもって学習に取り組むこと。教育隊長より以上である」 「敬礼ッ! 直れッ! 解散!!」 ナタリアが士官室に帰り、助教らが詰め所に戻ると、エウセピアら三人は、ほっと一息ついて空を見上げた。 「入学だな」 「はい」 空を見上げたまま、無名がぽつりと呟いた。 「やっと、あいつと一緒になれる」 「はい」 その声色はとても柔らかくて、普段の獰猛な肉食獣のような彼女からは想像もできない。 だが、この無名もまた同じ無名なのだ。それをエウセピアは知ってしまった。 何事もそつなくこなし、二人に比べれば怒鳴られ叱られる頻度のずっと少なかったフェイトが、そんな二人を不思議そうに見つめている。 「約束は守った」 「はい」 「だから、あいつは俺のものだ」 「違います」 顔を戻した無名が、むっとした表情でエウセピアをにらみつける。 その視線をじっと見つめ返し、エウセピアは言った。 「私達の、です」
https://w.atwiki.jp/animeyoutube/pages/301.html
【 YouTubeアニメ無料動画@Wiki >ひだまりスケッチ>【MAD】ゆのっちが可愛すぎて生きていくのが辛い【ひだまりスケッチ】】 【MAD】ゆのっちが可愛すぎて生きていくのが辛い お気に入りに追加する bookmark_hatena(show=はてなブックマークに登録,target=blank) このページは YouTube ,veoh,MEGAなどで見れる【MAD】ゆのっちが可愛すぎて生きていくのが辛い【ひだまりスケッチ】の 無料 動画 を紹介しています。 更新状況 更新履歴を必要最低限にわかりやすくまとめたものです。 【広告】あの部長のドメインが、ワタシのより可愛いなんて・・・・。 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(9/23) 【最新】けいおん!!:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【最新】屍鬼:アニメ動画2本追加しました!(9/23) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【ソノ他】動画ページ上部に「お知らせ」を追加しました!(9/23) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(9/5) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(9/2) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/26) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画3本追加しました!(8/25) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【修正】デュラララ!!:第7話を視聴可能な動画に更新しました!(8/16) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(8/16) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/15) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【過去】とらドラ!:アニメ動画5本追加しました!(8/14) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/12) 【ソノ他】70万ヒット達成!ありがとうございますヽ(´∀`)ノ(8/11) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/11) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(8/11) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【関連】殿といっしょ:MAD動画等7本追加しました!(8/10) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画2本追加しました!(8/10) 【過去】こばと。:アニメ動画全話追加し終えました!(8/9) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/6) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/3) javascript plugin Error このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。 お知らせ↓追加しました!(9/23) 最近、更新が停滞していて本当にごめんなさい。管理人の都合で、またしばらくサイトの更新ができなくなります。えっと、都合というのはちょっとした国家試験なんです。もっと早く勉強を始めていれば・・・と後悔が募るばかりですが、この度、生まれて初めて(!)本気を出そうと思います。もうすでに遅いような気もしますが、ネットするのを我慢して、自分なりに頑張ってみようと思ってます。たまに更新することもあるかもしれませんが、その時は勉強サボってるなあと思ってください(^^;) 更新は10月下旬頃に再開する予定です。怠け者でダメ人間な管理人ですが、これからも生温かい目で見守ってくれるとうれしいです(*´□`*)♪ ※実はこっそり隠れてツイッターもやっています。あまり見られたくないですが、もし見つけたらリプくれると喜びます! 当サイトについて 動画は最近放送されたアニメを中心に( ´∀`)マターリ紹介しています。管理人の気まぐれや人気記事ランキング、リクエストなどを参照して過去のアニメも更新してます。最近はニコ動などのMAD動画やYouTubeなどにあるOP&EDもバリバリ更新!事前に動画共有サイトから埋め込みタグを取得しているので、他サイトに移動する必要はありません。再生マークをポチっとするだけでOK.゚(*´∀`)b゚+.゚ veoh アニメ動画専用。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合も結構あります。30分以上だと5分間しか見れませんが、ほとんどのアニメは30分以内なので全部見れます。→ Ranking MEGA アニメ動画専用。再生マーク赤をポチっとしたら、広告といっしょにもう一度表示されるので、再生マーク緑をクリックすると再生できます。あまり削除されません。72分間連続視聴すると動画が見れなくなりますので、その場合は54分空けてから見て下さい。また通常は1日に10本までしか見れません。→ Ranking YouTube アニメ動画やMAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。アニメ動画の場合は削除されることが多々あります。MAD動画の場合はなるべくコメント付きのニコニコ動画で見ることをお勧めします。YouTubeだけで紹介(そんな時期がありました…)しているアニメ動画のページは、かなり削除済み多数です(*_ _)人ゴメンナサイ。全部はとても対応できそうにないので、どうしても見たい動画は【リクエスト】してください。→ Ranking ニコニコ動画 MAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合もたまにあります。通常は登録しないと見れませんが、埋め込みなのでログイン不要です。コメントに慣れてない人は右下の吹き出しマークをクリックして非表示にしてみてください。広告は×を押して消して下さい。→ Ranking コメントについて↓一部更新しました!(9/23) いつもたくさんのコメントありがとうございます!遅くなる事もありますが、すべて読ませてもらってます♪ 少し注意事項です。動画ページには各ページ中部に感想を書くためのコメント欄がありますが、最近そのコメント欄に「動画が見れない」などのコメントが目立ちます。そのような視聴不可報告は【リクエスト・視聴不可・不具合報告】にコメントしてください。それ以外のページの視聴不可報告は見落としてしまって対応できないことがあります。ご協力よろしくお願いします。 上の注意事項は一部の方です。みんなの感想や応援のコメントには本当に感謝しています!励まされます!アリガトウ(●´∀`●)ノ 見れない時は… veohとMEGAの両方とも削除済みで見れない時は【視聴不可報告】にコメントして頂けると助かります。 動画の視聴に便利なサイト ■GOM PLAYER:MP4やFLV動画の再生ソフトです。DVD,AVIなどの再生にも対応しています。 ■GOM ENCODER :対応ファイル形式が豊富なカンタン高速動画変換ソフトです。PSP/iPod/iPhone/WALKMANなどに対応。 ■バンディカム:CPUの占有率が低く、キャプチャー中でもゲームがカクカクしません。無料動画キャプチャーソフトの新定番です。 動画を見る前or後に押してくれるとうれしいですd(≧▽≦*d) ニコニコ動画 【ニコニコ動画】【MAD】ゆのっちが可愛すぎて生きていくのが辛い。【ひだまりスケッチ】 このページのタグ YouTube アニメ 無料 動画MAD ひだまりスケッチ アニメ 静止画MAD Plus-Tech_Squeeze_Box Dough-nut's_Town's_Map ひだまりスケッチ ひだまりスケッチ×☆☆☆ シャフトいじめ プロの犯行 俺たちのクリスマス プロ達の犯行 コメント(感想) 動画【MAD】ゆのっちが可愛すぎて生きていくのが辛い【ひだまりスケッチ】に関するコメントを気軽に書いてください♪ 名前 クリック単価、広告の種類、管理画面の使いやすさなど総合的に判断しても1番オススメです(●`・v・) 今日の人気ページランキング 化物語 小学生vs高校生(中画質) ひだまりスケッチ×☆☆☆ 第11話「6月5日 マッチ棒の謎/2月16日 48.5cm」 12話の臨也さんはいつも通りの臨也さんでした。【デュラララ!!】 イナズマイレブン 第73話「灼熱の戦士!デザートライオン!!」 コメント/刀語 化物語 第9話「なでこスネイク 其ノ壹」 生徒会の一存 第3話「取材される生徒会」 【Lv5-judgelight-】とあるハイジの超低燃費2【OP比較】 【MAD】化物語 君の知らない物語【1~13話総集編】 【とある科学の超電磁砲】黒子の死闘(|||゚Д゚)【どぅっふぇ!!】 ヱヴァンゲリヲン新劇場版 破 コメント/【MAD】君に届け【吸い込まれそうな瞬間!】 会長はメイド様! 第6話「男・鮎沢塾!」 【けいおん!!2期OP】GO!GO!MANIAC【歌詞付き】 【とある科学の超電磁砲】黒子はタイヘンなヘンタイでした とある魔術の禁書目録 第14話「最強vs最弱」 デュラララ!! 第1話「開口一番」 四畳半神話大系 【手書き紙芝居風】南国果実少年ムクロ 2話【フルボイス俺】 ぬらりひょんの孫 昨日の人気ページランキング 君に届け 第25話「新年」 あたしンち 第327話「ほめ言葉っ/ユズ、夏休み最後の日」 君に届け 第12話「恋愛感情」 【MAD】生徒会の一存 すぎさきのなく頃に 【デュラララ!!】医療映画風予告MAD けいおん!の歌のシーンを集めてみた デュラララ!! 第2話「一虚一実」 にょろーん ちゅるやさん【癒しと萌え】 みなみけ 第8話「ほさか」 コメント/幽遊白書 「脅威!鎧を外した武威」(後半) コメント/君に届け 第15話「ライバル」 【MAD】とある科学の超電磁砲でギャグマンガ日和【うさみちゃん】 化物語 第3話「まよいマイマイ 其ノ壹」 けいおん!ふわふわ17位・CDTVランキング(アニソン部分) 君に届け みつどもえ イナズマイレブン 第75話「真剣勝負!円堂と飛鷹!!」 いちばんうしろの大魔王 第3話「ちょっと怖い先輩」 こばと。 第8話「…こねこの子守歌。」 生徒会役員共 第9話「いくらで買います?/なるほど!関係ないな!俺たち!/ベネズエラ」
https://w.atwiki.jp/animeyoutube/pages/801.html
【 YouTubeアニメ無料動画@Wiki >ひだまりスケッチ×365>ひだまりスケッチ×365 第1話「4月5日 はじめまして! うめてんてー」】 ひだまりスケッチ×365 第1話「4月5日 はじめまして! うめてんてー」 YouTube , ニコニコ動画 ,veoh,MEGAで 無料 で見れるひだまりスケッチ×365 第1話「4月5日 はじめまして! うめてんてー」の アニメ 動画 を紹介。 更新状況 更新履歴を必要最低限にわかりやすくまとめたものです。 【広告】あの部長のドメインが、ワタシのより可愛いなんて・・・・。 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(9/23) 【最新】けいおん!!:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【最新】屍鬼:アニメ動画2本追加しました!(9/23) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【ソノ他】動画ページ上部に「お知らせ」を追加しました!(9/23) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(9/5) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(9/2) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/26) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画3本追加しました!(8/25) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【修正】デュラララ!!:第7話を視聴可能な動画に更新しました!(8/16) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(8/16) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/15) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【過去】とらドラ!:アニメ動画5本追加しました!(8/14) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/12) 【ソノ他】70万ヒット達成!ありがとうございますヽ(´∀`)ノ(8/11) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/11) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(8/11) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【関連】殿といっしょ:MAD動画等7本追加しました!(8/10) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画2本追加しました!(8/10) 【過去】こばと。:アニメ動画全話追加し終えました!(8/9) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/6) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/3) お知らせ↓追加しました!(9/23) 最近、更新が停滞していて本当にごめんなさい。管理人の都合で、またしばらくサイトの更新ができなくなります。えっと、都合というのはちょっとした国家試験なんです。もっと早く勉強を始めていれば・・・と後悔が募るばかりですが、この度、生まれて初めて(!)本気を出そうと思います。もうすでに遅いような気もしますが、ネットするのを我慢して、自分なりに頑張ってみようと思ってます。たまに更新することもあるかもしれませんが、その時は勉強サボってるなあと思ってください(^^;) 更新は10月下旬頃に再開する予定です。怠け者でダメ人間な管理人ですが、これからも生温かい目で見守ってくれるとうれしいです(*´□`*)♪ ※実はこっそり隠れてツイッターもやっています。あまり見られたくないですが、もし見つけたらリプくれると喜びます! 当サイトについて 動画は最近放送されたアニメを中心に( ´∀`)マターリ紹介しています。管理人の気まぐれや人気記事ランキング、リクエストなどを参照して過去のアニメも更新してます。最近はニコ動などのMAD動画やYouTubeなどにあるOP&EDもバリバリ更新!事前に動画共有サイトから埋め込みタグを取得しているので、他サイトに移動する必要はありません。再生マークをポチっとするだけでOK.゚(*´∀`)b゚+.゚ veoh アニメ動画専用。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合も結構あります。30分以上だと5分間しか見れませんが、ほとんどのアニメは30分以内なので全部見れます。→ Ranking MEGA アニメ動画専用。再生マーク赤をポチっとしたら、広告といっしょにもう一度表示されるので、再生マーク緑をクリックすると再生できます。あまり削除されません。72分間連続視聴すると動画が見れなくなりますので、その場合は54分空けてから見て下さい。また通常は1日に10本までしか見れません。→ Ranking YouTube アニメ動画やMAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。アニメ動画の場合は削除されることが多々あります。MAD動画の場合はなるべくコメント付きのニコニコ動画で見ることをお勧めします。YouTubeだけで紹介(そんな時期がありました…)しているアニメ動画のページは、かなり削除済み多数です(*_ _)人ゴメンナサイ。全部はとても対応できそうにないので、どうしても見たい動画は【リクエスト】してください。→ Ranking ニコニコ動画 MAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合もたまにあります。通常は登録しないと見れませんが、埋め込みなのでログイン不要です。コメントに慣れてない人は右下の吹き出しマークをクリックして非表示にしてみてください。広告は×を押して消して下さい。→ Ranking コメントについて↓一部更新しました!(9/23) いつもたくさんのコメントありがとうございます!遅くなる事もありますが、すべて読ませてもらってます♪ 少し注意事項です。動画ページには各ページ中部に感想を書くためのコメント欄がありますが、最近そのコメント欄に「動画が見れない」などのコメントが目立ちます。そのような視聴不可報告は【リクエスト・視聴不可・不具合報告】にコメントしてください。それ以外のページの視聴不可報告は見落としてしまって対応できないことがあります。ご協力よろしくお願いします。 上の注意事項は一部の方です。みんなの感想や応援のコメントには本当に感謝しています!励まされます!アリガトウ(●´∀`●)ノ 見れない時は… veohとMEGAの両方とも削除済みで見れない時は【視聴不可報告】にコメントして頂けると助かります。 動画の視聴に便利なサイト ■GOM PLAYER:MP4やFLV動画の再生ソフトです。DVD,AVIなどの再生にも対応しています。 ■GOM ENCODER :対応ファイル形式が豊富なカンタン高速動画変換ソフトです。PSP/iPod/iPhone/WALKMANなどに対応。 ■バンディカム:CPUの占有率が低く、キャプチャー中でもゲームがカクカクしません。無料動画キャプチャーソフトの新定番です。 動画を見る前or後に押してくれるとうれしいですd(≧▽≦*d) 【お気に入りに追加する】【 bookmark_hatena】 MEGA このページのタグ YouTube アニメ 無料 動画ひだまりスケッチ×365 コメント(感想) 動画ひだまりスケッチ×365 第1話「4月5日 はじめまして! うめてんてー」に関するコメントを気軽に書いてください♪ 名前 クリック単価、広告の種類、管理画面の使いやすさなど総合的に判断しても1番オススメです(●`・v・) 今日の人気ページランキング にゃんこい! 第4話「美しい人」 おまもりひまり 第2話「海ねこスクランブル」 クレヨンしんちゃん シロをレンタルするゾ 昨日の人気ページランキング 荒川アンダーザブリッジ OP「ヴィーナスとジーザス」Full らき☆すた 第14話「ひとつ屋根の下」 【マイムマイム】マサオミマイム【紀田正臣】 君に届け 第13話「恋」 屍鬼 コメント/ひだまりスケッチ×365 第11話「9月28日 パンツの怪」 デュラララ!!ラジオ 略して デュララジ!! 第1回 デュラララ!! 公式パーフェクトガイド けいおん!の歌のシーンを集めてみた
https://w.atwiki.jp/animeyoutube/pages/1125.html
ひだまりスケッチ最後まで楽しめました、ありがとうございました - xx 2010-08-17 16 22 40
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1001.html
多分、次で最後の予定。これでミッシングリンクが繋がると思われる。 「辛そうですね」 「正直、今回の状況は予想していませんでした」 766教育隊の訓練が終わり「学院」組の学生が帰った後の打ち合わせで、開口一番プロヴィウシアはナタリアにそう声をかけた。 ナタリアは、肘を机について肩を落としてうなだれている。ほんのつい先ほどまでの冷徹な教官振りが嘘の様な落ち込みようである。 「とにかく、エウセピア学生は訓練についてきてはいます。今ならばまだ打てる手があるはずです」 「そうはいっても人間関係が理由だぞ? しかも、どちらが悪いという話じゃない。純粋に相性の問題だ。どうにかしようとしても、我々に打てる手はないな」 ヴェルミリオム師が、片眉をはねあげてナタリアの言葉をばっさりと切って捨てた。その言葉に、ナタリアの頭が一層深くうなだれる。もっともこの魔族の牧師も、いつもよりもはるかに早いペースで煙草をふかしているのだが。 「無名ちゃんも、エウセピアちゃんも、言葉が足りない子達ですからね。二人とも入営していたならば、いくらでも手の打ち様はあるんですけど」 「……今日は失敗しましたが、方向性としては間違っていないはずです」 「はい。でも今のままだと、先にエウセピアちゃんが壊れちゃいますね。今日はあなたが間に合ったからよかったですけれど」 「身体の方は私の魔法で直せるが、心の方は無理だ。今のままだと春までもたん」 そう、今日はいつもと変えてエウセピアとクラウディアではなく、エウセピアに無名を組ませて訓練したのだ。結果は、二人とも全く連携をとらずにナタリアから何度も怒声を浴びせられたあげく、無名がキレかけエウセピアも限界一歩直前にまでいっただけ。ナタリアが本気の殺気を二人に浴びせて止め、残りの訓練時間をずっと腕立て伏せさせ続けなければ、その場で無名が殺しにかかりかねないほどに険悪な雰囲気となったのだ。 ナタリアが悪役となることで二人の仲を少しでも近づけようと意図してのことであったが、エウセピアも無名も、教官の理不尽極まりないしごきを意地で耐え続けた。そしてエウセピアに無視され続けた無名が、とうとう堪忍袋の緒を切ったところでナタリアは訓練を中止しなくてはならなくなったのである。 訓練後、クラウディアが顔面蒼白になってエウセピアが更衣室で倒れたとすっ飛んできた時、ナタリアが常の通りの冷静な表情で応対できたのは、実に歴戦の軍人としての経験のおかげであった。両手で腹を押さえつけているエウセピアをクラウディアが抱きかかえるようにして馬車に乗せるのを平然とした表情で見送れたのも、戦場で何度も部下とともに死地へと飛び込んできた経験があったからにほかならない。 だからといって、ナタリアが何も感じないというわけではない。なにかとフェイトを猫可愛がりするように、彼女は部下には甘い方であるし、人一倍情に深い上官でもある。それだけに、エウセピアと無名の仲がここまで険悪となってしまっては、辛いことこの上ない。なまじエウセピアが教官であり上官であるナタリアに懐くようになっただけに、懐かれた当の本人にとっては神経にやすりをかけられるような思いである。 「問題は、エウセピアちゃんが、なぜあそこまで無名ちゃんに怯えているか、でしょうね」 プロヴィウシアが、さすがに困った表情をして腕を組む。 今日も、エウセピアに無名と一緒に訓練を行うと伝えた瞬間、彼女は恐慌を起こし顔面蒼白になって両手で胃のあたりを掴んでみせたのだ。そのまま倒れるかと内心真っ青になった教官らであるが、そこで踏みこたえたあたり、エウセピアも随分と根性がついたものである。もっとも、その結果は予想だにしないほど悪いものであったが。 「エウセピアは何と?」 「判らないそうです。あと、とにかく、自分は大丈夫だと繰り返すばかりで」 「無名は?」 「同じく、判らない、と」 「とりあえず組み合わせを元に戻せ。エウセピアとお前の二人が倒れては元も子もないぞ」 「ですが」 「駄目です。今回は失敗しました。次の訓練日までに別の方法を考えます。ナタリア、あなたも今日は下番して休みなさい。これは命令です」 「……了解しました」 いつになく真面目なプロヴィウシアの言葉に、ナタリアはふらふらと立ち上がって敬礼した。 「大丈夫? 落ち着いた?」 「学院」の女子寮に戻ってすぐに私室へ戻り、エウセピアを寝台で横にならせたクラウディアは、寝台の傍に椅子を動かしてきて座り、彼女の右手を心配そうに握っていた。訓練中は白蝋のように血の気も失せた顔色であったのが、ようやく人並みに戻ってきている。軽く目をつむって浅く呼吸をしている姿が痛々しくて見ていられない。 「大丈夫です」 ここしばらく、エウセピアは同じ言葉しか口にしない。当然のことながら、クラウディアは少女の言葉を真にうけることはできはしない。 「しばらく休んだ方がいい。教官にはわたしから説明するから」 「大丈夫です!」 泣きそうな表情になってぎゅっと力をこめて右腕を握り返してくるエウセピアに、クラウディアは、それ以上は何も言えなくなる。 何度も同じ問答を繰り返しては、最後はエウセピアが泣きだして話を続けられなくなって終わる。同じことが何度も繰り返されれば、クラウディアもそれ以上は何も言えなくなってしまう。 クラウディアには、何故エウセピアがここまでかたくなに訓練にこだわり続けるのか、それが判らない。考えてみれば、彼女が何故近衛騎士として訓練を受けることになったのか、それすら知らないのだ。教育隊の四人の選抜に副帝レイヒルフト自身が関わっていることは聞いている。でも、その選考の基準が判らない。 「エウセピア」 「……………」 「なんで近衛騎士になることになったの?」 クラウディアの問いに、エウセピアは黙って頭を左右にふるだけである。寄せられた眉が、何か苦悶に苛まれているように見えて、それ以上は言葉を続けられなくなってしまう。 「ごめん」 「……………」 ふっと、安心したように表情がやわらいだエウセピアの様子に、クラウディアは、今度は自分が泣きたくなってしまった。 無名がこんな風に意固地になるのは、クラウディアにだってはっきりと判っていた。だから、できる限り穏やかにさりげなく話を切り出したつもりであったのであるが、エウセピアの名前が出たとたんこの鬼族の少女の表情はこわばり、剣呑極まりないものへと変わってしまった。 「俺は悪くない」 「うん、それは判っている。だからさ、なにか思い当たることがないかなって」 「俺は悪くない」 第901大隊の営舎の廊下は、日も沈みかけているせいもあって暗く、こわばった無名の表情の細かいところまで見分けることができない。彼女のぎゅっと握りしめられた拳が、何かに耐えているようで見ていて痛々しくなる。 何故二人ともこうも頑ななのだろう、心配する自分の気持ちが二人に届かないことにクラウディアも辛くなってくる。 「……………」 「……………」 窓から差し込む橙色の陽射しが、無名の面差しに陰をきざんでいる。何かを口にしようとして、でも言葉がみつからないもどかしさ。言いたいこがあるだろう。言うべきことがあるだろう。でも、それを言葉にすることができない。そんな彼女の姿が痛々しくて、クラウディアはきびすを返した。 「ごめん」 「……お前は悪くない」 しぼりだすように呟いた無名の一言が悲しくて、クラウディアはずっと背中を向け続けるしかできなかった。 黄金色の閃光が襲い来る。 一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、そして、九つ。その全てが空気を焼く雷の臭いをまとい、わずかに着弾のタイミングをずらして飛来する。 半歩右足を前に出し、左肩を後ろにそらし、重心を左足から右足に移し、首を右に振り、右腕を胸の前に持ち上げ、左足を右足を軸に四分の一円動かし、六つまでを髪の毛一筋程の見切りで避け、残る二つを右手の長刀で斬って「殺し」、そして剣を振るった反動に合わせて身体を四分の一回転させ、最後の閃光をやり過ごし、左手の掌底を叩き込む。 だが打ち込んだ掌底は長柄の石突に弾かれ、カウンターとして右足に向けて長斧の刃が打ち込まれた。その一撃を左足に重心をずらし際に右ひざを折ってかわすと、戻す右足のかかとで長斧の刃を踏みつけた。 刃の軌跡が無理矢理変更されるのにあえて逆らわず、突っ込んできたそのままの勢いで飛び抜けると、避けられた雷弾の軌道を戻して牽制の攻撃をしかけ体勢を整えなおす。 だが、着弾のタイミングを同じにしたために振るわれた長刀の一閃で三つが「殺され」、その空いた隙間に無理矢理身体をねじ込ませ追撃の一閃が逆袈裟に襲ってくる。 その一撃を宙を蹴って上空へと逃げることで避け、くるりと宙返りし、さかさまの体勢から長斧を撃ち込んだ。 「クラウディアちゃん、何が起きているか判る?」 「とりあえず、相変わらず無名の動きが変態なのと、フェイトが捷いのくらいは判ります」 「まあ、目で見て追える動きではないわねえ。お互い視覚ではなく、魔導の「相」によって知覚して動いているから」 フェイトと無名の戦いを見学しているクラウディアは、教官のプロヴィウシアの問いかけにそう曖昧に答えた。 クラウディアの目には、宙を舞うフェイトが自身と生成した複数の雷弾をもって無名を攻撃し、それをわずかな動きで避けつつカウンターを返している様には見える。 もっとも傍目には、無名の周囲を複数の黄金色の軌跡が高速で舞い、その中心で無名が剣舞を踊っているようにしか見えないわけであるが。 「フェイトちゃんはね、自身の魔力を電気に改質する能力を先天的に有しているわ。だから、あの娘の一撃を生身に受けたらその瞬間に全身を焼かれて終わり。そして無名ちゃんは、「魔眼」で「存在のほころび」を見て、それを斬る事で対象を「殺す」ことができるの。だから、彼女の一撃を身体に受けたら存在が「殺され」て終わり。一撃でも入れられれば勝ちな二人だもの、速度か技術か、どっちにせよ避けきった方が勝つ試合よね」 「装甲も無効なんですか?」 「魔導によって強化されたものなら、一撃は耐えられる可能性はあるわね。でも二撃目は無理」 「無茶苦茶だ」 「よねえ」 すでにフェイトの生成した雷弾は全て無名によって「殺され」ており、互いに得物と肉体を使っての戦いへと移っている。 「それにしても、無名はいつの間に「魔眼」なんて物騒な代物を使えるようになったんです?」 「無名ちゃんが自分の目をえぐろうとした時のことは覚えているかしら」 「はい、教官殿」 「覚醒したのはその時らしいわね。あれからヴェルミリオム師が少しづつ封印を解いてゆきつつ、使い方を教えていったそうよ。まさか限定的とはいえ、一度に四相に目覚めるなんて天才もいいところよね。それを言ったらフェイトちゃんも八相全てに覚醒している「導師」なんだから、どっちもどっちなんだけれど」 高位の魔導騎士による近接格闘戦である。まさにどちらの気力魔力が尽きるかという戦いになるわけである。 「それで、あのフェイトが操っていた弾は、なんなんです? 雷かなにかですか」 「そう。電気改質された魔力の塊ね。あれを複数同時に操って攻撃できるなんて、私もが知る限りでは二人目ね」 「もう一人いるんですか?」 「ええ。アムリウス・アドルファス・グスタファス卿。クラウディアちゃんも名前くらいは聞いたことがあるでしょう?」 「はい、教官殿。あの「北の白い悪魔」ですよ。知らないはずが無いです」 アムリウス・アドルファス・グスタファス卿。 内戦中の教会軍総司令官ヤン・アドルファス・グスタファス北方辺境候の嫡子の古人であり、「黄色中隊」と呼ばれた教会軍最精鋭の重魔道機装甲部隊を率いて開戦から敗戦までを常に第一線で戦い続けた英雄達の一人であった。 並みいる皇帝軍の魔導騎士らが討とうとして果たせず、かえって皇帝軍は彼一人に少なくない数の機装甲を撃破され続けた相手であった。なにしろ、彼一人に皇帝軍のあまたの騎士達が翻弄される様に怒り狂ったリランディア帝が、銀貨10万枚の賞金をかけたことは知らぬ者とていない逸話の一つである。 「アムリウス卿はね、機神「アルブム・モノケロス」を駆って戦い続けたのだけれど、この機体には六枚の羽根が搭載されていて、これを騎士が自由に操って魔力砲撃を行う事ができたの。自由自在に空を飛んで、四方八方の死角から撃ってくるから、もう大変で。私もね、何をどうしても捕捉できなくて、逆にいいようにあしらわれてね。もう本当に大変だったんだから」 「それで生きて帰ってこられた教官殿が凄いと思います」 「ええ。で、話を戻すと、フェイトちゃんの戦い方は、アムリウス卿の戦い方をヒントに組み立てられたものなの。私もナタリアもアムリウス卿を何とか墜そうとして色々考えたから」 結局、墜せなかったのよね。 しみじみと昔を懐かしむような表情でそう語ったプロヴィウシアに、クラウディアは、はあ、と間の抜けたような返事をするしかできなかった。確かに、この撃墜数三桁に載せた大撃墜王が墜せなかった敵の戦技ならば、習得すれば大きな戦力となろう。 「というわけで、フェイトちゃんも最初は雷弾を一つしか飛ばせなかったのが、訓練を重ねて今では八つを自由に操れるようになったわ。それに合わせて無名ちゃんも「相」による知覚が鋭くなっていったわけ。その結果が、今の二人の試合に繋がっているの」 果たして、フェイトと無名の二人の試合は、魔力と体力の尽きかけたフェイトの大振りな攻撃の隙をぬった無名の一撃が入って、審判のナタリアの制止が入って終わったところであった。 無名はともかく、フェイトにまで魔法戦士として追い抜かれてしまっていた事に少なからずへこんだクラウディアは、学院の寮に戻ってからすぐに自室に向かった。そのあたりの気分も切り替え、学生としての自分に戻る。 「ウェーラ、エウセピアの様子はどう?」 「あ、お帰りなさい、クラウディア様。随分落ち着かれたようです」 「よかった。最初はどうなるかと思ったんだけど」 クラウディアが視線を向けた先には、ウェーラに付き添われるようにして寝台でエウセピアが寝息を立てている姿があった。 「本当に。ここ最近ずいぶんと落ち着かれなくていらっしゃったから、心配で」 「ごめん。ウェーラがいてくれて、本当に助かっているんだ。最近ではわたしが話しかけるだけで半狂乱になるし」 今日の訓練日、エウセピアだけ学生寮にて療養を命ぜられて待機することになったと伝達された時、彼女は文字通り髪を振り乱してクラウディアにとりすがった。自分は大丈夫だ、がんばれる、だから一緒に連れて行って欲しい、と。 だが命令は命令である。ウェーラにつきそってもらい、なんとかなだめすかして自室の寝台に寝かせ、ようやく教練に出発することができたのである。その間、エウセピアが散々泣きはらしていた姿を見ていただけに、訓練の間もクラウディアは彼女のことが気が気ではなかったのだ。 疲れきった様子で寝台の上に腰を下ろしたクラウディアに、ウェーラは椅子を動かして向き直った。眼鏡を外して目をこすっている彼女のことを、気遣わしげにそっと見つめる。 「……あの」 「うん?」 「わたし、思うんです。エウセピア様はクラウディア様のそばに居たいんじゃないかって」 「うん。それは判るよ。でも、それだけでこんなに必死になるのかな?」 「それは……、でも、そんな難しいお話じゃないと思うんです」 「そっか」 ウェーラはうつむいて言葉を探して、でも見つからなくて、もう一度顔を上げた。 「きっと、そうなんです。わたし、そんな気がするんです」 次の日の朝、じっとりと寝汗をかいて目が覚めたエウセピアは、枕元にクラウディアが付き添うように座って手ぬぐいで汗を拭いていてくれいるのに気がついて、また泣きそうになってしまった。 「うなされていたから。大丈夫?」 「大丈夫です」 だから、今度こそ置いていかないで欲しい、とは続けられなかった。 自分のことをクラウディアは気遣ってくれている。とても大切に想っていてくれている。それくらい判る。でも、何かがかみあっていない。すれ違っている。それが何だか判らないのがもどかしくて、辛い。 エウセピアの返事に、そっか、とだけ呟いたクラウディアは、しばらく何かを考えるかのようにうつむいたまま黙っていた。 「エウセピア、君は、わたしにとって大切な友人だ。親友だとも思っている」 「はい」 「だから、話せることは何でも話して欲しいと思う。……今はまだ言葉が見つからないんだと思う。でも、話せる時がきたら、話を聞かせて欲しい」 駄目だ。泣いてしまう。心配させたくなんてないのに。我慢しなくてはいけないのに。 エウセピアは、そのまま枕に顔をうずめ、声をあげないように必死になってこらえた。言葉がみつからないことがこれほどもどかしいなんて。 言葉を探して必死になって思考を巡らせているうちに、心を締め付ける何かに思考の焦点が定まってゆく。それは恐怖で、その恐怖は。 枕に顔をうずめたまま、一向に起きようとしないエウセピアをおいて、クラウディアは食堂に向かった。彼女は学生で、病気でもないのに課業を休むことは許されはしないのだ。 クラウディアがいなくなってから、仰向けになったエウセピアは、じっと天井を見つめていた。その木目を眺めていると、少しづつたかぶった気持ちがおさまってゆく。独り静かな気持ちで何かを考えるのは、本当に久しぶりであった。 そうやって考えるべきこと、見つめるべきことに思考を集中させていると、自室の扉をノックする音がする。 「はい」 「お久しぶりです、愛しいエウセピア」 「……………」 「お加減はいかがかしら」 幻覚ではない。妄想でもない。そこには、藍色の首元まで覆ったドレスをまとったメルツェデシアが立っていた。一呼吸遅れてから身体を起こしたエウセピアの元に近づいてくる貴婦人の姿に、思考が停止したまま何も言葉が出ない。 メルツェデシアは、わずかに小首をかしげてエウセピアに向かって微笑むと、つきそってきた修道女に一言声をかけて下がらせた。 「貴女の御友人から手紙を頂きました」 「……はい」 「屋敷へいらっしゃい。ここでは話せないこともありましょう。許可は頂いております」 「はい」 この人ならば、見つからない言葉も見つけてくれる。 そんな確信がエウセピアにはあった。 ユリウス・マクシムス家の帝都屋敷は皇宮に近いところに敷地を賜っており、敷地こそあまり広くはなかったものの、敷地一杯を外郭のように建物が囲み、その中庭に本屋敷が建てられている古い様式の宮殿であった。外郭の内側に通っている復層階の外廊には多くの人が行き交い、マクシムス公爵家がどれだけ権勢を誇っているを示していた。 エウセピアは、メルツェデシアに髪をブラシですいてもらって身づくろいをすると、制服に着替えてユリウス・マクシムス家の家紋の入った馬車に乗って屋敷へと向かった。馬車の中で貴婦人と見つめあいながら、沈黙に満たされた時間を過ごす。無理に言葉を口にしなくてもよい、ということの心地よさにひたりながら、寝台の中でひたっていた思考をさらに深化させてゆく。この女性のそばにいるだけで、こんなにも心が落ち着くことに驚きとともに納得を感じ、そしてそれこそが「学院」に来るまでの日々の彩りのひとつであったことをようやく思い出してもいた。 内屋敷の玄関に馬車が着き、馬車の扉が家令によって開けられ、メルツェデシアが馬車を降りる。そして、彼女に手をとってもらいつつ馬車を降りたエウセピアを、屋敷の入り口まで緋色の絨毯と、その両脇に並ぶ使用人らのお辞儀が出迎えた。 驚きで一瞬足が止まったエウセピアを、メルツェデシアが微笑んで手をとっていざなってゆく。 それは、メルツェデシアにとっての日常ではあっても、エウセピアにとっては非日常の光景であった。 そして、非日常はどこまでも続き、煌々たる魔道光に照らされた緋毛氈の絨毯の廊下を歩んでいった先に背の高い両開きの扉があり、使用人の手によって開かれたそこには、古い調度で飾られた客間と、この屋敷の主人がエウセピアを出迎えた。 「久しいな。といっても、ろくに話をしたこともなかったか」 そこには、灰色の豊かな頭髪と、綺麗に刈り込まれ整えられた髭をした、偉丈夫が立っていた。真白い普段着が鮮やかで、そして色黒の肌によく似合っている。 「しばらくゆっくりと休んでゆくといい。ここはお前の家でもあるのだからな」 フェルヌス・ユリウス・マクシムス南方辺境公は、両手を広げ、そう豊かなバリトンを響かせて歓迎の言葉を発した。
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1298.html
フェイトは、久しぶりに柔らかな毛布に包まって清潔なシーツの感触を味わいつつ、朝日が昇っても寝台から起き出さなくてよいという贅沢を楽しんでいた。帝國歴1100年の秋の「帝國」は、ゴーラ帝国との戦争に勝利し外海への進出を獲得したことで、内戦が終了した年以来のお祭り騒ぎとなっていた。二年半に渡った大戦争も終わり、出征していた部隊はそれぞれの衛戍地へと一度帰還する事になっていた。フェイトも久しぶりの「帝都」帰還であり、皆で順番に休暇をとって戦垢を落としていたのである。 半分眠ったままのぼんやりとした意識の中、フェイトは自分の子宮から全身に拡がる痺れるような快感に身体が痙攣し、軽く絶頂に達したところで目が覚めた。 「あ、おはようございます。フェイトさん」 「……おはよう、ガリル、シャルル」 「おはよう。起きちゃたった? ごめんね」 フェイトの暖かみのある金髪に顔をうずめ、鼻先を彼女のうなじにすりつけていたシャルルが、そう返事をしてくる。 フェイトは自分が左向きに横たえられ、正面からガリルが自分の胸にむしゃぶりつきつつ前に挿入していて、背中からシャルルに抱きしめられながら陰茎をいじられつつ後ろに挿入され、二人が抽送を繰り返していることを把握した。 昨晩はガリルとシャルルの二人に、穴という穴に白濁した粘液を注ぎ込まれて嬲られ尽くされてから意識を失うようにして寝てしまった。舌に残る生臭さに意識が蕩けそうになるのをこらえて目を開く。自分の胸に顔をうずめて射精の余韻に浸っているガリルの頭を抱きしめつつ、シャルルに腸内に射精されて再度軽く頭が真白くなった。 「二人とも、もういいかな?」 「……あ、はい。すいません、目が覚めたらなんかむらむらきちゃったんで……」 「うん、ごめんね。久しぶりだから我慢できなかったんだ」 「私は平気だから気にしなくていいよ」 ほほを上気させながら両手でフェイトの豊かで張りのあるおわん型の形の良い胸をいじっていたガリルが、名残惜しげに彼女から身体を離す。ずるりと粘液の糸を引いて彼女の前の穴から抜け落ちた彼の逸物は、まだ自身が満足していないと主張するように元気であった。そして彼女の陰茎をいじっていたシャルルも自分の逸物を彼女の後ろの穴から引き抜いて身体を離し、仰向けになったフェイトの唇にキスをした。 「うわ、生臭くて、また興奮する」 「駄目だよ。今日は会議があるから、もう身づくろいをしないと」 「そうかあ。じゃあさ、今晩またしようよ」 「今日はクラウディアのところに行くって言ったよね」 「うぅ、フェイトの意地悪」 「そんな声出したって駄目だよ、シャルル」 軽めのキスを繰り返しつつ、シャルルは指先をそっとフェイトの肢体の上をなぞらせてゆく。その気持ちよさに負けそうになりつつも、彼女は意識をはっきりさせて身体を起こした。 なごり惜しげに見上げてくるシャルルの額に軽くキスし、物欲しげな表情をしているガリルの額にもキスをする。未練たらしい視線を送ってくる二人を無視して天蓋付の寝台から降り立ったフェイトは、寝室の端の小机の上に置いてあるたらいに張られた水を両手ですくい、その水が自分の全身を濡らして先ほどまでの淫行の汚れを落としてゆく状況と過程を「観測する」ことで全身を清めた。身体のすみずみまで魔力を循環させて肉体を活性化させ、自ら望む自分を「認識し」肢体の上に二人がつけた痕を消す。 ばしゃりとたらいに戻った水は生臭く濁っていて、膣内はおろか腸内にまで吐き出された精液がどれほどの量であったのかを示していた。 ぶるりと身体を震わせたフェイトは、手早く下着からシャツから軍服まで身にまとうと、その膝裏まである長髪の先端を黒いリボンでまとめ、姿見で自分が帝國軍人として相応しい姿であることを確認した。 「先に食堂に行っているね。一緒に朝食を食べようよ」 少し残念そうな、嬉しそうな表情で彼女が身づくろいするのを見ていたガリルとシャルルに向かって笑顔でそう声をかけたフェイトは、意識を今日の部隊での会議に向けつつ足早に寝室を出て行った。 フェイトがガリルやシャルルと爛れた一夜を過ごした屋敷は、親衛第21混成旅団の駐屯地の近くに近衛軍が用意したものである。彼女ら「クルル=カリル」や「黒の二」改を駆る近衛騎士達の大半が双性者であり、妻帯者であり、恋人同士であったりした。そして、営内での色事は御法度である以上、並人のそれをはるかに上回る彼女らの性欲を発散させられる場所が必要となる。当然、門前街の淫売宿で娼婦を買ったり、部屋をとったりするのも無しである。まがりなりにも彼女らは皇帝陛下の御前にはべる近衛騎士であり、最低限の品位を保つ事が求められているのだ。さらに切実な理由として、機密保持の観点からも下手なところに出入りして欲しくはない、という理由があった。 結果として独り身の者が住まう寮のようなものとしてこの屋敷が用意され、それぞれが個室を持ち、勤務に支障や修羅場など起こさない範囲でという暗黙の了解のうちにそれぞれ気に入った者同士が楽しみ合う空間が作られたのである。 その屋敷の食堂で黒パンにチーズを塗り、ゆで卵や昨晩の残りもののシチーと一緒に食べているフェイトのところに、私服姿のガリルとシャルルが下りてくる。彼女は今日の会議の資料に目を通しつつ、手早く料理をかたづけてゆく。 「お先に」 「待っててくれなかったんだ。ちょっと残念」 「でも、もう時間ですよ。急がないと」 「営門前に転移すればいいのに。それならすぐだよ」 「駄目ですよ。緊急の事態以外で許可無く転移術式を行使するのって禁止されているんですから」 規則に対して多少なりとも緩い感覚のシャルルと生真面目なところがあるガリルとが、そんな事を言い合いながら食卓についた。待っていたかのようにすぐ女中が食事の盛られた皿を二人の前に置く。手早く食前の祈りを唱えた二人は、若者らしく旺盛な食欲を発揮してみせた。 「今回のゴーラ帝国との戦争において、旅団より多くの受勲者が出たことを旅団長として非常に喜ばしく思っている。しかし同時に、101、902、両大隊において多くの解決すべき問題が出たとも認識している。本日の会議において、部隊の今後のあり方について活発なる議論を期待したい」 この戦争の結果、殊勲賞を授与され凱旋式を挙行する事を許された親衛第21混成旅団長であるヴェルキン・ゲルトリクス准将の挨拶が終わると同時に、会議の列席者達はそれぞれ席についた。 会議室は何度も漆喰が塗り直された天井の高い古い建物の一室らしい重々しさをもっていて、フェイトはその重さを無意識のうちに感じ取ってしまい、少し気後れしている自分に驚いていた。 「では最初に旅団参謀長から始めたいと思います。今回の戦争の結果、機神「クルル=カリル」による航空偵察、敵策源への直接打撃、及び兵站線の麻痺化が非常に大きな効果を発揮する事が確認されました。以上の活動が戦争の勝敗を分けたといっても過言ではないと判断いたします。しかし同時に、稼働率の異常なまでの低さと交換部品の輸送が兵站にもたらす負担は、看過しえぬほど大きいものでした。以上の問題について議題を提議します」 最初に起立し言葉を発したのは、第21旅団参謀長のメトポロニア上級騎士隊長であった。こげ茶色の髪の毛をくるりと巻いて髪留めでまとめて眼鏡をかけた、いかにも才女らしい魔族はダイモンの女性である。襟元には今回の戦争で受勲した上級勲功章が下げられ、敵機装甲五〇機以上撃破で与えられる黄金剣勲章などのいくつもの勲章が飾られている歴戦の黒騎士である。 フェイトは、会議用の資料として配られた小冊子の最初の方に記載されている、101大隊における「クルル=カリル」の一回の出撃ごとの平均機数が二機を割り込み、可動機数が三機未満であるとの図表を見て、これは確かに問題となるだろうと納得した。なにしろ101大隊に配備された「クルル=カリル」の機数は七機。つまり常に四機以上が使用できない状態にあった事を意味するのであるから。稼働率14%というのはちょっと洒落にならない。 「101大隊長です。「クルル=カリル」の稼動機数の問題は、つまるところ機体整備所要に対して工部の人数の不足に集約されるものと考えます。特に「クルル=カリル」は、双性者でなくては起動させる事すらできない非常に限定された環境下で運用される事が前提となっています。さらには、機体数自体もわずか七機と本来ならば中隊を編成するのにも足りない数すか配備されていません。機体の追加配備、及び工部の増員が必要と考えます」 まずは独立近衛第101重駆逐機大隊長であるナタリア・グラックス・バジルス上級騎士隊長が発言した。彼女も襟元に上級勲功章を下げ、敵機装甲七五機以上撃破で授与される精霊銀剣勲章他の勲章を飾っている古強者の黒騎士である。漆黒の髪を襟と耳にかからぬよう短くし切れ長の深紫色の瞳をしている双性者の彼女は、普段にもまして厳しい表情をしていた。元々が背が高く峻厳な雰囲気をまとっているのが常の彼女が硬い声でそう言えば、誰もが背筋を伸ばすだけの力がある。 「21旅団工部頭です。今回の戦争で「クルル=カリル」の稼動機数が開戦前の見積もりを大きく下回ったのは、工部側の見積もりの甘さのせいです。仰る通り「クルル=カリル」は、魔導覚醒した双性者が搭乗する事を前提において開発された機神です。故に、工部にも双性者が必要であるとして弟子をとりましたが、絶対数の不足により稼動機数の不足を招きました。その責任は私にあります。その上で、101長の仰る通り工部の増員の必要性を提言させていただきます」 次に発言したのは、第21旅団の機装甲整備の総責任者である工部頭であり、かつ機神「クルル=カリル」を設計開発したイサラ導師であった。光加減によっては紺色にも見える黒髪をあごの辺りで切りそろえて額を出した小柄な少女にしか見えない彼女ではあるが、魔導八相に覚醒した導師の証である紺色の詰襟の服を着ており、「内戦」以来ずっと近衛騎士団で機神整備を担当してきた古参中の古参の一人でもあった。 ナタリアとイサラの言葉に、参謀長のメトポロニアは口をへの字に曲げて難しい表情になった。その眼鏡の下の翡翠色の瞳こそ見えないが、二人の要求の難しさを考えて困っているのは確実であろう。なにしろこの「帝國」でも万で数える程度の数しかいない双性者の中から、工部として機神を整備できる人材を要求されているのだ。今この会議に出席している面子における双性者の比率は非常に高いのであるが、それも皇帝陛下の近くに侍るための近衛騎士団の基幹部隊であるから、という理由があっての事である。帝國軍の各連隊には、双性者のいない連隊の方が圧倒的多数なくらいなのだ。 「21旅団高級副官です。101長と工部頭の仰ることは理解いたしました。しかし、双性者は黒騎士大隊ですら必要数を満たしていない現在の状況は御理解いただきたい。いかに今次大戦にて戦争の帰趨を決するに至った「クルル=カリル」のためとはいえ、工部に双性者を増員することは極めて困難であると思われます」 イサラと同じく、光の加減によっては紺色にも見える長めの髪を後ろに流しあご髭を綺麗に整えた青年士官のダハウ騎士隊長が、立ち上がり答えた。彼は、副帝レイヒルフト直属の親衛選抜混成旅団の選抜擲弾兵連隊の中隊長から軍大学に入校し優秀な成績で卒業したところを、第21旅団高級副官として引き抜かれてきた内戦古兵であり、襟元の上級戦功章を下げ、左胸に機装甲撃破15機以上で授与される青銅剣勲章を付けている歴戦の選抜擲弾兵である。フェイトは、彼がイサラと同じダルクス地方出身である事を彼の口から聞いたことがあった。 「別に今すぐ手配して欲しい、と言っているわけではない。次に「クルル=カリル」を実戦投入するつもりであるならば、大隊としての戦力発揮に難があり、それに対する抜本的解決は、機体数と双性者の工部を増やすしかない、と言っているのだ」 ナタリアは、ダハウの言葉にも特に気分を悪くした様子もなくそう返した。つまり101大隊側としては、現場の努力でなんとかできる問題ではない、と、最初に釘を刺しておきたかった、ということなのであろう。 それに対してメトポロニアもダハウも、了承したように肯いて返した。そして旅団司令部と101大隊の間で大して意味のないやり取りが交わされ、問題が正式に提議され、その件に関しては第21旅団の上部組織である近衛騎士団司令部に回すことにする、という事で決着がついた。上級騎士で小隊長の一人に過ぎないフェイトは聞いてはいなかったが、大隊先任士官のクラウディアも、大隊副官のエウセピアも特に表情を変えていないあたり、ここら辺はすでに事前の根回しはできていたのであろう。 「今回の戦争の戦費から、予備機として2機を調達するよう商議は通りましたが、配備はかなり先になりそうです。できればあと4機追加配備が望ましいところですが、さすがに皇室歳費からでは現有機数以上の配備は不可能でしょう。大隊定数12機及び試験機1機の合計13機調達が理想なのですが、それは現状では無理という事で理解していただきたい。旅団参謀長からは以上です」 そうメトポロニアがしめて、この議題は終わりとなった。さすがに今回の戦争の帰趨を決するに至った機神「クルル=カリル」についてだけに、比較的すんなりと終わったといえよう。 そして、次に参謀長が口にした内容を耳にした皆は、一斉に表情を消し、室内は硬い空気に満たされた。 「次に、今回の戦争における902大隊についてです。幹部士官以外は全て新任の騎士ばかりとはいえ、「黒の二」の被撃破数が大隊の半数に達したというのは問題と看做せざるをえません。以上の問題について、902長からお話をお聞かせいただきたい」 メトポロニアの言葉に、ぞろりと殺気をまとった隻眼の大男であるゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン上級騎士隊長が、ゆっくりと席を立った。彼も襟元に勲功章を下げ、精霊銀剣勲章を左胸に付け、そして機神及び邪神鎧撃破数五柱以上で元老院から授与される精霊銀の月桂冠の略綬をとめている古強者の内戦以来の黒騎士である。この身の丈六呎に達する巌のごとき筋肉の塊のような男が列席している全員を睥睨する様は、まるで猛獣が獲物を品定めしているかのような剣呑な雰囲気があった。 「902長だ。今回の戦争での大隊の不始末は、全てこの俺に責任がある。異論は認めねえ。半年では無理だが、二年以内に平騎士全員を最低でも黒騎士教育課程に放り込める程度には鍛える。以上だ」 「他には?」 「以上だ、と言った。俺の鍛え方が足りなかった。それ以上でもそれ以下でもねえ。いいな?」 「どこがどう足りなかったのか、それについて説明して欲しい、と言っています」 「全てだ。騎士としての技量、小隊員としての連携、戦術的判断能力、全てだ」 「つまり、実戦投入可能な段階にはない騎士を戦場に出した、とも聞こえますが?」 「そうだと言っている」 冷静なメトポロニアの言葉に苛立ちを隠せない表情で、ゲッツはきっぱりとそう言い切った。 さすがに彼の言葉に室内がざわめく。それを押さえ込んだのは、旅団長のヴェルキンであった。 「全員静粛に。902長の言いたい事は理解した。だが、戦前の段階では902は戦闘投入可能な錬度に達したと旅団も判断して戦争に臨んでいる。つまり、これまでのやり方では次も失敗する可能性がある、と旅団長からは指摘せざるをえない。これに対して902長は具体的にどう錬度向上を目指すのか、聞きたい」 「今回の戦争で被撃破を受けなかったのは、全員黒騎士の小隊長以上の騎士達です。つまり、902を黒騎士大隊として再編する時間を頂きたい」 「黒騎士教育課程を受講するには、内規を満たしていない騎士が大半のはずだが、それについてはどうするつもりかな?」 「近衛騎士団長から機甲総監部に特例を認めて貰えるよう話を通して頂きたい。そのかわり、必ず教育課程を通れる程度の錬度に達せしめます」 さすがに旅団長に対しては、元独立親衛第502大隊長であったゲッツであっても丁寧な口のきき方になる。 そのゲッツの言葉に対して、マルクス・クラウディウス・マルケルルス騎士隊長が席を立った。彼も襟元に上級戦功章を下げ、黄金剣勲章を付けた黒騎士であり、そして双性者の男性であり、魔導騎士としても錬達の黒騎士である。 「旅団運用訓練参謀としては、902長の見積もりは甘いと指摘せざるをえません。確かに902の騎士達は魔導騎士として覚醒しており、素質は十分にある事は確認されています。しかし、黒騎士たるは帝國軍機装甲乗りの最精鋭中の最精鋭。それを「黒の龍神」を預かるに至った「機神殺し」ゲッツともあろう方が理解できていないとは思えませんが?」 薄茶色の襟にかかる長髪の優男風に見えて、実はかつて黒騎士の教導も担当している独立親衛第501重駆逐大隊で副大隊長を務めていただけあって、マルクスの言葉は辛辣で直接的であった。 それに対してゲッツは大して気を悪くした様子も見せず、101大隊先任士官のクラウディアに黙って視線を向けた。 「101大隊先任士官です。今回の戦争において、第21旅団配属の重駆逐機の運用は、所詮は「結果として上手くいった」だけに過ぎないと指摘せざるをえません。つまり、運良く飛行中の「クルル=カリル」から故障機が出ず、運良く旅団本隊は敵の浸透攻撃を受けず、運良く101からも902からも戦死者は出なかった。まあ、その様に旅団司令部の指揮のよろしきを得たとはいえ、実際に「クルル=カリル」を運用した側としては、今の体制では次も今回と同じように上手くゆくとは到底考えられません」 独立近衛第101重駆逐大隊の先任士官であるクラウディア・セルウィトス・セルトリア上級騎士は、席を立つを太い黒縁の眼鏡を右手で直しつつそう会議の列席者の上を視線を流しながらそう語った。 いかに襟元に上級戦功章を下げ、敵機装甲二五機以上撃破で授与される白銀剣勲章を付け、さらには敵艦船撃沈五〇隻以上を示す帆船のレリーフ付き黄金剣勲章を飾る双性者の彼女であっても、この場においては軍歴では十年にも満たない若輩者に過ぎない。その彼女がこういう言い方をすれば、上級士官から冷たい目で見られるのは致し方がない。 だがクラウディアは、大して気にも留めた様子も見せず言葉を続けた。 「そもそもが101も902も、重駆逐機を預かるだけの部隊に過ぎません。そして大隊を構成する騎士達のうち、魔導騎士として十分な錬度に達していると評価できるのは実質三分の一以下。他の騎士は魔導戦技が使えるだけであって、魔導騎士としては錬度不十分です。そして重駆逐機配備大隊として考えるならば、機体も騎士も定数を大きく割り込んでいる欠編成の実質増強中隊程度の大隊が二個っきりというわけです」 「101先任士官の意見は理解した。では、その現状を改善するにはいかなる対策が必要であると考える?」 旅団高級副官のダハウが、厳しい表情でそうクラウディアに向かって質問を発する。その言葉を受けて彼女は、すっと眼鏡の下のその蒼い瞳を細めてきっぱりとした言葉で答えた。 「旅団隷下の重駆逐機大隊を、帝國軍の規定する大隊定数を満たすように再編する事を提言いたします。現在旅団の各大隊には、「クルル=カリル」七機、「黒の二改」十七機、そして騎士二六名が配備されています。うち魔導騎士が二四名。基本を「黒の二改」大隊として再編した上で、「クルル=カリル」の運用は特設中隊を編成してそちらで運用するべきであると愚考する次第です」 「本来の重駆逐機大隊は、「黒の二」二一機、騎士三〇名が定数だ。あと四機の黒の二を引っ張ってくるのは難しいだろうが無理じゃあねえ。そもそも101の「黒の二」は、「内戦」で撃破されて用廃になっていた機体を貰ってきて修理改装したもんだろ。解隊するのは902で構わねえ。そん時は俺が101の副大隊長に横滑りする。どうだ?」 黒騎士として「黒の龍神」乗りとしては、この場にいる騎士達の中ではゲッツが最先任である。なにしろ内戦前から「黒の龍神」を預かってきた古参中の古参であり、502長も勤めた身である。同じ「黒の龍神」乗りではあっても、ゴーラ帝国との戦争の直前に大隊長職についたナタリアとは、やはり一段格が違うのだ。その彼が902を解隊して101長の下に入ってもいいと言われては、さすがに旅団司令部の面々も何も言えなくなる。 フェイトは、クラウディアがいつの間にゲッツとそこまで親しくなっていたのか、その事実に驚いていた。 元々がクラウディアは、独立近衛第901重駆逐大隊の最古参「黒の龍神」乗りであるプロヴィウシア・エイビシア上級騎士隊長の直弟子とも言うべき存在で、ナタリアとも付き合いが長い。ゲッツが902長としてエドキナ大公領から赴任してきた時には、すでに101大隊の先任士官扱いであったのだ。 「重駆逐機大隊として編成を完結する事を前提とするならば、解隊するべきは101の方だね。君よりも101長の方が後任で、そして「クルル=カリル」を別枠で運用するならば、大隊はあくまで「黒の二」大隊として運用されるべきだ。ならば、大隊長は君が勤めるべきだ。フォン・ベルリッヒンゲン上級騎士隊長」 いっそ乾いたといってもよい声色でそう言葉を発したヴェルキンに、ゲッツとクラウディアはすくっと背筋を伸ばした。 「現状では、101と902を編合しても欠編成となる。まして「クルル=カリル」も運用するのであれば、配属するべき騎士の数もそれ相応に増やさざるをえない。そしてその必要があると、902長も101先任士官も判断したんだね?」 「「はい、旅団長」」 「判った。101長の意見は?」 「101長としても、902長と同意見です。現状の902は、要求される任務を遂行しうるだけの戦力を有していないと判断せざるをえません」 ナタリアも背筋を伸ばし、そうヴェルキンの言葉に答えた。 「「黒の二」二個中隊十二機稼動、「クルル=カリル」三機稼動として、騎士三〇名、さらに本部要員が四名として合計で三四名。902長と副官は「黒の二」専任になってもらうとしても、あと八名の魔導騎士を近衛騎士として叙任させないといけない。その必要があると、902長も、101先任も判断したのだね?」 「「はい、旅団長」」 「近衛騎士団工部頭に聞きたい。901の他に、「黒の二改」二一機、「クルル=カリル」九機を有する重駆逐機大隊を運用する為には、あとどれだけ工部が必要になるかな?」 「901は今別の工部頭が面倒をみていますから、私は902に専念できます。その上であと古人の工部が最低でも二人、できれば四人欲しいですね。「クルル=カリル」の稼動機数は、事実上古人工部の数と同数になると考えていただけますでしょうか」 ヴェルキンの質問に、イサラも背筋を伸ばしてそう答えた。 フェイトは、ヴェルキンの質問にナタリアもイサラもよどみなく答えてみせたことから、二個ある大隊を編合するという案は、すでに現場レベルでは意見の一致をみていたのだと理解した。なにしろ、101大隊副官のエウセピアも、902大隊副官のセルピウス騎士長も、特に驚いた表情もせずに会議にのぞんでいる。事前に根回しを受けていたのでなければ、こうはゆかないだろう。事実、101の小隊長である自分も、無名も、902の小隊長であるルキアヌス・アモニス騎士長も、ルナマリア・ファルコニア騎士長も、突然の話になんらかの驚きを隠せない様子であるのだから。 「参謀長の意見は?」 「特にありません」 「高級副官の意見は?」 「……特にありません」 「他に意見は?」 ヴェルキンの質問に、皆が沈黙をもって答える。ゲッツとクラウディアの意見は、本来ならばポストの減る現場から反発が出る話である。だが、その現場から出されたのであるならば、旅団司令部としては問題は無いということなのであろう。 「では、101と902の編合については、近衛騎士団長に旅団長より上申する」 結局は夜遅くまで続いた会議のあとフェイトは、煮詰まった頭のままクラウディアと共にセルウィトス一門の屋敷を訪れていた。さすがに今日の会議の内容は、一介の上級騎士でしかない小隊長にとっては理解するのも判断するのも難しい話であったのだ。 平服に着替えた二人は、軽めのアルコールで喉を湿らせつつ同じ長椅子の上で寄り添いあっていた。 「クラウディアは、今日の会議の内容は事前に知っていたんだ」 「うん。正直101も902も、今回の戦争で戦死者が出なかったのは、とてつもなく運が良かったせいだと思ってる。それは両大隊の幹部皆の一致した意見で、さすがに次の戦いで同じ幸運に恵まれるとは思えないよ」 「……そうなんだ」 「もしかして、事前に話を聞かされてなかったから怒っている?」 右手を肩に回してフェイトの柔らかくも真っ直ぐな暖かみのある金髪をすくように撫でているクラウディアの言葉に、彼女は首を軽く左右に振って答えた。 「ううん。私にはちょっと難しい話だから。でも、確かに運が良かったのは確かだよね」 「戦死者も、傷病死者も、大隊の騎士からは出なかった。今でも嘘みたいに思えるよ。旅団の他の部隊からは、少なくない死者が出ているのに」 101の騎士達から戦死者が出なかったのは、大隊長であるナタリアや、先任士官であるクラウディア、そして段列長も兼任する副官のエウセピアの不断の努力があってのことである。そのことをフェイトは全く疑ってはいない。だが、実際に大隊を運用してきたクラウディアにしてみれば、この結果は運が良かったとしか言葉にできないのであろう。 ころん、とクラウディアの膝の上に身体をかぶせたフェイトは、首をひねって彼女を見上げた。 「皆ががんばったから、だけでは済まないんだね」 「うん。「クルル=カリル」に故障機が出なかった、というそれだけでも本当に幸運なんだよ? 海の上では、故障が出たらそのまま未帰還なんだから」 「そうだね。墜ちれば死ぬのが「クルル=カリル」だしね」 魔導八相に達したフェイトならば、墜ちる機体から転移して脱出し、生き延びられる可能性もある。だが101の騎士の大半は、転移もできない魔導師としては未熟な者達ばかりなのだ。 「ねえ、クラウディア」 「なに? フェイト」 「私は、「クルル=カリル」に乗る騎士は、皆最低でも転移できるくらいの魔導師になるべきだと思うんだ。でも、そのための教育には時間がかかるのも判っている。その時間は貰えないかな?」 実はフェイトも戦争の間ずっと考えてきたことではある。101の騎士達が魔導騎士としてのみ鍛えられていて、魔導師としての教育はほとんどわきにのけられていた。だが、当分の間大きな戦争のない今ならば、皆にちゃんとした魔導についての教育を行えるのではないか、と。 「本当に時間だね、必要なのは。ヴェルミリオム師とフェイトと二人導師がいて、まあアムリウス先生とアウルス伯は一生懸命お願いすれば我侭を聞いて貰えるだろうし、シルディール元帥も総参謀長時代からすれば時間に余裕があるだろうし。時間さえあれば、随分と楽になるなあ」 「うん。私からすると、やっぱり皆にきちんと魔導師としての教育も受けて欲しいんだ。あのね、皆、「クルル=カリル」の本当の実力を発揮できていないと思う。あの子は、本当の実力を発揮できるなら、きっと誰も「帝國」に向かって戦争を仕掛けることをためらうような力を発揮できると思っているんだ。クラウディアはどう思う?」 クラウディアの膝の上でごろんと仰向けになったフェイトは、互いの両手の指を絡めてそうたずねた。 なにしろ機神「クルル=カリル」の開発騎士はクラウディアだったのだ。きっとフェイト以上にかの機神について深く理解できているはずであろうから。 「そうだね。……「クルル=カリル」にも原型機がいて、それは戦闘はおまけ扱いの魔導機として作られている。今ケイロニウス・ケルトリウス家の機神はアルトリウス殿下と一緒にアル・カルナイにいるから、皇太子殿下が乗る機神が無いんだ、表向きは。でも、その原型機がカタリナ師が乗るための機神で、そしてその事実は、ケイロニウス一門の各家門の主と、開発にたずさわった者達だけが知っている秘密なんだけれどね。その機体の開発の元になった機神についてはさすがに知らないけれど、その原型機は、カタリナ師が駆るならば、どんな奇跡だって起こせると思う。そして「クルル=カリル」に同じ事ができるかどうかは、多分乗り手次第なんじゃないかな」 「……そうなんだ。じゃあ、私が戦う以外にも魔導を行使することもできるのかな? 「クルル=カリル」なら」 「多分ね。なにしろ二号機以降の機体は、魔導行使に制限がかけられているくらいだしね。正直、皆の魔導師としての地力を上げて制限を外すのが、一番必要なことだって思ってる」 声を潜めて、でも優しい表情で秘密を語ってくれる彼女に、フェイトは嬉しさで一杯になってしまった。そっと手を伸ばしてクラウディアの眼鏡を外して寝台脇のサイドボードの上に転移させ、自分も身体を起こして両手を彼女の首に回す。 そんなフェイトを両腕で抱き上げて横抱きにしたクラウディアは、切れ長の蒼い瞳を優しげに細めてそっとついばむような口付けをしてくれた。 「あのね、私はクラウディアが一番好き」 「うん、知ってる」 「私は優しくしてくれる人が好き。好きになってくれる人が好き。でも、どれだけ優しくされても、好きになってもらっても、一番はクラウディアなんだよ」 フェイトにとってクラウディアは、感情で大きく心が揺らぐようになる前から彼女を見守って優しくしてくれた人の一人で、そして一番近くにいてくれた人である。彼女の欲求の根本にいる存在は、今は亡き母と彼女の二人なのだ。 だからフェイトは、こうしてクラウディアに言葉で自分の気持ちを伝えることで、自分というものを確かめている。 「知っているよ。だからフェイトが誰とどんな関係を持っても、わたしもフェイトのことを好きでい続けるよ。そして、それを誰にも邪魔はさせない」 「本当に?」 「わたしがこれまでフェイトに嘘をついたことがあった?」 「無いよ。うん、クラウディアは、黙っていることはあっても、嘘はつかないものね」 今度は、自分から甘えるようにねだるようにキスを返したフェイトは、クラウディアの黒髪に顔をうずめて声にならない声をあげた。 優しく甘やかして欲しい、という言葉にしないフェイトのおねだりに、クラウディアは、彼女の身体をそのまま抱きかかえて寝台へと移った。