約 495,219 件
https://w.atwiki.jp/macrossf-eparo/pages/59.html
846 名無しさん@ピンキー sage 2008/06/05(木) 13 01 07 ID sLuWZRbe 824 を見て思いついたアルシェリ話投下。 気がついたら、浅田次郎テイストのイイ話になったような気がします。 847 財布落として落ち込むアルトと励ますシェリル(1/4) sage 2008/06/05(木) 13 05 34 ID sLuWZRbe 運命というものがグラフで示せるなら、今のアルトは下降曲線の真っ最中だった。 SMSと新統合軍の対抗演習で機体を破損させ、オズマの鉄拳制裁を浴び、整備班長から小言をコッテリくらい、 始末書を書かされた。 美星学園ではパイロットコースの定期テストの実技でミシェルに僅差で負けた。 「はぁ…」 気がつくと溜息が洩れる。 これではいけないと、アルトは意識して背筋を伸ばし、新呼吸した。 これからシェリルに会うのだから、しょぼくれた所を見せては、どんな風に付け込まれるか判ったものではない。 通りがかったビルのショウウィンドウで身だしなみを確認する。ジャケットにTシャツ、ジーンズ、ショートブーツ。 「よし」 小さくうなずいて、待ち合わせのリニア駅に向かった。 改札近くで待っていると、背後から声がかかった。 「待った?」 「いや…」 振り返って驚いた。 今日のシェリルは、長い髪を大きめのニットキャップに収め、大きめのサングラス、タンクトップにデニム地の ミニスカートを合わせていた。 タンクトップの上から透かし柄のショート丈のニットを着ている。 足元はお気に入りのショートブーツだった。 全体の色遣いはラスタカラーで、いつものイメージとは大きく違う。 「すごい変装だな」 アルトが言うと、シェリルが言い返した。 「似あってるぐらい言えないの? 気が利かないわね」 「言われないと、お前だって気付かない」 「ああ、髪をね、まとめちゃうと全体のシルエットが変わるから」 他愛ない会話をしながら、二人でリニアに乗る。 「今日はどこに行くの?」 「そうだな、水族館とか」 そこでアルトは自分のジャケットに違和感を覚えた。 「ん?」 体に手を当てて、違和感の正体を探る。 「あ」 「どうしたの、アルト?」 「財布……無い」 財布とは言っても、電子マネーが主流のフロンティアでは身分証を兼ねたカードだ。 「落とした、か?」 慌てて周囲を見るが、落ちてない。 「忘れたんじゃないの、ドジねぇ」 シェリルが言った"ドジ"の単語がやけに胸に突き刺さる。 「くっ…」 リニアに乗るのに財布を使ったので、忘れた可能性はない。 "財布"は所有者が手に持って使用しないと機能が活性化しないので、紛失しても不正使用は難しい。ただ、 「再発行、面倒なんだよな……」 運命の下降曲線は続くらしい。アルトはガックリきた。 「財布ぐらいで、そんなに落ち込まないの。無いなら無いで、何とかなるわ」 シェリルは人差し指でアルトの頬をつついた。 リニアを降りて、水族館へ続く道を歩く二人。 「でね、グレイスが……ちょっと、アルト、聞いてるの?」 「ああ…まあ」 「もー、冴えないわね」 さっきからアルトはこの調子だった。占いを信じる気質ではないが、 こうも良くないことが続くとお祓いでもしてもらおうか、という気がしてくる。 「あんまりショボくれていると…」 「誰がショボいんだよ」 一応言い返すが、声に力が無い。 「えいっ」 シェリルはアルトを両手で突き飛ばした。 「おおっ!?」 二人が歩いてきた道は桟橋をイメージしたもので手すりなどはない。 突き飛ばされたアルトは澄み切った海水の中へ、派手な水しぶきを上げて落ちた。 「何をする!」 上へ向かって怒鳴ったアルトだが、目を丸くした。 シェリルが飛び込んでくる。 「うわっとぉ!」 「きゃぁ!」 シェリルもまた、水しぶきを盛大に立てた。 「お前、無茶を……わぷ」 この辺りは、足が底に着くほどの深さで、シェリルは手のひらで水をはね上げてアルトにかけた。 「あははっ」 笑顔のシェリルに、アルトも反撃する。 「このっ!」 「きゃぁ……やったわね!」 「くそ…くらえ、マクロスキャノン!」 「ぷはっ……アルト、必死すぎ…あはははっ」」 結局、水族館へは行かずに、二人してびしょ濡れになって砂浜に上がった。 「もう、ひどいかっこう」 「自分でやっておいて」 はしゃぎ過ぎた二人は、荒い息をしながら座り込む。 「でも……ちょっとはマシな顔になったわよ」 ストロベリーブロンドの髪を絞りながら、シェリルが言った。 「あ……」 あれはシェリルなりの励まし方だったんだ。アルトの心がほんのり温かくなった。 「アルト、振り返らないで。これをかけて」 シェリルの声が不意にシリアスなものになった。そして大きなサングラスを差し出す。 「なんだ?」 言われるとおりにサングラスをかけてアルトは驚いた。 「リアビュー(後方視界)サングラス?」 視界には、前方の視野に重ねて、サングラスのツルに仕込まれた超小型カメラから見た後方の映像を表示していた。 「パパラッチ対策用のおもちゃよ」 シェリルはアルトの耳に唇を寄せた。 「階段のところ、あのお爺さんリニアでもいたわ」 目を凝らしてみると、砂浜から道路へ上がる階段のところ、街灯に隠れるように小柄な老人の姿が見える。 言われてみれば、リニアの車内でも見かけたような気がする。 短く刈った白髪。特徴のないグレーのジャンパーに、グレーのスラックス。あまり裕福そうな服装ではない。 「尾行されている?」 シェリルは頷いた。 「かもね」 「帰るか」 アルトは立ち上がって、シェリルに手を差し出した。 服が乾くまでリニアも使えないので、駅ひとつ分ほど歩くことにした。 アルトの後方視界には、あの老人の姿がある。見ている内に気付いたのは、彼の目的はシェリルではないらしいこと。 どうも、アルトの方を監視している。 「どう?」 シェリルが尋ねた。 「わからない……でもパパラッチとかではないようだ」 撮影機材は小型化の一途をたどっているので外見からは判らないが、そうした職業の人間ではないようだ。 リニアの駅前はそれなりに混雑していた。 アルトの後方視界の中で動きがあった。老人が接近してくる。何か仕掛けるつもりだ。 「シェリル」 声をかけてから、シェリルの肩を抱いた。 「何、いきなり?」 シェリルはアルトの顔を見た。アルトがサングラスに投影された後方を注視しているのを見ると、黙って寄り添った。 人ごみの中、明らかに何かの訓練をした身のこなしで老人は急速に接近した。その手が素早く動く。 アルトの人並外れた動態視力と反射神経は老人の手を掴むのに成功した。 「ひっ」 老人は短く悲鳴を上げた。 「えっ?」 アルトは驚いた。悲鳴は甲高い女の声だった。 老女が手に持っていたのはアルトのカードだった。 異様な雰囲気で周囲の注目を集めそうになったところでシェリルが機転を利かせた。 「ちょっと、こっちへ」 駅に程近い小さな公園はアルトを引っ張ってゆく。アルトに腕を掴まれたままの老女もおとなしくついてきた。 人気の無い公園でアルトは尋問を試みた。 「このカードはどうしたんだ?」 「へっ、返すつもりだったんだよ。気づかれないように。アタシも老いぼれたもんだねぇ」 老女は悪びれずに言った。 「アルトからスリとったの?」 シェリルの質問にうなずく。 「ああそうさ、この芳乃(よしの)さんがスリとったのさ」 芳乃と名乗った老女は独特の節回しで口上を述べた。 問われて名乗るもおこがましいが 産まれは遠州浜松在 十四のときから親に放れ 身の生業も白浪の 沖を越えたる夜働き スリはすれど非道はせず 人に情けを掛川から 金谷をかけて宿宿で 名人と噂高札に 回る配布の盥越し 危ねえその身の境涯も 最早七十に人間の定めはわずか百年 フロンティアに隠れのねえ 中抜きの芳乃たぁアタシのことさ 「何を言ってるの?」 きょとんとしたシェリルの横でアルトは驚いていた。 そして、続く口上を述べる。芳乃とは違って正当な歌舞伎のセリフ回しで。 さてその次は江ノ島の 岩本院の稚児上がり 平生着慣れし振袖から 髷も島田に由比ヶ浜 打ち込む浪にしっぽりと 女に化けた美人局 油断のならぬ小娘も 小袋坂に身の破れ 悪い浮名も龍の口 土の牢へも二度三度 だんだん越える鳥居数 八幡さまの氏子にて 鎌倉無宿と肩書きも 島に育ってその名さえ 弁天小僧菊之助 「な……」 芳乃は絶句したが、アルトの顔を見て得心した。 「今日のアタシは本当に下手をうってばかりだねぇ。 早乙女家の御曹司の前で素人芸を披露しちまうなんざ、たははっ、本当におこがましい」 アルトは照れ笑いする芳乃がちょっと可愛く思えた。 「二人で盛り上がってないで、私に判るように話しなさいよ」 シェリルが唇を尖らせた。 芳乃は統合戦争前に地球で生まれた世代だった。 家庭環境に恵まれず、犯罪に手を染めて成人した。手先が器用で、スリを得意とした。 スリの中でも特に高度な中抜きといわれる技を身につけたのは中年の頃。 一度スった財布の中から、いくらか金額を抜き取る。財布は元の持ち主のポケットやバッグに戻すのだ。 被害が発覚しづらい、という利点がある。 「今じゃ、財布スったって現金なんざ入ってないけどね、移民星についたら、 エイリアンにでも教えようかって、こうして腕を磨いている。 財布はキッチリ返してんだ、お天道さんだって見逃してくれるだろ」 「はた迷惑なプライドだな」 アルトは半分呆れ、しかし半分は感心していた。 「そろそろ引退時じゃないか。リニアの中でスられたのに気づいたし、今、こうして捕まってるんだ」 「そうだねぇ。警察に捕まる時にゃ、最後にカッコつけようと白浪五人男の口上も覚えてみたけれど、 披露した相手がアンタじゃねぇ。どうにもシマラナイ」 芳乃はため息をついた。 「誰にでもアンラッキーな時ってあるわよ。元気出して、芳乃。」 シェリルが励ました。 「今はこんなシャッキリした顔してるけど、財布をスられた時のアルトったら、 それはもうションボリの見本みたいだったんだから」 「お前なぁ……」 アルトはため息をついた。それから、芳乃に向き直る。 「こんなのいつまでも続けてないで、何か新しいこと始めたらどうだい?」 「説教なら聞かないよ」 芳乃はキッパリと言った。 「そりゃ、ろくでもない人生だったさ。誰かの懐をアテに生きてきたんだからね。 でも、スリの技前だけは誰も奪えないアタシのものさ。今じゃ、銀河中探しても他に中抜きできるヤツなんざ居ない。 そうだねぇ、異星人の弟子でもできたら、誰か一人ぐらい世の中の役に立ててくれるかもねぇ」 「やれやれ」 アルトは肩をすくめた。 芳乃とは、その公園で別れた。 「見逃してくれた礼に、ひとつ老人の知恵ってヤツを差し上げようかね、お嬢さん」 最後に芳乃はシェリルにだけ聞こえるように囁いた。 「あの御曹司、鼻っ柱が強くて周りを振り回すタチだろ?」 「そうね。でも周りを振り回すのは、私も負けてないかも」 「ははっ、お似合いだ。あのテの男はね、三回貶して、一回褒めるのがいいよ。 褒めてばかりだと、どこまでも調子に乗るからね。鼻っ柱を折っておいて、ちょうどいいぐらいさ」 「ありがとう、参考になるわ。またお話したいの……今度はゆっくりね」 シェリルは芳乃の手をとって握手した。 「人生経験だけは、アンタの何倍も積んでいるからね、何かの役立つだろうよ」 芳乃は漂漂とした足取りで、公園から出た。その背中が小さく思える。 <終> ※続きは2-101(*エロあり)
https://w.atwiki.jp/vahren_ency/pages/367.html
最終決戦Ⅱにおいて、フェリル党が国名を変えた勢力。ほぼ現存するすべてのゴブリン人材たちが集結しており、フェリル国を追い詰めてフェリル制覇目前である。バルバッタがどうなっったのかは不明。 -- 名無しさん (2009-11-11 13 37 20) この勢力の拡大ぶりを見るに 長としてはチルクの方がバルバッタより数倍上手だったようだ -- 名無しさん (2009-11-11 20 27 10) S1時点でムッテンベルやアスターゼがフェリル党に居たなら、 マスターがバルバッタでも拡大していた気もする -- 名無しさん (2009-11-12 02 57 53) ↑だがその人材達を手繰り寄せる事が出来たのは、チルクの手腕によるものではないだろうか。 実際バルバッタがいなくなるまで人材はチルクのみという悲惨な状態・・・ -- 名無しさん (2009-11-12 03 17 00) バルバッタの存在価値について考えさせられる勢力である。 -- 名無しさん (2009-11-12 03 19 10) ゴブリン勢力であるにも関わらず、難易度:低である。 ただ、初期戦力と立地こそ良い物の、雇用は相変わらずチルク頼みで、 言うほど楽でもない。 -- 名無しさん (2009-12-18 00 05 42) 所詮はゴブリン、戦力が同数でも普通に吹き飛ばされる。優秀な人材頼り -- 名無しさん (2010-01-11 01 03 33) ゴブリンと侮り放置していると勢力を拡大しまくる。物量が半端ないので、敵にするなら範囲攻撃を持たないと時間切れになる可能性もある。 -- 名無しさん (2010-01-16 02 03 58) てんげんとっぱ -- 名無しさん (2010-04-09 20 46 29) 自分でプレイするとルルニーガさんがアルティマイトを面白いくらい 蹴散らしていく。 -- 名無しさん (2010-05-09 17 31 11) ブレア東の中立化やムッテンベルの弱体化などで弱体化。 CPU操作でも状況によっては負ける。 -- 名無しさん (2010-08-29 00 26 10) S7ではアスターゼ・ルルニーガが死亡した上にマクラヌスを奪われている -- 名無しさん (2011-06-05 18 11 02) 実質大フェリルはアスターゼとルルニーガにチルクマクラヌスだけでもってるようなもんだけれど これがないS7ではS6と比べて明らかに難易度があがっている おまけにまわりは鬼畜死霊軍 -- 名無しさん (2011-06-05 23 13 22) 四天王が20越えると彼らの上位精霊召喚も優秀。 しかし個人的には土に限っては下位のが使える。 作戦としては、早々に北上して砂漠制圧が吉。 エフォード→スネアでスネアの雇用範囲が広いので、ドワーフなどいろいろ雇用可能。 -- 名無しさん (2011-12-31 12 03 20) 土の下位召喚獣ベヒーモスは突撃が使えるんで結構な火力がある。確かにノームより強いかも -- 名無しさん (2011-12-31 21 56 24) コブリンは壁の弱さが難点だが、ベヒーモスならそれがおぎなえる -- 名無しさん (2012-01-06 11 48 36) 高レベルベヒーモス大量召喚はほんとに頼りになる。ウンディーネ召喚とあわせると、敵の体力がみるみるうちに削られてゆく -- 名無しさん (2012-01-07 12 39 06) サラマンダー召喚も数がそろえば優秀。 みるみる前衛が溶ける -- 名無しさん (2012-01-08 13 30 46) エフォード、ギストー、水軍、死霊と相性の悪い敵が多すぎでかなり厳しい 一応S6の選択画面では難易度低、となっているのだが… -- 名無しさん (2012-05-18 06 59 15) アスターゼがまさかの弱体化 召喚ゲーで問答無用に押しつぶすことはほぼ不可能に -- 名無しさん (2012-10-24 14 58 52) 召喚による物量作戦と兵士のコストの低さが魅力の勢力。ただ、領地毎に待機可能な部隊は種族差がない関係上、同数勝負となる展開が多く、耐性面の脆弱さからも高難易度な勢力と言える。 -- 名無しさん (2012-10-25 00 39 15) 一度だけまさかの蛇王打倒を果たすところを見たことがある。 -- 名無しさん (2013-03-15 17 44 45) アスターぜとるルーニがが強い フリエンとキスナートがかわいい -- 名無しさん (2021-11-17 01 00 40) 仔フェリルはない -- 名無しさん (2023-04-27 00 59 04) バルバッタ以外オールスター -- 名無しさん (2023-07-03 05 55 36) バルバッタが率いていたフェリル党は後世には小フェリルと呼ばれたのかも -- 名無しさん (2023-07-30 15 51 17) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/faren_ency/pages/3641.html
フェリル東の南西、シャルバイラ遺跡の少し北西にあたる地帯。フェリル城があるためか戦術マップはない。
https://w.atwiki.jp/vermili/pages/826.html
発言者:シェリル・マクレガー 決して、異端者や強大な力を持つ者には及ばないシェリル。 それでも、彼女が絶対に譲ることのできない――愛を貫くための咆哮。 決死の逃避行の最中、心臓に癒着した銀の呪いによって失われんとする大切な男の命。 その困難に対し絶望しかけたシェリルはしかし、自己の賜力と精神力を最大限に用い、銀の摘出に成功する。 大切な者を現世に繋ぎとめられたことに確かな“勝利”を感じるシェリル。 だが、過去の因縁に従い彼と彼女を狙うバイロンがその生の輝きごと、かつての継嗣である彼女を喰らおうと立ちはだかる。 「私に闘う気がないのかと問うたな? ああ、いかにもその通り。 私は戦士ではなく、吸血鬼として貪っているのに過ぎない。 その胸に芽生えたばかりの、ちっぽけな明日への希望とやらの蜜の味を」 「1909年6月。左鎖骨、胸骨、肋骨切断」 「1886年11月。右耳と左耳」 「1944年9月――鉄の乙女(おとめ)」 宣告通りの部位から、何も触れられていないはずの彼女の躯が次々と裂け爆ぜる。 鮮血と共にシェリルは急速に凄惨な過去を引き摺り出されていく。 バイロン曰く、その現象の名は、聖痕(スティグマ)。 精神の暗示力が、肉体に物理的な変化を発生させる現象。 たとえ心が幾度その色を変えようと、百年の間にシェリルの肉体に刻みつけられた幾千の敗北の痕は決して消えない。 バイロンという巨大なる「怪物」、その真の恐怖を思い知らされるシェリル。 そして痛みの記憶も止まらない。 もはや残り僅かとなった体内の血。命を紡ぐための源が失われるのを感じながら、シェリルは、それでも流血を抑えんとする。 ――心は既に砕け、魂は犯され、命は百年に渡って弄ばれた。 ――この吸血鬼(ばけもの)には絶対に勝てる道理がない。 判っている。わきまえている。思い知っている――そのはずなのに。 何故、自分は血を止めようなどと考える? 足掻くのをやめようとしない? 「……そんなの、決まってるでしょ」 「運命って奴に、あたしはやっと(・・・)1勝1敗…… ようやく星を取り返したばかりなのに、いきなり負け越す訳にはいかないのよ」 「かかって来なよ、バイロン───今度こそキッチリぶっ飛ばしてやるから」 掌に握りしめるは、愛をこの手に取り戻した証たる銀弾の残骸。 よろめく足で仁王立つ彼女の身からは、聖痕による鮮血が止んでいた。 魔人はその光景に貪るべきもの(・・・・・・)を今度こそ、喰らい尽さんと。 「ならば、シェリル・マクレガーと名付けられしその命よ。 存分に吼え猛れ。己が領土をこの荒野に切り取ってみせよ。世界の涯てはここにある!」 「朱き命よ、足掻いて血を流せ!其を啜る我が名こそは吸血鬼──我、貪るがゆえに我なり!」 己の賜力・狂人塔楼(ルームインザタワー)の齎す、闇より深き影に獲物を今まさに捧げようとした……。 その時───足音と共にシェリルは聞いた。 「なるほど、同感だ」 背中へと響いたのは、聞き慣れた深い錆を含んだ声で。 「その理屈で言うならば、俺は尚のこと運命とやらに勝たねばならんのだな」 時には陰気と苦言を呈し、時には辛気臭さを揶揄(からかい)の種にもした声。 「何となれば0勝1敗。 おまえと違って、俺はまだ一度も勝ってすらいないのだから」 その愛しき男の声は、満身創痍のシェリルの耳には天上の福音として響くのだった―――。 ここのシェリル最高に輝いてたよな -- 名無しさん (2018-01-02 13 51 09) 確かにヌッと現れるところは英雄思い出したけど -- 名無しさん (2019-04-28 00 14 03) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/macrossf-eparo/pages/43.html
645 作戦 sage 2008/05/28(水) 10 38 19 ID 7GAV5yEC ランカがアルトへの想いを自覚した……という前提で。 放課後の屋上。 「シェリルさん、教えてください」 「なぁに? ランカちゃん」 ランカはありったけの勇気を振り絞って言った。 「アルト君のこと、どう思っているんですか?」 シェリルは一瞬だけ目を見開いた。その目が微笑みに変わる。 「そうね……無意味に偉そうで、ムカつく男。でも、期待している答えは、これじゃないわね?」 「友達なんですか? それとも……」 「好きよ」 シェリルはきっぱりと言い切った。 その勢いの良さに、にランカは姿勢を正した。 「ムカつくのに?」 「そう。いつもケンカばっかりしているけど……私って変かしら?」 「変じゃないです。ケンカするほど仲がいいって言いますから」 「そうね」 頷いたシェリルの目もとに、寂しげな色が漂った。 シェリルは自分の言葉で、シェリル自身がどれだけ孤独な場所にいるのかを気づかされた。 現在の場所に上り詰めてから、アルトの他にはケンカする相手さえ居ない。 そして、孤独の影を振り切るように、シェリルはランカの瞳をまっすぐに見た。 「あなたは私のライバル?」 言葉は質問の形だったが、意味は断定だった。 ランカは黙っていた。 「苦労するわよ、ものすごく鈍感だから」 「鈍感なんかじゃないです」 ランカは言い返した。 「知ってるわ」 シェリルは頷いた。 二人とも、アルトの心に隠された傷を知っている。 「勝てるものなんて何一つ持ってないけど、これだけは負けません」 ランカの言葉は宣戦布告。 「相手がランカで良かった」 シェリルはランカの横を通り過ぎながら言った。 「どんな結果になったとしても私たちには歌があるわ。 歌がある限り、あなたと私の絆は切れない……自分でも上手く説明できないけど、それが嬉しい」 ランカはシェリルの背中を見送った。 「手加減なしで行くわ」 「負けません」 その夜、ランカは作戦を立てた。 (敵を知り、己を知れば百戦危うからず……だっけ?) 携帯君を手にとりアルトの番号を呼び出す。 どうやって話を切り出そうか、頭の中でシミュレーションする。 深呼吸一つするとコールボタンを押した。 「はい…」 アルトはすぐに電話に出た。 「こんばんは、アルト君。芸能科にいた時、演劇概論とってた?」 事前に想定したシナリオどおりの言葉を一気にしゃべった。 「ああ、あれは芸能科だと必修だろ?」 アルトは担当講師の名前と顔を思い出した。歌舞伎ファンで、何かというとアルトに話をふってきたので、うっとうしい授業だった。 「今日の授業で、ええとなんだっけ? ……チ、チカマトゥ?」 ここまで筋書きどおり話を進めてきたのに、度忘れした。ランカは焦った。 「近松門左衛門だろ? 曾根崎心中でも出たか」 「そ、そう。それそれ」 ランカはほっとした。アルトのおかげで、事前のシナリオに戻れた。 「あの話、いまいちピンとこないんだ。なんで二人は死ぬことを選んだの?」 「正直、俺にも判らない。逃げちまえばいいんだ」 「アルト君もそう思う?」 「ああ、心中モノって好きにはなれない。心中は自殺が二つじゃなくて、殺人が二つだ」 「あ、同じこと考えてた」 「芝居だと美しく演出しているけどな」 アルトの脳裏に曾根崎心中・天神森の段の一節が浮かんだ。 (この世の名残、夜も名残。死にに往く身をたとふれば、あだしが原の道の霜。ひと足づつに消えてゆく。夢の夢こそ哀れなれ ……やっぱり歌舞伎は嫌いになれないな) 「ずーっと一緒に居たい気持ちはよく判るよ」 「まあな。でも、その気持ちをこえて、離れていても思いが通じる方が好きだな」 ランカは心の中でガッツポーズを作った。 (やったー! アルト君に恋バナさせるのに成功!) 名付けて『授業の話にかこつけて恋バナに引きずり込もう作戦』は佳境に入りつつあった。 シェリルは作戦を立てた。 「敵を知り、己を知れば百戦危うからずって言うものね」 シェリルの部屋には、どこから運び込まれたのかホワイトボードが設置されていた。 「この私、シェリル・ノームに関しては知り尽くしているから、敵を調べないと」 ボードの上には、アルトに関連する報道やゴシップ、果てはネット内の匿名掲示板の書き込みまでが、ハードコピーの形で張り付けられている。 また、アルトに関係する人物の画像・情報も張り出され、本格的なソシオグラム(人物関係図)が完成していた。 もちろん、情報の大半はグレイスが検索能力を駆使して集めたものだった。 「ちょっと、おとな気無いんじゃありません?」 かたわらのグレイスが苦笑気味に言った。 ホワイトボードの周りは、昔の刑事ドラマに出てくる捜査本部のようだった。 「ライオンはウサギを狩るのにも全力を尽くすの」 グレイスの頭の中でウサギ姿のランカがネコ耳をつけたシェリルに追いまわされるマンガが思い浮かんだ。 「やっぱり、狙いはここね!」 シェリルの手入れが行き届いたネイルがびしっと指し示したのは十八世早乙女嵐蔵の写真だった。 「名付けて、アルトとお父さんを和解させてポイントを挙げよう作戦!」 そんな回りくどいことをしなくても……グレイスは軽いため息をついた。 <終>
https://w.atwiki.jp/k2727324602/pages/502.html
関連ページ:マクロスF 関連ページ:マクロスF 使用楽曲初出話メモ <鑑賞備忘録> 2010年5月以降に鑑賞した分。 ◆TVアニメ(2011/4視聴完了) 話名 主要新キャラクター 出来事メモ スパロボ対照表* 主要新メカ 第1話クロース・エンカウンター 早乙女アルト、ミシェル、ルカランカ・リー、松浦ナナセシェリル・ノーム、グレイス・オコナーキャサリン・グラスハワード・グラス大統領、レオン三島オズマ・リーヘンリー・ギリアム(→×死亡)ジェフリー艦長、ボビー・マルゴモニカ、ミーナ、ラム OP:トライアングラーED(第1話):アイモ♪シェリルツアーファーストライブ・新統合軍司令部CIC、バジュラ感知・民間軍事プロバイダーS.M.S出動・バジュラ大、フロンティアに侵入 VF-171ナイトメアVF-25FメサイアVF-25Sメサイア(オズマ)バジュラ小バジュラ大 第2話ハード・チェイス カナリア・ベルシュタイン ED(正1):ダイアモンド クレバス・アルト、ランカ救出チェイス・シェリル、ランカと出会う・アルト、SMSに呼ばれる「こんなサービス、滅多にしないんだからね!」 VF-25Gメサイア(ミシェル)RVF-25メサイア(ルカ) 第3話オン・ユア・マークス ・3人、退避壕に閉じ込められる・娘娘名物、まぐろ饅・ディソシエイティブ・アムネジア・三島とキャシー・イヤリング失くした!・グリフィスパークで「アイモ」・ギリアムの弔い SMS流葬儀・アルトSMS入隊、ランカオーディションへ VB-6ケーニッヒモンスター 第4話ミス・マクロス クラン・クラン、ネネ、ララミア早乙女嵐蔵、早乙女矢三郎ミランダ・メリン ・25回目の死亡おめでとう・ミスマクロス本選・最終入隊試験 vsピクシー小隊(&♪私の彼はパイロット) クァドラン・レア(クラン)クァドラン・レア 第5話スター・デイト エルモ・クリダニク ・ランカ停学、オズマと喧嘩・アルトとシェリルのデート・アイランド3異生物研究所 バジュラの生体「そうせずにはいられなかった」♪ランカ、ストリートライブ・シェリル、アルトにキス 第6話バイバイ・シェリル ・ランカ、ベクタープロモーション入り・大統領、バジュラ情報公開・特例B項発令「借りとくぜ、お前の幸運!」♪シェリル、サヨナラライブ マクロスクォーター 第7話ファースト・アタック リチャード・ビルラーブレラ・スターン ・ギャラクシー船団救出作戦・バジュラ兵掃討(&♪射手座☆午後九時Don t be late)・ルカ救出&ナイト級撃滅作戦(&♪インフィニティ)「このクォーターが、なぜ400m級でありながら、マクロスの名を冠されているのか、……いや、マクロスでありながら、なぜこのサイズなのか、思い知らせてやれ!」 ED(第7話):アイモ カイトス(→轟沈)ダルフィム(→救助成功)バジュラナイト級VF-27βルシファー(ブレラ) 第8話ハイスクール・クイーン あい君 ・ランカ、美星学園芸能課に入学・シェリル、美星学園を訪問・あい君、シェリルの下着持ち逃げ(♪ランカ×あい君×ブレラ「アイモ」)・シェリル、美星学園転入 第9話フレンドリー・ファイア ジェシカ・ブラン[回想] 「…残念だったわね、お姉さん」・ミシェル、誤射・ランカ、ティッシュ配り・伝説のメーキャッパー、ボビー・バジュラの巣の調査、ブレラ乱入 第10話レジェンド・オブ・ゼロ ジョージ山森監督G ・映画「BIRD HUMAN」撮影・Gと三島の密会・ランカ、ヒュドラに襲われる・ランカ、マオ役に抜擢されるED(第10話):アイモ~鳥のひと 第11話ミッシング・バースデー ・ランカ、娘々のCMに・プールサイドのシェリル・矢三郎兄さん、アルトを訪問・シェリル体調不良「あなたは演じることを止められない」・誕生日トリプルブッキングED(第11話):ねこ日記 第12話ファステスト・デリバリー 第33海兵部隊オゴタイ少佐隊員テムジン ・ガリア4慰問公演・シェリルダウン、クーデター勃発♪ランカ降臨「星間飛行」「ご存じないのですか!?彼女こそ、代役からチャンスを掴み、スターの座を駆け上がっている、超時空シンデレラ、ランカちゃんです!」ED(第12話):愛・おぼえていますか 第13話メモリー・オブ・グローバル ・アルト&ランカ、不時着・バジュラと感応するランカ・ディメンジョンイーター起動・ランカ、拉致される マクロス級4番艦グローバルバジュラビショップ級準バジュラクィーン 第14話マザーズ・ララバイ ・バジュラ大群、フロンティア襲撃・シェリル、バルキリ-操縦・ランカ、無事救助 シモン、ヨハネ、ペテロ[装備] 反応弾、スーパーパック 第15話ロスト・ピース (半総集編)・オペレーションカーニバル全様説明(&♪楽曲メドレー 全4曲)・プロジェクトフェアリー廃棄・病院でトライアングラー・ビルラー、アルトを呼び出し・三島、ランカを呼び出しED(第15話):ダイアモンドクレバス50/50 第16話ランカ・アタック ・アルト昇進・夜の公園でシェリル♪ランカアタック「アイモO.C.」ED(正2):ノーザンクロス 第17話グッバイ・シスター OP(17話):星間飛行[回想]オズマのパインケーキ・三島、ルカを呼び出し・オズマ、アイランド3調査・反応弾の効かないバジュラ♪ランカファーストライブ「星間飛行」・オズマ出血…しかし入院で済む 第18話フォールド・フェーム OP(正1):ライオン・シェリルに「死の宣告」・V型感染症/研究者グレイス・シェリル、早乙女家が保護・第7次超長距離フォールド決行 バトル・フロンティア 第19話トライアングラー ・アイモ記念日・あい君を探す眼鏡ランカ・オズマとキャシー、デート(のフリ)♪フォールド成功記念ライブ・三島、クーデター決行・再びトライアングラー 第20話ダイアモンド・クレバス ・バジュラ、再び大発生・ランカ、本音を吐露(×ハワード大統領暗殺)(×ララミア死亡)(×ミシェル死亡)♪シェリル、絶望の中で歌う→ED(第20話):ダイアモンドクレバス バジュラ幼生体 第21話蒼のエーテル 「さあ、僕のターンだ」・アイランド3切り離し作戦・あい君、脱皮「アルト君、さよなら…大好きでした!」ED(第21話):蒼のエーテル アーマードクランSパック 第22話ノーザン・クロス ・シェリルからもフォールド波検出・オズマとキャシー、SMSに帰還・シェリルの余命僅か・SMS、軍属を良しとせず離反アルト・ルカ vs SMS(&♪ノーザンクロス[そのままED]) [装備]MDE弾VF-27γルシファー(グレイス) 第23話トゥルー・ビギン ・ランカ&ブレラ、バジュラ母星到達・バジュラの腸内細菌ネットワーク・兄ブレラ=妹ランカ 第24話ラスト・フロンティア ・Drランシェ・メイの医療記録・超時空ネットワークの可能性「覚えておきなさい。こんないい女、滅多にいないんだからね?」・バジュラ本星降下作戦(&♪射手座☆午後九時Don t be late)♪ランカ・リー 愛・おぼえていますかアルトvs洗脳ブレラ 巨大ランカ・リー 第25話アナタノオト(Fin) ・SMS、電撃参戦・三島失脚♪決戦楽曲第一章 ノーザンクロス♪決戦楽曲第二章 アナタノオト♪決戦楽曲最終章 スペシャルメドレー「どこまででいっても、人は一人だ…だけど、一人だからこそ!誰かを!愛せるんだぁぁぁっ!!」・バジュラの恋の歌ED(最終話):トライアングラー (fight on stage) バトル・ギャラクシーAIF-9V ゴースト[装備] ユダ・システムバジュラクィーン[装備] ソードマクロスキャノン ※全く同名or原作再現が一定程度行われているシナリオを記載(「一定程度」の匙加減は完全に管理人の感覚に拠っています。ご了承下さい)。
https://w.atwiki.jp/macross-lily/pages/42.html
「私、お化粧ってまだあんまり自信がなくて…」 「あら、ランカちゃんメイクなんてしなくっても素で可愛いじゃない」 「シェッ、シェリルさんたら!もう…」 「ふふっ、そうやって怒ってるランカちゃんもかーわいい」 「うー…でもやっぱりステージに立ったり、テレビ出演もあるし、シェリルさんみたいに もっときれいになりたいんです。…家でも色々研究してるんですけど」 「嬉しいこと言ってくれるじゃない。いいわ、ちょっとリップ貸して?私がやってあげる」 「ほんとですか!?…あの、じゃあお願いします」 「OK。じゃあちょっと上向いて…ん、そう。そのままね」 (…わ、シェリルさんいい匂い…香水かなぁ) 「こうして…こう…ランカちゃんにはやっぱり明るい色が似合うわよね」 「そう、ですか?リップの色も色々あって迷っちゃいます」 「分かるわ、女の子ですもの。何が自分に似合うかなんて考えてたら目移りしちゃうわよね」 「で、結局選んでるうちに時間だけ経っちゃって、出かける時間になっても何にも準備できてなくって…」 「あるある!…ね、ちょっとアイシャドウも入れてみよっか?」 「あ、はい…あんまり使ったことないんですけど、シェリルさんにお任せします」 「任せといて!じゃあ目を瞑って…うん、ちょっと動かないようにするね」 (わ…シェリルさんの手がほっぺに…) (ランカちゃん…睫毛長いのね…なんかこうしてると、…キス待ちみたい) 「………明るいグリーンのシャドウ、爽やかな感じで凄く可愛いわよ」 「ん…わ、すごーい。自分じゃこんなにきれいにできないのに」 「ちょっと練習すればすぐよ。私も最初はほんとに下手でね」 「ほんとですか?…でも嬉しいなぁ。シェリルさん、色々相談に乗ってくれて…なんだかお姉さんみたいです」 (そっか、ランカちゃんはお兄さんしか家族がいないんだっけ…) 「私も、可愛い妹ができたみたいで凄く嬉しいわ」 「シェリルさん…」 「ランカちゃん…」 バンッ 「あまーい!!!」 「グレイス!?っていうか何で生きてんのよ!!そしてどこから湧いて出た!?」 「ダメよあなた達…シェリランでお姉様…とか分かり易すぎるでしょ!?今時ってのはねぇ、シェリルみたいに 高飛車であからさまなツンデレ系の子が実は内面弱くてランカちゃんみたいな健気そうな子が 芯が強くて普段生意気なツンデレ娘を支えてあげるっていうのが旬なのよ?ランシェリなのよ?分かる!?」 「俺もシェリランよりランシェリの方がいいと思う…」 「主人公(笑)アルトは黙ってろ!!!」 「アルト君不潔…」 「とにかくあなたたちなってないわ。やっぱり私がプロデュースしなきゃダメみたいね」 というところまで妄想したのでテキストに起こしてみた なんかもう疲れてるんだな自分…女の子同士で化粧したり着替え手伝ったり髪を手入れしたりって萌えるよな
https://w.atwiki.jp/fairy-waterfall/pages/25.html
943 名前:fusianasan 投稿日:2009/01/06(火) 00 25 18 分岐します。清らか編 時計を見ると、シェリルの誕生日も終わりすでに1時間が経過していた。 「さて、今日はどうもありがとう、素敵な誕生日だったわ」 「あ・・・プレゼント・・・。何も準備してなくてごめん」 「ううん、いいの。貧乏学生から絞り取ろうなんて・・・ あ、ねえアルト、あなたが多分家に置いてる、桜の櫛。アレを頂戴。」 「そう言えば、お前あれ、妙に好きだったな。 前からやるって言ってたのに。別にあれは俺のもんじゃない」 「じゃあ、決まりね。ふふ。」 茶器を片付け、キッチンへ持っていくシェリル。 草履をはくシェリルがすくっと立ち上がった。 二人きりの時間はもう終わりだ。 「雪露」 アルトはシェリルを後ろから抱きすくめた。 「必ず、必ず迎えに行くから・・・!」 シェリルがそっとアルトの手に手を添えた。 「ずっと、待ってる」 シェリルはくるりと振り向くとアルトの唇をかすめて、大輪の笑みを浮かべた。 「必ず、来るのよ」 「さあ、アルト、タクシーまでエスコートしてちょうだい。 この階段、バリアフリーとかいうもの知らないのかしら。ねえ、また遊びに来てもいい?」 「いっとくけど、俺は忙しいぞ」 「私だって!でも来るの」
https://w.atwiki.jp/fairy-waterfall/pages/69.html
カツン・カツンとヒールの音を響かせながら歩く。 窓の外に見える空はいくつもの紺色の布を重ねたようなグラデーションを作り上げ、星が瞬く。 いつもよりその色が明るく見えるのは、廊下の照明が極力落とされているからだろうか? ぼんやりとそんなことを考えながら、シェリルは極力電源の落とされた廊下を転ばぬように気をつけながらゆっくりと歩いた。 時刻は23時を少し回ったくらい。 普段ならとっくに帰宅をしている時刻だ。 どうしてそんな時間にシェリルが社内にいるかといえば、その理由は簡単なものだった。 単に 忘れ物 を取りにきたのだ。 薄暗い廊下を歩きながら、シェリルは小さく唇を噛む。 普段ならば絶対にしないミスは、シェリルを少し不機嫌にしていた。 一直線に自室まで歩き、自分専用の机へと近寄る。 思ったとおり、愛用の携帯は机の上に置かれっぱなしになっていた。 とりあえず、無事に見つかったことにほっと安堵すると、シェリルはクルリと身を返す。 鍵をかけ、出口へ向かおうとした瞬間、何かをその瞳の端に捉えた。 よくよく見ると、廊下の先がぼんやりと明るくなっている。 まだ、誰か残っているのだろうかと不思議に思ったシェリルは迷うことなくその足を進めた。 「なんだ。アルトじゃない。」 「うわぁぁあぁぁ!!って、シェリルかよ・・・驚かすなよな」 見覚えのある後姿に、思わず声をかけると目の前の人物が飛び上がった。 別に気配を消して歩いたわけでもないのに、気付かなかったということは本当に集中していたのだ。 変わらないことを嬉しく思いつつも、シェリルは表情を崩さない。 にこりともせずに、淡々と言葉を続けた。 「あら、ずいぶんな言いようね?何?残業?」 「あぁ、まあな。・・・週明けにプレゼンあるからどうしても今日中に終わらしたいんだよ。」 「ふ〜ん。じゃあ、まだやるの?」 「あと1時間ぐらいで終わるしな。」 シェリルから目を離し、再び端末を操りだすアルトとくるくると変わる画面を静かに見つめながらシェリルが問うと、アルトが端末に目を向けたまま答える。 キーボードを打ち続ける手が止まり、机の上に置かれた缶コーヒーを掴むとすぐにまた離れる。 そしてそのまま興味を失ったように見えた。 きっと、面倒に思えたのだろう。 そう確信したシェリルはくすりと笑った。 「ちょっと待ってなさい。」 「ん?」 「コーヒー淹れてきてあげるって言ってんの!!」 「えっ、あぁ・・・悪いな。って、お前が優しいのも変だな・・・」 よほどびっくりしたのか、まんまるの目がシェリルを見つめる。 その反応にシェリルの肩眉がピクリッと震えた。 唇を少しだけ尖らせ、冷ややかな視線を送ってやると、途端にアルトがしまったというような顔をする。 「何?欲しくないわけ?」 「あっ、いや・・・ただ、珍しいなっと・・」 「めったにしないんだから、ありがたがりなさい?」 「はいはい。」 慌てて取り繕うアルトにそういってやると、アルトが少しだけ笑った。 少しだけ与えられた対価が徐々にシェリルにも感染する。 口角が上がるのを見られないようにくるりと後ろを向いたシェリルの心に、懐かしく、優しい感情が満ちた。 ******* 自室の鍵を開け、部屋の電気を点けると、シェリルは手早く袖をまくる。 そして、使う道具を棚から次々に取り出した。 ドリッパーとポット、カップにお湯をはり、温めている間に豆をミルで挽く。 少し荒めに挽いてフィルターをドリッパーにはめてから、ゆっくりとお湯を注いだ。 数十秒の蒸らし時間を置いて、またゆっくりとお湯を注いでいくと、コーヒーのいい匂いが部屋中に広がる。 その匂いにうまくいったことを実感し、満足そうに笑いながらシェリルは温めていたカップへと手を伸ばした。 温めていたカップのお湯を捨てて、コーヒーを注ぐと、使った食器類を軽く水ですすぎ、洗浄機へと放り込む。 片付けをあっという間に済ませると、シェリルはコーヒーを乗せたトレーを持って、再び部屋を出た。 ******* 「懐かしいよな。」 「・・・そうね。3年前かしら?」 「だな。」 淹れてもらったコーヒーをおいしそうに飲みながらアルトがそう言うとシェリルが静かに同意する。 入社したときのことはついこの間のことのように思い出せるのに、あれからずいぶんと時間が経っているのだ。 そう思うと、ひどく懐かしかった。 「覚えてるか?一番最初にやった花見」 「忘れるわけないでしょ?あんなにタイヘンだったんだから」 「だよな〜」 「・・・・ほんと、懐かしい。」 入社して始めて任された仕事は会社の年行事の幹事を新入社員全員でやることだった。 ついこの間まで学生をやっていた人間からすれば、未知なことばかりだったから、経験のあるものやリーダーシップを取れそうなものが必然的にまとめ役をやらされることになる。 そして、その対象となったのがアルトとシェリルそしてミシェルだった。 アルトは実家の関係で、大所帯を取り仕切ることには慣れていたし、シェリルもコンサートなどで人を動かすことには長けていた。 ミシェルは対人関係が広かったから、飲食物の手配や小道具などの受注を全般的に取り扱ってくれた。 人材的には最高の3人だった。 けれど、それが災いした。 いつの間にかこの3人に任せていれば大丈夫だと思い込んだ同期の連中は、雑用のみをこなすようになり表立った仕事にはあまり関りたがらなくなったのだ。 渋る仲間を懸命に説き伏せつつ、通常の業務を行い、さらに花見の準備をするというハードスケジュールを入社したばかりの新人がこなせるはずもなく、連日連夜、会社に残って話し合いを繰り広げることになっていた。 「・・・・・」 「・・・・・」 二人の間に静かな沈黙が降りる。 穏やかな視線と視線がぶつかると、二人同時に苦笑した。 両手で抱え込むようにして持っていたカップを机に置くと、長い髪に手をやり、ゆっくりと耳横へかける。 その様子をじっと見つめるアルトにシェリルが笑った。 「何?」 「いや、お前のふわふわだよな。」 「まぁね。でも、アンタのもまっすぐで綺麗じゃない。」 「まぁな。母さん譲りだから・・・・」 「そう。・・・でも、本当に綺麗よね」 右手で頬杖をするシェリルが左手を伸ばすと、すぐにさらさらとした感触が手に触れた。 一房取って手から少しずつ流すと、軽やかな音を立て、滑り落ちてゆく。 その様子が、純粋に美しいと思った。 「・・・キレイ」 そう言って微笑み、ふと、顔を上げると目の前にアルトまっすぐな視線とぶつかる。 不思議な沈黙が落ちたと思ったら、何かが唇に触れていた。 かすかに余韻として残るコーヒーの香り。 重なったのはほんの数秒だった。 「・・・・何?」 「・・・悪、かった・・・」 零れた言葉は疑問だった。 通常ならばされた行為に怒るところなのに、怒りは生まれなかった。 感触は確かに身近に感じたのに、ひどく遠いことのように思えた。 うまくこころが繋がっていないような気がした。 「どうして謝るの?」 次いで出た言葉はまた疑問。 でも、答えたアルトもよく、自分の感情を理解できていないようだった。 「いや、急にそんなことして悪かったっ・・・」 「別に、イヤじゃなかったわよ?」 アレ?っと思った。 何を言っているのだと思った。 それくらいするりと出た答えはシェリルにとって意外なものだった。 けれど、それは同じくらい本当のことだった。 「んっ・・・・」 答えが返って来ない代わりにもう一度唇が重なる。 両頬が大きな手に包まれ、ほんの少しだけ少し引かれる。 少しだけ舌に苦い感触が走ったけれど、それは二人が離れる理由にはならない。 二度目の口付けは、先ほどより少しだけ長かった。 「ね・・・っん」 頬に添えられていた手が優しく髪を梳き、手が頭を撫ぜながら後ろへと移動する。 次第に深くなる口付けに、シェリルはゆっくりと溺れていった。 舌を絡ませるとジンッと身体の芯が痺れる。 くちゅりと音を立てる唾液を飲み込むと、もっと、もっとというようにアルトの舌が中へと押し入ってくる。 ぼんやりとする思考と同じで、抜けていく力をどうすることもできず、シェリルがアルトの肩辺りにあるシャツを掴む。 少しだけ冷たいその感覚がとても気持ちよかった。 頭に触れているのとは違う手が優しく身体を抱きこむと、もう片方の手が離れる。 重ねた唇は離さぬまま、器用な手つきでシャツのボタンを外される。 一つ外れる度に突っ張る布の感触は現実のものなのに、なんだか信じられなくて不思議に思えた。 やがて、アルトの唇がシェリルの唇を開放すると、そのまま首筋を辿って胸元へと降りてきた。 下着から覗く部分の柔らかい肉を吸い上げられると、小さな痛みが走る。 目を開いて見て見ると、赤いうっ血の痕が見えた。 「ヤバイ・・・な。」 「?」 「止まれそうにない」 アルトの言葉にシェリルが小首を傾げると、アルトが苦く笑った。 けれど、そういうアルトの頬は淡く染まり、瞳には熱に浮かされたような色が宿る。 その瞳が切なそうに歪められるのが見えた瞬間、シェリルはそっとアルトの両頬を覆うと、自ら口付けた。 もちろん、そんなことをすればその後どういうことになるのか分かっていた。 それでも嫌だというような感情は浮かんでこなかった。 「ねぇ・・・スキ、よ?」 「!!・・・っ・・はん、そくッ・・・・」 顔を歪めてそう言うアルトに腕を引かれたと思ったら、そこは腕の中だった。 膝の上に座らされ、苦しいほどに抱きしめられて、少し息が詰まった。 「なぁ、もう一度。」 「何を?」 「キス。」 甘えるように言われるの可笑しくて、でも、そう言うアルトが可愛くてたまらない。 戯れるように軽いキスを送れば、不満そうな顔で軟く唇を噛まれた。 音を立てたバードキスを繰り返す。 一つ鳴る度に、心の中で何かが弾けて心に満ちた。 肌の上を滑る唇の熱い感触。 かかる吐息がくすぐったい。 けれど、優しいソレとは別で下着を押し上げる手は少し乱暴だった。 「あッ・・・・ふっ・・」 先端にキスをされて僅かに身体が跳ねると、いたずらっ子のような瞳が下から自分を見上げていた。 先ほどとは違う濡れた感触が熱を上げていく。 触れられてるところが、熱くて、でも、それが心地よくて、離れがたい。 もっと、もっとアルトに触れてほしかった。 大きな手が乳房を抱き、やわやわと揉む。 時々先端を甘く噛まれ、舐められ、吸い上げられる。 ピクンッ、ピクンッと勝手に身体が震えた。 優しい愛撫は時々腹を擽ってはまた首筋を緩やかになぞった。 身体を抱いたままの左手の代わりに、右手がスカートの中へと入ってくる。 下着の上から秘部を2,3度撫でられ、再び、身体が震えた。 隙間から押し入ってきた指が触れると、濡れた感触がシェリルに伝わる。 自分がどれほどアルトを求めていたのかを実感させられる。 先ほど見つめたアルトの瞳と同じような色を自分もしているのだと思うと、一気に熱が上がった。 「あっ、あっ、あッ・・・・・っん―――」 下着の下へ潜り込んだ指がひだを擦り上げて熱を煽る。 擽られる度に声が漏れ、身体は勝手に震えた。 身体が熱くてたまらなくて、でも、駆け巡るなんとも形容しがたい気持ちよさにもっと、もっとと貪欲になる。 強請るように唇を合わせれば、すぐに舌が絡んだ。 入り口で遊んでいた指がぐっと中に入ってくる。 咄嗟に息をつめてその感触を押し込めていると、強張った背中をアルトがゆっくりと撫でてくれた。 ぎゅっと閉じていた目を開くと、少し視界が滲んでいた。 「痛かったか?」っと目で問うアルトに笑い、ゆるく首を振るとほっとしたように笑う。 つられて笑った瞬間、埋められた指が動き出した。 「アッ・・・・はっ・・ん・・・ぁ・・」 指がナカを動き回る。 動く手つきは優しいけれど、 触れてくれない ことを思うと、少し意地が悪い。 熱い息を宙に向かって吐いた後で、アルトを見下ろすと、やっぱり口の端が上がっていた。 途端に憎らしくなる。 頬を摘んでやりたい衝動にも駆られたけれど、結局シェリルはそうしなかった。 代わりに自分が知っている一番艶やかなキスで迫った。 「・・ッ・・バッ、か・・野郎っ・・」 甘い余韻をたっぷり含ませた後で、開放してやるとそう言われた。 熱に浮かされ、欲望に翻弄され、本能に押され、頭がはちきれそうになる。 けれど、それもアルトと一緒だった。 アルトが指を抜くと、愛液に塗れたソレが淫乱な光を返す。 ソレを正視できるはずもなく、アルトの肩に額を当てて目を閉じていると、少しだけ焦ったようなカチャカチャと金属がぶつかる音と 引きおろされる 音がした。 目を開いて、静かに見つめあう。 どちらからともなく唇を合わせるとシェリルはそっと膝で立つ。 イスにそんなにスペースがあるはずもなかったから、ちょっとだけ怖かった。 「ん・・・・あぁっ・・・・・は、ぁっ・・・」 埋まっていく感覚に身体が震える。 ゾクゾクとする波が背筋をなぞり、肌が粟立ちそうになる。 音叉の音が空間に響いていくように、幾重にもなる快楽の粒子が身体の隅々にまで広がっていく。 最高に気持ちがよかった。 「あっ・・・・アル・・ト・・」 耳を擽る甘い声にまた別のジンッとした感覚が走る。 もっともっと、聞きたいと思わせる声だ。 もっともっと、強請らせたいと思わせる声だ。 快楽の波に翻弄される顔が見たくて、その時に零れそうになるくらいまで潤む瞳が見たくてたまらなくなった。 「・・・動くぞ?」 短くそう言うなり、腰を突き上げる。 ヒュッと小さく喉がなったのが聞こえた。 トン・トン・トンっとリズム良く突き上げてやると、イヤイヤとシェリルが緩く頭を揺らす。 瞳の端に映るストロベリーブロンドの髪の先が連なって揺れるのがなんだか無性に愛しくて可愛かった。 「あっ、あっ、あっ・・・ん・・・」 肩に必死にすがってくるシェリルの片腕で抱きしめながらなおもアルトは突き上げる。 抱きしめる腕は優しいのだけど、逃がさないと言われているような気もした。 与えられる全てを受け止め、極限までこの腕の中で乱れろといわれているようなそんな感じがした。 アルト自身も徐々に蕩けていく思考を引きとめようと必死だった。 次第に何も考えられなくなっていくことが、シェリルと行為に溺れていくことが少しだけ怖く思えて、必死に抗いはしたのだけれど誘う声の艶やかさは、すぐにアルトを攫う。 突く度に漏れてくる嬌声と香る髪と肌の匂いそして何よりアルト自身に絡みついてくる内壁がアルトを更なる高みへと率いて行く。 それに追いすがろうと、アルトは必死にナカを穿った。 回数を重ねるたびに強さを増していく突き上げ 繋がった部分は、二人分の愛液で濡れそぼる。 それが潤滑剤となり、二人をさらに深い場所で繋げようと奥へ奥へと誘った。 「あ・・・・ぁ、あぁ・・・ッ―――」 シェリルの下肢が打ち震える。 弾け散ってしまいそうな思考をいっそのこと自分で飛ばしてみたいとも思った。 分かっているくせにこの時間を少しでも延ばしたいのかアルトはソコを攻めない。 何か言ってやりたいのに、何もいえなくて、言葉さえ浮かばなかった。 浮かぶ言葉は全て解放を懇願するものだった。 「アルッ・・・・・もっ・・・おね、・がぁ・い・」 切れ切れになりながらそう言った。 滲む涙をアルトのシャツが吸い取る。 背中に回した手で、アルトシャツの裾を何度も引く。 きっと、背中はぐちゃぐちゃになっているだろう。 そう思ったら、少し困った顔のアルトがまぶたの裏に浮かんだ。 それを可愛いと思った瞬間、アルトが内を擦り上げ最奥へと入り込む。 そして、熱塊を弾けさせた。 トクトクトクと注がれる懐かしい感覚にシェリルの意識がすぅっと引っ張られる。 浜に寄せた波が砂をいくつか握って帰っていくようなそんな穏やかな感覚で、シェリルも螺旋を上り詰めた。 ふわふわという不思議な浮遊感から、現実に引き戻してくれたのはすぐ側で聞こえた荒い息。 すぐに身体を起こすべきだと思ったけれど、もう少しだけこの腕の中に、記憶の中と同じ腕に抱かれていたかった。 「ねっ、覚えてる?」 「・・・昔のこと・・か?」 「うん。」 小さい、耳に届くか届かないかくらいの声で囁く。 それはシェリルにとっての賭けだった。 もし、アルトが答えてくれないのならば、自分も忘れたふりをしてしまおうと思っていた。 愛しさに満ちていた心が、少しだけ苦しくなる。 ずっと奥底に沈めていた記憶。 もう忘れたのだと思っていた。 関係ないと思っていた。 友達として付き合えると思っていた。 けれど、現実は違った。 途中まではうまくいっていたのに。 気まぐれにコーヒーを出したりしなければ、思い出したり、こんなに感傷的な気分にならずにすんだのに。 急に心が苦しくなって涙が溢れそうになっていることに、シェリルは泣き出しそうになった。 堪えてみるけれど目頭は熱くなるばかりで止まってはくれない。 一度歪みだした視界はその景色を滲ませるばかりで、透明な世界には戻ってくれなかった。 「・・・シェリル?」 優しい、気遣うような声。 アルトのことだから、気付いたりしないと思っていたのに。 そう思った瞬間、シェリルは小さく笑った。 自分が知っているアルトは3年前のアルトだ。 知らないことがたくさんあって当たり前なのだ。 変わっていて当たり前なのだ。 あの子 がきっと変えたのだから。 肩に顔を埋めたまま、言葉を紡げなくなったシェリルの脳裏に可愛らしい女の子の笑顔が浮かぶ。 そばにいるだけで安らげる女の子。 いつも側にいてくれる笑顔のやさしい女の子。 アルトが選んでしまうのも分かる。 たった数週間、一緒に仕事をしただけだ。 身体を重ねたのも数えるほどしかない。 付き合おうとも、愛してるとも言われていない。 自分が勝手に舞い上がっただけだ。 だからアルトを問い詰めたりする理由など、ありはしないのだ。 何度も、何度もそう繰り返した。 何度も、何度もそう自分に言い聞かせてきた。 でも、ダメだった。 どんなに理由をつけても忘れられなくて、思い出も気持ちも色あせてはくれなかった。 ずっと、ずっと同じだった。 「・・・・ね・・・すき・・・すき、なの・・」 この期に及んで何をいうのだろう? 自分はどうしてアルトを縛る言葉しか紡げないのだろう? それが悔しくて悔しくてたまらない。 心は思い通りに動いてくれなかった。 ずっとずっと閉じ込めてきていた想いは簡単にその堰を壊していった。 「・・・・・・俺、も・・・だ。」 静かな、静かな沈黙の後に聞こえた言葉。 一瞬夢か現実か分からなくなったシェリルは、優しく背中を撫ぜてくれた手にそれが幻想でないことを教えられた。 「・・・え?」 「えって、言うなよ。・・・俺だって、・・同じ、だ。」 「でも・・アルト・・・えっ?あの子・・は?」 「・・・はぁ?って、お前こそアイツは?」 「アイツ?」 噛みあわない会話。 慌ててシェリルが顔を上げると、少し気まずそうな顔をしたアルトが見えた。 じっと見つめるシェリルの視線に耐え切れなくなったのか、すぐに視線を床へとそらすと、アルトがゆっくりと口を開いた。 「だから・・その、雑誌で・・・」 「・・・・・えっ?」 「お前が男と手繋いで載ってたヤツだよ!!」 「あっ・・えっ?!アレは、他の事務所が仕掛けたゴシップ・・・って訂正が・・」 「なっ?!・・・えっ・・じゃあ・・」 「なんでもないわよ。」 「・・・・マジかよ」 シェリルの言葉にアルトから気の抜けたような声が答えた。 力が抜けたのかへなへなとしながらアルトの頭がシェリルの胸元へと被さる。 ちょうど先ほどと逆になる。 その頭をシェリルはおそるおそる抱いた。 「・・・アルト?」 「・・・振られたんだと思ってた。」 「えっ?!」 「あんな記事出たのにお前何も言わないし、連絡つかないし・・・思い出してみれば付き合うとかの話もなかったし・・・だから、振られたんだと思ってた・・・・」 「だって、訂正すぐに入れたし、アルトがあんな週刊誌のゴシップ読んでるなんて思わなかったし・・・」 「たしかにな。アレ、同じ部署の奴らが見つけて見せてきたんだよ。」 だんだんと小さくなるアルトの声にシェリルが慌てる。 「・・・・・でも、アルトだって・・・女の子・・・」 「ソレ、いつ?」 「3年前・・」 「あぁ・・。アレは新年会の段取りを教えてたんだよ。分かるの俺かお前か、ミシェルしかいないのに、お前コンサートでいなかったし、ミシェルとは・・・会いたくなかったらしい・・・その、・・・な。だから、俺のとこに聞きに来てたんだよ。」 「でもあんなに遅くに・・・」 「俺たちもやっただろ?連日連夜・・・」 「・・・・・」 思いもよらないアルトの言葉にシェリルが息を呑んだ。 「勘違い、だった・・の?」 「どうやら・・・な。」 おそるおそる言葉を紡ぐシェリルにアルトが苦々しく息を吐く。 あまりのあっけなさに、シェリルの身体からも力が一気に抜けていった。 「・・・・バカ、ね。私たち・・・」 「だな。・・・2年近く勘違いかよ・・ほんっと、バカ。」 笑ったのはどちらからだっただろうか。 可笑しそうに笑っていた声はだんだん小さくなり、それは次第に涙へと変わっていった。 バカという以外にどういえばよかったのだろう。 会おうと思えば会える。そんな距離にいながら、怖くて会うことができなかった。 終わったのだと告げられることが怖くて、どうしてもあの廊下の先に行くことができなかった。 どちらかがもう少しはやく勇気をだしていたならば、もっと早くに自分たちの勘違いに気付けたのに。 「あぁ・・・もうっ・・・あんなに近くにいたのにね。」 「ほんと、たった数メートルのとこにいたんだよな。」 「バカね。」 「バカだな。」 零れる涙は止まらない。 笑っても涙は次から次へとぽろぽろ零れていった。 幾筋にもなるその後をアルトが何度も何度も優しく拭う。 視界が滲んでよくは見えなかったけれど、アルトの目も少し潤んでいたように思えた。 「なぁ、シェリル。」 「何?」 「・・俺と、付き合ってくれないか?」 「・・・しょうがないわね、付き合ったげる・・・・・バカ同士だもの」 答えるシェリルの言葉にも苦笑が混ざる。 まだ目に涙を浮かべるシェリルの唇をアルトはそっと啄ばんだ。 甘い、甘いバードキス。 3年越しの告白がこの日ようやく実を結んだ。 END
https://w.atwiki.jp/macrossf-eparo/pages/61.html
866 アルシェリ、ベタ甘 sage 2008/06/06(金) 16 33 17 ID FoXDLi2g ここの職人さん達のレベルの高さにはいつも脱帽。 楽しませて貰ってありがとうございます。 大したもんじゃないですが、投下していきますね。 微妙に10話ネタ絡んでます。エロなしですいません。 -------------------------------------- 「キスくらい、何てことないんでしょ?」 揶うように言ったシェリルの前で、アルトは憮然として目を反らせた。 「勿論……何てことないさ!」 「あら、余裕ね。予行演習してあげようかと思ったのに、余計な心配だったみたい」 「あ、当たり前だっ!」 長い髪が宙に弧を描く勢いで振り返ったアルトの顔は、しかし真っ赤だった。 それを見てシェリルは、クスクスと笑う。 「ほんっと、アルトってシャイよね。日系の人って、皆そうなの?」 「皆ってわけじゃない……それと、俺はシャイじゃない!」 「人前でキスするくらいで照れるなんて、充分シャイよ。人によっては普通にしてる事よ?」 「違う! これは……」 「これは?」 「これは……おまえが、シェリルがあんまり綺麗だから……」 再び目を逸らしたアルトが、耳まで赤く染めて言った。 長い睫毛に縁取られた瞳を、ぱちぱちと瞬かせたシェリルの頬に、 アルトの赤面が伝染したように朱が昇る。 「もう……アルトったら反則。奇襲が得意なんだから」 「おまえに言われたくない」 「あら、心外ね。私の信条は、いつでも正々堂々よ」 クスリと笑ったシェリルは、細い指先で、アルトの顎をそっと撫でた。 銀河中の人々を虜にする言の葉と音律を紡ぎ出す、白魚のような指先は、 今は、真っ白い布地に覆われて見えない。 「よく言うよ。あの時もそうだったって言うつもりか?」 「あの時?」 きょとんと瞬きをしたシェリルは、ああ、と得心した笑みを洩らした。 綺麗にピンク色のルージュを引かれた唇が、曲線形を描く。 「勿論よ。これ以上ないくらい正面突破だったでしょう?」 「………………」 「私はあなたの中の扉を、きちんとノックしたつもり。不法侵入なんて したくなかったもの。気付かないあなたが悪いんだわ、アルト」 「……悪かったな」 「フフッ。いいわ、許してあげる。今はもう、あなたは私の全てを知ってるんだもの」 言ったシェリルの、透き通ったブルーの瞳は、微かに濡れていた。 衝動的に、アルトの腕が、その胸にシェリルを攫う。 そして魅惑的に自分を誘うピンクのルージュに口吻けた。 「んっ……」 一瞬、驚いたように目を瞠ったシェリルは、だがすぐに力を抜き、アルトに身を委ねる。 「……やっぱり、奇襲が得意ね。アルト」 アルトの腕の中で、歌姫は綺麗に笑った。 「予行演習は合格か?」 「ええ。後は神様の前でも、今と同じように上手にしてくれたら……ね?」 シェリルのストロベリーブロンドに纏わりつく純白のベールが、 窓から吹き込む風に揺られて、大きく舞い上がった。 END.