約 1,317,258 件
https://w.atwiki.jp/tokusa/pages/270.html
■稲本潤一(WBA05-06H)(リペイント) re0022.jpg ■フィギュアデータ メーカー エポック シリーズ - チーム ウェスト・ブロムウィッチ・アルビオンFC シーズン 2005-2006年 ユニホーム ホーム 発売年 -年 その他 リペイント作品(譲渡品) ■フィギュア感想 ペイント自体は丁寧に仕上げてありますので満足な一品です。しかしながらWBA時代のイナに全く思いいれが無いだけに微妙なコレクションとなっていますね。 ■その他 参考:稲本潤一【wikipedia】 .
https://w.atwiki.jp/moshinomatome/pages/15.html
私の心は煤けた掛け時計なんだと思う。 時を刻む事を止めてしまってから、もう長い時間が経つ。私の心はあの時あの場所であっさりと壊れてしまった。 私は原因を探った。 長い時間をかけてようやく答えに行き着いた。ゼンマイが一つ足りないみたいだ。なぜ、外れてしまったのだろう。 私は足りないゼンマイを探した。いろんな所にいった。いろんな人と話した。 それでも、ゼンマイは見つからなかった。 疲れたから、諦めた。 私はゼンマイの代替品を探すことに決めた。 希少な宝石。ヴィンテージワイン。壮大な絵画。上品なドレス。そして、魔法の宿った世界に一つしかない不思議な道具。 あたりをつけたものは、全部盗んだ。 だけど、どれもゼンマイの代わりにはならなかった。 私はやっぱり欠けたゼンマイが欲しい。 心が悲鳴をあげた。 そして、私は目覚める。 トリステイン学院の保健室に、私はいた。 学院長室の扉がノックされた。 「オールド・オスマン。よろしいでしょうか?」 「入りたまえ、ミス・ロングビル」 上司の許可を得たロングビルは、入室するとオスマンに一礼をした。 「勝手なお休みを二日も頂いてしまい、申し訳ございませんでした。私の健康管理が至らなかったばかりに…」 「なに、気にすることはない。今回は相手が悪すぎたよ。のう、土くれのフーケ?」 ロングビルの眉間にシワがよった。 「何をおっしゃっているんですか?」 「そうか。この二つ名は、いまだに馴染みがないのか。では、こう呼ぼう。マルチダ・オブ・サウスゴータ君」 ロングビルの顔が蒼白になった。それはかつて捨てた、いや、捨てざるを得なかった彼女の貴族としての名だった。その名を知るものは、もうこの世にはいないはずだ。 この老人はどこまで知っているのだろたう? ロングビルの表情が代わる。もはや、従順な秘書の姿を偽る意味はない。 「あなた、知ってたの?私が、土くれのフーケだって事を。秘書として雇う前から」 「いいや、知ったのは最近のことじゃよ。君と町の居酒屋で出会ったのは本当にただの偶然だ。君を雇うと決めた事にも、それは関係ない。君が優秀な人間に見えたからじゃ。 ただ、トリステイン学院は歴史の古い由緒正しい学院じゃ。素性の分からない者を雇うわけにはいかないじゃろ?だから、勝手に調べさせてもらった。それで分かったのじゃ、君の正体がな」 「で、どうするつもり?私の身柄を王室に引き渡すの?あなたが欲しいのは名誉?それとも、私に懸かった報奨金?」 「こんな年寄りが、今更、金や名誉で動くと思うかね?」 「じゃあ、何が狙いよ?私の体?あんた、まだ枯れてなかったんだ」 オスマンは首を横にふる。 「ワシは君の本当の笑顔が見たい。希代の盗賊と知りながらも、君を雇い続けたのは、それが理由じゃ。あの日…、そう、初めて君と出会った日、酒に酔った君はころころとよく笑っとった。じゃが、ワシには寂しい笑顔にしか見えなかった」 「何を言ってるの?とうとうボケが始まっちゃったわけ?」 土くれのフーケが嘲笑う。しかし、それは自嘲を含む笑顔だった。 オスマンは席を立ち、ロングビルの側によると、いつの間にか涙を浮かべていた彼女の両肩を握った。 「君が本当の名を捨てた理由はよくわかる。そして、その後、君が盗賊としての道を歩まざるを得なかった理由もな。君は寂しかったんじゃ。だからこそ、わしはその偽りの笑顔を無くしたい…」 「……何が言いたいのよ?」 「これからも、私の秘書として働いてくれるね?」 「は……?あんた、頭の中身、温まってるんじゃない?」 反抗的な言葉を吐きながらも、ロングビルの瞳からは涙が零れ続けた。 「焦る必要など、どこにもない。君はまだまだ若いんじゃ。『居場所』などすぐに見つかるよ。もしかしたら、この学院こそが君の居場所かもな。仕事に取り組む様は、君によく似合っているよ」 長年、かすりもしなかった。必死に探したのに。 だけど、ひょっとしたら見つかるのかも知れない。 ゼンマイの手懸かりを見つけたロングビルが鳴咽を漏らす。 「これからも、よろしくお願いします…。オールド・……オスマン」 彼女が学院の保健室で寝ていた間、この老人は魔法を用いて、せっせとロングビルの心を揺らし続けた。人間ならば成長の過程で必ず備わる精神の障壁、それがロングビルの心から完全に取り除かれるまで、それは執拗に行われた。 ロングビルの心は彼女の知らぬ間に、生まれたての小鳥のような状態に陥っていたのだ。 そんな無垢な心にインプリンティングがなされた。 全ては老人の思惑通りである。 涙を流し続けるロングビルは、老人の瞳が怪しく光るのを、歪んだ視界の為に見逃してしまった。 「オールド・オスマン。ですけど……、いい加減、セクハラはご遠慮下さいね……」 確かにオスマンはセクハラまがいのことをよく行っていた。 しかし、それも仮の姿に過ぎない。 ピエロを演じていれば、まわりの人間は面白いくらいに騙されていく。 長い人生経験から、オスマンはそれを良く知っていた。 ガンダールヴによる初号機とのシンクロに致命的な欠陥が潜んでいたことに気付いたのは、フーケ事件から間もない頃だった。 ある日、トリステイン学院から歩いて三十分程の場所に広がる平原で、シンジが初号機の戦闘訓練を行っていたところ、なんの前触れもなくルーンの輝きが失せた。そして、初号機の両肩が不自然な形で沈み込むと、それを最後に、その巨体は完全に沈黙してしまったのだ。 いくら意識を集中しようとも、ルーンが光を取り戻すことはなく、シンジは慌てて学院に戻るとオスマンに相談を持ちかけた。 だが、彼も頭を傾けるだけで、これといった答えは出なかった。 しかしながら、オスマンと共に初号機の擱座する場所まで戻ると、ルーンは何事もなかった様に発光を始め、あっさりと初号機とのシンクロが確立されたのだ。 「どういうことなんでしょうか?」 「ふむ…」 オスマンはしばし逡巡した様子を見せると、何かに閃いたようで、口を開いた。 「明日の夕方、わしの前で、オーガとの同調を試してくれんか?」 「原因が掴めたんですか?」 「どうじゃろな。明日には、はっきりするかも知れん」 翌日、約束の時間に現れたオスマンの前で、シンジは初号機の起動を試みた。しかし、またもや、ルーンの反応がなく失敗に終わった。 「ふむ、やはりな…」 「なにか分かりましたか?」 オスマンが夕焼けに染まった月を指差した。 「神々の黄昏が起きている。おそらく、それが原因じゃな」 シンジが困った様な顔をした。 「月とエヴァに何の関係があるんですか?」 「この世界にも、この世界なりの事情というものがあるんじゃよ。ま、なんにしても、一日に三時間はオーガの使役を封じられるということじゃ。それと、このことは胸の内に秘めときなさい。誰にも話すんじゃないよ」 シンジにもその理由は良く分かった。 もし、再びフーケの様な存在が現れ、この弱点を悟られた場合、敵がその隙をついてくるのは間違いない。 「そうですね。後、剣の練習も始めてみます。せっかく、マゴロクソードを頂いたことですし」 オスマンが頭をぼりぼりと掻く。 「君は呆れるくらいに真面目じゃな」 「ルイズさんが言ってました。ご主人様を守ることが、使い魔に課せられた最も重要な仕事だって。だから、やれることはなんでもやっておきたいんです」 「君はミス・ヴァリエールの事が好きなのかね?」 「もちろんです。色々と良くしてくれますし。ぼくは一人っ子ですから、なんか、優しい姉が出来たような感じで…、素直に嬉しいんです」 オスマンの意図した質問の内容から考えれば、シンジの言葉はまるで見当はずれだった。 オスマンは恋愛感情の有無について尋ねたのである。 「そうか。ならば、精進を怠らないようにな」 シンジが微笑む。 「はい!」 三日経って、オスマンの憶測が事実に違いないと証明された。 何度試しても、神々の黄昏時には初号機とのシンクロが確立されなかったのだ。 ちなみに、この世界の一日の周期は地球と同じ二十四時間である。そして、神々の黄昏はそれよりも短く十九時間おきに発生する現象だ。 その為、一日毎に神々の黄昏の発生期間は微妙にずれていくことになる。 非常に対策の立てづらい欠点だった。 シンジは重なり合う月に向かって、ルーンをかざした。 ガンダールヴ、そして、空に浮かぶ二つの月。 異世界であるはずのハルゲキニアで、エヴァに干渉する事柄がいかなる理由で二つも存在するのであろうか。 「ぼくがこの世界に召還されたのは、本当にただの偶然なのか……?」 トリステイン国の姫殿下――アンリエッタが、ゲルマニア国訪問の帰りに、トリステイン魔法学院を行幸することになったらしく、学院内が騒然とした空気に包まれた。 あちらこちらで、慌しく歓迎式典の準備が行われている。 どうやら、本当に急な話だったらしい。 学院の生徒たちは、少しでも姫殿下の御覚えが良くなる様にと、必死に自分の杖を磨いていた。 シンジはというと、特に興味がわくことも無かったので、学院の隅に見つけた人気の無い静かな場所でマゴロクソードの素振りを行っていた。 先日、ガンダールヴの更なる能力に気づいたシンジは、暇を見つければ、剣の練習に勤しんでいるのだ。 剣を握るだけで、ルーンが輝きだし、シンジの身体能力が飛躍的に上昇する。 空を舞う小鳥の羽根の動きがスローモーションの様にくっきりと見え、身体は今にも飛べそうなくらいに軽くなり、両手に握った双剣マゴロークソードが、まるで自分の身体の延長にあるような一体感を覚えた。 全ての武器を使いこなした伝説のガンダールヴ、おそらく、彼もこの能力を開花させた人間だったのだろう。 正門の方から、斉唱と歓声が聞こえた。 例の姫殿下一行が到着したに違いない。 「行かなくていいんですか?」 シンジは、芝生にぺたんと座り込み本を広げているタバサに尋ねた。 「興味ない」 タバサは貴族なのだから、王室から領地を安堵されている立場のはずだ。常識的に考えて、歓迎式典に参列しないのはまずいのではなかろうか。 しかし、彼女はそれを全く意に介さない様子だった。 「他の人たちはすごい楽しみにしてましたよ」 「そう」 タバサの瞳は本のページに向けられたままだ。 「本、好きなんですか?」 「うん。碇君は?」 「好きなほうだと思いますよ」 タバサは自分のポケットから文庫本を取り出すと、シンジに差し出した。 「おススメ」 「貸してくれるんですか?」 タバサは小さく頷く。 シンジは礼を言って、本を受け取るとそれをぱらぱら開いた。 「なんだ、これ?」 ページには、今まで見た事も無い意味不明な記号の羅列が記載されているだけだったのだ。 「これなんですか?」 「本」 「あ、じゃなくて、この記号のことなんですけど…」 シンジはページを指差しながら、腰を下ろすタバサによく見える様、本を差し向けた。 「ハルケギニア語」 「はい?」 「今、私達が話してる言葉」 「日本語ですよね」 自分自身の口から出た言葉で、はたと気付くものがあった。 文化も風習も文明の源も違うハルケギニアの公用語が日本語などということがありえるのだろうか。いや、まず、ない。 では、自分がハルケギニア語を話しているのかといえば、そん感覚は微塵もなかった。 自分が口に出す言葉を、何度反芻しても、やはり、日本語に間違いない。 今、自分に起きている不可解な事態をタバサにも理解してもらえる様に、シンジは出来るかぎり丁寧に説明した。 しばしの間、青い瞳が虚空を泳いだ後、タバサはシンジの左手に刻まれたルーンを指差す。 「ルーンの特殊能力」 シンジはまじまじとガンダールヴのルーンを見つめた。 「なるほど…。このルーンにかかれば、なんでもありなんだな」 しかし、ガンダールヴの力も文字の理解にまでは及ばないようだった。 「勉強」 「しろってことですか?」 シンジの言葉を受け、タバサは小さく頷いて応えた。 「いや、大丈夫ですよ」 「駄目」 「でも、全く不便を感じてないですし…」 「いずれ、困る」 確かにタバサの言うことは正論だった。 電話もパソコンも無線機もないハルケギニアの通信手段と言えば、早馬と手紙になる。 シンジは早馬を使用できるような身分ではないので、手紙が唯一の通信手段だ。つまり、遠くの誰かと意思疎通を計る為には文字の読み書きが必須条件である。 「そうですね。勉強やってみます」 タバサが、彼女には珍しくまだ幼さの残るその顔に微笑みを浮かべた。 「頑張って」 「ハルケギニア語を覚えたら、また、改めて貸してください」 シンジは借りたばかりの文庫本をタバサに返した。 しかし、二週間後、シンジはこの文庫本を再び借りることになってしまった。 その短い期間にハルケギニア語を全てマスターしたからである。取っ掛かりを掴んだ後は、単語、文法、慣用句などを乾いたスポンジの様に吸収するシンジの姿があった。 原因は、またもやガンダールヴにある。語学勉強に励むシンジに呼応したガンダールヴの進化システムが、シンジの頭蓋骨に納まる大脳のブローカ野を作り変えたのだ。 目に見えない変化が自分の体に起きていることを、この事をきっかけにして、シンジはようやく実感し始めた。 悲劇は、近い。 その日の夜、シンジは寝具の上に座り込んで、ルイズを見つめていた。なんだか、ルイズは激しく落ち着きがなかった。 「なにか、あったんですか?」 「ううん、なんでもないの」 ルイズの目が泳いでいる。歓迎式典の最中に何かがあったのは間違いなさそうだ。 そのとき、ドアがノックされた。 「誰ですかね?」 ルイズの顔がはっとした。思い当たる人物がいるようで、彼女は慌しくドアを開く。 ドアの向こうには、真っ黒な頭巾をすっぽりと被る少女が立っていた。 辺りをうかがうように首を回すと、そそくさと部屋に入ってきて、後ろ手に扉を閉めた。 「貴方は……?」 ルイズは驚いたような声を上げた。 頭巾を被った少女はしっと言わんばかりに、口元に人差し指を立てた。 それから、頭巾と同じ漆黒のマントの隙間から、魔法の杖を取り出すと軽く振った。同時に短く魔法を詠唱すと、光の粉が部屋に舞う。 「……探知魔法?」 ルイズが尋ねると、頭巾の少女が頷く。 「どこに耳が、目が光っているか分かりませんからね」 魔法による盗聴や盗撮の心配がない事を確認した少女が頭巾を脱いだ。 現れたのは神々しいばかりの高貴さを放つ少女だった。すらりとした気品のある顔立ちに、薄いブルーの瞳、高い鼻が目を引く瑞々しい美貌を持っていた。 「姫殿下!」 ルイズが慌てて膝をつく。 シンジは、寝具にあぐらをかきながら、ぼけっとその様子をみつめていた。 アンリエッタは涼しげな心地よい声で言った。 「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」 「姫殿下!いけません。こんな下賎な場所へ、お越しになられるなんて……」 ルイズはかしこまった声で言った。 「ルイズ、そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい!あなたとわたくしはお友達じゃないの」 「もったいないお言葉でございます。姫殿下」 ルイズは緊張した声で言った。 「やめて、ここには枢機卿も、母上も、あの友達面して、寄ってくる欲の皮の突っ張った宮廷貴族たちもいないのですよ! ああ、もう、わたくしには心をゆるせるおともだちはいないのかしら。幼馴染の懐かしいルイズ。あなたにまで、そんなよそよそしい態度をとられたら、わたくし死んでしまいますわ」 「姫殿下……」 ルイズは顔を上げた。 「幼い頃、一緒になって宮廷の中庭で蝶を追いかけたじゃないの!泥だらけになって!」 はにかんだ顔で、ルイズが応えた。 「……ええ、お召し物を汚してしまって、侍従のラ・ポルト様に叱られました」 「それだけじゃないわ。クリーム菓子を取り合ってつかみ合いのケンカをしたこともあったわね」 ルイズが笑い声を漏らした。 「でも、感激です。姫様が、そんな昔のことを覚えて下さっているなんて」 アンリエッタは深いため息をつくと、ベッドに腰掛けた。 「忘れるわけないじゃない。あの頃は、毎日が楽しかったわ。なんにも悩みなんかなくって」 深い、憂いを含んだ声だった。 「姫さま?」 ルイズは心配になって、アンリエッタの顔を覗き込んだ。 「あなたが羨ましいわ。自由って素敵ね、ルイズ」 「なにをおっしゃいます。あなたは姫さまじゃない」 「王国に生まれた姫なんて、籠に飼われた鳥も同然。自由なんてどこにもないわ」 アンリエッタは、窓の外の月を眺めて、寂しそうに言った。それから、ルイズの手を取って、にっこりと笑って言った。 「結婚するのよ。わたくし」 「……おめでとうございます」 アンリエッタの声の調子に、なんだか悲しいものを感じたルイズは、沈んだ声で言った。 そこで、アンリエッタは寝具の上に座ったシンジに気づいた。 「あら、ごめんなさい。もしかして、お邪魔だったかしら」 「お邪魔、どうして?」 「だって、そこの彼、あなたの恋人なのでしょう?随分、幼いようだけど、ルイズは年下が趣味だったのかしら?」 「いやだわ、姫様。彼は、私の使い魔です」 「使い魔?」 アンリエッタはきょとんとした面持ちでシンジを見つめた。 「人にしか見えませんが……」 話題に上ったシンジが立ち上がる。軽く会釈をしてから、口を開いた。 「はじめまして。ルイズさんの使い魔で碇シンジと言います。あと、ぼく、人間です」 アンリエッタはシンジに微笑みかけた。 「こちらこそ、よろしくね。だけど、ルイズ。まさか、人を召喚するだなんて……」 「この子、こう見えても、結構、頼りになるんです。姫様も学院の外に安置されているオーガを御覧になられたんじゃないですか?」 「オーガ?あの紫色の悪趣味な銅像のことかしら?」 「あれは銅像ではございません。この子が使役する使い魔です。おそらく、この子はハルケギニア最強の使い魔ですわ」 ルイズが胸をはる。 ご主人様から賞賛の言葉を戴いたシンジは顔をほころばせていた。 「動くのですか……?あれが?」 アンリエッタがため息をつく。 「あなたって昔からどこか変わっていたけど、相変わらずみたいね」 「お褒めの言葉として頂戴いたしますわ」 ルイズは砕けた微笑を浮かべた。 「そういえば、姫様とご結婚される幸運な殿方はどなたで?」 「……ゲルマニアの皇帝です」 「ゲルマニアですって!」 ゲルマニア嫌いのルイズが驚嘆した。 「あんな野蛮な成り上がりどもの国に!」 ルイズの口から差別的な言葉が出てきたことに、シンジは軽いショックを受けた。 なぜなら、あのキュルケもゲルマニアの貴族だったからだ。 知り合いまで一緒くたに卑下された気分になり、シンジは例えようのない居心地の悪さを感じていた。 「そうよ。でも、仕方がないの。ゲルマニアと同盟を結ぶためなのですから」 つまりは政略結婚だ。 先日、アルビオン内において有力貴族達が反乱を起こし、今にも王室は倒れそうであった。反乱軍が勝利を収めたら、【新生アルビオン】がトリステインに進攻するのは間違いない。 反乱軍が『ハルケギニア統一』、そして『聖地奪回』を旗印にしている為だ。 聖地とは始祖ブリミルに由縁する由緒ある土地なのだが、今では亜人種である【エルフ族】に占有を許してしまっている。 エルフは強力な民族で、今までにも各国が聖地奪回の為、散発的な進攻を度々行ってきたが、全て敗退に終わっている。 アルビオンの反乱軍首脳部は、聖地奪回の為にハルケギニア統一が必須事項と考えていた。しかし、ハルケギニアの国々は全くもって手を取り合おうとはしない。 その為、武力による統一を図ったのだ。 「そうだったんですか……」 ルイズは淋しそうに呟いた。アンリエッタが、その結婚を望んでいないのが、彼女の態度から明白だった。 「いいのよ、ルイズ。好きな相手と結婚するなんて、物心ついた時から諦めていますわ…」 「姫様……」 「礼儀知らずのアルビオン反乱軍は、トリステインとゲルマニアの同盟を望んではいません。二本の矢も、束ねずに一本ずつなら容易に折れますからね」 アンリエッタが俯く。 「したがって、わたくしの婚姻を妨げる為の材料を、血眼になって探しています」 ルイズが息を飲む。 「姫様には、材料になりうる存在の心当たりがあるんですね……?」 アンリエッタが後ろめたそうに頷いた。 「それは…?」 ルイズが尋ねると、両手で顔を覆いアンリエッタが苦しそうに呟いた。 「……わたくしが以前したためた一通の手紙なのです」 「手紙?」 「そうです。それがアルビオンの反乱軍に渡ったら……、彼らはすぐにゲルマニアの皇室にそれを届けるでしょう」 「手紙の内容は?」 「……それは言えません。でも、それを読んだらゲルマニアの皇室は、このわたくしを赦さないでしょう。婚姻の話は潰れ、ゲルマニアとの同盟は反故。となると、トリステインは一国にてあの強力なアルビオンに立ち向かわらなければならないでしょうね」 ルイズがアンリエッタの手を取った。 「畏れながら、申し上げます。わたくしめが必ずその手紙を奪還して見せますので、御詳細を…」 「……アルビオンにあります」 ルイズが口元に手を寄せた。 「では、すでに敵の手中に?」 「いえ、手紙を持っているのは、アルビオンの反乱軍ではありません。反乱軍と骨肉の争いを繰り広げている、王家のウェールズ皇太子が……」 「わかりました。私が必ずその手紙を受け取ってきましょう」 ルイズは真顔になり、きっぱりと言った。 「無理です、ルイズ!今、アルビオンでは苛烈な戦争が行われているのよ。そんな所に赴くのは危険過ぎます!」 しかし、ルイズは微笑む。 「トリステインの危機を放ってはおけません。それに姫様の御為とあらば何処なりとも向かいますわ」 アンリエッタに予感めいたものが浮かんだ。 この少女と少年ならば、あるいはやり遂げるのではなかろうか。 もちろん、何の根拠もありはしなかった。しかし、アンリエッタの中に巣くっていた不安の糸が断ち切られ、ふっと力の抜けた彼女がその場にくずれ落ちた。 「ありがとう……。…わたくしの親友なるルイズ」 その時、ドアが乱暴に開かれ、金髪の少年が飛び込んできた。 もちろん、ギーシュである。 「姫殿下!その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう」 アンリエッタに向かい恭しく膝を落とすギーシュに、ルイズが怒鳴った。 「あんた、盗み聞きしてたのね!」 「グラモン?ひょっとして、グラモン元帥の……?」 アンリエッタがきょとんとギーシュを見つめた。 そして、ギーシュが頷く。 「息子でございます」 「あなたも、わたくしの力になってくれるというの?」 「何をおっしゃいます。忠誠を誓うべき主は、貴女以外に見当たりません。貴女が仰せられるのであれば、例え怨嗟轟く戦場でも赴きましょう」 熱っぽいギーシュの口調に、アンリエッタは微笑んだ。 「貴方のお父様も勇敢な貴族ですが、貴方もその猛き血を受け継いでいるようですね。では、お願い致します。この不幸な姫をお助け下さい」 「この杖に賭けて…!」 ギーシュの様子を眺めていたルイズがため息をつきつつ、アンリエッタに言った。 「では、明日の朝、アルビオンに向かって出発いたします」 「旅は危険に満ちています。アルビオンの貴族たちは、あなた方の目的を知ったら、ありとあらゆる手を使って妨害するでしょう」 アンリエッタは机に座ると、ルイズの羽ペンと羊皮紙を使って、さらさらと手紙をしたためた。 アンリエッタは、自身の書いた手紙を見つめるうちに、悲しげに俯いた。 「姫様?」 怪訝に思ったルイズが声をかける。 「……なんでも、ありません」 アンリエッタは手紙を巻くと、杖を振る。すると、どこから、現れたものか、巻いた手紙に封蝋と花押がなされた。 その手紙をルイズに手渡す。 「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡してください。すぐに件の手紙を返してくれるでしょう」 それから、アンリエッタは、右手の薬指から指輪を引き抜くと、ルイズに手渡した。 「母君から頂いた【水のルビー】です。この指輪が、アルビオンに吹く猛き風から、あなた方を守りますように…」 朝もやの中、オールド・オスマンの助力を得たシンジとルイズとギーシュは、コルベールと共に初号機の改造に取り組んでいた。風石を装甲板に取り付けているのだ。 風石とは風系統の魔力が込められたものである。 先日、シンジがシエスタと共に城下町へと出かけた時、彼は主人から受け取った全財産をはたいて、【風石】を買えるだけ買っておいたのだ。 その時、シンジには見慣れない羽帽子をかぶった長身の男が現れた。 その姿に気付いたルイズが立ち上がる。 「ワルド様……」 ワ 第四話 ル ド、来訪 終わり 男 第伍話 の 戦い へ続く
https://w.atwiki.jp/blueroses/pages/23.html
本編の進み具合によって出たり消えたりする レアファントム出現は特定のMAPのみ 妖精の森1 市街地 妖精の森5 妖精の森3 幻想の泉3 黄泉の原1 市街地(二回目) 黄泉の原3 試練の丘3 妖精の森1 敵 ノーマ LV7×2 LV5×1 LV4×2 フーラー LV6×2 経験値 CORO EXP-3000 CORO-2000 宝箱 無し レアファントム おそらく無し 市街地 敵 ノーマ LV10×1 LV8×2 LV7×2 フーラー LV9×2 LV7×2 べゴマ LV10×1 LV8×2 経験値 CORO GETITEM EXP-8000 CORO-7000 GETITEM-チョコドーナツ 宝箱 無し レアファントム おそらく無し 妖精の森5 敵 ノーマ LV10×4 フーラー LV11×2 ラフレン LV12×2 LV11×2 LV10×2 経験値 CORO(レアファントム込み) GETITEM EXP-12000(15000) CORO-9000(12000) GETITEM-メープルクッキー 宝箱 無し レアファントム ちいさなヌシ(フーラー系) Lv18 スパイクグローブ 撃退法 雷が弱点ではあるがマヒ無効 しかし、眠りが効くのでミレーユで眠りをかけてやれば楽になる 妖精の森3 敵 ノーマ LV14×2 LV12×1 フーラー LV13×2 ベゴマ LV14×2 スロラー LV13×2 LV12×3 経験値 CORO(レアファントム込み) GETITEM EXP-16000(21000) CORO-12000(16000) GETITEM-メープルクッキー×2 宝箱 レアファントム はやてキング(スロラー系) Lv20 ヘルスネックレス 撃退法 名前通り速さが高く、攻撃力も結構高いので何回か攻撃を食らう事前提でマヒ頼みボルトで攻めるのが一番だろう 幻想の泉3 敵 ノーマ LV19×1 LV16×1 LV15×1 フーラー LV18×1 LV17×2 LV16×1 LV15×1 ベゴマ LV19×2 LV18×1 ラフレン LV14×3 経験値 CORO(レアファントム込み)) GETITEM EXP-24000(36000) CORO-15000(25000) GETITEM- 宝箱 無し レアファントム くいしんぼう(ノーマ系) Lv24 ウィングヘルム 撃退法 速さの高いジェイラス、ミレーユあたりで毒をかけて、防御の高い奴がリーダーになりながら魔法で攻めればすぐに撃破できる 黄泉の原1 敵 ノーマ LV18×2 LV17×4 ベゴマ LV19×2 スロラー LV19×2 LV18×2 LV17×2 経験値 CORO(レアファントム込み)) GETITEM EXP-32000(47000) CORO-20000(32000) GETITEM- 宝箱 レアファントム あばれんぼう(ビクフト系) Lv28 ガントレット 撃退法 眠りが効くので楽勝だが、防御がかなりあるため魔法しかまともにダメージにはならないだろう 市街地(二回目) 敵 バノーマ LV20×2 LV19×2 ベゴマ LV23×2 ダ・ヨーセ LV24×2 LV22×2 LV21×2 LV19×2 経験値 CORO(レアファントム込み) GETITEM EXP-45000(90000) CORO-24000(54000) GETITEM- 宝箱 レアファントム こあくま(デ・ヨーセ系) Lv30 クイーンヒール 撃退法 マヒが効くためボルトやブリジット、ジャックのサポートでマヒにすれば楽勝 黄泉の原3 敵 ラフレン LV27×1 LV26×2 LV25×1 スロラー LV25×1 LV24×2 ハオギス LV27×2 LV26×1 LV25×2 LV24×2 経験値 CORO(レアファントム込み)) GETITEM EXP-119800(179800) CORO-26000(51000) GETITEM- 宝箱 ラトリス(アリシア):プラチナサーベル プラカブ:白金のブーメラン ラブル:エンプレス キュリー:白金の扇 アルビオン:カーマインスピア レアファントム えーせーへー(ベゴマ系) Lv35 妖精の指輪 撃退法 弱点もなく詠唱妨害無効をもっているが眠りが効くので眠らせて物理攻撃でいじめてやれば楽 試練の丘3 敵 バノーマ LV28×3 LV27×1 LV26×2 ビクフト LV29×2 ハオギス LV29×2 LV28×1 LV27×3 経験値 CORO(レアファントム込み) GETITEM EXP-180000(270000) CORO-32000(48000) GETITEM- 宝箱 ラトリス:お菓子詰め合わせ プラカブ:お菓子詰め合わせ ラブル:お菓子詰め合わせ キュリー:お菓子詰め合わせ アルビオン:お菓子詰め合わせ レアファントム しょーぐん(ブレドナイト系) Lv50 ロードヘルム 撃退法 LV30あたりあれば魔法、スキル全力使用で難なく倒せる、リーダーはアルビオン付き物理キャラで行けばダメージも大した事はないだろう どうしても辛い時は眠りが効くので活用するといい
https://w.atwiki.jp/aousagi/pages/1492.html
氏名:ヴィルヘルム・エルダート 年齢:45 種族:人間 ICV:無し シナプス大佐亡き後、アルビオンの艦長として就任してきた… 階級は大佐… 過去の大戦で左目を失い黒の眼帯で傷跡を隠している… 的確な指示と有り得ない想像で戦況を見極める為… 『隻眼の賢者』の異名を持っている… 性格は真面目だが酒には弱く下戸である… 星の屑作戦における北米のコロニー落としで娘夫婦と孫を亡くしている… ブランクはあるが動かす程度であればMSの操縦も可能な人…
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/916.html
遺産! 破壊の杖と竜の羽衣 素朴だが美しかったタルブの村は、すでに無かった。 ほぼすべての家が焼け焦げ黒い煙が上がっている。 草原ではアルビオン軍の兵士達とトリステイン軍の兵士が睨み合っていた。 そして、トリステイン軍を狙って竜騎士隊が攻撃に移ろうとした時、遠くから奇妙な音が聞こえてきた。次第にそれは轟音となった。 一人の竜騎士が音の正体を発見する。緑色の、奇妙な竜だ。 あんな竜騎士は自軍には無い、敵だ。 竜騎士隊は新たな敵を迎撃すべく展開した。 ゼロ戦からタルブの村の惨状を見下ろした承太郎は、激しい怒りに震え操縦桿を力強く握りしめていた。 「野郎……許さねえ」 機体を捻り、タルブの村目掛けて急降下するゼロ戦。 狙いは竜騎士隊だ。 謎の轟音を聞き、村人達は森の中から空を見上げた。 一瞬、木々の間を通った見覚えのある形に気づいたシエスタは、慌てて森の端まで走っていった。 「シエスタ!? 危ないぞ!」 父と、何人かの村人が後に続く。 そして、森の端まで来て視界が開けると、シエスタ達は一様にして驚いた。 竜の羽衣が飛んでいる。 アルビオンの竜騎士の吐いた炎のブレスを華麗に回避し、羽衣の一部がチカチカと光ったかと思うと、敵の竜騎士は突如爆発した。 いったい何が起こっているのか、それは解らない。 でも確かな事がひとつだけ。 「ジョータローさんが、助けに来てくれた……」 喜びや安堵感が一気に押し寄せ、シエスタはポロポロと涙をこぼした。 ゼロ戦の機関砲を受けた火竜は、ブレスを吐くための器官を撃たれて引火し、無残に爆死して草原の中に落ちた。それを見たアルビオン軍が慌てふためく。 驚いているのはトリステイン軍も同じだが、どうやらそれが味方の仕業らしい事が解ると、一斉にアルビオン軍へ突撃した。 士気の高さはすでに逆転している。優勢は、トリステイン! 「スタープラチナ……」 スタンドを出現させ、その優れた視力で敵影を探す承太郎。 三騎の竜騎士が横に広がって迫ってきていた。 さすがに火竜のブレスを受けてはゼロ戦もただではすまない。 「上等だ、かかってきやがれ」 承太郎は鮮やかにゼロ戦を旋回させ、竜騎士隊の背後を取る。 「は、速い!? 何なんだあの竜は!」 竜騎士隊はあまりの機動力の差に驚愕し、その隙を狙われ機関砲に撃ち落とされる。 「な、何だ! なぜやられている!? あの竜のブレスが見えない!」 火竜の飛行速度はおよそ時速150キロ。だがゼロ戦は実にその時速400キロを誇る! さらに両翼に装備された二十ミリ機関砲と機首装備の七・七ミリ機銃は、まさに目にも留まらぬ速度で敵を撃ち殺す強力な武装だ。 天下無双と謳われたアルビオンの竜騎士を、パワーでもスピードでも圧倒している。 これこそ地球の人間達の叡智が生み出した『科学』の力だ。 タルブの村人達は、いつしかほとんどが森の端に集まっていた。 そして一騎、また一騎と竜騎士が撃墜されるのを見て歓声を上げる。 「すげえ、すげえぞ! アルビオンの竜騎士なんざ相手じゃねえ!」 「本当に飛んでやがる! シローの野郎が言ってたのは本当だったのか!?」 「速さが段違いだ! あんなすげーもんだったら、もっと拝んどきゃよかった!」 「見ろ、最後の一騎だ! 行け行け! 後ろを取った! やった、撃墜!」 これなら勝てる、これならタルブの村は救われる。 誰もがそう信じて疑わなかった。 「五分五分?」 タルブの村からやや離れた道に陣を構えていたアンリエッタは、そう聞き返した。 「ええ、五分五分です」 マザリーニ枢機卿は、竜騎士隊をわずか十二分で全滅させた竜の羽衣を見ながら言った。 「確かに竜騎士隊は全滅いたしました。あのたった一騎の竜によって。 しかしアルビオン艦隊はまだ無傷。我が軍も砲撃により大打撃を受けております」 「……そうですか……」 戦う心を折らせないために、マザリーニ枢機卿は嘘をついた。 五分五分どころではない。 敵軍は空におり、その数は三千。しかし我が軍は砲撃で崩壊しつつある二千。 確かにあの謎の竜の戦果は目覚しいが、あの程度で引っくり返る戦いではないのだ。 それに見たところ、あの謎の竜は竜騎士を倒す火力はあるようだが、とても艦隊を相手にできるような火力は持ち合わせていないらしい。 敵の旗艦レキシントン号は今も圧倒的な優位に立って――爆発した。 「何じゃと!?」 爆発はそれほど大きなものではなかったが、爆発したのはどうやら後甲板のようだ。 あそこは確か司令部のはず。 つまりこの戦場にいる敵軍のトップの人間は、今ので爆死したと見ていい。 「マザリーニ! 旗艦で爆発が起こりました、これで勝率はどうなりましたか?」 アンリエッタの問いに、マザリーニ枢機卿は頭を抱えた。 「えー、七分くらいにはなりましたかのう」 もちろん嘘だ。敵の司令官を倒したとしても、次に偉い奴が指揮を取るだけ。 圧倒的戦力差はこの程度の奇跡ではくつがえらない。 そう、この程度の奇跡では。 と、空が急に暗くなった。月が太陽を隠し始めたのだ。 「そういえば今日は日食でしたな。……不吉な事が起こらねばよいが。……ん?」 暗くなりつつある空を、一匹の風竜が飛んでいた。 自軍の竜騎兵ではないようだ。あれもあの謎の竜のような援軍だろうか? しかし竜二匹の援軍でどうにかなる状況ではない。奇跡でも起こらねば勝ちはない。 レキシントン号の司令部らしき場所に、 破壊の杖――ロケットランチャーを撃ち込んだ承太郎は、使用済みのロケットランチャーをしまうと、続いて機関砲と機銃の弾丸で追撃をかけた。 だがその程度で沈むほどレキシントン号はやわではない。 「やれやれ……さすがにあれだけでかいと、倒すのは難儀だな」 いっそ飛び降りてスタープラチナで戦って制圧しようか、 などと考えているうちに空が少しずつ暗くなっていく。 承太郎は太陽を見上げた。月が太陽を少しずつ隠していく。 「やれやれ……早いとこケリをつけねーと、帰れなくなっちまうな」 レキシントン号の砲撃を回避しつつ空を飛んでいると、承太郎は風竜を発見した。 スタープラチナの目で確認すると、その背中には見覚えのある四人。 「……仕方のねー奴等だ」 その口調は呆れながらも、どこか嬉しさを含んだものだった。 「ガンダールヴ!」 甲板から謎の竜を目で追っていたワルドは、それに乗っている承太郎の姿を発見した。 「そうか、あの爆発は奴の仕業か。やってくれる……!」 「どうするつもり? ワルド」 フーケが問うと、ワルドはニヤリと笑った。 「我々の出番が来たようだ。奴は私の獲物、私が仕留めてみせよう。 貴様は草原で戦っている兵隊を蹴散らしてこい」 草原で戦っていたアルビオン兵はすでに逃げ出し、トリステインの兵士達は歓声を上げていた。それを見てフーケの双眸が細まる。 「村を焼くのは気が引けるけど、貴族の犬を蹴散らすのなら遠慮はいらないねぇ」 そう呟くと自身にレビテーションをかけて、甲板から飛び降りていった。 「さて、私も行くとするか」 それを見送ったワルドは、自分用の竜を取りに向かった。 「やっと追いついたわね」 シルフィードの上でキュルケが笑う。前方にはゼロ戦の姿があった。 「どうやら竜騎士隊はもう倒してしまったようだな」 地面に落ちている竜の死体を発見しつつギーシュが呟く。 「まだ」 タバサが冷たい声で言った。 日食で隠れつつある太陽の中から風竜が舞い降りてくる。ワルドだ。 「ガンダールヴ!」 ワルドは叫んで風の魔法を放ってきた。 ゼロ戦は咄嗟に攻撃を回避するが、少々無茶をしたらしく機体が揺れる。 「ジョータロー!」 ゼロ戦がシルフィードの下へとよろけてくるのを見たルイズは、突然飛び降りた。 「ちょっ、ルイズ!?」 「な、何をしているんだ君はー!?」 慌てふためく二人のかたわらで、タバサは冷静にレビテーションでルイズを浮かせる。 「馬鹿な、ルイズ!?」 ルイズが飛び降りるのを見て、承太郎も彼女を拾うべく機体を操作し風防を開けた。 「うっ……ジョータロー……!」 「ルイズ!」 速度を落とし、スタープラチナを出して腕を伸ばす。 何とかルイズをキャッチした途端、ゼロ戦が大きく揺れた。 ワルドの風の魔法が機体をかすめたのだ。 操縦席にルイズを引っ張り込み膝の上に乗せると、承太郎は思いっきり怒鳴る。 「馬鹿野郎ッ! てめー、いったい何しに来た!?」 「だ、だって……ジョータローの事が心配で、心配で心配でたまらなかったんだもん!」 泣き喚くルイズを見て、承太郎は責める気を失う。 理屈の問題ではないのだ。 「……やれやれだぜ」 今まで出会った中で、もっとも鬱陶しい女。それがルイズだというのに、 どうして嫌いになるどころか、気に入ってしまっているのだろう。 「ホッ、何とか拾えたみたいだ」 シルフィードの背中でギーシュが胸を撫で下ろす。 そして、気づく。草原で戦っているトリステイン軍の異変に。 「あ、あれは……」 「何、どうしたの?」 キュルケとタバサも疑問に思って草原を見た。 見覚えのある巨大な土のゴーレムが、トリステインの兵士達を襲っていた。 「土くれ」 タバサが敵の正体を言う。 「マズイぞ……タルブの村人達も近くにいるはずだ。 あの兵士達、逃げ出しているじゃないか! フーケを何とかしないと!」 「タバサ!」 キュルケに名を呼ばれ、タバサは阿吽の呼吸でシルフィードを降下させる。 一度は倒した相手、何とかなるはずだ。だが。 タバサはゼロ戦がワルドから一方的に攻撃されている姿に気づいた。 咄嗟に風の魔法を唱え、ワルドの風竜に攻撃する。 だがワルドは軽やかにそれを回避すると、こちらにも魔法を放ってきた。 「わっ、わぁ! 何事だ!?」 「苦戦してる」 タバサがゼロ戦を指して言う。 理由は解らないが、竜騎士隊を全滅させてゼロ戦は、ワルドたった一人に苦戦している。 承太郎の話では、ゼロ戦には『きかんほう』とかいう、強力な銃がついていたはず。 所詮銃は銃だと侮っていたが、竜騎士隊が全滅している姿を見ると、恐らく想像以上の威力があったのだろう。 だがそれをワルドに使う気配は無い。 ならば答えはひとつ。 「多分、弾切れ」 「何ですって!?」 「それじゃあジョータローとルイズは反撃できないって事かい!?」 承太郎の能力をすべて把握している訳ではないが、少なくとも空中で遠距離攻撃をできるようなものではないと三人は理解している。 ルイズは魔法が使えない。銃弾も尽きたのなら、ゼロ戦はもう速く飛ぶ的でしかない。 ならば。 「……タバサ、キュルケ」 ギーシュが杖を手にして立ち上がる。 「僕は空中で敵に向けて飛ばす魔法なんて使えない。 だから君達二人でジョータローとルイズを援護してやってくれ」 「ちょっと、ギーシュ? どうするつもり?」 「土くれのフーケは、僕一人で倒す」 キュルケは耳を疑った。フーケを一人で倒す? ギーシュが? 「な、何馬鹿な事、言ってんのよ! かなう訳ないじゃない!」 「しかし! フーケを倒さねばタルブの村が危ない!」 「だからって勝てる訳ないでしょうが! あんたはドットクラスなのよ!? 土のドットと、土のトライアングル。実力が根底から違うの! ちょっと、タバサからも何とか言ってやって!」 タバサなら説得力のある言葉でギーシュを止めてくれるだろう。 そう思った。 でも。タバサは言った。 「あなたが今までの戦いで学んだ事を、忘れないで」 「ああ」 タバサはギーシュの力強い眼差しに、根拠もなく勝機を感じた。 これはただの勘。だが幾多の死線を潜り抜けたタバサの勘なのだ。 「行ってくるよ!」 迷いを見せぬ足取りでギーシュはシルフィードから飛び降りた。 「ちょっ、ギー……タバサ! 何であんな……」 困惑したキュルケはタバサに説明を求めようとしたが、 突然シルフィードが速度を上げたため次の言葉をつむげなかった。 「彼等を援護する。あの風竜を魔法で攻撃」 「……もうっ! どうなっても知らないからね!」 そう言いながらキュルケはファイヤーボールをワルドに向けて放った。 タバサも風の詠唱に入っている。 そしてギーシュは、タルブの村の草原にレビテーションで着地した。 その小さくも勇ましい人影に、フーケは気づく。 彼女は村人まで襲う気は無く、むしろ逃げた臆病な兵士達を追いかけるつもりだった。 しかし貴族が出てきたのなら話は別だ。 嗜虐的な笑みを浮かべ、殺意の目線をギーシュへ向ける。 「ぎ、ギーシュ様!?」 森の中から、シエスタはそのメイジの姿を見て驚いた。 あのギーシュが、たった一人で、自分達を守るために、立ち向かおうとしている。 兵士達ですら逃げ出した、強大で恐ろしいゴーレムを操るメイジに。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2236.html
前のページを読み直す / 表紙へ戻る / さらにページをめくる 「アッララララ――――――――――イ!!!」 雄叫びを挙げて跳び、ニューカッスル城に突入する蛮人トラクス。手には抜き身のデルフが握られている。 『土くれ』のフーケも後を追って城壁に降り立つ。すでにトラクスの『投石と矢』によって、こちら側の櫓や城壁の兵士は死に絶えていた。 トラクスは背後を振り返ると、鉄弓と矢を背負って背嚢を投げる。 「ロングビル、俺の荷物を持て」 「ここではフーケとお呼び。あたしは怪盗『土くれ』のフーケさ」 フーケは城壁の内側の地面から、高さ30メイルにも達する巨大な土のゴーレムを創造する。 それに二人は乗り移り、城の方へと向き直る。 「あたしが雑魚をひきつけてるから、あんたはさっさと大将首を取ってきな! 危なくなったら加勢してやるよ」 「おお、敵のメイジだぞ!!」「くそっ、一人で突入するとはいい度胸だ! なめおって」「いや、もう一人いるぞ」 わらわらと城の中から、アルビオン王党派の将兵が出てくる。 殺しは好きではないが、トラクスの殺しぶりを見ていると、躊躇っているのが馬鹿らしく思えた。 「あははははは、憎きアルビオン王党派め! この『土くれ』のフーケが、引導を渡してやるよ!!」 ゴーレムが豪腕を振るい、トラクスを城の尖塔めがけて、ふわりと投げつける。 トラクスは尖塔のテラスの手すりにしがみつき、中に入る。 「侵入者だ!」「しかもメイジではない、傭兵か!?」「剣や弓で、このニューカッスルに集いし勇士を滅ぼせると…」 ビュウ、と剣風が吹き、守備兵二人の首を刎ねる。もう一人だ。 「う、あああ、ああああ」 「おい、王様どこだ。教えろ」 デルフをひたりと首筋に当て、求める首の在処を聞き出す。聞き終わると、すっと刃を引いて動脈を切断してやった。 ついでに鉄弓を引き絞り、鉄の矢を放っては、下にいる敵兵を次々に串刺しにする。 矢を撃ち終わると尖塔を駆け下り、二つの首を目指して『礼拝堂』へひた走る。 暴れまわるゴーレムが外で陽動し、疾風のように駆けるトラクスは、すれ違い様に老若男女を切り倒していく。 前へ、前へ、前へ、前へ。血飛沫が舞い、臓腑が流れ、首や腕や手首が転がる。人々が逃げ惑う。 敵を切り殺すたび、マジナイを吸い込むたび、デルフは血と脂と魔力を喰らって輝きを増す。 その刃は妖しく光り、兇刃デルフの発する哄笑も大きくなる。 『そうだあ! トラクス、お前は始祖ブリミルにも仕えたという伝説の「ガンダールヴ」だ! あらゆる武器や兵器を自在に操り、メイジの盾となる戦士!! お前の左手のルーンはその証さあ! ご主人様のルイズはあのザマだがよおおおおお!!』 礼拝堂に来ると、宮廷メイジたちがトラクスの乱入に気づき魔法を放つが、デルフにはいい食事だ。 『そして俺様、デルフリンガーは六千年前、初代ガンダールヴが振るった魔剣!! こいつら如きのへろへろ魔法、俺様が全部食い尽くしてやるぁぁぁあああああ!!!』 何を言っているのかよく分からなかったが、自分とデルフがとても凄い存在だという事は伝わった。 少しずつだが、切り殺した相手の魂を吸ってか、この世界の知識も蓄積されていく気がした。 そして、無人の野を行くが如きトラクスの前に、細身の剣のような杖を構えた金髪の美丈夫が立ちはだかる。 「よく来たな、勇敢なる刺客よ。我が名はアルビオン・テューダー王家の誇り高き後継者、ウェールズ皇太子。 生憎だが、ここで命を落とすわけにはいかない。せめて貴族派に一矢報いたいのだ。 いざ、名乗られよ!! この僕が相手だ!! 他の者は、手を出すな」 ウェールズ。その名を聞いて、血塗れのトラクスが名乗りをあげる。 「俺は、トラクス。世界で最も勇猛で誇り高く、残忍なスキタイ人の戦士。 俺に王様も貴族もない、ただ殺す。 お前は、王子か。お前と王様の首をもらい、俺は生きて帰る」 互いに力量と間合いを測り合う。蛮人といえども、ウェールズは微塵もトラクスを見下していない。 一人の戦士として、死命を賭して戦うに相応しい相手だと見極める。 「スキタイ人・トラクスよ、いざ参る!!」 「来い、アルビオンの王子、ウェールズ!!」 ウェールズが横薙ぎの烈風を放ち、同時にトラクスへ突進する。 トラクスは風の刃を左手のデルフで切り裂きながら、沈み込んだウェールズに右腰の蛮刀を鞘走らせる。 だが、ウェールズは素早く懐へ入り、鋭い風を纏った杖でトラクスの肩を突く。 トラクスはよろめきながら避け、ウェールズの顎を蹴り上げる。 ウェールズは仰け反って衝撃を逸らし、後ろに跳び上がるや、くるくると回転して着地した。 「強い……!」「やるな、王子」 互角か。いや、トラクスの方が剣の腕は上。デルフリンガーの加護もある。 しかし、ウェールズは『風』のトライアングル・メイジ。直接攻撃魔法は魔剣で防げても、変幻自在な風は奥深い。 アルビオン王党派の生き残りは、固唾を呑んで勝負の行方を見守る。 老王ジェームズ1世は杖を握り締め、玉座を降りて非戦闘員を脱出船『イーグル』へ誘導する。 「今度は、こちらからだ!!」 トラクスが跳んだ。空中は風のメイジの独壇場、ウェールズは杖を振るい、トラクスの手足を空気の枷で縛る。 それをデルフが瞬時に切り裂き、両手で魔剣を振りかぶったトラクスは回転しながら皇太子に迫る。 咄嗟に横へ逃げたウェールズを、トラクスの回し蹴りが襲う。延髄に入った。 ぐらついたウェールズの咽喉を、右手で掴み、床に押し倒して締め上げる。 「首、もらった」 そこへ、皇太子とは別の風が吹く。トラクスは意表を点かれ、横殴りの『エア・ハンマー』に吹き飛ばされた。 「ぐがっ、何ッ!?」 「だ……誰だ!? ゴホッ」 礼拝堂の入口から現れたのは、羽根つき帽子を被り髭を蓄えた、若い貴族の男。 その後ろに、赤毛で褐色の肌の豊満な美女もいる。グリフォンから降り立ち、二人は皇太子に駆け寄った。 「ウェールズ皇太子! ご無事ですか!!」 「ああ、有難う。君は?」 「僕はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。二つ名は『閃光』。 トリステイン王国の魔法衛士隊、グリフォン隊の隊長です。 アンリエッタ王女の御命により、御前に参上いたしました。ご安心を」 「そして、私はゲルマニアの留学生、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。 二つ名は『微熱』。魔法学院の友人が蛮人に誘拐されたため、取り戻しに参りました」 「トリステインの……これは心強い!」 新手か。それも、強い。赤毛の女の方は学院で会ったが、タバサやルイズの友人らしい。 そして、ワルドという男。こいつは、ウェールズより強い。多勢に無勢が、ようやく現実の壁となる。 「山勘が当たったな。トラクスを保護した貴族派が、彼を『投入』するとしたらこの決戦場だと目星はつけていた。 三対一。卑怯とは言うまいね、蛮人(バルバロイ)のトラクスくん。さあ、ルイズを返してもらうよ」 形勢逆転。トラクスは壁際でふらりと立ち上がり、構えを解く。ワルドの放った風の槌は、左腕を骨折させていた。 「ウェールズ。お前のしている指輪は、『風のルビー』か?」 「ああ、いかにも。我が王家に伝わる、始祖ブリミルの秘宝だ」 急に問いかけられ、立ち上がったウェールズが答える。 「ここでお前を殺すのは、難しそうだ。どうせこの城は落ち、お前は死ぬ。 その指輪をもらって、そこの王様の首を刎ねて、持って帰る。いやなら、指か手首ごともらう」 (続く) 前のページを読み直す / 表紙へ戻る / さらにページをめくる
https://w.atwiki.jp/creationwords/pages/88.html
アルビノ 英語:Albino メラニン色素が欠乏した遺伝子疾患をもつ個体の名称。 概説 遺伝情報の欠乏により酵素が不活性となり、メラニン色素(黒色・赤色のもと)が生成されないことで起こる疾患。肌は白色傾向にあり、目の色も青色や灰色といった色になる。動物全般で発生し、人間での発生率は2万人に1人と言われている。また、動物のアルビノ個体で印象的な赤色の目は、アルビノで必ずしも発生するわけではない。 差別問題 アフリカを始め、いまだにその外見の違いから差別が絶えない。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1714.html
アルビオンの首都ロンディニウムにほど近い、工廠の街ロサイス。 数時間前に、神聖アルビオン帝国空軍の旗艦である『レキシントン』の艤装作業が完了し、食料などの搬入作業も終わろうとしている。 町はずれには、作業員達が憩いの場にしている酒場があったが、今は閑古鳥なのか客は誰もいない。 太陽がそろそろ傾き始める頃、店主がため息をついた。 「こりゃあ、困ったなあ…大赤字だ」 木製のカウンターの裏には、大きな酒樽がいくつも並んでいる。 『レキシントン』をはじめとする戦艦の艤装が始まり、街が活気づくと予想した店主が大枚を叩いてかき集めた酒だ。 ところが、ロサイスで働く技師や商人の足がぱったりと途絶えてしまった。 一仕事を終えて、懐の暖まった連中を相手に酒を振る舞おうと思っていたが、夜になっても客足はまばらだった。 なじみの客もなぜか来なくなり、店主は買い付けた酒の買掛金をどう工面しようとか途方に暮れていた。 「あの…」 店主はカウンターに肘を突いていたが、突然聞こえてきた声に驚き、バッと顔を上げた。 お客が来たかと思い声の主を捜し、店内を見渡す。 「あの、こっち」 店主が声のした方を見ると、そこにはカウンターとに頭が隠れてしまう程小さい少女が立っていた。 赤茶色の頭髪を紐で纏め、右肩から前に垂らしており、顔立ちはその年頃の少女とは思えないほど整っている。 身体には茶色のローブを纏っており、決して裕福には見えない。 「なんだい嬢ちゃん、ここは子供の来る所じゃないぞ」 「ひとをさがしてるの」 「なんだ、人捜しか…」 「おとうさんが、なにかあったら、ロサイスではたらいてるおじをたずねろって」 店主は少女の話から、戦災孤児か何かだと判断した。 「ロサイスで働いてる叔父ねえ…悪いけどなあ、この店にゃ今、ロサイスで働いてる奴らは来ないのさ」 赤毛の少女が首をかしげる。 「どうして?ここはさかばじゃないの?」 「そりゃあ、そうなんだが……何の仕事をしてるのか聞いてないのかい」 「うーんと……くんせいのお肉とか、やさいとかを、ふねにはこぶんだって」 「くんせい?すると、保存食か。ロサイス北通りに、赤い煉瓦のデカイ建物がある、そこが船に食肉を卸してるはずさ、そこを訪ねな」 店主はそう言いながら、カウンターの裏から小さな乾し肉の包みを渡した。 「これ、なあに?」 「干し肉さ、一切れだけやるよ。探し人が見つかったら、包み紙に書いてある酒場をよく宣伝しておけよ」 「ありがとう、おじさん。これお礼ね!」 少女がカウンターの上に小さな巾着袋を置くと、走って酒場を出て行ってしまった。 「戦災孤児かねえ、ああ畜生、人のこと心配してる場合じゃねえってのに……」 ふぅ、とため息をつきながら、カウンターの上に置かれた巾着袋を持ち上げる。 思ったよりもずっしりと思いそれは、ジャラリと、魅力的な音を響かせた。 「……金か?どうせはした金…いや、それにしちゃ重すぎる」 恐る恐る袋を開けると、そこには金色に輝く新金貨が五枚も入っていた。 「ちょ、え、なんだ、こんな大金!?」 袋を握りしめて外に出る、キョロキョロと辺りを見回したが、既に少女の姿は見つからなかった。 試しに自分の頬をつねってみたが、当たり前のように痛かった。 「夢じゃねえかなあ」 それでもなお、掌の仲にある重さには、現実味を感じられなかった。 ふと、近くの路地から少女と同じ色のローブを着た人物を見つけた。 だが、背中に大剣を背負っていたので、関係はなさそうだと思い、店主は酒場の中へと戻っていってしまった。 『いやー、それにしても子供のフリがうまいね』 「褒めてるの?けなしてるの?」 路地から出てきた女性は、背中に負った大剣と喋りながら、裏通りをてくてくと歩いていた。 「ここで働いてるのは、サウスゴータから連れてこられた人間と、操られている技師が主でしょうね」 『どいつもこいつも陰気な面してやがるのはそのせいか』 「酒場は閑古鳥よ、操られていたら酒を飲む気も起こらないんでしょうね」 『武器屋の店主がよ、仕事が終わった後の酒ってのは格別だと言ってたな』 「そうねえ……私も酒じゃ酔えないけど、時々飲みたくなるわ」 『へえ、吸血鬼に酒の味がわかるのかい?』 「クセって奴よ、そう、人間の時のクセね」 ゲルマニア皇帝、アルブレヒト三世と、トリステイン王女、アンリエッタの結婚式まであと九日。 結婚式はゲルマニアの首府、ヴィンドボナで行われる予定ではあるが、それに先んじてアルビオンからトリステインへの親善訪問が行われる。 当初、トリステイン側は親善訪問を結婚式の三日前にしようとしていた。 だが、アルビオン側からの強い要請により、予定を一週間近く繰り上げるハメになってしまった。 ラ・ロシェールまでルイズに随行したアニエスが、宮殿に戻り早々そのことを知らされ、顔を青くしたらしい。 マザリーニ枢機卿も、これが罠であることを重々承知していた。 そもそも神聖アルビオン帝国などという大仰な名前を付けれる連中だ、頂点に立つのは元司祭のクロムウェル。 枢機卿という立場上、マザリーニは信仰の力の恐ろしさも、その利用法も熟知している。 いや、知りすぎているがために、不可侵条約を結んだアルビオン帝国の訪問を止められなかったのだ。 トリステインは決して強い国ではない、メイジの数で競うならば、はるかに国土の広いガリアに匹敵するほどの数が居るが、国力は非常に弱いのだ。 アルビオンには強大なが空軍がある。 ガリアにはガーゴイル生産技術がある。 ゲルマニアには優れた工業技術がある。 トリステインには、とりたてて何か優れた物があるわけではない。 メイジとして優れた者が多くとも、それらが政治力、統治力を兼ね備えているとは言い難いのだ。 あるとすれば貴族の過剰なプライドであろうか。 増長したプライドが、他人を見下させ、想像力を欠如させる。 神聖アルビオン帝国が、卑怯な手段を用いて大義名分を作り出すことは想像に難くない。 しかしそれを、危機感として感じている貴族が、トリステインにどれだけ居ることだろうか。 トリステインの政治家達は、自身を奮い起こす大義名分がなければ動けないほど、保身に凝り固まっているのだ。 マザリーニは一人、執務室の窓から空を見上げ、ルイズの身を案じた。 夜のうちに、ロサイスの街を見ておこうとしたルイズだったが、日没後に現れた沢山の警備兵達を見て、それを取りやめた。 この街で働いている人間のほとんどは、アンドバリの指輪によって操られた人間達らしく、異常なほど規則正しい生活をしている。 女子供の例外もなく、日没と同時に休息を取り、日の出と同時に働き始めているのだ。 夜の街を歩いているのは警備兵だけ、ルイズの姿を見られたら間違いなく怪しまれるだろう。 ルイズは、人通りが多くなる時間まで休息を取ろうとして、適当な家屋に侵入した。 侵入した家屋には、一組の夫婦と、10才ほどの男の子が住んでいたが、ルイズのことを気にした様子もなく、機械的に日常を送っていた。 機械的に食事を取り、機械的に身体を洗い、機械的に床に就く。 ルイズはふと、吸血鬼ではなく透明人間になっていたら、こんな気分なのだろうかと考えた。 翌朝、盛大に朝寝坊したルイズは、昼近くなってやっと行動を開始した。 昨日酒場で聞いた「赤煉瓦の建物」を探そうと、操られた人間達に混じって街道を歩く。 ルイズは赤煉瓦の建物を発見したが、そそくさとその前を通り過ぎた。 中と外、両方に番兵が立っているのが見えたのだ。 視線だけ動かして周囲を観察しつつ、街を歩く。 ほとんどの人は目がうつろで、無言。 正気を保っている人間はほとんど見かけられない。 おそらく、洗脳した人間をかき集めて、仕事をさせていたのだろう。 普段なら噂話にでも興じるような、ランプ油を売る店にも人はいない。 多少、荒っぽい手段に出ようかと思ったところで、通りの先から馬車が走ってくるのが見えた。 道の脇に寄って馬車を見送る、黒く塗られた箱形の馬車は、よく見ると馬車アルビオン空軍の紋章が描かれている。 眼で馬車を追うと、先ほど通り過ぎた赤い煉瓦の建物の前で馬車が止まるのが見えた。 同時に、赤煉瓦の建物の中から髪の毛をカールさせた恰幅の良い男が出てきた。 その男は上質な絹の服を着ており、年齢は四十代ほどに見える。 それを見たルイズは笑みをこぼした。 「…あいつから話を聞きましょ」 『どうやってさ』 「”忘却”と、私の髪の毛を使って記憶を操作するわ、少しぐらいなら質問に答えてくれるでしょ」 『先住魔法で操られてる相手に”忘却”は効かないぜ』 「それは大丈夫よ、あいつ、笑ってたわ。賄賂でも貰ってきたんじゃない?」 『よく見てるなあ』 「まあね。 裏路地から先回りするわよ、竜騎兵が飛んでたら教えて」 『あいよ』 ルイズは裏路地を駆けながら、ティファニアの詠唱していたルーンを思い出す。 一度聞いただけなのに、まるで脳にこびりついたかのように、ルーンが記憶されていた。 腕の中に仕込んだ杖を右手に持ち、馬車の先へと回り込む。 周囲に、操られている人間しかいないのが幸いした。 ザザ、と足を滑らせながら、馬車の前に突如現れたルイズは、馬車を引く御者と馬車全体に向けて”忘却”の魔法をぶつけたのだ。 ぐにゃりと空間が歪み、馬車を包む。 馬車を引く馬がキョトンとして足を止め、御者もまたきょろきょろと辺りを見回した。 それを見て、ルイズは御者の膝を軽く叩き、注意を自分に向けさせる。 「あなたは街の外周をゆっくり回れと命令された、いいわね?」 「え?ああ、そうだったかなあ……」 ぼうっとした様子だが、御者は馬の扱いまでは忘れていないのか、手綱を軽く揺らして馬を歩かせる。 ローブを脱ぎ、馬車の扉を開けて中を見ると、そこには先ほど見かけた恰幅のよい男が座っていた。 ルイズはその男にローブをかぶせて視界を塞ぎつつ、自身の髪の毛を引き抜いた。 髪の毛はしゅるしゅると、まるで触手のように蠢き、太い針のようなものを作り上げる。 一見すると植物の種子にも見えるそれを、男の額にずぶりと突き刺す。 すると、もこもこと音を立てて触手が頭に張り付き、大脳へと侵入していった。 髪の毛を打ち込まれ、男は身体をがたがたと震わせていたが、しばらくすると動きを止めた。 「さあ、質問に答えて頂戴。あなたの所属は?」 「わ、わたしは、わたしは、神聖アルビオン帝国空軍の兵站支援部門……」 兵站(補給・整備・輸送・衛生)を担当する部署の者だと知り、ルイズは、してやったりと思った。 この男は、革命戦争前から戦艦に積み込む食料の運搬や検査を任されていたそうだ。 だが、多額の賄賂を受け取っていた上、軍備予算の着服がバレそうになり、レコン・キスタに鞍替えしたらしい。 「質問よ、トリステインへの『親善訪問』について」 「し、親善訪問は、親善訪問だ、としか、聞かされてない」 「上層部からの命令で腑に落ちないことはなかった?」 「あった」 「それを答えなさい」 「しょ、食料を積み込まなかったのが、2隻ある、食料の代わりに火薬と脱出廷を多く積んだ」 火薬と聞いて、ルイズの表情から笑みが消えた。 「……デルフ、当たりよ。こいつら、トリステイン側から攻撃されたという名目で船を自沈させるつもりだわ」 『だろうね』 「クロムウェルが虚無を使うというのは本当?」 「クロムウエル様は、死者を蘇らせるが、それが虚無なのか解らない。蘇らせるところを見たわけではないのだ」 「最期の質問よ、レキシントンの出航はいつ?」 「今朝、日の出と同時に、既に出航した…」 「!」 ルイズの眼が驚愕に見開かれた。 『こりゃヤバいんでねーの』 「…やられたわ、デルフ、すぐ出発しましょう」 ルイズは男を荒縄で縛り上げ、猿ぐつわを噛ませると、額に打ち込んだ自身の髪の毛を引き抜いた。 ローブを身に纏いつつ、馬車の扉を開け外に飛び出す。 ルイズは街の外で待機させている吸血馬の元へと急いだ。 「……もご、むご!?む…」 猿ぐつわを噛まされ、喋ることのできなくなった男は、翌日の朝になって御者が正気に戻るまで、馬車の中に閉じこめられていたという。 街道に出たルイズは、スカボローの港へと急いでいた。 吸血馬で堂々と街道を走ると、その姿を見た度との何人かはルイズを指さして驚愕の視線を向ける。 おそらく、石仮面……いや、鉄仮面の名がそれなりに広まっているのだろう。 ルイズはフードを深く被りなおし、デルフリンガーの重さを確かめた。 『嬢ちゃん、どうする気だい、港から出る船じゃあの戦艦には追いつかねえと思うぜ』 「スカボローの港には警備用の竜騎兵かグリフォンがいるはずよ、それを奪うわ」 吸血馬が走る。 ド ド ド ド ド ド ド ド ドと、地響きのような足音を響かせ、土煙を上げながら走る。 「止まれ!止まれーっ!」 途中、騎馬兵がルイズを止めようとするが、吸血馬はそれを無視して走る。 スカボローの港が遠目で見えてきた頃、直径1メイルはある火の玉が吸血馬の進行方向に落ちた。 ボンッ、と音を立てて火球が地面に衝突し、炎が飛び散る。 吸血馬はそれを難なく飛び越えると、その強靱な足で地面を踏みしめ急停止した。 ルイズが上空を見ると、竜騎兵が二騎、ルイズに向けて杖を構えているのが見えた。 一つは上空20メイルほどの高さに、もう一つは50メイルほどの高さに浮いている。 ルイズの口元に、笑みが浮かんだ。 低空を飛ぶ竜騎兵の杖から、『フレイム・ボール』と思わしき火球が生まれ、ルイズめがけて放たれ。 高い位置にいる竜騎兵からは魔力の尾を引いた『マジック・ミサイル』が放たれた。 「飛べ!」 ルイズが叫ぶ。 「GOAAAAAAAAAAAAAAA!!!」 吸血馬がそれに呼応し、竜のような咆吼を上げた。 ドォン、と音を立て、吸血馬とルイズが炎に包まれる。 それを見て、二人の竜騎兵は笑っていた。 『フレイム・ボール』と『マジック・ミサイル』を食らい、跡形もなく吹き飛んだだろうと思ったのだ。 この二人は、ニューカッスル城から脱出したという『鉄仮面』の噂を知っていたが、ただの噂だろうとタカをくくっていた。 だからこそ笑っていられたのだ。 だが、炎を突き破り、高さ60メイル以上にまで飛翔した吸血馬とルイズを見て、二人は笑うのを止めた。 http //www.hp.infoseek.co.jp/v/b/l/vblave/cgi-bin/source/up0412.jpg 竜騎兵は、我が目を疑った。 馬が、竜を『見下して』いたのだ。 その馬はまるでワイバーンのように、頬が裂けるほど口を開いて、竜騎兵を飲み込んだ。 吸血馬は空中で竜を踏みつぶし、たてがみを伸ばして、竜と同化していった。 もう一人の、低空を飛ぶ竜騎兵は、その異常な光景に目を奪われていた。 馬が竜を食らい、地面へと落ちる。 あまりにも常軌を逸しているその光景に、身が震えた。 「ぐっ」 不意に、竜騎兵の身体を、熱い何かが貫いた。 吸血馬から飛び降りたルイズが、デルフリンガーを使い、上空から竜騎兵を貫いたのだ。 竜騎兵はそのまま落下し、地面へと縫いつけられた。 「BUGOAAAAAA……」 竜と同化した吸血馬が、ぐちゃぐちゃになった足を引きずりながら、ルイズへと近寄る。 「これも食べなさい」 仕留めた竜をルイズが指さす、すると吸血馬は竜に跨り、その肉体を吸収し始めた。 ルイズは辺りを見回す。 よく見ると街道の向こうでは、何人かの旅人らしき人がルイズを見て腰を抜かしていた。 ルイズは杖を取り出し、詠唱を開始した。 「ナウシド・イサ・エイワーズ……」 可能な限り広い範囲をイメージする。 二匹の竜と一体化し、巨大になった吸血馬は、翼を器用に動かしてルイズを掴み、背中に乗せた。 ぶわさっ、と、ひときわ盛大に羽を打って、吸血馬が空へと舞い上がる。 「ベルカナ・マン・ラグー…………」 ルイズは吸血馬の背から、地面に向けて忘却の魔法を放った。 ぐにゃりと景色が歪み、街道を歩く人、ルイズと竜騎兵の姿を見て腰を抜かしている人達を包み込む。 ルイズは『吸血馬』『ルイズ』『竜騎兵』の記憶を奪ったのだ。 「………あ、う…」 『おい、大丈夫かよ』 吸血馬の背に膝を付いたルイズを見て、デルフリンガーが心配そうに声をかけた。 吸血馬もまた、背に乗るルイズを心配して、羽の動きを弱める。 「だ、だいじょうぶ、よ。少し休めば…大丈夫…」 『そんな大規模の”忘却”を使ったんだ、疲れもピークに来てるはずだ』 「悔しいけど…その通りよ……」 ルイズは自身の肩を抱き、ハァハァと苦しそうに呼吸していた。 すると、竜の鱗の隙間から、吸血馬のたてがみがしゅるしゅると伸びて、ルイズの身体を包み込んでいった。 「何?」 『寝てろ、って言いたいんだろ』 「そっか……デルフ、アルビオンの戦艦が見えたら起こして」 『俺が起こすまでもねえ、こいつは、おめえの意志をよく汲み取ってるさ』 ルイズが周囲を見渡す。 いつの間にかスカボローの港を通り越し、吸血竜は雲海へと突入しようとしていた。 ルイズのまぶたが閉じられる。 戦争は決して避けられない。 せめて戦争までの残り数時間、願わくば、魔法学院でのひとときを夢に見たい。 そうだ、私は笑顔が見たいのだ。 魔法が使えないと言われ、ゼロといわれバカにされ続けた私が本当に欲しかったのは、皆の賞賛を浴びることでも魔法が使えるようになることでもない。 ただ、笑い合いたかった。 雲海の中を飛翔する吸血竜は、ルイズの瞳から涙が溢れたのを感じた。 たてがみを伸ばして、そっと涙をぬぐう。 四枚の翼を持った異形の竜が、おおおおんと鳴いて、翼をはためかせた。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
https://w.atwiki.jp/msrw/pages/84.html
第1弾ロボットのみ500SPガシャ1 Zガンダム 百式 キュベレイ フリーダムガンダム ジャスティスガンダム ストライクガンダム アークエンジェル エターナル シグー プロヴィデンスガンダム ZZガンダム キュベレイMk-II サダラーン クィン・マンサ νガンダム ラー・カイラム サザビー リ・ガズィ α・アジール ヤクト・ドーガ ウィングガンダムゼロ トールギスIII ガンダムデスサイズヘル アルトロンガンダム ガンダムサンドロック改 蜃気楼 ガウェイン 紅蓮弐式 ランスロット ランスロット・アルビオン 斬月 神虎 ヴィンセント マジンガーZ エネルガーZ 機会獣あしゅら男爵 ガイキング 大空魔竜 ダリウス大帝
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8274.html
前ページゼロのチェリーな使い魔 フリオニール達が「スカボロー」の港でルイズとワルドを待ち伏せしていた頃 ルイズとワルドの乗った船がフリオニールの想像通り空賊の軍艦に拿捕されていた。 捕まえた船にトリステインの貴族が二名同乗していたので、賊はとりあえず軍艦の船蔵に 軟禁し、賊の一人がアルビオン行きの目的を問いただすときびすを返して蔵から出て行った。 空賊なんぞに屈服してたまるものか、と毅然とした態度を崩さないルイズにワルドが 「いいぞ、ルイズ。さすがは僕の花嫁だ」 すっと近づき肩を抱いて励ます。ポイントを稼ごうと躍起になっているようだ。 しばらくすると先程の賊が二人の元へやってきて 「お頭がお呼びだ」 船長室へと案内した。 狭い廊下を通り細い階段を上るとある一室の中へ入るよう促された。二人はドアを開けて 中を見渡すと豪華なディナーテーブルがあり、上座に派手な服を着飾り水晶の付いた杖を 握った男が鎮座しているのを確認した。恐らく元メイジの船長だろう。 「さぁ、名前を言え」 「大使としての扱いを要求するわ」 ルイズは恐怖に震えながらも空賊のお頭に一歩も引くことはなかった。 押し問答の末、このお頭こそがアルビオン王国の皇太子ウェールズ・テューダーその人で あることが判明した。 ウェールズは賊に扮した変装を解き、拿捕は敵の補給路を絶つ為であることを弁明すると 「アルビオン王国へようこそ大使殿。君達を試すような真似をしてすまかった。外国に 我々の味方がいるなど夢にも思わなかったのだよ」 歓迎の挨拶と無礼の謝罪をした。 ルイズとワルドは居住まいを正し自己紹介を済ますと、 「アンリエッタ姫殿下より密書を言付かって参りました」 ルイズは胸のポケットからアンリエッタの手紙を取り出した。 恭しくウェールズに近づき手紙を渡そうとしたルイズだったが 「あの・・・失礼ですが、本当に皇太子様ですか?」 躊躇いがちに伺った。するとウェールズはクスクスと笑い出し 「さっきまでの変装を見ていれば無理もない。僕はウェールズさ。何なら証拠をお見せしよう」 ルイズの指にはめられた指輪を見つめて言った。 この指輪はアンリエッタがルイズに手紙を託す際に困った時の旅の資金にでも、とプレゼントした ものでルイズはこれから一体何が起こるのか好奇心に駆られた。 ウェールズは自身の薬指に光る指輪を外すとルイズの手をとりアンリエッタの指輪に 近づけた。二つの宝石は共鳴し合い虹色の光を放った。 「僕の指輪はアルビオン王家に伝わる『風のルビー』だ。君が嵌めているのはアンリエッタの 『水のルビー』。そうだね?」 ルイズはコクリと頷く。ウェールズは微笑を浮かべ 「水と風は虹を作る。王家の間にかかる虹さ」 大使を労った。ルイズは改めて謝罪の言辞を述べ手紙をウェールズに手渡す。 ウェールズは大事そうに手紙を受け取り花押に接吻すると封を開け便箋を取り出した。 真剣な表情で手紙を読み耽るウェールズ。途中驚いたように目を見開いた瞬間があったが 最後の一行まで読み終えるとルイズとワルドを笑顔で見つめ 「了解した。しかし、姫より返して欲しいと頼まれた物は今手元にはない。ニューカッスルの 城にあるのだ。僕の宝物だからね。多少面倒だがお二人にはご足労願いたい」 ニューカッスルまで同行するように促した。 ローブをまとった怪しい男と対面するフリオニール達。 「いいんじゃない?そのかわりガゼネタ掴ませたら承知しないわよ!」 キュルケは他に当てがあるわけではないので、ラ・ロシュールから出港した船に男女一組の 貴族が乗っていて昼頃にはこのスカボローに到着しているはずである旨をローブの男に 伝えると金貨10枚を支払った。 持ち逃げされたら困るから、という理由でフリオニールがローブの男に付き添うことになり 約束が違うとゴネるローブの男の袖を引っ張ってレストランから出て行った。 フリオニールはローブの男と共に波止場をはじめ裏通りのカジノなど人が集まる場所へ 出向いて聞き込み調査をしたが目ぼしい情報を得られなかった。 どういうことだ!と怒るフリオニールにローブの男はおずおずと 「お客さん、何かの勘違いではありませんかね」 「そんなことはない!ラ・ロシェールの発着場には船はなかったんだ!」 「でしたら賊に捕まったとしか・・・」 「やっぱりそうか!?くそっ!」 「・・・お客さん、これは噂なんですがね・・・」 ローブの男は顔を近づけると小さな声で 「王党派が空賊に化けて反乱軍の物資を横取りしているそうな」 「本当か!?」 「まぁ、あくまでも噂ですし実際に目撃したものはいませんがね」 「王党派はどこにいるんだ?」 「はぁ、ニューカッスル城に篭って最後の抵抗をしてますが」 フリオニールは「ご主人様」からアルビオン行き同行を言いつけられたが何の用事で出向いて いるのかまでは判らない。 王党派が味方であるにせよ敵であるにせよニューカッスルへ行けば手がかりが得られる かもしれない、と顎に手を当てて思考を巡らせていたが意を決して 「ニューカッスルまで案内してくれ!」 「しかし、あそこは今激戦区ですよ?」 「かまわん!」 「じゃあ、保険金としてあと金貨40枚を」 ローブの男は右手を差し出し甲高い笑い声を発するのであった。 フリオニールはローブの男を伴って波止場のレストランへ戻り今後の対応を協議する。 行き違いになっては困るのでキュルケを留守番役とし、とりあえず様子見という形で フリオニール、タバサ、ローブの男の3人が出向くことになった。 留守番に文句を言うキュルケを懸命に宥めている間にシルフィードが夕日を背にやってきた。 立派な風竜を目の当たりにしローブの男はゴクッと唾を飲むと 「いやぁ、立派なドラゴンですな。これなら明日未明にはニューカッスルに着くでしょう」 お世辞を言いつつ保険金の催促をした。 やってられない、とばかりにキュルケは憤然と財布から金貨10枚を抜き出すとローブの男に 乱暴な手つきで渡した。 ローブの男は提示した金額より低い額を渡されたので文句を言おうとしたが、このような ドラゴンを飼い慣らしている連中はきっと只者ではないと考え直しひひひっ、と薄気味悪い 声を出して金貨を受け取った。 その日の夜 ルイズはニューカッスル城に無事到着しウェールズからある物を受け取ったことにより この度のミッションの折り返し地点まで来た筈なのだが何故か物憂げな表情だった。 無理もなかった。アンリエッタより受けた密命は以前、アンリエッタがウェールズに送った ラブレターを取り戻すことだったのだ。しかも内容は始祖ブリミルに誓った愛の告白が 刻まれている。始祖に誓う愛は婚姻の際の誓いである。アンリエッタがこれから嫁ごうと するゲルマニアの皇室にその手紙が伝われば重婚の誹りを受けて婚約解消となってしまう。 そうなればゲルマニアとの同盟関係も破談しレコン・キスタへ小国トリステイン1国で 立ち向かわねばならなくなるだろう。 アンリエッタは王女としての責務を果たそうとしウェールズはそれを認め自ら身を引こう としている。 深い絆で結ばれているのに引き裂かれる数奇な運命。アルビオン王家を窮地に追いやった レコン・キスタと呼ばれる反乱軍に対する怒りがルイズの心にふつふつと湧いた。 しばらくして怒りが治まると自身の使い魔がハルケギニアへ来る前にそのような組織に 属していたことをふと思い出した。 (あいつ、何やってるのかしら!?) ラ・ロシェールではぐれて以来顔を見せないフリオニールに対し不安と苛立ちを募らせる ルイズの元へワルドがやってきた。 「さぁ、ルイズ。これからパーティだ」 「ええ」 ルイズは一言返事をするとワルドと共に大使を歓迎するパーティ会場へ足を運んだ。 宴も終わり宮廷内が静けさを取り戻した頃 ニューカッスル城近郊まで到着したフリオニール達はシルフィードでこれ以上進むと捕らえられて 尋問を受けることになるだろうと考え徒歩で森の中を抜けることにした。 しばらく歩き兵隊に見つかることなく辛くも城外までたどり着いたが、城は軍艦や大勢の 兵士に取り囲まれていて落城一歩手前の様相だ。 森の木陰に隠れながら本当にここにルイズがいるのだろうか?と半信半疑になるフリオニールに ローブの男が 「着きましたぜ。さぁ、宝物庫目指して頑張りましょうや」 揉み手をして言った。この男の目的が火事場泥棒であることを理解したフリオニールと タバサはジト目でローブの男を見る。 男はひひひっ、とバツの悪そうな笑いを発すると 「何なら私がこっそりと中の様子を偵察してきましょうか?」 城へ忍び込むと言い出した。どうする?とタバサにアイコンタクトをとるフリオニール。 「え~と、桃色の髪の小柄な少女と羽帽子をかぶった口ひげの大男ですね」 ローブの男は再確認するようにぶつぶつ呟くと例によって右手を差し出した。 しかたがない、とフリオニールは背中のデルフリンガーを外して男に差し出す。 「これ、新金貨20枚で買ったんだ。本当はもっと値が張るらしい」 「あ、相棒!この俺っちを身売りするなんてひでぇじゃねぇか!」 「我慢してくれデルフ!あとでルイズさんに頼んで買い戻すから!」 「こんな怪しい奴に渡して大丈夫かよ・・・」 ローブの男は口元をニヤつかせてデルフリンガーを受け取ると 「私の記憶が確かならば通用口は向こうですな。では行ってきまっせ。もしお目当ての 人がいれば「外でお友達が待っている」と伝言しときますよ」 闇夜に消えるように静かに城壁に近づいて行った。 前ページゼロのチェリーな使い魔