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母親と言い争うなど、何時以来だろう。みゆきはそんなことを考えながら、道を歩いていた。 いくら考えても、思い出せない。そもそも、今まで言い争ったことなどあっただろうか? そんな事を思い出しても、今の状況が変わるわけじゃない。みゆきは首を振り、考えるのを止めた。そして、周りの景色を見る。 見たことはあるが、見慣れない景色。みゆきはこの辺りが、こなたの家の近くだと思い出した。 何も考えずに電車を乗り継いたら、無意識のうちにこんな所に辿り着いていた。 友達に頼りたい。そういう気持ちでもあったのだろうかと、みゆきは思いながら道を歩いていた。 ふと、前の方になにかが落ちているのが見えた。 よく見てみると、それは犬のようだった。アスファルトに横たわったまま、動かない。その犬の子供だろうか。子犬がその身体を懸命に舐めていた。 死んでいるんだ。車にでも、はねられたのだろうか。みゆきはなぜか、その犬から目を離すことが出来ないでいた。 母と娘と - みゆきの側を、何人かの人が通り過ぎていく。だが、誰一人犬の死骸に目をやる人はいない。 みゆきも見ているだけで、特になにかをしようとは思わず、心の中で手を合わせてその場を離れようとした。 ふと、みゆきは視界の端に見知った顔を見つけた。その方を見ると、さっきの犬の死骸の傍に、友人の泉こなたが立っていた。 そして、こなたはなんの躊躇も無く犬の死骸を抱き上げると、そのまま普通の足取りで歩き出した。その足元を子犬がすがりつくように付いていく。 みゆきはそれに驚き、思わずこなたの後を追いかけた。 こなたがやってきたのは、とある公園だった。その隅の方の、木が生い茂る場所へと向かう。 遊具などがある場所からは見えない、少し開けた場所。こなたは犬の死骸を丁寧に地面に置くと、その場に穴を掘り始めた。 そして、ある程度の深さの穴が出来上がると、こなたはそこに犬の死骸を入れ、手を合わせてから土をかけ始めた。 完全に埋まりきると、こなたは今度は服のポケットから木の棒を取り出した。よく見てみると、どうやらアイスの棒らしく、アタリと書かれた文字が見えた。それを墓標代わりに突き立てると、こなたはもう一度手を合わせた。 「…みゆきさん、別にこそこそする必要は無いと思うよ」 そして、みゆきが隠れている木の方を向いて、そう言った。 「ばれていたんですか…」 仕方なくみゆきは、木の陰からこなたの前へ姿を現した。 「うん、ばればれ。みゆきさん、尾行下手だね」 ニヤニヤしながらそう言うこなたに、みゆきは照れくさそうに頬をかいた。 「あの…泉さん、その…これは…」 そして、みゆきは聞きずらそうにしながら、こなたと今作った犬の墓を交互に見比べた。 「似合わないことしてる?」 「えっ…あ、いや、そんな事はけして!」 こなたの言葉に、みゆきは慌てて目の前で両手を振った。 「ま、普段のわたし見てると、そう思うのも仕方ないかもね」 「…い、いえ…その…すいません…」 恐縮して縮こまるみゆきの肩を、こなたは軽く叩いた。 「ま、気にしない気にしない」 「…はい」 みゆきは姿勢を正すと、改めてこなたが作った墓を見て、そしてこなたの方へと視線を戻した。犬を拾い上げる時も、ここへ来て墓を作るときも、こなたは何一つ躊躇することなく行動していた。 「泉さん。随分と手馴れていたようでしたが…前にも何度か同じようなことを?」 みゆきはその事が気になり、こなたにそう聞いた。 「周り、よく見てよ」 こなたは、答える代わりにそうみゆきを促した。 「…あ」 みゆきが周りを見渡してみると、たくさんの墓が見えた。石だったり、木だったり、日用品だったり、墓標に使われているものはばらばらだったが、全て今こなたが作ったような簡素な墓だ。 「この辺はさ、住宅地だから、ペット飼ってる人って多いんだよね」 驚くみゆきに、こなたが声をかける。 「その分、捨てる人も多くてね…結構事故とかで死んでるの見かけるんだ。だから、こうしてお墓を作ってるんだ」 「あの…これ全部、泉さんが…?」 「ううん。わたしが作ったのはまだ少ないよ。ほとんどはお父さんと…お母さん」 こなたの口から出たお母さんと言う言葉に、みゆきは少しドキリとした。 「これ始めたの、お母さんなんだって。そんで、お母さんが死んでからはお父さんがやってて、中学くらいからわたしもするようになったんだ」 自分の知らない亡き母を思ってか、こなたは少し遠い目をしていた。 「お母さんがね、何でこう言う事やってたんだろうって。同じことやったら、お母さんのこと少しでも分かるかなって、そう思ってね」 「…なにか、分かりましたか?」 「うーん…まだまだってところかな?」 照れくさそうにそういうこなたを、みゆきは少し羨ましく思えた。 「今日、母と喧嘩をしました…」 そして、そんな事を口走っていた。 「みゆきさんとゆかりさんが?珍しいね…」 目を丸くしてそう言うこなたに、みゆきは頷いて見せた。 「泉さんの話を聞いて、それくらい母を思えれば、喧嘩などしなかったのではないか…そう思いました」 溜息をつく。胸の奥から、ひどくもの哀しい感情が湧き出してくる。 「わたしも、母を失えばそのような気持ちになれていたでしょうか?」 「冗談じゃない」 「…え」 聞いたことの無いこなたの冷たい声に、みゆきは身を震わせた。 「そんな事、絶対にない」 こなたは怒っているようだった。眉間にしわがより、いつもの余裕のある表情は消えていた。 「…す、すいません…」 「失えば分かるかもしれないけど、失ってからじゃ遅いんだよ」 思わず謝るみゆきを無視し、こなたは言葉を続けた。 「失わなくても分かるかもしれないし、失っても分からないかもしれない。失わなければ絶対に分からないって事はないし、ましてや…分かるために失うなんて、間違ってる」 そこまで言って、こなたは自分の顔を両手で覆い隠した。 「…ごめん。ちょっと偉そうだった」 「いえ、わたしこそ迂闊なことを言ってしまって…すいませんでした」 お互いに謝りあい。その後、少しの間二人は無言で立っていた。 やがて、こなたが手を顔から離した。そこには、いつも通りのこなたの表情があった。 「さて、わたしはそろそろ行くよ」 そう言って、こなたは足元にいる子犬に顔を向けた。 「この子の飼い主を探してあげないとね」 「飼い主、ですか…?」 「うん、お父さんが仕事柄結構顔が効くからさ、以外と見つけやすいんだよ」 こなたはそう言いながら子犬を抱き上げた。 「じゃ、みゆきさん。また学校で」 「い、泉さん」 別れの挨拶をして踵を返すこなたの背中に、みゆきは思わず声をかけて引き止めてしまった。 「ん、何かな?」 こなたが首だけをみゆきの方へ向ける。 「え、えっと…その…あの…」 みゆきは言い難そうに、口の中でモゴモゴと何かを呟いていた。 「…すいません…なんでもありません」 そして、そのまま言葉を閉じてしまった。こなたはそんなみゆきの様子に、笑顔を向けた。 「うん…じゃ、また明日」 そう言って、こなたは手を振って歩き出した。 「…わたしも、帰りませんと」 みゆきはそう呟いて、自分の帰るべき家に向かって歩き出した。 みゆきが自分の家に着いたころには、日はすっかり落ちていた。門限なんてものは決められてはいなかったが、何の連絡もなしにこんな時間に帰宅するなど、初めてのことだった。 「…ただいま戻りました」 家のドアをゆっくりと開け、呟くように小さく帰宅の旨を告げる。まさか自分がこんなコソコソと家に入ることになるなんて…と、みゆきは少し後ろめたい気持ちになっていた。 「おかえり、みゆき」 しかし、あっさりと母のゆかりに見つかってしまう。 「遅かったわね。少し心配しちゃったわよー」 「…お母さん」 今朝の喧嘩のことなど無かったかのように普通に話す母に、みゆきは安堵と不安を同時に感じていた。 「さっきね、こなたちゃんから電話があったわ」 「え?」 「ちょっと長く引き止めちゃったから、帰るの遅くなるかも。ごめんなさい…って」 「それ、嘘です」 みゆきは思わずその事を否定していた。 「泉さんが、引きとめたわけじゃありません。わたしが勝手に居ただけです」 「あら、じゃあどうしてこなたちゃんはあんな事を?」 「それは…」 どうしてだろう。みゆきには分からなかった。不用意な発言でこなたを怒らせてしまったのに、何故自分をかばう様な真似をしたのだろう。 その疑問は、目の前の母にも言えることだった。今朝はあれほど激しく言い争っていたのに。家を飛び出して、遅くまで帰ってこなかったのに。何故、怒らないのだろう。 「…分かりません。泉さんも、お母さんも、何を考えてるのかわたしには…二人とも、わたしが怒らせたはずなのに…」 そう言って、みゆきは俯いてしまう。それを見たゆかりは、顎に人差し指を当てて少し考える仕草をした。 「みゆきは、少し重く考えすぎね」 「…重く?」 そして出た母の言葉に、みゆきは顔を上げた。 「今朝のことなら、わたしはもうなんとも思ってないわよ。アレくらいの口喧嘩なんて、若い頃はよくやってたしねー」 「そ、そうだったんですか…」 本当に軽いゆかりの口調に、みゆきは少し気が抜けるような感じがした。 「…あの、泉さんに会った時のことなんですが…」 そして、みゆきは無性にさっきの事を聞いてほしくなった。 「おもしろい子ね。こなたちゃんは」 みゆきの話を聞き終わったゆかりは、微笑みながらそう言った。 自分にとって不快な話もあったというのに、何故そんな表情が出来るのか、みゆきには分からなかった。 「…あの、やはりわたしは重く考えすぎてるのでしょうか?」 「そうねー…こなたちゃんにとってそれは、ホントにお母さんの真似をしてたってだけの事じゃなかったのかな」 ゆかりはそう言いながら、顔の前で指をクルクルと回し始めた。 「だから、その事を重く考えすぎて、みゆきがみゆき自身を傷つけるようなこと言ったから、怒ったんじゃないかな」 「…わたしが、ですか?」 「うん。みゆきは、わたしが死んじゃっても平気?…だったらちょっとお母さん泣いちゃうけど」 「え、いや、そんな事は…お母さんがいなくなったら、悲しいです…」 「…悲しいことが分かってるのにあんな事いったから、こなたちゃんは怒ったんじゃないかな」 みゆきは言葉を失った。単純な…本当に単純なことだったんだ。そんなことも分からない自分の迂闊さに、みゆきは少し腹が立った。 「だから、そんな重く考えすぎるみゆきには、子犬の飼い主は少し荷が重いわよ」 「え?ど、どうしてそれを?」 予想外のゆかりの言葉に、みゆきが焦る。詳細に話したとはいえ、その事は言ってないはずだった。 「最後。こなたちゃんを引き止めたのは、その事を言うためだったんでしょ?…でも、決心がつかなかった」 「…はい」 「それで良かったのよ…こなたちゃんも、言われればきっと止めてたでしょうしね」 みゆきはしばらく何も言えなかった。 「こなたちゃんは、いいお友達ね」 そのみゆきに、ゆかりが優しくそう言った。 「…はい。教えられることが、とても多いです」 「また、そんな堅いことを…教えられるってのなら、みゆきからの方が多いわよ。きっと」 「そう…でしょうか」 「自分を軽く見すぎるのも、みゆきの悪い癖かしらね…さ、そろそろお夕飯の準備しなくちゃ」 「え、今からですか!?」 みゆきが驚くと、ゆかりは首をかしげて壁の時計を見た。 「あら…もうこんな時間だったのねー」 そしてのん気にそう言って、みゆきの方を見る。 「今日はもう店屋物でいい?」 「…はい、それでいいです」 ゆかりの言葉に、みゆきは脱力感を覚えながら答えた。 「あ、お母さん」 そして、聞きそびれてたことがあるのを思い出し、みゆきは電話へ向かうゆかりの背中に声をかけた。 「なにかしら?」 「あの…どうして、わたしが子犬の飼い主になろうって思ったのが、分かったのですか?」 「分かるわよ、それくらい。誰よりも長くあなたを見てる…お母さんだもの」 それもまた、単純な答えだった。 夜、寝るために布団に潜り込んだみゆきは、明日の朝こなたにどう言おうか悩んでいた。 今日のことを謝ろうか、それとも礼を言おうか。 どちらも何か重いような気がして、みゆきは別の言葉を探した。 「…泉さん、昨日の子犬の飼い主は見つかりましたか?」 うん、これが良い。自分の呟きに満足したみゆきは目を閉じた。 終 - コメント・感想フォーム 名前 コメント こなたに諭されるみゆきというのは新しいですね(そうでもないか)。GJ -- CHESS D7 (2009-08-31 19 06 18) こなたとみゆきの会話に共感するものを感じました。 -- 名無しさん (2009-08-26 19 55 51)
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放課後。 「日誌をお届けに参りました」 担任の黒井先生に日誌を手渡す。 「おつかれさん。いつもすまんな、高良」 「いえいえ。学級委員長の仕事ですから」 教室に戻り、かばんをとって、帰路に着く。 何もなければ友人と一緒に帰ることも少なくないのだが、今日は委員会があったので一人だ。 電車の中で本を読む。 つい本に夢中になってうっかり乗り過ごしたことも一度や二度ではないが、今日は大丈夫だった。 駅から徒歩で自宅にたどり着く。 「ただいま、戻りました」 リビングから声がする。 「まぁ、そうなんですか。すごいですね」 ゆかりが電話で話をしていた。 雰囲気からしてかなりの長電話のようだ。 「そうなんですのよ。ええ、では、この辺で」 ゆかりが電話の受話器を置き、 「あら、お帰りなさい」 「どちら様だったんですか? 会話が弾んでいたようですけど」 「勧誘のお電話よ」 「あのう……そういう電話はすぐに分かるようになっていたはずですが」 最近の電話は進歩しており、データベースに登録されている電話番号からの電話は、ナンバーディスプレイに企業名などが表示されるようになっている。 「うん、でもほら、ヒマだったからお話ししたくて。三時間以上も話しちゃった」 「はぁ……。では、ご夕飯の準備もまだなんですね?」 「あっ、ごめんなさい。全然してないの~」 「残っている材料で炒飯でも作りますね」 「ごめんなさいね」 冷蔵庫を開ける。 「あら? 同じヨーグルトがたくさんありますね」 「みなみちゃんの海外旅行のお土産なの。体にいいっていうからたくさんもらっちゃった」 「では、ご夕飯のあとのデザートにいたしましょう」 台所にたち、夕飯の準備にかかる。 スライサーでニンジンの皮をむいていたところ、 「痛っ」 指を切ってしまった。 とりあえず、水道の水で傷口を洗い流して、ティシュペーパーでふき、絆創膏を貼る。 このようなドジも、一回や二回ではない。 「しっかりしないといけませんね」 自分にそう言い聞かせる。 三人分の炒飯を作り、テーブルに並べる。 ちょうどそのとき、母が帰ってきた。 「ただいま戻りました」 「お帰りなさい。今日は遅かったわね、みゆき」 「少々残業がありまして、遅れてしまいました」 みゆきは精神科医である。残業は多い方ではないが、今日は少しばかり帰宅が遅かった。 娘のエプロン姿を見て、 「あら、ご夕飯を作ってくれたんですか?」 「はい。余った材料で作った炒飯ですが」 三人で食卓を囲む。 食事はこの三人の場合が多い。婿養子の父は単身赴任で、祖父は幼いころに亡くなってたから。 「ねえ、みゆき。男の子ほしいって思わない」 「どうしたんですか、急に」 「ご近所さんにも男の子っていないでしょ。いた方が楽しいかなぁって」 「そうですね。今度、夫と相談してみますね」 ゆかりが唐突にふってきた話題を、みゆきは受け流す。 ゆかりはこんな話をしたことすら明日には忘れているに違いない。みゆきもそれが分かっているから。 近い将来に、高良家の家族が増えることはないだろう。 こんな調子でおっとりとした会話が続く。 家族なのに三人のうち敬語が二人というのも傍から見ればどうかと思われるかもしれないが、この家では普通のことだ。 高良家の一人娘にとって、祖母の天然ボケは日常の光景だったし、母の話は知識欲を満たす有意義なものだった。 自然と母の話に聞き入ってしまう。 その姿は、外見も内面もみゆきにそっくりであった。違うのは眼鏡の有無ぐらいである。 ありとあらゆるところが抜けまくっている祖母ゆかりを反面教師とし、なんでもそつなくこなし知識も豊富な母みゆきを見習ってきた娘が、みゆきそっくりに育ったのは至極当然のことであろう。 しかし、天然とドジな習性は、まぎれもなくゆかり由来の遺伝的性質である。 みゆきですらそれを矯正することができず、ものの見事に娘にまで受け継がれてしまった。 それゆえ、高良家の人々が冷蔵庫に貯蔵されているヨーグルトの存在を忘れていることに気づいたのは、その数日後のことだった。 終わり
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※本スレに投下していないものなので削除対象です
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「M事件」 多分みゆきさんの家で読んだのだと思う。 好きな人を永遠に自分のものにする方法。 それは一種のおまじないの様なもので、あの頃の私にはとても理解し難くて 正気には思えない、理解を越えた内容だった。 でも今は違う。私は今、恋をしている。 けれどその恋は実らない。 相手は私と同じ女の子だから。 私は彼女を家に招いた。彼女を永遠のものにする為に。 幸い彼女は私を慕ってくれている。断る理由もなく、彼女は家に来てくれた。 他愛もない話をして、少し勉強をして、私が作ったお菓子を食べた。 お菓子にはみゆきさんから譲ってもらった睡眠薬が入っていて… ゆたかの体は軽かった。軽くて小さくて愛しくて、辛抱たまらない。 そんな心情でゆたかをお風呂場に運んでいった。 浴槽にゆたかを置き、その首筋に鉈を押し当てる。 なかなか前には進まず、えいっと力を込めると、刃は恐らく骨の位置で動きを止めた。 ゆたかが起きていたのかはわからない。でも、押し当てた瞬間、頬を涙で濡らしていた。 それからの記憶は曖昧であまり覚えていない。 ひたすらゆたかを斬り刻んで、ゆたかの血溜りに身を置き、ゆたかを感じていた。 ゆたかの骨肉が私の中に染み込んでいく。私とゆたかが同化していく。このうえない幸せ。 小さな体を気にしていたゆたか、病弱な体を気にしていたゆたか、でももう気に病む事はない。 ゆたかは私で、私がゆたかなのだから。 ゆたかに包まれて、私は眠りにつく事にする。赤くて綺麗なゆたかに包まれて。 ゆたか…いつまでも愛してる…ゆたか…ゆたか… 「少女H 」 いつも私にちょっかいを出してたアイツ。 私をからい、笑い者にして、いつも騒いでいたアイツ。 私は今、アイツと暮らしている。 街を遠く離れた辺境、山村のあばら家に隠れ住んでいる。 私はあの日、想いのたけをアイツにぶつけてしまった。私は本気だった。 だからアイツにも本気の言葉を求めていた。はぐらかしを続けて出た言葉は 「親友のままでいようよ」 親友、それは今までと同じで、進展を望める可能性は、恐らく0。 予測の範囲内、でも、納得はできなかった。 だから、尚更アイツへの想いが暴発した。何が何でもアイツと一緒にいたい。 私は遊びに行くという口実でここへアイツを連れ込んだ。アイツはいぶかし気に私に訪ねた。 「ここに何があるの?」 何もない。行き当たりばったりでみつけた、只の廃屋、それがこの家の正体。アイツは帰宅を促したけど 私にその気はまるでなかった。アイツと一緒にいる。それだけが私の望みだったから。 アイツは変わらず帰りたいとだだをこねていた。アニメを観たい、ゲームをしたい、なんとも下らない。 アイツの泣きそうな顔、なんて可愛いのだろう。もっと、もっとその顔を見せて、こなた。 私の手には転がっていたビール瓶が握られていた。こなた、その顔を見せて…もっと…もっと…もっと! 何度叩いたのだろう、突然瓶が二つに割れた。アイツの頭から赤い血が流れていく。怯えるこなた、可愛い。 私は腕を振り上げて、それをこなたの頭上に叩き付けた。絶叫。喚きに喚いて、こなたは動かなくなった。 あれから数週間、アイツの体は変異し、蝿共が無遠慮にたかり続けている。体を這う蛆を尽く踏み潰し、愛しいアイツを抱き締める。 きっと他人が見たら、私を気違いだと思うだろう。それでも構わない。アイツが一緒にいてくれるなら。 朝日が眩しい。 アイツと目覚めのキスを交す。もう動かないこなた、体を腐らせたこなた、それでも愛しい、私だけのこなた。 アイツの腐敗臭を胸一杯に吸い込み、今日も一日が始まる。 今日は何をしよっか?こなた。
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アニ研部室。 「ひよりん」 「なんスか、先輩」 「そろそろ、私の後任の部長を決めなきゃいけないんだけど」 「ああ、もうそんな時期っスね」 「ひよりんで決まりだから」 「えっ、なぜっスか!? 私は部長なんて向かないっスよ!」 「まあ、そうなんだけどさ。今の二年部員に部長向きの人材ってそもそもいないんだよね」 「なら、せめてアミダとか……」 「それでもいいんだけどさ。でも、この部ってなんつーかみんな自由すぎて規律がゆるいっていうかそんな感じだから、せめて熱意っていうほど大げさでもないけどそんなのがある人間じゃないと、部長は務まんないかなぁってね」 「でも、私じゃこうちゃん先輩の後釜なんて務まらないっスよ」 今まではこうの統率力があったからこそ、このゆるゆるの部もなんとかまとまってきたというところはある。 その後任となると、今の二年部員は誰もが力量不足だった。 かといって、学校の部組織として部長なしというわけにはいかない。 となれば、少しでもマシな人材をあてるしかなく、そうなるとひよりが筆頭があがるのも、仕方のないところであった。 なんだかんだいっても、今の二年部員でアニ研の活動に一番熱心に取り組んでいるのは彼女なのだ。 「嫌なら、ひよりんのクラスの委員長を引っ張り込むんだね。あの若瀬さんなら適任だよ。これは毒さんも同意見」 「う~……」 確かにいずみは適任だった。こうとは全く違うタイプだが、学級委員長としての仕事ぶりには申し分なく、部長としてもうまくやっていけるだろう。 でも、彼女は隠れオタ。無理やりアニ研に引っ張り込むのは、気が引ける。 オタクの目から見れば、彼女が隠れオタなのはバレバレだったが、少なくても一般人にはまだバレてはいないから。 「八坂。少しは田村にも考えさせてやれ」 顧問のひかるがそう発言した。 「まっ、そういうわけだから、前向きに考えてくれよ」 こうはひよりの肩を軽く叩くと部室をあとにした。 翌日、昼休み。 お弁当を食べながら、ひよりは上の空だった。 「田村さん、どうしたの?」 「何か悩み事でも?」 ゆたかとみなみが心配そうにひよりを見る。 「まあ、悩み事といえば悩み事かな……」 ひよりは、事情を話した。 「Oh! ヒヨリがブチョウでスか。ダイシュッセね!」 バティがズレた感想を述べる。 「いや、部活は会社じゃないから」 いっそのこと、このパティを引っ張り込んでしまえば解決するのかもしれないが、いくら何でも途中でいなくなってしまうことが確実な留学生を部長に据えるわけにもいかない。 「ひよりなら大丈夫だと思う」 みなみがそう言った。 「でも、私じゃ八坂先輩みたいにはいかないし……」 「何もかも八坂先輩のようにする必要はないと思う。ひよりはひよりなりのやり方でやればいい」 「そうだよ、田村さん。田村さんは、ええっと……いろんな人とうまく付き合っていけるっていうか、そういう人だから、うまくやれると思うよ?」 確かに、自分がこうのようにやれるわけはない。 自分は自分なりのやり方でやるしかないのだろう。 「ジブンにジシンをモちましょう!」 パティに背中を叩かれた。 「痛いよ、パティ」 「アイのムチね」 「それ意味不明だから」 でも、なんとなく決心はついた。 「みんな、ありがとう」 ひよりは、お弁当を食べ終わると、3年C組に向かった。 数ヵ月後、アニ研部室。 「おっす、ひよりん。久しぶり」 「あっ、こうちゃん先輩、お久しぶりっス。今日は、どうしてこちらに?」 卒業式があったのは一週間前。 何か用事がなければ、こうがこの学校に来る必要性はない。 「ようやく大学決まったから、担任に報告してきたところ」 「おめでとうございますっス」 「やさこ、決まったんだ。オメデト」 制服姿のたまきが、さも当然といった態度でそこにいた。 「よかったじゃん」 そして、その隣では、同じく制服姿のみくが本を読んでいる。 たまきとみくは、推薦で早々に進路が決まっていた。 そして、このゆるゆるの部活は、三年部員の引退という概念があいまいだ。 よって、二人は、以前と変わらず放課後はアニ研部室に入り浸り、それは卒業しても変わることがなかった。 顧問のひかるがその辺に寛容だということもあって、そんな状況が続いていた。 「ひよりんも部長としてなんとかやってるみたいだな」 「それなりに何とかなってるっス」 部誌原稿のスケジュール管理さえ何とかやれば、あとはほぼ自由放任でもどうにかなる。アニ研はもともとそんな部活だ。 その部誌原稿で四苦八苦してるというのは、相変わらずのことだけど。 それから、ひよりとこうとたまきで久しぶりに雑談しながら、時をすごした。 翌日以降、たまきもみくも、そしてこうも、部室に来ることはなかった。 ひよりは、そのとき初めて、三人がもう卒業してしまったのだということを明確に認識した。 終わり コメント・感想フォーム 名前 コメント
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「ふわぁ~……」 「眠そうだね、こなちゃん」 また夜更かししたのかなぁ? あんまり身体に良くないのに……。 「うん、キリのいい所で終わろうとしてるんだけど……続きが気にな ってなかなか、ふわぁ~」 「次、黒井先生の授業だよ」 「そーいえばそーだね」 あはは……、こなちゃんは呑気だなぁ。寝たらまた叱られちゃうの に。 「そだ、つかさ」 「なぁに?」 何か閃いたのかな? 眠たそうな顔なのに何処か冴えてる……あ、 目が電球になってるよ~。 「もし私が寝ちゃったら携帯に電話してよ」 「え、携帯に?」 うーん、確かにそれで目は覚めるとは思うけど……そんな事したら 音が出て余計に怒られちゃうんじゃあ……。 「心配しなくても大丈夫だよ」 「え?」 「マナーモードでバイブにするから。つかさはちょっと電話掛けてく れれば良いからさ」 あ、そっかー。それなら直ぐに分かるしバレないよね。 こなちゃん頭良いなぁ~。 「うん、分かったよ。でもこなちゃんも寝ないようにしなきゃダメだ よ?」 「あはは、分かってるって。んじゃよろしくね」 「江戸時代後半、徳川の擬似太陽炉発明によって……」 こなちゃん今の所は大丈夫そうだけど……目が半分寝てるよ~。 後ニ十分だから頑張っ――。 「…………」 あちゃ~、やっぱり寝ちゃったか~。しょうがないなぁ、こなちゃ んは……。 バレないように、ぴぽぱっと。こなちゃんが起きたら電源押せば良 いんだよね。 「……っ!? えあ、わんっあぁんっ」 わ、わわわわ!? 何々!? とりあえず切らなきゃ! ポチッとな。 「はぁ……ふぅ……」 うわぁ、皆の視線がこなちゃんに行ってるよぉ~。とゆーか、こな ちゃん……。 どこにしまってたの~!? 「泉……? どうした?」 「あの、えと……シャックリが……ひっく。ほら」 「そ、そうか。念のため保健室に行っとき」 「はい……」 シャックリで保健室ってどんだけ~。でもあれシャックリじゃない よね、確実に……。 「柊、一緒に行ってやれや」 「あ、はい」 じゃあ、こなちゃん一緒に……!? 泣いてるよ、泣いちゃってるよ~。可愛いよぉ~。はぅ、これから 保健室で二人きりだよ……理性保てるかなぁ? ん? 私、今変な事考えちゃったかな? 「ポケットに入れたはずなのに……いつの間にか」 そ、そうなんだ。何でだろうね? 後でゆきちゃんに聞いてみよっ と! 「ゆきちゃーん」 「ごめんなさい。それは分かりませんね」 「まだ何も言ってないのに、流石ゆきちゃんだね」 「へぇ、そんな事がね~」 「うん、なんとかごまかす事は出来たんだけどね……」 そんな恥ずかしいこと教えなくてもいいのに……相手がお姉ちゃん だからかな? 「んで? 今日は大丈夫なの?」 今日は流石に大丈夫だよね? 昨日あれだけの事があったんだから ……。 「それが、昨日『みゆきさんスペシャル!ポロリもあるよ』っていう 深夜番組がやっててね……ふわぁ~」 「おいおい……」 「こなちゃん、次の授業、また黒井先生だよ~」 「分かってふよぉ~ぁ」 ダメだこりゃ。今度はどんな手段を使うのかな? 「つかさにまたお願いがあるんだけど……」 「またバイブ? こなちゃん昨日の事もう忘れちゃったの?」 「いやいや、前に黒井先生が言ってたんだけどね? 運転中、アニソ ンを聴いてれば事故に合ったとき恥ずかしいから運転に集中できる ~、みたいな事を言っててさ」 あ、なるほど~。じゃあ今度は寝たらアニソンが流れるようにすれ ば良いのかぁ。 「着信音をアニソンにしといたから、つかさは私が寝たら電話を掛け てね?」 「授業中にアニソンね、そりゃ確かに恥ずかしいわ」 いや、それじゃダメだよ……。 「そそ、寝たら羞恥の目に合うって分かってるから授業に集中できる って訳だよ」 ううん、それじゃ集中出来っこないよ……。もっと、もっと恥ずか しい事じゃないと! 「そうだよ、それじゃダメだよこなちゃん」 「え?」 「こなちゃんがアニソン流したくらいで恥ずかしい訳がないよ」 「つかさ?」 「もっと、そうだね、こなちゃんの恥ずかしい声を着信音にしたらど うかな?」 「え、恥ずかしい声……?」 「なるほど、一理あるわね」 流石お姉ちゃん。理解力の早さはぴか一だね。 「えー……」 「携帯貸して? 録音してあげるよ」 「……」 そんな顔しないでよ。これも全てこなちゃんの為なんだよ? えーと、録音モードは……あ、これだね。 「はい、いーよ。喋って?」 「え、と……」 すっかり赤くなっちゃって……こなちゃんも女の子なんだねぇ。 「いや~ん、エッチ~……ダメ?」 「……お姉ちゃん」 「しょうがないわね、手伝ってあげるわ」 「手伝うって、かがみ?」 録音開始っと……。良い声で鳴いてね、こなちゃん。 「ま、待って、なんでかがみそんな物持って……や、やめ……」 「千九百九十九年、地面の底から突如現れた大きな火、ラ……」 うわぁ、こなちゃん目がギンギンだよ。まぁ、あんなの流れたら嫌 だもんね~。眠そうなのに無理しちゃって……。 “実は先程、睡眠薬を投与しておきました” ゆきちゃんグッジョブ! ……え? 「はにゅうぅ~……はにゅうぅ~……」 って、こなちゃん必死すぎ! でも眠気って少し耐えれば無くなる んだよね。 こなちゃんファイトっ。 「極楽浄土南無阿弥陀仏」 「ふぁ…………」 こなちゃん撃ちーん! その前に、黒井先生、さっきからこれって 歴史の授業なのー? “つかささん、泉さんが眠りましたよ” あ、そうだった。携帯電話をポチッとな。 『やぁ、どうも。ここでの泉さんの台詞があまりに激しい為、伏字役 として呼ばれた小野大輔です。さて、彼女の恥ずかしい音声が鳴り 響いている間、何かお話でもしましょうか。っと、もう時間なんで すか? 残念です。では、また……』 あ、そういえば音量最大にしておいたんだった。これならすぐに目 が覚めるよね。あ、起きた。 「い、泉……? それはなんや?」 未だ繰り返し鳴り響くこなちゃんの可愛い鳴き声。 うーん、こなちゃんは目覚ましを止める習慣が無いのかなぁ? あっ、私が止めれば良いのか。ごめんごめん。 「う……うわぁぁぁぁぁん!」 「あ、おい泉っ!」 あれぇ? まだ授業中なのにどこに行くんだろう? あれから、こなちゃんは学校に来なくなった。つまんないなぁ…… こなちゃんが居ないと寂しいよ。 あ、メール。こなちゃんからだ。えーと……。 『げんこつ喰らった方がマシだった』 あはは、そりゃそうだっと。 完
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季節は夏。そして本日は七夕ということもあり、生徒会による七夕イベントが決行されていた。 イベントといっても、そんなに大それた事ではなく、玄関先に用意した青々と笹の葉茂った竹に、願いを書いた短冊を吊すというシンプルなものだ。 しかし、そのシンプルさ故に、既に笹には数多くの短冊が吊されていた。 当然、願いが叶うなんて非現実的な事はないのだが、こういうのは楽しんだもの勝ちである。 単純に、書いて吊して楽しむも良し。他人が書いた願いを読んで楽しむも良しと、まぁ楽しみ方は人それぞれだ。 「まだ誰も来てないよね?」 そうこうしているうちに、また一人、短冊に願いを書きに来たと思われる女子生徒が竹に近づいて来た。黄色いリボンがトレードマークの ショートカットな髪型の女の子は、キョロキョロと周りを確認しながら、落ち着かない様子で短冊を手に取った。 「誰も居ないうちに……」 どうやらこの女子生徒は、書いているところを見られたくない様である。頬を紅潮させている辺り、恋文染みたものだろうか。 短冊に自分の名前さえ書かなければ、後で誰かに確認されようが分からない。だから誰も居ない時を狙ったのだろう。 ロマンチックな乙女だ。 「これでよしっと」 自分で書いた願いを確認して、再び頬を紅潮させ、それを笹に吊した。どんな願いか分からないが、書かれた相手は幸せ者だな。 「あれ? つかさ早いわね。もう書いたの? 見せて見せて」 つかさと言うのは、黄色いリボンの女の子の事だ。そしてつかさの背後に突然現れたツインテールな髪型の女の子は、つかさの後方にある今吊したばかりの短冊を見てしまう。 「わわわわ、お姉ちゃん!」 つかさは必死に両手を上下にバタバタとするも時既に遅し。というか姉だったのか。 「……わぁ」 つかさの姉は、その短冊に書かれていた内容を確認し、気恥ずかしくなりつつも、その短冊をまじまじと見つめていた。 「はぅぅ……」 つかさはすっかり顔がトマトになり、恥ずかしい様で下を向いていた。一体、どんな内容なのだろうか。 「何々? 『お姉ちゃんとずっと仲良くいられますように』? しかもハートのイラスト付きだとぅ!?」 「わぁぁ! 口に出さないでぇぇ!」 「うぉっ!? こなたいつの間に!? あ、みゆきも」 突然現れるのが流行っているのかというくらい、タイミングの良い登場の仕方だ。こなたと言う小柄な女子生徒のお陰で、短冊に書かれた内容が判明された。 これは書いた本人も書かれた相手もかなり恥ずかしいだろう。それも身内ときたもんだ。 「だから誰も居ない内に書いたのにぃ……」 「いや、その……ごめん。でも」 「でも?」と、つかさ。 「嬉しいわよ。そういうこと書いてくれてさ」 「……えへへ」 この瞬間、姉妹という二人の間に、強烈な姉妹愛が生まれた。これを破壊することは何人たりとも出来ないのである。 「ぐぬぬ、やるなつかさ……くそーぅ! 負けてられるかぁー!」 こなたはそう叫びながら短冊を手に取り、物凄い勢いでペンを走らせていた。何が負けてられないのだろうか。 「良し、これで勝つる!」 書いた短冊を直ぐに吊しに行くこなた。しかし、ガシッと肩を掴まれてしまう。 「何すんのさかがみ!」 「ちょっとな、それ見せてみろ」 「もう、せっかちさんだなぁかがみは~。」 そう言って短冊をつかさの姉、かがみに手渡した。その内容とは、 かがみとチュッチュッしたいな(はぁと) こなた かがみは固まった。名前を書いてる辺り、つかさよりも大胆である。 「うおりゃー!」 「あぁ! 何すんのさ! 破くなんて酷いよー!」 「こんな恥ずかしい物、吊しといてたまるかっ!!」 こなたの願いは糸も簡単に粉砕された。ひらひらと舞い散る短冊は風に飛ばされ、余計に虚しさを増した。 「良いもん良いもーん! 私はみゆきさんとチュッチュッするもーん! ねぇ~みゆきさ~ん?」 「えーと……」 こうして、つかさの作戦は失敗に終わった。しかし、失敗して得たものも、そうそう悪いもんじゃないな、と、つかさは思うのであった。 「みゆきさんアイラブユー!」 「えーと……」 時間変わって、放課後。喧騒ざわめくここ、玄関先も、すっかり生徒達が居なくなり寂れていた頃、一人の教師と思われる女性が、短冊で埋め尽くされている竹に歩み寄って来た。 「ふふふ、あいつに見つからない内に……」 どうやらこの女性も、書いてる所を誰にも見られたくない様である。 女性はササッと短冊に願いを書き終わると、直ぐに笹に吊した。 しかし、二度あることは三度ある。そう、またしてもこのタイミングで背後から誰かが来たのである。やはりこの登場の仕方は流行っているのか。 「あら、桜庭先生、短冊書いてるんですか? えーと……」 「ばっ、見てはダメだ!」 ふゆきと 結 婚 ! これまた、大胆な願いだ。 「さぁ、結婚しよう」 そして本人は開き直っている。 「……桜庭先生、こういう形に残るものでこういう事書くのはダメですよ?」 「何? なら形に残らなければ良いんだな?」 「そうじゃありません。……そもそも学校で、」 「ほぅ、学校じゃなければ良いのか」 「もう、何でそうなるんですか」 しかし、意外に満更でもない様子。新たなカップルの誕生である。 「誕生しません。もう、何ですかこの終わり方は? 綺麗じゃありませんね」 「ふゆきは綺麗だ」 「……ひかるさんったら」 おわり
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ケロちゃん 絵師ID i6wC.Xc0氏:東方コスプレつかさ
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こなたのデッキ モンスター×20 泉こなたレベル4× 3 泉こなたレベル6× 2 泉こなたレベル9× 2 小早川ゆたか× 1 パトリシア・マーティン× 3 泉そうじろう× 3 田村ひより× 2 泉かなた× 1 岩崎みなみ× 2 ながもん× 1 魔法×12 チョココロネ× 2 Dドライブ× 1 レバ剣× 1 ごみ箱から元に戻す× 2 地獄の暴走ゆい姉さん× 2 ポイント使用× 1 アホ毛サーチ× 2 こなたの携帯電話× 1 親子の絆× 1 罠× 8 聖地のお触れ× 1 幸せ願う、彼方から× 2 朝までネトゲ× 2 団長の命令× 2 ハレ晴レ愉快× 1 計40 モンスター 泉こなた LV4 ☆4つ 闇 攻撃 1700 守備 400 【ぺたんこ族:効果】 このカードが裏側守備モンスターを攻撃したとき、 このカードの攻撃力が攻撃したモンスターの守備力を超えていれば、 その数値分、相手にダメージを与える。 この効果によって相手にダメージを与えた場合のみ、ターン終了時に このカードを墓地に送ることによってデッキ、または手札から 「泉こなた LV6」を特殊召喚することが出来る。 その後、デッキをシャッフルする。 泉こなた LV6 ☆6つ 闇 攻撃 2500 守備 1500 【ぺたんこ族:効果】 このカードが守備表示モンスターを攻撃したとき、 このカードの攻撃力が攻撃したモンスターの守備力を超えていれば、 その数値分、相手にダメージを与える。 この効果によって相手にダメージを与えた場合のみ、ターン終了時に このカードを墓地に送ることによってデッキ、または手札から 「泉こなた LV9」を特殊召喚することが出来る。 その後、デッキをシャッフルする。 泉こなた LV9 ☆9つ 闇 攻撃 3300 守備 2500 【ぺたんこ族:効果】 このカードは通常召喚できない。 「泉こなた LV6」の効果でのみ特殊召喚できる。 手札を1枚墓地に送ることで、相手フィールド上のモンスターを ターン終了時までコントロールを得ることが出来る。 効果名「こなたんの魅力」である。 こなた「まさか私がレベルモンスターだとは思わなかったよ」 かがみ「でもいろんなこなたが見れて面白かったわよ☆」 こなた「流石にウェディングドレス姿はビックリしたけどね……」 かなた「私も昔を思い出すわー」 こなた「あ、お母さん居たの?」 かなた「一応、ここ楽屋裏みたいなものだから……」 かがみ「それにしてもこの効果、反則じゃない?」 こなた「もし公式で出たら大幅に改良されるだろうねー」 かがみ「でないだろ」 小早川ゆたか ☆3つ 光 攻撃 500 守備 300 【ぺたんこ族:効果】 このカードは戦闘では破壊されない。 このカードが相手モンスターに攻撃され、裏側守備表示から、 表側守備表示になったとき、デッキから「泉こなた LV4」を 表側攻撃表示で特殊召喚することが出来る。 その後、デッキをシャッフルする。 かがみ「ゆたかちゃんは厄介だったわ……」 こなた「ゆーちゃんを戦闘で破壊する、なんて残虐な行為は誰にも出来ないのだよ」 かがみ「他の奴らはいいのかよ」 こなた「いや、そーゆー意味じゃないけどさ」 パトリシア・マーティン ☆4つ 光 攻撃 1900 守備 1200 【オタク族】 海外から日本の萌えを勉強しに来た女の子。 その巨大な胸の破壊力は某未来人をも上回ると言われている。 かがみ「パトリシアさん、全然役に立たなかったわね」 こなた「うわ、かがみ酷ッ!! でも☆4つで攻撃力1900は基本だよ?」 かがみ「あぁ、言い方間違えたわ。こなたが上手く扱えなかったって事ね」ヒヒヒ こなた「むぅ~……」 泉そうじろう ☆4つ 闇 【オタク族:効果】 攻撃 2200 守備 200 このカードは相手フィールド上にモンスターが存在する 場合のみ攻撃出来る。 こなた 「☆4つでこの強さ、まさに頼れるお父さんって感じだね」 そうじろう「おぉー! こなたぁー! お父さん嬉しいぞー!」 こなた 「カードの話ね」 そうじろう「……だよなぁ(TT)」 かなた 「もう、こなたったら……」 田村ひより ☆2つ 闇 【オタク族:効果】 攻撃 300 守備1900 このカードを攻撃したモンスターは攻撃を自重される。 このカードを攻撃したターンから2ターン後、攻撃で きるようになる。 かがみ「田村さんも厄介だったわ」 こなた「ホントは攻撃したモンスターと同じ能力・攻撃力を持つトークンを 自分フィールド上に特殊召喚するって効果にしようとしたんだって」 かがみ「ふーん、確かにそれのほうが田村さんらしいわね。なんで変更されたの?」 こなた「うーん、なんか妄想しすぎて別の世界に行っちゃうかも知れないからなんだって」 かがみ「へぇー……」 ひより(なるほど、あのモンスターを書けば良いんスね! は!? でもあれをこうしてあぁーしてうひょー!!) 泉かなた ☆10 光 攻撃 0 守備 0 【ぺたんこ族:効果】 このカードは通常召喚出来ない。 自分フィールド上に存在する「泉こなた」「泉そうじろう」「幸せ願う彼方から」 の3枚が揃っている時、「幸せ願う彼方から」を墓地に送る事でのみ特殊召喚出来る。 ライフを半分払う事で、全フィールド上のモンスターの攻撃力を0にする事ができ、 効果の対象になったモンスター全ての元々の攻撃力を足した数を このカードの攻撃力にする事が出来る。 このカードはターン終了時にデッキの一番下に戻る。 かがみ「このカードは反則過ぎるわよ!!」 こなた「確かに強すぎるよね……でもスレ的に考えて、お母さんはある意味最強キャラだから」 かがみ「このカードが無かったらこなたを私の者に出来たのにな……」ボソ こなた「え? 今なんて?」 かなた(聞き間違いではないわよね……まさかまた発症!?) 大天使「やれやれ、困ったものです」 岩崎みなみ ☆4つ 光 攻撃 1500 守備 1300 【ぺたんこ族:効果】 このカードを生贄に捧げることで、墓地に存在する 「小早川ゆたか」を裏側守備表示でフィールドにセットすることが出来る。 かがみ「なんというか、一番効果がキャラに合ってるような気がするわ……」 こなた「みな×ゆたは認められてるからね」 かがみ(もし、私とこなたが同じデッキだったら……きっと最強ね!) こなた「かがみ?」 ながもん ☆3つ 光 攻撃 900 守備 1100 【ぺたんこ族:効果】 このカードは、相手の魔法の効果を受けない。 このモンスターの召喚に成功したとき、デッキから 「ハレ晴レ愉快」を1枚手札に加える。 かがみ 「この子って、アンタのバイト仲間でしょ?」 こなた 「そうだよ。本編では手札から捨てられるだけで名前すら出てこなかったカードだったけど」 ながもん「問題ない」 魔法 【チョココロネ】 装備 カード名に「こなた」と名のつくモンスターにのみ装備可能。 このカードを装備したモンスターが相手モンスターを破壊したとき、 相手モンスターの守備力分、自分のライフを回復する。 かがみ「なんでこれが剣になるかな……」 こなた「いやぁ、みゆきさんには酷い事したと思ってるよ」 みゆき「そのわりには反省されてないようですが?」 こなた「み、みゆきさん!?」 みゆき「泉さんチョコ好きなんですよね? ならば一度味わってはいかがですか?」 こなた「ま、まってみゆきさん! やめてぇぇぇぇ!!」 【Dドライブ】 自分のデッキの上からカードを3枚めくる。 その中にモンスターカードがあった場合、そのカードを手札に加える。 魔法、罠カードがあった場合、そのカードをデッキに戻し、デッキをシャッフルする。 かがみ「そういえば、アンタのDドライブって何が入ってるの?」 こなた「恥ずかしくて言えない」 かがみ「普通にエロゲとかギャルゲじゃないの」 こなた「…………」 かがみ「こんど行ったときに見せてもらうわ」 かなた「私も」 大天使「では私も」 こなた「勘弁してください」 【レバ剣】 装備 モンスターの攻撃力が500ポイントアップする。 このカードがフィールドから離れたとき、 相手に500ポイントダメージを与える。 こなた「レアなんだからもうちょっと凄い効果でほしかったな」 かがみ「例えばどんな?」 こなた「うぉっほん! このカードを装備したモンスターの攻撃力は777ポイント──」 かがみ「ねぇよ!」 【ごみ箱から元に戻す】 相手はデッキからカードを2枚ドローする。 自分の墓地にある「こなた」と名のつくカードをフィールド上に 特殊召喚、または手札に加えることが出来る。 この効果で特殊召喚されたモンスターは、 このターン攻撃することは出来ない。 かがみ「この『ごみ箱から元に戻す』ってのがよく分からないんだけど」 こなた「これは本編にも書かれたようにパソコンにある機能でね? ごみ箱っていうフォルダから──」 みゆき「みゆきです☆ ここからは私が説明しましょう」 かがみ「みゆき……いくら出番が少ないからって、やめなさいよ恥知らず」 みゆき「す、すみません……(´・ω・`)」 こなた(かがみ怖い……) 【地獄の暴走ゆい姉さん】 速攻 相手フィールド上にモンスターが召喚、特殊召喚されたときに発動できる。 相手のモンスター1体の攻撃力を、永続的に500ポイント下げる。 同名カードが相手のデッキ・手札・墓地にある場合、 そのカードにも効果は及ぶ。 かがみ「これってアレよね? ユーアーマイグラービティー♪ の時の事でしょ?」 こなた「は? かがみが何を言ってるのか分からないよ」 かがみ「え? こなたにはあのBGMが聞こえなかったの!?」 こなた「ん~、私黒井先生の車に居たし」 かがみ「って、何話か把握してるじゃないの!!」 こなた「あは☆」 【アホ毛サーチ】 墓地のモンスターカードを3枚までデッキに戻し、 シャッフルする。その後、デッキからカードを2枚ドローする。 かがみ「アホ毛サーチなのに他のカードもサーチ出来るってどーゆーことよ!?」 こなた「そーゆー所は突っ込んじゃダメだよ」 【ポイント使用】 フィールド上に表側表示で存在する「LV」を持つモンスター1体と 墓地のモンスター1体をゲームから除外して発動する。 「LV」を持つモンスターを召喚条件を無視して手札またはデッキから特殊召喚する。 かがみ「出たわね、最上級こなたを呼び出したカード」 こなた「実際のカードより、リスク多いんだよね」 かがみ「実際のカード?」 こなた「なんでもないよー」 【こなたの携帯電話】 このカード1枚だけが他のカードの効果によって手札から 墓地に送られたとき、自分はカードを2枚ドロー出来る。 かがみ「これはあれか、手札にあってこそ効果を発揮する……まさにアンタの携帯電話だわ」 こなた「いつも家におきっぱだしねー」 【親子の絆】 墓地に「泉そうじろう」・「泉こなたLV4~9」があるとき、 ライフを半分払うことで「泉そうじろう」と「泉こなたLV6」を 特殊召喚する事が出来る。 かがみ「早めに泉親子を墓地に捨てて、早期決着が出来るカードね」 こなた「でもライフ半分払うから、決着できなかったらかなり痛いよ」 かがみ「それもそうね、2体のモンスターの攻撃力合計しても1ターンで倒せないし」 罠 【聖地のお触れ】 永続 このカードがフィールド上にある限り、 罠カードの発動、効果は無効化される。 聖地で争いはいけません。 かがみ「あれ、こんなカードも入ってたのね」 こなた「使う機会が無かったけどね」 かがみ「というか、これってまんま王宮の──」 こなた「言わなくてもわかるがな」 【幸せ願う、彼方から】 永続 手札を1枚捨てることで、モンスター1体を1度だけ あらゆる破壊から免れることが出来る。 かなた「私はいつまでも貴方を見守ってるわ」 こなた「うん、お母さん……」 かがみ「そこー! いちゃいちゃしてんじゃないわよ!」 こなた「いや、いちゃいちゃって……」 かなた「はぁ……」 大天使「いっそかがみさんの記憶消しちゃいましょうか?」 【朝までネトゲ】 相手モンスターの召喚、反転召喚を無効にし、 そのモンスターを相手のデッキの一番上に戻す。 こなた「あ、気が付いたらもう朝じゃん。眠いから今日は学校いいや」 かがみ「そーゆー意味なのかこれ……」 いのり「ホント、眠くてもうだめだわ……ふわぁ~」 かがみ「姉さんまで……恐ろしいカードね」 【団長の命令】 カウンター 相手バトルフェイズ中のみ発動可能。 全フィールド上のモンスターを守備表示に変更し、 バトルフェイズを終了させる。 かがみ「なるほど、このカードをうまく使ってアンタのレベルモンスターを進化させるって訳ね」 こなた「平団員の癖に鋭いわね! まぁ、実際に使い道は無かったけどね、引きが悪いっていうのかしら? なんで自分の好きなカードを手札に加えちゃいけないわけ? だいたい私はこーゆーゲームよりも もっと爽快なアクションゲームがしたいわけよ!」 かがみ「お前誰だ?」 【授業中になにしとんねん!!】 フィールド上の魔法、罠を1枚まで破壊することが出来る。 その後、手札を1枚捨てることで、更に1枚破壊することが出来る。 かがみ「あぁ、これね」 こなた「みゆきさんにしてやられたカードだよ」 ななこ「なんや、高良がウチの出番取ったんかいな。原点20としとくか!」 みゆき「そ、そんな! それはあんまりですよー」 【ハレ晴レ愉快】 永続 このカードは自分フィールドに 「泉こなたLV6」・「パトリシア・マーティン」・「ながもん」が 存在するときしか発動できない。 このカードを発動後、自分のターンで数えて3ターン後のエンドフェイズまで 上記モンスターとこのカードがフィールドから離れなかった場合、 自分はデュエルに勝利する。 フィールドから離れてしまった場合、自分はライフを半分失う。 こなた「これはドロー出来なかくて出番が無かったカードだね」 かがみ「なるほど、パトリシアさんとながもんはこのカードのために居たのね。というか……」 こなた「?」 かがみ「アンタのデッキってライフを半分払う効果が多くないか?」 こなた「言われてみればそうだね」
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参考SS:ID YLxe6ASO氏:狂った世界に救いに手を