約 187,606 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1697.html
「ゆゆっ!おにーしゃん!ちゅいにじぇんぶそろったね!」 「ああ・・・そうだな、長い旅だった。でもこれで旅も終わりか・・・」 「これでまりしゃたちのおきゃーしゃんがいきかえりゅんだね!」 「うっう~♪まりさたち、おめでとうだど~!」 「これでゆっくりできるのね!」 「ちーんっぽ!」 「おねがいがかなうんだねー。わかるよー」 「むきゅ!でんせつのゆっくりぼーる・・・きょうみぶかいわ!どすもそうおもうでしょ?」 「そうだね、ぱちゅりー!でもまりさはみんながゆっくり出来れば何でもいいよ!」 何も無い荒涼とした大地。 そこに人目を避けるようにして集った9つの影。 1つは人間のものだ。中肉中背の男性が、じっと足元に置かれた7つの珠を見つめている。 その珠はゆっくりボールと呼ばれ、全て集めたものの願いを一つだけかなえてくれるといわれている。 他の8つの影は全員ゆっくりと呼ばれる下膨れの生首饅頭だった。 常時薄ら笑いを浮かべているように見える顔立ち。妙に不快感のある声。落ち着きの無い性格に、何故か喋れるが思考能力の伴わない半端な知性。 そのどれもがどこか嗜虐心をそそる不思議な生物?がずらりと並んでいた。 赤ちゃんゆっくりれいむ、赤ちゃんゆっくりまりさ、ゆっくりれみりゃ、ゆっくりちぇん、ゆっくりみょん、ゆっくりありす、ゆっくりぱちゅりー、そしてドスまりさ。 男性も含めて、皆力を合わせてゆっくりボールを集めた仲間同士だった。 「さて、行くぞ・・・」 男性が神妙な声で合図を送るとゆっくり達は一斉に静まり返った。 「出でよ!シェンみょん!!」 その言葉がつむがれた瞬間、男性が見つめていた7つの珠が強烈な輝きを放つ。 珠を中心に風が起こり、巻き上げられた砂や木の葉がくるくると渦巻いている。 およそ5秒ほどそうやって瞬いていた珠が更に強い光を放った直後、珠からゆっくりみょんが出現した。 そのゆっくりみょんは非常に巨大で、体高はゆうに20mを超え、人知を超えた不可思議な力で宙に浮いている。 『ゆゆっ!みょんを呼んだのは君達なんだね!ゆっくりお願いをしてね!』 「さあ、れいむ、まりさ!はやくおねがいをしなさい!」 「ゆゆっ、ほんとうにれいむたちのおねがいでいいの?」 「あたりまえだど~♪」 「そのためにぱちゅりーたちはたびをつづけてきたのよ!」 「早くおかーさんを生き返らせてみんなでゆっくりしようね!」 「み、みんな・・・ありがとう!」 『ゆっくりしないでお願いしてね!お外じゃゆっくり出来ないよ!』 「ゆゆっ、ゆっくりりかいしたよ!それじゃあ、れいみゅのおきゃー「ギャルのパンティーをおくれ!」 赤ちゃんれいむがみんなに背中を押され、シェンみょんに急かされてお願いを言おうとしたとき、男性の変なお願いにさえぎられた。 『ゆっくり理解したよ!みょんはもうおうちに帰るね!』 シェンみょんがきっちりとその意味のわからない願いを叶え、パンティーがひらひらと地面に落ちるのを見届けると再び珠の中に戻っていった。 「どほぢでぞんなごどいうのおおおおおおお!?」 「おにいざんのばがあああああああ!?」 「いやぁ・・・ごめんごめん、何かついうっかり・・・」 「ちーっんぽ!!」 「うっかりじゃないわよ!またゆっくりぼーるをあつめなおさないといけないのよ!」 「次は気をつけてよね、おにーさん!」 総すかんを食らっている男性が、きまりの悪そうな表情でボールのあったほうに目をやると、ボールはゆっくりと四方八方に転がって移動していた。 そして、それらはあまりにゆっくりで、まだ2mほどしか移動していない。 その光景を見た男性はふとした思い付きでさっきの呪文を再び口にした。 「出でよ!シェンみょん!」 『どほぢでまた呼ぶのおおおおお!?これじゃゆっくり出来ないでしょおおおおおお!!』 予想通り、機嫌を損ねているがシェンみょんはきっちり呼び出しに応じてくれた。 ゆっくり達が予想外の展開に呆然としている中、男性だけが満足げな笑みを浮かべて何かを思案していた。 「・・・8匹と一人だから・・・よし!これだな!」 『ゆっくり早くしてね!お外じゃゆっくり出来ないんだよ!』 「わかったよ!じゃあ、お願いだ。次からは願い事を9つ叶えてくれ!」 『ゆぐぅ!?そんなの無「無理ならずっとゆっくりさせないぞ!」 シェンみょんは却下しようとするが、男性に脅される格好でしぶしぶそれを承諾すると、ボールの中へと戻っていった。 「これで皆の分のお願いが出来るぜ?」 男性はそう言って仲間達に微笑んで見せた。 「出でよ、シェンみょん!!」 『もおやべでええええええ!?みょんがゆっぐぢ出来ないよおおおおおおお!!』 「まず一つ目のお願いだ!」 お兄さんはシェンみょんの抗議を聞き流してさっさと願い事を要求する。 「まずはれいむとまりさのお母さんを生き返らせてくれ!」 『ゆっくり理解したよ!ほあっ!!』 シェンみょんの掛け声と同時に現れた光の中から、れいむとまりさの夫婦が現れる。 「「ゆゆっ?ここはどこ?」」 突然の事態に夫婦は困惑していたが、れいむ達の姿を見ると2匹とも一目散に駆け寄ってきた 「「れ、れいむ!まりさ!どうしてここにいるの!?」」 「あにょね!れいみゅたちがおきゃーしゃんたちをいきかえらちぇたんだよ!」 「まりしゃたちおきゃーしゃんにあいたかったんだよ・・・ゆっぐ・・・」 こうして4匹は感動の再会を果たした。 『早くゆっくり次のお願いしてね!みょんゆっくり出来ないよ!!』 空気の読めないシェンみょんに促されて、男性は次のお願いを考えた。 「次にここにいる皆を不老不死にしてくれ!」 『ゆっくり理解したよ!ほあっ!!』 「ゆ?おにーさん、ふろーふしってなぁに?」 「ずっとゆっくり出来るってことだよ」 「「「ゆゆっ!さすがおにーさんだね、すごいや!」」」 その言葉に無邪気に喜び、飛び跳ねるゆっくり達。 その表情から永遠の生の恐ろしさなど全く想像していないことが伺える。 『早くゆっくり次のお願いしてね!みょんゆっくり出来ないよ!!』 「それから、ぱちゅりーをもっと病弱にしてくれ!」 『ゆっくり理解したよ!ほあっ!!』 「むきゅー!?なんでぞんなごぐほっ!がほぉ!?げっふぅ!!?」 その瞬間、少し声を張り上げただけなのにぱちゅりーが中身を吐き出した。 「「「「「ぱちゅりー!?」」」」」 「あー、こりゃ致死量吐いたな・・・」 「ぎゅ~・・・ぎぼぢわるい、ぐるぢいのにぜんぜんぢなないわ・・・」 「ってことは本当に不老不死になったのか、すげえな」 「「「おにーさん、どういうことなの!?」」」 『早くゆっくり次のお願いしてね!みょんゆっくり出来ないよ!!』 「ああ言ってるから説明は後だ」 「ドスまりさは赤ちゃん並の体力にしてくれ!」 『ゆっくり理解したよ!ほあっ!!』 「ゆゆっ!?おにーさんなにいいだすの!?」 「しゃら~っぷ!」 男性がドスまりさに蹴りを見舞うとドスまりさにはそれなりの重さがあるにもかかわらずあっけなく吹っ飛んだ。 「ゆげぇ!?いだい、いだいよおおおおおおお!?」 「おお、本当に弱くなってる」 『早くゆっくり次のお願いしてね!みょんゆっくり出来ないよ!!』 同族?が酷い目に遭っているというのにシェンみょんは自分がゆっくりすることしか眼中にないらしくまたしても急かしてきた。 「れみりゃを絶世の不細工にしてくれ!」 『ゆっくり理解したよ!ほあっ!!』 「うーっ!?なんでぞんなおねがいずるんだどーっ!?」 そう言って抗議するれみりゃの顔に特に変わった様子は見られなかった。 「ゆゆっ!?れみりゃ、ぎぼぢわるいがらこっちむかないでね!」 「ゆげぇ・・・こんなにきもちわるいのはじめてだよ!」 「ゆゆっ、なんていなかものなの!?いなかものにしつれいなくらいいなかものだわ!」 「うううううううう!?でびりゃはがわいいいどおおおおおお!!」 どうやらゆっくりには違いがわかるらしい。 「・・・・・・ごめん、何が変わったのかお兄さんにはさっぱりだわ」 『早くゆっくり次のお願いしてね!みょんゆっくり出来ないよ!!』 「ありすを永久にすっきり出来ない体質にしてくれ!」 『ゆっくり理解したよ!ほあっ!!』 「ゆっ!?すっきりできないってどういうこと!?」 突然の指名に驚き、ありすは男性をねめつけるが彼はそんなこと意にも介さず、主無理鬼ありすに振動を与え始めた。 「つまり・・・こういうことさ!」 激しい揺さぶりがありすを瞬く間に快楽の世界へ誘う。 「ゆっ・・・ゆっ・・・ゆっ・・・ゆっ・・・」 その揺さビルはどんどん激しくなっていき、アリスはあっという間に絶頂寸前にまで達したが・・・ 「ゆううううううう!ずっぎりでぎないいいいいいいい!?」 「わかっただろ?イく一歩手前で永久にお預け食らわされてしまうのさ!」 『早くゆっくり次のお願いしてね!みょんゆっくり出来ないよ!!』 「俺に大量の虐待道具をくれ!!」 『ゆっくり理解したよ!ほあっ!!』 すると空から大量の虐待道具が降り注いできた。 お約束の透明な箱から焼き土下座用の鉄板、果ては苦悶の梨なんかまで。 「おぉ~・・・本当にいっぱい降って来たなぁ・・・」 『早くゆっくり次のお願いしてね!みょんゆっくり出来ないよ!!』 男性が感嘆しているとまたしてもシェンみょんが急かしてきた。 「こいつらが俺から逃げられないようにしてくれ!」 『ゆっくり理解したよ!ほあっ!!』 その瞬間、こっそり逃げ出していたまりさとれいむの一家が男性のほうに吸い寄せられるように戻ってきた。 『これでそこにいる子達はお兄さんから半径50mより外に出られなくなったよ!』 「しぇんみょん!どほぢでごんなごどずるのおおおお!?」 「しぇんみょんのばかあああああああ!!」 「ゆっぐりでぎないぢぇんみょんなんがゆっぐぢぢねええええええ!!」 どうやらゆっくり達は男性への罵倒を諦めて、標的をシェンみょんに変えたらしい。 『早くゆっくり次のお願いしてね!みょんゆっくり出来ないよ!!』 しかし、次のお願いをかなえればボールに戻れるシェンみょんはゆっくり達の罵倒を完全に聞き流している。 「シェンみょん、お前を虐待させてくれ!」 『ゆっくり理解した、よ・・・ゆぎいいいいいいい!!』 その言葉を聞いた直後、シェンみょんは体を持ち上げていた神秘の力を失い、どすんと大地に落下した。 「ふっふっふ、ずっとこの日のために我慢してきたんだ・・・ひゃあ、もう我慢できねぇ、虐待だぁ!!」 一箇所に固まっておびえるばかりのどうしようもなく無力なゆっくり達。 ドスまりさは赤ちゃん並の力になってしまった上に、シェンみょんも男性に虐待されるための存在になってしまった今、全くの無力。 そして、ここは人目のない荒野。 つまり、男性は誰にも邪魔されることなくゆっくりを虐待できるということだ。 「「「「「「「「「「『これじゃゆっくりできないよ!!』」」」」」」」」」」 何も無い荒野に無力なゆっくり達の悲鳴がこだました。 ‐‐‐あとがき?‐‐‐ ゆっくりは儚いからこそ虐め甲斐があるんだと思うんだ。 でも、永久に赤ちゃんのままのゆっくりは個人的にあり。 byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3628.html
『真冬のゆっくり対策』 「この時期に色々と対策を取ったほうがいいですよ」 ある村で会議が開かれていた。この村はゆっくりによる農作物の被害が多かった。 「確かに今が一番いいわね。今ならみんな冬篭り中だし手こずる事も無いでしょう」 ちなみに今は真冬。ゆっくりは冬篭り中で村には出没していない。そのうちにゆっくりの数を減らしてしまおうというのだ。 「春になったらまた子作りしますよ。そうしたら被害が増えるだけだ」 「ドスまりさも冬は動けませんよ。やるなら今です」 「しかしこの村の人数ではな…」 「でしたら周りの村や町にも応援を頼みましょう。虐待好きな方も動員しましょう」 「わざわざ来てくれるかね」 「どこも真冬はゆっくりが少なくて虐待が中々できないそうですよ。この辺りはゆっくりが多いようですから見つけやすいんじゃないですか? 喜んできてくれますよ。」 「いや…そっちの人のことを言ったんじゃないんだが…」 何はともあれゆっくり駆除の募集が行われた。 「ふ~ん…ゆっくり駆除ね」 新聞を読みつつ虐待お兄ちゃんは呟いた。 "ゆっくりを虐めたくてうずうずしてませんか?" 「してる。この時期は粋の良いゆっくりがいないんだよなあ」 彼の住んでいる村のそばだけでなく大抵の場合冬になるとゆっくりを見つけるのに少々手間取ってしまう。手間をかけてまでゆっくりを捕獲し 虐める人はそんなにいない。たまに自宅に忍び込もうとするゆっくりを捕まえて虐待するくらいだ。 「そういえばこの村は結構ゆっくり被害が多かったな」 "報酬はあまり出せませんが特産品をご馳走します" 「あ、この村確か良い酒があったんだ。結構高いやつ」 村の経済状況ではそれが精一杯だった。 "いつでもお越しください。ご協力お願いします" 「人助け&酒&虐待。良いこと尽くめじゃないか。早速出かけよう」 「うう…寒いわ」 虐待お兄ちゃんは村に着いた。彼が住んでいる村とは違い雪が積もっていた。 「そうか…雪がよく降るところだから米が良くて酒が美味いんだな」 彼の他にも多くの人達が着ていた。 「皆様、遠いところから良くおいで下さいました」 「この村はゆっくりによる被害が多くて困ってます。力を貸してください」 「無理はなさらないでください。夕方には戻ってきてください。夕食を用意いたします」 「ドスはここからかなり遠いところにいるので遭遇する心配はありません。ご安心ください」 「皆様お願いします」 彼らは準備を整え山へ向かった。 虐待お兄ちゃんは木の根っこの辺りを探していた。まずゆっくりが巣にしているのは木の根っこの下である。 「うーん…あ、ここ怪しい」 ゆっくりは冬篭りをする時入り口に草や石などを詰め寒さを防ぐという。不自然に石が固まって置いてある場所は巣の可能性がある。 「手ごろな大きさの石はないかな…」 彼はブロック程の大きさの石を見つけた後シャベルで木の根っこの辺りを掘り出した。 巣の中- 「ゆぅ…きょうはさむいね」 「おきゃあしゃん!しゅりしゅりすりゅちょ、ちょっちぇもあっちゃかいよ!」 「まりさともすりすりしてね」 「れいむも、れいむもすりすり~」 巣の中は典型的な幸せ家族であった。まりさとれいむに子れいむ、赤まりさ、赤れいむの5匹だ。巣の中は5匹と貯蔵している食糧でギリギリ といったところであった。 「せまくてごめんね、らいねんはもっとひろいおうちにすもうね」 「そんなことないよ。まりさががんばってつくったおうちだもん。とってもゆっくりできるよ」 「しょうだよ!まりしゃちょっちぇもゆっきゅりしちぇるよ!!」 そんな幸せムードもここまでだった。 「……で……~。は……す…よ…」 「ゆ!なにかきこえるよ」 「ゆ!なんだかさむくなってきたよ!!」 「しゃみゅいよお」 「はるですよ~!!!!!」 「「「「「ゆゆゆ!!!!」」」」」 入り口が壊され虐待お兄ちゃんが巣の中をのぞいていた。 「はるですよ~。なんちゃって」 「きょきょはまりしゃたちのゆkk…ゆぴいいいいい!!!しゃみゅいいいい!!!!」 「おちびちゃんたちはおかあさんのおくちのなかにはいってね!!」 「おじさん!!ゆうう!!!ここはまりさたちのおうちだよ!!さっさとでていってね!!!さむうううう!!!!!」 「あれ、まさか冬篭り中だったかい?」 「そうだよ!!!!だからゆっくりしないででていってね!!!!ゆううう!!」 「すまないねえ。なあ、ゆっくりと遊びたいんだけどこの辺りにゆっくりはいないかい?」 「ゆっくりしないででていってね!!!いりぐちなおs…ゆぴいいいい!!!!」 「早く教えてよ。いないんだったら君達と遊ぼうか」 「となりのきにありすがいるよ!!!まりさもいるよ!だからはやくでていってね!!」 「そうか、それはどうも。お礼に入り口埋めてあげるよ」 「ゆっくりしないでね!」 「じゃあ奥に入ってくれ」 「わかったよ!れいむ、おちびちゃんおくにいってね」 ゆっくり達が奥に入ったのを確認すると彼は石を巣の中にぶち込んでいった。 「丁度すっぽり挟まったね。これなら大丈夫だね」 彼は隣の木に向かった。 「ゆううう!!!!おじさん!!!ふさがってないよ!!!」 「もう…まりさがふさぐ…ゆゆゆ!!いしさんがじゃまでまえにすすめないんだぜ!!!」 「さむいよおおおおお!!!」 「ゆっきゅりできなああいいい!!!!」 「ゆんしょ…ゆんしょ…ゆうううう!!!!!」 「さて、多分ここだな。ここがありすのおうちか。今度はベーシックにいこう」 彼はシャベルで掘り始めた。 「はるですよ~。はるですよ~。でてきてね~」 巣の中- 「むきゅ…きょうはひえるわね」 「ぱちぇ、まりさとくっつくんだぜ!まりさがあっためてあげるんだぜ!」 「むきゅ~ん…ほかほかするわ」 「ぱ…ぱちぇ…まりさは…まりさはぱちぇとすっきりしたいんだぜ!!!」 「だめよまりさ。ごはんがすくないわ。あかちゃんなんてうめないわ」 「はるまでまてないんだぜ!!」 「まりさ……むきゅ!いりぐちがこわれてるわ!!」 「ゆ!」 「おうおう、おアツイねえ。あれ、ありすじゃねえ」 彼は巣を覗きニヤニヤしていた。 「おじさん!まりさのあいのすになんのようだぜ!!!」 「さむいわ!!ゆっくりできないわ!!」 「いやはや、おアツイところを失礼したよ。でもアツすぎると赤ちゃん産んじゃって冬越せなくなっちゃうよ。頭冷やそうね」 彼は巣の入り口を滅茶苦茶に壊していった。 「やべでえええ!!!!!あいのずがごわれぢゃううううう!!!」 「ゆぴいいいいい!!!!さむくてゆっぐりできなあいいい!!!!」 入り口どころか巣は修復不可能なほどに壊されてしまった。 「これなら少しは冷静になるね。じゃあね」 「むきゅううううう!!!!!!!」 「おじざん!!!!!!ゆうううう!!!!!おうぢなおじでええええ!!!!さむくでゆっくりできないよおおお!!!!」 「どうじだらいいのおおおお!!!!!」 「おうぢなおずんだ…ゆぴいいいいい!!!…ゆうう!!!ごはんがかぜでとばされでるんだぜええ!!!」 「今度こそありすのおうちはここだな」 巣の中- 「みんなごはんにするよ!」 「ゆっくりできるよ」 「きょうはむししゃんがたべちゃいよ」 「きょうはとくにひえるからとかいはならんちにしましょう」 「やったね!ごちそうだね!」 「「「「「むーしゃむーしゃ…しあわせぇ♪」」」」」 こちらも幸せな家族団欒であった。ありすとれいむの若干珍しい組み合わせ。子ゆっくり2匹と赤ゆっくり1匹だ。 「こんやはもっとひえるからよくたべてねましょうね」 「さむいよおお」 「だいじょうぶだよおちびちゃん。れいむおかあさんとす~りす~りしましょうね~」 「「す~りす~り」」 「ありちゅもしゅ~りしゅ~りしちゃ~い」 「ありすもす~りす~り」 突然だった。 「ゆ!なんだかすうすうするよ!!」 「おきゃあしゃん!おしょちょがみえちぇりゅよ!」 「とかいはなおうちをこわすいなかものはだれ!!!!さむいっ!!!!」 「ビンゴ。ありすだ」 「ここはありすたちのとかいはなおうちよ!!!いなかものはでていってね!!」 「しょーだしょーだ!」 「おかあさん!!さむいいいい!!!!」 「ハハハ。悪い悪い。プレゼント持ってきたんだけど余計だったかな」 「ぷれぜんと!」 「あまあまさん?おにいさん!あまあまさんくれるの?」 「べ…べつにぷれぜんとなんかでつられないわよ!だけど…あげたいならもらってあげてもいいわよ!」 「じゃあみんな、巣の奥に入って目を瞑っててね」 「ゆっくりおめめつむるよ」 「さみゅいきゃらゆっきゅりしにゃいでね」 「あまあまさん…あまあまさん…」 ドサアア!!!! 「ちべだあああいいいいい!!!」 彼が巣の中に入れたのは雪だった。 「遠慮するな。どんどん入れてあげるから」 「ちゅめちゃいよ!!!」 「やべでええ!!!ありすのとがいはなおうちがああ!!!!」 「それそれ!それそれ!」 「やめ…むぐうううう!!!…っぺっぺ…やべでええええ!!!!!むぐううううう…」 「いやあああああ!!!!ゆきさんこっちごないでええ!!!!」 「ほれ。トントンっと」 巣の中が雪でいっぱいになるとパンパンっと雪を固めて入り口を塞いだ。 「一面銀世界だなんてなんて都会派なんだろうね!!」 彼は次のターゲットを探したが中々見つからなかった。実は木の根っこを冬篭り用の巣にするゆっくりは少数らしい。 というのも巣が広げにくく食糧が貯めにくい事と雪の重みで入り口が壊れてしまうケースがあるからだ。 「あ、ここも空っぽだ。仕方ない根っこは諦めるか」 春になったら戻ってくるゆっくりもいるらしい。彼は山の奥の方へ向かった。 虐待お兄ちゃんがいなくなってから数分後- 「「ゆんしょ…ゆんしょ…」」 「おきゃあしゃんがんばっちぇね!」 「あかちゃんさむくない?す~りす~り…」 「しゅ~りしゅ~り…ゆうううう…しゃみゅいよおお」 石で入り口を中途半端に塞がれた家族である。 「ゆうううう!!!いしさん!!おうちからでていってね!」 「これじゃだめだよ…みんな!てつだってね。みんなでがんばればいしさんをどかせるよ!」 「まりしゃもぎゃんばりゅよ!」 「あかちゃん、がんばろうね」 「「「「「えいえいゆー!!」」」」」 「「「「「ゆんしょ!ゆんしょ!…」」」」」 微かに石が動いた。 「ゆ!うごいたよ!」 「みんながんばってね!」 「「ゆうう…みょうちゅかれちゃよ…」」 「れいむももうだめええ」 3匹が力尽きた時だった。 「「ゆべっ!!!!」」 「おかあさん!!」 「「ぎゃああ!!!!」」 親ゆっくり2匹が石に潰されてしまった。 「ばりざのあんよがああああ!!!!」 「でいぶのおがおがあああ!!!」 もうこの家族は冬を越せないだろう 「ゆびゅううううう…どうじよう…」 巣を壊されたまりぱちゅ。なんとか巣をそれらしい形にまでは戻したが寒気は容赦なく巣の中に入ってくる。食糧も大半が風で飛ばされてしまった。 「む…き…ゅ…」 「ぱちぇえええ!!!しっがりじでええ!!!!」 「もうだめだわ…ぱちぇは…もう…」 「ゆっくりしようよ!!!!!まりさといっしょにゆっくりいいいい!!!!」 ビュウッ!!!!! 強めの風が吹いた。 「ゆがああああ!!!!おうぢがあああ!!!!」 巣が壊れてしまった。さらに 「ゆああああ!!!!!まりさのぼうじがああ!!!!!ぼうじざんまっでえええ!!!!」 まりさの帽子が飛ばされてしまった。まりさは帽子を追って巣から出て行ってしまった。 「…ま…りさ…ぐ…ずっ…ひどいわ…」 まりさが帽子を取り戻し巣に戻ってきた頃にはぱちゅりーは死んでいた。まりさも直にぱちゅりーのもとへ逝くだろう。 「「「「「………………」」」」」 巣の中に雪を詰められた家族はみな固まってしまい動いていない。 「「「「「………………」」」」」 凍死ではなく仮死状態のようだ。解けた雪が体を溶かすより早く意識を戻すことができるのだろうか。 つづく by 虐待おにいちゃん
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/358.html
幻想卿の夏祭り 人間の里では毎年この時期になると夏祭りが行われる。 夜、村の大通りには沢山の屋台が並ぶ。 焼きそば、わたあめといった食べ物をだすお店、 射的や輪投げ、金魚すくいといった遊べるものを出すお店、 その日は、他の里や離れた場所からも多くの人が訪れ、里は大いに賑わう。 しかし今年の出し物は例年とは少し違うものだった。 幻想卿に訪れた小さな変化、ゆっくり饅頭が現れ人々の暮らしぶりは少し変わっていた。 「ゆっくりの踊り焼き」暖簾にそう書かれた屋台が立っている。 屋台には大きな鉄板が一枚、店主はお好み焼きを焼くようなヘラを持っている。 「へいらっしゃい!」 「おぢさん、ゆっくり焼きひとつちょうだい!」 「はい、よろこんでー!」 店主は屋台の裏手に置いてあった箱のふたを開け中から野球ボールほどのゆっくりれいむを一匹取り出す。 「ゆっ!?」 後頭部をつままれ持ち上げられたれいむは、何が起きたのか判らずに驚きの声を上げる。 「ゆっ!?ゆっ!?」 体を振りあたりを見回そうとするれいむ、良くは判らないが自分が空中に浮いていて背中を何かにつままれ動けない事だけは判った。 「は、はなしてね!れいむはゆっくりおかしをたべてるよ!!」 何かに向かって話しかける。 屋台の裏手に置いてあった箱には沢山のゆっくりとお菓子が入っていた。 つままれているれいむも、そのお菓子を食べてゆっくりしている所だった。 「おじさん、それどうするの?」 「それはね、こうするんだよ。」 れいむは希望通り開放されスーと下に落ちていく。 「ゆー、ありg・・・!!!」 ポトン、ジュウウウ・・・ 「あ”あ”あ”あ”!!!あ”ち”ぃ”ぃ”ぃ”い”い”よ”お”お”お”お”」 熱く熱せられた鉄板の上でれいむが踊る。 「ゆ”う”う”う”う”!!ち”ぬ”!ち”ん”し”ゃ”う”!!!」 熱さから逃れようと鉄板の上をピョンピョンはね回るれいむ、 とにかく鉄板の上から出ようと一直線に外を目指すがあと少しの所で鉄ベラが立ちふさがる。 「ゆ”き”ゅ”う”ぅ”ぅ”」 突然現れた壁に顔から突っ込んでしまうれいむ、そして鉄板の中央に向かって弾かれる。 ペシッ!ジュウジュウジュウ・・・ コロコロと転がってまだ焼けていない所が鉄板に振れるたびジュウジュウといい音がしてやけめが付いていく。 「や”め”て”よ”ぉ”お”お”!ゆ”っ”く”り”さ”せ”て”え”え”え”え”!!!」 鉄ベラに弾かれながらも必死に外を目指そうとするれいむ。 「ゆ”う”う”う”う”う”う”」 「や”へ”っ”!や”へ”て”え”え”え”え”え”え”」 「ち”に”た”い”く”な”い”の”!お”う”ち”か”え”し”て”え”え”え”!!」 れいむは抵抗する力を無くすと、熱に身を任せ鉄板の中央で短く鳴くだけになった。 「ゆ”ぅ”・・・ゆ”ぅ”・・・ゆ”ぅ”・・・ゆ”ぅ”・・・。」 「おじさん!おもしろいね!」 「そうだろう?ここからが仕上げだよ。」 そういうと店主は鉄ベラでれいむを平らに潰す様に押さえつける。 「ゆ”?ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”!!!」 ジュウーと焼ける音と連動するようれいむは声を挙げた。 押さえつけたまま良く焼いてから、慣れた手つきでひっくり返す。 ジュウー、表の面も同じように良く焼く。 「っ”っ”っ”っ”っ”っ”っ”っ”っ”っ”!!!」 れいむは声を上げられずに、ただブルブルと体を揺らすだけ。 十分に焼いたところでもう一度引っくり返す。 「はい、できあがり!」 「おー」 れいむは平べったく固まったまま焼き上がり、店主はそれをすくって紙に包む。 「おまちどうさま」 「ありがとう!おじさん!」 ゆっくり焼きを受け取った少年は、その食べ物をマジマジと見つめる。 れいむと目が合う。ゆっくりは中の餡を失わない限りそう簡単には死なない。 おいしく焼きあがった後も意識はハッキリとしていた。 「いただきまーす。あーん」 少年はゆっくり焼きを口に運んでいく。 「・・・や・・・や”へ”て”ぇ・・・。」 力なく命乞いするれいむ、しかし良く焼けた口は思い通りに動かない。 1噛み。 「あっ!熱っい!」 余りの熱さに思わず口を離す。れいむの噛まれた部分には歯型が付いていた。 「ははは、できたてほやほやだからね。すこし冷ましたほうがいいよ。」 そういわれると少年はフーフーとれいむに息を掛けて覚まそうとする。 「・・・ゆ?・・・たすけてくれるの?」 フーフーと息を掛ける。食べごろはそれが教えてくれる。 「・・・すずしくなってきたよ・・・つぎはおみずをもってきてね!」 アーン 「ゆ?」 パクリ 「ッ!!」 れいむの体に激痛がはしる。痛みのまま悲鳴をあげる。 しかし、れいむからは悲鳴はあがらず、かわりに少年の口が悲鳴を上げる。 「い”い”い”い”い”た”た”た”あ”あ”あ”あ”あ”あ”い”い”い”い”い”い”。」 一口で丸ごと持っていかれたれいむの口が少年の中で悲鳴をあげる。 「や”め”て”え”え”え”え”!か”ま”な”い”て”え”え”え”え”え”え”。」 「ハフハフ、おじさん口の中でなんかうごくよ!」 「おもしろいだろ?それを踊り食いって言うんだよ」 「あとは目玉の部分がおいしいんだよ。噛むと中から甘酸っぱいシロップが出てくるからね」 「おーい、山田ー!こっちこいよ!」 遠くで少年を呼ぶ声がする、少年は呼ばれたのを聞くと友達のもとに走っていった。 「あ!・・・しまったな。」 「御代をもらい忘れたな。あっはっはっは!」 その年の祭りも例年通り大いに盛り上がった。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/787.html
虐待分と言えるようなものはないかもしれません 虐待お兄さんと愛でお兄さんが出ますが虐待したり愛でたりすることはありません というかそもそも、どんなジャンルに分類されるかもわかりません ↓では、ドウゾ 「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」 畑仕事を終えた帰り道、聞きなれた声が森に唱和する。 ふと目を向ければ、そこにいるのは当然、ゆっくりだ。 れいむとまりさのつがいが二組、道行く途中で出会って挨拶を交わしたようである。 なんでもない日常的な風景だ。俺は無視して歩き出した。 ここで近所の虐待お兄さんなら「ヒャッハー!」と有無を言わさず捕獲にかかるのだろうが、俺はそんなことしない。 あんな饅頭虐めて何が楽しいんだろうかと思う。うるさいだけじゃないか。 かといって、俺はゆっくりを愛でる趣味もない。ゆっくりに関わるといえば、畑を荒らしたやつを駆除するときくらいなものだ。 なのだが、ちょっと今回は事情が違った。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆっくりしてるよ! れいむとまりさはどこからきたゆっくりなの?」 「このへんじゃみなおかおだね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆゆっ! ゆっくりしてるよ! だからどこからきたのかおしえてね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆぅ~! だからゆっくりしてるってば!」 「いいかげんにしてね! おはなしきいてね!」 何やら言い争いになっている。 どうも、新参のゆっくりに前からいた古参のゆっくりが怒っているようだが、どうしたんだ? ゆっくりにとって、「ゆっくりしていってね!」という言葉は挨拶以上のものを持つものだと聞いている。 人間風に言えば、スローガンというかポリシーというか信念というか。 ゆっくりは、ゆっくりできないこと、を何よりも嫌う。その顕れである言葉ではないのか? それを繰り返されるのがそんなに嫌なのだろうか。 とうとう、古参まりさは顔を真っ赤にして飛び跳ね始めた。 「ゆぅぅぅぅ!! れいむたちとはゆっくりできないよ!!」 「「ゆ?」」 そこで初めて、新参ゆっくり達は首、もとい頭を傾げた。 「「ゆっくりできないの?」」 「ゆっ……!! ゆっくりできないわけないよ!! まりさはゆっくりしてるよ!!」 「れいむもゆっくりしてるよ!!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「ゆゆぅぅぅぅぅ~!!!!」」 何故か悔しげに地団太(?)を踏む古参ゆっくり達。 ……ワケが分からん。 あの二匹はただ「ゆっくりしていってね!!」と言っているだけなのに、何をそんなに怒っているのか。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「うるざいよぉぉぉぉ!! れいむたちはもうどっかいってね!!」 「「ゆゆーっ!!」」 とうとう古参達が体当たりをし始めた。新参達は反撃するでもなくされるがままだ。 「「ゆっくりしていってよー!! ゆっくりー!!」」 「うるさいよ!! ゆっくりしてるよ!!」 「ゆっくりできないのはれいむたちのほうだよ!!」 攻撃が段々苛烈になっていく。 ……うーむ。 ゆっくり同士の喧嘩など、普段は珍しくもないのだが、なんだか今回は事情が違う気がする。 ちょっと興味が湧いてきたのだ。俺は事情を聞いてみることにした。 とりあえず声をかけてみよう。 「まぁちょっと待てお前ら」 「「「「ゆゆゆゆっ!!!!」」」」 びっくりした反応は全部一緒だった。 だがその後が違う。 「ゆゆっ! にんげんだよっ! にげるよれいむ!」 「ゆっくりできないよー!」 これは古参ゆっくり。 「ゆっ! おにいさんはゆっくりできるひと?」 「ゆっくりしていってね!」 これは新参ゆっくりだ。 古参は人間である俺を恐れているが、新参はそんな様子は微塵もない。よほど人里離れた場所からやってきたのだろうか。 「いや別に取って食いやしねーよ。お前達が喧嘩してたみたいだから、気になったんだ。一体全体、どうしたって言うんだい」 身を屈めて視線を低くしてやりながら、俺は訊いた。 口を開いたのは古参ゆっくりだった。 「ゆゆっ! あのこたちうるさいんだよ! ゆっくりしていってねってなんどもいうの!」 「れいむたちはゆっくりしてるのに!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 ゆっくり、という言葉に反応したのか、新参達が声を上げる。 「「だからうるさいよぉぉぉ!!」」 もう我慢できないのか激昂する古参達だが、その姿はどう見てもゆっくりしていない。 「お前ら、ゆっくりできてないじゃないか」 「ゆゆっ!? そんなことないよ」 「なんでそんなこというのぉぉぉ!?」 「だって、ほれ」 すぐさま突っかかってきた二匹を、新参ゆっくりのほうに見せてやる。 「「ゆ??」」 いきなり注目を浴びた二匹は、可愛らしく首をかしげるばかりで、どうして自分が見られているのか全然分かっていない様子だ。 知恵のついてない子供みたいな反応だが、それだけにむしろ泰然としたものまで感じさせる。 「ほら、あんなにゆっくりしてるだろ」 「「ゆううううううう……!?」」 反論が出ないあたり、この二匹も新参ゆっくりのゆっくりっぷりを感じ取ったのだろう。 「な? だからゆっくりできないのはお前らなんだって」 「ゆぅっ! ちがうよ! まりさはゆっくりできるゆっくりだよ!」 「そうだよ! あれはどんかんっていうんだよ! あんなにゆっくりしてちゃれみりゃにたべられちゃうよ!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「だからうるざいよぉぉぉぉぉ!!」」 できてねーよ。ゆっくりできてねーよ。 どうも、古参達は自分達こそがゆっくりできるゆっくりだと思っているのだが、しかしあの新参ゆっくりの真のゆっくりの前に、自信喪失寸前のようだ。 余裕のない態度がその表れであろう。 「まぁ、大体事情は分かった」 とりあえず俺の手に負えないってことは。 「とりあえず、俺の家にでも来るか。飯くらいは食わせてやる」 このまま放置しても良かったが、そうすると新参二匹がまた襲われてしまいそうだ。 ゆっくりなどどうでもいいことに変わりはないのだが、この二匹のことをもうちょっと知りたくなった。 あまりのゆっくりっぷりに癒されつつあったことも、まぁ認めよう。 「ゆ! ごはん! おにーさんのいえにつれてってね!」 「ゆっくりはやくね! ごはんー!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 古参二匹のふてぶてしさは正にゆっくりらしい。新参二匹も、どことなく声のトーンが上がっている。 俺は四匹を腕に抱きかかえると、家路についた。 その途中、談笑している虐待お兄さんと愛でお兄さんに遭遇する。 ……趣味が相反していそうな二人が、やたら仲が良さそうなのに驚く人もいるだろうが、別におかしなことではない。 他はどうだか知らないが、この愛でお兄さんは自分の飼っているゆっくりだけに愛情を注いでいるのだ。 それを偏愛だの差別だのという奴はまさかいないだろう。人間とて、飼い犬と野犬に注ぐ愛情には天と地ほどの差があろう。 犬とゆっくりの立場が置き換わっただけだ。だから愛でお兄さんも、実際はただのゆっくりを飼っているだけの人と言えよう。 もっとも、十数匹も飼って育てている時点で、既に普通ではないが。 「やぁ、どうも」 「これはこれは、とうとうあなたもこの道に……」 「違いますやりませんあんたと一緒にしないでください」 きめぇ丸もかくやという顔で擦り寄ってきた虐待お兄さんを遠ざける。 ちなみにこの虐待お兄さんは、何の変哲もない普通の虐待お兄さんである。 「そうですか。残念です。しかしそれならば何故ゆっくりを?」 「ええ、実はかくかくしかじか」 「まるまるうしうしということですね。なるほど」 日本語って便利だ。 「というわけで思わずこうして連れてきてしまったんですが、どうしたもんでしょうか。 このまま離してもこっちがこっちを虐めちゃいそうで、なんか後味悪いんですよね」 ふむふむとお兄さんズは頷きあったあと、「ならばこうしてみると良いでしょう」と提案してきた。 俺は二人に礼を述べると、再び家路についた。 十分も歩けば我が家だ。 「ただいまー!」 一人暮らしなので迎えてくれる人は誰もいないが、一応言う。 「「ゆっくりしていってね!!」」 今度先に反応したのは新参ゆっくりのほうだ。『おかえり』のニュアンスでも含んでいるのだろうか。 「ゆゆ! とってもきれいなおうちだよ!」 「ここをまりさたちのゆっくりぷれいすにしようね!」 当然、こちらは古参ゆっくりである。別に気にすることはない。これがゆっくりという生き物だ。 俺は足の泥を払って、四匹を空き部屋に放り込んだ。壊されるようなものも特にない。 「それじゃあゆっくり待ってろよ。今メシ作ってきてやるからな」 「ゆっくりはやくね! まりさはおなかがすいたよ!」 「おいしいものたべさせてね!」 「「ゆっくりつくっていってね!!」」 最早どちらがどちらだとわざわざ説明する必要もあるまい。 俺は台所で余り物の野菜と冷えたご飯を適当に炒めてやった。まあ、野生のゆっくりにはそこそこ美味い飯になるだろう。 大皿二つに分けて持っていってやると、そこでは案の定の光景が繰り広げられていた。 古参二匹は、そこら中を跳ね廻っている。キャッキャと実に楽しそうだ。 新参二匹はというと、縁側のほうで寄り添いあって日向ぼっこをしている。猫か老人を思い浮かべる。 「ほら、飯だぞ」 部屋の真ん中に皿を置いてやると、古参ゆっくり達は早速飛びついてきた。 「ガツガツガツガツッ!!」 「うめっ! めっちゃうっめ!」 よほど飢えているのか、凄まじい食いっぷりだ。 ものの数分ですっかり皿は空になってしまった。 「ゆぅ~ん、おなかいっぱいだよー!」 「おしかったよ! ありがとうおにいさん!」 そう感謝されては、こちらも少しは嬉しい気分になる。 「はいはい、おそまつさま。それにしてももうちょっとゆっくり味わって食えよ」 「ゆっ! だっておいしかったんだもん!」 「まぁそれならいいが……」 言いながら、もう一つの皿のほうに目を向ける。 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせ~」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせ~」 新参二匹は、実にゆっくりと食事を楽しんでいる。 「どうだ。美味いか」 「ゆっくりおいしいよ! ゆっくりたべるよ!」 「そうか、まぁゆっくり味わってくれ」 「ゆっくりあじわうよ! むーしゃ♪ むーしゃ♪」 見るものが幸せになってくるような、和やかな食事風景である。 ふと見れば今食事を終えたはずの二匹まで、また涎を垂らしているではないか。 「もっとゆっくり食えば良かったのにな」 「「ゆぅぅぅぅぅ~~~~~~~……!!」」 二匹は心底悔しそうであった。 食後も、二組の違いは明確に分かれていた。 古参は、食べてすぐだというのにまた遊び始めている。元気なことだ。まぁそのくらいじゃないと野生では生きていけんのかもしれん。 新参のほうは、部屋の隅のほうで寄り添いあって眠っている。牛になるぞ。 「ほら、次は水浴びさせてやる。こっち来い」 俺は古参を呼び寄せ、新参を起こしてやると、裏の水場に連れていった。 二つの大きめな桶に水を張り、それぞれの組を入れてやる。 「ゆっゆー! ぷしゅー♪ ぷしゅー♪」 「ゆーん! つべたいよれいむー! おかえしー♪」 古参は実に楽しそうに遊んでいる。 「ゆ~……ごくらく~」 「ゆっくりできるよー」 対してこちらは、まるで湯治場のジジイである。お前らほんとにゆっくりか……いやゆっくりだな。ゆっくりしてるし。 まるで子供と老人を見ているかのようである。 水遊びのあと、俺は元の部屋に戻り、四匹を前にして座った。 「どうだ。折角だし、今日は泊まっていくか」 四匹はいっせいに色めきたった。宿の心配はやはりあったのだろう。 「ゆっくりとまっていくよ!」 「ゆっくりしていくね! おにいさんもいっしょにゆっくりしてね!」 新参達は素直に喜びを表現している。 対して古参達は、 「とまっていくよ! でもそのこたちとはへやをべつにしてね!」 「そのこたちとはゆっくりできないよ! ゆっくりおねがいだよ!」 と言った。 「「ゆゆぅ!」」 新参達は傷ついたような顔をする。それはそうだろう。こいつらはただ一緒にゆっくりしたいだけなのだ。 「おいおい、酷いこと言うなよ。同じゆっくりだろ」 「ゆ! だってゆっくりゆっくりうるさいんだもん! そんなんじゃゆっくりできないよ!」 「ゆっくりすることが、お前達ゆっくりにとって一番大事なことだろ?」 「そうだけど……でもずっとゆっくりしてても、ごはんはとれないし、れみりゃからもにげられないよ!」 「ゆっくりするにも限度があるってことか?」 「ゆ! そのとおりだよ! ゆっくりしてばかりじゃゆっくりできないんだよ!」 日本語として何かおかしい気もするが、なるほど、実にもっともだ。 明日のゆっくりのために、今日のゆっくりを敢えて捨てる。捨てなければならない。悲しいけど、これ、現実なのよね。 ゆっくりだけでなく、人間にも通じる考え方であろう。 だが。 だがしかし、だ。 「それで、お前達は本当にゆっくりしていると言えるのか?」 「「ゆっ!?」」 俺は言った。目の前の二匹が、あまりにも哀れに思えたからだ。そしてそれが、自分や他の人間と重なったからかもしれない。 「ご飯を食べられればしあわせー♪だろうし、寝床にありつけばゆっくりできるだろう。 でもそれだけで、本当にゆっくりしているって言えるのか?」 「「どういうことぉぉぉぉ!?」」 「例えばの話、もしお前達が人間に捕まって、たくさんご飯をもらえたとするだろう。ゆっくりできるか!」 「ゆ! それはうれしいことだよ! ゆっくりできるよ!」 「目の前でたくさんの仲間達が、ご飯をもらえずにゆっくりしていても?」 「「ゆぅっ!?」」 その光景を想像したのだろう、二匹の顔が蒼白に染まった。 野生というだけあって、飢えの苦しみも知っているだろうから、まざまざと想像できたに違いない。 「掴まって狭い檻に入れられて、ゆっくりできるか? 確かにれみりゃからは襲われないし、安全だろうけど」 「ゆ、ゆぅ……」 「逆に、だ」 一拍置く。 「もし食べ物が足りなくても、もし安全な寝床がなくて……となりに大切な友達がいれば、ゆっくりできるんじゃないか?」 「「ゆゆっ……!!」」 二匹はお互いの顔を見合わせた。やはり、そんな経験があるのだろう。 苦しいときも支えあい、生き延びてきた、そんな経験が。 「そう、ゆっくりできるかどうかは、食べ物や寝床のあるなしじゃない。安全かどうかでもない。 一緒にゆっくりしたい誰かがいるか、そして何より『ゆっくりできている』と心から思えているか……そうなんじゃないか!?」 「「ゆ゛ーーーーーーーーー!!!!!!」」 ガァ────z______ン!!!という書き文字を頭から浮かべて、二匹は硬直した。 「お前達の今日の姿を見ていて、俺は思ったよ。 お前達はゆっくりできていなかった。それは、自然で生き抜くために、必要な在り方だっ。だから仕方ないとは思う。 だがな、見ろ」 俺は二匹を、新参ゆっくりのほうに向けてやる。 二匹はまたも注目を浴びて戸惑っていたが、やがて言った。 「「ゆっくりしていってね!!」」 まるで太陽のような明るい笑顔で。 「心にゆとりのある生き物……なんと素晴らしいことか! いつもどんなときも、自分がゆっくりできているからこそ、あの二匹はあんなことが言えるんだ。 自分がゆっくりするだけでなく、他の人もゆっくりさせてあげたいがためにな」 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆぅぅぅぅぅう!!!」 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 とうとう、二匹は泣き出してしまった。 新参達を見て、在りし日の姿を思い浮かべてしまったのだろう。 無邪気に遊べていた子供時代、何も心配することも恐れることもなかったあの懐かしき日々。 ああ、それを一体どこに置いてきてしまったのか……とか、そういうことを。 「ゆっ、ゆっくりしていってね!」 「なかないでね! いっしょにゆっくりしていってね!」 慌てたのは新参二匹だ。まるで自分が泣かせてしまったかのように思っているのだろう。 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっぐりざぜでえええええええ!!!」 しかし古参二匹はさらに泣き叫ぶばかりだ。ああ、そろそろうるさくなってきたぞ。 「いや、やってますな」 「やぁ、こんばんわ」 そんな折、虐待お兄さんと愛でお兄さんがやってきた。 「どうなりましたか? まぁ、これを見れば大体分かりますが」 「ええ、言ったとおりでしたよ」 愛でお兄さんと言葉を交わす。 お兄さんズは俺にこう言ったのだ。『どちらがゆっくりできているか観察し、そしてそのことをちゃんと言ってやればいい』。 その結果、古参は自分達がゆっくりできていなかったことを悟り、こうして泣き叫んでいる。 こうしてやれば、もはや古参達は新参達を虐めることはできまい。自ら敗北を認めてしまったのだから。 だがよく考えてみれば、根本的解決にはなっていない気がする。 新参ゆっくり達を野に放てば、どうせ他のゆっくりに虐められるに違いないからだ。 などと考えていると、虐待お兄さんが泣き叫んでいる二匹に近づいていった。ああ、また始まった。 「やぁ君達! ゆっくりしたいのかい?」 「ゆっぐりじだいでずぅぅぅぅぅぅ!!」 「ゆっくりさせてあげようか?」 「ゆっぐりざぜでぐだざいぃぃぃぃ!!」 虐待お兄さんはにんまりと笑う。 「そうかそうか! ではお兄さんの家でゆっくりさせてあげよう! まずはこの中に入りなさい」 と、二匹を麻袋の中に招き入れた。既に中で何かが蠢いていることについては突っ込むまい。 「ちょろいもんだぜ」 と唇の端をゆがめるお兄さんはどう見ても悪人である。 「ヒャア! 我慢できねぇ! 虐待だ!」 そしてそう言って、挨拶もなしに俺の家を飛び出していった。 「あーあ」 「行ってしまいましたね」 やれやれ、と愛でお兄さんと苦笑する。あの二匹は、もう永遠にゆっくりできないことであろう。死ぬまで。 「あれ? こっちは残していったんですね」 新参ゆっくりは、まるで旋風のように去っていった虐待お兄さんに目を丸くしている。 「ああ、彼はそのゆっくりには興味ないんですよ」 「というと?」 「真にゆっくりできているゆっくりは、虐めても良い反応を返しませんからね。レスポンスがないとつまらないと、そういうことでしょう」 「ふぅむ」 虐待お兄さんにも虐待できないものがあったとは。いや、というか、単にサドいだけか。 「「ゆゆっ!! ゆっくりしていってね!!」」 こちらの視線に気づいて、二匹がいつもの声を上げた。すると愛でお兄さんが近づき、二匹を抱き上げる。 「うん、ゆっくりしていくよ」 「「ゆっくりしていってね!!」」 優しく抱かれて、二匹とも嬉しそうである。 「飼うんですか?」 「ええ。このゆっくりは珍しいですからね。うちのゆっくりの、遊び相手にさせたいと思います」 珍しいねぇ。そんなに特殊なゆっくりなんだろうか。 「そんなに珍しいものなんですか? これ。見た目は普通のゆっくりと変わらないように見えますが」 「まぁ、ゆっくりであることに変わりはないんですが、ここまでゆっくりできているゆっくりとなると、中々いませんね。 今のゆっくりは、人や動物に襲われ続けて、警戒心が強くなってますから」 「つまり、昔はこのようなゆっくりが主流だったわけですか」 「ええ。ゆっくりたちは、生き残るために、ゆっくりすることを敢えて捨てて、今のようになったのです。世知辛い話ですね」 生き残るために、ゆっくりはゆっくりすることをやめた。 それでも『ゆっくりしていってね!』と言われて思わず立ち止まってしまうのは、種として誕生したときからの本能なのだろう。 そう考えると、ゆっくり達が少しだけかわいそうに思えてきた。 ゆっくりも、人間達と同じなのだ。生きるために働き、心のゆとりを喪っていく。 俺は目の前の二匹に、何か大切なことを教えられた気がした。 次の日から、俺はゆっくりに少しだけ優しくなった。 道端で声をかけられたら、ちゃんと『ゆっくりしていってね!』と返すようにしている。 ゆっくり達もまた、現代社会の犠牲者なのだ。それを無闇に蹴り飛ばすこともないだろう。そう思った。 ゆっくりにも、できるだけゆっくりしてもらいたいと、俺はほんの少し思うのだ。 ──ま。 だからって悪事を働いていい理由にはならないので、俺の畑を荒らしたやつは例外なくブチ殺すようにしているがね。 あとがき 虐待スレも、思えば遠くへ来たもんだ。 初期作品を読んでいたら、こんな話が出来上がっていました。 純粋なのも、ふてぶてしいのも、憎たらしいのもいいじゃない。ゆっくりだもの。 あと、いい加減自分に名前をつけることにしました。 好評を博して頂いている『焼き土下座』から名前を取り、これからは土下座衛門と名乗らせていただきます。 今後ともよろしくお願いいたします。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/856.html
※fuku2103の続き。人物オリジナル注意 前回のあらすじ ゆっくりできなくなっちゃった★ 第四話「憎しみの炎(笑)終幕」 少年の家の上空を三匹のうーパックが旋回していた。 中にはまりさが二匹、ぱちゅりーが一匹。 しばらくすると少年が庭に出てきた。 少年は箱の中からゆっくりれいむを取り出し、庭に放つ。 れいむの体は遠目から見てもボロボロだった。 皮は垂れ、リボンはあちこちがちぎれ、頭頂部には無数の釘が刺さり、底部は焼かれ、口には歯がなく、片目を失っていた。 うーパック内のぱちゅりー達はその惨状に涙した。 少年はムチのようなものを取り出し、れいむに叩きつける。 それを受けたれいむは必死に這って動いていた。無理矢理マラソンさせているのである。 その様子を見ていたゆっくり達はこう思った。 (れいむをあのにんげんからたすけよう!!!) (れいむをゆっくりさせてあげよう!!!) その決意を胸にうーパック達は森へ帰ろうと進路を向けた。が ただ一匹ぱちゅりーはもう少しだけ様子を見ようとしていた。 俺は昨日から朝早くにれいむを庭で無理矢理はいずり回らせている。 理由なくやらせているわけではない。でも今は秘密だ。 這うのをやめた瞬間俺はムチをれいむの体に走らせる。 「ゆぴゃっ!!!ひゃへへ!!!はひひはひゅうううううううう!!!」 歯がないのでわかりにくいが「やめて!!!はしりますうううううううう!!!」と言っているのだろう。 これくらいなら歯医者じゃなくともわかる。 「おにーちゃーん!」 隣のあの子の声だ。ラジオ体操の帰りなのだろう。 慌ててれいむを縁側の下に蹴っ飛ばす。 「おにーちゃん、なにしてるの?それなーに?」 やべ!ムチ持ったままだった… 「に…にしおかすみこのモノマネだよ!アーーーーーーーーーーーッ!!!」 「あーそっかあ!おにーちゃんじょうずー!」 我ながらナイスだ。 近所を通りかかった人達の視線が痛いが。 ~~~~~~~~さかのぼること二日前~~~~~~~~ まりさはズタボロの体を引きずり、ある場所へ向かっていた。 それは、独り立ちする前日、母まりさから教えられていた場所だった。 「いい!!!まりさ!!!もしもほんとうにゆっくりできないときがきたら、もりのどすまりさにあいにいくんだよ!!!」 「どすまりさ???」 「とってもとってもゆっくりしておおきいまりさだよ!!!どすまりさならどんなゆっくりでもゆっくりさせてくれるよ!!!」 「ゆ?ほんとう???」 「でもほんとうにゆっくりできないとおもったときだからね!!!ゆっくりできるときはたよっちゃだめだよ!!!」 「わかったよ!!!まりさはれいむとゆっくりするよ!!!」 まりさは母親のいいつけを守り、れいむとひたすらゆっくりした。 だがもう一つのいいつけを破り、人里に降りてしまった。 まりさとれいむはその人間をゆっくりさせてあげようとしたが、その人間はゆっくりできなかった。 狭い箱に閉じこめられ、家族は殺されおうちも失い、せっかく出来た子供達は皆殺しにされ、自分自身も酷い目に遭い、れいむはもっと酷い目に遭った上に人間に捕まった。 まりさはゆっくりできなくなった。 今まりさの中にあるのはれいむを助けたいこととあの人間に対する復讐心だけだった。 だからまりさはドスまりさに頼る道を選んだ。 まりさは自分がゆっくりできなくなったことをわかっていた。 だがドスまりさはどんなゆっくりでもゆっくりさせてくれる。その母親の言葉だけを信じ森を駆けるのであった。 しかし痛んだ体についに限界が訪れ、まりさは、森のど真ん中で気を失った。 「ゆ…………」 「ゆっ!!!まりさ!!!きがついたんだね!!!」 まりさが目を覚ますと、そこは見知らぬ洞窟の中だった。 目の前には、心配そうな、だが独特のふてぶてしい表情のれいむがそこにいた。 「れ、れいむっ!!!れいむううううう!!!」 「ゆっ!!!まりさ!!!まだうごいちゃだめだよ!!!ゆっくりおちついてね!!!」 まりさはれいむの姿を見るや飛びつこうとするが制止される。 やがて落ち着きを取り戻し、目の前のれいむが捕まったれいむと別ゆっくりであることに気付く。 「ゆ…れいむ、ここはどこなの…?」 「ここはどすまりさのかくれがだよ!!!まりさはもりのなかでたおれてたかられいむがはこんできたんだよ!!!」 「どすまりさの…」 まりさは倒れた時点で既にドスまりさのテリトリーに入っていたのだ。 そこで食料を集めていたれいむが偶然見つけ、今に至る。 「まりさ、ひどいけがしてるからいまはうごかないでね!!!でもみっかもすればもとどおりうごけるようになるってぱちぇがいってたからね!!! いまはゆっくりがまんして、ゆっくりげんきになってね!!!」 「うん…ゆっくりりかいしたよ…」 本音を言えばまりさはすぐにでも行動を起こしたかった。 だが今の痛みきった体のままでは復讐などとてもできたものではない。 まりさは素直にれいむの言う通り、自身の回復を待つことにした。 人間は「れいむは生かしておく」と言っていたし、何よりこのれいむにはあのれいむの面影があったからだ。 …この期に及んで人間の言うことを信じるあたりやはり餡子脳と言ったところか。 「ゆ…ううううぅぅうぅぅう……」 「いだいよぉおおおぉおぉおぉぉ………」 「ぐるじいよおおぉぉぉぉぉおぉお……」 「むぎゅううぅぅううぅぅうぅぅぅ………」 「ごのままじんじゃうんだね、わがるよ………」 「そんなこといっちゃだめだよ!!!きっとたすかるよ!!!ゆっくりがんばってね!!!」 よく周りを見渡してみると、そこには自分と同じ、もしくはそれ以上の大怪我を負ったゆっくりたちが呻き声を上げており、 それを必死に看護する元気なゆっくりたちの姿があった。 さながら戦時病棟のようである。 「むきゅ……も……だ…め…」 「ぱちぇ!!!ゆっくりがんばってね!!!がんばればきっとゆっくりできるよ!!!」 「ま……りさ……ごめ……むきゅー」 「ぱちぇえ゛え゛え゛ええ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇ゛ぇ゛え゛えぇ゛え゛ぇえ゛え!!!」 体の半分近くを失っていたぱちゅりーが今息を引き取った。 ぱちゅりーにしてはよく持った方であろう。それはひとえにゆっくりたちの必死の看護の賜物である。 「ゆ……れいむ……みんなどうしたの?なんだかゆっくりできてないよ……」 「あのみんなはね、にんげんにひどいめにあわされたかわいそうなゆっくりたちだよ!!!ここはそんなゆっくりをゆっくりさせてあげるためのへやなんだよ!!!」 まりさは激怒し、悲しんだ。 自分達と同じ境遇の持ち主がこんなにたくさんいたとは。やはり人間は忌むべき存在だと。 「にんげんはほんとにゆっくりできないいきものだね!!!みんなしねばいいとおもうよ!!!」 「ゆっ!!!まりさ!!!そんなこといっちゃだめだよ!!!」 「どうして!!!みんなにんげんのせいでゆっくりできないんだよ!!!ゆっくりできないにんげんはみんなころせばいいんだよ!!!」 「どう゛じでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛お゛お゛お゛ぉ゛お゛ぉぉ゛ぉ゛お゛おお゛!!!」 まりさとれいむはお互いの言うことが理解できなかった。 何故れいむはそこまで人間をかばうのか。 何故まりさはそこまで人間を殺そうとするのか。 全く理解できなかった。 二匹はお互いの事情を説明した。 まりさは自分たちが人間に受けた酷い仕打ちのこと。 れいむはゆっくりたちが人間に悪さをしたこと、その結果ゆっくりが迫害されたこと。 その他もろもろの事情をお互いに打ち明けた。 「だからしかたがないんだよ!!!これいじょうのひがいをださないためにもにんげんにてをだしちゃだめだよ!!! もしにんげんをころしちゃったりしたら、このさとがゆっくりできないってどすがいってたもん!!!」 「なにいってるの!!!にんげんはゆっくりできないやつなんだよ!!!おもいしらせてやらなくちゃだめなんだよ!!! しかえしされるのがいやならにんげんをみんなころしちゃえばいいんだよ!!!」 もはや「あの」まりさと同一人物とは思えぬ憎しみに満ちた発言。 平和的解決を望むれいむ達ドスサイドと人間達への制裁を望むまりさ。 まりさの不満が爆発し、れいむにこう言い放った。 「じゃあそのどすまりさにあわせてよ!!!したっぱれいむじゃはなしにならないよ!!! どすまりさににんげんがどれほどおそろしいかおしえればきっとわかってくれるよ!!!」 「ゆううぅうぅ……わかったよ!!!じゃあどすまりさにあわせてあげるよ!!! でもどすはきっとみんながゆっくりできないことにさんせいなんてしてくれないよ!!!」 簡単に折れたれいむはボロボロのまりさを丁重にドスまりさの間へと案内した。 ドスまりさは基本的にオープンなので、誰でも謁見できるのだ。 『ゆっ!!!まりさ!!!きがついたんだね!!!よかったね!!!これからはまりさのさとでゆっくりしていってね!!!』 「ゆ…ゆ…ゆっ……!!!」 まりさはドスまりさの大きさにただただ驚愕するしかなかった。あの人間より遙かに大きい。これなら人間に勝てるに違いない。 そう餡子が回ったまりさはすぐさまドスまりさに自分の事情を話した。 『ゆううう…!!!それはつらいめにあったんだね…!!!かわいそうに…!!!』 それを聞いたドスまりさは自分のことのように悲しみ、滝のような涙を流した。 「まりさはれいむをとりかえしてにんげんをころしてやりたいんだよ!!!ゆっくりちからをかしてね!!!」 『な゛に゛い゛っでる゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛おお゛ぉ゛ぉお゛ぉぉ゛ぉお゛おお゛ぉ゛ぉぉお゛お゛おお゛!!!』 ドスまりさは絶叫した。 このまりさは何を言っているのだ。「人間を殺す」? そんなことをすれば他の人間によって報復を受け、平和にゆっくりしていたゆっくりは皆殺しにされてしまうだろう。 ゆっくりたちが真にゆっくりできることを望むドスまりさにはそんな考えは理解できなかった。 『にんげんをころしちゃったらゆっくりできないよおおおおお!!!ゆっくりりかいしてね!!!』 「だったらしかえしされないようににんげんをみんなころせばいいんだよ!!!そっちこそゆっくりりかいしてね!!!」 「むきゅー。どす。このまりさはきっとくわしいじじょうをしらないのよ。ゆっくりせつめいしてあげればわかってくれるわ」 ドスまりさの脇からまりさより一回り程大きいぱちゅりーが呟いた。 このぱちゅりーは里の知恵袋としてドスまりさの片腕を担っている。 『そ、そうだね……まりさ、おねがいだからゆっくりきいてね!!!まりさたちがゆっくりできるためのだいじなおはなしだからね!!!』 「ゆ…わかったよ!!!ゆっくりきいてあげるね!!!でもまりさのかんがえはかわらないよ!!!」 「自分達がゆっくりするため」の話なのでまりさは仕方なく聞いてやることにした。 ドスまりさは自分達の事情を話した。 まずは、自身の強さだ。ドスまりさの戦闘力は人間よりも上である。まともにやり合えば人間だろうと簡単に殺してしまえる。 それを聞いたまりさは歓喜した。それならあの人間を殺すことができると。 その後、ドスまりさは何故それほどの力を持ちながら人間に手を出さないのかを説明した。 先程も言ったことだが、人間を殺せば当然その他の人間は黙っていない。 集団でこの一帯のゆっくりを皆殺しにするだろう。 まりさは人間に勝てるなら返り討ちにすればいいと言ったが 集団でかかられればドスと言えど勝ち目がないことを教えた。 以前に集団で襲いかかられ滅ぼされたドスの里があるということも教えた。このドスの里には、その里の生き残りのゆっくりが何匹かいるのだ。 その本人達の話も聞き、まりさは理解したようだった。 一通り話し終え、まりさは言葉を発した。 「ゆっくりりかいしたよ、でもまりさはれいむをたすけたいよ、あのにんげんもころしてやりたいよ。 それさえできればまりさはゆっくりできるよ」 『ゆううぅぅぅうぅぅうううぅ………』 まりさはドスまりさの話が理解できなかったわけではない。ただれいむを助けたい、あの人間を殺してやりたいだけなのだ。 それだけは絶対に譲れなかった。 「むきゅー。どす。ならばようすをみてみましょう。そのにんげんがほんとうにせいさいすべきかどうかたしかめるの。 そのあとどうするかきめればいいわ。それにもしかしたらすきをみてれいむをたすけてあげられるかもしれない」 悩むドスに助言を与えるぱちゅりー。この「制裁」とは「殺す」という意味が含まれているが 野蛮な言葉を嫌うぱちゅりーは「殺す」という単語を使いたくなかった。 『ゆ…!!!そうだね!!! まりさ!!!よくきいてね!!!いまからそのにんげんのおうちのちかくに「てーさつぶたい」をおくるよ!!! そのこたちにようすをみにいってもらうよ!!!そのにんげんをその…ころすかどうかはそのあときめてね!!! もしかしたられいむもたすけてあげられるかもしれないよ!!!』 「ゆ……!ほんとう!!!ゆっくりおねがいするよ!!!」 まりさはその意見に賛成した。「様子を見る」ことには不満があったが「れいむが助かるかもしれない」ことを聞き、期待することにした。 まりさはその人間と家の特徴を覚えている限り教えた。 それを聞いたドスとぱちゅりーは偵察部隊…別のぱちゅりーとまりさ二匹を呼び、すぐに発つよう伝えた。 移動には雇われうーパックに報酬を払う必要があったが、まりさに「うーパックが五匹殺された」ことを聞かされ、タダで乗せてくれることになった。 そして現在に至るのである。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (ここででていってもゆっくりところされちゃう!!!) 隙を見てれいむを助けだそうとしたぱちゅりー達だが、常に近くにはあの少年がいる。 隙など見あたらなかった。 「むきゅー。でもだいたいのじじょうははあくできたわ。どすのもとにかえりましょう」 「「「うー!!!うー!!!」」」 「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」 他のゆっくりに帰還する旨を伝え、再び庭を見下ろすぱちゅりー。 その時だった。 「むきゅ!?」 庭で少女と話していた少年と目が合った……気がした。 (ど、どうして!?……いいえ、きっとぐうぜんだわ。むきゅー) 自問自答したぱちゅりーはうーパックに指示し、森へと帰って行った。 気づかれないように距離と高度にはちゃんと気を配っている。気づかれるはずがない…そう思った。 「おにーちゃん、どうしたの?おそらになにかあるの?」 「ううん。なんでもないよ。そろそろおうちに帰んな。姉ちゃんが朝飯用意して待ってるぞ」 「そうだね。じゃあまたね、おにーちゃん」 「……………………」 ドスの隠れ家に帰ったぱちゅりー達は少年の家で見たことを全て話した。 まりさはれいむを助けられなかったことに落胆したものの、れいむがまだ生きていたことに安堵した。 それを聞いたドスまりさは考え事をしながら、こう言った。 『ぱちゅりー、そのにんげんの「にんそうがき」をかいてね!!!そのにんげんがなにものかかくにんしたいよ!!!』 「むきゅー。わかりましたわ、どす」 ドスまりさは偵察ぱちゅりーに「人相書き」を描くように指示した。 事情を聞いて、それほどの酷い仕打ちをした人間が何者なのか確かめたかったからだ。それには理由がある。 「むきゅー。かけましたわ」 『どう?ぱちぇ』 「ぱちぇ」とは片腕のぱちゅりーのことである。「ぱちぇ」は最も親しいぱちゅりーに対する呼称なのだ。 「むきゅううううううん!!!まちがいないわ!!!「ひゆっくリスト」なんばー6!!!「ありすごろし」といっちしてるわ!!!」 「「「な、なんだってー!!!」」」 非ゆっくリスト― それは呼んで字の如く「ゆっくりできなくなる」人間のいわゆるブラックリストである。 人相書きはどいつもこいつも子供のラクガキ以下で人間には判別不可能だが、ゆっくりにはわかるようだ。 ドスまりさの里ではゆっくりがゆっくりできるために気を付けるべきの存在のリストを作る傾向がある。 非ゆっくリストのナンバーは危険度により序列されており、少年は6番目に危ない人間として認識されている。 「ありす殺し」というのは少年がゆっくりありすを中心に虐殺を行っていることから名付けられた。 ある時は道ばたでれいむとすっきりしていたありすを殺し、ついでにれいむも殺した。 ある時は集団でとかいは(笑)を気取っていたありすを虐待し、見せ物のごとく磔にされた。 ある時はまりさ一家を集団レイプしていたありすを焼き殺し、とばっちりを受けまりさ一家も全滅した。 ある時はぱちゅりーと本気で愛し合っていたありすをぱちゅりーの目の前でむごたらしく殺した。ぱちゅりーはむきゅむきゅうるさいので殺した。 気がついた時にはこの町一帯からありすが消えていた。 故に少年は「ありす殺し」として恐れられている。 もっと恐ろしいのはこの町にはその少年を上回る虐待派がまだ五人もいることである。 『ゆううぅうぅうう…やっぱり……』 ドスまりさは「そんな気がしていた」といった感じで溜息をついた。 「やっぱりあいつはゆっくりできないんだよ!!!ころしてやろうよ!!!」 ドスまりさはこれまで、「非ゆっくリスト」に乗っている危険人物達に自ら「交渉」していた。 「ゆっくりをゆっくりさせてあげてほしい。わるさをしたゆっくりはどうしてもいい。でもゆっくりしてるだけのゆっくりはゆっくりさせてあげてね」 そう言うと人間たちはみな首を縦に振った。目の前の巨大なドスまりさが怖かったからだ。 だが、リストの1番から10番までの人間たちは虐待派としての「格」が違った。 何人かと交渉してみたが全て破られてしまった。だからトップ10の人間には特に関わらないように注意していた。 ちなみにトップ10の中にはドスまりさを恐れている者も少なくはない。だからあちらからドスの里に直接手を出してくることはなかった。 ドスまりさは考えていた。「まりさとれいむをゆっくりさせてあげる方法」を。 そして、長い思考の後、一つの答えを導き出した。 『…わかったよ!!!そのにんげんに「せいさい」をくわえることをきょかするよ!!! でもあいてはとっぷ10だからね!!!ゆっくりさくせんをたててからじっこうしようね!!! ほかのにんげんにばれないようにきをつけることもかんがえようね!!!』 「ゆっくりりかいしてくれてありがとう!!!そのときにそなえてゆっくりからだをなおすね!!!」 そう言ってまりさは病室へと戻っていった。 「…いいの?どす。にんげんにたたかいをいどむなんて。いままでにきずいてきたすべてがパーになるかもしれないのよ」 『しかたないよ!!!そうでもしないとまりさとれいむがゆっくりできないよ!!!まりさはゆっくりみんなにゆっくりしてほしいだけだよ!!! だいじょうぶ!!!ばれないようにころせばやりかえされないよ!!!うまくいけばみんなもっとゆっくりできるよ!!!』 「むきゅー。そうね」 ドスまりさが人間に手を出さないのは「ゆっくりがゆっくりできなくなるから」だ。 その為に人間達と安定した関係を築いてきた。 真にゆっくりしたいゆっくりは人間に近づかず、悪さをするゆっくりは制裁を受けた。悪いゆっくりはドスから見ればゆっくりできていない。殺されても仕方がないのだ。 だがあのまりさは「悪いゆっくり」ではない。真にゆっくりした結果人間に酷い仕打ちを受けた可哀想なゆっくりだった。 ドスまりさはまりさをゆっくりさせてあげたかった。その為に人間を殺すことを選んだ。 反対する者はいなかった。みな同じ気持ちだったから。 (れいむをあのにんげんからたすけよう!!!) (まりさとれいむをゆっくりさせてあげよう!!!) ドスの里数千匹のゆっくりの心が今、一つになった。 ゆっくりたちはたった二匹の仲間をゆっくりさせてあげたい一心で、命を賭けて戦う決意をした。 戦いの準備をするために、偵察部隊は三日かけて少年を監視し、調査し続けた。 その甲斐あってか、少年は一日に一回決まった時間に人気の無い草原でれいむを枕にして昼寝をしていることがわかった。 その隙にれいむを取り返そうと考えていたが、たった六匹(うーパック含む)で向かっていってもすぐに察知され全滅させられてしまう恐れがあった。 その話を聞いたドスまりさと片腕ぱちゅりーら首脳陣は次の日の同じ時間に作戦を決行することを告げた。 その時ならば他の人間に見つからないし、何より少年が一番油断している時だと考えたからだ。 決行前夜、片腕ぱちゅりーから当日の作戦をゆっくりしっかり伝えられた。 それを全てゆっくり理解した里のゆっくりたちはいつもより多くの食料を用意し晩餐会を開いた。 明日の活力をつけるためと、あまりにも完璧すぎるぱちゅりーの作戦を聞いて勝利を確信し、気の早い祝勝会といったところだ。 「ねえ、おにーちゃん」 「何だい」 俺は隣の家の縁側で女の子と一緒にこの子の姉の切ったスイカを食べている。 お呼ばれされたから来たまでだ。そうじゃなかったらわざわざ夜に外に出たりしない。 「どうしてゆっくりはわるいことするのかな」 「いきなりどうしたんだよ。そんなこと聞いて」 「おねーちゃんとおかいものにいったときにみたんだよ。おさかなくわえたゆっくりがさかなやさんとおいかけっこしてたの」 「それはひどい」 「それだけじゃないよ。たくさんのゆっくりがやおやさんのおやさいみんなたべちゃったの」 「最低だな」 「まえのちぇんだってそうだよ。おうちにはいってきたゆっくりのせいでおほしさまになっちゃった」 …この子が今飼っているちぇんは二代目なのだ。 前のちぇんは留守中に進入した「ゆっくりずむ」なれいむとまりさに殺された。 その二匹は俺が裏でこれ以上ない程の苦しみを与え殺してやった。 そしてちぇんを失ったこの子の悲しみを紛らわすため当時虐待用として飼っていたちぇんを修理し、譲ってあげた。 ちなみにそのちぇんは中のチョコクリームを少し入れ替えたため、俺のことは忘れてしまっている。 「だからね、いつもおもうの。なんでゆっくりはわるいことするのかなって」 「ちぇんはどうなんだ?」 「ちぇんはいいこだよ」 今のも前のも元々ブリーダーに育てられていたヤツだ。当然だろう。 …だが、そうでないゆっくりはどうだ。 この子の大事なちぇんを殺し、他人の家に上がり込み食い物を要求、店の食べ物は平気で盗む、人間にゆっくりを強要する、騒音を出す、ウザい、キモい、ムカつく。 どう考えても害悪でしかない。世の中にはそれらを愛でる愛護団体などというものも存在する。はっきり言って頭がおかしいとしか思えない。 「それはゆっくりが自分のことしか考えてないからだよ」 「?」 「人間だってそうさ。自分のことしか考えてない奴は嫌われるんだ。他人に好かれたかったら、相手のことを理解してあげなくちゃいけない ゆっくりはそんな考えができないから、人間から見て悪いことをするんだよ。しかもそれを悪いこととは思っちゃいないんだ」 「でも、ちぇんみたいないいこもいるよ」 「それは人間が必死に教え込んだからだよ。それでもいい子にならないゆっくりの方がずっと多いんだ」 「そう、なんだ…」 「君はゆっくりが好きなんだね」 「いいこはすきだよ。でもわるいこはきらい。ちぇんをいじめたもん」 「そうだね、みんないい子だったらいいのにね」 本当にそうだよな…性格と、あのツラと、言葉遣いと、デカい声がなけりゃな… ゆっくりはゆっくりすることを求める饅頭だ。 他人がゆっくりできれば自分もゆっくりできる。そう考えている。 だから他人を「ゆっくりさせてあげる」のだ。 そう、全ては「自分がゆっくりするため」。 ゆっくり同士ならそれで「しあわせ~♪」になるが、人間からすれば煩わしいだけである。 故にゆっくりと人間は決して相容れない存在なのである 続く このSSに感想を付ける 選択肢 投票 しあわせー! (35) それなりー (0) つぎにきたいするよ! (1) 名前 コメント すべてのコメントを見る 本家の霊夢と霧雨魔理沙の性格を組み込んだらもっとマシになるよ。 -- (名無し) 2016-11-24 22 22 56
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/20.html
ゆっくりとゆっくりする私。 ある日、私はゆっくりを拾った。 別になんて事無い、ありふれたゆっくりれいむだ。 雨の日だったなんてことも無く、全身怪我だらけなんてことも無く。 ただ、まだ小さいのに何故か親の姿は無く、一匹だけ。 それだけが私の気になったのだ。 私だって言いたく無いが珍しくも寂しい女の一人暮らし。 親は前に死んだが、働かねば生きてはいけない。 親の残した畑があるだけマシかもしれないが、それでも一人身は自由の反面、色々辛い事も寂しい事もある。 だから、私は同居人が欲しかったのかもしれない。 ある日、私はゆっくりを拾った。 「ゅー!」 私の手のひらよりちょっと小さいくらい、まさに手乗りゆっくり。 大きな瞳と小さな泣き声。 おお、こりゃかわいい。 試しに右の手のひらから左の手のひらへ。 今度は左から右へ。 また逆へ。 ころころころころ。ころころころころ。 …………あぁ、至福! 「ゅー!」 あ、顔真っ赤にしてる。涙目だ。これで怒ってるつもりなのか…… ……正直こりゃたまらん!!! おっといかん。 遊ぶのも良いが、まずは何か食事を与えてやらねば。 でも何食べるんだろ。 雑食だって言ってたよなぁ。 とりあえずおせんべを砕いて、水につけてからあげてみる。 あむ。 「おいちー!」 ふああああ食べてる食べてるいやああああああ口が小さい動きが早いわうおおおおおおおたまんねぇええええええ 「もっとー!」 うん、もっと。私ももっと見ていたいわ。 さっきよりはちょっと少なめにしよう。 あむあむあむあむあむあむあむあむ ふあーふあーふあーなんだこの癒し。 待つ事しばし。 私が見ている前で、ゆっくりはおせんべを食べ終えた。 あらま頬に付いてるわ。ふきふき。 はぁ、かわいかった。これだけでなんかもう疲れが取れるわホント。 さて、次はどうするか。寝床も作らねばならないだろうけど、まずはその前に。 食べ終わってゆっくりしている所をえいやと捕獲。 「はーい、逃げないでね~大丈夫でちゅよ~」 「ゅー! やめちぇ~!!」 ゆっくりを乗せた手の上、その指の間に必死で潜り込もうとする。 まずいなんだこの生き物冗談じゃない私が先に悶え死んでしまう! とは言うものの、見つけたときから気になっていた事があったので私が死ぬ前にそっちをなんとかしてやらねば。 名前の元からすれば多分?女の子だろうからね。 ゆっくりと言えども汚れてちゃいけない。 しかし。う~ん。饅頭だって言うし、お風呂はいかんよなぁ。 と言う訳で、ちょっと濡らしたふきんを用意。 優しく軽く拭いてやる。 最初は何をされるかと怖がっていたのか手の上を逃げ回って(と思う。実際は左右にもぞもぞぷりぷり揺れてただけだ)いたが、しばらくするとされるがままになっていた。 顔もそっと……うあー思いっきり目つむってる。眉間の小さい皺までかわいいなぁこんちくしょう。 リボンも拭いてやって、よし終了。 ゆっくり床の上に置いてやれば、溢れんばかりの笑顔でぴょんと跳ねて、 「すっきりー!」 私の方がすっきりだ。何か心の汚れが落ちていくようですよありがとうゆっくりを生み出した神様。 さぁ、あとは寝床探しだ。 ちんまいから探している間に居なくなったりされると困る。 とりあえずひっくり返したどんぶりの下に。 ああすぐ戻ってくるからそんな涙目にならないでねちょっと我慢してね。 小さいからお菓子の箱とかでもいいのかなぁ。 饅頭をお菓子の箱に入れるってなんか危ないよなぁ。ま、いいか。 うーん、どれにしよう。可愛いのが良いよなぁ、やっぱり。 選ぶ事しばし。これだと決めて部屋に戻ってどんぶりを開けると。 「あやややややややややややややややややや」 寝てた。 ……うぉー。なんかもうどうでも良くなってきたぞ。 とりあえず起こさないように箱に入れて、上からタオルをかけてやる。 よし、今日の空を見る限り、明日は雨っぽいから畑に出なくても良いだろう。 畑仕事は休んで上白沢先生に育て方を聞いてみるか。 あと名前だ。……いるのかなぁ。 みんなれいむはれいむ、まりさはまりさとかしか呼んでないけど、こいつらもそれで認識してるみたいだしなぁ。 それに、それに………… 枕元に置いた箱を見ながらいろんな事を考えていたら、私にも眠気が襲ってきた。 私はそっと部屋の明かりを消す。 おやすみ、ゆっくり。 まさにゆっくりですね。乙でした! -- 名無しさん (2009-03-11 07 51 47) 身悶えせんばかりの可愛らしさですね!♪ -- 名無しさん (2009-03-12 10 49 38) ゆっくちできたよ! -- 名無しさん (2010-11-27 13 19 29) あらかわいい -- 名無しさん (2012-07-25 18 36 47) おもちかえりぃ! -- 名無しさん (2012-08-10 22 29 19) サンジ野気持ちがわかった・・・ -- 名無しさん (2012-12-13 06 48 27) 文章だけで伝わるゆっくりの可愛さ!愛で派でよかったと思う俺がいる -- 名無しさん (2017-03-06 23 11 49) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1433.html
※他作者様の設定を使わせていただいております。 ※下品な表現がありますので、それが嫌な方は今すぐに回れ右してください。そう、今すぐに、です。 ゆちゅりーのゆっくりアイス 暑い。 とにかく暑い。 今年の夏は例年以上に暑く、ここ毎日最高気温を更新していた。 そんな中、俺は冷房を28度に設定した部屋の中で、ゆっくりと「ゆっくり宇治金時」を食していた。 うん、今流行のクールビズってやつだね。電気代も高くなっているそうだし、一人身はちょっとお財布の紐を硬くしておきたいのさ。 といっても、我が家の電気は全て「ゆっくり回し車」で発電しているから問題ナッシングネスなんだけどね。苦労するのはゆっくりだけだし。 「んまーい♪」 絶望と恐怖で凍りついた表情を張り付かせたままの、ソフトボールくらいの大きさのゆっくりれいむの頭頂部を外し、しゃくしゃくと気持ちの よい音をさせながら、凍った抹茶餡を崩して口に運ぶ。さらりとした甘さの抹茶餡が溶けながらのどを滑り落ちていく。 ゆっくりれいむはまだ息があるのか、「ゆ”…ゆ”…」とか細い声を上げながら、命の源が少しずつ少しずつ削り取られていく恐怖におびえていた。 「流石自家養殖の新鮮なゆっくりれいむは味が違うねー」 このゆっくりれいむは、我が家および公営スキー場の雑草処理係の内の1匹として、つい1週間前までは元気に飛び跳ねていたのである。 雑草だけを純粋に食べるよう調教されたゆっくりの餡子は、通常の粒餡から、小豆を残したまま濃い緑色をした抹茶餡へと変化する。 餌によってゆっくりの中身が変化することは知られているが、まだまだ未解明な部分が多かった。ある地方で捕獲されたドス・まりさの中身は、 濃い黄金色をした、濃厚な栗餡に変化していたという報告が出ているし、とある家庭で飼われていたゆっくりれいむの中身は、鮮やかな紫色を した紫芋餡へと変化していたという。 もともと謎の多いナマモノであるゆっくり。突然出現したこれが、人家や農作物に被害をもたらし害獣認定されてから3年。 その3年で、さまざまな研究が行われて、ゆっくりの生態などが解明されてきたが、まだ未知の領域が残っているのである。 うん、ロマンに満ち溢れているナマモノだね、ゆっくり。おいしいしね。ウザイけど。 「ゆっくりれいむとゆっくりまりさは餡子が変化するんだけど…そのほかの通常種はどうなんだろ」 すっかり中身のなくなったゆっくりれいむの皮を飲み込むと、俺はそう呟いた。 「たとえば、ゆっくりぱちゅり。あれの中身は生クリームなんだけど…他のに変化するのかな。たとえばイチゴ味とか。よし、試してみるか」 そう思い立ったら吉日。 俺は部屋を飛び出し、炎天下の町へと繰り出していった。 1時間後。 いろいろと買い込んできた俺は、慣れた手つきでゆっくり専用拷問部屋の中に機材をセットした。 今回の犠牲者…もとい、犠牲ゆっくりになっていただくのは、つい昨日捕獲されたばかりの野生のゆっくりぱちゅり3匹。 大きさはちょうどハンドボールくらいで、成体になる1歩手前だろうか。 加工所で購入してきた、3匹のゆっくりぱちゅり、通称ゆちゅりーをわが社の新商品「ちょうきょうくんG」に、起こさないように顔をを上向きにして入れる。 このクソ暑い中でも目を覚まさないなんて、加工所の仮死状態維持システムは凄いね。 そして、DVDプレイヤーから伸びた音声出力コードをドルビーサラウンド5.1チャンネルアンプを介してから、ちょうきょうくんG下部にある音声入力端子につなげる。 「うし、これで準備完了ーっと。でわでわ逝きますかー」 微妙なニュアンスを含んだ一言を呟き、俺は魔法の言葉を大声で叫ぶ。 それは、愛しのお姫様を目覚めさせる魔法の言葉。それは、悲劇のヒロインを絶望のどん底に陥れる呪いの魔法。 「ゆっくりしていってね!!!!!!!」 「「「ゆっ…ゆっくりしちぇいってね!」」」 そういうと、ほぼ同時に3びきのゆちゅりーが目を覚まして言った。 「おじさん、ここはぱちゅりたちのゆっくりぷれいすにするわ」 「わかったらゆっくりでていってね」 「ごはんとごほんをゆっくりとはやくよういしてね」 うんテンプレどおりっ!ははは、何も知らないって無知だね。といっても、生クリーム脳じゃ理解できないんだろうけど。 知能が高いと言われているゆちゅりー。でも、それは他のゆっくりと比べてであって、やっぱりゆっくりでした!ごめんなさいっ! 「透明な箱に入って何言ってるのかなベイビー?ここはお兄さんの家で、君たちはこれからお兄さんの実験につきあってもらうんだよ。ユーアンダスタン?」 これから始まるであろう惨劇を想像してぞくぞくする俺。やべぇ、少しおっきしてきた。 俺、もしかしてドSのHENTAIさん?いや、違うっ!紳士という名のッッッHENTAIなのだッッッッッ!!! 「なにいってるのおじさん?ばかなの?しぬの?」 「はやくごはんとごほんもってきてよね」 「さっさとゆっくりでていってね。ここはゆちゅりーのゆっくりぷれいすにするんだから」 人を小ばかにしたようなこの言い草。自分が生態系の最底辺に位置する完全被捕食生物であることを理解していないみたいだね! よし、ではこれからそれを思う存分思い知らせてあげよう! 「うん、また、なんだ。この映像は僕のおごりさ。でも、これを見たときに、君たちは確かなゆっくりを感じることができると思う」 ニコニコしながらそういいつつ、俺は傍らにあった液晶ディスプレイをゆちゅりーたちの目の前に設置し、スイッチを入れる。 と同時に、ちょうきょうくんGのふたを閉めて、南京錠できっちり鍵を閉める。 それと同時に、ある映像が流れ始めた。 主演はもちろん、この俺。 俺が、大小さまざまなゆっくりれいむやゆっくりまりさ達を、惨殺し、喰らい、拷問している映像だ。 今年の春に、社食に現れたゆっくり一家にキレた俺が、ついつい暴走したことがあった。そのときの隠し撮り映像(撮影:同僚A)である。 今では、加工所でゆっくりの仕上げに使われているという。 くそう、楽しみにしていた特盛ダブルカツカレーとイチゴの洗面器パフェ台無しにしやがって。ちょっとむかついてきた。 画面の中のゆっくりは、あるものは後頭部から喰らわれ、あるものは核ごと手刀で撃ち貫かれ、あるものは正拳突きで核を引き抜かれ、あるものは左右5つの 穴から餡子を噴出しながら、のたうちまわっている。おまけには生き赤ゆっくりの焼き饅頭だぜフゥハハハー。 まさに血しぶきならぬ餡子しぶき飛び散るスプラッタ映像。心臓の悪い人やお子さんは見ちゃいけないぞ!お兄さんとの約束だ! でも、その音は外部には聞こえてこない。静かなものだ。だがしかーし、箱内部のゆちゅりー達にはその音が、ゆっくり達の命乞いや断末魔の叫び声と、俺の狂った 笑い声が生々しく聞こえているはずだ。その証拠に、ゆちゅりー達はひくひくと痙攣しながら体中の穴という穴から謎の液体を噴出している。 このちょうきょうくんGは、優れた防音性を持ちながらもゆっくりを痛めつけないように優れた環境維持性能を持っている。 その上、内部に直接音声を流すことによって、ゆっくりたちに確実な恐怖を与えることができるのだ。 うむ、そろそろ頃合かな。 俺はDVDの再生を止め、ふたを開ける。 そして、ひくひくと痙攣しているゆちゅりーに声をかける。 「おーい、生きてるかー?」 「ゆ”…ゆ”…あ”か”ち”ゃんた”べないでぇ…」 「い”や”…い”や”…こ”な”い”でね”ぇえ”え”えっ!!」 「ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”」 「生きてるな。簡単に死んでくれたら困るんでなー」 そう言いつつ、今度はゆちゅりーの口をこじ開けて中に管を挿入する。 管の先には、2リットルのペットボトルの中にイチゴ牛乳を入れたものがつながっていた。それを3匹に1つずつつなげ、口の皮をガムテープで寄せて固定する。 「さて、あまーいイチゴ牛乳ですよー。たくさんあるからゆっくり全部飲んでね!!!」 そういうと、管をはさんでいた洗濯ばさみを取り去る。管を伝って勢いよくイチゴ牛乳がゆちゅりー達の中に流れ込み、その衝撃で飛びかけていたゆちゅりー達の意識が 戻ってきた。 「「「ん”ん”ん”ん”ん”ん”ん”ん”ん”ん”ん”ん”ん”ん”」」」 目を見開き、恨めしそうに俺を見るゆちゅりー達。 「うんうんそうかそうかー。おいしいかー。おにいさんうれしいなー」 見事なまでの棒読みで相槌を打つ。 すると見る見るうちにゆちゅりーの体が膨らんでいく。2リットルのイチゴ牛乳が全て入り終わるころには、ゆちゅりー達の体はもともとよりふた周りくらい膨らんでいた。 すげえ、全部入っちゃったよ。つーか、ちょうきょうくんGにみっちり詰まってやがる。 デジカメで写真を撮り、ついでにガムテープをはがして管を抜いてやる。 「ゆ”っ…ゆ”っ…ひ”どい”よひ”どい”よ”お”おぉおぉぉっ!!」 「こ”のし”し”い”、ゆ”っく”りし”でえ”ぇぇぇぇぇっ!」 「asawsedryguhnjiko lp +*!!!!!」 憤怒と憎悪の形相で、俺をにらみつけるゆっくり達。しかし、徐々にその体が赤らんできた。心なしか、そわそわしているようにも見える。 「どうしたのかなー?もしかして、出ちゃうのぉー?」 この上なく棒読みで、ニヤニヤした笑みを浮かべながら聞く俺。しかし、ゆちゅりー達は、そんな余裕はない様子だった。 よく見ると、あごの下にあたる部分に、黒い穴が開き始めていた。 あー、こりゃすぐポロロッカ状態になりそうだな。 ゆっくりは、基本的に排泄行為を行わない。口に入れたものはほとんど全てが内臓器官で消化される。 しかし、何らかの理由で、1回に内蔵で処理しきれないほどの水分を摂取してしまった場合、体内の餡子が解け出てしまうのを防ぐために、体の一部を変形させて一時的に 排水を行うことができる。 その際には、人間でいう下顎周辺に新たに排泄口ができ、そこから排水を行う。そして、排水が終了すると同時に閉じるのである。 俺は、そこに手早くシリコン製のチューブを体の奥まで差し込んだ。そして、反対側のチューブを口の奥まで差し込み、舌の上にガムテープで固定する。 「「「い”だあ”あ”あ”あ”いいい”ぃぃぃっ!!!!!!!!ぼじざんな”に”ずるのぉぉぉぉ!!!」」」 「ごめん、手が滑った。それよりいいのかい?おしっこ出ちゃいそうなんでしょ?すっきりしたいんでしょ?お兄さんのことは気にしないで、すっきりしたら?」 「ゆっ!?」 「このままじゃすっきりできないでしょ?」 「ゆっゆっ!そうだったね!」 「はやくすっきりするよ!」 「ぱちゅもすっきりするの!」 排泄のための穴に管を挿入された痛みもすっかり忘れたのか、ゆちゅりー達は口々にそう言った。やっぱりゆっくりはゆっくりだね。 そう言い終えたゆっくりの口を、俺はすかさず再び閉じ、ガムテープで厳重に目張りをする。ゆっくりの下の世話をするのは嫌だからね。 そうこうしている内に、ピンク色の液体が管を勢いよく流れていく。おー、そのまま出るのか。俺の予想どうりじゃないか。 そして!行き着く先はッッッ!もちろんゆちゅりー達の口の中だああぁぁぁぁぁ!!!!! 「「「ん”ん”ん”ん”ん”ん”ん”ん”ん”」」」 苦しそうに目を白黒させて悶えるゆちゅりー達。うわ、すげー嫌そうな顔してる。てか、お前ら下手なところできれい好きなのかよ。ゴミ饅頭の癖に生意気な。 ま、俺も飲尿趣味なんてないから、ごめんこうむりたいけどな! さてさて、なぜ俺がこんなHENTAIじみたことをしたのか種明かしといこう。 ゆっくりは、常に同じ種類の餌を摂り続ける事によって自身の中身を変化させる。 だから、雑草だけを食べ続けたゆれいむの中身が粒餡から抹茶餡に変わっていたのだ。 今回の実験は、同じものを摂り続けたゆちゅりーの中身(生クリーム)が、別のもの(イチゴクリーム)に変わるかどうかを確認することが目的である。 しかし、イチゴなんてものはこの季節には売っていないし、例え手に入れることができたとしても高価なもの、ゆっくりごとき下等生物にやろうなんて気はさらさらない。 ならばどうしたらいいか。 ゆっくりは、過剰摂取した水分をそのままの形で排水する。そして、消化器官で吸収できる分はゆっくりの体内に吸収され、栄養となり消費される。 つまり、餌となる成分の含まれた水を過剰摂取させ、それの排出→摂取→吸収というサイクルを確立させれば、餌やりも特別いらず、かつ同じ種類の餌を続けて供給できる ことになるのである。 もちろん、ゆっくりに人権なんぞないわけで、こんなひどい仕打ちをしても問題はないわけで。 「さてと、このままションベンが出なくなるまで、君たちにはそのままでいてもらうよ!もちろん、キミの食事は自分のションベンだけだからね!嫌でも飲まなきゃ死んじゃ うから、頑張って飲み続けてね!それじゃ…たっぷりゆっくりしていってね!!」 そう言うと、俺はゆちゅりー達の入ったちょうきょうくんGのふたを閉めて南京錠で開かないように固定した。 ゆちゅりー達の憎しみと恨みと怒りが篭ったうめき声を聞きながら、俺はゆっくり専用拷問部屋をあとにした。もちろん、ドアにはきちんと鍵をかけてね! それから20日後、ようやくゆちゅりー達の水分排出が止まった。 そこから逆算すると、ゆちゅりーが1日に必要な水分の量は100ミリリットルとなる。大体コップ半分くらいだね。多いように見えるが、実際には食事からも水分を摂っている ため、水分単体で見るとそう多くはない数字だ。 うちのゆっくり回し車の参考になるなと思いながら、俺はゆっくり専用拷問部屋に入った。いくらか成長したのか少し窮屈そうにちょうきょうくんGに入っているゆちゅりー達。 「ゆっくりしていってね!」 開口一番そう声をかけたが、ゆちゅりー達は虚ろな目で明後日の方向を見ながらかすかな呻き声をもらすばかりだった。 「ありゃ、こわれちゃったか。でも、これからお亡くなりになってもらうんだし、どうでもいいか」 そう言うと、俺はちょうきょうくんGのふたを開けて、1匹目のゆちゅりーを取り出した。 丁寧にガムテープやら管やらをはずす。そして、手にしたぺティナイフでことさらゆっくりとした手つきで、帽子と髪ごと後頭部を切り開く。 生きたまま体を切り開かれる痛みに、ゆちゅりーの目が大きく見開かれるが、声は出ない。かすかな呻き声が出るだけ。 「おー、いい色に染まってるじゃないの。実験成功したじゃん」 ゆちゅりーの生クリームは、見事薄いピンク色に染まっており、甘いいい匂いを放っていた。 俺は、スプーンでそれを一口すくうと口に入れた。 口の中にイチゴの芳醇ないい香りと甘い味が広がる。 「どれどれ、他のはどうかなー?」 2匹目、3匹目のゆちゅりーも同じように切り開いて確かめてみる。 結論から言うと、2匹目3匹目のゆちゅりーも、1匹目と同じように中身がイチゴクリームに変化していた。 これで、ゆちゅりーも同じ餌を摂り続けることによって、中身が変化するということが証明できたわけである。 「よーし、忙しくなるぞー。とりあえずは、研究レポート持ち込んで上の連中を説得するか!」 そう言うと、俺はすっかり廃ゆっくりとなってしまったゆちゅりーたちをお盆に載せて部屋を出て行った。 それから数ヵ月後。 クリスマス商戦にあわせて、加工所から新しい商品が売り出された。 その名も「ゆちゅりーのゆっくりアイス」である。 ゆちゅりーの中に、ゆちゅりーのクリームをそのまま固めたアイスが詰まっているというこの商品。 それぞれのゆちゅりーの中に、異なった味のゆちゅりーアイスが詰まっているということもあり、大家族用夜パーティー用に売れたとか。 おしまい あとがき マイサンがおっきしてくれた勢いで書いてしまった人生初の投稿SS、楽しんでくれたならば幸いです。 粒餡が別の餡子に変わるのならば、生クリームも変わらないはずがない!と、単純な思考かつ短絡的なネタです。 おいしいですよね、アイス。暑いときにはぴったりですよ。私はかき氷も好きですがね! でわ、また気が向いたら投稿するやも知れません。そのときは生あったかい目で生あったかく見守ってやってください。 ご意見、ご感想などお待ちしております。 ゆっくり虐待スレ29 レス番号602の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/175.html
近頃巷で流行ってるゆっくりなる生物 こいつらは人の畑を荒らし、おまけに堂々と自分の家だとか抜かしやがる。そのため農民たちに嫌われていた。 もちろん、俺もこいつらは大嫌いだが感謝もしている。 理由は簡単。こいつらのお蔭で俺は生計を立てているからだ。 こいつらが大量発生する前俺はただの農民だった。少し外れに住んでいたが妖怪が襲いに来るわけでもなく、日々の糧を農業によって得ていた。 しかし、去年の秋ゆっくりどもが大量発生したとき真っ先に被害にあったのは森に近い俺の畑だった。 秋の収穫も目前のある日、俺は作物の様子を確認するために畑へ向かった。ちなみに俺が育てていたのはさつまいも今年は天候も良く豊作だと思っていた。 しかし、畑で俺を待っていたのは食い荒らされた芋とそこでぴょんぴょん跳ねるゆっくり達だった。 呆然としながら近付くとこっちに気がついたのか赤いリボンをしたゆっくりが「ゆっくりしていってね!!」と言ってくる。それにつられて周りの黒いのや「ちーんぽ!」とか抜かすゆっくり達が俺に向かって「ゆっくりしていってね!!」と言ってくる。 しばらく呆気にとられた俺だが冷静になるとさっそく目の前の赤いリボンをしたのを持っていたスコップで叩き潰す。「ゆ”っぐヴぇ!」と気持ち悪い声をあげて潰れるゆっくり 直ちに周りのゆっくりが抗議の声を上げる「ひどい!ゆっくりさせてね!」「ゆっくりあやまってね!!」 煩い 黙れゴミ ただただムカついた こんな饅頭共に俺が丹精こめてつくった芋を食われたのかと、俺はこの冬どう過ごせばいいのかと そのまま近くにいた銀髪のゆっくりを叩き潰す「ぢーんっぶぇ!!」さすがにゆっくりも危険だと気がついたらしい「ゆっくり逃げてね!!」と黒い奴の号令で一斉に逃げだした。 そのまま追いかけて何匹かつぶすが首謀者のようだった黒い奴をはじめとして何匹かには逃げられてしまった。 俺は殺したゆっくりを処分すると、そのまま情報通の友人である霖之助のもとへと向かった。 「それは災難だったね。」お茶を出しながら霖之助が言う。 「ああ、まったくもって腹立たしい。で、霖之助あれはいったいなんなんだ?」霖之助も詳しいことは知らないようだったが概要を説明してくれた。あれが突然発生したということ。一番多いのはさっきの赤いリボンのと黒い奴でそれぞれ霊夢種と魔理沙種らしいがその他にもいろいろな種類がいるらしいこと。そして、雑食性のためあちこちで被害が出ていることも。 「そうか…俺のところだけじゃないのか…」あんな奴らが人間に迷惑をかけてるのかと考えるとイライラした。 「妖怪の間でも被害にあう子が増えてるらしいよ。そのたび駆除してるけどあまりにも繁殖が早く何回も来るとか」 「どうにかできないのか?」 「僕だけじゃね…あ、でも君これからの冬仕事がいるんだろ?」 「ああ、あの糞饅頭のせいでな」 「だったらピッタリのものがある!少し待っててくれ。」というと奥の倉庫に行ってしまった。 このゆっくりの話と冬の仕事と何がつながるのだろうか?と考えていると霖之助が何やら銃のようなものを取り出してきた。 「ちょうどよかった。君確かパチンコとか得意だったよな?」 「ずいぶんと昔のことを持ち出すな。まあ、確かにお前も含めてあのころ遊んだ仲間の中では一番だったな。」 「ならちょうどいい。この銃は繚乱の対弩と言って外の世界ではモンスターを狩るために使うらしい。」 「モンスター?」 「妖怪のようなものだろう。それにこれは、虫退治とかにも使うらしい。そのうえ弾は自然の草とか魚からできているからゆっくりを処分したあとそのまま畑に埋めれば肥料になるんだ。」 「で、これと俺の仕事の話は?」 「だから、君がこれを使ってゆっくりを処分してけばいいんだよ。これからどんどんゆっくりがらみの問題は増えるだろうし新しい職業になるかもしれないぞ。」 確かにそれはいい考えだと思った。ストレス解消にもなるしみんなにも感謝される最高の仕事だ。しかし… 「でも、俺は今そんなものを買うほどの余裕はないんだが…」この銃はどう見ても高そうである。しかも珍しい物好きの霖之助のことだそんなに安くはしてくれないだろう。 「一昔前ならそうだろうけどね。なぜか今年の3月の終わりから大量にこんな銃が流れ込んできたんだ。」 「外から?何かあったのか?」 「僕のお店の常連の妖怪さんは何でも「ああ、そういえば新発売ね。ボウガンは強化できないのよねー。」とか言ってたが」 「よく意味がわからんな。」 「僕もだよ。でもそのおかげで僕の倉庫は似たようなのでいっぱいなんだ。友達のよしみもあるし、とりあえず出世払いでいいよ。」 持つべきものは良い友達だ。そのまま霖之助に使い方を教えてもらい一通りの弾を貰うと、俺は早速村の中心に行き集会所に「ゆっくり退治お任せください。詳細は○○まで」と看板を立てて置いた。 2日後早速依頼が舞い込んだ。はじめに潰したとき何でも黒大福(魔理沙種とか言ったか?)を逃がしてしまったらしくそいつが仲間を引き連れて何回か襲撃に来たらしい。 「報酬は今年の収穫の十分の一でよろしいでしょうか?」裕福そうな依頼人だ。事実ここらでは一番の地主らしい。 「はい十分です。ゆっくりが来るのはこの畑ですか?」 「はい。何箇所か畑を持っているのでこの畑にばかり構ってられないのです。」 「了解しました。では、今日はこのままここに張り込ませてもらいます。大丈夫だと思いますが巻き込まれないように近寄らないようにお願いします」 ゆっくりが来るのは夜明けらしいのでそのまま張り込む。ゆっくりは動いてないものを認識しづらいらしくこのまま動かずに来たら狙撃するのが一番効率がいいと判断したからだ。 そして、そのままそこで仮眠をとり空が少し白み始める頃、あの耳障りな声が耳に響いた。 「今日もゆっくり食べようね!!」「朝ならあの人間もいないもんね!」「ここは霊夢たちのゆっくりポイントなのにね!!」「「「「ねー!!」」」 どうやら今日の標的は3匹らしい。魔理沙種と霊夢種とパチュリー種のようだ。 俺は息をひそめて銃弾をリロードする。とりあえず今回用意してみたのは散弾と徹甲榴弾である。そしてゆっくりが範囲内に入る。そしてどう仕留めるか考える。何回かの襲撃で知恵を少しはつけたらしく人間の気配を感じたらあっという間に逃げてしまうらしい。そこで俺はとりあえず固まってる霊夢とパチュリーを散弾の連射で仕留め魔理沙を徹甲榴弾で仕留めることにした。 スコープを覗き狙いをつける。と同時に徹甲榴弾のリロードの準備を整える。 3…まだ早い2…もう少しだ1…狙いを定める 「ゆ”ぐぐぐぐっぐ?!」「む”ぎゅぐげぐぐ!」散弾の連射を急に浴びた二匹のゆっくりまだ息はあるようだがもう動けまい。と同時に、「ゆっくり死んでてね!」と薄情な言葉を吐き黒大福が一目散に逃げ出す。 俺は徹甲榴弾をリロードすると同時にただちに黒大福を追いかける。 「ゆ”ぐっり”ざぜでえ”えええ”!」「ゆっっぐりじだっがだっよお!」後ろから二匹の声が聞こえるが無視する。 「ゆっくりしていってね!!」黒大福も意外と早く距離はなかなか縮まらない。だが徹甲榴弾は距離を関係としない威力をもつ。俺は森に逃げ込む直前の黒大福に向け徹甲榴弾を撃った。命中! 「ゆ?」徹甲榴弾は当たった時には大したダメージはない。「ゆっくりしていってね!!」人を小馬鹿にしたように森へ逃げ込むゆっくり。その時の顔はまさに勝ち誇った顔であった。おそらく森の中では逃げ切れると思ったのだろう。 確かに、その推測は正しい。森に逃げ込まれたらボウガンで仕留めるのは難しい。しかし、もうすでにやることは終わっている。 もう一回黒大福が満面の笑みで飛び跳ねる。だが、それと同時に発せられたはずのお決まりの文句は最後まで言い切られることはなかった。 「ゆっくりしてっぶっ!」次の瞬間ゆっくりの体が弾け飛ぶ。徹甲榴弾は命中した後爆発する弾である。見事真ん中に命中しやわらかい餡子の真ん中で止まった弾は爆発しゆっくりの体を四散させたというわけである。 こうして、ゆっくりを仕留めた俺は畑に戻り息も絶え絶えの二匹のゆっくりを生かしたまま畑に埋める。「ゆ”っゆ”っゆ”」「む”ぐむ”ぐぐぐ」とか最早意味のわからない言葉をあげていたが畑に埋めると声がしなくなった。 「ありがとうございました。あの黒大福がリーダーで引き連れてくるらしく狙っていたのですが警戒心が強くなかなか仕留められなかったのです。」 「いえ、私もこの仕事のおかげで冬を過ごせそうです。後、なにかゆっくりで困ってる人がいたら是非私のことを紹介してください」 「ええ、もちろんですとも。集会所で広めておきましょう。」 こうして、俺の仕事はウナギ登りに増えていった。そのうちゆっくり加工所から希少種の捕獲を頼まれることも多くなった。 そして今日も俺はボウガンを片手にゆっくりを狩る。最近では俺のまねごとを始めるを始める奴も増え始め、集会所は依頼を取りまとめる場所になっている。 そして、いつしか人は俺のことをこう呼び始めた「ゆっくりハンター」と。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ あとがきのようなもの ここまでお付き合いいただきありがとうございました。 元ネタは見ての通りモンスターハンターからです。今度は捕獲クエストで一本書こうと思っています 選択肢 投票 しあわせー! (25) それなりー (1) つぎにきたいするよ! (4) 名前 コメント すべてのコメントを見る なんでれいむとまりさって平仮名じゃないの? -- (名無しさん) 2020-10-05 22 54 57
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/538.html
がさ。 がさがさがさ。 「ん……?」 何やら耳元で音がする。 不快感を呼び起こす騒音に、眠気が少しずつ引いていく感覚。 瞼越しに伝わる光量からすると、時刻は丁度目覚めるのにいい時間帯だろうか。 がさがさがさがさがさがさがさ。 しかしなんだこの音は。 まるで何かが這いずり回っているような…… 「…………うぉっ!?」 目を開けた瞬間映った光景に、俺は驚いて跳ね起きた。 俺の周囲、円状に集まっている、虫の大群。 カブトムシやらコオロギやらゴキブリやら、その種類は半端なく多い。 生理的嫌悪を催す光景に、鳥肌がぷつぷつ浮かび上がる。 こんなことを仕出かす犯人を、俺は一人しか知らない。 「リ、リグルちゃんか……!」 朝の目覚ましモーニングサービスだかなんだかで、こういう事業を始めたことは知っていたが。 ちゃんと丁重にお断りしておいたのになぁ。 後で文句言わないと…… 「こ、こっちに来ないでね! ゆっくり離れてね!」 「……ん?」 何やら慌てた声が聞こえ、俺は声がするほうを向いた。 「ま、まりさは美味しくないよ! ゆっくりしないでどっか行ってね!!」 昨日、透明の箱に閉じ込めたゆっくり魔理沙。 その周囲に、虫たちが群がっていた。 「ゆ、ゆーっ!!?」 「れいむたちはごはんじゃないよぉー!!?」 「ゆっくりできないよぉぉぉ!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢の周囲にも、虫たちが興味津々といった様子で集まっている。 赤ちゃんゆっくりたちは可哀相にすっかり怯えてしまい、中央に固まってゆーゆー泣いていた。 ちょっと萌える。 「お、お兄さん、ゆっくり助けてね!」 そして我が愛しのマイペット、ゆっくり霊夢は眠りから眠りから覚醒した俺に気付き、必死に助けを求めていた。 むっ、これはいかん。 俺は虫を踏まないよう慎重に足元を確認しながら、ゆっくり霊夢を閉じ込めた透明箱を抱え上げ、テーブルの上に避難させた。 「お、お兄さん、魔理沙たちも助けてね!!!」 「おに゛いざん、ゆ゛っぐり゛ざぜでぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 他のゆっくりたちからも救助の声が上がるが無視。 だってこいつらの泣き顔見るのが超快感なんだもん。 涙を流しながら必死な表情で右往左往しているゆっくりは、鼻血が出そうなほど可愛いと思う。 こんな光景が見られたのなら、虫たちに少し感謝してもいいくらいだ。 俺は赤ちゃんゆっくり霊夢の箱を開けると、一匹だけ取り出した。 「ゆっ、たかいたかーい♪」 「あ、いいな!」 「れいむたちもたすけてね!」 虫たちの包囲網から救出してもらえたと思ったのだろう、俺に掴まれた赤ちゃんゆっくり霊夢が歓声を上げ、他のゆっくりたちが文句を言う。 俺はにこりと微笑むと、足元でうぞうぞしている虫たちに優しい声で言った。 「お前たち、餌をやるぞ」 「……ゆっ?」 何を言ってるのか分からない、といった感じの赤ちゃんゆっくり霊夢。 俺はそいつが理解するよりも早く、手の中のゆっくりを床にぽとりと落とした。 「ゆっ、ゆ゛ーーーっ!!?」 途端、涙声で逃げ出そうとする赤ちゃんゆっくり霊夢。 虫たちはそれなりに頭が良いのか、いきなり襲い掛かろうとはせずに、逃げ場を少しずつ埋めるように移動していく。 「や、やめてね! 赤ちゃんを助けてね!!!」 ゆっくり魔理沙の慌てた声。 俺はそんなゆっくり魔理沙に指をびしりと突きつけた。 「問題!」 「ゆっ!?」 「ゆっくりアリスは一度の交尾で、ゆっくり魔理沙との子供を六匹作ることが出来ます。七度ゆっくり魔理沙に襲い掛かったら、何匹子供が生まれるでしょうか?」 「ゆゆっ!? まりさは七回もこども生めないよ!?」 「はい、スタート。答えられたら子供は助けてやる」 有無を言わさず開始宣言。 ゆっくり魔理沙は悩みだすが、ゆっくりアリスに襲われる自分を想像してしまうのだろう、時々小刻みにぶるぶる震えていた。 俺は残り五匹となった赤ちゃんゆっくり霊夢たちに近付き、力付けるように言う。 「お前たちのお母さんがあのゆっくり霊夢を助けてくれるみたいだぞ!」 「ゆっ、本当!?」 「で、でも……」 一瞬明るい表情を見せる赤ちゃんゆっくりたちだが、すぐに暗い顔で俯いてしまう。 昨日、妹の一人が見捨てられた(実際は無理難題だったわけだが)ことを思い出したのだろう。 「まぁ、信じてな」 俺はそう言って、虫たちの群れに放り込んだ赤ちゃんゆっくり霊夢を観察し始めた。 涙目でぴょんぴょん飛び跳ねながら、全力で逃げようとしているその姿は果てしなく愛らしい。 しかし逃げようとした矢先に虫たちに回り込まれ、別の方向に逃げようとして、やはり回り込まれる。 ……む、面白い趣向を思いついた。 俺は机の引き出しから下敷きを取り出すと、姉妹である赤ちゃんゆっくり霊夢たちの閉じ込められている箱まで下敷きを使って虫を払い除け、道を作ってあげた。 「れいむ、こっちだよ!」 「ゆっくりしないでこっちにきてね!」 「ゆっ、れいむがんばるね!」 姉妹たちの声に勇気付けられ、赤ちゃんゆっくり霊夢は必死の力で床を飛びはね、箱に近付いていく。 しかし後ろから、どんどんと迫る虫たち。 まだ外の世界にいたころ、金曜ロードショーで見たアニメに出てくる王蟲の大群を思い出す光景だ。 やがて赤ちゃんゆっくり霊夢は見事に箱の前に辿り着いた。 が、しかしそこはやはりゆっくりブレインだった。 「ゆっ!? 中に入れないよ!!?」 そう、それが箱である以上、壁の内側に入れないのは当然なわけで。 ようやく姉妹の所に戻れてほっとしたのも束の間、赤ちゃんゆっくり霊夢は涙目で壁に体当たりを始める。 「いれて! そのなかにいれてよ!」 「ゆゆっ、はいれないの!?」 「どうすればいいの!!?」 身体に似合わない滂沱の涙を流しながら、身体を寄せ合うゆっくりの姉妹。 だけどその間は境界を分かつ絶対的な壁が存在し、まるで天国と地獄の様相だ。 そうこうしているうちに、とうとう痺れを切らした一匹の虫が、赤ちゃんゆっくり霊夢にかぶりついた。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅっ!!?」 悲鳴。 齧られたのは表面を少しだけ。だが黒い餡子がちょっとだけ漏れ出る。 それまで外の姉妹を何とかしようと壁に張り付いていた赤ちゃんゆっくりたちは、その光景にドン引きしたかのようにゆっくりらしくない素早さで後退した。 「ゆ゛っ!? い゛がな゛い゛でぇぇぇ!!!」 心の支えであっただろう姉妹の身体が遠く離れてしまったことに、赤ちゃんゆっくり霊夢は絶叫する。 そんなゆっくりに追い討ちをかけるように、他の虫たちも赤ちゃんゆっくり霊夢に群がり、ほんの少しずつ咀嚼する。 仲間意識があるのだろう、統率された虫たちの行動は訓練された兵隊のように澱みなく、抜け駆けして丸呑みしようとする虫一匹現れない。 仲間たちにきちんと行き渡るよう、一度噛み付いたらすぐに離れ、別の虫に場所を譲る。 だが赤ちゃんゆっくり霊夢からしてみれば、これ以上ないくらいの嬲り殺し、永遠に続くかのような拷問だった。 「れ゛いむ゛のあ゛んこだべな゛い゛でぇ゛ぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉっ!!!」 聞いてるこっちまで痛みが伝わるような慟哭。 箱の中で震える赤ちゃんゆっくりたちは、涙に塗れた瞳を母親へと向ける。 「おかあさん、はやくしてね!」 「いもうとをたすけてね!!!」 だがゆっくり魔理沙は、青ざめた顔で動かない身体の代わりに眼を忙しなく震わせるだけだった。 「さ、さんかいめでじゅうはちひき、よんかいめで……ゆーっ!! よんかいもできないよぉぉぉ!!!」 発情したゆっくりアリスの幻影でも浮かんでいるのか、イヤイヤするようにその身体を揺り動かす。 虫たちの餌になっている赤ちゃんゆっくり霊夢は、既に身体が半分になっていた。 「ゆっくりしたけっかがこれだよ……」 そして、トドメなのだろう。 壁際から虫たちの中心に運ばれた赤ちゃんゆっくり霊夢は、虫たちに一斉に飛び掛られ、その短い生涯を終えた。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!!!」 今際の際の悲鳴。 どれだけ苦しかっただろうか。 まだ生きたかっただろうに。 またも姉妹を失った悲しみに、赤ちゃんゆっくり霊夢たちは声を上げて泣いた。 そこに間髪入れず、俺が囁く。 「あーあ、またお前たちのお母さんは答えられなかったな」 びくり、と赤ちゃんゆっくりたちの身体が震える。 「答えられたら、あのゆっくりもお前たちと再会出来てたのになぁ。虫に食べられることなく、お前たちとゆっくり出来たのになぁ。お母さんが問題に答えさえしてればなぁ……」 成人したゆっくりだったら、そもそも先程の赤ちゃんゆっくり霊夢を虫たちの中に放り込んだ俺を糾弾していたかもしれない。 だが未だ幼稚な頭脳しか持たないゆっくりたちは、俺の言葉に見事なまでに惑わされ、ふつふつと母親への怒りを充填させていく。 「ひどいよおかあさん!」 「おかあさんがれいむのかわりにしねばよかったのに!!」 「おかあさんはゆっくりしないでしんでね!!!」 昨夜よりも激しい母への憎悪の発露。 あまりに理不尽すぎる状況と、それでも回答出来ていたら子供は助かっていたはずという罪悪感で、ゆっくり魔理沙は狂ったように泣き叫ぶ。 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇっ、お゛があ゛ざん゛にぞんな゛ごどい゛わ゛な゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 ゾクゾクゾクゾク!!! 背筋に走る衝撃。全身を包み込む恍惚感。 ゆっくりが泣く姿は、どうしてこう、俺に充足感を与えてくれるかなぁ!? 心の内より溢れて垂れ流さんばかりのこの感情を何と呼べばいいのだろう。やはり萌えだろうか。 俺は笑いを抑えることが出来なかった。 一息つき、虫たちが帰ったところで朝食の準備に取り掛かる。 台所から立ち上る香ばしい匂いを呼吸用の穴から嗅ぎ取ったゆっくりたちは、涎を垂らして俺に催促し始めた。 「ゆっくりたべさせてね!」 「おなかすいたよ!」 「たくさんちょうだいね!」 やれやれ、さっき家族が死んだばかりだというのに切り替えの早い奴らだ。 俺は人間二人分の料理を完成させると、一つはテーブルの上に乗せ、もう一つを半分にしてゆっくり霊夢の箱の中に入れた。 ゆっくり霊夢の箱は大きいので、箱の中でそのまま食事をすることが可能なのだ。 ゆっくり霊夢は何か言いたげに俺を上目遣いに見つめていたが、結局無言のまま料理に口をつけ始めた。 頭のいい奴。だから大好きなんだ。 そしてもう半分を床に置き、米粒を五粒だけ掴むと、赤ちゃんゆっくりの箱の中に投げ入れた。 「ほら、朝食だぞ」 「ゆっ、すくないよ!?」 「もっとたくさんちょうだいね!」 目の前にお腹いっぱいになれるだけの料理があるのに、何故これっぽっちしか貰えないのか。 空腹を抱えた赤ちゃんゆっくり霊夢たちはゆーゆー文句を言って飛び跳ねる。 俺はその声を無視して、ゆっくり魔理沙の箱に近付いた。 相変わらず大きさが不釣合いの箱の中に押し込められたゆっくり魔理沙は、息苦しそうに呻いている。 顔面を変形させ、いつもの小生意気な顔から今にも屋上から飛び降りて自殺するいじめられっ子のような弱々しい顔をしたゆっくり魔理沙は、相変わらず俺の心を掴んで放さない。 しばらく眺めていたい衝動に駆られるが、そこはぐっと我慢。 箱に顔を近づけ、赤ちゃんゆっくりたちに聞こえない程度の声量で、そっと耳打ちする。 「今からお前を箱から出してやるが、もし妙な真似をしたり何かおかしなことをしゃべったりしたら、お前ら全員加工所送りにしてやる」 「ゆっ……」 「妙なことさえしなければ、ちゃんと朝食を食べさせてやる。分かったなら二秒間だけ目を閉じろ」 ゆっくり魔理沙は数瞬視線を彷徨わせた後、言われた通り目を閉じた。 よしよし、計画通り。 俺はゆっくり魔理沙を箱から出してやった。 窮屈な箱から解放され、ゆっくり魔理沙はしばらく床を跳ね回る。 「すっきりー!」 だが、すぐにハッとした様子で、慌てて赤ちゃんゆっくりたちの元へ向かおうとする。 「おっと」 だが俺はゆっくり魔理沙の頭を掴み、それを阻止する。 「ゆ、ゆーっ!!?」 何をするんだ、と言わんばかりに俺に講義の視線を向けるゆっくり魔理沙。 しかし俺が加工所、と小声で囁くと、すぐに大人しくなった。 「さぁ、朝食の時間だ。たんとお食べ」 俺はわざわざ赤ちゃんゆっくりたちの前に置きなおした朝食の前に、ゆっくり魔理沙を持ってくる。 野菜炒めや焼き魚など至って普通のメニューではあるが、ゆっくりにとって野生にいたころからは考えられないご馳走だろう。 ゆっくり魔理沙にとって――勿論、赤ちゃんゆっくり霊夢にとっても。 「おかあさんだけそんなにいっぱい、ずるいよ!」 「れいむたちにもわけてね!」 予想通り、何も貰っていないも同然の赤ちゃんゆっくりたちが俄かに騒ぎ出す。 ゆっくり魔理沙はおろおろした様子で、俺を見上げた。 「ま、まりさはいいから、このごはんは赤ちゃんにあげてね!」 「駄目だ」 しかし、俺はぴしゃりと遮る。 「お前が全部食うんだ」 「で、でも」 「さもないと……」 ゆっくり魔理沙は慌てて食べ始めた。 最初は遠慮がちだったが、やがてゆっくりとしての本能が現れ始めたのか、 「うっめ!!! メッチャうっめこれ!!!」 と下品にがっつき始める。 それを見て不満が出てくるのが、無論赤ちゃんゆっくりたちである。 自分たちはこれだけしか食べてないのに、何故お母さんはあんなに食べられるのか? 自分たちの姉妹を見殺しにした母だけが、何故!? 憎悪と殺意が満ち満ちた視線で、己の母親を睨みつける。 「なんでれいむたちにごはんくれないの!!?」 「ゆっくりできないよ!!!」 「ゆっくりできないおかあさんはしねっ!!!」 「「「ゆっくりしねっ!!! ゆっくりしねっ!!!」」」 「ぞん゛な゛ごどい゛わ゛な゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇっ!!!」 謂れの無い中傷を浴びて、ゆっくり魔理沙は大泣きしながら子供たちの下に駆け寄ろうとする。 だけど俺がきっちりガード。言うこと聞かなかったお仕置きとして、赤ちゃんゆっくりたちから見えない角度でゆっくり魔理沙の背の皮を抓り上げた。 「ゆ゛ぐぅぅぅっ!!?」 「そのまま食事を続けろ。それと、食べ終わったら子供たちに向かって今から俺が言う台詞を言うんだ。いいか――」 「――ゆっ!? そんなこと言えないよ!!!」 「じゃあ、全員加工所送りだな」 「……」 ゆっくり魔理沙は気落ちした様子で、食事を再開した。 止まらない、子供たちからのブーイング。誤解を解くことの出来ないこの状況、親としてどんな気持ちで受け止めているのだろうか。 昨日まで、この家族は幸せの中にいたのだろう。 家族全員でゆっくり出来る、素晴らしい毎日を過ごしていたに違いない。 それが、今ではどうだ。 子供七匹のうち二匹が死に、しかもその責任を負わされ、弁解するチャンスもない。 ゆっくりが、ゆっくりすることが不可能なこの状況。 最高だ。 ゆっくり魔理沙は朝食を食べ終わると、赤ちゃんゆっくりたちのほうを振り向いた。 数秒、躊躇する。 だが俺が少し手を動かすそぶりを見せると、諦めたのか、早口に捲し立てた。 「美味しかったよ! れいむたちはそこでゆっくり餓死していってね!」 「――っ!!!」 怒りを覚えながらも、それでも心の片隅で、信じ続けていたお母さん。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちの中で、その信頼という形が、ガラガラと音を立てて崩れ去るのが、俺にもハッキリ伝わった。 「ゆっ……ゆ゛っ……!!!」 「ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉっ!!!」 「な゛ん゛でぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉぉぉっ!!?」 「お゛があ゛ざんな゛んでも゛う゛おがあ゛ざん゛じゃな゛い゛よぉぉぉ!!!」 「ゆ゛っぐり゛じな゛い゛でじん゛でね゛っ!!!」 「も゛う゛がお゛も゛み゛だぐな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉっ!!!」 怒号。悲鳴。絶叫。 ありとあらゆる不の感情の放出。 そしてそれに晒される、ゆっくり魔理沙。 「あ゛っあ゛あ゛ああああ゛あ゛あああ゛あ゛あ゛ああああ゛あ゛ああ゛あ゛あああ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁぁぁ゛ぁ゛ぁぁっっっ!!! 一生分とも呼べそうな涙を流し、身を引き裂かれるような心の苦痛でじたばた暴れまわる。 きっと、伝えたいのだろう。 自分が親として、どれほど子供を愛しているのか。 子供が死んでしまったとき、どれだけ哀しみを共有したかったのか。 だけど、言えない。 言ったら、それこそ全てが潰える。 伝えたい、だけど伝えられない、極限のもどかしさ。 「――!!!」 これだ。 俺が求めていたものは。 俺が見たいのは『必死』なゆっくり。 そしてこのゆっくり魔理沙は、他のどのゆっくりも、究極的に『必死』だった。 その後、俺は加工所に赴き、『あるもの』を入手してきた。 その正体は後ほど披露するとして、その前に仕込みをしておかなければならない。 俺はお菓子を与えることを条件に、赤ちゃんゆっくり霊夢たちの生まれた順番を教えてもらうことにした。 そしてその順番通り、赤ちゃんゆっくり霊夢のリボンにマジックで番号を振る。 「ゆゆっ!? れいむのりぼんにいたずらしないでね!」 とか言われたけど無視。 ちなみに最初に死んだのは六女、先程虫に貪られたのは四女らしかった。 現在、箱の中には赤ちゃんゆっくり霊夢1、2、3、5、7の五匹が身を寄せ合って「ゆっくりできないよ!」と騒いでいる。 ゆっくり魔理沙はまた狭い箱の中に閉じ込めた。ご飯をたらふく食べた分体積が増えたので、苦しさが増したようだった。 ゆっくり霊夢は他のゆっくりたちを助けるよう呼びかける声が五月蝿くなってきたので、申し訳ないと思いつつも猿轡を噛まさせてもらった。 後で好物のハンバーグを食べさせてあげるから許して欲しいところである。 「さて、と」 どうせなら、全部奇数にしてみるか。 俺は2の番号が書かれた赤ちゃんゆっくり霊夢を摘み上げた。 「ゆーっ!?」 「おねえちゃーん!」 「お、おにいさん、おねえちゃんをゆっくりはなしてね!」 姉妹たちがぴょんぴょん飛び跳ねて阻止しようとするが、赤ちゃんゆっくり霊夢2は既に俺の手の中だ。 いや、しかし冷静に見てみるとやっぱり可愛いよなこいつら。家を荒らさなければ思いっきり愛でてやったのに。 俺は赤ちゃんゆっくり霊夢2を床に降ろすと、加工所からの帰り道で拾った木の枝に糸と爪楊枝を結びつけただけの即席釣竿を構える。 そして赤ちゃんゆっくり霊夢2のリボンを解くと、素早く爪楊枝に結びつけた。 「ゆっ!? れいむのりぼんかえしてね!」 ゆっくりにとって、付けている装飾品を奪われることは死活問題に繋がる。 人間にとってゆっくりたちが身に付けている装飾品はただ食べられる素材で出来た食品に過ぎないが、ゆっくりたちにとって装飾品は固体を区別するための重要な機能らしい。 装飾品を奪われたゆっくりは目の前で奪われたのを目撃された場合のみを例外として、大抵ゆっくりたちから『ゆっくり出来ない存在』として忌み嫌われることになる。 理由はよく分からないが、そういうものらしい。 たとえ親兄弟だろうと、装飾品を奪われたゆっくりはその時点で『他人』となり、場合によっては暴力を振るわれることすらある。 だからゆっくりたちは装飾品に触れられることを嫌がり、取られた場合は取り返すために躍起になり、酷い時は他のゆっくりの装飾品を奪うこともあるという。 ちなみに死んだゆっくりの装飾品はその時点で死臭のようなものが漂い、身に着けてもすぐにバレるらしかった。 まったく、ゆっくりの生態はワケが分からなくて興味深い。 「かえしてね! ゆっくりかえしてね!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2はジャンプして爪楊枝に結びつけたリボンに食いつこうとするが、俺はギリギリのところで枝を固定しているため、届かずに落下してしまう。 「ゆ、ゆーっ! とどかないよ、どうしてー!?」 無駄な努力だと気付かず、半泣きでリボンに飛び掛る赤ちゃんゆっくり霊夢2。 うはー、かーわえー。 今俺の中では今すぐリボンを返して慰めたい気持ちとこのまま必死なゆっくりを観察したい気持ちが大体4 6くらい。 別にゆっくりが憎くてこんなことしてるわけじゃないしな。 ゆっくりは普通に可愛いと思う。 そして可愛いからこそ、こうして悪戯をしたいと思うのだ。 「ほらほら、どうしたー? もう少しで届くぞー」 「いじわるしないでかえしてね!」 息を切らしながらも、それでも死活問題なので意味の無い苦労を重ねる赤ちゃんゆっくり霊夢2。 姉妹ゆっくりたちも、その光景を固唾を呑んで見守っている。 目の前でリボンを取ったから一応姉妹だということを認識しているらしい。このままリボンを取り返せなかったら姉妹扱い出来なくなるから頑張って欲しい、といったところか。 ゆっくり魔理沙は体積が大きくなった分、箱の中の酸素が薄くなってしまったからか、とても息苦しそうだった。 おっと、これはいかん。 俺はゆっくり魔理沙の箱の蓋を開き、ゆっくり魔理沙の口が蓋側になるよう調節してやった。 「ゆ?」 困惑した様子で俺を見つめるゆっくり魔理沙。助けてもらえたのは嬉しいが、何故お兄さんがそんなことを、といった表情だ。 俺はにこりと微笑むと、爪楊枝からリボンを引き抜き、呼吸のために大きく口を開けていたゆっくり魔理沙の口内に放り込んだ。 「ゆっくり!?」 慌てて吐き出そうとするゆっくり魔理沙を押さえつけ、口が箱に押し付けられるような位置に調整し直す。箱内部はキツく狭いので、これで口を開くことは出来まい。 そして俺は一連の光景を呆然とした様子で眺めていた赤ちゃんゆっくり霊夢に、わざとらしいくらい大袈裟に言った。 「わー、お前のお母さん、お前のリボン飲み込んじゃったぞ!」 「ゆっ!? ……ゆっ……」 「リボンを失ったゆっくりがどうなるか、勿論お前のお母さんが知らないわけないよなぁ? つまり、お前のお母さんは、知っててわざと飲み込んだんだな!」 「んーっ、んんーっ!!?」 違うよ、間違いだよ、といった風に身体を小刻みに揺らすゆっくり魔理沙。己の口で俺の言い分を否定したいに違いない。 リボンを外して口に入れたところをちゃんと目撃したよね、と言いたいのだろう。 だが、赤ちゃんゆっくり脳の単純さを侮ってはいけない。既に母への信頼が0になっていたところに、俺の言葉が乾いた大地に落とした水のように染み渡ったのだ。 赤ちゃんゆっくり霊夢2にとって、俺はもう眼中に入っていない。こいつにあるのは『母が自分のリボンを食べた』その一点だけだ。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅう゛う゛うう゛ううう゛うぅぅ゛ぅ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅう゛うぅ゛ぅ゛ぅぅぅ!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2は涙と共に絶叫を上げ、ゆっくりにあるまじき凄まじい怒りの表情で母の入った箱に体当たりを仕掛けた。 「ひどい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ!!! ゆ゛っぐり゛じね゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 壁に当たって跳ね返っても、また果敢に体当たり。 ゆっくりとしてのアンデンティティを奪った相手を完全に抹殺しようとする、野生の生物としての本能。 憤怒。憎悪。殺意。 そしてそれらの悪感情を一心に浴びせられるのは、 「ん゛んっん゛ん゛ん゛ん゛んんんっー!!!」 今までこの赤ちゃんゆっくりを愛情込めて育て上げた母、ゆっくり魔理沙だ。 これまでの遠くから罵声を浴びせられる、ある意味まだ余裕があった間接的攻撃と比較して、これは直接自分を害しようとする行為を見せ付けられる最上級の拷問だ。 嗚呼、このゆっくり魔理沙の絶望と傷心と阻喪の入り混じったこの表情をカメラに保存して一生残しておきたいっ! 人はこのゆっくり魔理沙を哀れに思うだろうか。 でもしょうがないよね。 悪いことしたのはあっちだし。 この状態で赤ちゃんゆっくり霊夢2が家から逃げ出そうとすることはないだろう。 そう考えた俺は、一旦家の外に出ることにした。 扉の横には、加工所で購入した大小二つの箱が置いてある。 俺はそのうち、小さな箱を手に抱えた。 大きさは掌に収まるサイズ。 遠目から見れば結婚指輪を収納するアレに似ているかもしれない。 もっとも、中に入っているものはそんな幸せアイテムとは似ても似つかないものなのだが…… 「ゆ゛っぐり゛じな゛い゛でじね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!!」 扉を開けて家に戻ると、まだやっていた。 昨夜から今に至るまでで、ゆっくり魔理沙の精神はどれだけ磨耗しただろうか。 虚ろな眼でただ虚空を眺めているだけの生物になりかけている。 これ以上は危険だな。 破壊してしまっては面白さが半減どころの騒ぎではない。 まだ赤ちゃんゆっくりはたくさんいるのだ、これが終わったら少し休憩にしよう。 俺は体当たりを続けている赤ちゃんゆっくりを摘み上げ、その身体に糸を巻きつけ始めた。 身体を縛るロープ代わりである。 「ゆっ!? はなしてね!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2は俺の手からぴょんと逃れて離れようとするが、糸の長さまでしか遠くに行くことが出来ない。 糸がぴんと張ったところで無様にぶしゃっと床に潰れ、ゆーゆー泣き始めた。 「それじゃ、ご開帳っと」 糸の先を左手の小指に巻きつけ、俺は外から持ってきた箱を開けた。 中に入っているのは、 「ちょっと、とかいはのありすをはやくだしなさいよね!」 生後まだ二週間にも満たない、赤ちゃんゆっくりアリスである。 大きさは赤ちゃんゆっくり霊夢2よりほんの少し大きな程度。 俺はその赤ちゃんゆっくりアリスの身体に、赤ちゃんゆっくり霊夢2と同じように糸を巻きつける。 「な、なにするのよ、ゆっくりできないじゃない!」 ぶーぶー文句を垂れる赤ちゃんゆっくりアリス。 だけど俺が用があるのはプライドの高い普通のゆっくりアリスではなく、他のゆっくりから恐れられている性欲魔人としてのゆっくりアリスである。 俺は糸の先を今度は右手の小指に巻きつけると、赤ちゃんゆっくりアリスの身体を人差し指で揺すり始めた。 「ちょ、ちょっと」 最初は嫌がって離れようとする赤ちゃんゆっくりアリス、だが次第に熱を帯び始め、呼吸が荒くなっていく。 ゆっくりを発情させることはゆっくり霊夢にやってあげているので日常茶飯事だが、発情しがゆっくりアリスの様子はゆっくり霊夢のそれとは大分違っていた。 口元のゆるみっぷりは半端無く、熱も溶けるんじゃないかってくらい上昇している。息も荒く、重い病気にかかった人間のようだ。 そして何よりも、目がヤバい。白目の部分を血走らせ、獲物を探して右往左往している瞳の動きは、はっきり言って気持ち悪いを通り越して、怖い。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ!!!」 指を離そうとしたら、物凄い勢いで擦り寄ってきた。俺の指を孕まそうとしてるんだろうか。 俺は若干の恐怖を感じながら、赤ちゃんゆっくりアリスを箱から出して床に降ろしてやった。 すっかり発情した赤ちゃんゆっくりアリスの視線の先には、先刻から繋がれた糸をどうにかしようとぴょんぴょん飛び跳ねていた、赤ちゃんゆっくり霊夢2の姿。 「れ、れれれ、れ゛い゛む゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆ、ゆゆっ!!?」 とても成熟していない赤ん坊とは思えぬ素早さで赤ちゃんゆっくり霊夢2に襲いかかろうとする赤ちゃんゆっくりアリス、赤ちゃんゆっくり霊夢2はその剣幕にビビって逃げ出そうとする。 ピン。 「ゆべっ!?」 糸が最大限まで張り詰められ、赤ちゃんゆっくり霊夢2は勢いよく転倒する。 その間に距離を詰める赤ちゃんゆっくりアリス、その口からはご馳走を前にした獣のように涎が溢れまくっている。 「が、がわ゛い゛ぃい゛い゛いよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ゛ぉぉれ゛い゛む゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆーっ!?」 まさに絶体絶命、赤ちゃんゆっくり霊夢2が慄いて悲鳴を上げる。 赤ちゃんゆっくりアリスは狂気の目で、赤ちゃんゆっくり霊夢2に飛び掛った。 「り゛ぼん゛の゛な゛いれ゛い゛む゛もぞう゛じゃな゛いれ゛い゛む゛もあ゛り゛ずの゛ごども゛をう゛ん゛でぇぇぇぇぇぇ!!!」 ピン。 「れ゛い゛っむ゛ぐぅ゛!?」 しかし、ギリギリの位置で糸が届かず、赤ちゃんゆっくりアリスも転倒してしまった。 「ど、どう゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!? ごう゛びざぜでよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ!!?」 涙を溢れさせながら、それでも相手を孕ませるために前に出ようとする赤ちゃんゆっくりアリス。赤ちゃんゆっくり霊夢2からすれば、恐怖以外の何者でもない。 「さて、今こうして俺が糸を持っているから、均衡が保てているわけですが」 俺は奇妙な静止状態に陥った空間に、静かに言い聞かせるように告げる。 「俺がこうして少しでも糸を緩めると」 言いながら、赤ちゃんゆっくり霊夢2の糸を結びつけた小指を少しだけ前に出してやる。 「ゆっ、はなれたよ!?」 その分糸にゆとりが出来、赤ちゃんゆっくり霊夢2は危機からほんの少しだけ遠ざかることになった。 ゆっくりアリスは歯をギリギリ食いしばって悔しがっている。怖っ! 「逆にこっち側の糸をゆるめると」 今度は右手を前に。 すると赤ちゃんゆっくりアリスを押さえつけていた糸が緩み、ゆっくりアリスは猛牛のような勢いで赤ちゃんゆっくり霊夢2に接近する。 最初の時に比べてかなり近付いており、吐く息がお互いに届くくらいだ。 だけどくっつくことはかなわない。流石俺、ナイス調節。 「こうなるわけだ」 「や、やめてね! ありすのいとをゆるめないでね!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2が涙声で俺に訴えかける。 当の赤ちゃんゆっくりアリスは既に相手を妊娠させること以外頭にないのか、俺の言葉が耳に届いていないようでハァハァ言いながらじっと赤ちゃんゆっくり霊夢2だけを見つめていた。 こいつ本当に赤ちゃんなのか? まったく、ゆっくりアリスという種族は末恐ろしい。 「では、ここで問題です」 俺は膠着状態に陥った二匹をしばらく観察した後、足で器用にゆっくり魔理沙の入った蓋を開けた。 そのまま足先でゆっくり魔理沙の身体を回転させ、口をしゃべれる位置にまで持ってきてやる。 勿論、ジャンプして逃げられないように押さえつけるもの忘れていない。 「ゆっくり魔理沙が答えられたら赤ちゃんゆっくり霊夢の糸をゆるめてあげます。間違えたなら赤ちゃんゆっくりアリスの糸をゆるめてあげます」 「ゆ……」 ゆっくり魔理沙はまたか、とでも言うように眉を顰めた。 だけど娘の命がかかっている。どうせ選択権もないし、やらざるを得ない状況だ。 ゆっくり魔理沙は何か言おうと口を開きかけ、 「やめてよね!」 と、怒りの篭った声が割り込み、口を噤んだ。 驚いてそちらを見ると、そこには赤ちゃんゆっくりアリスから少しでも離れようと身体をひしゃげながら、母に敵意を向ける赤ちゃんゆっくり霊夢2の姿があった。 「おかあさんがこたえたられいむしんじゃうもん! ゆっくりできなくなっちゃうよ!」 「そ、そんなことないよ! おかあさんはれいむのために」 「だまっててね!」 キッ、とキツい視線を浴びせられて言葉を詰まらせるゆっくり魔理沙。 やがて、じわじわとまた涙が溢れ出してくる。 「ど、どう゛じでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ!!?」 「おかあさんがいるとゆっくりできないからだよ! おかあさんはゆっくりしね!」 吐き捨てるような口調。 今まで黙ってことの成り行きをハラハラと見守っていた他の赤ちゃんゆっくり霊夢たちも、賛同したように口を揃えて非難の声を上げた。 「そうだよ、おかあさんはゆっくりしね!」 「いもうとをかえしてね!」 「おかあさんのせいでぜんぶこうなったんだ!」 「おかあさんはもうゆっくりしなくていいよ、ゆっくりしないでとっととしんでね!」 リボンを失って少し時間が経過したゆっくりより、子供を裏切った母への怒りのほうが大きいようだった。 ここに、ゆっくり魔理沙の味方は一人もいない。 そろそろ『そんなれいむたちはまりさのこどもじゃないよぉぉぉ!』とキレるかと思いきや、俺が思ってた以上にゆっくり魔理沙はあくまでも母親だった。 「はやくもんだいだしてね!」 罵声の雨の中、それでも我が子を守ろうとするゆっくり魔理沙の姿に、俺はちょびっとだけ感動してしまった。 まぁ、全員助かった後で説明したらきっと分かってもらえるだろうという、ご都合脳なだけなのかもしれないが。 でも心を動かされたのは事実なので、問題は簡単なやつにしてやろう。 「では問題。答えは簡単、身体が弱くて喘息気味のゆっくり種といえば何でしょう?」 「ゆっ! 答えはぱちゅりーだよ!」 自信満々の回答。余程答えに間違いがないと確信しているのだろう。 ゆっくり魔理沙は今までの陰鬱な雰囲気はどこへやら、明るい表情で「さあ、赤ちゃんをたすけてね!」とのたまっている。 赤ちゃんゆっくり姉妹も、そんな母親を驚いた、だけど少し誇らしげに見つめていた。 やはり、母は母だったのだ、と。 俺はふっと笑い、 「ぶー、残念外れです」 僅かに見えた希望という光を問答無用で叩き潰した。 「な、なんで!? からだが弱いゆっくりはぱちゅりーしかいないよ!?」 納得出来ない様子のゆっくり魔理沙が俺に抗議の目を向ける。 俺はこの場にいる全ゆっくりに聞こえる大きさで、正しい解答を発表する。 「問題はちゃんと聞こうな。最初に言ったじゃないか。『答えは簡単』って。だから答えは『簡単』だよ」 「……ゆっ!?」 そんな馬鹿な話があるか、といったゆっくり魔理沙の表情。 何か変なことを言う前に、俺はまた芝居がかった声を出した。 「本当に赤ちゃんを助けるつもりがあったのなら、ちゃんと答えられたはずなんだけどなぁ。やっぱり赤ちゃんなんてどうでもいいから、助ける気なんてさらさらないんだね!」 「ち、ちがうよ! まりさは」 「はい、罰ゲーム!」 俺はゆっくり魔理沙が言い切る前に、右手の糸を緩めた。 今までお預け状態で気が狂いそうなほど我慢を強いられていたゆっくりアリスの枷が外れ、嬉々とした様子で赤ちゃんゆっくり霊夢2に飛びつく。 「ゆ゛ーっ!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2は逃れようとするが、そちらの糸は緩めていないので、逃げ場はない。 「はぁはぁはぁ、れ゛い゛む゛ぅぅぅ、がわ゛い゛い゛ごをだぐざんづぐろ゛う゛ね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 「や、やだよ! れいむはまだあかちゃんなんてつくれないよぉぉぉぉぉ!!!」 「あ゛あ゛っあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁっい゛い゛よ゛おおぉぉぉぉぉぉれ゛い゛む゛うううぅぅぅぅぅぅぅんほぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛ーっ! ゆ゛っぐりや゛め゛でぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 激しい律動。 赤ちゃんゆっくりアリスは摩擦で燃え上がるんじゃないかと心配になるくらい自分の身体を赤ちゃんゆっくり霊夢2に擦りつけ、赤ちゃんゆっくり霊夢2は涙をぼろぼろ流して逃れようとしている。 押し潰して殺してしまわないよう、成長したゆっくりアリスではなくその子供を連れてきたわけだが、そのゆっくりを押さえつける力は親にも引けをとらない 自分が気持ちよくなれば相手はどうなってもいいという身勝手な性行為。 元となったアリスさんとまったく似ても似つかぬ(まぁ、ゆっくりの大半は元の人物と似てないんだが)横暴さに、少し気分が悪くなってきた。 涙目で必死に逃げようとする赤ちゃんゆっくり霊夢2は可愛いんだけどね。 他の姉妹たちはその光景を見て、「はやくにげてね!」「おねえちゃんにへんなことしないでね!」と騒いでいる。 ゆっくり魔理沙は子供を助けようと、俺の足の下でもがいていた。 そうこうしてるうちにやがて快楽の頂点に達したのか、赤ちゃんゆっくりアリスは感極まった声を上げた。 「イグッイグよ゛おおぉぉぉぉれ゛い゛む゛うううぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「や゛だぁぁぁぁイギだぐな゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、……すっきりー!」 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」 一際大きな声を上げたと思ったら、ゆっくりアリスはぶるっと一瞬震え、そして満ち足りた表情で身体を離した。 赤ちゃんゆっくり霊夢2は壮絶な表情で固まっている。 やがて、にょき、と赤ちゃんゆっくり霊夢2の頭から蔦が伸び始め、植物界の常識を覆す速度で実を生らせた。 しかし、本来は子供が生るべきその場所は、泥団子しか存在しない。 当然だ。成熟していないどころか、この世に誕生してまだ一週間以上経過していないゆっくりが、子孫を残すことなんて出来るはずもない。 赤ちゃんゆっくり霊夢2は苦痛としか形容出来ない表情のまま黒く朽ち果て、その短い命を終えた。 「ま゛りざのあ゛がぢゃんがあ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁぁ!!!!!!」 ゆっくり魔理沙はまたもや子供を救うことが出来なかった悲しみで、何度目になるのか分からない涙を流す。 しかしそこに浴びせられるのは当然、 「なにうそのなみだをながしてるの!?」 「おねえちゃんをころしたのはおかあさんだよ!」 「かえして! おねえちゃんをゆっくりかえしてねっ!!!」 更に憎悪を増した子供たちからの罵倒の言葉だ。 先程、俺が言った言葉をまた思惑通りに受け止めてくれたらしい。 ゆっくり魔理沙はその言葉を聞いて、また悲しみに打ち震えて暴れだす。 俺はそんな光景に満足しながら、すっきりして落ち着いた様子の赤ちゃんゆっくりアリスを持ち上げ、残り四匹となった赤ちゃんゆっくりたちの箱の中に落とした。 「ゆっ!?」 予期せぬ闖入者、しかも相手は先程自分たちの姉妹を殺したばかりのゆっくり。 姉妹は警戒して距離を開くが、赤ちゃんゆっくりアリスがその辺を事情を知っているわけがなく。 「しょうがないから、あんたたちいなかもののゆっくりををとかいはのありすのおともだちにしてあげてもいいよ!」 とゆっくりアリス特有の上から目線で話しかける。 しかし、その言葉は姉妹の神経を逆撫でする結果にしたかならなかった。 ゆっくりアリスの丁度後ろに陣取っていた一番の長女、赤ちゃんゆっくり霊夢1が、まったくの無警戒の赤ちゃんゆっくりアリスのお尻に噛み付いた。 「ゆ゛ーっ!?」 突然の痛みに吃驚して悲鳴を上げる赤ちゃんゆっくりアリス、それが皮切りだったように、他の姉妹たちもゆっくりアリスに突撃した。 「ゆっくりしねっ!」 「や、やめなさいよ、やめでぇぇぇぇ!!!」 「ゆっくりしねっ、ゆっくりしねっ!!!」 「あ、あ゛り゛ずいな゛がも゛の゛でい゛い゛がら゛ぁぁぁぁぁ!!! だずげでえええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 四方からのリンチにたまらず赤ちゃんゆっくりアリスが泣き叫ぶが、姉妹たちは聞く耳持たずに行動を続ける。 その様子を眺めながら、俺はゆっくり魔理沙の耳元にそっと囁きかけた。 「おやぁ、子供たちは赤ちゃんゆっくりアリスを殺すつもりだぞ? 止めなくていいのか?」 「ゆっ、ゆーっ!!!」 ゆっくり魔理沙はじたばた暴れるが、閉め直した箱が開くはずもなく、徒労に終わる。 ゆっくりがゆっくりを殺害することは禁忌だ。 例えどのような理由があろうと、ゆっくりがゆっくりを殺害すると他のゆっくりたちから何されようと仕方の無い状態になってしまうらしい。 だからもし他のゆっくりを殺さなければならない状況の場合、親が相手のゆっくりを殺害し、子供たちに非難が及ばないようにする。 それがゆっくりたちの流儀……らしい。 ちなみに性行為は殺害の範疇に当たらない。 「み、みんな、やめてね!」 ゆっくり魔理沙は子供たちを止めようとするが、興奮した子供たちにその声は届かない。 やがて赤ちゃんゆっくりアリスの皮が裂け、中のカスタードが漏れ始めた。 「……ゆっ!?」 漂い始めたいい匂いに、たまらず姉妹たちはごくりと唾を飲み込んだ。 朝は何も食べていないに等しく、一粒の米と少量のお菓子しか食していない空腹のゆっくりにとって、その香りはあまりに魅力的すぎた。 「お、おいしいよ、これ!」 「ひぎぃ!? ありすのかすたーどすわないでぇぇ!!!」 「ゆっくりたべるね!」 「あまくておいしいね!」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 「い゛や゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 空いた穴という穴からカスタードを吸われ、赤ちゃんゆっくりアリスが悲鳴を上げる。 だが段々力を失って悲鳴が小さくなっていき、そして脱力し、その場に崩れ落ちた。 絶命。 子供たちがゆっくりを殺してしまった光景に、ゆっくり魔理沙はただただ泣き叫ぶしかなかった。 そしてその表情を見て、俺はまだまだ満足するのだった。 残り四匹。 まだまだ快感を味わえる。 続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3732.html
※虐めじゃないかも 俺はゆっくりが嫌いだ 作者:古緑 俺はゆっくりが嫌いだ 俺にゆっくりする気なんて無い 朝から晩まで仕事で忙しい身だ でも別に殴ったり蹴ったりしたいわけじゃない 嫌いなだけだ 餡子嫌いだから食うのも嫌いだ 「ゆっくりしていってね!」 この台詞も好きじゃない どんなゆっくりも同じことを言う 俺の趣味はバスケットボールだし ゆっくりしたものはあまり好きじゃない 「こわいかおしてないでゆっくりしてけばいいのに」 こいつはどっから入ってきてんだよ ゆっくりれいむだか何だか知らねぇが そこは俺んちの庭だ お前の『ゆっくりプレイス』じゃないんだよ 何も無い庭だけどお前みたいなのがいると鬱陶しい 出て行け 「ゆっ?ゆっくりしていってよー!」 ほら!出て行け!まったく ああいうのが『ゆっくりの押し付け』ってヤツか ゆっくりしてる暇なんてないんだよ 今日はとっとと寝たいんだ 「おじさんをゆっくりさせるよ!」 …また入ってきたのか 門はしっかり閉めた筈なんだがな どうでもいいが俺はまだお兄さんって歳なんだよ いいや、こんなのに構ってる暇は無い 「ゆっくりしていってね!」 もう放っておく どうせ雨戸を閉めちまうんだ しつこいゆっくりセールスに付き合う気はねーよ じゃあな押し付け販売員 「おふとんでゆっくりしていってね!」 デカイ声だ 春が近いとはいえまだ朝は少し冷えるな 古い鉄の雨戸は冷たくて指が凍えそうだ 「ゆっくりしていってね!」 …何のつもりなんだおめーは 今都市部で話題の乞食ゆっくりか? だったらここに来たのは間違いだ 家には碌に飯なんて無いんだよ わざわざ乞食にやる気もないからヨソあたんな 「おじさんはよゆうがないね!」 家出るときついでに摘み出しとくか 鬱陶しい生物だ それにしても本当に余裕ないな 朝飯は駅前のコンビニでランチパックかな 「ゆっ?ゆっくりはなしてね!」 おい二度と家の門くぐんじゃねーぞ 帰ってきた時またそのツラ見せたらブン殴ってやる 「ゆっくりしていってよ…」 やっぱり俺はゆっくりが嫌いだ 変なのに構ってたせいでいつもより遅れてるじゃねぇか 急がないと 「なかなかとかいはなまりさね!す…す…すっきりしましょほおぉおお!」 「やべろおおぉおお!!れいばーあでぃずはゆっくりじねえぇえぇ!!」 あの野良ゆっくりありす まだ生きてたのかよ 散歩中の飼いゆっくりに襲いかかってやがる 「ばでぃぶっ!」 あ蹴られた 本当に見苦しい生き物だな あんなのまでいるからゆっくりは嫌いだ うあぁ疲れた 帰って柿ピービールが平日の唯一の楽しみです 「ゆっくりおかえりなさい!ゆっくりしていってね!」 「むししないでね!」 てめーどっから湧いてきてんだ不思議生物の特権か ブン殴るって言ったの忘れたのか 「おぉこわいこわい」 『プシュ』あぁイイ音 ん?やらねーからとっとと失せろ 家ん中には入れねーぞ 一歩でも入り込んだら蹴りくれてやる 「つんつんしないでゆっくりすればいいのに」 舐めてんのか?二度とここまで来れねーように 今度は車で 「おじさんをゆっくりさせるよ!」 …だいたいそのゆっくりって何なんだよ? それに俺をゆっくりさせるって昨日も言ってたな? 「ゆっくりはゆっくりだよ! おじさんはあさからばんまでぜんぜんゆっくりしてないね! たまにはゆっくりしなきゃいつかゆっくりできなくなっちゃうよ!」 お前がいると駄目だわ ビールが全然旨くねぇ 明日の朝一で町外れの山まで車で捨ててきてやる それがヤなら今夜中に失せるんだな 「ゆっくりよるをあかしていってね!」 やらねーと思ってんのか ナメやがって やっぱり俺はゆっくりが嫌いだ ぽつぽつと大きくなる屋根を叩く音でふと目が覚めた まだ午前二時だ 明日の朝は雨かな もうザーザー音がするぐらい強い雨に変わってる まぁどうせ車で行く気だしどうでもいいや あのウザイ饅頭生物載っけてかなきゃだし そんな事を寝ぼけた頭で考えてると あのウザイ顔が困ってるような気がした 『ゆっくりは水に弱く雨に当り続けると死んでしまいます』 そんなどこかで聞いたような言葉が頭の中に浮かぶと 俺は布団から飛び起き 一階の雨戸まで急いで駆け下りていった 「オイ!」 「ゆっくりしてないねおじさん れいむはゆっくりできてるよ」 困った顔はさっき頭に浮かべた顔そのままだった 雨戸の外に雨を避ける場所は無く ゆっくりれいむの釣り上がっていた眉はハの字に曲がり リボンはびしょびしょになって濡れた髪に垂れていた 「………」 「ゆっ?」 俺はゆっくりが嫌いだ だけどその命そのものが嫌いなんじゃない 死にかけた命が目の届くところにいたら 手を貸してやりたいと思う事はきっと悪い事じゃない その命を助ける事で誰かが困る事もあるのかも知れない だけど命を救いたいと思う事自体はきっと悪い事なんかじゃないはずだ コイツの場合だったら玄関先を貸してやる事ぐらいいいだろう 起きたら雨は上がっていた 時計は7:35を示している あのウザイ生き物に関わっていたせいか 早起き出来なくなってる気がする こっから車で外れの山なんて行ってたら完全に遅刻だ 「ゆっくりしていってね!」 はいはいゆっくりゆっくり そりゃ挨拶なのかお前等の場合 なに我がモノ面で家の中跳ねてんだよ 昨晩拭いといて良かったわ 雨が上がったんならとっとと出て行きな 「おそとでゆっくりしていくよ!」 さてそろそろ行かなきゃな お日様も出てるし、たまにはバスなんか使わず駅まで歩いてくか まだまだ間に合うだろ 「ちょっとはゆっくりできるようになったみたいだけどまだまだだね!」 なんか満足そうだなお前 コイツどうしよう? まぁそのうちどっか行くだろ ゆっくり考えてきゃいいや それにしても生意気なヤツだ やっぱり俺はゆっくりが嫌いだ 寒いから帰りはバスにした 柿ピーとビールの補充は忘れない 明日は休みだしアイツに影響されたワケじゃないが たまには家でゆっくり過ごすのも悪くないだろう 「ゆっくりしていってね! おじさん!あしたはゆっくりするんでしょ?」 すっかり庭に居着いてるなお前 ゆっくりの事は嫌いだし追い出してやろうと思ってたが こいつの騒音で文句言うヤツはこんな田舎にはいないし 家に帰った時誰かが声をかけてくれるのは悪くない ペットなんてつもりは更々ないが ただっ広いだけの庭に勝手に生かしておくぐらいいいだろ 疲れてっからもう雨戸締めて寝るぜ 「あまどさんこんばんわ!ゆっくりしていってね!」 馬鹿だなアイツは AM 10:00 完全に影響されてるな でも悪い気はしない どうせ今日はゆっくりしようと決めてるんだ 飯でも買いにいくか 「ゆっくりしていってね!」 はいはいゆっくりゆっくり …そういえばこいつと時間を気にせず顔を合わせるのは初めてだな 俺はゆっくりが嫌いだが話をするのが嫌いなワケじゃない ちょうどいい機会だし色々聞いてみるか お前さ、何で俺につきまとうんだ? 「なんどもいわせないでよね! おじさんをゆっくりさせるためだよ!」 それについては癪な事だが成功したようだな 本当に変なゆっくりだな 人をゆっくりさせようとするゆっくりなんて 古過ぎるゆっくりはもう化石レベルだぞ なんでそんなに人をゆっくりさせたがる? 「だれかをゆっくりさせるとれいむもゆっくりできるよ …それにこのせかいのみんなはゆっくりしてないよ」 この世界?お前はどこから来たっていうんだ? 「れいむはやまでゆっくりしてたら いつのまにかここにいたよ」 何言ってんだお前 ゆっくり語は理解出来ないね じゃあお前、どうしてこんな何も無い庭に住み着いてんだ? 何も食うもんないだろ? 「くささんもむしさんもたくさんいるよ?」 あぁ…手入れしてないからな そんなモンでいいのかよ 都市部の奴等で草なんて食うヤツはもういないのに お前好きなモノとかあるのか? 「ゆ?れいむはゆっくりするのがすきだよ!」 そうじゃねぇよ 食べ物ってことだ 今まで食ってきた中で一番旨いかったものとか、 あるだろ? 「だったらたいやきさんだね! でもかんたんにはてにはいるものじゃないよ! さとまでいかないともらえないものだからね!」 あっそ ちょっと出かけてくるわ 「おじさん!」 なんだよれいむ 「いっしょにゆっくりしようね!」 別にアイツが好きって言ったから 鯛焼きを買ってきてやるワケじゃない 俺は餡子の詰まった鯛焼きが大好きだからな 一つぐらい買って分けてやるぐらいならいいだろ それにしてもところどころワケの分からないヤツだ やっぱり俺はゆっくりが嫌いだ でも悪くない あんなに自然体のまま誰かと話すなんて 母が死んで以来かもしれない 鯛焼きなんて買うのは産まれて初めてだ スーパーの先に屋台があるからついでにそこで買ってくか ゆっくり歩いていこう それがさっきまでの事 今俺の目の前には頭から蔦を生やし 真っ黒になったゆっくりれいむがガラス窓の前で横たわっている かつての笑顔は苦悶の表情に変わり全く動かない ガラス窓の前で死んでいたのは家を守ろうとしてくれたのか? 抱き上げるともちもちと弾力のあった体は端の方からポロポロと崩れ落ちていった 呆然としたまま庭を見ると叢の陰に隠れた木製の塀に ゆっくりれいむぐらいの小さな穴がある ずっと庭なんて見てなかったから忘れてたが 俺が子供の頃に蹴って開けた穴だ いくら追い出しても入ってくるワケはこれだったんだ 『これ』をやったヤツもここから入ってきたんだ どうしてゆっくりれいむがこうなったのかは分かってる ゆっくりれいむの頭に成った黒い実の中に ゆっくりありすの実があるからだ この辺の野良ゆっくりありすなんて一匹しかいない さっきすれ違ったのがそいつだ 俺はゆっくりが嫌いだ 命を気紛れに奪う事は悪い事だと思っている しかし今から俺がやる事は間違っていないと思う 友を殺した仇を討つ事はきっと間違っていない 震える拳を握りしめ 仇の住処の公園に向かいながら俺はそう真剣に考えていた