約 632,112 件
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/858.html
かわいいゆっくりゲットだぜ!!外伝-下(ごめんなさい)-おまけ ゆっくりれみりあ(れみりゃ)の捕食種設定ありです。俺設定もありです ゆっくりの捕食シーンと死亡するシーンと戦闘するシーンがあります。 ひどいあつかいのゆっくりと性格の悪いゆっくりがいます 3章のプロローグと重なる部分あります 投棄場と悩みましたがSSに載せる事にしました。助言をくれたスレの方たちありがとうございます 残酷なシーン、捕食と戦闘を【以下略の内容】として下にのせました。 ゆっくりの共食い(?)や死体食い(?)が一番下【小屋のゆっくり達】にあります。 上記の文章を理解てそれでもよければどうぞよんでください 【以下略の内容】 「きたんだぜ!」 「ほんとうにやるのまりさ! れいむはこわいよ!」 「がんばるんだぜれいむ! れみりゃをゆっくりぷれいすまでゆうどうするんだぜ! おちびちゃんのためなんだぜ!」 「!! れいむがんばるよ! かわいいおちびちゃんたちのためだから」 そういうとゆっくりれいむは巣の奥に入っていった。 まりさはその様子をみてでてきた時に捕まえてやると周りの仲間に合図を送った。 最悪、この駆りの混乱に乗じて群れから逃げればいいとまりさは考えていた。 「うーうー♪ うーうー♪」 「ゆっくりしてね!! はやすぎだよれみりゃ!」 すごい勢いでれいむの頭の上をくわえてれみりゃが飛んでいく 唖然としていたがまりさ達はそのれみりゃを追いかけ始めた。 ついた場所は、まりさたちが住んでいるゆっくりプレイスの小屋だ。 れみりゃはれいむを下におくと「うーうー!」といいながら飛び回ってる。 その様子をみにきたのか子ゆっくりと中にいたリーダ格の5匹もでてきた。 赤ゆっくりは入り口の段差から降りれず中からこっちをみている。 おきてを破った若い成体まりさが大声で叫んだ。 「れみりゃはゆっくりできないんだぜ! そのれいむをおそったんだぜ!」 「うーうー?」 自分は道に迷ったゆっくりを巣に連れてきただけなのにどういう事だろうか? リーダー格のまりさがれいむに聞いた 「ほんとうなのかだぜ。れいむ?」 「…ほんとうなんだよ…れみりゃにかじられたあながりぼんにあるでしょう?」 「みせるんだぜ!」 確かにれいむのリボンに2本の犬歯で空けられたような穴がある これがれみりゃに齧られた証拠なのかもしれない。 実際は、自分たちだけでは勝てるか怪しいので、若いまりさが群れの年長者をはめようとした作戦だった 「わかったらまりさとみょんでれみりゃをつかまえるんだぜ!」 「まりさはつかまえるきはないんだぜ!」 「どうしてなんだぜ?」 この若いまりさにかわからないかもしれないが自分はこの群れのために食べられることを栄光に思っている 自分は死ぬが自分のつがいのまりさの子供達が生き残ってくれればそれで満足なのだ。 彼らは冬のつらさを学んで立派に生きて子孫を残してくれる。 それで満足なのだ。そのことを若い世代のゆっくり達に伝えた。 若いまりさに従っていたゆっくりの中に動揺が走った。 なんとゆっくりとした意見だろうか自分達の愚かな行動との差を見せ付けられた気分だった。 だが若いまりさは驚くべき行動にでた。 れみりゃに噛み付き羽をもいだのだ。それを動揺している若いゆっくり達に投げた。 「うまいからたべてみるんだぜ!」 1匹のゆっくりが恐る恐る食べてみた少し固めの皮に暖かいジューシーな肉汁の餡 その匂いだけでよだれがたれてくる。ひとくちかじりついてみた。 「おいしいんだよ!」 その言葉を聞いた他のゆっくりも食べ始めた本当に美味しかった。 これをもっと食べたい。空腹の若いゆっくり達や話を聞いた若い世代の子供達がれみりゃに近づいていった その様子をみながら年長の世代は馬鹿なことをと思っていた。 多くの動物は子供の時に食べたものだけを食料と認識する。 今、れみりゃの味を知ったら大人になってから子供に何を食べさせる気なのだろうか。 リーダー格のまりさが群れの醜態ぶりをとめる為に声を荒げて叫んだ。 「やめるんだぜ!」 「たべたいんならわけてやってもいいんだぜ! そのかわりまりささまがりーだーなんだぜ!」 「そうだよ。れいむもおもうよ。おいしものをよういしたまりさがりーだーなんだよ!」 「とかいはなまりさがりーだーよ。いなかものはどこかにいきなさい!」 「わからないよー! ゆっくりできるれみりゃをたべれるのかわからないよー!」 「「「ちんぽ!」」」 群れが二つに分かれての戦いになりそうになっていた。 年長者を中心とした勢力(大人10匹、子ゆっくり20匹、赤ゆっくり50匹) 若い世代を中心とした勢力(大人20匹、子ゆっくり50匹) 数的には若い世代の勢力のほうが上だがみょんとゆっくりプレイスにろう城できる年長者を中心とした勢力も有利だ。 その時、左目より外側が無くなり自慢の羽を失ったれみりゃは死にかけていた。 自分の何はいけなかったもだろうか自分はこの群れのために頑張ったつもりだ 食料も集めたし頼まれ事もてつだった。 自分はゆっくりできるまんまぁー達の自慢の子供だ。 なのに自分は死にかけている…死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない… …死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない… …死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない… …死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない…死にたくない… まんまぁー達に会いたい…まんまぁー達に会いたい…まんまぁー達に会いたい…まんまぁー達に会いたい… まんまぁー達に会いたい…まんまぁー達に会いたい…まんまぁー達に会いたい…まんまぁー達に会いたい… まんまぁー達に会いたい…まんまぁー達に会いたい…まんまぁー達に会いたい…まんまぁー達に会いたい… まんまぁー達に会いたい…まんまぁー達に会いたい…まんまぁー達に会いたい…まんまぁー達に会いたい… ならばどうすればいいのか彼女はお月様に聞こうと空を見上げた。まん丸の赤いお月様に ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…ドクン ナラバ、カンタンジャナイノ、アノマンジュウヲ、タ・ベ・テ・シ・マ・エ・バ・イ・イ・ノ・ヨ 2匹のグループが対峙をしている時、若い世代の後ろのほうから悲鳴が上がった。 「やめてね! ゆっくりおろしてね!」 「ゆっくりしね!!」 一匹のゆっくりが5メートル以上の高さからはなされた 地面に叩きつけられ鈍い音をだして叩きつけられるゆっくりれいむ。 広がる静寂、目の前にいるのは…だれだ。悪魔のような羽・赤い目・見ただけで動けなくなる恐怖 それは・・・スカーレットデビル(紅い悪魔) 次に狙われたのは若い世代のリーダーまりさだ 「いだぁあ!!」 ゆっくりれみりゃがまりさの背中に噛み付き引きずっていく。 「ゆうー、ゆうー」 刺すような痛みの中捕食される恐怖に震えるまりさ。 次はサッカーのヘッデングのリフティングのようにまりさをうえにあげた。 残酷なサッカーはしばらく続き、もうゆっくりまりさは傷だらけでわずかに声をあげる程になっていた。 そして、気付いた時には中身の餡子だけをすわれていた 「う~♪ あまあまもっと~♪ 」 口の端から餡子を漏らしながら美味しそうに食べるれみりゃ。ゆっくり達にとっては本当に恐怖の具現である。 仲間が固まっているうちに、震えるばかりのゆっくり達に噛み付いては、引きちぎり、噛み付いては引きちぎり。 「ゆっくりしないでにげるんだぜ!」 リーダー格のまりさが言った時にハッとしたゆっくり達は様々な方向に逃げ始めた 虐めてもしょうがないので簡潔に書けば外に残ったゆっくりはほぼ全滅した。 れみりゃに食べられたり遊ばれたりしながら。 中には遠くに逃げれたものがいたかもしれないが…どうなったかわからない。 以下略の下に戻ってください 【小屋のゆっくり達】 「いそいでにげるんだぜ!」 恐怖に打ち勝ったリーダー格のまりさが言った。 その時にはれみりゃを食べた若い世代のゆっくりの大半とその子ゆっくり達が死んでいた。 まりさは小屋の中に逃げ込むと他のゆっくりがはいらないのを確認して本棚を動かした。 外ではゆっくり達の悲鳴が響き渡っている 本棚で入り口を閉めた時点で彼らの運命は決まってしまった。 入口は部屋でいうところの角の下のほうにあった。 ゆっくりは本棚を押すことはできても引くことはできない。 反対側にはか隙間が無く中から押すことができないのだ。 すなわち、唯一の外に出る手段がなくなってしまったのだ とはいえ先ほどのれみりゃの捕食の姿を見たゆっくり達が入り口を開ける気になることはなかったのかもしれないが・・・ 皮肉にも自分達の行いが仇となり餓死してしまう状況に陥っていた。 まりさは自分の行いの何が悪かったのだろうかと考えていた。 ぱちぇとれみりゃを利用して食料を大量に集めた。 みんながゆっくりできるように子供をたくさん生んだ。 その間違いに気付いた時には遅かったが・・・ れみりゃに食料探しを手伝ってもらったりもした 数の力によってれみりゃを自分たちの食料にしようとした。 れみりゃがゆっくプレイスに入れないように木の箱で入り口を閉めた。 自分だけは最後まで子供生まないように努力もした。 自分を食べさせることによって群れを生き残らせようとした。 なのに何故、ゆっくりできないのだ 残っているゆっくりは大人が自分も含めて3匹、子ゆっくりが20匹以上、 赤ゆっくりがつがいのありすとの子供を含めて50匹以上 幸か不幸かゆっくりの死体は小屋の中に1匹もない 本当はその正体を教えずに子供たち食べさせるつもりでいたがこの状況では説明するしかない 「みんなよくきくんだぜ! このなかでいちばんごはんをたべないのはあかちゃんなんだぜ!」 「…」 「だからおおきいゆっくりからいなくなればいきのこれるゆっくりがふえるんだぜ」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「 さいしょにまりさが『おたべなさい』をするんだぜ!」 「!!」 驚きの視線がまりさに集まってくる 『おたべなさい』とは名前の通り相手に食べてもらうことだ。 その瞬間に二つに割れるので痛みもを感じずに相手に食べられる手段だ。 もちろん食べられたものは死んでしまう。 「つぎにやるのはおとなのれいむなんだぜ!」 「わかっているよ! こどもたちのためだからがんばるよ」 「とかいはなありすが3ばんめね!」 「ありすはこどもがうまれるまでは『おたべなさい』をしなくていいんだぜ!」 「だったられいむが『おたべなさい』をするんだよ」 そう言ったのは子ゆっくりの中で一番大きなゆっくりれいむだった。 まりさは満足そうに頷いた。 自分とありすだけでも生き残る方法を考えもした。 が、それはあのれみりゃより自分がゆっくりできないと認めると感じてできなかった。 『もっとなかよくすればよかったんだぜ! ごめんなさいなんだぜ!』 そんな後悔をしながらまりさはみんなの前で大声で叫んだ 「さあ、おたべなさい」 その瞬間にまりさのからだは二つに割れた。 子ゆっくりたちが最初に食べようとするのを成体れいむがとめた 「さいしょはあかちゃんたちだよ」 そういうと赤ゆっくりたちに二つに割れたまりさをおいた。 赤ゆっくりは自分たちのリーダーを食べていいか悩んでいたが意を決して泣きながら食べ始めた 「「「「「むーちゃ、むーちゃ、しあわちぇー♪」」」」」 」 「「「「「しあわちぇーじゃないけど むーちゃ、むーちゃ、しあわちぇー…」」」」」 純粋にご飯が食べれて喜んでいる赤ゆっくりとおいしいけど幸せではない赤ゆっくりがいるようだ。 まりさの4分の1を食べたぐらいで子ゆっくりたちの番になった。 やはり、幸せなゆっくりと幸せでないゆっくりが半々ぐらいのようだった。 次の日に成体れいむが『おたべなさい』をした。 次の日は子ゆっくりの中で一番大きなゆっくりれいむが『おたべなさい』をした 次の日のゆっくりは『おたべなさい』をしなかった。 成体ありすのように子供がいれば食べられないと思い妊娠をしようとしたのだ。 結果、黒くなった塊ができてそれを残ったゆっくり達で食べた。 次の日、成体ありすは自分の子供が下に落ちたのを確認して『おたべなさい』をした その晩、悪魔がきた…残ったゆっくり達は怖くて何かいっていたが覚えていない。 次の日のゆっくりは『おたべなさい』をしなかった。 子供の中でもおおきい者達がすっきりをして『おたべなさい』から逃げようとしたのだ 結果、黒くなった塊が数十個できてそれを残ったゆっくり達で食べた。 次の日、黒くなった塊を残った赤ゆっくりと子ゆっくり達で食べた 次の日、人間さんが来て残っていたゆっくりの死体を埋めてしまった。 カゴに入れるとどこかに連れて行かれた。 そして、いま、自分たちはゆっくり屋という店で暖かくておいしいものを食べながら暮らしている。 れみりゃはとても怖いということもゆっくり屋のゆっくり達に毎日言い続けた 自分たちのために犠牲になったゆっくり達の分もゆっくりするために生きようと思いながら暮らしている。 自然の厳しさ…。 野生として生きるゆっくりは、こんなことがあるのかもしれませんね。 旧愛でWikiとしてのこの場所ですが、個人的にはこのくらいの描写は仕方ないと思ってます。 -- 通りすがりのゆっくり好き (2009-02-28 20 41 28) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/2229.html
前ページへ 「仕方ない、買ってやるよ」 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」 「やったどぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 れみりゃとちびりゃが歓声を上げながら「ばんじゃ~い」と両手を頭上に上げている。 やれやれ、今月は少し苦しかったんだが。 れみりゃと姉貴には勝てない、ってか? せめてマッチョリーには勝てるようになりたい…。 「うっう~♪さっそくかいにいくぞぉ♪」 「れみぃじゅんびしてくるどぉ♪」 「まんまぁもだぞぉ♪」 「お、おい…」 いや、今から買いに行くなんて言ってないんだが。 俺もう疲れたんだけど。 「おにいさんもゆっくりじゅんびしてねぇ~ん♪」 「あぅ~♪あぅ~♪」 こいつらすっかり乗り気だし。 あ~もう…行くしかないのか…。 俺は重い重い腰を上げることにした…。 「すぴあ☆ざ☆ぐんぐにるだっぞぉ♪」 「まんまぁかりしゅまだどぉ♪えれがんとだどぉ♪きゅーてぃくるだどぉ♪」 「そんなにほめられるとぉ♪まんまぁてれちゃうぞぉ♪」 ああ…財布が随分軽くなってしまった。 いや、紙幣で払ったんだから気のせいだろうけど…。 俺の諭吉が一枚消えてしまった…。 野口英世なんていらんかったんや…いや、いるけど。 「つぎはれみぃのばんだどぉ♪」 「うっう~♪おちびちゃんかりしゅまだぞぉ♪ぷりでぃだっぞぉ♪」 「あぅあぅ~♪」 まあ、こいつらが喜んでるから良しとするか。 俺は気持ちを切り替えることにした。 いい加減腹減ったしな。 「すぴあ☆ざ☆ぐんぐにるだどぉ♪」 「ぎゃお~!もけ~れはおぜうさまのぐんぐにるにやられてしまったぞぉ♪」 「おい、れみりゃ、ちびりゃ。飯食うぞ飯」 「う~♪ぷっでぃん♪ぷっでぃん♪」 「あぅあぅ~♪ぐんぐにるとぷっでぃんはとってもゆっくりできるどぉ♪」 れみりゃとちびりゃの笑顔はゆっくり出来る。 グングニル代はそれで返してもらったと思うことにした。 れみりゃとちびりゃのスマイル=プライスレス(金では買えない貴重なもの)なのだ。 俺にとってはな。 ,.-─- 、 ∧_,,∧\書/ /\ ( e'ω'a)∩‐ | 後 ⊂ / ヽ/ r‐' / `""ヽ_ノ 企画SSの合間に書いてみました。 選択肢実装実験+私のれみりゃ分補給の為ですw もし皆さんがこのような立場になったならどちらを選びますか? あと、買ってあげないという選択肢は無いのでそれはご了承ください。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1870.html
たっぷりしていってね! ======================== ≪はじめに≫ 一部、他作品の名称・設定等を使わせていただいております。 ちょっと変化球気味かもしれません(汗) 以上、ご理解ご容赦ください。 ======================== たぷたぷ。 たぷたぷ。 「うぁぁーーっ! やめるんだどぉーーっ!」 ここは友人の家。 私は、居間で椅子に座ってくつろいでいた。 そして、私の膝の上には、1匹のれみりゃが座っていた。 私に構ってもらいたかったのか、無防備にトテトテ歩いて来て膝の上に乗ると、 手に持った絵本を朗読するよう催促してきた……そんなれみりゃだ。 「もうやめでぇぇーー! きもぢわるいどぉーーー!」 けれど、先ほどまでニコニコしていたれみりゃは、 今は叫びながら嫌悪感を露わにしていた。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「ううう~~~~っ!」 大粒の涙を目に溜めて、嫌悪を堪えようとする、れみりゃ。 だが、なにも私はこのれみりゃを虐めているわけではない。 ただ少し、自分でも押さえられない、"手癖"をやってしまっているだけなのだ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「うぁぁーーーん! おにぃーしゃん、たしゅげでぇぇーーーっ!!」 とうとう、れみりゃは泣いて助けを乞いだした。 その声を聞いて、キッチンから一人の男が現れる。 男はこの家の主で、このれみりゃの保護者で、私の友人だった。 「……ったく、なんだっていうんだ」 「ごめん。ついやってしまった……」 「その癖……まだ直っていないのか」 溜息をつく友人。 私は、素直に友人に詫びて、れみりゃを放してやる。 「ううーーーっ! ごあかっだどぉーーー!」 れみりゃは、私から離れ、一目散に友人の下まで走っていく。 そして、ガシっと友人の足にしがみついて、ズボンに顔を埋めた。 「はいはい、もう大丈夫だから泣くんじゃない」 れみりゃの頭を、帽子の上からグシグシ撫でてやる友人。 友人の存在に安心したのか、れみりゃは次第に泣きやんでいく。 「さすがね」 「まぁ、仕事だからな」 この友人の仕事とは、ゆっくりのブリーダー業だ。 このれみりゃも、仕事の一環で家に預かっているとのことだった。 「お前こそ、ブリーダー業に戻る気はないのか?」 「無理よ。今も見たでしょ? この"病気"は直っちゃいない」 私は苦笑して、両手を友人に見せる。 その手を見て、れみりゃはビクっと体を震わせて、友人の背後に隠れてしまう。 そして、隠しきれていない大きな下ぶくれ顔をこちらに向けて、怯えたように声をだす。 「う~~、 おねぇーしゃんはゆっくりできないひとだどぉ……」 「ほら、この通り。ゆっくり達にもすぐ嫌われてしまうでしょ?」 そう、私も昔はゆっくりのブリーダーだった。 だが、この手癖……いや一種の病気のせいで、ゆっくりを適切に扱えなくなってしまったのだ。 「やれやれ、こいつのことを相談しようと思ったんだけどな…」 友人は、れみりゃの頭を撫でて落ち着かせる。 「う~~~♪ なぁ~でなぁ~でぇ、しゅきしゅき~~♪」 顔をほころばせる、れみりゃ。 緊張の解けた、端から見ていてもわかる"ゆっくりしている"状態だ。 「こいつも、れみりゃ種にしてはよくできたヤツなんだけどな……」 「ええ、大したものよ……その例の"自分は肉まん"という主張以外は、パーフェクトに近い」 「……その一点が大問題なんだけどな」 肩をすくめる友人。 彼曰く、このれみりゃは"自分を美味しい肉まん"と言って聞かないのだそうだ。 そんなれみりゃらしからぬ認識を矯正するというのが、彼の受けた依頼らしい。 だが、彼はその依頼に手を焼き、相談がてらグチがてら、 かつてのブリーダー仲間である私を家に招いたというわけだ。 「まぁ、いいさ。ゆっくりメシでも食っていってくれ」 「……ええ、そうさせてもらうわ」 私は、精一杯気を使って微笑み顔を作る。 この時、私の中では食欲よりさらにプリミティブな欲求が渦巻いていた。 その欲求、即ち私の"手癖"であり"病気"とは、 「常に何かを手で弄んでいないと気が済まない」というものだ。 摩擦症などとも似ているが、私の場合単なる性的な嗜好ではなく、 それを行わないと落ち着けない・動悸が荒くなるなどの、神経症に近い精神疾患の一種だった。 そして、ゆっくりのブリーダー業をしていた時、私は気付いてしまったのだ。 ゆっくりの柔らかく弾力のある体こそ、私の手が求めてやまない感触だということに。 以来、私はゆっくりを見ると、無意識的に"たぷたぷ"とゆっくりの体を愛撫してしまうようになった。 ゆっくり達は、最初のうちこそスキンシップとして受け入れてくれるが、 やがて病的な私の愛撫に嫌悪感と敵意をむき出しにするようになる。 ゆっくりに原因のある敵意なら叱りつけて矯正するべきだが、 この場合、叱って矯正すべきは私の手癖の方だ。 仕方なく、私はゆっくりのブリーダー業をやめることにした。 (……しかし、仕事を変えたところで私の悪癖が治るわけでもないか) 久しぶりに、ゆっくり相手にやってしまった"手癖"。 ブリーダー業から引退せぜるを得なくなった忌まわしき病だったが、 それでも、やはり欲求には逆らえそうになかった。 ああ、どんなに理性で否定しようとも、ゆっくりは良い。 中でも、れみりゃ種は格別だ。実に、私の手をそそらせる。 私は、久しぶりにドス黒い欲求に従うことを決めた。 * * * 数日後、私は森の中でキャンプを始めていた。 そして、森でキャンプを張り出してから三日後、ついに目標が現れた。 私は、茂みの中に身を隠して、その目標の様子を窺うことにする。 「うー♪ うー♪」 ピンク色のおべべ。 ふくよかで丸っこい体と短い手足。 申し訳程度に背中にチョコンとついた小さな黒い羽。 下ぶくれた顔に浮かべるニコニコ顔。 それは、胴体付きのゆっくりれみりゃだった。 それも1匹や2匹ではない。 木々の隙間から、楽しそうな声を上げて、れみりゃ種が次々集まってくる。 「「「う~~~♪」」」 れみりゃ達が集まってくるこの場所。 森の奥、木々に囲まれた中にひっそり広がる花畑。 ここは、ブリーダー業をしていた時に見つけた、ゆっくりれみりゃ達の"社交場"だった。 通常、野生のれみりゃ種は群れを作らない。 だが、甘えん坊で寂しがり屋なところの有るれみりゃ種は、 "一緒にゆっくりできるお友達"とやらを求める傾向がある。 それ故に、れみりゃ種は定期的に"しゃこーかい"と呼ばれる集会を開く。 手みやげに捕まえたゆっくりや、果物を持ち合って、「うぁうぁ」歌ったり踊ったり楽しむのだ。 「うっうー♪ いっくどぉー♪」 「まってましたどぉー♪」 「きょうもかぁーいいどぉー♪」 私の視線に気付かず、ワイワイ騒ぎだすれみりゃ達。 一番体つきのふくよかなれみりゃが、切り株の上に登り"うあうあ"ダンスを踊り出し、 他のれみりゃ達が、その1匹のれみりゃを眺めながら、いっしょにリズムを刻んでいく。 「「「うっふぅ~~~~ん♪ しゅびぃどぅばぁ~~~♪」」」 れみりゃ種がコミュニケーションや感情の発露、示威行動やマーキングにも用いる踊り。 専門用語で言うところの、"のうさつ☆ダンス"という奴だ。 「う~う~♪ うぁうぁ~♪」 「うー! きゃわいいどぉー♪」 「しゅっごいどぉー! しぇくしぃーだどぉ!」 切り株の上で踊るれみりゃに対し、他のれみりゃ達は賞賛を贈る。 「えれがんとだどぉー♪」 「おぜうさまこうほは、れみりゃにきまりだどぉー!」 切り株の上のれみりゃは踊りを止め、頬を赤く染めてかぶりを振る。 「う~~~、てれちゃうどぉ~~~~♪」 "おぜうさまこうほ" あのれみりゃ達は、そう言った。 数日前に話をしたブリーダーの友人曰く、 最近れみりゃ種の間で、広まりつつある新手のステータスらしい。 どこで誰が、いやそもそも本当にやっているのかも定かではないが、 れみりゃ種達のコンテストのようなものがあり、そこで認められたれみりゃは、 "おぜうさまこうほ"として丁重に扱われゆっくりすることができる…… と、何故かれみりゃ種達が信じだしているのだという。 半信半疑ではあったが、 目の前の光景を見るに、どうやらのその情報は本当のようだった。 (なら話は簡単……) 私は、切り株の上のれみりゃの姿を網膜に焼き付け、口角を歪ませる。 「うーー! 今日はおいわいだどぉーーー!」 「そうだどぉー! ぷっでぃーんでかんぱいだどぉーー」 れみりゃ種達は、予め持ち込んでいたれいむ種やまりさ種を手に取り合うと、 それらを一斉に天高く掲げて叫んだ。 「「「おぜうさまこーほにぃ~~♪ かんぱぁ~~いだどぉ~~♪」」」 ぱくぱく、ちゅーちゅー。 ゆっくりや果物を、口のまわりをベトベトにしながら食べていくれみりゃ達。 (そろそろ頃合いかな?) 私は、ガサッと茂みから立ち上がり、れみりゃ達の下へ歩いていく。 「「「うっ!?」」」 突然の人間の登場に、警戒するれみりゃ達。 だが、れみりゃ種は基本的に初対面の人間に対して怯えたり攻撃したりすることはない。 "こーまかんのおぜうさまである自分達は人間よりえらいんだ" "れみりゃたちは、とってもえれがんとでかわいいから、いじめられるわけない" "かわいいれみりゃ達のために、ぷっでぃーんをもってこさせよう" "れみりゃたちをゆっくりさせるためにつくすのは、目下の人間達にとって当然のこと" "もし、わるい奴やこあい人でも、さくやをよべばだいじょーぶ♪" そういった思考が、本能レベルでそなわっているゆっくり。 それが、れみりゃ種だからだ。 「う~~? おねーさんだれだどぉー?」 「ここはえれがんとでぷりちぃーなれみりゃ達のしゃこーじょうだどぉー♪」 「めしつかいのおねぇーさんは、かってに入ってきちゃだめだどぉー♪」 「まねかれざるきゃくだどぉー! まわれぇーみぎぃーだどぉー」 「でもでも~、れみりゃたちはやさしいからぁ~、ぷっでぃ~んもってきたらゆるしてあげるどぉ」 私は、れみりゃ達の言葉を気にせず、ツカツカ歩いていく。 目標はれみりゃ達の真ん中、切り株の上にいるれみりゃだ。 「れみりゃたちをむしするなどぉー!」 「おねーさんのぶぁ~~か! ぷっでぃんくれないとたべちゃうぞぉー!」 「だめなめしつかいだどぉー! さくやをよんでいじめでもらうどぉー♪」 抗議するれみりゃ達。 私は、そんなれみりゃを両手でかきわけて歩いていく。 「ぷぎゃ!」 「な、なにするどぉー!」 「れ、れみりゃのぴんちだどぉー!」 「さくやー! さくやはなにしてるんだどぉー!」 そして、私はとうとう切り株の前に辿り着く。 「う、うーー?」 切り株のれみりゃは、額にうっすら肉汁の汗をうかべて、じっと私を見上げる。 そんなれみりゃを、私もじっと見つめ返す。 「う~~~、そんなみつめちゃイヤ~~~ん♪」 ポッと頬をそめて、れみりゃはぶりっ子のポーズをとってイヤイヤ♪と首を振る。 「ダンス見せて貰ったわよ」 「う?」 「とってもゆっくりできたわ。あなたは素晴らしいれみりゃね!」 私は腰を屈めて、れみりゃと同じ目線にしてから、ニコっと笑いかける。 すると、れみりゃは見る間に警戒心を無くし、私に微笑みかけてきた。 「うーうー♪ おねーしゃんはなかなかみるめがあるどぉー! えらいえらーい♪」 切り株の上のれみりゃは、手を伸ばして私の頭を「いーこいーこ♪」と撫でる。 「さっしゅが、れみりゃだどぉー」 「おねーしゃん、れみりゃにメロメロだどぉー」 切り株の上のれみりゃを賞賛する、他のれみりゃ達。 「「「やっぱりおぜうさまこうほは、れみりゃに決まりだどぉー♪」」」 口を揃えるれみりゃ達。 切り株の上のれみりゃもまんざらでもない様子で、 照れながらも「うっうー♪」と胸を張っている。 その様子を見て、私はここぞとばかりに溜息をつく。 「はぁ……」 「う? どーしたんだどぉ?」 「……れみりゃは、おぜうさまこうほになりたいのよね?」 「そのとおりだどぉ~♪ れみりゃは~おぜうさまこうほになっちゃうんだどぉ~♪ だからぷっでぃんもってくるどぉ♪」 私は、れみりゃの尊大な素振りを確認したのち、 オーバー気味に首を左右に振って、表情を曇らせる。 「……ざんねんだけど、それは無理ね」 「う~!?」 私は、すっと立ち上がって切り株の上のれみりゃを見下ろす。 「だって、紅魔館のれみりゃたちは、あたなよりずっとダンスも上手くて、毎日厳しいレッスンを受けているんだもの」 「うっ!?」 「あなた達がこうやってゆっくりしている間にも、他のれみりゃ達は"おぜうさまこうほ"になるべく努力しているのよ」 「ううーっ!?」 「そんな何匹もの"エリート"れみりゃ達をおしのけて、あなたは"おぜうさまこうほ"になれるのかしら?」 「だ、だいじょーぶだどぉ! れ、れみりゃだって!」 「いいえ! 私は紅魔館のれみりゃ達を見たことがあるわ! 残念だけどあなたよりずっとプリティーでエレガントよ!」 「うがぁーん!」 ショックを受ける、れみりゃ。 私の言葉を聞くたびに、切り株の上のれみりゃから余裕の笑みが消えていく。 周囲のれみりゃ達も、徐々にざわつき始めている。 「う~~~~~! れみりゃどうすればいいんだどぉ~~~~!!」 切り株の上のれみりゃは、目を潤ませて、ペタンと座り込んでしまう。 私は、しめしめと心の中で笑みをこぼす。 いま言っていることは、殆どが出任せだ。 ブリーダー業をしている時に、紅魔館のれみりゃ達を見たことがあるのは事実だが、 "おぜうさまこうほ"になるためのレッスンなど受けているわけがなかった。 そもそも、紅魔館自体"おぜうさまこうほ"なんてものを募集していないのだから。 けれど、こんな他愛も無いウソも、目の前のれみりゃには効果絶大だった。 「う~~~~っ」 頭を抱え込むれみりゃ。 私は、そんなれみりゃの肩にポンと手をかけ、優しく微笑みかける。 「大丈夫、安心して」 「うー?」 私は、落ち込んでいる切り株の上のれみりゃを抱き上げる。 そして、赤ん坊をあやすように、"よしよし"と軽く上下にゆらしてあげる。 「うー♪ だっこきもちいいどぉー♪」 ニコニコ笑う、れみりゃ。 私はこみ上げてくる"手癖"の衝動を必死に押さえ込みながら、"演技"を続ける。 「私があなたを"おぜうさまこうほ"にしてあげる」 「う?」 「私はこう見えても一流のブリーダーよ! 私の下でレッスンを積めば、必ず"おぜうさまこうほ"になれるわ!」 「うー!?」 最初、私の言っている意味を理解できなかったのか、れみりゃはキョトンとしていた。 だが、ゆっくりその意味を咀嚼して、目を輝かせ始めるのに、大して時間はかからなかった。 「おねーしゃんのところへ行けば、おぜうさまこうほになれるどぉ?」 「そうよ! 私のレッスンを受ければ、あなたなら必ずなれるわ!」 「うっうー♪ やったぁどぉー♪」 私に抱かれたれみりゃは、両手を上げて、 さっそく"おぜうさまこうほ"になったつもりで喜び出す。 「きめたどぉー! れみりゃおねーしゃんのれっすん、うけてあげるどぉー!」 上から目線なのが多少気になったが、私はその程度で友好的態度を崩すことはない。 「そう! それじゃさっそく私の家へ行きましょう! 今日から個人レッスンのはじまりよ!」 「う~~~♪ こじんれっすんだどぉ~~♪」 意味を理解しているのかは怪しいが、 れみりゃは"個人レッスン"という響きに優越感を覚えているようだ。 まるでお姫様が庶民にそうするように、他のれみりゃ達に手を振り、出立を告げる。 「みんなぁ~、れみりゃはおねーしゃんといってくるどぉ~♪」 「「「う~~! ゆっくりしてくるんだどぉ~~♪」」」 ある者は誇らしげに、ある者は寂しげに、 森のれみりゃ達は、私に抱きかかえられているれみりゃにエールを送る。 「も~ちろんだどぉー♪ ゆっくりしてくるどぉー♪」 仲間達の応援をゆっくり受け止めながら、私の腕の中で応えるれみりゃ。 「ふふふ……」 私は、こらえきれず笑みを漏らしてしまった。 どのれみりゃも、私のレッスンでゆっくりできると思っているらしい。 「それじゃ、行きましょうか?」 「うーー! ゆっくりいくどぉー♪」 元気よく返事をする、れみりゃ。 私はれみりゃを丁重に抱きかかえながら、 裏を返せば、れみりゃが逃げられないように確保しながら、その場を後にした。 続く? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1992.html
ゆっくり加工場系2 ゆっくり霊夢の生涯? 虐 捕 ゆっくり加工場系5 プチゆっくり魔理沙の生涯? 虐 制 料 ゆっくり加工場系8 ゆっくりれみりゃの生涯 虐 料 アリス×ゆっくり系5 ゆっくりパチュリーの生涯? 虐制共 霊夢×ゆっくり系10 ゆっくり一家の生涯 『博麗神社編』(前編)? そ家 霊夢×ゆっくり系11 ゆっくり一家の生涯 『博麗神社編』(後編)? 制家料共 ゆっくり加工場系15 ゆっくり魔理沙の生涯『加工編』?虐機料 ゆっくりいじめ系251 ゆっくりえーきの生涯(前編)制家 ゆっくりいじめ系252 ゆっくりえーきの生涯(後編)虐性 ゆっくり加工場系22 ゆっくり達の生涯 『加工場脱出編』(前編)?虐家機 ゆっくり加工場系23 ゆっくり達の生涯 『加工場脱出編』(中編)?虐性機料 ゆっくり加工場系24 ゆっくり達の生涯『加工場脱出編』 (後編)?虐環機 ゆっくりいじめ系670 ゆっくり魔理沙の生涯『子育て編』虐捕 ゆっくりいじめ系901 ゆっくりレティの生涯 (前編) ゆっくりいじめ系902 ゆっくりレティの生涯 (後編) ゆっくりいじめ系1165 ゆっくりれみりゃの生涯 『希少種への進化編』 ゆっくりいじめ系1844 ゆっくり達の生涯 『冬篭り編』 (プロローグ)? ゆっくりいじめ系1845 ゆっくり達の生涯 『冬篭り編』 (前編)? ゆっくりいじめ系1846 ゆっくり達の生涯 『冬篭り編』 (中編)? ゆっくりいじめ系1847 ゆっくり達の生涯 『冬篭り編』 (後編-1)? ゆっくりいじめ系1848 ゆっくり達の生涯 『冬篭り編』 (後編-2)? ゆっくりいじめ系1849 ゆっくり達の生涯 『冬篭り編』 (エピローグ)? ゆっくりいじめ系2429 ~ゆっくりありす生涯『取り替え子編』(表)~? ゆっくりいじめ系2430 ~ゆっくりありす生涯『取り替え子編』(裏-1)~? ゆっくりいじめ系2431 ~ゆっくりありす生涯『取り替え子編』(裏-2)~? ゆっくりいじめ系2751 ゆっくり達の生涯 『加工場の日常編 プロローグ(A)』虐制家共料無 ゆっくりいじめ系2752 ゆっくり達の生涯『加工場の日常編 プロローグ(B)』虐家希無 ゆっくりいじめ系2753 ゆっくり達の生涯 『加工場の日常編 ライン工程』虐無 ゆっくりいじめ系2986 ゆっくり達の生涯 『加工場の日常編 にくまん工程』
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/766.html
ティガれみりゃ その2 ======================== ≪はじめに≫ 『ティガれみりゃ』の続きになります。 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 パロディネタおよび、自分設定有りです。 虐め……というのとは少し違うかもしれません。 すみません、まだ続きます。 文字数設定の関係上、改行が変な箇所があるかもしれません。 (あまりにも読みづらいようでしたら、修正版をupします) 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 ======================== 2、異常震域 月夜の下に広がる森。 小動物達が俄にざわめきだし、 彼等がさきほどまで寝床にしていた木々が、バキバキと折れていく。 その原因は、全て一体の巨大生物によるものだった。 よったよった、どったどった。 よったよった、どったどった。 短い足で、不器用なステップを踏みながら、 その巨体とは裏腹に、実にゆっくり進んでいく巨大生物。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 その巨大生物、通称・ティガれみりゃは、 歌いながら楽しそうに夜の森を往く。 見た目は、中綿たっぷりの、だぶだぶくたくたの恐竜型ぬいぐるみ。 恐竜の口の部分がぱっくり開き、そこにれみりゃ種特有の、憎たらしげな下ぶくれスマイルが覗いている。 だが、その滑稽な見た目に反して、その体は尻尾をあわせれば20メートルにも届かんとする巨大さを誇る。 短い手足をバタバタさせて、「うぅーうぅーうぁうぁ♪」とやるたびに、足下の生物達は生命の危険にさらされる。 それゆえ、数多くの命が暮らすこの森にあっても、 意図的にティガれみりゃに近づこうとする者は、まずいない。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪ とぉ~ってもぷりちぃ~~ティガれみりゃ~~♪』 本人はといえば、そんなことは気にも留めず、相変わらずの御機嫌ノリノリで森を進む。 いっそさっさと通過するなら、 動物達や森で暮らす他のゆっくり達にとっても、まだマシだった。 けれど、ティガれみりゃにそんな空気を読む力があるはずもなく、 よったよった、えっちらおっちら。木を倒し、ゆっくりを踏みつけ、動物達を脅かして歩いていく。 「ゆゆゆっ! ティガれみりゃはゆっくりしないで、どっかへいってね!」 「ゆぅ~~! おかーしゃん、こわいよぉぉっ!」 ティガれみりゃの足下、逃げ遅れたれいむの親子が、木々の影に隠れていた。 こんな恐い場所からはさっさと逃げ出したかったが、 ティガれみりゃが歩く度に震動が起こり、なぎ倒された木々が倒れてくるせいで、 おちおち移動することもできずにいた。 「おかーしゃーん! おかーしゃーーん!」 「だ、だいじょうだよ! あかちゃんのことは、れいむが守るよ!」 身を寄せ合い、震える親子。 そんな親子の願いが通じたのか、 ティガれみりゃは親子を踏みつけることなく、 そのすぐ横を通過して、森の奥へと向かっていく。 「ゆぅ~~~? なんとか助かったよぉ~~!?」 「やったねぇ~~! おかーしゃーん!」 顔を見合わせ喜びあう、れいむの親子。 だが、次の瞬間。 どっすん! 「ゆべぇぇぇっっ!」 「ゆぐぎゃぁぁぁ!」 ティガれみりゃの尻尾が振り下ろされ、れいむの親子はぺちゃんこに潰される。 残されたのは、地面に貼り付けられた、あんこの染みだけだった。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~~♪』 もちろん、ティガれみりゃが一々そんなことに気付くはずもない。 ティガれみりゃは、その後も歩き続け、30分後目的地の前で足を止めた。 『う~~、ついたどぉ♪ さっすが、れみりゃ! すらっとのびたあしは、あるくのもはぁやいどぉ~♪』 自分の短足・鈍足を棚に上げ、自画自賛するれみりゃ。 ちなみに、ここまで歩いてきた平均歩行速度は、その巨体からすれば驚くほど遅い時速4kmしかない。 うぁうぁダンスをしながらの歩行とはいえ、この遅さこそ、この突然変異種が"ゆっくり"であることの証ともいえる。 『う~♪ みんなぁ~まっててねぇ~♪』 猫なで声をあげるティガれみりゃ。 ティガれみりゃの目の前は崖になっており、その中の一角に沢山の岩が積み上げられていた。 岩の奥には巨大な洞穴が広がっており、そこがティガれみりゃの巣穴となっていた。 "こーまかんのあるじは、留守のあいだのとじまりもかんぺきだどぉー♪" ティガれみりゃはそう言って、洞穴の入り口に岩を積み上げ、栓をしていたのだ。 『うー、岩はじゃまだどぉ! ぽいするのぽーい♪』 言うや否や、ひょいひょいと岩を持ち上げ、ぽいぽい投げ捨てていくティガれみりゃ。 その岩を積み上げたのが自分自身であることは、既に忘れてしまっているらしい。 『うー♪ あいたどぉ♪』 積み上げられた岩のバリケードは瓦解し、その先に大きな洞穴が姿をみせる。 長年をかけて山の地下水が空けた空洞は、ティガれみりゃが余裕で入れるほどの大きさだ。 『れでぃ~は、しっかりかぎをしめるどぉ♪』 洞穴の中に入ったティガれみりゃは、再び岩を積み上げ、洞穴の入口に栓をしていく。 『うっ? おかしぃーどぉ、岩がたりないどぉー?』 手近な岩を全て積み上げても、洞穴の入り口はまだ半分ほどしか塞がれていなかった。 ついさっき、ティガれみりゃ自身が岩を「ぽぉ~い♪」してしまったためだ。 『う~~! だれか岩をもってきてぇ~~!』 叫ぶが、当然そんな誰かがいるわけもない。 『うー・・・』 ティガれみりゃは、岩をあきらめ、洞穴の奥へと歩を進める。 すると、そこにはティガれみりゃの帰りを"待っていなかった"たくさんのゆっくり達がいた。 「「「うーっ!! ゆっくりしねっ!」」」 『う~♪ ふりゃ~ん、ただいまだどぉ~♪』 ティガれみりゃが満面の笑顔を浮かべた先、 そこには、いるはいるは、胴体付き・無しあわせて100体近いゆっくりフランたちがいた。 「「「しねっ! ふらん達をとじこめるティガはゆっくりしねっ!」」」 笑顔を向けるティガれみりゃに対して、ゆっくりフラン達は明確な敵意を露わにする。 全員が中空に舞い上がり、臨戦態勢をとりながらティガれみりゃを睨み付けている。 『うっう~♪ そんないじわる言っちゃダメなんだどぉ~♪』 その敵意をまるで理解していないのか、 ティガれみりゃは、よったよったとフラン達の下へ近づいていく。 だが、フラン達の集団は、すぅーと静かに移動し、ティガれみりゃが近づいたぶんだけ距離をとる。 『うぅ~~?』 不思議そうに顔を傾けるティガれみりゃ。 額に少し汗を浮かべつつ、今度はお気に入りのフレーズとポーズを決める。 『ぎゃお~♪ いっしょにあそんでくれないと、た~べちゃうぞぉ~♪』 バッチリだ。 ティガれみりゃは自分に惚れ惚れした。 こんなにもかっこよくて、ぷりちぃ~な自分の姿を見せられては、 照れ屋さんなフラン達もメロメロになって、自分に寄ってきてくれるにちがいない。 手を大きく広げて、いつでもフラン達を受け止められるように準備するティガれみりゃ。 ……だが。 「「「…………」」」 ゆっくりフラン達は微動だにせず、軽蔑するような冷たい視線をティガれみりゃに送るだけだった。 『うぅ~~~~……』 ティガれみりゃは困ってしまった。 そして、なんだか鼻の奥が少し熱くなっているのを感じた。 『うー♪ ふりゃーん♪』 すすすっ。 『まつんだどぉ~♪』 すすすっ。 『うっう~うぁうぁ~♪』 すすすっ。 ティガれみりゃは何度となく、フラン達とのスキンシップを試みようとアプローチを繰り返す。 しかし、フラン達は、そんなティガれみりゃに敵意だけを向けて、空中を静かに逃げ回るだけだった。 『うぅぅぅぅ……。なんで、れみりゃをむしするんだどぉ……』 目の端にたまる涙が流れ出さないよう、鼻の上に力を込めてこらえるティガれみりゃ。 その瞬間、ティガれみりゃは大事なことを思い出し、ぱぁーっと顔を輝かせる。 『うー! そうだどぉ! 忘れるところだったどぉ!』 ティガれみりゃはゴソゴソとポケットに手をつっこみ、一本の枯れ木を取り出して掲げた。 『うっうー♪ れみりゃとくせいのおだんご~♪ とぉーってもおいしぃどぉー♪』 ティガれみりゃが掲げたもの。 それは、ちょうど昨晩、ティガれみりゃが山間の窪地に築かれたゆっくり達の集落を遅い、 ゆっくり達を枯れ木に突き刺して作った、れみりゃ印の"とくせいゆっくりだんご"だった。 きっとフラン達はおなかが空いていて、それで遊ぶのを嫌がっているに違いない。 そう結論づけたティガれみりゃは、そのゆっくりだんごをフラン達に向ける。 「「「…………」」」 しかし、フラン達は何の反応も示さなかった。 それもそのはず。 本来、生粋の捕食種であるフランは、生きた獲物を捕らえ、嬲り、そして圧倒的な力を誇示しながら食すのだ。 野生の動物がそうであるように、誇り高き捕食者は、生きた獲物にしか興味を示さない。 死んだ獲物を食べるなど、食べ残しで生をなすハイエナか、意地汚い被捕食種ゆっくりくらいのものだ。 少なくとも、このゆっくりフラン達は、その矜持を忘れてはいなかった。 『うぅ? どうしたんだどぉ? おいしぃおかしだどぉ?』 ちっとも興味を示さないフランに、戸惑うティガれみりゃ。 『う~! たべないと、た~べちゃうぞ~!』 おかしなことを口走りつつ、ティガれみりゃは無理矢理ゆっくりだんごをフラン達に近づける。 けれど、フランはゆっくりだんごを食べることはなく、空中からティガれみりゃを睨むだけだった。 「うぅー……どぉーしていうこときいてくれないんだどぉー……」 どっすん! ティガれみりゃは目尻に涙を浮かべながら、地面に座り込む。 その刹那。 何匹からのフランが、この時を待っていたかの如く、 急にスピードを上げて飛行を開始した。 目指すは、この洞穴の出口! このフラン達は、空腹にも耐えながら、 ティガれみりゃに隙ができるこのタイミングを狙っていた。 「「うーっ!!」」 赤い弾丸となって、洞穴の暗闇を裂くフラン達。 『うーっ!?』 遅れながらも、数匹のフランが脱走しようとしていることに気付くティガれみりゃ。 しかし、いくら巨大なティガれみりゃといえ、敏捷性は小型のゆっくりフラン達の方が上。 ゆっくりフラン達の脱出は成功するかに思えた。 『うーっ!! 逃げちゃだめぇーっ!!!』 ティガれみりゃは、もっていたゆっくりだんご……もとい立ち枯れた木を、 いままさに洞穴の外へ出ようとしていたフラン達に投げつけた。 「「ううーっ!」」 いきおいよく飛んでいった木は、見事フランに命中する。 そして、尖った枝はフラン達に突き刺さり、彼女達を"ゆっくりだんご"の一つにしてしまった。 「「ううっ!!??」」 その光景を見て驚く、他のゆっくりフラン達。 彼女達は、今回の脱出計画がうまくいき次第、同様の手でこの洞穴から抜け出そうと考えていた。 『だぁーめぇぇぇ! ふりゃんはれみりゃとあそぶのぉぉっ!!』 洞穴の中にティガれみりゃの叫びが響き渡る。 『う~~~! 逃げちゃ、めぇ~~なの! はやくもどってくるのぉ!』 ティガれみりゃは、ゆっくりだんごと化したフラン達へ呼びかける。 「う、うぅぅぅぅ……」 「ゆ、ゆっぐり、じねぇぇぇ……」 他ならぬティガれみりゃの手によって、ゆっくりだんごとなったフラン達は、 当然動くこともできず、地獄の苦しみを味わっていた。 極めて高い生命力と再生力を持つゆっくりフランであったが、 数日前にこの洞穴に連れ込まれてからといたものの、食べたのは最初から洞穴内に住んでいたゆっくりや、小動物だけ。 ろくな食事もとらぬまま体を貫かれたフラン達は、本来の再生力も発揮できず、間もなく息を引き取った。 『う~~? ふりゃ~~ん?』 フラン達の様子がおかしいことに、ようやく気付いたティガれみりゃ。 が、時すでに遅く。ゆっくりだんごとなったフランは、二度とティガれみりゃの声に反応することはなかった。 『うぁぁぁぁぁっ! なぁんでだどぉぉぉっっ!?』 数匹とはいえ、フランが死んでしまったことを知り、 ティガれみりゃはこらえていたものを一気に噴出させる。 『うわぁぁぁぁぁぁん!!』 その鳴き声は凄まじく、洞穴を反響して振るわせる。 『しゃくやぁー! しゃくやはなにしてるんだぉー! ふりゃんがぁーーーっ!!』 来るはずもない、遺伝子に刻み込まれた従者の名を連呼するティガれみりゃ。 ドタンと大の字に倒れ込み、仰向けのまま手足をバタバタさせる。 『ひっく、ひっく、ひっく……うぅー…ふりゃーん……』 嗚咽を続けるティガれみりゃ。 『うぅ……うぅ……』 ティガれみりゃの涙は本物であった。 ティガれみりゃには、"ゆっくりフランを自分の巣に閉じこめて愛でようとする"習性があるのだ。 ゆっくりフラン達からすればたまったものではないが、 ティガれみりゃからすれば良かれと思ってやっていることだった。 『……うぅ……うぅ?』 ひっくひっくと肩で泣くティガれみりゃ。 やがて、涙もかれてくると、今度は眉根をへの字にしかめさせた。 『うぅー……泣いたら、おなかがへったどぉー♪』 今までの涙がウソのよう。 すっかりいつも通りの下ぶくれスマイルを作って、自分のお腹具合を心配しだすティガれみりゃ。 れみりゃ種……ひいてはゆっくり全体に見られるこの思考の切り替え・責任転嫁は、 あるいは"辛いことはさっさと忘れる"ことでゆっくりしようという、ゆっくり達なりの知恵なのかもしれない。 『うっうー♪ 今日はひさしぶりにぷっでぃーんが食べたいどぉー♪』 そう言うと、れみりゃは自らの体を起こそうとする。 起こそうとして……違和感を覚える? 『う~、はやくぷっでぃん食べにいくどぉ♪』 せーの! 体を起こそうとするティガれみりゃ。 『う~♪』 よいしょ! 『うーーっ!』 こらしょ! 『うーーっ! うーーーっ!!』 ティガれみりゃは何度も上半身を起こそうと試みる。 しかし、起きあがれるのはせいぜい頭部のみで、 筋肉のついてないお腹はすぐにプルプル震えだし、力尽きてしまう。 ずてーん! 体を起こすことができず、ティガれみりゃは後頭部を地面にぶつける。 『ぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~っ』 後頭部の痛みに、ティガれみりゃは鼻の上のあたりを真っ赤にしながら、声にならない嗚咽をもらす。 その後も何度か起きあがろうとするが、結果は同じだった。 『うわぁぁぁぁん! 起きられないどぉーーーっ!』 泣き出すティガれみりゃ。 ゆっくりゃザウルスにも見られる傾向であるが、 ティガれみりゃもまた、仰向けに倒れてしまうと中々立ち上がることができないのだ。 『しゃくやぁぁぁ! はやくおこしてくれないと、なーいちゃうぞぉーー!』 既に泣いてるって! 洞穴に残されたゆっくりフラン達が、心の中で一斉に突っ込む。 そして、捕食種の本能がそうさせるのか、起きあがれないティガれみりゃを見ると、 ゆっくりフラン達は一斉にティガれみりゃへの攻撃を始めた。 今、一斉攻撃をすればティガれみりゃを倒せると判断したのだ。 「うぅーっ!」 「ゆっくりしねっ!」 「ティガれみりゃはしねっ!」 「ゆっくりしないでしねぇぇ!」 「しねしねしねしねぇぇぇーーっ!」 ゆっくりフラン達の怒濤の攻撃。 噛みつき、体当たりし、にくまんの顔に拳を打ち込み、 レーヴァティンと呼ばれる突起物をガシガシ叩きつける。 これだけの集中攻撃を受ければ、たとえドス種であってもひとたまりもないだろう。 ゆえに、経験したことの無い脅威に対して、本能が誤った判断を下したとしても責めることはできない。 『うぅぅ~~~? ……ふりゃんたち、れみりゃをなぐさめてくれるのぉ?』 フラン達の攻撃を受ければ受けるほど、ティガれみりゃは徐々に泣きやんでいく。 ティガれみりゃに、ふらん達の攻撃は効いていなかった。 それどころか。 『う~~♪ くしゅぐったいどぉ~~♪』 とうとう下ぶくれスマイルを取り戻し、きゃっきゃと喜びはじめてしまった。 「「「うぅーーっ!?」」」 自慢の攻撃が全く効いておらず、流石に驚愕をあらわにする、ゆっくりフラン達。 もし、ティガれみりゃが起きられずに泣いている間、ティガれみりゃに構わず逃げ出していたらなら、 今頃このフラン達は気持の良い満月の夜空を謳歌していたことだろう。 しかし、もう遅い。 「しねっ!しねっ!」 『う~~~?』 ティガれみりゃのにくまん顔に馬乗りになり、拳を打ち続けるゆっくりフラン。 その姿を見たティガれみりゃは、肉まん脳をフル回転させる。 『うー! ひらいめいたどぉー!』 ティガれみりゃは、うんしょ、うんしょと、 苦労しながら体を回転させ、徐々に俯せの姿勢へとなっていく。 その間、ティガれみりゃの体にまとわりついていたフラン達は振り落とされ、 離陸に失敗したものは、そのままティガれみりゃの体に押しつぶされてしまった。 俯せになったティガれみりゃは、両手を使い、上半身を起こす。 と同時に、膝を立て、両手と組み合わせることで立ち上がっていく。 『う~~~~! やったどぉ~~~~!』 バンザーイ!と両手を大きく広げて、立てたことをアピールするティガれみりゃ。 『すっごいどぉー! れみりゃはやっぱり天才だどぉ♪』 「「うううううう……」」 喜びを爆発させるティガれみりゃに対し、 フラン達はせっかくのチャンスを無駄にしてしまったことを悔しがる。 『うっう~うぁうぁ♪ うっう~うぁうぁ♪』 どったばったと手足を動かし、洞穴の中で踊り出すティガれみりゃ。 ティガれみりゃが踊る度に、洞穴が揺れ、天井からは希に小さな石つぶが落ちてくる。 身の危険を感じ、洞穴の奥で一カ所にかたまるゆっくりフラン達。 『ティガ☆れみ☆りゃ☆う~~~♪』 ご自慢のダンスを踊りきり、最高にハイになるティガれみりゃ。 やっぱり自分ってば凄い! かわいいし! かっこいい! 頭もいい! こうまかんのおぜうさまにふさわしい、すてきなれでぃーだ! ティガれみりゃは御機嫌なまま、洞穴のすみっこに固まるフラン達に向き直る。 さぁ、こんどは何をして遊ぼう? そんなことをティガれみりゃが考えた時だった! 「……ぅー」 『うっ?』 ティガれみりゃは、頭の奥の方で、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。 「……ぅーぅー」 まただ。 やっぱり誰かが自分のことを呼んでいる。 だって、あたまのなかで声がするんだもん。 そう結論づけたティガれみりゃは、周囲をきょろきょろ見回したのち、 どったどったと慌てて洞穴の外へと出て行く。 「…う?」 残されたフラン達は、その様子を不思議そうに眺めていた。 洞穴の外。 ティガれみりゃはそらを見上げて目をこらす。 『うー……、うー……、うーっ♪』 空を飛ぶあるものを見つけ、歓声をあげるティガれみりゃ。 空を見上げる視線の先では、うーぱっくの親子が満月の夜空を横断していた。 『う~~♪ まっでぇぇ~~♪』 うーぱっく達を見つけたティガれみりゃは、 そのままうーぱっく達の後を追って歩いていく。 『う~♪ まつんだどぉ~♪ れみりゃもおそらをとぶんだどぉ~♪』 よったよった、どったどった。 よったよった、どったどった。 ティガれみりゃは楽しそうに、うーぱっく達の後を追う。 空を飛ぶうーっぱくと、地面をどすどす歩くティガれみりゃでは、どんどん間の距離が離れていってしまう。 現に、すでにうーぱっく達はれみりゃの視界から消えていた。 しかし、れみりゃには不思議な確信があった。 このままこちらへ歩いていけばよいのだと。 「ぅーぅー」 「ぅーぅー」 「ぅーぅー」 だって、頭の中にあのうーぱっく達の声が聞こえてくるのだから。 そして、この声の先には、だいたい美味しそうなおまんじゅう達がいっぱいいるのだ。 『う~~♪ まっててねぇ~ふりゃ~ん♪』 笑顔で闊歩するティガれみりゃ。 ふと空を見上げると、おしそうな真ん丸お月様が輝いていた。 まるでおまんじゅうみたい。 でも、色はぷっでぃーんに近いかな? そんなことを考えながらティガれみりゃは木々を押し倒していく。 こんなにもお月様が美味しそうだから、歌っちゃおう♪ ティガれみりゃは短くずんぐりむっくりした手足を、うぁうぁと動かす。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 一方、その頃。 洞穴に残されたフラン達は、ティガれみりゃがいなことを確認して、月夜へ飛翔を開始していた。 余談だが、その後しばらく、ゆっくりフランによる必要以上のれみりゃ種への虐待が続いたという……。 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ3・(タイトル未定)』 ============================ (あとがき) byティガれみりゃの人 ……とか名乗っておいた方が良いのでしょうか? どうも、前回『ティガれみりゃ』を書いた者ですm(_ _)m とりあえず今回が2回目です。 1回目を書いた時点で、今回の範囲まではほぼ終わっていたので、 連日になってしまいましたが、upさせていただきました。 (少しでも楽しんでいただければ幸いです) その3は……しばらくお時間をいただくことになるかもしれません(汗 なお、作中のティガれみりゃとうーぱっくの関係ですが、 某有名怪獣映画のとある設定のオマージュにだったりしますw ============================ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/959.html
※fuku2180、ゆっくり鉄骨渡りの設定を引き継いでいます。 「ゆっくりしていってね!」 「「「「「「ゆっくちちていっちぇね!」」」」」」 目覚めの挨拶からまりさ一家の一日は始まる。 森にある、自ら掘って作った巣の中には親まりさ1匹、赤まりさ6匹、赤ぱちゅりー1匹がいた。 「おかあさんはごはんをとってくるから、みんなはゆっくりまっててね」 「むきゅ、ゆっくりまってるわ!」 「ゆっくちぃ〜」 親まりさは毎日、赤ゆっくり達の世話で休む間もないが、親まりさは幸せだった。 「ぱちゅりー…………まりさは頑張るよ…………」 死を覚悟でまりさとすっきりすると同時にこの世を去ったパートナーに思いを馳せる。 大好きだったぱちゅりーの死には大声で泣いたが、その数日後、 「ゆ……ゆっきゅりちていっちぇね!」 「ゆ……ゆっぐり゛じようね゛え゛え゛……」 まりさの頭の茎から一番に産まれた赤ぱちゅりーを見て、再び涙する。 ぱちゅりーの餡子を引いた、ぱちゅりーそっくりな赤ゆっくり。 さらに産まれる自分そっくりな赤まりさ達。この子達を命に代えても守りきろうと強く思った。 「ごはんをとってきたよ!みんなでゆっくりたべようね!」 運のいいことに、今日はクズ野菜が落ちていた。 普段森に生えるものではない。きっと天国のぱちゅりーのプレゼントだろうと思った。 「「「「「「むーしゃ、むーしゃ…………ちあわちぇ〜♪」」」」」」 満足そうにクズ野菜をほおばる赤ゆっくり達を見て、親まりさも笑顔になる。 と、そこに、 「クズ野菜を見つけたゆっくりを追いかけてみれば、こんなところによく作ったもんだな」 「だ、だれ!?」 突如、聞きなれない声がする。 「ああ、俺は虐待お兄さんさ。君達を捕まえるためにやってきてね」 「ゆ!こっちこないでね!ゆっくりでていってね!」 「そうはいかないな、虐待お兄さんだもの。よっと」 巣の中に男の右手が入ってくる。 しかし、巣の奥にいるまりさ一家には届かないようだ。 「こ、こわいよー」 「ゆっきゅりできないわ!」 「だいじょうぶだよ、ここにいればつかまらないよ!」 カタカタ震える赤ゆっくり達を安心させるため、親まりさは力強く言い切る。 内心は親まりさも怖いのだが、赤ゆっくりに不安を与えるわけにはいかない。 それに、現に男の手は届かないのだ。 「もうあきらめてね!ゆっくりおうちにかえってね!」 「うーん、しょうがないな。引っ張り出してくれないか?」 「うー!」 その声と共に、1匹のゆっくりが巣の入り口に姿を現す。 大きな顔と2枚の羽、体無しのゆっくりれみりゃである。 こういう時のために、男が連れてきたものだ。 「れ、れみりゃはこないでねえええええ!!!!!」 「うー!うー!」 れみりゃに喰われるかと思いきや、れみりゃは家族に牙を突き立てることはしなかった。 代わりに、あっという間に全員巣の外に引きずり出される。 「ふむ……赤ゆっくりは合計7匹か。あいつの要求した数より一匹多いから食べていいぞ」 「うー!」 「ゆ゛!」 れみりゃは一匹の赤まりさに喰らいつく。 体の小さな赤ゆっくり。小さな断末魔を上げ、すぐにれみりゃの胃袋に収まった。 「ま、まりざのあがぢゃんがあああああああ!!!」 「むきゅうううううん!」 「まりちゃのいもうとがああああ!!」 「はいはい、お前らはこの箱に入ってお兄さんと一緒に帰ろうね」 男は加工場製透明ケースに親まりさと赤ゆっくり達をポイポイと放り込む。 「これでゲームに必要な6匹、と。じゃああいつの所に帰るとするか」 「うー!」 上機嫌で帰路についた一人と一匹と、まりさ一家の表情は対照的だ。 「まりちゃ達、どうなりゅの…………」 「だいじょうぶだよ!おかあさんがたすけてあげるから!」 できもしないと分かっていても、強がりを言うくらいしかなかった。 男はそのまま人里へ行き、家に入っていった。 そしてまた別の、若干年下気味の男が彼らを出迎える。 「お疲れ様です。わざわざこんな面倒事を頼んですみませんね」 「まぁ俺も今回の虐待には興味津々だからな。この程度の手間は問題じゃないさ」 「そう言って頂けると助かります。お前も行儀よくしていたか?」 「うー!」 さて、この出迎えた男、まりさ一家を捕まえた男の隣人であり、男同様虐待お兄さんである。 そしてこのれみりゃは、この隣人のペットであった。 隣人は男に『赤ゆっくり6匹と親ゆっくりを捕まえて欲しい』と頼み、戦力としてれみりゃも貸し出した。 数々の虐待を共にしてきた仲、れみりゃも男には懐いているようだ。 「さて、それで道具は揃っているか?」 「バッチリです」 隣人は道具を一式、机に並べて男に見せる。 それは工具のノミと、5枚のごく小さな鉄板。 赤ゆっくりが入る程度の底面積の、縦長で透明な直方体の小さな箱を6つ。それらは1から6まで番号が書かれている。 さらに箱の上の方に4辺のうちの1辺だけ鉄板が差し込めそうな切れ目があり、その周囲は黒い紙で覆われていた。 「さすがだな。それじゃあ早速始めようか」 「ええ、この時を楽しみにしていましたよ」 隣人は箱からゆっくり達を取り出した。 親まりさは隣人の頭の上をパタパタ飛び回っているれみりゃに襲われるかと怯えていたが、そんな気配はないようだ。 そして6匹の赤ゆっくり達は6つの箱にそれぞれ1匹ずつ入れられていった。 「ゆ!ちぇまいよ!」 「ここじゃゆっくちできないよ!」 箱のサイズは赤ゆっくりがギリギリ入れる程度。 箱の中は、自由に動き回れる余地は全くない。 「なにするのおにいさん!赤ちゃん達をゆっくり出してね!」 透明ケースに残された親まりさが騒いでいる。 「ククク……そうはいかぬな……これから貴様らには、ゲームをしてもらうのだから……」 「げ、げーむ?」 隣人はいやらしく笑ったかと思うと、急に口調が一変した。 また始まったか、と男は心の中で一人ごちる。 この隣人、普段は真面目な青年なのだが、ゆっくり虐待になると性格が豹変するという困った癖がある。 溜めるような言い方が多くなり、一人称もコロコロ変わったり。 最初は男もかなり戸惑ったものだが、数々の虐待を共にこなしてきた今はもう慣れっこだ。 「説明しよう……わしはこれから一度だけ、この箱の中へノミを振り下ろす…… そんなことをしたら赤ん坊はどうなるか……分かるな?」 ゆっくり達の顔が青ざめていく。 ノミの先は見るからに鋭い。あんなものを喰らえば、とても生きてはいられないだろう。 「や、やめてね!まりさのあかちゃんをころさないでね!」 「ククク……心配無用……そのためにこの鉄板があるのだからな……」 「ど……どういうこと?」 「この鉄板は箱の切れ込みに差し込むことができる……これを差し込めば……」 隣人は説明しながら、箱の一つに鉄板を差し込んだ。 そして右手のノミをその箱目がけて強く振り下ろす! 「「「「「「「ゆ!」」」」」」」 ゆっくり達の悲鳴と共に、キンッという金属音。 隣人の振り下ろしたノミは鉄板に阻まれ、下にいる赤ゆっくりまでは届かない。 「このように……ノミは鉄板に阻まれ赤ん坊は助かるという仕組みだ……」 そして男は親まりさを透明ケースから出し、赤ゆっくり達と同じ机の上に置く。 結果的には大丈夫だったが自分の子供の危機だった、まだ平常心ではないようだ。 「それじゃあ俺達は10分ほどこの部屋を出る。時間が来たらノミを振り下ろしにまた来るぞ」 「ククク……どの赤ん坊を危険に晒すか、ゆっくり考えることだな……」 「うー!うー!」 親まりさと箱に入れられた赤ゆっくり達を残し、2人と1匹は部屋を出て行った。 親まりさは現実を受け入れ切れなかった。 昨日までの赤ゆっくり達との幸せな生活が、いきなりこんな事態になってしまった。 しかも既に1匹の赤まりさがれみりゃの犠牲となっている。 しかし。 「こわいよおおおお!」 「おかーしゃんたちゅけてえええ!」 「まっててね!かならずおかあさんがたすけるからね!」 今自分がやることは、とりあえずこの鉄板を箱に差し込んで子供を守ること。 すぐに頭を切り替え、鉄板を口にくわえようとしたが。 「ゆ……いちまいたりない……」 箱の数は6つだが、鉄板は5枚。 必然的に、子供を一匹無防備にしてしまうのだ。 『どの赤ん坊を危険に晒すか、ゆっくり考えることだな……』 ここに来て初めて、親まりさはその言葉の意味を理解した。 「おかーしゃん、はやくちて!」 「はやくまりちゃをまもっちぇね!」 赤ゆっくり達はそんなことは知らず騒いでいる。 いや、よく見ると3の番号の箱の赤まりさ、それと6の番号の箱の赤ぱちゅりーは黙っている。 この2匹は他の4匹に比べ賢く、既に鉄板が一枚足りないという意味を分かっていたのだ。 「みんな、よくきいてね……じつはいちまい、いたがたりないんだよ……」 「ゆ!どういうこちょなの!」 「だから、ひとりだけまもれないんだよ…… もしそこにあれがふりおろされたら、たぶん…………しんじゃうんだ……」 死ぬ、という言葉を聞いて赤ゆっくり達は泣き叫び始めた。 先の赤まりさと赤ぱちゅりーは相変わらずのだんまりだが。 「まりちゃ、ちにたくないよおおお!」 「たちゅけてええええ!」 「だいじょうぶだから、おかあさんのはなしをきいてね!」 親まりさが必死になだめるも、赤ゆっくり達は騒ぎ続ける。 そんな中、赤ぱちゅりーの一喝が飛んだ。 「むきゅ、うるさいよ!だまってね!」 いきなりの姉からの大声で、赤ゆっくり達はビクッとして騒ぐのをやめた。 「だいじょうぶ、たとえいたがなくても、はこはむっつもあるわ。 おにいさんはいちどだけふりおろすといってたわ。そうそうあたるものじゃないわ」 「で、でも……あちゃることもあるんでちょ……」 「むきゅ……そうだけど、かくりつはひくいわ……」 「じゃあ、まりちゃはいやだよ!ほかのだれかにしてね!」 再び騒ぎ出す赤ゆっくりを見て、赤ぱちゅりーは親まりさ共々頭を痛める。 確かに確率は6分の1とはいえ、死の危険はあるのだ。 死にたいわけではないが、姉として妹達をそんな危険に晒すわけにはいかない。 だからその危険な役目に自分が立候補しよう、と思ったところで、予期せぬことが起こった。 「……そのやくめは、まりさがひきうけるよ!」 そう叫んだのは、先ほど赤ぱちゅりーと共に黙っていた赤まりさだった。 この赤まりさは、赤ぱちゅりーに次いでの2番目の姉である。 赤ぱちゅりーを除けば姉妹でもダントツに賢く、妹達の面倒をよく見ていた。 そして幼いながら責任感が強く、妹達を守るために名乗りを上げたのだ。 「ほ、ほんとうにいいの……」 「おかーさん、これがおねーさんであるまりさのやくめだよ!」 「むきゅ……それならわたしが……」 「いいんだよ!かくりつはひくいっていったでしょ!だいじょうぶだよ!」 「おねーちゃん、ありがとう!」 「これでたちゅかったよ!」 死の危険があるにも関わらず、笑顔を見せる赤まりさを見て親まりさは涙を流さずにはいられなかった。 ぱちゅりー、ぱちゅりーのあかちゃんはこんなにもいいこだよ。 どうか、このこをたすけてあげて。 天国のパートナーに祈りながら、親まりさは箱に鉄板を差し込んでいった。 この赤まりさが入った3の番号の箱を除いて。 「さて、そろそろ終わったか?」 「きたね!いつでもいいよ!」 親まりさが、再び部屋に入ってきた2人と1匹と対峙する。 「ククク……では始めるとしようか……」 隣人がノミを持って机に座り、ついにゲームが始まった。 予想はしていたが、男はゆっくり達のに呆れるばかりだった。 勝負が始まってすぐのこと、隣人が、 「目星はついた……1かな……」 と言ってノミを近づければ中の赤ゆっくり達はおろか、親まりさまで「ゆ〜」と安堵の表情。 賢い赤まりさや赤ぱちゅりーも、まだ幼く表情まで気が回らないようだ。 「いや、2かな……」 ゆ〜。 「ククク……4も怪しそうだな……」 ゆ〜。 「いやいやいや、3も捨てがたい……」 ここで、ゆ!と皆でビクッとする。 ゆっくり達は無意識的にやっているのだろうが、バレバレである。 「それとも……6か……」 ゆ〜。 「いや……やはり3か……」 ゆ! 「む……5のような気がしてきたぞ……」 ゆ〜。 「………………3………………」 ゆ! すぐに振り下ろしても良かったのだが、そこはさすがに虐待お兄さん。 男と隣人は、しばらくそうしてゆっくり達で遊んでいた。 「ククク……散々迷ってきたが、ついに決心したぞ……」 段々飽きてきた隣人は、ついにノミを振り下ろす決心をする。 いよいよか。ゆっくり達の表情がこわばった。 「鉄板のない箱は……おそらく4……!」 叫ぶと同時に、4を目がけてノミを振り下ろす。 助かった、と安堵するゆっくり達。 金属音と共に、悔しがる男達の姿がゆっくり達の目に浮かんだ。 しかし、隣人は箱にノミを突っ込まず、寸止めした。 「と見せかけて実は……これだっ…………!」 隣人がノミを打ち下ろしたのは、すぐ隣りの3の箱だった。 皆が大好きだった赤まりさは真っ二つに切られ、この世を去った。 「おかーしゃんのうそちゅきぃー!」 「たちゅけるっていったくちぇに!」 「ちね!やくたたずのおかーしゃんはゆっくちちね!」 「むきゅ……おかあさんはわるくないわよ……」 「ぱちゅりーおねーしゃんまで、なにいっちぇるの!」 「ごべんね゛え゛え゛えええ!!!!」 4匹となった赤まりさは、箱の中で親まりさを責め続ける。 たまたま隣人が振り下ろしたところを無防備にした親まりさのせいだと思っているようだ。 自分にも責任の一端があるとも知らずに、いい気なものである。 さて、そろそろいいだろう。男はゆっくり達に話しかけた。 「いやぁ、残念だったなぁ。でもお前らのせいでもあるんだぜ」 「ゆ!なんでまりちゃのちぇいなの!」 「まりちゃ、なんにもちてないよ!おかーしゃんがわるいんだよ!」 「いや、それがさ……あの死んだ赤まりさの箱にノミを近づけるとさ。 誰とは言わないがお前らの中で何人か、明らかに怯えた反応する奴がいたんだよ」 本当は全員なのだが、それではこれから期待するような面白いことは起こらない。 「いや〜かわいそうに。お前らの中でバカ正直に反応する奴がいたせいで死んだからなぁ。 まあ誰とは言わないけどさ、そいつらのせいで死んだようなもんだしな」 少しの間、ゆっくり達はポカンとしていた。 が、少しして男の話を理解した赤まりさ達は一斉に喧嘩を始める。 「ゆ!おねーちゃんをちなちぇた、まぬけなゆっくりはまりちゃじゃないよ!」 「まりちゃでもないよ!おねーちゃんでちょ!」 「なにいっちぇるの!わたちたちのなかでいちばんばかなあんたでちょ!」 「そうだよ!このまえだってまりちゃのぶんまでごはんたべちゃって!」 「ちがうよ!まりちゃじゃないもん!」 「(むきゅ……たぶんわたしの……いや、わたしたちのせいだわ……) 「やめてえええ!!!けんかしないでえええ!!!」 「うるちゃいよ!もしかしておかーしゃんなんじゃないの!」 この責任の押し付け合いを見たいがために、わざと『何人か』と言ったのだ。 自分勝手なまりさ種らしく、期待通りの展開である。 「ククク……見ろよ、れみりゃ……」 「うー?」 「仲の良かった者が……些細な誤解……つまらぬすれ違いで………… 仲違い……醜く言い争う様は……いつ見ても…………楽しい…………!」 「うー!」 れみりゃは分かってるのか分かってないのか、隣人の頭の上を飛び回るだけであった。 「今日は仲違いさせるところまでだったな。次は3日後だったっけ?」 「ええ、それまでに準備は済ませておくので、3日後にまたいらして下さい。 れみりゃと一緒にお待ちしていますよ」 「うー!」 虐待していない時は、いつもの正常な隣人に戻っているようだ。 しかし虐待時が最も輝いていると言われる虐待お兄さん、むしろあちらが正常なのかもしれない。 虐待お兄さんにとっては、異常こそ正常である。 男は自宅に帰っていった。その日、隣人は親まりさ一家には餌を与えなかった。 翌朝。 「おーいれみりゃ、ご飯だぞ〜」 「うー!うー!」 隣人がれみりゃに与えたものは、ハチミツを塗った食パン。 それと川で釣ってきた魚を焼いたもの。野生のゆっくりから見れば破格である。 「どうだ、上手いか?」 「うー!」 「ククク……かわいいのう、かわいいのう……」 れみりゃと対照的に、透明ケースに入っている親まりさとまだ箱にいる赤ゆっくり達は空腹に襲われている。 なにせ男に捕まえられた昨日の朝から何も食べていないのだ。 「まりちゃにもそれをちょうだいね!」 「ごはんをくれないおにーちゃんはちんでね!」 「むきゅう……」 「分かった分かった……やろうじゃないか……」 隣人は親まりさのケースにクズ野菜をばらまく。 れみりゃの食べているものと比べれば遥かに落ちるが、ゆっくりの食事としては十分だ。 「ゆ!なんでおかーしゃんにだけあげるの!」 「おかーしゃんにあげるのならまりちゃにちょうだいよ!」 「ククク……貴様らにやる食べ物などないわ……」 冷たく言い放つ隣人。 それを聞いて、赤まりさ達がまたも騒ぎ始めた。 「おなかちゅいたよおおおお!!!」 「ゆっくちできないいいいいい!!!」 この4匹の赤まりさはことあるごとに騒いでいる。 迷惑な存在だが、泣き叫んでいるゆっくりを見て楽しむのが虐待お兄さんである。 「ゆ……まりさはいらないよ。あかちゃんたちにあげてね……」 親まりさはクズ野菜に手をつけずに言った。 昨日は自分の子供に散々罵倒されたとはいえ、やはり親であった。 このまりさはいわゆるゲスまりさではなく、昨日ノミで突かれた赤まりさ同様立派なまりさなのだろう。 「だが……却下っ……!」 「ゆ!な、なんで!」 「そうしたいからさ……食え……食わねば赤ゆっくり達の命はないぞ……」 「ゆ……」 子供の命とは比べられない。 申し訳なく思いながらも、クズ野菜に手をつけ始めた。 そんな親まりさに隣人は、赤ゆっくり達に聞こえないように囁く。 「ククク……それと食事中のいつものセリフ……頼んだぞ……」 「そ、そんあことあかちゃんたちのまえでいえないよ!」 「言わねば……赤ん坊が死ぬだけだ……」 そう言われるとどうしようもない。 涙を流しながら、親まりさは食べ続ける。 「むーしゃ、むーしゃ……しあわせ〜……」 「ゆがあああああ!!!!」 「ちねおかーしゃんはゆっくちちねえええええ!!!」 「むきゅ〜、みんなやめるのよおおお!」 赤まりさ達は親まりさの事情も知らず、口汚く罵る。 親まりさを庇うのは、赤ぱちゅりーだけだった。 ゆっくり一家が捕まえられてから、3日がたった。 再び男は隣人の家を訪れ、そして初めて赤ゆっくり達は箱から出された。 食事は常にれみりゃ豪勢、親まりさにはクズ野菜、赤ゆっくり達は無し。 育ち盛りの赤ゆっくりが3日も何も食べていないということは、かなり餓死に近づいているということだ。 「あかちゃんたち、しっかりしてね!」 「ゆ……ゆっくちちたいよ……」 「ごはんがたべたいよ……」 「むきゅ……」 いい感じに弱っている赤ゆっくり達に向かって隣人は言った。 「ククク……そんなに飯を食いたいなら食わせてやろう……」 「ゆ!ごはんくれるの!」 「ゆっくちもってきてね!」 瀕死なはずなのに、突然のご飯宣言に色めき立つ赤ゆっくり達。 男と隣人はほくそ笑んだ。この程度の元気さはないと面白くない。 「いいだろう……ただし、食いたければ戦え……」 「ゆ?」 「飛んでもらおう……貴様らには……空を……! ククク……そう……!貴様らがこれからするのは………… 生存率25%……クォータージャンプ…………!」 続く あとがき 今回は指きりジャックをゆっくりでやってみました。 次回はクォータージャンプ。さすがに皆殺しの魔女は無理でしょうけど。 過去作 ゆっくり鉄骨渡り このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/246.html
『その1 ホームラン』 「ゆっくりしていってね!!!」 「うわ、なにコイツ!?」 「ゆっくりしていってね!!!」 「ちょっと、掃除の邪魔だからあっちに行きなさい」 「ゆっくりしていってね!!!」 「だから、邪魔だってば」 「ゆっくりしていってね!!!」 「だからぁ……はぁ……人の話は聞かないのね」 「ゆっくりしていってね!!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 「む゛っ!」 「……なによ」 「ゆっくりしていってね!!! ゆっくりしていってね!!!」 「はいはい、おもしろいおもしろい」 「ちゃんとゆっくりしていってよー!!! もっとゆっくりしていってよー!!!」 「ああもう、いい加減鬱陶しいわよ」 「もっとゆっくりしてね!!! しっかりゆっくり゛ゆ゛ぶっ!??」 「たーまやー、と。あら、よく飛ぶわ」 『その2 ファイナルマスパ』 本日の幻想卿は晴天なり。 カランカラン……。 少々古臭い印象のある、古道具屋――香霖堂の扉が開く。 「香霖、じゃまするぞー」 言って店の敷居を跨ぐのは、白黒のエプロンドレスに魔女帽子という衣装をした魔法使いの少女だった。 活発そうな雰囲気を放つ彼女は何時もの如く勝手知ったるなんとやら、とばかりに店内に足を踏み入れたのだが、しかし、出迎えた声は彼女が聞きなれた店主の声ではなかった。 「ゆっくりしていってね!!!」 「うを!?」 突然上がった大声に一瞬身体を硬直させる。 思わず少女の顔に怪訝な表情が浮かび、声の発生源は何処だとおもむろに辺りを見回すと、店の奥に店主の姿が見て取れた。 いつもの定位置にて、彼女の来訪に気付いた店主は、苦笑を浮べながら少女に挨拶を寄こした。 「はは、魔理沙、良く来たね」 先ほどの大声があった為か、少しばかり構えた態度で魔理沙と呼ばれた少女は店主に視線を向けた。 見ると、その傍らになにやら奇妙な物体があるのが目に映る。 「ゆっくりしていってね!!!」 大きな、一抱えほどもある丸い物体。 「……………………」 魔理沙はおもむろにそれに近付き、ずっしりと重みを感じるソレを持ち上げる。 「ゆっくりしていってね!!!」 「……なんだこりゃ。新手のまんじゅう妖怪か?」 じろじろと観察してみる。 一言で言えば、巨大な饅頭に顔がついているような印象だった。 金の頭髪に、黒の魔女帽子。 ――鏡を見れば視界に映りそうな見てくれだった。 両手で持ち上げられたソレは、輝くような笑顔を浮かべ口を開く。 「ゆっくりしていってね!!!」 思わず溜息を吐き、店主に視線を移した。 「いつから香霖堂はこんな珍妙すぎる妖怪を飼うようになったんだ?」 「飼うようになったというか、気が付いたら居たのさ」 今朝早く、倉庫の品物の整理をしている内に、いつのまにか店内に居座っていたらしい。 それなりの大きさで、外に出すにも一苦労をし、追い出そうとしても勝手に戻ってくるので放置していたそうだ。 「あまり実害は無いみたいだしね」 「ゆっくりしていってね!!!」 妙な生き物だ、と魔理沙は微妙な表情を作り、再び溜息を吐いた。 「はいはい、勝手にゆっくりしていくさ」 同じ言葉を只管に連呼する物体を床に下ろし、戸棚に歩み寄る。 なぜか足元に纏わり着く物体が少々煩わしかったが、それ以上気にする事も無く戸に手を伸ばし、横に滑らせる。 その棚自体は古い物のように見受けられたが、店主の手入れが良くされている為か、戸はすんなりと溝を滑っていった。 中を確認する。 「ん?」 何も見当たらない。 次いでその奥へと手を伸ばしてみるが、望んだ感触は得られなかったらしく首をかしげて店主を振り向いた。 「香霖、茶筒が無いぞ」 「あー魔理沙、お茶かな?」 「それと煎餅だ」 私のお気に入りだったのにと、憮然とした表情を浮べる魔理沙に対して、香霖と呼ばれた店主はどうしたものかと視線を彷徨わせる。 次いで頬を人差し指で掻く仕草をし、おもむろに脇でにこにこと妙な笑顔を振りまく物体に視線を落とした。 その意味が分からず、仕方ないとばかりに今度は別の引き戸を開けて湯飲みをとりだそうとする魔理沙。 茶葉も煎餅も、別に切らしているわけではない。 魔理沙が自分用にと取っておいた分が無くなっていただけで、この古道具屋にはまだあった筈だった。 そう思って魔理沙は愛用の湯飲みを取ろうと引き戸を開けるが、 「あれ?」 開けた戸の中は、またも空だった。 これには益々表情を険しくし、少々拗ねたような口調で店主へと口を開いた。 「湯飲みも無いぞ」 その台詞を受けて、店主は再び傍らの物体へと視線を向けた。 「魔理沙、すまないんだが実は――」 と、店主が口を開いたのと被せるようなタイミングで、 「おいしかったー!!」 物体はにっこりと笑顔で、事実を口にした。 「……………………」 「……………………」 「とってもおいしかったよ! また食べたいな!」 妙な沈黙に包まれる二人、対して物体は上機嫌で笑顔を飛ばしている。 「……湯飲みもか?」 「……………………」 「ごめーん! ゆるして!」 無言で傍らの物体を指差す店主。 物体は特に悪びれた様子も無く、笑顔を魔理沙に向けている。 自分の行動に悪意を感じていないのか、責任があると思っていないのか、魔理沙の心情を慮ることもせずに物体は彼女に擦り寄ってくる。 魔理沙は本日何度目かになる溜息を吐いた。 「ちゃんと喋るんだな、こいつ――って違う。実害、あるじゃないか……私に対して」 実害が無いのは香霖、お前に対してか。と胡乱な瞳を向けられ、しかし店主は苦笑を返しただけだった。 「少し見ていると気付くと思うけど、その妖怪は見た目どおりに魔理沙の真似をしたがるんだよ」 店主は呆れたような表情で説明をする。 その妖怪は、魔理沙の使用品に興味を示し、なんでもかんでも使って見せようとしていたらしい。 見れば、店主の隣にあったのは魔理沙がいつも敷いている座布団だ。 そこにあったということは、先ほどまで目の前の物体がそこに座っていたという事だった。 その他にも、その座布団の周囲には色々と見覚えのある物品が散らかっていた。 思わず、魔理沙の額に青筋が浮かぶ。 「――湯飲みを割ったのは、お茶を飲もうとしてだろうね。ただ、手が無いからどうにかこうにか湯飲みを取り出した後に、小突いて割ってしまったんだ」 手が無いから湯のみが持てず、工夫しようとしているうちに体当たりで砕いてしまったそうだ。 煎餅はそのまま食べて、茶葉もそのまま食べたらしい。 どうやら雑食のようだ、と、店主は語った。 「あー、あー、あー……と。じゃあ、何か。このままこいつを放置しておけば、引き続き似たような目に私が遭うってことか」 魔理沙は妙な気迫の篭もった胡乱げな瞳を店主から物体へと移した。 対する物体は、やはり魔理沙に邪気のない瞳を向けている。 じっと物体を見つめた後、まあ害意が無いのは見れば判るがな、と口にして魔理沙は物体に背中を向けた。 「香霖、少し外で運動してくる。まんじゅう、お前もついて来い。遊んでやるぞ」 言って魔理沙は歩き出す。 言われた物体は嬉々として魔理沙の後を追って飛び跳ねていった。 「ゆっくりあそんでね! いっぱいあそんでね!」 「ああ、いってらっしゃい」 店主はぱたぱたと手を振って二者を見送る。 分かりきっている結果を予想して特に止めようとしないあたり、彼も少しは迷惑だと思っていた様子が見て取れた。 カランカラン……。 一人と一匹は店の扉を開けて外へと出て行った。 ………… 「じゃあ、遊んでやるから、そこにいろ。いいか、動くなよ」 「なにしてあそぶの? はやくあそぼうよ!」 「ああ、分かった分かった。だから動くな」 「うん! ゆっくりあそぼうね! いっぱいあそぼうね!」 「ん? なんだあれ」 「どうしたの? なにかあったの?」 「なんだろうな? ほらアレを見てみろ」 「どこ? どこどこ? なにがあるの?」 「後ろだ。お前の後ろ。ほら、後ろ向いてみろ」 「んー? なんなのー? なにがあるのー?」 「魔砲――」 「みえなーい! どこにあるのー?」 「――ファイナルマスタースパーク!!!」 ――じゅっ ………… カランカラン……。 「やっぱり妖怪は退治するに限るぜ」 肩を回して店内へと足を踏み入れるのは魔理沙一人。 本日の幻想卿は晴天なり。 『その3 見てみろ妹紅』 「ほら、見てみろ妹紅」 「ゆっくりしていってね!!!」 「なんだそれは」 「うむ。最近人里で悪さをしているという妖怪らしい何かだ」 「何かか」 「ああ、実のところ妖怪か如何かすら分からん」 「そうか」 「中身は餡子だ」 「そうか」 「つぶあんだ」 「どうでもいいな」 「そうだろうか」 「それで、こいつを如何するんだ」 「燃やしてくれ」 「分かった」 「あつーい!!!」 「ほら、こっちも見てみろ」 「ゆっくりしていってね!!!」 「おまえに似てるな」 「ほら」 「しゃきーん!!!」 「角が生えたな」 「ほら」 「しゅーん!!!」 「角が引っ込んだな」 「どう思う」 「むかつく笑顔だ」 「そうだろうか」 「ああ」 「どうする?」 「燃やす」 「あつーい!!!」 『その4 たぶんおそらく兎の話』 先ず喰い荒らされたのは、竹林に青く芽吹く竹の子だった。 次に喰い散らかされたのは、兎達が丹精込めて育てた人参畑だった。 更に喰い潰されたのは、薬師が手間隙を掛けて管理していた薬草畑だった。 果てに喰い捨てられたのは、姫が趣味で植えていた盆栽だった。 永遠亭、被害甚大。 「あー居ますね、また」 そう言って目の前の進む先を指差すのは、兎の少女。 竹篭を背負い包みを両手で抱えた彼女は、傍らに並んで歩く薬師へと声を掛ける。 「なんか、物凄い笑顔で竹の子食べてますね」 「生のまま食べて美味しいのかしら」 首を傾げながら薬師は呟いた。 ………… 「むーしゃ♪ むーしゃ♪」 巨大な饅頭のような体躯に、どこぞの紅白巫女や黒い魔法使いの格好をした物体が数匹、採り頃まで育った竹の子へと群がっていた。 「一、二、三、四……と、五匹ですか」 指で差して数を数えながら、二人は物体達へと近付いていく。 と、物体達も自らへと向かってくる人影に気付いたのか、その内の一匹が竹の子から口を離し、二人の方へと向き直る。 「おねいさんたちだれ! これはわたしたちがみつけたんだよ!」 言って、齧りかけの竹の子を庇うように前へと進み出る物体。 二人がこの竹の子を狙ってやってきたと思ったのだろう。 顔に警戒を浮べて威嚇を試みる物体。 そんな様子を眺め、薬師はくすくすと笑みを漏らしながら口を開く。 「あら、そんなものよりもっと美味しいものがここにあるわよ」 薬師が物体に差し出されたのは、丸い餡子玉。 つい先ほど、此処に来る前に作った代物だった。 一瞬、差し出された餡子玉をじっと見つめていた物体だったが、薬師がそれを置いて一歩下がると、釣られるように餡子玉へと近付き、それを口に含む。 「むぐむぐ」 浮かんだ表情は、喜色。 「しあわせー!」 至福の色を瞳に宿し、声高らかに幸福を叫ぶ。 竹の子よりも甘いそれは、目の前の物体達の嗜好に大変合う様子で、恍惚の表情を浮べた物体を見て、周りの物体達もそれを羨ましがる。 先ほどまで齧りついていた竹の子を放り出し、薬師へと向かって飛び跳ねて向かってくる。 「あ! わたしもたべたい!」 「おねいさん! ちょうだい!」 「ゆっくりたべさせてね!」 「いっぱいたべるよ!」 「はいはい、それじゃあこっち来て下さいねー」 手を打ち鳴らしながら言って、兎の少女は両手で抱えていた包みを物体達の前へと下ろす。 その包みの結び目を解き圧布を広げると、中からは一抱えほどもある餡子の塊が姿を現した。 物体達の瞳が輝く。 「わあい!」 「おねいさんありがとう!」 「おいしくたべるよ! ゆっくりたべるよ!」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪」 「あまあまー!」 目の前に餡子が現れた瞬間に飛び掛り、一心不乱にそれを頬張り口を動かす物体達。 頬を餡子で汚しながら、ただ只管に貪り食らう。 そんな様子を、どこか呆れた表情で眺め続ける二人。 やがて、場に盛られた大量の餡子が無くなった頃、物体達は薬師と兎の少女に向かって口々にお礼を述べ始めた。 「げふー!」 「おいしかったね!」 「とってもおいしかったね!」 「ありがとうおねいさん!」 「ごちそうさま!」 心底満足したという物体達の様子に、どのような意味でか薬師の表情に笑みが浮かぶ。 一回りほどその身を膨らませ、色艶も良くなった物体達を前にして、さらに魅惑の言葉を投げかける。 「ねえ、貴方達、もっと沢山食べたいと思わないかしら」 その言葉に物体達は益々表情を明るくし、喜びを全身で表現するべく上下に飛び跳ね始める。 「もっとたべるよ!」 「おいしくたべるよ!」 「いっぱいたべさせてね!」 「たくさんたべてあげるよ!」 「ゆっくりたべてあげるね!」 と肯定の言葉を聞き、浮べていた笑みを深くする薬師。 兎の少女が背負っていた竹篭を指差し、言葉を続ける。 「それじゃあ、あの籠の中に入って頂戴ね」 薬師がそう言うと、兎の少女が物体達にとって入りやすいようにと竹篭を降ろして横に倒す。 覗き込めば、妙に奥へと深い竹篭だった。 「はいはいどうぞどうぞー」 「うん! ゆっくりはいるね!」 そんな竹篭の様子を疑問に思う事も無く、兎の少女に案内されるまま、先ずは一匹が返事を返し竹篭の中へと飛び込んでいく。 そのまま二匹目、三匹目と物体達が続き、やがて全員が竹篭の中へと収まった。 兎の少女は五匹目が中へと入っていくのを見届けると、その竹篭に手を掛け、縦に引き起こす。 竹篭の中で物体達がごろごろと転がる振動を兎の少女は感じていたが、特に気にする様子も無くその縁に手を置き、頷く。 「はい、捕獲完了です、と」 ………… 「それにしても手間が掛かって面倒ですね」 兎の少女は先ほど物体を収めたばかりの竹篭に両手を入れ、その中から一匹の物体を取り出す。 「ゆ?」 物体は、入ったばかりですぐさま取り出されるという状況に、首を傾げるように身を傾けて疑問符を浮べている。 それを両手で抱え、薬師へと差し渡す。 「逃げ出そうとするのを捕まえる事だって、それなりに手間はかかるのよ」 だからこうやって自分から捕まりに来るように仕向けないと、と薬師は言う。 そのまま、兎の少女から手渡された物体を、餡子が無くなったままに広げられていた圧布の上へ据え置いた。 「ゆ?」 依然その頭の上には疑問符が浮かんでいる。 「うー、他の皆も協力してくれると助かるんですけどねー」 傍らに置いた竹篭を眺めながら、どこか疲れた様子で呟く兎の少女。 「てゐが嫌うのよ、こういうのを」 「あー」 会話を続けながら、薬師は何処に持っていたのか鋭く磨かれた円刃刀を取り出し、物体へと宛がって見せた。 「ゆ?」 「あの兎は、他の兎がこういう事に加担させられるのを快く思わないから」 相手は、その自らに突きつけられた刃の意味も分からずに、身体を斜めに傾げながら刃と薬師とを見比べている。 「なにをしてるのおねいさん? おいしいものはどこ?」 身に添えられた刃の感触を疑問に思うことも無く、ただ沢山の餡子を待ち望み薬師へと瞳を向ける。 次いで、先の甘くて美味しい食べ物はどこにあるのだろう、と周囲に向けて視線を動かし、期待に胸踊るといった印象で瞳を輝かせていた。 薬師はにっこりと微笑みながら、言葉を返す。 「ええ、すぐに取り出してあげるから、少し待ってなさいね」 「うん!」 薬師は笑顔をそのままに、相手へと宛がった刃を深く沈み込ませる。 「ゆ゛……!!??」 瞬間、苦悶の表情を浮かぶまもなく身体を二つに断たれ、先ずは顔面が着いた方へと薬師は手を伸ばす。 黒く湿った中身を指を使ってごっそりと掻き出し、広げられた圧布の上へと手際よく盛り付けていく。 「!!? い゛だ――――――――」 叫び声を上げようとするも既に時遅く、中身を抜かれた後の瞳はすぐに力を失い、苦悶に歪んだままの表情が残される。 それを傍らに置き、次いでもう片方へと手を掛ける。 「あの嘘吐き兎が好きなのは、飽くまでも悪戯までなのよ」 後頭部の中身を片割れと同じように掻き出しながら、先の言葉の続きを言う。 「兎達を使ってコレを追い払ったり捕まえたりするのは良いみたいだけど、こういう光景を見せるのは駄目だ、って」 目を見開き、歯茎を剥き出し、泣き叫ぶ寸前で固まったままの表情は、見るものに不快感を与えるような気持ち悪さを漂わせていた。 饅頭の生地を肉厚にしたような肌触りのそれを手に取り、兎の少女へとぷらぷらと振って見せる。 「うわぁ……私も凄い駄目ですよ」 目の前で揺れる死に面を眺めながら、微妙そうな表情で言ってみせる兎の少女。 対して、くすくすと笑みを浮べる薬師。 「ウドンゲ、あなたは私の弟子でしょう?」 「そうでしたね、師匠」 どこか苦笑いの表情で兎の少女は答えた。 薬師は手に持ったソレを適当に後ろへと放り捨てる。 これは見せしめのようなものだ。 竹林へと足を踏み入れればこのような姿になるという警告。 これがどの程度の効果を上げるのかは分からないが、まあ、この次は捕まえた相手で色々と実験を試してみようかなどと薬師は考えていた。 「はい、それじゃあ次を寄こして頂戴」 そう薬師は手を差し出して、二人は暫し作業を続けた。 『その5 ビビる⑨』 「ここは、わたしがみつけたおうちだよ! はやくでていってね!」 「うわ、な、なによあんた」 「でていってね! さっさとでていってね!」 「え、あ、なに? まんじゅう?」 「ちがうよ! ぜんぜんちがうよ! だからでていってね!」 「なにさ、別にいいじゃないのよ」 「ゆっくりしていってね! あっちでゆっくりしていってね!」 「むむむ、ここはあたいがいつも遊んでる場所なのよー!」 「そんなのしらなーい! むこうでゆっくりしていってね!」 「邪魔なのはそっち! ほら、さっさとあっち行って!」 「そんなのしらなーい! ここはわたしのおうちなの!」 「だーかーらー出て行けー!」 「これからおひるねするの! うるさいからでていってね!」 「むかちん!」 「おお、こわいこわい」 「むっかー!」 「おお、こわいこわい」 「きー!!」 「おお、こわいこわい」 「しゃー!!!」 「おお、こわいこわい」 「チルノ、どうしたの?」 「あ、レティ」 「なにかしら、これ。大福妖怪?」 「はなしてね! ゆっくりおろしてね!」 「レティ、貸して」 「はい」 「なにするの!? やめようね! ゆっくりおろそうね!」 「てりゃっ!」 「あら投げた」 「たかーい! おそらをとんでるみたい!!」 「よく飛ぶのね。なんなのかしら、あれ」 「むかつくやつ」 「そうなの?」 「うん、そう」 「って、あら」 「あ」 「わあい! たかいたか――――つぶっ!?」 「池に落ちたわ」 「ふふん!」 「ゆっくりたすけてね! はやくたすけてね!」 「あらあら」 「ざまみろー!」 「すぐにたすけてね! さっさとたすけてね!」 「? なんだか段々と膨らんできてないかしら」 「ばーか! ばーか!」 「ゆっくりのびるよ! だんだんのびるよ!」 「すごくぶよぶよしてるわ、よ……」 「ばーか! ばーか! ばーか、ぁ……うわー」 「ゆ゛ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ」 「……き、気持ち悪いわね、チルノ」 「……う、うん」 「……あっちで遊びましょうか」 「……うん」 「ぶくぶくぶくぶくぶく…………」 『その6 投げっぱなし唐突百合エンド』 がしゃがしゃと鉄籠を揺らすのは、先日捕獲したよくわからない物体達だった。 紅魔館の門番長である紅美鈴が館の門前でウロウロとしている物体たちを捕獲してきたらしい。 「だってパチュリー様、こいつら追い払っても追い払っても近付いてくるんですよ。だったら昇天させるか捕まえるかぐらいしかないじゃないですか」 と言って門番は捕獲の方をえらんだ様子だった。 「それで、なんでそれがここにあるのでしょうか?」 傍らに控えた小悪魔が問う。 「そんなの、面白そうだからに決まっているでしょ」 見なさい、と差し出された二匹の生き物。 一方は大きな赤いリボン。 もう一方は黒い魔女帽子。 「何処かで見たことの在る格好ですね」 「でしょう?」 視線を合わせ、パチュリーはその物体へと声を掛けてみた。 「ねえあなた達、名前はあるのかしら?」 少女の問いには間髪いれずに答えが返ってきた。 「わたしのなまえはゆっくりれいむ!」 「わたしのなまえはゆっくりまりさ!」 「ゆっくりさせてあげるよ!!!」 「ゆっくりかわいがってね!!!」 「うわー」 と子悪魔。 「な、なんだかむかつくわね」 とパチュリー。 しかし直に気を取り直し、興味深げに二匹へと視線を這わせた。 「なんで紅白と黒いのの格好なのかしら?」 「いっぱいいますしね」 後ろを振り向く小悪魔。 紅魔館にある巨大図書館の一室であるこの部屋の隅には鉄の下りがいくつか積み重なっており、その中身はこの二匹。 ゆっくりれいむとゆっくりまりさがみっちりと収められていた。 ゆっくり達は各々に口を開く。 「だしてー! ねぇだして!」 「ゆっくりしようね! ここからだしてね!」 「おなかすいたよー! おうちかえしてー!」 「……中国もたくさん捕まえたものね」 呆れた様子のパチュリー。 ふと思いついた様子で小悪魔は問いかける。 「出してみましょうか」 「酷い事になるわよ」 溜息を吐いて止めておきなさい、と主に言われ特に落胆した様子も見せずに子悪魔は引き下がる。 「まあ、最近暇だったし、色々と観察してみましょうか」 ゆっくりまりさを持ち上げ、パチュリーは言う。 「たかーい! いいけしきー!!」 「わたしも! わたしも!」 ゆっくりれいむもその様子をみてパチュリーへと擦り寄っていく。 「あーはいはい」 言ってパチュリーは気だるそうに子悪魔へと視線を向けた。 その意を汲んだのか、小悪魔はゆっくりれいむを手に取り、高々と持ち上げて見せた。 「すごーい! いいけしきー!」 「こんなので喜ぶなんて、お手軽な脳味噌してるのね」 呆れたように呟くパチュリーに対して、ゆっくり二匹は笑顔を振りまいて楽しげな表情を見せていた。 ………… 「すっぱーい!」 「酢は大丈夫、と」 「からーい!」 「唐辛子も大丈夫」 「しょっぱーい!」 「醤油も平気ね」 「あまーい! おいしーい!」 「砂糖も食べる、と」 「もっとたべたい! ちょうだい! ねえちょうだい!」 「はいはい」 パチュリーの指示を受けて小悪魔がざらざらと砂糖袋から砂糖を皿へと盛る。 それを二匹のゆっくりは二人並んでぺろぺろと舐め始める。 なぜか色艶がよくなっている気がする。 やはり醤油や酢などよりも、砂糖の方が食えた物であるためか。 「ゆっくりー!」 「ゆっくりー!」 二匹は二人そろって仲良く叫んでいた。 「まずーい!」 「一応、草とかも食べるのね」 「おいしくなーい!」 「カブトムシも、有り」 「むぐむぐ、んぐんぐ」 「生肉も平気、と」 「おいしーい! すごくおいしいー!」 「お菓子は良く食べる、と」 「もっとちょうだい! もっとたべたい!」 「もう無いわよ、後は私たちの分」 目の前に紅茶と共にあるのは、紅魔館のメイド長が手掛けた焼き菓子が数枚。 持ってきた分の半分をゆっくり達へと与えたから、残りはパチュリーとその傍らに控える小悪魔の分だった。 「むーっ!」 「むーっ!」 なんでもっとくれないの、と足元でむくれる二匹のゆっくりを見て、やれやれとシュガーポットへと手を伸ばす。 蓋を開け角砂糖を二つほど取り出すと、ゆっくりの頭上へ向けて落として見せた。 「?」 「?」 頭の上の弾んだ感触に上を向き、目の前に転がってきた白い立方体をしげしげと眺め、やがて口に含む。 そして、その表情に喜色が浮かんだ。 「あまーい!」 「ありがとーパチュリー!」 「安い自尊心ね」 くすくすとパチュリーが苦笑を浮べるすぐ下で、二匹のゆっくりはパチュリーに擦り寄るように笑顔で騒いでいた。 ………… 今日一日観察してみて、分かったことを口にしてみる二人。 「雑食ね」 「雑食すぎますね」 あの後も様々な食べ物を与えてみて、生魚や芋虫、ついでに血液や人肉ケーキなども与えてみたが、美味い不味いの反応はあったものの、二匹のゆっくり生物はすべからく胃袋に収めてしまっていた。 食の観察をしてみれば、雑食この上ないという結果だった。 次は何をしようかしら、とパチュリー。 ああそういえば、と思い付きを口にする子悪魔。 「共食いとか、するんでしょうか?」 ちらりとパチュリーの足元に視線を向ける。 ゆっくりれいむとゆっくりまりさがそれぞれ寝息を立てて横に転がっていた。 それは、この雑食すぎる二匹のゆっくり生物に対して沸いた只の疑問であって、特に本心から思ったものでは無かった。 しかしパチュリーはどことなく冷やかな視線を足元に向け、口を開いた。 「試してみる?」 「え、宜しいのですか」 「宜しいのですかって何がかしら」 「万一にも共食いをしたら、どちらかが居なくなってしまいますよ」 「別に、私はペットを飼う心算は無いわよ。ティータイムのクッキーが減るのも、嫌」 咲夜の作ったお菓子は美味しいもの、と特にどうでもよさそうな事を呟いてパチュリーは指を振って何言かを唱えた。 二匹のゆっくりはふわふわと揺れるように浮かび上がり、パチュリーが着いている丸テーブルの上へと案内された。 未だ夢見心地の二匹を眺め、口を開く。 「まぁこの程度で情なんてモノが沸いていたら、百年も魔女なんてやっていないわよ」 つん、と指先でゆっくりの頬を優しくつつき、冷淡な微笑みを湛えて見せた。 ………… 1日目 「せまいよ! もっとひろいところがいい!」 「おなかすいたよ! あまいのたべたい!」 「えーと、特に異常無しですね」 2日目 「ゆっくりしようよ!!」 「なんでゆっくりさせてくれないの!?」 「ゆっくりしてますよー、私はー」 3日目 「おねいさん! だしてよ!」 「もっとゆっくりしようよ! ねえ!」 「それにしてもこの時間は暇ですねー、パチュリー様に習って本でも借りてきましょうか」 4日目 「だして! ここからだして!」 「ひどいやつ! パチュリーにいいつけてやる!」 「そうですねー、パチュリー様はお優しいですからー、知ったらきっと出してくださると思いますよー」 5日目 「パチュリー! たすけて!」 「わるいやつがここにいるの!」 「んー、しぶといと言うべきでしょうか、本日も異常無し」 6日目 「だずげでえええ! バヂュリ゛ー!」 「お゛な゛がずい゛だよ゛おおおお」 「さて、次はどの本を読みましょうか」 7日目 「い゛や゛だあああ! ゆ゛っぐり、じだいいいい」 「も゛う゛い゛や゛あああ! ゆ゛っぐりざぜでえええ」 「異常無しですか。んー、これはもしかすると――」 ………… 「すっきりー!」 「すっきりー!」 「すっきりー!」 「……………………なにしてるんですか、パチュリー様」 「あら、戻ってたのね」 なにやら高速で振動している三匹のゆっくり。 良く見なくても、パチュリーの魔法の仕業であることが分かる。 妙に頬を高潮させているゆっくり。 そして何故かその周囲には飛沫が舞っていた。 「ほら、こうすると発情するのよ」 高速で振動していたそれが、さらにその運動を激しくさせる。 「ゆっ……! ゆっ……! ゆっ……! ゆーー!!」 がくがくと震え初め、その丸い物体の下部から液体が飛び散り始める。 「す、すっきりー!」 「ほらね、これで、えーと……八回目かしら?」 うわぁ……と微妙そうな表情を見せる小悪魔にたいして、その主は笑顔を浮べ、言う。 「面白いでしょう?」 「……………………」 「……冗談よ。それで、今日の様子も変わり無いのかしら」 そう拗ねた様子で言って見せたパチュリーに対して、小悪魔は別室に隔離したゆっくりれいむとゆっくりまりさの様子を伝える。 といっても、七日目である今日の様子はといえば、ただ只管に泣き叫ぶだけだった。 「まあ、共食いといっても別に期待していたわけではないから、そういう生き物だったってだけよね」 そろそろ出してあげるのも良いかしら、と口にするパチュリー。 傍らで振動を続ける三匹のゆっくり達は、二人の会話中もそのままだった為か、白目を剥いて泡を吹き始めていた。 「これを掃除するのは、私なんでしょうか」 小悪魔の目の前には、色々な液体で水浸しになった一面の床と、その上で失神中の三匹のゆっくり達。 思わず溜息が零れた。 ………… がちゃり、と扉が開かれ、その奥から気だるげな印象を備えた少女が姿を表した。 「バヂュリ゛イイイイ!!!」 「バヂュリ゛イイイイ!!!」 「ひさしぶりね、貴方達。随分と痩せてしまったみたいだけど、大丈夫だったかしら?」 パチュリーの姿を目にした途端、跳ね起きるようにして鉄の格子に身体を押し付け、泣き叫ぶようにして助けを求めるゆっくり。 「だずげでバヂュリ゛ー!!!」 「わ゛る゛い゛や゛づがい゛る゛の゛おおお!!!」 「あらあら、まだまだ元気いっぱいね」 困ったような笑顔を浮べたパチュリーは二匹のゆっくりが収められている鉄籠に近付き、その扉に掛けられた錠前を魔法で切断してみせた。 籠の扉はその上部についており、そこから中を覗き込むとゆっくりが笑顔を浮べて此方を見上げているのが見て取れた。 「ゆっ! ゆっ!」 「ゆ……っ! ゆ……っ!」 二匹のゆっくりが、真上に開かれた出口から飛び出そうと一生懸命飛び跳ねて見せるが、あと少しという所で届かない。 「ほら、そんなに慌てなくても、手伝ってあげるわよ」 言うが早いか、ゆっくりれいむの体がふわりと浮き上がり、出口を潜ってパチェリーの胸元へと導かれる。 やさしく抱きとめられるゆくりれいむ。 「バ、バヂュリ゛ー!」 涙と鼻水でずるずるになったその表情をパチュリーの胸板へと押し付け、ゆっくりれいむは嗚咽を我慢せずに泣き始める。 思わず溜息を零し、パチュリーはその視線を期待に溢れた表情を浮べているゆっくりまりさへと向けた。 「はぁ……まりさは少しまっててね。れいむを置いてくるから」 「うん! まりさまってるよ! いいこだから! でも、はやくもどってきてね!」 「ええ、すくに戻ってくるわよ」 笑顔を浮べてゆっくりまりさに答えると、パチュリーはゆっくりれいむを抱えて部屋の入口へと向かっていった。 入ってくる際に開け放しのままにしておいた引き戸を潜り、廊下へと足を進める。 こつこつこつ、と暫し進む。 と、パチュリーの直傍らに佇む影が現れる。 「どうでしたか?」 「あっ!!」 小悪魔が声を掛けるのと、ゆっくりれいむがその姿に気付くのは同時だった。 パチュリーが小悪魔に言葉を返そうと口を開こうとするが、それを遮ってゆっくりれいむが大声で叫ぶ。 「パチュリー! こいつだよ! わるいやつ! やっつけて!」 敵意を剥きだしにして子悪魔を威嚇するゆっくりだったが、その様子を気にも留めずに小悪魔はパチュリーの衣装を気遣う。 「ああ、パチュリー様の御召し物をこんなに汚してしまって、駄目ですよ」 「パチュリー! はやく! こいつがれいむをいじめたの!」 「ほら、そのまま持っていてはさらに汚れてしまいます」 そう言ってパチュリーに向かって両手を差し出してみせる小悪魔。 ゆっくりれいむはその動作に一瞬身体を震わせ、その身をさらにパチュリーへと押し付けた。 口を開き、叫びを吐く。 「なにしてるの!? たすけてパチュリー!! こいつをやっつけて! はやく!!!」 一生懸命にパチュリーに懇願するゆっくりと、その様子をどうとも思っていない子悪魔。 やれやれ、とパチュリーは首を振り、至極あっさりとゆっくりれいむを手渡した。 「はい」 「――ゆ?」 何が起こったのか、はて? と首を傾げるゆっくりれいむ。 「……?? ……????」 辺りを見回し、パチュリーの顔を眺め、上を向いて子悪魔の顔を視界に納める。 「パチュリー様、御着替えでしたらあちらに咲夜様が居られますので」 「わかったわ」 パチュリーが小悪魔とすれ違い、離れていく。 「????」 何が起こったのか、全く理解できていないのだろう。 疑問符を浮べたまま、去っていくパチュリーの後姿を眺め続けるゆっくりれいむ。 「さて、台所を借りましょうか」 小悪魔は、直傍を通り過ぎたメイドの一人へと声を掛け、その足を厨房へと進めた。 ………… 「ごはんですよー」 「あっ! わるいやつ!」 パチュリーがゆっくりれいむを抱えて去っていった室内。 静かにパチュリーが戻ってくるのを待っていたゆっくりまりさの前に姿を現したのは、望んだパチュリーではなく悪い奴である子悪魔だった。 「パチュリー! はやくきて! わるいやつがここにいるよ!」 パチュリーに知らせる為であろうか、大きく音を立てるようにと鉄籠を揺らすべく上下に運動を繰り返すゆっくりまりさに対して、小悪魔は片手に持ったトレイから一枚の大皿を取り上げて見せる。 「そんな事は無いですよ、ほら」 言ってゆっくりまりさに差し出された大皿の上に載せられていたのは、輪になった生地に大量の餡子が詰められた、しいて言えば巨大な饅頭を輪切りにしたような何かだった。 「むっ」 ゆっくりまりさは格子を挟んだ向かい側、小悪魔が置いた食べ物らしき物体を凝視する。 空腹の為か、暫しソレを見つめ続け、次いで小悪魔へとその視線を移す。 これは何なのか? どのような意味なのか? といった視線だった。 「これはパチュリー様からですよ」 まるで花が咲いた様に笑いかける小悪魔。 「パチュリーから!?」 「私もあなたに意地悪したことを怒られてしまいましたし」 「おこられたの!?」 「ええ、はい。それはもう」 「パチュリー! ありがとー!」 思わず飛び跳ね、勝ち誇った笑みを小悪魔に向けるゆっくりまりさ。 「おもいしったか!!」 あらあら、と小悪魔はその笑みを益々深くする。 「それじゃあ出しますよ」 小悪魔の両手にて持ち上げられるゆっくりまりさ。 大皿の直傍に降ろされ、差し出された輪切り饅頭に齧り付く。 「むーしゃ♪ むーしゃ♪」 その表情に喜色が宿る。 「どうですか?」 「あまーい! おいしーい!」 ゆっくりまりさの胴回りと同じくらいのそれは食べ物としては巨大だったが、ゆっくりまりさにとっては久しぶりの甘味である為か瞬く間にその量が減っていく。 「まだまだありますよ」 巨大な何かを食べきった際に、さらに差し出される同じ形のソレ。 「ぜんぶまりさのー! むーしゃ♪ むーしゃ♪」 笑顔を浮べ、その量をさらに消化していく。 三つ、四つと食べきっていき、やがて差し出された大皿の中には最後のひとつが残されていた。 輪切りにされた何かの端。 げふー、と喉を鳴らしてそれに齧りつこうとするゆっくりまりさに向かって、小悪魔は口を開く。 「おいしかったですか?」 どこか、確認を求めるような声色だった。 「おいしかったー!」 「ソレも食べますか?」 「たべるの! ぜんぶまりさの!」 「そうですかー」 言って相変わらずの笑顔を貼り付けたままの小悪魔。 「でも、これ、裏返しですね」 「?」 「ほら、こちらが表です」 最後の一切れを、裏返す。 「……………………え?」 そこに何を見たのか、ゆっくりまりさの動作が止まる。 「……? ……??」 首を傾げ、首を振り、目を瞑り、目を開き、今まで食べたものを思い起こす。 「……??? ……????」 次いでカタカタと小刻みに震え始め、言葉にならない音がその口から漏れ始めた。 「れ……れ?」 「れ――なんですか」 「れ、れれ、れい、れい、む?」 「はい。正解です」 そこには、まるでこの世の全てに絶望しきったような愕然とした表情を貼り付けた、ゆっくりれいむの顔面部分があった。 薄く切り取られたその表情は、どこか虚空を見つめたまま、動くことは無い。 「……!? ……!?」 たまらず魚の如く口を開閉させるゆっくりまりさの様子を気にも留めず、小悪魔は大皿にのせられたゆっくりれいむ表情を相手へと進めてみせる。 「どうしましたか? これもあなたのものですよ? ほら、食べないと」 「……!! ……!!」 「これで最後ですよ、ほら、あーん」 「っ……!! ……パ」 「パ?」 「パチュリイイイ!!! わるいやつが!!! わるいやつが!!! れいむを!!! れいむがああああ!!!」 目を剥いて子悪魔を威嚇し、ゆっくりれいむの切れ端の直傍にて上下に飛び跳ねるゆっくりまりさ。 そんな突然の態度の豹変を受けても、小悪魔はにこやかな姿勢を崩さない。 にこにこと笑顔を浮べ、しかしその手段は強行だった。 「はやくきて!!! パチュリイイイ!!! はやくきて!!! こいつをやっつけて!!! パチュムグッ!??」 「はい、どうぞ♪」 小悪魔は片手をゆっくりまりさの口内に突っ込みこじ開け、もう片方の手でゆっくりれいむの切れ端を掴み、丸め、その開いた口内へと無理矢理押し込んだ。 「んぐ……っ!? むぐ……っ!! むー……っ!!!」 ゆっくりまりさは押し込まれるソレを舌で押し返そうと一生懸命抵抗するが、それも虚しく、小悪魔は強引にソレを押し込んでいく。 やがて口いっぱいに押し込まれていったソレは、ごくり、と嚥下されていった。 小悪魔が唾液の滴った手をゆっくりまりさの口から引き抜く。 「ごちそうさまでした♪」 両手を合わせ、首を傾げてゆっくりまりさに微笑みかける小悪魔。 ゆっくりまりさは目の前の空になった大皿を呆然と眺め続け、動かない。 さてそれでは、と子悪魔がゆっくりまりさを抱えあげるも反応はなく、そのまま室内を出ようとした所でようやくゆっくりまりさが呼び続けた人物が現れた。 「あら、パチュリー様、どうかなさいましたか?」 「……パチュリー?」 子悪魔に呼ばれたその名前に反応し、顔を上げるゆっくり。 はたしてそこには、ゆっくりまりさが待ち望んだ人影があった。 「パチュリー!!!」 「あっ」 予想外の勢いで小悪魔の懐から抜け出したゆっくりまりさは、一目散にとパチュリーへと飛び跳ねていった。 「パチュリー! たすけてパチュリー! わるいやつが! ひどいやつが! もうぜんぜんゆっくりできなーい!!!」 扉を抜けてパチュリーへと縋りつくべく精一杯の速度で飛び跳ねるゆっくりまりさ。 目の前のパチュリーまであと少し。 傍らに見知らぬ人影が二人分あったが、そんなのは思考の外であった。 しかし、次に聞こえてきた声にその身は震わされた。 「うー! うー!」 ゆっくり生物の共食い種。 ゆっくりれみりゃの登場である。 何処に居るのか、とゆっくりまりさが冷や汗を流しながら辺りを見回すと、パチュリーの直傍。 見知らぬ人影の内、片方、桃色の衣装を纏った少女の足元に、ゆっくりれみりゃは存在していた。 「レミリア様も御一緒だったんですね」 「ええ、私も、おもしろいものを見つけて、ね」 小悪魔の問いに対してレミリアと呼ばれた少女は、今現在ゆっくりまりさをおいかけまわしている何かに向かって視線を向けていた。 「うー! うー!」 「だずげでバヂュリ゛ー!!」 上機嫌に追い掛け回すゆっくりれみりゃと、パチュリーに助けを求めるべく当人に飛びつこうとするゆっくりまりさ。 「あら貧血」 パチュリーの胸板へと飛び込んできたゆっくりまりさを、ふらりとよろめく姿勢でパチュリーは回避する。 パチュリーはレミリアの傍らに控えていた銀髪のメイドに抱きとめられ、迎えられることの無かったゆっくりまりさの身体は空中を浮かぶ。 「ゆ゛!?」 べしょ、と床に顔面から墜落するゆっくりまりさ。 思わずレミリアから失笑が零れる。 「ふふふ、やっぱり、あの白黒とは似ても似つかないわね」 「うー! うー!」 追いついてきたゆっくりれみりゃに食いつかれ、悶絶し、暴れだすゆっくりまりさ。 「い゛、いだい!! やめ゙てやめでね゙…!!!」 「うー! うー!」 「…や゙め゙…!!……ばな゙じ…!!…ゆ゙…ゆ゙…ゆ゙!!!」 「うー! うー!」 「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛……!!!」 ぶちっ、と身体を引き千切ってその身の安全と確保するゆっくりまりさ。 おもわず前のめりに躓くゆっくりれみりゃを放置して、そのままの勢いで駆け出していく。 「あら、やるものね」 「でも、そろそろ飽きたわ」 指を伸ばし、言霊を紡ぐパチュリー。 皆に背を見せてゆっくりれみりゃから一目散に逃げ出そうとしているゆっくりまりさの身体がふわりと持ち上がる。 「な゛、な゛に゛!?」 空を切った感触に一瞬思考に隙間が出来るが、くるりとその身体を反転させられ、目の前に現れたその姿にゆっくりまりさの心に希望の火が灯った。 「パ、パチュリー!! たすけてね! ゆっくりたすけてね!」 ゆらゆらと波間を漂うように揺れながら、ゆっくりまりさとパチュリーの距離が縮まり、もう少しで届くかという所で、その真下から一人と一匹の触れ合いを妨害する声が上がった。 「うー! うー!」 思わず冷や汗を垂らして強張った表情を貼り付けたゆっくりまりさが、恐る恐る自らの下へと視線を向ける。 ゆっくりまりさの傷口から溢れ出た餡子を直下で待ち構え、零れ落ちて来たそれを頬張っているゆっくりれみりゃ。 慌ててパチュリーに向き直り、唾を飛ばしながら必死な形相で懇願をし始めるパチュリー。 「た、たすけてパチュリー! あいつがまりさをいじめるの!! あいつをやっつけて!!!」 そう言ってパチュリーに助けを求めるが、パチュリーは笑みを浮べたまま動こうとはしない。 そればかりか、先ほどからゆっくりまりさとパチュリーとの距離は縮んでいない様に感じられた。 「なにしてるの!? はやく!! はやくたすけてパチュリー!!」 既に完全に恐慌状態に陥っているゆっくりまりさに対して、パチュリーはようやく口を引く。 笑顔から一転、呆れたような表情を見せて、一言。 「あなたの相手をするのは凄く疲れるわ」 向けられた視線は冷やかだった。 「パ、パチュリー? ……?」 「自分勝手で我侭なのは別に構わないわ。食いしん坊な所も馬鹿な所も、ね。でも、一々人に頼るのは止めて頂戴。凄く疲れるから」 「……? ……?? ……??? ……????」 ぱくぱくと声にならない音を漏らし、その表情に何を浮べるべきか定まらないゆっくりまりさ。 何を言っているのか、何を言われたのか。 理解できない、理解したくない。 愕然とした表情のまま、ゆっくりまりさの精神が停滞する。 「あなたは興味深い生き物だったけど、もうおしまい。ほら、あの子に食べられれば寂しくないわよ」 あなた以外の子は、みんなあの子が食べちゃったんだから、と。 「うー! うー!」 ゆっくりれみりゃの声が聞こえる。 くるりとパチュリーが指先一つでゆっくりまりさを反転させると、その三寸先に、ゆっくりれみりゃの顔が浮かんでいた。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……!??」 「うー! うー!」 ぱたぱたとその背中の羽を動かして、ゆっくりまりさと同じ高さに浮かんだゆっくりれみりゃは邪気の無い表情を相手へと向けている。 おいしい食べ物を目の前にして、その機嫌は上々の様子だった。 何を思ってか、ゆっくりまりさのその表情が酷く歪む。 「ゆ゛っ゛ぐり゛……!!」 ゆっくりれみりゃが大きく口を開く。 何か、黒い塊を吐き出すように、まるで原型を留めていない表情でゆっくりまりさは吼えた。 「ゆ゛っ゛ぐり゛ざぜでえええええええ――――づぶ」 暗転。 「さすがにこれは酷いですねー」 「お嬢様……」 「な、何よ二人共、散らかしたのはこの子よ」 「うー?」 そういってゆっくりれみりゃを抱えあげるレミリア。 ここは紅魔館の一室。 パチュリーが捕まえられたゆっくり達を観察していた、ゆっくり観察部屋だった。 部屋の彼方此方に散乱しているのは中身の無い鉄籠。 中身は空である。 しかし、注目すべきは其処では無い。 部屋の全体に向かってぶちまけられる様に散乱した、大量の餡子。 見れば、赤いリボンや黒い魔女帽子の残骸も部屋の彼方此方に見て取れた。 このような有様になったのはつい先ほど。 パチュリーがゆっくりれいむの涙と涎でずるずるになった衣服を着替え、この部屋へとやってきた際、レミリアが一匹のゆっくりを連れてこの部屋を訪れた。 そのゆっくりがゆっくりれみりゃである。 どうやらパチュリーがゆっくり達を構っているのを見て、自分でも一匹ほど飼ってみたくなったらしい。 中国にお願いして一匹捕獲してもらい、それがゆっくりれみりゃであったそうだ。 「――それで、ほかのゆっくり達と遊ばせようと思って籠を開けたら、片っ端から食べられてしまった、と」 まさに、阿鼻叫喚の地獄絵図だったらしい。 逃げるゆっくり達。 追いかけるゆっくりれみりゃ。 種類の差だろうか、立ち向かうという思考すら浮かばないらしく、パチュリーやレミリアの陰に隠れ必死に懇願を繰り返すゆっくり達。 もりもりと上機嫌でゆっくり達を喰い散らかしていくゆっくりれみりゃ。 泣き叫ぶゆっくり。 逃げ惑うゆっくり。 飛び散るゆっくり。 喰いまくるゆっくりれみりゃ。 物凄い光景だったらしい。 「――ああ、それではあの部屋の前を通りかかったのは」 「咲夜を呼びに言った帰りね」 部屋の掃除のために、と主人。 「はぁ……」 とは従者の呆れである。 「それにしても、紅白巫女や白黒魔法使いの他に、レミィのゆっくりも居るなんてね」 「うー?」 わたしに似たゆっくりも居るのかしら? と言ってレミリアの腕の中に納まっているゆっくりれみりゃへと腕を伸ばすパチュリー。 と、 「うまうま!」 むーしゃ♪ むーしゃ♪ とゆっくりれみりゃ。 「あ」 と子悪魔。 「あら」 とは腕を丸齧りされているパチュリー。 「パチェ!!」 ばん、と大きな破裂音を残して、ゆっくりれみりゃの姿が掻き消える。 部屋の壁一面に盛大な染みが生まれ、飛び散る肉汁。 腕を振りぬいた姿勢のレミリア。 その顔は青い。 「あ、あぁ、なんて事……だ、大丈夫? ねえパチェ」 「このくらい何とも無いわよ、レミィ」 「こんなに血が出て、なんて痛ましいのかしら」 「やさしいのね、レミィ」 「あぁ、パチェ……」 「レミィ……」 見詰め合う二人。 触れ合う両手。 近付く唇。 ………… 「……さっさと片付けましょうか」 「……そうですねー」 紅魔館は今日も平和だ。 『その7 一人芸』 「シャンハーイ」 「え、何? この生き物は何かって」 「ホラーイ」 「うん。今朝魔法の森で見つけたのよ」 「シャンハーイ」 「何で黒焦げなのかって? さあ、拾った時にはそうだったから、そこまでは私にも判らないわ」 「ホラーイ」 「如何するのかって? ふふふ、ねえ見て、この生き物、何かに似てると思わない?」 「シャンハーイ」 「うーん、判らないかしら」 「ホラーイ」 「あら、正解よ」 「シャンハーイ」 「ふふふふ、ね? ほら、魔理沙に似ていると思わない?」 「ホラーイ」 「くすくすくすくすくす……さあ? どうしてくれようかしら」 「……………………ゆ…………ゆゆ」 「ん? あら」 「ゆっ……ゆっ……」 「目が覚めるのかしら」 「ゆっ……?」 「あら、おはよう」 「ゆっくりー……?」 「ゆっくり?」 「こ……」 「こ?」 「ここ……」 「ここ?」 「ここはどこなの? おねいさんはだれ? おうちかえして!」 「そんな一遍に言われても答えられないわよ」 「…………」 「?」 「おねいさんのばーか!」 「うわ」 「おなかすいた! おうちかえる!」 「ふーん」 「ゆっくりしたいの! おうちかえる!」 「へぇ」 「ゆっくりするからね! おうちかえる!」 「あら、こんな所にショートケーキが」 「ゆっ!? それちょうだいね! おいしくたべるよ!」 「シャンハーイ」 「あー、人形に持っていかれちゃったわ」 「む゛っ!」 「あら、あんな所にモンブランケーキが」 「ちょうだい! それちょうだい! おねいさんあれとって!」 「ホラーイ」 「あー、人形が取って行っちゃったわ」 「む゛ーっ!」 「あら、そんな所にシュークリームが」 「ゆっくりー!!!」 「味はまあまあね」 「あー!!!」 「ん? どうしたの? 何をそんなに騒いでいるの?」 「わたしの! それわたしのシュークリーム!! なんでかってにたべちゃうの!!!」 「…………は?」 「ひどーい! おねいさんひどい!!」 「うーん……始めて見た時から予想してたけど、想像以上の自分勝手ぶりね。さすがは魔理沙モドキといった所かしら」 「む゛む゛む゛!」 「やれやれ……」 「シャンハーイ」 「ゆ?」 「ホラーイ」 「ゆゆ!!」 「まあ、お人形さんがあなたにケーキをあげるって。よかったわねぇ」 「わーい!」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「ふふん! おねいさんにはあげない! これはわたしの! いいでしょ!!」 「そうね、羨ましいわ」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪」 「酷い食べっぷりね」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪」 「なんて不細工なのかしら」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪」 「まるで人面饅頭ね」 「むーしゃ♪ むーしゃぶぶっ……!?」 「……? どうしたの?」 「か、かかかか」 「かかか?」 「からーい!!! おみず!! おみずはどこ!!」 「あらまあ」 「おみず!! おみず!! はやくしてね!! さっさとしてね!!」 「水、ね。何処にあったかしら」 「くちのなかがひりひりするの!! はやく! おねいさんはやく!」 「ごめんなさい。お姉さんちょっと物忘れが激しくて」 「どこ!!? おみずはどこ!! はやくおもいだしてね!! すぐにおもいだしてね!!」 「はぁ……全然思い出せないわ」 「ばーか!! おねいさんのばーか!!! ばかばかばーか!!!!」 「…………」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「へえ、お人形さんがトマトジュースでよければあるよって。よかったわねぇ」 「わあい!」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「ふふん! おねいさんのばーか!!」 「はいはい。さっさと飲みなさい」 「ゆっくりのむよ! おいしくのむよ! ありがとうおにんぎょさんたち!!」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「ゆっくりー! …………ごくごくごくごくごぶぶぶっ!!!??」 「ふふふっ、どうしたのかしら? ねえ?」 「~~~~~~~!????」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「あら、お人形さんがごめんなさいって。トマトジュースじゃなくてタバスコだったって」 「……!!! ……!!?? ……!????」 「うーん、何言ってるのか全然分からないわ」 「∂∫∬¥$¢£Å‰ξ……!!!」 「うわ、瞳孔開いてるわよ」 「シャンハーイ」 「よっぽど辛いものが苦手なのかしらね」 「ホラーイ」 「泡まで吹き始めたわ……って、流石にこれは気持ち悪いわ。どうしようかしら」 「シャンハーイ」 「え? 何処かに捨ててきましょうかって? ……そうね、このままガタガタゴトゴト五月蝿いのも煩わしい事だし――」 「ホラーイ」 「――折角だから、使わなかった辛子団子と山葵饅頭も押し込んで放り出しましょうか」 「シャンハーイ」 「はい、ありがとう。ほら、そこの魔理沙モドキ口を開きなさい」 「……ゆ゛? ……ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛????」 「はい、そこで捻じ込んで」 「ホラーイ」 「……!!!??? ……!!!!!!!」 「ごちそうさま、と。じゃあ口を開かない様にぐるぐる巻きにして、そこら辺の藪の中にでも転がしておこうかしら」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「ぐるぐるぐる、と」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「行ってらっしゃい、なるべく物騒そうな所に捨ててくるのよー」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「…………ふー。んー、なんだか久しぶりにすっきりした気がするわー!」 『おわれ』 駄文製作者:ななな
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/698.html
黄色い高草が、吹き渡る風に揉まれて散ってゆく。見渡す限り――地平線までの草原。 低木がまばらに立ち、小川の流れる、そこは、何者も存在しない土地だった。 無尽庭園 実際には、北の方角から南西までを、大きく湾曲して流れる広い川で、それ以外の方角を森で仕切られている。出入り口となる境界上には俺の庵があり、その円状の範囲が俺の所有となる。 それでも、小さな村ひとつ分ほどの広さをもつ広大な土地だ。一介の虐待お兄さんに過ぎないこの俺が所有するには本来不釣合いなほどの。 俺は、ゆっくりれいむとまりさのつがいを放った。まだ若く、生気に満ち満ちている。 「さあ、ゆっくりしておいで」 「ゆゆっ!!」 「だぜ!!」 二匹のゆっくりは籠を揺らして飛び出すと、俺の事など振り返りもせずに駆け出した。 黄色い草の中に、ゆっくりたちの踏み荒らした路ができていく。 俺は庵の近くに立てた高見台から、ゆっくり達の後姿を見送った。 「ゆっくりしていってね!!」 * * * * 本能のままに駆け出した二匹は低木の根本で一息つくと、そこに身を落ち着けた。眼前に広がる大自然に向かい、まずまりさが自分のお家宣言をする。 「ここは、まりさたちがみつけたまりさたちのおうちだぜ!!」 ばばーん。決まった。 「こーんなひろーいおうちだなんて、まりさすてきー!!」 「それほどでもあるぜ!ここがまりささまとれいむのゆっくりぷれいすだぜ!!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 二匹は身を寄せ合い、”おうた”を歌い始める。 「ゆゆ~ゆゆゆゆゆ~ゆ~ゆ~ゆっゆ~」 「ゆっ!ゆっ!ゆゆゆ~ゆ~ゆ~ゆゆゆーゆゆ~」 何しろ基本的に身勝手なゆっくり二匹。音程も調子も、全く合っていなかった。しかし、お互い気にすることもなく歌い終える。 「すごくゆっくりした!!」 「こんなひろいおうちをもってるゆっくりなんて、このまりさとれいむだけなんだぜ!!」 「まりささいこう~!!」 「あたりまえだぜ!まりさはやりてなんだぜ!!」 満足し、次はごはんたいむだ。虫や小動物がまったく通りかからなかったので、二匹は手近な草に飛びかかった。 しかし、二匹は異変に気づかされることになった。 「ゆゆっ!?」 ぱらぱらぱら。 「むーしゃ、むー……?」 ぱらぱらぱらぱら… 黄色くひょろ長い草は、口に含もうとするとかさかさと崩れ、風に飛ばされていってしまい、ほとんど口には入らない。おかしいと思いながらも悪戦苦闘していた二匹だったが、音を上げるのは時間の問題だった。 「ゆっぐりできないいい~~~!!!」 「おかしいぜー!なんでゆっぐりできないんだぜええーー!?」 次に目をつけたのは、今までもたれかかっていた低木。しかしこれも、恐ろしいほど硬い皮に阻まれ、うまく食することができない。 「ゆぐっ……ゆぐっ……」 「うえええ………」 これでは埒が明かない。他ならぬ食料の問題、結論はすぐに出た。れいむはまりさを振り返り、今までの尊敬のまなざしなど忘れたかのように鋭く睨む。 「こんなたべものじゃぜんぜんゆっくりできないよ!!まりさのやりてはくちばっかりなの?しぬの? そうじゃないなら、れいむのためにはやくおいしいたべものとってきてね!」 「ゆぐぐぐぐ!!ゆぐううう~!!」 先ほどの大言が仇となり、満足に言い返すこともできないまりさ。ぴょんぴょんとその場で跳ね、身をよじる。 「さっさとしてよ!!れいむがぜんぜんゆっくりできないのはまりさのせいなんだよ!!ぴょんぴょんやめて、ゆっくりなんとかしてよね!!」 「あ、ああ…そうだな…れいむ……ここにいてもしょうがないんだぜ、れいむもいっしょに、ほかのばしょにごはんをさがしにいくんだぜ」 まりさが不機嫌のれいむをなだめすかして移動をはじめる。 しかし、どこまでも続く草、草、草…… 「むしさん、どうぶつさん、どこぉ……」 「だぜ、だぜ、だぜ……」 日が傾き、夕暮れの刻限となっても二匹は移動し続けていた。しかし、辺りにあるのはいつも変わらない、黄色の高草ばかりだった。 「んもおおおおお!!!!これというのもみんなまりさのせいだよ!!ゆっぐりじだいよおおおお!!!!!!」 「まりさはわるくないぜ!!!いけないのはこのゆっくりぷれいすのほうだぜ!!」 奇しくもまりさの言葉は正しい。ここは人間達が農作を放棄した、比類なく痩せた土地。虐待お兄さんが手に入れることができたのもそのためだ。 ゆっくり達にできるのは、味気のない高草をもそもそと長い時間をかけて食することと、硬くて噛み下せない木の枝を舐めることしかないのだ。 「ゆぬぐうううう!!!!」 「いくらたべてもはらいっぱいにならないぜ!!こんなのいやだぜ!!」 「おみずのみたい!!まりさ!!ゆっくりおみずもってきてね!!!」 「そんなのどこにもないんだぜえええ……」 ここは川までは遠い。二匹が水にありつくには、朝露を待たねばならない。 やがて、夜が下りてくる。 まりさが今まで忘れていた、ある事に気づいた。 「れいむ、おうちをつくるんだぜ。そうしないとゆっくりできないんだぜ」 「ゆゆっ!!そうだね!おうちをつくってゆっくりしようね!!」 飢えと乾きにさいなまれながらも、見えた一抹の光明。 おうちさえあれば、いまよりはゆっくりできるのではないか。それどころか、食料や水も手に入るような気がする。 「ゆぅ……さっきはひどいこといってごめんね……まりさはやっぱりすてきな、れいむのまりさだよ……」 「きにすることないぜ!さ、ゆっくりおうちをつくるんだぜ!!」 二匹は元気を取り戻し、おうちづくりの作業を開始する。 しかしそれが完了することのない徒労であることに、餡子頭の二匹はいまだ気づかずにいた。 止んでいた風が、また吹き始めていた。それはすぐに勢いを増し、草の海に波を立てていく。 ざああああああ……… 「ゆゆっ!ゆぐううううう~~~!?」 ほんのちょっとの風が、たった今運んできた一束の草を吹き散らしてしまう。 「まって!まっでえええええええーーーー!!」 必死の形相で、ぴょんこぴょんこと草を追いかける二匹。それが完全にばらばらになってしまっても、跳ねることをやめなかった。餡子頭の考えでは、追いかけていればそのうちつかまえられるはずなのだ。しかしついに力尽き、息が切れてその場にぺしゃんと座り込む。 「やっばりまりざのぜいだよぉ……!!まりざなんがどいっじょになるんじゃながったよぉぉぉぉ……」 「うっさい!!れいむがへたくそだから、くさがとんでっちゃったんだぜ!!こんどはもっとうまくやるんだぜ!!」 仕方なく気を取り直し、ふたたび草をちぎってくわえ、先ほど家と定めたの木の下まで戻る。すでに疲労しきっている二匹は無意識に草を口に含むため、草は少しずつ目減りしていく。さらに、ゆへゆへと息を切らしただらしない口の端からもこぼれてゆく。 そうして苦労の末に集めたほんの少しの草も、 びょおおおおうううう―― 「まっで!!まあっでええええ!!なんでまだな゛い゛の゛お゛っ゛た゛ら゛あ゛あ゛!!!!!ゆ゛う゛う゛う゛う゛お゛お゛!!!!ま゛でっ゛!!ま゛でっ゛ま゛でっ!!ゆ゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!!!」 「ま゛つ゛ん゛だぜえ゛え゛え゛え゛え゛!!!???」 並の知能しか持たない二匹が家作りを諦めるのは、まだまだ先のことである。 びゅおおおおおおおお……… 「か゛ぜさ゛ん゛!!!じゃ゛ま゛じな゛い゛でゆ゛っ゛ぐり゛さ゛せ゛て゛よ゛お゛ぉ゛ぉ゛!!!!ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「のどかわいた……おなかすいたんだぜぇぇ……」 「も゛う゛や゛た゛あ゛あ゛あ!!!゛お゛う゛ち゛か゛え゛る゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!!!!!!!」 ひゅううううううう―――― * * * * がたがたと簡素な庵が揺れる。強まってきた風のせいだ。この土地特有の、いつまでも止むことなく吹き続ける、木枯らしのような風だ。 俺は待っている。 「遅い……」 「れみりゃのあかちゃん、かっわいいどぅ~☆」 「うあ♪うあ♪」 「さすがれみりゃのあかちゃん!!さいこうにぷりってぃ~だどぅ~~!!う~♪」 「(……うぜ)」 暖かく快適な庵の中で、俺はゆっくりれみりゃの親子とともに待機している。 「早くゆっくり達、来ないかなあ……」 いったんおしまい。 つづくんだぜ □ ■ □ ■ あとがき 一区切り。とりあえずはこんなところだけれど、最終的にはみんなまとめてゆっくりできなくしてやるぜ!!ヒャア!!虐待だあ!! 読了下さり、ありがとうございました。 虐待BGM:ビリー・ジョエル『NO MAN S LAND』 過去に書いたSS 豚小屋とぷっでぃーん 豚小屋とぷっでぃーん2 エターナル冷やし饅頭 れみりゃ拘束虐待 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3581.html
※虐待されないゆっくりが居ます ※虐待と言うよりは虐殺かもしれません ※俺設定入ってます ※東方キャラがほんのちょっとだけ出てます <<ふつうとちょっとだけちがうゆっくりさくやのおはなし>> ゆっくりさくやというゆっくりがいる。 銀髪にまるでメイドのようなカチューシャの形をした飾りを持つゆっくりだ。 数はあまり多くないらしく中々見かける機会は少なかったのだが、とある事情により我が家で飼うことができるようになった。 これは、普通とほんの少しだけ違うゆっくりさくやと俺のある日の出来事である。 「だんなさま、あさですわ! ゆっくりおきてください!」 ある日の朝。いつものようにさくやに起こされた。さくやはいつも俺より先に起きる。一度さくやが寝るまで待ってみようとした事もあったが、 さくやも寝ずに根競べになって三日三晩寝ずにすごしてダブルノックダウンとなってからは諦めた。 このさくやは元々湖の向こうにある紅魔館という所で飼われていたゆっくりで、里に行商に行った際に会ったそこに住む赤い髪の悪魔さんから譲り受けた。 なんでも屋敷にいたほかのゆっくりと問題を起こして屋敷に置けなくなったが、捨てるには忍びないので誰かに譲りたかったらしい。 何で縁もゆかりもない俺かと疑問に思ったものだが、間違っても屋敷に来ないような人なら誰でも良かったらしい。 まあ、信用してもらえたのなら有難い事だ。出来るならば俺の露店の商品を買ったり胸触らせてくれたりしたらもっと良かったが。 しかしまあ、そこでの教育の成果なのだろう、このさくやは、人間の俺から見ても非常に優秀でそつがない。 こいつ本当にゆっくりなのか? そう思わせるほどに見知ったゆっくりの印象と違う。 まず控えめであり、人間(俺)を立て、ぎゃあぎゃあと騒ぐ事もない。家に侵入したゆっくりを仕留めておやつに出してくれるくらいだ。 逆にちゃんと戸締りをしてくれと注意もされた。それなら何故追い出されたのだろう、と思うが、妖怪の考えることは分からん。 恐らくこの性格からお嬢さまの機嫌でも損ねたのだろう。 「あいよ。しかしお前ほんとゆっくりしてないよなぁ」 「だいのゆっくりをえるためにはしょうのゆっくりはすてるのがしんのゆっくりですわ!」 ……さいですか。本当はゆっくりに姿を変えた向こうのメイドさんじゃねえのかお前。 寝床からのそのそと這い出て居間へと向かう。まずは飯を食わねば仕事も出来ない。 「さて、作業に入るか。さくや、外で遊んできていいぞ?」 俺は木を使った細工物を作る職人だ。作ったものを露店で売ったりもするが、オーダーメイド物のほうが売り上げはいい。 家庭でゆっくりを飼う事が多くなってからは。ゆっくり用のおもちゃやゆっくりが好む棲家用の家具も作っている。 そういった物を扱う店からの注文が一番多いが、まあ蛇足だろう。 さくやに手伝える事はあまりないのでそう言うと、さくやはこっちに向かって跳ねてきた。 そういえば、コイツに頼まれて作ったものがあったな…… 「だんなさま! おねがいしていたものはできました?」 「おう。出来てるけど他の家のゆっくりに向けて使うんじゃないぞ? 危ないからな」 そう言って出したのは木でできた小さなナイフ。ゆっくりが口に咥えて丁度いい、と言うくらいの大きさで、先端に重りが仕込んである。 ゆっくり種は大抵幻想郷の英雄や妖怪に似た顔を持ち、オリジナル(実際は違うらしいが便宜上そう呼ぶ)が持つ物を持ちたがる傾向にある。 例えばみょん種なら木の枝(刀のように使うらしい。飼いゆっくりでは木刀や小刀を持ちたがるとか。)、 ぱちゅりー種なら本(文字を書いた紙切れなら何でもいいらしい)等。 コイツの場合、オリジナルのメイドさんのように投げナイフを欲しがった。流石に刃物は危ないのでこうして木を削ったものを与えているが。 実際腕はたいしたもので、飛んでいる胴なしのきめぇ丸を仕留めた事もある。 「そんなばかなまねはしませんわ! ぷんぷん!」 心外だ、とばかりに膨れるさくや。こういうときばかりはこいつもゆっくりらしいなぁ、と思うので、ついついからかってしまうのだ。 「はは、悪い悪い。ほらよ」 与えてやると喜んで髪の下にしまい込む。前に見せてもらったが、まりさ種のように帽子がないためずり落ちないように工夫している。 その時はよく考えたものだなぁ、と感心したものだ。 「それではだんなさま、おひるにはもどりますわ! きょうのおやつはなにがいいですか?」 「あー、そうだな。ここ暫く餡子だったしそれ以外が食いたいな。まりさとれいむ以外だったら何でも良いや。 でもゆかりんだけは勘弁な」 「かしこまりましたわ!」 開けっ放しの戸から出て行くさくや。近所で飼っているゆっくり達と遊んだ帰りに野良を狩って来てその日のおやつにする、 というコースがいつもの流れで、多いときは4・5匹狩ってくることもある。その際にナイフを使うので、それなりに消耗が激しい。 まあ端切れの木材で作れるし甘味は得られるしで収支としては大いにプラスだ。 さくやも俺が喜んでくれるのが嬉しいらしく、嬉々として狩っている。楽しそうで何よりだが、 たまに怪我をして帰ってくるのであまり熱を上げすぎないようにとは言ってある。 狩って来たゆっくりは適度に恐怖を与えてある為美味いが、さくやが死んでは元も子もないのだ。 そして正午。ゆっくりが跳ねる音がするのでさくやが帰ってきたと思ったが、縁側に上がってきたのは違うゆっくりだった。 狐のような耳と9本の尻尾が生えたゆっくりと、猫のような耳と2本の尻尾が生えたゆっくり。 ゆっくりらんとゆっくりちぇんだ。何やら追われているようで、しきりに後ろを向いて酷く怯えた様子で震えている。 「どうしたんだお前ら。ここは俺の家だぞ?」 「わ、わかるよー! でもおわれてるんだよー! わかってねー!」 「何に追われてるんだ?」 と聞くと今度はらんが、 「と、とってもゆっくりできてないゆっくりだよ! ゆっくりたすけてね!」 「まー、良いけど。取り合えず中に入っておけ。そこだと見つかるんじゃないのか?」 手招きすると凄い勢いで跳ねてきて膝に乗った。まだ恐いのかガタガタと歯を鳴らしながら震えている。 そうしていると、少ししてまたゆっくりが跳ねてくる音がした。目を向けると、そこにはうちのさくやがいた。 らんたちの震えが一層酷くなる。なるほど、そういうことか。 「おい、あのさくやがお前達を追いかけてたゆっくりか?」 「そ、そうだよー! あのさくやがいきなりおいかけてきたんだよー! わかってねー!」 「にんげんさん、はやくあいつをやっつけてね! やっつけてくれたらおとなしくでていくよ!」 どうやら俺とさくやの関係は知らないらしい。俺はそんな2匹の頭を掴み、軽く持ち上げながらさくやに聞く。 「こいつらが今日のか?」 びくりと手の中の2匹が硬直する。どうやら俺とさくやの関係を理解したらしい。 「はい、だんなさま。たまにはいきのいいゆっくりでもとおもいまして」 2匹が激しく震えだす。俺は手をさくやの方に向ける。丁度、2匹の底面がさくやに向けられる形になる。 たまにはおやつの前にちょっとしたショーでも見ることにしよう。 「さくや、真ん中に当てろ」 「かしこまりましたわ!」 言うが早いか、さくやの姿が軽くぶれる。直後、2匹が「ゆぎぎっ!?」と悲鳴を上げる。 2匹の底面には俺がさっき渡してやったナイフが刺さっていた。丁度底面の中央、相変わらずいい腕をしている。 「よし、よくできた。後でごほうびをやろう」 さくやに笑いかけて、ナイフが刺さったままの2匹を天地逆にして床に置く。 ゆっくりは底面を動かして跳ねたり這ったりするため、底が損傷したり逆さにされると動けなくなる。 ナイフは刺さったままの為、迂闊にひっくり返ろうものなら深く刺さって悪ければ即死だろう。 俺は動けないようにした後囲炉裏に薪を放り込んで火をつけた。どちらかといえば、俺は焼き饅頭の方が好きなのだ。 それに底と口を焼いておけば、ナイフを抜いた後でも動けないし、食べる時に叫ばれなくて済む。 火を熾していると、背後でまた悲鳴が上がった。振り返ると、さくやが2匹の顎からナイフを貫通させて口を縫いとめていた。 そこまでしなくても良いのになぁ、と苦笑する俺の前で、薪がぱちぱちと燃え始めていた。 「さて、さくや。今日はご苦労さん。昼に言ってたごほうびだぞ」 夜。良い月がでているので、月見酒としゃれ込もうと縁側に出ていた。 俺とさくやの間にはさらに盛られた、いかにも美味そうな饅頭。この間寺子屋に顔を出した時にガキの時分世話になった慧音先生に会ったので、 髪飾りを差し上げたらお礼にと貰ったのだ。先生、できれば今度その胸にある2つの饅頭を揉ませてください。 ちなみにいうと、ゆっくりではない。ちゃんと材料の段階から吟味して丹精こめて作られた高級品だそうだ。 「おいしそうですわ!」 眼に見えて喜ぶさくや。やはりゆっくりなのか、甘いものには目がないようだ。 俺が饅頭を手に取ると、口をつけるのを確認してから時分も取って食べ始める。 本当、できたゆっくりだよお前は。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ……!」 目尻に涙を浮かべながら心底幸せそうな顔をする。いわゆる「へぶんじょうたい!」と言う奴だろうか。 そのいつもは見せない愛らしさに俺自身も「へぶんじょうたい!」となっていた所に水を差すかのように、 ぱたぱたと言う羽音が聞こえてきた。 「うー! うー! なんかいいにおいがするどぉ~?」 庭に下りてきたのはゆっくりれみりゃ。しかも胴付きだ。 捕食種として有名で、狩人の家では飼われることも多いれみりゃだが、胴付きはあまり好かれる事はない。 赤ん坊の頃からしっかりと教育された物ならともかく、野良の胴付きは図々しい個体が多いのだ。 胴なしは飛び回りこそすれ、多少我侭だが飼う際は他のゆっくりと余り大差はない。 だが、胴付きの固体は手足があり戦闘力が(ゆっくりにしては)非常に上がる反面、 慢心する事が多く常の生意気なゆっくり以上に自分を過信しすぎる。つまり非常に身の程知らずなのだ。 暫く辺りを見回していたれみりゃだが、どうやら俺や饅頭に気付いたようだ。 あのゆっくり独特のふてぶてしい笑みを浮かべ、こちらに向かって歩いてくる。 「おいしそうなあまあまがあるんだどぅ~。こーまかんのえれがんとなおぜうさまがたべてあげるからそれをよこすんだどぉ~?」 「だが断る」 そういってさっと家の中に皿を滑らせる。そして面食らったようなれみりゃに、畳み掛けるようにまくし立てた。 「俺の趣味は木で細工物を作る事ともうひとつ、自信満々に要求してくるゆっくりの要求を却下する事だ。 というか人の物が欲しいなら『寄越せ』はないだろ。『ください』だろ普通。まあくださいといってもやるつもりはないが」 言い放ってやると、れみりゃはぽかんとした後遅れて顔を真っ赤に染めて地団太を踏んだ。 そしてさくやがいるのに気付くと、俺を指差して大声で怒鳴り散らした。 「さくやー! そのあまあまをもってきてれみりゃによこすんだどぉー! そしてそいつをしょけいするんだどぉー! おぜうさまのめいれいだどぉー!」 れみりゃ種とさくや種の間には、オリジナルの様にさくやがれみりゃに奉仕するという奇妙な共生関係を築く場合がある。 初対面同士であってもそうらしいが、本能にそういうものだと刻まれているのだろうか。 しかしさくやは返事をしない。正直、素直に言う事を聞いてしまうのではないかと危惧したが、流石は元紅魔館のゆっくり。 その辺りの教育もしっかりしているようだ。 「…………」 さくやの顔は俯いていて良く見えない。心なしか震えているように見える。 本能が「れみりゃに奉仕せよ」と言っているのに抵抗しているのだろうか? だが、それは、間違いだと俺は気付かされた。さくやがなぜ紅魔館から追い出されたのかと言う理由を知ると共に。 「ざくやぁー! なぁにをじでるんだどぉ! ざっざとあまあまをもっでぐるんだどぉ!」 ゆでだこの様に真っ赤になって怒鳴り散らすれみりゃ。しかしさくやは動かない。 そして震えは良く見ずとも確認できる程に大きくなっていき、それが頂点に達した時、 まるで今日の昼と同じように、さくやの姿がぶれた。 「いぎゃぁぁぁぁぁっ!? でびりゃのぶりぢーなおべべがいだいんだどぉー!?」 れみりゃの悲鳴にそちらを向くと、れみりゃの両目にナイフが突き刺さっていた。そう、俺がさくやに作ってやったあのナイフだ。 れみりゃはそれを抜こうとするが、目測を誤りさらにナイフを押し込んでしまう。たまらず転倒し悶えるが、 さくやの動きがれみりゃが地面に倒れるよりも早かった。目にも留まらぬ速さでれみりゃに体当たりをすると、 胴体にストンピングをかました後、新しく取り出したナイフで四肢を縫いとめたのだ。 そして再度ナイフを取り出すと、今度は胴体に向けそれを突き刺し、引き抜き、それを何度も繰り返す。 「ふざっ! けるなっ! おまえのようなっ! くそまんじゅうがっ! おぜうさまでっ! あるものかっ! わたしのっ! おぜうさまは! れみりあさまっ! ただひとりっ! おまえのようなっ! できそこないがっ! かるがるしくっ! そのなまえをっ! かたるなぁっ! しねっ! しんでしまえっ! おまえのようなっ! ごみくずはっ! ゆっくりっ! しないでっ! さっさとっ! しねぇぇぇっ!」 突き刺し、抜き、また別の場所に突き刺し、抜く。 胴体に突き刺す場所がなくなれば今度は四肢、四肢に刺す場所がなくなれば今度は頭。 れみりゃ種は高い再生力を持つが、今回はそれが裏目に出た。他の場所を刺す間にその傷が治れば、 今度は治った場所から順に刺されていく。さくやの突然の狂乱は、それから暫くして れみりゃがゆっくりともいえないようなミンチに成り果てて動かなくなってから、ようやく終わった。 「はぁっ、はぁっ、おもい、しったか、くそ、まんじゅうめ……!」 「落ち着け、さくや。もう死んでる」 息を荒げ、なおもれみりゃに突き刺そうとするさくやを抱え上げ、抱きしめる。 抱き上げられる事で我に返ったのか、さくやはふるふると震えだした。袖が暖かい液体で濡れる感覚は、さくやが泣いているからだろうか。 「どうしたんだよいきなり。お前らしくもない」 「だ、だんな、さま……」 「取り合えず、洗ってやるよ。話はその後だ。今のお前、肉汁で凄いことなってるぞ?」 さくやの身体は、れみりゃの肉汁でぎとぎとになっていた。人間でいうなら、返り血で真っ赤に染まっているというところだろうか。 震えながらぽろぽろと泣くさくやを抱えながら、俺は風呂場へと向かった。 それから、暫く後。俺は居間でさくやの身の上話を聞いていた。 自分は生まれも育ちも紅魔館であること。自分は紅魔館の主、レミリア=スカーレットが戯れに手ずから育てたゆっくりであること。 主の事が大好きで、紅魔館を追い出された事も恨んではいないこと。そして、自分が紅魔館を追い出される事になった原因を。 「わたしは、おぜうさまがだいすきでした……こんなあるじにそだてられて、わたしはげんそうきょういちのしあわせものだともおもいました。 だから、ゆるせなかったんです、れみりゃが。あんな、おぜうさまをぶじょくするようなそんざいが……」 ゆっくりの多くは生意気で身の程を知らず、オリジナルにすら歯向かって殺される事もあるという。 ゆっくりアリスのレイパー種など、オリジナルからすれば皆殺しにしたくなるであろうものもいる。 さくやは、主の事を本当に慕っていた。忠義に篤い、ゆっくりらしからぬゆっくりなのだろう。 だから、れみりゃが許せなかった。オリジナルが飼っているれみりゃにすら牙を剥いて、殺してしまった。 それでやむなく紅魔館から出される事になったのだと言う。殺されなかったのは、せめてもの温情だったのだろう。 「そうか……まあ、気持ちは分かるよ。俺も生意気なゆっくりは腹立つし。 でもまあ、何事も程々が肝心だ。抑えるところを抑えるのも、瀟洒なメイドって奴だと思うぞ」 「はい……」 「俺は別にさ、それを知ったからってお前を追い出そうとかそういうのはないんだよ。 むしろ、嬉しいくらいだ。お前が腹の底までさらけ出してくれてさ。 だからさ……もっと抑えるところは抑えて、立派なメイドになれよ。 オリジナルが嫉妬するくらいに凄いメイドにさ」 「だんなさまぁ……っ!」 さくやが胸に飛び込んでくる。そういえば、こいつが自分からこうしてくるのは初めてだな…… 俺はそんな事を思いながら、声を上げて泣くさくやを抱きしめていた。 ―――――――――――――――――――――――― あとがき どうも、初めまして。95スレ 754です。 前々から書いてみようか、とは考えてたんですが、いまいちネタが浮かばずに居たところに 95スレ 750の人の一言にインスピレーションを得て書いてみました。 れみりゃ虐待SSというよりは、さくやメインのSSになってしまった感がありますが。 れみりゃを溺愛する咲夜さんというのが先達の方々のSSでよく見かけたので、 逆にさくやを育てるレミリア様がいてもいいのではないかと思いまして。 そして、そんな主に育てられたさくやは果たしてれみりゃを「おぜうさま」として認識できるのか?とも。 自分は「オリジナルをに愛されて育った後にゆっくりを見ても、主のまがい物にしか見えないのでは」という見解に至りました。 オリジナルに会った事がないさくやなら別なんでしょうけれど。 今回出てきたさくやは主に対する忠誠心が高すぎたさくや、と言う感じです。もはや狂信の域に達してるなぁこれ。 しかし、まだまだ虐待の仕方が甘いですね。虐待というより虐殺ですし。精進せねば。 今度はタカアキさんのやつのような、道具というか機械や虐待する為のものにゆっくりを放り込んで~みたいな物も書いてみたいです。 あと、一言だけ。今回はれみりゃを虐待しよう! ということでこういう感じになりましたが、 別にれみりゃが嫌いじゃないんです、俺。それだけですが。 最後に予想されるであろう質問に対するQ&A。 Q・なんで木工細工の職人なん? A・ナイフを作って与える都合上。深い意味は無いです。 Q・さくや速過ぎ。 A・紅魔館の英才教育マジパネエ。 Q・おっぱい揉みたがるなんて変態じゃねえか。 A・多感な時期に目の前にあんなものぶら下げられたらそりゃおっぱい星人に育とうというものです。 以上。 書いたもの ふつうとちょっとだけちがうゆっくりさくやのおはなし
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1941.html
ゆっくりいじめ、になるのかな? 一部のゆっくりはほぼいじめて無いのでそこは注意 最近俺は機嫌がよかった。 以前ゆっくりに畑をやられないよう考えた罠が安定して効果を発揮していたからである。 畑の周りを柵で囲み、わざと一箇所だけ壊れたように見せかける そしてゆっくりがそこから入ろうとすると底にでかい強化プラスチックの箱をはめ込んだ落とし穴に落ちるのである。 落とし穴はゆっくりを捕獲するためであり、箱は穴を掘って出られないようにするため 実にわかりやすいトラップだが確実にゆっくりの進入を防ぎ、なおかつ加工所に売りさばく副収入もある でかい箱は少し高かったがそれだけの価値があったようだ。 とまあそういうわけで機嫌よく畑仕事をしていた俺だが、ある日珍しいやつが近くを通った 「う~れみりゃだじょ~」 ゆっくりれみりゃ、略してゆみりゃが俺の畑にやってきたのである。しかも体つき ただの顔だけならば適当に打ち落として近くの森に離してやったが(ゆっくりを食べるから)体つきである。 もしかすると紅魔館のやつかもしれない。いや、ぼろぼろの傘持ってる体つきはほぼ確実にあそこのだろう。 あんまりあそこのメイドに嫌われるのは勘弁である。どうしたものかと考えてたらこっちに近づいてきた。 「ぷっでぃ~んたべたいど~♪」 出会い頭にそれかよ。ずっと食べたいなら一生館から出てくるなよ。 心の中で突っ込んでいると柵のスキマからどてどてと入ろうとしてきた。バカだ 「がお~、たべ…ぶぎゃっ!!」 あっという間に落とし穴に落ちてしまった。もちろんあの俺が仕掛けた対ゆっくり用の罠である。 「いだい゛ーーーー!!!!い゛だいーーーーーー!!!!ざぐやーーーー!!!」 すごい声である。鼓膜がやぶれるかと思った。 この声でメイド長が回収しにきてくれないかなと思ったけど、勝手に抜け出したタイプらしい。メイド長は来なかった。 どうしたものだろうか。別に気にせず加工所に持っていってもいいが下手に持っていって変に恨まれるのもアレだ。 それにこいつを助けようものならこいつの相手をしなくてはならない。 自分勝手に「それよりぷっでぃ~ん!もってくるんだどぅ~♪」 とか言われたら正直蹴り飛ばしてつぶしそうだ。 だいぶ太陽も傾いてきたし明日でいいかな。 考えるのもめんどくさくなってきたので家に帰ることにした。 「ゆっ!おじさん、ここはまりさたちのおうちだよ!おいしいものをもってきてゆっくりでていってね!」 帰ってきていきなりこれかよ。テンプレ乙。なんで会ったばかりお前らに食べ物を渡さねばならんのか。 家の中にゆっくりまりさとれいむというありきたりな組み合わせのゆっくり二匹が入っていた。 とはいってもやっぱり罠にかかっているが。 俺は家にも対ゆっくり用の罠を仕掛けていた。まぁこっちも簡単な仕掛けだ。 ゆっくりは人の家を見かけると一通り入れそうな所を探し、見つからない場合はガラスを割って入ろうとする。 ガラスは高価だから何度もひょいひょい割られるのは勘弁である。 そこでわざと一箇所だけ簡単に入れるがゆっくりでは出られない仕掛けのドアを目立つところに作る。 そこに入ると檻で仕切られた簡単な部屋に閉じ込められるわけだ。 「ゆううぅ!!、まりさっ、あがちゃんがもうすぐうまれるよ!」 れいむは妊婦かよ。そんなもの連れて家探すなよ。 そういや加工所がにんっしんっできるゆっくりを高く買い取るっていってたなぁ 「ゆ、たいへんだよっ!!おじさんさっさとおいしいものをもってきてねっ!!れいむにはたべものがひつようだよ!!」 「いや、自分の家なら自分でとってこいよ」 「ゆゆっ、まりさはここからでられないんだよ!!だからひまなおじさんがもってきてねっ!!」 自分の家から出られないっていろいろおかしいし、そもそも俺はこれから自分の飯を作らなきゃならないんだが そこでふとあるネタが思いつく。どうせ勝手に入ってきたゆっくりだ。好きにさせてもらう そう考えると二匹を捕獲し、早速畑に向かった。 「おながずいだぁぁぁっっ!!ざぐやぁぁぁっ!!!」 ゆみりゃの声が響き渡る。が、さすがに叫びすぎたのかさっきよりはおとなしい 「ゆ、れみりゃのこえがするよっ!おじさんさっさとはなしてねっ!」 腕の中にいるまりさが暴れる。もう片方の腕にいるれいむも暴れているがさすがにおなかの子が心配なのかそれほどでもない 「ああ、離してやるよ。それ」 そういうと俺は穴の中へと放り込んだ。 「ゆぶっ、ぶぎゃっ。おじさんなにす…ゆぎゃ~っ!!」 「う~?あまあまおかし~♪」 落ちてきたゆっくりまりさに気づいたゆみりゃがまりさに手を伸ばす。しかしその動きは遅いものでまりさは慌ててそれをかわす。 「う~♪まて~♪」 「またないよっ!!勝手にそこでゆっくりしててねっ!!」 この落とし穴。実は群れが来たときのためにそこそこ広く作ってある。二十匹くらいなら普通に入る位の広さだ。 それに温室育ちのゆみりゃは狩なんぞしたことがないだろう。そんなやつが野生で生き残ったやつを捕まえることもできまい そのため動きの早いまりさならうまくやれば体つきゆみりゃから逃げることも可能なのだ。 「おじさんさっさとここからだしてねっ!このままじゃまりさがたべられるよ!!」 まりさが叫ぶが俺はそれを見下ろしながら答える。 「ああ、助けてやるよ。気が向いたらな」 「なんでぞんなごどいうの~、ゆぐぅうううぅ」 脇に置いたれいむが何かいってるが気にしない。妊娠中なのでまともに動くことも出来ないのだ。 「お前らが勝手に俺の家に入るからだろうが」 「ゆゆっ、あそこはまりさのいえだよっ!!」 ゆみりゃの猛攻をよけながらまりさが叫ぶ。意外と余裕かもしれない。 「まぁ、お前のでもいいさ。ここで死んだらゆっくり貰うから」 「ゆぎっ、あそこはまりさのいえっていってるでしょ!?おじさんば…ゆぎょ!」 おしい、こっちに意識が向いてる間につかまればよかったのに。 ずっと文句言われ続けるのもむかつくのでちょっとやる気出させてみるか。 「まりさにチャンスをあげるよっ!!成功したらゆっくりできる家もあげるしおいしいものもたくさん用意するっ!!」 「ゆゆっ、おじさんそれほんと!」 「ああ、本当だとも。そいつからしばらく逃げ切ったら家もあげるしおいしい物も君達のために準備する」 「ゆゆっ、まりさがんばってっ!!」 「わかったよっ!!がんばってにげきるよっ!!」 れいむの応援をうけ張り切るまりさ。おいしいものがほしいのだろう。 こうしてなんだかよく分からない賭けが始まった。 しかし、しばらくがどれぐらいの時間なのかまったく決めてないのにあっさりうけいれる饅頭達はやっぱりバカだと思う。 もちろんまりさがやられるまでに決まってるとも。 「う~~!!う~!!!、さっさとれみりゃにつかまっで~!!!」 「ば~かば~か、そんなのつかまらないよ~♪」 れみりゃは捕まえようとするがなかなかまりさは捕まらない。なかなか動きの早いまりさだ。きっとゆっくりでも上位だろう。 しかしなかなかおもしろいなこれ。いつ捕まるかでちょっと興奮する。今度小さい子に教えてはやらせよう。 「まりさがんば…いぎっ、ゆぎぎぎっっ!!なにがででぐるーーー!!!」 れいむが苦しみ始める。さっき言ってた子供がでてくるのだろう。 「ゆゆ、れいむどうしたの?おじさんれいむをたすけてねっ!」 「どうしたのってさっき言ってたじゃん。もうすぐ赤ちゃん生まれるって」 この短時間でわすれるなよ。さすが餡子脳。 「ゆゆっ、そうだったよ!!がんばってうんでねっ!!!」 必死に逃げながらまりさはれいむを応援する。きっと頭の中では家族とゆっくりする姿が浮かんでいるに違いない。 れいむは必死に生もうとしてるが、ここであることに気づく。 「ゆう!おじざんごのままだどあがぢゃんがあなにおぢぢゃうよ!!」 そう、いままで穴の中を見ていたのである。そして産道は正面にあるのだ、間違いなく落ちるだろう。 「そうか、がんばって生んでね」 「ぞ、ぞんな。だべだよっ!あがぢゃんがだべだれじゃ、ゆぎぎぃぃぃぃ!!!!」 ぽんっ おお、いい音したなぁ。 れいむの腹から生まれた子供が見事に飛んでいき、ゆみりゃの手前に落ちる。 「ゆっくりして…ゆっ?ゆぎゃぁぁぁぁっっ!!!!!!!」 「あまあま~♪」 ゆみりゃは落ちた子ゆっくりを拾うとあっという間に食べる。うーむ、一口とは豪快ですな。全然お嬢様っぽくない まあ生まれたばかりのゆっくりはうまいし。腹減ってたってのもあるんだろう 「ゆぅぅぅっ!!まりさのあがぢゃんがぁぁぁっっっ!!おじさんなんであがじゃんおどずのぉぉぉっっ!!」 「別にたすけろって頼まれてないし」 「びどいいいいいっっっ!!」 お前らの自分勝手な発想のほうがひどいだろ。なんであんなんで自然界を生きてられるん? 「うーーたりないどーー」 そういうとまたゆみりゃはまりさを襲う。まりさも慌ててにげだす。 「ゆぐぐぅぅぅううううっっ!!!づぎのごがうばでるよ!!!」 「おじざんづぎばだずげでねぇぇぇぇっっ!!」 「分かった。努力はするよ」 たすける気ないけど。 そんなこんなで生まれた三匹の赤ゆっくりは全部ゆみりゃに食べられた。 ちなみに二匹目は二口くらいで、三匹目は少しずつ食べました。 「うーー、おなかいっぱいだどーー」 「ばでぃざどあがぢゃんがーーっ!!!!どうぢでぞんだごどずづのーーー!!!!」 そりゃ捕食種だから当たり前だろ。 れいむは出産の疲れと子供が食べられたショックで動けないみたいだったので透明な箱に入れる。 明日加工所に持っていこ。 「がっでぢばでぃざどあがぢゃんだべづびゅっぐぢばぢんでで!!!」 もはや何いってるかさっぱり分からんがまりさはゆみりゃに体当たりを開始した。 しかしもちろんまったく効かない。立ってるときに体当たりするなら転ばせれたかもしれないが、 今のゆみりゃは座ってゆっくりしている。 「じゃまなんだどーー、いらないものはぽいだどーー」 ぐしゃ あ、つぶれた。さすが捕食種といったところか つぶしたまりさを気に留めることなくゆみりゃはあっという間に寝てしまった。たぶん疲れたんだろ。 俺も疲れたし腹減ったから家に帰るかな。 ゆみりゃは次の日メイド長に回収された。 預かっていたということでお礼をいくらかもらった。 総合的にプラスマイナスゼロといった感じだがあそこの館に好印象を受けたことだし結果オーライといったところだろう。 なんかよく分からない終わり方をしてしまいすみません。 ちなみに自分は今後も特に報告もなくロダに書き捨てていくつもり。他の方の作品を待つまでのひまつぶしにでもどうぞ ただの自己満足の書き捨てなので 過去作品 巨大(ry このSSに感想を付ける