約 1,127,550 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1953.html
前 *注意 ゆっくりいじめ描写無し。人間いじめ含む。 「こんにちは」 「………………」 「こんにちは」 「………………」 「ハロー・ニーハオ・ボンジュール」 「………………」 「さて、どうする、参謀? ワット・ドゥ・ユー・ドゥ?」 「言い直さなくていいです。私としてはちょうど良かったように思いますが、時期的に」 「クリスマスプレゼントか。天に召されるにしてもいい日ではあるな」 「観点が違いますよ、わざとでしょうけど」 「いや、そういう見方もできるということだよ。そう悪意でばかり捉えられると困るな」 「これまでの行いを省みることですね。ともかく調理班を呼ぶのが適当かと」 「うん、妥当だな。まあ、そうだ」 「長には、何か懸念でも?」 「いや、確かにこれは据え膳だろう。他の動物や妖怪に横取りされる前に、とどめを刺して解体するのが当然だろうな。ゆっくりは動物であり妖怪でもある存在だ」 「当然というより自然ですね。摂理に合ってます」 「それに、この衰弱具合では胃にも腸にも入っているものは何一つないだろう。臭みが取れていて美味いだろうな」 「そうですね。では、何が問題なんです?」 「意地が悪いな。本当はわかって聞いているんだろう」 「わかってはいますが、理解できないだけです」 「殺す人間を選り好みするのは、逆に生命を冒涜している……ということかな?」 「言いたいことの一つはそうですね」 「残りの理由は?」 「意地が悪いですね。本当はわかって聞いているんでしょう?」 「おぉ、言葉を返されるとは思わなかったな。というより、」 「『自分の意見を最小限にとどめて、相手の言葉を引き出す会話法を使っているね、さっきから』、ですか?」 「ハハッ、素晴らしい、その通り。いやいや、ますます可愛くなくなるね。売れ残りのクリスマスケーキも幾星霜を経れば、逆に価値が出るものなのかい?」 「それはお互い様ですから、ご自分の胸に聞くのが一番早いでしょう」 「本当に芯が強くなったなあ。もういっそお前さんが長をやったらどうかな。代わりに俺が参謀になろう。通り名はチビ黒参謀」 「そうですね。では引き継ぎを行いたいので、とりあえずどこかのお寺にこもってください。焼き討ちに行きますから」 「下剋上か。是非も無し。しかし、それではたった三日の天下だぞ」 「『鳴かぬならどうでもいいやホトトギス』」 「投げやりだな」 「では長もやり逃げはしないでください」 「責任は取れ、ということか。OK、認知しよう」 「ええ」 「俺の責任の下に、俺が命じよう」 「ではお考えをお聞かせ願いたく」 「まず、食糧に困ってない」 「困ってますよ」 「確実に餓死するほどではないだろう。備蓄にやや不安があるだけだ」 「流入してきたゆっくりが多すぎます。そのほとんどが冬眠もできず、食域も狭いです」「外部からの移民は晩秋初冬の風物詩だろう。予測した上で食糧は溜めておいた」 「それでも何かしらトラブルがあれば厳しいことになります。少しでも余裕があった方がいいでしょう」 「そう、それは認める。だが、絶対的に必要というわけでないのも事実だ」 「まあ……それは、その通りです、確かに。しかし、外部活動をする者たちからは不満も漏れ始めていますよ。『働かざる者が食うなんて』という旨のことです」 「それについては、食糧を前借りするのは正当な権利だと伝えておくことだな。それに流入者が下手に外部活動できるのでなくて、却って良かったのじゃないか? 外での活動が結局は一番糧秣を食うわけだしな」 「……ええ。少し話がずれてしまいましたね。苦しいところはあれど食糧は足りているという点で、長と私の意見は一致します」 「うん。それで、後の理由だが、お前さんの言う通り『選り好み』だよ」 「基準がわかりません。一体何ですか?」 「俺は面食いだ。彼は好みのタイプだ」 「なるほど」 「納得したか」 「はい」 「そうか」 「はい」 「………………」 「………………」 「すまない。俺が悪かった」 「早く話を進めてください」 「ん、基準の話だったな。上級の妖怪と同じ基準でこちらもやりたい」 「は? それは、ええと、確か」 「うん、生きるに値しない人間を選んで食べるということさ」 「『生きるに値しない』……というのはどういうことですか?」 「その辺りはまた話が長くなるな」 「しかしはっきりさせてくれないと困ります。ごく稀に私はそのことで酷く混乱するんですから」 「俺が不在の時は参謀の基準で行ってくれればいい。さっきの俺の基準は、群れにとっては最優先事項でないからな」 「確かにこれまでは問題なく処理できています。群れにおいても疑問視する声は聞かれません。けれど、曖昧にはしておきたくないんです。明確な基準とその意味をはっきりさせておきたいです」 「言い分はわかる。当然と言えば当然だ。わざわざ人里に入って人間を食い殺したと思ったら、今度は山で行き倒れた人間を助けたりするなんて、矛盾を感じてもおかしくはないな」 「え……? ……っ! 助けるつもりなんですか!?」 「そのつもりだ」 「信じられません。突発的かつ手前勝手な慈愛の精神に目覚めたのですか? このまま凍死にせよ、餓死にせよ、死ぬに任せておいてから解体するつもりだと思ってました。これなら殺さずに食糧を確保できます。でも、それでさえ理解できないというのに……」 「いやいや、理解できなくていいよ、そっちのつもりはないから。それに、通常なら殺してしまって問題ないというのはさっき言った通りさ。ただ、条件が揃っているなら、何かしら施してやってもいいだろうとは考えている」 「条件?」 「そう、彼我のね。さて、殺さない理由と生かす理由の有無を検証してみようか」 「…………………っ……」 「おや、ナイスタイミングかな? では、彼我の彼を確認してみよう。あー、アンニョンハセヨ?」 「普通に言ってください」 「…………だ、……ぇ」 「この界隈に群れを形成しているゆっくり、その長だ。初めまして。聞こえているかな?」 「…………ぅ……」 「そうか。では早速で悪いのだが、この縄張りから出て行ってもらえるかな。お前さんの存在は何かと物議を醸しているんだ」 「……べ…ぉの…」 「食べ物か。確かにその衰弱ぶりでは、自力で出て行けはしないな。しかし、こちらの台所事情も逼迫気味でね、その要求を満たすのはやや難があるかな。まあ、横にいる健啖な参謀は、是非とももてなしたいと言っているんだけどね。クリームと酢と塩を擦り込んだ上で」 「宮沢賢治じゃありませんよ」 「化け猫でなくて、化け饅頭だしな。──さて、人間、今のやり取りでお前さんを助けることが決定された。しばらく待っていてくれ」 「長、ちょっと待ってください」 「うん、手短にな、あの男が事切れる前に」 「私はまだ完全には理解できていないのですが」 「理解できたところまで話してくれ」 「人間の存在が問題になるのはわかります。何もせずに放置するのはありえません。特に群れの中でのことですから」 「そう、殺しもせずに死ぬのを待つのでは、虐待と変わらない。群れの教育上よろしくないな」 「しかし、そこから先がわかりません。助けられないならひと思いに介錯してあげるべきです。しかし、長は『助ける』と言った。『人間に渡せる食べ物はない』という台詞と共にです。矛盾していませんか」 「二点見落としているな」 「はい?」 「『彼我の彼の条件』は何かな」 「え、と、その話ですか。ええと」 「彼は殺されてしかるべき人間ではないようだ。よだれを垂らして飛びかかってくるようなら、むしろ話が早くて良かったのだけどね」 「正当防衛は使えない、そして彼の人柄は……。『彼我の彼における殺さない理由』はわかりました。私の目には、ただのお人好しにも映りますが」 「生命の危機に際しても、手軽に食えるゆっくりに手を出さないからな。特に参謀は食い出があるのに」 「長は煮ても焼いても食えませんけれどね。ともかく、彼は少なくとも生を弄ぶような人間ではない」 「そう、俺の基準で言えば、彼は殺したくない部類の人間だ」 「一つは片付きました。そして後一点、私が見落としているのは、『彼我の我における生かす理由』です。これがなくては、どんなに長が殺したくなくても、殺さざるをえなくなる」 「いや、何が何でも助けたいわけではないよ。助けられるから助けるのであって、そうでなければためらいなく殺すさ」 「やはり、見落としているのは食糧のことですね。それこそが彼を助けるものですから。しかし、だからこそわかりません。私の疑問符はどう外されるのですか?」 「単純なことだよ。まず参謀は俺の台詞を誤解している。俺は『難がある』と言ったのであって、『できない』とは言ってない」 「同じ事では? ギリギリの状態なのに、外部の者に譲渡する義理はありませんよ」 「非常時でもなければ食べない物があるだろう。与えるのはそれだ」 「……え? いえいえ、まさか。人間の食域はゆっくりのそれに比べて、格段に狭いはずです、少なくとも私たちの群れにおいては」 「今やそうなっているね。古参のゆっくりはみんな悪食のプロフェッショナルだからな」 「長がそう仕向けたんでしょうが、まったく。とにかく、群れの誰にも食べられないものが人間に食べられるはずがありません」 「それは事実だ。ただ何事にも例外があってな」 「例外、ですか?」 「さて、参謀。俺とくじ引きをしよう」 「本当に何とお礼を言ったらいいか」 「何度も言うが、気にしなくていい。成り行きでしたことだからな」 「そんなことはない。君たちは命の恩人だ。必ず借りは返すよ」 「いや、こちらとしてはお前さんが『何もしない』のが最善なんだ。気持ちだけ受け取っておく、とさえも言えない。ともかく、お前さんには早くここから出て行ってもらいたい」 「ああ、わかった。それからもう二度と群れには近づかないでおくんだね」 「そう願う」 「約束するよ。本当にすまないね、群れには食糧が無かったのに分けてもらって」 「本来は捨てるはずのものだ。そんなものを食べさせたんだが」 「だけど、そのお陰でこうして生きていられる。感謝するよ。わざわざ温めてもらって、暖も取れた」 「それは勘違いだな。加工したてだから温かかったんだ。いつもは廃棄するものだから、備蓄はない」 「あれは加工品の廃棄物なのか。なかなか美味しかったよ、素朴な味わいで。何て言う物なのかな」 「お前さんは丼物を知っているかな」 「ああ、鰻丼とか親子丼とか」 「では、鉄火丼も知っているね」 「『てっか』……? いや、初耳だよ。あれが?」 「まあ、具だけだがな。それもいらない部分を寄せ集めたものだ」 「そうか、あれが……。作り方を聞いてもいいかな。村に帰ったらもう一度食べてみたいんだ」 「残念だがそれは無理だ。人間と食料を争奪することになりかねない。だから、今回のことは他言無用とお願いしているわけだよ。察してもらいたいな」 「ああ、わかった。約束するよ。……貴重な食材なんだね」 「最寄りの村はこの先にある。お前さんが来た村とは別だが、冬が開けるまで世話になるといい。案内はできない。最近村人が妖怪に食い殺されてね、ゆっくりに対しても絶賛警戒中なんだ」 「ありがとう。お礼しか言えない自分が恥ずかしいが、心から感謝するよ。ありがとう」 「さあ、早く行ってくれ。『ここでは何もなかった』。いいな?」 「これにて一件落着と。さて、俺たちも昼食にしようか」 「………………」 「ん、どうした? 何か心配なのかな。大丈夫だろうさ、あの人間は。身体に差し障りがあるはずがない。栄養価も悪くないし、毒性なんてあるはずもないのは検証済みだ。現にあれだけ回復していたじゃないか」 「………………」 「味も香りも不快なものではなかったろう。感謝していたわけだしな、家畜人ヤプーほどじゃないにせよ」 「………………」 「それとも、彼が事実を知ることを畏れているのか? 鉄火丼を知らなかったんだ、幻想郷には海がないから、普通に生きている限りは一生知ることはないさ。だから、海亀のスープみたいなことにはなりえないよ」 「………………」 「それにしても、我々にとってはトラブルでも、彼にとっては運が良かったな。いや、運だけでは命を繋ぐことは不可能だったろう。最後まであきらめない根気、そしてくよくよと細かいことに囚われない良い意味での鈍さ。すなわち『運根鈍』が彼を救ったんだ。そして、彼が食べたのは──」 「それ以上は黙ってください」 「何だ、せっかくオチを付けようと思ったのに」 「冗談じゃないです! 何で私があんなこと!」 「おいおい、厳正なるクジ引きの結果じゃないか。正規の業務の外なのだから、俺と参謀にしかできないことだったわけだしな」 「一軒一軒回って、あんな、あんなお願い……っ」 「涙目になる程のことかな。ちょっと変な目で見られたくらいだろう」 「くらいじゃないですよ! くらいじゃ! あぁ、もう私どんな顔してみんなに会えばいいの……」 「明日から子供たちのヒーローだな」 「長っ!」 「じゃあオチを付けるぞ。彼が食べたのは」 「長ァッ!」 「駄目か? じゃあウンコ丼は止めて、ホカ便にしようか」 「いい加減にしてください!!」 「参謀だったらどっちがいい? アンコ味のウンコか、ウンコ味のアンコか」 「ッ! 失礼しますっ!!」 「あ、参謀! ちょっと待ってくれ! 参謀! おい! …………参ったな……」 「……最後はクソクラエと罵倒してほしかったんだが」 黒ゆっくり4 過去作 fuku2894.txt黒ゆっくり1 fuku3225.txt黒ゆっくり2 fuku4178.txt黒ゆっくり3 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1353.html
前 「おかあさん、だいすき!」 ――ああ、これは娘の声だ。 目の前をぴょんぴょん飛び跳ねている赤ちゃんゆっくり霊夢は、目の中に入れても痛くないほど可愛い存在だ。 愛しい、愛しい、まりさの子供。 それが、七人。 皆、元気があって、頭も良くて、何よりすごくゆっくりしている。 まりさは、それだけが嬉しかった。 まりさは五人姉妹の末っ子として誕生した。 父はゆっくり魔理沙、母はゆっくり霊夢。 自分以外の姉妹の種族はゆっくり霊夢種。 自分だけがゆっくり魔理沙種。 だけど、家族皆仲の良い、本当にゆっくりした家族だった。 だが、その生活は一変する。 おうちが胴体付きのゆっくりれみりゃに襲われたのだ。 すると父親であるゆっくり魔理沙は、家族を犠牲にして逃げ出した。 最低のゴミクズだった。 幸いにも、ゆっくりれみりゃはまりさたちを無視し、家族の中で一番太っていて美味しそうなゆっくり魔理沙を追いかけていった。 家族は全滅の危機を逃れた。 ゆっくり魔理沙がどうなったかは、誰も知らない。 ただ、近くで帽子だけが見つかったから、きっと死んだのだろう。 もし生きてまりさたちの前に現れたとしても、帽子がないから父親だと認識出来なかっただろうが。 そんなことがあって以来、まりさは姉妹たちにいじめられるようになった。 まりさが家族を捨てて逃げ出したゆっくり魔理沙と同じ種族だから、理由はそれだけだった。 母はそれに気付いていたようだったが、止めることはしなかった。 それどころか、あからさまに食事の量を減らされるようになった。 少ないと文句を言うと、末っ子で一番身体が小さいんだから我慢しろと逆に怒られた。 なんでまりさがこんな目に合わなくちゃいけないの? まりさは酷く悲しかった。 そして、もし自分が親になることがあれば、絶対に、何があろうとも、家族だけは守ろう。 そう誓った。 目の前を、七人のゆっくりが飛び跳ねている。 愛しい、愛しい、まりさの子供。 そのうちの一匹が、突然眼前から姿を消した。 「……ゆっ!?」 慌てて周囲を見渡す。すると、遠く離れたところに、黒い霧のようなものの中に引っ張り込まれている赤ちゃんの姿があった。 「おかあさん、たすけてー!」 赤ちゃんが泣いている。 急いで助けないと。 だって、まりさはお母さんなんだから。 あのゴミクズの父親とは違う、ちゃんと子供を守るお母さんなんだから…… でも、あと一歩というところで、黒い霧は子供をすっぽりと飲み込んでしまい、そのまま掻き消えてしまった。 「ま゛りざのあ゛がぢゃんがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 まりさは悲しくて咽び泣いた。 ふと、気配を感じて後ろを振り向く。 するとそこには、残り六人になった姉妹たちが、感情のない目でまりさを見上げていた。 「み、みんな……」 「どうしてころしたの?」 一人のゆっくりが、ぽつりと呟いた。 「ま、まりさはころしてないよ!?」 「うそだよ。ほら、うしろをみて」 背後を振り向く。 するとそこには、先程消えてなくなってしまった赤ちゃんの無残な死体が転がっていた。 「あ、あがぢゃぁぁぁぁぁぁん!!?」 「れいむたちのいもうとをころすなんてひどいおやだね」 「ゆっくりできないよ」 「ゆっくりできないおかあさんはゆっくりしんでね」 「や゛めでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!! ぞん゛な゛ごどい゛わ゛ないでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇ!!!」 可愛い子供に罵られ、まりさは慟哭の声を上げた。 違う。 まりさはやっていない。 やったのは、あの黒い霧だ。 まりさは悪くない。 まりさは悪くない。 まりさは悪くない。 まりさは…… 「この後に及んで、まだ言い訳か」 突然、どこからかそんな声が聞こえた。 そして、まりさの意識は薄れていった。 「ねえ、お兄さん……」 「ん? どうした?」 最後の赤ちゃんゆっくり霊夢が死んで、数時間が経った。 未だに夏の暑さが続く気怠い昼を迎え、少しでもスタミナが付くようにと知人の夜雀が経営している屋台で購入したまま保存してあった八目鰻を食べていると、ペットのゆっくり霊夢がおずおずといった様子で話しかけてきた。 「まりさ、そろそろ許してあげてほしいよ……」 「なんだ、またその話か」 おかずの野菜を食みつつ、俺はぴしゃりとゆっくり霊夢の進言を跳ね除けた。 「駄目だ駄目だ。許してやるわけにはいかん」 「でも……」 「あのな、ゆっくり霊夢」 箸の先をぴしっとゆっくり霊夢に突き付ける。 「悪いことしちゃいけないってのは、知ってるだろ?」 「知ってるけど……」 「俺はな、人間や妖怪、ゆっくりに関わらず、悪いことしたやつは大嫌いなんだ。悪いことをするやつには当然、裁きが与えられる」 「ゆ……」 「あのゆっくり魔理沙たちは悪いことをした。だから、あんな仕打ちにあった。当然の結果だ」 ゆっくり霊夢は納得しかねる、といった顔をする。 言いたいことは分かるがやりすぎだ、そう言いたいのだろう。 だけど俺は気付かなかったフリをして、食事を進めることにした。 確かにあれは、どう考えてもやりすぎだった。 何故なら、八割以上が俺の趣味だったから。 『涙目で必死なゆっくりが見たい』 そのために、俺はあらゆる手段を尽くした。 そして、目論見は成功したと言って良い。 あの時間は夢のような時間だった。願わくば、もっかいやってみたい、とも。 ただ、そのためにはまた悪いゆっくりを捕まえなければならない。 流石に善良なゆっくりをいじめて悦に浸れるほど、罪悪感の欠片も持っていない人間ではないんだ、俺は。 いじめというのはやってはいけない行為。 それをやるからには、正当な理由が必要とされる。 だから俺は、悪いゆっくりしかいじめない。 元々、ゆっくりは可愛いと思ってる人間だ。 あいつらがきちんと礼儀良くしていたのなら、俺は大層歓迎していたことだろう。 だから、悪いのはあっち。 俺は悪くない、うん。 偽善者なのは分かってるよ。 きっと地獄行きだろうね。 でもゆっくりいじりは止めない俺。 「ゆっくり霊夢も悪いことするなよ。もし悪いことしたら、『ゆっくり出来ないようにする』からな」 「ゆっ!?」 ゆっくり出来ないようにする。 それはゆっくり霊夢のトラウマを抉る禁句だ。 かつて悪いことをしたせいで、地獄のような苦しみを体験した一週間。 それを思い出し、ゆっくり霊夢はぶるぶる震えだした。 「れ、れいむは悪いことなんてしないよ! きちんとゆっくりしてるよ!?」 「分かってるよ。可愛いなぁ、ゆっくり霊夢は」 優しくゆっくり霊夢の頭を撫でてやると、ゆっくり霊夢は複雑そうに微笑んだ。 ゆっくり魔理沙は目を覚ました。 だが、目を覚ましたという表現が正しいのかどうか、ゆっくり魔理沙には判断がつかない。 そこは暗かった。 星明りも届かぬ夜の世界、それよりも更に深い暗闇が身を包んでいる。 そして、今までゆっくり魔理沙が味わっていた圧迫感が続いていた。 自分はまた閉じ込められたようだ。 ここはどこだろう。 確か、自分はお兄さんに、自分を殺して欲しいと頼んで…… そこからの記憶が定かではない。 あの後、自分はどうしたんだっけ? 「……」 思い出そうとして、面倒になったので止めた。 もう、どうでもいい。 大好きだった赤ちゃんを守れなかった。 原因は、自分自身。 自分が赤ちゃんを殺したのも同然。 これから先、例え生きて森に帰れたとしても、心の底からゆっくりすることなんて出来ないだろう。 なら、もういい。 ゆっくりしないまま、死が訪れるのを待つだけだ…… ―――― 「?」 右隣から、何者かの息遣いが聞こえる。 生きることに億劫になったゆっくり魔理沙だったが、疑問に無関心になったわけではない。 純粋な興味につられ、右を振り向こうとして、 「……ゆ……」 振り向けない。 思ったより自分を包む箱(?)は狭く、身動きが取れなかった。 ようやく気付いたが、息苦しさも今までより遥かにキツい。 仕方なく、ゆっくり魔理沙は唯一自由に動かせる視線だけを右に移した。 するとそこには、 「……ぅー……ぅー……」 「!!?」 眠りこけるゆっくりれみりゃの姿があった。 先刻、自分の子供を無惨に殺害したゆっくりれみりゃと同種と認識。 だが復讐の炎が燃え上がることはなく、逆に本能的な恐怖が瞬時に湧き上がり、ゆっくり魔理沙は先程まで死が訪れるのを待っていた自分を忘れて悲鳴を上げた。 か細い声が風に乗って耳まで届いたので、俺は腰を上げた。 ようやくゆっくり魔理沙がお目覚めらしい。 妙に元気の無くなってしまったゆっくり霊夢を残し、玄関から庭に出る。 縁側なんて洒落たものは存在しない。 そもそもこの家自体借金して建ててもらったもので、未だ返済は終わっていない。 返済するためには働く必要がある。 働けば時間がなくなり、ゆっくりをいぢる機会が減ってしまう。 これでは俺の心が満たされない。 この幻想郷の何処かには日々の全てをゆっくりいじめに費やしている人間がいるらしいが、どうやって彼らは日々の時間と生活費を同時に捻出しているのだろうか。 俺も噂に聞いた幸せを呼ぶチェンジリングのゆっくりでも探してみようかねぇ…… などと取り留めの無いことを考えているうちに庭に到着。 そこには、地面に不自然に刺さった竹が一本、異様な存在感を放っていた。 俺はその竹の真上に陣取り、竹穴に耳を近づけた。 すると、 「いだい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! ま゛りざをだべな゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 待ちわびたゆっくり魔理沙の悲鳴が。 俺が想像していた通り、ゆっくりれみりゃに身体を齧られたようだな。 俺はにやにや笑いを隠すことなく、竹の中に声を響かせる。 「おーい、ゆっくり魔理沙ー」 「ゆ゛っ!?」 ギクリと身を強張らせたような声。 だがすぐに痛みが戻って来たのか、穴から涙声が返ってきた。 「おね゛がい゛じまずっ、ま゛りざをだじでぐだざい゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃ!!!」 「死にたいんじゃなかったのか?」 「い゛だいのや゛だぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁ!!! ごろ゛ずん゛な゛ら゛はやぐごろ゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「そんなこと言わずに、ゆっくりしていけよ」 「ごれじゃゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉ!!! ゆ゛っぐり゛ざぜでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 顔が見れないのは少々残念だが、簡単に想像は付くのでまずは満足。 装置は完全に機能しているようだ。 俺は二つの透明な箱を用意し、片方にゆっくり魔理沙、片方にゆっくりれみりゃを入れた。 二つの箱は、少し位置がずれるように連結。ゆっくりれみりゃの口が丁度ゆっくり魔理沙の頬の部分に当たっている。 そして、その部分の壁に穴を開け、排除。 ゆっくりれみりゃの入っている箱は大きくてゆとりがあるが、ゆっくり魔理沙の入っている箱はかなり狭いので、どうしても隙間である穴から頬が押し出てしまう。 つまり、頬がゆっくりれみりゃの口の部分に侵入する。 だから、ゆっくりれみりゃはゆっくり魔理沙の頬『だけ』を齧ることが出来、完全に食べることは出来ない。 そしてゆっくり魔理沙を入れた箱の天井に更に穴を開け、そこに空気穴兼言語伝達用の竹(デカい)をセット。 ちなみにゆっくり魔理沙はこの竹穴が丁度口の部分になるよう位置を調節してある。人間でいうなら仰向けの状態だ。 口の部分は不用意に閉じられないよう、鉤で広げたまま固定。 これで全ての準備は完了。 俺はこの装置を重力で餡子が漏れ出ない程度に斜めにして地中に埋め、二匹が起きるのを待っていたのだった。 「は、はやぐごろじでよぉぉぉぉ……はやぐ、てんごくのあがぢゃんだぢのどごろに……」 ゆっくり魔理沙が少し落ち着いた様子で懇願してくる。 どうやら、食べられる部分の頬を全て齧りとられてしまったようだった。 今頃、ご飯が全然足りないゆっくりれみりゃが不満気にうーうー唸っているのだろう。 「まぁまぁ、その前に食事と行こうじゃないか」 俺は懐に用意してあったオレンジジュースを取り出し、竹の中に流し込んだ。 ただのオレンジジュースではない。 永淋さん特性のゆっくり回復促進剤を混ぜられたジュースだ。 「ゆぐぐぐっ!!?」 突然振ってきた液体に驚いた様子のゆっくり魔理沙の声。 だが口は開かれたまま固定してあるので、零れることなく口の中へと収まっていく。 「ご、ごーくごーく…………ゆ!? 痛いのがおさまってきた……よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」 流石永遠亭特性の妖しい薬、効果は抜群のようだ。 オレンジジュースを飲んだゆっくり魔理沙の傷は瞬時に癒える。 癒えた身体は箱の質量を超え、ゆっくりれみりゃ側の箱にはみ出る。 それを嬉々としてゆっくりれみりゃが食べる。 ゆっくり魔理沙はまた激痛を感じる。 これが俺の考えた『強制無限激痛発生装置』だ。 後は適当に飢えないよう餌をやりつつオレンジジュースを飲ませればいい。 雨が降っても大丈夫なように、傘を作る必要もあるな。 俺が飽きるまで、この拷問は永遠に続く。 暗い闇の中、何も変化のない世界で、ただゆっくりれみりゃに食べ続けられるだけの毎日。 それは一体、どんな苦しみなのだろうか。 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐりじだい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ゛ぉぉ゛ぉ゛ぉぉぉ゛っ!!!」 これ以上ないくらいの、ゆっくり魔理沙の悲鳴。 俺は胸の中から溢れて垂れ流さんばかりの快感に包まれ、ひとしきり笑い続けるのだった。 ゆっくり霊夢は全てを見ていた。 ゆっくり魔理沙の家族が死んでいく様を、ずっと見てきた。 いつも優しく、自分をゆっくりさせてくれる主人。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちを嬉々として殺害していった主人。 どちらが本当の主人なのだろうか。 分からない。 ほんのちょっと遊んだだけの仲だったが、ゆっくり魔理沙は友達だった。 加工所から引き取られ、主人の家でずっと暮らしてきたゆっくり霊夢には、友達と呼べる存在はいなかった。 だから初めて友達が出来て、とても嬉しかった。 でも、その友達は…… 主人はゆっくり魔理沙が悪い、だから罰を与えている、と言った。 でも、あそこまでやられるほど、悪いことをしたのだろうか。 それとも、自分が無知なだけで、あれくらい普通なのだろうか。 自分も悪いことをすると、あんなことをされるのだろうか…… 以前の『お仕置き』を思い出して、ゆっくり霊夢はギュっと目を瞑る。 ゆっくり魔理沙。 きっと、数日もすれば、顔も思い出せなくなってしまうのだろう。 何故なら、自分たちゆっくりは、そういう風に出来ているのだから。 余程の強い刺激がない限り、ありとあらゆる物事を忘却してしまう。 主人に感じた『恐怖』も忘れ去り、また主人との楽しい日々に戻るのだろうか。 ゆっくり霊夢は生まれて初めて、自分がゆっくりであることを呪ったのだった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1095.html
※この作品は以下のものを含みます ドスまりさ×2 善良なゆっくり 悪辣なゆっくり 制裁要素 虐待お兄さん それでも良い方のみ、以下にお進みください ゆっくり禅譲 あるところに一匹のドスまりさがいた。 外敵が少なく餌の多い森林部に暮らし、とても大きくなったまりさだ。 森に生えたキノコを食べて育ち、ドス特有のドスパークやゆっくり光線を身につけるに至った。 まりさには、かつては他に姉妹もいたが、寿命や事故でそれぞれ命を落としていった。 そも、生物として脆弱なゆっくりがドスと呼ばれるまで成長するには、豊富な経験と多大な知識、そして何よりも運が必要だった。 そういった意味で、このドスまりさは強運の星の下に生まれたと言っても過言ではないだろう。 「ゆっへっへ、まりささまもおおきくなったし、そろそろむれをもってもいいころなんだぜ。 もりをでて、てきとうなむれをまりささまのものにするんだぜ」 ただし性格は最低だった。 ドスといえど、元がただのゆっくりである以上、性格はそうそう変わるものではない。 ゆっくりへの情に篤く、人を畏敬し両者の仲を取り持つような存在になるには、またより多くの時間が必要なのである。 そういった意味でこのドスまりさはまだ若輩であった。よって便宜上、このドスまりさを若ドスまりさと称するものとしよう。 「ゆっゆっゆ! おらおら、どすまりささまのおとおりなんだぜ」 誰もいない森の中を、その巨体を揺らしながら、若ドスまりさは出て行った。 あるところに一匹のドスまりさがいた。 人里にほど近い場所にいる群れのリーダーを勤めるドスまりさである。 このドスまりさはドスの中でもかなり長く生きており、まさに歴戦のつわものといった風情であった。 こちらは便宜上、老ドスまりさと呼ぶことにしよう。 老ドスまりさは、非常に責任感が強く、真面目なドスであった。 群れを護ることは当然のこととして、群れに属さないゆっくりや人間とも、可能な限り有効な関係を築こうとしていた。 南にれみりゃ・ふらんあればこれを蹴散らしてゆっくりを護り。 西にいじめられるめーりんあれば間に入ってこれを助け。 北に人間の里あれば「あそこには行くな」と群れに教え。 東に畑持つゆうかあれば群れには手出しさせないから安心しろと言い。 兎にも角にも、群れとその周囲の環境を護るため東奔西走。良きリーダーであろうとするあまり、ゆっくりできる日は一日もなかった。 なおかつ、群れの大半はそんな老ドスまりさの考えをあまり理解してくれなかった。 何度駄目だと言っても、自分の力を過信したゆっくりがれみりゃや人間に殺されたり、めーりんやゆうかを虐めたりするのだ。 幸いにして相手側に被害を与えたことは今のところないが、それも時間の問題であった。 元々からして、この群れはあまり素行の良くない群れであったのだ。それをなんとかしようとしたのが老ドスまりさであった。 だが全く学習してくれない群れの皆に、老ドスは疲れを感じ始めていた。 その姿たるや、さっさと引退して楽隠居を決め込みたい老体そのものであった。 そんな折である。 「ゆっ! どすがきたんだぜ! みんなこのどすまりささまのいうことをきくんだぜ!」 若ドスまりさはたまたま目に付いた群れの前に飛び出すと、早々にリーダー宣言を行った。 しかしゆっくり達の反応は、若ドスまりさの予想とは異なっていた。 「ゆゆ!! どすがもうひとりきたよ!!」 「どうしよう!? とりあえずれいむたちのどすをよんでくるよ!!」 「ゆゆゆ?」 若ドスまりさは困惑した。この群れにはもう他にドスがいたのか? 「ゆっ! 自分以外のドスまりさを見かけるのは久しぶりだよ! どうかゆっくりしていってね!」 やがて、群れのリーダーである老ドスまりさが姿を現した。 両者の大きさは同じほどであるが、見るものが見ればその纏う雰囲気の違いというものが一発で分かっただろう。 貫禄というか偉容というか、老ドスまりさにはそういったものが満ち溢れていた。 対し、若ドスまりさはそんなもの微塵もない。 また初めて山から下りてきたので、当然、ドスに対する信頼の証である髪の毛のリボンも一本もない。 これだけでどちらが格上か分かろうというものだ。 しかし若ドスまりさはそんなこと全然分かっていなかった。 「きょうからここはまりささまのむれなんだぜ! おいぼれどすはとっととでていくんだぜ!」 ここに虐待お兄さんがいたら若ドスまりさを指差してゲラゲラ笑っていたことであろう。 それほどまでに若ドスまりさの言動は身の程知らずであった。 体格とパワーが同じなら、ものを言うのは経験の差である。その点、二匹の差は天地ほどの開きがある。 ここで老ドスまりさが戦おうものなら、一分と持たずに若ドスまりさは地に伏すことであろう。 しかし老ドスまりさの発言も、また意外なものであった。 「分かったよ! この群れはまりさに任せて、私は出て行くよ!」 ここに虐待お兄さんがいたら顎が外れそうなほどに口を開いて呆然とすることだろう。 何しろ老ドスまりさには、この若輩者に立場を譲る意味が全くないからだ。 若ドスまりさも、これには流石に驚いた。 若ドスまりさとしては、群れの目の前で現リーダーを叩きのめし、自らの地位を不動のものとするつもりであったからだ。 老ドスまりさはゆっくりと説明を始めた。 「実は、もう私も歳をとってしまったから、そろそろ引退しようと考えていたんだよ! ちょうどよくまりさが来てくれたことだし、群れのリーダーは若くて強いまりさに譲ろうと思うよ!」 「ゆっ、そういうことなら引き受けてやらなくもないんだぜ!!!」 強いと言われて、若ドスまりさは得意満面である。 このドスは自分の強さに恐れをなし、屈したのだ。自分は戦わずして勝利を納めたのだ。若ドスまりさの中ではそういうことになった。 「そうと決まれば、まずみんなにリーダー交代を教えなきゃいけないよ! れいむ、群れのみんなを広場に集めてね!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 一匹のれいむが、群れの仲間達を集めに走り去っていった。 それから一時間ほどして、全てのゆっくりが広場に集められた。 老ドスまりさと若ドスまりさは、普段老ドスまりさが皆に話しかける際に使っている盛り土の近くに控えた。 「ゆゆゆ? どすがふたりいるよ?」 「あっちのどすはだれー?」 群れのゆっくりは混乱しているようだった。一度に二匹のドス級を見ることなど、普通ありえない事態だからだ。 「みんな、落ち着いてね! 今から事情を説明するよ!」 老ドスまりさが声を張り、盛り土の上に乗った。 「突然だけど、私は今日で群れのリーダーを引退するよ!」 「「「「「「「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆーーーーーーー!!!!!!」」」」」」」 群れは大混乱に陥った。 あまりに突然すぎる話であったし、今日まで老ドスまりさがいたから群れは存続できていたのだ。 このままじゃゆっくりできなくなってしまう、と群れのゆっくり達は総じて思った。 「でも大丈夫だよ! ゆっくり聞いてね!」 老ドスまりさはそう言って一歩引き、若ドス魔理沙に前に出るよう促した。 「今日からは、こっちのドスまりさがみんなのリーダーになってくれるよ! 私の代わりに、今日からはこっちのドスまりさをドスって呼んでね!」 老ドスまりさがそう言うと、混乱は収まったものの、しかしまだ困惑顔のゆっくりも多い。 それが若ドスまりさには不満であった。 (せっかくまりささまがりーだーになってやるっていうのに、なんのふまんがあるんだぜ!!) それを察したかのように、老ドスまりさが若ドスまりさに言う。 「さっ、まりさ、みんなに襲名披露演説をしてね!!」 「ゆっ? しゅーめーひろーえんぜつ?」 聞きなれない言葉に首をかしげる若ドスまりさに、老ドスまりさは頷く。 「そうだよ! 今日からまりさが群れのリーダーになるんだから、その前にみんなの前でリーダーとしての意気込みを語るんだよ! ここでみんなの気持ちをぐっと掴むことができれば、まりさの地位は磐石のものになるよ!!!」 「ゆゆゆっ、そういうことならまかせるんだぜ!!!」 言葉の意味はさっぱりだったが、若ドスまりさはニュアンスでそれとなく理解した。 要するに、自分がいかに頼れるか、強いかを群れの皆に教えてやればいいのだ。 「ゆっ、そういうわけで、きょうからむれのりーだーをすることになった、どすまりさなんだぜ!!!」 若ドスまりさは、老ドスまりさよりもさらに大きな声で自己紹介を行った。 それだけで、群れのゆっくりの殆どは若ドスまりさに好感を持った。 元気だし、活力に満ち溢れているし、何より若々しくて頼りがいがありそうだった。 ……実際は新しいものを目にしたときの錯覚も多分に含まれている認識だが。 「まりさは、むれのみんなにいままでいじょうのゆっくりをあたえることをやくそくするぜ!!! こっちのどすなんかよりもっともっとだぜ!!! にんげんだってやっつけちゃうんだぜ!!!」 「「「「「「「ゆゆーーーーーーーーーーー♪♪♪」」」」」」」 頼もしい若ドスまりさの言葉に、群れはいっせいに色めきたった。 群れが新しいリーダーを認めたという証拠である。 「おめでとう、まりさ! これでまりさが群れの新しいリーダーだよ!」 「ゆへへ、てれるんだぜ!」 笑顔の老ドスまりさに褒められて、若ドスまりさはとても気分が良かった。 ああ、なんと自分は幸運なんだろう。労せずしてこれほどの規模の群れのリーダーになれるとは。 老ドスまりさが、再び皆に向き直る。 「それじゃあ、私が預かっているリボンをみんなに返すから、新しいリーダーに結び直してあげてね! それが終わったら、私は群れを新しいリーダーに任せて、ここを出ていくよ!」 「「「「「「「ゆっくりりかいしたよ!!!!!」」」」」」」 後ろを向いた老ドスまりさに、群れのゆっくりが一列に並んで飛びついていく。 そして自分の分のリボンを取ると、若ドスまりさの髪に結わえ付けていった。 一時間ほどして、ようやくゆっくりがそれぞれ元の位置に戻った。 「ゆゆゆっ?」 ここで若ドスまりさが声を上げる。 てっきり全てのゆっくりがリボンを付け替えてくれたと思ったが、老ドスまりさの頭にはまだいくつかのリボンが残っていた。 そして、どうやらそのリボンの持ち主と思しきゆっくり達が、老ドスまりさの近くに並んでいる。 残っているのは、れいむ一家、まりさ一家、それにありすとぱちゅりーと子れいむが一匹ずつだ。 「ゆっ! ぱちゅりー、これはどういうことなんだぜ! せつめいをようきゅうするんだぜ!」 全てのゆっくりが自分に従っていないと気づいた若ドスまりさは、容易く激昂した。 ここでぱちゅりーが迂闊な答えを返せば、すぐにでも潰さんばかりの勢いである。 しかしぱちゅりーは落ち着いて答えた。 「むきゅ、わたしとありすはこっちのどすの『そっきん』だから、どすといっしょにたびをするわ。 こっちのこどものれいむは、ありすがそだててるこだから、いっしょにつれていくの」 「まりさ! 自分の側近を選ぶのが、群れのリーダーの最初の仕事だよ! まりさも自分の群れの中から、自分に合った側近を探し出してね!」 「ゆっ、そういうことならまぁいいんだぜ」 老ドスまりさにそう言われ、若ドスまりさは納得した。確かにこれだけのゆっくりがいるのだから選り取り見取りであろう。 「そっちのれいむとまりさのかぞくはどうするんだぜ?」 「れいむたちは、こどもがおおきくなってきたから、あたらしいおうちをさがすたびにでるよ!」 「ごはんとおうちはそのままにしておくから、みんなでなかよくわけてね!」 それぞれの家長である母れいむと母まりさが言う。 「そういうことならしかたなくもないんだぜ! わかったからさっさとみんなでていくんだぜ!」 リボンを得たことで、若ドスまりさは既に万軍、いやさ饅軍の長になったかのようなふてぶてしい態度を隠さなかった。 ここに虐待お兄さんがいればモウガマンデキナくなってその拳を振るうところであろうが、老ドスまりさはなおも温和だった。 「そんなこといわないでね! 私に元リーダーとしての最後の仕事をさせてね! 私の巣に、緊急用の備蓄食糧があるから、それをドスのお祝いに使おうと思うよ!」 「ゆゆっ、それはいいあいでぃあなんだぜ! さっさとその『きんきゅうようのびちくしょくりょう』とやらをもってくるんだぜ!」 「わかったよ! それじゃあ持ってくるから、リーダーはそこでゆっくりしていってね!」 恵比須顔のまま老ドスまりさは自分の巣に跳ねていった。 しばらくして戻ってきた老ドスまりさは、口一杯に含んでいた食糧を吐き出す。 「ゆゆゆう! ごちそうがいっぱいなんだぜ!」 「今日は皆でそれを食べて、新しいリーダーをお祝いしてあげてね! それじゃあまりさ達はもう行くよ! ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていくんだぜ!」 老ドスまりさの最後の言葉に振り向きもせず若ドスまりさは答え、目の前の食糧に突進していった。 他のゆっくりも食糧に齧りつき、思い思いに口に収めていく。 「…………」 老ドスまりさはそれを一瞥すると、ぱちゅりー達と一緒に旅立っていった。 明けて朝。 「ゆゆんっ、ちょっときのうはたべすぎちゃったんだぜ!」 老ドスまりさの住処をそのまま我が物とした若ドスまりさ──いや、もう区別する必要もないのでドスまりさと呼ぼう。 ドスまりさは食糧庫を見て溜息をついた。 昨日はちょっと羽目を外しすぎたようだ。食糧庫の中には、昨日食べた量の半分程度しか餌がない。これでは今後が少々不安だ。 「れいむー! れいむ、はやくくるんだぜー!」 ドスまりさは側近のれいむを呼んだ。 「ゆ! どす、なんのよう?」 このれいむ、頭の出来は普通だが中々の美ゆっくりであり、ドスまりさは昨日の歓迎パーティで一目見たときから気に入っていた。 そのため即日自分の側近とすることに決め、こうして巣の中で一緒に暮らしていた。 「ごはんのりょうがこころもとないから、ちょうたつにいこうとおもうんだぜ。 このあたりでたくさんごはんがありそうなところをしっていたら、おしえてほしいんだぜ」 「ゆゆ! それならひがしにゆうかのはたけがあるよ! あのゆうかったら、きれいなおはなやおいしいくだものをひとりじめして、れいむたちにはわけてくれないんだよ!」 れいむはぷんぷん怒りながら言う。 「それならさっさとうばっちゃえばよかったんだぜ! なんでそうしなかったんだぜ!」 「だって、ゆうかをいじめるとまえのどすがうるさかったんだよ! れいむたちがいじめると、いっつもゆうかにあやまってたよ!」 「なんておくびょうなどすなんだぜ! あんなやつこのむれからおいだしてせいかいだったんだぜ!」 どうやらドスまりさの中では、『前の臆病で弱いドスまりさを自分の力で追い出した』ということになっているらしい。 「でもまりささまはそんなよわいどすとはちがうんだぜ! れいむ! みんなをあつめてくるんだぜ! ゆうかりんのはたけを、まるごとまりささまたちのものにしちゃうんだぜ!」 「ゆーん! かっこいいよ、どす! さっそくみんなをよんでくるよ!」 ドスまりさの呼びかけに応じ、群れのゆっくりの大半が集まった。 「それじゃあさっそくえんせいにいくんだぜ」 「「「「「「「ゆーーーー!!!!!」」」」」」」 気勢を上げるゆっくり達の軍勢は、森を抜け、程なく開けた場所についた。ゆうかの花畑である。 視界一杯に花々が咲き乱れ、とてもゆっくりできそうな場所だったが、しかし今、そこに主の姿はない。 「ゆゆっ? ゆうかがいないよ?」 「つごうがいいんだぜ! いまのうちにみんなでぜんぶいただいてしまうんだぜ!」 「「「「「「「ゆっくりいただいていくよ!!!!!」」」」」」」 ゆっくり達は、それぞれが思い思いに花畑の中でゆっくりし始める。 むーしゃむーしゃするもの、ごろごろと転がるもの、家に持ち帰ろうと集めるもの。 ドスまりさは花を食べたり集めたりしながら、ときどき周囲の森に横目を向けた。 どこからかゆうかが見ていたら、それに喧嘩を売ろうという魂胆である。 怒りに駆られでてきたゆうかを皆の前で叩き潰せば、皆の尊敬の眼差しはより強いものになるだろう。 しかし結局、ドスまりさが食事を終えてもゆうかは出てこなかった。 「ちっ、つまんないんだぜ! せっかくゆうかをいじめられるとおもったのに!」 「ゆー、しかたないよ、どす! きっとどすのつよさにおそれをなしてにげちゃったんだよ!」 「おくびょうなやつなんだぜ! ゆぇーっへっへっへっへ!!!」 「「「「「「「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!!!!」」」」」」」 ゆっくり達は大笑いすると、既にぼろぼろになった花畑を自分達の縄張りにすることを決め、群れに戻っていった。 午後からは、西にいるというめーりん一家のところに行ってみることにした。 「ゆゆっ! くずめーりんがいないよ!」 「おいっ、くずめーりん! さっさとでてくるんだぜ! またいじめてやるんだぜ!」 ゆっくり達は口々に、めーりん一家の住処である古木のうろに向かって叫び続けるが、出てくる気配はない。 ドスからめーりんを虐めることを厳禁されていたこともあって、ゆっくり達のめーりん一家への憎悪は並々ならぬものがあった。 「ゆっゆっゆ、まぁまぁみんな、そんなにあせることはないんだぜ」 いかにも大物らしく身体をゆすり、ドスまりさは笑う。 「どうせめーりんも、このまりささまのきょうだいさにおそれをなし、すがたをかくしているにちがいないんだぜ。 だからいまはみのがしておいてやるんだぜ。そのかわりいつかみつけだして、そのときはじっくりいたぶってやるんだぜ。 せいぜいのこりみじかいじんせいをたのしむがいいんだぜ」 「むきゅん! さすがどすらしい、かんだいなおこころだわ!」 「めーりんもいのちびろいできて、どすにかんしゃしてるはずなんだぜ!」 「ゆぇっへっへっへ!!! そうだぜ、まりささまはやさしいんだぜ!!!」 笑いながら、ゆっくり達は元来た道を戻っていった。 さて。 戻ってきたはいいが、結局あまり食糧は集まらなかった。 朝に比べればそこそこの量にはなったが、しかしこれではすぐになくなってしまうという予感がドスまりさにはあった。 昨日食べたほどの量をなんとか恒常的に確保したい、というのがドスの願いである。 一度贅沢を覚えてしまうと、多少のものでは満足できなくなってしまうものだ。 「しかたないよどす! きょうのところはがまんして、あしたまたたくさんあつめようね!」 にこにこ顔で側近れいむが言う。その美しい笑顔に思わず見とれてしまうが、しかしやはり食糧は欲しかった。 何か名案はないものか、とドスまりさは考え、そしてぴんと思いついた。 「そうだぜ! にんげんのたべものをうばってしまえばいいんだぜ!」 「ゆゆゆ!」 側近れいむが色を喪う。 「にんげんはだめだよ! ゆっくりできなくなっちゃうよ! むれのなかまも、なんにんもにんげんのところにいってもどってきてないんだよ! まえのどすも、にんげんにだけはちかづいちゃいけないっていってたよ!」 だがドスまりさは気にした風もなく、力強く言った。 「だいじょうぶなんだぜ! まりささまはまえのよわっちいどすとはちがうんだぜ! にんげんなんてちょちょいのちょいなんだぜ! しんじるんだぜ!」 バチン、とれいむに向けて含みを持たせたウインクをする。キモイ。 「ゆゆん……! かっこいいよぉ、どすぅ……!」 その勇ましい顔に、れいむは瞳を潤ませる。キモイ。 「それじゃあ、まりささまはこれからにんげんのところにいってくるんだぜ! れいむたちはみんなといっしょにまりささまのかえりをまってるんだぜ!」 「ゆっくりまってるよ!」 れいむの見送りを受け、ドスまりさは森の中を跳ねていった。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ……」 そうしながら、ドスまりさは思考する。 さっきはついあんなことを言ってしまったが、ドスまりさとてそう簡単に人間から食糧を得られるとは思っていなかった。 しかし、それほど難しいとも思っていなかった。 何しろ人間の里の近くで、あれだけの群れが維持されてきたのだ。恐らく、老ドスまりさと人間達の関係は良好であったに違いない。 なら自分が新しいドスを襲名したと言えば、昨日の老ドスまりさのように、お祝いとしてある程度の食糧は用意してくれるだろう。 いや、そうでなければならない。このつよいまりささまに、にんげんはしたがうべきなのだ。 従わなくても、こちらにはドスパークがある。その威力は実証済みだ。 人間を見たことはなかったが、話に聞いた限りでは、それほど強いものだとも思えなかった。 「ゆっへっへ、このよのすべてはまりささまのものなんだぜ……!」 そう意気込みながら、ドスまりさは森を下っていった。 そして開けた場所に出る。地面には規則正しく野菜が並び、その真ん中で直立した細長い生き物がどすまりさを見ていた。 あれが多分人間なのだろう、とドスまりさは思った。思っていたよりもずっと弱そうである。これなら労せずして食糧を得られるに違いない。 とりあえず、ドスまりさはゆっくりのリーダーとして挨拶をすることにした。 「ゆっ、おじさん、まりささまは「ドスまりさが来たぞーーーーーーーーーーーーー!!!!!」ゆゆゆっ??」 ドスまりさの言葉を最後まで聞かず、人間は後ろを振り返って大きな声で叫んだ。 何事かとドスまりさが思っていると、遠くから両手を上に上げた人間達が、大きな声を上げながらこっちに走ってくる。 (ゆゆっ、みんなでまりささまのりーだーしゅうめいをおいわいしてくれてるんだぜ!) そう思ったまりさは、まず人間達を落ち着かせようと声を発した。 「あわてなくていいんだぜ! まずひとりずつならんで、それからまりささまにごはんを「死ねこの化け饅頭が!!!」ゆびゃえっ!!??」 人間の一人が振り下ろした大木槌が、ドスまりさの額にめり込んだ。 「とうとう来やがったな、クソ饅頭ッ!!」 「オラァッ、潰れろッ!!」 「やっぱり餡子脳じゃ『協定』のことは忘れちまったようだなぁ!!!」 何も言わないうちに、ドスまりさは複数の屈強な男達からタコ殴りにされた。 「ゆびぇっ、ゆげべっ、べぇえええ!! やべでえええええ!!」 ドスまりさは突然の事態についていけなかった。 身体が大きく、ドスパークを使えようとも、このドスまりさには経験が足りなかった。 しかも痛みらしい痛みも知らずに育ったため、最初の一撃ですっかり闘志を折られてしまっていたのである。 「うるせぇっ! 約束も守らねぇゆっくりにかける情けなんかねぇんだよっ!!!」 「折角、最後の頼みだって言うから聞いてやったってのに! 甘さを見せた結果がこれだよ!!!」 「じらないぃぃぃ!!! やぐぞぐなんでじらないんだぜえええ!!!」 「しらばっくれるんじゃねぇ!!!」 「げびっ!!!」 ドスまりさの口から、大量の餡子が吐き出された。 ……実は、前リーダーである老ドスまりさは、人間達と『絶対不可侵協定』なるものを結んでいた。 その内容とは、ゆっくりが人間の里に一歩でも入った場合、その後の進退にドスまりさは関与しないというものであった。 ドスまりさの威光を笠に着たゆっくり達の度重なる襲撃に業を煮やした人間達が、老ドスまりさに突きつけた最後通牒であった。 もしドスまりさが罪を犯したゆっくりを庇い立てするなら、いかなる犠牲を払おうとドスまりさを討伐するとまで宣言して、である。 老ドスまりさは、すんなりとこれを呑んだ。 老ドスまりさとしても、正直なところ人間に迷惑をかけるゆっくりの扱いには頭を痛めていたのだ。 注意しておいたのに、それに従わないゆっくりにかける情けはない、と老ドスまりさも決断したのである。 しかし今のドスまりさ──若ドスまりさはそれを知らなかった。 当然だ。老ドスまりさがそれを教えなかったのだから。 いや、教えずとも、れいむを通して注意は喚起されていた。だがドスまりさは、それを無視した。 リーダーが変わろうと協定はいまだ有効であり──その範囲には、当然ドスまりさも含まれていた。 「ぢがうぅぅぅう!! まりざざまはどずなんがじゃないんだぜええええ!!」 ようやく殴られる理由を理解したドスまりさは、必死に主張した。 ドスまりさからしてみれば、自分の知らないところで交わされた約束で撲殺されようとしているのだからたまったものではない。 「嘘つくんじゃねぇ! そんなに髪にビラビラとリボンつけたゆっくりが、他にどこにいるってんだよ!!!」 「今更言い逃れしようなんざふてぇ野郎だ!!!」 だが人間達にとっては、その言葉は通用しなかった。 当然である。普通の人間に、ゆっくりの顔の区別はつかない。ましてや、ほとんど姿を見せないドスまりさである。 人間達にとって、『人間より大きく髪の毛にたくさんリボンをつけているゆっくり』が、即ちドスまりさなのだ。 「オラァ! さっさと逝けやデカブツがぁあ!」 「ゆがばぁあああああ!!!」 人間達が、木槌で、木刀で、もしくは石で、ドスまりさを滅多打ちにしていく。その度に、ドスまりさは口から餡子を吐き出していった。 そんな折、ドスまりさの帽子からぽろりと大きなキノコが落ちてきた。 (ゆ……!) そこに、ドスまりさは希望を見出した。落ちてきたのは、ドスパーク用の魔法のキノコであったからだ。 必殺のドスパークを使えば、こんな人間達など一発で消し飛ばせる。そう思い必死に舌を伸ばして、 「させねぇよ馬鹿!」 「ゆんびぇっ!!!???」 キノコを蹴り飛ばされた挙句、伸ばした舌を踏みつけられた。最後の希望を絶たれたドスまりさは、両目から目幅大の涙を流した。 もっともチャージタイムのかかるドスパークでは、撃つ前に阻止されていただろうが、ドスまりさはそんなことにも気づかなかった。 舌を踏みつけた男が、チッ、と忌々しげに舌打ちをする。 「こうなった以上、群れも放置しておくわけにゃいかねぇな。おい又八、他の男衆連れて森のゆっくり片付けろや。加工所にも応援呼んどけ」 「おうよ」 「どっ……どぉじでええええええ!!!??? まりざのむれになにずるのぉおおおおおおお!!!???」 男の一人が唾を吐き捨てた。 「ほれ見ろ。やっぱこいつ覚えちゃいねぇ。自分から言い出しやがったくせに」 「ドスっていうくらいだからちったぁマシな気もしたが、そんなことはなかったぜ!」 かつて老ドスまりさが人間と結んだ協定には、もう一つの要素があった。 もしドスまりさ自ら人間の里に侵入した場合は、群れ全体を殲滅して良いという内容だった。 これは老ドスまりさが人間への誠意の証として自ら提案したものであり、それを受け、人間も人里に入ったゆっくり以外には手を出さないと決めたのだ。 勿論、このドスまりさはそんなことは知らない。 「じらないいいいいい!!! まりざはぞんなやぐぞぐじでないいいいいいい!!!」 「ああうっせぇ。おい、さっさと黙らせようや」 「おうよ」 それからドスまりさは男達からしこたま殴られ、餡子をきっかり半分吐き出させられると、リヤカーに乗せられ、縄で縛り付けられた。 「ゆ……が……が……」 息も絶え絶えなドスまりさは、男達の手によって、森の奥まで運ばれていく。 そしてある地点に辿り着くと、男はリヤカーを傾け、その光景をドスまりさに見せ付けた。 「……ああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 ドスまりさは叫んだ。 あたり一面に広がる餡子の海が、一体なんであるのかを理解した。 生き残っているゆっくり達は、その全てが人間の持つ網の中に詰め込まれていた。 「むれがあああああああ、まりざのむれがあああああああああああ!!!」 「うるせぇ!」 「ぐぎぇっ!」 男の拳が、傷だらけになった顔面を殴りつける。 「うわああああああん!」 「ゆっくりできないよぉおぉぉぉぉ!」 「どすぅぅぅぅ! たすけてぇえええええ!!!」 数匹のゆっくりが、人間の手を逃れてドスまりさのほうへ向かってくる。 「まーだいやがったか」 近くにいた人間が、それを足で一匹ずつ踏み潰していく。 「ゆぎぇっ!」 「おねーじゃああああわびゅっ!」 「どうじでええええ! なんでだずげでぐれないのどずううううう!!!」 「ああ、ああああ……」 ゆっくり達は、ドスまりさに助けを求めながら、ドスまりさの前で朽ち果てていった。 その中には、あのれいむもいた。 「れいぶぅぅぅぅぅぅ!!!」 れいむは後ろ半分を踏み潰されていたが、まだ息はあった。美しい髪も半分以上が喪われ、見る影もない。 「じっがりずるんだぜっ! れいぶ、じんじゃだめなんだぜええええええ!!!」 どう見ても助からない傷だったが、ドスまりさは叫んだ。叫ばずにはいられなかった。 尋常ならざるドスまりさの様子に、男達はれいむにトドメを刺すのを待ってやった。 れいむは、自分に赦された最後の力を振り絞って、ドスまりさへの別れの言葉を呟いた。 「……どずの、ぜいだ……」 「ゆゆっ!?」 「どずが……にんげんだぢに……でをだじだりなんがずるがらだ……」 「どぉしてぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉ!!??」 「うるざいッ!!!」 死に体だとは思えぬ大喝に、ドスまりさは竦んだ。 「うぞづぎっ、うぞづぎっ、にんげんなんがに、がでるなんで、どうじでぞんなうぞづいだのぉぉ……。 おまえみだいなぐぞまりざ、どずでもなんでもないよ……!」 「ぢがっ、ぢがうううう!!! まりざざまはほんどにづよいんだぜぇええええ!!! ほんどなんだぜえええ!!!」 だがれいむには、もう答える気力も残されていなかった。 話が終わったと見て、男はれいむを踏み潰すために足を振り上げた。 「ゆっくり……しね……」 それを最期の言葉として、れいむは飛び散った。 ドスまりさは、自分の群れの崩壊を最後まで見せ付けられた。 そしてそのまま、森の中に放置された。 続く? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2699.html
「ゆぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――――――――!!!!」 突如、部屋中に響き渡る、巨大赤れいむの絶叫。 お家の中でまりさの無事を願っていた一家も、一体何事かと入口からこっそり顔を出し始めた。 そんな一家が見た光景。 そこにはなんと、足から脳天に深々と割り箸を刺してもがいている巨大赤れいむと、それを唖然とした表情で見ていた親まりさの姿があった。 ブランコは、割り箸を紐を組み合わせて作られている。 だんだん体当たりをすることすら億劫になってきた巨大赤れいむは、その重量をもって圧し掛かり、親まりさごとブランコを破壊しようと考えたのである。 しかし、これがいけなかった。 割り箸の強度を軽んじていたことと、丁度最悪の位置に圧し掛かってしまったことで、割り箸は見事に巨大赤れいむの体を貫いてしまったのである。 「ゆぎいいいいぃぃぃぃぃ―――――――!!!! いだいよおおおぉぉぉぉぉぉぉ――――――――!!!! これとっでえええぇぇぇぇ――――――――!!!!!」 割り箸を取り付けたまま、巨大赤れいむが地をのたうち回る。 生まれて以来、初めて感じる強烈な痛みに我を忘れ、巨大赤れいむは大量の汗と涙と涎をまき散らしながら、もがき苦しんでいた。 それを見ていた親れいむと姉妹たちが、家の中から飛び出してくる。 そして、姉妹はその様子に大満足といった様子で、囃し立てていた。 「ゆっくりくるしんでね!!」 「れいむたちをころそうとしたから、ばちがあたったんだよ!!」 「おお、ぶざまぶざま!!」 相当フラストレーションが溜まっていたのだろう。 巨大赤れいむの無様な姿に、皆溜飲を下げていた。 しかし、それを一喝する声が掛けられる。 それは、最も巨大赤れいむの攻撃にされされていた親まりさであった。 「おちびちゃん!! ゆっくりだまっててね!!」 「!!!」 この父は、いきなり何を言ってくるんだと言わんばかりの表情の姉妹。 それも仕方があるまい。何しろ自分たちは命を狙われたのだ。 そんな仇敵が目の前で苦しんでいる。それを笑って何が悪いというのだ。 しかし、親まりさは厳しい表情を崩さない。 「おちびちゃんたちのきもちは、ゆっくりりかいできるよ!! でもだれかがけがをしたすがたをみてわらうのは、とってもゆっくりできないことなんだよ!!」 「ゆうぅ……で、でも……」 「このおちびちゃんは、もうゆっくりばつをうけたよ!! あとはおねえさんがかえってきたら、ゆっくりしかってもらえばいいよ!! だから、そんなことをいっちゃいけないよ!!」 「……ゆっくりりかいしたよ!!」 未だ完全には納得できないものの、姉妹たちは一応の理解を見せる。 何しろ一番殺されかかった親まりさが許すというのだ。ただ逃げていただけの自分たちに、それを覆す権利はなかった。 親まりさは、何とか分かってくれた子供たちに安堵し、巨大赤れいむの側にやってくる。 そして未だ絶叫を上げ続ける巨大赤れいむに、その声に負けない声量で呼びかけた。 「おちびちゃん!! ゆっくりはんせいした?」 「ゆぎいいいぃぃぃい―――――――!!!! これとっでええぇぇぇぇぇ――――――――!!! 「ゆぅ……」 巨大赤れいむは返事を返さなかったが、痛さで自分の声も頭に入っていないのだろうと考える。 その後、親れいむの元に行き、巨大赤れいむに刺さった割り箸を取ってあげようと提案した。 その提案に親れいむは、若干渋い顔をする。 自分たちを殺そうとした巨大赤れいむを助けるのが嫌というのではなく、助けた後、再び殺されるのではないかという懸念からであった。 しかし、それはないよと、まりさは断言した。 例え、割り箸を抜き、手当をしたとしても、完全に動けるようになるまで、相当な時間がかかるはずである。 それまでには、男も愛で子も帰宅しているはずである。 その旨を伝え、納得した親れいむは、親まりさと共に巨大赤れいむの尻の所に来ると、突き刺さった割り箸を噛みしめ、体から抜こうとした。 「ゆぎいいいぃぃぃぃ―――――――!!!! いだいよおおおおぉぉぉぉぉ――――――――――!!!!」 抜くときのあまりの痛さに、これまで以上に絶叫を上げる巨大赤れいむ。 しかし、割り箸は相当深く食い込み、マイクロゆっくりの両親の力では抜くことが出来ない。 親まりさは、子ゆっくりにも割り箸を抜くのを手伝うよう呼びかける。 初めは嫌そうな様子を見せるも子ゆっくりだったが、徐々に巨大赤れいむの余りに惨めな姿が気の毒になってきて、両親の背後に付き、割り箸に噛みつき始める。 ちなみに姉たちの様子を見て、赤ゆっくりたちも手伝うと申し入れたが、親まりさがそれを認めなかった。 赤ゆっくりの体格上、割り箸を噛むことは出来ないし、大豆が三匹加わったところで高が知れるというものである。 親まりさの号令に合わせ、全員で一気に割り箸を抜こうと試みた。 しかし、結果は変わらず、巨大赤れいむが絶叫を轟かせただけに過ぎなかった。 「ゆうぅ……ゆっくりこまったよ!!」 マイクロ一家は、すっかり弱音を吐いてしまう。 自分たちの力では、どうにもならないことが分かってしまったのだ。 しかし、このままにしておく訳にはいかなかった。 何しろ、巨大赤れいむと割り箸の隙間からは、徐々に餡子が漏れ出しているのである。 仕方がないと、親まりさは一つの解決策を打ち出した。 割り箸はこのままにして、餡子の流出だけを抑え込むのだ。 水槽内には、緊急用のオレンジジュースが備え付けられている。 一家は全員でそれを口に含み、巨大赤れいむの元までやってくると、餡子の漏れ出している箇所に、水鉄砲のように噴射した。 これを何度も何度も繰り返し行うことで、徐々に巨大赤れいむの皮は復元し、餡子の流出は抑え込まれていく。 一家は、男と愛で子が帰宅するまで、延々とこの作業を繰り返し続けた。 「ただいま~、今帰ったぞ~~」 「れいむ、ただいま。いい子にしてたかしら? お菓子をたくさん買ってきたからね」 二人は帰ってくるや、食材の入った袋を置くと、一家の水槽のある部屋に入ってきた。 そして、その様子に絶句する。 「な、なにやってんだああああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――!!!!」 「れ、れいむううぅぅぅぅ――――――――――!!!!」 絶句の後、絶叫を上げる二人。 ようやく二人が帰ってきたことに安堵した一家は、オレンジジュースの噴射をやめて、男に懇願した。 「おそいよ、おにいさん!! ゆっくりしすぎだよ!!」 「ゆっくりはやく、おちびちゃんをたすけてあげてね!!」 一家は男に急かす。 しかし、事情が読み込めない男は、一家に説明を求めるが、 「お前たち!! いったい何でこんなことが……」 「それより、愛で男くん!! れいむの治療を!!」 「えっ? あ、ああ、そうか!! そうだな!!」 顔面蒼白な愛で子に指摘され、そんな場合ではないと、水槽の中から巨大赤れいむを取り出し、急いで台所に向かう。 割り箸を抜き出し、冷蔵庫から餡子と小麦粉とオレンジジュースを取り出すと、まず餡子を割り箸で出来た穴に注ぎ込んでいく。 しっかりと中まで入ったことを確認し、更にその上から大量の小麦粉とオレンジジュースをかけて、傷を埋めていった。 「たぶんこれでどうにかなると思うんだが……」 「本当? 本当なの、愛で男くん!!」 「ああ、俺がガキの頃に買っていたミニゆっくりも、一度鉛筆で体を貫いたことがあったんだが、この治療で治ったからな。 それでも、近いうちに一度ゆっくりショップか、ゆっくり病院で診てもらったほうがいいと思う」 「はあぁぁ……よかった……よかった」 愛で子は巨大赤れいむが治るというその言葉に、腰が抜けたのか、そのまま座り込んでしまった。 そんな愛で子の肩を抱き、ソファーの元に連れて行くと、男は事情聴取をするべく、一家の元にやってきた。 その表情には、怒りが見て取れた。 「お前たち、これはいったいどういうことなんだ? しっかり説明してもらおうか?」 嘘は絶対に許さないという態度で詰問する。 一家は、巨大赤れいむの世話で疲れ切っていたが、事情を言わない訳にはいかず、親まりさがこれまでのあらましを説明した。 初めは怒りに身を任せていた男だったが、事情を聴いていくうちに、すっかりその怒りも霧散してしまった。 何しろ一家の話が本当なら、もしかしたら怪我を、いや怪我どころか死んでいたのはマイクロ一家のほうかもしれなかったのだから。 しかし、突然の巨大赤れいむの乱心というのに、信じられない思いがあった。 一家の話から推測するなら、巨大赤れいむが襲ってきたのは、愛で子に告げ口されることを恐れての犯行だろう。 それは分かる。しかし、同時にその程度のことで? という気持ちが男にはあった。 告げ口されれば、当然愛で子は巨大赤れいむを叱りつけるだろう。もしかしたらお仕置きに体罰くらいは受けるかもしれない。 しかし、所詮その程度である。 愛で子の性格からいって、お仕置きを受け十分反省するなら、その後はいつものように精一杯目一杯可愛がるに決まっている。 一家を殺そうとする動機としては、とても薄っぺらく思えてしまう。 あるいは、巨大赤れいむの積りに積もった負の感情が一気に噴き出してきたのだろうか? その線も考えたが、それもいまいち納得できない。 確かに巨大赤れいむを蔑ろにしている部分が多少あったことは、男も分かっている。 いや、男も一家も蔑ろにしていたつもりはないが、巨大赤れいむがそう思っているのではと感じたことは、少なからずあったように思える。 しかし、あの程度の蔑ろは、一家に対し何度も行っている。それこそ生まれたばかりの赤ゆっくりに対してもだ。 外出で構ってやれないことも多いし、テレビや読書の最中に、面倒になって無視したことも何度あっただろうか。 愛で子と違い、お仕置きには叱責だけでなく度々体罰も加えた。例をあげていけばキリがないくらいである。 それでも、一家は素直にスクスクと成長していった。多少親バカなところは自覚しているが、客観的に見てもいい子たちであるという自負がある。 その観点から見ても、巨大赤れいむの負の感情など、「その程度のこと」としか男の目には映らなかったのである。 しかし、男にはただ一つ知らないことがあった。巨大赤れいむの愛で子に対する、依存にも似た感情である。 生まれてすぐに両親と離され、姉妹もなくゆっくりショップのゲージの中で過ごした数日間。 巨大赤れいむは途轍もない孤独感に支配された。 そして、それを癒してくれたのが、巨大赤れいむを買った愛で子である。 自分には愛で子しかいない。愛で子は親であり、姉妹であり、友達であり、そして家族であった。 その愛で子を一家に奪われるかもしれない。 一家に告げ口をされて、愛で子に嫌われるかもしれない。 それが、巨大赤れいむが何よりも恐れることであった。 実は男と愛で子のペットに対する接し方にそれほど違いはない。 寧ろ、愛で子のほうが男以上に巨大赤れいむに構っていたくらいである。 一家と巨大赤れいむの唯一の違いは、飼い主の他に心の拠り所となる者がいるかいないかの差である。 一家は男に叱られても、慰めてくれる家族がいる。 構ってもらえなくても、遊ぶ相手が大勢いる。 最悪、男に捨てられたとしても、一家は一匹ではないのだ。 しかし、巨大赤れいむには、愛で子しかいない。 叱られて慰めてくれる人はいないし、遊んでくれる相手もいない。 愛で子に見捨てられれば、完全に孤立してしまうことになってしまうのだ。 この差は、飼い主からすれば大した問題ではないかもしれないが、ゆっくりからすれば、己の一生を左右する切実な問題なのである。 そんな一家と巨大赤れいむの立場を同列に見なしている男に、この疑問が解けることはなかったのである。 「愛で子……」 「あ……まりさちゃんたち、なんだって?」 男は愛で子の隣に腰を下ろし、一家に聞いたことをそのまま愛で子に聞かせてやった。 それを聞いて驚き、そして大いにショックを受けた。 「この子がまさかそんなことを……」 「いや、まだ完全にまりさたちが言ったことが正しいかは証明できないが……」 男はそう慰めるが、正直、まりさたちが嘘を言っているとは思っていなかった。 ゆっくりは根が単純で、嘘をつこうものなら、すぐに顔に出てしまう。 こんな大嘘を吐こうものなら尚更だ。しかし、一家には一切それがなかった。 それと、自分の可愛い子たちを信用しているということもあるし、あの水槽の荒れ方や一家が治療を施していた状況からも、一家の説明と合致する。 なぜ巨大赤れいむが、突如一家を殺そうとしたのか。その理由は分からないが、それ以外はまず間違いないだろうと確信していた。 と、そんなことを考えていると、傷が回復したのか、巨大赤れいむが、ゆっくりと目を開いた。 「……ゆっ? ……おねえしゃん?」 「れいむ!!」 寝ぼけ眼で、愛で子を捉える巨大赤れいむ。 最初は何が何だか分かっていなかった巨大赤れいむだが、次第に餡子脳がハッキリしてくるや、ようやく最愛のあ姉さんが帰ってきたとばかりに擦り寄っていった。 「おねえしゃん!! ゆっきゅりおかえりなちゃい!!」 巨大赤れいむの威勢のいい挨拶。しかし、そんなれいむを、愛で子は悲しそうな視線で見つめている。 「れいむ。良かったわ、元気になって……」 「りぇいむ、しゅっかりげんきになっちゃよ!! ゆっきゅりおなかがちゅいてきちゃよ!!」 「……」 数十分前のことを覚えていないのか、巨大赤れいむに悪びれた様子は一切なかった。 そんなれいむを見て、信じたい気持ちでいっぱいの愛で子だが、事情はハッキリさせなくてはならないと、重い口を開き始めた。 「れいむ。あなたに聞きたいことがあるの」 「ゆっ? にゃんにゃにょ、ききちゃいこちょって?」 愛で子は、男に聞かされた話を、巨大赤れいむに伝えていく。 初めは余裕の表情で聞いていた巨大赤れいむだったが、次第にその余裕は消え去り、顔は青ざめ、遂には傷が癒えたばかりだというのに、大量の砂糖水が体から流れ出てくる。 震えた体に、噛み合わない歯、視点の定まらない瞳。 この様子を見るだけで、一家が嘘を付いていないことは明白だが、真実を自分の口から言わせなればならないと、愛で子は巨大赤れいむに、ゆっくり静かに問いただす。 「れいむ。今のお話は本当なの?」 「ゆっ……ゆっ………ゆ……」 「れいむ!!」 「……お、おにぇえちゃんたちが、ゆっきゅりうしょをちゅいたんだよ!! れいみゅはしょんにゃこちょ、ちてないよ!!」 この期に及んでも、巨大赤れいむは嘘を並びたてていく。 すでにどちらが嘘を言っているか分かっている男と愛で子は、その巨大赤れいむの答えに大いに失望した。 「……本当に嘘をついていないのね?」 「ゆゆっ!! ゆっきゅりほんちょうだよ!!」 「本当にまりさお姉ちゃんたちが嘘を付いているのね?」 「ゆっ!! しょうだよ!! おにぇえちゃんたちは、ゆっきゅりうしょちゅきなんだよ!!」 「怒らないから本当のことを言って、れいむ!!」 「れいみゅはうしょなんきゃ、ちゅいてにゃいよ!! ゆっきゅりおにぇえちゃんたちを、おちおきちてあげちぇね!!」 「そう……」 その後、愛で子はソファーを立つと、来る時に巨大赤れいむを入れてきたゲージを持ってきた。 そして、巨大赤れいむを手に取ると、ゲージの中に入れていった。 「ゆっ!! おにぇえしゃん?」 「もう帰る時間よ。ご飯は家で食べましょうね」 「ゆゆっ!! ゆっきゅりりかいちたよ!!」 巨大赤れいむは上機嫌でゲージの中に入っていった。 巨大赤れいむは嬉しかった。何しろ自分の嘘がばれなかったのだから。 ゆっくりに人間の機微は読めない。それが赤ゆっくりとなれば尚更である。 マイクロ一家に告げ口されたことで追及は避けられなかったものの、やはり愛で子は自分のことを信じてくれたのだと考えていた。 あれ以上追及が来なかったことが、何よりの証拠である。 家に帰るのは、嘘をついたと思っている一家に腹を立てたためだと考えた巨大赤れいむは、ゲージの中でほくそ笑んだ。 最悪の一家に苛められたし、痛い思いもしたが、収穫はあった。 あのゆっくり用の遊具はとても魅力的であった。 家に帰ったら、自分だけの素晴らしい遊具を買ってもらおうと、巨大赤れいむはすでに自分が犯した過ちも忘れ去っていた。 ゲージをもって玄関に行く愛で子。 それを追いかける男。 「なあ、本当に帰るのか?」 「ええ、ごめんなさい。その……うちの子が……」 「いや、特に目立った怪我はしていないし、あいつらも許してるみたいだから、俺はいいけど……でも……その…その子は?」 「この子を買うとき、お店の方から育て方のマニュアルと一緒に、条例の書かれた書類も頂いたわ……」 「条例? ……………まさか!!」 「……」 「いや、それは、でも……本気なのか?」 「……」 「い、いや……そこまですることはないだろう。ほら、俺もあいつらも気にしてないしさ!! それに結構費用だって掛けてきただろ?」 「せっかく買い物してきたのに、御夕飯作れなくてごめんなさい。また機会を見て遊びに来るわ。まりさちゃんたちにもよろしくね」 「……あっ」 愛で子は、男の質問に答えることなく、一礼をして、玄関を出て行った。 男は呆然としながら、しばしその場に佇んでいた。 「ゆゆっ!! おにいさん!! おねえさん、ゆっくりかえったの?」 「ああ……」 「おにいさん!! まりさたちは、ゆっくりおちびちゃんのことをゆるしてあげるよ!! だから、こんどおねえさんにあったら、ゆっくりいってあげてね!!」 「……もうおそいよ」 「ゆっ?」 まりさには、男の言葉の意味が分からなかった。 「おねえしゃん!! ゆっきゅりどきょにいきゅにょ!!」 翌日、再度ゲージに入れられた巨大赤れいむは、愛で子に行き先を尋ねた。 しかし、愛で子は何故か朝から口を聞いてくれなかった。 昨夜は今まで食べたこともないような豪勢な食事を与えてくれたというのに。 いぶかしむ巨大赤れいむ。自分は何か愛で子の機嫌を損ねるようなことをしただろうか? すでに巨大赤れいむの中では、昨日のことは忘れ去られていたのである。 そのことに考えを集中させていると、いつの間にか、愛で子は目的の場所に着いたらしい。 ゲージの中から巨大赤れいむを取り出すと、それを目の前の厳つい男に手渡す。 「……よろしくお願いします」 「はい、確かにお預かりいたしました」 「あ、あの……この紙に書いてあるんですけど、本当にその……」 愛で子は言いづらいことなのか、途中まで言いながらも、言葉を閉ざしてしまう。 その様子に厳つい男は疑問に思い、愛で子が差し出した紙に目をやる。 その内容を読んで、愛で子が何を言いたいのか理解した厳つい男は、柔和な笑みで愛で子に答えた。 「ええ、ご安心ください。この赤ちゃんれいむは、とても安らかひと時を送れますよ」 「そうですか……お止めして申し訳ありません」 「いえ、お気持ちはお察しいたします。それではそろそろ時間ですので」 厳つい男は愛で子に一礼し、巨大赤れいむを掴みながら、愛で子の元から離れていった。 「ゆっ? おねえしゃん?」 自分の境遇が理解できない巨大赤れいむは、男の手の中から、愛で子の姿をとらえる。 そこには、何故か涙を流し、じっと遠ざかっていく巨大赤れいむを見つめ続ける愛で子の姿があった。 「ゆっ!! ゆっきゅりとまっちぇね!! れいみゅはおねえしゃんのときょりょにかえりゅよ!!」 最愛の飼い主の悲しそうな泣き顔を見て、巨大赤れいむは今すぐ愛で子の元に返せと、厳つい男に言ってくる。 しかし、厳つい男は巨大赤れいむの言葉に返事を返さない。 巨大赤れいむは、何とか厳つい男の手の中から逃れようともがいたが、男の力は強く、れいむの力では抜け出すことが出来なかった。 やがて、男はある部屋の扉の前にやってくると、鍵を開けて、中に入っていく。 「おい、じじい!! ゆっくりまりささまをここからだすんだぜ!!」 汚い言葉を使ってくる汚れたまりさ。 「すっぎりさせでええぇぇぇぇ――――――!!!」 全身に拘束具を付けられ苦しそうなアヘ顔のありす。 「むきゅ――――!!! ぱちぇはもりのけんじゃなのよ!! ゆっくりここからだしなさい!!」 顔が半分かけたぱちゅりー。 そこには、多種多様なゆっくりが、所狭しと床を埋めていた。 そんな足の踏み場もないようなところに、うまく隙間を見つけ入っていくと、そこに巨大赤れいむをゆっくり置いた。 「ゆゆっ!! れいみゅは、おねえりゃんのときょろにかえりゅんだよ!! きょんなちょこりょに、ゆっきゅりようはないよ!!」 巨大赤れいむは、愛で子の元に連れて行けと喚くが、男は聞こえないのか、その言葉を無視し、部屋から出て行った。 そしてドアを閉めるや、鍵を掛ける。 巨大赤れいむは、なぜこんな所に連れてこられるのかが理解できず、ドアの前であらん限りの大声を張り上げる。 しかし、それに返事を返してくれる者はおらず、「後三分か……」という訳のわからない言葉が聞こえてきただけであった。 それでも巨大赤れいむは喚き続ける。 今日は愛で子にゆっくり用遊具を買ってくれるよう進言するつもりだったのだ。 こんな所で油を売っていては、日が暮れて店が閉まってしまう。 遂にはドアに体当たりをする巨大赤れいむ。 しかし、当然の如く、ドアはびくともしない。 それでも繰り返し繰り返し体当たりを続けている巨大赤れいむだったが、しばらくすると、突然「ビ―――――――!!」という不快な音が部屋に鳴り響いた。 そして、それに間をおかず、天井から白い煙のようなものが、部屋中に降り注いだ。 「ゆっ? にゃんにゃの、きょれ?」 巨大赤れいむは、突如出てきた白い煙に舌を付ける。 ゆっくりは分からないものがあると、大抵舌を出す癖がある。 朝食を取っていなかったこともあるだろう。 しかし、それが巨大赤れいむの運命を決定づけた。 舐めてみると、それは特に味も香りもなかった。 もしかしたら食事かと甘い期待を抱いていた巨大赤れいむは、すぐに失望した。 しかし、舌を仕舞うと、何故か体がピリピリするような錯覚を覚えた。 一体なんだろう? そう考えた瞬間だった。 「ゆぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――――――!!!」 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ―――――――――――――!!!!」 「ゆげえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――――――――――――――!!!!!」 「がああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――――!!!!」 突然、部屋中にいたゆっくりから悲鳴が漏れ始める。 巨大赤れいむも例外ではなく、絶叫を響かせ、餡子を撒き散らす。 「ゆげえええぇぇぇぇぇぇぇぇ―――――――――――!!!! にゃんにゃの、きょれえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――!!!!」 体には激痛が走り、嘔吐感が止まらない。 口からは止めどなく餡子が流れ出て、遂には、口だけでは狭いと言わんばかりに、巨大赤れいむの左目が餡子によって飛ばされた。 「ゆぎいいいぃぃぃぃ――――――!!!! りぇいみゅのおみぇみぇがああああぁぁぁぁぁぁ――――――――――――!!!!」 周りのゆっくりも、巨大赤れいむの様に、餡子が目を押しやったり、ちょっとした傷口が一気に広がって大量の餡子が漏れ出したりと、大惨事だった。 「おねえしゃあああああああああん!!!! くるちいよおおおおおおぉぉぉぉぉぉ――――――――!!!! たしゅけてええええぇぇぇぇぇぇぇ――――――――!!!!」 あまりの痛さと、命の餡子が流れ出る恐怖に、巨大赤れいむは、最愛の愛で子を呼び続ける。 しかし、いつもなら巨大赤れいむが泣いているとすぐに駆けつけてくれた愛で子は、この時来てくれないばかりか、返事も返してくれない。 それでも巨大赤れいむは、愛で子の名を叫び続ける。何しろ彼女には、愛で子しかいないのだから。 「おねえしゃあああああああああん!!! おねええしゃあああああ……ん!!! お……ねえ……しゃ……ん! おね……え……しゃ……………」 巨大赤れいむは、最後まで愛で子が来てくれると信じながら、大量の餡子をまき散らし、絶命した。 「れいむ……ごめんね……ほんとにごめんなさい……」 愛で子は保健所の椅子に座り、涙を流し続けた。 ゆっくりが故意に人もしくは飼いゆっくり、ペットに危害を加えた場合、保健所に引き渡すことが都市条例で決められている。 それは、いくつかの特例を除き、ゆっくりの飼い主が必ず守らなければならない義務である。 しかし、現状でその条例が市民に完全に守られているかと言えば、必ずしもその限りではない。 誰でも自分のペットは可愛いものである。 例え人間や飼いゆっくり、ペットに怪我を負わせてしまっても、条例を無視しなあなあに終わらせたり、示談で済ませたりする人が後を絶たない。 酷い例になると、条例すら知らない飼い主もいるくらいである。 愛で子も巨大赤れいむを引き渡したくなどなかった。 自分が飼った初めてのペット。子供のころから、何度親にゆっくりを買ってと懇願したか分からない。 愛していたのだ、心の底から巨大赤れいむのことを。 男もマイクロ一家も気にしていない、許してくれると言っていた。保健所に告げ口なんてしないだろうし、黙ってさえいれば、誰にも分からない。 しかし、それでも愛で子はこの手段を選んだ。 それは愛で子が真面目だったからということだけではない。 真面目には違いないが、法とペットの命、どちらを取るかと聞かれれば、おそらく躊躇いつつもペットの命を優先するだろう。 もし、今回の事件が然程大きなものでなければ、愛で子はこれからも巨大赤れいむと一緒に暮らしていたに違いない。 巨大赤れいむが、腹立ちまぎれに自分の力を見せびらかす程度のことだったなら、甘いとは思うが愛で子もこの決断はしなかったに違いない。 自分の力が理解できず、誤って暴力をふるってしまったと言うことなら、愛で子もキツイ折檻だけで済ませてしまっていただろう。 しかし、今回は事が事であった。 巨大赤れいむには、一家に対し、明確な殺意をもって攻撃を行ったのである。 一度、そういう考えを持ってしまったゆっくりは、中々矯正することが難しい。一生矯正できない個体のほうが多いくらいなのだ。 次もこういう事態になったら、今度は躊躇いもせずに、最初から相手を殺しにかかるだろう。 巨大赤れいむが、自暴自棄の果てに返り討ちにあって死んでしまうなら構わない。いや、構わなくはないが、それは愛で子が悲しいだけで済む話である。 しかし、万が一、相手に傷をつけたら、それは簡単に済む問題ではない。 今回、マイクロ一家が傷も残さず生き残ったのは、彼女らの優秀さもあったが、それ以上に運が良かっただけの話である。 普通の個体だったなら、全滅していただろうし、生き残ったとしても、大怪我をしていてもおかしくはない状況だったのだ。 だからと言って、巨大赤れいむを部屋の中に一生閉じ込めておくことも出来ない。 マイクロ一家と違い、外に散歩にも行きたがるだろうし、部屋に友人を呼ぶことだってある。将来的には、相方が欲しいと言ってくるだろう。 それらを無視して、れいむを籠の鳥のように閉じ込めておくことは、ゆっくりすることを信条とするゆっくりにとって、とても耐えられないことに違いない。 結局、巨大赤れいむが、これからも生きていくには、ゆっくりらしさを捨て去る以外、手はないのである。 そんなことをさせるくらいならと、昨晩、睡眠も取らずに悩みに悩んだ結果が、これであった。 保健所についての項目を読んでいくと、ゆっくりの処分はゆっくり用の神経ガスを使い、まるで眠るように息を引き取ると書いてある。 先程、厳つい男に聞いた時も安心しろと言ってたくらいだし、きっと安らかに逝くことが出来るだろう。 自分はいい飼い主にはなれなかったけど、天国で精いっぱいゆっくりしてねと、何度も何度も巨大赤れいむに心の中で謝罪を繰り返し、愛で子は目元を腫らしたまま、保健所を後にした。 ゆっくり条例 第〇章 第△条 人間もしくは飼いゆっくりに危害または殺害を犯したゆっくりは、その危険性を考慮し、ゆっくり保健所に引き渡すこととする。 特例として、以下の場合に限り…… ~fin~ 新発売 マイクロゆっくりHC 通常のマイクロゆっくりより高い知能を有し、2倍から~最大32倍まで賢さアップ 当店おすすめは、マイクロゆっくりHC 賢さ8倍モデル お値段、扱いやすさ共に満足の一品です お求めはゆっくりショップ 〇〇支店まで 過去作? ゆっくりいじめ系435 とかいは(笑)ありす ゆっくりいじめ系452 表札 ゆっくりいじめ系478 ゆっくりいじり(視姦) ゆっくりいじめ系551 チェンジリング前 ゆっくりいじめ系552 チェンジリング中 ゆっくりいじめ系614 チェンジリング後① ゆっくりいじめ系615 チェンジリング後② ゆっくりいじめ系657 いい夢みれただろ?前編 ゆっくりいじめ系658 いい夢みれただろ?後編 ゆっくりいじめ系712 ゆっくりですれ違った男女の悲しい愛の物語 ゆっくりいじめ系744 風船Ⅰ ゆっくりいじめ系848 風船Ⅱ ゆっくりいじめ系849 風船Ⅲ ゆっくりいじめ系936 カルガモとゆっくり 前編 ゆっくりいじめ系937 カルガモとゆっくり 後編 ゆっくりいじめ系938 カルガモとゆっくり おまけ ゆっくりいじめ系960 ゆっくりにドラえもんの道具を与えてみた ゆっくりいじめ系1702 三匹のゆっくり 1 ゆっくりいじめ系1703 三匹のゆっくり 2 ゆっくりいじめ系1704 三匹のゆっくり 3 ゆっくりいじめ系1705 三匹のゆっくり 4 ゆっくりいじめ系1706 三匹のゆっくり 5 ゆっくりいじめ系1707 三匹のゆっくり 6 ゆっくりいじめ系1708 三匹のゆっくり 7 ゆっくりいじめ系1709 三匹のゆっくり 8 ゆっくりいじめ系1716 続・ゆっくりにドラえもんの道具を与えてみた ゆっくりいじめ系2536 ゆっくりですれ違った男女の悲しい愛の物語 加筆修正版
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1311.html
ゆっくりいじめ系110 髪飾りの続きです。 前の騒動の際に拾ったゆっくり霊夢。 こいつは仲間の死を見たせいか、仲間を殺してしまったせいか、ずっと固まったまま動かない。 口に物を入れれば食うし、生きてもいるようだが心が死んでしまっている。 俺自身も痛みを与えたり、髪飾りを死んだゆっくりの物交換してみたりと色々な方法を試みたが、何一つ反応を見せない。 「こうなったら代案ならぬ代餡として、中身でも入れ替えてみるか……? でもなぁ……」 それではつまらない。このゆっくり霊夢だからこそ期待できるものがあるのだ。 悩んでいても大して良い案は浮かばずに数日が過ぎた。 今日も今日とて歩きながら考えていると、道脇の草むらで何かが動いた。 「ゆぅ……くりぃ……」 ゆっくり魔理沙だった。どうやら傷ついて餡子が減っているらしく、かなり皮のたるみが目立つ。 別にどうでもいいか、と無視しようとした時、ふと妙案が思い浮かび、足をゆっくり魔理沙の前で止める。 「おい、大丈夫か? しっかりしろ!」 「ゆっ……りぃ……」 うーむ、我ながらうそ臭い演技だ。しかし、ゆっくり魔理沙の方は本当に重体らしく、返事をする元気すらない。 おそらく何らかの理由餡子を吐き出してしまったため、生きていくぶんの餡子が足りていないのだろう。 「よいしょっ、と……!」 ゆっくり魔理沙を抱え上げて、家に走り帰る。早くしなければ死んでしまうかもしれないのだ。 「待ってろ……! すぐに助けてやるからな!」 家に帰り、ゆっくり霊夢用の餡子とオレンジジュースを与えると、ようやく危機は脱したように見えた。 さっきよりも少しふくらみ、顔ツヤも良くなっている気がする。 「ありがとぅ……おにいさん……」 「無理に喋るな。とりあえず、ここでゆっくりしていけよ」 「うん、ゆっくりしていくね……」 ゆっくりぱちゅりーぐらいのか細さである。これは休ませておいた方がいい、と判断し、その日は俺も就寝した。 寝る前にゆっくり魔理沙をあえて、ゆっくり霊夢の近くに置いておいた。 次の日、ゆっくり魔理沙の様子を確認すると、本調子ではなさそうだったが、昨日よりかは随分良くなっていた。 「どうだ? 身体はもう大丈夫か?」 「ゆっくりやすめたから、すこしだいじょうぶになったよ」 やはり、答える声にはゆっくり種特有の無駄な元気さはない。もう少し置いてやるべきかな。 「ゆっ、おにいさん、あのこどうしたの?」 「ん、ああ、ゆっくり霊夢か……」 ゆっくり魔理沙は置物のように鎮座したゆっくり霊夢を気にしていた。ゆっくり同士の連帯感故だろうか。 思惑通りに事が進んでいる。俺はいくらか考えたふりをして話してやった。 「あのゆっくり霊夢は家族がみんな死んでしまって、酷い目にあったんだ。それで動かなくなっちゃったんだ……」 簡潔すぎるほど簡潔だが、ゆっくりに小難しい話をしても分からないだろう、と判断して適当にまとめた。 「……ゆっ!」 傷が癒えきっていない身体で飛び跳ね、ゆっくり霊夢の隣に行くゆっくり魔理沙。そして、いつもの言葉。 「ゆっくりしていってね!」 「………………」 相変わらず、反応しないゆっくり霊夢。……よし、実験開始。 「なあ、ちょっといいか?」 「ゆ?」 「このゆっくり霊夢を見ててやってくれないか? 食べ物はちゃんと渡すし、見てるだけでもいいんだが」 「いいよ! ゆっくりみてる!」 心なしか元気が戻ってきているように見える。やけに聞き分けがいいところにが何かありそうだ、と感じさせる。 『ゆっくり同士の交流で心は戻るか』という目論見であるが、どちらに転んでもどうでもよかった。 その日から、俺は朝食と昼食二匹分の食べ物を渡し、仕事をして、夜にまた食べ物を渡しながら一日の経過を聞くという生活になった。 ゆっくり霊夢は自分から食べようとはしないため、誰かが与えてやらなければならなかったが、それはゆっくり魔理沙がやってくれた。 ゆっくり魔理沙もゆっくり霊夢のことが気になるらしく、傍から見ていても姉のように甲斐甲斐しく世話をしている。 それが理由なのか、近頃ではゆっくり霊夢が微妙に反応を示し始めている。 小さくだが「ゅ……ゅ……」という声が聞こえるのだ。それを聞いて、ゆっくり魔理沙は嬉しそうに語りかけたりしている。 ゆっくり魔理沙は出来ないことも弁えているらしく、「れいむをあらって、すっきりさせてあげて」などと頼まれた。 ゆっくり霊夢は動かないので、ゴミや埃が積もって汚れてしまうのだ。 ついでにゆっくり魔理沙も洗ってやろうとすると、「まりさはいいよ」と拒否したので無理やり洗ってやった。 くすぐったそうにしながらも、暴れずに大人しくしているゆっくり魔理沙。 ゆっくり種としてはその聞き分けの良さ、おとなしさは奇妙というか異常であった。 俺は今までの経緯や行動から、ゆっくり魔理沙の事情をだいたい予測していた。確証を得るために語りかける。 「なあ、魔理沙。お前、仲間からいじめられたりしてたんだろ。だから、あんなに傷ついてたんじゃないか?」 「…………」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢が乗り移ったかのように黙り込む。やがて、ゆっくりと口を開いた。 「まりさはね、ぼうし、なくしちゃったんだ……」 「そうか……」 それだけ聞けば何があったのかは予想できる。そして、現在のゆっくり魔理沙は帽子をつけている。 「他のゆっくりから取ったのか?」 ゆっくり魔理沙は一瞬迷ってから、言った。 「しらないゆっくりの、しんじゃったゆっくりのぼうし、ひろったんだ」 「知らなくて、しかも死んでるなら別にいいんじゃないか? 誰も使わないわけだし」 俺はてっきり、生きているゆっくりから帽子を奪ったから、いじめやリンチにあったんだと思っていたのだが。 むしろ、帽子やらリボンやらがないと、元いた群れであっても仲間扱いされなくなるのは前回の実験で判明したことだ。 「しんじゃったゆっくりのぼうしだとね、みんなからきらわれちゃうんだ……」 嫌われる……? どういうことだ。帽子をかぶってるのにいじめられただと? まさか、ゆっくりは分かるのか。そいつに合っていない髪飾りや、死んだゆっくりの髪飾りを使っているのが。 これは、非常に興味深い。俺はゆっくり魔理沙から当時の状況を詳しく聞くことにした。 ゆっくり魔理沙の言ったことをまとめてみると、 1、「帽子を失くす」といじめられた。群れから無視される立場となる。 2、「生きている他のゆっくりの帽子」を奪ったら、仲間として認められた。しかし、帽子を奪い返されると、以前の立場に逆戻り。 3、「死んでいるゆっくりの帽子」をかぶったら、群れの仲間どころか、行く先々のゆっくりに攻撃された。で、倒れて拾われる。 という経過らしい。 ……成る程。ゆっくり種の髪飾りにはここまで意味があるとは。驚愕の思いを隠しきれない。 そして、ゆっくり魔理沙がゆっくり霊夢を世話するのも、群れから追い出されて寂しかったからだろう。 しかし、もしもゆっくり霊夢が目を覚ましたら、どんな行動を取るのだろう。 それはそれで楽しみである。 「ゆっくりしていってね!」「ゆぅ!」 ある朝、二匹分の声で目が覚めた。まさか、と思い居間へ確認しに行くと、そこにはゆっくり魔理沙とゆっくり霊夢が仲良く並んでいた。 「おにいさん、ゆっくりおはよう!」「ゆっ!」 「……帽子、気がついてないのか?」 ゆっくり魔理沙の言うことが真実なら、ゆっくりには死んだゆっくりの帽子を判別する能力があるみたいなんだが。 「だいじょうぶだよ! ゆっくりしてるよ!」「ゆゅ!」 と、そこで気づく、家にいたゆっくり霊夢は大きさであれば、それなりに成長してる個体のはず。 しかし、先ほどからまるでほとんど喋ってしない。精々、「ゆ」の一文字文ぐらいだ。 思い浮かんだのは幼児退行という言葉。しかし、そんなのゆっくりにも起きるのか? 疑問を持ちながらも、さらなる観察を続けることにした。 「ゆっくりしていってね!」「ゆっ!」 最初に気づいたのは、このゆっくり霊夢は「ゆっくりしていってね!」と一切言わないことだった。 ゆっくり子霊夢ですら「ゆっくりちていってね!」と返事するのに、何度も呼びかけても何も返さない。キョトン、としたままだった。 ゆっくり種としての常識でもぶっ壊れてしまったのだろうか。 個の識別は出来ているようである。ゆっくり魔理沙は当然としても、俺ですら家族の一人のように反応する。 しかも、言葉の識別も出来ているらしく、「お~い」と呼ぶと普通に寄って来て、「ご飯だ」と言うとやたらと速く寄って来る。 何故だか身体能力もあがっているらしく、己の背丈を越えるほどの跳躍力を見せることもあった。 それに引っ張られるように、ゆっくり魔理沙の能力も上がってきている。単純に傷が癒えた、というだけでは説明がつかない。 傷の治りが妙に早かったり、語彙が増えたり、知能が上がっているような気配すらある。 ゆっくりとしての禁忌を破ったからなのだろうか。よく分からない。 こうなってくると、最早ゆっくりとは違う種とすべきか! と一人盛り上がってみたが、即断するにはまだ早い。 近頃では二匹が仕事を手伝ってくれるようになった。仕事といっても農作業だが。 「おんがえしだよっ!」「ゆ~!」 と言っては泥だらけになるのも構わず、文句も言わずにせっせと働いている。いや、楽だね。 今日もまたゆっくりたちが俺の手伝いをしていると、草むらから音がした。ぴょん、と飛び出る塊。 「ゆっくりしていってね!」 野生のゆっくり魔理沙であった。それだけなら別にどうということはないのだが、今はまずい。 「ゆ……!? ゆっくりしねぇ!」 「ゆぐぅ!?」 野生ゆっくりが、俺のところのゆっくり魔理沙を見た途端、人格が変わったように体当たりをしてくる。 相手が大きかったこともあり、吹っ飛ばされるゆっくり魔理沙。野生ゆっくりは攻撃の手を緩めない。 「ゆっくり! しね! しねっ! しねぇぇっ!!」 「ゆぶっ! ぎゅぶ!」 鬼のような形相で攻撃し続ける野生ゆっくりと、口から餡子が出始めているゆっくり魔理沙。 放置するのも面白いのだが、まだやってもらわねばならないことがあるので助けようとする。 と、そこへ駆けつけるゆっくり霊夢。ゆっくりとは思えない速度で野生ゆっくりにぶつかる。 「ゆーーーー!!!」 「ぐべぇ!?」 二倍近く体格差があったように見えるのだが、それを物ともせず、今度は野生ゆっくりが弾き飛ばされる。 どれほどの力が込められていたのか、野生ゆっくりは木にぶつかると、餡子を撒き散らして潰れた。 普通のゆっくりとは比べ物にならない力の強さである。普通のゆっくりだと、集団で攻撃してようやく一匹を潰せる程度の力だ。 ゆっくり霊夢は野生ゆっくりのことなど眼中になく、すぐさまゆっくり魔理沙のところに駆けつけた。 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!?」 ゆっくり霊夢が悲痛な叫び声を上げる。何事か、と見てみれば、ゆっくり魔理沙の皮が破れて餡子が飛び出していた。 どうやら、吹っ飛ばされた時に木の枝にひっかけてしまったらしい。 「ちっ……まずいな。大丈夫か?」 「ゆぅぅ……」 だらり、と返事も出来ずにへたりこんでいるゆっくり魔理沙。そこまで、餡子の流出が大きいのかとも思ったが、何か違う。 身体がぶるぶると震るわせ、悪夢にうなされているように「ゆっ、ゆっ、ゆっ」と呻いている。 とりあえず、症状を観察するのは後回しにしてゆっくり魔理沙を家の中に運び込むことにした。 一応の手当ては終了した。傷口にテープを貼り、オレンジシュースを飲ませておく程度のものであったが、応急処置にはなる。 状態が良くなったわけではないが、傷よりも精神的に弱っているようだった。 「みつかった……みつかっちゃたよぅ……」 涙を流すわけでもなく、生気の抜け落ちた顔でぶつぶつと呟き続けている。 ゆっくり種の禁忌を犯しているゆっくり魔理沙は、制裁を恐れているのだろう。 「大丈夫だって。襲ってきたやつは潰しただろ? もう来ないんじゃないか?」 「そうかな……?」 怯え切った顔つきだ。俺としてもゆっくり種にそこまでの探知能力はないと思う。第一発見者がいなければ犯罪は露呈しない。 「もう、ゆっくりできないできないよぅ……」 なおも呟き続けるゆっくり魔理沙。どうしたものかな、と思った時、 「ゆぅ、ゆっ、ゆ、ゆっくり、しない、でね!」 なんとゆっくり霊夢が喋り始めた。ぴょんぴょん、と跳ねながら、頑張って話そうとしている。 「ゆっくり、しなくても、だいじょうぶ、だよ? おかー、さんは、れいむが、まもるよ!」 たどたどしく、けれど、はっきりと宣言した。 母親と認識していたことにも驚きだが、「ゆっくりしなくていい」とはゆっくり種としての存在意義に関わるのではないだろうか。 「さっきのは、ちがう、ひと。れーむたち、とは、なんかちがうの」 どうやらゆっくり霊夢は明確な境目を他のゆっくりに感じているらしい。 これは……面白い。その背中を押してみるべきだろう。 「そうだ、違うぞ。。あいつらはお前たちみたいなのが嫌いなんだよ」 「? どーして?」 「お前たちの髪飾り、リボンや帽子は死んだゆっくりのものでな。普通のゆっくりはそういうのを許さないらしい」 「だから、おかーさんを、いじめたの?」 「そうだ」 簡潔に伝えてみると、ゆっくり霊夢は身体をぶるぶると震わせ始めた。 怒りの感情かもしれないが、そこには何かしらの決意みたいなものが感じられた。 「じゃ、れーむは、ゆっくりじゃなくていい! そんなこというひと、みんなおいはらうよ!」 「へぇ……」 そっちの方向へ行くのか、と俺は感心していた。種であることよりも親を守る。 もしかすると、自分が既にゆっくり種から受け入れられないと分かっているのかもしれない。 「お前はもうゆっくりしないのか?」 「しないよっ!」 「じゃあ、お前は今度から『ゆっくりまんじゅう』っていう名前にしてみたらどうだ? ゆっくりとは違うってことで」 「ゆっ!? ゆっくりまんじゅう! れーむはゆっくりまんじゅうだよ!」 思いのほかあっさり承諾した。むしろ、喜んでいる。俺としては、人づてに聞いた小噺から思いついたものなんだが。 これで、本当にゆっくりとは違うものになったんだろうか、明日はどうしてみようか。 そんなことをワクワク考えながら、俺たちは眠りについた。 夜中。声と気配で目を覚ます。ゆっくりまんじゅうたちのいる部屋からしているようだ。 「なんだ……まさか!?」 急いで、居間に繋がっている扉を開けようとする。が、何かにつっかえているらしく、僅かの隙間しかできない。 その隙間から声が聞こえてきた。 「おかーさん! おかーさん! やめぐっ!?」 「ゆ、ゆゆ……」 「ゆっくりしないでね!」「ゆっくりできないよ!」「すっきりさせてね!」 まんじゅうゆっくりたちとは別の無数の声。俺は事態を察して、扉からではなく、窓から外に出て、玄関へと向かった。 「うわっ……」 表から見ると、玄関は開け放たれており、何匹ものゆっくりが部屋に入ろうとしていた。 しかし、既に入っているやつが多すぎて入れていない。それでも、まだ部屋の中に入ろうとしている。 「邪魔だ! どけっ!」 玄関周辺のゆっくりを潰して道を作る。ようやく、部屋の中を見るとそこには床一面にゆっくりが蔓延っていた。 「ゆっくり!」「ゆっくりできないやつはしね!」「じゃまなひとはどっかいってね!」 どうやら、俺には全く感心を抱いていないようだ。ゆっくりまんじゅうたちを目で探してみると、 「ゆぅ! ゆっ!? ゆぅぅぅぅぅ!!」 多くのゆっくりに圧し掛かられているまんじゅう霊夢がいた。 力で押し返そうとしているが多勢に無勢。潰されてはいないが、完全に身動きを封じられていた 「おかーさん! おかぁ、さん!」 その声で今度はまんじゅう魔理沙を探すと、テーブルの上で何匹かゆっくりがまとまっていた。 まさか、とテーブルに手を伸ばすが、玄関からでは遠く、突っ込むにはゆっくり達で動けない。 「ゆ、ゆ……ゆ。ごめんね、ごめんね……」 テーブルでは魔理沙が頭から食べられていた。何度も謝罪の言葉を呟きながら。誰に向かって謝っているのだろう。 「ゆっ、ゆっ! あのひとたち、へんなゆっきゅだよ! しんじゃえばいいのに!」 「みたよ、おひるにここのおうちでゆっくりしてたよ! ゆっくりじゃないのになまいきだよ!」 他のゆっくりよりも嬉々として、ゆっくりまんじゅうたちに攻撃を加えている二匹のゆっくり魔理沙。 あれは、もしかして昼間の野生ゆっくりの家族だろうか。現場を見られていて、仲間に場所を伝えたというわけか。 第一発見者がいなくても、第二発見者がいれば犯罪は露呈するか。くそ、あの後、周辺を警戒しとくんだったな。 「れーむもおかーさんも、だれにもめーわくかけてない! やめて、やぶぎゅ!?」」 動き回ってゆっくりたちを引き剥がそうとするが、さらに多くのゆっくりに圧し掛かられて、餡子が出そうになる。 「ゆっ、くりぃぃぃぃ!!」 その光景を見た魔理沙は最後の力を振り絞って、もう半分以上、無くなっている身体で飛んだ。我が子を守るため。 霊夢の近くに落ちる魔理沙。その衝撃と気迫に驚いて、群がっていたゆっくりたちはわらわらと散っていく。 「おかー、さん? おかーさん!? おがーざぁん!?」 「ごめんね……ごめんね……」 「 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」 最後まで謝りながら息絶えていく魔理沙。泣きすがる霊夢。 「ようやくしんだの? ばかなの?」「あとひとつ、つぶせばゆっくりできるね!」「すっきりしようね!」 口々に汚く罵るゆっくりたち。流石に見ていて腹が立った。俺がやってみたかったのに。 先ほどの、場所を教えたゆっくり魔理沙がまんじゅうへと寄ってくる。 「ゆっくりたべるよ! どいてね!」 餡子を食う気だろう。完全に余裕の笑みを浮かべている。 「おいしそう~♪ あ~ぐぎゃ!?」 ゆっくり魔理沙は食べようとして突如、吹き飛ばされた。壁にぶち当たって、中身が飛び散る 「ゆっくり!? ど、どうしたのぉ!?」「ゆっくりしんじゃったよ!」 「ゆっくり……」 ゆっくりたちが声した方を見る。ゆっくりたちの認識において、そこには潰され、食べられる予定の獲物しかいないはずだった。 「ゆ、ゆ!?」「ゆゆゆ!?」「ゆぅ!?」 「ゆっくり、するなぁぁぁぁっ!!!」 そこにいたのは狩人だった。否、狩人という言葉すら生ぬるい。それは戦士だった。 周囲のゆっくりを比較にならない力と素早さによる体当たりで叩き潰すまんじゅう。その凄まじい勢いにゆっくりたちは恐慌を来たす。 「い゛や゛ぁ゛ぁぁ!?」「おうぢがえる! おうぢにがえりだいよぉ!」「だじでぇぇっ!!!」 先を争って俺の方、すなわち玄関へとへ向かおうとするが、数が多いのが災いして思うように動けない。 その様子を見てから、俺はまんじゅうに声をかけた。 「おい、まんじゅう。一人で出来るか?」 「ひとりで……ひとりでできる! まかせて! みんな、ゆっくりできなくさせるよ!」 「だ、そうだ。お前ら、全員そこの『まんじゅう』にやられちまえよ」 指でまんじゅうを指し示してやってから、ゆっくりと玄関の扉を閉める。外にいたゆっくりもついでに放り込んでおく。 俺自身もイラついていたのだ。気分的には収穫しようとした果実を目の前で掻っ攫われた気分に似ている。 中の様子を窓から見てみる。 多数のゆっくりが外に出ようと扉に張り付いているが、結局開かず、後ろから来た他のゆっくりに潰されている。 「だぢでぇぇ!! ごごがらだじでぇ!」「 ゆ゛っぐり、じだいよおおおお!」「まんじゅういやぁぁ!!」 皆が逃げようとすればするほど、潰されていくゆっくりたち。しかし、後ろから今だ危機が迫っているのだ。 「ゆっ、くりぃ!」 まんじゅうは上空から勢いをつけて、一匹のゆっくりを叩き潰す。広がる餡子。見せつけるようにまんじゅうはそれを食べた。 「むしゃり! むしゃり! ぺっ!」 リボンを吐き出す。さらに震え上がるゆっくりたち。 髪飾りを盗った許せないゆっくりがいると知って群れで潰しに来たはずなのに。しかし、現実は過酷だった。 「どうじでぇ!? どうじでこうなるのぉ!?」「ゆっぐりざぜでね!?」「「まんじゅうはこないでぇぇぇぇ!」 「どうして? ゆっくりたちがれーむの、ゆっくりまんじゅうのおかーさんをころしたからだ!!」 今更、たわ言を抜かしていたゆっくり魔理沙を潰す。それは母に似ていても、決定的に母ではなかった。 「まんじゅう!?」「まんじゅうごわ゛い゛!」「ま゛んじゅう゛、やべでぇ!」 「ぼうしやリボンをなくしたゆっくりは、まんじゅうになってイジメられるんだ! おぼえとけ!」 「お゛ぼえ゛る゛! お゛ぼえ゛る゛がら゛だずげでぇぇ!」「ゆっぐいじだがっだよ゛う゛!」 「じにたくないよ゛おお゛お゛お゛お゛お゛!」「ぎゅっぐりぃ!!」「おがあざぁん!」 まんじゅうは飛び上がって、扉に群がっているゆっくりに思い切り体当たりをぶちかます。その勢いで扉が開け放たれた。 既に大半のゆっくりはやられていたが、それでも残ったゆっくりが我先にと逃げ出していく。当然、仲間に潰されたゆっくりもいた。 「まんじゅう゛ごわい! ま゛ん゛じゅうごわいよぉ!」「ま゛んじゅうなりだぐな゛いぃぃぃ!!」 「ずっぎりじだがっだだげなのにー!!」「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!???」 それぞれがまんじゅうに対して恐怖を口にしながら、どこかへ行った。 「いいのか、そこそこの数を逃がしたけど」 まんじゅうの狙いは分かっていたが、あえて聞いてみる。 「いいよ。あれで、まんじゅうがこわいっておもってくれれば、いいんだよ」 やはり計算してやっていたか、と少し感心していると、まんじゅうが俺の方を向いて小さくお辞儀をした。 「なんだ、どうした?」 「おとーさん、いままでそだててくれて、ありがとう。ここにいると、ゆっくりがいっぱいきて、めーわくがかかるからどこかにいくね」 「何……?」 俺ってお父さん扱いだったのか、と思いながら、なんとなくある推論が思い浮かんだ。 このゆっくり霊夢、もといゆっくりまんじゅう霊夢は、本当にゆっくり種とは違うものに変質しまったのではないだろうか。 きっかけは先日の惨劇であり、髪飾りを変えたことかもしれない。 しかし、俺や元ゆっくり魔理沙と暮らすことでゆっくりとしての常識を失っていったのかもしれない。 あの身体能力はそんな中でも生き残るために発揮されている、所謂「火事場の馬鹿力」だろうか。 そうだとすると、その寿命は長くは保てないだろう。 これはこれで興味深い事例であった。 俺はまんじゅうに、餞別として潰れたばかりの餡子を包んでくれてやった。 面白いものを見せてくれた礼でもある。 「元気で、とは言えないが、まあなるべく死ぬなよ?」 「うん。おとーさん、おかーさんのぶんまでしなないよ。ばいばい」 どこか穏やかな顔つきでまんじゅうは、消えていった。 その後、やけに強いゆっくりとして、まんじゅうの存在はたまに人々の噂にされることもあったが、死んだかどうかは分からない。 普通に考えて、いくらまんじゅうでも敵の数が多いと生き残れないのではないか、と思う。 それでも、時折だが山からある叫び声が聞こえるそうだ。そう、 「ま゛ん゛じゅ゛う゛ごわ゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛っ!!??」 と。 ここらで一つ、後書きっぽいものをどうぞ。 ゆっくりに「まんじゅうこわい」と言わせたかった結果がこの長文だよ! 「髪飾りの失くしたゆっくり」だと長いので適当に名前をつけてみたら、「まんじゅう」になった。反省している。 「ゆっくりまんじゅう」を正式名称にしたのは、流石に「ゆっくり」って言葉がついていないとマズイだろ、という判断から。 地の文で書く時、または他のゆっくりが呼ぶ時には「まんじゅう」になります。「饅頭」に非ず。 「まんじゅう」の脳内設定も一応書いておきます。使っても使わなくても、どっちでも構いません。 名称だけ使うとかも大丈夫です。設定改変もご自由に。 ……そもそも、こんな設定を使ってくれる人がいないだろうけど。 「ゆっくりまんじゅう」 髪飾りを失くしたゆっくりのこと。 髪飾りが無くなったゆっくりは種として迫害される運命にある。特に仲間の死体から髪飾りを盗んだ者は絶対に許されない。 「ゆっくりまんじゅう」は、それでも生き残るために変化した突然変異型ゆっくり。 髪飾りを失くしただけでは変異しないが、他のゆっくりったいによって迫害されることで変異することがある。 身体能力や知能は通常のゆっくりを遥かに凌駕するが、それは体内餡子の糖分を使っているため。 故に、通常のゆっくりよりも寿命は短く、中の餡子も甘みがなくて不味い。 「ゆっくりするな!」などの「ゆっくり」という言葉に対して否定的な言葉をぶつける。 自分から他のゆっくりを襲うことはしないが、襲われたら相手がれみりゃであろうと、群れであろうと死ぬまで戦う。 子ゆっくりであろうと容赦せず、相手の餡子を食らうことも平気でする。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/684.html
※妄想シーンがあります ※お兄さんがキモく、ウザくなります ※ゆっくりが木から生えます 「ゆっくりが実る木」 ある家の玄関に種が入っている袋が落ちていた。 「うん?」 何じゃこりゃと袋を拾い上げるお兄さん。 すると種のほかに紙が置いてあった。 「この種を植えてください 追伸 おなかがすいているのであればこの木から育った実を食べてください」 それしか書いてなかった。 「へぇ・・・ なんかの果物か? ちょうどいい、腹も減ってるし、金もないから、植えてみるか。」 早速中庭に種を植える。 水とか肥料はバッチリだ。 「へへ、そう簡単にならないのは知ってんだよ。 ま、気長に待ちますか。」 実はこの男、前に木を育てたのだが一ヶ月足らずで駄目になってしまった経験がある。 そんなことは関係ないか。と思い家の中に入る。 そして夜。 何か変な音がした。 「何だ?ゆっくりが忍び込んできたか? いや、違う。ゆっくりがこんな時間帯にくるはずがない。」 なんだってんだよー、ったく と思った後、外を見つめた。 すると植えたはずの木があっという間に育っているではないか! 「な・・・なんじゃこりゃアアアアあアアアアあアアアアアアアアアアアアアアあアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 しかも立派に育っている。 「やばいってこれ。夢だよ、夢だって、そうさ!いつだってッ!!」 とあわてて家の中に戻り 布団に飛び込む 「だからお休みー」 布団を再びかぶり眠りにつく。 で、翌日。 ぱっと目を覚ました俺は中庭を覗いた。 すると目の前にあったのは・・・ やはり立派な木だった。 「何で夢じゃないのおおおおおおおおお!!!」 ゆっくりのような悲鳴を上げたお兄さん。 さらによく見るともう実がなっている。 「はぇぇ・・・はぇぇよぉ・・・」 この木の成長振りにびびるお兄さん。 よく見ると、その実はどこかで見たような気がする形だった。 「なんかこうウザい感じがするな・・・」 はぁーと、溜め息をした次の瞬間。ぷちりという音がした。 「ん?何の音だ?木の裏側っぽいな、見てみるか。」 と覗くと、黒い髪に赤色リボン。これってまさか・・・ 「ゆっきゅりちていっちぇにぇ!」 一口サイズの小さなゆっくりれいむだ。 「さっきまでいなかったはずのれいむがなぜここに・・・ まさか!」 お兄さんは木の実を見る。 よく見ると、ほかの木の実には黒い帽子、カチューシャ、猫耳帽子、ナイトキャップなどがついている。 これでもう明らかになった。 この木はゆっくりが実る木。 「なんてこった。 俺は大変なものを・・・ あ。」 お兄さんは懐に合った紙を取り出した。 『この種を植えてください 追伸 おなかがすいているのであればこの木から育った実を食べてください』 と書いてあった。 食っていいから大丈夫だよなと思った俺はまりさと思われる実に手を伸ばす。 「よし・・・」 と実をくいっと引っ張った。 すると実は簡単に取れた。 まりさは悲鳴を上げることもなく絶命した。 次に帽子をぽいっと捨てる。 「ゆぅ~にゃにしょれぇ?おいちいにょ?」 と木の実から生まれたれいむがたずねてくる。(以下実れいむ 実まりさなど) 「ん~どだろ。」 ぽいっと口の中へ放り込む。 味はいまいち まだ成長が未発達のせいかそんなにおいしくなかった。 「これ以上増えてもらってはこまるな・・・ 何かいい策はないもんか・・・」 と頭を抱え悩みこむ。 するとお兄さんの家の近くから声がした。 よく見ると一人のお兄さんがれいむとまりさを籠につめ歩いているところだった。 「何してるんですか?」 と問いかけると、お兄さんは苦笑し。 「お前知らないのか。 こいつらを加工所に売り飛ばすんだよ。 そうすりゃ金になる。」 「かごうじょいやあああああああああああああああああ!!」 加工所という単語を聞き暴れるれいむとまりさ 「るっせーな、今楽にしてやるから覚悟しとけ。」 なんてやり取りの後お兄さんはすたこらさっさと逃げていった。 サイドビジネスの予感。 お兄さんは将来の自分を想像した後、とんでもないことを考えてしまった。 「いや、待てよ。 ぽんぽーんと連れて行ったら怪しいって思われて家宅捜索されるんじゃ!?」 創造というよりモロ妄想である サイドビジネスはあきらめた。 金を渡す加工所の気持ちも少しわかった気がする。 「そうだ!木!」 俺はあわてて庭の中へ。 すると実がぽろぽろ落ちてきている。 そしてお兄さんのほうを向いて 「「「「「「「「「「ゆっきゅりちていっちぇにぇ!」」」」」」」」」」 オウ、ノーもう生まれてる。 しかも十匹近く。 でも、こいつらを飼うわけにはいかない 野生に離してもれみりゃが現れるだけ。 どーすんのよ。 殺しまくってストレスを処理しても ぽんぽん増えるやつだから飽き飽きになるだろう。 なので。 数週間後。どこかのマンション トントンとドアのノック音がする。 「うるせーなぁー朝から。つーかチャイムがあるからそれ押せよ。 どんだけレトロな人間だ?お前。」 「すまないなぁ・・・お前が一流の虐待お兄さんとして折り入って頼みがあるんだ。」 「はぁ?」 「友達のよしみってことで・・・ こいつら全部殺してもかまわないぞ」 と差し出されたのは大型サイズの籠にゆっくりたちが無造作に押し込まれている。 「んな!何匹いるんだよ!こいつら」 「んー、50匹くらいかな。」 「キャッホオオオオオオオオオオオオオオオオオオウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」 友達が歓喜の声を上げる。 「まさかこんなにゆっくりを大虐殺する日が来るとは!!」・・・と。 「あ、こいつら5000円な。 あと前に貸した10000円返せ。 それとこのことは誰にも言うな。」 すると友達はマッハの速さで財布を持ってきて。 15000円を渡した後、強くドアを閉めた。 「・・・いよっし!」 とお兄さんはルンルンと笑顔で帰った。 つまり加工所ではなく友達に売り飛ばせばいい。 秘密にさせておけば家宅捜索なんてないんだぜ!(モロ妄想です) そんな簡単なことに早く気づかなかったんだろ。 なんて思いお兄さんは家に帰る。 そして家に帰り木の本へ戻るお兄さん。 実ゆっくりたちのお帰りコールがあったので適当に返事をし木の本へ行く 「やっほ~ぅ。わがいとしのきよぉ~ かえったぞぉ~」 とでれでれと戻ってみると新しい実が実りつつあった。 「おお、金が実る。金が実る。」 お兄さんは次から次へと実を確認しました。 「おお、今日はちぇん・・・みょん・・・ おお、れみりゃだ。 フランまで。 むふふ・・・ お兄さんはうれしいどぉ~♪」 思わずれみりゃの真似をしたお兄さん さらには踊りまで真似する始末。 「うっうー♪うあ♪う・・・うん?」 お兄さんが何かに気がついた。 見たこともない実がはえていたのだ。 すると近くにいた実ちぇんが現れ実を見るなり 「ら・・・らんしゃまあああああああああああああああ!!」 「・・・は?」 「らんしゃまだ!まちがいないよ-わかるよー」 「なにいってんだここにらんがいるわけ・・・」 といい木の実を見ると 確かにいた。 らんがいた。 他にもゆゆことか、えーりん、ゆかりとかも生えていた。 「てかえーりんがここから生まれてもいいのか!?」 なんてお兄さんは思っていたがそれはどうでもいいとして。 まさに希少種のラッシュ。 売れば相当の金額になるだろう。 あと、どうでもいいができればゆゆこは早く生まれてきてほしい お兄さんのほしいゆっくりランキングナンバーワンだからだ。 お兄さんはルンルンとしていた。 まさかあの木からゆゆこが生まれてくるとはと。 翌日には生まれてくるんだ。 楽しみだな・・・ そして翌日。 お兄さんはウキウキしていた。 早くゆゆこうまれねーかな。 その隣にはちぇんがいた。 早くらんしゃま生まれないかな。 お互いはそんなことを考えていた。 すると実がゆれる。 ついに・・・ついに・・・ ゆゆこが(らんしゃま)が生まれるんだ! 実がぽとりと落ちる。 生まれてきたのは・・・ 「どうも、ゆっくりしていってください わたしはきよくただしい きめぇまるです」 きめぇ丸だった。 場の空気が凍りつく。 ついでにきめぇまるは生まれてきてから言語能力が発達しており生まれたにもかかわらず成体ゆっくりに近いような話方をする。 「なんでらんしゃまがうまれないのおおおおおおおお!?わからないよおおおおおおおおお!?」 ちぇんが半狂乱になっている。 「大丈夫だ!落ち着けちぇん!次こそはらんが生まれるって!多分!!」 「ゆ・・・そうだねーおちつくよー」 (さぁこい!ゆゆこ!!生まれたらお兄さんとゆっくりしようね!) お兄さんはそう思い妄想を開始した。 それはお花畑じゃなくてゆっくりたちのゆっくりプレイス 俺はゆゆこと手(?)を取りながら嬉しく虐待をしていた。 「あはははははははは・・・」 「こぼねー」 ゆっくりたちを踏みつけ、蹴飛ばす俺。 ゆっくりたちを容赦なく食らいまくるゆゆこ まさに俺の人生薔薇色! かもぉーん!ゆゆこ!! しかし、木に変化が起きた。 木が見る見ると枯れ、木が朽ち果ててしまったのだ。 当然実は栄養を受け取ることができなくなり黒ずんでしまった。 らんも、ゆゆこも。 「「うっ、うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 すると玄関近くにチャイムの音が 「はい・・・」 それは郵便局の人だった。 「いたいた。実はあなたにこれを渡すように頼まれまして。では。」 一通の手紙を渡した後、郵便局の人はバイクにまたがり去っていった。 その手紙には 「遅れてすいませんでした。 この木はゆっくりを実らす木ですが 一ヶ月たつとかれてしまいます。 お手数をかけすみませんでした。」 と書いてあった。 それを見たお兄さんは 「なんてこったい。俺のゆゆこがあああああああああああああああああああああああ!!」 ちぇんはもう息もしていないらんに泣き縋る。 「うわああああああああん!らんしゃまあああああああああああ!ゆっくりしてええええええええ!わからないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 お兄さんはその後怒りに身を任せ手紙を力いっぱいに破り捨てた後 、枯れ木などに八つ当たりをはじめ。 最後、暴れすぎたせいか意識がブラックアウトする。 「・・・はぁっ!!」 俺はがばりと起き上がった。 「な、・・・なんだ。」 お兄さんは起き上がり庭を覗く。 気はない、ゆっくりたちの死体もないし、ちぇんもいない。 まさか・・・これは 「夢オチかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 あとがき 最後は夢オチでした。 ゆっくりの出産方法に茎による植物性出産を考え 木からから生まれたらどうなるだろうかと考え作りました。 夢じゃなかったらどうなることかと俺は思う。 byさすらいの名無し 過去作品 いじめ系2850 ゆっくり油火踊り祭 いじめ系2889 ゆっくりべんじゃー いじめ系2932 すぃー吶喊 いじめ小ネタ542 ゆっくりジェットコースター いじめ小ネタ545 ゆっくりボール いじめ小ネタ546 ゆっくり太郎 いじめ小ネタ553 ゆっくりできない川さん いじめ小ネタ562 ゆっくり草野球 いじめ小ネタ567 ゆっくり瞬殺されるよ! いじめ小ネタ573 金バッチがほしいよ! このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/500.html
「ゆっ、ゆぐっ、ゆっ…」 「おかあさん、ゆっくりがんばってね!」 「わたしたちもてつだうからね!」 土を口に含んでは別の場所へ吐き、口に含んでは別の場所に吐き…。 ゆっくりれいむの一家は、穴を掘っていた。 手が無いゆっくり達にとって穴を掘ることは容易ではない。 口の中は土だらけになり、口の周りを汚しても掘り続けるゆっくり達。 子供達のため、ゆっくりするため。 おかあさんを手伝うため。 れいむの一家は全員、力をあわせて土を欠き出す作業を延々と繰り返していた。 どのくらいの時間が経過しただろうか。 「ゆっくりできるおうちがかんせいしたよ!」 「これでゆっくりできるね!」 「しあわせー!!」 ついにれいむ達の穴、いや家が完成した。 家といっても、ちょっと掘り進んだところに部屋が一室あるだけの粗末なものである。 それでも、自分たちの力で家を作ったことが、そしてこれで外敵を気にせずにゆっくりできることが嬉しかった。 「これできょうもあしたもずっとゆっくりできるね」 「ずっとゆっくりしようね」 翌日。 「それじゃあゆっくりごはんをとりにいこうね!」 家の中で安心できる一夜を過ごしたれいむ達は、早い時間から家を出た。 きょうもあそこにたくさんやさいがあるといいな。 そう考えてれいむ達が向かった先は畑であった。 そもそも、新しい家を作ろうとしたきっかけはこの畑なのである。 この一家は昨日、畑で野菜を食べていた。もちろん無断である。 子れいむ達がむしゃむしゃ食べている中、遠くから男がやってくるのを一早く発見した母れいむ。 人間の怖さを知っていた母れいむは、一家でどうにか逃げ切ることが出来た。 奇跡にも近い所業である。 そして母れいむは考えた。 あそこのちかくにいえをつくれば、だれもいないときにごはんがたべられる。 そして穴を掘り、今に至るれいむ達。 畑に差し掛かったあたりで、昨日は無かったものを発見した。 そこには「ゆっくりたちのごはんです、ゆっくりいえでたべてね!」と書かれた看板。 丁寧なことに、高さをゆっくりが読める位置まで下げてある。 そして、中にそれらしきものが詰まった風呂敷であった。 「ゆっ? ここにゆっくりたちのごはんがあるよ?」 「ゆっくりもってかえろうね!」 「はやくおうちでたべようね!!」 れいむ達は何の警戒もなしにその風呂敷を持って帰った。 風呂敷をみんなで頭の上に置いて、非常に仲睦まじそうに運んだ。 家からこの風呂敷を見つけるまで約3分。 既に、昨日野菜を食べた畑のことは忘れていた。 「ゆっくりただいま」 「ゆっくりおかえり」 「きょうもゆっくりできるね」 「ゆっくりごはんをたべようね!」 家に帰ってきてただいまを言う者、なぜかおかえりと言う者。 みんなウキウキと家に帰ってきたが、興味はやはり拾った風呂敷。 開けてみると、そこには一口サイズの、丸い饅頭のようなものがたくさん入っていた。 もっとも、ゆっくり達にとって、人間の一口サイズは少々大きいものであったが。 「おいちそうだね! ゆっくりいただちます!!」 そう言って真っ先に喰らいついたのは赤ちゃんれいむ。 昨日の疲れが残っていたせいもあるのだろう、それをきっかけに妹れいむ・姉れいむ・母れいむと次々に食べていった。 「うっめ、めちゃうっめ」 「はふっ、はふっ」 「あまくておいちー!!」 次々と平らげていくれいむの一家。 見る見る数を減らしていき、10分後には何も残っていなかった。 「「「「しあわせー!!」」」」 「ちあわ…うっ…」 みんなで食後の幸せを噛み締める掛け声。 だがその中で、子れいむの様子がおかしかった。 「うっ…うっ、う゛ぼぅ゛え゛え゛っぇ゛ぇぇ゛ぇぇ゛ぇ」 まず一匹。 口から餡子を吐いた。 口を閉じようとしても止まらない。 助けを求めて母や姉のほうを見ても、事態を飲み込めていない。 致死量どころか全身の餡子といっていいほどの餡子の量を吐き出した子れいむは、皮だけのぺらぺらな状態になり絶命した。 「どうなっでる゛のぉぉぉ゛ごれ゛えっぇぇぇっ」 「どぼぉぅぢでえぇ゛ぇぇ゛ぇぇぇぇ゛ぇぇ」 「ごれじゃ゛あゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉお゛ぉぉぉぉぉっ」 ゆっくりした家での食事から一転、完全にパニックに陥ったれいむ達。 そうして慌て驚き恐怖に慄いている間にも、 「ゆぐっ…ゆっ…ゆ゛ぐヴヴぉ゛え゛えぇ゛ぇぇ゛ぇ!!」 「げヴ゛ぉぉぉお゛ぇえぇ゛ぇっう゛゛ぇえ゛ぇ!!!」 「ぐぉ゛れじゃぅ゛ぁ゛ゆ゛っぐり゛でぎなぐぉぇぇっぇぇぇ!!」 「ゆっぐりう゛ざぁ゛ぜぇでぇ゛ぇぇ゛ぇぇえぇぇぇ!!」 次々と餡子を口から外へ排出していた。 自分の中から命とも言える餡子が消失していく感覚。 ほんの少し前までの家の光景はどこにもなかった。 幸せそうな顔もどこにもなかった。 「どぅぼぉぉぉぉじぃでぇぇー! どぅぼぉぉじぃでぇぇごん゛なごどずる゛の゛ー!! ゆ゛ぐっぐりぢだぃよ゛お゛ぉ゛ぉおぉ」 餡子まみれになった家の中で最後まで残った母れいむ。 しかしその叫びは誰にも届かない。 家族全員の亡骸を見ながら母れいむもまた、同じ運命を辿った。 「お、なくなってる。ってことはちゃんと効いたのか?」 男がそのことをチェックしたのは、昼過ぎのことであった。 「昨日はあいつらにしてやられたからな…餡子の匂いがする」 男はその匂いをたどっていった。 そして1つの穴を発見した。 「あいつら、こんな近くに巣なんて作りやがって。どれどれ、効果の程は…っと、おおすげぇ」 スコップで少し掘ってみれば、そこには大量の餡子とたくさんの皮が残されているのみであった。 それも、全員苦悶の表情を浮かべている。 「なんでもかんでも喰うからそうなるんだよ…ざまあみろってんだ」 そういうと男は皮を回収し、棒で突き刺した。仲良く一家全員である。 畑の一角にそれを立てると、男は農作業へと戻っていった。 「カラスの死骸をつるすって話は聞いたことあるが、ゆっくりの死骸は聞くのかなぁ。あいつらバカだし」 ゆっくりコロリ 人間が食べても害が無い(むしろ甘くておいしい)が、ゆっくり種が食べると短時間で毒が周り、餡子を吐き出し死亡する毒餌。 このとき、非常に苦しみに満ちた表情で死亡するのが特徴である。 原料は不明だが普通に食べることが出来るため、常備しておく家もあるとか。 ゆっくりへの看板セット付き。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1187.html
ある昼下がり 幻想郷の深い森の奥にある、木々の開けた小さな草原 その草原にゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙が二匹で寄り添っている ゆっくり霊夢の下腹部は大きく膨れあがっており、出産間近であることが伺える 「ゆ~♪ ゆ~♪」 ゆっくりと体を左右に揺らしながらゆっくり霊夢は歌を歌う 「ゆ~ゆ~♪」 「すごいおじょうず!れいむはおうたのてんさいだね!」 隣の魔理沙はその歌に大喜びである 「おうたがじょうずなれいむは、きっといいおかあさんになるね!」 魔理沙のほめ言葉に思わず照れながら微笑むゆっくり霊夢 なんとも仲睦まじいやりとりである そのまま夕暮れまでゆっくりすると、やがて二匹は巣へと戻っていった 「ゆ゙ぎぎ…!!」 その晩のこと、ゆっくり霊夢の陣痛がはじまった 「い、いたいよ…!ゆっくりできないよ…!!」 涙で顔を皺くちゃにして痛みを訴える霊夢 「ゆっ! れ、れいむ!ゆっくりしていってねっ!」 その声にゆっくり魔理沙はおろおろとする しかしゆっくり魔理沙には声をかけてあげることしかできない ゆっくり霊夢が陣痛を訴えてしばらくすると… プシッ 巣に小さな水音が響いた するとゆっくり霊夢の底部にある小さな穴、いわゆる産道からぬらぬらした透明な粘液が水溜り状に広がっていく 破水である 出産が開始されるのだ ゆっくり霊夢は体を後ろに傾けて壁にもたれかかると、荒い呼吸で出産を開始した 「ゆぎっ! ゆぎっ!」 顔を真っ赤にしながら必死にいきむゆっくり霊夢、その顔は汗で湿っており額中にびっしりと血管が浮き出ている その姿からは痛みの凄惨さが見て取れる 「いぎぎ…!ま、まりさぁ…!!」 「れいむ!がんばってね!げんきなあかちゃんをうんでね!」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の傍で懸命に声援をかけつづける しばらくするとゆっくり霊夢の産道周辺がヒクヒクと痙攣しはじめる その痙攣にあわせて、普段は目に見えないゆっくりの膣孔が見えるようになる 膣孔からは、ゆっくり霊夢の呼吸にあわせて粘液が漏れ出している ゆっくり霊夢の膣孔が菊紋を描くのを確認すると、ゆっくり魔理沙はその小さな穴を舐めはじめる 舌で刺激することによって、出産を促すのである 溢れる粘液を舐め取るように、中の粘液を吸いだすように、ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の底部に舌を這わす 「ひぃ゙~ッ!!ひぃ゙~ッ!!」 「がんばってね!がんばってね!」 痛みのあまり泣きながらいきむゆっくり霊夢 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の為に懸命に底部を舐め続けた やがてゆっくり霊夢の下腹部の膨らみは産道のほうに偏りはじめる 胎児が移動しているのだ それにつれ産道周辺がこんもりと膨らみはじめる 「んぃ゙ぎッ!!んぃ゙ぎッ!!」 髪を振り乱しながらさらに強くいきむゆっくり霊夢 するとぴったりと閉じていた産道がミチミチと音を立てて開いていく 「ん゙お゙お゙っ!!」 開いた産道の奥にはゆっくりの赤ちゃんの顔が見える 「れいむ!もうすこしだよぉぉ!!あかぢゃんもはやぐでてきでねぇぇっ!!」 応援しているゆっくり魔理沙の顔ももう涙でぐしゃぐしゃである 「あ゙がちゃッ…!!あ゙がちゃッ…!!」 満身創痍のゆっくり霊夢 ゆっくり霊夢は白目寸前の目つきで口を大きく開け、荒く呼吸しながらうわ言のように赤ちゃんの名を叫ぶ …と、すぐゆっくり霊夢の動きが止まった 凄まじい形相のまま固まったと思うと、プルプルと体を震わせはじめる すると ズポッ と赤ちゃんが飛び出してきた 地面にぶつかってコロコロと転がると、 「ゆっきゅりしていっちぇねぇ!」 力強い声でそう言った 「……れ゙」 「れ゙、れ゙いむ゙ゔゔ!あがぢゃんゔまれたよおおっ!!よぐがんばっだねええっ!!」 「ゆ゙っぐりじでいっでね゙ぇぇぇっ!!」 「びぇぇぇぇぇっ!!」 これ以上の無い歓喜である 二匹は号泣しながら新たな命の誕生を喜んだ 生まれたのはゆっくり霊夢の赤ちゃん まだ母親の体液で体がぬらぬらと光っているが、その姿はとても可愛らしく健康的である 好奇心旺盛に巣の周りをキョロキョロと見渡し、両親の姿を見つけると 「みゃみゃ、ぴゃぴゃ、ゆっくちちようね!」 と言って満面の笑みを浮かべてその場でピョンと飛び跳ねた ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙は赤ちゃんに寄り添ってほお擦りをする 赤ちゃんはそれをくすぐったそうにしながらも受け入れた だいすきなお父さんとお母さん、おいしいご飯に静かな森での幸せな生活… その目はきらきらと輝き、将来の希望に満ち溢れていた ──バキバキッ 「ゆ?」 「なんのおと?」 その時突然巣の中に大きな音が響いた ゆっくり一家は喜びの抱擁を中断し、部屋の周りを見回す すると… ──バキッ! ひときわ大きな音を立てたと思うと入り口の扉を突き破って何かが巣の中に飛び込んできた 人間の腕である ゆっくりの巣を見つけた人間が、ゆっくりを捕獲しようと巣の中に手を伸ばしてきたのだ 「ゆ゙!?ゆ゙ゔゔ!!?」 「な゙に゙ごれ゙ぇえッ!!?」 巣の中に突きこまれた腕はゆっくりを求めて巣の中を激しく動く 勿論突然の侵入者に動揺したゆっくり一家は、それが何なのか理解することができない 「み゙ゃみ゙ゃぁああああっ!!」 生まれたての赤ちゃん霊夢は突然の衝撃とあまりの恐怖に泣き叫びながら盛大に失禁する 幸い穴が深かったため寸手のところで人間の手がゆっくり一家に届くことは無かった それでも一杯に差し込まれた腕はゆっくりを探してバタバタと激しく動く ゆっくり一家は壁際に固まって、その腕から必死に遠ざかる ゆっくり霊夢もゆっくり魔理沙も何が起こっているのか理解できない ただ、我等の巣が何かに強襲されているということだけは理解できた 「ごわ゙い゙よ゙お゙お゙お゙っ!!!」 「あ、あかちゃんはかくれてねっ!」 「れいむもあかちゃんもまりさがまもるよ!」 ゆっくり魔理沙は家族を庇う様に前に出て、辺りの餌やら石やらをその腕に吹きつけはじめた 「びゃああッ!!ごわいよお!!ごわいよおおっ!!」 ゆっくり赤ちゃんは恐怖した ひたすら恐怖し続けた まともな思考など働く余地が無いほど震え上がり叫んだ 危機から身を守らねば 隠れるところを探さねば そうして赤ちゃん霊夢は隠れる場所を求め 先ほどまで自分が居た母親霊夢の産道にもぐりこんだ 「ゆ゙ゆ゙っ!?あかちゃん!なにしてるのっ!?」 今まで自分がずっと居た場所、一番信頼できる安全な場所 赤ちゃん霊夢が選んだのは母親の胎内だった 「ゆぐぐ!くるしいよ…!」 出産の影響もあり、ゆっくり霊夢の膣孔の皮は伸びきっていた為そこにもぐりこむのは難しく無かった それから間も無く、ゆっくり魔理沙の善戦あってか腕の主は捕獲を諦めて巣から去っていった しかし問題はそれで済まなかった 恐怖のあまり、赤ちゃん霊夢はゆっくり霊夢の産道にもぐりこんで出てこないのである 苦しむ母霊夢などお構いなしに、赤ちゃん霊夢は恐怖でガチガチと歯を鳴らしながら奥へ、さらに奥へと進んでいく 「ん゙ぃ゙ぃ゙!ん゙ぃ゙ぃ゙!」 「あかちゃん!もうだいじょうぶだからはやくでてきてね!」 ギリギリと歯軋りをしながら苦しさと痛みに耐えるゆっくり霊夢 ゆっくり魔理沙も必死に呼びかける 再び体積が増えた苦しさに、必死にひり出そうとしても赤ちゃん霊夢は抵抗して出てこない 再び赤ちゃんを包んだ膣孔は再度ぴったりとその口を閉じてしまっており その穴からはただただぬらぬらと透明な粘液を垂らすばかりである 「赤ちゃんでてきてぇーっ!!」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の膣孔に口をつけて必死に吸い出そうとする 巣にはただただ淫猥に粘液の水溜りが広がっていくばかりであった 戻るゆっくり ~END~ 自分で書き込みした話をSSにしてみた 満足している。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1134.html
Ⅰ.タケコプター 「ぱちゅりー、これはな~に?」 「むきゅ!! これはたけこぷたーというものよ!! これをつかうと、おそらをとぶことができるのよ!!」 「ゆゆっ!! おそらをとべるの!! まりさ、おそらをとびたいよ!!」 「れいむもとびたい!!」 「わかったわ!! ちょうどふたつあるから、まりさとれいむでおそらをとんでみてね!!」 ぱちゅりーはそう言うや、まりさとれいむの頭にタケコプターを乗せてくれた。 ちなみにれいむは問題なく乗せられたが、帽子をかぶっているまりさはどこに乗せればいいか迷い、結局トンガリ帽の天辺に乗せることにした。 永沢君の帽子みたいである。 ぱちゅりーが舌でスイッチを押してあげると、プロペラが回転し、2匹が浮かび上がった。 「すご~い!! おそらをとんだよ!!」 ちなみに、まりさは帽子を被っているのに何で帽子だけ飛んで行かないのとか、重力に引かれてグニャアアァァと体が下に伸びないのとか、空気の読めないことを言ってはいけない。 そんなこと言ったら、ダメ太君やパンチラちゃんも、空中頭吊り自殺を何度敢行したか分からない。 すべては神(原作)の思し召しである。 大空を舞った2匹は、存分に空の旅を味わった。 しかも、慣れてくると自在に操れるようになり、どこにでもすんなりと飛ぶことが出来た。 高い崖の上にも行けるし、湖すれすれにも飛ぶことが出来る。 人間の畑に降りて野菜を食い荒らし、怒った人間が襲って来ても、すぐに手の届かないところに逃げることが出来る。 今の2匹には、いけない場所は何もなかった。 「まりさ!! きもちいいね!!」 「ゆ~!! とりさんは、いつもこんなけしきをみているんだね!!」 空から雄大な景色を眺め、黄昏る2匹。何とも生意気なゆっくり達だ。 しかし、のんびり空の旅も、気がつけば山に夕日が掛かり、カラスが鳴いている。 もう日暮れは、すぐそこだ。 「れいむ、そろそろもりにかえろうね!!」 「そうだね!!」 今日は存分に楽しんだ。明日もまた、大空を楽しもう。 れいむとまりさは、森への帰路についた。 あと少しで森に着くかという頃、まりさの頭上でカタカタという妙な音が鳴り響いた。 「ゆっ? なんのおと?」 まりさが上を向くも、空には雲しか掛かっていない。 れいむに聞こうとしたら、なぜかれいむはまりさより高い場所を飛んでいた。 なんでれいむはあんな所にいるんだろう? 自分たちは並列して飛んでいたはずなのに? まりさはれいむの元に行こうとしたが、なぜか制御がきかず、むしろ2匹の距離は遠くなっていった。 「まりさぁ!! なんで、したにおりていくのぉ? まだもりじゃないよぉ!!」 れいむも気になったのだろう。 高度を下げてまりさの元にやってきた。 「まりさにもわから……」 まりさの言葉は、すべてれいむに伝えられることはなかった。 言うより先に、まりさの体は地面に落ちて行ったのである。 「ゆああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――!!!!!! おちるよおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――!!!!」 訳が分からない。 何でいきなり落ちるのだろう。操作を間違ってはいないはずだ。 しかし、そんなことはこの際どうでもいい。 このまま落ちるということは、地面と激突して死ぬということだ。 「れいむうううぅぅぅ――――!!! たすけてえええぇぇぇぇぇ――――――!!!」 恐怖にかられ、まりさはれいむに助けを求める。 れいむもよく分からないが、まりさが危険な目に合っているということは理解出来た。 すぐに、まりさの元に駆けつける。 自由落下のまりさより、タケコプターのれいむのほうが早かったようで、れいむは地面に着く前にまりさの元に辿り着いた。 「まりさ、ゆっくりまっててね!! れいむがしたからもちあげるからね!!」 「ありがとう!! れいむ!!」 れいむは落下するまりさの下に体を持ってくると、全身でまりさを支えに掛った……が、 「ゆぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――!!!!!」 まりさの絶叫が、れいむのすぐ上で聞こえてきた。 しかも、絶叫と共に真っ黒な訳の分からに物が、たくさん下に落ちて行く。 それはれいむの体にも付着し、何だろうとれいむが舐めてみると、甘く美味しいものであった。 れいむはまりさの居る真上を見上げた。 しかし、どこにもまりさの姿は見当たらなかった。 「ゆっ? まりさ、どこいったの?」 今まで感じていたまりさの重さも無くなり、れいむは不思議に思った。 すると、下のほうから、微かな声が聞こえてきた。 「れい…む……なに……する………の?」 そこには、なぜか半身がボロボロになったまりさの姿があった。 皮は破け、餡子が空中でどんどん放出される。 れいむは訳が分からず、空中でまりさを見つめていた。 まりさは、地面に落ちると、ベチャッと生々しい音をたてて、餡子を弾かせた。 言うまでもないだろうが、まりさの傷はプロペラに巻き込まれたもので、れいむが真上を見るということは体全体を傾けることであり、まりさはれいむの後ろを落ちて行ったのである。 まりさが落ちた原因は、これまた説明するまでもないが、バッテリー切れである。 30年も経つんだし、そろそろリコール対象製品になることを切に願う。 Ⅱ.どこでもドア 「ぱちゅりー、これはな~に?」 「むきゅ!! これはどこでもどあというものよ!! これをくぐると、どこでもすきなところにいくことができるのよ!!」 「ゆゆっ!! どこにでもいけるの? それじゃあ、ゆっくりできるところにもいけるの?」 「もちろんいけるわ!!」 「すごいよ!! れいむ、ゆっくりできるところにいきたいよ!!」 「まりさもいきたいよ!!」 「わかったわ!! それじゃあ、どあのまえでいきたいところをさけんでね!!」 れいむとまりさはどこでもドアの前に来ると、一緒に叫んだ。 「「ゆっくりできるところにつれていってね!!!」」 れいむとまりさの言葉を受けて、ドアがゆっくりと開き出した。 ちなみに、はっきり場所を指定せず、こういう曖昧な表現を使うと、ドアがランダムで場所を選んでくれる。 そこはまだ見たこともない、ゆっくりのゆっくりによるゆっくりのための場所に違いない。 れいむはドアが開ききるのを、今か今かと待っていると、隣のまりさがドアに突撃した。 「まりさ!! まだどあが……」 「ゆっへっへ!! もうまちきれないよ!! まりさはもうなかにはいるよ!!」 思いっきり地面を蹴り、まりさは中を見ることなく、ドアの中に飛び込んで行った。 慌ててそれを追いかけるれいむ。 そこはなんと…… 「ゆぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ――――――!!!! たすけてええぇぇぇぇ―――――!!!!」 まりさは必死で助けを求める。 ドアから出ずに中を覗くと、まりさが水の中でもがいている姿が目に入った。 いや、水から湯気が出ているし、この纏わりつく熱気からするに、どうやらお湯のようだ。 まりさは、お湯の中で溺れているのだ。 「なんでえええぇぇぇぇぇ―――――!!!! ゆっぐりできるところっていっだのにいいいぃぃぃぃ―――――――!!!!」 お湯の中で、必死で暴れ狂うまりさ。 しかし、ゆっくりの体の仕組み上、泳ぐことなど物理的に不可能。 さらに、足が底に付かないほど深く、まりさに助かる手段は皆無だった。 れいむは、まりさが溶けて消えるまで、ドアのところで叫び続けているしかなかった。 「まりさ……」 ポツリとつぶやくれいむ。 どうしてこんなことになった? 自分たちはゆっくり出来る場所ってお願いしたのに。 れいむが自問自答していると、ドアの中から声がしてきた。 「親父。風呂に入る前に、浴び湯くらいしろよ!!」 「うるせえ。そんなまどろっこしいことしてられるか」 「きたねえなあ」 「はあ~~、極楽極楽。やっぱり温泉は最高だな」 「全くだ。ホントゆっくり出来るぜ」 「……………」 Ⅲ.スモールライト 「ぱちゅりー、これはな~に?」 「むきゅ!! これはすもーるらいとというものよ!! これからでるひかりをあびると、なんでもちいさくなるのよ!!」 「ゆゆっ!! なんでもちいさくなるの? それじゃあ、れいむもちいさくなれるの?」 「なれるわよ!! ものでもゆっくりでも、じゆうじざいよ!!」 「れいむ、ちいさくなりたいよ!! ちいさくなって、うまれたばっかりのあかちゃんとあそびたいよ!!」 「れいむだけずるいよ!! まりさも、ちいさくなってあかちゃんとあそぶよ!!」 「わかったわ!! じゃあ、そこにならんでね!!」 ぱちゅりーはライトを地面に置くと、射光口をれいむとまりさのほうに向け、スイッチを押した。 光線を浴びて、2匹の体が徐々に小さくなっていく。 「ゆゆっ!! ほんとうにちいさくなったよ!!」 「おかあしゃあたちも、れいみゅやまりしゃたちと、おんなじおおきちゃになっちゃね!!」 赤ゆっくりと同じ大きさになった2匹。 赤ちゃんの時のように、周りの物すべてが大きく見える風景に初めは少しばかり恐怖を感じるも、次第に慣れるにつれ、それも無くなっていった。 親2匹が小さくなったのを見て、傍にいた赤ゆっくり達も大喜びだ。 その後、れいむとまりさは、赤ゆっくり達と大いに遊びまくった。 赤ちゃんの大きさでしか入れない場所に入ったり、同じ大きさの頬をスリスリ擦り合わせたり、最高の時間を過ごした。 半日もたった頃だろうか? 一家は、空腹を感じた。 「おかあしゃん!! れいみゅ、おなかがちゅいたよ!!」 「おかあさんもだよ!! そろそろ、ごはんにしようね!! おかあさんたちがごはんをとってくるからね!!」 れいむとまりさは、赤ゆっくりを巣の中に置いて、2匹で狩りに出かけた。 お腹もグーグーだし、今日は近場で狩りをしよう。 2匹は、巣のそばにある、狩りの定番スポットに足を運ぶ……が、 「まだつかないのおおおぉぉぉぉぉ―――――――!!!!!」 「づがれだよおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ―――――――――――!!!!!」 2匹はまだ狩り場に辿り着けないでいた。 本来の姿なら、10分程度で辿りつける場所だ。 しかし、小さくなったことでジャンプ力は低下し、普段なら軽く飛び越せるような場所も、巨壁の如く2匹の前に立ちふさがった。 しかも、歩幅も狭いので、どんなに進もうとなかなか到達しない。 れいむとまりさは挫けそうになった。 しかし、可愛い赤ちゃんのためにもここで諦めるわけにはいかないと、互いに励まし合って狩り場に赴いた。 やっとの思いで2匹は狩り場に着くも、またも試練が襲いかかる。 普段なら簡単に取れる物が、大きくて取ることが出来ないのだ。 木の根元に生えたキノコはとてもでないが持つことは出来ないし、花の上を飛んでいる蝶になど届きもしない。 仕方がなく、2匹はキノコや木の実を口で千切り、持てる分だけ確保し巣に急いだ。 帰りは、口や帽子の中に含んだ食料もあって、行きの倍の時間がかかった。 「あかちゃんたち!! ごはんをもってきたよ!!」 「おちょいよ!! おかあしゃんたち、ゆっくちししゅぎだよ!!」 「ごめんね!! いまごはんをあげるからね!!」 れいむは取った食料を口から吐き、まりさは帽子の中から取り出した。 「ゆっくりいっぱいたべてね!!」 2匹は満面の笑みで赤ゆっくり達の前に差し出す。 しかし、赤ゆっくり達は食料に食いつこうとしない。 「どうしたの? おなかがすいてないの?」 れいむは、気になって赤ゆっくりたちに聞いた。 すると、考えもしなかった答えが返ってきた。 「こんなちゅくないんじゃ、ゆっくちできにゃいよ!!」 れいむとまりさは、それを聞いてよく意味が分からなかった。 自分たちは、いつも通り口いっぱい帽子いっぱいに食料を詰め込んできた。 普段ならそれだけ持ってくれば、赤ゆっくり達が食べきれなくて残すくらいなのだ。 しかし、確かに見てみれば、目の前に置かれた食料は、赤ゆっくり1匹分の食糧にも満たない量だった。 狩り場に行く時にしても、巣に帰る時にしても、そのことに思いつかないあたりが、実に餡子脳らしい。 「おかあしゃんたちだけで、ゆっくちたべてきちゃんでしょ!!」 「ち、ちがうよ!! だって、これだけしかもってこれなくて……」 「うしょだ!! ほんちょうは、まりしゃたちにないしょで、ゆっくちおいちいもにょをたべてきたんだ!!」 「ちがうってば!! これでも、いっしょうけんめいもってきたんだよ!!」 「うしょをちゅくおかあしゃんなんて、れいみゅのおかあしゃんじゃないよ!!」 「しょうだよ!! うしょをちゅくおかあしゃんは、ゆっくちちね!!」 赤ゆっくり達は、2匹に襲いかかった。 親達は、時機に赤ゆっくり達も分かるだろうと、逃げなかった。 赤ゆっくり達がどんなに力を入れても、自分たちに敵わないことを理解していたからだ。 しかし、それはあくまで自分たちが、元の大きさでいる場合に限る。 2匹の大きさは、今や赤ゆっくり達と何ら変わらないのだ。 それが、何匹も一斉に襲い掛かってきたらどうなるか。 「ゆぎゃあああぁぁぁぁぁぁ――――――!!!!! なんでえええぇぇぇぇぇぇ―――――――!!!!」 憐れ、親2匹は赤ゆっくり達の下敷きとなってこの世を去った。 親が居なくなったことで、赤ゆっくり達も餌を取ることが出来ず、すぐに親の後を追う結果となった。 元の大きさに戻るということを思いつかない所が、ゆっくりのゆっくりたる所以である。 まあ、ビッグライトが無いから、元に戻れないんだけどね(笑)。 ※このスモールライトは、劇場版・宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)のスモールライトとは異なり、ビックライトと合わさっていません。 Ⅳ.ビッグライト 「ぱちゅりー、これはな~に?」 「むきゅ!! これは、びっくらいとというものよ!! これからでるひかりをあびると、なんでもおおきくなるのよ!!」 「ゆゆっ!! なんでもおおきくなるの? それじゃあ、れいむもおおきくなれるの?」 「なれるわよ!! ものでもゆっくりでも、じゆうじざいよ!!」 「まりさ、おおきくなりたいよ!! おおきくなって、どすまりさになるよ!!」 「まりさばっかりずるいよ!! れいむも、おおきくなりたいよ!!」 「わかったわ!! じゃあ、そこにならんでね!!」 ぱちゅりーはライトを地面に置くと、射光口をれいむとまりさのほうに向け、スイッチを押した。 光線を浴びて、2匹の体が徐々に大きくなっていく。 「ゆゆっ!! ほんとうにおおきくなったよ!!」 「これで、まりさもどすまりさになったよ!!」 「まりさ!! どすになったんだから、にんげんのところにいこうよ!!」 「ゆっ!! それはめいあんだよ!! どすまりさになったまりさに、にんげんたちはおそれおののいて、しょくりょうをたくさんくれるよ!!」 2匹は嬉しそうに、森の木々を倒しながら、人間の里に向かった。 「どすまりさがきたよ!! ゆっくりはやく、たべものをもってきてね!!」 人間の里に着いた2匹は、手近にいた人間を捕まえ要求した。 声をかけられた男は、とても驚いた。 この付近の森には野生のゆっくりはいる物の、ドス級のゆっくりは今まで確認されなかった。 そんなドス級が、一度に2匹も現れたとなれば、男が慌てるのも無理はない。 「お、俺の一存では決められない。今、村長を呼んでくるから待っててくれ」 「ゆっくりりかいしたよ!! えらいひとをつれてきてね!!」 男は2匹から逃げるように離れていく。 まりさとれいむは、里の入口のところで、村長が来るのを待っていた。 しばらくして、男が老人と他数名を引き連れ、2匹の元にやってきた。 ちなみに、2匹の位置からは見えない場所で、里の若い連中が弓や鍬や竹やりを手に隠れている。 無論、すぐに飛び出すような馬鹿なことをする気はない。 ドスと言えば、ビームを吐いたり透明になったりと、普通の人間では敵わないような力を持っている。 それが2匹もいるのだ。 全員で掛かれば負けはしないだろうが、人間側も深手を負うことは確実だ。 最悪の場合、共倒れにもなりかねない。 穏便に済ませられるなら、それに越したことはない。 「わ、わしがこの村の村長じゃ。それで、いったい何の用で来なすったのかな?」 「まりさたちは、ごはんをもらいにきたんだよ!! ゆっくりごはんをもってきてね!!」 「ご、ごはん? 協定を結びに来たのではないのか?」 いきなり食料を要求する2匹に、村長たちは不審に思った。 隣の里では、ドス級が来て不可侵条約を結ばされたと言っていた。 てっきり、このドス達も条約や協定を結ぶつもりだと思っていたのだ。 「きょうてい? そんなのほしくないよ!! まりさたちは、ごはんがほしいんだよ!!」 「食料か……して、どのくらいの食料が欲しいんじゃ?」 協定の話は出ない物の、ドスの必殺技などで脅されて不平等条約を結ばされるくらいなら、多少の食料を持っていかれたほうが、どんなにマシか分からない。 村長は、多少の出費は我慢して、まりさ達に食料を与える覚悟でいた。 しかし、まりさ達はと言うと…… 「ぜんぶだよ!! ここにあるしょくりょうは、ぜんぶまりさとれいむのものだよ!!」 「な、なんじゃと!!」 これには、村長はおろか、周りの連中も唖然とした。 まさか食料すべてを要求されるとは、一体誰が想像するだろう。 ドス級は、ゆっくりの中では比較的知能が高い。 人間一人より強くても、数人の人間に一斉に攻撃されては敵わないことも、重々承知している。 そのため、引き際を見誤るようなことはしない。 なのに目の前の2匹と言ったら、自信満々で人間達を見下ろしている。 この村の人間すべてをを相手にしても、勝てるだけの力を持っているということなのだろうか? 「ぜ、ぜんぶは、いくらなんでも無茶というもの!! せめて1/10くらいなら、かき集めればなんとかなる。それで我慢してくれ」 「だめだよ!! まりさとれいむは、おなかがすいているんだよ!! ぜんぶよこさないなら、みんなやっつけちゃうよ!!」 「む、むりじゃ!! いくらなんでも、ぜんぶなんて……」 「それじゃあ、まずおじいさんからしんでね!! いくよ!! どすぱーくをくらえ!!」 まりさは大口を開けて、スパークを放つ態勢に入る。 村長や周りの男たちは、逃げられないと体を固めた。 しかし、一向にスパークは発射されなかった。 村長や男たちは、チラリと2匹を見上げる。 そこには、未だ大口を開けたまりさの姿があった。 「まりさ!! はやくどすぱーくをうってね!!」 じれったく思ったのか、隣のれいむが早く撃てと言ってくる。 しかし、まりさは大口を閉ざすと、れいむのほうを振り向いた。 「れいむ!! どすぱーくって、どうやってうつの?」 「ゆっ? れいむもわからないよ!!」 まりさは口を開けて、力みさえすれば、ドスパークが放てると考えていた。 事実、以前まりさが見たドスまりさは、力みながらスパークを放っていたのだ。 なかなか出ないスパークに、まりさ自身が戸惑いを感じている。 しかし、この好機を逃さなかったのは、里の人間たちだった。 2匹のやり取りを見て、こいつらはただデカイだけのゆっくりで、ドスなどではないと分かるや、人間たちの行動は早かった。 「今じゃ!! 攻撃を開始しろぉ!!」 村長の言葉を皮切りに、陰で待機していた武器をもった人間たちが、一斉に飛び出してきた。 相手がドスでないなら、所詮こいつらは大きいだけの饅頭に過ぎない。 溜まりに堪った鬱憤を吐きだすかの如く、2匹に襲いかかった。 まず、竹やりを持った人間が、2匹の目を潰しに掛る。 「ゆぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――!!!」 深々と2匹の目に刺さり、まりさとれいむは、痛さと何も見えない恐怖に暴れ狂う。 さすがに重量が重量なので、近寄って巻き込まれれば、怪我では済まない。 そこで、人間たちは遠くから弓を構えると、2匹に向かって次々放った。 的がでかいので、実に当りやすい。 「ゆぎいいいぃぃぃぃぃ―――――――!!!! いだいいだいいだいいだい…………!!!!」 矢が突き刺さり、余りの痛さに我を忘れる2匹。 「もうおうじにがえるうううぅぅぅぅぅ―――――――!!!!」 人間の強さを知った2匹は、これ以上この場にいたら命はないと、森にかえろうとした。 とは言え、そこは目の見えない2匹だ。 どの方向に行けばいいのか分からず、とにかく矢の飛んでこない方向に逃げていく。 しかし、場所が悪かった。 この里の入口の前には、大きな川が流れていた。 里は川に橋をかけて、そこからしか入れないようにすることで、妖怪や野生生物から自衛していたのだ。 目の見えない2匹は、橋の上まで来ることは出来た物の、運悪くそこから橋の下に落下してしまう。 「ゆあああぁぁぁぁぁ――――――!!!! みずだよおおおぉぉぉぉぉ―――――!!!!」 「なんでこんなところに、みずがあるのおおおぉぉぉぉ―――――――!!!!」 2匹は何とか川の中から抜け出そうともがくが、底がぬかるみ足場が安定しないことと、水が負荷となって重く圧し掛かり、思うように抜け出せない。 更には、人間たちがそのまま川に沈めようと、武器や農具で2匹が出れないようにめった打ちしてくる。 「いだいよおおぉぉぉぉぉ――――――!!! ゆっぐりやめでえええぇぇぇぇぇ――――――!!!!」 あまりの痛さに泣き叫ぶも、一度里を襲ったゆっくりを人間たちが許すはずもなく、哀れ2匹は川の中に溶けて行った。 大きくても、所詮ゆっくりはゆっくりである。 ~fin~ ぱちゅりーに突っ込んじゃ駄目だよww 今まで書いたもの ゆっくりいじめ系435 とかいは(笑)ありす ゆっくりいじめ系452 表札 ゆっくりいじめ系478 ゆっくりいじり(視姦) ゆっくりいじめ系551 チェンジリング前 ゆっくりいじめ系552 チェンジリング中 ゆっくりいじめ系614 チェンジリング後① ゆっくりいじめ系615 チェンジリング後② ゆっくりいじめ系657 いい夢みれただろ?前編 ゆっくりいじめ系658 いい夢みれただろ?後編 ゆっくりいじめ系712 ゆっくりですれ違った男女の悲しい愛の物語 ゆっくりいじめ系744 風船Ⅰ ゆっくりいじめ系848 風船Ⅱ ゆっくりいじめ系849 風船Ⅲ カルガモとゆっくり 前編 カルガモとゆっくり 後編 カルガモとゆっくり おまけ ゆっくりにドラえもんの道具を与えてみた このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2677.html
※注:ゆっくりについて俺設定が入ってます!注意してください。 「はーいみんなー自分の席についてねー」 男がパンパンと手を叩くと騒がしかった子供達は自分のの席に座っていく。 ここはとある小学校、男はそこで教師をやっている。 「今日の理科の授業は実験を行います。みんな予習はしてきたかな?それでは実験室に移動しましょう。」 白衣の服に着替えている男はそう言った。 「ゆっくりと理科実験」 そんなこんなで実験室に移動してきた先生と生徒。 実験室には人の骨の標本や化石、ゆっくりのホルマリン漬けなどが飾られている。 「みんな席に着いたかな?今回は【電流の実験】を行います。復習しますのでP78を開いて下さい。」 今回の実験の目的、どんな道具を用いるのか、その実験をするとどんな結果になるか、などの説明をする。 予習してくれば理解できるはずだが、まあそれを全員に期待するのは酷だろう。 そのため私は実験をする際にはこうして説明をする。 やはり実験内容をプロセスから結果を含めて理解して欲しいからね。 おっと、自己紹介するのを忘れていたね。私はこの小学校で教師をやっている男だ。 特に専門としている科目は無く、国語から社会など何でも教えている。 中でも私は理科が一番好きだ。子供の頃から昆虫の観察などが好きだったからね。 それに今はあのゆっくりという生物もあるし・・・ゲフンゲフン話が長くなってしまったね。 それでは授業の風景をゆっくり見ていってもらおうか。 「・・・ここまでが今回の実験の範囲になります、それでは道具を前に取りにきて実験を始めて下さい。 ちゃんとスケッチと測定した結果をメモしておいてねー」 その言葉と同時に子供達が「わー」と声をあげ、必要な道具を集めていく。 豆電球にワニバサミのクリップに電池・・・そしてゆっくりである。 ゆっくり達は透明な箱に入れられている。その中でゆぅゆぅと寝息を立てながら寝ている。 サイズは大きいものから小さいのまで色々、種類はゆっくりれいむとゆっくりまりさである。 「各班ゆっくりは二つずつ持っていってねー。あ、種類は気にしなくて良いから。」 そう言われて我先にと言わんばかりにゆっくりを持っていく。 こら、そこ箱を叩くんじゃない。ウザイのが起きてしまうぞ。 「・・・ゆ!、ゆっくりしていってね!!」 「ゆ!?ゆっくりしていってね!!!」 あ~あ起きてしまったようだ。 「ゆゆ!?ここはなんだかゆっくりできないよ!れいむをはやくだしてね! 「ゆ~!ここはぜんぜんゆっくりできないよ、まりさたちをおうちにちゃんとかえしてね!! 起きたと思えば早速これだ。全く饅頭の分際で何をいってるんだ。 しかも相手はある意味大人より残酷な子供にだ。 道端であったら即潰されるか、いじりたおして殺されるであろうに。 しかし今のこいつらは実験に使うただの道具である。そのため私も子供達も無視して準備を進めていく。 「おじさんきこえないの?ばかなの?わかったらさっさとあやまってここからだしてね!」 「おなかすいたよ。とっととごはんをもってきてね!もってこないばかはゆっくりしね!」 はっはっはこやつらめ。 危うく私のギャラクティカマグナムが炸裂してしまうところではないか。 だが私も教師の端くれ、生徒の前でそんな姿を見せるわけにはいかないので我慢我慢。 ちなみにこのゆっくり達は加工所から購入したものだ。 ゆれいむとゆまりさはその入手のしやすさから割と安価で購入できる。 他にも種類はあるがありすは直ぐに発情して使い物にならないし、ゆちゅりーに至っては病弱すぎる。 だがゆちゅりーはゆっくりの中では比較的頭も良いので、加工所特性の餡子が凝縮されたゆちゅりーは この実験のような時に助手として使う学校もあるそうだ。 ゆっくりも使いようによって便利なものにもなるみたいだな。 「ゆー!もうれいむおこったよ!!ゆっくりしんでいってね!!!!」 「そうだよ!ゆっくりさせてくれないじじいはゆっくりしんでいってね!!!」 まあ最もこいつらは特に使い物にならない種類だがな それと私をじじいと呼ぶな、まだおじさんの年齢だぞ。 「先生準備ができました。」 「お、そうか。どれどれ。」 そう言って一つの班の生徒のところに行く。 ふむ、最初は電池を並列に繋いだみたいだな。+-は間違ってなさそうだな。 豆電球も・・・大丈夫そうだな。 「うん、大丈夫だよ。それじゃあスイッチを入れてごらん。」 生徒が私の指示に従いスイッチを入れる。 すると電球がぴかっと光る。そこまで激しくはない光だが、電球は光りを放っている。 「ゆ!なんかひかったよ、まりさ。」 「ゆ~きれいだねれいむ~」 などどこの饅頭たちは暢気な事を言っている。 自分達もあとで繋がれるという事も知らずに。 私は生徒にノートに取るように言い、次の実験に移るように指示を出す。 「ゆゆ~♪こんどはもっときれいにひかってるよ~♪」 「ゆゆ!とかいはのありすにいわせるとこういうの’ろまんちっく’っていうらしいよ」 「ゆ!’ろまんちっく’っていいひびきだね。まりさ!おうたでもうたおうよ!!」 「いいねれいむ、うたおうか!!!」 「「ゆぅ~ゆぅ~ゆゆーゆ~ゆーゆぅゆぅゆゆ~♪」」 うざい 果てしなくうざい。これには生徒もイライラし始めてきているようだ。 ちなみに今やっているのは直列に電池を繋ぐという実験で、並列の時より電球は明るく光るようになる。 何故かはここでは割愛させてもらう。 この班のゆっくりに触発されてか、他の班のゆっくりまでゆーゆー歌い始めてきている。 ふむ、これはいけませんね。ここは私自ら実験の実演を行いましょうか。 「はい、みんなここの班に集まってきて~」 ゆっくりとは違って私のいう事を良く聞いてくれる可愛い生徒達が集まってくる。 うむ、私はこんな生徒たちに囲まれて幸せです! 「ゆ、ひとがたくさんあつまってきたよ?」 「きっとわたしたちがかわいいからだぜ」 無視することにする。 「じゃあ今度は銅線じゃなくても電流が流れるのを見てみたいと思います。 ニンゲンにも電気は流れるのは教わったよね?それをゆっくりを使って観察したいと思います。」 ひょいと箱の中かられいむ持ち上げる。 「ゆゆ!?れいむおそらをとんでるみたい!」 「ゆ!まりさもとびたいぜ、おじさんはやくはやく。」 あー床に叩き付けたい。呼び方がおじさんになってるのは媚びてるつもりなのだろうか? まあこれから床に叩きつけるよりおもしろいのが見れるのだが。 私はれいむを机に置く。もっとおそらとびたいという抗議も無視する。 そして私は バチンッ 「ゆぅ”!?」 ゆれいむの右頬にクリップを止める。ちなみにクリップはギザギザしているタイプだぞ♪ 「・・・い”だいい”いいぃ”ぃぃぃいい”い”いい!!!!!!」 「れいむー!?おじさんれいむになにするの!ゆっくりやめてね!」 バチンッ 今度は左頬にクリップを止める。 「ゆ”ううう”う”ぅぅはなじでえ”え”え”ぇぇぇぇ」 「おじさんばかなの?まりさのこえきこえないの?さっさとれいむをはなしてあげてね」 「ゆ”っぐりできないいいぃぃぃぃ」 さて準備は整ったかな。まずは並列繋ぎからやってみるか。 電池を繋ぎスイッチを入れる。 「ゆ?ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”」 「れ、れいむううううううううううううう?」 「はい、みんなーこれが並列繋ぎだよーゆっくりにも電流が流れてるのわかるよねー」 そう言って生徒達を見渡す。お、ちゃんとスケッチしてるな、感心感心。 「ゆ”ゆ”ゆっ”ゆ”ゆ”ゆっ”ゆ”ゆ”ゆ”ゆ”♪」 イカンイカン、発情して来てるな。 子供達にも悪影響を与えそうなのでここらへんでスイッチを切る。 「ゆゆ?どおしてやめちゃうのおおおおおおおおおお!!!すっきりじだいいいいいいい!」 「はいみんなーこの時ゆっくりの事は無視して次の実験に進んでくださいねー」 一応釘を刺しておく。セクハラで懲戒解雇なんてされたくないしな。 今の親御さんたちは厳しいし。 そう思いつつ私は配線を直列に変える。 「ずっぎりざぜでよお”お”お”お”お”お”お”お?ゆびゃああああああああああああああ!!!!??」 うむ、成功だ。といっても電池を繋ぎ直すなんて小学生でもできるわけだしな。 ここ小学校だし。 「ゆ~れいむきれいだよ~♪」 さすが餡子脳。さっき必死に訴えてた癖にもう忘れている。 というかあれって綺麗に見えるのか・・・? 青白く発光してるゆっくりが白目向きながらビクンビクン痙攣してるのって。 「ま、ま”りざあ”あ”あ”あ”だずげ、ゆぐ!?ゆぐぅぅぅぅぅううううう!!!」 「ゆっ?おじさんれいむがくるしんでるよ、はやくたすけてあげてね!」 自分で助けようとは考えないのか。 ゆまりさはゆっくりの中でも一番タチが悪いという風に聞くしな。 そんなゆまりさを箱から持ち上げ机に置いてあげる。 「そんなに助けてあげたいなら自分で助けに行けば良いじゃないですか?」 「ゆ!まりさはあんなのにさわりたくないぜ。だからおじさんがさっさとたすけるんだぜ。」 早速同属を見捨てやがったのかこのクソ饅頭。 しかも触りたくないのか、確かに妙に狡賢いのだなまりさという種類は。 ふ、そんな甘いこと言ってられるのも今のうちだけだがな。 「みんな直列と並列の繋ぎ方は分かったね?ではゆっくり二匹を別々に繋いでみて観察しましょう。」 「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」 「「「「「「「「「ゆっぐりいいいいいぃぃぃぃぃ!?!?!?!?」」」」」」」」」」 うむうむ、良い生徒達だ。 それと同時に今の惨状を見ていた他のゆっくり達までもが悲鳴が上がる。 授業妨害は先生許しませんぞ。 「おじさん!まりさたちはまだなんにもわるいことしてないよ?どうしてこんなひどいことするの?」 「んー?君達は前は加工所にいたんだよ?それを私達が買い取ったのさ。だから君達は私たちの物だ。」 「ゆ!そんなことしらないよ!!まりさはまりさのものだよ。おじさんはなんにもしらないんだね!!!」 うーん餡子脳じゃもう覚えてないのかあ、調教される前の健康なゆっくりを買い取ったせいかな? それとこいつ今「まだ」って言わなかったか? 「おじさんじゃはなしにならないよ!ここからはやくでてい【バチンッ】っゆ?い、いだだだあああああいいいい」 「先生?こんな感じで良いですか?」 「うんうんOKOK。それじゃあ反対側にも付けてあげようか」 反対のほうにもクリップを付ける様に指示を出す。 バチンッ 「ゆううううううぅぅぅぅ!!!どぼじでごんなひどいことするのおおおぉぉぉぉぉぉ!?」 「さっき言ったでしょう?先生は人の話を聞かないゆっくりは大嫌いです。」 「ゆ”っぐりしたい”い”い”よお”お”お”お”お”お”お”お”」 「他の班のみんなもちゃんと実験を進めて下さいねー」 「「「「「はーい」」」」」 うんうん、やはり少しの知能と人語を喋るゆっくりと人は全然違いますね。 昨今は色々な生徒がいて大変みたいですが。 ふむ、各々の班が着々と実験を進めていますね。 逃げようとしたゆっくりやれいむを差し出して助けを懇願するまりさもいたようですが、大丈夫そうですね。 今回の実験も問題なく「ゆゆゆゆううううびゃああああああがががっがががががあsdfghjkl」 前言撤回ですね。 ゆっくりでもあんな大声を出すのは珍しいですね。 少し見に行きましょうか。 「どうしました?」 「あ、先生ーたかしくんがー」 「へっへーん!先生見てよこれ!!」 「うわあ・・・」 そこには電池十本を直列繋ぎしている配線にれいむが繋がれていた。 当のれいむはところどころ黒ずみで絶叫したまんまの顔で目と口から煙を出している。 「先生すごいでしょ!特にこのゆっくりの顔が・・・あいた!」 私はたかし君の頭を軽く小突く。 いくら世間が過敏になっているとはこれくらいは大丈夫だろう。 「たかし君?いつ先生がこんな実験をしろと言いました?」 「いや、えっと・・・あはは。」 「ふう、今回は怪我が無かったものの君のやった事は危ないことです。それとゆっくりも学校では消耗品なので無駄遣いは止めて下さい。」 「ご、ごめんなさい先生。」 「わかれば、宜しい。」 ふふ、飴と鞭は使いようです。 とは言ってもゆっくりは飴と鞭があってもダメですが・・・ 「先生・・・電池が。」 「ん?ああ、これはダメですね。液漏れしていますね。」 何本か液漏れしてしまっている。 まああんな無茶な繋げ方をすれば・・・あ、そこのれいむはゴミ箱に入れといて下さい。 確か代わりの電池がまだ前の壇上の方にあったはず・・・あれおかしいな? 「先生ーひだりひだりー。」 「ん?ああ・・・」 生徒に言われて左を向いてみると そこにはやけに膨らんで口元をモガモガしているまりさがいた。 「ゆっふっふこへせぇがふぁいとおふぃはんふぁちこはるんだよね」 通訳すると「ゆっへっへこれがないとおじさんたちはこまるんだよねか」か うーむ電池を奪うとはゆまりさはやはり少し知能があるそうだな。 問題があるとすれば口の中に入れたことかな。 ゆっくりはなんでもかんでも口に入れる事しか思いつかないか。 まあ顔しか無いしな。 「こふぇをくぁえしておしくぁったら、ゆっふりまりふぁたちをふぁなしてごふぁんをもってきてぬぇ!」 「断る。」 「ゆふぅ!?」 電池を返して欲しかったらゆっくり達を解放してご飯を持ってこいか。 ふうー・・・やれやれだぜ。 こんな時のために秘密兵器があるのだ! 「どうして?これがないとこまるんでしょ?おじさんたちがこれがほしいならさっさとまりさのいうこときいてね!」 もう通訳するのも生温いわ! いでよ!我が校の秘密兵器・・・ 「ゆっくりしていってくださいね!」 「ゆゆ!?」 じゃじゃーんゆっくりいくさんだ! 希少種なだけに手に入れるのも苦労したんだよこれは・・・ 「ゆっ・・・ゆっ、ゆははははは!おじさんなにそれ?まりさたちとおなじゆっくりがひみつへいきなの? にんげんのくせにあたまわるいんだね!ゆははははははは!!」 貴様の様な駄ゆっくりといくさんを一緒にするでない! 説明しよう! ゆっくりいくさんとは最近発見されたゆっくりの新種である。 モデルとなった人物が礼儀正しいせいか、ゆっくりなのに最初から敬語だ! そして何といくさんはゆっくりの中でも珍しく、いや生物としても珍しく電撃を放出する事が可能なのである。 (※つまりブラ○カである) その特性のおかげで昆虫から蛇などを簡単に捕獲することができ、食料にも困らないのだ! そのため人里には滅多に下りて来ることもなく、命の危険にも晒されないので繁殖することも少なく 捕獲されることは滅多に無い。 では何故そのいくさんを私が所有しているのかというと・・・ゲフンゲフン また話が長くなってしまうところだった、私の悪い癖だな。 「ゆ!せんせいきょうはなんのようですか!?」 「ああ、ちょっとそこにいてくれるかな。」 「ゆっくりりかいしました!」 「ゆははは、りかいしましたって、ゆっくりなのににんげんのいうこときいてるよ!ばがだね!」 私はまりさの声を無視して配線を行う。 いだっ!と声を出し、ぷくーと膨れて涙目のいくさんに謝りつつ、まりさもクリップで挟む。 「ゆ!まりさにこんなのがきくとおもってるの?まりさはほかのゆっくりとはちがうんだよ!わかったらさっさとこうさんしてね!!」 えーとゴム手袋はどこだっけな・・・お、あったあった これを手にはめてと・・・ 「おじさんまりさのこえがきこえないの?だとしたらもうじじいだね!じじいはゆっくりしないでさっさとしんでね」 よしサイズは合ってるな。 そういえばゆっくりは何でじじいなんて言葉を知ってるんだ? じじいなんてほど年取らないだろうに。 など考えつつ私はいくさんの頬を強めに抓る。 「いだいっ!?」 「きこえないのじじい?さっさと・・・ゆっぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!?!?!?」 抓った瞬間いくさんから大きな電気が放出される。 そして放出された電気はまりさに向かうわけだ。 「いきなりなにするんですかせんせい!おこりますよ!!」 「はは、ごめんごめん。」 いきなり抓った事にどうやら本気で怒ってるみたいだ。 でもその抓った相手に電気が流れてないのに気付いてないのも ゆっくりであると言うべきか。 「ゆ”ゆ”な、なんで・・・」 まりさは今何が起こったのか理解できていないらしい そりゃあ電気を流すゆっくりなんて信じられないだろな。 私はいくさんに顔を向ける。 「ごめんよいくさん。あとで代わりに’ふぃーばー’させてあげるから」 「ふ、ふぃ、ふぃーばー!?!?!?」 「うん、思う存分’ふぃーばー’させてあげるよ。」 「ふぃーばー・・・」 うっとりした表情をするいくさん。 これが他のゆっくり種と違ったゆっくりいくさんの特性の一つ ゆっくりするのが目的ではなく、ふぃーばーするのを史上の幸福としているのだ! そのふぃーばーするというのどんな時なのかがまだまだ研究中なのだが・・・ 「せんせい、いくはふぃーばーするためならがんばるよ!」 「はは、そうかそうか。じゃあ私が抓ったらさっきのように電気を出してくれないかな?さっきみたいに強く抓らないから。」 「はやくりかいしたよ!」 本人の了承も得たことだし、早速抓らせてもらいますか。 「ゆ!?ゆびゃああああああああああ!!!!」 離す 「ゆ?ゆうううぅぅぅぅ・・・」 抓る 「ゆっぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!」 離す 「ゆぅぅぅ、おじさん・・・まりさが」 抓る 「ゆ!?ゆびやああああぁぁぁぁああああああああ!!!!!」 離す 「ゆぐぅ、あ、あやま」 抓る 「ぐぎゃあ”あ”あ”あ”お”お”お”お”お”!!!」 離す これを延々と繰り返す。 徐々にまりさが焦げてきて焼き饅頭の良いニオイが出てくる。 帽子も金色の髪の毛ももはや消し炭化している。 「お、おじさん・・・まりさがわるかったよ・・・あやまるよ、ちゃんとこれもかえすよ・・・だからゆっくりさせて・・・」 「いくさん次は最大出力でお願いね♪」 「ゆっくりりかいしたよ!!!」 「ゆ”っぐり”り”がい”しないでえ”え”え”え”え”え”え”え”ゆっぐり”ざぜでえ”え”え”え”え”え”!!!!」 抓る 「ゆぐごあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あああ%あ#ぎ$ゆ&」 ふっ、饅頭が完璧に炭になったな。 ん、生徒達がこちらを変な目で見ているな。 イカンイカン少し自分に酔ってしまっていたようだ。 教職者としての勤めを果たさなければ。 「みんなー、ゆっくりいくさんはこのように危険なゆっくりなので、道端であってもいじめないで上げてください 。見つけた場合は先生が保護しますので知らせて下さい。」 「「「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」 うんうん、良い声だ。 ―――――――――――――― 授業の時間も終わりに近づいてきて、片付けに入っている。 勿論ゆっくりもだ。 どのゆっくりも意気消沈しており、目に光が無くぶつぶつ言ってるゆっくりから ヘラヘラ笑っているゆっくりもいる。 「先生このゆっくり達どうすれば良いですか?」 「ああ、そこに重ねて置いて下さい。」 「?わかりました。」 ゆっくりがドンドン重ねられて山になる。 これだけ重ねれば十分かな。 「先生これから何をするんですか?」 「まあ見ててごらんよ。」 「?」 ゆっくりの山に上からライトを点け照らしてみる。 「さあいくさん、存分にフィーバーして下さい。」 「ふぃぃぃぃばぁぁぁぁぁぁ♪」 いくさんがゆっくりの山の頂上を目指して上っていく。 「いたい!」 「ゆっくりさせてえええ」 「むぎゅ!」 「おうちかえるううううう」 「これはゆめなの、れいむはゆめをみてるの・・・」 いくさんが頂上に到達した。 さあいよいよ始まるぞ。 いくさんが力を溜めて、その溜めた勢いでジャンプして・・・ 「~~~~さたでーないとふぃーばーーーーーーー!!!!!」 「「「「「ゆぎょあ”あ”あ”あ”あ”あ””あ”あ”あ”あ”」」」」」 おおバチバチ光ってる。花火みたいだな た~まや~と頭の中で言ってみる。 「すっきりー!」 いくさんもすっきりできて良かった良かった。 あとはこの出来上がった焼き饅頭をと パクッ 上手い!味と香り共に申し分ない。これは加工所に一つ持って行ってみるべきだな。 しかしこの焼き饅頭の山全て持って帰るわけにも行かないしな。 「みんな~おいしい焼き饅頭ができたよ~持って行って良いよー。あ、お父さんお母さんには内緒にしてね。」 こうして私の授業は過ぎていく。 次の実験は何をしようかな? 確か電気を流すと銅が熱を持つのは教えたかな。 よし、次は熱を持った銅線でスライスしよう! そんな事を考えつつ私は帰路に付いたのだった。 あとがきなるもの お初です。SSを書くのはこれが初になります。 さてさて今回の理科実験ですが、作者の小学校時代にやった実験の記憶に 基づき書いてるので、世代によって色々違ってくると思います。 そして最後に銅線で熱もった物の実験について語っていますが これも実験で発泡スチロールをスライスしたりもやりました。 本当は電流もスライスするのも子ゆっくりも用いてやりたかったのですが・・・ 力尽きましたorz 遅筆もよいところです。職人さん達にはただ脱帽します。 あとゆっくりいくさんのネタは24スレの 614氏から拝借しました。 このSSに感想を付ける