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※俺設定注意 突然だが俺はゆっくり農場などというものを運営している。 ゆっくりによる管理・運営された農場。偶に人の手は借りるものの、今までに数多くの野菜が生産されてきた。 農場は二つに分けられている。 ひとつは屋内農園。躾を施された所謂善良なゆっくりがゆうか達の指導の下、日夜農作物の世話を頑張っている。 もうひとつは野外農場。こちらは所謂ゲスや無能なゆっくり共によって運営されている。 勿論、こいつらが普通に野菜を栽培できるなんてことはない。そこで考え出されたのが奴隷農耕法だ。 必要な時に必要な仕事を果たし、それが出来なければ仕置きを受ける。当然脱走や野菜のつまみ食いなどは万死に値する。 れいむもそんな屑ゆっくりの一匹だった。 たまたまこいつの属していた班の中のゆっくりが優秀な個体で、その褒美に野菜を取らせたことがあった。 だが何を勘違いしたかこいつは、それからというもの勝手に作物を貪りだしたのだ。 先述のように、つまみ食いは万死に値する。 こいつには相応しい方法で死んでもらう。 丁度スペースも開いていたことだし、今回はアレがいいだろう。 函の中 れいむは怒っていた。 ここに捕らえられてからというもの、れいむは全く幸せではなかった。 日も昇らないうちに叩き起こされ、馬車馬のように働かされた。少しでも休もうものなら鞭が、 逃げ出そうものならふらんが容赦なく飛んでくる。そして夜は泥のように眠る。 全く冗談ではなかった。こんな生活は欠片もゆっくりしていない。 勝手に生えるはずのお野菜さんの世話なんて何でしなければならないのか。れいむにはそれがとても理不尽に思えた。 そんなある時、お野菜さんを食べられるときがあった。 なんでも頑張ったご褒美らしい。れいむは歓喜した。 ようやくれいむにお野菜さんを食べさせる気になったか。当たり前だ。優秀で可愛いれいむにはその権利がある。 正確にはれいむではなく、同じ班のまりさが優秀だったかられいむにもお情けで野菜が支給されたのだが、餡子脳には知るよしもない。 だがそんな思い込みがいけなかった。 れいむはこれから毎日野菜を食べていいと解釈してしまったのだ。 それからというものれいむは隠れて何度も野菜を盗み食いした。 そして見つかった。 れいむにしてみれば当然の食事は、農場の主達にしてみれば作物を荒らす害虫の所業でしかなかった。 もはやれいむは奴隷ですらない。ただ処分されるのを待つ惨めな害虫。 だがそんなことはれいむは知らない。 だから今、男の腕に抱かれ廊下を歩いているこの状況でもれいむは物怖じせずに怒ることが出来ていた。 「ぷんぷん!おにいさん、れいむにたべものちょうだいね!れいむおなかすいたよ!」 男に腹が減ったと要求するれいむ。 ここまで厚顔無恥になれるのは無知ゆえか、それともこのれいむの本来の気質か。 当然男は答えない。 彼には害虫に言われるまま餌をやるほど人が良くなかった。 無視したまま廊下を歩く。 そんな男の態度に怒りを覚えるれいむ。 何でれいむの言うこと聞いてくれないの。れいむは偉いんだよ。 既に自分が奴隷だったということは頭にない。男の方がれいむの奴隷だと思い込んでいる始末である。 途方もない餡子脳だと言えた。 「おにいさん!れいむのいうこときこえなかったの!れいむおなかがすいたんだよ!」 自分の願いがかなえられて当たり前とも言わんばかりに、れいむは声を張り上げる。 何で奴隷の癖に命令を聞かないのだという立場を弁えない発言にも、男は眉ひとつ動かさない。 このままでは埒が明かないとばかりにれいむが暴れだそうとしても男の腕がそれを阻んでいた。 「ゆぎいいいいいいいいいいいいいい!!!れいむをはなじでえええええええ!!!」 腕の中でびたんびたんとのたくる饅頭に、彼は少しうんざりしていた。 この世全てを舐めきったかのような顔と態度も、喧しい声も、とにかくこのれいむを構成する全てが好みではない。 さっさとこの饅頭を処理するために、目的の場所へ男は歩く。 暗く深い地下に造られた一室。男の目的はそこにあった。 地下室のドアの前で、男は立ち止まる。 手元ではまだれいむがぎゃあぎゃあ喚いていた。 男はそんなれいむをやはり無視し、ドアを開ける。 金属製のドアが、ギィ・・・と少し掠れた音をたてながら開いていく。 例えて言うなら、そこはロッカールームだった。 壁という壁、床と天井以外一面に全て金属製の函が埋め込まれている。 よく耳を凝らせば何か囁くような声が聞こえる。 れいむは知るよしもないが、この函ひとつひとつに何かが入っているのだ。 「確か空いている場所は・・・・・・えーと、ここだな」 ようやく男が口を開いた。 しかしそれは、れいむの要望を叶える為のものではない。ただ空き函を確認しているだけ。 「ゆっ!?おにいさん、れいむにたべもの・・・・・・」 すかさずれいむが食べ物を要求する。 だが聞かない。男にとってれいむの声など雑音そのものだった。 男は空き函を開く。 郵便受けのような投函口がついた扉が開き、30×30×30センチの空間が姿を現す。 すかさずれいむを押し込む。連日の野菜ドロのおかげで少々肥満ぎみのれいむでも、すっぽりとそこに入り込んだ。 そして扉を閉める。これでれいむは出られない。内部からいくら押してもこの函は開かない構造になっている。 「ゆゆ!?おにいさん、なにするの!はやくれいむをここからだしてね!」 自力で出ようともせずに、れいむはここから出せと要求している。 頭がいいかと言われれば違う。ただ単に自分は動きたくないだけだ。 幸い、備え付きの投函口からは外の様子が確認できた。 れいむはそこから男を睨み、狭い空間の中でぷくうと身体を膨らませて威嚇する。 扉越しの威嚇は男には見えない。仮に見えたとしても何の効果もない。 ごそごそと懐の中を漁る男。 「ゆ!れいむにおいしいものくれるんだね!」 男の行動を自分に何か食べ物をくれるものだと思い込み、声を上げるれいむ。 今回に限って言えば、れいむの思い込みは正解だった。 「ほれ」 投函口からなにかを投げ入れる男。ころころとそれはれいむの元に転がってきた。 サイコロほどの大きさの、乾パンがひとつ。 「ゆゆ!とってもおいしそうなたべものだよ!ぱくっ!むーしゃ!むーしゃ!」 すぐさまかぶり付き、咀嚼するれいむ。 その醜悪な顔は扉に遮られ、男はそれを見ずに済んだ。 「むーしゃ!むーしゃ!・・・・・・しあわせー!おにいさん!もっとれいむにたべものちょうだいね!」 もちろん、サイコロ一個ほどの量でこの強欲な饅頭が満足することなどありえない。 あっという間に飲み込み、お代わりを要求するれいむ。 「お前に与える餌は、一日一回それっきりだ」 代わりとでも言うように、男は宣言した。 れいむには男が何を言っているのかわからない。 「ゆ!?なにいってるの!?そんなことどうでもいいかられいむにもっとごはんちょうだいね!!」 言うことは全て言った。 そんな態度で男は部屋から出て行こうとする。 ようやくれいむも今自分の置かれている状況を把握してきていた。 このままではまずいとばかりに、扉に向かって体当たりをするれいむ。 だが開かない。先述の通り、この扉はれいむの力程度では破れない。 ばいんばいんと扉にぶつかり跳ね返り、反対側の壁に頭をぶつける。それの繰り返し。 「ゆうううううううう!!!ゆっくりしてないとびらさんはゆっくりしないでしね!!!」 滑稽なほどに無力な体当たりを続けるれいむを尻目に、男はドアを開け、部屋を後にする。 がちゃりとドアが閉まったときには、もう男の姿はなかった。 「ゆああああああああああ!!!どうじでどびらざんひらがないのおおおおおおおおおお!!!!?」 男が去ったことにも気づかずに、扉に向かって必死に無駄な努力を続けるれいむ。 この根性を農作業の方面で生かせば、こんなことにはならなかっただろうに。 やがて疲れ果てたれいむは、函の中でじっとするようになった。 そして気づく。動かずに、喋らずにいることでようやくわかる息遣い。それが聞こえてくる。 何かがいる。この狭い牢獄の外、部屋中に拵えられた函にれいむと同じように閉じ込められた者がいる。 一つや二つではない。何十、いや何百もの息遣いがそこらじゅうから聞こえてくる。 その息の主はゆっくりだ。この部屋にはれいむ以外に閉じ込められたゆっくりが大勢いた。 「ゆ・・・ゆっくりしていってね!」 扉の向こうにいる見えない相手を確認するかのように、そっと挨拶する。 「・・・・・・ゆっくりしていってね・・・・・・」 「・・・・・・・・・ゆっくり」 「・・・・・・ゆ・・・・・・」 程なくして、ぽつぽつと挨拶が返ってきた。 ようやく自分のほかにも閉じ込められたゆっくりがいることを知るれいむ。 何でこんな事になってるんだろう。れいむはただお野菜を食べてただけなのに。 そのお野菜を食べていたことが原因だとは露も思わずにれいむは憤慨する。 れいむからすれば、いきなり拉致られてこんな狭い場所に押し込められたのだ。怒りもする。 それもこれもあの兄さんのせいだ。奴隷の癖にれいむをこんなところに閉じ込めるなんて、お仕置きしなきゃ。 相も変わらずに自分のやったことに気がつかない。 野生で一体どうやって生きてきたのかが不思議なくらいの楽観主義。 他のゆっくり達は元気がない。お兄さんに何かされたのだろうか。 だったらその分も含めてお仕置きしなきゃね。れいむは偉いんだから。 ひそかな呻き声を聞いて、れいむは思う。 少なくともこの場ではれいむの勘違いを正せるものはいない。だからここまでれいむは増長している。 ここから出たら、まずはお兄さんにお仕置きをしてやろう。 それから美味しいお野菜さんを沢山むーしゃむーしゃするのだ。さっきのご飯は少なすぎる。 出来もしない妄想を浮かべてにやにやする。 れいむは自力で出られない。野菜はれいむのものではない。きっちり先ほどの食事に不満を抱くのも忘れなかった。 「おにいさんはれいむにおしおきされたくなかったら、ごはんちょうだいね!!」 当の男が居ない部屋に、れいむの声が響く。 結局のところこの屑はどこまでも利己的で、欲の強い饅頭なのだ。 自分の欲望を正義の怒りだと思い込めるこの饅頭は世界一幸せな生物なのかもしれない。 自分の置かれた状況も忘れて、れいむは怒りに燃えていた。 ・・・・・・いったいどれくらい長くこうしていただろう。 空腹で働かぬ頭を必死に回転させながら、れいむは自問する。 もうどうしようもないほど長い時間が過ぎていた。 れいむはこの長い、永い間、ずっとこの箱の中で暮らしている。 既にはしゃぎ回れる体力などなかった。 出来ることは動かず、喋らず、飢えに苛まれながら男がこの部屋に来るまで待つことだけ。 そう、あの男。れいむが奴隷だと信じて疑わなかった、あの男だ。 彼は毎日決まった時間にこの部屋を訪れていた。一日一回、れいむや他の函の中のゆっくりに餌をやるために。 彼がくれるものはサイコロほどの小さな乾パンが、ひとつきり。 あの日の宣言通り、それ以外の何物もれいむに与えられることはなかった。 最初の数日は脅すように喚いた。 早くここから出せ。奴隷の癖に何をしている。ここから出たらお仕置きしてやる。 当然、男は答えなかった。 暫くして、少しずつ声に恐れが滲み出てきた。 もうお兄さんにお仕置きするのはやめるよ。やめるから、ここから出して。 それでも男は答えなかった。 それからは震えるように懇願した。 お願いします。ここから出してください。もうここは嫌なんです。何でも言うこと聞きますから。 やはり、男は答えなかった。 今はもう、言葉も出ない。 ただ黙り込んで餌が投げ込まれるのを待つだけ。 他のゆっくり達も同様だった。 いや、違う。れいむが彼らのようになったのだ。 どんなに叫んでも、どんなに懇願しても男は耳を傾けない。 ならば諦めよう。諦めて、受け取れるものは受け取っておこう。そうすれば、体力の消耗は最低限に抑えられる。 ただ生き延びるためだけに飢えと戦いながら、屍のように生きるだけ。 れいむがこの部屋に入ってきた時から彼らは知っていたのだ。 いずれこの新参のれいむも自分たちのように、ただ騒がずに全てを受け入れるようになると。 今この部屋は静寂が支配している。 ほんのわずかに聞こえるのは弱弱しく聞こえる呼吸音だけだ。 ガチャリ、とドアを開く音。 男がこの部屋にやってきた合図だ。 男が次々と函に餌を投げ入れ始めるのを、無感動に見つめるれいむ。 最早彼が奴隷であるなどといった考えは浮かんでこなかった。 やがてれいむの箱の中にも餌は投げ入れられた。 ずりずりと這い、ゆっくりと餌を口に入れ、もそもそと咀嚼する。 これっぽっちの量では、れいむは勿論赤ゆっくりすら満腹にすることは出来ない。 僅かながらも口に入れたために、かえって更なる飢餓感に苦しむ。 それでも食べることは止められない。食べるのをやめれば死んでしまう。そういう思いがある。 だから食べ続ける。これが更なる飢えを呼ぶのだとしても。 ふとれいむが視線を上げると、そこにはれいむを見つめる男の姿があった。 おかしい。彼は餌を投げ入れればすぐにでもこの部屋を出て行くはずだった。 正確には、男はれいむを見ていない。 見つめる先はれいむの隣の、その函の中。 その函に向かって、手を伸ばす。 ガチャンと音をたてて扉が開く。 中にいたのは一匹のゆっくりまりさ。 そっとまりさを取り出し、抱える。 れいむには男が一体何をしているのかがわからない。 「よし、まりさ。出してやるぞ」 ざわり。 男の声以外に何も聞こえなかったはずの部屋にざわめきが生まれる。 今、なんて言ったのだ? 出す?誰を?そのまりさを?どこから?この牢獄から?何故? 疑問は声となり、ざわめきは少しずつ大きくなる。 そのまま男はこの部屋を出て行こうとする。 ゆっくりと部屋の中を歩き、ドアに手を触れる。 その瞬間、れいむが動いた。 扉に張り付き、あらん限りの大声を張り上げる。 「おにいざあああああああああああああん!!!!れいむも、でいむもだじでえええええええええええええ!!!!」 ピクリと、男は反応する。 ドアを握ったまま動かない。 チャンスだ。れいむはそう思った。 今叫ばねばもう二度と出られない。 そんな思いで必死に声を搾り出す。 「でいむもうあんなごどいいまぜんがらああああああああああああ!!!!おでがいじまずうううううううううう!!!!」 れいむに触発されたのか、他のゆっくり達も叫び始めた。 「ばりざもおおおおおおおお!!!!!ばりざもだじでええええええええええええ!!!!」 「あでぃっ、あでぃずもだじでええええええええええええええ!!!!おでがいじまずうううううううううううう!!!!」 「だじねでえええええええええええええええええ!!!!わがるよおおおおおおおおおおおお!!!!」 叫びは伝播する。 あっという間に静寂に支配されていたはずの部屋は阿鼻叫喚の様相を呈していた。 「おでがいでず!!でいぶを、でいぶをだじでぐだざい!!!」 「そのばりざよりばりざをだじでくだざいいいいいいいいいいいいい!!!!」 「むぎゅうううううううううううううううううう!!!!」 「み゛ょん゛っ!!み゛ょお゛お゛お゛お゛お゛お゛おおおおおおおん゛っ!!」 「あでぃずをだじでええええええええええええええええええ!!!!」 「に゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああああああ!!!!」 そんな叫びも、男には何一つ届かない。 この部屋中の函に向かって、ゆっくりと口を開く。 「お前らは、まだ駄目だ。まだ頃合じゃない」 この悲鳴の嵐の中でも不思議と通る、男の声。 ゆっくり達は叫びながらも、男の話を聞く。 「もっと時間が経てばここから出してやる。それまで待て」 そう言って、男はドアを開く。 「ああああああっ!!まっでええええええええええええええ!!!!」 「おいでがないでえええええええええええええええ!!!!」 誰も男が抱えているまりさのことに気が付かない。 まりさは動いていない。喋っていない。それどころか、息すらしていない。 まりさは死んでいた。 男が与えるあまりにも少ない餌は、長い時間をかけてまりさを弱らせていった。 一気に飢えさせるより、餌を与えながら十二分に飢えさせた方がより苦しみは大きくなる。 ひたすらに長い間、まりさは飢えと戦った。そしてとうとう、まりさは死んだのだ。 この部屋はそういう目的で造られた。言ってみれば座敷牢のようなものだ。 まりさは死んでからようやく、外に出ることが出来た。 ゆっくりとドアが閉められていく。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああ!!!!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「わ゛がら゛な゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛おおおおお!!!!」 「ま゛っでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛えええええええ!!!!!」 「ま゛ら゛っ!!!ま゛ら゛っ!!」 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあ゛あ゛あ゛!!!!」 「ごぼね゛え゛え゛え゛え゛え゛ぇぇぇぇぁぁぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛!!!!!」 「ごごがらだじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛えええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」 部屋から男が居なくなってからも、しばらくれいむ達の叫びは止まらなかった。 「もっと時間が経てばここから出してやる」。一体どれほどの時間が必要になるのだろう? なにしろあのまりさはれいむがこの世に生を受けたときからあの函の中に入っていたのだ。 少なくともれいむもまた、それほどの長い時間を過ごすことになる。 れいむはまだ知らない。自分がこれからどれだけ長い間、あの函の中で暮らすのかを。 ゆっくりにとっては永すぎる時間も、男にとってはたったの数ヶ月。 れいむがあの函の中に入ってからようやく一ヶ月が経過しようとしていた。 先は、まだまだ長い。 麗らかな春の午後。 暖かな日差しが差し込む居間には、ゆうかと俺がふたり。 今は三時。おやつの時間だ。 一本木で拵えられたテーブルの、その中央に置かれた皿の上。 そこにあのまりさがいた。 元々はただの処刑のつもりだった。 昔、畑の野菜を食ったゆっくりを閉じ込めたことがあった。 餌は最低限ともいえない量のゆっくりフードを一粒だけ。それを一日一回与え続けた。 そいつはどんどん痩せていった。 だが死なない。そう簡単にゆっくりは飢え死にすることが無い。 そもそもゆっくりというナマモノは食事の必要性が殆ど無い。 口に入れたものを自分の中身そのものである餡子に変換し、余分な排泄などする必要が無いからだ。 まぁそれでもあにゃる等を持つゆっくりはいるのだが、そいつらは中世の貴族のように食っては出し食っては出しを繰り返す。 決して自身の栄養にはせず、ただ自分の食欲のために食べているだけだ。 そういうことを除けばゆっくりは意外とエコなナマモノなのだ。 そんなエコ饅頭も流石に辛かったのか、半年後、そいつはポックリ逝った。 死因は誰が聞いても解るとおりの餓死。不必要に引き伸ばされた飢えの苦しみを顔中に浮かべて死んでいた。 死体を割ってみて驚いた。 クッキーのようにそいつの身体はサクサクと割れたのだ。 極限の空腹の中、水分さえ手に入らない状況でゆっくりの身体が起こした変化。 とことん水分の抜かれたスカスカの餡は、まるでゆっくり版の八つ橋のようだった。 干しゆっくりとも違う食感に、凝縮された甘み。 これはなかなかいい発見をしたものだ。飢えゆっくりとでも名付けようか。 それから、飢えゆっくりを量産するためにあの部屋を造った。 野菜をつまみ食いする屑奴隷や人里に下りてきて畑を荒らそうとするゆっくりたちを次々に放り込んでいった。 ちなみに、このまりさは4期目の最後の飢えゆっくりとなる。こいつだけ妙に長生きしていたな。 大体十ヶ月もすれば、あの部屋のゆっくり達は全て入れ替わる。 今あの部屋にいるのは自分がこれからどうなるかもわからない饅頭達だけだ。 まりさを2等分し、齧り付く。 サクッとした軽い口当たり。今回も上出来だ。 元は餡子なので緑茶との相性も抜群。お茶もすすむ。 ちょっとがっつきすぎて喉に詰まってしまった。急いでお茶を流し込む。 あっという間に食べ終わってしまった。 ゆうかはまだ半分も食べていない。ちょっと急ぎすぎたな。 この飢えゆっくりは簡単に・・・とは言わないが時間をかければ誰でも出来る。 透明な箱にでもぶち込んで、1日1回ごく少量の餌をやればいいだけだ。 半年間忘れずに餌をやれるなら、挑戦してみて欲しい。 おわり ――――― 名前をいただきました、書き溜めです。 フォアグラってあるじゃないですか、あのアヒルだかガチョウだかの脂肪肝ってやつ。 あれのゆっくり版って無いかなと思ったら、あった。仕方が無いので逆にゆっくりを飢えさせてみました。 イメージでは中身の餡子はパサパサを通り越してカラカラ、クッキーみたいになると思いまして。 ちなみに「うあああああああああ!!」っていってたのはふらんです。肉まんをクッキーにしても美味しくないだろうと。 なんかオチがいまひとつな駄文に仕上がってしまいましたが、ここまで見てくれた方に感謝を。
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ゆっくり虐待士 このSSにはドス系を含みます。 俺設定ふんだんに使ってます。 初SSで文才0の俺なので駄文になる可能性大です 私はゆっくり虐待士養成学校というところを卒業したばかりの虐待士見習いの田村というものです その学校はゆっくり加工所とゆっくり関連の各種企業が資金と技術を提供しあって作り上げた学校で校長には、 八雲 紫氏が担当することになった(と言ってもほとんど藍さんがしてたようなものだが)。 そしてこの学校は特殊でゆっくりが冬眠する冬に卒業式を挙げる。なんでもゆっくりたちが冬眠中なので色々と準備して春から活動したほうが都合がいいとのこと。 ちなみに河童や加工所などの製品のレンタルも自由に出きるので虐待の幅はかなり広がるのも利点である。 そして卒業したときに関連企業への就職、村の用心棒などの進路があったが、私はあえて故郷に戻ることにした。 理由は両親がゆっくりの被害にあってるからである。 村へ着くと幼馴染の虐待お兄さん2人が出迎えた、なんでも私の着く2週間前にドスまりさとそれに金魚のフンのようについてきた群れが来た。 条約・・・とか色々言っていたが村長の顔色を見るとかなりひどい条約だと分かったらしい。 そこで正義感の強い2人はドスへ戦いを挑もうとしたが村人に「今戦えばこっちにも死人が出る」と言われとめられたらしい。 今ではおうち宣言されて12家族中3家族の家にゆっくりが住み着いてるらしい。 このままではゆっくりに村をつぶされる…と2人が嘆いてたところ私が帰ってきたということだ。 「なんとかできないか?」とお兄さんAが私に聞いた。 私は首を縦に振りながら「なんとでもなる」と答えた。 今は冬眠中なので巣を見つけてさっさと退治してしまうのもいいがそれだとこの2人は満足しないことを知っていた。 なのでまずは村をゆっくりに入れないようにしようと考えた。 ~会議中~ 虐待お兄さんA(以後A)「どうやってゆっくりたちを村に入れないようにするんだ?」 田村(以後田)「簡単なことです。まずは村の周りに幅25M、深さ5Mの溝作ってください」 虐待お兄さんB(以後B)「ふむふむ」 田「それと近くの川とその溝を繋げて、違う川にまた繋げてください」 B「その川のバイパスと今回の虐待は何の関係性が?」 田「それは春になってからのお楽しみです」 ~一方冬眠中の巣~ 「ゆゆ、はるになったらあのにんげんのさとにいくよ!!」とドスが言い出してる。 周りも「にんげんはれいむたちをゆっくりさせるためだけのそんざいだよ!!」やら「まりささまのゆっくりぷれいすをかしてやってるんだから春に返してもらんだぜ!!」 とか言っている。 春にはまだ遠いというのに・・・さすが餡子脳。 そして準備が始まった。堀のほうも完成し、おうち宣言してたゆっくり一家30匹ほどを拘束した。こいつらも後々使い道があるので今は生かしておく。 そして最後の仕上げのため私は山に入った。もちろんドスの巣に用はない。 狙いはドスの巣の近くにある「うーパックの巣」である。 この作戦の穴は「空からの攻撃や進入に弱い」ということだ。 消すにしても、利用するにしてもドスのところにうーパックを置いておくのは危険である。 そして巣は分からないのでお兄さんに案内を頼んだ。 「うーうー」巣から泣き声がする。 さて交渉に移りますか。 うーパックの巣に入った。もちろん威嚇してるがお菓子をあげると警戒しなくなった。 そしてうーパックたちに「いい契約があるよ」というとあっさり承諾した。ちなみに以下の文が契約である。 ①人間はうーパックたちは人里に寮を用意する。 ②うーパックたちは人間から預かった荷物を輸送し、その報酬は里から餌として支払われる。 というもの。 もともと契約という言葉に弱いのと餌と家と何より安全が約束されるこの契約を前にうーぱっくたちは迷いはなかった。 そして早速空き家を寮として開放した。後のうーぱっくの郵便局、略して「うー便局」の誕生である。 さて…私も準備しますか、と早速虐待士連盟に打診した。 虐待士連盟…それは養成学校から卒業した虐待士たちには欠かせない施設である。 虐待道具の貸し出しや購入、企業の最新虐待アイテム情報や虐待士同士の交流ができる。 そこで私は以下のアイテムを借りた(ちなみにレンタル代はどんなに借りても一律3000円) 河童印の拡声器 河童印の水中活動キットX2 大型扇風機 それとは別に購入したもの(全部で3200円) 巫女もびっくりホーミングアロー20箱(12本入り) 拡散型わさび玉、からし玉X5個ずつ そしてすべての準備を終わり、「春ですよ~」と弾幕ばら撒く妖精がフラフラと飛び回ってた。 ドスたちはうろたえていた。地続きだった村は川に囲まれていたのだ。だか声の大きいドスは叫んだ。 「おいじじいどうじでむら゛にはい゛れ゛な゛いの゛!!」 拡声器で村長の代わりに私が応じた「気が付いたら川ができてたんですよ、ゆっくり理解してねっ!!」 さすが河童の開発品だな、よく声は届く。 「ゆゆっ!まりさがむらをせいあつするんだぜ」と意気込んで帽子を水に浮かべ進んできた。 しかしまりさたちは知らない…水中に潜む2つの悪魔の存在を… そして突然悪魔が牙をむいた。水中のお兄さんがこっそりまりさの帽子を引っ張った。 「ゆっくりすすむよっ!!…ゆぐぅぅぅぶくぶく」 水中に引き込まれたまりさは死ぬ直前まで何が起きたか分からなかった。 そして死ぬ直前にまりさ見たのは、河童印の酸素ボンベを背中に背負った2人の人間である。 「もっと…ゆっくりしたかった…」と心の中で言いながら溶けて消滅した。 そしていつまでも上がってこないまりさを心配するドス。 しかしその悪魔は水上に顔を出した…死んだまりさの帽子を掴んで。 しばらくの沈黙、そして餡子脳でもここで分かった、まりさは死んだと。 「「「「ゆががががががが!!」」」」と発狂するゆっくりたち 「ばり゛ざーゆ゛ぐり゛ででぎでよ゛ー!!」と叫ぶれいむ。おそらくつがいだろうか。 ドスは放心状態である。 なんであのにんげんはまりさのぼうしをもってるの? どうしてあんなりうれしそうなの? どうしてまりさは出てこないの? どうして…とぶつぶつとうわごとを言っていた そして仲間のまりさたちが「「「「ゆっくりまりさのかたきをとるよっ!!!」」」」といいながら帽子を水に浮かべて2人の悪魔へ突撃した。 悪魔…もとい虐待お兄さんたちもそれに気づきナイフを片手にいつもの台詞を叫んだ「「ヒッハァー虐待だっ!!!」」 お兄さんたちは本体はあえて斬らず帽子に穴を開けていく。 「お゛に゛い゛ざん゛だずげでぐれ゛だぜ」 「ばり゛ざのお゛ぼう゛じがっ!!!」 「い゛ま゛だずげでぐれだら゛ゆ゛る゛じであ゛げる゛ん゛だぜっ!」 などと戯言が聞こえているが気にしない悪魔たちは全ての帽子に切れ目を入れたらそのまままた水中に潜った。 「どずっ!ばや゛ぐあ゛い゛づら゛や゛っ゛げでね゛っ!!」最初につがいを失ったれいむがドスに叫んだ。 「ゆ!わかったよ、みんなはなれてね」どうやらドスパーク発射体制に入ったようだ。 「ゆゆ!こうさんするならいまのうちだねーわかるよー」と群れのちぇんが言ってたが田村は涼しい顔をしていた。 ドスは降参しないと見るや否や「ゆっくりしねっ!!!」と叫びながら発射した。 水中にいるお兄さんたちには当たるわけはなく通り過ぎた。 しかし届く前にドスパークはみるみる小さくなり届く前に消えた。 村人は何が起きたか分からないと思ったのか田村が説明した。 「ドスパークの有効射程はせいぜい16M程度が限界だからこの25Mの溝越しに撃っても届くわけがないよ」 ドスに聞こえるようにわざわざ拡声器で解説した。 これは加工所の研究データによるもので平均15M最長で20Mぐらいだったが25Mを超える距離は出せないの判明してる。 群れの中はパニック状態である。 すかさず田村はドスを罵倒した。 「それにしても、ドスパークを無駄うちして楽しいの?馬鹿なの?死ぬの?」 少しずつだかドスの顔が赤くなってきた。 「仲間のまりさが死んだのに後ろでびくびくおびえてるドスはゆっくり死ぬといいよ」 この一言がきっかけになったのか「ゆ゛っ゛ぐり゛じね゛っ!!!」と叫びながら帽子を浮かべて突撃してきた。 ドスは勝利を確信していた。ゆっくりオーラという特殊能力で悪魔たちをゆっくりさせて向こうの村に行ってゆっくりするんだ。 しかし悪魔たちは帽子に取り付きナイフで切り取りを始めた 「やめてねっ!まりさのぼうしをきらないでねっ!」と言いながらオーラを使った。 しかし悪魔たちはゆっくりせずに作業を進めてる。 「どう゛じでゆ゛っ゛ぐり゛じな゛い゛の゛おぉぉぉ!!」 その理由も田村が解説した。 「ドスまりさのゆっくりオーラも確かに厄介だけど対策はできる。まずは水中の人間には通用しないこと、それと風が吹いてるとオーラが届かないことだね。」 ドスオーラの正体は未だ調査中だが先ほどの2つの方法で無力化できるのは加工所調べで確かである。 お兄さんたちは水中だし、私は大型扇風機で風を送ってるのでゆっくりしなくて済んでる。 そうこうしてるうちにどんどん水没してくドス、それを見て邪悪な笑みをこぼす2人の悪魔…。 では…私も虐待しますか~。 と冒頭で生かしておいたゆっくりたちを連れてきた。 「ここから出せー!」やら「ゆっくりできないぃぃ」などと言ってるが無視。 そしてもうひとつ…村の備品の迎撃用大砲が一門。 頭の賢い読者様ならお分かりでしょう。 つまりこの大砲でゆっくりを射出して地上に呆然としてるゆっくりたちに返すのだ。 さて一発目を装填します。「ゆゆっ!助けてくれるの?ゆっくりありがとう」 どーん 発射しましたが…残念ながら群れの少し前に餡子をぶちまけて散っただけであった。 最初はびっくりしてたゆっくりだがそこに残った髪の毛とリボン(射出したのはれいむ種だった)を見て何が飛んできたか分かったらしくさらにパニック状態になった。 そして2発目からはどんどん撃っていった…。 まりさ種は水しぶきを上げながら粉々になった。 ようむ種は木に激突して餡子をばら撒いて果てた。 ちぇん種は地上のゆっくりたちに派手に激突して汚い花火を上げた。 そうこうしてる内にゆっくりたちは沈みゆくドスまりさだけとなった。 田村は「何か言い残すことはない?」と告げた。 ドスは「どうじでごん゛な゛ごどを゛ずる゛の゛」と叫んでる。 うーんうーんと考える振りをして田村は答えた。 「私の両親を困らせたから…かな」と。 そしてドスは「もっと…ゆっくり…したぶくぶぐぶぐ…」と沈んだ。 ドス攻防戦(?)はドスたちが壊滅する形で終息した。 村は平和になっただけでなく、うー便局や周りの水路、そしてドスたちの残した帽子などの生地により村に活気があふれた。 お兄さんAはうー便局の局長となりうーぱっくたちに調教やら運営をしている。(虐待お兄さんだが制裁派なので何もしないうーぱっくたちは比較的に愛でていた) お兄さんBは私のような虐待士になるべく養成学校への入学試験のために猛勉強している。 そして私は、村の救世主ということで個別の館が建設されてそこで虐待のデータ取りや次の虐待依頼などの募集などをしてる日々です。 今日も平和だな~とつぶやく私と「「「「「ゆっくりできないよ…」」」」と叫ぶゆっくりたちだった。 あとがき ここまで見ていただいてありがとうございました。 この田村は私のSSではレギュラーキャラにしようと思います。 それと…田村の性別は読者様が想像できるように男でも女でも違和感のないように文にしました。 続編は今書いてますのでしばらくお待ちを・・・。 このSSに感想を付ける
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前回のfuku1364.txt『ゆっくりハンターの生活』の続きです。 こっちだけでも読めないこともないですが、出来たら前作を見てからご覧になってください。 ゆっくりハンターの生活2 朝よりも多少雲が出てきた昼下がりの午後。 阿求ちゃんとの楽しい昼食を終えた私は、ハンターとしての仕事を再開する。 「ハンターさん、午後はどうするのですか?私は狩りに行きたいです!」 阿求ちゃんが、メイスを高々と構えてそう意気込む。 朝は比較的穏やかな作業だったから、彼女には刺激が足りなかったのかもしれない。 私は、仕事用の手提げカバンを持って彼女に笑いかける。 「ええ、今日の午後は狩りに行くわ。一緒に依頼主のところまで行きましょうね」 「了解です。私のモルゲンで叩き潰して見せます」 「……ずっと気になっていたんだけど、モルゲンってそのメイスのことかな?」 柄の先端に歪な突起を生やした鉄の塊がついているだけという、か細い少女には似合わない無骨なメイス。 鈍い光を輝かせているそれはいかにも禍々しく、今まで殺されたゆっくりたちの怨念がこめられているようだった。 彼女はそのメイスを誇らしげに構えて、うっとりした目でそれを見ている。 「ええ!数々のゆっくりのあんこを吸ってきた、私の自慢のメイスです。 モルゲンステルン(トゲ付きメイス)タイプのものだったので、モルゲンと名づけました」 「阿求ちゃん、張り切るのはいいけど室内でそれ振り回さないでね」 「すみません。でも私の内から出るパッションが止まりません」 無闇に逸る阿求ちゃんをなんとかなだめて、私達は依頼主のところへ向かった。 そこまで行く途中の道で、私の隣を歩きながら持っているメイスをぶんぶんと振り回す少女はひどく危なっかしい。 怪我させないよにしっかりと見ておく必要があるだろう。 「えーっと、……ここかしらね」 私は手に持った依頼書を見て、目的地が目の前にある家で正しいか確認する。 前に何度か依頼が来たので間違いないと思うが、念のためだ。 「おじゃまします。依頼を受けたゆっくりハンターの者ですが、誰かいませんか?」 呼び鈴を鳴らし、入り口でそう言ってから待っていると、すぐに中から男が出てきた。 小太りのおじさんで、顔が油でてかてかと光っていた。 男はしかめっ面のままこちらを見て、そして黙って部屋の奥に目を遣る。 中に入れという合図だ。 私は一度彼にお辞儀をしてから中に入り、阿求ちゃんも私に続いた。 私達は、男によって客間の一角に案内され、用意された席に座った。 案内された部屋は、なにやら賞状やらトロフィーやらが目のつきやすいところに並べてある。 ゆっくり関連のグッズもそこかしこに置かれており、私の口からは素直にかわいいなぁと言う言葉が漏れた。 一方、阿求ちゃんは手をプルプル震わせてそのゆっくりたちを見ていた。 男は終始無言で、こちらと目をあわせようとすらしない。 阿求ちゃんはそんな男の様子を訝しんでいたが、私にとってはもう慣れたものだ。 懐から依頼書を取り出し、仕事の話を始める。 「では、依頼内容の確認をしますね。 私が依頼された仕事は、昼の間にこの畑を荒らしに来るゆっくりたちから作物を防衛すること。 その際に注意することは、絶対にゆっくりたちを殺さない。 ゆっくりに怪我を与えてしまうとしても、必ず最小限にとどめること。 成功報酬は依頼書に明記されている通り、ということで。 以上でよろしいですか?」 阿求ちゃんが私の言葉に驚いたような顔をこちらを見た。 狩りに来た、といっているのにこれだから仕方ないか。 事情を先に説明しとけばよかったな、といまさらながら悔やむ。 まあいまさら悔やんでも後の祭りだ。男が黙ってうなずくのを見て、私は阿求ちゃんをつれて席を立った。 「待て」 部屋の扉に手をかけたとき、男が始めて声を上げた。 やっとか、と私がほっとして男の方に向き直る。 「なんでしょうか?」 「いいか。絶対にゆっくりちゃんたちを虐めたり、殺したりするんじゃないぞ。 彼女達を透明の箱に入れて、無闇に苦しめるるのもいかんからな。 もし私の周りでそんなことをすれば、お前にも彼女らと同じ苦しみを味わわせてやるから覚悟しておけよ」 「ええ、彼女達は、かわいいですからね」 男は私の答えにふん、と鼻を鳴らし、そして特大ゆっくり人形を抱きかかえながらまた目をそらした。 「わかったならそれでいい。私はこの子と戯れているからさっさと出ていけ」 私はそれ以上男に話しかけることは無く、阿求ちゃんを連れて男の家から出た。 阿求ちゃんはずっと怒りを抑えていたらしく、表に出るなり真っ赤な顔をしてブンブンとメイスを振り回した。 「もう!どういうことですかハンターさん!ゆっくりたちを殺すななんて、私がモルゲンを持ってきた意味ないじゃないですか! それになんですかあのジジイの態度は!そんなにゆっくりが好きなら畑ごとゆっくりに上げればいいじゃないですか!」 「落ち着いて、阿求ちゃん。これには深くないけど事情があるの。それにゆっくりを狩ることに変わりは無いから」 私の言葉に、ようやく彼女の動きが止まる。 「え?今回は追い払うだけじゃないんですか?それに殺害はNGだとあのジジイが………」 「そんな対処の仕方をしても、ゆっくりに効果は無いのは阿求ちゃんも知ってるんじゃないかな? 翌日には忘れてまた来るだろうし。それに、殺害がNGなのはあの人の近場だけよ。 追い払った後追跡して、森の中で殺しても何も言われないわ。むしろ先方もそれを望んでるわ」 「……じゃあなんであのジジイはあんなことを言ったんですか?素直に退治してくれ、と言えばいいじゃないですか」 阿求ちゃんは納得行かないような顔で私にそういった。 正直私もそう思うが、人には事情があるんだから仕方ない。 「実はねぇ……あの人、ゆっくりんピースの会員なのよ。それも結構上の方の」 「はぁ!?あの基地外集団のですか?じゃあなんでゆっくりを殺せなんていうんですか? あいつらはゆっくりを保護する団体でしょう?」 「ええ、普通の会員さんだったらブリーダーさんに頼むところでしょうけどねぇ。 でもあの人、ゆっくりにお金かけすぎてそんな余裕ないのよ。ブリーダーさんって結構お金かかるから。 かといってそれなりに上のほうの人だから、自分で殺すのも加工所にうっぱらうのも周りの目が許さないし。 ましてやゆっくりに畑を明け渡したりなんかしたら、破産しちゃうわ」 「はぁ……だからお姉さんのところに話がまわってきたと」 「ええ。ハンターは割と安めで仕事を引き受けるものだから、こういう人たちの依頼は良く来るの。 こちらとしても、そういう人種の人たちはほかの人より多くお金出してくれるから万々歳よ」 彼女は私の言葉に心底呆れた様子で、深いため息を吐いていた。 子どもにとっては、こういう大人の複雑な理由は理解できないのだろう。 まあ、私も彼らのことを理解できることなんて一生無いだろうけど。 仕事だからと折り合いを付けているだけだ。 「だったらゆっくりんピース抜ければいいと思うのは私だけでしょうか……」 「私もそう思うけどねぇ。でも、今抜けたらこれまでゆっくりたちに使ってきたお金は無駄だった、と認めるようなものだから出来ないんでしょうけど。 まったく、もっと単純に自分の思うまま生きればいいのにねぇ」 阿求ちゃんはうんうん、と頷きメイスの先で家の壁を小突く。 大きな音は出ないものの、家の壁の塗装が少し削れた。 「ゆっくりを見つけたら何も考えず叩き潰すくらいでいいと思うんですよ私は。 それなのにゆっくりがかわいそうだの保護しようだのとぐちぐちと……やっぱりゆっくりんピースは害悪ですね!」 「こらこら、人の思想に口を出しちゃあ駄目よ?向こうは向こうで考えた末の結果なんだから。 そういうのは心の中だけで考えて、口には出さないものよ?あと壁突くのやめなさい」 阿求ちゃんはまだ納得いっていないようだったが、素直に私の言葉に従ってくれた。 妹がいたらこんな風なのかもしれない、と密かに思った。 「それじゃあ、畑に行こうね。いつゆっくりたちが来るともわからないし」 「そうですね。こんなやつのことは忘れてさっさとゆっくりで遊びましょう!」 彼女はそういうと、私の手を引っ張って畑の方に歩いていく。 彼女はもう待ちきれないと言った様子で、顔は興奮しているせいか少し赤い。 私は転ばないように気をつけながら、そのまま彼女についていった。 「ここが畑ですか……なんとも無防備ですね」 男の家の裏側に回ると、一面に畑が広がっている。 それなりに耕地面積は広く、作物もよく育っているのが見て取れたが、 外側の蔓ごと抜かれていたり、ほんの少しだけかじられた野菜が捨ててあったりとひどく荒らされていた。 ゆっくり対策に作られたのだろうか、木製の柵が畑の周囲に立てられていたが、ところどころ壊されておりもう柵としては機能していなさそうだ。 ゆっくりのことを少しでも調べた農家ならあんなもの役に立たないことぐらいはわかるだろうに。 もしかしたら、ゆっくりんピースには間違った知識が蔓延しているのかもしれない。 「無駄に広いから、ここを守るのは大変ですね……。ハンターさん、どうするんですか? 柵を張りなおしたりしとかないと、危ないのでは」 「そんなめんどくさいことしなくても大丈夫よぉ。一緒に座ってゆっくり待ちましょう?」 「……え?何もしなくていいんですか?」 「別にいいわよ。どうせ今からやったってたいした柵なんか作れないし。 あ、あの雲なんかむくむくしててかわいいわよ?ゆっくりみたいで」 私は地面の上に腰をおろし、柵にもたれながら空に浮かんでいる雲を指差してそういった。 阿求ちゃんはまだなにか言いたそうだったが、私の様子を見てあきらめたのか結局は隣に座って一緒に空を眺めていた。 そこにはやわらかそうな雲が数個浮かんでいて、あそこで寝たら気持ちよさそうだ。 いかにもゆっくりたちが好みそうな場所で、もしかしたらあそこにはゆっくりたちが住んでいるのかもしれない。 そんなことを彼女に言うと、彼女は笑ってそれを否定した。 彼女が言うことには、 崖の上でゆっくりをロープに括り付けたまま降ろしたところ、そのゆっくりはショック死してしまった、という実験結果があるらしい。 だからゆっくりたちは高いところは苦手だと思われ、よってあんな高いところにある雲でゆっくりすることは無理とのこと。 「へぇ~、ゆっくりたちが高いところ苦手だなんて知らなかったなぁ。 阿求ちゃん物知りだね」 「いや、物知りだなんてそんな。ゆっくりに関してはまだ未知な部分が多くて、私にも知らないことなんてたくさんあります」 彼女は俯いて、照れたかのように頬を掻いた。 子どもなのに謙遜までするなんて、将来は大物になるかもじれない。 「……ゆっくりと言えば、ハンターさんはゆっくりが好きなんですよね?」 彼女は再び顔をあげ、思い出したようにそういった。 「うん、そうよ。あのゆっくりの笑顔を見ていると、なんだか心がホンワカしてくるのよねぇ」 「じゃあなんでまたハンターなんかに?農家になれないのわかりましたが、だからってそれじゃなくてもいいじゃないですか。 ブリーダーとか、保護委員になるとか、他にもいろいろあるでしょう」 「それも考えたんだけどねぇ。でも私、殴ってしつけるのはちょっと苦手だし。 一時期頑張ってやってみたこともあったんだけど、私がゆっくりに餌をやったら何故か死んじゃうのよ」 「ああ、あの殺人野菜のことですか……うう、思い出したら気持ち悪くなってしまいました」 「おいしいのにねぇ。だから基本的に保護系は無理だったわ。保護した片っ端から死ぬんだもの。 でもどうしても私はゆっくりにかかわる仕事をしたかったから、ハンターの職に就くことを決めたの」 「……なるほど、納得しました。お姉さんも大変なんですね……あ!」 ちょうど話に区切りがついた時、向こうから小さくて丸い塊が飛び跳ねながらこっちに向かってくるのが見えた。 言わずもがな、ゆっくりだ。 見たところ全部まりさ種のようである。 「まりさたちのゆっくりごはんをとろうね!あそこのおやさいはとってもおいしいよ!」 「ゆゆ!?にんげんたちがいるよ!だいじょうぶなの?」 「だいじょうぶだよ!ここのいえのにんげんはまりさのかわいさにめろめろだから、なにもしてこないよ!」 以前来たときに相当甘やかされたのだろう、随分な言い草である。 こうなっては言葉で止めるのはもう無理だ。なにを言ってもここはまりさのものだからさっさと出てけと言われるだけ。 それを知っていたのだろう、阿求ちゃんがメイスを構えて攻撃体制をとる。 「かかって来なさい!みんなまとめて叩き潰してあげますよ!」 メイス片手に突撃しようとする阿求ちゃんの襟を、私は慌てて掴んだ。 「ぐぇ!な、なにするんですか!?」 「駄目だよ阿求ちゃん。そんなので攻撃したらゆっくりたち死んじゃうよ」 「じゃあどうするんですか!ああもうどんどん迫ってきてます!」 私はふてぶてしくにやりと笑うと、手提げかばんの中から銀色に光る"それ"を取り出した。 太陽の光を反射してまぶしく輝くそれは―― 「じゃじゃーん!銀のナイフー!」 それは刃渡り十五センチほどの狩猟用ナイフで、私が狩りのときに良く愛用するものだった。 狩りのとき以外にも、料理のときに使ったり、収穫のときに使ったりと、私にとっては生活の必需品となっている。 「ってそんなの見ればわかりますよ!ナイフなんて使ったらやっぱりゆっくりは死んじゃないですか!」 「モノは使いようよぉ?ちょっと見てなさい」 私は突撃してくるゆっくりに向かって、思い切りナイフを投げた。 そのナイフはほぼ直線に近い軌道を描き、ゆっくりにの顔に直撃――せずに、ゆっくりのかぶる帽子を射抜いた。 「ゆゆ!?まりさのぼうしが!」 ナイフは帽子に刺さっても勢いをとどめることは無く、そのまま帽子ごと地面に突き刺さる。 慌てて帽子を取られたゆっくりが拾おうとするも、ゆっくりではナイフを抜くなんて器用なことは出来ない。 泣きながら帽子の周りを飛び跳ねるだけだ。 「す、すごい…。こんな方法があったんですね!」 「まあ、リボンとかだと結構大変なんだけどねぇ。今回はまりさ種ばっかりだから楽に済みそうだわー。 エイ、タァ、ドウリャー、トゥー、ワーワー」 私は投げる毎に気合の言葉を発しながら、突撃してくるゆっくりたちの帽子をひとつ残らず地面に縫い付けていく。 前方の惨状を見て逃げようとするゆっくりにも、きっちりナイフを投げておく。逃げられたら厄介だ。 十五匹ほどの帽子を縫い付け、防衛戦は終了した。 「うーん、あんまりいなかったわねぇ」 「結構いるように見えますが…これで少ない方なんですか?」 「これだけ畑が広いと、コミュニティ全体で来ることもあるからねぇ。 違う畑では百匹近くのゆっくりが襲ってきたこともあったっけ。今回みたいに制限は無かったけど、さすがに危なかったわぁ」 あの時は仕事中に周りの農家たちも応援に来て、さながら闘技場のようになっていたっけなぁ。 あんこまみれになった畑の周りを、みんなで仲良く掃除したのはいい思い出だ。 今回は規模が規模だし、ここの住人自体もあまり評判がよろしくないので観客は阿求ちゃんしかいないけれど、 見られることを意識するといつも以上に頑張ろうという意欲がわくものだ。 「で、どうするんですか?あれ」 「そうねぇ。まりさたちにはちょっと聞きたい事があるから、阿求ちゃんはそこでちょっと待っててくれないかしら」 阿求ちゃんが目の前の自分の帽子の前で泣き叫んでいるゆっくりたちに指を向ける。 私は彼女をそこに残し、リーダー格と思われる、一番大きいサイズのゆっくりまりさに近寄った。 「ちょっといいかな?」 呼びかけられたゆっくりまりさが、涙やらよだれやらでぐちょぐちょとなった顔をこちらに向けた。 「お゛ね゛え゛さ゛ぁ゛ぁぁぁん!!ま゛り゛さ゛のぼうし゛と゛って゛ぇ゛ぇぇぇ!!」 「いいよ。はい、これでいいかな?」 私はそのまりさが言うように、地面からナイフを引き抜いて帽子を取ってあげた。 そして私の胸の前でそれを抱えるようにして持つ。 「おねえさんありがとう!それはまりさのぼうしだから、さっさとかえしてね!」 先ほどまでの泣き顔はどこへやら、まりさはいつものふてぶてしい顔をして私から帽子をとろうと飛び跳ねている。 たぶんさっきのは嘘泣きだったのだろう。 泣けばここの住人は馬鹿だから助けてくれる、なんて計略があったに違いない。 確かにそれは有効である。昨日までならば。 あのゆっくりんピースのおじさんの金と共に、このゆっくりたちの命運も尽きてしまった。 「じゃあ、私の質問にちょっと答えてくるかな?」 私はなるだけやさしい口調でそういった。 本当はもっと厳しく言った方がいいのだろうけど、やはりいきなりそんなことをするのも気がひける。 ゆっくりまりさは私が下手に出ている様子にこいつも自分に優しい人間だと思ったのだろう、 体を一回り大きくして見下すようにこちらを見ている。 「そんなことよりまりさのぼうしさっさとかえしてね!のろまはきらいだよ!」 案の定付け上がってしまった。 仕方がない、気は進まないけどこちらも少しだけ強硬姿勢を見せなければいけないか。 私は帽子をしっかりと抱え、ゆっくりまりさに取られないように注意しつつ、ナイフでほんの少しだけ帽子に切れ目を入れた。 自分の帽子がさらに傷を付けられていく様子を見て、ゆっくりまりさは慌てふためく。 「おねえさんへんなことはよしてね!まりさのだいじなぼうしにきずつけちゃだめだよ!」 「ごめんね?私も仕事だから。本当はこんなことしなくないのだけれど」 「だったらさっさとかえしてね!」 「じゃあ私の質問に答えてくれる?」 言外に答えなかったら帽子を引き裂くぞ、と言う脅しのニュアンスを含みつつ、私はゆっくりまりさに迫る。 ゆっくりまりさは下に見ていた人間に思わぬしっぺ返しをくらって心底悔しそうだったが、 自分の大事な帽子には変えられないのか、観念したかのように動きを止める。 「わかったよ!こたえるからさっさとしつもんしてね!」 「ふふっ。じゃあ聞かせてもらおうかしら。 あなた、ほかに仲間はいる?ここの畑を他のゆっくりに知らせたかしら?」 私が問うたのは相手の戦力の規模。 このゆっくりたちを処分するならばここから離れねばならない。その間、この畑は無防備になってしまう。 もしまだいるならばこのゆっくりたちは、このままここに縫い止めておかねばならない。 まったく、捕獲用の箱くらい使わしてくれてもよかろうに。 だが、私のそんな心配を知ってかしらずか、ゆっくりまりさの答えは私にとって理想的なものだった。 「なかまはいないよ!ここにいるみんなでぜんぶだよ!それにほかのゆっくりにもいってないよ! ここはまいさたちだけのゆっくりぷれいすだからね!」 「ありがとう。でも嘘はついちゃだめよ?そうしたら私にとってもあなたにとっても悲しいことになるわ」 「うそなんかついてないよ!まりさはしょうじきものだからしんらいしてくれていいよ!」 一応念を入れて探りを入れてみるも、ゆっくりまりさに嘘をついている様子は見受けられない。 まりさ種特有の強欲さから考えても、その話は信憑性に足るものだと思われた。 私の目標は、このゆっくりまりさだけとなった。 「おねえさん、おしえたんだからさっさとぼうしかえしてね!」 「ああ、ごめんなさい。今返すわ。でもその前に、私からもあなた達に教えたいことがあるの。 あなた達がゆっくりできるかどうかに関わる、とても大事なことなんだけど。聞いてくれる?」 「まりさはゆっくりしたいんだぜ!おねえさん、ゆっくりしないではやくおしえてね!」 ゆっくりできない、と言う言葉に本能的に恐怖を覚えたのだろうか、ゆっくりまりさが帽子のことも忘れて私の情報をせがんでいる。 私はまりさを安心させるように微笑むと、畑の方にいる阿求ちゃんを指差した。 「ねぇ、あの女の子って誰だかわかる?」 「ゆ?あんなひょろいやつなんてしらないよ!」 ゆっくりたちから見れば、彼女はそんな風に映るらしい。 私としては、線が細く、そのすらっとした体のラインはうらやましいものであるのだが。 私はこんな職業柄、どうしても少し筋肉質な体になってしまうからだ。 今度、どうやってあんな主そうなメイスを振り回すパワーを持ちながらそんな体型を維持できるのか、じっくりと聞いてみたいものである。 ……いけない、思考が脱線した。今は仕事に集中しないと。 「あの子はね、実はあなた達を捕まえに来た加工所の人なの」 「ゆゆ!?おねえさんそれほんとう!?」 「ええ、もちろんよ。彼女の持っているものが見えるでしょう?あれは、あなた達を捕まえるための道具なの」 実際は、あれは捕まえるものではなく殺すためのもの。それでも、ゆっくりたちにとって脅威であるものには変わりないのだが。 ゆっくりまりさはとりあえずあれの危険性についてはわかったのか、私に隠れながら、おびえた表情で向こうを見る。 「でも、心配しなくても大丈夫よ?あの子はあなた達が近づかない限り、何もしないから。 だから、今日はおとなしく森に帰ったほうがいいんじゃないかしら?」 「で、でもそうしたらまりさたちごはんたべられないよ!」 「それは仕方がないわ。たべものより命の方が大事でしょう? どうしても行きたいっていうんなら止めはしないけど、私はあの子からあなた達を守れるほど強くないわ」 阿求ちゃんのいる畑を見やって、ゆっくりまりさは考え込んでしまった。 お野菜は食べたいが、そこに立ちはだかるのはこわいもの構えて仁王立ちする人間。 この人数でかかればいくらかはあれを抜けられるかもしれない。だが、確実に私達の大半はゆっくりできなくなる。でも私じゃないかもしれない。 運がよくて私だけはおいしい野菜を食べながらゆっくりできるかもしれない。 どうしよう、怖いけど、お野菜は食べたい。あれはとてもおいしい。 おいしいものを食べたいと言う欲求と、死への恐怖と、もしかしたらという希望。 ゆっくりまりさの中で葛藤が渦巻いた。 ゆっくりまりさは考えに考え抜いた末、私に向かってこういった。 「おねえさん!まりさたちきょうはかえるよ!あしたあそこでゆっくりすればいいからね!」 勝ったのは死への恐怖。やはりあのメイスと、何より彼女が怖かったのだろう。 結構離れた私の場所でも、阿求ちゃんのゆっくりへの殺気がありありと感じられる。 ゆっくりまりさもそれを感じ取ったのだろう。 そうでもなければ、本能に従順なゆっくりが簡単に食への欲求を止められるものか。 私は彼女の殺気の波動から守るようにゆっくりまりさの前に屈みこんで、持っていた帽子をかぶせてやる。 「そう。命を大事にしてくれて嬉しいわ。早くみんなを連れてここから逃げてね」 「うん!おねえさんありがとう!みんなにおしえてくるね!」 ゆっくりまりさは勇んで他のゆっくり達に近づいていき――そして泣きそうな顔でまた私のところに戻ってきた。 「おねえさん!ほかのまりさたちのぼうしもとってあげてねぇぇぇぇ!!」 そういえば、まだ刺さったまんまなんだっけ。 私は地面に縫いとめられている帽子を回収し、それぞれのゆっくりまりさに被せてやる。 ゆっくりまりさたちは泣きながら私に礼をし、後ろでさっきを撒き散らす阿求ちゃんをみて恐れおののいて、そして帰っていった。 私はゆっくりたちがこちらを気にしなくなるほど離れてから、後ろにいる阿求ちゃんを呼び寄せる。 「すごいですね。どうやってあのゆっくりたちを説得したんですか? 合い辛そう簡単に畑を諦めるようなやつらじゃないのに」 「ふふっ。阿求ちゃんのおかげよぉ。 じゃあ他のゆっくりたちもいないようだから、後を付けていきましょうか。 待望の狩りの時間よ」 彼女は自分のおかげとはどういうことかと首をひねっていたようだが、 ゆっくりが狩れる聞いて俄然やる気を出したようだ。 「ほんとですか!ついにあいつらをつぶすときが来たのですね!」 「まあ、人目のつかないところまで尾行してからだけどねぇ。 ここで見失ってしまったらことだから、静かに、そして慎重に行きましょう?」 私は興奮する阿求ちゃんの唇に人差し指を押し当て、にこりと笑った。 彼女は了解です、とおでこに手をやって敬礼のポーズを取る。 まあ、ゆっくりたちは鈍感だからばれることは万が一程度しかないだろうが、念には念をだ。 そうして私達はゆっくりまりさたちの尾行を開始し、十数分後、彼女達の巣と思われる森の一角についた。 そこにはそのゆっくりまりさのほかにも、彼女の子ども達と思われる子ゆっくりもいた。 「おおー、いっぱいいますねー。もう我慢しなくてもいいんですよね?」 阿求ちゃんがメイスを構えて、満面の笑みで私の許可を請う。 私もナイフを構え、頷いた。 「いいわよ。ただ、向こうにいるリーダー格のゆっくりまりさは私に預からせてね?」 「わかりました!では行ってきます!」 彼女は弾丸のごとく疾走し、一直線にゆっくりに突撃する。 いきなりの奇襲に驚いたゆっくりは、すばやく反応することが出来ない。 「はぁーーーーっ!滅殺!」 「ゆべっ!?」 「びいっ!」 「ゆぐぅぅぅ!?」 「い゛ぃ゛ぃぃぃ!!」 彼女がメイスを振り回し、その暴風雨のような一撃に巻き込まれたゆっくりたちが内蔵物を撒き散らす。 ほんと、どこにあんな力があるのだろう。そう疑問に思いつつ、私は逃げようとするゆっくりを私がナイフを投げて縫いとめる。 今度は、帽子じゃなく本体を直接狙う。 「いだいよぉぉぉぉ!!」 「ゆぅぅぅ!!にげたいのにうごけないぃぃぃぃ!」 ナイフが刺さったごときでは致命傷には至らないが、それでもゆっくりたちの動きを止めることはできる。 動きさえ止めてしまえば、もう逃げられる心配は無い。後は阿求ちゃんに任せておけば大丈夫だろう。 私はそれを放置して、阿求ちゃんのメイスに当たらないように気を付けつつ、 目の前の惨状に呆然としているリーダー格のまりさに近寄った。 向こうも私を認識したようで、怒ったような顔で私に抗議の声を上げる。 「おねえさん、これどういうこと!!まりさたちをだましたの!!」 「ごめんね?これも仕事なの。あなた達には後で話があるから、とりあえずそこで待っててね?」 私はそのゆっくりまりさと、取り巻きにいた数匹のまりさをナイフで刺して動けないようにしておく。 ゆっくりまりさたちは体中を走る激痛に悲鳴を上げているが、私はそれを無視して阿求ちゃんのほうに向かう。 彼女のほうはあらかた片付いたようで、そこらじゅうにあんこが飛び散っている。 彼女も服をあんこだらけにしながら、恍惚の表情を浮かべてそこに佇んでいた。 「あらあら、もう終わっちゃったの?手伝おうと思ったのに」 「ああ、ハンターさん。本当はもう少しゆっくりいたぶろうかとも思ったんですが、一日中我慢していたせいで制御が利かなくて…」 「早いに越したことはないから私としては別にいいけどねぇ。って、あら?まだあそこに残っているわよ?」 そこには、あんこに埋もれていた一匹の子まりさがいた。 阿求ちゃんがまき散らかしたあんこが体中に飛んできて、運よくそれが擬態として働いたのだろう。 「ゆゆ!もうだれものこってなんかいないよ!ぜんめつしちゃったんだからゆっくりかえってね!」 自分を見つけられて焦ったのか、ゆっくりまりさが声を張り上げてそういった。 そんなことしても逆効果なのだが、ゆっくりだから仕方がない。 阿求ちゃんが頬を吊り上げながら、声のしたほうに近づいていく。 「そうですか、やっと全滅しましたか」 「そうだよ!もうだれもいないからゆっくりさっさとかえってね!」 「でもちょっと疲れましたから、ここで一休みしましょうか」 彼女は近くにあった木の根元に座り込み、隠れている子まりさの上に先端がのしかかるように、自分の持っているメイスを置いた。 「ゆぐっ!?お、おもいよ!とげがささっていたいよ!おねえさんはやくこれをどけてね!」 「おかしいですね~、全滅したはずなのにどこかからゆっくりの声が聞こえます。 幽霊でしょうかねぇ?おお、こわいこわい」 彼女はわざと子まりさと視線が合わないようにしつつ、そううそぶいた。 メイスを乗っけられた子まりさは必死に抗議の声を上げる。 「ゆゆ!ぜんめつなんかしてないよ!まりさがここにいるよ!だからさっさとこれをどけてね!」 「ええ?全滅なのではなかったのですか?でもどこにいるのでしょう。皆目見当もつきません」 彼女は周囲を探すように歩き回り、時折メイスの力を軽く踏んで子まりさの負荷を増加させる。 「いだいぃぃぃ!ふまないでね!これいじょうされたらまりさつぶれちゃうよ!」 「あらごめんなさい。でもあなたがどこにいるのか探さないと・・・ここかしら?」 そういってさっきより強くメイスの柄を踏む。 「ひぎっ!それいじょうはやめでねぇぇぇ!!あんこがでちゃうよぉぉぉぉ!!」 「あは、あはははっ!やっぱり見つからないですねぇ。ここですか?それともここ?ここかもしれませんねぇ」 彼女は興奮で顔を赤く染めながら、何度も、何度もメイスを踏む。 踏まれるたびに子まりさはビクン、ビクンと痙攣し、中のあんこをひねり出して行く。 「ああ、やっぱりたまらない!もっと、もっと聞かせてください!」 「ゆべっ!や、やべっ!!こべっ!もぶっ!だべっ!」 彼女は狂ったように笑いながら、汗が滴り落ちて妖しく光る足を上下に動かす。 子まりさはポンプのように、踏まれるたびに口から悲鳴を上げる。 そしてその声はだんだんと弱くなり、そして中のあんこがすべて飛び出ると同時にその声も聞こえなくなった。 「もう終わりですか?子どもは耐久力がないのが難点ですねー。 悲鳴は成体よりも良いのですけど」 「あらあら、あれだけ愉しんでたのに辛口ねぇ。 でもとりあえずこちらは終わったようだから、ちょっと来てくれるかしら?」 私は彼女を連れて、先ほど動けなくしておいたまりさ達の元へ向かう。 やはりまだ動けないようで、目の前の惨状に震えながらもそこから逃げられないでいた。 「お、おねえさん!まりさをたすけてね!まりさしにたくないよ! ほかのまりさたちはしなせてもいいから、まりさだけはにがしてね!」 リーダー格のまりさが私を見るなり他のやつらを見捨てて命乞いをする。 他のゆっくりまりさが慌てて自分も、自分もと命乞いを始める。 「自分だけ助かろうとは見下げた根性ですね。ハンターさん、殺しちゃっていいですか?」 「だめよぉ。この子達はみんな逃がしてあげるんだから」 私のその言葉に阿求ちゃん絶句し、ゆっくりたちは歓喜の声を上げる。 「おねえさんありがとう!まりさをゆっくりにがしてね!」 「ああ、でも私も仕事だから、ただで逃がすわけにも行かないのよ。 あなた達もう顔が割れてるから、万が一あのおじさんにあなた達のことを見つけられたら困ることになるわ」 「……ゆっくりなんて見分けつかない気がしますけど」 「あら、ゆっくりんピース舐めちゃだめよ?彼らはゆっくりたちの顔のわずかな違いでその個体を識別できるんだから」 ゆっくりたちは確かに似ているが、個々で微妙に違ってたりする。 目つき、口元、眉毛の凛々しさなど、ゆっくりんピースやブリーダーはそれを見て区別することができる。 「じゃあどうするんですか?やっぱり殺すしかないじゃないですか」 「そんなこともないのよ?ちょっと見ててね…えいっ」 私はナイフを使って、ゆっくりまりさの右目の部分だけを綺麗に刈り取る。 「ゆ、ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!まりさのめがぁぁぁぁぁぁ!!」 「ごめんね?痛いだろうけど暴れちゃ駄目よ?すぐ済むから我慢してね」 私は隣のまりさも同様に同じ部分を刈り取り、それを最初に切ったゆっくりまりさの目にくっつける。 同様に先に刈り取った右目も、今切ったゆっくりまりさの目に引っ付けて、傷口をふさぐ。 これで、二匹のゆっくりまりさの右目は交換された。 「どう?これならばれなくなるでしょう?」 「はぁ、パーツの交換ですか…良く考えますねこんなの」 「ありがとう、ほめ言葉として受け取っておくわ。 まあさすがにこれだけじゃばれちゃうから、もっと色々やるんだけど」 私は再びナイフをゆっくりたちに向ける。 ゆっくりまりさたちはこれから来る痛みから逃げようとするが、体に刺さるナイフがそれを許さない。 私はそんなゆっくりたちを安心させるために、優しく微笑んであげた。 「ちょっと痛いだけだから、我慢してね?これが終わったらみんな逃がしてあげるから」 ゆっくりまりさたちは悲鳴を上げているが、私は無視してナイフで顔のパーツを切り取っていく。 その悲鳴に罪悪感が心の中でもたげたが、ゆっくりたちを生かすためなのだから、と私はそれを押さえ込んで作業を続けた。 ゆっくりたちの麻酔なしの整形手術は、一時間後にようやく終わった。 「はーい、終わったよー。みんな、良く頑張ったね」 私は痛みに耐えかねて気絶しているゆっくりたちを起こし、ナイフを抜いて野に放ってやる。 ゆっくりまりさたちはまだ痛みが抜け切っていないようだったが、それでも体に鞭打って私の元から離れていった。 そのときに私になにか言おうとしていたが、交換したばかりだったせいか口が動かなかったようで、結局そのまま何も言わず去っていった。 お礼なんて、別にいいのに。 ゆっくりまりさたちを見送りながら、阿求ちゃんが私に質問をした。 「ハンターさん、なんであんなめんどくさい事をしたんですか?やっぱり殺したくないからですか?」 「もちろんそれもあるわ。でも、あの子達明日になったら私達のことなんてすっかり忘れて、いつか群れをなしてまたあのおじさんの畑襲うと思わない?」 「まあ、ゆっくりの習性上そうなってもおかしくは……って、まさか」 「大事な収入源は、できるだけ手放したくないものよねぇ」 私達はその後依頼人の男のところにいき、ゆっくりたちを追い払ったとだけ報告してお金を受け取った。 彼は自分の畑を襲うゆっくりたちが死んだのだと喜びを隠せずにいたが、 阿求ちゃんはそんな彼を哀れむように見ていた。 男は阿求ちゃんの様子に気づくこともなく、上機嫌のまま私達を見送るために玄関まで来ていた。 私は大事な顧客である彼にしっかりとお辞儀をして、そしてこう言った。 「また、何かあったらよろしくお願いしますね」 終わり 外伝へ? 読んでくださった人に感謝の念をこめて。 本当に、本当にありがとうございました。 このSSに感想を付ける
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かなーり俺設定です 虐待要素少なめ 未来世界 というかゆっくり要素もあんまないかも 東方関係ない? ゆっくりをしゃべらせるのも苦手 初投稿 かの不可思議な饅頭。ゆっくりが発見されてから何世紀も立ったある時代の物語 人類はほぼゆっくりを制圧する事に成功し、野生のゆっくりのむれが100を超えることはほとんどなく、防犯もしっかりしている為害虫としてすら認識されなくなっていた。 そして人類は宇宙へ道を進めた。人類は月面に都市を建設して月面2世、3世が生まれていた。宇宙にしろ月にしろ酸素なしで生きられるゆっくりは理想の非常食であった。ちょっと栄養に偏りがあるが非常食、飢えをしのぐには十分であった。そのためどんな月面都市にも、宇宙船にもゆっくりがいるのであった。餌もゆっくりを潰したものを与えればいいので自給自足できる。そんな世界だ 〜火星軌道〜 「あと1時間で火星軌道に移民船団が到着します」 「火星に小規模な都市が出来て早2年、大分発展してきたな」 人類は火星に降り立ち、生活を始めていた。200万人の第1次移民は特に問題もなく火星地表で生活をし、人口酸素とゆっくりによる自給自足も一応は可能な状況だ。 都市開発が進みさらに400万人分の住居が完成し今300万人の第1次移民船団が到着しようとしている。 全長800mを超える移民用の宇宙船が300隻ほど火星の中央宇宙港に到着する。海賊対策に100mほどの警備艇が6隻、ついており火星に到着後そのまま火星に配属されるのだという。 火星の移民司令部は6ヶ月に及ぶ長い旅を窮屈な移民船でやってきた移民たちをもてなすべく準備中であった。だが悲劇は起こった。 船団左翼に位置する警備艇「はやぶさ」のクルーが叫ぶ 「せ。。。船団左舷に巨大な影が…ああ、接近してくる」 「何事だ、レーダーは何も捉えられなかったのか!?」 艇長も驚いている。 「何も映っていません。あぁ、未確認物体から熱源反応!!」 レーダーには何もない場所から指向性を持った光が伸びてくるのが表示されていた。 ズズズズズズズッッ!! 「艇長、移民船に被弾しました。損傷は軽い模様」 「むぅぅ、直ちに全警備艇に連絡、移民船にはパニックを起こさないよう注意を払うように言うんだ!!」 というか既に被弾した船ではパニックが起こっていた。いきなり巨大な振動が船全体に伝わったのである。 被弾した箇所はゆっくり貯蔵庫、蒸発したゆっくりの香ばしいにおいが漂う。 「艇長、未確認物体がメインパネルに投影できる位置まできました」 「映せ」 今まで丸い球体としか認識できなかった未確認物体の実態が明らかになる。 それは巨大なゆっくりちぇんであった。 「これは・・・ゆっくり!?ゆっくりなのか!?」 ゆっくりちぇんはまたもやどこからともなく熱線を乱射する。それは狙いも何もない当てずっぽうであったが幾らかの移民船に命中した。 直径250mほどの巨大なゆっくりちぇん… 警備艇隊の司令である中佐から命令が入る。 「船団に被害が出た。死者もいるんだ。これは正当防衛である。そっこく巨大ゆっくりを撃破せよ」 左翼と後部についていた3隻の警備艇が反転、海賊捕獲用の重力魚雷を放つ。これは破壊力をもたず特殊な重力磁場を発生させ船の移動を止め、海賊を拿捕する為の武器である。 しかしちぇんはそれをものともせず前進、あいかわらず移民船に損害が出る。 3隻の警備艇はそれぞれ射程に入り次第荷電粒子砲を撃ち始める。ちぇんはなにやら叫んでるようだが宇宙なので響かない。苦しそうな顔をしながらも前進してくる。 幸いなのはその速力がかなーり遅いということである 応援に火星に駐留していた8隻の警備艇も出撃したがまもなくちぇんは沈黙した…ように見えた。 「後続に球体多数を確認!!、あいかわらずレーダーでは補足出来ません」 ちぇんを倒した3隻の警備艇を40を越える巨大なゆっくりが襲った。 8隻の警備艇や船団残りの3隻なども応援に向かおうとする、だが前方には100匹ほどの巨大ゆっくりがいるのである。 「っ・・・挟まれた!?」 各警備艇奮闘したが数の暴力になす術もなく全滅した。 生存者がいないので定かでは無いが14隻の警備艇は立ったそれだけの数で合計40ものゆっくりをあんこに変えたという。 もちろんゆっくりするわけにはいかない。戦闘のさなか移民船団はゆっくりに集中的に襲われた。非武装の移民船に挟み撃ちはなす術も無く火星にたどり着いたのは30隻に過ぎない。火星への航路であったこの宙域はスペースデブリという名の餡子と船の残骸で溢れた。 火星の移民本部はもうてんてこ舞いである。この事件については地球に連絡しなければならない。 そして数日後火星はこの無数のゆっくりに襲われた。200万いた火星の都市は全長300m程度のゆっくりに潰され、壊滅した。移民本部の幹部に生存者なし。先の戦いで生き延びた30隻の移民船も潰され、宇宙に逃げたものもゆっくりの熱線によって損傷を受け、ほとんどが地球にたどり着く前に息絶えた。 地球に無事生還できたのは大型貨物船に乗って多大な損傷を受けながらも月にたどり着いた数千人だけである。 地球本部はあせった。火星の人工衛星によるとこの巨大なゆっくりは地球へ向かう様子である。その人工衛星からの通信も途絶えた。 何も分からない。ゆっくりは何故襲ってきたのか? 何故あんなに巨大なのか? そもそも何で宇宙にゆっくりがいるのか? 火星から地球までゆっくりは何日でたどり着けるのか? 何より地球には宇宙軍が存在しなかった。連邦とかいう統一政府も無く、現状としては2010年と変わらず190近くの国がそれぞれ別々に政治をしているのだ。ただ各国はかなり仲良くなっているが。 地球に存在する戦力は各国連合で作られている宇宙警察だけだ。 早急に宇宙軍が結成、ゆっくり対策本部がおかれた。宇宙軍といっても警察の警備艇を寄せ集め、艦隊に仕立て上げただけの代物である。旗艦はEUが試験的に運用していた空間戦闘型巡洋艦「ジュネーブ」である。 対策本部は現在分かっている事をとにかく何でも並べた。主な情報源は火星の人工衛星からである 巨大ゆっくりは通常種で編成されている事、ちぇんが直径250mほどで、その他が最大300mほど、赤ゆっくりの30mから成体の300mまでサイズは様々 ゆっくりはとにかく遅いこと。でかい図体で鈍足の移民船にすら追いつけなかった。(ただし今回は挟み撃ちにより壊滅した 無数のビームを放つ事 ゆっくりのビームは威力が低い、非武装の移民船で何十発も耐えたし警備艇もかなり耐え抜いた模様 ゆっくりの防御力は高い、防御力というより耐久力が、何発も荷電粒子砲をぶち込んでようやく沈黙する あれ?そんな怖くなくね? というのが対策本部の結論である。敵のゆっくりは100ちょっと、こっちにも警備艇が100席以上居るのである。警備艇一隻で大体3匹を撃破できるようだ、怖くは無い そういうわけで対策本部は解散、やったことといえば民間の宇宙船に巨大ゆっくりを見かけたら報告する事、余裕があれば自衛用に武装の一つ二つつけることであった。 ただこれはいい機会という事で宇宙軍用の艦艇の開発が始まった。 ==〜16ヵ月後〜== もはや誰もが巨大ゆっくりのことなど忘れかけていた。覚えていたのは火星移民本部くらいであった。 「民間の小惑星帯に資源採掘に向かう輸送船が地球と火星の間…かなり地球よりのところで連絡を絶ちました」 「海賊か?」 「いえ、ゆっくりです」 オペレーターの報告に上官らしき人物は冷や汗を流す。 「まだ状況が分からん、警備艇に偵察に行かせろ」 月面の早期警戒基地から2隻の警備艇が発進する。宇宙軍に編入されてから哨戒仕様に改造され、速力、航続力の向上、対ナマモノレーダーをつけた新型だ。 まもなくこの警備艇は地獄を見る。見るだけで体験しなかったのは幸いだ。 「司令、偵察部隊から報告です」 「嫁」 「はっ…えっ? ゆっくりの一群を確認したとの事です…あ、あぁっ・・・・・・」 「予想していたことだろ、何故そんなに青ざめる?」 「ゆっくりの数、成体だけで1000を超え、小さいのも含めて4000を超えるとの事です」 「…………」 ゆっくりは16ヶ月の間、地球へ向かっている途中、何度もすっきりーをしていたのである。 「月軌道への接近は1週間後との事です」 「5日後までに宇宙軍の全警備艇に第4ルグランジュ地点へ集結と伝えろ、一定の武装を持つ民間船にも参加するよう呼びかけろ、いや徴用しろ、強制にだ!! 海賊にも協力を要請するんだっ!!」 7日の間緊張がずっと走っていた。宇宙軍が集める事に成功した船舶は以下の通りである。 宇宙警備艇、147隻 艦隊の中核をなす艦、重力魚雷を換装した宇宙魚雷2基と2門の荷電粒子砲を装備 ジュネーブ級宇宙巡洋艦 14隻 試験艦ジュネーブを量産した艦、まったく新しい攻撃兵器であるイオン・キャノンを連装2基と宇宙魚雷4門、レーザー機銃を備える アドミラリティ・S級宇宙駆逐艦 27隻 宇宙警備艇を大型化、宇宙軍の目的に合わせた艦、高速でイオン・キャノン2門と宇宙魚雷6門を備える 武装商船 165隻 多くが貨物スペースに荷電粒子砲や実体弾を1門、多くて3門ほど装備した貨物船、ほとんどが300mを越える巨艦&鈍足、装甲なしである 武装商船(小) 327隻 機関砲レベルの武装を施した小型の貨物船、戦力になるか不明 海賊船 42隻 装備は様々、高速で宇宙軍の警備艇と対等に渡り合える物も多く中にはジュネーブ以上の戦闘力を持つものもある 良くこれだけ集めたものである。 連合艦隊は戦闘に突入した。ゆっくりは何も考えていないのかむやみやたらに突撃してくる。相変わらずわけの分からないレーザーを乱射しながら。 まだ結成してから日の浅い宇宙軍は連携が上手くとれずにいたがそれでもゆっくりに比べ優勢な能力をもって奮戦した。 ゆっくりもまた地球にいる頃の性質を忘れていないようで子ゆっくりを盾にして突撃する親と思われるれいむや安全地帯に味方を踏み潰して避難するまりさなど、様々である。 相当数撃破したのに一向にゆっくりの勢いは止まらない。 それもそのはず、500近くのゆっくりが後ろですっきりーをしているのだ。 生まれたゆっくりはすぐに投入される。実際ゆっくりの群はほとんどが子供になっていた。そんななか1kmを超える巨大なまりさがやってきた。 「ドスまりさかっ!? あいつまで等しく大きくなったのかよっ…!?」 ドスを見た兵士は誰もが同じ嫌な予感を持った。 戦力の中核である宇宙警備艇が40隻ほど、まとめて吹き飛んだ、ドススパークによって。ジュネーブに搭乗する連合艦隊の司令官はすぐさま散開を指示する。 しかし火力の密度が薄くなると今度は大量のゆっくりが隊列に侵入、乱戦となった。 相打ちを恐れないゆっくりと恐れる人間、相変わらずゆっくりの攻撃はへぼビームだけであったが効率的な宇宙軍は攻撃が出来ず被害を増していった。 さらに恐ろしい事態が起こった。ゆっくりはその巨体の有効性に気付き始めてしまった。宇宙軍に向かって体当りを仕掛けてくる。成体の直撃を受ければ一瞬で沈みかねない。赤ゆっくりの体当りでさえ相当な威力で、衝突した衝撃で慣性の法則が働き近くの味方に衝突する事もあった。 ついに司令部は撤退を決意、それに伴いアメリカに長い間封印されていたとある兵器が目を覚ます事となった。 核である。 長らく凍結されていた核が始動した。撤退しながら艦隊はゆっくりを核の射程に追い込む。1000ほどのゆっくりがついてきたがすっきり担当の500匹が来ない。 手馴れた海賊船達はゆっくりをうまく纏め上げると離脱した。世界に残されたたった数個の核が弾道ミサイルに積まれ、惜しげもなく全て発射された。 助かった… 誰もがそう思った。500匹のゆっくりは冷静にも撤退を開始したようだ。ぱちゅりーでもいるのだろう。 しかし生き残った500が再び数を増やして攻めてくる可能性は高い… 今回の戦いで宇宙軍は8割の損害を出した。 今後を考えて戦力が増強される事になる。 ゆっくりの特攻による4隻、ドススパークで3隻が失われただけとなったジュネーブクラスが高く評価された。対ゆっくりの主力艦として大量に建造される予定だ 宇宙警備艇も従来通り建造が進められた。これはどちらかというと本来の任務である海賊対策のために そして成体ゆっくりを一瞬で蒸発させる事のできる3連装パルサー・ショックカノンを装備した宇宙戦艦「ラースタチュカ」クラス等が今後建造される事になる …・・・・・・ ゆっくりは数年に一度地球に攻め込んでいる。 回数を重ねるにつれ数が増えている。10回目の攻撃となる今回はついに成体だけで10000匹を超えた 密集するとドススパークの餌食に、散開すると火力濃度が落ちて接近戦によるカミカゼを許してしまう、この憎たらしい饅頭、今まで何度も撃退してきたが毎回おびただしい数の…全体の6割近い損害を出している。一度攻めてくるとその後数年来ないのが救いだがこのままでは地球には宇宙戦士がいなくなってしまう。第1次海戦の旗艦ジュネーブの10回目の戦闘でついに餡子に潰された。火星への移民も当分先送りである 巣を潰さなければこの戦いは永遠に続くだろう… あとがき はい、ぐちゃぐちゃでした。もし読んでくださる方がいれば感謝です。 直径300mの饅頭、恐怖ですね。結局ゆっくりは一度もしゃべりませんでした。スミマセン ちなみに第1次海戦のどすまりさですが、こいつ、艦隊が散開した時点で乱戦となり、相打ちを恐れてドススパークを撃つ事が出来ずに集中砲火を浴びて意識不明、鹵獲されてしまったようです。 また巨大ゆっくりの正体。 かなーり昔に実験の一環として木星に向かって飛ばした無人調査機のスペースに紛れ込んでいたゆっくりが宇宙に適応、大型化したという設定。 攻めてきた理由は地球というなのゆっくりプレイスを取り返すため、及び非常食という非ゆっくり道的な扱いをされている地球のゆっくりを助ける為です。 タイトルはトップを狙えを想像して 評価次第では続編も書くかもですよ? 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※注意※・愛でられるゆっくりがいます。 お兄さんの一人称が愛で時と虐待時で変わります。 よく考えるとお兄さんはあたまわるいです 『ゆっくり刷り込みしていってね!!!』 やぁ、僕はお兄さん。でもただのお兄さんとは違う、愛で&虐待の両刀お兄さんなのさ! 赤ちゃんゆっくりかわいいいいいいいいい!!!ナデナデしたいよおおおおおおおおお!!! だが成体ゆっくり、テメーは駄目だ。愛でてやらない。ゆっくりさせてやらない。俺がさせてやるものか。 だって成体ゆっくりのウザさといったらないじゃないか! 勝手に人の家に侵入して台所で人の食べ物を散々喰い荒らして、揚句の果てに 「ここはまりさたちのおうちだよ!!!しらないおじさんはとっととでていってね!!! でていかないならまりさたちにごはんをよういしてね!!!そうすればすこしだけまりさたちのおうちでゆっくりさせてあげるよ!!!」 だとよ、死ねばいいのに。そいつらは散々いたぶって殺したけど。 ただし、ちゃんとゴールドバッヂクラスまで躾られた飼いゆっくりなら成体でも大好きだ。 凶暴な野犬と躾られた飼い犬の差をイメージしてもらえば解りやすいだろう。 でも生まれたばかりのちびゆっくりだけはもう格別。 すごく愛でたい甘やかしたい。 だって柔らかくて汚れてなくて可愛いんだもの。 柔らかくて汚れてなくて可愛いんだもの。(大事二回 でも困った事に、ちびゆっくりと親ゆっくりはほぼ確実にセットで暮らしているので奪う事が難しいのだ。 否、奪う事自体は非常に簡単だ。親を殺して奪ったり、遊んでいる所をさらえばいい。 しかし、その方法で手に入れたとしても 「お゛がああぁぁぢゃあ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!!!な゛んでじょんな゛ごどずるの゛ぉぉぉぉ!?! お゛があ゛ぢゃんに゛ひどいごどずるじじい゛はゆ゛っぐり゛ぢねえ゛え゛え゛え゛!!!」 とか 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!おうぢがえぢでよお゛お゛お゛!!!おがーぢゃあ゛あ゛あ゛あ゛ん!!!」 といった具合に喚いて懐いてくれなくなってしまうのだ。 え?どうせ餡子脳だからすぐ忘れるだろうって?確かにそうさ。ちょっと美味しいお菓子でもあげて一眠りすれば、大抵の事は忘れるだろう。 でも、完全に忘れているとは限らない。人間の脳と同じで、ふとしたきっかけで記憶が戻るなんてことも有り得る。 万一そんな事が起こっては、かわいいかわいいちびゆっくりがゆっくりできなくなってしまうじゃないか。 両刀お兄さんは完璧主義なのさ!(キラーン☆ 『親から引き離した上でゆっくりさせなければならない』、しかし『無理に親から引き離せばゆっくりしてくれない』 このジレンマをどうにかして解消できないものか…… などと考えていたある日、ひとつ妙案が浮かんだ。 「親ゆっくりを排除する(あわよくば捕獲し虐待する)」 「ちびゆっくりに懐かれる」 両方やらなくちゃならないのが両刀お兄さんの辛いところだったけど……覚悟はいいかい?僕はできてる。 まずは準備から始めよう。地盤を固めなくては、何事も上手く行かないものだからね―――― ―――そして数週間後 僕、いや、『俺』は計画を実行に移した。 説明しよう!両刀お兄さんは愛でお兄さんモードの時は『僕』、虐待鬼意山モードの時は『俺』と、一人称が変化するのだ! 空っぽの籠を背負って尾行しているのは、予め狙いを付けておいた動物型妊婦れいむ。 俺の読みではそろそろ出産を迎える筈だ。 ――俺がこのれいむを標的にした理由はみっつ。 まずは動物型妊娠であること。複数の子供を産む植物型出産では、今回の計画の遂行に支障をきたす可能性があるためだ。 さらに母体が小柄であること。母体が小さければ産まれるちびゆっくりもさぞかしちまっこくて可愛いことだろう。 最後に片親である事。出産時に見張りが居ては計画が失敗する可能性をいたずらに増やしてしまう事になる。事はあくまで隠密のうちに終わらせなくてはならないのだ。 まぁ、この点に関しては父親であったゆっくりまりさが餌を採りに来たところを蹴り飛ばして絶命させたので問題は無い。 「ゆゆっ!?ゆっゆっゆっ」 などと解説している内に、れいむが産気付き始めたようだ。 「ゆっ、ゆっ、ゆぅーっ……ゆっ、ゆっ、ゆぅーっ……」 生意気にラマーズ法なんぞ使っているが、それ全部息吐いてるじゃねぇか。 「まりさはいなくなっちゃったけど……ゆっくりがんばってうまれてね……ゆっくりしたこにそだってね……!」 一応父親まりさがいなくなったという事は理解しているようだ。ああ、言われなくてもおちびちゃんだけはゆっくりさせてやるともさ。 この時点で俺は既に、並の野性動物なら感づいて逃げ出す程度の殺気を放っていたが、出産に集中している饅頭は気付く様子もない。 そのままゆっくりと近付いて行く。 「ゆゆゆゆゆゆっ…!う゛まれる゛ぅぅぅっ!!」 ついにその瞬間が迫ってきた。チャンスは一度きり、失敗は許されない…! 「ゆゆゆゆゆゆゆゆ……ゆぅっ!!」 すぽーん!ちびゆっくりが勢い良く生み出され、かわいらしい饅頭が空を舞う(大げさ)。 (来た!) 作戦開始、許される時間は約3秒。ちびゆっくりが地面に着地して振り向くまでに全てを終わらせるッ! 背負っていた籠をその場に置いて、全速力で親れいむに接近し、わし掴みにする。1秒経過、ちびゆっくりが着地する。頭の赤いリボンから察するに、ゆっくりれいむだろう。 声を上げる暇も無く口にガムテープを貼付けられる親れいむ。「ゆぐっ!?」驚きの声もちびゆっくりには届かない。 2秒経過。そのまま先程置いた籠目掛けて全力で投げるッ!!そのままれいむは籠の中に吸い込まれていった、そして…… 3秒経過ッ!!! くるっ 「ゆゆっ!おかーしゃん!!ゆっくちしちぇいっちぇね!!!」 「うん、ゆっくりしていってね(ニヤリ)」 ( 計 画 通 り !) これぞ俺が作り出した新たなお兄さん専用捕獲スペカ、「刷込『インプリンティング -Easy-』」ッ!! 説明しよう、「刷込『インプ(ry』」とは、子が産まれてから親を認識する前に親を排除、代わりに自分が入る事で自分を親と認識させる荒業である! 予想通り、ちびれいむは僕を親だと認識したようだ。 それにしても流石は餡子脳、明らかにサイズが違うのに全く気にしていない。 だが、そうか……母親と認識されているのは仕方ないとはいえ違和感があるな。訂正させよう 「僕はおかーさんだけどお兄さんなんだよ、ゆっくり訂正してね」 「…ゆゆ?いっちぇるこちょがわかりゃないよー、ゆっくりわかりやしゅくしぇちゅめいしちぇね!!」 舌っ足らずかわいいいいいいいいい!!!11お持ち帰り決定いいいいいいいい!!!!! そんなつぶらな瞳で上目遣いにおねだり(誇大妄想)されたらああああああああ、ああ、あ、あァォゥッ!!!…………ふぅ…… さすがに訂正とかは理解できなかったか。少しちぇんみたいになってるし 「うーん……じゃあ、おかーさんの事はお兄さんって呼んでね」 「ゆゆっ、しょれにゃらわかりゅよ!ゆっくりりきゃいしたよおか…おにーしゃん!!!」 「よーしいい子だれいむ!じゃあお菓子を持ってきてあげような!」 「おかち?しょれってゆっくちできゆの?」 小首を傾げるちびれいむ。ああかわいいなあもう! 「うん、すごくゆっくりできるよ!」 「ゆゆ!おかちほちい!ゆっくちしちゃいよ!ゆっくちもっちぇきちえにぇ!!!」 「はいはい、そこでゆっくり待っててね。」 ちびれいむをその場に待機させておく。僕を母親と認識しているおかげで、言ったことを素直に聞いてくれる。僕はちびゆっくりのこういう所が好きなんだ。 俺の足は、先程籠にナイスシュートした親れいむの所に向かう。 「ゆっぐ…ぐぐ……」 投げられ籠に叩き付けられた際の衝撃で内圧が上がったのか、親れいむの体の一部は裂けて餡子が漏れていた。 苦しそうにうめき声をあげているが意識はあるようだ。 籠は倒れていたが、籠の内側には粘着テープが貼ってある為に自力で出ることはできない。 故に、親れいむは倒れた籠の口から俺とちびれいむのやり取りの一部始終を見ていた事になる。 当然声は出せなくなっているので、外が見えた事は逆に地獄だったかも知れない。 自分をひどい目に遭わせた奴が我が子に話し掛けているのだから子供もひどい目に遭わされると思っているのだろう。そんな事しないけど。 俺は籠ごと少し離れた所に移動させてやると、親れいむを籠から出してやった。 籠の内側に強力に張り付いていたので、出す際に皮の一部が剥がれた。 「……!………!!!」 何やら抗議している様だ。おお、こわいこわい。口のガムテープを勢い良く剥がす。 「びゅっ!?」 剥がした痛みで顔を真っ赤にし、涙を滝のように流している。憎たらしい成体ゆっくりも、この表情だけは愛おしい。 「なにするのおじさん!!!いますぐれいむをここからだしてね!!!はやくあかちゃんにあわせてね!!!あとごはんをもってきてね!!! れいむにひどいことするおじさんはそのあとでゆっくりしね!!!」 ああ五月蝿い、注文が多いんだよこのド饅頭が。俺は親れいむの目の前にしゃがみ込むと、親れいむに話しかけた。 「おい、お前。」 「なに?ゆっくりしてないではやくれいむのあかちゃんにあわせt「お前の子供に酷い事されたくなかったら静かにしろ」 「ゆ゛ゆ゛っ!?」 親れいむの動きが止まる。目の前にいる人間が、どんなに恐ろしい事を言っているのかは解ったらしい。 だが当然そんな事はしない、ただのハッタリである。だがそれは効果覿面だったようで 「ゆ゛ぎぎ……」 歯をぎりぎり鳴らしながら大声を止めた。俺は質問する。 「今からお前にする事に最後まで耐え切れたら、子供を返してやる。だがお前がやめてと言ったら俺がお前の1番大切なものをもらう。どうだ、やるか?」 「……やるよ!れいむのあかちゃんはれいむがまもるよ!」 「よし、じゃあ始めるぞ」 俺はゲームの準備を始める。 「でもおじさんもばかだね!れいむはすごくゆっくりしたつよいこなんだよ!よわいおじさんなんかになにをされてもへっちゃらだもんね!」 何をもって俺を弱いと断じているのだろうかこの饅頭は。まぁこいつが本当に強いのか弱いのかはこれから解ることだろう。 「よし、準備完了だ。始めるぞ」 「ゆっくりむねをかしてあげるよ!!!かかってきてね!!!」 胸無いだろとかかかってこいとか何様だとか色々突っ込みたかったが、そんな時間的余裕は無い。先手必勝だ。 「よし、じゃあ遠慮無く。」 と言うが早いか、れいむの髪飾りを取り上げる。 「ゆっ!?それはれいむのりぼんだよ!!はやくかえしてね!!!」 抗議の声を無視して、鞄から液体の入ったビンを取り出す。蓋を外して中身の薬液ををれいむにかける。 「ゆゆっ、つめたいよ!……ゆ?なんかぬるぬるしてきもちわるいよ!」 文句を垂れる親れいむを尻目に、すかさず鞄から剃刀を取り出し親れいむの髪を剃り落とした。 するとれいむは――― 「ゆ゛ああ゛あ゛ああ゛!!?でいぶのうづぐじいがみにな゛んでごどずるの゛おおぉぉおぉ!!?!はや゛ぐ『や め で』ねぇぇ!!!」 ――と、取り返しの付かない一言を言ってしまった。 「ハイ、お前の負け。」 「や゛めでっやめでや゛め゛っでえええっ!!!……ゆ゛?………!!!ゆ、ゆがああああああああああ!!!」 いまさら自分の失態に気付いたようだ、饅頭ざまぁ。 「あーあ、散々自分は強い自分は強い言ってたからどれだけ強いのかと思ったら……おお、よわいよわい」 うろ覚えのきめぇ丸スマイルで親れいむを嘲笑ってやった。 「ゆっぐぅ……ゆ゛ぐぅぅぅ……」 己の失態を嘆く饅頭、半端に髪を刈られたその姿はさながら落ち武者のようだった。 「さて、約束通り1番大切なものを貰おうか。」 「やべでえぇぇ!!でいぶの゛あがちゃんもっでいがないでえ゛ええええ!!!お゙ね゙がい゙じまずううううううううう!!!」 「……何を言ってるんだ?俺が貰うのは赤ちゃんじゃないぞ?」 「……ゆ゛?」 「だってお前は子供の命がかかっているのに、髪の毛大事さに負けたんだ、1番大事なものは髪の毛だろ?だから……」 言うと俺は再び髪を剃り落とし始めた。 「い゛や゛ああぁあぁあぁ!!!でいぶのがみがあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 程なくして、れいむの頭には髪一本なくなった。 「綺麗な髪の毛(笑)も無くなって、すっきりー(笑)だな(笑)」 「あ゛あ゛あ゛………」 髪もリボンも奪われ、ただの顔付き饅頭と成り果てた親れいむはもはや泣いて呻くばかりだ。 「さて、罰ゲームも終わった事だし、赤ちゃんに会わせてやろう」 「………ゆ……!はやぐ…あわせてね……!」 赤ちゃんに会える。それを聞いて少しは気力が回復したようだ。お兄さんは親れいむを抱えて、ちびれいむの居る場所に戻った。 「やあ、遅くなってごめんねれいむ。」 「おにーしゃんゆくちちすぎやよ!れいみゅおにゃかへっちゃよ!『おかち』ちょうぢゃいにぇ!」 「ああ、『お菓子』、今あげるからね」 俺は親れいむを地面に下ろす。すると親れいむはすぐさまちびれいむに駆け寄りながら 「れいむのあがちゃああああん!!すごくゆっくりしてるよおおおお!!!」 と涙ながらに叫んだ。 ………が 「ぴぃっ!?おにーしゃん!これなに!?れーみゅびっくりちたよ!!」 「ゆ?」 ちびれいむの反応は親れいむの予想とは全く違っていた。 「あかちゃんわからないの?おかあさんだよ!!!」 「みゅ?にゃにいってゆの?れいみゅのおかーしゃんはおにーしゃんだよ?びゃかにゃにょ?」 「ゆ゛ううぅぅぅぅ!!?」 当然だ。ちびれいむは刷り込みのせいで親れいむではなく俺を親だと認識しているし、リボンはおろか髪までなくしたただの喋る饅頭にしか見えないものを自分の母親とは思わない。思えないだろう。 「これは『おまんじゅう』っていう、とてもゆっくりできるお菓子だよ。れいむ、お兄さんが押さえておくから……思 い き り か じ っ て ね!」 「わかっちゃよおにーしゃん!」 「な゛に゛い゛っでる゛nびぎぃゅ!!?」 親れいむの驚愕の声は、両刀お兄さんに頭と口を押さえられて潰された。 そしてちびれいむが親れいむの後頭部にかじりついた。 「……!!………!!!」 当然親れいむは激痛に苛まれる事になるのだが、お兄さんが口を押さえているため悲鳴も出せない。 「むーちゃ、むーちゃ………あまーーい!!!」 ちびれいむは涙まで出して心底美味しそうに母親の餡子を食べている。先程の虐待と、今現在の痛みと絶望で、餡子の味は市販最高品質クラスまで高まっているはずだ。 「おにーしゃん!このおかちしゅごくゆっくちできゆよ!!ちあわちぇーー!!!」 ああ、あんなにニコニコしてほっぺに餡子付けちゃって……かあああわいいいいいいいなあああああああああ!!!!!11 「好きなだけ食べていいからね!」 「ゆっくちーーー!!おにーしゃんだいしゅきー!!!」 「…~~…!~~!!」 親れいむは泣いていた。食べられる痛みだけではない。愛するはずだった我が子、それが他人、しかも人間に奪われたのだ。 だが、お兄さんに押さえつけられた親れいむにはただ泣く事しかできない。 『かぞくみんなでゆっくりする』 親れいむが思い描いていた幸せな未来は、もう訪れる事は無いだろう。 (でも、せめて――このこだけには――あかちゃんだけにはゆっくりしてほしいよ。このこがゆっくりできるなら――むーしゃ――むーしゃ―され―た――って―――) 最後にそう願って、親れいむの目はゆっくりと閉じていき…… 「あーん」ガブッ 親れいむが最後に見たものは、ちびれいむに 「れーみゅひちょりじゃちゃべきれにゃいよ!おにーしゃんもゆっくりちゃべちぇにぇ!!」 と言われ、お言葉に甘えてちびれいむへの感謝と共に今まさに親れいむに正面から噛り付かんと大きく開いた両刀お兄さんの口とそこから覗く牙だった。 「ゆぷぅーっ!おにゃかいっぱいでゆっくちれきちゃよ!」 「うん、そうだね。お兄さんもすごくゆっくりできたよ。じゃあそろそろお兄さんのお家に帰ろうか!真っ暗になるとれみりゃが来てゆっくりできなくなっちゃうよ?」 「ゆゆ!ゆっきゅりできにゃいにょやぢゃよ!!ゆっきゅりしちゃいよ!!おうちかえっちぇゆっきゅりちゅるにぇ!!!」 未だ見ぬ、どんなものかも判らない『れみりゃ』に少しばかり恐怖し、涙目になるちびれいむ。家に着いたらもう撫で摩らんばかりに可愛がってやろう、とお兄さんは決めた。 翌日、昨晩徹夜でちびれいむを愛でていた疲れから昼寝をしていた両刀お兄さんが目を覚まし外を見ると――― 「ぴきぃぃぃぃ!!!ゆっくちれきにゃいよおおおおおおおおおおおお!!!」 ちびれいむが野犬に喰われていた。 「もっちょ・・・ゆっくちちゃかっccゆぎゅっ!!?」 最後の言葉すら言い終える事なく、ちびれいむは野犬に噛み潰され餡子を撒き散らし絶命した。 野犬はちびれいむの餡子が口に合わなかったのか、不満気に去っていった しばし両膝を地に付けたまま呆然とする両刀お兄さん。 「ゆっくりしすぎた結果がこれだよ……」 ようやくそう呟いた両刀お兄さんの表情は、心底悲しそうだったそうな。 終われ- ●あとがき 一応の2作目です成体ゆっくりをかわいがりたい(虐待的な意味で) ちびゆっくりをかわいがりたい(愛で的な意味で) 両方詰めたらカオスなお兄さんが出来上がりました何だよ両刀お兄さんって…… HENTAIお兄さん成分も混ざっていたけど、良い子のみんなは分かったかな? ちびゆっくりのイメージはクラムボン氏の描く赤ちゃんゆっくりを想像して書きました。 あのもちもちぷにぷに感、口の中に入れて舐め回したいです。(HENTAI的な意味で) 毛繕いとかもしてあげたいです。 でもちょっと話し言葉を崩しすぎたかな?何言ってるかわかりづれぇ・・・ 内容の一部から愛でスレ行けと言われるかも知れませんが、ちびゆっくりと有益ゆっくり『以外』は虐めたい対象である事が多いので虐スレの方が合うのです。 これからも気が向くままに好き勝手書きたいと思います。 まとめ掲載の際のHNは「オズ」でお願いします。 ●ゆっくりできていない過去作品一覧 ゆっくりいじめ系270 ゆっくりスイーツ(笑) このSSに感想を付ける
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前 『真冬のゆっくり対策 最終話』 「さぁて、まずは分別しないとね」 村に帰った彼女は昨夜食事会が開かれていた施設の地下に向かった。許可は取ってある。箱を貸してくれた村の虐待鬼意山から さらに2つ箱を借りてきた。 「これはこの箱…これはここに…」 彼女は回収した100匹ほどのゆっくりを赤ゆっくり、子ゆっくり、大きめのゆっくり、大きいゆっくりの4つのグループに分けていた。 「ゆうう……」 「ゆっくり…しようね…おねえさん…」 ゆっくりはもう抵抗はしなかった。罵声も上げていなかった。頼みの綱であったドスが簡単に人間に敗れ希望を失ってしまったのだ。 「潰れちゃってるのがいるわね……赤ん坊は10匹ね」 箱に詰めていたため十数匹ほどが潰れていた。彼女は赤ゆっくりを箱から取り出すとボウルに入れ水道に向かった。 「ゆっきゅりちようね」 「ゆっきゅちちていっちぇね!」 「おねえちゃんはゆっきゅりできるひちょ?」 他のゆっくりと違いまだ元気であった。 「「「ちべちゃあい」」」 キャッキャと騒ぐ赤ゆっくり。彼女は赤ゆっくりを水で洗っていた。 「「しゃっぱりー」」 「「しゅっきりー」」 赤ゆっくりは綺麗になった。赤ゆっくりは彼女をゆっくりできる人だと思い幸せそうな顔をしていた。 「おちびちゃん…ゆっくりしてるね」 そんな姿を見て他のゆっくりの顔が明るくなっていった。もしかしたら自分達もゆっくりできるのではないかと淡い希望を抱いた。 「きりぇいきりぇいになっちゃね!」 「まりしゃきゃわいいでしょ」 嬉しそうに彼女に懐く。彼女はにっこりと微笑みながら言う。 「じゃあおやつね」 「「やっちゃにぇ!!」」 「「あみゃあみゃしゃん!」」 「「ゆっくちゆっくち!」」 嬉しそうにはしゃぎだす赤ゆっくり。彼女は皿と串を持ってきた。 「「おねえしゃんおやちゅ!おやちゅ!」」 「はいはい。そう急がなくてもおやつは逃げてないわよ」 彼女は1匹の赤ゆっくりを掴んだ。彼女の右手には串が握られている。 「あみゃあみゃしゃ〜ん…」 赤ゆっくりは口を開けた。 「何で口を開けているの?」 「ゆ?」 彼女は串を赤ゆっくりの右目に刺しそのまま貫通させた。 「「「ゆ!!!!!!」」」 他の赤ゆっくりは一瞬固まってしまった。 「…ゆぎゃあああ!!!!いちゃいよおおおお!!!!」 右目を刺された赤ゆっくりは悲鳴を上げた。その悲鳴に共鳴するかのように他の赤ゆっくりやゆっくりも騒ぎ出した。 「「「きょ…きょわいよおおおお!!!!」」」 「「「どぼじでぞんなごどずるのおおお!!!!」」」 彼女は笑って言う。 「誰がおやつをあげるだ何て言ったの?"おやつね"とは言ったけど。おやつは貴方達よ」 続けてもう1匹を掴み同じように右目を刺し貫通させた。 「「いぢゃいよおおおおお!!!!!にゃんぢぇええええ!!!!」」 他の赤ゆっくりは逃げ出そうとしたがボウルを登ることができない。 「「だじぢぇえええ!!!!きょきょきゃらだじでえええ!!!」」 「「おきゃあじゃんどぼじでだじげでぐれないのおおおお!!!」」 彼女は黙って更に赤ゆっくりを串に刺した。1つの串に3匹を刺すと皿に乗せ新しい串を取り出した。 「おねえさん!!!!やべであげでえええ!!!!」 「どぼじでぞんなごどずるのおおおお!!!!ゆっぐりじようよおおお!!!!」 「ごべんねええ!!!おちびじゃんだずげであげられなぐでごべんねえええ!!!」 箱の中からゆっくりが叫ぶが彼女は相手にしない。残りの7匹も串刺しにされた。 「3本だけね…これじゃ足りないわ」 彼女は外へ出かけ数分後オレンジジュースを持って戻ってきた。 「…あら?串が1本無いわ」 3匹が刺さっている串は3本とも皿の上にあったが1匹だけ刺しておいた串が皿からなくなっていた。 「ゆんちょ…ゆんちょ…」 微かに声が聞こえる。見れば赤ゆっくりが串を貫通させられながらも逃げていたのだ。 「ばばあ!!!ばーか!ばーか!あかちゃんはもうにげちゃったよ!!」 親であろうゆっくりが注意を引こうと必死に罵声を上げるが彼女は耳を傾けず串を拾い上げた。 「はなちてね!!!はなちぇえええ!!!!」 「心配することはないわ。後でちゃんと焼いてあげるから自分からコンロに行かなくてもいいのよ」 「ゆええぇえぇえん!!!!!ゆっくちちたいよおおおお!!!」 彼女は皿の上にあった串を含め4本の串をタッパーに入れると冷蔵庫にしまった。 「さて…団子を作るわよ」 彼女は箱から大きいありすを取り出した。 「な…なにするのよ!!!ありすをはなしなさい!このいなかもの!!」 「ねえありす。すっきりしたくない?」 「そ…そんなことしたくないわ!!!ありすはれいぱーじゃないのよ!とかいはなれでぃーよ!」 「はいはい」 彼女はありすをマッサージしたり揺すったりした。 「ゆうう"う"う"う"う"う"う"う"う"う"う"うう"う"う"うう"う"う」 「我慢しなくてもいいのよ。誰とすっきりしたい?まりさ?れいむ?ちぇんかしら?」 更にマッサージを続ける。 「おおおんんっほおおおおおおおっ!!!!」 ありすは堕ちた。 「さぁて…誰とすっきりしたい?」 「あ…ありずううはあああ…ま…ままままりさと…すっぎりいしたいわああ!!」 「どうぞ。思う存分やっちゃいなさい」 彼女は箱からまりさを放り投げた。 「ままままままままりさあああああああ!!!!!」 「あ…ありす!!!やめるんだぜ!!!もとにもどるんだぜえ!!!!」 「ゆっゆっゆ!まりさあああ!!さいこうよよよぉ!!」 「ゆぎいいいいい!!!!やべでえええ!!はなじでえええ!!!」 まりさはありすに組み伏せられレイプされた。 「いいわああぁ!!!もっど…もっとはげしくしましょうよぉぉ!!!!」 「やめでええええ!!!!ゆっぐりざぜでよおおおお!!!!」 「んほおおおおおおおおおおおお!!!…すっきりー♪」 「ず…ぎ…りい…」 まりさのあたまから茎が生えてきた。餡子を吸われまりさはどんどん黒くなっていく。 「そう簡単に死なないでね」 彼女は注射器にオレンジジュースを入れまりさに注射した。 「いじゃいい!!!!」 まりさの体はみるみる回復していった。 「ほら、ありす。第二ラウンドよ」 「まっ、まりさささあああああ!!!まだまだいぐよおおおんん」 「ゆぎゃあああああ!!!!!」 レイプは続く。 「すっきりー♪」 「ずっぎりいいいい……」 オレンジジュース注射 「すっきりー♪」 「……ぎりいい…」 オレンジジュース注射 「ゆゆっゆゆゆゆゆっゆゆゆゆ…やめでよお"お"お"お"おお!!!! じんじゃうよお"お"おおお!!!!」 「ゆううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…すっきりー……」 数回繰り返した結果まりさより先にありすが死んでしまった。 「ゆあああああああ……あがじゃんがごんなに…」 まりさの顔が見えないくらい茎が茂っていた。赤ゆっくりはざっと30匹は実ってるだろう。 「ゆ……」 赤ゆっくりがふるふる震えだした。オレンジジュースを注入し続けたため赤ゆっくりの成長も早い。もうじき生まれそうだ。 「ゆっくちうまりぇるよ!」 「ゆっくち!」 「みゃみゃあ♪」 まずは5匹の赤ゆっくりが生まれた。 「「「「「ゆっくちちていっちぇね!」」」」」 「ゆっくりしていってね!」 レイプされて生まれた子とはいえ自分の子供。まりさは嬉しそうな顔をしていた。 「はいはい。おやつね」 彼女はボウルを持ってまりさに近づいた。 「だ…だめだよ!まりさのあかちゃんはだれにもわたさないよ!!!」 「やれるもんならやってみなさい」 彼女はさっさと赤ゆっくりを回収してしまった。 「ゆう……」 大量に茎を生やされ動きが重いまりさは成す術が無かった。 「あかちゃあん…かえじでよお…」 「また生まれるわよ」 「ゆ?」 「ゆっくちい」 「ゆっくちおちりゅよ」 「ゆうう」 次も5匹生まれた。 「ゆっくりしてってね!」 「「「「「ゆっくち…」」」」」 赤ゆっくりが挨拶を終える前に彼女は回収してしまった。 「どぼじでえええ…」 結局まりさは1匹も赤ちゃんを救えなかった。 「さて、おやつにしちゃいましょう」 彼女はボウルに入れた赤ゆっくりを洗うと先程と同じように3匹ずつ串を右目に刺し貫通させていった。 「いちゃいよおおおお!!!!」 「おきゃあしゃんたすぎぇでえええ!!!!」 「どぼじでええ!!!!ゆっぐぢいいいい!!!!」 「にゃんでおきゃあしゃんはたしゅげでくれにゃいのおおおお!!!」 「ゆっくちできにゃいおきゃあしゃんなんかちんじゃえ!!」 「いくぢほうきだにぇ!さいちぇいにゃおやだにぇ!!」 「ぢがうよおおおお!!!!だずげだいんだよおおお!!!!!うごげないんだよおおお!!!!」 赤ゆっくりたちは親に恨み言を吐きながら串刺しにされていった。まりさは体力的にも精神的にも尽き果て死んでいった。 「まだまだ足りないわね」 彼女は箱から別のありすを取り出し同じように発情させた。 「ありすはだれとすっきりしたい?」 「ああああああああ…ありすはああ!!!!れ…でいぶどおおおお!!!!」 「はいどうぞ」 「いやああああ!!!!!ごっぢごないでええええ!!!!!!」 「づんでれなでいぶもがわいいわよおおおおおお!!!!」 「ゆっぐりできなあいいいいい!!!!!!だずげでええええ!!!!!」 「つかまえたわ♪とかいはなてくにっぐでめろめろにじであげるわああああ!!!!!!!!!」 こうして相当数の赤ゆっくりが生まされ串に刺されていった。 「残りカスは外に出しておきましょう。乾燥した餡子は良い肥料になるらしいわね」 ありすだったもの、まりさだったもの、れいむだったもの……部屋に散らばった餡子やカスタードは空になった箱に集められ外に放置された。 「いやあ…今日は大猟でしたよ」 今夜も食事会が開かれている。いつもより盛大だ。一番害が大きいであろうドスの群を退治したのだから。 「みなさーん。甘いものはいかがですか?」 出されたのは串団子だ。ただの串団子ではない、赤ゆっくりで作った串団子だ。 「おお、赤ゆっくりは美味いんだよな」 「こちらは焼いてあります。こっちは揚げてます。お好きなのをどうぞ」 赤ゆっくり団子はどこへ行っても人気お菓子だ。味が良いだけではない。 「お!こいつまだ微かに息があるぞ」 「この感触が堪らん」 意外にゆっくりというのはしぶとい生き物で焼かれても揚げられてもかろうじて生きている場合がある。 「…"…"…"…!!!!」 「ゆ"!」 「た……びぇ…にゃ……」 「ぼ……ど……ゆ…」 団子は人気であっという間に無くなってしまった。 「もっとないのか?」 「ありますよ。今追加の作ってますから」 虐待お兄ちゃんは彼女と話していた。 「なるほどね、使うってこういうことね」 「大きいゆっくりはあんまり美味しくないわ」 「よくこんなに赤ゆっくりを集めたな」 「元々はそんなにいなかったわ。無理矢理作らせたのよ」 「ふうん」 「まだ大きいのが残ってるから明日も出せるわ。ちょっと大変なんだけど」 「へえ…」 「………」 「……」 「俺そろそろ帰るわ」 「え、もう?」 「俺明日仕事あるんだ。だから帰るよ。この時間に帰らないと間に合わない」 「もうちょっとここでゆっくりしててもいいのに」 「そうしたいけどね。まあ楽しかったぜ」 「私もよ。清々したわ」 「あんたはどうするんだ?」 「私はもうちょっとここにいるわ」 「そうか」 「また何か起こったらここにきて下さい」 「そうするよ。妹さんによろしく」 「ええ」 「じゃあ帰るわ。さようなら」 「さようなら」 彼女は彼を見送った。 「ただいまあ」 深夜彼は帰宅しそのまま寝ようと寝室へ入ったがすぐに部屋を出た。 「まさか…いないよね。俺の家に」 彼はそう呟きながら床下を調べた。 「いるわけないか」 彼の家は頑丈にできているためガラスを割られたり隙間から侵入されることはない。戸締りさえしておけばゆっくりが入ることは不可能だ。 「あとは倉庫かな」 外に出て倉庫を開けた。 「…嘘!!!」 「「「「ゆ!!!!」」」」 倉庫の中に家族であろうゆっくりが4匹いた。 「おじさん!ここはまりさのゆっくりぷれいすだよ!!」 「ゆっくりできないじじいはさっさとでていってね!!」 「でていっちぇね!」 「あみゃあみゃしゃんよこしぇえええ」 「まったく…ゆっくりってのはどこいってもゆっくりなんだな」 彼は4匹を捕まえると家に入り虐待部屋に放り込んだ。 「近いうちに遊んでやるよ。俺は寝る」 部屋に鍵をかけ彼は寝室へ向かった。 数ヶ月が過ぎ春が訪れた 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 ゆっくり達が外に飛び出した。数ヶ月ぶりの外は気持ちが良かった。 「ちょうちょさ〜ん…まってえー」 「むーしゃむーしゃ…このくささんおいしいよ!」 久々に体を動かす。大人も子供も嬉しそうだ。 「ごはんだよ!!!」 「むしさんをつかまえたよ!」 「このおはなはおいしそうだよ。むーしゃむーしゃ」 「「「「「しあわせぇ♪」」」」」 冬篭りを終えて数日は巣の周りで餌を調達する。体力が完全ではないためそう遠くまでは動けないからだ。 「ままま…まりざああ…」 「れれ…れいむううう…」 数日するとほとんどのゆっくりが交尾をする。冬の間は交尾ができず性欲が溜まっているためだ。 「「すっきりー!!!!」」 胎生型にんっしんをするゆっくりや植物型にんっしんをするゆっくり。 「ゆっくりしたあかちゃんだよお…」 「ゆっくりそだってね!」 妊娠をするとより多くの餌を食べなければ赤ちゃんは満足に育たない。体力が完全に回復したこともあって遠出をし餌を探す。 「あかちゃんのためにおいしいごはんをもってくるよ!」 一部のゆっくりは子供のためパートナーのため赤ん坊のためいつもより美味しい餌を探していく。 「あのおやさいさんはおいしかったよ!あかちゃんのためにおやさいさんをとりにいくよ!」 野菜やお菓子などの味を一度でも覚えてしまうとこうした場合人里へ向かい人間の食糧を盗みに行くケースが多い。 「ゆゆ〜ん…だれもいないね!いまのうちにおやさいさんを…」 ゆっくりの対策を施したあの村にもゆっくりが現れた。あれだけ駆除してもゆっくりはいる。 「はたけさんにいくよ!」 「そろーり…そろーり…」 去年と同じように畑へ向かうゆっくり。しかし今年は何かが違う。 「ゆ?はたけさんがきえちゃったよ!!!?」 「はたけさんどこなのお??」 遠くからなら畑が見えていたがいざ畑に向かうと視界から消えてしまった。レンガで作った壁で畑が見えないのだ。 「どぼじでええええ!!!!!」 「このあかいかべさんがあやしいよ!」 壁の向こうに畑があると見破るゆっくりもいる。 「ゆあああああああ!!!!おちるうううう!!!」 勢いよく走り堀に落ちてゆくゆっくり。堀は川から水を引いているため落ちたゆっくりは流されていった。 「ゆ!ゆ!ゆ!ゆうううううう!!!」 「まりさはかわをわたれるんだよ!」 大き目のゆっくりは助走をつけて思いっきりジャンプをし堀を越えた。まりさ種は帽子で堀を渡った。真似をして落ちていくゆっくりも多数いる。 「かべさん!なかにいれてね!」 「このかべさんゆっくりできないよ!!」 「ゆっくりできないかべさんなんかこうしてやる!」 壁に体当たりをするがレンガでできた壁を壊せるわけが無い。 「どぼじでええごわれでぐれないのおおおお!!!!!」 「ながにいれでよおおおおお!!!!!」 ここで諦めて帰っていくゆっくりもいる。 「ゆぎゃあああ!!!!!」 「わすれでだよおおおお!!!!」 帰るときに先程越えた堀の存在を忘れ堀に落ちていくゆっくり。 「ゆ!こんなところにあながあいてるよ!」 壁に小さいゆっくりが1匹なら入れそうな隙間が空いていることが時たまあった。無論罠である。 「そろーりそろーり…」 「やったよ!はたけについたよ!…ゆああああああ!!!!」 目の前に広がる畑につい嬉しくなって走り出した途端落とし穴に嵌っていくゆっくり。 「いだあああああいいい!!!!……ゆぎゃああああ!!!!あんごがもれでるよおおおお!!!」 隙間を歩いていると顔の辺りを斬られた。前方に糸鋸が備え付けられていた。 「ゆゆ!こんなところに美味しそうな実があるよ」 「これをあかちゃんにあげるよ!ゆふふ…あかちゃんまっててねえ!」 村のいくつかの場所に美味しそうな実をつけた鉢が置いてあった。 「むーしゃむーしゃ…しあわせぇ♪」 「あまあまぁ♪」 その場で嬉しそうに食べるゆっくり。 「これおいしいよ!あかちゃん、ゆっくりそだってねえ♪」 「むーちゃむーちゃ…ちあわせぇ♪」 巣の中で食べるゆっくり。 「…ゆびぇええええ!!!!ぐるじいいいよおおお!!!!」 「ゆぎいいいいいい!!!!!」 「ぎゅええええええ!!!!!おええ"え"え"え"え!!!」 「ぎゅるちいいいいいい!!!!たちゅげでえええ!!!!」 鉢に植えられていたのはドクウヅキだった。美味しそうな外見に騙されて死んでいくゆっくりが多かった。 この村が冬に対策した効果は充分にあった。だが賢いゆっくりはいる。 「あれ?何でこいつら堀を渡れたんだ?」 ある男が堀の先にいるゆっくり達を見て呟いた。まりさ種はいるが1匹だけで残りは皆違う種だった。ジャンプして飛び越えられる程 大きくはない。 「あ、そうか。これか」 彼が見つけたのは木の板だった。多分このゆっくり達が木の板を運び堀の上に敷いて橋にしたのだろう。 「邪魔だ」 彼は板を堀に落とした。 「ああああ!!!!はしがああああ!!!!」 「おじさん!!!!どぼじでごんなごどするのおおおお!!!!」 「はしがないどがえれないよおおおおお!!!!」 「そんなに橋がほしかったら取って来い」 彼はゆっくり達を堀に落としていった。地上に上がれるはずも無く板ごとみな流されていった。 「あれ?何でコイツ俺の畑にいるんだよ!!!??」 「ゆ!!」 またある男は朝起きてみると小さなゆっくりが畑にいるのを発見した。 「ゆっくりしないでにげるよ!おじさんはそこでゆっくりしててね!!」 ゆっくりは逃げ出したが壁を前に困っていた。飛び跳ねたが壁を飛び越えられない。 「どぼじでええええ!!!!」 「はあ??どうなってるんだ??」 彼は壁の外に目をやった。 「「ゆ!」」 外には2匹のゆっくりがいた。大き目のゆっくりが2匹いた。 「はっは〜ん。考えたね」 大きなゆっくりの上にもう1匹の大きなゆっくりが乗っかりその上にこの小さなゆっくりが乗っかって壁を越えたのだろう。 中々の連係プレイだ。多分家族なんだろう。 「おい、この壁の外に出られたら殺さないでやるよ」 「なんでえええ!!!!なんでえとどがないのおおお!!!!」 「おちびちゃん!!ゆっくりしないでこっちにきてえええ!!」 必死に飛び跳ねるが全く届かない。 「時間切れ。サヨウナラ」 彼は小さなゆっくりを踏み潰し壁の外にいた2匹のゆっくりを畑に運び鍬で滅茶苦茶に潰した。 「戻れなきゃ意味無いじゃん」 彼の呟く通り少しばかり賢しいゆっくりは堀を越えたり壁を越えたりできたが帰りのことを全く考えていなかった。 「今はいいよ…」 今はこうしたレベルで済んでいる。しかしそのうちまた対策をする必要があるだろう。例えばうーぱっくというゆっくりの仲間が 空からやってきたら……。ドクウヅキだってそのうちバレる。また違う毒草や実を設置しなければならないだろう。 「めんどくさいねえ…」 男はそう呟くと畑を耕し始めた おわり by 虐待お兄ちゃん このSSに感想を付ける
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『お目覚めはゆっくりと』 ※現代にゆっくりがいる設定です 東京近県の衛星都市。 比較的地価の安いこの地域は、学生やフリーター、若手の新入社員達が多く住んでいる。 だから、専門学校を卒業して間もないような人間でも、 このあたりで部屋を借りつつ、"ゆっくり"と暮らすのも可能だった。 * * * 8畳フローリング・ロフト付き。 そんな間取りの部屋の中央で、1匹のゆっくりれみりゃが座っていた。 その傍らには、クレヨンや画用紙や積み木といったものが散乱している。 れみりゃは、大好きな玩具に囲まれながら、 幸せそうにだらしのない下ぶくれスマイルを浮かべていた。 「うー♪ ぷっでぃーん♪」 自然と口から漏れるのは、大好きな言葉。 れみりゃは、この部屋の主の人間とともに暮らし、実にゆっくりとしていた。 その証拠に、れみりゃの体は標準的なものに比べて、はるかに"ふとましかった" ふくよかな四肢ははちきれんばかりにプヨプヨしており、 お腹はぷっくら膨らみ、下ぶくれ顔にはさらに二重顎のおまけがついている。 「うー♪ ぽかぽかしてきたどぉー♪ そろそろだどぉー♪」 太陽から差し込む温かい光。 ポカポカの陽気を受け、部屋の中はエアコン無しでも温かい。 れみりゃは、その気温と太陽の光を確認してから"うーしょ、うーしょ"と重たそうに立ち上がり、 小さな黒い羽をパタパタ動かして、重たい体を浮き上がらせた。 「ぱたぱた~♪ う~☆」 れみりゃが、ご機嫌で飛んでいく先、 そこは部屋の角にあるベッドの上だった。 「おねぇーさーん♪ あさだっどぉー♪」 ベッドの上には、部屋の主である人間が眠っている。 れみりゃには、この部屋で"ゆっくりする"ためにいくつかの対価……すなわち勤めが課されていた。 朝になったら起こすというのも、比較的夜行性のれみりゃの役目の一つだ。 「……ん、うん……すぅ……すぅ……」 ベッドで寝ている人間は、わずかなリアクションだけをして、また健やかなな寝息をたてはじめてしまう。 その寝顔に下ぶくれ顔を近づけ、ぬぼぉーっと覗くれみりゃ。 れみりゃは、起きない人間のために、次なる手段をとることに決めた。 「しょーがいなどぉー♪ とくべつさーびすだっどぅ♪」 人間を踏まないように、れみりゃはよいしょとベッドの上に着地する。 短くて柔らかい足は、ちょうと人間の首を中心にして、左右に置かれていた。 れみりゃは、それからドスンと、まるで尻餅をつくように尻から座り込む。 大きなお尻の下には、ちょうど人間の顔があった。 「……うぷっ」 それまで定期的な寝息を立てていた人間の口から、反射的な吐息が漏れた。 それから、れみりゃは尻を顔に乗せたまま、左右に尻を振るように体重を移動する。 それはまるで、尻を顔に擦りつけるような所作だ。 「でびぃーのかわいいおじりぃー♪ あさから、くんかくんか☆できるなんてしあわせもんだどぉー♪」 ご機嫌満悦の微笑みを浮かべる、れみりゃ。 "うーうー"とリズムを刻みながら、お尻を揺らしていく。 「……うぁ?」 ふと、れみりゃはお尻のあたりがムズムズしているのを感じた。 れみりゃは、そのムズムズに促されるように、少しだけいきむ。 「あーぅあぅー♪ でび☆りゃ☆ぶぅーーー♪」 "ばっぶぅーーーー!" 豪快な音をたてて、れみりゃの尻から黄色いガスが勢いよく放出された。 「うー♪ でちゃったどぉー♪」 れみりゃは、照れながら、それでいてどこか得意そうに、顔を赤らめて笑う。 その直後、れみりゃの体はゴロンと前転して、布団の上に着地した。 「うー!」 驚き、目を見開くれみりゃ。 何が起きたかわからず左右をきょろきょろしてから、 れみりゃは背後へ振り向いて元気に叫んだ。 「うっうー☆おはようさんだどぉー♪」 そこには、気だるそうに上半身を起こして、片手で頭を押さえている部屋の主がいた。 「……おはよう、れみりゃ」 "自分のおかげで、今日も部屋の主が起きられた" そう考えているれみりゃは、どこか誇らしげだ。 大好きな人間に構っても追うと、朝の支度を始める人間のまわりをピョコピョコついて回る。 一方の当の人間はというと、れみりゃを適当にあしらいながら、洗顔に着替えにと、テキパキすませていく。 「……物騒な事件が続くなぁ」 人間は、新聞を開いて、ジャムを塗ったパンと野菜ジュースを口にする。 "未確認ゆっくりまた出現!" "未確認ゆっくり第4号、第21号と交戦" "ゆっくりと人間の共存は可能なのか?" "鏡の中に現れたゆっくりが人間を襲う!?" 記事を流し読みで済ませて、オートマティックな所作で朝食を終える人間。 テキパキ食器を洗い終えて、ふと一息。 この後、温かいコーヒーを一杯飲んで家を出るのが、この人間の毎日だった。 コーヒーに、ふーふー息を吹きかけて、人間は今の時間を確かめようと机の上へ視線を移す。 「……あれ、時計は?」 そこには、置いてあるはずの時計が無かった。 いわゆる電波時計という奴で、仮にれみりゃが起床役を忘れていても、きちんとアラームが鳴る代物だ。 量販店で買った安物ではあったが、あるはずのものが無くなっているというのは何とも気持ち悪い。 コーヒーを冷ますのをやめて、人間はあたりを探し始めた。 すると、人間の様子から事態を察したのだろう。 れみりゃが、机の上に立ち、人間の前にバンザーイと両手を上げた。 「う~~♪ あのゆっくりできないジリジリは、でびぃーがぽぉーいしといてあげたどぉ♪」 "ぽぉーい♪" その言葉を聞いて、人間は溜息をついた。ああ、またやってしまったのかと……。 人間は肩を落として、ゴミ箱の蓋を開ける。 すると、中には探していた電波時計が確かに入っていた。 「あれもぽぉーい☆これもぽぉーい♪ ゆっくりできないものはみんなぽいするのぉー♪ ぽぉーい♪」 「ぽーいぽーい♪」と物を投げ捨てるジェスチャーを織り交ぜながら、 "うぁうぁ"楽しげに踊り出す、れみりゃ。 それとは対照的に、人間は電波時計と一緒に捨てられていたものを見つけて、顔を青くした。 「ああっ、ボクのケータイ!!」 人間は、最近買い換えたばかりの携帯電話が乱雑に捨てられていたのを見て、慌ててそれを取り出す。 液晶をオンにすると、待ち受け画像と今日の日付、それにアラームが鳴っていた履歴が表示された。 どうやら、れみりゃはアラームが鳴ったものをまとめて、"ぽーい"してしまったらしかった。 壊れていないことにほっと胸を撫で下ろしてから、人間はケータイ電話をポケットに移す。 れみりゃはといえば、相変わらず誇らしげに胸をはり、人間の足下でニコニコしている。 どうやら頑張ったご褒美を欲しがっているらしい。柔らかくて短い手で、人間の服の裾を引っ張っている。 「でびぃーがんばってぽぉーいしたどぉー♪ ごほうびに、ぷっでぃ~ん☆ふたちょもってきてぇ~ん♪」 れみりゃからすれば、全くの善意の行動だったのだろう。 怒られるという不安は全く感じていないようだった。 本来ならば、しっかりここで教えておくべきなのだが、 ケータイに表示された予想外の時刻の前では、そんな余裕は無かった。 人間は冷蔵庫を開けてプリンを取り出すと、それをれみりゃに手渡す。 れみりゃはプリンを掲げて喜び、部屋の中央に座ってプリンを開ける。 「はぁ……いってきます……」 「うーうー♪ ゆっくりおつとめしてくるがいいどぉー♪」 プリンをがっつきながら、れみりゃは靴を掃き終えた人間に手を振った。 そうして、プリンを食べ終わると、れみりゃはパタパタ飛んで、ロフトの上に向かう。 ロフトの上には、収納用の段ボール箱と、ゆっくり用のおもちゃ箱、 そして人間の赤ん坊用のベビーベッドが置かれていた。 ベビーベッドには、ひも付きの札がひっかけてあり、 そこには汚い平仮名で大きく"こーまかん"と書かれていた。 「でびぃーはこれからおねむするどぉー♪ おやすみだっどぉー♪」 れみりゃはそのベビーベッドで横になり、目を瞑る。 それから、うぴーうぴーと鼻提灯を出しながら眠り始めるのに、さして時間はかからなかった。 * * * それから、数時間が経った。 れみりゃはタオルケットにくるまりながら、相変わらず寝息を立てている。 幸せそうにヨダレを垂らしているれみりゃ。 その顔に、突如"こぶし"がめり込んだ。 「ゆっくりしね☆」 「う、うびぃー!?」 いきなりの痛みに、れみりゃは起きあがり、 赤くなってヒリヒリジンジン痛む顔に手をあてる。 「うぁ~~! でびぃーのえれがんとなおかおがぁ~~~!」 目が覚めるとともにより明確になる痛みに、れみりゃは涙を浮かべて叫んだ。 「うー! おねぇーさま、ようやくおきた! おそい!」 「う、うぁ!?」 涙でにじむ視界の中、れみりゃの視線の先には、ゆっくりフランがいた。 このフランもまた、れみりゃとともにこの部屋に住んでいるゆっくりであった。 「うー! おねぇーさまをいぢめるふらんは、でびぃーがやっづげでやるどぉー!」 れみりゃはグシグシ涙とヨダレををぬぐってベビーベッドから出ると、 その手をぐるぐる振り回して、フランの下へドタバタかけていく。 だが、フランはそんなれみりゃの姿を見て、 キランと目を輝かせたかと思うと、手に持った棒で逆にれみりゃを殴り飛ばした。 「くりゃえ~☆ れ~ばてぃん☆」 「!!??」 "れーばてぃん"の直撃を受けたれみりゃは、叫ぶことさえできずに、床に倒されてしまう。 フランはそんなれみりゃの上に馬乗りになると、べしべしその頭をたたき出す。 「うーー! ふらんちゃん、やべでぇーー!」 「うー☆しねしね! ゆっくりしね!」 れみりゃの戦意は、あっという間に粉砕されてしまった。 だぁーだぁー泣き叫び、フランに許しを請うのが精一杯だ。 「うー! もぉーぶただいでぇー! でびぃーは、ゆっぐりおねむしてただけだどぉー!」 一方、フランは電波時計をれみりゃの前にドンと置いて指を指す。 時刻は午後4時。ちなみにれみりゃの起床時間は、午後3時と決められていた。 「もうおきるじかん! おねぇーさま、ゆっくりおきる! そしてしぬ☆」 「ぷんぎゃー!」 フランは最後に大きな一発をれみりゃにお見舞いすると、 "うー☆"という天使の笑顔に戻って、"こーまかん"と名付けられたベビーべッドへ上る。 「う、うぁ、うぁぁ……」 れみりゃは、痛む体を何とか起こして、 ベビーベッドでタオルケットをかけるフランに抗議の叫びをあげた。 「う、うー! そこはでびぃーのこーまかんだどぉー! ふらんちゃんはつかっちゃだめだどぉー!」 「うー、ゆっくりねる……つぎのしごとまで、しえすた……」 れみりゃの我が侭などどこ吹く風。 フランは涼しい顔を浮かべたまま、健やかな眠りに入っていく。 れみりゃは、何とか"こーまかん"を取り戻して再び眠ろうと考えたが、 先ほどまでの攻防の後では、フランに逆らうほどの勇気も無かった。 「さくやぁー! さくやぁどこぉーー! ふらんちゃんがいぢめるどぉーー!!」 れみりゃに残された手は、泣いて助けを呼ぶことだった。 なお、この部屋を借りている主、すなわち現在働きに出ている人間の名前は"さくや"ではない。 無償の愛で自分に尽くしてくれる存在、さくや。 れみりゃ種にとって、その名前を叫ぶことは本能的なものであった。 故に、仕方の無い側面もあるのだが、これから眠ろうとするフランからすれば、その騒音はたまったものではない。 それに、あまり五月蠅くしては、アパートを借りている人間にも迷惑がかかる。 困り者の姉が我が侭を言った時、ブレーキ役となるのが自分の役目だと、フランは考えていた。 故に、フランはベビーベッドから出て、 前のめりでわんわん泣いているれみりゃの尻を蹴飛ばした。 「ゆっくりしね☆」 「ぶひぃー!」 フランのその考え自体は間違っていないのだが、 そのやり方は少々過激で、主の人間からも度々注意はされていた……。 しかし、れみりゃに対して過激な言動に出てしまうのは、 れみりゃがさくやを呼ぶのと同じく、フラン種にとっての本能だ。 れみりゃへの愛情・愛着・信頼があったとしても、 あるいは、そういった感情があればこそ、フランはれみりゃに対して過激な行動に出てしまう。 「うぁぁーー! うぁぁー! でびぃーのぷりてぃーなおじりがぁーー!!」 「おねぇーさまもちゃんとしごとする……そうじとせんたくしなきゃだめ」 両手で尻をさするれみりゃに対し、冷静に告げるフラン。 それに対し、れみりゃは仰向けになると、泣きながらダバダバ手足を振り回し始める。 「でびぃーはおぜうさまだからいいんだもぉーん! そんなのさくやがやってくれるもぉーん♪」 フランは、大きく息をはいた。 しかし、それは残念だからでは無い。 聞き分けの無い姉に対して、今日もこれから"姉妹水入らずの肉体的コミュニケーション"を行える喜びからだ。 「う、うぁ!?」 キラーン☆と光るフランのルビー色の瞳に、れみりゃは反射的にビクっと体を震わせた。 「かぞくのるーるをまもれないやつは、ゆっくりしね!」 フランはそう叫ぶと、段ボール箱の中に入っていた小さな"あまあま"のヌイグルミを、れみりゃの口に押し込んだ。 口を塞がれ、"んーーんーー"とさくやの名を呼ぶこともできないれみりゃ。 その様子を確認して、うんうんと頷くフラン。 そうしてフランは、背中をゾワゾワ走る愉悦に身を任せるのだった。 * * * 薄暮の空の下、れみりゃ達の主の人間は、自転車を横に歩いていた。 自転車のカゴの中には、近所のスーパーで買った食品や日常雑貨が入っている。 「まいったなぁー、もう遅刻できないよ……やっぱり分担を変えるしか……」 主の人間は、結局今朝遅刻してしまい、上司からたっぷりしぼられてしまった。 元々、この人間は朝に弱く、遅刻をしがちだった。 より確実に起きられるよう、れみりゃにお願いをしたが、どうにも成果は上がらない。 妹のフランに頼めばより確実なのだが、 フランは、昼頃まで夜~朝シフトのバイトに出ており、それは難しい。 バイトといっても、いかがわしいものではなく、深夜のラジオ出演や雑誌関係の仕事が殆どだ。 いわゆる、タレントペットならぬ、タレントゆっくりなのだ。 その出演料は意外とバカにならず、"共同生活"を行う上で大いに助かっている。 実のところ、仕事が忙しい月に関して言えば、この人間の正規の月収さえ上回ることもあった。 そんな折、一人だけ働くフランに負い目を感じてか、それとも姉としてのプライドがあってか、 れみりゃにも家事という名の仕事を与えてみたが、なかなか上手くはいかない。 予想はしていたが、目覚まし係というのも向いていなかった。 「……うん?」 ふと、とある光景が目に止まり、人間は足を止めた。 自転車をアパート共有の駐輪場に置いてから、小走りでその現場へと向かう。 その現場は、アパートの目の前の電柱だった。 そこに、数人の小学生らしき子ども達が集まっている。 思い思いのバッグを持っていることからすると、学校帰りというよかは、塾帰りなのかもしれない。 そして、彼らの中心には、縄跳びのロープで電信柱に巻き付けられた、ゆっくりれみりゃがいた。 れみりゃの体はしっかり固定されており、うびーうびーと濁った寝息を立てている。 そのふとましい姿、何かあった時のため帽子に刺繍したアップリケ型の飼育証明を見て、 "間違いなく我が家のお嬢様だ"と主の人間は確信した。 「おい、こいつなんだよ?」 「こいつ、ゆっくりだろ? どっかのペットかな?」 「これ見てみろよ! 眠っていたらつねって起こせってさ」 少年が指差した先、電柱に一枚のメモが貼り付けられている。 そこには、平仮名で"ねてたらつねっておこす。それいがいしたらゆっくりしね"と書かれていた。 その文字を見て、主の人間には察しがついた。 姉妹喧嘩……というには一方的な、フランの制裁が行われているのだと。 そんなことを知らない少年の一人が、むぎゅーとれみりゃの頬を引っ張った。 その痛みには、寝ぼけ眼でれみりゃが目を覚ます。 「う~~! でびぃーのきゅ~どなほっぺがじんじんするどぉ~~!」 赤く腫れた頬をさすろうとするが、手はロープで固定されているため動けない。 しばらく"うーうー"難儀した後、れみりゃは痛みから逃げるように目を瞑って浅い眠りへ落ちていく。 「おっ、起きたぞ」 「でも、また寝ちゃったぞ?」 「なんか面白いな、こいつ♪」 少年達は、次々にれみりゃの頬を抓ったり、引っ張ったり、叩いたりしていく。 見ると、れみりゃの頬にはあちこちに赤く腫れた後がある。 おそらく、この少年達の前にも、同じようなことをした人がいたのだろう。 最初はおそるおそるだった少年達も、 起きてはまたすぐ寝てしまうれみりゃに対し、徐々に警戒感を無くして力を入れていく。 「うぁぁー! やめるんだどぉーー! さくやぁぁーーー!!」 れみりゃはとうとう泣き叫びだし、目の前の少年達へ敵意をあらわにしだした。 れみりゃのボリュームの大きな声に、びくっと後退する少年達。 少年達は、れみりゃが動けないのを再確認してから、れみりゃへ文句を言い始めた。 「なんだよ、このデブ! ここに起こせって書いてあったから起こしてやったんだぞ!」 「うー! でびぃーはおでぶさんなんかじゃないどぉー! こういうのは"ふとましい"っていうんだどぉー♪ これだから、ものをしらないしょみんはいやなんだどぉー♪」 説明してやれば美的感覚の無い少年達も、自分の凄さを認めるに違いない。 そして、あふれだすエレンガントさとカリスマにひれ伏して、ぷっでぃ~んを持ってくるに違いない。 れみりゃはそうとでも考えたのか、余裕の笑みを浮かべはじめた。 しかし、そんな事が起こるはずもなく。 少年の一人が、怒りの形相でれみりゃへ向かい、拳を振り上げる。 ここに来て、ようやく危険を感じ取ったれみりゃは、本能に従って絶叫した。 「なんだと、この!」 「さくやぁぁーー! たすけてぇぇーーー!! ああああーーー!!」 さすがにこれはやりすぎだ。 距離を置いて見ていた主の人間は、そう判断して、すたすたとれみりゃ達の下へ歩いていく。 その際、主の人間は、物陰に隠れているフランの姿を見つけた。 おそらく、ひどいめにあっている姉の姿を楽しみつつも、適度なところで助けに入るつもりだったのだろう。 主の人間は、やれやれと心中で肩をすくめた。 フランは頭の良いゆっくりであり、事実その能力もゆっくりとしては最上級のものだが、 自分の力を過信しすぎてしまうのが困ったところだ。 本当の危険が迫った時には、いかにフランといえどどうすることも出来ないのだ。 現に、この少年3人の前にフランが現れたとしても、いざ喧嘩になってしまえばフランに勝ち目は無い。 後でちゃんと話そう。 主の人間がそう決めたと同時に、れみりゃが主を発見して希望の声をあげた。 「う、うぁ! お、おねぇーさんだどぉー♪」 泣き叫んでいたのも忘れ、あっという間に喜色満面になるれみりゃ。 一方、驚いたのは少年達だ。 「「「え?」」」 少年達は、れみりゃに接していたのとは異なり、すっかり萎縮してしまっている。 少年達にも、れみりゃが飼いゆっくりであるのは何となく理解できていた。 もし自分たちがいじめていたのを見られていたら。 もし、さらに電柱に巻き付けたのまで自分たちだと思われたら……。 目の前のお姉さんに、親に、先生に、しかられる光景……。 いやそれ以上に、せっかく勉強したのに受験に影響するかもしれない、 損害倍賞の裁判を起こされ支払いを命じられてしまうかもしれない……。 なまじさかしかったが故に、少年達は最悪のケースを連想して震え上がっていた。 「え、あの、ご、ごめんなさい」 「こいつ……じゃない、このゆっくり、お姉さんのものなんですか?」 萎縮する少年達に無かって、主の人間は微笑んだ。 ただし、目だけは笑わずに。冷たく見下ろす視線を心がけて。 「うん、確かに。そのれみりゃはボクの家族だよ」 少年達は、目の前の女の冷たい目と威圧感、それに"家族"という言葉に恐怖した。 そこから、どれだけ自分たちへ怒りを持っているかを察し、 このまま見過ごしてはくれないだろうことを覚悟した。 「うー♪ ばかなしょみんも、これでゆっくりわかったどぉー♪ でびぃーをこあいめにあわせたぶん、たっぷりおねぇーさんにいぢめられるがいいどぉー♪」 一方、れみりゃはすっかり調子に乗っていた。 「うー♪ これでようやくぐっすりできるどぉー♪」 フランに少年達に、自分を襲った理不尽な恐怖は取り払われた。 これでもう安心だと、れみりゃはすっかり気を抜いていた。 だから、突如お尻に走ったムズムズ感を押さえることもできなかった。 "ばっぶぅーーーー!" 驚いて少年達が振り向き、さらに一様に鼻を押さえる。 れみりゃは、豪快な放屁を放って、恥ずかしそうに赤面した。 「う~~♪ あんしんしたら、でちゃったどぉ~~♪」 どこか誇らしげな、れみりゃの笑顔。 その笑顔を見ているうちに、主の人間の中にふと芽生える感情があった。 「……ねぇ、みんな。最近このれみりゃ運動不足なんだ。良かったらもう少し遊んであげて」 何気なく放たれた、主の人間の言葉。 少年達は目を丸くし、れみりゃは耳を疑いながら冷たい肉汁の汗をダラダラ流した。 「う、うー?」 「でも、ひどいことしたらダメだよ! ボクの大切な家族なんだからね!」 主の人間は、それだけ言うと、れみりゃに背を向けてアパートの方へ歩いていく。 「お、おねぇーさん? おねぇーさんまつんだどぉー!!」 れみりゃは必死に叫ぶが、それが聞き入れられることはない。 主の人間の姿は、そのままアパートの自室へ消えていった。 その代わりに、れみりゃの視界に入ってきたのは、ニヤニヤと不気味に笑う少年達だった。 * * * 「うー、おねぇーさま、だいじょぶ?」 人間が部屋に入ると、窓からフランが入ってきた。 仕掛け人の割には、姉のれみりゃのことを心配してソワソワしている。 「大丈夫だよ。それより仕事までちゃんと寝といた方がいいよ?」 「うー、わかった」 人間は、フランの頭を撫でてやり、それから冷蔵庫を開けた。 そこからプリンを3個と、オレンジジュースの入ったペットボトルを取り出す。 それから風呂場へ行き、桶を持って出ると、 そこに冷蔵庫から取り出したものとタオルも入れ、短い廊下を歩いて玄関へ向かった。 扉の外からは、れみりゃの声が今も聞こえていた。 "おねぇーさんたすげでぇーー! ごぁいひとがいぢめるよぉぉーー!!" ああ、この声だったらきっと自分もすぐ起きられるんだろうな。 主の人間は、そんなことを思いつつ、玄関のドアを開けた。 おしまい。 ============================ 自分の憧れのライフスタイル(?)を書いてしまった結果がコレだよ! まぁ近所の子どもにいじめられていたら助けると思いますが。 たぶん、子ども相手に大人げなくマジギレしちゃうかもです; あと一部に特撮ネタが無駄に入っていますが、ご容赦を。 『仮面ライダーゆケイド』とか妄想してました。 by ティガれみりゃの人 ============================
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妄想乙な内容です コケコッコー ゆっくりしていってね!! 「あ?……あー、あさか」 にわとりとゆっくりの鳴き声に目を覚ます。 まだ日が出たばっかりだが田舎なんてこんなもんだ。都会では日が沈んでも起きてるらしいが。 顔を水で洗うといつものように朝の作業。窓を開けて畑の見回り。 そして裏庭の鶏小屋に向かう。 コケーッ 「お前は朝から元気だね」 鶏にそうぼやくと小屋の中を覗く。そこには卵が一つ。今日の朝食決定。 四羽いるんだからもう少し生んでほしいものだが、餌をやらずに卵だけを失敬してる身なのでここは潔く引く。 そしてもう一つの小屋に向かう。 「ゆ~、ゆっくりしていってね~」 調子っぱずれの歌声が聞こえる小屋の屋根をはずす、そこにはゆっくりのつがいが入っていた。 れいむ種とまりさ種のありがちなやつだ。 こいつらは飼っているゆっくりだ。まあ飼っているとはいっても餌はやってない。 その辺にいたゆっくりを捕まえてこの柵で囲った庭に放りこんだだけのものだ。 餌は庭の雑草。草取りしないですむので便利だ。そしてなにより生まれたゆっくりはお菓子になる。 まぁ分かりやすくいうなら家畜である。 そして予想通りれいむの頭には植物が生えており、七匹の赤ちゃんゆっくりがくっついていた。 「ゆっ!ゆっくりできないじじいはたべものおいてしんでね!!」 「あっちいってね!!そしてしんでね!!」 「はいはい」 ぶちぶち 「あがぢゃんがああああああ!!!!!」 「どうぢでごんだごどずづのおおおおおお!!!!!」 文句をいうゆっくりを無視してくっついている赤ゆっくりをちぎる。 全部手のひらに収まるくらいでちぎりやすい。そしてさっさとはずした屋根を元に戻す。 屋根を取り外しできるのは簡単にゆっくりから赤ゆっくりを奪えるため。こいつらは上からの攻撃に弱いのだ。 まあやろうと思えば横からでも簡単だが。 回収したゆっくりと卵を持って俺は家の中に戻っていった。 「うーし、今日の予定は…肥料作りだったな」 朝食を食べて簡単に畑と田の手入れをした後、近くの広場に移動する。 そこでは大量のゆっくりが檻に入れられていた。周りでは他の大人達が作業の準備をしている。 俺はいとこの姿を探す。いた。 「おっさん手伝いに来たぞ」 「ん?ああ、来たか。早速だが作業を始めるから木箱を運んでくれ」 「おいーす」 こいつはいとこのおっさん。実際年上なのと見た目がふけてるのでおっさんと呼んでいる。 ちなみに妻帯者だ。それなりに村では発言力があり、結構世話になってる。 まぁこの話の中ではあんまり関係ない設定だが ある程度作業場が整うと早速肥料作りが始まった。 「せまいよ!!ここからだしてね!!」 「れいむをだしてね!!ゆっくりできないよ!!」 「ここからだしてくれるならかんしゃしないこともないわよ!!」 やり方を説明すると、まずこの檻の中で騒ぐゆっくりが材料。 こいつらは近くの山にいるやつを村の子供と猟師が三日くらいかけて集めてきたやつだ。 下の方にいるやつは飢えて死に掛かってるが肥料には使えるので問題ない。 まずこいつらの飾りをはずす。これは断熱にすぐれた布なので冬にそなえ取っておく 「でいぶのおでぃぼんがえじでね!!!!」 「ばでぃざのぼうじがああああ!!!」 ハンマーで一撃でつぶす。 「ぶぎゃ!」 「やめでる!!」 そして餡子の塊を木箱に入れる。このとき藁や牛糞などを混ぜ込み、運びやすい木箱に入れて保存する。 しばらく置いとけば立派な肥料の完成。実に簡単で、しかも作物がよく育つ。 ただ、全ての畑に撒くのに必要な量を作るのに、村中総出でやって半日くらいはかかるのが難点ではある。 まぁ冬に飢えるよりましだ。 「やめてね!!ゆっくりできないよ!!」 「つぶさないでね!!みんなでゆっくりしようよ!!」 「れいむはどうなってもいいからまりさはたすけてね!!」 その光景を見た檻の中のゆっくりが騒いでいる。うるさいがこっちは作業中、黙らせるのもめんどくさい。 しばらくやってると日が上にまで昇り、昼の時間。 俺はおっさんの家族とともにその辺に座って昼食をいただく。しばらく昼食休憩だ。 のんびり談笑しながら食事をするがその間も檻の中のゆっくり達は騒いでいる。 「れいむにそのたべものよこしてね!!ついでにここからだしてね!!」 「ざっざどよごぜぐぞじじいいいいい!!!!!」 「とかいはなありすにたべものをよこさないなんてとんだいなかものね!!」 ここは田舎です。関係ないがその田舎にすんでるありすはどう考えても都会派ではないよなぁ。 しばしの休憩の後また作業を開始。当たり一帯に叫び声が響くが誰も気にせずもくもくと作業する つぶし続けて日がやや傾いた頃、全部のゆっくりをつぶし終える。 「おつかれさま」 「あーくたびれた。饅頭ある?」 「はい饅頭。お茶もあるわよ」 「お、感謝感謝」 おっさんの奥さんから饅頭をもらう。もちろんゆっくりだ。 ゆっくりの飾りと邪魔な髪の毛をとって縦に紐で縛ったものが渡された。 ゆっくりは苦痛を受けることで甘くおいしくなる。そのために変形する程度にきつく縛ってある。 一応逃げるのを防ぐ意味合いもあるが、飾りも髪もないので逃げても仲間につまはじきされるのがオチだろう。 「ゆぎぎぎ…」 髪の毛がないので元々の種族すら分からないが、まぁどうでもいい話だ。うまいなら問題ない。 ゆっくりの紐をはずすと早速一口。 「うめぇ」 適度に苦痛を与えていたみたいで結構うまい。これだからゆっくりはやめられん。 「まだまだたくさんあるからたくさん食べていいわよ」 「じゃあ遠慮なく」 俺はこの後さらに三匹食べた。労働の後の一服とはいいもんだ。 夕方、空が赤く染まる頃。 畑の周りの罠を点検する。 ゆっくりがかかってることがあるため大体日が沈むころに確認するのだ。 仕掛けてあるのは落とし穴とゆっくり用トラバサミ。 ゆっくり用トラバサミはそれほどバネが強くなく刃も鋭くない、人間が踏んでも痛いだけの代物だ。 しかしゆっくりには十分な武器、手がないゆっくりにはバネが弱くても解除できないのだ。 こういった対ゆっくり用トラップを仕掛ける人は多い。 単純にゆっくりが畑を荒らさないようにするのはもちろん、ゆっくりそのものを売って副収入にするからだ。 また、畑を荒らすゆっくりは大抵ゆっくりの中でも性格が悪いので、そういったやからの駆除にも役立つ。 「いだいいいいいいい!!!!!はやぐだずげろおおおお!!!」 「はずしかたがわからないよー」 「まりさがんばってね!!れいむもがんばるからね!!」 早速かかってた。罠にかかったゆっくりまりさと、その周りにいるれいむとちぇんの三匹。 叫び声からまりさはゲスかもしれん。 「お前らなにやってるんだ?」 「ゆゆ!!にんげんさんがきたよ!!」 「にげるんだね、わかるよ!!」 「どうじでにげるんだぜ!!さっさとばりざざまをだずげるんだぜ!!」 あっという間に逃げるれいむとちぇん。こいつらの判断は正しい。 圧倒的に自分より強いやつが現れたらすぐに逃げるのは野生種の基本だ。 さて、ゆっくりに逃げられたまりさはどうするのかな 「じじい!!ばりざざまをだずげろ!!」 どうやら自分の立場を分かっていないらしい。やれやれ。 俺はまりさを罠からはずすと帽子をとって籠の中に放り込む。 解放しろだの帽子かえせだのおいしいものよこせだの叫ぶまりさを無視して罠の点検。 これ以外にかかっているゆっくりはいなかった。まぁそんなしょっちゅうゆっくりも来るわけではない。 ちなみにこのまりさは適当に痛めつけて保存箱に入れた。 夜 「ふー、満足満足」 ガタガタ おっさんの家に行って晩飯をたらふく食って家に帰ってきた俺。 お前もそろそろ嫁をもらったらどうだと言われてどうしたもんかなと考える。 田舎は結婚するのが当たり前だ。しかもいろんな村とつながりがあるから相手にも困らない。 「あー、でもなー」 しかしそういったことにいまいち乗り気になれない俺。 「ゆうううう!たべものがみつからないよ!!!」 「どうしてえええ!!??」 「おにゃかちゅいたよー」 いつものように寝室に行くとゆっくりのつがいがいた。ついでに子供もいる。 ありきたりなれいむとまりさだ。遭遇率が高いのは単純にこいつらが一番多いのだ。 たぶん俺が出かけている間に潜入して人間の食べ物を奪うつもりだったに違いない。 しかしそういったゆっくりのありがちな行動の対策など当に出来ている。 食べ物関係は全部上の方の棚だし、大量に収穫した野菜は鍵つきの倉の中にしっかり保管しているのだ。 地面に近いところにあるのはゆっくりの飾りや人間用の生活用品ばっかりである。 「しかたないからゆっくりたべものをもってこようね!」 「ゆうう…さすがにまりさもあきらめるよ…」 「れいみゅたちはここでゆっくりしてるね!」 「おい」 俺が声をかけると飛び上がって驚くゆっくり一家。今まで気づかなかったのだろう。 本当に野生種かと疑問に思ってしまう。 「ゆっ!!ここはまりさがみつけたいえだよ!!ゆっくりでていってね!!」 「そうだよ!!ついでにたべものもよういしてね!!」 「でていっちぇね!!」 「…あー」 相手にするのめんどくさいし適当に追い返そう。 俺はゆっくり一家をつかむと縁側から外に投げ捨てた。 『ゆべぇ!!』 見事につぶれた。 「なにするの!!もうおこったよ!!こうかいしながらゆっくりしんでね!!」 「まりさがんばってね!!」 「がんばっちぇね!!」 ふぅ、やっぱり痛めつけないとだめか。 こっちに向かって体当たりしてくるまりさを容赦なく蹴り上げる。そして落ちてきたところをもう一発。 「ばぎらべっ!!!」 見事に決まった。 べりょんべりょんと跳ねて家族の所に転がるまりさ。はやくも虫の息といった感じだ。 「まりざあああああ!!!」 「どうちでごんだごどずづのおおお!!!」 攻撃してきたから反撃しただけですがなにか? 「これ以上痛い目にあいたくなかったらさっさと山に帰れ。そして二度とここに来るな」 「ゆぎ!!」 ここで一発脅しておく。そうすれば二度とこいつらもこないだろう。たぶん。 「だめだよ!!よるはれみりゃがでるんだよ!!ゆっくりできないよ!!」 「ここでゆっきゅりさせてね!!」 村の適当な家を占領するつもりだったのか…なんというだめ饅頭。 「あー、面倒な」 ゆっくり一家どもを裏庭に放りこむ。例のゆっくりを飼ってる庭だ。そこなら少なくとも野獣に襲われはしない。 たまにれみりゃが入り込んで食われてることはあるけど。 「いたいよ!!やめてね!!」 「しったことか。お前らはそこでずっとゆっくりしてろ」 「ゆっくりするからおかしよこしてね!!」 「お前らの死体ならやるが?」 「ごめんなさい!あやまるからゆるしてね!!」 こぶしをぽきぽき鳴らすとあっさり謝るれいむ。最初からこんなだと楽なんだが。 そんなこんなで俺の庭にはゆっくりが増えることになった。 「まりさしっかりしてね!!」 「しっかりしちぇね!!」 「ゆううううう…」 「…」 ふむ、家族か…。 やっぱ俺を気遣う嫁はほしいかもしれん。ちらりとそんなことを思う。さすがにアホはいらんが とりあえずうるさいゆっくりどもをそれぞれ一発ずつ殴ると俺は寝ることにした。 ~~~~~~ 田舎にゆっくりがいたらこんな感じかなぁと妄想してみた。 一応ゆっくりメインになるように書いてます。つーか日常会話が書けん 別に書いてるSSのネタがかぶったのに少し困ってたりします。途中まで書いたやつどうするかな… しかも最近ちょっと書いてなかったせいか実力が落ちてきてる気がする…元々そんな無いけど 過去作品 巨大(ry 餌やり ゆっくり対策 巨大まりさ襲来 ゆっくり埋め どすまりさの失敗 原点 ゆっくり駆除ありす まきぞえ なぐる このSSに感想を付ける
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夕日の中を木枯らしが吹き抜け枯葉を巻き上げる。 晩秋から初冬への境 豊饒の季節はもうすぐ終わりを告げる。 この季節はゆっくりたちがもっともゆっくりできない、否ゆっくりしてはいけない季節である。 なぜなら冬篭りの準備をしなければならないから。 皆準備の為に跳ね回り食料と資材を集める。 今年生まれた子供たちも母親と同じ仕事が出来るほどに成長し 姉妹達を率いて下草を集めたり、木の実を埋めたりと忙しい。 食料を集め、下草を敷き、入り口を塞ぐ頃には冬が来る。 「まつんだど~」「みゃ~て~」 「ゆ!ゆ!ゆうぅぅぅぅぅ…」 日に日に三日月に近づく月の下 ご多分に漏れず冬篭りの準備に急ぐのは体つきのれみりゃの親子 ただし彼らの準備は食料集めではない。 食いだめである。 冬の間に外に出るゆっくりは少ない。 必然的にれみりゃの餌も少なくなる。いくら狩りに出ても十分な食料は得られない。 したがってれみりゃ種は冬眠するゆっくりとなった。 冬の訪れまでに出来るだけ沢山の栄養分を蓄え、後は眠るのだ。 春先と盛夏に生まれた二匹の子供たちも狩りの仕方を覚え、多くのゆっくりを狩った。 体は指先まで丸々と太り、パンパンに張った血色の良い肌は白桃色に輝いている。 「やったどぉ~ごはんだどぉ~」 捕まえたゆっくりを抱えて巣に戻るれみりゃ親子 少々飛行するのに支障が出ているらしく がさがさと木の枝に体を擦っているが、この程度でなければ冬は越せない。 今回の冬眠場所は大きな木の下に掘った穴の中 入り口は残雪の心配の少ないよう東向き しっかりと下草を敷いたので寝心地は抜群 春まで快適に過ごせるだろう。 「お~いし~どぉ~」「う~」「さいごのでなーだどぉ~」 れみりゃ親子は今年最後の食事となるゆっくりありすを食べていた。 このありすは少々ゆっくりしすぎたの。 この季節の夜に外を出歩いていたのだから。 寒さに強くないゆっくりは晩秋の夜にはけして出歩かない。 夜はれみりゃの時間だからだ。 おそらくこのゆっくりしすぎたありすは 皆が巣を塞ぎ始めるのを見てあわてて冬篭りの準備を始めたのだろう。 食料になるものは殆どとり尽くされた森の中を彷徨い 冷たい秋風に吹かれ動きが鈍ったところをれみりゃに襲われたのだ。 たっぷりと栄養を取った健康なれみりゃは少々の寒さにもへこたれない。 秋風の中を自在に飛び、獲物を狩って冬に備える。 知能は消して高くないれみりゃが今日まで生き延びている理由は このあたりにあるのかもしれない。 「うぅ~はぁっぱぁ~ぱぁっぱぁ~はぁっぱぁっぱぁ~」 ばさばさと落ち葉や枯れ草、小石や小枝を巣の入り口に撒くれみりゃ 遊んでいるのではない。巣穴を偽装して隠しているのだ。 捕食種といえど油断は出来ない。長い眠りに付く冬眠中は尚更だ。 「うぅ~いぃしをつぅんでぇ~すぅきぃまぁをつぅめぇてぇ~つぅちぃをぉぬぅってぇ~」 親子代々伝わる歌のようなものを呟きながられみりゃは内側から穴を塞いでゆく。 巣穴の入り口に石と土と小枝を積み上げ、草や苔を隙間に詰め込む。 さらにその上から土をぺたぺたと塗りつければ封鎖完了だ。 「かんせいだどぉ~」 「やったどぉ~」「これであんしんだどぉ~」 入り口を塞いだらあとは眠るだけだ。 下草の上に親子三匹、川の字で寝転ぶ。 「う~!ふゆどをこすどぉ~!!はるまでぐっすりだどぉ~」 「はるまで~」「ぐっしゅり~」 おそらくもう数日で初雪が舞う。 この一家はそれすらも知らずに眠り続けるのだろう。 暖かい春の日差しが雪を溶かすまで となるはずであったのだが。 「うぅ~」 …ックザッ… …ックザック… 「う~?」 ザック…ザッ… 「うううぅ~!?」 ザクッ 「よしやったぞ!!」 「うー!!」 突然巣の中に光と寒気が流れ込んでくる。 飛び起きたれみりゃの目に白銀の世界と黒い二つの影が飛び込んできた。 「おし、大当たり!れみりゃだ。」 「やりましたね兄貴!!」 男たちはれみりゃを縛り上げると次々と袋の中へ放り込んでゆく。 「みゃあみゃあ!!」 「あがぢゃあああぁぁぁぁん!!あがぢゃあああぁぁぁぁん!!」 泣き叫ぶれみりゃたちを無視して袋を荷車に放り込む。 「ゆっぐりじねぇぇぇ!!」「だぜえぇぇぇ」「う~う~う~!!」 荷台には既にいくつもの袋が並んでいる。中身はすべて体つきのれみりゃかふらんである。 「こいつらは高く売れるからな。これで首が繋がったぜ。」 「兄貴が闘ゆっくりで有り金全部スっちまった時はどうなるかと思いましたけどね。 こんな特技があったんですね。兄貴って。」 この二人は人里に住む与太者たち。金策の為に一稼ぎしに来たのだ。 「死んだ親父がゆっくり取りの名人でな。俺もよく一緒に取りに行ったもんさ。」 「しかし饅頭なんざいつでも一緒じゃないんですかね?なんで今だけ高くなるんです。」 「ばーか、ゆっくりだって旬ってのがあるんだよ。れみりゃやふらんは今ぐらいの奴一番だ。 冬を越すためにたらふく食って油が乗ってるからな。質が違うんだよ。 知ってるか?なんでこいつらに体がついてるのか。」 「いえ、知りませんね。人間みたいに動けるからですかい?」 「それが違うんだよ。こいつらは道具を使える頭がねえからな。 栄養を蓄えるためなんだよこいつらが体つきなのは。」 「へえ、じゃあ兄貴の下腹といっしょですかい。」 「おめぇあとで覚えてろよ。まあそんなもんさ、冬眠中に困らないようにそうなったんだろうな。 同じ肉まんでも頭と体じゃ味も値段も違うんだ。」 荷車をがらがらと引きながら歩く二人 荷台には二十匹ほどのれみりゃとふらん。 「じゃあこないだのれみりゃに自分の子供で肉まん作らせてた店。 だから高かったんですね。」 「そうさ、あの店のは本物の親子だからな。体は取っても死なないってわかってるから体で作るんだ。 赤の他人のれみりゃに作らせると頭も体も関係なしに…おっとまたあったぜあそこだ。」 「よくわかりますね。俺にはぜんぜんわからねえや。」 「年季がちがうさな。年季が」 男はそういいながらスコップでざくざくと雪を掘っていく。 数十センチ掘ればぼこりと土がへこみその向こうには体つきの 「むきゅうぅぅぅ…ごほん……」 紫色の奇妙な物体。そして大量のチラシや新聞紙 一瞬ゆっくりぱちゅりーのようにも見えたが微妙に違う。 もやしのように細いが体がついているのだ。 「ありゃ、違ったぜこいつは」 「なんですこの紙くずまみれのは」 「こりゃあぱちゅりぃだな。体つきのゆっくりぱちゅりーだよ。 穴の塞ぎ方が似てるから間違えたんだ。」 「案外兄貴もあてになりませんね。」 「うるせえな久々なんだから仕方ねえだろ」 男達の会話をよそに冬眠中の巣穴を暴かれたぱちゅりぃは 大量の紙屑に囲まれて眠ったままだ。 いや、反応が薄いだけで起きてはいるのかもしれない。 どちらにせよ頭に霞が掛かっていることに代わりはないが。 「で、こいつは売れるんでしかい?兄貴 こいつの体も油が乗ってるんでしょ?」 「こいつの体はなぁ…ちょっと違うんだよ。」 「と、いいますと?」 「こいつは食うモンがなあ…ああ、見ろよほれ。」 むきゅむきゅと寝言を呟きながら手を伸ばすぱちゅりぃ その手が掴んだのは干からびた野菜くず。 ではなくなんと紙屑の山の中のチラシだった。 「えっと兄貴、まさかこいつ。」 「そのまさかだ。見てろよ。」 チラシを掴んだぱちゅりぃは 「むきゅうぅん。むきゅうぅん。」 それをそのまま口に運んだ。 しばらくの間もしゃもしゃと咀嚼したあとゆっくりと飲み込む。 この間なんと35秒、驚異のゆっくりっぷりである。 よく見てみれば紙屑だらけのぱちゅりぃの巣に食料はほとんどない。 あるのは紙屑ばかりである。 防寒材としては優秀かもしれないが普通なら食料にはならない。 それを食料にしてしまうのが歩く紫もやしことぱちゅりぃである。 虚弱でありながら妙に頑丈な肉体を持つ彼女は 生き延びるために驚異の消化力を身につけたのだ。 「こいつってこんなもんばっかり食ってるんですかね?」 「らしいな。弱くてまともな餌は取れないからこんなもんを食うんだろうが。 栄養も殆どないだろうからな。だから弱いのかもな。」 「卵が先か鶏が先かみたいな話ですね。で、こいつは食えますかね?」 「筋だらけだろうさ。やめとこう。」 その時男たちは下から見上げる視線に気づいた。 いつのまにかぱちゅりぃが目を覚ましていたのだ。 独特のどろりと濁った目で男達を見つめるぱちゅりぃ 常にもぐもぐと動き続ける口をゆっくりと開くた。 「ごほんはどこ?」 「は?」 「むきゅぅ、もってかないでぇぇ…」 蚊の鳴くようなか細い声で喋るぱちゅりぃ 白い雪と黒い土、灰色の紙屑と紫色のぱちゅりぃ 前衛芸術家かなにかなら喜ぶかもしれないが男たちにはもう限界だった。 「はいはいごほんね、ごほんだよ」 そういってちり紙代わりの天狗の新聞をぱちゅりぃに押し付ける。 「むきゅぅぅぅごほん、ぱちゅりぃのごほん」 嬉しいのだろうか上体を陽炎のように揺らすぱちゅりぃ 「あーはいはいよかったねごほんだね。おやすみね。」 「春までねむってようなぁぱちゅりぃ」 「むぎゅうううぅぅぅぅ!!」 ぱちゅりぃの体を紙屑の山に押し込むと そのまま土をかけて埋めもどす。 少々手荒すぎる気もするがなに紙を食べて生き延びられるゆっくりだ。 これくらいはどうということもあるまい。 「しかしあんなゆっくりもいるんですね。兄貴」 「わからんもんだな。案外と」 荷車を引きながら人里を目指す男達 荷台のれみりゃ、ふらんの体力も尽きたらしく静かなものだ。 冬を生き延びようとゆっくりを食べたこのゆっくりたちは 冬を彩る肉まんアンまんとして人々に食べられる。 なんとも因果な事ではないか。 「おそくなっちまったな。しかし」 「晩飯にこいつらでも食いましょうか。」 「馬鹿言うんじゃねえよ。まったく」 このSSに感想を付ける
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※俺設定注意 ドスまりさの目の前でゆっくり達は全滅した。 泣き喚くもの、状況を理解せずに脅しつけるもの、命乞いをするもの。 人間はそんなゆっくり達を差別しない。 全て平等に、踏み潰し、切り裂き、引き千切り、殺す。 親ゆっくりも子ゆっくりも赤ゆっくりも老ゆっくりもすべてみんな殺されてゆく。 もちろん、ドスまりさもその殺戮の範疇にいた。 体は切り裂かれ、脳天に杭を打ち込まれているドスまりさの意識はない。 やがて処刑は終わる。 里の広場という処刑場にあるのは餡子。餡子。餡子の海。 気付けば日も暮れ始め、人間達はそれぞれの家に帰る。満身創痍のドスまりさを置いて。 だが、ここで奇跡が起こる。 ドスまりさの意識が目覚める。 本来ならば有り得えない。いくらドスとて、これほどの傷を負えばそのまま死ぬはずだった。 やがてドスまりさは地面にうち捨てられた帽子を拾い、ゆっくりと這い出す。 まただ。また、やってしまった。 ドスまりさはゆっくりと這う。おうちへと帰るのだ。 今回で何度目だ?一体、いくら死なせれば気が済むのだ? ドスまりさの胸中に浮かぶものは後悔。 ドスまりさは今まで何度も群れの全滅を見てきた。 ある時は突然の大雨。ある時はれみりゃの大群。そして、今回は人間の里に手を出してしまった。 他にも例をあげればきりが無い。 それほどまでにゆっくりは死にやすい。 今度こそ。今度こそこの群れは、立派にゆっくりさせてみせる。 そんな想いを何度も抱き、何度も打ち砕かれた。 この世はゆっくりできないものが多すぎる。そうだ。そうなのだ。 人間もれみりゃもふらんも山犬も雨も風も自然も何もかも、すべてがゆっくりできない。 もう解った。ゆっくりできないものには近づかない。近づきたくない。 だから次の群れは。次の群れこそはゆっくりさせてみせる。 ドスまりさは傷を庇うようにゆっくり這っていく。 その脳天には、いまだに杭が打ち込まれたままになっていた。 人間が立ち入ろうともしないような森の奥。 ここはゆっくりの理想郷。 ここのゆっくりは皆ゆっくりと、しあわせに暮らしている。 ゆっくりできないものなど無い。すべてがゆっくりしている。 ドスまりさは全てのゆっくりがしあわせー!になれるように、この理想郷を「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」と名づけた。 ゆっくりぱらのいあ 日の光が射しこむ朝。木の下に掘ったおうちの中で、まりさはゆっくり目覚める。 遂にこの日がやってきてしまった。 朝日の下、憂鬱な気分を紛らわすように溜息を吐く。 まりさの属する群れには、あるひとつの掟があった。 成人を迎えたゆっくりは、定期的に”お仕事”に就かねばならない。 まりさはこの春大人の仲間入りをした。今日初めて”お仕事”に就く。 これが普通の狩りや家事ならば、喜んでやろう。 まりさは本来そういう仕事に憧れていたし、その能力もあった。 だが違う。これからやる”お仕事”はどう考えても喜べるものではない。 ”お仕事”を放棄することは出来ない。 そんなことをすれば群れの長が黙っては居ない。 良くて追放、悪ければ・・・・・・まりさは考えるのを止める。 こんなことを考えても仕方が無い。 今日”お仕事”を済ませれば、当分の間は大丈夫。この群れに大人のゆっくりは数多くいる。 ゆっくり特有の前向き思考で、まりさは現状の問題を棚上げする。 こんな時はお兄さんと遊んだときのことを思い出そう。 まりさの話を聞いてくれて、まりさにいろんなことを教えてくれたとってもいい人。 今度はいつ会えるのだろう?また会って遊んでほしい。 楽しいことを思い浮かべるけれどもやっぱり憂鬱。 まりさはそんな気分で、森の広場へと向かっていった。 森の広場。 そこだけ木が切り取られたような広い空間に、巨大な饅頭が鎮座している。 この群れの長、ドスまりさだ。 「まりさ。まりさはゆっくりしてる?」 「もちろんだよドス。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』だよ」 嘘だ。本当はゆっくりなどしていない。 だが嘘をつく。そうでなければ殺されてしまうから。 このドスまりさは狂っていた。 ドスまりさはこの群れ、「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」をゆっくりにとっての理想郷だと信じ込んでいる。 ドスまりさは森の外は、ゆっくりできないものがうようよしていると信じている。 彼らは「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」の破壊を目的にしているのだ。 そのためドスまりさは、こんな森の奥に引っ込み、手出しができないようにした。 さらにドスまりさは、群れのゆっくりの中にも反逆者が混じっている、と信じている。 彼らはゆっくりできないもの、例えば人間と通じており、「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」の破壊を目論んでいる。 彼らは忠実な群れのゆっくりに化けている。探し出し、処刑しなくてはならない。 ここのゆっくりは、皆ゆっくりしている。何故ならば、ドスが皆にゆっくりを提供しているから。 ドスはみんなの友達であり、ドスはみんなのことを常に考えている、ドスまりさは自分でそう信じている。 従って、群れのゆっくりは皆ゆっくりとしていなければならない。 もしゆっくりとしていないならば、それこそ反逆者である証拠だ。 「れいむ。れいむはゆっくりしてる?」 「もちろんだよドス。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』だよ」 「ありす。ありすはゆっくりしてる?」 「もちろんよドス。ゆっくりしてるのはとかいはの『ぎむ』だわ」 「ぱちゅりー。ぱちゅりーはゆっくりしてる?」 「むきゅ、もちろんよドス。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』よ」 「ちぇん。ちぇんはゆっくりしてる?」 「もちろんだよー。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』なんだねー」 今日集められたゆっくりは5匹。 れいむ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、そしてまりさ。 この中で”お仕事”が初めてなのはまりさとぱちゅりー。 2匹は幼馴染みだった。 「今日はあつまってくれてありがとう。さっそく”お仕事”の説明をするよ」 一通り挨拶し終えたドスは話を切り出す。 「この前、ゆっくりできないれみりゃを見かけたという報告があったよ」 「れみりゃはゆっくりできない。ゆっくりできないものはこの森にいてはいけない」 「ドスはそう考えたよ。だからみんなに集まってもらった」 「みんなの”お仕事”は、そのれみりゃを永遠にゆっくりさせること」 「もちろん、反逆者がいたら報告してね。場合によってはその場で処刑してもいいよ」 きた。これだ。まったくゆっくりできない。 両親から聞いた話の通り過ぎて、まりさはさらに憂鬱になる。 「全てのれみりゃ・ふらん・その他捕食種はゆっくりできないよ」 「この森に住むゆっくりたちは全てゆっくりしており、この「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」は そうした完璧なゆっくりのみに許されたゆーとぴあだよ」 「ゆっくりしていない外見、中身、その他もろもろを持ったゆっくりは見つけ出され、根絶しなければならないよ」 知っている。 この森には飾りを無くしたゆっくりなんて者は居ない。 この森にはドスに逆らうゆっくりなんて居ない。 なぜなら飾りを無くせばドスに殺されるから。ドスに歯向かえば殺されるから。 最低のディストピアだ。 「ドスに内緒のお話・行動をしているゆっくりは反逆者だよ」 「ドスが知らない、認めていない組織に参加しているゆっくり。ドスが知らないということはその組織は秘密組織であり、 それに参加する者はドスや、「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」に危害を加えようとしているものと判断するよ」 「そんな反逆者は、狩りだして処刑されねばならないよ」 それも知っている。 秘密の狩りに出かけたもの。隠れてすっきりをしたもの。 彼らは全てドスに殺された。 この群れには密告というルールがある。 不穏な行動を取るゆっくりをドスに密告し、その報酬として安全を約束される。 自分の保身のために他のゆっくりを売る。 お陰でこの森から逃げる算段をつけることすらも難しい。 「ドスは君達の力量を考え、十分な装備を提供し、適切な任務を与えるよ」 「つまり、君達の任務成功率は100%だとドスは確信しているよ」 嘘だ。 ただのゆっくりがたった五人で、れみりゃに敵うと思っているのか。 それにこの森にれみりゃなんて居ない。 とっくの昔にドスまりさが狩りつくしてしまった。 報告というのもどうせ誰かの口から出任せ。 居ないものをどうやって捜せというのか。 つまり、まりさ達の任務成功率は0%だ。 ドスまりさの傍からゆっくりにとりが顔を出す。 このにとりも狂っていた。 まりさ達に手渡されるのは複雑に変形した棒のような何か。 おそらくはドスまりさの話を聞いて作った何かの模造品。これが「十分な装備」とは、恐れ入る。 「もし任務が失敗してしまうようならば、ドスはそれを反逆者の陰謀だと判断するよ」 まりさ達は任務の失敗を言い繕うために、反逆者を捜し出す。 別に反逆者である必要はない。誰かをそう仕立て上げれば良いだけのこと。 これからまりさたちが行うのは、自分達の命をかけた騙し合いだった。 「それからもう一つ!もし人間さんを見つけたら、必ず報告してね!」 「人間さんはゆっくりできないよ!人間さんはゆっくりできないよ!人間さんはゆっくりできないよ!」 壊れたようにドスまりさは繰り返す。 過去に何かあっただろう。それほどまでにドスまりさは人間を恐れている。 だがまりさは報告しない。 そんなことをすれば殺されてしまう。 ドスからすれば人間と会っているゆっくり=反逆者だからだ。 馬鹿正直に話をして、ドスまりさに反逆者と思われたら元も子もない。 「それじゃあみんな、頑張ってきてね!ドスはここで皆のことを応援してるよ!」 まりさ達5匹は、れみりゃが居たと報告された場所へ向かって歩き出す。 これから居もしないれみりゃを捜し出して、5匹の中の誰かを反逆者にするのだ。 まったくもって非生産的な”お仕事”。 楽しすぎて涙が出る。 そういえば、まりさは本当に反逆者なんだっけ。 ドスに内緒で人間さんと出会い、遊んだ。殺されるには十分な理由。 それだけのことで死んでたまるか。誰を犠牲にしてでも、絶対に生き延びてやる。 まりさはそう決意し、森の中を跳ねていった。 広場から遠く離れた森の何処か。 今まりさはひとり、森の中をぶらついていた。 当然のように、れみりゃはいなかった。 報告があったという洞穴。どこを探そうとれみりゃの影も形も見当たらない。 それでも一応、どこかに居るかもしれないという理由でまりさ達は分散して捜索を続けることにした。 死体は自分の無実を証明できない。 だから、まず先に殺してから相手に罪を被せることのほうが楽だ。 五人全員一緒に居ていつ誰から襲われるともわからない状況より、ひとりの方が気が楽だった。 このままでは任務は失敗に終わる。 その前に誰かに反逆者になってもらわねば。誰がいいだろうか?れいむあたりがいいかもしれない。 当然、相手も同じ事を考えている。殺るか殺られるか。 そう考えながら、まりさは周囲を捜索する振りを続ける。 突如。 目の前の茂みから、がさがさと音が鳴る。 まりさは驚愕する。 誰だ。れいむかありすかちぇんか。誰がまりさを殺しに来た。 いや、まさか。もしかしたられみりゃかもしれない。 もし本当にれみりゃが居たとしたら、今まりさはひとり。殺される。 あらゆる可能性が頭の中を駆け抜け、まりさを青褪めさせる。 しまった。いくら危険でも、全員で固まっていた方が良かったのかもしれない。 ここでまりさは殺され、後の4匹はまりさを反逆者ということにして生き延びる。 嫌だ。絶対に嫌だ。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない…… もうまりさが何を後悔しても遅い。茂みをかき分け、出てきたのは――― 「お、いたいた。まりさ、ゆっくりしていってね」 まりさの不安は外れた。茂みから出てきたのは、人間さん。 そう、まりさと一緒に遊んでくれたお兄さんだ。 安心とともに地面にふにゃりとへたれ込むまりさ。 「ゆ、ゆぅぅ……。びっくりさせないでね、おにいさん」 「?」 お兄さんが首をかしげている。一体何のことかわからないのだろう。 お兄さんに説明してあげなきゃ。まりさはゆっくりと、今の状況を説明し始めた。 「ふーん……成る程ね。難儀だな、お前も」 「ゆぅ……ゆっくりりかいしてくれて、うれしいよ……」 大体の説明を終え、お兄さんはまりさを励ましている。 こんな異常な話に理解を示してくれたお兄さんに、まりさはさらに好感を持った。 「お前んとこの長が狂ってて、今お前は誰に殺されるかわからない状況だと……すごい話だな」 「ゆ……そうなんだよ」 普通ならばこんな話は信じられない。少なくとも、まりさは信じない。 でもお兄さんは信じてくれている。人間さんはとってもゆっくりできるとまりさは思った。 「俺にはどうすることも出来ないけど……とりあえずこれ、食べるか?」 「ゆゆっ?それ、なぁに?」 懐から真っ赤な丸いものを取り出すお兄さん。 初めて見るそれに、まりさは疑問を呈する。 「見たこと無いのか?トマトっていうんだ。美味しいぞ」 「ゆっ……?」 日の光を浴びて輝くトマト。言われてみればとても美味しそうに見える。 まりさはふらふらとお兄さんに近寄り、トマトを一口かじる。 「おっ……おいしぃ~!!しあわせぇ~!!!」 思わず涙が出てしまう。 それくらいに美味しい。ほんのりとした酸味と甘さのコラボレーション。まるで太陽の味。 まりさは脇目も振らず、トマトを平らげる。 「おにいさん!ありがとう!おいしかったよ!」 「どういたしまして。傷物でよかったらまだまだあるよ」 更に懐からトマトを取り出すお兄さん。まりさはトマトにかぶりつく。 ああ、こんなに美味しいものをくれるだなんて。やっぱりお兄さんは良い人だ。人間さんはゆっくりできる。 ドスは何であそこまで人間さんを恐れるのだろう?こんなに人間さんはゆっくりできるのに。 赤い果実を食みながら、まりさはそんなことを思った。 もう日が高く昇っている。 お兄さんと別れ、まりさは歩き出す。 トマトのお陰でおなかは満腹。気力も充実。 今ならば誰にも負ける気がしない。生き残るには最高のコンディションだ。 そろそろ洞穴の前に戻るべきか。 このまま一人で居続けたならば、いつの間にか反逆者に仕立て上げられ、逃亡したということになりかねない。 そうなればドスまりさの山狩りが始まる。逃げ切れるとは思えない。 まりさは急いで元来た道へと引き返す。 「ゆっくり!ゆっくりいそぐよ!……ゆっ!?」 何か声がする。 ゆっくりしていない罵声。何か争うような音。洞穴の前で誰かが戦っている。 まりさは木の陰に隠れ、様子を伺う。 「まっででねおぢびぢゃん!!今がらままがおぢびぢゃんのがだぎをうづがらね!!」 「ゆあ゛っ、ぐるな゛、ぐるな゛ああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」 ゆっくりありすとゆっくりれいむ。 恐怖を顔に貼り付けながら逃げるれいむを、修羅もかくやという表情のありすが追っている。 「までっ、までえええええぇぇぇぁぁぁああああ!!!!おぢびぢゃんのがだぎいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!」 「ゆひいいいぃぃぃぃ!!!!ごなっ、ごないでえええぇぇぇぇぇぇぁぁぁああ!!!!」 すでに両者はぼろぼろだ。まりさが到着する前からふたりは戦っていたのだろう。 「じねえええええええええええええぇぇぇぇえええ!!!!!」 「ゆびゅぇっ!!!」 ありすの体当たりが炸裂する。吹っ飛ぶれいむ。 「じねっ!じね、じねえええええぇぇぇ!!!」 「ゆびゅっ!!!ぶっ、ぼぉっ!!!」 すかさずれいむに圧し掛かるありす。 そのままれいむを踏みつけだした。 「おまえのっ、ぜいでっ!!まりざがっ、おぢびぢゃんがっ、じんだっ、んだっ!!」 「げびゅっ!!ぶびょっ!!びょぶっ!!ぼびっ!!ぶぽっ!!」 ありすの踏みつけは終わらない。 どんどん餡子を吐き出し小さくなっていくれいむ。 「おばえざえっ、おばえざえいながっだら、ありずはっ!!」 「びょっ!ぶっ!ぼぇっ!」 おそらく、ありすの家族はれいむの密告によって反逆者として処刑された。 偶然にもれいむと”お仕事”をすることになったありすは、仇を討とうとしたのだ。 こんな光景は珍しくない。密告によって家族を失うゆっくりは大勢いた。 「までぃざどっ!!!おぢびぢゃんどっ!!!いっじょにっ!!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ありすは止まらない。 れいむが皮だけになっても、まだ跳ね続けている。 「ありずは・・・・・・じあわぜに・・・・・・」 ようやくありすは止まる。 れいむだった饅頭皮に顔をうずめ、泣き始めた。 まりさは隠れるのをやめた。 そっとありすの傍に近寄る。 「ありす・・・・・・」 「ゆ・・・・・・?ま、まりさ・・・・・・?」 ありすは顔を上げる。涙と泥と餡子でぐちゃぐちゃの顔。 「まりさだ・・・・・・まりさ・・・・・・まりさ・・・・・・」 何度もまりさの名前を呼ぶありす。様子がおかしい。 「ゆふ、ゆふふ・・・・・・!あのれいむをやっつけたから、まりさがかえってきた!」 何を言ってる・・・・・・そう言おうとして、まりさはやめた。 このありすは狂った。長年の仇を討ち、復讐という精神の拠り所を失ったのだ。 「まりさが、まりさがかえってきた!」 れいむを殺しても、まりさとおちびちゃんは帰ってこない。 わかっていたはずの現実から逃避し、ありすは楽しい夢の世界へといった。 「あれ?まりさはかえってきたけど、おちびちゃんがいないわね?」 きょろきょろと周囲を振り返るありす。 その瞳に正気の色は無い。 「おちびちゃんったらいったいどこにいったのかしら・・・・・・まりさ、しってる?」 まりさに子供の居場所を尋ねるありす。 まりさは首を振り、わからないと言った。 まりさにあの世の場所などわかるはずも無い。 「もう、おちびちゃんったら!ままにこんなしんぱいさせて、いけないこね!」 言葉では怒りつつも、その顔は満面の笑顔で満たされている。 きっとおちびちゃんがいた頃のありすはこんな感じだったのだろう。 慈愛に満ちた、優しいママ。 「まりさはそこにいてね!ありすはおちびちゃんをさがしてくるわ!」 まりさを洞穴に残し、ふらふらとありすは歩いていく。 見つかるはずの無いおちびちゃんを捜しに行くのだ。 「おちびちゃん~♪かくれてないででておいで~♪」 少しずつありすの姿は遠く、小さくなっていく。 おちびちゃんを呼ぶ声は、本当に楽しそうだった。 やがて、ありすの姿は見えなくなった。 でも、あの声は。 楽しそうにおちびちゃんを呼ぶ声はいつまでも消えずに、まりさに届いていた。 それからすぐに、ちぇんとぱちゅりーは戻ってきた。 まりさはれいむが反逆者であったこと、自分がそれを倒したことを伝えた。 ありすはれいむに食われたことにした。 生きていると知られるよりも、死んでいると思われたほうがあのありすにとって幸せだと思えたのだ。 結局、任務は失敗に終わった。 邪悪なる反逆者・れいむがその命を以ってまりさたちを阻んだのだ、ということにした。 森の広場で、ドスまりさに報告を行う。 「―――というわけで、にんむはしっぱいしちゃったよ、ドス」 「ゆうう!!反逆者がいたなら、仕方ないね!!」 まりさの言い訳に納得するドス。 任務は失敗だが、反逆者を見つけたことで満足したようだ。 「それじゃあ皆、お疲れ様。今回の任務はおしまい―――」 任務の終了を言い渡そうとするドス。 れいむという犠牲を払って生き延びられたというまりさの安心を――― 「まってねドス!はんぎゃくしゃはまだこのなかにいるんだよ!わかってねー!」 ―――ちぇんの叫びが、阻んだ。 「ゆ?どういうこと、ちぇん?」 「わかるよー!まりさははんぎゃくしゃだったんだよー!」 まりさの息が詰まる。 一体どういうことだ。このまま行けば任務は完了するはずだったのに。 「ちぇんはみたんだよー!まりさがにんげんさんといっしょにいるところを! まりさはにんげんさんからなにかあかいたべものをもらっていたよー! たのしそうにおしゃべりしてたよー!きっとまえからにんげんさんをしっていたんだねー!」 ちぇんは見ていたのだ。まりさが人間さんと出会った一部始終を。 それだけならばまだ良かったかもしれない。その後ちぇんはまりさを見失った。 そして洞穴に戻ってみればまりさと、れいむの死体があった。 きっとまりさは人間さんの手下として、れいむを殺したに違いない。 ありすがれいむに喰われたというのも嘘だ。きっとまりさがありすを殺して、食ったんだ。 なにも知らぬちぇんが、そう思ったのも不思議ではない。 本当の反逆者を告発するのに一片の躊躇もない。 「まりさのいってたことはうそだよー!きっとれいむとありすはまりさにころされたんだよー!」 「・・・・・・本当なの?まりさ」 能面のような無表情でドスまりさが問う。 やばい。やばいやばいやばい。殺される。何とかしてこの場を切り抜けなければ―――! 「ちっ、ちがうよ!ドス!そのちぇんのいってることはうそだよ!」 咄嗟にそんな言葉が口から出る。 こうなったら、ちぇんを反逆者にしてしまおう。そうでなければ、自分がそうなる。 まりさは覚悟を決め、嘘を並べる。 「まりさはそんなことしらないよ!きっとちぇんがにんげんさんのてしたなんだよ! まりさをはんぎゃくしゃにして、ころそうとしているにちがないよ! どす!だまされちゃだめだよ!このちぇんのほうこそはんぎゃくしゃだよ!」 「ちがうよー!まりさがはんぎゃくしゃだよー!わかってねー!」 「・・・・・・ゆうううぅぅぅぅ・・・・・・」 ドスまりさは悩む。 両者の言っていることは正反対。どちらかが反逆者だという明らかな証拠が無い。 はたして本当のことを言っているのはちぇんか。まりさか。 「まりさはしょうにんがいるよ!まりさはぱちゅりーといっしょにいたよ!」 「むきゅっ!?」 突然話を振られ、うろたえるぱちゅりー。 ドスまりさがパチュリーの方を向き、訊ねる。 「本当なの、ぱちゅりー?」 「む、むきゅううううううう・・・・・・」 おろおろしているぱちゅりーを見ながら、ちぇんは哂う。 何を言っているんだ、あのまりさは。 あの時まりさはひとりで、ぱちゅりーなどいなかった。まりさは自分の首を絞めたようなものだ。 虚偽の告発は、それも反逆だ。あの反逆者まりさは、処刑されるのだ。 「・・・・・・ほ、ほんとうよ。ぱちゅはまりさとずっといっしょにいたわ!」 「にゃあ!?」 ぱちゅりーの言葉に驚くちぇん。 そんな。どうして。何故そんな嘘を。 ちぇんはぱちゅりーの言っていることがわからない。 「ぱちゅはまりさといっしょにいたけど、にんげんさんなんてみなかったわ!ちぇんのいってることはうそよ! きっとちぇんがにんげんさんにあって、まりさをはんぎゃくしゃにするよういわれたにちがいないわ!」 ちぇんは知らなかった。 このぱちゅりーはまりさの幼馴染みだということを。 日々互いが密告をする群れの中で、2匹は信頼しあっていたということを。 ぱちゅりーは何も知らない。 まりさが人間さんと出会っていたことなど知らない。 まりさの言っていたことは嘘だということも知らない。 ただ、まりさのため。そのためだけに今こうして口裏を合わせている。 「いだいなちせいをもったドスならわかるでしょう!ちぇんははんぎゃくしゃよ!」 「ちっちがうよおおおおおおおお!!!わがっでねえええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 今度はちぇんがうろたえる番だった。 まりさは反逆者だったはずなのに、いつのまにか自分が反逆者ということになっている。 しかも相手には証人が居る。2対1。絶体絶命。 「・・・・・・ドスは判断したよ」 ゆっくりと口を開くドスまりさ。 「ドスはちぇんを反逆者だと判断し、これを処刑するよ!」 「に゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あああ!!!ぢがうよおおおおお!!!ドズぅ、わがっでよおおおおおお!!!!」 泣きながら自身の潔白を訴えるちぇん。 だが無駄だ。もうドスまりさはちぇんを反逆者と決めている。反逆者の言うことなど聞かない。 ゆっくりと開かれる口。 そこにはちぇんを消し去るための光が満ちる。ドススパークだ。 「反逆者はゆっくりしないで死んでね!!」 閃光。 まりさは見た。ドスの口から放たれる、灼熱の焔を。 小さく引き絞られた口径により、威力を高められた光の槍がちぇんを穿つ。 スパークと言うよりはまるでレーザーのよう。 ドスまりさは少なくとも勤勉だった。 己の身を守るため、群れを人間やれみりゃから救うために研鑽し続けた。 その結果がこのレーザー。このドスまりさだけが編み出した、新たなる武器。 ちぇんの額に穴が開く。 びくびくと痙攣し、白目を剥くちぇん。穴は深く、ちぇんの後頭部まで貫通している。 だがドスまりさはまだ止めない。 二度三度、レーザーを撃つ。次々にちぇんの穴が増えていく。 発射時間を抑え、その代わりに連射を可能にしたこのレーザーに隙は無い。 危なかった。まりさはそう思う。 一歩間違えば、自分がこうなっていたのだ。ドスの恐ろしさを改めて再認識する。 ドスまりさは止まらない。 ドスまりさがレーザーを撃つたび、森にレーザーの発射音が木霊する。 最早ちぇんが蜂の巣と見分けが付かなくなった頃。 ようやくドスまりさはちぇんを撃つのをやめた。 「―――ふぅ。反逆者はゆっくり死んだよ!」 元ちぇんだった穴だらけの何かの前で、ドスまりさは笑顔でそう言った。 最初の一発で死んでいたのに、何故ここまでやる必要があるのか。 やはりドスまりさは狂っているのだ。どうしようもない偏執狂。 「ごめんね、まりさ。ドスはまりさのことを疑ってしまうところだったよ」 まりさに謝るドスまりさ。 疑ってしまうところだった?思い切り疑っていたではないか。今は謝罪より、さっさと開放してくれ。 まりさは心の中で毒突く。 「さぁ、まりさ、ぱちゅりー、ご苦労だったね!"お仕事"は終了だよ!」 今度こそ任務の完了を告げるドス。 ようやく終わった。まりさは安堵する。 このふざけた茶番も終わり。次の"お仕事"がいつかは解らないが、とりあえずそれまではゆっくりできる・・・・・・。 「まりさとぱちゅりーにはご褒美をあげなくっちゃね!」 突然、ドスまりさがそんなことを言い出した。 ご褒美?なんだそれは? 両親の話にも出てこなかったご褒美とやらに、まりさは興味を持つ。 もしかしてまりさ達が優秀だったからご褒美をくれるのかもしれない。 5人の内、2人も反逆者がいたのだ。普通だったら全滅していてもおかしくはない。 生き残った2人は、それだけ優秀だった。ならば一体どんなご褒美が出るのだろう。 もしかして綺麗なたからものかもしれない。 ドスまりさが持っていると言われていたキラキラと輝く石。 そんなものがあれば、まりさは一生他のゆっくりに自慢ができるだろう。 もしかして沢山の食べ物かもしれない。 ドスまりさは群れの食料を管理している。そこからご褒美としてまりさに融通してくれるのでは。 自分の身体が埋まるほどの量の食べ物。一体どれほど幸せだろう。 もしかして。もしかして。もしかして。 まりさの期待は際限なく高まる。 「まりさたちには・・・・・・あの・・・・・・えーと・・・・・・なんだっけ・・・・・・ あの赤くて丸い、とってもおいしいもの。あのほっぺが落ちそうになるあれの名前は・・・・・・」 ああ。それはトマトだ。赤くて丸くて美味しいもの。 あの太陽のような輝きを持った食べ物は、まりさの心の中に刻まれていた。 「ゆっ!ドス、それはとまとさんだよ!」 まりさは指摘する。ドスのご褒美はトマトだったのか。 トマトならばご褒美として申し分ない。さぁ。早くトマトを。トマトをくれ。 まりさがドスに向かってそう言おうとした時。 「・・・・・・まりさ、トマトさんって一体何?トマトさんは人間さんの食べ物だよ」 冷たく重い、ドスまりさの言葉が返ってきた。 「まりさ、まりさは人間さんのことをよく知らないはずなのに、なんでトマトさんのことを知っているの?」 まりさは凍りつく。 やばい。しまった。迂闊だった。何とかしなければ―――。 「まりさは人間さんと出会ったことがないんでしょ?それなのになんでトマトさんのことを知ってるの? 人間さんを知らないのに、トマトさんは知ってる。 もしかして、まりさは人間さんと出会ってるんじゃないの?」 ドスまりさはまりさを騙したのだ。 ちぇんを処刑したとき、ドスまりさはまりさのことも疑っていた。ちぇんの証言は具体的過ぎる。 赤い食べ物とは一体何か。恐らくだが、トマトのことか、苺のことだろう。 ドスまりさはまりさにカマをかけてみたのだ。知らないならば良し、もし知っているならば反逆者。 「まりさはドスに嘘をつき、人間さんと出会っていた。これは立派な反逆行為となるよ! よってドスはまりさを反逆者と見なし、これを処刑するよ!」 まりさの目の前が真っ暗になる。もう駄目だ。まりさは死ぬ。 絶望の涙を流すまりさ。 「それからぱちゅりー!ぱちゅりーはドスに嘘をついていたね! ぱちゅりーはまりさと一緒にいたと言ったけど、それなら人間さんと出会っていることになるよ!」 「む、むきゅ!ドス、じつは、ぱちゅりーは・・・・・・」 「もしぱちゅりーがまりさと一緒じゃなかったなら、それもドスに嘘をついたことになるよ! ぱちゅりーはドスに嘘をついた!これは立派な反逆行為であり、ドスはぱちゅりーを反逆者だと判断するよ!」 「む゛、む゛ぎゅううううううううううう!!!」 ぱちゅりーも反逆者となった。 もうまりさたちに逃げる手段はない。 「ドスはまりさ、ぱちゅりーの両名を反逆者として認め、刑の執行を開始するよ!」 またも口を開くドス。その中には滅びの光。 今度その照準が向けられるのはちぇんではない。狙うのは、まりさ達。 最早まりさたちに希望はない。絶望し、涙を流しながら寄り添う二匹。 一体何のために生まれてきたのか。 自分達はゆっくりするために生まれ、生きてきたはずだ。それが何故、こんなことに。何故こんなことで死ななければならない。 もっとゆっくりしたかった。まりさ達はそう叫ぼうとして。 その叫びは光の中に呑み込まれていった。 「・・・・・・ゆぅ。まさか全員死んでしまうとは思わなかったよ」 「でも次のまりさ達なら。今度のゆっくり達なら、もっとうまくやってくれるよね」 「―――もしもし、○○さんですか?ええ、はい。私です。いつもお世話になってます」 今俺は電話をかけていた。相手は少し離れた里の重役さん。 「はい。いました。きめえ丸が巡回中に見つけたんです。 ・・・・・・ええ、うちのゆっくり園の中に逃げ込んでました。もう群れを作っていますね」 少し前、とあるドスまりさが群れを率いて里にちょっかいを出したらしい。 勿論その群れは潰され、ドスも殺されたはず・・・・・・だった。 「ええ、いえ、いいんですよ。別にうちの商品の価値が下がるというわけでもないし。 こちらとしても貴重なドスがゆっくり園にいるというのは好ましいことですから」 ところがそのドスは満身創痍ながらも逃げ仰せ、今は俺が所有する食用ゆっくりの繁殖地―――「ゆっくり園」に逃げ込んだ。 ここと向こうの里ではかなりの距離があるというのに、大した奴だと思う。 「はい。それに、結構面白い個体ですよ、奴は。どうもそちらでお灸を据え過ぎたようでしてね。 どうやら人間を恐れているようなんです。それも異常なくらいに」 今のドスまりさはとても変わったルールというか、指導方法を群れに課している。 いや、指導方法とは言い方が悪かった。あれではまるで粛清と、独裁だ。本当に変わっている。 「それに他にも面白いところがありまして。"ドススパーク"ってご存知でしょう? あれが少し変わってましてね。まるでレーザーみたいに連射してるんですよ」 毎日毎日誰かを疑っては、殺す。その日々をドスまりさは送っている。 きっとあのレーザーはそんな中で生み出されたものかも。実に興味深い。 「ああ、大丈夫です。連射が効くといっても、相手は人間を恐れているし、危険はありませんよ。 それに、あのレーザー程度じゃ問題にはなりません。駆除しようと思えばいつでもできます」 それに何より面白いのは、ドスがそんな暴君だというのに意外と群れの安定は保たれているということだ。 心優しい名君より、狂った無慈悲な暴君。そっちの方がゆっくりには合っているのかもしれない。 「しばらくは様子を見ようと思っています。あのドスが一体どういう群れを作っていくのかが興味あるので。 ・・・・・・ええ、どうも。ありがとうございます。それでは、また」 受話器を置く。傍らにはゆうかと、きめえ丸が立っていた。 「よし、きめえ丸。お前はもう一度監視に言ってこい」 「おお、了解了解。まったくゆっくり使いの荒いことで」 「ゆうかは俺についてこい。ちょっとあの群れのゆっくりに接触するぞ」 「わかったわ、お兄さん」 はてさてドス。お前は一体、その狂った頭でどんな理想郷を作ろうとしているんだ。 人間が立ち入ろうともしないような森の奥。 いや、正確にはここは私有地。だから誰も立ち入ろうとしない。 ここはゆっくりの理想郷。 ここのゆっくりは皆ゆっくりと、しあわせに暮らしている。 ゆっくりできないものなど無い。すべてがゆっくりしている。 それは嘘だ。全てはドスの妄想。ただドスがそう思っているだけ。 ドスまりさの頭にはいまだ杭が刺さっている。その杭のせいか、はたまたこの世の現実か。そのどちらかが、ドスまりさの心を狂わせた。 ここには幸せなゆっくりなど一匹もいない。ドスまりさは繰り返し滑稽な茶番を行う。 ドスまりさは全てのゆっくりがしあわせー!になれるように、この地獄を「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」と名づけた。 ――――ゆっくり、あなたはゆっくりしてる? ――――ZAP! ――――ZAP! ――――ZAP! おわり ――――― 元ネタはボードゲームの「パラノイア」です。 閉ざされたディストピア。狂った管理者。敵はモンスターではなく、他のプレイヤー。 いかに生き延びるか、あるいは滑稽に死ぬか。 そんな設定に心惹かれました。 といっても元ネタの設定の良さの10分の1すら伝わってないとおもうんだねー、わかるよー! て言うかボードゲームやったことないくせにこんなSS書くなんて身の程知らずだったんだね、わかるよー!! このSSに感想をつける