約 2,714,557 件
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4698.html
「爆発しろ」 私の呟きと同時に、私の前を歩くカップル達からちいさな爆発音が上がった。 お察しの通り、私は「リア充爆発しろ」の契約者。 それも、もともと契約していたのはただ一人の親友だった。 「あたし、彼氏できたんだ」 だからもう契約解除なのと笑って言った彼女にその都市伝説をくれと頼み、晴れて私は契約者となった。 「爆発しろ」 軽い破裂音が響き、周囲のそこここで爆発が起きる。リア充だらけじゃないか。ちくしょう。 幸か不幸か。私にとっては不幸だが、もともとその程度の威力なのか、 それとも契約者である私の力不足か、爆竹程度の爆発しか起きやしない。 小爆発を起こしたカップルはと言えば、きゃあきゃあ歓声を上げて、なあにこわーいなんて甘ったるく抱き合ってやがる。ちくしょう。 それに引き替え、こんなしょっぱい事しかできない私には、一生彼氏なんか出来ないかも知れない。 たまらなく惨めになって 「リア充爆発しろ!!」 絶叫してその場にしゃがみ込んだ。でもどれだけ連中が爆発したって、ちっとも慰められやしない。 「あの、お嬢さん」 顔を上げると、そこには黒いスーツにグラサン姿の、なかなかイケメンのおじ様が。 連れの女などは居ないよう。もしかしてナンパ?私に一目惚れしちゃいましたとか?ようやく私にも春の訪れが!?今12月だけど。 「あ…すみません。邪魔でしたか」 涙を拭いて立ち上がると、彼はそうではありませんと言い、名刺を差し出してきた。 「組織…?」 「ええ、威力は子どもの悪戯程度とは言え、 こちらの立場上、危害が発生する可能性を放置しては置けませんので」 つまり私に、「組織」の管理下に入るか、契約を解除し、 都市伝説を手放すか。どちらか選べと言うことらしい。 私はしばし考えて。いや、考えるふりをして。 「貴方が…担当になって下さるなら、どこまでもついて行きます」 声音にばっちり甘さを乗せてアピール。これに気付かない男はよほど鈍いか三次元不感症だ。 黒服はしばしぽかんと私を見つめ、 「せっかくですが…私は今でこそ『黒服』ですが、都市伝説に飲まれる前からの妻と子が居りまして」 ……やっぱり春なんか遠いんだなあ 「もうみんな爆発しろおおおおお!!!!」 END
https://w.atwiki.jp/legends/pages/804.html
ドクター 02 そこは犬で溢れていた 犬種は様々で、どこにでもいるような雑種から血統書付きの高級種、果てはどうも狼っぽいものやどう見ても人面犬といった代物まで 広いスペースにケージの類は無かったが、雑然と散らかしているような事はなく、トイレや寝床といったスペースはきちんと整えられており、むしろ動物の住処とは思えないほど整然としていた 気ままに吠え、眠り、遊びまわる犬達 そこへ磨き上げられたフローリングを叩く靴音が近付いてくる 「総員、傾注!」 肉声でありながらスピーカーでも通しているかのような大きくよく通る声に、犬達は一斉に顔を上げ集合し整列までして『お座り』の体勢を取る その統制の取れた動きに男は背筋を伸ばし咳払いを一つすると――その厳しい顔付きを一変させ、笑顔を浮かべ一匹一匹を抱きすくめ撫で回す 「ああお前達は本当に良い子だな。安心したまえ、私がいる限りお前達の生活と安全と自由はきっと保障しよう。良き飼い主が見つかるまで存分に堪能するのだぞ」 頭やお腹を撫で、お手、おかわり、伏せ等々の芸一つ一つを賞賛し、個々に合わせた餌を配膳していく 都市伝説組織『第三帝国』日本支部こと、犬専門ペットショップ『ゲルマニア』 ヒトラーのそっくりさんと近所で評判の気のいい店主が、そっくりさんを通り越して本人だという事を知る者はほとんどいないのであった 「総統閣下、相変わらずの息災っぷりに安心を通り越して逆に心配になりました」 「む、ドクターかね。遠路遥々よく来てくれた」 店のドアを開けて入ってくるなりの部下の態度に、総統は全身犬まみれのまま真面目な表情に戻る 「済まんな、あちこち大変な状況ではあるが……南極や南米の私の下よりは研究と実務を進められると思ってな」 「ええ、ここまでの密度で都市伝説が跋扈してる地域は類を見ません。我々の求める都市伝説医学研究にはうってつけかと」 「密度だけではない、その強力さもだ。そしてその濃さと強大さは次々と別の都市伝説を引き寄せる。当然ながらトラブルも多い」 総統はお腹を撫でられ転がっている仔犬に視線を落とす 「私は外様であるし、大きな干渉を行うべきではない。そもそも私が動けば南極や南米の私も呼応し、事態は大事になってしまうからな。武力介入は避け、別方面からの支援アプローチを考えた訳だ」 「なるほど、流石は閣下。感服致しました……個人的かつ大々的に犬と存分に触れ合い愛でる場を守りたい保守的行動でなかった事を心から安堵します」 その言葉に、ああうんと短く唸り視線を逸らす総統 「ともあれ個人開業という形で診療所を用意してある。当面はそこを拠点としてくれたまえ。必要なものがあれば随時調達しよう」 「御心遣い痛み入ります、閣下。それではこれより任務に移ります」 踵を返し店から出ていこうとしたドクターだったが 「そういえば、こちらの雇った運転手が地元のパトカーとカーチェイスの末にパンツァーファウストをぶち込まれまして。幸い運転手がアレだったので割と無事でしたが。日本の警察は何時からあのような重武装に」 「ああ、何やら何かと物騒な昨今、警察も武装強化が必要だとある警官から個人的に相談を受けてな。町の治安と正義のためにといくらか武器を譲ったのだが」 「なるほど、留意しておきます。失礼致しました」 そう言ってドクターは今度こそ店を後にするのだった 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1267.html
首なしライダー 21 変なガスによって女の姿になってから数日が経過したが 一向に元の男の姿に戻らない ……やれやれ、いつになったら元の男の姿に戻れるのだろうか… 俺はバイクを運転しながら昼の町を走る 時折、町の大通りから脇道に逸れて路地裏などを覗き込みながら、俺はある都市伝説を探していた。 ……ここもハズレか とある建物の間の薄暗い路地裏を探したが、都市伝説どころか人すらいないようだ。 俺の体を女の体にしやがったのはどうやら[マッドガッサー]って名前の都市伝説らしい。 俺は携帯を取出し、朝野から送られてきた情報を確認する 本来マッドガッサーとは外国の都市伝説で、毒のガスで人を殺すらしい 姿は全身黒ずくめで顔にはガスマスクを着けている ……普通に町を歩いていたら間違いなく怪しまれる格好だよな? 俺をこんな姿にしたマッドガッサーを見つけてボコボコにすれば元に戻る方法を吐くかもしれない…いや、吐いてもらわなきゃ困る もしも吐かなかったら…その時はいっそのこと首を刈ってやろうか 相手が死ねば確実に元の姿に戻るだろ………たぶん 俺はバイクにまたがり、再び大通りを移動する そして 俺はガソリンスタンドの横にある細い道に入っていく黒ずくめの人物を発見した。 顔にはガスマスク 奴だ!! マッドガッサーらしき人物は辺りを注意深く確認した後、路地裏に入っていった。 建物の間にある道にはバイクが入れないため、俺はバイクを降りてマッドガッサーの後を追おうと路地裏に入る 路地裏はゴミや物で元々狭い道がさらに狭くなっており死角も多いため、注意しながら奥に進まなきゃはならないな… マッドガッサーらしき人物は、俺のだいぶ前を歩いており、すぐに道の角を曲がり俺の前から姿を消した。 ……あの角を曲がって一気に相手を襲えば勝てるな 俺はマッドガッサーが曲がった曲がり角を一気に曲がって その先にいるはずのマッドガッサーを襲おうとしたのだが……… 曲がり角を曲がろうとした瞬間、突然男性が飛び出して来た。 やばい! 俺は咄嗟に止まって男性とぶつかるのを防いだ。 「くけけけけけけ」 危ない危ない、もう少しで男性とぶつかる所だった… …男性にもケガはないようだ 「くけけけけ」 男性はそのまま俺の横を通り過ぎて行った。 しかし…なんか変な笑い方をする人だなさっきの人 そんな事を思いながら慌ててマッドガッサーを追おうとすると ピピピピッピピピピッ!! 足下から謎の電子音が鳴り響く 足下を見てみるとそこには何故か携帯電話が落ちていた。 さっきの変な笑い方する人が落としたのだろうか? 幸い、さっきの人はまだ俺の少し後ろを歩いているので、今ならまだ渡す事が出来る 俺は携帯を拾い、さっきの男性に渡そうとしたのだが…… 瞬間、なんとその携帯電話が光り、そしていきなり爆発しやがった! 「くけけけけけ!」 ――――――――――― 「くけけけけけ!」 首なしライダーが拾った携帯電話が爆発すると同時に 爆発する携帯電話の契約者は自分の手に持つ携帯電話から他の携帯電話に電話をかけまくる すると路地裏の至るところに設置された携帯電話が着信し、爆発する 鳴り響く爆発音と着信音 「くけけけけけけ!」 爆発が路地裏にあった物やゴミを吹き飛ばしていく! ……… 数秒後、爆発の納まった路地裏には ボロボロになった首なしライダーが横たわっていた。 「おいおい…さすがにこれはやりすぎじゃね?」 「くけけけけけけ!」 横たわったまま動かない首なしライダーと、爆発によって破壊された路地裏を見ながら マッドガッサーは、首なしライダーが着けていた壊れた青色のヘルメットを拾い上げ呟いた。 以上? 前ページ連載 - 首なしライダー
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3461.html
第三話 【複写と磔】 飢えていた、憧れていた、望んでいた、欲しかった。 弱者も強者も敵も味方も他者も己も全てを屈服させる力を。 絶対に負けることのない力を。 最後まで立っていられる力を。 昨日笑いあった仲間は二度と笑えない。 空腹に耐え切れなくなって伴侶の喉元へ歯を立てる。 夜更けに生まれた子供の息はお天道様を見る前にはもう絶えている。 安寧とした生を過ごす家の外では烏に目玉を喰われた骸が転がっている。 どこかからやってきた連中に連れ去られた仲間達の最期の叫びが耳を打つ。 箱の外には死しかなかった。 だから、力を望んだ。 空を泳ぐ敵も、海を走る敵も、地を飛ぶ敵も、自分を見下す敵も、自分を見下ろす敵も――どんな奴にも勝てる力を願った。 外の世界で生きていける力を。 同族を殺して生き延びるのではなく、他族を殺して生き延びる方法を。 己を毒とせず、毒をも殺せる力を。 力が欲しい。 誰よりも強く欲した。 誰よりも強く望んだ。 誰よりも強く憧れた。 誰よりも強く飢えていた。 飢えて飢えて飢えて飢えて。 憧れて憧れて憧れて憧れて。 望んで望んで望んで望んで。 欲して欲して欲して欲して。 ただひたすらに力を求めた結果、奇跡が起きた。 必然という名の奇跡が。 初めて力を願った日は――もう覚えていない。 ◆ □ ◆ □ ◆ 「なあ」 「ん?」 「ジョニーデップは気付いてんのかな? 俺が激似なこと」 「黙れクソ親父」 久々の休日、彼は南区にある父親の職場に来ていた。 南区の繁華街より少し外れたところにあるラブホテル、ローペロペコンマ。 彼の父親がそこの経営者である。 彼自身の職場から徒歩で三十分弱の距離にあるのだが場所が場所だけに訪れることは少ない。 「帰っていいか?」 「んだよ、せっかく来たんだからゆっくりし――ああ、いや」 「今度は何だよ」 「ゆっくりしていってね!」 「言い直すな阿呆」 「厳しいなおい、実の父親だぞ、実父だぞ、zipなんだぞ。むしろzipでくれ!」 「……もういい、喋るな」 こめかみを押さえながら呆れたように溜息を吐く。 毎度毎度のやりとりとはいえ、こうもテンションが違うと調子が狂う。 見た目はともかく、性格が父親似でなくて良かったと心からそう思う。 「んで、何回だ?」 「……ああ、今月だけで十八回だ」 「相変わらずエンカウント率高えなあ、おい」 クックッと楽しそうに笑う父。 彼が都市伝説と契約していることを知っている数少ない理解者のひとりである。 「きっちり止めは刺したな?」 「ああ」 「江良井家家訓――『負けはしません、勝つまでは』を守ってればいいんだ。守らないと爺さんが化けて出てくるからよ」 彼の祖父は有名な武術家だった――らしい。 らしい、というのは祖父がその武術を振るっているところをみたところがないからだ。 武術といっても特殊な古武術などではなく、効率よく人を殺すことのみに特化した武術――否、殺人方法。 徒手空拳、刀剣棍棒、鈍器銃器、薬物毒物――ありとあらゆる殺人方法のみを祖父は持っていた。 失われるには惜しい技術だからとは父。気質が祖父似だからとは彼。 祖父が彼の中に何を見出していたのかは祖父亡き今、わかることはない。ただひとつ、殺人方法を受け継いだからこそ彼は学校町で生きている。 本来であれば不要とされていつの日か失われるであろう知識。 しかし、学校町では違った。 学校町で生きることは都市伝説との戦闘を――殺し合いを意味する。 安寧とした日々を過ごすことはできる。都市伝説から目を逸らし、知らぬ存ぜぬを通し続けていればそのうちに何も知らぬ一般人となれるだろう。 学校町で起きる行方不明や事件事故は他の町と比べると圧倒的に多い。被害者の多くは未知なる者の手にかかっている。 祖父が残した殺人方法は、都市伝説が異常に集まってしまった都市――通称、学校町で都市伝説契約者として生きるためには必要不可欠な知識であった。 彼が契約している都市伝説は、他の都市伝説の種類を調べたり他の都市伝説の気配を感じ取る能力はない。 戦いの中で敵がどんな戦闘スタイルかを一瞬で見抜き、よりよい対処法を選び抜く。 戦中前後に編み出され生み出された知識と技術を彼は都市伝説と契約するよりも前に習得を始め、二十歳を越えた頃に修めた。多種多様の相手に対応するために今もなお彼の中で技術は練磨されている。 「そもそも爺さんはよ――」 父が何か言おうとした瞬間、それは起こった。 「――――!」 世界の全ての音が吸い込まれたかのような静けさ。 きいん、と聞こえてくる耳鳴りのような音。 「……今の、何かわかるか?」 「いや」 「能力……だな」 「だろうな」 ラブホテルの無事を確かめるべく飛び出していった父親の後を頭を掻きながら追う。 基本的に彼ら親子にとって、都市伝説は彼らの生活に支障がなければどうでもいい。 しかし、外に出た父親は判断つきかねるといった表情で困っていた。 それもそのはず、ラブホテルの壁には『━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━』と描かれていたのだから。 「……こいつをどう判断する?」 「判断も何も見たまんま、だな」 「懐かしすぎて胸が熱くなるな」 「ああ、違いない。――親父がねらーだとわかってがっかりだ」 いつからいたのかわからない。 どこで発生したのか、知る者はいない。 突如各板に張られ続けたAAの嵐。 ◆ □ ◆ □ ◆ ∧_∧ ピュー ( ^^ ) <これからも山崎を応援して下さいね(^^)。 =〔~∪ ̄ ̄〕 = ◎――◎ 山崎渉 (⌒V⌒) │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。 ⊂| |つ (_)(_) 山崎パン \ .∧_∧ / \ ピュ.ー ( ^^ )<これからも僕を / ∧_∧ 山崎渉は \ =〔~∪ ̄ ̄〕 /∧_∧ ( ^^ ) かっこいい。 \ .= ◎――◎ / . ( ^^ ) / ⌒i 从// . \ ∧∧∧∧ /. / \ | | ( ^^ ) n \ <. >.. /. / / ̄ ̄ ̄ ̄/ |  ̄ \ ( E) \< の 山. >/. __(__ニつ/ 山崎 / .| .| フ /ヽ ヽ_// < 予. >. \/ / (u―――――──―――――――< 感 崎. >―――――──――――――― <. !!!. > 山崎渉age(^^) < 渉. > 1 名前:山崎渉 投稿日:02/ ∧_∧. /<.. >\ (^^) ∧( ^^ ). / ∨∨∨∨. \ ( ⊂ ⊃. / \ 3 名前:山崎渉 投稿 ( つ ノ ノ /. ―━[JR山崎駅(^^)]━― \. 2 |(__)_) / \ (^^; (__)_) /. ―━―━[JR新山崎駅(^^)]━―━― \ ./ \ ◆ □ ◆ □ ◆ 『山崎渉』という、シンプルな名の都市伝説。 あまりにも長い間、しかも大規模なスクリプト荒しだったため、掲示板の運営側はリモートホストを表示させる機能をつけて事態は終息した。 古いスレを開いた時にたまにその姿を確認することができるが、今となってはその存在すら忘れ去られようとしている。 「契約者ゲットだぜ! ってな気分だろうな」 「さっきの静寂は発動条件……いや、発動した証拠か」 「塗料じゃねえな。こいつは水ぶっかけても消えねえぞ」 「みたいだな。何らかの能―━[JR山崎駅(^^)]━―きされ――何!?」 彼が口にした推察は正しかった。 何らかの能力で描いたというより上書き、という彼の言葉の上に『―━[JR山崎駅(^^)]━―』と上書きされたのだ。 「異常はあるか?」 「……いや、何もない」 「言語にも直接害を及ぼすタイプか。こいつは厄介だな」 「ああ」 静寂が訪れ、耳鳴りがしたその瞬間に周囲の気配を探っている。 しかし悪意や殺意どころか、害意そのものは一切感じていない。 たまに、試すつもりで仕掛けてくる者もいるが、その気配すらない。 超がつくほどの遠距離攻撃型の可能性もあるが、的確に自分を攻撃できる力があるなら狙撃すればいいだけの話である。 都市伝説の暴走であれば騒動になっているはずだ。 彼はひとつの結論を出した。 ――問題なし、と。 「……帰る」 「あ? こいつはどうすんだよ」 「放っておいても問題はない。敵ならすでに攻撃してる」 「いやだってお前……」 「帰って寝る。じゃあな」 「ちょ、これどうすんだよ。――ああ、こういう時はこうだったな」 「?」 「じゃあの」 「くたばれアホ親父」 心底呆れたように彼は帰路へとついた。 正体不明目的不明の都市伝説との遭遇。 自分に対して一切の害意がないから戦う理由もない。 無駄な労力は使わないに越したことはない。 たまにはこんな日があってもいい。 明日は葬儀が五件控えているのだから。 了 前ページ次ページ連載 - 葬儀屋と地獄の帝王
https://w.atwiki.jp/legends/pages/775.html
……っぽ ぽっぽっぽ、と 誰も居ないはずの廃ビルの一角に、灯りが灯りだした 招かれた者だけが入り込める宴の準備が、始まろうとしているのだ 「ちょっと、そこの豆板醤取ってくれるか?」 「これかしらぁ?」 …「首塚」主催の宴が開かれる予定の廃ビル その中に、ガスコンロやら何やら、色々と持ち込んで、数名の人間…と、都市伝説が調理を行っていた まぁ、何せ、「夢の国」及び「鮫島事件」との戦いに参加した者全員を招待しているのである 流石に、全員来るとは思えないが…料理は多い方がいいだろう 余ったらどうとでもなるが、足りなかったら悲しいものがある だからこそ、多めに料理は作らなければならない訳で 作り置きが効く物はある程度作ってきたとは言え、それでも大変だ 「お野菜、切りおわったかしら?」 「はい、これでいいわね?」 金髪のチャラチャラした格好の青年、スーツ姿のキャリアウーマン風の女性、長いロングヘアの女性に、水っぽい服装の……女性に見える、男性 「ご主人様、そろそろ弱火に致しませんと」 「あぁ、そうだな……後は、焦がさないようにするだけだな」 洗練されたシェフを連想させる男性と、その男性と共にカレー鍋に向かう男性 これら、「首塚」のメンバーたちは、宴直前まで調理を続けていた 「夢の国」たちも手伝ってくれると言ってくれたが…一応、そちらには会場の飾り付けを任せて置いている なぜか? …そう言えば、飾り付けの事なんて、すっかり考えていなかった事を、当日になって気づいたからである 将門も、その辺りは気が回っていなかったようだ…と言うか、多分、最初から気にしてもいなかったのだろう 「宴会、しっかりとした開始時間が決まってないのよねぇ…まぁ、それなりに人数が集まったら開始かしらぁ?」 「そうなるんじゃないのか?」 時折、妙な所がアバウトな我等が首領は、開始時刻なんか告げてすらいなかった 夕刻以降、としか言っていない …まぁ、皆各自勝手に集まって飲め、みたいな雰囲気なのだし、仕方在るまい ……ちゃんと、未成年も来るだろうから酒以外も準備はしている 多分、きっと大丈夫だ 祝勝会に戦いを持ち込む無粋な奴もおるまい……そんな奴がいたら、「首塚」の総力を持って排除するが 「ふふっ、でも、色んな都市伝説が集まるのは、楽しみね」 外見は女性だが染色体的には男性の彼女…否、彼が、そう微笑む 「首塚」には参加したばかりの彼だが、息子が先に「首塚」に所属していたせいか、あっさりと馴染んでしまった 息子が前もって、父親の事をよく話していたお陰もあるだろう 「変なのが混じってこなければいいんだけど」 「問題ないんじゃないか?将門様のお力とかで、招待してない奴以外は入り込めないはずだろ?」 「招かれざる客は、立ち入り禁止でございますから」 ロングヘアの女性の言葉に、カレー鍋の前に立つ二人が答える そう、資格のある者以外は入り込めない …だからこそ、さほど警戒もせず、料理に集中できているのだ そうじゃなかったら、流石にもうちょっと警戒する 一応、敵対しているはずの「組織」の人間も若干名招待しているから…完全に、無警戒でもないが まぁ、わざわざ敵対組織の招待に乗ってくる相手だったら、そんな無茶などしまい 「…ま、いざとなったら、どうにでもなるさ。地の利はこっちにあるんだしな」 青年は、どこか気軽にそう呟いて っじゃ、とフライパンを気軽に操っているのだった ……開始まで、あともう少し 廃ビルから、美味しそうな匂いが、ふわり、ふわり、漂いだした …宴の開始まで、あと、もう少し to be … ? 前ページ次ページ連載 - 首塚
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4175.html
これはある日の出来事だった。いつも通りの朝、いつも通りの部屋。いつも通りの日常が始まると思っていた。 正義「お父さん、お母さん、おはよう。」 光彦&明美「・・・。」 正義「・・・あれ?」 何故か、挨拶が返ってこない。それどころか、食卓にボクの分の食事も無い。 正義「お父さん、おはようは?お母さん、ボクのゴハンは?」 光彦「・・・では行ってくる。」 明美「・・・ミツ、いってらっしゃい。」 何かがおかしい。おかしいのは分かっているんだけど、何故こうなったのかは分からない。ボクはとりあえず、お菓子だけ食べてから、学校に向かう事にした。 通学路を歩いていると、またおかしい事に気付く。勇弥くんと奈海ちゃ、・・・奈海が来ないのだ。 正義「・・・なんでだろ?」 その時、勇弥くんと奈海の家からここに来ると、若干学校には遠回りになる事を思い出す。 『ボクにわざわざ会う気が無い』という事?いや、まだ急いでいるだけという可能性もある。 ふと横を見ると、いるはずの存在、【恐怖の大王】がいない。なんでだ?大王は毎日ボクと一緒にいるはずだ。さらに用事があるとも思えない。 正義「ただの思い過ごしか、それとも・・・。」 考えられる理由は3つ。 1つ目は、ボクが悪い事をした。無意識にだと思うけど、悪い事には変わりないので、その場合は謝らないと。 2つ目は、ドッキリ系の悪戯。そうだったら学校についた頃か、帰る頃には元に戻るかな? 3つ目は、都市伝説の仕業。だとしたらなんとかしないと! とは言ったものの、勇弥くんも奈海もいないのでは話にならない。とりあえず、学校に行こう。歩いていても、やはり誰にも会う事もなく、学校に着く。 正義「・・・よし、おはよぉー!」 生徒達「・・・。」 やはり、挨拶が返ってこない。チラッとこっちを見たあと、すぐにそっぽを向く。 何かしたという心当たりは無い。これは逆に困った。どうすればいいんだろう? 正義「・・・勇弥くん、おはよう!奈海ちゃんおはよう!」 勇弥&奈海「・・・。」 ダメか。「えッ!奈海『ちゃん』?!」とか返してくれるかと思ったんだけど・・・。そのまま1時間目の授業が始まる。 先生「ではここ分かる人ー?」 正義「はい!」 ここで手を上げて無反応だったら、おそらく・・・。 先生「あいつは、どうでもいいな。」ボソッ 正義「ッ!?(『どうでもいい』?)」 先生「じゃあお前!ここ分かるか?」 『どうでもいい』?ダメだ、分からない。たぶん都市伝説の仕業なんだと思うけど、どうすればいいのか分からない。 勇弥くんも奈海もダメ、誰に頼れば・・・?そう考えていると、十文字さんが目に映る。一か八か。 正義「十文字さん!あの」 楓「黙っていてくれ。キミなんかに興味は無い。」 正義「・・・、(ダメか。やっぱりこれは)都市伝説の仕業・・・?」 ポツリと呟くと、十文字さんがピタリと止まり、こちらに顔を近づける。 楓「詳しく聞かせてもらえないか?」キラキラ 正義「う、うん・・・。(良かった、十文字さんの都市伝説に対する興味は奪えなかったみたい。)」 そういう訳で、ボクは今日の一連を十文字さんに話した。 楓「―――なるほど、それは困ったな。しかし本当なのか?」 正義「現に、十文字さんがボクの事を知らないでしょ?『都市伝説研究同好会』副会長のこのボクを。」 楓「なに?副会長?!・・・余計に謎だ。もしそうなら何故私が副会長であるキミの事を忘れているんだ?」 正義「それは・・・分からないけど・・・。十文字さん、なにか似たような事件とか無いんですか?」 楓「まず、無いな。『被害者への興味がなくなる』という事は、被害者は『被害にあった事を誰にも報告できない』だろ?」 正義「・・・そうか。ごめん、じゃあこれで・・・。」 楓「待て。ただ、似たような話があった気がするんだ・・・。そうだ、これだ!」 十文字さんは急にこんな話をしてくれた。――― 少女のところにお星さまが降り立ちました。 「なんでも一つ願いをかなえてあげよう」 お星さまはいいました。 少女は泣いていました。 「家族を消してちょうだい!あんな家族、まっぴらよ!」 次の日、少女が目を覚まして一階へおりると、いつものようにおかあさんと おとうさんとおにいちゃんがいました。 少女は後悔しました。 その夜、再びお星さまは少女の目の前にあらわれました。 「気に入ってもらえたかな」 少女はいいました。 「昨日のおねがいをとりけしてちょうだい」 お星さまはいいました。 「一度かなえたおねがいはとりけせないよ」 少女は泣きました。 ―――それでこの話は終わったのだが、ボクには意味が分からなかった。 正義「・・・どういう事?それだったら『その家族は血の繋がりがなく、血の繋がりがある本物の方の家族が消された』って話じゃ?」 楓「無論、その解釈が主流だ。ただ、他にも解釈があるんだ。マイナーなんだが、これが妙に印象に残っていてな。」 正義「・・・どんな解釈?」 楓「さっきした話は、語られていく内に微妙に改変されて、コンパクトになってるんだ。」 正義「つまり、重要なところが抜けて、分からりにくくなっていると?」 楓「そう。内容を言うと、本来は願いが叶って、『怒る』親や『意地悪する』兄が消えるんだ。」 正義「待って。『いつものようにおかあさんとおとうさんとおにいちゃんがいました』ってあるよ?」 楓「まぁ待て。正確には『何をしても怒らない』都合の良い家族になったんだ。」 正義「そうなんだ・・・。でもそこまでならハッピーエンドで、取り消す必要なんて無いよね。」 十文字さんが、ふと溜め息をつく。 楓「本当は、『何をしても怒らない』のではなく『自分に何の関心も持ってくれなくなっている』だけという事にしばらくして気がつくんだ。」 正義「『関心』・・・?」 楓「それが寂しかったんだろうな。それから取り消してと願い続けたんだ。すると1年後にお星様現われて・・・後は分かるな?」 正義「・・・そんな話があったんだ・・・。」 楓「・・・まぁ、ネットに上げられる物語は、『恐怖のナポリタン』のように真の解釈が埋もれてしまう事もある。 このような無限の解釈が、都市伝説となる事もあるかもしれない。そう思っただけだ。」 正義「・・・、ありがとう、十文字さん。」 楓「どうも。ところで、名前は?」 正義「え?[黄昏マサヨシ]だけど・・・?」 楓「そうか、覚えておく。では黄昏、私は私なりに調べてみる。紙の資料なら残っているだろうから、 その中から極端に興味が無い人間を当たってみるよ。まずはクラスの名簿だな。」 正義「あ、ありがとう!」 これで仲間ができた。とにかく、ボクも別のところを・・・。ん?「覚えておく」?―――十文字さんが、ボクに『興味を持った』? 正義「(・・・とにかく、今は犯人探しだ。)待って、十文字さん!やっぱりボクも付いて行くよ!」 こうして、ボク達の犯人探しが始まった。まずはクラス名簿からだ。 楓「この名簿から、極端に興味が無い人間がいたら、被害者の可能性が高い。」 正義「これとこれは前の学校のクラスメイト・・・。」 楓「これ・これ・これも私の小学校からのクラスメイトだ。」 正義「これは最近知った人で、これは・・・、どうでもいいか。」 楓「そしてこれとこれが―――、どうやらこのクラスにはいないようだな。」 正義「よし、隣のクラスへ」 楓「待て!」 十文字さんがボクの肩を掴んで止める。 楓「さっき、絶対におかしい所があったぞ。」 正義「ッ!?・・・ありがとう、十文字さん。危うく見逃すところだったよ。」 ボクは改めて名簿を見直す。 正義「えっと・・・どれだったかな。」 楓「これだ。ここで『どうでもいい』と言ったんだ。」 正義「やっぱり記憶に・・・あれ?あるような、無いような・・・。」 楓「クラスメイトなのかもしれないな。なら彼女は黄昏に任せた。私は別のクラスを当たる。」 そう言って十文字さんは別のクラスへ向かった。・・・では、探すとしよう。名札をしっかり見て、集中して。何処にいるんだ・・・? ふと、ある男子を見た時に思い出す。彼はボクと同じクラスだったのだが、彼のためにどれだけ苦労したか。 あれ?彼と、誰のためだったっけ?あんなにがんばったのに、名前も顔も思い出せない。 ふと、彼が女の子に話しかける。でも嫌われているのか、払いのけられ、教室から出ていった。 なんで彼はあんなどうでもいい子に話しかけたんだ?・・・あれ?あの光景、見覚えが・・・。 ―――そうだ!思い出した!って『どうでもいい』!?あの子も被害者だったのか!追いかけないと! 正義「まったく・・・!(やっかいな都市伝説だ!)」ダッ! 少し走ると、彼女がいた。良かった、でも話し合えるだろうか? 正義「あの・・・。」 女子「何よ?」 正義「良かった・・・。キミはボクと話せるんだね。」 女子「そうよ、当たり前じゃない。だって私がやったんだもん。」 正義「えっ!?」 彼女はゆっくりこちらに向かって歩き出す。 女子「ある日、急に私のお父さんとお母さんが私と話してくれなくなったの。そしてクラスの友達からも・・・。この辛さがあなたに分かる?」 正義「・・・。」 女子「だから私、お星さまにお願いしたの。『皆にも1人ぼっちの辛さを教えてあげて下さい』って。」 正義「まさか、やっぱり・・・。」 女子?「『そう、【お星さま】と契約したノ。そして皆から関心を奪う事がデキルようにナッタノ!』」 急に、彼女の声が変わったと思うと、窓の外に、不可解な光が。昼間なのに、星?!あれが都市伝説か?ふと、その星は姿を隠すように消え、彼女の声も戻る。 女子「だから私は、あなたみたいな友達がいっぱいいる人から関心を奪っているの。」 男子「あの!・・・何を、しているん、ですか?」 不意に声が聞こえる。振り向くと、あの教室で彼女と話そうとしていた、彼がいた。 女子「また来たの?帰って!あなたに興味なんてないの!」 男子「う・・・。」 彼女の前で、何も言えなくなっている彼。完全に思い出した。何故一瞬でも忘れたのか。その謝罪の気持ちもこめて・・・。 正義「・・・本当に覚えていないの?彼の事も、ボクの事も。」 女子「知らないわよ!どうせ皆独りぼっちの私なんて、どうでもいいと思っているんでしょ?」 正義「じゃあ思い出させてあげる!」 男子「・・・?」 正義は男子の前に立ち、笑顔を作って見せる。2人はふと、この光景に覚えがある事に気付く。 正義「や。キミに紹介したい人がいるんだ。」 女子「え?あッ!」 正義「この人。とっても優しい人だから、すぐに仲良くなれると思うよ。」 男子「ッ!そうか・・・。は、初めまして。よろしくお願いします。」 女子「・・・宜しく・・・。」 正義は知っている、この光景を。何故なら、正義はこの2人の仲を取り持ったからだ。 小学生の時、彼女と話したそうにしていた彼のために、色々と手伝っていたのだ。そしてこれは、始めに2人が会話した時の再現なのだ。 正義「ね、分かったでしょ?キミは独りぼっちなんかじゃなかったんだ。キミの事を、愛してくれている人がいたんだよ。」 女子「・・・。」 勇弥&奈海「「おぉーい!」」「正義ぃ!」「正義くん」 次は勇弥くんだ。良かった、ボクへの関心を取り戻したんだ。 勇弥「助け・・・は要らないみたいだな。」 正義「うん、今終わったよ。ところで、どうしてボクの事が?」 奈海「十文字さんのおかげでね。正義くんが危ないって聞いたら、戻っちゃったみたい。」 そうか、さすが十文字さん!ありがとう。あとは・・・。 正義「じゃあ、能力を解いて、契約を解除しようか。」 女子「・・・うん!」 ???『ふざけるなァァァ!』 突如、どこからか大きな声が響く。辺りを見回すと、窓の方にまた、星のような光が。 女子「【お星さま】・・・。」 奈海「あれが都市伝説?!」 正義「うん!でも、だんだん気配が弱くなってるんだよ。」 お星さま『わたシハ人から関心ヲ奪うタめに生まれタ!だからわタしは!ワたしは・・・!』シュゥゥ・・・ 【お星さま】の光がだんだんと弱くなっていく。 勇弥「・・・能力が成立していない事に気がついて、自分の存在が不安定になったのか。・・・終わりだな。」 正義「・・・あれ?」 ふと【お星さま】の変化が止まり、また強く輝きだす。 お星さま『ふふふふふ・・・そうか、魅力を奪っても、記憶を奪ってもだめなら・・・!』 急に【お星さま】から禍々しいオーラのようなものが溢れ出る。それはやがて窓から漏れ、ある形を模っていく。 お星さま『コ ロ シ テ シ マ エ バ イ イ ノ カ イ ?』 少女「・・・お父、さん・・・?」 その姿は、色こそ黒1色だが、形は人間、おそらく彼女の父親なのだろう。 奈海「な、何よ!?何なのよあれ?!」 勇弥「まさか、自分を保つために、強引に姿を変えたのか!?」 正義「そうはさせない! 大王!」 大王「ッ!・・・よく分かったな。やれ、少年!」 気付けば正義の後にいた大王が、正義の目の前に黒雲を広げる。正義はその雲に願い、いつもの剣を降らせる。 正義「よし!いっけぇぇぇ!」 お星さま『さぁ、君には消えてッも、ら・・・・。』 男子&女子「「あ・・・。」」 正義の剣が、いつものように邪念を切り裂いた。幻影のようなその姿に、攻撃が通る。 お星さま『そ、そんなッ!ばかなァァァ!嫌だ、消えたくッ』 ―――その言葉を最後に、【お星さま】の姿は、太陽の光に掻き消された。 正義「・・・よし、これで。」 勇弥「一件落ちゃ」 先生「こぅらぁぁぁ!授業中になにやっとるかァ!」 一同「「あ、先生。」」 正義「・・・て、授業中だったの?」 奈海「そういえば、ちょっと前に鳴ってたかも。」 先生「今すぐ教室に・・・、っておい、何でお前がこんなところに?!」 女子「え?わ、私?」 先生「お前、さっき親から連絡があってな。行方不明で探してほしいって。」 女子「え?!」 ―――こうして、事件は無事解決し、彼女は自分の家族を取り戻したのであった――― 奈海「―――って納得いかなぁーい!ハッピーエンド過ぎよ!なんで【お星さま】を倒したら家族まで関心を取り戻したのよ?!」 その日の『都市伝説研究同好会』部室には、せっかく終わった物語に野次を投げていた。 勇弥「まったく。じゃあ聞くが、あいつはなんで契約したんだ?」 奈海「え?だから、親が自分を無視するようになったからでしょ?その隙を突いて契約したんだけど・・・。」 ふとコインが現れて、勇弥と同じように、奈海に疑問を投げかける。 コイン「じゃあ、『もし奈海が同じような状態だったら』どうした?」 奈海「え?・・・まぁ、ひょっとしたら同じ事を、あ!」 勇弥「そう。『あいつが親の感心を奪った』んだ。そうすれば契約できると踏んでな。」 コイン「けっこう頭良いよね。そんな簡単に契約できるなんて。」 大王「いいや、まだまだだ。」 前回の反省を活かし、大王は窓の外から会話に入る。 奈海「なんでよ?充分すごいじゃない。」 正義「大王だったらどうやったの?」「あとなんで入って来ないの?」 大王「あいつは『関心を奪う能力』を無駄遣いしていた。それでさらに墓穴を掘ったんだ。」「もうあの二の舞は御免だ。」 奈海「無駄遣い?」 大王「確かにあの能力は強い上、盗みのような犯罪も容易にできる。だが、都市伝説は『噂』が無ければ自分の存在を維持できない。」 コイン「あ、そっかぁ!だからあの時、勝手に能力が解けたりしたんだ!」 勇弥「もっとも、オレ達は十文字さんがトリガーになったんだけどな。」 大王「その会長の少女も言っていたが、『新聞に事件が載っていない』だろう? 誰からも興味を持たれず、そのまま被害者を増やし続けた。 俺だったら『親だけ』『クラスメイトだけ』などを複数人作り、なんらかの噂を作らせる。」 正義「逆に新聞で話題になった【三倍返し】は強かったもんね。」 大王「そう考えれば、そいつや『田舎で都市伝説狩りをしている』と噂になったシェイド達の方が、数倍頭が良いって事になるな。」 急に、奈海が話題を正義に関する事に変える。 奈海「それより、正義くんがあの2人をくっつけてたのが意外なんだけど!」 勇弥「そういえばそうだ!」 正義「え?だってさぁ・・・。」 数歩、歩き、こちらへ振り返る。 正義「恋愛って、楽しそうじゃん。」 勇弥&奈海「・・・、はぁぁぁ?!」 満面の笑みで返された、回答になっていない回答に逆に疑問を抱き、2人は窓の向こうに答えを求める。 勇弥「なぁ、恋愛に興味を持ったのか?前に『無い』って噂を聞いたが。」ボソボソ 大王「なぁに、あれは丁度『特撮ライダーキバ』が中間に行ったぐらいの頃の話だ。」ボソボソ 奈海「あぁ、あの昼ドラ。愛とか恋とか多かったもんね。」ボソボソ 大王「あぁそうだ。それで、あの2人を見つけて、取り持ったって事だ。」ボソボソ コイン「へぇ、恋のキューピットってやつぅ?」ボソボソ 大王「【キューピット】?なんだそれは?」 楓「“ガラララ”入る。」 一同「おわぁぁぁぁぁぁ!?」 不意に、流れをぶった切るように十文字が入ってくる。全員驚き、大王はそのまま体を下へもって行き、コインはお守り袋の中へ何とか入っていった。 奈海「じゅじゅじゅ十文字さん!どうしてここに?!」 勇弥「クラブだからに決まってるだろ!?それ以外の理由があるか!?」 正義「じゅ、十文字さん!今日はどんな事件を?」 楓「いや、あの、だな・・・。今日は止めにしよう。私はもう帰らせてもらう。では。」ガラララ・・・タン 奈海「・・・なんで?」 勇弥「さぁ?あまり怪事件も起きないって事だ、と信じようぜ。」 十文字が出て行ったことも知らず、1人外で浮かんでいる大王。 大王「(しかし、頭は良くない、能力が弱くなったとは言ったものの、俺が契約者を放っておくとはな・・・。) (或いは俺の能力が使えず・・・という事も考えられたな。そもそも、俺が他人に操られようとは―――世界征服への道は遠い。)」 誰も知らないところで、誰も聞いていなかった言葉。 楓「『都市伝説』・・・、『契約』・・・?」 この言葉が、後にどうなるのかは、次のお話――― 第4話「奪えないもの」―完― 次回予告4コマ――― ☆Κλεφτησ―泥棒―☆ お星さま『ふふふ、はははは・・・。私は死んでなどいないぞ。生きている!』 お星さま『また同じ事をすればいい、何度でもこの手を使えば私は“ザクッ”か、は・・・?』 ???「おんなじ手とか、飽き飽きなんだよ、この『Κλεφτησ(クレフティス)(泥棒)』! 僕の真似みたいな事しやがって!破局は僕の専売特許だっての!」 ???「・・・それにしても、『関心を奪う』はずなのに『恋心』が奪えないなんて、まだまだだね。 ・・・それとも、あの2人には僕の力も無意味なのかな?試してみようか?」 ―――人間って、本当に面白いね――― ●という事で、人の心を弄ぶ神の言葉でした。まぁ分かる人には分かるh←( ☆ある日の会話☆ 光彦「そうだ、正義。お前にも話しておくな。」 正義「なに?」 光彦「今日の帰りにな、トラックが信号無視をして、お前と同じ中学校の生徒か、が轢かれそうになったんだ。」 正義「えぇ!?大丈夫だったの?」 光彦「あぁ。何故かトラックが『その生徒の前で止まった』んだ。」 光彦「ブレーキが利いたんだと思ったんだが、生徒が歩道に逃げた瞬間ぐらいに、また動き出したんだ。数mだけな。」 正義「・・・?」 光彦「別に誰も、怪我もなかったからいいんだが・・・。」 ―――なんでこんなに奇妙な出来事ばかりなんだろうな この町は――― ●次回はやっとポピュラーでまともな都市伝説です。トラックを止めるほどのその力とは?!では第5話に続きます。 前ページ次ページ連載 - 舞い降りた大王
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2290.html
【上田明也の探偵倶楽部11~アキナリ先生の都市伝説狩り講座~】 彼は間違いなく悪人だった。 「悪」には様々な定義がある。 「悪」とは何だろう? 人を傷つけること? 秩序を乱すこと? 挙げて行けばきりがない。 きりが無いけど五里霧中。 そんな自由な在り方こそが人々を惹き付けるのもまた一つの事実。 人を惹き付け、人を傷つけ、そうされてから人は気付くのかもしれない。 「ああ、あれこそが悪そのものじゃないんだろうか?」と。 さて、人々から悪そのものと疑われた青年は、真夜中の公園に車を停めていた。 「お兄ちゃん、もう眠い!」 「うーん、もうちょっと待ってくれないかな?」 お兄ちゃん、と呼ばれた青年はそう言って人の良さそうな笑みを幼女に向けた。 時刻は夜の11時。 青年と一緒に車に乗り込んでいるのは幼女。 年の頃は6才、時刻を考えればもう寝ていても良いはずだ。 「悪い都市伝説も眠くてでないよー!」 「そうかな?おにいちゃんの都市伝説講座その1を思い出してみようか。」 「悪い人も都市伝説も夜中に動く?」 「その通り、良くできました。」 上田明也は穀雨に自らの持つ対都市伝説の技術を全て教え込もうとしていた。 それは自らが人を襲った経験、都市伝説に襲われた経験、それらから学んだこと。 それを名付けるならば都市伝説と戦う為に都市伝説を学んだ技術だった。 そもそも上田明也は不器用な人間だ。 だからこそあらゆる物事をマニュアル化して徹底的に覚え込むことでそれを補うのだ。 素晴らしいセンスで100点を取るのではなくどんな科目でもマニュアル通りに動いて90点を取るタイプ。 しかし追い詰められれば自らの実力以上の力を発揮する。 そういう人間性が彼を助けていたし、穀雨に都市伝説を狩る方法を教えるのにも役立っていたのである。 自らが人を襲うときに夜を選んでいた以上、今回の相手も夜を選ぶ。 彼は解っていた。 「良いかい、穀雨ちゃん。 安全に生きていく一番大事な方法は夜に外を出歩かないことだ。 だから一番最初に君に教えることはその悪者は夜中に動くってことだ。」 「はーい。」 穀雨の持つ心の器は大きい。 それは十三階段の契約者のみならず上田もうすうす感じていたことだった。 だから穀雨に戦闘技術を教えるのは上田にとっては急務になっていた。 何時、彼女が戦いに巻き込まれてもいいように。 「今日は新しいことを教えたいと思う。 都市伝説との戦いは相手の情報を手に入れた時点で半分は終わっている。」 「なんで?」 「相手の長所や弱点を知っていれば戦いやすいだろう? それに相手が強くて勝てないと思ったら逃げれば良いんだ。 逃げる手段だけは何時でも確保しておいた方が良い。 逃げればその時点で戦闘は終わりだしね。」 「うーん……、解った。」 「今日の相手はザ・フック。車で夜道を行くカップルに襲いかかる右手が鈎爪の男の姿をした都市伝説。 身体能力は高く、被害者の真上までワープできる力もあるがそれ以外に大した特徴はない。 車の中に居る限り襲って来られないのも中々間抜けだしな。」 「お兄ちゃんと私ってカップルなの?」 非常に幸せそうに微笑む上田。 「まあ男女二人なら何とかなるよ、多分。」 「浮気したら茜お姉ちゃんに怒られるよ?」 「そうだな、気をつけないとな。」 そういって笑う上田、しかしその実二股ってレベルじゃないのは秘密である。 「なあ、穀雨ちゃん。」 穀雨の肩を掴んで瞳をジッと見つめる上田。 その表情は泣いているようで笑っているような不思議な表情。 「どうしたのお兄ちゃん?」 「ん?いや、穀雨ちゃんに聞きたいことがあるんだよ。」 さて、この幼女に自らの言葉は刺さるのだろうか? 自分の言葉で踊るのだろうか? 彼女という人間は俺の言葉で俺の思うがままになってくれるのだろうか? 彼は急に、それを実験してみたくなっていた。 幸い今は真夜中。 彼女に何かしても気付く人など居ない。 上田明也は彼女を都合で救った以上、都合で彼女を汚す可能性もある。 それに気付いた人間は何人いただろうか? 居たとして彼女を助けられただろうか? そうやって自らを悪におとしめることで自らを正当化する。 悪いことをしても良い、だって俺は悪人だから。 上田明也が口を開こうと思った瞬間だった。 コンコン 車の天井を二回程叩く音。 どうやら彼らの元に都市伝説が来たようだ。 「おにいちゃん!」 「ああ、ごめん。後で話すよ。それじゃあお兄ちゃんの都市伝説狩り講座3だ。 まずは先手必勝。 襲う側の人間がいきなり襲われるなんて誰も思わないからな。 俺も思わないし。」 最後の言葉はぼそっと呟くに留める。 「じゃあサングラスかけて、耳栓して……。」 てきぱきと穀雨に耳栓とサングラスをつける上田。 車のドアをわずかにあけるとぬいぐるみを投げ出す。 次の瞬間。 ぬいぐるみは上から伸びてきたフックに捕まってあっという間に真上に持って行かれた。 上田は素早くドアを閉めると耳を塞いで目を閉じた。 ――――――キィイン! 激しい光の奔流と音の固まりが辺りに満ちる。 幸い公園でのことなので近くに人は居ない。 ドスンと音を立ててフックの都市伝説は落ちてきた。 「とまあこういう風に囮で騙す作戦は汎用性が高くて使いやすい。 囮は何時でも上手に使うんだよ。」 「わかった。この後はどうするのお兄ちゃん?」 「うーん、依頼した人から生け捕りにするように頼まれていてね。 もう連絡は済んでいるから後はこいつを捕まえておくだけさ。」 警戒しながら車を降りてフックに近づく上田。 「都市伝説講座狩り講座4、一撃必殺。」 上田は袖から村正を取り出すとフックの由縁たる鈎爪を真っ二つに切り裂いた。 「お兄ちゃん、悪い都市伝説でもあんまり虐めちゃ駄目だよ!」 上田明也の殺気を敏感に感じ取ったのだろう。 子供らしい優しさでそれをたしなめる穀雨。 「安心しな穀雨ちゃん。殺しちゃったりはしないよ。 でも都市伝説は人間よりも力が強かったり頭が良い者も多い。 最後の最後まで優しいことを考えちゃ駄目だ。 一撃で相手の戦闘能力を確実に削ぐことを考えて動こうね。 それじゃあ今日の都市伝説講座は終わり。 茜お姉ちゃんの所に先に帰っていてくれ。」 半端な温情をかければ逆に殺される。 それが解っている以上、上田明也は容赦しない。 「はーい!」 穀雨が赤い部屋に入ったのを確認すると上田はフックに向き直る。 「まぁ、非情を学ぶのはまだまだ先で良いよね。」 既に手足の腱は切っているのだが念には念を入れておこうと彼は思ったのだ。 それと女性を口説こうと言うときに邪魔された恨みもある。 「ここから先は女の子には目の毒かな?」 村正をしまって特殊警棒を取り出すと、上田はフックの骨を折る作業に入った。 いっそ殺した方が優しさだよなあとか、殺さない限り何しても良いんだよなあとか呟く。 彼は不器用な人間だ。 しかし、なんだかんだいって他人を痛めつけることだけは生まれつき超得意なのだ。 【上田明也の探偵倶楽部11~アキナリ先生の都市伝説狩り講座~fin】
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4169.html
正義「いってきまぁーす!」 ボクは[黄昏正義]。中学1年生。皆からは[セイギ]と呼ばれている。 今日は中学初の授業だ。まだ充分間に合うが、早くクラスに馴染みたいので、ボクは急いで学校に向かう。 ―――大王と一緒に――― 今、ボクの後にいるのは、ボクと契約した【恐怖の大王】という都市伝説。世界征服を企んでいるけど、根はいい人だと思う。 ボクには大王がいるから、悪い都市伝説とも互角に戦える。ボクはこの学校町でも都市伝説と戦って、この町を平和にしてみせる。 大王「何を考えているかは知らんが、ろくでもない事を考えているんだろう?」 正義「もう!今アニメの主人公みたいにかっこよく決めていたのに!」 大王「あぁワルカッタ(棒読み)。ところで、俺達はだいぶ修行してきたよな?」 正義「え、う、うん。」 大王「では、何故こんなに小さいんだ?」 改めて正義の姿を見ると、どうも身長が低いのだ。おそらく小学生と見間違えられるぐらいの身長だ。 正義「・・・どうしてだろうね?」 大王「まだ成長期ではないのか?人間はよく分からん。ん?あれは友か?」 向こうから人の影がこちらに向かってくる。その正体はやはり[日向勇弥]であった。 勇弥「よぉ正義ィ、おはよう。」 正義「勇弥くん、おはよう。それにしても良かった、勇弥くんと一緒で。」 大王「友達の上、情報・戦闘能力共に優れているからな。これからも共に戦えるな。」 勇弥「ん、まぁこっちはいない方がいいと思っているけどな。正義の隣にいるやつが。」 大王「俺か!?」 勇弥「あぁ、正義に悪影響を与えないか心配だよ。」 正義「大丈夫だよ、ボクが何とかするからさ。」 一見、身長も性格も何も変わっていないようだが、この正義でも唯一変わった事がある。 大王「お、少女が」 奈海「正義くぅん、おっはよぉー!」 都合よく、向こうから奈海がやってきた。しかし彼女も中学生だからか、正義に抱きつこうとはしなかった。 正義「う、なんで奈海までこっちなんだ?別に中学校ぐらいいくらでもあるだろ。」 奈海「えぇー?本当は会えるかどうか不安だったくせに。」 正義「うるさい!オレは別にお前なんかいなくても―――」 そう、正義が『オレ』と言ったのだ。あまり重大な事でもないかもしれないが、当の本人にとっては大王と相談するほどの重大な事らしい。 奈海の前でだけ、乱暴に話す。それが『自分が大人になった事』を表している、らしい。 勇弥「なるほど、そういう事か。」 コイン「へぇ、正義くんもそういう時期なんだね。」 大王「そうらしい。ところで、『そういう時期』とは?」 コイン「ふふ、なぁいしょぉー。」 大王「・・・。(恋愛、は無いはずだが、コインにはあの能力があるからな。人間はよく分からん。)」 さすがに放っておくのも問題なので正義と奈海の口喧嘩を止め、正義達は学校に着く。そして大王は屋上に行き、正義達はクラスに入る。 正義「おはよぉー。」 生徒等「「正義おはよう!」」 勇弥「うるさッ。まぁいいか。そんだけ正義が」 生徒等「正義くん!またおんなじ学校だね!」「正義!これからも宜しくな!」「「宜しく!」」「「宜しく!」」ザワザワ 勇弥「・・・人気な証拠か。」 そう笑いながら、勇弥くんは自分の席に着く。ボクも席に着く事にした。前からの友達も多いけど、まだ知らないクラスメイトも多い。ここでまた新たな人生が始まる。 ところで、この学校町で暮らす事を誰よりも楽しみにしていた人がいるんだけど、分かるかな?そう。大王だ。 実は大王は「まだ行かないのか?」「そろそろ行った方がいいんじゃないのか?」とここに行く日を首を長くして待っていたんだ。 ここは大王と初めて出会ったところだから、おそらくここは大王にとって故郷のようなところなんだと思う。 ここにいると大王も落ち着くのだと信じたい。もっとも、ただ世界征服の拠点にしたいだけかもしれないが。 先生「はい、席に着いてー。」 おっと、先生が来た。じゃあボクは授業を受けるから、また後で。 という正義のナレーションが終わり、授業が始まる。特に面白い出来事もなく、放課後となった。 正義「さようならぁー!(さてと、部活を見に行くか。)」 皆も知っていると思うけど、中学校には部活がある。甲子園を目指す野球部とか、結構あこがれるよね。 だけど大王から野球部への入部は禁止されている。なんでも『シゴキ』というものがキツいかららしい。 さて、では何にしようか。絵が上手な訳でもないから美術部は今ひとつか。しかし、やった事がない事に挑戦してみるのもいいかな。 運動は修行のおかげで充分だから、あえて文化部の方に入ろうか。なら吹奏楽部、料理部、パソコン部・・・どれにするか・・・。 ふと、ボクの目にこのような文字が飛び込んだ。 正義「『都市伝説研究同好会』・・・?」 何故かボクは、そのクラブに興味を惹かれた。都市伝説の契約者が、仲間が増えると思ったからだろうか。ボクはその張り紙が貼ってある教室の戸を開ける。 ?女生徒「おぉ、よく来てくれた!さ、早速入ってくれ。」 するとすぐ目の前に女の子がいて、その子はボクの手を引いて、ボクを椅子に座らせた。 ?女生徒「ではまず名前から聞こうか。」 正義「あ、えと、[黄昏正義(たそがれマサヨシ)]です。」 ?女生徒「え?あぁ、黄昏か。」 正義「えっ?ボクを知ってるの?あれ、えと、誰だっけ?」 楓「ほら、同じクラスの[十文字楓(じゅうもんじカエデ)]だ。もう忘れたのか?」 名前を聞いてボクはやっと思い出す。彼女はクラスメイトの1人だ。まだ話しをした事はなかったので、しっかり覚えていなかった。 正義「あ、そうか。ごめんなさい、十文字さん。人の名前を覚えるのはニガテで・・・。」 楓「まぁ私も忘れていたからいいけどな。しかし都市伝説に興味があったとは。」 正義「あ、うん。まぁちょっと・・・。」 そう言い終わったぐらいの時に、教室の戸が開く。見ると、勇弥くんと奈海ちゃ、・・・奈海がいた。 勇弥&奈海「「あ、正義」」「くん。」 楓「おぉ、これで4人か。さ、座ってくれ。」 ボクの時と同じように、十文字さんは2人を椅子に座らせた。 楓「名前は、確か・・・。」 勇弥「ん、[日向勇弥(ひゅうがユウヤ)]、です。」 奈海「えぇと、[心星奈海(しんぼしナミ)]です。」 楓「やっぱりか。ほら、同じクラスの。」 奈海「え?えぇと、まだ覚えてなくて」 勇弥「十文字さんだろ?」 正義&奈海「「え?!」」 楓「おぉ、よく分かったな。十文字楓だ。」 正義「勇弥くん、なんで分かったの?」 奈海「まさかあんた・・・。」 勇弥「いや、名札ぐらい見ろよ。」 あ、と思い見ると、左胸に『十文字』と書かれた名札が付いていた。 正義「忘れてた。そういえば付いてたね。」 奈海「ほら、あれよ。かっこよかったから名字だと思わなくて。」 楓「まぁ、私も忘れていたんだがな。しかし日向も心星も都市伝説に興味があったとは。」 勇弥「いや、オレの方が驚いたんだけどな。」 正義「ところで十文字さん、このクラブは何をするの?」 ボクがそう聞くと、十文字さんの表情が変わる。 楓「よくぞ聞いてくれた。教えてやろう、この同好会の活動内容を。私は最近、ある事に気がついたのだ。」 勇弥「『ある事』?」 すると、十文字さんは得意げにこのような事を話し出した。 楓「最近、奇妙な事件が多いんだ。時に科学すらも超越するような事件がな。多くの人は、強引に科学で解決しようとしている。」 もうすでにだいたいの内容は読めたが、十文字さんの話は続く。 楓「しかし私は、この超常現象を『都市伝説』の仕業ではないかと考えた。実際それで説明がつく事件もある。 つまり『その事件と都市伝説の因果関係を調べる』、それがこの同好会の主な活動内容だ!」 正義「すごく、かっこいい・・・。」キラキラ ナレーションを忘れた正義を、勇弥が十文字から離れたところに引っ張る。 正義「なに?勇弥くん。」 勇弥「よく考えろ。契約者でもない人間が、都市伝説と関わってみろ。」ヒソヒソ 正義「え?あ。」 奈海「もし都市伝説と戦う事になったら、やられちゃうでしょ。」ヒソヒソ 勇弥「だから、ここは都市伝説なんていない事にして、もう関わらないように、って言うからな。」ヒソヒソ そう言って勇弥が十文字に近づく。 楓「なんだ?都市伝説なんていない、という話をしていたのか?」 勇弥「ん、いや、まぁそうだな。そんなありえない事について考えるより」 楓「ありえない事はない!都市伝説は実在する!現に私は都市伝説を見た事がある!」 最初は呆れるようなしぐさをとっていたが、その後の言葉に、3人は黙りこむ。そのまま、十文字はその日の出来事を話し始めた。 ~十文字の回想~ 私がまだ小学1年生の時、親の都合か何かで○○町に行っていた時の、帰りの車での話だ。信号待ちで、ふと窓の外を見ると、 同じ小1ぐらいの子が1人と大人ぐらいの男性と女性がいたんだ。最初は家族だと思ったんだが、それにしては雰囲気がおかしいと思って見ていると・・・。 ―――『遠くて見づらかった』と言われてもいい、だが私は『遠くからでもはっきりと分かった』と言い続ける――― ―――女がマスクを取ると、『口が耳まで裂けていた』んだ――― 私はその時、目を疑った。しかし驚きはまだ続く。その女が急に鎌を取り出したんだ。それを見て、男性は子どもを抱えて走った。 いや、『地面に足がついていなかった』、飛んでいたんだ。もっと見ていたい、このアニメのような光景を終わりまで見届けていたい、と思っていた時、車が動き出した。 しかし2人のスピードは車よりも若干早く、特に女の方はもう少しで男に追いつこうとしていた時だった。 ―――謎の雲が現れて、そこから雷が落ちたんだ――― 雷で女の目が眩んだ隙に、男が路地裏に隠れたところで、車はだんだんと離れていって、見えなくなってしまった。 ~十文字の回想/終~ 楓「後で調べると、あの女の正体が【口裂け女】だという事が分かった。だが【口裂け女】の能力に『雷を落とす』という話はどこを探しても見つからなかった。 だから私は、あの男がやったんだと思っている。つまり『雷を落とし、宙に浮く事ができる』都市伝説だったという事だ。」 十文字が言い終えると、やはり奈海は止めようと文句を言う。 奈海「そ、そんなのいる訳無いじゃん!だいたいその町は私達がいた町よ。【口裂け女】が本当にいたら」 正義「もし!都市伝説がいたとしたら、何故戦っていたんだと思う?」 奈海「え?!ちょッ、ムグッ!」 正義の発言を止めようとした奈海を、何故か勇弥が止める。 奈海「なによ、【口裂け女】がいる訳」 勇弥「正義は【口裂け女】を倒している。小1の時にな。」ボソッ 奈海「え?じゃあまさかさっきの話・・・。」ヒソヒソ 勇弥「おそらく正義が【口裂け女】と遭遇した時の話だな。それに、正義なら上手く説得できるかもしれない。」ヒソヒソ 勇弥が正義に注目する。 楓「・・・『何故』、か。都市伝説同士にもテリトリーのようなものがあって、自分のテリトリーに入った獲物を横取りされたから、だとあの時は思っていた。」 正義「そう・・・。なら、男の都市伝説は子どもを抱えて飛んだんだよね。その子どもはどうなったんだと思う?」 楓「コロされた、と思う。どちらに、かは分からないが。」 正義「そうか・・・、だったら都市伝説とはもう関わらない方が良いと思うよ。」 楓「なッ、何故だ?!危険だからか!?別に危険でも構わない、私は知りたいんだ!真実が!」 正義「なら、十文字さんにこれだけ言っておくよ。」 正義は数歩、十文字に歩み寄る。 正義「都市伝説なんて居ないかもしれない。でももし居たとしても、悪い都市伝説しかいない訳ではないと思う。 悪い事をする都市伝説を許せない、放っておけない都市伝説も居るかもしれない。違うかな?」 楓「・・・。」フルフル 正義「そうにも関わらず、良い都市伝説を悪いやつだと決め付ける事、それだけは止めてほしいと思う。 この世には悪い人だけがいる訳ではない、分かってくれるかな?」 今までの経験から出たその言葉は、単純に都市伝説について言っただけのものだったのか、とても深いものがあった。その心は、十文字にも伝わったようである。 楓「・・・そうだな。確かに決め付けていた。あの都市伝説は、あの子を守ろうとしていたのかもしれないな。」 正義「そうだよ、そう信じようよ。」 楓「ありがとう、黄昏。私は改めて、『悪事に利用されている都市伝説のためにも』!この活動を行おうと思う!」 正義「そうだよ、十文字さん!すっごくかっこいい!」 勇弥「ちょっと待てェェエ!」 奈海「待ってぇぇえ!」 途中までは素晴らしい内容だったが、正義もしっかりと趣旨を理解していなかったようで、はやし立ててしまった。 勇弥「だから、都市伝説を」 楓「日向も、心星も、帰るならせめてこれだけ見くれないか?」 そう言うと、十文字は鞄から、新聞の切抜きが貼られた紙が入ったファイルを取り出した。この状況では抜け出せない、おとなしく勇弥は話だけでも聞く事にした。 その1番上の記事にはこのような記事が書かれていた。 勇弥「『歩道で男が肩を骨折』?!」 楓「この町では結構有名な事件だった。これがさらに何件も・・・。」 正義「で、でもこんな話聞いた事も・・・。」 奈海「あ!これは聞いた事あるわ。『若者の骨粗しょう症に―――』っていう話。」 勇弥「あった!一時牛乳とかカルシウム摂るための料理ばっか出て、炭酸飲料を控えさせられた!」 楓「そう!骨折した人間の証言から、『骨がもろかったから起こった』という説が湧いて、定着してしまったんだ。」 正義「でも、十文字さんは違う、と?」 楓「それにしては被害者は『彼女がいる男性』という法則があるんだ。『キスをすると骨が―――』という強引な説明がされていたが。」 勇弥「たしか『デートの時にファーストフード店で飲食するから』ってものあったな。」 奈海「そ、そういえばこんなのあったわね。(これが理由で正義くんにキスしてないんだよねぇ。)」 十文字は新聞が貼られていない、『まとめ~予想される犯人像~』というページを開く。 楓「これが私が予想する、犯人像だ。」 正義「・・・、犯人は『恋人がいない人間』って?」 楓「それが妥当だと思う。被害者は学校には共通点が無いから、『いじめの復讐』の可能性は低い。 だからそういう、広い範囲の憎しみや嫉妬から犯行に及んだんだと思う。」 勇弥「予想される都市伝説は、『骨を弱くする』『怪力』『与えた衝撃を倍にする』能力・・・。【骨を溶かすコーラ】か。的を得ているな。」 楓「ファーストフード店に来たカップルがターゲットなら、今までの説とも合うからな。ただ、それなら『肩以外の骨折』の例もあるはずなんだ。 それに【骨を溶かすコーラ】をどうやって増やすか、も謎だ。裏ルートがあるのか?都市伝説を売買する組織があるのか?謎だ。」 そうか、十文字は都市伝説との契約の事を知らないのか。3人はそう思い、2人は我に返る。 勇弥「って、だから十文字さん!都市伝説なんてッ」 楓「あッ!すまない、私は用事があるんだ。先に帰らせてもらうぞ。その資料は黄昏に預けておくよ。」 そう言って、十文字は教室から出て行った。 勇弥「もう、関わらない方が・・・。」 奈海「・・・結構、自分勝手な人というか。」 正義「十文字さん、また明日ぁー!さてと。」 正義が窓を開けると、窓から大王が入ってくる。コインも鞄のお守り袋の中から現れた。 大王「なかなか見込みがあるな。資料をまとめるのは、戦闘でも役に立つ事だ。」 コイン「しかも、正確よねぇ。たぶん予想もほとんど当たってるわよ。」 正義「よし、奈海、コインちゃんで調べてくれ。」 奈海「いいけど、どうせ違うと思うわよぉ。それにしても・・・。」 何故か、奈海が正義を見て溜め息をつく。その後、紙と十円玉を取り出し、呪文を唱える。 奈海「コックリさんコックリさん、あの可愛らしかった頃の、正義くんの居場所を教えてくぅーださい。」 正義「違うだろ!この事件の犯人の居場所だ!」 勇弥「にぎやかだなぁ。」 コイン「まったく。でも無理よ。もう少し情報が必要だから。」 大王「なんでだ?なんでも知っているのが【コックリさん】じゃないのか?」 コイン「これだから素人は困るねぇ。」はぁ・・・ コインは溜め息をつきながら、自分の能力について説明する。 コイン「確かに私達【コックリさん】は多くの情報を持っているわ。地球上の、何万年前の情報もね。 だけど、多すぎて逆に全部を知る事はできないから、必要な情報だけを取り出して調べるのよ。」 正義「え?そんなにすごい事だったの?」 勇弥「オレも少しだけ分かるよ、その痛み・・・。」 コイン「特に私はまだ子どもだし、前に見た情報も忘れちゃったりするんだけどね。最近はだいぶ覚えられるようになったけど。」 正義「ふぅん、なんだか『特撮ライダーW』みたいだね。」 大王「言うと思った。なら『検索ワード』はその資料から探せばよかろう。」 勇弥「よし、じゃあ早速探すとするか!」 はたして、都市伝説の居場所は掴めるのか?はたまた、倒す事はできるのか?! 第3話「お返し」―続く― 次回予告4コマ――― ☆笑う者、泣く者☆ ?男「フハハハ・・・笑えるぜ、この記事は。まるで俺が犯人じゃないかのようだ。」 ?男「ん?また聞こえてきたぜぇ、『あいつの声』が。まだまだ強くなるって事かァ?」 ―――男よ、もっと人を苦しめよ!そして復讐を果たすのだ!――― ?男「言われなくとも、やってやる!楽しみにしていろ!」 ―――・・・モウヤメテヨ・・・――― ●書くと、どうしようもなく長くなったから分割した、というのはナイショ。では、後編に続きます! 前ページ次ページ連載 - 舞い降りた大王
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1271.html
序章 追うものと追われるもの 狙うものと狙われるもの 九月下旬、上条当麻は大覇星祭やイタリアでの、とっても愉快な旅行で身体全身が悲鳴をあげそうなくらい疲れていた。そんな不幸な彼に、強気な少女の声がかけられた。 御坂美琴である。 「ちょっと!アンタ!見つけたわよ!大覇星祭の罰ゲーム忘れてないでしょうね?」 当麻はそんな元気はないという脱力した顔で、 「あぁ・・・お前か、疲れてるんだ。今度にしてくれ。」 「何よ約束すっぽ抜かす気?!」 言葉とともに電撃が飛んでくる。 必死で走って、かわしながら逃げている上条を、 必死で走って、電撃を飛ばしながら御坂は追いかけている。 「ううっ!きついんだよ今は!不幸だぁーーー!!」 今日も不幸な男とビリビリな女は騒いでいた。 ここはどこかくらい廃墟であった。 所々蜘蛛の巣が張ってあり、ネズミも数匹いた。 その中に立ちながらとある人物が腕につけられた端末のモニタを見た 「くふふっあれが学園都市ですか・・・警備が硬そうですね。 まあいいでしょう、強行突破で行けばいいんですから。」 紺色のマントに身を隠した金髪で長髪の魔術師はつぶやいた。 そこにその端末に連絡が入る。 「んっなんだ?」 「準備は済んだか?強行突破で頼むぞ。」 電話の声の主は楽しみながら告げた 「あぁ、あえて強行突破で行かせてもらう。」 紺色の魔術師は笑いながら答えた。 それは何か深い意味があるような雰囲気をかもしだしていた。 「じゃあ頼む。」 電話が切れた。魔術師は一息つき、一言叫んだ。 「proportio385―我の行いはすべてを調和し均等と化す!!! さぁ均等を乱す者たちを狩ろうではないか!!」
https://w.atwiki.jp/legends/pages/5016.html
. さぁ、犯人はだぁれ? Red Cape くいくいっ、と服の袖を引っ張られた 振り返ると、晃が携帯を握りしめて、困ったような表情でおちらを見つめてきていた どうしたの、と聞かずとも何があったのかはなんとなく察することができる なので、聞くべきは詳細だ 「何が出たの?もしくは出そうなの?」 「………メリーさん。電話が何度も着てる。最初の電話しか受けてないから、どこまで近づいてきているかはわからない………」 なるほど、と頷く メリーさんは、毎回電話に出てくれていれば、どこまで近づいてきていたのかわかるけれど、電話に出ていないとどこまで近づいたかわからないのが欠点だ 「どうせなら、無理矢理にでも通話を繋げてくるタイプだったら接近具合がわかってよかったんだけど」 「……それだと、怖がる、駄目……」 「んー、まぁねー」 全くもって、難しいしめんどうなものだ どちらにせよ、自分達のする事は決まっているのだが 「それじゃあ、さくっと片付けちゃおうか、晃」 「………ん、でも、油断は駄目、だよ。優」 当然、と笑ってみせる 油断はしない、確実に片付けてやろうじゃないか 優が笑ってみせると、晃もわずかに笑みを返してきた さぁ、それじゃあ 狩りの時間だ 「むむー……」 むぅうううう ぷぅ、と頬をふくらませている幼女が一人 否、幼女の形の人形一体 ふわっふわの金髪に青い瞳、ひらひらふりふりのかわいいドレス 「アンティークドール」と聞いて日本人が思い浮かべる人形そのものである 名前をメリーと言う 貴方は「メリーさんの電話」と言う都市伝説を知っているだろうか 有名な都市伝説であり、バリエーションがいくつも生まれている都市伝説である うっかり萌え系な流れやオチが作られまくる程度にポピュラーな都市伝説 簡単にいえば「もしもし、私メリーさん」と名乗ってくる電話が突然かかってきて、メリーさんと名乗る声は「今、○○にいるの」と現在位置を告げてくる 電話は何度もかかってきて、その伝えてくる位置はだんだんと電話を受け取っている相手の位置へと近づいていき、最後には「今、貴方の後ろにいるの」と告げてきて…… 最後に、どうなるかは実は不明である しかし、話の流れ的に電話を受け取っている相手がろくな目にあわないだろうパターンを予想してしまうだろう このメリーさんは、つまりはその「メリーさんの電話」である メリーさんの正体は捨てられた人形である、という説があり、その名前からアンティークドールが連想される、故にこのような姿だ とにかく、そのメリーさんはふくれっ面をしていた なにせ、自分がターゲットと決めて電話をかけているその相手が、最初の2,3件以降の電話をガン無視してきているからである メリーさん的に、大変と不愉快だ これでは、自分がじわじわと近づいていっていることを知らせる事ができない つまりは、恐怖を煽る事ができないのだ 「メリーさんの電話」と言う存在である彼女的に、不愉快であるに決まっている 「まったく、電話がかかってきているのに無視するなんて、最近の子は困ったさんなの」 むーむーむー、と不機嫌になりつつも、メリーさんは意識を集中し始めた 仕方ない、ちょっと疲れてしまうけれど、無理矢理電話をつなげてやろう このメリーさん的には、それをやると大変と疲れるので嫌なのだが、背に腹は変えられない 意識を集中し、ターゲットの電話につながり……… 「……あれ?」 …繋がらない? あれ?あれれ??とメリーさんは首を傾げる 「……もっかい、もーいっかい!」 再び、集中チャレンジをしてみた そう、ターゲットの電話は、中央高校クラブハウス内にある つい先ほど電話をかけた時には、アーチェリー部の前だった 恐らく、そのあたりにいるはずで……… 「……あれれー??」 やはり、繋がらない どういうことなのだろうか 「……うーん、仕方ないの。近づいて、確認しなきゃ」 もしかしたら、何か対抗策をとったのかもしれないし そうなったら、直接近づいていくしかない ひょこりっ、と隠れていた校舎の窓からクラブハウスを見つめた うん、あそこに向かえばいいのだ 人形サイズな自分が歩いて行くとなると、ちょっと大変な距離だが仕方ない、がんばろう 気合を入れて、メリーさんが歩き出そうとした、その時 「………!」 人間が近づいてくる気配がする まずい、と感じて、メリーさんは再びぴゃっ、と隠れようとして……… 「……あ、隠れなくてもいいや。口封じすればいいんだもんね」 そう、口封じ 自分には、それができるのだから メリーさんは手元に鋏を出現させた どのような獲物を使うのかは逸話によって違うが、このメリーさんが愛用するのは鋏である 突いてよし、切ってよし、の素晴らしい武器であるとメリーさんは認識している 近づいてくる気配に意識を集中する その相手は………よし、携帯電話を持っている メリーさん的特殊能力でその携帯電話に電話をかける………よし、相手が出た 「私、メリーさん!今、貴方の後ろにいるの!!」 メリーさん的美学には反するが 最初の電話で一気に相手の真後ろへと転移した さぁ、この鋏、相手の首筋に突き立て………… 「どーん」 どんっ!! 大きな音が鳴り響いて メリーさんの首は、何か強い力によって一瞬で破壊されてしまった 「ーーーーっし!!」 背後に転移してくる、とわかっていれば対処は簡単なのだ 待ち構え、転移してきたそれに、後ろ回し蹴りを放った優は、制服の上に赤いちゃんちゃんこを羽織っていた 「赤いちゃんちゃんこ」、学校の怪談の一種だ 他者を真っ赤なちゃんちゃんこを羽織っているかのように真っ赤に血塗れに出来るだけの高い身体能力を手に入れている………優はそれの契約者なのだ 「……優、まだそいつ、動く」 「おぉっと」 しゅっ、と、首のなくなったメリーさんが鋏を突き出してきた ひらりっ、と、優はあっさりとその攻撃を避ける 「優、油断、駄目……」 「うん、ありがと、晃。あ、でも、晃ももうちょっとちゃんと隠れてなさい」 ん、と、晃はこそこそっと隠れた 接近戦闘に優れている優と違い、晃は接近戦闘は苦手なのだ 自分が、戦うべきなのだ 「むぅう~、もう、なんなのぉ!」 首のなくなったメリーさんがぷりぷりと怒っている なんとも不思議な事だが、首から上がなくなって口もないと言うのに声を発してしゃべっている まぁ、都市伝説に常識とかそんなものは、通じないのがよくある事だが 「襲われたからには反撃する、当たり前でしょ?」 「むぅむぅむぅ!人間の癖に、生意気!」 じゃきんっ、とメリーさんが、両手に鋏を構えた 口がなくてもしゃべることができるように、目がなくとも恐らく、見えるのだろう。面倒な相手め 「……ま、そっちが喋れるってのは、好都合なのよね」 「むぅ?どういうこと?」 「……決まっている」 ぼそり、と、口を開いたのは、晃 「………お前が本来襲うはずだった相手。何故、狙ってるの?」 メリーさんが動いたら、いつでも対応できるよう構える優 晃の質問に、メリーさんは首を傾げるような動きをしてみせた。首はないが 「襲う?…………襲う、うん、そうだね。襲うの範疇だろうねっ。でも、そんな事、答える必要はないのっ!」 中に浮かぶメリーさんの体が、動く 「こっちの女を殺したら、今度は隠れてる方も殺して口封じっ!!」 目にも留まらぬスピードで、優に突進するメリーさん いかに赤いちゃんちゃんこと契約している優であっても、反応は難しいだろう しかし メリーさんの鋏は、優には届かない 「……………あれ?」 腕が メリーさんの腕が、消えた 両腕とも、一瞬にして消えた………否 「…質問、答えられなかったから。もらう」 晃のスマートフォンの画面に、何か写っている それは、頭しかない男の子で………その男の子の両側に、何か浮かんでいた それは、腕 ハサミを持ったメリーさんの、腕だった 『僕と契約者の質問に答えられなかったんだから、もらってもいいよね?』 と、スマートフォンの画面に映るそれは、けたけたと笑った このメリーさんの敗因は、実にシンプルである 晃が戦闘要員ではないと誤解し、まったく注意を払わなかった事 注意を払っていたら、気づいたはずなのだ。晃が質問をした時、同時に、メリーさんに向かって、不気味な頭部だけが写ったスマートフォンの画面を、向けていた事に。そのスマートフォンから伸びた腕が、メリーさんの両腕をむしりとった事に 「…アンサーさんの質問に答えられないと………体のパーツ、持っていかれる」 怪人アンサー 初めは誰かが作った作り話でしかなかったそれは、恐ろしいまでの速度でネットを通して広まり、都市伝説として息づいている 晃は、その「怪人アンサー」と契約している もっとも、それだけではなくもうひとつとも契約しており………メリーさんが、本来のターゲットの携帯へと電話をかけられなくなっていたのはそのせいなのだが、メリーさんがそれを知ることはできない 鋏を持っていた両腕を奪われた今、メリーさんに戦う手段等、ない 「さって。降参して、情報話してくれるかな?」 「む、ぅ………むぅううううううううううううううううううううぅううううううううううううう……………………っっっっっっっ!!!!」 恐らく、口があったならば、ぎりぎりと歯ぎしりしていたのかもしれない 激しく悔しさをにじませるメリーさん 頭もなく、両腕も奪われた、今…………メリーさんにできることなど、ないに等しい 「……ッ駄目、言わない!だってだってだってだってだってだってだってだってだってだってだって、仲間を売るような行為は裏切り行為だから、消されちゃうんだから、だから、だからっ!!」 ぐるんっ、とメリーさんの体が、回る 最終手段として、体当たりを仕掛けるつもりになったのだろう まるで、ドリルのように体を回転させて優へと突進する 「あっ、そう」 そんなメリーさんに、優は冷めた声で告げる 「じゃあね、ばいばい」 ひゅっ、と風をきる音がして 直後、メリーさんの肉体は、優の拳を受けて粉々に砕け散った 「……優、怪我。ない……?」 「うん、へーきへーき。一発も食らってないよ」 「…良かった」 ほっとした表情になる晃 晃を心配させずに住んでよかった、と優は笑う 広瀬 優と広瀬 晃の双子 性格や身体能力は双子であるにも関わらず全く違う ……違うからこそ、余計に、互いを気遣いあっていた 優は、体の弱い晃を心配し、戦闘においては常に護ろうとする 晃は、健康体ではあるものの「赤いちゃんちゃんこ」と契約しているがため接近戦塔が多くなりがちな優が怪我をしないよう、全力でサポートする 互いに互いを気遣い合うがゆえに、調度良い状態になっていた 「……それじゃ、優。一応、荒神先生に、報告……」 「あ、そうだね。校内で戦ったし、校長先生が察知するだろうけど。一応、言っとかなくちゃね」 行こうか、と二人は職員室へと向かう 優の一撃で粉々に砕け散ったメリーさんの体は、そのうち最初から存在すらしていなかったかのように、静かに消え去ったのだった さぁ、名前を言ってごらん 私達の名前を 貴方は、それを知っているのだから Red Cape 前ページ次ページ連載 - 次世代の子供達