約 2,714,584 件
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3123.html
学園祭に向けて準備が進められているとある放課後、双子の姉妹である「犬神憑き」の契約者、天倉紗江と「怪人アンサー」の契約者、天倉紗奈は家路へと歩いていた。姉妹の後ろを、「犬神憑き」の内の一匹の黒い大型犬がついてきている。 「紗奈ちゃんのクラスの出し物、執事・メイド喫茶だっけ?」 「うん、そうだよ。今、荒神先生にも執事服を着せようってクラスの有志で追いかけてるんだけど…なかなか捕まってくれないんだよねー でも、獄門寺くんや小鳥遊くんも手伝ってくれてるんだもの…絶対に執事服を着せてみせる! 紗江ちゃんのクラスは?」 イベントや行事に対してやる気を見せる紗奈。 今回の場合、やる気に加えて普段白衣を着ている荒神先生の執事服を見たいという好奇心もあり、有志の一人として先生を追いかけていた。追いかけられている先生にとってはたまったものではないだろうが。 「(あ、荒神先生も大変なんだなぁ…) 私のクラスの出し物は『ワクワクトレジャーボックス』だよ。手錠で繋がれた男女1組がペアを組んで、校内に置かれた箱の中から手錠の鍵を探すの。箱には鍵以外にもいろいろ景品が入ってて、空けた人が貰えるんだよ。 執事・メイド喫茶かあ…紗奈ちゃんのメイド服見たいなぁ。見に行ってもいいかな?」 「へぇ…なんか楽しそうだね。休憩時間に顔出しにいくからね。 紗江ちゃんなら大歓迎だよ!来てくれるの楽しみにしてるね」 「君たち…注射をしても…いいかな?」 和やかな空気は、毒々しい色の薬品の入った注射器を持って、ボロボロの黒いコートを着た注射男の登場によって霧散した。 「お断りします!」 「よくないっ!」 即答する紗江と紗奈。注射器の中の液体が都市伝説にも効くのか分からないので、念のため犬神を下がらせておく。 「そんなこと言わずにさあ…注射をさせてくれよぉぉぉ!!」 目を血走らせて姉妹に襲い掛かる注射男の攻撃を左右に分かれて回避。 紗江が注射器を持っている方の手首に手刀を打ち込み、取り落とした注射器を遠くへ蹴飛ばす。 紗奈が注射男の手首を取り、外側に返すようにして注射男の体制を崩して地面に倒した。 犬神が倒れた注射男の喉に噛みつく…首の骨が折れたのか、ごきり、と音がしてそれきり注射男は動かなくなった。 「そちらのお二方、少しよろしいですか?」 注射男を倒した直後、背後から声をかけられた。 二人が振り向くと、いつの間に現れたのか、黒いサングラスを付けて黒いスーツを着た男性が立っていた。 「…どちら様ですか?」 「…何か?」 「失礼いたしました。私は、都市伝説から一般人を守る「組織」という機関に所属している黒服…A-No.666と申します。 先ほどの戦いを拝見させていただいた結果、ぜひとも組織に貴女方のお力を貸して頂きたいと思い、お声を掛けさせていただきました。 私達と共に、悪事を働く都市伝説から罪なき人々を守ってはいただけませんか?」 突然の出来事に、しばらく考えていた二人が口を開いた。 「…わかりました。私達の力で、悪い都市伝説から家族やクラスメートを守れるなら…」 「…わかった。せめて、身近な人達は守りたいから」 こうして、天倉姉妹は組織に加入することになる。 組織の闇も知らないまま… 続く…?
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3609.html
夕暮れの町並みを歩く、一人の青年 カイン・ディーフェンベーカー 「教会」所属の契約者である彼は、同じ「教会」所属の契約者であるニーナ・サプスフォードを探して、この学校町にやってきた だが… 「まいったな…」 未だに、ニーナを見つけられていなかった それらしい目撃情報はいくつか得られたのだが、肝心のニーナ本人は一行に見つからない テント暮らしをしているらしく、住処を点々としているようで…どうにも、すれ違っているようだ 「シスター・ヴァレンタインからも報告がないし…」 …ヴァレンタインが実際はシスターではなくオカマな事実はさておき 生真面目であるが故、そして、ニーナの事を本当に心配しているからこそ、カインは悩んでいた はやく、ニーナと合流し、彼女を支えてやりたいというのに… 己の力不足を痛感するカインを気遣うように、肩に乗っていた小鳥が擦り寄る 大丈夫だ、とでも言うように、小鳥に小さく笑いかけるカイン …日頃、目つきの悪さ(鋭さ)で色々と損をしている彼だが、こうやって微笑んでいる表情は優しい ……もっとも、同時に、いつ、消えうせてもおかしくない儚さも含んでいるのだが (…この街の北区に、教会があると聞いたな。明日はそこに顔を見せてみるか…) ニーナがそこに立ち寄っている可能性もある うまく、情報が手に入るといいのだが… カインが、そう考えながら歩いていると 「あ…カインさん?」 声を、かけられた 肩の小鳥が、驚いたように飛び立つ 「……悠司?」 「お久しぶりです」 ぺこり、頭を下げてきた少年…悠司に カインも、この国の作法に合わせるように、小さく会釈を返してみせた 「…そうですか。ニーナちゃん、まだ、見つかっていないんですね?」 「あぁ」 公園に立ち寄った二人 ベンチに腰掛け、話す 以前、この国の都市伝説に襲われていたところを助けられ、カインは悠司という少年を信用していた 助けられた、という事実以外にも…この少年から感じられる人柄を、カインは信用しているのだ 「僕の方も、これといった情報はなくて……すみません、力になる事ができなくて…」 「悠司が謝る事ではない。協力してもらっているだけでありがたいし、心強い」 謝罪してきた悠司に、そう告げるカイン 自分とヴァレンタインの二人だけで探さなければならないと思っていた状況、悠司が手助けしてくれるだけで、充分にありがたいのだ カインの言葉に、悠司は少し、ほっとしたような表情を浮かべた 「…あ、あの」 「何か?」 「あの、カインさんは、あれ以降、都市伝説に襲われたりしていませんか?」 どこか、心配そうな悠司の言葉に、カインは小さく、笑って見せる」 「今のところは、大丈夫だ」 「そうですか、良かった…」 この街は、本当に都市伝説が多いらしい だからこそ、悠司もこうやって、心配してくるのだろう 都市伝説と都市伝説は引かれ合う ゆえに、都市伝説契約者は、都市伝説と遭遇しやすい カインは都市伝説契約者だが、その能力は癒し、治癒 戦闘向きの能力ではないのだ だから、悠司も余計に心配してくるのだろう 「俺も、一応必要最低限、自分の身を護るくらいは出来る。そこまで気にかけずとも問題ない」 昔、「教会」に拾われるよりも前、姉と共に孤児院にいた頃、流れ着いた旅人から、格闘技を指南された事がある もっとも、「俺の流派は、お前には向いていないらしい」と言われて、一部しか習ってはいないが…それでも、充分に戦える 「でも、この街は本当に都市伝説が多いですから。突然変異の個体とか、時々、恐ろしい戦闘能力を保有している者もいるようですので……」 それに、と 悠司はカインを心配そうに見つめ続ける 「カインさん、日本の都市伝説には、詳しくないのでしょう?」 「……まぁ、確かに」 悠司の指摘通り カインは、日本の都市伝説には、詳しくない だからこそ、警戒せずにひきこさんに声をかけ、襲われてしまったのだ 心配し続ける悠司の様子に、カインはふむ、と考えて 「…ならば、悠司。俺に、この国の都市伝説を、教えてくれないか?」 「え…僕が、ですか?」 「あぁ。迷惑でなければ、だが」 せめて、ニーナの情報を手に入れられず落ち込んでいる悠司に、何か感謝の言葉をかけられる方法を探すように そう、尋ねたカイン もし、教えてもらえたならば、自分は自国の都市伝説や、天使など、「教会」に関わり深い都市伝説について伝えよう、と考えた …二人の様子を、じっと見下ろす小鳥 そのつぶらな瞳は、金色に輝き続けていた to be … ? 前ページ次ページ連載 - 我が願いに踊れ贄共
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1522.html
ガラガラガラガラガラガラガラガラガラ 何か、重たい物が降りてくる……音 ガシャアァアアン!!!と 生徒会室側の廊下から、階段への道 そこに……分厚い、防火シャッターが下ろされた 「…悪いな。俺の女を怖がらせた事と……俺が持つ事を許されなかった名前と日常を持ってるお前がムカついたんで、閉じ込めさせてもらったぜ。ハーメルンの笛吹き」 『オイコラ、ヘタレ。オレノオンナッテノハダレノコトヲイッテンダ?』 「「爆発する携帯電話」のあいつに決まってるだろ。こう言うのは言ったもん勝ちだ」 なにやら三角関係らしい。 「おやおや、捕まってしまった。」 防火シャッターか……厄介な物を使われた。 俺には超身体能力や漫画のような反射神経が有るわけではない。 圧倒的な破壊力を誇る村正とてホイホイ自由に使えるわけではない。 こほ、こほこほ あれだけの能力、反動は確実にあるのだ。 軽くした咳に血が混じっている。 閉じ込められたのは逆に幸運だったと思うべきかもしれない。 戦闘中にこうなっていたら……、相手によるが今度こそ危なかった。 壁に背中を預けてゆっくり腰を下ろす。 少々力を入れすぎた。 目を閉じて耳を澄ます。 あちこちで戦闘の気配が感じられるがまだ三階まで来る気配はない。 ああ、そうだ。 誰か来たら助けを請うてみよう。 助けて貰えるかは解らないが俺を使えば便利だと思うんだよなあ……。 丁度良く教室に誰か居るようだ。 ……と思ったら逃げられた。 人など役に立つと思えば割と簡単に心を開く物なんだがな。 「お前は人を物としか見ないのか?」 そう言われたことを思い出す。 やだやだ、それじゃあまるで人間という存在がみぃんな等しく価値を持っているみたいじゃないか。 そもそも人間なんかよりトイレットペーパーという物の方が等しく価値を持っている。 人間に価値など無い。 人間は価値を生み出すのだ。 その奇跡に気づいていない馬鹿が人間は等しく尊いなどというのだ。 人間に価値など無いのだ。 等しく卑しく醜いのが人間だ。 例えば人間は雑音に名前を付けて音楽にした。 例えば人間は形に法則を持たせて文字にした。 だが最初に雑音に名前を付けた人間が居なくても誰かがそれを行って音楽は生まれたし 最初に形に法則を持たせた人間が居なくても誰かがその仕事を行って文字は生まれた。 人間は取り替えがきくのだ。 それが俺の結論である。 人は……替われる。 さて、防火シャッターで俺を閉じ込めた男は今どうしているだろうか? 「聞こえているかは解らないが十三階段よ、聞いて欲しいにょ。」 俺は壁に向かって話しかけ始めた。 俺の身体が弱っていることを隠す為にも話し続けるのが得策だろう。 「俺の名前は笛吹丁、元大学生だにゃ。 都市伝説と契約する時に大学はやめたにょ。 大学では医学部に在籍していて仲の良い友人が沢山いたんだにゃあ。」 全く以て嘘話だ。 ウスイヒノトなんて入れ替えればフエフキノヒトである。 気づきはするまい。 更に言えば俺は法学部出身だ。 理数系科目など人間のやる科目ではない。 数学は神と対話する学問だと人は言うが神と対話する暇があったら目の前の人間と対話するべきだ。 と、言ったら喧嘩になったのでTVの前のみんなは言わないでね。 仲の良い友人だって居ない、相手は俺のことを考えて居てもそりゃあ嘘の自分だ。 そして奴からの返事はない。 「しかしまあなんていうの? 本当にふとした切っ掛けで今の都市伝説と契約したんだよね。 いやぁ、初めての殺人は本当に気持ちが良かったにゃ。」 嘘だ。 何の感慨もわかなかった。 目の前の人間が電車に轢かれたくらいで動揺するどこぞの子供とは違う。 ところでなんでこんなに自分語りを始めているのかというと 十三階段は人間としての俺の名前を気にしていた。 あの若干怒りをはらんだ声色から言うとそれに嫉妬しているのだろうか? 嫉妬……、相手を理解できない人間のすることだ。 人は等しくひどい苦悩を抱えているというのにそれに気づかない。 それ故に人は嫉妬する。 それならそんな奴の心に波風を少しばかり立ててやれば良い。 「さて、十三階段。 俺が名乗ったんだからお前も名乗るべきではないだろうか? それとも……、俺に名乗る名は無いか?」 俺も奴に名乗る本名は無いのだが。 「無いならつけてやろう。 トミーだにゃ!!」 広がる沈黙。 突っ込み役不在だったことを忘れていた。 メルを連れてくれば良かったのだが今の自分を見られたくない。 ゴトッ 物音が聞こえた。 ずっこけたのだろうか。 だが、奴は俺が今名前を付けたことの意味をわかっていない。 名前をつけることは本質を決めること。 名前を操られた時点で負けなのだ。 負けといっても何の勝負か知らないけれど。 「と言うわけでトミー、俺の話の続きをしよう。 俺にはそこそこ悪くない日常があったよ。 そしてそれは都市伝説として契約してからも変わらない。 株のデイトレーダーとか身分を偽ってこの町のどこかでのんびり暮らし続けている。 町内のボランティア活動とかにも積極的に参加したり家庭教師のアルバイトをしてみたり とりあえずこの快楽殺人者には勿体ない生活だ……にゃ。」 この辺りは割と本当の話。 ただし同居人は居ないことになっている。 メルと橙には申し訳ない。 あと頑張ればにゃんにゃん語尾を少し抑えられることが解った。 「時々考えるよ、何故俺はここまで幸せに生きていられるのだろうかと。 そこで俺は思うんだにゃ。 生きている人はみんな幸せなんじゃないかって。 幸不幸なんてそもそも相対的な物であって俺の今のありようだって将来の解らない不安定な物だ。 組織にも狙われているしな。 でも俺はそれに果てしない幸福を感じている。 おかしいかにゃ?」 ここであえてトミーに振ってみよう。 しかし答えはなさそうだ。 「残念だよトミー、君は俺の日常に興味を持っているんじゃないのかな? 多分君は俺の日常を羨んでいる。 それでは俺は勝手に話を続ける………にゃ。」 知ったような口を叩き相手の反応を伺う。 完全に無視されてはどうしようもないのだ。 何か喋らせなくてはいけない。 「本当にムカツク奴だぜ。訳がわからねえよ。」 始めて返事が返ってきた。 これは良い兆候だ。 一人で語り続けるのは暇なのだ。 「人間同士がわかり合えると思っているならばそれは大きなミステイク。 そう思わないかにゃ? だから俺はトミーの訳がわからないという反応は正しいと思うにょ。」 「人間同士はわかり合えないというのか?」 「ああ、そうだにゃ。」 「俺は知らないがあんたの意見は所謂普通とは大分変わっているだろうな。」 「じゃあ訂正しよう、解った振りなら出来る。 勘違いの集大成が社会だにょ。」 「………へぇ。 あんたはそうやって自分で何でも決めつけてその決めつけてきた世界を生きるのか。 ムカツクなあ、本当に腹が立つぜ。 アンタみたいな人間でも日常を謳歌できるその事実に腹が立つ。」 「お前は日常を楽しめていないのか?それともカルシウムが足りないのか? ああ、そもそも名前も日常も自由もお前には無かったんだったにゃ。 恐らく組織に良いようにこき使われていたんだろう。 嫌だったらもっと速く組織から抜ければ良かったのに……にゃ。」 ――――――プツン、と何かが切れる音がする。 「てめええ!?俺を怒らせたな!ああそうだ!俺は組織に道具みたいに使われていたさ! だが生まれた時からそんな状況だったらどうやって日常を得れば良いんだ! てめえの理論は他人に希望を与えるだけ与えて最後に全て奪い取るテメエ一人の為の理論だ! 幸福?不幸?そんなこと言っておいて貴様は目の前の壁一つ突破できねえ! 誰だって突破出来ない壁が!困難が有るんだよ! その目の前の壁も突破できないお前が!偉そうに説教垂れてるんじゃねえ!!」 「目の前の壁から出てこれない奴に言われたくはないにゃ。」 「なんだと!?」 良い感じでトミーの頭に血が上っている。 相手の動揺から隙を伺い続けよう。 それが今の俺にできる唯一のこと。 「はっはっは、そう怒るニャよ。 それじゃあもうちょっと昔話をしてやるにゃ。 トミーは俺が名前を持って平凡な日常を謳歌しているだけと思っているかもしれないがそうじゃないにゃ。 俺も実は組織に被害を受けたことがあるニャ。 あれはそう……、雪の降る日だった。 知っているか? 都市伝説には三つのタイプがいる。 欲望に任せて暴れ回る俺のようなタイプ そう言う奴らを止めようとして正義を気取るタイプ 全部無視して平和に生きようとするタイプ この三つだ………… 奴は只平和に生きたかっただけだった……にゃ。」 「奴?なんだテメーも組織と何か有ったのか?」 トミーが話に興味を示した。 良いぞ、狙い通りに進んでいる。 「いや何、幼馴染みを殺されたんだよ。あいつも都市伝説だったにゃ。」 「はぁ?」 「冷静に考えれば俺もまだ復讐できていない時点であんたと同じかもしれないにゃ。 俺もまだ組織が怖いにゃ。 さっきは好き勝手言ってすまなかったにょ。 お前だって頑張っていたんだよにゃ、うん。 声だけでは伝わりがたいだろうがあんたの気持ちも冷静になれば解らないでもないにゃ。」 「あ、……いや解れば良いんだよ。 そうだな、どうせてめえは出てこれないんだから話くらいは聞いてやらあ。」 よし、それでは話を聞いていただこう。 「当時俺は小学生だった。 近所には所謂幼馴染みが居てな、可愛い女の子だったよ。 幼稚園も小学校も一緒だった。 でもそんなある日のことだった。 俺と彼女はいつも通り学校の帰り道を歩いていたんだ。 その日はお気に入りのアニメが再放送やっていてよ。 俺は急ぐ余り信号無視をしちまっていた。 そこに丁度良くトラック。 下らないほどにおきまりのパターンだ。 ああ、死んだなって解ると人間慌てない物でさ。 俺はボケッとトラック見詰めていたんだ。 そうしたらいつの間にか俺の目の前でトラックがぺちゃんこになってた。 ペチャンコにしたのは……、そうさ彼女だ。 運転手は即死だった。 彼女、都市伝説の中でもレアな『吸血鬼』だったんだよね。 そりゃ当然彼女には口止めされたよ。 でも俺が喋らなくても運転手―――人が死んだからな、 すぐに組織は追っかけてきたよ。 ある日俺が彼女の家にプリントを取りに行くと家の中から黒服と妙な格好した男が出てきた。 俺は帰りなさいって言われたが無視して進んだんだよ。 そうしたら彼女がバラバラになってリビングに散らかっていた。 いやあ……死体って冷たいんだね。 うん、本当に………冷たかった。 ……………………にゃ。」 台無しである。 「嘘だろう? そんな漫画みたいな話……。」 無視してくれた。 優しさに感謝。 「信じるか信じないかはお前次第だよ。 ただ俺も只の快楽殺人者じゃあねえのよ。 今の都市伝説と契約するまではトラウマ抱えて生きていた只の人間なんだ。 ただまあ……、その事件から少々人間という物が憎くなった。 誰を抱きしめていようと俺の手にぬくもりは戻らないんだ。 あの日と全く変わらず冷たいまま。 彼女に似た誰かだったら俺の手は温まるかと思ったんだけど………にゃあ。」 蝶☆台無し 話し終わるとどこかから足音がする。 さっきあれだけ派手に罠を解いたのだ。 誰かが来ていてもおかしくはない。 さて、そろそろ戦闘パートに戻る時間なのだろうか……? 暗くて時計がよく見えない。
https://w.atwiki.jp/legends/pages/412.html
首塚の首領である将門は、あまり首塚本体から動かない 契約者が存在しない都市伝説である彼は、テリトリーである首塚から長時間、離れる事はできないのだ だからと言って、彼は今のところ、契約者を得るつもりはない …都市伝説としてあまりに力が大きすぎる首塚と契約したところで、人間は一瞬で、彼という存在に取り込まれてしまうから そんな将門の元には、大抵、「首塚」組織に所属する者が、傍にいる 将門が退屈しないよう、相手をしてやっている事が多いのだ この日は、以前、○本木ヒルズの呪いで傷を負った少年が、将門の傍にいた あの時の傷は既に癒え、包帯はとれている 「………」 あむあむ 少年は、もぐもぐとお菓子を食べていた まだ幼い少年、将門相手に、うまく会話できる訳でもない 将門も無理に話し掛けはせず、少年の様子を気まぐれに眺めていた 「…………う」 もぐ と、少年の手が止まる 何か、素晴らしい物でも見つけたように、その表情が輝いた てちてちてち 少年は、将門に駆け寄る 「む?どうした?」 「うー、将門様にあげる!」 す、と少年が差し出してきたのは…先ほどまで少年が食べていたお菓子 とある動物をディフォルメしたイラストが描かれたその菓子 一つ一つ、表情などが違うそれ 少年が差し出した、それは 眉毛が描かれた物だった 少年の能力を思い出し、将門は笑ってみせる 「では、ありがたく受け取るとするか」 「うー!将門様にも、幸せがありますように!うーうー!」 無邪気に声をあげてくる少年の頭を、撫でてやりながら 将門はその菓子をぽい、と口に放り込み、しばし、その甘さを楽しんだのだった おしまひ 前ページ次ページ連載 - 首塚
https://w.atwiki.jp/legends/pages/303.html
エンジェルさん 05 誰も居ない隙に…… 秋祭りの会場である神社では、多くの人が準備のためにあわただしく走り回っていた。 かくいう俺も一応準備のためにやって来たのだが。 「すみません、場所を用意してもらっちゃって」 「いえ、これも仕事ですから」 祭りに参加するために、黒服さんに場所を用意してもらったのだ。 というかこの人はいつ休んでいるんだろう。 「ではこれで失礼します」 「あ、たまには休んだ方が良いですよ。他の人も心配してるみたいですから」 この黒服さんは他の契約者からも人気が高い。この人柄があってこそだろうが。 「……大丈夫ですよ、倒れるわけにはいきませんから」 「……そうですか」 まだ心配だが、これ以上引き留めても迷惑だろう。 そのあとすぐに黒服さんは雑踏の中に戻っていった。 「……パレードは2日目か……」 2日目が決戦になるだろう。おそらく俺は役に立てないが。 「おっさん、1つ聞かせろ」 「……なんだ?」 「夢の国から逃げるにはどこに行けば良いですか」 『墓地』 「……また物騒な」 「墓地に居る都市伝説、聞いたことある! ある! 怪奇同盟! 怪奇同盟!」 「怪奇同盟?」 初耳だ。組織のようなものだろうか。 「都市伝説たくさん居る! 居る!」 「……他に知ってることは?」 「ない! ない!」 「……ないのかよ!」 駄目だこいつ、早くなんとかしないと。 「まあ、そう出たってことは安全なんだろう。いざとなったら逃げ込めよ、青年」 「『いざ』となったらな」 なるべく逃げたくはないが、相手が相手だ。逃げる必要もある。 「さて、準備を続けるか」 なんにせよ、祭りの日は忙しくなりそうだ。 前ページ次ページ連載 - エンジェルさん
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4112.html
【上田明也の探偵倶楽部after.act28~旅行中~】 「いやー大変だったなあ。」 「そうですねー。」 「まさか月宮駅なんて都市伝説があるとは知らなかったよ。」 「お客様、お客様をお訪ねしている方が……」 「あらら、お医者様もういらしたのかしら。」 「サンジェルマンの奴妙に速くないか?」 俺と茜さんは長い電車の旅の末、目的地の数寄屋町にたどり着いていた。 ここに来るまでに“月宮駅”とかいう妙な駅に停まったのである。 そこでF-No.の黒服に出会ったので、 その時襲いかかってきた邪魔な都市伝説を蹴散らしつつ、 黒服から携帯電話を奪い取ってサンジェルマンに今まであったことについて話したところ 「今すぐ行くから旅館で待っててください」 と言われたのだ。 「今来ました!」 「なんだよ、555くんなら何もしてないぞ?」 「違います!桐咲くんです!」 「なに?もしかしてお前のおほもだ……」 「今回は違います!彼は研究対象で!私の研究所を勝手に脱走したんですよ!」 「そうなの?」 「はい。」 「じゃあちょっと待ってて。」 パソコンを取り出す。 画面に手を突っ込んで桐咲くんの脚を掴んで引きずり渡す。 「なぜ脚だけ……。」 「だってこいつ俺に襲いかかってきたんだもん。 また襲われたくないぜ。 あとはお前が引っ張り出せ。」 「はーい。さて筑紫さん、帰りますよー。」 返事がない。 「あれ?もう死んでるんじゃない?」 「良いですよ、死体残ってりゃ老衰以外の死因なら治せますから。」 「やだそれ怖い。」 サンジェルマンがなんとか彼を引きずり出す。 先ほどのショットガンで手足が少々あれなことになっているが…… まあサンジェルマンに任せれば大丈夫だろう。 「いやーわりと死んでるね。」 「死んでますね。」 「やーべっ、吉静ちゃんとの約束破っちゃうかも」 「とりあえず治してきますね。」 「――――まだ、死んでないみたいですよ。」 筑紫少年の身体が俺めがけて跳ね上がる。 茜さんがそれを片手で捕獲。 開いていた窓から彼を投げ捨てたかと思うと、 俺の眼で捉えられない速さで彼女自身も窓から外に出て筑紫少年を捕縛。 地面にめり込むまで殴り始めた。 「なあサンジェルマン」 「なんでしょう。」 「時々思うんだ。」 「はい。」 「子供産まれるのは良いとして親子喧嘩になったら勝てないと思うの。」 「…………良いじゃないですか、親より優秀な子を持てるのは幸福です。 それより夫婦喧嘩は?」 「女性に対していかに上手に負けるかが男の器量を教えてくれるんだぜ。」 筑紫少年が地面に30cm程めり込んだところで茜さんは帰ってきた。 ここが和風の旅館で、しかも離れで、この部屋は一階だったことに心から感謝したい。 「お二人とも油断しすぎです。」 「すまんすまん。」 「いやまさかあの状況でも闘争本能を失わないとは……。」 私って改造の天才ですね、と言いかけたところでサンジェルマンは俺と茜さんのダブルラリアットを喰らった。 「まあとりあえずそいつが一体何者なのかは聞かせてもらうぞ。」 「そうですよ、危険極まりないじゃないですか!」 「解りました解りました……、それでは事情をお話しします。」 サンジェルマンは丁度淹れ終えた緑茶を飲むと話を始めた。 「そもそも私は数千年前から生きています。 だから時間とか有り余るんですよ。 そこでふと思いついたのが人間の進化の限界を確かめる実験でした。 それで世界中の様々な民族の様々な人々の遺伝的な特質をさらに強化する実験をしてたんですよ。 大成功でしたね。 天然物まではいかなくても中々どうして良い契約の器が生まれました。」 「俺はレアだぜ。」 「その実験って組織の人には……」 「あー、一人知ってる同僚が居ますけど……多分言わないでしょう。 うるさ型の同僚が騒ぎだしますしー。今トラブルを起こしている暇無いしー。同意の上で行った非人道的な実験だしー。 文句言われる筋合いは今回みたいな場合を除いてありません。」 「ぶーぶー」 「豚ですか?」 「文句言ってみた。」 「で、この少年が……。」 サンジェルマンは桐咲を地面から引きずり上げると指を鳴らす。 するとあっという間に桐咲は居なくなってしまった。 「他人への戦闘意欲を向上させている家系の人間でして。」 「わー、今の競争社会にぴったり。」 「ええ、適応しています。 そういえば良いお酒持ってきたんですけど飲みます?」 「飲む飲む。」 「私は遠慮しますね。」 俺とサンジェルマンは縁側に座って酒を飲み始める。 それにしてもさっきから飲み物飲み過ぎじゃないだろうか? こいつは腹がタポタポにならないのか? 「ちなみにそういう家は全部植物の名字になってるんです。」 「なんでさ。」 「私が思い出しやすいように。」 「えー…………。」 「ちなみに彼の都市伝説は……なんだっけ。」 「え?」 「ど忘れしちゃいました。なんちゃらの枝って古代神話の武器だったんですけど……。」 「俺が攻撃された時はシャーペンだったぞ?」 「無茶苦茶沢山の説があるせいで形が自在に変化する武器なんです。」 「うわすっげー。」 「明也さん、家族風呂の予約どうするんですか? もうそろそろ行かないと駄目ですよ。」 「あれ?そうだったっけか。」 「じゃあこの話は一旦打ち切りと言うことで。」 「そういえばサンジェルマン、このあたりで面白い観光名所は無いか?」 「そうですね、水族館が新設されたらしいですよ?」 「興味深いね。行ってみるか。部屋出る時は鍵閉めといてくれよ。」 俺は浴衣に着替えてタオルの準備をする。 そして茜さんと一緒に風呂に向かった。 【上田明也の探偵倶楽部after.act28~旅行中~fin】
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3997.html
「共鳴した者共の集い(エコーズ・メンバーズ・ミーティング)」 都市伝説、『厨二病』。中学二年生特有の、痛い妄想。例えば、特殊能力。例えば、特別な存在。例えば、もう一つの人格。そういったものが語り継がれ、都市伝説となったもの。 そして彼らは、お互い共鳴しあった厨二病の契約者(かんじゃ)達。そこに年齢は関係ない。『厨二病』だから中学二年生だけとか、そんなことはないのだ… 「クク…同志達よ。邪気眼を持つこの俺を呼んだからには、何か大切な用があるのだろう?」 彼は蛇木 眼気(へびき げんき)。契約都市伝説は、『厨二病』の中でもかなり有名な『厨二病 タイプ 邪気眼』 「そうね。選ばれし者である私達が集まったんですもの。何か大事な話があるでしょうね」 彼女は二心 栄良(ふたごころ えいら)。珍しい女性用の『厨二病』、『厨二病 タイプ 影羅』 「ああ、“第参の目を授かりし者(ダークサイド・サードアイ)”、“もう一人の私(リ・ヴァース・パーソナル)”。恐らく“奴ら”だろう」 彼は弐綱 夏樹(ふたつな なつき)。契約都市伝説は『厨二病 タイプ 厨二的二つ名』 「“奴ら”…か。フン…初見必殺(サーチアンドデストロイ)を使うときが来たようだな…」 彼は技名 流弥(わざな るび)。契約都市伝説は『厨二病 タイプ 厨二的技名』 「ええ、恐らく“奴ら”…カノッサ機関でしょう。世界を裏から動かそうとする、超巨大組織。巨大な規模を持ちながら、その情報を集めるのはきわめて困難…」 彼は黒野 教也(くろの きょうや)。契約都市伝説は『厨二病 タイプ 黒の教科書』 「そ…そうだね…。で、でも、そうじゃない可能性も…例えばほら、ドヴァ帝国、とか…」 彼は黒野 暦(くろの こよみ)。教也の双子の弟である。契約都市伝説は『厨二病 タイプ 黒歴史ノート』 「ドヴァ帝国は地獄(パラダイス)だよなァ。なにせ俺の闇(だいこぶつ)がたっぷりある」 彼は止乃 力(やみの りき)。契約都市伝説は『厨二病 タイプ 闇の力』 「まぁ、皆静粛にしたまえよ。その通り、カノッサ機関についてだ。本格的に動き始めるようでな、我々の命が狙われるかも知れん」 彼は患中 各利(くろなか かがり)。この中のリーダー的存在である。契約都市伝説は『厨二病患者隔離病棟』 眼気「クク…やはり奴ら、か…。こんな町にまで…しつこい奴らだ」 眼気が言う。ここで眼気の契約都市伝説、『厨二病 タイプ 邪気眼』の能力(ちから)を解説しよう。腕に宿る第三の眼、『邪気眼』を開放し、強力な力を得る、というものである 栄良「全くだわ。私達に何の御用があるんでしょうね。…え? 分かったわ。ちょっとだけ交代しましょう」 そう言ってマッチを擦る。マッチに火が点り、メラメラと揺れている。すると… 影羅「……ヘヘ、久しぶりに外に出られた。この小娘は意思が強すぎて困るぜ(笑)」 栄良の人が変わる。これが彼女の『厨二病 タイプ 影羅』の能力(ちから)である。火を見る事で魔族であるもう一つの人格、『影羅』と入れ替わる。もちろん魔族であるため、力は格段に上がる。 だが、母親の拳骨を受けると元の人格に戻ってしまう、という弱点がある 影羅「アタシとしては、寧ろ面白くなってきたと思うぜ? カノッサ相手なら思う存分暴れまわれるんだからよ…。あと誰か春巻き持ってねーか?」 余談だが影羅の好物は春巻きである。春巻きを見るとつい手掴みでムシャムシャ食べ始め、「久々の飯だぜ(笑)」と言ってしまうほどだ 夏樹「いや、“もう一人の私(リ・ヴァース・パーソナル)”。春巻きは此処には無い。諦めろ」 夏樹の都市伝説、『厨二病 タイプ 厨二的二つ名』の能力(ちから)は、他者や自身に“二つ名”を付け、それに見合った能力を与える、と言う物である。ちなみに二つ名の変更はいつでも可能だ 影羅「チッ…つまんねーな」 と此処でマッチが燃え尽きる 栄良「…これで気が済んだかしら」 流弥「フン…まぁ影羅の言うことも一理あるだろうな」 流弥の契約都市伝説、『厨二病 タイプ 厨二的技名』。能力は技名を叫ぶことで、その技を使う、と言う物である 教也「皆さん…『厨二病』は確かに強力ですけど…過信は禁物ですよ? 言ってしまえば『カノッサ機関』も『ドヴァ帝国』も『厨二病』の一部みたいなものなんですから」 教也の『厨二病 タイプ 黒の教科書』は黒の教科書を召喚し、それに載ってる技を使ったり調べ物をしたり出来る都市伝説である 暦「そ…そうだね…。相手を見下してるキャラって大抵やられるからね…」 暦の『厨二病 タイプ 黒歴史ノート』は、持っている黒歴史ノートに対象者の黒歴史(トラウマ)を写し出し、リアルタイムで放映することで対象者の心の古傷をえぐるある意味とてつもなく恐ろしい能力を持つ 力「だがよォ…逆に清々しいくれェに敵を見下してる奴ッてのも…生き残るンじゃァねェか?」 力の契約都市伝説、『厨二病 タイプ 闇の力』は、闇の力を使い、攻撃や防御が出来るという能力を持つ 各利「まぁ、落ち着きたまえ。学校町には『厨二病』の契約者が我々以外にも少なからず居るようだ。そいつらを仲間に引き込められたなら、大きな戦力になる。 …それに、仲間が多いほど『厨二病』の醍醐味、『覚醒』が起きる確立も上がるしな」 各利の契約都市伝説、『厨二病患者隔離病棟』は、厨二病患者及び『厨二病』の契約者のみに認識できる空間を作り出し、そこに入れる都市伝説である 夏樹「ああ、そうだな。了解した」 栄良「私みたいな女の子の『厨二病』も見つかるかも知れないしね…。『楽園の鍵』とか『楽園の鍵の予備』辺りが狙いどころかしら?」 眼気「クク…近くに同志がいればこの腕が疼き共鳴するであろうな…」 流弥「俺のようなタイプの『厨二病』契約者は多いと聞く…。まぁ、楽しみにしておこう…」 と、まぁこんな感じでそんな風に、『厨二病』契約者達は今日も集まり共鳴しあうのだった… 続く
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4165.html
大王「少年の友よ、都市伝説について訊いても良いか?」 これは、【恐怖の大王】が【タナトス】と遭遇した後の出来事。 大王は都市伝説について調べる事によって、何か新たな発見ができると考えた。 勇弥「『都市伝説について』?」 正義「なんでまた?」 奈海「なに言ってるのよ、自分だって都市伝説じゃない?自分で考えなさいよ。」 大王「自分の事は自分が1番知っているように思えて、実際は意外と知らない事も多い。」 コイン「私も知らない事あるよ。都市伝説は皆なんで契約するのか?とか。」 正義「奈海ちゃんだって知らない事あるんじゃない?長所とか、短所とか。」 勇弥「『灯台下暗し』、って言うしな。」 まさかのジェットストリームアタックに(主にいつかの件のせいで『短所』が効いた)奈海は言葉も出なくなっていた。 勇弥「では、オレが昔調べて大変な事になった時の内容をうろ覚えながら教えてしんぜようか。」 大王「頼む。(何があったんだ?)」 正義「ボクも気になる。(何が起こったんだろ?)」 奈海「私も聞いてあげるわ。(何が起こったの?)」 咳払いしてから、教授にでもなったかのように勇弥は話し始めた。 勇弥「まず、オレは都市伝説をおおまかに2つに分けている。それは―――。」 ○都市伝説の分類(仮)○ ≪妖怪系都市伝説≫ 主に名の通り妖怪やUMAのような、実体の有る都市伝説が所属している。 人を怖がらせる都市伝説が多い反面、人に幸せを運ぶものもあったりする。 無論、身体能力もあり、ものによっては自我や知識もある。 ただしテリトリー(※:都市伝説の活動範囲)外で弱体化・行動不能になるものもある。 【トイレの花子さん】【口裂け女】は元より、【人面犬】【ベッドの下の男】も定義上ここに所属となる。 ≪伝承系都市伝説≫ 言い伝えや事件に関する虚言のような、実態の無い都市伝説が所属している。 例外もあるが科学的に否定されているものが多い。 身体能力・自我・知識こそ無いが、決して弱い訳ではなく、ものによっては最強の能力を得られるものもある。 【扇風機をつけっぱなしにして寝ると死ぬ】【サザエさんの最終回】、果ては【ホワイトデーのお返しは三倍返し】【ゲーム脳】というものもあるらしい。 奈海「『妖怪』も都市伝説なの?」 勇弥「架空の存在、だからな。【コックリさん】もある意味妖怪だぞ。」 正義「『伝承系』は変わったやつが多いね。」 勇弥「ちなみにオレの【電脳世界=自然界論】も『伝承系』に分類されるぞ。」 以上の事を言い終えたところで、勇弥は溜め息をつく。 奈海「こうやってみると意外と多いような少ないような。」 勇弥「あ、あくまでこれはオレが考えたやつだ。所属が分かんねぇものも多い。 もっと分類を増やすべきだろうけど、情報不足でな。」 大王「では、契約はどうなんだ?強くなれると聞いたが、そこに関しても詳しく聞きたい。」 コイン「私もー。」 それでは、という勢いで、勇弥がまたも教授を始める。 ○契約について○ 都市伝説は人間と契約する事ができる。 契約には儀式を要するものもあれば、「契約したい」の一言で成立するものもある。 少なくとも、妖怪系ならその姿が見える状態で、伝承系ならその発生条件に近い状態でなければ契約できない。 (あるいは、契約可能な状態をつくる事こそが儀式なのかもしれないが。) 例)【ベッド下の男】 ベッドの下に現れるため、ベッドの下で人の気配を感じた時に下を見て、契約すると発言すれば契約成立する。 例)【ゲーム脳】 ゲームをしている時にこの言葉を発し、契約するに近い言動を行えば契約成立する コイン「私は奈海に呼び出されて契約したんだっけなぁ。懐かしいなぁ。」 大王「ここまでは常識だな。」 ≪契約による都市伝説への基本的なメリット・デメリット≫ ―――メリット ●単純に身体能力・特殊能力の強化&増加。 ●(忘れられる事による)消滅の防止。 ●テリトリーの外での活動が可能となる。(実体が有る場合のみ) などなど ―――デメリット ●契約者の死亡と同時に消滅する。 ●能力の強化&増加は契約者にゆだねられている(必ずしも都市伝説の意図通りに進化できない)。 ●契約解除の権利を所有していない。 などなど 奈海「都市伝説は契約しても良い事ばかりじゃないんだね。」 コイン「ますます契約の事が謎になったよ。」 正義「へぇ、都市伝説って、忘れられると死んじゃうのか。」 大王「『テリトリー』なんて始めて聞いたな。俺には無いのか?」 ≪契約による契約者への基本的なメリット・デメリット≫ ―――メリット ●契約者自体の身体能力・特殊能力の強化&増加。(ものによって異なる) ●都市伝説との遭遇時に戦う事ができるようになる、いわゆる護身用。 ●都市伝説を従える事による目的の達成 ●契約解除の権利を所有し、その代価は基本存在しない。 などなど ―――デメリット ●契約者の身体・精神に悪影響を与える。(ものによって異なる) ●都市伝説の制約に従わなければならない(必ずしも契約者の意図通りに戦闘できない)。 などなど コイン「あれ?契約者のメリット、イマイチじゃない?」 大王「主な契約理由は3番目か?少年の契約理由は2番目だがな。」 正義「それは奈海ちゃんや勇弥君だってそうじゃん。」 奈海「(コインちゃんにコロされそうだったから契約したなんて言えない。)」 勇弥「(オレの契約理由、3番目だなんて言えない。)」 契約についての教授を終えようとした時、奈海がひょんな思い付きを放つ。 奈海「つまり、たくさんの都市伝説と契約したらすっごく強くなれる、って事?」 正義「それなら、何と契約しようかなぁ。」 コイン「ッ!それだけはダメッ!多重契約は危険なんだから!」 大王「俺もそう聞いたな。なんでだ?」 勇弥「おっと、その事忘れてた。」 勇弥はさらに次の説明を追加した。 ○都市伝説のランク○ 都市伝説はその強さ(或いは知名度)に応じてランクが存在するとされている。 このランクは主に5段階で表されている。また、後述の『契約コスト』はこれと同じ数値をとる。 大王「『タクシ』か。」ボソッ 正義「大王、なにか言った?」 大王「いや、すまん、忘れてくれ。では、『契約コスト』とは?」 ≪契約コスト≫ 都市伝説は、そのランクに応じた『契約コスト』を持つ。契約者は、契約した都市伝説の契約コストの合計値以上の『心の器』を所有していない場合、 契約している都市伝説に精神を蝕まれる、人格を乗っ取られる現象(いわゆる『都市伝説に飲み込まれる』)が発生する危険性がある。 よって、よほどの自身が無い限り、複数の都市伝説との契約は避けるべきである。 勇弥「―――ではご清聴ありがとうございました。」 奈海「・・・、危険なのは分かったけど、多重が危険っていうのは?念押しされてる気分なんだけど。」 正義「例えば契約コスト[3]のやつ2体と契約すると、合計が最高の[5]より高い[6]になるでしょ?」 奈海「なるほど。・・・、でもそれって1体の時だって一緒じゃない?コインちゃんが[4]ぐらいとかさ。」 コイン「えぇ!?なんか怖いじゃん、奈海が壊れちゃうかもしれないなんて!」 奈海「なんか腹の立つ言い方だけど、契約コストを調べる方法は無いの?」 勇弥「ん、特殊な方法があるらしいけど、あとは都市伝説の、そうだ、コインちゃんの能力!」 コイン「あ、そっかぁ!自分で調べれば良いんだぁ!あったま良い!」 なるほど、と思いつつ、奈海はポケットから十円硬貨と紙を取り出し、紙に1から5と書き、いつもの呪文を呟く。 奈海「こっくりさんこっくりさん、これから挙げる都市伝説の契約コストを教えてください。」 コイン「おっけぃ。」 そう答えると、奈海の後で眼をつぶり、手を握り拳にして胸に当てる。 正義「あれ?コインちゃん十円玉の中入らないの?」 奈海「入るのは戦う時だけよ。入ってる方が集中できるけど、手を動かすだけならこのままでもいいの。」 コイン「でも集中してないといけないから、答え探したり、動かしたりしながらしゃべれないんだけどね。」 勇弥「じゃあ早速、[1]を最低、[5]を最高として、心星奈海と契約しているコインちゃんの契約コストは?」 ススッ、と十円玉が動き、[2]で止まる。 大王「[2]か、まだ余裕だな。」 コイン「はぁあ?!ありえない、故障よ!」 正義「だとしたらコインちゃんが壊れているんだよ?」 奈海「心配して損した。じゃ、次に行きましょ。」 勇弥「ん、日向勇弥と契約している【電脳世界=自然界論】の契約コストは?」 ススッ、と十円玉が動き、[4]で止まる。 コイン「うわぁ、ギリギリじゃん。」 勇弥「ま、こんだけ強けりゃな。よし次は正義か。」 奈海「まぁ良くて[3]、普通で[1]ね。」 大王「もう1度、雷落としてやろうか?」 勇弥「まぁまぁ、えと、名前を聞いてなかったな。なんだっけ?」 正義「【恐怖の大王】だよ。」 勇弥「ん、そうか恐怖の」 奈海&勇弥「「【恐怖の大王】!?」」 急に2人の間に季節を無視した冷たい風が吹く。 コイン「え?知らなかったの?」 大王「そういえば、世界征服の事も言っていなかったか。逆に何故コインは知っているんだ?」 コイン「物知りコインをなめてもらっては困るね。 て、前にこんな姿に人にあったら気をつけなさいって言われたからだけどね。」 奈海「じゃあなんで私に言わなかったのよ!私今までとんでもない事してたんじゃん!」 コイン「見たら分かるじゃん。知っててあんな事してるんだと思ってて、勇気あるなぁ、って思ってた。」 勇弥「勇気の有無じゃなくてただの馬鹿だろ。【恐怖の大王】にケンカを売るのは。」 奈海「うぅ、今までごめんなさぁいッ!あと[1]とか言った事も!」 大王「まぁ良いが。少女には借りもあるからな。」 正義「ねぇ早くやってよ。気になるよぉ。」ワクワク 勇弥「お前すごいんじゃないか?黄昏マサヨシと契約している【恐怖の大王】の契約コストは?」 大王「やはり[5]なのか?」ボソッ ススッ、と十円玉が動き、[5]で止まる。 奈海「え、最高じゃん・・・。」 正義「うわぁ、大王すごい!何で分かったの?」 大王「いやまぁ、ってそっちか。いや、心当たりがあったんだ。」 コイン「まぁ雷とか色々なもの落とせるし、もはや神様だね!」 大王「・・・いや、神にはまだ。」ボソッ 正義「?」 しかし勇弥はこの結果を別の視点で見ていた。 勇弥「やっぱり。正義、お前すごいよ。」 正義「え?なんで?」 奈海「今は大王、様のすごさを称える時では?」 大王「おい、戻っても良いぞ。怒りはせんが、逆に腹が立つ。」 勇弥「話の趣旨を忘れてるぞ。契約コストが心の器に収まっているかどうかを調べているんだぞ。」 奈海「ぇ、あ!じゃあ、正義くんって[5]だからッ!・・・どうなるの?」 勇弥「まず[1]、ほぼノーコストだ。多重契約しても問題ない。」 奈海「つまり[1]ならいっぱい契約できると。」 大王「ただしその分、弱いだろうがな。」 勇弥「次に[2]、ほとんど多重契約に問題はない。最低あと1体は可能だろうな。」 コイン「えぇぇ、なんか悲しいよぉ。」 正義「コインちゃんは攻撃力が無いから、攻撃力の高いやつがオススメだね。」 勇弥「次に[3]、単独の目安ぐらいだ。これに追加はきつい。」 大王「とうとう多重契約し辛くなったな。」 勇弥「次に[4]、単独でも、器の大きさによっては危険だ。」 正義「もう1つでも危険になっちゃった。」 奈海「それと契約している勇弥はすごいって事?って、これ以上行ったらもう契約できないんじゃない?」 勇弥「そして[5]、通常、単独でも危険なレベル。契約すればだいたい、都市伝説に飲み込まれる。」 コイン「えっ!正義くん飲み込まれちゃうの?!」 勇弥「普通は、な。でも現に今こうして元気でいるからな。」 正義「そうか、じゃあボクは多重契約は避けておこうか。」 大王「まぁ説得して仲間になった都市伝説がいるがな。」 コイン「あ、それより、契約の意味は?戦う理由は?」 勇弥「ん、あぁ。そこまではオレの都市伝説も知らなかった、という事さ。 コインちゃんだって知らないんだろ?」 奈海「ぅうん、つまり、いつの間にかこんな事になってた、って事?」 正義「契約の理由を探すのも、ボク達契約者の仕事なのかもね。」 大王「ずいぶんつまらない仕事だな。世話になったな、少年の友。では俺は修行に戻る。」 正義「あ、待ってよ、大王!」 大王「([5]で危険だと!?なら[6]だとどうなるんだ?) (その上があるのか?・・・全く、神とはいったいどんな存在なんだ?)」 神について、その契約の難しささえも知ってしまった大王。しかし、やはりその眼は闘志で燃えていた。 今の俺で倒せるか、どうやって倒すか、どのような能力が得られるか―――全ては契約者にかかっている。 さぁ、修行の始まりだ――― 「都市伝説について」―完― 前ページ次ページ連載 - 舞い降りた大王
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2435.html
「首塚」本部 そこで、将門は一人の黒服と対峙していた 「首塚」所属の「日焼けマシンで人間ステーキ」の契約者、日景 翼が多重契約を結んでいる相手である黒服だ 本来なら敵対するべき間柄である「組織」の黒服ではあるが、この黒服だけは特別である …その、黒服からの報告を聞いて 将門は、表情をゆがめる 「…朝比奈 秀雄、か」 「はい…あの子の、父親です」 黒服の表情も、暗い 今、学校町を騒がせているその黒幕が、翼の実の父親であると言う事実 そして、その目的が翼であり…今、起こしている騒動ですら、翼の精神を追い詰める為に行っているという、救いようのない事実 ぐしゃり 将門は、手にしていたその小さな杯を、握りつぶした 「……気に食わぬ」 ぼそりと、そう呟いた将門 己の部下が置かれているその状況に、怒りを抱いている この祟り神は、己の部下に対する害意もまた、「首塚」への害意と見なし、祟りをもたらす 実際、望に復讐をしようとした「組織」のとある少女が、黒服まで巻き込んだあの騒動の後、再び「組織」への祟りを再開したほどである 一応、その祟りは強硬派や過激派相手にのみ、おさまってはいるが 「お前は、その男に、弓引くつもりか」 「…まぁ、私の場合、弓ではなく銃になりますが」 小さく、苦笑する黒服 スーツの下のその光線銃に、そっと触れる 翼に、父親殺しの罪は重すぎる 翼の心は、父親殺しの罪に耐え切れないだろうから …だから 朝比奈 秀雄は、自分が殺す 「お前の力で、それを成し遂げられるのか?」 じっと、将門が黒服を見つめる …この黒服は、戦闘力が高くない 人間時代に契約していた都市伝説は戦闘向きではないし…そもそも、性格が戦闘向きではないのだ 慈悲深くてお人好し どんな悪人であろうとも、最後には許そうとしてしまう男 悪魔の囁きと、クールトーと……もう一つ、正体不明の都市伝説の多重契約者である朝比奈 秀雄 悪魔の囁きとクールトーは、彼本人の戦闘能力をさほどあげてはおらず、彼本人の戦闘能力は、すべて、その三つ目の都市伝説によってもたらされたものであろう 熱に対する攻撃をものともせず、ビル二つを一瞬で切断するほどの怪力 この黒服が、真正面から対峙して勝てる相手とは、到底思えなかった 「やりようはありますよ。元々、私は私自身の力ではなく、他の都市伝説の力を使わせて頂いて、戦闘を行っていますから」 …もっとも、その戦闘行為の大半は、防御行動だ 積極的な攻撃行動を、この黒服はめったに行わない 怒りという感情が、この黒服はあまりにも薄いのだ 怒りよりも、悲しみや同情と言った感情の方が先に出る …だが、この黒服で、すら 朝比奈 秀雄には怒りを抱いているのだ 敬称をつけず、フルネームであの男を呼び捨てしているのが、それを表している 「……あの子を苦しめると言うのなら、容赦をするつもりはありません」 「………そうか」 砕けた杯を放置して、新たな杯を手にした将門 自身で酒を注ぎ、呟く 「…お前の手に余るようであったならば、我がその男、祟り殺す」 「出来うる限り、あなたの手は煩わせませんよ」 「……ふん。できる事ならば、今すぐにでも祟り殺したいところだがな」 注いだ酒を飲み干し 将門は、小さく、呟いた 「…あれは、笑っているのが一番いい。それを奪うならば、それがあれの父親であろうとも……容赦はせぬ」 笑っている顔が、一番似合う青年だから 太陽か向日葵を思わせる、あの笑顔を奪うと言うのならば 容赦をする必要など、あるはずがない 黒服から、悪魔の囁きの契約者達の報告を聞いて 後で盟主に伝えるべきだな、などとも考えながら…将門は静かに、怒りを募らせたのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 首塚
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2587.html
「チィ、しぶとい。一体どんだけ居るのよ。面倒くさいわね」 「ックックック。文句を言うでない。好きなだけ殺していいんじゃ。悪くは無いじゃろ?」 「あんたと一緒にしないでくれ。にしても、完全に殺さなきゃ動きを止めないなんてな」 そう言い合いながら襲いかかる人々を切り刻みまくっている〝レッドキャップ〟〝赤マント〟〝口裂け女〟。 腕や足が無かったり、服が真っ赤に染まっていながらも、人々は攻撃を止まる様子は無い。 腕が無ければ噛付きや蹴りで攻撃し、足が無ければ這い蹲って攻撃してくる。止めをさしてやっと動かなくなるのだ。 さらに、《行き交う人々》にいたっては、暫くすれば傷が治っていくという始末だ。 「ふぅ、流石にしんどいな。けどなあ、ここで止まる訳にはいかねえんだよ」 辛そうにしながらも、《行き交う人々》の契約者は戦いを見続けている。 亡霊たちを戦わせるだけなら良いが傷を治すには相当のエネルギーが必要になる。 だが、《行き交う人々》の発動も傷の回復も止める気は無い。 〝レッドキャップ〟達を攻撃していた軍団が、突然、彼らの動きを止めるように手足に纏わりついてくる。 「何だ!? いきなり!?」 「知らないわよ!? この、離しなさいよ!」 3・4人程度なら、簡単に振り解く事が出来るが、十数人単位で抑えつけに来るのだ。 これによって、3体は動きを制限されてしまう。 「鬱陶しいのお。ん? 何じゃ、この音は?」 そんな中、何かが近付く音が聞こえてくる。それは、エンジン音を轟かせ、猛スピードで3体が居る所に突っ込んでくる。 満足に動けない彼らは、それ……大型トラックを初めとした車の突撃をモロに喰らってしまった。 「ッつ、皆!?」 「大丈夫。素体が無事なら修復可能」 その様子を目撃し、慌てる〝テケテケ〟を淡々となだめる美咲。だが、その顔には薄らと焦りが浮かんでいる。 それによって、出来た隙を狙っていたのか。 パッーンと言う、銃声が聞こえ美咲の腹部に銃弾が命中した。 「ッく――!」 ドサッと、崩れ落ちそうになった体を片手で支え。銃弾の飛んできた方角を見れば、数人の人間が虚ろな表情のまま此方に銃口を向けている。 その全員の指が、引き金を引いた瞬間。 「――――――――危ないんだよねッ!」 大鋏を投げ捨てた〝テケテケ〟が、ズザザァァと、音を上げて移動し美咲を庇う様に壁になった。 美咲の身長の半分程度しかない〝テケテケ〟では、壁になった所で本来それ程の期待は出来ないが、倒れている今ならば問題は無い。 パッーン、パッーン、パッーン、パッーン、パッーン………………… 全員の銃弾が尽きた所で、やっと銃声は鳴り止んだ。と、同時に〝テケテケ〟が倒れる。 「結局、まともに当たったのは最初の一発だけか……。まぁ、当たった事に変わりはねぇな」 銃撃の嵐に気を取られていた間に、近づいていたらしく。美咲が顔をあげたのとほぼ同時に、彼女の首元に、《行き交う人々》の契約者は刃を突き立てる。 呼び出した4体は、全員動けそうにない。その上、あとの2体を呼び出しても、刃が首を裂く方が早いだろう。 「俺達の勝ちだ。最期に何か言う事は有るか?」 「そうですね。実の所、感謝してるんですよ。復讐に来てくれた事を、殺しに来てくれた事を」 「何だ。止めてくれる人を望んでいた、とでも言いたいのか?」 「いえいえ。だって……相手が殺意を持って来たのなら。 ――こっちが、殺しても問題ないでしょ」 クスリと、笑った気がした。 美咲の背後に居る《行き交う人々》の契約者には、彼女の表情は分らない筈だと言うのに。 確かに、確実に。笑ったのを感じた。 それに、なにか嫌な気配を感じ反射的に刃を引いた。 ガキン、と美咲の動脈を切り裂くはずの刃は、何か硬いものに当たったような音を立てる。 血が噴き出す事はおろか、刃に血が付いた様子も無い。 その事態に、必殺となる攻撃が効かなかった事に、《行き交う人々》の契約者は叫びをあげる。 「なっ、何でだ?! 《七人みさき》に契約者の肉体強化の能力は無い筈だろ!?」 「ええ。《七人みさき》にはそんな力は有りませんよ。ズッ、く。 今のは、ッツく。〝硬気功〟です。そして、……これが〝軟気功〟」 傷口を指で広げて、貫通せず体に残っていた弾丸を取り出すながら喋る美咲。 取り出すたところで、淡く光る左手を傷口に当てると、見る見るうちに傷口が治されていく。 「多重契約者? いや、そんな訳はねえ。《七人みさき》の契約コストは相当の筈だ。 多重契約なんて、普通は出来る訳が無い」 「私をいいえ、《七人みさき》を調べたなら知ってる筈ですよね? 【七人みさきに殺された者は七人みさきになる】って話ぐらいはね。 〝レッドキャップ〟達の様に使役するだけじゃ無くて、私自身がその能力を使用する事も出来るんです。 まぁ、無条件って訳でも有りませんけど。そして――」 そう語る美咲の影が、本来の物を残して左右に3つに分かれていき、計7つの影が出来上がる。 新しく現れた影が盛り上がり、それぞれ人の姿と成っていく。具体的にいえば、美咲と同年代の少女の姿へと変わった。 「「「「「「「私達が、《七人みさき》本来の姿です」」」」」」」 それは、《七人みさき》と美咲が契約する際に、元になった亡霊である少女たちの姿だった。 彼女達が現れると同時に、辺りの《百匹目の猿現象》に操られていた群衆がバタバタと倒れていく。 「そしてさ」「《七人みさき》によ」「出会った者はだね」「高熱にですね」「襲われる」「な~んて」「話もありますよ」 髪型が、服装が、性格がそれぞれ違う7人の少女達が交互に喋る。 その内容から、《行き交う人々》の契約者は美咲が他の都市伝説の力を使った理由と、群衆が倒れた原因を理解した。 「殺した都市伝説を取り込んで支配出来る上に、存在するだけで相手を病気にさせるってのか?」 「その通り。とは言え、発病の能力は一般人にしか効果は無いんだけどね」「まぁ、こういう時には便利だけどよ」 「最近は、私達が出てくる機会も無かったからな」「久しぶりに外に出れて嬉しいです」「同感」「ホントにラッキーだよ」 「まぁ。都市伝説が相手だとあまり役に立たないうえ、五月蝿くなるだけですしね」 ブーブー、と文句を言いだす亡霊少女達を美咲はさらりとスル―し、周囲を亡霊で固め始めている《行き交う人々》の契約者に目を向ける。 「彼女達が全員揃わないと、発病の力は使えない上に、人並みの力しかないので取り込んだ都市伝説に戦わせる方が手っ取り早いんですよ。 ともかく、先に貴方の奥さんを潰しときましょうか。〝さとるくん〟居場所を教えて下さい」 「オーケー。……あのビルの最上階に居るみたいだね」 「……っ! させるかぁぁぁぁッ!!!!」 〝さとるくん〟が指を指すビルを見た《行き交う人々》の契約者は、眼の色を変えて亡霊達と共に飛び掛かって来た。 その反応は、自分から〝さとるくん〟の示したビルが正しいと言っているようなものだった。 「〝鬼女〟」 美咲や《七人みさき》を仕留めようとした彼らは、その一言で現れた和服の美女に触れること無く、まとめて吹き飛ばされた。 「大盤振る舞いじゃないか。妾まで呼ぶなんてさ」 「仕方がないでしょう。私を含めた本体や〝さとるくん〟じゃあ攻撃力に欠けるんだから。 ついでに、あのビルも潰して貰おうと。どんな都市伝説かは分かりませんけど、街の人達を操っているのが居るみたいですから」 額に小さな角がある彼女は、〝鬼女〟と言う名の通り鬼の一種である。 ただし、普通の鬼のように他者を圧倒する筋力は持っていない。その変わりに有するのが、多種多様な術式だ。 まぁ、身体強化の術式を修めて居るので殴り合いも出来なくはない。 それ故に彼女は、《七人みさき》に取り込まれている都市伝説で、トップの実力の持ち主と言える存在なのだ。 「成程ね。発動者が死ねば支配が解ける可能性も有るって事かい? そう言う事なら分かったよ」 先程の一撃で気絶した《行き交う人々》の契約者を一瞥し、ビルを見やる〝鬼女〟。その右手には、目に見える程の力が集まっていく。 集まった力は、腕先から肘までを渦巻きながら纏われている。 力の集束が止むと同時に身体ごと右腕を引き、ビルに狙いを定め撃ち出そうとしている。 それを阻もうとしている者は、誰も居ない。 操られた人々は、《七人みさき》の力で倒れ、男性は気絶したままだ。 「っりゃあぁぁぁぁぁぁァァァ!!!!!!!」 その〝鬼女〟の一声と共に、ビルに向かって爆音を響かせながら螺旋を描き放たれた――。 油断していた、と言うべきだろう。 呼び出された都市伝説を全て倒され、《七人みさき》に止めがさされる。 そう思っていた《百匹目の猿現象》の契約者である女性は、提げていた双眼鏡でその様子を見ていた。 夫の刃が防がれたり、少女が増え支配下の群衆が倒れたり、現れた少年によって自分の居る場所を知られた事も解った。 だが、これだけ離れて居れば大丈夫だと思っていた。 「ヒッ」 故に、現れた和服の美女に都市伝説ごと夫が倒され、双眼鏡越しに目が合って、恐怖に包まれる。 だからなのか、もしくはまだ余裕を感じていたのかその場を動きはしなかった。 だが、和服美女の腕に集まって行く力に、不味いと思いビルから去ろうと行動を起こした。が、遅すぎた。契約によっての身体強化が全くない彼女には、逃げる事は叶わなかった。 閃光に包まれて消えゆく中で、《百匹目の猿現象》の契約者が最期に思ったのは、娘の仇を取れなかった無念と夫の無事だった。 気絶から目覚めた《行き交う人々》の契約者が最初に目にしたのは、妻が居るビルが崩れて行く光景だった。 呆然とそれを見て居た彼だったが、段々と眼の前で起こっている事を理解していった。 「な、あ、な、~~~~~~~!!!」 言葉にならない悲鳴を上げ、呆然とする《行き交う人々》の契約者を尻目に美咲達は話し始める。 「うん。相変わらず凄いですね。〝鬼女〟の一撃は、もう二度と敵には回したくないですよ」 「そんなに褒めないでくれよ。で、如何だい? 成果は有ったかい?」 「大丈夫みたいだよ。敵意や殺意みたいなのが周りの人達から感じなくなったから」 〝さとるくん〟の言葉通り、苦しみながらも向けられ続けて居た自分達への害意が無くなった事に成功と判断した。 「んじゃ私達の出番もお仕舞い?」「おいおい。まだ、出たりねぇぞ」「それは、同感だな」 「えと、私は別に……」「素直に」「遊びた~い。転がってる奴らで遊びた~い!」 群衆を抑えるために呼び出された《七人みさき》の本体たちが口々に文句を言ってくるが、美咲は呆れたように溜息を吐いて言った。 「何を言ってるんですか。抵抗するのを分ってて、戻す訳がないでしょう。倒れてる人達への止めお願いしますよ」 「「「イェーイ!!!」」」「「よし!」」「やった」 そこら中に落ちている武器を手に、苦しんでいる人々に襲い掛かる少女達。 発病の力によって満足に反抗もできずに、群衆は確実に殺されていく。 何が起こっているのか? 自分達が先程まで何をしていたのか? そんな疑問を抱えたままに殺されていく。 「「「アハ、アハハハハハハ!!!!!」」」「「クス、クスクスクス!!!」」「フ、フフフフ!!!」 殺しまわる少女達の笑い声に、男性は気を取り直した。 「止めろ! 支配が解けたのならこの人達は関係無いだろう?!」 周りの出来ごとに焦って、《行き交う人々》を再び展開し、亡霊少女達を止めさせようとする。 「言ったでしょう。殺意には殺意で返すと、操られていようと何だろうと。いえ、私達に遭遇した時点で変わりはありません」 「そう言う事。《七人みさき》に、僕達に出会った時点でこの人達が死ぬのは確定してるんだよ」 それを遮るように美咲と〝さとるくん〟が語り、 「そもそも、捨て駒だったんだろう? 今更何言ってるんだい」 阻むように〝鬼女〟が彼らの前に立つ。 「それは……ッ!」 「反論なんかしなくて良いよ。それじゃ、僕は戻らせてもらって良いかな? する事も無いみたいだし」 「そうですね。良いですよ、戻ってて下さい」 〝さとるくん〟が消えても、《行き交う人々》の契約者に余裕は生まれない。 そもそも、敵戦力として数えて居なかったのだ。居なくなっても変わりは無い。 警戒しているのは〝鬼女〟と呼ばれた眼の前の女性だ。 先程、都市伝説ごとまとめて吹き飛ばされたのだから当然だろう。 「ついでに、他の皆も回収しておきますか。何時までも、倒れたままで居られても困りますし」 倒れていた〝テケテケ〟と車の群れに潰されていた3体の都市伝説も〝さとるくん〟と同様に美咲の中に戻っていく。 その最中も人々を殺し尽していた少女達は、満足したのか飽きたのか美咲の傍に寄って来た。 もう既に、その場に居たほぼ全ての人間が息絶え。残りの全員も、呼吸を荒くしたり血を吐いたりとかなり衰弱している。 ヤバイ、その一言が、今の《行き交う人々》の契約者の頭を占めている。 自分達の力だけでは〝鬼女〟を倒す事が出来ず、自分達に仲間が居る訳でもない。 だからこそ、この状況を打破するため、〝鬼女〟よりも先に美咲や少女達に矛先を向けて襲いかかろうとし、 「判断としては、間違っちゃいないね。けどまぁ、させる訳が無いけどね。土式――」 辛うじて息の合った群衆とまとめて、地面から突き出た石の槍にその身を貫かれた。 「ガ……ッハ!!」 「操技っとね」 「カハッ。ぐ、そっ。ヒューヒュー」 〝鬼女〟が創りだした槍に穿たれ、倒れていた全ての人間は止めを刺され、命を落としていった。 そんな中で《行き交う人々》の契約者である男性だけは微かだが息が有った。 しかし、すでに都市伝説を維持する力は無いようだ。 その様子に、何かを思いついたような表情を見せる美咲。 集まっていた亡霊少女達に何かを告げて、彼女達もそれに賛同する。 「その傷だと、もう長くは無いみたいですね。最期の手向けとして良い物を見せてあげますね」 「良、イ物? な、んノ、事だ」 「秘密だよ~。美咲っち、こっちは良いよ」 「それじゃあ、初めますか。これだけ居ると、私だけじゃ大変ですからね。」 7人が手を掲げると、死んだ人たちの体から人魂と呼べる様な光の球が出て来る。それは、吸い込まれるように《七人みさき》の手に向かっていく。 無数の光球が湧き出る様子は、とても綺麗で幻想的な光景であり。確かに美咲の言った通り、良い物と呼べるかもしれない。 だが、それも光球の正体が何なのか知らないから感じられる事だろう。 「綺麗よね。これが所謂、命の輝きってヤツなのかしらね」 「言い得て妙だな、命の輝きとは。確かに、その通りだ」 この光球は、知識や経験・能力と言った物が凝縮されたモノの塊であり、その人の生きた証と言っても良い。 《七人みさき》に殺されている事を条件に、人間や都市伝説に関係なく人型の存在にのみ現れる。 これを吸収する事によって、別の都市伝説を《七人みさき》に取り込むことが出来るのだ。 「い~っぱい集まったね。これだけ有れば、今日の分は大丈夫かな?」 「大丈夫どころかお釣りが来る位ですね。あなた達や〝鬼女〟も出したのに、消費分以上が集まりました。」 また、都市伝説を使うために必要なエネルギーの代わりにも出来る。 ただし、消費した分は決して戻らず、都市伝説や契約者の方がエネルギーが多い。 この機能によって、美咲は都市伝説に取り込まれる事無く、ギリギリのラインで人間としての自分を保っているのだ。 薄れゆく意識の中で、その様子を見ながら《行き交う人々》の契約者は、自分達の復讐が失敗した事を理解した。 いや、余計に力を蓄えさせてしまった分、逆効果だったとしか言いようが無いのかもしれない。 そもそも、前提から間違っていたのだ。《七人みさき》を相手に、物量戦で戦おうとした事が。 それを理解したのかは分らないが、悔しさと無念さを感じながら彼は、息を引き取った。 「うっし、全部集まったみてぇだな」 「そ、そうですね。あ、あれ? 〝鬼女〟さんは何処に」 「ええと。やる事やったから戻るって言って、戻りましたよ」 「私達も戻る」 「あぁ。そろそろ、移動しないと不味いかもしれん。戻るとしよう」 「むぅ~。しょ~がないか」 そう言うと、出て来た時とは反対に、亡霊少女達の体は影に沈んでいき。6つの影は美咲の影へと合わさった。 残ったのは、無数の死体とたった1人の少女の姿。その少女……美咲は急ぐ様子も無く、のんびりと街を去っていく。 「うわ?! 何じゃこりゃ……」 「辺り一面、死体だらけですねぇ……」 美咲が離れてから十数分後程で、入れ違いになるように黒服と女性の2人がやって来た。 彼らは、一番近くに居た事とその能力の関係から、組織がこの街から観測した都市伝説の調査を命じられたのだ。 それでやって来た現場は、死体だらけ。組織の人間として、それなりに人の死は見て来た2人も唖然としている。 「取り合えず、この街封鎖しとくべきか」 黒服が携帯で本部に連絡し、現場の状況を報告し街の封鎖を依頼する。 組織の方も、報告の内容から隠蔽が難しく時間がかかると判断し封鎖を決定したようだ。 「取り合えず。調べてみましょうか、危険は無いって私の《女の勘》が言ってますしぃ」 黒服の電話の間に、気を取り直していたらしい女性がそう告げる。 彼女は、女性限定の都市伝説である《女の勘》の契約者だ。その的中率は90%とかなり高い。 「だな。そんで、誰を調べれば良いんだ。教えてくれ」 「ええと、ですね。…………あ、あの人ですねぇ」 「アイツだな。んじゃま、調べるとしますかな」 女性が示した死体へ向かう黒服。 その死体は、他の幾つかと同じく地面からの槍によって体を貫かれている。 それは、《行き交う人々》と契約していた男性だった。 「さぁて、教えてくれ《残留思念》。此処で、何が起きたのかを」 《行き交う人々》の契約者の死体に手を当てて、黒服は都市伝説の力を発動させた。