約 8,219 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/933.html
話、お話、昔の話 昔、お話、昔の話 話、お話、多くの話 昔、お話、遠くの話 話、お話、昔の話 南アフリカ、昔の話 高い木一本立っていた そこに三匹住んでいた 住んでいるのはみすちー親子 母が一匹、子が二匹 今日も留まって鳴いていた 木の巣で留まって子守歌 「おちびちゃん 今日も元気でちんちんちー 大きく育ってちんちんちー」 そこへちぇんがやってきて 舌なめずりしてこう聞いた 「何しているの、みすちーさん その歌いったい何の歌?」 「一人前になるように 太く大きくなるように 歌っているのよ ちんちんちー」 「子供は何匹いるんだよー」 「ちーちーちーちー 二羽いるわー ちんちんちんちん 寝ているわー」 ちぇんはグルリと木を回り それからギロリとひとにらみ 「こっちは飢きんで空腹で そっちは二匹で幸福だ だからさ、それを分けてよね 一匹寄こせとわかってね」 理不尽極まる要求に 母は慌ててこう叫ぶ 「そんなことはできないわー どこかに去ってくださいなー」 「わかんないのー、このお馬鹿 足らない脳は鳥頭 ただの一つでいいんだよー それとも二匹がいいのかよー」 「お願い静かにしてちょうだい おちびちゃんたち起きちゃうわ」 「お願いさっさとそれちょうだい 子供が全部死んじゃうよー」 ちぇんは走ってジャンプする 木登りしようと見せかける ガウガウ、ガーガーほえかかり 襲う迫力見せつける 母みすちーはうろたえて とうとう一匹投げ落とす ちぇんはペロリと呑み込むと 再び母に声掛けた 「子供は何匹いるんだよー」 「ちーちーちーちー 一羽だけー ちんちんちんちん 寝ているわー」 悲しみ嘆くは母みすちー それでもちぇんはさらに言う 「それじゃあそれも寄こしてね ちぇんは腹ぺこわかるよねー わかることないお馬鹿なら お前も一緒に食っちゃうよ!」 ちぇんは走ってジャンプする 木登りしようと見せかける ガウガウ、ガーガーほえかかり 襲う迫力見せつける 母みすちーはうろたえて 残りの一匹投げ落とす ちぇんはペロリと呑み込むと さっさとそこから立ち去った 「ちんちんちー とても悲しい ちんちんちー」 悲しみ嘆くは母みすちー そこへ通るはきめぇ丸 胴付きゆっくりきめぇ丸 「どうしたのです、母みすちー」 「かくかくしかじか、ちんちんちー」 事情を聞いてうなずいた 理解、理解と首振った 「ちぇんは木には登れません そんな事例はございません 一杯食わされたのですね 二匹も食われたのですね それなら今度はわたくしが ちぇんをだますとしましょうか」 ある日、ちぇんは走ってた 必死の思いで走ってた 舌をだらりと垂らしつつ 汗をかきかき急いでた そこへ通るはきめぇ丸 飛びつつ、声掛け、身を案ず 「少し休めばいいのでは? そんなに急ぐと死にますよ」 「急がないと死んじゃうよー これから嵐が来るんだよー」 「それは大変 辛い、辛い 羽があったら楽なのに」 「確かにそうだよ、わかるよー うらやましいよ、飛びたいよー」 きめぇ丸はうなずいて 理解、理解と首振った 「それなら飛び方教えましょう 嵐の後に会いましょう」 約束通りまた会って きめぇ丸は念を押す 「それでは飛び方教えます 言うこと聞いてくださいね」 「わかっているよー、大丈夫 言うこと聞くよー、何でもね」 「ではまずそこの木のやにを 体の全部にお付けなさい」 言われた通りにちぇんはした ベタベタベトベトやに付けた 「空を飛ぶのって気持ち悪いー 帽子と頭がくっついたー」 「それは大変 不快、不快 それでもちょっとの辛抱です」 「わからないのがわかるよー これして何の意味あるのー?」 「ほらほら、こうしてわたくしが あなたに羽を付けるのです」 背中の羽を抜き取って ちぇんに付けるはきめぇ丸 ネコ饅頭のあちこちに カラスの黒羽貼りついた 「やったよ、やった、羽生えた! ちぇんも鳥の仲間だよー」 ちぇんは喜びその場を駆ける 尻尾や耳を上下する けれども空飛ぶ気配なく やがてプンプン怒り出す 「どういうことなの、飛んでない これじゃサギだよ、とんでもない」 「サギではなくてカラスです 飛ぶのはこれから覚えましょう」 ちぇんを抱えるきめぇ丸 強く羽ばたき急上昇 あんまり高く飛んだので 木はアリみたいに見えていた 「ここから飛び降り羽振って 飛ぶのを覚えてみるのです」 恐る恐る下を見て ちぇんは言葉が出なかった 「気が向きませんか? 怖い、怖い やめましょうかね、Fly high」 「何言ってんの、怖くない ちぇんはやるよ、飛んじゃうよー」 「じゃあ健闘を祈ります 飛んできなさい、どこまでも」 きめぇ丸は手を離す ちぇんは飛ぼうと身悶えた 尻尾を振って耳上下 体を揺らし尻回す けれでも飛ばず、ただ落ちる はがれる羽を尾に引いて わからないよ、の叫び声 おおおおおおお、と伸びていく そして地面に激突し 見るも無惨に四散した これを見届けきめぇ丸 愉快、愉快と首振って 事の次第をみすちーに 伝えに飛んでいったとさ 話、お話、昔の話 アイルランドの昔の話 昔、母親れいむいた お料理大好きれいむいた しんぐるまざーで頑張って 今日もお鍋を煮込んでた その時小人がやってきて 母親れいむにこう言った 「その鍋しっかり煮込んでる、あんたを見込んでお願いだ」 「できればやってあげるけど れいむに何の用事なの?」 「ちょっと家が欲しいんで おいらに作ってくれないか」 れいむのお家はそこらの洞穴 れいむは思った、そんな無茶な 「できればやってあげたいよ だけどれいむは作れない」 「それじゃあおいらに貸してくれ その鍋ちょっと貸してくれ」 小人は草と木の枝と たっぷり泥を取ってきて 放り入れたは鍋の中 たまげたことにぶち込んだ 「ちちんぷいぷい ちちんぷい」 あっという間に現れる 鍋の中から一軒家 小人は大きな家出すと 何と担いで立ち去った れいむは思った、なるほどと ああしてお家を作るのか 真似して集める草・木・泥 放り入れるは鍋の中 「ゆゆんゆぅゆぅ ゆゆんゆ~」 だけどもお家は飛び出ずに できたは悪夢のシチューだけ 「ゆゆーん、変だよ おかしいよ」 それから数日経った後 れいむはお鍋を煮込んでた またも小人がやってきて 母親れいむにこう言った 「その鍋しっかり煮込んでる、あんたを見込んでお願いだ」 「できればやってあげるけど れいむに何の用事なの?」 小人は連れの少年二人 れいむに見せてこう言った 「こいつら二人を一人にまとめ 一人前にしておくれ」 もちろんれいむは思った、無茶だ 当然すぐさま断った 「できればやってあげたいよ だけどれいむはできないよ」 「それじゃあおいらに貸してくれ その鍋ちょっと貸してくれ」 小人は二人の坊ちゃんを お鍋にぼちゃんとぶち込んだ 「ちちんぷいぷい ちちんぷい」 あっという間に現れる 鍋の中から美青年 小人は青年錬成すると そのままどこかに立ち去った れいむは思った、なるほどと ああして成長させるのか うちにも二匹おちびちゃん いるけどちょっと行儀が悪い せっかくだから一人前に 育ててみよう、作ってみよう そこで二匹を呼んできて 放り入れるは鍋の中 「ゆゆんゆぅゆぅ ゆゆんゆ~」 だけども何にも飛び出ずに できたはグロいスプラッタ 「ゆっゆっ? ゆげぇ?! ゆぅうぇええ!!」 れいむはとっても恐怖して 気持ちのままに走り出す 走って走って走って走る 逃げて逃げて逃げて逃げる 山のてっぺん着いたとき とうとう疲れてへたり込む そしたら後から登ってきたのは くだんの小人 なぜだか裸足 「やあこんにちは ところであんた、旅のお供はいらないかい?」 れいむは混乱してたので とんでもないと断った 「何していいのかわからない 何にも考えられないよ」 「気にしなさんな おいらはいつかきっとあんたの役に立つ」 こうして旅立つ二人の旅団 そうして繰り出す小人の提案 「近くの国の王様が 病気になって困ってる 不治の病で大変で 誰にも治せないんだと それで治せば褒美をやると 募集掛けてるとこなのさ さっそくあんたが医者やって いっちょ治してもうけよう」 「そんなの無理だよ、できないよ れいむはお医者じゃないんだよ」 「どうでもいいのさ、そんなこと 無用の心配、損の元 あんたは医者のふりしてりゃ 仕事はおいらがやってやる」 小人は勧める熱心に それじゃとれいむは承知した その城着くと門番が 「なんぞ用か」と、とどめ聞く 小人は言ったご丁寧 恭しくもご紹介 「ここにおわすは稀代の名医 鍋を使って何でも治す たとえいかなる難病だって 何秒かからず完治する」 「ヤブ医者ならば通しはせぬが ナベ医者ならばよろしかろう 何か要することあらば 遠慮などせず申されよ」 「王様現在どこにいる?」 「今は寝室、病に伏せる」 「それならそこに案内してさ お付きの人たちゃ出してくれ それから鍋に水入れて 火をかけ沸かしておいてくれ」 言われた通りに人払い 小人ごほんとせきばらい ぐつぐつ煮える鍋の横 ぐっすり眠る王様の 首をざっくりちょん切って 鍋にぼちゃんとぶち込んだ 「ちちんぷいぷい ちちんぷい」 そして取り出す王の首 見てるれいむはおっかなびっくり 元の通りに首載せた 途端に王様歌い出す 「すっかり全快 これは爽快 頭のつかえが取れたよう」 国中みんな大喜びで れいむと小人は大金持ち 金貨を背負った馬連れて れいむと小人は帰路に就く しばらくすると小人が言った 裸足の足出し痛がった 「歩って遅れる、ちと苦痛 買っておくれよ、一つ靴 おいらが欲しいはそれだけさ あとはあんたに全部やる」 れいむはとってもお金持ち だけどだからかケチになる ほんの銅貨の一枚きりも あげるのとっても惜しくなる れいむは言った 「だめだよ!」と そしたら消えた 皆全部 金貨も馬も小人さえ 消え去りみんないなくなる あとにはれいむが残るだけ 無一文のれいむだけ れいむは一匹とぼとぼと 家を目指して帰りゆく すると途中でうわさ聞く 別の国のうわさ聞く さっきの国の王様が なってた病と同じのに 別の国の王様も かかっているとのことだった やっぱり治せばたくさんの ご褒美もらえるのだそうだ (それじゃあれいむが治せるよ やり方見てて覚えたし) れいむはそちらのお城へと 目指す方向変えていく れいむのうわさは伝えられ 別の国でも有名で 名医のれいむはあっさりと 王様の命預かった 人払いした寝室で れいむは治療に取りかかる ぐつぐつ煮える鍋の横 ぐっすり眠る王様の 首をざっくりちょん切って 鍋にぼちゃんとぶち込んだ 「ゆゆんゆぅゆぅ ゆゆんゆ~」 だけど何にも起こらない 王様の首煮えるだけ 煮えた首を載せたけど 何にも起こる気配なし 「ゆゆーん、変だよ おかしいよ」 途方に暮れてるれいむの耳に トントン叩くドアの音 れいむ驚き慌てて叫ぶ 召使いに違いない! 「ちょっと待ってね! ゆっくりしてね!」 「何だ、どうにもつれないね 助けはさっぱりいらないかい? あんたのお供の小人がここに 登場したっていうのにさ」 れいむはドア開け、小人を入れる 「来てくれたんだね、うれしいよ」 「参上したてでさっそく聞くが どうしたんだい、この惨状」 れいむがこれまでのことを 説明するとうなずいた 王様の首をまた鍋へ 入れると呪文を唱え出す 「ちちんぷいぷい ちちんぷい」 元の通りに首載せた 途端に王様歌い出す 「すっかり全快 これは爽快 頭のつかえが取れたよう」 国中みんな大喜びで れいむと小人は大金持ち 金貨を背負った馬連れて れいむと小人は帰路に就く それほどせぬうち小人が言った 裸足の足出し痛がった 「歩って遅れる、ちと苦痛 買っておくれよ、一つ靴」 れいむは答える、「もちろんいいよ」 何も悩まずこう述べる 「お金だったら問題ないよ 欲しい分だけ持ってって 全部あげても全然いいよ れいむは何にもしてないし」 「あんたが前にもそれならさ 途中で見捨てなかったぜ それじゃあいよいよお別れだ 二度と会うこたないだろう 馬も金貨も持ってきな 全部あんたのものだしな」 さらりと消える小人の姿 煙のように消え去って 代わりに出てくる馬一頭 金貨を背負った馬一頭 二頭の馬を引き連れて れいむは家に帰り着く 「おかえりなさい!」と出迎える 二匹は自分の子供たち ことことぐつぐつ音するは いつもの煮込んだ鍋だとさ 話、お話、昔の話 昔、昔のドイツの話 ゆっくり村のゆっくりたちは みんな金持ちばっかりで けれども唯一貧乏な ゆっくりてゐがいたそうだ 誰もが牛を飼っていて てゐだけ何にも飼ってない あるときてゐは木を組んで 牛を作って呼び込むは 牛飼いやってるのうかりん 「ようやく子牛を買えたウサ だけどこいつは生まれた直後 まだ満足に歩けない だからちょっと牧場まで 抱いて運んでほしいウサ」 牛飼い了承、運んでみると その牛ずっと食べている 日が暮れ、帰るときになり それでも頭を垂れたまま (こんなに食うなら一人でも 帰れるくらいにゃなるっぺな) そんなことを考えて 牛飼い、子牛をそのままに 他の牛連れ立ち去った てゐは戸口に立っていて 自分の子牛を待っていた すると牛飼いやってきて 村を通るが子牛無し 「てゐの子牛はどうしたの? どこにも姿が見えないよ」 「あれならいまだに食ってるべ ほっといた方がいんじゃねか」 「何言ってんの、そりゃないよ ちゃんと連れて帰ってよ」 それで二人で牧場へと 行ってはみたけど 子牛無し 「ああほら言わないことじゃない 子牛が盗まれちゃったウサ」 それでてゐはのうかりん 村長のとこへ連れてった 村長ぱちゅりーこっぴどく 牛飼いしかって言い渡す 「子牛の代わりに牛一頭 あげてむっきゅり解決よ!」 てゐはようやく念願の 牛を手に入れご満悦 だけど飼い葉がないもので 結局始末するしかない かわいい牛はいなくなり 皮売りに行くしかなくなった 町へ向かったその最中 雨がポツポツ降ってきて やがてザーザー強くなる たまたま見かけた水車小屋 「一晩泊めて」と戸を叩く 粉ひきやってるすわこ種が 出迎え、寝床を指し示す お礼を言ってゆっくりてゐは ワラの上にて寝転がる そうこうするうち訪れた 新たな客人、戸を叩く すわこはやたらと歓迎し 招き入れるは巫女饅頭 緑の髪したさなえ種だ 「今日はだんなが留守なんで 二人でごちそう食べようね」 「それはちょっと悪いです でも常識にはアンチェイン」 どうやら浮気の相手らしい 仲むつまじく触れあった あれこれ並べる食べ物は 肉やら菓子やらワインやら (そんなに食べ物あるんなら ちょっとはくれてもいいウサに) てゐは腹ぺこだったので ちょっと腹が立ってきた そこへトントン戸を叩く 音が食事の邪魔をした どうやらだんなが帰宅の様子 「戸を開けとくれ」と声がした あわててすわこはごちそうを あちらこちらへ隠しおき さなえを突っ込む置戸棚 全部を全部隠し終え すわこはだんなをお出迎え 息を落ち着け戸を開ける 「やあただいま」とかなこ種が びしょぬれのままで中入り 「よっこらしょっ」と背に負った 柱を下ろしてくつろいだ ふっと目にしたワラの上 てゐ見てすわこに聞いてみる 「可哀想だしいいかなと 泊めてあげよう、ねえかなこ」 「何度も来られちゃ敵わんが 一晩だけならまあいいさ」 快くも了承し そしたらクゥとお腹鳴る 「飯にするかい 何がある?」 「パンしかないけどそれでいい?」 「この際何でも構わんさ ついでにそいつも呼んでやれ」 かなこはてゐに呼びかけた 「あんたも一緒に食べないかい」 すわこに言葉を挟ませず てゐはぴょんと跳びお相伴 一緒にパンを食い終えて 腹パンパンとはいかないが 一応空腹落ち着けて かなこはてゐに聞いてみる 「こういうときにはあんたがさ 何か話をするもんだけど あんたは何か知ってるかい? 楽しい話をしとくれよ」 「特に話はできないけれど 変わった特技があるんウサ」 「そりゃあ一体何なんだい?」 「てゐは占いできるウサ」 さっそくかなこがやらせてみると てゐはお耳をパタパタさせて そして一言つぶやいた 「ベッドの下に一瓶の 赤いワインがあるウサよ」 「何言ってんだい、そんなこと あったりなんかするもんか」 そう言い、そこを見てみると 言われた通りに酒あった そうして肉やら菓子やらと 次々てゐは占いを 続けてごちそう引き出した てゐとかなこは舌つづみ 鳴らしていたが一方で すわこは全く気が気じゃない 家じゅうのカギを一人持ち 布団の下でじっとする 「まだ占いはできるのかい?」 かなこの言葉に占い師 「大事なので占えない」 「そこを何とか占っとくれ」 そう言いせっつくかなこ種へ 「そんならどれだけ出すウサ」と てゐは吹っかけ金請求 大金の約束取り付けて てゐは再び耳振った 「ここには悪魔がいるウサね 場所はどうやら置戸棚」 「悪魔だなんてそりゃ大変 さっさと追いださないとねえ」 かなこは大戸を開け放つ すわこはカギをすぐ渡す てゐは戸棚を開けてやる さなえはさっさと飛び出した 「ありゃりゃまあまあ驚いた 確かに悪魔が飛んでった」 そうしててゐは大金を 手に入れ村へ帰宅した さて貧乏のはずのゆっくりが 大金持っていることに 村人みんな不審がり 村長はてゐを呼び出した 「どこでそんなに大金を 得たのかむっきゅり話しなさい」 「てゐは牛の生皮を 売ったらこんなになったウサ」 みんなそれ聞き、それならと 我も我もと牛殺し 皮をはぎ取り売りに行く 村長ぱちゅりー張り切って 鼻息荒くこう言った 「ぱちぇが先に売るからね みんなはむっきゅり後にして」 けれども期待は裏切られ 二束三文しかならない 後からやって来た者は 買い取りでさえ拒否された 村長・村人激怒して 即座に決定、てゐ死刑 穴だらけのタル用意され てゐはその中入れられる このまま川にぶち込んで ほんわかぱっぱ、ほんわかぱっぱ、土左衛門 最後のお祈り済ませよと 巫女が呼ばれてやってくる 村長・村人その場から お祈り時だけ立ち去った 「許されないのは誰ですか 神は全てを許します」 見ればその巫女見覚えあった いつかのなまぐさ巫女さなえ 「てゐが助けた、覚えてた? いつか開いた置戸棚」 借りと秘密を印籠に 黄門よろしく巫女脅す そこへ通るは羊飼い 羊の群れ追うまりさ種だ てゐはまりさが野心家で 村長志望と知っていた ニヤリと笑ったすぐ後で 必死の叫びを振りしぼる 「嫌だよ、嫌だ! 御免ウサ!」 「何が嫌だというんだぜ?」 計画通りにまりさ来る てゐは嘘泣きして言った 「このタルの中に入ったら 村長にすると言われたよ だけどてゐはそんなこと やりたくないから御免ウサ」 「それじゃあまりさが代わるのぜ 村長になってあげるのぜ」 そうしてまりさはタル入り てゐは羊と立ち去って さなえは祈りの終了を 村人に告げて帰路につく 村人行くとタル一つ フタ打ち付けてそこにある そんじゃま、やるかとゴロゴロと 転がし川にぶち込んだ みんなが村に帰ってみると ゆっくりてゐは何食わぬ 顔して羊の群れ連れる みんな驚き、わけ聞くと てゐはのんびりこう言った 「タルが沈んで川の底 着いたら草原広がって そこにたくさん羊いて いくらか連れて来たウサよ」 これ聞き、みんな喜々として 危機など感じず川へ行き のぞいた川面に映ったは モコモコ散った空の雲 それらを羊と思い込む 村長ぱちゅりー張り切って 鼻息荒くこう言った 「ぱちぇが先に行くからね みんなはむっきゅり後にして」 ドボンと飛び込む真っ先に それからみんなも後続く ドボンドボンと飛び込んで 一人残らず土左衛門 一人残ったゆっくりてゐは みんなの遺産を独り占め 村一番の貧乏は 大金持ちになったとさ 話、お話、昔の話 昔、昔のロシアの話 とある野原の真ん中に 転がってるのは首の骨 大きな馬の首の骨 そこへ来たのはちびれいむ ぽいんぽいんと跳ねてきた 骨を目にして立ち止まり 骨に言葉を掛けてみた 「お家よ、お家 だりぇかお家に住んでりゅの?」 答えはまったく返らない どうやら誰もいないよう ゆっくりぷれいす見つけたと れいむはそこに住みついた 次に来たのはゆっくりちぇん ちょこんちょこんと跳ねてきた 骨を目にして立ち止まり 骨に言葉を掛けてみた 「お家よ、お家 誰かお家に住んでるのー?」 「れいみゅがゆっくり住んでりゅよ そっちはだりぇだか教えてね」 「ちぇんは子猫のちぇんだよー」 「そりぇじゃ一緒にくりゃそうね!」 ちぇんは家の中入り 二匹で暮らすことにした 次に来たのはゆっくりみょん ひょいんひょいんと跳ねてきた 骨を目にして立ち止まり 骨に言葉を掛けてみた 「お家よ、お家 誰かお家に住んでるみょん?」 「れいみゅと子猫のちぇんいりゅよ そっちはだりぇだか教えてね」 「みょんは辻斬りみょんだみょん」 「そりぇじゃ一緒にくりゃそうね!」 みょんは家の中入り 三匹暮らすことにした 次に来たのはゆっくりありす ぴょこんぴょこんと跳ねてきた 骨を目にして立ち止まり 骨に言葉を掛けてみた 「お家よ、お家 誰かお家に住んでるの?」 「れいみゅと子猫のちぇんいるよ それから辻斬りみょんいるよ そっちはだりぇだか教えてね」 「ありすは都会派ありすなの」 「そりぇじゃ一緒にくりゃそうね!」 ありすは家の中入り 四匹暮らすことにした 次に来たのはゆっくりれみりゃ ぱたぱたぱたと羽で来た 骨を目にして立ち止まり 骨に言葉を掛けてみた 「お家よ、お家 誰かお家にいるのかど~?」 「れいみゅと子猫のちぇんいるよ 辻斬りみょんと都会派ありす 併せて四匹住んでりゅよ そっちはだりぇだか教えてね」 「れみりゃはお嬢様だどー」 「そりぇじゃ一緒にくりゃそうね!」 れみりゃは家の中入り 五匹で暮らすことにした 次に来たのはドスまりさ どすんどすんと跳ねてきた 骨を目にして立ち止まり 骨に言葉を掛けてみた 「お家よ、お家 誰かお家に住んでるの?」 「れいみゅと子猫のちぇんいるよ 辻斬りみょんと都会派ありす お嬢のれみりゃで五匹だよ そっちはだりぇだか教えてね」 「ドスはドスだよ こんにちは」 そうしてどすんと座った家は ぺちゃんとつぶれましたとさ 話、お話、昔の話 昔の韓国、昔の話 胴付きれみりゃが結婚し お婿に入っていったのは 柿の木生えたお菓子屋さん めーりんとさくやのお菓子屋さん そこで出されたシロップに れみりゃはとても驚いた イチゴの香りがとてもよく とろけるように甘かった さくやと初夜を迎えても 頭はそれでいっぱいで さくやに壺のある場所を 聞き出し即座に行ってみる 裸んぼうで向かう先 イチゴのシロップ、壺の中 見つけてすぐに両手を入れて むんずとつかむ多くのイチゴ 取り出し食おうとしたけれど つかえて出せない壺の口 振ったり蹴ったりしたけれど やっぱり出せない壺の口 片手でやれば取れるのに 二、三個ずつなら出せるのに れみりゃはそれには気づかない うんこらよっこら気張ってる とうとう疲れて諦めて シロップ飲もうと計画変更 お玉かスプーンを探したが シロップすくうはないらしい 頭がポカンの性してる れみりゃを救うはないらしい 壺は重くて持ち上げ不可で 抱えてあおるはありえぬ負荷だ そこで頭を突っ込んで 直接飲もうとやってみた 柔らか頭は中入り 成功するかに見えたけど シロップに届くその直前 誰かが近づく音がした ガタゴトする音聞きつけて やってきたのは母さくや 「誰かいるの?」と声掛けて どんどん近づきやってくる 慌ててれみりゃは逃げようと したけど頭が外れない すっぽりはまった壺頭 もがけどあがけどそのまんま どうにもならずに無理矢理に 重たい頭を被りつつ すっぽんぽんの壺頭 ふらふらよたつき逃げていく ぼたぼたシロップこぼしてく 少し遅れて母さくや 来たけど何にも起こってない 気のせいだったとほっとして くわえた棒を置こうとし まあ来たついでと、婿にやる 柿でも取ろうと庭に出た 当の婿たるれみりゃ氏は 追っ手の足音耳にして 慌てふためき木に登る 裸で登る壺頭 おぼろ月夜に浮かぶ様 奇妙奇天烈まか不思議 母のさくやが庭に行き 薄明かりの下、見上げれば 何とも大きな熟れた柿 重たく甘そうに生っている さっそくくわえた棒切れで 何度も何度も突くけれど いくらやっても落ちもせず しぶとくねばってしがみつく れみりゃ歯食いしばって耐えたけど やっぱり痛くてたまらない 声は漏らさずこらえたが 思わず漏らした生うんうん それ見て棒持つ母さくや 「あらあら、まあまあ」つぶやいた 「熟柿が裂けてしまったわ」 そうして家に入ったとさ 話、お話、昔の話 昔、昔の日本の話 昔、のんべのまりさいた お酒大好きまりさいた ご主人様のお使いの 途中でいつも飲んでいた 飲んではいつもグウグウいびき 注意されては飛び起きる 「これはいかんぜ、しくじったのぜ」 「早く行かんとしかられますよ」 おかみさんはせきたて送り出す いつものようにせきたてる 「急ぐぜ、速いぜ、遅いと死ぬぜ ご主人様は鬼なのぜ」 いつもそうして疾走まりさ いつもそうした粗相の連鎖 ある日いつもののんべのまりさ 飲んでグースカ昼寝した そこへ通るは四人の悪がき 食べているのは熟柿の甘柿 種を含んだ悪がき四人 酔って寝ているまりさを視認 「こいつは生意気、一斉射撃」 含んだ種を口から吹いた 種は頭に貼りついた まりさの頭にペトペトついた 気づかずまりさはグウグウ眠る やがておかみがせきたてて まりさは慌てて飛び起きた 「早く行かんとしかられますよ」 「これはいかんぜ、しくじったのぜ」 まりさは気づかず急いで跳ねる 頭の種に気づかず跳ねる やがて芽を出す柿の種 芽は出て、背が伸び、大きくなって 花咲き、実がなり、たわわになった 何がどうしてこうなったのか 何とも大変一大事 けれどもまりさは困らずに むしろ得意にこう言った 「おかみよ、おかみ、とくと見るのぜ この柿ゃ赤い、甘い柿のぜ 欲しい分だけあげるから あげた分だけ飲ますのぜ」 「はいはい、了解 それじゃちょうだい」 まりさはたっぷり飲んで眠った いつものように酔って眠った そこへ通るは四人の悪がき 甘柿食べてた例の悪がき 「何だこいつはふてぶてしい 頭に太い木 大いばり」 「切れ切れ、きれいにさっぱり切れよ」 「のこぎり、一切り、これっきり」 ギコギコ、ゴシゴシ切られる柿の木 グウグウ、スウスウ眠れる酔客 やがておかみがせきたてて まりさは慌てて飛び起きた 「早く行かんとしかられますよ」 「これはいかんぜ、しくじったのぜ」 まりさは気づかず急いで跳ねる 頭の切り株、気づかず跳ねる やがて切り株、成長株 そのままなどでは終わらない 生えるはキノコ、立派なキノコ 山ほど生えたヒラタケだ まりさはさっぱり困らずに 胸をそらしてこう言った 「おかみよ、おかみ、とくと見るのぜ このタケ、美味い、高いタケのぜ 欲しい分だけあげるから あげた分だけ飲ますのぜ」 「はいはい、了解 それじゃちょうだい」 まりさはたっぷり飲んで眠った いつものように酔って眠った そこへ通るは四人の悪がき 柿の木切った例の悪がき 「何だこいつはあきれたもんだ キノコ生やして眠ってやがら」 「饅頭なんかにゃもったいない 切り株掘って取っちまえ」 うんこら、よっこら、掘ってく作業 グースカ、グースカ、ほっとく気性 やがておかみがせきたてて まりさは慌てて飛び起きた 「早く行かんとしかられますよ」 「これはいかんぜ、しくじったのぜ」 まりさは気づかず急いで跳ねる 頭の穴に気づかず跳ねる やがて穴には雨が降る そして穴には水たまる さらになぜだかドジョウがわいた 何十何百ドジョウがわいた ジャブジャブ、ピチャピチャ水面跳ねて 活きがいいのを大表現 まりさはやっぱり困らずに 得意満面こう言った 「おかみよ、おかみ、とくと見るのぜ ドジョウがたくさん、売るだけあるのぜ 欲しい分だけあげるから あげた分だけ飲ますのぜ」 「はいはい、了解 それじゃちょうだい」 まりさはたっぷり飲んで眠った いつものように酔って眠った そこへ通るは四人の悪がき 頭を掘った例の悪がき 「何だこいつはどうにもならねえ」 「ほっておくしか、しかたがねえや」 そう言い、捨て置き立ち去った それこっきりでお終いだ こうしてまりさはいつものように お使い途中にいつも酔う ドジョウを売って、酔って、眠って 慌てて起きて、跳ねたとさ 話、お話、昔の話 昔、お話、昔の話 話、お話、多くの話 昔、お話、近くの話 これでおしまい どっとはらい!
https://w.atwiki.jp/tohofight/pages/2152.html
今日のファイトは主演映画の作成である。 双方自分たちが主演の映画を作り、より人気の高かったほうの勝ちとなる。 上映会場である紅魔館大広間には今回の審査員である里人1000人が今か今かと 上映開始を待っている。 しばらくして、上映開始を告げるブザーが大広間に響き渡る。 この日のために両チームが作成してきた映画は、 咲夜・早苗チームは今回の衣装指定でもある魔法少女を前面に押し出した 子供・大きなお友達向けの弾幕魔法少女アクション物。 大量の自機狙い弾をアクロバティックな動きで避けまくるアクションがとても 印象的で、ラストは歌姫・ミスティア・ローレライの歌が世界を救うという よくあるストーリであった。 一方、優曇華・妖夢チーム。 こちらも、今回の服装指定の黒服を存分に生かした刑事推理物。 少しおっちょこちょいだが真面目な妖夢と、上司に振り回されがちな優曇華が 周りに振り回されながらも少しづつ真実に近づいて行き、事件を解決するというものだった。 ラストで明かされた真犯人はそれまで優曇華と妖夢にアドバイスを与え続けていた 優曇華の腹心のてゐだったという 衝撃の結末に会場は度肝を抜かれた。 そして、里人たちの公平な投票の結果 2票差で優曇華・妖夢チームの勝ちとなった。 会場を後にする里人たちは口々に「あの結末は衝撃的だった」と話し合っていた。 優曇華「…あのシーン、台本無視のてゐのアドリブなのよね…」 妖夢「さすがは幸せウサギというか…結果オーライなんですが、なんか釈然としない気が…」 てゐ まじかる☆さくやちゃん コンビ戦 ミスティア 創作 咲夜 妖夢 早苗 芸 鈴仙 魔法少女
https://w.atwiki.jp/tamakagura/pages/445.html
全コダマの障壁スペル一覧 変化スペル。 属性とは関係ないですが一応属性順。 物理障壁 / 特殊障壁 / 両面障壁 / 異常障壁 物理障壁 5ターンの間、物理攻撃のダメージを半減します。交代しても効果は継続します。 VP消費20。 スペル名 属性 使い手 覚えるレベル アイスバリア 氷 ちびチルノNチルノSチルノDチルノADチルノ 1515151515 地上の恒星 地 Dリグル 60 ビロードカーテン 理 ビビットT小悪魔H小悪魔D小悪魔 40606060 ムーンライトウォール 岩 TルナHルナ 禁呪禁呪 守りの要 岩 D天子S天子 4035 リバーサルムーン 岩 AてゐSてゐHてゐADてゐ 40606060 前鬼後鬼の守護 神 ちびらんA藍T藍S藍H藍AD藍 151515151515 インビンシブルシールド 闇 ちびことひめN小兎姫 2020 緋々色金 鋼 霖之助 35 三種の神器 玉 鋼 D慧音 35 ドールクルセイダー 鋼 TアリスDアリス 6060 特殊障壁 5ターンの間、特殊攻撃のダメージを半減します。交代しても効果は継続します。 スペル名 属性 使い手 覚えるレベル サラマンダーシールド 炎 S輝夜 禁呪 イエローディフレクション 炎 NサニーHサニー 4040 核熱バイザー 炎 S空 35 イリュージョンスター 雷 E魔理沙 60 嫌われ者のフィロソフィ 樹 NこいしSこいしHこいし 604060 フリーズカローラ 氷 NレティDレティHレティ 404035 プリティウィンドスタイル 風 AはたてSはたてDはたてD天魔 35353540 ワンダーワンダーアジール 理 Hエレン 60 フィールドウルトラレッド 理 T鈴仙D鈴仙NレイセンSレイセン 40404040 八千万枚護摩 神 S藍H藍 3040 シャッターオブワールド 神 H神綺 40 カタディオプトリック 闇 TフランSフラン 6060 ミステリーサークル 闇 Hカナ 60 両面障壁 5ターンの間、攻撃スペルのダメージを半減します。交代しても効果は継続します。 VP40。 スペル名 属性 消費 使い手 覚えるレベル トワイライトガーデン 地 40 A静葉T静葉S静葉N穣子H穣子D穣子秋姉妹 禁呪禁呪禁呪禁呪禁呪禁呪禁呪 忘却の祭儀 神 40 H早苗 40 生と死の境界 闇 30 S紫H紫 禁呪禁呪 異常障壁 10ターンの間、状態異常と能力減少を防ぎます。交代しても効果は継続します。 VP消費5。 スペル名 属性 使い手 覚えるレベル 寒九の雨 水 S静葉N穣子H穣子 354040 無念無想の境地 地 A天子D天子 6060 白亜の露西亜人形 理 ちびアリスNアリスTアリスSアリスDアリスADアリスALICE 15151515151515 偽五神の護法陣 神 Nマガン 60 白い水晶 鋼 魔天使 60
https://w.atwiki.jp/tohotd/pages/36.html
加入条件 宴席召喚 能力 タイプ HP 攻撃 防御 魔抵 素質 コスト 移動 射程 命中 回避 必殺 吹飛 拡大 再動 便乗 反撃 アイテム 療養 物理 49+24 28+15 9+4 7+3 D(46) 3 4 1 2 6 11 18 0 1 27 10 120/197 4 評価 春ですよー。ブラックは出ませんあしからず。 3コストキャラの中では火力はかなり低め、加えて命中も低め。素質もDと育成もきつい。 長所は高めの便乗率とこっそり全キャラ中最大の初期アイテム枠である。ただし潜在アイテム枠はあまり広くない。 同じ3コスト4-1のお燐やはたてに比べると見劣りする間は否めないが実は敵としてうじゃうじゃ出てくる妖精族の中で 仲間になるのは彼女とチルノだけである。 どちらも愛を大量に必要とするキャラなので、貴方の愛が試されるそんなキャラです。 追記:移動4以上キャラで霊力辺りのHP防御が最高値 台詞集 初登場時 + ... リリー ん……。 妖夢 あら……。 リリー ……来た! 椛 !! リリー 私の時代が! 霊夢 来てないわよ。 リリー じゃあ春が! 魔理沙 ここにいたら季節とか分からんな。 リリー ……なら私の出番が!! てゐ ああ、うん。 それは。 リリー よし! リリー ってことは春よね! テンション上がるわ~。 霊夢 上がりすぎでしょ……。 魔理沙 まぁ、上がってて悪いことは無いだろ。 てゐ 扱いやすいしね。 ルーミア うん。 リリー で、何の用?春? 霊夢 何よ、春って。 リリー 季節よ? てゐ ……そうだね、春だね。 魔理沙 全くもって春だな。 魔理沙 だが残念なことに、 春を分かってない連中が外に居るんだ。 リリー 何ですって! 魔理沙 よりによって同じ妖精が、だ。 魔理沙 酷い話だろう? リリー ええ!! 魔理沙 だから、奴らに教えてやって欲しいんだ。 魔理沙 お前のその……春で。 リリー そういう事なら任せてよ! 魔理沙 そう言ってくれると思ったぜ。 これからよろしくな。 リリー ええ、よろしく! 霊夢 ……役に立つのかしら………。 てゐ …………頭数さ……。 リリーが部隊に加入します。 戦闘台詞 + ... レベルアップ 春の足音が聴こえて来たよ~。 アイテム発見 春度はないかな~? クリティカル これで伝わるかな? 吹っ飛ばし 冬は帰ってー! 効果拡大 春よ、春だよ、春ですよ~! 再行動 もっとみんなに伝えなきゃ~。 反撃 春闘だー! 便乗 春眠しない? 撤退 はーい。休憩、休憩~。 体力0 えっ、もう夏…?
https://w.atwiki.jp/harukaze_lab/pages/286.html
時は過ぎたり 徳田秋声 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)帰《がへ》 |:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号 (例)米|帰《がへ》 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)[#地付き] /\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号) (例)ぼちや/\ 南米|帰《がへ》りの皆《みな》川|信《しん》六は、もう五十のお爺《ぢい》さんになつてゐた。頭《あたま》は大|体《たい》禿《は》げあがつて皮膚《ひふ》に汚点《しみ》が出来てゐた。彼は主に日本の移植《いしよく》民を相手に医《い》者として働《はたら》いたのであつたが、金もいくらか持《も》つて来たし、皮膚病科《ひふべうか》を研究《けんきう》して来たので、何|処《こ》か好《よ》い場《ば》所を手に入れて、手ごろな病院《べういん》を建《た》てようと思《おも》つてゐたが、当《とう》分友人の病院《べういん》の仕事《ごと》を、毎《まい》日|幾《いく》時間かづゝ助《たす》けることにしてゐた。 彼は山の手の方に部《へ》屋|借《か》りをしてゐた。そこは木|造《ぞう》の洋風建築《ようふうけんちく》で、瓦斯《ガス》のストーブもたけるやうになつてゐたし、西|側《がは》の壁際《かべきは》にはベツドもおいてあつた。椅《い》子|卓子《ていぶる》も我|慢《まん》の出来ないほどではなかつた。南|受《う》けの日|当《あた》りの好《よ》いのが、何よりも彼を喜《よろこ》ばした。 南米における彼の独身《どくしん》生|活《かつ》は、可なり彼を憂鬱《ゆううつ》にしたが、外国行きを思《おも》ひ立つた動機《どうき》が、元《がん》来彼に取つて幸福《こうふく》なことではなかつた。といふのは二人の子|供《ども》をおいて妻《つま》が恋《こひ》人と逃《に》げてしまつたからであつた。尤《もつと》も彼は世間|普通《ふつう》の医《い》者|気質《かたぎ》とちがつて変《かは》りものであつた。研究《けんきう》心が莫迦《ばか》に盛《さか》んなのは可《い》いとして、妙《めう》に独断的《どくだんてき》なところがあつたため、或人からいはせると、どこか山|師《し》じみたところがあるといふのであつた。その金銭上のことが余《あま》りみみつちくて、享楽的《けうらくてき》のことには少しも興味《けうみ》をもたなかつた。何一つ道楽《どうらく》といふものをもたない男も世のなかには、ずゐぶん多いには違《ちが》ひないけれど、皆《みな》川ほど無|趣味《しゆみ》な男も少なかつた。彼は細《さい》君に半|衿《えり》一つ自|由《ゆう》に買《か》はせはしなかつた。芝居《しばゐ》や活動《かつどう》へもやらなかつた。日|曜《よう》の休みにも彼は研究室《けんきうしつ》に閉《と》ぢこもつて、まるで狂気《きちがい》のやうに、顕微鏡《けんびけう》を覗《のぞ》いてゐたが、娯楽《ごらく》といつては、動《どう》物|園《えん》とか植《しよく》物|園《えん》とか、又は郊《こう》外へ妻《つま》と子供《ども》を連《つ》れ出すくらゐのものであつた。その上彼は酒癖《さけくせ》が余《あま》り好《よ》くなかつた。 彼も決して醜《みにく》い方ではなかつた。少しおめかしをしたら、女が目をつけるだらうと思《おも》はれたが、そんな事《こと》は彼の趣味《しゆみ》ではなかつた。して若《わか》い細《さい》君は、ちよつと男|好《ず》きのする皮膚《ひふ》の綺麗《きれい》な肉《にく》のぼちや/\した女であつたが、良人と反|対《たい》に小|柄《がら》であつた。博士《はくし》にならないでもいゝから、そんな変《へん》な研究《けんきう》は止して、少し流行《はや》るやうにしてくれといふのは、妻《つま》の希望《きぼう》であつたが、しば/\その事《こと》で喧嘩《けんか》した。しかし彼は彼女を愛《あい》してゐた。形の好《い》い、愛《あい》らしい頭《あたま》を激昂《げきこう》して打つた果《はて》には、きつと両腕《れううで》の上に抱《だ》きかゝへて、頬《ほゝ》や頸《くび》にキツスをした。 「お前は好《い》い女だけれど、なぜそこいらの女のやうに、下らない虚栄《きよえい》心が強《つよ》いんだ。」 彼はいふのであつた。 彼女も彼の妻《つま》らしく、何か勉強でもしようと思《おも》つて、子|供服《どもふく》の講習《こうしう》会へなぞ通《かよ》つたこともあつたが、直《じ》きに飽《あ》きてしまつた。で、患《かん》者として彼のところへ暫《しば》らく通《かよ》つてゐた或る青《せい》年と親《した》しくなつてしまつた。 信《しん》六は、一つはその創《きず》を癒《いや》さうと思《おも》つて、もう妻《つま》の帰《かへ》つてこないことが確《たし》かになつてから、子|供《ども》を田舎《ゐなか》の家へあづけて外国に行つてしまつた。 信《しん》六の目には、妻《つま》の幻影《げんえい》はあらかた消《き》えてゐたが、銀|座《ざ》まで歩いてくると、ちよつと後|姿《すがた》の似寄《によ》つた女を見《み》て、はつとすることもあつた。 「あれももうよい加|減《げん》お婆《ばあ》さんだ。」彼はさう思《おも》ひながら、四十前後の世間の女を見《み》る度に、彼女が何んなお婆《ばあ》さんになつたかを、牾《もど》かしく想像《そうぞう》して見《み》たりした。 しかし彼女が今もしそこへ現《あら》はれて、罪《つみ》を詫《わ》びたところで、何うにもならない、十年前のことであつた。せい/″\彼女の過去《かこ》十|数《すう》年間の浮沈《うきしづ》みを知《し》るくらゐの興味《けうみ》しかもてなかつた。信《しん》六の推定《すいてい》するところでは、何うせさう幸福《こうふく》には暮《くら》してゐないに違《ちが》ひなかつた。なぜなら相手が不良|性《せい》の男であつたから、あの恋愛《れんあい》が巧《うま》く行つたか何うかは疑問《ぎもん》であつた。もしも彼女の運命《うんめい》が不|幸《こう》で、世にも惨《みぢめ》な暮《くら》しでもしてゐるやうだつたら、それこそ自|己《こ》の人生までが暗《くら》くなるに違《ちが》ひなかつた。好《い》い暮《くら》しをしてゐるとしたら、田舎《ゐなか》の子|供《ども》を思《おも》ひだして、たまに何か贈《おく》るくらゐの人|情《ぜう》があつてもいゝはずであつた。 兎《と》に角《かく》信《しん》六はさびしかつた。あの当《とう》時|妻《つま》の家出をしたときは、幼児《ようじ》を抱《かゝ》へた生|活《かつ》の方が多かつたが、今|全《まつた》くそれ等の煩《わづら》ひから自|由《ゆう》であつたゞけに年取つて帰《かへ》つて来た彼自|身《しん》の寂《さび》しさの方が強《つよ》かつた。それに博士論《はくしろん》文といふことも、今となつては断念《だんねん》しなければならないことなので、これから先き残《のこ》る仕|事《ごと》はたゞ患《かん》者の病《べう》気を癒《なほ》して、老《ろう》後の物|質《しつ》生|活《かつ》を安|定《てい》さするといふことより外ないので、何となく頼《たよ》りなかつた。幾《いく》時間かを賑《にぎや》かな病院《べういん》に過《すご》して、時によるとその友人の家|庭《てい》気分にも浸《ひた》つて、晩《ばん》方|部《へ》屋へ帰《かへ》つてくるのであつたが、この頃少し興味《けうみ》のあるのは、小さい病院《べういん》を建《た》てるについての設計《せつけい》くらゐのもので、地所の見当《けんとう》は丸《まる》きりついてゐなかつた。彼は友人にも頼《たの》み、自|身《しん》新聞の広告《こうこく》を見《み》たりしてゐた。どこか余《あま》り入|費《ひ》の張《は》らないビルディングがあつたらば、それも悪《わる》くはなかつた。 「そんなことよりも、先づ第一に女|房《ぼう》を持《も》ちたまへ。でなかつたら何も出来はしないそ。」友人は度々いつた。 彼もそれに気がついてゐた。先の妻《さい》に懲《こ》りてもゐたし、この年になつて今|更《さら》気心の知《し》れない女と同|棲《せい》するといふことが、彼にはちよつと現実的《げんじつてき》に考《かんが》へられないのであつた。しかし彼は強《し》ひて拒《こば》む勇《ゆう》気もなかつた。この先き幾《いく》年生きるか知《し》れないけれど、もし十年生きるものとしたらその十年間を独身《どくしん》で毎《まい》日の仕|事《ごと》に働《はたら》いて行けるか何うか、勿論《もちろん》預《あづ》けてある十六と十四の娘《むすめ》二人も引取ることになつてゐるので、その教育《けういく》にも相|当《そう》頭《あたま》を使《つか》はなければならなかつた。 あの当《とう》時、親類《しんるい》や友人は彼に再婚《さいこん》を勧《すゝ》めた。彼は臆病《おくべう》になつてゐた。どんな女にも昵《なじ》めないやうな気がしてゐた。しかし今となつてみると、外国へなど行かずに、直《す》ぐ結婚《けつこん》でもしておいた方が、もつと明るい新生|活《かつ》に入れたのぢやないかと思《おも》はれた。 或日も彼は友人のところで、細《さい》君から候|補《ほ》者の写真《しやしん》を見《み》せられた。女は四十二とかで、佐官|級《きう》の軍人の未亡《みぼう》人であつた。子|供《ども》は二人あるけれど、姉は片《かた》付き、弟は中学にゐた。容貌《ようぼう》も悪《わる》くはなかつた。むしろ年よりもぐつと若《わか》く見《み》える方であつたが、矢張《やは》り飛《と》びつく気になれなかつた。子|供《ども》のあるのも心配《しんぱい》だつたし、未亡《みぼう》人の再縁《さいえん》といふのも気に食《く》はなかつた。 「こゝいらが可《い》けなかつたら皆《みな》川さん、好《よ》い人はありません。」 「先の細《さい》君から見《み》れば、十|段《だん》も上だぜ。」 「いや結構《けつこう》です。なか/\美《び》人です。しかし軍人といふものは、家|庭《てい》にゐると晩酌《ばんしやく》でもやつて、上|機嫌《きげん》なものですから。少くとも気むづかしい旦那《だんな》さまではなかつたでせう。」 「そんな心|配《ぱい》した日にや際限《さいげん》がないよ。君は洋《よう》行前から見《み》れば、随《ずい》分|角《かど》が取れたぢやないか。」 「しかし本|当《とう》は、あのころから見《み》ると、もつと気むづかしくなつてゐるかも知《し》れないんだよ。――兎《と》に角《かく》お互《たが》いの流儀《りうぎ》や気質を呑込《のみこ》むまでには、随《ずい》分月日がかゝることだからね。第一|僕《ぼく》の病院《べういん》が成立つて行けば可いけれど、どうせ君のやうには行かないだらうからね。」 信《しん》六は財《ざい》政の方も考《かんが》へてゐた。矢張《やは》り不|幸《こう》な子供《ども》の方が可|愛《あ》いかつた。中|途《と》から入つて来る赤《あか》の他《た》人に、貴《たつと》い自分の労《ろう》力から得た物|質《しつ》を費消《ひせう》されることも厭《いや》だつたし、死んだあとで子|供達《どもたち》の負担《ふたん》になることも気|懸《がゝ》りであつた。兎《と》に角《かく》生|活《かつ》は単純《たんじゆん》で、自分自|身《しん》の思《おも》ひどほりにやらなければならなかつた。病院《べういん》が少しでも盛《さか》つて金の儲《まう》かることを考《かんが》へると、なほ更《さら》楽《たの》しみであつた。それは秘《ひそ》かな楽《たの》しみでなければならなかつた。他《た》人と頒《わか》つべき性質《せいしつ》のものだとは考《かんが》へられなかつた。もしも女手が必要《ひつよう》だつたら、或|約定《やくぜう》の給《きう》金さへ払《はら》へば親切《しんせつ》な家政|婦《ふ》を得るのも、さう困難《こんなん》ではないはずであつた。物|質的条件《しつてきぜうけん》で支|配《はい》される関係《かんけい》なら、そこに何等の煩《わづら》ひがあらうとは思《おも》へなかつた。贅沢《ぜいたく》をしようと、吝《けち》にしようとそれは自分の自|由《ゆう》だつた。この写真《しやしん》の女にしたところで、多分生|活《かつ》に困《こま》るから、結婚形《けつこんけい》式で他《た》人の家|庭《てい》へ入らうとするのに決《きま》つてゐた。無|論《ろん》彼女も寂《さび》しいに違《ちが》ひなかつた。生|活《かつ》の伴侶《はんりよ》の必要《ひつよう》なことに、男と女の変《かは》りはなかつた。しかし何といつても、大|部《ぶ》分は物|質《しつ》上の問題《もんだい》であつた。 と、さういふ風《ふう》に考《かんが》へ出すと、老《ろう》後の結婚《けつこん》が、いかに情味《ぜうみ》のない、寂《さび》しいものであるかゞ、犇《ひし》々胸《むね》に来るのであつた。もしもこゝに、さういふことには、まるで関係《かんけい》なく、或女と恋愛関係《れんあいかんけい》でも生じたとしたら、それはまた別問題《べつもんだい》だが、かうした事務的《じむてき》の結婚《けつこん》に果《はた》して何の意味《いみ》があるだらう? しかし信《しん》六はその恋愛《れんあい》をすら肯定《こうてい》することが出来なかつた。曾《かつ》ての妻《つま》を愛《あい》したやうに、女を愛《あい》し得るといふ気|持《もち》は、今の彼には遠《とほ》いものであつた。 信《しん》六は少し不|興《けう》になつた友人の家を出て、外へ出た。その病院《べういん》は、小田|原《はら》町にあつた。彼はそこから電《でん》車で銀|座《ざ》へ出て見《み》た。 三月の半ばで、まだ暮《く》れきらない町に電燈《でんとう》の光《ひかり》が懐《なつ》かしく潤《うる》んでゐた。彼は少し歩いてからいつもの喫茶《きつさ》店で、夕刊《ゆふかん》を見《み》ながらコーヒーを啜《すゝ》つた。喫茶《きつさ》店には楽《たの》しげな人達《たち》が、楽《たの》しげな談笑《だんせう》を交《かは》しながら軽《かる》い食事《しよくじ》をしたり、飲《の》みものを呑《の》んだりしてゐた。 喫茶《きつさ》店を出たとき、彼は珍《めづ》らしく酒《さけ》に酔《よ》つてゐた。何時になくコクテールを呑《の》む気になつたゞけでも彼は何かしら、日本の春の宵《よひ》らしい情緒《ぜうしよ》を唆《そゝ》られた。 十分ほどの後には、彼は本|郷《ごう》の千|駄《だ》木の方にゐる女|教師《けうし》のS子の古びた門の前に立つてゐた。 S子は信《しん》六が学生時代に世|話《わ》になつたことのある或る勤《つとめ》人夫|婦《ふ》の娘《むすめ》であつた。彼はそのころその家に下|宿《しゆく》してゐた。信《しん》六が学校を出る時分には主人か死んで、S子は間もなく結婚《けつこん》して九|州《しう》の方へ行つてしまつた。信《しん》六はしば/\その母を訪《おとづ》れたが、S子とも年に二、三度は手紙の遣《やり》取をしてゐた。外国へ行つてからも、思《おも》ひ出したやうに、簡短《かんたん》な時候の挨拶《あいさつ》くらゐの手紙を取りやりしてゐたが、S子が居《ゐ》所を知《し》らせてくれても、信《しん》六からは返辞《へんじ》がなかつたり、信《しん》六が思《おも》ひ出したやうに消息《せうそく》を知《し》らせてやつても、早速《さつそく》には返事《へんじ》がこなかつたりした。でも信《しん》六は彼女の手紙を粗末《そまつ》にするやうなことはなかつたし、昔《むかし》お互《たが》ひに感《かん》じてゐた仄《ほの》かな恋《こひ》心のやうなものは、折《をり》につけ佗《わ》びしい彼の心を温《あたゝ》めてくれた。 日本へ帰《かへ》つたら、先づ何をおいてもS子に逢《あ》つてみようと、彼は何かその事《こと》が気にかかりだしてゐた。そして彼女に贈《おく》るつもりで、宝《ほう》石を一つ用|意《い》したくらゐであつた。 信《しん》六が彼女を訪問《ほうもん》したのは、今夜が三度目であつた。彼は夜間になぞ彼女を訪問《ほうもん》したことはつひぞ無かつた。彼は門の前まで来て、来たことを恥《は》ぢた。 S子は弟夫|婦《ふ》と同|棲《せい》してゐたが、二|階《かい》の六|畳《ぜう》と四|畳《ぜう》を占《し》めて、ひそやかに暮《く》らしてゐた。 今度|逢《あ》つてみると、今まで打明けようともしなかつた彼女の過去《かこ》の生|活《かつ》の輪廓《りんくわく》が、ざつとこんなものだといふことが想像《そうぞう》された。彼女の片《かた》づいてゐたのは、信《しん》六よりも少し前に、そこに下|宿《しゆく》してゐた工|科《か》も採磯科《さいくわうか》出の学生であつた。S子はその男に切望《せつぼう》されて、十四五年間|礦《くわう》山の社|宅《たく》生|活《かつ》をした果《は》てに、戦《せん》後の不|況《けう》で解雇《かいこ》されてから間もなく、良人に死なれて悄《すご》々東京へ帰《かへ》つて来た訳《わけ》であつた。 信《しん》六はS子の変《かは》つてゐるのに驚《おどろ》いた。どこかに昔《むか》しの面影《おもかげ》を探《さが》し出すことはできるにしても、もしも彼女の家で逢《あ》つたのでなかつたら、いくら彼女が「私がS子です」といひ張《は》つても、信《しん》ずることが出来なかつたに違《ちが》ひなかつた。 「貴方《あなた》だつて随《ずい》分|変《かは》つてゐますわ。」負《ま》けず嫌《きら》ひのS子は遣《や》り返《かへ》した。 「しかし女の変《かは》り方は男と違《ちが》つて、何だか花が凋《しぼ》んだやうな感《かん》じですな。」信《しん》六は妹のやうに可|愛《あい》がつてゐた女なので、世間のどの女よりも自|由《ゆう》な口が利《き》けた。 「え、どうせ凋《しぼ》んだ花でせうさ。」S子は拗《す》ねたやうな風《ふう》をして見《み》せた。 勿論《もちろん》S子が昔《むかし》のまゝに若《わか》かつたとしても、今の自分の目にはさう美《うつく》しくは感《かん》じられないかも知《し》れなかつた。 「礦《くわう》山生|活《かつ》を十五年もしてゐるうちに、私はこんなになつてしまつたんですの。私はそこで労働《ろうどう》者|達《たち》の子|供《ども》を教育《けういく》してゐましたの。浮《うき》世のことは悉皆《すつかり》忘《わす》れてしまつたんですの。お陰《かげ》で勉強《べんけう》はできましたわ。」 「東京に産《うま》れた人が、よくそんな処《ところ》で辛抱《しんぼう》できたものですね。」 「仕方がなかつたんですもの。」 「子|供《ども》は産《うま》れなかつたですか。」 「一人|産《うま》れましたけれど、六ヶ月で死んでしまひましたの。女の子でしたけれど。あの子が育《そだ》つてゐたら、今年十四ですわ。」 「それきり?」 「え、宅《たく》がお酒呑《さけの》みでしたから。あんな処《ところ》ではお酒《さけ》でも呑《の》まなかつたら遣切《やりき》れなかつたでせうかね。お附合で町の料理《れうり》屋へも行きましたわ。不|道徳《どうとく》な真似《まね》も少しはしたでせうね。男つて誰《たれ》も彼も遣《や》るのね。あれさへなかつたら本|当《と》に好《い》い人でしたけれど。」 大|抵《てい》逢《あ》へばそんな話《はなし》をして別《わか》れるのであつたが、今夜は信《しん》六が酔《よ》つてゐたし、S子も何だか少し浮《うは》づゝてゐるやうに見《み》えた。下にお客《きやく》があつた。S子とも親《した》しい男らしかつた。 S子は下から紅茶《こうちや》や水|菓《か》子を運《はこ》んで来て、四|畳《ぜう》半の椅《い》子|場《ば》で話《はな》した。 「好《い》い時候になつて来ましたね。」 「さうね、そろ/\花が咲《さ》きさうですわ。先刻《さつき》も上|野《の》公|園《えん》を通《とほ》つて、貴方《あなた》につれられて、よくあの辺《へん》を散《さん》歩した子|供《ども》時分のことを思《おも》ひ出してゐましたの。貴方《あなた》はお部《へ》屋に閉籠《とぢこも》つて、一日|誰《たれ》とも口も利《き》かずに本ばかり読《よ》んでゐたわね。」 「さうでしたかね。」 「あの時分、貴方《あなた》はもつと毛が濃《こ》くて、蒼白い顔《かほ》をしてゐたわ。いつも毛がもぢ/\で、何だか憂鬱《ゆううつ》な人だと思《おも》つたものよ。」 「貴女《あなた》の病《べう》気の看護《かんご》をしたこともありましたね。氷《こほり》を取|替《か》へたり、脈《みやく》を見《み》たりして……。」 「さうでしたつけ。私は弱《よわ》かつたんですわ。」 「私は貴女《あなた》の結婚《けつこん》したことをちつとも知《し》らなかつた。私はあの時、始《はじ》めて寂《さび》しいといふことを感《かん》じたやうだつた。でもそれは仕方のないことだつた。」 「さう、私ちつとも私はやつと十九でしたもの。」 信《しん》六は彼女の顔《かほ》をぢつと見詰《みつ》めてゐたが少し低声《ここゑ》になつて 「今|貴女《あなた》は何にもないんですか。」 「私に? え、何にも。」S子は耳《みゝ》の附|根《ね》を赤《あか》くして俛《うつむ》いた。 「何故ですの。」 「何故つてこともないが、もしさうだつたら、私と結婚《けつこん》してもらへまいかと思《おも》つて……。」 S子はちよつと彼の顔《かほ》を見《み》たが、直《ぢ》き目を伏《ふ》せてしまつた。 「貴女《あなた》はどう思《おも》ふ。私の生|活事情《かつじぜう》はわかつてゐるでせう。病院《べういん》を作《つく》れば男の手では遣切《やりき》れないことが随《ずい》分あらうと思《おも》ふ。もし貴女《あなた》の力を借《か》りることができるなら、万|事《じ》好《こう》都合だとおもふんですがね。」 「え……。」 暫《しば》らく沈黙《ちんもく》がつゞいた。 「貴女《あなた》はほんとうに独《ひと》り?」 「え、それあ本|当《とう》に独《ひと》りですけれど。」S子は髪《かみ》の乱《みだ》れ毛を小|指《ゆび》で掻《か》きあげながら、 「独身《どくしん》生|活《かつ》も気|楽《らく》は気|楽《らく》ね。」 「貴女《あなた》もすつかりそれに慣《な》れてしまつたやうですね。」 「え、まあね。でも何うかすると寂《さび》しいこともありますね。何か自分を掣肘《せいちう》してくれるものとか、限《かぎ》りない自|由《ゆう》に或る制限《せいげん》を与《あた》へてくれるものとか、まあさういつた日常生|活《かつ》の対象《たいせう》がないと、寄《よ》りどころがないやうな気もするのね。」 「無|制限《せいげん》では真《しん》の自|由《ゆう》とはいへませんからね。何|処《こ》まで行つても際限《さいげん》のない曠野《こうや》に立つてゐるやうで……。」 「え、さう。その代り気|楽《らく》は気|楽《らく》よ。寝《ね》たいときに寝《ね》て、起《お》きたいときに起《お》きる。それに色《いろ》々な憧憬《どうけい》――もうそんなものも、あらかた無くなつてしまひましたけれど、それでも現実《げんじつ》にそれ を求《もと》めようとはしないながらも、何かしら考《かんが》へてゐるのね。長く自|由《ゆう》でゐると、現実《げんじつ》にふれるのが、迚《とて》も慵いことになつてくるのね。たとへば或一人の異性《いせい》を現実《げんじつ》の対象《たいせう》として想像《そうぞう》するといつたやうなことが、何だか厭《いや》になるのね。それだけ私は年取つたんでせうか。」 「同|感《かん》ですよ。」 「でも今夜は皆《みな》川さんは、いつもの皆《みな》川さんとは違《ちが》つてよ。」 「こんな話《はなし》を持《もち》出されて、貴女《あなた》は困《こま》る?」 「いゝえ、さうぢやないの。」 「今になつてからの結婚《けつこん》は、兎《と》に角《かく》臆劫《おつくう》な仕|事《ごと》には違《ちが》ひないね。私は《み》見ず知《し》らずの他《た》人を引|張《ぱ》つて来て、その人と暮《くら》さうといふ気には何うしてもなれないね。貴女《あなた》だつたら、まあ何うにかかうにか、努《ど》力なしにやつて行けさうに思《おも》ふんだけれど。」 「え、それあさうね。」 「考《かんが》へておいて見《み》てくれませんか。」 「え。」 信《しん》六は何だか物|足《た》りなかつた。やつぱり二人はこのまゝでゐた方がよささうに思《おも》へた。この上|深《ふか》い交渉《こうせう》を生ずるのは、煩《わづら》はしいことのやうな気がしたが、しかし言《いひ》出してみると、女が飛《とび》ついてこないのが淋《さび》しかつた。 「しかし貴女《あなた》の私に対《たい》する気|持《もち》だけは聞かしてもらつても可いだらうね。」信《しん》六は彼女の手を執《と》つた。 「私の気|持《もち》?」 「白紙?」 「そんな事《こと》ないわ。」 「今さら何も燃《も》えあがらないつてつた感《かん》じ?」 「貴方《あなた》は。」 「私は貴女《あなた》を愛《あい》してゐる。若《わか》いときのやうな熱情《ねつぜう》は兎《と》に角《かく》、永《なが》いあひだ貴女《あなた》のことは絶《た》えず頭脳にあつたのだね。」 「さう、それは有|難《がた》いけれど。でも、貴方《あなた》は奥《おく》さんを愛《あい》してゐたでせう。」 「勿論《もちろん》愛《あい》してゐました。貴女《あなた》が貴女《あなた》の良人を愛《あい》してゐたやうに。たゞそれきりですよ。」 「さうね。今夜は貴女《あなた》は酔つてゐるやうだわ。」 「さうかも知《し》れない。でも、酔つたまぎれの笑|談《だん》でないことだけは信《しん》じてもらひたい。」 「それあさうですわ。」 「兎《と》に角《かく》考《かんが》へておいて下さい。」 「え。」 それから暫《しば》らく雑談《ざつだん》に耽《ふけ》つたが、二人は何となしはずまなかつた。 「散《さん》歩でもしませんか。いゝ夜だね。」信六は窓《まど》をあけた。 「しても可いけれど。」S子は寄《よ》り添《そ》つた。 静《しづ》かな夜であつた。月|光《こう》がどんより曇《うる》んでゐた。信《しん》六は彼女を引寄《よ》せた。 翌《よく》朝ベツドのうへで目をさましたとき、信《しん》六はそつと彼女の年を繰つて見《み》て、幻滅《げんめつ》を感《かん》じた。彼は昨夜の申《もうし》出を悔《く》ゆる気|持《もち》になつてゐた。[#地付き](昭和4年3月1日「週刊朝日」) 底本:「徳田秋聲全集第16巻」八木書店 1999(平成11)年5月18日初版発行 底本の親本:「週刊朝日」 1929(昭和4)年3月1日 初出:「週刊朝日」 1929(昭和4)年3月1日 入力:特定非営利活動法人はるかぜ
https://w.atwiki.jp/midkiseki/pages/126.html
▼タグ一覧 エリンギの花言葉=宇宙 ミラクルアイ 女医 母親 銀髪 因幡永琳(旧姓・八意) てゐの実母で八意医院の院長。年齢4×歳。 亡き夫との間にてゐ達姉妹を授かり、女手一つで育ててきた。 やんちゃで悪戯好きなてゐを心配しつつも温かく見守る母親の鑑。 医者としての技量は高く、かつては都内の大病院に勤務していたという噂も… 実はその正体は… 「闇夜を照らす弓張月!ブレイン・アルテミス!」 〇ブレイン・アルテミス=因幡(旧姓:八意)永琳 ミラクルアイの知識兼回復担当。イメージカラーは銀色。 正体はてゐの母親。八意医院の院長でもある。実はミラクルアイでは最年【削除されました】。 衣装は赤と青のツートンカラーの看護服・青いコンピュータ搭載のナース帽・銀色のSMマスクを模した仮面。 様々な薬が作れ、怪我は一瞬で治療可能。ただし病気の治療はそれなりに時間がかかり、失ったミラクルパワーはさすがに治療出来ない。
https://w.atwiki.jp/touhourowa/pages/307.html
許容と拒絶の境界 ◆TDCMnlpzcc 走って、走って、走り続ける。 木の根を飛び越え、藪を抜けて、逃げ続ける。 転んでも起き上がり、走り続ける。 目的地なんかない。 「追いかけてくる」 悲鳴をこらえた喉から、絞り出すように声を出す。 後ろでは、自分を呼ぶ声が響く。 落ち着いて聞くと、後ろの声にはあまり悪意がこもっていないようにも聞こえる。 しかし、今の因幡てゐにはそれを感じ取る余裕はなかった。 とにかく、逃げ続けた。 ずいぶんと長く逃げ続けて、気づけば足が止まっていた。 足が重い。 疲れた。 もういいだろう。 足を止めると、少し夜風で頭が冷えてくる。 そして、一人でいることに気づく。 当たり前だ。とにかく皆から逃げてきたのだ。 誰かが周りにいるはずはない。 「これで逃げ切れた」 つぶやいた言葉に反応する声はない。 周りに誰もいないことは安全である証拠。 自分は逃げ切れた。 また、逃げた。 そしてまた一人になった。 本当にこれでよかったのだろうか? 痛いなあ。 よく見ると足にけがをしている。 どこかで切ったのだろう。 たらたらと血が流れている。 もっとも、治療の必要はなさそうだった。 ぷんと血の匂いがあたりに広がっている。 がさがさ。遠くで茂みが揺れた。 これから私はどうするのだろう。 また逃げだすのか? また裏切るのか? 裏切る相手もほとんど残っていないだろうに。 自分が生き残れる可能性などほとんどないだろうに。 このままだと、あの時のように、一人さびしく死んでいくだけではないか? 逃げだしたことを少し後悔した。 もしあのままあそこに残って説明して もしあそこで誰かがかばってくれて もし誰かが許してくれて そうだったらよかったのに。 いや、これは逃げた後だからこそできる後悔だ。 殺される、それも少し心を許しかけた相手に。 それはきっと一人ぼっちで死ぬよりはつらいことだから。 そう思ったからこそ自分は逃げ出したのだ。 つらいけど、殺されるよりはましだった。 あそこで死んでいたら、このようなことを考えることすらできていないのだから。 がさ、がさがさ。 今度は近くで茂みが揺れた。 「・・・にお・・・・てゐ・・・・・ち・・」 え? だれか近くにいる。 どうして? それにこの声は・・・ 「てゐ?近くにいるだろ」 近くの木立から声を受けて、立ち上がろうとする。 でも足が立たず、逃げ出せなかった。 走りすぎて、動ける状態じゃない。 それにしてもなんでここがわかったのだろうか? 「見つけた!!!」 目の前にきれいな羽が現れた。 フランドール・スカーレットの手には飛び道具が握られている。 不思議と恐怖は湧かなかった。もう感情が麻痺しているだけかもしれないけれど。 「てゐさん」 今度は東風谷早苗か、みんな集まってきたわけだ。 さて、どう料理されるのか。 自分が見つかった理由はよくわかっている。 血だ、血をたどられた。 ただの人間を相手にしているのとはわけが違ったことを忘れていた。 吸血鬼。 相手に血に関するエキスパートがいることを知りながら、血のにおいを消すことを忘れていた。 もっとも、けがをしていることに気付いたのはついさっきで、対策の立てようはなかった。 その傷からはいまだに血が滴っている。 その匂いは私にも嗅ぎ取れる。 もしかしたら、鼻のいい人間にも追跡はできたかもしれない。 「あんまり走ると風邪をこじらせるわよ」 少し遅れて、あとの二人も到着した。 霧雨魔理沙の手には、自分が渡した銃が握られていた。 重そうに、ふらふらと持ち運んでいる。 皮肉なものだ。 自分の渡した武器で殺されるかもしれないとは・・・ 目の前に四人が集まった。 「てゐさん」 私の騙した人間、東風谷早苗がこちらに歩み寄る。 なにをされるのだろうか? 疲れ切った頭で考える。ふと、痛い死に方はいやだな、と思った。 私は死にたくなかった。しかし、死を免れるすべは見当たらない。 かちゃ。 後ろの八雲紫が警戒の目で私の手元を見つめた。 気付けば私は早苗に銃を向けていた。 恐怖に襲われた兎の無意識な抵抗。 だが、早苗はそれを気にすることなく近づく。 そして・・・・ 「ケガ」 「?」 「怪我しています。止血しないと」 人間の手が、降りてきて、私の足を抑えた。 それは危害を加える手じゃなくて・・・・ 「なんで怒らないの?」 早苗の手は、私の構えた銃の下で動き続ける。 布を足に巻きつける。 「私はあなたを騙したのに」 しばらく、誰もしゃべらなかった。 そして、すっと手が差し伸べられた。 「私たちはあなたがなぜ騙したのかが知りたいだけです」 手から拳銃が滑り落ち、代わりに暖かい手に包まれた。 「私は騙されたことは気にしていませんよ」 それは思いもよらない人物からの許しの言葉。 因幡てゐの心は少し、ほんの少し揺れた。 「てゐさんはパチュリーさんを本当に殺すつもりだったのですか?」 殺すつもりはなかった。 思い返せばあの魔女を殺してしまったのは事故だった。 言い訳をすれば、助かるかもしれない。 でも、言い訳をしたところで、また嘘をつき続けるだけかもしれない。 それに、どうせ私は東風谷早苗を殺すつもりで武器を構えたのだ。 同罪だ。殺そうと思っていなくとも、引き金を引いた指には殺意がこもっていた。 「あなた、私にも話をさせて」 フランドールが一歩前に出た。 こちらを見つめる目は、いつものように紅く染まっている。 てゐにはその眼を見つめられなかった。 目を伏せて、出る言葉に耳を澄ました。 「全部話して、パチュリーを殺したことから、全部、何もかも」 そして私は、口を開いた。 長い、しかしたった一日の経験談が終わり、静かになった。 座り込んだてゐに話しかけるものはいない。 許してもらえるとは思っていない。 でも、目の前の四人から殺意は感じられなかった。 ここに漂っている空気は虚無感だけ。 あらためて話して思った。 こんな殺し合いがなければ、何も起きなかった。 まさか、紅魔館の魔女を、恨みもない魔女を殺すことなんかなかっただろう。 なんでこんなことになったのだろう。 「私はもとよりあなたと関わりはないけれど、いくつか質問してもいいかしら?」 八雲紫が無表情で尋ねてきた。 てゐは無言で了承する。 ほかの三人は何もしゃべらない。 「あなたが死ぬのを見届けた蓬莱山輝夜は人形だったの?」 「そんなはずはないと思うけど、月の科学力は進んでいるから」 「八意永琳にはまだ会っていないと」 「さっき話した通りだよ」 「古明地こいしは死んだのね」 「目の前で見たから、それは事実」 「今、人里に死体があるのよね・・・」 「どっちの?」 「どっちも、特にお姫様のほうかしらね。興味があるのは」 八雲紫はてゐがもう仲間であるかのように振る舞っていた。 それが仮の対応だったとしても、てゐには救いだった。 そこで、うーんとうめき声をあげて、魔理沙がこちらを見た。 「私には決められない。決めるのはフランと早苗だ」 ほらよ、と黙り込んだフランの肩を叩く。 反応がないのが不気味だった。 私は・・・と早苗が顔を上げた。 「私は、てゐさんに復讐したいとは思いません」 私は特に怪我をしませんでしたし・・・。 早苗は笑顔で付け足した。 私の心には、その笑顔が痛かった。 フランドールは黙りこくって、立ち尽くしている。 「・・・・」 どうすればいいのだろうか? 私は生きたいと思った。 しかし、それ以上に、許してほしいと思った。 目の前に与えられた、仲間という関係は、目の前の吸血鬼の判断次第で取り上げられる。 一人はさびしい。 「・・・・」 私はどうしたらいいの? 「ごめんなさい」 周りが、えっと声を出した。 「本当にごめんなさい」 それは、自身の行為の独白を続けてもなお、妖怪兎の口からでなかった言葉。 そして、それを口に出したのは・・・・ 「守ってあげられなくてごめんね、パチュリー」 プライドの高い吸血鬼、フランドール・スカーレットだった。 「私はさ、お姉さまみたいに器用に怒れないよ」 「フラン、お前・・・」 唖然とした皆の前で、フランドールは頭を垂れた。 「許してね」 そして、顔を上げた。 こちらを、紅い瞳が見つめる。 「私が許すとか、許さないとかじゃないと思う。 パチェリーが許すか許さないかだと思う。 だからさ、私はてゐをどうしようとも思わない。 もとから私がどうこう考えることですらないと思う」 言い切った言葉は、まっすぐだった。 はっとして思わず、私は下を向いた。 そして、周りに見えないように笑う。 自分自身を嗤った。 数千年も生きてきて、数百年しか生きていない吸血鬼に劣っていたとは。 力はともかく、それ以外で劣っていたとは。 私なんかより、こいつのほうがいい奴だよ。賢いよ。 「私は・・・・」 私がやるべきことは最初から一つしかなかった。 一つしかなかったのだ。 「ごめんなさい。本当にごめんなさい」 先ほどの、吸血鬼の言葉の丸写し。 でも、この場にはそれが一番似合った。 「ごめんなさい」 なんだか涙が出てきた。 視界がぼやけて、灰色に染まってゆく。 最後に人前で、嘘泣きでなく本気で泣いたのはいつのことだっただろうか? 久しぶりの、涙だった。 少し時間がたった。 「まあ、涙をふきなさい」 八雲紫の声で私は顔を上げた。 ああ、私は泣いていたのか。 その事実を思い出し、苦笑する。 年甲斐にもないことをしたものだ。 手で目をこすり、涙をぬぐう。 眼病にならないといいな、ふと思う。 しみついた健康への執着が戻っていた。 「私は何もしないけど、お姉さまはわからない」 フランドールがつぶやいた。 その通りだ。私が謝るべき相手はたくさんいる。 人里においてきた二人はどうなったのだろうか? わからない。 「まあ、レミリアも分かってくれる。わかってくれなかったら私が分からせる」 「ありがとう」 魔理沙が力強く言った。 でも、誰かの手を煩わせるつもりはなかった。 謝って、謝り通してやる。 許してもらうまで土下座して、謝って、罪を償おう。 私は生まれ変われるかもしれない。 すくなくとも、今、私の中で何かが変わった。 「ほら」 寄ってきたフランドールが、手を差し伸べる。 何をする気だろうか? 「えっ?」 私は思わず、竦んだ。 そんな私とフランドールを見つめる4人分の視線。 「仲直りの握手」 「フランドール・・・」 「フランでいいよ」 それはとても平和で、心地よい世界だった。 もう二度と味わえないと思っていた世界。 目の前のフランはとても優しくて、だから、死なせたくなくて・・・ 私はフランをつかみ、地面に引きずり落とした。 そして、乾いた、汚れた、忌々しい音が鳴り響いた。 そして、音よりも早く到達した何かが・・・・ 私の体を貫いた。 164 彼岸忌紅 ~Riverside Excruciating Crimson 時系列順 165 真実と妄想の境界 164 彼岸忌紅 ~Riverside Excruciating Crimson 投下順 165 真実と妄想の境界 163 消えた歴史(状態表) 霧雨魔理沙 165 真実と妄想の境界 163 消えた歴史(状態表) フランドール・スカーレット 165 真実と妄想の境界 163 消えた歴史(状態表) 因幡てゐ 165 真実と妄想の境界 163 消えた歴史(状態表) 八雲紫 165 真実と妄想の境界 163 消えた歴史(状態表) 東風谷早苗 165 真実と妄想の境界 153 アルティメットトゥルース ~Fruhlingstraum(後編) 西行寺幽々子 165 真実と妄想の境界
https://w.atwiki.jp/forsale-lawyer/pages/274.html
奇人山崎今朝彌-法曹界のアメリカ伯爵- 宮地嘉六 最後の対面 山崎今朝彌氏とは終戦後、久しぶりで偶然に或る追悼会の席で落ち合つた。それがついこのあひだのことのやうだが、もうそれから三四年は経つてゐる。そのとき、丁度、卓を挟んで向ひあふことになつたので私は少しバツがわるかつた。山崎氏の方でも何か同じやうなことを感じただらう。が、氏はそんなことには頓着せぬ風で、例によつてキヨトンとした顔で隣席の荒畑寒村氏と何やら話を交へてゐた。とんだ場所におれは席を選んだものだと思つたが、もうどうにもならなかつた。見渡したところ、みんなの席はきまつてしまつてゐる。 ずつとおしまひのあたりに、空いた席がなくもなかつたが、すぐ私の隣席には小生夢坊氏がゐ、その他、私と山崎今朝彌氏との曽てのイキサツを知つてる人が多数ゐて、その人達の手前、今更席をかへるのも見えすいてゐて、逃げをうつ心弱さを嗤はれさうな気もしたので頑ばりぬいて腰を落ちつけてしまつた。向ひあつた以上はお互に顔を見まいとしてもさうはゆかない。 私には三十年ぶりで目近に見る米国伯爵山崎今朝彌氏だつた。で一切を白紙にした気持で私の方からおじぎをし、挨拶した。おじぎだけではよそよそしくもあり、白々しくもあるので『--御元気で・・・・・・』とか何とかいはねばならなかつた。山崎さんの方でも軽く応答した。挨拶をして悪い気持はしなかつた。偶然にも彼氏の近くに席を選んで挨拶する機会を得たことは却つてよかつたやうな気がした。 が、そのとき、お互に席が遠く離れてでもゐたら、私とても、わざわざ近づいて行つて氏に挨拶する勇気は出せなかつたにちがいない。そして当夜、あいさつをせずにゐたら、もうこの世では氏と挨拶を交へる機会はなかつたわけである。山崎さんの急逝の報をきいて、私は、あのとき、挨拶をしてよかつたと今は思ふ。 かかあ天下の山崎家 法曹界の名物男、奇人の定評あつた山崎今朝彌氏と私との曽てのイキサツなど今は知らない人が多いのは私にとつては勿怪の幸ひでもある。が、山崎氏の半面を茲に描くには一応過去の荒筋を語らねばならぬことになる。 今から三十年前、今朝彌夫人実の妹俊子と私とは、堺利彦先生のおとりなしで結婚したのであつた。そして同棲僅かに一年余で別れてしまつた。丁度その年の師走近くに生れた赤ん坊を彼女に抱かせて、お産後の初の挨拶の意味で芝の桜田本郷町の山崎家へ母子を俥にのせてやつたところ、それつきり彼女は戻つてこないのだつた。平素、心やすい隣家の人も心配して迎へに行つてくれたりしたが『本人は戻りたいとおつしやつてゐますが、お姉さま御夫婦がお引きとめになるさうで・・・・・・』といふのだつた。 私としても山崎今朝彌夫婦のこじれてゐる気持がわからぬではなかつた。それは、私が結婚後、九州の福岡日日新聞(今の西日本新聞)に群像と題する小説を連載したこと、そして、その小説の内容が山崎夫婦の気持をいたく害してゐることだつた。百六十回ほどのもので、それは主として俊子との結婚生活を描いたものだが、その心理描写が山崎氏夫婦、殊に夫人のお気に喰はなかつたのである。いくら新婚生活を主題として描くにしても目出たし目出たしでは小説にならないから大努力で、突つこんで書いたのが祟つたわけであつた。 ところで私としては一方、新婚生活をきりぬけるために、さうした連載小説をどうしても書き続けねばならぬ苦難の途上にあつた。が或る日、堺先生の家を訪ねると『山崎夫婦は福日の小説を読んでるらしい。心理描写が深刻だといつてゐる』と堺先生はいはれた。 そんなことから私は山崎今朝彌氏の家にしばらく御無沙汰した。構はずにときどきゆけばよかつたかも知れないが、行けばブンとした顔をされるし・・・・・・だから、赤ん坊が生れたときも、鳥の子餅を持つて私自身出かけはしたが、つい神経質的に気おくれがしたので、山崎家の一丁ほど手前で俥を留め、私はそこに居て車夫君に贈物をとどけさした。それがまた先方に感づかれて、いやが上にも山崎夫婦の気持を害したといふわけであつた。 離婚が表面化してからはお手のものの法律を楯にギユウギユウ私は山崎氏にとつちめられた。喰ふか喰はれるかの激闘にまで展開しかけた。山崎今朝彌氏としては、一つは夫人の御機嫌とりに私を存分やつつけねばならなかつたらう。また、ひいては山崎夫人の実家に対してもさうであつたらう。といふのは、山崎家は嬶天下の傾向が多分にあつたから、夫人に対して、また夫人の実家に対しても、そこのかしら娘のお婿さんらしい腕まへをこんな時に山崎さんは見せねばならなかつたらう。事実、夫人の実家は弘前の旧家であり婿の山崎氏を偉大なる人物として信頼してもゐた。 新聞では私を悪者のやうにかいたがこれも山崎氏がさう書かせたらしい臭ひが多分にあつた。女房の持参金(そんなものを見たことも私はなかつたが)をまきあげたの、女房の物を入質してなくしてしまつたの、あることないことを新聞記者に書かせた。ところが、私の手もとには既に、女の所持品全部を受取つたといふ証書が山崎の方からとどけられてゐたのである。 私はその証書を、王子署の特高が来たときに見せて納得させてゐたあとだのに、私がよこしまなことをしたかのやうに世間に発表した。夫人の御機嫌とりに私をやつつけるのではあつたらう。けれど、山崎今朝彌といふ人はもともとさうした茶目な偽悪癖のある人だつたともいへよう。山崎家が嬶天下であつたといふことは決して悪いとは私にはいへない。あの、ものにこだはらない生一本の負けぬ気の先生が嬶天下で家ではをさまつてゐたところは愛すべきであつた。戦時中は遠くへ妻子を疎開させてゐたさうだが終戦となつても、家族を東京へよびよせることは転入禁止の場合、おいそれとはできなかつた。そんなこんなで手もとは不如意となり遂に持家を売りとばしたりしたらしい。その頃の苦難はひとり山崎氏一家ばかりではなく、御同様であつた。然し山崎夫人は良人が家を売り飛ばしたことをひどく残念がつたらしい。『あなた、あなたが死ぬまでに家だけは建ててから死んで下さいよ。お願ひだから・・・・・・』とあけくれいつたものださうだ。そのため、山崎氏は老体に鞭つてやつともと通り一軒の家を手に入れ、夫人の望みを実現して死んだ・・・・・・とこれはまた聞きの話しである。 モンペ姿の山崎氏 ところで、それと関連した話がある。終戦直後のこと、山崎今朝彌氏は杉並区の区長改選のとき新居格を向うにまはして立候補したことは周知である。これは興味ある選挙相撲、よい取り組として地元内外を熱狂させた。が、まんまと山崎氏は土俵際で突つ張りがきかずに惜敗した。しかし、新居が区長になつたお蔭で、その頃、住宅難で弱つてゐた山崎氏は新居のはからひで区長公舎に一時ころげこむことができたのであつた。選挙戦で勝者の地位にありついた新居は、せめて好漢山崎への心づくしとして区長公舎へ山崎を住まはせたのであつた。美談といへば美談。のうのうと準区長気どりで公舎にころげこんで、すましてゐるところも山崎らしい心臓だよ、といつてゐた人があつた。 女権尊重の国、米国仕込の山崎今朝彌氏が、一生を嬶天下でをさまり、サイノロの定評を残してこの世に終りを告げたのはあやしむに足らぬ。生れは信州諏訪で、法律家としてのふり出しは検事だつたさうである。が、それは、ほんの僅かの期間で、米国に渡り、あちらから帰ると米国伯爵と自称し、弁護士大安売、などと引札をばら撒いたりして剽軽ぶりで先づ世人を釣りこんだ。元来多分に諧謔家的素質の人。占領軍がバッコしてゐた頃のことだが、新憲法法文中の『主権在民』といふ字句を『主権在マ』などとヒニクつてゐたのも面白い。在マのマはマツカーサーを指していつたもので、さうしたことにトウイ即妙的な天才をひらめかす人だつた。明治文壇の鬼才齋藤綠雨ふうのところがあつた。 弁護士としては刑事弁護よりも民事を多く取扱つてゐた。一頃、二年あまり私は仕事の関係で毎日裁判所に出入りしたものだつたが、彼の刑事弁護は一度も聞く機会がなかつた。或る人が彼の刑事弁護を唯一度傍聴したことがあるといひ『山崎今朝彌の弁論ぶりは一風変つてて面白いよ。なんにもいはないで唯「被告は親孝行であります。何卒執行猶予を・・・・・・」と、それでおしまひなんだ』と私に語るのだつた。それでゐて裁判長の受けは、くどくどとわかりきつたことをいふ低調な弁論よりも簡にして要を得てゐたので案外よかつたさうである。 私は或るとき、山崎氏がモンペをはいて裁判所の民事部の廊下を大股でさつさと歩いてゆく姿を見た。終戦前後のことである。少し前かがみに歩いて行く姿は、元気さうには見えたが、年齢は争はれないものか、だいぶお爺さんらしく見えた。きけば晩年はよほど耳が遠くなつてゐたらしい。 氏は袴をはくことをめんどくさがる風で、芝の桜田本郷町から小田急線の成城町に移つてから、毎朝、蝙蝠傘のさきに小さな風呂敷包をつつかけて、それを肩にかけ、尻端折りで自宅から駅へと歩いて行く姿は珍風景に見えたさうである。そのコーモリのさきの風呂敷包は袴と法廷できる法服(戦後は廃されたが)だつたらしい--さういへば山崎今朝彌氏の洋服姿は恐らく見た人はないだらう。長らくアメリカにゐて戻つた人にはめづらしく、和服と無帽主義で一生を通したのではなかつたらうか。 二人で銀ブラした話 私が山崎氏の風□にはじめて接したのは堺先生主宰の売文社でであつた。その頃、売文社は今の日比谷の日活会館のあたりにあつたが、私もときどきその売文社を訪れた。或る日、ストーブのそばに五十近いイガグリ頭の和服の男が椅子にかけたまま両足を投げ出して話相手もなくポカンとしてゐた。袴もはかずに足を開いてゐたので膝坊主のへんまでまる見えだつた。円顔で頤の短い中柄な体格でどことなしに凄味があつた。社員と話をするときはにこにこと笑顔を見せるが、私にはゴロつきのやうにも見えた。場所がその頃の社会主義者の本城であつたから此の男はただものではないぞと思つた。ところがそれが米国伯爵山崎今朝彌氏であつたことがずつと後になつて私にわかつたのである。 彼の義妹との縁談の進行中、私は彼に誘はれてギンブラをしたことがある。堺先生、長谷川如是閑氏、加藤一夫その他左翼文士をグループとする著作家組合の会合の帰りだつた。散会したのは夜の九時頃であつたらうか、『どうだ、これから銀座を歩いてクリスマスデコレーシヨンでも見ないかね』と山崎氏の方から誘ふので『お伴しませう』といつて、それから二人は人出の多いクリスマス前夜の銀座をぶらついたが、銀座を一緒に歩かうかなどとめつたにいふ山崎氏ではない。 して見れば既に私はそのとき彼の意中での義弟になりかけてゐたのであらう。破格の親しみを仕向けられたといふわけである。が一緒に歩きながら二人は啞のやうに無言であつた。誘ひをかけたほどだからお茶でものまう、といふのかしらと思つたがさうでもない。酒を一滴ものまない山崎氏に私からバーに誘ひこむわけにもゆかない。唯ぶらぶら銀座の歩道を歩いてシヨーウインドーなどを覗いたりしてから『ぢや、さよなら・・・・・・』と彼氏の方からさういつて別れてしまつた。煙草も酒もたしなまない人であつた。 『君も印税で喰つてゆけるやうにならなくちやね・・・・・・』といよいよ彼の義妹と結婚してから彼は私にさういふのだつた。私も社会主義者、山崎氏も社会主義者のつもりだつた私はその言葉をちよつと受入れかねた。一人の大金持ができることは多くの貧困者をつくることになるといふ私のその頃の考へ方では、印税で、不労所得で生活することなど神の御心に反するものと思つてゐたのだ。 無口なユーモリスト 山崎さんが酒のみだつたら私にはとりつきよい男だつたかも知れない。酒も煙草もやらないといふ義兄だつたので呑助の私は当惑した。然しいつも酒に酔つてるみたいな愛嬌はあつた。無口でゐてユーモリストであつた。ところが、あれほど服装を構はぬ人でありながら、何々会などで私と出あつたりすると、それとなくジロリと私の服装に視線を向ける人だつた。私はもともとおしやれが好きで少少気どりやでもあつたが、どうかすると、無雑作なふだん着の粗服で同志の宴会に出席した。そんな時、山崎氏と出くはしたりすると氏はよい顔をしなかつた。自分の女房の妹の亭主としての関心を払ふのであつたらう。そんな場面が二三度あつたのを今でも思ひ出す。 私たちの結婚披露会は銀座横町の、その頃あつたカフエー・バウリスタ(三十年前の時事新報社前)でやつたが、次の日は山崎今朝彌氏の宅で山崎氏の平素親しい弁護士仲間を招待することになつた。その趣向がまた山崎流でふるつてゐた。数十人の客を迎へるだけの食卓がなかつたので八畳の広間にリンゴ箱をならべ、雨戸を持ち出して来て架け渡し、その上に白布をひろげて即席のテーブルができあがつた。料理は、おでん燗酒。その頃、社会主義のおでんや岩崎で聞えてゐた(有楽町のガード下でおでんをやつてゐた)岩崎善右衛門君が、屋台車を庭さきに曳きこんで、おかはり御自由といふのであつた。さういふヒヨウタクレたことのすきな山崎今朝彌氏だつたのである。(作家) <以上は、宮地嘉六氏(1958年没)が著作者である。> <旧仮名遣いはそのままとし、踊り字は修正し、旧漢字は適宜新漢字に直した。> <底本は、『文藝春秋』(文藝春秋社)第32巻17号165頁(昭和29年(1954年)11月号)> <この評論は、第三者による客観的な人物批評であるとはいい難い(森長英三郎『山崎今朝弥』(紀伊國屋書店)200頁参照)。とはいえ、山崎の人となりを知るうえで参考となると思われたから紹介することとした。>
https://w.atwiki.jp/chaos-touhou/pages/616.html
“東方永夜抄”“永遠亭のウサギ” 読み:“とうほうえいやしょう”“えいえんていのうさぎ” カテゴリー:Chara/女性 作品:永夜編 属性:無 ATK:6(-) DEF:4(+1) 【登場】〔自分の手札の 永夜編 のキャラカード1枚を控え室に置く〕 [自動]このキャラが登場かレベルアップかオートレベルアップした場合、ターン終了時まで、このキャラは攻撃力が4上昇する。 [永続]このキャラ以外の《“東方永夜抄”“永遠亭のウサギ”》が1体以上登場している場合、このキャラは『貫通』を得る。 幸運が訪れるわー illust:とんとろ 永夜-049 C 収録:ブースターパック「OS:東方混沌符 -永夜編-」 参考 特徴“東方永夜抄”を持つキャラ・エクストラ一覧 “異変解決”“東方永夜抄”逢魔が時「十六夜 咲夜」&「魂魄 妖夢」 “異変解決”“東方永夜抄”永夜異変「博麗 霊夢」&「霧雨 魔理沙」 “異変解決” “東方永夜抄”ラストスペル「霧雨 魔理沙」 “異変解決” “東方永夜抄”ラストスペル「博麗 霊夢」 “東方永夜抄”赤眼催眠「鈴仙・優曇華院・イナバ」 “東方永夜抄”蟲を操る妖蟲「リグル・ナイトバグ」 “東方永夜抄”老いる事も死ぬ事も無い人間「藤原 妹紅」 “東方永夜抄”禁呪の魔法使い「霧雨 魔理沙」 “東方永夜抄”生命遊戯「八意 永琳」 “東方永夜抄”狂気を操る月の兎「鈴仙・優曇華院・イナバ」 “東方永夜抄”火の鳥「藤原 妹紅」 “東方永夜抄”海を渡る兎の軌跡「因幡 てゐ」 “東方永夜抄”永遠亭の主人「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”永遠亭の「鈴仙・優曇華院・イナバ」 “東方永夜抄”永遠亭の「因幡 てゐ」 “東方永夜抄”永遠亭の「八意 永琳」 “東方永夜抄”永遠と須臾を操る月人「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”永夜返し -初月-「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”永夜返し -世明け-「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”永夜返し -丑の刻-「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”歴史を食べるワーハクタク「上白沢 慧音」 “東方永夜抄”正直者の死「藤原 妹紅」 “東方永夜抄”歌で人を狂わす夜雀「ミスティア・ローレライ」 “東方永夜抄”梟の夜鳴声「ミスティア・ローレライ」 “東方永夜抄”月兎遠隔催眠術「鈴仙・優曇華院・イナバ」 “東方永夜抄”月のいはかさの呪い「藤原 妹紅」 “東方永夜抄”旧秘境史「上白沢 慧音」 “東方永夜抄”新幻想史「上白沢 慧音」 “東方永夜抄”幽冥の剣客「魂魄 妖夢」 “東方永夜抄”幻想の巫女「博麗 霊夢」 “東方永夜抄”天人の系譜「八意 永琳」 “東方永夜抄”夢幻の使用人「十六夜 咲夜」 “東方永夜抄”壺中の大銀河「八意 永琳」 “東方永夜抄”地上の流星「リグル・ナイトバグ」 “東方永夜抄”古代の詐欺師「因幡 てゐ」 “東方永夜抄”人間を幸運にする妖怪兎「因幡 てゐ」 “東方永夜抄”リトルバグ「リグル・ナイトバグ」 “東方永夜抄”ラストワード「藤原 妹紅」 “東方永夜抄”ラストワード「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”ファーストピラミッド「上白沢 慧音」 “東方永夜抄”シンデレラケージ「鈴仙・優曇華院・イナバ」&「因幡 てゐ」 “東方永夜抄”イルスタードダイブ「ミスティア・ローレライ」 “東方永夜抄”あらゆる薬を作る月人「八意 永琳」 “東方永夜抄”Stage5 穢き世の美しき檻「因幡 てゐ」 「鈴仙・優曇華院・イナバ」 “東方永夜抄”Stage4 uncanny 伝説の夢の国「博麗 霊夢」 「十六夜 咲夜」 “東方永夜抄”Stage4 powerful 魔力を含む土の下「霧雨 魔理沙」 「魂魄 妖夢」 “東方永夜抄”Stage3 歴史喰いの懐郷「上白沢 慧音」 “東方永夜抄”Stage2 人間の消える道「ミスティア・ローレライ」 「霧雨 魔理沙」 “東方永夜抄”Stage1 蛍火の行方「リグル・ナイトバグ」 「博麗 霊夢」 “東方永夜抄”Final 姫を隠す夜空の珠「八意 永琳」 “東方永夜抄”Final B 五つの難題「八意 永琳」 「蓬莱山 輝夜」 “東方永夜抄”Extra 蓬莱人形「上白沢 慧音」 「藤原 妹紅」 “東方永夜抄” 永遠亭のウサギ “東方永夜抄” Imperishable Night. 特徴“永遠亭のウサギ”を持つキャラ・エクストラ一覧 “東方永夜抄” 永遠亭のウサギ
https://w.atwiki.jp/harukaze_lab/pages/319.html
小婢 徳田秋声 【テキスト中に現れる記号について】 《》:ルビ (例)片輪《かたわ》 |:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号 (例)一|時《しきり》 [#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (例)[#地付き] /\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号) (例)あを/\ 濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」 「片輪《かたわ》でない限《かぎ》り、誰《だれ》でも女《をんな》はみんなさうなんですから、ちつとも恥《はづ》かしいことはないんですよ。ちやんと自分《じぶん》で始末《しまつ》をおしなさいよ。訳《わけ》のないことですからね。」 細君《さいくん》がさう言《い》つて、そんな事《こと》にはとかく感《かん》じの鈍《にぶ》いお清《きよ》を諭《さと》してゐる声《こゑ》が、ふとその時《とき》私《わたし》の耳《みゝ》に入《はい》つた。 それは或《あ》る日《ひ》の晩方《ばんがた》であつた。いつもの癖《くせ》で、私《わたし》はぼんやり晩春《ばんしゆん》の庭《には》の風情《ふぜい》を見《み》てゐた。松《まつ》の老木《おいき》の蔭《かげ》に八重《やへ》の椿《つばき》がまだ咲《さ》き残《のこ》つてゐた。近頃《ちかごろ》結《ゆは》へたばかりの青々《あを/\》した竹《たけ》の垣根《かきね》ぎわに、えにしだの細条《さいでう》が、鮮《あざ》やかな黄色《きいろ》い花《はな》を綴《つゞ》つて瓔絡《えうらく》のやうに、しと/\ふる小雨に撓《たわ》んでゐた。黄昏《たそがれ》ちかい空《そら》の色《いろ》が、一|時《しきり》木々《きゞ》の若葉《わかば》を美《うつく》しく見《み》せてゐた。 十二か三で、東北《とうほく》の山《やま》から出《で》て来《き》たお清《きよ》も、もう十五になつてゐた。節々《ふし/″\》がかつ詰《つま》つてゐるので、子供々々《こども/\》してゐたけれど、はち切《き》れさうに脹《ふく》れた頬《ほゝ》に熟《じゆく》した柘榴《ざくろ》の実《み》のやうな赤味《あかみ》をもつて、かた/\と堅《かた》ぶとりに肥《ふと》つた体《からだ》が、ぶつ切《き》つたやうな不恰好《ぶかつかう》さで、年《とし》は年《とし》なりに発育《はついく》してゐた。 お清《きよ》もこの頃《ごろ》女《をんな》になつたらしい、細君《さいくん》がそんなことを言《い》ひだしたのは、もう余程前《よつぽどまへ》からであつた。彼女《かのぢよ》はお清《きよ》がそれを何《ど》う仕末《しまつ》をするかゞ気《き》になつてならなかつた。そしてそんな形迹《けいせき》がある度《たび》ごとに、それを仕末《しまつ》することを教《をし》へたのであつたが、お清《きよ》はいつもその事実《じじつ》を否定《ひてい》するだけであつた。 「下盥《しもたらひ》があるんですからね、間違《まちが》ひなくあれで早速《さつそく》お洗《あら》ひなさいよ。そこいらにつくねておいては可《い》けませんよ。洗濯《せんたく》したら手《て》もよくお洗《あら》ひなさいよ。食物《たべもの》を弄《いぢ》るんですからね。」 細君《さいくん》は繰返《くりかへ》して言《い》つて聞《きか》してゐた。 「それにしても、少《すご》し早《はや》いわね。私《わたし》十八でしたよ。」 細君《さいくん》は縁《えん》にちかいところで、針仕事《はりしごと》をしてゐるお清《きよ》より年上《としうへ》のお松《まつ》に話《はなし》かけた。彼女《かのぢよ》はもうそれのあがるのを待《ま》つやうな年《とし》であつた。 「私《わたし》はあつても軽《かる》うございますの。大抵《たいてい》二|日《か》ぐらゐで済《す》みますから、」お松《まつ》は言《い》つてゐた。 お清《きよ》の棒立《ぼうだ》ちに立《た》つてゐる姿《すがた》が、私《わたし》の方《はう》からも見《み》えた、私《わたし》はまるで余所事《よそごと》のやうに無関心《むくわんしん》に聞《き》いてゐたのであつたが、女達《をんなたち》の間《あひだ》にはそれか大問題《だいもんだい》となつてゐるらしいのであつた。 暫《しばら》くすると、七つになる末《すゑ》の娘《むすめ》とふざけてゐるお清《きよ》の噪《はしや》いだ声《こゑ》が茶《ちや》の室《ま》の一《ひと》つ先《さ》きの部屋《へや》から聞《きこ》えて来《き》た。彼女《かのぢよ》が一|番《ばん》親《した》しい感情《かんじやう》をもちうるのは、十|人《にん》の家族《かぞく》のなかで一|番《ばん》小《ちひ》さい我儘《わがまゝ》なその娘《むすめ》だけであつた。 しかし吩咐《いひつ》けさへすれば、何事《なにごと》にもお清《きよ》はよく働《はたら》いた。小《ちひ》さい時《とき》から細君流《さいくんりう》に仕込《しこ》まれたので、どこか抜《ぬ》けたところがありながらに、大抵《たいてい》のことはきちんと始末《しまつ》ができるくらゐに躾《しつ》けられてゐた。台所《だいどころ》に入用《にふよう》なものの買入《かひい》れ方《かた》も一と通《とほり》腹《はら》へはいつてゐたし、煮物《にもの》の仕方《しかた》も少《すこ》しは覚《おぼ》えてゐた。私達夫婦《わたしたちふうふ》の着物《きもの》の仕末《しまつ》や、数《かず》の多《おほ》い子供《こども》たちの槻衣《しやつ》や猿股《さるまた》の出入《だしい》れも心得《こゝろえ》てゐた。新《あた》らしい毛《け》の薄《うす》い方《はう》のシヤツをと言《い》へば、彼女《かのぢよ》は「はい」と言《い》つて、それを持《も》つてきてくれるし、足袋《たび》をおくれと言《い》へば、声《こゑ》に応《おう》じてちやんと其《それ》をもつて来《き》てくれた。買《か》ひものを一時《いちどき》にいくつも吩咐《いひつ》けても、間違《まちが》へるやうなことはなかつた。お客《きやく》さまの下駄《げた》はいくら言《い》つても、その都度《つど》命《めい》じなければ、揃《そろ》へておくことを忘《わす》れがちで、指《ゆび》の詰《つ》つた其《そ》の手《て》からは瀬戸《せと》ものが屡《しば/\》すべりがちであつた。それに自身《じしん》の髪《かみ》の始末《しまつ》をしようと云《い》ふ気《き》が なかつた。姿《なり》を調《とゝの》へるといふことにも、全《まつた》く感覚《かんかく》か働《はたら》かなかつた。で、着《き》ものや帯《おび》に気《き》をつけてやつても、それか少《すこ》しも体《からだ》につかないのが、細君《さいくん》には張合《はりあ》ひがなかつた。 お清《きよ》はどうかすると、機嫌《きげん》をわるくして、口《くち》も利《き》かずに脹《ふく》れてゐるやうなことがあつた。発作的《ほつさてき》に泣《な》くこともあつたが、不断《ふだん》はさう暗《くら》い感《かん》じのしない子供《こども》であつた。私《わたし》の家庭《かてい》から若《も》しお清《きよ》をなくしたら、日々《ひゞ》のこま/\した使《つか》ひ歩《ある》きや、家《うち》のなかの用事《ようじ》などに、何《ど》んな不自由《ふじいう》を感《かん》ずるかは誰《たれ》にもよく判《わか》つてゐた。 「みんなでさう一々《いち/\》お清《きよ》にばかり用事《ようじ》をいひつけては可《い》けないぢやないか。名々《めい/\》でできることは自分《じぶん》でしなさい。」私《わたし》は時々《とき/″\》子供《こども》たちに、さう言《い》はずにはゐられなかつたが、彼女《かのぢよ》にも少《すこ》しは智識《ちしき》の目《め》をあけてやらなければならないことや、針《はり》をもつこ とを習《なら》はしておかなければならないことも、時々《とき/″\》口《くち》にしながら、その暇《ひま》を与《あた》へるのが困難《こんなん》であつた。勿論《もちろん》針《はり》をもつことなどは、全《まつた》く彼女《かのぢよ》の性《しやう》に合《あ》はなかつた。 「お清《きよ》ももう少《すこ》し何《ど》うにかなつてくれないぢや困《こま》りますね。切《せ》めてお君《きみ》ぐらゐに。」細君《さいくん》は何《なに》よりもそれを気《き》にかけてゐた。 お君《きみ》といふのは、お清《きよ》の姉《あね》であつたが、小《ちひ》さいながらにまだしもいくらか形《かたち》が調《とゝの》つてゐた。 お君《きみ》は鉱山《くわうざん》をやつてゐる私《わたし》の甥《をひ》のところに長年《ながねん》使《つか》はれてゐた。その親達《おやたち》も鉱山《くわうざん》の仕事《しごと》に働《はたら》いてゐた。そしてそんな因縁《いんねん》から、お清《きよ》は東京《とうきやう》へ送《おく》られて来《き》たのであつたが、親《おや》たちと甥《をひ》との経済関係《けいざいくわんけい》が複雑《ふくざつ》してゐるので、最初《さいしよ》お清《きよ》が来《き》たときには、着物《きもの》を着《き》せて、食《た》べさせておいてくれゝば、それで十|分《ぶん》だど言《い》ふのであつたけれど、体《からだ》の弱《よわ》い彼女達《かのぢよたち》の父親《ちゝおや》は、とかく二人《ふたり》の娘《むすめ》を当《あ》てにしがちであつた。時々《とき/″\》彼《かれ》から長《なが》い手紙《てがみ》が来《き》た。細君《さいくん》はお清《きよ》の給銀《きふぎん》の前貸《まへが》しのつもりで、適当《てきとう》に思《おも》ふ程度《ていど》で彼《かれ》の要求《えうきう》に応《おう》じてゐた。 「それはそれとして、お清《きよ》のために月々《つき/″\》貯金《ちよきん》はしておいてやらなければ。」 「それも思《おも》ふんですけれど、着物《きもの》も拵《こしら》へてやらなければなりませんし、大凡《おほよ》そのところでやつぱり決《き》めておいた方《はう》がいゝと思《おも》ひますね。」細君《さいくん》は言《い》つてゐた。 お清《きよ》の父方《ちゝかた》の祖母《そぼ》が、時々《とき/″\》勝手《かつて》へやつて来《き》た。彼女《かのぢよ》はもう七十であつたが、学生《がくせい》のために御飯焚《ごはんたき》などして、何《ど》うにか自分《じぶん》で食《た》べてゐた。弟子息《おとうとむすこ》が一人《ひとり》東京《とうきやう》にゐたけれど、傭《やと》はれ先《さ》きの金《かね》を使《つか》ひこんで、しばらく田舎《ゐなか》へ行《い》つてゐた。老婆《らうば》は不検束《ふしだら》な子息《むすこ》のために、その穴《あな》を月々《つき/″\》少《すこ》しづゝでも埋《う》めて行《ゆ》かなければならなかつた。鉱山《くわうざん》にゐる兄子息《あにむすこ》からの無心《むしん》も、お清《きよ》が来《き》た当座《たうざ》は、大抵《たいてい》その老婆《らうば》が取次《とりつ》ぎに立《た》つのであつた。細君《さいくん》は老婆《らうば》から、意気地《いくぢ》のない二人《ふたり》の子息《むすこ》や嫁《よめ》たちのことで、よく愚痴《ぐち》をこぼされた。そして時々《とき/″\》心附《こゝろづけ》なぞをもらつてゐるうちに、老婆《らうば》はすつかり細君《さいくん》に昵《なじ》んでゐた。 お清《きよ》は小面憎《こづらにく》いほど、ませてゐる姉《あね》のお君《きみ》に似《に》てゐたけれど、しかし全《まつた》く違《ちが》つてゐた。言葉《ことば》の綺麗《きれい》なことと、まめに働《はたら》くことは似《に》てゐたけれど、姉《あね》のやうな気働《きばたら》きはなかつた。そこに出《で》てゐる小銭《こぜに》を取《と》つたり、箪笥《たんす》のなかから、小片《こぎれ》や、細紐《ほそひも》のやうなものを偸《ぬす》んだりする悪《わる》い手癖《てくせ》も共通《きようつう》であつたけれど、お清《きよ》は姉《あね》のやうにそれを体《からだ》につけるやうなことはしなかつた。 「きつとお君《きみ》にやつたんでせうと思《おも》ひますよ。」 死《し》んだ娘《むすめ》が体《からだ》につけて、ひどく気《き》に入《い》つてゐた帯留《おびどめ》のなくなつたことに気《き》づいたときも、それが確《たし》かにお清《きよ》の所為《しよゐ》だと考《かんが》へられた。そして、さう言《い》つたこま/\した物《もの》が、時々《とき/″\》紛失《ふんしつ》した。細君《さいくん》はすかすやうにお清《きよ》にきいて見《み》た。 「いゝえ取《と》りません。」お清《きよ》はいつでも言張《いひは》つた。 細君《さいくん》は終《しま》ひに根《こん》まけをしてしまつた。 子供《こども》か本《ほん》のなかに挿《はさ》んでおいた五|円紙幣《ゑんしへい》がちよつとの間《ま》になくなつて、大騒《おほさわ》ぎをしたこともあつた。そして夕方《ゆふがた》になると、それが不思議《ふしぎ》に一|頁々々《ページ/\》繰返《くりかへ》しく捜《さが》しても見《み》つからなかつた本《ほん》のなかから、ひらりと落《お》ちた。お清《きよ》はそんな騒《さわ》ぎのあひだ、いつでも全《まつた》く剛情《がうじやう》な唖《おし》であつた。勿論《もちろん》それは今《いま》までの女中《ぢよちう》の二三|人《にん》にも共通《きようつう》の、或《あ》る時期《じき》に起《おこ》りがちな本能的《ほんのうてき》な発作《ほつさ》でもあつた。 しかしお清《きよ》が尤《もつと》も私《わたし》の家庭《かてい》に有難《ありがた》がられることは、小《ちひ》さい娘《むすめ》のお末《すゑ》の懐《なつ》いてゐることであつた。お末《すゑ》が折監《せつかん》される場合《ばあひ》、お清《きよ》はいつでも目《め》に一|杯《ぱい》涙《なみだ》をためてゐた。お末《すゑ》が一|生懸命《しやうけんめい》救《すく》ひを求《もと》めるのもお清《きよ》であつた。そこにお清《きよ》の素朴《そぼく》な感情《かんじやう》があつた。 お松《まつ》が来《き》てから、お松自身《まつじしん》の給銀《きふぎん》で、時々《とき/″\》帯《おび》や着物《きもの》を、細君《さいくん》に見《み》たてゝもらふことがあつた。お末《すゑ》にはそれが不思議《ふしぎ》に思《おも》へた。 「どうして母《かあ》さんはお松《まつ》だけにお衣《べゝ》を買《か》つてやるの。」お末《すゑ》は遠慮《ゑんりよ》なく母親《はゝおや》に質問《しつもん》して、細君《さいくん》を困《こま》らせた。お松《まつ》を嫌《きら》ひなことも、つけ/\口《くち》へ出《だ》して言《い》ふのであつた。 「清《きよ》さんにもお衣《べゝ》を買《か》つてあげて頂戴《ちやうだい》よ。」お末《すゑ》は母親《はゝおや》にねだつた。 細君《さいくん》はこんなものが見《み》つかつたと言《い》つて、赤味《あかみ》のかゝつた綿繻子《めんじゆす》の帯《おび》に着物《きもの》の地《ぢ》を一|反《たん》買《か》つて来《き》た。お末《すゑ》はそれを見遁《みのが》さなかつた。 「これ清《きよ》やのよ、いゝでせう。」お末《すゑ》はさう言《い》つて、それを抱《かゝ》えて飛《と》んで行《い》つたが、お清《きよ》のゐないのに失望《しつばう》しながら、そこに働《はたら》いてゐるお松《まつ》に見《み》せた。 お松《まつ》は「さうですか」と赤《あか》くなつて笑《わら》つてゐた。 震災後《しんさいご》また東京《とうきやう》へ舞《ま》ひ戻《もど》つてゐたお清《きよ》の叔父《をぢ》が、ある日《ひ》勝手口《かつてぐち》へ、その姉《あね》と一|緒《しよ》に姿《すがた》を現《あら》はした。お清《きよ》の唯《たつ》た一人《ひとり》の叔母《をば》である、その姉《あね》は京都《きやうと》に住《す》んでゐた。娘《むすめ》はカフエーの女給仕《をんなきふじ》をしてゐた。彼女《かのぢよ》は東京《とうきやう》へ来《き》たてに、老婆《らうば》とつれ立《だ》つて、一|度《ど》姪《めい》のお清《きよ》が、何《ど》んなになつたかを見《み》に来《き》た。 「小《ちひ》さいね。」 叔母《をば》は期待《きたい》を裏切《うらぎ》られて、お清《きよ》を見《み》て笑《わら》つてゐるより外《ほか》なかつた。でなかつたら、もつと有利《いうり》なところへ、例《たと》へば自分《じぶん》の娘《むすめ》のでてゐるカフエーのやうなところへでも住《す》みこませるために、私《わたし》のところを暇《ひま》をもらふつもりであつたかも知《し》れないのであつた。 その叔母《をば》が弟《おとうと》と二人《ふたり》で遣《や》つて来《き》たのである。 「何《なに》か訳《わけ》がある。」細君《さいくん》はその瞬間《しゆんかん》にさう思《おも》つた。 段々《だん/″\》生長《せいちやう》して来《き》たお清《きよ》一人《ひとり》を、皆《みん》なが何《ど》んなに注目《ちゆうもく》してゐるかゞ、この頃《ころ》細君《さいくん》にも感《かん》ぜられて来《き》てゐた。少《すご》し役《やく》に立《た》つやうになつたところで、抜《ぬ》いて行《ゆ》かれることは、何《なん》と言《い》つても家婦《かふ》としての彼女《かのぢよ》には苦痛《くつう》であつた。その上《うへ》お清《きよ》のためにも好《い》いことではなかつた。 ちやうど其《そ》の頃《ころ》、礦山《くわうざん》にゐるお清《きよ》の父《ちゝ》から、金《かね》の要求《えうきう》が来《き》てゐた。私《わたし》たちはそれを送《おく》る心組《こゝろぐみ》ではあつたけれど、わざと渋《しぶ》くつてゐた。震災後《しんさいご》彼《かれ》は東京《とうきやう》で一|稼《かせ》ぎするつもりで、山《やま》をおりて来《き》たことがあつた。そして其《そ》の時《とき》お清《きよ》を見《み》に私《わたし》のところへ遣《や》つて来《き》た。間《ま》もなく彼《かれ》は何《なに》かの労働《らうどう》に有《あ》りついたらしかつた。それが都合《つがふ》よく行《ゆ》きさへすれば、妻《つま》や幼《をさな》い子供《こども》たちを、山《やま》から呼《よ》びよせる積《つも》りであつた。彼《かれ》は体《からだ》も、余《あま》り丈夫《ちやうぶ》でないらしかつたが、怠《なま》けものでもあるらしい噂《うはさ》であつた。お清《きよ》たちが肖《に》てゐる、彼《かれ》の妻《つま》は、それでも能《よ》く子供《こども》を産《う》んだ。或《あ》るときは、亭主《ていしゆ》の留守《るす》に、他《ほか》の男《をとこ》が来《き》て寝《ね》てゐたことを見《み》たなぞと、礦山《くわうぎん》にゐる甥《をひ》の弟《おとうと》から聞《き》いたこともあつた。 細君《さいくん》は、水口《みづぐち》のところで、大分《だいぶん》長《なが》いあひだ叔父《をぢ》と叔母《をば》とに話《はなし》を交換《かうくわん》してゐたが、やがて二|人《り》が帰《かへ》つて行《い》つたところで、私《わたし》のところへ報告《はうこく》にやつて来《き》た。 「お清《きよ》を工場《こうば》へやらうと思《おも》ふから、今直《います》ぐ暇《ひま》をくれつて言《い》つて来《き》たんですよ。」細君《さいくん》は少《すこ》し憤《おこ》つたやうな不安《ふあん》の色《いろ》を浮《うか》べてゐた。 「親《おや》もそれを承知《しようち》だと言《い》ふんです。何分《なにぶん》お金《かね》がいるので、何《ど》うせ娘《むすめ》を、食《く》ふつもりだつて言草《いひぐさ》なんです。だつてそんな勝手《かつて》な話《はなし》つてないぢやありませんか。私《わたし》は今《いま》が今《いま》といふ訳《わけ》には行《ゆ》かないと言《い》つたんですの。第《だい》一|親達《おやたち》の方《はう》も聞《き》いて見《み》なくちや判《わか》りませんもの。実際《じつさい》親《おや》の方《はう》からさう言《い》つて来《き》たとすれば、金《かね》の無心《むしん》はをかしいですもの。お婆《ばあ》さんの話《はなし》でも聞《き》いてゐますけれど、あの叔父《をち》が好《よ》くないらしいんですよ。お清《きよ》を食《く》ひものにする積《つも》りかも知《し》れませんからね。多分《たぶん》もう幾許《いくら》かのお金《かね》を取《と》つて、約束《やくそく》したのでせうよ。」 「お清《きよ》が浮《うか》ばれないね。」 「えゝ、それも有《あ》りますし、私《わたし》敬《けい》さんのところへ行《ゆ》かうと思《おも》ひます。そして親達《おやたち》に逢《あ》つて話《はなし》をして来《き》た方《はう》がいゝでせう。」 敬《けい》ちやんは甥《をひ》の名《な》であつた。 「それで結局《けつきよく》……。」 「一|応《おう》親達《おやたち》へ照会《せうくわい》してからのことにしませうつて、帰《かへ》したんですが、また来《き》ますでせう。外《ほか》でお清《きよ》にも言葉《ことば》をかけてゐました。お清《きよ》が無愛相《ぶあいさう》にしてゐるものですから、叔父《をぢ》さんを忘《わす》れたかなんて。お清《きよ》は肯《き》かないんですの。いゝえ善《よ》く覚《おぼ》えてますつて、澄《すま》してゐるんです。お清《きよ》も莫迦《ばか》ぢやありませんよ。是《これ》までにもあの叔父《をぢ》には瞞《だま》されたことがあるから、何《ど》うしても行《ゆ》くのは厭《いや》だと言《い》つて、あすこで泣《な》いてゐますよ。それにお清《きよ》はお末《すゑ》をおいて行《ゆ》くのが辛《つら》いんですの。」 今《いま》ではお清《きよ》も親《した》しい家族《かぞく》の一|人《り》であつた。 お清《きよ》の姉《あね》のお君《きみ》が、祖母《そぼ》につれられて、体《からだ》の振《ふ》り方《かた》を相談《さうだん》に来《き》たのは、それから大分《だいぶん》たつてからであつた。お君《きみ》は長《なが》く居《ゐ》なじんだ私《わたし》の甥《をひ》のところを暇《ひま》をもらつて、親元《おやもと》へ帰《かえ》つてゐた。そして今度《こんど》東京《とうきやう》へ出《で》て来《き》たのであつた。親《おや》たちと甥《をひ》のあひだに、何《なに》か葛藤《かつとう》があつたらしいのであつた。 お君《きみ》は敬《けい》ちやん達《たち》夫婦《ふうふ》が、東京《とうきやう》で暮《くら》してゐた成金時代《なりきんじだい》にも、ついて来《き》てゐたので、私《わたし》たちもよく知《し》つてゐた。敬《けい》ちやんの細君《さいくん》は、その時分《じぶん》からませたお君《きみ》を傍《そば》におくのを危険《きけん》がつてゐたが、今度《こんど》来《き》てみると、その頃《ころ》から見《み》ると、まるで様子《やうす》が変《かは》つてゐた。体《からだ》が厭《いや》に姿《なり》づくつてゐた。口《くち》の利《き》き方《かた》なぞにも素朴《そぼく》なところが、少《すこ》しもなかつた。 「並《なら》べてみると、容色《きりよう》はわるくても、自家《うち》のお清《きよ》の方《はう》が厭味《いやみ》がなくて、どんなに好いかしれやしない。」 細君《さいくん》は言《い》つてゐたが、お君《きみ》を何処《どこ》ぞ好《い》いところへ住《す》みこませてやらうと適当《てきたう》らしい場所《ばしよ》を探《さが》してゐた。 「わたし来《く》るときにも、お米《こめ》を一|俵《ぺう》借《か》りて入《い》れて来《き》ましたし、お父《とう》さんの薬代《くすりだい》も滞《とゞこほ》つてをりますから、何《ど》うしても四五十|円《ゑん》のお金《かね》を送《おく》つてやらなければなりません。」お君《きみ》は言《い》つてゐた。 口《くち》さへ見《み》つかれば、その位《くらゐ》の前借《ぜんしやく》は訳《わけ》のないことでもあつたが、親達《おやたち》の腑効《ふがひ》ないことが、一|層《そう》明《あきら》かになつた。つい四五|日前《にちまへ》に、私《わたし》も要求《えうきう》されたものを送《おく》つてやつたばかりであつた。少《すこ》し子供《こども》のことを考《かんが》へるやうにと、その時《とき》私《わたし》はいつになく彼《かれ》に手紙《てがみ》を書《か》いた。 するとちやうど好《い》い口《くち》が見《み》つかつた。是非《ぜひ》よこしてくれと言《い》ふのであつた。細君《さいくん》は間《あひだ》へ入《はい》つた入《ひと》のところまで、お君《きみ》を見《み》せに連《つ》れて行《い》つた。そして話《はなし》がすつかり取《と》り決《き》められたところで、お君《きみ》はお清《きよ》をつれて、一|日《にち》浅草《あさくさ》あたりで遊《あそ》ぶことになつてゐたが、その前《まへ》に叔母《をば》や叔父《をぢ》に其《そ》の話《はなし》をして来《く》ると言《い》つて、或日《あるひ》本所《ほんじよ》へ行《い》つた。 「今夜《こんや》帰《かへ》つておいでなさいよ。先方《せんぱう》の家《うち》でも待《ま》つてゐるんですから。」 「え、きつと帰《かへ》つてまゐります。」お君《きみ》はさう言《い》つて出《で》て行《い》つた。 しかしお君《きみ》は容易《ようい》に帰《かへ》つてこなかつた。その上《うへ》三|日目《かめ》に、叔父《をぢ》が更《さら》にお清《きよ》を迎《むか》ひに来《き》た。私《わたし》は来客《らいきやく》と後《うし》ろの家《うち》で話《はな》してゐた。細君《さいくん》も傍《そば》にゐたか、叔父《をぢ》が来《き》たときいて、何《なに》かまた事《こと》が起《おこ》つたのであらうと、不安《ふあん》な予覚《よかく》を感《かん》じながら、細君《さいくん》は立《た》つてゐた。 叔父《をぢ》はもうお清《きよ》の暇《ひま》を取《と》らうとは言《い》はなかつた。京都《きやうと》でカフヱに女給仕《をんなきふじ》をしてゐる、お清姉妹《きよきやうだい》の従妹《いとこ》が上京《じやうきやう》したので、お清《きよ》を逢《あ》はせたいと言《い》ふのであつた。 「話《はなし》はわかるんですの。叔父《をぢ》も思《おも》つたより人《ひと》がよささうです。」細君《さいくん》は安心《あんしん》したやうに言《い》つた。 とにかくお清《きよ》を遣《や》ることにしたが、全《まつた》く安心《あんしん》はできなかつた。 実際《じつさい》またお清《きよ》は二|日《か》も帰《かへ》つて来《こ》ないのであつた。 「もう帰《かへ》らないんぢやないか。」私《わたし》は言《い》つたが、細君《さいくん》は叔父《をぢ》たちを信《しん》じてゐた。 「そんな事《こと》はありませんよ。それにお清《きよ》かすつかり自家《うち》のものに成《な》り切《き》つてゐますから。」細君《さいくん》は言《い》つてゐた。 果《はた》して三|日目《かめ》にお清《きよ》が叔父《をぢ》につれられて帰《かへ》つて来《き》た。 私《わたし》は気忙《きぜは》しかつたので、詳《くは》しいことはわからなかつたけれど、細君《さいくん》の話《はなし》によると、口《くち》がきまつて、金《かね》を前借《ぜんしやく》するばかりになつてゐたお君《きみ》が、女給仕《をんなきふじ》の従姉《いとこ》に、すつかり唆《そゝのか》されてしまつたのであつた。 「何《なん》でもその従姉《いとこ》は、大変《たいへん》ものらしいんです。好《い》い着物《きもの》や指環《ゆびわ》も沢山《たくさん》もつてゐるやうですの。御馳走《ごちそう》をこしらへることも上手《じやうず》で、小説《せうせつ》の話《はなし》なんかもするさうです。月々《つき/″\》百五十|円《ゑん》からの収入《しうにふ》があるとか言《い》ふ話《はなし》をしてゐるんですつて、お君《きみ》にも来《こ》いと言《い》ふんですつて。今《いま》に自分《じぶん》でカフヱを出《だ》すから悪《わる》いやうにしないと言《い》ふのでね。それでお君《きみ》もすつかり其《そ》の気《き》になつたらしいんですわ。お清《きよ》の話《はなし》がなか/\面白《おもしろ》いんです。京都《きやうと》ものでも、なか/\気《き》の利《き》いた女《をんな》らしい様子《やうす》ですわ。女振《をんなぶ》りも好《い》いんでせうよ。」細君《さいくん》は私《わたし》に話《はな》した。 「お清《きよ》にも来《こ》いと言《い》はなかつたのか。」私《わたし》は笑《わら》ひながらきいた。 「言《い》つたさうですけれど、まさかお清《きよ》ではね。」 私《わたし》はお清《きよ》が可愛《かはい》さうであつた。 「お清《きよ》はなか/\強《つよ》いんですよ。そんな処《ところ》へ行《い》くものかと言《い》つた権幕《けんまく》で、叔父《をぢ》とさんざ遣《や》り合《あ》つたさうです。叔父《をぢ》は仕方《しかた》がないから、勝手《かつて》にしろと言《い》つたんですつて。お君《きみ》にも、奥《おく》さんにお世話《せわ》をやかせながら、違約《ゐやく》してそんなところへ行《ゆ》くやうな人《ひと》は、兄弟《きやうだい》とも思《おも》はないし、寄《よ》りついて来《き》てもくれるなつて、一つ端《ぱ》し啖呵《たんか》を切《き》つたやうな話《はなし》ですの。」妻《つま》は笑《わら》つた。 私《わたし》はまた少《すこ》しばかり責任《せきにん》か明《あきら》かにされるのを感《かん》じた。[#地付き](大正13[#「13」は縦中横]年6月「婦人公論」) 底本:「徳田秋聲全集第14巻」八木書店 2000(平成12)年7月18日初版発行 底本の親本:「婦人公論」 1924(大正13)年6月 初出:「婦人公論」 1924(大正13)年6月 入力:特定非営利活動法人はるかぜ