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関連が深い(婉曲表現)ので同一ページ。 なお、「鈴虫」はてゐの枠としてまとめる。 藍 阿求_20070807 藍_20070809 藍_20070811 藍_20070812 藍_20070814 藍_20070816 藍_20070827 藍_20070908 てゐ_20070910 阿求_20070913-1/2 阿求_20070913-2/2 阿求_20070918-1/2 阿求_20070918-2/2 てゐ てゐ_20070812 てゐ_20070816 幽香_20070817 てゐ_20070818 てゐ_20070820 てゐ_20070822 てゐ_20070823 阿求_20070824 てゐ_20070826 てゐ_20070831 てゐ_20070906 藍_20070908 てゐ_20070910 阿求_20070913-1/2 阿求_20070913-2/2 てゐ_20070919
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☆このページでは、霧雨の野望における因幡てゐについて詳細に解説しています。 東方Projectでの因幡てゐについて詳しく知りたい方は東方wikiなどの因幡てゐを調べてください 因幡てゐ(いなば)(? - ) 毛利家客将。 Act78で初登場。賭博場で金を巻き上げていた。 因幡に配置されていたようだが、いつの間にか毛利所属。腹黒が集まる家である。 ☆出生・家族構成 ☆官位・役職 ☆参加合戦 革新能力 統率65 武勇41 知略83 政治69 義理10 足軽D 騎馬D 弓C 鉄砲C 計略S 兵器C 水軍D 築城D 内政D 戦法:早撃ち、罵声、鼓舞、威圧、混乱、籠絡(Act78現在) うp主解説 永夜抄5面中ボス。しあわせウ詐欺。 高めの知略に加えて計略適性はS、他の適性は壊滅の完全計略特化型。とにかく騙す事にかけては天下一品。 こう見えても永遠亭の兎を束ねる古参妖怪なので統率・政治はそれなり。 本気を出せばかなり強い気もするけど、彼女に力押しで戦う気は全くありません。 名前通りに配置したのに数年後には宇喜多の元に居て笑った。引き抜かれていた模様。 緑の人解説 「人間を幸運にする程度の能力」 自分を幸運にする能力はありません。よって紙芝居でのボロ勝ちはイカサマなんじゃなかろうか 当初はただの小狡い中ボスだったが、国津神の一柱疑惑。永琳といい永遠亭は何気に神話率高い
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てゐ2 ――――――――――――――――――――――――――― 4スレ目 373(うpろだ0021) 桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけた黍團子、一つ私に下さいな。 ―――人には存在する意味がある。 ―――何かを望まれれば渡す事もあろう。何かを望めば与えられる事もあろう。 ―――大切なのはそれによって何に至るのか。それを知ることだ。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ その日、俺は兎と会った。 「何処だここ」 息を吐けば絹製のマフラー越しに白い湯気が噴き出す。 一歩前に進んでみれば、編み上げの半長靴が雪に沈み込む。 ヘルメットのバイザーを上げ、周りを見渡してみれば……白と緑のコントラスト。 「竹林?」 雪降る竹林に、俺は立っていた。 前も後ろも右も左もあっちもこっちもそっちもどっちもブルドッ……これは古いか。 我ながら少し混乱している。ともかく竹が生えている。 俺はバイザーを下ろして上空を見上げるが……生い茂った竹の葉のお陰で光も少なく、太陽の位置も分からない。 「何で俺はこんな所に居るんだ?」 呟いた瞬間、背後から何か重いものが落ちる音がした。 反射的に強化プラスチック製の大盾を構えて振り向き、背中の警杖に手をかける。 「……雪か」 いかんいかん、気が張り詰めているようだな。落ち着け。何時ものクールな俺となるのだ。 まずは状況確認……俺は竹林に居るようだ。まぁ見れば分かるが。 ならばとりあえず、何とかしてこの場所を抜けねばならん。 訓練も途中なのだ。早く合流しないと先輩に張り倒されかれん。 「……うぇぇ」 早く合流しなくても張り倒されかねないということを理解し、心底嫌そうなツラになるのは仕方ないと思われる。 まぁ誰も見てねぇだろうし、多少嫌そうなツラしてても誰も気にしないだろうが…… 「……」 なんか居た。 「あ……」「……」 竹林の陰から少女がこちらを覗きこんでいた。 緑と白の空間の中に浮かぶ柔らかな桃色の服と大きく深く紅い瞳。 こちらを見つめる表情からは何を考えているのかは分からなかったが…… 何故か、その瞳から目を反らすことが出来なかった。 「あー……えーと、寒くね?」 我ながら頭の悪い一言しか出なかった。いや、だってあれじゃあ防寒効果ないだろうしなぁ。 ピンクのワンピースだし。素足だし。 「あ、おいッ!?」 俺の第一声の直後、少女は俺に背を向けて走り始めた。 このような竹林に少女が1人、それもあんな薄い服で……ただ事ではない。 俺は大盾を背中に担ぎ、少女の後を追いかけた。 ~少女(を)追跡中~ 「ぜぇ、ぜぇ……」 何つー速さだ。いくら俺が雪慣れしてないつっても近付けもせんとは……ッ! 少女は既に見失ってしまった。少女に全力ダッシュで負ける男、我ながら何とも情けない話だ。 「ったく、何だってんだ。竹林に居たり女の子が居たり……」 少し時間をかけて落ち着いてきた息を確認し、再び足を動かし始める。 ともあれ、先の少女をもう一度探さねばなるまい。 一応、救助対象だろうしなぁ。見捨てて一人で出口探すわけにもいくまい。 ・ そしてそこから数時間、俺は迷いに迷い続けて…… 「家だ」 竹林が開け、目の前には木造立ての純和風な…… 「でけぇ……」 驚くほどに大きな建物があった。 半分安堵、そして半分、先の少女を見つけられなかった罪悪感を感じる。 だが、とりあえず人に会うことが出来れば連絡手段もあるだろう。 部隊に合流した後であの娘を捜索する部隊を編成してもらって…… 「ってまずは中に入らんとな」 いい加減この暑苦しい格好でも寒くなってきた。 ふと周りを歩いてみれば、人影を見かける。 「すみませーん、ここの人ッスかー?」 人影が振り向く。 「「え?」」 見覚えのある寒そうなピンクのワンピース。 ……俺と声を揃えたのは、先ほどの少女だった。 「ちょ、ちょっと! 何でアンタこっちに来てんのよッ!?」 「うわぁい、口悪いわこの娘」 可愛い顔してあの娘何とやら、第一声からこれかよ……と思いつつも、少しホッとする。 「ここの子だったか。ならアレだな、探す事もなかったか」 「?」 「あぁ、気にすんな。それにしても……寒くねぇか? そんな薄着で素足でマフラーも帽子もなくて、耳はあるが……耳?」 「何よ、耳がそんなに珍しい?」 少女はそう言って耳をピコピコ動かすので、おもむろに掴んでやった。 「ぴぎゃっ!?」 「ふむ……よく出来てんな」 手を離した直後、少女がこっちに向かって噛み付いてくる。 「ちょ、こら! ホントに噛み付くなッ!」 「うがぁーッ!」 籠手のお陰で歯は通ってないが、気分的に嫌だ。 「どうしたの、てゐ。何かさっきから騒がしくしてるみたいだけど……」 入り口が開いたため、俺と少女は揃って顔を向ける。相変わらず噛み付かれてるが。 「へーへん(訳:れーせん)」 「またウサ耳だ」 俺達の様子に、新しく現れたブレザー姿のウサ耳少女は一歩引いてこちらを見た。 「ま、また……変わったお客様ね、てゐ」 「ひゃふひゃはひはひょ!(訳:客じゃないわよ!)」 「まぁ客じゃなくてもこの際構わんが……君はここの子かい?」 「あ、えぇ。一応……」 「機動隊巡査。○○と言う者だが……」 俺は今だに籠手にぶら下がっていた少女を突きつける。 「お届けものだ」 永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永永琳 てゐが何やら珍妙な格好をした人間を連れてきた、という報告をウドンゲから聞き…… 私は客間にその人間を通すように伝えた。 確かに彼は珍妙な格好をしていた。 青を基調とした全身を包む重装備、ヘルメットを脱いで脇に抱え、正座でこちらに一礼してきた。 とりあえず礼儀作法はあるようだ。 何故か部屋の隅でてゐがむくれていたが、とりあえず今は気にしないでおく。 軽く自己紹介を交える。 どうやら彼は外の世界の住人で、『キドウタイ』という部隊に所属していた青年らしい。 訓練中に突如、竹林の中に迷い込んでしまったようだ。あのスキマ妖怪が寝惚けて神隠したのだろうか? 部隊と聞き、思わず月の使者かとも思ったが…… どうやら外の世界で一般市民を守る防衛隊のようなものらしい。 実際、彼の装備を一度全部調べてみたが、どれも人を殺傷するだけの能力を持った武器ではなかった。 一応、長い棒と巨大な拳銃のようなものは預かることにしたが。 「しかし重いわね、これ」 「まぁ……総重量30kg越えますしね。ボディアーマーは防弾プレート込みだし、プロテクターもありますさね」 ワイシャツに青いズボンと、随分ラフになった格好で彼は説明してくれる。 「訓練って、これ付けたままするの?」 「フル装備に慣れてねぇといざという時に力を発揮出来ねぇらしいッスから。確かに重いけど……もう慣れましたぜ」 慣れるものなのかしら、これは。 続けてこちらから、ここが幻想郷という世界、彼が居た世界とは違う世界であるということを説明する。 初めのうちは半信半疑な彼だったが、 都合よく「出て来いやズッコケスカートぉおおッ!」と叫びながら突っ込んできた妹紅のお陰で説明は省けた。 直後に「やンのかこのハンドポケットぉおおっ!」と叫びながら現れた姫は、 最近ネトゲでのソロ活動に疲れているくせにオンライン上の友達が居ないのでフラストレーションを大変溜めてらっしゃるようだった。 ソロのネトゲほど虚しいものはない。 ちなみに彼は弾幕の余波に巻き込まれながら吹っ飛んでいた。 髪の毛がアフロになっていた。 余談だが私は見ていた。 妹紅のフジヤマヴォルケイノが放たれた瞬間、 てゐがニヤッと笑って彼の背中にドロップキックを放って突っ込ませたのを。 そして続きも見ていた。 彼がその足を咄嗟に掴んで2人揃ってヴォルケイノに被弾したのを。 てゐもアフロになっていた。 「……なかなか面白いコンビね」 「セットにしないでもらえませんか?」 「全くだ。この俺の死なば諸共精神が発揮されなければ俺1人でオチ担当だったぞ。 ぷっぷーッ! ウサギちゃん、何その髪の毛! ウサ耳がアフロに沈んでかっこわるーい!」 「あんだとー! やんのかこのアフロマッチョ! あとウサギちゃん言うなーッ!」 「あぁん? マッチョにアフロは神聖な組み合わせなんだぞコラーッ!」 2人はアフロ同士をバインバインぶつけ合いながらメンチ切りまくってた。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 魑魅魍魎と人間が共存する地、幻想郷……とやらに俺は迷い込んだらしい。 何のコラだい? と思ったが、流石にアレを見たら信じざるを得まい。火の鳥怖い。 俺は早々に元の世界に戻ることを望んだのだが永琳と名乗る女性に止められてしまった。 というのも外の世界に出すことが出来るのは2人、 1人は妖怪、1人は巫女をやってる人間で、どちらかに話せば外の世界に戻ることは可能なのだが…… 妖怪の方はこの時期冬眠しているとのこと。 蛙の妖怪か何かだろうか。 そしてもう1人の巫女の方もこの時期は近づかない方が良いらしい。 理由は聞かせてもらえなかったが、正月過ぎは機嫌が悪くなる体質なのかもしれない。 とりあえず、2月過ぎれば会っても問題ないだろうという話だ。 というワケで、俺は永琳さんの提案でしばらくこの『永遠亭』にお世話になることになった。 肉体労働に雑用、要するにこき使われるという条件付とは言え、行く先もない俺はなりふり構っていられなかった。 それを心底嫌そうな目で最初に見つけた少女、因幡てゐが見ていたので、ハンッと鼻で笑ってやった。 取っ組み合いになった。 あのちっちゃな体格で現役機動隊員の俺と五分に渡り合うとは、流石は妖怪兎だなおい。 ……男の意地にかけて、五分でしたよ? ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● やりませう、やりませう、これから鬼の征伐に、ついて行くならやりませう。 ―――彼は何の為に戦いを望んだのか。 ―――名誉? 地位? それとも金? ―――もしかすると、ただ大事な人を守りたかった。それだけなのかもしれない。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ それから数日が経った。 思えば何だかんだで色々と忙しい日々を送っている。 折角なのでここで、今までの日々を少しだけ振り返ってみよう。 【ケース1】 俺に最初に与えられた仕事は廊下の水拭きだった。 だが、永遠亭の廊下は何しろ長い。そりゃ俺が派遣された先のイナバの子達もうんざりするだろう。 こいつぁ最早、罰ゲームの一種だな。 だから俺は考えた。 機動隊の大盾の下に雑巾を敷き詰め、取っ手と俺の腰をロープで結ぶように繋げる。 そして、イナバの子達をその上に乗せて廊下を走るのだ。 ……イメージが湧かない人は犬ぞりを想像してもらおう。 犬が俺、ソリが大盾と雑巾、その上に乗る人がイナバ達だ。You see? これで俺の訓練にもなり、みんなも楽で素敵な水拭きとなるのだ。 あ、でも時々は普通に水拭きするけどな。でねぇとイナバ達がサボってるように見られるし。 その辺のフォローも完璧、流石だな俺者。 これが俺が編み出した全く新しい掃除技だ! うーぉおおおーーーッ! 「さぁ、今日も歌うぞー! 俺に続けー!」 「「「おーッ!」」」 ハートマン永遠亭ソングver1.00d 作詞 あなたの○○ 作曲 ハートマンZUN曹 俺と姫さんは部屋でゴロゴロ 姫さん転がりこう言った 「お願い(Webマネーが)欲しいの」 「パシリかよ」 おまえによし 俺によし うん まぁよし 日の出と共に起き出して 働けと言われて一日働く 因・幡・てゐはろくでなし 嘘つき 詐欺師 年中ワンピ 永遠亭が大好きな あの人誰だか教えてよ 永遠亭の薬屋さん! 俺の愛するえーりんさん! 俺のえーりん! 貴様のえーりん! 我らのえーりん! たすけてえーりん! 人から聞いた話では 鈴仙の瞳は電波塔 うん よし 感度よし 具合よし すべてよし 味よし すげえよし おまえによし 俺によし スカした美少女 大好きだ 俺の彼女はまだ居ない もし廊下で倒れたら 手術台に乗って復活する 「さあよみがえるのだ この電撃でー」 誰か見ててよ 見事な俺様! ※以下熱い想いを込めて最初から繰り返し×∞ ガラッと近くのふすまを開けて何か言いたげなブレザー兎こと鈴仙が出てきたので、足を止めた。 「ねぇ」 「ん?」 「一部……というか師匠の歌詞部分だけ毛色が違う気がするんだけど」 「鈴仙、お前も電撃受けたいか?」 「うん、まぁ仕方ないよね」 俺だって彼女を下手に刺激して電撃イライラ棒でヒギられたくない。 ヒギられました。(理由:姫さんの歌詞部分が気に入らなかったらしい) 【ケース2】 「はい、これ」 「飲まなきゃ、いけねぇんスよね?」 手渡されたどどめ色のカプセルを見つつ、すっごい嫌そうに言うが永琳さんに鼻で笑われた。 「今、人間の成人男性モルモットは数少ないの。折角居るんだから最大限活用しなきゃ」 「まぁ良いや……どーせごねても飲まされるんでしょうし、飲みますよ」 我ながら素敵な覚悟を決め、カプセルを水と共に流し込む。 数秒後、身体が熱くなり……そして割合すぐに治まる。 何だ、別に変化は無いじゃないか。 月の頭脳も大したことねぇなぁ……と思っていたら妙にスースーする。主に性的な意味で。 いや違う、この妙な感覚は性的じゃなくて股間部だ。 「ぎゃああッ! 俺の大事なパイナップルがぁーッ!」 「大丈夫よ、30分もしたらまた生えてくるわ」 「そんな雨後の筍みたいにポコポコ生えたり抜いたりして良いモンじゃねぇでしょうに!」 ズボンをパンツごと引っ張り、俺の股間部を確認するヤゴコロ先生。見られる俺も俺だが、流石だ。 「とりあえず、逆ふたなり効果は問題なく出てるわね」 「それは逆言わないんじゃねぇッスか?」 更に言うなら出てない、引っ込んでる。全部まとめて引っ込んでる。 というか男として見られて恥ずかしくない股間部なんぞ初めてだ。 何か(と書いて『スッパ』と読む)に目覚めてしまいそうで非常に怖い。 「そう言えば永琳さん、この薬……何のために使うんですかぃ?」 「……」 ひ・み・つ♪ 【ケース3】 「ところで……」 「何スか?」 「今夜もヨロシク」 「……またですか。まぁ良いッスけどねぇ……」 最近は輝夜の姫さんのネトゲに夜な夜な付き合って居る俺ガイル。 一瞬でもネチョい想像をしたやつは↓ため↑+Kのタイミングずれてジャンプヒールキックになってしまえ。 (http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/6306/1150384787/180) 「……本物の輝夜姫が今やネトゲ中毒者なんてことが世に知れ渡ったら、 かつて小学校の頃の劇で『かぐやひめ』役になれて喜んでた女の子が居た堪れない気分になりますな」 ちなみにその時の俺の役は『月の迎えを返り討とうとする兵士B』だった。 台詞は「うわぁ!」の一つだけ。 悔しかったのでトマトジュース使って盛大な死に様演じたら先生にしこたま怒られたほろ苦いメモリーがある。 「あの頃の俺は若かった……」 「今も充分若いと思うけど?」 「いやいや姫さん、精神の老化は人生の老化ですぜ。 とりあえず、過去の思い出を振り返って『あの頃は良かった』とか言い始めたら人間色々と終わりッスな」 「そういうものなの? 私にはよく分からないけど……」 分かってもらっても困るけどね。 「まぁ良いや。今日も飛ばすわよー!」 「頼みますから調子乗って暴れ回らんで下さいよ?」 オンライン上で姫のキャラ一回倒れる度に永琳さんが俺に一回人体実験をするという暗黙ルールがあったりする。 文字通り、死んでも殺すわけにはいかない。 「ぎゃー! 俺がログインする前にダンジョンに突っ込むなー!」 幸い、人体実験は3回程で済みました。 【ケース4】 「というワケで、うちの姫さんが何時もお世話になってるから一回くらいは挨拶しとけと永琳さんに言われたため、 本日は藤原さんちの妹紅さんに会いに来ました。 こんにちは妹紅さん、永琳さんの話には裏があるような気がしませんか?」 「また妙なヤツが来たなぁ」 わざわざ説明をした上にマイク(『くいしんぼう万歳』と書いたしゃもじ)を向けてみたのにつれないリアクションだった。 「……まぁまぁ妹紅、何時もの刺客じゃないだけマシじゃないか?」 「そうか刺客だな、よし殺す。とか言われたら……俺普通に殺されちゃうわけですが」 俺の中で妹紅さんのフジヤマヴォルケイノは最早トラウマだ。 『さん』付けて心なし口調が丁寧な時点でトラウマ具合を感じて欲しい。 「っていうか今日は慧音さんも一緒なんスね」 まぁ慧音さんも『さん』付けなワケだが。 「一応な……いざという時、『なかったこと』にしなければ色々と大変だし」 「何処も苦労してんスねぇ、俺の場合は何時も弄られてますが。身体的に」 「……人里に住居用意してやろうか?」 「でも最近は何故かバッチコーイって感じなんで、まぁ大よそ大丈夫スよ」 「それって洗脳って言うんじゃないの? ほれ、茶」 慧音さんと話してる間に妹紅さんが茶を入れてきてくれた。良い人だ。 とまぁこんな感じで俺達はしばしの間、和気藹々と世間話をしていたわけだが…… 夕刻となり、夜も更け、ぼくも帰ろ おうちに帰ろ でんでん でんぐりがえって そろそろ帰ろうかと思ったその時、 「う゛ッ!」 突如、慧音さんが湯飲みを落として苦しみ始めた。 「な、大丈夫スか慧音さん!」 「ゥ・・・ァァ・・・」 慧音さんが苦しむ様子を見て、妹紅さんも慌てて近寄ろうとし……そして足を止めた。 「まさか……! 月は出ているか!?」 「何そのサテライト以下略。……あ、出てますね。満月だ」 「満月だと!? マズい○○、早く離れろ!」 「え、な……何で?」 「フゥゥ・・・ハァァ・・・」 Caved!!!! 「うっかり新たな趣味に目覚めそうになりました」 機動隊・匿名希望 とまぁこんな感じだ。数日間の割にはまるで小話集のように充実してた気がする。 まぁビリビリしたモノ突っ込まれたり、大事な何かを失ったり、人体実験されたり、ケツがヒリヒリしたりと…… 何か10割がた永琳さんが関わってる上に、 そこはかとなく大切な何かを日々失いかけてるような気がするがまぁ死んでないのでよしとしよう。 とりあえず概ね、俺の永遠亭ライフは順調だと言える。 だが、そんな俺にも最近、気になることがある。 「うーむ……今日もまた会えなんだ」 永遠亭、イナバ達のリーダー、因幡てゐ。 俺が永遠亭に来る切欠となった少女。 最初の内に喧嘩した程度で、最近は顔も合わせようとしてくれない。 鈴仙曰く「普段なら誰彼構わず悪戯するのに……」と言っていた。 彼女の頭の上に絶妙なバランスで黒板消しが乗ってた時点で俺は納得した。 「と言うことは、俺だけ……だよなぁ」 いくら俺が何時かは外の世界に戻るとは言え、口すら聞いてくれないというのは寂しい限りである。 「しかし、多少強引に話しようとしても逃げられちまうしなぁ」 そもそもスピードの面では圧倒的な差があるのだ。 兎の脚力は伊達じゃない上に空まで飛びやがるしな。 その上、地の利もある。 この間、話をしようと彼女の部屋に行ったら……何と着替え中の鈴仙が居たという巧妙な罠を仕掛けられたくらいだ。 え? それでどうしたかって? いや決まってるでしょ旦那。座薬はねぇよな。(ケツを押さえながら) 「それはともかく、上手いこと何時も逃げられてんだよなぁ」 そこまで避けられる理由は何だろうか? 俺が知る由は無い。無論、他のイナバの子達も鈴仙も知らないそうだ。 「ったく、どうしたモンかねぇ……」 「お兄ちゃん、何悩んでるの?」 「いや、何でみんな空飛ぶのに見えないのかなって。絶対領域」 通りすがりのイナバの子に心配されたので、次点で気になって仕方がない悩みを打ち明けたら白い目で見られた。 ・ 「全く、しょうがないわね……」 ・ その晩。 俺は永遠亭の湯船の中で身体を伸ばしていた。 「あー……良い湯だ」 一日の疲れがダダ漏れる、この瞬間が俺は好きである。 どうせだから、風呂について少しばかり話をしよう。 実は昔、俺は何だかんだで一応は客人と言う扱いのため、一番風呂に入らせてもらっていた。 だが……イナバの子達の苦情により最後になったのだ。 ↓ちなみにその時の意見。 『お兄ちゃんの後って変な毛とか浮いてるからやだー』 『何か臭いしねー』 全俺が泣いた。 気分はお年頃の娘を持ったお父さんであった。頑張れお父さん。俺も頑張る。 ともあれそんな理由で俺は最後に回されたのだ。3日で。 だが! 今日は違う、今日はなんと一番風呂なのだ。 一番風呂というかつての栄光を失った俺は枕を色々な意味で濡らした。 あまりに悔しかった俺は、再び一番風呂に入らせてもらえるように、 髪と眉を除く全身の毛という毛を全部剃ったり、風呂入る前に全身くまなく洗ったり、 時にはイナバの子達が居るのに気付いていながら突撃し、偽うっかりエロスキルを発動させたりと地道な努力を続けたのだ。 一度永琳さんが入っている時に突撃してしまい、内側が1ドットしかない壺中の大銀河を叩き込まれたのも良い思い出だ。 ちなみにその時の映像は俺脳内のS級フォルダ内にしっかりと納められている。永久保存版だ。誰にもやらん。 ともあれ、そんな地道な努力が実を結んだ瞬間だと言えよう。 永琳さんが溜息をつきながら俺に告げたのも、俺の情熱を理解してくれたからに違いないのだ。 まぁ、この際一週間に一回だけという制限は大目に見てやるとしよう。 そして今日はその初日なのである。 「っと、いけねぇいけねぇ。剃刀忘れてたぜ」 言うまでもなく無駄毛処理用である。ツルツルお肌は趣味ではないが、一番風呂への最低条件なのだから仕方ない。 俺は湯船から上がり、腰に手ぬぐいを巻きながら脱衣室への扉に手を…… ガラ、と扉が開く。 「……」 「……」 てゐが居た。 まぁアレだ。色んな意味で描写は避けておく。 「よぉー、ウサギちゃ」 瞬時に閉まる扉。 反射的に阻止。 「恐ろしい早業だなオイ!」 「な、何でアンタが入ってんのよ!」 「ぁん!? 今日から一週間に一度、一番風呂に入らせてもらうことになってんだよ!」 「そんなわけ無いじゃない! 永琳様が言ってたのよ!? 私に先入るようにって!」 む?俺が入っていることは永琳さんも百も承知のはずだが……月の頭脳も時にうっかりエラー起こすのだろうか。 「えぇからとっとと入れ! そこまでスッパしてんだったら今入ろうが後で入ろうが変わんねぇだろうが!」 ともあれこれは話をする良いチャンスだ。 一歩間違えたら犯罪的な臭いがプンプンしやがるが、相手は俺より(中身は)年上の妖怪兎なのでなんら問題ありません。 「きゃーイヤー! だーれーかぁーッ!」 「あーもーうっせぇ!」 「ピギャッ!?」 空いていたもう片手で、てゐの耳をがっしと掴み、吊り上げて湯船に向かって歩いて行く。 途中、片足で湯船付近に向かって腰掛を軽く蹴り滑らせる。 「ぃよーし、楽しい風呂タイムだ。この俺様がウサギちゃんを隅々までクリーニングしてやるぜ」 「ぎゃーッ! はーなーせー! おかされるーッ!」 「誰がそんな貧相な身体に欲情すっかよ、このB級!」 ちなみにB級フォルダは整理する際にやや惜しみつつも容赦なくShift+Deleteするという位置付けである。 残念ながら俺にロリコンの趣味はない。 ジタバタと暴れるてゐを腰掛に座らせ、俺は湯船の縁に座り、手近な風呂桶でてゐに湯をぶっかける。 「ほれ、これでもう外に出れんな。そんな状態で外に出たら身体に悪いしなぁ?」 てゐが無類の健康マニアであるという情報は既に仕入れている。 情報量はカレーのニンジン横流しだった。末端まで情報規制の手が届いてねぇぜ、てゐちゃんよ。 「う゛ーーーッ!」 こちらに顔を向けず、唸り声を上げているのを聞き……俺は近くの石鹸を手で泡立て始める。 「まぁ髪の毛くらいは洗わせろ。そして聞かせろ。何故に俺を避ける?」 「……」 途端に黙り込む。チッ……ストレートはマズったか? 「だんまりか。まぁ良い」 充分に泡立った石鹸の泡を、満遍なくてゐの頭に乗せて……爪を立てないように丁寧に揉み込み始める。 「ふーん、意外と髪の手入れはちゃんとしてんだな。 お客さん、痒ぃ所はありませんかねぇ」 「……」 まただんまりか、うーむ……暖簾に腕押しってヤツだな。 しばしの間、沈黙とてゐの髪を洗う音だけが風呂場に響く。 「ねぇ」 「お?」 ちょっと意外、向こうから話し掛けてきた。 「髪洗うの、上手いわね」 「これでも元・カリスマ美容師だからな。嘘だが」 人の髪の毛を洗うのなんざ初めての経験である。だから、上手いと言われてちょっと得意気。 「ねぇ」 「ぁん?」 俺のボケにツッコまず、再びてゐが声を出す。 「アンタ、私が嫌いじゃなかったの?」 「何言ってんだオメェ。俺は好きだぞ、ウサギちゃんのこと」 「な、ななッ!?」 「永遠亭のヤツらもみーんな好きだぜ。何かとサドいけどな。 俺ぁ楽しいからこそ、ここに滞在してんだぜ。仕方なくじゃねぇ、その辺覚えとけよウサギちゃん」 カカッと笑い、何度か泡の中でてゐの髪を梳いてみる。 「しっかしオメェの髪、良い艶と手触りしてんなぁ」 「褒めても何も出ないわよ?」 「世辞は苦手なモンでなぁ」 お陰様で良い年しながら巡査止まりだ。 適度に洗い終え、てゐの頭の泡を湯でしっかりと流し始める。 「ねぇ」 「ん?」 三度目の声に、俺は桶を持ったまま固まる。 「……何も聞かないのね」 「話したくねぇことをムリヤリ聞くのは趣味じゃねぇからな。 とりあえず、嫌われてねぇって事さえ分かりゃ満足さね」 本格的に嫌われてるんだったら、一発弾でも撃ち込まれて終了だろうしな。 髪の毛まで洗わせてもらってんだ。それは無いと思いたい。 「ま、俺としてはだ。外の世界に戻る日まで、ここの想い出はしっかり残しときてぇわけだ。 一生に一度限りかもしれねぇ機会があったら、その機会を大事にしましょう、ってな」 そのまま、湯を汲んで自分も頭から湯をかぶり……ポンポンとてゐの頭を軽く叩く。 「だからまぁ、それまで短い期間かもしれねぇが仲良くしてくれや。な?」 そしてよっこらせっと立ち上がり、脱衣室へと足を向け…… 「ちょっと待ちなさいよ」 る前に止められたので、足を止めててゐの方を向く。 「私だけ洗われるのは悔しいじゃない。背中洗ったげるわよ」 ……ほぉ、嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。 「あぁ、頼むわ」 おもむろに歩き始めたてゐの横に並び、風呂場の隅にあったデッキブラシをてゐが掴んだので、俺も反対側を掴んだ。 「ウサギちゃーん? 流石の俺様でもこんなモンでこすられたらちょぉっと痛いかなぁー?」 動物園の大型動物じゃねぇんだぞ。 「まぁまぁ、遠慮せずに」 「いやいや、お構いなく」 デッキブラシを挟んで力を込め合う俺とてゐ。 歯をギリギリ食い縛り、コメカミに青筋を浮かべながら笑みを浮かべ合う俺達の姿は、傍から見れば何とも愉快な光景だろう。 ・ 結局、デッキブラシが砕け散るという大惨事によって引き分けた。戦いは何時だって無力な者から先に犠牲になる。 ありがとうデッキブラシ。こんにちはヘチマたわし。 やっぱ身体洗うんだったらヘチマたわしだよな。 亀の子たわし持ってきた時は思わず湯船に背負い投げ飛ばしてやったが。 「……思ったより広いのね」 てゐに背中を洗ってもらう。何となく気恥ずかしいモンがあるな、これ。 「鍛えてっからな。理想は背中に鬼の貌(かお)を浮かべることだし」 誰にもできないことみつけだせー、それが、君のばきー。 「そう言えば、イナバの子達が言ってたんだけど」 「ほう、俺の話題か? あのイケメンの彼女になりたいとかそんな感じの話題沸騰か? いやぁモテる男はつらいねぇ……って痛ぇなこのB級! そんな無駄に気合入れて擦るなッ!」 皮剥けるかと思った。 「馬鹿なこと言ってるってのも噂通りねぇ」 「どうしよう、俺……ナメられてる」 ギリギリギリと思わず歯軋りしつつ、俺より2回りほど小さいイナバの子達を思い浮かべて憤りをぶつけようとしたがむしろ和んだ。 俺にロリコンの趣味はないが、子供は好きである。 「でも……」 「ぁん?」 「時々、妙に寂しそうな笑み浮かべるらしいじゃない」 「……」 「今度はそっちが黙るのね」 「男にゃ時に黙って背中で語る時ってのもあるんだよ」 「嘘ね。図星を指されて誤魔化すお約束のパターンよ。今の発言は」 くっ、流石に百戦錬磨の二枚舌に生半可な誤魔化しは通用しないか。 「まぁ気にすんな。人には色々あるんだよ。言いたくない事の一つや二つな」 「……それは分かるけどね」 てゐの意味深な発言を最後に、しばらくお互いに沈黙が続く。 ……適当に話題振って流れを変えるか。 「しかし、背中洗ってもらうとか何年ぶりかねぇ……」 「外の世界だと、そんなに洗わないもんなの? 不健康よ、それって」 「洗うっちゃ洗うんだが……最低でも、外の世界じゃ1人で洗うのが普通だかんなぁ。 誰かに背中洗ってもらうってのは大抵は家族か恋人同士って相場が決まってるもんだ」 「……ッ!」 「ギャーッ! 痛ぇ痛ぇ摩擦で熱ぃ気持ち良いッ! 何しやがるこのB級ッ!」 「さっきから何なのよそのB級って!」 ・ 「平和ですねぇ」 月夜に2人、縁側で薬師と姫が茶を啜る。 「ギャーとか言ってるけど?」 「何時ものことでは?」 「それもそうね」 永遠亭は今日も平和だった。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 行きませう、行きませう、貴方について何処までも、家来になって行きませう。 ―――時に同じ意志を持つ者は現れるかもしれないが、それが同じ人間だとは限らない。 ―――だが、本当に同じ意志を持つのならば人種の間に垣根は無いのかもしれない。 ―――そう、もしかしたら人間と人外の間にすら垣根は無いのかもしれないのだ。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ その日、俺は鬼と会った。 1月も半ばを過ぎた。 鈴仙の涙無しには語れない愚痴を聞いたり、永琳さんの実験がエスカレートして時々記憶がなくなったり、 姫さんと妹紅さんの死合いに付き合わされ、その度アフロになって両者に腹抱えて笑われたり…… イナバの子達にシチューのニンジンを渡す代わりに肉を入れるよう要求したら、 脂身が山ほど入っていたという嫌がらせを受けたりする日々に満足しつつ、 俺は永遠亭の日々を割と楽しく過ごしていた。 てゐもあの風呂の一件の後……時々なら話をしてくれるようになった。 決まって他に誰も居ない時に限り、誰かが来たら遁走するという奇妙な行動を取っていたりはするが、 全く近付きすらしてくれなかった頃から比べたらまさしく劇的な進化と言えるだろう。 そんなある晩。 風呂に最後に入り終えた俺は部屋で1人、フル装備で腕立て伏せを行っていた。 機動隊員は身体が資本。いくらこき使われているとはいえ、基礎トレーニングをサボるわけにはいかない。 鍛錬は身体を作り、維持し、果ては自分の身を守ることにも繋がるのだ。 というかブッチャけ、機動隊に戻った時に鈍ってたら張り倒される。 「でも考えてみりゃ、この幻想郷じゃ俺の実力は下の下なんだよなぁ」 つーか、幻想郷の標準レベルがあまりにも高すぎる。その辺のイナバの子ですら弾を撃った時、俺は泣いた。 この永遠亭でのヒエラルキーの最下層に俺は居るわけか。 道理で最近、かつてその位置に居た鈴仙が妙に嬉しそうなワケだ。 何時か貴様のパンツを全部こっそり縞パンに変えといてやる。 「スタッフサービスに相談しよかな」 「何よ、そのスタッフサービスって」 「上司や部下に恵まれなかった時に無償で愚痴を聞いてもらう素敵なサービスだ」 よいっしょっと立ち上がって自然な流れでファインティングポーズに移行する。 流石の俺も、突然虚空から声が聞こえてきたら警戒する。 「うぉッ、なんだこりゃ!?」 部屋の天井には白い霧が不自然に集まっていた。 「下ばっか見てるから上に気付かないのよ」 上向いてやる腕立てってどんなんだ。 「まぁまぁ、とりあえず今回は戦り合う気は無いから、そう警戒しないでよ」 「そういうのは姿見せてから言いな、お嬢ちゃん」 「見せてるじゃない。さっきから裾引っ張ってるわよ」 「ぁん?」 確かにズボンを引っ張られる感触を感じ、下を見てみる。 「上ばっか見てるから下に気付かないのよ」 「……グレムリンか、アンタ」 こちらに向けてブイサインしてる小さな少女が、そこには居た。 ・ 「伊吹 萃香?」 床に胡坐を組み、瓢箪を煽る少女に向かい合い、俺も床に座って反芻する。 「そ、それが名前」 ちなみに萃香と名乗った少女の体格は先の小人ではなく、普通の人間サイズになっていた。少々幼いが。 幼いとは言え、その頭から突き出る二本の角は、それが決して人間ではないことを物語っている。 「んで、その西瓜が何用だ? 流石に不法侵入してたら永遠亭のヤツらも黙っちゃいねぇぞ?」 「あはは、ムリムリ! 月人ならまだしも他の有象無象の兎程度じゃ私を捕まえられりゃしないわよ。 ってちょっと待て人間。今物凄く馬鹿にしなかったか?」 「ハッハッハ、大した自信なこった」 自分が不利になりそうな発言を言っときながらサラリとスルー。これぞ瀟洒。 「まぁ良いや。で、あぁ、用だっけ? んー、これと言って難しい話じゃないわよ」 瓢箪をドンッと置き、笑みを浮かべる。 「ちょいと、外から来たっつーアンタと飲んでみたくてね」 ・ 厨房からグラスを拝借して戻ってきた時、萃香はまるで自分の部屋に居るかのように頬杖をついて横になっていた。 「おかえりー。今更だけどいけるクチ?」 「任せとけ。俺は毎晩酒を持ち込んでは一人酒盛りをして、時々先輩にバレては丸坊主にされるのが趣味という男だ」 「変わった趣味ね」 「これ以上髪の毛が無いときは下の毛も刈られるぞ。あれはクセになるな」 目の前の角っ娘の視線がとても痛い。だが俺は謝らない。 彼女の瓢箪から酒を注いでもらい、軽く乾杯する。 ・ 久しぶりの美味い酒に舌鼓を打ち、ほろ酔い気分で調子に乗り始める。 何を隠そう、俺は宴会の席で1人居たら何かと重宝される盛り上げの天才だ。 ……決して調子に乗り過ぎて最終的に俺がボコられるというオチをテンプレ化させる天才ではない。 「じゃーアレか、オメェは鬼ってヤツなんか?」 「だからそう言ってるじゃない。外の世界はどうなの、鬼の話とかあるのー? 炒り豆ぶつけたりする行事とかさ。アレ痛いんだよねー」 「あー、言い伝え程度ならな。2月3日はそっちの言う通り炒り豆撒くし恵比寿巻きも食うさね。 かく言う俺も鬼を演じたこともあるしな」 ちなみに機動隊のボランティアである。 鬼のマスクかぶって近所の幼稚園の子達に「うるせー豆ぶつけんぞ」とか言われてベシベシ豆を投げられていた。 あまりにぶつけられてばかりで悔しかったので、 一度、白い液体(豆乳)撒き散らしながら盛大にのた打ち回ったら先生ドン引き子供は号泣、 俺は先輩同期後輩教官問わずしこたま殴られるという地獄絵図が描かれたほろ苦いメモリーがある。 ちなみにその後、物凄い勢いで減棒されてしばらく様々な意味で地獄を見たのもそのメモリーのうちだ。 あの頃の俺は馬鹿だった。 「お願いだから鬼が誤解されるようなことしないでよ……」 「失敬な。鬼は怖がられて何ぼだろう。だから俺はガキに鬼の恐怖というヤツを刷り込んでやったのだよ」 「正論だが根本的に恐怖の方向性が違うわ!」 「そもそも人間の俺様が見たこともない鬼の恐怖を体現出来るわきゃねぇだろ!」 「逆切れするな馬鹿!」 馬鹿は人生楽しめます。 まぁそんなこんなで鬼の萃香と杯を交わし始めて更に数刻。 俺の機動隊伝説を萃香が大爆笑されたり、呆れられたり、瓢箪が俺の顔面にメリ込んだりしつつも馴染んできた。 途中で通りすがりの鈴仙が様子を見に来たりしたが、何故か生温かい瞳で「……ほどほどにね」と言い去って行った。 その時萃香はちょいと花を摘み(花を摘む=御不浄=厠=トイレ)に行ってたらしく居なかったので、 もしかしたら俺1人で酒飲んで奇声を発しているかのように見られていたのかもしれない。 失敬な。それではまるで俺がキグルイな人みたいではないか。 「まぁ分かってて隠れたわけだけど」 はかった喃。萃香、はかってくれた喃。 帰ってきた萃香と再び酒を飲み交わしつつ、ふと湧いた疑問を聞いてみる。 「しかし、萃香も奇特だねぇ。外から来てるからつっても、俺みたいな人間なんぞ見てても面白いか?」 何しろ不思議な能力もなければ変わった外見でもない。 普段の生活は我ながら愉快痛快な行動であるとは思うのだが、 これといって鬼の萃香が興味を惹くような部分は無いとは思うんだが…… 「いや、存外面白いわよ? 何とも滑稽で非力な人間が幻想に馴染もうと無駄な努力してる所とかさ」 場の雰囲気が一瞬にして変わったのを感じ、俺はグラスを片手に動きを止める。 「私はアンタのことをよく判ってるわ。ずっと見てたからね」 萃香はそんな俺の様子をみて、にやりと意地の悪い笑みを浮かべる。 「力はなく、種族も違い、考え方も違う。いくら皆に近付こうとしても、その距離はあまりにも遠い。 壁は越えられない。幻想にはなれない。何故ならアンタはただの人間だから。 そんなアンタは明るい笑顔が溢れる永遠亭の中でも実は孤独を感じてる」 無言でグラスの中身を煽りながら、萃香の言葉を聞く。 「そんな孤独なアンタは無理をしてでも皆に認められようとすることで自己を保とうとしてる。 あたかも寂しいと死んでしまう兎のように。 だから、何時までも認めてくれないように見えるあの兎が気になって仕方が無い」 あの兎、てゐのことか。 「どう? 私の考察、間違ってる点があればいくらでも反論して良いわよ」 「正論に対する反論は言い訳にしかなんねぇよ」 グラスを差し出すと、萃香が瓢箪を傾けて酒を注いでくれる。 「萃香の言った事は何一つとして間違っちゃいねぇ。ぜーんぶ正解だ。 そこまで俺の内心を把握されるたぁな。俺もまだまだ修行が足りんぜ」 「幻想郷の人間と比べりゃ、アンタくらい分かり易い人間は他に居ないわよ」 幻想郷の人間ってのはホントに人間か? 「でも……」 その言葉に、俺は萃香の方を見つめる。 「アンタは迷ってる。最初のうちは外の世界に戻る気で居た。いや、今でもまだ戻る気では居る。だけど……」 「この永遠亭という場所に惹かれる自分も確かに居る。 ここで一生を過ごすことになっても、それはそれで良いかもと思ってる。萃香に言われんでも分かってるさ」 俺の独白に、萃香は軽く笑う。 「正直だねぇ。正直者は嫌いじゃないよ」 「そりゃどーも」 ったく、こういう点で萃香みたいな人外との差を感じてしまう。これが越えられない壁ってヤツか。 「ま、考えることね。現実に戻るか、幻想に成るか。 アンタは幻想郷に居座るには、少しばかり異分子のままで居過ぎた。 どっちにしても覚悟を決める時期だと思うわよ、そろそろね」 外の世界に戻るならば、知り合った皆と別れて幻想を忘れる覚悟を。 幻想郷に留まるならば、外との縁を切って幻想を追いかける覚悟を。 逃げてはいけない選択肢が、俺の前の前に明確に提示された。 「御忠告ありがとさんよ。しかし……何でまた、萃香はそこまで言ってくれる?」 それこそ異分子、赤の他人である筈の俺に萃香がそこまで世話を焼いてくれる理由が見つからない。 好意に理由付けるのも無粋な話だが、気になる物は気になる。 このへんがまだ、外の世界の住人的なんだろうな。 「んー……何でだろうね。ちょいと私の聞き知ってる人間にアンタが似てたからかな?」 「そいつぁまた素敵な男だな」 俺に似てるということは、そいつはきっと絶世のイケメンだったのだろう。 「……アレはアレで変わった男だったって聞くからねぇ。人望……獣望はあったって話なんだけど」 俺を見ながらクスクス笑う萃香。何だか物凄く失礼なこと言われてる気がする。 「俺はともかく、永遠亭のヤツらを馬鹿にすっと怒るぞ?」 「永遠亭のヤツらって言うか、あの兎のことでしょ?」 この鬼っ娘は何処まで知ってるんだか……。 「アンタも奇特な人間よねー。 幼女趣味は無いとか散々公言してる割に、あれだけ関わろうとしない相手に必死に絡もうとして…… 挙句、問い詰めずに自分から引いちゃうんだから。何ともまぁ臆病者」 「俺ぁジェントルメンなんだよ」 「嘘。他の誰でもなく彼女に嫌われるのが怖いってことに気付いたんでしょう?」 ニヤニヤ笑う小鬼の笑顔は何とも眩しかった。 悔しかったので鰯の頭と炒った大豆と柊の葉を細かく刻んで味噌と醤油で軽く煮た物をツマミとして出してやった。 ヤツが絶叫と共に盛大に噴出したそれらは俺の顔面に直撃し、あげく瓢箪を口に突っ込まれてしこたま酒を流し込まれた。 ほろ苦いメモリーになった。 ちなみにその日はそこで俺の記憶は途切れているが……その日以降、夜は萃香と酒を酌み交わすようになった。 この縁が果たして俺にどのような影響を与えるのか、この時点では知る由もなかったが。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● そりや進め、そりや進め、一度に攻めて攻めやぶり、つぶしてしまへ、鬼ヶ島。 ―――森羅万象に絶対はない。 ―――正しいと思うことこそ間違いで、間違いだと思うことこそ正しいことなどこの世にはいくらでもあるのだ。 ―――我々がそれを見極めるためには、全てを疑い、時に対立をし、その上で受け入れねばならない。 ??????????????????????????? アイツが永遠亭に来て一ヶ月近く経った。 アイツは馬鹿で失礼で助平だが嫌いじゃない。 嫌いじゃない、多分……ど、どちらかと言えば……いや、でも駄目なのだ。 アイツはイナバ達に慕われ過ぎた。最近、私の統率力が乱れ始めてきたのだ。 わざわざアイツと接触しないようにして、私の威厳を保とうとしていたのに…… アイツはこっちの気も知らずズカズカと絡んでくる。 その上、最近アイツがもしかしたらここに残るかもしれないという噂を聞いた。 イナバ達は喜んでたが……そうなったら手の付けようがなくなる。 今の内に追い出しておかないと、私の立場が取られてしまうかもしれない。 それだけは嫌だ。 何時かは外の世界に帰ると言っていたからこそ手は出さないでいたが……やらないと、いけない。 私のポリシーには反してしまうけど……仕方、ないのよ。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 2月を過ぎたある日、永遠亭で事件が起こった。 大きいといえば大きく、地味といえば地味かもしれないが……事件であることに変わりはない。 永遠亭の住人達のスペルカードが全て盗まれたのだ。 だが幸いにも、スペルカードはすぐに見つかった。 俺の乱闘服の内ポケットの中から、だが。 ・ 「じゃあ、何時の間にかポケットの中にあったってわけね?」 「おぅ、俺自身も何時の間にかあって吃驚したくらいッスよ」 部屋の中には机を挟んで両腕を組んだ俺と永琳さんが向かい合っていた。 現在、取調べの真っ最中。 ちなみに永琳さんだけでなく姫さんも取調べするーとか言っていたが、何を思ったのか突如カツ丼を作り始め、 ちょうど通りがかった集団空腹状態のイナバ達に囲まれて右往左往していたのをさっき確認した。何しとんだあの姫さんは。 「んー……でも入ってたのは事実なのよねぇ」 「動機が俺しかないのも事実ですな」 「周りとの力量の差に焦った、もしくは単純に力を得ようとした無知な貴方がスペルカードを盗もうとしたってのなら一応のスジは通るわね」 なお、永遠亭の他面子に同様の動機は相当しないだろう。 叩き出されるリスクを負ってまでこのような真似はする理由がないしな。 外部犯でない限り、最も怪しいのは間違いなく新参の俺だと言える。 「まぁ、疑ってるわけじゃないわよ? 何だかんだ言いつつ、貴方がこんな姑息な手を使うとは思ってないし」 「そりゃ何とも嬉しいですな」 信用されてるってことは悪い気はしない。 「そもそも、こんな姑息な手は使うような投薬してないし」 「そりゃ何とも嬉しいですな」 実験されてるってことは悪い気しかしない。 冗談だよね? 「まぁそれはともかく、犯人の目処は付いてるけどね」 「あぁ、永琳さんもですか。実は俺もですわ」 俺が犯人に最も近いと言うことは、逆に言えば『そう仕向けた』という可能性も有り得る。 つまり、スペルカードを盗むことそのものが目的ではなく……俺を窃盗犯として仕立て上げることが目的。 それならば、1人だけ動機が出てくる。 これはおそらく……俺などより遥かに聡明な永琳さんの方が分かっているはずだ。 「まぁ、特に犯人を明確にしないでも私達を含めて誰も気にしないでしょうけど……」 「いや……明確にしてもらわなきゃ困りますぜ」 俺の言葉に、あら? と不思議そうに永琳さんがこちらを見つめる。 ニヤッと笑いつつ、俺は自分を親指で指し示す。 「犯人は俺だった、ってね」 そう、そういうことにしてもらわねば困るのだ。 「流石に永琳さんにゃまるっとスリっとゴリっとエブリシングお見通しだろうけど。 是非ともこの事件の犯人は俺ってことにしといて下さいや」 ………。 「優しいのは悪いことじゃないけど、人の罪を全部かぶろうとするのは、あの娘の為にならないわよ?」 「悪ぃッスね。間接的にとは言え俺が撒いた種ですからな。自分で処理しなきゃ」 俺の意図を瞬時に全て理解してくれたようだ。 流石は月の頭脳、天才と呼ばれる人だ。理解が早くて助かる。 俺が犯人でないと言い張れば、確かに永遠亭のヤツらはそうだと思ってくれるかもしれない。 だが、それでは不味いのだ。 俺が犯人でないということになれば……皆は今の俺達と同じ目処を付けて、次点の容疑者である『彼女』に目を向ける。 いや、むしろ最有力候補になる。 そうなってしまえば、『彼女』の立場が悪くなることは間違いない。 何しろ、俺を陥れようとした……という動機となれば永遠亭での立場は限りなく悪くなるだろう。 最悪、永遠亭から追放ということも考えられる。 それは俺の望むところではない。そうなるくらいなら俺が犯人として自首するのだ。 そしてこんな俺の行動は『彼女』の思惑通りなのだろう。 つまり、今回の事件は『彼女』自らが次点の容疑者となる…… 分かりやすく言えば己を盾とすることで、俺が自ら冤罪を被るよう仕向けたものなのだ。 まさしく『彼女』のシナリオ通り。そうと分かっていても俺にはこうすることしか選べない完璧なシナリオ。 だが、今回のシナリオは、その『彼女』のモットーに反している。 それを破ってまでこんな手を用いるということは、それだけ追い詰められていたのだろう。 迂闊だったぜ。今この瞬間まで……『彼女』の本音が分からなかった。これじゃ色々失格だな。 あくまで不敵に笑う俺に対し、その意を汲んでくれたのか……永琳さんは溜息を一つつく。 「……はぁ。分かりました。では、今回の事件の犯人……貴方に、とりあえず処罰を与えます。 流石に無罪放免というわけにはいかないしね」 俺は初めてこの間を訪れた時と同じように正座し、背筋を伸ばす。 「私達のスペルカードは私達にしか使えない。 例え盗まれようと、大抵はまた作れる以上……この行為に意味は無いわ」 永琳さんが俺をしっかりと見つめ、俺も決して目を反らさないように姿勢を正す。 「でも……スペルカードを盗もうとした意志は見過ごせないわ。 よって永遠亭の管理者の1人、八意永琳として……」 俺の予想が確かなら、俺に対する処罰はたった一つ。 「貴方の永遠亭の客人、住人としての権利を剥奪し……永遠亭からの即時退去を言い渡します」 永琳さんは、まさしくその処罰を俺に言い渡したのだった。 ・ 布団を畳み、掃除をし、俺は永遠亭に来た時と全く同じ装備を身に付けて、 俺の部屋だった場所でしばし正座して瞑想する。 正直な所、ああは言ったが未練がないワケがない。 ここの住人はどいつもこいつも楽しく、そして優しく、出て行く事なんざ考えたくもなかった。 だが、良い機会なのは確かだ。 時は2月、外の世界に戻るには丁度良い時期。 元々俺は外の住人、このように永遠亭のヤツらと過ごす事は本来あり得ない筈だったのだ。 ……と、自分に言い訳してみる。 「準備は……出来てるみたいね」 その声に目を開き、立ち上がりながら襖の方を見れば、そこには永琳さんと姫さんが居た。 「預かってた銃と棒は返しておくわ」 永琳さんが完全装備の俺に唯一足りなかった武器……ガス筒と警杖、そしてそのガス筒の弾2個を返してくれる。 「お? 弾も一緒に帰してくれるんですか。こりゃありがたい」 「これが無いと貴方は自衛手段に欠けるでしょ? 何しろまだ弾一つ撃てないんだから」 「普通の人間は素手で弾撃てるようになってませんからなぁ」 ガス筒を腰に、警杖を背中に背負う。改めて、これで完全装備だ。 「……本当に行くのね」 姫さんが俺を見て、心なし寂しそうに言ってくれる。 「えぇ、一応処罰は処罰ッスから。姫さん、ネット上の知り合いはもっと作っといた方が良いと思いますぜ?」 「直接会う事も出来ないのに知り合いなんて作っても仕方ないじゃない」 まぁそれも正論。 「伝説のかぐや姫に会えた……なんて、外に世界に戻っても誰も信じてくれねぇでしょうなぁ」 「多分、医者か何かを薦められるでしょうね」 「その時は永琳さんに診てもらいたいモンですな」 カカッと笑う。 「見送りにはいかないわ。処罰を与えた者として被処罰者を見送るのはおかしいことだから」 「了解してますさね。でもここで挨拶してくれるという点に俺は御2人の優しさを感じますがね」 「私があげたのは薬だけよ」 「私があげたのは苦労だけよ」 「俺はかけがえない想い出を貰いましたぜ」 3人同時に言った後、顔を合わせ、からからと笑い合う。 「全く、良い男ね。貴方みたいな男だったら難題の一つくらい、解けるのかもね」 「伝説のかぐや姫の『五つの難題』ってヤツですか。出してもらえるモンなら何とも光栄ですなぁ」 そこで、姫さんは何かを思いついたように微笑みながら、 「だったら、一つ難題を貴方に出すわ」 人差し指を立て、俺を指差す。 「客人でも住人でも、あまつさえ侵入者としてでもなく、この永遠亭に入る方法。 それが私が貴方へ出す難題よ。これが解けたらそうね……嫁にはならないけど、ご褒美をあげる」 「そりゃまた何とも難題ですなぁ」 それじゃどうやって中に入れというんだろうか。 つーか、そもそも処罰を言い渡されている状態では戻れんだろう。流石は難題。 ・ 姫さんと永琳さんの2人に別れを告げ、廊下を歩いて永遠亭の出入り扉を開ける。 そこには、多くのイナバの子達と鈴仙が居た。 「おいおい、こりゃまた見送りが多いねぇ……」 これでも一応、『スペルカード窃盗犯の追放』っつー名目なんだがなぁ。 イナバの子達が俺の姿を見て、駆け寄ってくる。 「行っちゃうの?」 「おぅ、そろそろ良い時期だしな」 「お兄ちゃん……姫様達のスペルカード盗もうとしたなんて嘘だよね?」 「いーや、スマねぇな。ちょいと魔が差しちまったのよ」 カカカッと笑いつつ、問いかけて来たイナバの子の頭をポンポンと軽く叩く。 皆の目は暗に、何故嘘をつくのかという疑問に満ちていた。 ……そんなに俺の言葉は嘘っぽいかねぇ。 「ほら、俺って演技派だからよ。皆も存分に騙されたワケだ。 ……今後は見知らぬ人間だからって簡単に信用してホイホイ付いて行くんじゃねぇぞ? 捕まって兎鍋にされちまうぜ?」 何か言いたげだったが、言葉が見つからなく眉をひそめるイナバ達。……心が痛む。 「よぉ、鈴仙。オメェまで見送りに来てくれたんか」 誤魔化すように鈴仙に話を振る。 「……本当に行くのね」 「オメェにしろ姫さんにしろ、そんなに出て行くのが意外か?」 カカッと笑ってやるが、鈴仙はこちらを静かに見つけたまま決して笑わない。 「意外に決まってるじゃない。あれだけここに馴染んでたのに…… 貴方が居なくなったら、イナバ達も哀しむわよ?」 「わはは、鈴仙は哀しんでくれんのか? そうしたらそこから始まるラブストーリーが怒涛の勢いで展開されぶらぁッ! えぇい零距離座薬弾はやめぃ! 何故か顔面にぶち込まれてるのにケツ痛くなるから!」 「座薬言うな!」 そんな鈴仙の様子を見て、ニィッと笑みを浮かべる。 「なぁに、ここのヤツらの絆は強いかんな。時間が解決してくれるさね。 俺が居たのは一時だけ、ちょっと変わった客人で卑怯者だったと。まぁそう思っといてくれ、な!」 そう言ってバンバンと鈴仙の背中を叩く。 「まぁアレだ。これからはまた何かと永琳さんの実験対象とかになるだろうけどよ、強く生きろよ?」 誤魔化すように大笑いし、周りを見渡してみる。 ……てゐは、居ないか。 ったく、最後くらいキッチリ別れと謝罪の言葉は言いたかったんだがなぁ。 神社まで送りましょうか?と聞いてくれた鈴仙の申し出を感謝しつつも断る。 折角の最後の竹林だ。 少々危険なのは百も承知だが、想い出を噛み締めながら歩いて行くことにしよう。 幸い、神社までの道筋も教えてもらったし、永琳さんに竹林抜けるために必要な道具も貰ったしな。どう見てもコンパスだが。 未練は残ったが、まぁ良い。 願わくば……永遠亭の皆が幸せになれるように。 特に『彼女』が罪悪感に囚われることなく幸せになれるように願っとくかね。 鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴鈴仙 「じゃあな!もう会う事はねぇだろうが……達者に過ごせよ皆の衆!」 後ろ手を振りながら、彼の背中が少しずつ遠ざかる。 イナバの子達が目に涙を溜めながら手を振って見送っている。 彼の姿が竹林の中に消えてしばし経った後……私は呟く。 「てゐ、貴方……本当にこれで良かったの?」 「……」 彼女は出入り口の影、彼の死角となる場所で1人、佇んでいた。 今回の事件には多くの矛盾がある。 ほとんどの子は気付いてないが、私には何となく真相が見えていた。 「彼は最低でも……貴方に何かしようという気はなかった筈。 そんな人を追い出して満足なの? ねぇ、てゐ」 彼女が、一枚噛んでいるのだと。 私とてゐの間を冷たい風が吹き抜ける。 てゐはおもむろに、スタスタと歩き始める。彼が去った方向とは正反対の方向に。 「……何処に行くつもり?」 彼を追いかけるというわけではなさそうだ。 「ちょっと散歩よ、散歩」 てゐはそう言い、跳ねながら竹林の中へと消えていった。 彼女も迷っていた。 もし、もう少しだけ……あと少しだけ迷いが強ければ、 もしかしたら彼も出て行くことはなかったのかもしれない。 永遠亭を見上げてみる。 彼が去り、何となく寂しくなったように感じた。 賑やかな彼は思った以上に永遠亭に馴染んでいたらしい。 私は何も出来なかった。彼を庇う事も、てゐを止める事も。 無力だなぁ、私。 萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃香 兎が竹林を散歩しているのを眺める。 苛々しているのか、時々雪を意味もなく蹴っ飛ばしている。 「気に入らないな」 ―――だが、苛々しているのはアンタだけじゃない。 私の呟きに、目の前の兎はキョロキョロと周りを見渡す。 「私は自己犠牲を是とする人間は嫌いだ」 ぱすっと言う柔らかい音と共に着雪し、私は彼女の後ろに姿を現せる。 兎は振り返って私を視認し、顔を歪める。 「だが、それ以上に……」 私の一睨みに、兎の耳がピンと立つ。 「嘘吐きは、大嫌いだ」 兎が一歩下がる。 「特に、その嘘で他人を不幸にするような嘘吐きはな!」 「脱兎『フラスターエスケープ』ッ!」 直後、ヤツの投げつけたスペルカードから5本の線状弾幕が張り巡らされる。 弾幕は地面を、竹を、足場にして跳ねるようにこちらに向かってくる。 見れば……兎は既に背を向けて逃げ始めていた。 ……なるほど、逃走用に特化した弾幕か。なかなか面白いスペルカードね。だけど…… 「無駄、無駄ッ、無駄ぁッ!」 私は霧へと変化し、弾幕の間を抜けて彼女の真上で再び実体化する。 「酔夢『施餓鬼縛りの術』ッ!」 そのまま空中で鎖を伸ばし、一気に投げつける。 「きゃうッ!」 鎖は兎の足に絡みつき、ゴキリと鈍い音をさせる。 「ッ!?」 私はそのまま、勢いに任せて兎ごと鎖を振り回して……地面の雪に向かって叩き付ける。 「か……はぁッ!」 「逃げようたってそうはいかない。アンタは私の逆鱗に触れた。 卑怯な手段を使って、あの人間を駆逐した。……そう、かつて私達がされたように」 「あ、あぁ……ぁぅ」 鎖を外し、元の長さに戻す。だが兎は動かない。否、動けない。 施餓鬼縛りの術は霊力吸収の効果を持つ。 その上、脚も潰しておいた。飛ぶ事も跳ねる事も、ましてや弾幕を張ることなど出来はするまい。 「こればかりは許すわけにはいかない」 私は懐から、一枚のスペルカードを取り出す。 「鬼符『ミッシングパワー』」 ピンッとスペルカードを弾くのと同時に、私の身体が巨大化する。 竹の葉が邪魔にならないように竹林を越える大きさにはなれないが、それでも大きさとしては充分。 握った拳は足元の兎の身体と同程度だ。 「自身が吐いた嘘を後悔しながら潰れろ、この兎詐欺(うさぎ)ッ!」 その拳を振り上げ、振り下ろす。その瞬間…… 「警備実施要則、第四章、第二節! 第三十七条その二ぃいッ!」 居る筈のない人間の声が、聞こえた。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● おもしろい、おもしろい、残らず鬼を攻めふせて、分捕物をえんやらや。 ―――そして真実は姿を現し、決断を迫る。 ―――彼は何を思い、何の為に戦い、何を選ぶのか。 ―――正解はない。 ―――だが間違いも、ない。 ―――ただの人間の鬼退治。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 「実力規制を行なうにあたっては事態に応じ、危害を防止することぉッ!」 俺はてゐと萃香の拳の間に身を滑り込ませる。 そして、がっしと大盾で受け止め……ヒビが入り、悲鳴の上げるそれを思いっきり横に向け、全力で捌く。 「うぉらぁああッ!」 強化プラスチック製の大盾が粉々に砕けながら弾け飛ぶ。だが彼の犠牲は無駄ではなく、俺達は無事だ。 「そして、その一! 実力規制を行なうにあたっては事態に応じ、適切かつ妥当な方法によること!」 俺は腰から抜いた2型ガス筒を萃香に向かって突きつける。 そのまま引き金を引く。直径37ミリのガス弾が放たれ、萃香の眉間にメリ込む。 萃香が僅かによろけて……そしてこちらを見て目を丸くする。 「……本来、ガス筒の水平撃ちは禁忌(タブー)なんだがな」 「ちょッ、人間ッ!? アンタ何で……」 「これだからなぁ、おーい萃香! 息止めて目ぇ瞑っとけー」 「え?」 直後、先の弾から白い煙が噴き出し……萃香の顔を包んだ。 S(スモーク)弾。正式名称「S100L型」 内包した催涙剤を燃焼させてスモーク状にし、催涙ガスを噴出する機動隊の暴徒鎮圧用装備だ。 まぁ……流石に萃香にはそう効果はあるまい。 何しろ大きさがケタ違いだ。だが時間稼ぎは出来るはず。 俺は軽く咳き込む萃香を尻目に、てゐに向かう。 「よぉ、何か知らんが弱ってんな。立つことも出来ねぇか」 「う、うん……」 「弾幕は? 空も飛べねぇか?」 「無理……」 「何時もの皮肉を言う気力もねぇか。相当らしいな」 「……うぅ」 「まぁでも生きてて良かったぜ」 頭をわしゃわしゃ撫でると、てゐがむぅー……と唸る。 「でも何で……」 「運が良かったな。いや、俺にとっちゃ悪いんだが。出口への道間違えてなぁ。 つーかコンパス役立たねー! 速攻で大回転始めるってどうよ!」 からからと笑いながら再び萃香に向かう。 S弾の噴射が終わり、少し薄くなった煙の中からこちらを睨みつける萃香に顔を向ける。 「おぅおぅ、そんな怖い顔したら可愛い顔が台無しだぜ?」 「……その兎を助けるつもり?」 てゐを一度後ろ見て、不敵な笑みを浮かべる。 「おぅ、そのつもりだぜぃ。こればっかは杯交わした萃香と言えど退けねぇなぁ」 「……そう。なら……」 俺は乱闘服のボタンを外しながら、萃香を見上げる。 「やるか?」 「やらいでかッ!」 直後、萃香が勢いよく瓢箪を煽る。 それを視認した瞬間、乱闘服を萃香に向かって投げ広げ、俺は一気に振り向き…… てゐを掬うように両腕で抱き上げる。 「後ろ!」「分かってるッ!」 直後、俺達を燃え盛る炎が襲い掛かった。 萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃香 姿を小さくしながら、再び瓢箪を煽る。 私の周りの雪は先ほど私が吹いた火によって溶けて無くなっていた。 「ふーん……なるほど、修羅場はそこそこ潜ってるみたいねぇ」 あの人間と兎の姿は無い。 あの炎を前に、人の身であり、また何の能力も持たぬ男はこの場より逃げ切ったのだ。 その中心部、焼け焦げて原型を留めていない布切れを摘み上げる。 先ほど、あの人間が炎に向かって投げ付けた服だ。 どうやら燃え難い素材で出来ていたらしく、ほんの一瞬だけ私の炎を受け止め、2人を守る壁となり、そして燃え尽きた。 その使命を全うした、偉大な服を丁寧に地面に置き直し……私は笑みを浮かべる。 「さて、楽しませてくれるかねぇ」 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 「難燃加工施してる乱闘服があそこまで簡単に燃え尽きるとはなぁ……」 俺はてゐを抱えたまま走っていた。 上半身はワイシャツとマフラー、ヘルメットのみとなってしまっている。ハッキリ言って超寒い。 乱闘服を盾に炎と萃香から逃げたのは良かったが、同時に籠手を棄てたのは少々痛かった。 だってそうしないと脱げないんだもんよ。 「下に着てた服は棄てなくても良かったのに……」 「あれ重ぇんだよ」 ボディアーマーは防弾プレート込みで十数㎏。普段ならまだしも、逃げること前提ならば棄てざるを得なかった。 「ねぇ、これからどうするの?」 あの鬼から離れ、少し気力を取り戻しつつあるてゐが俺の腕の中で聞いてくる。 「あー……ちょっと待ってくれ。今逃げながら必死で考えてる所だからよ」 ジョギング気味に走りながら、ガス筒を中折り、空の薬莢を捨てて腰のベルトから一発の弾丸をその中に込める。 「ちょっと……何も考えないで出てきたわけッ!?」 「うっせぇ! 後先考えてたらミンチにされてただろうがッ! つーかあー怖かった! あのデカさはねぇよな! 一寸法師の気分味わったぜ!」 うわははは! と笑いながら先ほど感じた恐怖をムリヤリ誤魔化しつつ、ガス筒を再び腰に差す。 「ねぇ」 「ぁん?」 「どうして、助けてくれたの?」 「どうしてってそりゃ……」 決まってんだろ。 「みーつけた!」 直後、俺達の真上から聞こえる声。 2人して反射的に上を向けば、そこには薄くぼやけた白い霧が萃まっていた。 「萃香、か?」 「正解!」 その声と同時に霧の中から弾が撃ち出され、 「ぬぉおおッ!」「きゃあッ!?」 2人揃って悲鳴を上げつつ、俺は再び走り出す。 だが、逃げた先に再び白い霧が現れる。 鬼ごっこじゃ萃香にゃ敵わんか…… 「チッ、なら……てゐ、しっかり掴まっとけよッ!」 俺の言葉に、てゐは無言で首に腕を絡めて掴まる。 それを確認した後、片手を離し、腰からガス筒を抜き放ちざまに撃ち放つ。 「またあの弾? 無駄無駄ぁッ! 同じ手が二度通用すると思わないことね!」 確かにS弾ならば効くまい。 いくらS弾を撃ったところで、その噴射タイミングが遅い以上避けられるのは自明の理。 さっきは巨大化してた故に上手くいったが、霧状では尚更難しいだろう。 だが、あの弾ならば話は別である。 P弾。 S弾と共に、たった一発しか持ってない俺の切り札……ラストショットだ。 弾は頭上の霧状の萃香を抜け、竹の葉の間に入り……そして炸裂する。 衝撃で竹がしなり、しなった分だけ空を見せる。雪と竹の葉に混じり、白色の粉が空から降ってくる。 「てゐ! 息を止めて目を瞑れッ!」 ガス筒を放り棄てた手でてゐの後ろ頭を掴み、俺の首元のマフラーに押し付け…… 俺自身もマフラーに口を付けて、バイザーをしっかりと下ろす。 目の前の紅い瞳が大きく見開かれる。 それを気にすることなく、体勢を低くして一気に駆け抜ける。 「え、なにこ……いたッ! 痛い痛い痛い痛いッ! げ、ゲホゲホッ!」 後ろから聞こえてくる萃香の悲鳴を背に、俺は粉の範囲を抜ける。 P(パウダー)弾。正式名称「P100L型」 S(スモーク)弾が催涙剤をガス状にする弾に対し、P弾は催涙剤をガス状にせずにそのまま火薬を用いてぶちまける弾である。 そもそも催涙弾は粉末状で、ガス状にしようが粉末状にしようが効果は変わらない。 むしろガスが出尽くすのに時間のかかるS弾と比べ、一瞬で強烈な効果を発揮する。 特に萃香に対しては効果は抜群……霧状になっていれば問答無用で粉が付着する上、 自身が広く存在する分、本来ならば対多人数に対して使用される量を、全て1人で受ける羽目になるのだ。 流石の鬼と言えど、このダメージは尋常ではあるまい。 「よーし、とりあえず」 「ぅー……」 「ぁん?」 「ぅ゛ーーー! う゛ーーーーッ!」 「いでぇッ! な、何しやがんだ!?」 お宇佐様のウサパンチが俺の頬にメリ込む。 「何泣いて……あ! さっきの粉受けちまったのか!? 目ぇ瞑れつったろ!?」 「そうじゃないわよ……さっきアンタ、何したのよー!」 さっきっつーと…… ~青年回想中~ ガス筒を放り棄てた手でてゐの後ろ頭を掴み、俺の首元のマフラーに押し付け…… 俺自身もマフラーに口を付けて、バイザーをしっかりと下ろす。 目の前の紅い瞳が大きく見開かれる。 それを気にすることなく、体勢を低くして一気に駆け抜ける。 ↓ 手でてゐの後ろ頭を掴み、俺の首元のマフラーに押し付け…… 俺自身もマフラーに口を付けて、バイザーをしっかりと下ろす。 目の前の紅い瞳が大きく見開かれる。 ↓ てゐを首元のマフラーに押し付け…… 俺自身もマフラーに口を付けて、 目の前の紅い瞳が見開かれる。 ↓ てゐを首元のマフラーに『押し付け』…… 俺自身もマフラーに『口を付け』て、 『目の前』には紅い瞳。 ~回想終了~ 「……」 「……」 気まずい空気が流れる。 「ふ、不可抗力ってヤツだ!」 「う゛ーーーッ!」 お宇佐様のウサパンチが俺の鼻っ柱にメリ込む。 「待て待てッ! 遊んでる場合じゃないっての!」 「後でしっかり言い訳してもらうわよ!」 そいつは何とも夢の無い話だ。 それはともかく、本当に遊んでいる場合ではないのだ。 何故なら……俺達の目の前で霧が一箇所に萃まり、実体化しつつあったからだ。 萃香が地を転がりながらその姿を現す。その顔は涙と鼻水でグチャグチャだ。 だが、その憤怒の炎が燃える瞳はこちらをしっかりと捉えている。 闘争心は……全く衰えてない。戦意は落ちていない。 S弾とP弾の両方撃ち込まれてもまだ戦る気かッ!? 「ったく、本気で恐ろしいな鬼ってヤツはッ!」 俺は慌てて、その場から走り出そうとして……衝撃が頭を突き抜けた。 ヘルメットが飛ぶ。バイザーが砕け、ガラスの200倍の強度を持つ素材を使ったヘルメットに大きくヒビを入れながら空を舞う。 何とか踏みとどまった時初めて、俺はコメカミの痛みに気付いた。 萃香を見れば、まだ地面に倒れ付していたものの……その手には長い鎖が伸びていた。 コメカミから血が流れ出し、頬を伝って滴り落ちる。 だが、俺はそれを気にする事も逃げ出す事も出来なかった。 萃香がこちらを睨んでいる。 逃げられない。 そう思わせるような威圧感を持って、ゆっくりと立ち上がるが……俺はその姿を見続けることしか出来ない。 歯が噛み合わず、背筋に雪以上に冷たい何かが突き刺さったかのような錯覚を覚える。 そうか、これが…… 今の人間が忘れてしまった、遥か昔に存在した鬼に対する 恐怖 か。 僅かな対峙。実際は数秒そこそこだったのだろうが、動けない俺にとっては何分にも感じられた戦慄の間。 声を出したのは他ならぬ、 「もう、良いわよ。ここから先は私が何とかするわ」 てゐだった。 「え……?」 「だから、もう良いって言ってるのよ。もう充分回復したから、とりあえず下ろしてアンタは逃げなさい」 ……。 「まだあいつのターゲットは私でしょうし、今から逃げたら充分逃げられる」 ……ッ! 「それに、アンタみたいな足手纏いが居たら私だって逃げられないじゃない」 俺は震える手を離し……ゆっくりとてゐを下ろした。 てゐは雪の上に尻餅を付く。 「それで良いわよ。さぁ、早く……」 そして俺は歯を食い縛り、萃香に向かって背負っていた警杖をゆっくりと抜き……構える。 「ッ! 何してるのよ! 早く逃げなさいって言ったでしょ! そんなものでアンタが何とか出来るような相手じゃないのよ!」 「分かってるさ。だがな……震えてる女を見捨てて逃げるような男は地獄に落とされちまうからな」 「ッ!」 萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃萃香 私は少し驚いていた。 目の前の男の姿に、嘘吐き兎を守るために…背負っていた杖を構えた人間に。 まだやる気なのか。 鬼の威圧感はただの人間である彼を確かに一度、押し潰した筈だ。なのに…… 「何故そこまでしてその兎を守るの?」 じろり、と彼の後ろに居る兎を一度睨めつけて…… 「私は見てたわよ。 アンタを追い出した姦計、手口、全てをね。 でもあんたはそれを理解した上で守ろうとしてる。正直、そこまでする価値などないように思うのだけれど」 その姿が遥か昔……3匹の獣と共に鬼の住む島に乗り込んできたと聞く、ある男の姿を思い起こさせる。 私は直接見たことなど、ない筈なのに。 彼はその言葉を受け、少し目を瞑り……ゆっくりと口を開いた。 「理由は2つある」 静かに、僅かに震える声を隠すことなく人間は語る。 「疑問を疑問で返すようで恐縮だが、俺が何で機動隊なんてシゴトやってるか知ってるか?」 彼の言葉の意図を掴みかねて疑問を浮かべる私を見て、彼は静かに続ける。 「機動隊ってのな。決して面白いシゴトじゃねぇんだ。 毎日毎日アホのように訓練やって、先輩や上官にゃシゴかれて…… 真夏は炎天下の下で走り続け、真冬は身も凍る海で泳がなきゃいけねぇ。 その上、俺らが戦う時は何時も悪意と罵倒がぶつけられる。特には敵に、時には守るべき市民に。 これで面白いってヤツがいたらそいつは余程の馬鹿野郎だ」 「だったらどうしてそんなことしてるのよ」 彼は目を開き、しっかりとこちらを見据えた。 「決まってるだろうが、俺にしか出来ねぇからだ。 ―――決まっているだろう。俺にしか出来ないからだ。 誰かの為に死地に向かう、そんなことが普通の人間に出来るか。だから、俺がやってんだ」 ―――誰かの為に鬼ヶ島に来る、そんなことが普通の人間に出来るか。だから、俺がやってるんだ 萃香の目の前で杖を構える男の姿が、かつて鬼が棲む島にやってきたと伝えられし人間の幻影と重なった。 「かつて萃香は言ったな。力はなく、種族も違い、考え方も違う。 皆との距離はあまりにも遠い。壁は越えられない。幻想にはなれない。俺は孤独だと」 初めて彼と飲んだ時、確かにそんな事を言った記憶がある。 思えば、至って普通の……何の力も持たない人間と飲んだのは、あれが初めてだったかもしれない。 「確かにその通りだ。だが……」 彼もそれを思い出しているのだろう、懐かしそうな笑みを一瞬浮かべ…… 「今、現在、この瞬間、こいつを守れるのは俺しか居ない。 そこには距離も幻想も孤独も、俺を騙したことも関係ない。 例え弾が撃てんでも、無能力者でも、俺しかやれないから……やるんだ」 そう、言い切った。 「それが1つ目の理由」 そこで一息つき……少しの間を空ける。 まるで、心を落ち着けるように。まるで……何かを告白するかのように。 「そして、2つ目の理由は萃香も知っての通りだな」 にぃッと、普段の彼らしい……何とも不敵な笑みを浮かべる。 「てゐは俺にとって大事なヤツだからだ。好きなヤツを守ろうとするのは当然のことだろ?」 「え……?」 彼の後ろから小さな声が聞こえる。 私は目元を手で抑え、高笑いを上げた。 何たる無知。本物の鬼の力を知らない人間が鬼に挑むのだ。無知と言わずして何と言う。 何たる無謀。力の差を知った上で私に力勝負を挑もうと言うのだ。無謀と言わずして何と言う。 何たる蛮勇。自らが非力な人間であると理解した上で鬼に挑むのだ。蛮勇と言わずして何と言う。 何たる勇気。自らを騙した者のために信念と想いを持って戦おうと言うのだ。勇気と言わずして何と言う! 鎖を元の長さに戻し、パンッと一度拍手(かしわで)を打った。 「面白い! 面白いよ人間ッ! アンタみたいな人間は久しぶりだ! 分かった、この勝負受けよう! かつての人間と鬼のルールに乗っ取り、アンタが勝てば褒美をやるよ。 ただしアンタが負けたら……攫ってやる」 「分かった」 「ちょっとッ!?」 「大丈夫だてゐ。何しろ俺には……」 不敵な笑みと共に彼は振り返り、兎の額を小突いた。 「幸運の女神が付いてっからな」 そんな言葉と共に。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 俺は再度振り返り、再び萃香と相対する。警杖を正眼に構え、息を整え歯を食いしばる。 目の前には酒を煽る鬼っ娘1人。だが、その力は言うまでもなく『鬼』そのもの。 「それじゃ……」 震える心に活を入れ、震える身体に気合を込めるように声を上げる。 「この舞い散る雪の中、愛する兎を守り切るぜ、鬼っ娘ッ!」 「この舞い散る雪の下、嘘吐き兎と共に果てろ、桃太郎ッ!」 その言葉を皮切りに、先手必勝とばかりに渾身の力を込めて踏み込み……全力の振り下ろしを放つ! 萃香は動かない。不敵な笑みも動かない。瓢箪すらも動かない。 だが俺の動きも止まらない、狙いはただ一つ……萃香の脳天ッ! 硬質的な打撃音が周りに響く。 「ッ!?」 萃香は僅かに首を捻り、警杖を己の角で受け止めていた。 「先手はくれてやったよ。さぁ……それじゃ今度はこっちの番だッ!」 萃香がその小さな体を捻る。竜巻のような威圧感に、思わず吸い込まれてしまいそうになる。 マズ…… 「らぁあああッ!」 身体の内部を突き抜ける音と共に萃香の左拳が俺の腹部に叩き込まれる。 息が止まり、全身の神経が止まり、代わりに湧き上がる激しい嘔吐感と共に身体が折り曲がる。 続けて顔面に右拳のアッパーが叩き込まれ、俺は弾け飛んだ。 己が出す血飛沫と砕けた歯、吐瀉物の舞う空を見つめながら俺は吹き飛び……背中から着雪する。 沈黙が場を支配し…… 「い……」 それを掻き消したのは、 「いやぁあああーーーッ!」 てゐの悲鳴だった。 「いやぁ、いや……○○、○○ッ!」 ……て……ゐ……。 「あー……五月蝿い五月蝿い。死んじゃいないわよ。何だかんだでキッチリ鍛えてあるみたいだしね」 ……。 「でもまぁ、これで勝負ありかな? じゃあ約束通り攫っていかせてもらいましょうかねぇ」 ……! 「や、止めて! 悪かった、私が悪かったから! ごめんなさい! だから……だから彼を攫うのはッ!」 「いーや止めないね、ヤツも言っただろう? 『分かった』ってね。 一度結んだ約束は契約として破る事は許されない。口約束は言霊の契約、契約は……守るためにあるのさ」 クッ……。 「い……」 俺の呟きに、反応したであろう2人。 「何だ? まさかお前自身まで嫌だとか、ごねるんじゃないだろうな? だとしたら、私は嘘をついたお前をこの場で縊り殺さないといけないんだが……」 「ッ!」 てゐの息を呑む声、おそらく……今、萃香はおっとろしい形相をしてるのだろう。 ……見えてなくて良かった。 「いや、げほごほッ! はぁ……すぅ、俺も約束は守るべきだと……思う。 だが……勝ったと思うのは早計だぜぇ。萃香……」 俺の言葉に萃香はおそらく……何か聞こうとしたんだろう。 だが、その言葉は聞こえることはなかった。 それ以上の爆音が、萃香を包み込んだからだ。 「あー、何だかよく分かんないんだけどさ」 仰向けのままでもよく分かる、この熱気。俺の傍の雪が音を立てながら溶けている。 「とりあえず、撃ってみたんだけど……間違っちゃないわよね?」 これだけの熱を生み出す存在は、そうは居ない。俺の知りうる限り1人だけだ。 てゐが叫ぶ。そう、彼女の名は…… 「妹紅ッ!?」 「ったく、何これどういう状況よ。散歩してたら爆発音するもんだから来てみりゃ…… 兎は泣いてるし、あの時の人間は血塗れだし」 「やっぱ妹紅さんだったか……空に火の鳥が見えてたから、もしやとは思ったが」 「あらら、ボロボロな割には元気そうね」 「伊達に毎日、永琳さんに人体改造されてませんぜ」 「ゲホゲホッ! な、何よこれ……どういうことだ! 答えろ人間ッ!」 すぅ…と息を吸い、腕に力を入れて上半身を持ち上げる。 そして、晴れた煙の中から半分怒りに……半分困惑に揺れる萃香に目を向けて、笑みを浮かべる。 「俺じゃ……どれだけ立派なこと言っても、ガチンコで萃香にゃ敵わねぇ。 俺は英雄でも妖怪でもない、ただの人間だからな…… だが、今回ばっかは決して負けるわけにゃ行かなかった。なら……残った手は流局しかねぇだろうが。 ま、『運良く』……妹紅さんが来たからこそ、出来たわけだがな」 強調した運良くという部分に対し、妹紅さんが頭の上に疑問符を浮かべるが……萃香はその言葉で気付いたらしい。 「運良く……くっ、そうか。そこの嘘吐き兎の能力か!」 「御名答。言ったろう。俺には、幸運の女神が付いてると」 てゐの『人間を幸運にする程度の能力』 文字通り、これに賭けてみたわけだが……どうやら上手くいったようである。 「ま、よく分かんないけど折角普通に知り合った人間を見捨てるのも気分良くないからね。 とりあえず、続きやるんだったら相手になるわよ?」 妹紅さんはそう言い、軽く首を鳴らしながら萃香に向かって不敵な笑みを浮かべる。 萃香はギリギリと、こちらにも聞こえそうな歯軋りをしたが、どうやら不利と悟ったらしい。 いや違うな……萃香の性格上、勝負を挑まれたら逃げることはない。ならば…… 「再戦は次の機会だ! 覚えてろよッ!」 つまり、俺との勝負を優先してくれるらしい。俺との決着を付けるまでは他のヤツとは戦わない。 鬼の流儀ってヤツか。何ともまぁ……義理堅いこって。 「忘れようにも忘れられるキャラじゃねぇだろうが」 萃香が身体を霧と化して消えて行く。 それを見送ったのを最後に、俺の視界はゆっくりと傾き…… 這いながら近付いてきているてゐの泣き顔を見ながら……俺は意識を手放した。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 万々歳、万々歳、お伴の犬や猿雉子は、勇んで車をえんやらや。 ―――一つの結果は、口伝により各々の心を構築する材料へと変換される。 ―――どんなに時が経とうとも、例え真実とは違った歴史を伝えられようとも、 ―――その結果を持つに至った者と寸分変わらぬ信念を持つ者は必ず現れる。 ―――それが、輪廻というものだ。 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ―――お母さん、お母さん! ぼく、大きくなったら桃太郎になる! ―――あらあら……それだったら今のうちからいっぱい運動して、身体を強くしないと駄目ね。 ―――うん! ……懐かしい夢。 俺の思い出せる、最古の記憶。 ―――でもね○○、身体が強いだけじゃ桃太郎さんにはなれないのよ? ―――え?どうして? 現実は厳しかった。この世界に鬼は居ない。 桃太郎は幻想の人間だ。いくら身体を鍛えようと『いない者』には『なれない』 ―――桃太郎さんはね、とっても優しかったの。大事な人、おじいさんとおばあさんを守りたかったの。 だからね、貴方が桃太郎さんになりたいんだったら大事な人を見つけなさい。 そして、その人を守ってあげなさい。そうしたら、桃太郎さんになれるわよ? そう、だから…… ―――……うん! わかった! 俺は、誰かを守ることの出来る……機動隊員になったのだ。 ・ 瞼が重い。 「……」 だが、起きなければならない。現状を把握せねばならない。 ―――てゐを永遠亭に連れて行かねばならない。 その意思を瞼を乗せて、ゆっくりと開けば……木板張りの天井が目に入った。 毛布が俺の身体に載ってるのに気付き、上半身を緩やかに上げる。 同時に生まれる腹部の鈍痛。 「~~ッ!」 痛みで思い出す。今までの経歴、気を失ったということ。そして…… 「ここは、永遠亭、か」 この場所のこと。 何となく見覚えのある内装、見覚えのある布団、見覚えのある…… ってここ俺の部屋(だった部屋)じゃねぇか。 周りをゆっくりと見渡して、再び手元に目を向ける。 さて……敢えて今まで気にしないように努めていたが、そろそろツッコまねばなるまい。 何でてゐが俺の腕に絡み付いて寝てんだ? 「てゐー、入るよー?」 ツッコんだ直後に襖の向こうから声が聞こえた。 顔を向けるのと同時に襖が開き、鈴仙が盆に皿を載せて入ってきた。 「……」 「よぉ」 「お、おはよう」 「おぅ、おはよう」 一文字加えるだけで会話になる不思議。 鈴仙は返事をしてきたのが俺だったのが余程意外だったのか、しばし固まっていたが…… 俺の腕に絡み付いていたてゐを見て微笑んだ。 「起きたんだ。良かった」 「何かてゐを見る視線が妙に生優しい上に微笑が果てしなく気にはなるが、これは一体どういうことなのか説明求む」 「てゐが起きたら礼言いなさいよ? 貴方が寝てる間、ずっと看てたんだから」 「俺、どのくらい寝てた?」 「……んー、一日半くらいかな?」 道理で外が暗いと思った。 「いや待て、考えてみりゃそれとこれと話は別だ。何で、てゐが、俺の腕に、絡み付いて、寝てんだ?」 「それだけ心配だったんでしょ。でもホント何があったの? 突然血塗れの貴方と半泣きのてゐを妹紅が抱えて来たかと思ったら、姫様とホーリーランドごっこ始めるし」 「ちなみに決まり手は?」 「クロスカウンター」 「引き分けか……」 流石にダブルノックアウトでは互いにリザレクションするまい。 「まぁ良いや、それらについてはまた今度聞くわね」 「おいおいな。ってオイ! さり気なくてゐに関する俺の質問に答えてねぇ気がするぞ!?」 「そういうのは、私から聞くんじゃなくて本人から聞きなさい」 鈴仙はクスクス笑いつつ、お盆の上の皿を俺に手渡す。 「すりリンゴ?」 「今の貴方にはそれが一番良いと思うわよ。それじゃ、私は出て行くわね」 鈴仙はそう言い、襖の方へと戻って行く。 「あぁそうだ、それと……」 「ぁん?」 「気付いてた? 貴方、何時の間にかてゐのこと呼び捨てになってるわよ。 今までずっと『ウサギちゃん』だったのにね」 「ッ!」 お大事にー、とにこやかに手を振りつつ鈴仙が襖を閉める。 くっ、この俺ともあろう者が鈴仙にからかわれるとは。 覚えてろ。何時か貴様のスカート全てにチャイナ服ばりのスリットを入れてやる。 と、俺が暗い覚悟を燃やしていると……小さな呻き声が聞こえた。 見てみれば、俺の腕に絡んでたてゐが目を擦っていた。どうやら起きたらしい。 ふむ……ここは一発爽やかにてゐを目覚めさせてやるとするか。 「よぉ、グッモーニン」 爽やかに歯を輝かせながらの俺の声に、てゐは目を見開き、勢い良くこちらを見つめてきた。 「あ……」 「?」 「ぷっ!」 突然、てゐが噴き出した。 「あはははははッ! 歯、歯がッ!」 歯? 「んがッ!? お、俺の歯が! 前歯がぁッ!?」 今気付いたが、上下の犬歯までの前歯が根元から全滅していた。 奥歯を噛み締めていてもあっかんべーが出来るという奇妙極まりない感覚が実に嫌だ。 「……そうか、あまりに衝撃的な一撃過ぎてダメージが完璧に麻痺ってたんだな。鬼の怪力、恐るべし……」 よくよく触ってみれば、俺の顔面は酷い有様だった。 まず、まるでミイラと見違わん限りに巻かれた包帯。 その上、鼻骨折れとるわ一部頬骨砕けとるわ瞼が一定以上開かないわと、我ながら何とも恐ろしい状態である。 何故か触ってみても痛みが無いのが殊更恐ろしい。 「永琳の薬の効果じゃない?」 ……包帯を解いた時、前の俺とは違う顔になってる気がしてならない。 しばしして、落ち着いてきたのかてゐが腕から離れつつ俺の横に座る。 少し残念だと思ったのは秘密だ。 「ねぇ」 「ぁん?」 鈴仙から貰ったすりリンゴを蓮華で掬い食べつつ、てゐの方を向く。 「2つ目の理由、あったじゃない」 「2つ目……あぁ、萃香に言ってたアレな」 何故てゐを守るのか、その理由を問われた時に返した言葉。 「……あれ、ホント?」 「あんなことをネタにして嘘付けるか馬鹿者。全部ホントだ」 「何で? 私が言うのも何だけど……貴方にそんなこと言われる権利なんて……」 「口開けぃ」 すりリンゴの乗った蓮華を片手にそう言い放つと、てゐは疑問符浮かべつつも素直に口を開ける。 てゐの口に皿に盛った大量のすりリンゴの方を流し込んでやる。 「もががぁー! ごぼッ! ゲホァッ! 何すんだコラぁーッ!」 「いょーし、それで良い。オメェに謙虚なツラなんぞ似合わねぇ。 良いか? 権利とかそういうのはこの際関係ねぇ。オメェが俺に何をしたかってのもこの際関係ねぇ」 蓮華のすりリンゴを食べ、空になった蓮華でてゐを指す。 「つーかむしろオメェ何かしたっけ? 覚えがねぇなぁ。記憶もねぇなぁ」 だって俺、一度も『誰が犯人か』言ってねぇしな。 あれ誰が犯人だったんだっけなぁ、殴られて思い出せねーやわははのは。 「というワケで、オメェがそういう態度だと色々覚悟して告った俺が馬鹿みたいじゃねぇか」 「格好良いこと言ってるけど、リンゴまみれだと格好付かないわね」 「オメェがやったんだろうが」 「そもそもリンゴ流し込んできたのはアンタでしょうが」 食べ物粗末、駄目、絶対。 「ハッハッハ、気にするな。あぁところで……」 目元のすりリンゴを拭う。 「何で俺の腕に絡んでたんだ?」 俺のスムーズかつナチュラルな会話の流れにあまりに感動したのか、てゐがピシッという効果音と共に動きを止める。 しばしの間の後、てゐが小さく呟いた。 「……怖かったのよ」 「怖かった?」 「見た感じ、まるで死んでるかのように寝てたから、生きてるってのを確認したかったのよ。 ……それで腕の脈、取ってたら眠くなって」 そのまま寝ちまったってワケか。 鈴仙は決して適当に答えてたわけではなかったらしい。 「落ち着くリズムだったんだから仕方ないじゃない!」 「何でキレてんだよ、ワケ分かんねぇよ!」 てゐッ! と真っ赤に染まるてゐの額に軽くチョップを入れる。 う゛ーー……と唸りながらこちらを睨んでくるてゐ。 何かムカつくので睨み返してみる。 「……」「……」 「ぷっ」「くっ」 「「あはははははははッ!」」 何時の間にか睨めっこになってたらしく、互いのすりリンゴ塗れの酷い惨状に同時に噴き出した。 「やっぱ駄目ね。アンタ相手だとどうにも緊張感無いわ」 「人に癒しを与える男だからな」 「笑えない冗談ね」 うわぁい、やっぱり口悪いわこの娘。 「そ・れ・で、こっちからも一つ聞きたいことがあるんだけど」 「何となく嫌な予感がするが一応聞こう、何だ?」 「良い勘してるわね。『言い訳』、で分かる?」 ―――後でしっかり言い訳してもらうわよ! 「あーあーあーあー、あれね。うん、まぁ不慮の事故だったっつーことで」 「それで済ませてたまるかッ! そ、その……初めてだったのよ! 不慮で済まされてたまるもんかッ!」 「じゃあどうしろっつーんだ」 「やり直しを要求するわ!」 ……。 「ワンモアプリーズ」 「やり直しを要求するわ!」 「正気か?」 「本気ならまだしも正気を疑うのはどうかと思うわよ、私は」 「それはその……えーと、『2つ目の理由』の返事と受け取って、良いのか?」 「……」 てゐは顔を真っ赤にして……小さく頷いた。 あ、その動作は結構キた。 「あー……まぁ構わんが」 俺の言葉に、更に顔を赤くするてゐ。 多分俺も顔が赤いだろうが……包帯してるので気付かれてはいないだろう。 「……今度はそっちからじゃなくて、わ、私からするから……ちょっと目を瞑っててよ」 てゐの言葉に頷きを返し、目を瞑る。 暗闇の中、てゐがスーハーと深呼吸しているのが聞こえる。 ……そんなことしてたらなおさら緊張するだろうに。 よしッ、という小さな呟きと共に吐息が近付いてくる。 そしてゆっくりと……自然に、自然に……重ねられる唇。 一瞬とも、数秒とも言える長いキス。 終わってしまうのが惜しくて、俺は……濡れた唇に、強く唇を押し付けて、体に腕を回す。 ……押し寄せる愛しさと生臭さ。 「生臭さ?」 感じた違和感と同時に回した腕も空振ったので、思わず目を開けると目が合った。 コイ目コイ科フナ属の淡水魚の総称。 すなわち、鮒(フナ)の目と。 「えいっ」 追い討ちをかけるかのように新鮮な鮒を顔面にぶつけられた。ベチンッと良い音がする。 「ふなぁぁぁぁあああああ゛あ゛あ゛ッ!」 劇的なまで淡水魚特有に生臭い! 包帯に生臭さが滲んで最早これは地獄だ、鮒地獄だ! 怒りが、命を懸けるほどの怒りが全身を! 「テメェコノヤロウ! これは決闘だな! 決闘の申し込みなんだな! ぶぶぶぶっ殺してやる!」 俺が布団を跳ね上げるのと同時に、てゐは襖を開けて脱兎の如く逃げ出した。 「あははははッ! やっぱこうじゃなくっちゃねー!」 「貴様にッ! 貴様に俺の大事なセカンドキスを鮒に奪われた気分が分かるか! テメェの唇も鮒臭くしてやる! 大人しくとっ捕まってその唇吸わせろ! キッシャーッ!」 そして誰も居なくなった部屋の中で、 一匹の鮒がビチビチと跳ねていた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 疾走する2人が廊下の角を曲がった直後、さっきまで彼らの居た隣の部屋の襖を開けて蓬莱山 輝夜と八意 永琳が出てくる。 「解かれてしまいましたね。姫の難題」 「客人でも住人でも侵入者でもなく『患者』として搬入される、無自覚の内に難題を解くってのも大したものよねぇ」 「それで、難題解決の褒美というのは何だったんでしょうか?」 「処罰の取り消しってのはどうかしら?」 「それは良いですね。でもその前に姫」 「何かしら?」 「鼻ティッシュは何ともなりませんか?」 「しょうがないじゃない。なかなか止まらないんだから」 そう言い、鼻に詰めたティッシュをフンッと押し込む輝夜。 もはや姫と呼ぶことすらおこがましいその動作に、永琳は苦笑いを返す。 ちなみに妹紅も同じように鼻ティッシュしたまま帰ったらしい。 物理的にも性格的にもメラメラ燃えている分、向こうの方が鼻血の出は良いに違いない。 きっと帰り道で出血多量で倒れてるだろうがリザレクションするのでなんら問題ありません、 と、その時…… 「やってくれたわね、御二人さん」 「あらこんばんは。子鬼さんと、霊夢」 声の聞こえた空を見上げれば、ゆっくりと降りてくる二つの影。 博麗 霊夢と伊吹 萃香は、輝夜と永琳に相対するように庭に降り立った。 霊夢がおもむろに、懐から一枚の折り畳まれた和紙を取り出し、 「『外から変わった人間が来てる。折角だから見に来ない? 蓬莱山 輝夜』」 広げることもなく読み上げる。 「アンタが手紙なんて珍しいとか思ってたけど、なるほど……萃香を呼び寄せるためだったのね」 「これだから月人は信用ならないのよ」 ふてくされる萃香の言葉に、永琳と輝夜はクスクスと笑う。 「まぁ、霊夢はこの時期、何かと機嫌悪かったしねぇ……性格上来ないとは思ってたけど」 「そう思うんだったら初詣に来て賽銭していきなさいよ」 「不死の私達にとって、一年の始まりなんて些細なものですわ」 「とか言いながら、年越し蕎麦とおせちが無かったら文句言いますけどね」 「美味しいじゃない、あれ」 「太るわよ」 霊夢のパスウェイジョンニードル並の一言は輝夜のハートを串刺しにしたらしく、彼女はがっくりと項垂れていたorz 「それだけじゃない。他にも色々と小細工してくれたようだな」 萃香が永琳を睨みつける。 「本来、あの人間の放った程度の煙幕なんて鬼には効かない。だからこそ2発目のダメージは予想外だった。 そう……まるで、炒った大豆をかぶったかのようだった」 永琳はその言葉に、ニコニコと笑みを浮かべたまま動じない。 「あの弾丸……2発目の弾に細工したな。 従来の粉末と炒った大豆の粉を入れ換えておく。単純ながらなるほど、鬼の私にとってはこれ以上ない効果だ。 そしてその入れ替えが出来たのは、あの人間から一時的に武器を預かってて……解析し、細工を行うだけの知能を持った者。 つまり……月の頭脳・八意永琳、アンタしか居ない」 永琳は微笑みを浮かべたまま何も答えなかったが、その沈黙が何よりの肯定であると如実に伝えていた。 「何でこんな事したのよ」 霊夢が、当然といえば当然の質問をぶつける。 「簡単よ。私達は永遠亭を提供し、何時も世話をしてくれたてゐに借りを返したかった、それだけ」 「でもそれが、何より難解な難題。私が出すような難題とは別の意味での……難題」 永琳と輝夜が交互に言葉を重ねていく。 「私達では彼女を幸せにする事は出来ない。 姫は永遠と向き合うこと、私は姫のこと、ウドンゲは永遠亭の皆のこと、それを最優先する。 彼女一人を優先するような人間は、彼女の周りに居ない」 「そう、あのイナバの能力は決して己が幸せになるとは限らない」 「例えば彼、○○はてゐと出会って幸せになった。僅か数日で永遠亭に馴染んだのがその証拠。 でも……その時点ではそれがてゐの幸せになるわけじゃなかった。 彼に自分のポジションを奪われかけ、あわや地上兎のリーダーとして威厳は失墜しかけた」 「でも、もし……彼が『あのイナバが幸せになること』に幸せを感じることが出来る人間ならば、 それは彼女自身も幸せになるという可能性はあった。私と永琳は、そこに賭けてみたのよ」 「彼がその人間であるという根拠はあったのかしら?」 「てゐと出会い、外に出るのではなく永遠亭に来たのがその根拠。 彼は竹林から出ることよりも先に、てゐを心配し探そうとした」 「ほんのちょっとの違いね」 霊夢の言葉に、チッチッチッと指を振って永琳は笑みを浮かべる。 「そのちょっとが大違い。 自分よりほんのちょっと他人を優先出来る程度の素直な馬鹿じゃないと、てゐを幸せにする事は出来ないからね」 「何しろ、あのイナバは素直じゃない嘘吐きだからねぇ。そのくらいがバランス良いのよ」 まぁ、今回は控えめだったみたいだけどね。と輝夜が袖を口元にクスクスと笑う。 それらを聞き、萃香が叫ぶ。 「じゃあ丸っきり私は当て馬ってことじゃないか! うっおーっ! くっあーっ! ざけんなーっ! 納得できるかそんなもーんッ!」 「あら、じゃあリベンジすれば良いじゃない」 「元よりそのつもりよ! こうなったら意地でもあの人間を攫ってやる!」 ……。 「三角関係?」 「意地になってるってところが無自覚っぽいわね」 「そこ! 何ヒソヒソしてんのよ!」 「それで、彼を外に連れて行くのかしら?」 縁側の隅っこでヒソヒソと話す霊夢と永琳にツッコむ萃香を華麗にスルーして、 微笑を浮かべる輝夜の台詞に、霊夢は肩を竦める。 「彼はもう、外の世界には戻れないわよ」 「あら、それはどうしてかしら?」 「何の能力も持たないただの人間が、どういう形であれ鬼と引き分ける。それは最早、立派な幻想なの。 幻想の人間と化してしまった以上、彼が外に戻るのは難しいわ。 博麗大結界は彼をここに押し留めようとするでしょうね」 「あら、それは大変」 「白々しい……ぜーんぶ計算づくでしょうに」 それこそ彼が来た時から今に至るまでね……と続け、2人を睨めつける。 その視線を受け、永琳は笑みを浮かべる。 「でも霊夢、一つだけ訂正させてもらうわね」 そして伝える。 「彼は外の世界に『戻れない』んじゃなくて、『戻らない』の」 彼が編んだ想いは、計算ではないのだと。 「彼にとって大切なものは、ここにあるんだから」 ――――――――――――――――――――――――――― 参考資料 ・機動隊万歳! ・我が青春の機動隊 ・幻想郷非公式ワールドガイド(仮) ・イチャスレ まとめのまとめ (特に『てゐ1』の項目は参考にさせて頂きました) ・winter scenery 同人誌『妖怪兎の歌』 (今回のてゐのイメージはこの同人誌よりお借りしました) ・100%東方カーニバル 『03.おウサ様がみてゐ【原曲:お宇佐さまの素い幡/出典:東方花映塚】 Arranger◎すぺらんかー+小宮真央[Silly Walker]』 (執筆時エンドレスBGM イ・ナ・バ(゚∀゚)テウィ!!) その他、様々なネタに関するサイト... (上記サイトは直リン可か分からないので名前のみ。・の横にある単語をググったらどんなサイトか分かります) ついでに ・実際に髪と眉以外の全身の毛という毛を剃ってみた俺自身のツルツルお肌 ・ここ最近の俺の昼飯、すりリンゴ ・滋賀県の郷土料理、鮒寿司 (匂いはきつかったけど美味しかったです。でも顔面にぶつけられたら多分殺意を覚えます)
https://w.atwiki.jp/thcm/pages/30.html
加入条件 解説 能力スキル ステータス コメント 加入条件 永遠亭後半でてゐを倒す 解説 種族:獣 地上の兎たちを纏めるリーダー兎。人間を幸福にする能力を持つが別にドロップ率が上がる訳では無い。 光属性の魔法と物理攻撃を持つ他に、マスターとしては珍しくコントロールランドを使える。モンスターの攻撃属性を見て、 予めランドを傾けておくのも面白い。またエリア・ヒールを持っているので掛けまくるとモンスターが死ににくくなる。 全体的にスキルのバランスが取れているので諏訪子が仲間になるまでの繋ぎ、もしくはこのまま最後まで使い続ける事も可能。 能力 スキル 名称 系統 消費MP 範囲 属性 説明 習得条件 通常攻撃 物理 0 単体 殴 必殺の前歯 物理 8 単体 斬 ダメージと共に即死を与える スターハンド 物理 4 単体 光 スターブレイズ 魔法 3 単体 光 サンシャイン 魔法 5 全体 光 強打 不死・妖怪ダメージと共に盲目を与える 焼き鏝 物理 4 単体 殴 ダメージと共に沈黙を与える ハードヒット 物理 8 単体 殴 威力と命中が高めの攻撃 スターライトウェブ 魔法 15 全体 光 エリア・ヒール 魔法 19 一列 回復 HPを回復 ディスペル 魔法 7 単体 解呪 能力変化を解除する Lv55? コントロール・ランド 魔法 36 ランド 指定のランドパワーを高める ステータス Lv HP MP 攻撃 防御 魔法攻撃 魔法防御 速度 回避 1 5 10 15 20 30 40 50 405 94 153 15 159 20 58 10 60 499 108 179 15 186 20 58 10 70 597 120 203 15 211 20 58 10 80 699 132 226 15 235 20 58 10 90 99 920 152 265 15 275 20 58 10 コメント Lv80 699-132-226-15-235-20-58-10 -- 名無しさん (2013-01-04 14 52 24) Lv99 HP920 MP152 攻撃265 魔攻275 速度58 防御15 魔防20 回避10 -- 名無しさん (2013-01-04 22 46 44) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kyougenshi/pages/210.html
因幡 てゐ(使用者) いたずらウ詐欺。 初出は第一篇 『異変』 -アクシデント-。 関連カード 使用者が因幡 てゐのカード 兎符「開運大紋」 兎符「因幡の素兎」 「エンシェントデューパー」 因幡 てゐのスペル・ドライブ 因幡 てゐに関連する効果を持つカード イラストのテーマが因幡 てゐのイベントエフェクト 参考 妖怪 兎
https://w.atwiki.jp/tsubaki/pages/88.html
・《因幡 てゐ》 ・《お宇佐さまの素い幡》 ・《巧言令色の素兎 因幡 てゐ》 ・《う詐欺 因幡 てゐ》 ・《迷いの竹林》 ・《月下の永遠亭》 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/tohonico/pages/47.html
因幡てゐ
https://w.atwiki.jp/touma/pages/278.html
何人かの方に wiki登録してないのね って言われたので とりあえずページ作ってみたうさー これからもよろしくうさっ 200戦したうさっ 長いようで短かったうさねぇ・・・ 永遠てゐ イメージ +... 1 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (wikitei1.jpg) 2 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (wikitei2.jpg) 地上の真っ白な兎うさ たまに 口調が うさ じゃなくなっちゃうけど 気にしないでくれると嬉しいうさっ 親切な方からアドバイスもらったから コメントつけてみたうさっ wiki開設おつかれさまっ よろしくおねがいしますねー -- さにぃみるく (2009-04-08 06 25 53) ありがとううさっ よろしくお願いしますうさー -- 永遠てゐ (2009-04-08 15 00 53) Wikiって、色んなことに使えますからね~・・・ 作ったからには、なにか遊んでみたいですよねっ(笑 -- リリー (2009-05-03 14 08 10) 名前 コメント カウンターもつけてみたうさー - 人が竹林で迷ったうさ そのうち - 人は わたしが帰してあげたうさ でも - 人は・・・ ちょっと言えないうさ・・・ 連絡先:Ay-and-Ty@live.jp (@は半角にしてほしいうさ)
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【種族】妖怪兎 【能力】人間を幸運にする程度の能力 【強さ位置】弱グループ 【設定】 幻想郷の中で最も長く生きている部類の妖怪。 1200年以上前の稗田阿一の幻想郷縁起の頃から確認がとれている。 野生の兎のリーダー格 (求聞史紀 てゐの項) 兎を捕まえていたら妖怪兎に見つかって報復される等、直截妖獣に手を出さなくても被害を受けてしまう事もある。 (求聞史紀 妖獣の項 妖怪兎関連) 一見ただの獣。(てゐの項には、人型なことが特筆されている) 大抵は何らかの獣が元になっていて、姿も性格も能力もその獣の影響が強く見られる。 身体能力の違いから、正攻法では圧倒的に人間は不利である。 一般的に知性に欠ける事が多いので、人間が仕掛けた罠にまんまと嵌まる事が多い。 兎取りの仕掛けに引っ掛かっている事すらある。 (求聞史紀 妖獣の項 妖獣全般の解説) ああ、兎肉は淡泊だからどんな味付けにも合うよ (香霖堂店主) 兎肉は幻想郷では人気の高い食材の一つである。 *2 かくいう私も大好物。 兎を罠にかけても、中々妖怪兎は掛かっていないんだよね (匿名) 流石に、妖怪兎となると智慧がある。 (求聞史紀 てゐの項 目撃報告例) 永遠亭には輝夜の能力&永琳の仕掛けによる「永遠の魔法」が掛かっていて 歴史になるような出来事は起きないようになっていたのだが、 てゐは永遠の魔法を突破して永遠亭に入り込み、 竹林の警備などを対価として兎に智慧を与える契約を永琳に持ち掛けた。 てゐが永遠亭に入ることが出来た理由は永琳にさえ未だに判っていない。 てゐは只の妖怪兎ではないことは明らかであった。地上の兎はてゐの言うことなら何でも聞いた。 本人を見ていると何の威厳も感じられないが、大量の兎を自由に操る姿はどことなく仙人を思わせる。 永琳「うふふ。残念ながら、私の言う事も聞いてくれないわ。」 「地上の兎達はてゐの命令しか聞かないの。」 「ここは見つかりません。てゐが月の使者を寄せ付けないようにしてくれているのですから」 (儚月抄 小説1話) 赤い瞳は地上の兎の何倍もの狂気が宿る もう、兎の逃げ足の速いこと速いこと。兎の生態でも記事にしようと考えたのですけど、 あちこち飛び跳ねるもんだから狙いが定まらなくて・・・ (ゲーム文花帖 文のコメント) 花映塚EDで寝込んでうわ言を言っている。永琳の診察によるとメディからの毒は寝込む程強くなく、映姫の説教による精神的なショックが原因。寝込んでいるとは言っても意識はあり寝たふりのうわ言で人参ジュースを要求したが、気を失っているという前提で偽薬のうどん粉が用意されて涙目という展開に。 (花映塚 てゐED) 妖獣は精神的に強いとされているので、気を失う程度ではないにしろ布団にこもる程度の精神的ショックを受けてるいることはマイナス要因と考えられる。 【能力概要】 幸運の程度は「四十葉のクローバー」くらい (求聞史紀) 足元のクローバーが全て四つ葉のクローバーになったりしている (花映塚) 竹林に迷った者が、たまに彼女の姿を見かける事がある。 彼女の姿を見ると必ず竹林から抜け出せると言われていた為、彼女は迷いの竹林の道案内役だと思われている。 実際は、彼女から貰った幸運をそんな所で使ってしまうのはもったいないのだが、人間は気が付かない。馬鹿だから。 (永夜抄) 【各種要素をふまえての強さ議論】 元ネタの因幡の素兎を考えると100万年以上生きる幻想郷屈指の大長寿妖怪兎。 ただし来歴が全て元ネタ通りであるとする明確な設定はない。 戦闘とは関係のない、所謂「格」や「地位」に関するプラス設定はたくさんあるが、直接戦闘に関わるプラス設定の方はあまりない。 幸運能力について「相手が人間の場合、能力で強化してしまうという性質がマイナス要素となるのでは?」という意見もあるが、 現在のところ、てゐの能力は本人の意思と無関係に発動してしまうのかは不明であり、 実際にてゐが対面した敵を自分の意思とは無関係に強化したという描写はない。 「一般妖怪より弱いとするマイナス設定が無いなら、一般妖怪レベルである普通グループ2に上げるべきでは?」という意見に対しては 花映塚で説教の精神的なショックで寝込んだことや、メディスンの毒で唯一、息切れを起こしたこと(原因が心毒性やパニック発作によるものかは不明) また、三月精で毒と見抜けず、チョウセンアサガオの葉を僅か四分の一枚ほど食べただけで中毒(嘔吐)を引き起こしたことが挙げられている。 (※人間の場合、チョウセンアサガオで中毒症状があらわれるには体重50㎏の小柄な大人で5枚ほど必要とされる) さらに、妖怪兎は普通の兎用の捕獲罠にかかることがあり、その際自力での脱出が出来ないことが判明している。 このことは知能や体力の低さを示すもので、咲夜や慧音など種族補正が大きく影響しているキャラが存在しているため 簡単には無視できないマイナス要因であると思われる。 以上のことから妖獣であるにもかかわらず、心身の弱さが指摘されているので普通2グループへの昇格は難しいのではと考えられる。
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てゐ9