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銀座ろくさん亭 六三郎のまかないカレー メーカー 大塚食品 内容量 220g 熱量 194kcal 辛さレベル ? 購入価格 200円台 かの道場 六三郎の名を冠したレトルトカレーです。 が、、、、ん~どうだろ? 食べた後に、妙にしょっぱさが口に残りました。 「ご飯はもちろん、うどんともよく合います。」とのコメントもあり、「おいしいひと工夫」としてもパッケージ裏でカレーうどんが紹介されていますが、実際、カレーうどんのカレーの味。 むしろご飯だとあっさりすぎるような気がします。 カレーうどんのほうが美味しいかも。 でも、やっぱりしょっぱい??? カレーらしい辛味も、まろやかなコクも、ほとんどないです。。。 あくまであっさり系? あ、ひとつあたらしい発見。 これも、ボンカレー同様、袋のまま電子レンジで温められるタイプですが、実はお湯でも温められるんですね。 それは便利! 一言評 ろくさん亭、、、カレーうどん用? 記: 2009/06/16 .
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「―――うそ、だろ?」 青年の眼の前には一人の男と、四人のよく知った―――いや、青年にとって掛け替えのない仲間が横たわっている。 「―――何を、した」 聞く必要はない。聞かなくても青年は理解している。 「見て解らんのか?」 男は、そう口にした。見て、何が起きたかを理解できないのか、と。 解る。 青年に解らないはずがない。 だが、認めたくはない。 それを、認めたくはない。 答えを、認めたくはない。 「何をしたって聞いてんだよぉおおおッ!!!!」 知らず、青年は叫ぶ。それは、認めたくない故の。叫ばないと気が触れてしまうから。 「―――知れた事。ただの初期化に他ならん」 男は青年の叫びを意に介さず、そう口にする。 「ふざけるな・・・。なんの、どんな理由があって貴様にそんな事をする権利があるってんだよぉ!!」 なお叫びながら、青年は静かに、冷静に『能力』の発動準備に入る。 「―――理由など無い」 「理由もなく、貴様は、貴様は―――」 青年は横たわる四人の掛け替えのない仲間を見据える。彼らは、もう、何も言わない。動かない。 「―――あいつらを殺したのか」 「まぁ、強いて言うならば・・・そうだな、それが私の 俺の 僕の 我の為すべき事というだけだ」 「あぁ、解った――――貴様を殺す」 ――キュンッッッッ!!!! 【荒嵐風神】 風を繰り、嵐を従える能力。 今放たれたものは、亜音速に達する真空の刃。その数は十二。 男を目掛けて、事実上不可避の真空の刃が襲い掛か――― 「ふむ、忠告が遅れたか」 「――――ッ!?」 ―――らず、男は青年の背後から声をかける。 ギャギャギャギャギャギャッッッ!!!!! 真空の刃は、男が立っていった空間を切り裂き、霧散する。 そう、男 が 立 っ て い た 空 間 を 。 「私を 俺を 僕を 我を 殺したいと思うのは君の 貴公の お前の 貴様の勝手だがな。能力を使わずに戦った方が勝機は得やすいと思うが―――まぁ、過ぎた事。存分に初期化されよ」 だが、青年の反応も然るもの。この事態に『能力』を行使し、振り返りざまに風弾を放つ―――よりも速く。 「―――があっ!!!」 電撃が、青年の身を焦がす。 それでも咄嗟に転がりながら距離を取る様子で、青年の戦い慣れというのを窺う事ができる。 事実、青年とその仲間達はこの界隈ではそれなりに名の知れたチームだった。もっとも、正義を馬鹿にし悪を笑うという類のものだったが。 「電撃の能力者・・・?」 青年は呟き、即座にそれを首を振って否定する。 確かに、男の放ったものは電撃の他にないがそれだけでは真空の刃を避け、青年の背後を取る事はできない。 そして、青年は一つの答えにたどり着く。『自らを電撃と化す』能力者だ、と。 「いや、自らを電撃と化す能力は未だ私の 俺の 僕の 我の内には無いぞ」 男は、青年の心の内に答えるかのように。 「・・・・・・未だ? まさか、いや」 「―――どれ、こうか?」 男が俺に向かって手を翳すと ―――キュンッ!!! 「!! くそっ!!!」 飛んできた真空の刃を咄嗟に嵐壁を呼び起こして防ぐ。 「今のは、俺の―――」 これでも何度も能力者と戦ってきた事がある。似た能力ならばその中で何度か見た。だが、今の能力は、威力こそ低かったが確かに俺の、 「別段驚く事でもあるまい」 驚かないはずが無い。あれは俺の能力。唯一無二の、俺の【荒嵐風神】。 「そもそもな。君に 貴公に お前に 貴様に出来ることが他人には出来ないと―――」 言葉の途中で、男は俺の視界から消え。 「―――何故、決め付けるのだね?」 トス、と。 音のした方向を見てみれば、 「――――え、」 胸から、刃物が、突き出ていた。 「―――――――こふっ」 喉に、鉄の味がせり上がってきて、ぱしゃぱしゃと地面に鮮血が降る。 「ふむ、そこのとは違い意外と頑丈だな。多少は、誇っても構わんぞ」 「ふざ、ける―――」 俺の背後から刃物を突き刺したという事は、至近距離に男が居るという事に他ならない。 だから、言い終わるより速く。速く。速く。 「―――なぁぁぁぁぁああああああっっっっ!!!!!」 ―――キュガ、という音。 自己の中心から外へ向けて【荒嵐風神】による真空の刃を四方八方三六〇度へ乱射出する事実上回避不可能の無差別絶対必殺攻撃結界。 その名『吹き荒ぶ凶陣』。 それに喰い付かれたが最後、人は人の原形を留めずに死を直視する―――の、だが。 男は、それを直視し。 ―――ザクンッ! 「―――な!?」 青年は驚愕する。 「―――ほう、私の 俺の 僕の 我の腕を喰らうか」 原形を留めずに死に至る必殺を右腕が千切れる程度の損傷で切り抜けた事を。 「さすがに、全天無作為攻撃全てを避け切る事は適わんか・・・。まぁ、この程度の損傷ならば是といった所よな。しかし、腕が無いのは存外バランスが取り辛いか・・・。ふむ・・・」 男は千切れた右腕を拾い上げ、切断面を合わせる。すると、まるで、時間が巻き戻ったかのように右腕が接続される。 「―――ッ!」 青年の、幾度目かの驚愕か。信じれない。信じたくは無い。目の前の男の能力はなんだ。電気に類するモノではないのか。一体なんなん――― 「ま、さか・・・」 そして、青年は思い至る。一つの能力のカテゴリーに。 そのカテゴリーは最強の一つとされるもの。他者の能力を複写し、自らの能力として扱う稀少能力。 「少し違うな。私の 俺の 僕の 我の能力は他者の模倣だ。複写ではない」 刹那。 ザクン、と。 音を立てて。 「な――ん、」 ゴトリ、と。 音を立てて。 「―――複写と模倣の違いを理解できぬ塵芥が多すぎるな」 男が口を開く。 青年の身体は直立のまま。 「今のは 君の 貴公の お前の 貴様の能力と他者の能力の複合に拠るモノだ。どうだね、君の 貴公の お前の 貴様の能力よりも切れ味が良かったろう?」 首は、男の足元に。 「しかし、まぁなにかね。人の話の途中に死ぬのは如何なものかと思うがね」 男はカカカ、と笑い声を上げ、それらを初期化した―――。 一刻の後。 その全てを見届けていた一羽の梟が男の頭へと着地する。 「――ホッホゥ。まぁ、殺しつくしたのう」 「アレらも元は実験体の端くれ、もう少し強度は高いと思ったんだがなぁ」 「死体はあのままでよいのか?」 梟の視線の先には肉の塊。元々何人居たか解らないほどにぐちゃぐちゃな肉の塊。 「――あぁ、あのままで構わん。不出来では在るが初期化は成った。然すれば誘蛾の一つにでも為るだろうさ」 男は笑う。 カカカカカカ、と。 こうして、日常の1コマは終わりを告げる。 ―――さぁ、明日もまた日常は続く。
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946 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/12/23(水) 18 44 50 ID ??? アムロ「ううっ……!こ……ここはどこだ!」 (拘束されている……灯りはないのか?部屋は真っ暗だ) ブライト「アムロ!その声はアムロだな、お前もここに連れ去られたのか」 アムロ「ブライト!?なぜ俺たちを」 X総帥「お目覚めかね、我が町最強のパイロットと名艦長たちよ」 アムロ「!!」 ブライト「!!」 アムロ「何者だ!」 X総帥「我々は猛魂戦隊ヒタイダー。日夜長い友を守るために戦っている」 ブライト「ヒタイダーだと!」 アムロ「名前は聞いているが、ヒタイダーが俺たちに何の用がある! 俺はシャアほど生え際が後退してもいなければ、親父の髪に絶望もしていない!」 ブライト「私も歳を取って髭が生えたぐらいで、髪の毛の後退など全くないぞ!」 X総帥「フフフ……だが知っているのだよ、君たち二人が力を合わせれば…… 後頭部はフサフサ、額はツルピカ、究極猛魂戦士ヤム飯に変身できることを!」 ブライト「ま……まさか!!」 アムロ「なぜ漫画版以上の黒歴史を!!」 X総帥「断ると言われれば無理にでも力を貸してもらおう!」 ブライト「い、いかん、アムロ」 アムロ「あれを……やるしかないな!」 X総帥「フフフ、出るかフュージョン……だがそれはこちらの思うつぼだ」 アムロ&ブライト「「燃えろ、俺の小宇宙よ!!」」 X総帥「え……」 トレーズ『ニュースエレガントの時間です。今日夕方、ヒタイダー本部ヒミツの園でまたも謎の爆発が起きました。 今度もヒタイダーは集合しておらずに無事でしたが、再建した本部は再び壊滅し 当直の職員が光速拳に巻き込まれて吹き飛ばされ全治100レスの重傷を負いました。 また今回の事件については悪い夢だったとして無かった事にされる動きも……』 ミネバ「アフロが治っておらんのに包帯グルグルになっておるぞ、マリーメイアの父上」 プル「あはははは、ミイラ男みたい~」 マリーメイア「見ないでっ!見ないでください!!」 プルツー「……入院しなくていいのか?」
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ステータス 初期値 LvMAX スコア 77 1302 スキル縦ライン状にぷちぐるをまとめて消すよ 必要ぷち数 34 34 効果範囲 S- LL- 特技ショータイム中のコンボ数が追加されるよ 発動確率 5.0% 100.0% 効果 100.0% 100.0% スキルLv 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 必要ぷち数 34(変化なし) 効果範囲 S- S S+ M- M M+ L- L L+ LL- 必要スキルExp - 1 1 2 3 4 5 6 8 10 (累計) 1 2 3 5 8 12 17 23 31 41 入手方法 ガチャで入手 【えらべるチケット】(それは僕たちの奇跡)と交換 解説 スキルの基本的な使い方に関しては、「スキル 特技」内の解説項目を参照。 スキル文章からは分からないが、消去範囲は盤面の左右両端である。 つながっていないぷちぐるが集まりがちな端を重点的に消せるのが強みだが、 まとめて消した際に出現するボムが画面端に寄ってしまうという欠点もある。 スキル演出はアニメ2期オープニング「それは僕たちの奇跡」の振り付けから。当該シーンは「ほのクロール」とも呼ばれる。 ボイス パズル開始 パズル開始だよ! パズル終了 パズル終了だよ! ショータイム ショータイム! スキル 夢をかなえよう! 特技 助けに来たよ! ミッションクリア やったね!
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2009年7月20日 締 切 新聞論評 学籍番号1914078 氏名 [[水長一輝] 1.新聞情報 見出し 民主300超 政権交代 発行日 2009年08月31日 新聞社 日本経済新聞、朝刊 面数 1面 2.要約 第45回衆議院選挙は30日投票、即日開票された。民主党の獲得議席は定数480のうち300を超える圧勝の勢いで、政権交代が確実となった。民主党の鳩山代表は9月中旬に召集を予定している特別国会での首相指名選挙で首相に選出され、社民国民新党との連立政権を発足させる。(124文字) 3.論評 1955年の保守合同以来、形は変えては命脈を保ってきた自民党政権に終止符が打たれた。劇的な政権交代なのに、世間はどこか冷めきっている。冷戦構造が崩れて20年、戦後日本の成長モデルそのものといえた自由民主党に、有権者は強烈な「ノー」を突きつけ次の4年を巨大民主党という未知なる「非自民」に委ねた。今回の選挙の結果に比較的冷静なのは、4年前の郵政選挙の経験があるからであろう。当時の小泉首相は郵政民営化に賛成する革命派と、これに反対する勢力を分類することで「自民対民主」ではなく、「自民対自民」の選挙構図を作り出して圧勝した。 民主300越えて政権交代になったが私自身、鳩山代表には期待していない。なぜなら、マニュフェストを発表しているが原則守るみたいなことをいっている。高速道路の原則無料化なんて出来たとしても、今まで高速道路のでの収入は約2兆円だ。日本はそもそも借金大国で今の政治家は考えることがおかしすぎる。高速料金を無料にすることによることにより、今まであった約2兆円のお金を補う為には消費税をあげて国民の負担になることは間違いないであろう。消費税を上げるなら、医療機関での治療を更に安くするべきであると私は考えている。政権交代をして、鳩山代表がどこまでマニュフェストを実行できるかが楽しみだ。 (542文字)
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「思えば先輩と二人で話すのは随分と久しぶりね。ここへ来るのは尚更」 俺高坂京介が後輩であり友人でもある黒猫こと五更瑠璃と、この校舎裏を訪れるのは半年ぶりにもなる。 思い出深いには違いないが…ここで最後に交わした会話が会話だったため、自然と足は遠のいていた。 あの夏の日。彼女が精一杯に投げかけた呪いは今も生きている。 たとえそれが彼女の望んだ形で結実しなかったにせよ 「そんな暗い顔で黙り込むのはどうかしら、先輩?」 「あ、あぁ。悪い。このシチュエーションが何ともな」 俺がつい正直な気持ちを吐露してしまうと、黒猫は珍しく目を細めて苦笑った。 「貴方がナイーブになってしまうのも理解できるけれど。私は悪くない気分よ。不思議と」 「そいつは、なんでだろうな」 「そうね…言えばまた貴方を困らせてしまうのかもしれないけど。 先輩への気持ちが、あの時と変わらず、小揺るぎもしていないと実感されるから。というのはどう?」 「…ロマンチストだな、黒猫は」 「恋をする人は誰であれロマンチストになる、みたいな文言が昔の小説にあった気がするわ」 春まだ遠い季節を感じさせる一陣の風が吹く。 その風に乗って今にもフワリと宙に舞いそうな、妖精じみた軽妙さをもって黒猫は続けた。 「そろそろ話とやらを聞かせてもらえる? 此処でないと駄目って話じゃないなら、正直屋内に戻りたいもの」 昇降口まで引き返してもいいんだが、果たして彼女が俺の報告を冷静に受け止めてくれるだろうか? といった旨を遠回しに伝えると、 「愚問ね。聞きもしないうちから何ともコメント出来ないわ。勿体ぶるのはやめて頂戴」 アッサリ切り捨てられてしまった。 確かに…いつまでもウダウダと足踏みしてるわけにはいかないんだ。 俺の手前勝手で、恐らく黒猫にいつかと同等の落胆を強いることになるだろうが。 気が重いからって後延ばしにしても仕方がない。決めたんだ、今日話すと。だから―― 「今日はよろしくない報せを持ってきた」 「そのようね」 「話して、お前を怒らせるか、あるいは『また』傷つけちまわないか、どう切り出したものかわかんなくてな」 「そう。見るからに気が進まないって顔してたから、薄々察しはついていたわ」 「この期に及んで…とは思うが、一つ確認させてくれ。桐乃から事前に何か聞いてるか?」 「いいえ。これから聞く話についてあの子が仲介に入ろうとした節は見られたけれど。貴方から聞かせて」 黒猫のいわく勿体ぶった手順を踏みながら、俺はなけなしの覚悟を振り絞りようやく核心に触れる。 「差し向かいで伝えるのもどうかと散々迷ったんだが………… 俺、好きな奴ができた。そいつと付き合おうと思ってる」 時が止まったかと錯覚させるような長い沈黙が… 降りなかった。 「そう。そんな事だと思った」 「ってえらい淡白なリアクションだなぉぃ」 「私が我を忘れる程ショックを受けるとか、取り乱すのを想像していたのかしら。お生憎様」 フフッと思いもかけない微笑を浮かべ、黒猫は言葉を継ぐ。 「驚きはあるわ。ショックも、無くはない。 けれども今は先輩の心を見事に掴んだ件の人が誰なのか、そこに尽きる…というところね。 『妹を幸せにしてやれると思える相手が現れるまで、俺が恋人をつくるわけにいかない』 …あんな見栄を切った貴方に心変わりさせるなんて、大したものじゃない。 私に出来なかったことを成し遂げたのは、順当にいくとベルフェゴールかしら。 それともまさか他でもないあの子自身だったりするの? 駄目よ先輩、シスコンは許されても近親は許されるものではないわ」 一気呵成に言い切る様子に、平静を装おうとしていた黒猫の動揺が見て取れた。 「…そこで黙り込まないでくれる? 変に真実味を漂わされても困るわ」 「いや、ねーよ。桐乃とは相変わらずだ。知っての通り、な」 もっともその桐乃が意外にも俺のことを慕ってくれていたという事実が表面化したのは極最近だが。 閑話休題 「まったく貴方たち兄妹には何かと振り回されてばかり。今更言うのも…今更だけれど」 その点について俺なんか桐乃の足元にも及ばないだろう。が、ここで混ぜ返すような台詞は命取りか。 「それにしても私としたことが先輩の『そういう』心情を見誤るだなんて、正直とんだ誤算ね」 「――そういう、とは?」 「皆まで言わせないで頂戴。自他共に認めるシスコンの貴方が、私を袖にした理由でもある妹との約束を反故にしてまで、特定の女子と親密になる…そんな事は当面なさそうだという考えが根拠の薄い思い込み、単なる希望的観測でしかなかったってお話よ」 「黒猫、あのな、ちょっと落ち着」 「これが落ち着いていられるものですか、貴方に言われたくないわ」 そーですね。 滅多なことを言って火に油を注ぐ結果になってもたまらん。彼女の言い分を聞こう。 ふぅ……と、黒猫は大きく息を吐いて呼吸を整えた。 というよりは猫が怒気を含ませた声を静かに響かせる様にも似て見えるのは気のせいか 「お前の指摘はもっともだ。自分から課した制約を簡単に覆して、見損なったってのは妥当だな…しゃーない」 そこは責められて然るべきだ。そのために俺はこうして彼女に話している、ような側面もある。 懺悔ではないが…告解に近いかもしれない。その相手として黒猫以上に相応しい人物はいまい。 なんとまあ勝手な動機じゃないか、俺。 「間違えないで。見損なったとは言っていないわ。むしろ見くびっていた認識を正された、というところかしら」 「見くびるて…」 これまたレアな表現が出た。こうもストレートな毒舌は実に久しい。 「先輩ほどの兄馬鹿なら、あの子に良い相手が現れるまではと、本気で約束に身を捧げそうに見えたのよ」 さいですか。 そりゃ慧眼、ご明察だ。 あの当時、たしかに俺はそういう心積もりだった。 決して軽い気持ちで桐乃と約束をしたわけではないし、 黒猫の告白を断る際に引き合いにしたのも口実なんかじゃなかった。 それが僅か半年でこの様なんだから、何ともはや。 「だから私は耐えられた。あの子に良い相手が…なんて、それこそまずあり得ないと思えたし。そのあいだ先輩が保護者の努めに徹するのであれば、私の気持ちを受け入れてもらえる機会はいずれ巡ってくると希望を繋いでいたというわけ……都合の良い解釈。そこで待ちの姿勢に入ったのが今回の敗因ね」 「耐えられた、か? でもお前、あの時――」 「忘れなさい。」 「…はい」 「それで先輩。いよいよ疑問なのはどうしてその話を私に告げる気になったのか、教えてもらえる?」 振った私への責任や誠意とか抜かすなら温厚な私も手が出るかも、と威嚇される。 それを微笑して言う今日の黒猫は怖えぇ 先ほど思い浮かんだ通りに弁明する。 弁明?違うか? 無論黒猫のためではなく、こればかりは加奈子のためでもなく、俺自身が話さないと収まりがつかなかったから。 それだけだ。そう伝えた。 「悪い。勝手で」 「そうね、すこし呆れたわ」 「だろうよ」 「でも…」 「でも?」 「言ったでしょう、それだけ、あの子と同等以上に先輩の心に大きな位置を占める誰か…興味深いわ」 ベルフェゴールでないなら是非紹介してほしいものね、と冗談めかして言う黒猫の瞳はどうやらマジだった。 さて、どうしたもんか。 二人を面通しするのは別に悪くない。が、黒猫は加奈子に会って何を話すというのだろう。 ……うん? そういえば 「待てよ、会いたいてんなら俺から渡りをつけて紹介はするけどさ。お前、今日はバイトじゃなかったか」 「あら。よく憶えてるわね」 「仕方ない、時間に余裕のある日に改めて 俺の台詞の終わりを待つことなく黒猫は素早い所作で携帯を取り出す。 呆気にとられていると、電話の相手へ丁重に欠勤を断りお辞儀を添えて速やかに携帯を閉じた。 ぱたん。という音がやけに耳に残る。 「時間は出来たわよ、先輩?」 「…みたいだな」 涼しげに言ってのける黒猫に気圧されそうになりつつ、こちらも加奈子に都合を聞くべくメールを入力する。 「鉄は熱いうちに打て、か」 別段問うでもない呟き。だが黒猫の耳には届いたらしく。 また今度という類いの話でもないでしょう、と呟き返す声音に迫るものが感じられた。 「悪い、バイト無理に休ませるような形になって」 「そこまで気を使わなくていいけれど。無理を言い出したのはむしろ私なんだから」 「そか。そういや、黒猫でも電話越しの相手にお辞儀したりするんだな」 「露骨に意外な顔をしないでもらえる? 不躾な連絡をする以上、これくらいの弁えは当然よ…」 ついさっきは相当感情的になってたかと思えば、これだ。 この切り替えのよさがいかにも彼女らしく見えて、なんだか、やたら感心させられる。 加奈子から折り返しの電話で了解の返事を受け、軽く飯でも食らいながら話そうという流れになった。 それまでに道すがら外堀を埋めておかなきゃならんか。 そんなことを思案しつつ下駄箱で靴をかえ、改めて黒猫と合流する。 が、適当なきっかけが出てこない。 こんなとき自分の不器用さが実に恨めしい。 内心で身悶えしていると、知ってか知らずか黒猫のほうから会話を振ってくる。 「さっきの…」 「うん?」 「カナコといったかしら、電話で話してた子」 「あ、聞こえてたか」 「ええ勿論。先達ての、貴方が身を呈して助けた子だったわよね」 「そんな大袈裟なもんでもねーけど、な」 あれから一月余り。色々ありすぎてもう俺の中では『そんなこともあったっけ』程度の過去となりつつある。 結果的に腕の傷も大して尾を引かずに済み、その後の環境の変化に振り回されたのがよほど印象強い。 一瞬これまでの回想に浸りかけていると 「あれから随分と足繁く御見舞いに通っていたと聞いたわ。それが決め手になったの?」 「いや。直接そうってわけでもないかな」 「そう」 すぐに途切れる会話。訪れる間。 わかっちゃいたが気まずいこと甚だしい。 「あの時の」 「…何?」 「くれた上着、助かったよ。ありがとうな」 「お礼は二度はいいのよ。どういたしまして」 下心も少しは縫い込められていたのだけど、気付いてもらえなかったのは良し悪し… そう続けて黒猫はこれ見よがしに溜め息を吐いた。 「遠慮しないでもっと積極的に絡んでいくべきだったわ。もしかして鳶に油揚げをさらわれるのを防げたのにね」 フフッとまた例の微笑から発せられる語りに、どうも居たたまれない気持ちになる。 微妙に屈折させちまったかと不安を煽られるんだが。杞憂であってほしい。 「たしか名前は来栖加奈子だったわね。何度か話は伝え聞いているから朧げに人物像は描けているのだけど」 「直接の面識は無いんだっけか?」 「ええ。イベントで外見や声は知ってても、知った相手とは言えないもの。単純に会うのが楽しみな面もあるわ」 そういうもんか。 楽しみな面もて、それ以外にどんな側面があるのか訊ねるのが躊躇われる。 変に縺れて修羅場ったり…まさかと思うが…キャットファイトになったりしないだろうな。 いやいや。ンな馬鹿な。 ふざけた妄想を拭い払う。自意識過剰だろう高坂京介。 「それで彼女はどういった子なの、先輩から見て」 「どういったと言われてもなぁ。少なからず贔屓目は入っちまうぞ?」 「構わないわ」 そうさね、言うなれば―― 「桐乃に似たタイプかな。あいつからオタ趣味と秀でた運動神経と学力と文才と要領のよさを取ったような……で、残ったワガママさと口の悪さと手の早さ、傍若無人でガキっぽいところが共通項だと思う」 「こ、恋人になろうって相手にひどい言い草ね? それじゃあ私は何故遅れをとったのかわからないわ…」 「はて」 事実そんなんだが、まぁこの説明で納得いかんのは当然か。 それにしたって、俺から見て加奈子がいかに魅力的かと黒猫に語るのは…憚られる。 「結局のところ、百聞は一見に如かずってわけかしらね」 先輩があの子に似た子を好きになったというのは癪だけど。 半眼を作り、これでもかとジト目を向けてくる黒猫の視線が痛い。 ああ、そうとも。そこは俺だって…俺たちだってと言うべきか…気にしてはいるんだ。 デリケートな部分だから正直触れてほしくない。そうもいかないか。 「そういうことなら、あの子の心中もさぞ複雑でしょう。こうして私に話す前からだいぶ込み入ってるようね」 お察しの通りである。 遠目にマツキヨの看板が見えた。待ち合わせの店は近い。 途中また黒猫が電話していたため、加奈子のが先に到着してるらしい。 「にしても。なんで定食屋をチョイスするかな~」 カフェでもマックでもいいじゃねえかと、場所を決める前に黒猫にも同意を求めたが 「私もいまは御飯の気分ね」と多数決が下ったのだった。 そんなにガッツリ食って何に備えるつもりなんだ、お前ら…? 入口をくぐると少し奥まった席に見知った後ろ姿が確認できた。 携帯を片手に、鼻唄を口ずさんで、まぁ随分くつろいだご様子。 曲調からするとメルル関係じゃないようだ。 そりゃそうか、聞く限りしばらくは公式イベントもないしな。 席へ向かうべく黒猫を促そうとすると、何か衝撃的なものを見たような表情を浮かべていた。 「ど、どうしたんだよ一体。いきなりそんな顔して?」 「いえ……ちょっと以前の私とダブって見えてしまって。あんな風に見るからに人待ち顔で、期待をもて余して歌なんか唄って、周囲の人間に気恥ずかしい思いを伝染させるような……穏やかで、幸福の、恋の空気。聞いてた感じと違うのね、当てられてしまうわ」 そう言いながら上着を脱ぐ黒猫には、先ほど危惧された屈折は見られない。 俺にはイマイチ窺い知れない心境の変化があったのだろうか。 加奈子はまだこちらに気付いていない。挨拶にかえて、おもむろに頭をわしゃわしゃとやってやる。 「ぁにすんだよゴルァ##」 言うが早いかすかさず放たれたバックブローを避けつつ、今度こそ加奈子に声をかけた。 「よう、お待たせだ」 「んぁ…京介」 俺を認識した加奈子はさっきの剣幕を引っ込め、苦虫を噛み潰したような顔。 継ぐ言葉に迷ったらしく「うぃっす」と短く挨拶を済ませ、続けて曰く 「そいつ……誰、さん?」 と訝しげに訊いてくる。そういや、細かい話はまだだったっけか。 「紹介しよう。今回の依頼人、もとい後輩の黒猫だ。同じ部活の仲間でもある」 「はじめまして、来栖さん。でいいかしら」 「あぅ、はじめまして」 差し出された手を握りながら、加奈子は疑問符を露にする。 漫画であれば文字通りハテナマークが飛び交ってるところだろう 「えぇと、黒猫?…かわった名前だな…京介から会わせたいやつがいるって聞いてたんだけど、どんな用件?」 状況を飲み込めない加奈子は、俺と黒猫と交互に視線を寄越す。 どんな用件かと訊かれても、俺だって説明の言葉は持ってないぞ。 「用件ってほど大層なものじゃないの。ただ」 黒猫はそこで台詞を区切り、こちらへ一瞥をくれた。 「シスコンの先輩が近頃は別の子に御執心らしいから、よければ話をしてみたくて」 「……ふーん。そなんだ」 格別当たり障りない応対に思えたが、何か気になるところでもあったのか。加奈子はすこし言い淀んで、返す。 「なぁ、京介ってば、そんなに加奈子にゴシューシンだったわけ?」 「ええ、それはもう。本人は半端にクールぶってるつもりか知らないけれどね」 「あのなあ」 黒猫め、ここへ来て意趣返しとばかり俺をからかい倒す気か? まぁそれで幾らか気が紛れるなら、抵抗もしづらいが。 一方の加奈子はというと「へぇ~」だの「そっかぁ」だの、黒猫の言葉を額面通り受け止めてやたら嬉しそうだ。 単純なやつ。見てるこっちが照れ臭くなるっつーの。 なるほど、幸福の空気ね… ここで注文を取りにきた店員に各各オーダーして、ドリンクは先に出してもらうよう伝える。 一足先に入店していた加奈子だけは、待っている間に頼んだのだろうサラダをサクサクと突っついている。 「あれ、おい加奈子。おまえ顔にドレッシングついてるぞ」 「うそうそ、マジかよ」 「こんなんで嘘言ってどうなる。ホラ、下手すると袖につくだろ。拭いてやるから動くんじゃねえ」 「ちぇ…なにが『拭いてやる』さ。そもそもさっきアンタが不意打ちしたからじゃん」 「あー悪い悪い。そんなむくれるなって」 まだ温かいおしぼりで口のわきに付いたドレッシングを拭う。 ホント下手に服に付いたりした日には染みになりかねないから油断ならんのよね。 今日の加奈子は私服だから尚更だ。こいつ、俺が連絡したらすぐに早退けしやがったのか。 問い詰めると悪びれもせず白状する。 「だって、せっかく京介からの誘いなのに、制服のままじゃ味気無いでしょ」 ちなみに本日の加奈子の服装はこないだとは変わって気合い入ってないゆるめのコーディネートで、 長袖シャツの上に半袖を重ね着したスタイルの、なんちゅー格好かは知らないが平素の着こなし感が似合っていた。 食べこぼして汚すなよと言えば、わかってますーと唇を尖らせ、にへらっと相好を崩す。 「何がそんなにまで楽しいかね」 野暮を承知で言ってやると 「いいじゃん、別に何にもなくたって楽しいの」 臆面もなく言ってのけ、おしぼりを持ったままの俺の手を引き寄せて「うへぇ…」と安らかに嘆息した。 おいおい、ここは二人きりじゃないんだ。ちったぁ周りの人の目を気にしなさい。とりわけ黒猫のな。 案の定、彼女は盛大に引いている。 「くっ、なんてプレッシャー……もしかして場違いだから帰れと暗に要求されているとでも…」 んなこたぁないが。 加奈子は一度スイッチ入ると暫くはこうだかんな。他意はないんだと思う 「会って早々、ものの数分で、闇の眷属たる私を動揺せしめようとはね……正直ちょっと後悔…」 すまねーな。所在ない思いをさせてる責任の一端は俺にもあるので、後で落ち着いたら謝るとしよう。 さてと。 こうして対面の場を持てたとはいえ二人の間には思った以上に会話が成り立ってねーな。 それで空気が重いわけではないから、特に気に病むこともないんだろうか。 そこらへんどうなのよと提案者の黒猫に声をかけようとすれば、 彼女はどことなく遠い目で思案顔をしながら注文したカフェオレを飲んでいた。 お前さっきメシ頼んでたよな、パンじゃなくて!? 喉まで出かかったツッコミを何とかこらえる。 加奈子がまだ軽くわんこトリップしているため、気持ちボリューム抑えめで話しかけてみた。 「なあ、黒猫」 「……何かしら」 「なんつーか待ちぼうけさせてるみたいで悪ぃ。コイツと話しときたい事があるなら、いま正気に戻すぞ?」 加奈子を指さしつつ訊くが 「いいのよ。そんなに邪険にするものではないわ」 可愛いものじゃない…と続けて苦笑する。 「一体私には何が足りなかったのか。その答えをその子に見られればと来てみて、もうおよそ解ったし」 「答えねぇ。俺にはよく解らんが」 「本当に?…だとしたら先輩の無自覚さも相当なものだけど」 また違った、揶揄するような笑みを浮かべる。 こうもバリエーションに富んだ黒猫の笑顔を見るのは何時ぶりだろう。 内心あるいは穏やかならざるものがあるのかもしれないが、それを窺い知ることは難しい。 「とにかく、たらればの思考には区切りをつけないと。そういう意味では会いに来て正解ね」 「サバサバしたもんだな。筋違いを承知で言わせてもらうと、ちょっと意外だ」 「二度目だもの」 「…そか」 こればっかりは、軽々に「悪い」とは言えない。 すまない、ゴメンな、同様だ。何のフォローにもならない言葉を下して、心中だけに止める。 ややあってメシが届く。 加奈子を軽く小突いて正気に返し、互いのおかずを適当に交換したりして、暫くは箸と皿に集中。 ちなみに加奈子はジンジャーエールらしい。ま、いいけどよ……一方俺は無難に烏龍茶にしといたよ。 「マジ盛り?」 「そ。この店の特盛みたいなもん」 確かに、大盛りでは済まない量が鎮座ましましている。圧倒的じゃないか… 「某カップ麺を思わせる響きね」 「あ、それ俺が言おうとしてたのに」 「甘い。ツッコミで先手を奪われるようじゃ、鈍ってると言わざるを得ないわ」 「チッ、言わせておけば」 とか何とか俺らがしょうもないやりとりを交わしていると、口を出しそびれた加奈子いわく 「黒猫って京介と仲いいのな。なんか、さっきから京介が生き生きして見える」 生き生きっつーか、まぁ何つーのかな。以前に戻った感じか。 黒猫は意図的にさっきみたいな平静に接することで、割り切ろうとしてるんだろう。 「聞こうか迷ったんだけどさ。もしかして二人は、前に、その……恋人だったりすんの?」 あまりにストレートな問い。黒猫の手前もあって一瞬返答に詰まる。 と、当の黒猫がこちらへチラリと視線を寄越し、やれやれという風情で答えた。 「いいえ。残念だけれどそんな事実は無いから、安心なさい」 「そなんだ。てっきり……えーと『残念だけれど』?」 「私、振られたの。この男ときたら身の程も知らずスッパリと振ってくれてね。癪にさわるったら」 やめて、俺のライフはもうゼロよっ 「へ、へぇ……驚き。京介ってば、そんな話は全然聞かせてくんなかったし」 「見てのとおり今では軽口をたたける仲に戻りつつあるから、あまり気にしないでくれるといいわ」 実際には今日さっきのことながら、加奈子に対してはあくまで過去のこととしたいらしい。 知り合ったばかりでギクシャクする要因は残したくないといったとこか。 その後は、互いの桐乃との付き合いの話題を皮切りにそれなりにスムーズに話せてる様子。 あいつも呼んでやるかと思わなくはなかったが、 女子三人に対して男子俺一人、連中が意気投合した場合いかにも分が悪い。 今回はやめといた。…恨んでくれるな、マイシスター。 食事は一段落して、時たま残ったマジ盛りのおかずを銘銘でつまむ。 話題はいつかコスプレに及んでいて、黒猫が熱弁をふるおうとしていた。 「あなたは人並みならぬ演技力があるのだから、もっと作品に関心を向けるべきじゃなくて?」 「ってもさぁ、趣味でやってるワケじゃないしー」 「あの子に付き合って何度かイベントを見たわ。支持してくれているファンに応えようとは思えないかしら」 「そりゃ、あいつらが加奈子のこと持ち上げてくれんのは悪い気はしないけど」 いやいや、どころか結構ノリノリだろ。 きめぇとか言いつつあの一体感を満更でもなく思ってるの、知ってるぞ。 「人気があっても作品世界への思い入れが無いようでは、いつまでも私や先輩の水準には到達できないわよ」 俺?? 「え、何何、京介もコスプレやってんの? それこそ初耳なんだけど!」 加奈子が勢い込んで食いつく。 「そうよ、見せてあげるから刮目なさい。これが先輩の…」 ちょ 待っ ―――――――――――― ―――――――― ―――― そんなこんなで会食は終わり、早くも夕暮れの気配が漂いはじめるなか帰途につく。 黒猫はマスケラのDVDを加奈子に貸す約束をして、布教の手ごたえに満足げだ。 黒歴史を晒された俺は泣きたいんだがな。 別れ際「すこし借りるわ」と加奈子に断り、連れ出された。 すぐ先の角を折れる。 「いい子じゃない。会う前は『この泥棒猫』とでも言おうかと考えてたのに」 「それは……ギャグで言ってるのか…」 「半分は。でも話してみたら毒気を抜かれてしまったわ。 あの子が…ああ、貴方の妹が、ね…荒れてないのも頷ける気がするもの」 「今日は色々あったからな、桐乃のやつと積もる話もあるだろ。俺はノータッチにするよ、お手柔らかに頼むぜ」 言って、切り上げることにする。 「待って」 「…おぅ」 黒猫がすかさず服の裾を掴むので、向き直る。 「聞き苦しいでしょうけどまだ心の整理が完全ではないの。そのうち、いつかは、二人のことを祝福できればとは思う。でもしばらくは無理そうだから……棚上げにして、あの頃のままの関係でいられない?」 「俺は是非もない」 「そう、有り難う」 「礼なんて、言わないでくれよ」 「いえ。私と先輩の友情に免じて」 黒猫は今日一番の笑顔を見せた。 「泣いたりしないのな」 「言ったでしょう。二度目。先輩にはもう十分泣かされたもの」 笑顔。 「よしんば泣くとしても、貴方の目の前ではあり得ない。そんなに憐れな女になるつもりはなくてよ」 「あぁ」 「先輩のほうこそ泣きそうな顔に見えるけど?」 笑顔。 「バカ言うな。丁度夕陽がさして眩しいんだよ」 「あら、そう」 別れを笑顔で貫く黒猫に、じゃあなと手を振り改めて背を向けた。 そうとも。バカを言うなだ。俺は黒猫の好意を決定的に断ったんだ、いつまでも感傷に浸る資格はない。 ただ、せめていまは今日一日彼女が俺に向けた笑顔を噛み締めよう。 …あの角を曲がったら、俺も笑顔で加奈子と向かい合えるように。
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【Yi-side】 終わりました。長い長い戦いが。 文化祭の全てをかけて挑んだこの戦い、 恐らくは私たちの勝利という形で幕を閉じたのでしょう。 純「でも、どうして文集を鞄に入れると思ったんですか? 教室に残す手段もありましたよ」 澪「教室には梓がいただろ? 梓は鈴木さんが文集を買っていないことを知っている。 安易に教室に文集を残して、発見されたら言い訳のしようがない。 どこかに隠そうものなら、見張ってる私の友人が通報してくれるしね」 純「なるほど、それでこのメール、 “鞄を持って、音楽準備室に来てくれない?”ですか。 見張りまでつけて、完璧ですね」 澪ちゃんカッコいい。改めて、そう思います。 ただ澪ちゃんはそう言われたことを、不服そうにしていました。 澪「なにが完璧ですね、なんだ? 全部鈴木さんの狙い通りだったんじゃないか?」 純「……ああ、やっぱり気付いてましたか。 怪盗が二行目でヒントを与えているのは事実だと 言っていましたもんね」 澪「“誰かに謎を解かせるまでが、鈴木さんの計画だった。” そういうことだね」 私も、なんとなく、それは感じていました。 律儀すぎる怪盗。それに答えを出すのなら、 自分を見つけて欲しいというものしか、思い当たりません。 純「とあるお話の検事が言っていました。 “自分の犯罪を誇示したいというのは、 ほとんどの犯罪者心理に共通する特徴なのだ”って。 私は全犯罪者がそうだとは思いませんが、 小さな罪ぐらいなら、ちょっと誇示したくなる気持ちもわかります」 そこで私は首を振りました。 どうやら澪ちゃんも何か言おうとしたようですが、 私に遠慮して口を閉じました。 ならば、私は遠慮せずに言わせてもらいましょう。 唯「純ちゃん。純ちゃんが誇示したかったのは、 犯罪じゃないよね?」 純「どうしてそう思うんですか?」 唯「和ちゃんが、ただの悪戯に付き合うとは思えないから」 純「盗難事件がただの悪戯ですか?」 唯「文化祭は、お祭りだよ?問題にはなってたけど、 ギター以降は本当に差し障りのないことしか起きてない。 むしろイベントとして扱われていたよ」 模倣犯も出る程の。 純「なるほど。それで、私はなにを誇示したかったんですか?」 唯「ズバリ、ヒロイズムだね!」 純ちゃんは小首を傾げました。 ただ、その顔は大して不思議がっていませんでした。 唯「ここからは何の証拠も無いよ。 間違えているかもしれないよ。 でも、合ってたらイエスって答えて欲しいかな」 純「はい、わかりました」 唯「純ちゃんは映画研究会から園芸部を助けた?」 純「……イエス。って単刀直入すぎません?」 そうでしょうか。 視界の端で、澪ちゃんが頷いていました。 そこまでかなあ。 唯「え、えっとね。つまり純ちゃんは、 部費を確保できなかった映画研究会が 恨みで園芸部に酷いことをしようと知って、 和ちゃんになにかすることを提案したの」 純「イエスですね」 唯「和ちゃんはすぐに提案を受け入れてくれた?」 純「それはノーです。 和先輩はまず園芸部の部長を呼んで、 花壇に見張りをつけることを提案したみたいです。 当然ですが、何者かが狙っているなんてことは隠して。 ですがそれは叶わず、結局花壇に見張りはつきませんでした。 そのことを知らせに来たのが、文化祭前日でしたね」 それがあずにゃんに聞いた、あの呼び出し。 唯「この計画を立てたのは、和ちゃん?」 純「半々ですね。 虹の色を順番に盗む“色泥棒”を演じて、 様々な色を持つ園芸部に警告するという アイディアは和先輩のものです。 私が、最後は誰かに解かせたいと言ったら、 メッセージカードの二行目のアイディアもくれましたよ。 ですが、盗む品は私が決めました。 私が簡単に盗める……といっても、 すぐに返すので“手に取る”とだけにしましたが、 そんな品々に決めました。 ただ、返すからといって、一時的に手元から消えただけで、 とても悲しむ人もいるんですよね。 失念していました。今回の最大の反省点です」 純ちゃんは本当に落ち込んでいました。 さすがに友人を、あんな目に遭わせてしまったから……。 純「文化祭期間中だというのに、 和先輩には本当に助けられました。 瞬時に、文化祭に差し障りないものを選んで、 私に取らせる計画まで立てたんですから」 唯「正直、ここまで事件が複雑になるとは思っていなかったよね?」 純「そうですね。まさか模倣犯とは。 想定外でした。ただ、複雑になったからには、 より高みを目指したくなりましたけどね」 なるほど、なるほど。 以上のことをまとめると、つまり。 純ちゃんは園芸部を守るため、 自ら怪盗レインボーとなり、色という色を盗んで回った。 園芸部への警告というのは、恐らく文化祭新聞でしょう。 昨日の九時号に書いてありましたが、 純ちゃんのクラス、一年二組にも新聞部の子はいますし、 それとなく“園芸部が危ないかもね”と仄めかしておけば、 誘導は可能でしょう。 澪「こんな回りくどいことをした理由は?」 純「第一に、園芸部を動かすことが出来なかったからです。 まさか生徒会の一員ともあろう人が、 映画研究会の生徒を悪く言うことなんて出来ませんし、私なんか論外でしょう。 そして第二に、これは唯先輩が言いましたが、 文化祭はお祭りだからです」 澪「なるほどな……。 じゃあ、そういうことなら、梓を呼んでも大丈夫そうだな」 唯「うん、そうだね!」 犯人が純ちゃんとわかり、あずにゃんが何を思うのか心配でした。 ですが、一応真っ当な理由はあったので、 その心配は完全に無用のものとなりました。 なら、ここへ呼んでも問題はないでしょう。 澪ちゃんは携帯を取り出し、なにかに気付いて、元に戻しました。 澪「梓は携帯持ってないんだっけ。直接行ってくるよ」 そう言って柔らかい笑みを浮かべ、 澪ちゃんは音楽準備室をあとにしました。 * * * 音楽準備室に二人というのは、 あまり新鮮ではないかもしれません。 ですが、今の状況は今まで経験したことのない、 とても新鮮なものでした。 純「いやー、澪先輩ってカッコいいですよね! 本当もうなんというか、憧れますよー」 唯「だよね~! でもね、澪ちゃんは怖いものが嫌いだったりして、 可愛い面も一杯あるんだよ?」 純「おお、それはプラスポイントですね! やっぱりファンクラブが作られるだけのことは ありますね!」 純ちゃんと二人っきり。これは珍しいです。 まあ、だからといって、話題に困ることは無いですけど。 純「唯先輩って、結構澪先輩のこと好きなんですね~」 唯「いやいや、私は皆が好きだよ?」 純「私は一番澪先輩が好きですけどね。 当然、憧れっていう意味でです!」 私は……、まあ。 純「あれ、どうしたんですか唯先輩? 顔が赤くなってますよ?」 言わないで! 唯「そ、そうだ、あのメッセージカードのことだけど!」 私にとって不利な話題だったので、 あからさまに話題を変えました。 そのことを純ちゃんも少し怪訝そうにしてましたが、 特になにも言ってきませんでした。 純「あれがどうかしました?」 唯「一行目にさ、英語書いてあったよね。 Over the rainbowだっけ」 純「ああ、確かに書きましたよ。 日本語も横に書いたと思います」 唯「あの言葉にも意味があるの?」 適当に捻りだした話題。 とくに意味もないと思っていた質問でしたが、 意外と純ちゃんの顔は真剣さをまとっていました。 純「ああ、あれですか。意味ありますよ」 唯「どんな意味?」 純「虹を越えるんです。すると、なにがありますか?」 窓の外に視線をやりました。 そこに虹はありませんが、虹のある場所は空。 そこを越えたとすれば……。 唯「宇宙?」 純「いいですね、その答え。ロマンチックです」 澪ちゃんならもっとロマンチックに答えたのかなあ。 そう思いながら、少し考えました。 宇宙。レインボー。 レインボーが執着していたのは? 答え。色。 唯「黒色?」 私はぽつりと呟きました。 それに対する純ちゃんのリアクションは、 非常に大きなものでした。 純「正解です!おめでとうございます!」 唯「えへへ~……で、黒ってなに?」 純「それも当ててみせてくださいよー」 黒。黒。黒。 純ちゃんが欲しそうな、黒。 ……はっ! 唯「み、澪ちゃんは私のものだから、渡さないよ!?」 純「えっ?」 ……いま、とんでもないこと口走った気がします。 まあ、その、本人がいないからセーフです。 ドアの外で物音がしましたが、セーフです。 純「なに言ってるのか、よくわかりませんが……。 まあ面白そうな発言だったので、覚えておきますね」 止めて!すぐに記憶から消して! 純「まあ、多分唯先輩に答えは出せませんよ」 純ちゃんは思わせぶりな口調で、話を続けました。 純「きっとそうなんです」 唯「じゃあ、答えを教えてよー」 純「良いんですか?本当に?」 純ちゃんは軽い語り口であるのとは対照的に、 非常に重々しい雰囲気を発していました。 とても、言いにくいことを言おうとしているような。 思わず、唾を呑みました。 唯「……良いよ」 純「そうですか」 純ちゃんは目を瞑りました。 そして、深呼吸。目をゆっくり開かせると、 私に近づき、耳元に口をもっていき、 純「私の最後の狙い。 それは不幸を呼ぶ黒猫の天使“アズサエル”です」 突如、頭にハンマーが振り下ろされたような、 そんな気分になりました。頭痛が酷いです。 視界がぐにゃりと歪んで、 身体もふらついているような感覚に襲われました。 足も、動きません。 口だけを、なんとか動かしました。 唯「今……、なんて……?」 純「最後に私が取るターゲットは、 黒猫の天使アズサエル。人間名、“中野梓”です」 ついに足が身体を支えきれず、 私は床にへたりと崩れ落ちそうになりました。 が、純ちゃんはそんな私を間一髪のところで支えてくれました。 純「大丈夫ですか?」 唯「あ、ありがと……」 でも。 唯「どういうことなの……?」 純「まあ、人間に転生したとはいえ、 元・天使として、警告する義務があると感じたってところでしょうか」 唯「元・天使って……、えっ?」 純「あー……、それを絶対的に証明する手段はありませんよ。 でも、梓を天使だと私は知っている。 それだけで十分証拠たり得ると考えてくれれば、 ありがたいんですけど」 ……純ちゃんの目は、笑っていませんでした。 こくりと頷いた私を見て、純ちゃんは話を再開させました。 純「信じてくださって、ありがとうございます。 さて唯先輩。梓は決して悪いやつじゃありません。 でも、あいつは不幸を引き寄せるんです」 純ちゃんは顔を歪めながらも、説明を始めました。 * * * 純「それは私が天使だった頃、天使の世界で見たこと。 あいつは黒猫の姿をしていました」 はっとしました。 あずにゃんのあの姿は、仮の姿。 今までに何度か、あずにゃんの本来の姿、猫の姿を、 私は確かに見ていました。 覚えているのは、春、私が両親と遊びに行った日……。 純「私は転生する間近でした。ですから、あまり長い期間、 あいつの姿を見たわけではありません。 ですが、あいつの力は、不幸を呼び寄せる力は本物です。 唯先輩、一つ尋ねますが。 梓が来たことで、不幸が降りかかりませんでした?」 すぐに思い当たりました。酷い嫌悪感を覚えました。 勿論、自分に対して。 春。あずにゃんが新聞を持ってきました。 私はそれをきっかけに、その新聞に載った事件を 解決する羽目になりました。 園芸部の裏に隠された事情を知りました。 私の中で、なにかが壊れました。 この一件で、私と園芸部の人は、 ちょっとしたお知り合いになりました。 その関係で、園芸部の人は花を一つ持ってきてくれました。 花弁が落ちました。 おかげで私は、抱きたくもない疑念を抱いてしまいました。 あれは最低な勘違いでした。 そういえば春の事件のことを、私は和ちゃんに話しました。 和ちゃんはそれで、園芸部の部費を追加を提案してくれたと 聞いています。そして秋。部費が足りていないために、 映画研究会は文化祭への出展を諦めました。 その怒りの矛先を、園芸部に向けました。 全ての発端は、どこにあったでしょう? 園芸部でしょうか? いいえ。 私と園芸部を繋げたのは、紛れもありません。 “あずにゃんです。” 唯「は、ははは……」 純「……梓も、悪気があったわけではありません。 あいつはきっと、自分を変えようとしたんでしょう。 人に笑顔を振り撒き、幸福にしてくれる先輩の近くに行って、 不幸を引き寄せる自分を」 唯「……そっか。そうだったんだね」 あずにゃんと出会った日、私はなんと言われたでしょう。 天使みたいにふわふわした人、でしたか。 とんでもない嘘つきですね。 天使である自分と、対極の人間を選んだのに。 唯「それで……、あずにゃんをどうするの?」 純「私はどうにも出来ません。 それを理解した上で一緒にいるのであれば、 なにも言いませんよ」 ただし。 純「リスクは避けられないと思ってください」 まあ、そうだろうね。 心の中でそう呟きました。 純「……ここが防音に優れている部屋で良かったですね。 扉の外に、いますよ」 唯「いるね。澪ちゃんと……、あずにゃんが」 純「どうするんですか?」 唯「私は変わらないよ。変わったとしても、元に戻る」 純「……それは、もう……」 純ちゃんは何かを言おうとしたようでしたが、 口を閉じました。 その続きの見当は、つきました。 唯「ありがとうね、純ちゃん。色々と。 それと、そう知っていながらも、あずにゃんの友達でいてくれて」 純「私、カッコ悪いことは嫌いですから」 唯「そっか。じゃあ、今の私は、嫌い?」 純ちゃんは呆れたような笑みを浮かべました。 張り詰めていた空気が、緩んだ気がしました。 純「むしろ、私好みですよ」 * * * 私と純ちゃん、二人で扉を開けると、 案の定、そこには澪ちゃんとあずにゃんが立っていました。 あずにゃんは平然としていましたが、 澪ちゃんは頬を赤く染めていました。 まさか、あれ、聞かれちゃったかな。 純ちゃんがお先に失礼しますと、階下へ。 その際にあずにゃんにレインボー事件のことを話すため、 連れていってしまいました。 残った澪ちゃんは、どこか気まずそうでした。 ああ、これはやっぱり聞かれちゃったな、と。 そう悟りました。 ……それなら、かえって好都合。 そう考えるのは、楽観的すぎるのでしょうか。 唯「澪ちゃん!」 澪「な、なんだ?」 唯「……一緒に、帰ってくれるよね?」 沈黙。とっても幸せな。 私は澪ちゃんの返事をいつまでも、いつまでも待つつもりで、 真っ赤に染まったその顔を、まじまじと見つめていました。 ああ、今日の夕日はなんて綺麗なのかな。 少し、怖いぐらいに。 ―――文化祭。真相。 怪盗の目的は人を守るためのものでした。 天使を守るために奔走した私たちと、同じように。 怪盗は、空に色々な虹をかけました。 その虹は何色あるでしょう。 七色でしょうか。五色でしょうか。 数えられないほど、あるのでしょうか。 それとも…… 唯(“誰もが、一色だけでも、自分の色を隠している。” ……今回学んだ、私なりの教訓だね) わざと数えていない色も、あるのでしょうか。 第十四話「天使が見えた日」‐完‐ ―――第十五話に続く 32
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甘くはないですよ やっぱり返さないと情けない でも分からないものは分からない 「ここに来んのも久しぶりだわー」 ツンツンに逆立てた茶髪に攻撃的なつり上がり気味な、目付きの悪いすらっとした男は、連れ立って来た短髪黒髪の普通体型な同年代の男に聞かせるよう空に向かって独り言を吐き出した ツンツン茶髪の男ハンドルネーム『名無しのバーテン』は、日本帝都東京内の某所に佇む飲食店の店員だ 給金は月25~30万とそれなり 色々と入り用な帝都でも彼くらいの稼ぎがあればなんとか生活が出来る程度には頑張っていた 「よくここで沈んだりハイになったりしたもんだ」 夢は官僚か政治家か 国を動かす立場に立ちたかった男は夢破れて今を生き昔を懐かしむ 日ごと報道を賑わせる国会の場にもしかしたら立っていただろう自分を幻視して 「この公園に思い入れでもあるの?」 彼の心中預かり知らぬバーテンの連れ ハンドルネーム『名無しの無職』は、何かを思い出している彼を見て問いかけていた 「特別な場所に聞こえたんだけど」 「んーまぁ、思い入れっつーか、今の人間関係が出来る元になった場所なんだよ。夢とか何とか考えたり、クララと出会ったのもここ。このベンチでさ。V.V.のおっさんやマリーベルと出会ったのもここなんだ」 「へぇ、さしずめ人生の交差点か」 「んな大袈裟なもんでもねーけどな」 失敗人生始まりの地でもあると、バーテンは自嘲気味にからから笑いながら手に持つ缶ビールを仰ぎ飲んだ 「失敗人生ねぇ、俺にはそうは思えないよ」 「なんでよ? 俺ってば最終学歴三流高校なんだぜ。大学受験なんて全部失敗だしさ。成功人生とはとても思えねー」 「大学行ったからって成功するとは限らないよ。俺を見ろよ。いま無職で親からの仕送りに頼って生きてるんだぞ? どうだい成功してるよーに見える?」 「いや、そりゃなあ、まあ」 バーテンの自嘲に無職は自嘲で返礼をした 「バーテンはさ、成功はしてなくても失敗はしてないよ」 「そっかなぁ」 「そうだよ」 バーテンは彼自身が知らないだけで、築き上げていた人間関係についてだけを見てみれば、無職の知る人間の中では最も大成していると断言できてしまう男なのだ 彼を思いやる人たちに彼は囲まれている 彼を心配する人たちに彼は囲まれている 彼を愛する女性からは海よりも深い愛情を寄せられている それだけを以てしてもバーテンは誰よりも成功者なのだと無職は思った 人間関係を構築するのは一朝一夕でどうにかなるものじゃない 長い時間が必要だ 家に籠りきりだった自分にはただ無為に過ごしてきた時間しかないのだと無職は考えていた 「俺なんて家族との付き合いはない、友達いない、知り合いなんてネットの中だけだったんだ。最近になって生まれた交遊関係だっておまえを通じてのものじゃないか。おまえは俺よりもずっといい環境にいるよ」 それにバーテンは無職ではない。飲食店店員といった平社員だがランペルージグループの末端社員でもある 大人しく今を享受しながら真っ当に生きてさえいれば順風満帆な日々を送れるのだ 「それなのに失敗なんて言ってたら殴りたくなる」 得てして恵まれた環境に身を置く者は、自分が如何に恵まれているのかに気づかない 知らないだけで羨まわれる場所に彼はいるのだ バーテンには分からずとも無職には分かること 彼との交遊関係を築いたことでそのおこぼれを与っているのは誰あろう無職自身だという事だった 「殴んのはやめてくれマジに。こないだあの糞ジジイに殴られたばっかしなんだから勘弁だぜ」 糞ジジイ バーテンがそう呼ぶ人は世界も視野も共に狭しな彼の中では一人しかいない おっさん、ジジイ、爺さん、ガキみたいな年寄り まるで悪口の羅列とも受け取れよう罵りを吐かれているその人は確かに年輩の人で 見た目だけなら小学生そのものな、色素の薄い色の金髪を踵まで伸ばした不思議な雰囲気を持つ人物だった 名無しの無職はその人とも面識がある 何度となく見舞いに訪れていた病院で顔を合わせた、バーテンの東京での身元引き受け人の人であった その正体はバーテンに好意を寄せている二人の女性、その人の実子クララ・ランフランクという可憐な美少女と、ブリタニア帝国の戦姫、第88皇女マリーベル・メル・ブリタニアの実の伯父なのだ ブリタニア帝国皇帝の兄 皇籍を返上しているらしいとはいえ、ブリタニアの皇兄殿下であった となれば実子クララ・ランフランクも世が世なら姫殿下となる 無職はバーテンと二人で巻き込まれた事件を通じてバーテンの周りにいる人たちの正体を知っていた どこの誰を見渡してもVIPばかりという恐ろしい人間関係だった バーテン自身は何も知らない だがしかし、知らないで良いと皇兄殿下、V.V.は無職に伝えていた 知らない方が誰しもにとっても幸せで 気兼ねなく接する事ができるだろうと 馬鹿ゆえに気づかない 生来の鈍感力が良き方向へと彼を導いているのだ そんなバーテンにとっての最良の環境が生まれていた 「まーた怒られるような事したんだろ」 普通の一般人にしては有り得るはずのない滅茶苦茶な交遊関係を持つそんなバーテンは、入院中何度もV.V.に怒られていた 飲酒で怒られ 誰ぞに馬券を買いに行かせては怒られ ナースにセクハラしては怒られ 娘をベッドに連れ込んだと誤解されては殺されかけ まさに自業自得の連続だった クララをベッドに連れ込んだのは誤解から生じたすれ違いだが、大体は考えなしの彼が悪いに帰結するので、無職もバーテンの性格と無計画ないい加減具合を目の当たりにし理解させられていた V.V.おじさんが怒る=バーテンが悪い 話はそれで終わってしまうのだと 「なにやらかしたんだよ」 「マリーに5万借りたんだ。そしたらよ、その日の内におっさんちに呼び出されてマリーと一緒に一時間正座強要、くどくど説教されながら俺だけ4,5発いかれた」 「…おまえすげーな…」 「なにが?」 「いや…」 一国のお姫様に平気でお金貸してと言える無神経さがだよ!とは無職も言えなかった 彼の周囲の人間関係についてを彼自身も入れて誰にも口外しないようにと言い含められているから 「クララが俺を甘やかしてるって怒られて俺に金貸すの禁止されたって言うもんだからマリーを頼ったわけよ。したらば今度は俺も呼び出し受けて、俺みたいに無計画な金遣いをしてる人間の金の貸し借りは信用の切り売りに繋がる。お互いのために良くないからやめろって借りたばっかの金をマリーに返させられちまってさ」 「おじさんの言うとおりじゃんか。大体なんで借金しなきゃならないくらいにまで使い込みするわけ?」 「5と9が来ると思ったんだよ!」 「やっぱしギャンブルかー!!」 バーテンはギャンブルが好きである 生活費を使い込むほどにやらかしてしまうくらいには リアルで初対面したオフ会が競艇だから言わずもがなであるが 「クララからも生活費を使い込むなって注意された」 「へー、あのおまえには駄々甘なクララさんがね」 クララとはまだ短い付き合いの無職だが、彼女の甘えっぷりは見ている方が恥ずかしくなるくらいだった 膝枕、耳掻き、抱き着きに頬擦り 胸に抱き止めて頭をなでなで 尽くす女だからと自分で言い切る彼女はとにかくバーテンに甘えまくるし、またなにかと彼に対して甘くもあった ついでにクララへと対抗するようにしてマリーベルもバーテンに対してそれはそれは甘い事この上ない有り様だ 病室で彼の唇を奪った事を皮切りに、彼を抱き寄せ胸に掻き抱いたりして甘えるその姿からは 世界最先端をゆく倉崎重工の技術をふんだんに盛り込まれているらしい、エルファバという巨大な空中戦用のナイトメアを駆使して、テロリストを相手に大立ち回りをする勇ましさなど微塵も感じられなかった (二人とも甘やかせ過ぎてるんだろうな) V.V.やマリーベルの筆頭騎士がブレーキを掛けて丁度いいくらいなのかもと、無職は無職なりに色恋とは無縁の人生を送りながらも考えさせられるほど、クララもマリーベルもバーテンには甘いのだ (こんなのがどうしてあんな美少女や美女にモテるんだろ? 世の中理不尽だ) 世が世ならブリタニアのお姫様だったクララ・ランフランク 世も何もブリタニアのお姫様であるマリーベル・メル・ブリタニア 甲乙付けようにも付けられない美少女と美女が駄目男に恋をしている (あーなんか腹立ってきた) このヘンテコアンバランスな恋模様を密やかに応援はしている無職だったが、腹立たしいものは腹立たしい 鎌首をもたげる嫉妬に身を焦がそうとしていた無職はだがその直後にはバーテンの意外な一面に心を沈めさせられてしまう 「おかげでこんなのしか買えなかった」 バーテンが肩から下げていた鞄から色とりどりのキャンディが入ったキャンディボックスを二つ取り出したのだ 「絶ってーに使わんと残してた金で買ったやつなんだけどな。やっぱ返すもんは返さないと情けねーかなって」 一つは宝石箱のようなキャンディボックス もう一つは坪をかたどったような透明のキャンディボックス 「こっちには丸いキャンディがいっぱい入ってて、こっちには金平糖がいっぱい入ってんだよ」 バーテン的にはあれこれ悩んだが結局マシュマロよりもキャンディにした なにを? 勿論先月のお返しである 「まさかそれ、クララさんとマリーさんにか?」 「他に誰がいるよ」 「チョコ、もらってたの?」 「先月な」 「…」 淡々としたバーテンと、思わず殴りたくなった無職 だが無職は一方で称賛してもいた 称賛されたバーテンにはわからないが、金遣いの酷い彼が女性の為に絶対に使わないお金を避けて置いていた事実に無職は衝撃を受けたのだ 「殴るのまた今度にする」 「なんで殴られにゃならねんだ!」 「いや、全国のモテない男を代表して」 「なんの代表だよそりゃ!」 しかし二つのキャンディボックスはどちらがどちらへ渡るのか 無職の興味はそちらに移っていたのでこれはこれで良かったのだろう 「丸いキャンディの入ってるキャンディボックスがクララで、金平糖のがマリーだ」 「意味でもあるのか?」 「金平糖についてはマリーが好きな飴だからだ。クララの方はちょっと悩んだけどよ、マリーが飴だからクララも飴かなってな。安直だが飴と飴なら公平だろ」 にししと笑うバーテンに彼なりに考えてそうしたらしいと分かった無職は聞いていた 「なあ、おまえさあ、どっちが好きなの?」 「は? なんだよいきなり」 「クララさんとマリーさんのどっちが好きなのかって話。真面目な話だぞ」 急な話に押し黙るバーテン そんな事を聞かれても困る 好みと外れてるし そう言い訳をしそうになるも言葉にならなかった 「あー、うーん。や、あのさぁ、怒んなよ?」 「怒らないよ」 答えにくかったがバーテンは答えた 「今までろくに考えたことなかったんだよ。クララもマリーもなんつーか妹って感じで。マリーと再会したのはつい最近の事だからまあまだしも、クララとはあいつが小学生の頃から遊んでやってたから。二人とも好みのタイプからは外れてるし、でもな、なんかこう…なんつーの…? あーなんつったらいいのかわかんねー。モヤモヤしてる。あいつらの気持ちは嬉しいし、あいつらとキスしてから変に意識しちまって、昔好きだった女の子の事を考えてたときと感覚的には似てるんだが、なんかもやーっとしてるみたいな…おまえ分かる?この感じ」 「逆質されても分からないって。俺、女の子に好かれた事ないし恋愛経験無しだから。単純にどっちが好きなのかなって思っただけなんだ」 「そっかあー」 話はすぐに終わりを迎えてしまった
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book.5さん 『なぜ天照巣町には歴史がないのか? <天照巣大学文学部考古学専攻のチラシ>』 原作はこちら あらすじ 設定
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2010-06-23 21 26 31 | Weblog 相手が興奮しているからと言って、こっちも声を荒げてはいけない。 「興奮してる」と言われないためには。 だけど、穏やかに言うと、 「馬鹿にしてるっ!!」って怒られちゃうんだよな~。 そうだよな~。 私だって、相手がアホな主張を穏やかに 「あら、あなた興奮しないでくださいな。怖いわ~。私は興奮してませんのよ~」 みたいに話されると、頭くるもんね。 そうなの。 今思い出すと、私がそういう穏やかな反論された場合って・・・・・ そういう場合に限って、相手の主張がアホなの。 噛み合ってないの。 全然的を射ていないの。 何故? でも、そうなんだけど、表面的にみると、私だけが興奮して噛みついているように見えて損なのだよ。 だから、噛みつかれた方がやり易いよな。 私の主張は、(相手よりは)論理的だ。 和をもって貴しの日本人なら、双方ともに悪いイメージがするだろうけど、 論理的主張を好む人なら、客観的に判断を下してくれるだろうから。 ってか私、いつも論争相手に恵まれないなあ。 あ~、やだやだ。 多分、かしこい人は、そもそも私なんかと話さないから。 別の世界にいらっしゃるんだろう。 こんな低次元なところじゃなく。 そして、低次元なところにいる私も低次元な人間なのだよ、しょせん。