約 3,555,357 件
https://w.atwiki.jp/kyotaross/pages/4954.html
「誕生日おめでとう(だよー)(ございます)、エイスリン(さん)(先輩)!」 エイスリン「ミンナ、アリガトウ!」 塞「これ皆で選んだのよ」 エイスリン「コンナニイッパイ!ウレシイ!」 豊音「特にこのキーホルダーは皆とお揃いだから私も超嬉しいよー」 胡桃「豊音が一番よろこんでどうするの」 白望「ダルかったけど…、いいの選べた…」 京太郎「そしてこれが俺の作ったケーキです」 エイスリン「キョータローガツクッタノ!?スゴイ!」 塞「確かにケーキは京太郎に任せたけど、まさか作ってくるなんて…」 胡桃「そんな特技があったんだ」 京太郎「いやいや初めてですよ、ケーキ作りなんて。料理もあんまりしないし」 豊音「じゃあエイスリンさんが京太郎君の初めての相手なんだね、超羨ましいよー」 塞「豊音!そういう言い方は止めなさいって」 エイスリン「ドウイウイミ?シロ」 白望「…ダル」 京太郎「でもなんか作れそうな気がしたんですよね、実際は結構失敗しちゃいましたけど」 塞「いや、簡単に作られたら私たちも女の子として面目立たないから」 エイスリン「デモ、オイシソウ!」 京太郎「気に入ってもらえてなによりです」 京太郎(本当はエイスリン先輩にいいとこ見せたかったからだったんだけど…) エイスリン「キョウタロウ」 京太郎「はい?」 エイスリン「Thanks!」ウィンク 京太郎「!」 京太郎(このウィンクと笑顔が見れただけで大成功だ) 豊音「京太郎君超真っ赤だよー」 胡桃「照れてる照れてる」 塞「からかわないの。それじゃあハッピーバースデー歌って早く食べよう?」 白望「ダルいけど…まあ、いいか」 カンッ
https://w.atwiki.jp/yuimugi/pages/148.html
・ ・ ・ 私の知っている人の中で一番可愛いのはあずにゃんだと思う。 澪ちゃんも可愛いけど、一番綺麗って言った方がいいかな。 一番話が合うのはりっちゃん りっちゃんとならずっとバカな話しをしてられる 一番安心できるのは和ちゃん 心の故郷って言ったら分かりやすい 一番甘えられるのは憂 妹だけど自然に甘えられる ……彼女はこのどのランクも一番じゃない 時々何で彼女と付き合ってるのか分からなくなる。 だって一緒にいても話はりっちゃんほど合わないし、緊張するし、 スキンシップなんて恥ずかしくて絶対できない。 彼女と一緒にいるときは全然いつもの私らしくないのだ。 けど…それでも一番に考えてしまうのが彼女の事で、こうやって別な人といても ふとした瞬間に彼女の事ばかり考えてしまう。 「物思いにふけるなんて唯らしくないわね」 声の主は私が一番安心できて信頼している子。 唯「失礼な、私だっていろいろ悩んだりするんだよ」 和「ごめんなさい。これで機嫌を治してもらえるかしら?」 お盆の上にはケーキと紅茶がのっている 唯「よし、治りました~」 和「相変わらず調子いいんだから」 和ちゃんはニコッと笑い、私の分をわけてくれた。 ――――――― ―― 和「そういえばこうして唯と2人っきりになるのって久しぶりね」 唯「そうだね、私和ちゃんのお部屋に来たの2ヶ月振りだよ~」 中学の頃は頻繁に遊びに来ていたこの部屋はその頃から変わらず、部屋の主と同じに私をあたたかく迎えてくれる 和「まあ私も唯も生徒会や部活忙しいもの、特に唯の方はね」 含みのある笑い方をする和ちゃんを見て、私はケーキを喉に詰まらせた 唯「ゴホゴホ…もう和ちゃん!!」 和「いいじゃない、本当の事なんだし」 唯「うぅ……」 和「それで、ムギとは順調なの?」 和ちゃんには私とムギちゃんの事を話していた。 付き合う前、私がこの感情を恋と理解する前から苦しんでる私に気がついて助けてくれたのが和ちゃんだった。 和ちゃんには……と言うように、それ以外の人――軽音部のみんなや憂にもまだ話していない 唯「う~ん多分」 私はケーキを食べながら答える 和「歯切れ悪いわね」 唯「だって経験したことないからこれが順調なのかわからないんだもん」 和「それもそうね……ケンカとかするの?」 唯「……しょっちゅうする」 和「それは意外ね…… 唯もムギもぽわぽわしてるイメージあるから、そういうのとは無縁だと思ってたわ」 やっぱり意外だよね…… 実際誰よりも自分が一番意外に思ってる。 私が昔イメージしていた誰かと付き合うっていうのは、毎日笑顔で楽くて、 全てがバラ色に見えるんだろうな、なんて思っていた。 だけど実際は悲しい事や辛い事もたくさんある…… 特に彼女と喧嘩してる時がそうだ。 だったら喧嘩なんてしなければいいと思うのだけど、 子供のように何で分かってくれないの?と、不満に思いいじけたのも一度や二度ではない。 だからこそ軽音部のみんなには言えなかった。 今言ってしまったら、私はきっと彼女との問題を軽音部の問題にしてしまうから。 みんなに甘えて協力をあおぎ、解決しようとするかもしれない…… そうして部内を巻き込んでしまって、みんなにも迷惑をかけてる。 もしかしたら軽音部のみんなは優しいからそれでもいいと言ってくれるかもしれないけど、 私にとってはそれだけは絶対にしてはいけないことだった。 だからもう少し気持ちのコントロールができるまではみんなに黙っていようと思っている。 話せるのは当分先な気がするけど…… 和「けど澪がね、最近唯は真面目になったって言ってたけど私もそう思うわ、 遅刻ほとんどしてないでしょ?」 唯「まあ……」 和「部活も頑張ってるって聞くし、赤点はとらなくなったし、彼女と付き合って全部がいい方にむいてるじゃない? やっぱり大事な人ができると変わるものなのね」 確かに和ちゃんの言ってることは当たっている。憂に言われなくても起きるようになったし、 ギターも誉められることが多くなった。勉強も……まあ努力はしている。 けど私が真面目になろうとしているのは、あまり前向きな理由じゃない。 彼女と付き合えた――気持ちが向かい合った時、本当に嬉しいと思えたし、それは人生最良の日と言っても良かった。 けど次に私を襲った気持ちは恐怖だった。 せっかく手に入れたものがなくなってしまう恐怖。 一度味わったものが失われるのは、一度も味あわないより辛い事だと思う、だってそれは麻薬のようにすでに私を虜にしてしまっているから。 だから私は何とか失わないよう努力する事にした。 だって彼女は頭もよくて作曲までしていて、火の打ち所がなかったから 彼女の隣を歩ける人になろうと、彼女が一緒にいて恥ずかしくない人になろうと勉強や部活をがんばった。 けど彼女の前に立つとどうしようもなく緊張して、 普段ならなんてことないお喋りやスキンシップですら、まともにとれなかったりする。 本当に私らしくない。 いつも思う。彼女はこんな私と一緒にいたくて付き合ってるわけではないんじゃないかって だってそれは彼女が付き合う前に見ていた平沢唯とは真逆の女の子だから 和「どうしたの?」 私は和ちゃんを無視して考え事を耽ってしまっていたみたい 唯「ううん、何でもない」 和「……何かあるなら言っちゃいなさい。経験がない私じゃ大したアドバイスできないけど、話さないよりはマシかもしれないんだから」 唯「ありがとう和ちゃん……ねえ、私の良いとこってどこかな?」 和「唯の?う~ん……笑顔とかかしら?あとはそののんびりした雰囲気とか」 唯「……そっか」 だとしたら、やっぱりムギちゃんにとって私は全く魅力のない女の子になっちゃうな 和「はぁ~これはあくまで私の考える唯の良いとこなんだからそんなにへこんだ顔しないでよ。 そんなもの相手の受け取り方で変わるものよ」 あからさまにへこんだ私に、和ちゃんが優しく声をかけてくれる。けど受け取り方って…… 唯「どういう事?」 和「例えば私が思う唯の良いところを悪く言えば、いつもヘラヘラしてとろいって事でしょ」 唯「ひ、ひどいよ~」 和「だから悪く言えばよ。優しいっていうのも優柔不断や自主性がないとか、真面目っていうのも面白味がないとも言えるわよね」 唯「う~ん、そんなもんかな?」 和「まあ言い過ぎな部分はあるけどね。 だけどムギには私とは違った唯の良いところが見えていているのかもしれないんだし、少なくてもムギはあなたが好きだから付き合ってるんでしょ?そこには自信持ちなさい」 唯「うん……」 その後気をつかってくれたのか違う話題を振ってくれたけど、私は和ちゃんの話が最後まで頭の中にくすぶっていた ―――――― ―― 家が近いという油断からすっかり帰るのが遅くなり、憂からの心配の電話でやっと私は和ちゃんの家を後にした。 やはり和ちゃんの隣は時間を忘れるほど居心地がいい 外は時期的にはまだ春だけど、夜風に少しだけ夏の匂いが混じってる気がする。 私の良いところか…… 和ちゃんに言われたことを考える。 直接ムギちゃんに聞くのが一番早いけど、普通の状態で面と向かって自分の良いところなんて聞けるわけないよね 最近、澪ちゃんが恥ずかしがったりする気持ちが良くわかる、 次りっちゃんやさわちゃん先生が澪ちゃんをいじめていたら助けてあげよう そんな事を考えてるとまた携帯がなった。 憂の心配症にも困ったものだと思って携帯を開くと、そこにはドキッとする名前が書かれていた あっ私今ニヤついてる… 何だかんだ言っておいて、結局彼女からの連絡が嬉しいのだ、 この名前が表示されるだけで携帯の価値があがった気がする。 私は一度深く呼吸をして、通話ボタンを押した 唯「もしもし」 一瞬の間ですら焦れったい、早く彼女の声が聞きたかった 紬「紬です」 唯「うん」 もう少し普通に愛想良く話したいけど、先ほどから心臓が痛いほどドキドキしてるから今回も無理そう 後ろから車の光が近づいて来たので、道路の真ん中で突っ立ってた私は端へと避け、家の塀に体をあずけた。 紬「もしかしてまだ外?」 唯「うん。和ちゃんと遊んでて、その帰り道」 紬「和さんと……」 変な間が空く、もしかして勘違いさせてしまった? 唯「違うよ、和ちゃんとはそんなんじゃないからね」 とたんに携帯からクスッと笑い声が聞こえる。 紬「分かってる。けど私が何も聞いてないのに言い訳するなんて逆に怪しいわよ」 またやられた……こうやって彼女は時々小さい意地悪をしかけてくる 唯「用あるんじゃないの?」 ムっとして、ちょっとキツい言い方になってしまう 紬「なかったら連絡しちゃいけない?」 唯「……別にそうじゃないけど」 紬「良かった」 口調から彼女の笑った顔を想像できて私は簡単に照れてしまう、本当にらしくない 唯「じゃあちょっと待ってて、お家に帰ってご飯食べたら私から連絡するから」 紬「ありがとう、けどその前にひとつ聞いておきたい事があって」 唯「何?」 紬「来週の土曜日なんだけど予定ある?」 唯「予定?部活あるんじゃない?」 紬「うん、多分夕方までわ。それ以降なんだけど……」 遊ぶ予定だろうか?だったらわざわざ電話してくるなんて珍しい。 だって今日みたいにどうしても外せない用事以外の日は、一緒にいるのは当たり前になってるし、私に関してはどうしても外せない用事なんてほとんどなかったから ちなみに今日はムギちゃんのお父さんの誕生日があった為、遊ばなかった。 なんでも家でパーティーがおこなわれてるらしい 唯「多分暇だと思うよ」 紬「じゃあ一緒に来て欲しいところがあるんだけど……」 ムギちゃんの話し方が、いつもより歯切れの悪いものになっている気がする。 嫌な予感が湧いてきたので、携帯を強く握り締めた 唯「どこ?」 紬「……私のお家なの」 とりあえず携帯は落とさずにすんだ ―――――― ―― この駅で降りるのは初めての事だった。 同じ車両から降りた人達は迷わず進んで行ったので、降り口がわからなかった私はその後ろにくっついて歩く事にする。 途中大きな鏡がおいてあり、自分の姿が写し出される。もっとかっちりした服を着てくれば良かったと後悔したけど、 私が持っている服でそれに唯一該当するのって制服なんだよね…… これでも恥ずかしくならないように、家にある服を総動員して選んだものではあった。 それはお母さんの服や憂の服も例外ではなく、まさに総動員で。 服を選んでる時の憂の顔を思い出す。 彼女は貸すことには抵抗なかったみたいだけど、最後まで何か聞きたそうな顔をしていた。 それも当たり前か…… 誰かの家にお泊まりに行くからって、あんなに次から次へと洋服を着て感想を求められたら困惑するよね。 結局上着は一番のお気に入りの物を着て、憂には靴とスカートを、お母さんには黙ってだけどネックレスを借りた。 家ではなかなかさまになってると思えていた服も、こうやって見ると少し子供っぽ過ぎたかと心配になる。 けど今更家に帰るわけにもいかない 私は腹をくくり、諦めにも似た心境で彼女との待ち合わせ場所に歩みを早めた。 ―――――― ―― 待ち合わせ場所に指定していた駅の入り口には帰宅を急ぐ人でごった返していたけど、彼女はまだ着ていないようだった。 とりあえず遅刻はしなくてすんだ それでも体は少し強ばっていて、自分でも緊張しているのがよくわかる いつも以上に服を気をつけてたのもその為なんだろう。 だって彼女の家に呼ばれるのは初めての事だったから…… 友達の時も、付き合ってからも、彼女のお家に行ったことはなかった。 彼女がどんな部屋で過ごしてるのか興味はあったけど、漠然と彼女はそれを望んでないんじゃないかと思っていた。 それは彼女のお家が普通とはちょっと違うからなのか、 私達の関係が普通とはちょっと違うからなのか。 どんな理由でも結局のところ断られるのが怖かった私は、彼女が誘ってくるまで待とうと思っていて、 だから今回の突然の誘いに対しても真意が分からず、ただ行くことを了承しただけだった。 「唯ちゃん」 横から声をかけられ顔を向けると、先ほど部活で会った時とは違い、私服に包まれた彼女が立っていた。 紬「ごめんね、待たせてしまって」 最後に別れてから2時間もたってないのに、何でこんなに嬉しくてたまらないんだろう。 今すぐにでも抱きつきたい気持ちをグッと我慢する 唯「待ってないよ、今来たとこだから」 紬「なら良かった。あら?そのスカート初めて見るわね」 気づいてくれた事が嬉しくて、顔がしまりのないものに変わるを必死に抑える 唯「憂に借りた」 紬「そうなの?可愛いわね」 こんなセリフで私の顔は簡単に熱くなる。それを誤魔化す為、小さく息を吐きながら自分とは関係ない話題を探すことにした 唯「人けっこういるんだね」 紬「ええ、ここは住宅街だからこの時間は家に帰る人が多いのよ」 唯「ムギちゃんの家は遠いの?」 紬「少しね。普段はバスを利用してるんだけど、今日は車で来てるから」 唯「え!?」 自然と声のボリュームが二段階ほど上がってしまった 紬「どうしたの?」 唯「え……ううん何でもない」 紬「そう、じゃあここにいても何だし行きましょうか」 そういうと彼女は私を先導するように歩き始める。 ここまで車で来たって事はムギちゃん以外の誰かが運転してきたって事で、それはもしかしたらムギちゃんのお家の人で…… 紬「大丈夫?怖い顔してるわよ」 唯「うん……だ、大丈夫」 全然大丈夫ではない。 覚悟はしていた事だけど緊張する、だって相手は彼女の家族なんだから…… 紬「あそこの車よ」 そこには黒くて長いピカピカした高級そうな車と、その横にスーツを着た年配の男性がこちらを見て姿勢良く立っていた。 ゴクリと生唾を飲み込む 唯「あ、あれがムギちゃんのお父さん?」 紬「違うわよ、あれは執事の斎藤」 執事……お父さんじゃないのか…… 少し緊張がとかれる。 ………執事? 唯「ムギちゃんのお家って執事いるの!?」 紬「ええ、ほら車に乗りましょ」 ムギちゃんが男性に目をやると、何も言わずに車の扉が開けられた。 執事なんてものがこの世に存在していることに驚き、 その執事に命令してるのが自分と同い年のましてや恋人なのに尚驚きながら、男性に頭を下げて車の中に足を踏み入れる。 車が静かに発進して、車なのにムギちゃんと向かい合いながら座っていても私はただただ圧倒されてばかりいた。 別荘があったり、余らせるほどお菓子があったりと、ムギちゃんのお家がお金持ちなのは知っていたけど、それは私の想像を越えていたようだ。 紬「今日はありがとう」 唯「え?」 紬「来てくれて嬉しかった」 唯「え……あ…うん、いいよ」 何となくムギちゃんもいつもと違うように見える 車中の会話はいつも以上に続かないまま、目的地である彼女の家に到着早々と到着した。 彼女の家を見ても先ほどより驚かずにすんだ。ただでさえムギちゃんが隣にいるのにこれ以上心臓に負担をかけたくない。 ただ驚かずにすんだのは、私が彼女の家を西洋のお城くらいはあるかもと覚悟していて、 実際は私の家の5倍くらいだけだったという話で大きいのに変わりはしなかった。 小さい頃なら巨人が出入りしてるんだと夢見できるほどの玄関をくぐると、メイド服を着ている女性が2人立っている。 「お帰りなさいませ、紬お嬢様」 まるで定規で計ったよう正確に、同じ角度でお辞儀をする女性が一瞬ロボットかなにかなのではと疑ってしまう 彼女の家なら本当にありえそうで怖い 紬「ただいま、お母様は帰ってきてる?」 「いえ、先ほど予定より少し遅くなると連絡がありました」 紬「そう、……お父様はいつも通りね?」 「はい」 メイドさんと話してる彼女は軽音部にいる時とも、私といる時とも違って少し冷たく感じた。 紬「唯ちゃんお腹減ってない?」 唯「うん、大丈夫…」 本当は少し減ってるけど、この場でそれを言うのは自分だけが子供みたいで恥ずかしく言いだせないよ 紬「なら先に私の部屋に行きましょうか」 唯「あっ……うん」 靴を脱ごうとして彼女に止められる。どうやら脱がなくていいらしい 雨の日とか大丈夫なのかと心配になったけど、少なくてもどこもかしこもピカピカだった。 階段を二回上り、初対面のメイドさんと執事さんに一回ずつすれ違ってからやっと彼女の部屋にたどり着いた。 紬「どうぞ、つまらない部屋だけど」 大きい扉が開けられる。 中はとても広く、高級そうなベットやソファが置かれていて雑誌に載っていそうな部屋だったけど カーテンの色とかソファーの色とかが、彼女の趣味とは少し違う気がした。 しかし扉を開けた瞬間、部屋の中からフワリと彼女の匂いがして、やっぱり彼女の部屋なんだと当たり前の事を考えていた。 唯「綺麗な部屋だね」 ありきたりなセリフしかでてこない自分のボキャブラリーの無さが悲しくなる 紬「物がないだけよ。そっちのソファーに座ってて、すぐにお茶がくると思うから」 唯「うん」 ソファーはテーブルを挟んで二人掛けと三人掛けのものが対面に置かれていて、 私は促され三人掛けに彼女は二人掛けに座ると、すぐにまた初対面のメイドさんがいい匂いの紅茶を運んできてくれた。 しかしメイドさんはいったい何人いるんだろう? 紅茶を一口飲むとやっと落ち着いた気がする。まるでいつもの部活のように 紬「どう美味しい?」 唯「うん……」 紬「あら?口にあわなかった?」 唯「いやそうじゃないよ、美味しいんだけど……」 ―――思い出してしまっただけ 紬「何?」 唯「普段飲んでる方が私は好きかな……って……」 もちろん普段飲んでるのは彼女の淹れてくれたもので純粋にそう思ったから言ったのだけど、 いつもなら少し意地悪な切り返しをしてくるであろう彼女が、何も言わずに自分の持っている紅茶に視線をおとしていたので、 私は何かまずい事を言ってしまったのかと不安になる。 ありきたりなお世辞にとられて、嫌なやつだと思われただろうか…… 私は緊張の為また一口紅茶を飲んだけど、 やっぱり彼女の淹れてくれた方が美味しいと思っただけで、喉の渇きはそれほど癒えなかった。 紬「唯ちゃん」 唯「な、何?」 紬「そっちに行ってもいい?」 唯「……いいけど」 彼女が隣に腰をおろすと体と心がまたざわざわして、それを隠すために私も座り直す 紬「唯ちゃん……」 言葉と共に彼女の左手が私の膝に降りる。 タイツ越しに伝わるいつもより冷たい彼女の手にビクっとなってしまった。 いや、ただ私の体温が上がってるからそう感じただけかもしれないけど…… 何だかマズい気がする 唯「ムギちゃん、誰かくるかもしれないしちょっと離れよう」 紬「誰も来ないわよ」 彼女の体重が私にかかり、ワザとなのかどうなのか彼女の胸の膨らみが私の肘にあたっている。 私はそれだけで、全身を堅くしながら下を向き身動きがとれなくなってしまった。 紬「ねえ唯ちゃん…」 さらに肘に柔らかい感触がかかる 唯「ん?」 先ほどみたいに言葉はだせず、口を閉じて反応する。 開けてしまったらはしたない声をだしてしまいそうだったから… 髪に何かサワサワと当たったかと思ったら、耳のすぐそばから彼女の声がした 紬「先週和さんとどんなお話ししたの?」 それは耳というより脳に直接話しかけられてるみたいで、私はもう何も考えられなくなる。 彼女が怒ってるのか? 何でこのタイミングで和ちゃんの話をするのか? 疑問に思う事はあったけど、全部忘れて彼女の魔法のような言葉にただただ答えるしかなかった。 唯「が、学校の事とか……部活の事とか……」 紬「私の事は?」 唯「少しだけ……」 紬「どんな事を話したの?」 膝に置かれていた手が円を描くように動かされる。 唯「ふぁ……」 紬「気持ちいいの唯ちゃん?」 膝から太ももに手があがり、それだけで体が震える 唯「ん……」 紬「可愛い……それで和さんと私について何を話したの?」 唯「和ちゃん……和ちゃんは……ムギちゃんと付き合えて……良かったねっ…て」 紬「そう……」 彼女の手が太ももからまた少し上にあがる。せっかく憂から借りてきたスカートはだらしなくはだけていた。 紬「唯ちゃんは和ちゃんが好き?」 また突飛な質問がとぶけど先ほどと同じように私は答えるしかない 唯「好き、だよ」 また手が上へとあがる 唯「んぁ…」 紬「私より?」 唯「…く…比べられないよ」 本心だった。和ちゃんへの好きとムギちゃんへの好きは全く別物だったから 紬「比べられないのね……」 また手が上へとあがり、もうそれはタイツ越しとはいえ私の大事な部分まで到達している。 私は何とか抵抗しようと閉じている足の力を強めた 紬「和さんはこんな気持ちいい事してくれないわよね?……それともした事ある?」 指先がわずかに大事な部分に触れる 唯「あンッ…あるわけないじゃん!!」 出来る限り声をだし否定した 紬「ふふっ、そう、良かった。」 そう言って彼女の吐息が耳に近づき、甘く噛まれる 唯「いや…」 スカートの中に入ってる手を柔らかに動かし指先でつついてくる。 今日はこんな事をしにきたわけじゃないのに…… 唯「いや…ムギちゃん……したく、ない」 これからムギちゃんの家族と会うかもしれない、もしかしたら大事な話をしなきゃいけないかもしれないのに 唯「…ダ…ダメだってば」 しかし彼女の手が撫でるように動くと私の意志は簡単に崩れてしまい、体と心がバラバラにされてしまったようにこのまま流されてしまう。 ―――けどそうはならなかった 彼女の次の言葉が私を現実へと引き戻す 紬「ほら、邪魔な服は脱いじゃいましょ…」 火照っていた体温が一気に下がる 違う…… だって彼女は知ってるから、私がどんな気持ちでこの服を着ているのか。 彼女との初デートの前日。 どんな服を着ていけばいいか分からなくて、和ちゃんと一緒に買いに行った。 普段はあんまり行かないようなちょっと高めのお店に行って、見つけたこの上着。 和ちゃんも店員さんも似合うって言ってくれたけど、ムギちゃんに言われるまでずっと自信がなかった。 だからデートの日一番最初に聞いたんだ、この服変じゃない?って。 彼女はキョトンとしてたけど、私に聞き返してきた もしかして今日の為に買ってくれたの?って。 私は恥ずかしがって声をうわずらせながら、そんなわけないじゃんって嘘をついたんだ。 けどやっぱり彼女にはバレてて そう、ごめんなさい。ありがとう。とっても素敵よって言ってくれた。 その日から大事な日には絶対これを着ていくようにしている。 だから違う…… 彼女はこんな時でも絶対この服を邪魔だなんて言わない。 魔法がとかれた私は彼女の手をはねのけて、ソファーの端へと逃げる。 紬「唯ちゃん?」 彼女からあまり聞かない不安な声がする。 心が苦しい……こんな声を彼女にださせてしまったことが。だけど私はどうしても許せない、だってこの服は特別だから。 紬「ど、どうしたの……唯ちゃん?」 私は彼女を強く見据えると、先ほどとは立場が変わったのか彼女は弱々しい顔を見せてきた 紬「いい子だからこっちに来て」 哀願する彼女に首を振る 紬「何で?気持ちよくなかった?なら私もっと頑張るから…」 やっぱりおかしい……彼女は私が何に怒ってるのか分からない人じゃない、一体どうしてしまったんだろう? 紬「唯ちゃん…わ、私…唯ちゃんに……」 彼女の手が伸びて私の髪に触れようとする。怖かった、彼女が私の知らない人みたいで 唯「いや、触らないで」 自分でも怖いほど低い声がでて、彼女の手が空中で止まり力なく落ちていく。 同じソファーの隣同士に座っているのに、今私達の間には絶対的な距離ができてしまった気がした。 そう思った矢先、重たい空気を割るように扉を叩く音がする 「お嬢様」 低い男性の声が聞こえたけど、呼ばれた彼女は動こうとせず、ただ私にすがるような視線が送くるばかりだった。 私は彼女の寂しげな視線に耐えきれなくなり視線を外す そしてもう一度ノックの音がするとやっと彼女は反応し、フラフラと立ち上がると扉に近づていった。 紬「何」 ゾッとするほど冷たい声がムギちゃんの口からでる。 「奥様ですが、急な仕事が入ったため明日の朝にならないとお戻りになれないそうです。」 彼女の変化に気づいてないのか、受け答えしてる男性は淡々と言葉を発していた。 紬「…分かりました」 「あと夕食なのですが…」 紬「斎藤、それはこちらから連絡しますからとりあえず準備はしといて下さい。もうないなら下がっていいわよ」 斎藤「はい、かしこまりました」 矢継ぎ早な会話が終わったのが分かり 私は急いでスカートを整えて、その上にある手をぎゅっと握りしめ彼女の言葉を耐えるように待った。 紬「唯ちゃん」 先ほどのドア越しの会話の時とはまったく違った、頼りなさげな声がする。 目線を合わせると彼女の顔はただでさえ白い肌が一段と蒼白くなり、目元に涙すら浮かんでいた。 そうさせたのは私か… 紬「さっきはごめんなさい」 唯「あっ……ううん、私も言い過ぎた」 お互い謝っても気まずい雰囲気は消えることはなかった。 だって彼女はなぜ先ほどのような真似をしたのかまでを話してはくれなかったから 紬「そろそろ時間も遅くなったし、夕食にしない?」 唯「うん……」 紬「なら食堂に行きましょ、きっと唯ちゃんも気に入ると思うわ」 唯「うん、ありがとう」 会話が止まる。 やっぱりこのまま何てダメだ 唯「ムギちゃん…何かあったの?」 彼女が答えやすいようできるだけ優しい声で聞いてみる。だけど彼女の顔の陰りが消えはしなかった。 紬「……何もないわよ。それじゃあ行きましょう」 無理に微笑みながらそう言って歩き始めるムギちゃんを問い詰めたいけど、、 彼女の後ろ姿は私の質問を完全に拒否していた。 食堂に行くと次々と美味しそうな料理が並びはじめ、それを大きいテーブルで二人っきりで食べる。 広々とした食堂内には皿やファークが奏でる無機質な音ばかりがなっていて、こんなに美味しそうな料理も大して味がわからなかった。 ムギちゃんどうしたの?何かあったの? 何度も聞こうと喉まででているこの言葉が口から出ることはない、たった一度の拒否で恐怖心が私の口を塞いでいて、 もしあの時ムギちゃんを受け入れていたらと後悔ばかりが頭をあげる 紬「そろそろ寝ましょうか?」 あれからほとんど会話もないまま、ただただ気まずい時間を過していた時 彼女が思い出したようにポツリと言う 時間は23時 普段なら間違いなく寝てはいない時間だけど私もどうしていいか分からず、小さい声で同意してしまった。 ただもしかしたらベッドでなら話しができるかもと小さい希望は持っていた。 ソファーから立ち上がりベッドに向かう彼女の後ろをついて行くと、側まできた彼女が振り向き私を見る。 紬「唯ちゃんはここで寝て。私はソファーで寝るから」 唯「え?」 紬「別々に寝ましょう……」 唯「…何で?」 空気がさらに重くなる。 彼女は何も答えてくれないけど、もうムギちゃんの拒否を恐れている場合ではないことは私にも分かった 唯「一緒に寝ようよ」 こんな事言うのは初めてかもしれない、それだけ私達にとって自然な事だったから。 もう一度自分の意志を伝えようと口を開きかける私を、彼女の言葉は遮った 紬「ごめんなさい」 そういうと彼女はひとつ枕を持ってソファーに向かう 唯「何で?」 唯「……何で一緒に寝ちゃダメなの?」 聞き分けのない子供みたいに同じ問いを繰り返す この場の空気と不安な気持ちに私は押しつぶされそうだった。 唯「ねえ、少しだけでもいいk……」 紬「ごめんなさい」 私の哀願するような声がまた彼女の声に阻まれる 紬「今の私少しおかしいの。そんな状態で唯ちゃんの隣に寝たら…… あなたをめちゃめちゃにして、傷つけてしまうから。ごめんなさい」 彼女はそう言うと扉の近くまで行き、部屋の電気を消した。 一気に広がる暗闇に一瞬で彼女を見失う それは視覚的にも、そして心情的にも。 心が折れそうだった。何でこんなになっても私は何もしないでこうやって立ってるだけなんだろう ムギちゃんが何かに苦しんでるのは分かってるくせに、それを知ってしまうのが怖い。 彼女を苦しませてるほどのものが、私にどうにかできるのか? 助けてあげられなかったら彼女に失望されるかもしれない・・・ 眼先で拒否されているのに私はそんな事ばかり考えていた。 布の擦れる音が聞こえて、また静かになる 紬「お休みなさい」 彼女の言葉が永遠の別れに聞こえた 私は誰かに助けを求めたくなる。軽音部のみんなや和ちゃん、憂に私はどうすればいいのか聞きたかった。 けどそんなことしても無駄なんだ。 誰かに聞いて答えがででも結局やるのは私だから、私が何かしないと変わらないんだ。 これは二人の間の問題で、ムギちゃんが苦しんで解決できないなら私がやるしかない。 ムギちゃんならどうするか…… きっと私がそうなっても私の本心を見抜いてくれて、良い方へ導いてくれる。 けど私はムギちゃんではないし、彼女にはなれない。 だったら私ならどうする…… 唯「いいよ……」 紬「え?」 暗闇の中、私の言葉が彼女に届く 唯「ムギちゃんがしたいようにしていいよ」 私は服を脱ぐ さっき私は彼女を一度拒んだ。 あまつさえ触らないでとまで言ったのだ、彼女がおかしいと気づいていながら。 それが――私の犯した間違いなんだと思う。 私にはムギちゃんみたいに本心を見抜くことができない、だったらその歪な気持ちのまま受け止めるしかなかったんだ。 受け止めた後にその中から探すしかない、彼女の本当に望んでいることを 着ていたものを全て脱いで一歩一歩彼女に近づく、覚悟を決めても情けない事に足は震えていた。 暗闇の中でも近づけば彼女が上半身を起こしてるのがわかったので、そのまま柔らかく抱き締める。 紬「ゆ、唯ちゃん!!…えっ……ふ、服は!?」 触って初めて気づいたのか、ムギちゃんの声がたじろいでいた 紬「……ゆ、唯ちゃん!?」 唯「いいよ」 もう一度伝えよう、ムギちゃんに私の気持ちを 唯「めちゃくちゃにしていいよ。」 紬「えっ……」 唯「痛いことでも我慢する、もしかしたら泣いちゃうかもしれないけど大丈夫だから。 ムギちゃんがしたいこと全部受け入れる」 紬「……」 唯「私バカだから、ムギちゃんが悩んでたり苦しんでたりしても、解決させてあげられない。 頼り無くてごめん…… 解決はできないけどそれを分けて欲しい。 ムギちゃんの傷とか悲しみとか私にも分けて、私も一緒に悩んだり苦しんだりするから。 ムギちゃんとならどんなに辛くても、きっと大丈夫。 だから……だからね…… 一緒にいて……あなたの隣にいさせてください。お願い…大好きなの…ムギちゃんの事…」 多分最後の方は言葉になっていなかったと思う。声をだしたくても涙と嗚咽が邪魔をしていたから だけど少しは私の気持ちが彼女に届いたのか、彼女はキツく強く抱きしめてくれていた。 ――――― ―― 紬「先週の父の誕生パーティーの日、偶然話を聞いたの」 相変わらずの闇の中、ベッドで彼女に身を寄せている私が落ち着いたのを見ると彼女は語り始めた。 次へ 戻る
https://w.atwiki.jp/devilchildren_br/pages/47.html
これが魔界の全貌だ! 【出典】 株式会社アトラス.「これが魔界の全貌だ!」.『真・女神転生 デビルチルドレン 赤の書 取扱説明書』.株式会社アトラス.2000,p.6-7
https://w.atwiki.jp/tothelegend/pages/20.html
"I" 隊長伝説 『"I" 隊長伝説』Ⅰ 指揮官起つ! 編 彼は4/5、少数の部隊を率いて戦場に赴いた。住人たちが忘れかけた熱い血の滾りを求めて・・・。 話はその日から数日遡る。彼はルイーダの再興を喜びつつもなにか物足りなさを感じていた。 「今の俺たちには何かが・・・。」それが何かということを見つけるのにさほど時間はかからなかった。 そうそれは空爆。疾風のごとく敵地に侵入し規制をかいくぐり、存在をアピール。そんな日々が懐かしかった。 彼は思った。再び逝こう。あの場所へ。魔界オルタナティブへ! 魔界であると同時に彼にとっては『聖地』でも あった。自分が熱き冒険者であることをいつも彼に思い出させてくれる場所・・・。 彼は他の冒険者達に呼びかけた。「空爆しようぜ!!」しかし、住人たちの反応は今一つだった。 しかし、彼にとってそんなことは問題ではなかった。出来ればみんなで、行きたかったが、一人でも行くつもりだったから。 これは彼にとっての文字通り『聖戦』だった。そこには影薄と笑われた彼の面影はもう無かった。一人の熱き指揮官の 誕生の瞬間だった。 『"I" 隊長伝説』Ⅱ 集まった部下達 編 彼の空爆への思いはごくわずかではあったが、住人たちの心を動かした。そして彼らは、"I" 隊長のもとへ。 集まった部下達を見て、隊長は思った。「ひのきに、汚水に、1p、そして新人の死霊か・・・。」 「俺に比べたら、まだまだ、ヒヨッコばかりだなwww」。確かにキャリア、戦闘力、統率力、どれをとっても 部下達は隊長の足元にも及ばなかった。貧弱すぎた。しかし、"I" 隊長は嬉しかった。「よく来た部下達・・・。」 心からそう思った。部下達の目は隊長に期待している。そして、彼もその期待に応える自身があった。 "I" 隊長は部下達の視線を正面から受け止めて、こう語った。「よっしゃぁ!ノリこのままで逝くか!? いいんか!?やっちゃうぞ!?参加キボンヌ者は23時までに本スレ集合。」(*当スレ242より引用) 死霊はこう思った。( ´_ゝ`)。o0○(俺はもう逝って来たぞ。一人きりでな。ふっ・・・) 1Pはこう思った。( ´_ゝ`)。o0○(し、渋すぎます隊長・・・) 汚水はこう思った。( ´_ゝ`)。o0○(そんなことより俺、勉強しないとなぁ・・・) ひのきはこう思った。( ´_ゝ`)。o0○(クールだな隊長・・・) 『"I" 隊長伝説』Ⅲ 隊長の追憶 編 4/5、23時の到来とともに、隊長の怒号が響いた。「そろそろ空爆開始じゃあ!ひとりずつ突っ込んで逝けや!! 俺は11時半より参加だゴルァ!!!!!!!!」(*当スレ316より引用) 彼は叫びながら、ひとつの言葉を思い出していた。『Show the flag!!』 これは彼の師匠、推薦勇者がかつて、 初めて魔界オルタナティブへ乗り込んだ時に口にしていた言葉だ。(パート1 85・95参照) "I" 隊長はその言葉を呟いてみた。 「Show the flag・・・」じぃーん(涙 ついに俺もここまで来たか・・・。じぃーん(涙 思えば"I" 隊長がルイーダに参加したのも、推薦勇者を慕ってのことだ。推薦勇者が、『Show the flag!!』を 叫んだ時、彼はまだ非戦闘員だった。だが、しかしその時の推薦勇者の勇姿が彼の生き方を大きく変えてしまった。 「お、おれもいつかあんな風に・・・。」"I" 隊長は思った。 あれから時は流れ、今、"I" 隊長自身が部隊を率い、突撃を指揮している。感無量の隊長だった。 部下達はすでに魔界で戦闘を開始していた。「むっ、そろそろか・・・?」隊長は時計を見た、23:30を少し過ぎていた。 「Show the flag・・・」彼はもう一度呟くと、静かに歩き出した・・・。 『"I" 隊長伝説』Ⅳ 遅れてきたツワモノ 編 隊長が追憶モードに突入している頃、ケツァを加えた部下達は熾烈な戦いを繰り広げていた。そしてなかなか現れない 隊長に苛立ちはじめていた。「隊長はまだか?どこだ?隊長は?」そんな声があちこちから聞こえてきた。 だが"I" 隊長は落ち着いていた、そして静かに呟いた。 「フフフ・・真のツワモノは遅れての参加だよ。」(*当スレ326より引用) 戦場に現れた隊長はまたしても感無量だった。彼の部下達が予想以上に奮闘していたからだ。 「俺の部下達よ。よくがんばった。あとはこの俺に・・・。"イフリート" 隊長に任せてもらおう!!」そう思った。 また部下達も、イフリート隊長の到着を心から喜んだ。「もう大丈夫。あのイフリート隊長が来てくれたのだから。」 皆一様にそう思った。そして期待のまなざしを隊長へ向けた。イフリート隊長もまた、その期待に応える自信があった。 まっすぐにその視線を受け止めながら、こう言った。「一皮剥けてますが何か?」(オルタナ 1243より引用) おおぉっーーこれは期待できる! 誰もがそう思った。 さぁ俺達の隊長の攻撃をうけるがいい!!魔界の住人達よ。 『"I" 隊長伝説』Ⅴ 隊長よ永遠に。そして・・・伝説へ 編 あっという間の出来事だった。隊長は戦死した。イフリート隊長の攻撃は3発。そして彼はそのまま 星になった。誰よりも空爆を熱望し、誰よりも早く散った、伝説のイフリート隊長の末期だった。 「何しに、いらっしゃったんですか?隊長・・・。」部下達は途方にくれた。 死霊はこう思った。( ´_ゝ`)。o0○(だから俺一人で充分だったんだよ。ふっ・・・) 1Pはこう思った。( ´_ゝ`)。o0○(は、早すぎます隊長・・・) 汚水はこう思った。( ´_ゝ`)。o0○(そんなことより俺、勉強しないとなぁ・・・) ひのきはこう思った。( ´_ゝ`)。o0○(目立ったな隊長・・・) ケツァはこう思った。( ´_ゝ`)。o0○(これがイフリート隊長・・・) イフリート隊長は薄れ行く意識の中でこう呟いていた。 「俺はもう、影薄じゃねぇ・・・影薄じゃねぇ・・・。影薄じゃ・・・」 ありがとうイフリート隊長。私達はあなたを忘れない。 ガ━━━(゚Д゚;)━━━ン
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/908.html
「くすくす、で?バーサーカーちゃんは此処に何をしに来たの?」 血のように赤く染まった目で、かつて間桐桜であった少女はバーサーカーを見つめた。 邪悪な視線に対し、バーサーカーは目をそらすこと無く真っ直ぐに見つめている。 「桜を、助けに来た」 その一言に、『サクラ』は哄笑した。嘲りを隠そうともしないその笑顔のままに、一言だけ言った。 「うるさい」 瞬間、影がバーサーカーに襲いかかる。水流も白霧も影に飲み込まれて消える。必死で影を回避するその動きを見て、『サクラ』はまた嗤った。 「あはは、馬鹿みたい。あなたなんかよりよっぽど強いアーチャーもセイバーも食べちゃった私に、もう怖い物なんか無いわ……だから、たっぷり苦しんで死んでね?」 ランサーよりもなお巨大な黒色の巨人が出現し、バーサーカーに向かった。 「たああああ!」 バーサーカーが剣を振るう度に巨人は雲散霧消するも、次から次へと出現するそれに、疲労は募る。 「桜、士郎も凛も慎二もキャスターもお前を助けるために」 「うるさいっ!」 漸く、嘲り以外の感情を露わにした少女は、両手で頭をかきむしりながら叫んだ。 「どうせ私を殺そうとしてるんでしょう、分かってるんだから、今まで誰も助けてくれなかった!お父様もお母様もおじさんも姉さんも兄さんも先輩も誰も!!ほっといてよ!完成すれば、痛みも熱さも消えるんだから!!」 周囲を取り囲んだ影の巨人を魔力放出で消し飛ばしながら、バーサーカーは苦しむ少女を見つめた。 「あなたには分からない。大勢の人達にちやほやされて、綺麗なままで死ねたあなたなんかに―――!!」 津波のように襲いかかってきた影を一刀で切り伏せたバーサーカーは口を開いた。 「私は今まで桜を救えなかった。だけど、今からならば、別の話だ」 バーサーカーの眼光は澄み切っていた。 「何を、言ってる、のよ」 肩で息をする『サクラ』に、バーサーカー、安徳天皇言仁は言葉を紡ぎ続ける。 「桜、お前はまだ間に合う。救う事はできる。できるのだ……信じろ」 そうして、安徳天皇は、黒い泥が溢れ出す聖杯を見上げ―――跳躍した。 「え……?」 そのまま泥の中に消えていく幼帝を呆然と見たまま、『サクラ』は暫くその場に硬直していた。 その場所には全ての悪があった。 殺生偸盗邪淫妄語飲酒殺生偸盗邪淫妄語両舌悪口綺語貪欲瞋恚邪見殺母殺父殺阿羅漢出仏身血破和合僧。 害悪がある。旧悪がある。凶悪がある。極悪がある。最悪があり、罪悪があり、邪悪があり、醜悪があった。 故に救いは無『もういい、いいのだ』く―――貴様は何者か。闇の中に光が灯った。 『時間が無い。もう、終わらせよう』悪が支配するこの場所における異物。追放せよ。 『始めるぞ』追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放! 『掛けまくも畏き伊邪那岐の大神、筑紫の日向の橘の小戸の』 やめさせろ!やめさせろ!やめさせねばならない!やめさせなければ! 『檍が原に禊ぎ祓え給いし時に、生りませる祓え戸の大神たち』 ―――やめさせられない。泥は太陽を見上げることは出来ても、そこに行く事も、それを汚すことも出来ない。 呪いの声が何も出来ないうちに、全ては終わりゆく。悪も罪も全てが終わる。 『諸々の禍事罪穢有らむをば、祓給い清給えと申す事を聞食せと、恐み恐みも白す』 すべてが、おわる。おわってしまう。この場にある悪も罪も何もかも。 唱え終わった瞬間、光が爆発し、全ての泥を一瞬で蒸発させた。 安徳天皇は、在位中に入水したことから水天皇とも呼ばれる。 それはいつの日か仏教における天部の一人、水天と同一視された。しかし、水天のなりたちはそれだけではない。 水天は元々インド・イランにおけるヴァルナと呼ばれる最高神であり、それはやがてゾロアスター教に取り入れられ、アフラ・マズダとなった。正義と法の神であり、悪神アンリ・マユと戦い続け、終末の日に善なる者と悪しき者を裁く最高神である。 それは、清水の濁流に流される小枝のような物だった。 流され。 濯がれ。 清められる。 天皇は日本国で不可侵の尊き人であり、故に行う祭祀は日本国最高のものである。 唱えられる祓詞は、罪と汚れを清めるための物であり、罪と悪の塊であるアンリ・マユにとっては相性の悪すぎる相手。 しかも、それを行っている安徳天皇の神性は最高のAランク。 只の、この世全ての悪など、物の数では無い。 全てが無色そのものとなるまで、祓い清められたその場所に、安徳天皇はいた。 今、この状態こそかつて御三家が追い求めた真なる聖杯、無色の大魔力だ。 世界を変える奇跡の塊に目もくれず、安徳天皇は歩き出した。 どれだけ歩いたのか、それとも僅かしか歩いていないのか、安徳天皇は蹲る人物の前に立っていた。 拷問で四肢を切り落とされ、目を潰され、全身の皮を剥がされた『彼』の前に立っている。 舌を抜かれた『彼』に呪いの言葉など吐けるはずも無い。今までの呪いは全て邪悪であれと願った『彼』の周りの人々全ての声だったのだ。安徳天皇は、口を開いた。 「―――お前は、こんな所で苦しまずとも良い。眠れ」 その言葉が引き金だったのか、『彼』の身体が光の粒子となって消える。 そして、何もかもが無色に染め戻された。 「え、あ―――うそ」 熱さも痛みも苦しさも全てが消えている。そして、『サクラ』だった『桜』は、全てを思い出した。 「うわあ……ああ、嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌、やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ!!」 自分の正体は、笑いながら人を食い殺した人面獣、そんなものが生きていていい筈も無かった。 自分自身で首を絞める。 両腕がまるで自分のもので無くなったかのように、自分の首を絞め続けた。 故に、両手を離したのは桜の意思では無く、いつの間にか現世に戻った幼帝の手によるものだった。 「桜、もうよいのだ」 「嫌、やだ、いいわけない!私、人を殺したんですよ!?笑いながら!!最低、汚い、死んじゃえば……」 「桜!!」 安徳天皇は、初めて見せた厳しい表情で桜の自虐を遮った。 「言っただろう。皆がお前を救うために戦ったのだ。士郎が私を喚び、凛が喚んだキャスターが協力し、この世全ての悪を清める策を考えたのは、慎二だ。既に散華したライダーもまた、お前を思っていた。 全てが終わったのに、お前が自分を責めてどうする……桜は、優しく笑うのが一番いい」 「ううぅぅぅぅぅ、わあぁ!!」 泣きじゃくる桜を抱きしめ、安徳天皇は聖杯を見た。汚れは全て清められ、神々しい輝きを発している。 だが、安徳天皇はずっとそれを渋い表情で見ていた。 追いついてきた凛に桜を任せ、安徳天皇と士郎は聖杯の前に立っていた。 「これが、聖杯か」 「士郎」 ポツリと呟く安徳天皇に、士郎は顔を見る。幼帝の表情は、真剣なものだった。 「私は、士郎がどんな選択をしても、責めたりはしない。この聖杯なら変なことにもならないだろう」 「……言仁は、安徳天皇はそれでいいのか?自分で手に入れた何かが欲しかったんじゃないのか」 「わたしはもういい。色々なものを皆から貰った。だから、いいのだ」 その言葉で、士郎は決意を固めた。聖杯に手を伸ばす。 失われた過去を思う。失われた命を思う。失われた全てを思う。 士郎は、聖杯を掴み、叫んだ。 「聖杯、消えて無くなれ!!」 「―――ああ、ここだ。私達がいた場所は」 山口県、下関市みもすそ川公園、そこから望む海が、平家終焉の地、壇ノ浦だ。 現代風の衣服に身を包んだ安徳天皇は、外見こそ普通の子供だが、その周囲だけ空気が違うように清浄な気配を身に纏っている。そのまま小さく手を合わせ、目を閉じた。 ―――アンリ・マユを浄化した安徳天皇は、そのまま受肉した。この世に再び生を受けたのだ。 最初は戸惑っていたこともあったが、この世界で生きていくことにも前向きなのが、皆にとっては喜ばしい。 最初に始めようと思い立ったのが、源平の合戦の跡地を訪れ、敵味方関係なく弔うことだった。 この旅行に出かけたのは、士郎と安徳天皇の二人だけだった。 慎二は旅に出た。エアメールによると大戦の古戦場跡に行っているらしい。あの男の軌跡を辿っているのだろう。 キャスターは自分で契約を切って消滅した。凛に『借金よろしくな』と言い残し、素敵な笑顔で消えた。 凛は倫敦で頑張っている。遠坂家再興のために協会の仕事をしているらしい。無理をしなければいいと思う。 桜は凛と共に倫敦に留学した。自身の力と心をコントロールできるようになって、もうあんな事が起きないように、力を尽くす決心をしているようだ。 イリヤと虎は二人で道場を始めようとしているらしい。止めなくてはならないと思うのは気のせいだろうか。 旅に出たのは、急に広くなった家に、自分でも落ち着かなかったからなのだろうと思う。 そんなことを士郎は、壇ノ浦の海面を見ながら思った。 ふと気がつくと、安徳天皇は、売店にいる親子連れを見ている。傍目に見ても、本当に幸せそうな人達だ。 「士郎」 「どうした?」 「朕(わたし)は、あの者達を守ったのだな」 「……ああ、守った。俺達は世界中の人達の笑顔を守ったよ」 「朕(わたし)は、自分で何かを得られれば、すぐに『座』へ戻ってもいいと思っていた」 「……」 安徳天皇は、涙を流していた。かつて共にいた者達のために。 「だけど、今はもっと多くの綺麗な物や、愛おしいものを、見たいと思っているのだ……かつてわたしと一緒にいた皆は、もうそれを見れないのに……見たいけれど……だけど皆は……」 士郎には分かっている。かつて自分と一緒にいた人達は皆死んで、受肉した自分だけがこんなに幸せでいいのか、と不安がっているのであろう事が。もやもやとした不安が、かつての自分達が最期を迎えた地に赴いたことで、表に出たのだろう。 そこで士郎は、不器用に笑った。 「言仁は、泣くより笑っていた方がいいと思うぞ。天国の皆だって、きっと笑っていて欲しいと思っているさ」 「……そうなのかな」 「そうに決まっているさ。だから、これからもよろしく頼む」 士郎の言葉を聞き、涙をごしごしと拭いた安徳天皇の顔を、潮風が撫でる。海の方へ向き、呟いた。 「……わたしは元気だ。皆心配しなくていい。いつか、お土産の話を楽しみにしていてくれ」 海が頷くように波が止み、静かな姿を見せた。
https://w.atwiki.jp/minasava/pages/969.html
「くすくす、で?バーサーカーちゃんは此処に何をしに来たの?」 血のように赤く染まった目で、かつて間桐桜であった少女はバーサーカーを見つめた。 邪悪な視線に対し、バーサーカーは目をそらすこと無く真っ直ぐに見つめている。 「桜を、助けに来た」 その一言に、『サクラ』は哄笑した。嘲りを隠そうともしないその笑顔のままに、一言だけ言った。 「うるさい」 瞬間、影がバーサーカーに襲いかかる。水流も白霧も影に飲み込まれて消える。必死で影を回避するその動きを見て、『サクラ』はまた嗤った。 「あはは、馬鹿みたい。あなたなんかよりよっぽど強いアーチャーもセイバーも食べちゃった私に、もう怖い物なんか無いわ……だから、たっぷり苦しんで死んでね?」 ランサーよりもなお巨大な黒色の巨人が出現し、バーサーカーに向かった。 「たああああ!」 バーサーカーが剣を振るう度に巨人は雲散霧消するも、次から次へと出現するそれに、疲労は募る。 「桜、士郎も凛も慎二もキャスターもお前を助けるために」 「うるさいっ!」 漸く、嘲り以外の感情を露わにした少女は、両手で頭をかきむしりながら叫んだ。 「どうせ私を殺そうとしてるんでしょう、分かってるんだから、今まで誰も助けてくれなかった!お父様もお母様もおじさんも姉さんも兄さんも先輩も誰も!!ほっといてよ!完成すれば、痛みも熱さも消えるんだから!!」 周囲を取り囲んだ影の巨人を魔力放出で消し飛ばしながら、バーサーカーは苦しむ少女を見つめた。 「あなたには分からない。大勢の人達にちやほやされて、綺麗なままで死ねたあなたなんかに―――!!」 津波のように襲いかかってきた影を一刀で切り伏せたバーサーカーは口を開いた。 「私は今まで桜を救えなかった。だけど、今からならば、別の話だ」 バーサーカーの眼光は澄み切っていた。 「何を、言ってる、のよ」 肩で息をする『サクラ』に、バーサーカー、安徳天皇言仁は言葉を紡ぎ続ける。 「桜、お前はまだ間に合う。救う事はできる。できるのだ……信じろ」 そうして、安徳天皇は、黒い泥が溢れ出す聖杯を見上げ―――跳躍した。 「え……?」 そのまま泥の中に消えていく幼帝を呆然と見たまま、『サクラ』は暫くその場に硬直していた。 その場所には全ての悪があった。 殺生偸盗邪淫妄語飲酒殺生偸盗邪淫妄語両舌悪口綺語貪欲瞋恚邪見殺母殺父殺阿羅漢出仏身血破和合僧。 害悪がある。旧悪がある。凶悪がある。極悪がある。最悪があり、罪悪があり、邪悪があり、醜悪があった。 故に救いは無『もういい、いいのだ』く―――貴様は何者か。闇の中に光が灯った。 『時間が無い。もう、終わらせよう』悪が支配するこの場所における異物。追放せよ。 『始めるぞ』追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放!追放! 『掛けまくも畏き伊邪那岐の大神、筑紫の日向の橘の小戸の』 やめさせろ!やめさせろ!やめさせねばならない!やめさせなければ! 『檍が原に禊ぎ祓え給いし時に、生りませる祓え戸の大神たち』 ―――やめさせられない。泥は太陽を見上げることは出来ても、そこに行く事も、それを汚すことも出来ない。 呪いの声が何も出来ないうちに、全ては終わりゆく。悪も罪も全てが終わる。 『諸々の禍事罪穢有らむをば、祓給い清給えと申す事を聞食せと、恐み恐みも白す』 すべてが、おわる。おわってしまう。この場にある悪も罪も何もかも。 唱え終わった瞬間、光が爆発し、全ての泥を一瞬で蒸発させた。 安徳天皇は、在位中に入水したことから水天皇とも呼ばれる。 それはいつの日か仏教における天部の一人、水天と同一視された。しかし、水天のなりたちはそれだけではない。 水天は元々インド・イランにおけるヴァルナと呼ばれる最高神であり、それはやがてゾロアスター教に取り入れられ、アフラ・マズダとなった。正義と法の神であり、悪神アンリ・マユと戦い続け、終末の日に善なる者と悪しき者を裁く最高神である。 それは、清水の濁流に流される小枝のような物だった。 流され。 濯がれ。 清められる。 天皇は日本国で不可侵の尊き人であり、故に行う祭祀は日本国最高のものである。 唱えられる祓詞は、罪と汚れを清めるための物であり、罪と悪の塊であるアンリ・マユにとっては相性の悪すぎる相手。 しかも、それを行っている安徳天皇の神性は最高のAランク。 只の、この世全ての悪など、物の数では無い。 全てが無色そのものとなるまで、祓い清められたその場所に、安徳天皇はいた。 今、この状態こそかつて御三家が追い求めた真なる聖杯、無色の大魔力だ。 世界を変える奇跡の塊に目もくれず、安徳天皇は歩き出した。 どれだけ歩いたのか、それとも僅かしか歩いていないのか、安徳天皇は蹲る人物の前に立っていた。 拷問で四肢を切り落とされ、目を潰され、全身の皮を剥がされた『彼』の前に立っている。 舌を抜かれた『彼』に呪いの言葉など吐けるはずも無い。今までの呪いは全て邪悪であれと願った『彼』の周りの人々全ての声だったのだ。安徳天皇は、口を開いた。 「―――お前は、こんな所で苦しまずとも良い。眠れ」 その言葉が引き金だったのか、『彼』の身体が光の粒子となって消える。 そして、何もかもが無色に染め戻された。 「え、あ―――うそ」 熱さも痛みも苦しさも全てが消えている。そして、『サクラ』だった『桜』は、全てを思い出した。 「うわあ……ああ、嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌、やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ!!」 自分の正体は、笑いながら人を食い殺した人面獣、そんなものが生きていていい筈も無かった。 自分自身で首を絞める。 両腕がまるで自分のもので無くなったかのように、自分の首を絞め続けた。 故に、両手を離したのは桜の意思では無く、いつの間にか現世に戻った幼帝の手によるものだった。 「桜、もうよいのだ」 「嫌、やだ、いいわけない!私、人を殺したんですよ!?笑いながら!!最低、汚い、死んじゃえば……」 「桜!!」 安徳天皇は、初めて見せた厳しい表情で桜の自虐を遮った。 「言っただろう。皆がお前を救うために戦ったのだ。士郎が私を喚び、凛が喚んだキャスターが協力し、この世全ての悪を清める策を考えたのは、慎二だ。既に散華したライダーもまた、お前を思っていた。 全てが終わったのに、お前が自分を責めてどうする……桜は、優しく笑うのが一番いい」 「ううぅぅぅぅぅ、わあぁ!!」 泣きじゃくる桜を抱きしめ、安徳天皇は聖杯を見た。汚れは全て清められ、神々しい輝きを発している。 だが、安徳天皇はずっとそれを渋い表情で見ていた。 追いついてきた凛に桜を任せ、安徳天皇と士郎は聖杯の前に立っていた。 「これが、聖杯か」 「士郎」 ポツリと呟く安徳天皇に、士郎は顔を見る。幼帝の表情は、真剣なものだった。 「私は、士郎がどんな選択をしても、責めたりはしない。この聖杯なら変なことにもならないだろう」 「……言仁は、安徳天皇はそれでいいのか?自分で手に入れた何かが欲しかったんじゃないのか」 「わたしはもういい。色々なものを皆から貰った。だから、いいのだ」 その言葉で、士郎は決意を固めた。聖杯に手を伸ばす。 失われた過去を思う。失われた命を思う。失われた全てを思う。 士郎は、聖杯を掴み、叫んだ。 「聖杯、消えて無くなれ!!」 「―――ああ、ここだ。私達がいた場所は」 山口県、下関市みもすそ川公園、そこから望む海が、平家終焉の地、壇ノ浦だ。 現代風の衣服に身を包んだ安徳天皇は、外見こそ普通の子供だが、その周囲だけ空気が違うように清浄な気配を身に纏っている。そのまま小さく手を合わせ、目を閉じた。 ―――アンリ・マユを浄化した安徳天皇は、そのまま受肉した。この世に再び生を受けたのだ。 最初は戸惑っていたこともあったが、この世界で生きていくことにも前向きなのが、皆にとっては喜ばしい。 最初に始めようと思い立ったのが、源平の合戦の跡地を訪れ、敵味方関係なく弔うことだった。 この旅行に出かけたのは、士郎と安徳天皇の二人だけだった。 慎二は旅に出た。エアメールによると大戦の古戦場跡に行っているらしい。あの男の軌跡を辿っているのだろう。 キャスターは自分で契約を切って消滅した。凛に『借金よろしくな』と言い残し、素敵な笑顔で消えた。 凛は倫敦で頑張っている。遠坂家再興のために協会の仕事をしているらしい。無理をしなければいいと思う。 桜は凛と共に倫敦に留学した。自身の力と心をコントロールできるようになって、もうあんな事が起きないように、力を尽くす決心をしているようだ。 イリヤと虎は二人で道場を始めようとしているらしい。止めなくてはならないと思うのは気のせいだろうか。 旅に出たのは、急に広くなった家に、自分でも落ち着かなかったからなのだろうと思う。 そんなことを士郎は、壇ノ浦の海面を見ながら思った。 ふと気がつくと、安徳天皇は、売店にいる親子連れを見ている。傍目に見ても、本当に幸せそうな人達だ。 「士郎」 「どうした?」 「朕(わたし)は、あの者達を守ったのだな」 「……ああ、守った。俺達は世界中の人達の笑顔を守ったよ」 「朕(わたし)は、自分で何かを得られれば、すぐに『座』へ戻ってもいいと思っていた」 「……」 安徳天皇は、涙を流していた。かつて共にいた者達のために。 「だけど、今はもっと多くの綺麗な物や、愛おしいものを、見たいと思っているのだ……かつてわたしと一緒にいた皆は、もうそれを見れないのに……見たいけれど……だけど皆は……」 士郎には分かっている。かつて自分と一緒にいた人達は皆死んで、受肉した自分だけがこんなに幸せでいいのか、と不安がっているのであろう事が。もやもやとした不安が、かつての自分達が最期を迎えた地に赴いたことで、表に出たのだろう。 そこで士郎は、不器用に笑った。 「言仁は、泣くより笑っていた方がいいと思うぞ。天国の皆だって、きっと笑っていて欲しいと思っているさ」 「……そうなのかな」 「そうに決まっているさ。だから、これからもよろしく頼む」 士郎の言葉を聞き、涙をごしごしと拭いた安徳天皇の顔を、潮風が撫でる。海の方へ向き、呟いた。 「……わたしは元気だ。皆心配しなくていい。いつか、お土産の話を楽しみにしていてくれ」 海が頷くように波が止み、静かな姿を見せた。
https://w.atwiki.jp/srwkdm/pages/356.html
19代目スレ 2007/11/07 ナンブ家 タカヤ「お茶持ってきたよ、姉さん、ゼフィア先輩」 レモン「ありがと。そこおいといて」 タカヤ「でも珍しいですね。先輩がうちに来るなんて」 ゼフィア「うむ、実はミッテ先生から非常に難解な課題を出されてな」 レモン「きっと私たちが降参するのを見て、悦に入るつもりなのよ。あの行かず後家で更年期障害寸前のサド教師!」 タカヤ(……同族嫌悪?) レモン「こうなったら意地でも解いて、鼻を明かしてやるんだから」 ゼフィア「……何にせよ、最善を尽くすのに越した事はない」 タカヤ「が、頑張って下さい」 906 名前:それも名無しだ[sage] 投稿日:2007/11/07(水) 16 56 25 ID DeL4M4Sk レモン「お、ちょっといい手応え。ゼフィア、私はこのまま計算を続けるから、あんたはデータの検証を頼むわ」 ゼフィア「承知--ところでレモン」 レモン「何?」 ゼフィア「お前、自分の部屋でも白衣なのだな」 レモン「そうだけど、それが何か?」 ゼフィア「俺のような無骨者が言うのも何だが、もう少し身だしなみに気を使ったらどうだ?」 レモン「ハァ? 何言ってるの、あんた。まあいいわ、特別に乙女の秘密を見せてあげるから」 907 名前:それも名無しだ[sage] 投稿日:2007/11/07(水) 16 58 41 ID DeL4M4Sk 衣装棚には白衣がぎっしり入っていた レモン「今着てるのが部屋着で、こっちが学校用にショッピング用。 これがパーティーとかに出るための一張羅、そしてこれが寝間着。 ちゃんとTPOに合わせて着こなしてるんだから」 ゼフィア「……全部、微妙に形が違うのだな……襟とか、袖口とか」 レモン「あ、分かる? こういう細かいところにこだわるのが、真のお洒落ってもんよね って言うか、私ほど服に気を使っている子って学校にはいないわよ、多分」 ゼフィア「……すまん、聞いた俺が馬鹿だった」
https://w.atwiki.jp/tanigawa/pages/53.html
https://w.atwiki.jp/alicero/pages/151.html
そして少女は総てを喪う 「……ハァ……ハァ……」 光が差し込まない暗闇の中で少女は逃げ惑う。 それは唐突にして残酷な出来事。 考えるべきことは沢山あるけれど、 今はひたすらに逃げるしかない。 自分の為に、 思い人の為に。 追う者は余裕のある歩調でじわじわと自分に迫る。 入り口の扉を叩く。 だが、閉じられたそれは反響音を鳴らすだけで 無情にも開く事は無い。 必死で扉を開けようとしても、 その間に追いつかれてしまう。 「助けて……ユウキっ!」 フィルの叫びが木霊する。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 「…う、うぅん…ここは?」 フィル・イハートが目を覚ました時、 辺りは暗闇に包まれていた。 最初は倒れている間に 夜になってしまったのかと思ったが、 どうやら自分が光源の少ない建物の中に 居たのだと数少ない窓から差し込む 心許ない明かりで気づく事ができた。 「うんしょ」 フィルは飛び跳ねるように起き上がると まずは自分の身体を確認し、 何処にも異常が無い事を確認すると 準備運動をして軽く身体を温める。 自分が居る建物、どうやら倉庫と思しき この場所にはフィル以外の人間は 気配からして居ないようだ。 「待っててね、ユウキ! 僕がすぐに助けに行ってあげるから」 他に人が居ないのなら特にこの場所に 留まる理由はフィルには無い。 すぐにでも想い人の所へと 駆けつけようと行動を始めたフィルだが、 その出鼻はあっさりと挫かれる。 「あっれぇ~? 鍵掛かってる?」 出口へと辿り着き、 扉へと手を掛けて開けようと試みるが、 ガシャガシャと音を鳴らすだけで 扉に開く気配はない。 「ひょっとして、僕。 閉じ込められてる?」 他に出入り口も見当たらず、 最悪の予想が予想ではなく 現実である事をフィルは実感する。 「どうしよう……おぉ~い、誰か居ませんかぁ~!!」 扉を叩き、大声で外へと呼び掛ける。 これを数度繰り返し、拳が痛み始めた頃に 外に誰かが歩み寄る音が聞こえてきた。 若干、落ち込みつつあった気持ちがそれにより 再び活気を取り戻し、フィルは外の人物へと必死に呼び掛ける。 「お願いしまぁ~す! ここを開けてくださ~い!」 扉の前で足音は止まり、 フィルはホッと息をつく。 「すいません、ちょっとここを開けてくれませんか?」 外の人物に呼び掛けるが反応は無い。 「聞こえてますよね? 開けてください!」 更に外の人物へと呼び掛けるが 一向に返事は来ない。 最初は丁寧に接していたフィルも苛つき始める。 「ねぇ、聞こえてるんでしょ? 開けてってば!」 必死に扉を叩き、外の人物への苛つきも手伝って 口調は大分荒くなる。 「……お前、女か?」 突然、外の人物がフィルへと呼び掛ける。 それまで黙り込んでいた相手の 突然の言葉にフィルは驚き、 動きが一瞬固まるがすぐに答えを返す。 「女だけど、何? ねぇ、それよりここを開けてってば!」 フィルの返事と共に外の動きに変化が表れた。 先程までフィルが叩きまくっていた扉から 何かを引き抜くような音が聞こえ、 それまではびくともしなかった扉が音を立てて開き始める。 差し込む外の光に暗闇に目が慣れ始めていた フィルは目を顰める。 外の光の中に立っていたのは異国の剣士を思わせる風貌の 棘棘した雰囲気を持った男が一人。 その男がフィルをじっと睨みつけるように眺めていた。 「……な、何?」 その視線に嫌なものを感じたフィルは 扉を開けてくれた礼を言うよりもまず身構えてしまう。 「耳」 男が一言だけ発した。 フィルのエルフの血を引く者特有の長い耳を 異様な熱意を込めて眺めている。 男の視線に一層の嫌悪感が働き、 フィルの耳はぴくぴくと動く。 「動いた! ……本物か!」 男が驚きと喜びの混じった叫びを上げる。 「だったらなんだっていうのさ!」 不可解な男の態度に苛つきが頂点に達した フィルが怒鳴り、男を睨みつける。 だが、そんなフィルの態度もまるで意に介さずに 男はわなわなと震えだす。 いや、笑っているのである。 「ハァーハッハッハ!! 面倒な馬鹿がいると思ったが こいつはとんだ拾い物だ!」 男がねっとりとした嫌な視線をフィルに向け、 生理的な嫌悪感がフィルの全身を奔る。 (やばい…こいつ“ヤル気”な奴だ!) フィルも冒険者の卵である。 敵意のあるかどうかは相手の態度を見れば分かる。 いや、隠す気も無いほどに男の気配は 濃密にフィルへの害意を示している。 「折角の嫁も死んでしまって困っていた所だ。 お前は今日から俺様の嫁だ!」 この男、スパーンの言った事には一つ嘘がある。 彼は確かに自分の嫁に迎えた女性を最近喪っている。 だが、この男は困った等とは露とも思ってはいない。 折角の玩具が一つ無くなってしまった程度にしか感じてはいない。 心根が完全に腐りきっているのである。 「僕はもうユウキのものだい! 誰がお前なんかに!」 最早、言わずもがなで相手はフィルにとっての敵である。 出来ればこの倉庫から抜け出したかったが 相手にはその様な隙は見られない。 身構え、距離を取るフィルに対してスパーンは 倉庫に入り込むと扉に手を掛けて 先程までのフィルの努力を嘲笑うように 扉を閉めてしまう。 そして、手に持っていた鍵で扉に再び鍵を掛ける。 「ふん! 最初は鍵束など渡されて腹も立ったが こうしてみれば成程、便利なものだ」 再び暗闇の中に放り込まれた形になったが 先程までとは違い、 今度は自分に敵意を持った相手と一緒の形で、である。 ここを出る為の鍵は相手が持っている。 出る為には奪うしかない。 フィルも覚悟を決める。 「後で謝ったって、許さないからね!」 神術と共に格闘技を学んできた彼女のそれは 並みの相手ならば一蹴に伏す事が出来る程のものである。 それを構えを見ただけで察したのか 男から楽観的な態度が抜ける。 「ふん! 中々出来るようだが、 まぁ、俺様の敵ではないな」 スパーンが剣を取り出し、構える。 「言ったね!!」 相手が構えるのが早いかフィルがすかさず飛び掛る。 相手の足元を狙った下段蹴りをスパーンは脛で受ける。 (硬い!) 並みの相手だったらあっさりと崩されるような フィルの蹴りを受けてもスパーンに変化は見られない。 相手も口だけの男ではないという事である。 それでもフィルは攻勢を緩めない。 すかさず繰り出した右・左のジャブのコンビネーションを スパーンが身体を捻り、ギリギリのところで避ける。 (今だ!) インターアドで自分が倒された技を思い浮かべる。 相手のアルツ・エリオンの動きを脳裏で再現し、 忠実に再現していく。 相手の死角を狙った裏拳。 わざと動きに馴らさせておいて 虚をつくこの技に相手は気づく暇を与えられない。 フィルがそうであったようにスパーンもまた、 この動きにつられてしまった。 鈍い音がしてフィルの拳がスパーンのこめかみに当たる。 だが、フィルは大きな勘違いをしていた。 相手はフィルと同じ体格の相手ではなく 屈強な男であるという事を。 スパーンは確かにこの技により大きくグラついた。 だが、意識が飛ぶほどのものではない。 「痛ってぇじゃねーか! てめぇぇッ!!」 仕留めたと油断していたフィルへ、 スパーンの一閃が走る。 それは掠めた程度だが彼女にとって 致命的なものをもたらした。 はらりと服が裂け、 彼女の未発達な身体が顕わになる。 「い、いやぁぁぁぁっ!!」 彼女は冒険者である。 その為の覚悟もしてきた。 だが、それ以上に彼女は乙女なのである。 純粋に一人の男を想う女なのである。 それまでの勢いを無くし、 慌てて彼女は自分の胸を手で隠す。 「…チッ、Aか。 まぁ、エルフである事が重要だからな」 こめかみを押さえつつ、 フィルの顕わになった胸を下卑た視線で スパーンが繁々と眺める。 「や、やだぁぁぁっ!」 その視線から逃れる為に必死に 隠そうとするフィルの顔面をスパーンが 思いっきり殴り飛ばす。 「ふん! まださっきの分には足りないが これからたっぷりとお仕置きしてやる!」 拳を軽く振るい、 じりじりとにじり寄る悪意。 「……やだ、やだ、やだ、やだぁ!」 フィルはその恐怖に屈した。 ただただ唯一の守れるものを。 自分の身体を守る為に惨めにその場を逃げ出した。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 初めから分かっていた事なのである。 逃げ場などとうに無くなっていた事は。 逃げ回るその姿はただ相手の嗜虐心を刺激して 喜ばせる行為にしか過ぎなかった事は。 「開けて……開けて、開けて開けて開けてッ! 嫌だ、嫌だよ、助けてユウキッ!」 無様に縋る様に虚しく開く事が無い扉を 必死にこじ開けようとする。 哀れなまでに無力なその姿を 眺める者は残念ながら救い手ではない。 フィルの肩に手が掛けられる。 「ひっ!」 そして振り返ると同時に張り飛ばされる頬。 小麦色に日焼けした肌に刻まれる紅い痕。 そして、 暗闇の中で嘲笑う男の貌。 「やだぁぁぁぁぁぁっ!」 少女の叫びは人為的に作られた闇の中で溶けていく。 <キングクリムゾン!アリスロワは性犯罪に反対します! 扉が開かれる。 其処に奇跡を願った少女の姿は無く。 満ち足りた表情の男が口笛交じりで出て来ただけである。 「ふふふ~ん♪ 身体はまだがきんちょだったが 今度から仕込めば良いことだ。 フフフ、幸先いいな俺様!」 だが、その表情はふと向けた視線の先で すぐに嫌そうなものに変わる。 視線の先には影がいた。 いや、正確には影のような黒衣を身に纏った 一人の青年が其処に立っていた。 「チッ…折角の気分が辛気臭い面のせいで台無しだ」 スパーンが黒衣の青年、久我匡一郎に嫌味を言い、 シッシとあっちに行けとでも言うように手を振る。 「……何をしていた?」 スパーンの嫌味など無視して久我が スパーンを静かにだが厳しく問い詰める。 「俺様はお前に答える口など持っておらん! さっさとどっかいけ!!」 だが、それに答えるスパーンでもなく 無駄だと察した久我がスパーンを押しのけて 倉庫の中を覗き見る。 「……これは!」 其処に居たのは人形。 いや、そうとしか思えない程に光を気力を無くし、 無残に陵辱の限りを尽くされた少女の姿。 身体中に刻まれた痕と飛び散る証が 少女が既に純潔ではない事を物語っている。 自分が汚れる事も厭わずに助け起こした 久我の腕の中で少女は焦点の定まらぬ目で ぶつぶつとうわ言の様に誰かの名前を呟いている。 少女が久我の顔に視線を向けて、 乾いた笑顔を浮かべる。 「……あはっ……ユウキだぁ…」 久我の顔に誰かを重ねるように弱々しく手を当てる。 だが、その顔はすぐに恐怖へと歪み、 久我の手を払いのけて少女は悲鳴を上げながら這い逃げる。 「イヤァァァァ、もう許してぇぇぇっ!!」 久我をスパーンとは違う人間だと認識出来ぬほどに 正気をなくした少女は久我からある程度離れると、 蹲り、またぶつぶつとうわ言を呟き続けている。 「何だ、壊れたのか? 残念だが、もういらんな。 面倒臭いし」 そんな少女の姿を興味を無くした様子で 鼻をほじりながらスパーンはあっさりと 自分が行った事を棚に上げて眺めていた。 久我の脳裏に苦い思い出が蘇える。 まただ。 また、自分は間に合う事ができなかったと。 少女の叫びと妹の叫びが久我の中で重なる。 それに呼応するように久我の影の中に潜む者達が ざわめき始める。 「貴様は……」 「あん?」 久我は立ち上がり、 それと共に少女を庇うように影が少女の身体を覆う。 「ここより先は見なくていい。 君の無念は俺が晴らす」 【ナンコウ/1日目・朝】 【フィル・イハート@ぱすてるチャイムContinue】 [状態]:全身に暴行の痕 [装備]:素手 [道具]:基本支給品、不明支給品×2 [思考]基本:最早、不明 【スパーン@大番長】 [状態]:こめかみに打撲 [装備]:ファイヤーソード@ぱすチャ [道具]:基本支給品、ナンコウの倉庫の鍵束、 [思考]基本:嫁探し(エルフ限定) 【久我 匡一郎@大番長】 [状態]:健康 [装備]:素手 [道具]:基本支給品、告知箱@Rance6-ゼス崩壊-、愛情薬@GALZOO [思考]基本:皆で脱出 1:スパーンを殺す 【ファイヤーソード@ぱすてるチャイムContinue】 炎のブロードソード。 燃えている以外は結構、普通。 【ナンコウの倉庫の鍵束@大悪司?】 ナンコウの倉庫用マスターキー。 【告知箱@Rance6-ゼス崩壊-】 攻撃を受けても奇襲されなくなります。 だって告知してくれるんだよ? 【愛情薬@GALZOOアイランド】 本来はレオ君が好きになる薬。 今回は使用者の事が好きになっちゃう薬。
https://w.atwiki.jp/galgerowa2/pages/248.html
第一回放送 食らわれるは人の心、そして ◆wYjszMXgAo 新しい朝が来た。 希望の朝だ。あるいは絶望の朝だ。 あるものにとっては吉報に、またあるものにとっては悲報となる言の葉が。 ――――島中のありとあらゆる場所へと響き渡る。 もたらすものは何か。 もたらされるものは何か。 それを知るものは未だこの場にはいない。 ――――この声の主たる伝令者でさえも。 遠く、遠く。 明けの空にじっくりと浸透していくのは悦楽交じりの音の群。 言峰綺礼は喜色を隠すこともなく――――、己が切開のメスをさくりと入れていく。 「……さて、諸君。ご機嫌はいかがかね。 見も知りもしない赤の他人が息絶える傍らで、何事もなく朝を迎えられた喜びは耐え難いものだろう? 実に結構なことだ。とても君達は人間らしい。 人間でないものたちも含めて、な。 誰かを手にかけた時の優越感はいかがだったかな? 誰かに裏切られた時の絶望感はいかがだったかな? 誰かを助けられなかった時の無力感はいかがだったかな? 誰かと共にいる時の安心感はいかがだったかな? 誰かを騙す時の心苦しさはいかがだったかな? ……ふむ、まあ前置きはこのくらいにしておこう。 禁止エリアの発表に移る。 ……死者が知りたいかね? 誰が無残に散っていったか、愛する者がどれだけ悲惨な目に遭ったかを知りたいと。 ……くく、それを知ってどうすると言うのかな? せいぜい自己満足にしかならないだろうに。 君たちがいかに猛ろうが悲しもうが、死者は戻っては来ないのだぞ? ……話が逸れたな。剋目して聞くといい。 運悪く該当箇所にいるものは、自己の保身を露にしながら生き足掻くその姿を見せてみたまえ。 8 00よりE-2。 10 00よりF-6。 以上の二つだ。 ――――では、そろそろお待ちかねの死者の発表といこう。 大切な人間の死を味わうものは、その誰かが与えてくれた過去に感謝するといい。 喜べ、君は間違いなく満たされた人間だ。 失えるものがあるのは幸せな人間の特権だろう? 大切な人間の生に安堵したものは、その誰かを護る為の未来に感謝するといい。 喜べ、君は無力ではない。 彼ないし彼女の未来を掴み取る為に、騙し欺き殺し奪い、ありとあらゆる手段を用いて闘争できるのだから。 大切でない人間の死を悦を抱くものは、今自分の生きている事実に感謝するといい。 喜べ、君は実に典型的な感性の持ち主だ。 邪魔者が与り知らぬところで始末されたのだぞ? 偽善などに惑わされず、諸手を挙げて歓喜を表現してみせたまえ。 ウィンフィールド。 岡崎朋也。 リセルシア・チェザリーニ。 蒼井渚砂。 対馬レオ。 小牧愛佳。 向坂雄二。 間桐桜。 宮沢謙吾。 以上、9名だ。 ……さあ、どうだ? もう一度問おう。ご機嫌はいかがかな? ……ところで、君たちに一つ告げておくことにしよう。 人によっては朗報だ、心して聞くといい。 この殺し合いに優勝した暁には、君たちにはある権利が与えられる。 ……それが何かは、ふむ、いずれ分かることだろう。 その機を期して待ちたまえ。 そして告げよう。 君たちの中には結託し、我々に対抗しようとするものがいるだろう。 結構、……大いに結構だ。 ――――君たちが抗い苦しみ、我々との力の差に絶望する姿を見せてくれ。 それが実に楽しみだ。 ……ふむ、思い上がりと口にするかね? 我々とて人の子、勝てぬ道理はないと? では、証拠を提示しよう。我々の力の一端を。 諸君らの中には、すでに死の世界から蘇ったものがいる。 そのものたちは自分自身で気付いているだろう? ならば、教えてやるといい。 我々の力を以ってすれば、死人に今一度の生を与えることすら叶うのだということを。 生死すら自在にする力を我々が持っていることを、その手で証明して見せたまえ。 そして私は君たちに期待する。 愛するものを失った人間が、絶望に駆られるまま混沌を生み出すことを。 我々に立ち向かおうという人間が、我々に一矢報うことすらできぬまま、同胞たる参加者に踏み躙られる有様を。 もっともっと、人間の成し得るありとあらゆる感情と行動を、私に見せてくれ。 ――――最後に、もう一つ。 君たちの中には、私達の息のかかった者がいることを教えてやろう。 そのものは確かに息づいていて、この場において混乱を生み出すのだ。 会場内にいる人間全てを味方にしたとて、絶対に平和が訪れることはないことは理解頂けたかね? さあ、互いに疑いあいたまえ。 君の傍らにいる人間は、そ知らぬ顔をして君を利用した後背中を刺すかもしれないぞ? 預けておいた背中を、さくり……とな。 ……では、次の放送の時に会おう。 その時までありとあらゆる手段を持って行動したまえ。 我々に立ち向かうのでも、殺し合いを促進するのでも構わない。 掌の上で踊っているのがワルツかロンドかという違いでしかなく、 またそれこそが私にとってこの上ない愉悦となるのだから」 その言葉を最後に、ぶつりという音がなる。 後に残るのは静寂。 ……そして。 そして人々は――――。 いや、その前に、不意にノイズが走る。 ……だが、言峰の言葉は聞こえてこない。 チン、カチャカチャという何かをぶつけ合う澄んだ小さな音。 そして、やや荒い息遣いとごくりと言う何かを飲み込むような響き。 それだけが聞こえ、しかし静寂が破られたと言うにはほど遠い。 放送のスイッチが入れられたというのに沈黙が続くのは何故だろう、と、 誰もが思う頃合で――――、ようやく言峰は続きを告げる。 「は、ふ……っ。そうそう、もう、……ひとつ、だ。ん、ぐ。 もぐ、む……っ。優勝の、特典について、ふ……っ、ふ……っ、だが。 ……この殺し合いが、は、もぐ……、誰かの優勝に、ハフ、終わった、暁にはだ。 ――――先ほど言った『権利』、ムシャ、以外に、はふ、はふ、君たちに……ゴク、モグ、 ……は、ふぅ、……ふぅ。は……、ふ、んぐ。 と、失礼した。続きを告げよう。 ――――君たちに、この世のものとは思えない程のディナーを振舞うことを確約しよう。 ……以上だ。君たちも朝餉を楽しみたまえ。 食べるものも食べなければ、生き延びることなど到底出来はしないのだから」 ◇ ◇ ◇ かちゃかちゃと舞うのは蓮華。 中にあるのは白と赤の混成物。 はふはふと、バクバクと、モグモグと。 ぐつぐつと熱さに自己主張のないそれが飲み込まれていく。 コクのある豆板醤の、舌に残る辛み。 椒の香り高く、鼻を刺激する辛み。 それら二種が絶妙のハーモニーとなって、口中に吸い込まれて留まることを知らない。 咀嚼する。 ニンニクの葉は野菜のエキスを供給し、食欲を増進させる香りを放っている。 牛豚の合挽き肉は、たっぷりの肉汁を滴らせ、ウマみをもたらして止まない。 柔らかいが適度な弾力のあるクリーム色の豆腐は、他の具材に負ける事無くほのかな甘みを以って全体を調和させる。 ゴマ油の香ばしさはそれだけでご飯が一膳食べられるほど。 ベースとなる鶏ガラスープは滋養に溢れ、体に染み渡るようにダシの美味さを主張する。 中華料理特有の大火力で豪快に炒められたこれらは味の成分を活性化され、全ての要素を極限まで高めているのだ。 「……言峰神父。朝っぱらからそんな物を、胸焼けが……いや、それはいいか。 『この世のものとは思えない』辛さのソレを本当に優勝者に振舞うつもりなのかな?」 放送機材に向かったまま、ガツガツと食事を再開した言峰は振り返ることすらしない。 ただ、その問い掛けに――――、言峰はスープのこびり付いた口端をニヤリと歪めて表現する。 これ以上ないという、愉悦の表情を。 ソレを食らいながら、これから巻き起こされるであろう混沌に思いを馳せる。 ――――さて、言峰綺礼の愉悦の時間は始まったばかりだ。 参加者たちの悲鳴と言う美酒を肴に、彼は至福の食事を楽しみ続けることだろう。 073 影、ミツメル、光 投下順に読む 075 一乃谷 073 影、ミツメル、光 時系列順に読む 075 一乃谷 052 鬼神楽 言峰綺礼 094 記憶の水底 052 鬼神楽 神崎黎人 094 記憶の水底