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友奈がまだ本調子ではなくて、東郷は彼女に付きっきり。 必然的に部活動中に完成しなかった小道具は私たちが延長で作成することになる。 まあ友奈に貰った恩義を思えばこれ位は大したことないけれど、冬の夕べは冷え込むので帰りが遅くなるのが辛い。 「そうだ、夏凛。良かったら夕飯食べていきなさいよ。遅くまで付き合ってくれたお礼」 温かい夕食の誘惑もあって、結局風に押し切られる形で姉妹に連れられて犬吠埼家にやって来た。 何度か訪れたことがあるが、ここは姉妹の空間だというのがよく伝わって来るので少し居づらい気持ちになる。 「今日はあつあつおでんとカキの炊き込みご飯よ!樹、準備手伝って。夏凛はお客様なんだからそこ座って!」 そういう遠慮する間柄じゃもうないだろうに、風は割と内弁慶のようだ。 結婚する相手は苦労するわね、等と思いながら室内を見回していると、前は気付かなかった物が目に入った。 雛人形。内裏と雛の2体だけの場所を取らない簡素なタイプ。 今は2月なので、西暦の時代に使われていた旧暦(ああ、ややこしい)で考えれば飾ってあってもそうおかしくは無い。 ただ、その人形には何だか気になる部分があった。 「何で、内裏にだけこんなに埃被ってるのかしら?」 雛人形の方は綺麗に手入れされて、毎日でも掃除されているんじゃないかと思うくらいだ。 対して、内裏の方はと言うと出されてから1年は掃除されていないんじゃないかというくらい埃に塗れている。 雛人形が少しだけ内裏に背を向けたような角度になっているのもあって、まるでDVを思わせる光景だ。 「なんかの妖しい儀式とかじゃないでしょうね」 犬吠埼家は大赦の家なので神樹様信仰のはずだが、バーテックスとの戦いの中で色々あった。 我が国は神樹様の恵みによって全てが成り立っているので神樹様への信仰は極めて自然なものだ。 しかし、一応信仰の自由自体は憲法で保障されている。あまり立ち入らない方がいいかも知れないが。 「どうしました、夏凛さん」 皿を並び終えるともう出来ることが無いらしく、樹がこちらに近づいて来る。 「これよこれ、雛人形。なんで片方だけこんなに汚れてるの?」 「ああ、それ。私がお掃除サボちゃってるから」 「ん?」 何でもこの雛人形は風と樹がお小遣いを2人で溜めて買ったものらしい。 当時からイマイチ私生活がだらしなかった樹に、風は毎日この人形を掃除するようにと命じた。 だから季節を超えてずっと雛人形が出され続けているのだが、肝心の樹は年に1回くらいしか掃除をしないらしい。 「あんた、思った以上に気合の入った生活無能力者なのね」 「ご、ごめんなさい。お姉ちゃんと買ったものだから大事にはしたいんですけど」 「でも何で片方だけ?雛人形だけは毎日掃除してるワケ?」 「え?」 そこで初めて、樹は雛人形だけが綺麗になっているのに気付いたようだった。 樹がサボっているということは、風が掃除をしているということだろうか。何故片方だけ? 「そう言えば、掃除を思い立った時もお内裏様だけ毎回汚れていたような」 「気付きなさいよそれ。1年1回だから覚えないのよ。 それに雛人形は出しっぱなしにしてると婚期が遅れるって言われてるわよ」 「ええ!?」 樹は(今さら)雛人形をしまおうというのか、何処かにある箱を探し始める。 探し方が非効率的でまず見つからないだろうと言うのは部外者の私にも解った。 「樹―?そろそろご飯だから手洗いなさーい。夏凛、先に席についてー」 「は、はーい」 引きだしたものをそのままで洗面所の方に駆けて行く樹。これは雛人形関係なく婚期は遅れそうだ。 「樹はお嫁になんて行かなくてもいいのにね。ずっと、永遠に」 私の背中越しに風がそう呟く。 その言葉があまりにも重々しくて、ゾッとする冷たさを孕んでいて。 振り返っても風の表情はいつも通りで、聞き間違えなんじゃないかと思った程だ。 「ねえ、風。あんたもしかして、わざと」 「手、洗って来たよ!」 「よろしい。それでは食事にしましょうか。ほらほら夏凛、お客様なんだから一番に座ってないと」 私は雛人形の方を振り向く。 これからも1年に1度しか省みられないであろう内裏と、いつまでも美しい雛。 2体だけのセットにはついていないはずの官女の姿が、一瞬散らかされた箱の陰に見えた気がして。 私は慌てて席につくと、風の料理に集中して舌鼓を打った。 そして、帰る頃にはそんなことがあったのを忘れてしまっていた。多分。
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美希(覚醒)メール「夏の思いで、作ろ?」 取得条件:祭典オーディション(夏)に勝利する お疲れ様!ミキだよ→(ハート) サマフェスオ→ディション、合格おめでとうございますなの! あ(豆電球)、今、「合格したのはミキだろ?」とか思ったでしょ? あはっ☆ミキには、何でもお見通しだよ? でもね、確かに合格したのはミキだけど、それはミキの力じゃないから、 「おめでとうございます」 で、いいの! 今日の合格は、ぜ→んぶ、ミキにレッスンして、ここまで連れてきてくれて、 今もミキを支えてくれてる、ミキの大事な大事な人のおかげだから```(ハート)。 合格のうれしさ、教えてくれて、ありがとうって言わないとってカンジ! ね、サマフェス本番、楽しみだね→!それに、夏がくるってことも、楽しみ(笑顔) 夏も思いで、いっぱい作ろうね!(ハート×5)(*^_^*) 美希(覚醒)メール一覧に戻る トップページに戻る
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普通の兄弟でありたい! 第1話 普通の兄弟でありたい! 第2話 普通の兄妹のあり方
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販売日 モード ブランド 2023年1月21日 プレミアム なし アイテム名 レア度 備考 おいでませアニメ付色白スキン ★★★ おいでませ楽しげな目/顔パーツ ★★★ おいでませチーク付ほほえみ口/顔パーツ ★★★ おいでませほっこりまる目/顔パーツ ★★★ おいでませ枕持ち旅館浴衣 ★★ おいでませ湯呑み持ち浴衣 ★★ おいでませアップヘア/茶 ★ おいでませアップヘア/桃 ★ おいでませスタイルアップ浴衣 ★ おいでませつけハイネック/黒 ★ 「おいでませニット/黒」とのセット販売 おいでませつけハイネック/白 ★ 「おいでませニット/白」とのセット販売 おいでませニット/黒 ★ 「おいでませつけハイネック/黒」とのセット販売 おいでませニット/白 ★ 「おいでませつけハイネック/白」とのセット販売 おいでませ羽織 ★ おいでませフード付チェスターコート ★ おいでませ細見えスカートセットアップ ★ おいでませポンパヘア ★ おいでませくわえコーヒー牛乳 ★★ おまけ販売
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121 : 名無しさん@chs 2010/08/21(土) 22 11 06 ID z3jB1riY 「__さん、今日飲み会があるけど。」 夕方、私は喫煙休憩を終えて部署に戻ってきた会社の女の先輩に飲み会の誘いを受けた。 ぼんやりとしていた私はその言葉で現実に引き戻された。 ぼんやりとしていたはずなのにデスクワークをこなしていたあたりは、ワーカーホリックに近いのだろうか。 「ああ、ごめんなさい、今日用事があって…せっかく誘ってくださったのに、すみません。」 会社の先輩の誘いを断るのは正直心苦しい。 この心苦しさがなくなる方法は無いのだろうか?と常々思う。 「あら、そうなの。」 先輩はそれだけ言うと自分のデスクに戻っていった。 新人ではなく中堅でもないが、淡々と作業していても注意されることが無くなったと思ったのは何時だっただろうか。 そんな事が頭に浮かびながら私は今日中に仕上げなければならない書類だけ一式そろえて、上司に提出した。 そして自分のデスクに置かれたデジタル時計が定時を過ぎたのを確認すると帰り支度をした。 「お先に失礼します。」 "用事"という言葉が便利な言葉と思ったのは何時のころだろうか? 「ただいまー。」 私は玄関で靴を脱ぎ、自室へと続く階段をゆっくり上った。 階段を上りきり自室へと行く途中、私はある部屋の前で足を止めた。 そこは自分の部屋の廊下を挟んで向かい側は私のたった一人の兄ちゃんの部屋だ。 私は息を潜めてそのドアに手をかける。 122 : 普通の兄妹でありたい! 2010/08/21(土) 22 12 20 ID z3jB1riY 今日も職場で自分の仕事をこなす。 自分がまるで上司や会社から与えられた仕事をこなすだけの機械みたいだと思った。 兄ちゃん、何してるんだろう…。 こんなとき思い浮かべるのは兄のことだった。 3つ年上の私の馴一(じゅんいち)兄ちゃんは、高校を出て就職したが、職場が合わず退職。 それ以後はフリーターをしている。 私は短大を出て実家から通勤できる会社で働いている。 世間から見たら、ごく普通の成人した兄妹。 よっぽどの事が無い限りは定時で帰宅しているが、それに対して文句を言われたことは無い。 そして仕事先から帰宅して荷物だけ自分の部屋に置いたらまず兄ちゃんの部屋に行く。 これは私の日課。 何時からだろう、こんなに兄を思い浮かべるようになったのは。 兄ちゃんなんてただ、ウザイだけの存在だった。 根暗で、だらしが無くて… それが…どうしてなんだろう。 時折ドキッとするくらいかっこよく見えてしまう。 今日も会社から帰宅して真っ先に兄ちゃんの部屋へ行った。 ドアを開けると、兄ちゃんはベッドの上でうつぶせになって漫画を読んでいた。 その様子を見て思わず笑みがこぼれた。 (やばい…顔がにやける。) そこに兄ちゃんがいる、たったそれだけのことなのに。 「兄ちゃん、何読んでるの?」 とりあえず、話しかけてみた。 「あー?いいじゃん、別に何読んでても俺の勝手だろ。」 そう言ってる間に私は兄ちゃんの隣に座った。 兄ちゃんはこちらを振り向かない。 私はじっと、兄ちゃんを観察してみた。 私の兄ちゃんはいわゆるモテナイ君で彼女なんて、出来たことが無い。 これは断言できる。女の影が全く無いもの。 ただ、兄ちゃんはもう少し、お洒落とかに気を使えばモテルと思うのだ。 それも断言できる。だけど、それは本人には絶対言わないけど。 兄ちゃんの短く刈り込まれた頭髪や後姿を見つめながら、ふとイタズラ心がわいてくる。 123 : 普通の兄妹でありたい! 2010/08/21(土) 22 13 07 ID z3jB1riY ――イケル、かな? 兄ちゃんのいろんな表情が見たい、その欲求を抑えることが出来なかった。 どんな反応してくれるんだろうと期待しながら漫画に夢中な兄ちゃんの背中に抱きついてみた。 が、反応なし。 その上に寝そべってみた。 それも反応なし。 …もう! 業を煮やした私は後ろから兄ちゃんの耳を口に含んで、甘噛みをした。 「…っぉわ!、 てめえ何しやがる!!」 そこでようやく兄ちゃんが振り向いた。 ガッ 同時に自分の左足に痛みが走った。 兄ちゃんは必要以上に近づかれると、蹴ったり、引っ叩いたりしてくる。 そんな兄ちゃんに悲しくなって私は泣いてしまうが、私は知ってる。 「兄ちゃん」という人を。 だから、今日は、これ位でカンベンしてあげる。 でも、罰は受けてね。 私は兄ちゃんの部屋を出ると、蹴られたことを母に報告した。 そうすると、兄ちゃんは両親から罰を受けるのだ。 いつだったか隣に寄り添って座って兄ちゃんの肩に頭を乗せただけで突き飛ばされた時は、夕食抜きになったこともあった。 一旦自分の部屋に戻り、着替えてから夕飯を食べた。 食べ終えた後、リビングに設置されたテレビを付けると毎週やっているありきたりな恋愛ドラマがやっていた。 私はそれを(ありえねー)と思いながら見ていたが、ふと自分の兄ちゃんに対する気持ちこそ、 ありえないと感じてしまいあわててその思考を払拭させた。 払拭させても、言い表せない切ない気持ちが胸の奥に残ってしまっていた。 『私だけの人でいてよ!どうして駄目なの?!』 テレビから聴こえるヒロインの恋敵の悲痛な台詞。 私はいつでも恋敵に感情移入してしまうのだ。 決して結ばれることの無い運命。 それでも、望みをかけて相手を振り向かせようとする。 124 : 普通の兄妹でありたい! 2010/08/21(土) 22 13 48 ID z3jB1riY ガタン ふと、キッチンの方から物音がした。 物音がした方向に振り向いて見ると、兄ちゃんが冷蔵庫から水の入っているペットボトルを出してそれをラッパ飲みしているところだった。 風呂上りだろうか、毛先が濡れており、飲みながら時折滴る雫を首に巻いているタオルで拭っていた。 私は兄ちゃんの水を飲み込むたびに上下するのど仏に見惚れてしまっていた。 そんな私の視線に気づいたのか、 「お前、風呂入れよ。 あと、俺の部屋に勝手に入んな。」 と言うと、さっさと自室へ戻っていった。 何時からだろう、兄ちゃんをそういう目で見るようになったのは。 思い出せないが直接のきっかけといえば、あの日のことだ。 高校時代から、私は、勉強道具を借りたり、漫画を読ませてもらうために よく兄ちゃんの部屋に入り浸っていた。 あの日も、ただ、参考書が借りたくて部屋まで来たのだった。 「兄ちゃん、参考書、貸し…」 なんとなしに開けた兄ちゃんの部屋のドア。 そこで私の目に飛び込んできたのは、下半身を出して自慰をする兄ちゃんの姿だった。 「ちょ、おい、またかよ!!出てけよ、おい!!」 無断で入り浸る私を咎めるのと、羞恥で顔が赤くなっている兄の複雑そうな表情を見た私が そのとき感じたのは、 ”可愛い” ”兄ちゃんも男なんだ” ということ。 普通なら気持ちが悪いはずなのに、そんな感情は全く湧かなかった。 当時、私には付き合っていた彼氏がいたが、その彼のことが霞む位、兄ちゃんが身近な男だということを実感した。 幸いなことに我が家では部屋に鍵をかけることが禁止されてる。 それに、兄ちゃんと両親との折り合いも悪い。 兄ちゃんに蹴られる度に私は母に誇張してそのことを報告する。 だから、兄ちゃんがどんなに私から離れたく思っても、そんなことは出来ないし、させない。 兄ちゃんは、根が優しいから、根気よくあきらめなければ、受け入れてくれる。 私が兄ちゃんの性格を知り尽くしているから出来ることだ。 ほら、前は胡坐に座らせてくれなかったのに、今日は座らせてくれる。 「ねえ、兄ちゃんって優しいね…。」 うれしくて不意をついてキスしてみた。 瞬間、蹴られて追い出された。 いつもの光景。 そして、両親から兄ちゃんに向けられる「妹と仲良くしろ。」の言葉。 これもいつもの光景。 125 : 普通の兄妹でありたい! 2010/08/21(土) 22 14 32 ID z3jB1riY 兄ちゃんの部屋に入り浸り始めて何時からだろう、一緒に寝るようになったのは。 正確には兄ちゃんが寝入ったところに潜り込んでいるだけだけど。 これも、あと少しで、兄ちゃん公認で習慣に出来そう。 背を向けて眠っている兄ちゃんが可愛くて、愛しくて、思わず寝巻きの裾を捲りあげて、 素肌に触れてみた。その感触が心地よくて、その背にキスをした。 それだけでは足りなくて、強く吸ってみたり、舐めてみたりした。 ふいに眠っているはずの兄ちゃんが唸り、寝返りを打ってこちらを向いてきた。 おそらく、私の愛撫がくすぐったくて無意識に反応してるみたい。 兄ちゃんは、一度眠ってしまうと、よっぽどのことが無い限りは、起きない。 こちらを向いてくれた兄の寝顔を見つめてみた。 少し開いた口、捲り上げて、露になった胸板、すべてが愛しくて思わず、その一つ一つ丁寧に唇を寄せてみる。 兄ちゃん 兄ちゃん 好き その言葉は紛れも無い私の本心。兄ちゃんに対してそういう意味での…。 私は兄ちゃんの少し開いた口に自分のそれを合わせて、ゆっくりとその隙間から舌を滑り込ませてみた。 (今は、こんなことでしかアナタを感じられないけど…いつかは…。) 気づくと、私はおへその下にある膨らみに触れていた。 両手で撫でる度に反応するそれに思わず笑みがこぼれた。 「…可愛い…兄ちゃん、好き――」 それから兄ちゃん自身に触れていた両手をズボンの中に忍び込ませて、今度は直接触れてみた。 熱い、でも、愛しいそれ。 刹那 「…っにしてやがんだ!」 兄ちゃんが飛び起きてしまった。うそっ、いつもは熟睡しているはずなのに…。 あわてて手を引っ込めた。 「手前、何、人の股間いじくってやがんだ…!おい。」 「なに言ってるの?兄ちゃん。」 こうなってしまったらあくまで白を切る。私は寝ぼけていたと兄ちゃんに主張する。 「くそっ」 短髪の頭をガシガシ掻きながら、私をにらみつける。その表情に体が震えた。 私は思わず、声が出そうになったが、押しとどめた。 「お前、いい加減俺んとこ潜り込んで寝るの止めろ。」 「じゃあ、一緒に寝ていい?」 間髪いれずに兄ちゃんに言った。その後言われる内容を想定してしまったから。 「バカ。いい年してみっともないし、一緒に寝たければ彼氏と寝ろよ。」 何言ってるの?そんなこと言わないでよ。 「それに俺なんかキモいだろ。そんな兄貴と一緒に寝てるなんてどう考えてもおかしいだろ? 判ったら、自分の部屋で寝ろ。」 彼氏?キモい? 「それに、俺付き合ってる彼女いるから。」 は?モテナイくせに何言ってんの? 結局その日は一人で寝ることになったが、頭の中で兄ちゃんが言ったことが渦巻いて一睡も出来なかった。 126 : 普通の兄妹でありたい! 2010/08/21(土) 22 15 24 ID z3jB1riY そして数日後、兄ちゃんは「彼女」を連れて来た。 その時私は居間で母とお煎餅を食べながらテレビを見ていた。 「あー、えーっと、紹介するよ――さん。」 兄ちゃんが「彼女」を紹介している声が遠くのほうで聞こえる。 兄ちゃんの隣には私と同じ年ぐらいの女。 私はこの女が本当に「彼女」なのか観察してみた。 「…―――。」 コイツ「彼女」じゃない、なぜかそう確信できる。 これが所謂「女のカン」というモノなのだろうか。 一見、親しい関係のようだが、微妙な「距離」を感じる。 何を思ってこんな女を当てたのか、モテナイくせに。 とにかく、兄ちゃんの隣にいる女は「彼女」じゃない。 確信してから、兄ちゃんの彼女工作する姿を想像して思わず心の中で苦笑した。 そんな事してもムダなのに。 必死で彼女をアピールする兄ちゃんの姿が可愛くて可笑しくて思わず鼻で笑ってしまった。 その時兄ちゃんがチラッと私を見た。 私の反応を伺っているのだろうか、それとも、私がニセ彼女を見破ってないかどうか伺っているのだろうか。 兄ちゃんのその反応が真実を物語っているというのに。 女が帰った後、兄ちゃんの部屋に行き単刀直入に言ってみた。 「今の、彼女じゃないでしょ?」 「な、に言ってんだよ、彼女だよ。 なんで、そう思うんだよ。」 「女のカン。」 「ん、だよ、根拠ねーじゃんかよ。」 往生際が悪い。 私は兄ちゃんの言葉を無視して続けた。 「どうしてそんなことするの? そんなに私の事嫌い?」 「~~あのなぁ、お前は妹だぞ?」 「だから、何?」 「お前はただ、身近な男の兄である俺にちょっかい出してるだけだよ。」 どうして? どうして?どうして?どうして? (私だけの人でいてよ!どうして駄目なの?!)頭の中であのドラマの恋敵が言った台詞がよぎった。 そしてある日、仕事から帰ってきたら兄ちゃんが居なくなっていた。 目次 次へ
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九音・詩歌@詩歌藩国様からのご依頼品 水竜は海にいた。 そこは冬だというのに雪が降っておらず、海面に氷が張ることもなく、熱帯魚が元気に泳いでいた。 そこは、南国の海だった。 /*/ 白い砂浜に、青い海。輝く太陽。 そこはレンジャー連邦からほど近い、ちいさな無人島だった。 絢爛世界での戦いからの帰り道、突如決まった一日休暇。 藩王いわく、みんながんばったし、たまにはいいよねとのことだった。 島に到着して1時間、みな思い思いに時を過ごしている。 打ち寄せる波音を聞きながら、かな子は嬉しそうに目を細めた。 IBPの仕事でレンジャー連邦へ来たこともあったが、ゆっくりしたことはなかった。 それ以上に、こうして国のみんなが同じ時を、すこやかに過ごしていることが嬉しかった。 かな子は人の幸福をまるで自分のことのように喜ぶことができた。 おまけに今はドラゴンシンパシーの力で愛すべき竜たちの声もまるわかりだったから、もう言うことナシ状態であった。 「おいで、ノーヴェ」 声をかけると一体の水竜が海面からゆっくりと顔を出した。が、すこし遠い。 大きすぎて浜辺まで近よれないのだった。こちらから泳いでむかう。 唇のあたりにつかまって、立ち泳ぎのまま見上げてみた。 風の谷のナウシカになった気分。 大きくてゴツゴツしていて見た目は怖そうなのだが、不思議と恐れる気持ちは湧いてこなかった。 むしろ、かわいい。 例えるならば、出産した友達を訪ねた時に抱かせてもらった赤ん坊に抱く感情に近い。 ただ無性に愛おしい気持ちでいっぱいだった。 かな子はノーヴェを抱きしめた。 体格が違いすぎてはた目にはしがみついているようにしか見えなかったが。 ノーヴェには意外なことに表面から毛のようなものが生えており、ふさふさしていた。 なんだか大型犬を抱きしめているみたいだ。 そのままシンパシーで語りかけてみる。 南の海は暖かいということ。 はじめての戦いのこと。 トレはちゃんと戻ってくること。 こんど背中に乗せてねということ。 今までのこと、これからのこと。 ノーヴェは言葉すくなにあいづちを返すだけだったが、かな子はそれでも満足だった。 心の深いところで繋がっているから。 ノーヴェのからだは温かくて、そのまま眠ってしまいそうだった。 うとうとした気持ちのまま、うっすらと目をあける。 いつの間にか砂浜に戻って寝そべっていたらしい。 「目がさめたかい?」 「っあ、藩王さま?」 そこにいたのは詩歌藩国は藩王、九音・詩歌だった。 どうやらとなりにすわって文庫本を読んでいたらしい。 「ノーヴェが心配していたよ。話し疲れて眠ってしまったと」 「わー、すみません……!」 「いやいや。リラックス出来てるようでなにより」 そう告げてから優しく微笑むと、詩歌は海へと視線をむけた。 地平で交わる空と海。広々とした自然の風景は、ただそれだけで美しい。 「ACEのみなさんも連れて来たかったですね」 「そうだね。個人騎士団の設立費用がもうすこし安ければいいんだけど」 まぁ、次の生活ゲームでなんとかしようと言って詩歌は立ち上がった。 「どこ行くんですか」 「みんなの様子を見に」 ゆっくりと歩きだした詩歌の背中を見ながらかな子はすこしだけ迷って、1番気になっていたことをくちにした。 「あの、藩王さま」 「なにかな?」 「なんで水着を着ないんですか?」 薄手のパーカーを身につけた詩歌は相変わらずの性別不詳だった。 それを聞いて、詩歌はほんとうに困ったように笑いながら、どっちを着ても問題があるからね、とだけ言った。 /*/ かな子と詩歌からはなれること500メートル。 崎戸剣二は砂浜で酒を飲んでいた。より正確にいえば、のまれていた。 グラスをにぎったまま泣き崩れ、さめざめと語り続けている。 「私だってね、アイドレスで色々やってみたかったんですよ。みんなみたいに生活ゲームだってやってみたかった」 「ははぁ、なるほど。崎戸さんは生活ゲームがやりたかったんですねー」 となりにいたのは詩歌藩のアイドルナース9歳児こと豊国ミルメーク少年だった。 手には子供らしくオレンジジュースのペットボトル。 しかし落ち着き払ったその様子は、崎戸とは大違いである。 まぁ、アイドレスで見た目と中身が一致する人物は控えめにいっても多くない。 「だいたい生活ゲームに43マイルってなんなの。高いよ、高すぎるよ! 噂の秘宝館でSS書いても4マイルでしょ?11回分じゃん。もうね、ドンダケーって叫びたいくらいだよ!」 「はいはい、大変ですねー。それより崎戸さんそれ以上のんだらダメですよ。3杯目は致死量でしょ」 ぐでぐでになった崎戸を豊国がいなす。 崎戸が飲み始めてからずっとであるから、かれこれ2時間以上はそんなやり取りを続けていた。 「ま、そもそも登録してないし書いたことないけどさ……でも、一回くらい会ってみたかったなぁ」 「ほほー、それはまた誰にです?」 この時、9歳児は平静をよそおいつつ思った。 誰だ、いったい誰が好きなんだ、と。 この人物、見た目は子供でも中身は乙女である。 恋の話には興味津々なのだった。 「実は……」 やはり身近なところで詩歌藩王か。サンタコスでもうしんぼうたまらんくなったのだろうか。 いや、もしかしたらロジャーかもしれない。 あのスーツ姿で魅せるクールな笑顔ににころっとイッてしまったのかも。 いやいや、よく考えてみたらボラーという可能性もありうる。 強いし、絶技で核とか撃てるし。 などというかたよった予想が豊国の中の人の脳内シナプスを神速で駆け巡った。 が、もちろん予想はすべてはずれた。 「実は……ふみ子さんとか、いいなぁと」 「……へ、へぇ~。それはまた、なんというか、珍しいですね」 予想の斜め右上の返答が返ってきた。 あまりにも予想から掛け離れていたため、うまい返事ができなかった。 その後、崎戸が酔い潰れるまで、ミルメークはふみ子のどこがいいのかをさりげなく聞き出すことに専念したのだった。 /*/ 花陵と経は砂浜にいた。 水着のままで、二人並んで寝そべっている。 すぐそばにはソットウォーチェ・クワットロ。 なぜか浜辺に打ち上げられたクジラのように、体の半分ほどが地上に露出していた。 よくよく見れば2人+1匹で川の字になっていることに気がつく者もいるかもしれない。 「あったかーいー」 「ですねー」 「太陽きもちいーいー」 「そですねー」 「よし、裏側も焼こうー」 ここで2人+1匹はあおむけからうつぶせへとフォームチェンジをはたした。 「あったかーいー」 「ですねー」 「きもちいーいー」 「そですねー」 「……」 「……?」 「……Zzz」 「かりょーさん、寝ちゃいましたかー?」 「……Zzz」 「……」 「……Zzz」 「……Zzz」 「……Zzz」 その後、二人はこんがり小麦色の肌を手に入れたのだった。 /*/ 駒地は絵を描いていた。海を泳ぐ水竜の絵を。 木の幹に背中をあずけ、体育座りの姿勢でスケッチブックを支える。 一体どこに持ち込んでいたのか、それとも常に携帯しているのか、絵を描く道具はバッチリ用意されていた。 木陰で光をさえぎりながら、思うままに筆を走らせる。 絵を描くのは、楽しい。 自分にしかできないものを創り上げていくこの感覚。 なにかを表現しようという気持ち。 世に名作を残していった芸術家たちはみなこのような心情だったのだろうか。 もしそうだとしたら、彼らはきっと描くだけで満足だったろう。 二度と同じ色を生み出せぬ絵の具の混合とそのかがやき。 一筆に込められたあふれんばかりの情熱。 これほどの興奮を味わえる娯楽は、ほかにない。 だが、今の駒地にはそれ以上に己を突き動かす衝動があった。 描いた絵を森晴華に見てほしい。 そして話がしたい。絵を描いたその時になにがあったのか。どこでなにをしていたのか。 たとえば今回の場合なら、南の島なんてはじめて行ったけどやっぱり暑かったとか、ヤシの実はけっこうずっしりした重さだったとか、サンゴ礁がとてもキレイだったとか、そういったことを。 そんな話をしたとき、彼女はどんな顔をするだろう。どんなことを思うのだろう。 考えれば考えるほど、駒地の筆は進むのだった。 ふと視線を感じて顔を上げると、そこにはソットヴォーチェ・チンクエがこう、ずーんとたたずんでいた。 ドラゴンシンパシーの効果だろうか、駒地がなにをしているのか興味があって近づいてきたことがおぼろげに感じとれた。 「あなたを描いていたのよ。ほら」 スケッチブックをくるりとひっくり返して見せてみる。 カメラのレンズがめまぐるしくピント合わせに動いていた。 「ほしいの?」 チカッと照明が一回光った。YESの合図だ。 そっか、と言いながらスケッチブックをめくる。 「ちょっと待ってね。もう一枚描くから」 水竜の美人さんはどう描けばいいんだろうと一瞬悩んだが、がんばって描くことにした。 /*/ 海はいい。特に水着をつけた女性はすばらしい。 鈴藤は心の底からそう思った。まったくもってハラショーだ。 オペラグラスを握り締め、喜びをかみしめる。 花陵さんの水着はワンピースタイプですかそうですか。 さすがわかっていらっしゃる。 かな子女史は意外と大胆な……いや、大好きです。 経さんのはなんだろう、チャイナ風ツーピース? パレオの切れ目がスバラシイ。 駒地さんはセパレーt……ってあれ、なんだろう誰かに似てるな。 誰だっけ、魔女の宅●便に出てくる絵描きの人。名前忘れた。 そんな失礼きわまりない感想を抱きつつ、鈴藤は砂浜から遠くにある木々の間へ身を隠し、女性陣の様子をうかがっていたのだった。 もう立派な変態である。 わざわざ遠くからうかがわんでも近くで一緒に遊べばいいじゃんと思うのだが、それができないへたれチキンで……あれ、なんだろう目から汗が。 まぁそんなことはどうでもいい。 あとには詩歌藩の二大巨頭、イタリア系美人のアルティニとましょーのおんな星月典子が残っているのだ。 二人の水着姿を拝まんことには死んでも死にきれんとばかりに鼻息も荒く二人を捜し歩く。 そんな時、砂浜に座り込んだ竜宮を発見した。 むこうの都合も考えず、さっそく本日の戦果を語る。 「竜宮さん見ました!?もううちの女性陣サイコーッスよスバラシイですよ!かな子さんとか花陵さんとか経さんとか!なんで海に来ただけで外見の値が5割り増しなんだろう……ってなにやってんですか?」 「トレの修理。できるだけのことはしてあげたいから」 絢爛世界へ向かう途中、偵察部隊との戦闘で水竜のうち一機が破壊されていた。 名前をトレという。イタリア語で三番目という意味だ。 そのトレに搭乗していたのが竜宮だった。 「竜宮さん……」 よく見れば周囲にはトレの残骸が積み上げられていた。 鈴藤は、おのれを恥じるようにうつむいて言った。 「竜宮さんって、そんなシリアスキャラでしたっけ?」 俺の記憶ではギャグキャラだった気が、との言葉に竜宮は眉をよせてくちを開くか迷ったが、そのまま修理を続行することにした。 バカの相手をしたところでなんの意味もないことは、よくわかっていた。 /*/ 須藤 鑑正は、のんびりと茶などしばいていた。 もちろん一人ではない。 となりには彼女が一緒である。 アルティニ 皆高。ゆえあって須藤宅に居候中の女の子。 二人は穏やかな顔で空と海とを眺めている。 紅茶をひとくちすすった須藤のカップがからになった。 すぐにアルティニがつぎ足す。 「ありがとう」 「はい」 たがいに気負いも照れもなく、ごく自然な動作であった。 おそらくは家でも同じようなものなのだろう。 恋人同士というよりは、むしろ家族同士の気安さがあった。 二人が知り合ってすでに2年になる。 毎日顔をあわせていることを考えれば、当然かもしれなかった。 筆者的にはこう、水着のアルティニをはじめて見て須藤がうろたえる様子とか、あらティナちゃん意外と着痩せするタイプねとか書いてみたかったのだが。 「せっかくだし、泳ぎにいかないのかい?」 「あきまささんが泳ぐなら一緒に行くです」 「いや、僕はここで待ってるから」 「じゃあ、私もここにいます」 そう、とつぶやいて須藤は黙った。 須藤としては、アルティニが楽しく海を満喫してくれればいいと考えていた。 それを見守る自分の姿が容易に想像できる。あくまで保護者思考の須藤だった。 どうやって説得しようかと須藤が頭を悩ませていると、アルティニが言った。 「あきまささんのとなりがいいです」 「ティナ……」 なんだかうれしくなって、それ以上考えるのがばかばかしくなった。 そうだね、とだけ言って、須藤は景色を眺める作業に戻ることにした。 /*/ 星月典子は真っ暗な部屋の中にいた。 パソコンのディスプレイだけがぼんやりと光をはなっている。 そんな中で星月はひたすらにキーボードを叩き、護民官作業の報告書を作っていた。 リアル仕事の影響で案件がたまっている。 メッセンジャーは切ったままだった。立ち上げると仕事が降ってくるので逃げていた。 なんだか頭がくらくらする。ついでにまぶたが重い。最後に仮眠をとったのはいつだったか。 ふいにキーボードを打つ手がぴたりと止まる。 作業を進める前に確認すべきことが出来てしまった。 さんざん迷ってメッセンジャーを立ち上げる。 やはりメッセージがたまっていた。一気に20個ほどの窓が開かれる。 愛用のマックが1分ほど固まった。 泣きそうになりながらひとつずつ対応していく。 その間にも窓は増えていく。 「ううぅ、もうやーだー……」 「そうか、いやか」 声がして上を見上げると、「ごみんかんちょう」と書かれたたすきをかけた知恵者がいた。なぜかすっげー嬉しそうだった。 「そんなに嫌いならもっとやろう」 そう知恵者がつぶやくと、人間大ほどもある文字が大量に降ってきた。 よく見れば案件456とか722とか書いてある。 星月はその文字の山に押し潰された。悪夢としか言いようがなかった。 もちろん、夢の中の話である。 現実には、星月は水竜の背の上にいた。 ビーチチェアで横になり、南国気分を全開で満喫しているうちに眠ってしまったのだった。 「かんにんしてつかーさい……かんにんしてつかーさい……」 「ここまで予想通りの寝言もめずらしいなぁ」 イモムシのように丸まった星月を見下ろしていたのは、様子を見にきていた九音・詩歌だった。 さて、どうしたもんかと腕を組む詩歌の視界の端に、飲みかけのビールが置かれていた。 カロン、という涼やかな音色に星月は目をさました。 なんだかひどい夢を見たような気がする。 ぐーっと背筋を伸ばす。 ふと気がつくと、テーブルの上に見慣れないものが置かれていた。 そこには飲みかけのビールのかわりに、トロピカルジュースがあった。 透き通ったブルーの液体に赤いサクランボがのっている。 グラスの下にはメモが一枚。 ゆっくり休んでくださいね、とだけ書かれていた。 いったい誰が、と思ったが、それよりのどの渇きが強い。 ジュースをひとくちだけ口にふくむ。 それは、とても甘い味がした。 作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) これは大作。いい休暇です。 -- 九音・詩歌@詩歌藩国 (2008-12-29 20 57 02) 背中でバカンスを一足先に再現してみました。ご指名ありがとうございました。 -- 鈴藤 瑞樹@詩歌藩国 (2008-12-29 23 58 34) もーうー。鈴藤さんってばー!これ読んで、 -- 花陵@詩歌藩国 (2008-12-30 20 09 27) (切れました!)背中でバカンスへの期待が、いっそう膨らみましたー。 -- 花陵@詩歌藩国 (2008-12-30 20 11 28) 名前 コメント ご発注元:九音・詩歌@詩歌藩国様 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one namber=1498 type=1464 space=15 no= 製作:鈴藤 瑞樹@詩歌藩国 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=1754;id=UP_ita 引渡し日:2008/12/29 counter: - yesterday: -
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当サイトは移転しました。 移転先「OnlineGames Wiki*」 http //wikiwiki.jp/onlinegames/ このサイトの編集権限を管理者メンバーのみにして更新できないようにしました ↓↓↓↓↓ ここから旧ページ(閲覧用) ↓↓↓↓↓ 「テンプレ置き場/ネトゲしたいのですが何がいいでしょうか?」 編集 更新日時:2008-08-23 20 54 39 (Sat) 2chネトゲ質問板スレ「ネトゲしたいのですが何がいいでしょうか?」のテンプレ置き場 使用時は前スレ修正忘れずに(次スレに移行したら編集しておくとラク) Index 現行スレ テンプレ テンプレ1 テンプレ2 コメント 下位ページlist 「テンプレ置き場/ネトゲしたいのですが何がいいでしょうか?」 編集 更新日時:2008-08-23 20 54 39 (Sat) 現行スレ Find.2ch スレタイ検索「ネトゲしたいのですが」 ネトゲ質問板 ネトゲしたいのですが何がいいでしょうか?part128 http //live27.2ch.net/test/read.cgi/mmoqa/1218897035/ 「テンプレ置き場/ネトゲしたいのですが何がいいでしょうか?」 編集 更新日時:2008-08-23 20 54 39 (Sat) テンプレ テンプレ1 ★質問テンプレート 【課金方式】 【どんなゲームがしたいか】 【好きなゲームとその理由】 【嫌いなゲームとその理由】 【その他、経験済みのゲーム】 【英語のみのゲームをプレイできるか】 【スペック】CPU・メモリ ・VGA・回線・OSを書いてください 。 ★マシンスペック確認方法 【スタート】→【ファイル名を指定して実行】→【「dxdiag」と入力して「OK」を押す】 【システム】の欄にある「プロセッサ」の内容をCPUに書き込み、 【ディスプレイ】タブのデバイスの括弧の中にある「チップの種類」をVGAに書きましょう。 ★自分に合ったネットゲームを捜し求める求道者のスレです。 マターリが基本。これは最重要事項です。煽り、荒らしは放置。 過度の雑談や議論は避け、質問したい人の邪魔をしないようにしましょう。 ★質問者心得 ・ 1の質問テンプレートを使って質問してください。 ・ネットワークを利用して遊ぶネットゲームは多岐にわたります、 ある程度、遊びたいゲームの種類を見極めてから質問すると良いでしょう。 ・○○ってゲームはどう?のように個別のゲームについての質問は、 そのゲームのスレッドで聞いてください。 ★回答者心得 ・あつかうゲームは有料無料、テスト正式サービスを問いません。 ・自分の好きなゲームを語る際は、欠点も必ず書いてください。妄信的発言は嫌われます。 ・ゲームをランク付けするのは止めましょう。 「テンプレ置き場/ネトゲしたいのですが何がいいでしょうか?」 編集 更新日時:2008-08-23 20 54 39 (Sat) テンプレ2 ★FAQ Q.MoEとかマビノギを異様に勧める奴何なの? A.昔から居る荒しです。過去にはROが良く使われていました。現在の標的はMoEとマビノギのようです 「その条件なら○○」と勧めたり「ありがとう○○やってみる」等質問者を騙ったりします ウザいと思う方は一行レスをするIDをNG登録して下さい。 どうしようもない質問の場合にネタとしてマビ・MoEと答える場合もあり 次スレは950が立てましょう 踏み逃げの場合は960 970と10レスずつでお願いします。 ★過去スレ ネトゲしたいのですが何がいいでしょうか?part128 http //live27.2ch.net/test/read.cgi/mmoqa/1218897035/ ★関連リンク ネトゲしたいのですが何がいいでしょうか? まとめwiki http //www36.atwiki.jp/netgame/ ↑↑↑↑↑↑↑ テンプレ以上です ↑↑↑↑↑↑↑ 「テンプレ置き場/ネトゲしたいのですが何がいいでしょうか?」 編集 更新日時:2008-08-23 20 54 39 (Sat) コメント 全コメント表示? 名前 「テンプレ置き場/ネトゲしたいのですが何がいいでしょうか?」 編集 更新日時:2008-08-23 20 54 39 (Sat) @wikiによる広告
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お昼の時間を過ぎた頃。二階の部屋で本を読むドールが一体。そんなドールに、幼い足取りで近付くドールがいた。 「蒼星石、うにゅーあげるの!」 「良いの?貰って」 「うん!ヒナ、もうひとつ持ってるもん。それに、蒼星石の事大好きだから、大好きなものも半分こするの」 「ふふ、ありがとう」 そう言うと、差し出された苺大福を受け取った。 雛苺の方は、お気に入りのポシェットからもう一つの苺大福を取り出し、包みを剥がし始めた。早速食べる気らしい。 そんな雛苺を見て優しい意味で少しだけ笑うと、自分も先程貰った苺大福の包みを剥がし始めた。 「いっただっきまーす、なの」 「いただきます」 二人同時に、口にした。雛苺は二分足らずで完食し、それに苦笑いしつつ、蒼星石は五、六分で完食した。 そして、異変が起きたのは暫く経ってからの事だった。 「(何だろう…、暑い……)」 心の中で密かに呟き、窓越しに空を見る。良い天気ではあるが、陽射しが強い訳ではなく、快適な気温だった。なのに何故、異様な暑さを感じるのか。さっきまでは何とも無かったのに。 「どうしたの?」 「い、いや…何でも…」 「暑いの?」 少しだけ目を見開き、雛苺を見つめた。ドールは汗をかかない為、見ただけで判断する事は出来ない筈。ましてや、快適な気温の日にそんな事を思うのは、まず考えつかない。 「何か…知ってるの?」 「うん。さっきのうにゅーなのよ」 「!」 「さっきね、蒼星石の事大好きって言ったでしょ?あれは本当なの。だから…貴方を食べたいわ」 蒼星石には見えた。雛苺の左目が一瞬だけ、金色に輝くのを。 「ベリーベル」 こちらが動く前に、相手は動いた。ベリーベルの力で全身を拘束されたのだ。 「っ…」 「“私”の力だから、真紅達は気付かないのよ?」 これが“雛苺”の力だったら、真紅が気付いただろう。しかし、違うものの力だったら…。 『今、紅薔薇お姉さまと翠薔薇お姉さま、黄薔薇のお姉さまは一階のテレビに夢中。…助けに来る人はいませんよ?』 「…望みは?」 『貴方を食べる事。先程申し上げた通り』 「どうやって…」 『……………』 無言で、にこにこと笑いながら蒼星石に歩み寄る。 危機を感じ、必死に逃れようともがくが、轍はきつく絡んでおりビクともしない。 『こうするのですよ』 いつの間にか目の前に立っていたかと思えば、次の瞬間、唇と唇を重ねていた。重ねるだけではなく、強引に舌をねじこみ、口の中を犯していく。 「ふ…ぁ…っ」 『ん、ふ……ぷは…、』 暫く堪能した後、“雛苺”は名残惜しげに唇を離した。 一方漸く解放された蒼星石は、頬を赤くさせながら必死に呼吸を整えていた。何気無いその行動は、酷く色っぽかった。 『もっと、味わいたい……』 悦の表情を浮かべる“雛苺”は、一度ベリーベルの轍を縛り直す。両手を後ろで固定させ、そのまま体育座りの様な格好で座らせる。自分は蒼星石の向き合う形で座った。 『……邪魔ですわね』 何かを睨み不機嫌そうな表情になると、轍を操りズボンを脱がせ始めた。 「な…何を…!」 『……これも、いりません』 さらにドロワーズまで脱がせ始めた。暫くすると、もう蒼星石の下半身を隠すものは無かった。 「い…や、だ……」 『…でも、此処はそうでもなさそうですよ?』 再び轍を操り、閉じようとする脚を強引に開かせ、奥のものに手を触れた。 「あっ…」 『やっぱり……フフフ』 何かを確信した笑みを浮かべ、手に付いた液体を舐めとった。再び奥に手を伸ばし、さらに奥へと指を挿入させた。 「ひぁ…!」 『拒絶の言葉を口にしても、此処は拒絶していない様ですよ?』 「や…やめ…っ」 『絡み付いてきますわ…』 少し経つと、挿れた二本の指をゆっくりと動かし始めた。 「やぁ…んん…っ」 『どうやら、あれの効果は絶大の様ですね』 あれ、とは先程の苺大福の事。苺大福に細工をし、食べたものの性的感度を上げたのだ。 『そろそろイきたいですか?』 「…っ……」 『イきたそうな顔ですね。…良いでしょう』 くす、と笑うと、ゆっくりと動かしていた指を激しく動かし始めた。 「あぁ…!や、ぁ…だ、めぇ…っ」 『あ、イく時はちゃんと言わなきゃ駄目ですよ?』 「っ…あ……い…イ、く…――っ!!」 命令に従い、蒼星石はそのまま果てて気絶してしまった。苺大福にした細工は、そこまで快楽に落とす力があった。 『フフフ……美味しかったですわよ、蒼薔薇お姉さま』 ペロリと指についた愛液を舐めたのは、雛苺ではなく、薄い桃色の長い髪をなびかせたドールだった。 end
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川原雅@FEG様からのご依頼品 /*砂糖の演習*/ 猫屋敷。またの名を川原邸。百匹の猫がおわすという彼の伝来(?)の猫の家。 その家の猫と家主達は、昼日中、暖かな日差しの下で食後のひとときを過ごしていた。穏やかな縁側は心地よい風と猫の声に満たされている。 最近すっかりなついてきた猫が、仟葉の肩にのぼったり、足下で丸くなったりして山を作っている。 遠目に見れば刈り取ったばかりの羊毛の山とも言わんばかりのボリューム。猫屋敷ならではの光景である。 これを越える光景を作れるのは、彼の霧賀家の小助くらいである。彼は自らも一体となって猫の山を作り得る。 今日は彼はおらず、従って仟葉と川原の両名が猫と共にのんびりと日向ぼっこをしている一日だった。 川原は洗い物を終えると、ちょっと目を離した隙に猫にすり寄られている仟葉の側に腰を下ろした。仟葉がちらと川原を見て、小首を傾げる。少し笑っている。 「あっという間に集まってるね」 「五分もあれば、こんな感じだね」 仟葉はゆっくりと言ってから、左手の猫の背をなでた。猫はゆらゆらと尻尾を振った後、欠伸混じりに立ち上がった。のそのそと歩いて行く茶色い猫は、仟葉の右側に回り込んで、他の猫たちに混じりながらべたーと寝転んだ。 手招きする仟葉。川原はささっと側に寄った。 ……そのまましなだれてみようか。とか。少し考えたが、やめた。なんとなく気恥ずかしかった。代わりに、川原はんー、と言いながら微笑した。 仟葉は追求せず、猫のおやつが無くなってきたね、と言う。 首を傾げる川原。 「あれ、そうだった? この間たくさん補充したと思うけど」 「え? そっか……誰かが盗んだのかな」 「え?」 また唐突な。しかし、彼がそう言うということは……。 「心当たりがあるの?」 「ちょっと物の配置が変わっていたり。普通ならほとんど気づかないくらいだから、逆に気になってね」 「あー。誰の仕業だろう。まあいいや。買い出しに後で行ってくるね」 こくり、と仟葉は頷いた。 そのまま沈黙が続く。 二人はのんびりと庭を見ていた。時々、猫がとことこと歩いて行っては、適当な日だまりを見つけて丸くなる。と思えば、子猫が猛スピードで駆け抜けていったり。 静かなのか賑やかなのか判断に困る光景である。 左手の猫だまりから一匹の猫が起きあがる。オーレがとことことやってきた。川原の膝の上にのぼってごろんと転がる。 なでれ、みたいな態度に川原は笑いながらわしわししてやった。オーレは気持ちよさそうに鳴いた。 「退屈?」 「え?」 ふいに、仟葉が聞いてきた。川原がそちらを向く。 「いや。いつもこうしてるだけだから。退屈してるかなって」 「うーん」 「たまには散歩に行く?」 「え?」 珍しい誘いに少し驚く。目を丸くしていると、少し照れたみたいに目をそらす。 そんなに物欲しそうな目をしていただろうか。川原は頬に手を当てて考え込む。 ……散歩かぁ。 「そうですね。買い出しがてら行きましょうか」 まあ。たまには。 少し、のんびりと歩いてみるのもありだろうと。川原はのんびり頷いた。 +++ 買い出しに出て行った川原と仟葉を見送って、オーレはわしわしと顔を洗った。軽く体を震わせ、にゃ、と鳴く。 すると。庭に現れる是空氏。どもー、是空配達です、といいながらオーレに近づく。 「どよ。作戦は順調?」 「散歩中ですにゃ」 「散歩かぁ……」 オーレの言葉に腕組みする是空。しかし……。 「それじゃおまえさんの言った、あー、デート? にならないんじゃないか?」 散歩をデートにできるほどラブに傾倒しているキャラではない……、はず、と考える是空。 「難しいですにゃ。ご主人様はあんまり甘くないのです」 猫に甘さ批評されるとは。是空は天を仰いだ。 ……NWCの影響だろうか? 「まー。言われた通り朝のうちにおやつは持っていったけど」 「後は外部部隊に任せるのですにゃ」 「ああ。あの野良達か……何するつもりなんだ?」 「そんな事はわからないのです」顔を洗うオーレ。 「おいおい」傾く是空。 「猫ですから」 +++ 仟葉と川原はのんびりと外を歩いていた。あまり人の多くない高層ビルの外、最近草地になった裏道。 涼しい風と、遠くの喧噪。 これで桜か梅か、木の下を歩いていればいろいろと完璧な雰囲気である。 仟葉の右手には月刊誌を何冊か重ねたくらいのボリュームの袋がぶら下がっている。すでに買い物は終わり、今はぶらぶらと裏道を歩いている。 「もう帰る?」 川原が聞く。仟葉は少し考えた。 ……このままデートをする、という選択肢も無いではないが、たぶんきっと、難しいだろうな。この袋がなければまだなんとか、とも思わなくもないが。 「そうだね」 仟葉は頷いた。まあ、いつも通り。のんびりと歩いて、のんびりと帰ろう。 少し影響されてるな。仟葉は頭を振る。 「だけど、なんだったんだろうね。確かに買い込んだはずなんだけど」 「猫たちが食べていた、とか」 「包装ごと?」少し笑う川原。 「それはないか」仟葉は苦笑した。 「昇さんはなんだと思う?」 「泥棒……だと思ったけど。よく考えたら、それなら気づかないはずがないし……。猫たちも静かだったから」 目を細めて考え込む。川原はにこにこ笑いながらそれを見ている。 が、ふと、足下に目を向けた。つられてそちらを見る仟葉。 猫がいる。白地に黒の模様の猫。どこかペンギンみたいな模様をした猫がとてとてと近づいてきていた。 「おや。慣れてるねー」 しゃがみ込む川原。昇は足を止めた。 反対側、昇の方には茶色い猫がやってきている。額に黒いわっかのある子だ。 「こっちにも」 昇が言う。川原はわーといいながらもう一匹の猫を見た。 「どうしたのおまえ達」 「知り合い?」 「んー。初めて見る子」 「そう」 話している間に、茶色い猫がていていと昇の手にしたおやつへと前足を伸ばしてくる。こらこらといいながら持ち上げると、飛びかかってきた。 「ほんとうに慣れてるね」やや呆れながら昇が言う。 「おなかすいたのかな。えーっと」 川原は辺りを見回して、少し先にいったところに広場を見つけた。最近ではよく見かける草地の広場で、ただベンチを置いただけの、それだけの場所である。 施設としては高層ビルに空中庭園までもつFEGでは、草地だけの土地というのはある意味で珍しい。 二人はそこまで移動した。当然のように追いかけてくる猫たちは、二人がベンチに座った後もじっとこちらを見てきた。昇が膝に置いた袋から川原はえびのおやつを取り出し、そっと地面に置いてみた。 猫たちは近づいてきて、しばらくその周りをうろついた後、はぐはぐと食べ始めた。 「うちの子達おなかすかせてるかなぁ」 「今頃寝てるんじゃないかな」 ほとんど反射的に仟葉は答えた。最近、猫ばかり見ているので生活リズムが手に取るように分かる。おなかをすかせるにはあと一時間はいる。 「昇さんはおなかすいた?」 「そういえば、もうおやつ時だね。さっき買ったの、食べる?」 「そうしよっか」 昇が袋の中から紙の包みを二つ取り出す。一つを川原に渡した。 どこにでもある、素朴な鯛焼きである。 何故かさきほど通った路地に詳しい松井から川原が聞いた、一押しの品であった。 「……」 二人同時に、ぱくりと食べる。 ……なるほど、と思う。確かに薦められるだけあって美味しい。少し時間が経って冷めているけれど、味は濃すぎず、生地はしっかりしていて。味は素朴だが、どこか懐かしい感じでもある。 少し、年寄り臭いかな、と思わなくもない。 「なかなか美味しいね」 「うん。あの通りは他にもいろいろと美味しいものがあるらしいから、今度ほかにも買ってみよう」 「そうだね。……もう少ししたら暑くなるし、羊羹とかもいいかも」 きょとん、とする川原。じっとこちらを見た。 「どうしたの?」 「ううん。珍しいね。食べたいものを言うなんて」 「そう? ……そうかも」 「羊羹ね。うん。覚えておく」 何故か、少し嬉しそうにしながら鯛焼きを平らげる川原。仟葉は少し照れくさくなって、目をそらした。 「あれ、猫たちはどこだろう」 「あ。いつの間にかいなくなってる」 「がめついな……」 食べるだけ食べてどこかに行ってしまった猫たち。仟葉と川原は顔を見合わせて苦笑した。 それから、何故か二人とも少し固まった。何か考えているようでもある。 「えっと、」 何か言いよどむ仟葉。川原は笑って立ち上がった。 「帰ろう」 +++ 猫屋敷に戻る。と、もう昼寝の時間は終わっていたらしく、猫たちがずいぶん騒がしく駆け回っている。 二人が帰って縁側に向かうと、 「こらこら」 何匹か襲いかかってきた。 膝を駆け上がってこようとする猫を抱き上げたり、おろしたりしながら。しかしなかなか猫たちの突撃はやまない。 「みんな落ち着いて。昇さん?」 昇は微笑んだまま見ている。餌は? と首を傾げる川原。 「なんだか、おもしろいなと思って」 「あ。わざとか」 「ごめんごめん」 苦笑しながら、仟葉はおやつをいくつか開封して餌場に置いた。途端に集まっていく猫たち。解放された川原はよいしょ、といいながら縁側に座る。隣に座る仟葉。 「猫たちは元気がいいね」 「お腹が空いてるんだよ」 「うん。ても私は少し満腹」 「なかなかしっかりしてたね、あの鯛焼き」 そうね、と言いながら、川原はそれとなく寄り添ってきた。肩に頭を乗せてくる。 仟葉は二分ほど迷ってから、片手を伸ばした。髪を梳くようにそっとなでる。 くすくす笑う川原。 「くすぐったい」 言いながら目を瞑る。仟葉は気が済むまで川原をなでた後。さて、と立ち上がろうとした。 ……が、川原が動かない。 あれ、と思ってそちらを見れば。すうすうと、寝息を立てている。 「器用だな」 思わず感想がこぼしつつ。 それとも、疲れていたのだろうか、と考えたり。 「……まあ」 これもいいか、と考えながら仟葉は空を見上げた。 遠く高い青空。のんびりとした夕方直前の一時。腹を満たす心地よい満腹感。 なるほど。眠たくなるのも仕方ない、と。仟葉は欠伸をかみ殺した。 +++ 「………………あっ」 はっとして頭を持ち上げた。 すると、ずるりと何かが滑ってきた。膝の上に落ちてきた仟葉に、川原は再びはっとする。 あたりは夕暮れ。オレンジ色に濡れた景色の中、目覚めた川原は軽く頭を振って眠気を追いやった。 ……どうも、うたた寝をしていたらしい。そして膝に倒れてきた昇を見る限り、どうも、身を寄せ合ったままお互いに午睡にまどろんでいたようだ。 座ったまま寝るとは器用だな、とどうでもいいことを考える。無意識のうちに相方と似通ってきている。 ……そして、現実に意識を向け直して。 「……昇さん?」 そっと、声をかける。 しかし返事は無し。規則正しい寝息が帰ってくるばかり。 ……。 …………。 「よし」 位置をそっとずらして、膝枕などしてみたり。 そしてさっきのお返しとばかりに、そっと頭をなでてみた。 ぴくりと、眉が動く。まぶたが持ち上がる。 仟葉が、こちらを見上げてきた。 じっと川原と見つめ合う。 「おはよう」 「うん、おはよう」 「えっと」 仟葉は少し挙動不審。あちこちに目をやっている。 気づく川原。 「もしかして、起きてた?」 「頭をなでられた感覚は、ある」 「そ、そう」 何故か動揺する川原。 「顔、赤いよ」 「昇さんこそ」 しばらく沈黙する二人。 夕暮れはもう終わり。 空からは赤色が消えつつあるけれど、二人の顔はまだしばらく赤かった。 作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) 名前 コメント ご発注元:川原雅@FEG様 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one namber=2087 type=2050 space=15 no= 製作:黒霧@涼州藩国 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=2095;id=UP_ita 引渡し日:2010/10/28 counter: - yesterday: -
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「それでは、今日の占いーっ、らっきー☆すたー!!」 女性アナウンサーのはきはきとした声が流れる中、柊かがみは朝食を頬張りつつ、ぼん やりとテレビへ顔を向けた。 「今日、最も良い運勢は…」 画面に表示される本日第一位の星座を眺めながら、かがみの頭に浮かぶのは、もうそん な時間なのかということだった。花も恥じらう女子高生としては、甚だ間違った思考であ ろう。 それに比べて、テーブルの向かいに座る妹のつかさは、パンを手に持ったまま、口に運 ぶことも忘れるほど熱心に画面に見入っている。 姉妹にしてこの違い。本当に双子なのかと首をかしげたくなる程だ。 尚、今日に限って姉妹揃って朝から牛乳を飲んでいるのは、別に友人である某眼鏡天然 お嬢様のバストサイズに関係した話では全くない。 妹のそんな様子に苦笑しつつ、口に含んだ目玉焼きを嚥下し、牛乳を流し込むと、かが みは促すように声を掛けた。 「ほら、つかさ。パン、冷めちゃうわよ」 その声に、はっとしたようにつかさは手にしたパンを口に運ぶと、そのまま動きを止め て、かがみの顔をじっと見つめた。 「何、どうかした?」 視線に気付き、手にしていたコップを下ろして訊ねると、倣うようにつかさもパンを皿 に戻し、上唇と鼻の間を両手の人差し指で押さえるような仕草で言った。 「お姉ちゃん、口に牛乳のお髭がついてるよ」 「えっ!?」 はじかれたように口元を押さえると、慌てて手の平で拭う。朝から牛乳を飲むこと自体 が久しぶりであるためか、長いブランクから、普段の彼女からはとても考えられない、― ―いや、充分に考えられる失態であった。 家の中であったのがせめてもの救いか。よく見ると、羞恥のためか耳まで赤くなってい る。もしこれが学校であったなら、そう思うかがみの脳裏には、自分をからかうように猫 口で笑う人懐こい顔が浮かび上がる。 「……取れた?」 手を外し、蚊の鳴くような声で訊ねると、つかさは再びパンを頬張りながら、「うん」 と頷いた。 その言葉を聞いて安心したのか、「ふう」と一息ついたかがみは、手と口周りを洗おう と立ち上がり、 「そして今日もっとも悪い運勢はー……、ごめんなさい、蟹座のあなた!」 という言葉を耳にした。慌ててテレビ画面を振り返る。そこには、疑いようもないほど はっきりと、自分の星座が最下位であることが表示されていた。 普段から占いなど信じないタイプのかがみではあるが、いざ自分の星座が最下位だと目 の前で言われると、さすがに少し心にひっかかりを覚える。ましてやたった今、いくら身 内の前とは言え、牛乳髭などという醜態を晒した後では特に。 よく見ると、双子であるから当然同じ星座であるつかさも、ショックのためか、食事の 手を止めて呆然と画面に見入っている。 「でも、大丈夫!」 爽やかな朝の空気の中、突如固まった柊家の空気を何とかしようと思ったのか、はたま た決まった流れなのか、もちろん後者であるが、女性アナウンサーの声が二人を宥めるよ うに響く。 「そんなあなたを助けてくれるおまじないはー……」 数秒の溜め。思わず二人の喉が鳴った。つかさだけではなく、いつの間にか、かがみの 顔も真剣そのものだ。画面を食い入るように見つめる瞳は瞬きすら忘れている。 尚、この時かがみの上唇周辺の産毛が、ところどころ乾いた牛乳片によりきらきらと輝 いていたことは、誰も気付かなかったので割愛する。 このままCMに入れば、残り時間を確認したつかさが是非の判定を下してくれたであろう が、今回はクイズでなく占いであるため、そうはならなかった。当然CMも入らない。 そうして永遠に近い2秒弱が流れた後、画面の切り替わりと同時に女性アナウンサーの 声が響いた。 「好きな人とハグをする!」 「ええーッ!?」 間髪入れず聞こえた叫び声は一つ。その声に驚いた顔も一つ。前者は、思わず阿呆毛を ひょこひょこ踊らせつつにじりよる人物が思い浮かび、それを必死に否定するための悲鳴 であり、後者はその声に反応して竦み上がった彼女の妹のことであった。 つかさはかがみを見つめ、かがみはテレビの画面を見つめ続ける。再び固まりかけた空 気を動かしたのは、今度もやはりテレビから流れる声だった。 「それでは、今日も元気に、いってらっしゃい」 画面が切り替わり、違う番組が始まったことで我に返ったかがみは、手と顔を洗いに行 く途中だったことを思い出し、ぎくしゃくと洗面所へ向かった。 洗面台の前に立ってまず思ったのは、鏡に映った自分の顔が、我が事ながらツッコミた くなる程真っ赤であるということだった。 それと同時に、先程のおまじないとやらが脳裏に浮かび、併せて身長の低さをアホ毛で 補う彼女の顔が思い出され、更に顔が赤くなる。 そんな思考を振り払うように、かがみはぶんぶんと首を振り、蛇口を捻って流水に手を 浸した。熱を持った手の平に、冷たさが心地よい。そのまま、髪を濡らさないよう注意し つつ顔を洗うと、顔の火照りも取れ、気分も落ち着いてきた。 「よしっ」 タオルで顔と少し濡れた前髪を拭き、大きく息を一つ吐く。もうすっかりいつも通りだ。 そのまま歯磨きを終え、捲っていた袖を下ろし、外していた腕時計を巻いて廊下に出ると、つかさが待っていた。 かがみの鞄を差し出しながら、声を掛ける。 「お姉ちゃん、そろそろ行かないと遅れちゃうよ」 「ん、ありがと。そうね、遅れたらこなたの奴に何言われるか分かったもんじゃないわ」 答えながら、手を出して受け取ろうとするもタイミングが合わず、落ちた鞄がかがみの つま先を強打する。 「ぐあっ!!」 「ご、ごめん、お姉ちゃん。大丈夫?」 慌てて姉の様子を気に掛けて屈もうとしたつかさの頭と、返事をしようと顔を上げたか がみの額が、これまた見事にぶつかった。 「きゃっ!」 「あうっ!!」 痛みと衝撃で落としたつかさの鞄が、自らのつま先にヒットする。 「ひああっ!!」 しばらく悶絶する二人。連続して聞こえる悲鳴を気に掛け、様子を見るために廊下に出 た母親が見たものは、仲良く丸まって足のつま先を押さえつつ、ぷるぷると震える姉妹の 姿であった。 「ぅおはよーっ」 頭の天辺から飛び出たアホ毛をリズミカルに揺らしながら、泉こなたが待ち合わせ場所 に立つ二人に向かって元気に手を振る。周囲には会社員や他の学生等の姿も見られるが、 そんなことはお構いなしだ。 「……って、どったの? 二人とも」 遠目では気付かなかったが、近くで見ると二人の表情が妙に暗い。何故か二人とも額が 赤く腫れているし、かがみは右の靴が泥で真っ黒だし、つかさはスカートのお尻のところ に砂埃がついていた。 「こなちゃーん!」 怪訝そうに近づくこなたが射程圏内に入った途端、つかさが涙を滲ませながら、飛びつ くようにして抱きついた。身長差があるために、思わず倒れそうになる体を、しっかりと 踏ん張って何とか支える。 「う、ぐ……、ど、どうどう。つかさ、落ち着いて」 宥めるように背中をぽんぽんと軽く叩きつつ、傾いていた身を起こすと、つかさの後ろ でまごついたように立ち尽くすかがみの姿が目に入った。 「二人とも何かあったの?」 つかさに抱えられたまま、こなたが小首を傾げつつ重ねて訊ねると、ようやくかがみは 状況に気付いたのか、二人を引き離しにかかった。 そんな三人がじたばたと絡み合う内に、車輪の軋む音を響かせながら、電車が滑り込ん できた。慌てて乗り込み、車内に入ると同時に扉が閉まる。列の先頭で待っていたはずな のに、ぎりぎりセーフだ。 「あ!」 座席の方へ移動しようとして、かがみが声を上げる。こなたとつかさが振り向くと、ス カートの裾を扉に挟まれて身動きの取れないかがみがいた。 「あー、もう」 明らかに苛立った様子で扉を睨む。その様子を見つめるつかさの表情も、やけに沈んで いる。 「ありゃー、かがみん。今日はツイてないねぇ」 普段の調子で猫口で笑いながらこなたがそう言うと、目に見えて空気が凍り付いた。深 刻な表情で俯いたかがみとつかさを見て、流石のこなたも動揺する。 「あ、あれ……?」 二人の顔を交互に見つめながら、どうしたの? と視線で問うが、かがみもつかさも黙 ったまま動かない。いや、よく見ると、かがみの肩だけが小刻みに震えていた。 その光景は火山が噴火する寸前の地鳴りに酷似しており、最も近くにいたこなたが本能 から危機を察知した瞬間、間髪入れずにそれは怒った。いや、起こった。 「ツイてないなんてもんじゃないわよっ!!」 大喝一声、あまりの迫力に車内がしんと静まりかえる。いくつかの視線がその発生源に 向けられ、すぐさま首の骨を折るほどの勢いで背けられた。触らぬ神に祟りなし。 言葉通り、乗客は揃って明後日の方を向き、図らずも切っ掛けとなってしまったこなた は、今まさにかがみと言う名の祟りと直面していた。 「え、えーと」 何とか状況の把握と打開を試みようと話しかけるも、かがみの「人も殺せそうな」視線 を間近で浴び、こなたは竦み上がった。アホ毛まで痺れ上がっている。 いや、よく比喩表現として使われるが正にあれは殺人兵器だった、と後にこなたは語る。 成人男性なら3人、老人や子供であれば6人は殺せたであろう。車内に死者が出なかったの は奇跡であり、偏に盾となって全てを受け止めた私のおかげであると。 「まったく、何だって言うのよ。今日は本当に……」 地の底から響くようなおどろおどろしい声。電車の揺れと、車輪とレールのぶつかる音 も合わさって、何とも形容しがたい雰囲気が漂っている。強いて例えるならば、地獄の釜 の底であろうか。 救いを求めるようにつかさの方へ目をやるこなた。つかさは視線に気付くと、かがみを ちらりと見やった後、「実はね」と出来るだけ刺激しないよう小声で話し始めた。 「うーん、それはまた何とも災難だったねぇ、二人とも」 「だから災難なんてそんな簡単なものじゃ……!」 つかさが簡単に事の経緯を話し終えた後、しみじみと感想を述べるこなたに、憤懣やる かたないかがみが噛み付く。 それも致し方ないことだ。こなた達が乗車後ずっと、どの駅でも反対側のドアが開き、 結局スカートが挟まった扉はいつもの降車駅でも開かず、ようやく開いた見知らぬ駅で降 車後、現在折り返しの電車に揺られて遅刻確定の学校へ向かっている途中なのだから。 更に、どうやら家を出て待ち合わせ場所に着くまでにも、犬には吠えられ追い回され、 左折車に巻き込まれそうになったと思えば、横道から飛び出してきた自転車を避けようと して転んで尻餅をつくし、鳥の糞は降ってくる、さすがにこれは回避したと思えば踏み出 した先は蓋の外れた側溝だったり、正に踏んだり蹴ったりを具現したと言えよう。 「星の巡りってのも案外馬鹿にならないネ」 腕組みをしてうんうんと頷くこなたに、目元に涙を浮かべたかがみの鋭い視線が突き刺 さる。さすがに自重しているのか先程までの迫力はないが、相手がこなたでなければ肝が 縮んでいるだろう。男性であればコツカケを習得してしまう程に。 「それにしても……」 こなたの目がつかさに向けられる。 「ん?」 視線を感じたのか、窓の外を流れる景色など眺めつつ、バルサミコ酢ぅ~などと口ずさ んでいたつかさが振り返った。 「私が見たところ、かがみはかなり不幸な目に遭ってるけど、つかさはそうでもないよ ねぇ」 「え?」 そんなことない、と反論しようとして、良く考えてみると、こなたと会ってから不思議 と急に何も起きなくなっていたことに気が付いた。 かがみの方はスカートを挟まれる以外にも、この短時間で、電車が揺れた拍子に転んで スカートが捲れそうになったり、乗り換える際には靴を片方車内に脱ぎ落としそうになっ たり、階段では蹴躓いたり、ホームでは鞄のバックルが外れて中身を撒き散らしたり、と 実にバラエティ溢れる事態に遭遇したと言うのに。 「あ、あれ?」 首を傾げて考え込む。こなたに会うまではつかさもかがみも同じ状況だった。それが会 ってからは、つかさの方のみぱたりと不幸が止む。一体何があったのか。 「何かフラグでも立てた?」 「うーん……」 待ち合わせ場所で会う前後のことを頭の中でリプレイする。こなたに会うまでは不幸が 起きて、会ってから不幸が起きなくなったということは、つかさとかがみの分岐はこなた と会う直前か、会った直後ということになる。 「これがゲームならTIPSとか出て真相に近づいたりするのカナ、カナ?」 会心の物真似によるこなたの呟きは、しかし二人の耳には届かなかった。仮に届いてい たとしても、状況は何一つ変わりなかったであろう。 ただ、この時3人にもっとも近い座席で微睡んでいた雑誌編集者A氏は、この後一日中 「カナ、カナ?」というフレーズが頭の中でリフレインし続け、ついには午後の会議にお いて席上で「カナ、カナ?」と口走ってしまったため、上司に長期の病気休暇を申し出る ことになるが、とりあえず三人にはまったく関係のない話である。 まあ、そんなことがある中、突然つかさの脳裏に鋭い閃きが走った。 「あーっ!!」 勢い込んで顔を上げると、こなたがしかつめらしい顔で妙なポーズをしている。しばらく無言で見つめ合う二人。 「……えっと、どうしたの? こなちゃん」 「パリイ!」 「え?」 「いや、つかさが何か閃いたーって顔してたからサ。うん、いいよ。分からないよネ。 忘れて」 どこか隅の方を見つめて落ち込むこなたに苦笑した後、つかさはかがみの方へ向き直っ た。 「お姉ちゃん、分かったよ!」 つかさが閃いた事というのは、朝の占いで言っていたおまじない、好きな人とハグをす るというものだった。 「……つまり、どういうこと?」 いつもの駅に着いて電車を降り、改札をくぐっても、「遠くへ行きたい」を呟くように 歌っていたかがみだったが、救いの光が見えたことでようやく現実に復帰した。 「だからね、ほら、朝にこなちゃんと会った時、私抱きついちゃったでしょ」 つかさに言わせると、つまりそれが占いのおまじないで、それを実行したために不幸を 免れるようになったのだということだった。 「で、でも、あれって好きな人とって言ってなかった?」 「うん、そうだよ」 「いや、だから、ほら、それだとつまり、その、こなたのことを……」 ごにょごにょと呟くかがみの顔は、話の終わりに近づくに従って赤くなっていった。そ んな彼女の様子を見て、こなたは堪えきれない様子でにまにまと笑い、つかさは不思議そ うに訊ねる。 「お姉ちゃん、こなちゃんのこと好きじゃないの?」 「え゛っ!?」 反射的に身を引くかがみの見事な裏声、見事な赤面、そして見事な動揺。その完璧なま でのデレを目の当たりにして、こなたのにまにま笑いが更に深くなる。 「べ、別にこなたのことが好きとか嫌いとかじゃなくて。……そ、そう言うつかさはこ なたのこと好きなの?」 「うん、私こなちゃんのこと好きだよ。お姉ちゃんは?」 「ぐっ……!」 正に墓穴。しどろもどろで必死に言葉を紡ぐも、自らドツボに嵌っていく。事ここに至 っては、「私もこなたのこと好き好きー」などと口に出来るはずもない。さすがはかがみ と言えよう。 こなたのにまにま笑いは今や最高潮だ。と思いきや、横合いから伸びたかがみの手が、 八つ当たり的にその口をつまみ上げる。 「ひだだだだだだだだっ!!」 「さっきからあんたは何笑ってんの!」 ぶにぶにと上下左右に引っ張られるこなたの頬。その柔らかさ、その感触に思わず怒り も忘れ、しばし夢中になるかがみ。引っ張るだけでは飽きたらず、両手で挟んだり、撫で たり、そしてまたつまんだり。心なしかやや息が荒くなっている。 「……かがみ?」 「はっ!?」 こなたの声に我を取り戻し、慌てて手を離すと、誤魔化すようにそっぽを向いて咳払い をする。 「ふー、まさかここまで怒るとは意外だったヨ。そんで、どうすんの?」 やや赤くなった頬をさすりながらこなたが訊ねると、かがみはばつの悪そうな顔で「ご、 ごめん」と謝った後、きょとんとした顔をして聞き返した。 「何が?」 「何がって、ほら。これ」 こなたはそう言うと、にんまり笑って両手を広げる。その様子を3秒ほど見つめ、やが て言わんとすることに気付いたのか、かがみは赤面して大声を上げた。 「ちょっ、こ、こなた!?」 「ほれほれ」 道の途中で立ち止まり、こなたは両手を広げたまま、かがみに向かって手首だけをくい くいと動かし手招きをする。何とも男らしい行動だ。ノンケの人だってほいほいついて行 くだろう。あまりの堂に入った姿に、つかさも感心したように眺めている。 「う、ぐ」 しかし、かがみは動かない。いや、動けない。こなたの広げた両手を見つめたまま、硬 直したように立ち尽くしている。 分かってはいるのだ。不幸から逃れる術があるというのならば、あらゆる可能性を試す べきだということは。 しかしこの時、彼女の頭の中では、不幸を一刻も早く何とかしたいという願望とか、こ なたの勝ち誇ったような顔がむかつくとか、朝だけでこれなら今日が終わるまでにはどれ 程の不幸が降りかかるのだろうという不安とか、もしこなたに抱きついても不幸が消えな かったらどうしようとか、それってつまり私がこなたを好きじゃないってこと? つかさ より? そんなことあるはずない! とか、それはもう様々な考えがぐるぐると回り続け、 結局動き出せずにいたのだ。 こなたもそんなかがみを特に急かそうとはせず、ただじいっと待っている。 風が、静かに流れた。 少し離れて二人を見守るつかさは、何となくムツゴロウさんのテレビ番組を思い出して いた。 そうそう、野生の動物は警戒心が強いから迂闊に近寄っちゃダメなんだよねー、などと 妙な感心をしている。この場合、野生の動物とは彼女の姉であり、ムツゴロウさんは彼女 の親友である。 つかさの頭の中では、次第に様々な動物ドラマが繰り広げられ、それはもう色々と何だ かすごいことになってしまっていたが、実際には状況に何の変化もない。両者は膠着状態 に陥っている。 しかし、全く動きがないというのも当事者以外には退屈なもので、脳内劇場が盛り上が っていた彼女もやはり例外ではなく、ふと何かを思いついたつかさは、静かにかがみの後 方へと回り込んで行った。 じりじりと秒針がその位置を変えていく。流石にそろそろ事態の打開を図らねば、と二 人が考え始めた時、極めて人為的な形で切っ掛けが訪れた。 それはある種、爆弾の投下にも似た行動で。 「わっ!!」 静寂の中、これ以上ないタイミングで響いた大声に、驚いて飛び上がったかがみは、反 射的に目の前のこなたに抱きついていた。 「きゃああああああああっ!?」 「うおっとー!」 訳が分からず慌てて振り返ったかがみの視線の先には、つかさが照れ笑いを浮かべて立 っていた。 「な、な、な、いきなり何してるのつかさー!!」 こなたにしがみついたまま、猛然とつかさへ食って掛かる。心臓はあまりの衝撃にばく ばくと悲鳴を上げ、目元には涙が滲み、頭の中はごちゃごちゃで、現状の把握すら出来な い。そのため、とりあえず目の前にあるものへ感情をぶつけているのだった。 こういった際の人間の行動について、この時点までまったく名前が出てきていない主要 メンバー残りの一人、歩く百科事典の異名を持つ彼女がいれば、適切な説明をしてくれる のであろうが、残念ながらこの場において彼女の登場は無く、今後においてもその予定は ない。関係者各位については、心からお詫び申し上げる。 「ごめんね、お姉ちゃん。でも、ほら」 かがみが本気で怒っている訳ではないと分かっているためか、つかさは申し訳なさそう に笑って、かがみの後方を指さした。 「……何よ、ほらって」 つかさに促され、ゆっくりとかがみの首が後ろと言うか前を向く。丁度45度ほど振り向 いた時、「それ」が視界に入ったのか、かがみの体が音を立てて固まった。 そう、彼女の目に飛び込んできたのは、これ以上はないくらい満面の笑みをたたえるこ なたの顔。何をどうすれば人はここまでとろけた顔になれるのかと言うくらい、文字通り 喜色満面な笑顔だった。 更にこなたは追い打ちを掛けるように、 「いやー、かがみん、情熱的だねえ。でも、そのほとばしる熱いパトス、確かに受け取 ったヨ」 などと言って、かがみの頭を撫でた。ちなみに、もう一方の手はしっかりと背中に回さ れている。 かがみは慌ててぶんぶんと首を振った。 「ち、ち、ち、違っ、違う! 違うんだから!!」 「違うって何がだね? ここまで熱く抱擁しておいて、今更違うだなんて、そりゃつれ ないってもんだよ、かがみん」 猫口で笑いながら、かがみの胸に顔を埋めるこなた。かがみはようやく自分の両手がこ なたの腰をしっかり抱いていることに気が付くと、大慌てで手を外し、今度は肩を掴んで 引っぱがそうと藻掻いた。 「えーい! 離れんかぁーっ!!」 「そんなに照れることなにのに。かがみんはまったくツンデレだなぁ」 「ツンデレ言うな!」 すったもんだともつれ合う二人。実力伯仲、一進一退の攻防だ。端から眺めると仲のい い馬鹿ップルのじゃれつきにしか見えない。 それを正に端から羨ましそうに見つめるつかさ。彼女の脳内劇場第二幕は、これまたす ごいことになっていた。現実が妄想に追いつく日も、そう遠くはないのかもしれない。 「もおっ、何よ! おまじないだなんて嘘ばっかり! 全っ然不幸が終わらないじゃな いのよぉーっ!!」 かがみの叫びはどこまでも青い空に吸い込まれるように消えていった。ついでにつかさ の呟きも。 「……でも、お姉ちゃん、幸せそう」 【終わり】 コメントフォーム 名前 コメント 読みやすいし話のまとまりもGOOD 埋もれるのが惜しい作品 -- 名無しさん (2010-03-14 23 08 25) かがみんはツンデレだなー=ω=. -- 名無しさん (2009-02-17 18 19 39) とりあえず、gj。 癒されたとてもすごく。 -- 名無しさん (2009-02-02 07 38 54) 実際にこんな占い結果がでたら町中ハグだらけだよなー -- 名有りさん (2009-02-01 22 10 27) ナレーションが面白かった -- 九重龍太 (2008-03-29 12 16 53)