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適当な造語、俗語。 ぽにょる 手加減、失着の際に使われる造語。 由来は、囲碁きっずでも有数の過小者のポニョニョから。 石がマミる、ほむる 大石が取られたり、殺した時の名言。 由来は、某アニメの登場人物の死亡シーンから。 rokiki流 俗筋と非常識によって、囲碁の常識を見事に打ち破った新興流派。 ・桂馬に裂かれよ ・ポン抜き二目、亀の甲四目 ・二線は勝線なり カリスマウイルス 細菌テロ。現代の医学では治療することができない不治の病で、感染するとどんな人間もキチガイと化す。 一級フラグ建築士 フラグマイマスター。他人のフラグまで自在に操作し、どんなフラグであっても回収し尽す。 そんな可哀想な人間に与えられる不名誉極まりない資格。 岡部倫太郎のブログ 自己満足ブログ。原型がなくなるほどに改悪された検討図をただただ記すためのサイト。 その内容は常軌を逸しており、なんでもない一隅の定石の変化を盤面全体に広げていく妄想には狂気すら感じる。 検討に至っては下手すら置き去りにする始末である。
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勇者。 強い勇気を持ち、人々の羨望を集めた者に与えられる名前だ。 彼女達にとって勇者は強い意味合いを持っていた。 片や”魔王”の運命を背負わされた王女が目指した輝かしい名前。 片や神託を受けて世界の脅威と戦う力を得た少女を称える称号。 誉れ高き勇者の逸話を後世に遺せば、相応のクラスを与えられたサーヴァントとして召喚される。 エクストラクラス・フォーリナー。 それが結城友奈に与えられたクラス名だ。 「サーヴァント、フォーリナー……結城友奈」 「うん! 私は結城友奈……勇者のサーヴァントだよ!」 お辞儀をする無垢な少女。 そのあどけなさは、天童アリスの友になった優しい少女達とよく似ていた。 もしも、友奈がゲーム開発部にいたら、みんなといいお友達になってくれる。 そんな取り留めのないことを考えて、アリスは笑みを浮かべた。 「昨日、友奈の逸話を夢で見ました!」 「うっ……なんだか、ちょっと恥ずかしいね」 「アリスは知りました! 友奈には、素敵なお友達がいっぱいいたのですね!」 「……そうだよ! 東郷さんも、風先輩も、樹ちゃんも、夏凜ちゃんも、園子ちゃんも、みんな私の自慢だから!」 誇らしげな友奈の姿。 友奈は決して一人ではなかった。タタリに呪われ、誰にも真実を告げられずに追い詰められた時も、彼女はいつも想われていた。 一途で眩い絆。かつてのアリスが知らなかった尊いものだ。 「じゃあ、アリスにとっても、友奈は自慢ですね! だって、友奈は真の勇者ですから!」 天童アリスはアンドロイドだ。 名もなき神々の王女AL-1S。 古の民が残した遺産にして、無名の司祭が崇拝したオーパーツだ。 「不可解な部隊(Divi Sion)」の指揮官にして、世界滅亡の為に誕生した「魔王」だった。 いずれ、キヴォトス全域に終焉をもたらす事を約束した厄災。 だが、彼女はその運命を変えた。 友との絆、培ってきた正義と愛の心、そしてアリス自身が抱いた心からの願い。 友情と勇気と光のロマンが、アリスをなりたい自分に変えてくれた。 それは、この世界に希望を与える勇者。 「アリスはまだ「見習い」勇者です! だから、勇者の先輩である友奈から、たくさんのことを教わりたいです!」 そんなアリスの元に導かれたのは。 紛れもない正道を歩む少女にして。 小さな両手で数多の命を救い続けた正真正銘の勇者だ。 その輝きで凶星(バーテックス)を幾度となく打ち倒した英霊(サーヴァント)。 アリスにとって、まさに理想の体現者である勇者だった。 「本当に、友奈は素敵ですから!」 紛れもない本心。 善意と情熱に溢れた素直な言葉。 友奈の在り方と力、それ以上に彼女を支える友情と真心に目を焦がれていた。 結城友奈は勇者である。 そして愛を与えられた普通の女の子だ。 時にはワガママを言って、たくさんの友達と当たり前のように遊んだ。 アリスがゲーム部に入ってから得たものを、生まれた時から持っている乙女。 けれど、絆だったらアリスだって負けていない。 「へへ……照れちゃうな。なら、先輩勇者として教えてあげる! それは……」 「それは……?」 「私達、勇者部のモットーの勇者部六箇条だよ!」 「おおー!」 勇者として、または普通の女の子でいる為に決めた6つの誓い。 挨拶はきちんと。 なるべく諦めない。 よく寝て、よく食べる。 悩んだら相談! なせば大抵なんとかなる。 無理せず自分も幸せであること。 一語たりとも聞き逃さず、アリスは心に刻み込んだ。 「パンパカパーン! アリスは、勇者部六箇条を覚えた!」 それは友奈がアリスにくれたはじめてのプレゼント。 「アリスは最初のクエストをクリアしました! 仲間と出会い、絆を深めること!」 「おめでとう、マスター! 見習い勇者から、マスター勇者になったね!」 「なるほど……アリス、マスター勇者にランクアップしました!」 英霊の座に登録された勇者からのお墨付きだ。 アリスにとって誇らしい勲章にして、この聖杯大戦に立ち向かう大きな第一歩。 マスターとは、主人である証ではない。 揺るがない絆と親愛の証明にして、何よりも勝る最強のバフ。 この称号があれば、アリスが持つ勇気と愛のステータスは無限大に強化される。 どんなバッドステータスでも跳ね返せた。 「……マスターは、聖杯に何かお願い事をしたい?」 真っ直ぐな目で友奈から聞かれる。 「私はあなたのサーヴァントだから、何でも言ってね」 でも、どこか寂しそうで。 その眼差しの意味をアリスは察した。 アリスと友奈にとって避けて通れない試練。 聖杯戦争のサーヴァントとして召喚されたからには、いずれ友奈も他者を殺める時が訪れる。 アリスを信じ、アリスの願いを叶えたくて、アリスに大きな贈り物を与える為に。 「アリスの願い、ですか?」 きょとんと首を傾げるも。 すぐに、彼女は真摯な顔つきになる。 TVゲームや漫画、古く遡れば伝記で称えられる勇者と呼ぶにふさわしい眼力だ。 如何な巨悪にも屈しない眼差し。 鬼神、悪魔、魔王、魔神。恐ろしい二つ名を持つラスボスを前にし、何度傷付けられても立ち上がる胆力があった。 それは、アリス一人だけの力ではない。 「……大切な仲間がいます」 間を開けてから、ゆっくりと言葉を紡ぐアリス。 「みんな、今もアリスの帰りを待っているでしょう」 アリスの脳裏に浮かぶ仲間達の笑顔。 花岡ユズ。才羽モモイ。才羽ミドリ。 魔王と知られても、アリスのせいで怪我をしても、みんなは手を差し伸べてくれた。 ゲーム開発部のみんなだけじゃない。 ネル先輩達C Cや、シャーレの先生だってそうだ。 みんなは、アリスの本当の願いを思い出させてくれた。 魔王である運命を変えて、アリス自身の意志で……勇者になってみんなと冒険をしてもいいのだと教えて貰った。 「アリスはみんなとまた会いたいです。勇者になって、みんなでいっぱい冒険したい……これがアリスの願いです!」 聖杯はいらない。 だって、アリスの願いはもう叶っているから。 幸せな日々を過ごしているのに、どうして今更他の何かに縋らないといけないのか。 もちろん、みんなが待ってるキヴォトスに帰りたい。 でも、嘘や悪意で誰かを傷つけたくない。 天童アリスは全てを話した。 「そっか。それが、マスターの願いだね」 「アリスの願いを聞いてくれて、ありがとうございます」 心からの言葉を、譲れない願いを、大切な想いもーーその全てを優しく受け止める友奈。 英雄譚の主人公になるべくしてなり、勇者として英霊の座に登録されるべき少女だ。 「それに、アリスの中にも、頼れる仲間がいました!」 「マスターの中にも? それって、どういうこと?」 「言葉の通りです! アリスの大切な仲間、ケイがいました!」 アリスの身には鍵となる少女が宿っていた。 固体名は<Key>。 モモイの読み間違いからケイと呼ばれた少女。 ケイはアリスを魔王に変える引き金にして、大きな鍵となるAIだ。 一度、アリスの中にいるケイが起動し、モモイが怪我をした。その一件からアリスはケイを避けて、目をそらし、苦しめた。 けど、それは勇者の在り方じゃない。 誰かを助けたいという気持ちこそが勇者の資格。 ならば、ケイの事だって真っ直ぐに向き合うべきだった。 「もう、アリスの中にケイはいません。でも、ケイはアリスを……助けてくれました。だから、ケイの為にも……アリスは勇者でありたいです!」 聖杯の奇跡があればケイとまた会える。 でも、ケイはそれを望まない。 心を一つにし、アリスとケイの二人で光の剣を掲げたから。 仲間の期待に応えると宣言したのに、魔道を歩むのはあり得なかった。 「アリスに力を貸してください、友奈!」 今の天童アリスは武器を持たず、キヴォトスの大切な仲間はそばにいない。 闇を切り開き、奇跡をもたらした『光の剣:スーパーノヴァ』は手元にない。 ケイの想いをしまった小さなロボットも、今はアリスのそばにいなかった。 屈強なキヴォトス人よりも、更に高いスペックを彼女は誇る。 だが、如何にアリスだろうとサーヴァントの神秘には耐えられない。 大切な絆の証がないまま、戦いを挑む事に不安はあるし、とても寂しい。 ……それがどうしたのか? 剣がなければ勇者は戦えないのか。そんなはずない。 たった一人になった勇者はただ逃げるだけ。断じて違う。 勇者とは、文字通り勇気ある者。 勇気という最高の魔法がある限り、悪を打ち砕く正義の一撃は何度だって放てる。 友奈だってそうだったから。 「任せてね、マスター!」 アリスの願いを知った友奈は、胸を大きく張りながら笑ってくれた。 天真爛漫な彼女達には、これからたくさんの試練が待ち受けている。 勇者を目指す少女、そして勇者の影法師たる少女に牙を剥く悪鬼も現れるだろう。 少女達を茨の道に歩ませ、逸話を血と罪で汚し、名を貶めようとする卑しい大人も現れるだろう。 けれど、彼女達に迷いはない。 夢と希望に満ちた明日の為、二人は戦いを決意する。 天童アリスと結城友奈は勇者なのだから。 「勇者部六箇条……無理せず、自分も幸せであること。マスターの幸せのため、頑張るよ!」 「では、アリスと一緒に帰りましょう! これが次のクエストです!」 「おー!」 夕焼け空の下、アリス達は肩を並べながら帰路につく。 キヴォトスから遙か遠く離れた世界にて、アリスの役割(ロール)は留学生。優しい一家に囲まれながら、ホームステイ先で暖かな日々を過ごしていた。 友奈の事も、この街で出会った新しい友達として受け入れられている。 一緒にゲームをして、TVも見た。 RPGゲームのやり方をアリスは友奈に教えてあげたし、二人仲良くレースや格闘ゲームでも遊んだ。 もう彼女達の関係はマスターとサーヴァントではない。 アリスにとって友奈は仲間で、友奈にとってアリスは友達。 言葉は違えど、繋がりに込められた愛と慈しみは同じ。 祈りと、真っ直ぐな輝きは誰にも穢せなかった。 どす黒く、重苦しい深淵の闇すらも、二人の勇者を呑み込めない。 天童アリスと結城友奈は前を見続けていた。 光に満ちた未来を作る勇者である為に。 【クラス】 フォーリナー 【真名】 結城友奈@結城友奈は勇者である 【ステータス】 筋力B+ 耐久C+ 敏捷B 魔力D 幸運B 宝具B 【属性】 秩序・善 【クラススキル】 領域外の生命:B 人類を守る神樹に魅入られ、一度は神の眷属にも選ばれた逸話でこのスキルを得た。 友奈がフォーリナーのクラスで召喚されたのも、神と深い関わりを持った事が由来とされている。 神性:B 神霊適性を持つかどうか。 神に選ばれ、勇者となったことで神性を獲得した。 【保有スキル】 対魔力:B 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。 精霊の加護:B+ 精霊の牛鬼からの祝福により、命の危機において精霊のバリアが発動する。 勇者の攻撃力及び防御力が向上し、同ランクまでの宝具ならばダメージを軽減する。 生前、勇者システムの変更によって、バリアを発動すれば勇者の切り札たる満開が使用不可となったが、マスターからの魔力があれば再使用が可能。 勇者の資格:B 守りたい人々の為に戦い続け、その手で己の運命を変えた勇者に与えられるスキル。 戦闘続行、勇猛の複合スキルであり、戦闘時に発揮される。 【宝具】 『結城友奈は勇者である』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:- 結城友奈が勇者である為に必要な勇者システムそのもの。 勇者システムの発動によって結城友奈は勇者となり、パーテックスと戦う力を得られる。 生前は勇者が強化する切り札として満開システムが実装され、強大な力と引き換えに身体機能が一部喪失……散華のリスクがあった。 後に勇者システムの変更で散華がなくなった代わりに、満開はたった一度だけとなる。また、その前に一度でも精霊の加護が発動すれば、そもそも満開システム自体が使用不可。 サーヴァントとして召喚された事により、令呪一画分の魔力供給があれば満開の再使用が可能。 『大満開(だいまんかい)』 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1 歴代の勇者達からの想い、そして神樹の力を授かった結城友奈が満開した姿。 この宝具を発動すれば、友奈は従来の満開よりも更に神々しい姿となり、各種ステータスが向上し、更に神性スキルを保有する相手であれば各防御スキルを無効化する。 無論、その拳一つで世界の運命すらも変えてしまう。 だが、歴代の勇者達と想いを共有し、更に神樹そのものを供物にしなければ奇跡は起こせない。 令呪三画全てを消費しようとも大満開は果たせない為、現在の彼女では事実上発動不可となった宝具。 【weapon】 勇者スマホ。 【人物背景】 讃州中学勇者部の部員。 かけがえのない友達と力を合わせ、勇者となって世界を救った少女。 【サーヴァントとしての願い】 勇者として、マスターの願いを叶えてあげたい。 【マスター】 天童アリス@ブルーアーカイブ 【マスターとしての願い】 聖杯はいりません。 友奈と一緒に、勇者として戦いたいです。 【weapon】 なし。 【能力・技能】 アンドロイドのアリスは並のキヴォトス人を凌ぐ体力や握力を誇り、また傷を受けてもナノマシンによる自己修復もできる。 ただし、サーヴァントの宝具に耐えることはできない。 愛用する『光の剣:スーパーノヴァ』、そしてアリスが大切にする小さなロボットは手元にない。 【人物背景】 勇者に憧れる少女。 ミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部に所属し、RPGゲームの影響で勇者を目指すようになった。 元々は世界を滅ぼすために生まれた「魔王」だが、仲間達との絆で自分の夢を思い出し、「勇者」になりたいと宣言する。 その身に宿す鍵の少女とも向き合い、共に光の剣を掲げて世界を救うきっかけを作った。 【備考】 参戦時期はプレナパテス決戦後からです。
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九音・詩歌@詩歌藩国様からのご依頼品 水竜は海にいた。 そこは冬だというのに雪が降っておらず、海面に氷が張ることもなく、熱帯魚が元気に泳いでいた。 そこは、南国の海だった。 /*/ 白い砂浜に、青い海。輝く太陽。 そこはレンジャー連邦からほど近い、ちいさな無人島だった。 絢爛世界での戦いからの帰り道、突如決まった一日休暇。 藩王いわく、みんながんばったし、たまにはいいよねとのことだった。 島に到着して1時間、みな思い思いに時を過ごしている。 打ち寄せる波音を聞きながら、かな子は嬉しそうに目を細めた。 IBPの仕事でレンジャー連邦へ来たこともあったが、ゆっくりしたことはなかった。 それ以上に、こうして国のみんなが同じ時を、すこやかに過ごしていることが嬉しかった。 かな子は人の幸福をまるで自分のことのように喜ぶことができた。 おまけに今はドラゴンシンパシーの力で愛すべき竜たちの声もまるわかりだったから、もう言うことナシ状態であった。 「おいで、ノーヴェ」 声をかけると一体の水竜が海面からゆっくりと顔を出した。が、すこし遠い。 大きすぎて浜辺まで近よれないのだった。こちらから泳いでむかう。 唇のあたりにつかまって、立ち泳ぎのまま見上げてみた。 風の谷のナウシカになった気分。 大きくてゴツゴツしていて見た目は怖そうなのだが、不思議と恐れる気持ちは湧いてこなかった。 むしろ、かわいい。 例えるならば、出産した友達を訪ねた時に抱かせてもらった赤ん坊に抱く感情に近い。 ただ無性に愛おしい気持ちでいっぱいだった。 かな子はノーヴェを抱きしめた。 体格が違いすぎてはた目にはしがみついているようにしか見えなかったが。 ノーヴェには意外なことに表面から毛のようなものが生えており、ふさふさしていた。 なんだか大型犬を抱きしめているみたいだ。 そのままシンパシーで語りかけてみる。 南の海は暖かいということ。 はじめての戦いのこと。 トレはちゃんと戻ってくること。 こんど背中に乗せてねということ。 今までのこと、これからのこと。 ノーヴェは言葉すくなにあいづちを返すだけだったが、かな子はそれでも満足だった。 心の深いところで繋がっているから。 ノーヴェのからだは温かくて、そのまま眠ってしまいそうだった。 うとうとした気持ちのまま、うっすらと目をあける。 いつの間にか砂浜に戻って寝そべっていたらしい。 「目がさめたかい?」 「っあ、藩王さま?」 そこにいたのは詩歌藩国は藩王、九音・詩歌だった。 どうやらとなりにすわって文庫本を読んでいたらしい。 「ノーヴェが心配していたよ。話し疲れて眠ってしまったと」 「わー、すみません……!」 「いやいや。リラックス出来てるようでなにより」 そう告げてから優しく微笑むと、詩歌は海へと視線をむけた。 地平で交わる空と海。広々とした自然の風景は、ただそれだけで美しい。 「ACEのみなさんも連れて来たかったですね」 「そうだね。個人騎士団の設立費用がもうすこし安ければいいんだけど」 まぁ、次の生活ゲームでなんとかしようと言って詩歌は立ち上がった。 「どこ行くんですか」 「みんなの様子を見に」 ゆっくりと歩きだした詩歌の背中を見ながらかな子はすこしだけ迷って、1番気になっていたことをくちにした。 「あの、藩王さま」 「なにかな?」 「なんで水着を着ないんですか?」 薄手のパーカーを身につけた詩歌は相変わらずの性別不詳だった。 それを聞いて、詩歌はほんとうに困ったように笑いながら、どっちを着ても問題があるからね、とだけ言った。 /*/ かな子と詩歌からはなれること500メートル。 崎戸剣二は砂浜で酒を飲んでいた。より正確にいえば、のまれていた。 グラスをにぎったまま泣き崩れ、さめざめと語り続けている。 「私だってね、アイドレスで色々やってみたかったんですよ。みんなみたいに生活ゲームだってやってみたかった」 「ははぁ、なるほど。崎戸さんは生活ゲームがやりたかったんですねー」 となりにいたのは詩歌藩のアイドルナース9歳児こと豊国ミルメーク少年だった。 手には子供らしくオレンジジュースのペットボトル。 しかし落ち着き払ったその様子は、崎戸とは大違いである。 まぁ、アイドレスで見た目と中身が一致する人物は控えめにいっても多くない。 「だいたい生活ゲームに43マイルってなんなの。高いよ、高すぎるよ! 噂の秘宝館でSS書いても4マイルでしょ?11回分じゃん。もうね、ドンダケーって叫びたいくらいだよ!」 「はいはい、大変ですねー。それより崎戸さんそれ以上のんだらダメですよ。3杯目は致死量でしょ」 ぐでぐでになった崎戸を豊国がいなす。 崎戸が飲み始めてからずっとであるから、かれこれ2時間以上はそんなやり取りを続けていた。 「ま、そもそも登録してないし書いたことないけどさ……でも、一回くらい会ってみたかったなぁ」 「ほほー、それはまた誰にです?」 この時、9歳児は平静をよそおいつつ思った。 誰だ、いったい誰が好きなんだ、と。 この人物、見た目は子供でも中身は乙女である。 恋の話には興味津々なのだった。 「実は……」 やはり身近なところで詩歌藩王か。サンタコスでもうしんぼうたまらんくなったのだろうか。 いや、もしかしたらロジャーかもしれない。 あのスーツ姿で魅せるクールな笑顔ににころっとイッてしまったのかも。 いやいや、よく考えてみたらボラーという可能性もありうる。 強いし、絶技で核とか撃てるし。 などというかたよった予想が豊国の中の人の脳内シナプスを神速で駆け巡った。 が、もちろん予想はすべてはずれた。 「実は……ふみ子さんとか、いいなぁと」 「……へ、へぇ~。それはまた、なんというか、珍しいですね」 予想の斜め右上の返答が返ってきた。 あまりにも予想から掛け離れていたため、うまい返事ができなかった。 その後、崎戸が酔い潰れるまで、ミルメークはふみ子のどこがいいのかをさりげなく聞き出すことに専念したのだった。 /*/ 花陵と経は砂浜にいた。 水着のままで、二人並んで寝そべっている。 すぐそばにはソットウォーチェ・クワットロ。 なぜか浜辺に打ち上げられたクジラのように、体の半分ほどが地上に露出していた。 よくよく見れば2人+1匹で川の字になっていることに気がつく者もいるかもしれない。 「あったかーいー」 「ですねー」 「太陽きもちいーいー」 「そですねー」 「よし、裏側も焼こうー」 ここで2人+1匹はあおむけからうつぶせへとフォームチェンジをはたした。 「あったかーいー」 「ですねー」 「きもちいーいー」 「そですねー」 「……」 「……?」 「……Zzz」 「かりょーさん、寝ちゃいましたかー?」 「……Zzz」 「……」 「……Zzz」 「……Zzz」 「……Zzz」 その後、二人はこんがり小麦色の肌を手に入れたのだった。 /*/ 駒地は絵を描いていた。海を泳ぐ水竜の絵を。 木の幹に背中をあずけ、体育座りの姿勢でスケッチブックを支える。 一体どこに持ち込んでいたのか、それとも常に携帯しているのか、絵を描く道具はバッチリ用意されていた。 木陰で光をさえぎりながら、思うままに筆を走らせる。 絵を描くのは、楽しい。 自分にしかできないものを創り上げていくこの感覚。 なにかを表現しようという気持ち。 世に名作を残していった芸術家たちはみなこのような心情だったのだろうか。 もしそうだとしたら、彼らはきっと描くだけで満足だったろう。 二度と同じ色を生み出せぬ絵の具の混合とそのかがやき。 一筆に込められたあふれんばかりの情熱。 これほどの興奮を味わえる娯楽は、ほかにない。 だが、今の駒地にはそれ以上に己を突き動かす衝動があった。 描いた絵を森晴華に見てほしい。 そして話がしたい。絵を描いたその時になにがあったのか。どこでなにをしていたのか。 たとえば今回の場合なら、南の島なんてはじめて行ったけどやっぱり暑かったとか、ヤシの実はけっこうずっしりした重さだったとか、サンゴ礁がとてもキレイだったとか、そういったことを。 そんな話をしたとき、彼女はどんな顔をするだろう。どんなことを思うのだろう。 考えれば考えるほど、駒地の筆は進むのだった。 ふと視線を感じて顔を上げると、そこにはソットヴォーチェ・チンクエがこう、ずーんとたたずんでいた。 ドラゴンシンパシーの効果だろうか、駒地がなにをしているのか興味があって近づいてきたことがおぼろげに感じとれた。 「あなたを描いていたのよ。ほら」 スケッチブックをくるりとひっくり返して見せてみる。 カメラのレンズがめまぐるしくピント合わせに動いていた。 「ほしいの?」 チカッと照明が一回光った。YESの合図だ。 そっか、と言いながらスケッチブックをめくる。 「ちょっと待ってね。もう一枚描くから」 水竜の美人さんはどう描けばいいんだろうと一瞬悩んだが、がんばって描くことにした。 /*/ 海はいい。特に水着をつけた女性はすばらしい。 鈴藤は心の底からそう思った。まったくもってハラショーだ。 オペラグラスを握り締め、喜びをかみしめる。 花陵さんの水着はワンピースタイプですかそうですか。 さすがわかっていらっしゃる。 かな子女史は意外と大胆な……いや、大好きです。 経さんのはなんだろう、チャイナ風ツーピース? パレオの切れ目がスバラシイ。 駒地さんはセパレーt……ってあれ、なんだろう誰かに似てるな。 誰だっけ、魔女の宅●便に出てくる絵描きの人。名前忘れた。 そんな失礼きわまりない感想を抱きつつ、鈴藤は砂浜から遠くにある木々の間へ身を隠し、女性陣の様子をうかがっていたのだった。 もう立派な変態である。 わざわざ遠くからうかがわんでも近くで一緒に遊べばいいじゃんと思うのだが、それができないへたれチキンで……あれ、なんだろう目から汗が。 まぁそんなことはどうでもいい。 あとには詩歌藩の二大巨頭、イタリア系美人のアルティニとましょーのおんな星月典子が残っているのだ。 二人の水着姿を拝まんことには死んでも死にきれんとばかりに鼻息も荒く二人を捜し歩く。 そんな時、砂浜に座り込んだ竜宮を発見した。 むこうの都合も考えず、さっそく本日の戦果を語る。 「竜宮さん見ました!?もううちの女性陣サイコーッスよスバラシイですよ!かな子さんとか花陵さんとか経さんとか!なんで海に来ただけで外見の値が5割り増しなんだろう……ってなにやってんですか?」 「トレの修理。できるだけのことはしてあげたいから」 絢爛世界へ向かう途中、偵察部隊との戦闘で水竜のうち一機が破壊されていた。 名前をトレという。イタリア語で三番目という意味だ。 そのトレに搭乗していたのが竜宮だった。 「竜宮さん……」 よく見れば周囲にはトレの残骸が積み上げられていた。 鈴藤は、おのれを恥じるようにうつむいて言った。 「竜宮さんって、そんなシリアスキャラでしたっけ?」 俺の記憶ではギャグキャラだった気が、との言葉に竜宮は眉をよせてくちを開くか迷ったが、そのまま修理を続行することにした。 バカの相手をしたところでなんの意味もないことは、よくわかっていた。 /*/ 須藤 鑑正は、のんびりと茶などしばいていた。 もちろん一人ではない。 となりには彼女が一緒である。 アルティニ 皆高。ゆえあって須藤宅に居候中の女の子。 二人は穏やかな顔で空と海とを眺めている。 紅茶をひとくちすすった須藤のカップがからになった。 すぐにアルティニがつぎ足す。 「ありがとう」 「はい」 たがいに気負いも照れもなく、ごく自然な動作であった。 おそらくは家でも同じようなものなのだろう。 恋人同士というよりは、むしろ家族同士の気安さがあった。 二人が知り合ってすでに2年になる。 毎日顔をあわせていることを考えれば、当然かもしれなかった。 筆者的にはこう、水着のアルティニをはじめて見て須藤がうろたえる様子とか、あらティナちゃん意外と着痩せするタイプねとか書いてみたかったのだが。 「せっかくだし、泳ぎにいかないのかい?」 「あきまささんが泳ぐなら一緒に行くです」 「いや、僕はここで待ってるから」 「じゃあ、私もここにいます」 そう、とつぶやいて須藤は黙った。 須藤としては、アルティニが楽しく海を満喫してくれればいいと考えていた。 それを見守る自分の姿が容易に想像できる。あくまで保護者思考の須藤だった。 どうやって説得しようかと須藤が頭を悩ませていると、アルティニが言った。 「あきまささんのとなりがいいです」 「ティナ……」 なんだかうれしくなって、それ以上考えるのがばかばかしくなった。 そうだね、とだけ言って、須藤は景色を眺める作業に戻ることにした。 /*/ 星月典子は真っ暗な部屋の中にいた。 パソコンのディスプレイだけがぼんやりと光をはなっている。 そんな中で星月はひたすらにキーボードを叩き、護民官作業の報告書を作っていた。 リアル仕事の影響で案件がたまっている。 メッセンジャーは切ったままだった。立ち上げると仕事が降ってくるので逃げていた。 なんだか頭がくらくらする。ついでにまぶたが重い。最後に仮眠をとったのはいつだったか。 ふいにキーボードを打つ手がぴたりと止まる。 作業を進める前に確認すべきことが出来てしまった。 さんざん迷ってメッセンジャーを立ち上げる。 やはりメッセージがたまっていた。一気に20個ほどの窓が開かれる。 愛用のマックが1分ほど固まった。 泣きそうになりながらひとつずつ対応していく。 その間にも窓は増えていく。 「ううぅ、もうやーだー……」 「そうか、いやか」 声がして上を見上げると、「ごみんかんちょう」と書かれたたすきをかけた知恵者がいた。なぜかすっげー嬉しそうだった。 「そんなに嫌いならもっとやろう」 そう知恵者がつぶやくと、人間大ほどもある文字が大量に降ってきた。 よく見れば案件456とか722とか書いてある。 星月はその文字の山に押し潰された。悪夢としか言いようがなかった。 もちろん、夢の中の話である。 現実には、星月は水竜の背の上にいた。 ビーチチェアで横になり、南国気分を全開で満喫しているうちに眠ってしまったのだった。 「かんにんしてつかーさい……かんにんしてつかーさい……」 「ここまで予想通りの寝言もめずらしいなぁ」 イモムシのように丸まった星月を見下ろしていたのは、様子を見にきていた九音・詩歌だった。 さて、どうしたもんかと腕を組む詩歌の視界の端に、飲みかけのビールが置かれていた。 カロン、という涼やかな音色に星月は目をさました。 なんだかひどい夢を見たような気がする。 ぐーっと背筋を伸ばす。 ふと気がつくと、テーブルの上に見慣れないものが置かれていた。 そこには飲みかけのビールのかわりに、トロピカルジュースがあった。 透き通ったブルーの液体に赤いサクランボがのっている。 グラスの下にはメモが一枚。 ゆっくり休んでくださいね、とだけ書かれていた。 いったい誰が、と思ったが、それよりのどの渇きが強い。 ジュースをひとくちだけ口にふくむ。 それは、とても甘い味がした。 作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) これは大作。いい休暇です。 -- 九音・詩歌@詩歌藩国 (2008-12-29 20 57 02) 背中でバカンスを一足先に再現してみました。ご指名ありがとうございました。 -- 鈴藤 瑞樹@詩歌藩国 (2008-12-29 23 58 34) もーうー。鈴藤さんってばー!これ読んで、 -- 花陵@詩歌藩国 (2008-12-30 20 09 27) (切れました!)背中でバカンスへの期待が、いっそう膨らみましたー。 -- 花陵@詩歌藩国 (2008-12-30 20 11 28) 名前 コメント ご発注元:九音・詩歌@詩歌藩国様 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one namber=1498 type=1464 space=15 no= 製作:鈴藤 瑞樹@詩歌藩国 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=1754;id=UP_ita 引渡し日:2008/12/29 counter: - yesterday: -
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彩貴@レンジャー連邦さんからのご依頼品 /*/ 「彩貴」 ん、誰だろう。私を呼んでる。 すごく安心する声。 「どうした?彩貴?」 え?ヤガミさん?? なんで上半身裸なの? 以外と筋肉あるほうなんだ… ってそうじゃなくってそうじゃなくって! 「バレンタインチョコ、ありがとう」 いえいえいえいえいえ! そんな、ご迷惑じゃなかったですか? 「迷惑なわけないだろう。そうだ。お礼がまだだったな」 良かったです。安心しました。 って、あれ? なんか近づいてませんか?? え、いやじゃないですけど… と、突然で…でも、ヤガミさんとなら… /*/ 「う…ううん…やわらかいです…ヤガミさん…」 レンジャー連邦パイロット控室。 今日もラスターチカを駆る共和国の空の守りたるレンジャー連邦のパイロットたちが、緊急事態に備えて詰めている。 そんな中、居眠りをしてとんでもない寝言をはいている彩貴を生暖かい目で見守っているのは、同じ連邦の春雨と七周である。 「いやー春雨さん。恋する乙女はいいねえ」 ごくごくと牛乳を一気飲みする七周。それだけならまだしもぷはーとか言ってしまうところが悲しい。 「そう…ね…可愛い…わ。相手が…ヘタれなのが…気に…くわないけ…ど」 こちらは緑茶をすする春雨。うっとりと彩貴を見つめる瞳は少し怪しい。 「これは、協力してあげないといけませんな」 ふふ、と笑う七周。 「…そう…ですな」 無理に口調を合わせる春雨。 この日の控え室からは、ふふふという不気味な笑い声と、彩貴の寝言だけが流れ続けていたという。 /*/ ざざーん 穏やかな遠波が、夏の浜辺に打ち寄せていた。 空は抜けるような青空で、それを映す海もきらきらとコバルトブルーに輝いている。 白くて足の裏に心地よい絹砂の浜辺、振り返れば風にゆれる椰子の木が南国の雰囲気を盛り上げている。 そう、リゾート!ここはリゾート夏の園! だけど ―――なんでこんなことになっているんだろう 外気温の暑さにもかかわらず、彩貴は顔を青くしていた。 肩が小刻みに震え、膝が笑っている。 隣では七周が 「いやーお嬢。海はいいねえ!」 などといいながら海なのに牛乳をごくごく飲んでいる。 春雨は二人をそっちのけで、この風景をどの色で写し取ろうかと余念がない。 /*/ そもそもの始まりは一冊のパンフレットだった。 『宰相府藩国夏の園』 白いかもめが舞い、沈みゆく夕陽が美しいそのパンフレットを、七周がごく自然に持ち込んだあの時から陰謀は始まっていたんだ、と今考えれば思う。 「今度の休み、春雨さんとあたしと、彩貴ちゃんで海に行かない?」 それはすごく魅力的な話で、彩貴は一も二もなく飛びついた。 休み時間に抜け出して、新しい水着も買ってきた。 昨日の夜は楽しみで、忘れものがないか三回も荷物を確認してしまった。 到着した宰相府の入国管理所は二回目だけど、まだ珍しくてわくわくした。 それなのに… 「あ、そういえば今日は他に二人、こっちで合流することになってるから」 「え?えーと、どなたですか??」 怪訝な表情で返す彩貴に春雨がぼそりとつぶやくように衝撃の一言を放った。 「グラン…パ…と…ヤガミ」 「…え、ええええーーーーっ!!」 一瞬の間を置いて、彩貴の悲鳴が入国ロビーに響いた。 /*/ そして今に至る。 彩貴は自分の二の腕を見て、悲しげな溜息をついた。 ―――腕太いなあ 誤解のないように言えば、彩貴は全く太っていない。 健康的で理想的な女の子らしい体つきをしているのだが、たいていの女の子というものは自分のスタイルにどこかコンプレックスを持っているものなのだ。 それが証拠に、先ほどから何人かの通りすがりの観光客が、通りすがりに彩貴のほうをちらちら見ているのを七周と春雨は確認していた。 ある統計によると、女性たちにとっての理想的なスタイルだと言える平均体重から許される誤差は±100gである。その±100gの理想のために女性たちは男性では想像もつかないような努力をしているものなのだ。(ただし残念ながら、その100gの違いがわかる男性は非常に少ない) 彩貴は最初に、どこか茫洋とした目で景色を見ている春雨を見た。 女性としては長伸で、三人の中でも一番背が高い。ダークブルーと白を基調とした水着は、女らしさよりもむしろスポーティな要素が強く、クールな外見と相まって中性的な魅力を醸し出している。 しかしながら、彼女を見る多くの人が最初に目を奪われるのは、ところどころにまかれた包帯と眼帯だろう。すらりと長い脚に巻かれた包帯はどこかアンバランスで儚く、見ているものを陶然とした領域にシフトさせる。地に足をつけた現実感というものを狂わせる力があった。 次に、となりで二本目の牛乳をあけている七周を見る。 こちらは背が低く、小柄なスポーツ選手のような引き締まった体つきをしている。くりくりとした勝気そうな瞳はまだ少女のようで、白い肌と一緒に、夏の太陽を照り返して輝いていた。ダークレッドの水着の上から同じ色のシルクの布を巻いて、それがなんともエキゾチックな国のセクシーさを表現している。発言はいつもおやじ臭いのに外見だけはどうにも若々しかった。 さて、彩貴の水着はといえば、全男子憧れの淡いピンクのビキニである。いつもは三つ編みにしているふわふわの髪を今日はピンクの薔薇のコサージュでアップ気味にまとめている。空の色を写し取ったような瞳と、あどけなさの残る表情は、美人というよりも可愛いの領域に君臨している。目を奪われるというよりは、思わず微笑んでしまうようなそういった種類の美しさだった。 水着のトップスは、防水素材の上にゆったりした布が付いており、それを胸の間で蝶結びに結んでいた。ちなみに彩貴は意外と着やせするタイプというやつである。彩貴は着やせするタイプである。大事なことなので二回記述しておく。 ボトムスのほうは、水着の上からミニスカートのようなパレオをつけている。裾はフリルがふんだんに使われており、動くたびに、もしくは風が吹くたびに揺れて、中高生男子諸君を悶死させること必至である。当の本人は全くそれ所でないので気が付いていないが。 首には黒のフリルのついたピンクのチョーカー、右の二の腕と、左のふとももにチョーカーとお揃いのバンドをしている。この姿を見た人々はある一つの重大な事実に気づくことになるだろう。すなわち、バンド等の装飾品を装備することで素足、もしくは素二の腕よりも、その魅力が増幅され、視神経を通して大脳を刺激し、ドーパミンを大量に分泌させるという劇的な化学反応を起こすということである。 純粋にその装飾品のもつ魅力がプラスされるのか、それとも一部を隠すということ自体がこのような効果を生み出すのか、それは後世の研究を待たねばならないが、とにかくその破壊力は抜群であるとここでは書いておくことにしよう。 さて、水着についての考察をすませたところで、さらに突っ込んだ魅力について記述していくことにしよう。 一滴の汗が形のいい顎から鎖骨へと滴り、鎖骨を経由して(以下検閲により削除) 腰のライ(以下検閲により削除) 豊満な(以下検閲により削除) チラリズムばんざ(以下検閲により削除) /*/ さて話は本筋に戻る。 牛乳に夢中な七周や景色に夢中な春雨でなく、膝をがくがくさせながら、いつ想い人があらわれるかときょろきょろしていた彩貴が先にグランパを見つけたのは当然の流れだった。 「あ、グランパさんこんにちは!今日は来ていただいてありがとうございます」 緊張していても礼儀正しさと明るさを失わないのは彼女の美徳の一つである。 「こんにちは……グランパさん……お会いできて光栄…です」 「こんにちは、お会いできて光栄です」 彩貴の声に二人も気を取り直して挨拶する。 グランパはその丸い体をこちらに向けると 「わしも嬉しい」 といってくるくると回りだした。 春雨もつられて回りだし、七周がそれを見てなぜかにこやかに笑っている。 そんないつもの二人の様子と、初対面でも好意的なグランパの様子に彩貴は少し安心した。が、しかし、次の瞬間に胸の中で心臓が跳ね上がった。 ――――ヤガミさんだ! ヤガミは別の木影で腕を組んで海を見ていた。 海を見ているというよりは、もしかしたら海を通して別のものを見ているのかもしれないが。 彩貴は意を決してヤガミに声をかけた。 「ヤガミさん、先日はどうもありがとうございました」 実は彩貴がヤガミと会うのは二回目である。前回は初心者騎士団二期生の卒業式に来てくれて、そこで出会った。 そこで「女は嫌いだ」「孫娘の婿になるかもしれないヤガミです」などの言葉に結構本気で傷ついたりもしている。乙女は繊細なのだ。 「…と、大丈夫ですか?」 反応の薄いヤガミを彩貴は心配そうに見つめた。 「ああ。すまん。哲学していた」 ヤガミはそのまま振り返ると、彩貴をまっすぐに見て言った。 「チョコをくれたやつだな。ありがとう」 ―――覚えててくれた! バレンタインのチョコレート。送ったはいいものの迷惑だったんじゃないかと何度も後悔していた。 ありがとう ただその一言だけで、報われた気がした。単純にうれしくて、胸が苦しくなった。 「あ、受け取ってくださって嬉しいです」 それだけ一気に言い切ると下を向いた。顔が真っ赤になってしまって恥ずかしくて顔が見れない。耳のほうでごうごうという音が聞こえる。 七周と春雨はお互いに目配せをすると、彩貴の肩をさりげなく叩いて、グランパの隣に腰をおろした。 ヤガミはそんな春雨やグランパたち三人を見て少し苦い顔をしている。 「まあ、食べ物に罪はない」 つい照れ隠しにそんなことを言った。なんだかんだ恋愛は得意ではないのだ。 「え?ええと…もしかしてまずかったとか…ですか?そうだったらすみません!」 そんな照れ隠しに彩貴はまともに反応して、慌てて謝った。 ―――ああ、ブラウニー甘すぎたかな?焼きすぎて苦味が出すぎたとか…どうしよう 一人ぐるぐるする彩貴。ヤガミは困ったように目をさまよわせ春雨たち三人を見た。 「痛そうだな。大丈夫か?」 丁度、春雨の包帯を見つけて、これ幸いと声をかける。 「…私は空気だと思っていて…」 が、一撃で突き放される。 さらに困ったヤガミは頭をかいて、空を見ている。 抜けるような青空を飛ぶ一羽のかもめが、「まだ若いな」と言うように鳴いた気がした。 /*/ 彩貴。相変わらずぐるぐるしている。 春雨と七周はこちらを見てによによしているだけで、フォローしてくれない。 顔をあげると、ヤガミが困った顔をしているのを見てさらにぐるぐるしてきた。 ―――はっ。こんな時は 「春の園も綺麗でしたがここも綺麗ですよね!ヤガミさんもよかったら泳ぎませんか?」 彩貴は唐突に海に誘った。 /*/ このセリフにはわけがある。時間は少し戻る。 入管を抜けて、砂漠の道を夏の園まで行く途中の車内。 彩貴はここでもぐるぐるしている。 「ど、どんな顔して会えばいいんですか!?」 「大丈夫、大丈夫。お嬢の魅力にかかればどんな男もいちころよー」 「その…ままの…あなたでいい…のよ」 七周は無責任に言い放ち、春雨はまともなことを言っているようで口もとの笑みが隠し切れていない。 「ああ、だめです!絶対になんにもしゃべれなくて変な女だと思われます…!」 もうこの世の終わりかというくらいの表情の彩貴。擬態語で表現すれば「よよよ…」と言った感じだ。 「そんなお嬢のために、こんなもの用意しましたーホットキャットエクスプレス夏の増刊号!憧れの人と海へ行こう特集!」 「パチ…パチ…パチ」 「そ、そんなの当てになるんですか…?」 七周の取り出した怪しげな雑誌に思いっきり脱力する彩貴。 「お嬢にねーぴったりなのはねー」 そんな様子に構うことなく七周はページを繰る 「思いっきりハジケテ夏☆ あこがれの人と海に来たはいいけど、うまくしゃべれないし、会話が続かないよー(泣)なんてよくある話! せっかくうまくいきかけた恋の台風が熱帯低気圧に勢力を弱めちゃう…なんてことも。そんな時は、強引にでも海に誘っちゃおう! 海の中なら会話が少なくても大丈夫(あんまりしゃべってると溺れちゃうゾ)さらに泳ぎが上手な彼に泳ぎ方を教えてもらうなんて嬉しはずかしイベントもあるかも! 自然に触れ合う二人に夏の女神さまも嫉妬しちゃう??この夏、恋のハリケーンは伊勢湾台風級よ☆…だってさ」 「多少…強引に…でも…海に…引きずり込むの」 「そ、そんなことできませーーんっ!」 またも彩貴の悲鳴が宰相府に響き渡った。 /*/ 「まあ、かまわんが。どういうことだ?」 唐突な誘いに、ヤガミは怪訝そうな顔で尋ねた。 遠くの方ではなぜか春雨たちがガッツポーズなどをしているが気にしないことにする。 あいつらを相手にするとどうも調子が狂う。 「?どういうこととは?」 目の前では彩貴が、不思議そうに首をかしげている。相変わらず耳まで真っ赤だ。 ―――これはどういう状況だ?何かの罠か? 「俺はもてない」 ヤガミ、半ば本気である。 グランパが遠くの方でしみじみ「若いのう」とつぶやいているが、これも黙殺する。グランパに比べればたいていのものは若いだろう。 「え、そうなんですか?私はかっこいいと思いますが…」 小首を傾げる彩貴も本気だ。 ストレートな物言いに、ヤガミはすこしすっと目をそらした。 「目を、治したほうがいい」 瞬間、春雨から殺気が立ち上る。 あまり表情は変わらないが、その瞳の奥には「私のお嬢になんてことを」という書き文字が青い炎とともに踊っている。 まあまあと春雨を止めている七周は上機嫌に二人のやりとりを見守っていた。 ―――やっぱり罠か? ヤガミは冷や汗をかきつつ、また視線を彩貴に戻しながら、そう思った。 /*/ 「う…今日は泳ぐので眼鏡ないですが!生活に困るほどわるくないですよー!」 ―――ああ、こんなことが言いたかったんじゃないのに! 海は近く、波の音がこんなにはっきり聞こえるのに海に入るのは簡単ではなかった。 もういまや彩貴の頭の中は車内でのホットキャットの記事でいっぱいである。 ―――と、とにかく海です!私の希望は海にしかありません!間違いありません! 「えっと、泳ぎましょう!せっかくの海ですから!」 理屈にはなってないが、気持ちは伝わったのか、ヤガミはまた一度苦笑すると、海に向かって泳ぎだした。 ひとりで泳ぎだすところが、カモメにもグランパにも若いなとしみじみされる所以であろう。 「え、えー!ま、待ってくださいー!」 ヤガミを追って入った夏の園の海は暖かかった。 昔温水プールに行った時のことを彩貴は思い出していた。 友達は、「彩貴ちゃん泳ぎうまーい!」と言ってくれていた。 小学校の頃だけど。 「泳ぎは得意なんですー!なので負けません!」 ザパ…ザパ…ぷはーザパ…ザパ…ぷはー 彩貴のスタイルは伝統的なクロールである。左手、右手、息継ぎ、左手、右手、息継ぎ。 教科書通りだが、あんまり早くはない。というか遅い。 ヤガミは、ちらちらと彩貴のほうを心配そうに見ている。 泳ぐ速度をゆっくりと落として彩貴に合わせた。 「わー。泳ぎ得意なんですか?」 久しぶりの海は穏やかで、泳ぐのが楽しくて、彩貴はにこにこしている。 先ほどの緊張が嘘みたいだ。意外とあの雑誌の言うことにも一理あったのかもしれない。 「不得意だ」 「うーん、そうなんですか?私必死ですよー。結構自信あったんですが」 立ち泳ぎでしゃべって、またクロールで少しずつ近づいていく。 ぶっきらぼうなヤガミの照れ隠しにも、さっきよりも傷つかなくなった。 あと五メートルくらい。 「俺はほとんど機械だ」 ―――またそんなこと言って あと二メートル 「機械だからって泳ぎの得意不得意はきっと関係ありませんよー」 ザプザプザプ あと一メートル! 「…えい」 彩貴は追いついてヤガミの腕につかまった。 ―――振りほどかれるかな… 彩貴の予想とは別に、ヤガミは動かなかった。 そっと上目遣いでヤガミを見る。 ヤガミの顔が少し赤くなっているのを見て、彩貴もまた顔を赤くした。 ―――恥ずかしいけど…放したくない 「近すぎないか?」 ヤガミの声が遠く聞こえる気がする。 ―――言わなきゃ。今。言わないと。 また次いつ逢えるか保証はまったくない。 バレンタインのチョコと一緒に送った手紙に書いた約束。 それは一方的で、自分勝手かもしれないけど、彩貴の素直な気持ちだった。 だから、逃げ出さずにここまできた。 ぎゅっと握ったヤガミの体から暖かいものが伝わってきた。 機械の体でも熱を発するのかもしれない。もしかしたらただの彩貴の錯覚かもしれない。 でも彩貴にとって、そのぬくもりは真実だった。 やっと会えた。伝えることができる場所に立てた。 顔をあげて、ヤガミを見た。 「私、約束を守りにきました」 はっきりと。 伝える。 ―――恥ずかしい。怖い。でも目はそらさない。 「…え、ええと…だめですか?」 顔が火照る。 ヤガミも彩貴をまっすぐに見ている。 ぶつかりそうなくらい近い距離で、二人は見つめあった。 「…」 ヤガミの唇が何度も動きかけて、止まる。 そんな沈黙の時間が、続く。 「あなたに会って伝えたいことがあったんです。…一方的ですが」 答えを聞くのは怖かった。でも伝えられないまま終わるのはもっと怖い。 胸が切なくて、苦しくて。 でも、目をそらしたらすべて消えてしまいそうだから。 彩貴は必死にヤガミを見つめた。 想いが相手に届くように。 さらにぎゅっとヤガミの腕を握った。 言葉では言い足りない想いをすべて込めて。 そんな時間が、いつ終わるともしれなく続いて。 そして、ヤガミは大きく一度息をはいて、言った。 「考えとく」 ヤガミは筋金入りのヘタれだった。 /*/ 「ヘタれだ」 先ほどまで春雨や七周と話し込んでいたはずのグランパがいつの間にか波打ち際で二人を見ていた。 「…ヘタれ…めがね…」 春雨が恨みをこめて、グランパの隣でぼそりと言った。 「…ヘタれ眼鏡…」 七周がさらにとなりで溜息をついた。 カモメが戻ってきて「ヘタれだな」と言うように鳴いた。 ウミネコがそれに続いてヘタれヘタれの大合唱を始めた。 「…お嬢がかわいそう…」 「うちのお嬢はあんなにかわいいのに…何が不満だって言うのかねえ?」 春雨と七周はもはや親戚のおばちゃん状態である。 「そこ、うるさい」 ぶすっとした表情のヤガミ。 しかし、カモメと、ウミネコと、人間と、Ballsのヘタれコールは、しばらく夏の園の浜に響いていたという。 /*/ 「○月×日晴れ 今日は宰相府の夏の園に行きました。そこで大切な人に会いました。春雨さんと七周さんはヘタれだって言うけど、私は…優しいなって思いました。 次も返事が聞けるか分からないけど、また会いに行きます。きっと。必ず。」 そして二人の恋の物語が始まる。 作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) 名前 コメント ご発注元:彩貴@レンジャー連邦様 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one namber=1898 type=1783 space=15 no= 製作:ダムレイ@リワマヒ国 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=1990;id=UP_ita 引渡し日:2009/04/22 counter: - yesterday: -
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川原雅@FEG様からのご依頼品 /*今日の食卓*/ ぱたぱたと床を駆けていく、無数の猫の絨毯爆撃。 うにゃーと走っていく猫の群れ。廊下を走っていく姿を、床に座って眺めている。すると、いつの間にか、周りは猫に取り囲まれていて、近くで丸くなっているたくさんの姿に身動きがとれなくなっていた。 ちゃっかり膝の上を占領している、一匹の猫がいる。白い毛色に、茶色のぶちが一つ。オーレという名前の雄猫は、川原の手のひらに撫でられてなんとも心地よさそうに眼を細めていた。 猫がどたばたと走る音に、ふと、チャイムの音が混じった。川原は面を上げると、腰を上げた。オーレが膝から降りて、猫の山を越えて着地。川原も猫の山を半ば飛び越えるようにして廊下に出た。 「はーい」 ぱたぱたと歩いていき、玄関に向かう。オーレがすぐ横をついてきて、二人共に玄関口で立ち止まった。 玄関を開ける。千葉が立っていた。 「いらっしゃいませ」 「お邪魔します。あ、これ、お菓子です」 紙袋を持ち上げる。川原は目を丸くした。 「わ、ありがとう!」 「いえいえ。エビ煎餅です。猫も、食べれると思います」 「わー、嬉しい。良かったね、オーレ」 オーレが川原を見上げた。にゃあ、と鳴いた。 千葉は微笑んでから、それにしても、と辺りを見回した。そこら中を駆け回る猫、猫、猫。まるで川のようだと思っている間に、その足下をするりとすり抜けていく別の猫。 「あ、どうぞ上がって。今お茶いれるね……うん?」 「猫、多くないですか?」 猫屋敷、と人は呼ぶ。近所の噂によれば、その家に住み着く猫は百匹はくだらないとの話である。千葉も噂には聞いていたが、やはり、見ると聞くでは大違いである。 何というか。これが、圧倒される、という物だろうか……。 「多いね。滋賀さんが連れて来た猫がだいぶまじってると思うけど」 川原はのんびりと説明した。そうか、あの人が。千葉は何となく頷いた。 「……おじゃまします」 猫を踏まないように気をつける――必要はあまりなかった。千葉が脚を上げると、するりと猫が避けていく。躾けられている、というよりは、単に、自分の都合のいいように歩いているだけのような気がした。 「あ」 と、不意に川原が振り向いた。少し心配そうな顔をしている。 「もしかして動物苦手とかある? 聞いておけば良かったね」 「いえ」千葉は少し微笑んだ。「猫は大丈夫」 そう、とほっとしたようにする川原。千葉は彼女の後ろについて、居間に向かった。 居間にも猫がたくさんいる。窓から差し込む光の中に、猫だまりが出来ていた。なんとも柔らかそうな光景から少し視線を逸らしてみると、今度は、キャットタワーを勢いよく駆け上がる猫たちの姿がそこにある。 「本格的だね」 ちょうど、ぶちが穴をくぐり、棒をつたって頂上についた所だった。 千葉の声は半分呆れていたが、頷きつつ、川原は言った。 「あんまりたくさんいるから、いれてみたんだけど。でも見てて楽しいよ」 「なるほど」 千葉は苦笑した。それから猫から目を逸らし、彼女を見た。川原はエビ煎餅を机に置き、キッチンにお茶を入れに行く。 どことなく。楽しそうに見える背中に、声を掛ける。 「家だと喋り方、変わってる」 「え、そうかなー」 お茶を持ってきて、正座崩しで床に座った。千葉もそばに座った。お茶を受け取る。 「ああ、でも宰相府だとなんとなく仕事用になってるかも」 いいながら川原はエビ煎餅を手にした。 途端、たくさん猫が集まってきた。川原、というよりも、その手の平を見上げて、にゃあにゃあ鳴いている。他にも、膝に乗って腕に手を伸ばしたり、台に上ってまっすぐ手を見つめていたり。 「このお兄さんが持ってきてくれたのよー」 いいながら手を下ろし、順番にわけようとした途端、猫たちが迫ってきた。一斉に手のひらに顔を寄せて、指まで食べてしまいそうな勢いではぐはぐ食べている。川原は笑みを浮かべながら、いまかいまかと待っていたオーレの方を向いた。 「はいこれはオーレの分」 オーレは嬉しそうにエビ煎餅を食べ始めた。 「みんなすっごく気に入ったみたい。ありがとう」 「もっと一杯買ってくればよかったですね」 そう言って、千葉は頭を掻いた。少し考える。 「もっと一杯、かってくればよかったね」 ちょっと照れながら、言い直した。 「でもこんなにいると思わないよね、普通」 「うん。想像の枠外だった。驚いた」 普通の反応。まあ、いいか。ちょっと残念に思いつつも、千葉は台の上にいる太った猫と目をあわせた。 「おまえ、さっき川原さんにもらってたろ?」 「ふとっちょさん、食い意地はってる」 くすくす笑う川原の声を聞きながら、千葉は、それでまあいいかと思って、エビ煎餅を少し渡した。猫は満足そうにはぐはぐ食べている。 「あ、人間が食べてない。昇さんもどうぞ」 煎餅を手渡す。千葉は受け取りながら、二人して食べた。濃厚なエビの味がする。 「値段分にはいけるな」 「うん、美味しい。気に入るはずね」 千葉は微笑んだ。 と、千葉に向かって猫たちが整列した。二十匹並んで敬礼する。 「感謝されてる」 笑みを浮かべながら言うと、茶色い雄猫、シェンナを戦闘に猫たちは二列縦隊で昼寝に向かっていった。尻尾を揺らしながら立ち去っていく後ろ姿、それを眺めつつ、川原がつぶやいた。 「うわー訓練されてる……」 「この屋敷の警護ですにゃ」 オーレが言った。少し自慢げ。 「面白い芸だね」千葉は小さく頷く。 「私も知らなかった。広いしけっこういろんな人が猫の世話で出入りしてるのは知ってたけど」 「猫も色んなのがいるみたいだね」 「うん……訓練したら猫士になるのかな。ああいう子達が」 オーレが頷いた。 「シェンナと猫達に、警備いつもありがとうって言わないとね。あとで」 オーレは敬礼した。川原はえらいえらい、といいながらオーレを撫でた。眼を細めて、耳を揺らすオーレ。「オーレも警備してるよねー賢いから」と言って喉の下を撫でると、ごろごろ言って首を伸ばした。 「昇さんも撫でてあげて」 千葉は微笑んだ。嬉しそうにしているオーレと川原に近づいていった。横に並んで、そっと撫でてみる。 オーレはひっくり返ってばんざい。体がのびきっていた。 「ふふふー、おなかみせちゃって」 堪えきれずに、千葉は笑った。なんですかーと、やや恥ずかしそうにいう川原に、幸せそうだなあ、と千葉は答えた。 /*/ のんびりしているうちに、すっかり日が暮れてしまっていた。日だまりをすっかり占領していた猫たちも、ほとんどが家の中に引き上げてしまい、そこかしこで固まって、やっぱりはしゃいだり、あるいは眠っていたりと、勝手気ままな様子を見せている。 「さて。じゃあ今日はそろそろ」 日暮れに赤く濡れた部屋で千葉は立ち上がった。川原も、膝で丸くなっているオーレをそっとおろしてから立ち上がり、隣を歩いていく。 「うん。遅くまで引き留めちゃったね」 「次は、もっとエビ煎餅を持ってくるよ」 「楽しみにしてる」 話ながら玄関に到着。靴を履き、外に出る千葉。 「それじゃあ、これで」 「うん。またね」 「うん。それじゃあ……」 そう言って、歩き出そうとする千葉。 その脚が、不意に止まった。振り返る。 「忘れ物?」 「いや、そうじゃない」 それから千葉は少し考えるようにしてから、少し、笑みを浮かべた。 「今から時間あるかな?」 「え? あるけど。どうしたの?」 「いいところを知ってるんだ。ああつまり、食事だけど。一緒にどう?」 「え?」 目を丸くする川原。千葉はじっと川原を見ている。 「うん。わかった」ややあって、川原は頷いた。 「案内するよ」 「あ、でも大丈夫? 臭わないかな……」 「大丈夫」千葉は少し笑った。「じゃ、行こう」 手を延ばす。手を取る。二人はゆっくりと、夕暮れの街に出て行った。 作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) 名前 コメント ご発注元:川原雅@FEG様 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one namber=1397 type=1394 space=15 no= 製作:黒霧@星鋼京 http //cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=1612;id=UP_ita 引渡し日:2008/11/6 counter: - yesterday: -
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気づけばここはもう薔薇学の正門だった。 2人の話に気をとられて、2人が避けた自動車の侵入防止用ポール・・・直前まで2人に隠れて見えなかった・・・にぶつかったのだ。そんなことってあるだろうか。 「よくわからないけど、ケガは無い?」 蒼星石が心配そうにこちらをのぞきこんでくる。さすが蒼星石。 さっきから痛いことばかりだったが、優しさが身にしみる。涙が出そうである。 「この歳になって年がら年中平地で転べるのは金糸雀ぐらいのもんです。ある意味感動的ですぅ」 翠星石が意地悪そうな笑みを浮かべてこちらを見下ろしている。蒼星石に比べてこの姉は・・・。 「だ、大丈夫かしら。ありがとうかしら蒼星石」 実際擦り傷などもほとんど無く、金糸雀は立ち上がって埃をはらうと蒼星石に礼を言った。 ついでに翠星石を睨みつける。 「一回転ぶたんびにケガしてたら今頃金糸雀は全身包帯のミイラ男です。心配するまでもないです」 金糸雀の無言の抗議を受けて、翠星石はしれっと言ってのける。おのれ翠星石。反論できないのがまた悔しい。 「・・・そ、そんなことより、2人はなんの話をしていたのかしら?」 転んだ気恥ずかしさをごまかすため、金糸雀は話題を変えた。 そもそも自分の注意がそれたのは先ほどの2人の会話内容のせいである。 そこでは自分の名前が挙がっていた。一体何の話だったのか、気にならないはずがない。 「話?」 「話って?」 翠星石と蒼星石が聞き返す。自分の転倒がインパクトを与えすぎたのだろうか。直前の会話を思い出せないらしい。 「だから、カナが転ぶ前の話よぅ。2人でカナ、じゃなくって、何か話をしてたようだけど・・・」 『自分のことを話していたようだが』と言いかけて、思い直してやめる。 相手の反応次第では内容について推測できるかもしれない。 「え、あ、ああ、話。話ね・・・」 「な、なんの話でしたっけね?蒼星石・・・」 きゅぴーん。金糸雀の目が光った。案の定だ。いくら金糸雀でもわかる。 翠星石はあからさまに目をそらしているし、蒼星石も動揺を隠しきれていない。 根が正直なのだ。翠星石の場合は単純なだけだろう。そういうことにしておく。 ともかく、2人は何か自分に隠している。 「ま、別にいーかしら。それより、そろそろ行こうかしら2人とも」 追求してもおそらく真相は得られまい。そう判断して金糸雀は二人を促す。 まだ授業までには時間があったが、ずっとここで立ち話というわけにもいかない。 「そうだね、行こうか翠星石」 「え、あー、そ、そういや金糸雀のせいで足止めくらってたです。えらそーに先導してるんじゃないです!」 「へーんだ、悔しかったら追いついてみるかしらー!」 あかんべーをしながら走り出す金糸雀。翠星石も挑戦を受けては黙っていない。 「待つですこのチビ金糸雀ぁぁぁぁ!!」と後を追って駆け出していった。 とりのこされた蒼星石はしばらく迷ったものの、やはり後を追うことにした。 いつも一緒に登校しているのだし、自分だけ歩いて行くのも翠星石をほったらかしたようであまり気分が良くない。 さらに翠星石と金糸雀では追いかけっこの勝敗が明らかである(第一脚の長さが違う) 追いついた翠星石が金糸雀にどんな阿鼻叫喚を執行するかもわからない。 やれやれ。肩をすくめながら、苦労性の妹は姉と友人の背中に呼びかけつつ、走りだした。 「待ってよー、2人ともー!」 やがて予鈴が鳴り響き、今日も一日が始まる。 (9)へ戻る/長編SS保管庫へ/(11)へ続く
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であえ殿さま あっぱれ一番 プレイヤーキャラ 動画 コメント サン電子が1995年3月31日に発売されたSFC用ゲームソフト。 プレイヤーキャラ ニョロトノ:バカ殿 ロズレイド:バカ王子 動画 コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
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みんなであそぼう! 仔犬でくるりん みんなであそぼう! 仔犬でくるりんデータ ソフト紹介(メーカーより) 人気ソフトランキング ソフト紹介・感想 データ メーカー:エム・ティー・オー ジャンル:アクションパズル 配信日:2008/10/7 ポイント:500 プレイ人数:1~4 使用ブロック数:93 対応コントローラー:Wiiリモコン Wi-Fi対応:ニンテンドーWi-Fiコネクション対応 ソフト紹介(メーカーより) かわいい仔犬たちのアクションが超楽しい!爽快アクションパズルゲーム! ルールはとっても簡単。「まわして・つなげて・いれる」だけ!上から落ちてくるカラフルな仔犬のピースを、同じ色の犬小屋に入れて得点をゲットします。大量連鎖&一気消しで気分爽快! ピンチのときには、必殺技「くるりんスマッシュ」で一発逆転を狙うことができます。ゲーム中には5つのコースを勝ち抜く「ひとりでくるりん」や、最大4人までの対戦が楽しい「対戦くるりん」など、多彩なモードが盛りだくさん! くるりんの成長がグラフでわかる「まいにちくるりん」モードでは、Wi-Fiランキングに登録して全国のプレイヤーとスコアを競うこともできます。 人気ソフトランキング 08年10月 日 月 火 水 木 金 土 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 19 17 17 17 18 16 17 16 16 16 16 16 17 19 ※カレンダー内の数字は順位。過去の2chスレに書き込まれたランキングに基づく。 ※表内の「※」はランクが不明な日 ※背景色が■の日は配信開始日 ソフト紹介・感想 キャラクターの犬たちが可愛いです。DS版は完全版となっています -- チョコ (2019-12-18 16 47 39) 名前 コメント
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金髪の小柄な学生の男が野原を走っていた。 その走っている姿は移動している為でも、誰かを追っている為のものでもなかった。 逃げている走りであった。 だが彼を追う者は居ない。 では何から逃げているのか? 人を殺してしまった少女の罪からであった……。 ▼ 僕の視界は今、ぐにゃぐにゃしている。 走って駆けている野原の草、地面、全てが曖昧で歪に見えてしまっている。 それの原因は僕の目から溢れている涙のせいである。 後悔はないと誓ったのに。 大事な妹の為なのに。 ――たった1人の人間を殺しただけで精神が落ち着かない。 これから何人も殺さなくてはいけないのに、今くよくよしていたらいけない。 「くそっ、だから僕は岡崎にバカにされるんだ!」 制服の袖で涙を拭く。 袖が涙を染み込み視界が直る。 だが完全な視界にはなっていなく、まだ歪みがある。 まるで僕が佳乃ちゃん殺しの罪を認めるまで視界を奪ってやるという神の意志に感じてしまう。 「はぁ、はぁ、はぁ……。佳乃ちゃんの死体からは遠く離れたかな……?」 辺りを見渡す。 そこには真っ直ぐなはずの地形がぐにゃぐにゃと狭い視界しか見せない。 佳乃ちゃんの姿はないが、もしかしたら不自然に途切れた視界の境目に倒れているのかもしれない。 正直走った距離なんかわからない。 全力疾走で走ったつもりでも、普段の歩くスピードより遅く感じてしまっていた。 「落ち着け陽平。僕は走った、間違いない。僕の体感時間がズレただけなんだ」 言い聞かせる。 だがそれはただの自分の励ましにしか聞こえなかった。 どんなに真実を並べても嘘に塗り替えられている様だった。 全てがおかしかった。 「おかしいのはこの状況だ……。おかしいというのならここに連れて来られた時点でおかしいんだ」 もっと言うなら僕がこのサバイバルナイフを持った瞬間からだ。 「僕は正しい人間じゃない!今までだって不良の春原とか言われてきたじゃないか」 自分が悪者なのはさっきから始まったわけじゃない。 あの高校のサッカー部を辞めさせられた瞬間から色んな人から嫌われてきた。 それと同じだ。 「なんで自分で自分を説得してんだよっ!」 支離滅裂。 僕の脳みそにその4字が思い浮かんだ。 「そうだ……。僕は犯罪を犯しているわけじゃない。これは緊急避難とかに適用されるはずだ」 たまたま公民の時間に授業が終わらないかと時計を見ながら聞いた話にそんな話があった気がする。 民法の第何条とかなんとか。 そうだ! 僕は赦されるんだ! これは認められた正義なんだ! ―これが彼にとっての吹っ切れる魔法の言葉― ―歪んだ正義の在り方を見つけた― ―全て赦された事― 「それに僕は死にたくない……」 首輪に手を付けて思い浮かぶは悪魔の15分。 一生で一番長く、気持ち悪い濃密な時間。 「……そっか。芽衣の為?確かにそうだ。表向きだなこれは」 今自分で演技していたところに『素』が出てきたな。 僕は今『死にたくない』と口にした。 「うん。死にたくない。所詮自分の為だな」 自己中だ。 智代が居たらバカだと言って思いっきり蹴られるだろう。 僕はバカだ! 否定はしない。 自分で認めてすらいる言葉。 「ヘタレを直すチャンスだ、これで僕はもう杏にだってヘタレ扱いされない。むしろあいつをヘタレ扱いをしてやれるぐらいさ」 今の僕には全てが上手くいく気がする。 まだ見ぬ参加者の心臓に突き刺すナイフ。 騙して頭を撃ち抜く銃。 優勝し、芽衣の元に帰って兄貴として見守る自分。 「その為には僕は親友をも裏切らなくてはならないな……」 出来れば自分で手をかけたくない。 あいつらだけは他の参加者の手にかかる事を願うしかない。 「最低だ……。渚ちゃん、智代、それに岡崎の死を考えている僕……」 最低な僕にも優しく接してくれた渚ちゃん。 僕が悪い事をする度に怒ってくれる智代。 僕の高校の悪友で最高の親友、岡崎。 「僕はあいつらにすら情けをかけられないのかっ……」 既に佳乃ちゃんに手をかけた。 全ての参加者に平等でなければならない。 それが正義の責任だろ? 「ボンバヘッ!」 僕が大好きなヒップホップの一言を叫んでやる気を起こす。 迷ってはいけない! 必ず生きて帰るんだっ! ―春原陽平― ―彼の視界は元の世界を映す正常な物になっていた― ―それが出した結論であるなら信じた道を歩めと言ったメッセージが込められてある様であった。― 【G-1 野原/黎明】 【春原陽平@CLANNAD】 【装備:サバイバルナイフ@現実】 【所持品:支給品一式 赤いビー玉@Kanon 便座カバー@現実 そうめん@AIR 鍋@現実 ベレッタM92(15/15)ベレッタM92の弾丸×15@現実】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:優勝してこの島から帰る。 2:生き残る為ならどんな事だってする……が親友に対して迷いがある。 【備考】 ※渚ルート終盤からの参戦。 045 Lの殺意 時系列 052 「ミッションスタートだ」 047 魔女の惨劇会 投下順 049 ああっ、侍さまっ 007 それと便座カバー、それと…… 春原陽平 061 決意と殺意が交わる時