約 106,078 件
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/628.html
前へ 「わ、私にどうしろっていうの」 なんで他人のダイエットのことで、このような理不尽な目に合わなきゃならないんだ。 そう思っていると、「りーちゃん、他人事じゃないんだからねっ」と舞ちゃんの一睨み。 「りーちゃんも負けず劣らず、ぷくぷくぽん」 「あばばば、そりは言わんといてぇ」 もう、舞ちゃんたら容赦ないんだから! 自覚はあったものの、親以外の人に言われたのは初めてだ。 だけどあんまり躊躇せず言うもんだから、カチンときたりはしない。あ、はい、ですよねー・・・みたいな。 意外と気難しいと称される私には珍しい事だ。 それはきっと、舞ちゃんがとても素直でウソのない性格だから。私的には、有原さんみたくねっちょり責められるよりも説得力があるような気がした。 「決めた!ちしゃともりーちゃんも、2人まとめて舞が面倒見るでしゅ! りーちゃん。今日のお昼ごはん、お弁当?」 「ううん。今日は学食にしようかと」 答えてから、しまった!と思ったけれどもう襲い。 みるみるうちに、舞ちゃんの可愛らしいお顔が、ドS様のそれに変化していく。 残念ながら私はMっ子じゃないので、舞様舞様オシオキキボンヌというわけには行かず、悪寒が体を突き抜けた。 「ちょうどよかったでしゅ。 舞特製のダイエットランチ、りーちゃんにも堪能してもらわないと。 ちしゃと、りーちゃん。後でお昼にね。楽しみにしてろでしゅ。ケッケッケ。 ほら栞菜、行くよ!」 「引っ張るなコラ!ぷにぷにシスターズよ、また後でね!絶対に阻止してやるかんな!グヒョヒョヒョヒョ」 歩きながらケータイを開いて、「ランチ1人前追加でしゅ。はぁ?オメーが学園にもってこいでしゅ!」とどこかに電話する舞ちゃん。いや、舞様。命令口調がナチュラルすぎる。 ザワ・・・ザワ・・・ 嵐の如く、学園の有名人が去っていった後、私たちはクラスメートからの好奇の眼差しに晒されることとなった。 「お、岡井さぁん」 「気になさらないで、すぎゃさん。 千聖たちにお付き合いいただくことはないわ。まったく、舞ったら強引なんだから・・・」 「ん、でもいいよ。今日は舞ちゃんのプランに乗っかってみる」 そう言うと、岡井さんは不思議そうな顔をしながらも、曖昧にうなずいてくれた。 ・・・まあ、私もお年頃ですし。ちょっとぐらい、ダイエット的な何かを体験してみてもいいんじゃないかと思う(ラーメン立ち寄りはやめないけどね!)。 * 「さーて、お待ちかねの時間がやってきたかんな!」 それから2時間後のランチタイム。 私たちは舞ちゃんのテリトリー、屋上の給水塔の影に座り込んでいた。 「何で栞菜まで来たんでしゅか」 「はーん、お嬢様在る所栞菜も在りって諺知らないの?」 「そんな諺あってたまるか」 「舞、栞菜、そんなことよりも、千聖はおなかがすいてしまったわ。早くお弁当を出してちょうだい」 岡井さんにせかされて、舞ちゃんはバッグからピンクの小さめなお重を2つ取り出した。いつもの岡井さんのお弁当箱だ。 「ごめんね、私の分まで。本当にいいの?」 「気にしないで。舞はレシピ考案しただけだし」 「調理は?」 「家来が。さっき追加分も持ってこさせたの」 「もう、舞ったら。おとなしいからといって、あの執事をあまり苛めないであげてちょうだい」 メッ、って感じに窘められて、若干嬉しそうな舞ちゃん。私にもやっとわかってきたぞ、この辺りの力関係が。 それにしても、舞ちゃんって家来とかいるんだ・・・。執事さんってことは、男の人なんだよね?全く未知の領域だ。お料理なんか、できるものなのかな? 「さ、開けて開けて!」 舞ちゃんにせかされて、岡井さんとせーのでお弁当の蓋を開けた。 「・・・・えー、と」 ・・・何ていうか、プルプルした素材のものが、そこにはぎっしりと詰まっていた。 「初日のメニューは寒天でしゅ。舞特製・超超超低カロリー弁当、どうぞ召し上がれ!」 舞ちゃんは天使のように可愛らしい笑顔で、さも楽しげに私たちを促した。 ・・・ああ、そうですね。いかにもカロリーありませんって感じだ。 ピンクやオレンジ、黄緑色に着色されて、星とかハートにくりぬかれた寒天達。お弁当用の串とかいっぱい使って、盛り付け方も可愛らしい。舞ちゃんのセンスか、家来さんのセンスか知らないけれど。 私はおそるおそる、真っ赤なお星様の寒天を口に運んだ。 「どう?」 「・・・おいしい。トマト味?」 「うん。野菜とか果物を磨り潰して、ピューレにしたんだってさ。糖分は一切使ってないみたい」 「それはまた、手の込んだことを・・・」 あれもたまには役にたつこともあるんでしゅね、とつぶやく顔は、完全に女王様だった。 「どう、ちしゃとは?美味しいの?」 「ええ・・・おいしいわ」 あいまいにうなずいた岡井さんは、うかない表情。 目が合うと、すがるような表情を浮かべてきた。 「・・・うん」 「・・・ええ」 何となく、言いたいことはわかる。 たしかに、野菜と果物の寒天は美味しい。・・・これがおやつだったら、良かっただろう。でも今は、ランチタイムなのだ。 くいしんぼうでしょっぱいもの大好きな私たちには、もの足りないどころの騒ぎじゃない。 そもそも、寒天ってお弁当箱いっぱいに詰め込んで食べるものじゃないし・・・食感もぷるぷるなだけで単調だし・・・味は薄目に抑えられてるし・・・ 「さぁーて、私もお弁当食べるかんなっ」 そんな私たちをあざ笑うかのように、有原さんはおもむろにランチボックスを開く。途端に広がる、スパイシーな香り。 「・・・まあ、栞菜ったら!」 手のひらサイズの密閉容器が3個。 そこに、本格インド料理屋さんで出されるみたいなカレーが詰まっていた。 「付け合せはタンドリーチキン、チーズナン。美味しそうだかんな。ナマステー」 「あっ、ちょっと栞菜!舞の家来勝手に使わないでくれる?どーせ作らせたんでしょ?ってか、そういうお弁当でちしゃとの気引かないでよね!」 ・・・よくわかんないけど、ご愁傷様です、家来さん。 「はーん?最初に言ったはずだよ。私はお嬢様のダイエットには賛成してないんだかんな。お嬢様、辛ーい料理はお好きですよね?寒天なんてやめて、こっち食べるかんな! バターチキンカレー、グリーンカレー、レッドカレー。おやおや、下の段にはフライドチキンもあるみたい」 「カレー・・・」 「ダメ、ちしゃと!」 虚ろな表情で、栞菜さんのお弁当に引き寄せられる岡井さん。 その襟首をガッと掴んで、引き戻す舞ちゃん。つりあがっていく岡井さんの目じり。・・・ああ、修羅場が始まりそうだ。 私は寒天をもぐもぐ、若干御三方と距離を置いて、給水等の影に避難した。 「・・・少しぐらい、いいじゃない、舞」 「だめ!一口食べたら、もっともっとってなるでしょ、ちしゃとの場合。そんなカロリーの高いもん」 「あら、カロリーは1つの目安にすぎないのよ。カレーはカプサイシンやスパイスで新陳代謝が良くなって云々」 「・・・ったくちしゃとのくせに、そういう知識だけはいっちょまえに!とにかく、屁理屈言わないで今日は寒天!」 「フガフガフガフガ!」 じゅるり。美少女のキャットファイト、最高だかんな・・・ 有原さんがケータイのムービーを構えるのを、私は涙目で見守った。寒天を食しながら。 もしかしてこの人・・・岡井さんのダイエット妨害のために、ハイカロリー弁当を持ち込んだんじゃなくて、最初からちさまいバトルをハァハァしながら観覧するために・・・?ああ、もうこれ以上このことについて考えるのは危険な気がしてきた。 「ごちそーさま・・・」 菅谷、じみーに寒天完食。 そのまま3人にバレないよう、抜き足差し足で給水等を降りた。 岡井さんには申し訳ないけれど、私のような一般人には、とても付き合いきれる世界ではなさそうなので・・・。とりあえず、ダイエット的な体験も出来た事だし、ここでドロップアウト! 屋上から階段でおりつつ、私はケータイをパカッと開いて、アドレス帳から番号を呼び出す。 「もしもーし、熊井ちゃん?今日の放課後なんだけど、新しいラーメン屋さん見つけたんだぁ。厚切りチャーシューで、味噌とんこつベースでぇ・・・」 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5132.html
前ページ次ページPersona 0 ペルソナ0 第十二話 走る、走る。 辺り一面には茫洋とした霧が立ち込め、前も後ろも右も左も分からない。 ただ混迷を深める景色のなかをルイズは走る。 どこへ向かっているかは分からない。 なにを目指しているかも分からない。 それでも足を止めることは出来なかった。 ドキドキする心臓とズキズキする喉、息は荒く力を使いすぎたせいか割れそうなほど頭が痛い。 足は棒のようで一歩踏み出すごとに馬鹿みたいにふらつく。 それでも足を止めることは出来なかったのだ。 「――トォ、サイトォ」 朦朧とする意識、痛む喉が知らずその名前を呟いていた。 見知らぬ他人、ほとんど会ったこともない平民の少年。 だと言うのに何故? 何故こんなにも心を掻き毟られるのだろう? こんなにも切ない気持ちになるのだろう? 「それはただの幻想にすぎない」 心のなかで思っただけなのに、その言葉に返事が返ってきた。 「今感じている感情はお前が得たものではないからだ」 ルイズは走る、四方八方から響いてくる声がルイズに方角を見失わせる。 けれど走る、心が命じるまま倒れそうになる体を動かす。 「偽りの繋がり、偽りの主従、滑稽だ。それほどまでに追い求めた“真実”がどれほど厳しいものか……」 「――るさい」 ルイズは叫ぶ、自分を惑わす声を、行く手を遮る霧を吹き払うかのように。 「うるさい!」 激情のままにルイズは叫ぶ。 そのルイズを憐れむように霧の向こうから響く声は告げる。 「愚かな……ならば知るがいい」 霧の中に照らし出される、一筋の道。 「お前が求める真実の苛烈さを……」 それきり霧の向こうからの声は途絶えた。 代わりにルイズの耳が捉えたのは慌てた足音と、己の名を呼ぶ友の声。 「ルイズちゃん、ルイズちゃーん!」 赤と黒で彩られた道の向こうからルイズを呼ぶ声がする。 疲れ果てた体に鞭を打ってルイズは一歩踏み出した。 ――その姿を見ている者がいる。 一人は人をあざ笑う白痴の塊。 一人は全てを覆い隠す霧の王。 そして一人は神の国を統べる狂信者。 ロマリアの王、若き教皇ヴィットーリオ・セレヴァレは杖を振りかざしたまま、宙に浮かんだ光る鏡に映し出されたルイズの姿を熱心に見ていた。 その傍らに控えるのはにやにやとした笑いを浮かべた月目の優男。 「成程、素晴らしきは“虚無”の力と言ったところですか」 「ええ、全くですね。しかし癪に障るな、本来なら僕が聖下の使い魔になるはずだった筈なのに」 「それは仕方がありません、これも始祖のお導きでしょう」 そうってヴィットーリオが杖を動かすと、鏡はその移す景色を変える。 ルイズの遥か後方、霧の果てから彼女のことを見つめる一匹の巨大な化け物へと。 「虚無の使い魔の最後の一人、記すことすら憚られる者――一体偉大な始祖ブリミルは僕たちになにをさせようとしているんでしょうね?」 「それはわかりません、ですが私たちがするべきことはただ一つ」 ヴィットーリオは空いた方の手で執務机の上に置かれた書類にサインした。 無駄に修飾と婉曲な表現を多用したその羊皮紙でできた髪の上には教皇庁の名立たる大司教の署名と共にある二つの名前が書き連ねられている。 それは一つの歴史ある王国に新たに生まれた女王と、その側近である年老いた枢機卿の名前。 「“この”ハルケギニアに住む者たちに幸福を齎すことではないでしょうか?」 杖を下ろしにこりと微笑んだヴィットーリオの言葉には一片の曇りもなく、ほんの僅かな逡巡もない。 パンパンパンパン 突然響いた拍手の音にヴィットーリオは背後を振りむき、ジュリオは自らの主を庇うように前で出る。 何者だ、などと無粋極まりない詮索などしている暇はない。 此処は薄暗く黴臭い六千年を秘め隠す教会の暗部、歴代の教皇のみが入ることを許された地下禁書庫だ。 場所を知っている者も極めて限られている上に、水の秘薬の力でただこの場所を守ること以外考えられなくなった最強の衛兵へと己の心を作り変えた精鋭達が羽虫一匹たりとも入れぬ警備を続けている場所。 そんな場所まで入ることのできた暗殺者に詮索などしては無意味だ。 懐の銃を握ったジュリオの手が嫌な汗で汗ばむ。 既に自分の命を代価として最愛の主人を逃がすことは彼の決定事項であったが、果たして自分程度の人間の命でどれほど時間を稼げるものか? ジュリオの頭に主が見せてくれた別の世界の自分の姿が浮かぶ。 もう一人の自分は右手のルーンを輝かせ、幾百幾千もの幻獣たちを操って主のことを守っていた。 ガリアが放った巨大な騎士人形ですらガンダールヴと二人ががりならば物の数ではなかった。 なのに今の自分はただの木偶の坊、命を代価としてすら主がルーンを唱えきる時間を作り出すことすらできない役立たず。 目前に現われた男への殺意と異なる世界への自分への嫉妬で狂いそうになりながら、ジュリオは引き金を引いた。 ダンッと火薬がはじけ、もの暗い世界が一瞬照らされた。 そこに立っていたのは蒼い髪の美丈夫であった。 船乗りが着るような簡素な服の上から、それとはまったく不似合いな深紅のマントを帯びたその男は肩から血を流している。 銃が当たったと言うことよりも、まだ自分が死んでいないことが信じられずジュリオはその端正な顔を間抜けに呆けさせ、目の前の男のことを見ていた。 パン、パン、パン……パン 「素晴らしいご高説まったく痛み入る」 ジュリオに肩をやられたせいか若干やりずらそうだが男は拍手をやめようとしない。 いや己の傷にまったく頓着していない。 「それだけ言えれば大したものだ、宗教狂いの教皇聖下どの」 男は笑う、いかにも楽しそうと言った様子で笑うくせに男の声は少しでも楽しそうではなかった。 「さて――物は相談なのだがね、その話に俺も咬ませてはくれないか?」 「おま……いえ、あなたは…………」 ジュリオが男の正体に気づいた時、彼の主は既に心を決めていた。 「構いませんよ、ガリアの無能王どの」 「おお、それは僥倖だ。既に娘を魔法学院に留学させてしまってな、これで断られたらどうしようかと思ったぞ」 笑う無能王と笑う教皇。 二人とも方向性こそ違っていたがその瞳には同種の光が宿っている。 ぞくりとジュリオは身を震わせると、糸が切れた人形のようにその場に膝をつく。 「しかし、一体どうやって此処へ」 ジュリオの問いにジョゼフは笑いながら答えた。 「何、始祖ブリミルの気まぐれに振り回されるのは今に始まったことではないからな」 無造作に掲げた右手、そこには薄汚れて茶色くなった始祖の香炉が握られている。 「全く、この世は喜劇に満ちているな」 くつくつと、ジョゼフは笑った。 「これを使うクマ!」 そう言ってルイズに手渡したのはピンクのフレームをしたメガネ。 霧を見通す力を持った“それ”にルイズは驚きクマに感謝の言葉を送る。 ――けどこんなもの一体どこから持ってきたの? 帰って来た素朴な疑問の言葉にクマは頭を捻った。 云われて見ればクマは一体どこからこんなものを用意したんだろう? と。 思い出そうとしても思い出せない、そもそもクマ自身の眼にも備わっている霧を見通す能力だが、最初からこんな力はなかった気がする。 ただルイズに会いたくて、ルイズを助けたくて、死に物狂いで霧の中を走っていたらいつの間にか出来るようになっていた。 メガネだって同じだ、いつの間にか持っていた。 まるで何もないところから湧き出してきたように。 「クマは、クマは一体なんなんだクマ?」 足を止め自問するクマ、こんなことができる自分はなんなのだろうか? 空っぽな自分、その中身は一体どこにあるのだろうか? 考えれば考えるほど深みに嵌まりそうになり、クマは無心でルイズの後を追いかける。 そしてクマは出会う。 気を失った一人の少年をその背に乗せた、自分と極めて近しい存在に。 「お前、お前は……」 それは一匹の黒毛赤眼の巨大な犬、冥府の番犬“ガルム”だった。 伝説によれば生と死の境界を明確に区切る地獄の獄卒でもあり、またその恐ろしい見た目から想像できないが歌好きで、飼い主であるヘルには甘えた一面を見せるとも言われる。 「サイト!?」 だがガルムはその身体を霞ませていた。 黒い身体はむこう側の地面が見えるほど透きとおり、ともすれば一瞬その存在を見失いそうになるほど存在感がない。 「くぅん」 一鳴きするとガルムはゆっくりと背中の少年を地面に横たえ、ルイズに向かって押し出した。 少年はまるで醒めない悪夢のなかにいるかのようにうなされ続けているが、命には別状はないようだ。 ほっと一息ついたルイズとは対照的に、クマの表情は暗い。 薄くなり続けるガルム、今にも消えてしまいそうなナニカ。 それがやたらと心を掻き毟り苦しくて堪らない。 ――君は、何クマか? クマの問いかけにガルムは薄くなった真紅の瞳でまっすぐにクマを見る。 ――“同胞”ヨ、ルイズ、ヲタノム…… 消えていくガルムの最後の思念、それがクマのなかの空っぽな何かを震わせる。 ――任せるクマ、ルイズちゃんはクマが必ず守るクマ! その言葉が届いたのか僅かに纏う雰囲気を穏やかなものへと変え、黒い犬は虚空へと溶け消えた。 後に残ったのは気を失った少年とふらふらになりながらその少年に取りすがる少女。 「同胞って、どう言う意味なんクマ?」 頭を抱えた一匹のクマと。 ――ルゥゥゥゥイズゥゥゥゥ。 霧の果てから彼らを見守る、一匹の化け物が残された。 前ページ次ページPersona 0
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2300.html
(ゆっくりできないあいつ) れいむは待っていた。もうすぐあいつが来る時間。ゆっくりできないあいつがやって来る。 れいむはじっと待っている。今日こそ、今日こそあいつをゆっくりさせてみせる。 れいむと飼い主のお兄さんがこの町に越してきてから2週間。だいぶ新しい環境にも慣れてきた。 新しいおうちは前のよりも広々としてゆっくりできるし、近所の人達もゆっくりとしたいい人ばかりだ。 だが、ここには以前住んでいた処にはいなかった、ゆっくりできないあいつがいる。 あいつはいつも決まった時間にれいむのおうちの裏を通る。 真黒な体。その体と同じ真黒な煙を吹きながら、おうちのすぐ裏を駆け抜けていく。 れいむはいつも呼びかける。あいつが通る度に呼びかける。ゆっくりする様呼びかける。 しかし、あいつは決まって「ゴオオオオオオオオオオオ」という唸り声をあげて、れいむの声を無視して走り去る。 昨日もそうだった。れいむの「ゆっくりしてええええええええ!!!」という叫びはあいつの唸りにかき消された。 そしてあいつは日に何度もれいむのおうちの裏を往復するのだ。「ゆっくりして」と叫ぶれいむをあざ笑う様に。 ゆるせない。ゆるせない。なんだってあいつはあんなにゆっくりしていないのだ。 ゆっくりは素晴らしい。この素晴らしさを皆にも知って欲しい。だかられいむは皆に「ゆっくりして」と呼びかける。 なのにあいつは知らんぷり。れいむの言う事など聞こうともしない。 今日こそあいつに解らせてやる。ゆっくりは素晴らしいんだ。もっとゆっくりするべきなんだ。 大丈夫。今日は秘策を用意している。一晩かけて考えた必殺技。これならゆっくりできないあいつでもイチコロだ。 必ずゆっくりさせられる。そしてゆっくりがどんなに素晴らしいものなのか、ゆっくりと教えてあげよう。 時間だ。あいつがやってくる時間。遠くから微かにあいつの唸りが聞こえてくる。 れいむは駆け上がる。あいつがいつも通る小高い丘の上へ。 最後の一歩。枕木の上にぴょんと着地すると、あいつが来る方へくるりと向き直る。 そして体中のバネを使い天高く跳び上がると、あらん限りの大声で決め台詞を発した。 「ゆっくりしていってね!!!」 ベチャァ!!! end 作者名 ツェ
https://w.atwiki.jp/mormon/pages/1128.html
エレミ50 エレミヤ書 第50章 エレミ50 1 主が預言者エレミヤによって語られたバビロンとカルデヤびとの地の事についての言葉。 エレミ50 2 国々のうちに告げ、また触れ示せよ。旗を立てて、隠すことなく触れ示して言え、’バビロンは取られ、ベ ルははずかしめられ、メロダクは砕かれ、その像ははずかしめられ、その偶像は砕かれる’と。 エレミ50 3 それは、北の方から1つの国民がきて、これを攻め、その地を荒らして、住む人もないようにするからで ある。人も獣もみな逃げ去ってしまう。 エレミ50 4 主は言われる、その日その時、イスラエルの民とユダの民は共に帰ってくる。彼らは嘆きながら帰ってく る。そしてその時、主を求める。 エレミ50 5 彼らは顔をシオンに向けて、その道を問い、’さあ、われわれは永遠に忘れられることのない契約を結ん で主に連なろう’と言う。 エレミ50 6 わたしの民は迷える羊の群れである。その牧者がこれをいざなって、山に踏み迷わせたので、山から丘 へと行きめぐり、その休む所を忘れた。 エレミ50 7 これに会う者はみなこれを食べた。その敵は言った、’われわれに罪はない。彼らがそのまことのすみか である主、先祖たちの希望であった主に対して罪を犯したのだ’と。 エレミ50 8 バビロンのうちから逃げよ。カルデヤびとの地から出よ。群れの前に行く雄やぎのようにせよ。 エレミ50 9 見よ、わたしは大きい国々を起し集めて、北の地からバビロンに攻めこさせる。彼らはこれに向かって勢 ぞろいをし、これをその所から取る。彼らの矢はむなしく帰らない老齢な勇士のようである。 エレミ50 10 カルデヤは人にかすめられる。これをかすめる者はみな飽くことができると、主は言われる。 エレミ50 11 わたしの嗣業をかすめる者どもよ、あなたがたは喜び楽しみ、雌の子牛のように草に戯れ、雄馬のよう に、いなないているが、 エレミ50 12 あなたがたの母はいたくはずかしめられ、あなたがたを産んだ者は恥をこうむる。見よ、彼女は国々の うちの最もあとなるものとなり、かわいた砂原の荒野となる。 エレミ50 13 主の怒りによって、ここに住む者はなく、完全に荒れ地となる。バビロンのかたわらを通る者は、みなそ の傷を見て驚き、かつあざ笑う。 エレミ50 14 あなたがたすべて弓を張る者よ、バビロンの周囲に勢ぞろいして、これを攻め、矢を惜しまずに、これ を射よ、彼女が主に罪を犯したからだ。 エレミ50 15 その周囲に叫び声をあげよ、彼女は降伏した。そのとりでは倒れ、その城壁はくずれた、主があだをか えされたからだ。彼女に報復せよ、彼女がおこなったように、これに行え、 エレミ50 16 種幕ものと、刈入れどきに、かまを取る者をバビロンに絶やせ。滅ぼす者のつるぎを恐れて、人はおの おの自分の民の所に帰り、そのふるさとに逃げて行く。 エレミ50 17 イスラエルは、ししに追われて散った羊である。初めにアッスリヤの王がこれを食い、そして今はつい にバビロンの王ネブカデレザルがその骨をかじった。 エレミ50 18 それゆえ万軍の主、イスラエルの神は、こう言われる、見よ、わたしはアッスリヤの王を罰したように、バ ビロンの王とその国に罰を下す。 エレミ50 19 わたしはイスラエルを再びその牧場に帰らせる。彼はカルメルとバシャンで草を食べる。またエフライム の山とギレアデでその望みが満たされる。 エレミ50 20 主は言われる、その日その時には、イスラエルのとがを然しても見当たらず、ユダの罪を探してもな い。それはわたしが残しておく人々を、ゆるすからである。 エレミ50 21 主は言われる、上って行って、メラタイムの地を攻め、パコデの民を攻め、彼らを殺して全く滅ぼし、わ たしがあなたがたに命じた事を 皆、行いなさい。 エレミ50 22 その地に、いくさの叫びと、大いなる滅びがある。 エレミ50 23 ああ、全地を砕いた鎚はついに折れ砕ける。ああ、バビロンはついに国々のうちの恐るべき見ものとな る。 エレミ50 24 バビロンよ、わたしは、おまえを捕えるためにわなをかけたが、おまえはそれにかかった。そしておまえ はそれを知らなかった。おまえは主に敵したので、尋ね出され、捕えられた。 エレミ50 25 主は武器の倉を開いてその怒りの武器を取り出された。主なる万軍の神が、カルデヤびとの地に事を 行われるからである。 エレミ50 26 あらゆる方面からきて、これを攻め、その穀倉を開き、これを穀物の山のように積み上げ、完全に滅ぼ し尽し、そこに残る者のないようにせよ。 エレミ50 27 その雄牛をことごとく殺せ、それを、ほふり場に下らせよ。それらのものはわざわいだ、その日、その罰 を受ける時がきたからだ。 エレミ50 28 聞けよ、バビロンの地から逃げ、のがれてきた者の声がする。われわれの神、主の報復、その宮の報 復の事をシオンに告げ示す。 エレミ50 29 弓を張る射手をことごとく呼び集めてバビロンを攻めよ。その周囲に陣を敷け。ひとりを逃がすな。その しわざにしたがってバビロンに報い、これをおこなった所に従ってこれに行え。彼がイスラエルの聖者である主に向 かって高慢にふるまったからだ。 エレミ50 30 それゆえ、その日、若い者は、広場に倒れ、兵士はみな絶やされると主は言われる。 エレミ50 31 主なる万軍の神は言われる、高ぶる者よ、見よ、わたしはおまえの敵となる、あなたの日、わたしがおま えを罰する時が来た。 エレミ50 32 高ぶる者はつまずき倒れる、これを助け起すものはない。わたしはその町々に火を燃やして、その周 囲の者をことごとく焼き尽す。 エレミ50 33 万軍の主はこう言われる、イスラエルの民とユダの民は共にしえたげられている。彼らをとりこにした者 はみな彼らを堅く守って釈放することを拒む。 エレミ50 34 彼らをあがなう者は強く、その名は万軍の主といわれる。彼は必ず彼らの訴えをただし、この地に安き を与えるが、バビロンに住む者には不安を与えられる。 エレミ50 35 内容? 主は言われる、カルデヤびとの上とバビロンに住む者の上、そのつかさたち、その知者たちの 上につるぎが臨む。 エレミ50 36 占い師の上につるぎが望み、彼らは愚か者となる。その勇士の上につるぎが望み、彼らは滅ぼされ る。 エレミ50 37 その馬の上と、その車の上につるぎが臨み、またそのうちにあるすべての雇兵の上に臨み、彼らは女 のようになる。その財宝の上につるぎが臨み、それはかすめられる。 エレミ50 38 その水の上に、ひでりが来て、それはかわく。それはこの地が偶像の地であって、人々が偶像に心が 狂っているからだ。 エレミ50 39 それゆえ、野の獣と山犬とは共にバビロンにおり、だちょうもそこに住む。しかし、いつまでもその地に 住む人はなく、世々ここに住むひとはない。 エレミ50 40 主は言われる、神がソドムとゴモラと、その隣の町々を滅ばされたように、そこに住む人はなく、そこに 宿る人の子はない。 エレミ50 41 見よ、1つの民が北の方から来る。大いなる国と多くの王が地の果から立ち上がっている。 エレミ50 42 彼らは弓と、やりを取る。残忍で、あわれみがなく、その響きは海の鳴りとどろくようである。バビロンの 娘よ、彼らは馬に乗り、いくさびとのように身をよろって、あなたを攻める。 エレミ50 43 バビロンの王はそのうわさを聞いて、その手は弱り、子を産む女に臨むような痛みと苦しみに迫られ た。 エレミ50 44 見よ、ししがヨルダンの密林から上ってきて、じょうぶな羊のおりを襲うように、わたしは、たちまち彼らを そこから逃げ去らせる。そしてわたしの選ぶ者をその上に立てる。だれかわたしのような者があるであろうか。だれ がわたしを呼びつけることができようか。どの牧者がわた
https://w.atwiki.jp/supergirl121/pages/51.html
都内私立○□高校2年B組、このクラスには裏サイトがある。 特定の男子生徒の実名や住所、メールアドレスを勝手に公開され、 うざい、きもちわるい、死ね、と書き込まれるなど、 深刻なネットいじめがおこっていた。 その生徒の携帯電話には深夜でも無言電話、いじめメールも1日に10通以上届く。 学校側もいじめに気づいたが、この手のいじめは、誰がやっているのか見当もつかず、 対応に苦慮していた。 ====================================== ちょうど1ヶ月前、森川美貴という女子生徒がクラスに転校してきた。 まじめで成績優秀な、でも少し地味なタイプの生徒であった。 が、、彼女は、地球から遠く離れた星からやってきたスーパーガール。 姿は普通の女子高生だが、その身体には地球人をはるかに超える能力がやどる。 地球人の約5000倍のスーパーパワー、どんな衝撃や薬品にも不死身の身体、 人間のレベルを超えたスピードと敏捷性、さらに空を飛び、X線ビジョンを使う。 美貴は放課後、学校の体育倉庫で、 同じクラスの 尾下翔太 という男子生徒を待っていた。 彼女は知っていた。 例の裏サイトの事実上の管理者、いじめの首謀者が彼であることを。 翔太は、体育倉庫に入り扉を閉めたとき、青と赤の物体が、 天井から彼の背後に舞い降りるのを感じた。 見ると、 青いトップに深紅のミニスカートとブーツ、もちろん胸には大きなシンボルの「S」。 美貴であった?はずの、スーパーガール。いや、スーパーガールである、美貴!! 「え、森川? その格好は、まさか。」 と、驚きの表情を隠せない翔太。 「そう、私、地球人じゃないの。といっても信じられないか。証拠を見せてあげるね。」 というと、いろんな器具が置かれている体育倉庫の棚から握力計を取り出した。 彼女は針を0にもどすと、グリップ部分をを右手の親指と人差し指で掴む。 握力計の数字を翔太に見えるようにして、2本の指に少しずつ力を加えた。 あっという間に針は100kgを超え、振り切れた。 握力計からバキッという音が響く。 2本指で摘む金属のグリップ部分のへし折れた音だった。 「どう,私の握力。普通の男性の5000倍くらい。といっても想像つかないわね。」 スーパーガール美貴は、今度は器具の置かれる棚から砲丸投げの砲丸を取り出した。 彼女は、取り出した砲丸を、森川の目の前で鷲掴みにし、握りしめた。 鋼鉄の指に握られた砲丸は、大きくかん高い音を発する。 指の形にあわせて砲丸がひしゃげていく、たちまちもとの形を失った。 「ちょっと、待って。森川。俺に何を、まさか。ネットの。。」 とおびえる翔太を横目に、 「そうよ。私は知ってるの、尾下くん。今日は、お仕置きとして罰を与えます。」 と残酷な言葉を浴びせると、彼女は空中を浮遊し、跳び箱の上に馬乗りになった。 「たとえばあ、こんなのはどう?」 というと、馬乗りになった跳び箱の木枠がきしむ。 バキバキッ、ベキベキッ、、、 赤いミニスカートからのびる女子高生の艶やかな太ももとふくらはぎ、いや、 スーパーガールの鋼鉄の太ももとふくらはぎが、跳び箱を粉々に挟み潰していく。 跳び箱は、バラバラの木片に姿を変えた。 翔太はスーパーガールの太ももに挟まれる自分の身体を想像し、言葉を失った。 内臓破裂、どころが上半身と下半身に引き裂かれてしまうだろう。 次の瞬間、美貴はスーパースピードで移動し、翔太の目の前に現れた。 「があっ、いいっ、、」 翔太は、苦痛のうめき声をあげる。 あろうことか、美貴の右手が翔太のペニスを鷲掴みにしている。 だが、砲丸を握り潰すあの握力ではない、十分に手加減している。 「あなたのペニス、潰さないであげるから、オナニーをしてみて。はい、早く。」 命令口調で話した美貴は、睾丸の手を離した。 逆らえばどうなるのか、翔太は床に転がる砲丸の変形した姿を見た。 「じっとしててもだめよ。いつもやっているんでしょ。早く。」 惨めだ、こんなふうにオナニーを強制され、逆らうこともできないなんて。 翔太は、ズボンをずらし、自分でペニスを握って上下にしごいた。 それをあざ笑うようにスーパーガールは見つめる。 こんな状況でも、さすが高校生、ペニスはだんだんと元気になってきた。 「元気になったわね。でもその皮かぶりでは地球でも女の子に嫌われるでしょ。」 翔太の張りつめた陰茎をスーパーガールは、右手でしっかり握った。 「剥いてあげる。」 というと、包皮を根本までぐいっとめくりあげた。 「やめろ、いや、やめてください。」 と翔太は悲鳴をあげた。 突然、スーパーガールは翔太の耳元でささやく。 「陰湿ないじめは許さない。」 「やめるとあなたが誓わない限り、このパワーで、こんなものは、、」 スーパーガールが、左手で翔太の萎えかけたペニスを睾丸ごとわしづかみにした。 「ぎゃっ、痛っ。」 スーパーガールは、睾丸が潰れる一歩手前まで力を加えた。 「ずいぶん力加減が必要ね。地球人の身体ってなんて柔らかいのかしら?」 と残酷にいう。 翔太は彼女の鋼鉄の指に引き裂かれ、潰される自分の睾丸を想像した。 「うそ、うそ、さすがにやめておいてあげる。」 というと、彼女の指は睾丸を開放した。 翔太は、にわかにほっとし、全身の力を抜いた。 スーパーガールは、翔太の両脚をつかんで転倒させた。 彼女が握る足首には、とんでもない激痛が走る。 強引に翔太を仰向けの状態にした。 立ったままの彼女と、床に寝転がり両脚を持たれた翔太。 2人が向かい合った形だ。 その瞬間・・・ 真っ赤のミニスカートからスラリと伸びた右足が、翔太の股間に伸びた! もちろん真っ赤なブーツをはいたままで、 「うぁぁぁぁぁ!?」 ブーツで踏みつけられ、翔太は驚きと痛みの声をあげた。 「どう?電気あんま!」 スーパーガールの両腕で、ぐいぐい両脚が引き付けられ、 そのぶん赤いブーツが股間にくい込む、 電気マッサージ機のようにブルルルルルルッと振動を与える。 「うぁぁ、イイイゥゥ!?」 その間も彼女の脚の振動は止まらない。 敏感なペニスをブーツの靴底で踏み、振動を与えられる。 ガクガクと体を震わせ、翔太は泣きだしはじめた。 突然、振動が終わり、スーパーガールの右足が股間から引き抜かれた。 翔太は、荒い息をついたまま、恐怖のあまり動けなかった。 「どう、力加減は? 加減しなければこんな感じよ。」 というと、彼女はブーツを3センチほど持ち上げると、 軽く、、体育倉庫のコンクリート製の床に踏み降ろした。 ズドン。床のコンクリートには大きなヒビが入る。 「痛いわよー、きっと」 さらに、振動を与える。部屋全体が揺れる振動で。 ガガガッ、ガッと、体育倉庫の床のコンクリートが、たちまちがれきに変わる。 スーパー電気あんま ちょうど削岩機でコンクリートの床を破壊するのと同じような光景だ。 「尾下くんも体験してみる。骨盤はぐしゃぐしゃ、粉砕骨折になるけど。」 「ややっ、めてください。」 恐怖のあまり翔太は、腰が抜けて動けない。 「そうね。今日はやめとく。お仕置きはここまで。」 そうというと、彼女は翔太にきびすを返し、体育倉庫の扉を開けた。 「たーだーしー、、今度変な書き込みがあったら、即、電気あんまの刑、ね。」 美貴は翔太のほうを振り返って、ほほえみながら言う、 「あと、私の握力で、あなたの身体のいろんなところを握りしめちゃうわよ。忘れないで。。」 と言い残し、倉庫の扉から2、3歩、歩くと、ピョンと軽くジャンプした。 彼女はスーパーガールの姿のまま、翔太が瞬きするまもなく、大空の彼方の消えていった。 森下美貴は、翌週の月曜日には転校し、そのまま高校から姿を消した。 翔太が彼女に出会うことは、2度となかったし、彼も彼女のことを誰にも語らなかった。 翔太は、町中で青と赤の服装の女の子をを見るたびに(そんなカッコほとんどいないが)、 背筋に冷たいものが走る。心の傷、PTSDというべきであろうか。 クラスの裏サイトは削除され、あのネット、メールいじめがなくなったのは言うまでもない。 (おわり)
https://w.atwiki.jp/bamboo-blade/pages/78.html
空は鈍色の雲が覆い何もしていなくても汗が滲むほど湿度が高い土曜の朝、 今までよりも2時間は早く起床してメイプルを目指す。 『開店準備中』の立て札の前には、いつものように彼が立っていた。 「おはようございます、清村さん」 「よお、今日も早いな」 手提げかばんを持っていないほうの手をあげて彼が私に挨拶する。 「清村さんこそ……私より遠いのに、来るの早すぎです」 「甘いもの好きにとってははずせねーんだよこの店は」 と言って今にも涎を垂らしそうな顔で清村さんは遠くを見るような目をした。 多分今この人の頭の中には特性ショートケーキのことでいっぱいなんだろう。 「それにしても、並ぶ人の数が減ってきましたね」 「ま、テレビで紹介されたから来たってだけのにわかファンが多かったってことだよな。 とりあえずあのババアが来なくなっただけでも良かったぜ」 「あの時は……本当に、ありがとうございました」 「別に礼言われるほどのことじゃねーよ」 「そんなことはありません」 鼻をポリポリと掻きながらなんでもないことのように彼は言う。 でも、私にはとても真似出来ない。 自分自身のことですらやりたいことが満足にできないんだから、 困っている人のために何かするようなことなんて私には絶対に無理だろう。 だけどこの人は、当たり前のようにそれができる。 それがとても、私には眩しかった。 「私はお礼をしたいんです。何か清村さんにしてあげたいんです」 「いーよ別に」 「でも、このままだと」 「それにお返しならしてもらったし」 「え?」 「ほら、あの時公園で一緒にケーキ食っただろ。あれで帳消し」 「あの時、公園で……?」 私の中での公園での記憶は、私のために清村さんがケーキを分けてくれたり、 そんな清村さんにケーキを吹きかけたり、それでも彼が笑って許してくれた事とかしかなくて、 私がこの人にしてあげたことなんて何一つないのに。 「あの、私は何もお礼をしてないと思うんですけど……」 「一緒にケーキ食っただろ」 「ええ、でもそれは清村さんが自分の物を分けてくれた物で、 ぜんぜん私のお礼になってないですよ?」 「でも、一人で食うより何倍も美味かった。食事ってそんなもんだろ? どんなに美味いモンでも、一緒に食うやつが嫌いなヤツならちっとも美味くない。 もしどんな美味いモンでも、あのババアといっしょならろくに味がしねーだろーな」 言いながら清村さんは少し険しい顔になる。 あのおばさんと食事するところを連想したのかもしれない。 「でもよお、一緒に食うのが気心の知れた奴や同好の士なら真逆で、 なんでもない料理でも美味しく感じることもあるし、 美味しい物ならもっと美味く感じるってモンだろ」 「同好の士、ですか」 「ああ、俺みたいな甘い物好きからみても、いい食べっぷりだったぜ。 まじで幸せそうに食うから、見てる俺も嬉しくなっちまったなー」 「……確かに、あの日のケーキは私も美味しくいただきました」 「なるほど、精神状態は味覚や消化に十分影響を与えますからねー、ふふふ」 と、突然私の背後から女性の声がした。 「あ、安藤さん。おはようございます」 「お、あんたはいつも通りの時間に到着だな」 気がつけば、私たちの後ろにはすでに10人近くの列ができていた。 「ええ、あたしは誰かと違って別に早く起きる理由もありませんから」 そう言って安藤さんは私の体を上から下まで舐めるように眺める。 「じゃ、列の最後尾に行くんで、お二人ともごゆっくり……」 なんだか意味ありげな笑みを浮かべ、彼女はくるりと反転して行列の後ろに加わる。 「……なんだありゃ。変な奴だな」 「安藤さんは、ちょっと掴み所のない人ですけど、いい人ですよ」 「ふーん……」 「あ、すいません、メールです……って、あれ?」 送り主は安藤さんだった。 すぐ近くにいる彼女を見つつ不思議に思いながらも内容に目を通す。 『さっきの話ですけど、確かに料理は一緒に食べる人によって変わりますよね。 親しい人はもちろん、“好きな人”、とか』 「なっ……」 「ん?どうしたんだ?」 思わず声を上げた私を怪訝そうな顔で清村さんが一瞥する。 「あ、いえ、なんでもありません!」 「そう」 清村さんはそれだけ言うと自分の携帯に視線と注意を戻す。 『どういうことですか?別に清村さんは私のことを 自分と同じ甘味好きとしか思ってないんですよ』 私は汗をかきながら安藤さんにメールを返す。 『いえいえ、清村さんではなくあなたですよ、好意を抱いているのは』 『そんなことはないと思います』 目と鼻の先にいる安藤さんは「ブラック出歯亀マニュアル」と書かれた本を読みながら、 器用に片手で携帯を操り質問を投げかけてくる。 『今日部活はあるんですか?』 『ありますけどそれが何か関係あるんですか』 10メートル離れた場所で、安藤さんがニヤ~と笑った。 『じゃあ何で私服なんですか?今まで部活がある時は着替えるのが面倒で制服のまま来てたのに』 メールを打とうする私の指が止まる。 そんな私をあざ笑うように、指先に液体が落下した。 「雨か。天気予報どおりだな」 後ろで清村さんの声と折り畳み傘を開く音が聞こえる。 その後、列の人達が傘を開く音が連続で聞こえた。 しかし行列の中で私だけはその音を発生させることができない。 なぜなら私は傘を持っていなかったから。 『あらあら、傘を忘れたんですか?朝からずーと降り出しそうな曇り空だったと言うのに。 他の人も全員傘を持ってきてるのに。よっぽど慌ててたんですね。 でもしょうがないですよね。早く来ないと朝一で来る清村さんの後ろに並べませんし』 「あれ、傘忘れたのか」 『でもよかったですね、おかげで』 「入れよ」 『相合傘ができますよ』 「濡れちまうぞ」 清村さんの手が私の肩を掴んで引き寄せる瞬間、 「ひゃあっ」 私は叫び声を上げてしまった。 「……悪りぃ、いきなり女の子の肩なんか掴んだら、そりゃびびるわな」 頭をポリポリかきながら清村さんが体を離す。 「あ、違うんです」 安藤さんのメールのせいで、清村さんを意識して顔が見れない。 「その、蒸し暑い中長い距離自転車をこいだから、 私の体が汗臭いんじゃないかな、と思って」 携帯を畳みながら私は焦って言い訳をする。 まあ半分は本音なんだけど。 「あー、そっか。でもそんな匂わないぞ」 「でも、その」 「それにまあ、嫌いな汗じゃない」 そう言って清村さんは私の首筋を指でなぞって汗を絡めとる。 「な、何を」 触れられた箇所がかーっと熱くなった。 今度は声こそ我慢できたけど、顔が赤くなるのはどうにもならない。 清村さんは私の汗を指先で広げる。 「粘ついてないな。なんつーか、スポーツマンの汗だ」 「スポーツマンの……汗?」 「そう。運動してる人間の汗は、してない人間に比べてあんまべたつかないんだよ。 こーいう汗は嫌いじゃない。匂いも感触も」 「でも……」 清村さんは苦笑する。 「それともあれか、実は俺が匂うとか」 「そ……そんなことないです!」 つい私は大声を出し、背後の人達が視線を向ける気配を感じた。 顔を真っ赤にしながら私は下を向く。 「その、清村さんは悪くないです」 「そっか、じゃあ」 清村さんは笑いながら私の体を引き寄せる。 「入れよ。年上の言う事は聞くもんだぜ」 腕と腕が直に触れ合う。 汗と汗が溶け合い混じり合う。 ああ、本当だ。 サッカーをしている清村さんの汗はべたついてなくて、全然不快じゃない。 むしろ、なんだかどきどきする。 「あの、清村さん……」 そうか。だから私は朝早く起きるようになったんだ。 「……ケーキを買ったら、その後……」 午後から部活があるのに私服で来たんだ。 「今日も、二人で一緒にケーキを食べませんか?」 二人で食べたケーキがあんなに美味しかったんだ。 「いいね、それ。あそこの公園なら東屋あったし、雨もしのげるだろう」 密着していたため耳元で響く清村さんの声は、 特製ショートケーキより甘くて体中から力が抜ける。 今日食べるケーキは今まで食べたケーキよりもっと甘く美味しくなっているはずだ。 私は心の中でそう思った。 次話に進む
https://w.atwiki.jp/gdgdtales/pages/154.html
エクシリア登録履歴なしキャラ エクシリア登録履歴なしキャラ ローエン・J・イルベルト 【テイルズオブエクシリア】 「ふふふ、確かにジジイの時間はとても貴重。立ち止まってはもったいないですね」 大国ラ・シュガルの高級貴族の一つである、シャール家当主に仕える老執事。 どんな時も落ちついていて、丁寧で品のある物腰を崩さない。 精霊術を得意とし、一行を力ではなく、経験と作戦でフォローするブレイン的存在であると同時に、 緊迫した空気を冗談でさらりと緩めたりする、お茶目なムードメーカーでもある。 幅広い知識と、卓越した分析力、状況判断力を持ち、一手先を読むことに長けている。 時折垣間見せる鋭い眼光には、普段の柔和な表情からは想像もつかない迫力がある。 声:麦人 年齢:62歳 身長:175cm 武器:サーベル 戦闘タイプ:精霊術士 ガイアス 【テイルズオブエクシリア】 「俺は滅びぬ。弱き者を導くこの意志がある限りな」 ア・ジュールの現王。 人間離れした戦闘力と人をひきつける器を持って、様々な部族が入り乱れる北方大陸を統一、 強大な連邦国家ア・ジュールを成立させた英雄である。 何者に対しても怯まず、その強烈な意志が揺らぐ事はないが、決して凝り固まることなく思考は柔軟。 ガイアスは、力ある者が、その責を果たさない事を認めない。 それは当然、自分自身も含む主張であり、彼は身をもってこの理想を体現し、ア・ジュール統一を成し遂げた。 リーゼ・マクシアの覇権を争うラ・シュガルへの、反抗の機会を窺っている。 声:置鮎 龍太郎 年齢:32歳 身長:185cm 武器:長刀 戦闘タイプ:剣士 + 他シリーズでのキャラ紹介 【テイルズオブアスタリア】 「我が民を手にかける者は…何人たりとも許しはしない!」 ア・ジュールの国王。人をひきつける器を持ち、多くの部下からの信頼を得ている。 それと同時に、強き者が弱き者を導くという、彼の揺るぎない意思とそれを体現する姿は、 ア・ジュールの民へも伝わっており、絶大な支持へと繋がっている。 その重々しい言動から冷酷な印象を持たれがちだが 「弱き者を守る」という想いを、一貫にして胸に秘めてた熱き王である。 声:置鮎 龍太郎 年齢:33歳 身長:185cm 出身:連邦国家ア・ジュール ティポ 【テイルズオブエクシリア】 「やっぱり友達は、ニコニコ楽しくだねー!」 エリーゼがいつも抱えている、しゃべる変なぬいぐるみ。形は伸びたり、ふくらんだり。 会話が得意ではないエリーゼをフォローし、彼女の気持ちをうるさいくらいに代弁する。 しかしその言葉は、他意はないが配慮もなく、非常にストレート。 一人(?)で自由に動き回る事もでき、戦闘時にはエリーゼを守ってパワフルに戦う。 エリーゼとは幼い頃からずっと一緒で、その絆はとても強い。 声:池澤 春菜 身長:30cm ※なりチャにおいて、ティポは単独で会話できるため、エリーゼとは別キャラとします。 ただしティポはエリーゼに依存した独立型増霊極(ブースター)の為、 別キャラ扱いにするのが適切かどうか、状況に応じて再考します。 ウィンガル 【テイルズオブエクシリア】 「導く指導者がいなければ民は路頭に迷うだけ、と言っている」 ガイアス直属の部下「四象刃(フォーヴ)」のリーダー格。 ウィンガルという名は「翼」を意味する称号である。 ガイアスの片腕として、ア・ジュールの行政を取り仕切る若き宰相であり、 軍事面でも、参謀として全ての作戦を立案している。 ガイアスとは古くからの付き合いだが、公私の区別を厳しくつけ、人前でそのような言動を見せることはない。 普段は物静かで、白黒をはっきりつけた物言いをする。 しかし戦闘時は一変、別人のように粗暴な性格になり、言葉に出身部族の言語が混じるようになる。 声:木内 秀信 年齢:28歳 身長:175cm 武器:剣 戦闘タイプ:術剣士 プレザ 【テイルズオブエクシリア】 「ボーヤ、そうやって弄ばれて、いつかは捨てられるのよ」 ガイアス直属の部下「四象刃(フォーヴ)」の一人。プレザとは「牙」を意味する称号である。 モデルのような姿態と妖艶な仕草、色気を含んだ妖しい話術で相手を翻弄する美女。 諜報員として各地で暗躍し、幾人もの貴族や高官を手玉にとっては、目覚しい成果をあげている。 魔方陣を書き込んだ特殊な本を使い、精霊術を自在に操り戦う。 アルヴィンとは浅からぬ因縁があるらしく、今でもそのことを恨みに思っている。 声:佐藤 利奈 年齢:22歳 身長:168cm 武器:本 戦闘タイプ:精霊術士 ジャオ 【テイルズオブエクシリア】 「やはり戦場でまみえることになった、か。悲しい時代だのお」 ガイアス直属の部下「四象刃(フォーヴ)」の一人。ジャオとは「角」を意味する称号である。 四象刃のムードメーカーであり、敵味方の区別なく誰にもくったくなく接する好漢。 魔物と意思を通じ、自在に操る特殊能力を持った一族の出身で、魔物を家族のように扱っている。 その異能と巨体から周囲に忌避されてきた過去があり、 かつては一匹狼として無頼の生活を送っていたがガイアスに打ち倒され改心。 現在のような険のない人物に生まれ変わった。 声:大友 龍三郎 年齢:42歳 身長:250cm 武器:大槌 戦闘タイプ:槌使い アグリア 【テイルズオブエクシリア】 「うっせー、ブス!しゃべるんじゃねーよ!」 ガイアス直属の部下「四象刃(フォーヴ)」の一人。アグリアとは「針」を意味する称号である。 強力な精霊術を使いこなす天才児。過去の経験から、他人の真剣さや努力を見下し、あざ笑う。 怒りと嘲笑でしか感情を表現する事ができず、その心は世界への憎しみに満ち満ちている。 大抵の事には無関心だが、自分の邪魔をする者、侮る者は絶対に許さない。 一旦キレると制御が利かず、作戦や状況をメチャクチャにしてしまうトラブルメーカー。 声:坂本 真綾 年齢:15歳 身長:153cm 武器:仕込み杖 戦闘タイプ:術杖士 イバル 【テイルズオブエクシリア】 「ミラ様のお世話をするのは、巫子である俺だ!」 マクスウェルを祀る村で、代々「マクスウェルの巫子 (みこ)」を務めている家系の出身。 巫子であることに強いプライドを持ち、子供の頃からずっとミラの世話係として、傍に仕えてきた。 ところがジュードの登場によって、世話係のポジションを奪われたと一方的に決め付け、 ことあるごとに突っかかっていくようになる。頭は良く、人並み以上の正義感も持っており、 二刀を使いこなす武術の腕もかなりのものだが、 短気さとエリート意識のせいで、感情的な行動に走って失敗してしまうことが多い。 声:森久保 祥太郎 年齢:16歳 身長:165cm 武器:二刀 戦闘タイプ:剣士 ドロッセル・K・シャール 【テイルズオブエクシリア】 「ふふ、あなたたちのおかげで、いい買い物ができちゃった」 クレインの妹。唯一の身内である兄、クレインをとても敬愛している。 苦労知らずのお嬢様だが、弱い者を守ろうとする兄譲りの高貴な心を持っている。 エリーゼと意気投合し、妹のように接するようになる。 声:鎌田 梢 年齢:18歳 クレイン・K・シャール 【テイルズオブエクシリア】 「この今の幸せのために、僕も決心しなければいけない……」 交易の要衝の街、カラハ・シャールを治める青年領主。ローエンの主人。 ラ・シュガル王の専制体制と対外武力政策に強い不満を持っており、 若年ながら中央に抵抗し、カラハ・シャールの自由な気風を守ってきた。 人々からは非常に信頼されているが、中央からはその反抗的な態度を問題視されている。 妹のドロッセルにだけは、少々甘い。 声:保志 総一朗 年齢:24歳 ジランド 【テイルズオブエクシリア】 ナハティガルの側近を務めるラ・シュガル軍参謀副長。 クルスニクの槍の設計、運用計画の指揮を執っている。 ナハティガルにおもねるだけの凡庸な男と目されているが…。 声:木下 浩之 年齢:35歳 身長:180cm ナハティガル・I・ファン 【テイルズオブエクシリア】 「資質など王には無縁。王は生まれ出ずるときより王よ」 大国ラ・シュガルの現王。リーゼ・マクシア統一の野望のため、強引に独裁体制を固めつつある。 もともとは王位に着ける可能性の少ない第三王子であり、 若き日は身をもって祖国を支えるべく軍に入隊、多くの戦果を残した。 しかし、兄王たちが起こした内乱を鎮圧し王位を得ると、次第に独占的傾向を強めていくようになり、 近年では武力を用いて地方都市に圧力をかけ、政策に従わせるような強硬手段もとり始めている。 声:大塚 芳忠 年齢:52歳 身長:190cm 武器:槍 戦闘タイプ:槍使い ユルゲンス バラン など…
https://w.atwiki.jp/side_flip/pages/191.html
#freeze 有栖川有栖 contents #contentsx 書籍情報 plugin_html is not found. please feed back @wiki. 著者 : 有栖川有栖 発行元 : 講談社 単行本発行 : 2001.10 文庫版発行 : 2004.2 黒鳥亭、壷中庵、月宮殿、雪華楼、紅雨荘、絶叫城の6つの館を舞台に臨床犯罪学者・火村英生と作家・有栖川有栖が挑む。「館」をテーマとした火村シリーズ短編集。 収録作品 黒鳥亭殺人事件 壷中庵殺人事件 月宮殿殺人事件 雪華楼殺人事件 紅雨荘殺人事件 絶叫城殺人事件 あらすじ 1. 黒鳥亭殺人事件 火村とアリスが学生時代からの学友、天農に請われて訪問した「黒鳥亭」 ここはかつて以前の所有者であった銀行の支店長が妻を殺害したのち、断崖から身を投げて自殺したという痛ましい事件の舞台となっていた。 ところがその後黒鳥亭の所有者となった叔母から相続して、妻を早くに亡くした天農がまだ幼い娘と暮らしている今になって、自殺したはずの支店長が裏庭にある古井戸から発見されたのである。しかもそれは死後わずか一週間ほどしか経過していない変死体であった……。 2. 壺中庵殺人事件 壺中庵と名づけられた地下室で男は首を吊ってぶら下がっていた。 死体の痕跡からは偽装自殺であることは明らかであるにもかかわらず、その部屋には1階に通じる梯子を上った先の跳ね上げ式の扉以外には出入り口が存在せず、しかもその扉には内側から閂がかかっていたらしい。犯人はいったいどのようにしてこの部屋から立ち去ったのか……。 3.月宮殿殺人事件 あるホームレスが、自ら拾い集めたがらくだで築き上げた建物――月宮殿。 以前そこを訪れたアリスが、今日火村と共に通りがかったその時、月宮殿は灰燼と帰し、その主も一酸化炭素中毒で死亡していた。火災の原因は放火で、犯人は日頃からホームレス達に悪事を重ねていた高校生のグループであることも判明した。 しかし彼らは月宮殿の中には人がいなかったと主張するも、目撃者であるホームレス仲間は火事の際月宮殿の主はその中にいたと証言している。果たして真相は……。 4.雪華楼殺人事件 雪華楼と名付けられるはずであったその七階建ての細長い建物は、不況のあおりを受け、旅館としての完成を見ることのないまま放置されたいた。 そこではある若い男女が刹那的な愛を育む場所として住みついていた。ある夜、その恋人の片方――男性――が雪華楼の屋上から転落死した。その死体の頭部には自殺したにしては不自然な傷痕も残されていたが、雪の積もる屋上には彼の足跡以外の痕跡以外は発見されなかった。残された女性はひどくショックを受け、錯乱しているとも言える状態であった。二人の愛憎の果てに何が起こったのか……。 5.紅雨荘殺人事件 ある映画のロケ地として有名になった「紅雨荘」の女主人が絞殺された。しかし殺されていた場所はその女主人がもう一軒所有する邸宅であった。実はそちらの邸宅こそが本来の「紅雨荘」であり、女主人は普段はそちらで生活していたとのことだった。 ロケ地の方の「紅雨荘」には被害者の三人の子どもが――全員立派に成人しているというのに――一緒に暮らしていた。そしてその近くの家には被害者の従妹である人形作家、牟礼真広が住んでいた。三人の子どもには鉄壁のアリバイが、しかし真広は警察に対し、奇妙なアリバイを主張する。果たして真相は……。 6.絶叫城殺人事件 ホラー系ゲーム「絶叫城」中の殺人鬼「ナイト・プローラー」の名を名乗る犯人が、あたかもゲームの中の殺人鬼であるかのような犯行を繰り返し、街を恐怖に陥れていた。そんな中、捜査陣をあざ笑うかのように再び起こる犯行。遺留品や、被害者の警察へ通報からも「ナイト・プローラー」の犯行かと思われるのだが、何か不自然さを感じさせるものが……。 書評 1.黒鳥亭殺人事件 推理小説としてはトリックは少々肩透かしを食らわされたような感じです。しかしアリスたちの友人である天農の娘との掛け合いを通じて火村の不器用だが優しい雰囲気とアリスのお人好しでこれまた優しい雰囲気が良くでていると思うので、ファンにとっては嬉しく、有栖川先生初心者の方にとっては良い導入編になるのではないでしょうか。それにしてもアリスは、まだ小学校にも上がっていない娘さんと見事にがっぷり四つに組んでます。 2.壺中庵殺人事件 壺中庵で壺を被った首吊り死体。真っ正面からの密室トリック。素直に楽しめました。 現実に行なうのは難しいと思いますが、まあそれは置いときましょう。 それにしても、このような短編ながらきちんと複線が張り巡らせられているのはさすがです。 3.月宮殿殺人事件 浮浪者ががらくたで築きあげた醜くもどこか幻想的な妖麗さを湛えた建物。そしてその塔のブリキでできた尖端は月の光をきらきらと反射していた……などの描写。まさかそこにあんな落とし穴があったとは。それにしても火村先生はよく解ったなあと思います。月宮殿の秘密。広辞苑にも載ってないのに。でも、そのような方向に推理が向かった根拠はきちんと用意されていて無理がありません。 4.雪華楼殺人事件 切ないお話ですねえ。始まったときから、その終点が見えているような刹那的な共同生活。しかしその犯行現場は、どのような狡猾なトリックが使われたのかという不可能状態。と思い悩みながら読んでおりましたが……そう来ましたか。あり得ねえ……。しかしその思いにすら有栖川先生は答え――いいわけか?――をご用意なさっていました。トリックに割り切れない思いを抱いた人は、あとがきへ向かえ! 5.紅雨荘殺人事件 こちらもある意味奇抜な犯行でした。トリック自体はそれほど目新しいものではないのですが、自分の無罪を証明するはずの目撃証言を頑なに否定する人物、何となく怪しいのに実に完璧なアリバイを持つ息子たち。動機の部分でちょっと強引さは感じましたが、これは有栖川先生の場合結構あることなので目を瞑ります。で、謎の解明部分については文句なしですが、やはり複線の張り方がうまいです。有栖川先生らしい叙情的なイントロから始まる紅雨荘の描写があんな風に核心部分に関わってくるとは。 6.絶叫城殺人事件 アイデアとしては面白いのですが、これはできないと思うのです……。 アリスは出版社の経費でのホテル缶詰中に10時間以上もゲームに浸っていてはいけないと思うのです……。 そんなことでは仕事もせずに事件に首をつっこんでばかりのフリールポライター、浅見光○氏よりもやばいです。何せあちらは事件を解決してますから。 総括 (ある種の)館をテーマにした短編集ということで、推理小説としての出来映えよりも、物語としての雰囲気を重視している感のある本だったように思います。 実は有栖川先生の本を拝読したのはこの作品が最初だったのです。昔からのクリスティファンであった私が国内ミステリにも手を出してみようと何となく手に取った、鯨統一郎先生の「ミステリアス学園」における巻末の「本格度マップ」(名前は違うかも)において、有栖川先生の作品がかなりの本格度であったこと、「日本のエラリークイーン」とも称されていることなどから、たまたま本屋で見つけて手に取ったのがこの本だったのです。 ですから初読の際は正直言って???でした。なぜこの作家がエラリークイーンなんだ? と。雰囲気はよいけど、トリックとしてはちょっと無茶なものが多いじゃないか、と。 しかし、再読したときに思いました。確かに動機も、トリックもちょっと無茶なものが多いけど、そこに探偵(火村先生)が至る過程は見事に論理的思考の積み重ねになっているではないかと。そしてその思考のネタは基本的にきちんと読者にも開示されている。確かにこれは本格推理ではないかと。ただ、この感想は再読までにほかの有栖川先生の作品を読み漁り、本当の真正面の本格推理といえる作品たちを堪能したからこそ、こういうのもアリだなと思えたのかもしれません。 感想・書評投稿 ぜひ、この書評に対するあなたのコメントをお願いいたします! こちらからどうぞ あなたもこの本についての書評を書いてみませんか? 短いものでもけっこうです。 こちらからどうぞ
https://w.atwiki.jp/civilization/pages/1601.html
目次 プレイレポ/BtS/多元配信マップで投石戦争/その1 プレイレポ/BtS/多元配信マップで投石戦争/その2 プレイレポ/BtS/多元配信マップで投石戦争/その3 プレイレポ/BtS/多元配信マップで投石戦争/その4 プレイレポ/BtS/多元配信マップで投石戦争/オラニエ編・上 プレイレポ/BtS/多元配信マップで投石戦争/オラニエ編・下 目次 [#x9cd4c01] 緒言 [#h95bf68d] 設定 [#p9d18a1b] 初期配置 [#w2b421f2] 方針 [#g737c9fc] コメント [#b4a343e4] 緒言 我が国でも例のマップ共通規格企画、「CIV4シングル多元配信」に手を出してみた。 動画はめんどうなので作風に合わないのでいつも通りこっちで。 関連レポなど:プレイレポ/BtS/多元配信関連まとめ 設定 ロシアのピョートル(哲学拡張志向) 難易度 不死 地図 課題 不死 ピョートル OCC向け.Civ 世界の大きさ 標準 文明数 8 気候 温帯 海面 中 開始時代 古代 ゲーム速度 普通 攻撃的AI、OCC、破壊的蛮族などチェック無し BtS3.13 MOD無し 多元配信課題.zip http //wiki.rk3.jp/civ4/fileup/file/1291.zip OCC向けとなっているが通常ゲームとしてプレイしている。 その理由はこれ↓↓ #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (0-01.jpg) \(^o^)/ OCCではパカルが勝利したナリよ #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (btn_lh_russia_peter.jpg)「この馬鹿者がー。鼻から酢でも飲んでろ」 ひーお助けーあわわわわわ、ぶべr 実は我が国ではあまりOCCは好まれておらず、経験も少ない。 遺産病全開にしたいときに、難度も下げて遊ぶ程度できていた。 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (btn_lh_russia_peter.jpg)「ならおとなしく国王でやれ」 先進国の天帝OCCレポなどを見ていると我が国も上手くなったかのような勘違いを起こしてしまいまして……てへ #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (btn_lh_russia_peter.jpg)「きめえ、何がてへだ。お前はシベリアで伐採でもしてろ。ほら斧やるよ」 その斧でビスマルクに報復ラッシュですね、わかります。OCCチェックは外して。 敗北した理由の90%はビスマルクのせいだ。きっとそうだ。 奴の悪行を500語でいい、500語だけ君に言わせてくれ。 ・本来ロシアにあるべきピラミッドを1ターン差で建てるという不届きな行い ・予定が狂ったロシアをあざ笑うかのようなアレクサンドリア図書館強奪 ・隣国ロシアがOCCのため国土が広く、スコア1位でさらに調子にのってさらに遺産建てまくり ・ロシアと国境を形成する都市で宗教創始 ・その文化パワーで周辺国を圧迫しまくる、もちろんロシアも酷い目にあい都市圏が使えなくなる ・国土と遺産がアレなロシアは、技術で世界をコントロールしきれないためマンサふるぼこタイムに参加し好感を稼ぐ ・しかしドイツはまさにぼこられているマリを平和的に属国化して突然介入してくる ・ドイツ騎士に荒されるロシア、黄金期発動と奴隷長弓連打で凌ぐがますます内政が苦しくなる ・スコア1位のドイツもマンサ叩きの世界連合相手ではフルボコでスレイマンの属国化、ロシアを荒しただけで終わる ・マンサ→ビスマルクと連続ふるぼこタイムで世界が仲良くなったのか、一人仏教バチカンのパカルが宗教外交勝利 ・ビスマルクはひたすらロシアに嫌がらせをするだけの存在 ・ビスマルクは氏ぬべき ・プラスチックだ とまあそんな感じ。 本来ならOCCで再チャレンジすべきなのだろう。 しかしロシアにあるべき遺産を不当に占有し、それを自国文化だと言い張るドイツには温厚な我が国も久しぶりにキレちまったぜ。 今こそOCCチェックを外し、ベルリンの遺産の数々を本来の所有者ピョートル大帝の元に取り戻す!いざ屋上へ! でも今回に限ってパカルが全部持ってくなんて事だけは勘弁な。 OCCの方はその道の先進国がやるのを見て、我が国も勝ったかのような勘違いをすればそれでいいや。 初期配置 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (0-02.jpg) 指導者の声 ピョートル ビスマルクは氏ぬよ パカル2世 せっかくこの酷い土地で勝ったのにやり直しなんてずるいナリよ スレイマン さて、北と東、どっちの金融屋を狭くしてやろうかな あ、両方でいいか シャカ 俺、戦争屋四天王筆頭のおシャカ様 今日、オマエ氏ぬ ラグナル このラグナルこそがナンバーワン戦争屋だと言うことを教えてやろう マンサ・ムサ ちょっと君たち興奮しないでくださいよー いや、ホント勘弁してください オラニエ公 ……あっちは酷いな オランダは東海岸でよかった ビスマルク 大陸中央なのでな 遺産の文化で国土を守らんと あ、誰か来た 各指導者での動画を見ていれば初期立地なども詳しく掴める。 ここでの説明が不要なくらいに。 方針 ドイツをぼこり遺産を奪ってビスマルクざまーただそれだけ。 先のことは正直考えていない。今はドイツをぼこれたらそれで満足。 後のことはその時になってから考える。 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (btn_lh_russia_peter.jpg)「あ、復讐のためにも遺産大量に奪いたいから斧ラッシュは禁止な」 確かに斧ラッシュではピラミッドとヘンジくらいしか無いかも知れませんね。 しかしコサック兵まで待つと文化圧迫で酷いことになって国家が麻痺する恐れがあるんですけど。 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (btn_lh_russia_peter.jpg)「なら中世でやってしまえ」 なかなか無茶いいますね、陛下。まーパンゲアど真ん中なんで戦争屋巻き込んでなんとかしてみます。 都市防御はどうせチチェン・イツァーも建ててくるだろうという前提でスパイ都市反乱で対処しますか。 泥沼の後進国化が予想されるので経済復興にもスパイ経済がちょうどいいですし。 技術 建築ルート中世戦争の中核はやはりカタパルト。トレブシェットならなおよしだが、そこはスパイの技術窃盗しだい。数学建築学で法律を取得し哲学ジャンプを行う。交換材料目当てなので道教創始はできなくてもよし。-拡張 ほどほどに建築まで到達するにはそこそこのビーカーが必要なので、あまり無理な拡張で経済を止めるわけには行かない。大スパイ経済で哲学志向では、科学者を配置できる期間が短いためコインがないと研究ができない。-偉人 一人目科学者その後大スパイ遺産を奪うタイミングが早すぎると大スパイに限定できなくなるのでそこにも気を使う。-世界遺産 ドイツから奪うこれがそもそもの大方針。他はこれを実現するための下位の項目。-宗教 テキトーにあるものを戦争準備でスパイによる宗教工作をするハンマーは捻出しづらい。ならいっそ創始も目指さず他国任せ。 事前の方針としてはそんなところでゲームスタート。 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (btn_lh_russia_peter.jpg)「事前と言ってもある意味事後なわけだが」 そこはいつものおきまりのフレーズなんで。細けぇことはいいんだよってやつです。 その1へ続く コメント 感想、見にくい点の指摘などありましたらお願いします。 プラスチック吹いた -- できれば、動画を見てない人にも分かるようにお願いしますー -- 主のドイツは、プレイヤー指導者になった時以外の扱いがひどすぎるw -- 凄いペースで我々を楽しませてくれますなw -- このパカルいつも技術独走してる -- 動画を見てない人にも~に関して、基本的にいつも通りの書き方でいきます。独立したレポのつもりで。 -- ちょっとだけ修正。最後のピョートルの顔の位置が変でした。 -- 「事前と行っても」が修正されていませんぞ (-1) -- お前はミスを指摘してくれたのだな+3 -- 貴公は迅速に誤字を直してくれた (+2) -- 名前
https://w.atwiki.jp/senka/pages/76.html
作者:3スレ51氏 (戦火の生贄シリーズの登場人物引用) 独特の音色と独特のリズム。竜神の使いである小鳥が戦士を鼓舞する様子だと言われている。そして竜神の命を受けた戦士は、世界を救うのだ 移住を繰り返し、歌やダンス、果ては占いなどの特技を披露して生活する部族の神話音楽である。そしてそれを奏でることが出来るのは族長から選ばれた者のみ。いわばエリートである。 そのエリートの中でも「鳥」の称号を得た、全ての旋律を奏でる最高のエリートは、今年16になる女の子。名前をナザンと良い、その顔立ちの良さから、余所者として扱う定住民も一目みようと立ち止まる。 本来なら祝福され、生涯の伴侶と共に甘い生活を送るはずだった。相手がいないわけではない。同じくエリート「竜」の称号を持つジャン。流れ民族にしておくのはもったいないと言われたほど、優しい性格が顔に表われている。 そう、本来ならば二人は近いうちに夫婦の誓いをあげ、家族となるはずだった。 最初は二人を認めていた族長が、一週間前ほどに言ったのだ。 「この度は竜神の花嫁をナザンにする」と。 要は人柱である。竜神への捧げ物として処女を湖へと突き出すのだ。当然、命は無い。助かったとしても戻ってきたらそこで処刑される。 選ばれることが光栄とされていても、動揺しないはずがなかった。ナザンは言葉を聞いた時から、好きだった笛を触りすらしなくなり、誰とも口を聞かなくなった。 本来、というのは、予定では違う娘だったのだ。 ところが、その娘は定住民の男とかけおち。部族始まって以来の出来事に族長も動揺していたのだ。しかし、その後は冷静に判断した結果、ナザンに決まったのである。 「どうしたの?」 儀式の前の、最後の夜。月明りが眩しかった。部族の移動式テントから離れた湖畔。ナザンは一人で出てきたはずなのに、予想外の声に振り向いた。愛しいジャンの声に。 「解ってるくせに。」 ナザンが不満そうに口を開く。 「何も解らないよ。」 ジャンは困っていた。久し振りに話した彼女の口は、以前と違ってあまり動かない。黙っていると、ナザンはサンダルのまま、湖の波に足を浸した。 「この湖に住む竜神様が、昔、小鳥を遣わせて戦士を助けてくれたんだってね。ならば、どうして竜神様は私を助けてくれないの?」 湖に向かって話し掛けている。答えが見つからず、ジャンは黙ったままだ。 「ジャン、私は鳥が好きだった。自由に空を飛んで歌う鳥。族長は最後に打ち落とした。だから私は!」 振り返り、ジャンの手を取る。そしてそのまま体を抱き締め、口付けを交わす。竜神の花嫁としての禁忌。誰にも触れてはならないことを破っているのだ。 「ジャン、この一晩で良いから!私にはもう部族も何も関係ないの!」 腕の中のナザンを優しく抱き締める。そして髪を撫でて告げる。 「月が沈む時まで、夫婦でいよう。」 嬉し過ぎる言葉に、ナザンは言葉も出なかった。ジャンの体を強く抱き締めた瞬間、馬の甲高い嘶きと怒声が遠くで聞こえる。 二人がその音の方向を見た瞬間、体は動かなかった。先程までいたテントの集落が燃えている。崖の上に張ったキャンプが次々と点火されていくのだ。ただごとではない事態に、二人は駆け足で集落に戻る。 「殺さず捕らえろってなぁ、難しいもんだなぁ!」 ひげづらの大男は喜々として目の前の老人を切った。傍らにはさらに巨漢の筋肉が、気絶した人、主に青年男子を縄で縛っていた。 定住貴族に、奴隷狩りとして雇われた傭兵たち。だから必要なのは男手である。しかしもう一つ理由があった。 「いやぁあああ!」 「あがぁああ」 縛られ、着衣を剥され、傭兵たちに犯されるままの女たち。 労働に女はいらぬ。「不用品」を再利用する感覚だったのかもしれない。悲鳴と許しを乞う高い声が混じり、それらをあざ笑うかのように犯していく傭兵。 ただ見ているだけしかない男は、涙を流す者、暴れるもの様々であった。 しかし武器を取れば最期、細身の男が持つ槍に貫かれる。すでに勇敢な何人かの男たちが、物言わぬ屍となって横たわっていた。 この地獄のような光景を見て、二人は声も出なかった。逃げなければ、と思った矢先、二人の背後に巨大な影が塞がれる。その口からは興奮しているのを示すようによだれが垂れていた。 「ニゲルナアア!」 二人に巨体をぶつけ、祭の中心へと突き飛ばす。実際、ぶつかったのはその巨大な腕であるが、タックルされたようであった。 「オマエコッチ!」 「うぐっ」 巨漢がジャンを縄にかけている。転がり、ジャンの方へ駆け寄ろうとしたナザンの前に、リーダー格の髭男が立ち塞がる。 「よぉ、嬢ちゃん、ようこそパーティへ。」 髭男がさっきまで犯していたのは、ナザンが姉のように慕っていた人物。明るく、占いを得意としていた。物をハッキリ言うタイプであったが、今は裸にされ、仰向けになったまま犯された衝撃で動けなくなっていた。それを見つけ、さらに別の傭兵が組み伏せる。 「あ、貴方たち、族長は…一体…」 「あのジジイならそこにいるぜ。貴族の奴隷になってもらうには少々ジジイだが、言うことを聞くからな」 髭男が指した方向には、頭から血を流し、縛られている族長。まだ生きてる、と安心したのも束の間、髭男に右手をつかまれる。 「やめろ!その娘はお前らが探してる『鳥』だ!」 族長が渾身の力で叫ぶ。痩男が無言で族長の首を掴み、握力で黙らせる。 「へへっ、嬢ちゃんがそうなのか。喜べ!お貴族様の妾になれるぞ!」 「貴族?妾…?」 ナザンはかぶりを振る。 「私は『竜』の妻。それ以外の誰のものではない!」 髭男の目が一瞬光った。族長はもう終わりだ、という目をしている。 「おいジジイ。この雀の旦那のトカゲは誰だ?もしかしてもう死んでんのか?おい、この中で該当するやつは素直に出て来い。そうすればもう終わりにしてやろう。」 族長の目や、他の部族の目もあっただろう。しかし優し過ぎるジャンは、素直に髭男の言葉を信じ、ゆっくりと立ち上がった。 「お前か。よし」 痩男が動いた。ジャンを太い木に縛らせる。全く身動き出来ず、なおかつキツめであるため、大きな声も出せない。 「ほら、お前の旦那に見せてやろうぜ!」 布がちぎれる。乱暴に服を掴むと、一気に引きちぎったのだ。 「!話が違う!」 「誰がお前の女房はヤらないって約束したぁ?」 「そんな…ナザン!」 ジャンの抵抗も虚しく、すでにナザンは全裸にされ、手を頭の上で縛られ、抵抗できない姿をさらしている。 「いや、助けてジャン!」 自分がどのような処遇になろうとしているのか、容易に創造がつくだけに、恐怖も増して来る。最後の抵抗をするも、傭兵の力には勝てず、両足を大きく開いた。 「ナァ、オ、オレ、モウアソンデイイガ?」 巨漢が野獣のごとく鼻息を荒くしている。そういえばさっきからこいつは縛る動作しかしてない。まさか… 「ああ、いいぜ。好きなのヤってこい」 髭男の許可が出るや否や、この場の状況が飲み込めていない、7~8才の女の子を脱がし始めた。 「ミディ!」 族長が叫ぶ。それもそのはず、族長の孫娘である。この状況で泣きもせず、大人しくしていたのは族長の孫であるという自尊心があったからだ。それが今、野に放たれた獣が、食べやすいように皮を食いちぎるかのごとく、ミディを全裸にしていた。 「さて、他人の心配するのはそこまでだ。」 ナザンは自分の上にいる髭男の声に我に返った。開いた足の中心を狙い、髭男の凶器ともとれる剛直を近付けていた。髭男の手はやわらかい乳房を触り、その感触を確かめている。そうやってナザンを惑わせ、一気に突く。 「ぎゃああああ!」 ミディの声だ。自分の身を案じながらも声の方向を見る。巨漢がミディの足に食らいついているようにしか見えなかった。髭男のものとは比べ物にならない程の巨根を、小さな体では全て受け止めることが出来ず、半分くらい出ている。それでも満足そうにミディに食らいつく。