約 314,585 件
https://w.atwiki.jp/side_flip/pages/157.html
高里椎奈 contents #contentsx 書籍情報 plugin_html is not found. please feed back @wiki. 著者 : 高里椎奈 発行元 : 講談社 単行本(ソフトカバー)発行 : 1999.12 文庫版発行 : 2006.6 落ち着いた好青年座木(くらき・通称 ザキ)、超美少年の深山木秋(ふかやまきあき・通称 秋)、赤毛で元気いっぱいな少年リベザルが営む「深山木薬店」を舞台にした「薬屋探偵妖綺談」シリーズの第3作。 あらすじ 以下 文庫版裏表紙より引用 毒死した京都の外科医、轢死(れきし)した東京のプログラマー、失血死した鳥取の書店員…場所も日時も別々で互いに無関係な六人の死。自殺、事故死、殺人としてすべて解決したはずのこれらの事件の共通点とは何か? 薬屋探偵三人組の良心座木(くらき)が難攻不落の謎に挑む! 個性派キャラが続々登場する好調シリーズ第3弾。 引用終わり 書評 読みやすさに甘えていると後悔します 読んでいる感覚は下手すればジュブナイル。 実際の年齢はともかく、悩める少年リベザルの葛藤と成長に焦点を当てた作品です。全体から受ける印象は、今までの2作に比べて対象年齢が低く感じました。少なくとも読んでいる間は……。 更に、元々読みやすい文章が更にこなれてきて、すいすい読めてしまうのでなおさらです。 ……が! 甘かったです。 漫然と読み過ぎました。 ミステリとしての構成は、序盤からいろんな脈絡のなさそうな細かい事件が取り上げられ、それが最後につながってゆくというスタイルで、それ自体は特に目新しいものではなく、どうまとめていくのかな〜といった気分で読み進めていました。そして、後半、一気に事件同士のつながりが明らかになってゆくのですが……ん? で、結局犯人は? 謎の本当の核心部分が、シリーズの舞台設定を活かしたファンタジー色の強い表現で語られるため、はっきり言って、わかりません。ファンタジーなトリックというわけでなく、「人間の事件」の描写をファンタジーというベールで覆ってしまったような感じといえばよいのでしょうか。 なんだかわかりそうでわからない。ミステリ愛好家としては最もつらい展開であります。 そのあたりが、この作品に関して「これはミステリではなくファンタジーだ」と評される方が多い一因でしょうか?(少なくとも私はそういう評価を良く目にしました) 最後の最後で欲求不満の杯を突きつけられながら。 「秋! 頼むからもう少しヒトに優しい名探偵になってくれ!」 そう叫びかけながら。 そして、そのラストの意味を考えながら。 でも、それと同時に思い起こしていました。 「そういやなんだか伏線くさいシーンいっぱいあったよな〜」 そうなのです。 ラストにつながるあからさまなシーンが多数あったにも関わらず、私は文章の読みやすさにかまけて「謎は作者が教えてくれるさ♪」とばかりに、軽く読み飛ばしてきたのでした。 おそらくこの事件の本当の経緯は、本格ミステリになれている方にとっては、おそらくそれほど複雑なものでなく、むしろ、安直に感じてしまうものであるような気がします。実際、複数の事件をつなぐ糸の解明においては、そんな単純な考察でいいの? と感じてしまいました。だから意地悪な言い方をすれば、単純に人間の視点で真相が語られたときには、ミステリとしての水準はそれほど高くないのかもしれません。が、それは逆に言えば、読み手が注意深く考察しながら読んでいれば、ラストのぼかした表現にも関わらず、自分なりの真相に到達できるレベルだったのかもしれないのです。 なんだか届きそうで届かない。 もう一度きちんと読まないとガマンなりません! なんだか「してやられた」といった気分ですので。 それにしてもキャラクターの個性はますます際だってきました。 特にリベザルの無垢っぷりや、ザギの色男っぷりなどはちょっと大げさになってきたようにすら感じます。脇役の高遠や葉山両刑事も前作「黄色い目をした猫の幸せ」で得た存在感に磨きをかけ、欠かすことのできない「探偵の協力者」としての地位を確立したように思います。 そんな中、秋は意外と地味な変化です。 でも、すべての言動からは、その奥に潜む思慮が滲み出ます。はじめは単なる暴君(!?)だったと思うのですが、どんどん優しくなっています。悩めるリベザルの歩む道を整えながらも、自分自身でその道を見つけるように導くその振る舞いに、大きな魅力を感じます。 総評。 自分自身の読み込みの甘さを棚に上げてしまいますが、純粋にミステリとして考えると、やはり掘り下げ方は浅いように感じます。複数の事件が一つに収束してゆく過程の描き方が乱暴で、唐突な感じだったので、カタルシスを感じることはありませんでした。 でも、小説は別に純粋なミステリである必要性が、そもそもありません。 あたりまえですが。 賛否両論あるところだと思いますが、あの結末の描き方は、まったくわけがわからないわけでもなく、単純に真相を述べているものでもなく、最後の最後で安心しかけている読者を、もう一段階作品側に引き寄せる、絶妙のバランスであったように思います。しかもそのファンタジー的表現は唐突なものではなく、独特の作品世界をうまく利用したものであり、活き活きとした登場人物達とあいまって、キラリと光るひとつの物語として読者の前にその姿を見せてくれています。 良い「物語」でした。 感想・書評投稿 ぜひ、この書評に対するあなたのコメントをお願いいたします! こちらからどうぞ あなたもこの本についての書評を書いてみませんか? 短いものでもけっこうです。 こちらからどうぞ
https://w.atwiki.jp/akazunoma/pages/20.html
101 名前: 1 of 6 投稿日: 2006/07/19(水) 20 06 57 ID pzZyJuUF0 学校の話が出てきたので、俺も一つ・・・・ 俺の通っていた中学校は、いわゆる団塊ジュニア世代が大量入学するのに備えて建てられたため、かなり大きな校舎だった。そのため俺が通っていた頃は生徒数も減少しているために幾つもの空き教室が存在した。 その中学校は若干丘陵地に建てられているため、校舎入り口が建物の2階部分に存在していたため、空き教室は全体的に日当たりのよくない1階部分に多かった。(校庭も2階と同じ高さにあった) 一階の空き教室は5つもあり、使わない卓球台とか大きな地図とか体育祭やら文化祭なんかで使う様々な用具が無造作に置かれたりしていた。そして普段は部屋は使わないので全て外から鍵で閉ざされていた。 5つあるうちの2つの部屋は、廊下側の窓の鍵が開いていたので、それを知っている一部の生徒が無断で侵入して隠れてタバコを吸ったり、シンナーをやってたり、中にはそこでセックスをするツワモノもいた。 廊下側も外側も窓には黒いカーテンがかかっており(全ての部屋で)無断侵入してもこれをキチッと閉めてしまえば外からわからない。(入った後にその窓の鍵も閉めてしまえば後から入って来るヤツもいない、もっともこんな場所、普段あんまり遊びに行かなかったけどね) 102 名前: 2 of 6 投稿日: 2006/07/19(水) 20 08 04 ID pzZyJuUF0 俺もたま~にこの空き部屋に行ったことがある。大概は部活をサボっての暇つぶしで、ちょいとタバコを吸ったり(時効)エロ本読んだり、ビール持ち込んで菓子食いながらしゃべったりしていた。一応電気も通っているんだが、外が暗くなってからそれを点けると教師にバレてしまうので日のあるうちはちょっとカーテンを開けて外の光を取り入れたりしていた。どっちにせよ北向きで暗いし、外の窓の向こうはすぐに木々が生い茂った丘陵が立ちはだかっており、鬱蒼とした雰囲気。あまり長居したい場所ではなかった。 生徒間では、あのあたりは昔墓地で、今も幽霊が出るとか、ここは戦国時代の古戦場で戦死した武者の怨霊が出るとかいろいろとあったが、実際は別にそういう曰く憑きの場所ではなかった。(余談だけど、隣町に有名な心霊スポットがあり、そっちのほうが有名だった) ところがある日、どうやらあの場所に何かがいるんじゃないかっていう噂が立った。曰くカーテンの位置が前の日から少し変わってるとか、夜中に学校の傍を通りかかった時に、窓に薄明かりが灯り、ゆらゆら揺れ動く人影が見えたとか、そういう話だった。 それは、例の「生徒が侵入できる部屋」のことなんじゃないのか?カーテン動いてたのも外光を取り入れるために動かしてたヤツがいたんだろうし、夜の明かりも、人を脅かすためのデマか、本当だとしても、たぶん夜中に残ってた生徒がいたんだろう。俺自身、友人と肝試しに夜この部屋に入ったことあるし・・・ 103 名前: 3 of 6 投稿日: 2006/07/19(水) 20 09 24 ID pzZyJuUF0 ところがその「噂の部屋」は生徒が無断侵入できる2つの部屋ではなく、 完全に閉ざされた残りの3つの部屋だという。まさかね~。 結局、生徒の噂もあるし、ちょうどその時期に1学期も終わりを迎え夏休みを前に大掃除の必要かな、ということで、その「開かずの間」を開け、掃除することになった。 運が良いのか悪いのか、「開かずの間」を掃除することになったのは、俺のクラスだった。たまたまその「開かずの間」の管理を担当してたのが俺のクラスの担任だったからだ。 放課後、担当することになった班(俺も含まれる)がそこに向かった。クラス全員で行ったわけではなく、学年全体で学校中のアチコチの掃除をそれぞれ分担していたため、その「開かずの間」に向かったのは、俺を含めて10人ほどだった。 「開かずの間」でない最初の2つの「開かずの間」には特に異変は無かった。もっとも大量に発見されたタバコの吸殻やビールの空き缶などは先生にとっては大異変であったが(あとで全校集会でこってり絞られることになる) 104 名前: 4 of 6 投稿日: 2006/07/19(水) 20 10 27 ID pzZyJuUF0 そして遂に、本当の「開かずの間」である。 3つあるうちの最初2つは別に何とも無かった。様々な用具が雑然と置かれてあり、誰も侵入した様子がないのは、一様に降り積もったホコリの量からも明らかだった。 そして残る部屋・・・一番奥、一番北の、一番薄暗い部屋。じつは此処こそが例の噂だ立った曰く憑きの部屋である。先生が扉の鍵をガチャガチャ言わせながら開けた・・・。 元々校舎全体の陰に在って薄暗い場所の上、真っ黒のカーテンで閉ざされていて部屋は闇に包まれた様だった。・・・そして鼻に付くすえたような悪臭。なんのニオイだ?! 俺は1番に部屋に入った。なんか好奇心で勢いづいてしまったのだ。 先生が部屋の明かりを点けた。 ・・・・何だこれは!!・・・・(岡本太郎風に) そこにはボロボロになった布団らしきモノ。煮しめたように汚れた服らしきモノ。ウイスキーの空きボトルや、中の残り物が完全に腐りきった開けられた缶詰、なぜかボロい鍋や汚れ切った皿なんかもそこにあった・・・・エロ雑誌やらボロボロの歯ブラシやら日用品も散乱していた。壁から壁にボロいロープが張られ、そこに汚れたタオルや下着らしきものが吊るされていた・・・。 105 名前: 5 of 6 投稿日: 2006/07/19(水) 20 11 53 ID pzZyJuUF0 この部屋には生徒は誰も侵入できなかったはず・・・なのにこの有様・・・・。 誰か住んでいる・・・・?! 俺は唖然として立ち尽くしてしまった。普段、気の強い親友のNもいたが「何だよ・・これ・・」と言ったきり黙ってしまった。女子は皆気味悪がって、部屋に入ろうとしない。先生もどうしていいのかわからないままボーゼンとしている。一緒にいたYという女子が、「先生、誰か呼んできた方が良いんじゃないですか・・・」と、消え入るような声で言うと、ハッとしたように我に返り、「そうだな・・うん・・そうだ!」といって誰かを呼びに駆け出してしまった。 ・・・普通、生徒を使うだろ? この状況で生徒だけを此処に残すか?・・・ どうやら今は誰もいないことがわかると、俺やNは部屋の奥へ入っていった。とにかく酷いニオイだ。 脂汗の酢酸臭、他にも垢じみたニオイ、カビくささ、生臭さ・・・・。 床に学校指定のジャージが落ちているのがわかった。えらく汚れていたが、間違いなくそうだ。 何でだろ? そういって、手にした箒の柄でそれを引っ掛けて持ち上げてみた…。 106 名前: 6 of 6 投稿日: 2006/07/19(水) 20 14 41 ID pzZyJuUF0 何かがこびり付いている・・・カピカピに乾燥したものや、乾燥しきれずにまだ粘度が 残っているのもあった。 「これ、・・・もしかしてザーメンじゃねえ・・・・?」 何時の間にか隣に来ていたNが言った。・・・そして俺もそう思った・・・。 よく見ると床のあちこちに指定のジャージや体育着がある。なんと制服のブレザーまである。 それらは全て、女子のものであった・・・・。 「ウゲッ!!」 俺は急に吐き気がして、手にしていたジャージを箒ごと床に放り投げた・・・。 その後、警察がきた。 部屋中いろいろと調べ回ったみたいだけど、結局その「侵入者」は発見できなかった。 どこから侵入したのかも分からなかったようだ・・。 まもなく夏休みに入ったが、休みを前に学校側から「不審者には注意」と強く勧告があった。 もちろん生徒のほとんどはそれを強く「肝に銘じた」はずだ。 後にあの部屋も含め全ての部屋は、各クラブの部室として開放された。使わないより使った ほうがいいという学校側の判断だろう。で、例の部屋だが、そこは野球部の用具入れになった。 女子ソフト部の部室って話もあったけど、立ち消えになった。 そりゃろうだろ。ザーメンまみれだったからな、あの部屋・・・。(了)
https://w.atwiki.jp/side_flip/pages/169.html
北村薫 contents #contentsx 書籍情報 plugin_html is not found. please feed back @wiki. 著者 : 北村薫 発行元 : 東京創元社 単行本発行 : 1989.3 文庫版発行 : 1994.3 落語家「春桜亭円紫(しゅんおうてい えんし)」師匠と女子大生の「私」の交流のなかで、様々な日常の謎がほぐされてゆくシリーズ第一作にして、北村先生のデビュー作。 単行本は「鮎川哲也と十三の謎」の一冊として刊行されている。 掲載作品 織部の霊 砂糖合戦 胡桃の中の鳥 赤頭巾 空飛ぶ馬 あらすじ 1. 織部の霊 「私」と円紫師匠が、大学の加茂先生を通じて知り合うきっかけを、加茂先生が幼い頃見た「見るはずのない夢」についての謎解きを通じて描かれます。 2. 砂糖合戦 喫茶店の隅の席で陰気に座る若い三人の女性は、なぜみんな揃って大量の砂糖を注文した紅茶に入れたのか? 3.胡桃の中の鳥 山形県は蔵王まで、友人である正(しょう)ちゃん、江美ちゃんと共に、円紫師匠の独演会にやってきた「私」 そこで出会った、小さな女の子と、シートカバーを外されてしまった江美ちゃんの車の謎とは? 4. 赤頭巾 ある絵本作家の家の近所の公園に、毎週日曜日、夜になると出没する女の子。 彼女はいつも、何か赤いものを身につけていることから「赤頭巾」と呼ばれていたが……。絵本作家の女性が書いた「赤すきん」と外に立つ「赤頭巾」との関係とは? 5. 空飛ぶ馬 クリスマスが近づいていたある日、幼稚園に贈られて来た木馬。 しかし木馬はその晩、幼稚園から消えていた。にもかかわらず次の朝にはきちんと園に戻ってきていた木馬は、空を飛んだのか? 書評 日常の謎解きをオカズにして、「私」の心を描く短編集 北村薫先生のデビュー作です。 短編集ですが、一冊を通じて時がつながっている、連作短編集的な構成になっています。 「私」と円紫師匠の出会いから始まり、二人の関係が心易いものになって行く過程を描く2編、そして「私」の心の機微に焦点を当てたラスト2編。淡々と、「私」の時の流れを描いています。 最初の2編は、「私」の周りの主な登場人物は、初老の大学の先生と、(イメージは若々しいですが)おじさん年代の落語家の円紫師匠。ですから「私」はちょっと古風ではあるけれど「普通の若い女性」とイメージが先に立っていました。 ここに三作目の「胡桃の中の鳥」で、友達の江美ちゃんと正ちゃんを登場させ、「私」との対比的な描写がなされることで、よりイメージがふくらみ、後半で彼女の心の微妙なところが描かれるときに、すんなり彼女の気持ちを感じることが出来たように思います。 ミステリーとしては、ちょっと強引さも感じさせます。 謎としては短編らしい面白い趣向のものが揃っているのですが、円紫師匠が謎を解く過程がちょっと強引に感じられたものもあったということです。 また、日常のシーンがちょっと冗長すぎるように感じられた作品も多かったように思います。もちろんこれは「ミステリである」という前提で考えたときに、そのミステリとしての骨格が比較的小さい骨組みな割に、日常という肉付けが多すぎて……ということですので、逆にミステリ部分が物語を盛り上げるためのおかずであって、あくまでも「私」の日常を描く私小説なのだ、と考えれば「欠点」とは呼べなくなるとも思うのですが。 ちなみにこの作品発表当時、北村先生が完全に覆面作家として活動されていたので、作者は「私」のような若い女性だと考えていた人も多かったということで、確かに女性の日常にあるちょっとした描写がそう感じさせるのかな、とは思うのですが、わたしにはやはり「男性が描く女性像」に見えてしまいます。なぜなら人物描写だけをいっているのではなく、その取り巻く環境も含めて「男性が安心してみていられる」状況のように思うからです。 真面目で、化粧っ気がなくて、目立ちたがりではないけれど聡明で、ちょっと古風。そして、周りに読者を差し置いて彼女をたぶらかそうとする若い男の存在は皆無なのは基本です。 ただ、誤解のないように。 これはこの作品を批判するつもりで言っていることではありません。 だって、このくらいの方が安心して読めますし、何でもかんでもリアルに書けば良いというものではないと思いますから。 書評などで「女性が描けている」といった評判をよく拝見していたので、どちらかというとその見方に対する疑問と言ったところでしょうか? う〜ん。 でもちょっと言い過ぎかな? やはり、心理描写などはなかなか女性的な視点で描けていると感じます。流石だなぁと思います。単に設定が男性好みだなぁと思うだけで。 うん。 心理描写という点に限って言えば、女性が書いたと言われても確かに納得ですね。 まとまりのない文章になっていますが、これを書きながら気付いたこともあるので、あえて訂正はしない方向で。 私は北村先生の作品は正味初めてです。 とにかく続きも読みたいと感じたことは、紛れもなく事実です。 楽しみです。 感想・書評投稿 ぜひ、この書評に対するあなたのコメントをお願いいたします! こちらからどうぞ あなたもこの本についての書評を書いてみませんか? 短いものでもけっこうです。 こちらからどうぞ
https://w.atwiki.jp/side_flip/pages/143.html
#freeze 鯨統一郎 contents #contentsx 書籍情報 plugin_html is not found. please feed back @wiki. 著者 : 鯨統一郎 発行元 : 祥伝社 新書版発行 : 2005.10 鯨統一郎先生の得意とする、わずかな手がかりから話を広げて謎を解くタイプの短編集です。伝説のサイコセラピスト、波田煌子(なみだきらこ)が今度は迷宮入り事件を捜査する特捜班で犯罪心理分析官として活躍する。シリーズ第2作。 収録作品 涙の赤い薔薇 涙の冷蔵庫殺人 涙の海岸物語 涙のエレベーターガール 涙の少女人形 涙のクニタチーゼ 涙のサヨナラホームラン あらすじ 以下、新書版裏表紙より引用 ぼく花山仁(はなやまじん)は迷宮入り事件を捜査する特捜班に配属された。憧れの刑事になれたと喜んだのも束(つか)の間(ま)、他のメンバーを知って愕然とする。囮(おとり)捜査で左遷された前泊(まえどまり)ナナ、定年間近の久保主任……。要は警視庁のお荷物軍団なのだ。極めつけは波田煌子(なみだきらこ)とかいう犯罪心理分析官。野暮な容姿と惚(とぼ)けた言動。プロファイルはおろか心理学についての知識さえ覚束(おぼつか)ない「エレベーターガール生首ゴロリ事件」「プロ野球スモール人形殺人事件」など、立ちはだかる七つの難事件をぼくらは解決できるのか? 引用終わり 書評 こじつけたら日本一! 鯨ワールドを堪能しよう! 伝説のサイコセラピスト、波田煌子シリーズ第2弾です。前作ではメンタルクリニックを舞台として、いわゆる「日常の謎」を扱う、何とも平和な物語だったのですが、今作は……おなかいっぱいになりそうなくらいの猟奇事件のオンパレード。 もう死体の切断なんて日常です。 ひどいところでは、死体の部位を使って本人のミニチュア人形が作られたりなんかしちゃいます。 まったく二階堂黎人先生あたりがリメイクすればさぞかしえげつないことになってしまいそうなシチュエーションばかりです。 それなのに、我らが波田先生は相変わらずのマイペース。 おどおどしているように見えるのに、怖いもの知らずで辛辣で自信家で。 物語としては(おそらくわざとでしょうが)前回と同じように、パートナーとなる男性(花山刑事)の視点で語られ、彼はセックスアピール満載の女性(前泊ナナ)に憧れているといった設定で、前作と同じようなリズムで進みます。ただし、謎解きは前に述べたとおり、いかにも推理小説的な事件のオンパレードですので、前作よりは考える楽しみは味わえます。もっとも、真相は相変わらずぶっ飛んでいるので、あまり真面目に考えると脱力すること必至ですが。 それにしても、最後に波田煌子が言うように、やはり彼女には日常の謎の方が似合うような気がしますが、本作のように非日常的な殺伐とした舞台で、あくまでも飄々としている波田煌子もまた魅力的ではあります。 感想・書評投稿 ぜひ、この書評に対するあなたのコメントをお願いいたします! こちらからどうぞ あなたもこの本についての書評を書いてみませんか? 短いものでもけっこうです。 こちらからどうぞ
https://w.atwiki.jp/side_flip/pages/141.html
鯨統一郎 contents #contentsx 書籍情報 plugin_html is not found. please feed back @wiki. 著者 : 鯨統一郎 発行元 : 祥伝社 新書版発行 : 2007.9 伝説のサイコセラピスト、波田煌子(なみだきらこ)が学習塾の事務員として、塾生達の様々な問題を解決する。シリーズ第3弾! 収録作品 第1限 路線図と涙 第2限 相似形と涙 第3限 清少納言と涙 第4限 疑問詞と涙 第5限 月の満ち欠けと涙 第6限 確率と涙 第7限 基本的人権と涙 あらすじ 以下、新書版裏表紙より引用 教育こそが日本を変える。希望に燃え学習塾を開いた波田信人(はた のぶと)は戸惑うことばかり。受験を控えた難しい年頃の中学生の間で、厄介な事件が続発するのだ。 おちこぼれ生徒が突然試験で高得点をとったり、「トラが空を飛んだ」「日本からアメリカまで一時?」など嘘を連発したと転校生がいじめられたり。 そして信人最大の悩みが新米事務員・波田煌子。元警視庁のプロファイラーだというが、言動はお惚け。しかしカンニング疑惑の真相も、嘘つき発言の真意もどうやら掴んでいるようで……。 引用終わり 書評 当たり前に生徒を信じ続ける波田煌子は素晴らしい! 今回、この書評のために本作品を再読したのですが、初読時とはまた違った感慨がありました。 初読時は波田煌子の相変わらずのとぼけっぷりと、それと裏腹な自信満々な言動に魅了されっぱなしだったのですが、今回はちょっと違いました。 波田煌子、優しすぎる。 とにかくどんな異常な状況に思えても、生徒を信じ続けています。それも何とか信じてあげよう、ということではなく、「当たり前に」信じているのです。これって実はすごいことですよね。 今まで、メンタルクリニックの所長、警視庁のプロファイラーとして活躍してきた波田煌子ですが、私はこの学習塾の事務員というのが最も波田煌子の人間性が活きるような気がします。あくまでも学習塾の先生ではなく、事務員というのがポイントだと思いますが……。 ミステリとしては、今までのシリーズの中で、一番普通の謎解きです。もちろん強引なものは多いのですが、ある意味普通の推理で真相に近づけるものが多いように思われます。前作までは、正直言って鯨先生の作風を理解していない人に薦めるのはちょっと危険なものを感じていたのですが、この作品ならとりあえず普通のミステリファンの人にもお薦めできます。なんというか、普通の「日常の謎」系の小説になったような感じでしょうか? ただし、ミステリとしては「日常の謎」ですが、波田煌子がいる空間自体が「非日常」の空気を感じさせます。それも波田煌子以外の登場人物は、あくまでも普通であるがために、波田煌子の異質さが際だっています。それでも、生徒達はもちろん、波田煌子をうさんくさい目で眺めていたなみだ学習塾のスタッフ達も、いつしか彼女の周りに引き寄せられてゆく、その過程が静かな感動を誘います。 最後に波田煌子が密かに浮かべたうれし涙に、いろんなものが詰まっているような気がします。 軽い物語ながらも、名作だと思います。 {以下、(軽く)ネタバレありです。未読の方はご注意を }; 正直なところ、初読時にはなぜ彼女はこの塾を去ってゆくのかよくわかりませんでした。波田煌子らしいといえばそうなのですが。 しかし、今回はシリーズ完結編「蒼い月 なみだ事件簿にさようなら!」を読んでから再読すると、彼女の「見つけた……」の台詞の意味がわかりました。 そして「蒼い月」事件で、とりあえずの到達点に至った彼女には、また本作のような世界に戻ってきてもらいたいと、切に願います。 感想・書評投稿 ぜひ、この書評に対するあなたのコメントをお願いいたします! こちらからどうぞ あなたもこの本についての書評を書いてみませんか? 短いものでもけっこうです。 こちらからどうぞ
https://w.atwiki.jp/side_flip/pages/191.html
#freeze 有栖川有栖 contents #contentsx 書籍情報 plugin_html is not found. please feed back @wiki. 著者 : 有栖川有栖 発行元 : 講談社 単行本発行 : 2001.10 文庫版発行 : 2004.2 黒鳥亭、壷中庵、月宮殿、雪華楼、紅雨荘、絶叫城の6つの館を舞台に臨床犯罪学者・火村英生と作家・有栖川有栖が挑む。「館」をテーマとした火村シリーズ短編集。 収録作品 黒鳥亭殺人事件 壷中庵殺人事件 月宮殿殺人事件 雪華楼殺人事件 紅雨荘殺人事件 絶叫城殺人事件 あらすじ 1. 黒鳥亭殺人事件 火村とアリスが学生時代からの学友、天農に請われて訪問した「黒鳥亭」 ここはかつて以前の所有者であった銀行の支店長が妻を殺害したのち、断崖から身を投げて自殺したという痛ましい事件の舞台となっていた。 ところがその後黒鳥亭の所有者となった叔母から相続して、妻を早くに亡くした天農がまだ幼い娘と暮らしている今になって、自殺したはずの支店長が裏庭にある古井戸から発見されたのである。しかもそれは死後わずか一週間ほどしか経過していない変死体であった……。 2. 壺中庵殺人事件 壺中庵と名づけられた地下室で男は首を吊ってぶら下がっていた。 死体の痕跡からは偽装自殺であることは明らかであるにもかかわらず、その部屋には1階に通じる梯子を上った先の跳ね上げ式の扉以外には出入り口が存在せず、しかもその扉には内側から閂がかかっていたらしい。犯人はいったいどのようにしてこの部屋から立ち去ったのか……。 3.月宮殿殺人事件 あるホームレスが、自ら拾い集めたがらくだで築き上げた建物――月宮殿。 以前そこを訪れたアリスが、今日火村と共に通りがかったその時、月宮殿は灰燼と帰し、その主も一酸化炭素中毒で死亡していた。火災の原因は放火で、犯人は日頃からホームレス達に悪事を重ねていた高校生のグループであることも判明した。 しかし彼らは月宮殿の中には人がいなかったと主張するも、目撃者であるホームレス仲間は火事の際月宮殿の主はその中にいたと証言している。果たして真相は……。 4.雪華楼殺人事件 雪華楼と名付けられるはずであったその七階建ての細長い建物は、不況のあおりを受け、旅館としての完成を見ることのないまま放置されたいた。 そこではある若い男女が刹那的な愛を育む場所として住みついていた。ある夜、その恋人の片方――男性――が雪華楼の屋上から転落死した。その死体の頭部には自殺したにしては不自然な傷痕も残されていたが、雪の積もる屋上には彼の足跡以外の痕跡以外は発見されなかった。残された女性はひどくショックを受け、錯乱しているとも言える状態であった。二人の愛憎の果てに何が起こったのか……。 5.紅雨荘殺人事件 ある映画のロケ地として有名になった「紅雨荘」の女主人が絞殺された。しかし殺されていた場所はその女主人がもう一軒所有する邸宅であった。実はそちらの邸宅こそが本来の「紅雨荘」であり、女主人は普段はそちらで生活していたとのことだった。 ロケ地の方の「紅雨荘」には被害者の三人の子どもが――全員立派に成人しているというのに――一緒に暮らしていた。そしてその近くの家には被害者の従妹である人形作家、牟礼真広が住んでいた。三人の子どもには鉄壁のアリバイが、しかし真広は警察に対し、奇妙なアリバイを主張する。果たして真相は……。 6.絶叫城殺人事件 ホラー系ゲーム「絶叫城」中の殺人鬼「ナイト・プローラー」の名を名乗る犯人が、あたかもゲームの中の殺人鬼であるかのような犯行を繰り返し、街を恐怖に陥れていた。そんな中、捜査陣をあざ笑うかのように再び起こる犯行。遺留品や、被害者の警察へ通報からも「ナイト・プローラー」の犯行かと思われるのだが、何か不自然さを感じさせるものが……。 書評 1.黒鳥亭殺人事件 推理小説としてはトリックは少々肩透かしを食らわされたような感じです。しかしアリスたちの友人である天農の娘との掛け合いを通じて火村の不器用だが優しい雰囲気とアリスのお人好しでこれまた優しい雰囲気が良くでていると思うので、ファンにとっては嬉しく、有栖川先生初心者の方にとっては良い導入編になるのではないでしょうか。それにしてもアリスは、まだ小学校にも上がっていない娘さんと見事にがっぷり四つに組んでます。 2.壺中庵殺人事件 壺中庵で壺を被った首吊り死体。真っ正面からの密室トリック。素直に楽しめました。 現実に行なうのは難しいと思いますが、まあそれは置いときましょう。 それにしても、このような短編ながらきちんと複線が張り巡らせられているのはさすがです。 3.月宮殿殺人事件 浮浪者ががらくたで築きあげた醜くもどこか幻想的な妖麗さを湛えた建物。そしてその塔のブリキでできた尖端は月の光をきらきらと反射していた……などの描写。まさかそこにあんな落とし穴があったとは。それにしても火村先生はよく解ったなあと思います。月宮殿の秘密。広辞苑にも載ってないのに。でも、そのような方向に推理が向かった根拠はきちんと用意されていて無理がありません。 4.雪華楼殺人事件 切ないお話ですねえ。始まったときから、その終点が見えているような刹那的な共同生活。しかしその犯行現場は、どのような狡猾なトリックが使われたのかという不可能状態。と思い悩みながら読んでおりましたが……そう来ましたか。あり得ねえ……。しかしその思いにすら有栖川先生は答え――いいわけか?――をご用意なさっていました。トリックに割り切れない思いを抱いた人は、あとがきへ向かえ! 5.紅雨荘殺人事件 こちらもある意味奇抜な犯行でした。トリック自体はそれほど目新しいものではないのですが、自分の無罪を証明するはずの目撃証言を頑なに否定する人物、何となく怪しいのに実に完璧なアリバイを持つ息子たち。動機の部分でちょっと強引さは感じましたが、これは有栖川先生の場合結構あることなので目を瞑ります。で、謎の解明部分については文句なしですが、やはり複線の張り方がうまいです。有栖川先生らしい叙情的なイントロから始まる紅雨荘の描写があんな風に核心部分に関わってくるとは。 6.絶叫城殺人事件 アイデアとしては面白いのですが、これはできないと思うのです……。 アリスは出版社の経費でのホテル缶詰中に10時間以上もゲームに浸っていてはいけないと思うのです……。 そんなことでは仕事もせずに事件に首をつっこんでばかりのフリールポライター、浅見光○氏よりもやばいです。何せあちらは事件を解決してますから。 総括 (ある種の)館をテーマにした短編集ということで、推理小説としての出来映えよりも、物語としての雰囲気を重視している感のある本だったように思います。 実は有栖川先生の本を拝読したのはこの作品が最初だったのです。昔からのクリスティファンであった私が国内ミステリにも手を出してみようと何となく手に取った、鯨統一郎先生の「ミステリアス学園」における巻末の「本格度マップ」(名前は違うかも)において、有栖川先生の作品がかなりの本格度であったこと、「日本のエラリークイーン」とも称されていることなどから、たまたま本屋で見つけて手に取ったのがこの本だったのです。 ですから初読の際は正直言って???でした。なぜこの作家がエラリークイーンなんだ? と。雰囲気はよいけど、トリックとしてはちょっと無茶なものが多いじゃないか、と。 しかし、再読したときに思いました。確かに動機も、トリックもちょっと無茶なものが多いけど、そこに探偵(火村先生)が至る過程は見事に論理的思考の積み重ねになっているではないかと。そしてその思考のネタは基本的にきちんと読者にも開示されている。確かにこれは本格推理ではないかと。ただ、この感想は再読までにほかの有栖川先生の作品を読み漁り、本当の真正面の本格推理といえる作品たちを堪能したからこそ、こういうのもアリだなと思えたのかもしれません。 感想・書評投稿 ぜひ、この書評に対するあなたのコメントをお願いいたします! こちらからどうぞ あなたもこの本についての書評を書いてみませんか? 短いものでもけっこうです。 こちらからどうぞ
https://w.atwiki.jp/side_flip/pages/199.html
鯨統一郎 contents #contentsx 書籍情報 plugin_html is not found. please feed back @wiki. 著者 : 鯨統一郎 発行元 : 光文社 新書版発行 : 2008.9 サイコセラピスト探偵波田煌子シリーズ完結からまもなく出版された本作ですが、波田煌子シリーズ第2作「なみだ特捜班におまかせ!」および最新作「蒼い月 なみだ事件簿にさようなら!」に登場する特捜班の高島警視と久保主任が登場します。 収録作品のうち第1話から第4話は、「なみだ研究所にようこそ!」「なみだ特捜班におまかせ!」の執筆時期と重なっています(2000年から2003年)が、第5話以降は書き下ろしとなっています。しかし、波田煌子シリーズとは出版社が異なっており、この先、本作品について波田煌子シリーズとリンクしたさらなる展開があるのかは微妙なところです。 収録作品 第1話 世界は水からできている (タレス) 第2話 汝自身を知れ (ソクラテス) 第3話 われ思う、ゆえに我在り (デカルト) 第4話 人間は考える葦である (パスカル) 第5話 純粋理性を求めて (カント) 第6話 厭世主義(ペシミズム)の暴走 (ショーペンハウアー) 第7話 神は死んだ (ニーチェ) 第8話 存在と時間の果てに (ハイデッガー) あらすじ 以下、新書版裏表紙より引用 警視庁の高島警視と久保主任は、難事件を専門に扱う特捜班に所属している。鉄壁のアリバイを持つ容疑者、密室に突然出現した死者、細かく切り刻まれた惨殺死体……。二人が関わる事件は、解決の糸口すらつかめないようなものばかり。 事件に行き詰まった彼らは、たまたま訪れた競馬場で、哲学好きで短歌趣味で馬券師の男と出会う。男が開陳した、驚くべき推理とは!? 変幻自在の鯨ミステリが、三十一文字の中に森羅万象を詠む! 引用終わり 書評 う〜ん。救いは「あの」シリーズとのつながりか? これほど早く、あの「波田煌子」シリーズの世界に再び触れることができるとは思ってもみませんでした。「蒼い月 なみだ事件簿にさようなら!」が発表されてからまだひと月足らず。この「哲学探偵」を開いた私は我が目を疑いました。 「高島警視」に「久保主任」が所属する特捜班!! 高島警視は本作では26歳となっており、27歳とされていた「なみだ特捜班」のプレスト-リーであろうということは一目瞭然! 文章を追う私の視線のスピードもいつになく加速します。 本作の探偵役は、哲学好きで短歌好きの馬券師(以下、哲学探偵)という、いろんな蘊蓄をミステリに絡めるのが大好きな鯨先生らしい設定です。そして、波田煌子シリーズと似たような速いテンポの展開と、この一冊に8作品も詰め込まれていることから、謎解きにはそれほど期待はしていませんでした。 ……が。 物語の設定が「嬉しい誤算」であったことと裏腹に、ここの作品のミステリとしての出来は、残念ながら、あまり期待は高くなかったにも関わらず、それでも更に「文字通りの誤算」でありました。 私はよく短編集の書評に「アクロバティックな展開は歓迎です」ということを書くのですが、それは、短い物語の中では、ロジカルな流れをある意味無視した強引な流れであっても、そのかわり大きな驚きを読者に与えてくれるのであれば、それもアリなのでは? という考えに基づくのですが……今作はロジカルとはいいがたい上に、なんと平々凡々な謎解きなのでしょう。 提示される謎自体は魅力的なのです。 「小指のなかったはずの被害者の遺体には,なぜ指が揃っていたのか?」 「遺体はなぜ341片に切り刻まれていたのか?」 「20年ぶりに開かれたタイムカプセルには、なぜ新しい生首が入っていたのか?」 などなど、猟奇的ではありますが、ミステリ好きにはたまらない謎の提示です。 ところが、哲学探偵がひもとく謎の解決は……ミステリとしては余りにありきたりです。 「まさかこれじゃないよな〜」と読みながら除外した、平凡な解決が延々と続きます。もちろんその結論に至るきっかけになる視点や推理の経路は、それなりに工夫を凝らしてはありますが、なんといっても各作品は短いがために、読者を納得させるだけの掘り下げはなされていません。 波田煌子シリーズでは、推理の論理性は飛躍に次ぐ飛躍でしたが、そのかわり意外な発想と真相で読者を驚かせてくれたものです。この作品にはそれがない。結末は平凡。推理の論理性も中途半端。残念ながらミステリとしてはあまり人にお薦めできるものだとは言いかねます。 また、鯨先生お得意のこじつけも不発であるように思います。 「哲学」「短歌」と鯨先生の作風から考えると「おいしい」こじつけネタを準備していたにも関わらず、あまり謎を解くに当たっての必然性を感じませんでした。 毎度毎度、競馬で大穴を当てては、様々な女性を同伴しての豪遊を決め込む哲学探偵、その話を聞くたびに、なんの犯罪でもないのに「いつか逮捕してやる」と決意する高島警視など、鯨先生らしい「おきまりだけど、欠かすことのできない」ネタは見事に決まっているので、ミステリの部分の中途半端さが本当に残念です。 それにしても、最強メンバーを集めている最中の、目下二人だけの特捜班。 久保主任の「かく言う私も一人、心当たりがいるんですが」との台詞。 もちろん、あの人ですよね? 久保主任? 正直なところ、あまり自信を持ってお薦めできる作品だとは、私は思わないのですが、それでも、なんと言っても「波田煌子シリーズ外伝」とも言うべき本作は、やはり波田煌子ファンには読んでいただきたい一冊です。 波田煌子シリーズにつながるさらなる展開と、波田煌子の再登場を期待させる、ほんの少しの足がかりを与えてくれたことに感謝です。 出版社が違うのが気にかかるところですけどね? 感想・書評投稿 ぜひ、この書評に対するあなたのコメントをお願いいたします! こちらからどうぞ あなたもこの本についての書評を書いてみませんか? 短いものでもけっこうです。 こちらからどうぞ
https://w.atwiki.jp/side_flip/pages/197.html
鯨統一郎 contents #contentsx 書籍情報 plugin_html is not found. please feed back @wiki. 著者 : 鯨統一郎 発行元 : 祥伝社 新書版発行 : 2008.9 伝説のサイコセラピスト、波田煌子(なみだきらこ)シリーズ完結編。 シリーズ初の長編で、波田煌子の過去が語られる。 あらすじ 以下、新書版裏表紙より引用 現場に残された「蒼い月」という文字、横たわる死体――。 18歳のフリーター三ヶ尻由衣が自宅で強姦、刺殺された。特殊捜査班が事件解決に乗り出すが、犯行は重ねられる。警察はあの波田煌子の協力を仰ぐことに。 彼女は七つの猟奇事件を解決した名プロファイラー、のはずが、言動がなんだかちぐはぐで……。 警察の不安をよそに、煌子は心理学者・主計龍太朗(かずえ りゅうたろう)の挑戦まで受けてしまう。果たして推理対決の行方は? 「蒼い月」に込められた犯人のメッセージとは? 煌子の衝撃の過去が明かされる人気シリーズ完結編! 引用終わり 書評 シリーズ完結には早すぎる! 長編で魅せる「人間」波田煌子 伝説のサイコセラピスト、波田煌子シリーズ第4弾にして、完結編です。 物語は上のあらすじの通りで、今回は短編集ではなく、一連の猟奇的な強姦殺人事件を追う長編となっていますが、むしろこの本の主題は「波田煌子の過去」と言ってよいでしょう。 前作で学習塾の事務員として、塾生達の悩みを次々と解決し、去っていった波田煌子でしたが、その時には、今回の「蒼い月」事件が存在していたようです。 波田煌子は「なみだ特捜班」で警視庁のプロファイラーになったとき、行方不明の両親を捜していると言っていましたが、実は両親は放火で殺害されていたのでした。 そして、この「蒼い月」事件を目の当たりにしたときに、彼女は自分の両親の事件との共通性を見いだし「自分探しの旅」すなわち両親を殺害した犯人捜しの旅を締めくくるべく、請われるままに再びプロファイラーとして警視庁へを赴くのです。 この本のタイトルを初めて目にしたとき、なんだか雰囲気が違うぞと感じたものです。なんだかシリアスそうな気がして、本来ののんびりした雰囲気が好きだった私はちょっと危惧しておりました。 結果的には……やはりシリアスでした。 基本的に今回の波田煌子は、今までの宇宙人的人格から、より人間らしく書かれています。奇抜な推理は健在なものの、一足飛びにいきなり真相を言い当てたりしません。もちろん長編でそれをしてしまったらえらいことですが。 また「なみだ研究所」の現所長である松本くんに、恋心を抱いていたことまで明らかになってしまいます。 そして極めつけは、「なみだ研究所」事務員で、今は所長の松本くんの婚約者でもある小野寺久美子が事件に巻き込まれると、何とか助け出すためにそれこそ必死で行動を起こします。 これらの姿は、本来であればむしろ今までよりも人間が描けている、ということになると思うのですが、やはり、波田煌子は飄々として、自信家で、あまり感情は表に出さず、そしていきなり事件を解決してしまうからこそ波田煌子だ、と感じてしまうのです。 そのように多少の違和感はあったのですが、それでも「あの」波田煌子が必死になっているということで、より緊迫感のある物語となっていたようにも思います。 謎解きについては、過去の事件と複雑に絡んだ糸をほぐしていくという、本格推理の王道的なものではあるのですが、こちらは推理小説としてはそれほど入り組んだものではないです。ある程度犯人の想像が付く方も多いのではないでしょうか? でも、そんなことはどうでもいいくらい、今回は「波田煌子の物語」でした。 彼女を中心に、過去の仲間達が再び集まります。 まさにオールスター。 お茶とお茶菓子も健在です。 「群馬県詩吟チャンピオン」の経歴の謎も明かされます。 彼女の人並み外れた洞察力のルーツも明らかになります。 そして、何より、彼女の心を暗く覆っていたものも白日の下へさらされます。 彼女の飄々とした姿は、もしかしたら、心の周りを幾重にもバリケードで覆ってしまったことから生じたのかもしれません。もしそうであるなら、彼女が時折流す涙には、とても濃密な想いが潜んでいたのかもしれません。 シリーズ完結編だけあって、シリーズ全体に流れる大きな謎は、ことごとく解明されてしまいました。 それでも、私はいずれまた波田煌子が、どこかで謎を解き、人の心をほぐしている姿が見られるような気がしてなりません。 ラストで波田煌子は言います。 「あたしにしかできないこと」をすると。 そしてもうひと言。 「もうしばらく待っていてください。そうしたらお知らせいたします」 待たせていただきますよ。 気長にね。 感想・書評投稿 ぜひ、この書評に対するあなたのコメントをお願いいたします! こちらからどうぞ あなたもこの本についての書評を書いてみませんか? 短いものでもけっこうです。 こちらからどうぞ
https://w.atwiki.jp/side_flip/pages/192.html
#freeze 高田崇史 contents #contentsx 書籍情報 plugin_html is not found. please feed back @wiki. 著者 : 高田崇史 発行元 : 講談社 新書本発行 : 2005.3 文庫版発行 : 2008.7 浪人生コンビ、通称「八丁堀」と「饗庭慎之介」、そして大金持ちで美形の高校生「千葉千波」がパズルのように謎を解く、千葉千波の事件日誌シリーズ第4弾。 収録作品 桜三月三本道 迷路な二人 徒競走協奏曲 似ているポニーテイル ゲーム・イン・ゲーム 直前必勝チャート式誘拐 あらすじ 文庫本裏表紙より引用 これは、論理パズルでデコレーションした本格ミステリか、それとも本格ミステリの仮面を剥ぎ取った論理パズルか? 天才高校生・千波くん、平凡浪人生・ぴいくんたちと一緒に、筋道だったチャーミングでエレガントでスプレンディッドな謎解きを、ご堪能あれ! やみつきになること間違いなし。本当だよ。 引用終わり 書評 この書評をご覧いただく前に、シリーズ第一作「千葉千波の事件日記 試験に出るパズル」の書評をご覧いただくとよいと思います。シリーズ全体についての解説的内容になっていますので。 今作は、前作で一月まで描かれた、ぴいくんたちの浪人生活の終わりを告げる作品……ではありません。 ぴいくんの高校時代から、浪人生活一年目のセンター試験間近までの中からいろんな時点の物語が書かれています。 今作は、前作「千葉千波の事件日記 試験に出ないパズル」までに比べて、本編のパズルっぽさがかなり低く抑えられているように感じます。最初の「桜三月三本道」くらいでしょうか? いつもなら最後にもう一つ強烈なパズルっぽい作品が来るのですが、今回のラストである「直前必勝チャート式誘拐」に関しては、パズルではあるものの、どちらかというと、ぴいくんが好きなタイプのパズルっぽい、要するに論理パズル系のものではありませんでした。 また、いつも間に挟まれる普通の推理小説的物語は三つであったのに対して、今回はそれが四つだったことも、パズルっぽいイメージが低かった原因でしょう。 しかし、今回は、本当にキャラが活き活きしていました。 当初、「いつも静かに微笑んで」系だったはずの千波くんもだいぶん自己主張するようになってきました。また、今作ではぴいくんの妹のチョコちゃんが大活躍。6編中4編で中心的役割を担います。千波くんの身体が心配です。 が、その中でも異彩を放つのがぴいくんです。 確かはじめの頃は、あまりぱっとしないし、理屈っぽいけれど、それでも普通の少年だったような気がするのですが。 キャラが立ちまくりです。 ほとんど変質者です。 チョコちゃんが目の前で殺人を犯しても、にこにこしながら「かわいいなぁ」とか言ってそうな、極度のシスコンに加えて、ロリコン的趣味も全開になってきました。また、今までも語られてきた服装のセンスの悪さも、具体的に記述されるようになり、本当にセンス悪かったんだということを再認識いたしました。(例 : リオのカーニヴァル民芸品センターで売ってそうな、金箔入り寄せ鍋のような色合いのセーター。手の甲にイグアナの刺繍が付いている、澄んだエメラルドグリーンの毛糸の手袋) 大阪のおばちゃんだ……。 そして極めつけは、その体型。 「直前必勝チャート式誘拐」でぴいくんが語るところによると「トイレの窓にお腹が引っかかって逃げられなかっただろうけれど」とのこと。もちろん窓は小さかったと思うのですが、普通「お腹がつっかえて」という連想をするには、かなりの堂々たるお腹が必要だと思われるのですが、いかがでしょう? まだ十代なのに……。 大学に入れるかどうかというのとは、また別の意味で、ぴいくんの将来が心配になりました。 とりあえず、原作に忠実にアニメ化するのは難しそうです。 総合的には、シリーズ中最も楽しく読めた一冊です。 キャラが高田先生の決めた枠組みの中から独り立ちを始めた感じです。 作品中にちりばめられたパズルも、ちょっとしたとんち問題みたいなものから、論理パズル的なものまで、種類も難易度もほどよく散らばっていて、飽きずに楽しめましたし。 また、このシリーズ全体に横たわる「ぴいくんの本名」の謎も、私のような凡人でも推理できるレベルのヒントがこの本でたくさん出てきました。 ぴいくんと慎之介の受験がうまくいけば、このシリーズはどうなるのでしょう? 慎之介の第一志望は「某私大文学部のミステリー研究会」だということなので、その辺を絡めた新たな展開も期待できそうです。 とにかくまだまだ続いて欲しいシリーズです。 感想・書評投稿 ぜひ、この書評に対するあなたのコメントをお願いいたします! こちらからどうぞ あなたもこの本についての書評を書いてみませんか? 短いものでもけっこうです。 こちらからどうぞ
https://w.atwiki.jp/side_flip/pages/156.html
#freeze 有栖川有栖 contents #contentsx 書籍情報 plugin_html is not found. please feed back @wiki. 著者 : 有栖川有栖 発行元 : 講談社 新書版発行 : 1994.8 文庫版発行 : 1997.7 エラリー・クイーンのひそみに倣った「国名シリーズ」第一作品集。 収録作品 動物園の暗号 屋根裏の散歩者 赤い稲妻 ルーンの導き ロシア紅茶の謎 八角形の罠 あらすじ 1. 動物園の暗号 阿倍野動物園の猿山で開闢以来の珍事が発生。 飼育係の男性が、頭を鈍器で殴られたうえで猿山の底に落とされて息絶えていたのだ。その男性の手には様々な動物の名前らしき漢字などが書かれたメモが握られていた……。 2. 屋根裏の散歩者 アパートの家主の老人が殺されていた。 それだけであれば何の変哲もない事件だったのだが、被害者が意外な場所に隠していた日記によって、その老人が巷で騒がれている連続女性暴行殺人事件の犯人を知ったために殺されたのではないかという疑惑が浮上する。ところがその日記に書かれた人物達は妙な符丁であらわされていたために、捜査は難航する……。 3. 赤い稲妻 雷雨の中、マンションの7階から金髪のアメリカ人女性モデルが転落死した。その転落の直前、そのマンションの部屋には他の人影があったとの証言が得られるが、その部屋には誰も見当たらず、密室と呼べる状態であった。さらに、その被害者のパトロンの男性が見つかるが、その妻も第一の事件から一時間とおかず、別の場所で踏切事故によって命を落としていたことが判明した……。 4. ルーンの導き 火村英生の同僚の外国人講師が火村に助けを求めてきた。訪問先の友人宅で人が殺されたというのだ。早速現場へ向かった火村だが、その事件の被害者はルーン文字が刻まれた数個の石を握って死んでいたという。果たしてその石が示す意味とは……。 5. ロシア紅茶の謎 表題作。知人達が集うパーティの最中に、新進作詞家がロシア紅茶に混入された青酸カリを飲んだことにより死亡した。しかし毒は被害者が飲んだ紅茶からしか検出されず、そうすると被害者のコップにのみ毒を投入できる者がいない状況となってしまう。犯人はいかにして被害者のコップに毒を投入したのか……。 6.八角形の罠 八角形のホールをもつ「アルカディアホール・オクト」 そのこけら落としに先立つお披露目イベントの推理劇の原案を執筆した有栖川有栖は、その舞台稽古を火村英生とともに観に来ていた。が、どうもその舞台を勤める劇団員達の間には不穏な空気が流れる。そんな中で殺人事件は発生した……。 書評 1. 動物園の暗号 さすが○○ファンの有栖川先生。 いや、これ以上は言いますまい。 典型的なダイイングメッセージものです。趣味の作品という気がしないでもないですが、有栖川先生だけあってきちんとこのようなダイイングメッセージを残す必然性は考慮されているので安心して楽しめました。 2. 屋根裏の散歩者 これも一種のダイイングメッセージ的な感じです。 しかしこの暗号のセンスは……。そのアイデアだけでも笑えるのに、オチまで用意されているのは、さすが関西人の先生らしいところです。 3. 赤い稲妻 こちら短編の割にはなかなか有栖川先生らしい、論理の積み重ねを見せてくれます。短編だと思って単純に犯人を決め付けて推理していたところ、見事にだまされました。 4. ルーンの導き またまたダイイングメッセージもの。今回は怪しげなルーン文字が刻まれた石がポイントとなっていますが、もともとダイイングメッセージに関してはあまり自分で推理する気にならない私ですが、今回も 「ルーン文字なんか使われたら余計わからん」 と、はじめからあきらめモードでした。が、結末を見て 「そうきたか!」 と思うと同時に 「このメッセージはちょっと無いような……」 とも思って、少し首を傾げてしまいました。 でも、犯人を推理する手がかりをその一点に頼らず、他の要素をさりげなく持ってきているところが、有栖川先生らしくて好感が持てます。 5. ロシア紅茶の謎 第一に謎めいているのは、なぜこんなに泥沼的な人間関係の人々が集まってパーティをするのかな? といったところですが、これはまあ短編ですし、手っ取り早く容疑者を絞り、かつ一所に集めてしまう手法だということで見逃しておきましょうか。 で、トリック。 どうでしょうか? そのトリック自体もちょっと強引過ぎる気がしましたが、それはまあ意外性ということで良しとしても、そのトリックの準備などの段階から推察すると、かなり無理があるような気がするのですが、どうでしょうか。 6.八角形の罠 これは実際に舞台化された有栖川先生の原案をノベライズしたものだということですが、メイントリックはもう一ひねりほしい感じです。しかし、ある○○○が犯人を追い詰める決め手となってゆく過程は、とても論理的で、かつ、何かあるのではと思わせられているのに驚くことができる、なかなか楽しめるものでした。 それにしても、設定として実際にあるホールの見取り図をそのまま使用されていて、なおかつ特徴的なホールですので、長編で読みたかった……。たとえていうなら5階建て、40室もある由緒正しい古めかしい洋館で、殺人がひとつだけ起こってしまって終わり……というような。ぜいたくですかね。 総括 最近では、本格推理のファンを納得させるのがなかなか難しくなっているであろう、ダイイングメッセージものが3編入っているため、人によっては結構厳しい評価をされているケースがあるようです。 が、私は「短編集」を読む心構えで読めば、本作のような、ど真ん中もあれば、お遊び的な小品もあり、といった構成はなかなか楽しめてよいのではないかと思います。「動物園の暗号」「屋根裏の散歩者」で使用されたようなダイイングメッセージが長編の鍵となるトリックとして使われれば、ちょっと目もあてられないことになってしまうのは明らかですので、このような短編集で発表する側も読む側もリラックスして気軽に楽しむというのも一興ではないかと思うのです。 動物園の暗号でのダイイングメッセージは、有栖川先生もお気に入りのようですし。 感想・書評投稿 ぜひ、この書評に対するあなたのコメントをお願いいたします! こちらからどうぞ あなたもこの本についての書評を書いてみませんか? 短いものでもけっこうです。 こちらからどうぞ