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番号外の特番、もしくは番号不明のもの ここでは、番号がない可能性のある特番、及び公式サイトのライブラリーでも番号がわからなかったものをまとめる。 番号外の特番 『シリーズ世界遺産100』タイトルのもの(5分) サブタイトル ナレーター 初回放送日 備考 ダイジェスト編 世界遺産壮大な物語 油井昌由樹 2004/06/01 『シリーズ世界遺産100』タイトルでの最初の放送番組 コンセプト編 未来へ伝える世界遺産 2004/06/02 世界遺産からのSOS 危機遺産を守れ! 江守徹 2006/01/14 サブタイトルは保存番組アーカイブによる。番組表アーカイブでは「危機遺産を守る」になっておりどちらが正しいか不明 『特集 シリーズ世界遺産100』タイトルのもの(13分) サブタイトル 出演 初回放送日 備考 いつか行きたい世界遺産 橋田壽賀子 2005/08/17 宇宙から見た世界遺産 毛利衛 2005/08/18 デジタルアーカイブスをつくる 布施英利 2005/08/19 番号不明のもの 存在するらしい記録はあるが、公式サイトでは番号を確認できなかった回。 遺産 サブタイトル 国 ナレーター 初回放送日 備考 マラケシュ旧市街 祝祭の広場 モロッコ 江守徹 2007/05/04 日付から300番台前半あたりと思われるが見つからず2006年12月に同名の番宣番組の放送記録あり
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「ふたば系ゆっくりいじめ 1061 まりさのものは俺のもの・後/コメントログ」 容赦ない虐待でよかった ・・・けど最後で台無しだよ! -- 2010-06-10 20 29 37 SSとしての完成度が高い 虐待とは無関係に評価したい -- 2010-06-13 22 23 53 面白かった -- 2010-06-17 22 27 42 読了後の無常さが何とも しかしまりさのうざったさの表現が上手いなあ -- 2010-06-17 22 46 39 感動した分、最後のきめぇ丸登場で壮大に噴いたw でも良く纏まった話だった -- 2010-06-24 05 11 41 最後のオチを含めてとても完成度の高い素晴らしいSSさんだったよ! ごちそうさま! トラウマの結果ただの虐待お兄さんになるわけではないところが人間臭くて良いと感じたよ! -- 2010-07-06 14 29 33 いやー、とてもいい話でした!最後のきめぇ丸でちょっと噴いてしまったのも含めてすばらしかったですw -- 2010-07-08 21 37 52 まぁ…ことの発端は人間が、「まりさがお菓子を食うように仕向けた」ことなんだけどね。 -- 2010-07-08 22 31 38 久しぶりにレベルの高いSS読んだわ -- 2010-07-16 03 35 59 本当に「どうしてもっと早く謝らなかったんだ」だよ 全体的な話は面白かったし、虐待あり制裁ありで良かったけど、最後にまりさが覚醒したように謝るのがなんとも 徐々に心境が変化するならまだしも本当に急な覚醒でちょっと冷めたよ まりさの両親も「子まりさに謝らせる」って行為をしようとしないのが不思議だった -- 2010-07-16 11 42 03 オチがww 餡子脳だから基本強気に出るしか考えられないし、親もびびって思いつかなかったんじゃないかと、、 -- 2010-07-24 01 27 21 まりさがおはぎを食べる描写に最高にイライラした 「悪いことしてない」って言うことが一番悪いことなんだと気づけないこいつに相応しい末路 -- 2010-07-24 20 17 33 ↓↓↓まりさの両親も「子まりさに謝らせる」 その通りだよなあ・・・結局このまりさ、ゲスなのか子供ゆえの我が侭なのかがわからん。 確かに思いつかなかったのかも知れないけど、普段から教えるぐらいは出来ただろうに・・・ でもまりさも、人間に近寄るな、人間のお菓子を食べるななどの教えもアッサリ破ったくらいだから、 教えても言わなかっただろうな。 そういう点で言えばゲスだったのかも -- 2010-07-28 13 19 23 ゆっくりの発言を人間が逆手に取ったらとんでもないことになる、と ゆっくりが有りもしない所有権の主張やおうち宣言を行ったところで人間からの制裁が待っているだけだけど、 人間がゆっくりの持ち物や住処を人間のものであると主張すれば、それだけで搾取が始まるんだなぁ いや、見てて気持ちが良いんですけどね -- 2010-07-29 22 49 47 ゆっくりの世界じゃ「謝る」という行為にどれだけ価値があるんだろう むしろ弱みを見せたらたちまち付け込まれるゆっくりの世界じゃ謝るという選択肢ははじめからないに等しいのでは -- 2010-08-03 19 37 54 後半もめっちゃおもしれえ!! このまりさは態度こそ悪くないが 自分がゆっくりする事しか考えていないゲスだな 友達のくだりでそれがよく出てた まあ子供だからってのもあるが -- 2010-08-08 07 23 51 面白かった!!しかし想像もつかないオチにはまいった!!もっと色々書いてほしい!! -- 2010-09-09 09 31 10 ゆっくりを人間扱いした結果がこれだ これに尽きるな、人間ならここで謝るだろう、って事で謝ればそこでゲーム終了のはずだったのに ここまで謝らないとはある意味想定外だっただろうな 「人間とゆっくりとは、関わるべきじゃないんだよ」 ↓ 「人間と餡子脳は、関わるべきじゃないんだよ」 にすればOK、知能が人間と共存できるレベルなら良いのです -- 2010-09-16 18 23 38 ゆっくりを想像したのだって人間なのだし、ある意味で人間の一部であって、 今回の場合は、まりさ・被害者面の親達=人間の愚かさ・醜さの象徴と言った印象 人間が切り捨てたい感情の集合体で、 忌避し嫌悪感を際立たせるのがゆっくりに求められていることなのかなあ、と思った ダブルスタンダードでも仕方ないと思う -- 2010-10-07 12 14 57 まりさを被害者家族が生きながら責め立てる描写がえぐかった…。 最後が良い感じ。 -- 2010-10-07 13 03 28 面白かったのに「妻が~~」で萎えた。 あまりにも蛇足。折角まりさも可愛くて最高に面白かったのに。 -- 2010-11-29 00 09 25 とても面白かったな。 どうして……どうしてこんなことするのお………れいむたち……にんげんさんにめいわくかけないようにしてきたのに……… で、両親すら途中まで子供が人間に迷惑かけた事を全く理解すらしてないし。 親の言い付け破ってきたまりさも悪いが、親の方も大概だなw ラスト吹いたw 茶道の趣が解るとは…希少種となら人間と共存できるのかもしれない -- 2010-12-12 12 57 58 質、量ともに兼ね備えた傑作だったのに…ダブスタですべてが瓦解してしまったよ。 コメディでもギャグでもないんだから落とす必要は無かったんじゃないかなー。 -- 2010-12-18 16 39 42 でも「悪い事をしたとしてもとにかく謝れば許される」という認識をゆっくりにされても困るわけで 口だけの謝罪だけじゃなく損害賠償まで叩き込むべき -- 2011-01-13 23 04 31 ダブスタもよかったよ。 -- 2011-01-21 01 26 20 なんでこのラストにしたんだ・・・。 -- 2011-11-17 23 28 54 ラストだけゴミだ 非常に残念 -- 2012-06-07 11 46 36 レベル高いなこの作品 ダブスタも、結局は双方が幸せになるためのものだしいいと思うのよ -- 2013-03-23 18 29 58 人間とゆっくりは別の生き物だからいくら仲良くしたってしょせんは分かり合えないっいう主人公の結論は悲しい答えだけどなるほどなぁ~と素直に納得出来る…それなのにどぼじでざいごのざいごに作品テーマをぶち壊すようなごどずるのぉぉぉぉ~!!これがギャグ作品だったら普通に笑えたをだけどシリアルさんだったから笑えないでしょおおお!主人公の分かり合えないは結局分かり合えない(笑)だったってことぉぉぉ~!?ゆがぁ~こんなのゆっくりできないぃぃぃ! -- 2013-06-06 19 14 42 これがほんとうの「だそく」ってやつなんだねーわかるよー -- 2013-07-17 13 40 10 どうしてまりさしんじゃうの…理解できてなかったでござる -- 2014-01-02 03 52 16 突然のきめぇ丸登場こそ作者さんの力量を示していると思うよ 強引にでも落とさないとあまりに救いがないSSになってしまったはず -- 2014-03-08 03 19 31 いやぁ、これは最低のオチだろう 素晴らしい作品だと思っていたのが終盤のお兄さんの心境ばりに冷めたぞ -- 2014-03-29 02 16 47 このSSのテーマをなんと読むかなんだろうか、ラストの扱い 人間のトラウマの扉を開けた愚かなゆっくりの描写がメインテーマだと思って読んだら最低の結末だとか最悪とか平気で言えそう でも作者さんは「ゆっくりに期待をかけることもできる一方、ゆっくりを殺しまくることもできる」人間のダブスタ・矛盾を描きたかったんじゃないかいやっぱり そうじゃなきゃそもそもの「悲劇」の発端の必然性もわからなくなる気がするよー -- 2014-04-21 15 14 34 あのアリスがいなければオチに納得出来た 質の高いゆっくりが気に入るならあのアリスも気に入るんじゃないのかな? -- 2019-03-15 01 49 10
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フエトのための 「祭りはもう終わりか」 問いかけた少年の声に、わたしは「うん」と答えた。 「あっという間だったね。こういうの……、味気ないっていうか……」 「うん」 わたしは繰り返した。 遠くの方でかがり火が燃える音がする。 もうすぐ消えてしまう、弱々しい音だ。 さっきまではあって、今はないもの。 祭りの後の空気。 「僕でさえ一瞬、信じそうになった。奇蹟ってヤツを。 ……それくらい、綺麗な景色だった。あんなにも人のこと、嫌いだと思ってたのに」 「なんだ、ちゃんと見てたんだ。歌声は聞こえてたから、いるのはわかってたけど」 強がったように言うと、少年はバツが悪そうに、 「別に心配で見に来たわけじゃないぜ? ただ、あんまり人が集まらないんじゃ可哀想だろ?慰めるくらいはしてやろうと思ってさ」 「……ありがと」 つぶやくと、少年は顔を背けた。 暗闇が隠していても、なんとなくその表情は想像できる。 「それにしても、静かすぎるよな。 まるで何も起こらなかったみたいだ」 空の上の風の音を聞きながら、再び、彼は口を開いた。 「たぶん、あいつらだってすぐに忘れちゃうな。持ち上げるだけ持ち上げてさ。 あーあ。やっぱり無駄なことだったんじゃないかなぁ……」 わたしには彼の言うことがとてもよく理解できた。 森の星空のステージ。 わたしは歌った。歌声は集まった人々の熱と一緒に、空に吸い込まれるように消えていった。 「うん」と、三度目の返事。 「知ってたけど。本当は……記憶になんか残らないんだよ」 なんとなく思ったことを、そのまま口にしていた。 「ふぅん……」 少年の目に、訝しそうな光が浮かんだ。 驚いたのが素直に出てしまった、そんな口調だった。 「どういうこと?」 「どういうこと?」 人々が散り散りになっていくのを感じる。 小さくなる雑踏が夜空に反射しているかのように。 星空は透き通っていて、すべてを包み込むように大きくて、とても綺麗だ。 「理解して欲しくて、歌ったんじゃないのか?」 わたしは首を振った。 短い髪とリボンが揺れた。 「何も考えてなかった。歌ってるときは。それが本当のことだった」 わたしは大きく息を吸ってみた。 冷たい空気。感じるのは共振。自分の存在を信じられるだけの重さ。 「ただ、それだけだから、記憶には残らない。わたしだって、きっと……」 「俺は嫌だな。ただ、望まれた詩を歌うだけの人形なんて。寂しいだろ、そんなの」 「寂しくはないわ」 ふてくされた彼の声に、わたしは笑顔で答えた。 「それは、わたしたちが空気や水のようになるということだから」
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And criticizing moral tone generated, that acuses it is "disregard to human life" and "Kamikaze pilots were pitiful war victim". 本当にそうだったのでしょうか? Is that the truth? (第二案)Do you really think so? 【確定】Is that true? これから皆さんにお話しすることは、ありのままの特攻隊員の姿、真実の歴史です。 These tales are figures of genuine Kamikaze pilot and their real history. ニミッツ海軍元帥 (米太平洋艦隊司令官) Fleet Admiral Nimitz (Commander in Chief, U.S. Pacific Fleet) 沖縄作戦で我が海軍がこうむった損害は、戦争中のどの海戦よりも、はるかに大きかった。 Our damage suffered from Okinawa gambit is the hardest than any other naval combat during times of war. 沈没30隻、損傷300隻、9千人以上が死亡・行方不明または負傷した。 Wrecked ships were 30, damaged ones were 300, and more than 9,000 people were dead, missed, and injured. この大損害は、主として日本の航空攻撃、特に特攻攻撃によるものであった。 This great damage was brought down by mainly Japanese air attack, especially by suiside attack. ベイツ海軍中佐(駆逐艦艦長) Commander Bates, US Navy (Commanding Officer of a destroyer) 我々は、あらかじめ日本空軍は手強いということは知っていたが、こんなにやるとは思わなかった。 We didn t count on Japanese terrible struggle although we had already known Japanese air force is formidable. RLウェアマイスター海軍中尉 Lieutenant JG R.L. Wearmeister, US Navy 日本が失った飛行機の12%で、米損傷艦艇の約77%、米海軍人員の死傷者中、約80%をやっつけたことになる。 Only 12% of airplane Japan lost destroyed apploximately 77% of US damaged warship and approximately 80% of casualty of US navy. すばらしい戦果といえよう。 This is marvelous result of the war. もし神風攻撃がなかったら、アメリカの空母は自由に日本本土の基地や工場を破壊することができたはずである。 If there is not Kamikaze attack, US aircraft carrier must have been able to freely destroy Japanese homeland s basement and industory. アンドレ・マルロー (フランスの作家、文化大臣) André Malraux (French author, Minister of Culture) 母や姉や妻の命が危険にさらされている時、自分が殺られると承知で暴漢に立ち向かうのが、息子の、弟の、夫の道である。 When his mother, sister, and wife is being exposed to any danger, he tackles with being fully aware that he is going to die. This is "the way" of son, brother, and husband. 愛する者が殺られるのを、黙って見過ごせるものだろうか? Can you silently overlook your loved ones being killed? マルコム・マクガバン(米海軍大尉) Lieutenant Malcolm McGovern, US Navy 我々の空母の飛行甲板を貫いたこの男は、私より立派だ。 This man is greater than me. He broke through our aircaft caerrier s flight deck. 【確定】(第二案)Greater than me is this man who broke through our aircraft carrier s flight deck. 私には、とうていこのようなことはできない。 I dare not be able to do such a thing. アイヴァン・モリス (イギリスの日本史家) Ivan Morris (English historian of Japan) 神風特攻隊員たちの心の中には、敵への憎悪、復讐心がほとんどなかった。 There are hardly hatred and vengeful thoughts to enemy in the heart of Kamikaze pilots. 彼らは、外国がもたらす汚れから日本の清らかな土地を守るため、また家族を防衛するため、生命を捧げる義務があると、遺書に書き残している。 They wrote in their will that they are obligated to offer a life in order to protect clean land of Japan from the dirt which a foreign country brings about, and in order to defend their family. 彼らの遺書からは、敵兵に対する憎悪や、西洋人への人種的敵意が出てこない。 From their farewell notes, one cannot find hatred against enemy soldiers nor racial hostility to Westerners. むしろ、誕生してからこれまでに与えられた数々の恩に報いなければという、責任感や「報恩」の決意が前面にあらわれている。 Rather, determinations such as responsibility and gratitude that they must repay numerous obligations for kindness given so far after being born are appearing in front. 特攻隊員たちの遺書 The farewell note of Kamikaze pilots 【確定】The will of Kamikaze pilots 母上様、幸光の戦死の報を知っても、決して泣いてはなりません。 Mother, never cry even if you knew Sachiyuki s death in action. 靖国で待っています。 I will wait for you at Yasukuni shrine. きっと来て下さるでしょうね。 I am sure you come. 私がやらなければ、父様母様が死んでしまう。 If I don t do it, Father and Mother would die. 否日本国が大変な事になる。 Rather, Japan gets into trouble. 幸光は誰にも負けずきっとやります。 Satiyuki inevitably fulfills as bravely as the next person. 富澤幸光 中尉(23歳) Sachiyuki Tomizawa, Lieutenant 23 years old. お前が大きくなって、父に会ひたい時は、九段へいらっしゃい。 Come to Kudan when you grow up and want to see your father. そして、心に深く念ずれば、必ずお父様のお顔がお前の心の中に浮びますよ。 And if you deeply think of me, Father’s face will appear in your mind. 素子が生まれた時におもちゃにしていた人形は、お父さんが頂いて、自分の飛行機にお守りにして居ります。 The doll Yasuko played with became talisman in my plane. だから素子はお父さんと一緒にいたわけです。 That is why Yasuko was with your father. 植村眞久 大尉(25歳) Lieutenant Masahisa Uemura なつかしい静ちゃん! Dear Shizu chan! おわかれの時がきました Time has come to say good bye. 兄ちゃんはいよいよ出げきします。 Your brother is going to attack the target. この手紙がとどくころは、沖なはの海に散つています。 When this letter reaches you, I will be in the sea of Okinawa. 思ひがけない父、母の死で、幼い静ちゃんを一人のこしていくのは、とてもかなしいのですが、ゆるして下さい。 Please forgive us. We feel extremely sorry for you, Shizu-chan that we left Shizu-chan alone due to sudden deaths of your father and mother. もうプロペラがまはつています。 Propellers are turning. さあ、出げきです。 Time to go. では兄ちゃんは征きます。 Your brother is going. 泣くなよ静ちゃん。がんばれ! Don t cry, Shizu chan. Fight it out! 大石清 伍長(11歳の妹への遺書) Corporal Kiyoshi Ooishi (will to his 11-year old sister) 特攻隊 元搭乗員の証言 Testimony by ex-kamikaze pilot 特攻は、国民全体を救おうとする、我々の決意のあらわれだった。 Kamikaze attack was the representation of our determination to save the entire nation. それは「大いなるものに命を捧げる愛」の行動である。 That is an action of “love that offers a life to the Great”. 多くの人々の生命を救う、至上の博愛なのである。 It is supreme philanthropy that saves many people s lives. 人命の軽視どころか、比類の無いほど他に尽くす「人命の尊重」だった。 It was unparalleled "respect of the human life" serving for others instead of disrecpecting a human life. 「自分さえよければ」というエゴイストには、特攻はできることではない。 Self-centered egoists cannot do Kamikaze attack.
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鎌田浩毅 『京大人気講義 生き抜くための地震学』 ちくま新書 2013.3 p.160 (1)外出時常備携帯品 東京出張時の携帯品(ちょっとおしゃれなリュックサックの中に常備):500mlの水、食べ物(スティク型の羊羹)、ポケットライト(携帯ペンライト)、帽子、手袋 p.160 徒歩で移動するので、勤務先のロッカーに、スニーカーなどを入れておく。週刊誌を頭にかざし、ビルからのガラスを防ぐ。日差しは帽子。手袋か軍手も必需品。懐中電灯と携帯ラジオ(手回し発電のもの) p.163 企業や学校での準備 飲料水と食糧(全従業員、全生徒の3日分)、楽品、電池、コーヒー用の砂糖はコンパクト。 トイレ(水洗便所使えず):尿を吸収する高分子繊維など p.164 安否確認の方法 (1)NTTの災害用伝言ダイヤル:171(イナイ)+メッセージ+自宅の電話番号。171+自宅番号→メッセージ再生。なお、公衆電話で優先的に回線が確保される。 (2)各携帯会社の震災用伝言板:メッセージ(?)入力や100字コメント (3)Googleのパーソンファインダー:名前を入力して安否情報を登録・確認 p.171 家庭で準備する防災用具 (1)必需品1:即死回避グッズ:玄関や子供部屋のそばの壁にかけておく 寝室には家具を置かない。置くなら確実に固定する。鉄製の突っ張り棒と家具の下に差し込むストッパーを併用すれば、L型家具とほぼ同じ効果が得られる。 (2)必需品2:一次持ち出し品(リュックなどに入れて保管)1日分が目安 ヘルメット(防災ずきん)、マスク、ゴーグル、食料(乾パンなど)、水(ひとり3リットル)、携帯ラジオ、救急キット、現金、懐中電灯、コップ、預金通帳や保障証のコピー、雨具、ナイフ、ポリ袋(「震災マニュアル」) (3)必需品3:二次持ち出し日:3日分、コンテナなどに入れて保管 食料(インスタントラーメン、レトルト食品、缶詰など)、水(ひとり9リットル・保存期限の長いもの)、鍋、食器(アルミ容器や紙皿など)、ガスコンロ、ライター、ろうそく、乾電池、トイレットペーパー、防寒着、毛布(か寝袋)、下着、印鑑、その他(生理用品、おむつなど) キャンプ用品(卓上コンロ、ガスポンべ、固形燃料、簡易食器)、下着類、靴下、防寒用の毛布、軍手、雨具、カイロ 携帯ラジオと電池(手回し充電ラジオ)、懐中電灯、ろうそく、マッチ (4)必需品4:避難生活対応品:2週間分 水と食料。簡易ガスコンロ(マッチやライターなしで使える)、布製粘着テープ(油性マジックでメモ、ガラスの破片をとる)、食品用のラップ(水不足のとき食器に使う。余った食品の保存) 梱包用のひも、風呂敷、ダンボールは居場所の確保、防寒 自宅が被災した場合:キャンプ用品が役に立つ(テント、寝袋、バーベキュー用品一式) ロープ・ビニールシート・雨具、ナイフ、ハサミ、タオルはさまざまに 折りたたみポリタンクは給水車から飲料水をもらうのに便利 携帯用トイレ、紙袋、ビニール袋などの予備 避難・救助用品:ナイフ、ロープ、シャベル、バール、ノコギリ、ハンマー等の工具 p.180 防災グッズ本 『地震イツモノート』(県立 8F369.3シ 市立)、4コマですぐわかるみんなの防災ハンドブック、地震わが家のお助けノート、大震災サバイバルハンドブック、女性のための防災BOOK(県立)、身近なもので生き延びろ(7FB369.3ニ) サバイバルグッズは登山用がもっとも優れている。モンベル社「浮くっしょん」は日常は座布団で、津波時はライフジャケット 普段使いを防災グッズにするため、アウトドア用品を防寒具、雨具、下着などに利用している。 p.181 企業の事業継続計画(Business Continuity Plan) 緒方順一ほかBCP<事業継続計画>入門、昆正和・あなたが作るやさしいBCP 第2版(県立) p.223 減災実現のために 1年単位のスケジュールに減災活動を入れる(土手の花見) 10年スケール災害対応:毎年どこかで起きている 100年スケール災害対応:「稲むらの火」のような伝説 濱口梧陵(私財で防波堤) 東日本大震災:森の防波堤 関東大震災:瓦礫を埋めて山下公園をつくった 第2次世界大戦後のベルリン:瓦礫などを埋めて公園を再建
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既に動いている活動 纏めWIKIを作る。国会議員や各種労働・経済・業界団体、デモ、連絡先などの評価と纏め(選挙にいこう!)。 2ch、mixi、その他団体など日本国民を主権者とする立場の有志で超党派の団体を作る。(ネットでまとまり政治を動かそう) 大規模オフ板にスレ立て。(政治を正常化させる為の総合活動オフ) チャットを設け定例会議をする。(毎週日曜夜十時より定例チャットhttp //rent.kanichat.com/rent.cgi?room=seijigiron) 活動案・議論 (発起人の提案) 2CH、MIXI、その他諸々、この国の主権者は日本国民という立場の有志で、党としての骨格を作る(但し、4年限りの時限政党) 骨格が出来たら具体的に公布活動、党員募集、農業・地方・派遣者等様々な勢力から協力を求める わずかに残っている国会議員でまともな人間に協力を求める。出来れば平沼氏を顔役に迎える。 選挙で勢力を握り、正しい選挙が行われる為の選挙制度改革。経済も応急的な処置を行う(消費税廃止、国債一部に地銀引き受け等)。 4年後解党 それぞれの党員 及び新たに育った勢力が互いのイデオロギーを戦わせ、国民が正しく政治を監視する選挙を実行させる (スレッドでの提案) ネット上の政治に関わりのあるスレッド、コミュに参加、宣伝する。携帯用HPを作る。 会計は最重要課題で、信用の置ける税理士に頼むのが最良。 専門書物、論文、海外のデータを引用、紹介、纏め、翻訳。 ネット献金や政治活動についての具体的取り纏め、システム作り、議論。 4年で解党はなし。 既存政党、議員、落選候補、十年前の供託金値上げで活動停止に追いやられた団体の吟味、評価、連絡。 選挙出馬における高額な供託金を憲法第44条違反として訴訟を起こす。諸外国における供託金額の設定基準やその基準の決まった背景をwikiにまとめる。 ブログを書く。 選挙wikiのスレを議員・選挙板に立てる。 圧力団体を目指す(直接議員を送り出す方がはやいのではないか) 議員にFAXを送り嘆願、指南する。 宣伝用テンプレ 宣伝失礼します。日々の暮らしを守る為に、出来る事少しづつ協力おねがいします。 国民主権の下の自由民主主義を守り、日本国民とその子孫一人一人が幸福を享受出来る社会を創る この理念の為に国民一人一人が出来る事をやっていこう という協議式のスレです。 今の所 議員・政策WIKI作り コミュ 政策議論 選挙制度に対する訴訟 比例区で出せる政党作り 各少数勢力の合流 政策議論では主に ・増税すればするほど増える仕組みの日本の国債を正しく処理する方法 ・欧米の100倍以上の供託金等で新規参入を阻止する選挙制度改革 ・人権擁護法案、外国人参政権等 国民主権を大きく脅かす法案に対する対策 こういった物を話し合ってます。よろしければ参加お願いします。 政治を正常化させる為の総合活動スレ(3) http //namidame.2ch.net/test/read.cgi/seiji/1230291756/l50 ご意見 名前 コメント
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オリーブオイルのためのお皿 2008年10月2日 (木) Canon EOS Kiss Digital 2008/10/02 08 46 48 ラ・クッチーナ・フェリーチェ青山で見つけた、オリーブオイル専用皿。 真ん中に向かってオリーブオイルの色が濃く見えるグラデーションが素敵。 パンはお気に入り、三宿のシニフィアン・シニフィエのもの。 パンを食べる時に、私の場合、最初はオリーブオイルだけで食べます。 その次に、美味しいお塩をちょっと入れて食べます。 最後に、粉チーズ(パルミジャーノレジャーノなど)を入れて食べます。 パンの食べ方はさまざまありますが、普段バターやジャムしかつけていない人にオリーブオイルをつける食べ方を教えてあげると、斬新な美味しさにびっくりされます。 フレンチレストランやイタリアンレストランでは、パンと共にオリーブオイルが入った小皿が出てきますからご存じの方は多いでしょうが、オウチでこの食べ方をされている人は少ないみたい。 バターが品薄で高価な今だからこそ、パンにはオリーブオイル!がおススメです。 おいしいもの かなえキッチン : ごはん日記 2008年10月
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KETpicをはじめるための準備をしましょう。 授業で配布するプリントの数式やグラフ,図で困ったことがある先生はたくさんいらっしゃるのではないかと思います。 ここで紹介するKETpicは,プリントで用いる数式やグラフ,図を、LaTeX上で美しく表現してくれます。 中間考査や期末考査も美しい仕上がりです。 最初のうち、LaTeXの使い方やKETpicの使い方で,戸惑う先生がいらっしゃるかもしれませんが、順を追っていけば必ずKETpicの使い手になると思います。 まずは初心者ページを参照してください. 作図を伴うデータの作り方に慣れましょう。 KETpic特有の命令文に慣れましょう。 (1) 関数 のグラフを描く→ G=Plotdata("x^2-3x+1",x); (2) 中心,半径4の円を描く→ Cir=Circledata((-2,3),4); (3) 点と点を結ぶ→ G=Listplot ((1,2),(3,4) ); (4) 点A,点Bを定義する→ A=(1,2),B=(3,4); (5) 点Aと点Bを結ぶ→ G=Listplot(A,B); (6) 点Aを中心とする半径の円→ Cir=Circledata(A,sqrt(3)); などありますが、少しずつKETpicのコマンドに慣れて下さい。 Scilabにおける他のコマンドについては、下記にKETpicコマンドレファレンスとしてまとめました。 ご参考にして下さい。 次に、ScilabのSciNotesで簡単なプログラミングを書いてみましょう。 ScilabのSciNotesを使ってグラフや図を描いてみましょう。 ScilabのScinoteについては、.sceによるプログラミング「sceファイルを作りましょう」ページを参照して下さい。 ★例1 KETpicを用いて、3次関数 のグラフを描いてみましょう。 プログラミング****** Ketlib=lib("/Users/****/Desktop/texfiles/ketpicsciL5/"); ← ketpic ライブラリを読み込む。****の部分は各人で異なります cd("/Users/****/Desktop/texfiles"); ←作業フォルダc /work に移動する。****の部分は各人で異なります Ketinit(); ← ketpic 使用のため変数を初期化する。 Setwindow([-3,3],[-2,3]); ← グラフや図を表示する範囲を指定する。 G1=Plotdata("(x+2)*(x-2)*(x-1)/3","x"); ← Plotdata関数を使ってグラフをG1として指定します。 Windisp(G1) ← ディスプレイ上に、G1を描きます。↓下の3jikansu.pshttp //www55.atwiki.jp/ketpic?cmd=upload&act=open&pageid=10&file=3jikansu.pのようになります。 ★例2 KETpicを用いて、 直線と3円,, を描いてみましょう。 プログラミング****** Ketlib=lib("/Users/****/Desktop/texfiles/ketpicsciL5/"); ← ketpic ライブラリを読み込む。****の部分は各人で異なります cd("/Users/****/Desktop/texfiles"); ←作業フォルダc /work に移動する。****の部分は各人で異なります Ketinit(); ← ketpic 使用のため変数を初期化する。 Setwindow([-9,54],[-1,36]); ← グラフや図を表示する範囲を指定する。 G=Listplot([-4,0],[36,0]); ← 点(-4,0)と点(36,0) を直線で結ぶ。 Cir1=Circledata([0,4.5],4.5); ← 点(0,4.5) を中心とする半径4.5の円をCir1として指定する。 Cir2=Circledata([6,2],2); ← 点(6,2) を中心とする半径2の円をCir2として指定する。 Cir3=Circledata([18,18],18); ← 点(18,18) を中心とする半径18の円をCir3として指定する。 Windisp(G,Cir1,Cir2,Cir3); ← ディスプレイ上に、直線G,円Cir1,円Cir2,円Cir3 を描きます。↓下のen tyokusen.psのようになります。
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まりさのものは俺のもの・後 53KB 虐待-普通 自業自得 家族崩壊 透明な箱 幻想郷 「今はまりさがゆっくりできる時代なんだ!」 俺はまりさに無理難題を突きつけた。 しかも、まりさがお菓子を返すならすべてを元に戻すとまで言った。 当然不可能だ。俺は神ではないから、死んだゆっくりを生き返らしたり、まりさの顔を元に戻すこともできない。 あんなのは口約束だ。 そもそも、まりさがおはぎを返すことなど絶対にできない。 だが、まりさは「元に戻す」という言葉に希望を持ったようだ。 「ゆげぇっ! ゆげっ! ゆげぼっ! ゆぼぶぶぶぶぶっ!」 まりさはいきなり奇妙な顔をすると、何と吐き始めた。 「ゆげええええっ! おかしさん! おかしさん! きいておかしさん! はやくでてきて! でてきてよおお! ゆぼおおっ! どうじでででごないのおおお! ででぎでよおお! まりざのおぐぢがらおがじざんででぎでよおおお!」 めちゃくちゃなことをしている。 とっくの昔に消化されたおはぎが、今更奇跡のように口から出てくるわけがない。 しかし、まりさとしてはもうこれしか俺を追い払う方法が思いつかないのだろう。 必死に体をぐにゃぐにゃ動かし、腹部に圧力をかけている。 まりさは世にも気色悪い顔をして、口からなおも餡子を吐く。 「おげええええっ! えおげええええっ! おがしさん! おがじざああああん! いじわるじないでででぎでええええ! はやぐ! はやぐ! はやぐうううううう!! まりざのおくちにはいったでしょ! だからはやくでてぎでよおおお!」 吐く度にものすごい苦しみがまりさを襲うらしく、まりさの顔は見る見るうちにひどいものになる。 それでも、口から吐き戻されるのは汚い餡子だけであり、おはぎではない。 「ないよおお! おかしなんてないよおおお! やだあ! もうやだああ! ゆわああああああん! もうやだよおおお!!」 とうとうまりさはわんわん泣き始めた。 餡子を吐くことで少しは体力を消費したかと思ったが、まだまだ元気いっぱいではないか。 俺がこうまで執拗なのは、こいつが一度も謝らないからだ。 ここまでやったからには、謝るまでやってみたくなる。 ……もう、俺の感覚は正常ではなかった。 「楽しかったよ! もっとやらせてね!」 まりさの口調を意地悪く真似ると、まりさは恨めしそうな目でこちらを見てからまた泣き出す。 俺はまりさの横をすり抜け、用意していたスコップをこいつの家に突っ込んだ。 巣穴はなかなか大きく、スコップが十分入る。 奥行きもそれなりにあり、俺はひざを屈めなければならなかった。 先端が壁に当たり、俺はスコップを使って巣の中にあるものを掻き出した。 「な、なにしてるのおおおおお! にんげんさん! やめてええええええ!」 「やめてください! そこはれいむたちのおうちなんです! だいじなおうちなんですうううう!」 親れいむと親まりさが血相を変えて跳ねてきた。 俺は構わず、もう一度スコップを中に突っ込む。 まだまだ中にはいろいろあるようだ。一度で掻き出すことはできない。 俺は二匹を無視し、その後も数回スコップを巣に入れて中身を地上に引きずり出した。 「あああ……ひどいよお………まりさたちのおふとんが……おさらが……ひどいよお……にんげんさんひどいよお……」 「どうして……どうしてこんなことするのお………れいむたち……にんげんさんにめいわくかけないようにしてきたのに…………」 ようやく巣穴を空っぽにし、俺は一息ついて戦利品を眺めた。 布団、皿、と親まりさが呟いていたが、確かにそれらしきものが巣から出てきた。 鳥の羽毛と藁を丁寧に組み合わせた籠のようなものが、恐らくベッドだろう。 ゆっくりが作ったものにしては、信じがたいほど精巧な品だ。 皿は葉を折って作ってある。これも丁寧に作ってある。 それ以外のものもたくさんある。 平たく磨かれた石は、多分テーブルだ。ここに皿や食事を並べるのだろう。 乾燥した虫やドライフルーツ、野草の類は保存食で間違いない。 それ以外にはセミの抜け殻、ビールの王冠、ビー玉や壊れた懐中時計まで出てきた。 「やめてええ! それまりさの! みんなの! みんなのごはんだよ! みんなでむーしゃむーしゃしたくてあつめたんだよ!」 俺のしたことにようやく気づいて、まりさがまたうるさくわめき始めた。 つくづく、このまりさのスタミナには驚かされる。 「まりさのたからもの! だいじなだいじなたからものなの! さわらないで! いっしょうけんめいあつめたの! まりさのだよ! まりさのだからね! とらないでね! かってにまりさのたからものをおにいさんのものにしないで!!」 騒ぐまりさの声を俺は聞いたが、だからといって譲歩する理由はない。 「何を言ってるんだ。まりさだって、勝手に俺のものを自分のものにしたじゃないか。忘れたわけじゃないだろ。 だから、俺だって勝手に君のものを自分のものにするよ。勝手に、全部燃やしてあげるよ」 俺は懐からマッチ箱を取り出し、マッチを擦るとまりさたちの食事と家財と宝物の山に投げた。 マッチは弧を描いて飛び、丁度あの素晴らしい出来のベッドに落ちた。 乾燥した草と羽毛だ。これ以上はない可燃性の素材である。 「やめてえええええええええええ!! まりさのだいじなたからものおおおおおおおおお!!」 「やめてえええ! やめてくださいいい! おねがいですからあああ!」 「あああああああ! もやさないで! もやさないでええええ!」 一瞬で火に包まれたベッド。 さらに火勢が強まるのを見た三匹は、いっせいに飛びかかった。 点火した俺ではなく、今まさに火によって失われようとしている大事なもの目がけてだ。 「危ないよ。火傷したらどうするんだい」 俺はスコップで両親を軽くはじき飛ばした。 「ぶぶべっ!」 「ゆぎゅお!」 そこそこ重量があるはずの二匹は、あっさりと吹っ飛んで木に頭をぶつける。 親まりさと親れいむは殺す必要はない。 むしろ、ここで死んでもらったら困る。 「ああ……ゆああ………いっしょうけんめいあつめたごはんが……ごはんがあ………もえちゃうよお…………」 「ゆうう……どうして……ありすにつくってもらったおふとんが……すごくゆっくりしてたのに……ひどいよお……」 荒事が苦手なゆっくりだが、この両親は輪をかけて争いが苦手と見える。 人間と自分たちの力の差をはっきり理解できているからか。 両親は一度殴られただけで闘争心がゼロになったらしく、遠巻きに悲しそうに燃える火を見ている。 「ゆーしょ! ゆーしょ! きれいないしさん! きれいないしさん! どこなの! ゆっくりしてないででてきてねえ!」 分からないのはまりさだけだ。 まりさは火の恐怖に半泣きになりながらも、まだ燃えていないところに顔を突っ込んだ。 ご飯やベッドには目をもくれず、自分の宝物だけを持ち出すつもりだ。 「あぢゅいいいい! あぢゅいよお! いしさんはやくでてきて! どこなの! どこなのおおお!」 舌で掻き分けるものだから、火が触れてまりさは火傷した。 熱さで涙を流しながら、まりさはなおも自分の宝物だけを探す。 「あったよ! あったよおおおお! きれいないしさん! ゆっくりでてきてくれてありがとうね!」 まりさは火の中でそれを見つけて、慌てて口の中に放り込んだ。 きれいな石とは、ビー玉のことだ。 落ちていたのを拾って、大事に取っておいたのだろう。 確かに、あの輝きは自然界の中にはない。 きっと、まりさにとって素敵な宝石だったのだろう。 口の中で転がしてつるんとした感触を楽しんだのだろうか。 それとも、光が当たって輝く様子を飽きずに眺めていたのだろうか。 「きれいないしさん! よかったね! まりさのだいじなたからものだよ! ぜったいになくさないからね!」 燃える家財と食事に背を向け、まりさは口からプッッとビー玉を吐き出した。 炎できらきら輝くそれを、まりさはうっとりとした顔で見つめている。 舌でつんつんとつついてみたり、ニコニコ笑って頬をくっつけてみたり、こいつの愛着は並々ならぬものだ。 「ずるいよ、まりさ。半分ちょうだいね」 俺は、スコップを振り上げるとまりさの目の前に全力で振り下ろした。 狙いはビー玉だ。 「ゆ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ゙っ゙っ゙!!」 「ごめんごめん。半分にするつもりだったけど、壊しちゃったよ。別にいいよね」 スコップは見事ビー玉に命中し、まりさの目の前でまりさの宝物はこっぱみじんに砕けた。 ガラスの破片が周囲に散弾のように飛び散る。 まりさは最初呆然としていたが、後に残った残骸を見て少しずつ理解したようだ。 大事な宝物は、なくなってしまった。 もう二度と、見ることも触ることもできない。 取り返すこともできない。 ばらばらに砕けてしまったのだから。 「ゆっ!! ゆうっ!! ゆぅえええええええええええん! ばびざのおおおおお! ばびぢゃのだびじなだがらぼのおおおおおお!! ひどいよおおおおおおお! ひどいよおおおおおおお! がえじでええ! ばりざのだがらものがえじでええええええ!!」 顔中を口にして、涙を滝のように流しまりさは号泣した。 その泣き方は、もしかすると自分の片目を失った時よりひどいかもしれない。 あの時は、肉体的な苦痛と恐怖の方が大きかった。 今回は、純粋に精神的な苦痛だ。 大事な宝物を、目の前で粉砕されたのだ。 「こんな家に住んでいてまりさはずるいね。だから、これももらうよ」 俺はそろそろ灰になりつつある、かつての家財と食事と宝物をスコップですくい上げた。 勢いを付けて、それらを家の中に放り込んでいく。 「やめてえええ! そんなことしたら! おうちが! まりさのおうちがなくなっちゃうよおお!」 「やめてください! やめてください! どうしてこんなことするの! どうしてええええ!」 再び両親が騒ぎ出す。 「ゆええええええええん! ゆあああああん! まりさのいしさん! いしさああああん! かえってきてよおおお! もとにもどってよおおおおお! おねがいだよおおお! まりさのいしさん! いしさあああん! だいじないしさあああん!」 対するまりさは、のんきにビー玉の破片を集めては泣いているだけだ。 あれでは、好きこのんでビー玉がなくなった悲しみを深めているだけだが。 破片を集めれば集めるほど、もう宝物が修復不可能であるという現実を突きつけられる。 そんなことも、まりさは分からないらしい。 燃えかすを全部放り込んでも、まだ巣穴は塞がらない。 少し肉体労働になるが、ここまで来たら乗りかかった船だ。 とことんまでやってやろうじゃないか。 俺は悪ノリに近い勢いで、スコップを地面に突き立てた。 土をすくっては、どんどん巣穴にぶち込んでいく。 しばらく、すすり泣く両親と泣きわめくまりさの声を聞きながら黙々と作業を進めた。 結果がこれだ。 「おうちが! まりさのおうち! おうちいいいいい! ないよ! なくなっちゃったよおおお!」 「ないよおお! なにもない! おうちも! ごはんも! れいむたちなにもなくなっちゃったあああ!」 「ゆえええん! ゆええん! まりさのおうちいいい! ゆっくりしてたのに! いっぱいむーしゃむーしゃしたのに! ないよおお! おうちがないよおお! おにいさんひどいよおお! まりさのおうちかえして! かえしてよおお!」 大木の根元には、穴などもはや空いていない。 俺はまりさたちの家を完全に住めないようにしてやった。 かつてのお家には、家財と食事と宝物の燃えかす、それにチビれいむとチビまりさの死体が埋まっている。 もう一度同じ場所に巣を作ろうとするならば、変わり果てたチビたちの死体を掘り起こすことになるだろう。 俺はそのことを丁寧に説明してやると、三匹はそろって涙を流した。 さて、これからが少々厄介だ。 とことんまでやってやる、とは思っているが、面倒なことになるだろう。 俺がまりさに、友達がどこに住んでいるのか聞こうとした。 「な、なんなのこれえええええ! まりさ! どうしたのおおお!?」 「まりさ! なんでないてるんだぜ! それにまりさのおとうさんとおかあさんも!」 「まりさのおうちがなくなってるわ! どういうことなの?」 「み…みんな……みんなああああああ! ゆわあああああん! まりさこわかったよおおおお!!」 俺が振り向くと、そこにはまりさとほぼ同じサイズのゆっくりが三匹そろっていた。 れいむ、まりさ、ありすという顔ぶれだ。明らかに、まりさの言っていた友達だろう。 遊びに誘ってきたのか、それともうるさくて不審に思って出てきたのか。 鴨が葱を背負ってきた。 まりさにとっては不幸だが、俺にとっては棚からぼた餅だ。 「みんなああ! おにいさんが! にんげんさんが! まりさをいじめるんだよおおおおお! ひどいよおおお! いもうとをころしちゃったよおおお! おうちも! ごはんも! まりさのたからものも! ぜんぶおにいさんがああああ! ひどいよおおお! まりさなにもわるいことしてないのに! おにいさんのおかしたべたかっただけなのにいいいい!」 こいつは妹たちが俺に惨殺されたことに、まったく懲りていないらしい。 今度は何と、自分の友達に泣きついた。 状況が分かっているのは、こいつの両親だけだ。 「おちびちゃんたち! ここはあぶないよ! かえりなさい! はやくおうちにかえって!」 「れいむたちはだいじょうぶだからね! ね? はやくかえって! あぶないからあああ!」 「やだよお! かえっちゃやだああ! まりさをひとりにしないで! しないでよおおお!」 真っ青な顔で、しきりに三匹を追い払おうとする親れいむと親まりさ。 しかし、親の必死の説得も分からず、まりさはめそめそ泣きながら友達にすがりつく。 友達を盾にするつもりなのか。 人間とゆっくりの力の差が、妹たちが死んでも分からないのか。 「わかったぜ! あんしんするんだぜ! まりさがまりさをいじめるにんげんさんをこらしめてやるんだぜ!」 「まりさだけじゃないわ! ありすもいっしょよ! いっしょにいなかもののにんげんさんをおいはらいましょう!」 「おいはらうだけじゃだめだよ! まりさをいじめたわるいにんげんさんだよ! ちゃんとあやまってもらうからね!」 「だめだよおおおお! やめて! にんげんさんにかなうわけないよおおおお!」 「かえって! かえってよおおおお! みんなしんじゃうよおおおおおお!」 「みんなあああああ! まりさうれしいよおおおお! たすけてくれてありがとう! ほんとうにありがとうね!」 俺を懲らしめてやると息巻くまりさの友達。 この上さらに死人を増やされてはたまらないと叫ぶ親れいむと親まりさ。 そして、さらなる捨て駒を手に入れて大喜びのまりさ。 たぶん、こいつは次々と襲いかかる不幸に頭が付いていかないのだろう。 どうすれば事態が好転するか考えるのではなく、ただ我が身の不幸を嘆くだけ。 だから、自分が事態をさらに悪化させていることに気づかない。 「ゆっ! ゆっ! にんげんさん! どうだぜ! まりさのたいあたりは! いたいのぜ? くるしいのぜ?」 一番槍はまりさだった。 気合いを入れて、まりさは俺の足に体当たりを始める。 先程のチビたちの体当たりに比べれば、かろうじて威力がある。 「まりさにつづくわ! ゆっ! ゆっ! ゆーっ! どう? にんげんさん! ありすのたいあたりはいたいでしょ!」 「れいむもやるよ! ゆっくりーっ! がんばろうね! にんげんさんはくるしんでるよ! いたがってるよ!」 「そうだぜ! ゆっ! まりさたちの! ゆっ! さいきょうのこうげきに! ゆっ! にんげんさんはいちころだぜ!」 ぽむぽむとコミカルな効果音と共に、三匹は体当たりを繰り返す。 しかし、こいつらはいったい何を言っているんだ? 俺が苦しんでる? 痛がってる? いちころ? どう見ても、俺は棒立ちに突っ立って、ダメージらしいダメージなど受けてないのに。 こいつらは、自分の空想を本当だと思い込んでいるのだろうか。 「がんばって! みんながんばって! おにいさんをやっつけて! まりさおうえんするよ! ゆっゆっゆ~♪ ゆゆゆ~♪ みんながんばって~♪ ゆっくりがんばって~♪ ゆっくりゆっくり~♪ にんげんさんなんかにまけないぞ~♪」 肝心のまりさは、友のために健気に奮闘する三匹の後ろで、即席の応援歌を歌っているだけだ。 自分も攻撃に加わろうともしない。 ぴょんぴょんと跳ねているこいつの顔には、悲壮感など何もなかった。 もうこれで勝負は決まった、と信じて疑わない。 「おにいさん! もうわかったよね! まりさたちはつよいんだよ! わかったらはやくぜんぶもとにもどしてね!」 「まりさ、そんなことどうでもいいからさ。この友達、全員俺がもらうからね」 俺はスコップを振り上げた。 両親の方を横目で見ると、二匹ともぎゅっと目をつぶっていた。 いい選択だ。 「しぶといわね! いなかもののくせに! ありすのほんきがみたぶびびぶっ!!」 振り下ろしたスコップは、ありすの正中線に突き刺さっていた。 ざっくりと刺さったそれは、きれいにありすを真っ二つにしている。 「ゆ?……ゆ?……ゆっ?……ゆ゙! ゆ゙! ゆ゙ゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔ!!」 ありすは目を白黒していたが、すぐに自分の体にスコップが突き刺さっていることが分かった。 体を切り裂く激痛に、ありすは跳ね回りたいのを必死で我慢している。 「とって! これとって! おねがい!」と目で訴えている。 俺はすぐに望み通りにしてやった。 スコップを引き抜く。 同時に、ありすの体は左右に分かれ、汚らしくカスタードクリームを垂れ流して地面に転がった。 ありすは初めて見る自分の断面を、見ているこちらもぞっとするような顔で見ていた。 口を何度かぱくぱくと動かし、最後にカスタードが混じった涙を流してから、ありすは息絶えた。 「あ! あでぃずうううううううう!!」 「ありぢゅがあああああああ!!」 「ゆっくり~♪ あ? え? ゆ? あ、ありすううううううう!?」 まずは脇にいたまりさとれいむが、そして最後にへたくそな歌を歌っていたまりさが友の死に絶叫した。 こいつらにとってまさかの出来事に、どいつも動きが停止する。 れいむの立ち直りが一番早かった。 この中で、もしかすると一番賢かったのかもしれない。 「ゆっくりしないでにげるよおおおおお! おうちにかえるううううう!」 まだ恐怖でわめいているまりさ二匹をあっさり見捨て、れいむは背を向けて跳ねようとした。 敵前逃亡か。 しかし、ゆっくりとしては賢明な行動になるだろう。 結果は変わらないのは仕方ないが。 「ばびゅゔぇ゙っ゙っ゙!」 体を折り曲げ、跳ねるための力を溜めている無防備な背中に、俺はスコップの平たい部分を振り下ろした。 上から叩きつける鈍器の一撃に、れいむはドラ焼きと見間違えるほどに平たく潰れる。 「ばぶっ! ぶぶばぅ! ばぎひっ!」 口と尻から餡子を吹き出してのたうつれいむに、俺は二度、三度、四度とスコップを叩きつける。 その度に、れいむは口から餡子を吹き、それは硬直するまりさの顔にかかった。 顔はこちらから見えないが、きっとれいむの顔は苦痛でぐちゃぐちゃだろう。 「ゆばっ……ばゆっ………だず……げ……で……びぶっ……ばり……ざ……だずげ……で…よ……」 もう呻くだけになったれいむに、俺はとどめのスコップを食らわした。 「ばっぼぉいいっ!」 れいむの体から餡子が出尽くし、小さく震えてから動かなくなった。 最後は、勇ましくも俺に一番最初に体当たりしたまりさだ。 まりさはすっかり怯えてしまい、足元にしーしーの水たまりを作って動けないでいる。 俺が微笑んでやると、まりさは露骨にこびへつらった顔をした。 「にんげんさん! まりさはたすけるんだぜ! まりさはわるくないんだぜ! まりさはこんなことほんとはしたくなかったんだぜ!」 何とかして殺さないでもらおうと、まりさはべらべらと喋り始めた。 命乞いは悪くないが、どうせするなら言葉をもっと選んで欲しいものだ。 「まりさをころすなら、あっちのまりさにするんだぜ! あっちのまりさが、ぜんぶわるいんだぜ!」 「まりさ? まりさああ? どうして? どうしてそんなこというの? ひどいよおおお!?」 まりさは俺の方に寝返るつもりだ。 にやにや笑いながら、俺にまりさを殺すよう言ってくる。 当然、友にそんなことを言われるとは思っていなかったまりさは目を剥いて驚いている。 「ともだちでしょ! ともだちだよねえ! なんで? なんでそんなこというの? まりさととおともだちでしょおおお!?」 「うるさいんだぜ! さっさとそのきたないくちをとじるんだぜ! このげす! くずゆっくり!」 「ゆ……ゆええええええん! ひどいよおおお! まりさのこと、おともだちだとおもってたのにいいいい!!」 「まりさはともだちだとおもったことなんかいちどもないんだぜ! おまえなんかはやくころされるといいぜ!」 こうすれば、俺に殺されないと思っているのだろう。 まりさは口汚く向こうのまりさを罵る。 向こうのまりさはまだ状況が分からず、突然の友の裏切りに涙を流してわめくだけだ。 俺はスコップを振り上げた。 「やっ! やだあっ! やめるんだぜ! やめるんだぜ! やだあ! やああああ! やぎゃげっ!」 首をぶんぶんと左右に振るまりさの顔に、スコップの先端を浅く刺す。 片方の目が潰れ、顔が半分陥没する。 「びぎゃ゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙! い゙ぢゃい゙! い゙ぢゃい゙い゙い゙い゙! あっ! やべでぇ! ぼうやべでえ! ぎゃげびゅっ!」 もう一度だ。 反対側の目が潰れ、顔が完全に歪む。 俺は黙々と同じことを繰り返した。 饅頭が潰れないように慎重に、少しずつまりさの顔と体を潰していく。 「ぎゅげぇっ! ぐぞおっ! おばえのっ! おばえのぜいだああ! おばえのぜいでばりざがじぬっ! ぐぞおおお! ぎゃぎゅっ! ぎいでるのがあああ! おばえぼじねえ! ありずもれいぶもっ! おばべのぜいでじんだんだあ! ばりざもっ! あぎゅうっ! あんごがっ! ばりざのあんごがでぢゃうっ! いやだあっ! じにだぐないっ! じにだぐないいいい!」 次第にまりさの叫び声は、突っ立って一部始終を見ているだけのまりさに向けられていった。 今では、俺など無視してまりさをひたすら呪っている。 気にせず俺はひたすらまりさを切り刻む。 「おばえのぜいだ……おばえの……ぜいだ……おばえが……わるいんだ……ゆ゙ゆ゙っ!……ゆ゙……ゆ゙……」 餡子と皮のミンチになった状態で、まりさはなおもまりさを恨んでいた。 餡子の中からそこだけぐにゃぐにゃと動く舌が、まりさを呪う言葉を吐く。 俺は最後にその舌を真っ二つに切り、まりさを殺した。 これで、こいつの友達も全部もらったことになる。 こいつの友達の「命」をもらったのだが。 「やめて……やめてよお………もう……とらないで……まりさのだいじなもの……とらないでよお……」 ようやく、まりさは察したのだろう。 俺によって、まりさの大事なものが一切合切奪い取られたことが。 もうかわいい妹たちには会えない。 ゆっくりできたお家は土の下だ。 お気に入りの宝物は、目の前で粉々になった。 友達はみんな死んでしまった。 まりさに至っては、死ぬ前に自分を恨んでいた。 そして自分は、片目と髪の毛、それに歯を失った。 全部、俺のものにされて奪われていく。 「親がいるなんてまりさはずるいね。まりさのお父さんとお母さんも俺がもらうよ」 俺は涙をぽろぽろこぼしているまりさから、こいつの両親に顔を向けた。 「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! まりさたちがわるかったです! だからころさないでください!」 「れいむたちがわるいです! あやまります! あやまりますから! ころさないで! ころさないでえええ!」 「………ならば殺さないであげるけど、一つ聞くよ。君たちは誰のもの?」 「おにいざんのでず! ばりざはおにいざんのものでず! ばりざをおにいざんにあげまず!」 「れいぶもおにいざんのものでず! れいむのぜんぶ、おにいざんがもらっでぐだざい!」 「うん。その通りだ。君たちのものは全部、俺のものなんだよ。分かったかい?」 「はい! はいいいいい! ゆっぐりりがいじまじだああああ!」 「わかりまじだ! わがりまじだがら! おねがいだがらごろざないでえええええ!!」 跳びはねながら土下座する両親。 この二匹を殺す必要はない。 なぜなら、こいつらははっきりまりさの前で言ったのだ。 自分たちは、俺のものだと。 自分たちのものはすべて、俺のものだと。 それはつまり、こういうことだ。 「まりさ、お父さんとお母さんは、もうまりさのお父さんとお母さんじゃないんだよ。分かったか?」 「ゆっ? えっ? どうして? ねえどうして?」 まりさは目を丸くした。 嘘、とすぐ断じるつもりだっただろう。 だが、悲しそうに目を逸らす両親を見て、まりさは震え始めた。 最後の支えが、崩れようとしている。 「そんなことないよね? まりさはおとうさんのまりさだよ。おかあさんのまりさだよ。そうだよね! そうだよね! ねえ? なんでそうだっていってくれないの? ねえなんで? なんでなんでなんでええ? そうだっていってよおおおおお!!」 「ごめんね……ごめんね……ごめんねおちびちゃん…………」 「ごめんね……ほんとうにごめんね……もうだめなんだよ……おちびちゃん」 「やだああああ! そんなこといわないで! まりさだよ! かわいいまりさだよ! まりさはここにいるのにいい! まりさこれからどうすればいいの? まりさひとりぼっちだよ! そんなのやだよ! やだおおおおおおおお!!」 俺は、まりさから親まで奪った。 たとえ家がなくても、妹たちが死んでしまっても、親さえいればまだ救いはある。 悲しい時には慰めてもらえる。すりすりしてもらえる。ぺろぺろしてもらえる。 幼いまりさには、親さえいれば助けになるだろう。 だが、もはやまりさにはそれさえない。 「やだよおお! すてないで! すてないでよおおお! まりさいきてるよ! ゆっくりしてるよ! もっとゆっくりしたいよお! ゆっくりさせて! ゆっくりさせてよお! おとうさんとおかあさんといっしょにゆっくりさせてよおおおお!!」 「悲しむことはないよ、まりさ。だって、君は丸ごと両親のものから俺のものになったんだからね」 俺は、現実を受け入れられずに涙をぼろぼろこぼして泣くまりさを片手で持ち上げた。 もう片手で、その辺にあった尖った木の枝をつまむと、まりさの顔に突き刺す。 「いぢゃいいいいいい! いぢゃい! いぢゃいよおおおお! まりさいだいっ! いだいいい!」 「そうだね。痛いだろうね。もう一本刺すよ」 「やめてええええ! いたいよ! すごくいたいよおお! いぢゃいっ! いぢゃいいぢゃいいぢゃいいいい!」 弾力のある皮を貫いて、鋭い枝がまりさの体を貫く。 経験したことのない痛みに、まりさは必死になって体をよじる。 俺はさらに枝を刺す。 「いぢゃよおおお! まりさのおかおがいたいよおお! たすけてよお! おとうさああん! おかあさあああん! まりさいたいよ! すごくいたいよおおおお! たすけて! たすけてえええ! どうしてたすけてくれないの! たすけてよお!」 「見てごらん、まりさ。君がどんなに助けを求めても、お父さんもお母さんも助けに来ないよ。君はもう、両親の子どもじゃないからね」 意地悪く俺が言うと、まりさはもはや泣きすぎてふやけた顔で両親の方を向いた。 最後の救いを、一生懸命探しているのだろう。 まりさは、すすり泣きながら親まりさと親れいむにすがりつく。 「おとう……さん……おかあ……さん……。たすけてよ……まりさを……たすけて…………おねがい……たすけてよお……」 「ごめんね…ごめんねおちびちゃあん…………できないの。……おかあさんにはできないよお…………」 「にんげんさんに……まりさたちはかてないよ………。できないよ……ごめんね…ごめんね……」 親まりさと親れいむは、まりさの呼びかけに目をそらした。 まりさの助けを求める声を、切って捨てたのだ。 まりさの顔はその瞬間、生きる意欲さえ失った死んだゆっくりの顔のようだった。 「うそだ……うそだ……うそだああああああああ!! そんなの! そんなのひどいよ! ひどいよおおお! かえして! おにいさんかえして! まりさにかえして! いもうとも! おともだちも! おうちも! たからものも! ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶううううううううううう!! かえしてよおおお! まりさにかえして! かえしてえええ!!」 何かも奪われたまりさは絶叫する。 信じたくなくて、しかし現実は変化せず、まりさはもう絶望しかない。 絶望で死にたくないから、まりさは俺にすべてを元通りにするよう迫る。 聞くわけがない。 「返すわけないだろ。まりさのものは全部俺のものなんだから。君と同じように、欲しいって言えばすぐに手に入れられるんだ。 もちろん、君のお帽子もだ。まりさにはもったいないね。こんな帽子をかぶってまりさはずるいよ。俺がもらおう」 俺は絶望で顔を歪めたまりさから、最後の大事なものを取り上げた。 こいつの帽子だ。 手に取ると、屋外で生活しているゆっくりにしては汚れていない。 ほつれや染みもない。まりさがとても大事にしていたのが、人間の俺でも分かる。 さぞかし、これを自慢にしていたことだろう。 ぴんと尖った帽子を頭に乗せ、得意そうに庭を跳ねていたまりさの姿を思い出す。 「まりさのおぼうしいいい! かえして! かえして! すぐかえして!……おとうさん? おかあさん? どうしたの?」 帽子を取られたまりさは案の定わめき始めたが、不意に驚いた顔で向こうを向いた。 まりさと同じ表情をした両親がいる。 「おちび……ちゃん……どうしたの……そのあたま…………」 「ひどいよ……おちびちゃんのかみのけが……ないよ…………」 そこでようやくまりさは気づいたようだ。 自分の頭には、家族や友達に誉めてもらったきれいな金髪がもうないことに。 今やまりさの頭にはまばらに金髪が残っているだけで、帽子がなければただの禿饅頭だ。 中途半端に残っているのが、また無様だ。 「あ……ああ……やだやだやだああああああ! みないで! みないでえええ! まりさをみないで! みないでよおおお! みないでえええ! まりさのかみのけ! まりさのかみのけないの! ないのみちゃやだああああ! やだああああ!」 まりさは最も恥ずかしい自分の姿を見られたことで、声が嗄れるほど泣いた。 今日一日で、まりさはこれまで生きていた中で流した涙を上回る量の涙を流したに違いない。 顔をぐしゃぐしゃにして、まりさは無様な自分を見られたことで恥ずかしがる。 きっと、こいつとしてはもう死にたいくらいだろう。 「そうか、禿になったからまりさには帽子が必要か」 「そうだよ! おにいさんのせいだよ! ひどいよ! はやくかえして! まりさのすてきなゆっくりしたおぼうしさんかえしてよお!」 「いいよ。返してあげる。ほらっ……」 俺は、帽子をまりさの頭に返してやった。 「あ゙あ゙あ゙っ!!」 頭に帽子を乗っけたまりさの目は、限界まで大きく見開かれていた。 信じられない。信じたくない。 これだけは、どんなことがあっても信じたくなかった。 しかし、現実はまりさの願いとは裏腹に残酷なままだ。 「あ……あ……あ……まりさの……おぼうしさん……すてきなおぼうしさん……おぼうしさんが……おぼうしさんがあぁぁぁぁ……」 まりさの体がガタガタと震え始めた。 涙がぴたりと止まり、代わって全身から冷や汗らしきものが流れ出す。 よく分かるだろう。生まれた時から頭の上にあるものだから、ちょっとした違いでも分かるだろう。 ましてや、帽子の重さが半分になってしまったことぐらい、こいつはすぐに理解できるだろう。 そもそも、俺の手には引き裂いた帽子の半分が握られている。 「まりさが独り占めしてずるいから、半分もらったけどね」 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!! ばびぢゃ゙の゙じゅでぎな゙お゙びょゔぢぢゃんがあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」 無惨にもただの布きれになった帽子を頭に載せ、まりさは今までで一番の絶叫を張り上げた。 その声は極限まで高められた負の感情によって、耳を塞ぎたくなるほど濁っていた。 もう、まりさの精神は限界だった。 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!! ゆ゙ぎゃ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! あ゙あ゙あ゙あ゙っ゙!! ゆ゙がぎゃ゙ぐぎゃ゙げぎょ゙ぎょ゙げえ゙え゙え゙え゙え゙え゙!!」 俺の手の中で、まりさはでたらめな声を発しながら、よだれをまき散らし体を捻る。 その目には理性もなければ感情もない。 次々と襲いかかるストレスに、まりさの心は潰れてしまったのだろう。 何も分からず、ただひたすら積もりに積もった苦しみから逃れようと、まりさはわめき散らす。 「それじゃあ、もらっていくよ。まりさの素敵なゆん生は、全部俺のものだ」 「びゃびゃあああ! びゃっびゃあああああ! ゆっびぇえええええ!! ゆっゔぁあああああ!!」 何を言っても反応しないまりさを俺は手で持ち、森を後にした。 親れいむと親まりさは悲しそうな顔で俺を見ていたが、その場から一歩も動かなかった。 俺は庭に出て、透明な箱に向かった。 庭の隅っこの、一番日当たりが悪い場所にまりさを入れた透明な箱がある。 あれから、俺はこいつを飼っていた。 いや、飼うと言っても飼い主らしいことは何一つしていない。 単に、まりさを閉じ込めていた。 俺が近づいても、頭に半分になった帽子を乗せたまりさはまだ気づかない。 まりさはうつろな表情で、ずりずりと這っては透明な壁にぽよんとぶつかっている。 ぶつかった衝撃で後ろに転がると、再びずりずりと這って近づいてはぽよんとぶつかる。 いつもの行動だ。最初それを見た時、頭がかゆいのかと思ったがそうではない。 「だして…かべさん……まりさをだして………。おうちにかえりたいよ……まりさのおうち……おうちぃ……… だしてよぉ……かべさんいじわるしないでぇ……まりさをだしてよぉ……。おうちにかえって……いっぱいいっぱいゆっくりしたいよぉ……」 呆れたことに、まりさは壁を壊そうとしていたのだ。 あれは加工場で購入した透明な箱だ。ゆっくりの力で壊れるわけがない。 それでも、まりさはあきらめきれないらしく、一日の大部分を無意味な行動に費やしている。 「どうしてでられないのぉ……。ゆええん……ゆええん……。でたいよお……。おとうさんとおかあさんにあいたいよお……」 やがてスタミナが切れたらしく、まりさは箱の中でめそめそ泣き始めた。 その泣き声には、かつてのようなかん高く耳障りな音量はない。 今にも消え入りそうで、我が身の不幸をただ嘆くだけといった感じだ。 箱の中は俺が定期的に掃除するため、そんなに汚れていない。 隅に小さな皿を置き、トイレとして使わせている。 だが、ほかには何もない。 俺は餌を一日二回入れるだけで、後は何もしていない。 まりさの一日は涙と共に始まり、涙と共に終わる。 朝、目を覚まして楽しい夢が終わってしまったことを知り、まりさは泣く。 野菜の切れ端や生ゴミを食べながら、家族が誰もいないことでまりさは泣く。 暗い日陰から庭の草花や昆虫を見ながら、自分がそこに行けないゆえにまりさは泣く。 何度も壁に体当たりし、自由になれないことと腫れ上がった顔の痛さでまりさは泣く。 友達と遊んだ記憶を思い返しては、自分がひとりぼっちだという事実でまりさは泣く。 陽が傾き、今日も一日全然ゆっくりできなかったことでまりさは泣く。 温かいベッドも一緒に眠るゆっくりもいないで、冷たい床に一人で寝る寂しさに泣く。 眠れば、恐らく妹と友達が死に、親に捨てられる悪夢を見るのかやはりまりさは泣く。 四六時中観察しているわけではないが、つくづくまりさはよく泣いている。 泣く理由に事欠かないのは事実だが、この囚人のような生活にちっとも慣れないようだ。 それも無理はない。 目の前には庭が広がっている。 まりさが散歩した、自然の豊かなゆっくりプレイスがすぐ近くにある。 そこに行きたい。花のいい匂いを嗅いで、イモムシなどをお腹いっぱい食べたい。 それが終わったら、群のゆっくりたちの所に行きたい。 お父さんとお母さんともう一度一緒に暮らしたい。 新しい友達を作って、いつか誰かと祝福されながら結婚したい。 まりさの願いは、ゆっくりでなくても分かる。 だが、まりさの願いは叶わない。 今日もこうして、透明な箱の中で手の届かないユートピアを見ているだけだ。 まりさの顔は、かつてのような無邪気で輝いた表情を見せはしない。 いつも、半分死んでいるような、どんよりと暗い空虚な顔しか作らない。 俺は透明な箱に近づき、蓋を開けた。 生きる意欲のない目をしたまりさが、俺の方を見る。 「おにいさん……。だして。まりさを…ここから……だして。……おねがいだから、だしてよお…………」 語尾は震え、まりさは半分泣いていた。 俺は箱の中に野菜の切れ端を入れ、うんうんが入った皿を新しいものと取り替えて蓋を閉めた。 会話もせず、まるでまりさがいないかのように俺は振る舞う。 俺が背を向けると、まりさの泣き声が聞こえた。 「ぐすっ…ゆぐっ……ゆええん………むーしゃむーしゃ…するよ……ふしあわせぇ……ふしあわせぇぇぇ……」 森にいた時では味わえないおいしい野菜を食べていても、まりさは押し寄せる悲しみに疲れ切っていた。 これを、妹たちと一緒に食べられたら。 両親と一緒にむーしゃむーしゃできたら。 友達と一緒に分け合えたら。 今は、まりさはたった一人で食事をしなくてはならない。 寂しがりなゆっくりにとって、それはゆっくりと死んでいくのに等しい状況だろう。 毎日のように、親れいむと親まりさがこいつの様子を見に来た。 俺に何度も頭を下げて「おちびぢゃんをゆるじでぐだざい!」「おぢびぢゃんをがえじでぐだざい!」と頼んでいた。 俺が応じないでいると、その内あきらめたようだ。 俺が餌をやり終えて家に入ると、まりさのいる透明な箱に近づいては壁越しにすりすりしていた。 壁越しにお互いにぺろぺろしていることもあった。 だが、感触は最悪だろう。饅頭皮の柔らかさはなく、あるのは冷たく固い壁だけだ。 まりさはそれでも、両親との面会を心から楽しみにしていた。 たとえ壁越しでも両親に会える。 会話ができる。一緒にいることができる。 両親とまりさは、午前中から夕方になるまで一緒にいることさえあった。 しかし、徐々に親れいむと親まりさがこいつの元を訪ねることは少なくなっていった。 それに反比例して、二匹の体に傷が増えていった。 俺はその理由が分からなかったが、ついにある日両親は悲愴な顔付きでまりさに言った。 「ごめんね……。おちびちゃん、ほんとうにごめんね……。まりさたちは、ひっこすことにしたよ」 「もう……おちびちゃんにはあえないよ。おにいさんをおこらせないで、ゆっくりしていってね」 突然の引っ越しだった。 二匹は巣を俺によって潰されてもしばらく森で暮らしていたが、ついに別の森を目指して出ていくことにしたらしい。 まりさの騒ぎ方は尋常ではなかった。 「どうじでええええ! まりざごごにいるよ! どうじでばりざをおいでぐのおおおお!!」 「まりさのおともだちが……しんじゃったでしょ。だから、おともだちのおとうさんとおかあさんがすごくおこってるんだよ」 「こどもがしんだのは、おちびちゃんのせいだっていっておかあさんたちをいじめるんだよ。……もう、れいむはたえられないよ」 「そんな……そんなの……そんなのひどいよおおおおお!! まりさも! まりさもつれてって! おいてかないでえええ!」 「むりだよ。おとうさんたちは、おちびちゃんをたすけられないんだよ。ゆっくりりかいしてね」 どうやら、あの時俺が殺したまりさの友達の両親が、まりさを目の仇にしていたようだ。 この所急に増えた二匹の体の傷は、死んだ子どもの両親によるもので間違いないだろう。 まりさは今度こそ両親と会えなくなることが分かり、箱の中でめちゃくちゃに暴れた。 壁に体当たりしながら、まりさは泣き叫ぶ。 「やだああああ! やだああああ! おとうさん! おかあさん! まりさここにいるよ! ここにいるのにいいいいい!! いなくなっちゃやだあああ! まりさといっしょにいてよ! すーりすーりしてよ! ぺーろぺーろしてよおおおおお!!」 ついに、両親に我慢の限界が訪れた。 俺は、温厚そうな親れいむが怒るのを初めて見た。 「うるさいよ! そうやってじぶんでなにもしないでたよってばかり! れいむのおなかにはあかちゃんがいるんだよ!」 「そうだよ! あかちゃんのためにまりさたちはひっこすってきめたんだよ! そこでずっとひとりでゆっくりしていってね!」 「あああああああ! すてないでええ! すてないで! すてないで! まりさをわすれないでえええ! わすれちゃやだあああ! まりさかわいそうだよ! ひとりぼっちだよ! どうして! ねえどうして! どうしてまりさをすてるの! ひどいよおおおおお!」 新しい子どもたちのために、安全な場所に引っ越すのか。 そして、新しく子どもができたことで、今いるまりさを優先することがなくなったのか。 二匹は寄り添いながら、振り向きもせずに庭から出て行った。 後に残されたまりさは、その日一日声が嗄れるまでまで泣き続けていた。 次の日から、俺の庭は急に騒がしくなった。 やって来たのは、六匹のゆっくりだ。 明らかに、まりさの友達の両親だと分かる言動をしている。 それはこんなものだ。 「じねええ! このぐぞまりざああああ! おぢびじゃんがじんだのに、どうじでおまえだげいぎでるんだ! そくざにじねえええ!」 「ゆええええん! ゆえええええん! やめてよおお! こわいよおお! まりさをおこらないでよおおお!」 「おばえだげは! おばえだげはぜっだいゆるざない! ごろじでやる! ごろじでやるうう! このゆっぐりごろじいい!!」 「ちがうよ! ちがうよおおお! みんなをころしたのはおにいさんだよ! まりさじゃないよおおおお!」 「にんげんざんをおごらぜだのはおばえだろうがあああああああ!! おばえのぜいで! おばえのぜいでみんなじんだんだあああ!」 「ごろず! おばえがぞごがらでだらぜっだいごろじでやる! ごろじで! ごろじで! ゆっぐりゆっぐりごろじでやるがらなああああ!!」 六匹のゆっくりは箱を取り囲み、般若の形相で罵声を浴びせ、箱に体当たりを繰り返す。 その怒り方は正気とは思えない。 案外、両親たちは子どもが死んだことで気が触れたのかもしれない。 人間の俺でさえ引くような憎悪を見せつけられ、まりさは箱の中で縮こまる。 「やだよおおお! そんなのやだああああ! ゆああああん! れいむうう! まりさああああ! ありすうううう!」 「おちびぢゃんだぢのなまえをぎやずぐよぶなああああああ! おばえなんがが! おばえなんががあああああ!」 「おばえなんが! うばれでごなげればよがっだ! じねばよがっだ! じねええ! ざっざのじねえええええええ!!」 「じなないならごろじでやる! おぢびぢゃんのがだぎだ! ごろじでやる! ごろじでやるがらででごいいい!」 「いわないでええええ! れいむおばさん! ありすおばさん! まりさおばさん! まりさをいじめないでえええ!!」 この上なく醜い寸劇はしばらくの間続いた。 ほぼ日をおかずに六匹はやって来ては、まりさを罵り箱を壊そうとする。 しかし、どれだけやってもまりさを殺せないと分かったのか、しばらく経つと来なくなった。 けれども、まりさの心に刻まれた傷は相当なものだったようだ。 「ゆっくり………ゆっくり。………ゆっくり? ………ゆっくりって……なんだっけ? ……わからないよ……ゆっくり…ゆっくり………」 まりさはだんだん食欲を失い、毎日白痴のような顔で外を眺めているだけになった。 排泄さえもどうでもよくなったらしく、トイレではなくその辺でしーしーやうんうんを垂れ流している。 「まりさが……まりさがわるいんだ……わるいのはまりさ……わるいまりさ………まりさはわるいこ……どうしてわるいこなんだろ?」 俺は、たとえようもなくうんざりしていた。 俺は駆除でゆっくりは殺すことはしても、痛めつけたところで別段面白くもない人間だ。 一時の怒りにまかせて、ずいぶんと面倒なことをしてしまった。 不思議なことに、まりさの目を潰し、歯を抜き、帽子を破った時、俺は嫌悪感を感じなかった。 まりさの大切なものを壊していくことに、まったく躊躇はなかった。 むしろ、破壊に快感さえ感じていた。 あの時の俺は、異常だったとしか言いようがない。 ゆっくりとは、そういう存在なのかもしれない。 俺は常々、なぜこんな危険でもない饅頭がこれほど人間から憎まれ、虐待されているのか分からなかった。 今なら分かる。 些細なことから難癖を付けて、まりさを虐待した今ならよく分かる。 ゆっくりとは、とにかく人間を苛立たせる饅頭なのだ。 俺のものと分かっていながら、菓子を勝手に食べるだけではない。 謝りもせず、もっとよこせと臆面もなく要求する。 しかも、要求が通るまで口うるさくぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる。 これほど人間の感情を逆なでする存在には、まりさ以外に出会ったことがない。 だが、熱はすぐに冷める。 腹立ち紛れにまりさを虐めている時は感じなかったが、俺はゆっくりに関心がないのだ。 そもそも、俺が失ったものはおはぎが一つだけだ。 もしまりさが我が家の家宝を壊したら話は別だが、もう俺の怒りはとっくに収まっている。 こうやってまりさを手元に置いておくだけで、俺はほとほとうんざりしていた。 飼い続ける気などさらさらない。 いっそ潰してしまうかとさえ思ったが、熱が冷めた今殺すのは気が引けた。 まさに惰性で、俺はまりさを飼っていた。 ようやくこの下らない日々が終わったのは、ある休日の午後のことだった。 餌をやろうと箱の蓋を開けた時、久しぶりにまりさが俺の方を見た。 「おにいさん……きいてね…………」 まりさの意味のある言葉を聞いたのはどれほどぶりだろうか。 無視できず、俺はまりさの次の言葉を待った。 頭に半分だけになった帽子を乗せた、まだ禿が残っている無様なまりさは、俺に向かって頭を下げた。 体を折り曲げて、謝罪の意を示したのだ。 「あのね…………。かってに、おにいさんのおかしをたべてごめんなさい。まりさがわるかったよ」 俺は、何も言えなかった。 ようやくだ。 ようやく、俺は待ち望んでいた言葉を聞いたのだ。 だが、遅すぎた。 もはや俺は、まりさの謝罪を聞いても感動はしなかった。 「たべちゃだめだっておにいさんがいったけど、まりさはがまんできなくてたべちゃったよ。まりさはわるいゆっくりだね」 今まで狂ったゆっくりのようだったのが嘘のように、まりさははっきりした言葉を発する。 まりさの片方の目には、今はちゃんと理性の光がある。 「おにいさん、おかしをかえしたいけど、まりさはかえせないよ。ほんとうにごめんなさい」 まりさはもう一度、俺に向かって謝った。 いったいどういう心境の変化だろうか。 最初から、自分が悪いことをしたことが分かっていたのだろうか。 だとしたら、なぜ今まで謝らなかった? 俺が人間だから馬鹿にしていたのか? それとも、言い出すきっかけがなかったのか? いや、やはりまりさにとってあれは悪いことではなかったのか。 ここ数日ずっと考えていて、ようやく分かったのだろうか? そうではないだろう。こいつの両親はこいつが悪いことをしたのだと分かっていた。 まりさの心境の変化は、俺には分からなかった。 だが、もう俺はどうでもよかった。 仮にこいつが俺を騙すつもりで謝っていても、興味はない。 まりさの謝罪は、俺にとってまりさを解放する格好の口実にしかならなかった。 「外に出たいのか」 「……ゆ?」 「外に出たいのかと聞いたんだ」 俺の問いかけに、まりさはぽかんとしていた。 外に出る。 その響きは、まりさにとってもう絶対に聞けないものだと思っていたに違いない。 「……でたいよ。おうちはなくなっちゃったけど、まりさはもりにかえりたいよ」 まりさとの関係にうんざりしていた俺にとっても、その言葉は朗報だった。 俺は箱をひっくり返し、まりさを地面に転がした。 「出て行け。もう二度とここに来るんじゃないぞ」 まりさは、しばらくその場で固まっていた。 現実が信じられず、まりさはぼーっとその場で突っ立っている。 だが、徐々に理解できたらしい。 きっと、足の感触の違いで分かったのだ。 もう、自分が踏んでいるのは固い人工の床ではない。 柔らかい土の感触が、足から伝わってくる。 外だ。 外に出られたのだ。 まりさは待ち焦がれた自由に、隻眼からぽろりと涙をこぼした。 「……ごめんなさい、おにいさん。……ほんとうに、ごめんなさい…………」 「分かったから行くんだ。森で、人間にかかわらず生きていけ」 「わかったよ……。まりさは、もりにかえるんだ……。ゆっくりかえるよ……。まりさは……おうちをみつけて…ゆっくりするんだよ。 ごはんさん……むしさん……おはなさん……まっててね。まりさは……いっぱいみつけて……おうちでいっぱい……むーしゃむーしゃするよ。 それで……ゆっくりおやすみして……いっぱい……いっぱいおともだちみつけて……いっぱいあそんで……いっしょにゆっくりして………」 尽きない望みを次々と口にしながら、まりさは嬉し涙を流していた。 俺の目の前で、まりさはずりずりと這って生け垣に向かう。 以前、俺から逃げようと必死で跳び込んだ元気さは、もう今のまりさにはない。 それでも、まりさは生きている。 生きて、森に帰ることができるのだ。 失ったものは多いが、まだ希望はある。 まりさは生け垣に潜り込み、俺の前から姿を消した。 「……やれやれ。長かった」 俺はまりさの這う音が聞こえなくなってから、大きくため息をついた。 つくづく、我ながら馬鹿らしいことをした。 たかが菓子一つのことで、ずいぶんむきになったと自分でも思う。 それだけ、俺にとっては父に怒られた経験がトラウマになっているのか。 だが、茶番もこれで終わりだ。 まりさとはもう、二度と会うこともあるまい。 これでよく分かった。 ゆっくりと人間は、言葉こそ通じるがまったく別の思考を持つ生物なのだ。 俺の価値観をまりさに押しつけようとして、こんな馬鹿らしい事態を招いた。 ゆっくりを人間扱いした結果がこれだ。 まりさを謝らせようなどと考えなければよかったのだ。 まりさのように菓子をせがむゆっくりがいれば、蹴り飛ばすか菓子を隠してしまえばいい。 どうせ、その程度の存在なのだ。まりさが謝ったのも、せいぜい偶然だ。 そういうふうに思えば、遙かに楽だ。 俺は肩の荷が下りた気分だった。 一週間ほど経った。 透明な箱を片づけたことで、俺は早くもまりさのことを忘れかけていた。 もう、ゆっくりには駆除以外で関わることはないと思っていた。 それは、山芋を見つけに森に入った時のことだった。 「いたい? いたいいいいい!? そうだよねえ! いたいよねえ!」 「おちびちゃんはもっといたかったのよおおおお! もっとくるしかったわああああ!」 「くるしいよねえ! しにたいよねえ! まだころさないよ!」 「もっともっと! もっともっともっともっと! まだたりないぜえええええ!」 「あはははははは!! いたそう! すごくいたそうだよ! いいきみだよおおおお!」 「もっとくるしめようね! おちびちゃんのかたきだよおおお! こいつはああああ!」 聞くに堪えない耳障りな声が聞こえてきた。 あまりに騒がしく異様な雰囲気だったので、俺は声がする方を見た。 少し離れたところに、背の高い木がない小さな空き地がある。 そこで、六匹のゆっくりが何かを取り囲み、やたらと興奮した様子で叫んでいる。 俺が近寄っても、こちらを見るゆっくりは一匹もいない。 顔付きからして不気味だ。 ゆっくりらしいのんびりした顔をしているゆっくりなどいない。 どのゆっくりも、歯をむき出しにして憎悪の表情を浮かべている。 「ぶっ………ぶっ………ぎゅっ………ゆ゙っ………ゆ゙っ………ぢぢっ……」 六匹のゆっくりが取り囲んでいたもの。 俺は最初、ゆっくりが木の枝で作った人形ではないかと思った。 あのベッドのような複雑なものを作るゆっくりだ。自分たちそっくりの人形くらい作るだろう。 まじまじと観察してようやく、何なのか分かった。 それは、生きたゆっくりだった。 おびただしい数の木の枝を全身に突き刺され、なおも生き続けているゆっくりだった。 髪の色からかろうじてまりさだと判別が付くが、地肌がそもそも見えない。 隙間が見あたらないほどびっしりと、まりさの表面に木の枝が刺さっている。 両目と無理矢理開かされた口には、特に大量の枝が突っ込まれている。 両方の目は枝で完全に埋まり、口は枝によって閉じられない。 さらには引きずり出された舌まで、不気味な剣山となっていた。 「ぼぉ………ぼぼぉ………ごっ………びっ…………」 どう見ても生きているはずがないのに、まだまりさは生きている。 かすかに痙攣していることと、口から呻き声が聞こえることが、こいつが生きてることの証だ。 いったいどれだけの苦痛を感じているのか、想像することさえできない。 「……何だ、これは」 あまりに凄惨なまりさの姿を見て、俺は思わずそう言っていた。 ようやく興奮していたゆっくりたちも、すぐ側まで人間が近づいていることに気づいたらしい。 口々に俺にまくし立ててくる。 「にんげんさん! じゃましないでね! れいむたちはおちびちゃんのかたきをとってるだけだよ!」 「にんげんさんにはかんけいないよ! さっさときえてね!」 「そうだぜ! まりさたちはおちびちゃんのかなしみとくるしみをこいつにあじわわせているだけだぜ!」 「これくらいじゃぜんぜんだめだよ! しんじゃったおちびちゃんはこれくらいじゃよろこばないよね!」 「たりないわあああ! こんなんじゃぜんぜんたりない! もっといためつけないと! まだころすなんてできないわああ!!」 「そうよ! もっとさしましょう! まださすところはたくさんあるわ!」 ゆっくりたちは怒りと憎しみに歪みきった顔で、俺に訴えてくる。 俺は、もう一度死んだ方が遙かにましな目に遭っているまりさを見てみた。 気づいた。 帽子をかぶっていないと思ったら、そうではない。 まりさの頭には、よく見ると帽子の残骸らしきものが乗っている。 きれいに、半分に破かれたそれ。 ……合点が行った。 「こいつは、お前たちの子どもを殺したのか」 「そうだぜ! まりさたちのおちびちゃんは、こいつがばかなことをしてにんげんさんをおこらせたせいでころされたんだぜ!」 「ゆるせないよね! ぜったいにゆるせないよね! にんげんさんをおこらせたこいつはしんでとうぜんだよ!」 「そうよ! おちびちゃんは……おちびちゃんはああああ! ころされたの! にんげんに! にんげんにいいいい!」 「こいつがにんげんさんをおこらせなければ! おこらせなければあああああ! おちびちゃんはしななかったのにいいいいい!」 「いきなりこいつがおうちにやってきていったのよ! 「まりさがわるかったよ。ありすがしんじゃってごめんなさい」って!」 「ゆるすわけないでしょおおおお! ゆるせるわけないでしょおおおお! おちびちゃんがしんでどうしてこいつだけいきてるのおおおお!」 唾を飛ばしてゆっくりたちはまりさを責めると、また落ちている枝を口にくわえた。 六匹がいっせいにまりさにそれを突き刺す。 「……びゅっ!!」 まりさの体がびくんと大きく震えた。 痛覚は決して鈍っていない。 まりさは今この瞬間も、発狂しそうな量の激痛に苦しんでいる。 「ぜったいにゆるさないよ! こいつはえいえんにゆっくりするまでいっぱいいっぱいいためつけてやるんだよ!」 「もうこいつにぷすぷすしてからおひさまがいっぱいのぼったね! まだたりないよ! もっともっとぷすぷすしてやるよ!」 「このくそゆっくり! しね! しね! おちびちゃんのいたみをおもいしれ! どう? いたい! いたいでしょ!?」 俺はまりさを眺めた。 かすかに痙攣しながら、まりさは何かを言おうとしている。 「ぶぶっ……ぼっ………ごぉ…………ゆ゙っ……」 だが、口の中いっぱいに詰め込まれた木の枝のせいで、その声はただの呻き声にしかならない。 それでも、まりさはひたすら同じ言葉を繰り返している。 「まだころしてあげないよ! ころすなんてできるわけないでしょおおおおお!!」 「にんげんさん! はやくかえるんだぜ! まりさたちはいまいそがしいんだぜ!」 「はやくあっちにいって! にんげんさんにはかんけいないでしょ!」 「ああ、それは無理だ」 俺は、山芋掘りに使っていたスコップを振り上げた。 奇しくもそれは、こいつらの子どもを殺したスコップと同じものだった。 三分とかからなかった。 俺は餡子とカスタードにまみれたスコップを、地面に突き刺す。 周囲には、体の中身を飛び散らせたゆっくりが六匹転がっている。 あの時俺が殺した、まりさの友達だった三匹の両親たちだ。 「どっ……ど…ぼ…じ……で…………」 「おぢ……び……ぢゃ……がだ……ぎ……」 「じに……だ……ぐ……ない……よ…………」 しばらくの間、即死しなかった数匹が呻いていたが、やがて静かになった。 こいつらは最後まで、俺が自分の子どもを殺した張本人だと気づかなかったらしい。 思えば、こいつらが庭でまりさを罵っている時、俺は側にいなかった。 結果としてまりさを拷問から救うことになったが、俺はまりさを助けたかったわけではない。 ただひたすら、おぞましかったのだ。 憎悪をむき出しにするゆっくりたちが、見るに堪えなかっただけだ。 あれは、あまりにもおぞましすぎた。 我が子が殺された恨みをまりさにぶつける姿は、寒気がする程不気味なものだった。 俺は、あんなものがいることに我慢できなかった。 きっと、俺以外の誰かがあの場面を見ても、俺と同じようにするだろう。 そして同時に、俺はゆっくりたちに自分の姿を重ねていた。 子どもを殺されたことを絶対に許さず、おぞましい拷問を行うゆっくり。 菓子を食べたことを謝らなかったから、まりさからあらゆるものを奪った俺。 自分のしたことがあまりにも低レベルなことに思え、俺はぞっとした。 俺は死んだゆっくりたちを踏み越え、今もまだ弱々しく痙攣しているまりさに近づいた。 生きているのが不思議な状態だ。 俺はしばらく考えてから、舌に突き刺さっている枝と、口を塞いでいる枝を抜いた。 「ゆ゙っっ!!」 傷口を引っかき回される苦痛に、まりさがびくんと痙攣した。 一瞬だけ動いたその体は、次の瞬間ぐったりとして地面に潰れる。 「まりさ。まりさ。聞こえるか」 「だ……れ……? だれ……な……の? おと……さ……ん? おとう……さん……だよ……ね……」 まりさはもはや瀕死なのがよく分かった。 俺が手を下さなくても、今日一日保つか保たないかだっただろう。 まりさは弱々しく頭を動かし、声の主を捜す。 聴覚も鈍り、俺の声と親まりさの声と区別が付かないらしい。 「い…た…い……よ……。くる…しい……よ……。こわ…い……よ……。しにたく……な……いよ……」 まりさは全身の苦痛と、死の恐怖からぶるぶると震えていた。 あまりにも、その姿は哀れだった。 一番最初にまりさを見た時に感じた、あの天真爛漫なはつらつとした様子はない。 ここにいるのは、死にかけた惨めで汚らしいごみのような饅頭だ。 「おと……さ……ん。まり……さ……ここ…に…いる……よ。ゆっく…し……て……ね…………」 「ゆっくりしているよ。まりさももう、ゆっくりするといい」 「うれ……しい……な……。おとう……さん……ありが……と……う………」 ずたずたになった顔で、まりさはかすかに微笑んだ。 最後の最後で、まりさはわずかばかりのゆっくりを手に入れることができた。 それが、ほんの数秒であっても、ゆっくりであることに変わりはない。 まりさの体が、弱々しく痙攣しだした。 最後が近い。 「……いや…だ…よ……。やっと……おと…うさんに……あえた……のに…しにたく………ない……よお……。 まりさ…しにたく…ない……しにたく………ないよぉぉ……どうし…て……まりさ……しんじゃう……の……? ど……う……し……て……? ごめ…な……さい……ごめん……な……さい……ごめ……な……さ…………」 まりさは一度だけ「ゆ゙っ……」と鳴いてから、動かなくなった。 木の枝がいっぱいに刺さった目から、じわりと餡子混じりの涙が滲み出る。 まりさは死んだ。 最後に少しだけ安らぎがあったとしても、あまりにも無惨な最後だった。 むしろ、小さな希望が与えられたことで、かえって絶望しつつまりさは死んだのかもしれない。 俺は、変わり果てたまりさを手で掴んで持ち上げた。 「なぜ、もっと早くに謝らなかったんだ、まりさ」 死んで動かないまりさに俺は問いかける。 こいつは、即座に謝るという選択肢が思いつかなかったわけでもあるまい。 もし、何でもいいから、どんな形でもいいから一度でも「ごめんなさい」と言っておけば。 まりさは何一つ失うことなく、今も家族と友達と仲良く暮らしていただろう。 まりさからすべてを奪った張本人が言うのもおかしいが、俺はそう感じていた。 せめて、「もっとちょうだいね!」などと言わなければ良かったのに。 俺の過去のトラウマを、引きずり出すようなことをしなければ良かったのに。 俺は誰からも悲しまれずに死んだまりさを持ち帰り、庭の片隅に埋葬した。 それが、俺なりの終わらせ方だった。 ……ということがあったのだが、俺はそれを余すことなくありすに伝えることはなかった。 単にかいつまんで、昔人間に関わってゆっくりできなかったゆっくりがいたことを教えただけだ。 名前も場所も伏せて、俺は自分の過去をまるで伝え聞いたかのようにありすに教えた。 「……わかったわ。きっとそうなのね。おじさんとありすたちとは、ぜんぜんちがういきものなのね」 「俺もそう思う。俺たちはたまたま同じ言葉を話せるだけで、考えていることはまったく違うんだよ。 それを忘れると、お互いひどい目に遭う。もし忘れなくても、きっと些細なことから行き違いが生じて、やっぱり不幸になるだろう」 「ありすにはよくわからないけど、おじさんのいうとおりよ。できないことをできるようにいうのは、とかいはじゃないわ」 ありすは明らかに残念そうだったが、それでも泣き言を言うことなく笑って見せた。 俺は前言を撤回したい気持ちに囚われたが、それでも首を左右に振る。 「さよなら。森で人間にかかわらず静かに暮らしなさい。ここは君たちにとって危険な場所だからね」 「わかったわ。おじさんもゆっくりげんきでね。てぃーぱーてぃーはたのしかったわ。さよなら」 くるりと背を向けて、ありすは夜の闇の中に消えていった。 きっと、森のどこかにある巣穴に帰るのだろう。 もしかしたら家族がいるのかもしれない。 両親に、それとも番に、今日会った人間についてどんなことを話すのだろうか。 森の奥にいる限り、余程のことがなければ人間によって駆除されることはない。 ゆっくりが名前の通りゆっくり暮らしていくには、人間と接触するべきではないのだ。 俺は、あのまりさからそれを学ばされた。 ゆっくりと人間とは、言葉こそ通じるがその思考はあまりにも違いすぎる。 俺は人間の思考をまりさに押しつけようとして、結果あまりにも馬鹿げたことをした。 あの時、まりさが何を考えて謝らなかったのか分からないし、何を考えて謝ったのかも分からない。 唯一つ言えるのは、お互いに関わらなければ何もなかったということだけだ。 「人間とゆっくりとは、関わるべきじゃないんだよ」 俺がそう呟いたのを、奥にいた妻が小耳に挟んだらしい。 向こうから妻の返事が返ってきた。 「あなたがそうおっしゃっても、説得力に欠けますけどね。おお矛盾矛盾」 編み物の手を休め、妻は首を左右にシェイクする。 お分かりだろう。俺の妻は、きめぇ丸なのだ。 彼女は、かつては俺の茶道教室に通う生徒の一人だった。 「突然の訪問恐れ入ります。私、実は茶道を勉強したいのですがよろしいでしょうか。おお勉強勉強」 最初はあっけにとられたが、普通のゆっくりとは違い手足があるため、俺も入門を拒まなかった。 教え始めてから俺は驚いた。 彼女は人間や妖怪の先輩たちを見る見る追い抜き、俺の教える茶道をたちまち自分のものにしてしまったのだ。 誰よりも勉強熱心で、誰よりもひたむきに茶道を学ぼうとするきめぇ丸。 俺は、生まれて初めて恋に落ちた。 今では結婚し、子どもこそいないものの夫婦で仕事をがんばっている。 ……これがいわゆる、ダブルスタンダードという奴だろうか? 挿絵 byキモあき トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る あのアリスがいなければオチに納得出来た 質の高いゆっくりが気に入るならあのアリスも気に入るんじゃないのかな? -- 2019-03-15 01 49 10 このSSのテーマをなんと読むかなんだろうか、ラストの扱い 人間のトラウマの扉を開けた愚かなゆっくりの描写がメインテーマだと思って読んだら最低の結末だとか最悪とか平気で言えそう でも作者さんは「ゆっくりに期待をかけることもできる一方、ゆっくりを殺しまくることもできる」人間のダブスタ・矛盾を描きたかったんじゃないかいやっぱり そうじゃなきゃそもそもの「悲劇」の発端の必然性もわからなくなる気がするよー -- 2014-04-21 15 14 34 いやぁ、これは最低のオチだろう 素晴らしい作品だと思っていたのが終盤のお兄さんの心境ばりに冷めたぞ -- 2014-03-29 02 16 47 突然のきめぇ丸登場こそ作者さんの力量を示していると思うよ 強引にでも落とさないとあまりに救いがないSSになってしまったはず -- 2014-03-08 03 19 31 どうしてまりさしんじゃうの…理解できてなかったでござる -- 2014-01-02 03 52 16 これがほんとうの「だそく」ってやつなんだねーわかるよー -- 2013-07-17 13 40 10 人間とゆっくりは別の生き物だからいくら仲良くしたってしょせんは分かり合えないっいう主人公の結論は悲しい答えだけどなるほどなぁ~と素直に納得出来る…それなのにどぼじでざいごのざいごに作品テーマをぶち壊すようなごどずるのぉぉぉぉ~!!これがギャグ作品だったら普通に笑えたをだけどシリアルさんだったから笑えないでしょおおお!主人公の分かり合えないは結局分かり合えない(笑)だったってことぉぉぉ~!?ゆがぁ~こんなのゆっくりできないぃぃぃ! -- 2013-06-06 19 14 42 レベル高いなこの作品 ダブスタも、結局は双方が幸せになるためのものだしいいと思うのよ -- 2013-03-23 18 29 58 ラストだけゴミだ 非常に残念 -- 2012-06-07 11 46 36 なんでこのラストにしたんだ・・・。 -- 2011-11-17 23 28 54 ダブスタもよかったよ。 -- 2011-01-21 01 26 20 でも「悪い事をしたとしてもとにかく謝れば許される」という認識をゆっくりにされても困るわけで 口だけの謝罪だけじゃなく損害賠償まで叩き込むべき -- 2011-01-13 23 04 31 質、量ともに兼ね備えた傑作だったのに…ダブスタですべてが瓦解してしまったよ。 コメディでもギャグでもないんだから落とす必要は無かったんじゃないかなー。 -- 2010-12-18 16 39 42 とても面白かったな。 どうして……どうしてこんなことするのお………れいむたち……にんげんさんにめいわくかけないようにしてきたのに……… で、両親すら途中まで子供が人間に迷惑かけた事を全く理解すらしてないし。 親の言い付け破ってきたまりさも悪いが、親の方も大概だなw ラスト吹いたw 茶道の趣が解るとは…希少種となら人間と共存できるのかもしれない -- 2010-12-12 12 57 58 面白かったのに「妻が~~」で萎えた。 あまりにも蛇足。折角まりさも可愛くて最高に面白かったのに。 -- 2010-11-29 00 09 25 まりさを被害者家族が生きながら責め立てる描写がえぐかった…。 最後が良い感じ。 -- 2010-10-07 13 03 28 ゆっくりを想像したのだって人間なのだし、ある意味で人間の一部であって、 今回の場合は、まりさ・被害者面の親達=人間の愚かさ・醜さの象徴と言った印象 人間が切り捨てたい感情の集合体で、 忌避し嫌悪感を際立たせるのがゆっくりに求められていることなのかなあ、と思った ダブルスタンダードでも仕方ないと思う -- 2010-10-07 12 14 57 ゆっくりを人間扱いした結果がこれだ これに尽きるな、人間ならここで謝るだろう、って事で謝ればそこでゲーム終了のはずだったのに ここまで謝らないとはある意味想定外だっただろうな 「人間とゆっくりとは、関わるべきじゃないんだよ」 ↓ 「人間と餡子脳は、関わるべきじゃないんだよ」 にすればOK、知能が人間と共存できるレベルなら良いのです -- 2010-09-16 18 23 38 面白かった!!しかし想像もつかないオチにはまいった!!もっと色々書いてほしい!! -- 2010-09-09 09 31 10 後半もめっちゃおもしれえ!! このまりさは態度こそ悪くないが 自分がゆっくりする事しか考えていないゲスだな 友達のくだりでそれがよく出てた まあ子供だからってのもあるが -- 2010-08-08 07 23 51