約 1,493,429 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6011.html
前ページ次ページ死人の使い魔 第三話 グレイヴを召喚してから数日が過ぎた。ルイズとグレイヴの生活にも 一定のパターンができあがってきていた。 朝、ルイズがベットで目覚めるとともにグレイヴは初日に与えられた イスで目を開く。特に本人からの要望はなかったのでイスが彼の寝床と なった。寝床兼生活スペースかもしれなかった。ルイズの部屋にいる間は、 ほとんどをそこに座って過ごしている。 案外気に入っているのかしらね。そんな風に思う。 グレイヴとの生活が始まってからルイズの目覚めはよくなった。 一度寝坊しかけて彼に起こされたときは心臓が止まるかと思った。 割と本気で。それ以来、彼より早く起きるように心がけている。 朝の準備を終えるとルイズは朝食をとるために食堂へと向かう。 グレイヴは食事をとらないため、授業まで部屋で待機させている。 授業の時間になると教室でグレイヴと合流する。 恐らく、グレイヴは教室に移動するときまで、部屋のイスに 座りっぱなしのはずだ。確認したことはないが正しいと思う。 もしかして私が部屋を出たあと、私のベットでゴロゴロしてたりして。 そんなことを想像する。 ……ありえないわね。万が一それが真実だったとしてもその場面だけは 目撃しないようにしないと。私の今後のために。 グレイヴは喋らない平民の使い魔として学院で少し知られてきた。 ときどき、本当にときどきだが彼の正体について言ってやりたくなる ときがある。 昼食の時間になると再びグレイヴと別れる。部屋で午後の授業まで 待たせているのだが、コルベールに呼ばれ彼の研究室、もしくは トレーラーに行くことがある。少しでも手掛かりが欲しいらしいが 結果は芳しくないようだ。 そんなある日、コルベールは彼の左手に目をやる。 召喚されたものにばかり気を取られていましたが、珍しいルーンですね。 一応メモしておきましょう。 その日の夜、彼はそのルーンが伝説の『ガンダールヴ』のルーンと 同じであることに気づく。すぐにオスマンに知らせたが、彼も頭を 抱えていた。 『ガンダールヴ』とは始祖ブリミルの使い魔であったされるものだ。 あらゆる武器をつかいこなし、その強さは並みのメイジでは歯が 立たないくらいだったとされている。 「ただでさえ厄介なのにこのうえ『ガンダールヴ』じゃと」 「とりあえずこれも秘密じゃな、ミス・ヴァリエールにもな」 「彼女にもですか?」 「これ以上秘密を抱えさせるのもかわいそうじゃろ、それに、この問題は ひょっとしたらガーゴイルということよりもやっかいかもしれんしな、 他言無用じゃ」 「わかりました」 最近というかグレイヴを召喚してからルイズは、彼のことを考える時間が 多くなった。もちろん、恋などではない。グレイヴの正体についてだ。 彼はなんのために作られたのだろうか?そう彼が人為的に生み出されたの ならきっと何か目的があるはずだ。それも並大抵ではない。なんせ人の血で 動くのだ。家事などをするために作られたのだとしたら、ちぐはぐ過ぎる。 人の生き血をすする召使い。ありえないわね。 しかし想像はつく。ミスタ・コルベールも気づいているだろう。 彼は戦うために生み出されたのではないか?その想像はきっと正しい。 想像を裏付けるものの一つとは彼の持っている鞄と棺桶だ。 非常に重いのだ。それを軽々と持ち運ぶ怪力。鞄の中に入っている二つの ものは鈍器なのでは?棺桶もなんらかの武器かもしれない。 そう考えると彼が鞄を手放さない理由もわかる。戦うために生み出された 彼が武器を手放すわけにはいかないのだ。 両手にあの鈍器を持って戦う彼を想像する。少し、いや大分かっこ悪い気がする。 ちゃんとした武器を与えたほうがいいかしら?見栄えのする大剣とか。 でも買う前にミスタ・コルベールに相談したほうがいいかもしれないわね。 剣を持たせるなどとんでもないと反対されるかもしれないし。 しかしそれは杞憂に終わった。彼は特に反対しなかった。 コルベールは相談されたことについて考えていた。グレイヴに剣を持たせる。 彼は『ガンダールヴ』でもあるのだ。どんな反応をするか、持ち前の好奇心が うずいた。 彼が剣を持つ危険についても考えてみたが、剣を持たせるくらいは 大丈夫な気がする。ここ数日、彼と付き合ってみての印象だ。少なくとも 学院の人々に危害は加えないと思う。もしかしたらこの学院で一番 グレイヴを信用している人物は彼かもしれなかった。 虚無の曜日になりルイズはグレイヴを連れ剣を買いに出かけた。 遠出をするとグレイヴに伝えると、彼はいつもの鞄に加え棺桶まで 持っていこうとした。あんなもの馬に乗せられるわけないと置いてこさせたが、 鞄はしっかり持ってきている。 トリステインの城下町を武器屋に向けて歩いているが、グレイヴはやはり 目立っていた。長身に加えてあの格好である。かなり目を引く。 それに彼の雰囲気を感じてか、微妙にだが周りの人が道を譲ってくれている ように思える。見た目だけでも護衛の役目を果たしているわね。そんなことを 考えながら歩いていると、武器屋に到着した。 どんな剣がいいか分からないので、グレイヴに選ばせてみる。 「グレイヴ、好きな剣を選んでいいのよ」 しかし彼は何も選ばない。イライラし声をかけようとすると、不意に声が 聞こえた。 「迷っているなら俺を買え、おめえさん『使い手』だろう?体格も立派だし、 雰囲気もただもんじゃねえ。是非とも、おめえさんに使って貰いてえ」 グレイヴは声のほうを向く。ルイズには彼が驚いているようにみえた。 そこには一本のボロボロの剣があった。ルイズも最初驚いたが インテリジェンスソードと知って納得する。 それよりもグレイヴの反応が気になった。いつもと明らかに違う反応。 もしやあの剣の言ったことに何か関係しているのだろうか?確か『使い手』 とか言っていた。 本当はインテリジェンスソードの存在を知らなかったからの反応だったの だが、ルイズには分からなかった。まさかインテリジェンスソードの存在を 知らないとは思いもしなかったのだ。 よし、これにしよう。 見た目はみすぼらしくグレイヴに持たせたくはなかったが、彼の正体を知る きっかけになるかもしれない。インテリジェンスソードを買い、グレイヴに 持たせる。デルフリンガーというらしい。 帰る道中デルフリンガーにグレイヴのことや、『使い手』のことを尋ねて みるが、どうにも要領を得ない。 グレイヴも特に反応はしないし、あの剣を買ったのは失敗だったかしら? 学院に着くとルイズはグレイヴを連れて中庭に向かう。そこでルイズは グレイヴにデルフリンガーを抜かせてみた。詳しいことは分からないが様に なっているようにみえる。するとデルフリンガーが気になることを言う。 「おでれーた、相棒、おめえさん人間じゃないな?それに心も感じられねえ」 ルイズが驚きながらに言う。 「あんたグレイヴのことが分かるの?教えなさい。今すぐ、できる限り詳しく」 「待て、待て、落ち着け、俺もそんなに詳しく分かるわけじゃねえ。 ただなんとなくそう感じただけだ」 「なによ、当てにならないわね。でもグレイヴが人間じゃないってことは 秘密だからね、誰にも言うんじゃないわよ。それからグレイヴのことが何か 分かったらすぐに教えなさい。いいわね」 「いいともさ、俺も相棒のことを言いふらしたりはしないよ」 そんな会話の中、グレイヴは突然デルフリンガーを地面に突き立てる。 「おーい、相棒?」 アタッシュケースを開けケルベロスを手に取る。 何をしたいのかしら?ルイズは疑問に思うが、デルフリンガーは気づいた ようだった。 「そりゃないよ、せっかく俺を買ったんだから俺を使ってくれよ。銃より剣の ほうがいいぜ」 「あれって銃なの?」 あんな形の銃など見たことがない。そういわれてみれば引き金らしきものがある。 「ねえ、グレイヴ、一発撃ってみなさい。どれくらいの威力があるか 見てみたいわ」 横でデルフリンガーが銃なんて邪道だ、などと言っているが無視する。 しかしグレイヴは撃たない。何故かしら?目標を決めてないから? 周囲を見ると丁度いい目標があった。本塔の壁である。確か固定化の魔法が かかっていて、そのうえ厚みもあり凄い丈夫なはずだ。いい的だと思ったのだ。 そのときは。 変な形をしているし片手で扱う銃のようなので、かなり距離のある的まで 届きすらしないかも、そう思い気軽に言う。 「ほら、撃ってみてって」 グレイヴが本塔の壁に銃を向ける。 せめて届いてほしいわねなどと考える 引き金が引かれる。 轟音が響き、思わず耳を押さえる。本塔に近づき銃弾のあとを確かめようと する。しかしそんなに近づかずとも本塔の壁にヒビが入っているのが見えた。 「嘘……」 思わず声が漏れる。あれがあの変な銃の威力?信じられない威力だ。 「おでれーた、これが相棒の銃の威力かい?」 デルフリンガーも驚いている。 突然、グレイヴの気配が変わった。持っていたデルフリンガーを投げ捨て、 先ほど撃った銃を一丁ずつ両手に構える。下からデルフリンガーの苦情が 聞こえてくる。 どうかしたの?と聞こうとするが、その言葉を発する前に巨大な土ゴーレムが 現れた。ゴーレムはルイズ達のことなど気にもせず、本塔のヒビの入っている 壁を殴り、穴を開ける。 ルイズはあまりのことに頭がついていってなかった。グレイヴも銃を構えた まま動かない、様子をうかがっているのかもしれない。 それからゴーレムは学院の外へと歩き出す。 我に返ったルイズがあわてて言う。 「あそこは確か宝物庫だったはずよ、急いで追いかけないと」 「もう無理だ、追いつけないって。ずいぶん離されちまった」 デルフリンガーが引き止める。しかし追いつけなくとも、何か手がかり くらいは見つけられるかもしれない。ゴーレムの逃げたほうへ走り出す。 グレイヴもついてくる。 「お~い、置いていかないでくれえ」 後ろでデルフリンガーが叫んでいたが気にしている余裕はない。 上空には何か飛んでいるのが見える。あの盗賊の使い魔だろうか? 空を飛んで逃げられたら絶対に追いつけない。焦りながら懸命に走る、 すると遠くでゴーレムが突然崩れるのが見えた。 空を飛んでいた何かも、いつの間にかいなくなっていた。崩れたゴーレムに 追いついたが、そこには土の山があるだけだった。 こういうときこそ、落ち着かなくては。そう自分に言い聞かせ事態を 整理する。 あのゴーレムは本塔にあったヒビを殴っていた。その結果穴が開き、 宝物庫が襲われた。つまり襲われた原因、少なくとも穴が開いた原因は あのヒビのせいということになる。あのヒビの原因は考えるまでもない。 盗賊について思いだそうとするが離れていたこともあり、黒いローブに すっぽり身を包んでいたことくらいしか分からない。 盗賊には逃げられ、手がかりもない。ルイズは頭を抱えた。 前ページ次ページ死人の使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1866.html
朝早くワルドに起され促されるままついていくと、礼拝堂でわたしの結婚式が 始められようとしていた。 ここに居るのは、わたしとワルド、ウェールズ様とプロシュートだけだった。 何故、今こんなのとになっているのか、わたしには分からなかった。 ワルドは、この旅が終われば僕を好きになると言った。 結婚しようとも言った。 だけど、何故、今?こんな時に?こんな場所で結婚式を? 分からない、分からない。 不安になりプロシュートを見るが、彼は部屋の隅で黙ってグラスを傾けていた。 どうして何も言ってくれないの? 「緊張しているのかい?仕方が無い。初めてのときは、ことがなんであれ 緊張するものだからね」 ウェールズ様は、にっこりと笑って後を続けた。 「まあ、これは儀礼に過ぎぬが、儀礼にはそれをするだけの意味がある。 では繰り返そう。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、 そして夫と…………」 こんな気持ちで結婚なんて出来るワケないじゃない。 わたしはウェールズ様の言葉の途中で首を振った。 「新婦?」 「ルイズ?」 ウェールズ様とワルドが怪訝な顔でわたしの顔を覗き込む。 「どうしたね、ルイズ。気分でも悪いのかい?」 「違うの。ごめんなさい……」 「日が悪いのなら、改めて……」 「そうじゃないの、そうじゃないの。ごめんなさい、ワルド、わたし、 あなたとは結婚できない」 わたしの言葉にウェールズ様は首をかしげた。 「新婦は、この結婚を望まぬか?」 「そのとおりでございます。お二方には、大変失礼をいたすことになりますが、 わたくしはこの結婚を望みません」 ワルドの顔に、さっと朱みがさした。ウェールズ様は困ったように首をかしげ、 残念そうにワルドに告げた。 「子爵、誠にお気の毒だが、花嫁が望まぬ式をこれ以上続けるわけにはいかぬ」 しかし、ワルドはウェールズに見向きもせずに、わたしの手を取った。 「……緊張しているんだ。そうだろルイズ。きみが僕との結婚を拒むわけがない」 「ごめんなさい。ワルド。憧れだったのよ。もしかしたら、恋だったかもしれない。 でも、今は違うわ」 ワルドは、わたしの肩をつかんだ。その目がつりあがる。表情がいつもの 優しいものでなく、どこか冷たい、トカゲか何かを思わせた。 熱っぽい口調でワルドは叫んだ。 「世界だルイズ僕は世界を手に入れる!そのためにきみが必要なんだ!」 豹変したワルドに怯えながら、わたしは首を振った。 「……わたし、世界なんかいらないもの」 ワルドは両手を広げると、わたしに詰め寄った。 「僕にはきみが必要なんだ!きみの能力が!きみの『虚無』が!」 そのワルドの剣幕に、わたしは恐くなった。優しかったワルドがこんな顔をして 叫ぶように話すなんて夢にも思わなかった。 わたしは知らず知らずのうちに、ワルドから身を引いた。 「ルイズ、いつか言ったことを忘れたか!きみは始祖ブリミルに劣らぬ、優秀な メイジに成長するだろう!きみは気づいていないだけだ!その才能に!」 「ワルド、あなた……」 この人は、わたしの知っているワルドじゃない。何が彼を、こんな物言いをする 人物に変えたのだろう? ワルドの剣幕を見たウェールズ様が、間に入ってとりなそうとした。 「子爵……、きみはフラれたのだ。いさぎよく……」 が、ワルドはその手を撥ね除ける。 「黙っておれ!」 ウェールズ様はワルドの言葉に驚き、立ち尽くした。 ワルドは、わたしの手を握った。 「ルイズ!きみの才能が僕には必要なんだ!」 「わたしは、そんな才能のあるメイジじゃないわ」 「だから何度も言っている!自分で気づいていないだけなんだよルイズ!」 痛い。振りほどこうとしたが物凄い力で握られて振りほどくことができない。 「そんな結婚死んでもいやよ。あなた、わたしをちっとも愛してないじゃない。 わかったわ、あなたが愛しているのは、あなたがわたしにあるという、 在りもしない魔法の才能だけ。ひどいわ。そんな理由で結婚しようだなんて。 こんな侮辱はないわ!」 ウェールズ様がワルドの肩に手を置いて、引き離そうとした。 しかし、今度はワルドに突き飛ばされた。 突き飛ばされたウェールズ様の顔に赤みが走る。立ち上がると、杖をぬいた。 「うぬ、なんたる無礼!なんたる侮辱!子爵、今すぐにラ・ヴァリエール嬢から 手を離したまえ!さもなくば、我が魔法の刃がきみを切り裂くぞ!」 ワルドは二つ名の閃光のように素早く杖を引き抜き、呪文の詠唱を完成させた。 そのまま風のように身を翻らせ、ウェールズ様の胸を青白く光る杖で貫いた。 「ウェールズ、貴様ごとき無能なメイジが僕を切り裂くと?笑わせるな! 滅びの道しか残されておらぬ哀れな王族よ、そこで犬の様に這い蹲り、 己の無力さを呪うがいい」 「き、貴様……、レコンキスタか?」 ウェールズ様の口から、どっと鮮血が溢れる。 「よく気が付いたな、偉いぞウェールズ」 ワルドは冷たい感情のない声で言った。 「ウェールズ様!」 わたしはワルドの手を引き剥がしウェールズ様を抱え起こした。 「……ラ・ヴァリエール嬢……アンリエッタに……この指輪を」 ウェールズ様は震える指先で自分の指輪をわたしの手の平にそっと置いた。 「あと……アンリエッタに……」 言い終わらない内にウェールズ様の手がダラリと垂れた。 「しっかりしてください!ウェールズ様!」 ウェールズ様の体から生命の鼓動が消えた。 わたしは、たまらずワルドに怒鳴った。 「貴族派!あなた、アルビオンの貴族派だったのね!裏切り者ッ!」 「裏切り者か……ルイズ、視野を広げて見ると、裏切っているのは実は君達の 方かもしれないよ」 わたしの怒鳴り声にも、どこ吹く風のワルドがとんでもない事を言い出した。 「何言ってるの?」 「始祖ブリミルの悲願、聖地の奪還を疎かにし、ブリミルの恩恵である魔法の 力を貴族同士で領土を奪い合うためだけに使う事こそが、始祖ブリミルに 対する裏切りだとは思わないか?ルイズ」 「なら、その考えを陛下に言えばいいじゃない!」 「言ってどうする、ハルケギニア全土のメイジの意志を一つにまとめる事に 何年かかると思っている。いや、不可能といってもいい。そのために革命が 必要なのだよ」 「昔は、そんな風じゃなかったわ。何があなたを変えたの?ワルド!」 「月日と、数奇な運命のめぐり合わせだ。今ここで語る気にはならぬ 話せば長くなるからな」 もはや目の前の男は、わたしの知ってるワルドじゃない! 「助けて……助けてプロシュート!」 ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ザッ ピタリ プロシュートはわたしの隣に来ると手に持ってたグラスの氷水を わたしの頭にぶっかけた! 「冷たッ!なにすんのよ!」 「頭を冷やせルイズ。要するにワルドは敵だってワケだ。後はワルドを 倒し手紙を持って帰る。それだけだろ?」 「えらく簡単に言ってくれるわね。ワルドはスクエアのメイジなのよ」 「知ったことか、お前は自分の身を守る事だけを考えてろ」 いつの間にか出現したグレイトフル・デッドがワルドに向かって大きな手を 繰り出した。しかし、その大きな手はワルドの杖で防がれてしまった! 「見えているの!?」 わたしの疑問にワルドは余裕の態度で解説した。 「見えている訳ではない、風の動きを読んだのさ。土くれの情報『見えない力』 と言ったな。動きが速過ぎる為見えないと思っていたのだが、そのままの意味 で『見えない力』であったか」 今までプロシュートが圧倒的だったのは、他のメイジにはグレイトフル・デッドが 見えていなかったからだ。 「ど、どうするのよプロシュート」 しかし、プロシュートに全く焦った様子は無かった。 「慌てるなルイズ。俺は見えて当たり前のヤツ等と殺し合ってきたんだぜ。 見えて対等であって、決して不利じゃねえ!」 グレイトフル・デッドの拳をワルドは飛びながらかわした。 それから杖を振り、呪文を発した。プロシュートはグレイトフル・デッドで防ごうと するがウィンド・ブレイクは脇をすり抜け彼だけを襲う。プロシュートは剣を素早く 構え受け止めようとするが壁にぶち当たり、プロシュートは呻き声をあげる。 怪我した左腕が痛むのか、プロシュートの動きにいつものキレが感じられない。 「どうした?お前のお前の力を見せてみろ、偉大なる使い魔ガンダールヴ」 残忍な笑みを浮かべて、ワルドが嘯く。 そんなとき、デルフリンガーが叫んだ。 「思い出した!」 プロシュートも突然のデルフリンガーの言葉にとまどってる様だ。 「なんだよてめえ、こんなときに!」 「そうか……ガンダールヴか!」 「なんのことだ!」 「いやぁ、俺は昔、お前に握られてたぜ。ガンダールヴ。でも忘れてた。 なにせ、今から六千年も昔の話だ」 「寝言、言ってんじゃねえ!」 デルフリンガーに返答しながらプロシュートはワルドの魔法をかわしていく。 「嬉しいねえ!そうこなくっちゃいけねえ俺もこんな格好してる場合じゃねえ」 叫ぶなり、デルフリンガーの刀身が光り出す。 プロシュートは呆気に取られてデルフリンガーを見つめていた。 「デルフ?」 再びワルドはウィンド・ブレイクを唱えた。 光に気を取られていたプロシュートは避けずにデルフリンガーを構えた。 「無駄だ!剣では避けられないと、わかっただろうが!」 ワルドが叫んだ。が、しかし、プロシュートを吹き飛ばす風が、デルフリンガーの 刀身に吸い込まれていく。 そして……。 デルフリンガーは今まさに砥がれたかのように、光り輝いていた。 「デルフ?お前……」 「これが、ほんとの俺の姿さ!相棒!いやぁ、てんで忘れてた!そういや 飽き飽きしてたときに、テメエの体を変えたんだった!なにせ、面白いことは ありゃしねえし、つまらん連中ばっかりだったからな」 「早く言いやがれ!」 「しかたねえだろ。忘れてたんだから。でも安心しな相棒。ちゃちな魔法は 全部、俺が吸い込んでやるよ!この『ガンダールヴ』の左腕、 デルフリンガーさまがな!」 興味深そうに、ワルドはプロシュートの握った剣を見つめた。 「なるほど……。やはりただの剣ではなかったようだ。この私の『ライトニング・ クラウド』を軽減させたときに、気づくべきだったな」 それでも、ワルドは余裕の態度を失わない。 杖を構えると、薄く笑った。 「さて、ではこちらも本気を出そう。何故、風の魔法が最強と呼ばれるのか、 その所以を教育いたそう」 プロシュートは剣とスタンドで襲うが、ワルドは軽業師のように剣戟を かわしながら、呪文を唱える。 「ユビキタス・デル・ウィンデ……」 呪文が完成すると、ワルドの体はいきなり分身した。 四体の分身、本体と合わせて、五体のワルドがプロシュートを取り囲んだ。 「分身か……ギトーはコレを見せようとしてたのか」 「ただの『分身』ではない。風のユビキタス(偏在)……。風は偏在する。風の 吹くところ、何処となくさ迷い現れ、その距離は意思の力に比例する」 ワルド達は懐から真っ白な仮面を取り出すと、顔につけた。 あの、桟橋で襲ってきた仮面のメイジはワルドだったの! 「まるでスタンドだな。最強の所以は分かった……だとしたら、どうして『虚無』に 拘るんだ、『風』が最強なんだろ?」 プロシュートの問に、フッとワルドは自嘲的な笑いを浮かべた。 「確かに系統魔法で『風』は最強だ……だが視野を広げて見ると、認めたくは 無いがエルフの使う先住魔法は我らの力を遥かに凌駕する。その強力なエル フ共を打ち破る為にルイズの『虚無』が必要なのだよ!」 ワルドの目に以前、宿で見た妖しい光が灯る、ワルドの本当の目的が判った。 ワルドが在るという、わたしの虚無の力がエルフを倒す為に必要だったのね。 「自分じゃエルフを倒せない、だからルイズの力に頼ろうってのか。恥ずかしく 無いのかテメーはよぉ」 「目的のためには、手段を選んでおれぬのでね」 言い終わると、ワルドは呪文を唱え、杖を青白く光らせた。 『エア・ニードル』、さきほど、ウェールズ様の胸を貫いた呪文だ。 「杖自体が魔法の渦の中心だ。その剣で吸い込むことはできぬ!」 五体のワルドがプロシュートを襲う。 その攻撃をプロシュート自身とグレイト・フルデッドが防ぐが、五対二……はっきり 言って分が悪い。反撃できずに防戦一方だ。 ワルドは楽しそうに笑った。 「平民にしてはやるではないか。さあ見せてみろ、お前の力はこんなものでは ないのだろう?」 じりじりとワルド達はプロシュートににじり寄った。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ 「もう、スデに『見せている!』、気づいてないのか?」 まさかっ!まさか……プロシュートは!…… 「なに!?こっ、これは……」 ワルドの仮面に隠されていない口元に深い皺が刻まれていた。 あの長い髪にも分かりづらいが白髪が見え隠れしている。 グレイトフル・デッドの無差別老化攻撃! わたしは慌てて自分の髪を手ですき、観察してみる。 艶のある桃色のブロンド……指先も皺が無かった。 顔は鏡がなかったので確認できなかったが、手触りでは違和感が無かった。 こいつら!早くも気づいていやがったんですよ!兄貴の『グレイトフル・デッド』は 体を冷やせば老化が遅れるっって事をよォーッ。 !!突然聞こえた男の声。だから、プロシュートはわたしに氷水をかけたのね。 わたしの体を冷やすために。 「こ、これはっ!?この疲労感は!」 ワルドの言葉に始めて焦りが出てきた。 「どうしたワルド、任務の疲れで肩コリでも出て来たか?」 プロシュートはデルフリンガーとグレイトフル・デッドでワルドに攻撃した。 ワルドにも先ほどの動きが見られなかった。 「うおおおおおおおぉ、そんな馬鹿な!神の左手ガンダールヴ、その『能力』は あらゆる武器を使いこなす事と超人的な運動能力の二つのはず……… この力は一体……!?」 「この力は俺自身のスタンド能力だ」 プロシュートがグレイトフル・デッドの拳をワルドに振るう。 「『スタンド』?先住魔法か!?」 「おいおいワルドさんよー、俺が何から何まで親切に教えると思うのか?」 「おのれ土くれ!なにか隠しているとは思ったが、この事だったとは!!」 フーケ……ワルドに老化現象は話さなかったのね。いや、思い出したくも 話したくもなかったのか。 このままだとプロシュート押し勝つだろう…… なんだか心のモヤモヤが晴れない、わたしは何をやっているんだろう。 フーケの時も、今の戦いもプロシュートに任せっきりにしている。 たしかに使い魔は主人の身を守る。だけど主人は何もしないって事じゃない。 わたしは、この任務で成長すると誓った。だけど今わたしは何もしていない…… これじゃ何も変わらないわ。 わたしは杖を掲げ呪文を詠唱する。 「なにやってる!ルイズ」 プロシュートの叱責が飛ぶが、わたしは止めない。 ファイアーボールを唱え杖を振る。一体のワルドが表面で爆発する。 ぼこん!と激しい音がして、そのワルドは消滅した。 「え?消えた?わたしの魔法で?」 残った四体のワルドが一斉にグルリとわたしの方を向いた。 こっ恐い……。 「ファイアーボールの一発で僕の偏在が消し飛ぶ訳が無い。君は土くれの ゴーレムの腕を吹き飛ばしたそうじゃないか、しかも再生するはずの腕を そのままにして」 ワルドの言葉に熱がこもる。 「追い詰められ、命を懸けると本当の力がわかる。なるほど、そこの使い魔の 言うとおりだ。まだ自分の系統に目覚めてもいないのに、この威力! 覚醒すればどれ程の力になるのか楽しみだ、実に楽しみだぞ僕のルイズ!」 ワルドが目を輝かせ、わたしに杖を向ける。 「逃げろ!」 プロシュートが叫ぶがワルドの風で、わたしは壁に叩き付けられた。 「「カ八ッ」」 わたしは衝撃でしばらく体が動かなかったがワルドは何もせず、ただプロ シュートの様子を眺めていた。 おもむろにワルドが口を開いた。 「今、僕の魔法が、かすりでもしたか?」 何を言ってるのワルド? プロシュートの方を見ると険しい表情で汗をダラダラとかいていた!? プロシュートが叫ぶ。 「逃げろッ!ルイズ!」 わたしには何が何やらさっぱり分からなかった。 「主人の危機を知らせる能力か?ルイズのダメージが使い魔に伝わったのか」 ワルドの攻撃の質が変わった!プロシュートだけを狙う攻撃から、わたしにも風 を当てようと杖をこちらに向けてきた。 ズドドドドドドド 「うおっ、うおぉおおおおお」 プロシュートはわたしを庇う様にワルドの前に立ちはだかる。 「プッ、プロシュート!!」 「オレにかまうなッ!逃げろッ!」 「え!!え!?」 「早くにげろーッ!」 わたしのダメージがプロシュートのダメージになるですって? 思い出した!!そういえば召喚した時にプロシュートが言っていた。 それを今の今まで忘れていたわ!何てこと、何てことなの。 まさか、こんな事になるなんて! 一体のワルドがエア・ハンマーを、わたしにぶつける。 「「カハッ」」 攻撃を受けていないプロシュートも息をもらす。 「隙だらけだぞガンダールヴ」 三対のワルドの杖がプロシュートを引き裂いた。 「プロシュート!!」 プロシュートが床に倒れる、その体はピクリとも動かない。 出血がみるみる内に床に広がっていく。 わたしは立派なメイジになるとか、認められたいとか……空回りして。 プロシュートの足を引っ張って、最低のマヌケだわ。 ワルドの顔から皺が消えた…… 余裕を取り戻したワルドが、にこやかな口元で声を高らかにあげた。 「さてルイズ、今一度問おう。僕と一緒に来てくれるかい?」 「絶対に嫌よ!」 YESと答えると思ってんの、この男は? 「さて、どうしたものか。かけがえのない『虚無』を殺してしまう訳にもいかぬ。 無理矢理に連れて帰っても協力を得られない……薬でも使うか?いや…… 魔法の使えぬ人形にしては意味が無い……そうか、その手があったか。」 ワルドは、ニタァと笑うと舐める様な視線をわたしに向けた。 「君に惚れ薬を使う」 「ワルド、あなた何を考えているの。惚れ薬の売買、所持、使用は重罪よ!」 「革命を考えている者に、その様な忠告は無意味だとは思わないのかい?」 「あなた最低ね!」 「最後に自分の考えで話せる言葉は、それでいいのかい僕のルイズ?」 いいわけないでしょ。なにが惚れ薬よ!冗談じゃないわ! 「フフフ、いいぞ『聖地』が見えてきた!ヤル気がムンムンと湧いてくるじゃ ないか!ええ、おい!」 ワルド、自分の世界に酔ってる? 四対のワルドがゆっくりと、わたしを囲もうと動き出す。 「フフ、すぐ済むよ」 にっこりと笑うワルドはもう、ただ気持ちが悪いとしか言い様がない。 「近づかないで!」 ファイアーボールを唱える。 しかし、ワルドにぶつからず、全く別の場所が爆発するだけだ。 続けてもう一度唱えるが、これも当たらずワルドの歩みは止まらない。 「威力は申し分ないがコントロールは、まだまだの様だな」 歩み寄って来るワルドの足が急に止まった。 「ば……ばかな!こ……この疲労感……ま……また始まったぞ!」 「終わってないぞ!!まさか……まさか!あいつ!」 ワルドが苦しんでる?でも……プロシュートはもう…… わたしはプロシュートに視線を向ける。 「グレイト……フル・デッド……」 プロシュートの血溜の中にグレイトフル・デッドが立っていた。 その表面が古い土壁の様にボロボロと崩れていく………… まるでプロシュートの傷を表わすかのように…… 「プロシュートォォォォォ」 「本当に……あなた……ううっ……そのとおりだったのね。 腕や脚の一本や二本、失おうとも、わたしを守ると言った事は!! プ……プロシュート、あんなボロボロの重症じゃあ………… も……もう……あなたは助からないッ! 息をひきとるのも時間の問題ね。 だのに、あなたは自分のグレイトフル・デッドを解除しない。 わかったわプロシュート!! あなたの覚悟が『言葉』でなく『心』で理解できたわ!」 ワルドがプロシュートに息の根を止めようと襲い掛かる。 「この死にぞこないが!」 そうはさせない!! 「ファイアーボール」 プロシュートに迫ったワルドが吹き飛んだ。 「むっ!!ルイズのコントロールが良くなった!?」 残った三対のワルドが、わたしを取り囲もうと動き出す。 わたしは急いでプロシュートを守るように立った。 「嬢ちゃん、俺を使え!」 足元から、デルフリンガーが声をあげる。 わたしは、言われるままデルフリンガーを両手で構える……重い。 杖と剣を纏めて持っているので、振るいにくい! 剣を構えたとたんにウィンドブレイクが迫ってきた。 だがそれはデルフリンガーによって吸収されていく。 「くっ、インテリジェンスソードか!直接ルイズを気絶させねばならぬようだな」 目の前のワルドが、わたしに杖を構える。 「ファイアーボール」 ワルドが音を立てて消し飛んだ。これも偏在か……だが、あと二体!! 消し飛んだワルドから、二体のワルドが間合いを取る。 「せ……正確すぎる、僕の動きが正確に読まれてしまっている。 しかも一撃で偏在を吹き飛ばされる『パワー』もすごい! 老化の使い魔さえ倒せば、もう僕の勝利かと思ってた…… だが甘くみていた、この戦いの中で本当にやっかいなのは 『老化させる能力』の使い魔の方ではなかった 真に恐ろしいのは……!!この『虚無』のルイズの方だった!」 今まで、外していたのが嘘のように、狙い通りに魔法が当たる。 不思議な感覚、これがリズムが生まれるってやつなの? 「栄光は…………おまえに……ある……ぞ………… ……やれ やるんだ…… ルイズ オレは…… おまえを 見守って…… いるぜ…… やれ…… 」 「ルイズ、君の『面がまえ』……今まで、こんな『目』をしているメイジではなかった まるで『十年』も修羅場を、くぐり抜けて来たような……スゴ味と…… 冷静さを感じる目だ……たったの数分で、こんなにも変わるものか…… 君に小細工は通用しない!!」 二体のワルドがわたしに突っ込んできた。 「ファイアーボール」 わたしは前を走るワルドに魔法をぶつけた。 ワルドが爆発し消し飛ぶが、後ろのワルドは構わずに突っ込んでくる。 偏在を盾にしたのか。これで残るのは本体のみ! 「もらったよ、僕のルイズ」 呪文が間に合わない!単純な力押しできたか!! ワルドが杖を構える。やっぱり、わたしじゃ勝てないというの? 憎憎しげにワルドを睨む。その後ろには、いつの間にかグレイトフル・デッドが その大きな腕を振り下ろしていた。 ワルドの左腕が飛んだ。 「なにー!?」 「グレイト……フル・デッド……」 激昂したワルドが杖を振り上げた。 「この使い魔がッ!!」 ありがとうプロシュート。このチャンス、無駄にはしないわ。 「隙だらけよ!ワルドッ」 プロシュートに一撃を加えた屈辱の台詞をそのまま言い返す。 「しまっ……」 「ファイアーボール」 「ぐはッ!!」 ワルドの表面で爆発が起こり、煤だらけで倒れた。 倒した……わたしが『スクエア』のワルドに勝った!!
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1087.html
「クレイモア」の高速剣のイレーネ ラファエラ対峙後で右腕が常人の力程度に再生した状態 ゼロの使い魔―銀眼の戦士― 1 ゼロの使い魔―銀眼の戦士― 2 ゼロの使い魔―銀眼の戦士― 3 ゼロの使い魔―銀眼の戦士― 4 ゼロの使い魔―銀眼の戦士― 5 ゼロの使い魔―銀眼の戦士― 6 ゼロの使い魔―銀眼の戦士― 7 ゼロの使い魔―銀眼の戦士― 8 ゼロの使い魔―銀眼の戦士― 9 軽い用語解説 『イレーネ』 組織のかつてのNo2。高速剣のイレーネの異名を持ち、No2だが歴代No1にも匹敵する力を持つ。クレア曰く「化物だな…お前も」最強の覚醒者『プリシラ』により左腕を奪われ瀕死の重傷を負うも辛うじて生存していた所に、右腕を失ったクレアを救う。高速剣と自身の右腕を託した。 『妖魔』 人の臓物を喰らい、人に化ける化物。 『クレイモア』 妖魔の血肉を取り込み、半人半妖と化した戦士。それぞれ47のナンバーで格付けされている。戦士が使う大剣の事も指す。 『覚醒者』 限界を超え妖魔と化した戦士の姿。思考が妖魔と変わらず基本的には人間の敵。元の妖力の高さに比例して強くなり、一桁Noの覚醒者は総じて強力。 『妖力解放』 戦士が内に秘める妖魔の力を解放させる事。1割で目の色が変わり、3割で顔つきが妖魔に近くなり、5割で体付まで変化する。8割を越えると限界を超えたとされ、大抵の戦士は覚醒者へと変貌する。また八割を超えていなくても負傷などの状態で妖力を解放すると限界を超える事がある。 『高速剣』 片腕を完全妖力解放させ、暴れまわる片腕を精神力で無理矢理押さえつける技。使用者には常に冷静を保つ強靭な精神力が必要。故に、心を震わせパワーアップするガンダールヴとは相性最悪。その神速とも言えるスピードは抜き身すら確認する事はできない。クレア曰く「ろくでもない技」
https://w.atwiki.jp/madomagi/pages/63.html
Mathieu まてゅー 委員長の魔女の手下。その役割はクラスメイト。 足に履いたスケート靴で糸の上を優雅に滑走するが それぞれは魔女が糸で操ってるだけであり意思を持たない。 概要 委員長の魔女・Patriciaの使い魔。 Patriciaの縮小版のような使い魔で、ひざまくらという商品を彷彿とさせる。 プリーツスカートを穿いた下半身のみの姿をしており、空から大量に降ってきたり、Patriciaのスカートから発射されたりする。一応外敵を邪魔しているようだが、落ちてきて糸の上をスケートするだけで、攻撃らしい攻撃はしてこない。 親の魔女と違いスカートの中身が見放題だが、ちょうちんブルマを穿いているので視聴者のご期待には添えない。 劇団イヌカレーによれば「魔女といえどもパンツチラリは許しません」とのこと。 その上、Mathieuは男性名である。女装が疑われるが、姓に使われることもあるので断定はできない。 ポータブルでのドロップアイテム MathieuはAGI強化ポイントをドロップしティーチャーはDEX強化ポイントを落とす。 ティーチャーについては詳細はないのでまとめて表記する。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2503.html
「使い魔」とは主人に絶対の忠誠を誓い、己の身を盾にしてでも主人の為に尽くす存在らしい。 恐らく契約の際なにかの洗脳でもされるのだろう。このディオにも知らず知らずの内にそのような洗脳を施されているのだろうか。 考えると胸くそが悪くなった。 おれは使い魔になるぞジョジョーッ! 第四話 日が昇ってから時間も経ち、生徒達の声もいつの間にか聞こえてくるようになった。 そんな中、ディオはルイズの部屋にスルリと入る。 フン、まだ寝ていやがる。使い魔である以上放っておく訳にはいかないので無理矢理起こす。 「ん…んんぅ…」 「おっとルイズ、朝だ、起きるんじゃあないのか?」 と言いながら毛布を剥ぎ取る。 「な、なによ!何事!?」 「朝だ、ルイズ」 目をこすりながらディオを見上げたルイズは 「…あんた誰よ!?」 と怒鳴った。このド低脳めッ! 「昨日ぼくを使い魔にしたのはどこの誰だったかな?」 「あ…帰ってきてくれたの…じゃなくって昨日はよくも!ちゃんと掃除洗濯したんでしょうね!?」 「ああ、してあげたよ。御主人様」 昨日の行動から想像できなかったルイズは面食らいながらもやっと使い魔の自覚が持てたのかと一人納得し、服を着はじめた。 昨日の事を思い出し、恐る恐る服を取ってくれるように『頼む』と、丁重に取ってくれた。 服を着替えてドアを開けて廊下に出ると、同時に赤い髪の女が向かい側のドアを開けた。ヴァリエール家の宿敵、ツェルプストーだ。 「おはよう、ルイズ。昨晩はお楽しみでしたか?」 「うるさい、下半身で動いてるあんたと一緒にしないでよ」 「『微熱のキュルケ』ですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。 でも、男の子はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね?」 ただでさえ朝に弱いルイズの機嫌が悪くなる。だが女はそんな事を気にする様子はない。 「あなたの使い魔ってそれ?」 とディオを指差す。この学院の女生徒は皆スカートの丈が短いが、それにも増して露出が高い女だ。 ロンドンを騒がしていたジャック・ザ・リパーがいれば真っ先に襲っただろう。 だがキュルケはそんな二人の様子など我関せずといった様子で水路の関を外した水のように話し続ける。 「『サモン・サーヴァント』で平民(笑)呼んじゃうなんて実に『ゼロのルイズ』らしいじゃない」 「…うるさい」 ルイズの機嫌が更に悪くなるが、女は構わずディオに向き直る。 「私の名はキュルケ・フォン・ツェルプストー。キュルケでいいわよ。あなたのお名前は?」 「ディオだ。」 値踏みをするように暫くディオを見つめると、ただの平民だと判断する。 てっきり異世界の光るマジックアイテムとかそういうものでも持っているかと思ったがそうでもなさそうだ。 「でもあなたも大変ね。『ゼロのルイズ』になんて召喚されて。そうだ、ついでだから私の使い魔も紹介してあげる。おいで、フレイム!」 すると女の後ろから巨大な赤い色をしたトカゲがのっそりと姿を現した。 「ふふ、やっぱり召喚するなら何もできない平民よりフレイムみたいなサラマンダーを召喚するべきよねぇ~ヴァリエール」 ルイズには反論できない。何回も失敗したあげく出てきたのは主人の言うことを聞かない使い魔。しかも平民だ。 ルイズはサラマンダーを見せ付けるように可愛がるキュルケを憎々しげに見つめる事しかできなかった。 「ほーら、貴方の勇姿をヴァリエールの貧相な使い魔に見せてあげなさい」 そんなルイズを見てキュルケはトドメとばかりに嫌がらせをする。 キュルケの命令通りルイズとディオに近付くフレイム。 ボギャァァ!! 次の瞬間、フレイムは顎を蹴り飛ばされていた。 なんの事はない。ディオがフレイムに膝蹴りをしたのだ。 いくら火吹き竜とはいえ思ってもみなかった攻撃には耐えられなかったらしく、フレイムは部屋の端に吹き飛ばされてしまう。 「な、何をするだァーーッ!ゆるさん!」 思わずゲルマニア訛りで怒るキュルケ。 だがディオはゆっくりと姿勢を戻すと、 「すまない、火吹き竜なんて元の世界では見た事がなくてね、思わず攻撃してしまった。許してくれ」 と丁重に謝罪した。 キュルケは言い返そうと思ったが、平民がサラマンダーを恐がるのは当たり前の反応だし、なにより少し挑発しすぎたかな、と 後悔していた所だったので、今の無礼はなかった事にした。 とはいえヴァリエールの者にまで「はいそうですか」と許す気はない。 「わかったわ。でも使い魔の責任は主人の責任。ルイズ、今日の真夜中に決闘を申し込むわ。お受けになって?」 売り言葉に買い言葉、ルイズも負けじと言い返す。 「当たり前じゃない。今日の真夜中ね?覚悟しなさい!」 そう叫ぶルイズに何度も一輪車に乗ろうとしては倒れる子供を見るような目つきで微笑むと、 「立ち会い人はタバサに頼むわ。それじゃ、逃げ出さないでね」 と会釈をくれ、食堂へと歩いていった。 その姿を見送ったルイズはディオに向き直る。その顔は先程とは違い、喜んでいる。 「あんたやるじゃない!あのツェルプストーの使い魔に一発喰らわせるなんて!」 キュルケには謝っていたがあの瞬間のディオの顔はとてもサラマンダーを恐れている人間のものではなかった。 あのキュルケに一泡吹かせたんだから鳥の皮くらいはサービスしてあげてもいいかもしれない。 だがディオはそんなルイズに背を向けると、 「今まで見てきたが、今確信が持てた! ぼくは使い魔が嫌いだ!怖いんじゃあない。人間にへーこらする態度に虫酸が走るのだ! ぼくはあのフレイムとかいう阿呆竜のようにはならないからな!」 と言い残し、食堂へと去っていった。 やはり今日の食事は抜きにしてやろう、ルイズはそう思い直した to be continued…
https://w.atwiki.jp/sorakaakeru/pages/49.html
・トラスティア世界でのみ使役出来る ・それは契約した悪魔等かもしれないし、己の内側が悪魔等として具現化したものかもしれない ・基本的にトラスティア世界では使い魔を持つ者が多いが、必須ではない ・中立地帯や重要施設では無闇に使役すると何者かに排除される ・使役する使い魔は基本的にプレーヤーさんが考えて下さい。アトラスゲーとかに疎いけどなんとなく使い魔が欲しいという方は申請して下さい。 出来るだけコチラで用意しますし、スレで広く募集をするのもいいかもしれません。 ・属性や技などこまけぇこたぁ(ry。ただ、チートすぎるものは禁止。あとは弱点攻撃などは戦闘中の雰囲気に任せます ・使い魔は倒されても、次のセッション時には回復します。また回復魔法等による復活もありですが限度は考えましょう ・主に精神にダメージがフィードバックします。酷使するとその分、頭痛が激しくなります。経験すればダメージは軽減化 ・原則として、トラスティア外での使い魔の使用は出来ない。だが、「しかるべき手段」を取れば召喚して使役も可能 ・外部でも使い魔カードによりホログラム化をしてコミュニケーションを取ることは出来る 使い魔作成(以下から必要事項を選択) ※【名前】 ※【使役者】 【大きさ】SS S M L LLより選択。Mが人間サイズになります。 【種族】 【属性】 【アイテム】 【技能】 【備考】
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5051.html
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 暖かな陽光が照らす朝。 朝食をとる為に食堂へと向かい、朝日が差し込む廊下を歩く影が二つ。ルイズとその使い魔=ジャンガだ。 「はぁ…」 「…何度目だよ、そのため息は?」 ルイズのため息にジャンガは顔をしかめる。 「仕方ないでしょ……他の皆は使い魔とのコミュニケーションもとっくに終えて、共に過ごしているっていうのに、 私は召喚から”4日”も経った今日、初めてアンタを連れているのよ?」 ”4日”の部分を強調し、ルイズは振り返らずに答える。彼女が憂鬱なのもまぁ無理も無い事ではある。 ジャンガは召喚から三日三晩経った昨日の時点で目が覚めてはいた。 だが怪我はまだ完治しておらず、念の為にともう一日休息を入れたのである。 その為、召喚から計4日と言う開きが出てしまったのだ。 ただでさえ皆に馬鹿にされている彼女にしてみれば、これは非常に致命的な弱みでもあった。 このまま食堂に行けばどうなるか…考えただけでも更に気持ちが沈む。 「はぁ…」 更に鬱な気分になり、彼女の口から再びため息が漏れた。 学生達が食事をする『アルヴィーズの食堂』は既に大勢の生徒で賑わっていた。 三つ並んだ、やたらと長いテーブルにはロウソクやら花が飾られ、所狭しと豪華な料理が並んでいる。 ちょっと油断をすれば直ぐに腹の虫が鳴き出す香ばしい匂いの中、ルイズはジャンガを引きつれ足を進める。 案の定、周りからは嘲笑が聞こえてきたが、彼女は全力でそれらを無視。 ジャンガに席を引かせると着席する。 「で?」 「”で”……って?」 「俺は何処に座ればいいんだ?」 ルイズの左右の席には既に着席している生徒が居る。 自分の席は何処かと辺りを見回す。ルイズはそんな彼のコートの裾を引く。 振り向いた彼にルイズは床を指差した。 ジャンガが視線を向けると、そこには罅の入った皿が一つあり、豪華な料理とは比べる事などできないほど、 粗末なスープと如何にも硬そうなパンが乗っていた。 「おい…何だこいつは?」 「この席に座っていいのは貴族だけなの。使い魔は本来なら外で待っているのよ? あんたは私が特別に計らってあげたから床。感謝しなさいよ?」 「……」 無言のままジャンガは床に座った。――額にハッキリと青筋を浮かべながら…。 朝食が終わり、午前の授業が始まった。 食堂でもそうだったが教室に入った途端、ルイズは生徒達に嘲笑や罵声を浴びせられた。 それにも彼女はやはり無視を決め込んだ。 そんな彼女と生徒達の様子を見つつ、ジャンガは他の使い魔達と共に教室の後ろの方で壁に凭れ掛かっていた。 暇潰し程度に授業の内容を聞きながら、ただ呆然と時間が過ぎるのを待った。 やがて暇を潰すのにも飽き、船を漕ぎ出した時、生徒達が急に騒ぎ始めた。 「んだぁ…?」 騒がしい声にジャンガは顔を上げる。 見ればルイズが席を離れ、先生(ミセス・シュヴルーズとか言ったか?)の方へと歩いていく。 そんなルイズに周囲の生徒達は一様に鬼気迫る表情を浮かべ、「やめて、ルイズ」などの言葉を投げかける。 食堂や教室に入って来た時などの嘲笑とはまた違うその雰囲気にジャンガは不可解な物を感じた。 「なんだってんだ…一体?」 そうこうしているうちにルイズは教卓の前に立った。 「では、ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を強く思い浮かべるのです」 優しく促す教師=ヴァリエールの言葉にルイズは緊張の面持ちで教卓の上の石ころを見つめる。 その様子を静かに見ていたジャンガだが、ふと一人の生徒が扉を開けて出て行くのに気付いた。 ゆっくりと扉を閉め、タバサは教室を後にする。 ルイズが魔法を使おうとすればどうなるかは誰もが承知の事実。 故に誰もが必死にルイズを止めようとしたのだ。 あの教師は少し気の毒だが、今年就任したばかりで彼女の事を知らないのだから致し方ない。 それにタバサにしてみれば気に留める必要もない。…何せいつもの事なのだから。 教室を離れた後は読書をしつつ、次の授業の事を考えればいい。 タバサは本に目を落としながら、静かに読書できる場所へと歩みを進める。 「授業中に抜け出すたぁ、良くねぇな~?」 唐突に聞こえてきた聞きなれない声にタバサは顔を上げた。 見れば壁に凭れ掛かりながら、こちらに顔を向けている長身の男が立っていた。 左右で色と見開き方の違う月目が自分を見つめている。 「…ジャンガ?」 「キキキ、嬉しいねぇ…俺の名前を知っているたぁな?」 何時の間に先回りしたのだろう?多少気になったが、タバサの興味をさらうほどではない。 タバサは本へと目を戻し、ジャンガの前を通り過ぎようとする。 「おいおい、無愛想だな…?」 「……」 タバサは最早顔も上げず、読書を続けながら歩みを進める。 そんな様子に舌打するジャンガ。 「まだ授業は終わっちゃいねぇぞ…?不味いんじゃないのか?」 「…いいの」 「おいおい…」 「多分…授業続けられない」 「そりゃ、どうい――」 ――その時、ジャンガの声を遮り、学院内を揺るがす爆発音が響き渡った。 「な、なんだぁ?」 突然の事にジャンガは両目を見開き、爆発音の聞こえてきた方向=教室の方を振り返った。 タバサは全く動じずにその場を立ち去ろうとする。その背にジャンガは声を投げかけた。 「お、おいっ!?今の何だ?」 「…彼女の魔法…」 タバサは振り向かずに一言。 「はっ?」 「…行ってみれば分かる…」 そう言い残すと彼女は今度こそ、その場を後にした。 ジャンガはその背を暫く見送っていたが、やがて教室へとその足を向けた。 「……」 教室へと舞い戻ったジャンガは言葉を失った。 あの爆発音からある程度予想はしていたが、目の前の状況は多少それを上回っていた。 教室内は爆発の名残であろう煙が充満し、壁や天井には罅が無数に入り、窓ガラスは残らず割れていた。 床や机には砕けた壁や天井の欠片が散らばっている。 ふと、目を向けた先の床ではシュヴルーズが倒れている。 時折痙攣しているところから目を回しているだけのようだ。 爆発の状況などから考えて、おそらくは爆心地に近い所に居たのだろう。 不幸と言えば不幸だが、これだけの大爆発の爆心地にいて目回している程度で済んでいるのは幸運と言える。 と、シュヴルーズの近くの煙の中から人影が立ち上がった。…ルイズだ。 顔は煤だらけ、服やスカートはボロボロ、路地裏で生活している奴と比べても大差無い…いや寧ろ酷い。 ルイズはこんな状況下でありながら、全く動じる気配を見せず、取り出したハンカチで顔の煤を拭き取る。 「慣れてるな…」 ある意味、感心したジャンガは思わず声を漏らした。 「だから言ったのよ!」 突然、響き渡った声にジャンガは目を向ける。キュルケが怒鳴り散らしているのが見えた。 しかし、やはりルイズは動じる気配を見せずにハンカチを動かす手を止めない。 「ちょっと失敗したみたい」 そんなルイズに生徒が一斉に騒ぎ出す。 「どこがちょっとだよ!」 「今まで成功の確立ゼロじゃないか!?」 「ゼロのルイズ!!」 『成功の確立ゼロ』……その言葉にジャンガは彼女が何故『ゼロのルイズ』と呼ばれるのかを知った。 (なるほどねぇ…) ジャンガは小馬鹿にするような笑みを浮かべ、ルイズを見た。 (ゼロ……つまり”無能”って事か…。キキキ…ピッタリじゃねぇか) 前ページ次ページ毒の爪の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/861.html
前ページ次ページ糸色望の使い魔 「と言うことは何かな、この中に犯人がおると?」 学院長であるオールド・オスマンはそう言った。 ここ、学院長室にはオールド・オスマン、ミス・ロングビル、その他数名の先生と生徒、兵士が集まっていた。 「そんな、ここに居るのはみな家柄のしっかりし……てない人も居ますが」 と先生の一人が私の隣に居るイトシキを見て言った。 「あら、家柄で怪しむなら私も怪しいと言うことになりますわね」 そうロングビルが続ける。その一言でその先生は次の句が告げられずに黙り込んだ。 そもそも何故こんな状況になったのか。 それは数刻前に遡る。 ゴーレムを発見した私はとっさに駆け出していた。 杖を振りかざすとゴーレムの胴体を爆発させた。ゴーレムの身長は三階をゆうに超える巨体。命中精度が低い私の魔法でも十分に当たる。 何を目的にしているのかは分からないが、学院に向かって拳を振り下ろしている時点で攻撃を迷う必要は無い。 だけど私が魔法で破壊した穴は小さく、すぐさま塞がってしまう。 ゴーレムはこちらの存在など無いものと無視して壁を殴るのをやめない。 続けてファイアーボール(失敗しているが)を唱え続けた。 そうこうしている間に先生や一部の兵士が駆けつけてきた。 ゴーレムを取り囲むように展開すると、四方から魔法を浴びせかける。 多数の魔法を浴び、爆発と烈風によりゴーレムは横倒しにされた。 だが、ゴーレムは特に抵抗を見せないまま、そのまま土に還ったのである。 まだ暴れることができたはずなのにあっさりと引いてしまった。 その事に不信を覚えたオールド・オスマン学院長は殴られていた場所が宝物庫であることに気づいた。 すぐさま宝物庫に走る、ついていく先生や兵士に混ざって私も宝物庫へと走った。 螺旋階段を駆け上がると、そこには重厚な鉄の扉。学院の宝物庫には貴重で価値の高いものが保管されている。よってスクウェアクラスのメイジ数名によって封印がされている。 その扉のには張り紙がしてあった。紙には 『お宝はたしかに頂戴しました。土くれのフーケ』 と書いてあった。 これに驚いた学院長はとっさに呪文を唱えて鍵を開けた。 そのまま宝物庫になだれ込む私たち、一見宝物庫の中は変わった様子は無い。 そもそも入ったことが無かったので元の風景をしらないのだけれども。 フーケが隠れていないかと警戒しながら私たちは宝物庫を見回った。 この宝物庫は意外と広く、死角になる場所が多い。 全員で散って探したのだが怪しい人影はまったく見えない。 これはもう逃げたものと思い入り口に戻った。そうするとオールド・オスマンが全員を集めて話した。 大きな円筒状の杖を知らないかと。 これがゴーレム出現から破壊の杖が盗まれるまでの経緯であった。 ここから導き出された犯人の行動予定は、まずゴーレムで騒ぎを起こす。 そして偽の張り紙で学院長に鍵を開けさせて目当ての宝を盗み出す。といった所だったのだろう。 犯人にとっての予定外は、予想以上に人が宝物庫に駆け込んできたため、入り口はずっと兵士が見張っていたこと。 学院長が真っ先に無事を確認した破壊の杖が目的で、学院長が無事を確認したあとに盗み出してしまったこと。 そのため、犯人はあの時宝物庫に居た人間の誰かと言うことになった。 当然その場に居た人間全員の身体検査を行ったが何も出てこない。 さらにオールドオスマンと他一名が宝物庫を徹底的に探したのだが出てくることは無かった。 品評会は急遽中止、他の生徒は寮からの外出を禁止、姫様には速やかに王宮にお引取り願った。 そして怪しまれている私たちは学院長室に集められたわけである。 「そもそも、本物のフーケかどうかはともかく、ゴーレムを使っていたんでしょう? 私は関係ありませんわよ」 と赤い髪を揺らし、キュルケが言った。今回ばかりは同意する。彼女は火のメイジ、ゴーレムは作れない。 私も残念ながらあんなゴーレムは作れないし、キュルケの隣に居るタバサは確か風と水のメイジだったはずだから同様だろう。イトシキなんか魔法自体使えない。生徒とその使い魔は全員シロということだ。 「そうは思っておるが、事件があった時に同じ部屋にいたのじゃ。何か犯人を捕まえる手がかりを知っておるかもしれんじゃろ?」 「そうねぇ、私はゴーレムと戦ってる時からずっとタバサと一緒に居ました。杖についてはまず気にもしませんでしたわ」 タバサもコクリと頷いた。 「ヴァリエール嬢はどうかな?」 「私も特には……気がついたら杖が無くなったと聞かされただけで。杖がどこに保管されてたかも知りません。イトシキ、あんたは何か気づかなかった?」 と横に立って無関係を装ってた彼に話しかけた。 彼は青い顔をこちらに向けた。その顔は「何故話しかけたんですか」と言っている。 どうやら自分が濡れ衣を着せられるのではないかと怯えているようだ。何もしてないのだったら堂々としていれば良いのに。 その様子は周りからも不信に見えたらしく。 「顔が青いな、まさか貴様が……?」 と兵士がイトシキに問いかける。 「べ、弁護士を呼んでください!!」 と、またよく分からない事を叫んだ。 「またあなたたち軍隊は怪しいというだけで市民を引っ立てて無実の罪をなすりつけるつもりなんですね!」 「は? そんな事は一言も……」 「いいえ、口でそう言いながら心の中では私が犯人だと思い込んでるに決まってるんです。そうやって歴史はウソで塗り固められていくんです! もしかしたら●ットラーやス●ーリンは善人だったかもしれないじゃないですか。何故そう断言できるんです!」 「落ち着きなさい、バカ!!」 ロープを首にかけると思いっきり引っ張って締め落とした。そのまま簀巻きにする。 「お騒がせしました」 「ルイズ」 「なによ、キュルケ」 「なんでロープなんか持ってるの?」 「品評会の直前にイトシキから没収したからよ」 そのままでは埒が開かないので、学院長が一人ずつ尋問することになった。 待ってる間は別室で待機となった。 学院長室の真下の客間に私を含めて生徒三人、兵士が二人、先生が二人、そして各々の使い魔が詰めていた。 タバサの使い魔は窓の外を飛んでいるが。 今はコルベール先生が学院長室でオールド・オスマンと話している。 「本当にこの中に犯人なんか居るのかしら?」 あまりに手持ちぶたさのため単純な疑問が口から漏れた。 「人間、裏で何を考えているかは分かりませんからね。最近は温和な人ほど怖いということもあります」 イトシキの『最近』はあてにならないが、確かにそういうものなんだろうか。 「なに? タバサが怪しいって言いたいのかしら」 その発言にキュルケが噛み付いた。 「違います、私は私以外の全員を疑ってます!」 それはそれでどうなんだろうか。 「そもそも、学院長が取調べを行うのもどうかと思いますよ。彼が犯人だったらどうするつもりです。私なら虚偽の証言で誰か適当な人間を……そうですね、学院として傷が付かない兵士の方二人のどちらかを犯人に仕立て上げます!」 「そうかもしれん、だが『破壊の杖』は学院長個人の持ち物であると聞く。それじゃあ自分のものを事件を起こして盗み出したと言うことになるぞ」 イトシキの疑惑に先生が反論を立てる。 それもそうだ、学院長が犯人ならなんのためにこんな事をしたというのだろうか。 「保険金詐欺、が考えられますがこの世界にはありませんでしたね。でしたら破壊の杖を行方不明、盗賊の手に渡ったことにする。その後その杖を使って何か事件を起こせば盗賊に罪が降りかかります。十分メリットはあるでしょう」 「あんたの中で学院長はどんな極悪人になってるのよ」 「年を取った人はいつも悪いことを考えてるものです!」 あなたが言うな。 最近、このネガティブを矯正するのは無理なんじゃないかと思いはじめている。 「そう考えると辻褄が合います。まず学院長は品評会の前に宝物庫に行って偽の盗賊の書置きを残す。そしてゴーレムを遠隔操作で操り、倒された後はさも当然のように数人を伴って宝物庫に行く。そして盗まれたフリをして騒ぎを起こし、その間に破壊の杖を外に運び出すのです」 「面白い考えだけど、穴だらけよねぇ」 とキュルケが冷静に言った。 「そもそも学院長が犯人ならば、機会はいくらでもある」 とタバサが補足した。 それもそうだ、犯人にとってこれだけの人数が宝物庫に集まったのは予想外のはず。学院長が犯人ならこんな無理な条件でさらに計画を進める事は無い。 「まあ、面白い推理だったけどね。確かに盗んだフリをして実はまだ宝物庫にあるってのは……」 全員がはっと顔を上げる。 「ちょっとまって、宝物庫を点検したのは学院長よね?」 「いや、確かもう一人誰かが一緒に点検したはずだ」 と私の疑問に先生の一人が返す。 「ミス・ロングビル」 タバサがぽつりと言った。 客室に居た私たちは大慌てで学院長室になだれ込んだ。 中に居るのは、驚いた顔をしたコルベール先生と、片眉を上げているオスマン学院長。 ミス・ロングビルの姿は見えない。 「学院長、ミス・ロングビルはどうしました?!」 「どうしたんです、血相変えて」 「彼女なら、ちょい前にトイレに行ったぞい……そう言えば遅いの」 遅かったようだ。 その後、イトシキの推理を学院長に話し、先生を総出でミス・ロングビルを探した。 だが彼女は完全に学院から姿を消していた。 私たちを笑うように宝物庫には『今度こそ間違いなく、破壊の杖を頂戴しました。土くれのフーケ』と書置きだけが見つかった。 再び学院長室には男の先生と容疑者だった私を含める生徒三人と何故かギーシュ、それと使い魔が集まった。 兵士はもう居ない、城へ戻って彼女を指名手配するとの事だ。 「騎士団がフーケを追うと連絡があった……じゃが」 いつもとは違った厳しい表情を見せる学院長。 ここまで良いように盗賊にコケにされたのである。さすがに怒り心頭といったところであろうか。 「これは学院はじまって以来の事件、我々が解決すべきことじゃ。誰かフーケを追おうという者は居らぬか?」 私は迷い無く杖を上げようとした、が隣から伸びてきた手に妨害された。 「何のつもりかしら、イトシキ」 「手を上げるつもりでしょう」 「当たり前じゃない」 「ダメです!」 「何? 珍しく心配でもしてくれてるの」 「心配も何もあなた、私を当然のように連れて行くつもりでしょう。絶対にイヤです!」 「当たり前でしょう、主人に付き従わない使い魔がどこにいるのよ」 力づくで手を上げようとし、それをイトシキが押さえつける。 力が拮抗してるあたり男の癖に本当にひ弱である。 「ミス・ヴァリエール。保護者から預かってる、学生である君を盗賊退治に向かわせるわけにはいかんよ」 「ぉお、さすが学院長。PTAの事をよく考えられている」 イトシキを手を振り払うと、前に進み出る。 「では、先生方の中で名乗りを挙げる人は居るのですか?!」 全員が顔を背けた。土くれのフーケはトライアングルメイジと聴く。しかもあのゴーレムを操るのだ。 今度は昼のように戦いになれた兵士たちは居ない。怪我どころか命をかける仕事になるかもしれないのだ。しかもただの盗賊退治、名誉も何も無い。 だけど私たちは貴族だ。イトシキでは無いけれど、その物騒な名称の杖を使っていつ盗賊が国家に仇名すか分からない。早急にやれることをやるべきだ。 「だから私が行きます」 と、杖を上げると隣でもう三本の杖が上がった。 「私もいきますわ、ヴァリエールばかりに格好つけさせるわけにはいきませんもの」 「……心配」 「女性ばかりでは心配だ、僕もいこうじゃないか」 キュルケとタバサ、ギーシュだった。 だが学院長もこれには眉をひそめた。それもそうだろう、学生だけでいかせるにはいかない。 他の先生もそう考えているようでザワザワと騒ぐ。だが誰も杖をあげようとはしない。 「それでは、私が志願するよ」 とコルベール先生が杖を上げた。 それに続いてイトシキが手を上げた。 「はい、私はいきません!」 「行くに決まってるでしょ!」 前ページ次ページ糸色望の使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1756.html
早朝、朝靄が漂う魔法学院の玄関先に私とルイズは立っていた。ただ立っているわけではない。王宮からの馬車を待っているのだ。 王女アンリエッタとゲルマニアの皇帝アルブレヒト三世との結婚式はゲルマニアの首府ヴィンドボナという場所で、2日後のニューイの月の1日に行われる。 その結婚式の場でルイズは巫女として『始祖の祈祷書』を手に、式の詔を詠みあげなければならない。 つまり、ルイズはヴィンドボナに行かなければ行かなければいけないのだ。お姫様がヴィンドボナへ行く際、一緒に行くことになっている。 そのためお姫様のいる宮殿から王宮の馬車が迎えに来るというわけだ。学院に帰ってくるのは大体1週間後だろう。 ちなみに私はルイズの使い魔ということで随伴しなければいけないらしい。 ルイズは『始祖の祈祷書』を胸に抱えながら、私はデルフを使って足元にいる猫を地面に押し付けあることを考えながら時間を潰していた。 あることというのは無論最近の生活についてだ。特に生活が苦しいところは無い。『幸福』ではないが前に比べ随分と充実している。 しかし、不満が無いわけではない。今私が大いに不満に思っていることはルイズと同じベッドで眠っているというところだ。 なぜルイズなんかと一緒に寝なくちゃいけないんだ?ルイズがキュルケのようにボンキュボンならむしろ喜んで一緒に眠るがルイズにはそういった魅力が感じられない。 ルイズは13歳か14歳ほどだろうから当然かも知れない。だが、そうなると一緒に寝ているときは邪魔なのだ。何故他人のことに配慮して眠らなくちゃいけないんだ。 一人で好きなときに好きな体勢で眠りたい。つまり自分のベッドがほしい。それが今の切実な願いだった。 剣を売った金で画材を買おうと思っていたが変更してベッドを買ったほうがいいかもしれないと本気で思っている。安物なら買えるだろう。 それと、 「ルイズ」 「なに?あ、ヨシカゲ!あんた何時までいじめてんのよ!」 「ミー!」 そう言ってルイズは猫を助けようとデルフを蹴飛ばそうとしてくる。 だが、デルフに蹴りを当てさせるわけにはいかないので、猫をいじるのを止めデルフをルイズの蹴りの場所へ移動させる。 猫はその隙をつきどこかへ走り去っていった。しかし、これでいい。猫をヴォンドボナへ連れて行く気がなかったので離れてくれて助かった。 「まったく、趣味悪いわ」 「そんなことはどうでもいい。ルイズ、トリステインに帰ってきてからでいいんだが、服を買ってくれないか?」 「服?」 「そうだ。私の服だ」 そう、服。今現在私は衣服の替えを持っていない。それはなかなか由々しきことだ。この先一張羅で生きていくわけにもいかない。 人が寝しまっている間に自分の服を洗濯したり、夜じゃあまり乾かないので生乾きで着たりと面倒くさいしな。 「そういえば、あんたそれしか服持ってなかったわね」 「ああ、さすがにもう色々と限界だ。使い魔に必要なものぐらいは買ってくれるよな?」 「ま、まあ……今までよく働いてくれたからそれぐらいしてあげてもいいわね。それと同じ服を何着か作らせればいいんでしょ」 「ああ、助かる。ついでに手袋と帽子の予備もあればもっと助かる」 よし、衣服の問題は無事解決したな。しかし、こういったことはルイズが私に賃金をくれれば起こらないんだがな。だが、自分の使い魔に金を渡す奴がいるか?いるわけがない。普通使い魔ってのは下等動物(竜やなんかは例外だ)だ。 そんな文明もない奴らに金を渡しても意味がないからな。私は人間だが、使い魔だからルイズは金をくれない。わかりやすい方程式だ。わかりやすくてむかついてくる。 幽霊でも金が要る世の中なのに金が手に入らないなんて。剣を売れば自分の自由な金が手に入るが所詮一回こっきりだしな。どうせならルイズに賃金でもくれるように交渉してみるか? 「あれ?だれかしら?」 「あ?」 交渉するべきか否かを悩んでいる所に、ルイズの声が聞こえてきた。その声に反応しルイズを見るとルイズは玄関外の朝靄を見つめている。 いや、人影を見詰めている。人影はこちらになかなかの勢いで近づいてきている。やがて朝靄が薄れ始め、人影がはっきりし始めた。 「あれは……、王宮の使者だわ」 「王宮の使者?」 王宮の使者は髪を振り乱し必死の形相でこちらへ走りよってきた。尋常と言える様子ではないことは一目瞭然だ。使者は私たちに気がつくと私たちに近寄ってきた。 「ハァハァハァハァ……き、きみたち」 「ど、どうかしたんですか?」 ルイズも使者の様子におどいた様子で少し焦っている。 「オールド・オスマンは今どちらに?と、取り急ぎ伝えねばいけないことが……」 そういえばオスマンは今何をしているのだろうか?オスマンも私たちと一緒に宮殿へ行くことになっていたはずだ。準備に手間取っているのだろうか? 「オールド・オスマンなら学院長室にいるかと」 「ありがとう。では急ぐので」 そう言うと使者は学院長室を目指し走っていった。 「ねえ、いったいなにがあったのかしら」 「さあな。少なくともいいことではなさそうだったけど」 あの使者の眼にあったのは焦りと悲しみだった。そんな感情を抱いている時点でいいことのはずがない。 「なんだか胸騒ぎがするわ。わたしも行ってみる」 「じゃあ私はここで王宮の迎えを待っておこう。迎えが来たときに誰も居なかったじゃあっちもこっちも困るからな」 というか、いくらよくないことが起ころうと、私に害が及ばない限り知ったこっちゃない。 「……わかったわよ!勝手にしなさい!」 ルイズはどこか怒ったような声を出すと使者のあとを追っていった。やれやれ、何を怒っているんだか…… まあ、そんなことはどうでもいい。迎えが来るまで暇だな。何をして時間を潰そうか……。デルフと喋るか?そうだな、そうしよう。 デルフを完全に抜きはなつ必要は無い。喋れる程度に抜けばいいんだ。そうすれば不意に見られたとしても怪しまれる心配は殆んどない……と思いたい。 さて、何を話そうか。いや、そんなの考える必要は無いな。会話の内容は重要じゃあない。真に重要なのは会話をするということなのだ。 デルフを喋れる程度に引き抜く。 「おはよう相棒」 「ああ」 「相棒ってよ。あれか?好きな子ほどいじめたいってやつか?」 は?抜いて早々何を言ってるんだこいつは? 「何で?って顔だな。だってよ。相棒はあのこねこのことが好きなんだぜ。なのにいじめてるじゃねえか。もし好きじゃねえって言うなら相棒が気づいてないだけさね。ってか、これ前にも話したような気もするけどな」 デルフ、お前はあの猫が気にっているのか?なかなか話題に出すことが多いが、まさか気に入っているのか? ちっ!私は別に好きだからいじっているわけではない!猫自体は……まあ、デルフほどではないが愛着を感じ始めていることは確かだ。 だが、勘違いするな!暇だからいじっていただけだ!それだけなんだぞ! なんてことは口が裂けてもいえない。だから私は、 「ふ~ん」 とだけ返しておいた。自分が好感を抱いている者に素直な感情を発露するには多大な勇気が必要だ。私も早くそんな勇気を身につけたいものだ。 そんなとき、不意に何かが私の足に触れた。下を見るとそこには、 「ほら、こいつも相棒のことが好きだとよ」 どこかへ去ったはずの猫が私の足に前足を乗せ私を見上げている。 「……肩、乗るか?」 「ニャー」 ……首輪を買うのもいいかもしれないな。 そんな気持ちを黙殺しようと努力しながら私は猫を抱き寄せた。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4522.html
前ページ次ページ鮮血の使い魔 武器を失ったガンダールヴなど平民の小娘でしかない。 嗜虐の笑みを浮かべるワルドと、残りひとつとなった遍在。 一方、ウェールズとルイズはまだ杖を持っている。 先に言葉を始末し、遍在と二人がかりでルイズ達を殺すか? 雑魚を適当にあしらい、反撃する能力を持つルイズとウェールズを殺すか? ワルドの選択は、ルイズが決めさせた。 「ワルド!」 チェーンソーを破壊されたため言葉が無力化してしまったと理解しているルイズは、 言葉を守るため、注意を引くべく、ワルドに杖を向け詠唱を始めた。 失敗でも何でもいい、爆発を起こして、起死回生のチャンスを生み出さねば。 そんな動きを見せるルイズを、先に始末しようとワルドは決めた。 「エア・ハンマー!」 空気の塊を叩きつけられ、ルイズは石造りの壁に向かって吹っ飛ばされる。 壁に直撃すれば骨折程度ではすまない、打ち所が悪ければ死の可能性もある。 だからウェールズは、咄嗟にルイズに向けてレビテーションを唱え、ブレーキをかけた。 その隙に遍在がエア・ニードルを唱えながらウェールズに飛びかかる。 ウェールズはルイズの前に立ちふさがり、自らの肉体を盾として守ろうとした。 (さようなら、アンリエッタ――) 死を覚悟した男の背中を、ルイズは頼もしく思うと同時に、悲しくも思った。 自分のせいでウェールズが死ぬ。死んでしまう。 アンリエッタの大切な人を死なせてしまう。 (誰か――!!) 助けて、と思うよりも早く、彼女は来た。 エア・ハンマーで吹っ飛ばされたルイズを見て、言葉に動揺が走った。 裏切ったはずなのに、ああ、どうして自分は、こんなにも。 何とかしなければならない。しかし武器はもう無い。ガンダールヴの力は使えない。 武器を持たず飛び出しても間に合わない、ただの女子高生の力ではどうしようもない。 ウェールズが魔法をかけたのか、ルイズは壁に激突する前に止まったが、 その二人に向かって遍在が飛びかかる。エア・ニードルで杖を凶器として。 手を伸ばしても届かないと理解していながら、言葉は手を伸ばした。 何かを掴もうとして、虚空しか掴めぬ現実に打ちのめされる。 (私は、ルイズさんが殺されるのを、見ているしかできない) 絶望の中、憎しみを、悲しみが上回った。 その瞬間、床から光と共に、剣が飛び出してきた。 正確には生えたと表現すべきだろうか? 石畳を材料に剣が構築され、言葉の前に現れたのだ。 錬金? 土系統の魔法? 誰が? どこから? 何故? 世界を裏切った言葉に味方するものなど、何も無いはずだった。 しかしその女は確かに、言葉のために魔法を行使した。 教会の扉の陰から様子をうかがっていた、フードで顔を隠した女メイジ。 そのメイジの名は、土くれのフーケといった。 虚空を掴むしかなかったはずの手が、魔法で作られた剣を掴む。 左手のルーンが今までにないほど力強く光り輝いた。 感情の昂ぶりに呼応して力を発揮するガンダールヴのルーン。 今、ルーンは言葉の何の感情に呼応しているのか? 憎悪? 悲哀? 激怒? 確かなのは、ワルドへの敵意ではなく、ルイズへの情だという事。 風は烈風。すべてを切り裂く死の刃。 烈風となった言葉は、ウェールズの胸元を今にも貫こうとする遍在を一瞬にして一刀両断した。 かつて居合いを学んでいた言葉にとって、 剣という武器は日本刀ほどでないにしろずっと使いやすい獲物だった。 ノコギリやチェーンソーといった工具に頼っていた自分が馬鹿らしく思えるほどに。 そして、彼女が習得している居合いの真価は初太刀の後にある。 居合い斬り。大道芸として知られるこの技は、素早く抜刀して斬りつけるものだ。 しかし本物の居合いは違う。 抜刀をしての初太刀にすべてを込める一撃必殺の剣というのは間違いだ。 一撃で仕留められなかったら死に体という致命的な隙を作る? そんなもの剣技ではない。 居合いとは抜刀と同時に攻撃する技術であると同時に、 二の太刀、三の太刀を如何に素早く的確に放つかを追求している。 初太刀で相手を倒せなかった場合を想定せず抜刀する居合い術など存在しない。 初太刀でけん制し、二の太刀以降の攻撃で敵を仕留める事が多かったとさえ伝えられる。 刃を止めず、流れるように、様々な体勢から、様々な状況に対応し、臨機応変に敵を斬る。 それがい居合いだ。 だから、言葉は遍在を両断した直後にはもう、本物のワルドに向かって疾駆していた。 「ライトニング――!」 斜めに斬り上げる。向けられた杖を、ワルドの右腕ごと斬り落とす言葉。 悲鳴が上がるよりも早く、身を守ろうとして出された左腕を三の太刀で斬り落とす。 両腕を失ったワルドは、ようやくカエルのような悲鳴を上げてよろめいた。 そのワルドの視界の端で銀光がきらめく。 首筋に鋭い感触。 眼前で酷薄な笑みを浮かべるガンダールヴ。 「死んじゃえ」 ワルドの首筋にあてがわれた剣が、素早く引かれる。 「あ……」 呆けた声を漏らし、一拍置いてから、ワルドの首から噴水のように血が飛び散る。 白目を剥きいて糸の切れた操り人形のように崩れ落ち、鮮血の結末を迎えた。 「こ、コトノハ……」 背後からルイズの声がする。 振り向きたい思いに駆られながら、言葉は眼前の死体に手を伸ばした。 その懐からはみ出ていた手紙、かつてアンリエッタがウェールズに送り、 任務を受けたルイズが回収しにきたそれを、言葉は自らの制服のポケットにしまう。 「コトノハ、大丈夫?」 心配げな、ルイズの声。 世界を、この世界のすべてを裏切ったはずなのに、 ルイズも、そして今手に持つ剣を与えてくれた者も、言葉に手を差し伸べてくれている。 その手を握る資格など無いのに。 「さようなら、ルイズさん」 振り向かずに、別れを告げる。 「裏切ってしまった私は、もう貴女の側にいられません」 そう言って、言葉は誠の入った鞄を取りに行こうとし、教会全体が揺れた。 外が騒がしい。怒声と破壊音が響く。 「始まったか……レコン・キスタとの戦いが!」 ウェールズが言い終わると同時に、教会の天井が崩れる。 ワルドの死は悲しかったが、それよりも言葉とウェールズの無事をルイズは喜んだ。 ようやく話ができる余裕ができたと言葉に声をかけたが、返ってきたのは拒絶だった。 直後、ワルドとの戦いで気づかなかったが、 すでに始まっていたレコン・キスタとの戦いが、教会を襲った。 天井にヒビが入り、破片が落下し出す。小さな石でも、頭に当たれば大怪我をする。 そんな中を言葉はガンダールヴの脚力で椅子を飛び越えて誠の入った鞄を掴むと、 ルイズ達を振り返らず一直線に教会の戸を開け放ち走り去った。 「コトノハ!」 このまま行くつもりだ。レコン・キスタへ、クロムウェルの元へ。 アンドバリの指輪を求めて、独りで。 ルイズを裏切って。 (もう――戻ってこないつもり?) フーケと通じていた、ワルドと通じていた、という裏切りよりも。 これが言葉との別れなのかという予感が、悲しかった。 「ミス・ヴァリエール、ここは危ない」 茫然自失となったルイズの腕を掴んだウェールズは、 教会が本格的に崩れ出すよりも早く脱出する。 そこはすでに戦場となりかけていた。 言葉の姿を探したが見つけられない。 「ミス・ヴァリエール、君のために船を用意してある。 手紙は、ミス・コトノハが持っていってしまったが……君は逃げてくれ」 「ウェールズ殿下……」 「君はアンリエッタが心を許したかけがえのない友人。 僕の代わりに、彼女の支えとなっておくれ」 「……しかし、私は」 ルイズは唇を噛んだ。血がにじみ出るほどに。 任務を果たせず、ワルドは裏切った末に死に、言葉は裏切って手紙を持って逃亡した。 戦いが始まり、足手まといの自分は、やはりアルビオンから脱出するべきなのだろう。 でも。 ――裏切ってしまった私は、もう貴女の側にいられません。 あの声は、今にも泣きそうなのをこらえているように聞こえたから。 振り返らなかった言葉。どんな表情をして、どんな瞳をしていたろうか。 レコン・キスタに行って言葉はどうするのだろうか。 誠が生き返ったらどうするのだろうか。 もう帰ってこないのか。 「私の、所に、もう」 頬が濡れた。 第15話 さようなら、ルイズさん 前ページ次ページ鮮血の使い魔