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九重 真璃 「私、『魔女』だったの」 基本情報 名前 九重 真璃(ここのえ まり) 学年・クラス 高等部1-P 性別 女 年齢 満15歳 身長 151 体重 43 バスト 84 性格 無口でおとなしい。本性は根暗 生い立ち 異能発現により双葉島にやってきた 基本口調・人称 私 口調は多少ぶっきらぼうに 特記事項 無し 詳細な設定 魔女(ウィッチ) 帚に跨がることで発動する飛行能力 瞬間最大速度 時速500キロ 最大戦闘速度 時速350キロ 巡航速度 時速250キロ 航続距離 気力・体力・魂源力の続く限り マリは、魔女の中では「遅い」「劣る」部類に入ります しかし非常に小回りの利く飛行を得意としており、極端な挙動も難なくこなせます 低速域での戦闘や攻撃回避、曲芸飛行はマリの十八番です 魔女研に入っても、おとなしい無口なキャラをしています 葉月たち後輩に対しても、自分からあまり干渉しません 「超音速とかなにそれすごい」 程度に思ってます マリは飛行能力で全体的に劣るので、集団で高速飛行するときは周りのサポートを必要とします (しんどくなったら手と手をつないで牽引してもらったり?) 戦闘時になると前に出て、回避能力を活かして相手を錯乱させ、味方の攻撃を促します 中等部一年生のときに魔女研に入隊 白い衣装は、能力や性格がぱっとしない彼女がしっかり自分を持つことのできるアイデンティティそのもの (魔女流にいえば、自分らしくしていくための「おまじない」) 単独活動のときは白い衣装、チーム活動のときは黒い衣装を使用することが多いです 作者のコメント 評価していただいた感謝の気持ちも込めて、キャラシートを新規作成しました
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9 ×××××は口を大きく開けて硬直していた。 視線の先では、××が「うっ」とうめいてずるずる横に倒れていった。わき腹のあたりから鮮血が噴き出し、ブラウスを濡らしていった。 「いやぁああ、××ちゃぁあん」 ×が自分の頭を両手で抱えて叫び、絶望を表現する。とっさに駆けつけるが、××は銃で撃たれた痛みに苦しみ喘ぎ、歯を食いしばっていた。 ジュンは拳銃を懐にしまい、静かに言った。 「××だけは、不合格だ」 ×××××もよろよろと××に近づき、怪我の様子を見る。幸い急所は外れていた。それからジュンをきっと睨んでこう声を荒げる。 「どうして、どうしてこんなことを!」 「用済みだからさ」ジュンはそう言った。「××は君との戦いで倒れた。そう、エリザベートには説明しておく」 「こんなことしなくたってぇ!」と、×が泣きながら怒鳴る。 「どうってことはない。××もそこの×××××も、結局のところエリザベートに魂源力を抜かれるんだから」 「そんなぁ・・・・・・やだ、ひどいよぉ。せっかくここまでやったのにぃ・・・・・・」 「ふふふ、こんな奴なんてどうでもいいじゃないか・・・・・・」 その発言に、×も×××××も大きく目を見開いた。 「クチだけで全然強くない。そんな情けないやつの、いったいどこがいいんだい?」 「やめて・・・・・・! ××ちゃんの悪口を言わないで・・・・・・!」 ジュンは前に出た。ずかずか×に接近して××から引き剥がし、無理やり立ち上がらせる。そして居間のじゅうたんに突き飛ばした。×は「きゃっ」と悲鳴を上げた。 「何かと目障りだったんだ、僕にとって」 ×が上体を起こしたときには、すでにジュンの顔が目の前にある。強引に押し倒されてしまった。 「僕ね、君のことが好きなんだ、×」 奔放すぎるジュンの振る舞い。×は何も言い返すこともできず、ただただ信じられなかった。「この人、どうしてこんなことするの?」と。 「××はどうもいけ好かない。君の隣にいるアイツが気に入らなかった。だからね、ずっと消すタイミングをうかがっていたのさ・・・・・・」 たったそれだけのことで、××をあんなかわいそうな目に合わせたのか。 たったそれだけのことを、こいつはこうでもしないとできないのか。 人に愛を告げることや、欲しいものを手に入れることを、こいつは暴力に訴えない限りできないのか。それで本当に欲しいものや欲しい人の心が、手に入るとでも思っているのだろうか? いや、力ずくで得られるものなど何もない――。 さぁっと×の心を黒い感情が支配する。ジュンに触れられただけで、ジュンの顔を見ただけで、ジュンと目と目が合うだけで、とてつもない不快感がこみ上げる。不快感はやがて怒りとなり、心のうちがめらめら燃える。 「さあ、×。もう邪魔者はいないよ。今日このときから僕らはずっと一緒だ」 「やめて」 「僕と一緒になって、エリザベートに力を捧げて。地獄の底まで君は僕のもの」 「やめて・・・・・・!」 「愛してるよ、×・・・・・・」 ジュンはそうささやきて、×の唇を奪おうとする。 「嫌ッ!」 うっとジュンがうめき声を上げた。×がガリッと彼の顔を引っかいたからである。 彼は無言で頬に手を当てる。斜めに赤い傷が走っており、出血を確認する。ジュンのこめかみに青筋が走った。 「このッ!」×の頬を打った。「どうして言うことを聞かない! おとなしく僕のものになってしまうんだ!」 「触らないでぇ!」 次の瞬間、ジュンは×から弾き飛ばされていた。宙を舞い、床に叩きつけられた。 背中から叩きつけられたジュンは、びっくりして×のほうを向き直る。彼女は球状の結界に守られて立っていた。神聖な結界によってこの下種を弾き飛ばしたのである。 魂源力が静かに×の全身から放たれている。彼女の涙が左右にゆっくり泳いで流れていくのがそのしるしだ。 「××ちゃんを悪く言ったあなたを許さない・・・・・・」 ×の足元に白く発光を見せる魔方陣が出現したと思ったら、それが一気に床全体に広がった。「なんだ!」。これほどの力の具現を、島の外で暮らすジュンは見たことがない。 ×を包む結界が膨張を始めた。術者の少女を守る鉄壁のごとき甲羅は、下心に満ちた卑しい感情など一切許容しない。 「防御しかできない君に何が出来る!」 「あなたなんか」 結界はどんどん膨らんでいく。どこまで膨張するんだとジュンは固唾を呑んだ。 「あなたなんか・・・・・・!」 いや、違う。 ジュンはようやく気がついた。これは身を守るための結界ではない。 「消えてしまえばいい!」 ドンと、×は出せる限りの魂源力を解き放った。球状の結界はそれに反応して一度振動すると、怒りの爆発をそのまま描写するかのように膨れ上がっていったのだ。ジュンに向かっていく。 「ぐ、ぐぉおおお!」 両腕を前に突き出し、ジュンは×の結界を受け止めた。いくら彼が両足を使って踏ん張っても、彼はどんどん後ろへ押し込まれていった。 「結界で攻撃に出たか・・・・・・やるな!」 断固たる姿勢を貫き通すが如く、結界はジュンをどんどん押し出していく。まるで生きているかのような結界の壁だった。憤怒。拒絶。×の感情そのものがジュンに襲い掛かっている。 「だがそれでどうなるっていうんだ! 馬鹿な真似はやめ――何ぃ!」 ジュンは後ろを向いて愕然としたのであった。 そこには、居間を保護するために×に張らせた一枚目の結界があったのだ。ジュンは結界と結界に挟まれようとしているのだ。ズシンとついに結界どうしが衝突する。 「ぐぎゅううおぉおお、×ぅ、×××ぃいいいいいいいい!」 壁と壁に圧迫されて、めきめきとジュンの体が潰されていった。 「あなただけは絶対に許さないんだからぁ!」 両目をぎゅっと瞑り、最後、×は全力でジュンに向かって叫んだ。その瞬間、星が爆発を起こしたかのように結界が最後の膨張を見せ、部屋全体が閃光に包まれる。 力を全解放した×は両膝を付き、座り込んでしまう。最初に貼った結界も解除され、戦いで荒れた居間がもとの姿を取り戻した。 ぼたぼたと、壁際で何かが落ちた。 それは結界に押しつぶされて平面となってしまった、醜いジュンの死体であった。 「助かったわ、×。本当にありがとう・・・・・・」 顔面を脂汗でべったり汚している。生命力が高いのも異能者の特質だろう。 そんな二人の前に×××××がやってきた。そう、彼女たちにとって戦いはまだ終わってなどないのだ。毅然と二人にこう言った。 「馬鹿な真似はやめて、私たちと島に帰ることね」 くっと真横を向き、××は×××××の顔を見ない。 みんなを裏切ってエリザベートに付き、混乱に陥れた××と×。×××××は、今更二人がどんな抵抗をしてきても連れて帰るつもりでいた。 「×××××、××ちゃんを責めないで」 負傷した××の傍らについている×が、懇願するようにそう言う。 「××ちゃんはね、×××××を助けたくてわざとあいつらについていったの」 はぁ? と×××××の目が丸くなる。 つまり何だ。×××××を助け出すためにわざわざ双葉島の倉庫で戦い、学園やみんなを捨ててここまでやってきて、こうして大怪我してまで死闘を繰り広げたとでもいうのか。 「それだけじゃないわ。親玉を暴いてやりたかった」 ××は相変わらずそっぽを向いたまま、ぶっきらぼうに言う。 「何度も言ってるでしょ? 私はただ活躍したかっただけなの」 バシンと×××××が頬を叩いた。叩かれた××はようやく彼女の顔を見る。×××××はとうとうこらえきれずに、ぼろぼろ泣いて××に抱きついたのである。 「私たちがいるじゃない! 力を合わせればよかったじゃない! 何よもう、心配させて!」 胸元でわんわん泣き喚く×××××。しばらくぽかんとしてから、××にも笑顔が戻る。 「まったく、怒ったり泣いたり。表情豊かね・・・・・・」 ×××××を××は優しく抱きしめた。×は安心して肩をなでおろしている。 本当は自分たちだけでアジトを突き止めて、ジュンとシホに負けたとき、もうこうすることしか生き延びる手段がなかっただけのことだった。 情けなくてたまらなかったと思う。良心も痛んだだろうと思う。そして悪の手先となるのは屈辱的だったと思う。 でも×にはなんとなくわかる。××は活躍したかったからだけではなく、×を守るためにプライドを捨て、生き延びるためにあがいたことを。 ×はしっかりと前を向いた。二人にこう言う。 「何か手当てできるようなもの探してくるね。××ちゃん、待っててね!」 弾むように駆け出して、×は居間を出て行った。残された××と×××××は、そんな彼女の後姿を見ながらくすっと笑った。 「気持ちの切り替えが早い子ね。私、何だか×が恐ろしいわ」 「×はただ、あなたについていっただけなの?」 「え? ま、まあそうでしょうね。まったく、いっつもあの子は私に」 「×はね、きっと本当にあなたのことが好きだから付いていったのよ? 仲間を捨てて、悪者になってまでね。ちょっとは感謝しときなさいよ」 「う、う~ん。まぁ、いい友達を持ったと思うわ・・・・・・」 「うむ、いい友達を持ったもんじゃないか」 ビクッと二人は驚いてドアのほうを向く。完全に油断しきっていた。得体の知れない人物の声だ。 そして目に飛び込んできた光景に、××はひどく驚愕する。 「×!」 ×は意識が無いのか、襟首を掴み上げられている。 腕と足をぶらりと下げて、返事も無い。そんな彼女を片手だけで掴み上げているのは、赤いドレスに身を包んだ西洋風の少女であった。背丈も×とほとんど変わらないのに、とんでもない力だ。 「私のお友達も、それぐらい素直でおりこうだったらよかったのにな・・・・・・?」 隣に転がっている汚い死体に目をやってから、二人に苦笑を見せつけた。 「あんたがエリザベート!」 初見となる×××××はわなわな震えながら声を荒げる。×××××を拉致させその手にかけようとしている宿敵だ。 「そうとも呼ばれている。なかなか気に入ってるがな」 赤いボブカットに赤い瞳。肌は白い。エントランスホールの肖像画の通りだった。彼女こそがジュンとシホの親玉であり、この洋館の主・魔女・エリザベート。 「×をどうする気!」と、××が叫ぶようにして言う。 「君には教えたじゃないか? こうするんだよ」 「まさか、嘘でしょ?」 愕然とする。こいつは最初から自分たちを仲間として見ていなかったのだ。 敵を欺くはずのつもりが、結局は敵の言いように扱われていた。学園に二度目の背信をし、×××××を裏切って、不本意ながら悪に染まった結果がこれでは、あまりにも馬鹿げていて空しすぎるではないか。 もはや誰の味方でも敵でもない。涙を散らして懇願することぐらいしか、裏切り者の彼女にはできなかった。 「ダメ、やめて――――」 ぱっと手を離した瞬間、×の体がふわりとその場で浮いて静止する。それをエリザベートは背中から抱きしめた。×が赤いドレスに包まれる。 きゅんという、何かが発火したような音が×××××を驚かせる。×の肌や髪、瞳が真っ白になってじゅうたんに崩れ落ちたとき、彼女は物も言えないぐらい衝撃を受けた。彼女の始めて目撃する「魂源力強奪」の瞬間であった。 「・・・・・・ものすごい力だ。やはり双葉学園の生徒はいいモノを持ってるなぁ。あっはっは」 「いやぁあああああああああ・・・・・・」 ××は居間に泣き声を響かせた。いつも自分の後ろについて周り、懐き、共に戦い、時に守ってくれた親友が、無残にもやられてしまった。×を守ってやれなかったことがとにかく悔しくて、情けなくて、悲しい。 ボンとエリザベートの近くで爆発が起こる。魔女はすかさずそれを避ける。 ボンボンと爆発が連続して起こった。弾幕を貼ったような強力な攻撃だが、エリザベートは踊るように避けながら二人のところへ突っ込んでくる。 魂源力の回復した×××××が、エリザベートにエクスプロージョンで攻撃しているのだ。 「××! あなたは逃げて!」 ××はうつぶせになったまま、動かなかった。じゅうたんにうずくまったまま、長い黒髪を背中と床に散らばしてしくしく泣いている。 「大怪我してちゃ戦えない! 早く逃げて! ねぇ、聞いてるの――うっ」 ×××××は喉元を掴まれた、瞬時に重力から解放されたように体が浮き上がり、天と地がひっくり返る。 彼女の体が横の壁に叩きつけられた。エリザベートに投げられたのである。頭を強打したため出血を起こし、右目にべっとりかかった。「何てすごい力なの・・・・・・!」 しかしすぐにはっとしてエリザベートのほうを見る。彼女はとうとう××のところに到達し、毒牙を伸ばそうとしているのだ。 「次は××××、君だ」 「いけない! ××、××ぁー!」 ×××××は必死に××の名を呼んだ。 ××はそれでも動かなかった。床に伏せたまましばらく固まっていた。 そして、フフッと一人で笑い出したのだ。エリザベートも怪訝そうな顔つきになり、手を止めた。 「馬鹿ね私ったら。力とか強さとかよりもっと大事なもの、あったのに――」 気が強くて、強がりで、みんなに美しい黒髪や鱗粉を見てもらうのが大好きな少女。これからも彼女は周囲に力を見せ付けるために、活躍をして実力をひけらかすために自分の戦いを続けるのだろう。 でも、本当に彼女の神秘的な鱗粉はそのためだけに使われるべきものなのか? ××はついに自分にとって大切なものを見つけた。××××という、守りたい人を守れなかったという悔しさから。 「君は何を考えて――?」 エリザベートがそう言ったとき。×××××は、××がスカートのポケットから何かを取り出したのを見た。「マッチ箱」だ。 青ざめる。××が何をしようとしているのか一瞬で理解したのだ。 「ダメ××ぁ! そんなことしたらあなたは――」 汗や汚れで湿っていた黒髪に魂源力が流れ込み、一瞬にして艶や揺らめきが蘇る。背中に張り付いていた後ろ髪がグワッと一瞬にして逆立ち、大粒の鱗粉が無数に発生した。ものすごい形相で××は赤き魔女を睥睨する。 「死ねぇええええええええええええええええええええ!」 マッチに火が点ると同時に、××の両目にも点火して怒りの炎が爆裂した。 ×××××が能力を活用してかきあつめてきた水素たちは、激しい烈風と爆音でもって××の怒りに応えた。さすがのエリザベートも「うぉおお?」と片腕で顔面を覆い、そして爆発に巻き込まれていったのである。 「××ぁ――――!」 爆発を手で覆ってしのいでから、×××××は叫ぶ。なんという壮絶な攻撃だ。鱗粉を最大限に発生させ、それを爆発で相手に浴びせたのだ。当然、爆発による破壊力も秘めたとんでもない自爆攻撃である。 もちろんこの攻撃は××自身もただじゃ済まない。煙幕が晴れるのを待ちながら、×××××は××が無事であることをひたすら祈った。 そして、彼女はその美しさに心を奪われてしまうのである。 制服が破れ、切れ端を埋めるかのように鮮血が全身を濡らしていた。それでも堂々と××××は直立している。黒髪は燃え盛るような揺らめきを持って、翼のように輝いていた。 まさに、ボロボロの羽を背にたたずむ美しいアゲハチョウ・・・・・・。 「見事だ、上出来だ」 ××はひどく顔を歪ませた。非常に悲しそうな顔になり、ぶるぶる小刻みに震えて宿敵の声がしたほうを向く。 自分の全力を持ってしても、大好きな×の仇をうてなかった。実力が足りなかったことよりも、そのことのほうがよほど辛かったからだ。 「しかし、自爆は哀しみしか生まないんだ・・・・・・!」 煙幕が晴れたとき、エリザベートの赤い髪と瞳とやや幼い表情が現れる。そう××に言う赤い魔女の顔は、どこかもの哀しげであった。 それよりも、彼女は信じがたいぐらい残酷な光景を目撃してしまうのだ。 「××××という子がいなければ、君の自爆攻撃で無様に干からびていたことだろう――」 「何者・・・・・・なの・・・・・・あんた・・・・・・」 ××は思わずそう言葉を発していた。眼球を細かく揺らし、がちがち歯を鳴らす。×××××もまた、魔女が見せた本当の力を前にして絶句させられていた。 エリザベートの真正面に、見慣れた透明の「結界」が展開されているのだ。××はその力のことをよく知っている。魔女はその結界で爆発から身を守ったのである。 「最後の最後でお友達の力に殺されるとは。裏切り者にふさわしいマヌケな結末じゃないか」 「×××××。私を殺し――」 ××がそう呟いたときには、エリザベートは「おっと」と彼女の喉を掴んで黙らせていた。華奢な黒髪の少女を、自分よりも背の高い××を、ぎゅっと抱きしめる。 きゅん、という魂を根こそぎ抜き取られる音。直視できず、×××××は悔しそうに横を向いた。 黒髪が一瞬にして毛先まで白くなり、台無しになってしまった。両腕もだらんと下がり、両膝もがくんとじゅうたんに付く。そしてその場に倒れ・・・・・・。 ・・・・・・倒れなかった。 ××はもう一度、自分の足で立ち上がってみせたのだ。 「ほう・・・・・・?」 この珍しい事態に、エリザベートがニヤリと笑う。 「×・・・・・・」 自慢の黒髪も老けたかのように真っ白。そんな無様な姿でもなりふり構わず、××は前へと歩き出した。輝きを失った濁りきった瞳が目指す先は、先に倒れていった×の体である。 「×、どこ? どこなの・・・・・・?」 やがて彼女は×のもとにたどり着けず、とうとう倒れこんでしまう。右腕を前に投げ出し、うつぶせに倒れた。学園や仲間を捨てて魔女の駒となった××と×は、結局エリザベートによって魂源力を奪われ、空しく散っていったのである。 最後、××はこう呟いて残した。 「一人にはしないから・・・・・・×」 彼女の白く枯れ果てた指先は、×の指先に触れていた。 「・・・・・・素晴らしいじゃないか。これが××××の、××××××の魂源力かぁ」 ウサギのような赤い瞳を小さく絞り、嬉しそうな哄笑を見せたエリザベート。 「無尽蔵に沸いてくる精気、異能力。奮えてしまいそうだ。あっはっは、これが欲しかったんだよ・・・・・・!」 そして、エリザベートに異変が生じる。 赤いショートカットの毛先から、みるみるうちに黒い影が伸びていった。それは「髪」だった。彼女に黒の後ろ髪が生えてきたのだ。 ロングヘアーになった魔女は、ばさっと片手で優雅に髪を払う仕草を見せた。 「優れた力を手にしたようだ。もう、この意味がわかるよな、×××××?」 ×××××の姿はなかった。 「逃げたか」クククとエリザベートは笑う。「賢い選択だ。マクスウェルの悪魔か。『欲しかった』――」 そして、真っ白に朽ちた××を見る。背中からは白髪となった後ろ髪が放射線状に伸び、床に散らばっていた。 「カピカピに干からびて標本にもならないじゃないか! 汚いちょうちょだ、あっはっはっはっは・・・・・・」 トップに戻る 作品保管庫に戻る
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春峰央歌 「私のせいで、みんながひどい運命に直面してしまったら……」 基本情報 名前 春峰央歌(はるみねおうか) 学年・クラス 高校二年F組 性別 女 年齢 16歳 身長 155cm 体重 49kg 性格 引っ込み思案のオドオド系。本当はそれなりに大人しいくらいの明るい普通の子。自分の異能を完全に恐れている。 生い立ち 大人しい普通の子として育ってきたが、高校一年のとき友達の運命を不意に加速させてしまい、将来起こりうる出来事を一斉に押し付けてしまい、大変なことに。そこで学園に見出される。 基本口調・人称 たどたどしい途切れがちな敬語。私、あなた、あの人 特記事項 キャラデータ情報 総合ポイント 22 レベル 7 物理攻防(近) 1 物理攻防(遠) 1 精神攻防 2 体力 2 学力 4 魅力 4 運 3 能力 『フェイトブースター』他者の運命を加速させ、将来起こることを即座に発生させる。底に関わるはずの要因などは、別の何かに置き換わるか、無視される 特記事項 その他詳細な設定 異能の範囲はかなり曖昧だが、目に見える範囲の他人や物体など。 運命加速の効果は即時的に発生する。引き寄せられる運命の時間的範囲は数分から数日。 年単位の未来などは引き寄せられず、またより遠い未来を引き寄せようとするほど莫大な魂源力を消耗する。 登場作品 突撃のストレイトブースター 作者のコメント 何か付け加えたいことや言いたいこと、キャラに対するこだわりがあればここに
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怪物記 幸せは歩いてこない ――星野哲郎 昼食を食べに週に一度のスパンで利用していた中華料理店に行ったところ、トラックが店につっこんだらしく休業していた。 こんなこともあるのかと思いながら、別の店で食事をとろうと飲食店を回ってみるがどこもかしこも満員で席が空いていない。 仕方なくコンビニで済まそうかと手近なコンビニに入るも、なんとコンビニ強盗に遭遇。風紀委員により犯人が捕まるまで店内に拘束され、結局その日は昼食をとり損ねた。 帰宅後、助手に「センセってば人質似合いませんねー」などと揶揄される。 その日は厄日だった。 ピーターパン事件で何日か学園都市を留守にしていたが、帰ってくるなり風の噂にラルヴァが流行っていると聞いた。 ラルヴァが流行っているとはどういうことだ。ウィルス型のラルヴァが蔓延したのか。それとも会長の白虎のようにマスコットとして流行っているのか。はたまた学園の外にラルヴァの情報が漏れ出して一大事となっているのか。 どれだ、もしくはそれ以外か、などと考え込んでしまい、考えるよりもっと詳しい情報を集めるのが上策だと気づいて聞き込みをした。 何人かの学生に聞いたところすぐに森林区の自然公園にいると教えてくれた。どうやら流行っている云々はあるラルヴァが学園都市内で噂になっているということらしい。 「それで、件のラルヴァの名前は?」 「知ってるじゃない」 「なんだって?」 どういう意味だ? 「だからクダンだっての。ク・ダ・ン。あたしはあんまり詳しくは知らないんだけどさ」 「ナナイロクダンって名前らしいよ?」 第五話 【七色件】 件とは十九世紀前半から日本各地で出没していた妖怪の名だ。妖怪の中でも目撃証言が多く、瓦版や新聞などに人頭牛胴の絵姿が残っていることから実在の可能性が高いと言われていたものだ。 そして伝説の妖怪や怪物がラルヴァだったという例に漏れず、件もまたラルヴァの一種である。 件の能力は予言。大飢饉や疫病、地震、空襲などの直前に現れて未来の災いの内容を告げ、言い終えたら死ぬ。それが件である。助手曰く「ラルヴァの中でも特にうざい。ダダドムゥと赤壁の次にうざい」だそうだ。 そして【七色件】は件の亜種だ。カテゴリーはビースト。等級は下級Sノ0。オリジナルの件との違いは『あまり大きなことを予言しない』、『良いことばかり予言する』、『七色のカラーバリエーションがある』などだ。 余談だが、大災厄を予言するオリジナルの件の危険度は5である。 森林区にある自然公園には多数の女子学生により列が出来ていた。中には男子学生も少数混ざっている。 列の先頭の女子生徒の前にいるのは一匹のラルヴァ、『赤』い七色件だった。 「件さん件さん、私の未来を教えてください」 ――あなたは明日の昼に素敵な男性と巡り合うでしょう きゃあきゃあと女子生徒が歓声を上げる前で予言を言い終えた『赤』い七色件が息絶える。 しかし、『赤』い七色件の死骸は『青』に変色して再び息を吹き返した。 すると列が動き、後ろにいた女子生徒が『青』の予言を聞く。と、これが延々繰り返されている。 「件さん件さん、あたしの未来を教えてください」 ――今晩体重を量ると前に測ったときより五百グラム減っています 再び女子生徒の歓声が上がる。前の女子生徒と同じ口上を述べていたところからすると、あれが七色件に予言させる合図のようだ。それは知らなかった。 私はここでも聞き込みをすることにした。するとタイミングよく久留間君が並んでいたので訊いてみた。 「三日くらい前からこんな感じです。最初は私達みたいな戦闘要員や風紀委員が対処しようとしたんですけど、何度倒しても生き返ってくるから倒せなかったんです。 だから倒し方を学者さんに聞きに行ったんですけど、あ、語来さんじゃなくて研究所に勤めてる他の学者さんですよ。そしたらその学者さんはこのラルヴァには害がない。幸福を呼ぶ益獣なんだって、逆に倒すのをやめるように言われました。 それから口コミでこのラルヴァが幸福を呼ぶって噂が広まって、今じゃこの行列です」 たしかに七色件は害がないラルヴァだ。赤壁と同じで益獣と呼ぶこともできるだろう。(まぁ、あれの場合は差し引いて余りある憎らしさがあるのは否めないが) それにしても七色件のこの扱いは。 「まるで人気の占い師だな」 「まるで、じゃなくてまんま占い師ですね。倒すのに参加してたあたしも興味あってつい並んじゃいました。ところで、あのラルヴァがなんで蘇るか分かりますか?」 「七色件も件である以上は予言を告げた後はすぐ死ぬが、ここでもう一つオリジナルとの違いが出てくる。七色件は死ぬと蘇生する。すぐ死んですぐ生き返るラルヴァだ。スペランカー先生みたいだな」 「スペランカー先生ってなんですか?」 若い子は知らなかった。 ……レトロゲーだからだろうか、それとも私と彼女の間のジェネレーションギャップがこの『自分が年を食っていると実感する』悲劇を生んだんだろうか。 「……ちなみに予言をして死んだときのみ変色して蘇生する。カラーバリエーションは七色件の名前からも分かるように七色だ。また、虹の七色と同じであるために虹件の別名もある」 「件さん件さん、あたしの未来を教えてください」 ――貴女は二十分後に百円玉を拾うでしょう 『橙』の七色件の予言に女子生徒が微妙な顔をする。 「それにしても、最初の素敵な出会いはともかく体重が減るとか百円拾うとか小さい予言が多いですね。やけに内容がバラバラですし」 「七色件は色によって予言内容が違うからな」 赤は恋愛。 橙は金銭。 黄は仕事。 緑は食事。 青は健康。 藍は学問。 紫は至福。 各分野で起きる好事を各色が分担して予言している。 「『紫』以外はそう大したものではないがね」 その紫にしても文献に至上の幸福と書かれていただけなのでよくわからない。だからやはり、予言の内容はささやかな幸福ばかりだ。しかし、ささやかでも幸福が確実に手に入るので人は七色件の前に集まっている。 「ささやかすぎたら泣けますね」 まぁ、同感だ。少なくとも長時間並んで百円拾うだけというのは中々にくだらない。 「でも、ささやかだとしてもよくあんなに幸運がゴロゴロ転がってますね」 「それについては確証の高い学説が一つある。『七色件は幸運の予言と幸運の引き寄せを並行して行っている』という説だ」 「つまり百円拾うことを言い当てるんじゃなくて、百円拾わせてるんですか?」 「ああ。最初の『素敵な出会い』のような大きな幸福は予言、『百円』など小さなものは引き寄せだ」 両者に使うエネルギーは恐らく等量であり、対象に大きな幸福が待っているときは予言を、特に大きな幸福がないときは確率を操作して小さな幸福を引き寄せているのだとされている。 「予言はともかく確率操作ってちょっとすごいんじゃないですか?」 「別に大したものではない。風紀委員長の能力も似たようなものだ。未来の攻撃を予知して『自分に当たる確立』を操作しているわけだからな」 「へー、そういう見方もあるんですね。あ、さっき七色って言ってましたけど今まで見てても六色しか出てないみたいなんですけど」 「最後の一色、『紫』は滅多に出てこない。いわゆるレアだな」 「食玩ですか?」 「カードダスもだな。昔は100円入れてよく回したものだ」 「あ、ほんとだ。カードダスみたいですね。予言は一人につき一回って噂だから連コインはできませんけど」 「ふむ、それも知らなかったな。あとで一度図書館で七色件について洗いなおしてみるか。ありがとう、お陰で大分状況がつかめた」 「どういたしまして」 私は久留間君に礼を言って別れた。 「件様件様! 俺の未来を教えてください!!」 ――近々新たな出会いがあるでしょう 「また変態か!? 変態との遭遇なのか!!」 「メッシーのことだから多分……」 「チクショーーーー!!」 七色件の予言は私が帰るときも変わらず盛況だった。 さて、久留間君と話してあらかたの事情を聞くことはできたが奇妙な点がある。 「なぜ七色件は放置されているのか……」 少し、七色件の事件を順にまとめてみよう。 七色件が出現し、学園生徒が迎撃するが蘇生するため倒せず、研究所に伺いを立てた。すると研究所の学者が益獣認定し、噂になって今はごらんの有様だ。 ここで疑問なのは研究所側の対応だ。いくら無害な七色件とはいえラルヴァを放置、捕獲もせず研究もせず手も打たず……はっきり言って杜撰すぎる。 七色件は大人しい。殺せなくとも捕獲することは容易く、捕獲後に研究施設に移すなり山野に放すなりすればいい。放置して占い師扱いにするのはいくらなんでも対応が酷い。 何か事情があるのか? 「……少し探りを入れてみるか」 私は研究所に勤めているある人物へと連絡を入れた。 OTHER SIDE 『恐らくは今日そちらに移送することになるでしょう』 「おそらく、ってなんや。あんた、俺の予定を恐らくで決める気かいな」 『い、いえ。今日中に双葉学園から運び出せます。それで……』 「何や?」 『我々の身柄と報酬は……』 「準備はできとるさかい心配すなや。自分らが仕事こなせるなら何の問題も起きへんよ」 『は、はい。わかりました、必ずやりとげ……』 通話を途中で切って、彼はため息をついた。 「……あかんかもなぁ。あのおっさんら幸薄そうや。こりゃ余計な一仕事もせなあかんかも。面倒やなぁ……検問やら何やらも突破せなあかんし」 その人影は双葉大橋を挟んだ対岸から学園都市を見ていた。 学園都市の中では今も七色件に学生達が並んでいる。 「幸福のラルヴァさん、頼むから俺にも幸せ残しといてくれや。疲れることしたないねん」 『彼女』に頼みごとをしてから二時間ほど経って、私は学園都市の図書館で七色件に関する記述が載っているラルヴァ図鑑を読んでいた。 図書館や学園の図書室に所蔵されているラルヴァ図鑑は三ヶ月の周期でラルヴァの情報が更新される。(中には情報が記載されないラルヴァもいるが) しかし七月の頭に更新したばかりのラルヴァ図鑑でも、七色件の項目は初めて出現したのは件より前であるとか、名づけられたのは件が全国的に普及してからであるなどの小さな情報と簡潔な表しか載っていない。 元から知っていた情報ばかりであまり参考にならなかったが、ここでまた一つおかしな点が浮かび上がる。 この図鑑には件に予言させるための口上が書かれていない。 恐らくは口上について書かれた書物か口伝はどこかには残されているのだろうが私も見たことはない。ゆえに私も今日まで口上のことは知らなかった。 しかし、口上も含めて七色件がどんなラルヴァであるかの情報が学園都市内で噂として広まっている。 「学園に集まる最新の情報を載せた図鑑に載っていないようなことを……誰が広めた?」 そして広めて、生徒達に予言を受けさせてどんな意味がある? 図書館から出ると日が暮れていた。切っていた携帯電話の電源を戻すと不在着信を知らせるシンボルとメール着信を知らせるシンボルが点いていた。発信者の名前はどちらも――【難波那美】。 メールを開くと、そこには次のような短い一文が書かれていた。 『件名:【七色件】 電話しろ!』 苦笑しつつ、私は彼女に電話をかけた。 「もしもし、語来だ」 『……あんたねぇ、人に調べさせといて携帯の電源切ってるってどういう了見?』 「すまない。この件の調査で図書館に入っていたのでな。確信をもてたこともある」 『その確信ってのは後で聞かせてもらうとして、先にこっちが研究所でいろいろ聞いてわかった情報を教えるわね。……でもね、これってあんたが自分で調べてもよかったんじゃない?』 「研究所に所属していない個人研究者よりは研究所に席を置く君の方が適任だろう、難波教授」 『そうかもね、語来無職』 ……少し罵倒の選択が酷すぎる。 就職はしてないが収入源はあるぞ。 『手っ取り早く説明するわね。研究所で今回の七色件の調査やら研究を担当してるのは第十七研究室。 どうもこの研究室の方から研究役に名乗り出たみたいね。「七色件は益獣」って発言をしたのもそこの室長よ』 「自ら調査を買ってでた割りに、捕獲もせず何の調査もしていないようだったが」 『調査はしてたみたいよ? 常に研究員が森林公園で張り込んでたらしいわ。それに捕獲にも今さっき出たところよ』 なぜ今になって……。 『それと、第十七研究室は対ラルヴァ用の檻や輸送トラックも用意したみたいだから一応捕獲する気もあるみたいね。ただ……』 「ただ……なんだ?」 『同時に学園都市外部の研究施設に移す申請もされてるのよ。変だと思わない?』 たしかに奇妙だ。ラルヴァ研究ならこの学園都市の研究所の設備は国内屈指。研究対象を外に出すメリットはほとんどない。 ……後ろめたいことをするのでなければ、な。 なるほど。なるほど。なるほど。 あらかた読めてきた。 となると、時間はあまり残ってないかもしれない。 「ありがとう、難波君。お陰で真相がわかった」 『真相? ちょっと、あたしにも説明しなさいよ』 「カードダスだ」 『どういう意』 「すまないが少し急ぐのでね。説明はまた今度だ」 私は難波君との通話を切り、別の人物へと電話をかけながら走り出した……。 OTHER SIDE 夜間の双葉学園都市のハイウェーを一台のトラックが走っている。 学生ばかりの学園都市は全体として車の所有者が少なく道路も空いているものだが、日が沈むと交通量はさらに減少する。付近を走っているのはこのトラックと車間距離を空けて後方を走る乗用車の二台だけだ。 このトラックはただのトラックではない、一般のトラックよりも格段に強度の高いコンテナと車体で組み立てられたラルヴァ運搬用の強化トラックである。 運転しているのは第十七研究室の研究員であり、助手席には第十七研究室の室長が乗っている。 そしてこのトラックのコンテナに載せられているのは七色件だ。 今日の夕方、第十七研究室によって捕獲された。その際に並んでいた学生達から苦情が出たが、「研究のため」と言って苦情を突っぱねたのは室長だ。 室長と運転手、七色件を乗せたトラックと、こちらも第十七研究室の研究員三名を乗せた乗用車。二台はハイウェーを双葉大橋……学園都市の外へと向けて走行している。 だが、双葉大橋の袂に近づくと、橋の入り口が土嚢か何かで封鎖されており、二台は橋の手前で停車せざるをえなくなった。 「おい、ちょっと降りてどかしてこい。これでは通れんではないか」 せっつかれ、トラックの研究員と乗用車の研究員が土嚢を撤去しにかかる。 室長は一人トラックの助手席に座り、研究員達の作業が終わるのを待っている 「まったく何だというんだ。もう少しで学園都市から離れられたというのに……ん?」 不意に、トラックの車載カメラに人影が写った。 その人影はトラックのコンテナに近づき――コンテナのロックを解除し、中に入ってきた。 「!?」 室長はあわてて下車し、コンテナに駆け寄る。 「だ、誰だ! そこで何をしている!?」 室長の声に研究員達も異常に気づきトラックへと戻る。 室長と研究員の視線がコンテナの中へと向けられる。 そこにいたのは、 「さて、室長。事件の答え合わせをしようか」 語来灰児と……希少色である『紫』へと変色した七色件だった。 「カードダスだ」 「な、に?」 「例えば、次にどんなカードが出るか分かるカードダスがあり、カードダスの機械には何百というカードが収まっている。しかしレアカードが欲しくても、自分の手元にコインは一枚しかない。そんなとき、どうするか」 「簡単だ。他の奴に引かせればいい。次でレアカードが出るまで、な」 ここで言うカードダスとは七色件であり、レアカードとはもちろん『紫』のことだ。 七色件が希少色である『紫』に変色するまでには何百回も予言させなければならないが、七色件の予言を聞けるのは一人につき一回。 普通ならば至福と云われる『紫』の予言を聞くのはほぼ不可能だ。 だが、何百人という人間に予言をさせればどうか? それが今回の七色件の一件の真相だ。 七色件の噂を流し、何百人という学生に七色件の予言を受けさせ……『紫』が出たら掻っ攫う。 「正直、今回の事件は内容がせこいし被害者もいないしで事件というのもおこがましい事件だ。強いて言うなら【マナー違反】だな。割り込みは駄目だろう。恥ずかしい」 私の侮蔑に第十七研究室の室長は顔を真っ赤にして憤慨する。 「だ、黙れ! この七色件の研究は我々第十七研究室の担当だ! 特に貴重な『紫』に変色するのを待って回収して何が悪い」 無論、研究のために必要なやり方であったなら何の異存もない。『紫』が出るのを待って自分の予言をさせるというのもいささか行儀が悪いが、まだ問題なかった。 しかし…… 「研究や予言のためだったら別によかったんだが……」 「お前、七色件を売る気だろ」 「……なぜ!?」 なぜばれた、と言いたげに室長の表情が変わる。 「研究するならこの学園都市の内部で十分だ。ここ以上に設備の整った研究所はもうほとんどない」 あるとすれば違法科学機関オメガサークルなどの秘密結社くらいだろう。 「だとすると残った可能性は、表に出ない違法研究所に持ち込むか……売るかだ。幸福を予言、あるいは操る七色件の中でも至福と呼ばれる『紫』。高値がつきそうだ。いくらだった、室長?」 「む、ぐ……!」 図星を突かれた室長の言葉が詰まる。だが、私の言葉は止まらない。 「……室長、私はラルヴァに関しては殺す、研究する、共生する、全てをありだと思っている。どれだっていい。彼らは多様だ。人間も多様だ。様々な接し方がある。だがね。 売り物扱いするのは……違うだろう?」 私は珍しく――怒りをこめて問うた。 「は、は! なんだ貴様は、ヒーローにでもなったつもりか! カッコイイじゃないか、だがヒーローらしく愚かだ!!」 四人の研究員が懐から拳銃を取り出して私に向ける。 なるほど。多勢に無勢と言いたいわけか。たしかに防弾コートを着てはいても頭に一発でも当たれば異能力者ではない私など抗う術もなく即死だ。 「アスファルトに脳漿を撒き散らして死ぬがいいヒーロー気取り!」 室長もまた懐から拳銃を取り出して私に向ける。合計五つの銃口が私に照準を定めている。大変に危険だ。 しかし、それにしてもさっきからヒーローヒーローと……。 「ヒーロー? それは違う。それは決して私の立ち位置じゃない」 訂正しておかなければならない。なぜなら、 「私は一人の研究者だ」 「研究者だから……戦場に一人で来るわけないだろう?」 次の瞬間、研究員四人の持った銃は別の四人によって銃身を握りつぶされ、研究員四人は別の四人の当て身でアスファルトに崩れ落ちた。 室長もまた銃を砕かれ、ある人物に腕を後ろ回しに拘束された。 「な、なんだ、こいつらは!?」 ある人物とは、別の四人とは誰か。それは……。 「学者さん、危機一髪でしたね」 久留間走子と久留間戦隊だった。 難波君との通話のあとに電話して助力を願っておいたのだ。 ちなみに土嚢の積み上げも彼らの功績である。 彼らによって第十七研究室の面々は無力化された。いかに銃器で武装していようと研究員は私と同じ一般人。身体強化系異能力者五人の奇襲を受けては銃を撃つ間も無く制圧されるのは当然と言えば当然の結果だ。 彼らのお陰で助かった。あとは風紀委員に連絡して彼らを引き渡すだけだ。 「我々には取り調べをする権利はないからな。販売ルートや誰に売るつもりだったかは風紀委員に自供してくれ。 まぁ、情報漏洩やら何やらの余罪は付いてそうだしな……室長?」 久留間君に拘束されている室長の様子がおかしいことに気づいた。 「うぅ、あうぅう……」 落ち着かないのか、目が動いている。 否、それは目が動いていると言うには動きすぎている。 目が――廻っている。 グルグルグルグルとまるで昔の漫画の一コマのように目が廻り……やがて視神経が千切れて眼窩から両の目玉が零れ落ちた。 「おああああああ!? 目が、目がぁぁぁぁ!!」 室長は眼窩から血の涙を流して絶叫し、痛みのショックによるものか気絶した。 辺りを見れば、気絶していた研究員達の様子も一変していた。 全員――首が捩れて死んでいる。 「学者さん! これって、七色件の……?」 「いや、あまりに七色件とは能力の系統が違いすぎる。これは別のラルヴァかもしくは……」 「異能力者の仕業。俺の仕業ってことや」 その異能力者は、土嚢で封鎖された向こう側、橋の袂にいた。 小さなギターケースを背負い、目元が見えないほど目深に被られたニット帽を被り、ジャラジャラと金属製のディスクがぶら下がったジャケットを着ている。人のことを言えた義理ではないが夏場に随分と暑苦しい服装だ。 それにどういうわけか、ペダルの代わりに固定された足置きが取り付けられチェーンもないマウンテンバイクに跨っている。 奇抜にも程がある。街中で見かけたら大道芸人か何かだと思ってしまいそうだ。だが、 「……学者さん、下がってください」 久留間君の表情は真剣だ。 私はラルヴァには詳しくても、異能力者に関しては門外漢。彼女のほうがよく理解しているのだろう。 危険な異能力者というものを。 「しっかし、使えないおっさん共やなぁ。商品納入することもまともにできへんのか。まだamazonの方がええ仕事するわ。予約しても発売日に届かへんけど」 「君が取引先か?」 「ちゃうちゃう、俺はただの受取人やって。取引したんはうちの組織や」 「組織?」 「“聖痕《スティグマ》”いうんやけど、知らへんか?」 OTHER SIDE “聖痕”。 ラルヴァを神の使いと崇める信仰団体にして異能力者の殺し屋を多数擁する秘密結社である。 その在り方ゆえに“聖痕”に所属する異能力者にはある種の特徴がある。 それは――殺人に特化しているということ。 「ちなみに俺は回転する黄金軸《スピニングスピンドル》のスピンドルくんや。よろしゅーな」 “聖痕”の異能力者スピンドルはへらへら笑いながら手を振って挨拶するが、久留間戦隊のメンバーの表情は張り詰めている。 彼らは“聖痕”のことなど何も知らなかったが、スピンドルの放つ気配が相当の実力者であると如実に証明していたからだ。 「てなわけで、そこのトラックと荷物、俺に渡してくれへんかな? あ、心配はいらへんよ。免許は持ってへんけど運転はできるさかい」 スピンドルは学園都市の内部まで七色件を受け取りに来たのだ。不甲斐なく失敗し予定を狂わせた第十七研究所の研究員を処刑し、“聖痕”の施設へと七色件を移送するために。 「……断ると言ったら?」 灰児が自分でも半ば答えが分かりきったことを尋ねると、 「その首が縦に廻るようになるわなぁ」 スピンドルはへらへら笑ったまま尋常でない殺気を放つ。 それは火遼岳で出会った踊盃の殺気よりもなお暗く深い――ヒトの殺気。 スピンドルの殺気に皆が身動きを取れなくなる中で、一人だけスピンドルに向けて歩き出した人物がいた。 「みんなは学者さんのガードお願い」 久留間走子だった。 「リーダー、俺たちも」 「たぶん無理。彼、かなりレベル高いよ。それも対人戦に特化してるみたい」 今しがた四人の人間を惨殺した手際がスピンドルの能力の性質を如実に語っている。 「はぁん……中々わかっとるやないかおねえさん」 「だからあたし一人でやらないと、死人が出ちゃう」 「はぁ?」 スピンドルは呆れた声を出すが、久留間はスタスタと歩いてスピンドルに近づく。 「おねえさん、ちぃっと訊いてええかな?」 「いいですよ」 「なんや、あんたの言い方やと『五人がかりだと五人中誰かが死ぬかもしれへんけど、一人やったら普通に勝てる』みたいに聞こえるんやけど?」 「はい」 「ハハッ――冗談きついわおねえさん」 両者の間の空気が熱を増し、緊張が高まり――戦闘開始。 スピニングスピンドルの異能はそのコードネームのままに『回転』である。 自身の魂源力を物質に浸透させ自らが発する回転指令により、廻す。 単純ではあるが、人の関節を廻して捻り切って殺す程度は軽くやってのける。 しかし、抵抗力のない無機物や一般人とは違い異能力者には彼の魂源力が浸透しにくい。 では彼は異能力者を殺すとき如何にして殺すのか? 「たしかにあんたの首を捻るのは赤子の手を捻るのよりは手間そうやが、その程度やなぁ!」 スピンドルは自らのジャケットに吊り下げていた金属製のディスクを両手の人差指から小指までの間にそれぞれ三枚ずつ、三×三×二の計十八枚を掴み、手裏剣の如く放り投げる。 高速で飛翔する十八枚の金属ディスク。それはただ飛翔するだけではない。スピンドルの魂源力が浸透したディスクは高速回転し――殺人的な切断力を持つ丸鋸へと変貌する。 しかし久留間もさるもの、高速で飛来する殺人ディスクを避け、あるいは側面を拳で弾いて叩き落す。 「はぁ! やるやないか! でもな、俺のディスクはぶった切るために使てるわけやあらへんのや!」 次の瞬間、久留間の左手の人差指の関節が捩れ、骨が圧し折られた。 久留間の人差指には、ディスクを弾いたときにできた小さな傷があった。 スピンドルの回転は異能力者には利きづらい。それはスピンドルの魂源力が空気中から伝わせる程度では異能力者の体内に浸透しないからだ。 では彼は異能力者を殺すとき如何にして殺すのか? 魂源力を染み込ませたディスクで傷をつけ、そこから体内に直接魂源力を浸透させるのである。 指なら指を、肘なら肘を、首なら首を――捻り殺す。 「……痛ったぁ」 「はっはぁ! まだまだいくで!!」 スピンドルは両手の指に十八枚のディスクを挟み、再びディスクを放つ。 久留間は今度のディスクは弾かない。間をすり抜けてスピンドルを直接叩こうとする。 放たれたディスクの弾幕の全てを避けきり、スピンドルへと駆け出す。 だが、後方から車のホイールのように地面を走って襲い掛かってきたディスクに左手と左足を切られ――捻れて圧し折られる。 「リーダー!!」 「避けたはずなのに……ああ、そういうことですか」 久留間は左足を押さえながら、自分を囲むように列をなして周回するディスクを見る。 スピンドルの殺人ディスクは一度放ってそれでおしまいのフリスビーではない。一枚一枚がスピンドルの回転指令によって回転数、回転速度を制御される知性兵器《スマートウェポン》なのだ。宙を舞う間は殺人ディスク、地に落ちてからは殺人ホイールとなって敵を襲う。 これぞ“聖痕”の恐るべき戦闘型能力者スピニングスピンドルの回転殺法である。 「お仲間さんら、今から共闘してもええで? このままやとおねえさん完敗や」 スピンドルは久留間戦隊のメンバーを挑発する。 「言われなくても……!」 「みんな、来ちゃ駄目」 しかし戦線に出ようとしたメンバーを制止させたのは劣勢に立たされている久留間自身だった。 「ですがリーダー!」 「だから駄目だって、みんなじゃまだ彼の相手は無理」 「……あんなぁおねえさん。あんたでも無理やって」 スピンドルが回転指令を発して久留間の周囲を旋回していた殺人ホイールの回転数を上げる。 「予告するで。次で終いや。その足じゃもう俺のディスクは避けられへん。あんたじゃ俺には勝てんのや」 「それはどうでしょう?」 「もうええわ」 スピンドルは呆れ果て、殺人ホイールに殺人指令を下した。 久留間は立ち上がれぬまま、十枚以上の殺人ホイールに襲われる。 無事な右手を駆使していくつか叩き壊すが少なからず傷ができる。 そればかりか残った殺人ホイールによって肩や背中、首を微かに切りつけられる。 それで十分。 スピンドルは切りつけた首に回転指令を発した。 「お仕舞いや」 久留間は首がねじ切れて死ぬ――はずが久留間の首は少しも廻りはしなかった。 「は?」 スピンドルはもう一度、回転指令を発する。だがやはり結果は同じ。久留間の首は廻らない。 魂源力が浸透していない。 「やっとわかりました。あなた、自分の魂源力を物体に浸透させて操る異能なんですね」 「……わかったからなんや」 「はい。わかったので、あたしの魂源力を皮膚に集中させてあなたの魂源力を弾かせてもらいました」 「!?」 久留間は体内に侵入しようとしたスピンドルの魂源力を自分の魂源力で身体の外に押し出してしまったのだ。 理論上は可能だがそれには魂源力の、異能のコントロールに相当の習熟が必要となる。 「……おねえさん、あんた、異能者になって何年や」 「生まれたときからなので十八年ですね」 「キャリアは俺の倍かい……。そりゃコントロールじゃ勝てんわ」 ヘラヘラ笑っていたスピンドルの顔から笑みが消える。 「すまんおねえさん、舐めてた。本気でやるわ」 スピンドルはある物に回転指令を送る。 それは――研究員の乗っていた乗用車のホイール。 乗用車は高速道路走行時と変わらぬ速度で久留間へと迫る。 久留間は乗用車を片足で飛んでかわすが、そこに生き残っていた殺人ホイールが飛び掛る。 二段構えの攻撃。ホイールの狙いは久留間の首と心臓。異能による殺傷ではなく外傷による殺害を狙った攻撃目標だ。 身動きの取れない空中では避けられず、左手が折れていてはまともな防御もできない。 スピンドルは勝利を確信した。 しかし、 「覇っ!」 スピンドルが勝利を確信した0.5秒後に久留間は両手でホイールを叩き壊し、両足で地面に立った。 「……なんでや?」 左手と左足は、ついさっき圧し折ったばかりではなかったか。 久留間走子の異能はシンプルな身体強化である。 全身の筋肉、骨格、循環系が常人よりも遥かに強靭にできている。 常時発動型であるが彼女自身が異能のコントロールに秀でていることもあり、若干ながら強化に偏りをもたせることができる。 今の彼女は折れた左手と左足の無事な筋繊維を強化することで切れた筋繊維を補い、その筋繊維を収縮させることで折れた骨の代わりに左手と左足を固定させていた。 要は、自分の筋肉をギブス代わりにして手足を動かせる状態に戻したのである。 「結構無茶しちゃってるから長くもちそうもありませんし、そろそろ勝負を決めさせてもらいますね」 そう言って久留間は、クラウチングスタートの姿勢をとり――目にも止まらぬ速度で疾走する。 今の久留間のスピードは、スピンドルが操作した乗用車よりもなお速い。 人間の動作とは、筋肉によって行われている。 瞬きから、指の曲げ伸ばし、心臓の拍動、無論走ることも筋肉によるものだ。 ゆえに、筋力を強化するということは単に力が強くなるだけではなく、圧倒的な速度を得ることにも繋がる。 流石に音速の壁こそ超えられないが――スプリントなら乗用車などより遥かに速く走る。 スピンドルが次に久留間の姿を捉えたとき、久留間はスピンドルの目の前にいた。 「んなアホな!?」 悲鳴は果たして声に出せていたのか、久留間の右の拳が炸裂し、スピンドルは彼の操るディスクよりも勢いよく吹っ飛んで積み上げられた土嚢に激突した。 女子生徒が一〇〇キロオーバーの速度で走ってパンチ一発で人間をボール並に吹っ飛ばす光景はなかなかシュールだった。 それにしてもかなりのスピードだ。死出蛍のときは私を背負っていたし持久走だったからまるで本調子ではなかったらしい。『魔女』を抜かせば学園都市でも指折りに速いかもしれない。 はて、あれより速いのが学園都市の目立つ地位にいた気がするが……まぁどうでもいいか。 「…………きっついわぁおねえさん。なんや、俺の攻撃全部と今の一発がトントンやないの」 崩れた土嚢の中からスピンドルが立ち上がる。 随分とボロボロで、肋骨も折れていそうだがまだ表情に余裕があった。それは、彼が手にしているもののためか。 彼の手には背負っていたギターケースが握られている。 「こうなると、俺もでかい一発決めるしか手があらへんなぁ」 スピンドルがギターケースを開くと中には――ドリルが納まっていた。 しかも工具のドリルではない、ロボットアニメに出てくる円錐型のドリルだ。 スピンドルはそのドリルを右手に装着する。 「それがあなたの奥の手ですか?」 「そうや。名前はクリティカル・スパイラル。俺の必殺技や」 ……“聖痕”の殺し屋にも案外茶目っ気があるのかもしれない。 「勝つにしろ、負けるにしろ……次の一撃やろなぁ」 スピンドルの右手のドリルが異能によって超高速回転を始める。 そうか、久留間君の推測が合っているならスピンドルは自分の魂源力を物体に浸透させて回転させる異能力者。 直に触れた状態でいくらでも回転させられるドリルはスピンドルの異能を百パーセント発揮できる武器。そして、その武器を使って相手の体に送り込む魂源力の量はディスクの比ではないだろう。 見た目は滑稽でもあれは宣言に偽りなく必殺の威力を持っている。 「次の一撃……そうですね」 対する久留間君もこれまで見せたことのない構えをとる。 あるいは彼女にも、スピンドルと同じく奥の手があるのか。 久留間君とスピンドルの戦いに決着のときが近づく。 私と久留間戦隊のメンバーは固唾を呑んで見守るしかない。 場の緊迫感がピークに達しようとしたとき、 「うおぅあああああ! 目ぇ、私の目ぇ……!」 そんな悲鳴が場の空気を打ち壊した。 悲鳴のもとは、今の今まで気絶していてこの場の全員から存在を忘れられていた第十七研究室の室長だ。 彼はスピンドルに捻り切られた両目が収まっていた眼窩を押さえて立ち上がっている。 「ひどいぃ、ひどすぎるぅ……私がいったい何をしたと言うんだぁ……!」 「密売とスパイと殺人未遂だ」 私の声など聞こえていないらしく、室長は目が見えないまま歩き……七色件の載せられたコンテナに行き着いた。 まずい、と気づいたときには遅かった。 「ひへへ、へへ、件さまぁ、件さまぁ……私のォ、未来を教えてくださいぃぃぃぃ……!」 室長は、七色件の予言の口上を述べ終えた。 「ジジイ! なにしよんねん!?」 スピンドルが怒りの声を上げるが、既に至福を予言すると云われている『紫』の七色件の予言は始まっている。 ――あなたは 室長は眼球のない満面の笑みで七色件が告げる予言を待望し、 ――安らかに天に召されます 「はへ?」 間の抜けた声を発して、そのまま倒れこみ……安らかな顔で死んでいた。 時間が跳んで翌日。ここは学園都市内の病院の一つだ。 あの後、スピンドルは「アホらし」と言い捨て、あのペダルのないマウンテンバイクを異能で運転して学園都市から出て行った。あちらも乗用車より速かった。 久留間戦隊のメンバーは追撃しようとしたが、久留間君のダメージが見た目よりも重かったようで追跡を断念。久留間君を病院に運んだ。 私はといえば現場にやってきた風紀委員に相当長く詰問されて解放されたのは今朝方の話だ。 まぁ、橋は土嚢で通行止めになっているは人が五人も死んでいるはラルヴァがいるはで何も聞かれないわけがない。 難波君が第十七研究室を調べて“聖痕”との取引の記録などの証拠を持ってきてくれなければ今もまだ取り調べを受けていたかもしれない。今度なにかしら借りを返す機会があれば返したいところだ。 そして私は釈放されてすぐに久留間君が入院している病院へと見舞いに足を運んだ。 久留間君は左手と左足にギブスをつけ、包帯だらけで病院のベッドで横になっていたが元気そうだった。 ……久留間戦隊のメンバーからは睨まれたが。 「学者さん、七色件の『紫』って至福じゃなかったんですか? なんで室長はお亡くなりに?」 「室長が七色件の口上やら何やらを知っていたのは“聖痕”から情報を得ていたためらしいが、至福の内容については知らなかったようだな。スピンドルが『紫』の予言の後に引き下がったから“聖痕”も『紫』の至福がああいうものだとは知らなかったんだろう。 さて、なぜあれが至福なのか私なりの推論を述べさせてもらうと、昔の人々には『紫』の予言……もとい幸福の引き寄せは天国、極楽への片道切符だと思われていたと推測する。至上の幸福とはそういうことだ。もっとも、天国が本当にあるかどうかは知らんが」 たしかにあの死に顔を見たら天国にでも逝ったのかと思える。前回『紫』が現れたのが百年以上前なら尚のこと幸せそうに死ぬことが至福と伝えられても不思議ない。滅多に出ないことと文献の風化から至福であるというころだけが残ったのだろう。 まぁ、死んだ当人でなければ本当に至福なのかわからないところだ。 「少なくとも私は天国行きでも今死ぬのはごめんだね」 「あたしもです。あ、そういえば学者さん、七色件はどうなりました?」 「討伐もできんし、研究の引き取り手もいないので人気のない山中に逃がすことになったらしい。『紫色のときは話しかけないでください』と焼き印してな」 「……それ面白半分で話しかける人出ませんか?」 「まぁ、大丈夫だろう。予言の口上はこの学園の中でしか広まっていないし、学園生徒には『紫』に予言されると死ぬという情報を噂にして広めてあるようだ。学生の間の噂話の進行速度は早いのは今回がいい例だ」 かくして、七色件の事件は解決を見た。 久しぶりに自宅兼研究室のマンションに帰ってきた。 ピーターパン事件で何日も閉じ込められ、昨日も帰ってきてすぐに七色件の事件があったのでだいぶ留守にしていたことになる。 自室の扉を開けると、泥棒が家捜ししたかと思うほど散らかっていた。そのうえ助手がベッドに寝転がって漫画を読んでいる。 「あ、センセ、おかえりなさーい」 「……うん、何でここまで盛大に私の部屋が散らかっているんだろうな。何してたリリエラ」 「センセと連絡取れなくて暇だったから色々してましたよー。お出かけとか『倉庫』のお片づけとか読書とかゲームとかー」 ちなみに『倉庫』とは助手がワインボトルやジャックハンマーを保管している場所のことらしい。どこにあるかは私も知らない。しかし、それはおいといて。 「どうして私の部屋がこうも散らかっている?」 「やー、この漫画の八巻がどうしても見つからなくてー。仕方ないから部屋中ひっくり返して探したんですよー」 なんでこいつは毎度毎度ここまで自由に生きれるんだろうか? 仕方ないので部屋の片づけをすることにして、片付けながら助手にピーターパンと七色件の事件のことを話した。 「結局センセは七色件の予言は受けなかったんですかー?」 七色件事件のことを話し終えると、助手は私にそう尋ねた。 「ああ」 「もったいなーい」 もったいない……か。 「よし。リリエラ、私も一つ予言しよう。今日は幸多い日になる」 昼食を食べに週に一度のスパンで利用していた中華料理店に行ったところ、トラックが店につっこんだらしく休業していた。 こんなこともあるのかと思いながら、別の店で食事をとろうと飲食店を回ってみるが、どこもかしこも満員で席が空いていない。 仕方なくコンビニで済まそうかと手近なコンビニに入るも、なんとコンビニ強盗に遭遇。風紀委員により犯人が捕まるまで店内に拘束され、結局その日は昼食をとり損ねた。 帰宅後、助手に「センセってば人質似合いませんねー」などと揶揄される。 その日は厄日だった。 「大外れでしたねー、センセの予言」 「それでもいいんだ」 「未来なんてものは『良いことが待っているといいな』と思うだけで十分だ。『これこれこういう幸福が待ってます』なんて教えられるものでも売るものでもない」 「知らない、分からないから楽しみなのさ」 第五話 【七色件】 了 怪物記第五話の登場ラルヴァ・キャラクター
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空窪 阿酉 「男やったらしゃんとしいや、アンタら」 基本情報 名前 空窪 阿酉(そらくぼ・あとり) 学年・クラス 高等部・1-A 性別 女 年齢 16歳 身長 160㎝ 体重 49㎏ 性格 真面目かつ手厳しい。だが辛辣さは親愛の裏返しである場合も。一度突き放した後に心配になってコッソリ様子を見に行くタイプ。 生い立ち 西日本の出身 基本口調・人称 関西弁で一人称はアタシ。二人称は名前もしくはアンタ。目上に対しては役職か敬称まま。 特記事項 胸は豊か。でも乳的な何かを求めると殺られる。 キャラデータ情報 総合ポイント 20 レベル 6 物理攻防(近) 3 物理攻防(遠) 3 精神攻防 3 体力 2 学力 4 魅力 4 運 1 能力 空圧 特記事項 特になし その他詳細な設定 男子をして「柔らかいのは乳だけ」と言わしめる容赦のない性格。 眼鏡の怜悧さに加え、胡乱なものを見るような三白眼が更にそれを後押ししている。 特に攻撃的な人間ではないのだが、歯に衣着せるより明確な意志疎通が 相互の為に快いという考えの持ち主。打ち解ければ泰然さで友人に頼られるタイプ。 器量は相応にあり、艶のはっきりした長髪を襟首で縛っている。 異能 周囲の空気を撹拌・圧縮させて空圧を生じさせる能力。 一定範囲で循環させて旋風のような防壁にしたり、ピンポイントの加圧・開放による 爆風じみた攻撃など、用途は自在。空気さえあればどこでも使え柔軟性も高い優秀な異能。 ただし効果の幅は持続力に拠る為、例えば敵の攻撃を防ぎ続けたりと必然的に発動状態を 連続するような状況では、魂源力や体力の消耗度が高い。 また自分を囲む(包む)形での空圧の展開は移動力が低下する。 登場作品 mono-i target 前編 後編
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投票一位により以下のキャラが当選致しました。 名前 時鳥 渡(ホトトギ ワタル) 学年・クラス 高校2年 性別 男性 年齢 100才 顔(髪型込) 短髪、中性っぽい顔立ち 身体的な特徴 痩身長躯、テンガロンハットにエスニック風の服装、常にギターを背負っている 性格 人懐っこく朗らかでとにかくユルい 異能 「ホトトギス」ギターを演奏することで攻撃やら防御やら色々な効果が出ることがある。しかし完全にランダムで本人には制御できない。そして稀に時空間を移動するハメになる その他口調人称等特徴的な要素 一人称は「オレ」。元は1919年生まれだが異能のおかげでいろいろ転々として2019年の双葉島に突如出現した。複雑な身の上にも関わらず悲壮感は全く無い。場が殺気だつと「ここで一曲」とやり始める。いつ別れるかわからないからこそ他人との関わりを求める ※NPCを投下する人は事前に決まりごと【双葉学園三周年イベント 特設ページ】を読んで下さい 規定にあってない投下が散見されます 名前 坂本 瑛都(さかもと えいと) 学年・クラス 中等部・現国講師(担任なし) 性別 男性 年齢 27才 顔(髪型込) イケメンではないがブサイクでもない。xエラが張った角ばった顔立ち。肩くらいまである長髪 身体的な特徴 中肉中背 性格 異能とは関係なく生徒が子供らしく育ってほしいと思っている。注意するときは丸めた教科書で叩く。 異能 なし その他口調人称等特徴的な要素 一人称は俺。生徒は必ず苗字を呼び捨て。 名前 那間倉 シャル(なまくら しゃる) 学年・クラス 高等部2年 性別 男性 年齢 17才 顔(髪型込) 顔は二枚目だが頭は武士みたいなチョンマゲ 身体的な特徴 長身で褐色肌。日本刀を持ち歩いている 性格 熱血で武士道精神を重んじるが、他人にもそれを強要する迷惑な男。弱いのに好戦的 異能 『不殺刀(ガンジー・ブレード)』。自分が手に持った刃物すべてが自動的に鈍になる役に立たない異能 その他口調人称等特徴的な要素 ござる口調で一人称は拙者。前世は侍と言い張るが、実はインド人とのハーフで生まれも育ちもインド 名前 七海 千画(ななみ せんかく) 学年・クラス 高等部三年 性別 男性 年齢 18才 顔(髪型込) 細面の美形、糸目。長い髪を無造作に束ねている 身体的な特徴 痩せ型の長身 性格 温和で丁寧だが掴みどころがない 異能 完全千里眼 その他口調人称等特徴的な要素 一人称:私 口調:ですます よく風景画を描いているが目の前の景色ではなくどこか遠くの景色を『視て』描いている。それも含めて周囲からはよくわからない人間だと思われている。「きっと心はここじゃないどこかにあるのだろう」 名前 ピエール=ビオ(ぴえーる びお) 学年・クラス 美術教師・マンガ研究部顧問 性別 男性 年齢 41才 顔(髪型込) 美形・メガネ・口ヒゲ 身体的な特徴 痩せ型。話す時に身振り手振りが大きい 性格 影響を受けやすく、猪突猛進タイプなオタク(15歳の時に母国フランスの絵画コンクールで入賞を果たし将来を期待された画家だったが、日本のアニメにハマり日本でイラストレーターになると来日。ケータイゲームのイラストを数点描いたが、それで生活はできずアニメ・マンガの専門学校や美大予備校の講師をしながら暮らしていた。) 異能 無し その他口調人称等特徴的な要素 一人称はオレ。絵の専門は油彩だが、絵画以外の芸術全般に詳しい。 名前 火引 轟(ひびき ごう) 学年・クラス 高等部3年 性別 男性 年齢 18才 顔(髪型込) 黒髪オールバック。太眉。ごつい、濃い 身体的な特徴 背は高めでボディビルダー系のムチムチ筋肉。季節に関係なく常に長ラン姿 性格 昭和の不良タイプ。口は悪いが仲間思い 異能 応援異能者。彼が応援する対象の能力を底上げする。効果時間は彼が声を上げて応援し続けている間のみ。また、誠意や熱意、声の張りを強めることで効果を高められる。 その他口調人称等特徴的な要素 地元の中学高校と応援団に所属しており、異能発症と双葉学園編入の際、「双葉学園応援団」(自称)を立ち上げる決意をする。狙いは勝手に戦場に押し寄せては(こちらからは戦闘には一切手を出さず)戦闘中の異能者を全力で応援すること。応援団のセオリーは一切崩さないポリシーをもっている。団員募集中 名前 佐々倉 啓(ささくら けい) 学年・クラス 中等部2年 性別 男性 年齢 14歳 顔(髪型込) ぱっちりとした目でやや童顔な顔立ち。髪はふわっとした髪質の短めの黒髪 身体的な特徴 少し小柄で、顔と相まって年齢より年下に見られがち(とても気にしている) 性格 自分の能力に対し自信過剰気味。頭脳明晰な人間は素直に敬意を払う反面、自分の言葉が理解できない人間に対しては(立場が上の相手でも)露骨に不機嫌になる 異能 〈エッグ・オブ・エンブリオ〉1日1回卵を産む機械仕掛けの鶏。この卵はナノマシンの塊で、命令を入力することで様々なことを行うことができる。例えば一軒家程度なら半日で建てることができる(当然、材料は別途用意する必要がある)。なお、使用してもしなくても卵の寿命は半日である その他口調人称等特徴的な要素 一人称は僕、二人称は君・貴方(年上の場合)。学業的な知識には詳しい反面他者とのコミュニケーションに関してはやや疎い 名前 八坂 風真(やさか ふうま) 学年・クラス 高等部一年 性別 男性 年齢 16才 顔(髪型込) 顔は悪くないが目つきが悪いので女性受けは悪い。ザンバラ髪 身体的な特徴 背は普通。痩せマッチョな体形 性格 粗野で粗雑で自分勝手。何か偉そうで喧嘩っ早い。卑怯な真似が嫌い。強い相手にも喧嘩を売るバカだが弱い者は文句を言いつつ、つい助けてしまう。負けず嫌いで何事も諦めない芯の強さを持つ。割とスケベ 異能 能力として発現していない。ただし魂源力のコントロールは出来る その他口調人称等特徴的な要素 一人称:俺 口調:不良言葉 全身の魂源力を拳や足に一点集中。圧縮された魂源力は変容し破壊力を伴った気≪オーラ≫となり力となる『魂源力闘術』の使い手。学園に転校してきた当時、喧嘩っ早いくせに能力に目覚めていなかった為弱くいつもボロボロで、それでも突っ張り続けていた彼に「意地を張り続けるための力」としてある男が教えたと言う。学園創成期の銃器が使えなかった時代に流行ったが、今はもう使う者は殆ど居ない。あくまで身体能力は人並みだが、気≪オーラ≫は足に込める事で一瞬ながら爆発的ダッシュ力を発揮する事も出来る 名前 脇谷 信夫(わきや のぶお) 学年・クラス 高等部2年 性別 男性 年齢 17才 顔(髪型込) 普通の顔、普通の髪型 身体的な特徴 平均的身長・体形 性格 どこにでも居る至って普通の男子 異能 中級程度のテレパシー能力 その他口調人称等特徴的な要素 一人称:オレ 口調:普通 1年の時に転校してきた。趣味はゲーム。得意科目は現国。苦手科目は数学。帰宅部。交友関係は広く意外な知り合いが多い。どこでどう知り合っているのかは謎 名前 多聞 宗謙(たもん そうげん) 学年・クラス 双葉学園高等部校長 性別 男性 年齢 58歳 顔(髪型込) 托鉢している。顔の左側に大きく縦に刻まれた傷がある。 身体的な特徴 身長201cm体重134kg筋肉で覆われている。 性格 普段はあまり感情を表に出さず岩のように静かで穏やか。 異能 三昧耶形(毘沙門天が使ったとされる三叉戟)に宿る法力を使いこなす その他口調人称等特徴的な要素 一人称は私。かつて日本最強の異能者と呼ばれた男。今でも醒徒会には及ばないものの相当な力をもっている。双葉管理に直接高等部の校長に指名される。 名前 時鳥 渡(ホトトギ ワタル) 学年・クラス 高校2年 性別 男性 年齢 100才 顔(髪型込) 短髪、中性っぽい顔立ち 身体的な特徴 痩身長躯、テンガロンハットにエスニック風の服装、常にギターを背負っている 性格 人懐っこく朗らかでとにかくユルい 異能 「ホトトギス」ギターを演奏することで攻撃やら防御やら色々な効果が出ることがある。しかし完全にランダムで本人には制御できない。そして稀に時空間を移動するハメになる その他口調人称等特徴的な要素 一人称は「オレ」。元は1919年生まれだが異能のおかげでいろいろ転々として2019年の双葉島に突如出現した。複雑な身の上にも関わらず悲壮感は全く無い。場が殺気だつと「ここで一曲」とやり始める。いつ別れるかわからないからこそ他人との関わりを求める 名前 鏡花井 要(きょうかい かなめ) 学年・クラス 高等部1年 性別 男性 年齢 16才 顔(髪型込) 銀の長髪を毛先で束ねている 身体的な特徴 眉目秀麗。翠の瞳。左耳に銀製の月のピアス 性格 物腰が柔らかい 異能 異邦境( if の世界に誘う) その他口調人称等特徴的な要素 一人称は私。二人称は貴方。丁寧口調。質問に質問で返す癖があり、常に微笑。夕陽射す頃、人気のない屋上や中庭の樹の下で出会えるとの噂 名前 岳川 北鈷(たけがわ きたこ) 学年・クラス 高等部ニ年 性別 男性 年齢 十七才 顔(髪型込) 肩くらいまでの長髪、顔立ちは中性的だが無表情で目にハイライトが無い 身体的な特徴 身長は自称170cm、体格は引き締まってる方だが肌は女がイラっとくるくらい白く滑らか 性格 バイクで走るのが好きで他との比較や勝負に無関心、異性の感情や好意には認識障害レベルで鈍感 異能 自分の乗るバイクの稼動状態や走行に必要な情報を言葉として知覚する「バイクと話す能力」バイクに触れた瞬間から話せるが、三輪バイクやモペット等の曖昧な乗物とは話せたり話せなかったり その他口調人称等特徴的な要素 東京の大手バイク店でバイクに乗るより整備や事務の仕事の多い無為な日々を過ごしていた双葉学園生の幼馴染に「いくらでもバイクに乗れる仕事がある」と半ば騙され双葉学園に転校してくる現在は双葉学園高等部に在籍しながら、幼馴染が営むおにぎり屋の宅配バイトで生活費を稼いでいる双葉島最速のデリバリーと噂され、ピザ宅配ライダーや蕎麦屋の出前からライバル視されている自分のバイクを持っていないので配達用原付を普段の足に乗り回している 名前 厚木 福助(あつぎ ふくすけ) 学年・クラス 高等部三年 性別 男性 年齢 十七才 顔(髪型込) 人からはあまり覚えてもらえない特徴の無い顔、髪はスポーツ刈り 身体的な特徴 背は低く体型も無個性、その場に居ても気づいてもらえず、写真でも顔が隠れたりピンボケしたりする 性格 スケベでお調子者、ラノベのエロ同級生みたいな奴 異能 アンリミテッド・パンストワークス(無限のパンスト)掌からパンストを出すことが出来るナイロン製からシルク製まで様々だが、買ったほうがマシってくらいのエネルギーを使う その他口調人称等特徴的な要素 生活のあらゆる物事をパンストで解決する男部屋の掃除も機械の修理も、学園生活も女の子を楽しませるちょっとしたジョークもパンストがあれば大丈夫パンストの先に小銭を詰めたブラックジャック格闘の名手だが、技を使う時には頭にパンストを被ってちょっと引っ張り、下を脱いで直パンストを穿き、戦の舞いを踊るパンストの伸縮性を活かしたブラックジャックとくいこみを強調するダンスで相手の肉体にダメージ、精神に大ダメージを与えるんじゃないかと思う気に入った女子には高級パンストを贈るが、そのたびにヘンタイ扱いされる元々は都下の商業高校に通っていて、女子率の高い商業科の居心地のよさゆえ双葉学園からのスカウトを断り続けてきたが、商業なのに簿記と数字に弱く三年への進学が絶望的になり、やっぱ入れてくれと泣きついて転校してきた 名前 真央雄砂(まお ゆうさ) 学年・クラス 中等部二年 性別 男性 年齢 十四才 顔(髪型込) 子供っぽい。髪は適当に切りそろえられた程度。 身体的な特徴 身長は低く細い。 性格 人見知りで引っ込み思案。 異能 一定の範囲にいる生物を強制的にRPGののような世界に引きずり込み、キャラクターに当てはめてしまう「夢幻郷」。魂源力が高い者ほど重要なキャラクターに割り当てられる傾向がある。引きずり込まれた者は基本的にゲームのルールに準じた行動しか取れないうえ、主人公役が魔王役を倒さない限り夢幻郷からは脱出できない。 その他口調人称等特徴的な要素 口調はごく普通の内気な少年といった感じ。一人称は僕。異能の才能ありと判断され、一月前、双葉学園に転入。まもなく異能を発現するも「夢幻郷」は本人にはほとんど制御できず、周囲に迷惑がられている。 名前 青峰 明良 (あおみね あきら) 学年・クラス 中等部2年の学年主任(担任は2-A) 性別 男性 年齢 31才 顔(髪型込) 快活な笑みを浮かべるハンサムフェイス。さらさらとして長めのヘアからはよく寝癖がピョロっと出ている 身体的な特徴 長身で均整の取れたスタイルでシワひとつないスーツをビシっと着こなし、キメキメ。でもどこか抜けてる。ボタンかけまちがえてたり、タイがよれてたり、社会の窓がオープンな状態だったり 性格 ウザい、さわやか。ウザさわやか。ひとの悪口や陰口を正しく理解できない、駄目ポジティブシンカー 異能 どんなものでも触れたところで分割することができる。生物の場合はなぜかダメージを負わずにそのまま活動できる その他口調人称等特徴的な要素 一人称は「先生」で口調は体操のお兄さん的な「~かな」「~だぞう」。いらんとこに首をつっこむクせがあり、敵味方好悪問わずに被害を拡大させるが、最終的には話をまとめてしまうというとても面倒なひとなので扱いに困る感じで
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273 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/12/31(日) 21 33 25 ID sp49-96-45-148.msd.spmode.ne.jp [2/7] 【旭夜交差】鏖 「アーミヤ代表、ケルシー女史、Dr.██。ロドスの皆様方の多大なご協力、大変感謝しております」 「此方としても、お力添えができたのなら幸いです」 『チェルノボーグ事変』が一応の終結を見てから一週間後。 チェルノボーグ難民や感染者の対応と避難にも目処が付き、また、日本政府と契約して暫定難民キャンプの円滑な運用開始に協力したロドス・アイランド製薬の本社艦が長距離移動を始めるとのことで、日本・ロドス代表者による挨拶が行われていた。 ゲーム的には“メインストーリー第一部”とも言えるチェルノボーグ事変だが、日本の動きとしてはその大部分を蚊帳の外に立って傍観していた。 というよりは、事変発生から2週間もしない内に事態が沈静化しており、日本側が体勢を整えた頃には全てが終わっていたに等しい状態だったのだ。 事変自体も全容が分かってしまえば何てことの無い………… 『不死の黒蛇』とかいうウルサスの愛国的幽霊(?)妖怪(?)精神体が、比較的開明的な現皇帝になってから貴族反乱と大粛清 勢力膠着状態で落ちぶれるウルサスの現状を嘆き、ウルサス帝国が侵略戦争による繁栄に明け暮れていた前皇帝の時代を懐かしみつつレユニオンのリーダーの精神を乗っ取り、チェルノボーグを隣国の都市龍門に突撃させて炎国とウルサスの戦争を誘発、再び始まる戦争の時代を通して強いウルサスを取り戻そうとしてたというだけだった。 ファンタジーフィルターを通していて分かりにくいが、要するに、ソ連に憧れるロシア超国家主義派がテロリストと共謀し偽旗テロでWW3を引き起こそうとしていたような構図でしかない。 「それで、チェルノボーグ奪還の為に漸くウルサス軍が動き出した現状、貴方がたはこれからどうするおつもりでしょうか」 「一度、ゲートの向こうに撤退することとなるでしょう。偶発的な事態とはいえ、ウルサスの国土を軍靴で踏んでいては、あらぬ誤解を受けてしまうやもしれませんから」 日本にとっての問題は、その首謀者の思惑に旧守派貴族の一部が便乗している可能性があることだ。 レユニオンのチェルノボーグ突撃作戦が頓挫した今、戦争を求めるウルサス軍とその背後の貴族には振り上げた剣を叩き下ろす先が必要となった。であるならば、今、チェルノボーグに居座っている異邦の軍隊である日本がその標的にされるのも想像に難くない。 「それでは、我々は撤収準備がありますので、これで……」 274 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/12/31(日) 21 35 02 ID sp49-96-45-148.msd.spmode.ne.jp [3/7] 「……本当にこれで、良かったのでしょうか?」 「アーミヤ……?」 「仕方ないとはいえ、日本の皆さんを囮にするようなことを…」 退出した日本人を見送った後に、コータス(兎)の少女が小さく呟く。 本来、二国を巡る陰謀に首を突っ込んだロドスは、真っ先に狙われる存在だった筈だ。 しかし、それは“日本”という更に大きな存在によって覆された。 両国……少なくともウルサス帝国の目は日本の方を向き、その為にロドスは危険域から安全に離脱する事ができる。 しかしてその事実は、難民キャンプの設営において短い間ながらも日本人達と苦楽を共にした心優しい少女にとっては、心に小さなしこりを残すものだった。 「……国家と国家の衝突は、往々にして我々の想像もできない域に達する。その損害は、時として天災によりもたらされるものを上回り、そして、天災の前に一個人が何も出来ないように、我々もまた全面的な戦争の前には無力な存在でしかない。アーミヤ、今の我々に出来ることは無いんだ」 「ケルシー先生……それは、そうなのですが…」 「多分……彼らも予想していた事だと思う。迎え撃つ準備も、既に…」 「ドクター…?」 複雑な心境を抱く少女の横で、ドクターと呼ばれた彼(もしくは彼女)は、短くも深い思索から顔を上げ、一つの結論を出していた。 「ウルサス軍に大打撃を与えて、ゲートの支配権を認めさせるつもり……かもしれない」 「ドクター、君もその結論に至ったか」 「……!」 フェリーン(猫)の女性がドクターに同意するのに対して、コータスの少女は驚きの表情を浮かべる。 国ぐるみで鉱石病患者への差別と迫害が行われているテラにおいては、現代地球的価値観で感染者を手厚く保護しているだけの日本の行動すらも、十分驚きに値するものである。 それが故に、無意識の内に日本をテラの様な厭悪や野蛮とは無縁の“聖人”として捉えていたからこそ感じる驚きなのであるが……文字通り世界が違うという事から来る意識の隔たりは、存外に大きいものであった。 一方その頃……ウルサスの寒々とした荒野に、打ち捨てられたチェルノボーグ市へと近づく土煙が上がっていた。 彼らは、ウルサス帝国軍。 高速戦艦と呼ばれる砲熕兵器を備えた陸上移動要塞と、全てが成功した暁に動く筈だった第三師兵団(おそらく師団規模部隊)の兵士達である。 黒を基調とした非常に現代的な装具を身に付け、それに反して見た目だけはモダンな剣や槍、盾、クロスボウなどの武器を持つ。 その後方には高らかにウルサスの国章……双頭の鷲の旗が掲げられていた。 これから戦場に向かう彼らに不安の顔色は無い。 何故なら、『日本連邦』とかいう自称別世界から来た“敵”は……感染者の暴徒集団(レユニオン)から街一つ奪う事も出来ずに逼塞していた“弱者”なのだから……一様に、彼らの意識はこのような見識に支配されていたのだった。 とはいえ、これは過度に侮っている訳ではない。 チェルノボーグが簡単にレユニオンによって陥落させられたのは、ウルサス内部の協力者によって防衛体制が予め骨抜きにされていたことが一番の要因だった。 本来なら、レユニオンと国家の正規軍が正面衝突すればレユニオン側には万に一つの勝ち目も無い。 更に日本は、難民保護の為の全周波数帯での呼び掛けの際に「鉱石病および源石の知識が少ない」旨を言って諸国に協力を呼び掛けていた。 源石技術が全てのこの世界において、それは「高度技術文明に至っていない」と受け取られてもおかしくはない。 つまり、これも世界が違う故の悲劇といっても良いだろう。 275 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/12/31(日) 21 36 34 ID sp49-96-45-148.msd.spmode.ne.jp [4/7] 「源石の危険性は?」 「構成元素の分光分析においては不明瞭な結果を返すだけでしたが、大まかな機械的性質は把握されています。また、異なる物理法則下に置かれている為か、こちら側での自己増殖は確認されておりません。活性状態への移行こそありますが、エネルギー保存則に反するものではありません」 「では、水際作戦でも問題ない、ということだな」 「現在、第6師団がゲート前面に展開を完了。後詰めとして第9師団より第9戦車連隊及び第21歩兵連隊が展開中。第7航空団も準備を完了しており、いつでも行動できるとのことです」 「よろしい。後は、奴らが来るのを待つだけか」 移動都市の壁を乗り越え、黒衣の軍団が静かな街に侵入してくる。その足取りは確かなもので、影のように静かに進む。彼らの装備は重厚で、武器を携えた者たちはその鋭さを物語る。 源石に犯された無人の街はかつての喧噪を知る者にとって、異様な静寂を漂わせていた。 大通りの市場の店は放り出されたままで、広場にはもちろん誰もいない。故に、その静けさは黒衣の軍団…………ウルサス帝国正規軍の侵攻を妨げる事は無い。 帝国精鋭先鋒の指揮官が一団を率い、広場に進出する。彼の目は冷徹で、周囲を睨みつけるようにして歩む。その後を従う兵士たちは一様に黒と赤の装備に身を包み、シルエットが都市の影に混ざり合う。 彼らの進む先にはゲート───突如としてこの世界に現れた光の幕が広がっており、空気には緊張感が漂っている。 彼らの目的や動機はただ、ゲートとその“先”を手に入れる事のみ。 彼らの到達点がどこであるかは彼ら自身にもわからないが、その進軍は確実に帝国による繰り返される侵略の再開を意味している。 街が抱える秘密や歴史の積み重ねの上で今、暗黒の中でテラは新たな展開を迎えようとしている。 276 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/12/31(日) 21 37 56 ID sp49-96-45-148.msd.spmode.ne.jp [5/7] そうして、ゲートを越えた彼らが目にしたのは「圧倒的な豊かさ」だった。 緑に覆われた大地、粉塵一つ無い澄んだ大気。そして、移動都市などという狭い箱庭に縛られない、どこまでも広がる人の営み。 まさしく楽園と呼べるような光景に、彼らは躊躇を捨てた。 ゲートと楽園を隔てる一枚のフェンスと、「これより先日本連邦領域、立ち入り禁止」の看板。 それらは防壁としてはあまりにも弱々しく、帝国先鋒の刃によってアッサリと断ち切られた。 そうしてウルサスの侵攻部隊が日本の地へと雪崩れ込んだ、その瞬間。 『────射撃開始』 地面が爆ぜ、爆風によって土が捲り上がる。 着発と曳火の混じった150mm砲弾は、ほぼ同時にウルサス帝国軍歩兵陣の只中で炸裂し、何も分からない哀れで雑多な歩兵を吹き飛ばす。 とはいえ、それに何とか耐える兵も存在しているというのが、流石はファンタジーというべきか……しかしその者らも、偽装網を翻した戦車による一斉射撃に消し飛ばされた。 ダグイン状態の主力戦車より放たれる140mm多目的榴弾が、正確無比な射撃管制装置の力によって重厚な盾を構えたウルサス盾兵の真正面で炸裂。強烈な鉄のシャワーを浴びた盾兵は意図も容易く細切れに寸断された。 ウルサスの戦列は瞬く間に壊乱し、機動戦闘車の50mm機関砲が取り零した兵を丁寧に刈り取っていく。 ウルサス強襲射撃兵と呼ばれるジェットパックらしき物を背負って飛んでくる兵も、基地防空設備から引っ張り出してきた20mm対空機関砲の火線が鞭の様に薙ぎ倒した。 比較的後方に存在したウルサス砲兵は、お得意の砲撃強襲に使われる迫撃砲の様な兵器の設置に取りかかるが……半端な現代戦を日本相手に挑むことの代償は、その後すぐに支払われた。 偵察機より情報を受け取り低空飛行してきた戦闘ヘリから連射されるロケット弾が即席の迫撃砲陣地を潰し、重攻撃機(ガンシップ)の機関砲と榴弾砲が逃げ惑う兵士達を掃除していく。 弾幕を掻い潜り恐ろしい脚力で日本側陣地に突入しようとしていた兵士は、次の瞬間に強い光を発して火だるまと化した。 飛翔体迎撃用の戦術レーザーが照射する不可視の化学レーザーは、文字通り光の速さで兵士を捉えると高出力の電磁波で容易く自然発火点を突破させる。それは、生身の人間にとっては極めて致命的だ。 ゲート前に形成された一辺約数キロメートルにも及ぶキルゾーン内部には、日本の持つありとあらゆる火力が投下され、別世界からの侵略者の悉くを引き潰していった。 無論、ウルサス軍が特別に無能という訳ではない。というよりか、テラにおいては最強クラスの軍事国家として君臨している。 只々、彼らの戦っていたテラの戦場では“あらゆる方向からあらゆる火力を最大効率で叩き付けられる”という場合の戦訓を得ることは不可能だっただけなのだ。 まぁ、日本側も得体の知れないファンタジー正規軍を畏れ、相手を「ジェダイとアベンジャーズの連合軍」と考えていた節もあったのだが…… しかしてその結果は悲惨なものであり、戦闘開始から1時間も経たない内にウルサスの侵攻部隊は完全に殲滅されていた。 『第9戦車連隊、準備完了』 『第14戦車連隊、準備完了』 『第22即応機動連隊、準備完了』 斯くして、攻守は入れ替わる。 277 名前:奥羽人[sage] 投稿日:2023/12/31(日) 21 43 05 ID sp49-96-45-148.msd.spmode.ne.jp [6/7] とりあえず以上となります。転載OKです。 地獄のまな板状態ですね。 日本だって“光と化して1km跳躍強襲できる騎士”を何人も抱えた国相手にまだ戦略的優位性を保てる国とか怖いですもんね
https://w.atwiki.jp/radio_baseball/pages/426.html
4月22日-4月28日← →5月6日-5月12日 2024年4月29日(月) ナイトゲーム 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 広-神 RCC 中止 佐々岡真司 伊東 平 一柳信行 MBSにネット⇒降雨中止 ABC 中止 濱中 治 高野純一 山下 剛 降雨中止 その他ナイトゲーム 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 巨-ヤ ※中継なし 中-デ CBC 17 21 小松辰雄 宮部和裕 榊原悠介 SF 17 27 鈴木孝政 犬飼俊久村上和宏 源石和輝 3回まで犬飼、4回以降村上が実況 日-オ HBC 16 16 新垣勇人 山内要一 波多野裕太 ロ-楽 Raku (不明) ---- 本間拓人 ---- ゲスト 河内一朗 ソ-西 RKB 16 21 秋山幸二 冨士原圭希 櫻井浩二 KBC 16 21 藤原 満 居内陽平 沖 繁義 特記事項 在京局はいずれも通常編成【巨-ヤ】LF取材 師岡正雄 2024年4月30日(火) LF-NRNネット 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 本番- 巨-ヤ LF 21 41 佐々木主浩 山田 透 森田耕次 実質LF関東ローカル 予備1 中-デ SF 21 21 仁村 徹 吉川秀樹 源石和輝 予備2 広-神 RCC 21 16 山崎隆造 坂上俊次 小宅世人 MBSにネット 予備3 ソ-楽 KBC 20 56 松田宣浩 田上和延 居内陽平 予備4 西-日 LF 中継無 ※屋内球場より下位(取材 洗川雄司、STVはQR受け) 予備5 オ-ロ MBS 中継無 ※屋内球場より下位(取材 金山泉) その他ナイトゲーム 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 中-デ CBC 21 21 彦野利勝 榊原悠介 塩見啓一 (ABC予備カード兼) 広-神 ABC 21 11 福本 豊 山下 剛 高野純一 西-日 QR 20 36 山崎裕之 高橋将市 斉藤一美 STVにネット HBC 20 27 大宮龍男 土井悠平 山田弥希寿 QR制作裏送り ソ-楽 RKB 20 56 島田 誠 茅野正昌 植草 峻 TBC,KRY,NBC,RKK,OBSにネット Raku (不明) ---- 河内一朗 ---- ゲスト DJ ASARI 特記事項 RFは巨-ヤを中継せず 2024年5月1日(水) LF-NRNネット 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 本番- 巨-ヤ LF 20 56 若松 勉 煙山光紀 大泉健斗 全国21局ネット 予備1 中-デ SF 21 11 谷繁元信 森 貴俊 北山 靖 予備2 広-神 RCC 22 41 天谷宗一郎 一柳信行 石田 充 MBSにネット(LFも一部ネット) 予備3 ソ-楽 KBC 21 31 西村龍次 和田侑也 沖 繁義 TBC,NBC,RKKにネット 予備4 西-日 LF 中継無 ※屋内球場より下位(取材 森田耕次、STVはQR受け) 予備5 オ-ロ MBS 中継無 ※屋内球場より下位(取材 近藤亨) その他ナイトゲーム 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 中-デ CBC 21 11 牛島和彦 塩見啓一 高田寛之 (ABC予備カード兼) 広-神 ABC 22 41 福本 豊 高野純一 山下 剛 西-日 QR 20 56 東尾 修 長谷川太 高橋将市 STVにネット HBC 20 48 新谷 博 寺島啓太 土井悠平 QR制作裏送り ソ-楽 RKB 21 26 岸川勝也 井口 謙 冨士原圭希 Raku (不明) 浅井宏太 河内一朗 ---- 浅井はゲスト解説扱い 特記事項 RFは巨-ヤを中継せずLFのRCC広-神ネットは21 02-21 25 2024年5月2日(木) 試合なしのため、以下の番組を放送放送局 番組名 備考 LF-NRN ナイタースペシャル 17 50 いつでもみんなのプロ野球 19 00 わらふぢなるおのわらふぢなるおがやる番組ですか? 20 00 若きアスリート歌手 歌ってしゃべって60分 最大で全国27局ネット(STV,KBCは非ネット) QR 17 57 ライオンズナイターSP 高橋将市 SET UP!!20 00 ガキパラ~SPECIAL STAGE~ HBC Music Delivery BAN BAN RADIO~G.W.のバンラジSP~ STV ナイタースペシャル リアルタイム! CBC ドラ魂ワイド 17 57 ドラ魂ワイド(第1部) 19 00 戸井康成の増刊スクラッパー ABC 北條瑛祐と久野静香のゴールデンウィークやって! RKB そよかぜましおの今夜は増し増し KBC MANDAN(拡大版) 2024年5月3日(金) LF-NRNネット 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 本番- 巨-神 LF 21 06 江本孟紀 清水久嗣 師岡正雄 ABC含む34局ネット(SFは18 27から) 予備1 西-ソ LF 中継無 ※屋内球場より下位(取材 宮田統樹、KBCはQR受け) その他ナイトゲーム 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 巨-神 RF 21 11 清水隆行 矢田雄二郎 真鍋杏奈 MBS,GBS,CRKにネット 西-ソ QR 20 56 松沼博久 斉藤一美 長谷川太 KBCにネット RKB 20 46 川口和久 槇嶋範彦 寺島啓太 QR制作裏送り デーゲーム 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 ヤ-中 NHK 18 24 宮本慎也 星野圭介 澤田彩香 SF 18 26 野村弘樹 山内宏明 胡口和雄 LF制作裏送り 広-デ RCC 16 56 山崎隆造 坂上俊次 石田 充 楽-ロ TBC 16 01 大塚孝二 坂寄直希 飯野雅人 Raku (不明) 高木誠也 佐藤 修 ---- 高木はゲスト解説扱い オ-日 HBC 16 16 岩本 勉 井上雅雄 三ツ廣政輝 MBS制作裏送り 2024年5月4日(土) NRNネット(QR中継なし) 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 本番- 巨-神 (QR) 21 11 辻 発彦 長谷川太 斉藤一美 QR制作裏送り、ABC,KRYがネット 予備1 ヤ-中 SF 23 10 荒木大輔 高橋将市 槇嶋範彦 QR制作裏送り LF-MBSネット 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 本番- 巨-神 LF 21 11 谷繁元信 師岡正雄 煙山光紀 MBSにネット(21 01まで) 予備1 ヤ-中 LF 中継無 ※屋内球場より下位(取材 松本秀夫) デーゲーム 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 広-デ NHK 16 25 大野 豊 西川順一 冨坂和男 RCC 16 26 安仁屋宗八 小宅世人 伊東 平 楽-ロ TBC 16 01 岡本真也 飯野雅人 坂寄直希 Raku (不明) ---- 河内一朗 ---- ゲスト るみなす 西-ソ RKB 16 55 五十嵐亮太 大泉健斗 洗川雄司 LF制作裏送り オ-日 HBC 15 56 湯舟敏郎 北條瑛祐 平野康太郎 ABC制作裏送り 2024年5月5日(日) NRNネット(QR中継なし) 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 本番- ヤ-中 SF 21 21 松沼雅之 槇嶋範彦 ---- QR制作裏送り、実質SF中京ローカル デーゲーム 対戦 幹事局 終了時間 解説 実況 リポーター 備考 巨-神 NHK 17 00 今中慎二 宮田貴行 池野 健 ABC 17 11 清水隆行 石黒新平 真鍋杏奈 RF制作裏送り 広-デ RCC 16 31 佐々岡真司 石橋 真 一柳信行 楽-ロ TBC 16 01 岡本真也 守屋 周 玉置佑規 Raku (不明) 千葉耕太 河内一朗 ---- 西-ソ Nack 16 30 ---- 加藤 暁 滝島 杏 RKB 16 35 薮田安彦 洗川雄司 宮田統樹 LF制作裏送り オ-日 HBC 16 26 中田良弘 中邨雄二 平野康太郎 ABC制作裏送り 特記事項 在京局はいずれも通常編成【巨-神】LF取材 胡口和雄 中継カードがない局 MBS MBSベースボールパーク番外編 4月22日-4月28日← →5月6日-5月12日
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3 空き家であるはずの一軒屋。一階にあるシャッターは、恐らく自家用車のためのガレージだろう。 小柄なショートカットの女の子が、その空き屋にそっと触れる。そして。 「呪詛諸毒薬・所欲害身者・念彼観音力・還著於本人、囁き、詠唱、祈り、念じろ」 すると空き屋全体が発光を見せ、周囲はガラスの壁のようなものに包まれた。 これこそが××××の異能である陰陽術「奇門遁甲の陣」である。平たく言えば破壊不能の結界で、術者が死亡したり負傷したりしない限り、外部から干渉されることはない。 実はこの術こそがあの四神「玄武」であり、醒徒会長・藤神門御鈴の「白虎」に匹敵する高度なものである。これほどの力を手にしておきながら、×はほとんど学園の表舞台に出ることなくひっそりと過ごしてきたのである。 結界が完成したのを確認し、××××はガレージのシャッターをこじ開ける。外部から遮断されているので、このような蛮行も他人に目撃されることはない。 「白のスポーツカー・・・・・・!」 その国産スポーツカーを目にしたとたん、二人はごくりと唾を飲み込んだ。 「間違いないわ。犯人はこの空き屋をアジトにしていたのよ」 「目撃証言、間違ってなかったね」 ××と×は奉仕活動をサボって、とある事件の調査をしていた。「中等部生失踪事件」である。 女子寮のロビーで話題になっていたのを××が耳にしたのだ。昨日の夜から中等部生の×××××と×××が行方不明になっていた。忽然として夜の町に消えた二人のことを、寮で生活しているクラスメートたちが口々に心配の言葉を出していた。 だから今日はずっと中学生たちの捜索をすることに決めたのである。ところが公園周辺で奇妙な目撃情報を得たのだ。 「昨日の夜、不審な白のRX7が公園に停まっていた。中にはアベックがいた。どういうわけか袖ヶ浦ナンバーだったのでよく覚えている」 と、一言でまとめればそのような内容の証言であった。袖ヶ浦といえば千葉県である。醒徒会や風紀委員に先駆けてこの貴重な情報を手にした××と×は、いっそう張り切って事件の調査に没頭していたのである。 ××は目立ちたかった。 活躍をして、学園のみんなに自分の強さや存在を認めてほしかった。 そのような強すぎる気持ちが彼女を駆り立て、行動させていたのである。 「いいこと×。私はただ活躍したいだけなの。これ以上、学園のみんなから悪いように言われたくなかったら大人しく帰りなさい?」 ところが返事として帰ってきたのは、温かな手の温もりだった。××はきょとんとして×のほうを見る。 「私はずっと××ちゃんと一緒だよ。ずっとそうだったし、これからもそう」背の低い×は、子犬のような愛嬌のある笑顔を××に向ける。「××ちゃんと一緒なら、何を言われても何をされてもかまわないよ」 「もう、あなたって子は」××は呆れたような笑顔になった。「やっぱりあなたには何を言っても無駄なようね」 口ではそのようなことを言いつつも、本当は嬉しくてたまらないのである。 ××たちはRX7の脇を抜けて、室内へと潜入していった。RX7がどんな形をした車であるかは、インターネットで検索すればすぐにわかった。 ガレージ付きの空き屋は、家というよりももともとは何かの作業場といったような雰囲気であった。部屋が広く造られているのだ。まるで小さな体育館のよう。 その隅で、××たちは捜していた人間たちを発見したのである。三人とも縄で縛られて、こんこんと深い眠りに落ちているようだ。 「×××××!」 「××ちゃん、中学生の二人もいるよ!」 ××と×がこのアジトを特定できたのは偶然のことであった。 白のスポーツカーという情報を得たのはいいものの、いくら島内の隅々まで巡っても肝心の車を発見できず、行き詰っていた。××が何となくモバイル学生証のGPSで自分たちの位置を確認しようとしたときだった。 GPSの反応があったのだ。どうしてか×××××がこの建物にいたのである。それも、空き屋であるはずの。意を決しガレージに潜入したら、該当する車を認めたというわけだ。 こうして×××××も中等部生も見つけることができた。あとは逃げればいいだけなのだが、好戦的な××は違う。 「ほら、出てきなさいよ!」 こっそりもぐりこんできたのにも関わらず、犯人を呼び出すという行動に出たのだ。 二人を助けるだけでなく、犯人を倒して警察に突き出すことまで彼女のシナリオだった。どうしてそこまでして活躍したいのか? 何かこう、彼女を強く突き動かす動機めいたようなものが見え隠れする。 「もう見つかってしまったのか・・・・・・」 「双葉島は怖いとこねぇ。甘く見てたわぁ」 向こう側にあるドアが開き、男女がやってきた。証言どおりだ。 一人は銀色の髪をした美青年。もう一人は白衣に身を包んだ茶髪の女性であった。白衣のほうは小さなタンクを一つ背負ってきて、その場にドンと下ろした。××はしっかりその場に立って構え、×はいつでも術を使えるようお札を指先に摘んだ。 「悪いけど容赦しないわよ?」 「この家は結界で封じられています。××ちゃんはいつでも強力な攻撃に出られます。抵抗はやめてください」 「・・・・・・やれやれ。どうする、シホ?」 「殺しちゃっていいわぁ」さらりと恐ろしいことを言う。「どうせ車に詰め込めないでしょ? ただの邪魔だし、この子たちは始末しちゃいましょ」 「了解」 「舐めんじゃないわ!」 ××が魂源力を解放する。ゆらっと後ろ髪が持ち上がり、鱗粉がその周りに浮かびだした。 「させないわぁ」 ところが白衣の女も攻撃に出た。タンクがバキンと破裂し、破片が吹っ飛ぶ。そして中にいたものを目にしたとき、××も×も戦慄したのであった。 灰色の体がまず目に付く。二つの足で直立していることから、恐らくデミヒューマンのラルヴァに近いものがあるだろうと思う。 何よりも奇妙で奇怪で恐ろしかったのは、その化物の両肩から伸びる「触手」の束であった。人間でいう両腕の部分が「触手」となっている化物だ。頭部は萎縮してクレーターのような陥没が目立ち、顔面も皮膚が垂れ下がって何重にも積み重なる段を構成している。隙間から飛び出て細長い紐のようなものでぶら下がっている、二個の球体が、恐らく眼球なのだろう。 「な・・・・・・何なのこれぇ・・・・・・!」 「×、しっかりして! 来るわ!」 体長がシホの半分ぐらい――子供程度の背の高さである――化物は、タンクから出された直後はしばらくじっと止まっていたのだが。 「うわあっ!」 魂源力を解放して待ち構えていた××に、触手の束が突っ込んだ。垂れ下がる眼球をぶらぶら揺らしながら、化物は俊敏な動きで××に襲い掛かってきた。 「××ちゃん!」 「おっと、君の相手は僕だよ」 ×は不覚を取った。ジュンに接近を許してしまったのだ。眼前を彼の手のひらが包む。 バチンという強い衝撃。×は悲鳴と共に崩れてその場で膝を付いた。ジュンは倒れ行く×の背中を、左手で支える。 しばらくまじまじと×の顔を見つめていた。それからフッと微笑み、こんなことを言い出したのだ。 「美しい・・・・・・!」 「え? ・・・・・・あ、やだ、ちょっと」 何と×の顎を右手の指先で持ち上げて、唇を奪おうとしてきたのである。 「やだぁッ!」 ×とジュンとの間に結界の壁が発生し、それはジュンを拒絶するかのように吹き飛ばす。彼は受身を取って転がり、シホの足元で起き上がった。 「またあなたのスタンで倒れなかった。学園の異能者ってほんとすごいわぁ」 「ふん。年頃の仔猫ちゃんには、噛み付く力ぐらいあるのさ」 そして×の後方では、××が触手を胴に巻かれてきつく締め上げられていた。頭に来た××は魂源力を瞬間的に、全力で解放した。 「こ、こ、こ、この化物めぇ――ッ!」 なりふり構わず鱗粉を解き放ち、クリーチャーに食らわせる。とっさに×も自身に結界を貼り、××の無差別的な攻撃を防ぐ。味方に損害を与えかねない危険な能力。まさに「××××××」の力。 化物は奇声を上げつつ、体全体から気体を吹上げ、みるみるうちに干からびながら凍っていく。魂源力を怒りのままに爆発させた××は、その場で両手両膝をついてぜえぜえ苦しそうに呼吸をしていた。頭にスタン攻撃を食らってダメージを負っている×も、よろよろと近づいてきて××の隣についた。 「××ちゃん、あいつら強いよ!」 「このままじゃやられる・・・・・・! 何なの? 何なのよあいつらは!」 ××と×はまだ知らなかった。今、島の外ではとんでもない人物が陰で猛威を奮い、異能者たちを恐怖のどん底に突き落としていることを。そしてとうとうその手先がこの双葉島に乗り込んでいたということも。 「僕はジュン。人をショックで気絶させる力を持ってる。こっちは科学者のシホだ」 「改めましてお二方、『クリエイト・クリーチャーズ』のシホと言うわぁ。・・・・・・異能はもうおわかりのように、化物を生み出す力なのよぉ」 シホはそう言ってドアのほうに歩き、廊下に出た。いったい何をするのだろうと、××と×は見ていたのだが。 ドン、と置かれたタンク。二人はそれを見ただけで絶句した。あの恐ろしくて強い化物がもう一体いたのである。××が死力を尽くして倒すのがやっとであったというのに。 「はい、もう一個」 楽しそうな弾んだ声で、シホはもう一つタンクを置いた。もう二人は声も出ない。シホは化物を運搬するさい、専用のタンクに詰め込んで運んでいる。タンクには食料の缶であるというカモフラージュがされていた。これで車の後部座席に詰め込み、難なく双葉大橋を通過してきたのだろう。 「クリーチャーは三体持ち込んできたわぁ。残念ねぇ、嫌な死に方することになるなんて」 「うーん、やっぱ殺すのはやめにしないかシホ? せめてあの小さな子だけでも」 「何を言ってるのよぉ。車にはもう詰め込めないって言ってるでしょお?」 ×はがくがくと震えていた。単なる誘拐事件だとたかをくくってこうして乗り込んだはずだった。趣味の悪い誘拐犯を捕まえて警察に突き出すことが目的だった。そうすることで××も自分も学園から見直され、その強さや実力を認めてもらう・・・・・・はずだった。 相手は趣味が悪いどころではなかった。趣味が悪すぎてとんでもない化物を創って仕掛けてくるぐらいの、たちの悪い異能者だったのだ。危険な事件に首を突っ込んでしまった。殺される。 「適当に軽でも盗めばいいさ。シホも免許もってただろ?」 「また適当なことを。もう、わかったわ? こいつらも捕まえて、エリザベート様に差し出しちゃいましょお」 「エリザベート・・・・・・?」 二人が何を言っているのか全くわからない××は、そう呟いていた。彼女の怯えた顔に応えるよう、二人は彼女たちに説明をする。 「エリザベートは怖い方だ。女の子の魂源力を抜き取って、自分のものにしてしまう」 「エリザベート様は双葉学園の子に興味を持ってらっしゃるわぁ。もう三人も捕まえちゃったし、すっごく喜んでいただけると思うわぁ」 そう、紅潮した頬に右手を当てながらシホはうっとり語る。××は怒鳴った。 「それであんたたちが島に送り込まれたってわけね!」 「その通り。私たちはエリザベート様の命を受けて、双葉学園の女の子を拉致しに来た工作員のようなもんなの」 「さぞかし、エリザベートにとっては学園がお菓子の家に見えることだろうね」 つまり、エリザベートという女は双葉学園の女子異能者を食らいつくすために、シホとジュンを送ってきたのだ。エリザベートに差し出された学園生たちが、次々と魂源力を吸われて倒れていく・・・・・・。 そんな光景を想像しただけで、×はぶるっと震える。「何て罰当たりな・・・・・・!」 「そして君たちもエリザベートの糧となるのさ。光栄だね」 かちかちと、恐怖で××の歯が鳴っていた。 「もう、四人目五人目の獲得なのねぇ。順風満帆ねぇ」 二人の静かな笑い声ががらんどうのフロアに響く。ゴン、ゴンという、タンクの中から何かが壁を殴りつけているような音が聞えてきた。 もう、二人に勝ち目などなかった――。 西の空は一面の赤に輝きわたり、雲が小さな黒い点となってぽつぽつ浮き上がって見えた。 「ほう。これだけこなせるとは、君たちも大したもんじゃないか」 白い肌が夕日に染まって赤みを帯び、黒髪も綺麗なあまり反射して一部が白く光って見える。逢洲等華は学園の問題児三人に対して淡々とそう言った。彼女たちの隣には軽トラック五十台分はある見事な雑草の山が出来上がっていた。 「本っ当にムダな時間でしたわ! こんなの早く止めさせてくださいまし!」 物怖じすることなく奔放に噛み付く××。等華はギロリと睨む。「まあまあ、××ちゃん」と××××が苦笑しながらなだめた。 「にしても、××××と××××はまたサボりか。謹慎期間を延長したほうがいいのかもな」 二人に関しては特にフォローも見せない××たちである。あの戦いから、××らのペアとほとんど会っていない。 ××と×はずっと一緒になって行動している。何をしているのかもわからなかった。今日の草むしりだって、二人が来ていればもっと楽な作業になるはずだったのに。今日は丸一日使って学園内の雑草を処理したが、それでもあと三割ほどの敷地が周れていない。 「××××××××××がいないな。どうしたんだ? 具合でも悪いのか?」 しかし、この件に関して三人は気にならずにいられなかった。今日、途中から合流するはずだった×××××がついにやってこなかったのである。 真面目な×××××は奉仕活動を欠いたことがなかった。×××ですら助っ人の依頼で活動を休むことがあるのに、×××××はこれまでずっと皆勤賞という優等生ぶりだった。 「まあいい。今日はこれで終了だ。お疲れ様」等華はふうっとため息をつく「××××くんの事情聴取をしないとな」 猫のイラストが可愛らしいスケジュール帳を開きつつ、三人の前でうっかり呟いてしまったのだ。 「事情聴取ですって?」 「何かあったのでしょうか?」 口々に言った××と××××。等華は「しまった」とばかりに焦る。 「こっちの話だ! 君たちには関係ない!」 等華は「ところで××××××××。貴様どっかで私の悪口を言ってなかったか? 無愛想だの凶暴だの、貧乳だの!」「は? 何のことですの!」「いつかそのひねた性格を叩きなおしてくれる。覚悟しとけ!」「知りませんわ! 知りませんわ!」と、××に唐突な話を持ち出して、その場から足早に去ってしまった。 フン、と××は両手を腰にあて、こう言う。 「なーんか隠していますわね?」 「暗示で・・・・・・聞き出せないことも・・・・・・ないですが・・・・・・相手が・・・・・・悪すぎました・・・・・・」 と、×××が言った。 ×××の異能は「強制暗示」である。普段前髪に隠れている瞳が輝いたとき、彼女の視界に入ったもの全てを無差別に暗示下に置くことができるのだ。 しかし×××の力も結局は一人の異能者の力に過ぎないのである。精神力の強い者にはかかりにくいという欠点があり、恐らく風紀委員長の逢洲等華には通用しないだろう。そしてもしも彼女に対して暗示を使用したことが判明すれば、今度こそ×××はタダじゃ済まされない。 そのときモバイル学生証の着信音が聞えてきた。×××のものだ。同時に××××や××のものもポケットの中でぶるぶる振動をした。 「メールだ。誰からだろ」 「×××××ですわねぇ。どうせくだらない内容に決まって」 だが、メールを開いた瞬間、三人の顔が凍りついた。 『×××××が何者かにさらわれた』 ×××××は喫茶ディマンシュに三人を呼び出し、偵察で得た内容を教えることにした。この店ならウェイトレスも優しい人なので、自分のような悪目立ちをしている人間たちがやってきても気に留めることもしない。 GPS機能で×××××の居場所を特定しようとしたが、できなかった。とっくにモバイル学生証を破壊されたか何かで、対策をされているようだった。 「シャレになんないことになってるわ。よく聞くのよ」 昼間のときとは違って、ニコリともせず×××××は言った。 本日の昼ごろ、××××××××××と六谷彩子が謎の二人組に強襲され、×××××が拉致され連れていかれた。彩子はその場で倒れているところを、彼女を探していたクラスメートたちが発見し保健室へ搬送したという。「草むしりしてたときだ」と××××が言った。 そしてそれとは別に、今、中等部の女の子二人が行方不明になっている。これは昨日の夜に突然失踪したとのことで、島内の異能警察隊が捜索していたところだった。 「彩子って子が夕方四時過ぎに目を覚ましてね、この言葉を言ったのよ。『エリザベート』」 「エリザベートって! 嘘、そんなまさか!」 ××が目を大きく開いて驚く。 「そうよ。島の外で話題になってる謎の魔女『エリザベート』。それでもう醒徒会や風紀委員や島内警察はとんでもない騒ぎになってる」 草むしりをしているときに、好奇心から×××××が教えてくれた魔女「エリザベート」。女子異能者をことごとくさらい、魂源力を根こそぎ強奪してしまう恐怖の存在。魔女。 そのエリザベートが、二人を使いとしてよこしていよいよ双葉学園に牙を向けた、ということなのだろうか? ・・・・・・なるほど、エリザベートにとって、異能も魂源力も教育によって洗練された女の子の多いこの双葉島は、さぞかし甘い果実の詰まったバスケットのように見えることだろう。 「中等部の子の件も謎の二人組の仕業だと話が繋がったわ。でも、それより×××××よ。×××××がさらわれちゃったのよ!」 ×××××はドンとテーブルを叩き、感情いっぱいに言った。×××が×××××の隣に移動し、「落ち着いて・・・・・・」となだめる。 幼少のドイツ時代から双葉学園に至るまで、×××××は×××××とずっと一緒だった。お互いに成長するたび、性格の差も明確になってきて対立も見せるようになった。それでも、かけがえのない親友であることには変わりない。 ×××××が生命の危機に脅かされている。ずっと一緒だった友達が、エリザベートという得体の知れない脅威によって殺されようとしている。黙っていられるわけなどない。 鋭い眼光はやがて落ち着きを取り戻したようにその殺気を緩和し、×××××はふうっと重い息を吐いた。 「学園の連中は相変わらず何も教えてくれない。×××さんを呼んで暗示で聞き出そうとも思ったけど、それをやっちゃ今度こそ学園にいられなくなるかもしれないしね」 情報を手にするにはかなり高い障壁が待ち受けている。双葉学園は時として、敵として立ちはだかるときがある。しかしそれは自分たちに限っての話なのだろうが。×××××は苦笑を見せた。 「彩子さんなら、何か知ってるのかな?」 ふと××××がそう言った。××も「そうですわ! 彩子さんから話を聞けば、二人組のこととかわかるかもしれませんわ」と同調する。 「もちろんそのつもりよ。ま、当の本人がインフルエンザで寝込んじゃってるんだってさ」 「インフルエンザって・・・・・・ああ、なるほど」 「相変わらず×××××さんは歩く病原体ですわね」 と、××と××××は引きつったような笑顔になった。 「では・・・・・・聞きたくても・・・・・・会えない・・・・・・聞けない」 ×××がしょんぼりし、ささやくように言った。しかし×××××ははっきり「関係ないわ」と言う。 「×××××がさらわれたんですもの。明日、彩子って子のところに乗り込んでぶん殴ってでも吐かせるつもりよ」 鞄から何か丸まった紙を取り出し、テーブルに広げる。六谷邸の間取り図と図面であった。こんなものどっから手に入れたの、と××××がびっくりしている。 ×××××は時として強引に出る面がある。大丈夫かなぁ、と三人は正直のところ心配でたまらなかった。 「ああもう。こういうときに限って、××さんと×さんはどこで何をしてらっしゃるの?」 ××は窓の外を見る。夜道を行きかう自動車のライトと、すっかり困り果てた自分自身の表情がガラスに映った。 トップに戻る 作品保管庫に戻る
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10 彼女の想定していた通り、洋館は広かった。二階には高そうな家具の配置された豪勢な客間があり、廊下の壁にも絵画や照明など洋風の調度品がたくさん置かれていた。ドイツでもこれぐらい豪華絢爛な家はあまり見なかった。 ×××××は洋館の二階を探索していた。敵に警戒しつつ、バヨネットを片手に×××××を探している。チェーンで開かなかったドアには苦労させられたが、何とかドアを蹴破って破壊して脱出することができた。 残してきた×××のことが気がかりだが、後ろを向いている時間は残されていなかった。別の客間に足を踏み入れた。自分が軟禁されていた部屋とそっくりだが、そこには馴染み深いデザインのブレザーがハンガーにかけられている。 誰のものだろうと上着を手に持つ。名前を記入する欄には「××××」とあった。×とともに魔女エリザベートに付いたと言われている、×××××の仲間だ。 もの悲しげな表情になって上着を元に戻したとき、ポケットから何か紙切れが出てきて宙を舞った。手に取ると、それは×××××たち七人が楽しそうに一緒に映った写真であることがわかった。 「やっぱりあの子が裏切るなんて、嘘だよね」 その写真を見ただけで、×××××は気持ちをしっかり持つことができた。 「みんな、待っててね」 ×××××は急いで××と×の部屋を後にした。 ××××は××の使用していたライトサーベルを使い、片腕だけで化物となったシホと戦っている。飛んだり跳ねたり、敵の触手に打たれるたび、左肩からスパークが激しく飛び散った。 致命的な損傷ではなかったものの、腕を一本失ってしまっているぶん自由には戦えない。戦力は格段に落ちていた。 「自分まで化物になるなんて! どこまで狂ってますの!」 自分の研究に対して、ことさら××××のことに対しては一生懸命になれる××××××××でも、このシホという科学者の行為はとうてい理解できなかった。 人命の尊さを忘れ、自分の命までも弄んでみせる。 なぜ? この女は何がしたいの? どうしてそこまでして? 色々な考えがよぎっては彼女の頭をぐるぐると回っていた。 クリーチャーとなったシホは、これまでのものに比べてずっと強かった。触手の数が非常に多く、接近すら許さない。 ××××は触手に絡めとられた。片腕、両足、胴、首を同時に締め上げられ、サーベルを落としてしまう。全身が軋んだ音で悲鳴を上げ、いたる箇所から火花を散らした。 「×××!」 二人は生命の危機に直面していた。シホが強いだけでなく、××××の戦闘能力が著しく低下しているのが致命的だった。荷電粒子砲を狙ってもすかさず触手を飛ばしてきてチャージができない。サーベルを使った接近戦でも触手を自在に使われてしまい、主導権が握れない。 そろそろ、××××に蓄積されたダメージが許容範囲を超えようとしていた。このままでは全身の関節を締め上げられ、バラバラになってしまう。そして、もはやこれまでと××××はついに意を決したのであった。 「××ちゃん・・・・・・私は××ちゃんに、すごく感謝してる・・・・・・」 何とか触手による戒めから右腕を解放できた。荷電粒子砲のチャージを開始する。 「×××! いけませんわ、そんな状態で発射したらあなたも!」 「魂を使われてるとか、命を使われてるとか、そんなこと思ったことないよ。××ちゃんと一緒にお話できて、学校に通えてとっても」 ××は「バキッ」と何かが飛んだのを見る。足だった。××××は右足を膝の辺りからちぎられてしまったのだ。 失神しかけた自分を奮い立たせ、気をしっかり持つ。××××を助けなければ。 彼女に優しい言葉を投げかけられて、守ってもらって。そこまでしてもらって、黙っていられるはずがない。××は知恵を絞る。辺りを見回す。シホを撃破し、××××を助けるための手段を探し求める。 化物は表現しようのない奇怪な絶叫をあげる。きっと笑っているのだろう。しかしそんな醜悪なシホに××××は毅然とこう言った。 「痛くなんかありません。今私は本当に望む事の為に戦っていますから」 表情を変えずにそう言ってみせた。荷電粒子砲のチャージが完成されつつある。しかしこの状態で放ったら××××も助からないだろう。刺し違えてでもシホを倒す気なのだ。。 「四十・・・・・・五十・・・・・・六十・・・・・・あうっ・・・・・・! アツィルトサーキットオーバーヒート・・・・・・!」 体の各所が崩壊しつつあった。触手で全身を覆われているため、排熱ができない。もろい箇所から順々にパーツが弾け飛んで崩壊し、機能不全となり、視界にノイズが走った。 それでも××××は敵に表情を変えなかった。親友の××を守るために、大好きな××を守るために、彼女は自分の魂を力に変えるのだ。とうとうチャージを完了させた。でもそれは同時に、自分が崩壊して死ぬことも意味する。 「××ちゃんのために私は私の命を使うんだから!」 ××××は自らの魂を燃やし、散ろうとしていた――。 ところがドッと衝撃が伝わり、化物が叫ぶ。発射をキャンセルして化物のほうを見た。××がライトサーベルで背中を貫いていたのだ。 「だめよ×××。まだ行かせるわけにはいきませんわ!」 ××はニッと不敵な笑みを××××に送ったのである。 ××××に二度と命の使い方を間違わせないために。 ××××に一人の女の子として生きてもらうために。 大好きな人のことを思い浮かべながら眠りについたあの××××に報いるためにも、××は××××と共に生きる道を歩まなければならないのだ。 化物は苦痛から暴走し、××と××××を触手で吹き飛ばした。左足を失ってしまった××××はごろごろ転倒する。 「×××、これを使いなさい!」 同じように土や草にだらけになった××が、ライトサーベルを投げて渡す。××××はそれを受け取り、光の刀を具現させる。それを地面に突き刺すことで支えにし、立ちあがることができた。 体勢をきちんとして適正な出力に調整すれば、こちらに被害が及ぶことはない。幸いシホは××の一撃で心臓を貫かれ、弱っている。チャージや出力を加減できるのだ。 「ありがとう、××ちゃん」 地面に刺したサーベルを右肩のわきに当てて、松葉杖のようにして使う。ゆっくり慎重に右腕を前に伸ばし、敵に向ける。 「これでおしまいです!」 出力は二十パーセント以下に設定。荷電粒子・チャージ。 右手からの放電現象が周囲を青白く照らす、そしてついに、直径一メートルはあるだろう荷電粒子砲がシホに向けて放たれる。 「シュートヒム!」 正義の鉄槌が悪の科学者に下された。 「もう! 私を置いて行こうとするなんて!」 ××と××××は木陰にいた。夏場とは思えない冷涼な夜風がさらさら葉を凪いで、とても気持ちがいい。 荷電粒子砲発射を終えた、×××××の点検をしていた。大事には至らなかったがところどころの損壊がひどく、もはや戦うことができない状態であった。 「そんな悲しいこと・・・・・・もう嫌なんだから・・・・・・」 「ごめんね。うんわかってる、私たちは友達だから」 ××××は、頭に乗っかった木の葉を摘んでこう言った。 「魂を使われてるとか、命を使われてるとか、そんなこと思ったことないよ。××ちゃんと一緒にお話できて、学校に通えてとっても幸せ。××ちゃんの力で私は幸せになれたの」 「×××・・・・・・」 ずっと胸のうちに隠してきた罪悪感めいたものが、すっと抜けて落ちたような気がした。 「だから、気を落とさないで? あんな奴の言うこと、気にしちゃだめよ?」 心配そうに眉尻を下げている××××。××はにっこり微笑んでみせた。 だが、相手はまだ死んだわけではなかった・・・・・・。 「くすっ・・・・・・」二人は戦慄する。「まだなぁんにも終わっちゃいないわよ? お嬢ちゃんたちぃ?」 シホの頭部が残っており、二人に対して話しかけていたのだ。頭部はある程度修復されて、もとの憎たらしい女性の顔になっていた。恐らく生命力の強さや意志の強さがシホに話をさせているのだろう。 「バラバラになっても、しゃべってる・・・・・・?」 「フン! そんな格好になってもまだ舌の根は乾きませんのね! 負けたくせに!」 「殺されるがいいわぁ。エリザベート様に力も生き血もぜぇんぶ吸い取られて、この私よりも醜く朽ち果てるがいいわぁ! きゃはははははははははははっ!」 それから、シホは涙を零す。視線を落とし、優しい声の調子でこんなことを言ったのだ。 「幸せでした・・・・・・。エリザベート様――暦ちゃん。どうか願いがかないますように。そして、私のぶんも・・・・・・より・・・・・・に・・・・・・」 何も声が聞えなくなると同時に、夜風がシホの体を粉々にして吹き飛ばした。今度こそシホは死んだ。 「何だったの、彼女」 「知りませんわ! ああもう、嫌なことだらけで疲れましたわ! とっとと×××××さんと×××さんを捜しましょ」 ××が××××の肩を持ち上げ、二人三脚で移動を始めたときだった。 ザッという足音を耳にし、二人ともばっと振り返る。 「誰!」 赤いドレスに赤い髪、赤い瞳。そう、エントランスホールに飾られていた巨大な肖像画の人物だ。特異な点はどうしてか長髪で、肩の先から髪の毛の色が「黒」となっていることだった。 奇妙な違和感を拭うことができないなか、黒い後ろ髪を二人に見せ付けるように、エリザベートは両手でそれをかきあげてばさっと下ろして見せた。 「初めまして君たち、私がエリザベートだ。・・・・・・何てことはない、この村のしがない長さ」 「あなたがエリザベート!」 「女の子の魂源力を吸い尽くす・・・・・・生ける魔女!」 ××と××××は口々に言った。 ××××が警戒しつつ、ライトサーベルを杖にして立ち上がる。 「わざわざ力を奪われに来てくれたとは、そこまでありがたい客人は見たことがない。歓迎しよう」 「貴女の目論見もそこまでですわ。この通りお友達は倒した。もう一人のキザなのも×××××が何とかしてくれたはず。あとはあなただけでしてよ!」 「手加減などしません。ここで終わらせます。エネルギー・チャージ開始」 ××××がチャージを始める。 「確かにジュンもシホも死んだな。あとは私だけとなった。まぁ私だけでも君たちの力を奪えることには変わりない」 「×××に近づかないで!」 ××が前へと飛び出ていった。制服の内側に隠していた拳銃を取り出す。ヒエロノムスマシンのシステムにより、自分の魂源力を使って威力を得る特製の銃だ。 「君たちにいいものを見せてやる」 魔女は黒髪をばさっと浮かせてそのまま振り回してきた。その攻撃方法に見覚えのある××は、自然に足が止まっている。その瞬間、鱗粉が××に襲い掛かった。全身をびしびし引き裂く、焼けたような痛み。××は悲鳴を上げた。 「引いて、××ちゃん!」 右足のバーニアで飛び出した××××が、××を捕まえてエリザベートの攻撃範囲から離脱する。左足を失っているので着地できず、二人とも激しく転倒した。 エリザベートは周囲に残って風に乗っている、鱗粉を見渡しながらこう言った。 「ふむ、凍傷を与える程度の力か。まぁ、悪くない」 「そんな・・・・・・その力は・・・・・・××さんの・・・・・・!」 「魂源力を奪う異能者じゃないっていうの!」 「強奪したモノは、奪っておしまいかい?」 エリザベートはにやにや笑いながら、余裕たっぷりにこう言った。 「換金するなり投資するなり浪費するなりするのがお決まりさ。奪い取った物は好き勝手使わせていただく、これが私の異能『アイアンメイデン』」 何ということだ。エリザベートはただ魂源力を強奪するだけの異能者ではなかったのである。他人の魂源力を『悪用』することが彼女の力の正体であった。 史実のエリザベート・バートリーは若い娘の生き血を全身に浴びて己の美貌を保ったという。「鉄の処女」をはじめとする数々のおぞましい器具で新鮮な血液を搾り取ったというのはあまりにも有名な伝説だ。 目の前にいる魔女・エリザベートも女性異能者の魂源力を抜き取って悪用し、どんどん己を強化してくのだ。まさにモデルとなった人物と匹敵する恐ろしい人間だった。 「俺のものは俺のもの。お前のものは俺のもの。好きな言葉だ」 ××××は赤い視線に捉われて動くことすらできない。深手を負ってもはや戦えないし、それに××の殺人的な異能を持っている。打つ手は何一つ残されてはいなかった。 「クフフフ。何をおっしゃるのかと思えば・・・・・・」 隣から聞えてきた笑い声に、××××は目を丸くする。 「×××には指ひとつ触れさせませんわよ? この子は私のもの。貴女なんかのものじゃないんですから」 腰に手をあて、胸を張ってそう言ってのけた。エリザベートは邪悪な微笑みをして様子を伺っている。 ××にはわかっていた。この女の狙いは×××なのだ。 広島型原爆の三十倍以上の破壊力を秘める、リーサルウェポン。絶対に敵に渡すわけにはいかない。あるいは××××に秘められた××の科学力も狙われているかもしれない。ヒエロノムスマシンの理論によって作り上げられたこの××××××××。この理論やシステムは××だけしか理解できないものだが、それでも守らなくてはならない。 大事な友達を守らなくてはいけないのだ。たとえ自分の命と引き換えにしても。 恐怖の魔女が近づいてきた。そして××は、背後にいる××××に横顔を向ける。いつも彼女がする、意地悪そうな笑顔をしていた。それがいっそう悲壮感を際立たせていた。 「さぁ×××? 早く逃げておしまいなさい? まだ片足のバーニアがあるでしょう?」 「嬉しいよ×××ちゃん、こんな私なんかのために・・・・・・」 ふっと微笑んで応える××××。このようなやりとりも、もうどれぐらい長く繰り返したことだろう。楽しかった。本当に楽しかった。 「でも、ごめんね」 ××××は××を後ろに引っ張り、代わりに自分がエリザベートの前に飛び出る。 「あっ、×××、だめぇ!」 荷電粒子砲のチャージをする。もちろん出力は全開だ。助からないだろう。力を解き放った瞬間が彼女の最期となるだろう。 でも、もうこうするしかなかった。自分を犠牲にしてでも強敵を倒さなければならない。正義のために、××のために・・・・・・。これが自分の役割だと、命の使い方だと××××は理解していた。 「××ちゃん、どうか本物の××××を大切にね」 チャージがどんどん進んでいく。死が刻一刻と近づく。再び身体がきしんで視界が乱れ始めたとき。 「ぐぇっ」 「えっ」と××××はあっけに取られる。 彼女の背後で、××がうめいたのが聞えたから。 エリザベートはその手を自分ではなく××に伸ばしていた。彼女の首を真正面から掴み取っていたのである。 「君の力、欲しかったんだだよ。ふふふ」 荷電粒子砲など撃てず右手を伸ばしたまま、××××は顔をこわばらせていた。ショックのあまりそうして硬直していたら、きゅん、という力がごっそり抜き取られる音と、ぱさっと××の軽い体が庭園の砂利道に落ちた音がした。 ××の髪が漂白されたように色を失い、まるで死亡したかのように倒れてしまった。 「そんな・・・・・・。××ちゃん、××ちゃぁん!」 高らかに笑うエリザベート。そのとき彼女の黒髪がばさばさと抜け落ち、もとの赤いショートボブに戻った。××の異能が消去されたのだ。 「貴様はただの機械か」 エリザベートが石を拾って投げつける。××××が杖にしていたサーベルに直撃し、「あうっ」と彼女は転倒した。がしゃんがらんと、生身の人間らしくない音が響いた。 「ボロボロの人形など欲しくない。ここで朽ち果てるがいいさ」 左足と右腕を失い、すぐに立つことのできない××××。芋虫のように張いながら小さな顔を上げて、エリザベートの顔を見上げた。魔女は人を馬鹿にしたような嘲笑を向けると、そのまま××××を放置し、××の肉体と共に庭園からふっと「消えた」。 「××ちゃんを返してよー!」 一人取り残された、××××の切実な叫びがこだまする。 トップに戻る 作品保管庫に戻る