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クレープにホットドッグ、綿菓子に焼きそば。 ダイエット中の身にはなかなか厳しい出店たちが、私を誘惑している。 「はー、どうしよっかな・・・」 午前8時半。 クラスの店番の確認が終わってから、私は給水塔によじ登って、桜色のパンフレットをパラパラと眺めた。 学園祭の間中、千聖を独占しようかと思ってたんだけど、さっきあっすーと約束しているのを見たばっかりだから、今日は引き下がっておくことにしましょう。 「でもなぁ・・・舞別にやることないしなぁ」 クラスの出し物といっても、ジューススタンドの会計を1時間程度やるだけだし、他の時間はどうしよう。 寮のみんなはクラスだけじゃなく生徒会や委員会、部活の関係で忙しいだろうし、何かちょっと誘い辛いな・・・。 「あー、何かめんどくさっ」 私は軽く舌打ちして、ゴロンと寝返りを打った。 以前の私だったら、適当に食べ物を調達して、ここで一日ダラダラ過ごすという選択をしていただろう。あるいは、寮に戻っちゃうとか。 でも、私はもう、大好きな人達と過ごすかけがえのない時間を知ってしまった。 友達なんかいらない。一人でも大丈夫だったはずの私は、こんなささいなことに戸惑って、寂しさを憶えるようになってしまった。 「・・・情けないなぁ」 まったく、天才少女の名が泣きますよ。進化したんだか退化したんだか、よくわからない。 88 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/05/31(月) 22 52 30.19 0 手持ち無沙汰になって、ケータイから適当にメルアドをチョイス。 “あ”行の先頭にあったその名前に、“ばーかばーか”ってメールを送信してみる。・・・いいんだもーん、どうせ舞はガキですよっ! そのままダラダラしていると、女の子特有のキャッキャとはしゃぐ声や、吹奏楽部の奏でる音楽が耳に入ってきた。・・・そろそろ、学園祭の開始時間なのかもしれない。 最初ぐらいは教室にいたほうが良かったかな・・・と思ったけど、今更戻るのも何か照れくさい。 クラスの子たちも私のサボり癖はよく知っているだろうから、わざわざ探しに来たりはしないだろう。こういうの、何ていうんだっけ。自業自得、じゃなくて因果応報、じゃなくて・・・。 「もしもし、そこの可愛いお嬢さん」 「うおっ」 いきなり、背中を指でチョンチョンとつつかれた。しかもブラ線を的確に・・・こういうことする℃変態といえば、もう一人しか該当者はいない。 「・・・なんだよっエロ魔人」 「あーあー、そういう言い方はひどいかんな!ていうかさっきのメールなんだよー!いきなりバーカとか言ってさ、ヒドイじゃーん!」 私の体をよっこいしょと転がして、ちゃっかり自分のスペースを作っちゃったのは、言わずもがな。日夜千聖をめぐり、血みどろの戦いを繰り広げている好敵手・栞菜だった。 「舞は縄張りでリラックスしてただけだし。ここ千聖と舞以外立ち入り禁止なんですけどぉ」 ――ええ、言われなくてもよーくわかってます。自分が嬉しそうな顔しちゃってるのは。 「またまたー、私と遊びたかったんでしょ?全力でイこうぜ!女の子は素直が一番だかんな、ジュルリ」 「うっさいな、どこ触ってんだよっこの℃変態め!」 「か・ん・ちゃ・ん!」 金網デスマッチより危険な給水塔キャットファイトに興じる私たちの背後から、いつものキャンキャン声が響いた。 89 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/05/31(月) 22 54 21.51 0 「んもー、一人でいいなんて言うから任せたのに、遊んでる場合じゃないでしょうが!」 わしわしと梯子を上ってきたのは、今日も今日とて風紀委員の腕章がまぶしいなっちゃんだった。 「ちょっとー、舞のテリトリーなのに、みんな勝手に」 「テリトリーって舞ちゃんあのね、ここは学校の設備であって・・・まぁ、とりあえず今はいいケロ。それより、時間がないから簡潔に言うね」 なっちゃんは私たちの腕を引っ張って立たせ、自分も正座になって向き合う。 つられて背筋を伸ばすと、なっちゃんはぷっくりした唇をゆっくり開いた。 「本日より、萩原舞さんを、生徒会補助役員に任命いたします!!」 「・・・は?」 優等生モードで微笑む2人は、「おめでとーう!」とかいって拍手を送ってくる。 「ちょ、ちょっと待ってよ。勝手に決めないでよね。舞毎日結構忙しいんだけど」 慌てて言い返すも、2人は年上っぽく、余裕綽々って感じに笑いかけてくる。 「だって舞ちゃん、委員会も部活も特に何にもしてないでしょ?時間いっぱいあるでしょ?何が忙しいの?」 「・・・べ、勉強?とか」 「いや、してないでしょ」 「えーと・・・読書とか」 「舞ちゃんなら大抵のものは5分あれば読み終わるでしょう」 「・・・だって、そんな急にさぁ」 私ちょっと眉をしかめた。 おっしゃるとおり、別にこれといって多忙なわけではない。むしろ暇人な方だと思う。 でも、私は協調性がないし、束縛されたくないし、自分の行動をきっちり決められるのも苦手だった。そんな私が学園の、しかも最重要機関の生徒会の仕事に携わるなんて、思ってもみないことだった。 90 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/05/31(月) 22 55 25.27 0 「キュフフ、あのね、舞ちゃん。私たちには、舞ちゃんの力が必要なの」 「もうすぐ、舞美ちゃんもえりかちゃんも、佐紀先輩も卒業しちゃうでしょ?3人が安心して巣立っていけるように、いきなり役員とか幹部じゃなくていいから、まずは補佐として手伝いをしてほしいんだ。お願い。」 ――卒業。 心臓がズキンと鳴った。・・・そっか、いなくなっちゃうんだ。お姉ちゃんもえりかちゃんも。 わかっていたつもりだったけど、どこか遠い話のように考えていた。 だけど、生徒会のお仕事を一緒にやっている栞菜やなっちゃんたちにとっては、私よりもずっと身近で深刻な話なのかもしれない。 とりわけ、責任感の強いなっちゃんのことだ。こうして私に頭を下げに来るまでにも、いろんな思いが錯綜していたことだろうと推察できる。 「・・・どうかな?私、舞ちゃんが生徒会に来てくれたら心強いんだけどな」 「ダメ?お願い、舞ちゃん」 2人がかりの説得で、私の心はかなり揺れていた。というか、実際もうほとんど、引き受ける方向に傾いている。 それなのに、素直にウンとうなずけない理由。それは・・・ 「何かさ・・・、栞菜となっちゃんに説得されて就任ってなると、ちょっとカッコ悪くない?あの子何様?とか思われないかな」 口を尖らせてそう言うと、二人はキョトンとした顔をした後、ちょっとイヤーな感じの含み笑いを浮かべた。 「キュフフ、舞ちゃんそういうとこ可愛いよねぇ」 「からかうなよぅ」 「だったらさ、舞ちゃんが立候補したってことにすればいいじゃん?みんな喜ぶよ」 「でも、舞そういうキャラじゃないし」 ――うわ、めんどくせえ・・・。 我ながら困ったちゃんなゴネかただとは思うけど、どうも信頼している&年上という条件が揃っていると、甘えん坊が発動してしまう。 「もー、ま・い・ちゃ・ん!!」 とうとう、焦れた栞菜がガシッと肩を掴んできた。 91 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/05/31(月) 22 56 17.45 0 「あのね、認めたくないけどね、舞ちゃんが生徒会入ったらお嬢様も絶対喜ぶから!」 「いや、それとこれとは話g」 「舞ちゃんはお嬢様の喜ぶ顔を見たくないの?」 「だ、だからぁ」 「見たいか見たくないのかどっち!二択!」 「み、見たい、です」 「なら、生徒会のお手伝いしてくれるよね?ね?はい決定!」 憎たらしいほど満足げな栞菜。 でも、まあ悪い気はしなかった。こんなに全力で、仲間に入れてくれようとするなんて。 「・・・℃変態の癖に、交渉は上手いんだから」 「本当、℃変態でさえなければね・・・。それより、いいの?強引に決めちゃったけど」 さすがに、なっちゃんは投げっぱなしにしないでくれるみたいだ。 「うん、いいよ。さっきは素直になれなかっただけ。でも、あくまでお手伝いなんだからねっ」 「はいはい。とりあえず、みんなのとこ行こう。学園祭開始の合図は、生徒会全員で放送でするの。 もう舞ちゃんは、生徒会の一員だから、居てもらわなきゃ困るんだからね」 さらさらロングの髪をたなびかせながら、なっちゃんは私の少し前をスキップ交じりに歩いていく。 「ん?」 ふと、手が温かい感触に包まれた。 背丈に比べて小さめな、栞菜の手が私と繋がっていた。 「舞ちゃんさ」 いつものふざけた調子じゃないと、ちょっと戸惑う。 栞菜は静かに、私の目を見つめていた。 92 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2010/05/31(月) 22 57 35.95 0 「な・・・に」 「寮と同じだから。属してる、なんて思わなくていいからね。いつも舞ちゃんが、好きなときに帰れる居場所だって考えてくれれば」 私より身長も低いくせに、お姉ちゃんぽく頭をポンポンなでてくれる。・・こういう時の栞菜って、憎たらしいほど鋭い。心臓がキュッと掴まれるような感覚をごまかして、「・・・栞菜のくせに、心の中覗くのやめてくれる」って毒づいてみせる。 「猫、大好きだからね。舞ちゃんみたいな猫科の生態はよくわかるんだよん」 「何それ。じゃ、犬科のちしゃとのことは諦めてよね」 「それはそれ、これはこれ。お嬢様は奥が深いから一概に犬科とは・・・まあ、それはまた後日。ほら、なっきぃ待たせてるし、行こ」 「はいはい。・・・仕切んなよぅ」 何か、強引に事を進められてしまったけど、心は不思議と軽やかだった。 栞菜に手を引かれていく先には、ほぼいつもどおりの・・・でもちょっとだけ形の違う、新しい私の場所が待っている。 ただそれだけのことに、溢れてしまう笑顔を必死に噛み殺しながら、私は屋上を後にした。 TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「おねえちゃんさ、誕生日何が欲しい?」 「えぇ?」 オフの日曜日、私は舞とお買い物デートを楽しんでいた。舞のお気に入りの安くて可愛いアクセサリーショップで、おそろいのネックレスを買おうかなんて話しているときに、唐突にそう切り出された。 「事前に聞いちゃうの?それ。」 「だってぇ。」 舞は目の前でプラプラ揺れてる、ものすごい色使いのドレスを着たどでかいクマちゃんのストラップを指差した。 「例えばさ、舞が誕生日にこれあげたらどう思う?」 うーん。 ケータイのストラップとしてはかなり大きすぎる気もするけれど、もしかしたら私のキラキラデコ電にはしっくりくるかもしれない。 せっかくもらうんだったら、そのストラップに合わせてケータイをカスタムしなおしてもいい。 「嬉しいよ。」 少し考えて私が答えると、なぜか舞は難しい顔になってしまった。 「じゃあ、これだったら?」 次に舞が手に取ったのは、き●んしゃトーマスのトートバッグ。全面プリントされたトーマスが、笑ってない目で微笑しながら私を見つめる。 「えー!びっくりするけど、やっぱり嬉しいと思うよ。エコバッグに使わせてもらうかも。」 「うんこ型ボールペン。」 「もらったら使うよ。友達にウケそうだし!」 「赤ちゃん向けのおもちゃ。ガラガラとか」 「部屋で1人で遊ぶかも。」 「・・・そう、そうなんだよねお姉ちゃんは。」 「な、何?」 舞は大きな目をくるっと私のほうへ向けた。多分これは、ちょっと真面目な話をしたいってサイン。 「お姉ちゃんて、何あげても喜んでくれるでしょ。気を使ってとかじゃなくて、本当に嬉しく思ってくれる。」 「そうかな?うーん・・・そうかも。確かに、プレゼントをもらうってこと自体がもう嬉しいって思うかな。」 「それってさ、逆に選びづらいんだよね。だって、舞はお姉ちゃんのものすっっっごく喜んだ顔が見たいのに、せっかくの誕生日もリアクションが一緒じゃ味気ないよ。」 うっ。 そういえば、何日か前にも同じようなことを千奈美に言われた気がする。「舞美はさ、喜びの沸点低すぎだよ!」って。 私はあんまり物事に対して不満を持ったり激怒したり、逆にテンション上がりすぎておかしくなっちゃうみたいなことがない。 ちっさー・なっきぃとメイドさんで遊んだときはかなり盛り上がったけれど、そういう時だって、例えば前のちっさーみたく「うひゃひゃひゃひゃひゃ!」ってMAX状態にはならない。 「私が欲しいものかぁ・・・何だろうな・・・」 「あ、待って。やっぱりいいや。」 真剣に考え出したところで、舞がストップ!のジェスチャーで私を止めた。 「そうだよね、考えてみたらこういうの本人に聞いたって仕方ないよね。ごめん。舞、お姉ちゃんにめっちゃ喜んでもらえるように頑張るから!」 「そ、そう?私も舞へのプレゼント考えておくね」 そんな感じで一旦会話は終わったのだけれど、私は舞からの指摘に、内心動揺していた。 私って、何が嬉しいんだろう・・・?こんなにいろんなことを簡単に嬉しがるのは、変なのかな?心から喜んでないってことになるのかな? 普段あんまり物事を深く考えない分、一度気になるとそのことばっかり考えてしまう。 そんなわけで、私は少々自分の喜怒哀楽の“喜”と“楽”が、よくわからなくなってしまったのだった。 次の日、雑誌の取材の休憩中に楽屋でくつろいでいると、なっきぃとちっさーがニコニコしながらやってきた。 「はい、みぃたん!このお菓子ね、今コンビニで売ってたんだ!みぃたん好きそうだったから、2人で買ってきたケロ♪」 「あんまり甘くないみたいなので、舞美さんのお口にも合うと思うわ。よかったら、召し上がってください」 「わ・・・わぁ~!!!おいしそー!!ありがとうー!!!」 うわうわ、何このリアクション!自分でもどうかと思うぐらい、私はわざとらしい大声で、2人にお礼を行っていた。 「あ・・・嬉しくない?ごめん、無理させちゃった?」 みるみるうちに、なっきぃの顔がしょんぼりしてしまった。 「舞美さん?」 「あっ違う違うの!ごめんねなっきぃ!本当に、これおいしそう。ありがとう!」 慌ててフォローしようとしたけれど、うまい言葉が見つからない上に余計わざとらしい感じになってしまった。肩を落としたなっきぃは、そのままちっさーと歩いていってしまった。 「はぁ~・・・」 浮かない気持ちのまま、私は仕事を終えて電車に乗り込んだ。 いつも一緒に帰る舞は、今日は家族で出かけるらしい。ちょっと寂しい気持ちのまま、ドア付近の手すりにもたれて景色を眺める。 「舞美さん。」 「うわっ!」 しばらくボーッとしていると、突然背後から名前を呼ばれた。 「びっくりしたあ、ちっさーかぁ!一緒の電車乗ってたんだ。最初から一緒に帰ればよかったね。」 「あ・・・えと、お元気がないようだったので、千聖が話しかけてもいいものかわからなくて。あの、でも、もし私でお力になれれば、何でもお手伝いします。」 「ちっさー・・・」 ちっさーは、お姉さんモードで笑いかけてくれた。無性に甘えたくなった私は、ぎゅっとちっさーを抱きしめてみた。 「グチってもいい?」 「ええ。もちろん」 ちっさーのちっちゃい体は、あったかくて柔らかくて、ふわふわいい匂いがした。優しい声のトーンに促されるように、私は今の自分の気持ちをちっさーに打ち明けた。 「・・・そうだったんですか。それで、本当にご自分が喜んでいるのかわからなくなってしまったのですね」 「さっきはごめんね、私本当に、なっきぃとちっさーがお菓子くれて嬉しかったの。でも、変な感じになっちゃった。」 「あぁ、それはもうお気になさらないで。早貴さんも、落ち込んでいるというより、舞美さんが元気ないことを心配していらっしゃったわ。」 背の低いちっさーの声は、抱きしめているとちょうど私の胸の辺りにダイレクトに響いてくる。 声と一緒に、ちっさーの優しさもしみこんでくるようで、ちょっとだけウルッときた。 「舞美さん。私、舞美さんには今までどおり、嬉しいと思った時には思いっきり喜んでいただきたいです。 舞美さんの笑顔を見ていると、とても元気になるわ。舞さんは、きっとそんな舞美さんのもっともっと素敵な笑顔を引き出したいって思ったのではないかしら。」 「いいのかな・・・これからも単純で何でも喜ぶ私のままで」 「私は、これからも舞美さんがたくさん笑顔でいてくださったら嬉しいわ。」 ちっさーは目を三日月にして、私の顔を見上げて笑ってくれた。 「よーし、ちっさー!励ましてくれたお礼に、今からご飯行こう!」 「えっ・・・あら?でも、私、家族と・・・」 「ラーメン、おごってあげる。」 耳元で囁くと、ちっさーはお嬢様らしからぬニヤリ笑いで「・・ご馳走になります。」と返してきた。 「さ、ちっさーの最寄り駅で降りよう!前においしいって言ってたところ、連れてって!」 「ええ。ギョーザもおいしいんですよ。」 「ほんとー!?私今ギョーザ気分なの!嬉しいっ!」 ギョーザ一つで元気になれちゃう私は、悩んだところで、結局嬉しがりな性格は変えられないみたいだ。 「お誕生日、楽しみにしてくださいね。千聖も舞美さんにうーんと喜んでいただきたいわ。」 クフフと笑いながらホームへ降り立つちっさーの背中を、私は晴れやかな気持ちで追いかけた。 ―後日談― 「なっきぃ!あれ見て!山!おっきくない?」 「みぃたんはしゃぎすぎ~キュフフ」 今日は私の17回目の誕生日。 予定入れないで、絶対に開けておいて!とみんなに言われて、朝早くに呼び出された私はそのままわけもわからず電車に乗せられた。 「お誕生日、おめでとーう!」 オフの日だというのに、メンバー全員がそろっている。私の誕生日を祝うために、みんなで集まってくれたんだ。 電車の中だから声は小さめだけれど、ハッピーバースデーの歌を歌ってくれた。 「舞美には、キュート全員からこちらを差し上げます。」 かしこまったえりから、封筒が手渡される。 「・・・旅行券?」 「みんなでお金出し合って買ったんだよ。舞美、ずっとメンバーで旅行したいって言ってたでしょ?まぁ、一泊だけなんだけど、今から温泉に行くんだよ。」 「覚えててくれたんだ・・・・!」 「舞美さんのお荷物は、こちらで用意してますから。おくつろぎくださいね。」 胸の奥から熱い感情がじわじわとこみあげてくる。私は顔中くしゃくしゃにしながら笑って、「ありがとう!」と一人一人にハグしながお礼を言った。 「ねえ、舞。」 「なぁに?」 私の隣で、ちっさーのかばんから取ったお菓子をポリポリ食べてる舞に話しかける。 「舞さ、私が本当に喜ぶポイントがわからないって言ってたでしょ」 「あぁ、あれは・・ごめん、なかったことにして。そんな風に言ったらだめだって、千聖に怒られちゃった。」 チロッと舌を出して、舞は肩をすくめた。 「そうなんだ・・・。でもね、私思ったんだけど、私が一番嬉しいことって、私だけじゃなくみんなも一緒に嬉しく思ってくれることなんだと思う。家族や友達にも誕生日プレゼントもらったけど、正直、このプレゼントが一番嬉しいもん。」 舞は目をパチクリさせて「・・何かおねえちゃんらしいね。」と笑った。 「もうすぐ着くよー!準備できてる?ほらほら、みぃたんと舞ちゃんお菓子しまって!」 なっきぃの呼びかけで、私たちはいっせいに立ち上がった。 「あらあら、舞美お嬢様。お荷物をお持ちしますわよ。とかいってw」 「お足元にお気をつけて。とかいってw」 「ちょっとー、私の口癖まねすんなよー!とかいってw」 こんな素敵なメンバーに囲まれているんだから、私がいつでも嬉しそうな顔になってるのは、当たり前のことなんだよね。 「舞美ちゃん?早くおいでよー」 「はーい」 楽しい旅行になるといいな。そう思いながら、私はみんなの元へ走っていった。 TOP コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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DX人生ゲームIV 【でらっくすじんせいげーむふぉー】 ジャンル ボードゲーム 対応機種 プレイステーション 発売元 タカラ 開発元 インフォグラムス 発売日 2001年11月29日 定価 6,090円 判定 良作 人生ゲームシリーズ 概要 システム 評価点 問題点 総評 概要 ゲーム版人生ゲームの中でも、比較的高い評価を獲得している『DX人生ゲーム』シリーズの作品。前作である『III』を発展させた要素が多い。 システム 本作にはいつも通りの「わいわいモード」の他、コンビでの攻略を要求される「たっぐモード」、たっぐモードに似ているが、こちらは男女のカップルで進めていく「ペアモード」、決められた目標の達成を目指す「未来絵日記」、クリア済みのキャラクターがいる時のみ選べる「達人アイランド」の各モードが用意されている。 以下最も基本となる「わいわいモード」について解説していく。 まずは自身の分身となるキャラクターを作成していく。名前、性別、誕生日、血液型(なぜか?型というものがある)を決めた後、キャラクターの外見を決めていく。 これは言ってみればモンタージュのようなもの。おまかせ機能もあるが、ほぼ確実に人外と化すので愛着を持ってプレイしたい人は注意。これを逆手にとって全員おまかせで始めるのも一興だが。 そしてゲームの肝となる「どの段階からゲームを始めるか」と「マップをいくつ入れるか」を決定する。 ゲーム開始時の段階は「赤ちゃん」から以下「小学生、中学生、高校生、社会人」のいずれかから始められる。ちなみに社会人からの場合、全員フリータースタートとなる。 マップは最大8個まで。入れないこともできる。 その後は決めた段階からゲームスタート。ボードの人生ゲームと同様、ルーレットを回して止まったマスのイベントをこなしていくことになる。 イベントによってはパラメーター(体力、知力、センス、モラル)が増減したり、所持金が変動する。 またミニゲームが発生したり、カードが手に入るマスもある。 これ以外にも「ショップマス」「物件マス」「ペットマス」と言うマスでは買い物ができる。ショップでは「洋服(外見が変わる。能力には変化なし)」「カード」「宝くじ」が買え、物件やペットは最後にお金になる。 人生の重要なポイントでは「受験」や「就職」といったイベントが待っている。 この時重要になってくるのは前述のパラメーター。受験ではパラメーターが高いほど合格しやすく、就職ではパラメーターが足りていないとそもそも就職できない。 また各職業に就いた後は給料日マスで給料がもらえる。この時パラメーターが基準を満たしているとランクアップし、給料が上がる。また複数の職業を最高ランクまで上げると就ける特別な職業もある。なお、これらの上級職の条件はオプションからいつでも確認可能。 結婚は強制イベントではなく、高校生から登場する「ハートマス」に止まり、デートをこなし、好感度を上げた後告白することで達成できる。 思い通りの人がいなければ出会いを探したり、自分に自信がなければ自分を磨くことでパラメーターアップもできる。 結婚後はハートマスは結婚イベントとなる。子供ができることもあり、この際はみんなからお祝いがもらえるのは原作と同じ。 こうして様々なイベントをこなしていき、「最後の賭け」で人生の総決算をした後、総資産が多い人が勝者となる。 また総資産とは関係なく人生の行いに応じて「人生ランク」というものが発表される。 全150段階あり、最下層には「キャプテンくん(*1)」「ミトコンドリア」と言ったものが並んでいるが、上位になればなるほど「ウサギ」「ゴリラ」など脊椎動物になっていき、ついには「人間」を超えて「ニュータイプ」などになっていく。 評価点 イベントが非常に多彩。 その総数4500種類。4人同時プレイでもイベント被りはほぼ起きない。 イベントには「喜びマス」のプラスイベント、「悲しみマス」のマイナスイベントの他、ペットを飼っている時だけ起きるイベント、職業ごとに固有のイベントなどもある。 マップは8種類。起きるイベントに違いがあるだけでなく、喜びマスが多い「天国」、逆に悲しみマスの多い「ホラー」、ハートマスが多く恋愛成就させやすい「メルヘン」、唯一ギャンブルマスがあり一発逆転が狙える「カジノ」などマップ構成そのものが大きく異なる。 人生の各時期限定のイベントも多い。中には受験に失敗し、浪人した時しか見られないイベントなどもある。 選択肢のあるイベントも多い。例えば高校生の時の喜びマスのイベントに「今日は勉強をしよう!誰と勉強しようかな?」というものがあり、「○○さんと復習する」「△△さんに復讐する」という選択肢が出現する。前者を選ぶと自分と○○さんのパラメーターが上がり、後者を選ぶと△△さんのパラメーターと自分のモラルが下がる。 職業も79種類存在し、いずれも個性豊か。「教師」「花屋」などの一般的な職業、「発明家」「ギャンブラー」といった実際に就くのは難しい職業、「正義の味方」「悪の大王」などそもそも現実に存在するか怪しいものまでバラエティに富んでいる。 上級職も転職条件が最初から明かされているので、目標を立てて特定の職を目指すことが容易。人生の最初から人生設計が可能である。 マスの種類も豊富。例を挙げると… 「クリスマス」…サンタが現れ、一人ずつルーレットで「誰が誰に○○(*2)をいくつあげるorもらう」ということを決定する。運が良ければ総取りだが、運が悪ければ根こそぎ分捕られる名前に反した恐怖のイベント(*3)。 「捕まりマス」…なぜか逮捕されて刑務所エリアにぶちこまれる。このエリアはマイナスマスが多いので早急に脱出したいところ。 「新世紀マス」…2001年に入ったためか、名称に「新」が付いている。2個の檻があり、この檻に全員一緒か、マスに止まった人とそれ以外に分かれて入ることになる。その後ランダムにどちらかの檻が選ばれ、選ばれた方の檻に入っている人全員のパラメーターが激減する。一蓮托生を狙うもよし、一人だけ助かる可能性に賭けるもよし。マスに止まった人の良心が試される。 ユーザーフレンドリーで初心者にも優しいゲームデザイン。 ゲーム中マスコットキャラの「天使くん」が基本的な進め方を教えてくれる「天使のアドバイス」が聞ける。 初心者でも非常にわかりやすい。またゲーム開始時を含め、ゲーム中いつでもオン、オフを切り替えられるので何度もプレイしていても安心。 ミニゲームは「技」「運」の2系統各6種類の全12種類。ミニゲームマスに止まった際は各系統から1種類ずつランダムに選択され、好きな方を選択できる。 「技」はテクニックや反射神経が要求されるもの、「運」は文字通り運とその場の勘が物を言うゲーム。ゲームに不慣れな人を交えて遊ぶときはできるだけ「運」を選べば公平になる。 ちなみにゲームの名前は「どっちのボールショー」「渡る氷はヒビばかり」など有名テレビ番組のパロディになっている。現在では放映の終わっている番組も多いので、元ネタのわからない人もいるだろうが。 時間がなくても安心な「時短モード」搭載。 ルーレットの出目と獲得金額が2倍になり、あっという間にゲームが進行していく。こちらもゲーム中いつでも切り替えできる。悪用できるが、良識ある人ならばそんな使い方はしないだろう。そもそもパーティーゲームでイカサマしたところで面白くもなんともない。 問題点 「ガンゲームマス」がやや理不尽。 このマスでは全員参加のガンシューティングをプレイすることになる…のだが、その仕様が面倒なものになっている。 本作ではパーティーゲームの例に漏れず、コントローラーの使いまわしが可能である。よってコントローラーが一個しかなくても多人数で遊べるのだが、一個のコントローラーでガンシューティングをやるために4つのボタンに全員が集合するという妙なプレイスタイルになる。 たとえコントローラーが2つあっても、必ずどちらかのコントローラーで全員が操作することになる。このため人が密集して場合によっては画面が見にくくなる。 ゲーム自体は自動で照準が移動していき、悪人に照準が合ったらボタンを押し、一般人を撃ったらペナルティ、敵が出た時は最初にボタンを押せた人がポイントをもらえ、最終的に一番ポイントが多い人が勝利、というもの。 しかし要求される反応速度が意外と速く、他のミニゲームと異なり「運」という逃げ道がないのでゲーム初心者には結構キツイ難易度になっている。 しかも時々プレイヤー自身が出現する。一般人と同じ扱いだが、撃つとゲーム終了時撃たれた人の体力が下がるので間違って撃ってしまうと険悪な雰囲気にもなりかねない。 前作からの追加要素が少なめ。 基本のゲームシステムに大きく様変わりしたところがなく、グラフィック、ミニゲームなどもほぼ使いまわしで占められている。 もちろん本作単体でも十分魅力的な存在ではあるのだが…前作既プレイ者にはあまり目新しさのない内容である。 総評 単体のパーティーゲームとしての完成度は非常に高い。ユーザーフレンドリーなシステムもそうだが、なによりイベントが非常に多彩なので、何度もプレイしても飽きが来ず何度でもプレイできる。 もちろん人生ゲームというシステムの根幹上、ほぼ運ゲーでありプレイヤーの介入できる要素はあまり多くないのだが、それが逆にゲーマーと初心者の境界を低くし、あらゆる層の人が問題なく楽しめる内容になっている。 この後、人生ゲームシリーズは『V』が出た後、PS2で『EXシリーズ』として発売されていくのだが、EXシリーズの評価は芳しくなく、トドメとばかりにWiiで発売された人生ゲームがいずれもクソゲーであったため、完成度面で最も安定しているのは本シリーズと言うことになる。今から人生ゲームシリーズを遊ぼうと思っているならば、中古屋で本シリーズを探してみるといいだろう。
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「そ、そんなに仲良くなりたいならさー、もぉが紹介するよ?千聖食いしん坊だから、ランチとか誘ったら絶対ついてくるって。」 「梨沙子から誘ってもいいけど?」 「えー、そういうんじゃないの。誰かの紹介とかじゃなくて、もっと自然な流れで運命的な友情がぁ」 ―めんどくせぇ・・・ 2人の唇が同時にそう動いた。め、めんどくさいってぬゎんですか! 「もーいい。うちはうちのやり方でお嬢様のこと調べ上げてやる!」 自分の頭から湯気が立ってるのがわかる。勢いよく立ち上がると、私は屋上の扉の方へ歩いていった。 「くまいちょー、アドバイスが欲しかったらいつでも言ってね?ウフフ」 私のプンプンなんてもう慣れっこなんだろう、ももは余裕で手をひらひら振ってきた。何か悔しい! 「くっそー・・・」 独り言を言いながら廊下を進む。かなり大またでわき目も振らず歩いていたら、階段との十字路のところで小さな人影が飛び出してきた。 「ひゃあ!」 「きゃん!」 避け切れない!そう思った私は、とっさに手を伸ばして、その体を抱きとめようとした。・・・けれど、運動オンチな私は結局体勢を整えることができなくて、その人の腰を掴んだまま、思いっきりしりもちをついた。 「いたたた・・・」 「おじょじょおおじょ、お嬢様!大丈夫ですか!お怪我は!?」 「え、ええ、私は大丈夫ですけれど・・・」 間髪いれずに、真っ青な顔のなかさきちゃんが飛び出してきた。そして、どういう力加減でそうなったのか、私の上に馬乗りになっているその生徒――千聖お嬢様、の体をペタペタと触っている。 「もー、友理奈ちゃんたら!お嬢様がお怪我でもなさったらどうするの!」 「ひどい!うちの心配はしてくれないのなかさきちゃん!」 「どーせまた変なこと考え込んで、前方不注意だったんでしょ!?それにその髪!巻かない方が友理奈ちゃんは可愛いって言ってるのに!」 「それ今関係ない!」 どうも私となかさきちゃんは、顔を合わせればこんな言い争いばっかり。私は廊下にねっころがったまま、顔を覗きこんでくるなかさきちゃんに反論した。 「――まあまあ、それよりお嬢様、熊井ちゃんの上からどいてあげてください?熊井ちゃんも、しまパン見えてるから。」 そんな微妙な空気を、ハキハキした明るい声が遮ってくれた。 「茉麻ぁ・・・」 オロオロするお嬢様を後ろからひょいっと抱え上げて、私のスカートを直してくれたのは、学年1個上の茉麻だった。 「全く、君達はトムとジェリーだね。」 そんなことを言いながら、茉麻は強引に私となかさきちゃんを握手させた。 私は口げんかを途中で止められるのはあんまり好きじゃないはずなんだけれど、茉麻みたいにカラッとしている人は別だと思う。お母さんに仲裁してもらった姉妹みたいに、「ごめん」「なっきぃもごめん」なんてどちらともなく謝って、変な空気は自然に解消された。 「ごめんなさいね、千聖も生徒会のお手伝いの段取りを考えていて、前を見ていなかったの。腰、打ってしまったようですけれど・・・大丈夫ですか?」 千聖お嬢様は体を起こした私の前にひざまずいて、じっと顔を見つめてきた。 こんなにお近づきになったことは今までなかったから、ちょっとだけドキドキする。 ビー玉みたいな目。バニラみたいないい香り。ふわふわした喋り方。とても、もも達が言うようなおてんばなタイプには思えない。でも、実際に私もキャッキャとはしゃいでる姿は見たことがあるわけで・・・何ていうか、ギャップがある。どういう人なのか、うまく分類できない。 「熊井ちゃん?平気ならそろそろいいかな。今ね、生徒会で使う書類運んでたんだ。」 そのまま無言で見つめ合ってると、茉麻が苦笑まじりに私とお嬢様の間をチョップで遮った。 「あ、そうなんだ。うちは大丈夫。何か、驚かせてしまってごめんなさい。」 「いいえ、こちらこそ。大きな大きな熊さんに、ケガがなくてよかったです」 ――大 き な 大 き な、く ま さ ん 「あの!私は熊井です!くまさんじゃなくて!あとそんなに大きくないんで!」 いや大きいよ、という茉麻のツッコミは受け流して、私はお嬢様の両肩をガシッと捕まえた。 「ひっ」 そういえば、お嬢様は梨沙子のことも「すぎゃさん」とか変な呼び方をしていた。ここはちゃんと直してもらわないと、今後も「大きな大きな(ry」呼ばわりされたらたまらない。 「何か違う呼び方にしてください!ゆりな、でもゆり、でもいいんで!熊さんとかゴツイし!」 「あら・・・どうしましょう、そんな、急に言われても。大きな熊さんたら」 「ぬゎんで大きな熊にこだわるんですかぁ!」 せっかく空気が緩和されたと言うのに、ムキになる自分を止めることができない。だんだん人が集まってきて、そろそろヤバイと思いつつ、私は引くに引けなくなってしまっていた。 「まあ、呼び方はまた後で決めればいいじゃん。ね?熊井ちゃんは千聖お嬢様と仲良くなりたいんだよね?」 無意識に茉麻に顔を向けると、いつものお母さんな表情で助け舟を出してくれた。私は無言でぶんぶんうなずくと、とりあえず「ごめんなさい」と驚かせてしまったことをお詫びした。 「あら・・・私も、大き・・いえ、くま、くまい、さんと、仲良くなりたいわ。」 「・・・まあ、お嬢様がそうおっしゃるなら。なっきぃも今度時間があるときに、お膳立てさせてもらいます。キュフフ」 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「あ、ごめん話が逸れちゃったね。あの、ありがとう、新聞部のこと。」 舞ちゃんは私の指をいじくりながら、照れくさそうに笑った。 「あー、うん。まあ、直接話にいったのは舞美と愛理だけなんだよ。あの超怖そうな部長さん相手に、すごい頑張ったみたい。ウチだったら3秒で言い負かされてボロ泣きだよ。」 「・・・そう?別に怖くないよあんな人。舞、口げんかで負けたことないもん。」 当たり前のことみたいにサラッと言われて、私はあいまいな笑いを返すことしかできなかった。 「舞ちゃんさ、もうこれで千聖お嬢様とわざと距離を置くような理由はなくなったじゃない?仲直り、できない?もう、みんなの作戦に乗っかったふりしてさ。」 私の提案に、舞ちゃんのあの意志の強い瞳が揺らいだ。めったに見せないその表情は、私の心臓をズキンと突き刺した。 「仲直り・・・したい。でも、私あんなひどいこと言って、今更どんな顔して千聖に謝ったらいいのかわかんないよ。怖い。」 “もう、千聖のワガママにはうんざりなの”“一人じゃ何にもできないじゃん” 数日前、私と舞美の前で、舞ちゃんがお嬢様にぶつけた言葉がよみがえってくる。 心にもないような悪口でお嬢様を傷つけながら、自分も同じだけ――もしかしたらお嬢様以上に傷ついていたのかもしれない。 「私ね、千聖のことが大好きなの。多分みんなが思ってるよりずっと好き。」 「うん。」 「だからもう千聖が変な噂で汚されないように、自分から嫌われるように仕向けた。そんなの嫌だったけど、あの時はもう、他の方法が思いつかなくて。・・えりかちゃんに問い詰められるまでは、寮のみんなにもあの記事の話はするつもりなかったし。」 遠くで昼休みの終了を告げるチャイムが鳴っていたけれど、私も舞ちゃんもこの場を離れようとはしなかった。5限目は化学だったっけ。大事なミニテストがあるんだっけ。でも私はそんなものより、一人で苦しんでいる舞ちゃんの側にいることのほうが大切なことだと思った。 私の指をいじる舞ちゃんの手を捕まえて、強く握り締める。ちょっと驚いた後はにかんで笑う可愛い顔を見ているだけで、なぜかまた涙腺がジワッと刺激されてしまった。 「結局、私が千聖に一方的に絶交を言い渡しただけで、千聖からは何も言われなかったんだよね。途中で逃げちゃったから。 今私が千聖に謝って、もし千聖が許してくれなかったら・・・もう舞なんて嫌いって言われたら、私多分生きていけない。」 「そんな・・・」 「それぐらい、私にとって千聖は大切な存在なの。他の誰に何言われたっていい。千聖と話したり、触ったりできなくても大丈夫。・・・でも、直接千聖に嫌いって言われるのだけは耐えられないよ。」 動揺を隠せない私と違って、淡々と話すその姿が返って痛々しく感じた。 舞ちゃんがどんなに千聖お嬢様を好きなのか、私なりに理解していたつもりだった。 でもその思いは私が考えていたよりもずっとずっと深くて・・形式的な慰めの言葉なんか絶対に届かないような、神聖なもののように感じられた。 「舞ちゃん、お嬢様だって舞ちゃんのこと大切に思ってるんだよ。」 「え・・・」 「舞ちゃんがメイドさん見習いやってること、お嬢様はすごい気にしてるの。何かにつけてめぐに“舞をいじめないで!”なんてプンプン怒ってみせたりして。 栞菜のスキンシップだって、嫌がりながら楽しんでるけど・・・やっぱりどっか、舞ちゃんのいない心の隙間を埋めようとしてるようにウチには見える。 舞ちゃん、大好きな人にはちゃんと大好きって言わなきゃだめだよ。ウチは舞ちゃんが頭よくて、すごい思いやりのある子だってわかってる。でも、頭で考えてるだけじゃ伝わらないことってやっぱりあるんだよ。・・・あ、何かごめん。余計なこと言ったかも。」 舞ちゃんはびっくりしたような顔で、口をつぐんで私を見ていた。 「・・・ううん。舞、あんまり千聖以外の人に説得されたりすることがなかったから、びっくりしただけ。謝らないで。むしろちょっと嬉しい。とかいってw」 舞美の口調を真似するイタズラな表情が可愛くて、思わず2人で笑いあう。 「さっきも言ったけどさ、ウチらの作戦に乗って、お嬢様と仲直りしたらいいんじゃないかな。多分それでうまくいくと思うよ。」 「うん・・・」 私達は5限の時間をフルに使って、少しずつお嬢様と舞ちゃんの距離が縮まっていくような作戦をたてることにした。 その時はまだ、知らなかった。 私がいなくなった生徒会室に、新聞部の部長がお嬢様を訪ねて来ていた事を。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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このwikiについて このwikiはレースゲームの情報交換などのためにつくりました。コメント欄で質問などをしましょう。 管理サイトCIRCUIT 名前 コメント
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いろいろゲームの攻略 ここはゲームみんなで攻略するコーナー 管理はグラン&バナナ!よろしくーー 例 軽い説明 コメント 攻略してほしいゲーム うわーコメがない -- さといも (2013-05-26 19 55 20) ーー太鼓の達人ーー -- バナナ (2013-05-26 20 09 28) 攻略方法 とにかく練習あるのみ 槍込みが大切 -- バナナ (2013-05-27 20 47 31) 槍いれるの!? -- さといも (2013-05-28 19 21 18) [3DS] ←←槍⊂(槍∀槍)⊂ ドスッ こんな感じ -- バナナ (2013-05-29 22 30 36) (笑) -- さといも (2013-05-30 12 57 30) WWW -- JOKER (2013-06-13 12 17 49) 神ゲー メタルギア -- バナナ (2013-06-18 21 46 01) バナナ -- ベテラン?だから言えることは メタルギアは攻略するところが全て魅力ということかな 攻略 何でもやりこみ観察、レーダー確認が重要。 攻略必然品は初めての方は望遠鏡 Mk.22 段ボール サバイバルナイフかな 攻略済みの人はソリトンレーダー ステルス迷彩 Mk.22 生物レーダー 遊びたい人はTNT(C4) クレイモア 雑誌 その他使いたい武器 だな (2013-06-18 22 19 55) パズドラァァァ -- JOKER (2013-07-19 20 45 27) グンホ!!! -- JOKER (2013-07-19 20 46 18) パズドラああああああああああああああ(←便乗) -- グラン (2013-07-19 21 02 57) ガンホ!! -- グラン (2013-07-27 19 03 52) うるさいぶちのめすぞ -- バナナ (2013-07-27 22 02 50) 明日サバゲーしようぜ! -- バナナ (2013-08-26 22 58 46) なまえ: コメント
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混同される人 名無しのため、コテと違い区別が少し難しいですが、使用する単語言い回しは独特なのですぐに区別がつきます 他の実況を荒らしている人と混同されがちですが、以下の人とは別人です ぎゃはは 古くからいる個人攻撃を主とした人物、(笑)とは活動時間が異なり夜~早朝によく出没、活動に波があり毎日暴れているわけではない。「ぎゃはははははwwwwwwwwwwwwwww」の口癖が特徴。IDを変えるのが大好き 口くさそう 別人です みな専 ◆.lchIa2tA2の酉をよく使うので混同されがちですが、別人です 広島OCN 別人です (旧)千住 おそらく別人です。が、気質は似ており、少なくとも彼は千住に多大なシンパシーを感じているのは確かです 特徴 主な活動時間は、平日9時~14時前後、及び17時~翌2時前後 土曜日は基本的に平日と変わらないが、4月12日の活動再開以降、平日の主な活動時間帯である、すぽると放送時には現れない 日曜日はみんなのケイバ松尾翠スレ、エチカの鏡高島彩スレに現れることもあるが、不規則 出没場所は実況板、アナウンサー板、アイドル画像板、最悪板 以前は20時頃までだったが、おそらく最近自分専用のPCを入手し、深夜まで活動時間を拡大させた 実況以外でも同時間帯に複数の女子アナ板に罵倒、煽り、画像・動画転載などのあらし行為をしている 特にフジテレビスーパーニュースの女子アナ関連スレは(笑)の活動のコアタイムなため壊滅的な状態 ほとんどのレスが女子アナの誹謗中傷とスレ住人への罵倒の言葉で占められる 2IDを使って自演をよくするが、彼に好意的なレスをするのが2ID目の人物だけなので、非常に分かりやすい 2ID目の人物の特徴として最初は「です、ます」口調のあたかも人当たりの良い風な口調であるが、ただの1ID目の持ち上げ しかも、それを指摘されると荒い口調になり1ID目と演じ分けができなくなる キャプ画を嫌う傾向があるが、過去の画像を貼ることから自らもキャプを収集しているものと思われる またどういう目的かは皆目不明だが他人の画像を上げなおし、貼るという行為をする(現在はあまりしていない、無意味さに気づいたか?) バイナリレベルで比較しても他の人が上げたものと同一のもの しかし本人曰く「オレがキャプったもの」 自分がキャプできないことにコンプレックスを持っていると思われ、そこからキャプ職人への妬みが湧いているものと推察できる 72 名無しでいいとも! 2010/02/24(水) 18 27 23.41 ID KnYyYDon 64 はぁ?俺がキャプしてんだけど? 他人から拝借した動画・キャプ画で釣って懐柔・レスを貰うのが手口、お礼のレスをしようものなら手のひらを返し罵倒することもよくある 動画の転載をよくする。さらすことで嫌がらせ、自分ができないことに対する憂さ晴らしだと推測できる キャプ画を加工して女子アナを罵倒する(最近(2010/03)はexif情報にyokoの文字列が見つかったからか、飽きたからか不明だが休止中) プロファイル ニートなの? 本人がニートであることを告白している 373 最低人類0号 2009/10/15(木) 17 05 36 ID So0Oi2CK0 無職に決まってるだろ ありやと違って潜伏なんてせん また、毎日の活動からヒキコモリニートであることはまず間違いないと思われる 少なくとも2010年に入って長時間外出した形跡がない にも関わらず事あるごとに他人をニート認定し罵倒する、おそらく自分が一番引け目を負っている部分 どこに住んでいるの? 埼玉在住との発言がありました 過去にも「ほぼ東京」「テレ玉がかろうじて映る」などの発言があること、 (=゚∀゚) ◆KITaaAAATUとのバトルで埼玉に来いと言った過去があることから、この信ぴょう性はかなり高いものと思われます。 過去には福島説がありましたが、本人の言質は取れておらず、信ぴょう性は乏しいと思われます。 いずれにしても関東北部、以北の可能性は非常に高いです。 420 :馬馬虎虎 ◆5q6qgtrdn. :sage :2010/05/08(土) 01 14 38.31 ID uIlzU6Or 408 じゃあ、HDD増量で分散! 417 どこに住んでるの? 422 :名無しでいいとも! :2010/05/08(土) 01 15 44.54 ID BKYsiuNz 419 そうなんだ。肺がんだかだっけ。 420 埼玉 年齢と性別は? 発言内容からは10代後半~20代前半の男性と推察できる 本人が21歳(2010/02/24現在)であると発言している(頭の程度と学歴は?を参照) 「ワンピース」を愛読していることからもその辺りであろう 自分のPCを持っていないって聞いたけど? 活動が日中~夕方に限られていることからそう言われている 画像を加工してあげることがあるがその画像のexif情報より、使用ソフトの署名が「yoko」であることが発覚。 yokoが人名なのか法人名なのか不明だが、一般的には人名のラストネームと考えられる。 (笑)本人は男性であることはほぼ間違いないであろうから、家族のいずれかと考えるのが最も自然。 状況から母親のPCである可能性が最も高いと考えられる。が、推測の域をでない。 また女子アナに粘着しているにも関わらず、早朝や週末深夜の女子アナが番組には出没しない ありやに粘着しているにも関わらず、ありやの活動時間にはほとんどバッティングしないことからもそう考えられる キチガイなの? 精神疾患の程度は不明だが、重度かつ多岐に渡るコンプレックスを持ち、抑鬱された状態であることは確か 発言内容の整合性が全くない 他人を罵倒する言葉のほとんどが自分にも該当するため、行為そのものが自分自身を傷つけるという負のスパイラルに陥っていると推測される 頭の程度と学歴は? 高卒or高校中退がほぼ確定しました。 514 :名無しでいいとも![sage]:2010/02/24(水) 03 12 26.00 ID KnYyYDon 俺21だけど高校はK組まであったぞ 現在21歳であれば現役合格であっても大学3年生か4年生であります。 ニートであることは本人および行動から明らかですので、大学には就学していないことが確定的です。 また学歴に関係なく発言内容から頭は良くはないと思われる 発言が矛盾にあふれ、使用する語彙も少なく、ワンパターン PCやネットワークなどITの知識は乏しい 781 名前:名無しでいいとも![] 投稿日:2010/03/13(土) 10 12 40.15 ID B10XelCZ なんかWが これと「W」これ「W」しか出なくなったんだが・・・ 直し方教えて・・・ 学歴についても相当コンプレックスを持っていると推察できる。 なんで女子アナスレに粘着しているの? はっきりはわからない コンプレックスの塊であるため、華やかな女子アナウンサーに嫌悪している物とも考えられる あるいは好きな女子アナウンサーがいるため、それを侮辱されると、彼独特の「罵倒されたら、罵倒し返しても良い」という論理でそれの過剰反応とも考えられる 罵倒しているフジ女子アナは本田朋子以外のすべて 本田朋子スレはフジ板、女子アナ板でも過去に荒らした形跡がない、ただし、本田朋子のスレに書き込みがされたこともないことから、好きだとも断定し切れない なんでありやに粘着しているの? 昨年「千住」という長野翼専属キャプ職人をありやが批判したことに対抗したことがきっかけと思われる ありやが優位な立場から千住を叩いていると思い、実生活でも抑鬱された環境にあるためか、説諭されることをとことん嫌う 他人である千住にシンパシーを感じて自分のことのように怒りを覚えたのであろう 千住は当時大多数から非難されていたがありやはコテでわかりやすかったので具体的な報復対象として判りやすかったのであろう 自分に反対する存在、気に入らない存在は片っぱしからありや認定する あまりの無軌道振りに一部のアンチありやからも疎ましく思われている 下記スレは元は千住が立てたものだが、事実上の主催者を彼が引き継いでいる 元来ありやスレだが、圧倒的に彼の書き込みが多く、彼の話題が大部分を占めるため、ありやスレというより(笑)スレと認識している人も多い ありや ◆areya/HdV.を威すスレ Part3 http //mamono.2ch.net/test/read.cgi/tubo/1265006513/ (=゚∀゚) ◆KITaaAAATUとやりあっているのを見ましたが? え?オレが見たときは馴れ合っていたよ? 最近(2010/03現在)では通称「山陰」と呼ばれる人物を共通の敵として結託しているようです。 下記のように壮絶な罵り合いをしたにも関わらず、結託したきっかけは「山陰」が(=゚∀゚) ◆KITaaAAATUの画質批判をしたことに発端するようです。 (=゚∀゚) ◆KITaaAAATUは「最近暴れているみたいだから、ぼくがいじめてあげる」と当初彼の討伐に立ち上がったはずですが、共通の敵が現れて懐柔されてしまいました。 彼が(=゚∀゚) ◆KITaaAAATUを執拗に粘着しないのは(=゚∀゚) ◆KITaaAAATUが自分と同類だと思っているからと推察される ●-----------------結託以前-------------------------------- 2010/02/05 (Fri)に両者の7時間にも及ぶ大論戦・罵り合いが勃発 【めざ】綾子さん千明たぬ未央たぬ実況スレ【にゅ~】 http //live23.2ch.net/test/read.cgi/livecx/1265311486/243- http //p2.chbox.jp/read.php?host=live23.2ch.net bbs=livecx key=1265311486 ls=243-999 offline=1 大方の見方は (=゚∀゚) ◆KITaaAAATUの大勝利に終わる、明確な敗北宣言こそないが(笑)本人も多人数からの攻撃で負けたと匂わしている 敗因は多人数の攻撃を受けたからではなく、多人数から攻撃されるような発言を繰り返しているからであること 撤退宣言して戻ってきて、相手に「逃げた」と訳のわからないことを数回繰り返すなどが本当の敗因である その日のその後「もう女子アナの誹謗中傷はしない」と宣言するもトップページにある通り12時間ほどで発言に反する行為を行う その理由として「やめると宣言したのに俺をバカにしたから、やっぱり俺はやめない」というあまりに身勝手な思考から
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「ももー、こっちこっち。あったよー!」 昇降口のすのこをひっくり返していた私を、裏のゲタ箱にいたくまいちょーが大きな声で呼んだ。 「ここ、ここにあった。」 「ほうほう、今日はまた新しい場所ですな。・・ってアホクサ。」 体育の授業で校庭に出ている間に、私の上履きは消えていた。まあ初めてのことじゃないから別にどうってことないんだけど、今日は中等部との合同授業で、くまいちょーと一緒だった。 別にいいって言ったのに、くまいちょーは上履きの捜索を始めてしまった。くまいちょーの場合、あんまりかたくなに拒むと逆効果になる。 あくまで“隠された”ではなく“なくした”ということにして、ひとまず探索を手伝ってもらうことにしたのだった。 「ありがとうー。ここかぁ!ここじゃ気付かないよね。くまいちょーの身ch・・・じゃなくて、捜索能力がないと。」 「でもさ、もも、何でこんな高いとこに置いたの??ていうか、どうやって?ももの身長じゃむりじゃない?」 本日の上履きの隠し場所は、反対側の下駄箱の一番上の隅っこ。じっくり探したつもりだったのに、ちびの私じゃ目が届いてかなかったらしい。 くまいちょーは身長のことを言うと激怒する(まだ伸びてるらしい。成長の神秘!)から、あんまりそこは引っ張らないことにした。 「いやぁ、何か1人宝探しごっこみたいなノリ?もぉ自分で隠した場所すぐ忘れちゃうからさぁー。」 「えーそれ、面白いの?やっぱりももって変人だよねー。」 かなり無理のある説明だったのに、なぜかくまいちょーは納得した。 これで実は上履き隠されてましたなんてバレたら、真面目でマジレッサーなくまいちょーは、私を引きずって職員室に乗り込んでしまうところだ。危ない危ない。 「じゃあ、私教室戻るね。上履き、見つかってよかったね!」 「ん、ありがとぉ。またねー」 るんるんスキップのくまいちょーの背中が遠ざかっていく。優しいなあ。自分のことみたいに喜んじゃって。 「さて。」 私は救出された上履きを履いて、こっそり下駄箱に引き返した。 犯人はもうわかっている。私のことを気に入らないらしい、同じクラスの4人グループ。 今までも靴隠しはもちろん、教科書隠しとかやられたことがある。もっとも、少し探せば見つかるぐらいの範囲でだけど。 バレてないつもりなのかもしれないけれど、そんなのは風評で大体伝わってくる。 「あほくさー。」 彼女達は、決定的なイジメ行為はやらない。いや、できないんだ。チキンだから。どうせやるなら、もっと徹底的に仕掛けてくればいいんだ。例えば・・・おっといけない。黒桃子が出てくるところだった。 とはいえ、やられっぱなしでスルーできるほど私は人間ができていない。 弟の机から拝借してきた小さいスーパーボールを、4人の上履きにこっそりしのばせておいた。これ踏んづけて地味に痛い思いしやがれ。 「ん?」 ふと顔を上げると、柱の影に誰かが引っ込んだのが見えた。 あのグループ・・じゃないな。やつらは1人じゃ行動できない。 ちょっと気になって、抜き足差し足で忍び寄ると、いつものブリッコ桃子で「ハロー♪」と言いながらにゅーっと顔を出した。 「きゃあっ!?」 「えっ?大丈夫?ごめんごめん、そんな驚くと思わなかった。」 ぺたんと女の子座りで腰を抜かしているのは、見たことのない子だった。赤いリボンだから、中等部の子か。 男の子みたいなショートカットで、一見地味な顔に見えたけれど、よく見ればパーツのはっきりした、よく整った顔立ちだった。浅黒い肌に、切れ長の深い茶色の瞳が印象的な子だ。 私も人のことは言えないけれど、ずいぶん背がちっちゃい。何となく、近所にいる毛足の短いミックスの小犬を思い出した。この子、犬顔なんだな。 「あの・・・あの・・」 「ん?あぁ、やだぁもぉったら!かわいいからついなでなでしちゃったぁ。ウフフ」 私は無意識に、手を伸ばして頭をなでなでしていた。ちょっと怯えたような表情が可愛らしい。 「ねえ、名前はなんていうの?私、桃子だよ。高等部の1年生。」 「・・・」 「中等部でしょ?学年は?」 「あの・・・えと・・」 はずかしがりやさんなのか、話しかけてもモゴモゴ言うだけでなかなか答えてくれない。ちょっと質問を変えてみることにした。 「あのさ、さっきのあれ・・・見ちゃった?」 私はジェスチャーで、スーパーボールをポンと落っことす仕草をしてみせた。 「あ・・」 その子は無言でコクコクとうなずく。 「やぁだ、見られちゃったんだ!これ、もぉとあなたの間の秘密にしたいんだけど、どう?だめ?」 もちろん、偶然見てしまったこの子に非はない。彼女が誰かに言いつけたいというならそれはそれで構わないのだけれど、極力面倒なことは避けたいから、ちょっと首を傾げて、ぶりっこのポーズで迫ってみた。 「あ・・えと、わ、わかりました。私誰にも言わないです。」 舌足らずなフカ゛フカ゛口調でそう言うと、その中等部の子はいきなり立ち上がって、渡り廊下の方へ走って行った。 「えっもう行っちゃうの?ねー名前ぐらい教えてよー!・・ちぇー。」 何か妙に構いたくなるタイプの子だったから、もうちょっと喋りたかったのに。 まあ、しょうがない。もうすぐ本礼がなってしまう頃だし、ひとまず教室に戻ろう。 あのいやがらせ4人組に今日はどんな皮肉を言ってやろうか、黒桃子モードで思案しながら、私は廊下を歩き出した。 「え、それって岡井さんのこと?」 「梨沙子、千聖“お嬢様”でしょー。」 「ぶー。何でー。」 帰りのホームルームの時間、私は梨沙子とくまいちょーに、さっきの女の子について尋ねた。 どうやら有名な子だったみたいで、身体的な特徴を言っただけなのに、2人はすぐに誰のことだか理解したみたいだ。 「おかいちさと?お嬢様?」 「うん。1年生。お金持ちで、みんなお嬢様って呼んでるよ。梨沙子同じクラスなんだよね。」 「ふんっ」 あれ。梨沙子はちさとちゃんのことをあまりお気に召さないみたいだ。色白のほっぺたをぷっくりふくらませて、そっぽを向いてしまった。 「・・・だってさ、何か、岡井さんってずるいんだもん。いつもみんながいろいろやってあげて、全然めんどくさいこととかやってないんだよ。 掃除も、クラスの係も、一番楽なことばっかり。先生も岡井さんだけは難しい質問したりしないし。ずるい。」 「え、でもそれってさあ、千聖お嬢様が悪いんじゃなくて、周りの人がいけないんじゃないの?」 おおっなかなかいい意見じゃないですか!くまいちょーにのんびりした口調でそういわれて、梨沙子はちょっと興奮状態になった。 「だ、だってさ変じゃん!同じ生徒なのにさお嬢様とかあばばばば」 「わかったわかった!声、大きいって!」 注目を浴びているのを感じて、私は慌てて梨沙子を宥めた。 「・・・でもさ、くまいちょーもちさとお嬢様って呼ぶんだね。梨沙子と一緒で、そういう特別扱いみたいなの嫌いそうなのに。」 「特別扱いって?お嬢様って、ただのあだ名でしょ?私も友理奈お嬢様って呼ばれたいなあ」 ――相変わらず、くまいちょーは鋭いんだか鈍いんだかよくわからない子だった。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -