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前へ 「はー!疲れたぁ。」 カレー、ご飯、丸パン、そしてアイスをたっぷり食べて、みんなでゲームをやって、撮影が終わった。 盛り上がりすぎて少し時間が押してしまったから、とりあえず一度千聖とコテージに戻った。 「元気な人は後で舞美たちの部屋に集合!」なんてまだまだ元気な舞美ははしゃいでたけど、うちらはどうだろうか。 今日はいろんなことがあって疲れてしまったから、ちょっと厳しいかもしれない。 私はベッドにダイブして、お隣の様子を伺った。 「千聖?寝るなら着替えた方がいいよ。風邪引いちゃうからお布団入って。」 「んー・・・」 千聖は私服のワンピースのまま、小さく丸まって横になっている。喋るのも面倒なのか、完全に生返事だ。 「ほら、千聖。」 しかたないなあ。私はもたもた起き上がると、千聖のベッドに移動した。 「着替え手伝うよ。はい、バンザイして」 背中のリボンを緩めて、頭側からガバッとワンピースを脱がせる。 ・・・あらあら、今日のおブラは白ですか。薄いピンクのフリルが可愛い。 仕事上、メンバーの下着姿なんて見慣れているけれど、わざわざ自分で脱がせたりなんだりするのはやっぱりちょっとドキドキする。 「パジャマ、バッグに入ってる?」 「・・・」 返事がない。目を閉じたまま、むにゅむにゅと口だけが動いている。寝言モードにまで入ってしまってるなら、これは当分起きそうにないな。 私は千聖のかばんを探った。前みたいにTシャツ短パンが入ってるのかと思いきや、 「・・・ねぐりじぇ。」 丈の長い、薄いブルーのお姫様みたいなお召物が鎮座していた。なんだこれは。パフスリーブとプリーツが可愛らしい、いかにも高そうな柔らかい素材だった。舞美が好きそう、こういうの。 「えーこれ、どうやって着せたらいいんだろう。」 私もネグリジェは何枚か持っているけれど、こんなお値段の張りそうなのは持っていない。きっとママにおねだりしたか、お小遣いをためて買ったんだろう。これは、間違っても破いたり汚したりしたくない。 かといって、このまま下着で放置するわけにも・・・ええい、仕方ない! 私は自分のバッグから、パジャマ代わりの水玉のガウンを取り出した。 これなら着脱も簡単!腕を通して、帯を締めるだけ。 あっという間に着替えを終わらせて、掛け布団をかけてあげれば、千聖の就寝準備は終わりだ。 あ、私?私は、前になっきぃからもらったミカン野郎Tシャツがあるから大丈夫!LED発光だから暗闇でも光るよ! ・・・本当はお昼の続きをしたかったけれど、疲れた千聖を起こしてまでやることじゃない。こんな風に、寝顔を眺めてるだけでも満足。 “えりかちゃんは、ちっさーのことが好きなんだよ” 「いやっ、そんなわけない!違う違う!」 さっきの栞菜の妄想劇場を、必死で頭から振り払う。 私ももう17歳。恋というのがどんな感情なのか、さすがに理解しているつもりだ。 恋っていうのはもっと、甘くて苦くて切なくて苦しくて、心が張り裂けそうなものだ。 千聖にエッチなことするときに生まれる感情は、そんなんじゃない。 正直千聖のちっちゃくてふにふにした体はとても抱きごこちがいいし、ずっと腕の中に閉じ込めていたくなってしまうのは否めない。あの子供みたいな顔が気持ちよさにとろけていくのを見るのも好き。お嬢様のくせに、びっくりするほど色っぽい声を出すのもなんかいい。 でもそれはドキドキじゃなくて、どちらかといえば和みや癒しの感情に近いと思う。だからこれは恋じゃない。恋であってはいけない。 “そういう愛の形だってあるんだよお姉ちゃん” 「ああーうるさいうるさい!お黙り、栞菜!」 私は脳内で語りかけてくる栞菜を追い払って、シャワーを浴びにいくことにした。 家から持ってきたバブルバスの素で、浴槽をもっこもこにする。大好きな薔薇の香りがただよい始めて、ちょっと興奮していた私の心も落ち着いてきたみたいだ。 ピンクの泡に体を沈めて、しばし考え事にふけることにした。 どうしようかな、これからの私と千聖のこと。 栞菜はおかしなことをいいつつも全面的に私の味方のようだし、愛理も面白がってはいるものの、千聖が決めることだと言っていた。 舞ちゃんはあんなことを言ってるけれど、実際に私たちが何をしているのかわかっていない。ていうか、中学1年生の女の子の考えが及ぶような行為じゃない。多分。舞美はもっとわかってない。 ・・・なっきぃとは結局あの後じっくり話す時間が持てなかったから、誤解を解くことも意見を聞くこともできてない。 本当になっきぃの言うように、私のしていることが千聖にとってよくないことなら、それは即やめなくちゃいけないとは思う。 でも私の本音を言えば、しばらくこの関係を続けていたい。 千聖を救って癒してあげる行為だと思っていたけれど、本当に心を癒されているのは私の方かもしれない。 “えりかちゃんは、ちっさーのことが好きなんだよ” 「・・・・わかんないよ、そんなの」 さっきまでは、違う!と否定できた脳内栞菜の囁きに、今は即答できない自分がいた。 次へ TOP
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前へ 「あーっ千聖!」 舞美ちゃんの大声と何かが落ちた鈍い音に驚いて振り返ると、千聖が階段の一番下で倒れていた。 どうやらくすぐり合いっこをしていたら、バランスを崩した千聖が足を滑らせてしまったらしい。 雑誌の撮影が終わり、階段を降りていく途中の出来事だった。 「もー何やってんの」 まだ舞美ちゃんに笑顔の余韻が残っていたから、私はそのまままた前を向いて愛理とのおしゃべりを続行することにした。 でも「やだ、ちょっと・・・千聖動かないよ。」 「どうしよう、私・・・」 千聖と一緒に階段の途中でふざけていた舞美ちゃんが、みるみるうちに青ざめていく。 舞美ちゃんに抱きかかえられている千聖はピクリとも動かない。 「違うよ、マイが最後に千聖をちょっと押しちゃったんだよ。舞美ちゃんのせいじゃないよ。」 舞ちゃんの目に涙が溜まっていくのを見ていたら、つられて私も泣き出しそうになった。 栞菜も愛理もすごく動揺しているのがわかる。 えりかちゃん・・・はずいぶん前を歩いていたから「どうしたのー」なんてケーキをモシャモシャ食べながらのんびりこっちに向かってきた。 こんなことになるなんて・・・。 「とにかくさ、誰が悪いとかどうでもいいからマネージャー呼んでこよう?」 一番最初に冷静さを取り戻した愛理がそういうと。玄関の方に向かって走り出した。 そのとき「う~ん・・・」 千聖が短く声を漏らして、ゆっくりとまぶたを開けた。 「千聖!」「大丈夫?」「どっか痛いとこない?」 みんなが走りよって、千聖にいっせいに話しかける・ 「よかったぁ私千聖に何かあったらどうしようって・・・」 「なっきー泣きすぎだよ」 涙でほっぺたをぬらしている栞菜に突っ込まれたけど、私の涙は止まってくれなかった。 そんな私たちの顔を、順番にゆっくりと見つめながら、千聖は体を起こした。 「皆様、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。わたくしはもう大丈夫ですので、早くお家に帰りましょう。」 「千・・・聖?」 「それでは参りましょう、皆様。」 えりかちゃんの手から、食べかけのケーキが落ちた。 次へ TOP
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食事の後は、デザートのフルーツゼリーの種類をかけて千聖の家族みんなでゲームをやった。あっすーと千聖は姉妹でイタズラ顔になって私に攻撃をしかけてきたけれど、弟くんの巧みな防衛で最下位は免れた。 「あー、もう!ビリになっちゃったー」 ぶーたれるあっすーの顔をチラッと見て、1位の千聖は 「あら、明日菜のもおいしそう。半分こしましょう。これ、好きでしょう?」 とスプーンで半分にしたゼリーを取り分けた。 「いいの?ありがとう。」 2色になったゼリーを見て、あっすーも嬉しそうな顔をしている。 「愛理ちゃん、おいしい?」 「はい、とってもおいしいです。あの、良かったら、後で作り方を教えてもらえますか?本当、すごくおいしい。」 千聖の家族はとても温かい。いつもお互いがお互いを見ていて、ごく自然に手を差し伸べあっている。 赤ちゃんがムズがれば誰かがサッと席を立ってあやしに行く。夕飯の後片付けも当たり前のように各々やっている。 千聖だけじゃなく、家族みんなが、私が退屈しないように自然に会話の中に入れてくれる。 千聖が日頃みせるさりげない気づかいは、こんな優しい空間の中で自然に生み出されているんだろうな、と思った。 何だか無性に自分の家族が恋しくなってしまった。 「それじゃあ、私たちは部屋に戻ります。」 「ご馳走様でした。」 私は強引に後片付けを手伝わせてもらってから、千聖と一緒にリビングを出た。 「うるさかったでしょう。もう、みんな愛理が来るって言ったらはしゃいでしまって。」 そんな風に言いながらも、千聖の顔は優しくほころんでいた。 しばらく千聖のお部屋でまったりくつろいでいたら、千聖ママがお風呂ができたと知らせに来てくれた。 「愛理、お風呂先にどうぞ。」 「んー・・ねえねえ千聖、良かったら一緒に入らない。」 「・・・・ええ???」 千聖はポカーンとした顔で私をまじまじ見つめた。 「いや、そんなに驚かなくても」 「だって、愛理はあんまり好きじゃないのかと思っていたから。誰かとお風呂に入るの」 どうやら州;´・ v ・)<ホントやめて欲しい のイメージがかなり根強いらしい。 「まぁまぁ、人は日々変わるんだよ。ねぇー、一緒に入ろうよぅ」 普段は千聖を可愛らしく思うことの方が多いけれど、お姉ちゃんモードで悠然としてる姿を見ていたら、私の甘えん坊スイッチが入ってしまった。 「ふふ、・・・それじゃあ一緒に入りましょうか。パジャマを出すから待っててね。」 千聖は引っ付き虫の私を軽くいなして、タンスをごそごそ漁りはじめた。 私はドアの前で、千聖のおうちのワンちゃんみたいに、今か今かと準備が終わるのを待つ。 「お待たせ、行きましょう。あんまり広いお風呂じゃないから、愛理は先に体を洗って。洗面所で待ってるわ。」 「はーい」 自分の家とは違うシャンプーの匂い。使ったことがない洗顔料。何かテンションが上がる。 「しぶーやをーあるくぅ」 「ひとーりであるく」 ご機嫌な鼻歌に、また千聖がタイミングを合わせて歌ってくれた。 「無ー邪気のままでいてー・・・・お待たせ、千聖!」 3曲ぐらい調子よく歌ったあたりで、やっと私は頭と体を洗い終えた。 「はーい。それじゃ入るわね」 湯船に移動して、千聖のスペースを確保する。 千聖が体を洗ってる間、することがなかったから、何となく体をじろじろ見てしまった。 「なぁに?」 「んーん。」 千聖は背はちっちゃいけれど、私と比べてすごく女性っぽい体つきだと思う。女の子、じゃなくて女性。梨沙子もかなり大人っぽい外見だけれど、それとはまた違うみたいな。 こういうのってどう言えばいいのかよくわからないから、直接千聖には伝えてないけれど。 「そんなにじっと見ないで。・・・私、あんまり自分の容姿が好きじゃないの」 「えっどうして?私はうらやましいけどな。千聖胸おっきいし、顔だって可愛いよ」 千聖は黙って首を振ると、ボディソープを落として湯船に入ってきた。 少し沈んだ表情のまま、私の顔を指でなぞる。 「私、愛理みたいになりたかった。色白で、可愛くて、スラッとしてて、優しくて・・・」 「千聖、」 「ごめんね愛理。何か最近、情緒不安定みたい。嫌だわ」 きっと苦しいだろうに、千聖はこんな時でも笑いかけてくれる。 「そんな、いいよ。私もたまに感情のコントロールができなくなったりするもん。気にしないで。」 私は栞菜やなっきぃみたいに、元気に人を励ましてあげたりするのがあんまり得意じゃない。こんな風に無理して笑わないでほしいのに、上手く伝えられない。 「私、本当に千聖のことすごいって思ってるんだよ。前にもラジオで言ったことあるけど、千聖は私にないものいっぱい持ってるし、尊敬してるよ。 千聖が、私をライバルって言ってくれるの嬉しい。千聖のこと好きだから。 ライバルって、敵じゃないでしょ?だからそんな風に言ってもらえて・・・・・ごめん、何か上手く伝えられないけど。」 「いいえ、ありがとう愛理。嬉しいわ。私、愛理とお話してると元気になれる。」 まだ少しぎこちないけれど、千聖の笑顔はさっきより自然にみえた。 「そろそろ上がりましょうか、のぼせてしまいそう。」 「あっ!じゃあちょっと待ってて。私が先に着替えてもいいかな?」 「ええ、もちろん」 私は千聖を湯船に残して、“アレ”を手早く身に着けた。千聖、どんな反応するかな? お風呂のドアをそっと開けると、変な裏声で千聖に話しかける。 「キューリ、チョウタ゛イ。」 「きゃっ!・・・まあ、愛理ったら!今日はカッパ愛理なのね」 黄緑色の、カッパの着ぐるみ。 お泊りが決まったときから、今日のパジャマはコレと決めていた。 「うふふ、よかった。」 「え?なになに?」 「愛理、ここにいてね。」 千聖は少し慌てて脱衣所へ走っていった。5分もしないうちに、「どうぞ」と洗面所に呼び戻される。 「わんっ!」 「・・・・・・ええ~!すごくない、私たち!」 なんとなんと、千聖の用意していたパジャマはあのチッサー犬だった。 「嬉しいわ。こんな格好してると明日菜と弟が飛びついてきて大変だから、あんまり着る機会がなくて。愛理が来てくれる時ならいいかなって思ってたのよ。」 「私もだよ~ケッケッケ。これで家の中うろうろしてたら、家族にマジメに心配されちゃったもん。いいじゃんね、着ぐるみ。」 「そうね、可愛くて暖かいのに。」 思わぬところでシンクロして、千聖の顔にもいつもの弾けるような笑顔が戻った。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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いろんな人に突っ込み/2006年02月20日/教育ママごん、関西最強校を狙う いろんな人に突っ込み/2006年02月20日/昨日の話だが…? いろんな人に突っ込み/2006年02月20日/教育ママごん #blognavi
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前へ 「千聖、久しぶり。いろいろ大変だったみたいだねー。」 「ごきげんよう、佐紀さん、雅さん。」 「ごっ・・・・」 続いて向かったのは、キャプテンとみやとえりかちゃんのところ。 「現場被る時はベリーズも協力するからさ、遠慮しないでね?」 「はい、ありがとうございます。」 「・・・何か本当雰囲気変わったね。可愛い!」 個性派ぞろいのベリーズをまとめてるだけあって、キャプテンは新しい千聖にもそれほどとまどわないで自然に接している。 そんな2人の様子を、大きな目をらんらんとさせながらみやが見つめていた。 「ほら、みやも何かしゃべったら?」 「えっ!えー・・・と」 派手っぽい外見と裏腹に、みやは結構人見知りでシャイなところがある。 まったく別人の千聖に、どう対応していいのかわからないみたいだった。 「大丈夫だよ、みや。千聖は千聖だよ。キュートが保証する。ねっ舞ちゃん?」 「うん。お嬢様だけど千聖だよ。」 私とえりかちゃんの助言で、みやは恐る恐る千聖に話しかけた。 「な、何か、なんて言ったらいいかわかんないけど・・・これからも、よろしく。」 ぎこちなく手を差し出して、2人は握手を交わす。 「あら、雅さんの爪とっても綺麗。貝殻みたいだわ。」 「あ、これ?これはね、ジェルネイルっていって・・・・」 お嬢様の社交術はすごい。 会話の糸口を即座に見つけて相手の懐にすんなり入っていってしまう。 私はきっと、そんな千聖の前と変わらない人懐っこさが逆に怖かったのかもしれない。 いつか前の千聖を忘れて、自然に今の千聖に馴染んでしまうことを恐れていたんだ。 でも、今は本当に穏やかな気持ちで千聖を見守ることできるようになった。 「成長したね、舞ちゃん。」 「・・・えりかちゃん、心読むのやめてくれる。」 えりかちゃんは不敵に笑うと、黙って私の手にハイタッチをしてきた。 舞美ちゃんとは全然違う方向性だけど、えりかちゃんもまたずっと私たちを見守ってくれていた。 どちらの味方につくでもなくいつも公平で、積極的ではないけれど求められれば応じるような、さりげなくて細やかなえりかちゃんらしい優しさだった。 「おー・・・やっぱりキュートは団結してるね。うちらも見習わないとなあ。基本自由すぎるから、ベリーズ。」 「まあ、家族みたいなユニットなんだよね。でもベリーズみたいにシャッキリやれないところがどうも・・・」 年長者同士、ちょっぴり高度な話が始まった。 私や千聖も高校生になったら、中学生組の梨沙子や熊井ちゃんたちとこんな風に深い話もできるようになるのかな。 「いや、できなそう。ふふふ。りーちゃんたちじゃなあ。」 「あっ・・・・舞さん、ちょっと私、愛理たちの所へ行ってきます。」 一人妄想にふけっていると、ちょっとそわそわした感じで千聖が話しかけてきた。 みやとのオシャレ談義も一息ついたらしい。 すでに目線は、中2トリオの2人と栞菜が固まっている場所に向けられている。 「わかった、またあとでね。」 名残惜しい気持ちがないとは言わないけれど、私は2人の絆を、千聖の心を信じられるから、もう何も怖くない。 小走りで去っていく後ろ姿に、そっと小指を差し出してみる。 さっきの黄色いリボンが、まだ私たちを結んでいるのが見えた気がした。 次へ TOP
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前へ “あんあん、そこはだめよ” “ぐへへへ、口では嫌がっていても××はすっかり××だぜ” 深夜1時。 私は毛布を頭からかぶって、自室のテレビをひたすらジーッと見つめていた。 画面に映るのは、舞ちゃんの運命を変えてしまったあのエッチDVD。高校のクラスメートの誰かが、いたずらで私の机にしのばせたやつだ。 部屋の前には、トランクやミニテーブルでバリケードを作った。万が一でも家族に知られるわけには行かない。こんなDVDを持っているだけでも問題ありまくりなのに、ましてやそれを見ているだなんて知られたら・・・・ “へっへっへ、お前の××、×××ぜ” “あーん、イクー” アホか。そんなんでイクーってなるわけないじゃない。 本当に、なんて内容だ。男の身勝手な妄想をぐちゃぐちゃに捏ね繰り回して凝縮させて、女の子の気持ちなんて全然考えないで、物みたいに扱ってる。信じられない。こんなのまともに見ていたら、恋愛観とかおかしくなっちゃいそう。 現に、舞ちゃんはこのビデオに感化されて、千聖に無理やりエッチなことをしたらしい。 もう仲直りはしたらしいけど、だからといって、このエッチビデオを一緒に見ようと舞ちゃんに持ちかけた私の罪が消えるわけじゃない。 私はドーンと凹んで、落ち込んで、どうしようもない状態になっていた。 といっても、仕事中は何とか平静を保つことができた。別人になりきる、お芝居という仕事だったのがラッキーだったのかもしれない。 だけど、本番が終わって、反省会が終わって、帰り支度をする頃には、また落ち込んだ気持ちが心を侵食していっていた。 一体、舞ちゃんは千聖に何をしたんだろう。 本人はもちろん、千聖にだってそんなことは絶対に聞けない。千聖は最近、いきなり明るい方の千聖に戻ったり、心が不安定になっているような気がする。 今更仲違いの原因を穿り返せば、辛かった気持ちを思い出させてしまうだけだ。 だから、私は舞ちゃんの行動のヒントを求めて、また夜な夜なこのDVDを再生しているわけだけれど・・・ 「舞ちゃぁん・・・これ犯罪だよぅ」 わかりきったことだけれど、私は間抜けな独り言を漏らした。 最初に見たときは、衝撃が強すぎて、ほとんど内容は頭に入ってなかった。ただ、無性に息が荒くなっていたのは覚えている。 逆に、舞ちゃんは冷静だったと思う。もともと、年齢のわりにかなり大人っぽいところがあるから、冷めた目で見ていたのかと思っていたんだけれど・・・ むしろ、心の深い部分を刺激されてしまっていたのかもしれない。 舞ちゃんは千聖のことが大好きで、大好きすぎていじめることが昔からよくあった。 お嬢様の千聖にはあんまりそういうことはしないけれど、喜怒哀楽の激しい明るい方の千聖のダイレクトな反応は、舞ちゃんのツボだったんだろう。 どっちかっていうとドエームな私には、よくわからない感覚だけど・・・やりすぎだと感じれば、止めに入ることもあった(その時の舞ちゃんのブリザートスマイルといったら!)。 多分、私の予想だと、千聖はそれほどMではないと思う(えりかちゃんが“ベッドの中では(ry)と言っていた。殴った)。Sでもなさそうだけど。 だから、戯れ方を間違えれば、いくら相棒の舞ちゃんだって許してもらえないこともあるんだろう。ましてこんなビデオを参考にしたんじゃ・・・ “へへへ、次は××を××してやるぜ” 相変わらず、画面ではキモイ系の男の人が、ニタニタ笑いながら女の人を辱めている。 舞ちゃん、一体何をしたの?「へへへ、次はちしゃとの××を××してやるでしゅ」って? 「あぁあ~・・・」 私は頭を抱えた。舞ちゃん本人が言うように、“遅かれ早かれ千聖にそういうことをしていた”のかもしれない。だけど、私がこんなものを見せなければ、回避できたことだったはず。 どうしよう、もういっそ私から千聖に謝って・・・いや、そんなことをしたらいろんな経緯が明るみに出て、余計に千聖を傷つけることになるか。 “ひっひっひ、××が××で××××” 「あー、うるさい!!」 人がまじめに考えているっていうのに、痴漢男の不愉快な声が邪魔をする。私は一旦DVDを消した。ベッドには戻らず、毛布を体に巻きつけて丸くなる。 そうして改めてその内容を頭に思い浮かべると、ゾッと鳥肌が立つ。 やだやだ、好きでもない人に、あんなことされるなんて絶対ありえない。あんな・・・ “ちしゃと、××が××でしゅよ。××な子でしゅね。舞が××してあげましゅ” 舞ちゃんの短く切りそろえられた爪が、千聖の小麦色の肌を優しく引っかく。真っ赤になって悶える千聖。やがて、その指は千聖の豊かな胸に 「ああああ!違うって!もう!」 一人絶叫していると、うるさい!とばかりに隣の部屋のお姉ちゃんが壁をドンと蹴った。・・・やばい、こんなところで自爆するわけにはいかない。 どうしよう、こんなこと考えちゃだめだってわかってるけど、妄想が止まらなくなってきた。頭の中で、“かまわん、続けろ”となぞの声が指令を出す。 私は毛布を頭からかぶった。外の音も全部遮断されて、完全に自分だけの世界。もう一度あのDVDの内容を思い起こしてみる。・・・今度は、痴漢の顔を舞ちゃんに、女の人を千聖に置き換えて。 「はぁ・・・」 あ、さっきより全然いいかも。使える。最近は妄想の中でみぃたんにお世話になる(・・・)ことが多かったから、これは新鮮だ。 ―私、自省のためにエッチビデオ見てたはずなのに、何でこんなことやってるんだろう。そう思っても、ピンクのもやもやに占拠された頭と、そっとソコをなぞる指が止まらない。 「うー・・・」 でもこれ、一体何目線なんだろう。寝取られ目線?痴漢目撃者目線?そもそも舞ニー?それともちさニー?いっそちさまいニー?・・・もう何でもいいや。とりあえず、始めてしまったから終わるまで楽しもうっと。明日から顔を合わせるのが、ちょっと気まずいけれど。 次へ TOP
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「あっ違う星って言っても、本当は私も千聖も地球人だってわかってるよ。でも、今までと違うっていう意味で」 「いや、そこはわかるから。」 熊井ちゃんはせっかく面白い例えを使うのに、変に生真面目だから、わざわざ説明をしないと気がすまないみたいだ。 うまく誘導しないと、こうやっていつまでたっても本題に入らなくなってしまう。 「何か、今までの千聖は思ったことは全部ポンポン言ってたのに、今は一度立ち止まって考えてから喋ってる気がする。話の内容はそんなに変わってないんだけど、あんまり暴走してないっていうか。」 ちょっとつまんなそうに、熊井ちゃんは口を尖らせた。 「私も結構そういうとこあるし、千聖はこっち側の人だと思ってたんだけどな。仲間が減って残念。何で変わっちゃったんだろう。・・・ねえ、聞いてる?」 空いてる部屋や控え室、自販機の近くのベンチなんかを探索しながらフンフンと生返事をしてたら、わき腹にチョップを食らった。 「うわうわっ、聞いてるよ!多分、熊井ちゃんがそう思うなら本当に変わっちゃったんだよ。熊井ちゃんだって、ちゃんと千聖のこと見てるんじゃん。優しいね。」 「嘘、本当に?嬉しいなぁ~」 熊井ちゃんは小さいことでも顔をくしゃくしゃにして、大きい赤ちゃんみたいに喜んでくれる。 ちょっと曇りに差し掛かっていた私の心も、この笑顔で簡単に快晴になった。 「もも、いないね~」 「楽屋も見てみる?でもちょっと遠いし先に他のとこ・・・あれ?ちょっと、熊井ちゃん隠れて」 私たちは近くの部屋に飛び込んで、隙間から頭だけ覗かせた。 すぐ前のトイレから、千聖が出てきたところだった。 もっと近くのトイレ行けばいいのに。 ウ●コ?と思ったけれど、熊井ちゃんはこの手の下ネタにマジギレすることがあるから、とりあえず黙っておくことにした。 「千聖、戻らないのかな?」 千聖はなぜか引き返さずに、みんなのいる部屋とは反対方向に歩いていった。 「わかった、多分うちらと一緒だよ。もものこと探してるんじゃない?」 「そっか!じゃあせっかくだし一緒に行きたいよね。茉麻、ちょっとシーッね。」 熊井ちゃんはいたずらを思いついた時のわくわくした顔になって、抜き足差し足で千聖の後をつけはじめた。 でも身軽で早足な千聖と、のんびり屋の熊井ちゃんでは、全然距離が縮まらない。 だんだん苛々しだした熊井ちゃんは、少しずつ大またになって競歩みたいな足取りで、千聖を追いかける。 「熊井ちゃん、バレちゃうよ。」 私の小声とほぼ同時に、気配に気づいたのか千聖がふと足を止めた。 「だーれだ!!」 振り向かれる前に、と慌てた熊井ちゃんが、千聖に手で目隠しをした・・・・はずだった。 「んぎゃんっ!」 千聖が瀕死の小犬のような声をあげた。 「あっ!やだ、違う!」 何事!?急いで千聖の前に回ると、熊井ちゃんの長い指が思いっきり顎と喉の境に食い込んでいた。 かなりの長身の熊井ちゃんと、ちっちゃい千聖では身長差が30cm近くある。 慌てたのと、うまく位置を掴めなかったせいで、目標よりだいぶ下のほうを捉えてしまったみたいだ。 「ひーん、どうしよう!千聖ごめんね、息できる?大丈夫?」 「ケホッケホッ・・・え、えと、ふわぁっ」 慌てた熊井ちゃんは、半泣きで首から手を離して肩をガクガク揺さぶった。 千聖は目を白黒させている。 「熊井ちゃん、とりあえず落ち着いて!ゆすっちゃ駄目だよ。」 熊井ちゃんはイマイチ自分の体のことをわかっていない。 舞美ちゃんみたいなスポーツ系じゃないとはいえ、十分上背はあるんだから、加減しないと思わぬ事故が起こるんだ。そう、今みたいに。 「やだーやだーもう!どうしよう、痛かったよね?」 「う、ん?びっくりした・・・ケホッ」 「ごめんねー、千聖。ジュース奢るから、ちょっとまぁたちに付き合ってくれる?」 パニックになってる熊井ちゃんを落ち着かせたかったので、とりあえず3人連れ立って自販機まで戻ることにした。 「はい、紅茶でいい?」 ベンチに座っている2人に、紙コップのミルクティーを差し出す。 「う、うん。ありがとう。本当にいいの?私お金払うよ。」 「いいって。びっくりさせちゃったお詫びで。」 千聖の喉元は真っ赤になっている。慌てた熊井ちゃんが全力でさすってあげたのかもしれない。 困惑した顔でカップに口をつける千聖は、横にいる熊井ちゃんを何とか励まそうとしているみたいだ。 「熊井ちゃーん。千聖は大丈夫だよ?びっくりして変な声出しちゃっただけ。」 熊井ちゃんは声もなくがっくりと肩を落としている。 整った顔立ちの熊井ちゃんは、黙っていると少し怖い感じになる。 その顔で落ち込んでいると、まるでこの世の終わりみたいな悲愴な表情になってしまう。 「本当だよ・・・別にそんなに落ち込まなくても。」 「だって私、こんな小っちゃい千聖に」 「「1歳しか違わないよ!」」 突っ込みが綺麗に綺麗にそろった。 「ク゛フフッ」 「あはっ」 いいなあ、この感じ。 千聖と私はこういうしょうもないことのタイミングがよく合う。 さっきは千聖が変わっちゃったなんて思ったけど、このノリが消えてないならまあ別にいいかな。 熊井ちゃんも私たちの方をチラッと見て「ふへっ」と少し笑った。 戻る TOP 次へ
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「私、世界のウメポーは、過去数回に渡り、JCでありおぱいちゃんである岡井千聖ちゃんに淫らな行為を行った事を深く反省し・・・」 「えりかちゃん、私そのネタよくわかんないよーケッケッケ」 「だぁっってぇえ~・・・!」 えりかちゃんはおもむろにテーブルに突っ伏した。 ラジオの収録日。お茶でも飲まない?とえりかちゃんをスタジオ近くのカフェに呼び出した私は、数日前千聖の家で話したことを打ち明けた。 「千聖、言ってたよ。えりかちゃんの考えてることがわからないって。辛そうだった。・・ねええりかちゃん、これから千聖とどうするの?」 「いや・・・どうすると言われましても・・・」 どうにも煮え切らない態度で、えりかちゃんはキャラメルマキアートをスプーンでぐちゃぐちゃにかき混ぜている。ついいじめてみたくなって、私はちょっとした切り札を使ってみた。 「私、千聖と寝たよ。」 ブーッ!!! カ゛ッシャハ゜リーン ス゛コー 「ひいいいいいいい!!!」 えりかちゃんは昭和のコントみたいに、考えられるリアクションを全部披露した後、ものすごい形相で私を見た。 「あ、一緒のベッドで寝たって意味だよ?ケッケッケ」 「え?な、なんだーびっくりした!」 「でも胸はいっぱい触った。1時間ぐらい。ぷにゅぽよーん。」 「ええ!?」 赤くなったり青くなったり、えりかちゃんは歩行者用信号機みたいだ。 まっ昼間のカフェで話すようなことじゃないのに、なぜか私は今日に限って饒舌だ(よくない方向に)。声をひそめて、話を続ける。 「千聖、最近キレイになったよね。あれってえりかちゃんのおかげっていうかせいっていうか。やっぱりああいうことしてると、女性ホルモンが活性化してどうのこうの」 しったか愛理を披露していると、さらにえりかちゃんの顔はげっそりしていく。 「ねえ、えりかちゃん。前にも言ったと思うけど、私は別にえりかちゃんと千聖がそういう関係でもいいと思ってるんだよ。舞ちゃんも千聖狙いっぽいけど、私はえりかちゃんの方がいいと思うなあ。何かすっごい、和んでるし。」 「愛理・・・」 「でも、えりかちゃんが千聖を傷つけたりするなら、話は別。そんなんなら、私が千聖を幸せにするから。とかいってwケッケッケ」 「ションナ!」 えりかちゃんは頭を抱えてしばらくうめいた後、「ちょっと、考える。」と言って黙り込んだ。 「うん。ごゆっくり」 暇つぶしに読みかけの文庫を開いてみたものの、あんまり中身が頭に入ってこない。 胸を触る以上のことをしてないのは本当だけど、私はあの夜結構グラついていた。ずっと前、トイレでもう少し踏み込んだことをした時のような感情がよみがえっていた。千聖がカワイイわんちゃんの着ぐるみじゃなかったら、本当に何をしていたかわからない。 “忘れましょう。・・・私たち、何もしなかったわ。” お泊りの翌日、千聖はそんな風に言って柔らかく笑った。 “明日からも、これまでどおり。愛理は私の大切な友達。・・・ライバル。そのままでいましょう” その顔は恋に悩む中学2年生なんかじゃなくて、よくわかんないけど“女”って感じがした。全てを見透かしたように、悠然と、包容力すら感じさせるようなたたずまい。 お嬢様の千聖はすっごく大人で、優しくて、・・・ちょっとだけしたたかだった。 「えりかちゃん、そろそろいいかな?」 「・・・・・よしっ、決めた。」 もう時間だ。声をかけると、えりかちゃんはカップに残っていたマキアートを飲み干して、おもむろに立ち上がった。 「ねえねえ、決めたって、どうするの?」 「それは内緒です。」 えりかちゃんはやっといつもの余裕綽々なえりかちゃんに戻って、ふふんと笑ってみせた。 私が今日、こうしてえりかちゃんに急な決断を迫ったのにはわけがある。 こうして関わってしまった以上、どうしても2人の今後のことを、この目で見届けたかった。 私と、千聖と、えりかちゃん。 3人っきりになれるチャンスは、今日しかなかったから。 「おはようございます。」 「おはよーちっさー。」 「おつかれー。」 スタッフさんからの今日の進行についての説明が一区切りついた頃、千聖がブースの中に入ってきた。 「今日は、よろしくお願いします。」 挨拶とともに席に着いて、今度は千聖もまじえた打ち合わせが始まった。 そう、今日のキューティーパラダイスのゲストは、千聖だった。私はそれで、今日中にどうにかしたいとはりきっていたのだった。 “この辺は雑談っぽく・・・” “曲の最中に指示を出すから・・・・・” 私の横で、千聖が長いまつげをパタパタさせながら、スタッフさんの指示を聞いている。普段はどちらかというと愛嬌のある千聖の顔は、その一方で、真面目なシチュエーションではとても大人びて見える。私はこの神秘的な横顔が好きだった。 「千聖、わからないとこある?」 「え?・・・いいえ、今のところは特に。ありがとうえりかさん。」 ふいにえりかちゃんに話しかけられた千聖は、一点に集中した少し険しい顔を崩して、とても嬉しそうに笑った。心なしか、えりかちゃんの視線も優しい。 「千聖とラジオなんていつぶりだろうね?」 「私、今日は楽しみにしていたの。えりかさんとも、愛理ともご一緒できるんて嬉しいわ。」 えりかちゃんと舞ちゃんは、千聖のことをほとんど“ちっさー”とは呼ばない。 舞美ちゃんと栞菜はほとんど“ちっさー”呼びで、私となっきぃは半々ぐらい。 自他共に認める「変なところで」頑固者なえりかちゃんが“千聖”呼びにこだわるのには、何か理由があるのだろうか。あるとしたらそれは、千聖を幸せにしてくれるものなのだろうか? 頭を打って急にお嬢様になって、普通じゃない状況で千聖が感じている葛藤や不安は、とても他人が理解できるものじゃない。 だから、えりかちゃんにはきちんと千聖と向きあってほしい。千聖の心を癒すために始めた“行為”なら、そしてもしそれを今後も続けるのなら、いつまでも最初の目的を忘れないでほしい。 そんな風に考えるのは、私の傲慢なのかな・・・? 「千聖、ちょっといい?」 事前準備が全て終わって、本番まで30分ぐらい時間が空いた。その時、えりかちゃんが唐突に千聖に話しかけた。 「え?ええ・・・」 「ごめん愛理、ちょっと待ってて」 いつものヘタレ気味な態度はなりをひそめて、えりかちゃんはキリッとした顔で、千聖の手首を掴んでブースを出ていった。 きっと、さっき私が決断を迫った例の件について話すんだろう。できればリアルタイムで聞きたかったけれど、ここは思いっきり人の目があるし、2人だけにしかわからないいろんな事情というのもあるだろうから仕方ない。 私はまた読書をしようと本を取り出した。しばらく没頭していると、廊下からバタバタと足音が聞こえてきた。 「千聖・・・?どうしたの?」 千聖がドアを思いっきり開けた。私の姿を確認すると、すごい勢いで飛びついてきた。 「愛理ぃ、えりがじゃんがフカ゛フカ゛フカ゛フカ゛フカ゛」 興奮していて、何を言ってるのかよくわからない。・・・ん? 「千聖?今、えりかちゃんって」 「え、えりかちゃんが何か変なことしてきた!何で?わけわかんない。何か変なことしてきたの!」 大事なことだから2回言いました。じゃなくて、千聖は、唐突にもとの千聖の喋り方に戻った。・・・多分、喋り方だけじゃなくて、内面も・・・ 「千聖、待って!」 続いて、青ざめたえりかちゃんが戻ってきた。こちらはもう半泣きだ。 「・・・まあまあ、とりあえず落ち着こう。」 パニック状態の人が2人もいると、本能的に冷静になれるものなのかもしれない。私はとりあえずひっついてくる千聖を宥めながら、えりかちゃんも前に座るように促した。 TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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前へ 「・・・・ねえ。」 舞美ちゃんの家から仕事場に一緒に来た私は、楽屋の鏡の前でぼんやりしている千聖の横に立った。 「舞、さん」 「話があるから一緒に来て。」 腕を掴んで立ち上がらせて外に出ようとしたら、栞菜となっきぃが前にたちはだかった。 「ちょっと待って、舞ちゃん。栞菜も舞ちゃんに話があるんだ。ちっさーにも聞いてほしいから、ついていっていい?」 「舞ちゃん、私も。おとといの夜のこと、ちゃんと話したい。謝りたいよ。」 「2人とも、舞はちっさーと2人で話したいんだって。後でいいじゃないか。」 「でもっ」 ・・・ああ、そうか。 私がこの千聖のことをいじめるんじゃないかって、心配してるんだね。 無理もない。私は自分の感情にまかせて、かなりひどい仕打ちをしてきた。 挨拶無視にはじまって、一昨日はついに直接本人を責めた。 なっきぃはその現場にいたわけだし、栞菜の耳にだって入ってないわけがない。 愛理は私を睨んでいる。えりかちゃんは「舞美・・・」と何かいいかけて口を閉ざした。 皆にいじめっ子認定されちゃったわけか。でもそれも、自分の起こした行動が生んだ報いというやつなんだろう。 「別に、何にもしないよ。」 「でもさ、実際に舞ちゃんちっさーのこと」 「栞菜。早貴さん。」 その時、ずっと黙って私に手を引かれていた千聖がもたもたした口調で喋り出した。 「私も今舞さんと、2人で話がしたいわ。私が先ではだめかしら。」 「ちっさー・・・」 ちょっとボーッとしているみたいだ。顔色が悪くて隈が出ているから、寝不足なのかもしれない。 でも、はっきり「舞さんと話したい」そう言ってくれた。 「ごめん、もう行く。ちょっと時間がないんだ。」 「時間って、どういうこと?」 「ほらほら、舞がそう言ってるんだからちょっと2人にしてあげようよ。さ、行って。みんなは舞美のところに集合!」 ありがとう、お姉ちゃん。 きっと今回の事件について、みんなに話してくれるんだろう。 私も後でちゃんと、なっきぃと栞菜の話を聞かなきゃいけないな。 「こっち。ついて来て。」 ちょっと奥まった自販機の前に千聖を連れて行くと、 「おごって。」 と唐突に言ってみた。 「えっ・・・」 「前の千聖なら、舞におごってくれた。」 「・・・・ええ。」 千聖は困惑した表情で、ジュースを差し出してきた。 「舞の好きなやつだ。忘れてなかったんだね。」 「舞さんは、いつもこれを選ぶのよね。もちろん覚えているわ。」 微笑む顔につられて、つい表情を緩めてしまった。 この千聖と笑いあうなんて、これが初めてだ。 「・・・一昨日の、夜なんだけど。」 一呼吸置いて、私は本題を切り出した。 「ごめんなさい。舞が悪かったです。」 「舞さん、待って、頭を上げて。舞さんは悪くないわ。」 千聖の手が、私の手を包み込んだ。 「以前の私がどんな性格だったのか、自分ではわからないれど、本当に全く違うのでしょう? ずっと仲良くしてくれていた舞さんが、今の私を拒絶するのは仕方がないと思うの。 でもね、・・・たとえ舞さんが私を嫌いになってしまったとしても、私は舞さんが好き。 どうか、この気持ちだけは拒まないで。」 「もういいよ、わかったから。」 これ以上聞いていたら、また心が乱れてしまいそうだった。 動揺しているのをごまかしたくて、千聖の目元に手をやった。 「ひどい顔してる。また泣いてたんだ。あと、寝てないでしょ。顔色ヤバいって。」 「そん、なにひどい?」 「最悪だよ。アイドルなのに。 ・・・・・あの、さっきは、気持ちをきかせてくれてありがとう。だから、舞の話も聞いて。」 もう逃げない。 千聖の目をまっすぐに見つめながら、私は昨日舞美ちゃんと考えた事一つ一つを言葉に変えていった。 次へ TOP
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“「なっきぃ、なっき、なっきっき♪」 「もー、何だよぅ愛理ぃ。キュフフ」 珍しくジャレついてくる愛理が可愛くて、私も手を伸ばして頭をわしわし撫でる。まったり平和な昼下がり、私たちはのんびりひなたぼっこをしていた。 「なっきぃはさーあー、何でそんなにかわいいのかなぁ?ケッケッケ。スタイルもいーしぃ、ひよこちゃんみたいな顔じゃないかぁ~」 「なにそれー!キュフフフ」 愛理の独特の、妙に間延びした声でそう言われると、照れよりも先に笑いがこみあげてくる。 「愛理こそ、最近ますます可愛くて色っぽくなってきたじゃーん!ほらほら、可愛いぞー?」 「やめてくれよぅ、可愛いのはなっきぃだってー」 「愛理だよー」 「なっきぃ!」 「愛理!」 「キュフフフ」 「ケッケッケ」 ああ、本当に、和む。普段からのんびりふんわりな愛理だけど、今日はいっそうおっとりさんオーラがにじみ出ている。田舎のおばあちゃんちに遊びに来る、大きな猫みたいだ。 せっかちな私もつられて、ふにゃふにゃになってしまう。たまにはこんな時間の過ごし方も悪くないな、なんて思った。 「あははぁー、それではここで、なっきぃに質問ターイム!イエーイ!」 あまりに和んでウトウトしはじめると、急に愛理のテンションが急上昇した。私の手を取りながら、ずいっと顔を近づけてくる。 「何、何!いきなり」 「じゃあまず一問目ー!最近何か楽しかったことはありますかぁー?」 「えー?・・・そうだなあ、夏のツアー、楽しいよね!やっぱなっきぃはコンサートが好きだなぁ」 「ふむふむ、ほうほう。それでは次の質問!」 なんだかよくわからないけど、愛理が楽しそうだから付き合ってみようかな。その後も雑誌の取材みたいなQ&Aで盛り上がって、しばらくしたら気が済んだのか、愛理が「では、次が最後の質問でーす!」とにっこり笑った。 ――ん? その笑顔に何か違和感を覚えて、私がとまどっているうちに、愛理は体をぴったり付けて、手を恋人つなぎにしてきた。 「最後の質問はぁ・・・なっきぃは、一人Hしたことありますかぁ?」 「・・・・はぁ!?愛理ちょっと、なに言って」 わめく私を諌めるように、愛理は人差し指を唇の前に立てて「ケッケッケ」と妖しく笑った。 「ありますかぁ?」 ふわふわした女の子らしい、柔らかい声のまま、愛理はとんでもないことを言っている。えりかちゃんみたいに、いかにもいやらしい言い方をされれば撥ね付けることもできたけれど、私はとっさに対応がわからなくなって、・・・・そして、間違えた。 「・・・し、ししたことないよ。」 「ほぅー?ファイナルアンサー?」 「ふぁ・・・・ふぁいなるあんさー。」 手に汗をかきつつ答えると、愛理は某司会者さんのように、眼力を強めて私を見つめてきた。嫌な沈黙が流れる。 「・・・・っ残念!」 そして、焦れてきた頃に、愛理はあの人のテンションのまま、心底辛そうに、くっ・・・!と膝を叩いた。普段なら爆笑してるとこだけど、それどころじゃない。 「な・・・何でよ!だってしたことないもん!しょしょ証拠があるの!そそそんなはしたないことを愛理ったら」 声が震える。でもそれだけは、認めるわけにいかない。マシンガンのようにまくし立てる私を、余裕の表情の愛理がまぁまぁと諌めた。そのまま、無言でケータイを取り出して軽く振った。 「まさか・・・」 「なっきぃ、デスメールには注意しなきゃ。ケッケッケ」 ――人生、オワタ。 昨日、愛理にメールを送ったことは覚えている。でもそれは、いたって普通の雑談ネタだったはず。愛理に送信するメールと、保存している個人的なメモ代わりのメール――つまり、デスメール、を送り間違えたということか。 「ケッケッケッケ、いやぁ~なかなかハードボイルドワンダーランドですなぁ。」 「あの、愛理・・・」 「愛理、てっきりなっきぃは清純派なのかと思ってたよ。昼は淑女、夜は艶女。とかいってw」 いったんスイッチの入ってしまった愛理は怖い。しゃれにならない冗談を連発しては、目の奥の玉が笑っていないスマイルをこちらに向けてくる。 「ご・・・ごめん、愛理、そのことは忘れて。お願い今すぐ。」 とりあえず、本当に困っているのだということをわかってもらえれば、愛理はそう意地悪なことはしないはず。・・・だったはずなのに。 「果たしてそれはぁー、なっきぃの本心なのかな?」 「は?当たり前じゃん、何言って・・・」 「なっきぃは、エッチなことに興味津々なのに、試す機会がないから一人でハッスルハッスルしてるんでしょぉ?」 「それは・・・」 「じゃなきゃエッチッチな文章なんて、書き溜めたりしないよね?」 愛理の推理はいちいち的確で、口ごもる私を見て「あはっ可愛いなあ」なんて頭をなでてくる。もう、私は年上なのに! 「というわけで、そんななっきぃの願いを叶えてさしあげることにしましたー!どうぞー!」 「えっ何・・・ええっ!?」 どうにかしてこの状況から抜け出さないと。私がそう考え込んでいるうちに、気がついたら謎の愛理の号令とともに、我がキュートの誇るガチンコ仲良しコンビがひょっこり顔を出した。 「千聖・・・舞ちゃん・・・・」 「おはよ、なっきぃ」 「早貴さん、ごきげんよう。」 反射的に腰を上げて距離をとろうとする私の肩を、舞ちゃんが軽く押した。柔らかい草むらに、お尻をつく。 「あら、舞さんたら。乱暴になさってはだめよ。」 「いいの。なっきぃは、こういうほうが興奮するんだから。ね、そうだよね、なっきぃ?」 舞ちゃんはもちろんのこと、庇ってくれてるはずの千聖の目つきも心なしかギラギラしていて怖い。いつもの半月スマイルがやけに艶かしく感じられた。 「なーっき、」 「わあ!」 いつの間にか後ろに回りこんでいた愛理が、私のあごをガッと掴んで、無理やりひざに乗せてきた。女の子らしくて柔らかい愛理の腿の感触がほっぺたに当たる。 「ぅんっ・・・」 「あは、可愛い声出しちゃって。」 愛理の指が、ほっぺたや唇を優しく優しく撫で回す。じれったい感触に身をよじっていたら、今度はまた違うところに電気が走った。 「あっダメ、舞ちゃ・・・」 目線を下に向けると、舞ちゃんが私の両足をガッと開いて、体を割り込ませている真っ最中だった。 「ちょっと、やめてよ」 「・・・・違うでしょ、なっきぃ?や め て く だ さ い ま い さ ま でしょ?」 いつもどおりお目目ぱっちりですごく可愛い舞ちゃんは、その顔を奇妙に歪めて笑いながら妙にはっきりした口調でそういった。 「なっ・・・そんなの言うわけないじゃん!」 「・・・なっきぃ生意気。あーあ、舞におちんちんがついてたら、入れちゃうところなのになぁ。何か、代わりのものは・・・」 おっ、おち・・・!私はヒッと息を呑んだ。本能的に悟った。これは、逆らわないほうがいい。舞ちゃんは今までのエセサディスト(?)のみやびちゃんやえりかちゃんとは質が違う。 「わ、わかった、言います。・・・やめて、ください、舞、様。」 「そう、それでいいの。ふふん」 「ギュフゥ・・・」 仕方のない状況とはいえ、年下の舞ちゃんにこんなことを言わされるのは屈辱的だ。でも、その恥ずかしいような悔しいような気持ちが、私の体にゾクッと快感をもたらした。 「ウフフ、早貴さんたら、とても色っぽい顔をしていらっしゃるわ。」 「ふわぁ」 舞ちゃんの猛攻を回避して安心していると、今度は耳の穴に、ふわんふわんな声が吐息とともに入ってきた。 「ちさと・・・」 「大丈夫です。一緒に気持ちいいことをしましょう?」 囁きながら、千聖は子犬がそうするように、ほっぺたをぺろんと舐めてきた。 「ウフフ」 「あン、ちょ、だめ、ちさ」 ちょっとはにかみながら、私の顔中にキスを降らせる。ずるい。そんなちっちゃい子みたいな顔をされたら、やめてなんていえなくなってしまう。 まさに飴と鞭。愛理に揺さぶりをかけられ、舞ちゃんから理不尽な脅しをかけられ、千聖に甘えられる。キューティーガールズは役割分担が上手いな、なんてこの危機的状況の中で暢気なことを考えてしまった。 「ね・・・ねぇ、愛理・・・」 「ん?」 私のうなじや首元をいじくりまわす、いたずらな手を捕まえて、私は最後のお願いをすることにした。 「なぁに、なっきぃ」 「キュフフ・・・ちょぉ、くすぐったいよ。・・・ねえ、これが終わったら、メール、消去してくれるんでしょ?」 ちさまいの手や唇がもたらす感触と戦いながら、私は必死に交渉する。でも、とうの愛理は、ん?と小首をかしげる不思議な反応だ。そして、その薄くて綺麗な唇から、衝撃的な言葉が発せられた。 「メール?送られてきてないけど?」 「え・・・・・」 「私は、“デスメールには注意しなきゃ”って言っただけだよ?そしたら、勝手になっきぃが自白してくれただけだから・・・」 ――やられた! 「か、かまかけたの・・・!?しどい!」 「ほら、なっきぃ、もっと足開きなよ。恥ずかしいね、こんな屋外で。人に見られたら大変大変。」 「ウフフ・・・こちらも触ってもいいかしら?早貴さん」 「ギュフゥ・・・・」 いつも元気で明るいキューティーガールズは、無邪気さはそのままに小悪魔・・・いや、悪魔になってしまった。 「あはは」 「ウフフ」 「ケッケッケ」 心底楽しそうな声を耳にしたまま、私の意識は不釣合いなほどの青空へと溶けていった・・・・・” 「・・・・ふう。」 所変わって、自室のベッドの上。 やることやり終わって、賢者タイムに突入した私は、妙に冴えた頭で枕元のペットボトルに手を伸ばした。 「キューティーガールズニー・・・最上級のエンジョイgirlsケロ。」 現在、夜19時。コンサートのリハーサルは順調に進み、アドレナリン大放出のまま家に帰ってきた私は、さっそくそのテンションのまま本日2回目のニーに励んだわけだけれど・・・ さすがに中学生メンを・・・ってのはどうなの?と思いつつ、そういえばえりかニーの時は間接的に千聖ごめんねだったことを思い出して、自分の行動を正当化してみた。 言葉責めって素敵やん。特に、舞ちゃんみたいな真性の人で考えると、より興奮が増す。 おまけに年下、集団、野外、など、私の羞恥心を煽るシチュエーションがもりもりもりだくさんで楽しめた。 「キュフフゥ」 次は、どうしようかな。そんなことを考えながらほくそえんでいると、「早貴、ごはんできたよー!」と私を呼ぶ声が響いた。 あぁ、お母さん。こんな℃変態な娘でごめんなさい。もはや自分でも止められないのです。 そんな形式上の謝罪を頭に思い浮かべながら、私は「はぁい♪」と鼻歌交じりに返事を返して、部屋のドアを開けた。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -