約 4,030 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8437.html
前ページ次ページゼロのペルソナ 女教皇 優しさ・不安定 タバサがイザベラより受けた任務は過酷なモノであった。 ガリアの首都リュティスより南東に500リーグほど下った場所に存在する山間の片田舎、サビエラ村に巣くっている魔物の退治。 それだけなら騎士の仕事としては至極まっとうではあるようだが、問題はその退治すべき魔物が吸血鬼であることだ。 吸血鬼は、その名を聞いて恐怖しない者はハルケギニアにはいないと言っていいほどおそれられる魔物だ。 そして吸血鬼と戦うと命じられて恐怖しない者はあらゆる死線を越えた魔法使いか、圧倒的に危機感に欠如のある人物だけであるとされる。 吸血鬼は力ではオーク鬼、トロル鬼を下回る。彼らの使役する魔法――人間の使用する魔法とは別種の先住魔法の使い手としてはエルフに劣る。 そして太陽の光に弱いという弱点まである。 彼らを最悪の妖魔としているのは“人間と見分けがつかない”ことであった。 いかな魔法を駆使しても彼らと人間の選別することはできないのである。 グール そして魔法使いが使い魔を持つように吸血鬼は一体の屍人鬼を意のままに操る。 吸血鬼に血を吸われた人間の末路は二つだけである。動かぬ死体か、動く死体か。その後者が屍人鬼である。 吸血鬼の中にはその能力と高い知性で街一つを壊滅させた者もいるという。 タバサと陽介が挑むのはそれほど凶悪な怪物なのだ。 さてタバサと陽介はサビエラ村にすでに到着していた。 彼らは村長宅で自己紹介をしている。ただし、事実どおりの紹介、ではなかった。 「えーと俺が魔法使いで花村陽介っていいます。で、この子は従者です、はい」 陽介はサビエラ村の村長にウソの自己紹介をしていた。 出会い頭からウソをつくなど気のいいものではないが、これはタバサの作戦だった。 それは吸血鬼にタバサが魔法使いだと悟らせないことである。 そして吸血鬼は人間の中に紛れ込み暮らしているので村中の人間全てにそう思わせなければいけないのだ。 つまり村のリーダーへのウソの自己紹介はその始まりなのだ。 当然のことながらこの世界で異質な学ランでは魔法使いとは思われないので陽介はいつもの姿ではなかった。 この世界に着いてから常に着ていた学生服ではなく、タバサが用意した魔法使いが着る服を着ていた。 また服だけでなくタバサの杖、マントを借り身につけていた。 着慣れないごわごわした服を着て、いかにも魔法使いという杖とマントを着て、陽介はなんだか冗談のようで、笑いたくなってくる。 もっとも先ほど笑いそうになったらタバサに背中をつねられたので今は笑わないようにしている。 タバサはというと陽介の隣で従者らしく荷物を持ちたたずんでいる。 荷物を持ちじっと佇んでいる姿は、そわそわして落ち着きのない陽介の変装よりはよっぽどそれらしく見えた。 もっとも彼女は役に入り込むというわけではなく、自然体であったが。 「ハナムラ・ヨースケさまですか……」 少なくなった髪は全て白となっている村長は確認するように言った。 ハナムラ・ヨースケという名前を変わったものと思ったのだろう。確かにこの世界では珍しい名前であろう。 実際、初めてタバサたちに名前を言ったときもキュルケとルイズに変な名前と言われた。 しかし彼は確認にとどめ名前のことはそれ以上触れなかった。 この世界だと魔法使いはイコールで貴族らしいから、貴族の名前を面と向かって変とは言わないのだろうと陽介は解釈した。 「それでは事件のことを話させていただきます」 犠牲者は報告に聞いていたとおり前任の魔法使い一人を含めた9人。 村では誰もが人を屍人鬼ではないかと疑心暗鬼に満ち、村を出て行く者も止まらない出血のようであるという。 「屍人鬼には吸血の痕があるはずと調べてみましたが、なにせこの山の中ですから、首に傷があるものだけでも7人はいましたわ」 陽介はタバサを見る。タバサは首をかすかに振った。 たとえ傷を見つけてもそれを吸血鬼のものかヒルや虫などがつけたものとの判別は難しいということだろう。 「そんなわけですじゃ……」 村長は自分の無力さを恥じるようにうつむいた。 その隙にタバサは陽介に耳打ちをした。陽介は戸惑ったが、尤もな事でもあるので結局従った。 「調査の前に村長さんの体を調べさせてもらいたいんですけど、いいっスかね?」 村長はぽかんと口を開けた。 「わしを屍人鬼と疑っているのですか?」 「あ、いや、そういうわけじゃ……って、そーなんですけど」 陽介は手を顔の前で振りながら否定しようとするが、否定するのもおかしいと気付いてその手で頭をかく。 「……こんな老いぼれの体ですじゃ。恥ずかしがることなどありません。存分にお確かめ下さい」 村長は服を脱ぎ、生まれたままの姿になった。タバサは陽介を押しのけその老体を調べた。 小さい女の子が老人の裸体をじっと調べる光景はある意味魔法以上に現実感のない光景だな。 と、緊張感のないことを陽介が考えているうちに調べ終わった。 タバサのアイコンタクトを受けて村長に終わったと告げる。 「疑いは晴れましたかの。では、騎士さま、よろしくお願いしますじゃ」 その時、陽介は女の子が廊下にいることに気付いた。小さな顔が扉の隙間から覗き込むように見ている。 「誰ですか、あの子?」 「エルザといいます。お入りエルザ、騎士さまにご挨拶なさい」 少女は脅えた表情のまま入室し、硬い礼をした。 陽介は笑顔を浮かべる。小さい子と話すときは笑顔が大切なのだ。 「エルザって言うんだ、キミ?いい名前だね、エルザちゃん」 陽介は知り合いの小さな女の子のことも思い出されなんだか微笑ましくなった。 彼の親友の妹――本当は従妹だが――は活発で年齢に似合わず理知的な子だったが、 たしか初めて会ったときはお兄ちゃんに隠れるようにモジモジしていたものだ。 昔の記憶が思い出され、自然と笑う陽介の耳元で、タバサが再び囁いた。 「うっそ!この子も調べんの!?」 陽介は素っ頓狂な声を上げ、村長は首を振った。 「この子は勘弁してやってください」 エルザはガタガタと脅えきっていた。 陽介も、こんな小さい子を裸にするのは……。と気乗りではないところを、タバサに思い切り背中をつねられる。 「イッテ!れ、例外は認められないんで!」 タバサの言うことが情がないように見えても、実際問題として正しいから従うのだ。 決して痛いのが嫌だからタバサの言うとおりにするのではない。 村長は悲しげに呟いた。 「エルザ、服をお脱ぎなさい」 エルザは恐ろしいのか、体を震わしながら服を脱いだ。透き通るように白い肌が現れる。再びタバサは念入りに裸体を調べ、頷いた。 「もういいよ、良く我慢したねエルザちゃん、えらいぞ」 陽介ができる限り優しい声で言うが、エルザはわんわんと泣き出し服を抱え逃げ出してしまった。 「嫌われちまったな……。当たり前だけどさ……」 しょうがないというふうに陽介は目をつぶって頭を振る。 「失礼をお詫びします。でも堪忍してやってください…。あの子はメイジが怖いのです」 「いやいや別に気にしてないっすから。……ってメイジが怖い?」 「エルザは両親をメイジに殺されておりますのじゃ」 「両親ってことはお子さんですか……?」 ためらいがちに陽介は尋ねる。村長はエルザの親というには年をとり過ぎている。陽介はエルザを村長の孫だと当たりをつけている。 村長は首を振った。 「あの子とわしに血のつながりはありません。拾い子ですじゃ。一年ほど前、寺院で捨てられたのです。 聞けば両親はメイジに殺されて、逃げてきたのとことでの。おそらく無礼討ちにされたか、メイジの盗賊に襲われたか……。 森は妖魔以外の危険もいっぱいですじゃ。家族のいないわしはあの子を引き取ったのです」 「そんなことが……」 村長は遠い目を見せる。 「わしはあの子の笑った顔をみたことがないですじゃ。体も弱くて……、あまり外で遊ばせてやれることもできん……。 一度でいいからあの子の笑顔をみたいもんじゃのう……」 陽介は思わずタバサを見てしまう。 彼女はいつもどおりの無表情のまま。 陽介は考えてしまう。この世界に来てから数日しか経っていないが、自分も彼女の笑顔を見たことがない。 笑顔だけじゃない。喜怒哀楽という感情を顔に出したところを彼は見たことがない。 自分を使い魔にした少女も何か笑顔になれない理由があるのだろうか。あのエルザという少女と同じような、悲しい何かが……。 タバサと陽介は調査を開始した。 まずは被害者である女性たちの家を調べている。吸血鬼は若い女の血を好むという。 なるほど派遣され返り討ちにあってしまったメイジ以外全て若い女性だった。 状況もほぼ同じで窓・扉を固く閉め切っているというのに、吸血鬼はどこからか侵入し、ベッドで眠る女性の血を吸いつくすという。 護衛で何人かいるそうだが、なぜかいつも寝てしまうという。 「“眠り”の先住魔法……」 タバサがぽつりと呟いた。 陽介はバステ魔法みたいなもんか。と一人納得した。 「でもどっから入って来たんだ?」 陽介は首をひねる。その被害者の宅は、できる限り惨劇当時のままでとどめられていた。 当然死体は運び出されたが、寝具や家具に至るまでそのままである。 窓には板が打ち付けられている。事件当時、ドアの前には開かないようにと家具が山と置かれていたそうだ。 ところが事件後、窓に打ち付けられた板は一枚もはがされておらず、 ドアに至っては家具が動いていないどころか鍵さえ外されてもいなかったという。 「完璧な密室殺人だな、こりゃ……」 陽介はチラっと彼の主を見る。その矮躯はすすで黒く汚れていた。部屋に備え付けられた煙突を入って調べたからだ。 薄汚れたというのに証拠は何も見つからないんだから、言っちゃ悪いが徒労っぽいな。と陽介は口に出さず思った。 「吸血鬼は蝙蝠になって家の隙間から入って来ると言います。本当でしょうか?」 調査する陽介たちと同室していた被害者の親が尋ねる。 陽介は妖怪についての専門知識どころか、この世界の常識すらろくすっぽ知らないので返答に困る。そうするとタバサが従者として答える。 「吸血鬼は変化の魔法は使えない」 老夫婦は従者の言うことは本当なのかというように陽介を見る。 「そ、そーです。吸血鬼はそんなことできません」 陽介はタバサの助け舟をありがたく思いながら、せいぜい魔法使いらしく見えるように偉ぶって言った。 窓の外に、荷物を満載した馬車がごとごととあぜ道を行くのが見えた。 被害者の老父はその光景を見ながら陽介たちに説明する。 「村を出て行く者たちです。若い娘がいる家族はどんどん出て行きます。わしらも準備していたんですが……」 間に合いませんでしたねえ……と老母が言葉の先を引き取った。 陽介の脳裏に昨年、彼の住んだ町に起きた連続誘拐・殺人事件が思い出される。その被害者の一人は彼にとって大切な人であった。 だから理不尽によって娘を殺された老夫婦の気持ちも分かった。 陽介が失ったのは肉親ではなかった。ただ、好きな人だった。 この事件を解決しよう。 最初は、元の世界に戻る方法を探すには魔法使いの協力が不可欠だから、渋々ながらタバサに付いて来ただけだった。 人々が殺されていることを知り、残された遺族と出会い、陽介はもう他人事とは思えない。陽介はこの村の恐怖を払うことを強く決意した。 陽介たちが外に出るとなにやら騒ぎが起こっていた。 十数人の村人たちが物々しい雰囲気で歩いて行く。それぞれが鍬などの得物を携えている。火のついた松明を持っている者もいた。 陽介は不審に思った。 「なんだこりゃ……っておい?」 タバサは村人たちの後に続くようだ。陽介はしかたがないと先に歩いていくタバサの後を追う。 人々の流れに乗っていくとたどり着いたのは村はずれのあばら家だった。 人々がその家を取り囲み、口々に喚いている。 「出て来い!吸血鬼!」 「吸血鬼だって!?」 陽介は驚いた。あの家の中に吸血鬼がいるというのか? 見るとあばら家から四十前くらいに見える屈強な男が出てきて村人たちに怒鳴った。 「誰が吸血鬼だ!失礼なことを言うんじゃねえ!」 「アレキサンドル!お前達が一番怪しいんだよ!よそ者が!吸血鬼を出せ!」 「吸血鬼なんかいねえよ!」 「いるだろうが!昼間には出てこねえババアが!」 「おっかあを捕まえて吸血鬼とはどういうこった!病気で寝てるだけだ!」 「いいからここまで連れて来い!確かめてやる!」 「できるわけねえだろう!病気で寝てるんだから!」 「日の光に当たったら皮膚が焼けちまうからだろう!?」 「だから病気だって言ってるだろう!」 一触即発の雰囲気であった。 危ういものを感じて陽介は割って入った。 「ちょっと待てって!落ち着け!」 「なんだよコラ!引っ込んでろ!」 アレクサンドルと言い争っていた村人は陽介を怒鳴りつけるが、他の村人が彼の手にある節くれだった杖に気付いたようだ。 「貴族!」 「お城からいらっしゃった騎士さまじゃねえか」 陽介は今自分が演じている役を思い出し、それらしく振舞いこの場を納めようとする。 「そうだ。俺は騎士だ!だからおとなしくしてもらうぜ」 「だったらこの家のもんを調べて下せえ!間違いなく吸血鬼だ!」 陽介は嫌な気分になった。村長から聞いたとおりこの村には疑心暗鬼が蔓延しているようだ。 このままでは些細なことでだれかがリンチにあってしまいかねない。 「俺たちが調べっから、頼むからおとなしくしててくれ!」 村人たちが不思議そうな顔になる。頼むのは貴族らしくなかったか?と陽介は言葉の選択のミスを悟る。 「本当に貴族なのか、あんた?」 「ほ、本当に貴族で魔法使いだっつーの」 「だったら何か魔法を見せてくれ」 陽介はさっと血の気が引いていくのを感じた。 陽介は当然ながら魔法使いではない。ペルソナ使いとして魔法を使えるが、それはこの世界の魔法とは明らかに違う。 いくらこの世界のことを未だ理解していないと言っても、魔法を使う際に自身の化身を呼び出して魔法を使うのが一般的なことではないのはわかっていた。 困り陽介は隣で佇むタバサにヘルプの目配せをした。 「…タバサ」 しかし頼みの綱タバサはぼうっと立っているだけでなんのアドバイスもしない。 「なんだよ!魔法が使えないのか?」 「そんな騎士さまがいるものか!」 村人にどやされ陽介は困り果てた。ちょっと泣きそうだった。 そこでやっとタバサがその重いというかそもそも喋るための物かわからない口をようやく開いた。 「この騎士さまは音に聞こえた偉大なメイジである」 「ガキは黙ってろ!」 罵声に構わず淡々と喋り続ける。 「ただし、今は精神力が溜まってないのである。したがってあなたたちが望むような魔法が使えないのである」 「お城は何を考えているんだ!そんな情けない騎士なんかよこすな」 村人たちにあきれた顔が浮かぶ。 そこへ村長がやって来た。騒ぎを聞きつけてきたのであろう。 「お前たち何をしておるんじゃ!証拠もないのに誰かを屍人鬼に決め付けるなんてとんでもないことじゃ! 吸血鬼も怖いが、我らがお互いに疑い合うような事態はもっと恐いんじゃ!」 村長の説教に村人たちはしゅんと頭をたれた。 「でも村長……あいつの首には二つの牙のあとがあるんですよ」 アレクサンドルは激昂した。 「だから山ビルに食われたあとだっていってあるだろう。何度いったらわかるんだよ!」 タバサと陽介は駆け寄ってアレキサンドルの首を調べた。確かに赤い二つの傷が首にあった。 しかし、治りかけなので虫に刺された傷と区別がつかない。証拠としては薄弱であった。 「首に傷がついてるのは俺だけじゃないだろう?よそ者だからって俺ばっかり疑うのはひでえじゃねえか」 「とりあえず、お前の母親を改めさせてくれ」 村人の一人がそう言うと他のの村人たちも同調した。 「わかったよ!」 アレクサンドルは村人たちと陽介たちをあばら家の中へと案内した。家の中は一部屋だけであった。土間の奥に粗末なベッドが見えた。 人が入ってきたことに気付き、その上で寝ていた老婆が身を起こした。赤い派手な服を着ている。 「おい!マゼンダ婆さん!失礼するぜ!」 そう言うと老婆は「おお、おおお……」と、うめいて布団をかぶってしまった。 何人かが近づいて布団を引っぺがそうとする。 乱暴な扱いを受けようとする母を見てアレキサンドルは止めようとしたが、彼を数人の村人が羽交い絞めにして動けなくする。 一人は脅える老婆の口を無理矢理開いた。 「どうだ、レオン?」 「お袋は牙どころか歯すらねえよ!」 アレクサンドルが怒鳴り、調べていた青年レオンが頷く。それからレオンは、困ったことになったと様子を見ていた陽介たちに顔を向けた。 「騎士さま、たしか吸血鬼は血を吸う寸前まで牙をしまっておけるんでしたよね?」 陽介は横目でタバサを見る。こくりとタバサは頷いた。 「あ、ああ。そうらしい」 「じゃあ、歯がないからって吸血鬼じゃないって決まったわけじゃない」 「なんだと!」 アレクサンドルが再び激昂した。 あばら家は騒然となったが、村長が諫め、村人たちはしぶしぶといった感じで引き返していった。 「騎士さま、本当にお願いいたします。わしに出来ることならなんでもしますからの」 村長は神妙に頭を下げた。 陽介はさっそく村長に頼み事をする。もちろん、タバサに言われたとおりに。 それは自分の宿泊している村長の屋敷に、村に残っている全ての若い娘を集めてくれるようにと頼んだのだった。 おおよそ15人がタバサの寝泊りしている部屋の隣の大部屋に詰め込まれた。 それだけのことをするとタバサは調査を切り上げ、陽介を連れて自分の部屋に戻ってしまった。 人目もなくなったことで陽介はタバサに話始めた。 「アレクサンドルって親子が怪しいのはわかるけどよ……。違うような気がすんだよな……」 タバサは興味があるのかないのか判断のつかない無表情のまま尋ねた。 「どうして?」 「いや、あんまりにも怪しすぎるからってだけなんだけどさ。わかりやすいことが真実ってわけでもないだろ? それに吸血鬼って頭いいらしいじゃん。ならそんな簡単に疑われるのかって……」 彼の言葉の言うことをどう思ったかはわからない。 彼女は「これから眠る」とだけ言った。 昼間なのにと陽介は思ったが、タバサはあっという間に寝付いてしまい、自分もやることもないので彼女にならうことにした。 時刻は夜である。 陽介は人目もはばからず、それどころか見せ付けるように酒をあおっていた。 現在、陽介の手にはタバサの節くれだった杖はなく、彼女も近くにはいない。 これは作戦である。 魔法使いが杖を持たずに酒を飲んでいるというのは、それを襲うモノとしては絶好の機会であり、何かしらのアクションを起こすはずである。 タバサは杖を持っていない魔法使い役の陽介を襲うときに不意を討つつもりである。 そのために彼女は陽介が酒を飲んでいる村長宅の庭にある納屋に隠れている。 だが陽介が酒を飲んで数刻経つが、吸血鬼は未だに姿を見せない。 陽介は顔を赤くしながら未だにちびちびと酒を飲んでいる。 「ういー、しょーじきなトコロ、おんなじご主人様にするならクマみたいにボンッキュッボンがよかったなー。なんつって…あいて!」 タバサの投げた石が使い魔にヒットした。 陽介が頭をなでていると、 「……きぃやあああああああああ」 という叫び声が聞こえた。その声は一階から聞こえてきた。 タバサが飛び出し、陽介も後に続く。 声は女性たちを集めた部屋からではなかった。幼い声であった。 家を外側から沿うように走ると割られた窓が見つかった。エルザの部屋だ。 杖を掴んだタバサ、そして陽介はそこから跳び込んだ。 「いやあああああああ!」 毛布をかぶって震えていたエルザは大きな悲鳴を上げる。 「大丈夫だ!俺たちだから安心してくれ!」 陽介は安心させようと力強く言う。しかし少女は震えているばかりである。 「くそっ、こんな小さい子まで……!」 陽介は憤りを隠せなかった。 それに対し、タバサは先ほどまでの緊張感も顔から消えて、いつもどおりの表情を浮かべていた。 それから少し経って、少し落ち着きを取り戻したエルザは小さな怯えた声で話し始めた。 「……お、男の人がいきなり入ってきて、私の体を掴もうとしたの」 「どんな奴だった?」 陽介が尋ねると、ひ!とうめきエルザは毛布をかぶってしまった。 彼女は両親を殺されたためにメイジを恐れているのだった。 実際は違うのだが純真な子供に怯えられるのは少し傷つくものだった。 「お、おねえちゃんもメイジなの?」 毛布の隙間から杖を握ったタバサに問いかける。タバサは恭しく陽介に杖を渡し、少女に向き直った。 「わたしはメイジじゃない。ちょっと騎士さまの杖を預かってただけ。だから安心して」 「魔法を使わない?」 「使えない」 タバサは表情を変えずに言った。 「寝てたら……、耳のそばで荒い息がしたの……。 そして目を開けたら男の人が立って、私をじっと見つめていたの。わたし、びっくりして叫んだの」 エルザは泣きそうな顔でタバサにしがみついた。 「口から牙が生えてて……、だらだら涎が垂れてきて……、ひっぐ、うっぐ、えぐ……」 エルザは泣き出した。 「もう大丈夫。その人は見覚えのある人だった?」 「……暗くてわかんなかった」 陽介とタバサが近づいてきたのに気付いたのか、男は何もせず出て行ったという。 その直後に陽介たちが飛び込んできたらしい。 「だから……、おねえちゃんたちが吸血鬼だと思ったの……」 「誰も見なかったよな。入れ違いだったか……!」 その男はおそらく屍人鬼だろう。だれかが分かれば、重要な手がかりとなったのに。 陽介は悪態をついて残念がった。 事態を村人たちに説明してタバサたちはエルザも伴って部屋に戻った。連れて来たのはタバサであった。 怯えていて一人では眠れそうにないということは陽介も思っていたことだが、タバサがそのように気を使ったことに陽介は少なからず驚いた。 親切心を見せながらも無表情のままのタバサの評価を上方修正する。 「それじゃあ、俺は寝るからなにかあったら起こすんだぞ」 陽介はエルザの目もあるので杖は自分で持っておくことにする。なにかあればすぐにタバサに投げ渡すつもりだ。 寝るという口実で従者役のタバサに預ける、ということも考えたが、エルザはメイジを恐れている。 せっかく彼女がなついているタバサにメイジの杖を渡すことをはばかったのだ。 タバサは何も言わないが、おそらくそれでいいと思っているだろう。 「こわい……」 「大丈夫」 寝たふりをしている陽介の耳に小さな少女とそれよりさらに小さい少女の会話が届く。 タバサの武器である杖を持っている以上、急変あればすぐにでも渡せるように寝るわけにはいかない。 「おねえちゃんはえらいよね、こどもなのにいっしょうけんめい、いっしょうけんめい働いてて、えらいなあ……。おねえちゃんのパパとママは何してるの?」 しばしの沈黙。 「パパはいない。ママはいる」 「そう。わたしのパパとママはメイジにころされたの。わたしの前で。まほうで。虫けらみいに……。だからわたしメイジきらい。おねえちゃんのパパはどうして死んだの?」 少しだけ沈黙があり、 「殺された」 とタバサは呟くように言った。 「魔法で?」 「魔法じゃない」 「じゃあママはどうしてるの?」 「寝たっきり」 陽介は横になりながらも起きて二人の話を聞いていた。 それにしてもタバサが言ったことは本当であろうか。 タバサのことだから自分が起きていることはわかっているだろうから、自分にも聞こえていることがわかって話したのであろう。 父が殺され、母が寝たきりとはどういうことだろう。彼女の身になにがあったのだろうか……。 陽介が考えごとをしているうちにエルザはタバサとさらに2,3言交わした後に寝ついたようだった。 そこに村人たちから事のあらましを聞いた村長が飛び込んできた。 「エルザ!おおエルザ!無事だったか!」 陽介はベッドから身を起こしエルザを指差し、人指し指を口に添え静かにするように示した。 村長はスヤスヤと寝ているエルザを見て安心したようだった。そして声のトーンを下げた。 「どうやら無事なようでほっとしました」 「今日から俺たちが預かります」 「そうして下されば安心ですじゃ……。しかしまさかこんな小さな子までとは……、 なんともはや、吸血鬼というのは血も涙もない連中ですのう……」 村長が出て行き、陽介は再び毛布にもぐった。布団の中でタバサの身の上について考えているうちに本当に眠ってしまった。 元の世界では飲めない酒を、いい機会だと調子に乗って飲みすぎてしまったようだ。 前ページ次ページゼロのペルソナ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8464.html
前ページ次ページゼロのペルソナ 正義 意味…誠意・一方通行 極楽鳥の卵を手に入れてプチ・トロワを訪れた後、タバサは表情にこそ出さなかったが、戸惑ってばかりであった。 あの今まで嫌がらせしかしてこなかった従姉が高級食材である極楽鳥の卵を食べることを許したり、 それが不味かったからと口直しに宮廷料理を出してくれたり、宮廷の浴場に入るように勧めたり、 次の日のための休息のために寝室を貸してくれたり、実家に帰るように勧め馬車を出すと約束したりしてくれた。 そう、いつものイザベラとはまるで対応が違う。 タバサの経験から言って最もおかしいのはイザベラがその間イタズラをしてこないことであった。 料理を手を使わずに口だけで食べろとか、風呂で息継ぎせず5分間潜水しろとか、ベッドの上に虫の死骸がつまれていたりとかそういったことが何もなかったのだった。 これから考えられる客観的事実はイザベラが親切をしているということだ。にわかには信じがたいことだが。 戦士であるタバサはどのような状況下でも必要とあれば眠ることのできるのだが、その夜は寝つきが悪かった。 違和感がまとわり付いて仕方がなかったからだ。 そして妙に冴えた頭でタバサはイザベラの変心の理由を考えた。そしてり陽介以外に考えられないと結論付ける。 陽介が彼女と一人で会って、次に来たときにイザベラの態度は激変していたのだ。 彼はイザベラの何かを変えたのだろう。 もしかしたら彼は自分の運命すらも変えてくれるかもしれない。そのような考えも思いついてしまう。 突拍子もない考えだろうか。しかし、ともすれば頼りなさそうに見える彼は三度も自分の命を救ってくれた。 一度目は吸血鬼から、二度目は大軍勢に囲まれた城からの脱出の際、三度目は火竜から。 どれも並みの魔法使い、いやスクエアのメイジであろうとそう出来るモノではない。 そうしてタバサは自分の使い魔のことを考えているうちに眠りに就いてしまった。 次の日の朝、タバサと陽介は朝食を済ませて出立の準備をしていた。 イザベラが陽介に会いに来たのはそんなときだった。 彼はすでに彼の主人が先に行っているであろう馬車が用意された所へ向かおうとしていた。 「なんだ、イザベラさん?タバサならもういないぜ?」 そう言われるとイザベラはつんとそっぽを向いた。 「わかってるよ、昨日のあんなことしたあとじゃ会いづらいだろ」 「照れてんのか?」 もしかして……という口調で陽介は尋ねる。 「そんなんじゃないけどさ……」 口ごもるようにイザベラは言った。 陽介が見るに的は射ているのだろうが、どうも複雑な感情もあるようだ。 「で、なんのようだ?」 陽介は話の舵を別の方向へと切ると、イザベラはこの部屋に来て話そうした本題を語る気になったらしい。 「あんたにはあの子のことを良く知っていて欲しいの」 イザベラは打って変わって真剣な表情になる。 「あの子にとって一番大切な人は実家にいるの……。それを知らないとあの子のことはわかんないのさ。 ヨースケ、あんたにあの子の力になって欲しいんだ。あたしには、やっぱり、その……難しいからさ」 イザベラが喋り終わったあとに二人はじっと見合った。それから陽介は言った。 「ああ、任せとけ。俺はなんつってもタバサの……」 「使い魔なんでしょ」 途中でイザベラが言葉を奪い取った。陽介はよくわかったなと笑った。 目的地には王都リュティスから出発して半日ほどで着いた。 それは大きな湖の近くにある立派な造りの大名邸だった。しかしどこかうらぶれた印象を陽介は持った。 その豪邸内に入ると陽介は客間に待たされ、タバサはさっさとどこか別の部屋に行ってしまう。 陽介は部屋を見回した。豪奢な造りで手入れも行き届いていたが、生気が感じられない。 高そうな絵も、きらびやかなシャンデリアも荒涼さを増やすだけだ。まるで人が住んでいないようだった。 もっともさきほど、ペルスランという老いた使用人に出会ったので本当にそうだというわけではないが。 部屋を見回しているとその老僕が盆を持って部屋に入ってきた。そして陽介の前のテーブルにワインと菓子を置く。 菓子に目もくれず、陽介は尋ねた。 「なあ、ペルスランさん、この家ってタバサの両親は住んでないのか?」 尋ねられた方は、じっと質問者の顔を見た。 「タバサとはシャルロットお嬢さまのことですか」 ペルスランはどこか苦々しげに言った。その苦々しさは陽介ではなく別の何かに向けられていると陽介は感じたがそれでも少し居心地が悪く感じた。 ペルスランはその様子に気付いたのか、はっとして言った。 「すいません。あなたが悪いというわけではありません。どうかご気分を悪くしないように」 「いや、別にいいっすよ」 それにしてもタバサというのは本名ではなかったのか。イザベラとの会話でおそらくはそうではないかと思っていたが。 シャルロットという名前もイザベラの口から聞いたような覚えもある。 「どうして、偽名なんて使ってるんですか、タバサは……いやシャルロットは?」 陽介をじっと見ながらペルスランは言った。 「よろしければお名前をお聞かせ願いますか?」 「花村陽介です」 「わかりました、ヨースケさま。お嬢さまがこの家に連れてきた方、また使い魔であるなら構いますまい」 それからペルスランは深く一礼すると語り始めた。 「今を去ること五年前、先王が崩御なさった時、二人の王子がいました。 現在、王位にあらせられるジョゼフさま、そしてシャルロットお嬢さまのお父上であられたオルレアン公のお二人です」 「やっぱりタバサは王族だったのか……」 陽介は自分で事実確認をするために口にした。 王女であるイザベラが従姉であるなら、タバサが王族なのは当然であろう。 「しかしご長男のジョゼフさまはお世辞にも王の器とは言いにくい暗愚なおかたであられました。 オルレアン公は王家の次男としてはご不幸なことに才能と人望にあふれていた。 そのため宮廷では、ジョゼフさまを王としようとする派閥とオルレアン公を、という派閥が生まれてぶつかりました。 結果を申しますとオルレアン公は謀殺されました」 「謀殺……って殺されたってことか!?タバサの父親が!?」 ペルスランは頷き、肯定する。 「狩猟会の最中、毒矢で胸を射抜かれたのでございます。 この国の誰よりも高潔なおかたが魔法ではなく下船な毒矢によってお命を奪われたのです。 その無念たるや、私などには想像もつきかねます」 なんと言っていいかわからず陽介は黙り込んでしまう。 「しかし、ご不幸はそれだけにはとどまらなかったのです」 ペルスランの話は続く。 「ジョゼフさまを王座につけた連中は、次にお嬢さまを狙いました。 将来の禍根を断とうと考えたのでありましょう。連 中はお嬢さまと奥さまを宮廷に呼びつけ、酒肴の最中に毒の杯をあおるように命じたのです。 そして奥さまはシャルロットさまをかばい、代わりにそれをお飲みになられました。 それはお心を狂わせる水魔法の毒でございました。以来、奥さまは心を病まれたままでございます」 陽介はペルスランの話を黙然として聞いている。 「お嬢さまは……、その日より、言葉と表情を失われました。 快活で明るかったシャルロットさまはまるで別人のようになってしまわれた。 父を失い、目の前で母が狂えば当然のことでしょう。そんなお嬢さまは素寸で王家の命に従いました。 困難な……、生存不能と思われた任務に志願し、これを見事果たして王家への忠誠を示したのです」 半ば言葉を失いかけていた陽介ははっとした。 タバサの受けた任務とはイザベラを仲介して命じられる任務のことであろうか。 ペルスランは陽介の様子がすでに見えなくなっているのか、感情に任せるままに言葉を紡いでいく。 「そして!未だに宮廷で解決困難な汚れ仕事が持ち上がると、解決を命じる! 父を殺され、母を狂わされた娘が自分の仇にまるで牛馬のようにこきつかわれる! 私はこれほどの悲劇を知りませぬ。どこまで人は人に残酷になれるのでしょうか」 そこまで言い切るとペルスランの激情も落ち着いたようで、一息ついた。 陽介は、無口で無愛想なタバサのことを考えた。親の仇にこき使われているという。 そしてイザベラのことを考えた。従妹に非情な命令を与えている張本人。 恨むべき敵であろうか。イザベラがいなくても彼女の父親であるという王が命令を与えるかもしれないが、事実として彼女はタバサに困難な任務を与えていた。 親のやったことに対して娘に責任はないはずだと陽介は考える。 彼女がタバサの親に何かをしたわけではないが、彼女は実際にタバサに命令を下していたのだ。 イザベラが変わろうとするならタバサがそれを許すならば構わないはずだ。 しかし考えてみれば陽介はタバサとイザベラの間に何があったかは、実を言うとロクに知らない。 腹の中がジリジリと焦れてくる感じがする。陽介は勢い良くソファから立ち上がってペルスランに尋ねた。 「タバサはどこにいるんすか?」 タバサの母の部屋の前で待っていると、タバサが部屋から出てきた。その顔は驚いているように陽介は見えた。 この世界に来てからタバサに付き従っている間に彼女の表情変化を読むことが出来るようになったのかもしれないし、 もしかしするとタバサが自分に気を許して感情を表に出すようにしてくれているのかもしれない。 あるいは表情の変化など気のせいかもしれないが、それは考えないことにする。 タバサは出てきてからしばし陽介を見つめたのち、歩き出した。陽介も横に並ぶ。 「ペルスランさんから話聞いちまった」 「そう」 短くタバサが答えた。 「そっか……」 その様子から最近タバサの表情を読むことに長けてきた陽介(そう思うようにした)は自分が知っても構わないとタバサが考えていると判断した。 それから陽介は何を言っていいか分からなくなってしまった。 いてもたってもいられなくなってタバサの母親が居る部屋でタバサの対面が終わるのを待っていたのだが何を言おうとは考えていなかった。 陽介は足を止めて振り返る。そしてタバサが先ほど出てきた扉を見た。 あの扉の先に心狂わされたタバサの母親がいるという。 イザベラの言ったタバサの一番大切な人、そして守りたい人なのであろう。その人があの部屋の中にいる。 彼女に関して一つ陽介に考えがあった。タバサが母親の部屋から出てくるまで待っていたときに浮かんだものだ。 彼女の心を狂わせたのは魔法の薬だという。ならばクマによって治せるのではないか。 クマはアムリタという毒・混乱など全ての状態異常を直す魔法を使えるからだ。 しかしそれを陽介はタバサに伝えられない。ペルソナ能力でこの世界の魔法を直せるとは限らないからだ。 もし効かなかった場合を考えると下手に伝えることは出来ない。 タバサは落胆の表情を見せようとしないだろうが、それがなおさらつらい。 考えをひと段落させて再び歩き出そうと視線を戻すとタバサと視線が合った。 陽介はビクっと体を震わして驚く。どうやらじっと陽介が歩き出すのを待ってくれていたようだ。 「うおっ……待っててくれてたのか?」 タバサは答えずに背を向けて歩き出した。 陽介は2,3歩ほど跳ぶようにして彼女の横に並んだ。 「ありがとな」 「いい」 つれない返事だったが陽介には、いや二人にはこれで十分であった。 二人は並んで歩いた。 前ページ次ページゼロのペルソナ
https://w.atwiki.jp/game_rowa/pages/158.html
たくさんのものを手に入れた。 仲間との絆。宿命の終焉。そして、新羅カンパニーやメテオの脅威の去った、平和な星。 しかしその結末を迎えるために、零れ落ちたものがあった。その時に生まれた哀しみも怒りも、前に進むためには必要なものだった。 星の命に比べれば、きっと誰もが多少の犠牲は仕方ないと言って吐き捨てるのだろう。 だけど俺には、その零れ落ちたものが何よりも大切だったんだ。 誰かにとっての多少の犠牲は、俺にとっては星よりも重かったんだ。 闘いの中で、答えを見つけた。 人はそれぞれ現実を持っていて、それぞれが己の現実を守るために闘っている。 アバランチも新羅もその芯は正義でも悪でもなく、己の望む現実を通そうとしていただけに過ぎない。 でもそれでいい。正義も悪も自分の現実を邪魔しない。するべきじゃないんだ。邪魔をしていいのは自分の現実を妨げる敵だけ。 「俺は俺の……現実を生きるッ!」 それならばこれは、現実の奪い合いだ。自分の望む現実を生きるために、相手の望む現実を奪う。 殺し合いを命じられたというのは、そういうことなんだろう? ザックスの人格ではなく自分自身の人格で、エアリスとの物語をやり直すんだ。 それが誰にとっての正義でなくても構わない。自分にとって、それが正義であるならば。それが俺の願う現実だ。 変わらぬ信念を胸に、クラウドは闇を纏った聖剣―――もはや魔剣と化したグランドリオンを振るう。 「それこそが幻想だって……言ってんだろうがッ!」 その信念を、花村陽介はたった一言吐き捨てた。 闘いの中で、答えを見つけた。 現実は辛い。理不尽な暴力によって失われるものは数知れずあるし、自分は自分のなりたい理想像にまったく届いちゃいねえ。届くビジョンも見えやしねえ。 だけど、それでいいんだ。目を背けてさえいなければ、いくらでも前には進める。虚飾を拒み、真実を追究する意志。それさえあれば自分を見失うことだけは絶対に無い。自分の生きる在り方、その全てが現実なのだから。 陽介もまた、その信念は変わらない。変わらないからこそ、陽介のシャドウ『ジライヤ』は陽介と同じように前を向き、クラウドに真っ向から立ち向かう。 クラウドの今は他人の犠牲の上に成り立っている。 目的のための犠牲は必要なものだと割り切っていながらも、だけどたった一つ、そう割り切りたくない犠牲があった。クラウドは今、その自己矛盾から目を逸らして闘っている。目を逸らさねば、多くの犠牲を正当化できないから。 一方で、陽介が今ここにいるのは自分と向き合い、真実から目を逸らさなかったからだ。 久保のように己のシャドウを否定し続けていれば。あるいは真実を見極めようとせずにあの時に生田目を殺してしまっていれば。人々は霧の中でシャドウへと化していたはずだ。 両者ともに、相手の主張は己の旅路で得た答えを否定するものだった。棄却し、ねじ伏せなくてはならないものだった。 ㅤそれならば当然、その主張の行先は衝突する未来のみである。そして此処が殺し合いを生業とする世界なればこそ、そこに武力衝突をも伴うもまた摂理。 ㅤ心の準備はできている。ホメロスが闘っているのを観ている間、ホメロスが死ぬという最悪の事態の想像は常に胸に付きまとっていた。 現状、ホメロスが気絶しているだけで生きていることがその想像との唯一の差異であり、しかしその差異こそが陽介から逃走の選択肢を奪っていた。 ㅤクラウドが先に動いても、陽介は落ち着いてその動きを見据え、いつものようにジライヤを顕現させる。 ㅤ拳と刀の鈍い衝突音が響き渡る。二度、三度、その数が増していくにつれてジライヤへの負荷が増していく。 ㅤ堪らずジライヤを下がらせると、クラウドの視線はジライヤから陽介へと移った。当然、それはターゲットの変更を意味する。 「俺の願いの邪魔となるのなら、俺はお前を斬るだけだ。」 ㅤクラウドは明確な、殺害の意思を示す。そしてそれは同時に、動機の提示でもあった。 ㅤクラウドが言った、願いという単語。おそらくは優勝者への何でも願いを叶える権利とやらだろう。 あんなの、基本的に楽観主義的な思考の陽介から見ても眉唾ものだ。それならば当然、クラウドから見ても100%信頼出来るものなどではないはず。 クラウドの願いとは、それでも縋ってしまうようなものなのだろう。そんな願いの内容なんて分からない。だけどただ一つだけ、言えることがある。 「あんな奴らの手を借りなきゃ叶わない願いなんて、間違ってる!」 ㅤそれがどれだけ至高な願いであろうとも、自分の手で掴み取れず、マナやウルノーガのような悪しき存在無しには叶わない願いであれば、叶うべきでは無い。 悪魔のような催しで叶えた願いに、価値など見出してはならないのだ。 しかしその言葉は伝わらず、真っ直ぐに斬り込むクラウドとジライヤが再び衝突する。ジライヤの『突撃』に対し、魔剣グランドリオンの一閃。先ほどまでの応戦よりも一際大きな衝撃を受けたクラウドは陽介へと到達することが出来ずに下がらされる。 「俺の世界は、あの時から止まったままなんだ。」 「それでも! 俺たちは前を向いて生きていくしかねえんだよ!」 ㅤ次に先手を打ったのは陽介だった。クラウドが距離を置くのを許さず、威力よりも速度に重きを置いたソニックパンチによる追撃でクラウドの防御の手を休ませない。先ほど、クラウドに唯一まともにダメージを通した技でもある。 「詭弁だな。」 ㅤそして今度も、ジライヤによる攻撃は確かにクラウドの元に届いた。しかし手応えがほとんど感じられない。 ㅤクラウドからすればそれは一度見た技。『てきのわざ』マテリアが無いためラーニングまでは出来ないが、その軌道をハッキリ見切るには充分であった。 グランドリオンを縦に構えて最低限の負荷で受け流す。 「お前に俺の願いの何が分かる?」 ㅤジライヤをやり過ごし、陽介に斬り掛かるクラウド。 ㅤ対する陽介が図るのはペルソナを戻すまでの時間稼ぎだ。しかし、下がって距離を取る選択肢は無い。後方数メートルの地点でホメロスが気絶しているため、下がりすぎると巻き添えにしてしまう。 「分からねえよ。」 ㅤ斬撃を回避しながら、陽介は反論する。 ㅤ陽介が選んだのは、その場から大きく動かないままの回避。ホメロスが闘っていた時に使ったマハスクカジャの効力がまだ残っていたことが幸いし、クラウドの斬撃は空を切った。 陽介の右手に握られた龍神丸の刺突を警戒し、追撃せずに一歩引き下がった。 「話し合って分かり合えるんならいつでも大歓迎なんだがな。」 「興味ないね。」 停戦の申し入れを突っぱね、地を蹴って再び斬り掛かる。しかし戻ってきたジライヤが邪魔をし、グランドリオンの射程内には陽介を捉えられない。 「そこだっ!」 「甘いっ!」 クラウドの上空から放ったパワースラッシュはブレイバーで相殺される。クラウドは深く斬り込めず、陽介もまたクラウドに決定打を決められない闘いが続いていた。 ㅤしかしこの状況、不利な状態であることに陽介は気付いている。 業物のリーチの差であれば長剣と短刀、クラウドに分がある。だが陽介のペルソナが、そのリーチ差を逆転させる。これだけならば陽介が有利だ。 しかしペルソナの顕現は体力の消耗を伴う。リーチの有利な局面を維持している限り陽介の方が消耗が激しいということだ。 ただでさえホメロスとの闘いで傷を負っているにもかかわらずほぼ無傷の陽介と互角に渡り合っているクラウド。 もし、長期戦になってペルソナを多用することで互いのコンディションの差が埋まっていけば、陽介に待つのは死だ。 (いや……それでも、闘うしかねえんだ。) 首を振って浮かんでくる不安を押し殺す。結局、逃げるという選択肢は無いのだ。逃げれば少し離れて気絶しているホメロスが今度こそ殺されてしまう。 「ペルソナッ!」 考えるのを辞め、半ば自暴自棄的にアルカナを砕く。質より数と言わんばかりに、クラウドの上方に顕現させたジライヤがガルを連射する。結局のところ、逃げないのなら突撃あるのみだ。ごちゃごちゃ考える方が面倒臭い。 そしてそれは、意外にも有効に働いた。陽介の見据える敵はクラウドのみであるのに対して、クラウドは陽介を殺した後も他の参加者と衝突し続けるのだ。 小さいダメージであっても可能な限り避けたいと考え、ガルのひとつひとつをグランドリオンで弾く。 「今だッ!」 ガルへの対処にクラウドが気を取られているその間は、龍神丸のリーチまで接近する絶好のチャンス。陽介はここぞとばかりに飛びかかろうとする。 「お前も、ペルソナとやらの使い手なのか。」 しかし次の瞬間、陽介は凍りつくような殺気を感じ取った。咄嗟に攻撃を中断し後ずさる。そしてその直後、自身の感覚に誤りが無かったことを認識した。陽介の飛び込もうとしていた先の地点ではガルを弾き飛ばしながら形成された"凶"の字の斬撃が陽介を待ち構えていた。もし、あのまま攻撃していれば今ごろの陽介は細切れになっていただろう。想像し、悪寒が走ると同時に冷えた頭にクラウドの言葉への疑問も湧いてきた。 「どういう意味だよ。ペルソナを知ってんのか?」 「……ああ。お前もペルソナとやらで俺の道を阻むのなら……」 クラウドの頭に浮かぶのは、命を賭けた決意を見せた少女、天城雪子。 いのちのたまを用いてでも他人を守ろうとした彼女を、羨ましいと思った。その命と引き換えに星に希望を残したエアリスと彼女を、重ねずにはいられなかった。 「俺はただ、お前を払い除けるだけだ。」 「そうかよ……」 クラウドはその言葉の意味をハッキリとは語らなかった。しかし、暗示されたことを陽介は理解できた。放送で呼ばれた天城は、コイツに殺されたのだと。 そう認識した次の瞬間、目の前の景色が歪んで見えるほどの激しい怒りが陽介の脳内を支配していた。 完二に続いて天城まで。自称特別捜査隊から大切なピースがひとつひとつ零れ落ちていく。 灰色の日々に彩りをくれた奴らが、こんな馬鹿げた企画のために殺されていく。 どうすれば、大切な人が殺されるのが終わるんだ?どうすれば、大切な居場所を守ることができる?そんなの決まってる。 ――コイツを、殺すんだ。 「ああああああああ!!!!」 陽介の脳がその答えに至った瞬間、雄叫びを上げる。 それに対し、次に来るであろう攻撃にカウンターを仕掛けるべくクラウドは構える。『怒り』に任せた攻撃は、その精度を鈍らせる。 同じペルソナの能力を持っているため、知り合いであると考えた天城雪子の殺害を陽介に伝えたのは、スクカジャにより一撃一撃が正確にクラウドを捉える陽介の攻撃の精度を落とすための、クラウドの挑発だった。 「もう、うんざりなんだよ!」 しかし、陽介から怒りに任せた特攻が来ることはなかった。その代わり、その目は『悲しみ』に満ちているように見えた。 「誰が殺しただとか、何を願うかだとか、何でそんなことを考えなくちゃいけねえんだよ!」 陽介を止めたのは、ホメロスに対する怒りをも抑え込んだ鳴上悠の声だった。 ㅤ感情は本質を見失わせる。あの波乱の一年間を超えてなお感情で動くのならば、自称特別捜査隊で学んできたことがすべて無に帰してしまう。 それを、完二や天城が望んでいるわけがない。チリチリする指先も、口の中がカラカラに乾いた感覚も、目の奥から込み上げてくる熱も、そのすべてを強さへと昇華する強さを、陽介は持っている。それは、クラウドの現状の否定だった。 「お前もそんなに強いのなら、この状況打ち破って脱出できる可能性だって考えただろ!ㅤ皆で協力すれば誰も殺さなくていいとは思わなかったのかよ!」 ㅤクラウドも、陽介の語る可能性を考えなかったわけではない。少なくともいま、エアリスは生きている。それならばエアリスと、そしてティファ、バレット、ザックス等の有志と、再び手を取ってこの殺し合いからの脱出に向けて闘えたのなら、全員が生き残れる世界も有り得るのではないか、と。 ㅤ考えて、それでもなお否定した。人と人は立場が変われば闘うしかないものだと知っているから。 「そんなの……綺麗事だ!」 ㅤクラウドは一言吐き捨てる。 ㅤ雪子の殺害を告げることは、陽介の信念を挫く一手であるはずだった。一度、たった一度だけでも、陽介が明確な殺意を以て感情的に自分を殺そうとしたならば、陽介の語る正義は完全に説得力を失う。 ㅤクラウドは陽介を否定しなくてはならない。しかし、それを否定する言葉をクラウドは持たない。 ㅤだからこそ、斬り掛かる。しかし半ば感情的に振るわれた刀に殺意は篭れど精度は伴わず。 「綺麗事で何が悪い!」 ㅤ冷静にグランドリオンの到達点を分析したジライヤの拳はそれを真っ向から弾き返し、更に追撃の蹴りが受け身も許さずクラウドを平らな大地に叩き付けた。 (ダウンを取った……。今ならッ!) ㅤそれを隙と見た陽介は飛びかかる。地上に全身を打ち付け、揺れた視界が明瞭さ取り戻した時にクラウドが見たのは、龍神丸を掲げた陽介の姿。 ㅤしかしペルソナを除いた単純な身体能力で競えば、そこはクラウドの独壇場だった。咄嗟に突き出した脚が陽介の腹を打ち、蹴飛ばす。 「がはっ……」 ㅤ飛ばされた陽介は今度は逆に背を打ち付けられる。腹部に受けた強烈な蹴りも含め、平和な現代日本ではそうそう味わうことのない痛みだ。悶絶してもし足りない、闘いの痛み。 「綺麗事を並べても、俺には響かない。」 「だったら響かせてみせるさ。言霊使いも黙りこくる俺の伝達力を舐めんなよ?」 ㅤそれでも、立ち上がる。陽介もまた、クラウドを否定しなくてはならないのだから。 両者が主張だけでなく、根本的な倫理観から噛み合わないのも当然の帰結だった。何せ、互いに互いを知らないのだから。 陽介やその仲間たちが、命を尊ぶ日本という平和な世界を生きてきたことも。クラウドやその仲間たちが、人の命の価値が霞むほどに理不尽な死と身近すぎる世界を生きてきたことも。どちらも相手には伝達されない。 陽介にとってのクラウドは人を殺すというその一点のみを見ても悪であり、テロリズムが横行する世界を生きてきたクラウドにとっての陽介はただの偽善である。 だからこそ精神力の面でクラウドに軍配が上がるのも明白だった。いつも戦っていたシャドウという異形の怪物とは違い、生身の人間を相手にしている陽介。それに対し、元々多くの人間と衝突してきたクラウドの闘いは普段と何も変わらない。 さらに陽介は先ほど、ミファーとの闘いで死というものを目前にしたばかりである。 冷たい海の中で、仲間も誰もいない、絶対的な孤独。瞳を一度閉じてしまえばもう二度と光を取り込むことはないように思えてしまい、刃が迫る光景をじっと見つめていた。 あの時の感覚は今でもハッキリ思い出せる。きっと生きている限り、それが消えてくれることはないのだろう。そんなトラウマを植え付けるほどの『死』が、一瞬の攻防の中でも何度も陽介の脳裏を掠めるのだ。 逃げれば気絶しているホメロスが殺されると分かっていても。それを受け入れてでも逃げたいと、塵ほども思わずにいられようか。去年までは命懸けの闘いというものと完全に無縁だった陽介は、決して強い人間ではない。 「俺は絶対、お前を認めない! ペルソナァッ!」 それでも。強くなかったとしても。強くありたい人間。それが、花村陽介である。 ――『ガルダイン』 素早く体制を持ち直し、クラウドが次の動作を開始するよりも速くアルカナを砕いた。それに伴って顕現したジライヤの両の腕から二重のブースタがかかった風の刃が放たれる。 「……俺は、負けない。」 持ち前の速さと『素早さの心得』に凝縮された命中精度から繰り出される、最速の風の刃。元より浅くない傷を負ったクラウドを追い詰めるには充分すぎる威力。 「負けられないんだ!」 だが、クラウドは天城雪子を殺してここに立っている。いのちのたまを用いた彼女の魔法は更に強力なものだった。それならば、彼女の決意を叩き潰した自分はそれに劣るもので死ぬわけにはいかない。 その決意が、持ち主の心を映し出す剣に纏われる闇をいっそう重く、そして深くした。魔剣グランドリオンのひと薙ぎ。たったそれだけの所作で迫るガルダインを消滅させるほどに。 障害となる風の刃が消えたことで、クラウドは陽介に向かって駆ける。一方の陽介、ガル系のスキルが時間稼ぎにもならないことは証明済み。ホメロスが倒れているため大掛かりな回避も選択肢の外。すなわち取れる行動は、たったひとつ。 「迎え撃て、ジライヤ!」 迫りくる死を回避するための半ば反射的な攻撃だった。しかしそれは決定的な悪手となってしまう。 クラウドは雪子との闘いで理解していた。陽介も用いている『ペルソナ』という能力によって顕現した影は、その存在自体が操り手の死角を作り出してしまうことを。 クラウドの前進はフェイント。ジライヤが陽介の前に出た瞬間、クラウドは大地にグランドリオンを突き刺して強引にその歩みを一瞬止める。ジライヤ自体が死角となり 、直前までクラウドを捉えていたはずの拳は空を切った。その横を、グランドリオンを引き抜き、その勢いでクラウドは通り抜けて行く。 ジライヤをやり過ごしたクラウドは狙いを陽介に絞る。すでにクラウドはLIMITBREAK状態。 クラウドの中でも最速の斬撃、破晄撃を陽介に向けて放つ。 ジライヤの速度であれば対処できても、陽介本人はそうはいかない。 (くっ……避けられねえ……!) 陽介の心臓に向けて一直線に斬撃が迫る。 驚く暇も与えられずに迫ってきた、ミファーの振りかざした刃よりも。クラウドとの闘いの最中、何度も潜り抜けてきた多くの死線の中のどれよりも。 それは、明確な『死』の確信だった。 (すまねえ、天城。仇……とれなかった……!) 悔しさに打ち震えながら、陽介は迫る死を静かに待つことしかできなかった。 (……?) だが、待てど暮らせど死は訪れない。 「ボーッとするな、陽介!」 背後から聴こえた声が、夢現だった陽介の意識を半強制的に覚醒させた。 「うおっ!ㅤ何だこれ!?」 目の前に見えたのは、空中で静止した破晄撃。そして背後には、シーカーストーンを構えるホメロスの姿。 「お前の綺麗事は、絵空事のままでいいのか?」 シーカーストーンの数ある機能のひとつ、ビタロックによって陽介への斬撃は止められた。それが再び動き出す前に陽介は慌てて射線上から離れ、そして敵を見据える。 クラウドは、陽介の綺麗事を否定した。だがかつて闇を生きたホメロスには分かる。綺麗事とは、その名の通り綺麗なものなのだと。濁った者にとって、羨望の目でしか見られないものなのだと。クラウドの否定の言葉は、己の濁りから目を背けているに過ぎない。 その心の隙間から生まれる自己嫌悪は、この上ない隙となる。 「綺麗事ならば、濁った言葉など跳ね返せ!ㅤお前にはその力があるだろう!」 「ああ……やってやらあァ!」 そうだよな。闘ってるのは俺一人じゃねえ。 人ってのは弱い。簡単に迷うし、簡単にくじけたくなる。一人でできることなんて、たかが知れてるんだ。 そしてだからこそ、人は手を取り合うこともできる。 それは簡単なことのようで、だけど見栄とか、感情とかが邪魔をする。俺だって最初、ホメロスを殺そうとした。完二を殺したウルノーガの配下なんて、許したくなかった。手を取り合う、たったそれだけのことなのに、この世界では特にそれが難しいんだ。 俺一人じゃこんな化け物、勝てる気がしねえよ。ちょっとの攻防の間に何度死にかけたか分からねえ。 だけど、俺には仲間がいる。同じ敵を見据えて共に闘う仲間が。 「俺たちの決意を、この一撃に込めて!」 カッと見開かれた瞳の捉える先に、一枚のアルカナが浮き上がる。その先にある倒すべき敵、クラウドの姿を見据えたまま拳を握り込み、砕く。 (この気迫……相殺は困難か……?) 対して、クラウドは剣を斜めに構えて攻撃を逸らした上での返しの一撃を狙う。陽介の全身全霊の一撃、ただこの局面だけを耐え抜けば、陽介にクラウドの反撃を躱す余裕は生まれない。 アルカナの破砕音が響くと同時、ジライヤが姿を現す。そのタイミングも位置も何もかも、クラウドの予測の範囲内。意識を集中し、グランドリオンを握る手に力が籠ったその時。 ――『リーフストーム』 側面より撃ち出された高速の草葉の刃がグランドリオンに向けて真っ直ぐに注ぎ込まれた。 「しまっ……!」 ホメロスと同時に意識を取り戻したジャローダによる援護射撃。二度目であったためにその威力はがくっと落ちている。しかし、それを受けたグランドリオンは勢いのままにクラウドの手を離れ、地に落ちる。 「届け! ブレイブ…………ザッパァーーーーッ!」 様々な想いが込められたその右腕を、妨げるものは何も無い。 「エアリス……俺は……まだ……」 ここで、終わるのか? そう感じた瞬間、己の願いのために切り捨ててきた数多くの命が脳裏に過ぎった。 明日が来ることを疑わずに眠っていただけのミッドガルの人々。 新羅に立ち向かったアバランチの同胞たち。 チェレンを護るために闘ったレオナール。 志を同じくして共闘したチェレン。 居場所を守りたかった天城雪子。 ――そして、目の前でその背を貫かれたエアリス。 その誰もが願いを持っていた。そしてその誰もが、犠牲となった。 ここで負けるのならば、彼らの願いを、彼らの死を、ただただ無意味なものだったと貶めることに他ならない。 それならば、答えはひとつ。 「……終わりたく……ない……!」 クラウドの叫びに呼応するように、ザックの中の何かがキラリと光り輝いた。 「っ……!ㅤこの、光は……!!」 ホメロスはその光の正体を知っていた。だが、それを防ぐ一切の手段は無かった。 「嘘……だろ……」 ホメロス、ジャローダ、そして花村陽介。その場にいるクラウド以外の全員を包み込むように、銀色に輝く稲妻が辺り一面に降り注いだ。 弱点である雷属性の特技を受けてアルカナへと還っていくジライヤ。その衝撃により陽介は地に倒れ込み、元から意識を消失するだけの傷を負っていたホメロスとジャローダは再び意識を落としていった。 ――『シルバースパーク』 ㅤその雷撃は、そう呼ばれていた。ザックの中に眠っていた、シルバーオーブに封じられし特技の名。 願いへのクラウドの執念。それはかつての持ち主、ホメロスの持っていたそれに決して劣らず、ザックの中に眠っていたシルバーオーブの魔力を解き放つトリガーとなったのである。 ㅤ間もなくして稲妻は消えていく。気がつけば、その場に立っているのはクラウドのみであった。 →
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/27280.html
登録日:2014/01/26(日) 18 14 49 更新日:2022/01/22 Sat 19 23 47 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 P4U アンソロジー コスプレ ペルソナ4 作者は病気 森田夏菜 「幻影カーニバル」とはDNAメディアコミックス刊行の『ペルソナ4 ジ・アルティメットイン マヨナカアリーナ コミックアンソロジーvol.2』に収録されている一篇。作者は森田夏菜。 【ストーリー】 仲間を探して校内を探索する花村陽介。その時、後ろから声が。その声は鳴上悠だった。ようやく仲間と会えたことに安心する陽介だったがー。 「どこだ菜々子おォ!?」 「どうしたんだよ相棒 その格好!?」 鳴上の格好は堂島菜々子の普段着(足が見えている)の上に「菜々子♡LOVE」と書かれたハッピを着ていた上に、「菜々子♡命」と書かれた鉢巻を巻いているというとんでもない格好だった。だが当の本人は至って普通の表情をしているので鳴上の頭を心配する陽介だが、鳴上はそれを「菜々子を侮辱した」とみなし襲い掛かってきた。やむなく応戦し、勝利した陽介。2人は感覚を惑わされていたことに気づき、陽介は「そんな格好どこから調達した」と聞くが、鳴上の方も同じ事を聞いてきた。 「ナース服がお前の"普通"なのか?」 鳴上から今の自分がピンクのナース服を着ていると言われた陽介はここで幻覚も見せられていたことに気付く。鳴上は自分がナース本を買ってこれなかったので血迷って自ら着たと思ったと言い、即座に否定する陽介。逆に鳴上は今の姿の事を言われても「菜々子の服ならいい」と気にしなかった。 その後、勝者しか先に進めないと言われた陽介はナース服のまま先を進むことを強いられるハメに。そこに天城雪子の姿が。彼女の格好は「黒雪姫」をイメージしたシックのドレス姿であり安心した陽介だったが、直後彼女から暴言を浴びせられ激しくヘコむ。それでも戦おうとする陽介だったがミジンコの爪の先ほども興味ないしどうでもいいと言われ泣きながらも勝利した。 先を急ぐ陽介は精神的ダメージより肉体的ダメージの方がまだマシだと思い、里中千枝はどんな格好なのか想像していた。チャイナ服や"肉食獣"にちなんで猫耳というのもいいかなと思った矢先、千枝の声が。振り向くと彼女は本物のドラゴンとなっていた。「食べさせろぉ!」と襲い掛かる千枝に対しシャレにならないだろと応戦。何とか勝利する。 リボンナポリンを飲み、一息つく陽介。そこに巽完二の声が。近づく陽介だったが…… 「み~つけた♡」 「ガチムチ皇帝!!」 完二の姿はあのシャドウ完二と同じ物になっていた。だが一度戦ったことがあると陽介は自分を落ち着かせようとするが、さらに衝撃の光景が。 「ってお前フンドシは!? フンドシどした!?」 「すべてを解♡放」 「やめろ! 全年齢対象の本なのに発禁処分になるだろが!」 何とフンドシもしておらず大事な所は薔薇で隠してあるだけといういろいろとアウトな姿となっていたのだ。直後襲い掛かってくる完二。陽介はガルダインを放とうとするが、あることに気付く。 ガルダイン→巻き起こる風→吹き飛ぶ薔薇→大♡解♡放♡ 陽介は即座に技を封じ、肉弾戦で応戦。心身ともにやつれながらも一度も触れさせることなく完勝した。そこにエリザベスの姿が。彼女は陽介を見て「この荒ぶる戦場においてキュートでピンクなミニスカナース…『勇者』でございます。いえ、ここは『男の娘』…というべきでしょうか。」と感想を述べた直後、彼をカメラで撮影。姉たちにも見せようと言いながら去って行った。 「何ソレ ヤメテ 写真消してー!!」 そんなこんなでどうにか放送室に辿り着いた陽介。そこにはロボットの姿となり動揺しているラビリスの姿が。彼女は機械の姿が本当で人の姿は幻だなんておかしいと嘆くが、陽介はそんなの何の問題もない、むしろ今日一緒にいた人の中で君が一番まともだと言い切った。 「妹の服着たりまっ黒クロスケだったりドラゴンだったり超兄貴だったり人の恥ずかしい写真撮ったりするより全っ然まとも! ちっともおかしくない!!」 「うわー そんな人おるんや…」 陽介の話を聞いたラビリスはあんたがウチでもいい気がしてきたとシャドウを受け入れた。こうして、陽介の犠牲…ではなく活躍によって事件は一件落着したのであった。 【余談】 この話で雪子が言った「ミジンコの爪」だがミジンコにも「尾爪」と呼ぶ腹部に爪のような物が存在する。これは種を特定するのに大事な箇所である。 また彼女が言った「どうでもいい」は間違いなくキタローネタだろう。 この他、原作以上に暴走しているシャドウ完二だが、作者もまさか続編の『P4U2』でシャドウモードとしてシャドウ完二が使えるようになるとは思わなかっただろう。ちなみに、ゲーム中ではフンドシをしている(当たり前である)。 追記・修正お願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] なにこれ超読みたい。 -- 名無しさん (2014-05-06 15 05 31) 何これ超買いたい -- 名無しさん (2014-05-06 16 42 34) CV堀江由衣のドラゴンは是非動物園で飼育してもらいたい。(自宅は不可) -- 名無しさん (2014-09-20 18 48 19) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/game_rowa/pages/175.html
たくさんのものを手に入れた。 仲間との絆。宿命の終焉。そして、新羅カンパニーやメテオの脅威の去った、平和な星。 しかしその結末を迎えるために、零れ落ちたものがあった。その時に生まれた哀しみも怒りも、前に進むためには必要なものだった。 星の命に比べれば、きっと誰もが多少の犠牲は仕方ないと言って吐き捨てるのだろう。 だけど俺には、その零れ落ちたものが何よりも大切だったんだ。 誰かにとっての多少の犠牲は、俺にとっては星よりも重かったんだ。 闘いの中で、答えを見つけた。 人はそれぞれ現実を持っていて、それぞれが己の現実を守るために闘っている。 アバランチも新羅もその芯は正義でも悪でもなく、己の望む現実を通そうとしていただけに過ぎない。 でもそれでいい。正義も悪も自分の現実を邪魔しない。するべきじゃないんだ。邪魔をしていいのは自分の現実を妨げる敵だけ。 「俺は俺の……現実を生きるッ!」 それならばこれは、現実の奪い合いだ。自分の望む現実を生きるために、相手の望む現実を奪う。 殺し合いを命じられたというのは、そういうことなんだろう? ザックスの人格ではなく自分自身の人格で、エアリスとの物語をやり直すんだ。 それが誰にとっての正義でなくても構わない。自分にとって、それが正義であるならば。それが俺の願う現実だ。 変わらぬ信念を胸に、クラウドは闇を纏った聖剣―――もはや魔剣と化したグランドリオンを振るう。 「それこそが幻想だって……言ってんだろうがッ!」 その信念を、花村陽介はたった一言吐き捨てた。 闘いの中で、答えを見つけた。 現実は辛い。理不尽な暴力によって失われるものは数知れずあるし、自分は自分のなりたい理想像にまったく届いちゃいねえ。届くビジョンも見えやしねえ。 だけど、それでいいんだ。目を背けてさえいなければ、いくらでも前には進める。虚飾を拒み、真実を追究する意志。それさえあれば自分を見失うことだけは絶対に無い。自分の生きる在り方、その全てが現実なのだから。 陽介もまた、その信念は変わらない。変わらないからこそ、陽介のシャドウ『ジライヤ』は陽介と同じように前を向き、クラウドに真っ向から立ち向かう。 クラウドの今は他人の犠牲の上に成り立っている。 目的のための犠牲は必要なものだと割り切っていながらも、だけどたった一つ、そう割り切りたくない犠牲があった。クラウドは今、その自己矛盾から目を逸らして闘っている。目を逸らさねば、多くの犠牲を正当化できないから。 一方で、陽介が今ここにいるのは自分と向き合い、真実から目を逸らさなかったからだ。 久保のように己のシャドウを否定し続けていれば。あるいは真実を見極めようとせずにあの時に生田目を殺してしまっていれば。人々は霧の中でシャドウへと化していたはずだ。 両者ともに、相手の主張は己の旅路で得た答えを否定するものだった。棄却し、ねじ伏せなくてはならないものだった。 ㅤそれならば当然、その主張の行先は衝突する未来のみである。そして此処が殺し合いを生業とする世界なればこそ、そこに武力衝突をも伴うもまた摂理。 ㅤ心の準備はできている。ホメロスが闘っているのを観ている間、ホメロスが死ぬという最悪の事態の想像は常に胸に付きまとっていた。 現状、ホメロスが気絶しているだけで生きていることがその想像との唯一の差異であり、しかしその差異こそが陽介から逃走の選択肢を奪っていた。 ㅤクラウドが先に動いても、陽介は落ち着いてその動きを見据え、いつものようにジライヤを顕現させる。 ㅤ拳と刀の鈍い衝突音が響き渡る。二度、三度、その数が増していくにつれてジライヤへの負荷が増していく。 ㅤ堪らずジライヤを下がらせると、クラウドの視線はジライヤから陽介へと移った。当然、それはターゲットの変更を意味する。 「俺の願いの邪魔となるのなら、俺はお前を斬るだけだ。」 ㅤクラウドは明確な、殺害の意思を示す。そしてそれは同時に、動機の提示でもあった。 ㅤクラウドが言った、願いという単語。おそらくは優勝者への何でも願いを叶える権利とやらだろう。 あんなの、基本的に楽観主義的な思考の陽介から見ても眉唾ものだ。それならば当然、クラウドから見ても100%信頼出来るものなどではないはず。 クラウドの願いとは、それでも縋ってしまうようなものなのだろう。そんな願いの内容なんて分からない。だけどただ一つだけ、言えることがある。 「あんな奴らの手を借りなきゃ叶わない願いなんて、間違ってる!」 ㅤそれがどれだけ至高な願いであろうとも、自分の手で掴み取れず、マナやウルノーガのような悪しき存在無しには叶わない願いであれば、叶うべきでは無い。 悪魔のような催しで叶えた願いに、価値など見出してはならないのだ。 しかしその言葉は伝わらず、真っ直ぐに斬り込むクラウドとジライヤが再び衝突する。ジライヤの『突撃』に対し、魔剣グランドリオンの一閃。先ほどまでの応戦よりも一際大きな衝撃を受けたクラウドは陽介へと到達することが出来ずに下がらされる。 「俺の世界は、あの時から止まったままなんだ。」 「それでも! 俺たちは前を向いて生きていくしかねえんだよ!」 ㅤ次に先手を打ったのは陽介だった。クラウドが距離を置くのを許さず、威力よりも速度に重きを置いたソニックパンチによる追撃でクラウドの防御の手を休ませない。先ほど、クラウドに唯一まともにダメージを通した技でもある。 「詭弁だな。」 ㅤそして今度も、ジライヤによる攻撃は確かにクラウドの元に届いた。しかし手応えがほとんど感じられない。 ㅤクラウドからすればそれは一度見た技。『てきのわざ』マテリアが無いためラーニングまでは出来ないが、その軌道をハッキリ見切るには充分であった。 グランドリオンを縦に構えて最低限の負荷で受け流す。 「お前に俺の願いの何が分かる?」 ㅤジライヤをやり過ごし、陽介に斬り掛かるクラウド。 ㅤ対する陽介が図るのはペルソナを戻すまでの時間稼ぎだ。しかし、下がって距離を取る選択肢は無い。後方数メートルの地点でホメロスが気絶しているため、下がりすぎると巻き添えにしてしまう。 「分からねえよ。」 ㅤ斬撃を回避しながら、陽介は反論する。 ㅤ陽介が選んだのは、その場から大きく動かないままの回避。ホメロスが闘っていた時に使ったマハスクカジャの効力がまだ残っていたことが幸いし、クラウドの斬撃は空を切った。 陽介の右手に握られた龍神丸の刺突を警戒し、追撃せずに一歩引き下がった。 「話し合って分かり合えるんならいつでも大歓迎なんだがな。」 「興味ないね。」 停戦の申し入れを突っぱね、地を蹴って再び斬り掛かる。しかし戻ってきたジライヤが邪魔をし、グランドリオンの射程内には陽介を捉えられない。 「そこだっ!」 「甘いっ!」 クラウドの上空から放ったパワースラッシュはブレイバーで相殺される。クラウドは深く斬り込めず、陽介もまたクラウドに決定打を決められない闘いが続いていた。 ㅤしかしこの状況、不利な状態であることに陽介は気付いている。 業物のリーチの差であれば長剣と短刀、クラウドに分がある。だが陽介のペルソナが、そのリーチ差を逆転させる。これだけならば陽介が有利だ。 しかしペルソナの顕現は体力の消耗を伴う。リーチの有利な局面を維持している限り陽介の方が消耗が激しいということだ。 ただでさえホメロスとの闘いで傷を負っているにもかかわらずほぼ無傷の陽介と互角に渡り合っているクラウド。 もし、長期戦になってペルソナを多用することで互いのコンディションの差が埋まっていけば、陽介に待つのは死だ。 (いや……それでも、闘うしかねえんだ。) 首を振って浮かんでくる不安を押し殺す。結局、逃げるという選択肢は無いのだ。逃げれば少し離れて気絶しているホメロスが今度こそ殺されてしまう。 「ペルソナッ!」 考えるのを辞め、半ば自暴自棄的にアルカナを砕く。質より数と言わんばかりに、クラウドの上方に顕現させたジライヤがガルを連射する。結局のところ、逃げないのなら突撃あるのみだ。ごちゃごちゃ考える方が面倒臭い。 そしてそれは、意外にも有効に働いた。陽介の見据える敵はクラウドのみであるのに対して、クラウドは陽介を殺した後も他の参加者と衝突し続けるのだ。 小さいダメージであっても可能な限り避けたいと考え、ガルのひとつひとつをグランドリオンで弾く。 「今だッ!」 ガルへの対処にクラウドが気を取られているその間は、龍神丸のリーチまで接近する絶好のチャンス。陽介はここぞとばかりに飛びかかろうとする。 「お前も、ペルソナとやらの使い手なのか。」 しかし次の瞬間、陽介は凍りつくような殺気を感じ取った。咄嗟に攻撃を中断し後ずさる。そしてその直後、自身の感覚に誤りが無かったことを認識した。陽介の飛び込もうとしていた先の地点ではガルを弾き飛ばしながら形成された"凶"の字の斬撃が陽介を待ち構えていた。もし、あのまま攻撃していれば今ごろの陽介は細切れになっていただろう。想像し、悪寒が走ると同時に冷えた頭にクラウドの言葉への疑問も湧いてきた。 「どういう意味だよ。ペルソナを知ってんのか?」 「……ああ。お前もペルソナとやらで俺の道を阻むのなら……」 クラウドの頭に浮かぶのは、命を賭けた決意を見せた少女、天城雪子。 いのちのたまを用いてでも他人を守ろうとした彼女を、羨ましいと思った。その命と引き換えに星に希望を残したエアリスと彼女を、重ねずにはいられなかった。 「俺はただ、お前を払い除けるだけだ。」 「そうかよ……」 クラウドはその言葉の意味をハッキリとは語らなかった。しかし、暗示されたことを陽介は理解できた。放送で呼ばれた天城は、コイツに殺されたのだと。 そう認識した次の瞬間、目の前の景色が歪んで見えるほどの激しい怒りが陽介の脳内を支配していた。 完二に続いて天城まで。自称特別捜査隊から大切なピースがひとつひとつ零れ落ちていく。 灰色の日々に彩りをくれた奴らが、こんな馬鹿げた企画のために殺されていく。 どうすれば、大切な人が殺されるのが終わるんだ?どうすれば、大切な居場所を守ることができる?そんなの決まってる。 ――コイツを、殺すんだ。 「ああああああああ!!!!」 陽介の脳がその答えに至った瞬間、雄叫びを上げる。 それに対し、次に来るであろう攻撃にカウンターを仕掛けるべくクラウドは構える。『怒り』に任せた攻撃は、その精度を鈍らせる。 同じペルソナの能力を持っているため、知り合いであると考えた天城雪子の殺害を陽介に伝えたのは、スクカジャにより一撃一撃が正確にクラウドを捉える陽介の攻撃の精度を落とすための、クラウドの挑発だった。 「もう、うんざりなんだよ!」 しかし、陽介から怒りに任せた特攻が来ることはなかった。その代わり、その目は『悲しみ』に満ちているように見えた。 「誰が殺しただとか、何を願うかだとか、何でそんなことを考えなくちゃいけねえんだよ!」 陽介を止めたのは、ホメロスに対する怒りをも抑え込んだ鳴上悠の声だった。 ㅤ感情は本質を見失わせる。あの波乱の一年間を超えてなお感情で動くのならば、自称特別捜査隊で学んできたことがすべて無に帰してしまう。 それを、完二や天城が望んでいるわけがない。チリチリする指先も、口の中がカラカラに乾いた感覚も、目の奥から込み上げてくる熱も、そのすべてを強さへと昇華する強さを、陽介は持っている。それは、クラウドの現状の否定だった。 「お前もそんなに強いのなら、この状況打ち破って脱出できる可能性だって考えただろ!ㅤ皆で協力すれば誰も殺さなくていいとは思わなかったのかよ!」 ㅤクラウドも、陽介の語る可能性を考えなかったわけではない。少なくともいま、エアリスは生きている。それならばエアリスと、そしてティファ、バレット、ザックス等の有志と、再び手を取ってこの殺し合いからの脱出に向けて闘えたのなら、全員が生き残れる世界も有り得るのではないか、と。 ㅤ考えて、それでもなお否定した。人と人は立場が変われば闘うしかないものだと知っているから。 「そんなの……綺麗事だ!」 ㅤクラウドは一言吐き捨てる。 ㅤ雪子の殺害を告げることは、陽介の信念を挫く一手であるはずだった。一度、たった一度だけでも、陽介が明確な殺意を以て感情的に自分を殺そうとしたならば、陽介の語る正義は完全に説得力を失う。 ㅤクラウドは陽介を否定しなくてはならない。しかし、それを否定する言葉をクラウドは持たない。 ㅤだからこそ、斬り掛かる。しかし半ば感情的に振るわれた刀に殺意は篭れど精度は伴わず。 「綺麗事で何が悪い!」 ㅤ冷静にグランドリオンの到達点を分析したジライヤの拳はそれを真っ向から弾き返し、更に追撃の蹴りが受け身も許さずクラウドを平らな大地に叩き付けた。 (ダウンを取った……。今ならッ!) ㅤそれを隙と見た陽介は飛びかかる。地上に全身を打ち付け、揺れた視界が明瞭さ取り戻した時にクラウドが見たのは、龍神丸を掲げた陽介の姿。 ㅤしかしペルソナを除いた単純な身体能力で競えば、そこはクラウドの独壇場だった。咄嗟に突き出した脚が陽介の腹を打ち、蹴飛ばす。 「がはっ……」 ㅤ飛ばされた陽介は今度は逆に背を打ち付けられる。腹部に受けた強烈な蹴りも含め、平和な現代日本ではそうそう味わうことのない痛みだ。悶絶してもし足りない、闘いの痛み。 「綺麗事を並べても、俺には響かない。」 「だったら響かせてみせるさ。言霊使いも黙りこくる俺の伝達力を舐めんなよ?」 ㅤそれでも、立ち上がる。陽介もまた、クラウドを否定しなくてはならないのだから。 両者が主張だけでなく、根本的な倫理観から噛み合わないのも当然の帰結だった。何せ、互いに互いを知らないのだから。 陽介やその仲間たちが、命を尊ぶ日本という平和な世界を生きてきたことも。クラウドやその仲間たちが、人の命の価値が霞むほどに理不尽な死と身近すぎる世界を生きてきたことも。どちらも相手には伝達されない。 陽介にとってのクラウドは人を殺すというその一点のみを見ても悪であり、テロリズムが横行する世界を生きてきたクラウドにとっての陽介はただの偽善である。 だからこそ精神力の面でクラウドに軍配が上がるのも明白だった。いつも戦っていたシャドウという異形の怪物とは違い、生身の人間を相手にしている陽介。それに対し、元々多くの人間と衝突してきたクラウドの闘いは普段と何も変わらない。 さらに陽介は先ほど、ミファーとの闘いで死というものを目前にしたばかりである。 冷たい海の中で、仲間も誰もいない、絶対的な孤独。瞳を一度閉じてしまえばもう二度と光を取り込むことはないように思えてしまい、刃が迫る光景をじっと見つめていた。 あの時の感覚は今でもハッキリ思い出せる。きっと生きている限り、それが消えてくれることはないのだろう。そんなトラウマを植え付けるほどの『死』が、一瞬の攻防の中でも何度も陽介の脳裏を掠めるのだ。 逃げれば気絶しているホメロスが殺されると分かっていても。それを受け入れてでも逃げたいと、塵ほども思わずにいられようか。去年までは命懸けの闘いというものと完全に無縁だった陽介は、決して強い人間ではない。 「俺は絶対、お前を認めない! ペルソナァッ!」 それでも。強くなかったとしても。強くありたい人間。それが、花村陽介である。 ――『ガルダイン』 素早く体制を持ち直し、クラウドが次の動作を開始するよりも速くアルカナを砕いた。それに伴って顕現したジライヤの両の腕から二重のブースタがかかった風の刃が放たれる。 「……俺は、負けない。」 持ち前の速さと『素早さの心得』に凝縮された命中精度から繰り出される、最速の風の刃。元より浅くない傷を負ったクラウドを追い詰めるには充分すぎる威力。 「負けられないんだ!」 だが、クラウドは天城雪子を殺してここに立っている。いのちのたまを用いた彼女の魔法は更に強力なものだった。それならば、彼女の決意を叩き潰した自分はそれに劣るもので死ぬわけにはいかない。 その決意が、持ち主の心を映し出す剣に纏われる闇をいっそう重く、そして深くした。魔剣グランドリオンのひと薙ぎ。たったそれだけの所作で迫るガルダインを消滅させるほどに。 障害となる風の刃が消えたことで、クラウドは陽介に向かって駆ける。一方の陽介、ガル系のスキルが時間稼ぎにもならないことは証明済み。ホメロスが倒れているため大掛かりな回避も選択肢の外。すなわち取れる行動は、たったひとつ。 「迎え撃て、ジライヤ!」 迫りくる死を回避するための半ば反射的な攻撃だった。しかしそれは決定的な悪手となってしまう。 クラウドは雪子との闘いで理解していた。陽介も用いている『ペルソナ』という能力によって顕現した影は、その存在自体が操り手の死角を作り出してしまうことを。 クラウドの前進はフェイント。ジライヤが陽介の前に出た瞬間、クラウドは大地にグランドリオンを突き刺して強引にその歩みを一瞬止める。ジライヤ自体が死角となり 、直前までクラウドを捉えていたはずの拳は空を切った。その横を、グランドリオンを引き抜き、その勢いでクラウドは通り抜けて行く。 ジライヤをやり過ごしたクラウドは狙いを陽介に絞る。すでにクラウドはLIMITBREAK状態。 クラウドの中でも最速の斬撃、破晄撃を陽介に向けて放つ。 ジライヤの速度であれば対処できても、陽介本人はそうはいかない。 (くっ……避けられねえ……!) 陽介の心臓に向けて一直線に斬撃が迫る。 驚く暇も与えられずに迫ってきた、ミファーの振りかざした刃よりも。クラウドとの闘いの最中、何度も潜り抜けてきた多くの死線の中のどれよりも。 それは、明確な『死』の確信だった。 (すまねえ、天城。仇……とれなかった……!) 悔しさに打ち震えながら、陽介は迫る死を静かに待つことしかできなかった。 (……?) だが、待てど暮らせど死は訪れない。 「ボーッとするな、陽介!」 背後から聴こえた声が、夢現だった陽介の意識を半強制的に覚醒させた。 「うおっ!ㅤ何だこれ!?」 目の前に見えたのは、空中で静止した破晄撃。そして背後には、シーカーストーンを構えるホメロスの姿。 「お前の綺麗事は、絵空事のままでいいのか?」 シーカーストーンの数ある機能のひとつ、ビタロックによって陽介への斬撃は止められた。それが再び動き出す前に陽介は慌てて射線上から離れ、そして敵を見据える。 クラウドは、陽介の綺麗事を否定した。だがかつて闇を生きたホメロスには分かる。綺麗事とは、その名の通り綺麗なものなのだと。濁った者にとって、羨望の目でしか見られないものなのだと。クラウドの否定の言葉は、己の濁りから目を背けているに過ぎない。 その心の隙間から生まれる自己嫌悪は、この上ない隙となる。 「綺麗事ならば、濁った言葉など跳ね返せ!ㅤお前にはその力があるだろう!」 「ああ……やってやらあァ!」 そうだよな。闘ってるのは俺一人じゃねえ。 人ってのは弱い。簡単に迷うし、簡単にくじけたくなる。一人でできることなんて、たかが知れてるんだ。 そしてだからこそ、人は手を取り合うこともできる。 それは簡単なことのようで、だけど見栄とか、感情とかが邪魔をする。俺だって最初、ホメロスを殺そうとした。完二を殺したウルノーガの配下なんて、許したくなかった。手を取り合う、たったそれだけのことなのに、この世界では特にそれが難しいんだ。 俺一人じゃこんな化け物、勝てる気がしねえよ。ちょっとの攻防の間に何度死にかけたか分からねえ。 だけど、俺には仲間がいる。同じ敵を見据えて共に闘う仲間が。 「俺たちの決意を、この一撃に込めて!」 カッと見開かれた瞳の捉える先に、一枚のアルカナが浮き上がる。その先にある倒すべき敵、クラウドの姿を見据えたまま拳を握り込み、砕く。 (この気迫……相殺は困難か……?) 対して、クラウドは剣を斜めに構えて攻撃を逸らした上での返しの一撃を狙う。陽介の全身全霊の一撃、ただこの局面だけを耐え抜けば、陽介にクラウドの反撃を躱す余裕は生まれない。 アルカナの破砕音が響くと同時、ジライヤが姿を現す。そのタイミングも位置も何もかも、クラウドの予測の範囲内。意識を集中し、グランドリオンを握る手に力が籠ったその時。 ――『リーフストーム』 側面より撃ち出された高速の草葉の刃がグランドリオンに向けて真っ直ぐに注ぎ込まれた。 「しまっ……!」 ホメロスと同時に意識を取り戻したジャローダによる援護射撃。二度目であったためにその威力はがくっと落ちている。しかし、それを受けたグランドリオンは勢いのままにクラウドの手を離れ、地に落ちる。 「届け! ブレイブ…………ザッパァーーーーッ!」 様々な想いが込められたその右腕を、妨げるものは何も無い。 「エアリス……俺は……まだ……」 ここで、終わるのか? そう感じた瞬間、己の願いのために切り捨ててきた数多くの命が脳裏に過ぎった。 明日が来ることを疑わずに眠っていただけのミッドガルの人々。 新羅に立ち向かったアバランチの同胞たち。 チェレンを護るために闘ったレオナール。 志を同じくして共闘したチェレン。 居場所を守りたかった天城雪子。 ――そして、目の前でその背を貫かれたエアリス。 その誰もが願いを持っていた。そしてその誰もが、犠牲となった。 ここで負けるのならば、彼らの願いを、彼らの死を、ただただ無意味なものだったと貶めることに他ならない。 それならば、答えはひとつ。 「……終わりたく……ない……!」 クラウドの叫びに呼応するように、ザックの中の何かがキラリと光り輝いた。 「っ……!ㅤこの、光は……!!」 ホメロスはその光の正体を知っていた。だが、それを防ぐ一切の手段は無かった。 「嘘……だろ……」 ホメロス、ジャローダ、そして花村陽介。その場にいるクラウド以外の全員を包み込むように、銀色に輝く稲妻が辺り一面に降り注いだ。 弱点である雷属性の特技を受けてアルカナへと還っていくジライヤ。その衝撃により陽介は地に倒れ込み、元から意識を消失するだけの傷を負っていたホメロスとジャローダは再び意識を落としていった。 ――『シルバースパーク』 ㅤその雷撃は、そう呼ばれていた。ザックの中に眠っていた、シルバーオーブに封じられし特技の名。 願いへのクラウドの執念。それはかつての持ち主、ホメロスの持っていたそれに決して劣らず、ザックの中に眠っていたシルバーオーブの魔力を解き放つトリガーとなったのである。 ㅤ間もなくして稲妻は消えていく。気がつけば、その場に立っているのはクラウドのみであった。 →
https://w.atwiki.jp/mahoroba_bing/pages/16.html
トヨウケビメとデートしてぇ - 名無しさん (2023-01-26 01 44 03) 5aあ、メンバー商人したで! - 陽介 (2022-01-18 22 47 11) 承認ありがとうございます! - 5aあ (2022-01-18 22 51 03) いいってことよ!ってか誤字ったな! - 陽介 (2022-01-18 23 02 58) ミイラ所持者!?←[助けて~]一反木綿のスタンプ「やっちゃるじね!」を使うと発言 驚愕兎所持者!?←イースターバニーのスタンプ「びっくりピョン!」を使うと発言 酔いどれ所持者!?←[さとられ泥酔]さとりのスタンプ「私は正気ですよ」を使うと発言 - 名無しさん (2022-01-18 21 29 06) やりよる…今日びんぐ観察日記つけられてた説 サンキュー! - 陽介 (2022-01-18 22 42 13) 山月記やめろ←その白虎は、我が友、李徴子ではないか?等の山月記のセリフに類似したチャットをすると発言 - 名無しさん (2022-01-18 02 28 50) サンキュー! - 陽介 (2022-01-18 02 46 29) 気持ちよさそう←暮露暮露団の[気持ちいいわね]のスタンプを使うと発言、・英検一級!?←英語のチャットに対して発言、のはず - 名無しさん (2022-01-18 02 20 07) その二つめっちゃ気になってたから助かる! - 陽介 (2022-01-18 02 46 19) 教師所持者!?← [授業をはじめるのです!]セントエルモの火の[勉強するのです]を使うと発言 ・卓球所持者!?←[卓球勝負じゃ]殺生石・安芸の[一球入魂じゃ]を使うと発言 - 名無しさん (2022-01-18 02 16 37) ありがてぇありがてぇ… - 陽介 (2022-01-18 02 46 03) 盛るわよ←[新たなる挑戦!]輝夜姫の[盛り上げるわよ]を使うと発言 - 名無しさん (2022-01-18 02 09 28) ナイスゥ! - 陽介 (2022-01-18 02 13 49) ボゼスタンプへの反応が「インディアン!?」となっていますが、正しくは「カービィのアピールみたいな挨拶しやがって」ですね。恐らく元ネタはスマブラかと。 - 名無しさん (2022-01-17 22 00 05) 草 そうだったか~ 証拠SSしかもらってなかったからボゼと予想しちゃってたわw - 陽介 (2022-01-18 00 13 02) というかあれか、インディアン!?と複数混在してるかもしらんのな…とりあえず同じとこにまとめといた! - 陽介 (2022-01-18 00 15 48) 安宅丸アバタースタンプの反応が「温泉所持者!?」となっていますが、正しくは「バスタオル所持者!?」だと思います。なお、イワエアバタースタンプには反応したことはないと思います。 - 名無しさん (2022-01-17 21 58 16) サンキュー!ちょっとそのへん曖昧だった! - 陽介 (2022-01-18 00 12 20) 5aあ編集手伝ってくれてありがとな! - 陽介 (2022-01-17 03 07 30) 荒らし沸くの早すぎてほんま草だった - 陽介 (2022-01-17 02 58 06) びっくりするよね - アンキモ (2022-01-17 02 25 52) なぜ作ったし - ゆーてぃあ (2022-01-17 01 48 19) ウニ「びんぐ語録まとめ作ろうぜ」 俺「作るか」 ウニ「@Wiki辺りでいいんじゃね?」 →作成 - 陽介 (2022-01-17 01 54 48)
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8460.html
前ページ次ページゼロのペルソナ 悪魔 意味……悪意・悪循環からの目覚め タバサと陽介の主従はガリアの首都リュティスを訪れていた。 シュヴァリエ・ド・ノールパルテル その理由は北 花 壇 騎 士としての任務を北花壇騎士団団長であるイザベラから受けるためだ。 ガリア王国の王女でもあるイザベラが住まう宮殿プチ・トロワに入る前にタバサは以前したように使い魔を外で待たせようとした。 だがタバサなりの使い魔への気遣いは陽介が来るようにとのイザベラからの指示のために断念することになった。 タバサはイザベラのいつものいびりが陽介に向かうのではと心配した。 しかし陽介はタバサに「心配すんなよ」と言って彼女を待合室に残し、イザベラのいる謁見室に向かっていった。 メイドに連れられて陽介は大きな扉をくぐった。 扉が大きいだけあって部屋もなかなかの大きさで、天井も高い。 扉の直線状にイザベラはいた。RPGで王様のいるところのように階段状に高くなったところでずいぶんと高そうな椅子に鷹揚に腰かけている。 「久しぶりじゃない、ヨースケ」 「そーですね」 王族相手にどんな敬語を使ったらいいのかわからないが、とりあえず以前喋った時と同じノリで喋っておく。 特にイザベラがそれで気を害した様子もないのでこの調子でいいのだろう。 「これに今回の詳細が書かれているわ」 イザベラはポケットから一つの手紙を出した。 ポケット付きとか案外実用性の高いドレスだな。と陽介は思った。 陽介がどうでもいいことを考えているとき、使用人が陽介に手渡すべくイザベラから手紙を受けとろうとするが、 彼女はわずらわしそうに手をふってそれを制した。 「ヨースケ、あなたが直接取りに来なさい」 使用人たちの間にどよめきが走ったのを陽介は感じた。別に声にだして呻いたわけでもないが、 動揺が走ったのは確かだ。イザベラが何か妙なことをしたのかと思ったが、陽介には思い当たらない。 彼らの様子をいぶかしげに思いながら陽介は玉座の階段を上がって行く。 そしてイザベラと同じ高さの段に立った。 使用人たちが息を飲んだようだが何に彼らがそれほど気を張り詰めているのか陽介にはやはり分からない。 21世紀の日本育ちの高校生である陽介には知るはずもないことだが、 平民が玉座において王族と同じ高さに立つなど許されるはずもなく、 まして今イザベラは座っているため、陽介は見下ろす格好になっている。 使用人たちは全員陽助が不敬罪になるのではと肝をひやしているのであった。 しかし当人たちはどこ吹く風と言った様子である。 陽介はともかくハルケギニアでも指折りの高貴な血を持つイザベラは王族に要求される煩雑な作法を熟知しているというのに。 イザベラがその高貴な振る舞いを実践できているかどうか疑問もなくもないが、 しかし自分への礼儀を徹底させることに関しては熱心なイザベラの光景は使用人たちの目に奇異なものと映っていた。 「わたしはあいつを妬んでる。認めるよ」 イザベラは小さな声で言った。陽介にだけ聞こえるように。 「だからわたしはあいつに死ぬような任務を押し付けるのさ」 イザベラは陽介をきっと睨む。 陽介は目をそらさない。 「んなことしたって何の解決にもなんねーと思うぜ」 陽介は言葉を選ぶように額を押さえてから呟いた。 「やっぱ、話あったほうがいいんじゃないか。一人じゃ二人の関係は変わらねえと思うんだよ」 じっと見つめていたイザベラはくくくと笑った。 「あんたは王女さまにタメ口かい?」 陽介は慌てて訂正する。 「え……、っと自分はそう思うと思います!」 さらにイザベラは笑う。 テンパったためにへんな敬語しかでなかった。 陽介は言いなおそうとするが、彼女は笑いながら「いいよ別に」と言ってそれを制する。 笑い終わったあと、イザベラから表情が消えた。 「もう遅いんだよ。それに今回の任務は本当に危険だ。話し合う前に死んじまうさ」 陽介はイザベラの目を見て言った、強い意思を込めて。 「死なねえよ。タバサを死なせたりなんかさせねえ。 もちろん俺も死ぬ気はねえ。……だからきっと遅すぎるなんてことはないと思うぜ」 言い終わるなり陽介はイザベラに背を向けて退出する扉へと歩んでいった。 出て行く前に陽介はイザベラを見たが、顔を下げていたため表情は窺い知ることは出来なかった。 世界七大美味だという極楽鳥の卵を取ってくる。それが今回、騎士タバサに課せられた任務だった。 鳥の卵を取ってくるというだけでは簡単そうであるが、もちろん簡単ならばタバサに仕事は回ってこない。 極楽鳥は年二度卵を産む。今の季節はたしかに産卵時期のひとつなのだが、本来はこの時期に卵を取ることはない。 というのは極楽鳥は火竜山脈という6000メイル級の山が並ぶ山脈で卵を産むのだが、この時期は火竜山に子育てのために火竜も集まってくるからなのだ。 なので、火竜たちの居ない時期を狙って卵を取りに行くのが普通であり、そうでない時に卵を取りに行く者は自殺志願者としか思われない。 そして今、タバサと陽介はまさしくその危険な時に火竜山脈を登っていた。もちろんタバサも陽介も死ぬ気などさらさらない。 他人がその様子を見れば、そう思わないとしても。 「あっちい……」 陽介はゲンナリしたようにこぼした。 登山で体を動かしたからというのもあるが、事実として火竜山脈は暑いのだ。 通常、山というものは登れば登るほど気温は下がっていく。 そして一定以上の高さを持つ山は頂に雪がつもっているものだが、火竜山脈は6000メイルの高さがあるにも関わらず一片の雪も認めることはできない。そ れは山のいたるところで溶岩流が噴出しているためだ。 そのため、山は高温に保たれ、その上降雨は全て水蒸気となるため火竜山脈は蒸し風呂同然だった。 陽介は腰に学ランを巻きつけていた。 だが巻いている分だけそこが熱を持ち、学ランを捨てたい衝動にかられる。 「この湯気にもうんざりだわ……。 俺って湯気にあんまり良いイメージないんだよな。なんか完二の思い出すっつーか」 「でも、わたしたちを隠してくれる」 陽介の言ったことの後半を無視しながらタバサは言った。 そのいつも変わらない涼しい口ぶりに陽介は感心する。 タバサの体も陽介と同様に多量の汗をかいているから暑いわけではないのであろう。 泥で汚れ、汗で前髪は額にへばり付いていた。白いシャツは汗で体に密着し体のラインを顕にしている……。 そこまで考えて、俺は思考を振り払うように頭を振る。 なんでこんな小さい子の体をじっと見てるんだ!アホか!変態か! 実際は17歳の陽介に対して15歳のタバサがそこまで幼いと言えないのだが、陽介はタバサを外観から12、13歳くらいだと考えているのであった。 そんな陽介の苦悩などお構いなしにタバサは登っていくので、陽介も余計な思考を振り払いついていく。 登っている途中、瑠璃色に光る鳥の羽が二人の視界を過ぎて行った。 「お、あれがそうじゃねーのか?」 「そう」 タバサはこくりと頷き、おおよそ極楽鳥が産卵する高さまで来たので卵を捜索すると陽介に言った。 また、極楽鳥が産卵する場所ということは火竜が生息するので気をつけるようにとも。 陽介は火竜に気をつけ小声で了承の意を伝えた。 それから20分ほど黙々とふたりは極楽鳥の卵を探した。 しかし、わかりやすいところには産まないのか卵は見つからない。極楽鳥が飛ぶ姿は時々見かけるのだが。 陽介がめげずにタバサに言われた通り岩の間を探っていると、二つの瑠璃色の卵を発見した。 ずいぶんと大きく、鶏の卵の十倍はあるんじゃないかと思われる。 「おい、タバサ。それっぽいの見つけたぜ」 陽介が小声でタバサを呼んだ。ちゃんと聞こえたらしくタバサが走り寄って来る。 その姿を確認して、陽介は岩の切れ間に手を伸ばした。届かない。 ならばと陽介は体をねじ込み、両手を伸ばす。 卵に手が届いた。なんとか片手ずつに大きな卵を持って、穴を抜け出そうする。しかし…… 「あれ……?やべ、抜っけねえ!」 上半身全てを岩の切れ目に入れてしまったために体が引っかかりぬけなくなってしまった。 あせって腰の位置をずらしてなんとか脱出しようとするが抜けない。 鳥がなにやら甲高い声で鳴いているが、気にも留めなかった。今は穴から抜け出すことが全てにおいて最優先だ。 陽介が極楽鳥の卵を発見したらしいので、タバサは陽介に近づいた。 陽介は上半身まですっぽりと岩の切れ間に体を入れて卵を取ろうとしていた。 これで任務も完了かと気を抜きかけたとき、タバサは空で極楽鳥がさえずっている意味に気付いた。 タバサが振り返ると、靄の中に大きな影がある。 それはタバサがエルフと並んで戦いたくない魔獣、竜だ。 しかもタバサの前に姿を現したそれは通常の火竜よりも大きく、十八メイルはあろうかという個体である。 頭には雄にあるトサカがなく、鱗の色は雄よりも色濃く燃え滾る炎のようだ。老成した雌である。 火竜は一鳴きした。極楽鳥の鳴き声に似ていたが、それは事実とは逆であろう。 極楽鳥は火竜を呼ぶためにその真似をしているのである。だが声質は似ていても声量はまるで違う。 空気が震える。それが伝染したかのようにタバサも身震いした。 その圧倒的過ぎる姿。人間がどれほど修練しようと勝てない存在それが彼女の前に存在した。 背後で陽介が「うわっ、なんの声だ!?」と騒いでいるのが聞こえる。くぐもった声なので未だに穴の中なのだあろう さらに火竜は天を仰いで咆哮した。そしてどうやらそのまま火を吹こうとしているようだ。 口から火炎が溢れる。そのわずかな火炎でも、周りの空気は揺らめく。信じられない熱量だった。 タバサに戦慄が走る。逃げ出したくなる。しかし、一度背後を振り返ってから、タバサは地面に足を突き立てた。一歩も引かないつもりである。 なぜなら彼女の後ろには彼女の使い魔が居るのだ。 自分は魔法使いだ。使い魔を見捨てることなど出来ない。 タバサは強く決意し、呪文を唱える。 「ラグーズ・イス・イーサ・ウォータル……」 ジャベリン タバサの杖の先に、太く、大きな“氷の槍”が膨れ上がる。 火竜は目の前の口を大きく開き、岩をも溶かすブレスを吐いた。 同時にタバサもジャベリンを解き放つ。 炎の息吹と氷の槍が空中で激しくぶつかった。 氷の槍が、巨大な熱量で溶けていく。 炎の息吹が、その冷気で燃え尽きていく。 激しい水蒸気が立ち上る。 時間にすれば一瞬の出来事だ。 氷と炎が生み出した霧が晴れる。 火竜も魔法使いも攻撃を放つ前の姿のままで佇んでいる。 タバサはじっと火竜を睨みつけていた。その視線は射るようだが、実際は先ほどの槍でもう精神力は空っぽになり彼女には魔法は撃てない。 もはや彼女に自衛の手段は何もなく、今残っているものは魔法使いとしての矜持とさきほどまで自身の持ちうる最高の氷槍を持っていたときの残滓である。 火竜はしばらくうなり続けていたが、それから再び首を天に向けた。再び炎の息吹を放つつもりだ。 タバサは絶望に包まれる。ついぞさっきまでの戦う者の表情はない。 それは彼女が“雪風”と呼ばれるようになってから、最も感情的な表情的なものだったかもしれない。 彼女にはもう目の前の巨大な存在に対抗することはできない。 それが火を噴けば自分の命は簡単にかき消えてしまうだろう。 タバサの口が小さく動いた。彼女が何を言おうとしたのかは彼女自身にもわからない。 その時、背後から陽介の叫びが聞こえて回転する円形の刃が火竜へと飛んだ。 そしてそれは天にのばされた火竜の首に接触し、切断した。 タバサは呆然とする。 何が起きたというのか? 切断されてかろうじて乗っかっていた切断された上部が切断面からズレて地面に落ちたときも 目の前で何が起きているか分からなかった。 「大丈夫か!タバサ!」 背後からかけられた声でタバサは後ろを振り向いた。 そこには彼女の使い魔、花村陽介が佇んでいた。両手に瑠璃色の卵を持って。 自分の使い魔が助けてくれたということにタバサはようやく気がついた。 タバサは地面にぺたりと座りこむ。 「大丈夫か!おい?」 陽介がもう一度尋ねてくる。タバサは力なくこくりと頷いた。 いつもの寡黙ではない。言いたいことがあるはずなのに声が出ないのだ。 「よかった……」 陽介がほっとしたように言った。 そのとき再び大きな足音が聞こえてきた。先ほどの火竜の鳴き声を聞いたからか三匹の火竜が現れる。 「んな!増援かよ!?」 陽介が驚いたように言うが、タバサは無感動だった。 現れた3匹は先ほどの雌火竜に比べてこぶりとはいえ、一匹の火竜より脅威に違いないというのにタバサの心は波打たなかった。 恐怖感が鈍くなっているのは、一匹でもかなわない恐ろしい火竜が三匹も現れたせいなのか、 それとも隣に立っている使い魔のせいなのか、タバサにはわからない。 現れた3匹の火竜は明らかに動揺していたようだった。おそらく強力な火竜は仲間の死体を見ることに慣れていなかったためであろう。 だが敵を前にしての逡巡はあまりにも無用心であり、そのツケは高い代償であがなわれた。 「頼むぜ、ペルソナ!」 陽介の背にペルソナ、スサノオが現れた。 スサノオは力を貯め、そして体の回りを回る刃を天に放つと同時に力を放出した。 三匹の火竜は嵐よりも激しい風の渦に襲われる。疾風の刃で体を切り刻まれ、 その体を地面に叩きつけて激しい音を立てながら地面に倒れ伏した。 タバサはただただその光景を見ているばかり。 「よしっ、終わりィ!」 タバサは座り込りこんだまま使い魔を見た。 今は黒い上着を脱いで白い服になっている以外はまるでいつもの様子だ。 とても魔法使いが死力を持ってしても倒せない火竜を4体もほふった人には見えない。 陽介はタバサに話しかけようとして、何かに気付いたらしく、卵を地面においてから改めて言った。 「ほらっ、立てっか」 ぼうっとしているタバサに陽介は手を伸ばした。 タバサはその手を取った。 イザベラは薄着でベッドの上で横になりながら、小さいころの思い出をよみがえらせていた。 自分は小さいころかあの従妹が嫌いだった。 いや、陽介が行ったようにコンプレックスを抱いていたというほうが正しいだろうか。 彼女は自分よりも小さいというのに魔法がうまかったために嫉妬した。 また、もしかすると彼女はいつも両親と楽しげにしていたことにも嫉妬していたのかもしれない。 彼女はあのころは良く笑う少女であった。 自分には母はおらず、父は自分と遊んでくれることなどなく顔を合わせること少なかった。 それを寂しいと思ったことがないわけではないが、そういうものだと割り切っていた。 しかし本当は自分の従妹のように親と楽しそうに話す姿に憧れていたのだろうか。 わからない、理由はわからないが実際自分は従妹に嫉妬していて 彼女の父が死んだ時も母の気が父の手で狂わされたときもかわいそうだとは思わなかった。 彼女に冷たい仕打ちをし続けた。しかしその結果はどうであろう? ただただ虚しさが積っただけだ。一度でも満足できたことなどない。 やり直すべきなどであろうか。遅すぎることなんてないと思うなどと陽介は言ったが、遅すぎるとしか思えない。 そもそも今回の任務は危険すぎる。いくら腕利きの彼女とはいえ帰ってこれるとは……。 思考にふけっている時、イザベラの寝室に使用人が入ってきて彼女の予想を裏切ることを告げた。 「シャルロットさまが参りました」 イザベラは呼び方を人形七号に訂正させることもせずに、使用人の言葉を吟味した。 それからイザベラの言葉をじっと待つ使用人に彼女を使い魔と共に謁見の間に通すように命じた。 陽介とタバサは極楽鳥の卵を渡すべくプチトロワを再び訪れた。 今回はイザベラの命令で二人で謁見の間に来ていた。 「ふうん、本当に生きて帰って来るとはねえ……」 尊大に腰かけたままイザベラは言った。 それからイザベラは黙りこくった。何度か口を開こうとするが、思いなおしたように口を閉じる。 それを見て、用はないと判断した卵を渡したタバサはさっさと退出しようとする。 「あ、おい」 と陽介が呼び止めようとするが、構わずに去ろうとする。 本当は宮廷の適当な者に卵を渡して帰るつもりだったのだ。 それがなぜかイザベラは直接陽介と共に渡しに来るように命じたから来ただけだ。 タバサはこの従妹を嫌っているわけではない。だが、特に騎士になってからというもの、下らない嫌がらせをされ続けていた。 だから彼女が面倒な用事を思いつくのを待つつもりはなかった。 しかし退出しようとするタバサはイザベラは呼び止められた。 「ま、待ちな、用はまだ済んじゃいないよ!」 その声が若干上ずっていることが気にかかりながらタバサは踵を返して戻った。 用はあるといいながら、イザベラはタバサが待つとなると再び何か言おうとして、それを打ち消してを繰り返した。 その作業が何度目かに及んで、ようやくイザベラは喋り始めた。 「卵を二つ取ってきたんだよね?」 いつもの尊大さが感じられない質問に、タバサはいつものようにこくりと頷く。 「実はその依頼主はどっかの大貴族でね、大金払って北花壇騎士団に依頼してきたのさ」 イザベラは早口に言う。 「でだ。極楽鳥の卵は一つ渡せばそれで済むんだ。だから一つ3人で食べちまわないかい?」 イザベラは言い切ったという表情を浮かべている。 一方タバサは表情には出さなかったが、眉をひそめる思いだった。いったい何を考えているのだろう。 しかし、陽介の反応は気楽なものだ。 「えっ、いいのか?あれってめちゃくちゃ高級なシロモノなんだろ?」 「あ、ああ、構わないよ」 イザベラはなぜかホッとした様子だった。 「ラッキー!じゃあご相伴に預かろうぜ、タバサ」 自分の使い魔に勧められ、タバサはうなずいた。もともと彼女にはイザベラの申し出を断る権利などないのだ。 それから三人は部屋を変えて、長机についた。 上座にはイザベラ。そして彼女を挟むようにタバサと陽介が座っている。 極楽鳥の卵が調理されている間、会話はなかった。 タバサはいつもどおり寡黙で、イザベラはそわそわとしていただけで何も喋らない。 陽介が「3人で食うにはこの机長すぎね?俺たち端しか使ってないし」と言っても二人とも何も答えてくれなかった。 そんな時間もほんのしばらくで、シェフの手によって料理された極楽鳥の卵が運ばれて来た。 「お、来た来た……ってゆで卵?」 陽介は自分の前に置かれた料理を見て、きょとんとして言った。 こんな豪華な宮殿で調理されるというのだからどのような調理がされるのかと思っていたら、庶民的に調理されていたのだから当然だろう。 「いい食材はね、シンプルな料理法が一番おいしいのよ」 とイザベラが言った。 なるほど、ゆで卵というシンプルな調理法にも関わらず、それからはゆで卵とは思えないほどいい香りがしていた。 「たしかにこんなデカイゆで卵ってだけでたまんねえな、ちょっと」 陽介はさきほどとは打って変わって目の前の卵を楽しみそうに眺める。 マンが肉ではないがそれに近いものがあると陽介は思った。 「それじゃあ、お食べなさい。ヨースケ、シャルロット」 久しぶりに従妹の名前を呼んだイザベラはタバサをちらりと見た。タバサは特に変わった様子もなく、ゆで卵を口に運んでいた。 イザベラは小さく溜め息を吐くと二人に遅れて三等分させた極楽鳥のゆで卵を食べた。 それから沈黙が流れる。 タバサはいつもどおりのポーカーフェイスだが、イザベラと陽介は似たような表情を浮かべている。それは困惑とか戸惑いとかいったものだ。 陽介は遠慮がちに喋り始めた。 「さすが世界七大珍味っつーの?庶民的な俺の舌には合わないつーか……」 「珍味じゃなくて美味よ。あと、わたしの舌にも合わないわね」 イザベラが陽介の言葉を訂正しつつも同調した。 そしてタバサがはっきりと言い捨てた。 「まずい」 イザベラと陽介は大きく笑った。 結局、極楽鳥の卵は火竜のいない時期に取ってきたものだけが味が良く、 タバサの手に入れた卵は食用に適したものではなかった。 しかし、イザベラにとってこの食事は忘れられないものとなる。 悪循環は終わる。 前ページ次ページゼロのペルソナ
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/4731.html
登録日:2012/04/22 Sun 23 45 02 更新日:2024/04/15 Mon 21 03 02 所要時間:約 6 分で読めます ▽タグ一覧 アムネジア ペルソナ4 ヴァイスシュヴァルツでは厨性能 事件の被害者 先輩 姉 小西早紀 小説ではヒロイン 悲劇のヒロイン 救われないヒロイン 涙腺崩壊 陽介の想い人 鬱 小西早紀とは、PS2ソフト『ペルソナ4』の登場人物。 八十神高校の三年生で、花村陽介の先輩に当たる。 また、一年生に弟の小西尚紀がいる。 年上であり、姉と言う立場からか、面倒見がよく、争い事は嫌いな様子。 実家は商店街の酒屋だが、大型スーパーのジュネスでバイトをしている。 また、花村陽介の思い人であり、彼女も先輩と言う立場からか、陽介を「花ちゃん」の愛称で読んでいる。 ゲームでは、主人公が転校してきてから3日後に初登場となる。 アルバイト中のエプロン姿で、陽介らと雑談を交わす。この時の彼女の柔和な感じから気に入った人も多いだろう。 時は過ぎて夜、主人公が居間でテレビを見ていると、小西先輩らしき姿が。 どうやら先輩はぶら下がり事件の被害者、山野真由美の第一発見者だったらしく…… 以下、ネタバレ 巷で噂のマヨナカテレビを試した主人公、するとそこには先輩らしき人影が。 気になって次の日も試した陽介はそこに映るのが小西先輩と確信する。 しかし 翌日、小西早紀は電柱にぶら下がった状態で、遺体で発見された。 偶然テレビの中に入る事が出来る能力を持っていた主人公達は彼女の死の真相を確かめるため、テレビの中と言う異世界に入り込む。 その世界で出会った謎の生き物クマの助力を得てたどり着いたのは、小西先輩の家「小西酒店」だった。 中に入り、聞こえてきたのは…… 「小西酒店の早紀ちゃん、ジュネスでバイトしてるらしいのよ」 「ジュネスが出来てから、商店街は寂れる一方……なに考えているのかしらねぇ」 「くそ、誰なんだよ一体…!」 「何度言ったら分かるんだ早紀ッ!よりによって、あんな店でバイトするなんてッ!金か?それとも、男かッ!?」 「これ…先輩の親父さんの声?」 「ずっと……言えなかった……私、花ちゃんの事…」 「ウザいと思ってた」 小西先輩にとって、陽介は店長の息子だから、都合が良いと思って仲良くしていただけだった。 毎日毎日商店街の人々に陰口を叩かれ、家では怒鳴られ、とても息苦しい日々を送っていたのだ。 それを頻繁に心配してくる陽介も、疲れきった彼女にとっては己を縛りつける存在だったのだろう。 これは後に、陽介の影の発現に関わってしまう。 下心がありながらも彼女の死を誰よりも悲しんでいた陽介を「ウザい」と思っていた事を知り、ここで彼女を嫌悪した人もいるだろう。 しかし、それは心労から来るものであり、陽介の事は最初に会った時に言っていた「お節介でウザいけど、イイ奴」と言うのが、彼女の本音だろう。 (実際、影の発言は基本的に歪んでいて、へんな方向に行きやすい。例として完二の影など。また陽介の事をウザいと思う自分を肯定するとペルソナが発現するため、否定して暴走したシャドウに殺されたと思われる) また、親の都合で田舎に引っ越して、商店街の人々から陰口を叩かれる退屈な毎日を送っていた陽介に「親は親、キミはキミでしょ?」と言っていたり、 ゲーム中のモブキャラの発言からも「誤解されがちだけど、いい人なんだから!」と言われてる辺り、 彼女の人格は温厚で面倒見が良く故に、自らを押し殺してしまう、悩める少女だったのだろう。 「親は親、キミはキミでしょ?」 この言葉は、彼女が最も言って欲しかった言葉だったのかも知れない。 小説『ペルソナ4 ~キリノアムネジア~』では、いつもとは違うテレビから入った陽介達の前に、早紀にそっくりな少女「アムネジア」が登場する。 一切の記憶が無く、陽介に「記憶喪失(アムネジア)」と名付けられ、行動を共にする。 落ち着いた物腰で、皆のお姉さん的立場となり、千枝と雪子と一緒に温泉に入ったりする。 千枝と雪子と一緒に温泉に入ったりする。大事な事なので二回言いました。 以下、ネタバレ 「花ちゃんは私が守るから!」 アムネジアの正体、それは小西早紀の影そのものだった。 彼女は、破壊本能だけしか無い影の中では珍しい、争いを好まぬ、本物同様の温厚な人物であった。 だが、テレビの世界の霧が晴れるとき、普段抑圧されているシャドウの破壊本能は解き放たれる。 それはアムネジアも例外ではなく、気付いたら本物の小西早紀を殺していた。 自らを殺してしまった罪悪感から、彼女のシャドウとしての力「忘却」を使い、記憶を消し去ったのだ。 しかし、陽介と関わり、彼の優しさに触れてくうちに、徐々に記憶を取り戻していく。 そして現れた山野真由美の影に襲われた陽介を助けるため、「自らを縛る象徴」である鎖を具現化し、陽介達と共闘する。 最終決戦では、山野真由美の影「イワナガ」の攻撃を弾き返しながら、陽介達と抜群の連携を見せ、忘却の力でイワナガの記憶を消し去る。 が、イワナガの最後の足掻きにより陽介は大穴に引きずり込まれてしまう。 我は影、真なる我― こんなことで、死なせはしない!! 漆黒のロングドレスに、肘まで覆うレースの手袋、氷雪のような肌に、幾重にも重なる鎖― 彼女はシャドウとしての姿を表し、陽介を救い出す。 シャドウである自分を化物と呼び、お礼なんて似合わないと言うアムネジアに、 陽介は「あんたは先輩の中から生まれた、紛れもなく先輩の一部なんだ」と受け入れる。 無事、クマと合流し、現実の世界へ帰っていった陽介達。 アムネジアはクマに、「本体を失ったシャドウは、いつか霧に溶けて消える」と言う悲しい事実を知らせる。 「静かに、力を使わずに過ごせば、長く消えずに済む」と言うクマに「また、花ちゃんに悲しい思いをさせたくない」と自らの消滅と引き換えに、 彼女と過ごした記憶を消し去る。 「その寂しさも。一瞬の後忘れるよ。」 現実の世界に戻ってきた陽介達。なにかを失った。だけど、なにを失ったのか、見当もつかない。もどかしいのか、せつないのか、悲しいのか。 己の感情を理解出来ずに、涙が溢れてしまう陽介。 いつもとは違うテレビを見て、陽介は呟く。 「……気のせい、なんだよな」 そう。気のせいだから――思い出さないで 陽介は、そんな誰かの声を聞いた気がした。 追記、修正は 忘れた何かを思い出してから、お願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 声がエロい。 -- 名無しさん (2014-01-27 10 41 54) なるほど 彼女は彼女なりに苦しんでいたのだな -- 名無しさん (2014-02-21 13 19 53) 陽介が好きになった人なんだから優しい人だったに違いないと思うよ -- 名無しさん (2014-02-21 13 28 46) ちょっとだけなにかがズレていたら、小西先輩も『心の鎧』を手に入れてたのかな・・・ -- 名無しさん (2014-07-27 03 00 20) 死ぬことである意味救われたというのが -- 名無しさん (2014-07-27 03 12 58) 霧のアムネジアは、ぜひともP4Aのスタッフにアニメ化してもらいたいなぁ・・・ -- 名無しさん (2014-07-27 06 59 40) 兼役の多いゲーム本編だけど、その中でもこの人の中の人は特に分かり易すぎて困るw -- 名無しさん (2014-10-14 23 48 35) かわいそうなキャラだったなあ。特に悪いことをしたわけでもないのに。 -- 名無しさん (2014-11-12 21 16 10) 仮にペルソナが覚醒したとしたら、アルカナは弟のコミュと同じ「刑死者」だろうか -- 名無しさん (2015-07-20 23 19 54) 5から初めて遊んでいたけど、 田舎の陰湿さが象徴していて怖っと思った -- 名無しさん (2017-06-28 21 49 18) きっと、『影』の中にはアムネジアみたいに、心優しい『影』もいるんだろうなぁ。 -- 名無しさん (2017-10-25 18 46 32) ↑ちょっと違うけど5の双葉の影は「現実から目をそらすな、お前は本当は悪くない。生きようとしろ」と引きこもってた本体に発破かけてたな。 -- 名無しさん (2019-06-09 05 03 35) 彼女が死んでしまったことが,陽介をウザいと罵る影を「否定」したことの証左というのがなんとも切ない -- 名無しさん (2020-04-05 15 40 03) 山野アナの遺体を発見してしまった事がマヨナカテレビに映る原因となってそれが生田目が接触する要因となって更に足立の接触を誘発してしまうという悲劇の歯車が悪い方悪い方にどんどん回ってしまったな。 -- 名無しさん (2023-08-24 13 11 41) 弟のコミュを進める時期によっては「犯人を捕まえた→模倣犯でした」「真犯人を捕まえた→冤罪で無実でした」「今度こそ真犯人を捕まえた→現職のアレな上に殺害手段は立証不可能」と死体蹴りな出来事がだんだん積み重なっていくので周囲が腫れもの扱いするのも家庭崩壊しかかっているのももうどうにもなんねぇ・・・って感想しか出てこなくなる。主人公と会って少しは救われただろうけどそれでもずっと傷は残り続けるんだろうなって切ない・・・ -- 名無しさん (2024-04-15 21 03 02) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/45kssos/pages/22.html
本編のシリアスブレイカーです 19 ◆WzpMn05TJA 真弓「本編の内容のシリアスブレイカー死者スレも募集しますわ」 涼子「早速4人も居ますわね……」 渚「皆さんよろしくです」 沙都子「歓迎しますわー」 由香「よろしくお願いします」 チャド「…………」(交ざれない) 105 ◆WzpMn05TJA 佳乃、上条さん、マリアさん、理樹が死者スレにログインしました マリアさん「皆さん紅茶でもどうぞ」 上条さん「ありがとうございますマリアさん……ってマリアさんも今ログインしたばっかりですよ!?」 沙都子「そうですわよ、それはわたくしの仕事ですわマリアさん」 マリアさん「あらあら」 沙都子「関係ありませんけどログイン寸前のレナさんが気がかりですわ」 マリアさん「信じる事も大事ですよ沙都子さん」 上条さん「そうだぜ北条。仲間を信じろ」 沙都子「そうですわね」 渚「佳乃ちゃんは春原さんにですか」 佳乃「あの親友はなんなんですかね?仲良く1、2でマーダーになって」 渚「しかも両方keyヒロインって何の恨みがあるんでしょうか…」 由香「理樹君ごめんね。先に私が死んじゃったからお兄ちゃん黒化するなんて」 理樹「謙吾も真人も活躍してるのに…。そんなのってないよ」 由香「……その名言は恭介さんに言ってくださいよ」 シャルル「ギアス勢は黒化ならぬ空気化か?」 郷田「シークレット勢も予約しかないから空気ですわ」 涼子「ハルヒ勢は人気ですよ?」 シャルル「長門はワシの嫁だが予約はないらしいな」 涼子「年齢考えてください」 郷田「何人子供と孫居ると思ってんですか」 シャルル「ジョークじゃ」 チャド(あれ?また俺空気!?) 219 ◆WzpMn05TJA 2周目解禁記念! ガッカリ王子、征服王イスカンダル様がログインしました 陽介「扱いが露骨に違うじゃねーか!」 ライダー「ワハハハハ」 沙都子「陽介さんとイスカンダルさんの活躍を見れば露骨に扱いを変えたくなるってもんですわ!」 陽介「……セリフ一言もなく散ったガキに言われたかねーよ!しかも誰にも名前呼ばれずに出たの死亡確認だけの奴!」 由香「……う」 理樹「いやいやいや、由香ちゃんも該当しちゃうからそれ。大人気ないって陽介」 陽介「大体支給品がマリアさんとかと違って差が激しいじゃないですか」 マリアさん「これも運ですわ」 渚「あれ?前の回の『少女の戦』を見ると御剣さんの支給品の方が酷くないですか?」 佳乃「甲子園の土に羽根付きのランドセル、こけしですよ?」 上条さん「ランサーのブーメラン、柔道着、ミニカーも相当酷いよな」 陽介「つーかなんで俺だけ死者スレ全員からこんな扱いなんだよ!?おっさんにもなんか言えよ」 沙都子「イスカンダルさんは格好良かったですわ〜。死亡なんて冗談だと思ったぐらいですわ」 上条さん「俺の死も評判良かったって作者言ってたけどおっさんも相当だぜ!」 理樹「アサシンさん、ギャルゲ2ndと別人で怖かったよ。改心してほしいな」 ライダー「ワハハハハ、次のロワでは余は大活躍じゃ」 陽介「やっぱり扱い違うのな…。みんなしておっさん、おっさんって!死者スレ全員酷いぜ……。みんな嫌いだ……」 チャド「え?」 ↑ 何も言ってないのに陽介に嫌われた人 298 ◆WzpMn05TJA 魅ぃちゃん、ダメツナ、あゆみがログインしました 陽介「新年早々死者スレかよ!?」 理樹「縁起が悪いね」 上条さん「そのふざけた縁起をぶち殺す!」 イスカンダル「おっ!?そえぶだな。新しいスタイルじゃな」 沙都子「それにしてもわたくしの登場は回想シーンの見知らぬ幼い子供扱いじゃありませんの」 由香「同じ中学生なのに出番のあるそらおと勢やひぐらし勢やかりんさんズルい」 渚「なんかみんな新規の人放置してないですか?」 上の渚以外「みんな俺(僕、余、わたくし、私)と関係ないもん」 マリア「沙都子さんは魅音さん、由香さんはあの狂人の知り合いじゃないですか」 佳乃(マリアさん、篠崎さんに殺されたの恨んでる……) シャルル「まぁ、良い。新年あけましておめでとう諸君」 みんな(お前が締めんのかよー!?) 魅音「どうするー?混ざれない」 あゆみ「あはははははは(死んだのに気付いていない)」 ツナ「あれ?新入者3人だよね?なのに待機1人多くない?」 チャド「…………」 697 : ◆RmIe4rjRnw:2012/05/13(日) 20 21 51 ID y6zUJl5M0 倉田佐祐理、戦慄のガチムチ皇帝、ロロ雑巾、ミイラがログインしました 佐祐理「皆さんどうぞよろしくお願いします」 上条さん「こ、こちらこそ(笑顔が可愛いな)」 沙都子「見るからにデレデレですわね」 ダメツナ「よ、よろしく(京子ちゃん並みのかわいさだ)」 マリア「あらあら、だらしない顔ですね」 シャルル「ふむ...(将来が期待できるやもしれん)」 ほぼ全員(ダメだこのおっさん...早くどうにかしないと...) 陽介「完二、オメーこんな早くに脱落してんじゃねーよ!」 完二「んなっ、センパイだってそうでしょーが!」 陽介「てゆーかガチムチ皇帝ってなんだよ!?やっぱそのケがあるのか!?」 完二「ふ、ふざけんじゃねえっ!!」 理樹「にぎやかだなぁ」 ロロ(くそっ、馴れ合いやがって...ここにいるってことは死んだってことだぞ!? ...こいつら分かってるのか!?) 渚「あなたも春原さんに殺されたんですね」 佳乃「私に続いて二人目なんて、春原さん、運がいいんですね」 由香「どんどん人が死んでて怖い...」 魅音「詩音も暴走してるし、なんか殺伐としてきたねー」 あゆみ「あはははははは」 ロロ(この女共、なんで僕の周りで話を始めるんだ!?) チャド「......結局混ざれないのか......」 ???「トントン」 チャド(誰かが肩を...?)クルッ ミイラ「......」 チャド「!?...ミイラ!?」 ミイラ「......グッ」 チャド「......グッ」 【チャドとミイラ 意志疎通確認】 785 ◆WzpMn05TJA 12/07/25(水) 14 59 38 ID AgHcBWyYO 御剣総一、古里炎真、長沢勇治、日向秀樹がログインされました 炎真「やー、ツナ君僕も死んじゃったよ〜」 ツナ「セイバーさんは強いからね〜」 炎真「ツナ君と仲良く同じ場所で逝っちゃった」 陽介「ってお前ら!?なんでそんな仲良しなの!?」 ツナ「え?僕の友達だよ?」 炎真「ジャンプで今協力して復讐者と戦ってるよ?」 理樹「マンガなら恭介に聞くか。ケータイ繋がるかな?」 陽介「ちょっと待って!?今回突っ込みの理樹不在?大体ダメツナを倒したのお前じゃん」 理樹「今日の僕は沙耶ルートのバカ理樹だよ!」 炎真「ツナ君をよく知らないのにダメツナって言うなよ」 陽介「突っ込みが追いつかない。理樹はRefrain参戦時期だし、炎真もツナの事憎んでたじゃん」 炎真「ん?あぁ、シャルルに継承式編の記憶消されてた」 陽介「それがもしロワの真実だとしたらどうすんだ!?」 炎真「…………せっかくボンゴレ倒したのに死亡かよ」 陽介「もみ消しやがった……」 長沢「御剣の兄ちゃんばっかり復活してズルいぞ!」 総一「いや、まだ決まってねーし。もしかしたらルルーシュの母、マリアンヌがギアス使って俺の体使ってる可能性あるから」 陽介「お前らバカなの!?さっきの会話の二の舞じゃん。大体長沢も悪霊じゃん」 長沢「俺は主人公だからな!しかも放送が終わってからの2周目の投下は俺が一番最初なんだぜ!」 陽介「死んだ奴が最初に2周目来るのは前代未聞だな」 日向「つーかSSSって最初から死んでるんだからAB勢って死者スレに自由に出入り出来るんじゃね?なぁ音無」 音無「んぁ?」 陽介「お前が連れて来たんだろ、そういうのは無し」 音無「だって予約入んなくて暇だし」 陽介「音無の意志かよ!」 陽介「というか今日の死者スレは強制終了だ」 理樹「陽介に、……そんな資格あるかな?」 陽介「あるよ」 カオス過ぎたので強制終了
https://w.atwiki.jp/gamerowa/pages/33.html
堕ちた竜騎士 ◆FjuL6rOGS. 「殺し合いだって?冗談じゃないぜ」 気が付けば一方的に殺しあえと言われた挙句、さらに見知らぬ場所へと 飛ばされた花村陽介は自らが置かれた状況に当惑を隠せないでいたが、 つい先程この殺し合いへの参加者が集められたホールでの惨状を思い出す。 道化師のような男にローザと呼ばれた女性が見せしめとしてに殺された事を。 忌々しい事に人の命をたやすく奪った金属製の首輪は、陽介の首にもしっかりと はめられていた。無闇に主催者には逆らえない、だけど。 (こんなふざけた事だけは絶対に許せねえ!) その気持ちだけは確かだった。自分の気持ちを確認し、恐らく同じ気持ちを抱いていた であろう親友の事を思い出し辺りを見回してみる。しかしホールで一緒だった親友の姿は 見当たらずどうやら親友とはまったく別の場所に飛ばされたらしい。 念の為に参加者一覧を確認するとホールでは気が付かなかったが親友の少年の他に 里中千枝、天城雪子の二人、さらに稲葉署の刑事である足立透の名前も確認する事が出来た。 「よし、まずはみんなと合流しよう」 主催者に対抗するにしたって自分一人じゃあ心許ない。でも仲間達と協力すればあるいは、 そう考えを纏めると地図とコンパスを取り出し現在位置を確認する。 手にしたコンパスが示す東の方角にまるで天空の彼方まで届きそうな巨大な樹木が見える。 あれが地図に乗っている世界樹だとしたら、目測で現在地との距離を測ってみる。 恐らくは世界樹とタウロスタウンの中間辺りが現在位置だろうと目安を付ける。 (闇雲に仲間を探し回ってもラチが明かないだろうから、まずは町に行ってみるか) 陽介は手にしたデイパックを片手で漁りながらタウロスタウンへ向けて歩みだした。 しかしその直後、不意に背後から人の気配を感じ、陽介が慌てて振り返るのと 蒼い鎧に身を包んだ男、竜騎士カインが手にした槍で陽介を襲うのは全くの同時だった。 「ちょっ、うわっ」 咄嗟の事にカインの槍を辛うじてかわした陽介が悲鳴を上げる。 「あっ、あんたっ!この殺し合いに乗ったってのか!」 「ちっ」 カインは初撃をかわされた事に舌打ちをすると手にした槍を構え直し再び陽介に襲いかかる。 対する陽介は片手を突っ込んだままのデイパックから掴んだ物を咄嗟に取り出し防戦する。 だが出てきたものは一本のゴルフクラブ。クラブの先端が槍の一撃であっさりと 断ち切られ、後方に飛んでいく。どう考えてもハズレ支給品だった。 「ちょっ、待った!待った!」 「黙れ」 カインは陽介の静止の声に全く聞く耳を貸さず槍の二撃目を受けたゴルフクラブは先程より更に短くなっていく。 (冗談じゃないぞ!全身鎧を着込んだ上にあんな物騒な槍を振り回してくるとかマジかよ! ファンタジーのゲームか、映画からでも出てきたってのかこいつ!?) 「くそっ、こうなったらペルソナを使うしか」 だが、はたしてペルソナがマヨナカテレビの中でもないのに使えるのか? 陽介の脳裏を一抹の不安が掠めるが、どちらにしてもこのままでは槍の餌食。 (試してみるしかねぇ!!) 陽介は己の分身のであるペルソナ、ジライヤを呼び覚ますべく精神を集中する。 「ハアアァッ!!」 その陽介の眼前に再びに槍が迫る!! (やばい、試す以前に間に合わない) 陽介は手にしたゴルフクラブの残骸を無我夢中でカインに投げつける。 だが無常にもその一撃は槍の一蹴であっさりと弾かれる。 「死ねっ」 しかしカインの一撃が陽介を貫くに見えた瞬間、二人の間を割って入るように飛来した爆炎がカインを穿つ!! 「なっ、ぐぁ」 「おわっ、今度は何だ!?」 完全に不意を突かれた炎の一撃に体勢を崩したカインは後方へと大きく飛び退く。 「この炎は!!」 咄嗟の事に驚愕の表情を浮かべる陽介、カインの二人は炎の飛んできた方角を見やる。 そこには真赤な衣装と灼熱の炎に全身を包みこんだ男、ルビカンテが悠然と立っていた。 「そのような弱者をいたぶる戦いぶりをするとは。見損なったぞ、カイン」 「貴様っ、ルビカンテ」 カインとルビカンテはお互い睨み合い対峙する。 「くっ、貴様のような奴に言われる筋合いはない」 「ずいぶんな言われようだな。だが私の知るカインは武器を持たぬ輩を襲うような 卑劣漢ではなかったはずだ。あの道化師の言葉に乗せられたか?」 「黙れっ、俺は・・」 「まあ、貴様の事だ、おおよそローザの為だろうと大体の見当は付くが」 ルビカンテの言葉にカインは苦々しげに表情を歪める。 「ちょっと待ってくれ、あんた達知り合いなのか?」 顔見知りらしき二人の様子に話が見えない、とばかりに陽介が声を掛ける。 「誰がこんな奴と」 「それは私の台詞だ」 槍を構えるカイン。拳に先程と同じ爆炎を手にするルビカンテ。その様子に再び緊張が走る。 ただ一人武器を持たない陽介、しかしカインが陽介を狙えばルビカンテの炎がカインを狙う。 狙われているとなればカインも迂闊には動けない。 どういうつもりなのかルビカンテが陽介を狙う仕草は見えなかった。 「くそっ、この場は一旦引かせてもらう。だがルビカンテ、いずれ貴様は倒す!」 場が悪いとばかりにそう言い放つと、カインは森の中へ颯爽とその姿を隠す。 「助かった・・」 カインが去った事により多少は肩の力が抜け呟く陽介だったが未だ得体の知れない炎を 纏った男がこの場にいる事には変わりはなかったが窮地を救ってくれたであろう男、ルビカンテに声を掛ける。 「急に襲われて正直やばかった。ありがとう、って礼を言ってもいいのかな?」 「なぁに、私は弱者をいたぶるマネが好かん。ただ、それだけだ」 その答えに一旦は安堵した陽介だがもう一つ肝心な事を尋ねる。 「助けてもらって聞くのもどうかと思うけど。あんたは殺し合いのってないのか?」 「あの道化師の事は気にくわんが。さて、どうしたものか」 炎の男はニヤリと笑いどちらとも取れない答えを返す。 (おいおいどっちなんだよ・・) ルビカンテの言葉に冷汗を垂らす陽介は内心の動揺を抑えながら片手で汗を拭うとルビカンテに声をかける。 「とりあえず自己紹介しないか。俺は花村陽介」 「私の名はゴルベーザ様の四天王が一人、火のルビカンテだ」 【B-4森/一日目/深夜】 【花村陽介@ペルソナ4】 [状態]健康 [装備]なし [道具]基本支給品一式、ランダム支給品×2 [思考] 基本方針:殺し合いはしない。まず仲間達と合流、その後行動方針を決める 1:ペルソナ4主人公、里中千枝、天城雪子、足立透を探す為にタウロスタウンに行ってみる。 2:ルビカンテ、一体何者なんだ? 4:鎧の男(カイン)怖っ。 3:ペルソナが使えるか試したい。 ※カインの名前はルビカンテがカインと呼ぶのを聞いています。 ※ランダム支給品を一つ消費しました(ゴルフクラブ@ペルソナ4) が戦闘により破損しました。 ※作中からの登場時期に関しては真ルート突入前、ペルソナはジライヤ 足立に関しては頼りない刑事の印象です。 【ルビカンテ@ファイナルファンタジー4】 [状態]健康 [装備]なし [道具]基本支給品一式、ランダム支給品未確認×3 基本方針:不明 1:カイン・・。 2:花村陽介か・・。 ※作中からの登場時期はカインと面識がある以降、時期不明としておきます。 ◆ ◆ 「はぁはぁ・・」 花村陽介とルビカンテの前から姿を消したカインは息を切らしながら森の中を駆け抜ける。 二人が居る場所からある程度の距離が離れた所でようやく足を止めると脳裏に先程のルビカンテの言葉が蘇ってきた。 『あの道化師の言葉に乗せられたか?』 『貴様の事だ、おおよそローザの為だろうと・・』 図星だった。ローザが殺された瞬間、ホールの片隅でカインは絶叫していた。 「俺は、俺は・・」 恐怖に引きつりながら鮮血を吹き上げ虚しく散っていったローザの顔を思い出す。 傍にいながら下手な命乞いしかできず、ローザを守ってやれなかったセシル。 セシルは何をしていたんだ!もし、傍に居たのがセシルではなく俺だったら? 命乞いなどせず、ローザを守れたんじゃないのか? それが理不尽な感情だとはわかっていた。それでも考えてしまう。 過去にローザに恋愛感情を抱きながらも相思相愛のセシルとローザの為に身を引いたカイン。 だがその行為は間違いだったのかもしれない。 なぜならば、セシルは愛するローザを守れなかったのだから。 だったら、今度は俺がローザを守る。俺がローザを救う。 「ローザを生き返らせる為だったら何だってやってやる」 そうだ、どんな汚い手を使ってでも、相手が無抵抗の女子供であろうとも たとえセシルと再び戦う事になったとしても、必ず優勝してやる・・。 瞳に暗い炎を宿しながら、覚悟を決めるカインだった。 【C-4森/一日目/深夜】 【カイン・ハイウィンド@ファイナルファンタジー4】 [状態]疲労(小) 腕に軽度の火傷 [装備]ナイトキラー@ファイアーエンブレム蒼炎の軌跡 [道具]支給品一式、ランダム支給品未確認×2 基本方針:優勝してローザを生き返らせる 1:殺し合いに勝ち残り優勝する 2:ルビカンテを倒す ※ランダム支給品×1消費(ナイトキラー@ファイアーエンブレム蒼炎の軌跡) ※作中からの参戦時期はルビカンテと面識がある以降、時期不明としておきます。 時系列順で読む Back 常識にとらわれなくなった結果がこれだよ!!! Next とある廃人の記録 投下順で読む Back 常識にとらわれなくなった結果がこれだよ!!! Next とある廃人の記録 Back GAME START 花村陽介 Next FIRE FIRE GAME START カイン・ハイウィンド Next 愛しさは、腐敗につき/友達を殺してまで。 GAME START ルビカンテ Next FIRE FIRE