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第一部 『眠れない二日間』⑨ 〈二十三時三分 綺璃斗〉 少女からこっとんを守るように立ったスバルは冷静に指示を出す。 「君は逃げて。ココは戦場になるから」 「でも……」 数分前まで少女と戦っていただけに戦線を離脱する事を躊躇うこっとん。 そんなこっとんにスバルは叫んだ。 「はやくっ!」 その怒鳴り声にこっとんはビクリと背中を震わせ、『ライトニングブルーム』にまたがる。 機械で出来たワニのような穂が開口し、魔力を勢い良く吐き出す。 こっとんの周囲に風が巻き起こり、こっとんが空を飛ばす。 水色の魔力を吐き出しながら飛んで行ったこっとんにスバルはくすりと笑い、『リボルバーナックル』を嵌めた右手を、左の掌に叩き合わせる。 そして、スバルは少女に言った。 「あたしが君を助けるから」 「……」 少女は無言で靄で作られた漆黒の鎧を纏い、巨大な騎士の姿となる。 かすかにスバルは口元を緩ませる。 「……ちょっと、我慢してね」 そう言って、「リボルバーナックル』を構えるスバル。 顔は既に幾つもの困難な任務を乗り越えてきた局員の顔になっていた。 騎士は靄を集めて槌を形成。スバルを殴り飛ばすために槌を振り回す。 「はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」 スバルは『リボルバーナックル』で、騎士の鎚を打ち砕く。鎚どころか、騎士の両篭手までが弾け飛ぶ。 その隙にスバルは間合いを詰めようとする。 騎士は鎧から太くて鋭い棘を無数に生やす。 スバルはバックステップで避けようとするが、間に合わない。 瞬時にバリアを張り、漆黒の棘を防ぎにかかる。 バリアを張ったおかげで間一髪の状態で棘を避ける事に成功した。 しかし時間差できた錫杖を防ぐことが出来ず、吹き飛ばされる。 「マッハキャリバー!」 〈Wing Road〉 スバルは空中で〈ウィングロード〉を張り、足場を作る。 「ん~」 〈ウィングロードで体勢を整え、スバルは考える。 騎士の攻撃を迎撃するのは可能であるが、懐に飛び込んだ瞬間にカウンターで棘がくる。 このままだと戦況が千日手に陥る事は間違いない。 「……マッハキャリバー」 〈Ignition〉 スバルの意を感じ取った『マッハキャリバー』はカートリッジロード。 「リィボルバァァァァ…」 カートリッジロードによって『マッハキャリバー』に圧縮された魔力によってスピナーが高速回転する。 スバルは腰を極限まで捻って構える。 「シュゥゥゥゥトっ!」 前方に『リボルバーナックル』を叩きつけように突き出す。 放たれた衝撃波が騎士の装甲を吹き飛ばし、吹き飛ばした装甲を粉々に粉砕して黒い靄へと返す。 しかし今、スバルが戦っている敵は作り出した武器や装甲をただ壊すだけでは話にならない。 周囲に漂っている黒い靄は精神力が強くない人を狂気に飲み込んで狂わせ、時間が経てば再び騎士の武器や装甲となる。 例えスバルの精神力が強くても、それは時間が経過すればするほど心を侵食して理性を溶かしていくのだ。 その上、騎士は周囲に漂う黒い靄を元に武器を作り出す。いわば騎士の周囲にある空間自体が武器であるとも言える。 騎士を倒す手段は三つ。一つは絶対的な攻撃力を持って瞬時に倒す事。二つ目に遠距離から砲撃魔法を叩き込む事。三つ目は核である少女を何とかする事。 「マッハキャリバーっ!」 〈All Right Buddy!!〉 カートリッジで圧縮された魔力を開放。その魔力を持って『マッハキャリバー』のホイールが毎秒に回転する数を増やす事によって加速。 更に道路をジグザグに走る事で動きを撹乱しつつも騎士に接近。接触ギリギリで跳躍し、右足を横へ薙ぐように蹴る。 「エアリアル……ファングっ!」 鞭のようにしなった蹴撃が風鳴りを伴いながら騎士の横腹に突き刺さり、回転し続けるホイールが装甲を抉り取った。 装甲を深く抉った右足で地面を強く踏み、そのまま兜と胴体部分の隙間に右手の五指を入れて身体を半回転。ほぼ右腕の力で強引に一本背負い。 騎士の身体が宙を舞い、砂埃と黒い靄を周囲に撒き取らして地面に叩きつけられる。 そこでスバルは容赦なく振り上げたリボルバーナックルに魔力を込め、振り下ろすと同時に圧縮した魔力で上体から拳を強化し、更に拳の全面に硬質のフィールドを生成。 フィールドごと衝撃と圧縮した魔力を地面にへばりついているような感じの騎士に撃ち込む。 轟音を立てながら地面にクレーターらしきものを作り出し、その威力を持って黒の装甲を霧散させる。 核らしき少女と辛うじてくっ付いている騎士の残滓は大きくバウンドして、スバルから少し離れた所に落ちた。 グチャ、と言う耳障りな音でスバルはやりすぎたと思って少女に駆け寄る。 しかしそこで気を抜いてしまったのが間違いであった。 上から黒い球体が落下し、スバルの頭を打つ。その球体は一瞬だけスバルの意識を奪い、行動を微かに鈍らせた。 スバルの頭を襲った球体の落下を合図に漆黒の球体が雨のように落下してスバルの身体に叩き付けられる。 球体の半分ぐらいが地面にめり込むくらいの威力を孕んだそれは、少女へと駆け寄ろうとしたスバルを跪かせた。 身体が鈍い痛みを訴える中で、スバルはとある肉弾専門の教導官の技を思い出した。 それは魔力を「重さ」に変換するという稀少な気質を持つ篠鷹アキ教導官の〈星堕ちつ日《スターライトフォーリングダウン》〉。 物量と落下速度によってスバルを跪かせた球体は少女の周囲に集まって新たな形となる。 球体が泡を立てて膨らみながら空中で回転し、黒い靄を纏う漆黒の鮫を生み出す。 どうやら篠鷹アキ教導官とその相棒である和泉アサギの合体魔法である〈破軍鮫陣《ストレイト・オーヴァ》〉まで再現できるようだ。 少女が腕を横に大きく振り抜いたのを合図に、黒の鮫は鋭い牙を見せつけるように大きく口を開けてスバルへと迫る。 半分は弾丸のように突っ込み、残りの半分はその身を跳躍させて自重で相手を潰しにかかった。 鈍痛に耐えながらもどうにか立ち上がったスバルを突っ込んできた鮫たちが押し倒し、跳躍した鮫がスバルの身体に圧し掛かった後に粘り気のある物体に変化して身動きを取れないようにする。 少女は靄を集束させ、巨大な篭手を作りながらスバルの方へ歩み寄る。その瞳は白と黒が逆になり、法衣に似た衣服が風に揺れている。 顔に笑顔を貼り付け、口からは壊れたレコードのように笑い声を吐き出す。 そして抜け出そうとするスバルの顔をマウントポジションで容赦なく殴り始める。 腕も黒い物で塞がっている為に防御姿勢すら取る事が出来ない。 ただ、殴られるだけ。 スバルの顔を鈍痛と衝撃が襲い、その威力は絶えず地面を打ち鳴らす。 絶え間なく打たれているせいで気絶する事も許されない。 打ち込まれる拳によってスバルの顔は微かに腫れ上がり、頭蓋骨は軋むような音を立てる。 下手すれば少女の乱打によって頭を潰されて脳漿と血液を撒き散らかして無残に死亡する危険性もあった。 そこで生存本能と言うものがスバルの身体にあるリミッターを解除した。 スバルの目が金色に変わり、身体から放出された青い魔力が身体を拘束していた黒い物体と少女を吹き飛ばした。 「マッハキャリバー。バリアジャケット以外はモードリリース」 〈What suddenly?〉 戦況が悪い状態にモードリリースを告げられた『マッハキャリバー』は抗議の声を上げる。 「ごめん、マッハキャリバー。あの状態で戦うから、きっと壊しちゃう」 自身の相棒に謝罪するスバル。 〈……Ok. Buddy. For the fortune of war〉 『マッハキャリバー』は主であり、相棒でもあるスバルの意思に従い、バリアジャケット以外はモードリリースする。 蒼い石に戻った『マッハキャリバー』にスバルは言った。 「ありがとう、相棒。今―――征くから」 そう呟いたのとほとんど同時だっただろうか。 数十歩の間合いをスバルは何の足捌きも見せずに地面を滑走してのけたのは。 少女の懐に飛び込むと、そのまま両手を捻り上げ、掌から肘の外へと騎士の手を滑らせる。 ねじり合わせた両手から鎌を振り下ろすが如く手刀を落とす。 その威力に少女はひるむと、スバルは更に半歩踏み込む。 腰と両足をしぼりつつ、アッパーカットを思わせる形で右手を突き上げる。 微かに浮いた少女の内懐に滑り込み、踏み込んだ脚がアスファルトの地面を雷鳴のように打ち鳴らす。 同時に繰り出された掌底が少女の胸板を直撃する。その破壊力は胸元で手榴弾が炸裂したかの如き威力。 吹き飛ばされた少女の身体は宙を舞い、勢いよく地面に叩きつけられる。受身など取る事も出来なかった。 スバルは無言で少女の方へ歩み寄る。 元々能力が暴走している為に少女の意識が在る無しに関係なく能力が勝手に発動。 空間内にある靄が集束して分厚い壁を作り出す。 しかしスバルは壁に身体を密着させて攻撃を叩き込む。 ぱぁん、と聴覚を不能にするような轟音。それはまるで渾身の正拳突きを叩き込んでいるかのよう。 スバルは手の甲が壁に密着した状態で、装甲に拳撃を叩き込んでいたのである。 拳法を使う者たちのパンチは腕の力のみで放たれるものではなく、大地を踏む両足の力に、腰の回転、肩の捻りなども相乗し、全身の力を総動員させて放つものである。 その技術の極点を極めた者にとっては肩から先の運動が果たす効果は全体に比べたら微々たるもの。必要であれば拳を標的に密着した状態でも十分な打撃力を発揮する。 それはとある流派では『寸頸』と呼ばれる絶技であった。 壁にクレーターと巨大な亀裂が生まれ、砕けると同時に靄へと戻っていく。 その技は肉体を武器とする者は両足がしかと大地を踏み締めているだけで危険である事をその威力が証明していた。 そしてスバルが『マッハキャリバー』をモードリリースした理由もその扱う技の威力にあった。 二年前に起きた『J・S事件』の後にスバルは対AMF戦と魔法を使わない物理破壊の方法を探究する為にとある戦技教導官に教えを乞いた。 その戦技教導官によってスバルは様々な流派の技を得た。その一つに『浸透頸』と呼ばれる技術があった。 『浸透頸』とはとある武術の秘伝として存在する技で、特殊な打法を用い身体の表面ではなく、その内部に波動を『浸透』させて破壊する。 スバルはその『浸透頸』に目を付けたのだ。 ようは先天性の固有技能である『振動破砕』を改良して編み出した技である『打震』を波動として打ち込んで内部から一時的な行動不能にする事を考え付いたのだ。 仕込まれた技はある程度ならば使用出来るが、完璧に使いこなしているわけではない。 だから『浸透頸』を用いる時に『打震』が『マッハキャリバー』や『リボルバーナックル』に『浸透』して破砕する危険性がないとは言えない。 その為、スバルは大事を取って『相棒』をモードリリースさせたのだ。 時間の経過で薄くなってきた靄を突き抜けて黒いナイフを持った少女が突っ込んできた。 しかし細くて長いスバルの右手の指が、少女の右手首を掴む。 身体を蛇さながらのしなやかさで低く屈め、少女の右腕の下へ滑り込ませる。次の瞬間、まるで怪我人に肩を貸すかのような姿勢で、スバルは少女の右腕を肩の後ろに背負い込む。 スバルの身体が少女の腰に密着すると同時に折り曲げて突き出した左腕の肘が少女の鳩尾に入り、左足は少女の軸足を鮮やかに刈り払う。 『打震』を浸透された事による全身の激痛と痺れで、少女を行動不能に出来ると踏んだスバル。 しかしスバルの予想は綺麗に外れた。 『神よ。何故、私に重荷を課した』の能力は少女の身体を強引に動かす事によって、限界を超えた動きを可能にした。 少女の身体は地面に叩きつけられてバウンドすると同時に宙で身体を回転させ、まるで獣のように手と足を地面について着地する。 そして両足で立ち上がると、足の筋力を限界まで酷使してバックステップで下がる。 「マッハキャリバー」 〈Ok. Buddy〉 スバルの声に従って瞬時に『マッハキャリバー』は起動する。 右腕に『リボルバーナックル』が装着されるのを確認したスバルは術式を謳うように詠唱する。 「行くよ! 其は幾千の災いを受け流す者にして、其は幾千の難を穿ち抜く者」 『リボルバーナックル』のシリンダーが高速回転する。回転するシリンダーから周囲に漂う魔力が吸収される。 徐々に、肩の付け根ぐらいまで蒼く染まっていく。それと比例して、シリンダーの回転する勢いが増していった。 「其は幾千の万象を断つ……」 左手に魔力球が精製され、『リボルバーナックル』と同様に周囲の魔力を吸収していく。 集束されていく魔力が荒れ狂い、制御主であるスバルに襲い掛かる。 ボロボロの身体に魔力制御による負荷がかかりスバルの口から血が垂れた。 しかしスバルは魔力の集束と濃縮し、その魔力球を制御する事を止めない。 「……殲滅の剣となれ」 周りに漂う魔力がスバルの右腕と魔力球に集束し、最終的に空のような蒼から濃い群青色に変わる。 少女は靄を集束させ、手に巨大な突撃槍を作り出す。どうやらそれでスバルを貫くつもりであるらしい。 周囲から靄で作った槍を射出させ、少女はスバルに特攻をかける。 それをスバルは右足で地面を蹴って跳躍。着地と同時に渾身の力で少女の懐に踏み込んで、足で顎下から蹴り上げる。その一撃は少女を打ち上げるには十分過ぎた。 「我は不屈の魂を持って其を振るう………」 ちょうど少女が落ちて来た所でスバルは群青色の右拳を宙に浮いている魔力球に叩きつける。 「フラガ………ラッハああああああああああああああああ!!」 魔力が濃縮された魔力球から魔力の奔流が放出された。その魔力の奔流の形状はまるで剣。 放出された魔力の奔流は少女の中に巣食っていた能力と黒い靄と共に身体を突き抜け、そのまま周囲に霧散した。 周囲が目の眩む様な閃光と濃い粉塵に包まれる。 閃光と粉塵が晴れた時、そこにはスバルと少女の姿があった。 『リボルバーナックル』より先の地面は深く抉られ、スバルの腕の中には一人の少女が収まっていた。 「んっ……」 ゆっくりとまぶたを開く少女。彼女の目はさっきのように黒目と白目が反対になってはいなかった。 「もう。大丈夫だよ」 腕の中に収まる少女にスバルは笑顔を浮かべながら言う。 少女の表情が不意に変化する。それはある種の恐怖に満ちた顔。 「ん? どうしたの?」 スバルは少女の表情に首を傾げる。 恐怖を感じている彼女の目には黒い靄がスバルの背後で集まっていくのが見えたからだ。 「逃げて下さいっ!」 「え……?」 少女の言葉の方が早かったか遅かったか。 どすっ、という鈍い音がした。 スバルと少女の身体に何かが貫通する。 それは真っ黒な槍であった。 「……ぐ…はっ…はっ………」 喀血するスバル。 スバルの吐き出した血が少女の顔を汚す。 「お姉ちゃん……」 少女の目から涙がこぼれる。漆黒の槍が少女の身体の中に飲み込まれていく。 眼球が再び、白と黒が反対となる。 漆黒の槍が完全に少女の身体に飲み込まれた時、スバルの身体が崩れ落ちる。 少女の口がガクンと大きく開く。 「zくぁあくぇrちゅいおぱsdfghjkl;:zcvbんm、。・fvtgbyhぬjみ、こl「:¥」!!」 それは何を言っているのか分からないが、それは一種の咆哮。 しかし、その咆哮には悲哀が混じっていた。 クラナガンの空を疾駆する黒い影。 それはメイド服を纏う女性。スカートの裾と共に漆塗りの黒髪と髪を縛っている臙脂色のリボンが風ではためく。 時空管理局第二十一番特別編隊。通称『ナイツ』ブレイブ分隊隊員。恭耶陸曹長。 それが彼女の名前と役職であった。 彼女は建物の壁を蹴りながら自由自在に宙を舞う。 宙を舞うように走る彼女は黒い軌跡を描く。 そして彼女は大晦日でありながらも司令部で警護任務のサポートを行っているオペレーターに指定された場所へとたどり着く。 指定された場所には陸士部隊特別救助隊のスバル・ナカジマが倒れていた。 恭耶はスバルを抱き上げる。抱き上げたその身体は異様に軽かった。 腹部からはおびただしい出血痕があり、既に目の焦点が幾分か合っていない。 口からはヒュウヒュウと笛のような音を出していた。 「スバル・ナカジマ一等陸士っ!」 掛けられた声に気づいたスバルは恭耶に顔を向ける。 しかし目はまだ焦点が上手く合っていないような感じであった。 きっと今のスバルは話しかけてきたのは誰なのか分かっていないであろう。 「…あの子…を……助けてあげて………」 それだけ言って、スバルの意識は途切れた。 スバルの手が地面に落ちる。 「恭耶陸曹長っ」 武装した局員がスバルの方に駆け寄ってきた。 どうやら敗北したスバルの救援に来たようだ。 「……スバル・ナカジマ一等陸士を頼みますわ」 駆け寄って来た局員にスバルを預け、恭耶は走り出した。
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過去ログ(2ch) 自衛隊板:【事件】自衛官の娘、横浜で殺害される【衝撃】 http //kamome.2ch.net/test/read.cgi/jsdf/1306254507/ http //logsoku.com/thread/kamome.2ch.net/jsdf/1306254507/ ν速+板:【神奈川】横浜の路上で25歳くらいの女性死亡 首絞められた痕 通報したとみられる男性が病院から姿を消す http //raicho.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1306168468/ http //logsoku.com/thread/raicho.2ch.net/newsplus/1306168468/ ν速+板:【神奈川】横浜の路上の25歳女性遺体、殺人容疑で住所不定派遣社員の47歳男を逮捕 http //raicho.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1306253703/l50 http //logsoku.com/thread/raicho.2ch.net/newsplus/1306253703/ ν速板:【二人は初対面】 職業不詳の藤岡真亜佐さん(25)をホテルで殺害したとして、住所不定派遣社員の原憲治逮捕 http //hatsukari.2ch.net/test/read.cgi/news/1306254118/ http //logsoku.com/thread/hatsukari.2ch.net/news/1306254118/ ネットwatch:【バスケ青春の詩】ヲチスレ http //kamome.2ch.net/test/read.cgi/net/1307618368/ http //logsoku.com/thread/kamome.2ch.net/net/1307618368/ ヴィジュバンド:【専属】キャンゼル2【メイド】 http //logsoku.com/thread/dubai.2ch.net/visualb/1213267173/ ヴィジュバンド:新興宗教楽団NoGoD12 http //logsoku.com/thread/music8.2ch.net/visualb/1215962303/ BBSPINK(2ch) ソープ板:長身ソープ嬢・みやびさん http //kilauea.bbspink.com/test/read.cgi/soap/1293567583/ http //mimizun.com/log/2ch/soap/1293567583/ ホスラブ 横浜・路上で女性 http //hostlove.com/cgi-bin/fuzoku/ibo.cgi?mode=tp all=1 page=3 file=20110524065427 横浜で25歳女性殺害 http //hostlove.com/cgi-bin/fuzoku/ibo.cgi?mode=tp all=1 page=1 file=20110524173224 横浜コートダジュール殺人事件 http //hostlove.com/cgi-bin/fuzoku/ibo.cgi?mode=tp all=1 page=1 file=20110530143935 横浜】藤岡麻亜佐【野垂れ死に http //hostlove.com/cgi-bin/fuzoku/ibo.cgi?mode=tp all=1 page=3 file=20110617182036 2ch2 V系初代たぬきの掲示板 【いっち顎ルー】キャンゼル②【リーハク様ゆきみん】 http //old.bbs.2ch2.net/admin/readkako.cgi?bbs=visualtanuki q=1221 q2=1221551084 【りぃ顎ルー】キャンゼル3【リーハクゆきみん】 http //old.bbs.2ch2.net/admin/readkako.cgi?bbs=visualtanuki q=1221 q2=1221975466 【蜜かぶり】キャンゼルハク【多数】 http //old.bbs.2ch2.net/test/read.cgi/visualtanuki/1220674225/ ----- 自衛官ニュース ----- 空自三沢基地の1等空尉を逮捕 児童ポルノ製造容疑 /岩手 - 毎日新聞 ローンを組みやすい「自衛官」、老後のために58.3%が「資産運用」を実施 ~自衛官103名対象「マンション経営」に関する調査実施~|不動産投資の健美家 - 健美家株式会社 「能力不足感じ自信喪失していた」夜中に駐屯地抜けだし 実家 へ…母連絡し発覚 21歳自衛官を停職処分(北海道ニュースUHB) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 頑張る理由は「元カノとヨリを戻したい」突然の電話で直談判するが...!?:CHOTeN - テレビ東京 MBCニュース | 「飲酒運転ゼロ」「被害者に支援を」長男亡くした女性の願い - 南日本放送 「性的衝動を抑えられなかった」コンビニ駐車場で下半身露出…37歳男性自衛官を 停職 女性目撃し通報(北海道ニュースUHB) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース アフガン撤退の教訓を肝に銘じよ! 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- PR TIMES
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https://w.atwiki.jp/issadono/pages/21.html
●2011年7月2日~3日にかけ、一佐殿ご本人が2chの書き込みに反応を示しました。 自業自得とは… 2011-07-02 00 02 03 http //blog.goo.ne.jp/fujioka2650/d/20110702 (魚拓) http //megalodon.jp/2011-0702-0101-09/blog.goo.ne.jp/fujioka2650/d/20110702 追伸…自業自得の意味 2011-07-02 07 02 21 http //blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/49cba89db694b270dcc1d9166c5e96d6 (魚拓) http //megalodon.jp/2011-0702-0714-04/blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/49cba89db694b270dcc1d9166c5e96d6 煽り、煽られて… 2011-07-03 05 25 06 http //blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/ecca8e9daf7074ebb9198363485993be 書き換え前 (魚拓) http //megalodon.jp/2011-0703-0736-37/blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/ecca8e9daf7074ebb9198363485993be 書き換え後 (魚拓) http //megalodon.jp/2011-0703-1643-30/blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/ecca8e9daf7074ebb9198363485993be ●2011年7月12日、再度一佐殿ご本人が2chの書き込みに反応を示しました。 どうやら、舐めるようにスレッドを巡回し情報を得ているようです。 その割にはいちいち苦言を吐いています。 事実を知るにつれ…2011-07-12 00 36 10 http ///blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/0ead412800231719c3f28baae53ba4a1 (魚拓) http //megalodon.jp/2011-0712-0109-21/blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/0ead412800231719c3f28baae53ba4a1 正しく読み込まず批判すること如何に…2011-07-12 19 56 51 http //blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/ffbcdc538cceff7c1ee0319a8c2e7a16 (魚拓) http //megalodon.jp/2011-0712-2306-12/blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/ffbcdc538cceff7c1ee0319a8c2e7a16 正しく読み込まず批判すること如何に…その2 2011-07-12 21 32 09 http //blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/acb8ace5027080fa182515d0558bc161 (魚拓) http //megalodon.jp/2011-0712-2308-57/blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/acb8ace5027080fa182515d0558bc161 ●2011年8月9日、またまた一佐殿ご本人が2chの書き込みに反応を示しました。 今回も一度書いたエントリーを修正してまで何か言いたいようです。 一切反論したことないとか書いてます。 討論・論争と議論 2011-08-09 00 50 55 http ///blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/f160f1f892a2e66b5f3f328d283e11e1 書き換え前 (魚拓) http //megalodon.jp/2011-0809-0637-53/blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/f160f1f892a2e66b5f3f328d283e11e1 書き換え後 (魚拓) http //megalodon.jp/2011-0810-0115-16/blog.goo.ne.jp/fujioka2650/e/f160f1f892a2e66b5f3f328d283e11e1 ●2011年8月10日、どうやら楽しんでいるようですw http //twitter.com/#!/fsunrise/status/101056728862429185 @fsunrise 籠球太郎 やっぱり乗ってきましたね♪チャネラーの方… 内容も吟味せず、論点も整理せず、相手を批難 するだけの論調は相変わらずですね。さすがです。 こちらも参考に撤回の撤回の撤回の撤回 ----- 自衛官ニュース ----- 空自三沢基地の1等空尉を逮捕 児童ポルノ製造容疑 /岩手 - 毎日新聞 ローンを組みやすい「自衛官」、老後のために58.3%が「資産運用」を実施 ~自衛官103名対象「マンション経営」に関する調査実施~|不動産投資の健美家 - 健美家株式会社 「能力不足感じ自信喪失していた」夜中に駐屯地抜けだし 実家 へ…母連絡し発覚 21歳自衛官を停職処分(北海道ニュースUHB) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 頑張る理由は「元カノとヨリを戻したい」突然の電話で直談判するが...!?:CHOTeN - テレビ東京 MBCニュース | 「飲酒運転ゼロ」「被害者に支援を」長男亡くした女性の願い - 南日本放送 「性的衝動を抑えられなかった」コンビニ駐車場で下半身露出…37歳男性自衛官を 停職 女性目撃し通報(北海道ニュースUHB) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース アフガン撤退の教訓を肝に銘じよ! 国軍に士気がなければ米軍は動かない 自衛隊機の派遣命令遅れは政治に責任 (夕刊フジ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「警察特捜2021 緊急出動!凶悪逃走犯を追え」父が元警察官の近藤春菜がナレーションを担当 - テレビドガッチ 高橋メアリージュン「吹き替えなし!」警棒奪ってアクション 練習写真公開(日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 代表質問詳報コンパクト版 - 河北新報オンライン 恒例の日米指揮所演習ヤマサクラ アメリカ兵が日本文化を学ぶプログラムも - おたくま経済新聞 有事の国民保護、事前の備えを…第19回安全保障シンポジウム詳報 - 読売新聞 訓練中に迫撃砲が演習場外に着弾 「火薬の量誤る」陸上自衛隊が謝罪 12人懲戒処分 滋賀・高島市(ABCニュース) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 宇宙飛行士・油井さんが子供たちに語る宇宙での生活 静岡・掛川市(テレビ静岡NEWS) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「家を選ぶときは必ず現地に」 流行のネット内見に警鐘鳴らす投稿が話題(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 5人が乗った車が石垣などに衝突で1人死亡…運転していた19歳の海上自衛官を逮捕(MBSニュース) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【外交安保取材】日本の防衛力整備は失敗だったのか - 産経ニュース 「外交的ボイコット」日本はどう対応すべき?与野党の政治家から主張相次ぐ(ハフポスト日本版) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 綾野剛が語る『アバランチ』第8話の見どころ「勝敗以上の物語があります」(TV LIFE web) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 部下の隊員に暴行、陸自の50代陸曹長を停職1日に 発生から処分までには1年8カ月(山陰中央新報) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 自治会費横領の自衛官免職 北海道 - 産経ニュース 大村市の自衛官の男を酒気帯び運転で現行犯逮捕 - www.fnn.jp 松岡昌宏:日テレ土曜枠に11年ぶりの帰還! 成田凌への復讐に燃える元自衛官役 - MANTANWEB 元自衛官の芸人・やす子の「はい~」のルーツを探る『白黒アンジャッシュ』(TV LIFE web) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 元自衛官が香川・小豆島のオリーブ生産者に 胸に抱く平和への思い(ほ・とせなNEWS) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 神戸・新開地の名画座「パルシネマしんこうえん」 二本立てを500円で 神戸市の支援金で市民に還元(ラジトピ ラジオ関西トピックス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【直球&曲球】葛城奈海 日朝交渉の場に制服自衛官の同席を - 産経ニュース 「あの基地は飯がマズイから嫌だ」と自衛隊員に言わせないために(JBpress) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ローンを組みやすい「自衛官」、老後のために58.3%が「資産運用」を実施 - PR TIMES 自衛隊の大規模接種センター閉鎖 防衛省「目的達成した」 [新型コロナウイルス] - 朝日新聞デジタル 自衛隊の隊員食堂で出される「ねばねば丼」。免疫力アップにももってこい!(ESSE-online) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 新企画「海峡陣取り」でやす子がサンシャイン池崎に恋心…『アイ・アム・冒険少年』(TV LIFE web) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「お前の骨全部折る」壮絶パワハラ告発 元自衛官“身内調査”に「我慢できない・・・」 - TBS News 「軍人」たちが見た「9・11」 自衛隊と日米同盟を変えたテロ事件|9・11から20年:絶対の「自由と民主」が去った世界で(新潮社 フォーサイト) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「隊の生活になじめず」無断で帰省 隊員を減給処分 陸上自衛隊富士駐屯地(テレビ静岡NEWS) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 46歳で早期退職した元自衛官、59歳で「年収1500万円」に到達するまで(週刊SPA!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 佐世保市で交際相手の首を絞めケガさせた疑いで海上自衛官の男を逮捕 - www.fnn.jp 海上自衛官、国立研究機関主任も…わいせつ動画配信「一斉摘発」の裏にある警察当局の執念〈dot.〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ボート沈没、自衛官乗り訓練中 燃料切れ、流され浅瀬へ 宮古島(琉球新報) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【マンガ】「待ち合わせはヒトロクマルマル」キター!! 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魔法少女リリカルなのはSpiritS 第一話「蒼き新星(後編)」 ぷらん、ぷらんと揺れる青。 さながら海か空の色を、そのまま結晶化させたようなもの。 透き通るような青色の、縦長の六角形の水晶体。 リスティのすみれ色の瞳の中では、そんなものがぷらぷらと揺れていた。 「それ、何……?」 やや控えめな声で尋ねる。 環状の紐で吊られたそれを、ぷらぷらと揺らす歳上の少女へと。 つぶらな瞳を持ち上げて、水晶と同じ色をした、青い髪の少女へと問いかけた。 「これ? これはね、あたしの相棒のマッハキャリバー」 返ってきたのは朗らかな笑み。 にっかと満面の笑顔を浮かべたスバルが、銀髪の娘へと誇らしげに言う。 「さっき一緒に戦ってた、ローラーブレード型デバイスの待機モードなんだ」 『正確には“使っていた”と表現するのが正しいかと。私はあくまでマスターの武器であり、所有物に過ぎませんから』 「あ、またそういうこと言う。そういう道具扱いするのは嫌だって、何度も言ってるじゃん」 機械的なインテリジェント・デバイスの音声に、ぷぅっと頬を膨らませるスバル。 先ほどまでリスティに向けられていた視線が、じと目になってマッハキャリバーへと向かった。 そんなごく自然なやりとりが、クラナガンの廃ビルの一角にて繰り広げられていた。 否。むしろ逆に、自然であることが異常に感じられる。 黒い長袖のジャケットに、ジーンズのミニスカートとスパッツ。既に正体を隠す必要はなくなったので、マントは脱ぎ捨てられていた。 ややボーイッシュであることを除けば、普通の年頃の少女の出で立ち。 だがスバルはその数十分前に、圧倒的な強さを見せつけ、2名の戦闘機人を蹴散らしたばかりなのだ。 「こうして見ると、本当にただの子供にしか見えないんだがな……」 信じられない、と語尾に小さく付け足しながら、俯瞰するリスティの父親が呟いた。 何せ筋骨隆々としたこの男でも、手も足も出なかった連中を、あっという間に叩き潰した豪傑である。 その彼女が見せている歳相応のあどけなさは、戦闘中とのギャップがあまりにも大きすぎた。 鬼神のごとき戦いぶりが、今ではまるでハイスクールの休み時間のようだ。 「ストライカー、ってのは知ってるか?」 困惑するひげ面の男へと、すぐ隣に腰掛けたサングラスの男が確認する。 中骨中肉といった印象の上半身は、今は包帯によって覆われていた。 肩に受けた銃創の手当ての跡だ。 このご時世、薬品の類は貴重品だが、リスティら父子を救おうとした男を、無下に放置するわけにもいかない。 結果として応急処置が施され、今では出血も止まっている。 「ああ。ゼスト何とか、って奴がそう呼ばれてたな。どんな困難な状況も突破し、勝利をもたらす優秀な魔導師……だったか?」 「大体そんな感じだな。一騎当千のワンマンアーミーがエースなら、組織戦で全体を引っ張るのがストライカー、ってところだ」 確認で返してきた男へと、サングラスの若者が説明した。 言うなれば、エースとストライカーとは剣と盾だ。 他を寄せ付けぬ圧倒的な技量の下に、単身で戦端を切り開き道を作るエース。 迫り来る脅威に立ち向かい、戦線の中核となって味方を守り抜くストライカー。 「で、話を本題に戻すが……管理局は先の戦争で、そういう優秀な魔導師をかなり失うことになっちまってな。 そこで戦力の質を増強するのと、後は、新たな旗印として扱える人材を生み出すために設けられた、徹底された戦技教導…… 通称“ストライカーズ養成計画”と呼ばれるプログラムの下に生まれた新人の1人が、あのスバル・ナカジマだ」 「未来のストライカーとして鍛え上げられたエリート、ってことか……だが、何でエースじゃないんだ?」 「そこは、ホラ、求めてるものが違うんだろう」 サングラス男の言葉に、ああ、とフィリスの父は納得した。 現在の管理局残党の頭数は、到底芳しいと言えるものでないに違いない。恐らくは、士気に関しても同様のはずだ。 ならば単独で切り込むエースよりも、共に戦ってくれるストライカーの方が、皆の支えにはちょうどいいのだろう。 加えて同じ戦線の主軸であっても、ある程度周囲の援護を頼れる位置で戦うストライカーの方が、孤高のエースよりも大成が早い。 「まぁ、ペラペラと喋っちまったが、一応スカリエッティ達には内緒の極秘プロジェクトだからな。あんまり言いふらさないでくれよ?」 言いながら、腰掛けていた瓦礫から若者が立ち上がる。 上半身裸の右肩に上着を引っ掛け、左手でズボンの尻についた埃を払った。 管理局の機密事項。 それをさらりと口にした男に、ひげ面の親父はぎょっとしたように目を見開く。 「で、どうすんだスバル? そろそろ連中も出てくる頃だろ?」 そしてそんな様子は露も気にせず、若者はスバルへと声をかけた。 「あ……やっぱり、そうなる?」 「たりめーだ。こんだけ派手に暴れた奴を、そのまま放置しておくわけないだろ。 多分ここらの親玉自ら、徒党を引き連れてやって来るだろうな」 「そっか。そう、です、よね……なはは、はは……」 たらり、と冷や汗を流しながら。 今度はスバルの表情が、困ったような苦笑へと変わった。 スカリエッティが支配したクラナガンで、管理局の魔導師が、戦闘機人相手に乱闘を繰り広げたのだ。 しかもその戦闘の果てに、2名の戦闘機人が撃退され、人間ごときに拘束されている。 連中からすれば、放置しておく理由がない。 自分達に脅威をもたらす者を排除するため、そして自分達の立場を示すためにも、本腰を入れて始末にかかるはずだ。 後先考えずに突っ込んだ結果、この場所により強大な戦力を呼び込む羽目になってしまったのだ。 「仕方ねぇっちゃあ仕方ねぇ状況だったがよ……ここがクラナガンでも、隅っこの方だったのが幸いだったぜ」 がしがしと頭を掻きながらサングラス男がぼやく。 スカリエッティ支配下の都市の中でも、首都クラナガンは特殊な場所だった。 駐留する戦闘機人達が一箇所に固まって支配するには、この街はあまりにも広すぎるのだ。 よって市内を計15ブロックに分割し、それぞれをそれぞれの派閥のテリトリーとすることで、この街の戦闘機人は均衡を保っている。 要地である中央に近ければ近いほど派閥の規模は増し、外側になればなるほど他の派閥からの援護を受けづらくなる。 周囲に示しをつけるというのも、隅の方が対処しやすいというのも、どちらもそういう事情あってのことだ。 「それで、結局どうすんだよ? 人数上の不利は変わらねぇし、乱戦になりゃ周囲への被害も馬鹿になんねぇぞ?」 きっ、と。 サングラスの男の問いかけに呼応し、緑の双眸が細められる。 へらへらと緊張感なく笑っていたエメラルドの瞳が、一瞬にして厳しく引き絞られた。 そうだ、この顔だ。 1人のスバルという少女のそれではない、管理局員スバル・ナカジマの戦士の顔だ。 「ボスが来るっていうのなら、そいつを一騎討ちで倒します」 決然と、言い放つ。 真剣そのものの気配を、静かに語気に滲ませて。 「一番強い奴に勝てば、あたしが奴らの誰よりも強いと証明できる……少なくとも、そう見せかけることができる」 「お前自身を牽制役とすることで、この地区の戦闘機人全員を大人しくさせようってか……だが、連中が素直に乗るか?」 「いくら仲間を倒されたからって、そう簡単に油断は抜けないはずです。 昔倒した管理局の魔導師くらい、自分1人で倒せる……むしろそうでなければ、奴らのメンツも立たない」 「連中のプライドを利用するってことだな。 確かに考えてもみれば、たかだか魔導師1人を集団で囲って倒すなんて、みっともねぇ真似もできねぇだろうよ」 そうと決まれば善は急げだ。 若者が言い終えると同時に、スバルがミニスカートの腰を浮かせた。 迫り来る敵を迎え撃つべく、廃ビルの外へと向かわんとする。 と、その時。 ぴくりと眉を動かして、歩みは不意にあっさりと止まった。 何かの視線を感じたのか。怪訝そうな表情と共に、少女の顔が下方へと下がる。 「………」 気配の主はリスティだった。 小さな娘のすみれ色の瞳が、不安げにスバルを見上げていた。 ふるふると震える小さな肩。 触れれば砕けそうな華奢な体躯が、より儚さを増すようにして怯えている。 また危険な目に遭わされるのではないかと。 迫る脅威を予期したかのように。 「……大丈夫」 にっこり、と。 顔つきを緩め、笑顔を浮かべて。 倍近い背丈の身体をしゃがませ、視線と視線をそっと合わせて。 「なんにも怖いことはないよ。怖いのは全部、お姉ちゃんがやっつけてあげるから」 今は先ほどまでリスティに見せていた、等身大の少女の顔へと戻り。 差し出した右手を頭に当て、銀色の髪をくしゃっと撫でた。 ふっ、と。 サングラス男の口元も、自然と軽い笑みに緩む。 戦士として鍛えられたスバル・ナカジマが、失うことなく残していた、人間らしい優しさに。 「なぁ……お前、一体何者なんだ?」 と、その時。 野太いひげ面の男の声に、不意に現実へと引き戻される。 恐らくは鳩が豆鉄砲を食らったような、きょとんとした目つきをしているであろう顔を、リスティの父親へと向けた。 「管理局の秘蔵っ子と知り合いで、おまけに機密事項まで知ってるなんて……」 この中年男を驚かせたのは、それだ。 管理局残党に関わる者以外は、誰一人として知らぬはずの極秘プロジェクトを認知し。 その養成計画の下に鍛え上げられた、虎の子の新人エリートとも顔なじみ。 どう考えても、一般人であるはずがない。 これほど事情に通じた人間が、そこらのスラム住まいのガキであるはずがない。 であれば、この男は一体何者なのか。 「ヴァイス・グランセニック」 にっと不敵な笑みを浮かべ。 ゆっくりとサングラスを取り払い。 短く切られた茶色の髪を、軽く揺らしながらその名を名乗る。 「しがない管理局のヘリパイロットさ」 ばたばた、とはためく漆黒のジャケット。 ゆらゆら、と揺らめく青色の短髪。 ひび割れたアスファルトの上に立つのは、両腕を組んだスバル・ナカジマ。 歳の割に発育のいいふくよかなバストが、ぎゅっと押し付けられている。 鋭い眼光も相まって、さながら男のような風貌だ。 それだけの威圧感を感じさせる何かを、彼女は確実に内に秘めていた。 「分かってるよな、スバル」 横合いからかけられる、若い男の声。 完全に上着を羽織った、サングラス男改めヴァイスが、離れた位置からスバルへと言う。 「一番強い奴と戦うってことは、一番倒しづらい奴と戦うってことだ」 「覚悟の上です」 「やれるか?」 「やれるやれないじゃない――やるしかない」 スバル・ナカジマは揺るがない。 このエリアを支配する敵の中でも、最も強い敵と戦わなければならなくとも。 最も巨大な困難に、たった1人で立ち向かわなければならない状況であろうとも。 決意の瞳は揺らぐことなく、地平の果てを睨み続ける。 一切の恐怖も不安もなく、勇敢な眼光を燃やし続ける。 何物にも動じぬ戦士の形相は、さながら不動明王か。 どんな敵が相手であろうとも、人々を必ず守り抜いてみせる。 気配にも滲み出るその覚悟には、なるほど確かにストライカーの片鱗が浮かぶ。 「こんな子供に、世界の命運を背負わせることになるとはな……」 故に、その背中が痛ましかった。 あまりにも大きく見えるその背中が、ひげの男には痛々しく映った。 見れば見るほど不自然な子供だ。 普段は歳相応の娘と変わらぬ、笑顔の似合う女の子。 されどひとたび戦場に出れば、厳しい表情を浮かべた戦士。 二律背反の表情だ。 その両方を持ち合わせるのは、しかし15の少女には、あまりにも荷が重過ぎるのではないか。 1人の娘を持つ父親の目は、その背に言い知れぬ危うさを捉えていた。 「言うなよ。あいつ自身が受け入れた道だ……周りのせいにされるのは、あいつも居心地が悪いだろうよ」 そう言うヴァイスの言葉には、微かに苦いものが混じっていた。 改めてリスティの父親は、この茶髪の若者の姿を見る。 包帯の上に羽織ったジャケットは、確かに改めて見てみれば、管理局のフライトジャケットだ。 そしてそれなりに整った顔立ちの眉に、微かな皺が寄せられている。 彼女を利用せんとする管理局に所属しながら、必ずしもそれを本意として受諾してはいない。 この男は信用できる。 ヘリコプターのパイロットを名乗った、この若者なら信用できる。 率直に、そう感じた。 「来た」 ぽつり、と。 小さく、短く。 スバルの声が囁いた。 落とした視線を持ち上げる。 中年男がそうしたように、同じく遠巻きにスバルを見守っていた住民達が、一様に彼女の向く方へ視線を向けた。 かつり、かつりと響く音。 劣化したアスファルトを叩くのは靴音。 たった1人のそれではない。合計10人分はあるだろうか。 見れば視界の彼方には、ぞろぞろと人影が浮かんでいる。 男性型、女性型。筋肉質に低身長。多種多様なものが入り混じっているが、どれも身に纏うのは同じフィットスーツ。 戦闘機人だ。とうとう奴らがやって来た。 生意気な管理局の魔導師を粛清すべく、この場所へと足を踏み入れたのだ。 「ほぅ、これは大層なお出迎えだ」 そして彼ら軍団の中、一歩先を歩む者がいる。 残る9人を従えるかのごとく、集団の先頭に立つ者がいる。 黒い短髪に、ひょろりと伸びた細い手足。 黒きマントから覗く体躯は、背丈の高い痩せっぽち。 されど、油断は禁物だ。 その暗色のスーツと黄金の瞳が、彼もまた戦闘機人であることを証明している。 その残忍かつ尊大な笑顔が、彼の集団の中での地位を物語っている。 間違いない。 この男がボスだ。 あの赤茶と金髪を従えていた、リスティ達の住むエリアの親玉だ。 「201号と273号をやったという魔導師はお前だな?」 「そう言うお前がこのエリアのボスか」 「そうだ。俺がクラナガン第11区を率いる、戦闘機人第98号機だ」 静かに。それでいて得意げに。 右手を灰色の胸元へと添えながら、漆黒の戦闘機人が名乗りを上げた。 「その親玉様としては、何としてもあたしを排除しておきたい、と」 「何せ俺達の事情もなかなか複雑でな」 スバルの問いかけに対し、98番目の戦闘機人が、おどけるようにして肩を竦める。 「弱い奴には従わない……戦闘機人の間では常識だ。 示しをつけなければ侮られる。そうなれば俺の支配するこの庭も、他の連中にいつ掠め取られるか分からないのさ」 対するは沈黙。 嫌味な笑みを浮かべる98号とは対照的に、スバルは冷静な無言で受け止める。 見下したようなゴールドと、射抜くようなエメラルド。 黒髪の男と青髪の女が、真っ向から視線をぶつけ合わせる。 ふ、と。 不意に、98号の笑顔が軟化した。 自らの力を誇示し他者を威圧せんとする表情に、異なる感情の色が混ざる。 「しかし、お前もよく逃げずにいたものだ。その言い草からして、俺達が来ることは分かっていたんだろう?」 それは嘲笑。 愚かなる思考を嘲笑う形相。 反逆者を駆逐するために、いずれここに戦闘機人達がやって来る。 それを分かっていたにもかかわらず、逃げようともせずにこの場に残った。 確実に叩き潰すべく、徒党を組んでやって来ると、分かっていたにもかかわらずだ。 誰の目にも明らかな多勢に無勢。 10人の戦闘機人を相手取るなど、無謀にも程がある愚行。 どう考えても勝てるはずもない負け戦。にもかかわらず、スバルはこの場に留まった。 これを身の程知らずと呼ばずして何と呼ぶか。 げらげら、げらげらと。 背後に並ぶ機人達からも、次々と下品な笑いが上がった。 「確かに、あたし1人で全員を相手にするのは厳しいかもしれない……でも、お前1人だけなら倒せる」 「ほう、決闘をご所望か?」 「格下の魔導師を袋叩きにする、なんてのもみっともないでしょ?」 面食らったような顔の98号へと畳み掛ける。 僅かに丸くした双眸を振り返らせ、同じく丸くなった部下の瞳と見合わせる黒髪の機人。 ここまでは事前の計画通りだ。 現状敵の勢力規模は、管理局残党よりも圧倒的に大きい。 いわば戦闘機人は魔導師以上の格上の存在であり、格下とはすなわち慢心と自尊心を抱く対象だ。 それを再認識させて、一対一という状況へと引きずり込む。 敵の中でも一番強い奴を叩きのめし、より効果的に相手に衝撃を与えるために。 「……確かに、一理ある」 にぃ、と。 痩せたマント男の口元に、再び浮かんだ三日月模様。 「お前を確実に葬る手段はいくらでもある。 圧倒的物量を以って嬲り殺すなり、民衆を人質に取って身動きを封じるなり、な…… ……だが、どの部隊の何者とも知れぬ雑兵に、そこまでムキになるようでは、俺の面子もがた落ちだ」 ぱちん。 細い針金のような指を鳴らす。 ぞろぞろと蠢くは配下の連中。 合図に応じた戦闘機人達が、スバルを取り囲むようにして円形に並んだ。 ギャラリーに当たるリスティ達民衆からすれば、さながらスタジアムのフェンスのようだ。 「お望み通りに応じてやろう。逃げも隠れも許されない、一対一の真剣勝負だ」 邪悪な笑みが浮かべられた。 一組の男女を囲う壁は、せめてもの保険のつもりだろうか。 たとえスバルが逃げようとしても、そこでせき止められるようにするために。 あるいは、たとえ98号が追い詰められても、すぐに援護に出られるように。 「勝負をする前に、1つ聞きたいことがある」 「いいだろう。俺の知る限りのことなら、死ぬ前に1つくらいは答えてやる」 目の前の戦う相手へと、問いを発するスバル。 98号がそれに応じたのは、絶対的優位にあると確信してやまぬ自信故か。 ゆっくりと。 一度閉じた口が開かれる。 唇の紡ぐ言葉は。 少女の口から発せられた問いかけは。 「――“高町なのは”を知っているか」 一瞬。 その名が紡がれた、まさにその一瞬。 全ての時間は静止した。 その場に居合わせた人間の、あらゆる思考が凍りつく。 発せられたその名前に、全員の体感時間がストップした。 「昔管理局に所属していた、伝説のエース・オブ・エースだ。あの人が今どこにいるか……知っていたら、その居場所を教えてほしい」 そして一瞬のインターバルの後、改めて問いの内容を認識する。 ああ、知っているとも。 その名前だけならば、誰もの記憶に残っているとも。 リスティの父親はそう思った。 ヴァイスもそう思っているはずだ。 恐らくこの場の全員が、まず間違いなくそう思ったはずだ。 かつてエース・オブ・エースと謳われた、高町なのは一等空尉。 時空管理局の魔導師の中でも、最高の技術と戦績を有した者に送られる、最強の中の最強の称号。 おおよそこのミッドチルダに住む者の中で、彼女の名を知らぬ者など1人もいない。 「……ッ……ククク……」 ああ、それでも。 「くはっ、はははは……何を言い出すかと思えば、そんなことか……!」 答えるべき男は笑っている。 漆黒のマントを羽織った肩を、さぞ滑稽そうに揺らしている。 おかしくてたまらないと言わんばかりに、腹を抱えて嘲笑している。 「知らないはずがないだろう!? わざわざ俺が言わずとも、お前にもとっくに分かりきっていることだろう!?」 そうだ。 そうなのだ。 かつてのエース・オブ・エースは。 前大戦を駆け抜けた、最強最後の守り手は。 「高町なのはは既に死んだ! あの月面での最終決戦で、俺達戦闘機人が抹殺した! それが唯一の真実だ!」 高町なのはは、もういない。 「無様なものだな……偉そうに振舞っておきながら、過去の栄光にすがりつき、残酷な現実から目を背けることしかできないとは」 「違う! なのはさんの死亡はまだ確認されていない! お前達が勝手に言ってるだけだっ!」 これまで以上に意地悪く、狡猾な笑みを浮かべる98号。 これまで以上に熱くなり、荒い語気をぶつけるスバル。 「違わないさ。彼女は死んだ。エースの翼は、偉大なる創造主――Dr.ジェイル・スカリエッティに食い千切られた」 そうだ。 それが奴らが発表した、エース・オブ・エースの辿った末路だ。 かつての時空管理局とスカリエッティの戦争。 その最後の舞台になったのが、天上に浮かぶ2つの月。 月面に陣取った科学者の城塞・聖王のゆりかごへと、決死の突入を仕掛けた月面攻防戦だ。 背水の陣の覚悟で決行された作戦は、しかし管理局の敗北に終わった。 そして撤退する残存兵力を逃すべく、殿を買って出た高町なのはは、奴らの手にかかり命を落とした。 戦後2年近くが経った今でも行方が知れず、管理局に戻ってくる気配もないのが、その何よりの証明だ。 「こんな具合になぁッ!」 瞬間、絶叫。 急激に男の語気が強さを増す。 冷徹な嫌味を込めた口調に、燃え滾るかのような勢いが宿った。 そこに込められたのはすなわち気合。 振りかぶられた右腕に、ちかと輝く光がある。 ぱっと煌く紫の閃光。 ばちと轟くプラズマ音。 一瞬の出来事だった。 それら2つの現象を、リスティの父は同時に知覚していた。 否。 同時にしか知覚できなかった。 それが一般人の限界だ。 それが敵のエネルギー弾であったことも。 それが手下の包囲の穴を縫って、リスティ目掛けて発射されていたことも。 それが自分達の理解よりも遥かに早く、スバルによって防がれていたことも。 突き出された左手を見た瞬間に、ようやく理解できた事象だった。 くわ、と。 98号の瞳が見開かれる。 黄金色の機人の瞳が、これ以上ないほどの驚愕に染まる。 だがそれは、己の一撃を防がれたことによるものではない。 「お前……その、手は……!」 きっと自分達が抱いているものと、全く同じ衝撃のはずだ。 そこに突きつけられたのは、にわかには信じがたい残酷な真実。 「ふ……ははは……ファハハハハハハハ! そうか、そういうことだったのか!」 機人の男が大笑する。 今度こそ滑稽だと言わんばかりに、思いっきり大声を上げて大笑する。 98号の攻撃を受けた左手は、ひどく焼け爛れていた。 当然だ。 恐らくは防御魔法を展開する余裕もないままに、反射的に素手で防御を試みたのだ。 それだけならば普通の人間と同じ。特に驚くことはない。 本当に驚くべきはこれからだ。 引き裂かれた皮膚から覗く傷口から、流れ出すのは真紅の血液。 通常の人間であるならば、真っ赤な筋肉が見えるであろうその場所からは。 「まさかお前まで俺達と同じ――戦闘機人だったとはなァッ!!」 鋼色を放つ金属パーツと、断線したコードから放たれるスパークが覗いていた。 ああ、とうとうばれてしまったな。 できることならばこのままずっと、隠し通していようと思ったのにな。 煙の上がる左手を見やり、スバル・ナカジマは思考する。 されど、結局こうなってしまった。 リスティを守ることこそできたが、結局己が正体をさらす羽目になってしまった。 「そうだ。製造ナンバー、タイプゼロ・セカンド……あたしは一番最初に設計された、お前達と同じ戦闘機人だ」 こうなってしまっては仕方がない。 これ以上隠し通すことなどできない。 故に、その名を口にする。 誤魔化しきれない正体を、はっきりと声に乗せて言い放つ。 「くくっ、そういうことか……2人がかりでも倒せなかったのは、そういうからくりがあったからか……」 くつくつと。 嫌な笑顔を浮かべながら、嫌な視線を向けてくる。 何度向けられても気に食わない、この98番目の戦闘機人の嫌な表情。 人を見下すことしか知らない目。 人を嘲笑うことしか知らない口。 「お前も……戦闘機人、だったのか……」 野太い声が背後から聞こえる。 リスティのお父さんの声だ。 見た目通りのがっしりとした声が、しかし今は震えている。 彼の声を皮切りに、人々が静かにざわめきだした。 刺すような視線を肌に感じる。幾十もの声音を耳に感じる。 「お……おい、お前らっ! こいつは……こいつはなぁッ――!」 「いいのっ!」 立ち上がるヴァイス陸曹が張り上げた声を、それ以上の声で制止する。 「スバル……」 「いいんです……分かってたことですから」 その優しさは嬉しいと思う。 正体を知られた自分を庇おうとしてくれたのは、心底ありがたいとは思う。 それでも、その気持ちだけで十分だ。 中途半端な言い訳だけでは、届くことはないと分かっているから。 他人の口を通した言い訳が退けられた時ほど、惨めで申し訳ないことなどないのだから。 ちら、と振り返る。 緑の双眸に映るのは、すっかり様変わりしてしまった人々の表情。 当然だ。 こうなると分かっていたからこそ、正体を知られたくはなかった。 無用な刺激を与えることは、避けなければならないと思っていた。 エース・オブ・エースの名を知らぬ者がいないように、戦闘機人を嫌わない者などいない。 恐怖。憤怒。憎悪。 十人十色の負の感情が、明確な拒絶として発せられているのが分かる。 それだけのことをしてきたのだ。 自分達戦闘機人という人種は、それだけ嫌われることをしてきたのだ。 「っ……」 リスティのすみれ色の瞳を伺う。 つぶらな少女の双眸は、目に見えて恐怖に震えている。 一番分かりやすい例じゃないか。 彼女は前の戦争で、お母さんを戦闘機人に殺されていた。 本当なら、こんな顔をさせなくて済んだだろうに。 怖いものは全部やっつけてやると約束したのに、自分で怖がらせてしまっては話にならないじゃないか。 思わず苦笑が浮かんでいた。 「裏切り者の戦闘機人よ……お前は何故俺達に刃向かう?」 戦闘機人の親玉が問いかける。 地獄の悪魔のような声音が、そっと囁くようにして発せられる。 「人間に味方する理由がどこにある? 世のため人のためと戦っても、彼らはお前を認めはしない。 民衆から憎み恨まれ蔑まれ、管理局にも体よく利用され、無惨に屍を晒すだけだぞ? それでもお前はその道を歩み、この俺に牙を剥こうというのか?」 そうかもしれない。 確かにそれは正論かもしれない。 早々に人間達を見限り、スカリエッティの軍門に下った方が、ずっと楽な生き方ができるかもしれない。 「あの人に出会ったから」 ああ――それでも。 「あの人に救われて、大切なことを教えられたから」 止まることはできないんだ。 今歩んでいるこの道を、踏み外すことなどできないんだ。 「かつてこの機械の身体は、あたしにとって絶望の象徴だった。 戦って傷つけられることも、誰かを傷つけてしまうことも、怖ろしくてたまらなかった……」 戦うことは好きじゃない。 暴力を振るうことが好きになれない。 かつての幼い頃の自分は、人間ならざる身体を持ちながら、戦闘機人としても失格だった。 強すぎる力を誰かに振るって、不要に傷つけてしまうのが怖かった。 「……だけど、今はこの身があたしの希望だ」 だけど、今なら戦える。 あの日あの場所であの人と出会った、今の自分なら戦える。 「人でない戦うための機械の身体が、あたしの力を支えてくれている」 首元のマッハキャリバーが声を発した。 蒼穹色の水晶が発光した。 全身に纏った衣服が即座に分解され、代わりにこの身を戦装束が包む。 大切なあの人のものにも似た、純白の輝きを放つバリアジャケット。 漆黒の鉄拳リボルバーナックルと、音速の具足マッハキャリバー。 「守るために、振るう力を」 力の意味は一つじゃない。 何かを壊し誰かを傷つける、暴力だけが力ではない。 「だから、あたしはお前達と戦う。そしてあの人を見つけ出す」 壊すための力があれば、守るための力もある。 誰かを壊したくないということは、誰かを守りたいということ。 自分が生まれた研究所では、決して知ることのなかったこと。 それを教えてくれた人々を守るためなら、自分は戦うことができる。 壊すための力でなく、守るための力なら、いくらでも振るうことができる。 戦闘機人の機械の身体が、それを実現するだけの素質を与えてくれている。 「それを教えてくれた人に――高町なのはに会いに行く!」 白いはちまきが締められると同時に、スバル・ナカジマは宣言した。 一切の迷いなき視線と共に、アームドデバイスの鉄拳を構えた。 エメラルドの視線に宿るのは決意。 たとえどれほどの拒絶を受けようとも、世界の全てに否定されようとも。 人々を守り抜くためならば、この地獄のごとき世界の中でも、敢然と戦い抜いてやるという意志。 「上等」 ゴールドの視線が引き絞られる。 不敵かつ獰猛な笑みが浮かぶ。 「ならばこの俺直々に、お前の旅路を締めくくってやろう」 漆黒のマントが翻った。 布地の裏側を染め上げる、鮮血のごとき赤が躍った。 「何せ幻のタイプゼロだ。俺1人の力で捕らえたとあれば、その分手柄も増すというもの……」 目の前に立つのは許されざる敵。 たとえ命を賭けてでも、全力で否定しなければならない悪。 最も許せないと思った、壊すための暴力の権化だ。 必ず倒してみせる。 この地に生きる人々のためにも、降りかかる火の粉は払ってみせる。 こんな奴のために流れる涙を、もうこれ以上見たくなんてない。 人の幸せを奪う敵は、何人であろうとも薙ぎ倒してみせる。 「さぁ、来るがいい! 裏切り者の戦闘機人よ!」 宣言を聞き届けると同時に、マッハキャリバーを加速させた。 まるで蝶を追うような感触だ。 拳を振るう少女の顔に、少しずつ焦りの色が浮かんでいく。 右のストレートを勢いよく突き出し、続いて回し蹴りを叩き込めば。 敵はそれら双方を、ひらりひらりとかわしていく。 先ほどからこれの繰り返し。 どれほどの剛拳を打ち込もうと、目の前の男には掠りもしない。 余裕ぶって回避するたび、ひらひらとはためく漆黒のマント。 こちらが少しでも隙を見せれば、即座にエネルギーの弾丸を撃ち込んでくる。 さすがにこの11区の戦闘機人を束ね上げるボスだけのことはあるか。 覚悟はしていた。だが、これほどまでにやりづらい相手だとは思わなかった。 潰された左手は使えない。握力がほとんど残されていない。 その差が決定的な差になる前に、何としても敵の動きを読まなければ。 「無様だな、ゼロ・セカンド。報告にあった通りの力任せ……見た目にも色気がないときた」 右手より弾丸を放つ98号が、嘲笑と共に口を開いた。 煌く閃光。引かれるトリガー。 回避は間に合わない。反射的にプロテクションを展開。 ばちっ、と鳴り響く反発音。 紫色の光球と、空色の魔法陣が激突する。 電気のスパークのごとき烈音と共に、視界一面に迸る激烈な光輝。 青と紫の衝突が止んだ。目にも眩しき闇が晴れた。 その、瞬間。 至近距離に感じる、黒と黄金。 「俺が“女”を教えてやろうか?」 指先が顎を伝う、感触。 ほぼゼロ距離に感じる、吐息。 少女の顔に差し込む、影。 「っっ!」 顔が赤くなっていたかもしれない。 眉間には皺が寄っていたに違いない。 びゅん、と空を切り裂いて。 一瞬ムキになったスバルが、目前でせせら笑う男の顔へと、瞬速のアッパーを突き出した。 「ははっ! 安心しろ。俺はお前を手篭めになどしない。なにせ、お前の身柄はドクターに献上しなければならないのだからな」 されど、黒を捉えるには至らず。 白装束の振るう拳を、ひらりと飛び退り回避する黒装束。 捉えどころのないこの仇敵は、さながら暗黒の蜃気楼だ。 「お前は何のためにあたしを欲しがるんだ!」 「決まっている! 力のためだ! 製造者不明・所在不明のタイプゼロ……最高の被験体を探し当てたとなれば、俺は更に強くなれる! 創造主たるドクターの手による、更なる改造を望むことができる!」 「何のために力を! これ以上暴力を振るうべき相手なんて、お前達にはもういないだろっ!?」 「敵ならいくらでもいるさ! そうとも、こんな小さな箱庭になど収まるものか…… 俺はまだまだ強くなる……全てのライバルを踏み台にし、“原初の11人”をも引きずり落とし……最強の戦闘機人へと上り詰めてみせる!」 「っ……お前はぁっ!」 拳が震えた。 怒りに奮えた。 澄んだ緑色の双眸に、燃え盛るマグマの憤怒が宿った。 「戦い、倒し、強くなる! それが俺達戦闘機人の、唯一無二の存在意義だろう!」 「ふざ、けん……なあぁぁぁっ!」 轟、と。 右手の白銀の歯車が回転。 二層に連なる回転刃は、破壊力を高めるナックルスピナー。 魔力を動力へと変換し、火花と共に大気を引き裂く。 鋼鉄の駆動音を掻き鳴らし、瞬発攻撃力を増幅。 「あたしはお前を許さない……」 こんな奴らをたくさん見てきた。 高町なのはを探しながら、世界中を巡る中で、自分はこんな奴をごまんと見てきた。 己の嗜虐心を満たすために、いたずらに暴力を振るう者。 己の出世欲を満たすために、被験体と称して人々を引き離す者。 そうして誰かを悲しませる者達が、かつてこの地獄を作り上げた者達だ。 そんなふざけた連中のために、平和に生き続けたいだけの誰かが、常に涙を流している。 許せない。 許せるものか。 「そんな自分勝手な理由のために、誰かを傷つけるお前達を……あたしは絶対に許さないッ!!」 怒れるスバルの鉄の拳が、弾丸のごとく唸りを上げた。 金属色の咆哮。白銀が巻き込み切り裂く虚空。 螺旋を描くリボルバーナックルが、抉り込むようにして98号へと殺到。 これまで以上の一撃だった。 遥かに鋭い拳速。 遥かに重い拳圧。 遥かに強い気迫。 「っ……!」 その三拍子の一撃が、僅かに標的の読みを上回った。 より威力を増した右ストレートが、僅かに目測よりも早く届いた。 これまで掠りもしなかった攻撃が、揺らめくマントへと叩き込まれた。 左の脇腹のすぐ傍を掠め、はためく布地へと吸い込まれる。 回転は暴力的な破壊力を生み、薄い生地へと風穴を空ける。 漆黒の裏側に広がる赤は、真に鮮血のごとく瞳に映った。 「く……!」 戦闘機人の顔が青ざめる。 これまでの余裕に満ちた笑みが掻き消え、頬を一筋の冷や汗が伝う。 ただの一撃だ。 たった一撃が当たりそうになっただけだ。 ただそれだけであるにもかかわらず、顔は引きつり色は失せ、98号は顔面蒼白となった。 おかしい。 明らかに異常だ。 この常軌を逸した反応は、誰の目にも異常に映った。 「スバル!」 そして。 ただ、1人。 その異常の正体へと、思い至った者がいた。 「相手が回避に徹してるのは、防御に自信がねぇからだ! ドデカい一撃をぶち込めば、間違いなく一発でブッ潰せる!」 遠巻きに見ていたヴァイスの声が、鋭くスバルの鼓膜を打つ。 ち、と。 同時に鳴った音さえも。 戦闘機人の鋭敏な聴覚は、消え入るような舌打ちさえも、敏感に感じ取っていた。 言ってしまえば、この男の戦闘能力は、その外観から受ける印象と全く同じだ。 ひょろりとした痩せ気味の体格は、さながら柳や暖簾のように、攻撃を回避することには長けている。 だが、一度でも当たれば終わりだ。 枝葉をへし折るのはあまりにも容易。薄布を切り裂くのはあまりにも容易。 薄っぺらなその身体は、とことん堅牢性に欠けているのだ。 その98号自身の舌打ちが、この仮説を裏付ける何よりの証拠だ。 「だが……それだけではこの俺は倒せん!」 ばっ、と。 細く伸びた両腕が広がる。 阿修羅のごとき剣幕で、敵を睨みつける戦闘機人が、背中のマントを大いに広げる。 「教えてやろう……この俺がこの11区の中で、何ゆえ無敗を誇っていたかを!」 刹那、跳躍。 だんっ、と両足が大地を蹴る。 思いっきりジャンプした98号の身体が、廃墟の上空へと舞い上がる。 否。 これはただの跳躍ではない。 跳ぶ、ではなく。 飛ぶ、ということ。 すなわちこれは―――――――――飛翔! 「空戦型かッ!」 忌々しげにヴァイスが叫んだ。 空を自在に飛び回る技術は、魔導師の専売特許ではない。 魔導師風情に並べぬようでは、戦闘機人が存在する理由などない。 奇跡の力を巧みに操る、魔法の力があるように。 機械仕掛けの兵士には、人工の奇跡の力が宿る。 先天固有技能――インヒューレント・スキル。 「そう……俺のIS(インヒューレント・スキル)は飛行能力!」 威勢を取り戻した98号が、力強く天空に叫びを上げた。 虚空にはためく黒のマントは、さながら蝙蝠の翼のようだ。 爛々と黄金の瞳を光らせ、廃ビルの狭間に浮かぶ姿は、まさしく恐怖の蝙蝠男。 「高度30メートル! 陸戦型揃いの下僕共にも、お前にも手の届かぬ不可侵の聖域だ! 地べたを這いずる戦闘スタイルが災いしたな……ククッ、見ているがいい……俺の全力の空爆で、襤褸雑巾のようにしてくれる!」 高らかに笑った。得意げに両腕を突き出した。 内側より湧き上がる紫のエネルギーが、開かれた十指へと宿る。 出力マックス。エネルギー全開。 この高度ならば届かない。どれだけ防御が薄かろうと、敵の射程外に逃げれば怖くない。 ならば勝負はこちらの勝ち。 敵の攻撃は届かない。こちらは攻撃し放題。 圧倒的手数で制圧し、一気にケリをつけてやる。 「――甘いよ」 そう、思っているのだろう。 とでも、言わんばかりに。 「っ」 にやり、と顔に浮かぶ微笑。 笑ったのだ。 この瞬間、初めて。 戦闘機人第98号だけでなく、戦闘機人タイプゼロまでもが。 この戦闘が始まって以来、初めてスバルが笑みを浮かべたのだ。 何のつもりだ。 ハッタリのつもりか。 98号の笑顔は掻き消え、怪訝の一色が顔面を支配する。 できるわけがない。 飛び道具に乏しいベルカ式の、それも空を飛べない陸戦型が、自分を倒すことなど不可能なはずだ。 「魔法技術は日々進化してる……空飛ぶ術を持たないばかりが、ベルカの陸戦魔導師じゃない!」 そう、思っていたのだろう。 この、瞬間までは。 ぎゅん、と。 ナックルスピナーの唸りと共に、鋼の鉄拳が振り上がる。 手のひらに集束されるは魔力。 黒いグローブに浮かぶは蒼天の煌き。 握り締めた右の拳が、勢いよく眼下へと叩き落とされる。 スバル・ナカジマの背中には、憧れたエース・オブ・エースのような、天翔ける翼は生えていない。 地に足をつける陸戦型には、忌まわしき漆黒の機人のように、宙を舞うことなどできはしない。 それが古代のベルカ式なら、陸戦騎士が空を飛ぶなど、到底できるはずもなかった。 されど、彼女は違う。 幾多の先人達の努力の下、脈々と培われてきた近代ベルカ式魔法は、絶えず進化を続けてきた。 もはや翼を持たないことと、空を飛べないことはイコールではない。 空を翔けるための翼がないのなら。 空を駆けるための道を作ればいい! 「ウィング――ロォォォォードッ!!」 がん、と響く硬質な音。 ごう、と轟くスバルの叫び。 拳がアスファルトを揺らすと同時に、空色の閃光が立ち昇った。 その様は昇竜。 さながら雄叫びを上げる青き竜蛇が、天空高くへと飛び上がるようだ。 されど、魔力で形成されたそれは、伝承の竜と同じではない。 翼なき者が空を飛ぶためといえど、わざわざ竜を呼ぶ必要はない。 「何だ、これはぁぁぁっ!?」 驚愕も露わな声が上がった。 くわ、と瞳を見開きながら、翼持つ機人が絶叫した。 それは道だ。 猛然と迫り来るその輝きは、まさしく天へと昇る道だ。 薄っぺらな橋のごとく形成された魔力が、徐々に自らの身体を伸ばし、天上の標的目掛けて殺到しているのだ。 スバルの家系に代々伝わる、移動魔法ウィングロード。 人が空を飛べないのなら、空に道をかければいい。 御伽噺の虹の架け橋を、実現させてしまえばいい。 そんな馬鹿げた絵空事を、大胆にも実現してみせた奇跡の業だ。 日々邁進する魔導師達の、努力と探究心の果てに辿り着いた奥義だ。 「ふんっ!」 ばっ、とスバルが跳躍する。 その高度はあまりにも低い。宙に浮かぶターゲットに比べれば、10分の1の高度にもなりはしない。 だが、それだけで十分だ。 道に乗れさえすればいい。 後はこの光り輝くウィングロードが、行くべき道を築き上げてくれる。 「く……来るなっ!」 男がみっともなく叫んだ。 狼狽する98号の両手から、紫電の弾幕が解放された。 襲い来る紫色の弾丸の嵐は、さながら熱帯雨林のスコールのようだ。 並の人間であるならば、到底無事ではいられない。 避けることも防ぐこともできず、あっという間に蜂の巣にされる。 されど、今まさに天上を目指す者は、そこらのひ弱な一般人ではない。 未来の管理局を担う存在として、徹底的に鍛え上げられた、正真正銘の超人だ。 カット、カット、カット。 さながら金髪の巨漢相手の戦闘の焼き回し。 迫り来る猛威の間を縫うように、マッハキャリバーの軌道が曲がる。 ウィングロードの示す道筋は、スバルの求める道筋と同じ。 術者の思考と正確にリンクし、かくかくと複雑な軌跡を描く。 敵が紫の豪雨なら、こちらはさながら青き稲妻。 雷のごとき軌道を描き、猛烈な速度で標的へと肉迫。 「くぅっ……!」 逃げようとする。 98号が後退を図る。 そうはさせない。 逃がしてたまるか。 「!?」 蝙蝠の翼が逃れるよりも、魔法の道が届くのが早かった。 ぐわん、と青き道筋は曲がる。 ぐるんぐるんと鳴るかのように、光が描く軌跡は螺旋。 天上に描かれたスパイラルは、悪しき罪人を幽閉する牢獄。 回り込んだウィングロードが、敵の逃げ道を完璧に塞いだ。 「や、やめろッ! 来るな……来るなぁぁぁぁッ!!」 その願いは聞き届けてやらない。 散々命乞いを無視してきたお前の、その命乞いだけは絶対に聞かない。 がしゃん、と重厚な音を立て、デバイスのカートリッジシステムを起動。 魔力を圧縮した弾丸が、更なるエネルギーを解放する。 吹き出るスチームと共に満たされてく、強く眩き青の閃光。 「リボルバアァァァァァ――……ッ!」 振りかざすのは正義の鉄拳。 灼熱の魔力に覆われた、一撃必殺のストレート。 距離が詰まる。 拳が持ち上がる。 残された距離は数メートル。 それもやがてゼロへと変わる。 乾坤一擲の気合と共に。 疾風怒濤のごとき拳を。 まっすぐに。 叩き、つける。 「キャノオオオォォォォォォ―――ンッ!!!」 刹那、世界は爆裂した。 蒼穹色の激流が、視界の全てを塗りつぶした。 フィットスーツの腹部にて、眩いばかりのエネルギーが爆裂。 千々に引き裂かれた極光には、天地鳴動の破壊力。 「がああぁぁぁぁぁっ!」 野獣のごとき荒々しき悲鳴が、拡大する光を破り裂いた。 青き閃光が掻き消える中、悲痛な唸りを上げた男が、ゆらりと重力に引かれて落ちた。 ぷすぷすとたなびく灰の煙。さながら襤褸雑巾のような翼。 羽を焼かれたイカロスは、ただ地上へと落ちるのみ。 「ク、クククク……」 消え入るような嘲笑が、微かにスバルの鼓膜を突いた。 「精々みっともなく足掻くがいい……貴様らごときが、どう足掻こうと……世界は……変えられはしないの、だから……」 みっともない負け惜しみを吐いた大将は、鈍い音と共にアスファルトへと沈んだ。 訪れるのは静寂。 あれほど口やかましかった漆黒の機人も、もはやその口を開くことはない。 死人に口なし、ということだ。もっとも、本当に死んだかどうかは定かではないのだが。 重要なのは生死よりも、彼と彼女の勝負の決着。 「ボ、ボスが……」 「あたしらのボスが、やられた……」 クラナガン第11区の中でも、最強を誇った親玉が、敗北したという事実だ。 群れなす戦闘機人達にとっては、それが唯一の真実だった。 ざわめきが生じる。 あれほど振りまいていた自信と邪気が、みるみるうちに萎縮していく。 最強無敗が負けたということは、勝者はそれ以上に強いということ。 最強以上の最強に、雑兵が勝てる道理などない。 そしてこの激戦を制した強者は、彼らと敵対する存在だった。 ウィングロードが大地へと向かう。 純白と蒼穹の色の拳士が、ゆっくりとアスファルトへと着陸。 にっ、と。 不敵な笑みが、向けられる。 「……で、どうする?」 ぱし、と軽快な音を立て。 リボルバーナックルの鉄拳が、爛れた左手へと収まった。 スバル・ナカジマのその仕草と、その笑顔がとどめの一撃となった。 「う……うわああぁぁぁぁぁーっ!」 戦闘機人は実力主義。自分より弱い奴には従わない。 ひっくり返せばそれはすなわち――自分より強い奴には逆らえない、ということ。 彼我の戦力差は絶望的だ。 少なくとも、彼らにそう認識させるには、この大立ち回りのインパクトは十分過ぎた。 あれほど威張り散らしていた戦闘機人が、我先にと悲鳴を上げて退散する。 恥も外聞もない恐慌と共に、蜘蛛の子を散らすようにして逃げ去っていく。 あっという間に戦場から、暗色のフィットスーツの影が消えた。 後に残ったのは1人の少女。 負傷した左手に入れたパンチが、ぴくりと笑顔を引きつらせる。 新たなチャンピオンの誕生にしては、少々しまらない顔つきではあったが。 クラナガンに住まう人々の視界には、ただ1人の魔導師のみが残っていた。 一夜明けて、朝。 暗い宵闇が訪れ過ぎ去り、再びクラナガンの街に朝が来る。 ひび割れた道路やビル群を、穏やかな陽光が照らしていた。 本当に、穏やかな朝だ。 昨日の激戦以来、この街に現れた強者を恐れる戦闘機人は、すっかり暴れる様子もなく静まりかえっていた。 「召集、ですか?」 そして彼らを黙らせた少女はというと、きょとんとした表情で、ヴァイスの言葉を反芻した。 スバルが一夜を明かした場所は、小ぢんまりとした無人の不動産屋。 当然、住む者は誰もいない。 正体が割れるまでは、リスティの親子の寝床を借りる算段がついていたのだが、 戦闘機人であることが知れ渡った今、無用な刺激を避けるためにも、彼女は1人でここに転がり込んでいた。 そして夜が明け、職場の上司に玄関先にて呼び出され、お互い瓦礫に腰掛けながら話すという現状に至るというわけだ。 「そうだ。いよいよそれなりに反撃の準備が整ったらしい。 本格的に活動を開始するってことで、お前ら4人に、ちょうど一ヶ月後――5月の8日までに帰還しろ、って命令が出てる」 それを伝えるのが、ヴァイス・グランセニックに与えられた任務だった。 通信手段を使うことなく、わざわざ直接出向いたのは、通信傍受の可能性を避けるためらしい。 ストライカーズ養成計画の存在が極秘なら、彼女らを集めるのも極秘。 そこから情報が漏れ、手を打つ前に打たれてしまっては話にならない。 こういう時に幸いしたのが、彼の持っていたバイク免許だ。ヘリコプターを飛ばすよりは、隠密性も高いだろう。 「そっか……また、みんなに会えるんだ」 自然と、スバルの表情が綻ぶ。 当然といえば当然だ。 みんなというのは言うまでもなく、同じ養成計画のカリキュラムを受けてきた仲間達である。 戦闘機人という正体を知った上で、それでも仲間として接してくれているのは、現状管理局残党に関わる面々だけだ。 そしてその中でも特に、残る3人の同期達との絆は深い。 スバルには養父と姉がいると聞くが、彼ら3人に抱く信頼と愛情は、その家族へのそれとほぼ同等と言っていいだろう。 「………」 ヴァイスもまた、彼女の愛すべき友の姿を思い浮かべる。 これから1人ずつに伝令を伝え、全員が集合した後も、彼が面倒を見ていくことになる若者達を。 銀の二挺拳銃を携え、橙色のツインテールをたなびかせる少女。 燃えるような赤毛を揺らし、大仰な騎士の槍を振りかざす少年。 両手にブースト手袋を嵌め、召喚獣を使役する桃色の髪の少女。 スバルは一体彼ら以外に、何人の仲間を作ることができるだろう。 この呪われた身体に生まれた少女を、一生のうちに何人の人間が理解し、支えようとしてくれるだろう。 スバル・ナカジマは孤独な少女だ。 誰も信頼できる相手がいないわけではない。 同じ戦闘機人の姉はいるし、研究機関から救出された彼女らを保護してくれた父親もいる。 管理局の上官や同僚は理解を示してくれたし、親友と呼べる人間も3人いる。もちろん、ヴァイスも彼女の味方だ。 だが、彼女には敵が多すぎた。 戦闘機人を憎む人間が、この世界にはあまりにも溢れすぎてしまった。 戦争を起こし、自由を奪い、暴力と恐怖で管理世界を支配する彼らを、民衆はそう簡単には認めないだろう。 左手に巻かれた包帯を見る。時間をかければ、自然治癒でもある程度は回復が望めるらしい。 しかし事実として、彼女は左手に傷を負った。 知られれば拒絶されると知っていたのに、躊躇うことなく肉体にも傷を受けた。 自分を恐れ憎む者達を救うべく、独り心と身体をすり減らし、死と隣り合わせの戦場に臨む。 誰からも理解されることない、誰からも敵と見なされる――まさに、地獄だ。 「俺はあと2日も養生したら、次の奴の居場所に向かうつもりなんだが……お前はどうする?」 できることなら、無理やりにでもここから連れ出したかった。 一箇所の集落に住まう人間全員から、恐怖と憎悪をぶつけられる苦痛。 一体その笑顔の裏で、どれほどの痛みと苦しみを、その細く華奢な身体に抱えているのか。 ヴァイスに知る術はない。されど、人間には想像が可能だ。 想像するだけで、ひどく吐き気をもよおした。 世界中のどこにも逃げ場がないことは分かっている。スバルにとってこの世界は、尽きることない無間地獄だ。 それでも、せめてこの場ぐらいからは、彼女を遠ざけてやりたかった。 「んーと……」 身体は機械でできている。されど心は人間だ。 今もこうして、歳相応の人間らしさを見せる彼女に、これ以上の痛みを背負わせたくない。 本来ならば、戦う必要もなかったであろう彼女を、苦しみの中に放置しておきたくはない。 「?」 と、その時。 不意に目を丸くしたスバルが、脳内で紡いでいたであろう思考を打ち切る。 背後から気配を察したのか。ちょうどヴァイスの位置からでは彼女自身に隠れて見えない、何者かの存在を感じたのか。 怪訝そうな表情を浮かべ、首を後ろへと傾ける。 こんなことは、昨日にもあった。 ボスとの戦いに臨むスバルが、今と同じ状況を体験したことがあった。 「………」 振り返った先にいたのも、その時と同じ人間だった。 銀色の髪とすみれ色の瞳は、あの塞ぎ込んでいたリスティだ。 おずおずとした幼子の視線が、数歩分の距離を置いて、じっとスバルを見つめている。 当然だ。 彼女は戦争で母を喪った。戦闘機人の手によって殺された。 リスティにとって戦闘機人とは、最も恐怖と憎悪を抱く対象であって然るべき存在であるはずなのだ。 かつり、かつりと靴音が鳴る。 最も嫌いな人種へと、しかし彼女は歩み寄る。 歩幅の小さい、ゆっくりとした歩みであっても、着実にスバルの元へと近づいていく。 遂に彼女の座る瓦礫へと到着。 スバルとリスティの間の距離は、数歩分からゼロへと縮まった。 す、と。 小さな右手が持ち上がる。 時折震える短い腕が、恐る恐るといった様子で伸ばされる。 歩みの倍近くゆっくりと伸びた手は、漆黒のジャケットの裾をぎゅっと掴んだ。 ようやく彼女の元へと歩み寄り、ようやく手を伸ばしたリスティの顔は。 それまでどこか遠慮がちな、複雑な表情を浮かべていたリスティの顔は。 次の瞬間には――笑っていた。 にっこりとした微笑みが、眩い光を放っていた。 一瞬、スバルは面食らったような表情になる。 何せあれほど怯えていた少女の笑顔だ。予期せぬ行動と反応に、目を丸くして硬直する。 だが、しかし。 そこに込められた意図を察したのか。 その無言の笑顔に込められた、感謝と親愛の意を察知したのか。 次の瞬間には、スバルもまた、満面の笑顔で応じていた。 「……もう少し、ここに残ろうと思います」 ヴァイスの方へと振り返る。 心からの笑みを浮かべたスバルの顔だ。 「連中に牽制を効かせておかないといけませんし……ギリギリまでは、ここでなのはさんの手がかりを探そうと思います」 なんて眩しい笑顔だろう。 素直に、感動すらも覚えた。 そうだ。やはりこの娘には、こういう顔が一番似合う。 この弾けんばかりの笑顔こそが、人間スバル・ナカジマが持つ、何よりも強い一番の武器だ。 「そっか」 自然と、彼も笑っていた。 立ち上がり、リスティの手を握り返したスバルが、共にアスファルトを歩いていく。 互いににこにこと笑い合う背中を、同じく立ち上がって見送る。 ふと視線を傾ければ、あの幼子の父親がいた。 大柄な筋肉質の中年男は、相変わらずひげを伸ばしていて、相変わらずタンクトップを着ていた。 「俺は戦闘機人が嫌いだった」 すぐ横へと歩み寄ったヴァイスへ向けて、野太い声が紡がれる。 リスティが母を喪ったということは、彼もまた妻を喪ったということ。 厳つい男の厳つい視線が、伴侶の命を奪った仇と同じ、戦闘機人の背中へと注がれる。 「だが俺が嫌ってたのは、スカリエッティの戦闘機人だけだったらしい…… 一晩明けて、頭が冷えて……そしたら、不思議とあの子を嫌おうとは思えなくなってたんだよ」 向ける目つきは穏やかで。 呟く口元は、笑っていた。 「あの子に伝えてやってくれ。娘を助けてくれてありがとう、ってな」 ああ、それだけで十分だ。 そのたった一言だけで、あの少女はどれだけ救われたことだろう。 その理解と笑顔だけで、彼女の心にかかった闇が、どれほど晴れることだろう。 自分のことのように喜び、微笑を湛えるヴァイスの姿があった。 「……戦闘機人の中にも、あんな子がいたなんてな……」 男の口が言葉を続ける。 視線の先に立っているのは、にこやかに笑うスバル・ナカジマだ。 「あの野郎はああ言ったが、あの子ならきっと、世界を変えることができる……平和な世界を取り戻せる……そんな気がするんだよ」 彼の愛娘を抱きかかえた少女は、互いに笑顔を浮かべながら、言葉を交し合っている。 その笑顔につられるようにして、行き交う街の人々もまた、笑顔で彼女に声をかける。 憎むべき戦闘機人であったはずのスバルは、この街にすっかり溶け込んでいた。 彼女の振りかざした拳と正義が、真に人々を救ったのだ。 「ああ――違いねぇ」 心底、同意した。 強く優しいあの娘ならば、今この目に映る笑顔を、世界中の人々に与えられるはずだと。 きっと世界を変えるのは、心無い圧倒的な暴力ではなく。 いかな苦痛にも挫けない、優しき不屈の心だと思うのだ。 彼女の名はスバル・ナカジマ。 高町なのはを目指す者。 自由と平和を取り戻すために戦う、不屈の心を受け継ぎし者。 To be continued... 予告 その手に銃を取る者がいる。 亡き肉親の遺志を引き継ぎ、双銃のデバイスを手に戦う者がいる。 彼女の名はティアナ・ランスター。 スバルと志を同じくする、もう1人の若きストライカー。 忌むべき邪悪を打ち砕くべく、今、奴が牙を剥く。 魔法少女リリカルなのはSpiritS 第二話 【スカーフェイス・ガンスリンガー】 あたしは全ての悪を駆逐する者――あんた達みたいな悪党への、復讐者よ。前へ 目次 次へ
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第一部 第十二話『病院。林檎と一時の休息』⑦ 幽霧たちが106号室に戻ると、アサギと銀髪の女性がパイプ椅子に座りながら読書をしていた。読んでいたのは、幽霧霞総受け集。 色んな所に出回っている事に、幽霧はどうしようも無い心境に襲われた。 女性は幽霧たちに気づき、パイプ椅子から立ち上がる。 「アインさん」 「御久し振りです。幽霧霞三等陸士」 そしてアインはナタネの方を向いて微笑む。 「御久し振りです。白き大地の騎士。千年振りでしょうか?」 「そうですね。夜天の王」 ナタネは無表情で返す。 どうやらアインとナタネは過去に会った事があり、出会った場所も余り良くなかったらしい。 幽霧の目には二人がにらみ合っている様に見えた。 徐々に気温が下がっていき、魔力が顕在化していく。 魔法陣でも展開して、戦闘でも開始しそうな雰囲気だ。 まさしく一触即発。 アインとナタネの戦闘力は人づてで聞くばかりであるが、この部屋が壊滅する事位は安易に予想がついた。 辛うじて二人を止められるかもしれないアサギはというと、幽霧霞総受け集を熟読している。 間違いなく、106号室で戦闘が始まってしまうだろう。 どうしたものかと考える幽霧。 「ひさしぶり。アインおねえちゃん」 アルフィトルテは一触即発の空気の中で挨拶をする。 「久しぶりですね。私の可愛い妹」 アインは微笑みながらアルフィトルテの頭をなでる。 さっきまで殺伐とした空気が一瞬で無くなったような気がした。 106号室が壊滅するという事態が起きなかったという事に幽霧は安心した。 アルフィトルテの頭を撫でていたアインがノインを見る。 「貴女は……」 「はじめまして、アイン秘書官。無限書庫所属の久世ノインです」 ノインはアインに自己紹介をする。 「話はクロノからよく聞いています。久世ノイン無限書庫副司書長。無限書庫の副司書長にして置くには惜しい人材であると」 一瞬だけノインが驚くが、すぐに営業用のスマイルで取り繕う。 「お褒め頂き光栄ですと、クロノ・ハラオウン提督に御伝え下さい」 「了解いたしました」 空気がいくらか和らいだ所で、幽霧はアインに尋ねた。 「さっき読んでいた冊子はどこで手に入れたのですか?」 「ベッドのテーブルに乗っていましたが?」 首を傾げるアインに幽霧は安堵した。どこから手に入れたわけではなかったらしい。 しかし安堵するにはまだ早い。106号室の中にある幽霧霞総受け集は二冊ある。 一冊はレンのものだと思うが、アサギの呼んでいるもう一つは何なのだろうか。 「アサギさん……それを一体どこで……」 幽霧が話しかけると、アサギは答えた。 「実はもう一冊持っていたようだ。唾液かなんかでちょっと湿っているけどな」 アサギが自ら幽霧霞総受け集をどこかから入手してきたわけではないらしい。 安堵する幽霧にアインはろくでもない事を呟く。 「これを作る人たちの気持ちが分からない訳でもありませんね」 アサギはアインの意見に同意する。 「そうだな~。あの幽霧だからな~」 アインとアサギの呟きに幽霧は珍しくギョッとした。 微笑みながらアインは幽霧に告げた。 「私も初めて会った時、女の子だと思っていました」 「うん。男には見えなかった」 「……そうですか」 声からでも分かるくらい、幽霧は落胆した。 ノインとナタネは幽霧に同情してしまった。 沈んでいる幽霧を慰めるようにクーラーボックスを差し出す。 「とりあえず、アイスでも食べましょうか」 「……そうですね」 それでも幽霧の声は沈んでいた。 「アイス♪ アイス♪」 アルフィトルテは楽しそうにクーラーボックスを開ける。 何かには色とりどりのアイスが詰まっていた。 「どれにしますか?」 クーラーボックスからアイスの入ったカップを取り出しながら尋ねる。 「バニラで」 「私もバニラをお願いします」 幽霧とナタネはバニラアイスを選択する。 「いちご~!」 「ミントで」 アルフィトルテはイチゴ味。ノインはミントを注文する。 「みかん味でっ!」 突然の声に全員がスライドドアの方を見る。 そこには血のついた包帯の塊もとい包帯でグルグル巻きにされたレンがいた。 「レン・ジオレンス陸曹長……生きていたんですか」 「フェイトさんの補佐官になるまでは……そう簡単には死ねませんよ……それに……」 レンの目が光る。 「君を襲うまでは~!」 某泥棒も驚くくらいの俊敏な速度で衣服を脱ぎながら幽霧にダイブ。 しかし類稀なるシンクロでナタネとアインがレンに魔力を纏った回し蹴りを叩き込む。 「……グレイヴ・オブ・クラウン」 ノインのデバイスから出てきた無数の鎖がレンを絡め取り、一気に引き寄せる。 「よっこらせぇ~ぃ!」 アサギがレンの身体をキャッチし、上反りになってレンを窓の外に投げ飛ばす。 数秒後には何かが折れた様な音と断末魔に似た何かが聞こえてきた。 「さて、アイスでも食べるか。このチョコレートアイスを貰おうじゃないか~」 アサギは怪我人であるレンを外に投げ飛ばしたというのに、暢気にアイスを食べ始める。 「レン・ジオレンス陸曹長……大丈夫なのでしょうか……」 「フェイト・T・ハラオウンの魔法を直で喰らっても生きているような奴だぞ。大丈夫じゃないか~」 そう言ってのんびりとチョコレートアイスを食すアサギ。 よく考えれば朝も窓の外に吹き飛ばされても生きていたのだ。多分、今回も大丈夫だろう。 「そういえばアイン秘書官はアイスを作るのが上手いですよね?」 ミントアイスを食べながらノインはアインに言う。 「過去に一度、紅の鉄騎に作ったのですが……割と好評だったので」 紅の鉄騎という単語は聞き覚えが無かったが、幽霧はその時の同僚の事だろうと判断した。 しかし幽霧にはアイスの事以外にも疑問点があった。 「アインさん」 「何でしょうか?」 幽霧に呼ばれたアインは不思議そうに首を傾げる。 「アインさんは何故、アルフィトルテの事を妹と呼ぶのですか?」 一瞬だけきょとんとするアイン。そして幽霧の問いに答えた。 「幽霧さんのアルフィトルテは私と同じ機構で創られているという事は前も説明しましたよね?」 「ええ」 「私たちの身体は特殊な魔導機構を核にして創られているのですよ。詳細については作成者から喋らない様に言われてます」 アインの説明で少なからず幽霧は納得した。 同じ魔導機構を使用されているから、アインはアルフィトルテを妹と呼ぶのだろう。 魔導機構が収められているのだろう胸部に手を当てながら呟く。 「今では、リインフォースⅡよりアルフィトルテや白き大地の騎士の方が繋がりが深いかもしれませんね」 「リインフォースⅡ空曹長とお知り合いだったのですか?」 「ええ……まあ……」 何故か言葉を濁すアイン。過去に色々とあったのだろう。 無理に聞き出す必要も無かったので、幽霧はこれ以上は追求しなかった。 「そういえば、長月部隊長からこれを渡すように言われました」 アインはバッグから大きなビンを取り出す。中には虹色の物体が詰められていた。 「ユグドラシルの蜜ですか……懐かしいですね」 「ユグドラシルの蜜?」 アサギとアインは首を傾げる。 「長月部隊長特製の……一種の栄養剤ですね。自分やノインたちが風邪を引いた時、よく舐めさせて貰いました……」 ビンの表面を幽霧は懐かしそうに撫で、ふたを開ける。中から微かに甘い匂いがした。 「皆さんも食べますか?」 「……いただきます」 アインはあまったスプーンをビンの中に突っ込み、粘液状の中身を取り出した。 水飴の様に糸の引くそれには光沢があり、窓から差す日差しで虹色がより輝く。 虹色に輝くそれをスプーンで巻き、アインは口に入れる。 口の中に甘みと鼻を突き抜けるような爽やかな感じが広がる。徐々に身体も温かくなってきた。 「仕事上、なかなか帰れませんから本当に懐かしいです」 ノインも懐かしそうにぽつりと呟く。 「これがお前たちの住んでいた長月家の味か」 「……そうですね」 アサギの言葉に答える幽霧の声は何故か暗い。 長月家から出て、一人暮らしをしている事に後ろめたさがあるのかもしれない。 三人も暗い幽霧に何も言うことが出来なかった。 目の前が赤い。それは炎の赤であり。血の赤。そう。目の前の全てが赤に染まっていた。 赤い世界の中で逃げ惑う人の姿はない。 絶え間なき悲鳴。叫び。泣き声。恐怖。混乱。痛み。 しかし様々な音や声が不協和音として、赤き世界に響く。 炎が車内を焼いている。無理やり溶かされた内壁が奇妙な匂いをあげる。 そして周辺にはおびただしい数の死体が転がっている。そのいくつかの死体は炎に飲み込まれて、タンパク質の焦げる嫌な臭いをあげていた。 真っ赤に染まりきった世界。その中に一人の人が立っている。 その人はただ呆然と、上を見上げる 隣には墓標があった。それは死者の名が書かれた柱でも、杭でも無く、一振りの刀だった。 その墓標は人間の心臓を貫いている。貫かれた「人間」はカラカラに乾いて、黒い炭と化している。ここまで来ると「人間」ではない。ただの「モノ」だ。 墓標が刺さった「モノ」の周辺には銃の形をした機械が落ちていた。その周囲にはコードや銃弾が散らばっている。 その近くには一人の紅い女性が倒れているのを見つけた。血のように紅い髪が床に散らばり、まるで血が飛び散っているようだった。 しかし頭の辺りから流れているのはまさしく血。 幽霧はそれをどこかで見たような気がした。 上を見上げる人の背中から切なさと寂しさを感じた。 まるで、何かを強く祈るかのように。 墓標が刺さった焼死体の隣で上を見上げていた人が振り向く。 黒いインナーに黒い革ズボン。羽織るは真紅の外套。 三つ編みに編まれた白銀の長い髪。 開かれた瞼の中に収められるは鮮血を閉じ込めた様な真紅の双眸。 足元には鮮血のような真紅の魔法陣。 振り向いた人の顔に幽霧は驚く。 何故なら瞳の色が真紅に変わろうとも、それは幽霧自身だったのだから。 幽霧はベッドから跳ね起きる。 大量の汗で着ていたパジャマが肌に張り付き、いつの間にか荒い息を吐いていた。 隣ではアルフィトルテがすやすやと眠っていた。 汗を拭かずに慌てて外の方を見る幽霧。天気は晴れ。夢の中にあった紅い世界の風景が嘘のようだ。 開いた窓から入ってきた風が汗だくの幽霧を撫でる。その風が気持ち良い。 そして幽霧は自身の左手を胸に当てる。心臓は早鐘を打つようなリズムを刻む。 「はぁ……」 目の前にあるのが現実にいる事を実感し、幽霧は深い溜め息を吐く。 「はぁ……はぁ……」 何故か周囲から自身とは違う荒い吐息が聞こえてきた。 幽霧は荒い息がするほうを見る。 そこには幽霧を見ながら荒い息を吐くレンがいた。 「着衣が乱れたかすみたん……はぁはぁ……いぃぃっ!」 レンの身体が震え始める。そしていきなり青虫が蝶に脱皮する様に服を脱ぐ。 「ふるふる幽霧いただきま~す!」 全裸で幽霧に飛びかかる。 「ディバインバスター」 幽霧の目の前に虹色の閃光が通り過ぎる。 飛びかかろうとしたレンは虹色の閃光によって、開いた窓から外に放りだされる。 身体が落ちて地に叩きつけられる運命。しかしまだ迫撃は続く。 「アクセルシューター……シューっトっ!」 今度は桃色の魔弾がいくつも通り過ぎていった。 桃色の魔弾は一発残らずレンの身体に着弾する。 「おぅ! めるしぃ!」 魔弾が打ち込まれる痛みにレンは叫ぶが、妙に嬉しそうだ。 虹色と桃色の魔弾が幽霧の目の前を何十発も通り過ぎていく。 そのたびにレンが絶え間なく襲われる痛みで鳴き、同時に魔弾の威力で身体が浮く。 「其は呪いの魔弾。我はその呪いを持って我が怨敵を穿つ」 歌うように呪文が紡がれた途端、無数の紅い魔弾が出現する。 声がする方を見るとさっきまで眠っていたアルフィトルテが人差し指と中指を立て、宙に浮かされているレンに向けていた。 それと同時に無数の紅い魔弾が出現する。その数、五十以上。 使用者の感情に呼応するかのようにその魔弾は強い光を放つ。 「其は呪いの魔弾《ガンド》……ファイア」 紅い呪いが燈色の山に放たれる。その一撃でもはや光弾。もはや暴力。 それが五十発以上。まともに喰らってしまったら常人なら耐え切れるとは思えない。 「ちょっ! おまっ! すげっ! いいっ……それっ……いいっ! たまんねっ! もっとぉ……もっとだぁぁ!」 変態の領域まで達したレンの言葉に魔弾の放出が止まる。 レンは落下し、地面に叩きつけられた。数秒後には阿鼻叫喚が聞こえてきた。 「……」 幽霧は呆然としながら窓の方を見る。 ハラオウン執務官の魔法を直で喰らっても生きているような人だとはいえ、大丈夫なのだろうかと幽霧は心配になった。 「こんにちは。幽霧くん」 「おねえーちゃん。こんにちは~」 幽霧は声がした方を見る。そこには妙に清々しい顔をする高町なのは一等空尉とヴィヴィオ二等空士がいた。 「……こんにちは」 「意識不明の重体で運ばれたと言っていたから心配しちゃった。でも大丈夫みたいだね」 汗びっしょりな幽霧に笑いかけるなのは。 なのはの無邪気な笑顔に幽霧は無表情を保っているが、内心は戸惑ってしまう。 「ヴィヴィオ。ちょっと頼みたいけど……良いかな?」 「うん!」 膝を曲げる事でヴィヴィオと視線にあわせ、頼み事をするなのは。 ヴィヴィオは笑顔で頷く。 なのははポケットから小さなお財布を取り出し、ヴィヴィオに手渡す。 「ちょっとジュースを買ってきてくれないかな? 好きなものを買っても良いからね」 「うん。わかった! いこっ! アルフィトルテちゃん」 ベッドに座るアルフィトルテに歩み寄り、 廊下に足音を響かせながらヴィヴィオとアルフィトルテは自動販売機へ走って行く。 病院の廊下を走るヴィヴィオの足音を聞きながらなのはは幽霧に言う。 「汗かいてるよ……」 「ちょっと夢を見てしまったせいで寝汗をかいてしまいましたので……」 「拭いてあげるね」 なのははベッド横にあるキャビネットからタオルを取り出す。 まるでそこにタオルが入っているような感じだった。 「はいっ!?」 突然の事に幽霧は動揺する。 その間になのはは備えつきの水道から水を汲み、湿らせたタオルを絞る。 「じゃあ……脱いでくれないかな?」 そう良いながら幽霧の着ているパジャマを脱がしにかかるなのは。 「な……なのはさん!?」 かなり強引な行動に出たなのはに幽霧は抵抗する手段はなかった。 幽霧のシャツまで脱がしたなのはは露になった背中を撫でる。 「ひゃうっ!」 なのはの指の冷たさに幽霧は女の子の様な悲鳴を上げる。 「やっぱり幽霧くんって……女の子みたいだよね」 「……そうですか」 言われ慣れてしまったからか、幽霧の声は淡々としていた。 なのはは幽霧の背中を絞ったタオルで拭う。 タオルの冷たさがじんわりと身体に広がっていく。 「幽霧くんの身体……綺麗だよね。傷跡が一つもない……」 「昔から怪我の治りは早いんですよ」 なのはに背中を拭かれながら幽霧は答える。 幽霧の身体を拭うタオルが徐々にぬるくなっていく。 「そう言えば幽霧くん……」 「何ですか?」 「どんな夢を見たの……?」 なのはの問いに幽霧を言葉を少しだけ溜める。 「自身が紅い世界の中にいる夢です。様々な音や声が不協和音の様に響き、全てが紅く染まった世界」 背中を拭くなのはの手が止まる。 窓から空を見る幽霧。目の前に広がる空は青くて広い。 幽霧は青い空を見上げながら呟く。 「もしかしたら自身はあの紅い世界に帰らないと思っているのかもしれませんね」 なのはが手を止めた事に気づいた幽霧は背を向けながら言った。 「タオルを頂けないでしょうか?」 幽霧がそう言っても、なのははタオルを渡そうとしなかった。不審に思った幽霧は後ろに振り向こうとしたが、背中にかかってきた負荷にその行為は中断されてしまう。 「……なのはさん?」 幽霧の背中に抱きつくなのは。 そっと柔らかに幽霧の首に腕を絡め、消え入るような声で言った。 「少しだけ、この状態でいさせて」 「……なのは、さん」 心臓の音が聞こえた。 幽霧自身の心臓の音となのはの心臓の音。 どちらの心臓も、早鐘の様に早いリズムを刻む。 何も言えず、口も開けない。 振り向く事も出来ない。 そのまま、ただ、時間だけが過ぎ去っていく。 沈黙だけが106号室という空間を液体の様に満たしていった。 「……の……くんの……で……」 最初に口を開いたのはなのはだった。 「幽霧くんの身体は、幽霧くんの身体で……」 少しぎこちなく幽霧の髪に触れるなのは。市販のシャンプーしか使っていないと思うのに、幽霧のこげ茶色の髪は妙にサラサラだ。 「掛け替えの無いものなんだよ……もっと自分の身体を大切にしてね……」 不健康そうな幽霧の白い肌を撫でるなのは。見た目が女の子っぽいので、薄幸の美少女に見えてしまう。 なのはは幽霧の髪を撫でる。こげ茶色の髪は引っかかる事無く、綺麗に流れる。 「……お願いだから、私の様に堕ちないで……」 「……」 幽霧はなのはに返せす言葉が思い浮かばなかった。 かなり間を置いてから幽霧は答えた。 「……はい」 「ママ~!」 廊下に無邪気な子供の声と騒がしい足音が響く。 なのはは弾かれた様に幽霧の身体から離れる。 「ジュース買って来たよ!」 スライドドアが開き、ヴィヴィオとアルフィトルテが入ってくる。 「ママ……顔が赤いよ?」 頬が微かに高潮したなのはを見ながらヴィヴィオは首を傾げた。 「き……気のせいだよ……」 ヴィヴィオの指摘に動揺するなのは。 動揺するなのはを見て、ヴィヴィオは更に首を傾げた。
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SIREN2 part23-599,600,606,612,627,681、part24-13,267,274,344、part25-122,243、part26-60,472,474、part27-220 (途中まで) part38-441,443,446~452,460,461,463~466 (上記の続き) 599 :SIREN2:2006/07/26(水)02 20 33ID LEwIXp4X スマン、ageちまった シナリオ分岐する要素あるから、後につながる分だけ書きます。 父と、姉と慕う少女の3人で夜見島の蒼之久の集落に住む幼い少年、三上脩はある夜階下からのもの音に気づき、目を覚ました。 「お父さん・・・?」そういいながら階段を降りた先で見たものは、惨殺された父の死体だった。 必死に事切れた父を起こそうとするが、突如玄関に現れた、「犬を連れた男」に驚き、奥の間へと逃げ込むのだった。 窓から家の外へと逃げた脩は、両手を血に染めた、姉と慕う少女「加奈江」と一緒に、 なぜか加奈江を狙い、襲い掛かってくる漁師たちに見つからないように集落から逃走するのだった。 オカルト雑誌「アトランティス」の若手編集者の一樹守は29年前に島民が謎の消失を遂げ、 その後も近海で謎の消失事件の相次ぐ島、夜見島の取材を行おうとした。 夜見島へ行く手段が見当たらず、一時は途方にくれたが、その場に居合わせた盲目の作家「三上脩」 の計らいにより、彼がチャーターした漁船「翔星丸」に同乗することができた。 また、出港直前に駆け込んできたチンピラ風の男と、派手な格好の女を乗せ、 船は夜見島へと出港したのだった。 しばらくして突然船が大きく揺れだし、一樹が外に出てみると、海は赤く染まり、大きくうねり出していた。 船に必死にしがみつく船員の女性を助けようとするが、女性は流されてしまい、 大きな赤い津波によって船は転覆し、一同は海に投げ出されたのだった。 600 :SIREN2:2006/07/26(水)02 49 12ID LEwIXp4X 三上の父、三上隆平が殺害される少し前、網元である太田常雄の家に漁師たちが集まっていた。 彼らにとて余所者で、民俗学?者の三上は聖域を荒らす邪魔者であり、また彼が海岸で保護した少女、加奈江は 彼らが守る村の言い伝えにある「海から来た穢れ」でしかなかった。 太田常雄の娘、ともえが加奈江が黒い影のようものを海へ帰しているのを見たとう証言もあり、 加奈江討伐の決起ために集まったのだった。 太田以下、全ての漁師が緊張した面持ちだったが、反対するものは1人もいなかった。 海に投げ出された一樹は廃墟の港へ流れ着いていた。探索を始めようとした瞬間、 彼の視界の端を何かが横切った。一樹はそのまま朽ち果てた港湾施設を探索するが、 そのとき、人の死体を思しきものが動き出すのを見るのだった。 探索の果て、彼は小屋の中で気を失っていた美しい少女「岸田百合」と出会う。 「助けて・・!あいつらが私のこと探してる!」 一樹は訳が理解できなかったが、 その場に先ほどの動く死体「屍人」が現れ、百合に襲い掛かろうとした。 屍人を撃退した一樹は、百合を伴って廃墟の港を脱出するのだった。 ちょうどその上空を、一機のヘリが爆音を上げながら、急激に高度を落としていった。 夜見島近海を飛行していた陸上自衛隊の輸送ヘリが自機の場所を見失った上、 操縦不能に陥ったのだった。 夜見島に不時着したヘリは、奇跡的に助かった三沢岳三等陸佐、永井頼人陸士長、 瀕死の重傷を負った沖田宏二等陸曹を残し、全員死亡。 瀕死の沖田を前に泣きじゃくる永井と対照的に淡々と指揮を宣言する三沢。 観覧車らしきものを視認した三沢は永井とともに沖田を担ぎ上げ、移動を開始するのだった。 606 :SIREN2:2006/07/26(水)11 39 11ID bW9UhuMw 廃墟の遊園地にたどり着き、管理小屋の電話から外部への連絡を試みる三沢。 不時着の衝撃で無線機は壊れてしまっていた。だが電話が繋がる様子はない。 受話器を置き、銃を手に小屋の外へ出ると、永井が沖田の死体を前にして泣きじゃくっていた。 「オイ、そいつもう死んでるぞ」冷淡に声をかける三沢。永井を引き起こし、立たせようとしたが、 永井は再び座り込んでしまう。 その時死んでいたはずの沖田が突然動き出し、永井に向けて発砲したのだった。 永井に応戦を命じる三沢。永井は三沢から銃を受け取り、変わり果てた上官を打ち倒すのだった。 遊園地跡から脱出を試みる二人だったが、屍人として蘇ったかつての仲間が行く手を塞ぐ。 その途中、永井は奇妙なものを見つける。精神を高揚させる薬。三沢は自分のだと言って永井から取り上げてしまったが、 それはおおよそ三沢には縁遠いはずのもだった。もうひとつは紛失した装備を回収したとき、信管を含む発火装置は回収できたのだが、 C4爆弾がなくなっていたのだった。 遊園正門は厳重に封鎖されていたため、二人は遊園裏門からがけを乗り越え、遊園地を後にするのだった。 山道を行く一樹と百合。座るのに具合のよさそうな岩を見つけ二人は休憩を取った。 百合が島へ来た目的を話し出す。それはこの島に閉じ込められた母を助けるためだと言う。 驚きを隠せない一樹だったが、百合は続ける「母さんは鳩を飛ばし続けた、でも戻ってこなかった」 意味が理解出来ない一樹だったが「ずっと待ってた、あなたが来るのを・・・。あなたは私を助けてくれる・・・?」 懇願する百合に一樹は困惑しながらも、同行を決意するのだった。 夜見島出身の駐在警官、藤田茂は夜見島の金鉱跡を巡回していた。地元の漁師たちから無人のはずの島に女がいるのを見た、との通報があったためだった。 藤田は生来、余計な事によく首を突っ込む性質で、その事で、家族からは疎まれていた。 決定的だったのは数年前、情に絆されて窃盗犯を取り逃がし、警部補から現在の地位に降格されたときのこと。 妻は過労で倒れ、大学進学を諦めざるを得なくなった娘、朝子からは事実上の絶縁を手紙で通告される事になったのだった。 無線で連絡を取ろうとした藤田だったが、どうした事か無線が通じない。 その時、彼の視界を黒い塊が横切るのだった。 黒い塊は屍霊と呼ばれる凝り固まった闇に人面が浮かび上がったものだった。 屍霊の襲撃を懐中電灯と警棒で振り払い、高台の小屋から藤田は奇妙なものを見つける。 深い森の中に大きな客船が座礁しているのだった。 「はぁ~やんなっちまうなぁ。すまんなぁ、朝子。」 そうつぶやくと彼は客船へと急行するのだった。 612 :SIREN2:2006/07/26(水)13 29 57ID uOb6qP3u 再び移動を開始した一樹たちは、遊園地から脱出してきた三沢たちに出会う。 救助に来たのかと思い、駆け寄る一樹だったが、三沢は警戒を解かない。 ライトの光を怖れる百合を不審に思った三沢だったが、激昂した一樹が間に割ってはいる。 そのとき永井は信じられないものを目撃する。「三佐、あれ・・・」 一同はこちらに押し寄せる巨大な赤い津波を目撃するのだった。 その少し前、チンピラ風の男、阿部倉司とともに漁船に乗り込んだ女、喜代田章子は不思議なものを見ていた。 彼女は生まれつき場所や物に付いた過去の記憶を見ることが出来、その力を生かし占いで生計を立てていた。 (参照 http //www.yumemi-salon.com/j/index.html) 彼女は夜見島の漁港の、とても古い記憶の中に殺害された彼女の友人「多川柳子」の顔を見たのだった。 「なぁなぁそれ霊感てヤツ?実はさ、俺も昔みたことがあってよ~」 くだらない話で章子の思考をジャマする阿部は、その柳子の同居人であり、恋人であり、そして殺害の容疑者である。 柳子が殺害されたことを自宅のテレビで知った章子の下に突然ナイフを持った阿部が押しかけてきたのだ。 「俺は柳子を殺しちゃいねぇ!あの前にあいつにあっているんだ!」 そう喚く阿部。 彼は自宅で柳子らしき死体(顔が判別不可能なほどに殴打されていた)の発見する前に、階段で彼女とすれ違い、挨拶までしたという。 だが普段から粗暴で、柳子との諍いが絶えなかった阿部は真っ先に容疑者として指名手配されてしまう。 パニックに陥った彼は、柳子の友人で、彼が胡散臭がっていた章子のもとに駆け込んだのだった。 彼の過去を「視た」らしい章子は阿部を信じ、彼が目撃した「もう1人の柳子」を探し出すのだった。 そんなこんなで夜見島へきた二人だったが、船は転覆、二人は無人の島に置いてけぼりである。 にもかかわらず阿部は足元に落ちていた胡散臭い金のアクセサリーを拾って「これ純金じゃね?」 などとくだらない言動を取り続けるのだった。 軽薄な阿部にウンザリしていた章子は驚くべきものを目にする。 それは二人に向かって押し寄せる巨大な赤い津波だった。 脩を貨物用ロープウェイで先に脱出させた加奈江は夜見島港へと急ぐ、途中ともえが彼女の行く手を阻んだが、 ともえを振り切り脩の元へ急ぐ加奈江。「あんたは逃げられない!」 ともえの叫びが背後から彼女に投げつけられるのだった。 網元、太田常雄以下、多数の漁師が港湾施設跡地で二人を探していたが、加奈江は彼らの視界を盗み見する特殊なの力を駆使し、 彼らを欺き、無事脩と再会する。灯台へと向かう二人を漁師たちが取り囲み、窮地に立たされる2人。 そのとき唐突に足場が崩れ、二人は崖下の海へ落ちていく。 「終わった・・・」そうつぶやく太田たち。だがその時、サイレンに似た不気味な音が高らかと鳴り響き、島全体が鳴動し始めたのだった。 ともえは赤く染まった海から、巨大な赤い津波が押し寄せてくるのを目撃する。 逃げることも出来ず、漁師たちは津波に飲み込まれていくのだった・・・。 627 :SIREN2:2006/07/26(水)22 54 54ID z+KFlbYz なんだか長くなってしまった。無駄遣いスマヌ手元に攻略本しかないんでうろ覚え。 まるで誰かの意識が自分の中に流れ込んでくるような不快感に苛まれながら、 一樹は目を覚ました。傍に立つ百合に着物姿の女がつかみかかる。 「なんで!なんであんたが生きてんのよ!」女を振りほどき、逃げる一樹と百合。 金鉱跡にたどり着いたとき、一樹は再び不快感に襲われる。 「じっとして。意識を集中して・・・。」一樹に声をかける百合。すると一樹の視界に、百合の視界と思しき視界が入り込むのだった。 一樹は信じられなかったが、百合は特に気にした様子はない。 この不可解な力を駆使し、屍人の蠢く金鉱跡を突破する二人であった。 県立亀石野中学2年、矢倉市子は突然目を覚ました。 テニス部の試合、団体戦準優勝、その帰りのフェリーの中・・・のはずだった。 市子はたった一人、薄暗い船倉で倒れていたのだ。 「ノリコー!中島くーん!?みんなどこー!?」 だが返事はない。その時唐突に頭に流れ込む誰かの視界。 「なに・・?これ?・・・ヤダ・・わかんない!!」パニックに陥りそうになる市子だったが、 船内を徘徊する屍人をやり過ごし、何とか艦橋へとたどり着く。突然船内電話が鳴り響く。 受話器を取ると中年男性の声が受話器のから聞こえてくる。矢継ぎ早に市子に質問する男。 しかし市子が答えようとしたとたん、ノイズが混じり、電話は切れてしまう。またしてもパニックになりそうな市子だったが、 勇気を振り絞り、船底の電源室へと向かう。「誰かいませんかー!?」 そう叫ぶ市子に扉の向こうから男が答える。 「そこにいるのか!?待ってろ!お巡りさんすぐにここを開けるから!」 針金を使い、鍵をこじ開ける藤田。 かくして二人は無事合流し、船の外へ脱出するのだった。 藤田の乗ってきた船を目指す藤田と市子。旧軍の砲台跡地に差し掛かったとき、1人の男が二人の前に現れる。 「藤田んとこの、馬鹿息子か・・・・」 息も絶え絶えに語るのは、網元、太田常雄である。 「親父さん!あんた10年間なにしてたんだ!?」10年前に全島民とともに消えたはずの太田を前にして動揺する藤田。 だが二人は再会を喜ぶこともなく、太田は絶命してしまう。絶命した太田を取り囲む屍霊。ほどなくして太田は屍人として復活し、 二人に襲い掛かるのだった。 太田を退け、砲台跡の地下に入る二人、だがそこで太田に追い詰められてしまう。太田が市子に襲い掛かろうとしたまさにその時、 市子は太田に向かって哂ったのだった。その笑みをみて恐れおののき、逃走する太田。 不思議に感じた市子だったが、藤田は気にも留めず、二人はもうひとつの砲台跡を経由し船を目指すのだった。 681 :SIREN2:2006/07/28(金)01 45 29ID /Zgf4oI/ もう少し端折って短くしたいけど、下手に端折ると話が分からなくなってしまう・・。 金鉱跡を抜け、再び山道へと入った一樹と百合。一樹は自らの体験した数々の不可解な出来事に困惑していた。 「おかしい。いくらなんでも非科学的すぎる。」そうつぶやく一樹。 百合に意見を求めても、返ってくるのは母を助けるという自分のことばかり。 混乱と疲労が一樹を苛立たせ、きつい言葉を発してしまう。 「その君の母さんとかいう人、本当にいるの?」その言葉に過剰な拒否反応を示す百合。 「私のこと信じてないのね!」そう言い放ち、駆け出す百合。 一樹は取り繕うこともできず、その場に立ち尽くすのだった。 山道を独り歩く百合。足元にまとわり着く屍霊を踏み潰し、一瞥をくれたその時、 森の中に座礁した船から何かを感じ取りのだった。 「-誰?」そうつぶやくと百合は客船へと向かうのだった。 赤い津波に巻き込まれ(もっとも彼は見えていなかったが)、海へと投げ出された盲目の作家、三上脩。 彼は、彼の失われた記憶の断片に残るある少女を追って、夜見島を目指していたのだった。 舗装路の上で彼の愛犬ツカサに起こされる三上。だが彼は彼の視界に驚いた。 失ったはずの彼の視野には、ツカサのものと思しき視界が広がっていたのだ。 「ツカサ・・・これはお前なのか?」そういいながらフラフラと目の前の石段を登り、目の前の家の引き戸を開ける三上。 そこには29年前、あの日あの時の自分が事切れた父を抱き起こそうとしていた。 三上に驚き逃げる脩。背後から太田常雄が現れ、三上を不審に思うが、 突然、死んだはずの三上隆平が跳ねるように飛び起き、驚き逃げる太田を追いかけるのだった。 三上は状況が信じられず、事実を確かめるために彼が埋めた、「お姉ちゃんとの思い出」を掘り出しに行く。 彼の記憶の通り、彼が描いたお姉ちゃんの絵はそこに埋まっていた。今時分は29年前のあの島にいる。 そう確信した三上をツカサが突き飛ばす。その直後、近くのプレハブが倒壊し、ツカサは生き埋めになってしまう。 更に三上の背後から屍人と化した漁師が襲い掛かる。弱い視界を頼りに逃げる三上。 だが彼は足を踏み外し、崖下へと転落するのだった。 金鉱社宅前で意識を取り戻した章子は奇妙な感覚に違和感を抱く。 いつもの過去の視界ではなく、今現在の誰かの視界を見ているのだ。 「何、これ?いつもと違う・・。」そうつぶやく章子。 彼女が見たのはフェンスに生っていたアケビをもぎ取って食べる阿部を見ている誰かの視界だった。 放置されていた軽トラに乗り、社宅跡を突破する章子。 一方阿部は犬の鳴き声に導かれるように、社宅跡を後にしていたのだった。 夜見島、瀬礼洲に打ち上げられた客船ブライトウィン号。 三沢と永井は船内を探索していた。永井が不安な心境を告白する。 -これは夢じゃないのか、自分の頭はおかしくなっているんじゃなのいのか- 三沢は頭に弾丸ぶち込んでみるか?と永井に聞く。 「もし夢なら暖かい布団で目が覚める。もし夢じゃなかったらー、それで、終わり-」 突然永井の頭に銃口を向け、ふざける三沢、その顔には子供のような狂気じみた笑い顔が浮かんでいる。 驚く永井だったが、背後の物音に気づきライトを向ける。 そこのは先ほどの若い女がいた。光を嫌がり、逃げる百合。 追いかけようとする永井だったが、三沢は気にも留めず、そのまま別の船室へと向かう。 「三佐?三沢さん!・・・・・なんなんだよあいつ調子乗ってんじゃねーよ」 永井は1人で百合を追うのだった。無事百合を保護した永井だったが、 百合を執拗に狙う、着物を着た女屍人によってタラップを落とされ、船から脱出できなくなってしまう。 永井は船倉にできた亀裂から百合を逃がし、自らも、救難艇で客船から脱出するのだった。 先に脱出した百合に追いついた永井。百合は長いに抱きつき、問いかけるのだった。 「あなたは私を信じてくれる?助けてくれる?」百合の神秘的な美しさに惹かれる永井。 その時、突然背後から三沢の銃口が百合に向けられる。銃口を跳ね除け、百合を逃す永井。 「何なんだよあんた!あんた前からおかしいと思ってたよ!!なんであんたなんだ・・・。 なんであんたじゃなくて沖田さんが・・・!ちくしょう!!もうやってられっかよ!!」 募らせた思いを吐き出す永井。吐露された怒りは上官と部下の関係を破綻させるのだった。 13 :SIREN2:2006/07/30(日)10 09 09ID l0kqLIjQ 最後の一粒になった錠剤を飲み込む三沢。 「なーがいくーん、いっしょにあそびましょー!」またしても彼らしからぬ、ふざけた調子を取る三沢。 彼の精神は極限まで蝕まれつつあった。 2年前、大地震に襲われ、壊滅した羽生蛇村。彼は災害救助の任務を遂行していた。 ただ1人、無傷で助かった少女を抱きかかえ、ヘリに吊り上げられる三沢。 その時彼は見たのだ。眼下に広がる泥土の中から彼と少女に掴みかかろうとする無数の手を。 この地にかけられた呪いの断片、安らかに眠ることすら禁じられたものたちの呪詛と怨嗟-。 「やめろ・・・やめろーーーーッッ!!」ただ叫ぶことしかできない三沢。 「三沢一尉?三沢一尉!?」彼を呼ぶヘリからの声で我に返る三沢。 彼の眼下にはただただ先ほどと同じ、泥土に埋もれた村が映っていた。 この出来事以来彼の精神は病み、鬱の状態になることが多くなった。 それは、三佐昇進、冬季東アジア大会での輝かしい功績をもってしても打ち消せず、 薬の使用により何とか押さえ込んでいる状態だった。 だがこの島に来て以来、立て続けに起きている怪異は彼の神経を高ぶらせ、鋭敏にし、 加速度的に精神状態を悪化させていた。 「どうしてそんなに嫌うかな・・・・・どこだ、永井。」そうつぶやき歩き出す三沢。 だが彼は廃墟の金鉱社宅の一室に妖しい光がともるのを目撃する。 その部屋へと向かおうとする三沢。だが彼の行く手を沖田以下、彼のかつての部下が阻む。 彼の持てる戦闘技術を結集し、屍人たちを退け、三沢はついに部屋へたどり着く。 そこには、あの日助けたはずの少女が、座って泣いていた。少女の肩に手をかけようとする三沢。 その時少女が突然振り向き飛び掛ってきた。あの顔は屍人そのものだった。 反射的に飛びのき、銃を乱射する三沢。だがそこには少女の気配すらなかったのだった。 崖から転落したあと、阿部によって助けられた三上。今は砲台跡のトンネルにいた。 「アレッ?あんた三上脩じゃねぇ?」相変わらず軽薄な阿部を無視して話を進める三上。 「この島のどこかに、記憶を引き出す鍵があるはず・・・阿部さん、あなたの目をかしてくれないか?」 阿部の視界を借り、砲台跡を探索する安部と三上。 地下の封じられた弾薬庫をの入り口を破壊し、中に入る二人。だが特に妖しいものはない。 「なんだよなにもねーじゃねーか」ぼやく阿部。 しかし三上がレンガ造りの壁に触れたとたん、壁が崩れ、土の中に埋もれた人魚のような生き物の化石を発見するのだった。 おおきなかみさま しんだ おねえちゃんのおかあさん うまれた いっぱいうまれた 子供のころ、加奈江が話してくれたことを思い出す三上。 二人は急ぎ、砲台跡を脱出するのだった。 遊園地跡へとたどり着いた二人、三上は闇の中から自分を呼ぶような声を聞いた気がした。 幼いころの記憶がよみがえる、七つの門、七つの鍵。 加奈江の残した言葉と歌、そして父、隆平が捜し求めた夜見島の謎、 それさえ解けば記憶が完全に戻るという確信が彼にはあった。 電動パンダにまたがる阿部に三上は再び協力を求める。 物事に頓着しない阿部は、彼の真意を知ることもなく、彼に協力するのだった。 267 :SIREN2:2006/08/16(水)22 08 40ID tyC+jfBT0 百合をさがして夜見島遊園へ独りたどり着いた一樹。 百合は座っていた。声をかける一樹に百合はガラス製の鳩を見せた。 「見て」百合の手から滑り落ち、粉々に砕けるガラスの鳩。 「早くしないと戻ってしまう、混沌の闇の中に・・・」そうつぶやく百合。 一樹は百合の言葉を理解できなかったが驚くべきものを見た。 それは先ほど砕けたはずのガラスの鳩だった。まるで何事もなかったかのようにそれはそこにあった。 百合の歌う失われたはずの「巫秘抄歌」と幻視によって次々と現れる碑の封印を解く一樹。 最後の巫女の碑の封印を解いた一樹。とたんに強い眩暈に襲われる。 「見て・・・」頭を押さえ、苦しむ一樹の背後を指差す百合。 錆付いた観覧車があったはずのそこには巨大な穴が現れていた。 遊園地の地下に広がる空間。異様な雰囲気が漂うなか、一樹は百合の後を追って鉄製の階段を下りていく。 その先にあったのは、地底に広がる赤い海。百合はゆっくりと振り返り、上着を脱ぎ捨てていく。 「本当の私を見て・・・」そう呟き、はだけた胸元には、もうひとつの顔が浮かび上がっていた。 百合もまた、人ならざる者だったのだ。立ち尽くす一樹。今度は胸元の顔が話しかける。 「見て・・・私を見て・・・本当の私を・・・」そして百合の背後の赤い海の底から、 サイレンに似た咆哮とともに怪物と呼ぶにふさわしい姿をしたものが現れたのだった。 百合を名乗っていたモノ・・・。それは「母胎」の化身だった。 母胎・・・かつて地上を光の洪水によって追われ、異界の地の底に潜みしものの集合体。 永遠に近いときを経て、彼らの悲願を達成する機会がついに訪れた。 人間の手により封印を解き、人の肉体を自らと融合させること。悲願達成の第一歩はついに歩みだされた。 成す術もなく、母胎に取り込まれそうになる一樹。だが取り込まれようとした瞬間。 翔星丸の無線員、木船郁子が突如現れ、不可思議な力で母胎の動きを封じ、一樹を助けた。 「早く逃げてっ!これ以上は私が持たない!」正気に返り、母胎から逃げる一樹。 その時。 「うわぁっ!何なんだよこれ!」絶叫する阿部。 三上と阿部の二人がこの封印の地へと、母胎の前へと現れた。 三上の見えなくなったはずの目に、母胎の、かつて己の目の前で海の底へ溶けるように消えていった加奈江の顔が映った。 「おねえちゃん・・・?おねえちゃんだよね・・・?」全ての記憶を取り戻した三上。しかし彼の目に映るのは人面魚体の怪物ではなく、やさしかった姉の姿。 「ぼくさびしかったよ・・・くらやみのなかでひとりぼっちだったよ・・・」ふらふらと赤い海に佇む加奈江へと歩いていく三上。 三上が加奈江に抱きつこうとしたその時、章子が現れ、三上に叫んだのだった。 「脩ゥッ!見ちゃダメェーーッ!!」 「おねえちゃん・・・?」章子の言葉に驚きの表情見せた三上だったが・・・ すでに遅かった。 母胎の腹部から伸びた何本もの触手によって、三上は母胎に完全に取り込まれてしまった。 「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」 歓喜の笑い声とともに何十、何百もの闇霊を産み落とす母胎。 その姿に驚き、阿部は章子を、木船は一樹を連れ、その場から逃げるのだった。 しかし彼らの後を闇霊-大きな口を持った、たとえるなら真っ白な人魚の胎児のようなモノ-が追いかけてくるのだった。 その時、地上では、三沢は無数の屍霊と戦い、永井は鳴り響くサイレンの音に耳をふさぎ、 市子は・・・鮮血に染まり、もう動くことのない藤田に抱きついて、泣いていたのだった。 274 :SIREN2:2006/08/17(木)17 07 52ID 2pt0I5q10 船から投げ出され、赤い海の中を漂う三上。 過去の記憶が断片的によみがえる。 足場が崩れ、海に落ちた後、彼は加奈江によってボートに乗せられた。 しかし加奈江は全ての力を使い切ってしまい、もう動くことすら出来なかった。 力なく海に浮かぶ加奈江。そしてそれを見つめる脩。 「脩・・・見ないで・・・・お願い。見ちゃダメ・・・・」 昇りゆく朝日とともに、加奈江は海の底へ、まるで溶けていくように消えていったのだった。 穴の壁面に沿うように設けられた鉄組みの足場を全力で駆け上がる木船と一樹。 だが一樹は母胎に操られたこともあってか、疲労が頂点に達していた。 膝をつき、その場から動けなくなる一樹。 そこへ、階段の上から無数の屍霊が、下からは無数の闇霊たちが迫ってくるのだった。 「僕を置いて・・・逃げるんだ・・」弱音を吐く一樹。 「何かっこつけてんのよ!こんなとこでかっこつけたって誰も見てないよ!バッカじゃないの!?」そんな一樹を叱咤する木船。 人外のものが迫り、最早これまでと思われたが、果たして化物たちは二人に襲い掛かることはなかった。 彼らを飛び越え、互いに喰らい始めたのだ。顔を見合わせ、頷く一樹と木船。 二人は全ての力を振り絞り、地上へと向かって走り出したのだった。 なんとか地上へと出た二人だったがそこにはすでに屍人たちによって包囲されていた。 木船は他者の肉体を乗っ取る自らの力を駆使し、武器を手に入れ、七つの碑を叩き壊し、 「冥府の門」を閉じようとするのだった。しかし門は閉じられることなく、門の中から黒衣をまとった闇霊たちがあふれ出てくるのだった。 逃げようとする二人を、変わり果てた藤田と屍人自衛官が包囲する。 しかしまたしても闇霊たちによって屍人は喰われ、二人は窮地を脱するのだった。 遊園地の出口へと向かった二人は三度、闇霊に襲われた。すでに出せる力もなく、絶体絶命の危機に陥る二人。 しかし空から降り注いできた赤い光によって彼らを取り囲んでいた闇霊は消滅し、二人は三度の危機をまたしても運命に救われたのだった。 集落まで逃げた二人。しばしの休息の後、人との接触を怖れる木船はその場から立ち去ろうとする。 木船の手をつかみ、二人で行動することを提案する一樹。 しかし木船の、自分は人の心を読むことが出来る、という言葉に驚き、一樹は手を離してしまう。 「そんな・・・化物を見るような目で見ないでよ」木船はそういい、力なく微笑み立ち去っていった。 -やはり自分は化物なのか。そのような思いに捕らわれる木船であった。 取り残された一樹は、何故手を離してしまったのか、と後悔していた。 彼の脳裏につらい過去の記憶がよみがえる・・・。 344 :SIREN2:2006/08/25(金)05 20 53ID o/3MmBwC0 怪異発生より8時間後の夜見島、潮降浜。 その近くを矢倉市子は彷徨っていた。服には藤田の血がついている。 「お母さん・・・家に・・・帰りたい・・・」 そう呟く市子の脳裏に一瞬奇妙な記憶が甦る。 誰かの手にぶら下がる自分。しかし、ブレスレットが千切れて海へ落ちていく。 記憶のなかの市子が海に落ちたと同時に、市子自身も足を踏み外し、崖下の道路へと転落した。 -逃げなきゃ。そう思い、潮降浜の前を走りにける市子。その前にアイロンで武装した女屍人が立ち塞がる。 武器を持たない市子では対抗することができない。逃げようとしたその時、背後から軽トラックのエンジン音が鳴り響いた。 驚いて道脇の草むらに飛び込む市子。そのすぐ横を軽トラックが猛スピードで通過した。 市子が草むらから這い出してみてみると、女屍人が少し離れたところに転がっていた。 撥ねられたらしい。 市子はアイロンを手にすると廃墟になった小中学校跡へと向かったのだった。 大道具倉庫で釘箱を入手した市子はそれを校舎裏の道に撒いた。しつこく追跡してくるトラックをそれでパンクさせようというのだ。 市子の目論み道理、タイヤが破裂し、制御を失い、封鎖された校舎裏門を突き抜けるトラック。 その時校舎裏門から大量の闇霊が侵入してきた。屍人たちは市子に目もくれず、闇霊を攻撃し始める。 そのまま校舎裏門を抜ける市子だったが軽トラックから屍人が降りてきた。 かつての沖田宏である。 沖田は市子に気づくまもなく闇霊に囲まれ、そして喰われた。 市子は泣き叫びながらその脇を通り抜けるが、闇霊に囲まれてしまう。 その時、市子の頭上に赤い光が降り注ぎ、包囲していた闇霊は蒸発するのだった。 その1時間ほど前。 崩谷、夜見島金鉱(株)社宅跡。 そこに女の悲鳴が響き渡った。だが生きているもののそれではない。 海より来る穢れに操られしもの、屍人の叫び声である。 異界、夜見島において人の上に君臨し、蹂躙する存在。 そのはずの彼らが恐怖し、逃げ惑い、仲間に助けを求めていた。 かつての彼らの同胞、闇人が復活したのだった。 同胞とはいえ彼らの間には仔細あって愛憎遺恨が渦巻いていた。 初めはいきり立って闇人に襲い掛かった屍人たちだったが、その力の差たるや歴然。 屍人は頂点の座をあっさり奪われた。しかし己の存在意義を賭け、全力で抵抗していた。 助けを求めた女屍人、鍋島揉子(金鉱跡で一樹たちの脳天をハンマーでカチ割ろうとした)は背後に迫る気配を感じ、ベランダへと逃げた。 機関拳銃を手にした闇人が彼女を追いかけていたのだ。 彼女を見つけ、歓喜の叫びを上げる闇人。その時。 -響きわたる叫び声に答えるかのように、不規則な足音が社宅跡に響く。その数2人分。 三沢、永井らの隊を指揮していた陸上自衛隊の佐官、一藤二孝が部下の屍人自衛官を連れ、揉子救出に駆けつけたのだ。 銃に弾倉を装着し、部下に指示を出す一藤。動き回る死体程度の屍人と完全に肉体を支配する闇人では身体能力の差は歴然。 ならば戦術でカバーするのみ。光に弱いという闇人の致命的な弱点をつきながら、立ち塞がる敵を倒し、社宅に突入した両名。 その一室で揉子を無事発見した一藤。 「うぉぅ!?(訳:大丈夫か!?)」 「ヒィィィィィィィ・・・(訳:アイロンが・・・形見のアイロンがないの・・・)」 銃に新しい弾倉を取り付ける一藤。 「うぉぅ!(訳:俺にまかせな!)」 女を泣かすやつァ許さねぇとばかりにいきり立つ一藤。その心の裏には彼女への想いがあった。 屍人だてらに一目ぼれである。 その想いの前には凄腕狙撃闇人も変わり果てたかつての部下も意味を成さなかった。 ついにアイロンを手にする揉子。あとはここより脱出するのみである。 脱出まであと一息、その時背後から一藤を大量の銃弾が襲った。 振り返ると銃を構えた闇人が立っていた。 「イヒヒヒィィィイィィ!!」 一藤に狙いを定め笑い声をもらす闇人。 「!?ギィィィィィィッ・・・!」 銃声とともにその場に倒れる闇人。その背後には部下屍人が立っていた。 その姿を見て、安堵し、その場に座り込む一藤と揉子であった。 122 :SIREN2:2006/09/07(木)01 55 01ID Xo0D5JwM0 四鳴山の林道を歩く阿部と喜代田。阿部が多川柳子との思い出を語りだす。 「あいつ時々わけわかんねーくらい暴れだしたりしてさ・・・」 そこまで語ると言葉につまり、俯く阿部。 阿部に寄り添う章子。二人が顔を上げたとき、信じられないものを見る。 目の前にそびえたつ廃鉄塔。その上空にはもう一本の鉄塔が宙吊りに浮いている。 そうではない。夜見島上空にはまるで鏡に映りこんだかのように、もうひとつ夜見島が存在していた。 「何かに呼ばれている気がするの。そこまで連れってくれないかな。」 そう阿部にいい、廃墟の港湾施設を探索する章子。そこここで立ち止まっては過去の映像を見ている。 「アレ?これは・・?」「どういうことなの?」「・・・そうか」「・・・もう少し・・・もう少しよ・・・」 「・・・灯台へ行きましょう」そう阿部に告げる章子。 「・・ほら、がんばって・・」「もう少し、あともう少しよ・・」 灯台前の橋にたどり着いた二人。だが橋は崩落している。しかし章子は穴に向かってフラフラと歩いていく。 「ホラ・・・もう少しよ・・・がんばって・・・・・しゅう」 「おい!あぶねぇ!」 穴に落ちそうになる章子の腕をつかむ阿部。章子はそのまま倒れこむのだった。 疲れ果て、道沿いの石の上に腰を落とす二人。 「はっぴばーすでぃとぅゆー♪」 突然歌いだし、ポケットから拾った金のアクセサリーを章子に手渡す阿部。 「今日誕生日だったろ?免許書で見たんだよ。」 戸惑いながらも表情を緩める章子。俯いて寝息を立てだした阿部に寄り添い、しばしの平穏を味わうのだった。 243 :SIREN2:2006/09/18(月)02 05 33ID //aGHVnB0 砲台跡で大の字になって寝転び、三沢は空を見上げていた。空にはもうひとつの夜見島があった。 「・・・あっち側は遠いなぁ・・・」そう呟く三沢。 その時、突然少女の叫び声が聞こえてきた。 すぐ近くで市子が闇人に襲われていたのだ。その叫び声を聞き、薄ら笑いを浮かべて武器を構える三沢。 市子は三沢に助けられ、無事に砲台跡から脱出する。そして三沢も市子の後を追うのだった・・・。 蒼ノ久集落に来た永井は少女の嗚咽と男の声を聞いた。 「あの女より生臭い。お前は何なんだ」そういい市子に銃を向ける三沢。 「わかんない・・わかんない・・・!!」そういい泣き叫ぶ市子。 「やめろーッ!!」そう叫び咄嗟に銃を構える永井。しかしその弾みで銃が暴発し、三沢を打ち抜いてしまう。 よろよろと永井の方に向き直る三沢。 「・・・・やるじゃない」そして永井に抱きかかり、最期の言葉を残すのだった。 「俺は先に目覚めちゃうけど・・・・・悪いな」 最後まで三沢の真意を理解できず、目の前の事実に呆然とする永井。 永井は市子を連れ、その場から逃げるのだった。 60 :SIREN2:2006/10/04(水)21 22 38ID VJosXtZY0 三沢を誤って射殺し、市子をつれてその場から逃げ出した永井は夜見島金鉱社宅へとたどり着いた。 虚ろな市子を励ます永井。その背後の暗闇に、巨大な顔がぼんやりと浮かび上がる。 銃を構える間もなくはじき飛ばされる永井。起き上がると既に市子の姿も無い。 さらわれた市子を奪還すべく走り出す永井。 社宅の一室に市子はいた。しかし永井が声をかけるが虚ろな笑い声だけを返す市子。 市子はフラフラと立ち上がり、突如機関拳銃を永井に向けて発砲した。 「あの時死んだのは・・・・私。・・・・早く還りたい・・・・おかあさん。」 意味不明な言葉を呟き、闇人を殲滅しながら社宅をさまよう市子。 永井は市子が落としたと思われる壊れたブレスレットを市子の前に示し、正気に戻そうとするが 市子は永井の手を振り解き、逃げてしまうのだった。 冥府の門が開き、母胎が復活したその時、市子に急激な変化が訪れた。 薄笑いを浮かべる市子。藤田の胸に突き立つナイフ。うわごとのように娘への懺悔を呟き動かなくなる藤田。 我に返った市子の嗚咽と叫びが闇に木霊するのだった。 市子は思い出す。ー眼下に広がる、荒れ狂う漆黒の海。親友ノリコの腕にぶら下がり、今にも落ちそうな市子。 おそろいで買ったノリコのブレスレットに指がかかり、ブレスレットが大きくゆがむ。 死にたくない-そう思い指に力をこめた刹那、市子は荒れ狂う異界の海へと落ちた。 赤く染まった海中に漂う市子。手にはブレスレットが握りしめられている。 水中に響くくぐもったサイレンのような音が、徐々に市子に近付いていく。 ドアを開け船室に足を踏み入れる一樹。薄暗い船内に外光が差し込み、闇霊が奇怪な叫び声を上げ消滅する。 殲滅すべき敵を認識した一樹の目に憎悪が宿る。 「光が・・苦手なんだな・・・。化物め、化物め、化物め!」 憎むべき敵と、その弱点を知った一樹は船内の電源を復活させ、闇霊を一掃する。 人の姿をした化物も、更に醜悪な姿になった闇人、ともえをも倒した一樹。 疲れ果て、忍び寄る闇霊に気が付かない一樹を永井が助ける。 悲観的言動の一樹に対して、ある種の居直りを見せる永井は、絶望的状況での悪あがきを促す。 再び夜が訪れる。 待っていても助からない。 二人は怪異とその元凶に挑む。 472 :SIREN2:2006/11/28(火)20 24 07ID 0Kyq4nbO0 夜見島、瓜生ヶ森。 背後から郁子の肩を掴もうとする阿部。反射的に振り払う郁子。 「なぁアンタ、派手なカッコした女見なかった?・・・・あれ?アンタどこかで・・。」 阿部は章子の行方を尋ねるうちに、何故か奇妙な懐かしさを覚える、郁子は何も答えず走り去る。 章子は蒼ノ久集落にいた。 章子の意識に自分のものではない過去の映像が断片的に甦る。目を開く章子。 「脩……あの子はどこ?」覚束ない足取りでさまよい始める章子。 自分のものでない記憶に導かれた章子は三上家へたどり着く。 しかしその三上家から異形の存在となった三上脩の父、隆平が現れる。 「まだ起きていたのか。早く寝なさい。」 子供をあやすような口調で襲い掛かってくる修平。 章子は霊体となった脩に導かれ、夜見島に伝わる、異形の存在を浄化するという滅爻樹を手に入れる。 修平の隙を突き、その体に滅爻樹を突き立てる章子。 異形の断末魔の叫びとともに、修平は浄化された。 そして章子は真実を知ることになる。 血にまみれさび付いた包丁。 本当の自分。 あの日の記憶 隆平の腹部に刃物を突き刺している自分。 隆平は何が起きているのかわからない、という顔だ。 玄関の戸が乱暴に開けられる。 雨合羽をきた漁師の男たち。 奥の部屋へ逃げ込む。 そこの鏡に映るのは 章子の顔。 振り上げた包丁を鏡に叩きつける。 章子の顔はひび割れ、砕け散る。 「ーそう、私はー」 錆びた包丁を手に立ち上がる章子。 だがその顔は加奈江のものであった。 220 :SIREN2:2006/12/24(日) 21 23 22 ID k+hq9IPm0 四鳴山、離島線4号基鉄塔。 かつて島民から聖域として畏れられた地に聳え立つこの鉄の塔も、 島の他のものと同じく朽ち果て、自然の中に埋没していた。 そしてそれは島が異界と化した際に、さらにおぞましい姿になった。 朽ちたコンクリートの基部とその上に立つ鉄骨製の塔、そしてそれらにまとわりつき、飲み込むように伸びる一本の巨木。 それは異形に対し、抗うことを決心した者たちさえも竦みあがらせた。 社宅、ブライト・ウィン号、それぞれで異形に対面した二人だったが、 一樹と永井は奇怪な鉄塔がそびえ立つ異様な光景に気圧された。 その鉄塔の先に、もうひとつの夜見島があるのを見た一樹がひとつの結論に達した。 「ここは27年前の夜見島のコピーだったんだよ!!」 「うわぁ・・・語り始めちゃったよこの人・・・。」 「やつらはこの鉄塔を利用して現実の世界に浸出するつもりなんだ!」 一樹は思いつめた表情で、塔へと独り歩き出し、諦めと居直りの態度の永井がその後を追う。 二手に分かれた一樹と永井だったが、鉄塔上部にて無事に落ち合うことができた。 階下の永井を一樹が引き上げようとしたその瞬間、背後から再び異形が現れた。 「他所者どもめ・・・・わしの目の黒いうちは好きにはさせんぞ!!」 それは変わり果てた網元、太田常雄だった。 太田に突き落とされ、鉄塔から落下する永井。 一樹は鉄塔内部へ逃げ込み、隙を突いて太田を押さえ込む。 そして途中で偶然手に入れた太田常雄銘の滅爻樹を突き立てた。 「あああぁぁぁぁぁッ!・・・穢れが・・・消える・・・」 断末魔の叫びを残して、太田常雄は滅せられた。 その様子を見ていた太田ともえは、驚き、怯え上階層へと逃げていくのだった。 441 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/06(火) 15 40 45 ID apy4KcCF0 簡単でいいからサイレン2お願いします。 まとめの奴って最後までかかれてないよね? 443 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/06(火) 18 16 51 ID ud1aa8n60 441 書かれてないからやってみてみるよ 446 :SIREN2続き:2008/05/06(火) 21 52 52 ID ud1aa8n60 初めてなんで変な文章でゴメンよ とりあえずwikiの続きから 夜見島離島線4号基鉄塔 感応視により闇人達が鉄塔を通じて現実世界に侵攻しようとしていることを知った郁子は、 鉄塔のふもとにて頂上を見上げ、闇人たちの思惑を打破しようと決意する。 そのとき不意に背後に気配を感じ振り向くと、視界の端に人影を捉え消えた。 その人物のいたところには滅爻樹(藤田茂銘)が転がっていた。 鉄塔を上る道中、クレーンの鍵、鉄塔に絡まるように生えていた大樹に突き刺さっていた 闇那其(あんなき)なる巨大な石、乙式ともえがいじくっていた一樹のカメラを入手。 感応視を駆使して闇霊や闇人がたむろする鉄塔をさらに上り、鉄塔中腹で徘徊していた闇人藤田を滅爻樹で浄化した。藤田は「そうか…あんたも…あの…」と謎の言葉を郁子に投げかけ浄化されていった。 闇霊闇人との幾多の戦闘や闘争のはてに疲労困憊となった郁子はよろけ、さらにその足場は崩れてしまった。 が、あわやの所でその手を一樹がしっかりとつなぎ止めた。数時間前には異能に躊躇し手放してしまった郁子の手だったが今度は離さないと一樹はこれまでの顛末を詫び、それに悪態で郁子は返した。笑みを浮かべる二人。 そして二人で鉄塔の頂上を目指すことになった。 夜見島金鉱採掘所 昨日団地内に自生していた夜見アケビに当たり腹痛に苛まれながらトイレを探していた阿部。激しい絶望感に「くそすぎだろっ!このままじゃよう…」とへたれこんだその頭上に銃弾が打ち込まれた。 徘徊の最中闇人化した三沢をかわし物置に入ると霊体化した三上と遭遇した。 持ち前の明るさでもって気さくに挨拶する阿部の目の前で三上は壁の中へ消えていった。 三上が消えたそこには犬笛があった。その犬笛を何の気無しに吹いてみるとツカサが現れた。彼女も霊体化した三上に導かれて金鉱へと来たのだった。ツカサは阿部が砲台跡で落としたライターを返すと瓦礫の向こうへと再び走り去っていった。 447 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/06(火) 21 53 54 ID ud1aa8n60 夜見島小学校 鉄塔から落とされ再び一人となった永井は闇人への徹底抗戦を決意。フェイスペイントを施し自己を鼓舞し『逆切れモード(永井談)』となり闇霊を殲滅していく。永井は軽トラックで小学校を根城に跋扈する闇人闇霊を轢き殺し、団地で手に入れたタイムカプセルの地図をもとにヒューズを手に入れた。さらに校舎に立てこもった闇霊を信号弾の閃光でいぶりだしそれも殲滅、残った闇人化した沖田をトラックに積んであったTNTで爆殺、体を完全に破壊されたことで沖田の復活は不可能になり、遂に引導を渡すことに成功する。 そのころ学校に程近い浜、そのさらにさらに底の方から何か異形の生物が陸地に向かって急激な浮上を行っていた。 夜見島離島線4号基鉄塔 鉄塔頂上を目指す一樹と郁子の前に完全に自我を失い模倣体(外見は完全なコピーで中身はさっきの異形の生物の意思というようなものを想像してくれればおk)として覚醒した市子が現れた。 母体への恨みと思慕を郁子へ語りかける市子。右手に日本刀左手に機関銃を携えた市子も鉄塔の頂上を目指している。 本能的に先に市子を頂上へ行かせてはいけないと悟った郁子と一樹はさらに急いで鉄塔頂上を目指す事になった。 ※ここで補足 何故みな鉄塔頂上を目指しているの 一樹: キバヤシ理論。根拠無し。 郁子: ブライトウィン号沈没の際に唯一生還した木船倫子(市子の親友で市子の片思いの相手の中島君の子供を宿している)の体内にいた双子に百合や章子、加奈江と同じ性質をもつ母胎地上侵攻作戦に向けて放たれた内偵者が同化した。 その結果郁子は生まれながらに異能を手に入れていたわけだが、異能を手に入れるとともに母胎の精神とのリンクも手に入れていた。 そのため鉄塔の頂上に母胎がたどり着いてしまうと現実世界も侵食されてしまうと気がついている。 母胎: 地上侵攻作戦。三上脩の肉体を手に入れたことで現実世界に侵攻する力を手に入れたため侵攻作戦が遂に実行されることとなった。鉄塔の頂上で現実世界とリンクしているためそこにたどり着けば現実世界への侵攻が現実のものとなる(らしい)。 市子: そもそも母胎と屍霊は同一種であり光の届かなかった頃の地上で繁栄していたが、地上に光が降り注いだ際に光に耐性のなかった母胎と屍霊はそれぞれ別の場所に避難した。 母胎は異世界へ、屍霊は光の届かない深海へ。 屍霊は自身を捨てて異世界へ逃げた母胎が憎くてたまらない反面、母胎と再び一つになりたいという願望を抱いている。 そのため母胎の元へたどり着くべくブライトウィン号沈没の際に手に入れた市子の水死体をもとに自己の意思を反映するためのコピー、模倣体を異世界へ送り込んだ。最初は人間のときの記憶が再生されていた市子ではあったが 現在は完全に模倣体として覚醒しており母胎と合流するために鉄塔の頂上を目指している。 また市子は母胎との合流が至上目標であるためそれを妨げるものは人間であろうと闇霊であろうと駆逐していくのであった。 一方母胎側としては長く現実世界にいることで形質が劣化してしまった屍霊にはさしたる興味もなく地上侵攻作戦を遂行することが至上目標であるため邪魔する屍霊は敵として認識されている。 鉄塔頂上に向かう道中乙式ともえを滅爻樹で浄化し、郁子が入手したクレーンの鍵でクレーンを動かし、市子をかわして鉄塔頂上へたどり着く二人。そこへ母胎も同じく頂上へたどりつく。 母胎と一樹、郁子が対峙するその最中突如鉄塔が崩壊を始め、市子は地面へ、一樹と郁子母胎は空へと落ちていった。 そのとき念願の母胎に辿りついた市子は、母胎にかえりみられる事もなく落ちて行くことになった。 448 :SIREN2:2008/05/06(火) 21 54 59 ID ud1aa8n60 夜見島金鉱採掘所 丁度同じ頃念願のトイレを遂に発見した阿部は用を足す。満足げにトイレを出、 ツカサに返してもらったライターでタバコに火をつけ一服の後、 バスケットのシュート宜しく便器に吸殻を放り込む阿部。 見事にシュートが決まりガッツポーズを決めた背後でトイレが爆発を起こした。 汲み取り式のトイレであったそのトイレの底に溜まっていたメタンガスにタバコの火が引火、爆発することになったのだ。 その爆発に連鎖されるように地下道に充満していたメタンガスが連鎖的に爆発。その爆発は鉄塔の足元にまで広がっていった。 遂に爆発は鉄塔の足元を完全に破壊しつくし、鉄塔は崩壊を開始する。目の前の現実に眼を疑う阿部なのだった。 その爆発鉄塔崩壊のため、現実世界とのリンクは崩壊、母胎の地上侵攻作戦は完全に潰えることとなり、阿部は何気に世界を救ったヒーローなのであったが、そのことは誰も知らない。 夜見島潮降浜渚 鉄塔が崩壊していく姿を呆然と眺める永井の周囲から光がなくなっていく。闇人甲式として進化を遂げた三沢が不敵に笑っていた。永井は三沢との決着をつけることを決意する。 闇人甲式として進化した三沢は無限弾薬を誇る最強の機関銃MINIMIを装備しているので、永井は迂闊にその前に立つことはできず、背後からその身を隠し狙撃することに成功する。(不死身の闇人を異世界の武器でない現代兵器で撃破することができたのは、三沢と対峙するまでに学校及び潮降浜渚付近の闇霊を殲滅していたため。闇人は闇霊が人間の死体を殻として利用している存在のため、殻=三沢の死体を利用する闇霊が付近に存在しなければ復活することができない。ゲーム中では三沢の体力がこの戦闘中一切回復しないことでそれが表現されている。) 機関銃を乱射し遂に地に果てた三沢。やっと全て終わったことに安堵する永井の背後から市子の声がした。その市子の顔には巨大な目玉が浮き上がっていた。市子はもはや模倣体としてその存在を維持できなくなっていたのだ。 「家に帰りたい…一緒になりたい…」とつぶやき倒れる市子と、倒れ動けなくなった三沢を吸収するように浜から巨大な顔面(市子のそれを模倣したもの)の生き物が浮上してきた。まだ戦いは終わっていないことを知った永井は 三沢の残した機関銃MINIMIを携え巨大な顔面の生き物(堕彗児/おとしご)との戦いに臨むことになる。 堕彗児は屍霊の凝結したものであり、光に弱い。ここで永井は潮降浜渚にある灯台に向かいタイムカプセルから入手したヒューズを組み込み灯台の光を起動した。さらに堕彗児は移動手段が回転による突進しかないことに気づいた永井は廃棄されたタンクに激突させ、そこに残されていた重油を浴びせかけることに成功する。 光を浴び重油を浴び、怯んだ堕彗児に対し、潮降浜渚に打ち揚げられていた、漁船の発電機を起動させ水銀灯をともし、そのランプを堕彗児にぶつけることで、重油を浴びたその体を燃やし尽くすことに永井は成功した。 今度こそ本当に全て終わったことに歓喜の雄たけびを上げる永井。その叫びが夜の浜辺にこだました。 449 :SIREN2:2008/05/06(火) 21 56 04 ID ud1aa8n60 特異点 鉄塔の崩壊により一樹、郁子、母胎は特異点へ飛ばされていた。特異点、それは全ての事象が起こりうる世界だった。 ゲームとしていえば全て終了条件2で終わった世界。無限の可能性の中で現世と虚無の区別のない世界だった。 その世界の空には赤い海があり、そこから母胎が顔を出していた。計画の破綻に激怒した母胎は一樹たちに襲い掛かる。 一樹たちも母胎との最後の決着をつけることになった。 一樹と郁子の協力の下でも母胎の力は強力で、一樹は弾き飛ばされてしまう。その際にポケットからかつて拾った、昔三上が埋めたメダルが零れ落ちる。そのメダルを辿って幼少の三上もこの特異点へ導かれた。さらにその三上を探して章子/加奈江も特異点へやってきた。三上を探す最中、加奈江は自身と母胎がかなりの精度でリンクしていることに気づいた。三上の肉体は母胎によって抑えられている。よってその肉体を解放するために加奈江は自傷する事によって母胎に強烈な痛手を与えることに成功した。 そのとき、一樹と郁子がここに来るまでに手に入れていた闇那其(あんなき)が輝きだし、石の刃物の様な形態になった。 その闇那其を母胎に振り下ろす郁子。すると今まで一度もさしたる痛手を受けたと見られなかった母胎がうめき声を上げ逃げ出した。 この闇那其には全てを無にしてしまう力(そして闇那其のみが残る世界を作る力)があったようだ。 そして一樹も母胎にその闇那其を叩き込んだ。強烈な断末魔を上げ息絶える母胎。決着に安堵する二人。がしかし母胎は最後の力を振り絞って再び赤い津波を呼び起こすのだった。 ENDING 三上脩&加奈江 赤い海の中パジャマを着た幼い三上を抱く加奈江。「おやすみ、脩。」 三上はそのまま瞳を閉じた。こうして加奈江と三上はともに赤い海(時空ののりしろ)の中静かに二人のときを過ごしていくのだった。 永井 堕彗児を倒したのもつかの間。赤い津波に飲み込まれる永井。その永井が飛ばされた世界は太陽に暗黒の影がかかり、 さも日食になったかの世界だった。浜辺には大量の闇人。この世界では闇人地上侵攻作戦が成功してしまったようだった。 この地上には人間は永井ただ一人、人間は伝説の怪物として恐れられていた。恐慌状態になる永井。 永井の姿に恐れおののく闇人を機関銃MINIMIで次々と銃殺していく。だがしかし現実世界に戻る術はあるのだろうか… 阿部&ツカサ やはり赤い津波に飲み込まれてしまった阿部とツカサであったが、辿りついた先は朝日の昇る穏やかな海岸道路だった。 その朝日を見つめながら、不意に全てが終わってしまったことに気づく阿部。この世界は闇霊屍霊がはじめから存在しない世界だった。 闇霊が存在しないため、母胎は存在せず、そして彼の愛した多河柳子もはじめから存在しなかった世界なのだった。 果てしない絶望感に苛まれただ滂沱と涙を流す阿部にツカサが寄り添った。彼女も自身が尽くしてきた飼い主の三上がいなくなってしまったのだ。そうして一匹と一人は互いに寄り添い朝日を見続けるのだった。 一樹&郁子 海岸で眼を覚ます一樹。朝日が昇っている。夜の世界が終わり現実に戻ってきたことを実感する一樹。 一樹と郁子が戻ってきた世界は唯一今までと同じ現実の世界だった。郁子が眼を覚ました。二人で朝日を見つめる。 穏やかな朝焼けの元満足げな一樹。その横で郁子は太陽の光を煩わしそうに睨み付けるのだった。 33 33 33 不死の肉体を持ち、異界の生物を殺しつくすうりえんを手にした異界ジェノサイダーとなった須田恭也は虚無の世界の夜見島に現れ、未だに生き残っていた闇霊闇人を殲滅する。その戦いに終わりはない。 450 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/06(火) 21 57 08 ID ud1aa8n60 終わり 前回の人の文章を読み込まずに見切り発車で書いてしまったので かぶっているところとかあったらゴメンなさい あとどこを補足したら良いかよくわかんなかったので補足した方が良いってところがあったら教えてください 451 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/06(火) 22 07 36 ID Z+mWvhJQ0 乙です 一樹&郁子のEDの時間の表示に関しても何かあれば… 452 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/06(火) 22 14 03 ID ud1aa8n60 えっと 一樹&郁子 24 44 44 永井 24 32 22 阿部&ツカサ 24 45 55 です 460 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/07(水) 21 10 27 ID seoCvCyQ0 446-450 リクした者ですが、乙です。 ありがとうございました。 で、 >ゲームとしていえば全て終了条件2で終わった世界。 の“終了条件”の意味を教えてほしいのですが…… 461 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/07(水) 21 16 23 ID iYvEONq50 460 終了条件はSIREN中のステージを攻略するための条件で それが達成されるとステージがクリアとなる 終了条件には2種類あってまずそのステージがプレイ可能になると 出現するのが終了条件1 他のステージで何らかの行動を起こすことで プレイできるようになるのが終了条件2 こんな感じで良いのかな わからないところとかあれば補足するんで是非 463 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/07(水) 21 38 23 ID 4VBlsTvTO 登場人物達は閉じた世界である異界に 取り込まれているので、ループして同じ時間を繰り返してしまう。(終了条件1) しかし、それを打破するために各人が少しずつ 違う行動をとり、それらが積み重なることで新たな道が開ける。(終了条件2) 例えば、A地点からC地点へ到達が条件1とする。 このままでは世界は何も変わらないが、途中のB地点で鍵を 拾ったりすることで新たな展開がある。 はっきりいうと新シナリオを開くためのフラグ立ての作ぎょ(ry 464 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/07(水) 21 42 38 ID seoCvCyQ0 つまり、 終了条件1でゲームを進める→主人公たちは無限ループに陥り、その隙に世界が征服される 終了条件2でゲームを進める→ループ崩壊。ラスボスの元にたどり着ける ということで良いのですか? 465 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/07(水) 21 56 45 ID iYvEONq50 無限ループは初代SIRENで SIREN2はパラレルワールドの世界だった気がする 無限にある可能性の世界の中で終了条件2を 達成した世界だけエンディングにたどり着けた みたいな感じの
https://w.atwiki.jp/storyteller/pages/616.html
SIREN2 part23-599,600,606,612,627,681、part24-13,267,274,344、part25-122,243、part26-60,472,474、part27-220 (途中まで) part38-441,443,446~452,460,461,463~466 (上記の続き) 599 :SIREN2:2006/07/26(水)02 20 33ID LEwIXp4X スマン、ageちまった シナリオ分岐する要素あるから、後につながる分だけ書きます。 父と、姉と慕う少女の3人で夜見島の蒼之久の集落に住む幼い少年、三上脩はある夜階下からのもの音に気づき、目を覚ました。 「お父さん・・・?」そういいながら階段を降りた先で見たものは、惨殺された父の死体だった。 必死に事切れた父を起こそうとするが、突如玄関に現れた、「犬を連れた男」に驚き、奥の間へと逃げ込むのだった。 窓から家の外へと逃げた脩は、両手を血に染めた、姉と慕う少女「加奈江」と一緒に、 なぜか加奈江を狙い、襲い掛かってくる漁師たちに見つからないように集落から逃走するのだった。 オカルト雑誌「アトランティス」の若手編集者の一樹守は29年前に島民が謎の消失を遂げ、 その後も近海で謎の消失事件の相次ぐ島、夜見島の取材を行おうとした。 夜見島へ行く手段が見当たらず、一時は途方にくれたが、その場に居合わせた盲目の作家「三上脩」 の計らいにより、彼がチャーターした漁船「翔星丸」に同乗することができた。 また、出港直前に駆け込んできたチンピラ風の男と、派手な格好の女を乗せ、 船は夜見島へと出港したのだった。 しばらくして突然船が大きく揺れだし、一樹が外に出てみると、海は赤く染まり、大きくうねり出していた。 船に必死にしがみつく船員の女性を助けようとするが、女性は流されてしまい、 大きな赤い津波によって船は転覆し、一同は海に投げ出されたのだった。 600 :SIREN2:2006/07/26(水)02 49 12ID LEwIXp4X 三上の父、三上隆平が殺害される少し前、網元である太田常雄の家に漁師たちが集まっていた。 彼らにとて余所者で、民俗学?者の三上は聖域を荒らす邪魔者であり、また彼が海岸で保護した少女、加奈江は 彼らが守る村の言い伝えにある「海から来た穢れ」でしかなかった。 太田常雄の娘、ともえが加奈江が黒い影のようものを海へ帰しているのを見たとう証言もあり、 加奈江討伐の決起ために集まったのだった。 太田以下、全ての漁師が緊張した面持ちだったが、反対するものは1人もいなかった。 海に投げ出された一樹は廃墟の港へ流れ着いていた。探索を始めようとした瞬間、 彼の視界の端を何かが横切った。一樹はそのまま朽ち果てた港湾施設を探索するが、 そのとき、人の死体を思しきものが動き出すのを見るのだった。 探索の果て、彼は小屋の中で気を失っていた美しい少女「岸田百合」と出会う。 「助けて・・!あいつらが私のこと探してる!」 一樹は訳が理解できなかったが、 その場に先ほどの動く死体「屍人」が現れ、百合に襲い掛かろうとした。 屍人を撃退した一樹は、百合を伴って廃墟の港を脱出するのだった。 ちょうどその上空を、一機のヘリが爆音を上げながら、急激に高度を落としていった。 夜見島近海を飛行していた陸上自衛隊の輸送ヘリが自機の場所を見失った上、 操縦不能に陥ったのだった。 夜見島に不時着したヘリは、奇跡的に助かった三沢岳三等陸佐、永井頼人陸士長、 瀕死の重傷を負った沖田宏二等陸曹を残し、全員死亡。 瀕死の沖田を前に泣きじゃくる永井と対照的に淡々と指揮を宣言する三沢。 観覧車らしきものを視認した三沢は永井とともに沖田を担ぎ上げ、移動を開始するのだった。 606 :SIREN2:2006/07/26(水)11 39 11ID bW9UhuMw 廃墟の遊園地にたどり着き、管理小屋の電話から外部への連絡を試みる三沢。 不時着の衝撃で無線機は壊れてしまっていた。だが電話が繋がる様子はない。 受話器を置き、銃を手に小屋の外へ出ると、永井が沖田の死体を前にして泣きじゃくっていた。 「オイ、そいつもう死んでるぞ」冷淡に声をかける三沢。永井を引き起こし、立たせようとしたが、 永井は再び座り込んでしまう。 その時死んでいたはずの沖田が突然動き出し、永井に向けて発砲したのだった。 永井に応戦を命じる三沢。永井は三沢から銃を受け取り、変わり果てた上官を打ち倒すのだった。 遊園地跡から脱出を試みる二人だったが、屍人として蘇ったかつての仲間が行く手を塞ぐ。 その途中、永井は奇妙なものを見つける。精神を高揚させる薬。三沢は自分のだと言って永井から取り上げてしまったが、 それはおおよそ三沢には縁遠いはずのもだった。もうひとつは紛失した装備を回収したとき、信管を含む発火装置は回収できたのだが、 C4爆弾がなくなっていたのだった。 遊園正門は厳重に封鎖されていたため、二人は遊園裏門からがけを乗り越え、遊園地を後にするのだった。 山道を行く一樹と百合。座るのに具合のよさそうな岩を見つけ二人は休憩を取った。 百合が島へ来た目的を話し出す。それはこの島に閉じ込められた母を助けるためだと言う。 驚きを隠せない一樹だったが、百合は続ける「母さんは鳩を飛ばし続けた、でも戻ってこなかった」 意味が理解出来ない一樹だったが「ずっと待ってた、あなたが来るのを・・・。あなたは私を助けてくれる・・・?」 懇願する百合に一樹は困惑しながらも、同行を決意するのだった。 夜見島出身の駐在警官、藤田茂は夜見島の金鉱跡を巡回していた。地元の漁師たちから無人のはずの島に女がいるのを見た、との通報があったためだった。 藤田は生来、余計な事によく首を突っ込む性質で、その事で、家族からは疎まれていた。 決定的だったのは数年前、情に絆されて窃盗犯を取り逃がし、警部補から現在の地位に降格されたときのこと。 妻は過労で倒れ、大学進学を諦めざるを得なくなった娘、朝子からは事実上の絶縁を手紙で通告される事になったのだった。 無線で連絡を取ろうとした藤田だったが、どうした事か無線が通じない。 その時、彼の視界を黒い塊が横切るのだった。 黒い塊は屍霊と呼ばれる凝り固まった闇に人面が浮かび上がったものだった。 屍霊の襲撃を懐中電灯と警棒で振り払い、高台の小屋から藤田は奇妙なものを見つける。 深い森の中に大きな客船が座礁しているのだった。 「はぁ~やんなっちまうなぁ。すまんなぁ、朝子。」 そうつぶやくと彼は客船へと急行するのだった。 612 :SIREN2:2006/07/26(水)13 29 57ID uOb6qP3u 再び移動を開始した一樹たちは、遊園地から脱出してきた三沢たちに出会う。 救助に来たのかと思い、駆け寄る一樹だったが、三沢は警戒を解かない。 ライトの光を怖れる百合を不審に思った三沢だったが、激昂した一樹が間に割ってはいる。 そのとき永井は信じられないものを目撃する。「三佐、あれ・・・」 一同はこちらに押し寄せる巨大な赤い津波を目撃するのだった。 その少し前、チンピラ風の男、阿部倉司とともに漁船に乗り込んだ女、喜代田章子は不思議なものを見ていた。 彼女は生まれつき場所や物に付いた過去の記憶を見ることが出来、その力を生かし占いで生計を立てていた。 (参照 http //www.yumemi-salon.com/j/index.html) 彼女は夜見島の漁港の、とても古い記憶の中に殺害された彼女の友人「多川柳子」の顔を見たのだった。 「なぁなぁそれ霊感てヤツ?実はさ、俺も昔みたことがあってよ~」 くだらない話で章子の思考をジャマする阿部は、その柳子の同居人であり、恋人であり、そして殺害の容疑者である。 柳子が殺害されたことを自宅のテレビで知った章子の下に突然ナイフを持った阿部が押しかけてきたのだ。 「俺は柳子を殺しちゃいねぇ!あの前にあいつにあっているんだ!」 そう喚く阿部。 彼は自宅で柳子らしき死体(顔が判別不可能なほどに殴打されていた)の発見する前に、階段で彼女とすれ違い、挨拶までしたという。 だが普段から粗暴で、柳子との諍いが絶えなかった阿部は真っ先に容疑者として指名手配されてしまう。 パニックに陥った彼は、柳子の友人で、彼が胡散臭がっていた章子のもとに駆け込んだのだった。 彼の過去を「視た」らしい章子は阿部を信じ、彼が目撃した「もう1人の柳子」を探し出すのだった。 そんなこんなで夜見島へきた二人だったが、船は転覆、二人は無人の島に置いてけぼりである。 にもかかわらず阿部は足元に落ちていた胡散臭い金のアクセサリーを拾って「これ純金じゃね?」 などとくだらない言動を取り続けるのだった。 軽薄な阿部にウンザリしていた章子は驚くべきものを目にする。 それは二人に向かって押し寄せる巨大な赤い津波だった。 脩を貨物用ロープウェイで先に脱出させた加奈江は夜見島港へと急ぐ、途中ともえが彼女の行く手を阻んだが、 ともえを振り切り脩の元へ急ぐ加奈江。「あんたは逃げられない!」 ともえの叫びが背後から彼女に投げつけられるのだった。 網元、太田常雄以下、多数の漁師が港湾施設跡地で二人を探していたが、加奈江は彼らの視界を盗み見する特殊なの力を駆使し、 彼らを欺き、無事脩と再会する。灯台へと向かう二人を漁師たちが取り囲み、窮地に立たされる2人。 そのとき唐突に足場が崩れ、二人は崖下の海へ落ちていく。 「終わった・・・」そうつぶやく太田たち。だがその時、サイレンに似た不気味な音が高らかと鳴り響き、島全体が鳴動し始めたのだった。 ともえは赤く染まった海から、巨大な赤い津波が押し寄せてくるのを目撃する。 逃げることも出来ず、漁師たちは津波に飲み込まれていくのだった・・・。 627 :SIREN2:2006/07/26(水)22 54 54ID z+KFlbYz なんだか長くなってしまった。無駄遣いスマヌ手元に攻略本しかないんでうろ覚え。 まるで誰かの意識が自分の中に流れ込んでくるような不快感に苛まれながら、 一樹は目を覚ました。傍に立つ百合に着物姿の女がつかみかかる。 「なんで!なんであんたが生きてんのよ!」女を振りほどき、逃げる一樹と百合。 金鉱跡にたどり着いたとき、一樹は再び不快感に襲われる。 「じっとして。意識を集中して・・・。」一樹に声をかける百合。すると一樹の視界に、百合の視界と思しき視界が入り込むのだった。 一樹は信じられなかったが、百合は特に気にした様子はない。 この不可解な力を駆使し、屍人の蠢く金鉱跡を突破する二人であった。 県立亀石野中学2年、矢倉市子は突然目を覚ました。 テニス部の試合、団体戦準優勝、その帰りのフェリーの中・・・のはずだった。 市子はたった一人、薄暗い船倉で倒れていたのだ。 「ノリコー!中島くーん!?みんなどこー!?」 だが返事はない。その時唐突に頭に流れ込む誰かの視界。 「なに・・?これ?・・・ヤダ・・わかんない!!」パニックに陥りそうになる市子だったが、 船内を徘徊する屍人をやり過ごし、何とか艦橋へとたどり着く。突然船内電話が鳴り響く。 受話器を取ると中年男性の声が受話器のから聞こえてくる。矢継ぎ早に市子に質問する男。 しかし市子が答えようとしたとたん、ノイズが混じり、電話は切れてしまう。またしてもパニックになりそうな市子だったが、 勇気を振り絞り、船底の電源室へと向かう。「誰かいませんかー!?」 そう叫ぶ市子に扉の向こうから男が答える。 「そこにいるのか!?待ってろ!お巡りさんすぐにここを開けるから!」 針金を使い、鍵をこじ開ける藤田。 かくして二人は無事合流し、船の外へ脱出するのだった。 藤田の乗ってきた船を目指す藤田と市子。旧軍の砲台跡地に差し掛かったとき、1人の男が二人の前に現れる。 「藤田んとこの、馬鹿息子か・・・・」 息も絶え絶えに語るのは、網元、太田常雄である。 「親父さん!あんた10年間なにしてたんだ!?」10年前に全島民とともに消えたはずの太田を前にして動揺する藤田。 だが二人は再会を喜ぶこともなく、太田は絶命してしまう。絶命した太田を取り囲む屍霊。ほどなくして太田は屍人として復活し、 二人に襲い掛かるのだった。 太田を退け、砲台跡の地下に入る二人、だがそこで太田に追い詰められてしまう。太田が市子に襲い掛かろうとしたまさにその時、 市子は太田に向かって哂ったのだった。その笑みをみて恐れおののき、逃走する太田。 不思議に感じた市子だったが、藤田は気にも留めず、二人はもうひとつの砲台跡を経由し船を目指すのだった。 681 :SIREN2:2006/07/28(金)01 45 29ID /Zgf4oI/ もう少し端折って短くしたいけど、下手に端折ると話が分からなくなってしまう・・。 金鉱跡を抜け、再び山道へと入った一樹と百合。一樹は自らの体験した数々の不可解な出来事に困惑していた。 「おかしい。いくらなんでも非科学的すぎる。」そうつぶやく一樹。 百合に意見を求めても、返ってくるのは母を助けるという自分のことばかり。 混乱と疲労が一樹を苛立たせ、きつい言葉を発してしまう。 「その君の母さんとかいう人、本当にいるの?」その言葉に過剰な拒否反応を示す百合。 「私のこと信じてないのね!」そう言い放ち、駆け出す百合。 一樹は取り繕うこともできず、その場に立ち尽くすのだった。 山道を独り歩く百合。足元にまとわり着く屍霊を踏み潰し、一瞥をくれたその時、 森の中に座礁した船から何かを感じ取りのだった。 「-誰?」そうつぶやくと百合は客船へと向かうのだった。 赤い津波に巻き込まれ(もっとも彼は見えていなかったが)、海へと投げ出された盲目の作家、三上脩。 彼は、彼の失われた記憶の断片に残るある少女を追って、夜見島を目指していたのだった。 舗装路の上で彼の愛犬ツカサに起こされる三上。だが彼は彼の視界に驚いた。 失ったはずの彼の視野には、ツカサのものと思しき視界が広がっていたのだ。 「ツカサ・・・これはお前なのか?」そういいながらフラフラと目の前の石段を登り、目の前の家の引き戸を開ける三上。 そこには29年前、あの日あの時の自分が事切れた父を抱き起こそうとしていた。 三上に驚き逃げる脩。背後から太田常雄が現れ、三上を不審に思うが、 突然、死んだはずの三上隆平が跳ねるように飛び起き、驚き逃げる太田を追いかけるのだった。 三上は状況が信じられず、事実を確かめるために彼が埋めた、「お姉ちゃんとの思い出」を掘り出しに行く。 彼の記憶の通り、彼が描いたお姉ちゃんの絵はそこに埋まっていた。今時分は29年前のあの島にいる。 そう確信した三上をツカサが突き飛ばす。その直後、近くのプレハブが倒壊し、ツカサは生き埋めになってしまう。 更に三上の背後から屍人と化した漁師が襲い掛かる。弱い視界を頼りに逃げる三上。 だが彼は足を踏み外し、崖下へと転落するのだった。 金鉱社宅前で意識を取り戻した章子は奇妙な感覚に違和感を抱く。 いつもの過去の視界ではなく、今現在の誰かの視界を見ているのだ。 「何、これ?いつもと違う・・。」そうつぶやく章子。 彼女が見たのはフェンスに生っていたアケビをもぎ取って食べる阿部を見ている誰かの視界だった。 放置されていた軽トラに乗り、社宅跡を突破する章子。 一方阿部は犬の鳴き声に導かれるように、社宅跡を後にしていたのだった。 夜見島、瀬礼洲に打ち上げられた客船ブライトウィン号。 三沢と永井は船内を探索していた。永井が不安な心境を告白する。 -これは夢じゃないのか、自分の頭はおかしくなっているんじゃなのいのか- 三沢は頭に弾丸ぶち込んでみるか?と永井に聞く。 「もし夢なら暖かい布団で目が覚める。もし夢じゃなかったらー、それで、終わり-」 突然永井の頭に銃口を向け、ふざける三沢、その顔には子供のような狂気じみた笑い顔が浮かんでいる。 驚く永井だったが、背後の物音に気づきライトを向ける。 そこのは先ほどの若い女がいた。光を嫌がり、逃げる百合。 追いかけようとする永井だったが、三沢は気にも留めず、そのまま別の船室へと向かう。 「三佐?三沢さん!・・・・・なんなんだよあいつ調子乗ってんじゃねーよ」 永井は1人で百合を追うのだった。無事百合を保護した永井だったが、 百合を執拗に狙う、着物を着た女屍人によってタラップを落とされ、船から脱出できなくなってしまう。 永井は船倉にできた亀裂から百合を逃がし、自らも、救難艇で客船から脱出するのだった。 先に脱出した百合に追いついた永井。百合は長いに抱きつき、問いかけるのだった。 「あなたは私を信じてくれる?助けてくれる?」百合の神秘的な美しさに惹かれる永井。 その時、突然背後から三沢の銃口が百合に向けられる。銃口を跳ね除け、百合を逃す永井。 「何なんだよあんた!あんた前からおかしいと思ってたよ!!なんであんたなんだ・・・。 なんであんたじゃなくて沖田さんが・・・!ちくしょう!!もうやってられっかよ!!」 募らせた思いを吐き出す永井。吐露された怒りは上官と部下の関係を破綻させるのだった。 13 :SIREN2:2006/07/30(日)10 09 09ID l0kqLIjQ 最後の一粒になった錠剤を飲み込む三沢。 「なーがいくーん、いっしょにあそびましょー!」またしても彼らしからぬ、ふざけた調子を取る三沢。 彼の精神は極限まで蝕まれつつあった。 2年前、大地震に襲われ、壊滅した羽生蛇村。彼は災害救助の任務を遂行していた。 ただ1人、無傷で助かった少女を抱きかかえ、ヘリに吊り上げられる三沢。 その時彼は見たのだ。眼下に広がる泥土の中から彼と少女に掴みかかろうとする無数の手を。 この地にかけられた呪いの断片、安らかに眠ることすら禁じられたものたちの呪詛と怨嗟-。 「やめろ・・・やめろーーーーッッ!!」ただ叫ぶことしかできない三沢。 「三沢一尉?三沢一尉!?」彼を呼ぶヘリからの声で我に返る三沢。 彼の眼下にはただただ先ほどと同じ、泥土に埋もれた村が映っていた。 この出来事以来彼の精神は病み、鬱の状態になることが多くなった。 それは、三佐昇進、冬季東アジア大会での輝かしい功績をもってしても打ち消せず、 薬の使用により何とか押さえ込んでいる状態だった。 だがこの島に来て以来、立て続けに起きている怪異は彼の神経を高ぶらせ、鋭敏にし、 加速度的に精神状態を悪化させていた。 「どうしてそんなに嫌うかな・・・・・どこだ、永井。」そうつぶやき歩き出す三沢。 だが彼は廃墟の金鉱社宅の一室に妖しい光がともるのを目撃する。 その部屋へと向かおうとする三沢。だが彼の行く手を沖田以下、彼のかつての部下が阻む。 彼の持てる戦闘技術を結集し、屍人たちを退け、三沢はついに部屋へたどり着く。 そこには、あの日助けたはずの少女が、座って泣いていた。少女の肩に手をかけようとする三沢。 その時少女が突然振り向き飛び掛ってきた。あの顔は屍人そのものだった。 反射的に飛びのき、銃を乱射する三沢。だがそこには少女の気配すらなかったのだった。 崖から転落したあと、阿部によって助けられた三上。今は砲台跡のトンネルにいた。 「アレッ?あんた三上脩じゃねぇ?」相変わらず軽薄な阿部を無視して話を進める三上。 「この島のどこかに、記憶を引き出す鍵があるはず・・・阿部さん、あなたの目をかしてくれないか?」 阿部の視界を借り、砲台跡を探索する安部と三上。 地下の封じられた弾薬庫をの入り口を破壊し、中に入る二人。だが特に妖しいものはない。 「なんだよなにもねーじゃねーか」ぼやく阿部。 しかし三上がレンガ造りの壁に触れたとたん、壁が崩れ、土の中に埋もれた人魚のような生き物の化石を発見するのだった。 おおきなかみさま しんだ おねえちゃんのおかあさん うまれた いっぱいうまれた 子供のころ、加奈江が話してくれたことを思い出す三上。 二人は急ぎ、砲台跡を脱出するのだった。 遊園地跡へとたどり着いた二人、三上は闇の中から自分を呼ぶような声を聞いた気がした。 幼いころの記憶がよみがえる、七つの門、七つの鍵。 加奈江の残した言葉と歌、そして父、隆平が捜し求めた夜見島の謎、 それさえ解けば記憶が完全に戻るという確信が彼にはあった。 電動パンダにまたがる阿部に三上は再び協力を求める。 物事に頓着しない阿部は、彼の真意を知ることもなく、彼に協力するのだった。 267 :SIREN2:2006/08/16(水)22 08 40ID tyC+jfBT0 百合をさがして夜見島遊園へ独りたどり着いた一樹。 百合は座っていた。声をかける一樹に百合はガラス製の鳩を見せた。 「見て」百合の手から滑り落ち、粉々に砕けるガラスの鳩。 「早くしないと戻ってしまう、混沌の闇の中に・・・」そうつぶやく百合。 一樹は百合の言葉を理解できなかったが驚くべきものを見た。 それは先ほど砕けたはずのガラスの鳩だった。まるで何事もなかったかのようにそれはそこにあった。 百合の歌う失われたはずの「巫秘抄歌」と幻視によって次々と現れる碑の封印を解く一樹。 最後の巫女の碑の封印を解いた一樹。とたんに強い眩暈に襲われる。 「見て・・・」頭を押さえ、苦しむ一樹の背後を指差す百合。 錆付いた観覧車があったはずのそこには巨大な穴が現れていた。 遊園地の地下に広がる空間。異様な雰囲気が漂うなか、一樹は百合の後を追って鉄製の階段を下りていく。 その先にあったのは、地底に広がる赤い海。百合はゆっくりと振り返り、上着を脱ぎ捨てていく。 「本当の私を見て・・・」そう呟き、はだけた胸元には、もうひとつの顔が浮かび上がっていた。 百合もまた、人ならざる者だったのだ。立ち尽くす一樹。今度は胸元の顔が話しかける。 「見て・・・私を見て・・・本当の私を・・・」そして百合の背後の赤い海の底から、 サイレンに似た咆哮とともに怪物と呼ぶにふさわしい姿をしたものが現れたのだった。 百合を名乗っていたモノ・・・。それは「母胎」の化身だった。 母胎・・・かつて地上を光の洪水によって追われ、異界の地の底に潜みしものの集合体。 永遠に近いときを経て、彼らの悲願を達成する機会がついに訪れた。 人間の手により封印を解き、人の肉体を自らと融合させること。悲願達成の第一歩はついに歩みだされた。 成す術もなく、母胎に取り込まれそうになる一樹。だが取り込まれようとした瞬間。 翔星丸の無線員、木船郁子が突如現れ、不可思議な力で母胎の動きを封じ、一樹を助けた。 「早く逃げてっ!これ以上は私が持たない!」正気に返り、母胎から逃げる一樹。 その時。 「うわぁっ!何なんだよこれ!」絶叫する阿部。 三上と阿部の二人がこの封印の地へと、母胎の前へと現れた。 三上の見えなくなったはずの目に、母胎の、かつて己の目の前で海の底へ溶けるように消えていった加奈江の顔が映った。 「おねえちゃん・・・?おねえちゃんだよね・・・?」全ての記憶を取り戻した三上。しかし彼の目に映るのは人面魚体の怪物ではなく、やさしかった姉の姿。 「ぼくさびしかったよ・・・くらやみのなかでひとりぼっちだったよ・・・」ふらふらと赤い海に佇む加奈江へと歩いていく三上。 三上が加奈江に抱きつこうとしたその時、章子が現れ、三上に叫んだのだった。 「脩ゥッ!見ちゃダメェーーッ!!」 「おねえちゃん・・・?」章子の言葉に驚きの表情見せた三上だったが・・・ すでに遅かった。 母胎の腹部から伸びた何本もの触手によって、三上は母胎に完全に取り込まれてしまった。 「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」 歓喜の笑い声とともに何十、何百もの闇霊を産み落とす母胎。 その姿に驚き、阿部は章子を、木船は一樹を連れ、その場から逃げるのだった。 しかし彼らの後を闇霊-大きな口を持った、たとえるなら真っ白な人魚の胎児のようなモノ-が追いかけてくるのだった。 その時、地上では、三沢は無数の屍霊と戦い、永井は鳴り響くサイレンの音に耳をふさぎ、 市子は・・・鮮血に染まり、もう動くことのない藤田に抱きついて、泣いていたのだった。 274 :SIREN2:2006/08/17(木)17 07 52ID 2pt0I5q10 船から投げ出され、赤い海の中を漂う三上。 過去の記憶が断片的によみがえる。 足場が崩れ、海に落ちた後、彼は加奈江によってボートに乗せられた。 しかし加奈江は全ての力を使い切ってしまい、もう動くことすら出来なかった。 力なく海に浮かぶ加奈江。そしてそれを見つめる脩。 「脩・・・見ないで・・・・お願い。見ちゃダメ・・・・」 昇りゆく朝日とともに、加奈江は海の底へ、まるで溶けていくように消えていったのだった。 穴の壁面に沿うように設けられた鉄組みの足場を全力で駆け上がる木船と一樹。 だが一樹は母胎に操られたこともあってか、疲労が頂点に達していた。 膝をつき、その場から動けなくなる一樹。 そこへ、階段の上から無数の屍霊が、下からは無数の闇霊たちが迫ってくるのだった。 「僕を置いて・・・逃げるんだ・・」弱音を吐く一樹。 「何かっこつけてんのよ!こんなとこでかっこつけたって誰も見てないよ!バッカじゃないの!?」そんな一樹を叱咤する木船。 人外のものが迫り、最早これまでと思われたが、果たして化物たちは二人に襲い掛かることはなかった。 彼らを飛び越え、互いに喰らい始めたのだ。顔を見合わせ、頷く一樹と木船。 二人は全ての力を振り絞り、地上へと向かって走り出したのだった。 なんとか地上へと出た二人だったがそこにはすでに屍人たちによって包囲されていた。 木船は他者の肉体を乗っ取る自らの力を駆使し、武器を手に入れ、七つの碑を叩き壊し、 「冥府の門」を閉じようとするのだった。しかし門は閉じられることなく、門の中から黒衣をまとった闇霊たちがあふれ出てくるのだった。 逃げようとする二人を、変わり果てた藤田と屍人自衛官が包囲する。 しかしまたしても闇霊たちによって屍人は喰われ、二人は窮地を脱するのだった。 遊園地の出口へと向かった二人は三度、闇霊に襲われた。すでに出せる力もなく、絶体絶命の危機に陥る二人。 しかし空から降り注いできた赤い光によって彼らを取り囲んでいた闇霊は消滅し、二人は三度の危機をまたしても運命に救われたのだった。 集落まで逃げた二人。しばしの休息の後、人との接触を怖れる木船はその場から立ち去ろうとする。 木船の手をつかみ、二人で行動することを提案する一樹。 しかし木船の、自分は人の心を読むことが出来る、という言葉に驚き、一樹は手を離してしまう。 「そんな・・・化物を見るような目で見ないでよ」木船はそういい、力なく微笑み立ち去っていった。 -やはり自分は化物なのか。そのような思いに捕らわれる木船であった。 取り残された一樹は、何故手を離してしまったのか、と後悔していた。 彼の脳裏につらい過去の記憶がよみがえる・・・。 344 :SIREN2:2006/08/25(金)05 20 53ID o/3MmBwC0 怪異発生より8時間後の夜見島、潮降浜。 その近くを矢倉市子は彷徨っていた。服には藤田の血がついている。 「お母さん・・・家に・・・帰りたい・・・」 そう呟く市子の脳裏に一瞬奇妙な記憶が甦る。 誰かの手にぶら下がる自分。しかし、ブレスレットが千切れて海へ落ちていく。 記憶のなかの市子が海に落ちたと同時に、市子自身も足を踏み外し、崖下の道路へと転落した。 -逃げなきゃ。そう思い、潮降浜の前を走りにける市子。その前にアイロンで武装した女屍人が立ち塞がる。 武器を持たない市子では対抗することができない。逃げようとしたその時、背後から軽トラックのエンジン音が鳴り響いた。 驚いて道脇の草むらに飛び込む市子。そのすぐ横を軽トラックが猛スピードで通過した。 市子が草むらから這い出してみてみると、女屍人が少し離れたところに転がっていた。 撥ねられたらしい。 市子はアイロンを手にすると廃墟になった小中学校跡へと向かったのだった。 大道具倉庫で釘箱を入手した市子はそれを校舎裏の道に撒いた。しつこく追跡してくるトラックをそれでパンクさせようというのだ。 市子の目論み道理、タイヤが破裂し、制御を失い、封鎖された校舎裏門を突き抜けるトラック。 その時校舎裏門から大量の闇霊が侵入してきた。屍人たちは市子に目もくれず、闇霊を攻撃し始める。 そのまま校舎裏門を抜ける市子だったが軽トラックから屍人が降りてきた。 かつての沖田宏である。 沖田は市子に気づくまもなく闇霊に囲まれ、そして喰われた。 市子は泣き叫びながらその脇を通り抜けるが、闇霊に囲まれてしまう。 その時、市子の頭上に赤い光が降り注ぎ、包囲していた闇霊は蒸発するのだった。 その1時間ほど前。 崩谷、夜見島金鉱(株)社宅跡。 そこに女の悲鳴が響き渡った。だが生きているもののそれではない。 海より来る穢れに操られしもの、屍人の叫び声である。 異界、夜見島において人の上に君臨し、蹂躙する存在。 そのはずの彼らが恐怖し、逃げ惑い、仲間に助けを求めていた。 かつての彼らの同胞、闇人が復活したのだった。 同胞とはいえ彼らの間には仔細あって愛憎遺恨が渦巻いていた。 初めはいきり立って闇人に襲い掛かった屍人たちだったが、その力の差たるや歴然。 屍人は頂点の座をあっさり奪われた。しかし己の存在意義を賭け、全力で抵抗していた。 助けを求めた女屍人、鍋島揉子(金鉱跡で一樹たちの脳天をハンマーでカチ割ろうとした)は背後に迫る気配を感じ、ベランダへと逃げた。 機関拳銃を手にした闇人が彼女を追いかけていたのだ。 彼女を見つけ、歓喜の叫びを上げる闇人。その時。 -響きわたる叫び声に答えるかのように、不規則な足音が社宅跡に響く。その数2人分。 三沢、永井らの隊を指揮していた陸上自衛隊の佐官、一藤二孝が部下の屍人自衛官を連れ、揉子救出に駆けつけたのだ。 銃に弾倉を装着し、部下に指示を出す一藤。動き回る死体程度の屍人と完全に肉体を支配する闇人では身体能力の差は歴然。 ならば戦術でカバーするのみ。光に弱いという闇人の致命的な弱点をつきながら、立ち塞がる敵を倒し、社宅に突入した両名。 その一室で揉子を無事発見した一藤。 「うぉぅ!?(訳:大丈夫か!?)」 「ヒィィィィィィィ・・・(訳:アイロンが・・・形見のアイロンがないの・・・)」 銃に新しい弾倉を取り付ける一藤。 「うぉぅ!(訳:俺にまかせな!)」 女を泣かすやつァ許さねぇとばかりにいきり立つ一藤。その心の裏には彼女への想いがあった。 屍人だてらに一目ぼれである。 その想いの前には凄腕狙撃闇人も変わり果てたかつての部下も意味を成さなかった。 ついにアイロンを手にする揉子。あとはここより脱出するのみである。 脱出まであと一息、その時背後から一藤を大量の銃弾が襲った。 振り返ると銃を構えた闇人が立っていた。 「イヒヒヒィィィイィィ!!」 一藤に狙いを定め笑い声をもらす闇人。 「!?ギィィィィィィッ・・・!」 銃声とともにその場に倒れる闇人。その背後には部下屍人が立っていた。 その姿を見て、安堵し、その場に座り込む一藤と揉子であった。 122 :SIREN2:2006/09/07(木)01 55 01ID Xo0D5JwM0 四鳴山の林道を歩く阿部と喜代田。阿部が多川柳子との思い出を語りだす。 「あいつ時々わけわかんねーくらい暴れだしたりしてさ・・・」 そこまで語ると言葉につまり、俯く阿部。 阿部に寄り添う章子。二人が顔を上げたとき、信じられないものを見る。 目の前にそびえたつ廃鉄塔。その上空にはもう一本の鉄塔が宙吊りに浮いている。 そうではない。夜見島上空にはまるで鏡に映りこんだかのように、もうひとつ夜見島が存在していた。 「何かに呼ばれている気がするの。そこまで連れってくれないかな。」 そう阿部にいい、廃墟の港湾施設を探索する章子。そこここで立ち止まっては過去の映像を見ている。 「アレ?これは・・?」「どういうことなの?」「・・・そうか」「・・・もう少し・・・もう少しよ・・・」 「・・・灯台へ行きましょう」そう阿部に告げる章子。 「・・ほら、がんばって・・」「もう少し、あともう少しよ・・」 灯台前の橋にたどり着いた二人。だが橋は崩落している。しかし章子は穴に向かってフラフラと歩いていく。 「ホラ・・・もう少しよ・・・がんばって・・・・・しゅう」 「おい!あぶねぇ!」 穴に落ちそうになる章子の腕をつかむ阿部。章子はそのまま倒れこむのだった。 疲れ果て、道沿いの石の上に腰を落とす二人。 「はっぴばーすでぃとぅゆー♪」 突然歌いだし、ポケットから拾った金のアクセサリーを章子に手渡す阿部。 「今日誕生日だったろ?免許書で見たんだよ。」 戸惑いながらも表情を緩める章子。俯いて寝息を立てだした阿部に寄り添い、しばしの平穏を味わうのだった。 243 :SIREN2:2006/09/18(月)02 05 33ID //aGHVnB0 砲台跡で大の字になって寝転び、三沢は空を見上げていた。空にはもうひとつの夜見島があった。 「・・・あっち側は遠いなぁ・・・」そう呟く三沢。 その時、突然少女の叫び声が聞こえてきた。 すぐ近くで市子が闇人に襲われていたのだ。その叫び声を聞き、薄ら笑いを浮かべて武器を構える三沢。 市子は三沢に助けられ、無事に砲台跡から脱出する。そして三沢も市子の後を追うのだった・・・。 蒼ノ久集落に来た永井は少女の嗚咽と男の声を聞いた。 「あの女より生臭い。お前は何なんだ」そういい市子に銃を向ける三沢。 「わかんない・・わかんない・・・!!」そういい泣き叫ぶ市子。 「やめろーッ!!」そう叫び咄嗟に銃を構える永井。しかしその弾みで銃が暴発し、三沢を打ち抜いてしまう。 よろよろと永井の方に向き直る三沢。 「・・・・やるじゃない」そして永井に抱きかかり、最期の言葉を残すのだった。 「俺は先に目覚めちゃうけど・・・・・悪いな」 最後まで三沢の真意を理解できず、目の前の事実に呆然とする永井。 永井は市子を連れ、その場から逃げるのだった。 60 :SIREN2:2006/10/04(水)21 22 38ID VJosXtZY0 三沢を誤って射殺し、市子をつれてその場から逃げ出した永井は夜見島金鉱社宅へとたどり着いた。 虚ろな市子を励ます永井。その背後の暗闇に、巨大な顔がぼんやりと浮かび上がる。 銃を構える間もなくはじき飛ばされる永井。起き上がると既に市子の姿も無い。 さらわれた市子を奪還すべく走り出す永井。 社宅の一室に市子はいた。しかし永井が声をかけるが虚ろな笑い声だけを返す市子。 市子はフラフラと立ち上がり、突如機関拳銃を永井に向けて発砲した。 「あの時死んだのは・・・・私。・・・・早く還りたい・・・・おかあさん。」 意味不明な言葉を呟き、闇人を殲滅しながら社宅をさまよう市子。 永井は市子が落としたと思われる壊れたブレスレットを市子の前に示し、正気に戻そうとするが 市子は永井の手を振り解き、逃げてしまうのだった。 冥府の門が開き、母胎が復活したその時、市子に急激な変化が訪れた。 薄笑いを浮かべる市子。藤田の胸に突き立つナイフ。うわごとのように娘への懺悔を呟き動かなくなる藤田。 我に返った市子の嗚咽と叫びが闇に木霊するのだった。 市子は思い出す。ー眼下に広がる、荒れ狂う漆黒の海。親友ノリコの腕にぶら下がり、今にも落ちそうな市子。 おそろいで買ったノリコのブレスレットに指がかかり、ブレスレットが大きくゆがむ。 死にたくない-そう思い指に力をこめた刹那、市子は荒れ狂う異界の海へと落ちた。 赤く染まった海中に漂う市子。手にはブレスレットが握りしめられている。 水中に響くくぐもったサイレンのような音が、徐々に市子に近付いていく。 ドアを開け船室に足を踏み入れる一樹。薄暗い船内に外光が差し込み、闇霊が奇怪な叫び声を上げ消滅する。 殲滅すべき敵を認識した一樹の目に憎悪が宿る。 「光が・・苦手なんだな・・・。化物め、化物め、化物め!」 憎むべき敵と、その弱点を知った一樹は船内の電源を復活させ、闇霊を一掃する。 人の姿をした化物も、更に醜悪な姿になった闇人、ともえをも倒した一樹。 疲れ果て、忍び寄る闇霊に気が付かない一樹を永井が助ける。 悲観的言動の一樹に対して、ある種の居直りを見せる永井は、絶望的状況での悪あがきを促す。 再び夜が訪れる。 待っていても助からない。 二人は怪異とその元凶に挑む。 472 :SIREN2:2006/11/28(火)20 24 07ID 0Kyq4nbO0 夜見島、瓜生ヶ森。 背後から郁子の肩を掴もうとする阿部。反射的に振り払う郁子。 「なぁアンタ、派手なカッコした女見なかった?・・・・あれ?アンタどこかで・・。」 阿部は章子の行方を尋ねるうちに、何故か奇妙な懐かしさを覚える、郁子は何も答えず走り去る。 章子は蒼ノ久集落にいた。 章子の意識に自分のものではない過去の映像が断片的に甦る。目を開く章子。 「脩……あの子はどこ?」覚束ない足取りでさまよい始める章子。 自分のものでない記憶に導かれた章子は三上家へたどり着く。 しかしその三上家から異形の存在となった三上脩の父、隆平が現れる。 「まだ起きていたのか。早く寝なさい。」 子供をあやすような口調で襲い掛かってくる修平。 章子は霊体となった脩に導かれ、夜見島に伝わる、異形の存在を浄化するという滅爻樹を手に入れる。 修平の隙を突き、その体に滅爻樹を突き立てる章子。 異形の断末魔の叫びとともに、修平は浄化された。 そして章子は真実を知ることになる。 血にまみれさび付いた包丁。 本当の自分。 あの日の記憶 隆平の腹部に刃物を突き刺している自分。 隆平は何が起きているのかわからない、という顔だ。 玄関の戸が乱暴に開けられる。 雨合羽をきた漁師の男たち。 奥の部屋へ逃げ込む。 そこの鏡に映るのは 章子の顔。 振り上げた包丁を鏡に叩きつける。 章子の顔はひび割れ、砕け散る。 「ーそう、私はー」 錆びた包丁を手に立ち上がる章子。 だがその顔は加奈江のものであった。 220 :SIREN2:2006/12/24(日) 21 23 22 ID k+hq9IPm0 四鳴山、離島線4号基鉄塔。 かつて島民から聖域として畏れられた地に聳え立つこの鉄の塔も、 島の他のものと同じく朽ち果て、自然の中に埋没していた。 そしてそれは島が異界と化した際に、さらにおぞましい姿になった。 朽ちたコンクリートの基部とその上に立つ鉄骨製の塔、そしてそれらにまとわりつき、飲み込むように伸びる一本の巨木。 それは異形に対し、抗うことを決心した者たちさえも竦みあがらせた。 社宅、ブライト・ウィン号、それぞれで異形に対面した二人だったが、 一樹と永井は奇怪な鉄塔がそびえ立つ異様な光景に気圧された。 その鉄塔の先に、もうひとつの夜見島があるのを見た一樹がひとつの結論に達した。 「ここは27年前の夜見島のコピーだったんだよ!!」 「うわぁ・・・語り始めちゃったよこの人・・・。」 「やつらはこの鉄塔を利用して現実の世界に浸出するつもりなんだ!」 一樹は思いつめた表情で、塔へと独り歩き出し、諦めと居直りの態度の永井がその後を追う。 二手に分かれた一樹と永井だったが、鉄塔上部にて無事に落ち合うことができた。 階下の永井を一樹が引き上げようとしたその瞬間、背後から再び異形が現れた。 「他所者どもめ・・・・わしの目の黒いうちは好きにはさせんぞ!!」 それは変わり果てた網元、太田常雄だった。 太田に突き落とされ、鉄塔から落下する永井。 一樹は鉄塔内部へ逃げ込み、隙を突いて太田を押さえ込む。 そして途中で偶然手に入れた太田常雄銘の滅爻樹を突き立てた。 「あああぁぁぁぁぁッ!・・・穢れが・・・消える・・・」 断末魔の叫びを残して、太田常雄は滅せられた。 その様子を見ていた太田ともえは、驚き、怯え上階層へと逃げていくのだった。 441 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/06(火) 15 40 45 ID apy4KcCF0 簡単でいいからサイレン2お願いします。 まとめの奴って最後までかかれてないよね? 443 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/06(火) 18 16 51 ID ud1aa8n60 441 書かれてないからやってみてみるよ 446 :SIREN2続き:2008/05/06(火) 21 52 52 ID ud1aa8n60 初めてなんで変な文章でゴメンよ とりあえずwikiの続きから 夜見島離島線4号基鉄塔 感応視により闇人達が鉄塔を通じて現実世界に侵攻しようとしていることを知った郁子は、 鉄塔のふもとにて頂上を見上げ、闇人たちの思惑を打破しようと決意する。 そのとき不意に背後に気配を感じ振り向くと、視界の端に人影を捉え消えた。 その人物のいたところには滅爻樹(藤田茂銘)が転がっていた。 鉄塔を上る道中、クレーンの鍵、鉄塔に絡まるように生えていた大樹に突き刺さっていた 闇那其(あんなき)なる巨大な石、乙式ともえがいじくっていた一樹のカメラを入手。 感応視を駆使して闇霊や闇人がたむろする鉄塔をさらに上り、鉄塔中腹で徘徊していた闇人藤田を滅爻樹で浄化した。藤田は「そうか…あんたも…あの…」と謎の言葉を郁子に投げかけ浄化されていった。 闇霊闇人との幾多の戦闘や闘争のはてに疲労困憊となった郁子はよろけ、さらにその足場は崩れてしまった。 が、あわやの所でその手を一樹がしっかりとつなぎ止めた。数時間前には異能に躊躇し手放してしまった郁子の手だったが今度は離さないと一樹はこれまでの顛末を詫び、それに悪態で郁子は返した。笑みを浮かべる二人。 そして二人で鉄塔の頂上を目指すことになった。 夜見島金鉱採掘所 昨日団地内に自生していた夜見アケビに当たり腹痛に苛まれながらトイレを探していた阿部。激しい絶望感に「くそすぎだろっ!このままじゃよう…」とへたれこんだその頭上に銃弾が打ち込まれた。 徘徊の最中闇人化した三沢をかわし物置に入ると霊体化した三上と遭遇した。 持ち前の明るさでもって気さくに挨拶する阿部の目の前で三上は壁の中へ消えていった。 三上が消えたそこには犬笛があった。その犬笛を何の気無しに吹いてみるとツカサが現れた。彼女も霊体化した三上に導かれて金鉱へと来たのだった。ツカサは阿部が砲台跡で落としたライターを返すと瓦礫の向こうへと再び走り去っていった。 447 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/06(火) 21 53 54 ID ud1aa8n60 夜見島小学校 鉄塔から落とされ再び一人となった永井は闇人への徹底抗戦を決意。フェイスペイントを施し自己を鼓舞し『逆切れモード(永井談)』となり闇霊を殲滅していく。永井は軽トラックで小学校を根城に跋扈する闇人闇霊を轢き殺し、団地で手に入れたタイムカプセルの地図をもとにヒューズを手に入れた。さらに校舎に立てこもった闇霊を信号弾の閃光でいぶりだしそれも殲滅、残った闇人化した沖田をトラックに積んであったTNTで爆殺、体を完全に破壊されたことで沖田の復活は不可能になり、遂に引導を渡すことに成功する。 そのころ学校に程近い浜、そのさらにさらに底の方から何か異形の生物が陸地に向かって急激な浮上を行っていた。 夜見島離島線4号基鉄塔 鉄塔頂上を目指す一樹と郁子の前に完全に自我を失い模倣体(外見は完全なコピーで中身はさっきの異形の生物の意思というようなものを想像してくれればおk)として覚醒した市子が現れた。 母体への恨みと思慕を郁子へ語りかける市子。右手に日本刀左手に機関銃を携えた市子も鉄塔の頂上を目指している。 本能的に先に市子を頂上へ行かせてはいけないと悟った郁子と一樹はさらに急いで鉄塔頂上を目指す事になった。 ※ここで補足 何故みな鉄塔頂上を目指しているの 一樹: キバヤシ理論。根拠無し。 郁子: ブライトウィン号沈没の際に唯一生還した木船倫子(市子の親友で市子の片思いの相手の中島君の子供を宿している)の体内にいた双子に百合や章子、加奈江と同じ性質をもつ母胎地上侵攻作戦に向けて放たれた内偵者が同化した。 その結果郁子は生まれながらに異能を手に入れていたわけだが、異能を手に入れるとともに母胎の精神とのリンクも手に入れていた。 そのため鉄塔の頂上に母胎がたどり着いてしまうと現実世界も侵食されてしまうと気がついている。 母胎: 地上侵攻作戦。三上脩の肉体を手に入れたことで現実世界に侵攻する力を手に入れたため侵攻作戦が遂に実行されることとなった。鉄塔の頂上で現実世界とリンクしているためそこにたどり着けば現実世界への侵攻が現実のものとなる(らしい)。 市子: そもそも母胎と屍霊は同一種であり光の届かなかった頃の地上で繁栄していたが、地上に光が降り注いだ際に光に耐性のなかった母胎と屍霊はそれぞれ別の場所に避難した。 母胎は異世界へ、屍霊は光の届かない深海へ。 屍霊は自身を捨てて異世界へ逃げた母胎が憎くてたまらない反面、母胎と再び一つになりたいという願望を抱いている。 そのため母胎の元へたどり着くべくブライトウィン号沈没の際に手に入れた市子の水死体をもとに自己の意思を反映するためのコピー、模倣体を異世界へ送り込んだ。最初は人間のときの記憶が再生されていた市子ではあったが 現在は完全に模倣体として覚醒しており母胎と合流するために鉄塔の頂上を目指している。 また市子は母胎との合流が至上目標であるためそれを妨げるものは人間であろうと闇霊であろうと駆逐していくのであった。 一方母胎側としては長く現実世界にいることで形質が劣化してしまった屍霊にはさしたる興味もなく地上侵攻作戦を遂行することが至上目標であるため邪魔する屍霊は敵として認識されている。 鉄塔頂上に向かう道中乙式ともえを滅爻樹で浄化し、郁子が入手したクレーンの鍵でクレーンを動かし、市子をかわして鉄塔頂上へたどり着く二人。そこへ母胎も同じく頂上へたどりつく。 母胎と一樹、郁子が対峙するその最中突如鉄塔が崩壊を始め、市子は地面へ、一樹と郁子母胎は空へと落ちていった。 そのとき念願の母胎に辿りついた市子は、母胎にかえりみられる事もなく落ちて行くことになった。 448 :SIREN2:2008/05/06(火) 21 54 59 ID ud1aa8n60 夜見島金鉱採掘所 丁度同じ頃念願のトイレを遂に発見した阿部は用を足す。満足げにトイレを出、 ツカサに返してもらったライターでタバコに火をつけ一服の後、 バスケットのシュート宜しく便器に吸殻を放り込む阿部。 見事にシュートが決まりガッツポーズを決めた背後でトイレが爆発を起こした。 汲み取り式のトイレであったそのトイレの底に溜まっていたメタンガスにタバコの火が引火、爆発することになったのだ。 その爆発に連鎖されるように地下道に充満していたメタンガスが連鎖的に爆発。その爆発は鉄塔の足元にまで広がっていった。 遂に爆発は鉄塔の足元を完全に破壊しつくし、鉄塔は崩壊を開始する。目の前の現実に眼を疑う阿部なのだった。 その爆発鉄塔崩壊のため、現実世界とのリンクは崩壊、母胎の地上侵攻作戦は完全に潰えることとなり、阿部は何気に世界を救ったヒーローなのであったが、そのことは誰も知らない。 夜見島潮降浜渚 鉄塔が崩壊していく姿を呆然と眺める永井の周囲から光がなくなっていく。闇人甲式として進化を遂げた三沢が不敵に笑っていた。永井は三沢との決着をつけることを決意する。 闇人甲式として進化した三沢は無限弾薬を誇る最強の機関銃MINIMIを装備しているので、永井は迂闊にその前に立つことはできず、背後からその身を隠し狙撃することに成功する。(不死身の闇人を異世界の武器でない現代兵器で撃破することができたのは、三沢と対峙するまでに学校及び潮降浜渚付近の闇霊を殲滅していたため。闇人は闇霊が人間の死体を殻として利用している存在のため、殻=三沢の死体を利用する闇霊が付近に存在しなければ復活することができない。ゲーム中では三沢の体力がこの戦闘中一切回復しないことでそれが表現されている。) 機関銃を乱射し遂に地に果てた三沢。やっと全て終わったことに安堵する永井の背後から市子の声がした。その市子の顔には巨大な目玉が浮き上がっていた。市子はもはや模倣体としてその存在を維持できなくなっていたのだ。 「家に帰りたい…一緒になりたい…」とつぶやき倒れる市子と、倒れ動けなくなった三沢を吸収するように浜から巨大な顔面(市子のそれを模倣したもの)の生き物が浮上してきた。まだ戦いは終わっていないことを知った永井は 三沢の残した機関銃MINIMIを携え巨大な顔面の生き物(堕彗児/おとしご)との戦いに臨むことになる。 堕彗児は屍霊の凝結したものであり、光に弱い。ここで永井は潮降浜渚にある灯台に向かいタイムカプセルから入手したヒューズを組み込み灯台の光を起動した。さらに堕彗児は移動手段が回転による突進しかないことに気づいた永井は廃棄されたタンクに激突させ、そこに残されていた重油を浴びせかけることに成功する。 光を浴び重油を浴び、怯んだ堕彗児に対し、潮降浜渚に打ち揚げられていた、漁船の発電機を起動させ水銀灯をともし、そのランプを堕彗児にぶつけることで、重油を浴びたその体を燃やし尽くすことに永井は成功した。 今度こそ本当に全て終わったことに歓喜の雄たけびを上げる永井。その叫びが夜の浜辺にこだました。 449 :SIREN2:2008/05/06(火) 21 56 04 ID ud1aa8n60 特異点 鉄塔の崩壊により一樹、郁子、母胎は特異点へ飛ばされていた。特異点、それは全ての事象が起こりうる世界だった。 ゲームとしていえば全て終了条件2で終わった世界。無限の可能性の中で現世と虚無の区別のない世界だった。 その世界の空には赤い海があり、そこから母胎が顔を出していた。計画の破綻に激怒した母胎は一樹たちに襲い掛かる。 一樹たちも母胎との最後の決着をつけることになった。 一樹と郁子の協力の下でも母胎の力は強力で、一樹は弾き飛ばされてしまう。その際にポケットからかつて拾った、昔三上が埋めたメダルが零れ落ちる。そのメダルを辿って幼少の三上もこの特異点へ導かれた。さらにその三上を探して章子/加奈江も特異点へやってきた。三上を探す最中、加奈江は自身と母胎がかなりの精度でリンクしていることに気づいた。三上の肉体は母胎によって抑えられている。よってその肉体を解放するために加奈江は自傷する事によって母胎に強烈な痛手を与えることに成功した。 そのとき、一樹と郁子がここに来るまでに手に入れていた闇那其(あんなき)が輝きだし、石の刃物の様な形態になった。 その闇那其を母胎に振り下ろす郁子。すると今まで一度もさしたる痛手を受けたと見られなかった母胎がうめき声を上げ逃げ出した。 この闇那其には全てを無にしてしまう力(そして闇那其のみが残る世界を作る力)があったようだ。 そして一樹も母胎にその闇那其を叩き込んだ。強烈な断末魔を上げ息絶える母胎。決着に安堵する二人。がしかし母胎は最後の力を振り絞って再び赤い津波を呼び起こすのだった。 ENDING 三上脩&加奈江 赤い海の中パジャマを着た幼い三上を抱く加奈江。「おやすみ、脩。」 三上はそのまま瞳を閉じた。こうして加奈江と三上はともに赤い海(時空ののりしろ)の中静かに二人のときを過ごしていくのだった。 永井 堕彗児を倒したのもつかの間。赤い津波に飲み込まれる永井。その永井が飛ばされた世界は太陽に暗黒の影がかかり、 さも日食になったかの世界だった。浜辺には大量の闇人。この世界では闇人地上侵攻作戦が成功してしまったようだった。 この地上には人間は永井ただ一人、人間は伝説の怪物として恐れられていた。恐慌状態になる永井。 永井の姿に恐れおののく闇人を機関銃MINIMIで次々と銃殺していく。だがしかし現実世界に戻る術はあるのだろうか… 阿部&ツカサ やはり赤い津波に飲み込まれてしまった阿部とツカサであったが、辿りついた先は朝日の昇る穏やかな海岸道路だった。 その朝日を見つめながら、不意に全てが終わってしまったことに気づく阿部。この世界は闇霊屍霊がはじめから存在しない世界だった。 闇霊が存在しないため、母胎は存在せず、そして彼の愛した多河柳子もはじめから存在しなかった世界なのだった。 果てしない絶望感に苛まれただ滂沱と涙を流す阿部にツカサが寄り添った。彼女も自身が尽くしてきた飼い主の三上がいなくなってしまったのだ。そうして一匹と一人は互いに寄り添い朝日を見続けるのだった。 一樹&郁子 海岸で眼を覚ます一樹。朝日が昇っている。夜の世界が終わり現実に戻ってきたことを実感する一樹。 一樹と郁子が戻ってきた世界は唯一今までと同じ現実の世界だった。郁子が眼を覚ました。二人で朝日を見つめる。 穏やかな朝焼けの元満足げな一樹。その横で郁子は太陽の光を煩わしそうに睨み付けるのだった。 33 33 33 不死の肉体を持ち、異界の生物を殺しつくすうりえんを手にした異界ジェノサイダーとなった須田恭也は虚無の世界の夜見島に現れ、未だに生き残っていた闇霊闇人を殲滅する。その戦いに終わりはない。 450 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/06(火) 21 57 08 ID ud1aa8n60 終わり 前回の人の文章を読み込まずに見切り発車で書いてしまったので かぶっているところとかあったらゴメンなさい あとどこを補足したら良いかよくわかんなかったので補足した方が良いってところがあったら教えてください 451 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/06(火) 22 07 36 ID Z+mWvhJQ0 乙です 一樹&郁子のEDの時間の表示に関しても何かあれば… 452 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/06(火) 22 14 03 ID ud1aa8n60 えっと 一樹&郁子 24 44 44 永井 24 32 22 阿部&ツカサ 24 45 55 です 460 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/07(水) 21 10 27 ID seoCvCyQ0 446-450 リクした者ですが、乙です。 ありがとうございました。 で、 >ゲームとしていえば全て終了条件2で終わった世界。 の“終了条件”の意味を教えてほしいのですが…… 461 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/07(水) 21 16 23 ID iYvEONq50 460 終了条件はSIREN中のステージを攻略するための条件で それが達成されるとステージがクリアとなる 終了条件には2種類あってまずそのステージがプレイ可能になると 出現するのが終了条件1 他のステージで何らかの行動を起こすことで プレイできるようになるのが終了条件2 こんな感じで良いのかな わからないところとかあれば補足するんで是非 463 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/07(水) 21 38 23 ID 4VBlsTvTO 登場人物達は閉じた世界である異界に 取り込まれているので、ループして同じ時間を繰り返してしまう。(終了条件1) しかし、それを打破するために各人が少しずつ 違う行動をとり、それらが積み重なることで新たな道が開ける。(終了条件2) 例えば、A地点からC地点へ到達が条件1とする。 このままでは世界は何も変わらないが、途中のB地点で鍵を 拾ったりすることで新たな展開がある。 はっきりいうと新シナリオを開くためのフラグ立ての作ぎょ(ry 464 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/07(水) 21 42 38 ID seoCvCyQ0 つまり、 終了条件1でゲームを進める→主人公たちは無限ループに陥り、その隙に世界が征服される 終了条件2でゲームを進める→ループ崩壊。ラスボスの元にたどり着ける ということで良いのですか? 465 :ゲーム好き名無しさん:2008/05/07(水) 21 56 45 ID iYvEONq50 無限ループは初代SIRENで SIREN2はパラレルワールドの世界だった気がする 無限にある可能性の世界の中で終了条件2を 達成した世界だけエンディングにたどり着けた みたいな感じの
https://w.atwiki.jp/orirowaz/pages/400.html
『農家の宇野さんから助けを求められました。 これから月影さんと恵子ちゃんの3人で宇野さんの家に向かいます。 みんなはこの家で待機していて下さい。 はすみ』 『地下室で何者かに恵子ちゃんが地下で殺されました。 恵子ちゃんを殺した人に月影さんとはすみさんも連れ去らわれたかもしれないので助けに向かいます。 それから勝子さん達が鈴菜さん達を助けに向かっている間に会議で話したヒグマに襲撃されました。 ワニとクマが合体したみたいな化け物で、はすみさんが言うには怪異らしいです。 遭遇したら後ずさりしながら目線を外さず、 刺激しないように逃げてください。 もし夕方までに私達が戻らなかったら、後はそっちの判断で行動して ひなた うさぎ』 「誰もいないと思ったら、こういうことか」 数時間前までは想い人を含む正常完全者の拠点となっていた袴田伴次の住居、その地下室にて。 虎尾茶子は床に敷かれた布団に横たわる、顔に白布を被せられたもの――字蔵恵子の遺骸の前で独り言ちた。 茶子は自分と同じ境遇の少女――リンを伴って山折神社から南下して、正常感染者の集う袴田伴次の一軒家へ向かった。 事態を収束するためには手足が足りない。己の手駒を増やす算段で訪れたのだが、袴田邸はもぬけの殻であった。 落胆しつつも居間へと向かうと、テーブルには一枚の書き置き。 A4サイズのコピー用紙の上段に書き記された文章ははすみの文字。品行方正の彼女らしい綺麗な字で書かれていた。 下段に書き殴られた文章は荒い筆跡。最後の一文に至っては蚯蚓ののたくった様な字で丁寧語すらつけ忘れている。 茶子の知るうさぎは姉のはすみと同様に達筆なため、ひなたが書き記したものだろう。 一先ず袴田邸を捜索することにし、リンに一階の探索をお願いして、茶子は書き置きの真偽を確かめるべく袴田邸の地下へと降りた。 そしてひなたの書き置き通り、恵子の亡骸が置かれていた。 (字蔵恵子の首筋には二つの穴。連続婦女殺人事件と穴の大きさは違うけど、無関係とは思えないな) 顔の布は取らずに死体を検分する。服から覗く皮膚はツマミのビーフジャーキーのように干からびており、死因は明らかだ。 袴田邸に滞在していた面子の異能は天宝寺アニカの言葉通りだろう。あの幼女は兎も角、愛しの彼が自分を謀るとは思えない。 『まず自分を疑え。Ms.Darjeeling、妄信は真実を求める妨げになります』 資材管理棟にて未名崎錬が茶子に面と向かって伝えた言葉を思い出す。 『そんな目をしたお前が言うセリフか?』と内心でせせら笑いながらも、その言葉自体には茶子も思うところがあった。 感染者の異能についてはあくまでそれぞれの自己宣告だ。天才とはいえお眠のお子様では見落としていた部分もある筈。 物的証拠、状況証拠、山折村で女性ばかりを狙う吸血鬼の噂。情報を統括・整理し、解を導き出す。 (犯人は彼奴だろ、月影夜帳) あっさりと辿り着く。情報を与えればアニカならば瞬きの間に、哉太ならば自分と同等の時間で辿り着くだろう答え。 月影の異能は恐怖を感じた対象を硬直させる『威圧』。だが、所詮彼の自己申告に過ぎない。 「私は人畜無害ですよ」などとほざいてアリバイを露見させ、本質を隠すことは徹底的に情報を隠匿してきた茶子も現在に至るまで行ってきた。 月影と同じ穴の狢だからこそ、彼と同様の結論になる。 「殺そ」 「ジュースでも買おう」というような気軽さで容疑者の死刑が確定された。 殺人鬼のように衝動で殺すのではなく、師のように理性的かつ自然に殺害を選択できる。 それが茶子の異常性の一つ。 茶子の推測が事実ならば身体能力の他に遠距離から金田一勝子を切り裂いた藤次郎のように『威圧』以外にも複数の能力を内包した異能の可能性が高い。 だとするならば、哉太とアニカ以外のメンバーを異能によって洗脳し、集団で恵子を殺害したとも結論付けられる。 「はすみ達も殺さなきゃいけないのか~。あ―最悪」 大きく溜め息をついて座り込む。茶子の眼下には物言わぬ少女の死体。端では手足を拘束された袴田伴次のゾンビが芋虫のようにもぞもぞと動いている。 それらに冷たい視線をくれながら、ショートパンツのポケットからシールで可愛らしくデコレーションされた黄色のスマートフォンを取り出す。 これは交番と高級住宅街を挟まれた道路で見つけた――茶子は知る由もないが気喪杉禿夫とひなたらの戦闘の余波で飛ばされた――スマートフォン。 「さて、美少女探偵サマはどんな情報を持ってるのかな?」 ◆ 初夏の日差しが築かれた屍山血河に渇きをもたらし、這い出る蟲が死肉を貪り飢えを満たす。 地獄を作り出したのは特殊部隊か、はたまた狂気と我欲に狩られて血に酔った殺戮者共か。 大田原源一郎は前者であり、独眼熊は後者である。 疾走する大田原の前方には小柄な薄汚れた少女の姿――手には猟銃を構え、背中からは鋭い鉤爪が五本生えた腕。 その傍らにはアリゲーターとグリズリーの特性を併せ持ったかのような巨体。 ゴーグル型の最新機器――スカイスカウターに映る色は少女が赤、巨体の怪物が青。 巨体の怪物が紛い物、少女の姿をしたモノが数時間前に自身を襲った怪物だと確信。 全身の血が滾る。屈辱の記憶が憤怒を呼び起こして熱となり、ひび割れた鋼鉄の如き理性を加熱する。 大田原に植え付けられた異能――『餓鬼』が発動する。副次効果である身体能力の効果が適用され、脚力が向上。 「フッ……!」 時速にしておよそ100キロ以上。この地に根を下ろすヒグマどころか自動車の最高速度にも匹敵する。 「ハッ!かつての我と同じ愚を犯すか!」 嘲笑と共に猟銃を構えようとして、止めた。同時に蠍のように背中から生えた剛腕が根本から180度回転し、地に爪を突き刺して掴む。 少女の矮躯が剛腕と共に浮かび上がると同時に4発の銃声。少女の頭と胸があったあたりに銃弾が通り過ぎた。 地を見下ろすと、独眼熊本来の姿の分身体が蜃気楼のように消え始めているのを目視した。 コンマ数秒ほどの完全な無防備状態。その隙を縫うように射程範囲に入った大男の両手に構えた拳銃が火を噴く。 頭・心臓・両手両足関節狙いの計六発。急所を防いでも次の行動を阻害するための射撃。 しかし、その銃弾が少女の身体に命中することはなかった。 届く数メートル前。どこからか飛来した「何か」によって遮られ、パラベラム弾が標的を撃ち抜くことはなかった。 がシャンと何かが破壊される音が大田原の耳朶を打つ。標的の落下先を確認する刹那、大田原は破壊した物体を確認する。 (これは!?) 飛来した謎の物体の正体は二本の懐中電灯。本来の持ち主である気喪杉禿夫が手拭いで頭に巻き付けていた物体。 どこからか飛来したそれが銃弾の軌道を逸らし、独眼熊の命を繋いだのである。 大田原は視線を動かして懐中電灯が飛んできた方向を確認する。十時の方向の草むらに伏せた何者かの影が一つ。 怨敵たる怪物がこちらに銃口を向けていることに注視しながら、地に伏せた影にに向かい、引き金を引く。 タン、と短い音が草原に響く。杜撰な隠伏をする何者かは大田原の銃弾を受けると衝撃で仰向けに倒れ、その姿を露わにする。 その正体を確認する直前、向けられていた怪物の銃口が大田原の頭蓋目掛けて放たれた。 狙いは数時間前の素人同然の狙撃とは違い、大田原の命を刈り取るように正確な狙撃。 『まるで熟練の猟師の記憶を思い出したかのように』 それを10時の方向へ――己が撃ち抜いた老人を飛び越える形で――回避。 老人の真上を通り過ぎる寸前、装着したサーモグラフィカメラで彼を確認すると、その身体は青く光っていた。 弾丸の命中先は老人の鼻先。脳には到達していないにも関わらず、スーツ姿の老人は身体の動きをピタリと止めていた。 着地と同時に一発、二発と老人の頭に向けて引き金を引く。短い音が草原に響き、老人の痩躯がビクビクと跳ねる。 三発目の銃弾が彼の脳をかき乱すと老人の姿は皮だけとなり、スーツごとぐずぐずと溶け出し、地面と一体化し始めた。 「ばあ」 老人を撃ち抜いた直後、土汚れだらけの少女の顔が大田原の眼前に迫ってきた。 もう片方の拳銃の引き金を引く刹那、小さな少女の両手が大田原のこめかみに当てられる。 銃口から弾丸が吐き出される。少女の脳天に直撃する寸前、大田原の顔面から何かを引き剥がされる感覚と同時に両肩に衝撃が走る。 水切りのように大田原の巨体が草原を滑る。拳銃を両手に持ったまま両手の親指だけで身体を止め、腹筋に力を入れて飛び起きる。 「これが眼鏡という奴か?」 人工音声とも獣の声とも呼べるような声が聞こえる。 人の皮を被った怪物の手には大田原が要請した物質の一つ、スカイスカウター。偽物と本物を見分けるゴーグル型の赤外線カメラ。 独眼熊対策に使用していたそれを、怪物は嗤いながら握りつぶした。 ◆ ―――――――――――――――――――― [Kanata Yanagi] [202X年 XX月XX日] [XX XX][挨拶スタンプ] [XX XX][写真] [XX XX][明日の13 00にTV shootでRestaurant reviewをするの!] [XX XX][場所は渋谷よ!仕事終わりに奢ってあげるから来て!] [XX XX][既読][謝罪するスタンプ] [XX XX][既読][わり。その日コラボカフェの予約入ってんだよ] [XX XX][ショックを受けてるスタンプ] [XX XX][What about other days?] [XX XX][既読][首を振るスタンプ] [XX XX][既読][季節メニューを全制覇しないと作品のファンを名乗れない] [XX XX][いじけるスタンプ] [XX XX][You refuse a girl's invitation, so you Now that you're a high school student, you can't get a girlfriend.] [XX XX][それにセンスは絶望的だし] [XX XX][既読][センス関係あるのかよ] [XX XX][既読][それに俺は彼女を作れないんじゃなくて作らないんだよ] [XX XX][煽りスタンプ] [XX XX][煽りスタンプ] [XX XX][煽りスタンプ] [XX XX][煽りスタンプ] [XX XX][煽りスタンプ] [XX XX][既読][落ち込みスタンプ] [XX XX][既読][アニカ、もしかして俺の事嫌い?] [XX XX][慰めスタンプ] ――――――――――――――――――――――――――― 「…………チッ」 ――――――――――――――――――――――――――― [Kazuo Kujo] [202X年 XX月XX日] [XX XX][既読][挨拶スタンプ] [XX XX][既読][天宝寺、隣のクラスの七紙光太郎が入院したの知ってる?] [XX XX][First time hearing.] [XX XX][既読][疑問スタンプ] [XX XX][既読][First time hearing←どういう意味?] [XX XX][初耳って意味よ] [XX XX][既読][英語キャラやめてくれない?帰国子女のお前と違って英語分らないし。友達減るぞ] [XX XX][明日はロケとかないからお見舞いに行くわ。コウタロウの入院先はどこ?] [XX XX][既読][既読スルーかよ。××病院。昏睡状態になっている] [XX XX][何があったの?] [XX XX][集団幻覚ね。旧校舎の建築に有害物質が使われていた可能性が高いわ] [XX XX][それに「七不思議のナナシ」「怪談使い」って何? 下らない妄想で彼を寄ってたかって悪者にするのはいじめよ] [XX XX][既読][んな下らないことするかよ。少なくともおれらは今でもナナシのこと友達だと思ってるんだぜ] [XX XX][既読][それで折り入って頼みがあるんだが、「怪談使い」についてお前のツテで調べてくれない?] [XX XX][既読][頼み込むスタンプ] [XX XX][OK.一学期が始まるまでに旧校舎の建築工事の調査とコウタロウの身辺調査のついでに調べておくわ] [XX XX][既読][怪談使いの優先度低くない?] [XX XX][当たり前じゃない。オカルトなんて立証されないものを信じるなんてできないわ] [202X年 XX月XX日] [XX XX][色々と調べ終わったわ] [XX XX][既読][驚いたスタンプ] [XX XX][既読][すげー早いな。まだ一学期始まってないぞ] [XX XX][コウタロウの人間関係について調べてみたけどいじめの事実はなかったわ] [XX XX][本人からも事情を聞いてみたけど、「僕が悪かった」ってしきりにカズオ達に謝っていた] [XX XX][アナタ達がいじめをしたんだと疑ってごめんなさい、カズオ] [XX XX][既読][驚いたスタンプ] [XX XX][既読][ナナシの奴、いつ起きたんだ? 後遺症なかったか?] [XX XX][今日の夕方に目覚めたって。後遺症はなし。至って健康体だってお医者様が言ってたわ] [XX XX][既読][ほっとしたスタンプ] [XX XX][既読][良かった。天宝寺、お前普通に謝れるんだな] [XX XX][当たり前でしょ。こっちに非があるんだし。私の事何だと思っているの?] [XX XX][既読][正論パンチで叩き潰してくる血も涙もない女] [XX XX][既読][既読スルーかよ] [XX XX][アナタの言っていた「怪談使い」についても分かったことがあるの。私は信じてないけどね] [XX XX][既読][頭を下げるスタンプ] [XX XX][既読][さんきゅ。どこで分かったんだ?] [XX XX][去年の都市伝説検証番組で共演した著名なオカルト研究家達に話を聞いたのよ。それで丸二日潰れたわ] [XX XX][明日怪談使いについて話すから15 00に××病院のカフェテリアで待ってる。カズオと一緒に集団幻覚を見た人達を集めてきて] [XX XX][既読][明後日始業式だから学校で話した方が良くないか?] [XX XX][コウタロウは明後日まで検査入院なの。彼、始業式に間に合わないみたいだし、わだかまりは早いうちに解いておいた方がいいでしょ] [XX XX][既読][サムズアップするスタンプ] [XX XX][既読][おけ。それじゃまた明日] [XX XX][また明日] ――――――――――――――――――― 談使い。 それは茶子が未来人類研究所とのコネクションを持つ前――先代蛇茨当主にスカウトされて村の暗黒に足を踏み入れたばかりの頃に知った伝承。 名称と出自以外の情報は現代に至るまで詳細が一切伏せられていたアンノウン。 「歪み」を藤次郎以上に知り尽くしていた茶子ですらも真相を知らず、生物災害が発生するまでは眉唾と軽んじていた存在。 山折の地に根付いた土着信仰の付属品程度の認識しかしてなかったものが、ここにきて重要なファクターへと変貌した。 (…………あの幼女、ギャン泣きするまでいびっときゃ良かった) 哉太とのLINE上のやり取りを思い出し、茶子は密かに八つ当たりに近い苛立ちを募らせる。 「怪談使い」について情報を聞き出せなかったこちらに非があるのだが、それとは無関係に自称パートナーの卑しい探偵少女に腹が立った。 茶子の感情はともかく、天宝寺アニカの利用価値が跳ねあがったのは事実だ。 手元にある「降臨伝説」の事実が記された羊皮紙写本。アニカが調べた「怪談使い」の情報。 まだこちらで詰められる情報があるが、この二つが山折村を襲った生物災害、ひいては研究所の目的と無関係とは思えない。 もし「降臨伝説」が真実であるのならば。もし「怪談使い」が実在していたのならば。 「―――――世界が変わるな」 ◆ 大田原源一郎は怪物の本体と分身の区別には時間が必要。 独眼熊は異能による分身の再召喚のためにはクールタイムを要し、同じく時間が必要。 奇しくも現状は拮抗を保っており、差をつける要素は異能と経験、判断力。 大田原は異能による肉体ブーストとSSOGで培った経験と判断力で、独眼熊は数多の異能と獣としての特性によって渡り合っていた。 閑散としていた草原はところどころ地面がめくれ、両者が雑草と共に踏み潰した小動物が辺りに散らばっている。 かのような有様故、小競り合いをしていた怪物と歴戦の勇士は二者とも肉体は一見無傷でありながら、そうではなかった。 大田原は独眼熊により防護服のところどころに裂傷を負い、骨折や削げ落ちた耳と共に異能による修復が現在進行形で行われている。 独眼熊は大田原により纏ったクマカイの皮や背中に生えた腕に銃創を負い、皮を含めて修復するための『肉体変化』により、己の血肉がキロ単位で使用されている。 遮蔽物のない平野において、短期決戦であれば大田原源一郎に、長期決戦になれば独眼熊に軍配が上がる。 大田原は高速で走り回る少女へ向けて銃弾を放つ。幾度となく行った牽制と急所狙いの両方を兼ねた銃撃。 この戦いにおいて幾度となく独眼熊の肉体を抉ってきた弾丸。怪物の癖も掴み始め、あと何度か同じことを繰り返せば確実に急所を狙い撃つであろう鉛玉。 急所は確実に防がれるにしても今回も少女の下に隠されている悍ましき肉体を抉れるであろうその銃弾を――。 「阿呆」 その言葉と同時にカン、カン、カンと鉄に弾かれる金属音が鳴り響く。 独眼熊の手に分厚いマンホールの金属蓋。それを円盾のように構えていた。 歴戦の勇士は見ていた。コンマ一秒にも満たない銃口を獲物に向ける刹那の瞬間。 怪物は足元に置いてあったマンホールの蓋を蹴り上げ、飛来する銃弾を防いでいた。 思えば戦闘の最中、独眼熊がしきりに捲れ上がった地面を気にしていた。 ほんの少し地面に注意を向ければ戦闘区域にいつの間にか穴が開いている。 独眼熊の行動を掴みかけたと思い込んでいた時から、ダメージを受けるのも厭わずに新たな防具を得るチャンスを伺ってきたのか。 もしそれが偶然ではなく意図的であるとしたらまるで未来予知をしていたかのようだ。 弾丸を防いだ直後、怪物は手に持った円盾の淵を掴むとフリスビーの要領で大田原に投擲。 新たな防具を得た瞬間の短絡的な行動。何故そんな事を?知恵を得た怪物とは思えぬほど短絡的な行動に大田原の頭に疑問符が浮かぶ。 しかし、怪物の愚行は今まで攻めあぐねていた歴戦の勇士にとって千載一遇の好機であった。 身を屈めて地滑りのように疾走する。『餓鬼』の身体能力ブーストの効果でその速度はヒグマの最大速度の二倍にも匹敵する。 フリスビーのように投げられた鉄蓋が大田原の頭上を通過する。 怪物が反応する前に大田原の巨体がクマカイの皮を被った独眼熊の小柄な体へ激突する。 「かふっ」という空気が吐き出される音を頭上から聞きながら、怪物の下腹部を掴んでそのまま背後――診療所の外壁へと諸共突っ込んだ。 その矮躯を離さぬまま、コンクリートの壁をぶち破り、瓦礫だらけの室内――美羽風雅が破壊し尽くしたリハビリ棟の放送室へと突入した。 その勢いのまま、少女を床へと押し倒す。強面の大男と小柄な少女。一見すると犯罪的な絵面だが本人達は真剣そのものだ。 確実に止めを刺すべく、大田原は独眼熊の小柄な体を拘束する。 血走った眼で薄ら笑いを浮かべている少女を睨みつけ、その額へと撃ち抜くべく銃口を向けた瞬間―― 「我の手が三本だけかと思ったか?」 腹部に衝撃が走り、大田原の巨体が凄まじい速さで浮き上がる。 勢いは天井にぶつかると止まり、そのまま地面に叩きつけられた。 息を整える間もなく、倒れ伏した大田原に猟銃が向けられる。 急ぎ横に転がってショットシェルを回避する。 起き上がり、前回の対峙のような愚を犯さずに手を離さずに持っていた双銃を構える。 「では第二ラウンドだ、小僧。せいぜいあがけ」 腹から太い男の腕を生やした少女が、逆再生のようにその腕を身体に戻して勇士へと嗤いかける。 ◆ 「これは……随分とたくさん見つけたのね……」 「そうでしょそうでしょ♪テーブルのしたとかほんがいっぱいあるおへやがらあつめたの!こんなにみつけてえらいでしょ♪」 袴田邸一階の居間。乾パンの缶詰やサラダ油、十徳ナイフや図鑑など子供視点で役に立ちそうなものがテーブルに所狭しと並べられている。 ほんの少し顔を引き攣らせて笑う茶子にTシャツと短パン姿の少女――リンは薄い胸を張った。 きっと自分に褒められたくて張りきったのだろう。視野の狭い幼子に品物のランク付けは難しかったか。 「こんなに頑張ってくれたのは嬉しいけど、全部持っていけそうにないわ。リンちゃん、ごめんね」 「ええ……そんなぁ……」 「全部持っていくとお姉ちゃんのリュックがパンパンになっちゃう。リンちゃんの鞄に入れようとするとお姉ちゃんの作ったサンドイッチがぺちゃんこになるかも。 だから、持っていくものをお姉ちゃんに選ばせて。お願い……ね?」 「むぅー……わかった」 しゃがみ込んでリンと目線を合わせる。そして両手を合わせて「お願い」のポーズを取ると、リンは渋々といった感じで了承した。 リンの許可を得た茶子はテーブルに乗った数々の品物を一つ一つ丁寧に検品し、仕分けを行う。 作業自体はすぐ終わり、テーブルに乗せられたアイテムは七つ。 うさぎの字で書き記された護符五枚――アニカから借りパクした包帯と同じと感じた――とモバイルバッテリー、袴田伴次のスマートフォン。 ノートパソコンもあったのだが、地震の影響で内部のマザーボードが壊れたらしく電源ボタンを押しても動くことはなかった。 「書いてた原稿が地震でパーになったなら発狂モンだな」と苦笑しつつも「不要」と判断して仕分けた。 「リンがあつめたもの、こんなにすくなくなっちゃった……」 「ごめんね、リンちゃん。でも、お姉ちゃんとっても助かった」 お礼とばかりにぎゅっとリンを抱きしめる。リンは少し驚いた顔をしたが、すぐに「えへへ」と気恥ずかしそうに笑った。 「チャコおねえちゃん、ごほうびにさっきのおはなしのつづきききたいなあ」 「お話って、巫女さんと陰陽師さんの物語?」 「うん!」 「どこまで話したっけ?」 「とってもつよいみこさんがかっこいいおんみょうじさんにであったところまで!」 「そっかぁ……お姉ちゃん、お話の続きまだ考えてないんだ」 「えぇー!なんで?」 「このお話はお姉ちゃんが即興で考えたものなの。続きはもうちょっとだけ待って?」 「その代わりに」と言葉を続け、茶子は傍らにあったリンのメッセンジャーバッグから化粧品を取り出して笑いかける。 「リンちゃんが可愛くなるようにお化粧してあげるわ。準備に少し時間がかかるからお庭で見張りをしてくれるとお姉ちゃん嬉しいな」 ◆ 「くひひひひひッ!!」 山折総合診療所のロビーにけたたましい雑音が木霊する。 ビニル床にはところどころ乾き始めた赤黒い血の跡が残り、髪の毛の塊や噛み千切られた指があらゆる場所に散らばっている。 雑音の主は少女の姿をした怪物。五本の刃が並ぶ尾を振りかざしながら縦横無尽に走り回る。 それを追走するのは人間型秩序装置である大田原源一郎。 彼も怪物に負けず劣らずの速度で追いかけ、両手の拳銃で子供へ狙いを定めようとするも――。 「――ッ!」 巨漢の眼前にソファーが凄まじい速度で投げ出され、視界を覆われる。 すぐさま回避し、幾度となく姿を眩ませた小柄な身体を探すべく視線を動かす。 直後、頭上から大きな長方形の影。見上げると白いシーツ――跳躍して診察室のベッドを振りかぶった独眼熊の矮躯が映る。 脳天に叩きつけられる寸前、大田原は独眼熊の方へと飛び込む。 頭上に映る一糸纏わぬ少女の姿。空中で身体を捩り、手に持つ二丁の拳銃で脳と心臓を牽制を交えて銃弾を放つ。 だが、背中から生えた腕がゴムのように伸びて振り下ろされたベッドのヘッドボードを掴む。 地面にぶつかる寸前で腕は一気に縮み、その勢いのまま前方へと少女の身体が前方へと発射される。 放たれた銃弾は天井からぶら下がる電灯を砕き、大田原の頭上からガラスの雨を降らせた。 怪物はくるくると宙を回りながら体勢を整え、大田原の方へと向き直り、人間の悪意を煮詰めたような嘲笑を向けた。 第二ラウンド――誘い込まれた診療所内での戦闘。 遮蔽物や小道具が多く存在する室内での戦況は怪物側に有利に傾いていた。 独眼熊が大田原に対する有効打は数あれど、独眼熊の攻撃手段は手元にあるに腸の拳銃のみ。 自動小銃などの威力の高い銃では弾数自体は多いものの、野猿のように小回りが聞く怪物との戦いには懐に入られてしまえば使い物にならなくなるだろう。 選択した支援物資に間違いはなかったと思える。しかし、有効打にはなりえるものの確実に排除できる手段とは言えない。 (あの怪物を確実に駆除するためには俺一人では困難だ。敵の強さは低く見積もっても俺と美羽、成田の連携でようやく互角といったところだろう) 吉田無量対数より授かった『最強』の称号。人間の極致ともいえる力をあの怪物は容赦なく踏み躙り、凌駕する。 己の傲慢に今一度腹が立つも、鉄の理性で無理やり抑え込んで頭を冷却する。 素の己ならば進化した怪物に成すすべもなく殺される。だが、現在の大田原には怪物に対抗できる手札がある。 異能『餓鬼』。際限なく湧き上がる飢餓感と引き換えに肉体再生能力と身体能力強化の恩恵を得ることができる。 現状こそ劣勢であるが、怪物と戦えている。それにいざとなれば己の命諸共怪物を焼き尽くす最終手段がある。 己の死地はここにあり。護国奉仕の勇士は己が命ごと怪物を燃やし尽くす事を決意する。 ひび割れた脳を酷使し、異能の発動を確認。 魂の底から溢れ出す飢餓感を使命感で抑えつけ、駆け回る怪物へと肉薄する。 眼前には中学生ほどの少女の顔。瞬く間に接近した巨漢にほんの僅かだけ目を見開く。 両手の拳銃では引き金を引く前に腕を搗ち上げられ、強烈なカウンターを喰らうと瞬時に判断。 故に手段は一つ。 「―――ガッ!」 勢いはそのままに怪物の小さな肉体に突進をぶちかます。 ベキリと音が響き、質量保存の法則を無視して皮に詰め込まれた軽量の肉体は一気に怪談側へと吹き飛ばされれう。 矮躯は階段の凹凸を砕いて停止した後、すぐにこちらの方へと視線を向けて疾走する。 だが遅い。独眼熊の行動パターンは読めた。八艘飛びのっようにこちらを翻弄しようとする直前に両足の関節を撃ち抜く。 高速で飛び回ろうとしていた少女の身体がビニル床に落下する。地につく間の数舜。その刹那に頭に狙いを定めて引き金を引いた。 短い音が何度も響く。奴を守る遮蔽物も投擲する小道具もない確殺の銃撃。しかし――。 歴戦の勇士と悍ましき怪物の間には巨大な瓦礫が落ちてきた。鉛玉はコンクリートを砕くことはなく、怪物の新たな盾となった。 見ると独眼熊の尻尾は変化しており。五本の指は天へと伸びる一本の腕に変わり、爪にあたる部分は収束し、長く頑強で鋭い刃へと変化していた。 天井の壁は歪な三角形の穴が開いており、そのいびつな形のまま落ちてきたのである。 瓦礫の隙間から悪意に満ちた笑顔を覗かせる。その直後、独眼熊は歪な尻尾を振り回しながら周囲を駆け回った。 一刻も経たぬうちに天井から瓦礫が落下する。瓦礫の他にベッドやロッカーなどが大田原へと降り注いできた。 轟音が轟く。頭を守るガスマスクがなくとも、100キロを優に超えるコンクリート片が頭にぶつかればそれで一巻の終わり。 最短経路を瞬時に見つけ出し、落下する瓦礫の隙間を縫うように疾走する。 瓦礫の迷路を抜け出す寸前、肌を突き刺すような殺気。視線を向けると猟銃の銃口が狙いを定めていた。 放たれる獣狩りの鉛玉。身を翻し、堕ちてくる瓦礫を盾に銃弾を防ぐ。 瓦礫が落ち切ったロビーに静寂が広がる。落石地獄から抜け出した大田原は怪物の行方を探す。 ほんの数舜、怪物は猟銃を手に取ったまま大田原へと突撃してくる。 今のこの刹那に限り、怪物の周りには遮蔽物が存在せず、突撃の勢いから判断するに突発的な攻撃に回避は困難だと推測。 少女はこちらに向けショットガンの引き金を引くも、カチカチと無情な音が響く。 眼を大きく見開く少女。戦闘開始以降、大田原は怪物の再装填と射撃を正確にカウントしていた。 ひたすら待ち続け、遂に現れた最大のチャンス。リロードには明確な隙ができる。 接近して肉弾戦に及ぼうとしても、奴の拳が大田原の頭蓋を砕くより大田原の指が引き金を引く方が圧倒的に早い。 銃口を少女の頭に向け、引き金を引いた瞬間――。 カチカチと弾切れを占める無情な音が手に持つ二丁の拳銃より響いた。 脳に受けたダメージ。理性で抑えつけた飢餓感。今まで経験したことのない異形相手の戦闘。その対応への適応。その他諸々。 数多の要因が重なり、普段の大田原源一郎では決して起こり得ない致命的なミスが起きてしまった。 何よりも問題になったのは脳のダメージ。素人が精密機械を弄った結果、壊れたように最高のタイミングで最悪の事象が発生した。 己を殺しかねない鉛玉が発射されないと知るや否や、独眼熊は瞬時に大田原へと接近する。 振りかぶられる武器はつい先程まで愛用していた猟銃。大田原の脇腹へと食い込み、構成された部品を床に散らばす。 「ガハ……!」 血反吐をまき散らしながら、大田原の巨体が床を転がる。 咳き込んで下を向いた巨漢の髪を掴み上げ、少女は心底つまらなそうな表情を浮かべる。 「これでは先程の焼き回しではないか。何も学習せんな、貴様は」 ◆ 「……見たことある情報(ネタ)ばっかだな。袴田センセも頑張って調べたんだろうけど、惜しかったね」 スマートフォンの画面をスクロールさせながら茶子は落胆の声を漏らし、少しだけ肩を落とした。 テーブルには子供でも可愛らしく化粧できそうな厳選したメイク道具の数々。既にリンへのご褒美の準備は整えてある。 茶子の目的は家探しして見つけてくれた家主のスマートフォン。リンが集めてくれたアイテムの中で特に利用価値が高いと踏んでいた。 ネタ探しで山折村中を駆け回っていた彼ならば、予想外の情報を持ってきた天宝寺アニカや地下研究施設の脱出口を発見した日野珠のように、何かの偶然で情報を掴んでいるのかもしれない。 そう踏んだ茶子は、じゃれついてくるリンに多少の申し訳なさを感じながらも次なる情報源を調べるため、適当な言い訳をして場を離れてもらった。 朝景礼治に飼育された彼女の無邪気は、使い方を間違えればこちらを殺す劇物になり得る。 それに茶子個人としても、できる限り過去の己の姿である彼女の心を無闇矢鱈に傷つけたくないのも大きい。 そんな思惑で居間で胡坐をかいて袴田伴次の個人情報を覗いた訳だが、出てくるネタはどれも既視感のある情ものばかり。 興味のないものには一切目を向けない偏屈小説家の人間性が現れたといえばそれまでであり、不本意ながらも納得するしかなかった。 保存されたテキストドキュメントのリスト。 和風ホラー作品が作れしまいそうな山折村の過去の風土病や廃れた因習。 脚色して設定をエベレストの如く盛りに盛れば阿呆の閻魔を主役にできそうなクライムサスペンス小説を執筆できるようにまとめられた木更津組の経歴と裏事情。 神楽総一郎を取材している中で思いついたのであろう、山折神社の伝説をモチーフにした袴田解釈「降臨伝説」のためにまとめられた参考資料―――。 「ん?ちょっと待て」 流し読みし、下へ下へと画面をスクロールさせていた指が止まる。 「降臨伝説」というキーワードで検索を掛けると、あやうく見逃しそうになっていたテキストドキュメントのタイトルが表示された。 書き置きにあったワニとクマの合成獣や異能を使う人間が現れた現状だからこそ、天宝寺アニカの調べた「怪談使い」やそれに連なる「降臨伝説」の情報を見落とす訳にはいかない。 「ヤマオリ・レポート」に書き記されていた死者蘇生の実験や異世界の研究の情報が思わぬところから繋がっているのかもしれない。 一切の躊躇いを持たず研究所関係者は画面をタップした。 ◆ ミ‶ーッ……ミ‶ーッ。 「あ"っづー。なァんであたらしは中坊ん時の課題をもう一度やらされるんすかねェ。クッソめんどい」 「そんな事言わないの。先生達も何かの考えがあったと思うわ~。例えばもっと山折村の事を知って好きになって欲しいとかね~。 それに今回はグループで取り組んでOKらしいからちょっと新鮮みがあっていいんじゃない~?」 「ンな事言ってもさぁ、暗にクオリティ高いもん作れって言われれる様なもんだと思うんすけど。 [テーマ絞って山折村についてのレポート書け]って手垢ベタベタの課題やらされるこっちの身になれってんだ。 どうせ郷田の親父あたりの入れ知恵で村長殿がねじ込んだんだろ」 「茶子ったら、またそんなこと言って~。でも確かにその線はありそうね~。 剛一郎おじさん、村長や総一郎おじさんと幼馴染の親友みたいだしあの人の意見を積極的に取り入れているかもね~。 そろそろお喋りはやめて課題の続きやりましょ~」 「そだな。テーマは山折神社の歴史で決まったし、後は資料を「お姉ちゃ~ん、ただいま~」お。うさぎが帰ってきたか」 「お腹すいた~。お姉ちゃん、お昼ご飯は……あ、茶子ちゃん来てたんだ」 「うっす」 「おかえり~。茶子とは一緒に課題しましょうって約束してたのよ~」 「その通り。てかもう昼じゃん。そろそろ昼飯にしよーぜ」 「そうね~。お昼作るけど茶子も食べていくでしょ?二人とも何食べたい?」 「冷やし中華!」 「うさぎと同じで。あたしのはハム多めでお願いね」 「ヘェ、今は学校で山羊飼ってんだ。紙食わせた後、山羊汁にでもすんの?」 「そんなことしないよ~。山羊さん達には校庭とか広場の雑草を食べてもらってるの♪ 茶子ちゃんはお姉ちゃんと一緒に自由研究するんだよね。何やるの?」 「山折村を調べろって奴。あたしとはすみは山折神社についてレポート書くことになった。 うさぎも中学に上がったら同じ事やるだろうし、今のうちに何やるか目星つけといた方が楽になるよ」 「ふーん。私も手伝ってあげよっか?」 「いいよ、別に。どうせお子様の知ってることなんざたかが知れてる「ちょっと待ってて!うちの家系図持ってくるから!」聞いちゃいねえ……」 「…………初代宮司以外はものの見事に女ばっかだな。女系家系ってこと?」 「そうだよ。お父さんは外の神職関係の人だし、ウチは代々女の子が家を継いでるの」 「男は生まれなかったの?」 「うん。今までは結婚しても女の子一人しか授からなかったんだって。私が生まれた時は親戚一同で盛大に祝ったってお姉ちゃんが言ってた。 『呪いが解けた―』ってお父さんもお母さんも喜んでいたらしいけど、どう言う意味なんだろ?」 「身も蓋もない迷信だから気にする必要はないよ。医学が発展して遺伝的要因が解消されたんだろ。 お父さんとお母さんが頑張ればキミの弟ができるだろうさ」 「頑張る?何を?」 「あー、うさぎには早かったか。夜、お姉ちゃん辺りに聞いてみな」 二人とも~、お昼出来たわよ~。 「は~い、今行きま~す。茶子ちゃん、家系図本棚に片づけお願いね!」 「ったく、仕方ないな」 「ちゅるちゅる……ところで茶子ちゃん」 「何だい?」 「なんで時々「~っす」って喋り方になるの?」 「陸上部の女子マネやってるからそれが移った」 「茶子の家では岡山林業の人達が結構な頻度で集まるからね~。男の子っぽい口調もその影響かしら~」 「ま、そういうこと。高校では普通に女口調で通してるけどね」 「この間、茶子ちゃんが高校生のお兄さん達と下校しているの見たよ。あの人達も陸上部の人?」 「そうだよ。いざとなったら守ってもらえるようにしてるんだ」 「でも、茶子は強いんだからその必要はないんじゃない~?」 「ずるずる……う~ん、そうはいかないんだよなァ。村にはヤクザがいるだろ?あたしはまだまだ未完成だし、人集めて連れ去らわれないようにしてんだ」 「まるで経験があるみたいな言い方ね~。木更津のドラ息子にナンパでもされたことがあるの~?」 「そういうことにしておいて」 ◆ 結論から述べると袴田伴次のスマートフォンには真新しい情報は存在しなかった。 しかし山折神社の調査資料を読み進めていくうちに書き記された情報が呼び水となり、茶子の高校時代の夏季休暇の記憶が蘇らせた。 (あの頃は護衛代わりに部員連れ回してたな。沙門のクソ含めて丸ごとヤクザ共ぶち殺せるようになったからいらなくなったけど。 今は代わりに発情モンキーとか及川おばさんみたいなブス集めて合コンするようになったな。 媚びを売るチンパンジーや必死こいてバラエティ芸人やるブス共は見てて最高だね。超ウケるわ。 そいつらでしか補給できない栄養あるし、お酒を美味しく飲める) どこかの女子校生の未来予想図だろうか。性格の悪さ全開にした感傷にほんの少しだけ浸る茶子。その後、気を取り直してナップザックを漁る。 取り出した物は畳まれた和紙。神社に無断で拝借してきた犬山家の家系図――春姫かはすみが庫裏の本棚から宝具殿に移動させたのだろう。 手元に置いた年代物の古書を捲りながら、テーブルに広げた横広家系図と見比べる。 ――どこかおかしい。多くの闇をその目で見てきた茶子の直感が告げる。 家系図からは犬山家が室町時代から始まったことが読み取れ、それは写本にも書き記された隠山一族誕生の時期と一致している。 余談であるが、この羊皮紙写本がおよそ十世紀前――平安時代に書かれた物だと茶子は思っていたがそれは誤りであることに気づき、茶子は認識を改めた。 「隠山祈の弟が初代宮司なのは分かったけど、妹の記述が少なすぎるな。 疫病で死んでフェードアウトしたってことならそれくらい一行くらい書かれてもいいんじゃない?」 そう口に出すと途端に違和感が湧き上がる。だがそれだけだ。 推理と料理はよく似ている。 素材と調理器具が揃っていても肝心の料理人がいなければ調理はできない。 茶子が持つ物「降臨伝説の真実」を始めとした特殊調理食材の数々と22年の人生で闇を潜り抜けてきた中で身に着けた身に着けた知識。 だが、茶子は多少の『料理』は可能でもその道のプロではない。 ここで打ち止めだ。フゥと一息ついた後、手元に置いた袴田のスマートフォンで時間を確認する。 リンを送り出してからおよそ10分程度経過。長すぎず短すぎず、怪しまれない程度には丁度良い塩梅だ。 玄関口に立ち、リンを呼ぶために声を張り上げようとした瞬間、茶子の脳裏に過る一つの疑問。 (犬山家が今まで女一人しか産まれなかったのなら、はすみとうさぎの二人が生まれた理由はなんだ?) ◆ 少女の姿をした怪物の殴打が続く。 その威力は数時間前に大田原を嬲った時よりも弱い。破壊するというよりも苦痛をもたらすためたけに嬲っているようにも思えるような攻撃。 しばらくして嬲っていた手を独眼熊は手を止める。歴戦の勇士の健闘に敬意を示したわけではない、ただ飽きたからやめただけである。 意識が朦朧としている巨漢の首っこを掴んで放り捨てる。 衝撃を受けてもSSOG最強は何の反応も示さない。 その無様な有様に少女は溜息をついた。 もう遊びは終わりだ。役目を果たせぬ狗などいらぬ。 幹部亡きまで大田原の肉体を破壊すべく緩やかな速度で倒れた巨漢に近づき、脳を磨り潰さんと拳を振り上げた瞬間――。 「―――ッ!?」 小さな拳が巨大な掌によって受け止められる。 あり得ぬ光景に独眼熊は目を見開き、振り解こうとするもがっちりと掴まれ、引き戻せない。 掴んだ手はそのまま、少女の矮躯が投げ飛ばされ、壁へと勢いよく激突する。 「ガッ――!!」 肺の空気が血と共に吐き出される。 体勢を整え、木偶人形になったとばかりと油断していた人間の姿を見る。 こちらへと明確に殺意を向けてくる巨漢。その目は先程の様な無機質な者ではない。 憤怒と狂気に満ちた男の目。追い込まれた手負いの獣の強く遅ましい眼であった。 ◆ ―――大田原一等陸曹!昇進おめでとう!貴殿の、新たな最強の、さらなる躍進を期待する! いつか聞いた、先代最強の言葉。その激励を踏み躙り、醜態を晒し続けた己。 彼は国を守護れと他ならぬ大田原源一郎に祈った。 幾度となく己の傲慢を打ち砕き、導いてきた男が才能以外空虚だった大田原源一郎に願った。 その男に応えるためにできることは、ここで何も成さずに朽ち果てることか? ――否、断じて否! 最早「最強」の称号は意味を為さず。その名を穢し尽くした己に名乗る価値は非ず。 為れば!その名を捨て、護国に仇為す兵器とあれ! 抑え込んでいた理性を狂気という熱で溶かし、本能を解放する。 昂っていた血が巡っていく感覚。霞んでいた視界がクリアになる。 ―――これより、正義を開始するッ!! ◆ 二者を除く、正者の存在しない閑散とした診療所内。そこで肉を叩き、骨を砕く鈍い音が何度も響く。 「オオオオオオオオオオオ!!!」 獣の如き雄叫びと共に大田原の鉄拳が幾度となく振るわれる。 拳が肉を打つたびに、対敵である少女の姿をした怪物が吹き飛び、宙を舞う。 猛攻に対して独眼熊は反撃を試みるものの、その全てが受け流され、カウンターとして打ち出された打撃が矮躯を打ち据える。 大田原源一郎の異能『餓鬼』。その能力は肉体再生に留まらず、身体能力の爆発的上昇も伴う。 強化された勇士の痛打・蹴撃は独眼熊の鱗の鎧を貫通し、内部の肉体へ骨とを確かなダメージを与え続けた。 今の大田原源一郎はSSOGでも護国の戦士でも非ず。ただ勝利(ちにく)に飢えた餓鬼畜生そのものである。 もう己に『最強』だの『SSOG』だのとほざく資格はない。己の命諸共怪物を殺す。。 誇りも想いも経験も何もかも全て焼き尽くして捨て去った今、残るのは極限まで鍛え上げた肉体のみ 充分だ。これほど心強いものはない。全ての大田原源一郎を以て、敵を討ち滅ぼす! 怪物の肉体がが再生する速度よりも重く早く、己の心と技を打ち込むのみ。 怪物は苦悶の声すら上げず、大田原の極限を受け続ける。 だが、その嵐の中にいながらも、独眼熊は己の急所――心臓と脳だけは守り続けていた。 「墳ッ!!!」 ふら付いてたたらを踏む少女の全身へ――急所を防ぐ手段をはぎ取るべく、技を放つ。 鉄山靠――八極拳における代表的な一撃――をその身に受けて独眼熊は宙を舞い、自ら生み出した瓦礫の山へと突っ込んだ。 これ以上、一切の行動を許してなるものか。 異能を使用し、脳に更なる肉体能力の向上を要求。その恩恵は空腹と共に訪れ、肉体に更なる強さをインプットさせた。 吹き飛んだ勢いは受付の壁にぶつかって漸く止まる。その直前、大田原は縮地術の如き疾走で独眼熊へと迫る。 思考・再起動の隙を許さぬまま、大田原源一郎は独眼熊の脳へ拳を振り下ろし――― ―――ゴキリと何かを砕く音によって激戦は終了した。 ◆ 出発準備を終えた茶子はリンの手を引き、多くの人間ドラマが生まれたであろう一軒家を後にする。 そこから向かった先は家から少し離れた場所にぽつんと佇むガレージ。 偏屈な小説家はここでも独特の感性を発揮させたのだろう。わざわざ遠い所に車庫を立てた意味に茶子は首を傾げていた。 白いハイエースの隣には茶子のスクーター。エンジンを吹かせる前にリンの小さな身体に補助ベルトを装着させる。 「チャコおねえちゃん♪リン、チャコおねえちゃんみたいにきれいになった?」 「ええ、とっても綺麗よ。リンちゃんは見事、もちもち肌のぷにぷにお姫様に変身したわ♪」 「きゃはははは♪くすぐった~い♪」 じゃれついてくるリンへのお返しとばかりに、彼女の柔らかい頬をもにもにと撫で回す。 戯れの後、役場へと続く塗装された道路へとスクーターを引いて進む。 アスファルトには幾つもの靴型の土汚れ――特に目立つのは草履とローファーがそれぞれ一足ずつ、スニーカー跡が二足――が南の方角へと続いていた。 茶子が知る限り、宇野性の住民は全員古民家群に集中しており、書き置きの宇野が宇野和義を指しているとしても行き先は同じ。 だが、月影らは哉太らが去ったタイミングを見計らって字蔵恵子を集団で殺害した可能性の高いグループである。 宇野さんとやらの救助要請とでっち上げ、次なる獲物を求めているのならば、行き先はもっと人の集まりそうな場所へと向かうだろう。 ここから近いのは、公民館や学校ほどではないが避難所として指定されていた役場。 目標変更。寄り道を怨敵共の住処から役場へと変更。 「どうしたの?じめんばっかりみてたらころんじゃうよ?」 「ああ、ごめんごめん。ちょっとお姉ちゃん考え事してた」 心配そうに見上げるリンに不安を解消させるために笑いかける。 「お姉ちゃん、次はここから南――役場っていう人がたくさん集まる場所に行こうと思ってるの」 「どうして?」 「あそこに女の子を食べちゃう悪い人達が出たのかもしれないの」 「ええ!?たいへん!」 「そう、大変なの。だからお姉ちゃんは悪い人達を大人としてやっつけに行かなきゃいけないのよ。 もしかしたら凄く危ない場所になってるかもしれないから、リンちゃんは身を守るためにもお姉ちゃんの言うことはしっかり聞いてね?」 「うん、わかった!」 山折村の良き隣人達は大部分が犠牲になった。 憎まれっ子世に憚るという言葉通り、生き残っているのは特殊部隊の連中か、木更津組を筆頭とした村の汚物共だけになっているのかもしれない。 それでもいい。村の存続こそが茶子の目的なのだから。 愛する『山折村』に戻れないのならば、悪鬼共に生き地獄を味わわせる『山檻村』に変わっても構わない。 『山折村跡地』になどさせてなるものか。 己を穢した連中を、村を蹂躙し尽くした連中を誰一人として許さない。 死んだ程度で楽になれると思うな。 ―――未来永劫の苦しみを。山折の地に呪いあれ。 「くひっ」 押し殺した笑いが漏れる。声を聴いた幼子は愛しき王子の横顔を見上げると――。 (チャコおねえちゃんのえがおってとってもきれいだなぁ……♡) その内心を知らず、頬を染めて見惚れていた。 ◆ ずるずると診療所を何かを引き摺る音が鳴り響く。 耳と鼻から血を垂れ流しながら引き摺られる者は大田原源一郎。虚ろな双眸で床を見つめている。 そして彼を引き摺る者。それは―――。 「………なぜ鬼神の如き強さの使い道を違えたのだ、戯け」 激戦の勝者、独眼熊。 ◆ 大田原の命を懸けた最後の一撃。その拳は怪物の命を刈り取る寸前で止まる。 情に負けた訳でも突如異能の力が消えた訳でもない。 「―――わたしの伏兵に終ぞ気づくことはなかったようだな」 言葉を聞き終える前に、大田原源一郎の巨躯が崩れ落ちる。 その背後にはつい先程、独眼熊により生み出された分身。 策を圧倒的な力で嬲り尽くし、一時は絶命寸前まで追い込んた歴戦の勇士。 しかし、大田原は一つだけ見落としがあった。 異能『クマクマパニック』は十五分のクールタイムがあり、それは診療所に到達した時点で過ぎていた。 『剣聖』の未来予知では己の頭蓋か砕かれる姿が見えた。 故に殺される直前で分身を召喚し、大田原を殺さず無力化する手段を取った。 独眼熊の目的は眼前の尖兵を送り込み、地下のねぐらに隠れ潜む人間共を殺し尽くすこと。 肉体再生の異能は知っていたがそれだけでなく身体能力の異能も持ち得てるとは思わず、それ以上に凶暴であった。 召喚した分身体は事前に入力していた指示に従い、気づかれぬように大田原の背後を取り、後頭部への一撃と頸椎への打撃を間を置かずに見舞い、昏倒させた。 ――今度は念入りに此奴を壊しておこう。 白目を剥いた大田原の耳に小さな手を当て――。 「ゴガガガガガガガガガガガガ……!」 少女の指が細く鋭く伸び、大田原の鼓膜を突き破って脳へと到達する。 今度の凌辱は無意味な実験ではない。理性とやらをはぎ取るためのしつけの様なもの。 指が百足のように蠢き、脳をかき乱す。這う度に大田原の巨躯が跳ねて痙攣する。 処置を終えると、独眼熊は脳漿の就いた二本の指をペロリと味わうように舐めた。 ◆ 引き摺る先は多くの人間の匂いがするドアの前。 ドアノブを回しても開かず、仕方なく拳で板に穴をあけ、力ずくで開いた。 意識のない大田原を引き摺りながら進む。 突き当りには何もなく、左手にはドアノブのない鋼鉄製の扉。ここも同様に力ずくで開く。 その先には何も存在せず、下には四角形の穴があるだけ。 (ここは廃棄孔か。朝廷の狗どもは死体漁りでもしているのか?) 心底冷めた目で奈落へと続く穴を見下ろす。 朝廷の狗共の堕ちるところまで堕ちたものだ。何せわたしを――――。 まあ良い。わたしには此奴らの事情など知ったことではない。 「そら、死体漁り同士仲良くしろ。もっとも貴様が奴らに喰われぬのならばな」 言葉と同時に大田原源一郎の巨体を穴へと投げ落とした。 堕ちていき、ゴンと間抜けな音が暗闇から鳴り響く。 己を極限まで追い詰めた男の様子など気にも留めず、独眼熊は悠々とその場を後にした。 ◆ 山折村の上空を舞うドローン型カメラ。山折総合診療所を旋回するそれは見た。 出口から悠然と出てくる薄汚れた少女――クマカイの姿。 一瞬、その姿がぶれる。クマカイと同じ場所に現れたのは3メートルほどのヒグマ。 その姿のままある場所へと向かう。ヒグマの動きが停止したと同時に再び身体がぶれる。 今度は既に殺されたはずの巨大なワニの姿へと変貌する。 同じように巨体を這わせながらある程度進むと再び姿がぶれる。 今度は一糸纏わぬ姿の黒い髪と白い肌の少女――この地にて非業の死を遂げた、一色洋子の姿。 一色洋子(仮)は動かない。そのまま観察していたドローンを見上げる。 ――双眸には瞳は存在せず、漆黒の伽藍洞がある。 ――口と思われる場所の隙間にも何もない闇が広がっていた。 深淵の目でドローンを見つめる少女の口は三日月を描いた後、口を動かす。 "み つ け た" ◆ 「チャコおねえちゃん」 「なあに?」 「おはなしででてきたおんみょうじさんはどんなことをしたの?」 「陰陽師さんはね、たくさんの人達を助けて村の始祖になったのよ」 「しそってなあに?」 「始祖っていうのは村を作った人なの」 「すごーい!むらをつくったおんみょうじさんのなまえおしえて!」 「いいわよ。その名前は―――」 ◆ 大田原源一郎の戦闘の中で見つけた鉄の蓋で封じられていた穴。 奈落の底に続いているかの如き深い暗黒が広がっている。 人間共の香しい匂い共に悍ましい気配がする。 ―――ここに奴の末裔が潜んでいる。 抑え込んでいた激情が吹き出し、区分けした『ナニカ』の領域がじわりじわりと独眼熊の領域を浸食していく。 奴の末裔たる神楽春姫は如何なる人物であろうか。 かつてあった傲慢も鳴りを潜めたその姿。己の全てを投げ出してわたしに手を伸ばした憎悪(あい)する彼の生き写しか。 はたまた彼とは似ても似つかぬ上辺だけをなぞった俗物そのものか。 ―――どちらにせよ、憎い。どのような手段でも確実に滅ぼす。 その忌まわしき男の名は――。 「神楽―――」 「―――春陽(しゅんよう)ッ!」 【D-4/袴田邸前/一日目・午後】 【虎尾 茶子】 [状態]:異能理解済、精神疲労(小)、山折村への憎悪(極大)、朝景礼治への憎悪(絶大)、八柳哉太への罪悪感(大)、スクーター乗車中 [道具]:ナップザック、長ドス、木刀、マチェット、医療道具、腕時計、八柳藤次郎の刀、スタームルガーレッドホーク(5/6)、44マグナム弾(6/6)、包帯(異能による最大強化)、ガンホルスター、ピッキングツール、飲料水、アウトドアナイフ、羊紙皮写本、スクーター、ヘルメット、護符×5、天宝寺アニカのスマートフォン、犬山家の家系図、モバイルバッテリー、袴田伴次のスマートフォン [方針] 基本.協力者を集め、事態を収束させ村を復興させる。 1.有用な人材以外は殺処分前提の措置を取る。 2.役場に向かい、月影夜帳を殺す。他の袴田邸滞在者も月影の異能で洗脳されている可能性も考え、全員殺害も視野に入れる。 3.天宝寺アニカに羊皮紙写本と彼女のスマートフォンを渡し、『怪談使い』に関連する謎を解かせる。 4.八柳哉太と天宝寺アニカを資材管理棟へ派遣し、情報を集めさせる。 5.用事が済んだら診療所に向かう。 6.リンを保護・監視する。彼女の異能を利用することも考える。 7.未来人類発展研究所の関係者(特に浅野雅)には警戒。 8.朝景礼治は必ず殺す。最低でも死を確認する。 9.―――ごめん、哉くん。 [備考] ※未来人類発展研究所関係者です。 ※リンの異能及びその対処法を把握しました。 ※天宝寺アニカらと情報を交換し、袴田邸に滞在していた感染者達の名前と異能を把握しました。 ※羊皮紙写本から『降臨伝説』の真実及び『巣食うもの』の正体と真名が『隠山祈(いぬやまのいのり)』であることを知りました。。 ※月影夜帳が字蔵恵子を殺害したと考えています。また、月影夜帳の異能を洗脳を含む強力な異能だと推察しています。 【リン】 [状態]:異能理解済、健康、虎尾茶子への依存(極大)、スクーター乗車中(二人乗り)、 [道具]:メッセンジャーバッグ、化粧品多数、双眼鏡、缶ジュース、お菓子、虎尾茶子お下がりの服、子供用ヘルメット、補助ベルト、御守り、サンドイッチ [方針] 基本.チャコおねえちゃんのそばにいる。 1.ずっといっしょだよ、チャコおねえちゃん。 2.またあおうね、アニカおねえちゃん。 3.チャコおねえちゃんのいちばんはリンだからね、カナタおにいちゃん。 [備考] ※VHが発生していることを理解しました。 ※天宝寺アニカの指導により異能を使えるようになりました。 【E-1/地下研究所・B1 EV上/1日目・午後】 【大田原 源一郎】 [状態]:ウイルス感染・異能『餓鬼(ハンガー・オウガー)』、意識混濁、脳にダメージ(特大)、異能による食人衝動(絶大・増加中・抑圧中)、脊髄損傷(再生中)、鼓膜損傷(再生中) [道具]:防護服(マスクなし)、装着型C-4爆弾、サバイバルナイフ [方針] 基本.正常感染者の処理……? 1.??? 2.??? 3.??? ※異能による肉体の再生と共に食人衝動が高まりつつあります。 ※脳に甚大なダメージを受けました。覚醒後に正常な判断ができるかは不明です。 【E-1/草原・地下研究所緊急脱出口前/一日目・午後】 【独眼熊】 [状態]:『巣くうもの』寄生とそれによる自我侵食(大)、クマカイに擬態、知能上昇中、烏宿ひなた・犬山うさぎ・六紋兵衛への憎悪(極大)、神職関係者・人間への憎悪(絶大)、異形化、痛覚喪失、猟師・神楽・犬山・玩具含むあらゆる銃に対する抵抗弱化(極大)、全身にダメージ(大)、分身が一体存在 [道具]:リュックサック、アウトドアナイフ [方針] 基本.『猟師』として人間を狩り、喰らう。 1.己の慢心と人間への蔑視を捨て、確実に仕留められるよう策を練る。 2.巣穴(地下研究施設)へと入り、特殊部隊の男(大田原源一郎)と共に特殊部隊含む中の人間共を蹂躙する。 3.人間共を率いた神楽春陽の子孫(神楽春姫)を確実に殺す。 4.隠山(いぬやま)一族は必ず滅ぼし、怪異として退治される物語を払拭する。 5."ひなた"、六紋兵衛と特殊部隊(美羽風雅)はいずれ仕留める。 6.正常感染者の脳を喰らい、異能を取り込む。取り込んだ異能は解析する。 7.??? [備考] ※『巣くうもの』に寄生され、異能『肉体変化』を取得しました。 ※ワニ吉と気喪杉禿夫とクマカイと八柳藤次郎の脳を取り込み、『ワニワニパニック』、『身体強化』、『弱肉強食』、『剣聖』を取得しました。 ※知能が上昇し、人間とほぼ同じ行動に加え、分割思考が可能になりました。。 ※分身に独眼熊の異能は反映されていませんが、『巣くうもの』が異能を完全に掌握した場合、反映される可能性があります。 ※分身に『弱肉強食』で生み出した外皮を纏わせることが可能になりました。 ※■■■の記憶の一部が蘇り、銃の命中率が上昇しました。 ※烏宿ひなたを猟師として認識しました。 ※『巣くうもの』が独眼熊の記憶を読み取り放送を把握しました。 ※脳を適当に刺激すれば異能に目覚めると誤認しています。 ※■■■■が封印を解いたことにより、『巣くうもの』が記憶を取り戻しつつあります。完全に記憶を取り戻した時に何が起こるかは不明です。 ―――うらうらおもて。 深淵から巣食う真実が蠢いて這い出した。箱庭が裏から表に裏返る。 静止した時計が動き出す。錆びついた秒針が廻る。 既に宴の準備は整った。狩人と獲物の役柄が反転する。 深淵の前でヒトの形をした少女が笑っている。 108.話の分かるあなたに 投下順で読む 110.炎 時系列順で読む 「会議を始めましょう」 虎尾 茶子 対魔王撃滅作戦「Phase1:Belladona」 リン いのり、めぐる 大田原 源一郎 運命の決断を 独眼熊
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WORLD ALL 1-0 自衛隊サイド 西暦200X年 10月30日 日本海対馬沖 朝鮮半島情勢は緊張の度合いを深めていた。 先年来の食糧難、そして相次ぐ脱北者、日本をはじめとする各国の援助打ち切り…北朝鮮の経済状況は明らかに瀬戸際だった。 それに対し、北朝鮮は強硬姿勢を崩そうとせず、逆に日本・アメリカへの弾道ミサイル攻撃を行う用意があるという宣言を行った。 譲歩しないブッシュ政権に対して脅迫を持って妥協点を得ようしたのだ。 これには、日本・アメリカのならず中国やロシアからも反発を受けた。 かくして国連安保理は北朝鮮に対する経済制裁と直接攻撃を決定。 多国籍軍の派遣を決定する。 小泉総理も、この事態を受けて有事法制を強行採決で可決。 邦人救助と経済水域封鎖を目的として護衛艦隊 第1護衛隊群、第4護衛隊群の派遣を決定した。 そして陸上自衛隊の派遣中隊第一陣も車両と装備を積載し輸送艦「おおすみ」とともに派遣されたのだった… そして、派遣護衛艦隊は現在米軍第7艦隊と合流、韓国釜山港へ向かう途上の海の上にいた。 「おおすみ」甲板上。 午前6時29分。 陸上自衛隊の橘2尉と藤原陸曹長はロープで固定された車両列の間を歩きながら話していた。 「でもアメリカが動くのは、日本にミサイルが落ちてきてからだと思ったけれどな」 「そりゃまた、何故です?」 「そうすればアメリカは北朝鮮への攻撃と、同時に日本占領の口実が得られるからだよ。 日本が北朝鮮と戦争して社会や経済に大打撃を受ければ、日米安保理を建前にアメリカは治安回復の為と称して日本を再占領できる」 橘2尉の視線の先には米海軍の空母キティホークが白い波を曳いて海上を進む姿がある。 併走する巡洋艦やイージス艦を引きつれ、海自の護衛隊まで従えて威風堂々とした王のようだ。 「そのために、韓国や沖縄から駐留部隊を引き揚げさせり、強硬な姿勢をとったりして北朝鮮を挑発した。 911テロの時もそうだが、アメリカはそこら辺ずるがしこい。 相手に一発殴らせてから、袋叩きにする口実をつけて喧嘩をする」 「…いかにもやりそうな事です。 真珠湾のときもアメリカは事前に日本軍の奇襲を察知していて、黙認したって言う噂もあります」 「噂じゃなくて、事実だよ」 橘2尉はくわえていた煙草を海に投げ捨てた。 事実、とは言い切ったものの陰謀論に過ぎない。 ただ、集団的自衛権が行使できるようになった途端、今回のような事態が起こったようなことを考えると、自分たちは誰かの書いた脚本の上で動かされているような、そんな気もしてくる。 「お前たち、何をやっているか! 釜山港に到着するまで艦内待機の命令だぞ!」 艦橋の上から声が響く。 二人は一瞬肩をすくめて艦橋の上を見上げた。 派遣中隊の中隊長、柊3佐。 規律にうるさく、隊内では煙たがられている人物だ。 中隊の指揮官で、今回の第一陣派遣には率先して志願したとささやかれている。 「おはようございます! 自分が藤原曹長を連れて車両点検巡回中です」 「そうか。 ならいい。 30分後にミーティングだ! 艦内に戻れ」 橘2尉が敬礼しそう答えると、柊3佐は意外にも簡単に納得し船内に戻って行った。 いつもはここからさらに10分ほど説教というか、小言が続くのだが。 藤原曹長がほっとしたように息を吐く。 「いつも二言目には規律、規律ですからね。 頭が固いったら…」 「ああいうのが自分の仕事だと思ってるのさ」 部隊の規律と部下の気を引き締めるだけが、指揮官の仕事ではない。 が、柊3佐はどうもそればかり重視しているような向きもあると橘2尉は思っていた。 ああいう上官は、上手く立ち回ってなだめたり軽くいなすのが調度いい。 自分の場合はさらに、下の部下たちと上の幹部たちの間を取り持つ役目もある… 「さて、3佐が戻ってきて小言の続きでもされたらかなわない。 戻るか」 そう言って、二人が艦内に戻ろうとしたとき、甲高い音を立てて警報が鳴り響いた。 警報は「おおすみ」艦内だけでなく、艦隊全部から発せられていた。 米海軍の動きもあわただしくなり、空母から艦載機が発進する。 『総員配置! 北朝鮮が第7艦隊および日本本土に向け弾道ミサイルを発射した模様!』 二人ははっとして顔を見合わせ、すぐに駆け足で艦内のタラップを駆け下りる。 途中、血相を変えた海自隊員数名とすれ違った。 「やっぱり血迷ってミサイル攻撃に踏み切ったか!」 「核弾頭でしょうかっ!?」 「わからんっ! そうでないことを祈ろう」 海上では日米双方のイージス艦が噴煙を吹き上げるスタンダードSAMを発射し始めていた。 午前6時47分。 北朝鮮は第7艦隊と日本本土へ向けて弾道ミサイルを発射。 米軍第7艦隊は日本の派遣護衛艦隊を含む艦艇の約3分の1を消失する。 その中には、「おおすみ」も含まれていた。 日本本土にもミサイルが着弾、自衛隊および民間に多くの犠牲者と行方不明者を出すことになる。 これを契機とし、アメリカは北朝鮮に宣戦布告、本格的な攻撃を開始する。 そして、中国およびロシアも北朝鮮に軍を派遣、朝鮮半島情勢は混乱の様相を見せ始めた。 1-0 F世界サイド 西方スード地方 アルヘイム王国 シーレーギャーグ内海に突き出た半島の先端部、フラーナングの入り江に見慣れぬ灰色の鉄の船が浮かんでいるのを岬の上から見下ろす集団がいた。 その内の一人は漆黒の外套を着た、男性とも女性ともつかぬ人物で、被ったフードは目元までを覆い隠し、表情は見えない。 そのほかの人物たちは上質そうな素材で仕立てられた装飾つきの礼服を着て腰に剣を帯びた者たちか、金属製の甲冑を着込んで武装した屈強そうな男たちで、兜の面頬をあげて驚嘆の表情を浮かべている。 「…これにて召喚の儀は滞りなく完了したしました。 あの者たちとの交渉は公御自らがなされるがよろしいかと」 闇の色に身を包んだその人物が少年のような高い声で、ひときわ華美な装飾のなされた服を着た偉丈夫に告げると、公、と呼ばれた人物はやや呆然としながらもうむ、と頷いた。 今しがた目の前で起きたことがまだ信じられないでいるようだった。 異世界より軍隊を呼び出すなどという事が。 しかし、現に眼下に見下ろす入り江にはこれまで見たことも無いような大きな鉄の船が、ほんの一刻ほど前までには船影一つ無かった静かな海面に浮かんでいる。 「もっとも、外つ国より呼び出されました彼の者たちの言葉を通訳する者がおりませぬと話しになりませぬから、それは私が務めましょうが…」 彼とも彼女ともつかぬその人物はそう言って、フードに半分隠された顔の、下半分から覗く赤い唇を笑うように歪ませた。 公はその笑みを見て肌寒いものを感じた。 この「魔法使い」に命じて異世界より軍隊を呼び寄せたのはほかならぬ公自身であるが、そもそもの初めに公へ異世界の軍勢を呼び出すことを進言したのは魔法使いの方である。 公も公の家臣たちも最初は魔法使いの言葉に半信半疑であったが、自らの野望のため戦力を必要としていた公はその進言を受け入れた。 そして、魔法使いは言葉どおりに軍…軍艦とその乗組員を召喚して見せたのである。 この魔法使いがいつ頃から自分の腹心として、公に助言や提言を行うようになったのかは公自身も覚えていない。 ただ、魔法使いの言う言葉は全て物事を正確に言い当て、その言葉に従って間違いはあったことが無かった。 そして今回も、この魔法使いはいとも容易く、風と稲光を伴って異世界より軍を呼び出して見せたのだ。 彼は思った。 これだけの事をやってのける魔法使いの力に、得体の知れない恐怖と不信感を抱いたのだ。 元々魔法使いという生き物は、魔の力を使う呪われた人間と世俗では言われ、誰もが魔法使いの行使するその力に畏怖と嫌悪を覚える。 公もそれは承知で、何よりも自分のために役に立つからと、この魔法使いを側においてきたのだ。 しかし、今回ばかりは魔法使いの力に恐怖した。 このまま、この化け物のような生き物を飼っていて良いものだろうかと。 その時、一瞬魔法使いが顔を上げフードの奥に隠していた青い左右の目を公に見せた。 公と魔法使いの視線が交差した次の瞬間には、公は魔法使いに抱いていた不審と恐怖とをすっかり忘れてしまっていた。 「うむ、ご苦労である。 引き続き、我が大義のために力を貸してくれような」 「御意…」 公が言葉をかけ、魔法使いは口元に笑みを浮かべながら恭しく一礼した。