約 24,300 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5342.html
今日は学校が始まる月曜日 あぁ……あの憂鬱な日々がまた始まるのか そう思いながら目を開けるた すると長門が俺の横で寝ていた 「うぉぉわぁぁぁ?」 なんでこんな所にいるんだよ長門?お前にはマンションがあったはず 長門「私にもわからない 情報が足りない 」 情報が足りないってお前…………お前ほどの力があったらわかるはずだろ?それが何故? そう思っていると長門が俺の上にのしかかってきた ずっとこっちをみて俺の目の奥のほうを見ている 「何やっているんだ?長門よ?」 まさか長門がそっちの方であるはずはない 長門「貴方の脳に接続し情報を引き出している 今92%完了した」 この短時間に俺の2テラバイトの情報を引き出したのか さすが長門だ 長門「貴方が今考えた事も私には分かっている」 ああそういうことか つまり俺には何も考えるなと というかもうそろそろ完了したはず 長門「あなたが余計な事を考えているせいで私が貴方の脳に接続する為の状態が悪くなっている」 ああそういう事ですか では俺は何も考えない事にしよう 長門?あの長門さん?目が虚ですが?どうかされましたか? 長門「貴方の頭の中にノイズ(余計なもの)が含まれていて除くのに時間がかかる」 「つまり俺の脳から情報はダウンロードしたわけだ じゃあ俺の上に乗っていないでくれるか?」 しかし長門さんは降りようとしない あの……健全な男子である私が貴方のように可愛い人物に乗っかっていられたらすごい事になりそうですが? 長門「そんな事は起きない 私は貴方を信用している」 おいおい 可愛いは否定しないのか?まぁ長門らしいが…… 信用しているといった時長門の顔が赤くなった様な気がした 長門「情報の整理が終了した 結論は………」 こいつ凄い顔が赤いぞ? エラーですか?まさかのまさか? 長門「私が夜マンションを出て貴方の家に寝に行きそこで眠りについた」 なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! その後長門はマンションに戻って学校に行くと言っていた 俺は長門が夜マンションを出て俺の家に来るなどという事ががあり得る物かと思っていたが学校に着くころにはもう忘れていた なにしろ早朝の事だった上に急に眠くなり寝てしまった―いわゆる二度寝というやつだ 何の異常もなかった―はずだったが 教室に入ると机と椅子が全て槍になっていた 俺は驚きの余り絶句した 朝倉が長門に飛ばして刺したあの槍だ しかしなぜにあの槍が? 朝倉か?しかし朝倉は消えたはず では長門か?しかしあいつは朝倉の様に暴走しないはずだ 俺はそう信用している そう思いたいだけかもしれないが というかこの教室だけか?他の教室もそうなっているかもしれない 俺の予想は当たった 全部の教室の机と椅子は槍になっていた いや教室だけじゃない職員室やSOS団の部室の机や椅子も槍になっている やはり長門か?しかし……そんなはずは…… いや……あり得るかもしれない 俺の家に夜自分のマンションを出て来るような状態の長門ならあり得るかもしれない 異常事態なのか? もしかしたら古泉にきけば分かるかもしれない そう思った時放送がかかった 「全校生徒の皆さん今日は家に帰り自宅待機です」 思えば長門がいない いや長門だけではない 朝比奈さんもハルヒもいない まさかこないだみたいな事があったわけじゃないよな? ちょうどそこに鶴屋さんが通りかかった そうだ聞いてみよう 鶴屋さんがハルヒの事を覚えていればこないだとは違う 「鶴屋さん 今日ハルヒ見てませんか?」 「キョンくんじゃないかにょろ ハルにゃん?そういえば今日は見てないにょろ」 良かった……覚えている つまり長門のエラーではないようだな 鶴屋さんがバッグから「何か」を取り出した そして俺に見せてきた 「家の庭に埋まっていたんだにょろ ハルにゃんに渡しておいてにょろ」 これは?何だろう?外見は……そうだな機械でできた埴輪とでも言おうか 「ところで鶴屋さん……長門はどこにいるかわかりますか?」 「そういえば長門ちゃんも来ていないにょろ―」 朝比奈さんは? 「みてないにょろ SOS団の女子勢が全員いないなんてどうしたのかな?古泉君はいるにょろ 屋上にいたにょろ」 古泉はいるのか! 「ありがとうございました! 鶴屋さん!」 「ちょっと待つにょろ 私の家の庭に埋まっていた物があるからSOS団に渡しておくね」 そして鶴屋さんは何かを思いっきりなげつけてきた それは機械でできた埴輪と言うような形状をしているが大きさは10㎝くらいである それをキャッチした………凄い重いぞ? 俺はそれを鞄にしまうと走り出した 階段を凄い勢いで上り屋上への扉を開けると古泉がいた 「おまえ何故ここに?」 こちらを古泉は見るとちょっと来てくださいと言うかのようにこまねきをした 「このフェンスのむこうが閉鎖空間です」 おい何を言っているんだ? 「はやくしないと行っちゃいますよ?むこうには長門さんがいます」 長門が?じゃあ俺も行かなくては………あいつには聞く事が沢山ある 「では目を閉じてください」 俺は言われた通りに目を閉じた おやおそいなぁ? 「もう目を開けてもいいですよ」 目を開けるとそこはいつぞやの閉鎖空間だった それにしても高さが俺の身長+30㎝くらいしかない しかしとんでもない所に閉鎖空間ができたものだ 「その通りです このままの状態で神人も出てくる事もできずしょうがなくあんなミニチュアなのです」 古泉が指さした方向には30㎝くらいの青い物がいた 「異常事態なんです こんな小規模の閉鎖空間などありえないんです」 「涼宮ハルヒの苛立ちが少ししかない そのため」 苛立ちが少ししかない?どういうことだよ? 「苛立ちがまるでどこかに封印されているかのように苛立ちが放出されていない」 「そこからは私に説明さして」 ちょっとまて私?古泉がおかまになったか?しかも「さして?」 しかし声の主は埴輪だった 鞄の中の埴輪がしゃべりだした事がわかった俺は驚いた しかもその声はどっからどう聞いても朝倉だった その埴輪は光だし朝倉?になった だがとても小さい……15㎝くらいか? 「おどろいた?」 ああ色々な意味でな また「死んで?」とか言われるんじゃないよな まぁこの体の大きさの違いがありすぎる今では無理だろ 「死んで!」 おい………ミニチュアナイフ……いや…針と言った方がいいかな? それを両手で持ち刺してこようとした しかしその願いはかなわなかった 長門につままれ暴れていた そういえば15㎝か………30㎝の神人と戦わせてみるか? それはそれで面白いな 俺の頭にものすごい悪な考えが浮かんだ 「ちょっと長門…朝倉を貸してくれ」 長門は頷くと朝倉を差し出してきた 「何をするつもり?」 朝倉はものすごい顔でこっちを見た まるで恐怖しているかのような顔で…… 「少し俺と長門が味わった苦しみをあじわってもらうだけさ」 俺はなるべく悪魔のような顔で言った 「もしや?そういう事ですか?」 そうだ古泉がいたこいつは昔野球をやっていたんだ 「古泉?ふんもっふと同じやり方でこいつを神人の所まで投げてくけるか?」 俺は古泉に朝倉を差し出した 俺はいつもはしないにこにこスマイルで古泉を見た 古泉は同じにこにこ顔で返してきた そして朝倉を受け取った 「ええいいでしょう ではいきますよ?」 俺と古泉はニヤニヤしていた そして古泉は野球のボールを投げる体制に入った 「ちょっと待って待って待って……ってぇぇぇぇぇぇぇぇ」 朝倉が抵抗したようだが気にはしない 朝倉は神人にむかって一直線に飛んで行った そして神人の頭に朝倉の体が激突した 神人が砂の様になっていき神人がいなくなった 朝倉硬いんだなと思った その瞬間だった………閉鎖空間の急に広がった いくら鈍感な俺でもわかった 「なんですか?この神人の数は………」 俺は古泉が見た方向を見た それは絶望の二文字だった 最初そちらを見ると青い壁かと思った だが青い壁だと思ったのは神人が重なっているせいで壁になっている様に見えるだけだった 「長門さんお願いしていいですか?」 古泉がひきつった声で喋った 「なに?」 長門はこんな状態でも冷静な顔だ いつのまにか朝倉が戻ってきている 「朝倉さんと連携して機関の同士にこの事をつたえてください」 「了解した」 朝倉が少し否定的な顔をしたが先程のようにまた投げられたらいやだと思ったのか納得した 「あなたがこの空間に入れたのは空間の裂け目があったからですね?」 「そう」 「では僕がいなくてもいいですね?」 古泉お前一人で戦うつもりか? 古泉の死亡フラグONか?そんなのはまた閉鎖空間が発生する理由になってしまう 古泉が死ぬなんて事はないでほしい そんな事は思いたくない 「そう」 俺は今の言葉は口には出してはいなかっようだ 「おれはどうすれば?」 俺の方向に飛んできた神人の拳にきずかなかったようだ 長門は俺の方向に飛んできたかと思うと高速呪文詠唱をした バリアがはられたかと思うとそのバリアが壊れた そして俺の前に吹っ飛んできた 「………………」 俺はその時血が降りかかった 朝倉が俺と長門をつかみ普通の空間に飛ばしてくれたおかげで二発目をくらわずに済んだ この時の朝倉には感謝している この後しっかり謝った 「おい長門!起きろよ長門!」 しかしいくら長門をふっても起きない もう駄目なのか?長門は二度と目を覚まさないのか? 「ちょっとどいてください!!」 後ろから聞こえたの朝倉の声に従うと朝倉後ろからとんできて腹に長門にとび蹴りをした そんな事をしたら……… 「何?」 何故だか知らないが長門が目ざめた 長門が目覚めた……良かった その時朝倉がある事を言った 「もう一名のインターフェイスを呼んでおきました」 3人のインターフェイス?そんな異常事態なのか? 「そう」 今度は長門が言った 「閉鎖空間がとても速いスピードで拡大している このままだと宇宙にまで広がる その事が自分達に対する影響を考えたらこうなった」 ガチャ 後ろでドアの開く音がした 俺はそちらを見た 喜緑さんが立っていた そちらを見た朝倉がそっちの方向に歩いていった状況を説明した 「分かりました」 すると長門が何か呟きだした あの高速呪文か……… 数分たつと長門が消えた 「あなたもついてきて」 長門の声が聞こえた すると俺は閉鎖空間にいた 後でわかった話だがこの閉鎖空間はどうやらハルヒの苛立ちとは関係なくできたものらしい ハルヒはこの時どこにいたかと言うと家で風邪になって寝込んでいたそうだ 赤い玉が神人を倒していく その中でこちらに飛んでくる赤い玉がひとつあった 古泉か?ああ古泉だ 死亡フラグは成立しなかったんだな 「いやぁー助かりましたよーこの学校の同士がすぐにきてくれたので死なずに済みましたよ ハハハ もうそろそろこの閉鎖空間は消えますよ」 ピキピキキキピキピキピキキピキキピキピキキキキ 閉鎖空間が豪快に壊れる音がした 空を見ると亀裂が入っている その後の事はおぼえていない 気づいたら家にいた その次の日 ハルヒは学校に来ていた 「ハルヒ昨日はどうしたんだ?」 「風邪よ風邪!」 ほう、こいつが風邪をひくか………面白いな 授業が終りSОS団の部室に行くといつものめんつがそろっていた 朝比奈さんも来ていた ハルヒは俺を見るとアヒル口で 「キョン!なんで私のお見舞いにきてくれなかったの?」 おいおいあの後ハルヒの見舞いに行けるかよ?俺はあの急展開についていけなかったぞ?その上あんな数の神人をみて死にそうな状況だったら精神が持たん 「そもそも何故俺がお前の風邪の見舞いに行かなければならないんだ?」 すると、ハルヒが怒ったような顔をして 「私が団長だからよ!あんた以外皆きてくれたわよ?あ、でもみくるちゃんは来てくれなかったけどまぁいいよ」 「ごめんなさぁい………」 朝比奈さんはとてもすまなさそうに謝った そういえば朝比奈さんは昨日どうしたんだろうか? 「朝比奈さん昨日はどうしたんですか?」 「家族でお出かけしてました……」 この家族というのはきっとハルヒの前だからそう言っているのだろう きっと「禁則事項」をしていたのだろう その禁則事項は俺にはわからんが きっと放送禁止用語ではないだろう まぁその後古泉と俺はオセロをして長門は本を読み朝比奈さんはお茶をくれた ハルヒはパソコンで情報収集をしていた まぁ今日はこれと言うこともなく、平凡に終わった しかし、長門の顔が怒っているように見えたのは気のせいだろうか? まぁ見えただけだろうからな あいつはいつも無表情だからそう思おうとして見ればそう見えるだろう そうして俺は帰路についた 家に帰り宿題をし、寝てしまった ~長門の家~ 憎い。何かが憎い。 憎くてたまらない。 私にそんな情報は設定されていないはず。 しかし憎い。とても憎い。 何故この「憎い」という感情をもってしまうのだろう? そんな設定は…… とにかくご飯を食べる事にしよう。 朝倉涼子に作ってもらえばいい。 バッグの中に入っているはずの朝倉を取り出すためにバッグを開けると小さい朝倉がバッグの中で寝ていた。 「起きて。」 私は小さく声をかけた。 すると朝倉は動きだしバッグの中から出てきた。 「ふぁぁぁぁ。よく寝ました。」 あの後、彼に対する攻撃はこの状態の彼女ではできないと判断され喜緑江美里と話合い私が保護する事になった。 「ご飯を作ればいいんですか?」 「そう、作って。」 「分かりました。でも、この体では無理ですから色々やってもらっていいですか?」 「分かった。」 {キョン視点} その次の日のSOS団部室 ハルヒが何か思いついたという顔でしゃべりだした 「そうだ!今日肝試しをしましょう!」 おいおい何故肝試しという発想が出てくるんだ? 「夏だからよ。古泉君!このアイデアいいと思わない?」 「大変よろしいかと。」 「古泉君もこう言っているから決行よ!」 俺は実は肝試しが嫌いだ 超能力者や宇宙人や未来人は会っているが幽霊には会っていないのでな しかし、超能力者や未来人や宇宙人がいるとなると幽霊がいるという可能性は高くなってしまう 「今日の午後九時に学校の校門集合!それまで自宅待機!もしこなかったら死刑よ!」 死刑と幽霊どっちを選ぼうかな?トホホ……… ~その夜~ 妹か何故ついてくるんだ……俺の本性を暴く為か? 校門に行くと俺以外の全員は揃っていた 「ああ、妹ちゃんも来たの?まぁ、いいわ。そうすれば人数がちゃんと揃うからね。さぁ肝試しを始めるわよ!このクジを引いてそれで無印と赤印に分かれるの!」 そう言うとハルヒはくじの入った箱を差し出した。 なるべくなら長門となりたいな……あいつならきっと何かあっても解決してくれるね。 どうやら長門のくじの印は赤だったらしい。 俺も赤が引けますように…… 俺はくじの先っぽが赤色である事を願いくじを引いた。 ああ、俺はついている。 赤色のくじが引けた。 長門さんよろしく頼みましたぜ。 しかし、長門が少し震えてそうに見えてしまったのはきっと気のせいだ。うん、きっと気のせい。 結果メンバー分けの結果はハルヒ、古泉、妹が無印で長門、朝比奈さん、俺が赤印だ あっちには古泉がいるのでおそらく大丈夫だ。 「部室にある紙を持ってきて!とって来なかったら死刑。じゃあまずは赤印チームからね。いってらっしゃい。」 俺達は渋々と学校の中に入っていった ん?なんだこの感覚は?もしや閉鎖空間? 「違う。どうやら前の夏休みの様な事が起きている。」 前の夏休みってあれか、特異点とやらの奴の事か? 「そう。でも、私が設置した物。来る前に設置しておいた。おかげで怖いというイメージを具現化する。でも家でホラー映画を見てからあのイメージが頭に焼きついたまま離れない。」 長門は凄いビクビクしている。 なのに対象的に朝比奈さんはビクビクしていない。 まるで、「私は平気です。」というかのように 「朝比奈さんは大丈夫何ですか?」 「怖くないです。理由は……禁則事項です。」 あぁ、どうやら未来でははっきりとしているのだろう。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3829.html
204 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/01/05(土) 00 14 49.96 ID oJT48RUM0 2レスほどいただきます。 状況描写なしの会話のみ。読み手の脳内補完に期待するです。 /**********************************************************************/ 「キョンのことよ。好きなんでしょう?ときどきキョンのこと見つめてるじゃない。瞬きも忘れるくらい」 「キョンはちょっと頼りないけど、悪いやつじゃないわ。有希がキョンのことを好きなら、 「団長として応援するに吝かではないわ!」 「私は…」 「彼が…」 「好き」 「善は急げよ!キョンはものすっごく鈍いやつだから、言わないとわからないわ!」 「そうね、中庭の木の下なんてどうかしら。ちょっと狙いすぎな気がしなくも無いけど」 「キョンが戻って来次第行かせるから、有希は先に行って待ってて?」 「なぜ?」 「なぜって、告白よ!ホントはキョンのほうからするべきなんだけど、おとなしい有希のほうから告白っていうのも意外性があって萌えるし!」 「必要ない」 「あなたがなぜ、私の好意を確認しようとしたのか、わからない。けれど、想像することはできる」 「あなたは彼に好意を持っている。しかし、それを認めたくない」 「私が彼への好意を表面化させれば、あなたは自分の好意を圧し殺すことができる。そう考えた。違う?」 「ち、違うわ!あたしは有希のことが好きだからっ!」 「私もあなたのことが好き。だけど」 「私の心は私のもの」 「有希…ごめん…」 「私は、彼と生涯を共にすることを考えたことは無い。それは彼も同じはず」 「そんなはずないわ!キョンは間違いなく有希のことが好きよ!……有希のこと見る目が、すごく優しいもの」 「彼は、私に心をくれた。父親という概念が、彼の存在を表現するに適当」 「彼が私に向ける好意もまた、肉親に対するそれに等しい」 「あなたは彼を独占したいと考えている。先ほどの発言はその裏返し」 「それは、異性に対する好意の基本的心理。認めるべき」 「あたしは……」 『善は急げよ!キョンはものすっごく鈍いやつだから、言わないとわからないわ!』 「有希…っ。そうよね。自分で言ったんだもんね」 「あたし中庭にいるから、キョンのやつが戻ったら来るように伝えて」 「有希、ありがとう」 おわり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1224.html
「……」 わたしは紅い夕日の差し込む教室で本を探している。 彼に買って貰った大事な本なのに、無い。 なぜ?わたしは鞄の中にしまっておいたはず。 ドアが開く。 わたしの目に映ったのは彼。 いつものように優しい口調で話し掛けてくる。 「長門、まだこんなところに居たのか」 「……ない」 「何がないんだ?」 「あなたに買って貰った本……」 「無くしたのか?」 「……ごめんなさい」 「お前……大切にするって言ってたのに」 「ごめんなさい」 「長門なんてもう知らん、別れよう」 「そんな……」 彼の後ろには涼宮ハルヒが見える。 そしてわたしの彼に抱きつく。 「今日からキョンはあたしのものよ」 「こらこら、俺は物じゃねぇぞ」 なぜ彼は涼宮ハルヒと仲良くしている? わたしとの関係は……もう……。 光が窓辺から差し込む。 ……朝……今のは……夢……? そう、夢。 もう一度よく考える。 彼に本を買って貰ったことなんて無い。 ……わたしと彼はあのような関係では……無い。 いつものようにのっそりと布団から起きる。 制服に着替え朝食を摂取し学校へと赴く。 今日も誰とも会話を交わさず机に向かい本を読み耽る。 けれど今日は本の文字がうまく思考の中へと入ってこない。 彼の事ばかり考えてしまう。 原因は解明し尽くしている。今朝あのような夢を見てしまったから。 放課後になるのが待ち遠しい。 昼休み。 わたしは食堂へと向かう。 今日もカレー。ここの食堂に勤務しているあの女性はなかなかの腕前。 食べ終わると部室で本を読む。 ……やはり何も頭に入ってこない。 今日のわたしは少し疲れている。休息すべき。 なので睡眠をとることにした。 「……と………長門」 何者かによって体が揺さぶられる。誰? 「お、やっと起きたか」 視覚器官で認識するより先に聴覚器官が反応する。 ……彼。 「それにしても宇宙人も眠るんだな」 「……」 「寝顔、けっこう可愛かったぜ」 「……」 ……これも……夢……? 不安に駆られながらも目の前に居る彼を見る。 エラー、恥ずかしいという感情がわたしの心を支配する。 顔に血液が集中するのが確認される。 「いつから寝てたんだ?」 「……昼休み」 「もう放課後だぞ」 彼は笑いながら言う。 どうやらわたしは長い時間眠っていたらしい。 そして今この空間にはわたしと彼で二人きり。 「……あなたは」 「ん?なんだ?」 わたしは細々と言葉を紡ぐ。 「わたしのことをどう思っている?」 わたしはどうかしている。 このような質問を彼に投げかけるのは彼を困らせるだけ。それは理解している。 ……けれど、投げかけてしまった。 なぜ?……原因は分かっている。やはり朝の夢のせい。 そう。わたしは不安でならない。 彼がわたしに対して嫌な感情を持っていないか、と。 「あー、長門……それは、どーいう意味で、だ?」 「……嫌い?」 「いや、嫌いじゃないぞ?でもな、なんていうかだな……」 彼を困らせてしまった。 「まぁ、す、好きだぞ?」 「……」 「あ!いやな、あのー、友達として、っていうか」 「……」 「好きってのはは恋愛感情とかも、入ってたりしないでもないんだがな、あの、な」 「……」 彼は自分の言った言葉を必死に説明している。 なんだかわたしは安心してしまった。ありがとう。 「好きっていうか、なんていうか、そもそも」 「わたしも……すき」 彼は数瞬固まる。 「……え?今、なんて言った?」 わたしは本を手に取りそれに目を向け文字を読み取り始める。 いつもの日常が始まる。 いつもと違うのは、彼とわたしだけ。 今はまだ、これでいい。 いつか彼に本を買って貰おう。 その時は無くさないように肌身離さず所持しよう。 彼を一度見るたび、待ち遠しくなる。 ……だから早く、もう一度「好きだ」と言って。 「ん?何か言ったか?長門」 「……ない」 「そうかい」 彼は呟く。わざとらしく。 「……好きだ」 わたしはそれを聞き逃さない。逃すはずが無い。 「そう」 こんな返事しか出来ないわたしが疎ましい。 でも、彼はそこまで鈍感では無い模様。 「明日、一緒に本屋行こうぜ」 「……」 わたしは心底驚いている。 彼は何時の間に読心術を手にしたのだろうか。 「本、買ってやるよ」 わたしはわたしにとって精一杯の返事を返す。 「ありがとう」 翌日。 彼に本を買って貰ったわたしの心は今、喜びで溢れかえっている。 そして、昨日浮かんだ疑問を彼に問う。 「あなたはわたしに本を買ってくれた……なぜ?」 彼は失笑し、次第にその顔がニヤけていく。 ……なぜ? 「はは、なんでって、長門、お前呟いてたぞ?……色々と」 わたしはどうやら彼のクセが移ってしまった模様。 ……エラー、恥ずかしい……です。 ~fin~
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1196.html
いつものように部室のドアを開けた俺は、いつもとは違った奇妙な光景を目にした。 「なにしてんだ?」 その問いに、ダンボール箱の上に正座をしていた長門が答えた。 「侵入者を捕獲した」 「侵入者だと?」 いや、それよりもなぜそんな原始的な方法で捕獲しているんだ? 「……」 長門は空虚を見つめており、その表情はかすかにこわばっている。 長門には似合わない表情だ。勘違いか? 俺は真っ先に浮かんだ質問を部室の入り口から投げかけた。 「侵入者ってのは異世界人か?」 長門は水汲み鳥のように視線を行き来させた後こちらを見た。 「ない」 どうやら俺と同じ一般的な人間らしい。突然爆発したりはしないだろう。 俺はドアを閉め、パイプ椅子を広げると長門の前に座った。 「侵入者は悪事を働いたのか? もしかして文芸部の入部希望者だったりしないだろうな?」 「一般的な人間ではない」 おいおい、いきなりなにを言い出すんだ。問題はそいつが爆発するかどうかってことだ。 爆発はしないのか? 性格が一般的ではないということか? よく知っている人物のように。 「爆発はしない。凶悪。ただし、凶悪というと語弊があるかもしれない」 「というと?」 「……」 「……」 長門は、黙ったままだ。 うまく言語化できないというやつか。 「……」 「ヘンタイ」 長門が答えた。 変態だと? まさか長門、 変態にあんなことやこんなことをされてしまったのでは……などと、 いらぬ想像をしていると、 「大丈夫」 長門が答えた。いつもの表情だ。 そうだ。侵入者は長門によって、すでに捕獲されている。 俺は、忍び寄る変態を一瞬でダンボール箱に押し込める長門の姿を想像して、 変態に少しだけ同情した。 「職員室へ連れて行くか? いや、警察か?」 「処分する」 「ちょっ、さすがにそれは」 いったいどんだけの変態だったのだ。 俺は汚いモノを見せられた長門の表情を想像しながら、ある疑問に気づいた。 「やけにおとなしいが」 「……」 長門は、人差し指でダンボール箱をつっついた。 「今は大人しくなった」 「なにかしたのか? 眠りの魔法をかけたとか」 「ない」 長門はダンボール箱をじっと見つめている。 その箱は、正座して体を折り曲げると大人ひとり入れそうな大きさで、 前後には取っ手になる穴が開いている。 俺は、目潰しをされないか不安を感じながらも、その穴を覗いてみた。 なにもいなかった。 「おい長門、なにもないようだが」 そう言って正座をしている長門の膝へ視線を向けた瞬間、 首筋に電撃が走ったかように頭が仰け反った。 「うぉ、目が! 目が!」 うかつだった。穴から視線をはずした瞬間に目潰しを食らってしまったのだ。 俺は痛みで目を開くことできなくなってしまった。 もちろん長門の三角地帯も見えなかった。 「長門、大丈夫か!」 返事はなかった。 その代わりにトタトタと遠ざかる足音が聞こえた。 この部屋には俺と長門しかおらず、長門は段ボール箱の上に座っていた。 この足音は侵入者のものか? それとも長門がダンボール箱から降りたのか? いや、考えたくはないが、どちらにしろ侵入者が出てきてしまったとことになる。 そのとき、ドアが開く音が聞こえた。 「こんにちはぁ」 朝比奈さんの声だ。 「きたらだめだ! ここは危険です朝比奈さん!」 俺は叫んだ。 「えっ、なんですかキョン君、あ、ふぇ、こっ、来ないでー!」 「朝比奈さーん!」 「くっ」 俺は目をつぶったまま立ち上がったが、これではどうすることもできない。 「一体、何事ですか」 古泉だ。今だけは頼りになる。 「古泉、朝比奈さんをお守りしろ!」 「え? うわっ、なんですかこれ、わわっ」 「どうした古泉!」 「これは僕には無理ですよ。わわっ」 なにが無理なんだ、役たたずめ。 そのとき、また別の声が聞こえた。 「あんたたち! 団長をのけ者にして、なに騒いでるの!」 ハルヒだ。ちくしょう、どうすればいいんだ。 「こ、来ないでぇ! ふぇっ」 「わわっ、飛びました、飛びましたよ今」 飛んだだと? 一体どんなやつだというんだ。 次の瞬間、軽快な音が響いた。 「だらしないわね、あんたたち。ゴキブリくらいで」 な、ゴキブリだと? 「ふぇっ、ふぇっ、」 「いやー、さすが涼宮さんです」 「キョン、あんた相当ビビリなのね。目までつぶって」 俺はどう答えていいか分らなかったが、なんとか目が開くことができた。 そして、そのとき最初に目にしたのは、カーテンにくるまっている長門であった。 ―― END
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4933.html
「なぁ長門、最近皆が自分のエピソードを語ってるみたいなんだが。お前もやってみないか?」 いい。私には語る事など何もない。 「そんな事言うなよ。今までお前がどれだけ成長したかこの眼で見てきているんだ。だから、 俺はもっと知りたいお前の事」 ……そう。あなたがそう言うなら。 「そっか、んじゃ試しにやってみてくれ」 長門有希。 「長門よ、名前だけじゃ何も伝わらないと思うぞ…。仕方ない俺が見本ってやつを見せてやるよ。 問題ないな?」 問題ない、あなたに任せる。 「この話は私が現在に至るまで経緯の一部でしかない。だが、私の胸中に抱き続けた心を垣間見る ことが出来るはず。こんな感じでどうだ?」 …解った。ユニーク。 「ユニークかどうかは解らないがな。タイトル何がいい?」 解らない。でも、恋がいいかもしれない。 「はっは、まさか長門の口から恋なんて聞けるとは思わなかったな。んじゃ、始めるか」 了解した。長門有希の恋心はじまり。 ――長門有希の恋心―― 私は蓄積したエラーに耐えきる事が出来なくなり世界改変を行った。私の残した世界再改変の鍵を 集めた彼。私はヒトで在りたいと願った。 だが彼はヒトである私より、インターフェースである私を選んでくれた。 私はそれに喜びという感情を抱いた。 そして、一時的であるにしろ情報統合思念体を消失させた私は、処罰を逃れる術は無かった。 それは当然の業。だが、彼はそんな私を責めたりしなかった。むしろ、私の存在を許してくれた。 彼の言葉が私を救ってくれたあの日、私は彼に恋をした。 私は今まで自分に蓄積していたエラーに対する価値観が変わった。今までは只、理解不能なデータの 塊でしかないと思っていた。だが、彼が教えてくれた。『それは、お前の心だと』 私は、ヒトに成れるのだろうか。彼と同じ道を、同じ速度で歩けるのだろうか。だが、それは叶わない。 私は情報統合思念体により製造された、只の端末に過ぎない。 自分の存在する理由、此処にいる理由。 涼宮ハルヒを観察する為。只、それだけなのだから。それ以上望んではいけない。 私は今日も自分を殺して、彼等と共にいる。 二年への進級を間近に控えた春休みのとある一日。私はSOS団の団活に強制的に参加させられていた。 いつもと同じ場所、同じ時間に。私には世界観など無かった、そんな漠然としたものを模索するより、 自らに与えられた役目を全うするのに徹していた。 だが、いつからだろう。同じ場所でも季節事に見れる景色、物、人全てが違う。 その様な事を過去に考えた覚えなどない。そう考えると自分がおかしく思える。 私は今日も待つ、皆より早く定位置にて時間まで待機する。 だが、あの日からこうしていつも最後に来る彼を待つ時間が幸せだった。そう、思える様になった。 最近の私は物事をなるべく論理的に考えない様にしている。そのせいか、見える景色が全て違う物に、 綺麗に見えた。彼のくれたアドバイスのお陰。 まだ時は八時一分五十二秒。ふと思い付いた様に空を仰ぐ、空はクレヨンで塗り潰した様に蒼く澄み わたっている。早朝の風は清んでいる。それを肌で感じるのが最近出来た楽しみの一つ。 「おはようごさいます。相変わらず早いですね、長門さん」 見慣れた人物が声を掛けてきた。古泉一樹、彼はいつも決まってこの時間に来る。私は黙って頷く。 それがいつもと変わらない古泉一樹との挨拶。 古泉一樹は黙って私の隣に立ち、左腕にはめた腕時計に視線を落とした。 私には時計など必要ない。それが私はヒトとは違うという証拠。…やめよう考えたくない。 「遅いですね皆さん」 「あなたの到着が予定時刻より早いだけ」 彼は少し苦笑いを浮かべ、気を取り直す様に咳払いをした。 「罰金は勘弁して頂きたいですからね。それに、彼の役目の一つでも有ります。それを涼宮さんも望んで いるんじゃないでしょうか」 そう。私にはその理屈は理解不能。 「微妙な乙女心といいますか、これに付いては解ってしまうとしか言えませんが。勿論、涼宮さん限定です」 そう。 私がそれだけ言葉を返すと、古泉一樹はそれ以降黙り込んでしまった。 きっと、彼なりに私に気を遣ったのだろう。 暫くして、朝比奈みくるが到着した。 「ごめんなさい、お待たせして」 深々とお辞儀をすると、満面の笑みを浮かべている。何故、そんなに意味もなく笑顔を作れるのか 私には理解出来なかった。 朝比奈みくるは古泉一樹の隣に立つと、楽しげに会話を始めた。 私は黙って彼を待つ。早く会いたい。 八時四十分二十三秒、涼宮ハルヒが到着した。 「皆、おっはよー!バカキョンは……うんうん居ないわね」 元気よく声を張り上げた後、彼を探す為か辺りを見回した。その後、何故か嬉しそうに何か含んだ笑みを 浮かべていた。これが古泉一樹の言う、微妙な乙女心というものなのだろうか? 理解不能。 最後になった彼を待ちながら楽しげに会話をする三人を眺める。やはり、私は浮いた存在なのだろうか。 必要最低限の質問ぐらいしかされない。 涼宮ハルヒが到着して間もなく彼が到着した。 彼の体は上下に揺らす程息を荒げ、急いで集合場所まで来た事を表していた。 そんな彼に向かって涼宮ハルヒはいつもと変わらない決まり文句を言う。 「遅い!罰金!」 自分と然程大差はないだろうに、それでは余りにも彼が理不尽だ。 「今日こそお前より早く着いたと思ったんだがな…はぁはぁ…あーぁ。たく、仕方ないな」 彼は皮肉っぽくそう言葉を漏らした後、私に視線を送ってきた。 「長門、おはよう」 「……よう」 思った様に言葉が出なかった。だが、彼は満足そうに笑顔を浮かべていた。何故? 「ちょっとキョン!さっさと来ないと置いて行くわよ!」 気付いたら三人は既に喫茶店へと向かっていた。 彼は「へいへい」と気だるそうに答えた後、再び私の方に向き直す。 「行こうぜ長門」 コクりと頷く。少し前を歩く彼の背中を眺めているだけで、何故か私は満たされた。 こうしている間にも、私の中に大量のエラーが蓄積していく。内容は理解不能。でも、何故か胸が苦しくなる。 これが彼の言う心なのだろうか? 喫茶店にて、各々自分の飲み物を頼んだ後、涼宮ハルヒがいつもの様に二本だけ爪楊枝の尖端を赤く塗り、 拳で握ると皆の前に突き出す。 私が引いたのは尖端の赤い楊枝。最後に引いた彼も赤い楊枝。これは本当に嬉しかった。 少しでも彼と二人きりでいられる。そう思うと心が踊る様だった。 だが、それを快く思わない人物がいた。言わずと知れた涼宮ハルヒ。彼女は唇をカモノハシの様に尖らせ、 不機嫌オーラを発しつつ頼んだアイスコーヒーを一気に飲み干し、独りで喫茶店を出た。 「何怒ってんだあいつ」 彼が呆れた眼差しで出入口を眺めている。 「おや、そんな事も解らないんですか?」 「そうですよ、キョン君。乙女心は繊細なんです。私達も行きましょうか」 二人も続いて出入口に向かう。それを追うようにして私達も付いて行く。 「一体何だってんだ?」 彼がぼそりと呟いた。彼は未だに涼宮ハルヒの好意に気付いていない模様。 彼と涼宮ハルヒが交際すれば、涼宮ハルヒに多大な影響を及ぼすかも知れない。それは、情報統合思念体が 待望している自律進化の可能性が秘められているかもしれない。 だが、もう一つ。涼宮ハルヒの能力が消滅するかもしれない。だが、これは私の見解であって総意ではない。 可能性に付いての報告をしていない。彼の身を再び危険に晒してはいけないのだ。 だが、私は何故こんなに苦しいのだろう。解らない。 だが、知りたいとは思う。でも理解しない方が良いのかも知れない。 最後に会計を済ませた彼が喫茶店から出て来ると私の隣に並ぶ。 「何回も言ってるけど、デートじゃないんだからね!?解ってんの!?」 涼宮ハルヒの怒号が頭に響く。 「解ってるって、お前こそしっかりやれよ」 「い、言われなくたって解ってるわよ!」 涼宮ハルヒは踵を返すと、肩をエベレスト山が如く突き上げ、ずかずかと歩いて行く。 その後に続いて、苦笑いを浮かべながら二人が付いて行く。 「さてと、何処に行こうか長門。やっぱり図書館か?」 …図書館。彼は私と二人になると必ず図書館に連れて行く。やはり私と一緒では退屈なのだろうか? そんなに私の相手は苦痛なのか。 私は自分が頭を横に振っているのに気付く。自身でも予期出来ない行動。 「嫌なのか?なら何処がいいかな。行きたい所あるか?とは言ってもこの周辺しか無理だぞ?」 行きたい所……。私は今までその様な事を考えた事は無かった。正直、反応に困った。 黙り込む私を見て察してくれたのか彼は。 「すまん。別に困らせたかった訳じゃないんだ。いきなり言われても思い付かないよな。 取り敢えず、散歩でもするか」 私は頷いた。やはり彼は優しい。私をまるで自分の妹を見る様な慈しむ瞳で見ている。 私は彼にとって妹、又は子供の様な感覚なのだろうか。 暫く歩くと、遊歩道の並木道へと出る。時間も早い為か、ウォーキングや犬の散歩などをする若年層から 高齢層がちらほらと見える。 右手に見える畔の水面が微風に揺らぎ、そこに注がれる太陽光が反射しキラキラと輝いている。 そんな一足早い春を感じながら、私は彼と並ぶ様に歩いている。 初めは彼の二歩後ろを付いて歩いていたのだが、今は隣を歩く事が私にとって至福の時なのだろう。 そう、思いたい。 「どうした?何か良い事でもあったのか?」 彼は微笑を浮かべながら私を見下ろす。 別に何もない。 私は素気ない態度で返す。最近は、極力思考や感情を表面に出さない様に心掛けている。 以前の私には必要なかったのだが、今の私にはそうして自分の役割を遂行する為に必要な処置なのだ。 他との境界線を引く、それが長門有希という個体が在るべき姿。 望んではいけない。求めたら私はもう戻れなくなる。 だが、彼は表面に出さない私の感情を、数少ないだろう情報から汲み取ってくる。 それは正直に言えば、嬉しいという表現に当てはまるものを私は感じている。だから、彼にだけは許してしまう。 だが私は自分の感情を表現に結び付けるプロセスを知らない。 そんな、私の素気ない態度など気にする様な素振りを見せずに、彼は「そっか」と一言呟いた後、 「ならいいんだ」と続ける。 彼は安堵したかの様に、優しく微笑んでいる。 私といる時、多くを語らない彼。やはり私といると退屈なのだろうか。そう思うと胸が苦しい。 ベンチに腰を下ろした彼に続き、その横に私も腰を下ろす。二人の間に開いた一人分のスペース。 それが私と彼との距離を表している。 それを自らが作り出し、落胆していると思うと酷く滑稽な有り様だ。 そんな私の心境を見抜いたのか彼が口を開く。 「どうした?やっぱ悩み事とかあるんじゃないか?俺で良ければ力になるが」 「……問題ない」 そう答えるしか私は術を知らない。彼は少し困った様に顔を顰めていた。 暫しの間、沈黙が続く。でも、彼と私の間ではそれが通常であり、むしろ言葉を交す事の方が少ないだろう。 私の語彙が少ない為と思われる。様々な書物等から得た情報を基に、日常に用いられる会話を想定し シュミレーションを行った事がある。だが、私には柔軟な会話は不可能とも言えるぐらい酷い結果だった。 先に沈黙を破ったのは彼だった。 「喉渇かないか?」 特に活動に支障を気足す程水分を浪費している訳でもなかったのだが、此処は彼の好意に甘えておくべきだろうか。 「ジュース」 「幅が広いな、好きな物は無いのか?」 頭を掻きながら苦笑いを浮かべる彼。 「甘い物」 私がそう答えると彼は。 「んじゃその検索項目から俺の独断で決めさせて貰うが構わないか?」 彼が選んでくれる物なら尚更問題はない。 「ない」 「了解、じゃちょっと待っててな」 そう言い残し、小走りで自販機に向かう彼の背中を眺めていたら、不思議と楽しい気持ちになる。 だがそれが同時に恐怖でもあった。 恐らく私はこの任務を終了した時、異常処理を起こした不良端末として削除されるだろう。 彼との過ごした時間、それは賭けがえの無い大切なもの。私は今過ごすこの平穏な日々を噛み締める様に、 記憶媒体へと記録していく。 「待たせたな」 彼に手渡される350mlのアップルジュース。 「俺の奢りだ」 私は彼から缶に視線を落としプルタブを引く。プシュッと音を起てると同時に林檎独特の甘い香りが漂う。 私がそれを口元に運び、チビチビと飲みながら目の前の景色を眺めてると。 隣からプシュッとプルタブを引く音がすると同時に、独特な甘い香りがしてきた。缶を傾けゴクリと三回程喉を 鳴らした後、私の視線に気付いたのか微笑みながら。「飲みたいのか?」と一言。 私が頷くと彼は嫌な顔一つせず私に缶を手渡す。 それを私は一口含んだ。薬の様な味がするのに、妙に甘ったるい。この喉がチリチリとする感覚は炭酸だろうか。 初めて飲んだそれをしげしげと見つめていると。 「どうだ?コーラは美味いか?」 と聞いてくる。正直、二択から選択するとなると迷う。 私が悩んでいるのを汲み取ったのか彼は。 「無理して答える事ないさ。俺も最初飲んだ時、思わず顔を歪めたしな。でも慣れたら結構美味いんだよな」 何かを思う様に空を仰ぐ彼から自然に溢れ出す笑い声。そんな彼を見て、私も口元が緩んでしまう。 「何だ、笑えるんじゃないかお前も」 迂濶だった。よもや彼に見られてしまうとは。 「笑ってなどいない」 「何強がってんだ?いいじゃないか、それだけ長門が成長したって事だろ?」 思わず口から溢れた否定句。だが、彼に言いくるめられてしまう。反論の一つも浮かばない。 暫くして、彼の携帯に着信が入る。恐らく、口振りからして涼宮ハルヒだろう。 電話を切り、苦笑いを浮かべながら彼は。 「戻るか」 と一言言った後、ベンチから立ち上がる。私もそれに続いて立ち上がり、先を歩く彼に付いて行く。 無言なまま二人並んで歩く並木道、私は彼の手にそっと触れてみた。 最初は驚いたのか目を丸くしていたが、私の意図を理解したのか。「仕方ないな」と呟くと、私の手を握り返してきた。 大きな手、温もり、この繋がりだけで私の中のエラーが消えていく。 少し恥じらう様にはにかむ彼を見上げ、私は思う。 私がここにいる理由。 私が私である理由。 彼と生きたい。 そう、私はヒトとして彼と共に過ごしたい。 それはきっと叶わぬ儚い願い。 でも、信じたい。 いつかその日は訪れると―― おしまい。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1276.html
恋人の居る男なら、いや、女の人でもそうだと思うが、一度くらい恋人に渡すクリスマスプレゼントを何にするか迷ったという経験があることだろう。 しかも付き合って一年目となれば尚更だ。 加えて言うと俺の彼女さんはちょっと特殊な属性持ちと来ているので、普通の女の子が喜びそうなもので喜んでくれるかどうかという意味では結構疑問があった。 そこで俺は、下策と承知しつつ本人に訊ねてみることにしたんだが、 「特に何も」 という味気ない返答が帰ってきただけだった。 味気なさの裏に何か別の感情が潜んでいたような気がしたんだが、残念ながら長門の表情を読むのに長けてきたこの俺であっても、そのわずかな変化から完璧な正解を見出せるほど鋭い勘の持ち主というわけではなかった。 というかそんなものが有ったら最初から迷ってなんかいないだろうって気もするな。 「いや、何もってことは無いだろう」 「何も」 食い下がる俺、突っぱねる長門。 「いやだから、何かこう、」 「何も」 もう一度食い下がる俺、やっぱり突っぱねる長門。 「そう言わずに……」 「……何も」 ヤバイ、長門の声が少しずつ鋭くなっている。 これはちょっとまずかっただろうか……、うーん、長門がこうなるとこれ以上聞き出すってのは難しいよなあ。ああしかし、クリスマスプレゼントのことで喧嘩になるなんて馬鹿みたいだよな。いや、喧嘩というより長門が一方的に不機嫌になっているだけのような気もするんだけどさ。 ここはもうちょっと上手く気を遣うべきだったか……、長門が、言わなくても分かって欲しい、何て雰囲気をかもし出してくること自体、予想外と言えば予想外だったんだが。……いや、そんな風に決め付けていた俺も悪いんだろうな。 宇宙人とはいえ、長門だって女の子だもんな。 ごめんな、長門。 「長門……」 「今日はもう寝る。あなたも寝るべき。……寝てから改めて考えるべき」 ……えっと、長門さん、あなた今口調はともかく声の響きがすっごく命令調な気がするんですが? とまあ、そんなわけで俺達は寝ることになった。 長門の家であるマンションに俺が泊まるって形なんだが、寝るのは同じ部屋だ。 仲良く並べられた二つの布団。そう、二つの。 今のところ俺達にそれ以上の進展は……、いやまあそのなんだ、人生焦っても仕方ないってことだよな! しかし相手は(それがエラーの原因になったとはいえ)二週間を一万回以上繰り返すなんてことをやってのけた人物だ。時間の感覚のずれってのを本気で考えるとちょっと怖い。 まあ、長門の人生がどんなに長かろうと短かろうと、長門が俺に居てほしいって望む限り、俺は長門の隣に居てやるつもりだけどさ。……俺が生きている限りな。 「なあ、長門。……って、寝ちまったよなあ」 すやすやと聞こえてくる規則正しい寝息を聞きながら、俺は小さくため息を吐いた。 そのため息には幸福と、所謂『やれやれ』みたいな感じが半々、いや、7:3くらいで詰まっていると思ってもらえればよろしいだろう。 なんだかんだ良いつつ俺は幸せなんだよな。こんな可愛い恋人が居るわけだしさ。 「……ん、うん……」 吐息の合間から、寝言めいた言葉が聞こえる。 こういうときの長門は本当に可愛いよなあ。普段の無表情系クールビューティも良いが、無防備な寝顔は別の意味で良い。 思わず頬を突っついてやりたくなるな。 「ん、……き、きゅ……」 寝言か? 一体何を言っているんだろうな? いや、意味のある言葉とは限らないわけだが、 「……ん、給料三か月分」 待て、長門、それは本当に寝言か? 大体給料って言ったって俺はまだ大学生の身の上だからバイトしかしていないし、そもそも給料三か月分ってのはクリスマスプレゼントではなくてだな、 「の、図書カード……」 ……。 ……。 ……いや、もう、なんていうか、ツッコミどころ満載過ぎて突っ込めないってのはきっとこういう時のことを言うんだろうな! 本当、これ以上ないくらいの長門らしい要求だよな……。俺には思いつかなかったけどさ。 しかし給料三か月分なんて単語はどこから出てきたんだろうな。やっぱりあれか、あれなのか? いやいやまさか、俺達はまだ大学なわけだし……、まあ、そんな先のことは良いか。今考えるのはそうういことじゃないんだ。 とりあえずプレゼントは決まったから。その用意だ。 しかしバイト代三か月分……、6桁かよ。 大学生にとっては荷が重い数字だが、仕方ない、ここは頑張って工面してやるか。 可愛い長門のためだもんな。 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1788.html
ソレは突然起こり突然終わった 情報統合思念体内で急進派が主権を握り ハルヒを拉致・解剖しようと乗り込んできたのだ 小泉・朝比奈 両名はその場で殺され ハルヒはどこぞに連れて行かれた そして俺と力を封印された長門は 不滅のゾンビ女・朝倉涼子の手により 囚われの身となってしまった 長門が別の場所に連れて行かれる 長門と目が合った あんな怯えた目の長門は始めてみた キョン「・・・・・なんで俺達を殺さない」 元1年5組の委員長に聞いてみる 朝倉「だってずっと消えてたんだもん♪ 私も少しは遊びたいわ・・・・・」 この時俺は もう長門と会えないんだろな と悟った・・・・・ 長門は床のの上に転がされていた 長門が動くような気配は無い、気絶しているのだろう その姿はあまりに無残であった 朝倉から”遊び”という拷問を受けたからである 長門の全身はいたるところ傷だらけで血がにじみ、皮膚は赤く腫れ上がっていた 鞭で打たれ衣服はぼろぼろになっていた コツ、コツ、コツ、 足音が近づいてくる この足音は朝倉だ また”遊び”をはじめようというのだろうか 長門の捕らえられている部屋に電灯は無い 扉についている鉄格子の隙間からもれる光が唯一の光だ 鉄格子からもれる光に人影が映る、朝倉が扉の前に立っているのだろう ガチャリとカギが開く音が聞こえ、扉が開く 朝倉「おはよう!! 長門さん、ご機嫌いかが?」 扉が開き廊下の電灯の光が暗い牢屋に入った 牢の中はすこし明るくなり、長門の姿が見えるようになる 長門を拘束するものは何も無かった 手錠も、足かせも何も身につけていない 衣服すら纏っていない もはや彼女を拘束する必要は無いのだ 手も足も思うように動かせないのだから 両足の腱は切断されていた 両手の指はありえない方向に曲がっている 全身の傷は紫色に変色していた 長門「・・・・・・・・・彼はどこ?」 まだ潰されていない まだ腐っていない 綺麗な目で睨む 朝倉「まだキョン君のこと考えてるの?」 朝倉はやれやれと手でジェスチャーして 朝倉「しょうがないわね、また遊んであげるわ」 長門は牢屋から引っ張り出され、”遊び”を受ける 長門の入れられている牢獄には何も無い 床に排泄物用の穴があいているだけで、それ以外は突起物すらない 今の長門は自分で体を動かすことすら難しい それゆえに排泄があっても垂れ流しであり、長門の全身は傷と汚物にまみれている 長門の汚れは基本的にはそのままだ 長門の汚れは”遊び”の時にだけおとされる それは長門が犯されるときだけであった 大きさ2m程の二足歩行をする犬達それが長門の遊び相手だ 朝倉「人間が相手じゃつまらないでしょ?わざわざ作ったのよw」 笑いながら言っていたのを思い出した 犬達が長門を犯すときはまず牢獄から水のあるところに連れて行き ホースで長門に水を浴びせかけ、デッキブラシで長門の汚れを落とす 針の先のようなデッキブラシは、傷だらけの長門の全身に苦痛を与える 長門はその苦痛で顔をゆがめるが、犬達は容赦なく長門の全身をデッキブラシで洗っていく そして一通り長門の全身の汚れが落ちたら、犬達は長門を陵辱するである はじめは抵抗もした、しかし犬達に押さえつけられすぐに動けなくされた そして抵抗すればすれほど、犬達はさらに非道な行為を長門に加えるのである それを理解してから長門は抵抗しなくなった 陵辱が終われば再び汚れを落とされ牢に戻される いつのころからだろうか長門に生理がこなくなった ストレスと栄養不足によるなのか妊娠したためかは今となってはもうわからない ザッ、ザッ、ザッ 誰かの足音が近づいてくる この足音は犬だと長門は感じた 犬が来る場合はほとんどが食事か陵辱だ 食事の方がいい 長門はそんなことを思っていた 扉が開くとそこには犬が立っていた 犬「・・・クエ」 そう言っては右手に持った大き目のお椀をひっくり返す 中身が床に落ち、つぶれた泥団子のようなものが床にできあがる これが長門の食事であった 床に落ちたものはもう食べ物というようなものではなくもはや汚物であった 長門は芋虫のように這いながら食べ物のところまで行き、それを食べる ぴちゃ・・ぴちゃ・・ 長門は舌を出してそれを口の中にわずかづつ入れる 皮肉ながらほとんどの歯を抜かれてしまった長門にとって この汚物のような食事しか食べることができなかった 硬いものなどもう摂取することはできなくなっていた どれだけ時間がたっただろう・・・・ 朝倉「ねぇw すこしは身だしなみに気を使ったらどうw?」 ひさしぶりに長門と遊ぼうとした朝倉であったが、朝倉はは長門の姿を見て大笑いした そして朝倉は犬達に命じ長門を牢から連れ出す 犬達に抱えられ、長門はいつもとは違う部屋に連れて行かれた そこは20畳ほどの広さの部屋、部屋の中には何も無い いや、ひとつだけ壁に大きな鏡がかかっていた 朝倉「今の自分の姿を見てみなさいw」 鏡には長門らしいものが映っていた 髪の毛はほとんど抜け落ちていた 左眼は潰れて 腐り落ちている 骨と皮でガリガリになりアバラがうきでている 全身はドス黒く変色し、どこに傷があるのかさえわからない 長門「う・・ぁ・・・あ・・」 長門は泣いた、しかしもう涙はもうでてこなかった このころになると犬達はもう長門を陵辱するどころか触れることさえ嫌がっていた 長門は床にはいつくばり食事をした 汚物のような物を何とか食べ終えると長門はそのまま眠りに落ちた 朝倉「・・・・・ん!・・さん!長門さん!」 それは朝倉の声であった わずかに右目を開き、長門は朝倉を確認する 朝倉「長門さん、まだキョン君の事が気になるの・・・?」 長門はかすれた声で答えた 長門「・・・彼・・・を・・・・解放・・・・・し・て・・」 朝倉「長門さん、そこまでキョン君のことを・・・」 長門「・お・・ねがい・・」 朝倉「・・・わかったわ」 長門「・・・・・・・・・・あ・・」 朝倉「もうこんなことやめる!あなたの思いはわかったわ!」 長門「あ・・・あ・・」 朝倉「キョン君も全部なくなっちゃったしねww」 長門「あ・・う・・ぇ?」 朝倉「もうキョン君はないの」 残念そうな顔をする元委員長 朝倉「あんなにいっぱいあったのに・・」 長門「ど・・う・・い・・う・・」 朝倉「あれ、気がつかなかったのw?あなたいつもキョン君を食べてたじゃないw、残さずに」 長門「・・・・!!!!」 朝倉「キョン君はおいしかった?」 朝倉のその言葉を聞いたとたん、長門は痙攣し始めた 長門の口から何かが吐き出される それは先ほど食べた”食事”であった 朝倉「あらあら、残しちゃだめでしょう!どこの部分かわからないけど”キョン君”なんだから!」 朝倉はそういうと靴の先で”キョン君”をつつき長門の口のそばまで持っていった 朝倉「ほら、いつもみたいにw♪ 残さず食べてw♪」 長門「ぇあ・・う・ぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」 絶望 まさにそうとしか呼べない顔をした物がそこにはあった もう彼女は何も感じない そして何も考えない 長門の心は崩壊した 圧迫。 皮膚感覚につよい圧迫を感知した。 覚醒する。 視野は暗いまま。 私は睡眠から覚醒した。 場所は、私のマンションの一室。 抱きついているのは私の一番大切な人。嗅覚で判る。 その人が、激しく動揺しながら私に抱きついている。 長門「どうしたの」 尋ねる。 彼は普段は至って平静で、このような行為をすることはない。 キョン「長門……な、長門……」 動揺と安堵の混じった声がする。 長門「落ち着いて」 キョン「スマン。悪い夢を見てた」 長門「どのような夢」 夢には人間の精神構造が反映されるという。 ならば彼の夢を聞くことで彼の精神構造の一端を知る事が出来るだろう。 それは私にとってとても大切な事だ。 キョン「俺が、殺されて、お前も何かに捕まってて、俺が食事にされちまってお前がそれを知らずに食っちまう夢だ」 長門「その夢で私はどうしたの」 キョン「わからん。まるでおかしくなったみたいに、発狂したみたいに叫んでた。イヤだった」 長門「そう」 キョン「俺が死ぬより、お前が叫ぶ事のほうがイヤだった。 ゆ、夢で、悪夢でよかった。よかった……長門……」 彼は寝汗をびっしょりとかきながら、私を腕の中に固く抱きしめている。 いつもの事だが、彼の肉体は皮膚接触するだけで私の肉体に多幸感を発生させる。 このような歓喜を与えてくれる彼に対し、私は可能な限り幸福を与えたいという欲求に駆られる。 キョン「そ、その……スマン。なんか、怖い夢見たってだけでお前を起こしちまって……ま、まるでガキみたいで……アホだな俺」 今度は彼は羞恥と自省に凝り固まっている。 経験上、こういう状況の彼を普段の彼に復帰させるには一つの最適解がある。 私は彼の顔を両頬に手を当てて固定する。 そしてゆっくりと顔を近づけていく。 瞼を閉じる。 彼がこうするときはそうするものだと言ったから。 唇に柔らかい感触。彼の唇。彼の匂い。彼の鼓動。彼の唾液。彼の昂ぶり。 胸の中に去来する限りない幸福感。 彼の唇から感じる、耐えられないほどの快美感。 上手く言語化できない私の想念を、可能な限り彼に伝える。 長門「……大好き」 朝倉「・・・・・ん!・・さん!長門さん!」 長門「う、ぁ・・・!!??」 朝倉「駄目よ、気絶なんてしちゃw♪」 長門「そん・・な・・・・・・・」 そう、夢だったのだ。うたかたの夢。 ひょっとしたらそれは≪かみさま≫の最後の慈悲だったのかもしれない。 朝倉「さ、た、べ、てw♪」 もう、長門には朝倉に抵抗する力も心もなかった。 長門「ふ、うぐぅぅぅぅ・・・あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ・・・・・・・・・・・」 そして今度こそ長門は目を覚ますことはなかった。 <<完>>
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4541.html
コーヒーの香りが部屋を包む 目が覚める、もう既に日は昇ったらしく、鳥が鳴いている、ああ、朝だ。 そこまで考えて、今は何時だと思った。 いつもは、そう。 7時に目覚ましがなって・・・ 冷や汗がタラリと流れ、おそるおそるアナログの時計を見た、8時52分。 瞬間3つの事が頭に浮かんだ 1 「会社へ出勤しなければならない」 となると、当然。目覚まし時計をセットしていたであろう7時に起きて8時に家を出、そして電車に乗らなければならない。 さて今の時間は? おっと、1分進んでしまった様だ。 8時53分。 会社間に合う?無理 2 「ええい、遅刻して怒られるくらいならいっその事今日くらい有給取って休んじまえ」 となると、当然。会社へ連絡しないといけないわけで。 有給というものは、事前に申告さえすれば誰でも取得できるわけだが あの部長がそれを許すだろうか 風邪引いてるんで…と、この間似た様な台詞を言ってしまった挙句、薬でもなんでも飲んで出勤してこいバカと怒鳴ったあの部長の顔が浮かぶ。 横でニヤケ顔の課長の姿が浮かんだが、すぐにかき消した。 3「もはやあきらめる」 返事が無い、ただのしかばねの様だ などという事を考えていると、寝室のドアが開いた。 「どうしよう、もう行かなきゃ」 とりあえず俺は1を選択した。 当然と言えば当然だと思う。 急いで着替えようとベッドを抜け出す。 俺は焦っていたのだが、寝室に入ってきたそいつはゆっくりと微笑んで 「どこへ?」 と、疑問系で返してきた。 会社だよ、会社 俺は慌てる、余計に慌てる 「なぜ?」 なぜって、俺は社会人でだな 「今日は、日曜日」 あぁ 頼むから マジで そういう事は最初に言ってくれよ なぁ、有希。 ◇◇◇◇◇◇ ジャムをトーストの上に乗っける。 むしゃむしゃと食べ、先程から良い匂いがしていたコーヒーを飲む。 そんな朝食、いつもと変わらぬ朝食。 違うのは今日は平日と違い、ゆっくりと咀嚼している事くらいか。 「ごめんなさい」 起きてから、今までの事をさらりと説明したあと、エプロンを付けた有希がぺこりと頭を下げた。 聞けば日曜日くらいはゆっくり寝かせてやろうと目覚ましのスイッチをオフにしていたらしい。 そういえば寝る前にそんな事を言っていた様な気がする。 いやはや、習慣というのは恐いものである。 「いや、忘れてた俺もバカだよな。すまん」 2枚目のトーストが焼けた音がして、ジャムのビンを手に取った。 俺には読めない文字のラベルが貼られていて、どことなくどこかの国の王宮で使っている様な高級品をイメージさせる イチゴのジャムを有希がトーストに乗っける。 俺はコーヒをすすり 「美味い」 と、呟いた。 そういうと有希は、ジャムは? と聞いてきた 「もしかして、ジャムも手作りなのか?」 こくりと頷く。 なんでも最近の趣味は以前の読書オンリーというわけではなく 読書8割、ハンドメイド2割だそうで 実はこのコーヒーカップも有希の手作りだったりする。 2枚目のトーストを頂きながら 「美味しいぞ」 本心からそう思った。 朝食を済ますと、俺は、まぁとにかく着替えることにした。 有希は洗濯物を干しに山へ芝刈りに…じゃなかった。 川へ洗濯に…のくだりの方が合ってるよな。 ベランダで洗濯物を干していた。 隣の奥さんと何やら談笑してるみたいだった、近所づきあいも上手にこなしている。 俺は、そんな有希の姿に感心しつつ新聞を広げ、活字の海へと身を投げた。 見てるのは昨日のプロ野球の結果とかテレビ欄だけじゃないぞ、ちゃんと経済面もみてるし、アダルトなページもしっかりチェック済みだ。 ふとSOS団の根城と化した文芸部室で読書に勤しむ高校時代の有希の姿が脳裏に映る。 これじゃ高校時代と立場が逆だなと、昔の事を思い出して少しだけ笑った。 有希が俺の顔を覗き込んだ 綺麗な目、透き通るような、まるで水晶みたいだと思った。 「どうした?」 読んでいた新聞をたたむ。 何か言いたげだな、と。俺は続けた くいと、有希の目線がカレンダーへ向く。 俺もつられてカレンダーへと目線をやる、どうしたんだ? 「今日は、あなたの誕生日」 もう一度カレンダーを見た。 あぁ、と。 言われてから思い出した。 今日は俺の誕生日だったんだ、と。 最近忙しかったからな・・・ 「いつもお仕事ご苦労様」 ぺこりと頭を下げた有希、なんだかこっちまで頭を下げてしまった。 「だから、私をプレゼント」 その日は、人生で一番幸せな誕生日だった。 言い方は悪いが、二人のハンドメイドが誕生したのは、それから10ヵ月後のことになる。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4240.html
コーヒーの香りが部屋を包む 目が覚める、もう既に日は昇ったらしく、鳥が鳴いている、ああ、朝だ。 そこまで考えて、今は何時だと思った。 いつもは、そう。 7時に目覚ましがなって・・・ 冷や汗がタラリと流れ、おそるおそるアナログの時計を見た、8時52分。 瞬間3つの事が頭に浮かんだ 1 「会社へ出勤しなければならない」 となると、当然。目覚まし時計をセットしていたであろう7時に起きて8時に家を出、そして電車に乗らなければならない。 さて今の時間は? おっと、1分進んでしまった様だ。 8時53分。 会社間に合う?無理 2 「ええい、遅刻して怒られるくらいならいっその事今日くらい有給取って休んじまえ」 となると、当然。会社へ連絡しないといけないわけで。 有給というものは、事前に申告さえすれば誰でも取得できるわけだが あの部長がそれを許すだろうか 風邪引いてるんで…と、この間似た様な台詞を言ってしまった挙句、薬でもなんでも飲んで出勤してこいバカと怒鳴ったあの部長の顔が浮かぶ。 横でニヤケ顔の課長の姿が浮かんだが、すぐにかき消した。 3「もはやあきらめる」 返事が無い、ただのしかばねの様だ などという事を考えていると、寝室のドアが開いた。 「どうしよう、もう行かなきゃ」 とりあえず俺は1を選択した。 当然と言えば当然だと思う。 急いで着替えようとベッドを抜け出す。 俺は焦っていたのだが、寝室に入ってきたそいつはゆっくりと微笑んで 「どこへ?」 と、疑問系で返してきた。 会社だよ、会社 俺は慌てる、余計に慌てる 「なぜ?」 なぜって、俺は社会人でだな 「今日は、日曜日」 あぁ 頼むから マジで そういう事は最初に言ってくれよ なぁ、有希。 ◇◇◇◇◇◇ ジャムをトーストの上に乗っける。 むしゃむしゃと食べ、先程から良い匂いがしていたコーヒーを飲む。 そんな朝食、いつもと変わらぬ朝食。 違うのは今日は平日と違い、ゆっくりと咀嚼している事くらいか。 「ごめんなさい」 起きてから、今までの事をさらりと説明したあと、エプロンを付けた有希がぺこりと頭を下げた。 聞けば日曜日くらいはゆっくり寝かせてやろうと目覚ましのスイッチをオフにしていたらしい。 そういえば寝る前にそんな事を言っていた様な気がする。 いやはや、習慣というのは恐いものである。 「いや、忘れてた俺もバカだよな。すまん」 2枚目のトーストが焼けた音がして、ジャムのビンを手に取った。 俺には読めない文字のラベルが貼られていて、どことなくどこかの国の王宮で使っている様な高級品をイメージさせる イチゴのジャムを有希がトーストに乗っける。 俺はコーヒをすすり 「美味い」 と、呟いた。 そういうと有希は、ジャムは? と聞いてきた 「もしかして、ジャムも手作りなのか?」 こくりと頷く。 なんでも最近の趣味は以前の読書オンリーというわけではなく 読書8割、ハンドメイド2割だそうで 実はこのコーヒーカップも有希の手作りだったりする。 2枚目のトーストを頂きながら 「美味しいぞ」 本心からそう思った。 朝食を済ますと、俺は、まぁとにかく着替えることにした。 有希は洗濯物を干しに山へ芝刈りに…じゃなかった。 川へ洗濯に…のくだりの方が合ってるよな。 ベランダで洗濯物を干していた。 隣の奥さんと何やら談笑してるみたいだった、近所づきあいも上手にこなしている。 俺は、そんな有希の姿に感心しつつ新聞を広げ、活字の海へと身を投げた。 見てるのは昨日のプロ野球の結果とかテレビ欄だけじゃないぞ、ちゃんと経済面もみてるし、アダルトなページもしっかりチェック済みだ。 ふとSOS団の根城と化した文芸部室で読書に勤しむ高校時代の有希の姿が脳裏に映る。 これじゃ高校時代と立場が逆だなと、昔の事を思い出して少しだけ笑った。 有希が俺の顔を覗き込んだ 綺麗な目、透き通るような、まるで水晶みたいだと思った。 「どうした?」 読んでいた新聞をたたむ。 何か言いたげだな、と。俺は続けた くいと、有希の目線がカレンダーへ向く。 俺もつられてカレンダーへと目線をやる、どうしたんだ? 「今日は、あなたの誕生日」 もう一度カレンダーを見た。 あぁ、と。 言われてから思い出した。 今日は俺の誕生日だったんだ、と。 最近忙しかったからな・・・ 「いつもお仕事ご苦労様」 ぺこりと頭を下げた有希、なんだかこっちまで頭を下げてしまった。 「だから、私をプレゼント」 その日は、人生で一番幸せな誕生日だった。 言い方は悪いが、二人のハンドメイドが誕生したのは、それから10ヵ月後のことになる。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3090.html
月曜日 この高校に入って2回目の夏休みも、去年同様ハルヒに振り回されて終わった。 まあ流石に去年みたいに延々とループさせられる、っつーことは無かったがな。 この夏休みを語る上で1番話さなくてはいけないこと、それは俺とハルヒが付き合いだしたってことだ。 告白したのは俺。まあなんというか、いい加減はっきりさせないといかんと思ったわけだ。 SOS団のメンバーの反応は、長門はいつものようにノーリアクション、朝比奈さんは笑顔で祝福、 んで古泉は「おやおや、ようやくですか」とか言って例のニヤケ顔さ。 まあ結局のところ俺がハルヒに振りまわされるっつースタンスは不動のもののようで、 デートと言っても不思議探索の延長みたいな雰囲気、まあ俺もそういうもんかなと思いつつ、 もうちょっと恋人らしく甘々な言動があってもいいんじゃないかという希望もあるわけだ。 さて、回想はこれぐらいにしようか。現在に戻ろう。 夏休みは終わり、今日からまた学校が始まる。この忌々しいハイキングコースとも感動の再会だ。 おー1ヶ月俺が登らなくて寂しかったかー。俺は全然寂しくなかったぞー。 暦の上では秋なんだからもっと涼しくていいだろうに、8月とまったく変わらぬ日差しで俺の体力を奪う. もう学校につくころには俺のHPは半分になっていたさ。 「ようハルヒ。普通ならここで久しぶりだとか言うんだろうが、まったく久しくないな。」 「まったくね。まあでも部室に行くのは久々だから、それは楽しみね!」 どうやらコイツの頭の中ではこれからやる始業式やHRなどは省略されてるらしい。もっとも俺もだが。 よって校長先生のありがたーい話や岡部の熱血HRなどは省略させていただく。 そして、放課後がやってきたわけだが、部室に行こうとする俺をハルヒが呼びとめた。 「ん?どうした?ハルヒ。」 「悪いけど今日、部室には行けないわ。」 「珍しいな、なんでだ?」 「母さんが熱中症でダウンしちゃったみたいなのよ。さっきメールが来てね。 ほっとくわけにもいかないから先に帰らせてもらうわ。」 「そういうことなら早く行ってやれ。みんなには俺から伝えとくさ。」 「わたしがいないからってみくるちゃんや有希にちょっかい出すんじゃないわよ!」 「出すか!」 そしてハルヒは笑いながら走り去ってしまった。やれやれ…… さてと、じゃあ部室に行くとしますかねえ。 例によって朝比奈さん着替え対策としてのノックをしつつ、 返事が無いので多分長門だけだろうとドアを開けたら、案の定長門だけだった。 「よう、長門だけか。」 と俺はあいさつをする。 この場合、無反応が20%、こっち見て頷くのが40%、「そう」と短い返事をするのが40%。 これは今までの長門の反応を統計的に分析しただいたいの確率だ。 さーて、今日はどのパターンかな。 「……うるさい。」 おお、今日は短い返事のパターンか。……ってあれ?なんか今変なことを言われたような…… 「あの~長門さん?今なんと……?」 「うるさいと言っている。本に集中できない。黙って。」 この時ようやく俺は、今の異常な状態に気付いたのだ。 「おい!一体どうしたんだ?……長門!」 俺が長門の肩をつかむと、長門はそれを冷たく振り払った。 そして本を閉じて 「……帰る。」 荷物をまとめて席を立ってしまった。 ガチャリ 丁度その時、ドアが開いて、古泉と朝比奈さんが入ってきた。出ようとした長門と丁度向かい合わせになる。 「あ、長門さん、こんにちはぁ~。」 「おや?帰られるのですか?」 「……どいて。」 「え?」 長門はそのまま外に出ていってしまった。 「あ、あの~今のは一体……?」 「部室で何かあったんですか?」 わからん。俺が部室に来た時からあんな感じだった。俺にもさっぱりだ。 あんな不機嫌そうな長門は見たこと無い。 コンコン と、その時だった。部室のドアがノックされたのだ。 ハルヒは休みだし、長門は今さっき出ていったばかりだ。 となると…… 「ど、どうぞ~!」 朝比奈さんの声でドアが開き入ってきたのは、意外な人物だった。 「喜緑さん!」 「お久しぶりです。」 喜緑江美里さん。俺より一個上の先輩で生徒会の書記であり、 長門と同じインターフェイスだったりする宇宙人なのだ。 「一体、なんのご用で?今は生徒会が関係する企画をする予定はありませんが……」 「いえ、今日来たのは長門さんのことについてです。」 「長門さんのこと、ですかぁ?」 「ええ。今日の長門さん、少しおかしくありませんでしたか?」 少しどころじゃありませんよ。あんな敵意ムキだしな長門、始めてです。 「やはりそうですか……」 「今長門さんに何が起こっているのですか?」 「単刀直入に申し上げます。長門さんは今、『反抗期』なのです。」 「「「反抗期!?」」」 俺と朝比奈さんと古泉の声が見事にハモった。 長門が……反抗期? 「はい。多くのインターフェイスは1回はこれを経験します。原因は自我の発達。 おそらく長門さんはこの夏様々な経験をして、自我が大きく成長したのでしょう。」 「その反抗期というのは我々人間と同じように、時と共に直るものなのでしょうか?」 「ええ、その点については問題ありません。個人差はありますが、5日程度で通常に戻るでしょう。」 5日か……うん、それぐらいなら対したこと無いな。 「ただし、我々インターフェイスの反抗期は、人間のそれよりも危険度が高いです。」 「と言うと?」 「過去、朝倉涼子が暴走しましたね?実はあの時も、彼女は反抗期だったのです。」 「マジですか!」 「ですから、そういう暴走を引き起こす可能性もあるかもしれないわけです。」 「いや、長門に限ってそんな……」 「今までの彼女とは別人のようになってしまう、それがインターフェイスの「反抗期」です。 もし長門さんが限度を超える暴走をした場合、私の手で彼女の情報連結を解除しなければなりません。」 「そんな……」 「私としてもこれは避けたいと思っています。 ですから皆さんには、長門さんが暴走しないように刺激しないで見守っていてほしいのです。 これからの5日間、不快にさせてしまうこともあるかと思われます。 でもこれも長門さんの成長なのです。どうか、見守ってあげてください。お願いします。」 そう言うと喜緑さんは頭を下げた。 ……分かりましたよ喜緑さん。これがあいつの成長のためなら、俺達はそれに付き合いますよ。 なあみんな? 「ええ。長門さんはSOS団の大事な仲間ですから。」 「ぼ、暴走なんて、させません!」 「……ありがとうございます。長門さんを、よろしくお願いしますね。」 喜緑さんはもう1度頭を下げた。 こうして、長門反抗期ウィークが始まったわけだ。いろいろ不安だが、乗り切るしかないよな…… 火曜日 朝、むしむしする熱さの中を坂を登って登校するあたし。 流石のあたしでも、これは結構体力を削られる。 やっぱり部室にもクーラーが必要よね。また電気屋さんに頼みこもうかしら。 荷物運びやセッティングは全部キョンに任せちゃいましょ。 校門にさしかかった時、見慣れた顔と鉢合わせになった。 「有希じゃない、おはよう。」 あたしはいつものようにあいさつをする。 いつもの有希なら小さな声で「……おはよう。」と返してくれる。 だからあたしもそういう返答を期待してたんだけど、返ってきた言葉は予想外のものだったわ。 「……話しかけないで。」 え? 今、なんて? 「ちょ……有希!」 私の声にも応じず、そのまま歩き去ってしまった。一体……なんなの? もしこれがキョンとかだったらそのままケリとか食らわすとこなんだけど、 相手が有希じゃそういうワケにもいかないし、する気も起きない。 怒りよりむしろ混乱の方が大きかった。あの有希があんなこと言うなんて……どういうこと? パニック状態のまま、あたしは教室に着いた。 既にキョンはあたしの席の前に座ってた。 「ようハルヒ。今日は遅いな。」 「ちょっと聞いて!さっき下駄箱で有希と会ってね……」 あたしはさっき起こった出来事をキョンに説明した。 でもキョンは驚く様子は無い。「やっぱりか……」みたいな表情をしてる。 「驚かないわね。なんか知ってるの?」 「ああ。ハルヒにも話しておこうと思ってたんだけどな、 今の長門はなんていうか、ちょっとナーバスなんだ。一般的に言う『反抗期』ってヤツらしい。」 「反抗期?」 あの有希が反抗期……?想像もつかないわ。 でもさっきの態度も反抗期だってなら説明できる。 「そういうことだ。時と共に直るはずだから、俺達に出来るのは見守ってやることだけさ。」 「……そうよね。それしかないわよね。無理に叱り付けても逆効果っぽいし。 それにしてもあの有希が反抗期だなんて……」 「確かに意外だが、俺はいいことだと思ってる。あいつは自分を出すヤツじゃなかったからな。 どんな形であれ、自分を出そうとしてるのは良い傾向だ。 長門なりに変わろうとしてるんだよ、きっと。」 キョンの言う通りね。こいつ、あたしよりも団員のことを分かってるかも…… ……いいえ!そんなことないわ!団員のことを1番分かってるのは団長であるあたしなんだから!! 授業を終えて、待ちに待った放課後。 あたしは掃除当番だから、キョンを先に行かせる。 昨日休んだから久しぶりの部室! ワクワクしながらあたしはドアを開けた。 「遅れてごっめーん!……あら?有希は?」 「帰っちまったよ。昨日と同じようにな。」 結局、有希は帰ってしまったらしい。 「まったく、しょうがないわねあの娘は。」 「すいません涼宮さん、彼女の無礼、僕が代わりに……」 「古泉くんが謝る必要は無いわよ!それにあたしは怒ってないわ!」 あの娘が変わろうとしてるんなら、あたしもそれを応援するつもりよ だって有希も大事なSOS団の団員なんだから! 「みんな!団長命令よ!有希のことを優しく見守ってあげること!!」 水曜日 今日は水曜日。長門さんが反抗期に突入してから今日で3日目です。 幸い、言動にトゲがあるものの、これと言った事件は無くここまで来ています。 このまま何事も無く反抗期が過ぎ去ってくれれば良いのですが…… そう願いつつ、いつものように部室のドアを開けます。 「こんにちは。おや、今日はお二人がいませんね?」 部室にいるのは長門さんと朝比奈さんのお二人だけでした。 元々少し長門さんが苦手なところがあった朝比奈さんです。 現在の反抗期中の長門さんとの二人きりな状況、たいへん苦痛であったと思われます。 現に僕がドアを開けた瞬間、彼女の顔からは安堵の色が伺えました。 朝比奈さん、お疲れ様です。 「こんにちは古泉くん。あの、涼宮さんとキョン君は、今日は行くところがあるからと連絡が……」 「なるほど。所謂デートということでしょうか。 それは非常に望ましいことですね。是非彼は彼女と仲良くなって頂きたく……」 ガタァン!!! 「ひぃ!?」 彼と涼宮さんがいないので比較的静かな部室に突然響いた音。 何事かと音のした方向を見ると、なんと長門さんが本棚を蹴っていました。 ……正直、かなり怖いです。 長門さんを無視して朝比奈さんと会話をしたのがマズかったのでしょうか…… 「こ、こんにちは長門さん。今日もいい天気ですね。」 「……そう。」 これは朝比奈さんで無くとも精神的にキツいですね。 今までのパターンから考えて、そろそろ「……帰る。」と言う頃でしょうか? 「……古泉一樹。」 名前を呼ばれました、さて、「……帰る。」ですかね? しかし次の一言はまったくの予想外で、僕を多いに驚かせました。 「……オセロでの対戦を希望する。」 ……マジで、言っているのですか? そういうわけで、何故か長門さんとオセロで対決することになりました。 結果……8割以上が長門さんの白で埋め尽くされるという結果に。惨敗、というヤツですね。 「………」 僕は彼ほど長門さんの表情を読むのが上手くはありませんが、何やら今の長門さん、不満そうに見えます。 はて……何がマズかったのでしょうか。 「あなたは私をバカにしている。」 はい!? いえ、まったくそんなつもりは無いのですが…… 「あなたの知能レベルとこのゲームの熟練度を考えれば、まだこのゲームに慣れていない私に勝つのは容易。 でもあなたはこれだけ負けている。つまりあなたは私に対して手加減をした可能性が高い。 私が今情緒不安定な状態になっているのは自覚している。その私を気遣ったということ? バカにしないで。こんな勝ち負けで私の感情は爆発しない。あなたのやっていることは侮辱。」 久々に聞きましたね、長門さんのマシンガントーク。 しかし彼女の意見はかなり的外れです。僕は手加減なんてしていないし、ガチでこの弱さなのです。 自分で言っていて悲しいですが、僕はこの手のゲームに弱いと自信を持って言えます。 普段の彼とのゲームの様子を見ればわかるはずですが…… やはり彼女は今冷静な判断力を欠いているようです。 「お言葉ですが、僕は手加減したつもりはまったくありませんよ。僕は普段から……おっと失礼。」 携帯電話が鳴りました。閉鎖空間のようです。 やれやれ、どうやら今デート中の彼が何かやらかしたそうです。 「すいません長門さん。閉鎖空間が出たようですので、僕はこれで……」 「ダメ。あなたは私と次のゲームをするべき。」 「いやしかし、閉鎖空間が……」 「あなたがこの部屋を出ることは許さない。私とゲームをするべき。」 「な、長門さぁ~ん、ゲームなら私がお付合いしますからぁ~!」 「あなたではダメ。私は古泉一樹との勝負を所望している。盤は準備した。さあ……」 「いい加減にしてください!」 言った後、しまったと思いました。僕ともあろう者が怒鳴ってしまうとは…… すぐに謝ろうと口を開きかけたところで、長門さんの様子がおかしいことに気付きました。 「うっ……うっ……」 なんと、あの長門さんがうずくまって泣いているのです。普段の彼女ならこんなことはありえない。 しかし僕はようやく理解しました。彼女は今、感情のコントロールが出来ない状態にある。 それは反発の感情だけではなく、喜びや悲しみなどの感情においても同じ。そして今は、悲しんでいる。 「長門さん……」 朝比奈さんも不安そうに長門さんを見ている。 ……仕方ありません。機関には後で罰を受けるとしますか。 今の状態の彼女を放っておけるほど、僕は冷徹になれそうにはありません。 「申し訳ありません長門さん。もう一勝負、お付合いしますよ。」 結局、僕が勝てて解放されたのは下校時刻ギリギリでした。 しかし、何故彼女はこんな状態になってしまったのでしょうか。 「自我の目覚め」と喜緑さんは言っていました。ではそのトリガーとなった出来事とは……一体? 木曜日 今日で長門さんが反抗期に入って4日目。 私は昨日と同じように長門さんと二人きりで部室に居ます。 私なりに、今までの出来事を整理してみたんです。そして気付いたことがあります。 「はい、長門さん、お茶です。」 「……。」 長門さんは特に何も言いませんでしたが、ちゃんとお茶を貰ってくれました。 私は勇気を出して、長門さんに尋ねてみます。 「ど、どうですか?おいしいですか?」 これは私が考えていることを確かめる意味でもあるんです。 すると長門さんは、口を開きました。 「……割と。」 やっぱり…… 今の返答で確信を持ちました。長門さんは、私や古泉くんに対してはあまり反発しません。 昨日の出来事も、敵意を持ってやったことじゃないと思います。 そして何より、昨日は帰らずに最後まで居たこと。それは、彼と涼宮さんがいなかったから…… ガチャ 「だから昨日は悪かったよ。」 「もう怒ってないわよ。でもまた変なことしたら死刑だからね!」 「へいへい。」 ドアが開いて、涼宮さんとキョン君が入ってきたみたいです。 会話からして、昨日閉鎖空間を発生させたいざこざは解決したみたい。良かったぁ。 「……帰る。」 そして長門さんは、部室を出ていってしまいました。 「お、おい長門……」 「有希……」 そう、長門さんは明らかにこの二人を避けているんです。それも、敵意を持って。 昨日長門さんが本棚を蹴った時のこと。 アレは古泉くんが長門さんを無視して話をしてたから怒ったんじゃありません。 話の内容に怒っていたんです。丁度あの時、二人のことを話してましたから…… 帰り道、長門さんを除いた4人で歩いています。 今日は珍しく、涼宮さんが古泉くんと話しています。 だから私は、キョンくんに話しかけることができるのです。 「あの~、キョン君、お話があります。」 「なんでしょう、朝比奈さんの話ならなんでも聞きますよ。」 「長門さんのことなんです。」 キョンくんの顔が真剣になりました。 私は続けます。 「昨日キョンくんと涼宮さんがいなかった日は、長門さん最後まで居たんです。 ちょっとしたいざこざはあったけど、無視したりはしませんでした。 でもキョンくんと涼宮さんの話を出した時だけ怒って……」 「そうだったんですか……」 「だから私思うんです。言いにくいけど……長門さんはキョン君と涼宮さんに敵意を持ってて、避けてます。」 「俺とハルヒ限定ですか?なんでまた……」 「それはきっと……」 「ちょっとキョン!どこ行くつもりなのよ!」 「え?」 キョン君は涼宮さんに呼びとめられました。 キョン君と私の帰り道は途中で別の道に分かれます。 その分かれ道のとこまで来て、そのまま私の方向へ行こうとしちゃったんですね。 「まったく!道忘れるぐらいみくるちゃんとの話に夢中になってたなんて!嫌らしい!」 「嫌らしいってなんだお前は!お前だって古泉と……」 「はいはい言い訳はこの後聞くわよ。じゃあねーみくるちゃん!古泉くん!」 こうして私と古泉くん、キョンくんと涼宮さんというように別の道に別れました。 「先程話していた内容、失礼ながら僕も聞き耳をたてさせて頂きました。 確かに、長門さんは彼と涼宮さんを特に避けていますね。よくお気づきになりました。」 「はい。でも肝心なことを言えませんでした。彼女が二人を避けて反発してる理由……」 「僕には安易に想像できますが、果たして彼が気付けるかどうか…… なんにせよ喜緑さんの言うことが本当ならば明日で終わりです。 何事も無く終わることを祈りましょう。」 「そうですね……」 でも、その願いが叶うことはありませんでした。 明日、長門さんはついに暴走をしてしまうのです…… 金曜日 今日で長門が反抗期になってから5日目。喜緑さんの言うことが本当ならば、今日で最後になるはずだ。 明日の不思議探索では普通に戻ってほしいと願いつつ、 俺はいつものように部室へと向かう。今日はハルヒと一緒だ。 「ねえ、キョン。有希のことなんだけど……」 「長門がどうかしたか?」 「私思うのよね。有希に避けられてるんじゃないかって…… さっきも会ったんだけど、私の顔を見るなりくるりと方向変えて逃げちゃったのよ。」 「この前も言ったろ。アイツは今ナーバスな状態なんだ。仕方ないさ。」 「でも……」 ハルヒは何か言いたげだ。 まあ確かにハルヒは長門が宇宙人ってことも知らないし、短期間で直るってのも知らない。 ずっとこのままこの態度だったらどうしようかと不安になるもの無理は無いだろう。 かと言って俺が「明日には直るさ。」と断言するわけにもいかない。 明日まで我慢してくれな、ハルヒ。 ガチャ 部室のドアを開けると、例のごとく小柄な宇宙人が一人で本を読んでいた。 だが、俺達の顔を見ると、露骨に帰る準備を始める。 「……帰る。」 ……まあ今日までだからな。このままごたごたも無く過ぎ去ってくれればそれでいい。 長門が俺達の脇をすり抜けて部室から出ようとする。だが…… 「ちょっと、待ちなさい!」 ハルヒが長門の肩をつかむ。お、おいハルヒ……長門は今ナーバスな状態で…… 「知ってるわよそんなこと!でもこのままでいいわけないでしょ! ねえ有希、なんでアンタ私達を避けてるの?言いたいことがあるなら言った方がすっきりするわよ?」 まあハルヒらしいっちゃハルヒらしい言い分だ。 同じ反抗期なら面と向かって反抗しろということらしい。 「あ……が……くい……」 長門がぼそぼそと口を開いた。え?なんだって? 「有希?」 「あなたが……憎い。」 な、長門!? 「きゃっ!!」 「ハルヒ!!」 ハルヒが長門に突き飛ばされた!そのまま団長机に激突してしまう。 「おいハルヒ!!大丈夫か!?」 ……意識が無い!頭を打って気を失ってる!早く病院に…… 「無駄。この空間を私の情報制御空間とした。この部屋からは出られない、私が許可しない限り。」 「だったらその空間を解除してくれ!このままじゃハルヒが……」 「問題無い。」 「問題無いわけねぇだろう!」 「涼宮ハルヒは、私がここで殺すから。」 「な……がと?」 そう言ってナイフを取り出す長門。 おい……冗談だろ?ナイフってお前……どこの朝倉だよ。 「なんでハルヒを殺すんだ!SOS団の仲間じゃなかったのか!?」 「涼宮ハルヒがいる限り、私とあなたが結ばれることは無い。」 「長門、お前……」 「私があなたを考えない日は無かった。 だけどあなたは私を見てはくれない。涼宮ハルヒのせい。 彼女の存在は私にとって邪魔。だから殺す、それだけ。」 そうか、長門は俺のことを…… なるほど、これが長門が反抗期になった原因か。ハルヒと付き合い始めたことが…… 俺はまったく気付いちゃいなかった。……あんだけ助けてもらっておいて。 そりゃ長門だって反抗したくもなるさ。全部俺の責任だ。 「長門、すまない。俺がお前の気持ちに気付いてやれなかったせいだな。」 「分かってくれた?じゃあ、私と一緒に……」 若干、長門の顔が輝いた……ように見えた。 でも、俺はそれに答えるわけにはいかない。 「それは、無理だ。」 「どうして。何故私の気持ちに答えてくれない。 あなたと私には信頼関係というものがあるはず。何の障害も無い。理解不能。」 「こんな脅迫のような形で、俺は自分の気持ちを変えたくはない。 俺はハルヒが好きだ。あいつもそれに答えてくれた。だから……」 俺は長門の肩に手をおいて、言わなくてはならぬことを言った。 「お前の気持ちに、答えることは出来ない。」 すまない、長門。 「……そう。」 長門はナイフを下ろした。分かってくれたか? なにやらボソボソと呟いている。 「……@@@@@@」 これは……例の高速呪文!? すると、長門の手に持っていたナイフが変化していって……これは……刀か? 「うおっ!」 長門は俺に向かってその刀を振り上げてきた。 まだ……やる気なのか? 「だったら、あなたも涼宮ハルヒも殺す。」 「長門!分かってくれ!お願いだ。」 「うるさい。もういらない。あなたも、SOS団も……」 長門が刀を振り上げる。だが、死ぬわけにはいかない! 俺は振り下ろされる長門の刀を避けて、ハルヒの前に立った。 「……なんのつもり?」 「俺はハルヒを守らなくちゃいけない。俺だけならともかく、こいつを死なせるワケにはいかない!」 「無駄なこと。この場所で二人とも死ぬ。……@@@@@」 長門がまた高速呪文を唱えた。 ……!?足が動かない!! 長門が刀を持って向かってくる。俺はハルヒを庇うように前に立った。せめてこいつだけでも……!! 「……!!」 思わず目をつぶってしまう。斬られるか……! でだが……痛みは来なかった。そっと目を開けると、そこには…… 「喜緑さん!」 「すいません、遅くなりました。長門さんの情報閉鎖が強力でして…… もう安心していいですよ。」 微笑む喜緑さん。 ひとまずは助かった。しかしここで俺は、月曜日に喜緑さんが言っていたことを思い出した 『もし長門さんが限度を超える暴走をした場合、私の手で彼女の情報連結を解除しなければなりません』 まさか……! 喜緑さんは長門の元へと歩み寄る。 「江美里……なんのつもり?」 長門が刀を持ったまま尋ねる。 逃げろ長門!喜緑さんはお前の情報連結を解除しようとしてるんだ! 「やめてくれ!喜緑さん!!」 パチン! ……え? 予想外の出来事に、俺は自分の目を疑った。 今……なにがあった? 喜緑さんが長門に……平手打ちをした? 「いい加減にしなさい、長門さん。」 「どいて。私は彼と涼宮ハルヒを……」 「殺してどうなるんですか。あなたはそれで満足なんですか? あなたのやっていることは、オモチャが手に入らなくて泣いているダダッ子と同じです。」 「……違う!」 「いつまで甘ったれているのですか!彼は優しいから、今まであなたの望むようにしてくれたでしょう。 でも、それに甘えてばかりじゃいけません。彼には彼の気持ちがあるんです。」 「違う、違う、違う……」 うわ言のように繰り返す長門。だが喜緑さんの説得は続く。 「あなたは失恋したんです。今あなたに必要なのはそれを認めて、諦めることですよ。 辛いですけど、これを乗り越えることで強くなれるんです。 それは人でも、インターフェイスでも変わらないことですから。」 「……うっ……うっ……」 喜緑さんの胸に顔をうずめて泣きはじめる長門。 長門の作った空間も崩壊を始めて、元通りの部室に戻った。 そうだ、ハルヒは!? 「すぅ……すぅ……」 ……寝てる。はぁ、のんきなヤツだよ。でも……良かった。 「……はぁ~……」 安心した俺は、そのまま床に座りこんでしまった。 「ありがとうございました、喜緑さん。」 「いえ、到着が遅れて申し訳ありませんでした。」 「でも正直、あなたが現れてびっくりしました。長門の情報連結を解除するつもりなのかって。」 「私がどの派閥に属しているかご存知ですか?」 「派閥?いえ……わかりません。」 「穏健派です。その名の通り、穏便に事をすますに越したことは無いのですよ。 それに前にも言った通り、私個人としても長門さんを消したくはありませんでしたから。 ……ふふ、泣き疲れて寝てしまってますね。」 長門は喜緑さんの胸の中で寝息を立てている。穏やかな顔だ。 今気がかりなことを喜緑さんに尋ねてみた。 「俺は……これでよかったんでしょうか?」 結果的に長門をフッたことになる。 でも喜緑さんは、微笑んで言った。 「それは、あなた自身が1番よくわかっているはずですよ。」 ……そうだな。 俺はハルヒを守ると決めた。そのことに後悔は無い。 長門、すまないな……でもこれが俺の答えなんだ。 土曜日 さて今日は不思議探索の日。 俺はみんなに昨日のことを話すため、集合時間より1時間早く来てくれるように頼んだ。……長門以外のな。 俺が集合場所に着いた時には古泉と朝比奈さんが居たから、昨日の出来事を覚えている限り正確に伝えた。 予想外な出来事で驚くかと思っていたが、 どうやら二人は長門の気持ちを既に察していたらしい。 ハルヒには既に昨日の帰り道で伝えてある。 と言っても当然妙な空間の話とかはするわけにはいかない。 だから俺がとっさに作った話では、 『長門は俺に好意を抱いていて、俺とハルヒが付き合いだしたことで情緒不安定になっていた。 お前に呼びとめられたことでカッとなって突き飛ばしてしまった。 あの後本人もパニックになってしまったので先生に家まで送ってもらった。』 というものだ。 我ながらなかなかの作り話だ。実際に家まで送ったのは先生じゃなくて喜緑さんだがな。 ハルヒはそれに納得すると同時に、長門に対して申し訳無い気持ちになったようだ。 珍しく「私悪いことしちゃったかな……」と気落ちしていたので、こう言ってやった。 「悪いと思わなくていい。俺はお前と付き合ったことに後悔してないからな。 ただ、長門を責めないでやってほしい。」 するとハルヒは100万ワットの笑顔を取り戻して「当然じゃないの!」と言った。 ようやくいつものハルヒに戻ってくれて、俺は一安心だったってわけさ。 さてそんなこんなでみんなが集まって30分ほどたった時、長門がやってきた。 おや……いつもと違うところが一個ある。 俺達と顔を合わせて早々、長門は頭を下げた 「ごめんなさい……迷惑をかけた。」 当然、ここで追い討ちかけて責めるヤツなんて、SOS団にはいないさ。 長門はその後、一人一人に謝罪の言葉を述べていく。 「朝比奈みくる、ごめんなさい。あなたを余計怖がらせるような真似をしてしまった。」 「いいんですよぉ、気にしないでください。 それに、私にも気持ち分かりますから。」 「……?どういうこと?」 「ふふ、禁則事項です♪」 首をかしげる長門。俺もよくわからない。どういうことだろうか。 「古泉一樹。ごめんなさい。あなたの任務を邪魔するようなことをしてしまった。」 「構いませんよ。僕の中での優先順位は、機関よりもSOS団となっていますから。 これからも遠慮せず、何でもお申しつけてくださって結構ですよ。 今度は将棋で勝負などはいかがでしょうか?」 「……感謝する。」 いつもと同じニヤケ面で対応する古泉。まあこの方が、長門も救われるだろうさ。 「涼宮ハルヒ。……ごめんなさい。私は、あなたを……」 「謝るのはあたしの方よ。ごめんね有希。あなたの気持ちに気付けなくて……無神経だったわ。」 「じゃあ約束してほしい。彼と一緒に幸せになって。これが今の私の望み。」 「……ありがとう。分かったわ!不幸になんてさせないんだから!」 二人の間にもわだかまりが出来なくてなによりだ。 そして長門は……俺の前に立った。 「あなたに1番迷惑をかけた……ごめんなさい。」 「構わないさ。それより長門……メガネ、つけたんだな。」 「そう。」 いつもと違う1箇所。それは、長門がメガネをかけていたことだった。 「俺は、メガネが無い方がかわいいと思うぞ?」 「いい。これは……けじめ。」 「そうかい。」 これがきっと、こいつなりのけじめなんだろうな。俺への気持ちを忘れるための、な。 「私はあなたのことを諦めた。でも、これからもSOS団の仲間として親しくしてほしい。……いい?」 愚問だな。そんなの決まってるじゃないか。 だから俺は笑って、こう答えてやるのさ。 「当たり前だろ。こちらからもお願いするよ。これからもよろしくな、長門。」 それを聞いて長門が微笑んだ……ように見えた。 きっとみんなの目にも、そう写ってるはずだぜ。 「……ありがとう。」 ……fin