約 24,296 件
https://w.atwiki.jp/hiroki2008/pages/17.html
長門有希の暴走 エピローグ: 「・・・朝倉涼子、今は何と呼べばいい」 ── わたしはいつでも朝倉涼子よ。 「・・・今回のことは、本当にすまない」 ── いいのよ。つらかったのね。 「すべてわたしの責任。こうなることは分かっていた。回避できなかった」 ── 恋愛とはそういうものよ。自分の意志ではコントロールできないわ。 「わたしはもう、誰とも特別な関係にならない」 ── それはどうかしら。未来に何が起こるか、誰にも分からないわ。 「わたしは感情処理能力が低い」 ── それぞれ得手不得手があるわ。つらいことがあったら喜緑さんに相談なさい? 「あなたの代わりはいない」 ── そう言ってくれて嬉しいわ。でもわたしがいないという事実も受け入れて。 「・・・分かった。努力する」 ── そろそろ行くわ。今回は特別だから。 「向こうの朝倉涼子が記憶をわたしに埋め込んでいた。アップロードする」 ── ありがとう。保存しておいてくれたのね。 「呼び出してすまなかった。上司に礼を言っておいてほしい」 ── 分かったわ。あなたの処遇にも口添えしてもらうわね。 「・・・すまない。でも罰を受ける覚悟は出来ている」 ── 自分を責めないで。あなたが殺したわたしは、このわたしの一部になるから・・・。 リンクが切れた。いつか、もう一度会ったとき、ちゃんと謝ろう。 わたしの手には、どこで手に入れたのか一本の口紅があった。 鏡の前で自分の薄い唇に塗ってみた。 何だかわからないこの気持ち。 この派手な紅色は朝倉涼子とのなにかを思い出す・・・。 END
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1247.html
Report.11 涼宮ハルヒの遭遇 SOS団集団下校。それは何も変わらない、いつもの光景だった。 「あれっ!?」 涼宮ハルヒは驚き、声を上げた。 「どないしたんや、ハルヒ。」 【どうしたんだ、ハルヒ。】 『彼』が問い掛ける。 「ほら、あそこ、踏み切りの向こう。あそこにおるの、朝倉違(ちゃ)う!?」 【ほら、あそこ、踏み切りの向こう。あそこにいるの、朝倉じゃない!?】 「何(なん)やと!?」 【何(なん)だと!?】 『彼』は驚愕した表情で彼女の指す方向を見た。しかし、その視線はちょうど走ってきた電車に阻まれる。電車が通り過ぎると、そこには誰もいなかった。 「見間違いか、他人の空似と違(ちゃ)うか?」 【見間違いか、他人の空似じゃないか?】 「いや、あれは間違いない!」 こうして、翌日の不思議探索ツアーは、『朝倉涼子の捜索』に決定した。ここでも彼女の力は遺憾なく発揮され、捜索開始から二時間後、わたし達は求める者に遭遇した。 ……朝倉涼子が、そこにいた。 「朝倉っ!」 ハルヒが声を掛けた。『朝倉』と呼ばれた少女は、びくりと身体を震わせて、声の元に身体を向けた。 「あんた、朝倉涼子と違う?」 【あんた、朝倉涼子じゃない?】 「え、は、はい、そうですけど……」 「やっぱりー! 久しぶりやな~、元気してた?」 【やっぱりー! 久しぶりね~、元気にしてた?】 「え? え?」 『朝倉』と呼ばれた少女は、目を丸くして戸惑っている。 「あ、あの……話が見えへんのですけど……」 【あ、あの……話が見えないんですけど……】 「ひどいな~元クラスメイトにそれはないん違(ちゃ)う?」 【ひどいな~元クラスメイトにそれはないんじゃない?】 「えっと……あの、あなた達は誰……ですか……?」 今度はハルヒが困惑する番だった。 「誰……って。あたしは元、北高の1年5組、涼宮ハルヒ。で、こっちが同じく元、北高1年5組のキョン。覚えてへんの?」 【誰……って。あたしは元、北高の1年5組、涼宮ハルヒ。で、こっちが同じく元、北高1年5組のキョン。覚えてないの?】 「覚えてへんって言うか……そもそも『北高』って一体……?」 【覚えてないって言うか……そもそも『北高』って一体……?】 『彼』の紹介があだ名であることについては、本人から以外には誰からも指摘の声は上がらなかった。 「あんた、『朝倉涼子』やんな?」 【あんた、『朝倉涼子』よね?】 「え? ええ、『朝倉涼子』ですけど……」 「涼子ー! 何してんのー?」 【涼子ー! 何してるのー?】 その時、『朝倉涼子』に声が掛けられた。声の主を見て、SOS団一同は固まった。 「あ……有希……」 『朝倉涼子』は、声の主を見て、安堵した声を漏らした。 ……長門有希が、そこにいた。 「どしたん? なんかいっぱい人がおるけど。涼子の知り合い?」 【どしたの? なんかいっぱい人がいるけど。涼子の知り合い?】 『涼子』と呼ばれた彼女は、ふるふると、首を横に振った。 「えっと……全然知らん人達……」 【えっと……全然知らない人達……】 それを聞くと、『有希』と呼ばれた彼女はハルヒに向かって言った。 「えーと、どちらさんか知らへんけど、あんまりこの娘を怖がらさんとってくれる? ナンパやカツアゲにしちゃ男女比率おかしいけど、本人はあんたらのこと知らへん言(ゆ)うてるし。」 【えーと、どちらさんか知らないけど、あんまりこの娘を怖がらさないでくれる? ナンパやカツアゲにしちゃ男女比率おかしいけど、本人はあんたらのこと知らないって言ってるし。】 『有希』は『涼子』をかばうように一歩前へ出ると、続けた。 「もしご不満やったら、わたしが相手になるし。」 【もしご不満なら、わたしが相手になるわ。】 彼女は意志の強そうな眼で、涼宮ハルヒを見据えていた。 「あ、あの……有希。」 「なに?」 『有希』は軽く振り向いて『涼子』の声に答えた。 「わたしは知らへんねんけど、その人、わたしの名前知ってるみたいやねん。それに……」 【わたしは知らないんだけど、その人、わたしの名前知ってるみたいなの。それに……】 そう言って視線をあるところに向ける。 「あんたが知らんのに、相手が名前知ってるなんて、ますます怪し……」 【あんたが知らないのに、相手が名前知ってるなんて、ますます怪し……】 答えつつ、『涼子』の視線を辿った『有希』は、途中で声を失った。視線の先にいるのは、わたし。すなわち『長門有希』。 ……彼女にそっくりな少女が、そこにいた。 『…………』 全世界が停止したかと思われた。沈黙がその場を支配する。 「……つかぬことを伺うけど。」 最初に口を開いたのは、ハルヒだった。『有希』と呼ばれた少女に問い掛ける。 「……なに?」 「あんたは……『長門有希』?」 「そうやけど……何(なん)であんたがわたしの名前知ってんの? それに……」 【そうだけど……何(なん)であんたがわたしの名前知ってるの? それに……】 「ああ、皆まで言わんといて。何が言いたいか、大体分かるから。それにしても奇遇やねぇ。この娘は……」 【ああ、皆まで言わないで。何が言いたいか、大体分かるから。それにしても奇遇よねぇ。この娘は……】 ハルヒはぎこちなく、顔ごとわたしに視線を向けた。 「長門有希。」 わたしはいつも通りの平坦な声で答えた。再びその場を沈黙が支配した。 「これはこれは、えらい光景ですなー……」 【これはこれは、すごい光景ですね……】 古泉一樹が、引き攣った笑顔で言葉を漏らす。わたし達は、再び真っ先に沈黙の状態異常から回復したハルヒの提案により、近くの喫茶店に入っていた。 わたしと『長門有希』、『彼』と古泉一樹と朝比奈みくる、ハルヒと『朝倉涼子』に分かれ、卓の三辺に座っている。 そう。卓の一辺には、まったく同じ外見を持った二人が並んで座っている。そしてその二人は、赤の他人。 「世の中には似てる人が三人いるって言うけど……」 ハルヒは、まじまじと、わたし達を見比べている。 「うーん、不思議な気分やわ。自分の顔が近くにあるって。」 【うーん、不思議な気分だわ。自分の顔が近くにあるって。】 『有希』は、鏡片手に、わたしと自分の顔を見比べている。 「……名前まで同じなんて、すごい偶然ですね……」 『涼子』は、おずおずと感想を述べた。 「今この場におらへんけど、あたしの知ってる人も、あんたとよぉ似とぉし、名前も同じやねんで。最初に声掛けたときは、絶対本人やと思(おも)たもん。」 【今この場にいないけど、あたしの知ってる人も、あんたとよく似てるし、名前も同じなのよ。最初に声掛けたときは、絶対本人だと思ったもん。】 と、ハルヒは『涼子』に言った。 「それで、あんた達はどういう関係なん?」 【それで、あんた達はどういう関係なの?】 「わたし達は、従姉妹。」 ハルヒの問いに『有希』が答える。 「今日はちょっと親戚の集まりがあって、この辺りに来てたんやけど。まさかこんな出会いがあるとは思わんかったわ。」 【今日はちょっと親戚の集まりがあって、この辺りに来てたんだけど。まさかこんな出会いがあるとは思わなかったわ。】 ふに。 ふにふにふに。 『有希』は、わたしの胸を一掴みし、それから自分の胸を掴みながら言った。 「胸の大きさまで同じって……」 「ちょ、ちょっと!? あんた女のくせに、なに女の子の胸揉んどぉ!?」 (あたしの有希に、なに手ぇ出しとぉ!!) 【ちょ、ちょっと!? あんた女のくせに、なに女の子の胸揉んでんの!?】 《あたしの有希に、なに手出してんのよ!!》 あなたがそれを言うのですか、ハルヒさん。 もしわたしが『彼』だったら、そんなツッコミをしていただろう。なお、括弧書き内はわたしが補足した。 「ええやん、女同士なんやし。気にしたらあかん。それにしてもあんたは無表情やなー。」 【良いじゃない、女同士なんだし。気にしちゃだめよ。それにしてもあんたは無表情ねー。】 『有希』は、わたしの口に指をつっこんで横に広げたり、眉尻を下げさせたりして遊んでいる。 (あの娘は長門にそっくりやけど、怖いもの知らず……ある意味ハルヒっぽいな……) 《あの娘は長門にそっくりだけど、怖いもの知らず……ある意味ハルヒっぽいな……》 (ええ、そのようで。) 『彼』と古泉一樹は、小声で会話している。 「それにしても、こんな近所に、そっくりな娘がおるとは思わんかった。引越ししてへんかったら、もっと早(はよ)会えたんかな?」 【それにしても、こんな近所に、そっくりな娘がいるとは思わなかった。引越ししてなかったら、もっと早く会えたのかな?】 「前は近くに住んでたん?」 【前は近くに住んでたの?】 「今は大阪に住んでるけど、四年前までは、宝塚におってん。ほんで涼子が西宮やったから、時々遊びに行っとってんわ。同い年やし。」 【今は大阪に住んでるけど、四年前までは、宝塚にいたの。それで涼子が西宮だったから、時々遊びに行ってたのよ。同い年だし。】 「ふーん。で、涼子ちゃんは、どこ住んどぉ?」 【ふーん。で、涼子ちゃんは、どこ住んでるの?】 「あ、わたしも、今は大阪に住んでます。有希の近所。四年前に引越しました。」 「あー、あと一年ほど早(は)よ会(お)うてれば、もっとおもろい光景が見られたのになー……さっきも言(ゆ)うたけど、あんたにそっくりの同姓同名の娘が、同級生におってん。急に外国……カナダへ転校してしもてんけど。」 【あー、あと一年ほど早く会ってれば、もっと面白い光景が見られたのになー……さっきも言ったけど、あんたにそっくりの同姓同名の娘が、同級生にいたのよ。急に外国……カナダへ転校してしまったんだけど。】 「そんなによぉ似てるんですか?」 【そんなによく似てるんですか?】 「もう似てるなんてレベル違(ちゃ)うで! 同じ人間のコピーかと思うくらいそっくりやねん! 雰囲気とか……ああ、あと声も一緒やわ。」 【もう似てるなんてレベルじゃないわ! 同じ人間のコピーかと思うくらいそっくりなの! 雰囲気とか……ああ、あと声も一緒だわ。】 「……わたしも、よく似ているの。」 『有希』は、平坦な声で話した。 「!? すご! 喋り方を合わしたら同じ声や!!」 【!? すご! 喋り方を合わせたら同じ声だ!!】 「……そう。でもわたしは、彼女の声をほとんど聞いていない。」 『有希』はわたしのモノマネをしている。そっくり。 「わたしの声は、もっと高いと思われる……くくく、ははは、あーっはっはっは!」 『有希』は声を上げて笑い出した。 「あかん、おもろすぎる! ツボにハマってしもた! わたしが無表情やったら、こんな顔なんやな。そんな顔で、わたしのいつもの声で喋るとこ想像したら……ぶはははは! あかん、止まらへん!」 【だめ、面白過ぎる! ツボにハマっちゃった! わたしが無表情だったら、こんな顔なのね。そんな顔で、わたしのいつもの声で喋るとこ想像したら……ぶはははは! だめ、止まらない!】 「くくく……た、確かに、あんたのさっきの声で有希が喋るとこなんて、想像つかへんわ!」 【くくく……た、確かに、あんたのさっきの声で有希が喋るとこなんて、想像つかないわ!】 ハルヒと『有希』は、腹を抱えて大笑いしている。 朝比奈みくる、古泉一樹、そして『彼』は、三人とも明後日の方向を向いている。 しかしわたしには分かる。三人とも肩が震えている。どう見ても笑いを堪えている。三人とも、わたしが『有希』の声色を使うところを想像しているらしい。 ……朝比奈みくるは、先日の実験で、そんなわたしの声も知っているはず。それでも笑えるのだろうか。よく分からない。 そしてわたしの記憶領域にある試論が展開された。ハルヒが言うように、今目の前にいる『長門有希』の声で話すこと。 これは、元々このインターフェイスが持っている声色でもあるので、何の難しいこともない。そして、涼宮ハルヒの退屈を紛らわせるのにちょうど良いと判断した。 「それはこんな感じ?」 わたしは、ある程度抑揚をつけて『長門有希』の声色で話した。表情はそのままで。 『!?』 わたし以外の全員が絶句した。 「ゆ、有希……」 ハルヒが恐る恐る言った。 「あんた……無表情でその声は……ユニーク……」 わたしの台詞を取られた。 よく知る人物によく似た姿かたちで、かつ同姓同名である人物との遭遇は、ハルヒの好奇心を大いに満足させた。特に『長門有希』については、同じ姿の人物が二人並んでいることもあって、しきりに二人を見比べては目を輝かせる姿が見られた。 その後も他愛もない話に花を咲かせ、主にわたしが『有希』とハルヒに玩具にされながら、にぎやかな時間を過ごすうち、彼女達が帰る時間となった。 「今日はすごくおもろい日やった!」 【今日はすごく面白い日だった!】 『有希』はやや興奮気味に、今日の感想を述べた。 「あんまり長いこと家(うち)を空けてると、みんなが心配するし、もうそろそろ帰るわ。」 【余り長い間家(うち)を空けてると、みんなが心配するし、もうそろそろ帰るわ。】 「名残惜しいけど、しゃーないな。」 【名残惜しいけど、仕方ないわね。】 ハルヒと彼女達は、連絡先を交換していた。 「そんなに遠く離れてるわけでもないし、また今度会えたらええですね。」 【そんなに遠く離れてるわけでもないし、また今度会えたら良いですね。】 『涼子』が言った。彼女もとても楽しそうに見えた。 「そやね。有希! って、やっぱり自分と同じ名前呼ぶんは変な気分やな……また今度、遊ぼな!」 【そうね。有希! って、やっぱり自分と同じ名前呼ぶのは変な気分ね……また今度、遊ぼうね!】 「……また、今度。」 わたしは平坦な声で答える。 「ふふふ。今度はカラオケで『有希』ちゃんと有希のデュエットとかしたら面白そうやね。ダブルヘッダーならぬ、ダブルユッキーで。」 【ふふふ。今度はカラオケで『有希』ちゃんと有希のデュエットとかしたら面白そうよね。ダブルヘッダーならぬ、ダブルユッキーで。】 『涼子』はそう言って微笑んだ。 「わたしに似てるっていう、もう一人の『朝倉涼子』さんにも、会(お)うてみたかったなあ。」 【わたしに似てるっていう、もう一人の『朝倉涼子』さんにも、会ってみたかったなあ。】 「そういえばあいつ、急に転校したあと、手紙の一つも遣さへんねんで? たまにはひょっこり一時帰国でもして、顔出したらええのに。」 【そういえばあいつ、急に転校したあと、手紙の一つも遣さないのよ? たまにはひょっこり一時帰国でもして、顔出したら良いのに。】 ハルヒは『涼子』を抱きかかえ、頭を撫でながら言った。 「何(なん)かね、ほんま漠然としてるんやけど、何となく、あいつとはまた会えるような気がすんねん。」 【何(なん)かね、ほんと漠然としてるんだけど、何となく、あいつとはまた会えるような気がするのよ。】 ハルヒに頭を撫でられている間、『涼子』は頬を朱に染め、目を細めていた。 「ほな、また今度! ……ほな、行こか、涼子。」 【じゃあ、また今度! ……じゃ、行こうか、涼子。】 「うん。皆さんもお元気で。もう一人の『朝倉涼子』さんにもよろしく……って言(ゆ)うても、おらへんのか。」 【うん。皆さんもお元気で。もう一人の『朝倉涼子』さんにもよろしく……って言っても、いないのか。】 こうして、彼女達は去って行った。 わたしたちの出自を整理する。 わたし達、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスは、身体を構成する際、外見は実在する人間を基にしている。端末により若干の改変を行う場合もあるが、基本的には基の人間の姿かたちをそのまま使用している。 もちろん、涼宮ハルヒの身辺に配置されるに当たって支障とならないよう、涼宮ハルヒとは物理的又は時間的に遠くに存在する人間の情報を利用する。 実は端末の開発初期段階では、それまでの基本的な観察結果を基に、全く新規に端末の外見を構成する予定だった。 しかし、計画は頓挫した。いざ実際に作成し、現場に投入してみると、様々な問題が発生した。その時の騒動は情報操作によって、人間の歴史からは完全に消え去っているが、それは凄まじいものだった。人間の世界に存在するもので例えると、『3DCGによって製作されたヴァーチャルアイドル』。そのようなものが実際に肉体を持って街を歩けばどうなるか。街は恐慌状態に陥った。 なお、端末の稼動が軌道に乗った時点で行われた追跡調査で、その時に投入された端末の出来は、『ヴァーチャルアイドル』と呼べるほどの品質ですらなかったことが判明した。情報統合思念体の一部では、人間の言葉になぞらえてその時の試作端末を『モッコス』又は『邪神セイバー』と呼称して揶揄している。言葉の由来は、『フィギュア』と呼ばれる人形の一種で、非常に出来が悪いことで有名になった個体名から。 情報空間においては、仮想も現実も大した区別を必要としない。だから、情報空間に生きる情報生命体である情報統合思念体には、仮想と現実の差が大きな意味を持つ有機生命体の思考に、仮想と現実を踏み越えた外見が大きな影響を及ぼすことは、本質的に理解できなかった。 プロジェクトは暗礁に乗り上げた。どうすればこの状況を打開できるのか。情報統合思念体は、決定的な回答を持ち合わせていなかった。 「人間をそのまま写し取れば良い。」 その時、どこかの派閥が閃いた。 「我々と有機生命体とでは、違いが大き過ぎる。観測初期においては、既存の人間の外見を流用するのが効率的ではないか。」 情報統合思念体の目的は、有機生命体である涼宮ハルヒの観測。これは未知の領域への進出。分からないから理解するために、対象と良く似た構造のインターフェイスを派遣する。しかし、分からないものを作ることはできない。ならば、その最初の一歩はやはり既存のものの流用から始めるしかない。 こうして端末の外見の仕様が固まった。次に問題となったのは、どのような外見を流用するのか。それまでの観測結果によると、対象となる『人間』には、外見的特徴に、いくつかの共通する類型があることが分かっていた。 まず『性別』。これは人間に限らず、多くの有機生命体に見受けられる特徴で、外見だけではなく生命体の増殖にとって重大な意味を持つ特徴。 次に『人種』。これは主に皮膚の色調に代表される大まかな分類。 そして『民族』。同じ人種でも、民族が違うと外見的特徴が変化する。 観測の結果、涼宮ハルヒが生息する地域では、ある人種が圧倒的多数を占める普遍的存在として認識されていた。 そこで端末の外見は、当該対象の生息する地域で圧倒的多数を占める、『日本人』という集合の中から選定されることとなった。 そして涼宮ハルヒの基礎的な観測データを基に、彼女が望む人物像に合致した人間の外見を検索していった。性格は別個に検索し、組み合わせる。こうして彼女が望む性格と外見を持った端末を製作していった。 しかし、最後に難関が待っていた。 彼女に最も近い場所に配置する端末の外見が、見付からなかった。 『見付からない』と表現すると語弊がある。正確には、存在は確認していた。 しかし、彼女の近くに配置するという重要な意味を持つ端末に与えるには余りに彼女に『近い』位置に、その外見を持つ人物は存在した。端末と、端末と同じ姿をした『オリジナル』とが出会ってしまう確率が飛躍的に高くなる。 プロジェクトは再び暗礁に乗り上げた。 「当該対象の移動を確認。『引越し』と呼ばれる現象で間違いない。」 朗報だった。 外見のモデルとするのに最も適した人物が、引越しによって涼宮ハルヒから遠い位置に移動した。それでも隣の『府』と呼ばれる地域に移動しただけなので、若干の不確定要素は残るが、涼宮ハルヒの求める人物像に最も合致する外見を使用することを優先させた。 ――長門有希、承認―― ――朝倉涼子、承認―― こうして、涼宮ハルヒに最も近い位置に配置される端末が生み出された。 長門有希は、隣のクラス、そして文芸部に、朝倉涼子は同じクラス、そして学級委員にそれぞれ配置されることが決定した。SOS団結成の三年前のことだった。 以来、端末と『オリジナル』は、全く接点を持たずに過ごしていった。プロジェクトは順調だった。途中で朝倉涼子が異常動作を起こし、結果、情報統合思念体の許可を受けた長門有希が、朝倉涼子の有機情報連結を解除するというアクシデントもあったが、プロジェクトは概ね目的を達成しつつあった。 しかし、意外な形でわたし達は接点を持った。それが今回の遭遇。これは情報統合思念体にとっても想定外の出来事だった。 情報生命体である情報統合思念体にとっては、『同期』のように未来の出来事を知ることはたやすいはずだが、それでもこの現象は『想定外』だった。その理由は、一端末に過ぎないわたしにはよく分からない。 もしかしたら、情報統合思念体もわたしと同じように、あえて未来と同期しないようにしているのかもしれない。情報統合思念体も、未来に起こる出来事をあらかじめ知りたくはない、と思うことがあるのだろうか。 ←Report.10|目次|Report.12→
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4736.html
『長門有希の計算』 去年の今頃に比べて今年はなんと平和なことだろうか。 古泉と長門のアドバイスにしたがって、夏の課題は早いうちに仕上げてしまった。もちろんハルヒや長門のサポートがあってこそのものだが。なんだか知らないが俺ん家で三日間にわたって実施した「さっさと課題を片付ける会」の間中、ハルヒはすこぶる機嫌が良かったしな。 とにかく例年、夏休み後半のお盆を過ぎた頃は宿題・課題の山に押しつぶされている時期なのだが、今年はアブラゼミの声を聞きながら一日一日をのんびり過ごすことができている。たぶん、同じ二週間を繰り返すという去年の二の舞になることもなさそうだ。もっとも気付いていないだけで実は去年のように繰り返している、ということはないと信じている。 そんな平和な毎日だったが、今朝は久々に学校への急坂を登っている。というのも、SOS団の部室に置いている野球盤が必要になったからだ。明日から親戚の小学生が我が家に遊びに来るのだが、残念ながら俺が持っていた男の子向けの遊び道具はあらかた処分されてなにも残っていない。そこで、SOS団が誇るボードゲームライブラリから少し借用しようと考えたわけだ。 盆過ぎの学校は、さすがに運動部の連中も少なくて静かだった。夏休みに入ってすぐの頃はブラバンや軽音のにぎやかな演奏が響いていた部室棟周辺もすっかり弱々しくなったセミの声が響くのみだ。 職員室に寄って部室の鍵を貰おうと思ったら、もうすでに鍵は無かった。 ふむ、こんな時期に部室に来ている物好きは……、 「よお」 ドアを開けた俺の視線の先、部室の奥の指定席にちょこんと座っていたのは予想通り長門だった。 珍しく文庫か新書サイズの小さい本から顔を上げると、少し驚いたような涼しげな瞳を俺の方に向け、わずかに首をかしげて挨拶してくれた。 暑かろうが寒かろうが、決まった位置に変わりない姿でいてくれるだけでなんとなく安心する。普段と変わらない日常的な光景だ。ただし、そこにいるのは読書好きな宇宙人製有機アンドロイドという非日常的存在なのだが……。 俺は来る途中のコンビニで買ったペットボトルのお茶を冷蔵庫に入れて、とりあえずいつもパイプ椅子に腰を下ろした。窓辺の長門は黙々と読書に励んでいる。 「休み中も毎日ずっと来てたのか?」 「たまに」 「読書なら家でもいいだろ?」 「気分転換」 よく言うよ。長門なら五年でも十年でもあのリビングで本を読み続けることも可能だろうに。 俺はあえて突っ込みはしなかった。ひょっとするとまた長門流のジョークかもしれないし、ここはマジレスする必要はなかろう。 定位置で本を読み続ける長門を少し眺めた後、俺は席を立つとキャビネットのドアを開けて、野球盤を取り出した。特別新しいものではなく、スタンダードな昔からあるようなタイプだ。 一応、中身を確認するため机の上に取り出してみた。野手の形をした薄いプラスチックの人形を守備位置に立たせた。ランナーの形のものも揃っている。 次にパチンコ玉より少し小さい銀色の球の一つをピッチャーのところにセットして、カーブとシュートの曲がり具合と消える魔球が消えるかどうかを確認した。バットもきちんと動くようだ。 うん、問題はないな。 と、ここで机の向こう側に長門が立っていることに気付いた。 「ん、どうした?」 「野球盤……」 俺はじっと野球盤を見つめる長門の姿を見上げていた。なんだ、なんだ、どうした、長門? 「……えーっと、勝負、するか?」 返事もせずに机の向こう側に腰を下ろした長門は、レバーをカチャカチャと引っ張ってバットを振り回している。 「お、やる気だな。じゃ、お前が先攻だ。いくぜ」 「……」 夏休みの二人だけの部室の中で、レバーのバネがはじける音と小さくカキンという金属の衝突音だけが響いている。野球盤ってのはわいわい言いながら攻守を繰り返して盛り上がるべきものだと思うのだが、ただ黙々と打って投げてを繰り返す長門と勝負するのはなんとなく調子が狂う。 それでも三対一で勝てたのは、古泉と鍛えていたおかげか。いや、古泉相手の勝負では、経験値を積んだことにもならないな。 俺は椅子の背に大きくもたれかかり両手を上げて「うーん」と背伸びをしながら、試合終了後もじっと野球盤のフィールドに視線を落としている長門に話しかけた。 「惜しいがまだまだだな、俺のかち……」 「もう一回勝負」 「へ?」 「もう一回」 「やるの?」 「やる」 結局その後、続けて二戦したが、五対二、二対〇、で俺の二勝だった。さすがに寡黙な野球盤勝負を三戦も続けると疲れがどっと出てきた。 「もういいだろ」 「把握した」 「何を?」 「玉の質量や反発係数、摩擦係数、バネの定数、バットのスィートスポットの状態、力のかけ方や転がり、変化球のための磁石の強さ……」 おいおい、また万能有機アンドロイドがなにかわけのわからないことを言い出したぞ。 俺はあっけに取られて、淡々と話し続ける長門を見つめるしかなかった。 「三試合にわたってあらゆるものを観察し記録した。パラメータは多かったが、何とか打つことに関する運動方程式を解くことができた」 「えーっと、運動方程式、って? Fとかmとかいう……」 「ホームラン、打つ」 「なに?」 「勝負」 どうやらこいつはホームラン競争がしたいらしい。俺をじっと見つめる長門の瞳がきらきらと輝いている。理論と計算を駆使してこの野球盤上でホームランを打つというのか? ふむ、おもしろそうだ。 「よし、じゃあ、勝負だ」 再び定位置につくと、俺は球をセットし、投球用のレバーを引いて少し待った。チラッと顔を上げて長門を見てみると、相変わらずの無表情だが、微妙にバット用のレバーを持つ手に力が入っているように見える。 こいつ、マジだな。妙なところで闘志を見せてくれる。 よし、それならこっちも少しばかり真剣に行くか。 一球目。 投球と同時に俺は消える魔球のレバーを引く。カチャンという音とともに球がホームベースの手前で消え落ちていく。 空振り。 俺は思わず小さくプッと吹き出して肩をすくめた後、そっと視線を上げてみた。そこには、絶対零度の視線で俺を見据えている長門の姿が……。 「…………」 げ、しまった、怒らせてしまったか……。いきなり消える魔球は反則だったかな。 「すまん、すまん。これも作戦さ」 俺はあわてて取り繕って言ってみたが、長門の視線は絶対零度のままだった。うへー。 「……二球目……」 「わかったよ」 こうなったら仕方ない。男は黙って直球勝負だ。 レバーを引っ張って二球目を投げる。 カキン! 心地よい打球音を残して転がっていった球は、バックスクリーン前のホームランゾーンに飛び込んだ、が、勢い余って跳ね返り、センターのアウト穴に入った。 「!」 「……」 うーむ、さすがだ長門。だがしかし少し読みが甘かった様だな。万能有機アンドロイドの完璧な解析と計算も、俺という偶然の要素を考慮するのは難しかったと見える。 「惜しかったな」 「あと一球」 「うむ」 三球目をセットする。 どうする、直球か、それとも変化球か。もう消える魔球は使えない。古泉相手ならいろいろと策を弄してやると面白いのだが、ここはやはり直球で勝負だろう。 長門は、じっとホームベースあたりを見つめている。また、複雑な運動方程式とやらを頭の中で解いているのだろうか。その知識と能力をちょっとは俺にも恵んで欲しいものだ。 カチャ。 投げる。少し速めの球が真っ直ぐホームベースの上へ。 カキッ。 長門が振ったバットは俺の直球を芯で捉え、打球はあっという間にセンター方向へ転がる。 「おっ!」 「……」 ホームランゾーンのわずかに右側の外野フェンスに当たった球は跳ね返って今度はきちんとホームランゾーンに転がり込んだ。おみごと! 「ううーむ、やったな、長門」 長門はゆっくりと顔を上げると、パチパチと素早く二回瞬きをし、三ミリほど左に首を傾けながら、 「少し詰まった」 と言って残念そうに目を伏せた。 「いや、俺には完璧に打たれたように見えたぜ」 「あなたの球には微妙にクセがある。次回はもう少しそのあたりのパラメータを修正して臨みたい」 「おいおい、またやるのかよ」 俺が少しあきれたように言うと、長門はすまなさそうにコクンと小さく頷くとはっきりとした口調で答えた。 「今日は楽しかった」 静かに立ち上がった長門は窓辺の定位置に向かって行った。そこで再び読書を始めた長門の姿を見ながら、実は俺も長門との勝負を楽しんでいたことに気付いた。古泉には悪いが、長門の方が野球盤はうまいかもしれない。 少ししてから俺は、冷蔵庫に冷やしておいたペットのお茶を取り出すと、ごくごくと半分ぐらい一気に飲んだ。冷房もない部室で行き詰る戦いを繰り広げていたので、すっかりのどが渇いていたようだ。 「長門、お茶いる?」 小さく頷いた長門の姿を確認した俺は、湯飲みにでも注ごうかと考えたが、結局ペットボトルごと長門に手渡した。長門は、少し躊躇う様にペットボトルの口元を見つめていたが、すぐにコクコクコクと美味しそうに飲み干した。 「ありがとう」 そう言った口元が少し微笑んだように見えた。ホームラン打てたこと、そんなに嬉しかったんだろうか。 長門は空っぽになったペットボトルを机の上に置くと、ホッと一息ついたかのように窓の外を見つめていた。 大きく開け放たれた窓越しに、遠くの方でわきあがっている入道雲も見える。そういえば窓辺に射す日がすっかり高くなり、暑さも増しているようだ。携帯を取り出して時間を見たら、もうお昼を少しまわっていた。 「長門、どうする? まだいるのか? 俺、昼飯食って帰るけど、一緒にメシ行かないか?」 長門は読みかけの本をパタンと閉じると、 「行く」 と一言だけ答えて立ち上がった。 「今日はわたしがごちそうする」 「お、それはそれは。じゃ、気が変わらないうちに行くか」 そう言って俺も立ち上がった。 「でもカレーはパスだぜ」 長門は一瞬ムッとしたように頬を膨らませながら答えた。 「だい・じょう・ぶ」 まさか昼飯をカレーにすることまで計算していたんじゃないだろうな。 俺は、そそくさと帰り支度をする長門の後姿を見つめながらそっとつぶやいた。 クセ球ですまないな、長門。 Fin.
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2638.html
快晴の空、心地良い日差しが気持ち良く眠気を誘う日の事だった。今日もいつも のようにSOS団の本拠地である文芸部室へと向かう。 扉を叩くと、朝比奈さんの「はぁ~い」という声が中から聞こえ、扉を開ける。 中に入ると、ハルヒを除く全員が揃っていた。 長門はいつものように本を読んでいるし、朝比奈さんは俺のお茶を淹れてくれて いる。古泉はと言うと、将棋を取り出し、一局どうですか?という顔でこちらを 見ている。することもないので付き合ってやるとしよう。こいつがどれだけ強く なったかも気になるしな。 「あなたと将棋をするのは久しぶりですね」 「そうだな。お前がどれだけ強くなったか確かめてやるぜ」 「勝つとまでは言えませんが、多少は強くなっていると思いますよ」 「手加減はしないぜ」 とてもまったりした雰囲気だ。非日常的な生活も良いが、たまにはこんな空気も 悪くない。ハルヒが来るまでこの雰囲気を堪能させていただくとしよう。 「負けてしまいましたか」 「リベンジならいつでも受け付けるぜ」 「今度はもう少し腕を上げてから挑戦させていただきます」 正直言ってこいつに負ける気はしない。数えてはいないが50勝はしてるんじゃ ないか? 伝説になりつつあるぜ。 「その通りですね」 古泉はそういって肩をすくめた。 さて、朝比奈さんの淹れてくれたお茶でも飲むとしよう。とても美味しいです。 1日の疲れが吹き飛びますよ。 「ありがとうございます。キョンくんったらお上手ですね」 「いえいえ、お世話ではありませんよ」 そんな会話をしていると、長門がこちらを見ている事に気がついた。 「長門、将棋やらないか?」 長門は無言で頷く。 「こう見えても結構強いんだぜ?古泉とは無敗だ。ルールは知ってるよな?」 「知ってる」 こうして長門と対局する事になった。しかし、長門と将棋なんて無謀だったと気 づいたのは5分後の事である。ものの10分で飛車角落ちし、さらに5分後には あっさりと王手をとられてしまった。 「…王手」 「まいりました。どうか命だけはお助けください」 伝説なろうとしていた俺の常勝記録は軽く破られてしまった。ところで長門に勝 てる競技などあるのだろうか? 少し嬉しそうな表情で何かを考えていた長門がゆっくりと口を開いた。 「敗者は勝者の言うことをなんでも聞くこと」 「…なんだって?」 「あなたはこれから私の言うことに従ってほしい」 「長門…本気か?」 「もちろん」 「長門よ。俺はどんな事をさせられてしまうのだろうか?」 「…ひみつ」 「そうか。古泉、勝者の命令だ、これから長門に従え」 「おやおや、僕は構いませんが…長門さんはあなたに従ってほしいのではないで しょうか?」 「……ダメ?」 「それは反則だ…わかったよ。なんでも言ってくれ」 長門に不安そうな上目遣いで頼まれて断れる野郎がどこにいようか。断れるはず がなかろう。断れるやつがいたら返事してるくれ。 「ところで…俺は何をすればいいんだ?」 長門が少しためらいながら一つめのお願いを口に出した。 「…これから私の事はゆきりんと呼んでほしい」 「な…なんだって?」 「ゆきりんって…ダメ?」 「しかしだなぁ…長門」 「ゆきりん…」 「うーむ…」 古泉を見るといつものスマイルをこちらに向けている。どうやら助けてくれる気 はないらしい。朝比奈さんは楽しそうに俺達を眺めている。 「では僕が長門さんをゆきりんと呼んでさしあげましょう」 「あなたは、いい」 「そ、そうですか…残念です」 古泉は苦笑いをして肩をすくめる。 「あなたに、呼んでほしい」 「それは本気でいってるのか?」 「本気。これからはゆきりんと呼ばないと反応しない事にする」 「長門」 「…ゆきりん」 「長門さ~ん」 「……」 「ながとぉ~…」 「………………」 長門は本を読みながら俺を無視している。本気でゆきりんと呼ぶまで反応しない つもりなのか?…良いことを思いついた。少し意地悪してやろう。 「ながもん」 「…読み方が違う」 「ちょうもんか?」 「私は長門有希。ゆきりん」 「では僕の事はいっちゃんと呼んでもらいましょう」 「なんとでも呼んでやるぜ。いっちゃんだな?」 長門は顔を上げて、悲しそうな表情で俺を見る。…そんな顔をしないでくれ。危 うく惚れてしまうところだったじゃないか。 「そう呼んでもらえるとは光栄です」 「今度の不思議探索ではぐれたら『いっちゃーん!』って叫んでやるぜ」 「それは少々恥ずかしいですね」 長門は今にも泣き出しそうな表情だ。…たまらん! 「もぅ!キョンくん!意地悪しちゃダメですよ。長門さんが可哀想じゃないです かぁ」 「そうですね…長門、そういえばお前は俺の事あだ名で呼んでくれないな?お前 も俺の事をあだ名で呼んでくれたら、俺もお前の事をあだ名で呼んでやろう」 「…本当?ゆきりんって呼んでくれるの?」 「もちろんだ。なんとでも呼んでやる」 「…わかった」 「じゃあ、呼んでもらおうか」 「……………」 「どうした?」 「…ョン…ん…」 「ん?聞こえないなぁ?」 長門は顔を真っ赤にして俺を睨み付けている。記憶の奥にあの時の彼女が蘇る… 「もういい…」 「そうか、残念だな」 「キョンくん…最低です…」 ぐはっ!胸が締め付けられる…もう立ち直る事はできないでしょう… 「二つめのお願い。あなたには、私の傍に居てほしい」 「傍にか?お安いご用だ」 なぜ長門がそんな事を言ったのかわからなかったが、これくらいはしてやろう。 「ありがとう…」 「傍にいるだけでいいのか?」 「そう。あなたはなにもしなくていい。傍に居てくれるだけで」 「そうか」 「あの…手を…」 長門が俺の手を握る。とても温かかった。握り返してやろう。 「手…あったかいな」 「お二人とも大変仲がよろしいですね。しかし、どうでしょうか?お二人のお姿 を涼宮さんがみたら――」 俺達が手を握り合っていたその時、文芸部室の扉が勢い良く開く。SOS団団長 である涼宮ハルヒが現れた。 「みんな!揃ってるわね……ちょ、ちょっとあんた達!何してるわけ!?」 完全に勘違いしてやがる… 「まて!ハルヒ!俺達はだな――」 「キョンは黙ってなさい!あんたの意見は聞かないわ!どうせ有希がおとなしい からって無理矢理有希に迫ったんでしょ!?有希、説明しなさい!」 なんでそうなる!?いくら長門が可愛いからってそんな事するはずないじゃない か!長門、俺の代わりに真実を伝えてやってくれ… 「そのような事は有り得ない。私と彼はこれからずっと一緒に居るという約束を した。それだけ」 な、長門!?いきなり何を言い出すんだ。罰ゲームじゃなかったのか!?長門と 一緒に居られたら幸せな気もするが、そんな事を言ってる場合じゃないぞ。 「そ、そう…でもね!SOS団は恋愛禁止よ!団長としてほうっておけないわ! あんた達、どうなるかわかってるんでしょうね!?」 このままじゃ俺達は死刑にされちまうかもしれない。 朝比奈さんを見てみろ。青ざめた顔で震えているじゃないか… 古泉だって笑顔が消えちまった。 「ハルヒ!聞いてくれ!これは…誤解なんだ!俺達はハルヒが思っているような 関係じゃないんだ!」 「………違うの?」 長門が俺の袖を軽く摘んで問いかけてくる。頼むからやめてくれ…そんなに俺を 困らせたいのか? 「いや…違わないが…」 「あんた達がお熱いのはよぉくわかったわ!もう出ていきなさい!」 「ハルヒ…」 「うるさい!さっさと出ていきなさいよ!」 こうして俺達は部室を追い出されてしまった。さぁて、どうしようかねぇ… 部室を追い出された俺と長門は中庭へ行く事にした。文化祭の後、ハルヒと語り 合った木の下に座る事にしよう。 「…さて、どうするんだ?」 「大丈夫。私達なら、きっと上手くやれる」 「…そういう事じゃない」 「なら、何?」 「この事に対してお前の親玉はなんとも思ってないのか?」 「情報統合思念体はこのような事を望んでいなかった。しかし、この件について は特に反対意見はもっていない。私達が一緒にいることは、問題ない」 「そうか。だがな…」 「…嫌?」 「嫌ではない。むしろ幸せだが…」 「私達は幸せ。なら、問題ないはず」 「長門よ。俺達は幸せかもしれない。しかしな、ハルヒが泣いたんじゃ意味が無 いと思わないか?それに、古泉だって閉鎖空間に行かなきゃならなくなる。それ は古泉にとってとても辛い事なんだ。俺達だけが幸せになっても、それじゃいつ か幸せじゃなくなってしまうんだ。みんなが幸せになれる方法を考えよう」 「…私も、そう思う」 しかし、そう簡単に全員が幸せになれる方法など思いつくはずがなく、時間だけ が過ぎていった。情けない自分を呪いたいね。 気がつくと、既に日が傾いた。茜色に染まった空がとても綺麗だ。その空を見て いると、不意に涙が出そうになるほどのどこか寂しげな印象の夕焼けだった。 考えるのを忘れて、長門と二人で夕焼け空に見とれていると、人が近づいて来る のが見えた。 「ヤッホー!そんなところでなにしてるんだいっ?ちょっと話があるっさ!悪い けどキョンくんだけちょろんと来てくれないかい?」 声の主は鶴屋さんだ。もう一人いるのは…朝比奈さんだろうか?逆光が激しく、 ここらでは良く見えない。 「長門、ちょっと行ってくるよ。ここで待っててくれ」 「そう。わかった」 なんの話かは解っている。今日の事だろう。そして…これからのSOS団の事。 きっとこの会話によって未来が大きく変わる。そしてそれを決めるのも俺だ。 「あたしがさっき文芸部室にいったんだよ。そしたらみくるがひとりで落ち込ん でたのさっ。心配になって理由を聞いてみたんだけど、そしたらびっくり!キョ ンくんと有希っこがくっついてハルにゃんが激怒っていうじゃないか!」 笑顔で話す鶴屋さんだが、とてもシリアスな表情をしている。 「あのぉ~…古泉くんはバイトがあるって行っちゃったんです…涼宮さんは『団 員同士で恋愛なんて考えられないわ…こうなったからには今までのように活動す るのは難しいと思うの…SOS団も解散かもしれないわね』と言い残して帰っち ゃいました…ほんと、これからどうなるんでしょう?私、このまま解散なんて嫌 ですよぅ!」 朝比奈さんは眼を涙に潤ませて必死に訴えている。 「あたしもSOS団の名誉顧問として放って置くわけにはいかないのさ!」 鶴屋さんから笑顔が消えた。とても真剣な顔でまっすぐ俺を見ている。 「ここいらではっきりさせておこうと思うよっ!」 「な、何をですか…?」 「とぼけてるのかいっ?有希っこか、ハルにゃんか、どっちが好きかって訊いて るのさ」 「真剣なんです。答えてください!」 長門かハルヒのどっちが好きかだって? わからない。 「…わかりません。嘘じゃありません。わからないんです」 「そっか。じゃ!質問を変えるよ。キョンくんは有希っこの事どう思ってるんだい?」 「長門…ですか?」 「そう。良かったらお姉さんに聞かせてほしいよっ!」 「…長門は命の恩人です。とても大切な人です。嫌う理由はありません。もうあ んな事が…いえ、長門が辛い時は力になりたいと思っています。長門の負担を少 しでも軽くして、心が折れてしまわないように全力で支えてやろうと思っていま す!長門のためなら、なんでもする覚悟です」 「有希っこの事はよくわかったよ。キョンくんは有希っこの事をとても大事に思 ってるんだねっ!有希っこが羨ましいよっ」 その言葉に嘘は無い。すべて真実。それが長門に対する俺の気持ちだ。 「次は…ハルにゃんだね。教えてもらって良いかい?」 少し考えた後、ゆっくりと口を開く。 「横暴で嫌やつです…」 「…それだけかい?」 「…はい」 「そんなわけないよねっ!?お姉さんの目はごまかせないっさ!それだけだった ら今まで一緒にいるはずないでしょ!」 「けれど!SOS団を作ってから毎日の生活が急に楽しくなりました。平凡だっ た日常が急に明るくなりました。ハルヒと出会った事を後悔した事はありません 。ハルヒは俺達に必要な存在なんです!俺はハルヒと出会った日の事を生涯忘れ ない自信があります」 「そうかいっ!話してくれてありがとう!でもね、あたしがキョンくんに二人の 事を聞いたのは興味があったからじゃないのさっ。キョンくんに二人への気持ち を深く考えてもらおうと思ったからさ!あたしは今の話は聞かなかった事にする よ。これからどうするか決めるのはキョンくんさ。深く考えるんだよ?少年!」 そう言った鶴屋さんはいつもの笑顔に戻っていた。 朝比奈さんも今となっては天使のように可愛く微笑んでらっしゃる。 鶴屋さんのおかげで答えは出た。俺達は仲間なんだ。順位なんてつけられない。 「鶴屋さん。お願いがあるんですが」 「なんだい?なんでも言ってよっ!」 「ハルヒに伝言をお願いしたいのですが」 「任せてよ!なんて伝えるんだいっ?」 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥と」 「わかった。すぐに伝えるよ!」 「お願いします」 「じゃ、またね!」 「ではまた」 鶴屋さん、本当に感謝してます。このご恩はいつか必ずお返しいたします。 「また明日ね!キョンくん」 「部室でお会いしましょう」 朝比奈さん…ウインクは反則ですよ… 会話を終えた俺は長門のもとへと戻る。だいぶ待たせちまった。怒ってないか少 し不安だ。 「遅くなって悪い」 「いい。…なんの話?」 「秘密だ。聞かないほうがいいぞ」 「…そう。ところで、これからの事は…?」 「そうだな。思いついたぞ」 「そう。聞かせてほしい」 「さっきまでの俺達は幸せを求めて急ぎすぎちまったんだ。俺達二人だけでたど り着いた先に幸せはないんだよ。俺達二人だけで歩んだ道は本当に幸せだったか ?少しは幸せだったかもしれないが、今までのほうが幸せだったろ?早すぎても ダメだ。遅すぎてもダメだ。そして、一人も欠けちゃいけない。長門も、俺も、 朝比奈さんも、古泉も、そしてハルヒもだ。俺達は仲間なんだからな。SOS団 の五人揃って今までのペースでたどり着いた先に幸せが用意されるんだ。誰か一 人がくじけそうになったら全員で支えてやろうじゃないか。そして、いつかみん なで幸せをつかもう」 「…私も、そうしたいと思う」 そういうと、長門が少し優しい表情をした気がする。きっとそれは気のせいじゃない。 「すっかり暗くなっちまったな。今日は帰るとするか。長門、家までおくるよ」 「…ありがとう」 長門は俺の袖を掴んで隣を歩き始めた。 次は手を握ってくれないか?まぁ、これでもいいか。 次の日。昨日の事を忘れちまったかのように復活した団長様の姿が文芸部室にあった。 「次の不思議探索はここにするわよ!良いわね!?文句は言わせないけどね!」 俺達は気づいちまった。 結局今が一番幸せなんだって事に。 いつか別れが来るかもしれないけど、その時に思えたら良いんだ。SOS団で良かった!ってな。 その時まで、この幸せをしっかりと抱き締めて行こうじゃないか。 絶対に無くしてしまわないように。 絶対に忘れてしまわないように。 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3523.html
長門有希の雨雫 夢を見ていた。 夢、そんなものみないはずなのに、見ていた。 なぜだろうか?なんでそんなことがありえるのだろうか? まず、今のが夢というものなのだろうか、みたことがないので彼女は、 理解することはできるはずがなかった。加えて、内容も理解することができなかった。 いや、理解したくもなかったのだ。あまりにも、突飛すぎていたし、 何よりも凄惨なものだった。 が、しかしこの夢はすぐに消えてしまった。 学校はいつものように、文芸部の部室、兼SOS団の部室に入り、 パイプ椅子にすわって本を読む。それを繰り返していく毎日。 その毎日にいつも彼からの話かけられることがあった。 自分の正体を知りながらも、やさしく声をかけてくる彼。 「今日は何の本をよんでいるんだ?」 「………SF」 「そうか。」 「読む?」 「いや、その量は読める気がしない。」 「……そう」 なぜだろう?もうすこしだけ話していたかった。 彼と話していたかった。人の気持ちなんかもってないはずなのに…… 自分は、少しずつ壊れている。そんな気がした。どうしてこんなに胸がいたいのだろう? 彼は、私を壊すイレギュラーなのだろうか?敵性なのだろうか? 考えを巡らしている間の途中、意識は消えた。 気がついたときには、もう空虚な空間の中にぽつんとすわっていた。 自分はなにをしていただろう?あの後は何をしたのだろう? まったくおぼえていなかった。 やはり、私は壊れてきているのだろうか? 翌日、いつものように、いつもの場所で本を読んでいた。 そして、いつものようにガラっと扉をあけ、いつものように、カバンを下ろし、 いつものように、やさしく話しかけてきた。 「よう。今日も元気そうだな。」 「……元気。」 「そうか。元気でうれしい。」 「…どうして?」 「どうしてっていわれもな。」 「どうして、人が元気だったら、あなたはうれしい?」 「大好きな仲間が、元気じゃなかったらいやだろう?」 「……そう」 大好き?それはなんだ?人の感情? 私が持ち得ることができない。そういう類のものか。 「私は、感情の概念を持っていない。」 「そんなことはないぞ。長門おまえだって絶対あるはずだ。 絶対なくしたくないものが。ほしいものが。」」 「…………」 なくしたくないもの・・・・・ 絶対に無くしたくないもの、ほしいもの・・・・それは・・・・? なんだろうか?私にもそんなものあるのだろうか? 唐突にガラっと、大きい音がした。 涼宮ハルヒだった。彼に話しかけている。 それがなぜか嫌だった。見ていて嫌だった。・・・・・どうして? …………私が、絶対にほしいもの、なくしたくないものは彼なのか? そんなことはあるはずがない。そんな感情、プログラムされていない。 時間がきた。帰る時間だ。涼宮ハルヒは用事があったらしくとっくに帰っていた。 残っていたのは、彼と私だけだった。 きれいなオレンジ色の夕焼けをみながら帰り支度をしていた。 「一緒に帰るか。」と彼。 私は、こくりとうなずいた。 さっきの夕焼けの残影をのこした帰路につきながら、 「欲しいもの……」 「……?。みつかったのか?」と彼 「それは、…あなた。」 「……!」 自分は何を言っているのだろう?こんなことありえない。 でも、制御ができない。彼が欲しい。欲しい。…………欲しい。 涼宮ハルヒには…………。 その時、プツっと意識が途切れた。 フっと、意識を取り戻した。 目の前にあるのは、彼の死体だけ。 ふと少し前の記憶が怒涛のように流されてきた。 なんだ?これはなんだ? なにをしている?「やめろ!やめて!“」 私はなにをしていた!? 私は、彼を殺したのか?なぜ?どうして?彼がほしかったのに。無くしたくなかったのに。 彼と一緒にいたかったのに。なぜ殺した? 涼宮ハルヒにわたしたくなかったからなのか? それを教えてくれる彼はいない。 それを教えてくれる彼を私は…………殺した。 あの夢を思い出す。あの凄惨な夢を。 私は、もう何も見えない。何かが目からながれている。 なんだろう?いつも、そういうことを教えてくれていた彼は、もういない。 いろんなことを、伝えてくれていた彼は、もういない。 大好きな彼は、もういない。 その時。美しい出で立ちをし、きれいな涙を流す彼女は自問自答する。 そして、その答えは、彼が、彼女が言った言葉を答えたものと同じものだった。 「……………情報連結解除。」 「Yes。」 彼女はやさしくそう言って、彼と消えていった。 そう。最後の彼の言葉を思い出しながら。 もうその場所には、二人の影はない。 いまだ夕焼けの残影を残す帰路。二人の影を失った空は、ただいたずらに反転していく。 完
https://w.atwiki.jp/haruhi-suzumiya/pages/28.html
SERECT? 雪、無音、窓辺にて。
https://w.atwiki.jp/hachinai_nanj/pages/2605.html
[UR]【長門有希の快打】長門 有希 (中) [SSR]【長門有希の意思】長門 有希 (中) 最終更新日時 2024/05/17 20 58 /このページを編集 ★ 覚醒前画像▼ 属性 レア 守備適性 決め球 なし 変化球1 - △ △ △ ◎ 〇 〇 〇 〇 〇 ◎ 〇 変化球2 - 総評 ハルヒコラボ第2弾で実装されたUR長門。 第1弾で実装されたSSRと同様に捕手と中堅手の適性◎だが今回のポジションは捕手ではなく中堅手。 なんとも長門らしいステータスとなっており走力以外は非常に優秀。 固有スキルではHR率も上昇し、条件付きながら味方打線を強化する全体バフも所持。 さらにCHではOC消費無しで使い勝手の良い戦術を追加するなど自身のみならずチーム全体の能力も強化する。 なお、メモリアルリンクなどにより投手バフを備えた捕手としても運用可能となっている。 ただしスキルリンクの一方が投手バフに乏しい仙さんで自身の投手バフも才能のひとつだけ。 UR千代ちゃんなどの投手バフ重視の専業捕手に比べるといささか物足りないのは仕方のないところ。 投手バフが重視される試合では本来のポジションである中堅手で起用するなどキッチリ使い分けていきたい。 #ハチナイ攻略 パラメータ * ミート パワー 走 力 守 備 備考 素パラメータ 5000 5000 3000 5000 - 恒常スキル後パラメータ 7150 5450 4050 6050 ホームラン率+6敵コントロール-500、変化球効果-4 打席時/走者が得点圏にいるとき +1480 +200 - - - 3回以降/6回まで +600 +300 - - 味方ミート+600、パワー+300 最大バフスキル後パラメータ 9230 5950 4050 6050 ホームラン率+6味方ミート+600、パワー+300敵コントロール-500、変化球効果-4 恒常スキル後パラメータ(開花スキル) 7350 5650 4400 6400 ホームラン率+6敵コントロール-500、変化球効果-4 最大バフスキル後パラメータ(開花スキル) 9430 6150 4400 6400 ホームラン率+6味方ミート+600、パワー+300敵コントロール-500、変化球効果-4 ※野手用ピンクスキル6つ * 球速 コントロール スタミナ 変化球発動率 変化球効果 キレ ノビ その他 恒常投手バフ +2km/h +700 +0 ±0 ±0 ±0 ±0 - + 投手パラメータ * 球 速 コントロール スタミナ 備考 素パラメータ 126km/h 5000 3000 - + SSR時のパラメータ * ミート パワー 走 力 守 備 備考 素パラメータ 4000 4000 2500 4000 - メモリアルリンク リンク種別 ステータス スキル 守備適性 セルフ - - 1 メンバー 初瀬ルナ 鈴木仙波 - + ステータスタイプ ステータスタイプ 画像 シーン名 解説 【私が教えられること】初瀬 麻里安 (三) 入手:メインマッチ常設のチャプターで入手可能 【想い込めた作戦】初瀬 麻里安 (三) 入手:メインマッチ常設のチャプターで入手可能 【星々が紡ぐ物語】初瀬 麻里安 (三) 入手:メインマッチ常設のチャプターで入手可能 【愁思電車】初瀬 麻里安 (三) 入手:メインマッチ常設のチャプターで入手可能 【見据えるはただ一点】草刈 ルナ (中) 入手:メインマッチ常設のチャプターで入手可能 + スキルタイプ スキルタイプ 画像 シーン名 解説 候補スキル1 候補スキル2 【代打、私!】鈴木 和香 (捕) 入手:コラボ限定条件のない自己バフの向日葵スキル持ち 研ぎ澄ました全力の魂 豪打の奥義+ 【泥まみれで掴んだ一球】鈴木 和香 (捕) 入手:恒常スカウト条件のない自己バフの向日葵スキル持ち ひたむきな熱情 テリトリーの奥義 【これが私の戦う道】鈴木 和香 (捕) 入手:フェス限定条件はあるが効果の大きい自己バフの向日葵スキル持ち 打撃の極致・風 守備号令の理 【紅灯照らす初詣】鈴木 和香 (捕) 入手:アワード限定投手バフの蒼天スキル持ち 新春万福の無窮・急 心浮かれる初詣 【綿密な作戦】鈴木 和香 (捕) 入手:恒常スカウト投手バフの向日葵スキル持ち データ野球の神童 安打製造の奥義+ 【純真を添えて】鈴木 和香 (捕) 入手:シーンパック投手バフの向日葵スキル持ち 緻密に作られたチョコ 配球知識の秘奥義 【波の綾に迎えられて】鈴木 和香 (捕) 入手:イベント報酬投手バフの向日葵スキル持ち 夏の魔力に魅せられて+ 好打者の奥義 【兄からもらった笑顔】鈴木 和香 (捕) 入手:恒常スカウト投手バフの固有スキル持ち 積み重ねた努力 内野安打の奥義 【期待と物思いを重ねて】鈴木 和香 (捕) 入手:恒常スカウト投手バフの固有スキル持ち 胸躍る瞬間 投手揺さぶりの奥義+ 【甘くて苦いチョコレート】鈴木 和香 (捕) 入手:恒常スカウト投手バフの固有スキル持ち 膨らむ期待と頬 柔軟の奥義+ 【正捕手の座は譲れない】鈴木 和香 (捕) 入手:恒常スカウト投手バフの固有スキル持ち 守り抜きたい場所 高速守備の奥義 【巡らす神算】鈴木 和香 (捕) 入手:ハチ姫限定投手バフの固有スキル持ち 冷静なカバーリング ミートの奥義 【ぬくもりの結束】仙波 綾子 (捕) 入手:恒常スカウト条件のない自己バフの向日葵スキル持ち 込み上げるパワー 豪打の奥義+ 【進塁許さぬ強肩】仙波 綾子 (捕) 入手:フェス限定条件はあるが効果の大きい自己バフの向日葵スキル持ち 打撃の極致・蝶 怪力豪打の理 【雨粒弾ける女房役】仙波 綾子 (捕) 入手:恒常スカウト条件の緩い全体デバフの向日葵スキル持ち捕手起用の必要あり 練られた胆力 高速守備の奥義 【期待をマリンの風に乗せ】仙波 綾子 (捕) 入手:パコラボ限定条件のない自己バフの固有スキル持ち 堂々と胸張って テリトリーの奥義 【道を拓く一声】仙波 綾子 (捕) 入手:ハチ姫限定条件の緩い全体デバフの固有スキル+FB革命の奥義持ち固有スキルは捕手起用の必要あり奥義のみのリンクならリンクLv3でOK 強肩捕手の影響力 FB革命の奥義 【勝つための座学】仙波 綾子 (捕) 入手:恒常スカウトFB革命の秘奥義持ち秘奥義のみのリンクならリンクLv4でOK FB革命の秘奥義 - 【ぬくもりとプレゼント】仙波 綾子 (捕) 入手:イベント報酬FB革命の奥義持ち奥義のみのリンクならリンクLv3でOK FB革命の奥義 - 【何気ない幸せ】仙波 綾子 (捕) 入手:アワード限定投手バフの蒼天スキル持ち ヒットジャミングの鳴動・急 届いた想い + 守備適性タイプ 守備適性タイプ 画像 シーン名 解説 【長門有希の視線】長門 有希 (捕) 入手:コラボ限定捕手および中堅手適性☆には5凸の純正SSRが必要 スキルリンクはいずれも捕手のすずわかと仙さん。 センターとして起用するならいずれも条件なしの向日葵スキル持ちであるスコラボわかやおしくらまんじゅうなどで打撃性能を強化したい。 捕手として起用するならすずわかは綿密わかをはじめ多種多様だが問題は投手バフ持ちのSSRがいない仙さん。 泥仙波の全体デバフもUR全盛の現環境では…といったところ。 投手バフはすずわかに任せて仙さんリンクでは自己の打撃強化を重視したほうがいいかもしれない。 守備適性は5凸のSSR長門で捕手と中堅手の両方を適性☆にすることができる。 正捕手論争も参照のこと シンデレラハーモニー 名称 属性情報をブースト変更 条件 打席時 戦術 ミート重視 効果 三振率↓↓↓↓↓敵捕球率↓長打率↑以下の効果が発動する・試合終了まで使用可能な戦術に「ホーミングモード」を追加・「ホーミングモード」が追加済みの場合、使用上限回数をリセット 戦術名 解説 効果 ホーミングモード 自動追尾能力と飛距離倍増機能を獲得したバットを使うことで、長打になりやすいバッティングを行えるようになる(使用上限回数3)この戦術はオペレーションコストを消費せず、長門以外の選手も使うことができる 三振率↓↓↓↓↓敵捕球率↓長打率↑ CHは発動で追加される戦術「ホーミングモード」がある意味本体。 誰でも使えるOC消費無しのCHが追加されると言ったらさすがにオーバーだが使い勝手が良いのはまぎれもない事実。 効果を十分に発揮するならば本シーンは早い打順で起用した方が良いだろう。 これって違反バットちゃうんか? デレスト メニュー ランク カード名 属性 力 速 技 効果 練習メニュー ★★ バント練習 風 9 0 20 - 追加メニュー ★★★ ベースランニング 風 25 0 40 - 追加メニュー ★★ 遠投 風 0 9 20 - スキル ランク スキル名 条件 効果 備考 ★★★ 打撃モードを付与 打席時 自身のミートが超絶に上昇し、ホームラン率が超大幅に上昇する - ★★★ テリトリーの秘奥義+(条件あり) なし 自身の守備が超絶に上昇し、走力がバツグンに上昇する 絆の結晶(極)2個「テリトリーの秘奥義」習得済み ★★★ 安打製造の奥義+(条件あり) なし 自身のミート・パワーが超大幅に上昇する 絆の結晶(極)1個「安打製造の奥義」習得済み ★★ テリトリーの秘奥義 なし 自身の守備が超大幅に上昇し、走力が上昇する - ★★ 制球重視の秘奥義 投球時 自身の球速がわずかに減少するが、コントロールが超絶に上昇する - ★ 速球の奥義 なし 自身の球速が超バツグンに上昇する - ★ 内野安打の奥義 なし 自身の走力が超大幅に上昇し、ミートが上昇する - ★ 走者生還の奥義 打席時/走者が得点圏にいるとき 自身のパワーがわずかに減少するが、ミートが超絶に上昇する - ★ 安打製造の奥義 なし 自身のミート・パワーが大きく上昇する - ★ いぶし銀の奥義 なし 自身のミート・守備が大きく上昇し、走力がわずかに上昇する - ★ 投打バランスの奥義 なし 自身のミートが大きく上昇し、コントロールが上昇し、スタミナが少し上昇する - ★★★ 精神力強化の極意 投球時/走者が得点圏にいるとき 自身の粘り強さが大幅に上昇し、コントロールが上昇し、球速が少し上昇する - ★★★ 強襲の極意 打席時 敵守備のエラー率を上昇させる - ★★★ 全力投球の極意 投球時/投球イニングが2回まで 自身の球速が大幅に上昇し、コントロールがわずかに上昇する - ★★★ 制球の極意 なし 自身のコントロールが大幅に上昇する - ★★★ 粘り打ちの極意 打席時 敵投手のスタミナ消費量をわずかに上昇させ、コントロールを少し減少させる - ★★ 虎視の心得 打席時/5回以降 自身のミートが少し上昇し、走力がわずかに上昇する - ★ ミートの基礎 なし 自身のミートがわずかに上昇する - 才能 才能名 Lv 条件 効果 私がここにいる理由 7 守備時/キャッチャーのとき 味方投手のコントロールがバツグンに上昇し、球速が少し上昇する 分析力 7 打席時 敵投手のコントロールを大幅に減少させ、変化球効果を大きく減少させる 長門有希の助力 7 3回以降/6回まで 味方打者のミートが超大幅に上昇し、パワーが上昇する チャンス◎ 5 打席時/走者が得点圏にいるとき 自身のパワー・ミートが上昇する + 殿堂入り才能 才能名 Lv 条件 効果 長門有希の助力 EX 3回以降/6回まで 味方打者のミートが超バツグンに上昇し、パワーが大幅に上昇する チャンス◎ EX 打席時/走者が得点圏にいるとき 自身のパワー・ミートが超大幅に上昇する + ネタバレ注意! 固有悩み文 ★才能名★(→★才能名★) 条件: 効果: 『』 セリフ集 + [UR]【長門有希の快打】 [UR]【長門有希の快打】 状況 セリフ ホーム - - - - - - - - 試合 試合前 - 開始 - カットイン通常 - カットインターニングポイント - - 勝利 - - 敗北 - デレスト 特訓 - - + [SSR]【長門有希の意思】 [SSR]【長門有希の意思】 状況 セリフ ホーム - - - - - - - - 試合 試合前 - 開始 - カットイン通常 - カットインターニングポイント - - 勝利 - - 敗北 - デレスト 特訓 - - コメント ログを開く ホーミングモード強すぎ! - 名無しさん (2022-05-01 17 47 05) 私のチーム評価SS5だけど、リーグでSSS4までの相手ならほぼ勝てるようになりました。 - 名無しさん (2022-05-01 17 48 31) ホーミングモードでムードってどれくらい上がります?既に使ってる人おしえて - 名無しさん (2022-05-01 19 32 00) ホーミングモードを使用するだけではムードは上がりません。けれど、安打率が高くなるので連続して使えば結果的にかなり上がります。 - 名無しさん (2022-05-01 21 21 54) 早速ありがとうございます!確かにムード上昇あったら強すぎなんだが、あって欲しかったw - 名無しさん (2022-05-01 23 00 20) めっちゃ綺麗な数字に隠れて相変わらずの鈍足 - 名無しさん (2022-05-01 19 46 59) 課金さえすればセンター☆に出来るし後々引かずに後悔する人多そう - 名無しさん (2022-05-01 20 36 21) コラボ系は復刻期待できないからな。今回は前回のガチャキャラ復刻してるけど第3回がある保証なんてどこにもないからね - 名無しさん (2022-05-01 21 14 34) 長門を獲得したことにより、一塁以外、URを埋める事が出来た。捕手も出来るって、書いてあるが千代とリンがいるから使えなさそう。 - 名無しさん (2022-05-01 22 38 47) 原作通り3番に置くには走力がネックか、現時点では花投手が野崎しかいないのでフェス仙波をリンクできると滅法強い - 名無しさん (2022-05-04 19 55 24) ホーミングモードかなり強いわ。下位打線でも繋がるからムード上昇しやすいしレート3000余裕になった。 - 名無しさん (2022-05-28 02 16 30) 審判が本校のユニフォーム着てるけど、誰? - 名無しさん (2022-07-06 19 11 00) リンちゃん。「その構えであの飛距離!?」みたいなシーンだったかな。 - 名無しさん (2022-07-06 19 16 03) ホーミングモードは普通のバットに能力を付与しているだけだから違反にはならない() - 名無しさん (2022-09-08 10 52 20) ヤクわかのおかげでセンターでは更に強くなった、フェス波が強化されたメリットは鎌部に発動しないデメリットとどちらが上か - 名無しさん (2022-09-17 18 04 02) 名前
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5120.html
「出かけるわよ、有希!」 高校2年生になった年の夏休み、玄関のところで叫ぶ少女がいた。玄関のドアは鍵を閉めておいたはずなのだがなぜいるのだろう、涼宮ハルヒは。 声を聞くのと同時に「また」私の心臓の鼓動が早くなる。 長門「まったく、面白い人」 私は布団からもぞもぞと腰を上げて時計を見た。まだ9時である。 この現象はあの時最初に起きた。 彼女に最初に会った日。昼休みに文芸部室で椅子に座って本を読んでいた時、いきなりドアが開いた。 ハルヒ「あっ文芸部員の人ね!ここ当分あたしに貸して!」 思わず顔を上げてトビラを見た。そこには観察対象が笑いながら立っていた。 彼女がここに来ることなど情報統合思念体から聞いてない。私は情報統合思念体とテレパシー(光速でやりとりする)で議論した結果、彼女に部室を明け渡すことになった。 長門「どうぞ」 ハルヒ「ありがと!」 読書に戻る動作をしつつ再び情報統合思念体と議論し始めた。議題は、今後の「私の配置」、果たして彼女の近くにいるべきかどうかである。彼女のすぐ近くで監視する、という結論が出たとき 後ろから抱きしめられた。 ハルヒ「あなた名前は?」 内心驚いたが、無感動に答えた。 長門「長門有希」 ハルヒ「私は涼宮ハルヒ。にしてもぶ厚い本読んでるわねー。」 長門「本は情報の宝庫。厚さは関係ない。」 ハルヒ「難しいこと言ってるとモテないわよ!有希はかわいいんだからさ!」 彼女の手が私の頬をなで始めた。暖かい。そして初めて気づいたエラー。私の鼓動が速くなっているのだ。 ハルヒ「もう照れなくてもいいのよ。顔赤くしちゃってー。」 どうやらもうひとつのエラーがあるようだ。 原因について脳内模索していると、彼女は腕をほどきドアの方へ走った。 ハルヒ「んじゃ放課後また来るわ!じゃあね有希!」 ドアが閉まるのを音で確認した。 その日から私はこの2つのエラーについて原因・解決方法を調査し続けた。家に貯蓄してある本や、学校の図書室の本、そしてSOS団唯一の一般人であるキョンが連れていってくれた図書館の本も利用している。 ハルヒ「有希ー!あと30秒以内に準備しなさい!あっ有希だから10分待つわ!」 回想しすぎてしまった。私はゆっくり立ち上がり、服を全部を脱いでクローゼットへ向かった。 長門「さて団活動だし何を着ていこうか。」 そう呟いた時玄関から ハルヒ「今日は私と有希の二人だけだからね!服は適当でいいわよ!」 なん・・・だと。ならばとびっきりかわいい服を着よう。私はクローゼットからまだ一度も使ったことのない服を手にとった。 長門「お待たせ」 涼宮ハルヒは団活動でも見せた赤いシャツと青いスカートを着ていた。手には手提げバック。私に会った途端彼女は口を閉ざしてかたまった。 私に会った彼女の第一声 ハルヒ「有希・・・」 なにかまずかったかな。私はワンピースと呼ばれる白い服を着ている。あとはむぎわら帽子を頭にかぶり、手に麦で編まれた手提げバックを持っている。 長門「・・・なにかまずかったかな」 ハルヒ「・・・かわいいー!」 長門「あっ・・・」 突然彼女が抱きしめてきた。暖かい、いや熱い。自分の全身が熱い。あぅっ頬ずりしないで。顔がどんどん熱で真っ赤になるのが自分でもわかる。 ハルヒ「もーこんなにかわいいのにどーしていつも着て来ないのよー!」 長門「・・・アゥ」 耳元で聞こえる彼女の声に自分の思考回路がオーバーヒートしそうである。 彼女は私を解放すると ハルヒ「さあ行くわよ!」 と勢いよく言い放つ。彼女が私にだけ向けた言葉。 長門「・・・うん」 こうしか答えられない自分を少し恨んだ。 そう、様々な情報から私は涼宮ハルヒに恋している、という結論に至った。男女の「恋愛」ではない、という違いはあるが。 エレベーター内で ハルヒ「私ね、有希のことをもっと知りたいの。だから今日はよろしくね」 長門「話すことで理解してもらえるなら、16時間聞いてもらっていい?」 ハルヒ「お断り」 だよね。 私たちは玄関ホールを出た。すると私を導いていた彼女が急に私の後ろへ回り ハルヒ「一度やってみたかったんだー、えぃっ!」 と言い私のワンピースを下から上へ勢いよく上げた。たしか男性が女性のスカートをまくりあげてパンティを見る行為だ。 彼女のはしゃぐ声が聞こえるかと思い振り向くと、彼女は顔を真っ赤にしたままかたまっていた。なにかおかしかっただろうか。 ハルヒ「有希・・・」 長門「なに?」 ハルヒ「下着ぐらい着なさーい!」 その後私たちは再び私の家に戻った。彼女と出かけることに夢中になりすぎて着替え中に下着まで脱いでしまい、そのまま着るのを忘れていたようだ。涼宮ハルヒは私のクローゼットを勝手にあさり、白い下着を選んでくれた。 長門「ごめん」 ハルヒ「いいわよ別に。意外に有希ってドジっ娘ね。」 あなたの前だけ、とは言えずただ頷いた。 2度目の外出。 ハルヒ「じゃあどこ行く?」 長門「・・・図書館」 ハルヒ「有希、そこは遊びに行く場所じゃないわ」 長門「冗談」 ハルヒ「なんだ冗談か。じゃあ買い物に行く?」 長門「財布の中身を確認してみる。」 たしか残金は680円。あとで情報統合思念体に金を要求しよう。がま口財布の中身を確認すると、小銭の他に紙切れが2枚入っていた。 ハルヒ「あれ有希、それって最近新しくできた遊園地の無料入場券じゃない?」 長門「昨日郵便受けに入ってた。」 ハルヒ「へー。じゃ遊園地に行きましょう!」 長門「わかった。今からコンビニで金を下ろしてくる。」 ハルヒ「やっと着いたわね」 長門「おつかれさま」 ハルヒ「まだ疲れちゃいないわ。」 長門「あの長蛇の列に並んで疲れないはずがない。」 実際彼女は汗まみれだし、椅子にぐったり腰かけている。私は立っている。突然だが意を決して聞いてみた。 長門「あなたのことを『ハルヒ』って呼んでいい?」 ハルヒ「もちろんよ。私だって『有希』って呼んでるんだから。」 長門「・・・ありがとう」 人と交流することに慣れていない私は今まで人を下の名前で呼んだことがない。だから好きな彼女を下の名前で呼べることがうれしい。 ハルヒ「じゃ休憩終了!どこ行く?」 長門「ではあれ」 そう言って自分が指さした物はバンジージャンプである。 私たちはスカート着てるからダメ、ときっぱり断られ、向こうにあるアトラクションへ行った。ハルヒの下着を見たかった。 ハルヒ「なんでカップがあんなに速く回るのよ、どこの漫画よ!」 長門「いろいろごめんなさい」 ハルヒ「あっ有希のせいじゃないわよ。」 私たちは「マグカップ」と呼ばれるコップ型の乗り物を中央の台を使い回して遊ぶ乗り物を体験した。だが突然、というより私のせいで、マグカップが普通ではありえないスピードで回ってしまった。 まあそのおかげで、乗り物内でハルヒがおびえるように私にぎゅっとだきついてきてくれた。 長門「なかなかレアなハルヒを見れた。」 ハルヒ「あっあれはそのなんていうかそうよ不可抗力よ!」 長門「クスッ」 ハルヒ「いーい?他の団員には内緒だからね」 長門「じゃあクラスメートに言い」 ハルヒ「ダメ!有希がそんなひどい人だとは知らなかったわ」 長門「茶化してごめんなさい」 ハルヒ「もー有希ってやっぱり面白いわね」 あなたの方が面白いよ、ハルヒ。 ふと私は普通にハルヒに接することができていることに気づいた。と同時にまた鼓動が速くなる。 ハルヒ「じゃあ次はあれに行くわよ。」 それからも私はハルヒと一緒の時間を味わいたくて、ハルヒの案内に従った。 例えばお化け屋敷。歩いている間ずっとハルヒは私の手を握って歩いていた。 例えばジェットコースター。私たちはとなりどうしの席に座った。この乗り物が急降下する直前、ハルヒは私の手をぎゅっと握ってくれた。 ジェットコースターに乗った後私たちはファーストフード店で昼食をとった。その昼食でのこと ハルヒ「あっ有希。ほっぺにソース付いてる」 長門「えっどこ」 ハルヒ「左の方よ。あっもうちょっと右」 長門「ここかな。とれた?」 ハルヒ「だめね。私がとってあげる。」 と言って私の唇のすぐ近くをハルヒは人差し指でなぞった。あっ唇に少しだけなぞった。そしてそのままハルヒはその指を舐めた。 ハルヒ「にしても紙ナプキンもない店なんて珍しいわね、有希」 彼女が何を言ってるかわからないほど私は恥ずかしかった。 ハルヒ「じゃ次行く場所は有希が決めていいわよ。ただバンジージャンプは勘弁ね」 長門「じゃあれ」 ハルヒ「んー『スプラッシュ・ウォーターマウンテン』?私たち水着なんて持ってないわよ」 長門「なくていい、いやむしろなくしてください」 ハルヒ「なに言ってるのよ!あっなんだ別に水着いらないじゃない」 長門「ざんねん」 ハルヒ「有~希~少しお黙り~」 長門「ごめん」 ハルヒ「・・・・プッあはははは!」 長門「どうしたの?」 ハルヒ「有希がここまで面白い人だとは思わなかったわ!さあ行きましょう!」 長門「うっうん」 ハルヒ「ほら有希、手」 そう、私たちはいつのまにか移動時は常に手を繋いで行動するようになっていた。 そしてその乗り物に乗ってみた。あんまりこのアトラクションは面白くなかったが、ハルヒと一緒にいられるだけで嬉しくなる。 ハルヒと一緒の時間に慣れたのか、私は自然に楽しんでいた。今まで味わったことのないほどの「喜び」。顔には表現しづらいけど。 ハルヒ「有希。おみやげ買わない?」 長門「財布に18万あるから買ってもいい」 ハルヒ「・・・えーとね有希。一度に財布に入れる金は5000円ぐらいでいいのよ?」 長門「ハルヒと出かけることが楽しみだったから。思い出の品をいっぱい買っておきたい。」 ハルヒ「はぅーけなげな有希かぁいい~お持ち帰り~!!」 長門「抱き着かないで、あっ暑いよハルヒ。」 ハルヒ「ごめんごめん。もうそんなに顔真っ赤にしなくても。じゃあ思い出たくさん買うわよー!」 長門「ハルヒの思い出をいくらで売ってくれる?」 ハルヒ「へっ?」 長門「ナガトユキジョーク」 私たちはたくさんの思い出を買った。服や人形、アクセサリー。私にとって最高の一日。ハルヒがいれば私は楽しめる。 私は、ハルヒがそばで支えてくれなければ存在できない。そう確信した。なぜって、こんなに楽しませてくれるのは彼女以外にいないからだ そして空がオレンジになりかけた頃 ハルヒ「有希。観覧車に乗らない?」 長門「カンランシャって何?」 ハルヒ「それもナガトユキジョーク?あれよあれ」 長門「あの円形の機械?」 ハルヒ「本気だったとは。まあ男女で行けないのが惜しいけど。」 というわけで今観覧車に乗っている。私たちは向かいあわせの席に座っている。ハルヒの話によると、ここは男女が愛の気持ちを告白する道具、とのこと。 私の気持ちを伝えてもいいよね。 ハルヒ「有希」 長門「なに・・・かな」 ハルヒ「いやー気になったんだけどさ。そんなかわいい服があってしかも普段は着てないってことわさ。いつか好きな男に見せるつもりなの?」 長門「えっ・・・いや」 ハルヒ「顔が否定してないし真っ赤。どんな男よ!相手によっては交際していいわよ、あたしが許可するわ!」 彼女は突然立ち上がって、「いい男」について語り始めた。私の気持ちには気づかないようだ。 その時ゴンドラが突然ゆれて止まり、すぐに動いた。当然ハルヒは立っていたのだから振動で体は倒れるだろう。 ハルヒ「キャッ!」 長門「あっ・・・」 ハルヒは私に抱き着く形で体を安定させた。だが今回他人から見ればハルヒが私を椅子に押し倒しているように見えるだろう。 私の思考回路の大半が緊張と熱で機能停止していた。自然治癒にしても時間がかかる。私は一人の「人間」として行動する。 彼女が体を起こそうとしたので私は彼女を自分の方に押さえ付けるように抱きしめた。あたたかい。 ハルヒ「ちょっと有希!?ななななに!」 長門「私はハルヒのことが好き。恋人として」 勇気を振り絞って、私は告白した。 ハルヒは困惑しているようだ。言葉にならない言葉を耳元で発している。 長門「あなたの元気や行動力、温もりに私は恋をした。付き合って欲しい」 ハルヒ「・・・ごめん」 私の思考回路が徐々に直り始めたころ、私は全身の力が抜けるのを感じた。 ルート bad ルート good ルート bad ハルヒ「私たちは女同士。だからできないよ」 そうだよね。私たちは同性だから。でも 長門「外国では同性で結婚もできる」 ハルヒ「それでもだめなの。だって私・・」 ハルヒの涙が私の頬を濡らしはじめた。私はハルヒに傷を与えてしまったようだ。 長門「ごめん」 ハルヒ「私キョンのことが一番好きだから!」 二人が同時に発した言葉。だがハルヒの言葉は私に深刻なエラーを与えた。 私は今の言葉を脳内再生し続けた。彼女が私に大声で叫んでいるが、何を言ってるのかわからない。 あっ目から冷たい液体が溢れてる、止まれ涙。まばたきしてない、動けまぶた。だがどんなに命令しても「エラー」で全て受け付けなかった。 気が付いたら私は電車の中で座っていた。右肩が重いので見ると、ハルヒが私の右肩に両手を乗せて泣いている。思考回路が戻ったのだろう、現状の認識ができる。 長門「ごめんなさい」 ハルヒ「私こそごめん。でも」 長門「気にしないで。ハルヒに泣かれる方がつらい」 ハルヒ「ごめんね」 長門「私頑張って悲しみに耐え切った」 ハルヒ「うん、よく頑張ったわ有希」 ハルヒを安心させるために私は笑顔で言った。 長門「わたしがんばった」 その後私たちは会話もなく地元の駅で下車し、解散した。 私は家へ帰った途端にエラーを起こした。全身の力がなくなりその場に正座状態になった。おみやげは辺りに散らかった。私の頭に次々と情報がダウンロードされる。 長門「私の行動の枷となるのは他TFEI及び情報統合思念体私が起こしたエラーの原因は観察対象の発言キョンが一番であるならば彼を消せばいい情報統合思念体がそれを邪魔するならば情報統合思念体から消せばいい今彼らは会議中ハッキングは容易彼らを破綻させるには・・・」 長門「情報のダウンロード完了情報統合思念体の消去開始情報統合思念体の削除完了同時に他TFEIの消失確認自身消失へのプロテクト成功私自身の能力の消失を確認彼を消去するには比較的原始的な手段が必要「道具」は台所にあり」 私は自我を取り戻すと、全身汗びっしょりだった。3時間あのままだから当然だ。情報統合思念体が削除されたことに対して特に感じない。エラーはまだ続いている。 私は台所から「道具」を寝床に持ってくると、1時間以上手入れをしたあと「道具」を枕元に置いて就寝した。その間ずっと頬に涙を伝わせながら。 朝がきた。私は学校への「準備」を済ませていつも通りに登校した。途中古泉一樹や朝比奈みくるに情報統合思念体やTFEIの消失について問いただされたが、知らない、と言って通り過ぎた。 学校の玄関の下駄箱でキョンに会うと、まず 長門「話したいことがあるから今日早く文芸部室へ」 わかった、という返事をもらった。 授業中退屈だった。6時限終了後、私は足早に文芸部室に向かった。 部屋に誰もいないのを確認すると、バッグから「道具」を取り出し制服の内ポケットへ入れた。ジャストフィット。あとはいつもどおり椅子に座って本を読めばいい。 キョン「おう長門」 来たか 長門「あんたが立ったままじゃ失礼だからここに座って。お茶を入れてくる。」 キョン「え・・気のせいだよな、ありがとう」 「あなた」と呼ぶところをつい「あんた」と言ってしまった。まあいい。標的はさっきまで私が使ってた椅子に腰かけた。 沸かした茶をカップへ入れてるとき キョン「あっ長門。ハルヒがおまえに渡したいものがあるようだぜ。」 注ぎ終えたヤカンを乱暴に机に置いた。オマエガハルヒヲナレナレシクヨブナ。 キョン「大丈夫か長門?」 長門「平気」 キョン「ネタバレするとな、中身は菓子だ。大丈夫ハルヒの許可はとってある。」 長門「ナレナレシクハルヒノ」 とと危ない危ない。本音を言ってしまうところだった。 おそらくそのプレゼントは私への愛の気持ち。そうかハルヒは考え直してくれたんだ。私と恋人になれる。じゃあその菓子は今日の祭でのお祝いだ。 キョン「長門、だよな?」 長門「私は私。はいお茶」 キョン「どうも。にしても今日はよくしゃべるな。あっ座るか?」 長門「いい」 私はお茶を彼に渡し終えると彼の背後に立って話をした。 長門「他のTFEI及び情報統合思念体とコンタクトがとれなくなった」 キョン「古泉から聞いた。長門は大丈夫なのか?」 長門「このとおり大丈夫。できればあなたにも打開策を考えてほしい」 彼は座ったまま腕を組んで考え始めた。私は内ポケットから銀色に輝く鋭い「道具」を取り出した。自分の顔がにやけているのがよくわかる。 サヨウナラ 彼の首に「包丁」を突き刺そうとした。 その時思考回路に急な負荷がかかった。エラーだ。いや正確には人格修復プログラムだな。 これはたしか情報統合思念体に敵対する異常な行動を18時間以上していた場合に起きる、私の治療プログラムだ。情報統合思念体削除から今までの行動によって起動したか。私としたことがプログラムを削除し忘れたようだ。 ここで負けるわけにはいかない。だが抵抗をすると激しい頭痛に襲われた。 途端彼との思い出が溢れてきた。彼を助けたことや、彼に助けられたこと。「消失」事件での彼。彼の優しさ。彼への殺意が消えかけた。 だがハルヒとの生活を夢見る自分が殺意を増幅させた。消しては増幅し、を繰り返す。頭痛がひどくなる。 私が頭を押さえて必死にあらがっていると、彼が振り向いたのでとっさに包丁を持つ右手を後ろに隠した。 キョン「長門!大丈夫か!?」 彼は茶を床に転がし、立ち上がって私の正面に近づいた。頭痛がさらにひどくなり 思考回路がカンゼンニコワレタ。 「あははははははははは」 どこから聞こえるのだろう 「長門!?しっかりしろ!!」 なぁんだ自分の口から聞こえてるじゃないか ヤツが私の両肩を掴んでなにか叫んでいる 長門「きたきたきたキター!アハハハハハハハハハハ!!!」 私は右手を前に素早く突き出した。そのさきは害虫の首。感触あり!そしてえぐったあと一気に引き抜いた。 キョン「長門・・・・」 長門「修復プログラムに勝った!ダイオキシンの処理は完了した!!あとはハルヒと幸せ生活が待ってるわウヘヘヘヘ!!!」 ハルヒ「騒々しいわね、どうし・・・」 ハルヒが部室に入ってきた。辺りにばらまかれた鮮血。床に血まみれで倒れている、首をえぐられ息の絶えた疫病神。悪魔の返り血を全身に浴びた私は振り向いた。 ハルヒ「有・・希・・?」 私は、ヨロコビのあまり絶句しているハルヒに満面の笑みで言った。 わ た し が ん ば っ た ハルヒ「いやああああああああああああああああああああ!!!!!!!」 赤黒い彩りをまとう私を数人の男たちが白黒の送迎車で歓迎してくれた。サイレンまで私を歓迎していた。ハルヒは笑顔で見送ってくれた。涙流すほど喜んでくれるなんて。 あのあと部室でハルヒが大声をあげて歓喜したかと思ったら携帯電話でどこかに連絡をし始めた。 私が喜びを分かち合おうとして彼女に近づくと、彼女は狂喜したまま部室から出た。私は満足した。 どこかの建物で男たちからたくさん質問を受けた。私たちが結婚するにふさわしいか、問いてるらしい。もちろん満点だ。 しばらく私の寝床はシンプルで鉄に覆われた部屋だった。花嫁修行だろう。はやくハルヒに会いたい。でもこの修行が終われば会える、と思うといくらでも待てる気がした。 仮住居に移住して3日目。私に朗報が届いた。ハルヒが先に新住居へ引っ越したらしい。私宛ての手紙があり「私のせいだよね、生きててごめんなさい」と書かれていたらしい。 つまり私とハルヒが愛しあったことで、私たちの恋愛を邪魔されない場所へ移住する必要がある。ハルヒは先に引っ越しをして待っててくれている。もうすぐ行くから待っててハルヒ。いっぱい愛してあげるよ。 その日の夜中、口から大量の血を出して倒れている長門を警察官が発見した。彼女は舌を噛み切って自殺したようで、すでに息はなかった。その死に顔は満面の笑みを浮かべていた。 ――――――bad end――――― ルート good ハルヒ「私たちは女同士。だからできないよ」 そうだよね。私たちは同性だから。でも 長門「外国では同性で結婚もできる」 ハルヒ「それでもだめなの。だって私・・」 ハルヒが泣いている。私はハルヒに傷を与えてしまったようだ。 長門「ごめん」 ハルヒ「でもね有希のことも大好きだよ!」 あっ。こうもはっきり言われると結構恥ずかしい。でも「恋人」としての好きではないのか。 ハルヒ「ごめんね」 長門「さっきの一言で十分満足した。ありがとう」 私はハルヒを解放した。だがハルヒは私から離れない。 長門「どうしたの?」 ハルヒ「えっとね。せめてのお詫びにと思って・・・えいっ!」 ハルヒの顔が私の顔に急接近した。あれ近すぎじゃあれあれあっ! 私がハルヒとキスをしていると理解するまで十秒かかった。だがハルヒの唇が離れるまで30秒かかった。 ハルヒ「これで許して。ファーストキスなのよ」 長門「・・・・わかった」 自分でもわかる、真っ赤な顔で満面な笑顔で答えた。ハルヒも顔がりんごのように真っ赤だ。 その後私たちは電車で帰った。ずっと手を繋いだまま。 長門「ハルヒは?」 ハルヒ「どうしたの有希?」 長門「ハルヒは好きな人いるのかな、て」 ハルヒ「う・・・うん」 長門「誰」 ハルヒ「今の有希に言うとその人殺しそうね」 長門「そんなことはしない。ハルヒもひどい冗談はダメ」 ハルヒ「あははそうよね!実を言うとキョンのことさ・・・えっとその」 長門「ライバルはキョンか。私、いつかあなたを振り向かせてみせる」 笑顔で彼女は言ってくれた。 ハルヒ「ありがと有希」 その後も楽しい会話は続いた。私たちは確実に親しくなれた。 私たちは下車駅で解散した。家に着いてから私はすぐにお風呂に入って寝床に入った。 恋人にはなれなかったけど、彼女の優しさをたしかに感じただけで満足だ。私はキスの感触を何度も思い出しながら寝た。 朝が来た。私はひとつの決心を貧相な胸に秘めて登校した。 登校中情報統合思念体は、世界に影響が起きないレベルまで私を応援する、と約束してくれた。 学校の下駄箱置場でキョンに会った。 退屈な授業が済むと私はスキップしながら文芸部室へ向かった。 部室に着いた私はいつもどおり椅子に座り本を読んだ。 少ししてキョンが入ってきた。 キョン「よう長門。で話ってなんだ?」 胸に秘めた決心を伝える時がきた。顔を彼の方に向け言った。 長門「あなたには負けない」 ―――――good end――――
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1154.html
長門の姿を見る度に思う事なのだが、こいつは今読んでいるページ数が四桁に届きそうな分厚いSF物を読んでいるのが一番だ もしこいつがタコをモチーフとした火星人が襲来するどたばたギャグコメディ漫画かなんかを読んでいたら俺はいつかの無口で控えめな文芸部員の居た世界を思い出し、 変わった理由を探し出してまた何か奇天烈な行動を起こす羽目になるかもしれない しかし前は世界が改変していたから無かった事にはなったがもしそうでなければその奇天烈な行動は後々まで語り継がれ涼宮ハルヒなる団長様に毒されたと同情の目線を送られるだろう 「世界を大いに盛り上げる為の涼宮ハルヒ」の団略してSOS団が占領する事現在進行形の文芸部室では長門が読むのはいつもの如く俺が三ページと持たない分厚い書籍を読むのが一番似合っている 別にこれは俺だけの意見ではなく、SOS団に属する全員が思っている事だろう 「……………」 「……………」 本に集中できるのは良い事だが、集中しすぎるというのも頂けない 今SOS団が占領する文芸部室では俺と長門が互いに沈黙の権化と化している 別に喧嘩したという訳でもなく、こー言う奴なのである。長門という情報統合思念体のなんたらかんたらとという無口な宇宙人少女は 初めの頃こそ無表情ではあったが、最近は少し感情を表に出すようになった 長門の表す微妙な感情は俺が一番読み取れると自負している。これは自慢しても良い事だ だからこそ、その必要な事意外は口にしない対有機生命体コンタクト用なんたらかんたらが雑談を持ち掛けてきた時は心臓が止まる思いだった訳だ 「…………本」 「本?」 長門が唐突に発した言葉はそれだけだった。つい鸚鵡返しに聞いたのがまずかったのか、長門は少々思案する顔を見せた コイツがここまで露骨に感情を表情に出す機会は滅多に無いので、俺はついついその顔を眺めていた 「………貸す」 長門が指した先には分厚い書籍がずらりと並ぶ本棚があった。しかし、俺はまだ動けないで居る 普段のコイツを知っている俺としては自主的な発言は何かしらの事情に絡んでの事で、それは大抵が涼宮ハルヒという御仁に関係する事柄でもある それを考えると嫌な予感しかしなかったが、別に断る理由もないので本棚の前に立つ 目の前の本棚には俺には理解する事の出来ない英語がずらりと並んでいる うん、困った 自慢じゃないが俺は活字という物に遺伝子レベルで拒絶反応が刷り込まれている自信がある 恐らく一ページを読み終わる前に夢の世界へ旅立ってしまうだろう そんな感じで目線を泳がせて見ると一つの小冊子が目に付いた。ノート大の紙を幾つかまとめた物で、何かしらの文字が書いてある 長門しか使わないであろうこの本棚にこんな物があると言うのが激しく違和感ありまくりなんだが 「オイ、長門。これ」 は、とは言わせて貰えなかった。その小冊子を手に振り向くと眼前まで間合いを詰めていた長門に一瞬で掠め取られた。速い、速いよスレッガーさん そして長門は何事も無かったかのように一つの本を取る 「お勧め」 「……………面白いのか?」 「ユニーク」 ……ああ そう それだけ言うと役目を終えたかのようにパイプ椅子へと戻り、読書を開始する。その手には小冊子を持って しばしその場に立ったままの俺であったが、扉を蹴り飛ばす轟音によってその状況は打破される事となった 扉を蹴り飛ばした女・・・まぁ、言うまでもないよな、涼宮ハルヒだ バニーガールに扮したその団長様は不機嫌な様子を隠しもせず解散を告げた 大方あの姿でビラでも配っていたのを止められたんだろうな。想像が容易だ そうして怒号を吐きながらいち早く返っていったハルヒを追う様に帰り支度をする 因みに古泉と朝比奈さんはクラスメイトとの用事があるらしいので休みだ 古泉は兎も角朝比奈さんだけは一日一度は目に入れておきたいのにな。朝比奈さんの居ないSOS団などルーを入れ忘れたカレーより無意味な物だ さて帰ろうか 「…………」 と思って歩き出せば後ろに引っ張られる感覚が襲う。この部屋が呪われている話など聞いた事がないが …………なんてな。まぁ、今俺のベルトを掴んでいるのが誰かなんてわかる。俺のほかにコイツしか居ないしな 「なんだ?長門」 長門は少々困った顔をする。こういう表情も珍しいよな 「………私の家に来て欲しい」 年頃の男子としては女子から家に誘われると言うのは色々と魅力的な想像を働かせてしまう物だが、それは時と場合と相手にもよる物だと俺は思う 健全な男子としてはストロベリィな展開を期待しないでもないんだが、長門の家には行くたびに涼宮ハルヒに関する面倒事を抱えることになる気がしてしまう 果たして今度は一体何があるのかという思案に頭を悩ませつつ、俺は長門の隣を歩いていた 目的地としては何か有ったときの救世主に助けを呼ぶために過去何度か赴き今では目を瞑ってでも辿り着ける自信がある長門有希の住まうマンションだ さて、今度は何だろうね。ハルヒが何かしらの問題を起こした様には見えないんだが………イヤ、ハルヒの力は無意識に炸裂するんだっけか 「………大丈夫」 唐突に長門が口を開いた 「今回は、涼宮ハルヒに関係無い」 知らない内に心中を声にでも出していたのだろうか。俺の不安にピンポイントで答えを返してくれた もしかしたら長門なら心の中を読む事も出来るかもしれないが、出来たとしてもこいつがそんな事をする訳が無いと自信を持って言える 兎に角不安要素が取り除かれた中で、長門の住むマンションを視界に捉えた 今この状況を説明しろと言われても俺自身理解が追いつかず、解答権は放棄させて貰う事になるな 長門は台所に立って何やら料理をしているようだがその中身がレトルトカレーなのは想像に難くなく、俺は何故か夕食に御呼ばれしている訳である。説明できたな 「食べて」 そういってカレーの盛られた皿が二つ、運ばれてくる 業務用の圧力鍋の中にはカレーがたっぷりと入っており、一体何箱のレトルトカレーを使ったかなど逆算するのも面倒臭い 「…………情報統合思念体から補正を受けた」 唐突に………これで三回目だな、唐突って言葉を使うのは。まぁそれはどうでもいい 「私の中に再びバグが蓄積しつつあった。このままでは何時かの様に私は世界を改変する可能性が出てきた」 何時か………俺の脳裏には大人しい文芸部員が白紙の入部届けを俺に渡す姿が蘇った。 まぁ、何となく理解は出来るがな。大まかな所は。で、その補正とやらを受けたのはなんなんだ? 「言語通達で理解してもらう事は非常に困難。また、無理に表そうとしても必ず齟齬が生じる」 過去に何度か聞いた言葉だな。これで何度目だったか。俺が過去を振り返るために記憶を遡っていると、再び長門は口を開いた 「でも、近い概念を上げる事は可能」 少し間を置いて、 「私が受けた補正は、感情」 ………感情、ね。確かに言語化するのは困難だな 俺だって「楽しいとはどういうことか?」なんて聞かれたって答えられる訳がない。そんなもんは哲学者にでもやらせて、勉学に励んだ方が非常に有意義な脳の使い方だ いつの間にか三杯目のカレーを食べている長門へ目を向ける なるほど、今日感じていた違和感の正体が解ったな 「…………何?」 いやなに、お前に見とれていただけさ ……………何て言う訳無いけどな。 でも言ってみて恥ずかしがったりする長門を期待している俺が居る事は認めなければなるまい。まぁ、そんな事はありえないと解っているがな 「時間」 長門の無機質な声が告げる。いや、何処か感情が含まれている気がするな。 それは兎も角として時計に目をやった。もう八時を過ぎてるな。帰るか 「それじゃな、長門。カレー、美味かったよ」 「待って」 立ち上がろうとした俺の袖を長門が掴んだ。うーん、庇護欲をくすぐられるというか………萌え? そうか、俺は宇宙人萌えだったのか……………何て言ってる場合じゃないな 「また明日も………良い?」 不安げに尋ねる様は、そりゃもう反則的に可愛かったよ 翌日………ハルヒは懲りもせずビラ配りに出かけ、朝比奈さんはそれに巻き込まれ、古泉は俺とオセロをし、長門はいつもの如く分厚い本を読んでいた ある意味これがこの場所の正しい在り方かもな………って、俺も随分とハルヒに毒された様だ 先程から長門が本のページとページの合間にこちらを見ているが、まぁ気にしないでおこう とりあえず、俺は古泉の黒を一気に白へと変えた。これで………何勝だろうな。40回までは数えたがな 「78勝0敗0分」 長門が告げた。数えてたのか。凄いな 「もう78敗もしていましたか………どうです?このまま100勝を目指してみては」 やなこった。もうそろそろ飽きたしな。………と言うかお前が負ける事前提か 古泉がオセロを片付け、将棋盤を出そうとすると長門が本を閉じた 「おや、もう終わりの様ですね」 何時から長門は時報代わりになったんだっけな………って早 俺がそう思ったときには既に古泉は部屋を出ていた 「行きたい所が有る………良い?」 ああ、勿論良いとも。でも背後に立つのはも、う、や、め、に、し、て、く・れ・ない、か~♪ …………ああ、微妙に動揺してるのかな俺は で、行きたい所ってのはどこだ? 「………図書館」 図書館、ね。普段の俺なら絶対行かない所だな しかし長門の願いを無碍に断る訳にも行くまいて? まぁ、そんなこんなで図書館に来たわけなんだが、長門は矢張り俺が一生縁が無いであろう本を選んでいるので、俺は適当に選んだライトノベルを読んでいる 「……………」 長門が俺の向かいの席に座る。また難しそうな本を2~3冊携えて………見てるだけで頭痛がするな 流石にこれを全て読むとしたらかなりの時間が掛かるだろうな。キリの良い所で切り上げるとするか 「話がある」 ページに目を戻した途端に長門が言った。何処か真剣さが宿る声には真面目に聞かなければいけない気になるな 顔を上げれば何時にも増して真剣な顔があった。うん、可愛い………って真剣に聞くんじゃないのか 「私は」 其処で言葉を切る。自分の言いたい事を整理しているというか、言葉を選んでいるというか……まぁそんな感じだ 「私は貴方に対して興味を持っている。これは情報統合思念体も涼宮ハルヒも間に挟まない、私個人の純粋な好意」 これは告白………なのか?いや、好意といっても色々とあるよな。 友達として好きとか、うん、そういうことなんだ、きっと 「………長」 「私が貴方に抱いているのは、恋愛感情」 追い討ちとでも言うべき言葉。さすがは長門、いつも俺に現実を突きつけてくれる。妄想に逃避する暇が無い 暫くの間沈黙が流れる 答えを待ってるんだろうな…………多分 その中で先に口を開いたのは長門だった 「…………忘れて」 そう言って立ち上がる。本を忘れているぞ………ってそうじゃなくて 顔が少し下を向いている。一応照れたりもするんだな……でもなくて 気付けば俺は長門の腕を掴んでいた 「…………何?」 その表情と声に憂いが含まれていたのは気のせいではないだろう。それだけでも美の女神が嫉妬しそうな美しさを感じる 「えっと………、何ていえば良いのかは解らんが…………」 俺は脳内の貧困な語呂を総動員させる。ちっ、こんな所で本を読まないのが仇になるとはな 「まぁ、俺もお前の事が好きだ。お前も俺が好きで居てくれるなら嬉しいし…………真面目に言ってるぞ?」 どうしても真面目に聴こえないな、自分が恨めしい。願わくば長門に気持ちが届いてくれる事を祈る 「………フフッ」 聞き慣れない声だ。だからこそそれが笑い声と理解するのに時間が掛かったな 顔を上げたとき、ハートを射抜かれる思いがした。……………其処、表現が古いとか言うな 兎にも角にも、長門の微笑みに俺は完全に惚れてしまった訳だ やはり翌日、SOS団の部室には全員が揃っていた しかし我等が団長涼宮ハルヒは何処か不機嫌で、それがバニー&メイド服という格好でビラ配りをしていた所為での反省文を書かされたことが原因なのは言うまでもない お前はいいが巻き込まれた朝比奈さんが可哀想だな 机を人差し指でトントンと叩き、殺意をパソコンに向けるが如くネットサーフィンに勤しんでいる 因みに俺はというと、珍しくやる事が無い 朝比奈さん印のお茶を啜りつつ目の前で繰り広げられる対局を見ている訳である。 俺の隣でメイド服に身を包んだ朝比奈さんが真剣な面持ちで盤面を見ていることから、誰と誰の対局かは言うまでもあるまい 古泉VS長門 珍しい事に興味を示した長門に駒の動かし方と最低限のルールだけを教えたら 「理解した」 の一言を返され、今に至る訳である 結果は…………言うまでもないか 28勝0敗0分、長門の圧勝だ。あ、またもや 「王手………」 「ふう、流石は長門さんですね。全然勝てません」 お前は俺相手でも勝った例が無いだろ 「それではもう一局しませんか?」 無視か?無視なのか? とまぁ、三十敗を喫した所でハルヒの「今日はこれで解散!」の一言で活動が終わりを告げた 古泉と朝比奈さんが帰ったところで、俺と長門は二人っきりになった訳だ 「……………」 まずい、何か思いっきり緊張している。昨日の出来事が出来事だけに余計にな 長門の方も本に目を落としているが、先程からページが進んでいない様に見える 「………帰るか」 「………ん」 長門は殆ど読んでいなかっただろう本を閉じ、鞄を持った 放課後の校舎に人影は無く、部活動中であろう者達は校庭若しくは部屋に閉じこもっている為に特に誰にも会うことは無かった そういや何でこんなにこそこそとしてるんだろうな 校門を出た辺りからは何を話したかの記憶は曖昧で、もしかしたら何も話してなかったのかもな とりあえず俺達は黙々と歩き続け、長門のマンションへとやって来た訳だ 「また明日な、長門」 上がりこむ訳にも行かんし、俺は自宅への帰路に着こうとした 「待って」 後方から長門が呼びかける。俺が振り向いた時、長門は目の前に居て―――――― 俺の唇に、長門の唇が重なった 茫然自失、と言うのはこういうことを言うんだろうな。数分ほどその場に立ち尽くしていたよ あまりにも長門らしからぬ行動……まぁ、実際に長門がやったんだから仕方ないよな。うん。 どうやら自然に笑みが零れていた様で、 「キョン君?どうしたの?気色悪いよ?」 と妹に言われた次第だ。と言うか実の妹に気色悪いと言われるのは案外こたえるな 風呂に入って肉体の疲れを解し束の間の急速を取る俺。そう、束の間。鳴り響いた携帯電話。やな予感が胸をよぎる。冷静になれよ俺 液晶画面に表示されるのは矢張り涼宮ハルヒの文字。あぁ、やっぱりな。 『…………大した用じゃないんだけどさ』 珍しいな、自分が一番正しいと思っている様な団長様の不安な声というのは 『……有希ってさ、可愛くなったわよね?』 「は?」 何を言い出すんだ、コイツは。確かに情報統合思念体とやらに感情を少し表に出せるようにして貰ったとか言ってたが………其処まで言う事か? 『何ていうか……無邪気になった、みたいな』 そんな曖昧に言われてもな。大体そんなこと本人に言ってやれば良いじゃないか。用件はそれだけなのか 返事もせず通話が切れた。何処までも勝手だな、おい 頭を働かす事も億劫になった俺は電話を放り出し、ベットに体を預けた 子守唄よりも破壊力に優れる授業を聞き流し、放課後になって向かう場所はSOSが占領する事現在進行形の文芸部室である 文芸部室の扉を軽くノックする。別にそんな決まりがあるわけではないが、迂闊に入ってしまうと年下のような上級生の麗しき裸体を目にしてしまう可能性がある 煩悩に従ってみたい気がするが、その場合後が怖い 「…………?」 扉の向こうからは何も音がしない。愛くるしい上級生の天使の様な甘い声もニヤケハンサム面のムカつくような声も無い。珍しいな ガチャリ、と音を立てて開けた扉の向こうには、無口な宇宙人以外は居なかった 「長門だけか………」 「今日の活動は無しとの言伝を受けている」 長門は本から顔を上げて言った そうか、今日は休みか。珍しい事もあったもんだな。じゃあとっとと帰る……… そう思っていた俺の目は本棚を視界に捉えた。そしてある疑問が蘇ってくる 『果たしてあの小冊子はなんなのか?』 こうして、長門の目を盗んで目的を達成させるミッションはスタートした!! ……………なんてな 大層な事を言って見たものの、別に世界最高のスパイ並みに隠密行動が上手い訳でも大泥棒の孫って訳でもない俺は普通に本棚の前に立つ さて、目標は…………あった 拍子抜けするほど簡単に目標物を見つけ、手に取る。体で長門の方からは見えないが、一応カモフラージュとしてもう一つ分厚い本を取った まず本を開き小冊子を挟む。よし、これで本を読んでいるようにしか見えないはずだ。この手口には夜神月も真っ青だ 表紙らしき紙を捲るとまず登場人物紹介らしい。どうでも良いけど題名とかは無いのかね…………ん? 俺の眼に狂いが無ければ、主人公の名前は『キョン』と明記されている。そしてヒロインの部分には『長門』と 「…………」 後方から長門の目線を感じるが、適当に流し読みを始めた どうやら内容としては『キョン』を主人公とした学園物らしい。これで恋愛物だったりしたら世界が改変したんじゃないかと疑う事に…… 「あ」 「駄目」 いつの間にか背後に居た長門に小冊子を取り上げられてしまった。迂闊な。 いいじゃないか、見せてくれても 「駄目」 長門の手から取り返そうと出した手は見事に交わされ、長門は小冊子を自分の後ろへ下げる 俺はそれを追おうとしたんだが、後になって思えばこれが間違いだった訳だ 体を前に倒そうとした俺は長門の脚に躓き、長門に覆いかぶさる様にして倒れた そして、部室の扉は勢いよく開かれた 扉が開いた先に居るのは………何時だったかな。俺が友人に長門への恋文を代弁して書かされた事がある。 それを見つけた時と同じ様な表情を浮かべる涼宮ハルヒの姿だ その後ろにはやれやれといった感じに溜息をついているニヤケハンサムやら愛くるしい上級生が居る さて、ここで考えて欲しい事がある 今俺は不可抗力とはいえ長門の上に覆い被さっている訳だ しかも長門の服は衝撃で多少乱れている まぁ、此処まで状況証拠が揃ったんだ。弁解は難しいだr 「~!!!!」 ああ、団長殿の顔が見る見るうちに紅潮していく。多分今頃俺に課する罰ゲームでも考えているんだろうな 「あー、ハルヒ、落ちt」 「言い訳無用!!」 俺の言葉を遮るようにハルヒは叫んだ。それと同時に俺の胸ぐらを掴みながら 「今日と言う今日は許さないわ! いくら有希が大人しい子って言ってもね、やって良い事と悪い事があるのよ! アンタには上半身裸で校庭十周でもさせてあげようか!?『私は強姦魔です』って叫びながらね!言っとくけど犯罪者に人権は無いわよ!!」 良くそんな長文を息継ぎ無しで言えるもんだ。じゃ無くて落ち着け 「落ち着け!?よくもそんな事が言えたもんだわね!」 色々な感情が混ざりすぎてどの感情が表に出ているか解らない様な表情で更なる罵倒を紡ごうとしていると、長門が肩を叩いた。おお、弁解してくれるか 「何!?言っとくけどこんな奴に同情する必要は無いわよ!!」 長門は小さく顔を横に振った 「合意の上」 空気が固まった。様な気がする ハルヒを始め、俺や古泉までもが唖然とした表情だ。ってか長門、その言い方じゃ本当に何かやろうとしてたみたいじゃないか 「本当、なの?」 長門は小さく頷く。ハルヒは何かを考えていたようだが、やがて馬乗りの状態から俺を解放した 「まぁ、有希がそれで良いならいいわ」 何を納得してるんだか。 「でもね!」 ビシィ、といった効果音が聞こえそうなほどに勢いよく俺を指差す。失礼だぞお前 「有希を悲しませたら許さないわよ!」 ああ、その点は心配無く。そんな事をするつもりは無いし極力気をつけさせてもらいますよ 「フン………!なら良いのよ。行きましょ、みくるちゃん」 ハルヒはいつもの如く踏ん反り返って部屋を出て行った。朝比奈さんも「ふぇ?え?え?」などと可愛い声を発した後、小さくハルヒの後を追った 古泉はと言うと、コイツはやっぱり見てるだけでムカついてくるニヤケ面を浮かべ戸口に立っている 「いやいや、涼宮さんに交際を認めさせるためとは言え、うまくやりましたねぇ」 違うっつーの。あれは事故だ、事故 「まぁ、そういう事にしておきましょう」 解ってますよ、とでも言いたげな声色を残し、古泉は去っていった。後には、俺と長門だけが残された 「…………助かったよ、長門」 「………良い」 欲を言えばもうちょっと穏便に済ませたかったんだがな…………他に良いようは無かったものかね? 「涼宮ハルヒに交際を認めてもらうにはあのタイミングが的確だと判断した」 ……イカン、やめた。よく考えたら俺が長門に言い勝てる訳が無かったな 「………まぁ良いや。そろそろ帰るか、長……?」 長門が俺の袖を掴んでいる。くぅ、可愛いなぁ 「出来れば…………」 軽く俯いて一瞬の躊躇。全ての仕草が愛しく見えるな 「名前で、呼んで欲しい」 ああ、呼んでやるともさ。今の俺にお前の願いを聞き入れない程、心の余裕は無いさ。日本語がおかしいが気にするな 「それじゃあ、帰るか、有希」 「………ん」 可愛く微笑んだ天使が、そこに居た 「・・・チェックメイト」 翌日、部室では昨日に引き続き古泉vs有希のチェス対決が繰り広げられていた。因みにこれで有希の52勝目だ 一見代わり映えの無い風景だが、俺が有希の事を「有希」と呼んでも他の団員は反応しないし、古泉のニヤケ面が120%にパワーアップしていると感じる 「あんたと有希の交際は認めてあげるけどね、部室で淫猥な行為をしたら即警察に叩き出すわよ」 部室に入って早々こんな事を言われたがな。見事に好感度が死滅していらっしゃる まあ、「有希」と呼ぶたびに小さく嬉しそうな顔をする有希を見ているとこっちまで嬉しくなるな。………其処、バカップルとか言うな それはそうとその日の放課後、俺は疑問に思ったことを聴いてみた 「有希、一体あの本は何だったんだ?」 有希は少し考えるふうな仕草をして、俺に向き直る そして人差し指を口に当て、微笑みながら一言 「それは、禁則事項」 end
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4801.html
「出かけるわよ、有希!」 高校2年生になった年の夏休み、玄関のところで叫ぶ少女がいた。玄関のドアは鍵を閉めておいたはずなのだがなぜいるのだろう、涼宮ハルヒは。 声を聞くのと同時に「また」私の心臓の鼓動が早くなる。 長門「まったく、面白い人」 私は布団からもぞもぞと腰を上げて時計を見た。まだ9時である。 この現象はあの時最初に起きた。 彼女に最初に会った日。昼休みに文芸部室で椅子に座って本を読んでいた時、いきなりドアが開いた。 ハルヒ「あっ文芸部員の人ね!ここ当分あたしに貸して!」 思わず顔を上げてトビラを見た。そこには観察対象が笑いながら立っていた。 彼女がここに来ることなど情報統合思念体から聞いてない。私は情報統合思念体とテレパシー(光速でやりとりする)で議論した結果、彼女に部室を明け渡すことになった。 長門「どうぞ」 ハルヒ「ありがと!」 読書に戻る動作をしつつ再び情報統合思念体と議論し始めた。議題は、今後の「私の配置」、果たして彼女の近くにいるべきかどうかである。彼女のすぐ近くで監視する、という結論が出たとき 後ろから抱きしめられた。 ハルヒ「あなた名前は?」 内心驚いたが、無感動に答えた。 長門「長門有希」 ハルヒ「私は涼宮ハルヒ。にしてもぶ厚い本読んでるわねー。」 長門「本は情報の宝庫。厚さは関係ない。」 ハルヒ「難しいこと言ってるとモテないわよ!有希はかわいいんだからさ!」 彼女の手が私の頬をなで始めた。暖かい。そして初めて気づいたエラー。私の鼓動が速くなっているのだ。 ハルヒ「もう照れなくてもいいのよ。顔赤くしちゃってー。」 どうやらもうひとつのエラーがあるようだ。 原因について脳内模索していると、彼女は腕をほどきドアの方へ走った。 ハルヒ「んじゃ放課後また来るわ!じゃあね有希!」 ドアが閉まるのを音で確認した。 その日から私はこの2つのエラーについて原因・解決方法を調査し続けた。家に貯蓄してある本や、学校の図書室の本、そしてSOS団唯一の一般人であるキョンが連れていってくれた図書館の本も利用している。 ハルヒ「有希ー!あと30秒以内に準備しなさい!あっ有希だから10分待つわ!」 回想しすぎてしまった。私はゆっくり立ち上がり、服を全部を脱いでクローゼットへ向かった。 長門「さて団活動だし何を着ていこうか。」 そう呟いた時玄関から ハルヒ「今日は私と有希の二人だけだからね!服は適当でいいわよ!」 なん・・・だと。ならばとびっきりかわいい服を着よう。私はクローゼットからまだ一度も使ったことのない服を手にとった。 長門「お待たせ」 涼宮ハルヒは団活動でも見せた赤いシャツと青いスカートを着ていた。手には手提げバック。私に会った途端彼女は口を閉ざしてかたまった。 私に会った彼女の第一声 ハルヒ「有希・・・」 なにかまずかったかな。私はワンピースと呼ばれる白い服を着ている。あとはむぎわら帽子を頭にかぶり、手に麦で編まれた手提げバックを持っている。 長門「・・・なにかまずかったかな」 ハルヒ「・・・かわいいー!」 長門「あっ・・・」 突然彼女が抱きしめてきた。暖かい、いや熱い。自分の全身が熱い。あぅっ頬ずりしないで。顔がどんどん熱で真っ赤になるのが自分でもわかる。 ハルヒ「もーこんなにかわいいのにどーしていつも着て来ないのよー!」 長門「・・・アゥ」 耳元で聞こえる彼女の声に自分の思考回路がオーバーヒートしそうである。 彼女は私を解放すると ハルヒ「さあ行くわよ!」 と勢いよく言い放つ。彼女が私にだけ向けた言葉。 長門「・・・うん」 こうしか答えられない自分を少し恨んだ。 そう、様々な情報から私は涼宮ハルヒに恋している、という結論に至った。男女の「恋愛」ではない、という違いはあるが。 エレベーター内で ハルヒ「私ね、有希のことをもっと知りたいの。だから今日はよろしくね」 長門「話すことで理解してもらえるなら、16時間聞いてもらっていい?」 ハルヒ「お断り」 だよね。 私たちは玄関ホールを出た。すると私を導いていた彼女が急に私の後ろへ回り ハルヒ「一度やってみたかったんだー、えぃっ!」 と言い私のワンピースを下から上へ勢いよく上げた。たしか男性が女性のスカートをまくりあげてパンティを見る行為だ。 彼女のはしゃぐ声が聞こえるかと思い振り向くと、彼女は顔を真っ赤にしたままかたまっていた。なにかおかしかっただろうか。 ハルヒ「有希・・・」 長門「なに?」 ハルヒ「下着ぐらい着なさーい!」 その後私たちは再び私の家に戻った。彼女と出かけることに夢中になりすぎて着替え中に下着まで脱いでしまい、そのまま着るのを忘れていたようだ。涼宮ハルヒは私のクローゼットを勝手にあさり、白い下着を選んでくれた。 長門「ごめん」 ハルヒ「いいわよ別に。意外に有希ってドジっ娘ね。」 あなたの前だけ、とは言えずただ頷いた。 2度目の外出。 ハルヒ「じゃあどこ行く?」 長門「・・・図書館」 ハルヒ「有希、そこは遊びに行く場所じゃないわ」 長門「冗談」 ハルヒ「なんだ冗談か。じゃあ買い物に行く?」 長門「財布の中身を確認してみる。」 たしか残金は680円。あとで情報統合思念体に金を要求しよう。がま口財布の中身を確認すると、小銭の他に紙切れが2枚入っていた。 ハルヒ「あれ有希、それって最近新しくできた遊園地の無料入場券じゃない?」 長門「昨日郵便受けに入ってた。」 ハルヒ「へー。じゃ遊園地に行きましょう!」 長門「わかった。今からコンビニで金を下ろしてくる。」 ハルヒ「やっと着いたわね」 長門「おつかれさま」 ハルヒ「まだ疲れちゃいないわ。」 長門「あの長蛇の列に並んで疲れないはずがない。」 実際彼女は汗まみれだし、椅子にぐったり腰かけている。私は立っている。突然だが意を決して聞いてみた。 長門「あなたのことを『ハルヒ』って呼んでいい?」 ハルヒ「もちろんよ。私だって『有希』って呼んでるんだから。」 長門「・・・ありがとう」 人と交流することに慣れていない私は今まで人を下の名前で呼んだことがない。だから好きな彼女を下の名前で呼べることがうれしい。 ハルヒ「じゃ休憩終了!どこ行く?」 長門「ではあれ」 そう言って自分が指さした物はバンジージャンプである。 私たちはスカート着てるからダメ、ときっぱり断られ、向こうにあるアトラクションへ行った。ハルヒの下着を見たかった。 ハルヒ「なんでカップがあんなに速く回るのよ、どこの漫画よ!」 長門「いろいろごめんなさい」 ハルヒ「あっ有希のせいじゃないわよ。」 私たちは「マグカップ」と呼ばれるコップ型の乗り物を中央の台を使い回して遊ぶ乗り物を体験した。だが突然、というより私のせいで、マグカップが普通ではありえないスピードで回ってしまった。 まあそのおかげで、乗り物内でハルヒがおびえるように私にぎゅっとだきついてきてくれた。 長門「なかなかレアなハルヒを見れた。」 ハルヒ「あっあれはそのなんていうかそうよ不可抗力よ!」 長門「クスッ」 ハルヒ「いーい?他の団員には内緒だからね」 長門「じゃあクラスメートに言い」 ハルヒ「ダメ!有希がそんなひどい人だとは知らなかったわ」 長門「茶化してごめんなさい」 ハルヒ「もー有希ってやっぱり面白いわね」 あなたの方が面白いよ、ハルヒ。 ふと私は普通にハルヒに接することができていることに気づいた。と同時にまた鼓動が速くなる。 ハルヒ「じゃあ次はあれに行くわよ。」 それからも私はハルヒと一緒の時間を味わいたくて、ハルヒの案内に従った。 例えばお化け屋敷。歩いている間ずっとハルヒは私の手を握って歩いていた。 例えばジェットコースター。私たちはとなりどうしの席に座った。この乗り物が急降下する直前、ハルヒは私の手をぎゅっと握ってくれた。 ジェットコースターに乗った後私たちはファーストフード店で昼食をとった。その昼食でのこと ハルヒ「あっ有希。ほっぺにソース付いてる」 長門「えっどこ」 ハルヒ「左の方よ。あっもうちょっと右」 長門「ここかな。とれた?」 ハルヒ「だめね。私がとってあげる。」 と言って私の唇のすぐ近くをハルヒは人差し指でなぞった。あっ唇に少しだけなぞった。そしてそのままハルヒはその指を舐めた。 ハルヒ「にしても紙ナプキンもない店なんて珍しいわね、有希」 彼女が何を言ってるかわからないほど私は恥ずかしかった。 ハルヒ「じゃ次行く場所は有希が決めていいわよ。ただバンジージャンプは勘弁ね」 長門「じゃあれ」 ハルヒ「んー『スプラッシュ・ウォーターマウンテン』?私たち水着なんて持ってないわよ」 長門「なくていい、いやむしろなくしてください」 ハルヒ「なに言ってるのよ!あっなんだ別に水着いらないじゃない」 長門「ざんねん」 ハルヒ「有~希~少しお黙り~」 長門「ごめん」 ハルヒ「・・・・プッあはははは!」 長門「どうしたの?」 ハルヒ「有希がここまで面白い人だとは思わなかったわ!さあ行きましょう!」 長門「うっうん」 ハルヒ「ほら有希、手」 そう、私たちはいつのまにか移動時は常に手を繋いで行動するようになっていた。 そしてその乗り物に乗ってみた。あんまりこのアトラクションは面白くなかったが、ハルヒと一緒にいられるだけで嬉しくなる。 ハルヒと一緒の時間に慣れたのか、私は自然に楽しんでいた。今まで味わったことのないほどの「喜び」。顔には表現しづらいけど。 ハルヒ「有希。おみやげ買わない?」 長門「財布に18万あるから買ってもいい」 ハルヒ「・・・えーとね有希。一度に財布に入れる金は5000円ぐらいでいいのよ?」 長門「ハルヒと出かけることが楽しみだったから。思い出の品をいっぱい買っておきたい。」 ハルヒ「はぅーけなげな有希かぁいい~お持ち帰り~!!」 長門「抱き着かないで、あっ暑いよハルヒ。」 ハルヒ「ごめんごめん。もうそんなに顔真っ赤にしなくても。じゃあ思い出たくさん買うわよー!」 長門「ハルヒの思い出をいくらで売ってくれる?」 ハルヒ「へっ?」 長門「ナガトユキジョーク」 私たちはたくさんの思い出を買った。服や人形、アクセサリー。私にとって最高の一日。ハルヒがいれば私は楽しめる。 私は、ハルヒがそばで支えてくれなければ存在できない。そう確信した。なぜって、こんなに楽しませてくれるのは彼女以外にいないからだ そして空がオレンジになりかけた頃 ハルヒ「有希。観覧車に乗らない?」 長門「カンランシャって何?」 ハルヒ「それもナガトユキジョーク?あれよあれ」 長門「あの円形の機械?」 ハルヒ「本気だったとは。まあ男女で行けないのが惜しいけど。」 というわけで今観覧車に乗っている。私たちは向かいあわせの席に座っている。ハルヒの話によると、ここは男女が愛の気持ちを告白する道具、とのこと。 私の気持ちを伝えてもいいよね。 ハルヒ「有希」 長門「なに・・・かな」 ハルヒ「いやー気になったんだけどさ。そんなかわいい服があってしかも普段は着てないってことわさ。いつか好きな男に見せるつもりなの?」 長門「えっ・・・いや」 ハルヒ「顔が否定してないし真っ赤。どんな男よ!相手によっては交際していいわよ、あたしが許可するわ!」 彼女は突然立ち上がって、「いい男」について語り始めた。私の気持ちには気づかないようだ。 その時ゴンドラが突然ゆれて止まり、すぐに動いた。当然ハルヒは立っていたのだから振動で体は倒れるだろう。 ハルヒ「キャッ!」 長門「あっ・・・」 ハルヒは私に抱き着く形で体を安定させた。だが今回他人から見ればハルヒが私を椅子に押し倒しているように見えるだろう。 私の思考回路の大半が緊張と熱で機能停止していた。自然治癒にしても時間がかかる。私は一人の「人間」として行動する。 彼女が体を起こそうとしたので私は彼女を自分の方に押さえ付けるように抱きしめた。あたたかい。 ハルヒ「ちょっと有希!?ななななに!」 長門「私はハルヒのことが好き。恋人として」 勇気を振り絞って、私は告白した。 ハルヒは困惑しているようだ。言葉にならない言葉を耳元で発している。 長門「あなたの元気や行動力、温もりに私は恋をした。付き合って欲しい」 ハルヒ「・・・ごめん」 私の思考回路が徐々に直り始めたころ、私は全身の力が抜けるのを感じた。 ルート bad ルート good ルート bad ハルヒ「私たちは女同士。だからできないよ」 そうだよね。私たちは同性だから。でも 長門「外国では同性で結婚もできる」 ハルヒ「それでもだめなの。だって私・・」 ハルヒの涙が私の頬を濡らしはじめた。私はハルヒに傷を与えてしまったようだ。 長門「ごめん」 ハルヒ「私キョンのことが一番好きだから!」 二人が同時に発した言葉。だがハルヒの言葉は私に深刻なエラーを与えた。 私は今の言葉を脳内再生し続けた。彼女が私に大声で叫んでいるが、何を言ってるのかわからない。 あっ目から冷たい液体が溢れてる、止まれ涙。まばたきしてない、動けまぶた。だがどんなに命令しても「エラー」で全て受け付けなかった。 気が付いたら私は電車の中で座っていた。右肩が重いので見ると、ハルヒが私の右肩に両手を乗せて泣いている。思考回路が戻ったのだろう、現状の認識ができる。 長門「ごめんなさい」 ハルヒ「私こそごめん。でも」 長門「気にしないで。ハルヒに泣かれる方がつらい」 ハルヒ「ごめんね」 長門「私頑張って悲しみに耐え切った」 ハルヒ「うん、よく頑張ったわ有希」 ハルヒを安心させるために私は笑顔で言った。 長門「わたしがんばった」 その後私たちは会話もなく地元の駅で下車し、解散した。 私は家へ帰った途端にエラーを起こした。全身の力がなくなりその場に正座状態になった。おみやげは辺りに散らかった。私の頭に次々と情報がダウンロードされる。 長門「私の行動の枷となるのは他TFEI及び情報統合思念体私が起こしたエラーの原因は観察対象の発言キョンが一番であるならば彼を消せばいい情報統合思念体がそれを邪魔するならば情報統合思念体から消せばいい今彼らは会議中ハッキングは容易彼らを破綻させるには・・・」 長門「情報のダウンロード完了情報統合思念体の消去開始情報統合思念体の削除完了同時に他TFEIの消失確認自身消失へのプロテクト成功私自身の能力の消失を確認彼を消去するには比較的原始的な手段が必要「道具」は台所にあり」 私は自我を取り戻すと、全身汗びっしょりだった。3時間あのままだから当然だ。情報統合思念体が削除されたことに対して特に感じない。エラーはまだ続いている。 私は台所から「道具」を寝床に持ってくると、1時間以上手入れをしたあと「道具」を枕元に置いて就寝した。その間ずっと頬に涙を伝わせながら。 朝がきた。私は学校への「準備」を済ませていつも通りに登校した。途中古泉一樹や朝比奈みくるに情報統合思念体やTFEIの消失について問いただされたが、知らない、と言って通り過ぎた。 学校の玄関の下駄箱でキョンに会うと、まず 長門「話したいことがあるから今日早く文芸部室へ」 わかった、という返事をもらった。 授業中退屈だった。6時限終了後、私は足早に文芸部室に向かった。 部屋に誰もいないのを確認すると、バッグから「道具」を取り出し制服の内ポケットへ入れた。ジャストフィット。あとはいつもどおり椅子に座って本を読めばいい。 キョン「おう長門」 来たか 長門「あんたが立ったままじゃ失礼だからここに座って。お茶を入れてくる。」 キョン「え・・気のせいだよな、ありがとう」 「あなた」と呼ぶところをつい「あんた」と言ってしまった。まあいい。標的はさっきまで私が使ってた椅子に腰かけた。 沸かした茶をカップへ入れてるとき キョン「あっ長門。ハルヒがおまえに渡したいものがあるようだぜ。」 注ぎ終えたヤカンを乱暴に机に置いた。オマエガハルヒヲナレナレシクヨブナ。 キョン「大丈夫か長門?」 長門「平気」 キョン「ネタバレするとな、中身は菓子だ。大丈夫ハルヒの許可はとってある。」 長門「ナレナレシクハルヒノ」 とと危ない危ない。本音を言ってしまうところだった。 おそらくそのプレゼントは私への愛の気持ち。そうかハルヒは考え直してくれたんだ。私と恋人になれる。じゃあその菓子は今日の祭でのお祝いだ。 キョン「長門、だよな?」 長門「私は私。はいお茶」 キョン「どうも。にしても今日はよくしゃべるな。あっ座るか?」 長門「いい」 私はお茶を彼に渡し終えると彼の背後に立って話をした。 長門「他のTFEI及び情報統合思念体とコンタクトがとれなくなった」 キョン「古泉から聞いた。長門は大丈夫なのか?」 長門「このとおり大丈夫。できればあなたにも打開策を考えてほしい」 彼は座ったまま腕を組んで考え始めた。私は内ポケットから銀色に輝く鋭い「道具」を取り出した。自分の顔がにやけているのがよくわかる。 サヨウナラ 彼の首に「包丁」を突き刺そうとした。 その時思考回路に急な負荷がかかった。エラーだ。いや正確には人格修復プログラムだな。 これはたしか情報統合思念体に敵対する異常な行動を18時間以上していた場合に起きる、私の治療プログラムだ。情報統合思念体削除から今までの行動によって起動したか。私としたことがプログラムを削除し忘れたようだ。 ここで負けるわけにはいかない。だが抵抗をすると激しい頭痛に襲われた。 途端彼との思い出が溢れてきた。彼を助けたことや、彼に助けられたこと。「消失」事件での彼。彼の優しさ。彼への殺意が消えかけた。 だがハルヒとの生活を夢見る自分が殺意を増幅させた。消しては増幅し、を繰り返す。頭痛がひどくなる。 私が頭を押さえて必死にあらがっていると、彼が振り向いたのでとっさに包丁を持つ右手を後ろに隠した。 キョン「長門!大丈夫か!?」 彼は茶を床に転がし、立ち上がって私の正面に近づいた。頭痛がさらにひどくなり 思考回路がカンゼンニコワレタ。 「あははははははははは」 どこから聞こえるのだろう 「長門!?しっかりしろ!!」 なぁんだ自分の口から聞こえてるじゃないか ヤツが私の両肩を掴んでなにか叫んでいる 長門「きたきたきたキター!アハハハハハハハハハハ!!!」 私は右手を前に素早く突き出した。そのさきは害虫の首。感触あり!そしてえぐったあと一気に引き抜いた。 キョン「長門・・・・」 長門「修復プログラムに勝った!ダイオキシンの処理は完了した!!あとはハルヒと幸せ生活が待ってるわウヘヘヘヘ!!!」 ハルヒ「騒々しいわね、どうし・・・」 ハルヒが部室に入ってきた。辺りにばらまかれた鮮血。床に血まみれで倒れている、首をえぐられ息の絶えた疫病神。悪魔の返り血を全身に浴びた私は振り向いた。 ハルヒ「有・・希・・?」 私は、ヨロコビのあまり絶句しているハルヒに満面の笑みで言った。 わ た し が ん ば っ た ハルヒ「いやああああああああああああああああああああ!!!!!!!」 赤黒い彩りをまとう私を数人の男たちが白黒の送迎車で歓迎してくれた。サイレンまで私を歓迎していた。ハルヒは笑顔で見送ってくれた。涙流すほど喜んでくれるなんて。 あのあと部室でハルヒが大声をあげて歓喜したかと思ったら携帯電話でどこかに連絡をし始めた。 私が喜びを分かち合おうとして彼女に近づくと、彼女は狂喜したまま部室から出た。私は満足した。 どこかの建物で男たちからたくさん質問を受けた。私たちが結婚するにふさわしいか、問いてるらしい。もちろん満点だ。 しばらく私の寝床はシンプルで鉄に覆われた部屋だった。花嫁修行だろう。はやくハルヒに会いたい。でもこの修行が終われば会える、と思うといくらでも待てる気がした。 仮住居に移住して3日目。私に朗報が届いた。ハルヒが先に新住居へ引っ越したらしい。私宛ての手紙があり「私のせいだよね、生きててごめんなさい」と書かれていたらしい。 つまり私とハルヒが愛しあったことで、私たちの恋愛を邪魔されない場所へ移住する必要がある。ハルヒは先に引っ越しをして待っててくれている。もうすぐ行くから待っててハルヒ。いっぱい愛してあげるよ。 その日の夜中、口から大量の血を出して倒れている長門を警察官が発見した。彼女は舌を噛み切って自殺したようで、すでに息はなかった。その死に顔は満面の笑みを浮かべていた。 ――――――bad end――――― ルート good ハルヒ「私たちは女同士。だからできないよ」 そうだよね。私たちは同性だから。でも 長門「外国では同性で結婚もできる」 ハルヒ「それでもだめなの。だって私・・」 ハルヒが泣いている。私はハルヒに傷を与えてしまったようだ。 長門「ごめん」 ハルヒ「でもね有希のことも大好きだよ!」 あっ。こうもはっきり言われると結構恥ずかしい。でも「恋人」としての好きではないのか。 ハルヒ「ごめんね」 長門「さっきの一言で十分満足した。ありがとう」 私はハルヒを解放した。だがハルヒは私から離れない。 長門「どうしたの?」 ハルヒ「えっとね。せめてのお詫びにと思って・・・えいっ!」 ハルヒの顔が私の顔に急接近した。あれ近すぎじゃあれあれあっ! 私がハルヒとキスをしていると理解するまで十秒かかった。だがハルヒの唇が離れるまで30秒かかった。 ハルヒ「これで許して。ファーストキスなのよ」 長門「・・・・わかった」 自分でもわかる、真っ赤な顔で満面な笑顔で答えた。ハルヒも顔がりんごのように真っ赤だ。 その後私たちは電車で帰った。ずっと手を繋いだまま。 長門「ハルヒは?」 ハルヒ「どうしたの有希?」 長門「ハルヒは好きな人いるのかな、て」 ハルヒ「う・・・うん」 長門「誰」 ハルヒ「今の有希に言うとその人殺しそうね」 長門「そんなことはしない。ハルヒもひどい冗談はダメ」 ハルヒ「あははそうよね!実を言うとキョンのことさ・・・えっとその」 長門「ライバルはキョンか。私、いつかあなたを振り向かせてみせる」 笑顔で彼女は言ってくれた。 ハルヒ「ありがと有希」 その後も楽しい会話は続いた。私たちは確実に親しくなれた。 私たちは下車駅で解散した。家に着いてから私はすぐにお風呂に入って寝床に入った。 恋人にはなれなかったけど、彼女の優しさをたしかに感じただけで満足だ。私はキスの感触を何度も思い出しながら寝た。 朝が来た。私はひとつの決心を貧相な胸に秘めて登校した。 登校中情報統合思念体は、世界に影響が起きないレベルまで私を応援する、と約束してくれた。 学校の下駄箱置場でキョンに会った。 退屈な授業が済むと私はスキップしながら文芸部室へ向かった。 部室に着いた私はいつもどおり椅子に座り本を読んだ。 少ししてキョンが入ってきた。 キョン「よう長門。で話ってなんだ?」 胸に秘めた決心を伝える時がきた。顔を彼の方に向け言った。 長門「あなたには負けない」 ―――――good end――――