約 24,296 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1155.html
部室に来たものの誰も居なく。丁度疲れていた俺はそのまま椅子で眠ってしまっていたようだ。 キョン「むう…?」 誰かの気配で目を覚ました…長門だ。長門が俺のすぐ目の前に立っていた。 キョン「よう…まだ、お前だけみたいだ…な゙?」 落ち着け。うん、落ち着け俺。OK、冷静だ。 目の前に居るのは長門だ。長門です。長門。うん、どう見ても長門だよなあ、うん。 長門「…ゔ~~~…(ぐすっ)」 どこか怯えたようにこちらを見… 前言撤回。どちら様ですかあなた。ああ、解らなければ聞くしかないよな。 キョン「…どちら様でしょうか?」 長門「有希…です。」 念のため確認する。 キョン「有希って…長門有希?」 長門「うん。」 念のため再確認。 キョン「……ヒューマノイドインターフェイス?」 長門「うん。」 即答した。OK、とりあえず本物としておこう。 キョン「一体どうしたんだ?そんな喋り方じゃなかったろう?」 喋り方だけじゃないが。 長門「…ウィルスのせい。」 キョン「ウィルスってのはパソコンとかのあれか?」 長門「うん、それ。」 キョン「…それのせいで口調が変わってると?」 長門「…口調じゃなくて人格。…人格以外はほとんど変わってない。」 人格が変わってても適切な説明をありがとう。 どっちかというと今の説明の方が解りやすくて助かるぞ長門ー。 とりあえず大体把握した…と思う。話を変えてみよう。 キョン「そういえばさっき、何か言いかけてた?」 長門「さっき?」 キョン「なんか涙目で」長門「泣いてない。」 追及されたくなさそうだ。無表情を見慣れているせいか解りやすすぎる。 キョン「俺が起きた時だ。何か言いたそうにも見えてたんでな。」 長門「あ、うん…でも話はちょっと後。」 呪文を唱えだす長門。瞬間、周囲の光景が大きい公園に変わる。 キョン「……おい長門…説明を頼む…。」 長門「ウィルスに触っちゃったのは2時間位前なの。それからすぐに他のインターフェイスが攻撃してきて私は空間に閉じこもって…」 人格一つでここまで変わるのか。言葉は解りやすいのに解りにくいぞ長門。 長門「こもってたら寂しくなったけどキョン君と一緒なら寂しくないかなって思って。」 ようやくウィルスと言えるものだと思った。行動がぶっとんでるというか衝動的というか。 キョン「なあ長門。そのウィルスはいつ…その、良くなるんだ?」 とりあえずベンチに座って聞いてみた。 長門「…誰も来なければあと20分位かな。」 案外早くてほっとする。長門が隣に座って来た。 侵入者は現れず時間は過ぎ。 キョン「あと1,2分だったっよな。」 長門「…うん。」 今日。1時間にも満たない間に、長門の色々な表情を見た。 否定してたけど泣き顔。 指摘された時の少しすねたような顔。 ぶっとんだ事を言った時の無邪気な顔。 今隣でどこかもの悲しそうに景色を見ている顔。もしかしたらこれらが本来の…視線が合った。 長門「どうしたの?」 キョン「…いろんな表情が見れたと思ってな…。」 長門「…うん。」 沈黙。長門が口を開いた。 長門「あと15秒で元に戻る。…だから。」 不意にキスをされた。すぐに離れ、言う。 長門「少し残念だけど、多分今の私とは永遠にお別れ。」 長門「またいつか。泣いたり笑ったりさせて欲しいな。」 周囲の景色が急に消え、いつもの教室が目に映… キョン「だっ!」 ベンチが消えて尻餅をついた。 視線を上げると長門が手をさしのべていた。 キョン「すまん。」 長門「私のミス。謝るのは私。」 いつもの長門…だな。そう思いながら手を取り立ち上が 谷口「wawawa忘れ物……はっ!」 手を取りながら立っている俺と長門。 谷口「…度々すまん。ごゆっくりっ!」 …谷口。お前は毎日何か忘れてるのか、おい。 キョン「…部室に行かないとな。団長様が怒ってそうだ。」 長門「そう。」 手を離そうとしたが離さない長門。 キョン「どうした?」 長門「このまま行く。」 キョン「……そうか。」 長門「そう。」 古泉「これから大変そうですね…ただ見る分には微笑ましいのですが。」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2643.html
長門有希の憂鬱Ⅰ おまけテキスト集 谷川流の憂鬱: 「二人とも行ってしまったなぁ……」 グランドに広がる炎の絵文字をぼんやりと眺めながら僕は、ここ数日の出来事を思い返していた。 思えば、あのときはびっくりしたよなぁ。 コスプレどころじゃない、キョン成りきりなんてとんでもないアニヲタだと思ったが 実は本人だったなんてなあ。 これからはもっとまともな話の展開を考えてやろう。いや、それじゃ面白くないか。 そうだな……煮て食うも焼いて食うも僕次第か。僕はニヤリと笑った。 もう実際に会うことはないんだろうな。もっと向こうの世界の話を聞いておけばよかった。 それにしても長門有希があんなに美人だったとは。 やっぱり僕の思い入れが他のキャラクタとは違うからかもしれない。 もしハルヒが来たら、やおら胸ぐらを掴んで「ちょっと谷川!もっとあたしを活躍させなさい、 誰が主人公だと思ってんの!?」とでも言うかもしれない。 そうだ、今度、平野綾さんにやってもらおう。 「さて、帰って次号の原稿でも書くか」 さっさと帰らないと警察と消防が来そうだ。明後日くらいの新聞の地方欄には載るかな。 そのとき、闇の向こうから大声がした。「谷川さん!谷川さん!俺です」 見るとグランドの端からキョン君が走ってくる。「谷川さん!また戻ってきました」 「キョン君!そんなバカな!たった今もとの世界に帰したばかりなのに!」 僕はその場で卒倒したらしく、そこからの記憶は曖昧だ。 To be continued... NG集 「……関西弁を習得した」 ほう、やってみせて。 「こん銀河を統括しとる情報統合生命体に作られた、 対有機生命体コンタクト用……ああっもう長ったらしいわ! 宇宙人製アンドロイド、それがウチ。 涼宮ハルヒは自律進化の可能性を秘めとる。 ウチが思うに、あの女にはオノレの都合のええように 周囲の環境情報を操作する力があるんよ。 それがウチがここにおる理由、アンタがここにおる理由」 「なに言うとるんや。んなケッタイなことあるかい」 思わず突っ込んでしまった。 「この世界にひとつ、謎がある……」長門はふとなにかを思い出したように箸を止めた。 「なんだ?」 「わたしが誰かの配偶者だという情報を多く見かけた」 「そうなのか」 「“長門は俺の嫁”って、何」 「なんだそりゃ」 「コンピュータネットワーク上でよく見かける」 「さあ、なんだろう。初耳だが。だとするとお前の旦那は大勢いるってことだな」 「……全力で断る」長門は無言のまま複雑な カット!なんかセリフ違うくない? 「……今のは、電気的ノイズ」長門が赤面。 「キョ……」 長門だ。やっと見つけたのだ。 俺はなにも言わず、長門もなにも言わなかった。下げていた買い物袋を床に落とし、ゆっくりとこちらに歩いてきた。 なにかを言いたげな複雑な表情をして、俺の背中に細い腕をまわし、そして胸に顔をうずめた。 いつもの長門らしくない衝動に、俺は少しだけ動揺した。胸に暖かく濡れたものを感じた。 長門の髪に、綿を連ねるようにゆっくりと雪の切片が舞い降りた。 「長門……泣いてるのか」 「……」長門は顔をすりつけたまま動かなかった。 ズ ズ ズ ッ カット!今の音なに!? 「……はなびじゅ」 「おーい誰かティッシュ」キョンが苦笑い。 目をつぶること三十分。 あれほど眠かったはずが待てど暮らせど眠れない。頭の後ろに長門の視線を感じる。 朝比奈さんが長門のマンションに泊まったとき、 寝てるときに長門に見られてる感じがして落ち着かない、と言っていたのを思い出した。 「長門よ」 「……」 「おい、長門」 「……」 「長門、起きろ」 「zzzz」 カットwww あとがき 子供のころ不思議な夢を見た 見慣れた風景なのに知ってる人間がまったくいない 団地の建物やら町の景観はまったく同じなのに そこは自分の住んでた世界ではないと直感した そのとき孤独感と疎外感、それから寂寥感に襲われた 団地の風景がやけに明るく見えたのを今でも覚えている 消失を読んでそのときのことを思い出した 読んでくれてありがとう
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2552.html
長門有希の憂鬱Ⅰ おまけテキスト集 ---- 谷川流の憂鬱: 「二人とも行ってしまったなぁ……」 グランドに広がる炎の絵文字をぼんやりと眺めながら僕は、ここ数日の出来事を思い返していた。 思えば、あのときはびっくりしたよなぁ。 コスプレどころじゃない、キョン成りきりなんてとんでもないアニヲタだと思ったが 実は本人だったなんてなあ。 これからはもっとまともな話の展開を考えてやろう。いや、それじゃ面白くないか。 そうだな……煮て食うも焼いて食うも僕次第か。僕はニヤリと笑った。 もう実際に会うことはないんだろうな。もっと向こうの世界の話を聞いておけばよかった。 それにしても長門有希があんなに美人だったとは。 やっぱり僕の思い入れが他のキャラクタとは違うからかもしれない。 もしハルヒが来たら、やおら胸ぐらを掴んで「ちょっと谷川!もっとあたしを活躍させなさい、 誰が主人公だと思ってんの!?」とでも言うかもしれない。 そうだ、今度、平野綾さんにやってもらおう。 「さて、帰って次号の原稿でも書くか」 さっさと帰らないと警察と消防が来そうだ。明後日くらいの新聞の地方欄には載るかな。 そのとき、闇の向こうから大声がした。「谷川さん!谷川さん!俺です」 見るとグランドの端からキョン君が走ってくる。「谷川さん!また戻ってきました」 「キョン君!そんなバカな!たった今もとの世界に帰したばかりなのに!」 僕はその場で卒倒したらしく、そこからの記憶は曖昧だ。 To be continued... ---- NG集 「……関西弁を習得した」 ほう、やってみせて。 「こん銀河を統括しとる情報統合生命体に作られた、 対有機生命体コンタクト用……ああっもう長ったらしいわ! 宇宙人製アンドロイド、それがウチ。 涼宮ハルヒは自律進化の可能性を秘めとる。 ウチが思うに、あの女にはオノレの都合のええように 周囲の環境情報を操作する力があるんよ。 それがウチがここにおる理由、アンタがここにおる理由」 「なに言うとるんや。んなケッタイなことあるかい」 思わず突っ込んでしまった。 ---- 「この世界にひとつ、謎がある……」長門はふとなにかを思い出したように箸を止めた。 「なんだ?」 「わたしが誰かの配偶者だという情報を多く見かけた」 「そうなのか」 「“長門は俺の嫁”って、何」 「なんだそりゃ」 「コンピュータネットワーク上でよく見かける」 「さあ、なんだろう。初耳だが。だとするとお前の旦那は大勢いるってことだな」 「……全力で断る」長門は無言のまま複雑な カット!なんかセリフ違うくない? 「……今のは、電気的ノイズ」長門が赤面。 ---- 「キョ……」 長門だ。やっと見つけたのだ。 俺はなにも言わず、長門もなにも言わなかった。下げていた買い物袋を床に落とし、ゆっくりとこちらに歩いてきた。 なにかを言いたげな複雑な表情をして、俺の背中に細い腕をまわし、そして胸に顔をうずめた。 いつもの長門らしくない衝動に、俺は少しだけ動揺した。胸に暖かく濡れたものを感じた。 長門の髪に、綿を連ねるようにゆっくりと雪の切片が舞い降りた。 「長門……泣いてるのか」 「……」長門は顔をすりつけたまま動かなかった。 ズ ズ ズ ッ カット!今の音なに!? 「……はなびじゅ」 「おーい誰かティッシュ」キョンが苦笑い。 ---- 目をつぶること三十分。 あれほど眠かったはずが待てど暮らせど眠れない。頭の後ろに長門の視線を感じる。 朝比奈さんが長門のマンションに泊まったとき、 寝てるときに長門に見られてる感じがして落ち着かない、と言っていたのを思い出した。 「長門よ」 「……」 「おい、長門」 「……」 「長門、起きろ」 「zzzz」 カットwww ---- あとがき 子供のころ不思議な夢を見た 見慣れた風景なのに知ってる人間がまったくいない 団地の建物やら町の景観はまったく同じなのに そこは自分の住んでた世界ではないと直感した そのとき孤独感と疎外感、それから寂寥感に襲われた 団地の風景がやけに明るく見えたのを今でも覚えている 消失を読んでそのときのことを思い出した 読んでくれてありがとう ----
https://w.atwiki.jp/bargikopoi/pages/177.html
ジュニア最古参に数えられる。 涼宮ハルヒの憂鬱のキャラクターである「長門有希」と「生徒会長」を合体させた。 昔は配信を頻繁にしていたようだ。 愛称は「長門」。 荒らしに絡まれやすい。 実際、配信中に荒らしにあっているが本人は楽しんでいる。
https://w.atwiki.jp/777townforandroid/pages/417.html
デザイン 機種 フィーバー涼宮ハルヒの憂鬱 アニメーション あり スキル効果 200回転の間、通常の確率より3倍当りやすくなる 消費SP 30 入手方法 チームイベント景品(だった気がする) LvMAX経験値 ? 限界突破素材 限界突破先 限界突破元 長門有希(バンド) 備考
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/15215.html
登録日:2010/02/07(日) 00 09 32 更新日:2024/02/10 Sat 08 39 14 所要時間:約 10 分で読めます ▽タグ一覧 15年春アニメ ぷよ アニメ アニメ化 サテライト スピンオフではなくもはや別物←もはやリビルド ニヤニヤが止まらない ラブコメ リビルド 善光寺 文芸部 森さんにHなことがしたくなる本 消失 涼宮ハルヒ 涼宮ハルヒの憂鬱 漫画 長野市 長野県 長門有希 ライトノベル『涼宮ハルヒの消失』を元にしたラブコメ風公式パロディギャグ漫画。 原作 谷川流 漫画 ぷよ キャラクター原案 いとうのいぢ 『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』でお馴染みのぷよさんの漫画。 「ヤングエース」で2016年まで連載された。 単行本全10巻で完結。 神様も宇宙人も未来人も超能力者も存在しない、平和な平行世界を舞台に、 長門とキョンがイチャイチャする様をニヤニヤしながら見守る『ハッピーエンド後のエピローグ』 ただし、平穏無事な日常ものというわけでもなく、長門の恋路を脅かすライバルが登場したり、 割とシリアスな展開も描かれるなど、単なるスピンオフに留まらない点もある。 なお、原作の消失と違う部分も多く、「涼宮ハルヒちゃんの憂鬱」の設定を多く引き継いでいる。 具体的には長門が大食いかつゲーム好き、朝倉が長門の保護者みたいなことになっているetc… 「涼宮ハルヒちゃんの憂鬱」でも「涼宮ハルヒちゃんの消失」というネタをやっており、そこからの流れである。 なので「涼宮ハルヒちゃんの憂鬱」のスピンオフといった方が近い。 ある編集者は「これはスピンオフというよりも、もはやリビルド」と評している。 アニメ版が2015年4月から放送。全16話。 製作は京アニからサテライトに変更される。 キャストは森さんの声優が変更したのみ。 キャラソンも発売予定。 OP『フレ降レミライ』 ED『ありがとう、だいすき』 ラジオ『長門有希ちゃんの消失北高文芸部ラジオ支部』も絶賛配信中。 パーソナリティーは茅原実里氏、桑谷夏子氏。 さらに『長門有希ちゃんの消失 とある一日』という小説も発売中。 著者は『GJ部』で有名な新木伸。 【だいたいのあらすじ】 文芸部廃部の危機を乗り越えた文芸部部長・長門有希は、文芸部の存続を祝う為、 そして部の存続に協力してくれた部員・キョンに告白する為にクリスマスパーティーを開催した。 告白こそ失敗しつつも楽しい時間を過ごした長門とキョンだが、 二人の前に、光陽園学院に通う痛々しい美少女・涼宮ハルヒが現れる。 思わぬライバルの出現によって窮地に立たされる長門、果たして二人の恋の行方は…… まぁエピローグだから長門とキョンが結ばれるのは確定しているのだが ◆長門有希 CV:茅原実里 本作の主人公。 内気で天然ボケ、ゲーム好きな文芸部所属の1年生部長。(作中にて進級したので2年生) 原作とは異なり表情豊かで天然ボケ、キョンの言動に一喜一憂する可愛い女の子。 キョンが眼鏡属性云々などと言わなかったお陰で、本作では常に眼鏡つけっぱなしである。 もちろん対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースなどではなく、ただの一般人。 しかし頭は良く、朝倉ですら解けない進学校レベルの数学を解いたり出来る。 その代わり説明はド下手で、無理に説明しようとすると原作アニメ同様の「宇宙語」が飛び出す。 キョンにベタ惚れしており、彼に何度か告白を試みているが、内気な性格が災いして上手くいかない。 しかし、「ある雨の日」に遭遇した事故をきっかけに、二人の関係には大きな変化が生じていく。 そして単行本7巻にてついに…… なお、単行本のおまけページにはポニーテールになった未来の姿「嫁長門」が登場する。キョン爆発しろ ◆キョン CV:杉田智和 長門に勧誘されて文芸部に入部した。本作では「別の世界から来た」などという事は無い、本当に単なる一般人。 主人公の座からは降格したものの、原作以上のイケメンぶりを見せる好青年となり、準主人公的な扱い。 長門の事はまんざらでもないみたいだが、彼女の事を妹のように見ている上に鈍感なので、関係はなかなか進展しない。 腹属性はないらしいが、原作同様にポニテスキーである。 漫画では朝比奈さんのサンタ姿に淡白な反応だが、 アニメ版では杉田氏が原作のキョンらしい演技をするので、ある意味アニメの方が原作より。 ちなみに収録現場では一人だけ大きなマイクを使っているそうだが、 そのせいで周りの女優陣から大不評らしく、 元々女性社会だったハルヒメンバーらしいが、最近は特に肩身が狭いらしい。 ◆朝倉涼子 CV:桑谷夏子 文芸部部員で、長門の親友。キョンのクラスの学級委員長でもある。 本作ではレギュラーキャラかつ準主人公に昇格した代わりに原作との乖離が一番激しい人。 大体のキャラが本家消失仕様である本作において、本家消失のような殺人鬼ではなく、 それどころか、作中どころか全ハルヒ関連作品中でも屈指の常識人。 そのキャラ性の違いは中の人が収録時に戸惑い(違いを理解してからは「私が親友に欲しい」と絶賛)、 原作漫画を読まずにアニメを視聴したハルヒファンが「この朝倉はいつ本性を出すのかと思ったら最終話まで普通にいい子だった」とラジオに感想を送るほど。 おそらくこの改変は、涼宮ハルヒちゃんの憂鬱で主婦化したあちゃくらさんの影響が大きいと思われる。 そのため長門の家事を基本的に引き受けているお母さん的な存在でもあり、 諭すときは諭し、甘やかす所はダダ甘。ただ、ほとんど甘やかしている。 また、長門とキョンの恋を進展させようと企む策士であり、長門にとっては恋の師匠。 しかし失策も多く、長門の恋愛事情で本人以上にやきもきしていると思われる。 ただ、二人が一線を越える事には抵抗もあるらしく、急進派なんだかそうでないのかハッキリしない。 原作通りAAランク+の美少女であり、眉毛可愛い……が、何故か全く男に縁が無い。 なぜかクラスメイトにも敬語で話す。 また、何を考えているかよくわからない本家消失とは対照的に、他人のことで激しく怒ったりもする。 更にハルヒとは喧嘩をしたことを機に仲良くなり、二人で長門の恋路を見守ったりしている。 ◆鶴屋さん CV:松岡由貴 書道部員2→3年のみくるファン倶楽部のシングルナンバーズ。本作ではメインキャラクターに昇格した。 SOS団と一定の距離を置いていた原作とは異なり、何かと長門とキョンにつっかかってくる。 その為、序盤は二人の関係をかき乱すトラブルメーカーとして活躍。 ハルヒ登場以降もパーティー、合宿、旅行などで率先して資金援助してくれる便利な人。 あらゆる面において高スペックで、ハルヒからも「マジの天才」と評されているが、やはり森先生には敵わない。 ◆朝比奈みくる CV:後藤邑子 書道部員2→3年の鶴屋さんのお友達。 未来人設定がなくなった事以外は原作と大して変わらない天然ボケな巨乳美少女。 キョンとの初対面時に鶴屋さんが暴走したためか、キョンからは原作ほど好かれていない。 勝手にファンクラブを作られたり(会員数は既に100名を超えている)、 アニメ版のOPで胸を揉みしだかれるなど、鶴屋さんに振り回されている可哀相な人。 たまに、ごくたまにだが良いお姉さんとして長門の恋路をサポートする。 ◆森園生 CV:小見川千明 体育教師。鶴屋さんの暴走を止めれる唯一の人だがやっぱりバイオレンス肉体派。 「えっちなのは感心しませんっ」 原作で演じていた大前茜氏が引退していたため、アニメ版では小見川千明氏が演じる。 また、アニメ版では何故か、同姓同名の別人が温泉旅館の従業員をやっていた。 ◆涼宮ハルヒ CV:平野綾 光陽園学院の1→2年生。 ひょんな事から長門と知り合い、文芸部を不法占拠(SOS団化)し始めた。 やってることは原作とさほど変わらないが、その貪欲な姿勢は長門が勇気を出す一因にもなった。 本編通り例の校庭落書き(?)事件を実行しており、それが切っ掛けでキョンに好意を持っている。 また、前述の通り朝倉と仲が良くなり、朝倉が暴走したときにはハルヒがツッコミ役になるという珍しい光景が観れる。 長門に対する恋のライバル的役割。 長門好きには「またハルヒか……」とモヤモヤさせる存在だが、ぷよさんの描くハルヒは何故か可愛い。 というか、周囲に配慮出来るイイ女になっており、原作よりこっちのハルヒのほうが好きという意見も…… ◆古泉一樹 CV:小野大輔 光陽園学院に通うハルヒのクラスメイト。 ハルヒの側近というかパシリ的な存在。もちろん超能力者ではなく、機関など存在しない。 ハルヒには好意を持っているが散々振り回されており、全く報われる気配はない。 (被害例:冬なのに校門前で体操服に着替えせられた) しかし、ハルヒの言う事なら何でも実行するという狂信的な一面があり、 小説版では「目でピーナッツを噛め」という無茶振りに応えようとして当のハルヒをも焦らせている。 アニメ版では何故か、キョンとのホモォ……な絡みが追加された。 ◆谷口 CV:白石稔 お馴染みキョンの悪友。一応文芸部部員その1(*1)。 出番は少ないが原作同様、周防に接触する。 アニメではオリジナルシーンで初登場した。 ◆国木田 CV:松元惠 鶴屋さんに気がある影が薄いほうのキョンの親友。一応文芸部部員その2。 アニメでは出番が増えた。 ◆キョンの妹 CV:あおきさやか 長門とキョンの出会いの場に居合わせた娘。 実は二人の関係を大きく進展させるキーパーソン的な存在でもある。 ◆佐々木 どういう訳か光陽園学院に通っている中学時代のキョンの”親友”。 長門にとっては、強大な恋のライバルでもある。 アニメ版には登場しなかった。というより登場エピソード直前までしかアニメ化されなかった。 ◆周防九曜 6巻で登場した光陽園学院の生徒。 原作における光陽園の子にあたるので、谷口とフラグが立っている。 佐々木と同じくアニメ版には登場しなかった。 追記・修正おねがいします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] アニメ化か……朝比奈さんや森さんとかどうするんだろう。 -- 名無しさん (2013-12-18 15 58 14) ↑別キャスト……だろうな -- 名無しさん (2013-12-18 16 54 04) 後藤さんアニメ出てるじゃん。 -- 名無しさん (2013-12-18 19 54 52) ゴトゥーザ様は既に回復してきてるしひだまりとか出てるから問題ないだろう。森さんの中の人は引退してるからスパロボスタッフみたいな事しないと無理だが -- 名無しさん (2013-12-18 22 30 45) ↑あれ、もう復帰してたっけ? 休養以降俺が見てたアニメには出てなかったのかな。 -- 名無しさん (2013-12-19 18 50 25) 腹属性ねぇよwww -- 名無しさん (2014-02-04 16 30 10) 噂ではしょこたんがCMしてるところでアニメがやるらしいは・・・ -- 名無しさん (2014-02-04 17 34 29) 後藤さん、ひだまりは大分頑張ってたらしくて休養中だとか。健康面で心配… -- 名無しさん (2014-06-27 06 09 49) アニメ化しても森さん&みくるちゃんの声優が代役になりそうだな -- 名無しさん (2014-09-02 15 08 59) ↑森さんは引退してるからな。 -- 名無しさん (2014-09-02 15 33 15) なんというか、ラブコメ漫画としての完成度はクソたけぇなこれ。絵もかなり上手くなっちゃって…… -- 名無しさん (2014-09-05 23 31 31) 後藤さんが10月に復帰するらしいし、収録は来月からかな -- 名無しさん (2014-09-14 12 48 50) 後藤さんが復帰して良かったと思う反面、心配から内心ハラハラしてます。 -- 老婆心 (2014-12-12 01 21 27) キャスト変更なしとあるが、森さんは? まさか、今作だけ特別に出演とか? -- 名無しさん (2015-02-08 09 37 08) 京アニはエンドレスエイトの件あって出禁にされたか? -- 名無しさん (2015-03-12 18 48 34) 7~8巻で話が大きく動いた(ネタバレに配慮)が、多分原作の続刊出る前に完結するよなコレ。つーか、既に『エピローグ』だし -- 名無しさん (2015-03-27 23 32 57) アニメ第1話、森さん登場シーンが見事にカットされてるんだよなぁ(その煽りでみくる達の初登場ちょっと後倒し)。こりゃ森さん完全カットも有り得るか…? -- 名無しさん (2015-04-05 22 01 36) アニメ1話で長門の中の人が声を忘れてみなみけの千秋みたいになってる。 -- 名無しさん (2015-04-19 18 48 36) 声忘れてるんじゃなくて演じ分けてるだけだろ、後々必要になるし -- 名無しさん (2015-04-19 19 02 17) アニメの出来はいいのに全く話題にならんな……京アニと比較されてこき下ろされてたせいか…… -- 名無しさん (2015-06-30 15 15 58) 2006年ハルヒ→全14話、2009年ハルヒ→全28話、長門有希ちゃん→全16話。きっちり1クールに収まらないのがハルヒシリーズなのか -- 名無しさん (2015-06-30 15 50 45) エンドレスエイトと京アニには本気で怒りがこみ上げてくる。これ自体は面白いが、前例が前例だけに誰も気にかけない。あと言ってはいけないが作者もいろいろやり過ぎて回収出来なくて書けない。悪しきスパイラルだな -- 名無しさん (2015-08-08 01 12 52) 次最終回かあ、朝倉いなくなった後の話も見たいがそもそもキョンとくっ付いた時点でもう話の目的地自体は達成されてるからなあ -- 名無しさん (2016-07-30 01 36 09) 完結おめでとう -- 名無しさん (2016-08-31 00 11 47) アニメ最初声どうしたって思ったけど消失編で声優ってすげえなって思わされた -- 名無しさん (2016-10-26 18 19 02) 個人的に朝倉とハルヒの絡みが好き。涼宮ハルヒシリーズ本編だと同じクラスなのにほぼ絡んでないし(というかハルヒがガン無視している)。 -- 名無しさん (2018-05-07 19 30 17) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1161.html
私が対人用ヒューマノイド・インターフェースである以上、人間との接触、コミュニケーションをとるにあたっての基本的な知識は持っている。 でも、それを応用するキッカケがない。私には話を盛り上げる知識は納められている、だが、話をかけるための体の知識はない。 だから私は、用もなく人に話をかけるというコミュニケーション方法はとれなかった。とる必要性もないと感じていた。 ごく稀に私に話をかけてくる人はいた。クラスメイトの女生徒が、稀に私に質問形式で話をかけてくる。 私はその質問に不都合がない範囲で簡潔に答える。不都合がある場合は答えず聞こえないふりをする。 それが終わると必ず、女生徒は自分のいるべき集団に戻る。そして私の反応を口頭で簡単に述べる。 たまに私の方をチラチラ見ながら。私にはそれがなにを表すのかわからなかった。わからなかったけれど、少しだけ悲しかった。 三度目のそれから三日と一時間後に、廊下で偶然、女生徒が数人で私の話をしているのを聞いた。内容を個条書きすると以下の通り―― ・気が弱くておとなしい ・何を考えているのかわからない ・活字中毒 ・友達がいなくて寂しそうだけど友達を作ろうとしていない ・話かけても反応がない、または薄い ――というものだった。そのうち話は私にはわからない話題になった。 それはともかく、私に対する憐憫や不満がほとんどを占めていたことに少しだけ驚いた。 その日の夜に私の中にエラーが発生した。原因は、人間のいうところの“ストレス”だった。 結局は“可哀想”という弱者への憐憫に満ちた感情から、彼女らは私に、稀に話しかけてきているということで理解した。 しかし、それは本音ではなく建前であると気付いたのはもう少し後の事だった。 彼女らは、まだ日の浅い仲の自分の環境を取り巻く集団に自分の存在を誇示し、さらに“優しい人”と周りに理解せしめることを頭に置いた上で行動していたのだと思う。 それからはSOS団の活動から帰り、家で涼宮ハルヒと自分を取り巻く環境のことを整理しようとするとエラーが発生するようになった。 原因はやはり“ストレス”だった。布団にくるまれながら、私は、私に感じるはずも発生するはずも無いストレスと同時に、無気力感が溜っていくのを感じた。 どうして……? 夢を見ないはずのヒューマノイド・インターフェースの私はその日、人がいう“夢”を見た気がした。 私は空気のように誰からも相手にされず、教室の片隅から私の席を眺めている。私の席には私じゃない私がいた。 クラスメイトと楽しそうに話す私がいた。 笑顔、驚いた顔、不満げな顔、にやけた顔、照れる顔……どれも私に備え付けられていながら、それが私の表情であることが驚愕なほどだった。 私じゃない私には、一般的な感情の表し方が備わっていた。 私じゃない私は、クラスメイトに囲まれて、私にはわからない話題を次々と話す。 クラスメイトのみんなが笑う。その中には、私のクラスではないあの人もいた。“彼”も。 私はただ立ち尽くしていた。なにかが悲しかった。 現実と夢のかけ離れた比率が悲しかったのか、“彼”が、私じゃない私と一緒に、楽しそうに私のよこを通り過ぎて行ったのが悲しかったのか、わからなかった。 でも悲しかった。 朝からエラーが発生した。 私は焦っていた。表情に表す方法がわからないために“彼”も涼宮ハルヒも、朝比奈みくるも古泉一樹もそれに気付かなかった。それでいいと思った。 私は確かに焦っていた、私の中に存在し増殖しはじめるエラーの対処に。 そのうち私が私でなくなる気がして、恐怖に震えた日が続いた。私はストレスを解消しなければならなかった。 読書もその方法には入らなかった。 現実ではない空間を頭の中に作り出し、サイドビューから繰り広げられるスペースアクションも現実逃避の扶助にしかならないことを知っていた。 要約すると、私は誰かと話をしたかった。ただそれだけだった。私のエラー内容を聞いてくれて、適切なアドバイスと相槌を打ってくれる人が欲しかった。 でも私には作り方がわからなかった。 そんな私が惨めに思えて悲しかった。という感情を持て余していたことなんて、誰も思わなかった。そう思って“いた”。 ――暫くして 外傷が無いのに満身創痍の身体を無気力に動かして、食料調達に行く。 もしまだ食料が僅かでもあったなら行かなかったと思う。行きたくなかったと思う。 カレーの味しかしない業務用カレー粉の缶を手に取り30個を籠に積む。一ヶ月は確実にもつ量を積み終えた矢先に、聞き慣れた声を耳にした。 「長門……?」 突発的に振り向いた先には“彼”がいた。童女と共に私のように食料調達のために。ちなみにこの童女が彼の妹であると気付いたのは少しののちだった。 「……食料調達。」 私の返答は確かに、相手の疑問を解消する内容。でもこんなこと言いたいとは思っていないのに私の、周囲に対して固定化され始めた表面がそれを拒んだ。 もっとあの時みたいに話がしたいのに。 でもそれは別の話。 「……そうか」 「……そう」 「……なあ、長門。おまえこの頃「キョンくん、このお姉ちゃん誰?」」 彼の言葉を遮って不意に彼にすがりつくように身を寄せていた童女が尋ねた。 彼をあだ名で呼んでいるため、私はこの童女を親戚または彼の近所の人間だと勘違いした。 「ああ、えっとな……」 彼が言い淀んだ。私は不意に焦燥を覚えた。彼は私のことをなんと言って紹介するのだろうか。 部活仲間? 同級生? 果ては宇宙人? ……私にはわかっている、この状況下では彼は高い確率で“知り合い”と答えると。 (部活仲間、同じ部活の、部員の、と答えた場合彼は恐らく童女に自分の部活動を紹介することになる。 SOS団などと言えるはずもないため童女は知らず、彼は言わないことになる。そして私は彼と同じクラスではない。) でもそう思いたくない、彼にそう言って欲しくない。私はそう思った。 何故? こんな幼い子供に虚勢を張ろうというのか。私にはわからない、わからない、 わからないけれどもそうであって欲しいと望んでいない“長門有希”が私の中にいる。 私の中の私は、「情報操作すればいい」と言っている。でも私はそれによって彼の口からでる偽りを望んでいない。 ゆっくりと口を開いた彼を凝視しながら私は、私の中の私を打ち消すように感情を殺した。 「……友達だよ、友達。長門有希っていうんだ」 私の中で何かが弾けた。彼は友達と言った。情報操作もしていない。 彼の口からでたこの場限りの、それでいてどこまでも真実の本音が私の耳に谺した。 「じゃあ……有希ちゃん?」 私の中で爆発しながら互いにその居場所を求め続ける安心感や焦燥感、不信感に喜び、その他の凄まじい量の感情。 彼の妹が何を言ったのか、その時は聞き取れもしなかった。 「まあ、そうだな。で……こっちが俺の妹の……って、お、おい!! な……長門……!?」 私は私自身気付かないまま、彼の胸を弱く掴み、そのシャツを涙で濡らしていた 彼は私を友達と言った、それはなんてありふれた言葉だろうか。 ただ気軽に話せるだけの交流が浅い人間でも友達、自分の悩み事を打ち明けられそれに適切なアドバイスをくれる人間も友達。 あまりにも身近に感じるものであることが“当たり前”のそれが私に欠けていた。 それでも私はその欲を表面上に表せずに、誰にも知り得るはずのない私の内面を必死に抑えていた。 私の一番欲しいものを私自身が無意識に遠ざけて、それでも欲しがって追いかけて、やっとつかんだSOS団という宝物、でも私はその使い方がわからなかった。 私にとって一番大切なもの、それが文芸部室にいる皆。ここの皆なら私の話を聞いてくれる、教室にいる皆とは違う。 そう思っていた。それだけに私はSOS団から浮いている気がすることが怖かった。 だが、自分ではそう思っていただけなのかもしれない。 私は、クラスメイトに不満や憐憫の感情を抱かれることでエラーが発生した。 そして放課後、SOS団の活動で涼宮ハルヒが閉鎖空間や不可思議な現象を起こそうとする片鱗を見ると、先程のを上回る量のエラーが検出された。 夜、夢の中で“彼”が私ではない私と楽しそうに話しているのを見て、今までにない量のエラーが発生した。 そして今、私は“彼”に「友達」と呼ばれて、私の中のエラーが七割ほど削除されたことを確認した。 それが意味するものは…… 情報統合思念体によって与えられた私の感情のタガは、僅かだが彼が溶かしてくれた。 情報統合思念体は、一介の人間の脳を60億集めたとしてもその内容をゆうにパンクさせる知識知能情報量を集っている。 その情報統合思念体が対人用とし完全と判断して私を造った。それの綻びを彼は見つけた。 それは無意識にしても彼の一勝であり情報統合思念体の一敗であった。 その瞬間から私は私の中の優先順位を情報統合思念体よりも“彼”に采配した。 つまりは情報統合思念体、そして情報統合思念体が私に観察対象として委ねた涼宮ハルヒ、 そして情報統合思念体が私に観察対象として委ねた涼宮ハルヒが創ったSOS団より上位に“彼”があがった。 私にとって一番大切なものが彼になった。 私は今、マンションの自室にいる。ここにいる人間は一人だけ。そして私は人間ではない。 「長門……?」 「待って……まだお湯が沸いてないから」 「いや……あ、ああ」 彼は狼狽している。 彼はあの後、感情爆発によって泣きじゃくり思考がままならない私を一度マンションまで送った。 その後、彼は彼の妹を家まで送り、また大急ぎで私のマンションに来てくれた。 その間、私の感情爆発の規模が少しずつ小さくなっていき、彼が玄関の扉を破壊する勢いでノックする頃にはなんとか平静を保てる状態になっていた。 「どうぞ……」 「あ、ああ……悪いな」 黄色く濁ったお茶を出し、人間の社交事例を終えた私は、意を決して話し始めた。 「あなたは悪くない、悪いのは私」 「長門……?」 「私は情報統合思念体によって造られた対人観察用ヒューマノイド・インターフェース……」 ………… おおよその説明と謝罪を述べた私に、彼は哀れむような、それでいて自分をさげすむような目をして言った。 「……長門」 「なに」 「……すまなかった」 「……何故?」 「俺は、長門のこと……」 「……言って欲しい」 暫く沈黙が続いて、私が催促しようとすると途端に彼は口を切った。 暫く沈黙が続いて、私が催促しようとすると途端に彼は口を切った。 「……俺は、長門のこと、本当にただ宇宙人としてだけしか見てなかったと思う」 「……」 予想していなかったことを口にされた。 「いつも一人で本読んでるおまえを見て、一度、言おうと思ったんだ……おまえ……」 おまえ……寂しいとかないのか……? ってな…… いつも一人で本読んでて、表情も薄くて、それに宇宙人なんだから寂しいとか悲しいとか……そういうのねえんだろうなって思っててな…… 話かけても必要最小限のことしかいわないだろ……? だからもしかしてただの人間なんかに無駄に話かけないでほしいとか、馴れ馴れしくしないでほしいとか思ってんじゃないかっても思って…… だから、俺が言うのもなんだけど……緊急時以外は空気みたいにいてもいなくても同じ様に扱っててもいいんじゃないかって……そんなふうに思って……頼る時だけ頼って、最低だよな……? なんかさっきから「思って」ってのが多いよな……でも俺がそう思ってたのは事実なんだ……だから、すまなかった……長門 正直に、素直に、私はショックを受けた。 彼に人間として扱われていなかったこと、いてもいなくても同じだと思われていたこと、それより、私の無意識が彼にいらない心配を募らせていたことが。 「……だけどな」 「……?」 「気づいたんだ、昨日。長門の様子がおかしいって」 昨日もいつも通り、ハルヒが朝比奈さんに迷惑極まりない行為をして、古泉が偽善者スマイルでそれを眺めて……いつも通りだけど、なにか足りないって…… 長門、おまえは昨日本当に本を読んでいただけなのか……? 足りなかったのは規則的におまえがページをくくる音だったんだ。 ふと気づいて、おまえのほうを見ると、ぼーっとしたまま視線だけ本に落としてて……その目が、悲しい色してたって分かるのは、多分、俺だけじゃない…… 「……」 「そう、思ったんだ……だから……だから、その……俺にできることがあったらなんでも言ってくれないか……?」 「……あなただけ」 「……えっ?」 私は空気のような存在。誰も私の少しの変化に気づきはしない。 いつも人間が呼吸し、吸い吐きしている空気の成分のなかで、酸素量が1%増えても誰も気付きはしない。それと同じ。 でも あなたはそれに 気が付いた 誰もが私がそこにいることが当たり前になりすぎて、そして私に自己主張がないために誰も私を見なかった。 それは当然といえば当然のこと。 誰だって変化のない実験に興味は示さない。 でもあなたは私を見ていた。ではあなたにとって私を見るに値する理由は何? 「それは……」 私にはある。あなたを見続ける理由が。もしそれとあなたの理由が一致するなら…… 「俺は……長門のこと……」 「長門のことが好きだから……それじゃダメか……?」 ……初めて温かさを感じた気がする。それは外気温、湿度、そういった外界の自然の定理や淘汰されいくこととは全く異なる“内”の温かさ…… 知らない内に流れた涙は頬を伝っていく。これが私の内に溜めていたストレスなのかもしれない……知らない内に溜めていた……それなのかもしれない……でも、もう大丈夫。 「……長門?」 その声で心臓が止まっていたような感覚から抜け出した。 「あなたにできること……そしてしてほしいこと……それは」 「ずっと一緒に居てほしい」 私の中で“私”が優しく笑った気がした。まるで、なにかを祝うように。 END 分岐 HAPPY END 「ハァ……ハァ……」 「……ん……」 あれから二ヶ月後、84回目の性交が終わって、彼は荒く息をついた。 あれから私と彼……キョン君はすぐ深い仲になっていった。お互いを想い合うもの同士ならば必然のことであるらしい。 私はキョン君を欲した、それと同じ様にキョン君も私を欲してくれた。その結果、生物の最大のコミュニケーション方法のひとつであり命、名の存続方法である性交に行き着くことは自然であったと考えられる。 「有希……」 「…………?」 一時的に思考を停止した。キョン君と話すときは人類にとってあまりに過度である思考情報回路をしようすることは避けている。その方が私らしくて好きだからと言われ、嬉しかったから。 「有希……何よりも一番好きだ……愛してる……」 キョン君が私を上に覆い被さるように抱いて言った。私はただ顔を紅くして彼に抱きつくほかなかった。でも、それが一番幸せだった。 だからこそ 悲しかった このことを 彼に伝えるのが 身を 切り刻むよりも 「……私は明日の朝、情報統合思念体によって、処分される……」 向き合う形で腰をおろし私の煎れたお茶をのんでいるキョン君が……彼が、瞳に映る。夜の暖かい風が、彼と一緒に買ったカーテンを揺らした、それを見るのも苦痛だった。 「……有希……?」 彼はまるでただ名前を呼ばれただけのような反応をした。この純粋すぎる目も苦痛、悲しい。 「……私はあなたと一緒にいる時間、涼宮ハルヒの観察を停止していた……しざるを得なかった……」 「……」 「……情報統合思念体は私にエラーが発生した、或いは初期システムエラーの見落としと判断し不必要と確認……」 「……有希……?」 ダメ、私は聞こえないふりをしなければならない。あなたの優しいところを見たくない。 「……明日7時に私の情報連結を解除し、さらに違うタイプの対有機生命体観察用ヒューマノイド・インターフェースを地球に送る……」 沈黙が流れた。私も彼も何一つ喋らないまま5分が過ぎた。そして、彼が口を開いた。 「……嘘だ……」 本当に嘘だったら嬉しい……認めたくないのは私も同じ……でも真実…… 「……嘘だっ!!」 今までどれほど、有希を愛して、有希と時間を過ごして、有希と分かりあってきたと思ってんだよ……? 俺は有希が好きで、有希が俺とずっと一緒にいてくれたら、本当に死んでもいいって思ってた…… でもこんなのってねえだろ……!? 不必要!? 俺が必要としてやる、情報統合思念体の分も誰かの分もみんなの分も!! ……だから……だから…… 「有希……嘘だって言ってくれよ……」 俺はいつの間にか両目を完全にボヤけさせ、シャツを濡らしていた……自分にこんなにも身近な人間の消失……死に免疫がないなんて思ってなかった…… 「……これは……真実……」 私もいつかのように涙を流していた。あの時は何が悲しくて何が嬉しくて泣いたのかわからなかったけど、今は嫌というほど分かる、痛みを伴う涙だった。 「あ……ああ……俺は……俺は……」 彼が言葉になっていないながらも、私にはわかる言葉を喚きはじめた。 「う……ウアアアアアァァァァァァァァァ!!」 ――バンッ! …………。 彼は急に出ていってしまった……どこにいったのかはわからない……そして私は追いかけてはならない……そんな気がした…… 後数時間で消える私の全ての記憶は、こんなにも軽率に扱われるのだろうか……? こんな時だからこそ、傍にいて優しく頭を撫でて欲しいのに……彼は自分の感情整理の為に私との残された時間を浪費している…… 最低だ。私にとってこれは完全に予想外であって、更に彼に失望するに値する現状である。私が今まで愛した彼は、いざとなると恐さに逃げ出す自分勝手な人間であると……判断する…… そう判断する……なんてそんなことができたら……どれほど楽か知れない…… どれだけ私の中の彼を嘲笑し、惨めで弱く汚らしい存在として認識しようとも……私の中の彼の記憶がそれを難くなに拒む…… 彼を嫌いにならなければ私が悲しむのに……彼を嫌いにならなければ……っ……そんなこと……でき……ない…… 涙が止まらなかった ……いつの間にか睡眠(スリープ)状態になっていた…… 暖かい風とまどろむようなほのかに明るい空が、彼と一緒に選んだカーテンの隙間から流れ込む……今の時刻は午前6時27分……私が消えるまであと33分…… 私は彼を探していた。すぐに見つかった。彼はベランダにいた、帰ってきていた。 「…………」 私にはかける言葉が見つからない……誰が責められるというの……? たった一人で、急に私がいなくなるということを聞かされて……出ていってしまったことを…… 原因は全て私の怠慢のせいなのに彼は一言もそれには触れずに……きっと苦しかったはず……きっと悲しかったはず……でも私にはどうすることもできない……もう私にはあなたを守ることができない…… 「有希……」 どうやら私に気づいていたみたい…… 私はベランダの柵に体を預ける彼の横に立った。 「有希と初めて会ったのは、あの図書館だったよな……」 私は無言で返事をした……彼はいつもより口数多く話だす……時間はあと10分もない…… あの時は有希のことも全く知らなくて……まさかこんなふうになるなんて予想もつかなかったな…… そういえばあの時の有希はどことなく微笑んでるように見えて…… このカーテン買いに行ったこと覚えてるか…… あの時は有希が…… そういえばあんなこともあったな…… 有希が…… もう やめて !! いつの間にか私の胸元には大きく濡れたシミが出来ていた…… 全部覚えてるから……あなたがくれたもの全部……あなたの仕草や言葉……優しくしてくれたこと……時には厳しく戒めてくれたこと……全部覚えてるから…… だからもう……一人で感傷して辛い思いをするのは……やめて……最後の最期にあなたを傷つけたくない……!! そう言い放つと同時に長門は俺の胸で大きく泣いた……俺が今してやらなきゃならない、してやれることは……頭をなでてやることくらいだ…… なあ長門……俺は…… 俺はお前がいなくなっても何も変わらない お前がやってくれたことは全てこれから俺が自分でやる だからもう大丈夫だ でもこれだけは忘れないでいてくれ 俺は長門有希と一緒にいられた時間を忘れないよ 私の覚えている彼の最期のキスは この世界のどんなものより温かく そして 汚れないものだった 俺は目の前の砂を見ていた そして振り返り 呟いた 「ハルヒ」 ……有希…… それは少し前までの私の名前……今は名前がない……あなたは誰……? ……有希…… 違う、有希は私、あなたも有希……? ……有希……! 聞こえている、大きな声を出さないでほしい……あなたは誰? ……有希……!! ……誰……!? あなたは……あなたは……「あなたは誰!?」 「俺は俺だよ」 地味なデザインの照明に、地味な壁……目を開けるとそこは私の家だった。 そして私の隣には、あぐらをかいて座っている彼がいた。そして横には、少し前まで私の観察対象であった“涼宮ハルヒ”が、いた。 ……私には何が起きたのかわからなかった。情報統合思念体に情報を求めようとした、しかし繋がらなかった。とにかく彼に抱きつきたかった……しかし今は涼宮ハルヒがいる、この状況を確認するのが先。 「……これはどうい」「有希っ!! 有希ぃ!! 良かった……ねえどうしたの!? なんであんなところにいたの!? あ、それより怪我は!? 怪我はない!?」 私が口を出そうとした瞬間に涼宮ハルヒは私の両肩を強く揺さぶり叫んだ…… …………? 状況が把握出来ない情報が多すぎる……怪我……?……私のいた場所……? 「あの……」「有希、もう大丈夫だからね……!! 有希……良かった……有希ぃ……」 そういうなり涼宮ハルヒは泣きじゃくり、布団のかかっている私の足元によりすがった。状況が理解出来ない…… 「説明して」 私は、愛おしい彼のほうに向き直って言った。感動の再開の一言目がこれではちょっと悲しいけど……今は仕方がない。 彼はうなずき、小さく私に言った。 「またあとで」と。 それから暫くの沈黙があったが、彼が涼宮ハルヒをなだめて、私に家から連れていった。涼宮ハルヒは相当私の事を心配していたようだが、私はわけがわからず何とも言えなかった。 ただ私がここにいることだけは確からしい……何故……私は消えるはずだったのに…… その後また、彼が私の家にきた。息を切らして。 「説明して」 私は即座にいい放った、でもそれとは裏腹に、説明なんていらない、また彼に会えて嬉しいと思った……けど口には出さなかった…… 「ああ……」 私と対面して座る彼は、微笑みながら言った…… 俺はあの後、つまり俺が有希のマンションから出ていってから、必死でハルヒを探した 朝四時に学校に忍び込んで名簿を盗みだし、朝の六時にハルヒの家まで向かった 夏休みなのにハルヒは何故か起きていた。俺は色々疑問があるであろうハルヒの両肩をつかんで言った 「昨日の夜から長門がいなくなった! さっきジョギング中に会ったマンションの管理人が、夜中に長門が出ていくのを見た!」 そういうとハルヒは急に不安そうになり「私は警察呼んで有希のマンションの近所に聞き込みしてくる!! キョンは有希のマンション行ってみて!! 早く!!」と俺に言った 俺はマンションに向かい、そこで朝七時を迎え、有希に最期の挨拶をした。有希が消えた直後そこに来たハルヒに「やっぱりここにはいない」と告げた その後、ハルヒと俺は血眼になって有希を探し回った(俺はフリだけ) そして……ハルヒは……有希が……ぴょこんとどこからか出てくる事を願った……とても強く……願った…… ハルヒの神の力が発動し、間もなく町から外れた山中で、機動捜索隊が有希を発見、生存を確認した 思ったようにハルヒが当然こうであるべき有希の出現を願ったために、常識の範囲内で片付けられる場所に有希は出現した 更にハルヒはもう二度と有希にいなくならないで欲しいと願った……そして情報統合思念体が消滅した…… 有希はハルヒが今までそのイメージを思い続けた形の人間として出現したのだ、当然記憶を受け継いで…… そこまでがこの経緯であった…… 「いや、まさかこんなアイデアが思いつくなんてな……俺は結構文才があるのかもしれないな……?」 彼がそういって笑った。 突拍子もない話だけど、そう考えるとつじつまがすべて合う……涼宮ハルヒの言動もなにもかも…… つまり……私はあなたのためにこの世から消えて……あなたのお陰でまた誕生した…… そして今ここにいる私は情報統合思念体の支配下にない私…… 「これで、いつまでも一緒にいられるな……?」 ふと彼が言った。色々な疑問があった……情報統合思念体が存在しないとすると涼宮ハルヒがもし異常状態になった場合どうするのか……朝比奈みくる、古泉一樹はどうなるのか…… そこまで考えて……思考を中断した。 私が考えることじゃない…… 私は人間なのだから…… 私は異世界の宇宙人としているであろう長門有希に言った 「また、よろしく」 それは私の中の私だったんだろう…… 「……まだ実感が湧かない……」 「……そうだろうな……」 「……強く抱きしめてほしい……」 「ああ、有希が望むなら」 なあ、有希……? 前にお前は俺に言ったよな? SOS団の中で浮くことが一番怖い、って…… でもお前が思うほどお前は浮いてなんかいないし、ましてや嫌わてなんかいない…… だってそうだろ? 空気みたいに扱われてるって言った有希を、アレだけ願ってハルヒがいるんだぞ……? 味方がいないなんて臆病にならなくていいんだ 俺は有希を愛してる、みんなは有希の事を大切に思ってるんだからさ だからこれ以上苦しまないでいいんだ……ずっと俺が、みんなが傍にいるから…… 空気と同じく、あるのが当たり前な存在だとしても みんな、空気がなきゃ生きていけないだろ……? End...
https://w.atwiki.jp/yaranaiomm/pages/65.html
一覧 【長門有希】 Bランク公式戦決勝【長門有希】 Cランク【黒百合】 【ロクショウ】 【獅子堂ナミ】 Aランク公式戦本戦決勝 狩猟祭 Sランク公式戦本戦第二一試合 練習試合 星降りの祭り 一覧 現在の主力 名前 系統 種族 性別 備考 黒雪姫 物質系 ブラック・ロータス/アナザーセラフ+12 ♀ クリスとナインボールの娘。血統限界。父親が超優秀だったのか、母親と違ってコミュ力はそれなり。神武に惚れており、エーリカの友人にしてライバル。 シエル 物質系 ホワイト・グリントFA+12 ♂ 鳴の息子でSM騎乗。血統限界。リア充。神武に初めての完全敗北を味わわせたが、戦闘では神武に完全敗北させられる。黒雪姫を守る約束をクリスとしており、何かと踏み込んでくる神武を蛇蝎のごとく嫌っている。いとこ叔父の玲瓏とは意外と気が合う シアシア 植物系 ラフレシア+11 ♀ リムリムの娘でエリカのラフレシアの妹。血統限界。ことあるごとにバグをまき散らす。男の娘疑惑が濃厚だったが、淑女だった。 ダイゼンガー 物質系 D・ゼネラルガーディアン+11 ♂ ミルルの子孫。血統限界。せいしんとういつ特化。苦労人枠。 ファサリナ ドラゴン系 超銀河眼の光子竜+11 ♀ 鈴の娘で血統限界。巨乳。エロい。シエルを盲目的に愛する故に黒雪姫の存在が気に入らず、衝突を繰り返していたが、最近は和解しつつあるよう。 トロンベ 物質系 アウセンザイター+11 ♂ カトリと機械馬系モンスターの息子。非血統限界の騎獣。ダイゼンガーのパートナー。普段は賢いが、変形すると「トロンベ」しか喋れなくなる。料理好きだが味音痴。無能。 過去に確認した仲間 名前 系統 種族 性別 備考 ロクショウ 虫系 ロクショウ ♂ チンクの父。親藩一筋。 クアットロ 人系 ♀ チンクの母。 黒百合 物質系 ブラックサレナ ♂ マトの父。カウンターが得意。 獅子堂ナミ 人系 獅子堂ナミ ♀ 七煌宝樹。マトの母。豆腐メンタル。 チンク 人系 チンク ♀ ロクショウとクアットロの娘。親藩の妻。 ラウラ 人系 ラウラ・ボーデヴィッヒ+5 ♀ 親藩とチンクの娘。六波羅の妹。ブラコン。SMは防御・反射型。 マト 物質系 ブラック★ロックシューター+5 ♀ 七煌宝樹。黒百合と獅子堂ナミの娘。公式の場では黒百合を名乗る。攻撃力のある魔眼を持つ 撫子 悪魔系 千石撫子+6 ♀ タトバな世界のライダーの子供で石化の魔眼と騎乗持ち。思兼の妻 蛮 獣系 美堂蛮+7 ♂ 撫子と思兼の息子でラピスの兄。騎乗と魔眼持ち。 ニュー 人系 ν ♀ ラウラの娘で蔵人のいとこ。超クーデレ。ディメンションソード所持※詳細はゼオライマーのデータに 蘇芳 不明 蘇芳 ♀ マトの娘(多分父親はアカギ)。三代目壁殴りにしてひきこもり ギララ ドラゴン系 ギラティナ+6 性別不明 強力な騎乗能力とドルマ特化の攻撃能力を持つ ミルル 物質系 スレードゲルミル+6 ♂ 特殊抗体、弐の太刀、メイガスの剣、斬艦刀、くうれつざんの使用を確認物理アタッカーの可能性が高い『弐の太刀』『猛虎』持ちなので逢坂大河の子供と思われる オリカ 妖精系 オリカ・ネストミール+5 ♀ ヒュノムス語を理解出来ないモンスターへの耐性貫通とビブラート、こうよう、あらし、せんそうの歌を持つ 鳴 人系 イナイモノ ♀ ニューと蛮の娘でラピスの姪。SM血統。「白騎士」 クリス 物質系 イチイバル ♀ 蘇芳の娘。壁は殴らないが超コミュ障。オリカの血を引く「黒百合」 ナインボール 物質系 (不明) ♂ 最後の熾天使の世界の裏モンスター。クリスの夫 リムリム 植物系 チェリム ♂ 補助・盾特化。神の盾・アイアス持ち 鈴 ドラゴン系 銀河の光子竜 ♀ ギララの子孫 カトリ ドラゴン系 ナナ・テスカトリ ♀ 騎獣。鳴とのコンビネーションで実力を発揮する。 ※「石化」 すばやさと回避率が大幅に下がり、物理攻撃から受けるダメージが増加する。回復と抵抗はせいしんに依存する。(401スレ470) 【長門有希】 …━…━…━…━…━…━…━…━…┓ ┗…━…━…━…━…━…━…━…━…━ . [ 戦闘 AA 天性の才能。理不尽な選択肢を容赦なくつきつける。マトは許されない。 . [ 育成 A+ 高いレベルでまとまっている。大体のモンスターは自分に適応させられる。 . [ 成長 SS+ 元々エリート級だった上に昨今とてつもない勢いで成長している。 . [ 交流 B- 昔とった杵柄で裏側でやたら顔が利く。信頼出来る友人や家族は数人程度。 . [ 知識 A+ 様々な方面の知識を持つ。インテリ会話もできる。 Bランク公式戦決勝 【長門有希】 Cランク . -―――- .._ ´ .. -―≧、-- .. _..z‐ ´ ‐ .ニ= ー 、.\ _ .. -‐ラ' / ´ / / ! ! \ .ヽ. ヽ. / // / /ィ | | V .ハ _,._. -ァ' / / /,.イ リ | | i! l i  ̄ / ! i.|.イ /| ,イ /! .イ l l ! . | | /./ ,l| l_|_ム_j/| l/j/ j_i_|j__| ト| } リ! l /イl! /.|小从「}イ`Y′ ´j'-_「jハリ./イiハ ト、 ー'/ lハ小.ハ V笊示ミ '7筰 カラ.´} / .ハ { \ / l!|ハ トヽVュリ 辷ソ //}' / ヽ /イ lハ ヽト\ 丶 イ/ムイ / ノ'/ / ハ小 iト.、 ‐.‐ /イ /イハ{ / |lハハ|リ`iァi -- 彳ィ/7|′ リ/´j!_}ムフ /トl、 ,、-、弋¨´ . . {__ __ __} . ` ーァ-、_ _..イ . ∧ ヾ ヽ |´.. -- `j . . . ./ /./  ̄`ー-/ \ヾ ヽ |´  ̄ `l / /.∧ j . .i ヽト、_,斗ォミ. | ノ / / . .! /. . . i . ァレ'/ ハ、 ヽ | / /./イ | ノ .. .. ..ヽ{ | {| {! | レ{爪!l! / /./..|.. .. ..! } .. .. .. . ..入 ' ト.Vリlj./ィ',.イ.. .|.. .. i | ハヽ . . .ノ.、 ヽ.__/トヽ! |' //.. .. .. | . .. l..l j../ { /.. ..丶.__ _,.ハヽl!ィ7| _.. ./!. . .. ..| __/ムイ.. .. .. .. .. . . ,. . ノ斗弋{三z=┘. .|. . .i ...l ,.ィ.´./´.´. .. .. .. .. . . / ../ . / イ | ∨.. .. ./.. .l . ..| .. | / .. _{_j..{ . ... .. .. . . ./. .. .../j.V' . イ==! .j . .. .,.. .. . |.. .. 、..l、 i.. .. .. .. .|.. -、―――-<∠/‐ーァ'イ.. .} .ヽ . .. .! . .. 丶l、 | . .. .. .. .ヽ、 ..`´ ̄ フ¨ ァァ- 二イ/.. ./ . .. 丶 ..∨.. .. .. .! ヽ `.ー‐-ァ´>‐.´.. ..,.イ . . . . .j.. ..'. . . . .. .. ヽ . } . . ./..} \. / / . .. .. .. /N′ /. .. .ィ . . . . . .// . , .. .. |]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]] 【長門有希】 Cランク Lv30 さみしがりや MP 72/72 SP 3/3 かしこさ / SS+ 【職業】 メイン/サブ モンスターマスター/がくしゃ★5 【称号】 "無機質な生き様" / 淡々と相手を挑発するその生き様に送られる称号 "成長限界Ⅰ" / 無配合モンスターを成長の限界まで育てた者へ送られる称号 "成長限界Ⅱ" / +1~3の配合モンスターを成長の限界まで育てた者へ送られる称号 【指揮官】総合Lv3 【攻撃】Lv0 【防御】Lv2 [ 指揮官命令:武力介入(1) / 仲間一体を任意のモンスターの行動「前」に行動させる。 [ 指揮官命令:絶対回避(1) / モンスター1体を1ターンすべての攻撃を回避する、1戦闘1回 [ 指揮官命令:攻撃誘導(2) / 敵全員の「呪文以外」の攻撃を仲間一体に引きつけ、「しゅびりょく」を上昇させる。 [ 指揮官命令:限界突破(2) / 仲間全員の「こうげきりょく」「しゅびりょく」「すばやさ」「かしこさ」を上昇させる。 【職業特技】 [ しらべる 消費0 / 相手のモンスターを調べる。魔物辞典に登録する。 【特性】 [ 孤高の創世 / 自分と自分のモンスター全員を「PTに一人」として扱う。 [ 才能開花 / モンスターの呪文・特技・特性の取得が早くなる。 [ 情報改竄 / 自分のモンスターのデータが他者に漏れそうになった時、その情報を改竄する。 【職業特性】 [ 魔物辞典 /魔物辞典を所持じている、しらべるを行った魔物の情報を見られる。 [ 生息魔物知識 /魔物図鑑に登録された魔物がその扉で通常出現するモンスターだった場合、 任意でエンカウント出来るようになる。 [ 生物知識 /様々なモンスターの知識がある、低確率で相手の攻撃に対して最適な行動が取れる [ くすりのちしき /回復呪文や回復アイテムの効果が少し上がる。 [ 精密解析 /「しらべる」をターンの開始時に行動を消費せず行えるようになる。 ターンを消費するとより詳細なデータを弾きだす。 【黒百合】 ,、 \、 〈 | \、〉〉 , -、_ 川 、___〉-`=ニィ´ ̄`ヾ´ニ= 、 /,-ヘ ` ̄ 〈」 !, 'l` i .-―- 、 ゝ._ _ _.〈\ 〈_., -、.〉 / ヽ ヽ、_ 三三三ニニニ二´ヘ×、 `ヽ.\ l.」∧l」〈 〉、  ̄ ゙̄ ヽニニ二二〈 、ゝ.、 ∨、- へ /i _ノ ' ,=ヘ ゝニ=、_// \\ ´ヾ〉 ヽ. \  ̄ ,- '/〉 \ ,.-‐-=ニヽ lヾ!_ / ‐-、i 、 ヘ li /ヘレイ \ / ヾ i ヽ! ヽ.i〈⌒ヾヘ.ヘ 〉 ゙'‐'` ー=ニス __ \ ,' \〉 |、 ヘゝー=ケl|ヽl /|,!⌒ヽ.  ̄ i ノ | i ヘ`ー-‐' !ゝ'-‐'、ゝ、ノゝ. ノ_ .-ゝ'´ 〉 _, -‐-、〉、 __ノi'´  ̄ `ヽ、\゙〉、 〈/_二-‐ '⌒ X x、_/ニ= 、 _ノ iヘ \\ / , -‐〃ケ//´ / ゙´ /´ ̄ `ヽ、\_| i/ ヾi〉 / /-‐ '^´.// 「ヘ ケ'ヽ. lヾ.、 | 、 ∧ / ∠二ニ= "' 〈/ / ノ ! l |ヌ‐-〈_〉'´〉" / /´ / ノニ二 __Xヘ_.ノ ヽ| ム_i"´ イ- '´ / /〈 `ーi' 〃〉 |x/ , ∧〉 ヾ' `セメーヘヒ〉]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]] 【黒百合】 【特技】 [ せんこうだん [ さみだれうち [ モノクローム [ とっこう 【特性】 [ ボソンジャンプ [ 復讐者 [ ディストーションフィールド(中) [ 抜き打ち [ 装填 [ 飛行 せんこうだん:まぶしい光と同様? モノクローム:ロクショウとの合体技 とっこう:ゲートガーディアンの水防壁・雷防壁・火防壁を突き破った=300以上のダメージ? ボソンジャンプ:魔法攻撃を回避できる 復讐者:PTに自分一人しか居ない場合、回避率が上昇する ディストーションフィールド(中):ダメージを軽減 抜き打ち:回避時に反撃、3hit 装填:さみだれうち使用後に発生、次ターンでのさみだれうちの威力が1.5倍程度に上昇 飛行:すいめんげりを回避 【ロクショウ】 ト、 |`ヽ、 | \ ヾ ヽ | ヽ ヾ \ ヾ \ ヾ |ヽ ヾ `l ヾ | ヽ ィ─-、 ヾ | `ヾ__/ ヽ ヽ \\ ヽ、ィ─── ゞ / ヽ \ `ヾ ヽ `ヾ ヽ\/ィ \ 、 /ヾ/ | |ヽ / ゝイ |`ヽヽ _ヾ // / /_/ `ヽ /ヽニゞ-イ´ `ヽ、`ヽ、 /|ヽィヽニニ// ̄ ̄ ̄\ `| |´_|_|ィ ̄ヽイ ,, ィヘ ヽ イ| /  ̄ヽ イ___/ ̄ ̄ / イ´ .ヽ| | ,_____/ |─、 .ィヽ___//ィゝミ/ ̄| |─、\/ |__ク  ̄ `ヽ ミ/○/ ,, イ´ゝ、 .`´ / `ゝ─く ̄ ̄`く○/ ヽイ´ ィ|´ヽ、_/-、 ヽ-、_冫-イ´ l´ ヽ-ィ_ |─イ /イ_ィ─´イ / / ィ-lィヽ、 / . ̄ヽイ _/、  ̄ヽ/ く_/ | | _イ ヽイヽ/]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]] 【ロクショウ】 むし系 【特技】 [ まじん斬り [ だいせつだん [ ミラクルソード [ しっぷう突き [ モノクローム 【特性】 [ 孤高の戦士 / PTに自分一人しか居ない場合、全能力が上昇する [ 横一線 [ 斬り払い [ 親藩一筋 モノクローム:黒百合との合体技 孤高の戦士:自分1人の時、全能力値が上昇 横一線:【斬撃】を1列に変更 親藩一筋:親藩への執念が力に変わる――会心の一撃! 【獅子堂ナミ】 '. ///////////// } ヾ ` 、//////V ´ V/////////// / \////── -- .._.〈/////////'´ `ー- .._ V/////// , ヽ‐-- ニ´_ V/////, /| イ i .ハ ` . ` ¨ . -‐ ¨ ‐-V////i / .i . / { .λ '. ` ´ .ト }////i ト、 i .'. .' i } ハ .i i.\ ヽ i ヽ .////.∧ |_ ', |、 .ヽ|ヽ / / __| i. i i .ヽ '. `¨//////∧ .|i 7ミぇミヽ、 へ. i /_/匕_.| .; .ハ .′ '. ヽ _.ヽ//////∧ .小 {i . . . .i|`ヾー- _,./ ,ム孑7 /,イ/ .' .|/ '. , -、, ´. \////.∧. | 乂少' /イ.λ_zソ .λ.,| ./ ' '. ./i ./.. -/ ,. .\///∧..| ´ { ` ///.| / ___ .i- 'ゝ_/. / / i `ー-/ト、 _ ヾ ./イ - |/´ ` ̄'´ |_ .. ィi/ // ∧ | ヾ /ゝ. ヾ.ー- .._,, ィ/ ' ` ‐ . | .{./{ { i '. .| ≧ 、/> ..  ̄ ´ . <イ==== ... ヽ /|ィ7'へ '. | .、 . . . . . . . . .` <//>.≦// `ヽ ` ー-- _]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]]] 【獅子堂ナミ】 【呪文】 [ マホカンタ [ メラゾーマ [ ドルモーア 【特技】 [ さそうおどり 【特性】 [ ひきこもり [ 魅了 [ 豆腐メンタル / 豆腐のように脆いメンタル、何かあるとすぐ砕け散る。 [ 踊りがとくい [ ドルマ系のコツ ひきこもり:PTに自分一人しか居ない場合、状態異常とステータス軽減を無効化する
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4771.html
『長門有希の密度』 『長門有希の夏色』 を踏まえています。 ======== 『長門有希の遭難』 九月、今年は無事に二学期を迎えることができた。 教室に入ると、七月以来会うことがなかった連中の懐かしい顔がちらほらと見える。夏練に明け暮れた運動部連中は真っ黒に日に焼け、それ以外の連中でも遊びまくったのか真っ黒に焼けているやつもいる。 「おはよ、キョン、久しぶり!」 「おいおい、三日前にも夏休み最後の虫取りとやらで一緒だったじゃないか」 「え、そうだっけ?」 ふん、何をすっとぼけたことを……。なんだかんだで夏休みの半分以上はSOS団の連中と顔を合わせていたかもしれない、何が、久しぶり、だよ。 「ま、いいじゃない」 そう言って窓の外を眺めるハルヒの前の席に俺は腰を下ろした。 そうだよな、今年の夏もいろいろあった。特に今年の夏は、情報統合思念体の働きにより、胸のサイズを二カップ分ほど増量した長門とプールや海で遊んだっけ。 俺は、机の上の程よく日に焼けた自分の腕を見ながら、長門と海に行った時のことを思い出していた。 ……………… ………… …… 妹と出かけた市民プールで、長門とたまたま出会ってから四・五日後のことだ。 長門からのメールに『海にでも行くか?』と返事をしたことをきっかけに、俺と長門は本当に二人で海に行くことになった。SOS団の公式イベントにしてしまえば、古泉がどこかのプライベートビーチでも手配してくれるに違いない。その方が俺的にも黙ってついていけばいいだけなので気は楽なのだが、なぜか長門とメールをやり取りしているうちに、普段いろいろと苦労しているはずの長門に少し息抜きさせてやりたい気になったので、公式イベントにすることはなく二人だけで行くことにした。 妹に見つからないように朝早くに家を出た俺は、長門と待ち合わせしている駅に向かった。 待ち合わせ時間の少し前に駅に到着した時には長門はすでにそこに立っていた。ノースリーブの白いブラウスに膝上丈のデニムのパンツ、少しつばの広い麦藁帽まで被っている。どこかのお嬢様というほどでもないが、清楚な感じがいかにも長門らしい。 「よお」 「……」 よかった、『遅い、罰金』とでも言われたら俺は立ち直れないところだったが、長門は普段どおりの無言で俺を迎えてくれた。 「じゃ、行くか」 そう言いながらふとブラウスの胸元が視野に入った。あいかわらず増量中らしい胸が存在を主張していて、俺は慌てて視線をそらした。 「……引き続き、有機情報因子は増量中」 長門は俺の方へ振り向くことなくそっとつぶやいた。 何回か電車を乗り継いで一時間以上かかって到着した海は、ほどほどに賑わっていた。さすがにここまで来ると、近くのメジャーな海水浴場のように芋の子を洗う状態ではないし、海の水もそこそこきれいだった。 先に水着に着替え終わった俺が、海の家の前で待っていると、長門がやってきた。先日プールで見たものと同じ水色のワンピースにパレオを巻いていて、白い花がついたビーチサンダルを履いて、手にはさっきの麦藁帽と小さなかばんを持っていた。すらりと伸びた手足の白さがまぶしいぐらいだ。 「んじゃ、パラソル借りるか」 海の家のパラソルは一日千円だった。うーむ、こんな傘ひとつで千円とはいい商売だね。その分、希望の場所まで持ってきて、砂にぐっと差し込むまではやってくれたが。 パラソルを立ててくれたバイトのにぃちゃんが去って言った後、持ってきたレジャーシートを広げて座り、俺はとりあえず一息ついた。隣に腰を下ろした長門は、もって来たかばんから文庫本を取り出して早速読み始めた。 うーん、まぁなんだ、せっかくここまで来たんだから、まずは海を見て、「わぁ、きれい」とか「気持ちいいわねー」とか言って欲しいところだが、長門には無理な注文であることは重々承知だ。 「なぁ、日焼け止め、いるか?」 長門は文庫本から顔を上げると、小さく首をかしげた。たぶん長門は日焼けなんかすることは無いんだろう。 「すまんが、背中とか塗って欲しいんだが」 俺は持ってきた日焼け止めクリームを自分の腕に塗りながら長門に話しかけた。実は子供の頃に一気に日に焼きすぎて、軽いやけど状態になったことがあって、それ以来、一日海にいるときには日焼け止めを塗るようになった。ただし、多少は黒く焼けたほうが健康的なので、SPF的にはゆるい目の日焼け止めにしている。 長門は文庫本を置くと、すっと右手を差し出してきたので、俺はその手のひらににょろーんと少しばかりクリームを出した。 「頼むわ」 後ろを向いた俺の背中に、長門の小さな手が当たる。この暑いのに相変わらず少しひんやりしていて心地よい。やがてその手が俺の背中を規則正しく動き出した。まず、肩口を横にクリームを伸ばすように動き、次に縦方向に上から下へと右側から左側へと順々に進んで行く。 見えないのでわからないが、長門のことだから、おそらく背中一面にミクロン単位で均等になるようにクリームを伸ばしてくれているんだろう。そんな気がする手の動きだった。 「ありがとう、長門」 俺が自分の胸あたりに塗っていると、いきなり長門の手がおへその辺りに回りこんできてクリームをすりこみ始めた。 「な、な、なっ、そ、そこはいいって……」 あまりの急な長門の攻撃で俺は度肝を抜かれてしまった。あわてて振り向くと、長門はキョトンとして首をかしげている。 「前は自分でやるからいいよ、ありがとう」 そういうと、長門はほとんどクリームが残っていない自分の手のひらを眺めて、 「わたしにも塗って欲しい」 と、ぽつりと言った。 「えっ、塗るの?」 コクンと肯く長門。 「そうか、わかった、ちょっと待ってくれよ」 俺は足回りとかの残りの部分への塗りこみをさっさと済ますと、長門の背後に回った。 長門のワンピースの水着はそれほど大きく背中が露出していないタイプだったので、俺はその小さな背中に必要と思われる量のクリームを手のひらに乗せて、そっと長門の背中に塗り始めた。 まるで作り物のように、きめ細やかでつるつるの肌だった。まぁ、宇宙人製の有機アンドロイドなんだから当然といえば当然か。 うちの妹に塗るときには、水着の隙間にも少し手を突っ込んで塗ってやるんだが、さすがに同級生の女子である長門にそこまでするのは気が引けるし、下手すりゃセクハラなので見える範囲だけにしておいた。 一通り背中に塗った後、ショートヘアの髪を少し上げて首筋あたりにも忘れずにクリームを塗りこんだ。 「よし、できたぞ」 「ありがとう」 その時、長門はパレオを少しはだけて足にクリームを塗っていた。こんな至近距離で長門の生足を見たのは初めてだが、背中同様につややかで輝いている。俺は見ないような振りをしながらしっかりと記憶に残しておいた。 その後は、少し海で泳いだり、パラソルの下に戻ってきて俺は睡眠、長門は読書とそれぞれに夏の一日を満喫していた。長門と二人だと、とてもまったりと過ごすことができる。ここにハルヒでもいれば、やれ競争だ、勝負だ、あれを食う、これを飲む、と忙しいことだったろう。 昼飯に海の家の思いっきりレトルトっぽいカレーを食った後、午後はしばらく二人してパラソルの下で昼寝をしていた。 結局一時間ほど寝ていただろうか、俺が目を覚ますと長門はすでに文庫本を読んでいた。俺はゆっくりと体を起こしつつ、長門に声をかけた。 「お、おはよう」 「……今は十四時前、『おはよう』は変」 「……そうか、それはすまない」 「いい」 こんなやり取りを楽しむことができるようになってどれぐらい経っただろうね。我ながら感心するよ、まったく。 「なぁ、カキ氷食うか?」 パラソルの下とはいえ炎天下で寝ていたのでのどが渇いた。 「食べる」 「買ってくるけど、何味がいい?」 長門は少し考えた後、 「イチゴミルク」 「わかった、ちょっと待っててくれ」 俺はそう言い残すと小銭入れを持って海の家に向かった。 ちょうどみんなカキ氷が欲しくなる時間帯だったようで、海の家のカキ氷には五人ばかりの行列ができていた。三つ、四つと買う人もいたので、俺がイチゴミルクとブルーハワイを手にするまで、七、八分は待たされただろうか。 あっという間に溶けていくカキ氷のカップを両手に一つずつ持って、長門の待つパラソルに向かっていくと、本を読む長門の前で、茶色い髪をしたヤツが二人ほどしゃがみこんで長門に何か話しかけていた。 お、ナンパだな。 こんな海岸でもナンパ野郎はいるようだ。しかし奴らは知らないだろうが相手が悪いぞ。あの情報統合思念体が銀河に誇るスーパー無口キャラをナンパで落とすとのは不可能に違いない。 俺は少し歩みを遅くして、どんなことになるのかそっと観察しながら近づいていった。 連中は、なにやら身振り手振りで長門に話しかけているようだが、長門は身動き一つせず、じっと不思議な生き物でも観察するような様子で目の前の二人を見つめていた。 やがて二人はあきらめたように、向こうの方を指差して去って行こうとしたが、その時、長門も立ち上がって、ついて行こうとしたように見えた。 お、おい、長門、お前……! あの長門がナンパ野郎の誘いに乗ったのか!? びっくりした俺は慌てて駆け寄った。 「長門!」 俺の声に気づいて振り向いた長門は、えっ、というような表情で俺のことを見つめると、 「おかえり」 と、言って立ち止まった。俺は、できるだけ冷静を装った。 「どこ行くの?」 「……あなたが遅いので様子を見に行こうと思った」 長門はごく当たり前のように答えた。 あらためて周囲を見渡すと、さっきの二人組はもう次の獲物を求めて遠ざかって行くところだった。どうやら、俺の早とちりだったようだ。やはり長門は長門だ、安心した。 すっかり溶けて水っぽくなったカキ氷をかきこみながら、俺は長門にさっきの出来事について尋ねた。 「連中、なんて言ってきたんだ?」 「『ひとり?』と聞いてきたので、『そう』、と答えると彼らはいろいろ話し始めた」 「おいおい、今日は俺と一緒に来たじゃないか」 「質問された時点ではわたしは一人でいた」 「う……」 「彼らが私に話した内容は、どれをとっても論旨が不明瞭で何を主張したいのかよくわからなかった」 あははは、やはりあのナンパ野郎には荷が重すぎたようだな。長門をナンパするつもりなら、論理的に何一つ矛盾することない言い回しを用意しないといけないようだ。 それにしても長門はあの状況を正しく理解しているのか俺はちょっと不安になったので確認してみることにした。 「お前、あいつらにナンパされたんだぜ」 「今日は風も波も穏やか。彼らが船に乗る予定があったのかは不明だが、乗ったとしても海上で遭難する恐れは低いと思われる」 ………… えっと、長門さん、このベタな展開を踏まえて俺にどうしろと言うのでしょうか。俺はどのようなアクションを取ればよろしいのでしょうか? 「その難破とナンパが違うだろ!」と突っ込むべきなのか、素直にナンパの定義についてレクチャーするべきなのか、俺はすっかり返答に窮してしまった。 戸惑う俺をよそに、長門はイチゴミルクのカキ氷を飲み干すと、うーんと一つ背伸びをして青空を見上げていた。ナンパ野郎を引き寄せる魔力を備えた二カップ増量した胸が水色の水着の下で少し窮屈そうに感じられた。 夕方四時近くになると、海の家のおばちゃん達は早々に片づけを始めた。確かにすっかりパラソルの数も減っている。海水浴シーズンも終盤だし、今年の夏の分はもう十分稼いだと見えて、今日はもう店じまいするらしい。 俺たちもなんだかんだで十二分に海を堪能することができたので、パラソルをたたみ、帰ることにした。 帰りの電車では運よくクロスシートの席に二人で並んで座ることができた。俺は窓側に長門を座らせると、網棚の上に荷物と麦藁帽を乗せて、発車の時間を待つ間に缶コーヒーを二本買ってきた。 電車が動き出すまでの間、俺は缶コーヒーを飲みながら、今日一日でうっすらと赤く日に焼けた腕を見ていた。日焼け止めのおかげで、程よく焼けているようだ。 「少し焼けたかな」 「わたしは……」 そういって長門は自らの腕を動かしてチェックしていたが、どこをどう見ても相変わらず白い肌のままだった。 「わたしも少し日に焼けたほうがいい?」 長門は両手で大事そうに缶コーヒーを持ちながら、俺のことを覗き込むようにして見上げている。俺は即答した。 「いや、日に焼かない白い肌の方がいいよ」 長門は一つ瞬きをすると小さくコクンとうなずいて缶コーヒーを口にした。 そうだよ、長門、お前はその名前のように白い肌が似合うんだ、間違いない。 しばらくすると電車が動き出した。海岸線を走る電車の窓からは、遠く水平線の向こうに沈む夕陽がとてもきれいに見えていた。窓の外を眺める長門の横顔越しに刻一刻と沈んでくオレンジ色の太陽を見ていると、長門が俺の方に振り返った。 「きれい」 「そうだな」 その後も俺たちは太陽が沈みきるまで黙って窓の外を見つめていた。 …… ………… ……………… 俺が、ささやかな夏の思い出に浸っているうちに、あっという間に放課後になった。始業式だというのに掃除当番に当たってぶつぶつ文句を言っているハルヒを残して、俺は一足先に部室へと向かった。 念のためにノックしたあと部室の扉を開けると、そこには長門がいつものように窓辺で本を読んでいるだけだった。 「よお、元気だったか」 そう言いながら定位置のパイプ椅子に腰を下ろして制服姿の長門に目を向けると、すぐにある一点に気付いた。 あれっ、ひょっとして、元に戻ったのか? 制服の胸元が夏休み中の増量サイズと比べるとすっかり元通りになっているように見えた。二カップ分が一カップ分かひょっとすると元のサイズまで戻っているかもしれない。 そんな俺の視線に気づいたのか、本を閉じた長門は静かに話し始めた。 「昨日、情報統合思念体に要請し、胸の有機情報因子の量を減らしてもらった。あの胸の増量はあなたの要望に基づくもので試験的・限定的なもの」 ほう、やっぱりそうだったのか。しかし、俺の要望というのはちょっと違うと前も言ったと思うのだが……。 「あのまま増量し続けることも検討したが、先日のように、どこかの海に出かけた時に海上で遭難する可能性が高いと思われるため、少し減量することにした。どう?」 「…………」 こいつ、またまじめな顔でこんなことを言ってやがる。しかし今度は確実に状況を理解した上で言っているな。百パーセント確信犯的な回答だ。じゃあ、俺もその話に乗っておこうか。 「万が一でもお前が遭難するようなことがあったら、俺が何としてでも助けに行ってやるよ」 俺の言葉を聞くと、長門は少し安心したように小さく肯いた。 まだまだ残暑は厳しいが、部室の中には少しだけ涼しげな風が吹き込んで、俺を見つめる長門のショートカットの髪を、白い頬をそっとなでるように揺らしている。 そうだな、今年もいい夏だった。 Fin.
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2548.html
長門有希の憂鬱Ⅰ 二 章 目の前に、口をあんぐり開けたおっさんがいた。 よれよれの服を着てベンチに座っている。 「あんた……今、そこに現れなかった?」前歯が一本欠けている。 「え……ええ」 「ワシゃずっと見てたんだが。あんた、そこに、いきなり現れた」 「そうですか……?たいしたことじゃありません」人がいきなり出現したなんて全然たいしたことだろうよ。 ホームレスっぽいおっさんは俺をまじまじと見つめていた。 やがて飽きたのか、目を閉じ、うとうとしはじめた。 ここはいったいどこだろうか。俺は目をこすって周りを見た。 ほっぺたをパシパシと叩いてみた。これは夢じゃない。人が大勢歩いてる。閉鎖空間でもないようだ。 どこからか列車の発車を告げるアナウンスが聞こえた。どうやら駅のコンコースらしい。 駅の名前は見慣れない、俺の知らない地名だった。 さて、これからどうするかだが。長門を探さないといけない。 俺は携帯を取り出して長門にかけた。話中の音が鳴りっぱなしで、画面を見ると圏外になっている。 「こんな繁華街で圏外か!?」 しかたないので公衆電話を探した。 ── おかけになった電話番号は、現在使用されておりません。 なんてこった。そんなはずがあるか。長門が引っ越したりするもんか。 携帯は登録されていない状態だと圏外表示になるのだということを後になって知ったのだが、 思えば、安易に電話なんかかけて簡単に見つかるだろうと思っていた俺も浅はかだった。 おかしいと思って公衆電話から自分の携帯にかけてみて、やっとそれが分かった。 ところで今はいつだ。俺はおっさんに声をかけようとして、その向こうにキオスクを見つけた。 新聞を買いに行った。ふつーによく知られている全国紙だ。 日付は合っている。俺はてっきり七月七日にでも飛ばされたのかと思っていたが。 まあ気温がそうじゃないことはすぐに肌で分かった。 時間は……と。噴水の前にあるでかい時計が午前十時を指していた。 俺の腕時計はまだ深夜二時だった。時計を十時に合わせた。 俺は切符売り場に向かった。ここがどこであれ、いったん地元に戻らないとな。 自動券売機のコーナーでちょっと立ち止まった。JRの路線図に俺の地元が載ってない。 そんなに遠方にいるのか俺は。飛行機で行ったほうが早いかもしれないな。 俺はみどりの窓口で行き先を告げた。 「お客様、ええと、そういう名前の駅はないようなんですが。何県になります?」 窓口の駅員が怪訝な顔をしてこっちを見た。 俺は地元の県名を告げた。 「あの、その県にはおっしゃる駅はないんですが……。路線名は分かります?」 ちょっと待った。なにか妙な雰囲気だぞ。いくらなんでも駅員が知らないなんてことはあるまい。 「すいません、ちょっと調べてきます」俺はあたふたとその場を去った。 路線を地図で調べたいんだが、どこかに本屋でもないだろうか。 駅を出て数分うろうろしているとネットカフェの看板が目に入った。 ちょうどいい。眠気覚ましにコーヒーでも飲もう。 ネットカフェに入り、チケットを買ってパソコンの前に座った。困ったときのぐーぐる様である。 GoogleMapで駅と地名を検索してみた。存在しない。ありえん……。 県名までは出てくるが俺の地元がない。地図上では別の名前になっていた。 もしかして最近流行の市町村合併か?いきなりそれはないよな。 それから知っている地名、建物、百貨店なんかを手当たり次第に検索したがいっこうに出てこない。 北高がない。いくらなんでも県立高校がなくなるなんてことはないだろう。だが存在しない。 俺は思い当たるもので検索できそうな単語を必死に入力した。 その影でなにかがささやく。この状況はもっと根本的なところでおかしい、と。 地元がないということは、つまりハルヒはじめSOS団のメンツ全員がいない。 おそらく俺の家もなく家族もいないということだろう。 前みたいに、少なくとも別の人生を歩んでいるあいつらがいてくれたら、長門もそこにいるかもしれないのだが。 その希望もあっけなく消えてしまうだろうと気が付いた。 暴走したときの長門を思い出して背筋が寒くなった。 日本の国土を書き換えるなんて、まさか長門……お前がやっちまったのか。 俺はその場で凍りついたまま動かなかった。 ハルヒといえば、そうだ。あの文庫本だ。 ずっと手に持っていたはずなんだが、どこにやったんだろう。 入れたつもりはないんだが、バックパックの中にあった。 「手がかりはこれだけか……」 俺はパラパラとめくってみた。さっきやったように読み返してみたが、今度は何も起らない。 初版の日付が未来にずれているだけで、ほかはいたって普通のラノベだ。 俺の知ってるやつらが出演している以外は。 しばらく腕を組んで考え込んだが、どこから考えればいいのかまったく分からない。 冷めたコーヒーを飲み干して、俺はバックパックをかついだ。 ウェブブラウザを閉じる前に、俺はやっと事件の糸口を掴む単語を入力した。 これを最初に気が付かなかったのは、やっぱり俺は推理小説やミステリーには向いてないからだと思う。 “谷川流。たにがわながる、ライトノベル作家。兵庫県在住” 真っ暗闇のなか、はるか遠くにかすかに小さな光が見えた。 一時間後、俺は新大阪行きの新幹線に乗っていた。 高速で走る車両の心地よい揺れを感じながら、いくつか分かったことを考えていた。 日時はずれていない。俺のいた日付と一致する。 だが俺の住んでいた町がない。つまり家も、北高も、SOS団のメンツもいない。 ひょっとすると日本のどこかで、俺とは接点のないまったく別の人生を歩いているあいつらがいるのかもしれないが。 この世界に存在する谷川とかいう作家が唯一の手がかりだ。接触してみれば何か分かるかもしれない。 まさか自宅に押しかけるわけにはいかないが、ちょうど書店でサイン会をやる予定らしい。 俺は自分の素性を明かすかどうか迷ったが、その結果がどうなるかは予想できないので、 とりあえず今は考えないことにした。 眠気に誘われてうとうとしはじめた。考えてみればあまり寝ていない。 夢うつつの中、俺は数時間前、部室であったことを思い返していた。 俺は深々と冷える部室で椅子に座り、(念のため長門が座っていた椅子を窓際に持っていってから)文庫本を開いた。 内容は古泉が言っていたとおり、俺が書いた風な文体で、俺の視点から見たSOS団の懲りない面々の話だった。 ページをめくる手がやや震えていた。 俺が言うのも変だが、話としてはなかなかに笑える。 古泉が実はアレだったとか、ピンチで鶴屋さんに助けられるとか、ハルヒの意外な一面とか。 まあフィクション、ノンフィクションは別として。 というかSOS団みたいな超こっけいな集団だから、なにを書いてもネタになるだろう。 確かに登場人物には、俺の知ってるメンツは出てくる。端役とも言える俺の妹とシャミセンすら出てくる。 だがエピソードは作られた話だ。季節が時間的にずっと先の話になっているし、こんなネタはまずあり得ない。 これはつまり、俺の知らないSOS団の話じゃないか。そうとも思える。 ページをめくる手が、本の半ばにかかった頃、次のエピソードに移った。 その冒頭を読んだ瞬間、俺は目を疑った。 “「不可解な現象が起こりました」 部室に入るなり古泉がしかめ面をして見せた。” 同じセリフを数日前に聞いた。同じ場所で。 さらに長門が消えて、喜緑さんがやってきて、長門に何があったのかと尋ねる。 俺が見たのと同じ行程がそこにあった。 で、その二日後に俺は長門の夢を見て、古泉に電話して……部室に来て。 文庫を開いている俺がいる。 「俺が読んでいる本を俺が読んでいる!」いやまて、その俺を読んでる俺が読んでいるわけで、 ああっもう無駄にややこしい。 これじゃまるで二枚の鏡に写る自分じゃないか。 こんな頭痛しそうな無限ループの設定を考えたのはいったい誰だ。 そこで俺が次のページをめくると、 “そこで俺が次のページをめくると、そこで俺が次のページをめくると、そこで俺が次のページをめくると、” めくると、そこにはただ、挿絵でナスカの地上絵にあったような象形文字が。 いつだったかハルヒと俺が東中のグラウンドに描いた、あれだった。 これの意味は確か、「わたしは、ここにいる」 その言葉をなにげなく口に出した、次の瞬間。周りがぼうっと明るくなった。 俺だけが光の球の中にいるようだ。 「長門……もしかしてこれか?」お前が遭遇したのはこれなのか。 周囲は音もなく静かで、塵ひとつ舞わない。長門が消えたときのような、嵐のような衝撃は起こらなかった。 ただ、なぜか俺以外の時間がゆるやかに巡っているような感覚はあった。 部室の様子がホワイトアウトし、よくは見えないが別の風景が見えてきた。 数十秒か数分間か、意外に長かったその白い光も徐々に消えた。 喧騒のノイズが一気にボリュームを上げて耳に入ってきた。俺は人ごみのなかにいた。 目の前に、口をぽかんと開けたおっさんが座っていた。 そこで目が覚めた。時計を見ると、最初の駅を出てまだ十分しか経っていない。 新大阪に着くまで、もう一眠りすることにした。 新大阪で降りて在来線に乗り換え、大阪駅まで行った。 数時間座りつづけていた俺は腰を伸ばした。 駅のホームに降り立って、なぜだか分からないが安堵に似たものを感じた。 喧騒と排気ガスと適度に汚れた空気がそこに生きる人たちの存在を感じさせる。 谷川氏のサイン会は明日だ。それまでどうやって時間を潰すか。 とりあえず書店の下見でもしておくか。俺は地下街を通って梅田駅に向かった。 ── 谷川流先生サイン会 午後二時~。あらかじめレジにて整理券をお求めください 店頭のイベントパネルにそう書かれてあった。 「すいません、明日のサイン会の整理券ってまだあります?」 「えっと、もう残ってなかったんじゃ……。 あ、お客様、一枚だけありますわ」 「ほんとですか、くださいください」 「最後の一枚です」 レジのお姉さんのスマイルのまわりに白く靄がかかっているようで、俺には天使のように見えた。 幸先がいい。運が俺に味方しているようだ。 「漫画か小説をお買い求めいただけますか」 「ハ、ハイッ」俺は喜々として言った。もう何冊でも買って差し上げますよ。 そこにあったものは……。 「な、なんじゃこりゃ!!」 店員と、その場にいた客の全員がこっちを見た。 平積みのテーブルに、小説、漫画、DVD、販促用のノボリ、ポップ、ポスター、すべてにハルヒがいた。 書店の一角を埋め尽くす、涼宮ハルヒコーナーとでも表現しようか。 そのときの全員に見られた俺の唖然とした表情は、まったく名状しがたいものだっただろう。 「お客様、どうかなさいました?」 「え、いえいえなんでもないです。すいません」 古泉、あのときお前の言ったことは正しかったかもしれん。こりゃまさに神扱いだ。 俺はとりあえず小説を片っ端から一冊ずつ重ねて、ろくに数えもせずレジに向かった。 俺は店員に尋ねた。 「あの……すいません、涼宮ハルヒってどれくらい知られてるんですか」 「ご存知ありません?去年アニメで大ブレイクして、おかげさまで在庫が足りないくらいですよ。 小説の発行部数が二百七十万部とか聞いてます」 「……」 これはどういう現象なんだ。ハルヒ、お前、いったいなにやらかしたんだ。 考えろ俺、この世界には俺の住んでる地元がない。なのにハルヒは存在する。これはどういうこと? 俺の世界のハルヒとこっちの世界のハルヒとは根本的に存在が違う。 アニメとか小説の類ってのは、つまり、こっちでは“架空の人物”だ。 こっちのは作られた人格で、たぶんそこにいる俺もそうだ。長門も朝比奈さんも、古泉も。 喜緑さん、あなたの言っていた未知の世界ってこれだったんですか。 この謎を解くにはどうしても谷川氏に会わなくてはならない。それが鍵だ。 俺は買い占めたハルヒ小説をバックパックに無理やり押し込んで書店を出た。 レジのお姉さんに、ここから近いネットカフェを教えてもらった。 もう一度振り返ってラノベ、いやハルヒコーナーを見たが。 どう見ても違和感を感じるくらいに派手だ。 このありさま、ハルヒのやつ、まさか他所様の世界にまでちょっかい出したんじゃないだろうな。 思えば、この世界は俺のいた世界とはなにか空気が違う。 化学的に言うO2やCO2ではなくて、雰囲気というか。 曖昧だがなにかこう安心できない、殺伐としている、といったほうがいいだろうか。 俺のいた世界ではこの感覚はなかった。どこへ行こうが、自分がそこにいるという感じがあった。 俺はこっちに来て自分の希薄さを感じている。 そんなことをあれやこれや考えつつ歩道を歩いていると、 百貨店の前を通り過ぎてからなにかがひっかかった。 目の端でずっと妙な既視感を感じていたのだが、ふと足を止めて後ろを振り返った。 この風景は前にも見たことがある。 そうだ、忘れもしない閉鎖空間。いや、閉鎖空間の入り口というべきか。 朝倉が消えた次の日、古泉にタクシーに乗せられてどり着いたのが、ここだ。 若干風景が違うような気はするが。建物の形、配置は似ている。 あのとき目に焼きついた映像は忘れもしない。 今、俺の目に映っている風景、これにどんな意味があるのかしばらく考えていた。 俺はなにかに押されるように横断歩道を歩き出した。 ここだ。ここで古泉が立ち止まり、こう言った。 ── ここまでお連れして言うのも何ですが、今ならまだ引き返せますよ。 すぐ連れ戻してくれ、今の俺ならそう言いたい。 青の信号が点滅をはじめる。俺は目を閉じて数歩を進んだ。 ……なにも、起らない。クラクションを鳴らされて俺は歩道まで走った。 なにやってんだ俺は。ここがもし閉鎖空間の入り口だったとしても、俺は超能力者じゃない。 だが俺の中にはなにかあきらめきれないものがあった。 ここと向こうの世界に、なにかつながりのようなものが欲しかった。 それから三度、同じ横断歩道をいったり来たりして、結局はあきらめた。 あきらめた後も、しばらく歩道でたたずんでいた。 知っている風景に、やっとひとつめぐり会えた。それが異空間への入り口だなんて、あまりに皮肉すぎる。 やっと出合った知った風景。歩きながら何度も振り返りつつ、俺はネットカフェに向かった。 チケットを買ってパソコンの前に座った。客は少ない。 俺はバックパックからハルヒの小説を取り出した。数えてみたが十巻もある。 憂鬱、溜息、退屈、消失……。しっかしまあ、SOS団によくこれだけのネタがあったもんだ。 憂鬱から読んでみたが、どれも俺が知ってることばかりだ。当然っちゃ当然、俺が出てるんだからな。 ハルヒとの出会いも、SOS団設立のいきさつも俺の記憶どおりだ。すべて一致する。 一致するどころか俺の口調やら性格やらを完璧に表現している。 どうやったらこんなことが可能なんだろう。情報統合思念体みたいなやつが二十四時間監視でもしてたのか。 だが昨日読んだ十三巻だけは別だった。これの内容はまったく記憶にない。 俺はウェブブラウザで、困ったときのぐーぐる様を呼び出して、十三巻のタイトルで検索してみた。 検索結果 0件。やっぱりな。まだ存在するはずがない本のタイトルが出てくるわけはない。 俺はハルヒの名前を入力してみた。数十件くらいは出てくるだろう。 ── 涼宮ハルヒ の検索結果 約3,720,000件 さ……さん……ありかよ!思わず声に出してそう叫びそうになった。ハルヒだけで三百七十二万件だと!?。 あいつはこの情報社会を征服するつもりか。 ── 長門有希 の検索結果 約947,000件 ── 朝比奈みくる の検索結果 約677,000件 ── 古泉一樹 の検索結果 約152,000件 俺はもう笑いが止まらなかった。お前ら、こんなところにいやがったのかよ。 俺はそれで安堵したというか、あきらめの境地というか。みるみる顔がゆるんでいく。 すべては妄想の産物で、現実の場所を探していたのは間違いだったわけか。 俺は我に返った。長門は現実にいるはずだ。この九十四万件余の中に必ずいるはずだ。 いたとしても探し出すのは至難の業にちがいないが。 長門有希とは-はてなダイアリー、長門有希フィギュア、長門有希の百冊、長門有希同盟?なんじゃこりゃ。 無数のうちの五十件目くらいだったか、ひとつだけ気になるサイトがあった。 ── 長門有希の中央図書館 図書館か。外観の写真が載っていた。俺と長門が訪れたアレに似ている。 もし長門が俺を待っているとしたら、図書館周辺になにかを残しているかもしれない。十分考えられる。 この図書館どこにあるんだ?……西宮市か。 なにかが閃いた。俺はバックパックを担いですぐさま店を飛び出した。 コーヒーもネカフェのチケットもどうでもいい。 今すぐ、図書館へ。そこになにかがあるはず。長門はそこにいる。頼むからいてくれ。 俺は梅田から電車に飛び乗った。行き先は西宮。路線図を辿ると西宮北口と書いてある。 「これ……あの北口駅か?」 俺の知ってる鉄道会社とは名前が若干違うが、車両も知っている、このアナウンスも耳慣れている。 なんとなくではあるが、見慣れている気がする風景が車窓を流れていく。 俺は狂喜した。俺の地元はすぐそこだ、確信があった。 「北口だ!北口駅じゃないか!」 改札を出た俺はまるで、独裁政権下の圧制から亡命してきて飛行機から今降り立った市民のように 地面にキスでもしそうな勢いだった。消えたわけじゃない、名前が違うだけで実在するんだ。 目の前に広がるこの空間、ここでSOS団のメンツが集合し、喫茶店に入り、遅れて来た俺が毎回勘定を払う。 「遅い!罰金!」 そこにハルヒがいて、相変わらず制服しか着てこない長門がいて、美しく着飾った朝比奈さんがいれば、 いつもの俺の生活圏じゃないか。 まあ爽やかスマイルの古泉はどうでもいいんだが、いてくれたほうがいい。 駅前の小さな書店で市内の地図を買った。 縮尺が小さくていまいち分かりづらいが、地名を知る程度なら十分だ。 北口駅、甲陽園駅、路線名と駅名は違うが確かにある。 つまり、俺の知ってる人物はいないが、施設や建築物はある、ということになるな。 俺はこの空間のどこまでが俺の現実と一致しているのかを確かめることにした。 駅前公園から北へ数分歩く。果たしてそれは、あった。ドリーム! 忘れることがあってたまろうか。厳しい小遣いのなかからこの店につぎ込んだ飲食費は相当なものだ。 そういえばここで喜緑さんがバイトしてたこともあったな。とりあえずいつものように俺はドアをくぐった。 内装は若干違う気がするが、同じ焙煎コーヒーの匂いがして少し安心した。 いつものテーブルにつくと店員がやってきた。 顔をまじまじと見てみるが、俺には見覚えがない。 「いらっしゃいませ。お客さん、もしかしてハルヒ見ていらしたんですか」 俺が手にしている文庫本を見ながら言った。 「え…ええまあ」いつも来慣れていて馴染みの客のつもりだったが、今回は冷や汗ものだった。 俺がキョン本人だなんてとても言えない。それに俺はアニオタでもないから。 そう。この席だ。SOS団一同、市内不思議パトロールと称してただその辺を練り歩いただけの一日。 結局ハルヒが何をしたかったのか、俺にも分からん。 一度は朝比奈さんと既定事項作りに奔走したが、あれはハルヒの知るところではないはず。 コーヒーをすすりながらそんなことを思い出していた。味も香りも同じだった。 とりあえず閉鎖空間の入り口と、北口駅と、この喫茶店。 若干風景が違うものの、知っている場所が存在することは分かった。俺の既定事項はまだあるはずだ。 そうだ。図書館に行こう。 時計を見ると四時を回っていた。あまりゆっくりもしていられない。 西宮中央図書館、ウェブサイトにはそうあった。 名前は似ているが果たして俺の知るままで存在するのか。 北口駅から南西に向かって歩く。 このコース、第一回市内不思議パトロールのとき、長門と歩いた道だ。 しかし考えてみれば、市立図書館といえば北口駅のすぐ真北のビルに支所があるのに、 なんでわざわざ中央図書館まで歩いたりしたのか、我ながら不思議だ。 歩いていくと、ところどころで知っている建物は見かけた。ジロジロと見るのはまずいのでさりげなく通り過ぎた。 俺は気付いた。似ている、と、まったく同じ、とは違う。 この、部分的に似ていてその他は違うという地理、街の景観はいったい何なのだろうか。 誰がこれを作ったのだろう?。長門なら納得のいく答えを持っているかもしれない。 図書館に着いたのは五時過ぎていた。 ここから北に十分くらいのところに駅があったのだが、途中になにかヒントでもないかと思い、延々ここまで歩いた。 俺の知る図書館と外観は同じだ。中に入ると暖房の効いた部屋が俺を迎えた。人は空いていた。 さてこれからどうしたものかと、周りを見回した。長門らしき人影がいないかと、 書架をうろうろしてみたが、まったく見当たらない。歩き疲れた俺は椅子に腰かけた。 あのとき、長門に貸し出しカードを作ってやったんだったな。 俺は立ち上がって、あのときと同じ、“学校を出よう”を探した。 それから居眠りをし、マナーモードにしていた携帯に起こされたんだ。 ポケットから携帯を取り出してみたが、圏外表示は変わらない。 “学校を出よう”は離れたところで見つけた。知っているはずの文庫小説のコーナーは別の棚になっていた。 記憶喪失の患者が、記憶を取り戻しつつある状態になると、それを失う前にやっていた同じ行程を辿る。 今の俺はまさにそんな感じだった。 これから何をすればいいのか考えていなかった。考えるより先に足が進んでしまう俺の悪い癖だ。 俺は出入りする人をじっと観察することにした。万が一、知っている顔が通るかもしれない。 この時期、受験が近いからか学生が多いようだ。 腕組みをしてしばらく眺めていたのだが、ついうとうとし、気が付くとそろそろ閉館時間が来ていた。 携帯には起こされなかった。 俺はバックパックを背負って、持っていた文庫を棚に返しに行こうとした。 文庫小説の棚の前に、きゃしゃなセーラー服の後姿を見た。 「な、長門!」つい叫んでしまった。 肩に手を触れてしまい、そして振り返ったその子は、メガネをかけ、短髪で風貌は似ているのだが長門ではなかった。 「あ……すいません。人違いでした」 女子高生は顔に縦線を入れて俺を見ていた。ちゃうって、俺アニオタじゃないって。 俺は顔から火が出そうになり、そそくさとその場を逃げ出した。 俺は寝ぼけていたんだと思う。 閉館のアナウンスが流れた。時計の針が七時を指した。俺は図書館を後にした。 長門、俺がやってることは間違ってないよなぁ?なあ? 図書館で見知らぬ女子高生に話し掛けるなんて、どう見てもナンパです。本当に。 俺は間違っていないんだと、無理にでも自分に言い聞かせつつ図書館を後にした。 これで既定事項は四つ目か。 来た道を戻らず、まっすぐ北に向かって歩き、夙川駅までたどり着いた。 ここまで来たんだ、どうせなら本拠地に行こう。 そう、甲陽園駅に。その名前からして、どう考えても光陽園駅じゃないか。 俺は電車に乗り込んだ。下り線はもう帰りの通勤客でいっぱいだ。 車窓の外はもう日が暮れていた。俺は見慣れた風景が見えないかとじっと外を見ていた。 桜並木がある川沿いの公園は分かった。 朝比奈さんからトンデモ告白をされて、ハルヒが時期はずれに花を咲かせてしまったあの公園の桜だ。 甲陽園駅に着くと、登り電車になり、学生の姿をちらほら見かけた。 大阪駅、西宮北口、甲陽園駅と辿るにつれて、俺の郷愁がうずく。少しずつ核心に近づいている気がする。 だがそいつらのは見慣れない制服だった。 駅を出て坂道を登る。 そう、俺が目指しているのは長門の住む、もしくは住んでいるはずのマンションだった。 ちゃんとある。マンションが見えたが、若干違う気がする。玄関口は似ているが。 四年前の七夕の日、そのときの長門は初対面の俺と朝比奈さんを迎え入れてくれた。 誰も頼れる人がいない、見知らぬ場所(厳密には時間だが)で長門に会ったとき、安堵の溜息が出たものだ。 正直、長門がそこにいるとは思ってはいなかったが、俺は一縷の望みにかけた。 俺はオートロックのインターホンで七〇八を押した。この馴染みの番号を押すのは何度目だろう。 「宅急便です、斉藤さんちはこちらでよろしいでしょうか」 スピーカーから聞こえてきた怒鳴り声は、長門の声とは似ても似つかないものだった。 「ちょいとアンタ!またオタクの人!?いいかげんにしないと警察呼ぶわよ!」 「スイマセン!」 なんだなんだ、宅急便が嫌いなのか?俺はそそくさと退散した。 アニメオタクとは人聞きの悪い。 えーとつまり、長門がここに住んでると思ってるやつがいて、 ここの住民はそいつらのいたずらに迷惑しているということか?。 ここのインターホンにはカメラが付いてたんだった。うかつだったな。 せめて配達員らいし帽子でも被るべきだった。 さっき怒鳴られた声で一気に疲れが出た気がする。腹も減った。とりあえず大阪駅に戻ろう。 いつもの俺ならこの時間に登りの電車に乗ることはないんだが、下校する学生に混じって梅田駅を目指した。 俺の北高はこっちではどうなってるのか確かめたいところだったが、今日は撤退することにした。時間も時間だ。 それに今晩どこに泊まるか考えないといけない。 午前中に行った二十四時間営業のネットカフェで深夜パックを買おうかと思っていたのだが、甘かった。 「お客さん、学生さんよね。ごめんねー、十八才未満の人、十時以降はだめなんだよねぇ」 「あ、そうなんですか……。あの、実は今日行くところがなくて……。一晩だけお願いできませんか」 俺はすがるような目でレジのおばちゃんを見つめてみた。 「ごめんねぇ。最近、青少年条例とやらが厳しくてね。夜たまにおまわりさんが巡回してくるのよね。 未成年を泊めたことがバレたら営業停止させられちまう」 俺のために営業停止に追い込むわけにはいかない。これ以上は頼めなかった。 となると、あとはまっとうな宿泊施設か。まっとうと言ってもそんな高い料金は払えない。 風呂に入るのもいいかと思い、カプセルホテルに入ってみた。 「あー、お客さん身分証とかある?十八才未満はだめなんだわ。ジョウレイよジョウレイ」 「はぁ。そうなんですか」ここもだめか。 残るは観光ホテルだが、この辺の高級ホテルは一泊二万くらいはするだろう。そんな金額とても払えない。 こうなりゃ野宿するしかないか。この寒風吹きすさぶ師走にか?。 二十四時間のファミレスとかで時間を潰してもかまわないんだが、それこそ補導されてしまう。 そんなことになったら身元を証明するどころか、病院送りにされるのがオチだ。 アッチの世界から来ました、なんてとても言えない。 駅ビルのハンバーガーショップで晩飯を食いながら、これからのことを考えた。 もしこのまま長門が見つからず、向こうの世界に帰ることもできなかったら。 簡単にあきらめるわけにはいかないが、これが長期戦になるんだとしたら、 とりあえず食っていくことを考えないといけないかもしれない。しかし住むところもないしな。 ドヤ街でしばらく寝泊りして、学生OKなバイト先を探して、なんて柄にもないことを考えていた。 俺はMサイズのコーラをズルズルと飲み干して店を出た。 駅周辺をあてもなく歩いていると、ガード下に段ボールのかたまりを見つけた。 ホームレスが住んでいるらしい。あれ、借りようかな。 ちょっと躊躇したが、贅沢は言ってられない。 俺は一度、駅ビルに戻った。荷物を全部コインロッカーに預け、身軽にしておく。 財布から札を抜き取り、二~三千円だけ持っておく。 手土産にコンビニで酒とつまみを調達したいんだが、未成年の俺に売ってくれるだろうか。 客が多いコンビニを選んで入った。缶ビールを数本、袋のつまみ、弁当をカゴに入れてレジに並んだ。 店員はチラと俺を見たが何も言わなかった。 どう見ても十八才未満なのにな。汚れた格好してたから見逃してくれたのか。 うす暗いガード下に行った。 電車がひっきりなしにガタゴトと音を立てている。こんなとこでよく眠れるよな。 ホームレスは数人いるようだ。リヤカーに畳んだ段ボール箱が山積みしてあった。 あれを一枚だけ分けてもらおう。 俺は多少はマシそうな格好をしているホームレスのおっさんに話し掛けた。 「あの、スイマセン」 ちょっと怖かったが、ここで寝るにはどうしてもホームレスの許可がいりそうな気がした。 「なんだぁ役人か!ワシはここから動かねーぞ!」 「いえ、違うんです。段ボールを一晩貸してもらえないかと」 「ワシの家を貸せだと?どこの馬の骨か知らんテメェに貸すような──」 「差し入れもあります」俺は缶ビールを差し出した。 それをまじまじと見て、おっさんは考え直したようだ。 「ガハハハ。まあ座れ。あんちゃん、家出か」おっさんは歯の抜けた口を大きく開けながら笑った。 「いえ。家に帰りたいんですが、今日は泊まるところがなくて」 「そうかあ。ま、人生にはそういう日もあるわなぁ。とりあえず飲め」 「はい。いただきます」俺は正座して自分が買ってきたビールを飲んだ。 ほんとは飲めないんだが、付き合っていたほうがよさそうな雰囲気なのと、 正直酔っ払いたい気分でもあった。 「あんちゃん、正座なんかしねーで足くずせよ。ミカーサ、スカーサって言うだろ」 このおっさん南米人か。 おっさんとぼそぼそと話しているとまわりのホームレスが集まってきた。 「サンちゃん、珍しくお客さんかい。もしかして息子かい?」 「子供がいたなんて初耳たぜサンキチ、おめー隅におけねーな」 「女に縁のないワシに息子がおるわけなかろうがバカタレ」おっさんは唾を飛ばして怒鳴った。 「で、あんちゃん、親父と喧嘩でもしたんか?」おっさんは俺の肩を叩いた。 「いえ、そういうわけじゃないんですが」 「ワシなんかよ、十五歳で家を飛び出してそれっきりよ。あ、一度だけ帰ったかな。妹の結婚式に。 そんときゃ親戚一同からどやされてよ。何しに帰ってきやがった!よ。 オレは思ったね。これが血を分けたやつらの言うことかよ、とね。それっきりよ」 おっさん達が涙ぐんでいる。なんなんだ、この安いドラマみたいな展開は。 「んだんだ。遠くの親類より近くの隣人ってやつだぁ。 昔から言うべや、袖の触れ合うも多少の縁、てな」 「で、あんちゃん、親父と喧嘩でもしたんか?」酔っ払いは何度も同じ質問をする。 「いえ、実は人を探してまして」 「コレか」おっさんが小指を立てた。まわりがドッとはやし立てた。 「憎いわね、この色男っ」シナを作ってみせるおっさんたちに鳥肌が立った。 「で、どんな女よ?」だから違うって。 俺はポケットから長門の写真を取り出した。 「こっちの、髪の短いほうなんですが」 「どれどれ見せてみい。おおっ!えらくベッピンじゃねえかよ」 見せろ見せろと、おっさん達の間で写真の取り合いになった。 俺にはそれが女に餓えたケモノの群れのように見えた。頼むから破らないでくれよ。 サンちゃんと呼ばれたおっさんが俺の目をまっすぐに見つめて言う。 「あんちゃん。ワシは女を見る眼はないが、人を見る目はある。 この二人、どっちを選ぶかであんたの人生は大きく変わる」 このおっさんは神がかったことを言う。どっちを選ぶって、なにを選ぶんだ?。 もう歳も暮れ、寒風が吹き付ける大阪のガード下、電車が通るたびにガンガンと耳が鳴る一角で、 妙に若いホームレスが混じった酒宴が賑やかだった。 こっちの世界に来てはじめて何かの暖かさを感じた気がする。 おっさんたちの、酒臭い息にまじった苦労話を聞きながら俺はうんうんと生返事をした。 それからどうなったのか、記憶があやふやだ。 ただ、まわりの風景がぐるぐる回りだしたところまでは覚えている。 ---- -[[長門有希の憂鬱Ⅰプロローグ]] -[[長門有希の憂鬱Ⅰ一章]] -[[長門有希の憂鬱Ⅰ三章]] -[[長門有希の憂鬱Ⅰ四章]] -[[長門有希の憂鬱Ⅰおまけ]] ----