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490 名前:NPCさん :04/04/30 23 33 ID ??? 特定の武器にこだわる困ったちゃんってのは ある意味困ったちゃんのスタンダードだよな… 492 名前:ダガー+バンディット :04/04/30 23 37 ID tWYYvmNV 490 両手剣厨とか日本刀厨なんかは代表的かもネ。 オレは大陸武術厨&フェンシング厨かしら。 494 名前:raopu ◆raopuYMrCo :04/04/30 23 41 ID ??? おれも、大陸剣術中だった時期があったよー。 メガテンで特技作ってたころだねー(w 498 名前:NPCさん :04/04/30 23 47 ID ??? 武器のこだわりといえば 斬艦刀がどうしても欲しいというPLがいた そこで俺が出した答 液体金属で出来た刃で、大きさを変幻自在に変えられる ただし、質量保存の法則は守って貰うので 柄から延びたチューブが背中に背負った大型バックパック(必用なだけの液体金属入)に繋いである 勿論如何なるサイズの場合も超重量武器であることにかわりはない こいつを渡して返ってきた答 「カッコワルい」 少々いじわるが過ぎただろうか。しかも全然強くないというおまけ付き 503 名前:NPCさん :04/04/30 23 58 ID ??? 武器じゃなくても技能や魔法にこだわりのあるPCも多いな 死霊系魔術を究めようと頑張るウィザード in ルナルとか 扇動技能の上昇に勉める吟遊詩人 同じく とかな 506 名前:NPCさん :04/05/01 00 01 ID ??? 武器はともかく種族、というかパーツにこだわるエキューみたいな奴はいたけどな。 ツバサスキーとか。 ルナル世界で一生懸命翼人の外見を可愛くしようと 「ハーフは駄目かハーフは無しか」と聞いてくるのは微笑ましかった。 空飛ぶ猫耳少女なぞ認めるものかよ。 スレ15
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556 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2010/03/15(月) 21 07 23 ID ??? ハゲだの空回りだのを語りたい人は 469のスレで頼む ここは困ったちゃんの報告スレであって、実演スレじゃないんで これだけじゃ俺もスレ違いなんで、愚痴スレ向きかもしれんが一応報告 サークルにちょっとしたことですぐやる気を無くす奴が居て困る パーティよりレベル高めの敵が多い戦闘では「絶対勝てない」と言い出だし、 少し立ち位置の被るNPCが出たら「俺のキャラ居る意味無い」と言い出して すぐにふて腐れ出す 戦闘のときはGMはオープンダイスだったけどパーティがちゃんと勝ったし、 立ち位置が少し被っても、ソイツのPCの方が強いし、話的には主役だったんだが 戦闘に勝った後や主役の話が終わった後は、一応不快な態度を謝るんだが あんまり反省して無いらしく、何度も同じ事を繰り返して鬱陶しい 558 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2010/03/15(月) 21 20 00 ID ??? 556 その状況になんかトラウマでもあるんだろうかねえ そこら辺を聞いてやるか、もしくはそいつが参加するときには そんなシナリオにしない、とか 両方が同じことをしているだけでは悪化していくだけかもなあ 559 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2010/03/15(月) 21 22 01 ID ??? 556 根回しして追い出せば? 561 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2010/03/15(月) 21 26 44 ID ??? 外野から言わせて貰えば何かの手を打った方がいいとは思うよ 放置してもギスギスしていくだけだし、結果的に鳥取出ることになっても スレ252
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前へ もやもやを吹き飛ばすように、鏡を睨みつけてひたすら踊る。 小学生でキッズオーディションを受けて、キュートを結成してからというもの、私は一日もダンスレッスンを欠かしたことがない。 キュートでセンターに立ちたくて、それはひたすら頑張ればかなうものだと思っていた。 でも、私の前にはいつも愛理や舞美ちゃん、そしてめぐがいた。 めぐはダンスのセンスが圧倒的だったし、とても同い年とは思えないような色香を身に纏っていた。 舞美ちゃんは明るく嫌味のない美人で、さわやかな容姿と抜群の運動神経でファンの人達をとりこにしている。 愛理は歌が上手で声がいい。作ったキャラじゃなく、もともとガツガツしていない楚々としたたたずまいは誰にも真似できない。 私はこの三人に、何をしても超えられない「天性の才能」というものを突きつけられた。 センターになるという夢をあきらめたわけではなかったのだけれど、そこで完全に行き詰ってしまったのは確かだった。 そんなある日、マネージャーからめぐが脱退するという話を突然聞いた。 一緒に頑張ってきた仲間だから、いなくなってしまうことは本当に辛くて悲しかった。 でも、これが私にとってのチャンスだという気持ちもなかったわけじゃない。 暫定とはいえキュートの三番手になることが確定したのだから。 のほほんとした穏やかな雰囲気のキュートの中で、ギラギラとオーラを放っていためぐ。 これだ!という才能を持ち合わせていない私がめぐの位置に食い込んでいくためには、どんなに望みが薄くても、やっぱりひたすら努力し続けるしかなかった。 負けん気と粘り強さでのし上がっていくつもりだった。 「なっきー、ダンス上手いよね。」 そんなある日、久しぶりに千聖が話しかけてきた。 いつも舞ちゃんと一緒にふざけているからなかなか2人で話すこともなかったけれど、私は屈託のない千聖と話していると心が落ち着いていた。 舞美ちゃんも愛理も好きだけれど、どこかでライバル視することをやめられず、楽しく話していても緊張感が取れなかったから。 「本当?ありがとう。」 「私全然立ち位置とか覚えらんなくて。なっきーはどうやって覚えるの?千聖ね、なっきーのダンスが一番好き。」 「え・・・」 嬉しかった。 どんなに頑張っていても結局年下組や栞菜が頼るのはえりかちゃんや舞美ちゃんだったから。千聖が見ていてくれて、私は少し努力が報われたような気がした。 「わっわっ、ごめんなっきー!泣いちゃったの?千聖悪いこと言った?」 知らないうちに泣いていたらしい。心配そうに顔を覗き込んだ千聖も泣きそうな顔になっている。 「ううん、なんでもない。ダンス褒めてくれて嬉しかったの。私でよければいつでも教えるから。」 千聖はそれ以上何も聞かないで、デヘヘと笑ってくれた。 それから私と千聖は、たまにプライベートで会って遊ぶぐらい親しくなった。 「千聖のライバルは、舞ちゃんじゃなくて愛理なの。」 そんな千聖の思いを聞かせてもらえるようになったのも、この頃だった。 もう千聖はこのまま元に戻らないのかな。今は愛理とすっかり打ち解けて、愛理に負けたくないって言っていた千聖はもういないのかな。 鏡にもたれてそんなことを考えていたその時、急にどこからか歌声が聞こえてきた。 もうみんな帰ったはずだったのに。 レッスン場を出て廊下を歩くと、段々声が近づいてくる。ロッカーの方だ。 何となく早足になって、思いっきりドアを開く。 「ごきげんよう、早貴さん。」 そこにいたのは、千聖だった。 次へ TOP
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【検索用 ふしょうちゃん 登録タグ 作ふ 作ふさ 作り手】 + 目次 目次 特徴 リンク 曲 CD 動画 コメント 特徴 作り手名:『武将ちゃん』(ぶしょうちゃん) 2022年4月、「Spark」にてボカロPデビュー。 使用VOCALOIDは初音ミクなど。 作曲のみならず、ギターやベースの演奏も行う。 リンク Twitter 曲 まだ曲が登録されていません。 CD まだCDが登録されていません。 動画 コメント 名前 コメント
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53.ローマ帝国 キャラ説明 【ローマ帝国】 難易度: 豪快な性格で地中海の覇者。ヴァルガス兄弟の爺ちゃん。 体力と気力が高く、性的なこともバッチコイ状態なので調教は楽かと思われる。 とにかく孫が大好き。 キャラステータス +... 53. ローマ帝国(ローマ爺ちゃん) 【基本情報 】 体力 5000 気力 2000 【素質 】 気丈 好奇心 楽観的 目立ちたがり 貞操無頓着 解放 恥薄い 痛みに強い 汚れ無視 快感に素直 両刀 謎の魅力 大柄体型 オトコ 人気 絶倫 女好き 【初期能力】 技巧 3 露出癖 2 料理技能 2 歌唱技能 2 【初期経験】 性交経験 100 【相性】 フェリシアーノ・ヴァルガス 200 ロヴィーノ・ヴァルガス 170 ルートヴィヒ 150 フランシス・ボヌフォワ 170 ちびフェリシアーノ 200 ちびロヴィーノ 180 神聖ローマ 180 若フランシス 180 ゲルマン 180 名前 コメント すべてのコメントを見る
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大丈夫、私は一人じゃないし、いざとなったら店員さんだって動いてくれるはず。 愛理の手を引っ張って、ぐんぐん奥へ進んでいく。 「このっ・・・・・」 変態め!2人を解放しなさい!! ウサギ人間をにらみつけてそう叫ぼうとしたのだけれど、どうも様子がおかしい。 みぃたんとえりかちゃんのまん前に陣取るその人は、腕組み足組みふんぞりかえって、威圧感と貫禄はかなりのものだった。 でも、超華奢。 どう考えても大人の体つきじゃない。っていうか、 「舞ちゃんじゃん!」 「ぶははははははははは」」 もう耐え切れんとばかりに、みぃたんとえりかちゃんがテーブルを叩いて笑い出した。 「なっきぃ反応よすぎ!ねえねえ何で“このっ”って言ったの?何で何で?」 「“このウサギ野郎!”って言おうとしたの?あっはっはっは!」 くっ・・・! 年長者2人がかりの言葉責めに、顔が真っ赤になる。 いったん顔を上げた二人は、私のみかん星人Tシャツを見てさらに吹き出した。 「みかんー!」 背後で愛理が耐え切れずに「ケッケッケ」と笑い出す声が聞こえた。 うさぎ舞ちゃんの細い肩もカタカタ震えている。 ヒドいケロ!とんだドSグループだ! 「もーなっきぃはやっぱり最高だね。おいで。」 涙を流しながら、みぃたんは私の腰を抱いて横に座らせてくれた。 「本当なっきぃはかわいいなあ。」 「ちょ、ちょっとそんなことより、何でうさぎ?」 私の質問に答えるように、舞ちゃんがおもむろにうさぎの首を取った。 たっぷり笑ったから、機嫌はかなりいいみたいだ。はにかんだ顔が可愛い。 「・・・なんか、目立つかなと思って。」 「いや、目立つけど誰だかわかんないよ。」 好きな歴史上の人物は徳川家康。モノマネもできます。 好きな言葉は一石二鳥。でも使い方はちょっと変。 舞ちゃんはしっかりものだけど、やっぱりどこか天然で変わった子だった。 「・・・じゃあ、全員揃ったところで。」 えりかちゃんはお誕生日席に移動して、私のみかん星人と目が合わないように若干上を見ながら、話を始めた。 「多分みんな気づいてると思うけど、今日は栞菜と千聖の件で集まってもらいました。」 わかっていたこととはいえ、みんな昨日のあの光景を思い出したのか、一気に緊張が走った。 「ウチはあの後栞菜を送っていったんだけど、かなり落ち込んでたのね。本当にひどい状態だった。だから、すぐ助けてあげなきゃって思って。」 「、ちっさーも同じ。泣けなくなっちゃうぐらいすごいショック受けてた。それで、えりと相談して、今日この場を設けたの。」 「・・・・なんで、2人はあんな風になったの?」 えりかちゃんたちの報告を聞いて、舞ちゃんが静かに問いかけた。 「それは・・・ごめん、私が勝手に言っていいことじゃないから。ちゃんと仲直りできたら、舞にも直接話がいくと思う。もうちょっと待ってて。 でも、これだけは言っておくけど、どっちか一人が悪くてああなったんじゃないの。 多分気持ちのすれ違いと誤解がたくさん積もっちゃっただけなんだ。 あとね、できるだけ舞と愛理となっきぃには中立でいてほしい。 正直、私はちっさーからいっぱい話を聞いたから、きっとこの件に関してはちっさー寄りの考えになっちゃうと思うのね。」 「そうそう。ウチは逆に栞菜とずっといたから、今は特に栞菜の気持ちが心配でたまらない。」 「・・・・要は、ニュートラルでいてってことだね。」 愛理がつぶやくと、2人は5秒遅れて「ニュー・・そ、そ、そうそう。・・・多分。」と言った。 舞ちゃんもしばらく考え込んでから、小さなうなずきとともに「わかった。」と短く返事をした。 「なっきぃも了解。」 本当は詳しい話が聞きたくてたまらなかった。 あんなにも当事者2人が傷つき果てた事件を、このままうわべだけ知って素通りなんてできるはずがない。 でも、みぃたんたちがそう言うなら待ってみようと思った。 今は先入観なしで、2人の手助けをしてあげるべきなんだ。 「で、具体的に何を?」 「うーん、まあ何をするってわけでもないんだけどさ、ここで2人を見守ってあげて。」 見守る? 「今からウチは栞菜の家に行って、栞菜をつれてここに戻ってくるから。千聖にはもう連絡してあって、もう一時間もしないでここに来ると思う。 ウチらが変に口出しするんじゃなくて、2人でとことん話し合ってほしいから、みんなは本当に緊急の時だけ手を差し伸べて。」 「わかった。」 「お店の人には、サプライズを仕掛けたい子がいるから、私たちの姿が見えづらい席に案内してって頼んであるから。」 さすがお姉さんコンビ。ぬかりないな。 「じゃあ千聖が来るまで、何か適当にオーダー・・・・・おっと」 テーブルの上に出しっぱなしになっていた、えりかちゃんのケータイが光った。 「やっばい、千聖だ。・・・もしもし?」 えりかちゃんは声をひそめて電話に出た。 いつもならマナー違反!とたしなめるところだけれど、正直、会話の内容が気になる。 「えっあと1駅?ウチまだなんだよ。・・・・うん、ごめん。待ってて。」 どうやらもうすぐ着いてしまうらしい。 ちょっとあわてているえりかちゃんを観察しながら、お冷に入っていた氷をごりごりとかじった。 二言三言交わした後、えりかちゃんはおもむろに口元を手で覆って、ニヤニヤしながら電話を切った。 ぶはっ 私の口から飛び出た氷が、愛理のおでこにゴチンとぶつかった。 「なっきぃ何やってんの!?」 「え、え、え、えりかちゃん・・・・・!」 幸か不幸か、私はかなり耳が良い。口を隠したって、斜め横の人の声ぐらいなら拾えてしまう。 えりかちゃんはエロカの顔になりながら、こんなことを言っていた。 「待たせちゃうけどごめんね、お詫びに今度すごいのしてあげるからね、千聖。トロントロンにしてあげる。」 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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正ちゃん2006/11/3 名前から勝手に普通の食堂と思い込んでいましたが、宴会も出来る結構大きな割烹屋さんでした。 駐車場側が表と思ったら、食堂は反対側にあります。 休みが変わっていて、10日ごとぐらいだとのこと。 いつが基準かわからないので、休みは不定休と思った方がいいのかしらん。 で、中華そば500円を。 スープ一口目にショウガの香りが。ちょっと苦手かと思ったのは一口目だけ。 鶏がメインだとは思いますが、豚系も? というのもほんのちょっと、なにやら苦手な味が。 豚系に多そうな感じがしますが、自分の表現力が未熟なため、この苦手さは言葉で言い表せません。 ただ、これも最初のうちだけで最後はおいしくいただきました。 高野食堂とここの連食もいいかも。 住所 栗原市栗駒岩ヶ崎八日町6 電話 0228-45-2163 駐車場 有り by JIJI 145杯 名前 コメント
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前へ ほんの小さな違和感でも、それが積もり積もれば大きなものになる。 「うーん。」 私は梨沙子たちと楽しげにおしゃべりしている千聖を見て、首をひねっていた。 何が変というわけでもないけれど、どことなく普段の千聖と違う気がする。 いつもよりちょっとオーバーアクションだったり、全体的に演技っぽさを感じる。 しばらく会ってなかったから、千聖のテンションについていけてないだけかもしれないし 中学生なんて日々変わっていく時期だから、特別気にすることじゃないのかもしれないんだけれど。 例えば、髪をはらうような仕草とか。 例えば、お菓子をほおばる仕草とか。 そんなどうでもいいような所作が、前よりも優雅になっているような気がした。 お年頃だし、好きな男の子でもできておしとやかにふるまってるだけかもしれない。 多分、単なる気にしすぎなんだと思う。 そうでなくても、何だか今日はおかしな日だ。 いつものももと千奈美の小学生レベルの争いがなかなか収まらなかったり、梨沙子がいきなりおなかを痛めたり、かと思ったら満面の笑顔で医務室から戻ってきたり。 「なんだろうなー」 私は普段あんまり細かいことは気にしない性格だから、その分たまにこうやって気にかかることがあると、ずっとそればかりを考えてしまう。 せっかくこうしてキュートと交流する場が設けられているというのに、私は誰ともおしゃべりしないで、その辺においてあったポテチを食べながら何となくみんなを眺めていた。 「えー、でもそれは千聖がぁ」 「あっごめん!この話ちっさーは関係なかった!アッハッハ」 「そうだ、あの時千聖が言ってたって・・・」 「え!まあまあそれよりさーキュフフ」 こうして黙っていると、みんなの会話がよく聞こえる。 あちらこちらに散らばってるキュートのメンバーは、会話に千聖の名前が出てくると、すごい勢いで話を変えている。 千聖イジメ?と一瞬思ったけれど、キュートに限ってそれはないな。 どっちかというと、私たちから何か隠すことで千聖を守ろうとしているような雰囲気。 気になるなら直接千聖と話せばいいんだけど、今日は中2トリオがやけにべったりしていて邪魔しちゃいけない感じだ。 私だって千聖とはかなり仲のいい部類に入るはずなのに、今日はまだ「おはよー」ぐらいしか話していない。 もうちょっとしたら、ちょっと強引にでも中2トリオにお邪魔させていただこうかな。 こんな風に遠慮するのは私らしくない。 いつもみたいに堂々と入っていったらいいんだ。 ・・・それにしてもこの変な雰囲気、千聖と仲良しなももはどう思ってるんだろう。 「あれ?いない」 舞美ちゃんあたりとおしゃべりしてるのかと思ってたけれど、どうやらまだこっちに着てないみたいだ。 今日変だったからな・・・一人になりたいのかな。 ももは全部自己完結しちゃうから、いまだに本心がよくわからない。 もっともっと頼ってくれればいいのに。本当は千奈美だってそれが寂しくて突っかかってるのに。 おせっかいかもしれないけれど、どこかに一人ぼっちでいるより、みんなの輪の中にいたほうがいいと思う。 そうすればいつでもももの必要なときに手を差し伸べることができるし、みんなももが思ってるほど冷たいわけじゃないのにな。 盛り上がってるところに水を差すのも悪い。私は黙ってももを探しにいくことにした。 「茉麻?どっかいくの?」 「ちょっとトイレー。」 適当にごまかして席をはずそうとしたら、熊井ちゃんが「私も行くー」とのんびりした口調でついてきた。 「いいの?」 「うん。」 主語も何もないけれど、私たちは大体これで通じる。 「でも、トイレは行かないよ。」 「じゃあ、もも?それとも千聖?」 ・・・・熊井ちゃんはエスパーか。 まったくかみ合ってない答えを返してきたようで、私の心を占めているものをいきなり2つとも当ててしまった。 「茉麻は優しいね。ちゃんと周りが見えてるし。私しばらく気づかなかったよ、ももいなかったの。ははは」 全然悪びれない言い方に、思わずつられて笑ってしまった。 「じゃあ熊井ちゃん、さっき千聖って言ってたのは何のこと?」 「あー。何だろう。何か別の星の人になっちゃった。千聖は私と同じかと思ってたのに。」 んん? 次へ TOP
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649 ちーちゃんのハサミ sage 2008/08/06(水) 03 17 36 ID ylz6/SPo 人には、それぞれに大切にしている物がある。 それは何かのコレクションだったり記念品だったりと、人によって様々だ。 ある意味では持ち主の個性を現す物なのかもしれない。 私の場合、それは一丁のハサミになる。 造りはハサミと言えば一般に思い浮かべられる洋鋏と同じで、だけど市販品よりも短小な上に指で握る部分はハート型、 薄いピンクのカラーリングに安っぽいガラス玉がちりばめられた、どう見ても幼稚な、子供向けの一品だ。 それも当然。そのハサミは私の十数年の記憶の中で一番最初、子供の頃にお兄ちゃんにもらった思い出の品なんだから。 まだ思春期や男女の違いという言葉が遠くて、兄妹が二人で並んでアニメを見るのに抵抗がなかった昔、 当時流行った子供向けアニメの主人公(ヒロイン)が画面の中で使っていたハサミ。 今はもう廃刊になった雑誌の懸賞でそれを当てたお兄ちゃんは、うらやましがる私に笑って言った。 『これはちーちゃんのハサミだからな。ちーちゃんにやるよ』 私の名前は日向 千夏(ひなた ちなつ)。 お兄ちゃんが夢中になった画面の中の女の子も私も、その時はみんなに『ちーちゃん』と呼ばれていた。 誇らしかったと思う。 私にそのハサミをくれたお兄ちゃんは────やっぱり友達には頼みにくかったのか────その後、 よく私に『ちーちゃん』の真似をさせては、自分も『ちーちゃん』の好きな男の子の真似をして喜んでいた。 戦隊モノとかよりもヒーロー側の役が少ないからみんなでやるのには抵抗があって、 だけど自分達の家の中では思いっきり楽しめる、兄妹二人だけのごっこ遊び。 嬉しかった。 お兄ちゃんの外に出かける時間が減って、お兄ちゃんと一緒の時間が増えて、 お兄ちゃんと話せることや出来ることが沢山になって、お兄ちゃんのくれたハサミが繋いでくれた時間が、 友達が自慢する何よりも、私にとってはキレイな宝物だった。 あの頃、確かにあった兄妹の絆は今でも変わらずに結ばれている。 お兄ちゃんが『ちーちゃん』を忘れて私のことを千夏と呼ぶようになっても、 お風呂に一緒に入らなくなったり眠る部屋が別々になっても、学校で部活を始めたお兄ちゃんの帰りが遅くなっても、 最後の部活の大会が終わったお兄ちゃんが部屋に篭もって一人だけで勉強するようになっても、 私はお兄ちゃんが他の何より大事だし、お兄ちゃんも私を大切に思ってくれてる。 あのハサミが生んでくれた絆は今も切れずに繋がっていて、私とお兄ちゃんが離れ離れになることなんかない。 ────────そう、思っていた。 薄々気付いてはいた、どんどん細く脆くなって行く、それでもまだ残っていた一本の糸が今日、 パチンと音を立てて切られるまでは。 雨が降っている。 轟々とうなる風は容赦なく窓をガタガタと怯えさせ、無数の雨粒がガラスの中を斜めに走り去っていた。 閉めにいくのが面倒なカーテン以外は全て締め切った薄暗い部屋の中に、時折悲鳴のような雷鳴が響く。 本日は土曜日。連休の初日は、だけど生憎と夕方から雷雨の予報。 ソトニデルノハキケンデスと、顔の見えない誰かが電子的に喋っている。 雨と、風と、雷と────────聞く価値もない他人の声。 出張中の両親もいない一人きりの家の中で、それらが私の邪魔をする。 無粋で、無遠慮で、不規則な音の群。苛立たしい雑音に囲まれて、手元が乱れそうになる。 しゃーこ・・・・・・しゃーこ・・・・・・ 滑らかに砥石の上を走る、二枚合せの短い刃の片方。 お兄ちゃんからもらったハサミを丹念に、心をこめて研ぐ。 650 ちーちゃんのハサミ sage 2008/08/06(水) 03 20 40 ID ylz6/SPo しゃーこ・・・・・・しゃーこ・・・・・・しゃーこ・・・・・・ お兄ちゃんんがくれた、子供向けで脆く欠け易い、決して実用的ではないハサミの手入れ。 もう何年もずっと繰り返してきた、兄さんが傍にいてくれる時の次に幸せで落ち着く、私の習慣の時間。 たとえ切れなくなってもいい、ただずっと使い続けられるように、二人の絆の証が壊れないように、 お兄ちゃんを想いながら手を動かす。そうして数年以上を共にしてきた刃はすっかりと磨り減って、 だけど細くなった刃の切れ味は包丁並だった。今となってはほとんど研ぐ必要なんかない。 いや。いつか壊れる心配をするなら、そもそも使わずに、単に肌身離さず持っていればいいのかもしれない。 そんなことはとっくの昔に分かっていて────────それでも、私はハサミを研いでいた。 しゃーこ・・・・・・しゃーこ・・・・・・しゃーこ・・・しゃーこ・・・ こうしていれば、私は落ち着けるはずだから。雨の日には夜が来るのが早くて、陽の光はもうない。 電気も付けていない部屋にいる私はたまに稲妻に照らされるだけで、その時に、細く薄くなったハサミの刃がきらっと光る。 どんなに強がってみても私は女の子で、子供の頃、そして今でも雷は得意ではない。 雷が振る時は雷神様がおへそを取りに来るとか、そんな話を昔に聞かされたからだろうか。 どこかぼやけた情景を憶えている。布団の中、まだ同じ部屋にいたお兄ちゃんに震える体でしがみ付きながら、 もし本当に雷神様が来た時は私がお兄ちゃんを守るんだと、このハサミを握り締めていた自分。 そんな私を、本当は自分も怖いのに、勇気を出して笑顔で慰めてくれたお兄ちゃん。 『ほんと、ちーちゃんは怖がりだな』 そう言って抱き締めてくれたお兄ちゃんの腕は今、この家のどこにもない。 「はは・・・あはは・・・」 しゃーこ・・・・・・しゃーこ・・・しゃーこ・・・しゃーこ・・・ 外は雷雲が出来るくらい湿ってるのに、声が乾く。そのくせ砥石の上にも、雨が降っていた。止んで欲しいのに止まない。 止まって欲しいのに、お兄ちゃんのくれたハサミを研いでいてこんな気持ちになるはずがないのに、後から後から出てくる。 滑りすぎたハサミで、少しだけ指を切った。 「ねえ・・・お兄ちゃん・・・・・・知ってるよね・・・?」 怪我の心配をしてくれるお兄ちゃんも、いない。 「私もね・・・・・・・雷、苦手なんだよ・・・・・・?」 あの女の家に行っちゃったから。 雷が苦手らしいあの女のことが心配だって言ったお兄ちゃんは、危ないよって必死に止めた私を置いて、 雷が苦手なことを知っている私を放り出して、豪雨の中をあの女のところに行っちゃったから。だから────────いない。 「うふふ・・・ははは」 大好きなお兄ちゃん。『ちゃーちゃん』を好きだったお兄ちゃん。『ちーちゃん』って呼んでくれたお兄ちゃん。 ハサミをくれたお兄ちゃん。二人だけで遊んでくれたお兄ちゃん。『ちーちゃん』の真似をする私だけを見てくれたお兄ちゃん。 私を千夏って呼ぶようになったお兄ちゃん。お風呂が別々になったお兄ちゃん。一緒に眠らなくなったお兄ちゃん。 部活を始めたお兄ちゃん。帰りの遅くなったお兄ちゃん。部活が終わったのに今度は勉強をするようになったお兄ちゃん。 頼んでも遊んでくれなくなったお兄ちゃん。勉強を教えてくれなくなったお兄ちゃん。私を部屋にいれてくれなくなったお兄ちゃん。 部屋の前で呼んでも返事をしてくれなくなったお兄ちゃん。それでも同じ家で暮らして、傍じゃないけど私の近くにいてくれたお兄ちゃん。 そして────────私の近くに、この家のどこにもいないお兄ちゃん。 「嘘だよ・・・・・・こんなの」 お兄ちゃんがいない、私の傍にいない、横を見ても後ろに振り返ってもいない、私の部屋にいない、 家の電話を鳴らしても出ない、お兄ちゃんのケータイにかけても繋がらない、この家のどこを探しても、 お兄ちゃんの部屋にも居間にもキッチンにもお風呂場にもトイレにもお父さん達の部屋にも クローゼットの中にもベッドの下にもベランダにも庭にも車庫にも屋上にもこの家のどこにも、お兄ちゃんがいない。 「お兄ちゃん・・・・・・」 651 ちーちゃんのハサミ sage 2008/08/06(水) 03 23 18 ID ylz6/SPo 雷が鳴る。気が付いたら、お兄ちゃんの部屋の扉が前にあった。ドアノブを左に捻る。 「お兄ちゃぁん」 ぼやけた視界に入る、見慣れた家具達。 勉強に邪魔なものは全部捨てられたり片付けられたりして、もうお兄ちゃんの部屋にはない。 お兄ちゃんが私と一緒に遊んでくれた道具やゲームも、どこか私の知らない場所に仕舞われている。 昔を思い出してもらおうと思って買って来た『ちーちゃん』のDVD-BOXは、 お兄ちゃんが時間がないって言って、結局一度も日の目を見なかった。 「ぐすっ」 目を擦ってから、『ちーちゃん』も私もない部屋を見渡す。カーテンまで締め切られたお兄ちゃんの部屋は本当に暗い。 毎日お兄ちゃんが触ってる明かりのスイッチを押す。 指先に感じる温度は冷たくて、電気を点けると、やっぱり殺風景な部屋が照らし出された。 ふらふらと、お兄ちゃんのベッドに倒れ込む。 「あは・・・・・・お兄ちゃんの匂いだぁ」 思いっきり鼻から息を吸う。 ベッドに倒れた時に舞ったお兄ちゃんの残り香に包まれて、体の中も外もお兄ちゃんで満たされる。 お兄ちゃんのくれたハサミを研いでた時に比べて、ちょっとだけ落ち着いた。 でも足りない。だからお兄ちゃんの枕を掴もうとして、顔を上げてベッドの上の方に手を伸ばす。 枕元に、私の知らない物が置かれていた。 「・・・なに、これ」 曲げられた金属の足がついた、長方形のガラスの板。その中に写真が一枚、入っている。 「こんなの、昨日までなかったのに」 起き上がって、枕の替わりにそれを掴んで引き寄せる。ガラスに挟まれた写真の中で、お兄ちゃんが嬉しそうに笑っていた。 その隣で、あの女も笑っている。明かりの点いたお兄ちゃんの部屋に、ゴロゴロと音が響く。 「────────ッ、お前があっ!!」 雷が落ちたのが、音で分かった。砕け散ったガラスの欠片が電灯に照らされてきらきらと光る。 「よくもお兄ちゃんを・・・私のお兄ちゃんをっ・・・・!」 立ち上がった足でガラス片まみれの写真を踏みつけなかったのは、お兄ちゃんの笑顔が写っていたからだ。 左手でその写真を拾い上げる。 私の右手には、ずっとお兄ちゃんのくれたハサミが握られていた。 「お前なんか・・・・・・お前なんか!!」 あの女の顔に、縦にハサミを入れる。 じょきんと音が鳴って気持ちの悪い笑顔が真っ二つになって、化物みたいに左右に開いた。 引き千切りたいのを我慢して、お兄ちゃんを切らないように横からハサミを入れる。 同じ音を立てて、あの女の首から上がなくなった。 「お兄ちゃんに触るな!」 今度は縦に、体の左半分を切り捨てる。それから、お兄ちゃんの肩と胸に触れている手と腕を。 じょきじょきと、ゆっくりと気を付けながら、それでも出来るだけ早くあの女の全身を切り刻む。 お兄ちゃんに触れている部分を切り落として、お兄ちゃんの傍から切り離す。 すぐに、バラバラになった女のゴミが床の上に散らかった。 652 ちーちゃんのハサミ sage 2008/08/06(水) 03 25 29 ID ylz6/SPo 「はあ・・・はあ・・・」 たとえバラバラでも写真でも、こいつがお兄ちゃんの部屋にいるのは許せない。 後で焼き捨てるためにも拾い集めなくちゃいけない。 そう思って、万に一つも残すことがないように一つ一つ拾い集める。 幾つかは落ちる途中でベッドの下に逃げ込んだみたいだった。 それも取ろうとして、しゃがみこんでお兄ちゃんのベッドの下を覗く。 何かがあった。 「・・・え?」 お兄ちゃんの部屋は、もう何年も、私が毎日掃除している。 お兄ちゃんが勉強で部屋にこもるようになってからは毎日は無理だったけど、 それでも出来るだけ、心を込めてきちんと掃除をしている。 当然、エッチな本とか私以外の女の子の写真とか、そういう、お兄ちゃんには必要ない物もちゃんと捨ててる。 お兄ちゃんの部屋に何があるのか、要らない物は置いてないかのチェックは怠ってない。 なのにこんな、私の知らない物が幾つもお兄ちゃんの部屋にあるのはおかしい。 何個か重なってるみたいなそれを一つ、引っ張り出して見る。 プラスチックのカバーの、バインダーみたいな物だった。 「まさか」 カバーを開いて中身を見る。入っている物を確認してから、ページをめくった。 そこにある物も確かめる。ページをめくる。また見る。ページをめくる。 見てページをめくる。その次も同じことをしてページをめくる。その次も同じ。 その次もその次もその次もその次もその次もその次もその次も。 そのアルバムの中には沢山のお兄ちゃんと一緒に、数え切れないくらいのあの女の姿が映っていた。 「────────────────」 思わず顔を押さえた時、部屋に響いたのが雷の音だったのか私の叫び声だったのかは、自分でも分からない。 ただ、私はその大きさに負けないくらい強く、お兄ちゃんのくれたハサミを握った。 お兄ちゃんの部屋の床の上に、ちょっとしたゴミの山が出来ていた。 全部がバラバラにしてやったあの女の破片だ。 それなりの厚さのアルバムでだいたい三冊分収まっていた写真から、私はあの女を切り落とした。 思ったより時間がかかったのは、あの女がお兄ちゃんに絡みついている写真が多かったせい。 あの女だけの写真なら百分割するのにも時間はかからないけれど、 たとえ写真でもお兄ちゃんを傷付けるわけにはいかないから大変だった。 だけど、おかげで今、私は沢山のお兄ちゃんの写真に囲まれている。 でも、本物のお兄ちゃんはここにいない。 あの女の場所にいるから。 「許さない・・・・・・」 さっきの写真立てやこのアルバムを、お兄ちゃんがずっと私に隠してたとは思わない。 お兄ちゃんの部屋やこの家の中にあったなら絶対に気付く。 お兄ちゃんの動きを追ってれば分かるから、見逃すはずがない。 それに、勉強の邪魔になる物は片付けると言ったお兄ちゃんがこんな物を隠していたはずもない。 お兄ちゃんはそういう人だ。やると言ったらやるし、徹底する。私には分かる。 だからこのアルバムも写真も、昨日までは他の場所────多分あの女の家か部屋────にあった物だ。 今までは勉強の邪魔になるからそこに置いてあった。そしてその必要がなくなったから、お兄ちゃんの部屋に移した。 653 ちーちゃんのハサミ sage 2008/08/06(水) 03 29 44 ID ylz6/SPo 『やったぞ千夏!』 昨日、本当に久し振りに笑顔を見せてくれたお兄ちゃんを思い出す。 試験に合格したって大喜びだった。そう、受験じゃなくて、試験。 大学の受験じゃなくて、就職するための資格の試験。お兄ちゃんが勉強していたのはそのためだった。 そんなことも、私は知らなかった。そんなことを教えてくれないくらい、お兄ちゃんは私から離れていた。 私が気付かなかっただけで。だから────────。 『千夏、よく聞け。オレな・・・・・・結婚する予定なんだ、来年くらいに』 お兄ちゃんが一度だけ家に連れて来た、部活の関係で知り合ったらしいあの女と秘密で付き合っていたことも、 あいつのために早く独り立ちしようと進学より就職を取ったことも、 そのために必要な資格の勉強をしていることも、全部、お兄ちゃんが話してくれなかった何もかも全て、知らなかった。 お兄ちゃんがあの女と結婚するつもりであることも、その証明のために『婚姻届』を書いたことさえも。 『いや、だってなあ。恥ずかしいじゃん? 彼女が出来たとか家族に報告するの。 資格も、取れなきゃ進学に切り替えてバイトとかするつもりだったし。 でもま、どうにかなったからな。親父達にも安心して報告出来たぜ』 お兄ちゃんは笑っていた。私が真似た『ちーちゃん』と一緒にいた時よりも、嬉しそうに笑っていた。 『まあ惚れた女のためにって言っても、オレの我儘でアイツにも随分我慢させちまったからな。 これだってどうなるかはわからねーけど、一応のケジメ、決意表明ってやつだ』 私に『婚姻届』と書かれた紙を見せた後でそう言ったお兄ちゃん。 私の知らない場所に就職して、私以外の女と結婚して、私から離れることを幸せそうに話したお兄ちゃん。 今はここにいない、これからもこの家には『帰って』来ないお兄ちゃん。私の傍には戻らないお兄ちゃん。 その原因を作った、あの女。 「ズタズタにしてやる・・・・・・」 お兄ちゃんのアルバムの最後の1ページ。 そこには、お兄ちゃんとあの女の『婚姻届』が挟まれていた。 ページをめくる度に段々と現在に近付いていく写真の中のお兄ちゃんとあの女の、まるで二人のゴールとでも言うみたいに。 目を通すと、細かいことはよく知らないけれど、必要な部分はしっかりと書き込まれてる。 あの女の名前も、知りたくもない個人情報も埋められていた。 「お前がお兄ちゃんの傍にいるなんて許さない・・・・・・お兄ちゃんを連れて行くなんて許さない」 写真よりも脆そうな紙に、ハサミの刃をかける。簡単に切れそうだった。 きっと気持ちのいい音が鳴るに違いない。 私が、お兄ちゃんの妹がこれを切り刻んだことを知ったら、あの女はどんな顔をするだろうか。 想像する。すぐに頭の中に浮かんだ気持ちの悪い顔は、縦に切り割られて消えていった。 愉快だ。きっと、実行したらもっと楽しいに違いない。 「あははははは」 笑ってハサミを構え直し、狙いを定める。最初に切る部分は決まっていた。 強く、一息で断ち切れるように指に力をこめる。 654 ちーちゃんのハサミ sage 2008/08/06(水) 03 32 07 ID ylz6/SPo しばらく止んでいた雷鳴が、これまでで一番の強さで鳴り響いた。 「あ」 その雷のように閃いた。 「ああ!」 ターンしてお兄ちゃんの机の引き出しを開ける。記憶通り一段目に筆記用具、二段目に定規やノリが入っていた。 『婚姻届』を机の上に広げて取り出した道具を広げ、先ず定規を当てる。 次にシャーペンで定規に沿って直線を引くこと四回で、あの女の名前を囲む長方形が出来た。 ハサミを限界まで開いて、重なった刃を留める蝶番の部分を持つ。これで即席カッターの完成。 挟まずにハサミの刃の先端だけを当てて、定規を添えた線に合わせて引く。すっと音も立てずに切れた。 繰り返す。四回目で、あの女の名前だけが切り取れた。 切り取った部分をひっくり返して、白紙になってる裏面に私の名前を書く。 それから縁にノリを塗って『婚姻届』の切り取られた空白の部分に貼り付けて、終了。 ある程度ノリが乾くまで少し待ってからそれを見てみる。見事に、あの女の名前が私のものに代わっていた。 同じことを他の記入されてる場所でも繰り返す。 「出来た」 すぐに、目的の物が出来上がった。 「お兄ちゃんと私の────────婚姻届」 あの女の書いた部分が全部、一つ残らず私の内容になった婚姻届。 それを見てさっきよりも静かに、でもずっと深い所で納得しながら、ふと思い付く。 「ああそっか、こうすればよかったんだ」 すとん、と自分の中に何かが入ったのを、私がそれを受け入れたのを実感した。 「そうだよ・・・・・・『切り替え』ちゃえばいいんだ。あの女を切り■して、私がそこに納まればいいんだ」 この婚姻届みたいに、あの女さえいなくなればその空白に私が納まることが出来る。 お兄ちゃんの近くに、お兄ちゃんの傍に、またお兄ちゃんと触れ合える位置に。 「あははは、何で気付かなかったんだろ」 こんな簡単なことに。 そうだ。邪魔者はなくしてしまえばよかったんだ。 あの写真だって、あそこに写っているのが私なら何の問題ない。同じことなんだ。 あの女が空白になれば、私はまたお兄ちゃんの傍に戻れる。お兄ちゃんが戻って来てくれる場所に行ける。 「うふ、は、あははははは!」 嬉しいな。また『ちーちゃん』の頃に戻れるんだ。あの女さえいなくなれば、またあの頃が帰って来るんだ。 だってそうだよね。そうだよ。お兄ちゃんが私から離れて行ったのはあの女のせいなんだから。 655 ちーちゃんのハサミ sage 2008/08/06(水) 03 35 25 ID ylz6/SPo 「────────じゃあ、■さなきゃ」 早く、少しでも一分でも一秒でも一瞬でもいいから早く、あの女と切り替わらなきゃ。 急いだ分だけ早くお兄ちゃんは帰って来てくれるんだから。 ■す。あの女を■す。切り■す。 お兄ちゃんのくれたハサミで『ちーちゃん』のハサミで顔を切り下ろして目玉を切り潰して首と体を切り離して 腕を切り落として足を切り裂いてお腹を切り開いて内臓を切り出して全身バラバラに切り刻んで骨を切り砕いて 一通り出来損ないの切絵みたいにズタズタにしたら、さっさと切り上げてあの女と切り替わる。 あの女さえ切り終われば私は、私とお兄ちゃんはまた幸せにやり直せる。 「カット、カット、カット────────リテイク♪」 必要な情報はさっき切り貼りした物に書いてある。あの女の住処を見付けるのもすぐだ。 そこに着けば探すまでよりも切り■す時間の方が早い。手早くやろう。 お兄ちゃんもそこにいるんだから、迎えに行くと思えば手間も省けるし。 「待っててお兄ちゃん。すぐ行くからね」 お兄ちゃんの部屋を出ようとして、ドアノブを握ってから引き返す。 そうだ。折角作ったんだから、お兄ちゃんと私の婚姻届も持って行こう。 考えたら工作なんて久し振りだったけど、見せたら喜んでくれるかな。それも楽しみだ。 「わ、凄い風」 一階に下りてさっと準備を済ませてから玄関を出る。 傘じゃあ折れるから、少し古いレインコートを着ることにした。何年か前までお気に入りだった黄色いレインコート。 何だか嬉しくなって、右手に持ったハサミをチョキチョキと鳴らす。 雨に濡らしたら錆びるかもしれないけど、どうせあの女を切り刻んだらボロボロになるんだから構わない。 お兄ちゃんがくれた大事な大事なハサミだけど、それでもお兄ちゃん自身に比べたらどうでもいい。 これでお兄ちゃんが帰って来てくれるなら惜しくない。 「楽しみだね、お兄ちゃん」 お兄ちゃんが戻って来てくれたら、一緒にやりたいことがいっぱいある。 教えて欲しい勉強も、聞いて欲しいことも、聞きたいことも、 一緒に遊びたいことも、兄妹で行きたい場所も、二人で試してみたいことも色々ある。 「『ちーちゃん』のDVD-BOXもあるしね」 あの女を■せば。 また、兄妹で並んでテレビを見ることも出来るんだ。 「その時はゆっくりしていってね、お兄ちゃん」 レインコートの内側に仕舞った婚姻届に上から手を当てる。 ゆっくり息を吐いて真っ暗な空を見ると、ごろごろと雷雲が鳴った。 「私達の家で、私の部屋で────────私の、傍で。ふふっ、うふふっ、ははあはははははははははははっ!」 雨の中、風を浴びて駆け出す。雷に照らされたハサミは、ジャキジャキと気持ちのいい音を立てていた。
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前へ 岡井さんと矢島さん、二人の間に流れていた、ほんわかした空気が変わったような気がした。 ケンカとか、そういうんじゃないけれど、決してよくない感じの・・・。それがなんなのか、私にはよくわからないけれど。 「あの、えと・・・そろそろ、一人で寝られるようにしないと、と思って。年齢も年齢ですし」 岡井さん、寂しがりだってブログでも言ってたっけ。一人部屋が割り当てられちゃった時には、矢島さんの部屋で眠ってるっていうのも、どこかで見たような気がする。 その話なのかな。確かに、ずっと部屋に来てくれてた人が急にそうしなくなると、不安になっちゃうかも。 「でも、なっきぃの部屋には行っているんでしょ?なっきぃがそう言ってたよ」 「ふがふがふが」 なんだか、意外な気がした。 私的に、矢島さんってこんなにガーッと迫ったりするタイプじゃないのかなって、思ってたから。 ℃-uteの皆さんの中では少し年齢が上だから、後ろから見守るポジションっていうか。 「私、ちっさーの嫌がることしちゃったかな?」 「あの、そんなことはないです。ただ、舞美さんのご迷惑になるかと・・・」 「ううん、全然!ちっさーが来てくれると、嬉しいよ。だって、気持ちいいから、抱いてると」 ――おお、びっくりした。矢島さん、すごい言い回しするんだなあ。 中学生としては、だいぶ深読みしてしまうお言葉だけど・・・まさか、そんな、ねえ?矢島さんが完璧美人すぎるから、一瞬少女漫画に出てくる超カッコイイ男の子みたく思えちゃったけど。 「矢島さんは岡井さんを抱いている・・・」 「ちょっと、まーちゃん!あれは抱き枕っぽい意味だからね?またそーやって」 「まーちゃん知ってますしおすしさやし。何で慌ててるんですかー」 「なっ・・・もう、ほんとなんなの!」 思わず大きな声を出すと、二人の先輩は、同時にこっちを振り返った。 「あっ!ご、ごめんなさ・・・」 「ぎょえー岡井さーん」 私のわきをすり抜けて、まーちゃんが一直線に岡井さんの懐へ飛び込んでいこうとする。 これはやばい。今までの経験から、この後の展開は容易に想像できるというもの。 しかも、岡井さんは今、まーちゃんをかまってくれるあの岡井さんではないんだ。頭の中で状況を整理していくうちに、かなりやばい状況なんだってことに気が付く。 「だめ、まーちゃん!」 とっさに、まーちゃんの前に立ちはだかる。 イノシシのように、前傾姿勢で頭から私のみぞおちに突っ込んでくるまーちゃん。ボグッと嫌な音がおなかの中に響いて、そのまままーちゃんとともに、楽屋の玄関に倒れこんでしまった。 「もっ・・・信じらんない!」 思いっきり打った背中が痛いし、まーちゃんがひっついてきて思い。 私がとめなかったら、まーちゃんはあの獰猛な野生動物じみた動きで岡井さんに突進していたんだろうか。 「え、大丈夫?どうしたの?」 矢島さんと岡井さんがあわててこっちに駆け寄ってきた。 「まーちゃんこっちおいで!」 「うおおおお」 あ・・・岡井さんの口調が変わってる。あえて演技でそうしてるのか、入れ替わっちゃったのかは私にはちょっとわからないけど。 引っ付いてきたまーちゃんを岡井さんがあやしてる間に、矢島さんが私の体を起こしてくれた。 「ころんじゃったの?」 「え?・・・はい」 「痛いところあったら言ってね!ちっさー、湿布あったっけ?足に貼るやつ!」 「いや、足は別に・・・」 「他に痛いところある?指は?グーパーできる?頭は打ってないかな?」 1つ質問するたびに、舞美さんの綺麗すぎる顔が近づいてきて慌てる。 娘、にはいない感じの独特のキャラクター。 本当に、どこまでも一途でまっすぐで・・・・・そして、全力で間違っている。 「救急車で大丈夫かな?あ、でもその前にご両親?」 「あの、ほんと大丈夫です!」 「あああ、そっか、まず道重さんに言わないと」 ど、どうしよう。 矢島さんがどんどんシリアスな表情になっていく。 すると、別に何ともなかったはずの自分の体のあちこちが痛くなってきたような気がして、不安になってきた。 「ずっき、どっかやっちゃったの?」 すると、岡井さんがまーちゃんを背中に貼りつけたまま、私のそばにしゃがみ込んでくれた。 「えっと・・・」 「我慢するとよくないから、言いたいことは言っちゃいな?」 今度は岡井さんに、じっと目を見つめられる。 不思議なことに、矢島さんの時のような、パニック状態には陥らないですんだ。 矢島さんが美人すぎるってのもあるかもしれないけれどΣリ・一・リ、岡井さんの目には、人を落ち着かせる不思議な力があるような気がする。 「あの・・・私、田中さんに、岡井さんを呼んでくるように言われて」 「おお、そうだったの!」 「はい、あの・・・でも、なんかまーちゃんもついてきてしまって、うるさくしないでって言ったのに」 あれ・・・どうしたんだろう。声がうわずっている。なのに、言葉がどんどんあふれて止まらない。 「早く、早く伝えなきゃいけないって思って、でも矢島さんと岡井さんが話してて、邪魔しちゃいけないから・・・でも、タイミングわからないし、岡井さんが・・・その違っていたら、まーちゃんが・・・」 かなり支離滅裂な私の言葉を、矢島さんも岡井さんも真剣な表情で聞いてくれた(ただし岡井さんは肩に噛みついたまーちゃんの鼻の穴に指を突っ込んでお仕置きしていた)。 「違う、まーちゃんは関係なかったです。やだ、八つ当たりしちゃった。こんな簡単な用事なのに、私、なにやってるんだろう。あはは・・・」 笑いながら言葉が詰まって、いきなり目がら涙がぽろっと落ちた。 「あ、どうしよ・・・」 一度あふれてしまった感情も涙も、急には止まってくれない。 こんな小さな用事ひとつできなくて、しかも違うグループの先輩の前で意味不明な理由で泣いて・・・そうだ、今朝もダンスのことで怒られたんだった。思い出したらさらに泣けてきた。 「ずっき、目こすっちゃだめだよ」 ひっくひっくと耳障りにしゃくり続ける私の頭を、岡井さんがぽんぽんって撫でてくれた。 「腫れちゃうからね。せっかくかわいいんだからさあ」 「だって、私なんて、どうせ誰も見てないです」 「見てなくなんかないよ!てゆーか、千聖が見てるし!」 「私も見てるよ!」 「まーちゃんも常に監視してます!」 みんな、全力で励ましてくれてる。だけどそれが余計に自分のふがいなさを突き付けられてるみたいで、また新しい涙がこみあげてきてしまう。 「…舞美ちゃん、ちょっと濡らした布かなんか持ってきてくれるかな」 「あ、そうだね!わかった、ぞうきんでいい?」 「ずっきの目冷やすの!なんでぞうきん!」 岡井さんが、はじけるような声でケタケタ笑う。 「あー、あ、目か!みんなで掃除するのかと思って」 「何でこのタイミングで!もー、舞美ちゃんはぁ」 いそいそと、タオルを持った矢島さんが部屋を出ていく。 残ったのはグズ泣きの私と、岡井さんと、岡井さんの胸を触ろうとしては手をはたかれているまーちゃん。 「・・・ずっきってさ、自分でもわけわかんなくなるまで、気持ち溜め込んじゃうタイプでしょ」 無言でうなずくと、岡井さんは少しため息をついた。 「普段、こんなことぐらいじゃ、泣かないもんね。これはたんなるきっかけでしょ」 「そして、今日という日を境に、暗黒の力に目覚めたズッ=キーは、世界を闇の彼方に・・・」 「目覚めねーよ!てかまーちゃん、静かにできるの?できないならくどぅーんとこ戻って遊んでもらいな?Σハ´。`oル千聖はずっきとい話してるんだからね」 おお・・・まーちゃんの扱いがうまい。さすが長女。さすが大家族の柱。 するとまーちゃんはふと思案顔になり、次に私の顔をじっと見た。 「まーちゃん、いない方がいいですか?」 次へ TOP