約 1,724,735 件
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/291.html
「な、ななななっきぃ何いってんの」 テンパる私の手を掴んで、なっきぃは近くのビルの陰に体を隠した。そのままカバンをごそごそ探って、1枚のDVDを取り出す。 「これ・・・」 「これ?」 渡されたDVDのパッケージを見ると、綺麗な女の人が制服を着てにっこり笑っている。・・・が、しかし、タイトルは 「女子校生超特急痴漢電車でイ」 「ギャー!」 声に出して読み上げかけたところで、鼻息も荒いなっきぃに口を押さえられる。 「もがもが・・・なっきぃ、何これ!?何でこんなの持ってるわけ?」 「ち、違うの!な、なっきぃもよくわかんないんだよぅ!」 なっきぃはもう顔面蒼白といった感じで、くりんくりんのおめめに涙がいっぱい溜まっている。 ふと思いついてパッケージを裏返してみる。一瞬でよく見えなかったけど、裸の女の人がキモイ男に何かされてる風だった。 「おえっ」 すぐにまたひっくり返して、なっきぃの胸にDVDを押し付けた。 「・・・・買ったの?」 「ま、まさか!違うよぅ!」 なっきぃは両手をぶんぶん振って否定する。 「とりあえず、落ち着こう。」 私はそこから程近い小さな公園まで、なっきぃを連れて歩いていった。ベンチに腰掛けて、水筒の麦茶を差し出す。 「ありがとう。」 こく、こくと音を立てて、なっきぃの白い喉が動く。一息ついたあと、なっきぃはやっと少し落ち着いたのか、あいまいに笑った。 「あれね、あの、DVD。・・・なんか、知らないうちに机の中にあって。」 なっきぃの話を要約すると、こういうことらしい。 最近、なっきぃの高校のクラスで、誰が持ってきたかわからないエッチな本とかDVDが、授業中に回ってくることがあった。 友達は結構興味津々だったみたいだけど、なっきぃはそういうのは見たくないから、「私には回さないで!」とはっきり言っていた。なのに、放課後引き出しを覗いたら、見事にこのエロDVDが入れられていた、と。 「ゴミ箱に捨てちゃえばよかったのに。」 「でも・・・一瞬でも持ち歩いてるの見られたらどうしようって思って。とっさにカバンに突っ込んで持って帰っちゃった。」 なるほど、変なトコ生真面目ななっきぃらしい。私だったら、犯人とおぼしき人につき返すか、友達みんなに見せて笑ってやるところだ。 「・・・で、何でそこから舞がエッチなビデオ見たことがあるかって話になるの?」 つながってるようでつながっていない、なっきぃの話。続きを催促すると、なっきぃは真っ赤な顔でまたぼそぼそしゃべりだした。 「本当は、すぐに処分しようと思ったのね。コンビニとか駅のゴミ箱なら、絶対ばれないだろうし。でも・・・何か・・・」 「何か?」 「何か、1回ぐらい、見てみたいかなって・・・」 ――ほほう。なるほど? 「そ、それで、舞ちゃんは大人っぽいし、お姉ちゃんいるし、こういうのちょっとだけなら見たことあるのかな?って思ったの。もしあったら、な、ななっきぃが見るのに付き合ってくれないかなあなんて思ったり・・・。 だって、みぃたんは乙女だから見せちゃだめでしょ。愛理も何かだめ。えりかちゃんは生々しいからだめ。千聖はこういうの本当だめだと思う。お嬢様にしても、明るいほうにしても。」 「うーん。」 言ってることはわかるけど、だからって、たかだか中2の私に、いきなり痴漢電車はキツいんじゃなかろうか。なっきぃは時々判断がおかしくなることがある。でも、 「・・・・一緒に見ても、いいよ。」 私は視線を外しながらそう答えた。 「えっ!本当に!でもまだ舞ちゃんには早いんじゃないかなあ!」 どっちやねん。 「・・・舞、そんなすごいのは見たことないけど、お姉ちゃんの買ってる雑誌についてたDVDなら見たことある。」 それは「☆初めてのパーフェクトHOW TO エッチ☆」とかいう脱力しちゃいそうなタイトルの、しょぼいアニメーションのDVDだった。保健体育の授業で見るようなのを、もう少しだけ過激にしたような。とはいえもちろんそこは、男を舞、女を千聖に置き換えて(以下自主規制)。 「でもなっきぃ、痴漢モノとかどうなの?途中で怒ったりしない?」 「・・・こういうのは、現実とは違うと思うから。どうしても無理だったらやめる。」 そんなわけで、私は急遽なっきぃのおうちにお呼ばれすることになった。 部屋に通されて、おしゃべりもそこそこに「ま・・・舞ちゃん、いくよ。」となっきぃがものすごく緊張した面持ちでDVDを取り出した。 ウイーン 機械の音が、静かな部屋に反響する。 私の手を握り締める、なっきぃの手が妙に汗ばんでいた。 約1時間後。 「・・・終わったみたいだよ、なっきぃ」 声をかけると、なっきぃがヒッと息を呑んだ。気まずそうに私の顔を覗き込んだ後、無言でDVDをデッキから取り出した。 私の感想。 キモイ。グロい。女優さんがうるさい。男もうるさい。ストーリーがおかしい。 隣のなっきぃが明らかに緊張しまくっていたせいか、妙に冷静に見ることができたかもしれない。 ていうか痴漢モノとかどうなの。犯罪じゃん。って思ってたけど、いろいろあって最後に痴漢と両思いになってハッピーエンドとか、とにかくありえなすぎてむしろ笑いがこみあげてきた。 肝心のエロシーンよりも、女優さんがパッケージほど若くなかったとか、「ぐへへ、ここは痴漢専用車両だぜ」という痴漢の台詞に噴き出しそうになったり、どっちかというとそういうくだらないことに気をとられてしまった。 「ま・・舞ちゃん。」 「ん?」 でもなっきぃはそうでもなったみたいで、熱いため息をつきながら、すごく潤んだ瞳を私に向けてきた。同性だけど、ちょっとドキッとした。 「ど、どうだった?」 間が持たなくなって、とりあえずそう聞いてみる。 「な・・・何か、よくわかんない、けど。想像してたのとは、違ったかも。」 「そうだね、舞もそう思う。」 「オ、オチもおかしかったし。キュフフ」 「だよねーあはは。」 「・・・・」 「・・・・」 沈黙。 別に、嘘の感想を言ったわけじゃないけど・・・お互いに、思ってることを上手く言えてないから、妙にぽわーっとした変な会話になっている。 「あ・・・、じゃ、じゃあ舞そろそろ帰るね。また明日!」 「あ、え、と、うん。ご、ごめんね何か。キュフフ・・」 何かきまずい雰囲気のまま、とりあえずその場はお別れすることにした。 帰りの電車に揺られながら、私はぼんやりとさっきのエロDVDのことを考えていた。 なっきぃ、ああいうの絶対怒ると思ったんだけどな。あんまりありえなすぎて、そんな感情も沸きあがらなかったのかなあ。 だって、あんな・・・・あれ?あれ? さっきまでは笑いの対象にすらなっていたその内容を思い起こすたび、頭にピンクのもやもやがかかってきた。 吊り革に手を縛られて、変なことされてあんあん言ってる女優さんの顔が、千聖に変換されてしまう。 “舞さん、やめて。アンアン” 「なああ!」 その妄想を断ち切るために、私は大声をだして座席から立ち上がった。周りの人が何事かと視線を集めてくる。 恥ずかしい。まだ降りる駅は先だけど、とりあえずドアが開いたところでホームに下りた。 だめだ、それはだめだよ舞。千聖でそんなこと考えたら・・・ 「ていうか私、痴漢目線かよ・・・・」 いろんな意味でぐったりして、私は人気のないベンチにもたれて天を仰いだ。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/289.html
「ゲキハロが終わったら、千聖と2人で旅行に行って来るから。」 それは、ゲキハロのお稽古真っ最中のことだった。 レッスン終了後、着替え中にえりかちゃんが私に告げた言葉。 「は・・・」 突然の報告に、とっさに言葉が出なかった。 「何・・・で」 やっとしぼり出した声は、私らしくもない弱弱しいもので、ちょっと情けない気持ちになる。 「何でって、これのお礼にね。」 そう言ってえりかちゃんが指で弄んだのは、キュートのメンバー全員でえりかちゃんの誕生日に贈った、ハートのネックレスだった。 「だ・・・だってそれは、舞たち全員からっ」 「うん、もちろんわかってるよ。ウチが千聖にお礼したいのは、ウチと一緒にみんなへのお返しプレゼントを考えてくれたこと。」 えりかちゃんの話は続く。 「ま、旅行って言っても、横浜だけどね。観光して、中華街でご飯食べて、ちょっといいホテルに泊まる。」 「ま、待って。ホテ、ホ、ホテルじゃなくていいじゃん!えりかちゃんちでいいじゃん!」 「えー、いやいや、それはちょっと。ムフフフ」 私の背中を、イヤーな汗が滴り落ちる。 えりかちゃんは、私の千聖に対する気持ちを知っている。知っていて、こういうことをわざわざ言うというのは、つまり、その、なんだ、うん。 「ま、舞の方が、千聖のこと好きだもん」 「・・・だとしても、千聖はウチのお誘いに乗ってくれたよ。すごく嬉しそうに。舞ちゃんは、千聖が望んでいることでも認めたくないの?」 「でも、だって・・・」 こういう時のえりかちゃんは、いつもの天然で優しいお姉ちゃんじゃない。私の知らないことをたくさん知ってる、18歳の大人の顔をしている。ここで私が「嫌だ」といっても、絶対にその予定を白紙にはしてくれないだろう。 「一応、舞ちゃんには言っておいたほうがいいと思ったから。」 「そんな思いやり、嬉しくないよ・・・」 「黙って行ったら、その方が嫌だったんじゃないの?」 悔しい。悔しいけれど、えりかちゃんは舞の気持ちなんてお見通しなんだ。しかも、純粋に私を思いやってる気持ちだけじゃなくて、自慢っていうか、上手くいえないけれど、そういう気持ちも入ってる気がする。 ふと、千聖の方に視線を向ける。 千聖は上半身下着のまま、なっきぃと何か楽しそうに話している。なっきぃが千聖のブラのタグを見ていたから、下着の話でもしてるんだろう。そういえば、今日の2人の下着は色違いだ。仲良しだから、一緒に買いに行ったのかもしれない。 だからって、別になっきぃに嫉妬心は沸かない。2人の関係は信用できる。なっきぃは千聖にすごく優しいし、もちろん変なこともしない。 その点では、愛理はちょっと怪しい(性的な意味で)。舞美ちゃんも危ない(悪気のない暴力的な意味で)。もちろん、えりかちゃんなんて論外だ。もし千聖とえりかちゃんがオソロのブラなんてつけてたら、絶対に剥ぎ取る。 「何がそんなに気に入らないの?」 えりかちゃんの声は相変わらず笑っている。わかってて聞いてるんだ。もー、普段はドMのくせに、こういう時はとことんイジワルなんだから! 「・・・わかってるなら聞かないでよ。」 そういうとこに泊まるっていうのは、つまり、そういうことをするっていうことでしょ。 去年の夏、えりかちゃんと千聖がコテージでしていたことを思い出す。 千聖の上に覆いかぶさる、えりかちゃんの白い背中。 その背中に回された、千聖の小麦色の腕。 2人の唇がくっつく。おっぱいも、大事なとこもくっつく。 えりかちゃんの茶色い髪と、千聖の黒髪が混じる。 聞いたこともないような、甘ったるくて甲高い千聖の声。えりかちゃんの湿った声。 私は悔しくてたまらなかったのに、そのことを思い出すたびに、頭がボーッとして、体がおかしくなっていた。 恥ずかしながら、夜ベッドの中で、えりかちゃんを自分に置き換えて妄想したこともある。 そして、誕生日に、千聖に同じ事をして欲しいとねだった。果たしてその願いは聞き届けられたのだけれど、いろいろ不本意な形に終わった(そもそも失神したのでよく覚えていない件)。 こんなんじゃ、えりかちゃんに全然勝てない。おまけに、こうしてまた差をつけられてしまうのを、指をくわえて眺めているだけなんて。 「事後報告、いる?」 「いらないよっ」 もう聞いてられない。私はえりかちゃんの元を離れて、舞美ちゃんに頭を撫でてもらいにいった。 「お姉ちゃん・・・」 「ん?どうしたの?よしよし」 大きい手にわしわし頭を撫でられて、少し気分が良くなった。 「えりかちゃんにいじめられた。」 「ええ?えり、コラだめじゃないかー!とかいってw」 えりかちゃんは黙って肩をすくめて両手を挙げるジェスチャーをした。欧米か。 再び千聖の方をチラ見する。すると、視線がぶつかった。何となくピースサインを送ると、首をかしげながらピースを返してくれた。三日月目のスマイル付き。あぁ、やっぱり可愛いな・・・ そのまま2人して手遊びゲームをしていたら、ふいに後ろから肩を叩かれた。 「ん?」 そこにいたのはなっきぃ。いつのまに着替えを終えたのか、バッグまで持って、今にも帰れそうな感じだ。 「舞ちゃん・・・今日、一緒に帰れる?」 「?舞と?うん、大丈夫・・・」 突然のなっきぃからのお誘い。ちょっとびっくりしたけど、もちろん嬉しくないわけがない。ちゃきちゃき着替えを済ませて、私は一足先に、なっきぃと一緒にレッスン場を出ることにした。 「今日暑いねー。」 「うん・・・」 「稽古楽しいよねー」 「そうだね・・・」 外に出てからいろいろ話を振ってみるものの、なっきぃは上の空だ。 「ねぇ、なっき・・・」 何か悩んでるなら、と口を開きかけた時、ぴたりとなっきぃの足が止まった。 「舞ちゃん。あのさ、」 「うん。」 いつもの可愛らしい声より、少し低くて真剣な雰囲気。私の背筋も伸びる。けれど、次のなっきぃの一言によって、盛大に脱力させられることになるとは・・・ 「ま、ま、舞ちゃんて、・・・・・エッチビデオとか、み、み見たことある?」 「・・・・・・・・はああ!?」 TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/seizade801/pages/142.html
ホームまで上るエスカレーターの中も、ホームも、人でいっぱいだった。 「さーちゃん」 「何」 「小学校のときさ、僕が校庭で泣いてたときにさーちゃん手繋いでてくれたじゃん。 あれ、振り払ってごめんね」 僕はあの日のことを昨日のように思い出せた。うーちゃんの声の優しさに言葉が詰まった。 「……そんなの、覚えてなくてもいいのに。僕じゃあるまいし」 「うん。でも、ごめんね。 僕、さーちゃんに嫌われたのかと思って、何でだかずっと考えてた」 「嫌ってなんかいないよ」 「……そうだったの? じゃあ、僕がずっと勘違いしてたのかな」 「うーちゃん」 「何」 「僕がうーちゃんのこと好きだって言っても、嫌いにならないでいてくれる?」 「うん」 「すごい特別な意味で言ってるんだよ」 うーちゃんは僕の気持ちを正確に知っていた。それは、返事をするときのちょっとためらう息遣いで知れた。 「うん」 うーちゃんはたくさんの荷物を片腕によせて僕の手に触れる。 そうやって、新幹線がくるまで手を繋いでいてくれた。 僕たちはまだ何もかも未熟だった。 「さーちゃんが僕のことかっこいいって思いながら見てくれてるんだと思って、ずっと頑張ってた」 「えっ。そうなの」 「うん」 僕たちの声は低い。僕たちの頬は赤い。 「向こうでも、そう思ってていい?」 「うん。また会えるよね」 「会おうよ」 新幹線がホームに入ってきて、僕たちは一気に流れ出した空気に渦巻かれる。 繋いだ手の熱さを永遠に忘れないようにしようと、僕とうーちゃんは息をとめるのに必死だった。 ~終~ スレ立て乙です。牛と蠍で書いてみました。いきなり長いの落としてしまってスマソ。 小説メニューへ
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/123.html
前へ 「・・・・ごめん。」 私よりも先に冷静になった愛理が、難しい顔のまま謝ってきた。 息が荒くなって、手が震えている。愛理らしくもない。こんな風に他人と思いっきりぶつかることなんてほとんどないんだろう。私を見つめる丸い目に、まだ興奮の色が残っている。 「あ・・・ほ、ほら、舞ちゃんも謝ったほうがいいんじゃないの?何かよくわかんないけど。ね、だよね、舞美?もーやだなあ、怒ってたのは私なのにさ。アハハ・・・」 「は、はは。そうだね。舞、愛理と仲直りしよう。」 すっかり私たちに圧倒されて落ち着きを取り戻したちぃが、慌てて私を宥めにかかった。 聞き分けのいい愛理は、すなおに仲直りの握手をしようと手を差し伸べてくる。 でも私は、その手を握ることができなかった。 ここで愛理に謝るのは、千聖のことをみんなに話していいと了承することと同じだ。それだけはできない。 「舞ちゃん、私も言いすぎた。仲直りしようよ。」 「舞ちゃん。」 「ほら、舞ちゃん意地はってないで。」 ・・・・・ああ、まただ。 また私が悪者になっちゃうのか。 そんなに、前の千聖に会いたいと望むことはいけないことなの? 「舞。」 私は無言で、舞美ちゃんの手を払いのける。 自分が正しいという自信があるのなら、たとえ味方がいなくても戦える。 でも今は、足元が揺らいで心もとない。 みんなも私と同じように、千聖のことを思っているというのがわかっているからだ。 前にもこんなことがあったな。 千聖があの千聖になっちゃうずっと前、多分まだ2人とも小学生のときだった。 私はちょっとした誤解でマネージャーからこっぴどく叱られたことがあった。 でも私は、自分は間違っていないと頑として謝らなかった。 みんなは私に謝れと言う。 私は自分の潔白を証明する言葉がわからなかったから、拳を握り締めて大人を睨み付けることしかできなかった。 その時、千聖だけは私をかばってくれた。 事情なんて知らないくせに、私を守るように前に立って、鼻水たらして大泣きしながら反論してくれたのだった。 舞ちゃんはそんなことする子じゃない、舞ちゃんは悪くない。 そんな風に泣きわめいて、全面的に私を信じてくれた。 結局それがきっかけになって私の無実は認められ、千聖は泣いてぶっさいくになった顔で照れくさそうに笑っていた。 そう、いつも千聖は私のことを一番に信じて、わかってくれるんだ。 きっと今、ここに前の千聖がいたら、あの時と同じように私を守ってくれるだろう。 私にとって、千聖は大きな支えであり、理解者でもある。その支柱がなくなったら、私はただの自分勝手なワガママ人間になってしまう。 私にはやっぱり、どうしても千聖が必要なんだ。元気で、明るくて、私を勇気付けてくれる、前の千聖が。どうしてもこれだけは譲れない。 「・・・・えっ、何これ。どうしたの?」 突然私の耳に、久しく聞いていない独特の甘い声が届いた。 「えっ、な、なんかあったの?梨沙子大丈夫?」 「もも~・・・どうしよう、みんなに千聖のことが」 梨沙子が泣きながら駆け寄っていく先には、ももちゃんと ・・・・・千聖。 軽く目を見開いた千聖が、戸惑った表情で部屋を見回していた。 「ちっさー、お帰り。」 「ええ・・・あの」 「待って!」 舞美ちゃんと千聖が話を始める前に、私はみんなを押しのけて、両手で千聖の腕をきつく掴んだ。 「きゃっ」 「舞!?」 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/268.html
第11話『帰ってきたせっちゃん――ある日のせっちゃん。短冊に願いを込めて――』 暑い日差し。抜けるような青い空。そして、棚引く飛行機雲。 例年より少しだけ早い梅雨明け。たっぷりの雨を吸収した草木が、強い日差しを浴びて生き生きと生え広がる。 柔らかい若葉が力強い緑に姿を変える。命輝く季節の到来だ。 「どうしたの、せつな? なんだか嬉しそうね」 「そうね。街全体が生き生きしてるみたいで、今日はいいことがあるような気がするの」 「天気がいいものね。この分なら今年は見られるかもしれないわね。七夕の星空を」 「七夕って?」 「はい、お待たせ。カオルちゃん特製、七夕ドーナツセットだよん」 「えっ? カオルちゃん、あたしたち頼んでないよ」 「いーのいーの。七夕なだけに棚ぼた。なんちゃって、ぐはっ」 「もう、ぼたもちじゃなくてドーナツでしょ。でも、中の穴が星形になってて面白いわね」 「外はちゃんと丸いのがいいね」 「見て、氷が星形になってる」 「いつもありがとう。カオルちゃん」 『いただきま~す』 わいわいお喋りしながら、カオルちゃんにご馳走になった。さっき中断された質問を口にする。 「ねえ、ラブ。七夕ってどんな日?」 「えーとね、――七夕はね」 「せつなって、妙に詳しかったり全然知らなかったりするわね」 「去年の今頃は、色々忙しかったよね」 「え~っと、う~んと。ブッキー……お願い」 「はいはい。七夕はね、逸話を元にして生まれた五節句の一つなの」 それは古い中国のお話。 織女って天女と牽牛という牛飼いの青年が恋に落ち、結ばれて新しい生活を始めた。 ところが、もともとは働き者であった二人が、結婚したことによって浮かれて仕事をしなくなってしまった。 それが天帝の怒りに触れ、天の川を隔てて別々に引き離されてしまう。 そして年に一度、七月七日のみ会うことが許されるようになったのだとか。 「今日は天の川を渡って二人が会える特別な日。それにちなんでお祝いしたり、お願い事をしたりする日なの」 「ずっと、許しもらえないままなのね」 「いや、せつな。これは本当のお話じゃなくて教訓を含んだ御伽噺だから」 「ええ、わかるけど、悲しいお話ね」 「そうだよね! あんまりだよ」 「ラブちゃんは忘れてたんじゃ……」 去年の今頃はまだイースだった。敵同士だった。四枚のカードを使っての命を懸けた死闘。 それも大事な記憶。大切な思い出の一つ。ようやく受け止めることができるようになってきた。 自分のせいで、去年はお祝いどころではなかっただろう。申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 「せつなちゃんは、お願い事何にするの?」 「そうね。すぐには決められないわ」 「今夜は笹に短冊をつるしてお願い事をするの。考えておいた方がいいよ」 「あたしはね~」 「ラブのは聞かなくてもわかるわよ」 「口ぐせだものね。美希ちゃんはモデルで活躍かな。後は和ちゃんの健康とか」 「そうね。ブッキーは人と動物がもっと仲良くなれますように、よね。毎年だもの」 みんなの楽しそうなお話を聞いていて思う。本当に、この世界はお願い事が多い。 色々な行事や自然現象。何か理由を見つけてはお願い事をする。 幸せになりたい。幸せであってほしい。そんな想いが強いからだろう。だからこの世界には幸せが満ちている。 くだらない、とは思わない。例え叶わなくても、想い、願うことには大きな意味がある。 人々の想いや願いを、翼に変えて戦った私達にはそれがよくわかった。 「せつなっ、今日はお買い物して帰ろう。七夕にぴったりの夕食思いついちゃった」 「そうね、私たちで作りましょう。美希、ブッキー。またね」 今日は――ううん、今日も精一杯楽しもうと思った。 織女と牽牛の再会を祝いながら。 大切な人と別れて暮らしている人達の再会を願いながら。 『帰ってきたせっちゃん――ある日のせっちゃん。短冊に願いを込めて――』 大きなお鍋にたっぷりのお湯。ぐつぐつ煮立ったらそうめんをほぐしながら―― 「待って、せつな。今夜は束のままで茹でるの。端っこを紐でしばってね」 「バラバラにならないように片側だけを縛るのね。わかったわ」 茹で上がったらすぐに流水で熱を取って氷に浸す。くくっている紐の部分を切り落としたら、綺麗な束のそうめんが出来上がった。 広いお皿に束の形を崩さないように盛り付けていく。色取り取りの野菜とたっぷりの氷で飾り付けたら完成だ。 そしてメインは鮎の塩焼き。香ばしい匂いが鼻をくすぐる。 「おとうさん、おかあさん、お待たせ! ラブとせつな特製の七夕スペシャルだよ」 「カオルちゃんのお店のメニューで思いついたらしいの。私は手伝っただけよ」 「これは綺麗だなあ」 「七夕をこんな風にお祝いにしちゃうのは始めてね。楽しくなっちゃう」 『いただきま~す』 型崩れしてないそうめんは天の川のイメージ。 スライスしたオクラは星の形。スティック状に切ったキュウリとニンジンが美しく彩る。 縦に長く切った焼きなすびと玉子焼き。流れるような盛り付けはせつなのセンスだ。 メインディッシュの鮎は代表的な川のお魚。そして健康的なタンパク質。見た目や意味だけではなく、栄養のバランスも申し分ない。 もちろん味も美味しくてさっぱりしてて、大好評だった。 「お母さんのお願い事叶っちゃったわね」 「おかあさんのお願いって?」 「ラブの生まれた翌年の七夕にね、優しくて料理の上手な子に育ってほしいって書いたのよ」 「そんなこともあったね、料理ってところがお母さんらしいなあ」 「だって、お料理は食べるのも作るのも大好きですもの」 楽しい家族の団欒。穏やかな気持ちで静かに聞いていたせつなを、あゆみが優しく抱き寄せた。 優しい手のひらから伝わる温もり。 大切な娘はあなたのことでもあるのよ。そう言っているのが感じられる。そっと目を閉じて体を預けた。 「さあ、せつな。飾りつけ終わらせちゃおう」 「ええ、笹に結んでいけばいいのね」 おとうさんがもらってきてくれた笹に、折り紙で作っておいた飾りを付けていく。 あみかざりに、ふきながし、いちまいぼしに、ひしがたつづり。ちょうちんに――たんざく。 「後は、短冊ね。私は……後にするわ。まだ決めてないの」 「たくさんありすぎて迷っちゃうとか?」 「どうかしらね。たくさんあるような。ひとつもないような」 願いはある、それは凄くたくさん。 私の願いは……。 チクリ、と胸が痛む。心の奥底から湧き上がる黒い感情。 それは寂しさ――それは乾き――それは欲望――それは渇望。 首を振って、その想いを飲み込んだ。得られる間は享受してもいい。だけど、自ら望むのはいけないことに思えた。 自ら望み、願えば、私にも罰が下るような気がした。 「せつな、お星様が綺麗だよ。あれが天の川かな」 「本当ね。どれが織姫と彦星なのかしら?」 「あれだよ。わかるかい、天の川の中心に大きく光る二つの星があるだろう」 「三つあるわ。おとうさん」 「あたしも三つに見えるよ」 「左の一つは白鳥座のデネブだ。織姫と彦星を加えて、夏の大三角形と呼ばれているんだ」 「天の川を挟む二つがそうなのね」 「上が織姫で、下が彦星よ、せっちゃん。織姫の方から会いにくると言われてるの」 幸せに溺れ、成すべきことを見失って処罰された二人。だけど、引き離され、胸を焦がしながら勤めに励む人生が正しいとも思えなかった。 今は、ゆっくり考えようと思う。そのための時間でもあるのだろう。 私は、間違えずに歩みたいと思う。今までが間違えだらけだったのだから。 「せつな、あたしは年に一度なんて嫌だからね。幸せは一緒にゲットするって決めてるんだよ」 「ええ……そうね。ずっと一緒に居られたらいいのにね」 こちらの気持ちを見透かしたかのようなラブの言葉。きっとラブは知っている。 私の迷いの、答えを。 それでも、自分で見つけなければならない気がした。 星空を見上げる。 どれが織姫と彦星か見失った。そう、織姫と彦星も無数の命の輝きの一つでしかない。 この世界には、ううん。色んな世界に無数の命があって、その全てが精一杯に輝き、幸せを求めている。 なんだか、その全てがとても愛しくなった。 「私の願い、決まったわ」 「えっ、なになに? あたしに見せて」 「恥ずかしいから嫌よ。見たらしばらく口きかないわよ」 「え~ひどいよ、せつなぁ」 「さっ、明日も学校よ。宿題と予習済ませるまで寝かさないんだから!」 「宿題だけでいいよ~。せつな、厳しいよ」 「「おとうさん、おかあさん、おやすみなさい」」 「おやすみなさい。ラブ、せっちゃん」 「おやすみ、夜更かしするんじゃないぞ」 ラブの手を引いて部屋に駆け上がっていくせつな。あゆみと圭太郎は嬉しそうに見送った。 少し前までは、誰かの手を自分から引いて行動するような子じゃなかった。本当に、明るくなったと思う。 ラブとせつなの短冊を手ですくうようにして読んでみる。 七夕の短冊は、子の夢や願いを知る大事な意味もあった。 “みんなで幸せゲットできますように” ラブ “みんなの願いが叶いますように” せつな 「二人とも良い子だな。双子みたいに同じことをお願いして」 「違う……同じじゃないわ。せっちゃんのお願いには、自分の幸せが入っていないの」 あゆみの表情に、悲しそうな影が差し込む。 ずいぶん明るくなった。自分から楽しいことを求めていくようになった。 だけど、変わってないんだ。 必要なら、あの子はいつでも自分の幸せを手放すことが出来る。――全く、惜しむこともなく。 そんな覚悟なんていらないのよ、せっちゃん。 人は誰だって、まず一番最初に自分を幸せにしなくちゃいけないの。 他の誰より、自分は自分の味方でなきゃいけないの。自分を愛してなきゃいけないの。 圭太郎があゆみの肩を抱いた。 「焦ることはない、僕らは家族だ。ゆっくり伝えて行こう。そして、僕らの願いは決まったね」 「ええ、そうね」 “二人の娘が、幸せになれますように” 圭太郎・あゆみ 風に吹かれて、せつなの短冊が大きく揺れた。 どうか “みんなの願いが叶いますように” そう言っているかのようだった。
https://w.atwiki.jp/donchan2248/
どんちゃんまとめ@wikiへようこそ!! ここではどんちゃん/どんちゃんねるに関する情報をまとめていきます! 各情報がまとめられたページはページ一覧の更新順 の所で確認できます! ☆wiki内での新規ページ作成は誰でも出来るので、ぜひ色々な記事を作ってください☆ 【関連リンク】 【YouTube】3代目どんちゃんねる https //m.youtube.com/@user-zn9is7ue7n 【YouTube】どん/ネットの闇調査隊 https //m.youtube.com/@user-lo5gk7vg5b X(Twitter) https //twitter.com/donchan2248?lang=ja ファンティア https //fantia.jp/fanclubs/351831%5D ツイキャス(donchan2248) https //twitcasting.tv/donchan2248 ツイキャス(alive2248) https //twitcasting.tv/alive2248 ファンアート #俺とお前の絵 切り抜き・MAD動画 #俺とお前の作品 YouTubeメンバーシップ名前 「どんちゃんと愉快な仲間たち」 ツイキャス(donchan2248)・ファンティアサポーター名 「メス奴隷調教キット」 【ファン二次創作ゲーム】 どんちゃん検定 どんちゃんクイズ https //buddymeter.com/quiz.html?q=XmeHQZ6 【wikiの編集方法】 @wikiの基本操作 編集モード・構文一覧表 @wikiの設定・管理 【編集にあたり参考にしたりするもの】 Twitter(X)・YouTubeチャンネル・ツイキャス・視聴者が持っているスクショ等・Waybackmachine このどんちゃんwikiの情報はほとんどがalive2248期から現在の情報を元に記載されています。
https://w.atwiki.jp/etorarowa/pages/170.html
「竿役なんざ怖くねぇ、竿役なんざ怖くねぇぇぇぇぇぇっっ!」 『ゲコッ』 「あっ、でっかい蛙――――」 その後、味が不味いということで巨大蛙に吐き出された、涎まみれのイキリ邪神が地面に転がっていたという 【邪神ちゃん@邪神ちゃんドロップキック】 [状態]:全身涎塗れ [装備]: [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3 [思考] 基本:主催ぶっ殺す!! 1:汚された…… [備考] ※参戦時期は後続の書き手にお任せします 『NPC紹介』 【ジャイアントトード@この素晴らしき世界に祝福を!】 『この素晴らしき世界に祝福を!』において登場するカエル型モンスター 座っている状態の高さが3メートルを超える巨体の持ち主で、山羊や牛を一頭丸呑みにすることが出来る 捕食行動中は頭を上に向けたまま動かなくなるため、そのタイミングで攻撃を仕掛ければ比較的容易に撃破可能 また、打撃攻撃に対しての強い耐性や、金属が苦手という点もある
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/100.html
「みぃたん、そんなに落ち込まないでよ。そういうみぃたんのお気楽なところとか、天然に救われることだっていっぱいあるんだから、ね?」 なっきぃが必死でフォローしてくれたけれど、何だか褒められてるのかけなされてるのかわからない。 もうちょっと人の変化に気づけるようにならないと・・・ さすがに反省しながらレッスン室に戻ると、もうすっかりお通夜ムードになってしまっていた。 愛理と舞ちゃんはキュートの中では泣かない側の二人だ。 こういう時なっきぃみたいに感情を爆発させない分、複雑な思いを自分の中に溜め込んでしまうんだろう。 「・・・あ、舞美ちゃん。今日はとりあえず解散でいいって。もうえりかちゃんと栞菜は1階に下りたよ。明日はお休みだから、今後の予定についてはマネージャーさんから改めて連絡があるって。」 ちっさーの荷物をまとめながら、愛理が丁寧に報告してくれた。 「そか、じゃあ私ちょっとマネージャーのとこ行ってくるから、4人で先に帰ってて。千聖のこと、お願いしていいかな。」 険しい顔の舞ちゃんが、無言でうなずいた。 まるで自分以外の全てからちっさーを遠ざけるかのように、ちっさーの顔を自分の胸に押し付けている。 舞ちゃん、怖い。 大丈夫だよね?愛理となっきぃもいるし。 その後私はマネージャーに今回の出来事について聞かれ(と言っても本当に何にも知らないんだけど)、リーダーなんだから周りを見てやれと注意を受け、ついでにちっさーのあのキャラはどうにかできないのかとまで言われた。 私は年長者だしリーダーだから、いろいろ指摘を受けるのはしょうがないんだけど、 ちっさーのことまで言われるのはどうしても納得がいかなかった。 「あれはちっさーのせいじゃないんです!」 「わざとああいうキャラにしてるんじゃありません!」 言い返すことなんてめったにない私が声を張ったから、マネージャーは目をパチクリさせてびっくりしていた(私も自分でびっくりした)。 マネージャーも機嫌が良くない日だったのかもしれない。ちっさーの状況はわかってるはずなのに、わざわざこのタイミングで言ってくるなんて。 もちろん口論にはならなかったけれど、なんとも気まずい感じで部屋をあとにした。 人に大きい声出すなんて、あんまり気持ちのいいものじゃない。 「はい、ドンマーイ・・・・へぇそうかーい・・・ハァ」 元気が出るかと思って呟いてみたけれど、逆にむなしくなってしまった。 こんな日はさっさと帰るに限る。 ストレス解消に一人ファッションショーでもやろうかな。 愛犬たちと夜のお散歩に行くのもいいかもしれない。 なるべく楽しいことを考えながら荷物を取りにロッカールームのドアを開けると、暗い部屋の隅っこに人影が。 「うわっ!!」 あわてて電気をつける。 体育座りでうつむいていたのは、舞ちゃんたちと帰ったはずのちっさーだった。 小柄でショートカットの風貌は、一瞬座敷わらしかなんかの妖怪に見えた。 「な・・・なんだ、ちっさーか。どうしたの?みんなは?」 ちっさーは無言で首を振る。 「ちっさー?」 顔を覗き込んでも、ちっさーは何にも言ってくれない。 困ったな。 私はあんまり勘のいいほうじゃないから、こういう場合、無言の相手から何かを察してあげるというのができない。 「とりあえず、出ようか。」 ちっちゃい子を抱っこするみたいによっこいしょとちっさーを持ち上げた瞬間、かばんに入れっぱなしのケータイが鳴った。 「あ、ごめんちょっと待って。」 愛理からメールが届いていた。 【千聖が「どうしても舞美ちゃんを待ちたい、来るまで一人にしてほしい」と言うので、私たち3人は玄関の前まで移動しました。このまま舞美ちゃんと千聖が来るの待ったほうがいいかな?返事まってます。 舞ちゃんが怖いよー!】 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/61.html
前へ 明日菜、明日の準備はできていて?忘れ物をしてはだめよ。」 返事ができない。いろんなことが頭の中で整理しきれなくて、自分がおかしいのかお姉ちゃんがおかしいのかわからなくなってきた。 「明日菜。こっちおいで。」 タイミング良くパパが呼んでくれたから、お姉ちゃんの手から逃れるように体を離した。 「パパ。」 「うん、大丈夫だ。何にも心配ない。」 私はまだ何にも言っていないのに、全てを見透かしたかのようにパパは笑って頭を撫でてくれた。 「明日菜も疲れただろ。お姉ちゃんが無事で本当に良かったな。」 「・・・うん。」 部屋に戻ってぼんやりしていると、お姉ちゃんが「まあ。」とか言ってる声が聞こえた。 ちょっと気になって廊下に出たら、ゴミ袋を両手に持ったお姉ちゃんにぶつかりそうになった。 「何やってんの。」 「整理整頓を。私ったら、どうしてこんなに散らかしていたのかしら。恥ずかしいわ。」 「・・・手伝う。」 ゴミ袋を奪い取って、玄関に運ぶ。 お姉ちゃんの部屋を覗いたら、ママにゴミルームとまで言われていた空間が、すっかり綺麗になっていた。 そして、やっとこのキャラがお姉ちゃんのいたずらじゃないことを理解した。いつも部屋の片付けから逃げまくっているお姉ちゃんが、悪ふざけのために大嫌いな掃除までするはずがない。 「手伝ってくれてありがとう。」 「別にいいよ。布団敷いてくるから、どいて。」 お姉ちゃんを押しのけるようにして寝室に入って、乱暴に布団を敷き始めた。 こんなことが、現実にあるんだ。頭打って性格が変わっちゃうなんて。まるでマンガみたいだ。心臓がドキドキする。 「明日菜ねーちゃんこえー。布団ぐっちゃぐちゃじゃん。」 「うっさいよ。早く寝るよ。」 絡んでこようとする弟を上掛けで押さえつける。ギャーギャー騒いで、全然言うことを聞かない。 「どうしたの、2人とも。お布団が乱れてしまってるわ。」 そこに、お姉ちゃんがひょっこり現われた。弟は標的を私からお姉ちゃんに変えたのか、腰をかがめて突進していく。 ちょ、ちょっと待って。その人は今までのお姉ちゃんとは- 「もう、暴れては駄目でしょう?」 押し倒されてベソかくかと思っていたら、お姉ちゃんはまた弟をギュッと抱いて止めてしまった。 「もう寝ないと駄目よ。また明日遊びましょう。お布団直してあげるわね。」 私達は逆らえずに、お姉ちゃんが手際よく整えた布団にねっころがった。 「お休みなさい。」 部屋の明かりをちっちゃい電球1個だけにして、お姉ちゃんが出て行った。 「ねえねえ、お姉ちゃんのことなんだけどさ。」 隣で寝そべってる弟に小さい声で話しかけた。 「今日のお姉ちゃん、どう思う?キモいよね?もっと男っぽかったよね?」 「それより、さっきちさと姉ちゃんにギューッてされた時顔におっぱいが当たってさあ。やっべー」 「あっそ。」 だめだ。男子って本当頼りにならない。バーカ。 中学生のおっぱいやべーとかずっと言ってる弟を無視して、お姉ちゃんが後で寝るスペースに視線を移した。 枕元に、薄いピンクの可愛いパジャマが綺麗に畳んで置いてある。 昨日まで着ていたTシャツ短パンが恥ずかしいと急に言い出して、ずっと前にママが買ってきたっきり一度も着てなかった女の子っぽいやつを、クローゼットから出してきたらしい。 あのよくわからないお姉ちゃんが、今日は隣で練るのか。いや、それどころかこれからずっと一緒に暮らしていくのかと思うと、なんかげんなりしてしまった。 変わってしまったお姉ちゃんが嫌だというより、自分がこれからどうしたらいいのかわからない。 リビングからはパパとママ、お姉ちゃんの笑い声が聞こえる。 ドアの隙間から覗くと、リップとパインを膝に抱いて微笑んでる姿が見えた。 うちのわんこたちは、結構人見知りだ。ああやって大人しく抱っこされているんだから、犬達から見たら今までどおり、優しくて可愛がってくれるお姉ちゃんなんだろう。 普段と何も変わらない風景の中に、性格だけ別人なお姉ちゃんがすっぽりと入り込んでいる。 あのまま家族になじんでしまうのかな。 パパとママはあんな調子で、弟はアホで、私だけがこうやってグズグズ悩んでいるみたいだ。 「もうそろそろ寝ますね。本当に今日は心配をかけてしまって、ごめんなさい。」 ヤバいな。そろそろお姉ちゃんがこっちに来そうだ。もうとっくに寝息を立ててる弟の方に体を詰めて、寝てるふりをした。 しばらくして、細く開いたドアの隙間から、お姉ちゃんがそっと入ってきた。 「もう、寝崩しちゃって。お腹が冷えてしまうわ。」 私と弟の夏がけを直してから、手早くパジャマに着替えたお姉ちゃんは、すぐに横になって眠ってしまった。 私や弟のスペースが狭くならないように、端っこの方で丸まっている。 それを見ていたら何か切なくなってきて、私は2人を起こさないように静かに部屋を出た。 「パパ。ママ。」 「明日菜。まだ起きてたの?寝られない?」 「ちょっと、話がしたいんだけど。」 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/2898.html
674 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/01/29(火) 01 00 45 ID ??? 困ったちゃんTRPG…MKPの称号を手に入れるために冒険するのか? 675 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/01/29(火) 01 02 28 ID ??? あれだろ、GMもPLも困ったちゃんだから GMがヴァンパイア数百体出したり、その屋敷に火つけるんだろ 676 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/01/29(火) 01 06 58 ID ??? 674 じゃあさしずめ 冒険…鳥取でプレイ 魔王討伐…コンベに出る 民衆(困スレ住民)が多い場所に冒険すると武勇伝(報告)が広まりやすいぞ! ってとこか 677 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/01/29(火) 01 07 01 ID ??? メタRPGならゲイシャガールウィズカタナがあるな。 あんな感じでみんなで困ったちゃんをやって台無しを目指すのか。 678 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/01/29(火) 01 21 37 ID ??? レレレ 679 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2008/01/29(火) 01 24 38 ID ??? むしろマルチ系カードゲームにw ノリはダイナマイトナースで スレ148