約 5,369 件
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/75.html
追跡表 作品別追跡表 【戯言シリーズ】 【人間シリーズ】 【世界シリーズ】 【新本格魔法少女りすか】 【刀語】 【物語シリーズ】 【めだかボックス】 各キャラクターごとにSSを追跡します。 並びは五十音(名簿)順です。 名前 話数 OP 深夜 黎明 早朝 第一回放送 朝 午前 昼 第二回放送 日中 午後 夕方 第三回放送 夜 夜中 真夜中 第四回放送 深夜 黎明 早朝 第五回放送 朝 午前 早朝 哀川潤 8 019 038 058 087 096 109 117 132 阿久根高貴 3 002020 028 阿良々木火憐 7 001025 047 057 077 086 093 阿良々木暦 1 003 宇練銀閣 6 007 028 058 087 115 122 江迎怒江 9 014 031 044048 055072 103 118 129 想影真心 7 016 030 053 097 109117 132 貝木泥舟 11 014 031032 044048054 067 085 100 109 128 供犠創貴 13 020 046 073 083087 099 120 124 137 144 150155 158 串中弔士 8 008 036 042 076 095102 116 126 玖渚友 16 011 039 049054 067 085 112 125132 133137 144 155 158 162164 球磨川禊 24 008023 033 048056 072 090 097 108115 121130 135137 139 145147 149152 160 165167 169173 黒神真黒 5 012 042059 091 105 黒神めだか 16 003012 034036 070074079 094098 113 124 134 139 145147 149 西条玉藻 9 011 032 048 055 082 096 109 117 131 西東天 7 021 029 076 095102 116 126 皿場工舎 1 000 戯言遣い 24 000 005018 037 045055 072 084088 095101 114 118 121130 135137 139 151154 156 161 169172 零崎軋識 5 006025 043 069 089 零崎双識 9 013 023 048 078 101105 120 127129 零崎人識 21 015 030035 043048 078 101105 120 121123125 137 139146 150153155 158 162164 零崎曲識 1 009 戦場ヶ原ひたぎ 15 002022 033 042061 064074080 104 119 123125 137 139146 左右田右衛門左衛門 6 023 034 062 081 098 111 ツナギ 7 018 037 045060 072 103 118 とがめ 3 001016 030 時宮時刻 5 015 030 052 071 090 匂宮出夢 3 010 031035 八九寺真宵 23 005018 037 045060 072 084088 095101 114118 121130 135137 139 151154 156 161 169172 羽川翼 17 017 041045 068 082 110 122130 135137 139 151154 156 161 169173 櫃内様刻 19 015 030 049 085 093 107 125 131136 142 154 156158 162164 166 169171 否定姫 3 027 050 066 176 人吉善吉 7 002022 033 042061 064074 日之影空洞 4 017 038 055 072 病院坂黒猫 2 015 030 病院坂迷路 2 015 030 浮義待秋 1 007 真庭喰鮫 1 006 真庭狂犬 1 011 真庭蝙蝠 17 013020 046 073 083087 099 120 124 137 144 150153 160 163 168170 真庭鳳凰 15 004 037 053 066 092102 116 126 128131136 140143 156158 水倉りすか 16 009 040 059 078 101105 120 124 137 144 155 158 164 168170171 無桐伊織 15 011 039 049 085 093 107 125 131136 142 154 156158 162164 宗像形 16 001025 047 051 077 086 093 107 116 125132 133137 144 150153 鑢七花 20 004 024040 075 094105 111120 127129137 145147 149152157 160 163 168170 鑢七実 25 010 031035 043048056 072 090 097 108115 121130 135137 139 145147 149152 160 165167 169172 以下、新西尾維新バトルロワイアルにおけるネタバレを含む + 開示する 名前 話数 OP 深夜 黎明 早朝 第一回放送 朝 午前 昼 第二回放送 日中 午後 夕方 第三回放送 夜 夜中 真夜中 第四回放送 深夜 黎明 早朝 第五回放送 朝 午前 早朝 不知火袴 6 000 063 138 159 175 176 日和号 8 030 093 141 151154 156 167 169 斜道卿壱郎 4 063 138 175 176 都城王土 5 083 123 141 159 176 萩原子荻 6 106 112 123 138 159 176 四季崎記紀 2(16) (082) 106 (110) (122)(130) (135)(137) (139) (145)(147) (149)(152) (160) (165) (169)(172) 176 兎吊木垓輔 1 112 安心院なじみ 8 072 130 135127 148151 159 174 紫木一姫 2 138 176 神原駿河 2 138 176 不知火半袖 4 148 159 174 176
https://w.atwiki.jp/sinnisioisinrowa/pages/89.html
◆xzYb/YHTdI氏が手掛けた作品 話数 題名 登場人物 018 一寸先は口!? 戯言遣い、ツナギ、八九寺真宵 020 反抗開始 供犠創貴、真庭蝙蝠、阿久根高貴 021 その男、取り扱い注意にして 西東天 022 「許せねえな」 戦場ヶ原ひたぎ、人吉善吉 023 虚数にしてやるぜ!!! 左右田右衛門左衛門、球磨川禊 025 殺人鬼の邂逅 零崎軋識、阿良々木火憐、宗像形 027 夢の『否定』 否定姫 028 破壊臣に墓石 宇練銀閣、阿久根高貴 031 雑草とついでに花も摘む 匂宮出夢、鑢七実、貝木泥舟、江迎怒江 036 +から堕ちた者と-に認められなかった者 串中弔士、黒神めだか 038 知られざる英雄(知られた英雄) 哀川潤、日之影空洞 040 時、虚刀、学園にて 水倉りすか、鑢七花 042 喫茶店でのお知らせ 串中弔士、、戦場ヶ原ひたぎ、人吉善吉、黒神真黒 044 いのじキャット 戯言遣い、ツナギ、羽川翼、八九寺真宵 048 冒し、侵され、犯しあう(前編)冒し、侵され、犯しあう(中編)冒し、侵され、犯しあう(後編) 西条玉藻、零崎人識、零崎双識、鑢七実、貝木泥舟、球磨川禊、江迎怒江 049 今まで楽しかったぜ 玖渚友、無桐伊織、櫃内様刻 052 善意の裏には悪意が詰まっている 時宮時刻 053 骨倒アパートの見るものは 想影真心、真庭鳳凰 057 図書館での静かな一時 阿良々木火憐 064 傀 コヨミモノ 物 ガタリ 語(上) かんにんぐ編傀 コヨミモノ 物 ガタリ 語(下) こたえあわせ編 戦場ヶ原ひたぎ、人吉善吉 067 静寂を切り裂く脆弱な義理策 玖渚友、貝木泥舟 072 この世に生きる喜び -Theory that can be substituted-この世に生きる喜び -Realize the dream-この世に生きる喜び -Theme song-この世に生きる喜び -Pleasure with me to live in this world- 戯言遣い、ツナギ、鑢七実、八九寺真宵、球磨川禊、江迎怒江、日之影空洞、(安心院なじみ) 073 走る走るおれたち 供犠創貴、真庭蝙蝠 079 ローリンガールなロンリ―ガール 黒神めだか 084 帰り道――――100%悪巧みで書かれた小説です――――帰り道――――120%悪巧みで書かれた小説です―――― 戯言遣い、八九寺真宵 114 虚構推理 戯言遣い、八九寺真宵 121 鏡に問う 戯言遣い、零崎人識、鑢七実、八九寺真宵、球磨川禊 129 ×××××&×××××――「あ」から始まる愛コトバ 零崎双識、鑢七花、江迎怒江 136 きみとぼくのずれた世界 無桐伊織、櫃内様刻、真庭鳳凰 139 球磨川禊の人間関係――黒神めだかとの関係球磨川禊の人間関係――鑢七実との関係 戯言遣い、零崎人識、鑢七実、戦場ヶ原ひたぎ、羽川翼、八九寺真宵、黒神めだか、球磨川禊、(四季崎記紀) 144 牲犠 玖渚友、供犠創貴、水倉りすか、真庭蝙蝠、宗像形 147 めだかクラブ 鑢七花、鑢七実、黒神めだか、球磨川禊、(四季崎記紀) 153 背信者(廃心者) 零崎人識、真庭蝙蝠、宗像形 161 解体サーキュレーション 戯言遣い、羽川翼、八九寺真宵 164 水倉りすかの駄人間証明 玖渚友、零崎人識、無桐伊織、櫃内様刻、水倉りすか 167 おしまいの安息(最後の手段) 鑢七実、球磨川禊 168 「柔いしのびとして」 水倉りすか、鑢七花、真庭蝙蝠 171 Q&A(12+1) 櫃内様刻、水倉りすか 172 Q&A(玖&円) 戯言遣い、鑢七実、八九寺真宵、(四季崎記紀) 173 Q&A(旧案と宴) 羽川翼、球磨川禊 176 檻と澱 櫃内様刻、不知火袴、斜道卿壱郎、都城王土、萩原子荻、四季崎記紀、紫木一姫、神原駿河、不知火半袖 9回 戯言遣い、八九寺真宵 8回 鑢七実、球磨川禊 5回 零崎人識、真庭蝙蝠、櫃内様刻 4回 江迎怒江、戦場ヶ原ひたぎ、黒神めだか、玖渚友、鑢七花、 水倉りすか、羽川翼 3回 人吉善吉、貝木泥舟、ツナギ、供犠創貴、宗像形、 無桐伊織、四季崎記紀 2回 阿久根高貴、串中弔士、阿良々木火憐、日之影空洞、零崎双識、 真庭鳳凰 1回 西東天、左右田右衛門左衛門、零崎軋識、否定姫、宇練銀閣、 匂宮出夢、哀川潤、黒神真黒、西条玉藻、時宮時刻、 想影真心、安心院なじみ、不知火袴、斜道卿壱郎、都城王土、 萩原子荻、紫木一姫、神原駿河、不知火半袖 西尾ロワのエースの一人 繋ぎ回が主で伏線を張るのも拾うのも上手 また多数のキャラを一度に動かすのも得意 個人的にオオウソツキからの傀物語、ネットカフェ〜からの静寂を切り裂く〜のリレーは見事 -- 名無しさん (2011-11-19 00 02 25) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/sysd/pages/5368.html
西尾レントオール 本店:大阪市中央区東心斎橋一丁目11番17号 【商号履歴】 西尾レントオール株式会社(1983年12月24日~) 西尾リース株式会社(?~1983年12月24日) 東北無煙炭鉱株式会社(?~?) 【株式上場履歴】 <東証1部>2013年7月16日~ <大証1部>2002年3月1日~2013年7月15日(東証に統合) <大証2部>1993年6月29日~2002年2月28日(1部指定) <店頭>1990年8月24日~1993年6月28日(大証2部に上場) 【合併履歴】 1971年5月1日 西尾実業株式会社 【沿革】 当社は、株式額面変更のため昭和46年5月1日を合併期日として、当時の西尾実業株式会社(実質上の存続会社)が休業中の西尾リース株式会社(旧社名東北無煙炭鉱株式会社、形式上の存続会社)に吸収合併される形態での合併を行い、昭和58年12月24日に西尾レントオール株式会社と商号変更し、現在に至っております。したがいまして以下に記載する合併期日前にかかる諸事項につきましては、別段の記述がない限り実質上の存続会社についてのものであります。 昭和34年10月 電気器具の部品加工並びに販売を目的として宝電機株式会社を設立。 昭和38年3月 宝電産株式会社に商号変更。 昭和40年9月 道路機械のレンタルを開始。 昭和40年10月 西尾実業株式会社に商号変更。 昭和44年1月 西尾建設機械販売株式会社(現西尾開発株式会社 連結子会社)を設立。 昭和46年5月 合併により西尾リース株式会社に商号変更。 昭和52年2月 米国スピードショア社との技術提携により、スピード土留の国産化に成功。 昭和53年4月 一般消費者向け民生品を取扱う総合レンタル業に進出し、我国最初の総合レンタルショップを開店。 昭和53年9月 株式会社大塚工場(連結子会社)に資本参加。 昭和54年3月 米国スピードショア社との資本提携により合弁会社日本スピードショア株式会社(持分法適用関連会社)を設立。 昭和55年10月 移動式小型投光機「ミニテラスター」を独自開発し、レンタル・販売を開始。 昭和56年4月 総合レンタルショップのフランチャイズチェーンの展開を開始。 昭和58年8月 トンネル機械のレンタル専門会社、三興レンタル株式会社(連結子会社)を設立。 昭和58年12月 西尾レントオール株式会社に商号変更。 昭和59年10月 イベントなど催事の企画運営業務を開始。 昭和61年3月 通信レンタルセンターを設置、情報通信機器のレンタルに本格進出。 平成元年9月 卸レンタル専門会社、有限会社アールアンドアール(連結子会社)を設立。(平成4年8月株式会社に変更) 平成2年8月 社団法人日本証券業協会の承認を得て店頭売買銘柄として登録。 平成4年1月 日本の建設会社の東南アジア進出にともなう現地でのレンタル需要の拡大を受けてNISHIO RENTALL(M)SDN.,BHD.(連結子会社)を設立。 平成4年10月 東日本地域におけるトンネル機械のレンタル専門会社、株式会社トンネルのレンタル(連結子会社)を設立。 平成5年4月 技術研修所を設置。 平成5年6月 大阪証券取引所市場第二部に上場。 平成6年9月 首都圏に高所作業機集中管理センターを設置。 平成6年12月 本社ビルを新築竣工、移転。 平成8年4月 関西圏にイベント展示会用機材の営業拠点を集約した物流センターを設置。 平成9年1月 首都圏にイベント展示会用機材の営業拠点を集約した物流センターを設置。 平成10年5月 演出用小道具等の総合レンタル会社サンガレン株式会社(連結子会社)をグループ化。 平成10年7月 関西圏に高所作業機集中管理センターを設置。 平成10年10月 土木建設現場向け泥濁水処理設備のレンタル専門会社株式会社三央(連結子会社)をグループ化。 平成10年11月 測器部門がISO9002の認証を取得。 平成11年4月 都市土木に強みを持つ建設機械のレンタル会社サコス株式会社[ジャスダック証券取引所上場](連結子会社)及びKENKI CENTRE PTE.LTD.(現NISHIO RENT ALL SINGAPORE PTE.LTD.(連結子会社))をグループ化。 平成12年2月 首都圏・関西圏の高所作業機集中管理センターでISO9002の認証を取得。 平成13年3月 タワークレーンのレンタル部門でISO9002の認証を取得。 平成14年3月 大阪証券取引所の市場第一部に指定。 平成18年8月 中部圏の高所作業機集中管理センター並びに同所営業部門がISO9001:2000の認証を取得。 平成18年10月 トンネル機械のレンタル・販売・修理等を行う新ケービーシー株式会社(連結子会社)が営業開始。 平成19年5月 サンガレン株式会社(連結子会社)の全事業を西尾レントオール株式会社が継承し、サンガレン営業部として設置。
https://w.atwiki.jp/anothermogidra/pages/2862.html
2022年ドラフト候補 内野手 168cm 67kg 右投左打 中京 2000年度生(4年) しっかり振り切り2年秋、3年春と打率4割超をマークした打力にスピードも。遊撃守備にも定評 指名者コメント一覧2022年度第16回、巨人:育成3位(22/08/06) URL一覧ドラフト候補の動画とみんなの評価 球歴 一球速報(打撃成績) 中京学院大公式HP 高校野球ドットコム(高校時代) 指名者コメント一覧 2022年度 第16回、巨人:育成3位(22/08/06) コメントなし URL一覧 ドラフト候補の動画とみんなの評価 https //player.draft-kaigi.jp/PlayerInfo.php?PlayerId=22058 球歴 https //www.kyureki.com/player/14115/ 一球速報(打撃成績) https //baseball.omyutech.com/playerTop.action?teamId=37714 playerId=2450508 中京学院大公式HP https //www.chukyogakuin-u.ac.jp/campus-life/club/regulation-baseball/member/index.html 高校野球ドットコム(高校時代) https //www.hb-nippon.com/player/15977 2022プロ志望届提出者 2022大学生内野手 2022大学生野手 東海地区大学 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/nisioisinnbr/pages/117.html
誰事(戯言) 「出て来い」 左右田右衛門左衛門の一言、 近くにはその声に反応する者は居ない……はずだった。 しかし、 「……よく、気が付きましたね」 一人が少し離れた建物の影から出てき、 「ちょ、ちょっと、勝手に出て行くんじゃないわよ」 同じ建物の影から二人目も出てきた。 その答え。 それに対する左右田右衛門左衛門の返答は簡潔。 「不気付」 「気付かずに居たのは、精々虚刀流だけだろう」 まあ、気が付いていたかも知れないがな。 そう付け加えながらも当然の様に言う仮面の≪それ≫を見ながら、 戯言遣いはしっかりと確信した。 ああ、こいつは危険だ、と。 世界が違う怪物だ、と。 あの匂宮出夢と同じ様に、 まるで御伽噺の様な存在だと、 確信した。 いや、確信させられた。 それ程の番外的な、 普通に生活を送っていれば、 会う筈の無い相手。 それが今、目の前に居ると。 否が応でも、確信させられた。 まさにそんな存在が目の前に居る状況を、 下手したら今から二秒後には死んでいるかも知れない状況を、 持っているバタフライナイフすら霞んで見え、 もし銃があっても勝負にならないだろう。 マシンガンならまだ判らないでもないが………… 何だか自分の事なのに傍から見ている様にまさに諦め切ったぼく。 しかし横に居るひたぎちゃんはそうでもない。 と言うか目の前の存在の危険さに気付いてもいない。 いや、気付いているが―――― 「とりあえず聞くけど、殺し合いに乗ってる?」 確認が必要な相手かは、 さっきの会話を聞いて判っていたはずなのにも関わらず、 念の為の確認を行う。 無論、その相手の仮面の男が言う事は判り切っている。 「不判」 「なぜ聞くか判断出来ないな――名は?」 今にも溜息を付きそうな声で仮面の男は聞く。 さっきまでの会話を聞いていれば判り切った事を聞く相手の、 名前を聞く。 「私は戦場ヶ原ひたぎ。 こっちの目が腐った感じのはいっくんよ」 状況さえ違えばまるで普通の会話であるが、 「で、あなたの名前は?」 状況が状況であるために普通に見えない。 と言うよりも恐らくここに居る時点では普通ではない。 無論、ぼくも含めての話。 「左右田右衛門左衛門」 「もろに偽名じゃない?」 瞬時に帰って来たそれを無視してカチャリと音が響く。 ぼくは何も言えない。 「覚える必要はない」 ボウガンに矢を番える音。 この展開は不味いと思いながらも。 この予感はかなり不味いと思いながらも。 「なぜならば、」 そして番えてやる事は一つ。 何と言えばいいかわからない。 「なぜならば」 狙いをすませて、 何を言えばいい、何を言えば止められる―――― 「ここで死ぬからだ」 何を言えばいい、何を言えば止められる! 「さて、お前達は何と言って――」 死ぬのかな?そういう前に 「ちょっと待った」 とりあえず普通に止めた。 思わず、膝を着きそうなほど気が抜けたらしく、 ズルッと言う擬音が付きそうなほど一気に、 左右田右衛門左衛門の体が傾いた。 「こ、ここまで行って「待った」と?」 「情報交換といきませんか?」 左右田右衛門左衛門の発言を完全無視。 ぼく、戯言遣いは言葉による交渉を開始した。 ふっ、 「不解」 「解せず――そんなもの、軽く拷問でもすればいいと判っているだろう?」 軽く、当然の事の様に、必然の事に様に、自然の事の様に、超然の事の様に、 極アッサリとそう聞かれる。 寒気がするほど、 感情が篭っていない様にしか聞こえないその質問。 それに対する答えも自然。 「まあ、知らないでしょうけど、ぼくの嘘吐きは半端無いですよ? そんなぼくから真実を吐かせる自信がありますか?」 「そんな事、簡単に吐かせて――」 「でも、確信は出来ないでしょう? 仮に、仮に今言った事が嘘である確立もありますが、逆に真実である確立もある。 その上で、その引きずり出した情報が間違いなく真実であると思えますか? もしかしたらあなたを陥れる為の罠かも判りませんよ?」 即座にそう返す。 反応は上々、 「――――――――」 「――――――――」 黙る左右田右衛門左衛門。 このまま上手く行けば………… 「甘いな」 「一人――――忘れていないか、いっくん?」 言いながら何故か呆れた口調の左右田右衛門左衛門。 え? 「何を――――ッ!」 「………………」 ちょっと落ち込んでいる忘れられていたひたぎちゃん。 無意識に前に出ていた性で、 視界に入っていなかった戦場ヶ原ひたぎの存在を忘れる。 いくら忘れっぽくてもすぐ近くに居る人物は忘れるとは! いろいろと末期かもしれない! 前には額を軽く抑えながらではあるが冷静な左右田右衛門左衛門、 後ろのひたぎちゃんからの視線に脂汗を垂れ流すぼく、 強烈な視線を送ってくるひたぎちゃん。 最初の頃の敵意もきつかったけどこの視線も痛い!何と無くヤバい! 「まあいい」 最初に声を出したのはやはり左右田右衛門左衛門。 まあ、脂汗を流しているぼくは話を続け難いだろうし、 交渉を完全にぼくに任せていたひたぎちゃんも無理。 結果的には順当に回って来たと言った感じ。 「二人も拷問していては時間が掛かる」 そう言う訳だから、情報を出せるだけ貰おうか? そう二人に向かって言った左右田右衛門左衛門の声は、 まるで氷の様な冷たさと刃物の様な鋭さを秘めていた。 直訳するとツララであるが。 まったく…………背筋が凍る思いだよ、人間失格。 その後は、 いくら相手が主導権を握った会話であるが、 言葉での交渉と言う点で、 戯言遣いを名乗っているぼくが負けるはずも無く、 「そう言う訳なので協力してもらえませんか?」 宥め、流し、賺し、聞き、褒め、煮詰め、 完全にぼくのペースに持って行った交渉だったけど、 「不受」 「残念ながらそんな穴だらけの、 いや、穴しかないような計画に付き合うつもりは毛頭も無い」 通じなかった。 いや、途中まで通じたが最後まで通せなかったと言えるかも知れない。 「脱出するにしても首輪をどう外す? 脱出するにしても主催者をどう見付ける? 脱出するにしてもこれに積極的な人間をどう引き込む?」 否定し尽くされてしまった。 「詰まる所――」 「交渉決裂……ですか?」 答えは予想通りに、 当たって欲しくない予想通りになり、 その後の事は予想できた。 「ああ、それではさっきの続きだ」 情報も貰ったしな………… そう続けながらずっと、交渉中でも決して話さずに持っていたボウガンの先を、 まずはひたぎちゃんに向けて、 「お前はなんと言って死ぬの」 かな?と最後まで言おうとしたみたいだけど、 シュッと言う音と共に上から黒い物体、 それが左右田右衛門左衛門の頭を狙い振って来て、 それを避ける為に動かざるおえず―――― 結局の所、またも失敗した。 まあ、ぼく達としては嬉しい限りだけど。 「ちッ!」 しかし、普通なら避けれないであろう攻撃、 それを避けられたのは単に…… 「不待?」 「後少しの所なのだが――待てぬか?」 多少なりとも予想出来ていた攻撃らしい。 まあ、ぼくの前であんまり死んで欲しくないからありがたいけど。 その相手は返答代わりにかぼく達の間を更に取らせる様に、 もう一つ何かを左右田右衛門左衛門の前の方に投げたようだ。 どうやらビルの上にでも居るのか? 周りを見ても見えないがとりあえず近くに居るのか? 少なくとも左右田右衛門左衛門は居場所に気付いている雰囲気である。 その返答を予想出来ていたが、 当たって欲しくなかった左右田右衛門左衛門だが、 一つ溜息を付いて川の方向に向かって歩く。 「命拾いしたな――いっくんに戦場ヶ原ひたぎよ。 しかし次は、次に会った時は…………」 「不逃」 「次に会った時は殺す」 そう言い残し、左右田右衛門左衛門は静かに消えて行った。 ぼくは地面に刺さった物体、黒い手裏剣を二個とも引き抜きながら、 「――――――いっくん?」 「判ってるよ。約束は守る」 一人目は失敗か…………でも命が残っただけ貰い物かな。 など今後の事を考えていた。 「可能な限り、努力はするさ」 「あら?「必ず生き残る」って言ったのはどこの誰だったかしら?」 あー……やっぱり騙しは効きそうに無いな…… 本当になんて戯言――いや、傑作な展開なんだろうな人間失格? そしてまだまだ戯言は続く。 「それより歩いたせいで右足が結構痛いんだけどどうしてくれるのよ」 「え…………」 いや、自分で移動しようって言ったじゃん! それに今更言われても…………どうしよう? 【1日目 黎明 E-5から移動中】 【戯言遣い@戯言シリーズ】 [状態] 頭部に軽傷、頬に軽傷、身体の数ヶ所に打撲(行動にそれほどの影響なし) [装備] バタフライナイフ@人間シリーズ(零崎人識が所有していたナイフの一つ) 王刀『鋸』@刀語シリーズ 手裏剣×2@刀語シリーズ(手裏剣砲のやつ) [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~2) [思考] 基本 ここから脱出する方法を探す。そのための協力者、情報を収集する。 1 協力者の第一候補として、まずアララギ君を探す。 2 戦闘に関しては、基本的に逃げの一手に徹したい。あるいはうまく丸めこんで、あわよくば仲間に引き入れる方向で。 3 ひたぎちゃんは、怪我が治るまでできる限りフォローする。 4 協力者探しは予想以上に厄介そうだと思った様子。 5 無理して動くべきじゃあ無かったと後悔中 【戦場ヶ原ひたぎ@物語シリーズ】 [状態] 右手甲負傷(物がうまく掴めない程度)、右足首捻挫(ある程度痛みだしています) [装備]スタンガン@戯言シリーズ(哀川潤が使用していた物) [道具]支給品一式(懐中電灯の乾電池を除く)、ランダム支給品(1~2) [思考] 基本 阿良々木くんと一緒に生きてここから出たい。 1 阿良々木くんに早く会いたい。 2 殺し合いには参加したくない。ただし阿良々木くんに害なす人間がいたら話は別。ていうか容赦しない。 3 生きて出るため、いっくんに協力する。 4 一回どこかで休みたい。 ※二人とも王刀『鋸』をただの木刀だと思っています。 ※玖渚友が来ていることは、いーちゃんは可能性すら考えていません。 023← 024 →025 ← 追跡表 → ― 左右田右衛門左衛門 ― ― 戦場ヶ原ひたぎ ― ― 戯言遣い ―
https://w.atwiki.jp/nisioisinnbr/pages/122.html
神はあまり役に立たない? 真庭忍軍十二頭領が一人、 神の鳳凰は走る。 他の二人の頭領、感染の狂犬と増殖の人鳥を探す為、 真・真庭の里を目指して駆ける。 「………………」 街中をまるで鳥かの様に、 一直線に里を目指す。 今、考えている事は三つ。 一つは情報収集。 片手を建物の壁に触れる様に走りながら、忍法・記録辿りで誰かが通ったかを調べている。 今の所は特に誰かが通った様子はないので特に意味は無いが。 一つは、あの化け物の様な天才に挑む為の策。 天才の様な化け物か化け物の様な天才か、 しかし思い出すのはあの戦場に突如として乱入し、 破壊と血肉と爆炎を撒き散らしたあの鑢七実と言う名の『虚刀流』。 技と力、ほぼ全てに置いて圧倒的な『虚刀流』、 幸いとも言うべきは極端に無い体力。 「………………」 それを除けば恐らく誰よりも強かったあの『虚刀流』、 あれを一時的でも真庭忍軍に入れれれば、真庭忍軍の勝率は格段に上がる。 しかし、交渉に応じるか? 応じないだろう。 姿が見えていない段階から爆炎を撒き散らし、 姿が現れたと思えば拮抗していた戦闘を完膚なきまでぶち壊した。 あの状況で行ってきた奇襲とも言うべきあの行動からすれば、交渉する気は零、殺す気が百と考えられるだろう。 仮に交渉出来たとして、こちらが有利に交渉出来る可能性は無い。 だったらどうするか? あの『虚刀流』を放って置けば残り三人になった真庭忍軍十二頭領。 我を含めた残り三人がどうなるか? この戦いのルールに従って殺されるだろう。 「………………」 だったら我はどうするべきか? 現状であの『虚刀流』と対抗する術は? 足を止めずに考える。 「…………人鳥は?」 臆病ではあるが恐らくここで生き残れれば主になるであろう人鳥はどうだろうか? 忍法運命崩しと柔球術の合わせ技で倒せるか? …………いや、無理だろう。 文字通り見ただけであの柔球術を見破られて終わる。 そして最悪、忍法運命崩しまで見取られたら………… それから考えれば却下するしかない。 だとすれば、 「…………狂犬は?」 仲間意識が強過ぎる事を除けば優秀であり、里の相談役でもある狂犬はどうだろうか? 忍法狂犬発動は文字通り女に対してのみの一撃必殺技に近いが、第一条件として相手に触れなければならない。 果たして指一本でも触れられるか? ――難しい問題である。 が、一考するだけの価値がある問題でもある。 そして最後に残ったのは、 「…………我は?」 真庭忍軍の中ではまだ普通の考え方を出来る我。 忍法命結び及び忍法断罪円及び忍法記憶辿りなどなど、 しかしはたして我の忍法が通じる人間がこの戦いに何人居るか? 先の館での戦いの三人にはそれぞれに邪魔されながらであったが当たらず、手の内を見せるだけに終わった上、もしもあの時の戦闘をあの『虚刀流』に見られていたら? ――時間稼ぎも出来るか分からない。 「現時点では狂犬が一番有利……か」 結果的にあの『虚刀流』と戦うと言う条件のみなら我が一番役に立たないとは………… 何とも言えない。 そして最後の一つは里を目指す事。 そこに居るかも知れない二人と合流する事を第一に。 「さ、さて、真庭忍軍を集める為に急がねばならんな」 少なくとも人鳥とだけでも合流出来れば、忍法運命崩しの効果で我等に運が向いて来る。 そうすれば殺しも情報収集も上手く行くはず。 いや、狂犬も忍法狂犬発動で女から情報を手に入れられる。 今現在のこの複雑怪奇な状況を整理する為の足掛かりになる上、その肉体を使えばどこかの人間の体を乗っ取っての不意打ちも可能。 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あれ? 我が地味に一番役に立てない状況? 戦闘力のみなら上だが、今、この状況を有利に動くと言う観点のみで行くと、 「わ、我の忍法が一番役に立たぬ…………」 と言う事に気が付いたが、 「い、いや、我には忍法記憶辿りが……」 あるが元は川獺の忍法。 いやいやいや、それを考え出したら我の忍法のほとんどが他人の物。 何やら真庭鳳凰が袋小路に嵌り出したが誰も心配する必要はない。 真庭鳳凰の趣味は気苦労なのだから。 大事な事なのでもう一度。 真庭鳳凰の趣味は気苦労なのだから。 なんら心配する必要はない。 「ふむ…………どうしたも」 真庭鳳凰が趣味とも言える様な、と言うより趣味の気苦労を重ねていた所で、 足場が突如として消えた。 ……いや、足場が消えたと言う表現は正しくは無い。 正しく言うと足場の無い所に足を踏み出したと言う方がむしろ正しい。 そして無論、足場の無い所に足を出してそのまま何事も無いかの様に歩く事は不可能。 つまり――落ちた。 落ちたのは考え事をしていた性ではあるが、その後の反応は流石は忍者と言えただろう。 崩しかけていた体を強引に立て直し、着地の態勢を取り………… 「ボチャン」とでも言い表す様な派手な水音を立てた。 そこから先の行動もまた、流石は忍者と言える。 落ちた場所から息の続く限り一気に水の流れの上流を目指して泳いで行った。 その時、水に落ちた時に発生した波紋、それ以外に目立った水の波紋を一切残さずに。 何処とも分からない橋の下。 「チャプン」と言い表す様な物静かな音を立て、真庭鳳凰は鼻と目だけを軽く出す。 新鮮な空気の確保と周りに誰も居ないかの確認の為。 今、手持ちの物は全て水で濡れている状態、 もしもこの状況に陥っている鳳凰が誰かに気が付かれたらどうなるか? この戦いに乗っている人間だったら問答無用で襲って来るだろう。 水で服が濡れている性でまともに体を動かせない鳳凰が、その相手に勝てる可能性は低く、ましてや負ける可能性の方が高い。 用心に用心を重ねての行動であった。 「――――――」 そして自分自身の考えが正解であった事を知る。 近くでの戦闘の物と思われる金属音、 荒い足音が一つ、二つ……おそらく二人。 近く……おそらくそこまで遠くない近くでの戦闘。 そして両方とも――玄人。 複数からなる金属音からして接戦。 忍者らしくそこに不意打ちをして二人とも殺せるか? ――――否。 そこまで甘い戦いとは思えない。 ましてや自身が万全でない状況でそんな事はしない。 二人の玄人が本気で戦っているのなら一人は死ぬだろう。 若干希望的観測ではあるが、ならば、わざわざ手を出す必要はない。 そう考え、再び潜る。 その二人の玄人の内の一人が、 まさか自身の親友だった人間だったとは、 考えもせずに。 再び水面下の移動を始めた。 ――――――チャプン―――― 無音……ではないが騒々しいとも言えない程度に川の流れる音が聞こえる中、 一つだけ少し違った音が辺りに響く。 その音は精々魚が水から飛び出した程度の音であり、普通なら聞こえても注意はしても警戒はしない程度。 しかし、その音を立てた本人は慎重に慎重を重ねている様に、一度引っ込めた頭をゆっくりと水から出して行く。 しかも今度は、一切音を立てずに。 そして辺りを見渡す。 その場所は川と川との分かれ目。 川の十字路とでも言い表す様な特徴的な地形の場所。 そこが真庭鳳凰が目指した場所だった。 「着いたか…………」 その一言と共に辺りを見渡す。 地点としては恐らく間違いない。 そして辺りに誰も居ないかの確認も終わった所で川からゆっくりと抜け出す。 「……しかし…………」 全身に張り付いき動きを阻害する服、 大した距離を泳いでいない筈なのに付き纏って来る倦怠感、 思わず顔を顰める。 普段ならばこの程度では大した倦怠感は訪れない。 これがあの主催者の言っていたハンデ。 そう思うと背筋に寒いモノが走る。 まさか人の基礎体力まで自由自在に操れるのか? だとしたら、 「これは不味いな……」 予想以上のハンデ。 流石に人鳥の性格と思考力を考えれば無茶をして体力を激減させる事はないだろう。 が、狂犬の方はどうだ? 狂犬の性格から考えればあっと言う間に無茶を重ねて追い詰められかねない。 つまり………… 「急がねば」 急いで狂犬を見付けなければ、最悪、この戦いが始まって最初の(戦いが始まる前のは抜いて)、最初の真庭忍軍の死者になりかねない。 そうなれば、 あの『虚刀流』に対抗する術はほぼ………………無い。 「急がねばならぬが…………」 そう、急がなければならない。 分かってはいる、分かってはいるが、 「ここで無茶は出来ない」 当初の予定通りに事を運ぶしかない。 手始めに、 スーパーマーケットなる場所で武器と服を乾かし、体力の回復を図る。 それからでないと、 「……我の体が持たぬ」 そう言いながら疲れを感じさせない様に歩く。 跡に水の跡を残しているのに気が付いていながらも、 歩くしかなかった。 【1日目 深夜 F-7】 【真庭鳳凰@刀語シリーズ】 [状態]身体中にかすり傷、疲労(大)、全身びしょ濡れ [装備]ジェリコ941 [道具]支給品一式、ジェリコ941の予備銃弾(残り60パーセント)、ランダム支給品(1~2) [思考] 基本 真庭頭領(特に狂犬)を探す 1 地図の果てを確かめる。 2 主催者が本当に願いを叶えるだろうか・・・? 3 体力を回復させる 4 スーパーマーケットなる場所で身体などを乾かす 028← 029 →030 ← 追跡表 → ― 真庭鳳凰 ―
https://w.atwiki.jp/nisioisinnbr/pages/46.html
阿良々木暦 No. タイトル 作者 000 オープニング ◆rOyShl5gtc 002 2話 ◆T7dkcxUtJw 戦場ヶ原ひたぎ No. タイトル 作者 014 世界の終わり、正しくは始まり(前編) ◆wUZst.K6uE 八九寺真宵 No. タイトル 作者 004 [めいろマイマイ]] ◆iaNM/KCMCs 神原駿河 No. タイトル 作者 002 2話 ◆T7dkcxUtJw 羽川翼 No. タイトル 作者 008 たかしフォックス 名無しさん 千石撫子 No. タイトル 作者 010 不運の結果(風雲の経過) ◆wUZst.K6uE
https://w.atwiki.jp/nisioisinnbr/pages/39.html
世界の終わり、正しくは始まり(後編) ◆ ◆ ◆ 呼吸の乱れは収まったものの、今度は身体の節々が今更のように痛みだしてきた。少女もまた同じような感じだったので、しばらくの間、林の中で身体を休めることにした。 ぼくは木にもたれるように座り、少女はデイパックを枕にして横たわった姿勢。 ちなみに地面に散らばった荷物は、すべて回収済み。ジャケットだけはもう着れた状態ではなかったので、デイパックの中に収納してある。スタンガンも、今は少女が持っている。 「言っておくけど」こちらを睨みながら言う少女。「後ろに誰かいるなんてハッタリかまして不意打ちなんて卑怯な真似、私は認めないわよ。私があなたより弱かったわけじゃないわ」 子供かこの娘。 最初に後ろから不意打ちかけてきたのは誰だとか、素手を相手にスタンガン振るってたのは誰だとか、突っ込みようはいくらでもあったが、確かに彼女の言うことも一理あった。 ぼくが最初に懐中電灯で殴った右手は、あの一発で既に相当傷んでいたらしく、払った足首に関しても同じようなものだったらしい。 つまり彼女はそんな状態であれほどの立ち回りを演じていたというわけで、頭こそよく打ったものの、両手両足が無傷のままのぼくより彼女のほうが疲弊しているのは、むしろ当然のことだった。 手加減する余裕がなかったとはいえ、女の子を相手に本気で殴りつけてしまったことについては、素直に申し訳なく思う。それも右手だけで三発。 「………ごめん」 殴り殴られはお互い様ではあったが、とりあえず謝っておいた。 「この世で最も誠意のない行為って、あなた、何だかわかる?」 「………何?」 「口先だけの謝罪よ」 容赦ねえ………。 正当防衛はむしろぼくのほうなのに………。 ところで、と仰向けのままこちらを向く少女。「あれってどこまで本気で言っていたの?」 「あれ?」 「あなたが撒き散らしてた数々の妄言よ」 「ああ——いや、もうほとんど当てずっぽうだったよ。何も考えずに、思いついた先から口に出していった感じかな。本気もへったくれもない。きみの言うとおり、妄言であってるよ」 結局あの銃声の正体はというと、スタンガンによる放電の音だったらしい。スタンガンの電流を乾電池にぶち込むことでスパークさせ、あの破裂音をかき鳴らしたのだとか。 無論、自分に火花などが飛ばないように、またぼくのほうに閃光が見えないように工夫しながら。 火の中に乾電池、コンセントの中にピンセット。 「……まさか本当に乾電池使ってたとは思わなかったよ」 人には散々妄言だとか言っておきながら………。 ほとんど正解しちゃってるじゃん。ぼくが一番びっくりだよ。 「火花とかすっごい飛ぶんだもの。びっくりしたわ」 当たり前だ。 「一度やってみたかったのよ。根暗のやる遊び」 だから遊びじゃ済まねえんだよ。 言うまでもなく、絶対に真似してはいけない。 ただ彼女の側としては、本気で銃声だと思わせるつもりは全くなかったらしい。銃でなくとも、武器としてスタンガンを所有していたわけだから、脅迫も戦闘もとりあえずは可能だったはず。 ただ「相手まで安全に近付けたら面白いな」みたいな発想の末、何となく思いついたあれを実行してみたら予想外にうまくいってしまったため、そのまま拳銃をもっている設定で押し通すことにしたらしい。 「言っておくけど」少女は言った。「私は『拳銃を持っている』と一度でも自分からはっきり言った覚えはないわよ」 そうなのだ。 結局、ぼくが一人で勘違いしていたといっても過言ではない。 ぼくがあれを拳銃だと誤認していようがいまいが、彼女にとっては関係のないことだったのだから。 そもそも、彼女がこんな面倒くさい真似をする気になった理由は、窓越しに見たぼくの第一印象が『どうとでもできそうな相手』だったからに他ならない。 要するに、ぼくはずっと彼女に弄ばれていたわけだ。 単なる思いつきの面白実験に、ずっと付き合わされていただけのことだったのだ。 彼女にとって一番意外だったのは、スタンガンの音を銃声と勘違いするなどという人間が存在したことより、ぼくが脅迫に屈せず反撃に出た事だったかもしれない。 確かに、まともな小説でこんなことをやっていたら、社会的には死刑に値するかもな……。 閑話休題。 疑問が解けた所で、まずは今更ながら自己紹介を始めることにした。 戦場ヶ原ひたぎ。 それが彼女の名前らしい。 「で、あなたの名前は?」 少女——ひたぎちゃんは当然のことを訊いてくる。 「別に聞きたくはないけど、礼儀として一応聞いておいてあげるわ。ただし記憶する気はあまりないから、どうしても憶えて欲しかったら、私が気に入るような名前を考えて名乗りなさい」 後半の台詞は、すべて当然のものではなかったが。 「……悪いけど、ぼくは人前では名前は名乗らないことにしてるんだ。個人的な理由なんだけれどね」 「何それ、馬鹿みたい」 予想通りの台詞を吐かれた。なんか、同じ台詞を似たような人に言われた記憶があるが……。 「そんなことを言ってるから、あなたは一生腐った魚と呼ばれるのよ」 一生の呼び名を宿命付けられてしまった。。 ていうか、今まででそんな呼び方をしたのはあなただけなんですけど。 「仕方ないわね、じゃあ今後あなたのことは『魚の腐ったような男』、略して『さっちゃん』と呼ぶことにするわ」 「………その愛称だけは、本気で勘弁して欲しいかな」 ある意味略さない方より嫌だ。 「じゃあ『細胞の死滅した脳を持つ男』、略して『さっちゃん』で」 「いや『さっちゃん』変わってないじゃん! 『さっちゃん』から離れろよまず!」 「じゃあ『有害で悪質な細胞を持つ納豆菌のように粘っこい男』、略して『害悪細菌』、さらに略して『さっちゃん』で」 「もう完全にわかってて言ってるだろそれ! 略しても略さなくても最悪の呼称だよ! てかどんだけ『さっちゃん』で押し通したいんだよ!」 「わがままね。あだ名すらつけて貰えない人間だって、この世にはいるっていうのに」 リアルに嫌な話だった。 「そんなに文句があるなら自分で決めなさいよ」 もっともだ。もっとも過ぎる。 「じゃあ、えーと——いっくん、で頼む」 自分の呼び名の中で、一番まともそうなのを選ぶ。 さっちゃんと大して違わないじゃない、などといいながらも、とりあえずその呼び名で納得してもらえた。 名前には、それほどこだわらない方なんだけどな……。 だからどんな能力だよ。 「ところで、ひたぎちゃん」 ばちぃ! 彼女の左手が閃光を放った。正しくは、右手から左手に持ち替えられているスタンガンの先端が。 「………何? びっくりするんだけど」 「気にしなくていいわ」事なげにいうひたぎちゃん。 「私の身体はある特定の条件を満たすと、自動的にスタンガンのスイッチを押すようにプログラムされているの」 特定の条件って……… 心臓に悪いんですけど。 「さっき、ここには強制的に連れてこられた、って言ってたけど」 ぼくはようやく本題に入る。 「きみは、このゲームに関しては何も知らないの?」 「知らないわよ。気がついたら変な所にいて、あれよあれよとここまで来ちゃった感じよ。詳しい説明も何もないし。死ねばいいのよ。死になさい」 だから何でぼくの方を見て言うかな。 ひたぎちゃんの話は、ぼくが経験した内容とほぼ一致していた。 連れてこられたといっても、その間の記憶はまったくないし、連れてこられる心当たりもなし。直前まで、極めて普通通りの生活を送っていたらしい。 ぼくもいたあの何もない空間で、知り合いと一緒にあの(訳のわからない)説明を受け、次の瞬間にはあの病院の前に立っていたという。 不可思議な現象。 不可思議な現状。 心当たりが全くないという点を除けば、確かにぼくと同じ境遇のようだった。 「本当に、殺し合いに乗る人なんているのかな……」 ぼくは何となく言ってみる。 「きみが言うように、自ら参加した奴ならまだしも、ぼくらには殺し合う理由なんてない。仮にあったとしても、こんなとこで見世物みたいな感じでやらされるなんて、不愉快以外の何物でもない」 「殺し合いに乗らなければ24時間後に皆殺し——みたいなことを言っていたわね。主催者の意向に逆らうような姿勢を取り続けた場合、あの時の人たちみたく首がどぐちゃぶしゅうな感じになっちゃうんじゃないかしら」 首が何だって? 「見せしめ、と言っていたしね」 勝者への褒賞、反逆者への刑罰。 極端なまでのアメとムチ。 闘いに乗る人間も、少なくはないと見るべきか。 「だとしたら、いつまでもここに居るのは危険だな………」 デイパックから時計を取り出す。零時五十五分。病室を出たのが、零時ちょい過ぎだったか。 夜が明ければ、この小さな雑木林では隠れる場所にはならない。林の外からでも見つかる可能性がある。 加えて、今のぼくたちは負傷している。ぼくは頭と肩と背中が痛む程度だが、ひたぎちゃんの方は足と利き腕を負傷してしまっている。殺意のある相手に当たってしまった場合、格好の標的にされるだろう。 「あなたがさせた怪我だけどね」 「………まあ、それはそうだけど」 「『あなたがさせた怪我だけどね』」 「………二重括弧でくくらなくても……」 「「「あなたがさせた怪我だけどね」」」 「さ、三重括弧でくくらなくても……!」 「。. * ・'゚☆。. * ・'゚★『あなたがさせた怪我だけどね』★。. * ・'゚☆。. * ・ ・'゚」 「デコしなくても!」 どんな技術だ。 「随分と余裕なのね」 「は?」 寝返りを打ち、向こうへと身体を向けるひたぎちゃん。 「ついさっきまで、命がけの状態だったっていうのに、スタンガンまで突きつけられたっていうのに、当の突きつけた相手の心配をするなんて、余裕もいいところじゃない? そんなに生き残る自信があるのかしら」 「いや………別にそういう訳じゃ——」 「そういう訳じゃないなら、他人の心配なんてよしなさい」 ぴしゃりと、叩き込むような声。 「余裕のない人間なら、心配すべきことは他にあるでしょう」 「………わかってるよ」 そう、最初から、言われるまでもなくわかっている。 いまのぼくには、ぼく自身を守るくらいの余裕しか、本当はないはずなんだ。 「そうよ、あなたはこのスレが過疎化して消滅しないかどうかだけを心配していればいいのよ」 「何言ってんの!?」 「今消えちゃったら、私の見せ場がないまま終わっちゃうじゃない」 「意味がわからない!」 「スレが安泰になってから、私の心配をなさい」 「結局自分も心配させるんだ!」 すげえぞ……この娘。 朽葉ちゃんどころじゃない。この攻撃力、もはや春日井さんに勝るとも劣らない。 この場に巫女子ちゃんがいたらと思うとぞっとする。殺し合いなんて目じゃないくらいの、核戦争並の大舌戦が繰り広げられていたに違いない。 「スレが消えるのが先か、私たちが全員消えるのが先か———これぞまさしく、究極の意味でのサバイバルだわ………」 声が真剣だった。不謹慎に真剣だった。 いかん、軌道を修正せねば。 そういえば、と、ぼくは新たな話題を打ち出す。「探してるきみの知り合いって、どこにいるかわかるのか?」 今までずっと、迷いのない足取りで——というより迷いのない命令口調で、ぼくに行き先を指示していたようだけれど、あれは知り合いの居場所を把握していたからでよかったのか? 「わからないわ」 わからないのか。 「知ってる名前の場所はあったけれど、そこにいるかどうかはわからないし——それに周りがどう見てもおかしいんだもの。不気味で逆に近寄りがたいわ」 確かに。あの病院の中で感じた不快感を、ぼくは思い出す。 「かといって、それ以外には手掛かりひとつ無いし、仕方がないから適当に歩き回ってただけ」 適当だったのかよ。 どうせ適当なら、適当な目的地くらい定めておけばいいのに。 ぼくは地図を取り出し、懐中電灯で手元を照らす。ぱっと見た感じは、普通の地図と大して変わらない。広げるとそれなりの大きさで、数字とアルファベットで64のエリアに区分けされている。 数少ない情報のひとつなのだから当然かもしれないが、かなり細部まで作り込まれている。 「作った人乙と言わざるを得ないわね」 「現在地はこのあたりだね」無視。「このまま行くと、心王一鞘流道場って所に辿り着きそうだけど」 小さな町をひとつ抜けて、いま雑木林にいるのだから——大体、E-3とE-4の境目くらいの所か。 ………しかし、本当にすごい地図だ。 所どころ、チェックポイントのように名前が振られているのだけれど、城から研究所からピアノバーまで百花瞭乱、もう統一性もへったくれもない。 ファンタスティック・ワールド。 ていうかもう、明らかにあり得ない名前の場所ががあり得ない所に存在していたりしてるんだけど。えらく見覚えのある固有名詞がそこかしこに点在してしまってるんだけど。 もう見ているだけで頭がおかしくなりそうだった。もしかしたら、既におかしくなっていたのかもしれないが。 つくづく思う。知らない場所より、知ってる場所が存在するほうが、この場合は精神的にきつい。 何度でも言おう。本当にふざけてる。 「こんなことして、一体何になるってんだ………」 そう、理由、理由だ。ここまでする理由はあるのか? どんな理由で、なんの目的で? この地図を見ていまだに自分が無関係だと思えるほど、ぼくは楽観的ではない。ここまで来ると、あてつけとしても酷すぎる。 いや——でも、他の人たちはどうなのだろう。 目の前で横たわる少女、戦場ヶ原ひたぎ。 例えば彼女も、地図の中に知っている場所があると言う。そっちに関しては、ぼくは名前すら聞いたことがない場所のようだったが、彼女の側にしても、ぼくに縁のある場所については全く知らないという。 ぼくと彼女とでは、ここに連れてこられた理由が違うのだろうか? ぼくと彼女に、共通の項目は存在するのか……? しかしひたぎちゃんは「主催者側の理由なんてどうでもいいわ」と素っ気ない。 「こんな倒錯した遊びの理由なんて、なぜ今の私は髪型をポニーテールにしているのかと同じくらいにどうでもいいことよ」 「まあ、確かにそれはどうでもいいけど———って危な!」 「あなたの頭蓋骨の耐久性に比べれば、少しは考える価値はあるとは思うけど」 「何で石が飛ぶの!?」 「それよりも、ここから生きて帰るための方法とかを考えるべきじゃないかしら。この下種な遊びを、さっさと終わらせる方法とかを」 一応、その方法を探るための思考ではあるんだけどな……まあ、その意見には完全に同意できるけど。 帰れるものなら、今すぐにでも帰りたい。 病院で感じた、あの不快感。 あの感覚はまだ、身体の中にこびりついている。 「もう三ヶ月以上、深夜の話ばっかり続いてるんだもの。飽きたわ」 「………」 あれ? また何か、控えてほしい気配が漂いつつあるような……。 無視するべきなんだろうか……。 「いっそ夢オチにしてやろうかしら」 「それは駄目だろ!!」 無視できなかった。 やっちゃ駄目だし言っちゃ駄目だろ。 「どうせこういう催し事って、長くやってるともう夢オチでしか収拾つけられなくなるくらいグダグダになっちゃうのが常なのよ。今のうちに終わらせちゃったほうが、きっと私たちも少しは報われるわ」 「いや、色々と報われないことのほうが多そうな気がするなぼくは!」 ていうか、まだ終わりにしたくないんじゃなかったのか。 「あなた冒頭で散々夢の話してたじゃない。あれが夢オチの伏線だったってことにしちゃえばいいのよ」 「いくねえよ! いい訳あるか!」 大体冒頭の話ってなによ。 「別にいいじゃない、どうせもう五人くらいしか読んでいやしないわよ」 「ひたぎさん!?」 「『投下乙です』くらい、私がいくらでも言ってあげるのに………」 「お願いだからそういう発言やめて!!」 もうなにがなにやら。 「何よ、さっきからギャンギャン犬みたいに噛みついて。見苦しいわよ」 「…きみは目の前に毒物を撒き散らしている人間がいたら、それを黙って見ていろというのか?」 「甘く見ないで。私の毒は百八式まであるのよ」 意味がわからん。 「うるさいわね、こういう設定をほのめかしておけば、重要キャラとして長いこと生きていられるのよ」 「だから何の話!?」 「あなたも精々アピールしておきなさい。あなた個性弱そうだし、次の人があっさり殺しちゃうかもしれないわよ」 「次の人って誰!? 何!?」 でも何か本当に大事なことのような気がする! アピールって、誰に対するアピール!? 「あのさ……ひたぎちゃん」 ぼくは正気を取り戻す。駄目だ、相手のペースに引き込まれ過ぎている。 ばちい! なぜかまたスタンガンが電撃を放出。そっちのほうはもう無視。 「さっきから全然話進まないんだけど……いい加減、真面目に話してもらえないかな……」 そろそろ怒られそうな気がしてきたし。 「私が不真面目だっていうの?」 「とても真面目にやろうって風には見えないな」 剣呑な目付きで、こちらを睨んでくるひたぎちゃん。 「そうね………確かに間違ってたわ」 また罵倒が飛んでくるかと思ったが、意外にも素直に自分の非を認めたようだった。 少し安心する。何だ、ちゃんと言えば伝わるんだ。 「最近では、むしろ重要度の高そうなキャラのほうが、意外性を演出するために途中でリタイアしちゃうことのほうが多いものね……あまり凝った設定を抱えてると、今では逆に死亡フラグとして扱われてしまうことを失念していたわ………」 「………………」 人との会話って、こんなにもままならないものだったっけ………? デイパックから水を取り出す。喋りすぎて喉が渇いた。さっきの立ち回りの後よりも疲れているような気がする。主に精神のほうが。 「………そういえば」 デイパックの中から、さらに一枚の紙を取り出す。ルーズリーフより簡素な見た目の、まっさらな一枚の紙。 これは何に使用すべきなんだろうか。与えられた荷物のうち、この紙だけよくわからないというか、「一応入れておいた」みたいな、どうでもよさげな空気を感じる。 筆記用具も入っているし、メモ用紙として使えとでもいうのだろうか。 つくづく意図が読めない。 「あなた、武器は持ってなかったの?」 水筒と紙を収納するのを見て、ひたぎちゃんがまた唐突に話かけてくる。 「ずっと素手のまま構えてたみたいだけど、武器になりそうな物、入ってなかったの? それともデイパックから出す暇がなかっただけ?」 「あれ、ぼくの懐中電灯取り出すとき、武器がないかどうか確認しなかったの?」 「忘れてたわ」 忘れてたのか。 ぼくは一体、どこまで軽く見られていたというのだろう。 「持ってるよ。ここにある」 ズボンのポケットから、ぼくは一本のナイフを取り出す。 手のひらにすっぽり収まるサイズの、いわゆるバタフライナイフ。見慣れているといえば見慣れているし、使い慣れてるといえば使い慣れてる武器。少なくとも、スタンガンよりはしっくりくる。 哀川さんから授かったあの刀子には遠く及ばないけれど、自分にあった武器という点では、それなりに当たりを引いたほうだとは思う。 「随分あっさり見せるのね。大事な手の内のひとつなのに」 「きみのも見てるし、五分五分だろ。大した武器ってわけでもないし」 「さっき、なんでそれ使わなかったの?」 「………別に。実はぼく、尖端恐怖症なんだよ」 あっそう、とだけ言い、再び黙るひたぎちゃん。何となく拗ねているように見えるのは、ぼくの気のせいだろうか。 バタフライナイフを再び、ポケットの中へと仕舞う。 もしさっきの闘いで、これを使用していたとしたら、ぼくは彼女を殺していただろうか。 あの時これを取り出していたら、ぼくは恐らく、自分の殺意を抑えることができなかっただろうと思う。身を守るためでなく、ただ殺すためだけに、それを振るうことを躊躇しなかったと思う。 一方で、もしそうしていたとしたら、殺されていたのはぼくの方だったかもしれない、とも思う。 殺意は新たな殺意を生む。そしてそれらが一度重なれば、どちらかが生き残るまで、どちらかが死ぬまで、その殺意は続く。 彼女がぼくに対し、殺意でなく敵意ばかりを向けていたことに、何か理由はあるのだろうか? あそこまで容赦なく他人に敵意を向けることができる人間が、殺意を向けることができない道理なんて、本来ならばないはずなのに。 ———一切の罪悪感なしに人を殺めることができる人間など、たとえ産まれたての赤ん坊でさえも決して有り得ることはない———。 戯言だ。 そんなもの、戯言でしかない。 「少しだけ、話を聞いてくれる?」 またしても、唐突に投げかけられる声。 いつの間にかひたぎちゃんは地面から身を起こしており、ぼくと同じように木に背中を預けて座っていた。 「少し前に読んだ小説の話なんだけどね」 こちらの返答を待たずに、彼女は話し始める。 「———とある学園を舞台にしたエンタメ小説なんだけど、その学園っていうのが色々と特殊な場所で、女子高生が策師を名乗ってたり、刃物に 病み付きな少女が徘徊してたり、もう首を吊ったようにパンキッシュな学校。その学校に捕われてる一人の女の子を救出するために、万能屋の女性と、無理矢理連れ出された冴えない男が学園へと乗り込む、っていう話」 「ふうん………?」 どこかで聞いたような気がするけれど。 ぼくも読んだことのある小説だろうか。 「そのうち、学校の中で人が殺されているのが発覚するの。バラバラ殺人。加えて密室殺人。結局、主人公が犯人を明らかにするんだけど、その犯人 っていうのが常人離れした技術の持ち主で、そのバラバラ殺人の他にも、学校内、学校外問わず、もう人間としてありえないくらい人を殺してしまっているの」 「………」 「その犯人が、主人公から殺した動機について問われた時に言った台詞なんだけれど——自分が何か酷い目にでもあっていたら、友達を殺されてた ら、強姦でもされてたら、大事な何かを奪われてたら、それで全部納得いくのか———人を殺すっていうのは、そういうことじゃない、って」 「………」 「小説にでてくる殺人犯って、大抵なにかの事情を抱えてたりして、探偵役の人にそれを吐露して終わったりするのがよくあるじゃない。それを あそこまではっきり切って捨てるような台詞を見たのって、その本が初めてだったから、とても印象に残ってるわ。人殺しはどうしたって人殺し、動機なんて同情を誘うための免罪符に過ぎない、みたいな潔さがあって、犯人に同情どころか、いっそ感心すらしちゃった」 彼女は語る。独り言のように。 「私の知り合い、阿良々木くんっていうんだけど」 アララギ君。 蘭? 蘭木? 「あの場所から、ここへ連れてこられる直前に、阿良々木くんが言ったの。『絶対に生きろ。お前が生きてる限り、ぼくも生きる』——って」 おお、なんて格好良い。男らしさ全開の台詞じゃないか。 「言われた時は、ただ嬉しいって思ったけど、あれってどういう意味で受けとるべき言葉なのかしら。どんな状況でも、どんな手段を用いてでも、 生き残ればそれでいいっていうこと? 他人を押し退けてでも、誰かを突き落としてでも、とにかく生きろっていうこと? 阿良々木くんもそうするし、私にもそうしてほしい、っていう意味として受けとるべきなの?」 ………。 「私は、阿良々木くんに生きてほしいと思ってる。それこそ、どんな手段を使っても、誰を殺してでも、生き残ってほしいと思ってる。阿良々木くんが生きてる限り、私も生きる。そう思ってるのは、私も同じ」 ………。 生きるということ。 それは同時に、誰かを生かすということで——— 同時に、誰かを生かさないということ。 「優しいのよ、阿良々木くんって」 彼女は言う。 「私にも、他の誰にでも。他人のために平気で傷付くし、傷付けた相手でも平気で助けようとする。傍から見てて、不安になるくらい、優しすぎるくらい優しい。だからきっと、自分が生きるために誰かを殺すなんて、阿良々木くんはしようとしないんだわ」 ………。 「私にはああ言っておいて、自分はそんな、自分より誰かの命の方を優先するような、中途半端な姿勢でいようとする人なのよ。そんなのって、卑怯だと思わない?」 「………」 ………成程。 彼女がなぜ、地図上に自分のよく知る場所を見つけながら、そこへ向かわなかったのか、ぼくは理解できたような気がした。 その場所に、その人がいるかどうかの確信がなかったから、ではおそらくない。 むしろそこにいる可能性が限りなく高いと思っているからこそ、そこへ向かうのを躊躇ったのだと思う。 何故なら、見てしまうかもしれないから。 もしその人が、そこへ向かっていたら、そこで自分を待っていたとしたら、見てしまうかもしれないから。 自分にとって大切な人の、その変わり果てた姿を。 最も望まぬ形での再会をしたくないからこそ、 見てしまう可能性が最も高い場所だからこそ、彼女はそこへ向かわなかったのだ。 「いっくん」 一瞬、自分が呼ばれたのだと気付くことができなかった。 「あなたの言う通りよ、いっくん。私じゃ——私たちじゃ、ここではきっと生き残ることはできない。遅かれ早かれ、同じような結果になるわ。それならいっそ、口先だけでも普通のままで終わりたいのよ」 すとん。 彼女の手から、スタンガンが滑り落ちた。 「生きるためでも、強要されたからでも、人殺しは所詮人殺しにしかなれないのよね。選択肢を押し付けられるのなんて、私だって真っ平ごめんよ」 ………………。 「ちょっと早いけど、私はここで終わりにしておくことにするわ。色々と悪かったわね、いっくん。スタンガン、欲しいなら持っていっていいわよ。………あ、もし阿良々木くんに会っても、私のことは伝えなくていいからね」 足枷にはなりたくないから。 そんなことを言って、彼女は独白のような語りを終えた。 再び、闇夜の中に訪れる沈黙。 「………」 ぼくは、彼女のことを何も知らない。 その知り合い——アララギ君とやらについても何も知らないし、そもそも自分の置かれている現状すら、よく理解できていない。 何も知らない。何もかも知らない。 足枷とは、誰に対する足枷のことだろうか? アララギ君の? それともぼくの? 自分のために誰かを殺す。誰かのために誰かを殺す。 自分のために自分を殺す。誰かのために自分を殺す。 それは、ある意味どちらでも正しく、ある意味どちらでも間違った選択。 正しくあるのは、正しいことなのか? 間違うことが、正しいことなのか? ———なにを考えてる? ぼくに、他人を心配する余裕なんてなかったんじゃないか? 「………小説の話じゃないけど」 沈黙を破り、ぼくは言った。 「少し前に、ぼくが知り合いから言われたことなんだけど………人生っていうのは、死んでも終わらない——んだってさ。そいつが死んでも、そいつの影響は残るから、本当は終わりなんてどこにもない。勝手に終わらせるな、って」 ぼくはそれに、そんなことわかりたくもない——と返したのだけれど。 「あんなこと言った以上、きみにこんなことを言うのは理不尽なのかもしれないけど——ひたぎちゃん。きみは、ぼくに会う前から、最初から終わりにしたいと思っていたんじゃないのかな?」 「………」 普通のままで終わりにしたいと彼女は言う。ならば、普通とは何だ? 人を殺さないということ? 人と殺し合わないということ? 人に、殺意を向けないということ? 「普通のままでいたいなら、普通のままで生き残ればいい。生き残る自信のない場所なんて出てしまえばいい。わざわざ乗っかってやる必要なんてない。踊ってやる必要なんてない。相手の都合なんて、相手に叩き返してやればいいんだ」 ——こいつは、一体どこまで勝手な言葉を吐き散らすつもりでいるのだろうか。 言えた立場か? 欠陥製品。 所詮すべて、戯言でしかない癖に。 「生きる方法なんて、魚だったら腐るほどにある。自分で選ぶのは当然のはずだ。きみもそう思うだろう?」 「………無理よ、そんなの」 彼女はうつ向きながら言う。 「そんなことがどれだけ不可能に近いか、あなただってわかってるでしょう? 殺さず、しかも生き残るなんて。仮に逃げ回って生き延び続けたとしても、最後の一人になるまで終わらないって、最初に言ってたじゃない」 ——やはり、彼女の本音はそこにあったか。 彼女は、誰も殺したくないのではない。誰かを殺したくないからこそ、初めから終わりにしたかったのだ。 「それに、さっきも言ったでしょう? 闘いに乗らなければ、結局殺されるのよ。24時間経てば、どっちにしろ——」 「24時間?」ぼくは言った。「それは永遠という意味かな?」 皮肉げに言ってはみたものの、ぼくが言うと、やはりいまいち様にならない。 「24時間も、ぼくらには猶予が与えられているんだ。状況を打開するには、十分すぎる時間だと思うけど?」 「………………」 何を言っているのかわからない、とでも言いたげな感じで、ひたぎちゃんはこちらを見ている。 ぼくだって、単なる楽観だけでこんなことを言ってるわけじゃない。 どんな手段を行使したのかは知らないが、ぼくが誘拐されたとすれば、ぼくがあの病院から消えたとなれば、その情報は十以上の確実性をもって玖渚の知るところとなる。玖渚がその気になれば今のぼくの居場所など、辞書で単語を引くような気楽さで調べあげてしまうだろう。 時間さえあれば、玖渚が必ずどうにかしてくれる。あいつをこの状況に巻き込むのは正直避けたい所ではあるが、今回はいくらなんでも、取れる手段が限られすぎている。 タイムリミットがある上に、尋常でないレベルで命が懸かっているのだ。形振り構ってはいられない。 ただし、玖渚だけに頼るわけにはいかない。 ぼくはぼくで、状況を打開するために動かなければならない。 「きみが本当にここで終わりにするつもりなら、ぼくにそれを止める権利はないのかもしれない。ただ、もしぼくの言葉がきみの選択肢を奪って しまったのだとしたら、可能な限りの選択肢を提示するくらいの責任は、ぼくにはある。押し付けるんじゃない。ただ提示するだけだ。きみには終 わりにする以外の選択肢があって、それを選ぶ余地がある。その上でまだ終わりにするって言うなら、ぼくにはそれ以上、言うことはないけれど———」 「………………」 ひたぎちゃんはぼくを見、ぼくはひたぎちゃんを見ていた。 言いようのない雰囲気を伴った沈黙。 ぼくにできることなんてたかが知れている。通りすがりの脇役に、取るに足らない道化役に、手のひらの上の踊り子に、欠陥製品の戯言遣いに、大したことなんて、何ひとつとして出来やしない。 だからこそ。 ぼくにできることは、すべてやり尽くさなければならない。 終わりにする前に、終わりになる前に。 たとえ、ぼくの行動に意味がなくても、ぼくの選択に意味がなくても、 ——そんなことは——— そんなことは、 どちらでも、同じことなんかじゃねえんだよ———。 本当に勝手だけれど、戯言だけれど、どうしようもなく欺瞞だけれど、自信も根拠も、滑稽なほどに皆無だけれど———、 後悔したまま、終わりにしたくなんてないから。 ………………。 ………………………。 長い沈黙。終わりを無くしたような、長い長い沈黙。 互いに見つめ合ったまま、互いを見据え合ったまま、時間だけがただ過ぎ去ってゆく。 言葉を失ったように、選択肢を見失ったように。 ここに来てから感じた幾つかの静寂。ぼくはその中で唯一、今のそれを息苦しくないと感じた。 「………………卑怯だわ」 永遠にも似た静寂は、彼女のか細い声によって打ち切られた。 「………そんなの、選択肢を奪うのと、大して変わらないじゃない」 相変わらずの、冷ややかな声色。今までと変わらぬ、剣呑な目付き。 ただ、放たれる敵意は既にない。 違いといえば、それくらいのものだった。 「あなた、やっぱりむかつくわ」 ぼくは苦笑した。「よく言われるよ」 「いっそ殺してやりたいわ」 「………よく言われるよ」 「いっそ納棺してやりたいわ」 「………………」 表現が迂遠すぎて逆に恐い。 何か急に生き生きしてないか、この娘。 「あなた、詐欺師になれるわよ」いっそ軽蔑するような声色。「本当、よく回る舌ね。回るだけ回してねじり切ってしまいたいくらい」 「………そりゃどうも」 「言っておくけど」彼女は言う。「生き残る道を選ぶからには、ただの希望や目標のままで終わらせるのは絶対に嫌よ。『やれるだけのことはやったからもう悔いはない』とか言って綺麗にまとめるような落とし方、地獄に落としてでも認めさせないからね」 ………認めないんじゃなくて認めさせないんだ。 言葉尻を揃える余裕があるのが微妙に恐ろしい。 「それと、ここまで選択の余地を削いでおいて『自分が選ばせた訳じゃない。自分は選択肢を提示しただけだ』なんて逃げ口上、通用すると思わないでよ。私に選ばせた責任、きちんと最後までとりなさい」 「………」 ………まあ、予想してはいたことだけど………結局そういうことになっちゃう訳か。 あーあ、なんだかなあ。 せめて、もっとスマートにできればいいんだけどなあ。 言うこと為すこと誤魔化しばかりで、結果はいつも空回り。 優しくなくて愚かしいだけ、男らしくなく女々しいだけで、格好良くなく不格好。 いつもいつも、そんなふうにしかできない自分に、正直腹は立つけれど。 「言われるまでもないさ、そんなこと」 ぼくは精一杯の毅然さを持って立ち上がる。 「必ず生き残る。希望でも目標でもない。それ以外は、絶対に認めない。きみと一緒に、生きたままここを出ることを約束する。きみが生きていてほしいと思う人がいるなら、その人たちも必ず一緒に」 ぼくは彼女へと歩み寄り、ゆっくりと手を差しのべる。 「きみが生きてる限り、ぼくも生きるさ。一緒に行こう。生き残るために」 差し出された手を、彼女はしばらくの間じっと見つめ、 「……格好良いなんて思わないわよ」 彼女の左手が、差し出された右手を掴む。そして彼女もまた、毅然と立ち上がる。 「私がそう思うのは、この世で阿良々木くんだけなんだからね」 そう言って、彼女はぼくに小さく笑いかけた。 初めて見る彼女のその表情は、見蕩れてしまうくらいに、魅力的な笑顔だった。 花火は見るより打ち上げろ。 砦は住むより打ち崩せ。 夢を見るにはまだ早い。 現実の夜はまだ明けぬ。 見てもつまらぬ祭りなら、踊らないのもまた一興。 さあ、戯言の始まりだ。 【1日目 深夜 E-4】 【戯言遣い@戯言シリーズ】 [状態] 頭部に軽傷、身体の数ヶ所に打撲(行動にそれほどの影響なし) [装備] バタフライナイフ@人間シリーズ(零崎人識が所有していたナイフの一つ) [道具]支給品一式、ランダム支給品(1〜3) [思考] 基本 ここから脱出する方法を探す。そのための協力者、情報を収集する。 1 協力者の第一候補として、まずアララギ君を探す。 2 戦闘に関しては、基本的に逃げの一手に徹したい。あるいはうまく丸めこんで、あわよくば仲間に引き入れる方向で。 3 ひたぎちゃんは、怪我が治るまでできる限りフォローする。 【戦場ヶ原ひたぎ@物語シリーズ】 [状態] 右手甲負傷(物がうまく掴めない程度)、右足首捻挫(自力で歩くことは可能) [装備]スタンガン@戯言シリーズ(哀川潤が使用していた物) [道具]支給品一式(懐中電灯の乾電池を除く)、ランダム支給品(1〜3) [思考] 基本 阿良々木くんと一緒に生きてここから出たい。 1 阿良々木くんに早く会いたい。 2 殺し合いには参加したくない。ただし阿良々木くんに害なす人間がいたら話は別。ていうか容赦しない。 3 生きて出るため、いっくんに協力する。 ※病院のくだりは、闇口濡衣たちが来る前の時系列ということで。 玖渚友が来ていることは、いーちゃんは可能性すら考えていません。 014← 014 →015 ← 追跡表 → ― 戯言遣い ― ― 戦場ヶ原ひたぎ ―
https://w.atwiki.jp/nisioisinnbr/pages/96.html
【物語シリーズ】からの出典 キスショットの心臓 鑢七実に支給。 文字通り、吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの心臓。心臓単体だが機能を維持し、脈打っている。
https://w.atwiki.jp/nisioisinnbr/pages/107.html
虚刀『鑢』対人類最終『橙なる種』 清涼院護剣寺、刀大仏が祭られる剣士達の聖地、そして無刀の姉弟達による決闘が果たされた地。 「はあ、なんでこんなとこに来ちまうのかね」 巨大な大仏を見上げながら、これまた大きな男、鑢七花は似合わぬため息を吐いた。 「まあ、元からどこに向かってるのかなんか全然わかってなかったけどさあ」 誰もいないながらも呟き続ける姿は不気味であるが、これは仕方の無いことだろう。 なんせ、さっきのさっきまで否定姫と話しながら歩いていたと思ったら、わけのわからない 場所へと放り込まれ、何かの説明がされたと思ったらここに一人放り出されてしまったのだから。 「誰もいないのかよ」 要するに七花は寂しいのである。いつでも道中には連れがいたのが今では一人。 どれだけ言葉を発しても返事してくれる相手が全くいない状況にまだ慣れてないのだ。 決して七花が悲しい性格だからではない。 「それじゃ、別の場所探してみるか」 別に誰も聞いてないのに、やっぱり寂しい七花は声に出して言う。 だが、別に七花は話し相手を探しているわけではない。確固たる目的があった。 (あの場所に確かにとがめが…いた) 自分が惚れ、そして守りきることが出来なかった女。自分の腕の中で死んでいった彼女が 確かにいた。 そんなはずがない。 とここに来る途中に何度も思った。 とがめはあの時に死んだ。 あの冷たくなった肌、消えていくぬくもり、死体から脱がせそして今自分が羽織っている形見の豪奢な着物。 全てが記憶に残っている。 けれど、確かにとがめはあそこにいた。 あの時のままの姿で あの時のままの格好で (あれは、間違いなくとがめだった) 死んだはずのとがめがなぜいたのか、考えれば考えるほどわからなくなっていった。 そもそも考えることは自分に向いていない。 それでも考えて、考えて、考えて、一つの結論に至った。 「会って、確かめるしかないよな」 単純ではあるが、一番確実な方法である。 考えぬかなきゃいけないようなことか?とかは思ってはいけない。 これでも七花もがんばったのである。 「けど、今俺どのへんにいるんだ?」 とがめを探すと言う目的に行き着いたが、重大な問題が出てきてしまった。 自分の現在地がわからないのである。 「さっき捨てたあの紙切れってやっぱ地図だったのか?」 と七花は気づいた時に持っていた紙と何かが入った袋のようなもののことを思い出した。 袋に関しては、開け方がわからないので全部置いてきたし、紙にしても読めない字がいくつも あるので捨ててしまった。 「全く、そうならそうと配る前にさっさと言えよ」 ちゃんと水倉林檎から説明があって、それをあの時七花はとがめに気を取られ聞き逃しただけなのだが、 それには気づかない。ついでにまにわにの首が吹っ飛ぶのも気づいてなかった。 まにわに哀れなり。 「ま、いっか、あの部屋にいた他の連中でも見つけてみるかな」 さらに信じがたいことだが、七花はこのゲームの説明にしてもあんまりよくわかってなかった。 とりあえず、うっとうしい首輪がつけられ色んな所に飛ばされた程度にしかわかってない。 とがめや否定姫がいないと駄目駄目な七花であった。 「それにしてもここにいると色んなこと思い出すよな」 この場所でのことも鮮明に覚えている。 血を分けた姉との戦い。 異端なる才能、そして最悪たる刀を携えた。紛れも無い最強の敵、勝てたことが今でも信じられない。 いや、正確には勝ったとはいえない。 とがめの奇策、そして虚刀流であるがゆえの宿命、刀の呪縛があればこそ、手に出来た勝利。 そこまでしなければ勝つことが叶わなかった許されざる天才。 「姉ちゃん…か」 七花が見つけたのは何もとがめだけではなかった。 あの天才もまたあの場所にいた。 あの時と同じ全てを見透かすような眼をして、 ちなみにまにわにに関しては誰一人として発見していない。 やはり哀れなり。 「やっぱり、俺のこと恨んでんだろうな」 とがめは七実は殺されたかったのだと言ってくれた。 けれど七花は納得できなかった。 なにせ姉が自分の腕の中で恨み言を言いながら死んでいくのを目の前で見てしまったのだから。 もしも、もしも姉とも出遭ってしまい、今度は憎悪を込めて襲ってきたら勝てるだろうか。 「勝てないだろうな…」 実力にしても当然ながら、姉が自分を殺したいと思っていたら殺されてもいいと考えてしまう。 こんな気持ちで勝てるわけがない。だが、負けてしまえばとがめを捜せなくなる。 「ええい、考えても仕方無いか!」 と七花は頭を振って考えを払いのける。 もしもの考えをめぐらせても答えなど出せるはずがない。そういうことには自分は向いていない。 「そろそろ行くか」 ここから早く出ないとまた考えてしまう。 そう判断した七花は最後にもう一度刀大仏をよく見ておこうと顔を上げ、眼に入ったのは 刀大仏の腹から突き出る漆黒の刀身だった。 「な…」 何が起きているのか理解出来ないうちに刀身を中心に亀裂が走り、大仏の腹がはじけ飛ぶ。 そして、 あたかも神の腹を喰い破る悪魔のように、 “それ”が姿を現した。 赤い、いや赤というには明るすぎる橙色の髪と同じ色の眼をした小柄な少女だった。 小柄な体に似合わぬ大振りの黒い刀を持ち、狂気に染まった眼で七花を睥睨する。 視るのでも診るのでも観るのでも看るのでもなく、ただじっと見つめる。 七花にはわからない。 この少女の名が想影真心ということも、 この少女が人類最終と呼ばれる存在であることも、 ただ解るのは 少女の持つ刀が『毒刀・鍍』であること、 そして 圧倒的な殺気。 「なんだよ…」 体が震える。 「なんなんだよ…」 足が、竦む。 「こんなの、こんなの」 この感触、過去に味わったことが、ある。この感覚は、 「あの時の姉ちゃんと同じじゃねえか…」 あの時に見せられた、姉自身ですら抑えられなかった姉の本気、その時と同じ殺意を その少女は放っている。 「げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら」 七花の心境をよそに真心は笑う、笑う、笑う。 心底おかしいように、心底嬉しいように、心底狂ったように。 そして目の前の獲物を見つめ、 次の瞬間に七花の目の前で刀を振り上げていた。 「な!?…くそ」 震える体を無理やり動かし、紙一重で刀の切っ先をかわし。後ろとびで距離を取り (なんて…速さだ!!) そして、さっきまで真心がいた場所を見上げ、 信じられないような光景を目にした。 大仏の腹に空いた穴から後ろの壁ではなく外が見えていた。 そのことから示される事実は一つ。 「外からここまでぶち抜いてきたってのか…」 あまりの常識破りの行動に言葉を失う七花に構わず、再び真心が切っ先をこちらに向け 飛び掛ってくる。 「っこの!舐めんな!!」 突き出される切っ先を体をわずかにひねる最小限の動きでかわし、構え、 「虚刀流『薔薇』!!」 迎え撃つように蹴りを放つ。 突っ込んだ勢いを抑えきれず蹴りをまともに喰らった真心の小さな体は後方に吹っ飛び そのまま床に叩きつけられ、 何事も無かったのように立ち上がった。 「嘘だろ!?」 今の一撃は完全に決まっていた。相手の速度を上乗せして叩き込んだ蹴りは相当の威力だったはずなのに、 「げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら」 真心は笑いを止めることなく再び突っ込んでくる。 「く…『杜若』!!」 七花もまた前に飛び出す。 だが、速さの差は歴然、真心が先に間合いを詰め刀を大上段から振り下ろす、 より先に七花が一気に加速して横に回り込む。 相手から見れば七花が突然消えたかのように見えるだろう。 この極端な加速の切り替えこそ、虚刀流の歩法『杜若』! 目測を誤って空振りし、隙が出来ている真心の横にそのままの速度で一気に突っ込み、身構え 「虚刀流奥義」 放とうとした瞬間、 真心の眼がぎょろりとこちらを向いた。 「なっ!」 本能的に七花は減速し後方に跳ぶ、 と同時に胸部を凄まじい衝撃が襲い、 胸を蹴られたと気づいたのは床に叩きつけられてからだった。 「なんてこった…」 今度こそ七花は驚愕する。 変幻自在の『杜若』がこんな早くに見切られた。 からでは無く 「今の攻撃、さっきの俺の『薔薇』じゃねえか…」 そう、真心の放った蹴りは紛れも無く自分自身が放った『薔薇』だった。 しかも 「なんつう威力だ…」 喰らう直前に後ろに跳んで威力を殺したはずなのにあばらが軋んでいる。 その痛みに気を取られる間も無く、 追撃してきた真心が再び刀を振りかぶる。 咄嗟に身構えた七花の前で、 真心が突然消えた。 (やばいっ!!) 考えるより先に体が動き、真横から振られた斬撃をかろうじてかわす。 が、 真心は刀を振り払った勢いをそのままに一気に加速し、再び『薔薇』で七花を蹴り飛ばす。 「ぐお!!」 今度は後ろに跳ぶ暇も無かった。 猛烈な衝撃が七花を襲い、まるで紙くずのようにその大きな体が大きく弾き飛ばされ、 壁に叩き付けられる。 (今の動きは『杜若』、間違いない…こいつ、俺の技を…) 痛みが全身に走りわたるのと同時に絶望感もまた広がる。 (冗談じゃねえ…これじゃ、まるっきり姉ちゃんと一緒じゃねえか) まだ一度しか見せていない自分の同じ技をより的確に繰り出す。 まさにあの姉に瓜二つ、いや、病魔による弊害が無いぶん、もしかしたら、あの姉より強いかもしれない。 そんな相手に、姉さえ凌駕しかねない、相手に勝てるだろうか? 否 勝てるはずがない。 あの時の姉には刀の呪縛と、そしてとがめの奇策が、守る物があったからこそ勝てた。 だが今度の相手は刀の呪縛があるように見えない、 なによりとがめが、守るものがいない、 (逃げるか…) 少し前の自分ならこんなこと考えもしなかった。 逃げるくらいなら最期まで戦うことを選んだろう。 だが、この敵はそんな信念すら覆す。 そんなことを考えている七花に、真心は歪んだ笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる。 (遊んでやがんのかよ、ちくしょう!) その事に憤りを感じても、どうすることもできない。 奥義を出そうにもその暇すら与えられない。 最速の『鏡花水月』 なら繰り出せるかもしれない。 だが、威力に劣る『鏡花水月』では致命傷は与えられない。 逆に吸収され、そっくりそのまま返されるのが関の山だ。 逆にあの筋力で『鏡花水月』を喰らえば、間違いなくこちらが致命傷に至る。 まさしく八方塞がり。打つ手が無い。 (ここで殺されたらとがめに会えない) 今回の戦いは逃げることが許されている。 だったら逃げればいい。 勝てもしない相手に喰らいつき虫けらのように殺されることが自分の目的ではない。 そうだ、姉に会っても逃げればいい、逃げて逃げて逃げて、生き残れればそれでいい。 今の自分には目的がある。 信念より矜持より大事な目的が、 (一か八かで入り口まで走るか!) ここから出てしまえば、逃げることは難しくない。 七花は『杜若』の体勢のため体を縮め、 自分の着ている着物がざっくり斬られているを目にした。 さっきの斬撃をかわしきれていなかったのだろう。 そこにうっすら血がにじみ着物に染み込んでいる。 その光景は、あの日と似ていた。 とがめが炎刀に貫かれたあの日と、 その斬り口を七花はじっと見つめ、そして、跳んだ。 生き残るための出口へ ではなく、真心へ、眼前の敵へと! そしてその勢いで手刀を叩き込む!! (は、何が目的だ) その一撃に揺るぎもせず、真心は反撃の拳を叩き込んでくる、が、避けない! (何が生き残る、だ) 拳が腹にめり込み、鈍痛が走る。 それでも、 七花もまた揺るがず『薔薇』で真心を蹴り飛ばす。 (逃げて、逃げて、逃げて) 後ろに仰け反る真心に合わせ、七花もまた前に出る。 休ませないために、反撃する暇も与えないために、そしてなによりも 勝つために!! (それで一体どんな顔してとがめに会えるってんだ!!) きっと、そうやってとがめに会っても、もうマトモに顔を合わせることも出来ないだろう。 折れた刀など、なんの役にも立たない。とがめに折れた刀など使わせられる訳が無い。 例え、どんな化け物でも、それが姉でも、刀は斬る相手は選ばない!! 刀が斬ることを放棄したとき、刀の役目は終わってしまう。 一度守りきれなかった女を今度こそ守るために、それだけは許されない!! 「うおおおおおおおおおおお!!」 雄たけびとともに、体勢を立て直せていない真心に連続して打撃を叩き込む。 「げらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげらげら げらげらげらげらげらげらげらげらげら」 が、それほどの連撃を受けても全く動かず受けた打撃とそっくり同じ打撃で反撃に転じる。 充分な体勢でなくても、繰り出される攻撃は速く、確実に七花を捕らえる。 手数こそ七花には及ばないが一撃一撃が、重い、とてつもなく重い。 それらは七花の体に叩き込まれ、骨を軋ませる。 それでも、それでも七花は退かない。休むことなく攻撃を続ける。 これこそが虚刀流の本質! 虚刀流の技を余すことなく攻撃へと転化する!! これこそが虚刀流の防御を捨てた戦い! 「はあっ!!」 その気迫に真心ですら圧され、わずかに、ほんのわずかに隙が出来る。 それはほんの一瞬、けれど、七花にとっては充分だった。 瞬時に加速し、真心の右にまわり、構える。 「『雛罌粟』から『沈丁花』まで打撃技混成接続!!」 それは姉から教わった奥義、この天才に繰り出すにはふさわしい技だった。 一つ一つに人を殺せる重みを持った二百七十二種類の打撃が放たれ、あらゆる方向から 外れることなく真心を打つ!! 「が…!」 それらの攻撃を受けても、まだ、真心は倒れない。さすがにかなりの打撲を負ったようだが、 それでも、倒れない。 どころか、攻撃が終わった瞬間を狙い、直突きを叩き込む。 攻撃の直後の隙をつかれ、かわす間もなく直撃を受け再び七花の体が後方にすっ飛ばされる。 「やっぱ、あれじゃなきゃ、駄目か…」 荒い息の下で七花は呟く。 直突きが当たる瞬間に筋肉に力を込めて威力を抑えていなければ、腹をつぶされていた。 それほどの威力は抑えてなお体に激痛を走らせる。 ただの直突でこの威力、次に体勢を立て直され、何かの打撃を喰らえばそれだけで沈むだろう。 そのうえ手は爪がはがれ、甲の皮が向け 血が流れ落ちている。 あの体に二百七十二発の打撃を喰らわせた手が耐え切れなかったのだ。 もう長くは戦えない。 (次で決める!) 七花は満身創痍の体を無理に立たせ、『杜若』を構える。 幸い、今の相手ならばなんとか最後の奥義を繰り出すことができる。 「げらげらげらげらげらげらげら」 対する真心は全身に打撲を負いはしてるものの、全く衰えを見せていない。 狂ったように笑い続ける。 その姿を見て、七花は何かが腹の奥底から湧き上がってくる物を感じた。 限界の見えない敵への恐怖 ではなく、腹の底から煮えくりかえるようなこの感情は 「…ふざけんな」 そう、怒り。 「ふざけてんじゃねえぞ!!」 怒りがどんどんこみ上げてくる。 「そんだけの力があって、そんだけの才能があって、なんでそんなくだらねえ毒なんかに 振り回されてんだ!!」 始めは呪縛などないと思っていた。 だが違う、この少女は誰よりもこの刀に縛られている。 もし、最初から理性を保っていれば、ここまで食い下がることすら出来ていなかっただろう。 刀に縛られた才能。それは七花にとっての幸運。 けれど許せなかった。 同じような才能を力を、生き残るために毒を使ってまで抑え込んでいた人間を知っているから。 許せなかった。 姉が手にすることの出来なかった力を容易に振るいながらも毒に縛られるこの少女が。 「お前は、あんな、あんな刀鍛冶に負けるような奴じゃないだろ!!眼ぇ覚ませ!!」 その言葉が届いたのか、 それともさっきの二百七十二発の打撃を受け、毒刀に亀裂が走ったのが原因か、 「げ…げらげ…しきざき?げらげら…俺…様はっ…」 笑いが尻すぼみになり、少女は頭を抱え、うめく。 まるで、自分自身を取り戻そうかとするように。 それは絶好の好機、だが七花は動かない。 言葉をつむぎ続ける。 「お前は誰なんだよ、四季崎記紀か?」 「ちが…う………違う……違う違う違う違う違う!俺様は俺様は俺様はぁああああ!!」 叫びながら少女は手に持つ毒刀を柄を持っていないほうの手で刀身を掴み、 「俺様は……四季崎記紀なんかじゃ……無い!!」 万力の力を込め、刀をへし折った。 「俺様は………想影…真心だ!」 『毒刀・鍍』が破壊されたところで、一度まわった毒は消えはしない。 だが、少女の真心の眼からは狂気の光が消え始めている。 毒に打ち勝とうとしている。 「真心……か、いい名前だな」 皮肉でもなんでもなく、心の底よりそう言い七花は今度こそ身構える。 「来いよ真心、決着を付けようぜ、まあその頃にはおまえは八つ裂きになってるだろうけどな」 その言葉に真心もまた折れた毒刀を投げ捨て構える。 今までのめちゃくちゃな体勢ではなく、戦うための体勢を。 片や、人類の最終の存在『橙なる種』。 片や、完了変体刀の最終の刀、虚刀『鑢』 意味合いの違う二つの最終は、微動だにせず、にらみ合い。 「がぁああああああ!!」 「虚刀流七代目党首、鑢七花!参る!!」 ほぼ同時に動いた。 二人の距離は一気に詰まり、一瞬にして近接する。 至近距離で七花は『鈴蘭』の構えを取る。そこから繰り出されるのは『鏡花水月』虚刀流最速の奥義! 真心の攻撃より先に七花の嘗底が突きこまれ、さらにそこを起点に 『花鳥風月』 『百花繚乱』 『柳緑花紅』 『飛花落葉』 『錦上添花』 『落花狼藉』 それら六つの奥義を連続して繰り出す、これこそ、七花の最終奥義!! 「『七花八裂』!!」 七つの奥義は余すことなく真心に叩き込まれる! が (おかしい…) 最後に『柳緑花紅』 を放つ途中で七花は違和感に気づく。 『七花八裂』の最大の弱点、それは『柳緑花紅』の溜めの長さ、 そして、当然その合間に反撃されることを覚悟していた。 だが、反撃が来ない。 そしてその理由はすぐに判明する。 真心は両腕を大きく振りかぶっていた。 その構えが何なのか七花にはわからない。 だが確実なのは、あれを受ければ、自分が死ぬということだ。 (はめられた!) 恐らく、今出そうとしている技には『柳緑花紅』以上の溜めが必要なのだろう。 それを確実に当てるために、攻撃終了後に出来る隙をつく為に、わざと反撃を控えていたのだ。 さっきまでのように本能で反撃するのではなく、先を見通し反撃を控え、必殺の一撃を繰り出すための戦略。 気づいた時にはすでに遅く、攻撃は止められない。 そして、それが耐え切られることも七花には直感でわかった。 だが、それでも、それでも、七花は勝ちをあきらめない! 全身全霊最後の力を振り絞る!! 「『七花八裂』より『七花八裂(改)』へ奥義強制接続!!」 『柳緑花紅』を起点に『鏡花水月』、『飛花落葉』、『落花狼藉』、『百花繚乱』、『錦上添花』、『花鳥風月』の 順番でつながれる『七花八裂(改)』。 七つの奥義を最速のそして最大の威力を発揮する順序で放つ正真正銘の最後の奥義。 真心の前に構える暇が無かった『柳緑花紅』を『七花八裂』の最後に放つことで補った、 最終を始点にする、究極の強制接続! どの戦いでも、あの姉との戦いですら使わなかった、いや使えなかった自分の限界点。 それを七花の勝ちへの執念が打ち破る!! 「ちぇりおーーーーーっ!!」 大切な人から教わった掛け声とともに放たれた『七花八裂(改)』は、真心の攻撃の発動を許さずに 最大の威力を持って、真心の体を吹き飛ばした。 人類最終『橙なる種』と完了変体刀完成形『鑢』との戦いはここに幕を下ろした。 「はあ、ひでえ目にあった」 ボロボロの体をひきずりながら、七花は護剣寺の門の前でため息をついた。 その仕草はやはり似合っていない。 「ってか、あれからあんまり時間経ってなかったのかよ」 体感的には一晩中戦ってた気もするが、実際は月の位置がほとんど変わっていない。 「さて次はどこに行くかな」 体のあちこちに激痛が走るが、それでも休む気は無かった。 そんな時間も勿体無い。 「本当にめんどうだ」 口癖である言葉を言い、さらに自分の担いでいる物を見てさらに深くため息をつく。 「余計な荷物も増えちまったし」 そこには、橙の髪をした少女。 想影真心が背負われていた。 「全く、なんでとどめを刺さなかったんだ?俺」 『七花八裂(改)』を喰らい吹き飛んだ真心は、それでもまだ生きていた。 全身ボロボロで気を失って、それでも息をしていた。 本来ならば、その場でとどめを刺しておくべきだった。 だが出来なかった。 やろうと思えば、すぐにできることがなぜか出来なかった。 なぜだろう? 気絶した相手を殺すのは誇りが許さないからか? 相手が子供だからか? それとも 「とがめに、似てっからかな」 気絶して眠っているような顔は昔、自分の隣で眠っていたとがめを思い出させる。 本人が聞いたら。 「だれが童子属性じゃーー!!」 と突っ込まれてたかもしれないが、残念ながらとがめは不在だった。 「まあ、いいや」 どこかで村でも見つけて、そこで後の面倒でも見てもらえばいいか、と、 相変わらずゲームのことなど全くわかっていない七花であった。 「それにしても変わった格好だよな」 七花は出遭った時から感じていた感想を口にする。 見たこともないような材質の服に、下はもっとわからない構造の何かを履いている。 現代人ならこれがスパッツと言う物だとわかり、さらにちょっとアレな趣味の持ち主なら、 色々と感じることもあったのだろうが、七花にそんな趣味は無いので、変という感想しか浮かばない。 「なんで、こんなめちゃくちゃな力を持ってて、こんな変わった格好した奴のこと 知らなかったんだ?」 とがめと刀を捜して日本全国を旅している間もこんな奴の噂は全く耳に入ってこなかった。 「これなら日本最強も余裕で獲れそうなもんだけどな」 現日本最強であり、数々の戦いでほとんどかすり傷すら負ったことのなかった七花をここまでに できる実力ならば、日本でダントツの最強になっていてもおかしくない。 実際は真心は人類最終という日本どころか世界最強といっても全く過言ではない存在なのだが、 七花はそんな別世界の事情など知る由もない。 「別に考えなくてもいいか」 単純に欲がなかったとかそんな理由なんだろうな。 と、深く考えるのをやめる。何度もしつこいようだが、七花は考えるのが苦手なのである。 「おかげで心構えも出来たし」 真心と戦うことで、七花は吹っ切れた。 もし、姉と会い、憎悪の眼差しで見つめられても、逃げることはきっと無い、立ち向かえる。 「まあ、会わないに越したことはないけどさ」 立ち向かえるといっても、やはり実の姉とは戦いたくはない。 「否定姫のほうも捜さないとなあ」 今まで薄情にも忘れていた否定姫のことも今更のように思い出す。 一応、とがめ亡き後に旅を共にした間柄である。そちらも無視はできない。 「まあ、先に会ったほうと一緒に捜せばいいか」 結局適当にまとめて、七花は歩き出した。 とがめと否定姫を捜すために、 だが、この時点で七花は知らない。 捜すべき相手と会いたくない相手が共に行動していることを。 七花は知らない。 今背負っている少女がどれほどの存在なのか。 そして自分の現在地すら、七花はわかっていなかった。 「ま、歩いてりゃどっかに着くさ」 恐ろしく単調な思考で七花は行く。どっかに着くために。 七花が去り少し経って、護剣寺の門の上で立ち上がった者がいた。 「すごい…!すごいすごいすごいすごいじゃないさ!!」 その人物、体中に刺青のような紋様を付けた少女はさきほどの戦いを思い出し 興奮したように叫ぶ。 真心といい、この少女といい、よく少女に目を付けられる男である。 だが、正確には彼女は少女ではない。 彼女の名は真庭狂犬、ゲームが始まるより前、首をすっ飛ばされたまにわにの皆さんの 生き残りである。 「あの虚刀流をあそこまで一方的に…なんて娘なの、あいつ!!」 彼女は自分の意識を別の女性の体に移し変えることで永い時を生きてきた。 その彼女でさえ、あれほどの強さは見たことが無かった。 始めは七花の気をそらす程度の相手としてしか見ていなかった。気さえ反らしてくれれば、 後は背後から襲うつもりでいた。そのための囮と、 卑怯な戦法である。 だが、卑怯卑劣こそが忍者の売り、ましてや相手が虚刀流ともなればなおさらである。 だが、 すぐにそれは間違いであったと気づかされる。 実際には卑怯卑劣など入り込む隙間も無かった。 それほどの存在。 「く、全く、この体なのが悔やまれるわね」 もし、あの時の凍空一族に乗り移る前の体なら、あの瞬間に飛び出し体を乗っ取れていただろう。 だが、今の体は戦乱の時代の頃の体になっていた。 この体は隠密行動には向くが、速さが足りない。 いくら手負いとは言え、虚刀流に迎え撃たれてしまうだろう。 「けど、あきらめないわよ…」 あの体さえあれば、鳳凰と人鳥の二人以外の敵を殲滅することも夢ではない。 そして、最後に自分が死に。 優勝者となる者を二人で決めてもらえばいい。 仲間を目の前で殺した水倉林檎とやらに頼るのは癪だが、この際仕方ない。 どちらが勝ち残ったところで、真庭の里には永遠の繁栄が約束されたも同然だ。 里の未来のために、この命を投げ打てるなら悪くない。 そのためにも、 「あの体を…頂く!」 その決意と共に狂犬は七花の後を静かに追う。 狂犬らしく食い散らかすために。 【1日目 深夜 D-5清涼院護剣寺】 【鑢七花@刀語シリーズ】 [状態] 満身創痍(一応健康) [装備]捨てた [道具]捨てた [思考] 基本 とがめと否定姫を捜す 1 とりあえず姉ちゃんには会いたくないな 2 とりあえず、この女をどっかに引き渡さないと 3 なんで砕いた毒刀がここにあるんだ? 4 げーむ?るーる?何ソレ?食い物の名前か? ※参戦時期は否定姫と旅してる最中です。 ※ゲームがなんなのかわかってません ※毒刀に斬られました。 ※とりあえずこのままだと爆死の危険大です。 【想影真心@戯言シリーズ】 [状態] 現在気絶中 [装備] なし [道具]落とした(地図くらい残ってるかも) [思考] 基本 不明 ※まだ、毒が残ってるかも ※七花の繰り出した技は全て習得した? ※二人とも体に制限がかかってます。どっちも全力なら護剣寺消し飛んでました。 【真庭狂犬@真庭語】 [状態]健康 [装備]なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本 真庭鳳凰と真庭人鳥を勝ち残らせる。 1 隙を見てあの小娘の体を乗っ取ってやる 2 真庭の里にもう一度繁栄を ※参戦時期は七花に殺された後です。 ※体は戦乱時代の物です。 018← 019 →020 ← 追跡表 → ― 鑢七花 ― 015 想影真心 ― ― 真庭狂犬 ―