約 666,481 件
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/425.html
497: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 15 53 21 ~雪奈side~ 『キーンコーンカーンコーン』 私が屋上のドアの前まで行くと授業開始のチャイムが鳴る。 でも、関係ないんだよね。 サボるから! 『ガチャ…』 屋上の扉を開けると風が一気に校内に入り込む。 髪が後ろにさらさらとなびいている。 寒いくらいがちょうどいいんだよ…きっと。 私は扉上へと続く梯子を登る。 先生とか来てもばれないように… いや、バーチャルだからバレてもいいのかな? でもサボるって言っちゃったし… 今帰ったら遅刻でもあるし… うん、やっぱりサボるのが一番かな。 「ふぅ…」 私はその辺に寝そべる。 空が青い。 …そういえばこの学校はどこにあるのかな? 風も吹いてるし…空も透き通るような青さ。 これをバーチャルなんかで作れるのかな? うーん… 『ガチャ…』 「えっ?」 だ、誰か来た! 先生かも…バレたらどうしよ… ばれないとは思うが人間いざという時になって慌ててしまう。 そういうものだ。 「ど、どうしよ…!?」 突然誰かに口を塞がれる。 て、敵!? 「静かに…気づかれちゃうよ?」 私は声の通りにじっと息を殺した。 しばらくすると入って来た人は何かを囁き、戻っていく。 せ、セーフ? じゃなくて… この人誰!? 私はぱっと離れて後ろを向いた。 498: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 16 02 11 「ふふ、君もサボりに来たんだね」 …! この人は…… 「十六夜…とかいう人…」 「覚えててくれたんだね?雪奈ちゃん」 そういえばこの人敵だ… それもやばいって聞いたし… 私は帰ろうと橋子に近づく。 「待ちなよ」 が、十六夜に手を捕まれた。 「せっかくなんだし、サボりなよ?そのつもりだったんでしょ? 大丈夫、今は何もしないよ」 うー…本当かな? でも…うんと言わないかぎり手を放してくれないだろう。 「う…わ、わかったよ… 本当に…今は殺しあいとか…なしだよ?」 「約束するよ」 この人…約束なんてちゃんと守ってくれるのかな? 私はとりあえず十六夜の隣で寝そべる。 まさか…敵チームで一番危ない人とサボることになるなんて… 499: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 16 14 01 「…はぁ、やっぱり学校はいいね」 「え…?」 「こんなにいいとこでサボれるから」 「あぁ…」 そういう意味なんだ… 一応ここは勉強を教わるところで サボれる場所では…… あ、そうだ。 「ねぇ、十六夜…さん」 「はは、さんなんて堅苦しいなぁ」 「じゃあ…十六夜…君」 「ん?何?」 何か調子狂うな…… 「あの…この学校とか空は作り物なの?」 「いいや、いくらなんでも空をこんなに再現出来ないよ。 この学校も空も本物だよ」 本物なんだ… 久しぶりの風… 前回のゲームでは硬く閉ざされた部屋にいたから… なんだか懐かしいな。 …出来れば…真波達ともう一度来たかったな… 「雪奈ちゃんは友達想いなんだね?」 「え?」 「…みんなと来たかったって…」 え? どういうこと? 何でわかるの? 頭が混乱している。 「僕は人の心が読めるんだ」 「え?な…」 「生まれつきそうだったんだよ。 人の過去も分かる…これも生まれつきの能力なんだ」 そんな人がいるなんて… アニメから飛び出した人みたい。 500: 名前:+椎名+☆2012/01/05(木) 16 23 17 「…はぁ」 ため息をついて十六夜君は空をじっと見つめている。 …こうしていれば…普通の…男の子なのに… 普通の…かっこいい男の子なのに… あれ?か、かっこいい…? そ、そんな風に思っては… 「かっこいい…ね、ありがとう。雪奈ちゃん」 う、読まれた… なんでかっこいいなんか浮かんできたんだろう… 「ねぇ」 「…?」 「雪奈ちゃんはさ…『愛』って分かる?」 愛…!? この人から意外な言葉が…! 「僕さ、愛とか友情とか…嫌いなんだよね」 …え? 「どうして…?」 「いつまでも友達とか言ってさ、 結局は先にいなくなっちゃったりするだろ? いつかはいなくなるんだよ…」 この人… 過去に何かあったのかな…… 今すごく悲しそうな目をしてる。 「私も…『愛』は嫌い」 「…!へぇ…意外だね?」 あれ? 愛が嫌いなんてなんで言っちゃったのかな… 本当は…友達とか友情とか愛とか好きなのに… 私は…愛が嫌い…? 保健室のこともそうだけど… 時々自分の気持ちがわからなくなる。 何故…私は保健室も愛も嫌いなのかな…
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/75.html
「ぅわっ、なんでこっち来るんだよ」 夕食時。 さっきの昼飯の時と殆んど同じように、俺らは座っていた。 葵は向こうの方にいる。 たぶん、同じクラスの友達と一緒にいるのだろう。 …なぜか周りは女子ばかりだけど。 で、俺の隣に座った慎也が、俺の斜め前(つまりは慎也の前)の桜田に嫌悪されたというわけだ。 「そりゃ、旭の隣が良いからな」 慎也が肩に腕を回して俺の身体を引き寄せるのを、俺は全力で阻止した。 「俺は良くない!」 俺ら二人の行動を見ている桜田と岸はにやりと笑う。 「お前ら仲良いよな」 「二人がくっつけば、周りの被害がなくなるのにな~」 双方が続けて言った。 「俺はそれでも良いぞ」 慎也も、俺の方を向きながら桜田たちと同じようににやにや笑っている。 「じょーだんじゃねえよ。俺はホモじゃない!」 普通に女子を好きになる体質だぞ、俺は。 「…さっき中田が"旭なしでは生きていけねぇ"って言ってたぞ」 岸が、慎也のセリフ部分は声色を変えて俺に言った。 「あっそ」 ファンクラブの方々から聞いたので、既に知っていることだ。 俺はそう思ってそっけなく返事をする。 慎也だって本気でそう思っているわけではないはずだ。 大体は"旭とセックスしなければ"、"旭に触れていなければ"っていうそういう感じの意味が込められているに違いない。 誰でも良いんだ、俺じゃなくても。 そんなことは百も承知。だから別段、食いつくような話題でもない。 やっと午後8時が来た。 ここからは時間割が決められていない。 自習室を使って勉強している優等生もいるようだが、大半はそれぞれの部屋で各々のことをするだろうと思う。 「っし、風呂行くかぁ」 大浴場から上がると、部屋に戻らず、桜田と岸の部屋に行こうと思ったので、そのための準備に勤しんだ。 慎也はいない。どこへ行ったのかも良く分からん。 ま、あんなヤツはどうでも良いんだ。うん。 一階の入浴場へ向かっていると、進行方向とは逆に多数の男子生徒たちがやって来た。 もう入り終えたのかな。…もしかしたら空いてるかも。 だが、みんな少し不満そうな顔をしている。 あまり気にはならないが。 脱衣場の扉を開けると、案の定、見る限りスリッパはなかった。 ちなみに一般の客はいない。学校が貸し切っているらしい。 やった、と俺は心の中で叫んだ。 どちらかというと温泉は、みんなでワイワイと騒ぎながら入るより、一人でのんびり寛いでいる方が好きだ。 服を全部脱ぎ終えると俺は、タオル一枚だけ持って浴場へと入った。 おおッ、マジで誰もいない! 広い広い風呂場の中、いるのは俺だけ。 奥の方には露天風呂に続く扉もある。 俺はそれを目前にして一人、テンション上がっていた。 とりあえず、賭け湯を済ませ、先に身体やら頭を洗うべく、シャワーがついている一区画に座った。 すると、後ろでカラカラと扉の開く音が聞こえ、人の気配がした。 誰かが入ってきたのか? せっかく一人だったのに。 と、俺は少しガッカリしたが、それは違うようだった。 露天風呂から、室内風呂に戻ってきただけのようである。 知らない生徒だとまじまじ見るのも変だし、俺は後ろを振り向かないことにした。 その人物は、俺の背後にしゃがむと横から手を伸ばし、備え付けのシャンプーのポンプを押す。 「よう、旭」 「っぎゃ!!」 驚きのあまり俺は身体に泡をつけたまま悲鳴を上げた。 紛れもなく慎也の声だ…。さっき男子生徒ががっくりした様子で戻ってきていた理由が分かった気がする。 「な、ななななんだよ、脅かすなっ」 心臓が壊れそうなくらい高鳴る。ホント、寿命が縮むよ。 「ケツの穴洗っとけよ」 慎也はわざとのように身体を接触させて、耳元でそう囁いた。 「は、あ? 何言ってんだ、お前」 「後でヤるからな」 「ふっざけんなぁッ」 俺がそう叫んだのも束の間、慎也はシャンプー液がたっぷり付いた自分の指を、身体に沿って滑り込ませた。 「…ああぁ、な、なに…ッすんだ」 ヂュグ。水音がして、俺の中で冷たい液体が泡立つ。 ぬるぬるしてとても気持ちが悪い。 「…あ、あぁッ…なんてことっ、」 俺は立ち上がると内部の泡を洗い流そうと、シャワーを秘腔部にあてた。 シャワーの水圧で、その部分は刺激されて少しの快感が襲う。 「ん…ぁ、ふ…ッ」 「ふふ、旭の火照った顔をみてると興奮する」 「んなぁッ! …の変態がぁぁ!!」 「頼みもしないのにシャワーでオナってくれるとはな。しかも俺の目の前で」 「お、お前のせいだろ!」 自慰していると捉えられていることに俺は最大の羞恥を覚え、まだ泡が残っている感覚はするものの、シャワーを止めた。 だが、慎也は俺の身体を抱き寄せると、シャワーの水を再び出して、 「ちょ、慎…也ッ」 俺の下半身にあてた。 それだけじゃなく、先程よりも蛇口を大きくひねり、しかもシャワーのレボルバー(っていうのか?)をマッサージモードに切り替えやがった。 真ん中に集結した水は更に圧力を増して俺の下に降り注ぐ。 「や、やめ…っ。ぁあッ…おね…が、だから…」 こっちは必死で頼んでいるというのに、慎也は聞く耳を持とうとしない。 「旭がイッたらやめてやるよ。俺は可愛い獲物を前にしてヤるの我慢してるんだぞ? ま、焦らされるのも良いけどな」 知らねーよそんなこと!!! そっちの都合だろうが!!! 俺は静かに一人でのんびり温泉に入って寛ぎたかっただけなんだぁーーー!! 慎也は俺を離そうとはしないし、シャワーを止めようともしない。 結果、俺は慎也の腕の中でただ喘ぐ以外のことはできないでいる。 「し、慎…ぁッあぁ、はな…せ」 イきそうだ…。 「ばーか、離すかよ」 俺と慎也の肌は接触しあっている。 湿度の高い風呂場で、水滴が付いてしっとりしている彼の身体はいつもに増して熱く感ぜられる。 俺に刺激を与え続ける慎也の下半身は結構勃起していた。 …ったく信じらんねー。 性対象として見るんじゃねーってさっき、言ったばかりだぞ。 聞いてなかったのかよ。 「あ、ぁあ…ん、も…止め…」 白濁とした物が陰茎の先端部から飛び出てきた。 これでもかと言わんばかりに紅潮したからだと頬。 膝はがくがくしていて、上手く立つこともできない。 「慎…也っ、たッ…のむ、あ…ぁ」 これ以上下半身を刺激されると頭がおかしくなりそうだ。 必死の懇願あって、慎也はやっと蛇口をひねってシャワーを止めた。 「…はぁ…はぁ…お前マジで…死ね」 這ってでも俺は、なるべく慎也から遠ざかろうとする。 「さっきさ」 そんな俺とは逆に、慎也は距離を狭めようとしている。 俺の手を取ると、慎也は伏せ目がちに話し始めた。 「そういう対象で俺を見るなって旭は言ったけど、それは無理」 「…はぁ? 何言って…」 「だってこんなに可愛いんだぞ? 旭の顔見るだけで俺、妄想して勃ってしまう」 「な、な! 信じらんねッ」 慎也はどんどん俺に近づいてくる。 ちょっとだけ動けば唇同士がかすれるくらい。 「今も旭を犯したくて仕方がない。コレでも抑えてる方なんだ」 「ちょ、顔…近ぇよ!」 俺が慎也を押しのけると、慎也は立ち上がって、入り口の扉に向かった。 「後で続きするから。…それまで処理せずに待ってる」 と言い残して去っていった。 あーー気持ちよかったぁ。 ん? ち、違うぞ。慎也にされたこと言ってるんじゃねえぞ。 温泉のことだから! ユーシー?? 本当に温泉はいいな。 まさに日本の象徴だ。 一番最初に掘り起こした人は天才だな。うん、尊敬する。 途中で邪魔が入ったけど、この合宿で一番楽しみにしていた温泉をこれほど堪能出来たんだから、まぁいっか。 な、老人みたいだなんて思うなよ?? …あれ、さっきから俺、誰に向かって喋ってるんだろ。 「何だ、もう風呂入ってきたのかよ」 自分の部屋には戻らず、当初の予定通り桜田と岸の部屋に俺はいった。 髪の毛が濡れている俺を見て、桜田が言う。 「あとでみんなで行こうと思ったのにー」 既に敷かれた布団の上で、桜田はPSPで遊びながら寝転がっている。 部屋には二人以外にも何人かいた。クラスメート。女の子もいる。 「隼人ぉ、雪代くん来たし、やろーよ」 女子の一人がテーブルの上に置いてあったカードの束を取った。 「やるかー」 PSPをしていたヤツ全員がそれを一時停止する。 モンハンのオンラインやっていたんだろう。音的に。 桜田は女の子からカードケースを受け取ると、カードを取り出して何度か切った。 「なにすんだ?」 俺は聞いた。 「UNOだよ。最後まで負けたヤツが全員のアイスおごりな」 カードをシャッフルしながら彼はニッと笑った。 アイス、と聞いて俺は俄然やる気が出た。 アイスクリームは美味いぞ。絶対勝ってハーゲンダッツおごってもらお。 入浴道具をたたみの上に置き、俺は布団の上に座った。 「っっしゃーーー!! 悠樹、んじゃアイスよろしくな。俺、チョコレート系なら何でも良いぜ。ハーゲンダッツで」 最後に残った岸以外、みんなケラケラと笑っていた。 岸は悲惨なほどカードを持っている。ドローツードローフォーは全部彼が当たったってくらい。 「あーあ、俺やっぱダメだこういうの」 「言い訳してもダメだよ。岸くん、あたしはイチゴのやつね! …もちろんハーゲンダッツで」 「なんでみんなしてハーゲンダッツ!? 高いのばっか注文しやがって!!」 財布をカバンから取り出しながらも岸は嫌々そうにしていた。 俺はそんな岸を宥めながら言った。 「まーまー、岸だけじゃ全部持てないと思うし、俺も行くよ。あ、俺はティラミスな。ハーゲンダッツの」 「雪代、お前もか」 買いに行く用意を済ませた岸は、哀愁漂わせながら部屋を出ようとした。 その時、だ。 バタンッ! 激しい扉が開く音と共に、俺を激しい悪寒が襲った。 ゾクッと背筋が凍りつくような。 危険を感じた俺は、障子の後ろにそそくさと隠れた。 わかる。見なくとも。 扉を開けたのは慎也だと、直感で分かってしまった。 「悠樹、隼人、旭はいるか!?」 やっぱり慎也の声だ。…ったく何で来るんだよ。 室内にいた全員の周りの空気が、一気に凍りつく。 俺は桜田の方を向いて、思いっきり首を横に振った。 いないって言ってくれと、視線のみで伝える。 「ゆ、き、代は…いな、いけど…」 挙動不審になって顔を引きつらせながら、桜田は慎也を押し返そうとした。 「嘘は吐くもんじゃない」 「はい?」 「旭の匂いがするけど?」 なんでだよ! お前は犬か何かかッ!! 慎也は押し返そうとする桜田に逆に迫り、部屋に入り込んだ。 桜田の頬に手をあてると、 「旭を返さないと、お前を全裸で亀甲縛りして直径3センチのバイブをアナルに突っ込んで明日の朝食ん時に学年全員の前に放置するぞ?」 と、不敵に笑った。 「ぎゃーっ、やめろ触んなーッ! わかったよ、そこにいるから!!」 青ざめた顔で、柱を指差す桜田。 「桜田ぁぁぁ!! 裏切んのかッ!? 俺ら友達じゃねーのかぁぁ!?」 障子の裏から出てくるや否や、俺は桜田と同じような表情で彼にしがみつく。 「ご、ごごごめん雪代、ハーゲンダッツおごるから…な?」 「いや、いやいやいやいや、ハーゲンダッツは岸にもらうから。二個も食ったら腹壊すから、い、いいいらねーよ…」 「お前この前ケーキバイキングで8個くらいケーキ食ってたじゃねえかよ!」 「け、ケーキは冷たくないじゃん!? アイスはダメだよ、アイスは」 「もういいじゃん…、潔く中田に食われれば良いと思うぜ、俺は」 良くねえ!! ちくしょー他人事だと思いやがって、この薄情者がーッ! 「相談は終わったか? 部屋帰るぞ、旭」 答えは聞いてない。という風に慎也は強引に俺の腕を引っ張った。 「うわあああ、バカやろー、お前なんか嫌いだー! バーカバーカ! 亀甲縛りくらいさせてやりゃーいいじゃんかよ!!」 申し訳なさそうに俯く桜田に、そう捨て台詞を吐くと、俺は慎也に引き摺られながら部屋を出た。 続き
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/134.html
405: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆06/30(水) 16 31 32 あやさま 長らくお待たせしました! なかなか辛い展開ですが……応援よろしくお願いします^^ ヤードさま 響の株アップ!笑 頑張りますね^^ * 「ねーウェイトレス用の布どこ?」 「誰か買い出し行ってきて!コンビニ!」 「あ、じゃあジュースも買ってきてー」 なんやかんやで文化祭まであともう数日しかない。喫茶店なんだけど、私達が着る服(衣装)がまだ間に合っていてなくてピンチだ。 運悪く、響と同じ分担の私だけどあれから部活のとき以外何も話していない。部活中でさえ極力話さない。 だから、前より響は山内さんと居ることの方が多くなった。 胸が痛む。でもこうする他はなかった、仕方ない。 「……最悪だな、私」 響に助けを求めたり、かと思えば離れた自分。 彼は合図を受け取ってくれたのに、私から手放してしまった。 ……まぁいい、それより今大変なのは…… 「……蓮。いい加減暑いから離れてよ」 「いーや」 佐久間蓮。必要以上に教室内外関係なくべたべたくっついてくる。 慣れとは恐ろしいもので、最近うんざりは思うものの振り払うことさえ面倒になってきた。 体を求めてくることは減ったんだけどね……。私が響と距離を置いたからなのかは分からないけど。 そして、隣では。 「……離れやがれ」 「やだよぉ。響照れ屋なんだもん!」 「るっせー、本気で殴られてぇのか」 「もーやだ響怖いー!……あっ買い出し行こうよ響!」 「は?おい引っ張んなっ……」 ……結構酷いことを言いながらも買い出しに引きずられていくその人を見ていたら、響のほうこそ満更でもないんじゃないかって思えてきた。 406: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆06/30(水) 16 45 27 うざい、本気でうざいべたべたまとわりついてくるこの女。しかしこの女とは別にまた俺をいらいらさせる原因の女が、最近いる。 「何で俺が買い出し係なんだよ……」 「……ねぇ響」 コンビニから出て道路に出た時、優華が足を止めて口を開いた。 「あ?」 「もう莉恵ちゃんは良いの?」 もう一人の俺をいらいらさせる原因の名を聞き、気が滅入った。 「……あいつは佐久間とデキてんだろ」 「ふうん。もう関係も持ってるっぽいよねえ」 そう言われて、あいつの身体を思い出した。 散らばるたくさんの所有の印の痕に、痣。 ……痣? なぜかこの間は何も思わなかったが、体に痣があるのは少しおかしい。 この女といい佐久間といい……まさか。 「おいお前、あいつに何かしたんじゃねーだろうな……」 「何のこと?優華知らないよ、関係ない」 (信用出来るわけねーだろうが) 何か、匂う。 「……響」 「!」 最近の莉恵の様子を浮かべて頭の中を整理していると、気付けば目の前一面に優華の顔があった。唇が触れる寸前に、思いっきり肩を押す。押すというよりなぎ倒すという表現の方が正しいかもしれない。 女ということも忘れて思わず手加減出来ずに倒すと、どんどん優華の顔が歪んでいった。 「酷い!痛いじゃな「うるせーよ!!知るか!!」 怒りに任せてそう怒鳴りつけ、俺は優華を残し走った。頭の中は一人のことでいっぱいだ。 何があった。いい加減素直に…… 「……もう許さない」 ピッピッピッピ 「……あー、もしもし?もうね、滅茶苦茶にしていいよ。文化祭の日でいいんじゃない? ……うん。全然。じゃあね」 (あの女、許さない) 415: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆07/11(日) 21 23 34 プリンさま 好きだなんて、私もあなたが大好きですよ!!(黙 常連さんとか本当に感謝です、ありがとうございます。 ライラさま 大丈夫なのでしょうか…… 見守ってやってくださいね>< miniさま わ、私の小説で泣くなんて( ;ω;`)あ、ありがとうございますなんだか申し訳ないです← ち、ちなみにどこですか!?(気になるらしい/笑 ムがない!さま いつもたくさんのコメントありがとうございます。 楽しみにしてもらっている分頑張りますねb あやさま 響のカッコよさにアゲだって!響よかったね!^^ ペース遅いですがよろしくお願いします、ありがとうございます。 リカさま あげ感謝です! * 「あんたやっぱり明日は佐久間くんと回るの?」 「え?……あー、多分……向こうもうその気でいるみたい……。なんかごめんね、最近」 文化祭を前日に控えた日の午後。 沙耶にいきなり問われてドキっとした。実は、今回の一連の出来事は沙耶には一切話していなかった。これ以上周りの人を巻き込むのは嫌で。よくもまぁここまで隠し通せてると自分でも思う。 「あたしは彼氏連れてくるから大丈夫だけどね」 (あぁ、そうでした) 「……でも、何か隠してない?」 「えっ。嫌、別に何も……」 「なんか最近変なこと多いし。相川くんとも前よりぎくしゃくしてるし」 (うっ……やっぱり鋭い、この子) そういえば二日前くらいに、響が何か言いたげな顔して近付いてきたけど全力で逃げた。もう避けることしか出来ないのか、私は……。でもこれ以上二人っきりで顔を合わせるのは正直辛い。 「……ま、何かあったらすぐ言いなさいよ」 「ありがと、沙耶」 友達まで裏切っている気がして少し気が引けるけど、必要以上に深入りしてこない沙耶には、言葉で言い表せないほど感謝している。 いよいよ明日だ、文化祭は。 あともう少し。もう少しの我慢だ。そう思うとほんのちょっと心が軽くなった。 417: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆07/11(日) 21 47 10 ふーさま あなたさまのそのお言葉が更新の原料ですよ(´ω`)ありがとうございます。 * 「いらっしゃいませー!」 「あー、そこの二人!ちょっと寄ってかない?」 学校中大盛り上がりの文化祭当日。まさかの人出の多さに私達のクラスもてんやわんや状態だ。あと20分くらいで交代なんだけど……しんどい。しんどすぎる。何がしんどいかって、なんたって隣にいるのが響なんだもん。 無愛想すぎるから宣伝なんて出来ないし、看板持って突っ立ってるだけ。(なのに女の子が響の顔を見て喜んで入っていく。声を張り上げている自分が可哀そう) 少なからず、私は久しぶりにはしゃいでした。文化祭当日くらい、全部忘れて楽しみたい。なんたってあの厄介者の二人も、文化祭後にはこの学校を去るわけだし。 横に響がいるのは、まぁ担当が一緒なんだから仕方がないし……。 (いや、本当は、 すっっっごく気まずいけど!) 例えば、今。多少人の出入りが少なくなって、私が黙って立っていると、ものすごく視線を感じるのだ。逆にここまで見るなら話しかけたらいいのにと思ったり、でも話しかけられてもどう接すればいいのと思ったり。 ……本当これ、どうしたらいいんだろう私は。 「莉恵ー、相川くん、交代だよ」 「!あ、ありがとう」 ぼけーっとしてたら交代時間まで来ていた。何してるんだろう私。 クラス全員が荷物を置く専用の空き教室が少し遠くにあるんだけど、ぶっちゃけ部室の方が近いから私はそこを使っている。ずっとこんなウェイトレスの格好なんてしていられない、部室で着替えようっと。 誰もいない部室のドアを開けて、服を脱ぐ。やっとこの格好から解放されて少しほっとした、そのとき コンコン 「……誰?」 「俺」 (!!響だ) 同じことを考えていたバスケ部員が数名この部屋に部室を置いている。 響は全く同じ時間担当だったんだから当たり前か……と一瞬考えるが、ドアが開きかけて我に返った。私今上半身下着姿なんです!! 「ちょ、待ってストップ!」 開きかけたドアが寸でのところで止まった。 「す、すぐ着替えるから……ちょっと待って」 ガチャ ……え 418: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆07/11(日) 22 28 27 最後の方の「同じことを~置いている」の文章中の ×部室 ○荷物 です。すみません; * な、なにこの人!最低! 「ちょ、待ってって言ったじゃん変態!」 とっさに背を向けるけど、背中がむき出しだ。落ち着かない。 「さ、さっさと出てってよ!……蓮のとこ行くから」 「こんな痣作ってか?」 (痣?……っ!!) やばい。すっかり忘れてた。あいつが乱暴に私の体を扱うもんだから出来てしまった複数の痣。まさかそれを見られていたなんて。これじゃあ何言われるか、 「……て思ったけど、何もないんだろ?」 (え……?) 「並河に聞いた。最近お前の様子おかしいってあいつも言ってたけどよ、あいつはお前のこと信じるって言ってたぜ。つーか昨日俺がすっげー怒られたわ、マネージャーの言うことも信用できないのかって…… だから、もう何も言わねぇよ。たとえまた、違和感感じてもお前自身が言わないんならな」 (こ、この人) 驚いた。まさかそんなことを考えていたなんて。 それに、 (沙耶、ごめん……) 私は本当に最低な人間だと思う。大切な人に本当のこと言わず、その癖心配かけて。みんなは私を信じてくれているのに。胸が痛い。 「……それを言いに来ただけだ」 駄目だな、私。周りがこんなに言ってくれてるのに。 自分自身で、決着つけなくちゃ。 中途半端な格好だったからぱっぱと制服を着て、私は口を開いた。 「あのね、知ってると思うけど多分今日が最後だよ……蓮も優華も」 「……あぁ、知ってる」 「……もう少しだから」 「あ?」 「ごめんね響。もう私、普通に戻れると思うから」 「は?……!! おい、何で泣いて…」 「っ……」 やばい。感情の制御が出来ない、涙がぼろぼろ零れる。本当は今すぐにでも、この人の胸に飛び込みたい。 でも、決着着けてこないと……。 「……じゃ、また後でね!あ、多分優華が探してると思うよ」 バタン! 「おい待て話が違っ……チッ行きやがった」 「もしもしっ……蓮、今どこ?……分かった、すぐ行く」 怖くないと言ったら嘘になるけど、私が、私自身で、終わらせないと。 429: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆07/18(日) 21 10 31 ガラガラッ 「はぁっ……」 「お前の方から来るなんて珍しいなー、どうしたんだよ」 白いベッドに腰掛けているその男。 ……この男、誰もいない保健室にいるなんて性質悪すぎでしょ。 一先ず単刀直入に言うことにする。 「ねぇ、悪い事はもう言わないから……もうこんなことするのはやめて」 意を決して私がそう言うと、意外だったのか蓮は目を丸くした。 「いや、どうせ今日までのことだろ。これ以上も何も、俺もうこの学校から出るし。知ってたと思うけど元々短期だったし、仕事とかの予定で」 「知ってる……だけど、このまま終わらせるなんて私の中で納得いかないから。 それに、あの写真だって。 バスケ部どうにかしようたって絶対にそんな「あー、あれね」 「……何?」 言葉を遮られてちょっとむっとした。 「あれね、 嘘」 は? 「俺言ったけどよー、写真ばらまくとかネット上にばらまくとか。あれ全部嘘ね。そりゃちょっと考えりゃ分かるだろ、今の時代本気で調べたら一発で誰がやったかとか分かるし。あんまり派手なこと俺がするわけにもいかねーし」 何それ じゃあ今の今まで私がずっと悩んでたのは何だったっていうの? 「ならどうして私にっ……」 動揺して声が震えるのを必死に抑えながら聞くと、蓮は面白そうに嫌な笑みを浮かべて答えた。 「お前の両親離婚しただろ?」 「……っな」 young leaf 続き18
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/76.html
慎也に腕をつかまれたまま客室に入る。 電気はついているが、暖房が効いていないのか肌寒い。というか寒い。 「はい」 慎也はテーブルの上に置いてあった、ハーゲンダッツ(ティラミス)のカップを俺に渡した。 「な、に?」 こんな寒い部屋に置いてあったにも関わらず、それは開けないでも溶けているのがわかる。 カップには水滴が滴って俺の指先が濡れた。 「…やるよ」 テーブルの前に敷いてある座布団に座ると、慎也はもう一つのカップを開けて食べだした。 彼はジーパンを履いているものの、上半身は半袖のTシャツ一枚のみで、冬にはありえない格好をしている。 しかも暖房は効いてない。 オマケにアイスクリームを食べているなんて、何とも異様な光景である。 「食べないのか?」 慎也にそういわれ、俺は何となく座った。 「お前が買ってきたの?」 「そうだけど」 「いつ?」 「風呂上がってすぐ」 慎也は俺を向くことなくアイスクリームを食べ続け、淡々と質問に答える。 「…待ってたわけ?」 そう聞くと、木製のスプーンの動きがちょっと止まった。 慎也のサファイアみたいな瞳がゆらっと揺れたかと思うと、少々微笑みながら、 「俺が旭と一緒に食べたかっただけだよ」 と言う。 俺は、そんな慎也の表情と言動を前にして一瞬、動悸が走った。 ドクンと一気に全身に血が駆け巡ったかと思うと、暖房は付いていないはずなのに頬が熱くなっていくようだった。 「そ…、そら悪かったな」 途端に慎也と目を合わせていられなくなり、視線を逸らしてハーゲンダッツに食いつく。 ドロドロに溶けて、もはや固形ではなくなっている。 それを食べる俺は、何だか慎也に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。 「うまいか?」 「え? …ああ、うまいけど」 「あそ。良かった。溶けてるから…」 慎也のそういう言葉が更に罪悪感を募らせる。 それ以降、慎也は何も言わなかったが、俺がアイスを食ってる様子をじっと見ている。 「…そんな見られると食いづらいんだけど」 「あ、気にすんな。俺はただ妄想してるだけだから」 「っは!!!? 妄想すんなよ!!」 いつもの変態発言をかました慎也にはもう、さっきの動悸がしなくなっている。 頬杖を付いていた慎也は俺の手からスプーンを取り、カップからアイスを一口分すくうと俺の口元に持ってきた。 「なんだ」 そんな彼を睨みながら俺は低い声で言った。 「この状況だったら、"あーん"しかないだろ」 「バッカじゃねーの!? 誰がするかよッ!!!」 「俺と旭以外誰もいないぜ? 恥ずかしがんなよ」 「恥ずかしがってるんじゃない。慎也に食べさせられるのが生理的に受け付けないだけだ」 「んじゃ、俺が食べよっと」 慎也はすくったアイスが乗っているスプーンを、今度は自分の口に運んだ。 「ちょ、やめろ! 俺のなくなるじゃねーか!!」 俺は慎也の手首を掴み、こちらへ引き戻した。 手に持っているスプーンの先にちょこんと乗っかった一口分のアイスを、パクっと食べてやった。 すると、慎也は茫然としたまま、しばらく動かなかった。 「はっはっは。バーーカ。食いモンの恨みは重いんだぞ!! 取ろうなんて考えんなよ」 「…このお馬鹿さんが」 「は?」 少し、驚きに満ちた表情を崩すと慎也は、スプーンをカップの中に入れた。 そして俺の肩を掴み、そのまま倒れこんだ。 「なっ…?」 幸い、布団は敷いてあるのでそれほど痛みを感じないけど、物凄いビックリした。 驚きで心臓がバクバクと高鳴る。 「寒くねーか? 暖房つける?」 天井からぶら下がっている電灯から洩れる光のせいで、慎也の輪郭がたいそうはっきり見える。 逆光で暗く、表情があまり見えないけど、あらためてじっくり見るとやっぱり彼は男前だ。 って、こんな状況で俺は何思ってんだろう。脳内おかしくなっちゃってますよ。 「え、あー、うん。ちょっと寒い…かな」 俺がしどろもどろそういうと慎也は立ち上がって柱に備え付けてあるエアコンのリモコンを操作した。 ピッと音が鳴ると、モーター音がして生暖かい風が顔にあたる。 「ごめん、気がつかなくて。俺は全然寒くなかったからさ」 「へ、へえ?」 曖昧な返事をしながら、上半身を起き上がらせる。 何気なくそこを動かないで入ると、慎也は自分のカバンの中から大き目の巾着袋を取り出した。 「それ…何?」 おそるおそる聞く。 何だか禍々しいオーラがその袋から出ているような気がした。 すると慎也はニコッと笑い、こう言った。 「"大人の"オモチャ、だ」 「は? ハァ?? 何言ってるんだよ!!?」 顔を引きつらせて俺は後ずさりをする、が。 「大丈夫、痛くはしない。ただちょっとアレ的な悟りが開けちゃうだけだ」 慎也はむずと俺のジャージの裾を握る。 「アホかー!! そんな悟り開きたくねぇッ」 手を振り回してみたが意味は無く、するっと慎也はジャージを剥いでしまった。 「ちょ、う…ぐ」 上裸のまま左手をぐいと引っ張られた俺は、布団の上にうつぶせになって倒れこむ。 「な、にする気だ!?」 そのまま両手を背中に回され、押さえつけられる。 「し…慎也」 言いようのない恐怖が感じられた。 慎也は巾着袋の中の黒くて細い、腰に巻くにしては短すぎるベルトを出したかと思うと、 「何するんだよ、って…嘘ぉッ!? 」 俺の両手首を束にして、そこに括りつけた。 「や、やめろッ」 「待たせてもらった分、きっちり楽しませてもらうぜ?」 眼鏡をかけたあの人のような鬼畜な声を漏らせる慎也に吐き気がしそうだった。 「し、信じらんね!! 友達にすることかよ!?」 もがけども慎也の力にはなぜか勝てない。 同じ男だってのに。 「本来友達にすることじゃないこと、今まで結構して来たじゃねーか。今更なんだよ、そんな嫌がって」 慎也の言葉のニュアンスに、多少不満が含まれているように聞こえた。 ベルトを巻きつけ終わると、慎也はその端を障子と障子の間の柱に括りつけた。 「旭」 俺を前に、視線も合わせてそっと名前を呼ぶ。 「なんだよ…」 じっくり見られると、何となく目をあわせられなくなってしまう。 彼の薄青の瞳に吸い込まれそうで。 理不尽な状況だってのに、それを忘れそうで。 「可愛い」 頬に慎也の、温度の高い手が触れた。 先ほどの鬼畜声からは考えられないほど、優しい微笑を浮かべると、慎也は俺の目に手の平を覆い被せ、視線を遮った。 「???」 途端に目の前が暗くなって動揺が生じる。 慎也の手を退かせようとしても、手の自由を奪われているため、できない。 「わわ、ちょっと!!」 見えてないのだが、ジャージのズボンが引き摺り下ろされたのはわかる。 「や、やめろよ!!」 首を振って慎也の手の平を退かせてその有様を見る。 「…このッ変態!!」 いうなれば俺は、全裸である。 柱に両手を括り付けられ、眼前には変態だ。 「おま…ッ、死ね! つかこれ外せ!!」 右手を引っ張ろうが左手を引っ張ろうが、ベルトはガチャガチャいうだけで外れようとはしない。 慎也は、今度は太股を押さえつけると、もう一つ短いベルトを取り出した。 「旭にも焦らしプレイっての、教えてやるよ」 「いらんわボケー! 離せ!! 離せってッ」 あーダメだ。いくら言っても無駄です、慎也には。 罵声は喜びやがるし。 慎也はそのベルトを、俺の陰茎の根本にきっちり縛り付けた。 …ええ、もちろん暴れたんですけどね、うん…はぁ。 何で俺は慎也に力が及ばないのかなぁ~、神様意地悪すぎるよ(遠い目)。 「んぅ、…ん」 そこに触れられると、いつもの倍は感じた…気がする。 なぜだろうか。 「効いてきた?」 「ん?」 「アイス、美味かったんだろ?」 ごめん、何が言いたいのかまったく分からん。 俺が疑問の表情を浮かべると、 「催淫剤入りの」 と、慎也はニヤっと答えた。 …え。催淫剤ってことはつまり…、アレ、ですか。 「ま、平たく言えば媚薬だな」 依然として悪魔のように微笑んでいる慎也の目を見ると、俺の顔は自分で分かるほど青ざめた。 「本気…かよ…」 そういえば、先ほどから全身がむず痒いというか、変な気持ちがするというか。 「ふふ、極限状態なのに扱くことが出来ずにいたら人間はどうなるんだろうな」 「…あ、…はなっ…せ」 どこも触れられてもいないのに、身体はなぜかびくっと震える。 「慎也……って、何…撮ってやがる」 当の本人はデジカメのシャッターをしきりに切っていた。 「見たいか? 自分のエロい姿」 クスッと笑うと、デジカメの液晶画面を俺の方に向けてきた。 最近の機器は優れていて、自分の裸体が鮮明に目に映る。 汗ばんだ肢体に、紅潮した顔。 こんな状況下で感じている自分がものすっごく嫌だ。 これなんて羞恥プレイ? 「お前なんか…嫌いだッ…」 首を傾けると、重力にしたがって目からは涙が流れ出てきた。 くそ…何だよコレ…。 何で、何で、いっつも慎也にこんなことされる訳?? 「お、俺…なんか…した?」 慎也に泣き顔を見せたくないのに、涙は次から次からあふれ出てくる。 手を拘束されているから、それを拭うこともできない。 「旭…」 親指でピッと俺の涙を拭う慎也。 「あ…っ」 媚薬の効果で、触れられるとぴくっと体が反応してしまう。 「…んぅ…、なん…で…こんなことばっか…」 男であるのにボロボロ泣いて、情けないことこの上ない。 「性対象で…見るなって言っ…てんだろ」 慎也は何も言わない。 黙ったまま、俺の頬にあてた手の平を、するする下に降ろした。 「あ…あぁ…、バカッ…や…めろ、」 慎也の手と俺の肌がこすれると、それに反応して口から嬌声が洩れてしまう。 感じて勃っているチクビに、慎也は親指を触れさす。 「ひ…ぁ…あ、ん」 まったくこんな高い声、どこから出てくるんだろ。 慎也が指先を俺の身体の上で動かすたび、身体はビクビク跳ねる。 「んぅ…はッ…あぁ」 これほどにも感じているが、下半身の根本は縛り付けられてイくことは出来そうにない。 「悪い…けど、"性的対象で見るな"なんて、そんな選択肢俺にはない」 意味分からんことほざいてんじゃねーよ。 友達とセックスしたいと思うかって聞いたら百人中百人、いいえって答えるもんなの! 「もっと淫乱な旭が見たい…」 「…は…あ?」 俺の耳元で囁くと、慎也は再び巾着袋から何かを取りだした。 「そ、それ…」 さっき、女の子の下着の間に挟んだヤツと同じヤツだ。 「だッダメだ! お前…バカじゃ、…やッ」 慎也は俺の身体を引っ張って横たわらせると、 「ちょ……な、…い、やだッ」 右脚と左脚の間に、その棒状の物を入り込ませた。 「ああぁッ…や、っぁ…いや…ッ」 ズチュ と淫猥な音をたんと響かせ、細いバイブは俺の身体に入っていく。 「嫌だっ…やめろッ…、ん」 脚をバタつかせ、身体を仰け反らせ、必死で抵抗するが慎也もまったく妥協しない。 「ホントに…信じら…ね…」 「でも、シて欲しいんだろ、本当は?」 「ん…はぁ…?」 「合宿までにそういう身体にしてやるって言っただろ。本当は俺に抱かれたいんだろ。気持ちよくなりたいんだろ」 …聞いててあきれ返ってくる。 どっから湧き出るんでしょうか、その根拠ない自信は。 だが…焦らされず早く極限に達したいという気持ちがあるのは認めざるを得ない。 「や…っ、ぁあ…う」 穴の中にバイブを差し込むと、慎也はスイッチ入れたり消したりを繰り返した。 「ん…はあ…、お前その…断片的なの…やめろッ…ぁ」 ヴーッと音がしては数秒で消え、また合間を少し置いて機会音が鳴り出す。 「やぁ、ん…っんはッ」 「やめたら焦らしプレイの意味なくなるだろ」 「プレイすんなよッ! …あぁッ」 カチ、ヴーという音が何度も繰り返される。 その度に俺はみっともない声をあげ、身体を仰け反らせて喘ぐものの、精液を出すことは出来なかった。 「ああぁ…も、や…だ…。んぁ…ッ、ふ…ぁあ…」 快感と、イけない悔しさしか感じられない。 あとは身体をくねらせることしか出来ない。 「慎也…お願い、おかしく…なりそう…ッぁあ」 イかせてくれと懇願するが。 「もっと楽しみたいな、俺は」 彼はそうはさせてくれない。 俺が感じて動くたびに、中にある、白濁物を付着させたバイブがぬるぬる感じる。 気持ちいいのだが、そう思っている自分がすごく嫌になってきて。 かといって抜くことも出来ない。 「お願い…イ、かせて…ッ」 俺の目から再び涙が流れた。 頬を伝って畳みに落ちる。何粒も。 「慎也…慎也ぁ…」 すがるように慎也の名を呼ぶ。 と、慎也は手を俺の肩に回した。 「あぁ…ッ」 またもや媚薬効果で、生身の人間の手が触れると変な反応をし、声を漏らした。 肩に手を回した慎也はそのまま、自分の方へ引き寄せる。 俺は目を瞑っていたから、何が起こったのか一瞬分からなかった。 「ん…ん、ふぅ…」 ただ、口の中に何か、柔らかいものが入ってきたのは理解した。 「ふぁ…ッは…」 次に目を開けたときは、慎也は俺の髪の毛を掻きあげ、唇をふさいでいるのが見えた。 「ん、あ…ちょ…っと」 しつこいほど口の中に舌を入れる慎也から、頭を横に向けることでようやく逃れられた。 「…は…ぁッ何の…つもり、だ」 「ご、ごめ…」 口元を押さえてぱっと我に帰ったように慎也は俺から飛び退く。 「キス…は、好きな…、ん…ッ人としろ…って、…お前、が」 「悪い、今のはノーカウントだ」 ちょっと米国人なまりがある言い草で慎也は言う。 「お前の泣き顔が、あまりにも綺麗だったから…」 いつもと正反対の、細々とした恥じらいのある声でそう続けた。 へえ、お前にも恥じらいスキルがあったとは。 普段のひょうひょうとした表情とは考えもつかんな。 慎也は赤らんだ顔を落ち着かせると、俺に付けられた拘束道具を一つ一つ外した。 下半身の細いベルトを外されると、急に尿意を催したような気分になる。 なんか…。 あ、別にもっとしてほしいとか言ってる訳ではないんだけど、 …やけにあっさりしている、気がする。 「慎…」 俺が何か声をかけようとした瞬間、慎也はぎゅっと俺の身体を抱きしめた。 「…んッ」 媚薬の効果はまだ残っている。触れられると感じるのは依然として変わりない。 「抱いても…いいか?」 と、慎也の声が俺の耳に残った。 「な…何言って…ッあ」 慎也の下半身が服越しに俺の腰に触れる。 「お、まえ…っ、ん…」 「早くもう…挿れたいんだけど」 勃起して凝り固まっているのがすぐにわかった。 はぁはぁと彼の息は荒い。 体温も通常より上がっている。 「あ…ッ、ちょ…ッと…ゃあ…」 慎也の中指が、トロトロに溶けた穴の入り口に触れるとそこは痙攣を起こし、そのまま指を飲み込んだ。 「…ぁあッん」 俺は座っているのも困難になって、慎也のシャツを掴みながら、伏せの状態までずるずると滑り落ちた。 「慎也…ッ、やめ…て…ッ」 指で内部をかき回されて、ともすれば極限に達しそうだ。 片腕で身体を支え、俺はもう片方の手を自分の陰茎に持って行った。 「そんなことしなくても、俺がイかせてやるから」 と、慎也は俺が自身を扱くのを止める。 「ダメ…もう、…早くッ」 もう限界でどうしようもない。 これ以上このままの状態が続けば、俺は間違いなく気が狂ってしまう。 「…しん、や…頼む、は…早く…イかせて…」 媚薬プラス拘束プレイで疲れ果てた俺は彼に身を委ねることにした。 「わかってる」 慎也は相槌を打って、ベルトを外してジーパンを脱ぐと俺の後方へ回った。 「や…やぁ…、んッ…ぁ」 腰を振るたび、慎也の肉棒が穴の奥を突く。 抜いたり挿したりを繰り返すと、そこはズチャッズチャッと音を立てる。 「あさ…ひッ」 息を切らせて俺の名を呼ぶ、と慎也は片腕で俺の性器に触れた。 「あ…あぁんッ…慎…也ぁ」 後ろも前も攻められるともう俺は、間もなくイってしまっていた。 「やぁあ…ッぁあ…」 下半身から前方に精液が飛び出すとほぼ同時に、慎也は俺の中に液を噴射する。 ピチャッ ねっとりした白い液体で、せっかく旅館の仲居さんが敷いてくれた布団が汚れてしまった。 慎也がゆっくりと下半身を引き抜くと、俺は脱力してその場に倒れこんだ。 「はぁ…はぁ…ッ」 息を整え、身体に付着した精液を拭き取る。 「お前…中出ししやがったな」 ゴムをつけていたものの、慎也の物だと思われる液を内部に感じる。 「ごめん。抜いてる余裕なかった」 と、他人事のようににっこりと慎也は笑った。 続き
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/299.html
あとがき うおっと、本篇だけではなくあとがきまで読む気でいるとは。いやはや。見上げた度胸ですなあ← あ、いえ、違いますね。 本篇だけではなく、あとがきまでクリックしていただき、ありがとうございます。 色々ダラダラ語ろうかと思います。 お暇な方、もしくはお忙しくても読んでやるぜ! という方はどうかお付き合い願います。 現在、バーッと書き終えて、「よく頑張ったぜ自分」と自分自身に言い聞かせている真っ最中です。 しかし、本篇をもう一度読み返してみると、展開が早い上に、純といっくん(郁也の事)の会話がなんだか「畜生このリア充共め!」「良かったなこのときゃリア充って言葉が無くて!」って言葉と思わせる会話ばかりでしたね← 許してやってください、処女作なんですよ、これは。 頑張ったのですよ? ま、頑張っても頑張らなくても駄作には変わりないですけれども。 因みに私はもうリア充は卒業しやした☆(それって喜んでいい事なのだろうか? 語尾に☆まで付けて) ちょっと話題を変えまして。 この作品執筆までの流れをちょいとグダグダ語ってみようかと。 最初催涙雨というものを知ったのは、「りぼん」という少女漫画誌ので園田小波さんが連載されている、「チョコミミ」でたまたま催涙雨のネタをやっていたからですね。 オシャレノートの頁を読み飛ばして(園田小波さんマジごめんなさい)、毎回チョコミミの最後の方にある数頁に渡るちょっとした長い話は、時々なーんとなく印象に残ったりする台詞があるのですが、今回は特に印象に残りました。 そんでなんとなく催涙雨に纏わる話が書きたくなって、最初、漫画にして「りぼん小学生漫画大賞」辺りに投稿でもしてみようかと思い、ネームだけでも作ってみました。 結果? はい、勿論ネームだけで挫折です。 ってかあまりに自分の画力がなかったので、そっちの衝撃の方が強かったです← 序でに今年受験生なので、親に「漫画描いてる暇あったら勉強しろ」の一言で漫画への投稿、断念。 でもストーリーは出来てるんだから日の目を見ないで終わらせるのもなんだかなーとか思っていました。 そんで七月七日。 テレビで丁度七夕の特集を見ていました。 「…………小説書こう」 そんな感じ(爆)。 ま、元々話は決まっていたので七月中にさっさと完結できてよかったです。あんまり長引かせてもモチベーションが下がる一方なので。 名前はほぼ即興で考えました。正直テキトーです← 元々名前とか考えたり決めたりするの得意じゃないので、恐らく名前をさっさと決められた最短記録を無意味に更新しましたよ、私の中で。 純は元々真白って名前にしようかと思ったのですがなんだかそれじゃあ普通過ぎてつまんねーとか思ったので純にしました。 でも純だけだとなんだか男っぽい気もしないでもないので、一応本名は「純子」にして、渾名が「純」という事にしました。 いっくんは適当、涼ちゃん(涼也の事)も超テキトーです(榎本兄弟可哀相にも程があるだろ!)。 夏江さんは……はだしのゲン思い出してw はい、此方の夏江さんは顔に火傷などしておりませんので。 薫さんも適当です。でも何故か……お気に入りです、薫さん。いつか薫さんの過去篇とか書いてみたいなあ。 そう言えば純の親父と爺ちゃんがいっぺんも出てこなかったな……。反省。 スマン二人共! 忘れてたわけなんだ!← 人口が信じられないくらい少ないのに廃村してないのはどうしてかとか何故そんなに人口が少ないのかとか色々設定を考えていたのですが、何故か更新している間はその設定をバーッと忘れちゃって「☆書き込む☆」をクリックして「あ」と言うの繰り返しでした。何故か。 (ってかさっきから「何故か」ばっか言ってる気がする) なのでいつかその事についての短篇の話も書きたいです。 ってか雨に纏わる話を短篇シリーズみたいにして書いちゃおうかな、もう。 舞台は全て雪ノ崎で。 いいもん、面白く無くても自己満だもんね!← ってか平成五年ってまだ私産まれてないしw 本当にこの年の七夕に催涙雨降ったのだろうか? とかちょい思ってしまったw今更w 実は純の家はとなりのトトロに出てくるさつきとメイの家(築四十年くらい・まだまだボロとは言えない)をイメージ。 雪ノ崎村はひぐらしのなく頃にの雛見沢村と新潟上越・中越地方を合体させた感じ。雪は結構降ります。因みに私は新潟市に住んでいます。具体的な場所は言わない。 (これでも結構具体的だと思うけど) それでは最後に。 この小説を更新する際、コメントをくださったアユミさん、まみぃ、はちみつさん、ありがとうございました。本当に励みになりました。 完結してからコメントをくださった さん、ありがとうございました。アドバイスを胸に刻み、昇進していこうと思います。 随分経ってから私の日記にコメントくれた刻鎖、ありがとう。顔びしょ濡れって……マジかよ……。 そして、此処をクリックして此処まで読んでくれたあなた! マジで感謝です! 感想やアドバイスをコメントフォームに書き込んでくれたらもっと喜びます。勿論ちゃんと返信もしますよ。 誤字・脱字、その他不具合があった際もコメントフォームへお願いします。 それではではっ! みくる@ひぐらしのyouとforフルーツバスケットにないた
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/101.html
16: 名前:刹那☆06/06(土) 12 38 49 第二章 「~♪。」 「あれ?香織、嬉しそうじゃん、何かあった~?」 「えへへ、ちょっとね!」 ちょっとじゃない。 すんごく嬉しい。 だって 邪魔者がいなくなったから・・・。 奈々が消えてから1週間。 あれから、悠とはラブ02だし、もうサイコー!!! 17: 名前:刹那☆06/06(土) 12 45 17 でも、奈々を刺した時のあの感覚・・・。 忘れられない。 おもしろかったから・・・。 もっと人を殺したい。 そう思った。 そんな時、あのニュースを見た。 ”怖いですね~、最近、誘拐や交通事故で死者が増えているんですよ~・・・。あなたも気をつけて下さい。” 見~つけた。 18: 名前:刹那☆06/08(月) 21 54 11 私は放課後、誘拐犯、殺人犯に会いに行った。 刑務所に向かう。 え? 勝手に入っちゃいけないんだって? フフフフフ・・・・・・。 大丈夫。 ちゃ~んと準備はしてあるもの。 カツカツ・・・。 周りはしんとしているから私の足音だけが響く。 そして、入り口から入ろうとした時―・・・ 「こら~っ!なにやってるんだ!一般人は立ち入・・・。」 グサッ! ポタ・・・ッ。 これよ・・・。 この感覚よ。 私はこれを求めていたのよ!! た~のしい♪ 私は奥へと入っていく。 私の後には倒れた、警務員。 コツコツ・・・。 足跡は・・・赤い。 牢屋を覗き込んでみた。 おっさんが2人、しゃがみこんでいる。 私に気づいたらしい。 「たっ、助けてくれぇ!」 「ここからだしてくれぇっ!」 残念ね・・・。 あなた達はこれから、殺されるの。 私の手によってね。 「いいわ、出してあげる。」 「ほっ、本当か!?」 「出してくれるのか!?」 『やっと出れる!!』 目が輝いている。 可哀想に。 もうすぐその目は光を失うわ・・・。 「ただし!」 2人の会話をさえぎって私は続ける。 「1つだけ条件をのんでもらうわ。」 「いい。」 「ここから出してけれるならな。」 言ったわね・・・・・・? 「誓う?」 「ああ、誓う―・・・。」 言っちゃったわね・・・。 「フフフフフ・・・。」 「!?」 「お、おい。どうしたんだよ!!」 「ア~ハッハッハッハ!!!」 ガチャリ。 鍵が開いた。 「よし!条件はなんだ?言ってみろ、何でも聞くぜ?」 「・・・・・・・。」 「ほらほら。」 「じゃあ・・・・・・。」 「?」 「あなたを殺したい・・・。」 「え!?」 グサッ。 男はその場に倒れこんだ。 「お・・・まえ・・・だま・・し・・・た・・なぁっ・・・。」 「何が?私はだましてなんかいない。何でも聞くって言ったあんたが悪いのよ。」 「・・こ・・・のや・・・ろ・・・。」 ガクッ。 男はそこまで言って、死んだ。 「・・・・・・。」 もう1人の男はそれを黙ってみていた。 「さぁ、次はあなたの番よ・・・。」 「い、いやだぁっ!殺されるのは・・・いやだぁっ!!」 男の目は見開いていた。 「何を言ってるの?あなたが散々してきたことじゃないの。」 「許してくれぇっ!!殺さないでくれぇっ!!」 私は男の方に近ずいていく。 「くっ、来るなッッ!」 ガチャリ。 鍵を開けた。 バァン!! 「きゃ・・・ッ!!」 鉄格子が勢い良く開く。 私は押し倒された。 「へっ!鉄格子が開けばこっちのもんだぜ!」 男はそう言って、逃げた。 「・・・・・・・。」 ひざに擦り傷ができた。 痛い。 あの男・・・! 私を怒らせた罪は重いわよ・・・? 22: 名前:刹那☆06/12(金) 21 26 31 ガシッ!! 男の腕をつかんだ。 次第に力が強くなる。 「言ったわよね?私を怒らせた罪は重いって・・・。」 「うわあぁぁっ!!」 私を見る男の目には、光が灯っていない。 私が口を開く。 「知ってる?私はたこ焼きがだぁい好きなんだぁ。」 私の唇がめくれる。 犬歯がチロリと見えた。 ドサッ!! 男を押し倒す。 そして 私はポケットからつまようじを出した。 「私ィ、食べるのはスキなんだケドォ、作ったコトないんだよね~。」 男の震えが止まらない。 「だからぁ、ちょ~っと下手かもしんないけどォ、我慢してね☆」 「おいっ・・・、それってまさか・・・。」 クスっ。 「そう、そのまさか・・・。」 私はつまようじを男の目に向かって、突き刺した。 25: 名前:刹那☆06/13(土) 10 31 47 「うっ、うわぁぁぁぁ!!!」 ブスッ!! 鈍い音がした。 「1度やってみたかったのよね。こういうの。」 フフフッと不敵に笑う。 そして、グリグリとつまようじを動かす。 「確か、こうやるんだったよね。」 コロン・・・。 「あれぇ?とれちゃったね。ごめんなさい。」 目玉が取れた。 「でもホラ、だんだん上手くなってきてる~。」 もう片方の目を動かす。 「あれ~?ジジィ、生きてるゥ?」 男からの返事は、もちろんない。 「キャハッ、死んじゃった?」 さて・・・。 今日はココまで。 26: 名前:刹那☆06/13(土) 10 40 30 さて―・・・。 ここで私のコトを少し紹介しておくわ。 ↓ ↓ ↓ ・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。 ☆花咲 香織 プロフィール☆ 年齢 中学2年生 得意科目 社会 好きなもの たこ焼きと悠 趣味 人殺し 生年月日 12月9日 ・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。 と、まあこんな感じかしら。 では、本題に戻るわ。 32: 名前:刹那☆06/14(日) 19 39 40 名無し様、本当にありがとうございます!! でわでわ更新しま~っす^^ ・。*・。*・。*・。*・。*・。*・。*。*・。*・。 翌日、昨日のコトがニュースでやっていた。 ”速報です!昨日、午後6時ごろ、××警察署で警察官、殺人犯、そして牢屋の中で、誘拐犯が殺されていたのが警察官の友人により発見されました。” フフ、やってるやってる♪ ”全員、数ヶ所に刃物のようなもので刺され、ほぼ即死状態だったと思われます。ただ1人だけ、目がくりぬいてあったとあります。この情報は入り次第お伝えします。” 「こわいわね~・・・。」 お母さんが言う。 「あなたは、あんな風にならないでよ。」 「・・・分かってる。」 犯人、私なんですけど・・・。 33: 名前:刹那☆06/14(日) 19 45 20 「行って来ま~す。」 学校に行くと、例の噂でもちきりだった。 「××で人が殺されたって・・・。」 「あ、それニュースで見た。こわいよね~・・・。」 おもしろい。 みんな、私がやったとは気づいていない・・・。 「お~い!香織!」 後ろから私の名を呼ぶ声がした。 その声の持ち主・・・ 『愛』 私の新しい親友だ。 「ねぇ、今日のニュース見た?こわいよね~・・・」 34: 名前:刹那☆06/15(月) 20 21 00 愛まで言っちゃって・・・。 とりあえず話を合わせるコトにした。 「見た!こわかったよ~・・・。」 「だよね、だよね!どうする?この町に来ちゃったら!」 「ない!それはない!来ないでよ~!」 「そうそう!捕まってほし~、ってか死んでほしいんだケド!!」 は・・・? 愛、今なんて言った? 死んでほしい? 私に? 私に死んでほしいの? 35: 名前:刹那☆06/15(月) 20 32 36 愛・・・・・・。 いくら私の親友だからって、許すワケにはいかないわ。 あなたも消してあ・げ・る☆ 「愛っ!明日、一緒に買い物行こうよ!」 「買い物?いいよっ!全然OK!」 愛は笑顔で答えてきた。 「じゃあ明日、××ビル、集合ね!」 まんまと引っかかったわね。 愛・・・・・・! ~翌日~ 「あっ、香織~!」 もう待ってるし・・・。 「ごめん!遅れた~。」 「いいの、いいの!それよりドコ行く~?」 ちゃんとコースはきめてあるんだから。 「あのね・・・!映画・・・見たいの!」 「映画?いいよ、私も見たかったし!」 私達は 『ココロ×ココロ』 というものを見る予定だ。 愛はポップコーン、ジュースを買って、映画を見る準備。 「そんなものばっか食べるから、太るんジャン?」 私は小声で言った。 「ん?香織なんか言った?」 「ううん!なんでもないよ!あっ、ホラ!始まるよ!」 38: 名前:刹那☆06/17(水) 20 50 23 『沙希っ!』 『真奈ぁっ!』 あ~あ、この映画つまんな~い・・・。 「う・・・ひっく・・・。」 私の横では愛が感動して涙を流している。 うるさいな・・・。 もうそろそろ・・・。 私はわざとらしく体を細かく左右に動かした。 「あれ?香織、どうかしたの?」 「うん、トイレ行きたくなっちゃって・・・。」 「な~んだ。」 「愛も一緒に来てくれる?」 「もぉ、しょうがないなぁ・・・。」 もうちょっと。 ~トイレにて~ 「早く~!」 さて、どうしようか・・・。 とりあえず、愛を背後から押した。 私も入って洋式のトイレのドアを閉める。 「いった・・・ちょっと香織!?何す―・・・!!!」 ごぼごぼごぼ! 愛をトイレの中の水につっこんだのだ。 「あ~ら、汚い!」 39: 名前:刹那☆06/17(水) 20 56 04 これからは、××サイドなど書いていくますね! ~愛サイド~ 香織が私を押した。 「香織!?何す―・・・!!!」 目の前が真っ白になった。 水!? やめて・・・ッッ。 苦しい・・・ッ。 息が・・・できない・・・。 まさか・・・・・・。 あのニュースの犯人って・・・・・・! 「あ~ら、汚い!」 汚い・・・? そうよね。 私は汚いわよ! でもね、香織・・・? あんたの心の方が汚いわよ!! 40: 名前:刹那☆06/18(木) 21 00 08 苦しい・・・・・・。 だんだん、意識が・・・ 遠のいてゆく・・・・・・。 私はもう 死ぬんだ。 そう思った。 「ばいばい、愛❤」 ひどい・・・。 ひどいよ、香織・・・・・・! 47: 名前:刹那☆06/23(火) 21 57 45 ☆飛鳥様☆ グロイですよね^^; ”いい”って・・・ 嬉しいな♪ あと何日か放って置いてすみません>< 更新しますね! 「「ガチャ」」 えっ!?? 誰かが入ってきた! 女の人・・・・・・。 不運なことに私達の行動は見られていた。 ヤバイ!!! やっと今の状況を理解したようで そして・・・青ざめた顔で 女の人は叫んだ。 「きっ、きゃあぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」 そして倒れこんだ。 チッ! 邪魔者が入ったわ。 愛を放って、女に近ずく。 「ひ・・・っ。」 「さっきの見てた?」 ガタガタと震えながら答える。 「みっ、見たとい・・・ったら・・・?」 「そう。」 その一言で女の人はホッとしたようになった・・・。 が、 「じゃあ、あなたも・・・。」 「いやよっ!私は死ぬなんて絶対イヤ!!」 「だぁいじょうぶ。スグに楽になれるから。」 「いっ・・・・・・!!」 サクッ・・・。 と、その時! ドアが開いた。 そして声がとんできた。 「警察だ!手を上げろ!!」 警察? ハッ。 「おじさぁん?何言ってんの?ココは女子トイレだよ・・・?」 「おまえを逮捕する!!」 男の後ろにはもっとたくさんの警官がいた。 「じゃあ、力づくで 48: 名前:刹那☆06/23(火) 22 03 53 すみません~>< 続きです!! 「じゃあ、力づくで逮捕してみなさいよ。」 すました顔で笑った。 「お前、まさか逃げられると思っているのか?」 「何人いたって同じよ。」 「このやろう・・・!かかれ!!」 ワアッ!! 警官が一斉に襲い掛かる。 だか・・・・・・ グサッ! グサグサッ!! あっけなくやられてしまった。 「これだけぇ?警察ってよっわ~い!」 フフフフフ・・・・・・。 ア~ハッハッハッハッッハッハ!!! 響き渡る声。 床にポタポタと落ちる血・・・。 そう。 私は恐い者なんて 何もない―・・・・・・。 第二章 END 私ハ悪クナイ 続き2
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/123.html
113: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/27(火) 21 46 54 「……お前が、いつまでたっても戻ってこねぇから」 響がドアを見つめたまま、ポツリと言った。 「探しに来た」 「……ありが、とう」 唇をぎゅっと噛みしめ、俯いてそう言う。本当に、もしもこのタイミングで来てくれなかったら、今頃私は本当に……。そう考えるだけでも吐き気がする。 「ごめんな」 「え」 意外だった。珍しく響が心の底から謝っている気がして。だけど、どうして謝るんだろう? 「気付くのが、遅かった」 「そ、そんなの!……あ、足!足大丈夫なの!?」 さっきの桐生達の会話を思い出し、慌てて聞くと「あんなくらい何ともねー」らしい。それならいいけど……。 「……怖かったか?」 「……!」 その言葉に、さっきまでの恐怖が蘇ってきて、今まで出なかった涙があふれ出す。そんな私に、響はぽんぽんと軽く頭を撫でてくれた。 「怖かった……けど、助けてくれてありがとう」 泣き顔だったけど、精一杯笑顔を作ってそう言うと、響はふいっと顔を背けてしまった。 「みんな心配してっから、ホテルに戻るぞ」 「……?うん」 ――響の部屋 「駿くん入りまーす。莉恵は?居た?」 「……」 「もしもーし?聞いてるか?」 「……反則だろ、最後のアレは」 「へ?」 「いや……」 「まぁいいわ。俺も部屋戻る」 「……おう」 バタン 「何だ?響の奴、柄にもなくしおらしい顔しやがって」 ――波乱の一日目、終了…… 114: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/27(火) 21 56 49 「はあ……」 今、私はストップウォッチ片手に朝のランニングの見学(?)中。 こういうちょっとした気が抜ける時間に、昨日の出来事を思い出してしまう。次から次へと仕事が入ってくると逆に考えなくて済むんだけど。 「ラスト一周でーす!!」 私は飲み物を用意して、帰って来たみんなに渡した。 「お疲れ様です」 「きっつ……」 「おい、莉恵」 「はい?」 汗を拭っていた手を止め、響が私に向き直る。 「今日から絶対俺らから離れんなよ。もう昨日みたいな目合いたくねーだろ」 「わ……分かった」 な、なんていうかそんな言われ方したら照れてしまう。 みんなは次のメニューをこなすために監督の方へ集まった。私はこのまま待機。 それにしても、今日は暑いな…… 「橋場!今日はあっちに移動だ」 「はいっ」 「……莉恵?」 荷物を持ち、移動しようとしたときに誰かに名前を呼ばれた。こんなところで、私の名前を呼ぶ人なんてうちのバスケ部の一部に限られているはずなんだけど。当の本人達はあんな遠いところにいるし。 ゆっくりと、私は振り返った。 「……!し、信」 「やっぱり莉恵か!?」 (えええええええ!?) そこにいたのは、中学生の時の同級生であった水嶋信。 そして、私の初めての「彼氏」になった人だった。 (ひ、久しぶりすぎて気まずさも逆にない、気がする) (えーと、こういうときってどんな反応すれば?) 117: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/30(金) 20 48 24 (あ、そうか) 「信もずっとバスケしてたもんね」 青いユニフォームには「星城」という文字が入っている。割とうちの学校(というか、地区)からは遠いから、信も寮にでも入っているのかな。 「ああ。……てかお前は?カナダは?」 「今年の春、帰って来た。で、今は西南のマネージャー」 「だよな。西南、真面目に俺らの目標だよ」 そう言いながらははは、と信が笑う。 「あ、俺そろそろ行くわ」 「あっ……うん」 たたっと信が走って行ってしまった。私は一人その後ろ姿をぼーっと見送る。 『ごめん、もう終わりにしよう』 『……それは、カナダに行くからか?』 『それもあるけど……』 『…………分かった』 私と信が別れたのは、私がカナダに行くことが決まった少し後だった。もちろん彼にはすぐにそのことを話した。結局、それから何となくすれ違いみたいなものが生じて、私から別れを告げた。 (今思うと、すごく身勝手だった) 嫌いとかじゃなかったのに、信は何も悪くなかったのに。カナダに行くっていうのがすごく不安で不安で仕方なかったから寂しかったのに、離れ離れになった後に振られてさらに傷つくのが怖くて自分から手離してしまったのだ。 「おい、橋場ー!早く!」 「はいはーい!」 118: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/30(金) 20 56 37 ―――夜 「おい信、食う手が止まってんぞ。なんか今日ぼーっとしてねぇか?」 「え?……あぁ、そうかも」 「俺見たんだけど。今日他校の女の子と話してなかった?」 「マジ!?可愛い子見つけたわけか?」 「いや、……元カノだよ」 「はぁ!?それ早く言えよ、ヨリ戻すつもりか?」 「いや、俺は……」 ぴちゃっ 「ふぁー……疲れた」 晩御飯の片づけのお手伝いが終わり、自分も部屋で荷物の整理をしていたためもう夜の11時。他のマネージャーの子とも担当仕事の時間がばらばらなため、あまりお風呂の時間が重なることはない。 (それにしても、今日はびっくりした) 「知らない間に男らしくなってたなー」 今日の信を思い出し、考える。元々あまり背が高くなかった気がするんだけど、私が見ない間に身長が伸びていたようでほとんど見上げるように会話をしていた。 まぁ、私としては良いお友達にって感じだけど。 「……そろそろあがろ」 浴室から出て備え付けの浴衣を身に纏い、髪を乾かし廊下に出る。 すると丁度同じタイミングで、男湯の方から信と、その友達が出てきた。 119: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/30(金) 21 06 14 友達の方は自販機の方に行ってしまい、必然的に私と信だけが取り残された。 「……なんか」 何と声を掛けようかと迷っていたら、信の方から話しかけてきた。 「お前、雰囲気変わったよな」 「へ?そ、そうかな?」 「あぁ。何か、大人っぽくなった」 「え……」 女としては、その言葉を褒め言葉として受け取ってしまう。信は自覚あるのだろうか?この人はそういう面があるから困るんだ。鈍いのか分からないけど、普通なら言わないような照れくさいセリフを堂々と言うもんだから、 (……て、照れる) 頬が熱くなるのを感じる。 「あ……ありがと。じゃあね」 恥ずかしくて、あまり目を合わさずに私は小走りにその場を去ってしまった。 (な、何か付き合いたての時期みたい) 部屋に入り、ベッドにごろんと横になる。 でも……何だろう。話しかけられても、何も感じなかった。前なら、信に話しかけられるだけで上の空になってしまっていたかもしれないのに。 (北井のことがあったから?) いや、違う。何か、もっと色んなことを吹き飛ばすくらい特別な何かが。 うーん、分かんないや。今日はもう寝よう。 120: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆10/30(金) 21 35 22 朝。目を開けて、まず違和感を感じた。 (……?) 時計に目を向けると、6時ちょっと前。 のろのろとベッドから抜け出して服を着替える。 (喉痛い) しかも、何だか頭がぼーっとしているような。 「風邪引いたかなあ……最悪」 カナダに行った初めのころ、気候の変化に体調を崩した以来風邪は引いていなかったというのに、どうしてよりによって今引いてしまったんだろう。 この学校のマネージャーになってから、確かに休みも少なかったし気が張っていたし、今ボロが出たのだろうか。 「けど、このくらい大丈夫!!今日くらい頑張らなきゃ」 ふらふらと私は部屋を出て、何時も通り朝の手伝いをした。 ――朝食時 「おーおはよ莉恵」 「おはよー」 うーん、あんまり食欲がない。これは、重症かも。 みんなの方に目を向けると、すでにおかわりしかかっている様子。朝から食欲旺盛で羨ましい。 私は、少しだけ食べてすぐお箸を置いた。 「え、もう食わねーの?」 「なんか今日は……ダイエット?笑」 「なんだそれー」 みんなに心配はかけられない。そう思い、朝食を終えた私は重い体を引きずるように皿洗いをし、ロビーや廊下の掃除のをした。 すると、途中で美菜さんに出会う。 「……おはようございます」 「おはよう、って、莉恵ちゃん、声死んでるよ?」 「はは……ちょっと風邪引いたみたいで。キャプテンがこき使うから(ぼそ」 「あはは、あのキャプテンの子だよね!すごい美形じゃない?顔が俺様っぽくて」 「は……はぁ」 そりゃあ、極力顔は整ってるけどさ。 「莉恵ちゃん実は狙ってるんじゃないのー?」 いやいやいやいや誰があんな変態俺様馬鹿野郎←なんか!! 「とんでもないです!!」 「マネージャーって良いポジションだと思うけどなー。私はあの頃は……」 なんて、うっとり遠くを見つめる美菜さん。 「ま、とりあえず早く風邪治してね。ほら、部屋戻って良いから」 持っていた掃除機を取り上げて言ってくれる。普段なら遠慮の一つもするところだが、少し寒気までしてきたので素直に甘えさせてもらうことにした。 「すいません……ありがとうございます」 121: 名前:葵 (.qW0eR0dmU)☆10/30(金) 21 45 32 HOST 121-83-51-135.eonet.ne.jp のろのろと部屋に向かう途中も、寒気が身を襲う。寒い=熱……?だとしたら、相当疲れてるよ私。熱なんて小学5年生の時インフルエンザにかかった以来だと思う。 「はー……」 こてん、と廊下の壁にもたれかかかる。冷たくて、少し火照った体には心地よかった。 まだまだ合宿は続くのに。こんなんで倒れてはいられない。 じゃないと、あの人に……馬鹿にされる…… いつの間にか意地を張っている自分がいた。 「莉恵?」 名前を呼ばれた。あぁ、ここ星城の生徒の部屋があるところだ。 「おはよー……!」 壁にもたれかかった私の様子を一目見るなり、即座に額に大きな掌を置いてくる。その何気ないしぐさに心臓がドキっと高鳴った。 「熱いじゃねぇか……!!」 「……やっぱり?」 「無理すんなよ、今日は寝といた方がいいんじゃないか?」 「んー、無理……」 半分瞳を閉じた状態でそう返したとき、ふわっと体全体が温もりに包まれていた。 落ち着く。まるで大きなお布団に抱え込まれているみたいな。このまま眠ってしまいそうだ。 「……良いから、休め」 「無理だってば」 「体もっと壊すぞ」 「このくらい平気だってば」 (……ていうか) このやり取りをしてて気付いたけど、今、信に抱きしめられてるじゃん。どうしよう、付き合ってた時だってここまで密着するようなことあんまりなかった。 しかも、よく分かったな、私が熱あるって。 一人考えながら、風邪とは違う意味で体に熱が籠ったその時。 「……朝から何してんのお前ら」 129: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/01(日) 13 58 30 ああ、何もこんなお決まりのタイミングで出てこなくても良いと思う。 この廊下、結構うちの学校の生徒の部屋から離れてるんだよ? 顔こそ信の身体が目の前にあるので見えないが、聞き飽きるほどに身に染みついているこの声の持ち主は、一人しかいない。 そこで私は、今信の腕の中にいるという事実を再び思い出して、咄嗟に 「ち、違う!えっとこれは……」 そんな言葉が口をついて出た。 (あれ、私何を否定して) 「来い」 ぐいっと腕を引っ張られて私は半ば強制的に信の腕から逃れていた。 「……大丈夫か?」 気遣うように信が言ってくれる。それに答えようと口を開くよりも一瞬早く、 「こいつ連れていくから」 私はひょいっと響におんぶされた。 そのまますたすたと歩き出しそうな彼に、 「ちょっと待てよ、莉恵はお前にこき使われてそんな状態になってんじゃねえのか」 「あぁ?」 (うわわわ!ただでさえ機嫌悪そうなのに。そんな火に油を注ぐような真似はしないほうが……)← 「わ、私大丈夫だから!」 慌ててそう言うと、今度は本当にすたすたとどこかへ歩きだしてしまう。 「ごめん、信。ありがとー」 ぼーっとしたまま私は信にお礼を言った。後ろを振り返ろうとしたけど、頭がずきずきするのでやめておいた。 「どこ行くの?」 しばらく歩いたかと思うと、ある一室の前で響が足を止める。 130: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/01(日) 14 08 07 響の部屋だ。 驚く間もなく、がちゃっとドアが開けられずかずかと私はおんぶされたまんま中に入り、抵抗する間もなく、気付いたらベッドに寝かされていて布団をかぶらされていた。 (何これ) 私が疑問の意を込めて響を見上げると、響は 「お前、自分の部屋に戻ったら無理に着替えて練習行くだろ」 あの独特な、何もかもを見透かすような射抜くような視線で私を見てくる。この目、苦手だ。 「う……」 しかも、実際図星だったり……。 「今日は一日休め」 「け、けど……!」 「あと、お前は隠してたつもりだったのかもしれねぇが、ふらふらしてないことに気付かないとでも思ったか? 俺達全員気付いてたから。しかも部員に移すわけにもいかねーだろ」 「……そうですね」 そう言われてしまうと、もう言い返す言葉はない。響の言葉は一理ある。 「だから、無茶すんな」 ベッドの横に座り込んで頭をくしゃっと撫でてくれた。 「ありがとう……」 何だか今日、優しい。私が病人だからか。 この人がこんな風に親切に接してくれることなんてそうそうないからよく味わっておかねば。 そんなくだらないことを考えていたら、響が再び口を開いた。 「あと、さっきの誰?てか何?」 何って……。 「あぁ、星城高校の水嶋信……?カナダに行く前同じ学校だったから」 私がそう答えると、少々いらいらしたようにチッと舌打ちをして、 「そういう意味じゃなくて。さっき何してたんだって聞いてんだ」 元々そんな風に聞いてなかったくせに……。 「えーっと……私がふらふらで……支えてくれて……?」 132: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/01(日) 14 15 07 「ふうん。それだけで抱き合ってたのか」 だっ……!? 「だ、抱き合ってないし!!」 後で冷静に考えたら、確かに抱き合ってるみたいな状況だったかもしれないけど、うん、意図が違う。 この人に細かい話を知られたくなくて、必死で否定していた。 「あっそ。で、あいつは元彼氏とか?」 「なっ……」 あっさりと見破られ、意志に反して頬が熱くなるのを感じた。 この人は、黒板に書いてある文字を読むように私の心を読んでしまう。嫌な特技だ。 「図星か。まだ好きなわけか」 「ち、違うよ」 「じゃあ向こうはまだお前のこと」 「も、もうやめてよ!!」 遮るように私は口を開いた。 響みたいに、何事も余裕の見方なんて出来ない。一つの出来事だけでいっぱいいっぱいなんだから。 「言わないでよそんなこと……」 「……分かった」 へ? やけに素直な返事に、逆にこっちが拍子ぬけてしまった。 「何抜けた面してんだ。満足だろ、文句あっか?」 「い、いいえ」 そりゃあ、文句はないけどどういう風の吹き回し? 響の顔を見ると、何だか楽しそうに笑っていた。 「そんなに俺のこと気になる?」 「ばっ……」 (馬鹿じゃないのぉ!?よくそんな都合の良い考え方にポンポンポンポン進めるねこの人は!!) 133: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/01(日) 14 22 34 あいさま キャー!リアルタイムにコメントありがとうございます!← * 「違うから!!」 「あーそう。熱ある割に元気だな、お前」 元気じゃないし!空元気なんですけど。 さっきから頭は重いしふらふらするし。体張って頑張ってるんですけど!! 「ったく。ちょっと待ってろ」 そんな様子の私を見かねて、響が部屋を出ていく。しばらくするとすぐに、水を持って帰って来た。 「薬もらってきたから、飲め。熱冷ましらしい」 (え……そこまでしてくれるの?) 「あ、ありがと……」 それを受け取ろうと上半身を起こすと、とたんに頭を襲う激しい眩暈。 「~っ……」 情けないが、私はそのままこてんと力なくベッドに伏した。 「……そのまま」 笑わずにその様子を見ていた響が言った。 「?」 「目つぶって」 言われるがままに、瞳を閉じる。 ふちゅ……と、唇に柔らかい感触。 それが何か気付いたとほぼ同時に、口内に苦い味が広がった。 ごくっ……とそれを飲み込んで、目を開けると目の前に響の顔が。 「飲めたか?」 「……飲めた。ありがと」 (べ、別に口移しじゃなくても飲めるのに!!) 恥ずかしくてふいっと目をそらす。 137: 名前:葵 (3e6wZ9rNfs)☆11/04(水) 17 15 26 「いや。多分眠くなるらしいから、大人しく寝とけよ。じゃあ、そろそろ時間だし俺行くから」 響が時計を見上げながら、荷物を持って立ち上がる。 「え、待ってっ……」 急に言われて、咄嗟に私はベッドから体を少し持ち上げて思わず言ってしまった。 「ん?」 (あれええ!?なんで、私今引きとめたの!?) お、おかしいおかしい。引きとめなくてもいいのに。熱があるときは寂しくなるっていうけど、 (……最悪) 「……い、今の取り消し。忘れて。じゃあ行ってらっしゃい」 恥ずかしさと悔しさで顔(+αで熱もね)から火が出そうになり、私は布団の中にリターンしてついでに中にもぐりこむ。(顔が見えないように) 「……」 どうやら動いていない様子の響。 出て行かんのかい! (いるならいるで黙ってないで何か言ってよ!!泣) がばっ 「!?」 いきなり布団をはがされ、響に晒される真っ赤になった顔。 案の定、その顔には意地悪そうな笑顔。 「夕方には戻ってくるから。 そんなに俺がいないの寂しいか?笑」 (こ、こうなると思った!だから嫌だった!) 「違うから!!ほら、何か人が急にどっか行っちゃいそうになったら条件反射で引き留めようとしてた、みたいな……」 苦し紛れの言い訳。ああ、言わない方がましだったかも。穴があったら入りたい……。 「莉恵」 「へ?」 ちゅっ 額に、一瞬柔らかい感触。 「……!!」 「熱ぃな。早く治しやがれ馬鹿が」 「う……うるさい!は、早く行きなよ!」 引きとめたり追いだしたり忙しい奴、と笑いながらそいつは出て行った。 (もう……見直したのに!) ずるい人だ。優しくなったかと思えば、またいつもの『あれ』に戻ったりするし。分かんない人。 「眠っ……」 本当に眠くなってきた。目を閉じたら、そのまま深い深い眠りに引き込まれていった。 young leaf 続き7
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/159.html
63: 名前:乃愛☆12/16(水) 17 38 34 結夏Side 「 ふんふっふふ~ん 」 庵蓮くんに告白された後、 あたしはこれでもかッ!ってほど浮かれていた。 だって、手も繋いでるし!! 「 へったくそな鼻歌 」 庵蓮くんはふっと鼻で笑うと あたしのおでこをつんとつついた。 「 え!?下手? 」 ちょっと残念… 浮かれすぎかな? 「 う-そ、すっごく可愛い 」 あたしの反応を見たからなのか 単にいじめたいのかは分からないけど、 すぐに庵蓮くんは微笑んで訂正してくれた。 あたし達のクラスは3階にある。 ちなみに進路相談室は2階。 話すことも話したしあたしはてっきり教室に戻るのかと思っていた。 だが、庵蓮くんがあたしの手を引っ張っていくのは 3階の図書室。 「 あ、庵蓮くん。何処行くの? 」 「 え、何処って…図書室 」 「 うん、そうなんだけどね! 教室に戻らないの? 」 「 戻らない 」 えええええええ!?!?!?!? 「 な、何で!? 」 「 そのうち分かるよ 」 庵蓮くんはあたしの頬にちゅっと音を立ててキスをしてきた。 こんな格好いい人にこんなことされたら、 断ることも何も出来ないよ…。 図書室には誰も居なかった。 まぁ…居たほうがおかしいけど。 図書室の真ん中にある椅子にあたし達は座った。 何をするのか未だに分からないあたしは 庵蓮くんの方を見て聞こうとした。 「 ね-、庵蓮くッ…んッ、ふぁ… 」 庵蓮くんを見た瞬間顔がドアップになって、 口の中に庵蓮くんの舌が入ってきた。 いきなりのキスに思わず目を閉じてしまうあたし。 それは庵蓮くんにとって絶好のチャンスだったのか、 5分後にはあたしの服は全部脱がされていて、 大きな机の上に寝せられていた。 「 あッ!…そこ、はぁッ…駄目え…んッ 」 庵蓮くんの舌はあたしの胸からお腹、 太ももと行き、最終的に着いたのはあたしのあそこだった。 音を立てて舐める庵蓮くんを見ると、 あそこが熱くなってムズムズする。 「 な、入れていい? 」 愛しているなら当然のこと―… あたしは、庵蓮くんが好き。 「 うん…あたしの中を庵蓮くんの形にするまで… あたしを庵蓮くんで埋めてくれるまでして? 」 あたしの口から出た意外な大胆発言。 こんな言葉、いう機会なんてないと思っていた。 「 あッ…入ってる! あたしの中に庵蓮くんのがッ…ああッ! 」 大きくなった庵蓮くんの物が 音をたてて入ってくる。 「 ッ…んッ…!! 」 「 声出して。 もっと結夏のエロいところ見たい 」 少し頬を染めた庵蓮くんの笑顔。 気づけばあたしは自分から、あそこが見えるような 体制をとっていた。 そしてそれは、庵蓮くんにとって自分のものが 入りやすい体制だった。 「 ひゃあッ…あッ、あッ…! 子宮に、いッ!当たってるよおッ!! 」 ゴツゴツとお腹を伝って振動が響く。 子宮に当たるたび、あたしはおかしくなっていく。 「 あッ、あッ、イクッ…! イッちゃうよおッ 」 「 ハッイケよ…ハッハッ 」 荒い声がする中あたしは体を反って 大きくイッた。 64: 名前:乃愛☆12/17(木) 18 22 34 啓斗Side 「 じゃあな 」 「 うんッ!ばいばい! 」 あの後俺達は急いで荷物を取りに行き帰ることにした。 俺は、送るのを嫌がる結夏を無視して、送ることを決めた。 結局2人で帰ったのだが、 結夏も結構ノリノリだった。 結夏の家に着くと、門の前で結夏は俺に手を振った。 しかし、家には入ろうとしていない。 「 入んないの? 」 「 んッ?え、え-と…曲がり角まで見てたいなって思って 」 結夏はにこっと天使のような微笑みを俺に見せた。 くうううううッ…可愛い!! 「 そっか。 じゃ、風邪引くなよ? 」 「 うんッ! 」 小さな子のように素直で明るい返事をする結夏。 か、可愛いッ!!(2回目) 角を曲がる直前、 俺は結夏の方を振り向き 「か・わ・い・い」と口パクで言った。 意味を分かったのか、 結夏の顔は真っ赤になった。 うおおおおおッ、可愛い!!(3回目、馬鹿) 角を曲がり、数分で着く家に入ると 俺は自分の部屋に入り携帯をバックから取り出した。 ------------------------------ Dear 結夏 今、家に着きました。 体は大丈夫? またヤるんだから、 体は大事にな!! From 啓斗 --------------------------- 数分後、すぐに返事が返ってきた。 ---------------------------- Dear 庵蓮くん 庵蓮くんのエッチ/// 体は大丈夫だよ! 心配ありがとう(*´∀`*) ---------------------------- …可愛い―――ッ!!!! 何々、この顔文字ッ。 女の子って感じがするなぁ! っていうか、結夏だから可愛いんだよなぁ。 65: 名前:乃愛☆12/18(金) 18 15 49 結夏Side 「 庵蓮くんのエッチ… 」 メールを打ち終わった後、 あたしは携帯に向かって顔を赤くし呟いた。 でも…、 “体は大丈夫?”っていう優しさが嬉しかった。 コンコンッ 「 ッ!!は、はぁい! 」 いきなり部屋のドアが鳴りあたしは驚いて 携帯をバックにしまいこんだ。 「 結夏ぁ~…、ここ分かんない 」 前髪を赤いゴムで結び ダボッとしたジャージを着て あたしの部屋に来たのは、 今村 結愛imamura yua 高校1年生のあたしに勉強を教えてもらおうとしている、 高校3年生の頼りない姉です。 「 はぁ…何処? 」 あたしは呆れた顔で溜息をして姉を見た。 姉はにっこりと可愛らしい笑みを浮かべた。 頭悪いってことを言わなかったら… すっごく可愛いんだけどなぁ…。 「 ここ!! 」 ……え。 ここって、 高1で習ったことを基本とする応用問題ってやつじゃあ… ないんでしょうか…。 「 え、何!? そんなに難しい問題だった? 」 姉はいきなりおろおろと動き出し、 問題集に目をやった。 「 ここはね… Xに4を代入して… 」 数十分後… やっと姉が理解してくれたようだ。 「 分かったぁ! 有難う、天才になった気分だよ!! 」 そう言って、爽やかな笑顔を部屋に残し 姉は鼻歌を歌いながら出て行った。 66: 名前:乃愛☆12/21(月) 18 50 01 皆様え* 更新が遅くなって申し訳ありませんでした! 色々と忙しく、Pcを開ける時間がありませんでした。 今後は、しっかりと更新していきたいと思います。 ---------------------------------------------------- 啓斗Side 「 ふぁあああ… 」 朝。 俺は目覚ましよりも少し早く目覚めた。 体を起こすと俺は首を何度かコキコキと鳴らし、 部屋着のまま、リビングに向かった。 「 あら、早いのね 」 朝ごはんのいい匂いを感じていると 父と俺の弁当を作っている母の姿があった。 「 お-。何かすっきり目覚めた 」 「 ん-…、啓早いな 」 俺が席につくと同時に眠そうな父が来た。 仕事に行く奴が俺より遅くていいのかよ…。 普通、ベタなドラマでは母と父が「おはよう」って むかえてくれんじゃねぇのかよッ!! 俺は軽く朝食を済ませると 母から弁当を貰い家を出た―… 向かった先は学校…ではなく、結夏の家。 結夏の家の前につくと、玄関の扉が開いた。 もしかして、結夏ッ…!? …と思った俺は馬鹿だった。 そこには俺達と同じ格好をした女の人―… あ!この人は、今村先輩。 バスケが上手くて、なによりモテるらしい。 「 おはようございます、今村先輩 」 俺はいつもどおりにっこりと微笑んで 斜め45°のお辞儀をした。 「 あ、もしかして噂の王子様?! え-っと…由美子が言ってた子だよね? 」 「 はい? 」 噂の王子様…? 由美子が言っていた…? さっぱり分からない。 「 えっと、私…結愛! 」 「 俺は「 庵蓮 啓斗くんでしょ? 」 フルネームで知られていたとは… 俺ってもしかして有名人? 「 もしかして、結夏の彼氏? 」 「 はッ、はい…!! 」 俺は顔を赤くしつつも いつものキャラを保ちつつ返事をした。 「 結夏ね、結構…やきもちやさんだから 多分、啓斗くんと女の子が話してるだけで嫉妬しちゃうかもよ 」 結愛先輩はくすくすと口に手を当てて いかにも女の子らしい!!という笑い方をしていた。 あ…笑うと目が細くなるの結夏と同じだ。 やっぱり、姉妹なんだなぁ…。 「 じゃ、あたし朝練あるからこれで 」 「 あッ、はい。頑張ってください 」 先輩と別れた後俺は携帯をいじり待っていた。 するとまた家の扉が開いた―… 「 ほえッ!?あ、庵蓮くん? 」 そこには驚いた顔をしている結夏。 「 おはよ 」 俺は携帯を閉じてポケットに入れて にっこりと微笑んだ。 「 お、おはよう… 何で居るの? 」 「 彼女を待ってて何が悪いんだよ 」 「 悪くないけど… お姫様みたいで恥ずかしいよ 」 結夏は赤くなっている顔を隠して言った。 「 い-じゃん、お姫様。 お迎えに上がりました 」 「 え~… 」 「 このじいが責任もって学校までお連れします 」 俺はにんまりと微笑み手を差し出した。 「 じいなの?王子様じゃないの? 」 結夏は首を傾げて問いかけてきた。 「 ヤダ。かっちょ悪いじゃん 」 「 じゃ、お姫様もヤダ 」 結夏は頬を膨らませて首を左右に振った。 67: 名前:乃愛☆12/23(水) 09 03 04 結夏Side お姫様かぁ…。 隣にいる庵蓮くんを気にせずに あたしはにっこりと笑みを浮かべて歩いていた。 「 ちょ、結夏ッ!! 」 「 ほえ~? 」 未だにお姫様のことを考えている あたしの腕を引っ張った庵蓮くん。 「 前見ろ、前ッ 」 前…? 焦っている庵蓮くんの顔を見た後に 前に目を向けると、目の前には電柱。 「 わわッ! 」 「 な~にボ-っとしてんの 」 庵蓮くんはクスッと呆れた顔で微笑むと あたしの腕から手を離し、あたしの手へと移動した。 「 こうしたら大丈夫だよな 」 繋いだ手を見て庵蓮くんは少し頬を赤くして言った。 うにゃ~…、これはこれでにやけちゃう。 手を繋いで歩いていると同じ制服を着た学生の姿がちらほら目に入ってきた。 学生達はあたし達のことを見て、こそこそと何か話していたり、目が合うとすぐに逸らしてくる。 何なんだろう…。 「 結夏あ―ッ!! 」 背後から名前を呼ばれ、振り向くと… そこには親友の高橋 優莉の姿。 「 優莉い―ッ!! 」 あたしはさっきまで繋いでいた手を離すと 優莉に向かって走り出し、抱きついた。 「 おはよう、結夏ぁ 」 「 おはよッ、優莉! 」 両手を繋いでにっこりと微笑んで くるくると回るあたし達。 すると、いきなり優莉は微笑んだ。 「 なぁに? 」 「 いいの? 」 意味が良く分からないあたしをそっちのけで 優莉はまだクスクスと微笑んでいる。 「 彼氏くん 」 はうッ…!!わ、忘れていたぁ。 恐る恐る振り返ると、そこには頬を膨らませて ギロリと睨んでいる庵蓮くんの姿。 「 あわわッ…、 ごめん!行くね 」 「 うん、やきもち焼きの彼氏を持つと大変だね~ 」 あたしは、欠伸をしながら手を振る優莉とわかれると いつの間にか視界から消えてしまった庵蓮くんを急いで探す。 探しているとき―… 目の前には大量の女の子。 「 啓斗く~ん、おはよお!! 」 「 啓~、遊ぼうよお! 」 「 啓斗、キスしてぇ 」 ……まさか。 庵蓮くん…? 「 キス?ど-しよっかなぁ 」 庵蓮くんはたくさんの女子と会話をしながら 校舎の中に入ってしまった。 教室に入っても庵蓮くんの人気ぶりはスゴい。 席は隣だからチャンス!!と思ったあたしが馬鹿だった。 庵蓮くんファンの皆がわざとなのかは分からないけど、 じたばたさせる足であたしの机がどんどん庵蓮くんから離れていく。 キ―ンコ―ンカ―ンコ―ン… やがてチャイムが鳴ると女の子達は名残惜しそうに 自分の教室へと帰っていった。 ほ…、やっとかぁ。 68: 名前:乃愛☆12/25(金) 09 10 19 啓斗Side ふはは…相当困っているようだな、結夏。 俺のドSスイッチが入っちまう顔だな、おい。 ちょ-っと裏の顔を止めて、 表の顔でクラッとさせてやるか。 俺は筆箱から消しゴムを取り出し、 結夏のほうにこっそりと投げた。 「 すみません、今村さん 」 「 …え? 」 結夏は俺の顔と口調にかなり驚いている様子。 そりゃそ-だよな。 最初、俺が結夏に片思いしているときは 結夏を見るため、照れないで見るために、睨んでいた。 そして、付き合ったらドSな俺が発覚して、 今は、こんな王子様キャラだ。 「 今村さんの足元に消しゴムが落ちてしまったんですが… 拾ってもらえますか? 」 俺は首を傾げてにっこりと微笑んだ。 これで落ちない女はいないッ…! 結夏の顔を見ると…… 頬を赤くもしていないし、無表情だ。 「 お願いします 」 また俺はにっこりと王子様スマイルを結夏に向けた。 すると、結夏は黙って自分の足元にあった消しゴムを拾った。 「 …はい 」 何だ… 何でこんな微妙な反応なんだ? 「 有難う 」 とりあえず俺は極上の笑みを浮かべてお礼を言い、 結夏の手から消しゴムを取ろうとした。 ハッ…! そうだ、消しゴムを取るときに手に触れてみよう…! 69: 名前:乃愛☆12/25(金) 18 37 12 結夏Side 庵蓮くんの笑顔にドキドキしない…。 あたしはそう思いながら庵蓮くんに消しゴムを差し出した。 すると、庵蓮くんの手はわざとらしくあたしの手に触れた。 あたしは何も言わずに、手を戻すと本来宿題であったプリントを机から取り出し、やり始めた。 素直じゃないあたし…… 本当だったら甘えちゃうのに、 庵蓮くんが女の子に囲まれてたところを見ちゃったからってすぐにいじけちゃう。 こうゆう反応したら庵蓮くんが気にかけてくれる…って あたし悪いことばっかり考えちゃう。 「 はぁ… 」 と深い溜息をしていると、 四つ折にされた小さな紙が隣から投げられた。 隣を見ると庵蓮くんは無表情。 あたしはカサカサと音を立てて中を開く。 --------------------------- おい、お前なんか怒ってる? 怒ってるなら謝る、ごめんな。 --------------------------- 手紙の内容を見てあたしはまた庵蓮くんの方を見る。 庵蓮くんは申し訳無さそうにあたしを見ている。 あたしが悪いのに… あたしが1人でいじけてるのに… どうして…? どうしてそんなに優しくするの…? あたしはすぐにその紙に内容を書き込んだ。 -------------------------------- おい、お前なんか怒ってる? 怒ってるなら謝る、ごめんな。 違うよ、怒ってないよ? 誤解させちゃってごめんね。 --------------------------------- 内容を書き上げると、あたしは紙を四つ折りにして 庵蓮くんの机の上に投げた。 眠たかったのか、庵蓮くんは丸くなっていた体を起こして 目を擦りながら四つ折になった紙を開いた。 中を見た庵蓮くんはにっこりとあたしに笑みを浮かべて、 その紙にまた何か書き始めた。 そして、書き終わったのか庵蓮くんはその紙を折りたたみ あたしに投げて渡してきた。 あたしはすぐに開いて内容を見た。 -------------------------------- おい、お前なんか怒ってる? 怒ってるんなら謝る、ごめんな。 違うよ、怒ってないよ? 誤解させちゃってごめんね。 まじで怒ってない? じゃ-、今から俺とヤる? ----------------------------- ボボボッ…!! 一気に顔が赤くなるのが分かる。 何で手紙なのにこんなの書けるの!? 顔を隠して手の間から庵蓮くんを見ると にんまりと悪魔の笑みを浮かべていた。 ドS…… あたしは心の中で庵蓮くんを見ながら何度呟いた。 70: 名前:乃愛☆12/26(土) 18 34 10 啓斗Side 「 あ-あ、ゆでだこちゃんになったな 」 くすくすと俺は笑うと結夏の頭をくしゃくしゃと撫でた。 頭を撫でられただけでこいつの顔はすぐに赤くなる。 面白れぇ…。 「 庵蓮くんのせいじゃん… 」 結夏は頬をぷぅと膨らませてぼそっと呟いた。 「 俺のせい?何でかな、結夏ちゃん 」 俺は何も言わせないぞ、という微笑みを結夏に向けた。 「 だ、え…「 ちょっとおおお!! 」 結夏が何か言おうとしているとき、 誰かが間に入ってきた。 チッ… こっちはいじめてんのに邪魔すんなよ。 そう思いつつも俺はにっこりと微笑んだまま 入り込んできた奴を見た。 「 ね-、今さぁ…啓斗くん今村さんのこと… “結夏”って呼ばなかった? 」 あ゛… ちくしょ、聞かれたか。 一番聞かれたくないことを聞いた奴。 相川 蕾。結構ギャルっぽい女だ。 「 何のことかな? 」 俺はとりあえず極上の笑みで誤魔化そうと判断した。 すると、相川は一瞬頬を赤く染めるとすぐに俺を睨んできた。 「 騙されへんよッ!うちの耳は地獄耳なんやから!! 」 ガ―ン…… こうゆう奴、俺嫌い。 71: 名前:乃愛☆12/27(日) 20 14 42 結夏Side 相川さん……だっけ?? あたし、こうゆうギャル…?っぽい女の子とは 気が合わないって言うか、馬鹿にされると言うか… だから、ちょっと苦手なんだけど……。 そう思いつつあたしは庵蓮くんの方を チラリと横目で見た。 “やべぇ…”って顔を露にしている。 あたしのこと『結夏』って呼ぶのはバレたくないのかな? でも、あんなドSな庵蓮くんがおどおどしているって言うのは、よほどのことだよね…。 ここはあたしがサポートしてあげないとッ!! 「 あッ、あのね!相川さん!! 」 「 いややなぁ~、相川さんだなんて… 壁を感じるやん!蕾でえ―よ 」 あ゛…う…。 この際呼び方なんて関係ないじゃんッ。 「 つ、蕾さんッ。 あの…あたしと庵蓮くんはただの席が隣ってだけだよ!! 」 ……し―ん…… え。 教室中が静まり返る。 そして女子の目がキランと光ったのをあたしはしっかりと見た。 時計の音だけが鳴る中… 蕾さんは1人吹き出した。 「 ぶ…あははははッ!!! やぁ~だ、もう!今村さんて超うけるんやけど!! 」 蕾さんがヒィヒィとお腹を抱えてあたしを見ている姿を見て、また教室はいつも通りにぎやかになった。 え…え…? あたし、何か言った? 庵蓮くんを見ると、少し悲しそうな顔―… 「 庵「 あれ?啓斗、どしたン? 」 あたしの言葉をさえぎって蕾さんは庵蓮くんに問いかけた。 庵蓮くんは苦笑いをすると、 「 ちょっとだりぃかも… 」 そう言って席を立った。 「 待っ「 待ちッ!!うちも行くわ 」 また…さえぎられた。 あたしははぁと深い溜息をして、 立ち上がった2人の姿を見た。 ―え…? 目の前には信じられない光景。 庵蓮くんの腕に自分の腕を絡めている蕾さん。 そして、その蕾さんの顔…… “勝った”とでも言いそうな勝ち誇った顔。 にっこりと嬉しそうに微笑む顔。 一体……何なの。 「 俺だけのプリンセス 」 続き4
https://w.atwiki.jp/pikopedia/pages/46.html
提供:HOYA、狐 織田(おだ、????年?月?日-)とは、由宇同様、ピコ森の新参。 「織田ってなんぞ?」などのスレッドを立て、自らの存在をアピールしている。 知名度は低いが憎めないタイプでもあり、 今後のピコ森を引っ張っていく人間になるのではないだろうか。 まさに期待の新星。 その他 書き込む時のアイコンはなぜかキューピー。
https://w.atwiki.jp/poki10/pages/151.html
27: 名前:みるみる☆08/01(日) 00 16 06 澪がいそいそとご飯を茶碗によそっているのを、優希は朝顔でも観察するように眺めている。 そうそう、そんな事を小学校の夏休みにやった。 種をフィルムケースにたくさん溜めた様な気がする。 そう言えば、フィルムケースなんて最近めっきり見ないけど写真屋は大丈夫なんだろうか、とぼんやり思考を巡らせていたが、茶碗が目の前に置かれる音で我に返った。 「おい、ロボット」 白い瞳はこちらを向かず、ただ箸を優希の目の前に差し出す。 「無視かよ」 「澪です」 人工のまなこがぎらりとこちらを見据えて、強めな声が自分の名前をなぞった。 つくづく面倒なロボットだと優希は嘆息した。 そして、少しだけ自分の身の上話をした。 優希は、実は「本当の澪」との縁が完全には切れていないらしく、彼女からは時折電話がかかってくることもある。 独り言のような言葉が、茶碗から立つ湯気の上に零れる。 「今日になって気付いたんだ。こんな前の彼女の服を着せて同じ名前まで付けてしまった奴が家にいると、こう……なんか、胸が苦しいんだよ」 普通に考えればそんなこと分かりそうなものだが、あのときの優希はどうかしていたのかもしれない。 澪の答えは簡潔だった。 「名前を変えるのは嫌です」 「なんでだよ」 うんざりしたような顔で優希が言う。 ロボットは口答えしないところが魅力じゃないのか、と心の中で舌打ちした。 「面倒くさいんです。服なら脱ぎますから」 「服を脱ぐくらいなら名前を変えるのも同じじゃないか」 澪は紫のワンピースを脱ぎ捨てる。 幾らロボットとはいえ、精巧な作りである澪が「すっぽんぽん」になってしまい、優希は「うわっ」と反射的に顔を背ける。 「同じではありません。私の記憶データを変更しなくてはならないので」 「だだをこねるのは良いからまず服を着ろ!」 「着なくてはいけませんか?」 「勿論だ!」 優希の、少し丈の余る服を着ながら、「兎に角名前の変更はなしです」と澪はもごもご言っていた。 30: 名前:みるみる☆09/06(月) 09 47 51 愛海様 すみません、気付いたらもう1ヶ月も更新していなかったみたいです。 ちょっといろいろと限界でした……。 少しだけ余裕ができたので更新します。本当に申し訳ないです。 もう忘れられているかもしれませんが、またゆっくりやっていこうと思っています。 ◆ ごちそうさまと言って茶碗を重ねた優希は、仕事にいつも持っていく鞄を開け、何冊かの絵本を取り出した。 大きな表紙は端がめくれ上がり、その本が辿った時代を感じさせる。 「どれがいいと思う?」 澪は何のことか分からず、黙ってその少し色あせた表紙を眺めた。 「会社の慈善運動とか言ってさ、読み聞かせすることになったんだ、近くのこどもセンターで」 優希はあまり気乗りしない顔で言った。 確かに優希はそういうものが得意そうには見えない。 「似合いませんね」 澪は思ったことをそのまま口にした。 優希は溜息をついて髪をぐしゃぐしゃと掻いた。 似合う似合わないの問題ではないらしい。 澪は、その中から一番汚れている本を選んだ。 人気があるから読まれるし、読まれるから汚れるのだと、そういう風に推測してのことだ。 優希もあまり深く考えずにその1冊だけを鞄にもどし、後はちゃぶ台の上に置いた。 「猫が百万回も生きるとは思わないけどなぁ」 じゃあ風呂に行ってくると言って、優希は少し涼しくなった夕闇の中へ出ていった。 31: 名前:みるみる☆09/06(月) 16 06 20 ◆ 海老で鯛を釣るようなことがあっても、海老が鯛にはなれません。 お金でパンが買えるとしても、お金はパンになれません。 犬に服を着せたとしても、犬は恋人にはなりません。 何故って、本質的に違うからです。 ◆ 「あっつー! もう日本ってば熱帯地域入り確定じゃね? ストップ温暖化ー」 蝉の声が空気を溶かす昼下がり。 お気に入りなのか、部屋着なのか、またもや黒のタンクトップの襟で汗を拭いながら、クレアが部屋にずかずかと上がり込んできた。 澪は読んでいた絵本から顔を上げ、「不法侵入は犯罪です」と言った。 追い出すようなことはしない。澪も時間を持て余している。 「あっれー、絵本なんか読んじゃって、かわいー」 髪を鷲掴みにされてぐしゃぐしゃになり、澪はその絹のような流れを整えた。 「何読んでるの? 『人魚姫』? いいねー、ロマンだねー」 クレアは本を自分の側に寄せ、頼んでもいないのに朗読し始めた。 32: 名前:みるみる☆09/07(火) 00 11 05 変に間延びしたようなクレアの声が、彼なりに優しく、語りかけるように物語を紡ぐ。 オリーブグリーンの瞳が、大きめの文字を辿っていく。 時々襟元を引っ張っては首筋を伝う汗を拭い、飽きもせずに最後まで読み聞かせる。 澪にはよく分からなかった。 声を失って、愛する家族と別れて、茨のような足の痛みに耐えながら王子に笑いかける人魚の気持ち。 泡になっても、それでもいいと思える強い気持ちを抱いたことは、まだ無い。 「人間って、そんなに良いものですか?」 「え?」 喉がからからになったのか、麦茶をあおっていたクレアは目だけでこちらを見る。 「私には、よく分かりません」 俯いた白い顔が翳る。 そうだねー、とクレアは何故か少し笑って答えた。 暫くの沈黙を、窓から入道雲が覗き込む。 「実際そんなもんでもないかも」 朝も早くから起きて、満員電車に揺られて、外の景色なんか目もくれずに空調のきいた部屋で液晶とにらめっこ。 一生懸命にやっても替わりがいると言われ、やらなければ切り捨てられ、皆無関係のようにしていながら無愛想は嫌われる。 「なんつーか、こんなの俺じゃなくてもいいじゃんって。ロボットと何も変わらないっていうか。結局嫌になって辞めちゃった。まあ、人間らしい暮らしをすればそこそこ楽しいんだろーけど」 33: 名前:みるみる☆09/12(日) 01 03 45 その言葉には無意識であろうとも少なからずロボットに対する差別が感じられるが、澪は気にしなかった。 澪ちゃん人間に憧れてるの? と言われて、すぐに答えることができない。 澪には分からない。 このじりじり照りつける日差しの暑さも。 自己犠牲の愛も。 人間も。 憧憬も。 「私は、人間に憧れているのでしょうか?」 質問に質問で返されて、クレアは困ったように息を吐く。 白色人種特有の白く滑らかな肌を、汗の雫が滑り落ちた。 蝉の音に掻き消されそうなくらい小さな声で、わかんねえよと言われた。 「そんなの、自分の心に聞いてみないと。俺じゃ駄目」 こころ。 そんなものは、人体模型の中にだって無いものなのに。 「私に、心はあるんでしょうか」 澪は何か胸騒ぎのような物を感じた。 胸の中にあるのは心臓ではなくモーターだけれど。 もしかしたら、分からないことだらけで処理能力が追いついていないのかもしれない、と、澪は思った。 クレアは質問には答えない。 俺に聞かれても分からないと思っているかもしれない。 代わりに、ねえ澪ちゃん、ハグしてやろうかと言われた。 澪が答える前に、腕が伸びて澪の体を優しく締め付けた。 クレアの薄い胸板の中に、確かに心臓があるのを感じた。 暫くの間、澪は思考回路を停止して、その心音だけに耳を傾ける。 これが、にんげんなのだと彼女は思った。 胸騒ぎは、いつの間にか止んでいた。 34: 名前:みるみる☆09/13(月) 15 21 24 HOST octp241042.octp-net.ne.jp 「機械の不具合でもあるのか?」 少しだけ心配そうに顔を覗き込んでくる優希に、いえ、と短く返答してから、澪は自分の大失態を一瞥した。 開いた炊飯器の中からは湯気も立たず、水の溜まったジャーのいつもよりずっと低いところに、白い米粒が沈んでいる。 スイッチを入れ忘れていることにさえ、今まで気づけなかった。 それをひどくがっかりするわけでもなく、優希は今澪が作った素麺を啜った。 「一応、今度あいつの家に持っていかないと」 そろそろモニターもお終いで良いだろう、と優希が呟く。 何気ない一言だったが、澪はそこで固まった。 それは澪の初めての決別を意味する。 しかも、もしも不良品だと見なされれば、澪は失敗作として鉄屑になってしまうのだ。 澪は何とも言えぬ気持ちになった。 それはいつもこの夕時になるとどろりと曇って窓に雨粒を滴らせるねずみ色の空に似ていた。 「私は、人間にはなれないんですね」 優希が咽せた。 きっとまたこのロボットは突拍子もないことを言い出したと思っているに違いない。 「え? 人間になりたいの?」 驚いているようで半分笑った声だ。 それに、今度は迷わず「はい」と答えた。 「私も人間になりたい。一人の人間として認められたい。痛いほどの感情に突き動かされてみたい。どうやら今の私には、それはないようです」 「『ようです』って……自分に心があるかどうかも分からないのか?」 そういう優希を澪はきょとんとした顔で見る。 「そう言うあなたには、あるんですか? 心」 優希が目を見開き、そして澪を見据える。 そこには明らかに嫌悪が混じっている。 「は? 何言ってんだ、お前」 「あなたは自分に心があるって、断言できますか? 自分の五感で確かめたことはあるんですか?」 澪の目に全く悪意は感じられない。それはまるで子どもが正論で大人を問い詰めるのに似ている。 けれどそれは余計に優希の神経を逆撫でした。 「お前、俺が何の感情も持たない冷酷非道な奴だって言いたいの? 悪いけど俺は人間だ。お前と一緒にするな」 そう言って、優希は澪の腹部に手を伸ばした。 その動作は乱暴で、瞳は冷たく燃えていた。 澪はとっさにその腕を掴む。 嫌な予感がする。 どうやら自分は、目の前の男を本気で怒らせる何かを言ってしまったらしい、と思った。 制止を振りはらい、優希は澪の着ている服をまくり上げた。 白く滑らかな肌が露わになる。 優希は一見境目の無いように見えるそこの、右側に手を掛ける。 「あ、」 嫌だ。 そんなこと、しないで。 おかまいなしに、優希はそのまま手前に引っ張った。 腹部が、開く。 無骨な機械が、そこにはあった。 真っ赤な血も、脈打つ心臓もない。 ただ、無機質に唸るモーターや、血潮ではなく電気の流れるコードがぎゅうぎゅうに詰め込まれている。 「これでわかっただろう」 優希の声は低く静かに言う。 「お前は人間にはなれない。自惚れるな」 ああ。 思い知らされた。 知っていたけど、突きつけられた。 私は機械なのだ。 優希が離れていく。 澪はそこで、自分にも強い感情があることを知った。 震える手で、開いた自分の腹部を閉じ、そのままうずくまる。 人はこういう時、「悲しい」と言うのだろう。 そして瞳からは涙が流れるのだろう。 自分も泣きたいと思った。 でも、澪にはできない。 生涯できない。 36: 名前:みるみる☆09/20(月) 23 54 46 愛海様 うああありがとうございますっ(あせあせ もう本当にのろすけのさぼりんぼうで申し訳ない限りです……。 やっとお話盛り上がることができそう…… でも私の場合起→(承転)→結みたいに、あっけなく終わっちゃうので; そんなこんなですが宜しくお願いします! ◆ 心配していた翌日の朝、意外にも優希は普段通り「おはよ」と澪に話しかけた。 それには澪の方が戸惑ったようで、無視され続けた時にどう対処するか考えていた回路は真っ白になった。 怒ってないんですか、と言おうか迷っている内に、優希の方から「昨日は悪かったよ」と切り出されたので更に驚く。 「やりすぎた。ついかっとなって、ほんと、ごめん」 「いえ、謝るのは私の方です」 昨日のことを思い出してまた胸がちくりと痛んだが、考えなしな言動をした私への罰だと澪はじっと耐えた。 炊飯器の中で、今日は上手く炊きあがった白米がつやつやと光り眩しい。 澪は実はこの蒸気を顔に浴びるのが結構気に入っている。 機械に蒸気というのはあまり良くない組み合わせなのだろうが、暫く浴びていると頬にうっすらと水滴ができ、汗のように見えるからだ。 優希が時々汗を拭いながらご飯を食べるのをうらやましいなあと思う。 もう少し浴びていたいと思ったが、ご飯が水分を失って乾くのも嫌だったので、澪は名残惜しそうに蓋を閉めた。 37: 名前:みるみる☆09/23(木) 13 52 30 優希がいつものように出て行った後、手持ち無沙汰になった澪は、ささくれ立った窓際の畳に寝転がった。 入道雲が囲む青空は、突き抜けるように明るい。 昼にかけて空の頂上に登っていく太陽は外のアスファルトをじりじり焦がし、立ち上る陽炎で車も電信柱もどろんとアイスのように溶けてしまいそうだ。 勿論澪は暑さを感じないので何てこと無い様子だ。 ふと、今日はまだクレアが来ていないことを思い出す。 クレアはそれが日常のように、毎日この部屋に上がり込んでは、澪を子どもでもあやすようにしておしゃべりをする。 優希はあまり快く思っていないようだが、澪は結構この時間が好きだった。 気付いたら、今日はまだ来ないかと待ちぼうけしているほどに。 いつもなら、もう来ても良い頃なのに。 38: 名前:みるみる☆09/26(日) 10 28 58 突然、隣の玄関の前で止まる4足の靴の音がした。 優希が仕事に履いていく革靴や、銭湯に行くときのゴム草履の音とは違う。 かつかつとヒールを鳴らす音。 ごすごすと鈍い、地面を擦る音。 あれは確か、クレアがよく履いているトレッキングブーツの音だろう。 こんな時間に外から戻ってくるなんて、クレアにしては珍しい。 高い女の声が、ドアの前で弾んでいるのが聞こえた。 クレアの聞き慣れたテノールボイスも、それに応えて、木漏れ日のような笑いが零れる。 「……そういうことですか」 今日は、クレアはここには来ない。 つぶす暇がないから。 目の前の愛しい人を、根っからの優しさでもてなすのだ。 夜まで、ずっと。 ふと、澪は自分がこれまでにないくらい沈んだ気持ちになっている事に気付いた。 どうして? 私は何か、あのひとに期待をしていたのかしら。 真っ青な空が急に目にしみるように感じて、澪は瞼を閉じる。 真夏の太陽が、瞼に焼き付いた。 あの太陽は一人だ、と思った。 でも、私とは違う。 太陽は、自分の存在を見せつけるように輝いている。 絶対にして、唯一無二の存在だ。 外で、子どもがはしゃいでいるのが聞こえる。 きっとこれから、近くにある市民プールにでも行くのだろう。 ぱたぱたと、小さな足が地面を蹴る音が家の前を通り過ぎた、その時だった。 足音が急に止まり、小さい子ども特有の高い声で、少女が何か叫んだ。 その声に澪は跳ね起きる。 何か、聞き間違いだろうかと、耳を研ぎ澄ます。 少女はもう一度叫んだ。 確かに、『澪ちゃん』と言った。 もう、澪は座ってはいられなかった。 ちゃぶ台を半分跳び越えるようにして、玄関へ。 ゴム草履が目に入った。 これまでにないくらい、胸騒ぎがした。 私を知ってる人がいる? こんなことって、あるだろうか。 ドアノブに手を掛けようとした。 そこで、足首に違和感。 ちら、とそこへ目をやると、ぴんと張ったコードが目に入った。 その先には、コンセント。 プラグが、今正に抜けるところだった。 「――――っ」 ドアノブに手がかかった所まで、澪は覚えている。 そのまま手は滑り落ちた。 関節という関節に力が入らなくなり、澪は頭をドアに打ち付けながら崩れ落ちた。 39: 名前:みるみる☆09/30(木) 15 29 32 ◆ 一人と独りじゃ、恋と愛くらい違うと思います。 なんて、格好付けたことを言ってみたくもなりますが、私もひとりです。 どちらの「ひとり」かなんて、考えたくもないですが。 さあ、それでは、私がお話しするこの物語も、そろそろお終いにしましょう。 ◆ 何だこんな日に限って、と悪態をつきながら、優希は綻ぶ表情を隠しきれない。 脳裏に、さっき見た携帯の液晶画面が浮かぶ。 早く、部屋を片付けないと。 どうせ4畳一間だ、客人をもてなすには心細すぎるが、最善を尽くせばいい。 大事なのはこころ。 そっと乗らないとパイ生地のように崩れてしまうんじゃないかという様な錆びた鉄の階段を、優希は駆け上がる。 そのまま、自分の部屋の前まで小走り。 急いで扉を引く。 ごて、と鈍い音がして、何かがこちらに雪崩れてきた。 革靴に乗っかっているのは、白く長い髪。 優希は一瞬呆けた目でそれを見、だらしなく開いた口から「はあ?」と間延びした声を漏らす。 「いやいや、そんな事してる場合じゃないって!」 自分の行動か澪に対する突っ込みを入れて、優希は力なく地面に突っ伏している澪を重たそうに引きずっていき、コンセントにプラグを差した。 目を覚ました澪に、優希は切羽詰まった様子で言いつける。 「この辺綺麗にしとけ! ああ、あとお前も、どっか押し入れとかに入っとけ」 まだ頭がぼうっとしている澪を余所に、優希は床に散乱した仕事の書類やUSB、ノートパソコンをほとんど放り投げるようにして押し入れに仕舞う。 「お客様ですか?」 優希は手元に意識がいってしまっているのか、その質問には答えなかった。 その代わり、澪を一瞥すると、今しがた自分で差し込んだプラグを抜こうとする。 澪は慌ててその手を止めた。 「何をするんですか!」 「押し入れに入ってろって言っただろう」 「嫌です!」 途端に優希は心底うざったそうな顔になる。 反論しないのがロボットの良いところじゃないのか。 そんなことを以前も言われた。 「あ、あの、ちゃんと押し入れには入りますから、じっとしてますから、だからこれだけは、抜かないでください」 そう言い寄る澪の表情は今までになく怯えている。 瞳は大きく揺れ、手も小刻みに震えている。 そんな澪に、優希は「お前、何か壊れたのか?」と怪訝そうに言うのだった。 勿論優希は昼間の出来事なんて知らない。 澪の哀しみなんて、知るよしもない。 取り敢えず、優希はプラグから手を離したので、澪は安堵の息を漏らし、押し入れに自分で入っていった。 40: 名前:みるみる☆10/01(金) 15 40 03 澪がぎゅうぎゅう詰めになった小さな押し入れでじっとしていると、すぐに来客用の呼び鈴が鳴った。 そう言えば、この呼び鈴が鳴ったのを初めて聞いたかもしれない、と澪はふと思った。 大人びた、女の人の声。 すぐに優希は玄関の扉を開け、その人を出迎えた。 昼間の出来事が思い出される。 クレアも優希にも、それぞれに大切に思う人がいるのだということを、改めて実感する。 優希に妻はいない。となると恋人、もしくは――。 そこまで思考を巡らせて、澪はいつか着た薄紫のワンピースを思い出した。 ああ、そうか。そういうことか。 確かに、聞き慣れた優希の声は、何度も「澪」という名前をなぞった。 もういい。聞きたくない。 掌で耳を押さえつけて、澪は膝に顔を埋める。 押し入れの中は暗い。それは夜空のようではなく、目の前に張り付くような薄っぺらい闇だ。 澪は、世界が歯車のようだと言った絵本を思い出した。 私は、誰と歯を合わせることもなく、ただ一人で空回りを続ける歯車。 外と繋がらない。 誰にも影響しない。 ただ、繋がっているのは無機質なコード。 また独りだ。 独りは、嫌だ。 41: 名前:みるみる☆10/01(金) 16 25 57 どれくらい、その暗く、寂しい空間に蹲っていただろうか。 「もう、いいよ」 細く漏れていた光が急に広がり、澪を4畳のあの空間へ引き戻した。 生まれたての山羊、というより立てなくなった老婆のように、澪は押し入れから這い出る。 優希はそこで、澪の表情に驚いた。 その表情は、何とも形容しがたい。泣いているような、笑っているような、ともすれば嘔吐きそうな、そんな表情。 「澪、」 流石に心配になった優希は、澪の顔にかかる白い髪をかき分ける。 それは表情をもっと良く窺う為の彼なりの優しさだったが、澪はそこでびく、と肩を震わせる。手が払いのけられた。 そして、俊敏な動きで優希と目を合わせる。身が竦むような感覚。 「もう、その名前で呼ばないでください!」 さっきまでの表情が一変、激昂の形を作る。 今までになく険しく、しかしどこか嘆願するような響き。 「え? だってお前が名前を変えるなって――」 「もう嫌なんです!」 呆気にとられる優希を前に、澪の剣幕は凄まじかった。 どこからそんな感情が湧き上がってくるのか。 それはまるで、人間のようだ。 澪は優希の声なんて聞こえていないのかもしれない。 「誰かの思い出を私に重ねないでください! 私は、私でありたいんです! 私は、人形なんかじゃない――」 澪はそこで言い留まる。 人形じゃなかったら何だ。 ロボット。機械を詰め込んだ、人形。 澪は声にならない叫びを上げた。それは、或いは機械の雑音だったのかもしれない。 ぷつん、と糸が切れたように、澪の動きが止まり、そして四肢が重力に従って床に落ちる。もう動かない。ただ、目だけは虚ろにどこかを見つめていた。 47: 名前:みるみる☆10/03(日) 14 17 08 立ち読みした人様 丁寧に読んでくださって本当にありがとうございました……。当方感涙でございます! ううっ 愛海様 いつもいつもあげて下さってありがとうございます! ちょっとでも読みやすい文章になっていたらいいなあと思いつつ書いています。 そろそろおしまいですー。 ◆ いつから使っていないんだろうというタウンページを引っ張り出して、端がめくれ上がり茶色く変色したページを捲る。 タクシーなんて、使うのはいつぶりだろうかと優希は少し考えて、止めた。意味のないことだ。 適当な番号に電話を掛けたあと、優希は昨日の夜から動かなくなってしまったロボットをちらりと見た。 最近調子がおかしかった。試作品だから、どこかに不具合があっても不思議ではないのだけれど。 しかし、故障した時にすぐに友人の元へ運んで行ける交通手段を、優希は持っていなかった。 「結局お前、失敗作だったんだ」 自分の発した声が、思っていたよりも同情の色を含んでいたのに優希は少なからず驚いたけれど、ロボットは何も答えない。 まずいっとうに問題だった短すぎるコードも、今は優希によって束ねられていた。 あと10分もすればタクシーが来るだろう。優希は静かだと思った。ロボットが喋らない云々ではなくて。 外から蝉の鳴き声が聞こえてくることもない。まだ早朝だ。 そばの道路を走る車の走行音もない。 何よりも、部屋にずっと響いていたらしいモーター音が、無い。 その音は、優希が気付かない間もずっとしていたのだろう。人間も、死んだ時には、自分の鼓動がどれだけうるさかったかに気付いたりするのだろうか、と優希はぼんやりと思った。 49: 名前:みるみる☆10/04(月) 15 48 47 突然白い髪の女をお姫様抱っこして乗り込んでくる男を見ても、タクシーの運転手は何も言わなかった。 聞かれたらどう答えようか決めかねていた優希は、取り敢えずほっと息をつく。 行き先を手短に伝えると、運転手は無愛想に返事を返した。 どうやら深夜まで仕事があったようで、あまり眠っていないのか、缶コーヒーのブラックの空がいくつか置いてある。 缶コーヒーのブラックは新聞紙を煮詰めたような味がするので優希はあまり好きではない。いつもミルクや砂糖でごまかした物を買う。 早朝の道路はまだ空いていて、真っ直ぐな道はずっと向こうまで車の影が見当たらない。 別に早朝ではなくても良かったのだけれど、白い髪の女はなかなか人目を引くので、優希はわざわざ早起きをしたのだ。 これからはしばらく早起きだ。朝ご飯を作ってくれる人はもういない。 「人じゃねえけど」 思わず呟いてしまったが、運転手は気にする素振りもない。 まあいい、好都合だ。 窓硝子の外で線になっていく代わり映えのしない風景は、すこし水色がかっているようで、ひんやりした空気を思わせる。 こんなに朝早く行けば、友人は怒るだろうか。 壊れた自分の作品を見て、がっかりするのだろうか。 ふと。急に視界がぐらりと揺らめいて、優希はバランスを崩した。 どうして? ずっとこの先も、真っ直ぐな一本道だったはず―― ちらりと前を見ると、今自分が乗っているタクシーが、センターラインを越え、反対車線を走っている。 一気に頭の芯が熱くなる。掌にさっと汗が浮かんだ。 「え? ちょっと、運転手さん――」 運転手はひどく、ひどく前傾してハンドルを握っている。 いや、もたれかかっているような。 心臓が早鐘を打つ。慌てて、優希は身を乗り出した。ハンドルをとにかく戻さないと。 その音に、運転手はやっとぴく、と動いた。 そして、焦ったその男は何を思ったか。アクセルをベタ踏みした。 慣性の法則に従って、乗り出していた優希の体は後部座席に叩きつけられる。 短い呻き声もエンジン音で聞こえない。 止まらない。 車は加速を続ける。もう止められない。制御不能。 電信柱が目の前に。どんどん大きくなる。 「ああ、ああああ――」 目を反射的に閉じようとした、その時。 白い髪が揺れた。 歩道に乗り上げた衝撃のせいか、白い腕が浮き上がり、首に掛かる。足の間に彼女の右膝が。彼女の、白い瞳がこちらを見ている。虚ろだったはずのその目。 揺れる視界。なんだ、笑っているのか。泣いているのか。またその表情か。優希は昨日の出来事を思い出した。お前、コンセントはどうしたんだよ。 鼻先と鼻先が触れ合う。 「ちゅっ」 澪の背中の方で、フロントガラスが粉々になるのが見えたところで、優希の意識は途切れる。 50: 名前:みるみる☆10/05(火) 16 30 35 ◆ そうして、今に至るわけです。 事故の翌日、小さく新聞に「居眠りタクシー運転手事故死 乗客1名重体」と記事が載っていました。 勿論、あのロボットについての記述はありません。 可哀想に、ばらばらになってしまった、私のお姉さん。 リノリウムの床を歩いていくと、すぐに病室が見えます。 一般病棟に移ったばかりの優希さん。足音で、こちらに気付いたようです。 前を歩いていた私の生みの親は、よお、と親しげに手を振った。 「元気ぃ? まあ元気なわけ無いかー。両足複雑骨折、肋骨3本損傷、全身打撲じゃあ、ね」 分かっているのなら聞くな、と言いたげに、優希さんは目を細めてこちらを見る。眉毛がぴくりと動いた。 私に気付いたようだ。彼は黙ってじっとりこちらを見ている。 「あちこち痛いけど、まあ元気さ。お前は何だ、彼女を見せびらかしに来たのか」 「やだなーもう。お見舞いに決まってるじゃん」 そして、ベッドの横に週刊誌やら雑誌やらが積み上げられた。 花よりもこちらが良いといったのは優希さんだ。 「それに、こいつは俺の彼女ではないのだよ。ふふん」 その言葉に、優希さんは訝しげな顔をする。じゃあ何でそこにいるんだよ、と言う心の声が聞こえてきそうだ。 暫くの間、沈黙が流れる。冷房の音が大きくなったように感じた。 「前のやつより、ずっといいぞ」 目で促されて、私は動けない優希さんの目の前に移動した。 深々と、お辞儀をする。優希さんはその動きを目で追っているようだった。 「初めまして。私には、コードも要らない機能もついていません。貴方のために仕え、貴方に奉仕します。優希さんの年齢に合わせて、外見は25歳前後にしておりますが、変更も可能です」 そして、私は頭に組み込まれたマニュアル通りに口角を上げ、少し首を傾げて微笑んだ。 優希さんは、そこで「ふっ」と笑ったようだ。 「いらない」 優希さんはまた笑う。笑っているのだけれど、今にも泣き出しそうな、無様な表情だ。 所詮私には人間の複雑に入り交じる感情なんて、全て理解できるわけではないけど。 しかしその表情も一瞬で消える。全くの無表情は、私の姿を捉えた。 「いらねぇよ。もうこんな思いはご免だ。泣いたり、笑ったり、怒ったり、苦しんだり。そんなのは――人間だけで充分だ。」 めでたし、めでたし。 51: 名前:みるみる☆10/05(火) 16 44 26 \あとがきだよっ/ やっぱりお終いが上手く書けない女、みるみるでございました。 なんだかいまいち何が言いたいんだか分からないお話ですみません……。部屋を掃除していた時に掃除機のコードが抜けてしまって「おーこれいいじゃん」って突発的に思いついたのがこれだったのです。 なので頭の中でぼんやり浮かんだのを書き出しちゃった、みたいな。 あと何故か貧乏アパートの貧乏暮らしを書いてみたかったんです……。 このお話を書いている間、次のお話は何にしようかなーと思っていて、結構煮詰まってきたので書いてみようと思います。 このお話よりは中身があるように頑張りたいと思います。 多分題名は「ひと夜ひと夜に」(ひとよひとよに)だと思います。 これも√2を見た時に思いついた物ですが…… まあ「何かやってるねー」ぐらいで見てくださると嬉しいですw それでは、こんなところまで読んでいただき、本当に本当にありがとうございました!