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か行の死亡者名鑑 【花京院典明】 【桐間紗路】 【越谷小鞠】 花京院典明 |ヽミx ≧====' `ヽ、___ノ } ト, {ー , _ }Vト、 ノ } ト---' / _,. ----=ミ ヽ、 _|.ハ  ̄ ノ `ーy >' \ Y ' / ´ ̄ヽ 7 t---≦ // `ヽ / '-=ミ { | ト-=ニニイ { /ヾ¬、_,厶´ヽ \ ', | _彡' ,ィフー<i ! ハ Y } ∧ | `ー< チ __ ヾ{ / / ,.イ}/ .∧ | /i { / __≧x__ , 厶イ .}i ∧ |.{{_rY V 弋ッ=ミー-' j.. -==' ', ∧ j ハゞヘ  ̄ ,イtッ=y,イ _ノ ノ /y .ト、 ! |  ̄ './´ > ´ / '7 /{ { { /´ { ヘ>'´ / / .' ¢ .ヘ ー- _ ´ '´ / V /7Y { ,i ∧ト、 i \ 一 ¨´ .イ .r‐'´7 { L Ⅵj >xミ、 ', \ / { √| | { i r≦{ ≧x ≧=< __ .i | .', 、 j--ミ .\ T=x._== 7 ,/ `ーi ! ', V ,.イ ` < { } / / Y r-、 ヘ ', { ヽ / .` <ー ' { ト、 ,.-} ノ 〉 i | / _ _ --ミ  ̄´ r=ミL....._ ヽ_j ', ! 〃>' ´ ヘ ゝ ' 、 \ ', {'´ ヽ ヘ .ヘ 弋_ ト、 ./ ヽ \ ∧ { ≧x⌒ヽ { ヽ 名前:花京院典明 作品:ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース 登場話数:7話 死因:吸血 スタンス:対主催 関わりの深い人物:ヴァニラ・アイス、神楽、ファバロ・レオーネ 「穿つべきピリオドは――」より登場。 DIOを、そして主催者を打倒する決意を固めた花京院だが、その直後に地上最強の生物―――範馬勇次郎の襲撃を受ける。 『法皇の緑』の応用性を活かして善戦するも、徐々に追い詰められていく花京院。だが…… ガ オ ン ッ ! そこに突如乱入したヴァニラ・アイスの『クリーム』により、範馬勇次郎は命を落とした。 突然の乱入者に対して、花京院は逃走することを選択。体制を整えようとする。 しかし、ヴァニラ・アイスは執拗なまでに花京院を追走するのであった……。 その後、紐状にしたスタンドをウ○コと間違われながらも、夜兎族の少女神楽と行動を共にする。 神楽の直感によってヴァニラ・アイスの待ち伏せを避けて進んだ先で、彼らは戦闘している男女―――ファバロ・レオーネとヴァローナを発見する。 一旦その場を収めようと両名を拘束した花京院。しかし…… ガ オ ン ッ ! その隙を突いてヴァニラ・アイスはヴァローナを殺害。そのまま太陽の光を避けて放送局へと侵入した。 その後、花京院と神楽はファバロを加えた三人で情報交換を行い、放送を聞かずに放送局へ突入。 自らの過失でヴァローナをむざむざ殺させてしまった花京院は、自分への静かな怒りでスタンドを成長させ、神楽とファバロの援護もあって戦闘を有利に進める。 しかし、勇次郎の右腕というヴァニラ・アイスの切り札があったこと。 ヴァニラ・アイスがキャスターと手を結んだことによって膠着状態となる。 その膠着状態を崩したのは全てを壊そうとする存在―――純潔、纏流子であった。 元々疲弊していた上、不意打ちに近い形での流子の攻撃に対応しきれなかった花京院。 最早戦闘不能となった彼にヴァニラ・アイスが迫り、吸血を開始する。 そのことによってヴァニラ・アイスが吸血鬼だと悟った彼は、最期までジョースターの血統を信じながら果てていったのである。 称号:「恐怖を乗り越えた男」 桐間紗路 _ , ,ィ _ ! { ,ィ !l , -、 丶丶. - ‘,┼/- 」i / ,__ 丞 =≠ ` < / ´¨ ̄  ̄≧、 ヽ ヽ / / .! , ', ∨ , ァ _ / / , ! { i 、 ! 、 ', ', / ー―-, _ -―' 丶 ! /! l斗i i ハ', .i.トx.lヽ ! l レイ ‐ ィ ーニ. -‐.>-、 i./.i l .L! l ハ / l .l ∨ ,ィ>¨ニ_T ´  ̄i / , ィ`トハ .l __`  ̄ __ ´ i / >xzzェ/ \ィ´ y'.ィ\.',=≡≡ ≡≡= ノ , / ,ィ \ {( i. l xxxx __ xxxx∠ィ / .,ィ.ノ \丶 丶 l } / ,.イ / (_ 、-' _> _ ゝ ' _/ ィ イ' /,、__ノ  ̄ レ´、iハ/ハ', Ttテ .八/ィリ /ゝ- 「i (⌒丶、_/⌒! \.l. \Y y,ィ__ l / , -、 .! l. \ く ト、 >、. ̄.ノY´ ー ' .i !r― ' ヽ γ 、 ハ ', o ol l. ∨ r、 ,' iゝ _ ィ⌒ヽ / 八 ` < ,' l l l. ∨_ (二) ! ! l ノ _ / ./ >、 .} ,'、,' °゚ ! ハ , .ィ´ 、`i __ ___ , ァ r‐, ./ i ィ_⌒ヽ ´ { ー‐ ' / ノ ノ , -、 / />-.-┴テ´',. ヽ、 / } r ´ ィ , --、 , ' / ¨ / ,' 'ィ_ノ ゝ-- < > ' / _ > ´ ノ γ⌒, l .l .l ∨ Y,/ / _ 二二 __ ー ' , ' / { ノ γ  ̄ ィ⌒ < γ ´ ィ ー イ_/^il i^i__r 、ィ// 〈 r ´ _ ィ ./ / ¨ ー- <__ , __)ー フ /´ l/ ノ `/ ! l ',ー、_.ノl ∨>‐┐ l / / ゝ、 く / ./ > ' .ィ ./ l. l ∨ l ∨ l l し ´ ー‐ ' ./ ノ r  ̄ //! i / ∧ l ', }. l ,'  ̄ L ,,,,,, ィ≦//」 ゝ ' ゝ ' ー ' ゝ'  ̄ ̄ 名前:桐間紗路 作品:ご注文はうさぎですか? 登場話数:7話 死因:射殺(弓矢) スタンス:対主催 関わりの深い人物:小湊るう子 「シャロと殺意なき悪意」より登場。 家バレした直後という悲惨なタイミングで殺し合いに放り込まれた彼女は、その疲弊した精神も合わさってうっかり口に出した言葉から紅林遊月を怒らせてしまう。 その後、遊月の友人である小湊るう子と出会い、アインハルト・ストラトス、三好夏凜の二人とも合流。 その後は四人で情報交換や考察等に勤しんでいたが、第1回放送が終わって空気が変わる。 つい口に出してしまった一言がアインハルトを怒らせ、グループを二つに分断するキッカケを作ってしまった。 再度合流しようとするも、そこに東郷美森とウリスのコンビが襲来。 東郷の放った二本の矢が、無慈悲にも彼女を射殺した。 零した言葉で相手に不快感を覚えさせ、自分を取り繕いながら生きてきた彼女。 そんな彼女がたどり着いたのは、遊月にも、アインハルトたちにも、そしてココアたちにさえも謝ることの叶わない袋小路だった。 称号:「口は災いの元」 越谷小鞠 / ヽ \ / .∧ ./ヽ ヽ ヽ , / .∨ .ヘ ヘ ヽ ∧ / / { .i , }、 ヘ、 , , ;イ 7 λ !、 , i ヘ },.∨ } ヘ ., { / i .{ { ヾ ヽ、 } 7 } i´ ', i }、} i i { ヘ {ヾ,ィfニミ、` ー' リ /ー'"!ィ=ミ、 ノ};∧ } i ソ ii , ヘ ! {i! ,i} ノ ノ {i! ,i} ソ } ./ /! {! ヘ ; `='" '" `=" ノ ./ ! ,' ヽ { ⊂⊃ ' ⊂⊃ ,ィ彡 ノ , , へrミュ r - ‐ - v┐ イ .i , , i .i ,' , ! ! ., , } .{ i i ,オ i ., ノ ヘ i\ i i , イ 7 .、 , ヘ i `..ーi ├ ' .ノ / .、ノ ヘ ! l______,l / ノ ヘ .ヽ / .r=-- 、_,..、 ノ ', _ _,,ィ=--、 ヘ へ、_ / / ヾヽ、 ン/´ ヘ ヾー--‐'" / / { へ、ー-‐'彡" , ∧ ヘ ヽ / ノ i / ヽ` ̄ / 7 , .ヘ ` { Y Y 〉 ヘ、 ``ア 名前:越谷小鞠 作品:のんのんびより 登場話数:2話 死因:圧殺(ゲームセンターの筐体) スタンス:対主催 関わりの深い人物:平和島静雄 「ゲームセンターに行った」より登場。 田舎に住んでいるためにまず行くことのないような娯楽施設に新鮮味を覚える――かと思ったが、状況が状況なのでむしろ不安感を加速させる。 そして最初に遭遇したのは、ブチギレ状態の平和島静雄。 殺す殺すと呟きながらいきなりゲーム筐体を持ち上げてぶん投げるその姿は脅威以外の何でもなく、あっという間に気絶してしまう(しかも漏らして)。 目を覚ました後は小鞠を怖がらせまいと付けた静雄のお面に本気でビビったり、和解して着替えた後は一緒にゲーセンのゲームで遊んだりと微笑ましい光景を繰り広げる。 だが、楽しい時間に終わりを告げた1つの店内放送。 静雄の嫌う折原臨也の名前を使ったそれは、静雄を罠に掛けた上で人の命の重さをあっさりと天秤に掛けた外道、衛宮切嗣のもの。 静雄が席を外したその隙に訪れた切嗣に殴って気絶させられ、最期は頭部に静雄が投げて傾いていたゲーセンの筐体を落とされ、死んでしまうこととなった。 その後は小鞠の死を巡って様々な思惑が飛び交うこととなるのだが、それはまた別のお話。 称号:「外道の被害者」
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オレは腸煮えくり返っていた。 ったく、どいつもこいつも、どうしてオレが何かしようとする所に邪魔を入れるんだ。 全く、気に入らねぇ。 ウェザーと形兆の姿は見えない。 俺の前に姿を現すと何も出来なくなるのが分かっているから、隠れているんだろう。 フン。ならば奴らは後回しだ。 まずは目に見えている奴から殺す。 「生きていたか」 オレが無事だった事にさほど驚いた様子も無く、花京院が言ってくる。 「あの程度の攻撃なんざ、バリアを張れば簡単に無効化出来る」 「その割には、苦虫を噛み潰したような表情だが」 「だまれ!!!!!!」 花京院の澄ました声が癇に障る。 何で奴はこうも余裕で居られるんだ。 オレの指先一つで瞬殺されるんだぞ? もっとおびえろよ。泣いて縋り付けよ。 こんな奴を一瞬で殺しても、オレのストレスは晴れないだろうが。 オレは、オレに一杯喰わせたこいつらを、どうにかして恐怖のどん底に叩き落したかった。 !!! そうだ! 「フン。いいことを思いついたぞ。 ならばテメェは苦虫に噛み潰されるが良いさ」 オレはパチンと指を鳴らす。 そして… ゾゾゾゾゾ… 背後に現れる鬼蜘蛛の大群。 「簡単には死なせねぇからな。足元からじわりじわりと食い殺されろ。 …と、そうだ。どうせなら泣き喚いて命乞いしながら逃げ回る姿が見てみたいしな。 特別サービスだ」 そしてオレは、花京院の本体のみを動けるようにした。 キシャアアアアァァァ!!! 眼光を光らせながら、蜘蛛は花京院目掛けて襲い掛かる。 さあ、おびえろ!わめけ! だが、花京院は、 「…」 ピチャン。 いつの間にか水溜りの出来ていた地面を、一歩踏み出した。 「花京院君!やめろ!君はスタンドを動かせないんだぞ!」 背後からジョージの声が掛かる。 しかし花京院はジョージの言ってる事は杞憂だとばかりに返事をする。 「お言葉ですが、ジョースター卿。荒木討伐隊はまだ全貌を見せていない。心配には及びません…」 そして蜘蛛が襲い掛かろうとした瞬間… 「舞い上がれ。漆黒の蝶」 バササササッ!!! 花京院の足元から、 無数の蝶が舞い上がっていた。 * * 「何………だと?」 眼前の光景にオレは茫然自失としていた。 “蜘蛛が蝶に喰われたのだ”。 無数の蜘蛛は、それを遥かに上回る数の蝶に覆われ、消失していた。 「こ、これは…」 蝶の正体、それは… 「これはーーーっ!!!フー・ファイターズ!!!?」 「そうだ」 そう言いながら、背後から何者かが現れる。 現れたのは一人の女、 ——F・Fだった。 「ウェザーさんが雨を降らした理由は、バッド・カンパニーの攻撃の煙幕にするためだけでは無かった。 フー・ファイターズが十分に繁殖出来るだけの環境作りが目的だったのだ」 花京院がそこまで喋ると、その後をF・Fが継ぐ。 「水さえあれば、アタシのフー・ファイターズは幾らでも増殖する。 今、この空間をフー・ファイターズが満たしている。 お前の攻撃は、もう通用しない。お前の能力では全てのフー・ファイターズをコントロール出来ないだろう」 「通用しない、だと?たったそれだけの事で? オレは今すぐにでもお前ら全員を弾け飛ばす事も出来るんだぞ」 「だとしても、お前は攻撃出来ないさ。何故なら…」 「お前が死ぬからな」 「何を言って………、ッ!?」 どういう事だ!? 体が………動かない!!! 「最後に教えてやろう。僕がお前にエメラルドスプラッシュを撃ち込んだ本当の目的を。 そして、ジョルノ君の作戦を」 「アタシは花京院にハイエロファント・グリーンの触角を使って連絡する事を教えた。 だが逆に、花京院から学んだ事もあるんだ」 「F・Fさんは僕とジョンガリ・Aの闘いから学習していた。 “スタンドを相手に潜り込ませ、相手を操る”と云う戦法を」 !!! まさか………!!! 「さっきお前にエメラルドスプラッシュを撃ち込んだのは、お前を斃す為じゃない。 お前の体内にフー・ファイターズを侵入させる為だった」 「エメラルドスプラッシュの中にフー・ファイターズ弾を幾つか紛れ込ませておいた。 まあ、花京院のように相手の意識を乗っ取る事は出来ないが、 お前の血で増殖したフー・ファイターズが、お前を内側から食い破る事は出来る。 漸くフー・ファイターズがお前の全身に行き渡った様だな」 そうか、コイツらがぺらぺらと喋っていたのは時間稼ぎで…! ヤバイ!!! その直後、三つの声が同時に響き渡った。 「フー・ファイターズ!荒木の体を弾き飛ばせ!!!」 「うわあああぁぁぁ!!!バトルロワイアル!俺の体内のフー・ファイターズを消滅させろぉ!!!」 「スタープラチナ・ザ・ワールド!!!」 * * * 「荒木を斃せる人間は現在生き残っている中で一人。空条承太郎さんだけです」 荒木打倒の方法を説明する時、ジョルノは先ずこう言った。 「他の人間では、奴に攻撃を加えてから死ぬまでに、必ず幾許かの時間を要します。 ですが、荒木ならば、一瞬でも時間があれば再生してしまいます。 攻撃から荒木を死に追いやるまで、時間を必要とせずに行なえる人間は、承太郎さん一人だけです」 「なら俺達にはやる事はないのか?」 ウェザーの言葉に、ジョルノは静かに首を振る。 「いえ。その状況を作り出すために僕達がバックアップする必要があります。 『承太郎さんが攻撃可能な距離に荒木を十分近づける』『承太郎さんに僕達の狙いを伝える』主にこの2点を。 厄介なのは後者です。 僕達が戦場に辿り着いた時、承太郎さんと荒木は既に対峙している筈。 つまり、承太郎さんはバトル・ロワイアルの支配下にある訳です。 承太郎さんが見たものは荒木も知覚し、承太郎さんが聞いた事は荒木も聞き入れてしまいます」 「それじゃあ、伝える手段が無いんじゃないか?」 「一つだけあります」 「?」 「以心伝心です。そしてこの中でそれが出来る人は一人か居ません」 そしてジョルノは花京院の方を向いた。 「花京院さん。貴方です」 「!」 その場に居る全員が、花京院の方を振り向く。 「DIO打倒の下、何十日と云う旅を共にし、心を通わせた貴方しか居ません」 「…」 「御願い………出来ますか?」 ジョルノの依頼に花京院は………静かに肯いた。 「だが、どうやって荒木を仕留めるんだ? はっきりいって、荒木ほど1対多数に向いているスタンドもない。 荒木の目を盗んで、承太郎の射程距離に近づけるなんて事出来るのか?」 「そうだな。恐らく荒木は、同時に10個のテレビが点いていても、全て同時に観る事が出来るような男だ。 俺達を相手にしながら承太郎の事も把握するなど、奴にとっては朝飯前だろう」 「えぇ。でも、それは平静でいられる間は、です」 「「「?」」」 「同時にテレビを10個見る事が出来る人間でも、 突然銃を撃ち込まれた時に“テレビ10個を同時に把握しながら銃声の方を確かめる”なんて事は普通出来ないでしょう?」 「「「!」」」 どうやら皆、僕の言いたい事が伝わったようだ。 「成程な。だが、どうやって奴を斃す?」 「はい。僕なりの打倒法を考えました。それをこれから説明します…」 そしてジョルノが説明した内容は、簡単に纏めれば以下の通りだった。 ①花京院が承太郎さんの前に姿を現し、アイコンタクトを取る ②アタシのフー・ファイターズを荒木の体内に潜り込ませる ③荒木の体内にフー・ファイターズが行き渡った所で、荒木にその事実を説明 ④荒木は動揺する。その時、自分の事に気をとられた一瞬を突き、承太郎さんが荒木を斃す * * * 『僕達が隙を作る。だから承太郎が止めを刺してくれ』 あの時花京院は、目でそう伝えていた。 そして遂に得られた一瞬。 伏線に次ぐ伏線のおかげで、一瞬だけだが、荒木は自分の事に気を奪われ、俺達の拘束を、バリアを解いた。 その一瞬をつき、俺は時を止めた。 正真正銘、最後のチャンス。 猛然と、俺は荒木の元へ向かって走る。 後2秒。 「…やれやれ、何とか間に合ったようだな」 俺は呟く。 そして… 後1秒。 「スター………フィンガー!!!」 ザンッ!!! 荒木を脳天から荒木を真っ二つにする。 ザンッ!!! 次は横一文字に。 斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬っっっ!!!!!! そのまま何度も荒木を切り刻み…、 時は動き始めた 凍えた時から開放された荒木は、その肉片を地面にばら撒いた。 確認するまでも無い。 荒木は死んだ。 「お前の敗因はたった一つだ。 たった一つの…シンプルな理由だ」 最後に俺は、荒木に手向けの言葉を贈る。 「テメェは俺達を敵に回した」 【荒木飛呂彦 完全敗北 —死亡】
https://w.atwiki.jp/bizarre/pages/29.html
(やはり何かおかしい…)花京院は次第に歩を速める。 誰も後は付けてきていない。だが何かがおかしいのだ…何かこう…誰かに見られている様な気が… そんな気がするためにいまだに港をウロウロとしていた。 広いところに出たら障害物がないためあっさり殺られてしまうかも知れないと考えている。 (しかしどこにも誰もいないじゃないか……いや、もしかしたら…) 花京院は一つの仮説に行き当たった。名簿を見て何となく理解した事…このゲームに参加しているのは恐らく主にスタンド使いだ。 今まで共に戦った仲間や敵として対峙した者が何人もいた。 ならば名前を知らない連中もスタンド使いの可能性は十分にあるだろう。何しろあの殺された少年もスタンド使いだったのだ。 (しかし何だ…誰にも気付かれずに尾行するとしたらそれはどんな能力だ?) 考えても埒が開かないので花京院は動く事にした。 (もし後を追われているならそのまま承太郎達と合流して迷惑は掛けられない… 虎穴に入らずんばとも言う…ここは僕のスタンドで謎を解く!) (後を付けているのに気付いている様だな…だが詳しいところまでは気付いていまい) 一方リゾットは前の男の後をずっと付けていた。正味約一時間と言ったところか? ここまでの尾行でわかった事がいくつかある。 まず男はかなりやり手だ。歩き方でわかる。周りに気を配りながら歩いている。 それもただ気を配っているだけではない。 ほんのちょっとした違和感をも見逃さない程の警戒をしているようだ。 暗殺チームのリーダーとして様々な人間を見て来たからこそわかる。とにかくこの男に簡単に近付くのは良くないと本能でわかっていた。 また男が路地に入る。 (この方向…まだ港を出ないつもりか…やはり後を付けているのには気付かれている様だな) こんな調子で一時間が経ったのである。余談だが男が入っていった路地は既に三回程通っている。 (まぁ良い。どうせ奴にはオレの姿が見えない。バレる等有り得ない。 しかしもう後を付けるのにも飽きたな。そろそろ…終わりにしようか) リゾットも後を追って路地に入る。すると数十m先に男の姿があった。 (慎重に射程距離まで近付く…) 次第に距離が近くなる。すると男が立ち止まる。バレたのか? どうやら地図か何かを見ている様だ。しかしそれならリゾットには好都合だ。一気に近付いて先手を取れる。まさにリゾットはそう思っていた。 が、先手を打ったのは花京院だった。 (何だ?何か飛礫の様な物が飛んでくる?!) リゾットは避けようとするもいくらかは当たってしまった。 「結界にかかったな。そこに誰かいるのはわかっている。隠れてないで出て来たらどうだ?」 …どうやら追い詰めたつもりだったが罠…釣り出されたらしい。 しかも厄介な事にどんな能力かは知らないが男のスタンドはリゾットの『メタリカ』より射程が長い様だ。 これでは近付くのも困難になる。 それにしてもこの目の前の男…まだ少年の様だがどうやらリゾットの予想よりかなりのやり手の様だ。 そこにいるのが完全にバレてしまっては姿を隠している意味もない。 「やり手と思っていたがまさかこれほどまでのやり手とはな」 何もないところから急に姿を現わした事に驚きはない様だな。 まぁそんな事で驚く様な奴だとしたらそんな奴にケガを負わされたこっちが恥ずかしい。 「何もないところから現れた…どうやらお前は自分を透明にして姿を隠す能力を持っているな」 男は語る。どうやら能力をわかっているつもりの様だ。 しかしオレの能力を透明になるだけと勘違いしている様なら射程距離の差があれどまだ付け入るスキはあるはずだ。 何とか近付いて…スタンドで仕留める! リゾットは駆け出す。が、再び飛礫が飛んでくる。 「!!!」 「無駄だ!半径20mにハイエロファントの結界を張った!触れればエメラルドスプラッシュが発射される!」 リゾットは動きを封じられてしまった。これでは動いたが最後、下手をしたら射程距離に近付く前に死んでしまいかねない。 「追わないと誓うならこの場は見逃そう。しかし攻撃をしてくるのであれば手加減はしない!」 見逃すと言う言葉にリゾットのプライドが刺激される。 (偉そうに言うではないか。 自分の優位はもう揺るがないって顔してやがる。 が、こちらにもまだ策はあるぞ!) リゾットはおもむろに先の攻撃で割れたガラスの破片を拾い上げると自分の左手の小指を切り落とし、石ころにくくり付けた。 少年もさすがにこの行動には動揺を隠し切れない様子だ。 「な…何を考えている?」 「オレは正直お前をナメてかかっていた。ゲームに対する覚悟も足りなかった様だ。しかし今はもうそんな油断はない!」 リゾットはそう言うと手に持っていた石を花京院の足下に放った。 たかが石ころ。指をくくったところで花京院にはなんのダメージもないはずだった。 が、花京院の足からいきなり数本の釘が飛び出す。 花京院は何が起こったのか把握出来ない。 「お前一体何を…」 「答えてやる義理はないな。」 そう答えるとリゾットは花京院に向かって走りだす。結界に触れようとお構いなし、ダメージ覚悟の様子だ。 一方の花京院は混乱した。ただ指をくくり付けただけの石で何故ダメージを受ける? そう思って石を拾い上げる。と、指の断面で奇妙な物がうごめいていた。 (ムーミンにこんなの出てきたな…それよりも奴のスタンド…指の中に?…もしかすると!) 敵の左手を良く目を凝らして見るとやはり同じ物が切り口でうごめいている。 (やはり!体内にいたのか!) しかしスタンドが体内にいるのがわかっても能力がわかったわけじゃあない。 花京院が敵の能力について思考を巡らせたのは数秒だった。 しかしその数秒で充分、だいぶ近付かれてしまった。 すると今度は額からカミソリの刃が大量に出てきた。 「ぐああああ!」 (クソ!奴の能力は一体…このまま結界を張っていても近付かれるのなら戻して攻撃と防御をしながら距離を離した方が…) そう考えると花京院は『法皇の緑』の結界を解き手元に戻した。 しかしリゾットの本当の狙いはこちらだった。 これ以上の攻撃はリゾット自身が危なかった。 しかしダメージ覚悟で近付いて攻撃をすればスタンドを手元に戻して…(恐らく結界と呼んでいた物と本体は別物だろう)身を守りながら距離を置こうとするはず。そう考えた。 花京院はさらに攻撃を食らっていた。距離を置こうとする前に腹から針がまた大量に飛び出す。 (だ、だいぶダメージを受けてしまった…しかし何なんだ…) そこまで考えたところで一つの仮説に行き着く。 「仮説だが…最初は釘、次はカミソリの刃、今のは針だったな…いずれも体の中から出てきた。共通点は鉄製という事と体内から出てきた事だがこう考えたらそれも納得行く…お前のスタンドは鉄分を何らかの手段で別の物に変えて攻撃する。違うか?」 血液の中には鉄分が含まれている。 花京院は相手はその鉄分をスタンド能力でカミソリ等に変えて攻撃していると考えた。 すると男が半ば感心した様な言葉を返した。 「大体正解だ。そこまでわかっているのならもう隠す必要もないだろう。お前の知力に敬意を表して教えてやろう。 私のメタリカは体内の鉄分を吐き出させる事が出来る。また磁力も利用している」 花京院の仮説はほぼ当たりだったのだ。 だがリゾットは続ける。 「しかし能力がわかったから何だというんだ?言っておくが鉄分は血液のみに含まれているわけではないぞッ!」 花京院が周りを見渡すと自分に刃先を向けて数本のナイフが浮かんでいた。 (ま、まずい…) 咄嗟に避けようとするも数本が刺さる。 花京院はその場に崩れた。普通なら確実に入院が必要な程の重傷である。 どうやらスタンドも消えてしまった様だ。 「なかなか手強かった…が、これで終わりか…止めだ!メタ…」 が、花京院への攻撃が成る事はなかった。リゾットは次の瞬間後方へと吹き飛ばされた。 (うぉっ!何だこれは) ふと見やると倒れていたはずの花京院が立ち上がり喋り出した。 「能力を詳しいところまで話してもらった礼に僕の能力も教えよう。 僕の『法皇の緑』はただ攻撃をするだけではない… 体を糸状にして地面を這わせたりする事も出来る。そこまで言えば何が起こったかわかるな?」 花京院のスタンドは消えたわけではなかったのだ。 消えた様に見せかけて背後に忍び寄らせ相手を射程距離外まで引きずり飛ばしたのだった。 「ただの学生に見えるだろうが、策を巡らせられるだけの修羅場はくぐってきたんだ。 喰らえ!エメラルドスプラッシュ!」 リゾットが見た光景は自分に向かって飛んで来る無数の飛礫。地面に跪いているリゾットにそれを避ける手立てはなかった。 そこでリゾットの意識はプツリと消えた。 「生き残った…が、ダメージもかなり大きいみたいだな…」 確かに生き残る事は出来たがだいぶヒドいケガである。 ちなみにリゾットも重傷ではあるが辛うじて生きている様だ…意識はないが。 多分…まぁその心配はないだろうがまた追われては敵わないのでリゾットを彼の服で建物の柱にくくりつけた。 ついでに支給品も必要な物のみ失敬する事にした様だがリゾットに支給された武器を見て明らかに落胆している様だ。 (この先承太郎達に合流する事は出来るんだろうか…) とりあえずの止血は済んだ。今すぐにも歩き出せる。 が、花京院は己の行く末に不安を抱いていた。 理不尽な殺人ゲーム…ゲームを操るのが荒木なら、そのゲームの中での人の生き死でさえ実は荒木の掌の上での事なのかも知れない… 花京院に訪れるのは希望の光だろうか…それとも絶望の闇だろうか… 【杜王港(I-09)/一日目/深夜~黎明】 【花京院典明】 [スタンド] 『法皇の緑(ハイエロファント・グリーン)』 [状態] 重傷/行く先に対する不安 [装備] アーミーナイフ [道具] 支給品一式、またリゾットの支給品から食料等をゲット [思考・状況] 1)こんなケガをした状態で承太郎達と会うまで生き残れるのか…? 2)とりあえず止血は済んでいる 【リゾット・ネエロ】 [スタンド] 『メタリカ』 [状態] 瀕死/意識不明 [装備] ハリセン [道具] 食料以外の支給品 [思考・状況] 1)花京院の能力の詳細(糸状になれる等)を把握しきっていなかったために後一押しが出来ずに負けた 2)冷静に対処すれば花京院が結界を解いた後に姿を消しながらの攻撃も出来たはずだが想像以上のダメージが思考を鈍らせていた 3)とりあえず生きているが身動きを封じられたため意識が戻ったところで誰かに見つかれば抵抗は不可能だろう 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 01 『ゲームスタート』 花京院典明 46 仮説・それが真実 01 『ゲームスタート』 リゾット・ネエロ 33 戦慄のリゾット
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昇り始めた太陽が恨めしい。 今の今まで僕を照らすことなく日陰者にしてきた張本人はしたり顔でスポットライトを当て、表舞台に引きずり出した。 睨み付けるように顔をあげるとそんな僕を非難するように容赦ない光が脳をチリチリと焦がす。 立ちくらみを感じ思わず立ち止まる。 すべてのものに公平なはずの太陽さえも僕に圧力をかけているかと思うのは被害妄想だろうか? そう思い、惨めであろう自分の姿を想像すると自虐的な笑みがこぼれた。 第一回放送を聞いてから一時間ほど。現在僕は進路を西にとり、線路か政府公邸を目指して歩き続けている。 先ほど存在に気づいた写真の同行者、吉廣氏には申し訳ないが彼にはポケットの奥底で黙って貰っている。 正直なことを言うと僕はまだ結論をだしてない。将来協力者になる可能性のある彼の機嫌を損なうのは頂けないがそれでも慎重な判断をすべきだと僕は思った。 それは吉廣氏が述べたことがあくまで彼『だけ』の話であり、あくまで彼の主観的な話であること。 吉廣氏が言った絶対に殺しあいに乗らない仲間、吉良吉影。 幸運なことにこの世界に来てから僕はいかに『絶対』というものが脆いか思い知ることができた。 そう考えると吉良吉影という人物が吉廣氏の言ったとおり『殺し合い』に乗らないか、どうか怪しいものだ。 仲間一人の証言をどこまで信じられるかだろうか。それこそ吉廣氏の言葉しか信用すべきものがないのにそんな相手に命を任せるなんて愚の骨頂だ。 何処の誰かのように生き残ることを強いられ、頼るものもなくし、仲間を失った者はこの舞台では容易く変わる。 なぜならこの僕、パンナコッタ・フーゴがそうだから。 そしてもう一方。 強盗、殺人、横領、暴行などなど…。彼の話を信じるならご対面はぜひとも遠慮したい。 吉廣氏が被害者側であり、多少の誇張表現が含まれていたとしても犯罪という分野に関わってることは間違いない。 危険人物である空条承太郎、及びその仲間たちがたとえチンピラのような分際であったとしても僕としてはそんな野蛮な人間に関わるのはゴメンだ。 …だからと言ってその集団が必ずしもこの舞台では『悪』とは断定できないけれども。 なぜなら僕たち、パッショーネのギャングだってそうだから。 ブチャラティ、アバッキオ、ミスタ、ジョルノ、ナランチャ…。 彼らは僕と違う。困難が立ち塞がろうとそれから逃げることなく向かっていく。それがどんなに巨大な壁であろうと。 彼らは僕と違う。正しいと思う道を、進むべき道を切り開いていく。それがどんなに困難なものであっても。 『オレは“正しい”と思ったからやったんだ。後悔はない……こんな世界とはいえ、オレは自分の“信じられる道”を歩いていたい!』 『“鍵”を渡すことはない。そしてフーゴもアバッキオも無事でみんなのところに帰る!』 『この国の社会からはじき出されてよォーー…。俺の落ちつける所は………ブチャラティ、あんたといっしょの時だけだ………。』 『よお………オメーか、フーゴ』 『オレに“来るな”と命令しないでくれーーーーッ!トリッシュはオレなんだッ!オレだ!トリッシュの腕のキズはオレのキズだ!!』 痛む頭を押さえる。直射日光から守るように目を日陰で覆うと僕の足はまた動き始めた。 時々僕は自分の頭脳が恨めしくなる。IQやらなんやらで人の可能性を決めつけるのは嫌だが、客観的に見たら僕は賢い部類に含まれるのだろう。 だったら、と願う。 僕はどうしてもっと聡明じゃないのだろうか? 或いはどうしてもっと間抜けじゃないのだろうか? ああ、わかってるさ。悪態を吐きたくなるのを堪える。ここで言ったらそれは即ち自己否定になるだろう。 それでもわかってしまう。本心を客観的に見つめてしまう。 それが見えなければいいのに。 それが客観的でないと心底否定できればいいのに。 結局の所僕は脅えてるにすぎない。 決断を先伸ばしにしたのはどちらにでも都合が良いときに付けるようにとの下心からだ。 都合がいいほうに味方できるようにだ。 決断してしまったら……ゲームに乗ったとしたら……もう戻れないのだから。 一ヶ所に留まって参加者最後の二人になるまで待つという選択肢を取り上げられた僕はもうどうすればいいかわからない。 それが唯一の道だと、なけなしの勇気を振り絞った僕にはその道しか選べないように思えたのに…。 それを荒木は許してくれなかった。 殺すことも殺されることも御免だ。 人影に脅えてビクビクするのも勘弁だ。 それでもそうするしかないんだ……。 堪えきれなかった感情は溢れて口をつく。 「僕は……死にたくないんだ………」 歩くことに取りつかれたように僕の体は動き続ける。 意図せずとも漏れた呟きは誰に届くこともなく消えた。 嫌なんだ。 恐いんだ。 死にたくないんだ。 誰か助けてくれ。 不意に聞えたその声は天使の助けか、悪魔の囁きか。 「やあ」 ああ、確かに求めたさ。 「死にたくないんだ、って?」 助けてくれ、と願ったさ。 どうにかしてくれ、と思ったさ。 「それだったら…取引しようか?パンナコッタ・フーゴ君…」 けどこれは冗談キツいだろ? 目の前に聳え立つ政府公邸を背景に突如現れた男。 ゲームマスター、荒木飛呂彦。 選択する権利さえ奪われた僕はもう、乾いた笑いを漏らすしかなかった。 ◇ ◆ ◇ 「そう急かさないでください。警戒を緩めるにはここは危険すぎます。常に気を張って、ほんの少しの気配でも感じたら……」 「わかってるって、花京院。それにしたってこんな時間に襲いかかってくるような奴はいないと思うぜ?せっかくのお天道様だってのに…もっと楽しまないとなッ!」 「ちょっと、グェスさん!…まったく………」 ため息と駆け出したあたしのあとを追いかけるような靴音が聞こえて思わず頬が緩む。 だらしない表情を曝してると頭で理解しながらもあたしはそれを変えることができなく、ただ花京院にそれを見られないようにまた少し足を速めた。 まったく…ハイスクールの女生徒じゃねーんだからと、今まで散々馬鹿にしてきた極めて『女の子』らしい行動に我ながら呆れる。 家族や知り合いにこんな光景を見られようものならそれこそこめかみにトリガーを突きつけてバン!だ。 言うまでもなく突きつけるのはあたし自身のこめかみだけど。 後ろからやって来た人影を横目で確認する。ちらりと視界に映った男…青年は息を弾ませながらあたしの横に並んだ。 平均身長よりやや高い、それでいて華奢な体。 呆れと心配からかすこし皺をよせた顔は男と言えどどこか美しくある。 なによりもその気高く孤高に輝く瞳はあたしにエメラルドを思い起こさせた。 「……?どうかしましたか?」 ばっちりとあたしと目があった花京院が聞いてくる。 キラキラ緑色に輝くお前の眼に見とれてた、なんてことを初なあたしが言えるわけもなく慌てて取り繕ったような言葉を返した。 「ああぁ…と…、えぇと…。そーいえばまだ朝食をとってないなぁー…ってな、思って。それで……」 上ずった自分自身の声を聞いてあたしはますます焦った。 こんな調子じゃ顔も赤くなってるんじゃないかと思い、それを隠すために平静を努めてに俯いた。 それでも花京院の奴は話しかけてくる。石を蹴飛ばし妙にぎこちないあたしに気を使って話しかけてるんだとしたら……くそ、意外に鈍いやつなんだな………。 あたしたちは今、政府公邸を目指して向かってる。 日記をパチったあたしの行動に花京院は最初、おおいに怒りを示した。 曰く『なんて危険な真似をッ!こんなことをしたら今すぐにでも荒木が取り返しに行動を起こすかもしれない……!』とのこと。 ただその一方で『貴女の行動は気高く勇気ある行動でした。誇りを持つべきでしょう。』とのこと。 別に誉められたかったからパチったわけじゃないし…ただ自分の手癖の悪さが出たっていうか…。 まぁ、誉められて嫌な奴はいなく、あたし自身もその大多数と一緒で満更でもなかった。 日記は荒木のスタンドによって細工が施されたのか開くこともできなかった。 そして花京院が言うにはだからこそ良いらしい。 『それだけ必死に荒木が隠したいものとは…』 そう言ってぶつぶつ呟いた後、最も近くにある施設、政府公邸で詳しく調べたいとの事をあたしに言ったわけ。 でもあたしとしても政府公邸に行くこと自体は大賛成だった。 そこに行けば食事も取れるだろうし、どっしりと腰を据えての情報交換もできる。 他の参加者に合う機会でもあるし、なにより体を休めるに最適な温かいベットだってあるだろうし…。 い、言っとくけどベッドっていうのは…その…イメージの中でもシングルベッドだからな! キングサイズだとかツインベッドだとかあたしがこいつとチョメチョメだとか………。 そんなことは断じてないんだからな! 「そうだ、絶対ない………ッ!」 「???」 唐突なあたしの言葉に花京院は頭上に疑問符を浮かべる。 あたしはそれを気にかけずずんずんと足を進めた。 不意に喉の乾きを覚えた。 それもそうか…。なんてたってもう六時間も動きっぱなしだ。 この緊張状態…殺し合いの緊張状態は簡単に人の体力を奪う。 そう考えたとき、さっきのあたしが口走った『まだ朝食をとってない』っていう提案が現実味を帯びてきた気がした。 まぁ、それでも流石にここで鞄を広げてピクニックってわけにはいかねーな。 そう思って鞄を体の前に回す。中を手探りで物色するとお目当てのペットボトルが出てきた。 歩き食いする気分じゃなかったし、事実あまり腹は減ってなかった。 喉を潤す水の冷たさを感じるとあたしの体は満足したのか、欲求をようやく押さえた。 それでもそれはペットボトルの半分までもを消費するには充分で、あたしはふと補給ができなかったらどうしようと思った。 きっとそうやって別のことを考えてたからだろう。 あたしがペットボトルの蓋を絞めきる前に、デイバッグそれごとを落としてしまった。 慌てて拾おうと身を屈めたがそこには水でふやけた物を口からぶちまけたデイバッグがあるだけで、仕方なく使い物になるか微妙な用具を集め始めた。 この時ドラマでよくありがちな物を拾おうとして男女の手が重なり『あッ………』っていうワンシーンを思いだしてしまったのは内緒だ。 先に言うが期待なんてこれっぽちもしてないからな! ただこういうシチュエーションはあたしにしては珍しいかなァ……って思っただけ。 結果としてあたしの手を花京院が包みこむなんて幻想は妄想に終わり、あたしは無事ふやけた地図と名簿に向かい合うことができたというわけ。 ただひとつを除いては。 「花京院………」 あたしの声の低さに何か読み取ったのか、花京院も柔らかな表情だったものを険しくするとあたしを見つめる。 黙ってあたしはそれを渡した。デイバッグの中で唯一濡れずにすんだ、正確にはなぜだか『濡れてない』日記を。 「これは………?」 「ああ、それだけじゃない。」 顎で促すように示すと今まで頑なに閉じていた表紙に力を込める。 すると、どうだろう。今までは開かなかった日記は急にその拘束を放ち、中身を曝し始めた。 真っ白な中身を。 「こ、これは………?!」 「何か条件があるんだろうな。とにかく思った以上にこいつはヘビーそうだな…。」 「急ごうぜ、花京院。そうとわかったらグズグスしてねぇで一刻も早く政府公邸に行かねえと。」 明らかに流れ出した緊迫感。 そこにはさっきまであった余裕は消え失せ、黙ったまま小走りになるあたしたちしかいなかった。 さっきまでの下らない妄想の数々を打ち消すように頭を振るとあたしは足を動かすことに集中する。 この雰囲気が好きかと言ったらもちろん好きじゃねーさ。 もっと緩くてダルそうな感じがあたしには合ってると自分ながらに思ってる。 大体こういうシリアスってのはキャラに合わないんでよォ。 そう思ってもあたしは今、たった今、この状況にはこれっぽちも不安を感じなかった。 なぜならあたしの横にはコイツがいてそしてコイツは言ってくれた。 『僕と友達になってください』ってな。 柄にもなく太陽が明るく見える。いつもと違う、あたしを優しく温かく包んでくれる太陽。 隣に並んでくれる奴がいる。それがこんなに嬉しいことなんて知らなかった。 それでも今だけは、この一瞬の幸せな時間に浸っていたいと思った。 ◆ 入り口に設けられた鉄門を慎重に開いていく。 いつもだったら気にならないであろう、それが軋む音に冷や汗を流しながらも二人して庭園に入る。 閉めるべきかどうか、少しの間悩んだが庭園内に警戒を張る花京院に聞くのも気がひけて、結局あたしはゆっくりと後ろ手に門を閉めた。 移動中に知ってびっくりしたがあたしのグー・グー・ドールズのような不思議な力は『スタンド』と言い、花京院もスタンド使いらしい。 運命を感じるだとかそんな狂言を吐いてる余裕はなく先行させたグー・グー・ドールズの視界に何か写らないか意識を集中させる。 ……特に不審なものはなし。隣にいる花京院に頷きでそれを伝えると花京院も同様に頷きを返してくる。 それを合図に庭園内を疾走する。政府公邸の入り口まで全速力でかけていく。 あたしたちが呼吸を整え安堵の息をついたのは扉にあたしたちの体を滑り込ませた後だった。 ほっとあたしを戒めるかのように花京院が手を挙げる。反射的に視線を向けるとその指が広々とした玄関ホールの脇にある一室のドアを指していた。 依然スタンドを出し警戒を解かないまま扉の前にたつと、花京院のスタンドが扉の下より滑り込んだ。 幾分か経過した後、中の安全を確認できたのか、花京院が扉を開くとそこは小さながらも政府公邸の名に恥じない立派な一室があった。 「…ふぅ」 「とりあえずは大丈夫そうですね」 そう言って互いに椅子に腰を下ろす。中央に置かれた背の低いお茶用の机を挟んで向かい合うようにあたし達は座った。 うお、柔らけぇ。いい椅子使ってんな…。 「大きすぎる施設ってのも考えもんですね。これ程だと中に誰がいるかどうかもわからない」 「あたしたちはゲームに乗ってないッ!……なんて大声で主張するのも間抜けだしなぁ」 あたしの言葉に頷きなから花京院は自分のスタンド、法皇の緑を展開していく。 イソギンチャクみたいに触手を伸ばしてく様は見ていて気味が悪いが口に出すとなんだか悪いのでやめといた。 細切れになった緑の網は部屋中に広がりさらに隙間から外に出ていった。 「法皇の結界…僕のスタンドで簡単ですが警戒ラインを敷きました。これで安心して情報交換ができますね…。」 ソファーに座り直し、顔の前で手を組む。 花京院はそうした後、組んだ手の向こう側から覗きこむようにあたしと目を合わせてきた。 この殺し合いに巻き込まれてからのことは歩きながらある程度は話終えていたから主だったものは自分達の境遇と互いの知り合いについてだった。 花京院の話を聞いて真っ先に考えたことは花京院にあたしが犯罪者であることを言うべきかどうかだった。 花京院の正義感の強さは話だけでなく実際に荒木の部屋でもあたしは目撃している。 そしてその過酷という言葉が生ぬるいほどの冒険とその発端。 …普通友達のお母さんのためとは言え命をかけれるか? あたしだったら少なくとも二つ返事で答えることも、躊躇いもなく首を縦に振ることもできないだろう。 そんな正義馬鹿…とまではいかないが、とにかくこいつがあたしが犯罪者であることを知ったらどうだろう…。 あたしは悩んだ。 相槌をうち、話を聞きながら必死で考えた。 適当な質問で話を引き延ばしながら脳みそをフル稼働させた。 そうして大袈裟なリアクションをとり時間を稼ぎ、あたしは結論を出した。 「――――…と、まぁ僕の話はこんな所でしょうか。」 「それじゃ、次はあたしの番だな。」 ソファーに改めて座り直す。姿勢を良くして背筋を伸ばす。 緊張で顔が強張ってないか不安だったが仕方ねぇ…。 いや、むしろ自分の過酷な『運命に』ついて語るんだ。少しぐらい緊張が伝わったほうが良いだろう。 唇を舐め、唾を飲み込んだあたしは花京院に向かって口を開いた。 「まず最初に、花京院だから話しておく。あたしはアメリカにあるグリーン・ドルフィン刑務所に服役中の犯罪者だ」 重々しい口調を意識した。 驚愕に見開かれた目に構わず言葉を続ける。 「……はめられたんだ、あたしは。たぶんこんなこといっても信じてくれないだろうけど…信じてくれ、花京院。あれは確か夏だったかな…?」 正義感が強い花京院、だからこそなのか、こいつは甘ちゃんだ。それもあたしがびっくりするぐらいの。 だからきっとこいつはあたしを信じる。 気の毒でしたね、なんて同情を示して。あたしが正真正銘の犯罪者なんてこれっぽっちも思わないだろう。 ……罪悪感がないかって?友達を裏切ることにならないかって? …それじゃなんて説明すればいいんだよ。 あたしは放火に殺人未遂に仮釈逃亡を重ねて刑期が12年あるベテラン囚人です、って言えばいいのかよ? 小心者で他人に嫌われるのが嫌で人生失敗してきました、なんて言えばいいのか? ……そんなこと………そんなこと言えッかよォ! 偽りの表情を貼り付けながらあたしは胸を痛めた。 きっと花京院はこの話を信じ、いもしない犯罪者に怒り、ありもない冤罪を被ったあたしを慰めるだろう。 罪悪感で胸が張り裂けそうだった。 それでも、あたしは初めてできた『友達』を失いたくなかったんだ……。 ◆ 「それにしても不思議ですね。『空条』なんて苗字はそうざらにあるものじゃないんですよ」 「でもあたし自身、あいつのフルネームは知らないからな…。かもしれない、だけであって違うかも」 「それでもなにか運命的な物を感じますね。同じ知り合いが同じ苗字…もしかしたら親戚かもしれない」 小声だが二人の会話は続く。 驚きと旧友の名前を聞いたからか、若干饒舌になった花京院の言葉に愛想笑いを浮かべ相槌を打った。 憂鬱な気分だったがそれをおくびにも出さずあたしは花京院の後に続く。 警戒を怠らずに次々と部屋を回っていく中で、あたしは気分を落ち込ませまいと無理に振舞っていた。 幸い状況が状況だったから、幸いにもいつもと違うあたしでも怪しまれることはなかったようだけど。 部屋の扉を開く。 相も変わらず高価な机やらソファーやらで部屋は快適に過ごせそうだ。 あたしには全部一緒に見えるが隣にいる花京院が言うにはその部屋その部屋で応接室、来客室、従者室等々……。 とにかくあたしが言いたいのはここが安全だと主張するにはまだ早い、ってことだ。 それだけ部屋があるってことはそれだけ隠れる場所が多いわけだからな。 とはいってもあたしは途方もなくある部屋の多さにいい加減勘弁だった。 ただでさえさっきのことがあって気持ちが落ちてるあたしには、部屋で隠れてる参加者をひたすら探すのはキツい作業だった。 まったくもういいだろ…。 少し投げやり気味に入り口から死角になった物陰を覗きこむ。 いなかったことにほっとしながらもあたしはうんざりし、隣に繋がる扉に手をかけた時だった。 花京院があたしの肩を掴む。 普段物腰が柔らかいコイツにしてはやけに強い…というか強引過ぎる。 そのまま部屋の壁際まで押し込まれるように移動を強制された。 少し痛む肩に顔をしかめつつ、見上げる花京院の顔は何処までも強張っている。 何かを言おうとして視線をさ迷わせ、花京院はそれでも黙ったままだ。 …あたしは覚悟した。 ああ、きっとさっきの嘘がバレたんだな。いや、もしかしたら最初から気づいてたのかもしれない。 それでも優しい花京院は口に出せなかっただけで。あたしがこうやって気持ちの整理をすることを見越していたのかもしれない。 でも…だからこそあたしは花京院が許せなかった。 お前が言ったんじゃない、友達だって。自分の言葉に責任とれよ、お前は。 お前がいう友達ってのはそんな軽いものなのか?気を使い合う必要があるのかよ。 空条ってヤツの母親のため、飛び出したお前と空条の間にはそういう遠慮があったのかよ。 八つ当たりだって……? 矛盾してるんじゃないかって? そんなの知ったことかよ…ッ! あたしの感情の昂りに合わすようにグー・グー・ドールズは姿を現す。 顔を歪めまいと堪える気持ちはきっと自分の傲慢な気持ちなんだろう。 それでも押さえきれなかった。耐えることなんてできなかった。 花京院…お前が言った『友達』が偽りだっていうなら……あたしは……あたしは…………ッ! 甲高い奇妙な音と銃撃音。 二つがあたしの耳に入った瞬間、体は突き飛ばされバランスを崩ししこたま頭をぶった。 振り返ったあたしの眼に映ったのは肩から血を流して崩れ落ちそうになる花京院。 そしてその向こうには部屋の切れ目から体を半身だけ出し片手に銃を持った青年。 瞬間身体を動かした。 怖いという気持ちが自分の中で湧き出る前に這いずるような格好で花京院に近づく。 歯をガチガチぶつけ合う音が自分の物とは思えず、それでも花京院の身体を無理矢理引っ張っていく。近くのソファーの裏側まで行かないとこのままじゃいい的だ。 もちろん襲撃者がそんなことを許してくれるはずがない。青ざめやけに若い、少年といっても通ずるようなそいつは今度は身体を完全に乗り出させて銃を持ち上げる。 あたしの脳裏に浮かんだのは一瞬で命を刈り取られた老人の最期。 あいつは直前まで自分の死に気づかなかった。痛みもなく、でも髪の毛一本も残さず瞬きする間に文字通り消された。 走馬灯のように駆け巡る映像の中でもあたしが感じた感情はひとつだった。 死にたくない。 少年がそうしてるのか、脳内に分泌された何かがそうさせているように見せているのか。 やけにゆっくりと狙いをつけている間にもあたしは命を諦めれなかった。 死にたくない。死にたくない。死にたくない。 這い出る恐怖と諦めきれない後悔。 いったいあたしが何やったんだって言うんだ…ッ! なんだよ、殺し合いって! 何であたしが殺されないといけないんだよ…ッ! なんで……誰もあたしを助けてくれないんだよッ! 少年が引き金に指をかけたのとエメラルド色の閃光が走ったのは同時だった。 不意をつかれたのか、少年は顔をびっくりさせ眼を見開く。 それでも反射的にスタンドを出現させるとものすごいスピードで宙を舞う宝石を叩き落とす。 視線を固定されたまま首根っこを捕まれ、あたしは後ろに引っ張られる感覚に身を任せた。 あたしを庇うかのように広げられた手。 細身の身体をそらすようにして胸を張る。 傍らに並び立つはその気高い精神を象徴する叡知のエメラルド。 「法皇の緑ッ!」 多方から無数に飛びかかってきた射撃に流石の少年も対応しきれない。 一発、二発をスタンドの両の手で弾くのが精一杯。 三発目を射軸上から身体をずらした後は後退しながらなんとか直撃を免れるように部屋の扉から出ていった。 「グェスさん…」 花京院が振り向きあたしに語りかける。出血が続く肩を押さえながらも視線を合わせようとその場で片膝をついた。 「貴女のおかげです…。貴女が僕をこのソファーの後ろに導いてくれた。その行動が僕の命を救ってくれたのです。 たったそれだけ……、と貴女は謙遜するかもしれません。 でもそのたったそれだけが僕と貴女の命を救ったんです。あの少年の襲撃から僕たちを救ったんです。」 肩に温かみを感じた。 なぜだか狭まった視界だが今は気にならない。 遠くでぼやけたように見える花京院の姿と声を必死でかき集める。 「貴女は誇るべきだ。友達の危機を救ってくれた、僕の最高に頼れる友達だと胸を張ってください」 少年はまだ隣の部屋にいる。 安心が慢心に繋がりかねない状況にも関わらずあたしはそれでも込み上げてくる何かに身を任せて眼を瞑った。 友達、か…。 「だったらよォ、花京院…。」 見開いた瞳で花京院を見つめ返す。今度はあたしが肩に手を置く番だった。 怪我をしてないほうの肩にあたしの手を重ねるとほんのりと花京院の体温を感じた。 力強いその目線に押し負けそうになるがそれでも目を逸らすことなくことなくあたしは言い切った。 「あたしにも助けさせてくれ。さっきみたいにお前の危機を救わせてくれよ…」 あたしが先に立ち上がる。花京院の手を引っ張って立ち上がるのを助けてやった。 手を握ったままあたしはまた言葉を重ねた。 「友達なんだから」 控えめながらも笑みを浮かべ頷く花京院を見てあたしは本当に嬉しかった。 ◆ 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ
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キャラクター名 キャラクターネーム 人徳 財力 品格 シャアクラス ★☆☆☆☆ ★★★★★ 所属国 自由の星 型 癒し系 発言の痛さ パパって呼んでもいいんだぞ 総評 隊長挌 本人への要望 お金貯めてください。 本人より ぐへへ 以下備考等 。 -- 名無しさん (2010-04-27 00 36 37) サブなのか -- 名無しさん (2010-04-28 21 08 36) 天狗だったのか・・・通りで -- つ (2010-05-01 13 31 35) tyo -- 名無しさん (2010-05-01 13 42 24) 新手の妖物だったのです -- 名無しさん (2010-05-01 13 43 17) フルネームで書いちゃってるww濁してたのに~w -- 河合砂沙美の旧友 (2010-05-01 13 44 00) 合戦になると下半身の天狗らしきものが叫び始める -- 名無しさん (2010-05-01 15 42 21) 自分が天狗だと言い張るのは、ガキな証拠だ。 -- 名無しさん (2010-05-01 17 34 51) ほらぁ!挨拶なさい! -- 名無しさん (2010-05-10 03 22 50) ガンダムUCは見るべきだと思う。 -- 名無しさん (2010-05-15 00 33 09) 頑丈な皮ください。 -- 名無しさん (2010-07-31 03 58 44) 名前 コメント
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コンクリート製のビルから離れるようにして、タクシーは排気ガスと騒音を発生させつつアスファルトの道路を走る。 深夜の町における何の変哲も無い日常の光景。 しかし“この場”は一人の悪意によって作り出された空間。 当然、走行中のタクシー内にも不穏な空気は流れていた。 「おいおいグェス君。質問をする気がないなら帰らしてくれないかい? ちょうど面白いイベントがあってね、出来ればそっちに集中していたいんだよ」 安っぽい合成皮の座席に座る女性『グェス』に語りかけるは人型の異形。 この殺し合いの主催者、荒木飛呂彦のスピーカーとなった『審判』という名のスタンド。 「うるせえええぇ! お前とは違ってこっちは何時何が起こるのかわからねぇんだ! あそこには殺人鬼のナルシソ・アナスイがいるんだぜ!? それが参加者の情報を貰えるなんて聞いてみすみすとあたしを見逃すの思うか? 思わないだろ? 楽しくお喋りしてたら後ろからズガンなんざゴメンなんだよ!」 「おっと失礼。なら、安全そうな所に着いたらまた僕を呼び出しておくれ。 ……君がそのときまで生きていたらの話だけどね」 「ちょっと待て! 不吉なこと言い残して消えるな! おい! おいってば! 返事ぐらいしてくれよ!!」 しかし、荒木からの返事は一切無い。 やはり話し相手が一人いるのか、誰もいないかでは差が大きすぎる。 グェスは黙々とタクシーを運転し続けた。安全な場所を求めて……。 ★ ☆ ★ (どうする? どうするんだあたし!) 荒木に聞きたい情報はそれこそ星の数ほど存在する。 殺し合いに乗ってない信用できるような人物の名前や現在最も安全な地域、逆に火種が集結する地獄。 また、徐倫の現在地を一応聞いておくのも悪くはないかもしれない。 強力なアドバンテージを手に入れたことによって少し落ち着きを取り戻すことができたようだ。 だが、安心しすぎて油断するというのはあまりにも愚かすぎる。 (あくまでも慎重な行動を取んなきゃね) これからの行動は生死に大きく関わるもの。 荒木から聞きだせる情報も石になるか玉となるかは分からない。 なんせ、知りたい事は数多あれど実際に回答が来るのは三つまでなのだから……。 (でも……やっぱり“奴”の情報は聞いておくべきだよな?) 比喩でもなんでもなく、文字通り一人の老人を消し去った謎のスタンド使い。 思い出しただけでも寒気が全身を駆け巡り、胃袋がひっくり返って中身をぶちまけそうになる。 だからこそ奴の情報は必要なのだ。 名前、スタンド能力、現在地。ありとあらゆるプロフィールを網羅しておきたい。 更に贅沢を言うならば、他の殺し合いに乗った人物の事も知りたい。 (頭のいいヤツならスパッと決められるんだろうな~) 自分は悪知恵のきく人物だと思っているが聡明だとは言い難い。 ここでと言う時にそれが致命傷になるとは……。 少々落ち込むも、うだうだしている時間は無い。 タクシーを飛ばすあたしの目に巨大な箱が見えた。 ★ ☆ ★ 「やあ、どうやらここは特別懲罰房の近くみたいだね」 水族館の囚人なら誰もが恐れる特別懲罰房。 一切の温もりを感じさせない聳え立つ灰色の外壁。 ちょうど、その壁によって死角になった所にグェスはタクシーを停車させ、再び黄金のランプを擦ったのだ。 「僕を呼んだという事は願い事はもう決まったんだろ? 最初の一つから言ってみてくれないかな」 「あぁ、いいぜ荒木飛呂彦!」 堂々と啖呵を切り、グェスは己のディバッグからペットボトルを取り出す。 そして、透明なペットボトルを引っ張り出した。 右手でペットボトルを支えて、左手で勢いよくキャップを捻る。 キャップが完全に開け終え、透き通る水を喉へと流し込み緊張による渇きを癒した。 ぷはぁと気持ちの良い声をが自然と湧き上がって来る。 「よし、仕切りなおしてもう一度言うぞ。三つの願いごとが決まった!」 「そうかい? ならば念のために確認しておくよ。 願い一つ回の目安は“参加者1人”についての“何か1つ”。 僕の答えられない質問は当然無しだし、願いを増やせってやつもアウト。 もしも僕が叶えられない願いを君が言った場合は、それはノーカンとする。大丈夫だよね?」 「大丈夫だ」 「じゃあ早速聞かせてもらおうかな」 「一つ目の願い――――」 「エメラルドスプラッシュ!!」 グェスの言葉はフロントガラスを突き破る攻撃によって妨げられた。 飛び散ったガラスと共に車内へと飛来する謎のエネルギー体。 「うわあああああああああああああああああ!!」 死んだ。 グェスは迫り来る“死”の恐怖に我を忘れて叫ぶ。 茨のように心に絡みつく恐れは体の震えを引き起こし、冷静な判断力を全て毟り取る。 (駄目だ…もう駄目なんだ……) 動けずにただ縮こまる彼女を他所に第二、第三のエネルギーの束が車内へと打ち込まれた。 既に彼女の心は壊れかけ、何時パニックを起こしても不思議ではない。 両手で頭を抱え、存在を一度も肯定した事がない神へ必死の祈りを捧げる。 ……その願いは確かに叶った。 「僕がヤツを食い止める! その間に早く車から逃げるんだ!!」 車外から青年の声が聞こえたのだ。 グェスは震える手を必死で動かしてドアノブに手にかけた。 しかし、恐怖に支配された体がその先の動作を許そうとしない。 「うわ! うわ!」 掴みかけた希望が絶望へと一気に変わる。 ガチャガチャガチャ。 スタンドを発現することも忘れて必死にノブを弄る。 ………開いた! ほうほうの体でタクシーから這い出したグェスは最後に車内を振り返る。 見えたのは外からの攻撃を両手で弾き、防ぐ審判の姿。 そして、攻撃が止まった刹那にヴィジョンが消えた。 「あっ……」 荒木からの情報というチャンスを失った事で、ついついマヌケな声をあげてしまう。 呆然とした様子で襲撃により大破したタクシーを眺めるグェス。 彼女は自分の背後より徐々に徐々に近付いてくる触手に気が付かない。 触手は彼女の背中に触れるか触れないかの微妙なラインへと近寄った後、先端を天へと向かわせて―――― 「ひあっ!」 身動きを取るわずかな猶予さえ残さずに触手は彼女の全身を絡め取った。 再びグェスは恐慌状態へと叩き落され、がむしゃらに手足を動かして抵抗しようとする。 「うあっ!」 いくら抵抗しようと身をよじろうとも彼女の肢体に絡む触手はピクリともしない。 むしろ動けば動くほど締め付けが強くなっていくのだ。 暴れまわった事によって服装は乱れ、所々から白い素肌が露となる。 服越しに触る感触も不快であったが地肌で感じ取ると更に生理的嫌悪が倍増する。 ジワリと彼女の瞳から涙が滲んできた。 しかし、触手はそんな事には一切構わずに彼女の体を蹂躙していく。 柔らかい肌には触手が食い込む様がハッキリと映しだされた。 瞳から涙が零れ落ち、筋となって頬を伝う。 ハァハァハァ 荒い息が暗闇の中から聞こえてきた。 やられる―― 反射的に目を閉じて、これから起こるであろう行為から目を背けようとした。 湿った土を踏みしめる足音がすぐ傍へと迫りくる。 元から歩みが速いタイプなのか、この状況だからこそなのかは分からないがやたらと早歩きの歩調。 グェスは既に固く目を閉じるだけで抵抗する素振りすら見せなくなったが、受け入れたわけではない。 諦めざるを得なかったのだ。 「申し訳ありません……危害を加えるつもりはなかったのですが……。 この場では誰が敵なのか分からなかったので一応拘束しただけです。安心してください」 落ちついた…いや、意図的に焦りを隠しているのだろうと読み取れる声がする。 危害を加えない。 今のグェスにとっては何よりも救いとなる一言に彼女は涙で濡れた瞳を開け、目の前にいる人物を見た。 眼球を覆う水分のせいでぼやけてしか見えないがどうやら相手は180センチほどの青年らしい。 グェスの全身から力が抜け、強張っていた筋肉が弛緩する。 簀巻きにされて半泣きのグェスをよそに青年―花京院典明―はタクシーへと乗り込み、 助手席にある絶対的な存在感を放つ金色のランプを拾い上げた。 「おい! それはあたしの支給品だぞ!」 相手が無害であると分かって安心したのか、グェスは唯一まともに動く場所の口を用いて抗議する。 花京院は顔を赤くして怒る彼女にあくまでも冷静そうに対応した。 「いえ、恐らくそれは偽者の支給品。僕はそれの正体に心当たりがあります。 あなたもあのスタンドに何か言われたのでしょう?」 「………」 グェスは花京院の質問に答えようとしない。 確かに心当たりはある審判とかいうスタンドを通して荒木と会話したのは確かに事実だ。 だが、それを軽々しく言ってしまうわけにはいかない。 万が一青年の言ってることが正しいとしたらこの支給品らしきものは確実に自分を殺す。 しかし、相手が本物であれ偽者であれ荒木飛呂彦と会話していたという情報は絶対に漏らすべきではない。 殺し合いの主催から情報が貰える。 たとえ罠であれどもそれはどの参加者にとってもおいしすぎる甘い蜜。 話を聞いた青年が自分を殺してランプを奪う可能性はゼロではないのだ。 沈黙を保つグェスに気を悪くしたりすることはせずに花京院は話を続ける。 「言いたくない気持ちは僕にだって分かりますよ。 “三つまで願い事を叶える”なんておいしすぎる提案を人には教えられないですからね。 真相さえ知らなかったら僕だって同じ行動を取っていたでしょう」 「………」 あくまでも口を閉ざすグェス。 しかし、彼女の表情は花京院の言が真である事をありありと示していた。 「ですが……その願いを叶えるというのは嘘なのです……。 いや、ある意味では真かもしれないですね…。 ヤツの能力の前にして願いを言ったが最期――――」 「やあ、随分な物言いじゃないか花京院君」 花京院のディバッグから悪魔の声が響き渡る。 それはごく普通の中年男性の声。 最初の舞台で聞いた荒木飛呂彦の忌々しい声であった。 だが、花京院は荒木の声には一切耳を貸そうとはしない。 「偽者には黙っててもらおうか、審判のスタンド使いよ」 「失礼だなぁ。僕の事を信じてくれないのかい?」 「信じた物を突き落とすのが貴様のやり方だろう? この外道め」 「もう~君は本当に頭が固いヤツだなぁ」 「何とでも言うがいい!」 「そうかい……」 花京院の脳裏にほくそ笑んだ荒木飛呂彦の顔が映しだされた。 特別懲罰房の一角を不気味な雰囲気が包み込む。 「じゃあ、君にも信じてもらえるように証拠を見せなきゃね」 何かがヤバイ! 五感全てと第六感が警鐘をけたたましく鳴らす。 咄嗟にグェスを拘束していたスタンドを解除、寸分の隙も見せずに再発現。 彼のスタンド―ハイエロファント・グリーン―は先程までの紐状の姿ではなく人型の姿を見せた。 「エメラルドスプラッシュ!」 高濃度のエネルギー体がハイエロファント・グリーンの掌から発せられて審判を襲うはずだった。 そう、はずだったのだ。 (意識が……遠く…なってい……くだ…と?) ハイエロファントの攻撃が始まる前に荒木は何らかの攻撃を花京院に仕掛けていたようだ。。 少しずつ、まるで消しゴムで少しずつ消されているかのように彼の意識は白に塗りつぶされていく。 それでも必死にハイエロファントを動かし審判を攻撃しようとするも、姿を保つだけで精一杯。 (すまない…みん……な) こうして彼の意識は完全に白に染まった。 ☆ ★ ☆ 「おはよう二人共」 別段大きな声だったわけではない。 面と向かって対話するときに出すような調子の声であった。 なのに、花京院とグェスはその声によって同時に目覚める。 覚醒した直後のイマイチ働かない脳をフルに使って二人は考えた。 ―――ここはどこだ? 純白の壁に囲まれた狭い部屋。 家具らしき物は机、椅子、棚の三つしか存在していない。 机の上はファイルや紙が多数置いてあるがなぜか雑多なイメージは感じさせなかった。 窓には淡い青色のカーテンがかけられており、外の様子を伺う事は一切出来ない。 その部屋の主が椅子に座ったまま首だけを二人のほうへと向ける。 意思が通じ合ってるかのごとく二人は同時に思い出した。 なぜ自分がこのような場所にいるかを。 椅子から立ち上がって二人と向き合った主催、荒木飛呂彦は最初に見たときと全く変わらない微笑を浮かべている。 底知れぬ本性を覆い隠す仮面のような笑みを。 「花京院君。これで僕が本物の荒木飛呂彦だと分かっただろう?」 悪戯の成功したようなしてやったりという顔で荒木は花京院を見た。 「いや! まだだ! 僕は貴様の能力の限界を知らない! もしかしたらこの部屋だって土で出来た紛い物の可能性だってあるじゃないか!?」 花京院の冷静さという物は完全にどこかへいってしまったようだ。 彼らしからぬ大声を上げ、唾を飛ばしながら必死で反論する。 冷や汗が彼の額や頬をダラダラと止まることなく流れていく。 彼の様子には流石の荒木も呆れてしまったようだ。 無駄毛の一本生えていない美しい指で花京院の首を指差した。 「この現象は審判の能力だけじゃ説明がつかないはずだけど?」 まさか! 自分の首筋へとゆっくりと手を近づけていく。 彼自身が確かめる前に正解は明らかとなった。 「おおお! 首輪がねぇぞ!」 狭い部屋に響き渡るグェスの歓声。 花京院は思い切って自分の手を首元へと持っていく。 やはりない! 普段ではあまり意識して触ることの無い部位ではあったが、本当に久しぶりに触った気がしてならない。 「ふふふ、いくら頭が固い君だってこれは認めるしかないでしょ?」 「どうやら…お前は正真正銘本物の荒木飛呂彦であるようだな……」 「分かってくれて嬉しいよ」 顔を下に背け俯く花京院と嬉しそうな荒木。 横槍を挟んだのはグェスの一言であった。 「で、荒木さんよ。あたしに言ってた願い事の件は有効なんだよな?」 「あぁ、そんな事もあったね」 「おい! ふざけんじゃねぇぞ!!」 「まぁまぁ落ち着いて聞いてくれよ。 こうして僕と直接会話できるわけなんだしチャラにしてくれないかな?」 怒りに沸騰したグェスを相手にしても荒木は相変わらずだ。 ふと、荒木と花京院の目が合った。 ゾワッ 背中を巨大な舌で舐められたような強い嫌悪感が花京院を襲う。 なぜ気が付かなかったのだろうか? 部屋に呼ばれたときには焦燥と困惑に満ちていたのだろうか? (こいつは違う……DIOとは…DIOとは違う! 荒木にはDIOの持つ妖艶さは無い。だが、隠された何かがある!) 急に込み上げてきた吐き気に花京院は口を押さえ、壁に手をつく。 喉を胃酸が焼くのをハッキリと感じたが決して吐き出したりはしない。 やっとの思いで吐瀉物を胃袋へと押し戻し、激しく胸を上下させた。 「いきなりどうしたんだよ!?」 花京院ほど修羅場をくぐっていないグェスには目の前の男の危険さがあまり掴めていないようだ。 やばいスタンド能力を持ってはいるものの、本体はただのおっさん。 グェスには分からなかった。 目の前にいる男からあふれ出す邪悪が。 血の気を一切感じさせないほど顔を真っ青にして体を震わせる花京院の心中が。 目をうつろにし、歯をガチガチと鳴らす花京院をグェスは不安げに見つめた。 彼女が疑うのは荒木のスタンド能力。 それが花京院をおびえさせているのではないか? という勝手な推測をし、一人怯える。 恐怖に負けた花京院、ただ無口となるグェス。 そして、ニヤニヤと笑いながら二人の様子を観察する荒木。 狭い部屋にはただ、花京院の歯が互いに打ち付けあうことによって発生する音のみが響いていた――――。 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ
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. Und der Haifisch, der hat Zahne und die tragt er im Gesicht und Macheath, der hat ein Messer doch das Messer sieht man nicht. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 空条承太郎。DIO。カーズ。 誰も彼も、普通の人間とは思えない超常的な能力を持っていた。 あれだけ激しい戦いをなんとか逃げ延びはしたが、吉良吉影は重傷であった。 放送を終え、互いの生存を確認する。 あの戦いでは、誰も命を落とさなかったようだ。 ちぃッ、と、吉良は心中で舌を打ち鳴らす。 せめてDIOかカーズ、どちらかでも消し飛ばすことができていれば…… 左手首が痛む。無理して『シアー・ハート・アタック』を酷使し続けた結果だ。 その代償を払った成果が得られなかったとこが、何より悔しい。 いや、あの場を生きて逃れられただけでも幸運と考えるべきなのだろうか。 「なにが起きたか…… ですか」 さて、どう答えるべきだろうか。 川尻しのぶと名乗ったこの女。おそらく川尻浩作、早人という2人の親族だろう。 親? 兄弟? 旦那? 息子? 近しい人間を亡くして間もないというのに、随分と気丈に振舞っている。 なにか他に、心の支えになるものでもあるのか。 ともかく、女の本性の見えぬうちに、下手なことを話すべきではない。 そう考え、吉良がすっとぼけた回答を返そうとしたちょうどその時、玄関から物音が聞こえた。 引き戸を開ける音だ。 そして、かすかに聞こえる足音。何者かが、この屋敷に侵入したのだ。 「誰か来ますね」 「え……ええ………」 しのぶを後ろ手に庇うような形で、吉良は侵入者への対応に備える。 開きっぱなしになった応接室の戸口から、緑色でスジのある光ったメロンのようなスタンドが顔を見せる。 スタンドは警戒を強める吉良を目に捉え確認すると、今度はその本体と思われる人間が姿を見せる。 赤く長い髪をした、日本人の学生のようだ。 「2人か?」 首肯する吉良。 「……承太郎はいないのか?」 続く少年の問い。今度は首を傾げつつ、黙ってしのぶの表情を伺う。 「……はい」 自然な受け答えだ。 と同時に、自分と承太郎のつながりを隠しつつ、しのぶと承太郎のつながりを確認する吉良。 この少年は、空条承太郎の仲間だろうか。 たしかに、ここは『空条邸』。空条の名に親しいものが集まってくるのは必然ーーー こうなる可能性も十分にあった。 考えが甘かったか、と吉良は思い返す。 前置きもなく、突如背後から言葉が投げかけられる。 少年が現れた反対側。 吉良は振り向くと、庭に面した縁側に別の男がスタンドを携えて立っていた。 学生服の方は囮だった。本命はこちらだ。 (危なかった…… 有無を言わさず学生服を攻撃を仕掛けていれば、こちらの男に倒されていたかもしれない……) 身体の怪我もあり、即決即断の戦闘態勢を取れなかったことが、逆に幸いしていた。 この侵入者、あらかじめ吉良たちの位置をだいたい掴んでいたようだ。 そして、屋敷に侵入してものの数秒で挟み撃ちを仕掛けてくる。 なかなか侮れない。 「突然、奇襲のような真似をしてしまい申し訳ない。だが、状況が状況だ。 安易に他人と接触することは命取りになる。勘弁して頂きたい……」 そうはいいつつ、2人ともスタンドは出したままだ。 完全に警戒を解いたわけではないようである。 まあ、言葉のひとつふたつを交わしただけでは、吉良たちを信用するにはまだまだ足りないのは当然であるが。 だが、とりあえず、問答無用の戦闘だけは避けられた。 泥スーツの男といい、空条承太郎といい、吉良が最近出会ったのは問答無用の敵ばかりだった。 ここに来てようやくまともな人間が現れたことに、吉良は息を吐いて安堵する。 「おおそうだ! まずは名乗っておこう。そっちのは花京院典明。そして私は、占い師のモハメド・アヴドゥルだ」 だんまりを決め込む花京院を余所に、でかいアフリカ人のブ男、アブドゥルがそう自己紹介した。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 少々、時は遡る。 「これで全ては闇の中……か」 放送を終えた直後、ビーティーは静かに項垂れる。 すぐそばに座り込んだジャイロ・ツェペリも、大きく肩を落としていた。 麦刈公一を殺した犯人、その容疑者として最も疑わしい存在だったスティーリー・ダンは、既にこの世の者では無かったのだ。 ツェペリも表情に悲しみを見せる。直接会って、問いたかったのだ。 自らをスタンド攻撃した意図を。そして、自分たちに見せた善良な彼の姿は、偽りだったのかを。 そして、ストレイツォ。 若き日を共に過ごした旧友の死は、すでに戦士としての生命を奪われた老兵には大きなダメージだった。 各人が放送の結果に重苦しい反応を示している中、ドルド中佐のみが、内心苛立ちを見せていた。 (たったの18人か…… 最初は一気に半分も減ったというのに、やはり人数が少なくなるにつれ、ペースが落ちていくのは必然か……) はやくゲームが終わって欲しいドルドにとって、この死者の数は物足りなかった。 仲間も居らず、優勝することしか頭にないドルドにとって、放送の結果などそんなものだ。 名前がわかる唯一の存在である橋沢育朗は、とっととくたばって欲しいのだがなかなかしぶといようなのだ。 「さて、もういいな。悔やんだところで始まらない。では、放送前に話し合った通り、まず俺ひとりで空条邸に出向く。 危険が無いことを確認すれば、合図を送る。その後、改めて全員でこちらに来てくれ」 立ち直りが早かったのは、モハメド・アヴドゥルだ。 彼とて、この放送には思うところが多々あった。 ポルナレフの遺言にあった、ブローノ・ブチャラティ。彼も死んでしまった。仲間であるアバッキオも一緒に。 見せしめでジョルノも死んでしまったので、残るは3人。彼らのうち何人が、レクイエムのことを知っているのだろうか。 だが、悔やんでも仕方がない。一刻も早く彼らと接触するためには、行動を止めるわけにはいかぬのだ。 空条邸より北東1kmほどにある小さなビルで放送を迎えた一行は、次の目的地をそこに選んでいた。 広いローマの地図のど真ん中に位置する施設であり、しかもそれは参加者の殆どに縁のある空条承太郎の実家なのだ。 いかなる理由をもってしても、立ち寄らない理由は存在しない。 「本当にひとりで大丈夫か? なんならオレも―――」 ジャイロが手を挙げて名乗り出るが、アヴドゥルはにべも無く返答する。 「いや、気持ちだけ頂いておこう。誰と遭遇するか分からぬ以上、この人数で動くのは危険だ。 ビーティーは戦うことはできないし、シニョール・ツェペリにも、無理はさせられない。 そんな中で、あの男から目を離すわけにはいかないからな」 アヴドゥルがドルドを一瞥する。ジャイロにも睨みつけられ、ドルドはやれやれといった雰囲気で肩をすくめた。 ズッケェロを始末したことを、まだ根に持ってやがるのか。 あんな野郎を生かしておこうとしたお前らの方がどうかしているだろう。 何を言っても、ドルドはそんな態度を変えなかった。 確かに正論かもしれない。間違っているのはアヴドゥルたちなのかもしれない。 だが、だからといってこの男の言うことを軽々と受け入れるわけにはいかなかった。 「気をつけてな、アヴドゥル」 ツェペリが拳を握り、檄を飛ばす。 アヴドゥルは笑顔で手を挙げて答えた。 「アヴドゥル…… 油断するなよ?」 ビーティーは自らの脇腹を親指で示しながら、注意を促した。 アヴドゥルは釣られて、ビーティーと同じように自分の脇腹に手を添える。 そこには、ビーティーから賜った『戒めのナイフ』を差してあったのだ。 「ああ、わかっている。『過信』はしない。―――行ってくる」 アヴドゥルはひとり、空条邸を目指した。 『空条』の名は我々にとっての正義であると同時に、多くの悪にとっての敵でもあるのだ。 スティーリ・ダンやJ・ガイルは死んだがしかし…… ラバーソール。ホル・ホース。最悪の場合、DIOがそこにいることまで想定して動く必要がある。 油断して殺されないように、か。 ふた回りも歳が離れている子供に、まさかこんなことを教えられるとはな。 アヴドゥルは自嘲し、しかしその言葉を心に噛み締めながる。 バイクに跨り、アヴドゥルは一路目的地を目指した。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ローマの街には似つかわしくない、本格的な日本庭園。 その敷地内に足を踏み入れると、そこにはさらに似つかわしくない高級リムジンが停車している。 『法皇の緑』が目撃したものに間違いない。 「まさか自宅に戻っているとはな…… リムジン通勤とは、随分と結構な身分じゃあないか」 花京院が軽くジョークを飛ばし、ラバーソールがその隣で「ククク…」と小さな笑いを零す。 承太郎を殺せば、さぞ高得点だろう。 あわよくば花京院と相打ちにでもなってくれれば、それがラバーソールの最も希望する結末である。 まずは、『法皇』を屋敷の床下へ潜行させる。 普段はドブネズミどもの住処になっている軒下から、屋敷内の気配を探る。 屋敷にいるのは、2名。男ひとりと女ひとりだ。 承太郎だろうか…… いや、迷う必要はない。問答無用で、襲撃し制圧する。 ラバーソールがその手を、屋敷の引き戸に伸ばす。その時――― 「待て」 花京院はこちらへ近づいてくる、僅かなエンジン音を聞いた。 この音は―――オートバイだろうか? 北東の方角から、ゆっくりこちらへ近づいてくる。 ラバーソールへ目線で指示を出し、花京院たちは一旦屋敷の玄関前から退き、離れとなっている書庫の陰へと身を隠した。 やがて現れたのは、オートバイに跨った大柄な黒人男性。 その手には、長物の銃火器。おそらく、猟銃。 (モハメド・アヴドゥル―――!) 先の放送から生存確認は取れていたが、ここで遭遇するとはタイミングがいいのか悪いのか…… 確かに彼は承太郎に匹敵する重要な標的のひとりだが、強敵だ。 中に承太郎がいるかもしれない。彼らふたりを同時に相手にするのは骨が折れる仕事だ。 前もって気が付いてよかったと、花京院は思う。 承太郎とアヴドゥルに挟み撃ちにされるのは御免である。 (しかし、ここで逃すのも惜しい相手だ。承太郎と手を組まれるとしたら面倒だし、始末しておきたいが……) 花京院は考えを巡らせる。 そして、ひとつの妙案に辿りついた。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 屋敷の玄関前に辿り着き、アヴドゥルは『魔術師の赤』を出現される。 誰かに見られている気配を察したのだ。 元々、誰かと接触するのを覚悟の上で、オートバイなどという目立つ乗り物で屋敷に来たのだから。 善良な者なら歓迎であるし、悪意ある者ならば排除するまでだ。 アヴドゥルにはその自信と実力がある。そして、やらねばならぬ使命もあるからだ。 どこからの攻撃にも対応できるようアヴドゥルは臨戦態勢に入り、周囲を見渡す。 すると観念したかのように、離れの陰からひとりの男が現れた。 「やれやれ、降参だ。さすがだな、アヴドゥルさん」 花京院典明だった。そばには、彼のスタンド『法王の緑』。 思いがけぬ仲間との再会に、アヴドゥルの緊張が緩んだ。 ポルナレフが死亡し、承太郎も見せしめとして殺された。 ツェペリがワムウから聞いた話によると、ジョセフ・ジョースターも同時に死亡している可能性が高い。 だとすれば花京院(とイギー)は、唯一残されたアヴドゥルの仲間なのだ。 再会が嬉しくないわけがない。 「あなたも承太郎の家に来ているとは思わなかったですよ。ここで―――」 「待て花京院」 だがアヴドゥルは冷静だ。 簡単に流されはしない。熱くなりやすい性格だと自分でわかっているだけに、常に冷静であろうと心がけている。 「疑うようですまないが、お前のスタンドを、私の手の届く距離まで寄越してはくれないか?」 「えっ?」 突然の尋問のようなアヴドゥルの態度に、花京院は固まる。 しばし逡巡するも、アヴドゥルの有無を言わさぬ眼光に刺観念し、黙って『法皇』をアヴドゥルの元へと操作した。 下手な動きをすれば命取りだと、花京院は理解していた。 アヴドゥルは『法皇』のスタンドヴィジョンへと手を伸ばす。 (触れられない……) 本物だ。 アヴドゥルが警戒したのは、ラバーソールの『黄の節制』。 承太郎より聞いた話によると、ラバーソールが花京院に化けていた際、『黄の節制』は『法王の緑』の姿さえも完全に再現していたそうだ。 だが、『黄の節制』は実態のあるスタンド。アヴドゥルが手を伸ばせば、そのヴィジョンには触れられるはずだ。 つまり、この『法皇』は本物であるということ。 ならば…… 「花京院……。その長い前髪を上げて、額を見せてくれないか?」 そこまでするか…と、花京院は嫌な汗を流す。 だが、黙って従うしかない。前髪を右手で抑え、額を露わにする。 肉の芽は―――――― 無い。 (やれやれ、どうも神経質になりすぎていたようだ……) ようやく、アヴドゥルは肩の荷を下ろす。 他人に化ける―――特に、過去に花京院に化けたことがある、ラバーソールという可能性。 もしくは、参加者たちの時代の差により生じうる、DIOの刺客だった頃の花京院であるという可能性。 ビーティーに感化されてか、それともバトルロワイアルの緊張感からか、つい疑り深くなってしまった。 「すまない、花京院。君を疑うような真似をしてしまった」 「いえ、仕方がない。この状況下ではむしろ当然でしょう。さすがだ、アヴドゥルさん」 頭を下げるアヴドゥルに、花京院はなんてことない素振りを見せた。 だがその内心は、今にも心臓が止まりそうなほどに、緊張が収まらなかった。 花京院―――否、彼に化けたラバーソール。 花京院の仕組んだ策は、偽物の花京院でのアヴドゥルとの接触である。 実際に花京院に化けて承太郎を襲撃しようとしたラバーソールの方が、「アヴドゥルの仲間である花京院」を演じることに長けているだろう。 それが、花京院の狙いだった。 (実際にはラバーソールが花京院に化ける際は、そのキャラクターまで似せるつもりはなかったのだが) 当然、ラバーソールは拒否したが、花京院は有無を言わせなかった。 ただでさえ花京院に対し痛い目をみた直後である。 最悪、花京院が敵側に着いたとすれば、花京院とアヴドゥルの二人を同時に相手にするハメになる(さらに屋敷には承太郎もいるかもしれない)。 あまりにも分が悪すぎる。ラバーソールは従うほかなかった。 『黄の節制』による外見の変装は完璧である。当然、額に肉の芽など現れないのだ。 ならばなぜ、アヴドゥルは『法皇』のヴィジョンに触れることができたのか? その答えは至って簡単…… この『法皇の緑』は『本物』なのだ。 『花京院』の側ならば、『法皇』のヴィジョンが宙を浮いていても不自然はない。 情報をラバーソールに独占させない為、且つラバーソールを見張る為、且つ隙あらばアヴドゥルに奇襲をかける為、花京院は『偽花京院』の側に自らのスタンドを配置したのだ。 射程距離の広いスタンド使いならではの奇策である。 (花京院の野郎―――ッ! こっちは冷や汗もんのスレスレ演技だぜッ!! 調子に乗りやがってよォ―――!!) まさかアヴドゥルが肉の芽の確認と、『黄の節制』の確認までしてくるとは思わなかった。 偶然が重なり、ラバーソールはアヴドゥルの追求を逃れることができた。 だが、これは逆に好機である。 始めにこれだけ疑われておけば、もはやアヴドゥルの信用は勝ち取ったも同然。 寝首をかくには、むしろ好都合といえる。 その後、アヴドゥルと花京院(ラバーソール)は二手に分かれて空条邸に進入。 吉良吉影、川尻しのぶの両名との接触を図るのだった。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 新たに3人、屋敷に現れた。 ウィル・A・ツェペリ、彼を背負うドルド中佐、それにビーティーの3人だ。 吉良らとの接触後、アヴドゥルはすぐに付近に隠れさせていた仲間たちを呼び寄せた。 空条邸の庭にでたアヴドゥルの『魔術師の赤』は火の玉を打ち上げた。 まるで打ち上げ花火のように花火のように、2発。 オレンジ色のそれは、日中ではさほど目立つ物ではなく、この周辺の空を注意してみていなければ気が付かないものだった。 事前の打ち合わせ通り、火の玉が1発なら危険、来るな。 2発なら、早急な危険は無し、来い。 という意味だ。 このことから、アヴドゥルは吉良、しのぶ、そして花京院についての警戒は(ある程度)必要ないと判断したとわかる。 「あれだけ死亡フラグまがいの別れのシーンの後で、随分あっけない再会になったな」 軽口を叩きながら、ビーティーはアヴドゥルに歩み寄る。 アヴドゥルは苦笑いを浮かべつつも、怪訝な表情を見せる。 「……ジャイロは外だ。用心のため、保険として待機させておいた」 アヴドゥルにしか聞こえない声で、ビーティーは囁いた。 ツェペリも、アヴドゥルの顔を見て頷く。 なるほど。 ドルドにツェペリの介助を任せたのは些か不満があるが、そういう役目ならばジャイロが適任だろう。 花京院はともかく、残り2人はまだ出会ったばかりだ。 男の方は大怪我をしていた。彼がどんな人物であれ、これまでの経緯などは聞いておきたい。 アヴドゥルに迎えられる彼らを、庭に面した応接室から吉良が睨む。 花京院に扮したラバーソールもまた、苦虫を噛みつぶしたような表情を必死に隠していた。 そして…… (面倒だな………) 離れの書庫に隠れ潜む本物の花京院もまた、予定より多い登場人物の数にイライラしていた。 これだけの数の仲間が潜んでいたのならば、アヴドゥルと接触すべきではなかっただろうか? (しかし、あの川尻しのぶという女は、承太郎について何か知っているような様子だった……) もう少しだけ、観察してみるか? 『法皇』で承太郎の行方さえ聞き出すことができれば、自分一人だけで追いかけるか。 正直、承太郎さえ仕留めることができれば、ラバーソールがどうなろうと、この場がどうなろうと、どうでもいいのだ。 空条邸の応接室に集合したのは、全部で7人。 アヴドゥルの一行のリーダーは意外なことに最年少のビーティーだった。 彼を中心に、向かって右隣にアヴドゥル。 アヴドゥルが脇に置いた猟銃を挟んで、川尻しのぶ。 吉良と、彼の左腕を治療するツェペリが並び、ツェペリの介助をするドルド。 最後に花京院(ラバーソール)、そしてビーティーに戻る形で円形に陣取った。 出会ったばかりの人物に無償で治療を行うことにビーティーは難色を示したが、ツェペリが頑として譲らなかった。 『魔術師の赤』の姿はアヴドゥルの意思によりとっくに消えているが、『法皇』はまだ花京院の側に佇んでいる。 花京院は素知らぬ顔をしており、他の者も、それについてとやかく言うことはない。 (花京院、どうかしたのか? ひどく落ち着かない様子だが…) そんな中でビーティーだけが、例外的に、彼の挙動に若干の違和感を覚えていた。 「さて、蓮見さん。治療を受けながらで構わない。話してもらえないかな。その怪我はいつ、どこで、いったい誰にやられたのだ?」 『蓮見』と呼ばれたのは、吉良吉影だ。 アヴドゥルとの遭遇後、吉良は名前を問われ、そのとき蓮見琢馬と答えたのだ。 ストレイツォらといた時とは、状況が違う。 あの空条承太郎の中で、吉良吉影と言う人物が殺人鬼であるということは等式で結ばれていた。 承太郎のように顔を見て吉良とは認識されなかったが、吉良の名前を知っているかもしれないと思い、偽名を使った。 実際に承太郎から吉良吉影の素性を聞かされていた川尻しのぶもおり、吉良の判断は正解だった。 問題は、偽名でなんと名乗るか。 名簿にない名を名乗るわけにはいかない。 第2放送までの生存者の中で、日本人男性とはっきりわかるのは、11人。 その中から、吉良吉影、空条承太郎、花京院典明を除外。 良平、億泰のような親族がいる東方ジョウ助、虹村形兆も意識して除外。 残る6人の中から、無作意で蓮見琢馬の名を選んだ。 これは一つの賭けであったが、吉良は無事に突破した。 ここでツェペリと面識のある宮本の名でも挙げていたなら、吉良は嘘が即座にばれて窮地に陥っていただろう。 閑話休題。 「……地下の洞窟で、3人の戦いに巻き込まれました。とても人間とは思えない、化け物でした。 たしか、名前はわからないがコートを着た男と、後の2人は、カーズ、それにDIOと名乗っていたと思います」 「DIO――!」 ツェペリの波紋による治療を受けながら、吉良はこれまでの経緯を説明する。 意図的に承太郎の名前を隠し、さらに吉良自身はやはり無力な一般人を装った。 偽名を使った以上、近いうちに全員始末する必要がある。 ならば、わざわざ『キラー・クイーン』を見せてやることもない。 DIOの名を出したことで、アヴドゥルたちの興味はそちらに移った。 さらに奴らの詳細を話し、ツェペリからカーズがワムウの同族であることが推測された。 吉良にとってはワムウというのは新たな情報。 あのカーズと同等の危険人物とは気が滅入るニュースであったが、情報が得られたこと自体は幸運だ。 「しかし、DIOたちの戦いに巻き込まれて、よく無事でいられたものだ」 「はい。幸運でした……」 「だが、それだけでは説明が付かんな? 蓮見、その左手首の傷は普通じゃあない。毒か何かで溶かされたようだが?」 鋭い目付きでビーティーが睨む。 ドルドはその歪な形の手首に、杜王駅に見たバオー鼠の能力を連想する。 吉良はビーティーから目線を外らし、沈痛な面持ちを浮かべて語り始めた。 「こちらのは、別です。体に泥を纏った……スタンド使い……でしたか、それに襲われました。ストレイツォさんが身を挺して守ってくれなければ、私の命はなかったでしょう」 「なんと―――っ! そうか、ストレイツォが君と……」 必要のない嘘は付かず、そして自分にとって都合のいいストーリーを吉良は創作して話す。 ツェペリがストレイツォと知り合いである事も気が付いており、彼の名を出す事でストーリーにも真実味が増す。 (まただ。話題を逸らし、深い追求から逃れ、煙に巻いた。蓮見琢馬、この男、やはりどこかおかしい) だが、ビーティーだけは吉良の言葉の不自然さに気が付いていた。 続いて川尻しのぶが話を始めたときも、吉良の不自然さは現れた。 吉良はしのぶの動きを常に気にしていた。 それは、今のしのぶが触れたものを爆破させる起爆材であり、不用意に他人と接触させたくないからである。 不自然の無いよう振る舞ってはいたが、ビーティに疑問を持たせるには十分だった。 「それで、空条さんはカーズという男に戦いを挑みました。私はこの空条邸で待つと、彼に約束を―――」 「なるほど。蓮見さんの巻き込まれた戦いのもう一人は、承太郎か。しかも、俺より年上の時代の承太郎とは…」 しのぶの話がだいたい片が付いた。 これまでの承太郎の動向。 ツェペリの気にしていたスティーリー・ダンと思われる人物を無慈悲に惨殺したことや、アヴドゥルが看取ったポルナレフの遺体を見つけたことまで、何一つ隠し事はしなかった。 そして、吉良吉影という男について。 吉良本人も知り得ない、未来の吉良としのぶの関係について。 吉良が川尻浩作に扮し、しのぶとひとときの結婚生活を送ることまで。 あまりの内容に吉良は呆気にとられた。 「しかしその承太郎って男は、蓮見がいながら構わずDIOたちとの戦いを続けたのか? 」 「…………」 「ああ、あり得るな。話を聞く限り、今の承太郎は何かがおかしい。まるでダーティハリー症候群だ。このまま放ってはおくわけにはいかん」 吉良に不信感があるビーティーが承太郎に対し不平を漏らすが、アヴドゥルはむしろ承太郎の現状に不安を感じている。 そして吉良は、綱渡りのような情報交換に疲弊していた。 今のところ致命的な矛盾は無いが、このままではいつかボロが出るだろう。 何か手を打たなければならない。 「だが、その承太郎が生きているという事は、同じように見せしめとなったジョセフ・ジョースターもまだ死んでいないということだろうか? それにジョルノ・ジョバァーナも―――」 「うむ。花京院、君の意見を聞こう」 情報交換の指揮はアヴドゥルとツェペリが中心となり、他の者は黙って質問に答える側だ。 ドルドに対しはなんとも思わないが、沈黙を保つ花京院にはビーティーだけでなくアヴドゥルも違和感を覚えていた。 「……さあ。私からはなんとも言えないな。君と違ってシンガポールまでしか知らないし、ここへ来てからもろくな人間と出会っていない」 話を振られ、ラバーソールはなんとか切り抜けようとした。 だがその後すぐに、今度はラバーソールがこれまでの経緯を話をするターンが回ってきた。 花京院からはほとんど何も聞かされていないため、彼も過去を創作する。 水のスタンドを使うアンジェロと言う外道を始末した事、その際に、川尻しのぶの夫らしき人を死なせてしまった。 などと言う内容などだ。 吉良の語ったカバーストーリーと比べて出来が悪く、ビーティーから鋭い指摘がある度に、言葉を詰まらせていた。 (やはり、この花京院も、何かを隠している……) (畜生ッ! このビーティーとか言うクソガキをぶち殺してやりてえ! しかしこの人数相手に、妙なことは出来ねえ……) ラバーソールは焦燥を誤魔化し、『法皇』を見る。 スタンドには変化はない。 (花京院ッ! もう限界だぜ! なにか指示を寄越せッ! このままじゃあ――――――) その後、今度はアヴドゥルたちが自分たちのこれまでの経緯を話し始めた。 ポルナレフの死、ホテルでの出来事、ワムウという男、ドルドの駆除対象である危険生物バオーについて等だ。 ビーティーに巧みな話術によりジャイロの存在はうまく隠され、ジャイロ無しでは知り得ない情報(主催者スティールの事など)も当然出なかった。 一通りの話が終わった頃、時計の針は既に午後2時半を回る頃だった。 「では、このままここで待機する。承太郎の帰還を待つのだ。異論のある者はいるか?」 アヴドゥルの言葉で、情報交換は締めくくられようとしている。 川尻しのぶの言葉を信じるならば、承太郎は必ずここへ戻ってくる。 まずは、それを待ち、合流の後にその後の方針を決定するという流れだ。 異論がでるはずもないが、若干1名は納得していなかった。 無論、ラバーソールだ。 (冗談じゃねえ… この人数に加えて、承太郎まで…… 花京院の奴は一体何をしているッ?) そんな2人を余所に、アヴドゥルはビーティーを見る。 そろそろジャイロを呼び出していいんじゃないか? そう問いたいのだろう。 まだ屋敷内にも不安要素は残っているが、ここらがビーティーとしても譲歩のし時だ。 いつまでも門の外で待たされ、ジャイロもそろそろ我慢の限界だろう。 ビーティーは目線でドルドに指示を送る。 アゴで使われることにやれやれとため息を付き、しかしドルドは静かに従う。 「少し外の空気を吸ってくる」 適当にそう言って、ドルドは立ち上がった。 ビーティーにとっての不安は蓮見(吉良)と花京院(ラバーソール)の2人だ。 彼らについて、アヴドゥルに注意を促しておくべきか? 蓮見は、ツェペリからの波紋の治療を終え、軽く体を動かしている。 溶かされた左腕はそのままだが、それ以外は普通に動くに問題ないほどにまで回復しているようだ。 花京院は…… (ム? 『法皇』の姿が無いーーー) ドルドに指示を送った隙にだろうか? 常に花京院の傍らに構えていた『法皇の緑』の姿が、いつの間にか消えていた。 室内を見渡すも、その姿はない。 花京院が消したのか、それともどこか遠くへ操作させたのか? いや、違う。 ビーティー同様に、花京院(ラバーソール)もきょろきょろとあたりを何かを探しているのだ。 (花京院? クソッ! 『法皇』はどこに行った? 花京院は何を考えている?) (なんだ? 花京院も『法皇』を探しているのか? 自分自身のスタンドを――? 奴が自分で消したんじゃあないのか?) 「おや? 川尻さん、どうしました?」 ビーティーの考えは、アヴドゥルの言葉に遮られる。 川尻しのぶが突然立ち上がり、生気のない表情を浮かべている。 その手には――― 「川尻さんッ! あんた何を?」 猟銃だ。 情報交換の間、アヴドゥルが小脇に置いていた猟銃。 川尻しのぶは猟銃を水平に構え、そして射撃した。 発射された散弾は、縁側から庭へ出ようとしていたドルドの背中を打ち抜き、胸に大きな風穴を生み出した。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ☆ (なんだ? 銃声か!?) 屋敷内で、なにか異変が? ジャイロ・ツェペリがビーティーの指示により空条邸の敷地外部にて待機をして小一時間が経過していた。 そろそろ待たされる我慢も限界に達していた頃、屋敷内から聞こえてきたのは、1発の銃声。 おそらく、アヴドゥルのもっていた猟銃だろう。 中で一体、なにが……? ドルドが暴れたのか。それとも、別の敵か? (どうする―――? 行くか? だが―――) 迷うジャイロ。 そこへ、さらに2発目の銃声が鳴り響く。 躊躇うことはない。ビーティーが自分を外に残したのは、こういう事態が発生した時を想定したからじゃあないのか? ジャイロは鉄球を握りしめ、屋敷内部へと駆けだした。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ☆ 「グハァッ!」 ドルドの機械仕掛けの胴体の風通しは良くなり、そのまま動作を失い地面に倒れた。 突然猟銃を放った川尻しのぶは、うつむいてなにかブツブツと呟いている。 「川尻さんっ! あんた何をしとるんじゃあ! なぜドルドを撃った!?」 「その猟銃をこっちに寄越すんだッ! さあ早くッ!」 川尻しのぶによる突然の暴挙。 これには流石のビーティーも想定外だ。 何かしでかすとしたら花京院か蓮見だと思っていたからだ。 完全に油断していた。 「猟銃? 猟銃ですってぇぇぇ……?」 しのぶが口を開く。 目は虚ろで、呂律も回っていない。 「アヴドゥルさぁん! あなたにはこの『棒っきれ』が、『猟銃』に見えるのぉおお!?」 足下がふらつき、口からは涎が垂れる。 そして猟銃を再度構え、銃口はビーティーに向けられる。 (いかんッッ!) 「それじゃあっ! ちゃんと! よく見なさぁい!!」 「『魔術師の赤』ッ!!」 アヴドゥルはビーティーを庇って前に飛び出し、スタンドを繰り出した。 銃声が鳴り響くと同時に、『魔術師の赤』も高熱の炎を吹く。 牢屋の鉄格子すら一瞬で焼き付くす炎で、飛来する弾丸を相殺させるのだ。 このゲーム開始直後、屍生人たちから同じ猟銃で狙われたときも、この炎によって防ぎきった。 「ぐゥゥ……」 だが、あの時より至近距離で、しかもとっさにビーティーを庇った直後の銃撃だった。 しかも相手は女性で、ここは学校の教室よりも狭い空条邸の応接室だ。 そのため対応が遅れ、すべての散弾を防ぎきることはできなかった。 急所は守り抜いたが、散弾の一部が炎のガードを避けて、アヴドゥルのわき腹に命中した。 (くそっ なんて事だっ! 腹をやられた。これでは、炎のパワーも落ちてしまうッ! だが―――) 「スタンドだッ! 彼女はスタンド攻撃を受けているッ!」 ビーティーが叫ぶ。 アヴドゥル同様、彼もその結論に辿り着いていた。 川尻しのぶは何者かに操られている。 それが何者の仕業か? それは、今のやり取りですべてわかった。 「花京院ッ! キサマかァッッ!?」 承太郎から聞かされた話でしか知らなかったが、花京院はDIOの配下だった頃、承太郎の高校の校医を操り、襲わせている。 そのときと状況が告示している。 肉の芽の有無は確認したはずだった、どうなっている? だが、情報交換中も、花京院はどこか様子がおかしかった。 なぜもっと早く手を打たなかったのかと、アヴドゥルは悔やむ。 アヴドゥルは『魔術師の赤』の手刀を、花京院に叩き込む。 しかしーーー 「―――くそッ!」 花京院の腕が黄色いスライムで覆われ、攻撃は防がれてしまった。 ラバーソールの『黄の節制』である。 「「何だとッ?」」 アヴドゥルとビーティーが同時に叫ぶ。 スタンドは一人につき一体だ。 花京院にこんな芸当ができるわけがない。 蓮見が絡んでいるのか?とビーティーは視線を切るが、彼もまた事態を飲み込み切れていない様子で、腰を落として身を引いているだけだ。 突然の事態に、考えがまとまらない。 そして、アヴドゥルに攻撃されたラバーソールは、それ以上に焦っていた。 (畜生ッ! とっさに守っちまったッ! 花京院の野郎、俺を見捨てて、おっ始めやがったなッ!?) すべては外にいる花京院の仕業だった。 『法皇』によって情報交換の様子を観察していた花京院は、空条邸での大乱闘を始めさせた。 承太郎がここに来る。 それは彼をターゲットとする花京院にとって好都合だったが、敵側であるアヴドゥルらの集団に行動されては、迎え撃つに都合が悪い。 花京院は、集団を崩壊させるプランを進めることにした。 ドルドが席を立ち、全員の意識がそちらに向いた隙をついて、『法皇』を川尻しのぶへ憑依さる。 そして、まず部屋を出ようとしていたドルドを銃撃。 その後、情報交換中にもっとも厄介だと判断したビーティーを始末しようとしたのだ。 『法皇』による操作を疑われるだろうが、問題はない。 なにせ、現場には『花京院』がいる。 罪はすべてラバーソールが被ってくれるというわけだ。 ラバーソールなどどうなっても問題はない。 『法皇』が暴れている以上『花京院』は言い逃れられないし、ラバーソールが正体を明かしたところで、アヴドゥルにとっては元々敵なのだから意味は無い。 そして、川尻しのぶがとりつかれている以上、『法皇』を攻撃できない。 アヴドゥルが花京院本体(ラバーソール)と交戦している隙を付き、『法皇』の攻撃でアヴドゥルを仕留める。 これで、花京院の勝利は確定する。 「アヴドゥルさぁぁん!! これは猟銃じゃあないわよねぇぇぇぇぇ!!!」 再度、弾を装填し、川尻しのぶがアヴドゥルを狙う。 炎の防御壁の威力は予想以上だった。 ビーティーから先に始末するつもりだったが、予定変更、アヴドゥルが先だ。 今の攻防でビーティーに身を守る能力がないのも明白である。 ここでアヴドゥルさえ押さえてしまえば、後はどうとでもなるだろう。 (まずい! もう一度攻撃されたら、今の俺では散弾を防ぎきれないっ! いや、花京院に捕まっているこの状態では、満足に動くこともできんッ!) 「パウッッッ!!!」 その刹那、ツェペリが飛び上がった。 座ったままの姿勢。腕の力だけでのものすごい跳躍で、ウィル・A・ツェペリは宙を舞った。 「やめんかァ―――っ!!」 (何ッ?) 花京院の予想を超える、ツェペリの超身体能力。 下半身不随と聞いて、侮っていた。 これが波紋の戦士の能力か。 飛び上がったツェペリの身体は川尻しのぶの身体を抱き留め、地面に押さえつけようとする。 だが――― カチリ (なんじゃとッ!?) 彼女の身体が床面に達するよりも早く、彼女の身体が起爆材となり、ウィル・A・ツェペリの身体は木っ端微塵に消し飛んだ。 「ウィル――――――ッッ!!」 奇しくもそれは、ジャイロ・ツェペリが応接室の縁側に辿り着くのと、ほぼ同じタイミングであった。 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ☆ ローマ文化の町並みから、門をくぐればそこは日本庭園。 豪華な高級自動車に、アヴドゥルのバイク。 離れの書庫に、大きな池。 それらを横目に庭内を走り抜け、銃声のした屋敷の縁側を目指す。 ジャイロ・ツェペリが最初に見えたのは、縁側の廊下で倒れているドルド。 知らない奴とスタンド同士で取っ組み合いになっているアヴドゥル。 そして、自分と同じ姓を持つ異世界の友人、ウィル・A・ツェペリの身体が吹き飛ぶ光景だった。 (馬鹿がッ―――! 何故ノコノコ現れた? 何のためにお前を外に残したと思っているんだッ!? こういう場面になってこそ、伏兵のお前の存在が活きてくるのに―――ッ! もっと慎重に動けッ! 愚か者め!!) 心中で憤るビーティー。 どんな時も冷静沈着な彼とは違い、ジャイロは結構熱くなり易いタイプだ 銃声を聞いて、いてもたってもいられなくなってしまったのだろう。 本当ならばもっと現れるタイミングを図って欲しかったが、出てきてしまったのならば仕方がない。 「くそっ! どうなってやがるッ? どいつが敵だッ!?」 見極めないまま考え無しに飛び出してきたジャイロには、攻撃対象が定められなかった。 一発しか無い鉄球を構え、ジャイロは思案する。 ツェペリが爆死した側でうずくまる女か? 高そうなコートを着込んだ、見慣れぬ金髪男か? いや、やはりアヴドゥルと組み合っている、長い前髪の少年が怪しいかッ!? 「女だジャイロ! 女を狙えッ!!」 ジャイロの迷いを、ビーティーの指示が一蹴した。 花京院が何かをしたのは間違いない。 だが、鉄球は1発だ。 謎の防御スタンドを繰り出した花京院の正体がわからぬ以上、貴重な攻撃手段を無駄に使うことはできない。 「女の腹に鉄球を叩き込めッ! その女は何者かに操られているッ! お前の『回転』ならば、吐き出させる事もできるはずだッ!」 「お おうッ!」 まず優先して無力化すべきは、猟銃を持つ川尻しのぶだ。 猟銃には残弾が5発あった。 ドルドに1発。アヴドゥルに1発。弾はまだ3発も残っている。 しのぶが本当に『法皇』に操られているならば、解放してやらねば。 そうでないとしても、鉄球でしのぶを倒してしまえば、とりあえず猟銃の驚異は無くなるだろう。 「うおおおおおっ!!」 ツェペリの体当たりを喰らい倒れていた川尻しのぶを狙い、ジャイロの鉄球が放たれた。 回転する鉄球が身体を起こしかけていたしのぶの腹部に突き刺さる。 しのぶは低い呻き声を上げ、そして大きく開けられた口から、先ほどから見失っていた『法皇の緑』のヴィジョンが姿を現した。 『何ィィ―――ッ!?』 『法皇』を操る花京院にとっては想定外の攻撃だ。 しのぶの体内から『法皇』が強制的に引きずり出される攻撃など、予測できるわけがない。 身体から飛び出した『法皇』などよそに、側にいた吉良は、鉄球を喰らったしのぶを抱き留める。 そして、無防備に投げ出された『法皇の緑』―――。 アヴドゥルがそのヴィジョンを確認し、そして深い悲しみに襲われる。 やはり、花京院の仕業だったのだ。 (花京院―――ッ! 何故だッ! 何故お前が―――ッ!?) 「うおおおおおおお――――――ッッ!!!」 『黄の節制』に腕を捕まれたまま、アヴドゥルは吠えた。 身体を捻らせ、力の限りを尽くした回し蹴りを、無防備な『法皇の緑』の胴体へと叩き込む。 『グバァァァ!!』 強烈な一撃に見舞われ、『法皇』は苦しみを見せる。 やがて『法皇』のヴィジョンは力無く地面に落ち、そしてその姿を消した。 (よしッ! 『法皇』は仕留めたッ! あとは―――) ビーティーとアヴドゥルは、同時に『花京院』へ視線を送る。 奴はまだ、『魔術師の赤』の手刀を黄色いスライムで防いだ状態のままだった。 つまり、『法皇』へのダメージが届いていない。 この『花京院』は『法皇』の本体では無かったッ! ジャイロはまだ事の成り行きを把握できず呆然としている。 だがアヴドゥルは、既にすべてを理解しつつあった。 花京院とラバーソール。どういうわけかは知らないが、彼らがグルになって仕掛けていたのだ。 『黄の節制』のスタンド使いを知らぬビーティーも、ここで何が起こったのか、だいたいの予想が付いてきた。 こうなると、ジャイロの考え無しの参戦も、結果オーライで済ませられるだろう。 こちらの人的被害は、厄介なドルドと足手纏いのツェペリだけで済んだのだ。 あとは、アヴドゥルとジャイロの2人がかりで偽の花京院を倒して仕舞う。 そしてどこか近くで倒れているであろう、本物の花京院を押さえてしまえば、すべてが終わるのだ。 本当に、そうだろうか? 何か見落としている気がしてならない。 ビーティーは、事件の経緯を振り返る。 そうだ。 これではツェペリが爆死した事に対し、説明が付かない。 彼は川尻しのぶの身体に触れたとたん、爆死した。 明らかにスタンドによる攻撃だ。 だが、これは誰の能力だ? どこかに潜んでいるであろう花京院の能力は、間違いなく『法皇の緑』である。 そしてこの偽花京院の能力は、おそらくこの黄色いスライムだ。 スライムを変形させて身体に纏い、変装すると同時に身を守るスタンドだろう。 どちらのスタンドも、条件に合わない。 アヴドゥルも知らぬ『法皇』の隠れた奥の手という可能性もあるが、やはり現実的ではない。 可能性として高いのは、更なる別の敵スタンド能力の存在。 ここで、未知の攻撃についてもう一度振り返る。 ツェペリは川尻しのぶの身体に触れたことにより、爆死した。 普通なら、ここでしのぶに触れる事が危険だと、誰だって思う。 だが、奴は違った。 鉄球に弾き飛ばされたしのぶを、真っ先に抱き抱えた奴。 それも、彼女を気遣っての行動ではない。 彼女の持つ武器、猟銃を手に入れるため。 そしてその他の状況を考慮しても、消去法でも、爆破の能力の本体は、奴以外には―――――― 「さて、聞かせてもらうか? キサマはいったいーーー」 「アヴドゥルッ! 蓮見だッッッ!!!」 ラバーソールへ尋問するアヴドゥルの言葉を遮る、ビーティーの叫び声。 そしてそれと同時に鳴り響く、もはや聞きなれた轟音。 猟銃を水平に構えた吉良吉影の放った弾丸は、モハメド・アヴドゥルの胴体を撃ち抜いた。 ★ ★ ★ ★ ☆ ☆ ☆ ☆ こいつは鮫だ こいつにゃ歯がある その歯は面に見えてらあ こいつはメッキース こいつにゃドスがある だけど そのドスを見た奴はねえ 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ
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Restart ◆v8O5xyO8Go 真円を描く月はほんのりと夜空を照らしているが、辺りは暗い。 おおよそ民家には明りが灯っておらず、あるのは街灯の光だけだったからだ。 そして人の、いや、生物の気配すらそこには感じられない。 自分以外に誰がいるのか。花京院典明は途方に暮れながら周囲の様子を窺っていた。 (っ……この状況…………) 彼はこの状況にどう対応すべきか考えを決めかねていた。 咄嗟に考えたのは、何故ここに参加させられたかだ。 紅海で女教皇(ハイプリエステス)を撃破し、ようやくエジプトに到着した辺りのところで意識が朦朧となり 気付けばああして殺し合いの説明を聴かされていた。 DIOの手下のスタンド攻撃によるものか。 しかしその考えは、会場に飛ばされた後自身の持ち物を確認した時に捨てざるを得なかった。 なぜならばDIOもまた参加者の一人だったからだ。 だからと言って状況が好転したわけではない。 おそらく花京院がどう動こうとも、殆どの確率でDIOとの対立は避けられないだろう。 ましてや殺し合いという状況ならば。 とある民家の庭先に潜み、花京院は自らのスタンド『法王の緑(ハイエロファントグリーン)』を出現させる。 遠距離操作型であるこのスタンドはその姿を細長くすることで周囲の索敵を行ったりすることができる。 なによりスタンドの姿はスタンド使いには見えない。この点は重宝できると言っていいだろう。 しかし油断はできない。あの体育館にいた数々の人間もまた、彼と同じように異能力を持っていたのだから。 殺された修道服の少女、そして平戸ロイヤルにくってかかった少女だけでなく、他の幾人かも『何か』を行使しようとする 雰囲気が感じられた。尤も、それがスタンド能力だと彼も断定はできなかったが。 だがしかしスタンド能力者はDIOに限らずいる筈だと判断できた。そのため迂闊に法王の緑を広げると不意打ちを食らう可能性は 充分にある。まだ状況整理がなっていない以上、慎重にならなければならないのは確実と言えるだろう。 (む……誰かいるみたいだな) 薄暗いため顔はよくわからない。 しかし服は白衣で、男であるということはスタンドの目を通じて確認できる。 ここでアプローチをかけるべきか、花京院は迷った。 そもそもこういった殺し合いの場で見知らぬ他人と行動すべきなのだろうか? 彼が唯一の知り合いとしてジョセフ・ジョースターを名簿から見つけることができたが(あってほしくないことだったが) それ以外の人間と関わるのは、戦闘になる危険性も孕んでいるのだ。 スタンドがあればある程度の敵には対処できるだろう。 だがその認識では甘いことを花京院も承知している。 彼に支給された武器はグルカナイフ。だがこれ以上の武器、例えばサブマシンガンなどを支給されているとするならば。 あくまでも彼はスタンドを持つ以外は生身の人間であり、銃弾に当たればダメージを受けるし、死にもする。 それはいつもと変わらない。生命の危機にさらされる戦闘も何度もしている。 ただ違うのは、周りの殆どが敵となりうる可能性を有していることだけだ。 それでも花京院は考える。 あの体育館で平戸ロイヤルに立ち向かおうとした者達がいたことからわかるように、殺し合いに乗ることに反対する者は たくさんいる筈だ。彼らに出会い、協力すれば当面の危機は脱せるのではないか。 そして現状に立ち向かうこともできるのではないだろうか。 希望的観測だが、何もしないよりはましだった。 少なくとも彼は戦う力を持っている。それだけで充分だと言えるだろう。 「何だテメエ?」 花京院が動き出そうとしたのと、その声が聞こえたのは同時だった。 斜向かいの家から微かに聞こえてきた男の声。そこは、花京院が『法王の緑』で探りを入れていた場所であり、彼が発見した 何者かがいた場所でもあった。つまり声を発したのはそいつに他ならず――― 一発の銃声がほぼ同時に響いた。 「ぐっ……!?」 驚きと痛みに花京院は声を漏らす。 彼の左頬からは赤い血がブツッと噴出した。 彼自身は直接ダメージを受けていない。これはスタンドがダメージを受けたことによるものだ。 スタンドが受けたダメージはスタンド使い本人にも反映される。この法則は殺戮の会場でも変わりない。 男の声がした時に引っ込め始めていたスタンドを花京院は自身の傍に配置させる。 『法王の緑』も彼と同じく左の頬が削れていた。 「……スタンド使いか」 スタンドはスタンド使いにしか見えない。 スタンドはスタンドでしか倒せない。 この常識でもあり法則でもある事象を、花京院は揺るぎないものだと思っていた。 だから相手をスタンド使いと思うのは自然なことだ。それが捻じ曲げられていることなど、露知らず。 ここで戦うことも、逃げることも容易い。 しかし相手が攻撃してきたのは花京院のスタンドが迫ってきた所為でもあるかもしれないのだ。 相手が危険人物であっても、いまならまだ何らかの情報を訊きだすことができるかもしれない。 近づいてくる気配がないと判断し、花京院は声を上げた。 「待ってくれ、僕は殺し合いをするつもりはない!」 反応は返って来なかった。 まあ一言で信じる者はいないだろう。 不意に気付かれた場合はこういう弊害があると、彼は実感した。 この時点ですでに膠着状態。 相手の手が全く分からない状況では、うっかり会話をすることもできない。 (念のため結界を張っておくか? だが相手の能力によっては無意味な可能性もありそうだ) ここでの最善の手は、おそらく戦闘離脱だろう。 逃げておけば花京院が傷つくことはない。だがそれは本性のわからない者を放置することにもなる。 もしそいつが殺し合いに乗るような殺人鬼ならば、到底見過ごすことは叶わない。 花京院の性格として、その考えは自然だった。 だがまだ動けない。 そうして緊張が数分は続いただろうか。 もう動き出すしかない。そう花京院が思ったとき、再び銃声が鳴り響いた。 「!?」 それは花京院に向けて放たれたものではない。 彼の驚きを蚊帳の外に、塀と道路越しに物語は勝手に展開されていた。 ] 「なっ……テメエ!!」 さらに2発。だがそれで終わりにはならない。 『痛いなぁ。死んだらどうするんだい?』 「ハッ……じゃあ殺し―――ア"ぁっ!!」 肉の避ける音がして、そこで声は途切れた。 鈍い叫び声を上げたのは『法王の緑』を撃った男。 もう一方は、少年と思われる声だった。 ただ事ではない。 今まで動けなかった花京院は、そこでようやく道路に飛び出た。 事の真相を確認するために。 道路を横断し、その家に向かう。 法王の緑を引き連れながら、彼はその光景を目の当たりにした。 シンプルに言えば、螺子というには巨大すぎる杭を体に突き刺された不良の様な白衣の男を、一見無害そうな少年が棒立ちになって その様子を見ていた。血塗れになり、手にはこれまた巨大な螺子を一本手に持って。 どちらが被害者で、加害者かは明白だった。 「ッ――――エメラルドスプラッシュ!!」 躊躇いは殆ど無かった。 ここで迷っていてはこちらがやられてしまう。 少年の無邪気そうな顔は、そう思わせるほどあまりにも悍ましかった。 猛烈に射出される無数の宝石状の弾を少年は無抵抗に受け止め、砂利のように吹き飛ばされる。 着ていた学生服はボロ雑巾のようになり、そのまま家の壁に叩きつけられた。 起き上れるようなダメージではない筈だ。花京院はそれだけのダメージを与えたと自覚していた。 殺しはしなかったが。 花京院はすぐに横たわった男に駆け寄る。 人相がいいとはお世辞にも言えないその男は、みかけのダメージの悲惨さの割には生きていた。 気絶しており、右腕と左太腿に螺子が刺さったままになっている。このまま放っておけば死ぬことは間違いなく、治療するには支給品の 応急処置セットでは明らかに足りそうにない。 「病院は……ここから近かったか」 現在位置は確かB-6だった。 男一人を運ぶにはなかなか骨が折れそうだが(状況的にも体力的にも)このまま見捨てるのは少々忍びなかった。 (いろいろ訊きたいこともあるしな。持ち物は僕が持っていた方が良さそうだ) 『非道いな。僕は連れて行ってくれないの?』 有り得ない。 声がした方を向くまでもなく、その事実を理解し、否定せざるを得なかった。 少年が、傷一つなく立っている。学生服も、髪も、皮膚も、全くの乱れが無い。 エメラルドスプラッシュに撃たれたことなど無かったかのように―――。 『僕は悪くないぜ。だって、最初に撃って来たのはそいつなんだから』 口元に微笑みを湛えながら少年はそう言う。 『助ける気はあるかい?』 確かに、と花京院は思ってしまった。 さっきの声のやり取りを鑑みるに白衣の男が先に手を出したのは間違いないだろう。 だが少年に撃たれた痕はなく、全く健全だった。 その事実が、男に対する自分の揺らぎを自覚させないでいたのだ。 花京院は沈黙する。 この状況をどう切り抜けるか、考えが思いつかないでいた。 少年の存在はスタンド能力とかといったものとは何か違う異質さを感じさせている。 その得体のしれないものに対する恐怖感が、咄嗟の判断を鈍らせた。 少年は手にしていた螺子を花京院に向けて突進する。 すぐさま『法王の緑』で少年を拘束するがギリギリ花京院の左肩に螺子が捻じ込まれてしまった。 元々5mは離れていた距離を、少年は突撃する前に何気ない風に歩いて距離を少し詰めていたのだ。 少年の異質さと言動に気を取られた花京院がスタンドを出しておきながら防げなかったのはある意味無理からぬことでもあった。 左肩を塀に磔られた花京院は痛みに顔を歪める。 だが少年の拘束は緩めない。これ以上の締め付けは出来そうになかったが。 しかしそれでも甘かった。彼はすぐに、少年と距離を離すべきだったのだ。 『君の記憶を虚構ったことにしてあげるよ。それで御相子にしようぜ。殺すのも殺されるのも面倒だし』 少年は同時にそう言って花京院の頭に触れた。 わけのわからぬまま、花京院は最後までその意味を理解できないでいた。 ◆◆◆ 「―――――はっ!?」 花京院は、はっと目を覚ましたような感じがした。 辺りを見回してみれば見知らぬ場所。空には月が輝いている。 (そうか……ここが会場というわけか) 花京院の記憶は、完全に無くなっていはいなかった。 殺し合いの説明を体育館で受け、会場に飛ばされる直前までの記憶は残っていたのだ。 しかしそれ以降はさっぱり覚えていない。 ふと、彼は自分の足元を見ると白衣の男が横たわっているのが分かった。 外傷はない。だが、気を失っているようだ。 「大丈夫ですか?」 返事はない。 花京院は、とりあえず男を安全な場所に運ぼうと思った。 しかしふと、自分の左頬に違和感があることに気付く。 「……?」 触れてみると、左手には血がべっとりとついていた。 ◆◆◆ 『やれやれ、銃声が気になってうっかり出てみればこれだよ』 少年――球磨川禊は何事もなかったかのように夜の闇に紛れながら歩いている。 花京院と男の記憶を消し、武器以外の支給品を奪ったあとは意気揚々と立ち去った。 彼の先ほどの行動はある意味自分の過負荷『大嘘憑き』がどの程度制限されているのか確認したかったからと言ってもいい。 ルールブックから幾人かの能力には制限がかけられていることを知った彼は、それを試したのだ。 結果としては一度能力を使用すると彼の時間間隔で約6秒経たないと再度使用ができない、程度のものだった。 しかし彼が気付いていないことはまだある。それは彼にとって今後致命的になるかもしれないことだった。 殺し合いをしろと言われた。 しかしそのままホイホイ乗る気にはなれない。 選挙の最中に横槍を入れられたのは気に食わなかったし、なにより平戸ロイヤルの口から出た名前が気にかかったからだ。 ――――安心院なじみ。 戦挙終了後まで台頭してくることは無いだろうと思われたその存在。 『まぁ、ともかく皆を探さないとな。めだかちゃんは……その時考えればいいか』 今はまだ動く時ではない。 彼はとりあえず、過負荷(なかま)を探すことにした。 【B-6北部・住宅街/1日目・深夜】 【球磨川禊@めだかボックス】 【状態】 【装備】学生服 【持ち物】支給品一式×3、ランダム支給品1~3 【思考】 基本:『殺し合いには今の所は乗らない』 1:江迎と志布志を探す。 2:黒神めだかに対しては……。 3:安心院なじみの名が平戸の口から出たことに驚き 「備考」 ※自身の能力『大嘘憑き』の制限に関しては完全に把握していません。 ※参戦時期は生徒会総戦挙会計戦後です。 ※花京院のスタンドを見ました。 ※大嘘憑きの制限について ・制限一覧に記載されている事項+一度使用すると再度使用に約6秒 ・球磨川が与えたダメージは無かったことにできる ・他の参加者の何か(能力や記憶)等を無かったことにできるのは6時間だけ 【B-6北東部・住宅街】 【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険】 【状態】 記憶を一部喪失(6時間後に復活)、左頬から出血(擦過傷) 【装備】学ラン 【持ち物】グルカナイフ 【思考】 基本:殺し合いには乗らない 1:男(木原)を 安全な場所に運ぶ 2:……?? 「備考」 ※参戦時期は女教皇戦後です。 ※会場に来てから今までのことは何も覚えていません。 【木原数多@とある魔術の禁書目録】 【状態】 記憶を一部喪失(6時間後に復活) 【装備】白衣 【持ち物】ベレッタM8000(11/15)、ランダム支給品×1(武器) 【思考】 基本:??? 1: ?? 「備考」 ※打ち止め誘拐前からの参戦です。 ※会場に来てから今までのことは何も覚えていません。 時系列順で読む 前へ:波紋の快感(よろこび) 戻る 次へ:「パンティとストッキングが交差するとき、物語は始まる!」 feat. 坊主-T 投下順で読む 前へ:波紋の快感(よろこび) 戻る 次へ:Lock n Load Revolution キャラを追って読む 行動開始 球磨川禊 [[『大嘘憑き』VS『幻想殺し』(前篇)] 行動開始 花京院典明 時をかけた男 行動開始 木原数多 ▲
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主人公は入院を余儀なくされた花京院を護衛するため、承太郎たちとは一旦別行動をとることに。 イベントクリア後(1日経過)、花京院と別れ、エドフにてジョースター一行と合流する(更に1日経過)。 こちらのルートを選択した場合、 「コム・オンボ」でのイベントと「アヌビス神戦」はスキップされる。 【<<アスワン】:病院:【エドフ>>】 仲間 宝箱 ショップデータ イベント 敵データ 隠し要素 コメント 仲間 承太郎 別行動 花京院 病室 ジョセフ 別行動 アヴドゥル 別行動 ポルナレフ 別行動 イギー 別行動 宝箱 アイテム名 場所 効果 薬箱×5 1F 救急室 HP250回復。 薬箱×5 1F 処置室 HP250回復。 神秘的な薬×3 2F 右個室 HP・SPをほんの少し回復、再起不能・プッツン・凍結状態を回復 傷薬×3 2F 中個室 HP50回復。 傷薬×3 2F 中個室 HP50回復。 ※スタプラタブ 2F 左個室 スピードを3上げる。 医療ツール×3 2F 大部屋A 再起不能以外の多くの状態異常を回復。 ※エクスペリエンス錠 2F 大部屋B HP最大値を5上げる。 ※エコーズエッグ 2F 大部屋C SP最大値を5上げる。 ※の宝箱は、オインゴボインゴ兄弟の襲撃後に開くようになる。 これらの宝箱を開けると極々まれに邪悪度+1。 ショップデータ 自動販売機 ダイヤモンドC 300 HP大回復+出血多量を治癒。 オーバードライブSY 300 SP大回復。 レクイエムGE 300 様々な状態異常回復。 波紋コーラ 300 全員のHPを小回復+波紋・肉の芽を治癒。 波紋ワイン 700 全員のHPを中回復+波紋・肉の芽を治癒。 イベント 肩を貸す 花京院に肩を貸す際に、主人公の性別や体格で色々反応が変化する。 花京院を医務室まで送り届けると邪悪度が1下がる。 花京院を助けろ! オインゴボインゴ兄弟の襲撃を受け、花京院が病室に閉じ込められてしまう。 一階のナースセンター(人がたくさんいる部屋)に一度訪れ 花京院の病室に戻ろう。 移動中、花京院が攻撃されてダメージをうける。彼のHPが0になるとゲームオーバーだ。 また、病院内にはトト神を使った対主人公専用トラップが仕掛けられており、 移動時にランダムでHP SPに30のダメージを受ける。 オインゴボインゴ兄弟の襲撃後は、鍵がかかっていた宝箱が入手可能になっている。中身は貴重なステータスアップアイテムだ。 病室に辿りついたとき、邪悪度が7以上だと主人公の台詞が変化。 オインゴの変装を見破ってクリアすることが出来れば、花京院との友好度が3上昇する。失敗した場合は上昇なし。 ナースセンターのイベント発生後、病院を探索すれば何かヒントがあるだろう。 (「オインゴが誰に変装しているか」は周回ごとにランダム) セキュリティシステム(ver2.5.1から) 鍵を取りに行かず、花京院の病室ドアを強引に開けようとするとドアと戦闘になる。 かなり固い上、戦闘中もランダムに花京院がダメージを受けてしまう。花京院・主人公共に高レベルでないと攻略は難しい。 敵データ 名称 HP 経験値 お金 ドロップアイテム 備考 BOSS ドア(スタンド:ライブ・カプセル) 1000 1500 1 鉄くず 距離S。物質同化型スタンド。本体はアスワン病院自体。攻撃はそれほどの威力はないが、無効や睡眠など状態異常にさせてくる。ほとんどの状態異常が通用しない上、非常に硬く回復も行うのでしぶとい。戦闘中、花京院が襲われ続けダメージを受け、HPが0になるとゲームオーバー。 隠し要素 なし コメント 古いコメントは過去ログに格納されます。 カフェの前だったかジョセフが確認の電話をするんだよな。んでそん時に時間巻き戻しで日数に余裕あると「あれ、意外と余裕あるね」的な会話がされるんだよな。ホリィさんの頑張りによるところみたいにまとめられてるけど -- 名無しさん (2013-04-06 15 23 42) ↑短時間で行ったって話じゃなく、ホリィさんがDIOの呪縛に抵抗していて寿命に余裕があるという解釈だったな -- 名無しさん (2013-04-06 15 37 36) 鍵入手前に二階にある宝箱の中身手に入ったんだけどバグかな? -- 名無しさん (2013-07-29 16 12 16) 攻略に関係ない雑談なら左メニュー・企画の中のスレッド形式雑談所オススメ 住み分けは大事ですよ。 -- 名無しさん (2013-08-05 21 36 24) 花京院に肩をかしてたら転んでHP減った。ふらつくだけじゃないんだなー -- 名無しさん (2013-09-03 16 03 56) 花京院を医務室まで送り届ける際に1Fの右下の部屋で医者が薬を売ってくれるのですが、「ダイヤモンドC」が2つ欄にあります。仕様ですかね? -- 名無しさん (2015-01-10 17 15 41) 自販機で烏龍茶とチャイ買えたので、追加おねがいします -- 名無しさん (2015-01-21 10 30 53) 何か、病院ルートに行ったらラッシュ時のセリフ変更が出来なくなった……バグかな? - 名無しさん 2015-10-01 17 45 46 思ったんだが、偽者がオインゴって事はスタンド見えるよな?アントとかなら虫を這わせて反応したのがオインゴみたいなイベント出来そうだな - 名無しさん 2016-07-19 09 24 46 扉を調べたら扉と戦闘できるようになり強引に入ることが出来ました - 名無しさん (2018-11-26 20 56 20) 扉と戦闘してたら花京院が生き絶えてしまった… - 名無しさん (2018-12-09 23 57 14) ちなみに答えはベイジ先生 - び (2018-12-28 14 11 26) ↑謎解きの答えは確率ランダムです。 - 名無しさん (2018-12-28 15 18 50) 防犯裝置強い、普通の病院でなだ? - 名無しさん (2019-01-09 13 57 20) ↑それは病院に染み付いてるスタンドだよ、スタンド使いはスタンド使いと引かれ合うからね - 名無しさん (2019-01-09 19 24 14) 入れ替わった医者のヒントは2階の倒れている人を調べることだよね? - 名無しさん (2019-01-15 00 11 01) 鍵見つかってないのに普通に病室は入れちゃうってなに?この説明の仕方だと、花京院病室以外の、どこかに呼ばれた先生を見つけだしにいくのかと思ったんだが。。。無駄足すぎる。急いで病室に戻ろう!とかでないの? - 名無しさん (2020-05-05 05 39 30) ↑鍵は四人の医者(変装したオインゴ含む)が花京院の病室に入るために使ったから開いてるので、病室に入れる事には何も不思議は無い。あと無駄足を踏んだのは単純にあなたの勘違いなので、ここで不満を言うのは筋違い。仕様に関して意見があるなら、それは作者さんにしかるべき方法で問い合わせるべき - 名無しさん (2020-05-05 11 56 26) ↑wikiも見ましたが、初見ではわかりにくかったためコメントしたまでです。変に突っかからないでいただきたいのですがwww - 名無しさん (2020-05-30 15 59 55) ↑え!そうか、人によってはそう感じることもあるんか…初見プレイだけど病室戻るんだなって自分はわかったから… - 名無しさん (2020-08-07 15 16 13) 名前
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++第八話 使い魔の決闘②++ 花京院は今、ギーシュと向き合っていた。 二人の距離はおよそ十歩ほどだ。花京院のスタンドの射程距離には十分入っている。 いつでもスタンドを動かせるよう構えながら、花京院は首を巡らせた。 二人の周りには、いつのまにか観客たちが集まっていた。 平民とメイジが戦う。 そのトップニュースはあっという間に学校中に知れ渡った。 噂を聞きつけた生徒たちは一目見ようと広場に集まった。 普段は薄暗く、人気のないヴェストリの広場が、今日だけは大勢の人で溢れ返っている。 あまりの人の多さに少々呆れながら花京院はギーシュを見た。 決闘を前に、緊張しているかと思ったが、ギーシュは気楽そのものだった。 先ほどから観客たちに手を振ったり、女の子には笑みを投げかけたり、なにかと観客たちにアピールしている。 「諸君! 決闘だ!」 ギーシュがバラを掲げ、声を張り上げた。 たちまち人垣がどよめき、歓声が巻き起こる。 ギーシュはもう一度観客たちに手を振り、花京院に視線を向けた。 二人は広場の真ん中に立ち、にらみ合う。 「とりあえず、逃げずに来たことは、ほめてやろうじゃないか」 「逃げる必要がないからな」 「お互い準備は出来てるようだ。そろそろ始めようか」 ギーシュはそう宣言した。 始まると同時に、花京院はスタンドを出して構える。 彼のスタンド、『法皇の緑(ハイエロファントグリーン)』には近距離パワー型のようなパワーやスピードはないし、特別な能力もあまりない。 しかし、それだけが強さではないことを花京院は知っている。 花京院と対峙するギーシュは余裕たっぷりの笑みを浮かべていた。 キザな仕草でバラを花京院に向ける。 「僕はギーシュ・ド・グラモン。栄えあるグラモン家の四男だ。たとえ相手が平民であろうと、手加減はしない」 ギーシュはバラの花を振った。 花びらが一枚、宙を舞う。 ひらひらと花びらは揺れ、次の瞬間、戦士の人形になった。 甲冑を着た女戦士の人形だ。大きさは普通の人間と同じぐらいだが、甲冑から覗く肌の色は甲冑と同色で、固い金属でできているらしい。 がしゃん、と人形が一歩前へ踏み出した。 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。……おっと、言い忘れていたな。僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。したがって、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」 ギーシュがバラを振ると、女戦士の形をしたゴーレムが突進してきた。吸血鬼ほどの速さではないが、プロのランナーぐらいの速度はある。 花京院のスタンドは近距離を得意としない。近寄られるのは得策ではなかった。 スタンドを操作し、ゴーレムに向けて両手を構える。 「エメラルドスプラッシュ!」 スタンドの両手からエメラルドの何かが放たれる。一見体液にも見えるそれは破壊のエネルギーの像だ。触れれば砕き、貫くことができる。 エメラルドスプラッシュは真っ直ぐにゴーレムに当たり、吹っ飛ばした。 上半身を仰け反らせながら後ろに吹っ飛んだゴーレムを見て、ギーシュの顔が強張った。 「き、君は今何をした。僕のゴーレムに何をしたんだ?」 「答える必要はない……と言いたいところだが、少しだけ教えよう。僕はある力を持っている。君のゴーレムと同じだ。ただ、誰にも見えないし、触ることもできないがな」 「……」 ギーシュは無言で花京院を睨みつけている。本当か嘘か図りかねているようだ。 軽く肩をすくめるようにして、花京院は言った。 「別に信じなくていい。……ただ、これは決闘だからな」 そう、これは決闘なのだ。ただの勝負ではなく、決闘。 卑怯な手段を使って、相手を倒すことが“勝利”ではない。 正々堂々、相手を打ち砕く。それが“決闘での勝利”なのだ。 だから花京院はスタンドでいきなり攻撃しなかったし、スタンドのことを教えた。 わざわざ相手に魔法を使わせるチャンスを与えたのもそのためだ。 ……これは彼女の誇りをかけた決闘だ。 だからこそ、負けるわけにはいかない。 絶対に、勝たねばならない。 ゼロと侮辱された彼女のためにも。 「……不思議な力か。信じがたいが、本当のことなんだろう」 少々驚いた様子で、ギーシュは呟いた。 そして、バラを振り、新たに六体のゴーレムを作り出す。 「ならば、僕も全力で相手をしよう」 再度、ギーシュがバラを振ると、たちまちゴーレムは花京院に向かって襲い掛かってきた。 合計七体のゴーレムが、花京院めがけて向かってくる。 花京院はそれを視界に納めると、狙いをつけた。 「エメラルドスプラッシュ!」 スタンドの手から無数のエメラルドが飛び出す。 それらはギーシュのゴーレムに当たり、相手を後方へと弾き飛ばした。 「この程度の攻撃で、倒せるとでも思っているのか?」 「戯言は勝負が終わってから言いたまえ」 地面に倒れたゴーレムたちは起き上がり、また花京院に向かって突進する。 魔法で動いているせいか、痛みや恐怖はないようだ。その動きにはなんの迷いも怯えも感じられない。 とは言っても、動きが見えている以上、その攻撃は意味がない。 花京院はまたエメラルドスプラッシュを放った。 後続のゴーレムと派手にもつれ合いながらゴーレムは後方へと転がる。 何度も、何度も、ひたすらそれを繰り返す。 意味のない、無駄なことをなぜ続けるのか。 花京院にはそれが疑問だった。 しかも、ギーシュは笑みを浮かべていて、何かたくらんでいるようだ。 「お前が何を考えているのかは知らないが、こんな攻撃を続けるつもりなら……」 その時、花京院は気付いた。 自分とゴーレムの距離。それがいつの間にか、狭まっている。 十歩ほどの間があったはずが、今は三歩ほどの距離まで近くなっていた。 ……まずい! 花京院は距離を開けようと足に力を入れたが、動かなかった。 愕然と足元に視線を落とす。 足元の地面が盛り上がり、足首を固定するように固まっていた。それもただの土じゃないらしく、蹴ったぐらいではびくともしない。 物音が聞こえ、顔を上げると、目の前にゴーレムがいた。 危険だと感じる余裕さえなかった。 次の瞬間にはゴーレムの拳が身体にめり込んでいたからだ。 「ごふっ!」 身体の奥底に響くその衝撃に、一瞬意識が遠のく。 かろうじて意識だけは保ったが、痛みが消えるはずもない。 身体を折り、花京院は地面に膝をついた。 「なんだ。もう終わりかい?」 「……いや、まだだ」 今度はゴーレムの蹴りが飛んできた。 脇腹に当たり、その衝撃で息が止まりそうになる。 地面をごろごろと転がりながら花京院は体勢を立て直そうとするが、すぐ側には別なゴーレムが立っている。 「降参するかい?」 「するつもりはない」 ギーシュの問いに、花京院は首を振った。 すると、ゴーレムの足が花京院を蹴り上げた。 束の間、宙に浮き、地面へと叩きつけられる。 「がっ……!」 肺の中の空気が外に出される。 横向きに倒れたまま、花京院は荒い呼吸を繰り返した。 「まだやるつもりかい?」 「当たり前だろう」 ゴーレムはゆっくりと足を上げた。 踏み下ろすのだと気付いた瞬間、花京院は右腕を構えていた。 落とされた足とそれを受け止める腕。 ごきり、と鈍い音がした。 痛みはあったが、どこか曖昧なものになっていた。 ……腕が折れたな 冷静に、花京院はそう思った。 落ち着く暇もなく、ゴーレムの攻撃は続けられる。 一つ一つがプロボクサーの一撃のように重く、速い。 避けることはおろか、受け止めることすらできない。 何度も何度もゴーレムの攻撃を喰らい、そのたび花京院は吹っ飛ばされる。 ギーシュは花京院の側まで来て、見下ろした。 「いい加減、諦めたらどうだい?」 「……そうだな。その角度がいい」 花京院は口元に笑みをにじませる。 ぼろぼろになっても笑みを浮かべる花京院を見て、ギーシュは怪訝な顔になった。 「頭でもやられたのかい? なんの角度……」 その時だった。 この勝敗は明らかに見えるこの状況の中、花京院だけは見えていた。 勝利でもなく、敗北でもなく、ただ今だけを見ていた。 スタンドがギーシュの口の中へと入っていく、この瞬間を。 狙っていたのは……この時だった。 To be continued→