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とくべつ~後編~ それからしばらくして、落ち着きを取り戻した母れいむ、父まりさ、 子れいむとまりさはすっかり仲良しになっていました。 「”どうつきさん”なんてはじめてみたんだぜ」 「まりさは”とくべつなゆっくり”なんだよ!」 まりさは再び、えへんっ!と胸をはりました。 「きせきさんをおこせるなんて、”どうつきさん”はとってもゆっくりしてるね!」 母れいむはもみあげさんをピコピコさせながら、嬉しそうにいいました。 「おねーちゃんの”あかいおめめさん”は、とってもきれいだね!」 「ありがとう!」 まりさは子れいむのその言葉にお礼をいいます。 大好きなケンくんから貰った綺麗なおめめは、すでにまりさのお気に入りでした。 でもこのときまりさは自分のおめめが赤いということは知りませんでした。 それを話すと、父まりさが 「それなら、ゆっくりついてくるんだぜ!」 といい、ゆっくりとどこかに向って跳ねていきました。 まりさがそれについていくと、公園の隅っこに小さな水たまりができていました。 「ゆっくりみてみるといいんだぜ、きれいなおめめさんなんだぜ」 そういわれて、まりさは水たまりを覗きこみました。 「うわぁ…」 まりさは驚きの声をあげます。 そこに映っていたのは、まりさの知っている”胴つきまりさ”とは少しちがった”まりさ”でした。 自分の姿は、ブリーダーのお姉さんと生活していたころ、よく鏡さんで見せてもらっていました。 しかし今、まりさの目に映った”まりさ”は、右目に痛々しい傷痕と、そして”綺麗で真赤なおめめ”がついていました。 (これがケンくんがくれたみぎめさん!) まりさは改めて心の中でケンくんに感謝しました。 それと同時に、どうしようもなくケンくんに会いたくなってしまいました。 会って、直接ケンくんにもう一度お礼を言いたい。 そう思うと、いてもたってもいられなくなってしまいます。 「ごめんねみんな、まりさ、もどらなきゃ…」 そう言って元きた道を戻ろうとしたとき、誰かがまりさに声をかけました。 「まって」 「ゆ?」 まりさは声のした方を向きます。 すると木の影から、ゆっくりと”あるゆっくり”が顔を出しました。 「ぱちゅりー!だめだよ、ゆっくりやすんでないと!」 「むきゅ、いいのよ…」 母れいむの静止を振り切って、”ゆっくりぱちゅりー”がゆっくりとまりさの前にやってきます。 「みさせてもらったわ…」 「なにを?」 突然呼び止められ、まりさは困惑してしまいます。 「まさにあれは”きせきさん”よ、ぱちゅはかんっどうっしたわ…」 ぱちゅりーはそう言うと、ゲホゲホと咳き込みます。 「”まちのけんじゃ”のぱちゅはしってるのよ、”どうつきさん”はなんでもできるのよ…」 「ゆっ!?そうなんだぜ?やっぱり”どうつきさん”はすごいんだぜ!」 父まりさが自分が褒められたかのように嬉しそうに、ぽよぽよと跳ねました。 「”あかめのまりさ”さんにおねがいがあるのよ…」 「なあに?」 まりさは聞き返します。 (まりさにできることなら、してあげたいよ!) まりさはそう思いました。 しかしぱちゅりーの口から出た言葉は、まりさの予想をはるかに上回るものでした。 「ぱちゅたち”のら”の、”おさ”になってもらいたいのよ…」 「おさ…?」 まりさは、ぱちゅりーが何を言っているのかわかりませんでした。 まりさは元々飼いゆっくりとして生まれ、育てられたので”野生のゆっくり本来の生態”を知らなかったのです。 戸惑うまりさにぱちゅりーが説明します。 「きれいなかっこうをみればわかるわ、さいきんまで”かいゆっくり”だったのね… ぱちゅもむかしはそうだったもの… ようは、ぱちゅたちの”かぞく”になって、その”リーダーさん”になってほしいのよ…」 まりさは、ぱちゅりーの言った”家族”という言葉に惹かれました。 「でも…ケンくんが…」 しかしまりさはケンくんのことを忘れることができませんでした。 野良ゆっくりと”家族”になること、それはもう”ケンくんの家のペット”になることはできないということです。 「おねがいよ、みてのとおり、ぱちゅたちはじゅうぶんゆっくりできているとはいえないわ…」 ぱちゅが父まりさや母れいむを見やり、そして自分の体をゆすって言いました。 たしかに父まりさや母れいむはお飾りもボロボロ、体も薄汚れています。 ぱちゅりーは髪の毛のつやがなくなり、体のいたる所に傷がついていました。 「それにさっきたすけてもらったおちびちゃんも、あなたがいてくれなかったらきっと…」 「おねーちゃん…」 子れいむは深刻な話をしているぱちゅりーとまりさを、不安そうに見ています。 「あなたにしかできないことなのよ…」 「…」 まりさは黙ってしまいます。 しばらく俯いて葛藤したあと、まりさはついに決意しました。 (そうだよ、まりさはとくべつな”ゆっくり”なんだよ! おねえさんにいわれた、”つよくてやさしいりっぱなまりさ”になるんだ!) 「わかった、まりさ、がんばるよ!」 まりさのその言葉にぱちゅりーはにっこりとほほ笑みました。 「むきゅ!ありがとう、よくけっしんしてくれたわ…」 まりさの意味をゆっくり理解して、遅れて父まりさと母れいむが喜びの声をあげます。 「ゆゆっ!”どうつきさん”が”おさ”なんだぜ!?うれしーんだぜ!」 「ゆゆ~♪”どうつきさん”はとってもゆっくりできるね!」 皆が嬉しそうにすると、子れいむもうれしそうにぴょんぴょん跳ねました。 「ゆっくり!ゆっくり!」 「よろしくね!ゆっくりしていってね!」 ごめんねケンくん。 まりさはとくべつな”ゆっくり”なんだよ。 だから、こまってる”のらゆっくりさんたち”をほっとけないよ。 でも、いつかケンくんと… まりさはぶんぶんと頭を振って迷いを振り切ろうとしました。 それでもまりさはケンくんのことだけはどうしても忘れることができそうもありませんでした。 これ以上不安が大きくならないように、まりさは段ボールさんのところに戻るのをやめました。 ケンくん…ごめんね…… ------------------------------------- それから瞬く間に時間は流れ、まりさは立派な”野良ゆっくり”として成長していました。 ちょっぴり背も伸びました、だけど髪の毛はくしゃくしゃ、大切なおぼうしもボロボロ。 それでもまりさはとっても日々を”ゆっくり”と過ごしていました。 なぜなら今のまりさには”守るべき家族”がいるのです。 それも最初の4匹だけではなく、いつの間にか”まりさの群れ”は何十匹ものゆっくりを抱える大きなものになっていました。 今日もまりさの群れの噂を聞きつけた野良ゆっくりが訪れます。 しかし時にそれは招かれざる客であることもありました。 まりさたちがある商店街の路地裏でゴミ箱をあさっている時のことです。 「ゆふふふ、とってもおいしそうなにおいがするよ!」 突然まりさの前にぼよんぼよんと体を揺らしてまるまると太った”れいむ”が現れます。 「だれ!?」 まりさが手に持ったまりさの背丈と同じくらいの木の棒を構えて威嚇します。 「かわいいかわいいれいむがきてあげたよ!ゆっくりしてないでごはんをちょうだいね!」 れいむは自分に食べ物が貢がれるのが、さも当然のように言い放ちました。 「ここはまりさのむれのかりばだよ!ゆっくりできてないゆっくりはほかをあたってね!」 そんなれいむをまりさはきっぱりと跳ねのけます。 「ゆぎいぃいいいーーー!!!でいぶのめいれいがきけないのぉーー!?」 自らを”でいぶ”といったソレは、全身をブルブルと震わせてまりさに迫りました。 「うるさいよ!ゆっくりしないであっちにいってね!」 しかしまりさは臆することなく木の棒を振ってでいぶを追い払います。 「くそぉおお!そんなのふりまわしたらあぶないでしょぉおおおおーー!」 そういいながらもでいぶは大きな体をゆらしながら、ゆっくりと逃げていきました。 そして群れからは歓声があがります。 「やっぱりおさはすごいんだぜ!」 「すっごくゆっくりしてるよぉおおーーー!!」 「さすがなんだねー、わかるよー」 「んほぉおおーーー!!とってもとかいはだわぁ!」 「むきゅん、やっぱりぱちゅのめにくるいはなかったわ…」 群のゆっくりたちは次々とまりさに称賛の声を浴びせます。 その声にまりさは笑顔でこたえます。 「みんなゆっくりおなかいっぱいになった?それじゃあにんげんさんにみつかるまえにゆっくりおうちにかえるよ!」 『はーい!』 そして群れはぞろぞろと行進し、自然公園や高架下などでゆっくりとした時間をすごします。 まりさは野良ゆっくりになってもとても優秀でした。 胴つきのまりさは、ほかのゆっくりにできないことがなんでもできました。 背が高いのでみんなが気付かない場所にあるものをいち早くみつけることができます。 腕があるので、ポリバケツさんをすぐに引き倒して漁ることができます、そしてお片づけもできました。 これで人間さんに対策ととられる心配がぐっとへりました。 二つの足さんは、ほかのどのゆっくりよりも速く移動することができます。 まりさが走りまわり、安全を確かめてから群を誘導するのです。 そしてまりさのかしこいおつむは、街の賢者のぱちゅりーをも凌ぐものでした。 ”借り場”や”おうち”も定期的に移動します、これもまりさの考えたことでした。 それによって、人間さんに見つかって罠を張られたり、駆除されたりする危険が減りました。 そして群れのゆっくりたちから最も信頼を受けている理由。 それが、まりさの”治療能力”でした。 まりさがけがをしたゆっくりのところにいき、傷を塞ぎ、「絶対大丈夫!」と一声かければ、 たちまちそのゆっくりは元気になってしまいました。 まりさの群は、群以外の野良からも噂される、とても”ゆっくりできる”群でした。 しかしそれはしょせん”ゆっくり”での話。 ”人間さん”はそう甘くはなかったのです。 日に日に野良ゆっくりを巻き込み、大きくなっていく”まりさの群”は、 次第にいやがおうにも目立つ存在になっていきました。 そしてついにその日は訪れます。 ある日、まりさの群がいつものように”狩り”をしていた時。 群にゆっくりと数人の人間さんが近づいてきました。 「ゆっくりしていってね~っと」 『ゆっくりしていってね!』 群のゆっくりたちは反射的に挨拶を返します。 「ゆっ!人間さん!まりさたちになんのよう!?」 まりさは群を守ろうと必死に棒を構えます。 しかしこのときまりさは内心穏やかではありませんでした。 (どうしよう、にんげんさんにみつかっちゃったよ…) 群れの中で一番強いまりさは、だからこそ一番”ゆっくりの無力さ”を知っていました。 出来る限り人間さんとは関わらないようにしてきましたが、ついに見つかってしまったのです。 「この群のリーダーはお前か」 人間さん達の中の一人が、まりさを見てそう言います。 「そ、そうだよ!」 「ふぅん、ってことはお前が…」 人間さんはふむふむと小さく頷いてまりさに言いました。 「ここいらの野良から聞いたんだ、”不思議な力のゆっくりした胴つきさん”のいる群があるってな」 「ゆっ!まりさは”とくべつなゆっくり”なんだよ!」 まりさはそう言いながら棒を構え、ゆっくりと後退します。 他のゆっくり達は、ただただ人間さんとまりさのやり取りを怯えながら見守っています。 (なんとか逃げなくちゃ…) しかしまりさの考えを読んだかのように、人間さんはいいました。 「おっと、ちなみにお前らは俺達から逃げられない、すっかり囲んでしまったからな、 もちろん、囲んでなかったところでゆっくりごとき逃がさないけどな」 群に衝撃が走りました。 強いゆっくり達は”ぷくー”をしたり、人間さんを睨みつけます。 弱いゆっくり達は、ただただ涙を流しながら、どうしてどうしてとうろたえます。 それを無視して人間さんは続けました。 「だけどまぁ、お前たちは運がいい、頭のいいやつはわかったかもしれないけど、 俺達は加工所の人間だ。でも”駆除班”じゃない」 人間さんはゆっくり達にもわかるように、やさしくゆっくりと説明をしました。 自分達は”研究班”でゆっくりの生体の研究をしている。 近頃は厳しい環境で育ったゆっくりに特異な進化をする者がいる。 急成長した群のリーダーの”まりさの能力”の噂を聞き、まりさの群を捜していた。 そう人間さんは説明したあと、まりさに言いました。 「お前が俺達についてくるなら、お前の群は見逃してやろう」 「ゆっ!?」 まりさは棒を構えたまま固まってしまいます。 「別に俺達は”お前”一匹に興味があるだけだ、ほかの野良なんてどうでもいいんだよ」 しかしまりさには分かっていました、人間さんの言うとおりにする以外に方法はないのです。 たとえここでまりさがそれを拒んだとしても、 人間さんは群のゆっくりを殺しつくしてでもまりさを連れて帰ったでしょう。 「わ…わかったよ…」 まりさは観念して、人間さんにいいました。 「むきゅ!だめよ!」 街の賢者のぱちゅりーが声をあげます。 「あなたがいなければ、このむれはおしまいだわ」 人間さんは足元にいるぱちゅりーをぎろりと睨みつけます。 「うるさいぞ、俺はお前なんかにきいちゃいないんだ、それともそんなに”ゆっくり”したいのか?」 直接的な言葉ではありませんでしたが、ぱちゅりーを含めたゆっくり達は、 人間さんが言ったことがどういう意味かを理解しました。 群のゆっくり達は皆一様に目を伏せ、口をつぐんでしまいます。 まりさはゆっくりと群の皆の方を向いていいました。 「みんなごめんね、でもこれはみんなをまもるためなんだよ」 その言葉を聞いて、何匹かのゆっくりがぼろぼろと涙を流し始めます。 まりさは最初に出会った”父まりさ”を抱きかかえ、みんなのほうに向かせて続けます。 「まりさは”おとーさんまりさ”にいろんなことをおしえてもらったんだよ。 これからはまりさを”まりさ”だとおもって、みんなこれからもげんきにゆっくりしてね!」 「まりさ…」 父まりさは体をぶるぶると震わせながら必死に涙をこらえていました。 群の中にいた母れいむと子れいむも、ぼろぼろと涙を流しながらまりさをみつめます。 ぱちゅりーはただただ申し訳なさそうに目を伏せていました。 「はいはい、感動感動」 人間さんはめんどくさそうに頭をボリボリとかくと、まりさの脇を抱えてひょいと持ち上げました。 「ゆべっ!」 反動でまりさの手から転げ落ちた父まりさは、地面に顔面から落ちてしまいます。 まりさは人間さんを睨みつけながら言いました。 「にんげんさん!やくそくだよ!まりさのむれにはぜったいにてをださないでね!」 「はいはい、”俺は”約束を守りますよっと」 そう言ってまりさを抱えた人間さんは、他の人間さんを伴ってゆっくりと歩き出しました。 取り残されたゆっくり達は、人間さんたちが見えなくなるまで、 ただただ茫然とその様子を見つめ続けることしかできませんでした。 ------------------------------------- まりさが加工所に連れてこられて、数日がたちました。 まりさはここに連れてこられた初日から、小さな個室が与えられ、さまざまな検査を受けました。 そして加工所の職員の手で、まりさは体を綺麗にしてもらいました。 そのおかげで、髪の毛は以前飼いゆっくりだったころのつやつやな輝きを取り戻し、 可愛いお洋服も着せてもらいました。 まりさは加工所でおいしい食べ物も与えられ、何不自由なく暮らすことができました。 しかしまりさの心はちっとも満たされませんでした。 加工所の職員の対応にはちっとも愛はありませんでした。 まりさはあくまで研究対象だったのです。 まりさは孤独でした。 そして毎日、別れた野良ゆっくり達の無事を案じていました。 寂しくなると、ケンくんの笑顔が頭をよぎったりもしました。 そのたびにまりさは、なんだか泣きそうな気持になってしまいます。 加工所に来てからというもの、まりさは一度も笑顔になることはできませんでした。 「おはようまりさ」 真白な部屋の真白な扉を開けて、”職員さん”がまりさに挨拶をします。 この職員さんは、まりさの世話をする担当になったお姉さんで、 加工所職員の中で唯一まりさに優しくしてくれる存在でした。 「さぁご飯だよ、ゆっくりおたべ」 まりさは差し出されたご飯を黙って食べます。 おいしいはずのご飯さんも、”家族”と一緒に漁ったゴミ箱の中身に比べれば、味気ないものに感じてしまいます。 「惜しいなぁ、まりさは笑えばかわいいとおもうんだけどなぁ」 お姉さんはまりさの綺麗な髪の毛をなでながら、ニコニコして言います。 まりさにはお姉さんがどうしてニコニコしているのかわかりませんでした。 まりさはただただ口を真一文字に結んで、ゆっくりできない日々を、部屋の中で過ごしていました。 そしてお姉さんはまりさが食べ終わるのを待ち、少しだけお話をしながら食器を片づけ、部屋を出て行きます。 「じゃあねまりさ、また」 お姉さんが扉の向こうに吸い込まれていきます。 ガチャリ まりさはこの音が嫌いでした。 お姉さんがまりさが脱走するのを防ぐために部屋に鍵をかけていきます、 たとえまりさにその気がなかったとしても、それが決まりでした。 でもまりさはそのことで、所詮自分はここに囚われているのだと、強く思いました。 日々がたつにつれ、まりさは徐々に”生きる希望”を無くしていきました。 清潔な暮らし、おいしいごはん、優しいお姉さん。 たしかにはたから見ればゆっくりした生活にみえることでしょう。 しかしまりさの”心”は決して満たされませんでした。 以前捨てられたばかりのころのまりさであれば、このまま幸せに暮らしたいと願ったかもしれません。 しかし野良の生活を経て、守るべき大切なものを手に入れ、そして奪われたまりさは、抜けがらでした。 それはおとずれたであろうケンくんとの生活さえもふいにして手に入れた、まりさの宝物だったのです。 ある日それは、突然起こりました。 まりさが眠りから覚めると、”右目”がジクジクと痛み始めたのです。 「まりさのみぎめさん…ゆっくりしてね…」 まりさが右目をさすっていると、今日も職員のお姉さんが食べ物を運んできてくれました。 部屋の中に入ったお姉さんは、すぐにまりさの異変に気付きます。 「どうしたのまりさ、何かあった?」 まりさはしばらく黙っていましたが、どんどん増していく右目の痛みに耐えきれず、ついに口を開きました。 「みぎめさんが…」 しかしまりさの声は、突然なった携帯電話の呼び出し音にかき消されます。 「ごめんね、ちょっとまってね」 お姉さんはまりさの頭を優しくなでると、胸ポケットに入っていた携帯を取り出し、通話ボタンを押します。 「もしもし?」 まりさの左目が見つめるお姉さんの顔は、電話を取った瞬間からどんどん険しいものに変化していきました。 「ええ、そう…わかりました、すぐに行きます」 お姉さんは携帯のボタンを押して、通話をやめ、まりさに言いました。 「まりさ、ごめんなさい、急な仕事が入ってしまって、人手が足りなくて応援に行かなくちゃいけないの できるだけ早く戻ってくるようにするから、いい子で待っててね」 お姉さんはそう言って急いで部屋を後にします。 まって、という言葉をまりさは言えませんでした、きっと言ってもお姉さんを困らせるだけだとおもったのです。 それからすぐに、部屋の外からバタバタと人間さんの忙しそうな足音が多く聞こえてきました。 まりさはなんとか眠って右目の痛みをやり過ごそうとしましたが、 痛みは時間がたつほど、どんどん大きくなっていきました。 「ゆっくり…できないよ…」 まりさの額にはじっとりと汗が浮かび、もういてもたってもいられませんでした。 まりさはゆっくりと立ち上がり、扉の前に立ちます。 「お姉さん…助けて…」 それはまりさがケンくんと別れてから、初めて人間さんを頼ろうとした瞬間でした。 しかし無情にもその小さな声に反応してくれる人間さんは誰もいませんでした。 まりさが耳を澄ませると、すでに扉の向こうは静かになっていました。 まりさは誰かに気付いてほしくて、背伸びをしてドアノブをつかみます。 するとなぜか扉はゆっくりと開き、まりさは部屋の外に出ることができました。 急いでいたお姉さんは、部屋を出るときに鍵をかけ忘れてしまったのです。 まりさはあてもなくふらふらと部屋の外をさまよいました。 というのも、まりさはまりさの部屋にどうやって連れてこられたのか、あまり覚えていなかったのです。 だからどうすればどこにいけるかもわかりません、 今はただ、誰でもいいから人間さんに会って、右目さんをなんとかしてもらいたかったのです。 しかしまりさはすぐに部屋を出たことを後悔しました。 まりさが部屋を出てしばらく歩いた後、突如目の前に広がったのは 地獄でした。 まりさははじめ目の前で何が起こっているのかわかりませんでした。 まりさの目に映ったのは、まりさがいる場所から透明なガラスで仕切られた向こうにいる、 たくさんのたくさんのゆっくり達。 まりさの方からはゆっくりの後ろ側しか見えませんでしたが、 ゆっくりたちは微動だにせず、”動く床”に乗せられて、ゆっくりと右から左に移動していきます。 そしてまりさの視界の端にある”四角い大きな箱”の中にどんどんとゆっくり達が消えていきます。 ゆっくりが箱の中に入っても動く床は止まることはなく、そして箱のゆっくりが入った方とは逆の方向からは、 なにやら”黒っぽい塊”や”白っぽい塊”が次から次へと動く床に乗って運ばれて、視界の外に消えていきます。 「うわあぁああああああああーーーーーー!!!!!!」 そしてまりさはゆっくりと理解してしまいました。 そう、それはゆっくり達にとっての死の行進、加工ラインだったのです。 ゆっくりたちは動かないのではありません、動けなくされて動く床、つまりベルトコンベアに乗せられていたのです。 そして大きな箱は、ゆっくり達をひきつぶす殺ゆマシーン、反対側から出てきたのは、 無残にも引きつぶされ”あんこの塊”になったゆっくりでした。 そしてまりさは気づいてしまいます、気づかなければまだ幸せだったのに、”気づいてしまった”のです。 「うそ…だ…」 機械の中に吸い込まれていくはるか向こうのコンベアの上にいたのは、まりさの見知ったゆっくりでした。 「お…おとーさん、おかーさん、れいむにぱちゅ…」 そう、野良生活をしていた時の群の、父まりさに母れいむ、子れいむ、街の賢者のぱちゅりーでした。 それにほかの群のゆっくりたちも、一匹残さずベルトコンベアに乗せられていました。 後姿でお顔は見えませんでしたけど、一緒に暮らしたまりさにはわかったのです、わかってしまったのです。 「や、やめてぇぇーーー!!とめて!とめて!!」 まりさは必死にガラスをバンバンと叩きます。 しかし非力なまりさでは、叫んでも、ガラスを叩いてもその残酷な流れを止めることは出来ません。 そうこうする間にも、ベルトコンベアはゆっくりと、ゆっくりと殺戮機械にまりさの”大切な家族”たちを近づけていきます。 「おねがい…おねがいします…だれか…だれか!」 そして バクンッ! まりさの耳には、”箱が家族を飲み込む音”が確かに聞こえました。 バクンッ!バクンッ! 「あ…あぁ…」 それはまりさの目の前で、静かに、無慈悲に、ただただ作業的に、ゆっくりとつづけられました。 バクンッ!バクンッ!バクンッ… 「うっ……うぅううううう!!!!」 まりさは声にならない呻きを上げ続けます。 歯をくいしばって、どんなに機械を睨み続けても、ガラスをたたく手が擦り切れても、機械が止まることはありませんでした。 そしてゆっくりと、最後の”家族だったもの”が機械から吐き出されました。 まりさはそれを追ってベルトコンベアの流れと同じ方向にゆっくりと歩き出しました。 「だいじょうぶだよ…きっとだいじょうぶだよ…まりさはとくべつなんだよ、だからだいじょうぶ…」 まりさは涙でくしゃくしゃの顔を無理やり笑顔にして、”魔法の言葉”を唱え続けました。 しかし二度と奇跡が起こることはありませんでした。 ゆっくりとベルトコンベアが、ガラスのある範囲を越えて、まりさの目の届かないところにいってしまいます。 それがまりさと家族の最後の別れでした。 「どうして…どうして…まりさたちなんにもわるいことしてないのに…どうして…」 まりさの”両目”からぼろぼろと大粒の涙がこぼれ落ちます。 まりさの右胸のあたりに、ほほからこぼれたしずくが、ゆっくりと”赤い染み”を広げていきました。 まりさは右目の痛みを忘れてただただ泣き続けました。 いまは右目なんかよりも、心がバラバラになりそうなほど痛かったのです。 ごめんね、みんなごめんね、ゆっくりさせてあげられなくて、ごめんね… どうしてまりさはいきてるんだろう、まりさだけいきてるんだろう… こんなおもいをするくらいなら、まりさは”とくべつ”なんかじゃなくてよかったよ… ごめんね…ごめんね… それからしばらくして、一人で床に座り込み、茫然自失としているまりさを 加工所職員が発見し、まりさは部屋に連れ戻されました。 まりさが部屋の片隅でひざを抱えていると、白い扉が開き、お姉さんが現れました。 まりさはぼんやりとお姉さんの方を向きました。 まりさの目に映ったお姉さんは、なんだか右側がぼんやりとかすんで見えました。 まりさの右目はいまだ痛み、その痛みはどんどん大きくなっていきます。 「まりさ、その目、どうしたの!?」 お姉さんはまりさの異変にすぐに気がつきました。 このときまりさの右目からは、どろどろとした真赤な涙があふれていたのです。 この涙は、まりさの右目さんそのものでした。 生きる希望を無くしたまりさの右目さんは、今ゆっくりと”右目さん”から”いちごキャンディーさん”に戻ろうとしていたのです。 そしてそれは異物として排除されるかのよに、ゆっくりとまりさに痛みとしてあらわれていました。 けれどまりさはそんなことは忘れ、お姉さんに向って小さな声で訴えかけます。 「どうして…やくそくしてくれたのに…どうして…」 お姉さんは一瞬まりさが何をいっているのかわかりませんでした。 しかしすぐにはっとした顔になって、そしてすぐに目を伏せ、うつむいてしまいます。 「もしかしてまりさ、みてしまったのね…」 まりさはただただぼろぼろと左目からは透明な、右目からは真赤な涙を流し続けます。 「どうして!?やくそくしてくれたのに!まりさのかぞくにはてをださないっていってくれたのに! うそつき!やっぱりにんげんさんはうそつきなんだ!しんじゃえ!みんなしんじゃえぇぇ!!!!」 まりさは感情を爆発させて、近くにあったものをつかんでは、お姉さんに投げつけました。 しかしそれはクッションのようなものばかりで、お姉さんにはちっとも痛みを与えることはできませんでした。 だけどまりさの悲痛な叫びは、確実にお姉さんの”優しい心”をえぐりました。 「ごめんなさい…」 お姉さんは言います、お姉さんには謝る以外の償いは思いつきませんでした。 「ごめんなさい…」 お姉さんはまりさを優しく抱きしめ、ただただ謝り続けます。 「うぅうぅぅぅ!!!」 手足をじたばたとさせながら泣き叫ぶまりさを強く抱きしめ、 お姉さんはごめんなさい、ごめんなさいと何度も何度も繰り返しました。 まりさの涙が枯れ果てたころ、お姉さんが言いました。 「私たち”研究班”は約束通りまりさの群は触れないことにしていたわ、でも”駆除班”とは管轄が違うのよ」 まりさにとってそれは何の慰めにもなりませんでした。 しかしお姉さんも、まりさと約束をしたあの職員さんも所詮一人の加工所職員にすぎません。 確かに約束をしてくれた人間さんは約束を守ってくれていました。 しかし職場の他部署、ましてや”害獣としての野良ゆっくり”を 定期的に駆除する行政的な流れを止めることなどできなかったのです。 そしてそれは、”野良”であるということだけで駆除、処理される街のゆっくりたちの”残酷な運命”でした。 まりさはそれ以上お姉さんと口を聞こうとはしませんでした。 もうまりさは人間さんなど信用できなくなってしまっていました。 きっとつぎにかおをあわせたときにはおねえさんもまりさにひどいことをするんだ。 まりさは与えられた食事にも手をつけず、毎日そんなことばかり考えていました。 そして”残酷な運命”がついにまりさのもとにも訪れる時がやってきました。 いつものように、お姉さんが部屋の中にはいってきます。 しかしお姉さんはいつもと違い、暗い表情を浮かべ、手には真っ黒な袋を持っていました。 そしてお姉さんは、まりさに近付き、静かに言い放ちました。 「まりさ、検査の結果、あなたは”ただの胴つき”ゆっくりだということがわかったわ ゆっくりの傷を治す”不思議な力”も、加工所研究班は”所詮思い込みの力”だった、という結論に至ったわ」 まりさは何も言いません、ただ黙って力無くお姉さんを見つめるだけでした。 ここ数日で、まりさの右目の痛みは、すっかりとなくなりました、しかし右目さんが見えなくなってしまったのです。 なのでまりさは右目をぎゅっととじ、左目だけを開けていました。 そうしないと、まりさの大切な右目さんがいなくなってしまうような気がしたのです。 まりさにとって右目さんは、まりさに最後に残された、”ケンくん”との想い出でした。 お姉さんはゆっくりとつづけます。 「そして加工所は明日からまりさを置いておく部屋は無いと判断したわ、 残念だけどまりさはこれから”廃棄物”として処理されます」 そう言ってお姉さんはまりさの頭の上で、持っていた黒い袋を広げます。 まりさの頬に温かい水が落ちてきました。 まりさが見上げると、なぜかお姉さんの目がキラキラと光っていました。 そしてお姉さんはゆっくりとまりさに黒い袋を覆いかぶせ、その上からぎゅっとまりさを抱きしめました。 「ごめんね…ごめんねまりさ」 お姉さんは震える声で何度も何度も謝りました。 優しいお姉さんは、すっかりまりさに情をうつしてしまっていたのです。 そしてまりさは真っ暗な視界の中、急に重力を感じなくなりました。 持ち上げられて運ばれていくのです。 まりさは眼をとじ、ゆっくりと考えました。 まりさは”とくべつ”じゃなかったんだ… じゃあブリーダーのおねえさんも、ほかのにんげんさんとおんなじでうそつきだったのかな… もうわかんないや… このまま、まりさはころされちゃうのかな… しんだら、”みんな”のところにいけるかな… でも、しんじゃうまえに、あいたかったよ… ケンくん… ドサリッ! まりさの体が急に硬いものに叩きつけられました。 まりさは袋に入ったまま投げ捨てられたのです。 しかしそのとき、まりさは、足元にある袋の口からわずかに光が漏れていることに気がつきました。 まりさが足で袋の口を押すと、すんなりと袋は大きく口を開けて、まりさは外に出ることができました。 お姉さんがわざと袋の口をとても緩く締めていたのです。 それはお姉さんがまりさに出来る最大の償いでした。 まりさは重たい体をゆっくりとおこし、左目で辺りを確認します。 外はわずかに雨が降っていました。 まりさが這い出たものと同じ黒い袋が、そこかしこに転がっていました。 まりさが途方にくれていると、遠くから人間さんの声がしました。 まりさは反射的に声とは違う方向の、近くの茂みに身を隠しました。 「ったくめんどくせぇなぁ、雨の日はお休みがいいよなぁ」 「まぁまぁ、そういうなって、ゴミってやつは毎日出るもんだ」 まりさが身を隠した直後、車輪のついた大きなかごをもって二人の人間さんがやってきて、 黒い袋をつかみ、次々とかごの中に放り込んでいきました。 「これで全部か?」 一人が最後の袋を放り込んで、もう一人に確認します。 「ん~、なんでか知らないけど空の袋が一枚あったけど、それで全部じゃないかなぁ」 (たいへん、きづかれちゃうよ…) まりさは人間さんに音をたてて気付かれないように慎重に茂みの奥へ奥へとはいっていきます。 幸いなことに、雨音がまりさの気配を消してくれました。 二人の人間さんは、まりさに気づくことなくもと来た道を戻って行きました。 しかしまりさは歩みを止めません。 まりさは自分が今どこにいるかもわかりませんでした。 なのでとりあえずただ闇雲にまっすぐ歩くことにしたのです。 歩いても歩いても、茂みは続いていました。 そして気が遠くなるほど歩きつづけていると突然まりさの足元にあった草がなくなり、コンクリートに変わりました。 道路に出ることができたのです。 しかしそれでもまりさはここがどこかわかりませんでした。 お姉さんが出してくれていたご飯を拒み続けていたおかげで、まりさの体力は既に底をついていました。 それ以上歩くことが出来ず、まりさはゆっくりと座り込んでしまします。 まりさは疲れ切り、もうなにもかもがどうでもよくなってしまいました。 袋から出た時人間さんが来て、反射的に身を隠してしまったけれど、 あの時すんなりと見つかって殺された方が楽だったかもしれません。 まりさは、ぼんやりと、最初に飼ってくれたお兄さんに捨てられた日のことを思い出していました。 あの日も丁度こんなふうに雨が降っていました。 まりさは思いました。 あめさん、こんどこそまりさをとかしてね… しとしとと、雨が振り続けます。 透明なしずくが、まりさの髪の毛濡らし頬を伝いお洋服をぐしょぐしょにしていきます。 閉じた右目の回りに赤みがかったしずくが流れだします。 しかしそれもすぐに雨で薄まり、わからなくなってしまいます。 そしてまりさはゆっくりと目をとじ、ごろりと横になりました。 もう二度と目覚めないことを祈って。 ------------------------------------- 「ゆ…ゆぅ…」 まりさが気がつくと、そこは暖かで光があふれる、とてもゆっくりできるお花畑でした。 まりさが目をこすりながらあたりを見回すと、そこにはあの時別れたはずの”家族”の姿がありました。 「ぱちゅ!?おとーさんまりさに、おかーさんれいむに、れいむも!?」 まりさは皆の元に駆け寄り、家族たちを抱きしめます。 「よかった、生きてたんだ、やっぱりきせきさんはおこったんだね!」 喜ぶまりさをいさめるように、ぱちゅりーが静かに口を開きました。 「むきゅ…ちがうのよまりさ、ここはてんごくさんなのよ…」 まりさはぱちゅりーの声に耳を疑います。 「えっ、じゃ、じゃあやっぱり…」 まりさは今まで天に昇っていた気持ちがしゅんと萎え、涙目になってしまいます。 「う…ごめんなさい、まりさはどうすることもできなかったよ、ごめんなさい…」 「あやまることはないわ…もともとぱちゅたちは、いずれこうなる”うんめい”だったのよ… のらのせかいでそうながくいきていけないことは、みんなしっていたわ…」 今度はぱちゅりーの横にいた父まりさが元気に跳ねながら答えます。 「だけどまりさたちは、まりさのおかげでとってもゆっくりできたよ!だからだれもまりさをせめたりしないよ!」 父まりさがそういうと、みんなが、そうだそうだと声をあげます。 「あ、ありがとう!でも、ここがてんごくさんなら、まりさもしんじゃったんだよね、 これからはここでみんなでゆっくりしようね!」 「だめだよ!」 母れいむがまりさに厳しく言いました。 その語調にまりさはビクリと身を震わせます。 「ど…どうして…?」 「れいむたちにはわかるよ、まだまりさは”えいえんにゆっくり”してないよ! いきてるんだから、もっともっといきて、れいむたちのぶんもゆっくりしていってね!」 「むきゅ、そうよ、いつまでもここにいてはいけないわ、もどるのよ」 「でも…でも…」 まりさはどうしたらいいかわかりませんでした。 失ったはずの家族にせっかく出会えたのです、もうこれ以上つらい思いをせずに、ここでゆっくりできたら幸せでした。 まりさの足元で、まだ小さな子れいむがぴょんぴょんと跳ねながらいいました。 「おねーちゃん!なかないでね!れいむはおねーちゃんのとってもゆっくりできるえがおがだーいすきだよ!」 「れいむ…」 まりさはあふれる涙をなんとかこらえながら、無理やり笑顔を作ろうとしました。 だけどやっぱりできませんでした、まりさの目からは次々と涙があふれてしまいます。 「やだよ…まりさ、みんなともっとずっとゆっくりしていたいよ…もうつかれちゃったよ…」 子れいむが言います。 「だめだよ!なきむしでゆっくりできないおねーちゃんなんか、おねーちゃんじゃないよ! ゆっくりあっちにいってね!」 子れいむは小さな体をぽすぽすとまりさの体にぶつけてきます。 「ゆっくりできるえがおさんになるまで、ぜったいぜったいここにきちゃだめだよ!れいむとのやくそくだよ!」 子れいむの声に合わせて、群の皆が一斉にまりさの体に体当たりをします。 けれどそれは、とても優しい、ぬくもりのある衝撃でした。 あっちにいけ!もどってくるな!と、みんなは笑顔でまりさに”エール”を送ります。 けれどまりさは踏みとどまってしまいます。 「うるさいよ!まりさは”とくべつなゆっくり”なんだよ!みんながたばになったって、まりさにはかてないよ!」 まりさがぷくー!と頬をふくらませて皆を受け止めます。 そのまま踏ん張ろうとしたとき、まりさの耳に、突然声が飛び込んできました。 『まりさ!死ぬな!戻って来い!』 まりさはその力強い声に、聞き覚えがありました。 「ケン…くん?」 まりさの踏ん張ろうとしていた足から、急に力が抜けます。 そのまままりさは、たくさんのゆっくり達に囲まれ、押しつぶされてしまいます。 「むきゅ…やっぱりあなたはここにいるべきじゃないわ、たいせつなひとが、いたのね…」 「みんなのぶんもゆっくりしなきゃ、ゆるさないんだぜ!」 「れいむはまだまだなきむしでおちびちゃんなまりさのこと、 いつでもみまもってるからね!れいむはおかーさんなんだよ!」 「おねーちゃん!ゆっくりまたね!」 『ゆっくりしていってね!』 温かな声の波と、柔らかな光に、まりさの意識が溶けていきます。 みんな…ありがとう… まりさは意識が途切れる最後の瞬間まで、ありがとう、と繰り返し続けました。 ------------------------------------- 「…!…!」 まりさの耳に、誰かが力強い声をかけ続けていました。 「ゆ…」 小さくうめき声をあげ、まりさがゆっくりと目を開けます。 しかしそれはすぐに真っ暗な世界に変わってしまいました。 「よかった!生きてた!心配したんだぞ!」 まりさは目覚めた瞬間、お顔を強く強く抱きしめられたのです。 しかしまりさには、それが誰か声でわかりました。 「ケン…くん?」 「そうだよ、僕だよ、また会えたね、ずっと会いたかった」 ケンくんはまりさを抱きしめる腕を放し、顔をまりさにみせてくれました。 まりさの左目には、たしかにケンくんの笑顔が写っていました。 「ケンくん…まりさも…ずっとずっとあいたかったよぉぉ」 二人が再開の喜びを分かち合っていると、ケンくんの背後から、男の人が現れました。 「おぉ!気がついたのか、よかったよかった!」 「ゆっ?」 ケンくんとの再会の喜び以外、状況が飲み込めていないまりさに男の人、 ケンくんのお父さんがゆっくりと事情を説明してくれました。 まりさがあの日、道路の端で倒れているところを、近隣住民が ”女の子が倒れている”と通報し、まりさは病院に運ばれたのです。 しかし病院の検査で、まりさが人間ではないことが発覚し、”ゆっくりの病院”に搬送されたのでした。 それが”ケンくんのお父さんの病院”だったのです。 そして、運ばれてきたまりさが、”あのまりさ”だと気付いたケンくんが、 目が覚めるまでつきっきりで看病してくれていたのです。 事情を説明し終わった後、ケンくんのお父さんが笑いながら言いました。 「しかしまぁ、ずいぶんかわいいゆっくりちゃんだなぁ、これはケンが惚れるわけだ」 お父さんがそう言うと、ケンくんは顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまいます。 「そんなんじゃないよ!でもまりさ、本当によかった、もう二度と会えないと思ってたよ」 ケンくんがまりさの手を握って、言いました。 「もう絶対にどっかにいったりするなよ、まりさはもう”うちの子”なんだからな!」 「ゆゆっ!?ほんとう?ほんとうにいいの?」 まりさは嬉しさのあまり困ってしまいます、それはまりさがとうにあきらめたはずの、幸せなもう一つの未来でした。 「もちろんさ!」 ケンくんが笑顔でいいました。 「うちにも、キミみたいなかわいいマスコットがいれば、お客さんがいっぱいきてくれるかもしれないね、 そうじゃなくても、大歓迎さ、いいだろう?母さん」 ケンくんのお父さんが、後ろの扉に向って声をかけます。 するとケンくんのお母さんが、ひょっこりと顔をだして、まりさの元にやってきました。 「いやぁ、私は最初は反対だったんだけど、まさかこんな可愛い子だったなんて… 私、こんな可愛い娘もほしかったのよね、ケンなんかよりかわいがっちゃうもんね~」 ケンくんのお母さんは、デレデレとしただらしない顔になって、まりさの頭をなでまわしました。 「ゆ…ゆゆっ!」 三人の笑顔に囲まれて、まりさはゆっくりとほほ笑みました。 それはまりさが家族と別れてから見せる、久し振りの本当の笑顔でした。 だけどケンくんは、まりさの顔を見て、いいました。 「あ、だめじゃないかまりさ」 ケンくんはまりさの右目を指さして言います。 「右目、見えるはずだろう?もう一度僕に見せてくれよ、あの綺麗な”赤い目”」 「ゆ…でも…」 まりさは困ってしまいます。 あの右目が見えなくなってしまった日のことを、まだケンくんにはいっていませんでした。 その様子をみて、ケンくんはゆっくりとほほ笑みます。 そして言いました。 「大丈夫だって、言っただろう、さぁまりさ、僕を信じて…」 ケンくんが魔法の言葉を唱えます。 それだけでまりさは、心の底から勇気が湧いてくる思いでした。 そしてケンくんがまりさの右瞼を優しく指でなでます。 ゆっくりと、ゆっくりとまりさが右瞼をあけます。 まりさの”真っ赤な右目さん”には確かに、とっても明るい、幸せな未来が映っていました。 おわり ------------------------------------- ---おまけ…まりさのひみつにっき--- ○がつ○にち、はれ きょうはまりさのしんっじんっなーすさんのでびゅーのひだったよ! おとーさんのびょういんさんには、まいにち、おけがをしたり、 びょーきさんのゆっくりがいっぱいくるよ! でもまりさは”とくべつなゆっくり”だから、しょにちさんからだいかつやく! けんくんじきでんの、まほーのことばで、みんなあっというまにえがおさんになりました! おしごとがおわったら、けんくんといっしょにおかいものにいきました。 しばらくあわないうちに、まりさはけんくんよりほんのちょっとせがのびていました。 まりさのほうがおねーさんみたいだよ! でも、きっとけんくんはすぐにまりさよりおっきくなるとおもいます! かたさんをならべておさんぽできるのは、いつまでかなぁ。 けんくんはいっつもてれておててをつないでくれないけど、 いつかおっきくなったけんくんにおひめさまだっこしてもらいたいな! けんくんは、”とくべつなゆっくり”のまりさの”とくべつなそんざい”だよ! おしまい。 ------------------------------------- スペシャルサンクス:ぷにあきさん あとがき いかがでしたでしょうか。 このSSを書くきっかけとなったぷにあきさんのイラストは ふたば系ゆっくりR-18ろだ ttp //loda.jp/otaku_13854/?gal=1 の 1.jpg と 2.jpg の二つです。 うまく文の中に表現できていたでしょうか。 幼いまりさを取り巻く環境をえがくために、あえて文全体を『ですます調』にしてみました。 読みにくく感じてしまったら、申し訳ありません。 かなり妄想駄文を書きなぐってしまったので ぷにあきさんがイメージしていたものと大分違うかと思いますが、どうかご容赦ください。 胴つきまりさへの愛がこういった結果を招いてしまったのです(笑 ご意見、ご感想などあれば ふたば系ゆっくりSS感想用掲示板(単独作品用) に、 ばや汁あき(仮 とくべつ anko1829 anko1830 というスレをたててみましたので、出来ればそちらにお願いいたします。 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13856/1276714275/ 以下蛇足 *本編に出てきた登場人物とは一切関係ありません。 ~おませなまりさとお兄さんの日常~ 「ふぅ~、すっきりすっきり」 トイレから出て、部屋に戻ろうとするお兄さんに、 物陰から二つのまんまるなおめめがジットリとした視線をぶつけていました。 「お…おにいさんったら…まりさというものがありながら”ひとりすっきり”だなんて!」 まりさは部屋に入ったお兄さんを追いかけます。 お兄さんがゆっくりと部屋でくつろいでいると、 小さなほっぺをぷくーっとふくらませたまりさがすぐに部屋に入ってきました。 「まりさ、どうした?」 まりさはまゆげさんをキッと吊り上げて、お兄さんを睨みつけます。 「おにいさん、ちょっとそこにすわってね!」 と、いってもお兄さんはすでに床に座ってくつろいでいるところでした。 「ん?なにかあったのかな?」 お兄さんはまりさにやさしく微笑みかけます。 「おにいさんが、まりさというものがありながらあんなことするからだよ! これはおしっおきっだよ!」 そういうとまりさは、おにいさんの元に駆け寄り、お兄さんのほっぺたに自分のほっぺをくっつけます。 「まりさのみりょっくっさんにもういちどきづかせてあげるよ!」 そしてまりさは合わせたほほをゆっくりと左右にこすりつけました。 「すーりすーり!」 まりさのぷにぷにのほっぺたの感触に、お兄さんはたまらず声をあげます。 「あはは、どうしたんだよまりさ」 「どう!?きもちいーでしょ?」 「たしかに、きもちいいな、まりさのぷにぷにのほっぺ」 単なるスキンシップと勘違いしたお兄さんは、まりさを軽く抱きしめ、 まりさのすーりすーりに合わせてほほをすりよせました。 「ゆゆっ!?おにいさんだいったんっだよ!だめだよ!まりさ、このままじゃ!」 「そーれ、すりすり~」 お兄さんは無邪気にまりさに頬をすりつけ続けます。 「す…す…すっきりー!!」 まりさはぶるぶるっと体を震わせると、体から力を抜いて、お兄さんの腕の中にくたりと身を預けてしまいました。 「も、もう…おにいさん…えっちすぎるよ…」 お兄さんはまりさが何をいっているのかよくわかりませんでした。 「ん~…なんだかよくわからないけど、よしよし」 お兄さんはやさしくまりさの頭をなでなでします。 その手の感触に、まりさがビクリっと体を震わせます。 「だめだよおにいさん、まりさいっちゃったばっかりなんだからね、でりけぇとさんなんだよ!」 (ゆふふ、これでおにーさんはまりさのみりょっくっさんにめーろめーろだね!) 「おにーさん、もう”ひとりすっきり”なんてしちゃだめだからね!」 一人でよくわからないことを訴えるまりさの頭を、お兄さんはとりあえず優しくなで続けました。 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 おしっまいっだよ! ------------------------------------- ぷにあきさんのおませなまりさを見るとどうしてもこんな妄想が止まりません、なんとかしてください。 これでほんとにおわりです、長々とお付き合いありがとうございました~ 今までの作品 anko1748 かみさま ばや汁あき(仮)でした。
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『野良のゆうかにゃん.TXT』 6KB 愛で 制裁 日常模様 野良ゆ 現代 独自設定 うんしー 初投稿です 『野良のゆうかにゃん』 重い・・・。 新居に引っ越したのはいいのものの、生活用品が足りず近くのホームセンターでかなり買い込むこととなってしまった。 両手に買い込んだものでパンパンになった買い物袋を持ち、今後のことを考えながら歩く。 親戚の持ち家をかなり安く借りることが出来たが、独り身には広い・・・猫でも飼うか?犬でもいいな・・・などと考えているうちに家に着いてしまった。 鍵を開け、荷物を持って入る。 両手が荷物でふさがっているため少し玄関に入りづらく感じる。 ふと足に ぽよん とやわらかい感触があった。 しかも、そのままぐいぐい押してくる。 驚いて下を見ると、小さな女の子・・・いや、緑の髪、麦藁帽子から突き出た猫の耳、下膨れの丸顔・・・ゆっくりだ。 TVで見たことあるな、確かゆうかにゃんという種類だ。 「おい、ちょっと、なにする。やめ・・・。」 ゆうかにゃんは俺の脚をすり抜けようと、足の隙間にぐいぐいを体を入れてくる。 俺は、勝手に家に上がられるのは気持ちが悪いから当然抵抗するが、いかんせん両手が塞がってるので捕まえられない。 おまけにこいつ結構力が強いぞ。 「やめろ、入るな。何なんだお前。」 と声を掛けるも、ゆうかにゃんは俺の目を見つめて キリッ! とした顔をするだけで、何も返事をしない。 とうとう足をすり抜けられ、家に上がられてしまった。 ただ玄関で靴を脱いで行ったのが、微妙にお行儀がいい。 とりあえず荷物を玄関に置き、ゆうかにゃんを捕まえて家から出すため、居間に入るとゆうかにゃんの他に、野良ゆっくりが3匹・・・れいむとまりさに子ゆっくりのれいむ・・・がいた。 ああ、喚気するために窓開けていたんだっけ。 周りを見渡すが、特に荒らされてはいないみたいだ。 これが話に聞くおうち宣言か?と見つめていると 「ゆゆ!やっとかえってきたね。」 「まちくたびれたよ。ぷんぷん。」 「あまあまよこちぇー。」 といきなり騒ぎ出した。 「おい、ここが俺の家だとわかっているなら出でけよ。それともなんか用か?」 と話しかけると、親のれいむが 「はぁ、やっぱりにんげんさんはあたまがわるいね。ねいむたちはね、あそびにきてあげたんだよ。わかる?おきゃくさまなんだよ。おもてなししなくちゃいけないでしょ。ん?あとぶさいくだね。」 と返事をした。 何処でこいつらはこんなことを覚えてくるんだろうな 「勝手に上がりこんで来て、何がお客様だ。さっさと出ていけ。」 と俺が怒鳴るも親まりさは 「はぁ。ほんとにゆっくりしてないんだぜ。こんなにゆっくりしてるいけめんまりさと、ぜっせいのびゆっくりのれいむ、ほうせきのようなおちびちゃんが、あそびにきたんだぜ。うれしいでしょ。ゆっくりできるでしょ。おれいにあまあまもらってあげるぜ。」 と意味がわからないことを言うし、子ゆっくりに至っては 「でりゅ、もりゅもりゅでりゅよー!」 とうんうんを撒き散らしている。 本当に訳が分からない。 だめだ、こいつらと話をすると精神が削られる。 俺はげんなりとしながら、何の気なしに隣に立っていたゆうかにゃんを見ると キリリッ! と顔をひきしめ、ゆっくりと頷いた。 「え。なに、お前も遊びに来たの?」 と俺が声を出すや否や、ゆうかにゃんはいきなり親まりさの顔面を蹴り上げた。 「ぶべらあ!」 と叫び声を上げながら、親まりさは吹き飛び庭に蹴り出されてしまった。 「いぢゃいいいぃ!」 と叫びながら涙と涎としーしーとうんうんと折れた歯を撒き散らし、ビッタンビッタン跳ねているのが本当に気持ち悪い。 そして、ゆうかにゃんは何が起こったのか理解していない親れいむを持ち上げ、まりさ目がけて投げつけた。 「おそらをとんでいるみたい。」 れいむは、いい笑顔で放物線を描き、まりさに命中しまりさを押しつぶした。 「ゆふ。いだいよ。なんなの。ゆ?ま、まりさぁ!」 「ゆっ・ゆ・・ゆ・・・。」 あれは致命傷だな。 さらに、「れいみゅのうんうんゆっくりしてるにぇ。もうこれはこくほうだにぇ!」と意味不明なことを言っている子れいむをつかみ上げ、オーバースローで親れいむに投げつけた。 バチコーンといい音が鳴り、親れいむの眉間に子れいむはめり込み白目をむいている。 「ゆんやぁあ!いだいいいいいいぃいい!もうおうちかえる!」 親れいむは子れいむを額にめり込ませたまま、転げ出るように庭先から飛び出して行った。 そして、すぐに車のブレーキ音と何かが踏み潰される音がした。 ゆうかにゃんはその音を聞き、満足げな表情をうかべた後、俺を見つめながら キリリリッ! とキメ顔をして親指を立てた。 「うなずいたのは、『駆除は任せろ』という意味だったの?いや、そんな頼んでないし。お前も出てけよ。」 とつっこむとゆうかにゃんはコテンと横に倒れ、すんすんと泣き出した。 俺が悪いのか・・・なんだろう・・・この罪悪感・・・。 「あーほら、ええとチョコレートあげるよ。ね。だから泣き止んで。ついでに帰ってね。」 俺がチョコレートを差し出すと、ゆうかにゃんは急に泣き止み キリリリリッ! とキメ顔をしてからチョコを受け取った。 そして、玄関へトコトコと歩き出した。 やっと帰ってくれる。 安堵しながら玄関ドアを開け、「じゃあな。」と声を掛けようとすると、ゆうかにゃんはポケットから白い布切れを取り出して俺に差し出してきた。 「え、くれるの?」 と尋ねると、ゆうかにゃんはコクンと頷いた。 俺がその布切れを受け取ると、ゆうかにゃんは外へ歩き出した。 しかしなんだろうこれ。 白い・・・靴下か?小さいな・・・。 俺が布切れを調べていると 「みつけたーーーーーーーーーー!!!」 外から大声が聞こえた。何事かと除くと 「あたしのくつしたを、かえせ!」 と胴つきのふらんが、ゆうかにゃんに怒鳴っている。 もしかして・・・これのことか・・・ ゆうかにゃんは、スタスタとふらんに近づいたかと思うや否や、ボディブローを打ち込み、ふらんがお腹を抱えくの字になったところに顔面への膝蹴りを叩き込んだ。 さらに、仰向けに倒れたふらんに馬乗りになり、容赦なく拳を振るう。 「ゆう・・あっかっ・・やめ。」 ふらんがぐったりして、抵抗が無くなるとゆうかにゃんはふらんのスカートの下に手を入れ、下着を脱がし始めた 下着を脱がされていることに気がついたふらんが抵抗しようとするが、またゆうかにゃんがふらんの顔面へ拳をめり込ませる。 必死で抵抗していたふらんだったが、十数発殴られたところで 「うっ・・・ひっく・・もうやめて・・・いたいの・や・・だ・・・うう・・。」 と心が折れたのか抵抗をあきらめた。 ゆうかにゃんはふらんの下着を脱がし終わると、それをポケットにしまい込み、そのまま走り去って行った。 後に残ったのは、泣きじゃくっているふらんだけである。 ゆっくりなんてどうでもいいと思い放って置いたが、なんだか可愛そうになり俺はふらんにオレンジジュースをかけて手当てをした。 靴下を返してあげると最初は訝しがったが、ゆうかにゃんとの出来事を話すと納得し 「おにいさんありがとう。」 と満面の笑みでお礼を言われた。 その笑顔が、たまらなく可愛く思えた。 その後、俺はふらんを飼いゆっくりにした。 そして1ヶ月がたったがふらんはいまだに下着を着けていない。 ゆっくり用品店で買い与えても、はかないのだ。 理由を聞くと、下着を盗られたのが口惜しくて、取り戻すまではかないことにしたそうだ。 正直やめて欲しい。 知らない人からすると、俺が飼いゆっくりでHENNTAI行為しているように見える。 本当にやめて欲しい。 そしてあのゆうかにゃんは、あれから姿を見せない。 今考えても何故ふらんの下着を盗むのか理由が分からない。ふらんに聞いても分からない。 まぁ、ゆっくりの行動に意味を求めてもしかたがないのかもしれない。 「5000えんでうれたにゃん。」 おしまい 挿絵:さなえあき 挿絵:車田あき
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前編へ ~☆~ 一方、ゆぶき町では怪しいゆっくり達が右往左往の大騒ぎしていた。 闘争中のてゐを捕まえる為、ゆぶき町全域を探し回っているのだ。 「おい!そっちに居た?赤ちゃんを連れたうさ耳ゆっくり!」 「いや、駄目だ!何処にも居ない!」 「むぅ、これだけの数で探しているのに、手がかりさえ得られないとは…。」 だが、一向に見つからないてゐの姿に、怪しいゆっくり達は焦り始めている。 …ふと、そんなゆっくりの目にマンホールの蓋が映る。 「…まさか、下水道を移動しているとか?」 「えェ!?まさか、そんな方法で!?」 「ありえないとは限らないだろ!映画ではよくある手法だぜ!」 あーだこーだと言っているが、いつまでも言い争っていてもしょうがない。 ゆっくりの何匹かが、マンホールの蓋を開けて、下水道へと下っていく。 「これで見つかるとは限らないけど…。」 「残りのメンバーは隠れられそうな所をドンドン探してみようぜ!」 そして残されたゆっくりは地上を更に徹底的に探し回るのであった。 怪しいゆっくり達の仲間のうちのれいむが逆さになって転がっていたダンボールを持ち上げて、「何処に居るの~~!?」 まりさが側溝の蓋を開けて。「大人しく出てくるんだぜ!」 ありすがゴミ箱をあさりながら。「今出てきたらおいしいタイヤキをあげるわよー!」 他のゆっくり達もあちこち探し回るが、てゐの姿は一向に見つからない。 …と、探しているゆっくりの内の一匹が、しきりにちらちらとある地点を見ている。 「…オイみょん、さっきから何しているんだ、気になって仕方ないぜ!」 「いや、だってさっきからあの変な胴つきゆっくりがこっちを見ている気がして…。」 「え?」 それを聞いてまりさがみょんの視線の先を見る。 …そこには、三度傘を深く被り、虚無僧のいでたちをした妙な胴つきゆっくりが一人据わっていた。 確かにそいつはしきりにちらちらとこっちを見ているような気がする。 怪しいまりさが、更に怪しい虚無僧ゆっくりに近づいて話しかける。 「オイ、お前、さっきからこっちをちらちらと見ていて何のつもりだぜ!?」 虚無僧ゆっくりは俯いたまま、ぼそりとこう呟いた。 「…いえ、私はそのゆっくりが連れている半霊がマシュマロみたいでおいしそうだな~って思っていただけです。」 「え!?」 :__」`ヽァ'7 ,,.____.,,__ : ハ : :ヽ ;!ゝ''"´_ ____ .`"'ヽ、: : ノ ヽ : :Y ´ `ヽ ヽ,: : / .ノ : : / / / / i 、 ヽ. \ ';,: : i ( : :| i |-‐ハ | ハ___ i i. | : : i `ヽ :. :| ハ ,ォ-;、|__ハ__/_」__`ハ | |: : ノ | : :レヘ__,!ノ(◯) ´(◯) Y!-| |: : ,. '"  ̄ ~ ̄~`ヽ、 | : :`ー/ ! "" ,rェェェ、 "" i | i |: : ,' i : :/ ヽ、 |,r-r-| ,/ | | .|: : i (◯), 、(◯) i : ヽ :レヘ_/丶..,.`ニニ´.___//,ノ,/ :: !"" ,rェェェ、 ". i : : ',. |,r-r-| . / : >,、 _`ニニ´,._/ 怪しいみょんはそう言って自分の半霊を見る。 半霊はその虚無僧ゆっくりから身を隠すようにみょんの後に隠れる。 「それは一体何味ですか?マシュマロ味ですか?はんぺん味ですか?」 「ひ、ひぃいいいいい!」 虚無僧ゆっくりの問いかけに、身を震え上がらせる半霊とみょん。 「気、気味の悪い奴だぜ、おいみんな!ここの捜索は後回しにするぜ!」 「ウ、うん!ゆっくり理解したよ!でも半霊が何味なのかは確かに気になるよ!」 「…………!」 更に震え上がるみょんと半霊を引きずるように、怪しいゆっくり達はその場から引き上げていく。 …虚無僧ゆっくりが去っていくゆっくり達を見送ると、横に視線を向ける。 「…連中は去ったわよ、そろそろ出てきなさい、てゐ。」 ,. -‐' ┐__,,.._ / l-‐─-='、ニー -,,,__, / _ ノ ノ ) ヽ. _ ;l.'-―‐ ' "´ヽ. / -=_. ´) Y--‐''"´`''、 i. - 、 | _l. 、_) | V,-,-,-,-( |ヽ、,ノ | ヽ _ _ l l ) ./∧ーーーー |‐'". `、 _ ,イ ; -‐―‐-、.--、 |' ー、'"`ヽ ヽ l ー-‐<__フ / i. | | ノ ヽ、  ̄ ー‐-‐ !、 l_,,..-< _ /,..-‐''" 丶. 、;;;;__ `_、_l ;; l ヽ/  ̄ ̄ ̄ ̄ ' ー ―――-┘' そう、横に居るテルヨフに問いかける。 しかし、テルヨフは全くピクリともしない。 「…どうしたのよ、てゐ、出てきなさい!敵は去ったわよ!」 虚無僧ゆっくりはテルヨフを持ち上げ、まるで貯金箱の中身を確かめるかのように振りまくる。 「まさか、中で何があったの?オイ、返事しなさい!てゐ~!」 「それの何処にどうやって隠れろというんじゃ馬鹿ぁあああああああ!」 一心不乱にテルヨフを振りまくる虚無僧ゆっくりの後ろからてゐは後頭部に回転体当たりをぶちかます! 弾みで、虚無僧ゆっくりの首がポロリと外れてしまう。 一瞬ドキッとする光景だが、心配は無い。 名瀬から、虚無僧ゆっくりの身体は、文字通り飾りの身体なのだから。 「ちょ、てゐ、何処に隠れていたのよ。」 ,,.. -──-- 、.,_ ,. '" `ヽ. ,.' ; ヽ. /__二ニ=-ハ i __i_ 、 ', / / ハ ! ! ハ __!_ '; i i i /! ,!ヽ.! L ! ー- ヽ! i | | ! ハ (ヒ_] ヒ_ン ) !__」 i | └-iヽ ! ,___, "" | ! | | .| 7" ヽ _ン .レi | | レ'iゝ、 ,イ | i | | ! ! i >ー-r i; -! | | | | 落ちた弾みで外れた三度傘の下から現れたのは、長く美しい黒髪が特徴のゆっくり、かぐやであった。 「そんな事より、マジでそいつの何処に隠れろというのさ!馬鹿なの!?死ぬの!?」 てゐはかぐやにまくし立てるように怒鳴りかける。 ちなみに、てゐは丁度かぐやの後に置いてあった大きなゴミ箱の中に隠れてました。 「うう、やっぱりくちゃかったよ…。」 鉢植えの赤ちゃんれいむもゴミ箱の上に置かれています。 …まぁ、どうでもいい事だが。 「何行ってるのよ、テルヨフの力は凄いわよ!なんと、こんな所に収納場所が!」 かぐやはそう言うと、テルヨフを裏返して背中のチャックを下ろした。 ,. -‐' ーー__,,.._ / 、ニー -,,,__, / _ ;l.'-―‐ ' "´ヽ. / ''、| i.,,__ | ,- ,l ̄ |. `i 、 | ー ーl | -- 、ノノ [三三三三三三三三三三三三三三三三三三三] `、 ―‐- | |´"'' ー、..,, ヽ / i. l ノ ヽ ヽ、 l_,,..- | /_,,..--'..,,_ノ 丶. 、;;;;__ 、_l ;; l ヽ/  ̄ ̄ ̄ ̄ ' ー ―――-┘'~ 背中のチャックからは、無数の目玉が覗き込んでいた。 「怖いよ!隠れたくねぇよ!何処に連れて行く気だよ! って言うか前から思っていたけど、それは一体何なんだよ!」 「元のキャラ的に背中にチャックがあっても不思議じゃ無いでしょ!」 「とりあえず、元のキャラはそこまで得体の知れない存在じゃ無いと思う!」 …なんだか、かなりメタな方にまで話題がずれている二匹であった。 「…あんたちゃち、なきゃがいいにぇ。」 赤ちゃんれいむはそんな二匹を見てそんな事を呟いた。 「別に仲良くねぇよ!」 聞こえていたらしく、てゐがそう言い返す。 「…で、なんだか追われているみたいだから匿ってあげたけと、 何で追われてるの?しかも何で赤ちゃんなんかつれて…。」 てるよはそう言って会の毛を伸ばして、ゴミ箱の上の赤ちゃんれいむを引き寄せた。 「うにゃああああ!?」 引き寄せられる際、赤ちゃんれいむが叫び声をあげる。 まぁ、いきなり大量の髪の毛が迫ってくれば、子供じゃなくても叫び声を上げたくなる気持ちも解る。 かぐやは引き寄せた赤ちゃんれいむの顔をじっと見つめる。 「…それにしても、見れば見るほどあんたに似てふてぶてしい顔してるわね。 ここまで来ると、ふてぶてしさで80日間世界一周できるんじゃない?ってレベルね。」 「どれだけふてぶてしいのさ、このゆっくり。」 かぐやの台詞にツッコミを入れるてゐ。 「…まぁ、そのふてぶてしい赤ちゃんをあのゆっくり達が必死になって追いかけてるんだけどね。 怠惰ふてぶてしいだけじゃ無いみたいだよ、こいつは。」 「そうだよ!ふてぶちぇしいだけじゃないんだよ、えっへん!」 てゐの言葉を受けて小さな胸?を張る赤ちゃんれいむ。 「…えばってどうするのさ馬鹿。」 てゐは呆れから来る溜息を吐いた。 「…まぁ、このふてぶてしい赤ちゃんの事は良く解らないけど、あのゆっくり達の事は良く知ってるわ。 …多分、あいつらはイオシスカンパニーに雇われた反逆ゆっくりよ。」 かぐやは、先ほどまでとは明らかに違う、真面目な表情と口調でそう言った。 「…イオシスカンパニー?」 あまり聞き慣れない言葉に、てゐは首をかしげる。 「知らないの?古今東西のクスリを製作、販売している有名な会社なのに。 ホラ、ここから見えるところに本社ビルだってあるのよ。」 かぐやはそう言って空を髪の毛で差した。 髪の毛の先の景色には、周りのビル群より一際高い、イオシスカンパニーと書かれたビルが見える。 「ふ~ん、あたしは薬の事には無頓着だから知らなかったよ。」 てゐはそのビルを眺めながらそう呟いた。 「…ま、あそこが売ってるのは薬だけじゃ無いみたい。」 かぐやがそう言うと、てゐは彼女の方へと向きを変える。 「…表向きはゆっくり達のための医療用の薬を売っているけど、裏側では反逆ゆっくりに スペルカードや胴無しでも使える武器を売りさばいているのよ、そのコネクションを使って、 会長は反逆ゆっくりを自身の用心棒として雇っているの。」 「…はは、そりゃ物騒な話だね。」 「そういえば、あそこの会長さん、跡継ぎの事でもめているって話を聞いた事があるわね。 何でも跡継ぎを誰かに連れさられて、その犯人と跡継ぎを反逆ゆっくりを使って必死に探しているとか。」 会長 跡継ぎ 捨てられていた赤ちゃんれいむ そして、そのれいむを必死で探す反逆ゆっくり。 キーワードが繋がって今回の話の全貌が何となくてゐの頭に浮かんできた。 「…あんた、思っていた以上に厄介なもん連れてきたんだね…。」 てゐは赤ちゃんれいむの方を見て、めんどくさそうにそう言い放った。 「ゆ?」 自分の置かれている状況が理解できていない赤ちゃんれいむは首を傾げるだけだった。 「…まぁ、解ったような解らんような…とりあえず、現況はあの会社にあるって解れば十分だよ。」 てゐはそう言って赤ちゃんれいむが実っている鉢植えを自分の頭の上に乗せる。 「ちょっと、何処に行く気?」 かぐやがてゐを呼び止める。 てゐは振り向かずにこう言った。 「もう、育児なんてめんどくさい事したくないし、親に突っ返してくる。」 「む、いきゅじほうきなんて れいみゅはどうきゃとおもうけど?」 「五月蝿い、本当の親の所に帰れるんだからいいでしょ!」 頭の上の鉢植え赤ちゃんれいむと言い争いを始めるてゐ。 かぐやはそんなやり取りを聞きながら、てゐ立ちに向かってこう言った。 「てゐ、イオシスカンパニーに殴り込みを掛けるなら一つだけ忠告しておくわ、 どうせあんたの事だから反逆ゆっくりの十匹や二十匹は楽勝でしょう、 でも、ただ一匹、目隠しをしているゆゆこには気を付けなさい。 下手したら対峙した瞬間に、あなたは頭から丸呑みされてるかもしれないわ。」 かぐやの忠告を受けててゐは立ち止まる。 脳裏をよぎるのは路地裏であったあの不気味なゆっくりゆゆこ。 しかし、動揺するでもなく、恐怖するわけでもなく。 「余計な忠告、ご苦労さん。」 それだけいって、てゐはイオシスカンパニーのある方へと歩き出すのであった。 「…かじぇがつよくなってきちゃよ、さむいよ!」 「子供は風の子。」 てゐの頭の上の赤ちゃんれいむが、風に揺られてユラユラ揺れていた。 ~☆~ イオシスカンパニー 丁度ゆっくりの街全体が胴つきゆっくりにより、発展し始めた頃に設立された製薬販売会社である。 社員の殆どが胴無しゆっくりを占めている会社であったがその技術力は胴つきゆっくりの経営する他のライバル会社にも引けを取らず、 現在も製薬業界においてトップシェアも果たす大型会社である。 …しかし、その急成長振りには疑問の声が上げられており、 裏で何かしてるんじゃない?と業界の間ではもっぱらの噂になっている。 「あ~もう、またこびり付いているよ…。」 「ちゃんとトイレはキレイに扱って欲しいぜ…。 これを掃除するのはまりさ達何だからな…。」 まぁ、そんな黒い噂なんて、トイレ掃除のために雇われたパートのゆっくりには関係ない話である。 彼女たちはイオシスカンパニーのトイレを掃除して雇い主からその報酬を貰う。 それ以外の会社との接点は無いのだから。 「全く、いつもいつも思うけど、何でここの連中はトイレをキレイに扱わないかな! 掃除するまりさ達の方の身にもなって欲しいぜ、全く。 一度社長に忠告して置くかぁ?なぁ。」 「…しても無駄じゃ無いかな、汚しているのはここの社員じゃなくて お客さんの方みたいだよ。」 「お客さん…ああそういえばたまに見かけるな、何だかガラの悪い変なゆっくり。」 「全く、お客さんだからってずうずうし過ぎるわよね。」 愚痴を漏らしながらトイレ掃除を続けるゆっくり達。 やがて、掃除していないのは奥のほうに設置された胴付きゆっくりや人間用の 洋式トイレだけとなった。 「後はあの胴付きや人間用の洋式トイレだけか…。 この会社は社員もお客も胴無しゆっくりだけだし、あんまり汚れてないんじゃないか?」 一方がそう言って溜め息を付くと、もう一方がこう言った。 「それでも、点検ぐらいはしないと社長怒るよ?給料引かれるよ?」 「…それもそうだな、めんどくさいけどこれも仕方ない、か。」 「…ああそう言えば、トイレと言えばこんな話を聞いた事があるよ。」 「何だよ、急に。」 「とある胴無しゆっくりがトイレで用を足すためにトイレに駆け込んだんだ。 でも殆どのトイレが使用中で開いているのは胴付きゆっくりや人間のための 洋式トイレしかなかったの。 で、そのゆっくりは無理矢理その洋式トイレで用を足すことにしたんだって。」 「…で?」 「洋式のトイレって中蓋があるでしょ? 焦っていたそのゆっくりは中蓋を閉めずにそのまま用を足そうとしたのよ、 …それが悲劇の始まり、そのゆっくりはトイレに嵌って、出ることが出来なくなったんだよ。」 「…何だその間抜けな話は。」 「ちなみに作り話じゃ無いよ、実際にトイレに嵌ったゆっくりを助けるために レスキュー隊まで来て大騒ぎだったんだから。」 「は、何とも間抜けなゆっくりもいるもんだぜ、 今度実際にあってトイレに嵌った感想を聞いてみたいもんだ。」 「確かに!フフフフフ!」 そんな下らない話で談笑しながらゆっくり達は洋式トイレの扉を開いた。 | | \ .∧ ○、,_ \ ○、.,_ / ', / `ヽ.`ヽ. /´ `ヽ)!へ,/V/、 ' ,_,ノト 、 ,' _[_`ゝ-‐''´ヽ、/ !/ ,ハ ,| /,' ´ |レへ,! / ! / /_.7-‐ァ' ̄!二7´ ̄7ヽ、/`ヽ._! !/ | | r' ̄7-‐'"´ ̄  ̄`ヽ、_!`ヽ、___! |、/ヽ| | !ァ'´ ゝ、 !. / ァ'/! 、`ヽ、___7、 ,ハ | ;' ,' /(◯), V 、(◯)ハ/! ヽ. ヽ ! / / ! ! ;' '"" ,rェェェ、 "" ! /! ハ!/ / `ヽ! ! .|,r-r-| .レ' ,' ./ |‐--‐< \ \__ __/ / \___) (___/ 「助けててんこ~。」 …そこには洋式トイレに思いっきり嵌っているらんの姿があった。 「………。」 「………。」 呆然と、トイレに嵌っているらんを無言で見つめているゆっくり二匹。 「…あんた、れいむ達と一緒に雇われた用務員だよね?」 一方がようやくと言った感じでトイレに嵌っているらんに問いかける。 「そ、そうだてんこ!一緒にトイレの掃除をするために雇われたらんだてんこ! トイレに思いっきり嵌ってしまったてんこ!助けてくれてんこ!」 らんはそう言ってトイレから脱出しようともがいている。 …が、きっちり嵌っている為、脱出は難しそうだ。 「…ところでさ、何でこんな高い所の階のトイレに居るんだぜ?」 そんならんにまりさがそんな質問を投げかけてくる。 「え?」 「二手に分かれてトイレ掃除をしたほうが効率がいいからってことで、 私とれいむは上の階のトイレから、お前は下の階のトイレから掃除することにしたんだよな。 ここはまだ30階中の25階だぜ?お前と鉢合わせするには早すぎるんだが…。」 「…。」 そう指摘されて、らんは冷や汗を流す。 そんならんに二匹のゆっくりの視線が冷たく突き刺さっていく。 …やがて、らんは観念して口を開いた。 「ご、ごめんなさいてんこ、一階まで降りるのがしんどくてここでサボってましたてんこ。」 「…。」 「…。」 その告白を聞いて顔を見合わせる二匹の用務員ゆっくり。 やがて、お互いに頷きあうと、ちょうどトイレに嵌っているらんを挟み込むように横に回りこむ。 _,,....,,_ -''" `''-、 ヽ ヽ | ;ノ´ ̄\ \_,. -‐ァ | ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__ | | __ _____ ______ _,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7 \ .∧ ○、,_ ,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、_..,,-" rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/`7 \ ○、.,_ / ', / `ヽ.`ヽ. 'r ´ ヽ、ン、"-..,,_r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノ /´ `ヽ)!へ,/V/、 ' ,_,ノト 、 ,'==─- -─==', i `!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ ,' _[_`ゝ-‐''´ヽ、/ !/ ,ハ ,| i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i | `! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノ /,' ´ |レへ,! / ! レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .|| ,' ノ !'" ,___, "' i .レ' / /_.7-‐ァ' ̄!二7´ ̄7ヽ、/`ヽ._! !/ | !Y!"" ,___, "" 「 !ノ i | ノノ ( ,ハ. ヽ _ン 人! | r' ̄7-‐'"´ ̄  ̄`ヽ、_!`ヽ、___! |、/ヽ| ..L.',. ヽ _ン L」 ノ| .| ( ,.ヘ ,)、 )>,、 _____, ,.イ ハ | !ァ'´ ゝ、 !. / ァ'/! 、`ヽ、___7、 ,ハ | | ||ヽ、 ,イ| ||イ| /__ ヽ___ ヽノ、`\ ;' ,' /(◯), V 、(◯)ハ/! ヽ. ヽ ! / / レ ル` ー--─ ´ルレ レ´_/ / /ヽ ! ! ;' '"" ,rェェェ、 "" ! /! ハ!/ / 〉 /\ 丶 / /  ̄ `ヽ! ! .|,r-r-| .レ' ,' ./ |‐--‐<  ̄♪ \ 丶 / / ♪ \ \__ __/ / \ 丶 (_ ⌒丶... \___) (___/ /⌒_) | /ヽ }. } ヘ / し )). J´(( ソ トントン ソ トントン 「ねぇねぇ、どんな感じ?どんな感じなの?」 「仕事サボった挙句にトイレに嵌ったのはどんな感じ?」 ウザサ1000倍で二匹のゆっくりはらんに話しかける。 「ちょ、そんな事してないで助けててんこ!」 「ねえねえ!」 「ねえねえ!」 らんの制止を無視して迫って来る二匹のゆっくり。 「ごめんなさいてんこ!仕事サボったのは誤るてんこー! だからマジで助けてください、お願いしますー!」 トイレから出ることが出来ないらんは絶叫することしか出来なかった。 ~☆~ 「…うう…酷い目にあったてんこ…。」 何とか悪夢の洋式トイレから脱出することが出来たらん。 彼はチリ一つ無い廊下をとぼとぼと歩いている。 「全く…れいむ達は真面目に掃除してるのに抜け駆けしてゆっくりするなんて何考えてるの! この事は雇い主に報告するよ!いいね、答えは聞いてない!」 先ほど、用務員ゆっくりに言われたことが脳裏をよぎる、 これで、給料を減らされるのは確実だった。 「ああ、何でこんな事になったてんこ…。 何とか仕事先を見つけたのはいいけど、トイレは臭いし、このビルトイレ多すぎだし…。」 全30階で、全ての階にトイレが最低限2つある。 全てきれいに掃除し終える頃にはまず間違いなくヘトヘトになっている頃だろう。 「…やっぱり、らんが駄目すぎるのが原因なのかてんこ?」 らんは自嘲気味にそう呟いて今までの人生を振り返る。 胴付きゆっくりの秘書であったが、ある事件でその胴付きゆっくりをボコボコにして辞職、 その後、仕事を転々とするがどれもこれも長続きしない。 現在は妻に食わせてもらっていると行っても過言では無い。 「やっぱりらんは何をやっても駄目だゆっくりだてんこ、ホント、どうしようもないてんこ…。」 今までの事を思い返せば思い返すほど、落ち込んでいくらん。 ド壷に嵌るとはこう言う事をいうのか。 『もう自殺しかないな、確定的に明らか。』 「そうだてんこ、もう自殺しか…って待て待て。」 言いかけて正気に戻るらん。 「今なんで自殺なんて考えたてんこ!?流石にそこまで追い詰められてないてんこ!」 「イヤイヤ、もう自殺したほうが良いって、ほら、さくっと!」 「サクッとって何だてんこ!そんなお手軽感覚で自殺して溜まるかてんこ! ッて言うからんはさっきから一体誰と話しているんだてんこ!?」 声は背後から聞こえてきている気がする。 そう思ったらんはすぐさま後へと振り向いた。 /| _,,...._ /( _,,....,,....,,....,.,,.( ( r r ∠ ( /''r''''ヽ ;;;;/./ニ> / ̄ヽ{ ' } ..,,_..,,  ̄フ...人____( ) )''''''''' '''''ヽ_..,,-" "- / / i ヽヽ i { { ! i i i ; i ', ノ ヽ ヽゝ、ヽ人人、/_ノノ i ', ` i \ヽrr=-, r=;ァ'| ノ i __,,.. -‐─- 、.,_ ,' | ).)" ̄ ,___, ̄"' |/' | ! _r'`i ̄Y ̄7ー、_. `ヽ、., ノ _人 ,ノ ヽ _ン 人 V ノ ♪ rr'´i>'‐- 、─-ァ' i‐-、 、ヽ、,__ `ヽ/| _r/ ̄ヽ>____イ \ _」Y´  ̄`ヽ/-、 ヽr--ヽ. .Y^ヽ、__Y ヽ. ∧ | |/ヽ. く ノ i /i ハ ハ 、 Y´i `''ー- 、 ´ /` \_」 |/ ム ∨ ', .r' ∠_/ / ト,、 レ' |/_,.!イi i iン く⌒ヽ ノ ハ } \ ヽ ル' L__/」 〉 ノ /ヽ/ r'´ ィ"レ´ ⌒ ,___, ⌒ `! i ハ / }! i ヽ 「 T、` ー イ |' / / ハ ハ/ ! /// ヽ_ ノ /// i ハ 〈〈{_ ノ } _」 | |ハ | | ⌒Y⌒Y´ノ /l ハノ i ヽ⌒Y⌒Y´ ,' !「}二ニニニ二} ', 〈,.ヘ ヽ、 〈 i ハ i 〉 /ヽ; ヘハイ |\ /ト、/\ ノ レ^ゝi>.、.,_____,,...ィ´//レ'ヽハヘノ. ハ/ヽ,ノV |∧ ` |_」\ハ そこに立っていたのはカチューシャを着けたれみりゃと、メイド服を着込んだてんこだった。 「…!?!?!?お、お前達なんでここに居るんでて…むごッ。」 いきなりらんはれみりゃの羽で口を塞がれる。 「シーッ!今れみりゃはメイドに扮して潜入操作中何だど!」 「め、メイド?」 「そうだど!お前は頭に輝くこのカチューシャが目に入らないのか!」 れみりゃはそう言って頭の上のカチューシャを見せ付けた。 そして、続いててんこがこう言った。 _,,...._ |\ ゝ,,,, \| ) )_,,....,,....,,....,.,,. )\ /_,,....,,_\、' r''''ヽ''ヽ ) _..,,-" { ' }r-''''フ ,'´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ. "-..,,_ r''''''''''''''''''''''''''''''''''''''( ( )____ノ - ,, | そ .お ご お | // r ; ! ヽ i ヽ ',' |''" | れ .風 飯 帰.| .' '; i i i ! i } } i | と 呂 に な |_|\∧∧/|_ ,' i ' ; ゝ、人人ノ/_ノノ / ノ 、 | も に す さ |\ / i ヽ .| (ヒ_] ヒ_ン ) / / i '、 | ・ す る い.|< じ > ! | \| "" ,___, " ( /| | '、 | ・ る ? .ア|/ \ ヽ V 人 ヽ _ン ヽ 人 '、 | ・ ? ナ | ̄|/∨∨\| ̄ 、_)ノ ノ >.、_ ,.イ/ ( ノ (._ ヽ | タ | / / ノ´ ,,.ィ''i ̄ ̄ノ こ ノ | ノ \ ヽ、_____ノ _,,...._ |\ ゝ,,,, \| ) )_,,....,,....,,....,.,,. )\ /_,,....,,_\、' r''''ヽ''ヽ ) _..,,-" { ' }r-''''フ "-..,,_ r''''''''''''''''''''''''''''''''''''''( ( )____ノ - ,, // r ; ! ヽ i ヽ ',' |''" .' '; i i i ! i } } i_|\∧∧/|_ ,' i ' ; (ヒ_] ヒ_ン ) / ノ 、\ / i ヽ .| "" ,___, " / / i '、< さ > ! | \| ヽ _ン ( /| | '、/ \ ヽ V 人 ヽ 人 '、 ̄|/∨∨\| ̄ 、_)ノ ノ >.、_ ,.イ/ ( ノ (._ ヽ / / ノ´ ,,.ィ''i ̄ ̄ノ こ ノ | ノ \ _,,...._ |\ ゝ,,,, \| ) )_,,....,,....,,....,.,,. )\ /_,,....,,_\、' r''''ヽ''ヽ ) _..,,-" { ' }r-''''フ "-..,,_ r''''''''''''''''''''''''''''''''''''''( ( )____ノ - ,, // rゝ、人人ノ/_ノ i ヽ ',' |''"_|\∧∧/|_ .' ';(ヒ_] ヒ_ン ) } } i\ / ,' i ' ; ,___, / ノ 、< つ > i i ヽ .| "" ,ヽ _ン " / / i '、/ \ ! | \| ( /| | '、 ̄|/∨∨\| ̄ ヽ V 人 ヽ 人 '、 、_)ノ ノ >.、_ ,.イ/ ( ノ (._ ヽ / / ノ´ ,,.ィ''i ̄ ̄ノ こ ノ | ノ \ 「お、お前はらんを馬鹿にしてるのかてんこ!?」 てんこの言動に怒りを覚えるらん。 「そんな事より、ちょうどよかったど~。」 「え?」 れみりゃの言葉でらんは目を点にする。。 「ここで働いているならここの構造について知っている筈だど! ちょっと道案内してほしいんだど!」 「み、道案内…?何処に?」 突然の問いかけに戸惑いを覚えるらん。 そんな彼女に答えを出したのはてんこであった。 「これから社長をズタズタにするから社長の居場所を教えて欲しいんですがねぇ。」 ~☆~ その頃、イオシスカンパニーの受付では。 「…………。」 受付で働いて早十年。 今まで様々な来客者に対応してきたベテラン、受け付けパチュリー。 しかし、今度の客にはそんな彼女も戸惑いを覚えるしかない。 ,-r_'Zヽ1Yヾ_ュ-、 r'`7ヽ,イ_スTゝ‐zヘjヽ. l`スZ_Y_い_,-ヘlイ_j、T,ゝ7 _,ト'Tヽ_ノ、 メ、7イ-rヘいKス._ ヽレv'ート、/7-、f`ナV-、ハノ、lヽィ′ ,レ'Tー!7´ト、_K´Yヽノ、j-イ゙Y、 ,ゝiくヽレくY_ノvヽい'ーくメゝト!、 ∥'人ノ`{二XX二}`;ヘレ′ _ || __ /{/}\ ` r , -`―'- 、イ v{/}v┘ イi イ人ルレ ン、 {/} /ヒン ヒン)| i、| {/}〈 ワ []ノ i {/} ー―――'レル'_{/}_ i´‐一''┴─`i ,. -l∧ ∧∧ ∧l ,.- 、 / `l工 工 工l /, ヽ. / _|_|_| //i i ,' / ソ ヽ、! | i / ; ; ゝ、____ノ 〉--' / /、__; ィ ハ 、_; ! i ハ 〈 i / ハ_ニ;、,レ レ、_;、ゝ | Y ハ レヘ i' rr=-,´ r=;ァハソ ハ | ノ l |〃 ̄  ̄ l | ノ ノ ハヽ、 'ー=-' ノ i ( イ / / イヽ>, -r=i' ´イ ハノ 〈rヘ ! レ´ `y二」ヽレ' 〈 「どうしたのさ、私は社長に合わせて欲しいんだけど。」 「はやくあわちぇてね!」 鉢植えに実った赤ちゃんれいむとそいつを頭に載せているゆっくりてゐ。 子連れで会社に来たゆっくりなど、初めてのケースである。 だから受け付けパチュリーも戸惑いを覚える。 …しかし、ここで慌ててミスを犯してはいけない。 落ち着いてマニュアル通りの対応をするだけである。 「申し訳がありません、社長も多忙な方ですので事前にアポを貰わなければ 会うことも許されません、取ってますか?アポ。」 「アポ?ああ、りんごの事?」 「アッポォではなくてアポイトメントの事よ。」 「何でゆっくりに会うのにそんなのを取らなくちゃいけないのさ。 イヤだねぇ、最近は何をするにもややこしくなっちゃって。 昔はもっとシンプルだったよ、出会い頭に「ゆっくりしていってね!!!」で誰も彼も仲良しだった。」 「…あの、何の話ですか?」 「それなのに今やただ会うだけであれやこれやとややこしい事しなくちゃ行けない! ああもう!『ゆっくりしていってね!!!』の精神は何処に消えたのさ!」 「せちがりゃいよのなかだにぇ!」 てゐの叫びと同時に頭の上の赤ちゃんれいむも続いて叫ぶ。 パチュリーはこのやり取りを聞いて確信した。 コイツ、ただの馬鹿だと。 「お客さん、ここで騒ぐようならこちらも考えがありますよ。」 パチュリーはそう言うと、壁に取り付けられていたボタンに体当たりをする。 う~!う~! 警報と共に、警備棒を被ったパチュリーが何匹かでてくる! 「ムキュ!一体何があったのかしら?」 「あそこで営業妨害をしているゆっくりを追い払って!」 受け付けパチュリーはそう言っててゐの方を見る。 すぐさま、警備パチュリーがてゐに飛び掛る! 「おっと!」 てゐは後に飛び跳ねてそれをかわす! その背後にはエレベータ。 「ふう、きょうも外回りだぜ!」 タイミングよくエレベータが開き、中からゆっくりが出てくる。 てゐはそのゆっくりの横をすり抜けてエレベータの中に入り込む! 「うわ!こら!エレベータは出るゆっくり優先だぜ!」 ビックリしたゆっくりはてゐにそう言うが、てゐは無視してエレベータを操作する! 「逃がすか!」 エレベータの扉が閉まろうとするが、それに構わず警備パチュリーが飛び込んでくる! ムギュ。 結果、エレベータの扉に警備パチュリーが挟まってしまう。 「むぎゅー!すぐにエレベータの扉を開けなさい!」 両側からエレベータの扉に挟まれて、ムンクのような顔になりながら警備パチュリーは叫ぶ。 「開けなさい、といわれて素直に開けると思わないでよ!」 てゐは警備パチュリーの顔面に、両耳で正拳突きをぶち込んだ! ドゴオッ! 挟まっていた警備パチュリーはロビーの床に転がり落ち、異物がなくなったエレベータは正常に閉じられる。 エレベータはそのまま上昇を始めた。 「ムキュ!大丈夫!?」 受付パチュリーの片割れが、警備パチュリーを起こす。 大丈夫では無いだろう、モチモチのほっぺには立派な跡が刻まれていたのだから。 「ムキュー!絶対に逃がさないわよ!」 怒りに燃える警備パチュリーは頭のナイトキャップの中から通信機を取り出した。 勿論、他の階の警備パチュリーに侵入者が居ることを知らせるために。 エレベータの中ではてゐと赤ちゃんれいむが一息ついていた。 「…さて、あんたの親にもうすぐ会える訳だけど、心の準備は出来ているかい?」 「むしろ、あんたがこころのじゅんびをしゅるべきじゃないの?」 「…そりゃ厳しい。」 赤ちゃんれいむの言葉に、てゐは苦笑いをするのであった。 続く 「昔はもっとシンプルだったよ、出会い頭に「ゆっくりしていってね!!!」で誰も彼も仲良しだった。」 ってなにげにいい台詞 -- 名無しさん (2011-01-29 18 04 12) 名前 コメント
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ちょっと短めの作品のため、2本を1つにまとめてみました。 どちらでもお好きなほうからどうぞ。 『どうぐ』 -------------------------------------------- 「ゆっくりしていってね!」 元気な掛け声とともに、また世界に一匹の命が産み落とされました。 「ゆっくりしていってね!」 その声に答えるのはお姉ちゃん。 生まれたばかりのまりさは世界中から祝福されていました。 しかしまりさが生まれたのには、理由がありました。 まりさが生まれた場所は、ある国にある兵器工場でした。 そこで主に生産されているのは、”ゆっくり型自動爆弾用ゆっくり”でした。 ゆっくり型自動爆弾とは、ゆっくりの体内に爆弾を埋め込み、敵の前線に送り込み、 拠点などに潜り込ませ、ピンポイントに爆撃を行う自立型兵器の総称です。 現在世界では、”ゆっくりによる代理戦争”が、主な戦争方式でした。 双方の勢力に所属するゆっくり達が兵器を操り、同族を殺しあいます。 後は普通の戦争となんら変わりありません、一番重要なのは、”人間の命が無事であること”でした。 人間にとっては、ゆっくりが何千、何万、何億と死のうと、 それで人一人の血が流れずに戦争ができるのであれば、これ以上のことはなかったのです。 生まれたばかりのまりさは、一緒に生まれた姉妹達と、ここで戦場に関する知識を教育され、 身体的な訓練を受け、”人間のために死ぬ喜び”を、ただひたすらにすりこまれました。 そして”製品”として完成されたまりさ達が、毎日毎日、パッケージングされ、戦場に送られていくのです。 今日はまりさと、一番仲良しのお姉ちゃんが”出荷”される日です。 長い訓練に耐え、やっと待ちに待った実戦です。 これからまりさにはどんな未来が待っているだろう、きちんと活躍できるだろうか、 成功したら、褒めてもらえるだろうか。 まりさはこれから起こることへの期待に胸をふくらませていました。 しかし、まりさが送られた戦場は、地獄そのものでした。 まりさは一つ大きな勘違いをしていたのです。 まりさ達は、兵隊などではありませんでした。 まりさ達が生まれたその時から宿命づけられていたこと、それは”兵器としての命”でした。 まりさが梱包されていたコンテナの荷が解かれるとすぐに、姉妹達が人間の手で次々と取り出されていきます。 そしてその場で順番に、体内に爆弾を埋め込まれ、命令を受け、次々と姉妹達は戦場に投入されていきました。 ドカンッ! ドカンッ! 遠くで何かが爆発する音が聞こえます。 それはまりさの姉妹達の”命の花火”でした。 爆音が轟くたびに、まりさに爆弾を埋め込んだ人間たちが、歓声をあげます。 どうやら戦場はこちらの優勢のようでした。 けれどまりさは、あることに気づいてから、体の震えが止まらなくなってしまっていました。 ドカンッ! ドカンッ! 一匹、また一匹とまりさの姉妹達が散っていきます。 皆笑顔で出動していきました、皆何を思って散っていったのだろう。 まりさは身体じゅうが恐怖に支配されてしまいました。 それはまりさが工場で想像していたような、かっこいい、名誉あふれるものでは決してありませんでした。 きっとそこにあるのは、ただの死。 あの音とともにまりさ達の元に訪れるのは、何もない、ただ真っ暗な死だけ。 戦場を目の当たりにし、その”真実”に気づいてしまったまりさは、もうその恐怖を拭うことができなくなってしまいました。 そんなまりさの様子に気づいたお姉ちゃんは、心配そうにまりさに声をかけました。 「どうしたんだぜ、おちび」 まりさは震える声で、けれど人間には聞こえないように、小さく答えました。 「おねえちゃん…こわい…まりさこわいよ…」 まりさが突然”欠陥的”な発言をしたことで、お姉ちゃんはびっくりしてしまいました。 爆弾も搭載され、後は出動を待つだけの段階で、いったいどうしてしまったというのでしょう。 お姉ちゃんも小声になり、必死にまりさを励まします。 「だいじょうぶだぜおちび、ならったでしょ?”にんげんさんのためにしぬ”のは、めいよなことなんだぜ」 お姉ちゃんの説得もむなしく、まりさの恐怖は消えることはありませんでした。 そしてまりさがついに”壊れて”しまいます。 「やだ…しにたくない…まりさ、しにたくないよ… おねえちゃんともっとずっといっしょにゆっくりしてたいよ… まだまだいっぱいしりたいこと、やりたいこと、いっぱいあるのに こんなところでしんじゃうのは、いやだよう…こわいよう…たすけて…たすけておねえちゃん…」 まりさはついにぎゅっと目をつむり、涙をぼろぼろと流してしまいます。 お姉ちゃんはそんなまりさのすっかり困ってしまいました。 しかしお姉ちゃんは、突然ふっと薄く微笑むと、まりさにとても優しい声でいいました。 「わかったぜおちび、おねえちゃんが、おちびをたすけてあげるんだぜ」 お姉ちゃんがそう言うと同時に、人間がまりさとお姉ちゃんの頭上から声をかけました。 「おい、次はお前だ」 まりさのお姉ちゃんが、ひょいと持ち上げられます。 「まって」 そう声をあげたのは、まりさのお姉ちゃんでした。 「どうした」 人間が不振そうに聞き返します。 「にんげんさん、もしまりさが、きょてんさんをおとせたら、このたたかいはおわるんだぜ?」 まりさのその質問に、周りにいた人間達は大声で笑いました。 「ははははは、確かに現状はこちらが優勢だが、そんなことできるわけないだろう」 「お前は何も考えずに、ただ敵を見つけて爆発すればそれでいいんだ」 「敵の拠点までにはまだたくさんの兵器がうろついてる、辿りつけるわけないさ」 人間達がくちぐちにお姉ちゃんにいいました。 その様子を、まりさはただただ小さく震えながら見守っていました。 まりさのお姉ちゃんが出動すれば、すぐにまりさの番がやってきます。 今まりさはそのことが怖くて、震えを止めることが出来ませんでした。 「さぁ、行くぞ」 お姉ちゃんを抱えた人間が出動口に向って歩き出そうとしました。 けれどお姉ちゃんはもう一度それを遮り、人間をまっすぐ見つめていいました。 「まりさに、いちばんきょうりょくなばくだんさんをつんでほしいんだぜ、そして、もしせいこうしたら…」 「おまえ、ほんきなんだぜ!?」 防塵ゴーグルをつけ、背中にライフルを抱えた胴つきまりさが、その両手で抱えたまりさに声をかけます。 「まりさはいつでもほんきだぜ!」 大きな声で答えたのは、体が一回りほどふくらんだ、”まりさのお姉ちゃん”でした。 「へへっ、ばかはきらいじゃないのぜ、いくぜ!」 まりさを抱えた胴つきまりさは、力強く大地を蹴り、全力で戦場を走りました。 そして配置位置につくと、腕に抱えた”爆弾”を下ろし、自分は持ち場で敵を狙うのです。 胴つきまりさは、まりさを放すと、照準を覗きながら 「いつかあのよで!」 とだけいい、あとは次々と引き金を引きました。 まりさは黙って頷くと、 「ゆぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 獣のような咆哮をあげながら、全力で前へ前へと走ります。 それはとてもゆっくりとは思えない、俊敏な動きでした。 「なんだあれ!?」 「ばくだんだ!とめろ!」 敵の胴つきたちは、まりさに気づくとみな一斉に手に持っている銃の引き金を引きました。 敵の爆弾たちは、まりさに気づくとその後を追いかけ、必死にまりさの動きを止めようとします。 銃弾の一発がまりさのお帽子を打ち抜きました。 一匹の爆弾の爆風で飛んできた小石が、弾丸のようにまりさの頬を掠め、傷口からじくじくと餡子が漏れ出します。 それでもまりさは決して走るのをやめませんでした。 ただまっすぐ、走って、走って、走って。 何百匹もの敵ゆっくり達の攻撃の波をくぐり抜けた先に、ようやく敵の前線基地を見つけました。 その頃にはもうまりさの体はボロボロに傷つき、並のゆっくりならば、泣き叫び絶命していてもおかしくない状況でした。 けれどまりさは、止まりませんでした。 「そいつを早く殺せーーー!!!!」 基地のスピーカーから、人間の罵声が聞こえてきました。 まりさは、ついにやってきたんだという達成感に満ち溢れていました。 そして敵の前線基地の壁に張り付くと、大声をあげて言いました。 「これでおわりだぜにんげんさん! おちびーーーー!!さきにいってるんだぜーーー!!!まりさのぶんまで ゆっくりしていってね!!!!!!」 そして奥歯に埋め込まれたスイッチを思いきり噛み砕きます。 カッ!!! 突然あたりが一瞬、真白な光に包まれました。 そして次の瞬間。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォオォオオオオオオオ!!!!! すさまじい爆風が、辺り一帯のもの全てをなぎ倒していきます。 「あいつ…すげぇぜ」 まりさを運んだ胴つきまりさは、傷ついた身体を仲間に支えられながら、 大きな大きなまりさの命の炎を見つめていました。 その胴つきまりさだけではありません、敵も、味方も関係なく、 その場に居合わせたゆっくりたちは、皆戦闘を忘れその光景に目を奪われていました。 「きれい…」 だれかがぽつりとつぶやきました。 そして間もなく、その戦場はまりさの所属する軍の勝利で幕を閉じました。 指揮をうしなった敵のゆっくり達は、自分たちだけではもはや抵抗することもなく、おとなしく負けを認めたのです。 人間達が基地の中で祝杯をあげるなか、まりさはいまだに部屋の片隅でぶるぶると震えていました。 するとまりさの前に、一人の人間がしゃがみ込みました。 「おい」 それは、あの時まりさのお姉ちゃんを抱えあげた人間でした。 「きいてるのか、おい」 人間に指でつつかれ、まりさはビクリと体を震わせます。 「おまえの姉ちゃん、英雄だったよ」 そう言うと人間は、手に持った酒瓶を嬉しそうにぐいぐいとあおり、まりさの頭をぐしゃぐしゃと乱暴になでました。 けれどまりさはちっとも嬉しくありません。 戦争は終わったかもしれないけど、お姉ちゃんは死んでしまったのです。 大好きなお姉ちゃんが死んで、まりさが喜べるはずはありませんでした。 けれど人間はいいました。 「よろこべ、お姉ちゃんのおかげで、お前は自由だ」 「ゆ?」 まりさは人間の言っていることの意味がわかりませんでした。 「本当なら未使用兵器は廃棄処分なんだがなぁ、お前の姉ちゃんが最後にいったんだ まりさが成功したら、おちびを開放してやってほしいんだぜ~ってな」 「おねえちゃん…」 まりさはやっとその意味を理解し、ぼろぼろと涙を流しました。 そしてまりさは、お姉ちゃんが最後に残してくれた”自由という宝物”を一生大事にしようと誓いました。 あの戦争から長い時間がたちました。 いままりさは、森の中で、たくさんのゆっくりに囲まれ、ゆっくりとした生活を送っていました。 突然森に放たれ、初めは群になじめなかったまりさも、その訓練された身体能力は、 野生のゆっくり達よりもはるかにすぐれていました。 まりさはすぐに群一番の狩の名人として認められ、可愛い奥さんももらうことができ、 ゆっくりとしたゆん生を謳歌できているという喜びに満ち溢れていました。 今日もまりさは、狩りを終え、お帽子の中にぱんぱんにつまった食べ物を家族の元に運びました。 「ゆゆ~ん、まりさ、ゆっくりおかえりなさい!」 「ゆっくち!ゆっくち!」 まりさの愛しい家族達が、まりさを出迎えてくれました。 しかし不幸は、そんな幸せ溢れる日常に突然訪れてしまったのです。 パンッ! 森に、ゆっくり達の聞きなれない乾いた音が響きました。 「ゆ?」 まりさの奥さんのれいむが、なにが起こったのかわからないといった顔であたりを見まわします。 「にゃに?にゃ~に?」 まりさの可愛いおちびちゃんたちも、それを真似してきょろきょろとします。 しかしまりさには分かってしまいました。 「どう…して…」 まりさの視界がぐにゃりと歪み始めます。 そして突然ごぼりとまりさの口から大量の餡子が流れ出てしまいます。 それを見たれいむが、急いでまりさの元に駆け寄ります。 「ゆわああああああああ!!どうしたのまりさあぁあああ!!ゆっくり、ゆっくりしてぇぇぇ!!」 れいむが近寄ると、まりさの後頭部のあたりにぽっかりと、内側から外側に向けて皮が裂けた黒い穴があいていました。 「そん…な…こと…って…」 それは不幸な事故でした。 人間がまりさに言った、「未使用兵器は廃棄処分」の本当の意味が、まりさに空いた穴でした。 あの戦争の時、まりさに埋め込まれた爆弾は、本来ならば衝撃吸収材に守られ、スイッチが押されない限り、 ゆっくりの移動する衝撃で暴発してしまわないように工夫が施されていました。 しかしその衝撃吸収材が、長い時間をかけてまりさの体内で吸収され、ゆっくりと餡子に変換されて、 いつしか爆弾がむき出しの状態になってしまっていたのです。 そのまま運がよければ、やがて爆弾も餡子になってしまうのですが、 まりさの体内に残っていた火薬が、不幸にも炸裂してしまったのです。 それによって、まりさは体の中を破壊され、一瞬で再起不能の状態に陥ってしまいました。 もはやまりさの命の灯が消えるのも時間の問題でした。 騒ぎを聞きつけた群のゆっくり達が、まりさのまわりにあつまり、ぼろぼろと涙を流しています。 何匹かのゆっくり達は、まりさの傷口を舐め、必死に治療を試みました。 けれどまりさにはもう、仲間たちの励ましの声も、あたたかなぬくもりも、どこか遠く、朧げにしか感じることができませんでした。 あぁ、これが、死ぬってことなんだ… まりさはぼんやりと思いました。 死は、やっぱりあのとき自分がイメージしていた物と同じでした。 真っ暗な闇に、たった一人で落ちていく。 まりさは孤独に胸が引き裂かれてしまいそうでした。 しかし、そんなまりさの目の前が、急にぱっと明るくなりました。 「おちび、いつまでもないてるんじゃないのぜ」 「おねえ…ちゃ…?」 そこに居たのは、まりさが大好きだったおねえちゃん、それに、まりさと一緒に生まれたたくさんの姉妹達でした。 「ゆっくりだって、いつかはしぬんだぜ、もうしょうがないんだぜ、だから、わらうんだぜ」 お姉ちゃんはまりさに優しくすーりすーりしながら、言いました。 暖かなぬくもりが、まりさのゆっくりと包み込みます。 「うん…まりさ、ゆっくりしても、いいんだよね…」 「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりしていってね!」 まりさの姉妹達が、まりさを歓迎するように声をあげました。 一人じゃない、これからは、大好きなお姉ちゃんと、ずっと一緒… まりさはほっとしてゆっくりと目をつむりました。 『まりさぁあああああああーーーーーーーーー!!!』 それはたくさんのゆっくり達の、森中に響き渡るような悲痛な叫びでした。 その中心には、今まさにゆん生を終えた一匹のゆっくりまりさがいました。 けれどそれを見ていたゆっくり達は、皆、後にこう言いました。 その寝顔は、どこか幸せそうで、とてもゆっくりした顔だった、と。 おわり -------------------------------------------- 『おかえし』 -------------------------------------------- お兄さんはれいむの事が大好きでした。 れいむはお兄さんのことを、とてもゆっくりさせてくれます。 そんなれいむに、お兄さんは、毎日 「いつもありがとう」 と声をかけ、れいむをそれはそれは大切に、可愛がっていました。 れいむはお兄さんの事が大嫌いでした。 お兄さんは毎日れいむの事を可愛がってくれました。 ふかふかのベッドさんから起きると、いつもたくさんのあまあまをくれました。 楽しくなって、れいむがゆんゆん歌を歌うと、お兄さんは笑顔で聞いてくれ、 「上手だよ、れいむ」 と、いつも褒めてくれます。 お兄さんのお世話はいつも完璧で、れいむの毛並みも綺麗で、肌ももちもちしています。 れいむが、健康に、ゆっくりした毎日をおくることが出来るのは、全てお兄さんのおかげでした。 けれどれいむはお兄さんの事が大嫌いでした。 それはれいむが、お兄さんにいつも”ゆっくりさせてもらっているから”でした。 「今日もよろしく」 そういって笑顔でれいむを撫でるお兄さん、 それは、今日もれいむにとって”最も辛い時間”がやってくる合図でした。 お兄さんは笑顔で、ガムテープでれいむの口をふさぎます。 そして、れいむを動けないように固定する台座に乗せて、 戸棚から2つの小瓶と、一つの注射器を取り出しました。 れいむは、これから起こることを知っていて、目に涙を貯めて、お兄さんに”やめて”と訴えかけます。 しかしいくら声を出そうとしても、ガムテープでふさがれた口からは、むーむーとくぐもった声しか聞こえてきませんでした。 お兄さんは、片方の小瓶の中の液体を注射器に入れ、それをれいむの頭に刺しました。 れいむは、頭に軽くチクリと痛みを感じ、顔をしかめます。 そしてお兄さんは、注射器の中の液体をゆっくりとれいむの中に注入しました。 するとどうでしょう、れいむの額から、突然にょきにょきと植物のような茎が生えてきました。 お兄さんが最初に注射した液体は、希釈された”精子餡”だったのです。 茎には豆粒ほどのれいむの赤ちゃんが3匹実っていました。 れいむはそれを見て、 (ゆゆ~ん、れいむのあかちゃんとってもかわいいよぉ~) と、感動の涙を流しました。 しかし次の瞬間れいむはハッとなり、今度は悲しそうな目をして涙をぼろぼろと流します。 れいむは、このあとおちびちゃんがどうなってしまうのか、知っているのです。 そんなれいむを無視して、お兄さんは手に持ったもう一つの瓶の中身を注射器に入れ、 それをさっきと同じようにれいむに注射しました。 すると今度は、れいむの茎に実った赤ちゃんゆっくりに変化が現れます。 今まで豆粒くらいの大きさだった赤ちゃんたちが、みるみると大きくなっていき。 ものの数分もたたないうちに、ぷるぷるとその身を振るわせて、今にも生まれそうな状態に育ってしまったのです。 お兄さんが二度目に注射したのは、栄養剤と成長促進材を混ぜ合わせたものでした。 これにより、本来は一日以上かかる実ゆっくりの成長を加速させたのです。 そしてれいむの赤ちゃん達はついに、 待ちかまえていたお兄さんの手のひらの上に、生まれ落ちてしまいました。 「むー!むー!」 れいむは赤ちゃんが生まれた感動に、”ゆっくりしていてね!”と声をかけようとしました。 しかし赤ちゃんたちには、お母さんのその声は届きません。 赤ちゃん達はそろって体をぷるぷると振るわせると、みんなそろって元気に、生まれたことへの歓喜の声を上げました。 『ゆっくちしていっちぇにぇ!!!』 お兄さんは三匹の子れいむが乗る手を見つめ、優しい笑顔で 「ゆっくりしていってね」 と返してあげました。 「ゆゆ~ん、おにーしゃん、ゆっくちしちぇいっちぇね!」 「こーろこーろしゅるよ!」 「しゅーりしゅーり!」 赤ちゃん達はお兄さんの手の上で、元気いっぱいにすりすりころころと可愛く動き回りました。 「あはは、可愛いなぁ・・・」 お兄さんは、空いている方の手の指で、一匹のれいむのほっぺたをぷにぷにとつつきます。 するとつつかれた子れいむは、その指にすりすりと体をこすりつけます。 「ゆゆ~ん、おにーしゃん、くすぐっちゃいよぉ」 「ゆゆっ!れいみゅばっかりじゅるいよ!れいむも」 「れいみゅもー!」 他の二匹も、我先にとお兄さんの指のすり寄ります。 それは見ているだけで微笑みが零れてしまうような光景でした。 れいむはその光景を、目から大粒の涙を貯めながら見つめていました。 それはこの光景に似つかわしくない、これから赤ちゃん達に起きる不幸を憂う、悲しい表情でした。 ぶちゅり その音は、何の前触れもなく響きました。 ”2匹の子れいむ”は、ほんの一瞬前まで姉妹が居た場所を、目を見開いて、 なにが起こったかわからないという顔で見つめていました。 「ゆんやぁああああ!!!」 「おにぇーちゃぁああああああ!!!」 今起こった現実をゆっくりと理解した二匹が、悲痛な叫びをあげました。 「むー!むー!」 母れいむも、必死でお兄さんに”やめて!やめて!”と訴えました。 「あーあ、かわいそう」 お兄さんは、手のひらに押しつけた指をそっと退けます。 お兄さんの指があった場所には、真っ黒な餡子が飛び出し、皮が裂けた無惨な姿の子れいむが居ました。 その小さな子れいむは、悲鳴をあげる間もなく、お兄さんの指で圧死させられてしまっていたのです。 「おにーしゃん!どうしてひどいことしゅるにょ!?れいみゅおこっちゃよ!ぷくー!!」 それをみた一匹が、精一杯頬を膨らませて、お兄さんをキッと睨みつけました。 お兄さんは笑顔を崩さず、親指と人差し指でそのれいむの両ほっぺたを優しく包み込みました。 そのままお兄さんはゆっくりと指に力を込めていきます。 「ぷくー!ぶ!ぶびゅ!」 子れいむは、膨らませた頬を圧迫され、たちまち変な顔担ってしまいした。 「びゅきゅー!」 それでも子れいむは、ぷくーを止めませんでした。 お兄さんは力を込めるスピードを決して早めず、ゆっくりと、ゆっくりと力を込めていきます。 そして・・・ 「びゅぶ!」 子れいむの、声にならない叫び声とともに、 その子れいむの小さな命の灯火は、あっけなく消えてしまいました。 最後に残された子れいむは、すっかり怯えきってしまって、おそろちーちーを垂れ流し、 ぶるぶるがたがたとお兄さんの手のひらの上で震えていました。 「お・・・おにーしゃん、どーちてこんにゃことしゅるの?」 子れいむは目に涙をいっぱいに貯めて、お兄さんに問いかけました。 お兄さんは、そんな子れいむに優しく微笑んで、一言だけいいました。 「僕が、楽しいから」 そしてお兄さんは子れいむの乗っている手を、きゅっと軽く握りました。 お兄さんが手を開くと、最後の子れいむも、姉妹と一緒に、 仲良く餡子の固まりになってしまっていました。 お兄さんは、れいむの赤ちゃん達で汚れた手を綺麗に洗い、 ただただ涙を流すれいむの元に戻ってきました。 「今日もありがとう」 お兄さんはそういうと、台座に固定されているれいむを優しく下ろし、 口に張ってあるガムテープをはがしてあげました。 れいむは目から涙をぼろぼろと零し、 「どぼぢで・・・どぼぢで・・・」 と呟きました。 お兄さんは少し困った顔をして、れいむにいいました。 「いつもいってるだろうれいむ、お兄さんは、 れいむから”いつもゆっくりさせてあげているおかえし” を貰っているだけなんだよ」 お兄さんはそういって、 「いつもありがとう」 と、優しくれいむの頭を撫でました。 れいむにはお兄さんの言っている事がさっぱりわかりませんでした。 れいむがどうして、と聞く度に、お兄さんは優しく”同じ答え”を答えてくれます。 だけどれいむは、いつもゆっくりさせてくれてありがとう! と、毎日お兄さんに感謝しているつもりでした。 なのにどうして、こんなひどいことをするんでしょう。 れいむが泣きつかれてぼんやりと空中を見つめていると、 お兄さんはれいむの餌箱にたくさんのあまあまを入れて、 もってきてくれました。 それを見たれいむは、辛い気持ちや悲しい気持ちなど全部忘れて、 大喜びであまあまにむしゃぶりつきました。 「れいむにはいつもゆっくりさせて貰ってるからね、これはほんの”おかえし”さ」 赤ちゃんを殺す時間以外のお兄さんは、いつも優しく、笑顔で、れいむをゆっくりさせてくれました。 れいむは、その”おかえし”に、お兄さんに赤ちゃんを”差し出され”続けました。 お兄さんは、れいむの赤ちゃんと”遊んで”お兄さんがゆっくり出来る”おかえし”に、 れいむをたっぷりとかわいがり続けました。 お兄さんとれいむは、お互いを”ゆっくりさせる”ことの出来る、まさに理想の関係でした。 お兄さんはれいむが大好きです。 それは、れいむがお兄さんの事をゆっくりさせてくれるからでした。 れいむはお兄さんが大嫌いです。 それは、お兄さんがれいむの事をゆっくりさせてくれるからでした。 おわり -------------------------------------------- 読んでいただき、ありがとうございます。 ばや汁あき(仮です。 長編さんも執筆中なのですが、ついつい小ネタを思いつくと書きたくなる衝動に駆られてしまいます。 風邪さんもゆっくりしてきてくれたので、頑張って書き途中の長編さんを仕上げられるように頑張ります! 感想板を用意しようかともおもったのですが、今更ながら乱立するのもどうかと思ってしまったので。 前作のスレッドと統合させていただくことにしました。 ご意見・ご感想あれば、お気軽にお寄せください。 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13856/1277741176/ ばや汁あき(仮でした。 今までの作品 anko1748 かみさま anko1830-1831 とくべつ anko1837 ぼくのかわいいれいむちゃん anko1847 しろくろ anko1869 ぬくもり anko1896 いぢめて 挿絵:我慢あき
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※これはゆっくりできるねと同設定の話です。 ※おさとう式ゆっくり、たにたけし先生のおさゆく設定を入れております。 ※それでもよい、という方はお読み下さい。 もの書きとゆっくりの一日 朝 『はい、腕をあげて大きく背伸びー』 「よっ…っと」 「ゆぅぅぅー」 十時。俺にとって習慣となっている某国民健康体操が始まる。 小説家といえども、いや小説家だからこそ体が資本になる。 自分の頭と体を使って飯の種を掴むのだから普段から健康に気をつかうようにしてきた。 先輩や担当の薦めもあってか、時間がある時は散歩を兼ねてネタを拾うようにしてきている。 横でもウチの同居人(?)のれいむが必死に伸びをしている。 いや、単に生首が伸びをしているから首が上を必死に向いているだけに見えるんだが……。 そして、れいむのその隣、おさとう式さなえ略しておさなえはもっとすごい。 「……」 お前は仮想空間に侵入して黒服とアクション繰り広げる、 どこぞの救世主かと言わんばかりの逆U字を描いて反りかえってる。 このおさなえ、無駄に運動神経はよい。 脚は俺より早いし、柔軟性もある。この前もれいむとの散歩行っていたというので、 どこにいったか聴いてみると 人の家の屋根を登って歩いていたそうな。 さすがにそれはイカンので、二匹に説教したのは言うまでもない。 つか、どうやって登ったんだお前ら。 唯一劣るのは細い腕で、通常の胴つきゆっくりより腕力はない。 「『かよわいおとめですから』だって」 とれいむ通訳によるとそんなに本人(?)は気にしていないらしい。 まぁ、それでも自分の食器ぐらいは持ってこれるので充分だと思う。 昼 普段よりかは遅めの執筆作業に入る。今回はゆとりもあるので、れいむやおさなえも仕事部屋に入るのを許可した。 二匹は自分達が上げたゲーム実況動画がランキング入りしているかをチェックしている。 「こんかいは、あんまりのびなかったねー…」 「……」 おさなえがれいむを慰めるように頭を撫ででいた。 「うん、次はげーむのくらいまっくすのしーんだし、がんばろうね」 おさなえも心無しか表情があかるくなり、か細い腕を振り上げている。 ……まぁ、こっそりまた宣伝でもしておくか。 後、二匹にはここに入ってもらったのは他に手伝いもある。 「れいむー、さなえー」 「ゆ?」 「ちょいここ、立って。さなえ、テキトーに戦うポーズ」 おさなえが脚を軽く広げ、腕でファイティングポーズを取る。 「れいむは…そだな」 俺は適当に辞書や本棚を積み上げた。 「上に乗っかって何かエラそうに悪役の真似してみて」 「ゆっ!」 れいむは器用に辞書の上に飛び上がりのび上がる。 おさなえも視点をれいむに合わせ見上げるようにする。 れいむは頂上に登ると急にごう慢になり 「ふははははは、このれいむさまにいどもうなどと、 おろかなゆっくりもいたものよのう」 おい、いきなり小ネタ始めるんじゃない。おさなえもドヤ顔きめんじゃねぇ。 「ふ。うんどうしんけいにすぐれただけの、おさとうしきゆっくりなど、 このれいむさまにとってはまんじゅうのかけらにすぎぬわー」 「お前も、饅頭の一種だろが」 と、ツッコミデコピンを入れる。 「ゆ!…いけないいけない。また、やくにはまっちゃったよ」 苦笑を浮かべるれいむ。 今、やってもらった通り、たまにこの二匹にシーンを再現してもらい文章に起こす。 そうすると頭で描いていたものと実際に見た時のシーンのギャップがあるので、 自分の文章に何か足りないものが明確に浮かんで来るのだ。 まぁ、たまに欠点はれいむが役にハマりすぎる事と 「……」 「さなえ?」 おさなえが、役とは言えちょっとした言葉に傷つく事だろう。 おそらく『運動神経に優れただけ』とか言われたのが、癪にさわったのだろう。 ため息をついて、おさなえの頭に手を置く。 「悪かったな。役とは言え、嫌な思いをさせて。すまなかった」 「そうだよ!やくであんなこといっちゃったけど、れいむはちゃんとさなえがだいすきだよ!」 「……まぁ、それでもれいむ。お前もちょいと悪ノリが過ぎたんじゃないのか?」 「ゆぅ、ごめんなさい」 おさなえに頭を下げるれいむ。 「……」 小さく手旗信号のように手を素早く動かすさなえ。 「何だって?」 「『おわびにおおきなスイカがたべたいです』だって」 「わーった。今までのギャラ代わりだ。晩飯食ったら出してやる」 さなえが急に大きく手を振り上げバンザイのポーズを取る。 「『じゃぁ、ゆるしてあげます!』だって!!よかったね!」 「あぁ、よかったよ」 アクロバティックなダンスを披露するおさなえの頭にのり、れいむも歌を歌う。 少し食費がかさむがいいかと、幸せそうな二匹に俺は苦笑を浮かべた。 夜 「しあわせ~」 「……!」 晩飯も終わり、約束通りデザートのスイカを出す。 れいむは口元を緩め、笑顔になり、おさなえは無表情だが、心なしか顔が明るく腕の動きは激しい。相当喜んでいるようだ。 「うまいか?」 「とっても!」 おさなえもアクロバティックにのけぞる。 「『ことしいちばんのびみです!!』っていってるよ」 「そうか」 俺も、一口スイカを食う。甘さが口に広がり、とてもゆっくりとした気分になった。 今年最後の夏のスイカになるだろうがよい思い出が出来たのでよしとしよう。 深夜 「おじさん、ねないの?」 「そうだな、ちょっとこのままだと『ゆっくりできそうにない』んでな」 「そっか……じゃ、さきにねてるけどはやくゆっくりできるといいね」 「ありがとな。お前らもゲームばっかせずに早く寝ろよ」 「うん、おやすみ!」 れいむとおさなえは自室に戻る。本来なら、俺も寝るはずだったが、別の短編の仕事が残っていた。 新ジャンルの挑戦でもあるのでもう少し取り組みたいという思いもあった。 『ゆっくりできない』=『仕事が忙しい』 という事で分ってくれる二匹が電気を消すのを見届けると俺は仕事部屋に戻り、原稿にとりかかる。 ??? これは夢なのだろうか、いや夢だろう。 新人賞以来になるだろうか、俺は何かの記念式典で表彰状を受け取ろうとしていた。 今まで、作品は何度か出してきたが、この場所に立つのは数年ぶりになる。 審査員には俺がこの道に進むきっかけとなった―今ではお亡くなりになった先生がいて。 その隣には、初めて俺にゆっくりを教えてくれた―どすまりさとびぐれいむ夫妻がいる。 後ろでは担当が珍しく微笑みを浮かべて拍手をしてくれた。 「よかったね、おじさん!」 「おめでとうございます!!」 れいむもいる。口を聞けないはずのおさなえも祝福してくれる。 会場には今まで世話になったダチもいれば、そのダチと一緒に住んでいるゆっくり達もいた。 皆が祝ってくれる。 ―幸せだな、俺は。 改めて幸せを噛みしめると表彰状を受け取る。そこには 『ゆっくり児童文学どすまりさ大賞』 と書かれていた。 「なんっじゃそりゃぁぁぁっ!!?」 大声で突っ込みを入れると気が付くと回りは朝になっていた。 窓の向こうにはオレンジ色の光がゆっくりと昇ろうとしている。 「朝か……」 どうやら、眠ってしまったらしい。変な夢を見たと頭を振ると、頭の位置におさなえがいた。 目を開けているが、まだ眠っているらしい。 「またか……」 おさなえの習性で何故か、俺がうたた寝をしていると枕になろうとしてくれる。 そんな時に限って疲れからなのか、それともこいつのせいなのか変な夢を見る時が多い。 「枕としては最適なんだがな……」 ひとりつぶやくと、PCの横でもまた一匹、れいむが寝ていた。 「ゆふ、ゆへへへへ……」 奇妙な寝言を呟いているがそこには既にぬるくなってしまったお茶と湿ってしまったせんべい、 そしてれいむの字だろう、汚くも大きな字で 「たまにはゆっくりしていってね!!」 と書かれていた。 思わず、苦笑が浮かぶ。 俺は、れいむを軽くなでてハンカチを布団代わりにかけた。 せんべいは既に湿っていたがしょうゆの味は濃く、うまい。 茶で流し込むと、PCを消して、またおさなえを枕に眠る。 おさなえの負担が減るか分らないが、頭を置くところにはタオルを置いておいた。 今日ぐらいは昼までゆっくりするか。 そう思うと、あっという間に俺は、眠りについた。 ノーマルゆっくりとおさとうゆっくりの違いが出ていていいですね そしてお互いいいコンビになってる でもおさゆくって細腕でも力は弱くないようなw -- 名無しさん (2012-09-06 19 00 40) 名前 コメント
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・登場人物モデルはふたばゆっくりスレから拝借しております(当人許可済み) ・万が一にもマズい表現がございましたらお知らせください ・ぬる虐め以上の虐待表現は一切出ません ・初投稿にていくつかの粗などはご容赦くだされば幸いです ・不幸になるゆっくりがいます。 「……で、なんでこんなことになっているのぜ?」 まりさは何度目か分からないため息をついた。 ため息のつき先は明白。 こんな事態になった原因である自分の飼い主に、である。 「何でってそりゃあ……」 ため息の当てこすり先があっけらかんとした表情で説明を始める。 カメラを構えているのはどこにでも居る普通のお兄さん。 ちょっと違うところがあるとすれば、落ちてるゆっくりを拾う癖があるくらい。 まりさは別に普通のペットショップ産の良ゆっくりであるからにして この癖は自分に対する脅威でしかなかったりするのだが。 さておき、彼らが今現在いるのは、夏の夕方の一軒家の瓦屋根の上である。 夕方となれば涼しいだろうという趣旨の元、飼いゆっくりであるまりさが嫌がるのを無視して一緒に上がってきたのだ。 「星の写真をとるにきまってるじゃないか」 原因主が簡潔に答える。 この男はいつでもこんな感じなので、まりさは正直対処に困っていた。 「だからなんで屋根さんなのぜ……」 もはやためいきを付くのも飽きてきたという顔の生首。 ため息をつくのは、せめてもの抗議の証であるが、今まで通用したことは一度もない。 生来ペットショップでは自分の何倍も高いところで飼育されていたのだから、別に今更高いところでうだうだと言う気にはならない。 もっとも落ちたら痛いだろうが……まあ普段から愛情をかけられて育てられてるから、それだけですむだろう。 問題はそういうことではない。 「まりさがいってるのは、なんで写真をとるのに屋根さんなのかなのぜ!!」 真夏日で熱した瓦屋根は、たとえ風が吹き降ろす形になったとしても、そこそこの熱を備えている。 饅頭であるまりさにとって正直あんまり趣味のいい場所ではない。 まあ、人間さんにとってもそれは同じなのであるが。 「ここのほうが綺麗に撮れるからだよ」 再びなんということもないという表情で答えるお兄さん。 あきれてものも言えない。 「でも前に落ちたのぜ?」いえないけど、いう。言わないと熱気でどうにかなってしまいそうなのだ。 「いやあ、あれは事故だよ事故。」 「えーりんの使う機械さんを作ってる人がえーりんにかかるなんて笑い話にもならないのぜ」 「ああ、そういう手もあるか。」 「あるわけないでしょおおおおおおおお!?」 この男、重度のえーりんふぇちさんであった。 飼われ心に密かに心穏やかでもないまりさであるが、そんな表情はおくびにも出さない。 「おにーさんはなんでお星様さんを写真にとりたがるのぜ?」 このままだと本気で医者にかかるために怪我をしかねないので、話を横にそらしにいくまりさ。 「うーん、そうだなあ。」 腕を組み、男は考え始める。 まりさは頭のいいゆっくりだが、所詮は餡子脳、少し説明を捻らないといけない。 元々この飼い主は星をみるのが大好きであり、まりさをひっぱりまわしてはキャンプし、各地で星をとっている。 無論本職のカメラマンというわけではないのだが、アップロードした時の評判は上々のようである。 ようであるというのは、お兄さんがそういってるからで、まりさがとくに見たわけではないからだ。 「星の輝きというのは、結構前の、前の前の光なんだよね。」 「ずいぶんゆっくりしてるのぜ?」 「まあ、そういうことなんだけど。」 いかにもゆっくりらしい解釈だなと、クスりと笑うお兄さん。 「ゆっくりしてるなら、人間さんが写真さんをとりたがるのもわかるのぜ。」 「でもその昔の光を見てるのは、今の俺が見たという証でもあり、その光を皆とも共有したい、ということでもある。わかる?」 「うーん……」 少しうつむいて考え始めるまりさ。 「難しいかな?」 「少し……なのぜ。ひかりさんは、ゆっくりできるのぜ?」 餡子脳なりには、よくできたまりさは言葉の一つ一つを噛み砕いて考えていく。 「それで、みんなをさせてあげたいから、お兄さんは写真をとるのぜ?」 「肝心のところが抜けてる気がするけど、そういうところかな」 「?」 誰よりも早く。 太古の光を写し取る。 それは何よりも気高く、美しい。 しかしそれを美しいと感じてくれる人間は、決して多くはない。 無論星の光に魅せられる人間は大勢居るが、その瞬間を切り取るその技術や耐久力などを褒める人間は少ない。 そして、褒められたいとも、思わない。 ただそこには、写真を、時間を切り取ったという確かな男の満足感があるのである。 「まぁ、まりさにはちょっと分かり辛いかな。」 時間に対するおうちせんげんのようなもの、と説明しようとして男は止める。 あんまりにもゲスくさかったからだ。 オマケにわかりつらいし。 「おにーさん、やねにのぼっちゃだめなのかー」 そんな二人をくすくすと笑いながら、ふわふわと浮かんでくるもう一人の飼いゆっくり。 胴つきゆっくりのるーみあである。よじよじと屋根瓦にしがみつき、ふはぁと一息つく。 「ん、もうすぐ星が一番光るんだよ」 「そーなのかー」 七夕の日に、お星様をずっとみていたというこのメルヘンチックなゆっくりをみて、思わず持ち帰ってしまったのである。 「だからさ、もうちょっとだけ」 「そういうとおもったのかー。でもまりさだけでもおろすのかー」 「ひ、ひい!? ま、まりさはおにいさんとうんめいをともにするんだぜ!」 るーみあを極端にまりさがこわがるのは、捕食種だから、というだけでもなかった。 お兄さんがるーみあを拾ったあの日、まりさは願い事を吊るしていたるーみあの笹を食べようとして、逆に食べられかけていたのである。 「どこの艦長さんだよ……」 「そちらも予測済みなのかー。アイスさんとお茶をもってきたのかー」 「お、助かるねえ」 器用に足元で吊っているお盆からソーダアイスとお茶を取り出するーみあ。 「ごーくごーく、しあわせーっ!」 冷えた麦茶は夏の夕日を見るのによく似合う。 「助かったよるーみあ、喉が渇いたのでまりさ泣かせて涙でも飲もうかと思ってたんだ。」 「ぺーろぺーろしあわ……っておにいさんきちくすぎでしょおぉおお!?」 「おっと、もったいないのかー。」 ぽろっとまりさのくちから落ちるアイスを掴み取るるーみあ。 「ゆわあああ!?まりさのあいすさんとらないでね!?とらないでね!?」 「……なんか理不尽なのかー?」 困ったような表情でアイスをまりさの口に返するーみあ。 流石に奪ったりはしない、とはいえない。 「ぺーろぺーろ、しししししあわせええ!」 まりさのほうがおいしそうだし、なんて言いそうだったし。 「ん……そろそろだな」 時計と星、夕日の角度を観測し、カメラを構えるお兄さん。 何も知らない女の子が見たら、少しキュンとなってしまうかもしれない。 というか実は一度あるのだが、そのときは岩山に上っており、直後落下したので100年の恋も一瞬で醒めるような刹那恋具合であったが。 「……」 カシャ 今時のデジカメではなく、ミノルタXEでぎりぎりの星を撮影する。 専用機材でもデジタルでもなく、望遠レンズ一枚での撮影にこだわるのも、男の密かな美学であった。 「……よし、今回は乳サナエ星の瞬く瞬間が大量に取れたぞ」 「それも昔々の遠い未来のお話、なのぜ?」 にやっと笑って帽子を斜めに構えて格好つける生首饅頭。 「どこで覚えてくるんだそんな言葉」 「てれびさんでやってたのぜ!」 「ふぉーすのちからさんなのかー」 二人の微妙な勘違いに苦笑しつつ、機材をクーラーバッグにしまいこみ、はしごを降りて片付けるお兄さん。 「そろそろ晩御飯さんなのかー」 ふよふよと地面にあわてて降り立ちお盆を足から外して台所にもっていくるーみあ。 天を仰げば、夕日が少しまだきつい。 「でもまあ……」 日々の仕事を考えて、ため息をつくお兄さん。 「こういうことができるのも、もう少しか」 家に帰ってきてから屋根に上る。 今日は戯れにまりさも一緒に上げたが、夕暮れが早くなれば、危なくて出来なくなるだろう。 彼なりにまりさを気遣いながら、いじめているのである。 ポケットからコンビニのレシートを取り出す。 今夜はちょっとしたあまあまを買ってきている。 二匹がどんな喜ぶ顔をするか、ちょっと楽しみだ。 自分が星をとり続けるのも、そういうことなのだろう。 見た人がどんな表情をするのか。 うれしそうな表情をするのか。 見れなかったことを悔しがるのか。 感謝の言葉を貰うのか。 もっといい写真はないのかと聴かれることか。 そんな人の反応が見たくて、きっと撮っている。 うん、そういうことなんだろうと、思う。 天を仰げば満天の星たちのパレードが始まる1時間前。 今夜も、美しい夜空を満喫できそうだ。 お兄さんが忘れ物に気づくのは、ざっと3時間後の話であった *過去作品リスト とくになし
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象印餅つき機BS-EB10 1升タイプ 暖房節約あると便利グッズ
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※オリジナルゆっくりが出ます。かなりチートです。 ※ある意味、希少種優遇 ※虐待分は低めで、戦闘分が大多数を占めます。 ※牧場主並びにミシャグジさなえが出ます ※事前に、<ゆっくり進化論>をよんで頂ければ幸いです。 それでは、以上の注意を踏まえて、ゆっくりしていってね!! そのもの達は、墓に住み、あらゆる者も、あらゆる鎖も、あらゆる総てのものをもってしても繋ぎ止めることはできない。 そのもの達は、縛鎖を引き千切り、あらゆる枷を粉砕し、狂い泣き叫ぶ墓の主たち。 この世のありとあらゆるモノ全て、彼らを抑える力を持たない。 故に主が、「名は何か」とお尋ねになると、それは答えた。 「愚問なり。無知蒙昧。知らぬならば答えよう―――我が名はレギオン。大勢であるがゆえに」 ―――新約聖書マルコによる福音書5章9節より。 群れをなすもの ジメジメとした梅雨が明け、緑豊かな草木生い茂る森を、大凡この場には似つかわしくない、バイオハザードで使用されるような防護服に身を包んだ牧場主と、居候である胴付きまいむ、最近になってふもとの群れで住み着くようになったミシャグジさなえの、一人と2匹が、ある場所を目指して、歩んでいた。 「牧場主さん、大丈夫ですか?」 「うん、正直、この格好で山歩くのきつい。お前ら、ゆっくりの出鱈目ぶりが羨ましくなる」 「しっかりするんだぜ!!もうすぐ、ゆうかのいる花畑に着くんだぜ!!」 ぜえぜえと息を切らす牧場主を、心配するミシャグジさなえに、牧場主の手を引っ張る胴付きまいむ。 しばらく、歩いていると、目的地―――隕石が落ちたように巨大な窪みに、中央にある大樹と変わらない巨大な花を中心に造られた花畑に辿り着いた。 とその入口に当たる場所に、一匹の胴付きゆうか―――この花畑にいるゆうか達の、群れの長が出迎えてくれていた。 「あら、牧場主さん、まいむ…それと…?」 「うちの新顔のミシャグジさなえだ」 「よろしくお願いします」 「ところで、そっちの方は、どうなんだ?」 「ええ、いつも通りよ」 そう笑顔で、花畑の手入れをしている群れの仲間達を見つめながら、胴付きゆうかが答えた。 「ゆゆ、こんなところに、おはなさんがたくさんはえたゆっくりプレイスがあるよ!!」 「ゆー!すごいよ!いっぱいたべものがあるよー!」 「「「「「おかーちゃーん、はりゃくちゃべようよー」」」」」 そんな素敵笑顔も、招かれざる無粋な連中―――成体れいむとまりさの夫婦に、子まりさと子れいむの子ゆっくり達が合計5匹によって、すぐさま曇った。 どうみても頭が悪そうだし、花畑を荒らすきまんまんである。 「まぁ、いつも通りだな。面子も定番通りだし」 「そうですね」 「…牧場主さん、殺しちゃっていいですか?」 「いや、別にいいよ。どうせ、いつも通りなんだから。番人達が片つけてくれるよ」 畑荒らしゆっくりは、発見され次第、即殺が基本なのだが、殺る気まんまんのミシャグジさなえを、牧場主は面倒臭そうに制止した。 そして、その足元では、花畑の中を突き進む小さな番人達が、畑荒らしゆっくり達に制裁を加えようとしていた。 「それじゃあ、みんなで、ゆっくり、おはなさんをむーしゃむーしゃしようね!!」 「そのあとで、ドスやむれのみんなをつれて、いっしょにゆっくりしようね!!」 「「「「「ゆっくちりかい―りぐおーん―ゆっ?」」」」」 「だれかしらないゆっくりのこえがしたよ」 「ゆゆ?だれかいるの?」 親れいむと親まりさの声に、5匹の子ゆっくり達が返事をした時、聞きなれない声が混じった。 何事かと、親ゆっくりの二匹が、あたりをキョロキョロ探し始めた。 だが、姿はどこにも見当たらないので、とりあえず、おちびちゃん達とお花を食べようとした瞬間――― 「「「「「「「「「「「「りぐおーん!!!」」」」」」」」」」」 「「ゆぅっ!?なんなのぉおおおおおお!!」」 「「「「「きょ、きょないでぇえええええ!!」」」」」 ―――突然、花畑から押し寄せてきた黒い波が、ゆっくり親子に襲いかかった。 「ぐるなぁああああ!!でいぶのはだにざわるなぁああああ!!」 「ゆあああああ!!いちゃいよぉおおお!!ちくちくさんは、ゆっきゅりできないよおおおお!!」 「だずぢゅげで、おがあああぢゃあああああん!!」 その黒い波は振り払われても、振り払われても、続々と押し寄せ、ゆっくり親子達の体を飲み込まんばかりの勢いで、纏わりついた。 そして、他の家族が黒い波に覆い尽くされる中、なんとか頭左半分抜け出した親まりさは、自分達に襲いかかった黒い波の正体を知ることになった。 「「「「「「「「「「りぐおーん!!」」」」」」」」」」 「り、りぐるだぁあああああああああああああああああああああああ、ゆ?」 なんだか、このりぐる、おかしい―――自分達に襲いかかる、数千はいるであろうりぐる達の姿を見て、親まりさは思った。 ゆっくりりぐるは、他のゆっくり種に比べ、手の平程と言う大きさしかなく、落書きみたいな昆虫のような6本の手足と、二本の触角、背中には外套の様な羽があり、人間から見れば、ゴキブリのような姿をしている。 だが、このりぐりには、甲殻類に見られ様なガッチリした殻に覆われた手足が4本しかなく、頭部の前面の上下に3本、頭部の後ろに1本と、突起のような角が生えていた。 やがて、奇妙なりぐる達が口を大きく開けた瞬間――― 「「「「「「「「「「りぐおぉぉおおおおおおおおおん!!」」」」」」」」」」 「ゆぎゃああああああああああああああああああ!!!ば、ばげものおおおおおおお!!」 りぐる達の口の中からぎょろりとした一つ目が飛び出し、まともに眼を合わせる事になった親まりさは、思わず叫び声を上げた。 同時に、親まりさは、花畑を喰いあらそうとした代償を支払わされることとなった。 「ぐるなぁああああ!!ごっぢに、ぐる、ゆぎゃ、ばちゃぁい!!」 「ゆばばばばばっば、ぐびっちぃ!!」 「「「「「ゆばぎゅぃ!!」」」」」 奇妙なりぐる達が、一斉に放電を始め、強烈な電撃が親子ゆっくりに襲いかかった。 2、3回の電光が迸った後、奇妙なりぐる達が一斉に立ち去った後には、無残な姿になった親子連れのゆっくり達の末路があった。 頭部右半分を焼かれ、右目と頬の一部を失った親まりさは、まだ良い方であった―――りぐる達によって完全に飲み込まれた親れいむと子ゆっくり達は、口や目などの穴と言う穴から餡子をまき散らし、飾りも髪の毛も焦げてボロボロになり、黒こげ饅頭になって、短い断末魔を上げて、感電死した。 「あ、あああああああああああ!!でいびゅ、おぢびぢゃんがぁあああああ!!」 「と、こんな具合にいつも通り、黒こげ饅頭が出来上がりましたっと」 「まあ、運がいいのもいたみたいだけどね」 物言わぬ黒こげ饅頭になった親れいむと5匹の子ゆっくりの亡骸を前にして、嘆きの声を上げる親まりさの前に、飄々とした態度の牧場主と花畑を荒らそうとしたゆっくりを冷たい目で睨みつける胴つきゆうかが近づいていた。 「ど、どうぢで、ごんなごどに…」 「はいはい、ゆうか達の育てた花畑を荒らそうとした代償に決まってるだろ」 「お、おはながっでに、はえで…」 「はいはい、鳴き声鳴き声。じゃ、花畑を荒らそうとしたまりさは、さっさと出て行ってね」 「ゆがぁあああああ!!ざわるなぁあああ!!はなぜえええええ!!」 「そぉぃ!!」 「ゆかあああああああああ!!おぞら、とんでぇええええええ、ゆべえ!?」 胴つきゆうかは、親まりさの―――花畑を荒らすゆっくりの十八番には、聞く耳を持たず、そのまま、森の方へと放り投げた。 そして、親まりさは、そのまま森の茂みに、突っ込みながら叩きつけられることになった。 「さて…今度は数日後ぐらいがちょうどいいかな」 「そうね。あのまりさの話だと、ここから少しかかるみたいだから。その辺が目途ね。あなた達もよろしくね」 「「「「「「「「「「りぐおーん」」」」」」」」」」 胴つきゆうかの言葉を聞いた奇妙なりぐる達は、了解をしたのか、一声上げると、そのまま、一斉に花畑へ向かって、散って行った。 とここで、一連の流れを茫然と見届けるしかなかったミシャグジさなえが、奇妙なりぐるたちが去った後に、慌てて牧場主に問い詰めてきた。 「ぼ、牧場主さん、今のは…」 「ん?ああ、あのりぐるの事か?」 ミシャグジさなえの疑問を察した牧場主はすぐさま答えを返した。 あの奇妙なりぐる達の正体を。 「ありゃ、お前のご同類だよ。<ゆん造>にまで進化したゆっくりりぐる―――通称:りぐおんだ」 りぐおん―――ゆっくりりぐるが、ゆっくりの進化における最高位である<ゆん造>に到達した際に、その姿と性質が、とある空想上の怪物に似ていたために、付けられた名称である。 生息地は、現在のところ、巨大な丸い窪みを利用して作られた、窪みの中心に巨大な花が存在する花畑であり、そこで、リーダーである胴付きゆうか達の群れと共に過ごしている。 普段は、花の受粉や雑草取りなど、花を育てるゆうか達の手助けをしているが、花畑を荒らしに来る外敵―――主に劣等種と称される普通種が対象になることが多い―――に対しては、容赦なくその攻撃性を発揮する。 最大の武器は、りぐる達の特徴でもある圧倒的ともいえる数の多さと、ゆっくりいくと同じく、電気ウナギのように体から強力な電撃を発生させる能力である。 これらの能力を活かし、スズメバチに群がるニホンミツバチのように、集団で相手を取り囲み、体から一気に放電し、相手を攻撃するのだ。 「まさに、この花畑の番人ってことになるのかな」 「そうなんですか。でも、大丈夫でしょうか…さっきのまりさ、群れにドスがいるみたいでしたし。もし、生きていたら…」 「ああ…」 生き延びた親まりさが、群れに戻り、今日の事をドスに話し、ドスが群れを率いて、ここに襲撃するのではと、心配するミシャグジさなえに対し、牧場主は、事もなげに意味深な言葉を呟いた。 「多分、2、3日後に来るんじゃねぇか。一応、その為にわざわざ生かしたんだし。そろそろ、前回の分もきれるころだろうし」 ―――3日後 「ここだね!!ゆっくりプレイスを独り占めする悪い人間さんとゆうか達がいるのは!!」 「そうだよ!!まりさの、れいむもおちびちゃんもみんな、あのげすどもにころされたんだよ!!」 「わかるよーひどいげすなんだよー」 「そんないなかものに、こんなゆっくりプレイスはふさわしくないわね!!」 「どすやれいむたちのものにするから、じゃまなげすはさっさとでていってね!!」 「はやくゆっきゅりしたいよ、みゃみゃ~」 「ゆっくち、ゆっくちv」 再び、牧場主と、ミシャグジさなえ、胴付きまいむが、ゆうか達のいるあの花畑を訪れた時、大勢のゆっくりを引き連れたドスまりさの群れが現れた。 群れの規模は、千匹という大人数で、その中には子ゆっくりや赤ゆっくりの姿もあり、どうやら、群れを丸ごと移動させ、ここに引っ越すつもりらしい。 と群れ中に、あの時生き延びた親まりさの姿もあった。 「ゆがぁああああああ!!あのときのぐぞじじいいいいい!!よぐも、でいぶと、おちびぢゃんだちをおおおおおおお!!」 「本当に来ましたね、牧場主さん」 「だろv伊達にゆっくり殲滅部隊の副隊長なんてやってねぇさ」 「一応、ゆうか達は避難させたけど、どうするんだぜ?」 「そうだな…とりあえず、りぐおん達と一緒にこいつら、駆除しますか」 「了解です」 「腕が鳴るんだぜ」 「――――むじずるなぁあああああああああああああああああ!!」 何やら、親まりさがほざいているが、当然の如く無視を決め込んだ牧場主達は、ゆうか達を避難したのか確認すると、りぐおん達と一緒に、ドスの群れを駆除することにした。 完全に無視と言う態度に、怒り心頭の親まりさが、牧場主に向かって、強烈(嘲)な体当たりを仕掛けようとした瞬間――― 「邪魔」 「ゆぶげぇあああああああああ!!」 ―――牧場主の蹴りが、体当たりをしようとした親まりさの顔面にめり込んだ。 まともに蹴りを叩き込まれた親まりさは、前歯の3,4本を折られ、地面に転がりながら、悶絶した。 「ゆあああああああ!!よぐも群れの仲間に手を出したね!!もう許さないよ!!」 「いや、先に仕掛けたのはそっちじゃん。後、手じゃなくて足だし」 「ゆっ!?…う、うるざい、ごちゃごちゃ言い訳するなぁああああ!!」 親まりさを攻撃した牧場主を怒りを向けるドスは、牧場主の指摘に思わず、言葉を詰まらせるが、すぐさま逆切れして、大きな声で怒鳴りつけた。 どうやら、このドスは、無能ドスの類らしい―――と牧場主は思った。 「むきゅ!!どす、このげすたちにこうしょうのよちはないわ!!ゆっくりぷれいすをひとりじめするげすは、せいっさいあるのみ!!みんな、いっせいこうげきよ!!」 「「「「「「「えいえいゆー!!!」」」」」」」」 参謀であるぱちゅりーの指示と共に、木の枝やとがった石を咥えた群れのゆっくり達が一斉に、牧場主達に向かって突っ込んできた。 その数は、およそ500匹―――群れの中でも、れみりゃやふらんを撃退した精鋭部隊だ。 もっとも――― 「「「「「「「「りぐおーん!!」」」」」」」」 「だらしゃぁあああ!!」 「うっとうしいんだぜ!!」 「ゆるさなえぇええええええええ!!」 「「「「「「「「「「「「ゆぶげぇい!!!?」」」」」」」」」」」」」 手のひら程度の大きさとはいえ、精鋭部隊の10倍の数がいるりぐおん達、数多くの群れを殲滅してきたクレイモア・ユンの元副隊長と、ドス撃墜数3ケタのドスキラ―まいむ、ドスをも殺せる抑止力を相手にするには、荷が重いであろうが。 黒焦げになりつつ、爆ぜる感電死、派手に餡子やクリームをまき散らす撲殺、無数の蛇の鞭にズタズタにされる斬殺、銃口から放たれるハバネロ弾丸を喰らい、憤死する銃殺―――まともに死ねるゆっくりは一匹もいなかった。 そうして、無駄に屍を築くだけになる一方的な展開になる―――はずだった。 「むきゅ、そこまでよ!!」 「うごくんじゃないんだぜ!!こいつが、どうなってもいいのかだぜ!!」 「うううぅ…ご、ごめんなさい、みんな」 それを阻んだのは、参謀ぱちゅりーと群れ一番の戦士と称するだぜまりさ。 そして、逃げ遅れて、だぜまりさに捕まり、痛めつけられた一匹のゆうかだった。 「「「「「「りぐ!?」」」」」」 「く、まさか、逃げ遅れていたゆうかがいたなんて…」 「どうするんだぜ、牧場主さん?」 「…」 花畑の群れに所属するゆうかを人質に取られ、牧場主たちは迂闊に、ゆっくり達に手を出せなくなった。 「ゆっ!!すごいよ、ぱちゅりー!!さすが、ドスの群れで一番賢いゆっくりだね!!」 「むきゃきゃきゃきゃきゃっ!!もりのけんじゃのぱちゅりーにかかれば、らくしょうよ!!さあ、おとなしくこうさんしなさい!!それがいやなら、さっさと…」 嘲るぱちゅりーに対し、牧場主は、やれやれと首を振り、思わずため息をつきたくなった。 「まったく…どうして、もりけんってのは、こう馬鹿な事やらかす無能が多いんだろうな。少しはまともに死なせてやろうかと思ったのに」 「むきゅ!!まけおしみのつもりかしら!!ぶざまね、にんげんさん!!」 「ゆうかに手を出したんだ…お前ら、まともに死ねないぞ」 「む、むきゅ?」 自分の挑発にまるで意を返さない牧場主の態度に不審がるぱちゅりーであったが、ゆうかを人質にとっただぜまりさが、しゃしゃり出てきた。 「ゆへへへへへ!!なにをいってるだぜ、じじい!!ごちゃごちゃうるさいんだぜ!!これいじょう、むだなていこうするなら、このゆうかをもういちど、えださんで、ぶすりと―――ブスリ―――されぎゃちゃ!!」 「ゆ、ま、まりさ、どうしたの?」 「ゆぁああああああ!!ばぢゅりぃいいいい、後ろ、後ろをぉおおおおお!!」 「にげでぇええええ!!ゆっくりにげでえええええええ!!」 「なんなの、あれええええええ!!!!わがらないよおおおおおおお!!」 「う、うしろ?」 牧場主を罵倒していただぜまりさが、傷ついたゆうかの頬に枝を突き付けた瞬間、地面から現れた巨大な白い爪が突き刺さり、中枢餡を貫かれたのか、串刺しにされたまま、絶命した。 だぜまりさの悲鳴に、戸惑うぱちゅりーに対し、ぱちゅりーの後ろに現れたそれを見た、ドスや群れのゆっくりが慌てて、ぱちゅりーに後ろを振り返るよう、叫びように騒ぎ出した。 そして、何事かと振り返ったぱちゅりーが見たのは――― 『…状況を確認する、牧場主』 「む、むぎゅうううううううううううう!!」 ぱちゅりーが驚くのも無理はなかった―――それほどまでに、現れたモノは異形の姿をしていた。 それは、白銀の甲殻に覆われ、カブトガニが腹部を見せて起き上がったような姿をしており、異常発達した、鎌のような形をした後脚1対と蟹のハサミのような前足1対、胸部の横から生えた4対の角、そして、頭部があるであろう場所には、異形の体には不釣り合いな、眼を閉じた胴付きりぐるが張り付けられていた。 そう、彼女こそが、この花畑の主であり、無数のりぐおん―――蟻で言うところの働きアリに当たるソルジャーりぐおんを統括する<群れをなす者>:マザーりぐおんと呼ばれるゆっくりなのだ。 「極めて簡単。花荒らしした馬鹿が、群れの連中誘って、仕返しにやってきた」 『…了解した。慈悲もなく容赦もなく死を始めよう』 「だ、だずげで、ど、むぎゅぇ!!」 牧場主の言葉を聞いたマザーりぐおんが、何の感情もなく答えると、ガタガタと震えるぱちゅりーに向かって、だぜまりさを串刺しにした巨大な前足を振り下ろした。 迫りくる死の恐怖に、ぱちゅりーは、ドスに助けを求めるがその前に、顔を潰され、口から大量のクリームを噴き出して、動かなくなった。 「ゆがあああああ!!よぐもばぢゅりーを!!!もう許さないよぉおおお!!せいっさいしてやる!!」 『笑止。許しを乞う覚えなど無い。ゆえに、お前達は勘違いしてはいけない。これは制裁ではない―――ただの』 昔馴染みである参謀ぱちゅりーを殺され、怒り心頭のドスが、マザーりぐおんに、熊さえを退かせた強烈な体当たりをしかけるが――― 「ぐらええええええええええええ、えっ?」 『害獣駆除だ』 「ゆべぇっ!!」 まるでそよ風に触れたかのごとく、意に反すことなく、ドスの体当たりを受け止めたマザーりぐおんは、そのままドスを投げ飛ばし、地面に叩きつけた。 これまで、力押しで負けた事のないドスにとって屈辱以外の何物でもなかった。 「ゆぎぎぎぎぎっ!!余裕でいられるのも、ここまでだよ!!お前なんか、ドススパークで消し飛ばしてやるうううううう!!」 「ゆっ!?そ、そうだよ!!ドスには、ドススパークがあるから、まけないよ!!」 「あんなやつにまけるはずないんだぜ!!」 「おもいしりなさい、いなかものぉ!!」 大きく口を開き、ドススパークの発射態勢に入るドスを前に、マザーりぐおんは、まるで意に反さず、感情のこもらない声で言った。 『撃てばいい。お前達、ドスにはそれしか取り柄がないのだろ。これまでやってきたドスも同じようにしていた。お前も使えばいいさ』 「ゆがあああああああ!!ドズを馬鹿にする奴は、ゆっぐりしないで死ねぇええええ!!」 舐められたと思ったのか、ドスの口から発射されたドススパークの強烈な光が、マザーりぐおんに向かって、飲み込まんとした。 だが、ドススパークを撃つ前にドスは気付くべきであった。 ―――ドスがここに来るまでにやってきた他のドス達が、ドススパークを使ったのに、未だにマザーりぐおんが存在する理由を。 マザーりぐおんと同じくゆん造位階に進化したミシャグジさなえは、ドススパークの適正使用距離でない超接近戦に持ち込む為に、接近戦に特化した進化をした。 そして、マザーりぐおんもまた、対ドススパーク用の進化をしているのだ。 『ただし、私には、そんなものなど通用しないがな』 迫りくるドススパークを前にして、マザーりぐおんの胸部横にある8本の角から放出された電磁波が、顔面正面―――異形の肉体に張り付いた、裸身をさらす胴付きりぐるを守るかのように巨大なバリアを生み出し、ドススパークを受け止め、分解し、無効化した。 「ゆ、う、うぞだよ…そんなはずないよ。ありえなよ。な、なんで…なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで…なんで、どずずばーぐが効かないのおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」 『これが、私が、お前達に打ち勝つために、お前らの誇りを叩き潰す為に生み出した<力>だ』 一撃必殺のドススパークをあっけなく防がれたドスは、これまで築いた群れの長としての自信とゆっくりをゆっくりさせるドスまりさの誇りを打ち砕かれ、半狂乱状態で叫ぶしかなった。 だが、そうなるのも無理はなかった。 事実、これまで、この花畑を荒らしにやってきたドスも同じく、切り札であるドススパークを同じように無効化され、恐慌状態に陥っていたから。 ドススパークを電磁波によるバリアで無効化する―――これこそが、マザーりぐおんが、対ドススパーク無効化のために特化させた進化だった。 『では、今度は、こちらから―――いくぞ』 「ゆひっ!!もういやじゃあああああああ!!おうぢがえるううううううう!!」 「ゆあああああ!!!ドズ、どこにいくのぉおおおおお!!」 「まっでぇええええ!!おいでがないでえええええ!!」 「びどりで、にげるなぁあああ!!!ごのいながものおおおおおお!!」 感情のこもらないマザーりぐおんの言葉に、既に戦意喪失のドスは、短く悲鳴を上げると、恥も外聞もなくすぐさま、追いすがろうとする群れの仲間を見捨てて、その場から逃げだし始めた。 所詮は、無能ドス―――ドゲスでなくとも、意志薄弱なゆっくりらしい行動ではあるが―――それを許すほど、マザーりぐおんは甘くなかった。 『逃さん』 「ゆぎゅぃうううう…な、なんにぃいいいい!!ゆぶぶぶぶぶぶぅぅううううう!!」 逃げだそうとするドスの姿を確認した、マザーりぐおんは、張り付けられた胴付きりぐるの、これまで閉じていた瞼を、ゆっくりと上げた。 はっきりと開かれ、血涙とともに現れたそれは―――無数の小さな眼がぎっしりと詰まった複眼だった。 そして、その眼がドスを捉えた瞬間、突如としてドスの体が硬直し、苦悶の表情で、白目を剥き、あちこち膨れ上がり、小刻みに震え始めた。 「あが、ゆがあぁああああ、ぷくぅじだぐないのになんでええ、がらだがぶぐれぇええええええええ!!だくげでぇ、おでがいじまず、だじゅげげえええええええええ!!」 必死に膨れようとする体を押さえつけようと、力を入れるが、効果は薄く、ドスの体は徐々に膨張していった。 言葉にならない命乞いをするドスであったが、マザーりぐおんはやはり感情のこもらない声で答えを返した。 『だが、断る』 「ぞ、ぞんんんんんんなあああああああああ、いやぢゃあああ、しにだぐない、じにだくうううううう、もっど、もdっど、ゆぐ、ゆぐぐちいいいいいいいい――――ゆばぁつ!!!」 マザーりぐおんの死刑宣告に、死への恐怖と生への渇望を望みながら、ドスはゆっくり固有の断末魔さえ、まともに言えず、限界まで膨らみ、そのまま、バラバラに破裂した。 あたりには、弾け飛んだドスの餡子やお飾りの残骸が、ぼたぼたとまき散らされた。 「い、今のは、牧場主さん、何が…?」 「マイクロ波シェル…あの胴付きりぐるの眼が、マイクロ波を収束照射して、対象物を発火燃焼させるってわけ。んでも、ゆっくりの場合だと、なぜか、電子レンジでチンするみたいに爆ぜるんだよなぁ、不思議」 簡単に説明する牧場主ではあるが、ミシャグジさなえとしてはただ驚くしかなかった。 とここで、<そろーり、そろーり>と逃げだそうとするドスの群れに所属するゆっくり達が、ミシャグジさなえの眼に映った。 「マザーりぐおんさん!!あいつら、逃げるみたいですよ!!」 『…』 「ゆっ!!!あんなばかなドスなんて、しんでとうぜんだぜ!!まりさはさっさとここからにげるんだぜ!!」 「あんないなかものたちのいるゆっくりプレイスなんて、もういらないわ!!」 「れいむたちは、おちびちゃんとあたらしいむれでゆっくりすごすんだよ!!」 口々に勝手な事を言いながら、逃げだそうとする群れのゆっくり達であったが、彼らはすっかり忘れていた。 さっきまで、牧場主たちが、手を出せなかったのは、ゆうかというゆん質がいたためだと言う事に。 すでに、マザーりぐおんによって、ゆうかが助けられた今となっては、容赦をする必要などなかった。 『言ったはずだ。誰一人として逃さないと』 「「「「「「「りぐおおおおおおおおおおおおおん!!!」」」」」」 「だずげでぇええええ!!!」 「じにだぐな“いぃぃぃぃじにだぐな”い”よ”お”お”お”お”お”!!!」 「ゆ”あぁぁぁぁぁーーーーーーー」 マザーりぐおんの死刑宣告と共に、怒りの咆哮を上げるソルジャーりぐおん達が、まるで、巨大な骸骨の腕のような形を取り、逃げだそうとする群れのゆっくりたちを次々に飲み込んでいった。 やがて、群れのゆっくりの全てが、ソルジャーりぐおん達に飲み込まれた時、黒い波と化したソルジャーりぐおん達は、群れのゆっくりたちを飲み込んだまま、一斉に中心部にある巨大な花のところに引き摺りこみ始めた。 「だずげでぇえええええ、だずげでぇえええええ、どずうううう!!でいぶううううう!!」 その中には、最初にこの花畑に訪れ、妻れいむと子ゆっくり達を殺された親まりさの姿もあった。 必死に助けを求めるも、それに応えるものなど、誰もいなかった。 やがて、巨大な花の根元にまで引き摺りこまれた時、地面からこの巨大花の根が一斉に姿を現し、ソルジャーりぐおん達の運んできた群れのゆっくり達を絡め捕った。 「はなじでえええええ、はな、ゆあぅあげああああああああ!!」 「しにちゃぐううううぐぎゅえいぇえええええええええ!!」 「でいぶのおちぶっぶううううううううぶぅ!!」 「どがいばああああどがいばああああああばばばばばばばあああ!!」 悲鳴を上げるゆっくり達であったが、巨大花の根が穴という穴を塞いだ時点で、そのまま次々にじめんに引き摺りこまれた。 一匹、一匹と、老いも若きも区別なく、群れのゆっくり達が地面に引き摺りこまれていく中、親まりさの傍に、牧場主が近づいた。 「よぉ、まりさ。元気にはしてないか…」 「――――――!!」 「口ふさがれてるから、分からねぇよ。一応、お前だけには、この後どうなるか教えといてやるよ。この巨大花はりぐおんプラント。りぐおん達の餌であるお飾りを作ってくれる面白い性質があるんだ。うちの牧場では、ここで余ったお飾りを仕入れて、ペットショップや加工場で売りさばいているんだ。まあ、その為に、肥料として生きたゆっくりをやらんといけないんだけど。この花だって、地面から染み出る死臭をごまかす為にゆっくり達の好む香りがするよう工夫してあるんだぜ」 「―――」 まさかと、親まりさは凍りついた。 あの時、自分が殺されなかったのは、群れの皆をおびき出す為だったのか? じゃあ、ドスや群れのみんなは――― 「お、良い表情してるな。否定したいだろうが、事実だから認めろ。お前のせいだよ、まりさ。お前が、群れの仲間を呼びつけなければ、群れにいるなんて言わなければ、少なくともお前だけが死んで終わったのにな」 「―、―、――――――――――――――――――――――!!」 容赦ない牧場主の言葉に、声なき悲鳴をあげる親まりさ。 やがて、じわりじわりと、親まりさの体は、根に引き摺りこまれ、地面に沈み始めた。 「―――!!―――!!」 「さあ、お別れの時間だ。お前はこの後、じっくりと締め付けられて、中身をじわじわと吸い尽くされて、ゆっくりできないまま、死ぬんだ。花が好きなんだろ?良かったじゃねぇか、花の為に死ねるなんてさ」 「―――、―――、-――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!」 『光栄に思え。この花畑の一部になれるという名誉を』 口が開けたならば、さぞかし大きな絶叫を上げてたであろう親まりさは、牧場主とマザーりぐおんの言葉を聞くのを最後に、大地に引き摺りこまれた。 そして、花畑にはいつもどおり、色とりどりの花が咲き乱れる平穏を取り戻した。 『これにより、全ての外敵は排除した―――協力感謝する。後は、怪我をしたゆうかの治療を頼む』 「おう、お疲れ様、この愛想無しv」 結局、ドスの群れを駆除した後でも感情の変化を見せなかったマザーりぐおんに対し、牧場主は軽口をたたきつつ、巨大な前足を軽くノックするように親しげに叩いた。 永琳によれば、マザーりぐおんに感情の変化がないのは、りぐおんプラントとゆうかを守る上で、不必要なもの―――群れを崩壊へと導くゆっくり特有の本能や感情を排し、自身を単一機能に特化した部品として位置付けているから、らしいのだ。 それでもと、牧場主は、マザーりぐおんに託された、怪我をしたゆうかを見て、思った。 ただ、守るために―――それ以外のモノは全て捨てたこのマザーりぐおんに感情がないと本当に言えるのだろうか? マザーりぐおんの渇望とはすなわち<守りたい>…それこそが、ゆん造位階に達したとあるりぐるが抱いたものなのだろう。 そうであるなら、マザーりぐおんにも、感情はあるはずだ。 なぜなら、守りたいとは、誰かを愛さない限り芽生える事のない想いなのだから。 ここは、とある窪みに造られたゆうかの群れがいるお花畑。 それを守るのは、小さな番人達と番人達の主。 生贄の餡子やクリームを吸いながら、成長する巨大花に見守られ、今日もゆうか達の花畑は綺麗に咲き乱れていた。 あとがき 多分、同じような事を考えた人がいるんじゃないかと思いながら書いてみました。 とりあえず、エッグチャンバーとかはオミットしてみました、如何でしょうか? 次は、胴付きまいむ中心の過去話か牧場主の里帰り話をやる予定です。 職あき
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