約 374,287 件
https://w.atwiki.jp/tansyuu/pages/59.html
スネーク「オタコン、人間に羽根が生えている。 あれはキメラか? それともコスプレイヤーか? 」 オタコン「スネーク、彼はピット君だよ。 パルテナ親衛隊 隊長のピットは、エンジェランドに住まう天使だ。 」 スネーク「まさか。本物の天使などいるわけがない。 」 オタコン「そういう種族なのかもしれないけど、背中の羽根や謎に包まれた武器は本物だ。年齢の割には戦闘慣れしているから気をつけたほうがいい。昔はとても軟弱だったけど、数え切れない挫折が彼を強くしたらしいね。 」 スネーク「いわゆる『ヤラレチャッタ』だな。 」 オタコン「なんだ、知っているんじゃないか。」
https://w.atwiki.jp/2jiseihaisennsou/pages/125.html
新都のビル群の真ん中に建つ冬木市庁舎。 その最上階の執務室で、一人の男性が傍らに立つ秘書の報告に耳を傾けていた。 「警察、行政からの情報は以上です、市長」 「ご苦労、私はこれから客人との会談に臨む。 暫くの間、職員たちの指揮権は君に預ける」 「はい」 市長と呼ばれた男性は秘書にそう告げ、執務室を出るとエレベーターに乗って数階下のフロアへ向かい、多少の緊張を抑えながら応接室の扉を開いた。 そこには、中世ヨーロッパの王族のような装いの巨漢がいた。傍から見れば時代錯誤甚だしい服装だが、その巨漢には不自然さを感じさせない、一種独特な雰囲気があった。 「……来たか」 重々しく口を開いた巨漢に、市長はやや恭しく答えた。 「遅れて申し訳ない。しかし私も、市政に携わる者としてこなさなければならない仕事がありましてな。 それでは交渉を始めましょう―――陛下」 “冬木市”市長、ジョン・バックスとベルン王国国王、ゼフィール。 彼らが邂逅し、今こうして会談の場を設けている理由、それを語るには暫く時間を遡らなければならない。 ジョン・バックスが聖杯戦争の存在を知ったのは、7月を迎えたばかりの頃だった。 とはいっても、彼自身に聖杯戦争の誘いが来たわけではない。 神の後継者の座を賭けて行われる12人の未来日記所有者による殺し合い。 その参加者である天野雪輝の無差別日記と我妻由乃の雪輝日記に、それぞれ聖杯戦争の存在と、彼らがその戦いに参加するという内容の記述を自身の未来日記、The watcherによって覗き見た事がきっかけである。 この事を知ったバックスは、すぐに時空王デウスに聖杯戦争の存在の有無について問い質した。すると、いくつもの驚くべき事実が明らかとなった。 まず第一に、聖杯の正体ともいえる異世界に存在するとされるムーンセルなるものの存在。 (デウス曰くどのような因果律であろうとも自分達の世界にムーンセルなどというものは存在し得ないから、並行世界ではなく異世界にあたるらしい) そのムーンセルが最近になってデウスに直接接触してきたらしいという事。 自分からデウスに接触できる存在というだけでも驚愕すべき事だが、話はそれだけでは終わらなかった。 ムーンセルは現在生き残っている未来日記ゲームの参加者の中から数名を聖杯戦争に参加させることを要求し、その対価としてデウスにいくつかの情報をもたらした。 そのうちのひとつが、デウスの小間使いであるムルムルの不正行為の数々だった。 今までバックスらが接してきたムルムルは、一言でいえば並行世界の未来においてゲームの勝者となった我妻由乃とともにこの世界にタイムリープしてきた、いうなれば1巡目のムルムルだったのだ。そして、2巡目のムルムルを封印し、ゲームにおいて2巡目の我妻由乃を殺害し、彼女と入れ替わった1巡目の我妻由乃が有利になるよう不正な干渉を行なっていたことも発覚した。(もっとも、これらの不正についてはデウスも薄々は気づいていたようだが) これらの情報を入手したデウスは、ムーンセルからの情報を基に2巡目のムルムルを解放し、彼女の力の封印を解除、1巡目のムルムルの力を剥奪し、その存在を完全に抹消した。 以上の顛末を聞かされたバックスは、自身も聖杯戦争に参加する旨をデウスに告げた。 もし我妻由乃が聖杯戦争に参加しなかった場合、並行世界で自分を破った彼女の前に敗北する可能性が高く、また、如何に寿命が近づいているとはいえ、ムーンセルが接触するまで1巡目のムルムルに対して何ら効果的な対処ができなかったデウスの、ひいては自分の世界の神の力に対して疑念を抱き、未来日記ゲームに参加し続ける意義を半ば失っていたからである。 同時に、デウスの手配によって現実世界の情報端末を通してムーンセルへの接触が可能になった事を告げられたバックスは、聖杯戦争への準備を始めた。 ハッキング技術の高い部下十数名を動員し、聖杯戦争に関するある程度詳細な情報の入手や、会場である冬木市内における市長の肩書きと権限の確保、更には自身の秘書を始めとした部下たちのパーソナルデータを再現したNPCを配置することに成功した。 勿論、普通の端末ではそこまでの改竄を行うことは到底不可能だ。しかし国内第三位の演算能力を持つスーパーコンピュータである「HOLONⅢ」を手中に収めているバックスにとっては、困難ではあっても決して不可能な事ではなかった。 そうして周到に準備を重ねたバックスは電子の海へと赴き、アサシンのサーヴァント、ファニー・ヴァレンタインを召喚した。(天野雪輝と我妻由乃が参加していることを未来日記で知ったのはちょうどこの時である) 正にチートと呼ぶに相応しい所業ではあるが、そもそも聖杯戦争は参加者間における完全に平等な争いが明文化されているわけではない。あくまで平等なのは、それぞれがサーヴァントを召喚し、3画の令呪を宿すという2点のみである。 その後、部下の報告で深夜の街を練り歩くゼフィール主従を発見し、敢えて堂々と姿を現して同盟を持ちかけた。(仮に問答無用で襲いかかられてもアサシンの宝具を用いれば時間稼ぎは十分可能と判断したため) そして承諾を得られた後、その足で市庁舎へ赴き、秘書からの報告を一通り聞き、今に至る。 「では内容をまとめましょう。 私はアサシンと部下たちを使って他のマスターの情報を収集し、有事の際には陛下に彼らの掃討をしていただく。 そしてその対価として、私の権限の及ぶ範囲で陛下の身の安全の確保と情報操作を行う。 これでよろしいか?」 「……構わん。だが、攻撃のタイミングはこちらで決めさせてもらうぞ」 威圧感を一切隠すことなく言い切る金髪の巨漢に、バックスは(少なくとも表面上は)涼しい顔で答えた。 「勿論です。餅は餅屋と言いますからな。 一介の政治屋に過ぎない私などよりも、歴戦の王たる貴方の判断の方が、戦場においてはよほど適切でしょう」 この言葉は本心である。 あくまで同盟に過ぎない以上、完全に信用するのは危険だが、戦場の空気を肌で知っている人間の判断力を利用しない手はない。 ちなみに、同盟をするにあたり、情報交換の一環としてバックスはゼフィールから彼のいたエレブ大陸の世界観について説明されたが、驚きはしてもさほど疑いはしなかった。 事前に手に入れた聖杯戦争の情報から、参加者がそれぞれ異世界から集められていることを知っていたためである。 「では私は失礼します。 まだ先は長い。どうぞごゆるりとお休み下さい」 そう言い残して部屋を出たバックスを無言で見送るゼフィールの隣に、実体化したライダーが現れた。 「良いのか、ゼフィール?あの男、間違いなく我らを利用し尽くす算段だぞ?」 最初に会った時から変わらぬ傲岸さと全てを嘲笑うかのような表情を隠しもせず、試すようにゼフィールに問いかける。 ゼフィールもまた、ライダーへの警戒と嫌悪を隠すことなく言い返す。 「そんな事は分かっている。だが現状、我らはこの見慣れぬ世界の土地勘で圧倒的に他のマスターに遅れを取っている。 なればこそ、他のマスターとの一時の同盟もやむを得まい。否とは言わせんぞ、狂王」 右手の令呪を振りかざしながら告げるゼフィールに、不遜な笑みを崩さぬままライダーは再び霊体化した。 ―――やはり、この男は信用ならん。 単純に現代の世界の情報を得るだけならば自身のサーヴァントに聞けば良い事だ。だがゼフィールはそういった情報提供の面ですらライダーを信用できなかった。 この魔人なら愉悦と称してわざと自分に誤った情報をもたらしてもおかしくない。少なくともゼフィールはそう確信していた。 だからこその他者との同盟。まずは比較的安全な状況下でこの世界について正確な情報を得る。いざという局面でこの狂王に遅れを取らないためにも。 だがこの時、ゼフィールも、そして聖杯から現代知識を得ている筈のライダーも気が付いていなかった。今彼らがいる応接室には監視カメラと盗聴器が仕掛けられており、先ほどのやり取りは全て筒抜けになっていることを。 知識でしか知らないものに、咄嗟に頭が回る者など滅多にいない。機械文明から縁遠い人生を歩んだライダーもまた、その例に漏れなかった。 【新都・冬木市庁舎(応接室)/未明】 【ゼフィール@ファイアーエムブレム 覇者の剣】 [状態]:健康・残令呪使用回数3回 [装備]:エッケザックス@ファイアーエムブレム 覇者の剣 封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣 【ライダー(アシュナード)@ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡】 [状態]:健康 応接室を出て執務室へ戻る途中、バックスは先ほどの金髪の覇王のことを思い返していた。 「あれが戦乱の世界を生きた王の威厳、か。全く生きた心地がしないとはこの事か」 先ほどはどうにか平静を装えたが、手は震え服の下には汗が滲んでいた。本来、一般人であるバックスには、あの男のような人種とは正対するだけで身が竦みかねないほどのプレッシャーを感じるのだ。 しかし収穫もあった。盗聴器によって聞こえたサーヴァントとの会話から察するに、あの覇王はサーヴァントとの関係が非常に悪いと見て良い。自身のサーヴァントが信用できないとあらば、序盤のうちはそうそうこちらに牙を剥く余裕は無いはずだ。暫くは寝首を掻かれる心配はしなくとも大丈夫だろう。 そして、視線を自分の未来日記、The watcherへと向ける。そこには、最後にチェックした時から変わらぬ内容だけが書かれていた。天野雪輝と我妻由乃の死を示す記述だけが。 「まさか、彼らがな……」 嘆息しながら呟くその声には、複雑な感情が入り交じっていた。 正直なところ、バックスが聖杯を目指すにあたり、一番の障害になるのは天野雪輝と我妻由乃だと思っていた。未来日記ゲームにおいて、何度も死の予告を覆してきた彼らこそが自分にとっての最大の強敵になるのだと、半ば本気でそう信じていた。 だが、現実はバックスが考えるよりも遥かに無情で残酷だった。この聖杯戦争は、天野雪輝や我妻由乃であっても、数時間と生き残ることを許されない戦いなのだ。 そして、ここから先はバックスもいよいよ覚悟を決めなければならない。彼の未来日記、The watcherは他の未来日記所有者の日記を覗き見る能力だ。即ち、他の所有者がいなくなれば、ただの携帯電話に成り下がることをも意味する。 「だが、私は負けるつもりなどない」 誰に言うでもなく、そう呟く。 その表情は、今までの彼の人生のどの瞬間よりも闘志に満ちていた。 【新都・冬木市庁舎(最上階廊下)/未明】 【ジョン・バックス@未来日記】 [状態]:健康・冬木市市長・残令呪使用回数3回 ※参戦時期は、天野九郎死亡後から、雨流みねねにHOLONⅢ(の一部)を破壊されるまでの間からです。 ※ムーンセルへのハッキング工作により、冬木市市長の役職を得ています。 また、聖杯戦争に関するある程度詳細な情報を得ています。
https://w.atwiki.jp/girlwithlolipop/pages/39.html
もう聖杯しか見えてない ◆zzpohGTsas まったく、全てが不愉快であると言わざるを得ない。 彼女の周りを取り巻く全ての環境は、今の彼女にとって真実のものではなかった。 彼女が今住んでいる某都市の1K安アパートも、某都を所在地とする公立大学に入学した一年生と言う社会的肩書も、 マンツーマン形式で小~中学生の子供に勉強を教える、市内の学習塾にアルバイトとして働いていると身分も。 全てが全て、演じろと言われるがままに演じている、紛い物の境遇だった。 自分の今の生活が、本来のそれでない事に気付いたのは、一昨日の事。 いつものように学習塾に足を運び、受け持っている子供に勉強を教えている時に、急激な違和感を覚えたのである。 違和感の正体を探りながら行った勉強指導は散漫その物で、珍しく塾長に注意されてしまった。その時は素直に謝罪したが、それでも違和感が消えない。 喉に小骨が引っかかるが如きこの違和感は、一体全体何だと言うのだ。 そう考えるうちに、根源的な問題提起――何故自分は此処で勉強を教えているのか、と考えた瞬間、全てを思い出した。 アパートに戻る際の、人通りの少ない小道での出来事であった。 彼女は聖杯戦争の参加者だった。 聖杯、西欧の地に端を発する一大宗教の開祖が、死の間際にワインを飲むのに使用した杯であるとも、はたまた磔刑にされた開祖から滴り落ちた血液を受け止めた杯であるとも言われているものだ。 聖杯戦争とはそんな聖遺物を求めて不特定多数の参加者達が争い、殺し合い、最後まで生き残った参加者には、その暁として聖杯を手に入れる事が出来る。 この世界に於いて聖杯とは、あらゆる願いを叶える万能の願望器。成程、確かに求めるに値する代物なのかも知れない。 だが悪趣味である。願いを叶えると言う奇跡をダシに、人間同士を殺させ合うなど、海の彼方の一神教の神は血生臭い儀式が好みのようだ。 ――無論、本気で神がこのような事を願っているとは彼女は考えもしていなかった。これは神の意思ではない。 神以外の何かの思惑を、感じざるを得なかった。でなければ、此処まで複雑に悪意の絡まり合った計画を、考え付く訳がない。 聖杯戦争はサーヴァントと呼ばれる存在と勝ち抜く戦いである。 サーヴァント、奴隷を意味する単語であるか、この催しの中では、意味合いが全く異なってくる。 奴隷としての側面は確かにあるが、それは彼女の左手に刻まれた、サーヴァントに対する絶対命令権である『令呪』がある限りの話だ。 令呪とは即ちサーヴァントに対する手綱。その手綱を失った場合、気性の荒いサーヴァントであれば容赦なく、操り手に牙を向く。 つまりサーヴァントとは、どちらかと言えば仲間、と言う意味合いが強い言葉なのである。 ではそのサーヴァントとはどう言った存在なのか、と言えば、諸人の信仰や想念の結晶、人間が憧れ、理想の存在として来た偉人や英雄、 幻想や御伽噺の中での存在が具現化したもの。つまり、英霊と呼ばれる類の存在が殆どであるらしい。 例え英霊でなくとも、歴史に名を刻んだ存在や、並ならぬ存在感を持っていた存在なら、英雄と全く真逆の存在であろうとも、この聖杯戦争に呼ばれうる。 そう言うものらしい。狐狸妖怪の類も、呼ばれる事があるのだろうか。彼女はそんな事を考えていた。 ――では、自分の呼び出したサーヴァントは、『何だ』? 諸人の信仰や想念の結晶? 撞着やら畏怖やらを一挙に集めた、偉人か、英雄か、猛将か? 万の軍勢を蹴散らし、竜を斃し、魔王を滅ぼした、御伽噺の中での存在か? いやはたまた、世界を恐怖のどん底に落とせしめた魔王なのか? 断じて違うだろうと、彼女は考えていた。 何故ならばその存在は―――――――――――― 「カンノミホ……(判読不能)」 ――――――――――クッソ汚い、ブサイクな男性であったからである。 目線の前で佇むこの男は、何なのだろうか。しかもくさい。 男性としては平均的な身長、一般人でもそこそこ鍛えれば到達可能な範囲の筋肉量と体格、少し日焼けした浅黒い肌。 身体中の至る所にポツポツと出来たホクロに、シミ。自分の身体に自信があるのかは知らないが、 何故この男はボクサー型のパンツだけを着用し、それ以外の何も身につけてないのか。 極め付けが、その顔。贔屓目に見れば、愛想の良さそうな。贔屓をなくして見れば、何処となく小憎たらしく、人をイラつかせるような顔立ち。 不細工かどうかと言われれば、そうでもないのかもしれないが、意識が、脳髄が。 強制的に「この男は不細工である」と認識させてしまう様な雰囲気を醸し出していた。くささの原因は、その雰囲気のせいか? ――……これは英霊なのか?―― 彼女でなくても、そう思うに相違ないだろう。 目の前のサーヴァントからは、優れた戦士が放つ気魄や凄味も、英雄偉人と呼ばれる存在が放つような神韻も、御伽噺の中の住人が醸し出す神秘さも感じられない。 市井を漁れば掃いて捨てる程見つかりそうな一般的な空気しか、この男からは感じられない。外れクジ、そんな単語が頭をよぎる。 このような男と、こんな馬鹿げた戦争を潜り抜けねばならないなど、頭が痛くなる。おまけにこの男、くさい。 夢なら覚めろと何度思った事か。しかし、全てが現実だった。 座布団に座った時の感触も、喉にぶつかるチューハイの感覚も、適度に身体を廻るアルコールも。嘘ではない。全て真実のそれだった。 だから、彼女、上白沢慧音は思わざるを得ないのだ。『全く、すべてが不愉快だ』……と。 「KIN、夜中腹減んないすか?」 「減らない。先程食べたのを見ただろう。と言うより、お前はサーヴァントだから食事は不要の筈だろう」 「クゥ~ン……」 子犬のような鳴き声を上げて拗ねはじめる彼女のサーヴァント。 茶目っ気のつもりなのだろうか。生憎と、全く可愛らしくもないし、憎たらしさだけが増長されてしまうだけだ。 可愛げのつもりが今の発言ならば、今すぐにでも令呪を使って自害させてやりたい気分である。 意外な事にこのサーヴァント、性能自体はどうしようもない程低い、と言う訳ではない。 幸運が致命的に低く、魔力が平均以下である事を除けば、宝具も強く、白兵戦もそれなりにこなせるサーヴァントだ。 だが問題は、彼のクラスがアヴェンジャー、つまり聖杯戦争の定石から外れたクラスであり、定まった使用法の確立してないクラスであると言う事だった。 おまけに宝具が強いとは言ったが、同時にクセとアクも強い為に、その運用には並ならぬ工夫が必要になる。 聖杯戦争は当然の事、殺し合いの経験すら満足にない慧音では、不安要素しかない。 「固くなってんぜ?」 と、得意げに口にするアヴェンジャー。言葉は軽いが、口調は少しだけマスターを気遣っている。 緊張している事を指摘しているのだろう。微かだが、チューハイを持つ手が震えているのに今更気付いた。 例え目の前のサーヴァント/相棒がアヴェンジャーではなく、最優のクラスであるセイバーだったとしても、身震いしていたかも知れない。 命の奪い合い、しかも生き残れるのはただ一人だけなのだ。そうなってしまうのも、無理もない事だった。 「なあ、アヴェンジャー」 「はい」 「そろそろお前の真名を――」 「ないです(食い気味)」 これである。 このサーヴァントは基本的には、命令に忠実なタイプである。 霊体化しろと言えば普通にしてくれる上に、大人しくしていろと言えば普通に黙っていてくれる。 彼と出会って二日程が経過したが、目立った命令無視の覚えはない。霊体化していてもくさいと言う点は残るが、従順な点は高評価だ。 だがそんな彼でも、一つだけ譲れないラインと言うものがあった。真名、つまり本名である。こればかりは、出会ってから今日に至るまで、全く教えてくれないのだ。 真名解放を必要とする宝具を持たない事がせめてもの救いだが、知っていれば何かしらの作戦も立てられる為、聞いておく事は無駄ではない。 こう言ったメリットを懇切丁寧に教えても、この男は譲歩しなかった。慧音がどれだけ説得しても、教えてくれない。 名前の為だけに令呪を消費するのも馬鹿らしい。結局今も、アヴェンジャーには真名の黙秘を貫かれているのであった。 ――変な所で、扱い難いし意固地だな……―― ふぅ、と一息吐いた後で、残りのチューハイを一気に飲み干す慧音。 今後どう振る舞おうか考えていた彼女だったが、ふと、ある事に気づいた。アヴェンジャーを呼び出してから2日あまり。 考えてみれば、この事を聞いていなかった。 「アヴェンジャー」 慧音が訊ねる。その事柄を知るべく、彼女は言葉を続けた。 「お前に願いはないのか。聖杯にかける、願いだぞ」 これを訊ねるのを、間抜けな話だが、すっかり失念していた。 万能の願望器である聖杯を廻って戦う場に、サーヴァントとして呼び出されたのだ。何かしらの願いを抱いている、とみるのが自然な向きだろう。 慧音にはこれと言って叶えるべき願いは抱いていないが、目の前の、如何にも俗物的な風貌をした男の事だ。何かしら叶えたい欲の一つ二つはあるだろう。 尤も、自らの名前や来歴すら明かさないアヴェンジャーの事。そう簡単に口にしてくれるとは、慧音は思っていない。 アヴェンジャーが見せるだろう反応から、願いの有無だけでも、知っておきたいのである。 「……ありますあります」 なんとアヴェンジャーは願いを肯定した。 どうせ黙秘を貫かれるだろうと思っていた慧音は、思わず面食らってしまった。 「どんな願いを、お前は抱いているのだ」 流石に此処まで踏み込んだ質問には、答えて来ないだろう。解っていて、重ねて問い質してみたのだ。 そして―― 「――先ずうちさぁ……殺したい奴、いるんだけど……」 この男が抱く闇の一端を、垣間見た。慧音の瞳が、驚きに剥かれる。 今更ながら、漸く理解してしまった。この男のクラスが、『アヴェンジャー』であった、と言う事に。 言葉を発する時のアヴェンジャーの顔は、まさに『復讐者』の名に恥じぬ、怒りと憎悪に満ちたそれであった……。 ――きたない―― 汚くない。 ――くさそう―― ちゃんと風呂には毎日入ってる。 ――ブサイク―― 自分ではそうは思ってない。 ――枕がデカすぎる―― 何でそんな事で批判されなくちゃならないんだ。 ――顔と声があってない―― 俺でも気にしてる事を言うんじゃない。 ――喘ぎ声が不愉快―― 男が掘られてあげる声なんて大体そんなもんだろ!! ――睡眠薬を混入させる手口が狡猾―― あれは監督の台本に書かれてた通りの事だから俺に罪はないだろ。 ――アドリブがうざい―― 少しでもリアリティを出そうと思っただけだ。 ―― 鈴 木 福 ―― 誰だよ。 ――脱糞する姿が最高に汚い―― そんなもん誰だってそうだろ……。 ――がんばれ がんばれ―― 何を応援してるんですかね……? ――24歳の学生の身分でホモビに出るな―― ……ごめんなさい。 数え切れない程の誹謗中傷、誹りの言葉に悪罵の言葉を浴びせかけられ続けた。 自分が生前、大した事をしていなかった事も、歴史に残るような大悪事を犯した記憶も、アヴェンジャーには全くない。 ただ、ホモビデオに出演しただけ。それだけでこの男は、日本国におけるA級戦犯や、ヒトラーにも匹敵、或いは、 彼らが裸足で逃げ出す様な謂れのない中傷を浴びせられ続けた。 その様子を面白がるように、身に覚えのない馬鹿げた逸話や、ゴシップ、英雄譚や冒険譚を付け加えさせれた結果、 彼はサーヴァントとして呼ばれるうる存在にまで昇華されてしまった。この様な経緯で高次の存在となった人類は、歴史上彼をこの男をおいて他にいるまい。 何故自分だったんだ、と考える事は幾度もあった。頼むから止めてくれと思う事など、その何倍だったか。 彼は無力であった。彼のゴシップは際限なく広がり続け、日本国内だけでなく、中国にまで波及するに至った。 自分のスキャンダルがアジア中に広がってしまう可能性も、いよいよ笑い話で済まされなくなってきている。 淫夢も終わりだなと言われ続けて久しいが、未だに滅ばず存続しているその様は、見ていて絶望する。 先行きに全く明るい展望がないのである。頼むから、自分を放っておいてほしい。そして、大人しく眠らせていて欲しい。 ――だから………… 「(やっぱ勝ち取るしかないんすねぇ……)」 本当の魂の安息の為に、アヴェンジャーは、マスターである上白沢慧音と共に戦うのである。 自分の安息を面白半分で邪魔をし続ける存在を、この世からなかった事にすると言う願いの為に。 自分がポルノビデオに出演していたと言う事実や痕跡を、完全に抹消する為に。 アヴェンジャーを動かす感情は、極めて純粋な殺意と、安息を求める切実さなのだった。 【クラス】 アヴェンジャー 【真名】 無銘(24歳の学生)@真夏の夜の淫夢 (真名解放は役名で足りる) 【ステータス】 筋力C 耐久C 敏捷C 魔力D 幸運E- 宝具EX 【属性】 中立・中庸 【クラススキル】 復讐者:C 己の復讐に縁があるものと対峙した際、筋力・耐久のパラメーターがワンランクアップする。 アヴェンジャーの場合は、『自分がホモビデオに出演していた』と言う事実を知っている者と対峙した際に、このスキルが発動する。 【保有スキル】 無覚の功罪:EX ――ホモビに出ただけで世界を救う男/惨めに殺される男。 たった一度の迂闊な行いで、全く身に覚えのない冒険譚や英雄譚、喜劇に悲劇に転落劇、武勲や逸話などと言ったエピソードが付け足されて行った事に由来する。 元々アヴェンジャーは本当に何の変哲もないただの人間だったが、後世の人間が彼のキャラクターを次々と付加させて行った結果、 整合性もなければまとまりもない何者かへと変貌してしまった。ランク相当の無辜の怪物及びその反対のスキルを保有する複雑なスキル。 真名秘匿:EX 真名及び過去に何をしていたかと言う事の露呈を防ぐスキル。ランクEXはあらゆる宝具やスキルは当然の事、魔法を用いたとしてもその素性が割れる事はない。 何万人にも届こうかと言う人間にその醜態やスキャンダルを目の当たりにされ、拡散され続けたにもかかわらず、本名は当然の事、 目撃談すら見つからなかったと言うエピソードに由来する。 アヴェンジャーにとっては最後の心の拠所となっているスキルであり、彼は自らの素性が明かされる事を何よりも恐れている。 淫夢の住人:A+ 現在進行形でネットの文化のみならず、現実世界の文化をも侵食し続ける現代のガン細胞、真夏の夜の淫夢に登場する人物かどうか。 ランクA+はそのジャンルの中で特に著名かつ有名な人物であり、事情を知らない一般人にまで、使用していた語録が知れ渡っているレベル。 Bランク相当の戦闘続行と仕切り直しを内包したスキル。元々カートゥーンテイストの強い創作体系の為、防御向けのスキルが揃う。 天性の肉体(大嘘):B- ステロイドで獲得した偽りのボディ。筋力、耐久、敏捷をワンランクアップさせるが、戦闘開始から数分程度で元のランクに低下する。 そもそもアヴェンジャーの肉体は常人が鍛えれば達成可能であるのだが、後世の人間が『これはステロイドで得た身体である』と根拠もないのに断定。 結果、獲得したスキルである。ちなみにアヴェンジャーの自己申告によれば、彼は水泳とトレーニングを行っていたそうである。 魔力放出(睡眠薬):C 魔力を消費して両手から睡眠薬をサーッ!!(迫真)と散布する。 アヴェンジャーの散布する睡眠薬は医薬品とは思えない程効き目が早く、耐性のない存在は良くて数分、最悪一分弱で相手は昏睡する。 当然アヴェンジャーの元となった人間にそんな奇天烈な能力はなかったのだが、これも彼がホモビデオに出演した際、 小道具の睡眠薬を用いた演技があまりにも面白かったから付与されたスキルである。 ちなみにアヴェンジャーの散布する睡眠薬は通称ホモコロリと言う。 【宝具】 『演じて見せた四ツの道筋(迫真の演技)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大補足:1~5 アヴェンジャーが過去にホモビデオ内で演じて来た四人のキャラクターをそのまま再現(演じる)する能力。 演じられるキャラクターは、水泳部の田所、空手部の鈴木、全身に銀粉を塗りたくりゴーグルを被ったサイボーグ風のサイクロップス先輩、 そしてアヴェンジャーを象徴する二十四歳の学生である。 水泳部の田所の場合は魔力放出(睡眠薬)がAランク相当に跳ね上がり、空手部の鈴木の場合は天性の肉体のデメリットなしに、 筋力・耐久・敏捷のランクがワンランクアップ。更にCランク相当の心眼と勇猛を獲得。 サイクロップス先輩はレーザーによる遠距離攻撃が可能になり、Cランク相当の矢避けの加護を獲得する。 普段は二十四歳の学生の姿で活動しており、この状態が通常のアヴェンジャーの状態。 だがこの宝具の真価は、それぞれのキャラクターを演じている間にアヴェンジャーを殺したとしても、 殺せるのは『その時に演じていたキャラクター』だけであり、アヴェンジャー本体は殺せないと言う点。 そして、殺されたキャラクターは聖杯戦争中二度と演じる事が出来ない。つまり、アヴェンジャーを確実に葬るには都合『四回彼を殺さなくてはならない』のである。 『万華鏡の如くに変わる顔(怪人二十面相)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:アヴェンジャーの顔を認識出来る距離 最大補足:アヴェンジャーの顔を認識出来る人数 アヴェンジャーの持つもう一つの側面が宝具となったもの。 アヴェンジャーは同じ相手に二度三度顔を見られても、相手はそれをアヴェンジャーと認識出来なくなる宝具。 彼が前に戦ったサーヴァントであると認識するには、Cランク相当の直感或いは千里眼等の、見識に関わる宝具やスキルが必要。 彼はその時々、しかも同じビデオの中に於いてすら、『顔』が全く違う時があると言うエピソードに由来する。 その種類は数多く、某天才子役、金メダルを獲得した某水泳選手、某NONA REEVESのボーカル、某サッカー選手、某女性声優等々。 ある意味で彼が振り撒いて来た風評被害の象徴でもある。 『野獣の咆哮(世界で最も聞かれたイキ声)』 ランク:C+++ 種別:対軍宝具 レンジ:10~50 最大補足:100 世界で最も絶頂の様子を見られ続けた来たポルノ男優。そのエピソードが宝具となったもの。 一度聴いたら二度と忘れる事が出来ない独特の声で絶頂の雄叫びを上げる宝具で、耳にした者は凄まじい不快感を得、更に初回に限り1ターン行動が不可能となる。 また対魔力や精神的な防御手段を持たない者は15ターン程の間Eランク相当の精神汚染を得、行動に支障を来たす。 魔力を用いて声帯を強化、或いは令呪一区画消費する事で高い威力を誇る音響攻撃として転用する事が出来る。 そして、『演じて見せた四ツの道筋』でキャラクターを『水泳部の田所』にした上で、 真名解放、そして令呪一区画消費と言うプロセスを経る事で、指向性の衝撃波を伴い、 Aランク相当の対軍宝具に匹敵するダメージを与える音響兵器に活用する事が出来る。 『真理に至れ野獣の正体(新説野獣先輩シリーズ)』 ランク:E-~A+++++ 種別:対自宝具 レンジ:1 最大補足:1 これだけ名の知れ渡ったアヴェンジャーであるにも関わらず、全く足取りも素性も掴めない彼の神秘性が宝具となったもの。 今も生きているのでは、まだ学生をやっている、死亡した、タイムスリップしているなど実に様々な憶測が飛び交っているが、 『そう言った状況なら野獣先輩は何にでもなれるのでは?』と言う小学生並の理論が、この宝具の骨子となっている。 宝具の真相は、『何者でもないのなら何者にでもしても良い』と言う呪いそのもの。 宝具の発動の条件は、幾つかの仮説を立てる事。その仮説はどんなに稚拙でガバガバでも構わなく、最悪一つだけでも良い。 宝具を発動させるとアヴェンジャーは元の浅黒い肌をした男性の姿から、ありとあらゆるもの、つまり『森羅万象』何にでもその姿を変えさせる事が出来る。 惑星や恒星と言った天体レベルの物質から、インフルエンザやエイズのウィルス、大統領専用車両から銃器。 果ては、本来アヴェンジャーの世界に存在しなかった筈の二次創作のキャラクターまで。何にでもアヴェンジャーは姿を変える事が出来る。 立てた仮説の数やその矛盾のなさに比例して、消費する魔力や変身に掛かる時間が最適化され、極論を言えば仮説が多ければ多い程完璧な精度でこの宝具を発動出来る。 立証した説をそれぞれストックする事で、アヴェンジャーはノータイムで変身を実行可能とし、立て続けに説を入れ替えて攻撃させると言う方法も可能。 宝具の発動には一切の魔力を必要としないが、宝具を発動した状態を維持しようとすると魔力が消費する。 そして、元々のアヴェンジャーから余りにも遠い概念、遠い存在に変身、それを維持しようとした場合は魔力の消費量が倍加。 惑星規模のものに変身しようものなら、一瞬で魔力が枯渇する。更になんにでも変身出来るとは言ったが、 それはあくまでも『マスターが今まで見聞して来た』ものの範囲の中での話であり、既知の範囲外の森羅万象については、この宝具は発動しない。 【weapon】 迫真空手: アヴェンジャーの元居た世界で著名な空手の流派であった、極真カラテをもじった架空の流派。 その修行は恐ろしく厳しいが、鍛え上げる事で893秒の間に地球を114514回も泳いで周回出来るらしい。これもうわかんねぇな。 【人物背景】 彼に関する来歴は、一切謎に包まれている。 何処の生まれで何と言う本名なのかと言う事は当然の事、最終学歴は大学なのか高校なのか、何の仕事に就いているのか、家族構成は、いやそもそも生きているのか? ビデオの中に記録されている、24歳の学生と言うデータと、身長170cmの体重65キロと言う情報すらも、自己申告の為に確かめようがない。 ――様々な嘘や根も葉もない噂、悪意ある情報や憶測が飛び交う彼の情報の中で、真実があるとすれば、彼はホモビデオに出演したと言う事。 そして、ある一人の野球選手の犯したたった一度の過ちさえなければ、彼、引いては真夏の夜の淫夢のキャラクター達も馬鹿にされなかった、と言う事だけである。 【サーヴァントとしての願い】 自らがホモビデオに出ていたと言う事実を知って居る者、また、自らの境遇をネタにし続ける全存在の消滅 【基本戦術、方針、運用法】 近接戦闘もこなせるサーヴァントであるが、機を待ち、逃げに徹する事を主軸とする。 平時に兎に角、『真理に至れ野獣の正体』で過程を立てて行き、新説のストックを常備。 格上のサーヴァントと交戦し、危機に陥った場合でも、淫夢の住人スキルの影響で、しぶとく生き残る事も可能。 三騎士として運用するのも中途半端な為、必然的に、『待ち』の戦い方を主軸に据える必要があるサーヴァント。 【マスター】 上白沢慧音@東方Project 【マスターとしての願い】 元の世界に帰りたい。 【weapon】 【能力・技能】 歴史を食べる程度の能力: 幻想種である白澤とのハーフである慧音が平常時に行使する事が出来る能力。 相手の存在をなかった事にする能力、と言うよりは、ある存在が現在に至るまでの過程、つまり過去の存在を少しボカし、 実際の現実を見え難くする、と言うのが能力の真相である。 その為能力を使ってボカした現実は、ボカされただけで確かに世界に存在している。解除は慧音の任意、或いは彼女が倒された時である。 本来ならば彼女に備わった固有能力の為魔力の消費はないのだが、聖杯戦争に際しては、能力の行使の際には魔力の消費を必要とする。 白澤化: 先述の通り彼女は中国の幻想種である白澤と人間とのハーフであるが、平時は普通の人間である。 が、満月の夜の時に限り、彼女は正真正銘本物の白澤へと変貌、頭部から角も生える。 純粋な妖怪と化した彼女は人間時を遥かに超える妖力と身体能力を発揮。また、普段から行使出来る『歴史を食べる程度の能力』が進化。 『歴史を創る程度の能力』に変化する。この能力を実際に扱うシーンは今のところ存在しないが、 どちらにしても慧音が今いる舞台が聖杯戦争のそれである限り、相手の存在をなかった事にすると言う事は出来ない。 この能力で出来る事があるとすれば、Aランク相当の『真名看破』スキルを行使出来ると言う事。 但しアヴェンジャーの真名秘匿ランクは、慧音の看破スキルを大きく上回る為、彼の真名を割らせる事はやはり出来ない。 各種スペルカード: 彼女がもと居た幻想郷ではスペルカードルールと呼ばれる、弾幕を展開して戦う戦法が主流であった。 慧音もまたその戦い方に造詣が深く、弾幕の展開を得意とする。 【人物背景】 幻想郷の人里の寺子屋で、子供達に勉強を教えている女性。 教師として活動している傍ら、その能力を使って、歴史の編纂作業を行っている。得意とする科目はやはり歴史であると言う。 妖怪退治も時と場合によっては行っているらしく、里の人間からは頼れる才女として通っているが、その戦闘能力の高さは、 身体の半分が白澤のものであると言う事実に由来している事を知っている者は、数少ない。 月に1度の満月の際に、慧音は完全に白澤化する為、この時は人里を離れた場所で、平時は使う事の出来ない能力を利用し、 歴史の編纂作業にさらに力を入れているのだと言う。 【方針】 人殺しには乗り気じゃない。さしあたっては、様子見である。
https://w.atwiki.jp/tokyograil/pages/110.html
『夢は夢で終われない』 ――誰もがシンデレラ、夢から今目覚めて ――始まるよ、新たなストーリー描いたら ――つかもう、私だけの光(My Only Star) ――まだまだ遠くだけど、光降り注ぐ明日へ向かうために ▼ ▼ ▼ 「変わり続けてるようで、やっぱり変わらないね、この街も」 渋谷凛にとって、この繁華街のスクランブル交差点は自分の庭の中心のようなものだった。 まだ輝く世界へと続く最初の一歩を踏み出す前から、この街の雑踏の中に彼女はいた。 夢中になれるものがあるわけでもなく、それをまあこんなものかと諦めて、ただ過ごしていた日々。 だけど、全てを変えたあの一歩もまた、この街であの人と出会った時に始まったのだ。 忘れるわけがない。最初はなにか質の悪い勧誘だと思ったぐらいだけど。 でも、あの日のプロデューサーとの出会いこそが、凛にとってのガラスの靴だった。 あの日の出会いがなければ、凛はきっと、夢中になれるものに出会えることなく過ごしていただろう。 輝きの向こう側を知ったから、あの人が、あの少女たちが手を引いてくれたから。 だからこそアイドルとして、幾多の苦難を乗り越え、大切な仲間たちと出会い、凛は成長していけた。 信じることの強さを知った。夢見ることの輝きを知った。 そして叶えたいと思った。心の底から。こんな気持ちになるのは初めてだった。 夢は夢で終われない。動き始めていったのだ、輝く日のために。 輝くステージ。煌めく衣装。ただの女の子にとっては遠く眺めるだけの場所だった、お城の舞踏会。 アイドルとして己を高め、昨日の自分を越えてゆくたびに、それは御伽話の挿絵ではなくなっていった。 手を伸ばせば届く場所。いつの日にか辿り着ける、輝きの向こう側。 たくさんのライバル達と競い合い、磨き合い、共に笑い合って、向かっていったその先に。 誰もが憧れた、あのシンデレラの舞台があったのだ。 凛にとってそれは、幸せな記憶だった。 辛いことはたくさんあった。苦しいこともたくさんあった。 それでも、そんな日々を乗り越えたからこそ手に入れられた輝きがあった。 そう、『今の凛』は記憶している。 だけど、今、この偽りの東京で。 凛は、すべての始まりの場所であるこの街を――聖杯戦争の当事者として見下ろしていた。 「聖杯戦争、ね……」 馴染みのある雑踏をビルの上から見下ろしながら、他人事のように疑問に思う。 そんな願いが、本当に自分にあるのだろうか? 凛にとっては願いとは自分の力で叶えるものだから、聖杯に頼るのは違うのではないか、という思いはある。 もちろん一人の力では出来ないこともあるだろう。それでも頼ることと頼り切ることは違う。 魔法使いにかぼちゃの馬車とガラスの靴を与えられたとしても、舞踏会に出るのは自分自身なのだ。 だからこそ、この聖杯戦争で叶えなければならない願い――いくら足掻いても到底自力では叶えられない願いなど、 凛にとってはそれこそ無縁のものであるように思えるのだった。 ――もっとも、今の凛がはっきりとした願いを持てないのには、もっと別の理由があるのだろうけど。 凛は下界から視界を戻して、そこでようやく、隣で立ち尽くしている少女のほうへ目を向けた。 率直な印象を言ってしまえば、印象の薄い子だ。クラスで三番目くらいに可愛い感じの、だけどあまり注目はされないような。 年頃は凛と同い年ぐらいだろうが、制服を着崩している凛と違って、至極普通に制服を制服らしく着ている。 かといって、特段固くて真面目であるようにも見えない。あくまで、何処にでもいる、凡庸な、当たり前の女の子。 それが凛にとって、パートナーとなる少女――『岸波白野』に対する印象だった。 だけど。言葉では言い表せないけれど、凛には、自分が何故彼女と惹き合うこととなったのか、察しはついていた。 似ているのだ、きっと。今の自分と、彼女の、その中途半端な在り方が。 そして、恐らくは、その魂の形も。 「ふーん、あんたが私の『マスター』? ……まぁ、悪くないかな」 凛を『サーヴァントとして召喚した』少女に向かって、ぶっきらぼうに声を掛ける。 確か昔、あの人に向かっても似たようなことを言ったなと思い出し、不思議な気持ちになる。 あれはきっと『アイドルである渋谷凛』の記憶であって、『英霊』として召喚された自分のものではないはずなのに。 呆然としていた白野が名を問うのを聞き、凛はその身を翻した。 身に纏っていた高校の制服が光に包まれ、代わりに魔力で編み上げられた装備が姿を現す。 露出の多いセパレートの鎧を丈の長い蒼のマントとスカートが覆う。 両手が同じく篭手で、両足の腿までがガーター付きの黒いソックスで覆われ、膝から下は更にブーツで固められた。 魔力の膨張が巻き起こす風が、マントを、スカートを、彼女の流れるような黒髪をたなびかせる。 纏うのは水の魔力。奔流と冷気。凛が得意とする、蒼の魔術。 そして――その手に握るのは、透き通るような錯覚を覚えそうなほど蒼白く輝く、両刃の剣。 「私は凛。渋谷凛。此度の聖杯戦争では、『剣士(セイバー)』のクラスとして召喚されたみたい」 その事実は、凛にとっても意外と言う他ない事態だった。しかし、事実なのだ。 目の前の彼女がそれを受け入れるように、自分自身が受け入れなければならないと、凛は決意していた。 そうしなければきっと――聖杯戦争という壁には、立ち向かえないから。 ▼ ▼ ▼ 『空の世界』――そう呼ばれる世界があった。 青空に浮かぶ島々。その間を行き交う空を飛ぶ艇、「騎空艇」。 それを操る人々は「騎空士」と呼ばれ、時には危険な冒険にも身を投じていた。 死滅したとされる地上。星の民の遺産たる生物兵器、星晶獣。語り継がれる神秘、魔法。 危険と隣り合わせでありながら、同時に未知へのロマンをも内包する、そんな世界だった。 現代日本に暮らすアイドル渋谷凛は、その『空の世界』を訪れたことがある。 正確には、その世界のことを夢で見たのだ。 凛と、同じ事務所のアイドルである島村卯月、神崎蘭子は、夢の中で『空の世界』を冒険していた。 凛と卯月は剣士、蘭子は召喚獣たる魔王となって、騎空挺に乗り騎空士達と共に旅をした。 それは凛にとってはただの夢で、それでも不思議なくらい存在感のある夢だった。 しかしそれは夢であって、夢ではなかった。 空の世界は――『大いなる青の幻想譚(グランブルーファンタジー)』の世界は、確かに存在した。 その世界の人々は、ある日突然この世界を訪れた少女達のことを忘れなかった。 彼らは少女達のことを口伝で、歌で、あるいは書物として語り伝えた。 物語はいつしか伝承となる。彼女達は、夢の世界で英雄となったのだ。 その伝承を、人知れず遥か遠方から記録し続けている物体があった。 ムーンセル・オートマトン。全長三千キロメートルに及ぶフォトニック純結晶体。 全地球の記録にして設計図たる、神の遺した自動書記装置。 その超級の聖遺物は、彼女達の伝承をもその記録として保存していた。 しかし、伝承の記録だけでは英霊は英霊足り得ない。 元の世界におけるアイドルとしての渋谷凛ならばともかく、この『空の世界』の凛にその資格はない。 そこには確かに物語はあったが、実体と呼べるほどの確かな存在がなかったからだ。 しかし、ここに不確定要素(イレギュラー)は起こる。 ムーンセルが記録していた英霊としての枠組みに、本来の「渋谷凛」の人格と記憶がダウンロードされた。 英霊足り得ないはずの存在が、サーヴァントとして召喚される条件を満たしてしまった。 あってはならないエラー。発生しないはずの不正データ。 赤い月の聖杯戦争におけるイレギュラーが生んだ、存在しないはずの剣士――『ネバーセイバー』。 凛の話を聞き、マスターである私、岸波白野は思う。 彼女が不正規の英霊として召喚されることになった原因とは、きっと―― >1.それはきっと私――岸波白野のせいだ。 2.それは多分ザビエル氏のせいだ。 不正規のサーヴァントが召喚された原因。それは、マスターである私自身が不正規な存在だからだろう。 作り上げられた枠組みに、イレギュラーとして自我が与えられてしまった。それは他ならぬ私自身の相似形であるわけだし。 それ以上に、何よりも、私が此処にいること自体が、見方によってはバグ以外の何物でもないのだから。 私は、岸波白野は、かつて彼女とは違う私のサーヴァントと共に月の聖杯へと至り――そして既にデータとして解体されている。 不正データとして削除されたはずの私がここにいる理由。 それは多分、ムーンセル自体が目的をもって私という不正データを再構築したからだろう。 そしてその理由こそが、この『赤い月の聖杯戦争』。 ムーンセルの能力を利用していると思しきこの東京の聖杯に対して、ムーンセルが意趣返しとして送り込んだ「抗体」。 しかしあからさまに刺客を送れば、東京の聖杯の管理者に警戒される。それゆえの、ほんの些細な措置。 他愛ないバグを引き起こすコンピューターウイルス。あるいは、聖杯戦争というシステムへのアンチプログラム。 恐らくは、こうだ――『岸波白野は、ムーンセルと一体化した赤い月の聖杯に接触することは出来ない』。 加えて、こうか――『しかし、だからといって、岸波白野は抗うことを決して辞めたりはしないだろう』。 故に、こうなる――『赤い月の聖杯戦争に対して、岸波白野はセーフティ付きの妨害装置として機能する』。 私という存在が立ち向かうことをやめては生きていけないことを理解した上で、この聖杯戦争へのカウンターとして利用している。 よくも上手く使ってくれるものだとほとほと感心することしきりだが、しかし、ドロップアウトするわけにもいかないようだ。 普通のサーヴァントならば、マスターが敗退すれば英霊の座に戻るだけだろう。だが、彼女はどうだ? 彼女は「渋谷凛」ではあっても「アイドルとしての渋谷凛」ではない。座に戻ると同時に、解体されてしまうのではないか。 かつての、私自身のように。 言い淀みながらも、それでもそう伝えた私へと応えるように、セイバー・渋谷凛は真っ直ぐこっちを見据えた。 「きっと今の私は、夢の続きを見ているようなものだと思う。あの日見た夢の続きを、夢の中の私だけが見続けているんだと思う」 そう言って、癖なのだろうか首の後ろを手でさすりながら、それでもその名の通り凛として、彼女は言うのだ。 「それでもさ――『“夢”は“夢”で終われない』。そうでしょ、マスターも?」 ああ――そうだ。 確かに彼女は、私に、岸波白野に召喚されたサーヴァントなのだと、その時はっきりと確信した。 諦めない。諦めることを良しとしない。立ち向かう。どんな困難にも。 アイドルであったオリジナルの彼女は、そうやってどんな苦難も越えてきたのだろう。そして、その心を引き継ぐセイバーも。 彼女の言う通りだ。夢は夢で終われない。彼女の、あるいは私にとっての『今』がただのひと時の『夢』に過ぎないとしても。 ムーンセルによって与えられた役割を演じるしかない、『幻』のような生だとしても。 >私は、生き続けることを諦めない。 私のサーヴァントに向かって、高らかにそう宣言する。 あの月の聖杯戦争で、私に最後まで力を貸してくれたあの英霊の想いに報いるためにも。 今目の前で微かに微笑んでいる、この蒼い少女と共に進むためにも。 勝ち残ったとして聖杯に辿り着けるかどうかは分からない、だからなんだ。それがどうした。 未来が不確定であることが、岸波白野(わたし)が、渋谷凛(かのじょ)が、歩みを止める理由になるものか。 彼女が答えてくれる限り、私は私として、この赤い月の聖杯戦争へと立ち向かうと誓おう。 >――“心は決して折れはしない(Never Say Never)”。 この東京で、私達は、夢から目覚める。 【クラス】 セイバー(ネバーセイバー) 【真名】 渋谷凛@アイドルマスターシンデレラガールズ 【パラメーター】 筋力B 耐久D 敏捷B+ 魔力B 幸運A 宝具B 【属性】 中立・善 【クラススキル】 対魔力:B 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。 大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。 騎乗:D 騎乗の才能。幻獣種を除く大抵の乗り物なら人並み程度に乗りこなせる。 騎乗にまつわる逸話に乏しいため、剣士のクラスとしてはランクが低い。 SYSTEM ERROR:? 詳細閲覧不能。 この非正規の英霊は聖杯のシステムに何らかのバグをもたらす可能性がある。 【保有スキル】 シンデレラガール:A ただの女の子からアイドルの頂点へと昇りつめた少女の称号。 苦難を乗り越えて成長した逸話により、困難へと立ち向かう時にステータス以上の力を発揮できる。 また彼女の歌やアイドルとしての魅力は、相手の性別を問わず惹きつける一種の魅了として発揮される。 夢幻の剣技:B アイドルであるはずの凛が夢の中の『空の世界』で使っていた剣術。 セイバーは本人も知らないはずの剣技をまるで「知っている」かのように使いこなす。 魔術:C 神秘を司る力。『空の世界』ではこれを修めた者は魔法使い、または魔女と呼ばれる。 凛は水属性の魔術を使うことが出来る。 【宝具】 『青天に歌え蒼の剣(アイオライト・ブルー)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人 セイバー・渋谷凛の奥義たる魔法剣。 その刃を手でなぞることで水属性の魔力を纏わせ、斬撃と共に炸裂させる。 また魅了状態の敵に対しては、シンデレラとしての輝きが光の魔力を引き出し更なる威力を与える。 威力と扱いやすさ、決して高くない消費魔力と、バランスよく高いスペックを持つ宝具。 『召喚石・傷ついた悪姫(ブリュンヒルデ)』 ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:50人 二対の黒翼と闇の魔力を纏いし覚醒魔王を召喚する力を秘めた召喚石。 魔王はその右手に炎、左手には氷を宿し、それら二系統に加え強大な闇属性の魔術で敵を殲滅する。 外見は中学生ほどの少女に見えるが、難解な言い回しを好むためその意思を汲めるのは召喚者のセイバーぐらいである。 …………言うまでもないが、その正体はアイドル神崎蘭子が夢の中の『空の世界』で真の魔王の力を手にした姿。 【weapon】 蒼い刀身の剣を使う。 【人物背景】 出典はソーシャルゲーム『アイドルマスターシンデレラガールズ』、そしてそのコラボレーション先である『グランブルーファンタジー』。 渋谷凛は十五歳の女子高生。そして『シンデレラガール』の座にまで昇りつめた人気アイドルだ。 クールでぶっきらぼうだが、人一倍努力家であり、自分に妥協を許さない性格の少女である。 ある日彼女は夢を見た。それは蒼天を騎空艇が飛ぶ『空の世界』の夢。その世界で凛は剣を握り戦っていた。 しかし夢はいつか醒める。凛は不思議な夢のことを時折思い出しながらも、元の生活へ戻っていった。 しかし彼女にとっての『夢』は、空の世界――『グランブルーファンタジーの世界』の人々にとっては現実だった。 ある日突然現れ、そして去っていった幻の剣士。空の世界の人々は彼女を忘れなかった。 その伝承が英霊としての枠を形作り、聖杯がその枠に相応しい魂としてオリジナルである渋谷凛の心と記憶を当てはめた存在。 それがサーヴァント『セイバー・渋谷凛』の正体であり、厳密にはアイドル渋谷凛が英霊となったわけではない。 『赤い月の聖杯戦争』に紛れ込んだ岸波白野というプログラムエラーが生み出した、存在しないはずの剣士――ネバーセイバー。 【サーヴァントとしての願い】 英霊として不確かな状態であり、願いと呼べるほどはっきりとしたものは持っていない。 それでも、決して立ち向かうことを諦めたりはしない。 【マスター】 岸波白野(女)@Fate/EXTRA 【マスターとしての願い】 不明。 【weapon】 ムーンセルによって送り込まれる際に、コードキャスト用の礼装を幾つか持ち込んでいる(本人が選んだわけではない)。 【能力・技能】 魔術師としての才能は平凡。 しかし戦略眼に秀で、月の聖杯戦争を通して更に磨きがかかっている。 【人物背景】 Fate/EXTRAの主人公(性別はプレイ開始時に選択可能)。 個性に乏しく「存在感が薄い」と言われがち。某サーヴァント曰く「典型的な汎用救世主型主人公」。 しかしその一方で逆境においても決して諦めない往生際の悪さが特徴で、悪足掻きを得意とする。 その必死の行動は下馬評を覆し、数々の格上のマスターたちにさえ抗しうるほど。 物語開始時点では記憶喪失であり、自分が何者かも分からない状態で悩みながらも成長していく。 その正体はムーンセルにアクセスした魔術師ではなく、何らかの原因で自我を持ってしまったNPCであった。 月の聖杯戦争にあたって「生まれた」ような存在であり、記憶喪失などではなくそもそも過去というものを持たない。 地上の人間がモデルではあるのだがその本人ではなく、いわばその人物を枠として新たな人格が芽生えたようなもの。 ムーンセルにとってはバグのようなものであり、聖杯にアクセスしたが最後、不正データとして認識されてしまう。 この聖杯戦争における白野はかつて月の聖杯戦争で最後まで勝ち残り、聖杯を手にしながらもムーンセルに解体されたはずのデータである。 しかしその異常なまでの諦めの悪さを一種の「抗体」とすべくムーンセルにより再構築された――『赤い月の聖杯』に対するアンチプログラムとして。 【方針】 自身が不正なプログラムであることは自覚しており、たとえ勝ち残っても聖杯には辿り着けないのではないかと感じている。 それでも、決して立ち向かうことを諦めたりはしない。
https://w.atwiki.jp/2jiseihaisennsou/pages/195.html
夏の土用の丑の日にはうなぎ、とは平賀源内のセールスによるものと伝えられているが、実際の夏場のウナギは一年で一番不味い時期に当たるという。 だが、脂ののった身と栄養素は夏場のスタミナ食としては十分である。ムーンセルが舞台として用意した「SE.RA.PH」に季節感は無いが。 そのうな重をバックスは3杯も食べていた。 どうやらこの聖杯戦争では、魔術回路が無い一般人には体力を魔力に変換するエミュレータが、アバターに備わっているらしい。 本来摂食を必要としない仮初の肉体ではあるが、食事によって体力、ひいては魔力を回復できるようだ。 バックスは栄養ドリンクの摂取、及び昼食でその事を突き止めた。 空になった重箱を片付けさせ、さらに栄養ドリンクのキャップを開けようとした時、アサシンが音もなく表れた。 なぜか巨大な大剣、もしくは槍を肩に担いで。 「まだ疲労はとれていないようだが、気力は萎えていないな。これならわたしの報告にも耐えられるだろう」 悠々とした態度と口調のヴァレンタインにバックスはじろり、と睨んだ。疲労困憊なのはとりもなおさず、このサーヴァントのせいではないか。 報告や事件の処理だけでもてんてこ舞いだというのにその上大量の魔力を持って行っているのだから。 型に背負った武器の石突を床について立てた後、ヴァレンタインは報告を始めた。 「ゼフィール達が殺られた。バーサーカーもどきのランサー達と相打ちになった」 「そうか……」 早いな、とバックスは呟いた。 静かで、淡々とした口調だったが、ヴァレンタインはその奥にある焦りを見てとった。 あまりにも急激な展開に、感情の置き所が掴めないのだろうとヴァレンタインは推測した。 バックスの脳内では現状生存しているマスターとその戦力の考察、今後とるべき戦略の構築のためにめまぐるしく回転している。 ヴァレンタインの報告から確認できるだけで死亡者は19人。バックスの想像よりハイペースだ。 この聖杯戦争ではマスターかサーヴァントのどちらかが死亡すれば、片割れも自動的に消滅する。例外が一人いたようだが。 現在把握している死亡者数に間桐邸、衛宮邸、柳洞寺周辺の報告を考慮に入れると、生き残ったマスターは半数以下、下手をすれば一桁の可能性すらある。 事ここに至ればある程度のチームが結成され、単独で行動しているマスターはまずいないとみて良い。 それでも尚誰とも組まないマスターがいるとすれば、かなり強力なサーヴァントを有しているか、他者との共闘に妥協する余地がないマスターくらいだろう。 この考察を正しいと仮定した上で自陣を顧みると、最早中盤を過ぎたといえる現状で、主従共に強力だったゼフィール達が殺られたのはかなり厳しい。 ヴァレンタインの宝具は決まれば確実に相手を葬れるが、その状況に持っていくのが難しいのだ。 では、改めて誰かと同盟を結ぶか? その為に我々が必要なものは何か? 「予定通りにいかないのは当然だが、こうも期待を裏切られるとはな」 バックスは眉間にしわを寄せた。 市長の地位を生かした他のマスターに対する優位と強力な同盟者で敵の弱点を突き、楽に敵の数を減らしていけるはずだった。 ところが同盟者は早々と退場。気付けば現状は目立つ地位で身動きが取れず、燃費が悪いサーヴァントは単体では暗殺さえ困難だ。 「陰で糸を引いていたのはアーチャーだ。どうやら奴は他人を支配、というより邪教の教祖にあこがれるような気持ちへと精神を操作する宝具を持っているらしい。 ランサーのマスターの行動は、まるで食われるのを喜ぶ、己の肉の味に賞賛を求める生贄の羊のようだった」 栄養ドリンクを飲み干しながら思考を進めるバックスに、ヴァレンタインが口をはさんだ。 「ならば、彼と共闘の可能性は全くあり得ない、というわけか」 実に不気味な表現だ、とバックスは思った。それだけランサーのマスターの行動は異常だったようだ。 そしてそのような行動をとらせるアーチャーの、底知れない悪意と非情さ、ある種の強いカリスマ性も脅威なのだろう。 バックスは同盟の相手としてアーチャーもあり得ると考えてはいた。戦争ならば次の戦いのために、敵と一時的な和睦を結ぶということはよくある。 極端な話、この聖杯戦争の場合、チームの誰かを最終的な勝者とし、チームメンバー全員の願いを叶えさせるという方法もあるのだ。 あの神父は勝者が全てを叶える事が出来るとは言ったが、それが一つの願いだけとは一言も言っていないのだから。 だが、この選択を取るチームはまずいないだろう。理由はこの方法が確実である保証はないから。そして何より他者への絶対的な信頼を条件とするからだ。 この聖杯戦争に参戦したマスター達はあらかじめ戦いの意思を問われている。他人を蹴落としても自らの願望を叶えるための強い意思を。 そんな連中が敗北に際して願いを他人に託すか? いや是が非でも叶えたい執念はあるだろうが勝者はそれを受け入れるだろうか? 叶えられるのは一つの願いのみという可能性の方が高いのに? ましてやアーチャーの様に精神を操作される可能性さえある。これではとても現実味のある方法ではない。 バックスは脳内でアーチャーと同盟する策を放棄し、逆に倒すための策を考え始めた。 「市長。異なる考え、価値観を持つ人間が結束するためには、何が必要だと思う?」 バックスの思考と感情がある程度落ち着いたとみたヴァレンタインは、一つの質問をした。 バックスは腕を組んで考え込み、数秒後、得心がいったとばかりに微笑んだ。 「……なるほど、『共通の敵』か」 ヴァレンタインは頷いた。 「古い東洋の国では外敵に対し盟を結ぶ時、生贄の牛から主催者が耳を切り、流れた血を器に盛り出席者たちに回し飲みさせる儀式を行うという」 言いながらヴァレンタインはデスクの上に手を置いた。椅子に座っているバックスと正面から相対している。 「中国の『覇者』のエピソードだな」 「先の主催者は領土のラインを決め、和平を結び、他者を凌ぐ力を手に入れた。なぜか? その者ならば必ず敵から国を守ってくれると信じられていたからだ。 平和とは『平等なる者同士の固い握手』ではなく『絶対的優位に立つ者が治める』ことで成り立つのが、この人の世の現実!」 ヴァレンタインはみしり、と音が鳴るほどにデスクを掌で押し付けた。 聖杯戦争とはかけ離れた話になっていったが、バックスにそれを指摘することはできなかった。ヴァレンタインの態度に圧倒されていたのだ。 「これが『社会』だ。常に社会は決めた者によって動かされている。均衡した状態で全員が動くのは『最初にナプキンを取れる者』が決めているからだ。 そしてナプキンを取れるものは万人から尊敬されていなくてばならない。例えばイエス様がキャメロット城の円卓に座ったなら、アーサー王でさえ先に動くわけにはいかないだろう。 人種、知性、文化、国家。あらゆる障害を越え『敬意を払われる』。それこそが『真の力』だ。他人を宝具で洗脳するなど暴君の所業だ」 ヴァレンタインの鋭い眼光がバックスの顔に突き刺さる。語る声色は力強く、熱を内包していたが自己陶酔の響きは無く、口調は平静で確信に満ちている。 まるで修道僧の説法と科学者の論文発表を同時に、違う言葉の同じ内容を聞かされるようだ。バックスは内心の奇妙な感覚をそう表現した。 バックスは未だにヴァレンタインの言う『ナプキン』の意味は掴めなかったが、単なる『権力』や『地位』でないことは理解していた。 それは恐らくバックスが目指す『神』の座とは似て異なる、この世の仕組みを決定する象徴をそう表現しているのだろうと。 「柳洞寺、遠坂邸に潜伏するマスターやその他出会ったマスターにアーチャーの情報を流そう。奴らは他のマスターを洗脳し、捨て駒として利用する非道な連中だとな。 ああ、もちろん宝具、スタンド能力もだ」 ヴァレンタインが実際の具体的な策を示し、バックスもまた思考を聖杯戦争の戦略に戻す。 「しかし、この情報で他のマスターは動くだろうか?」 バックスが問題点を提示する。 情報を聞かされたマスター、サーヴァントが思うところは一つだろう。奴は互いに争わせて漁夫の利を得るつもりだ、と。 利用すると言われてわざわざ動くお人よしがこの聖杯戦争でマスターとして参加しているものか? 動く、と断言したのはヴァレンタイン。 「一対一であのサーヴァントに勝てる者は数少ない。特に真っ向勝負だと同じ時間停止能力を持つサーヴァントしか太刀打ちできないだろう。 勝てるチャンスは多対一で襲い掛かれる今の内だけだ。複数でアーチャーを誘い、アーチャーかそのマスターを暗殺する。死人が出る事を前提とした戦術だが、それでもこのままでは勝機は皆無になる。 その利害を説き、さらに私が思うところを正直に語ろう。この先誰が聖杯を手中にするとしても、他人を洗脳するような『敬意』する気持ちを踏みにじる男、己の欲得だけを考えるクズに渡すわけにはいかない、と」 「成程」と、バックスが頷いたのはヴァレンタインが語った前半部分の論理に対してである。 残ったマスター達は既に自分が最終的な勝利を掴むため思案しているはずだ。では、その具体的な思惑とは何か。 「今、どのマスター、サーヴァントを殺せば、最終決戦で有利に戦えるか」 ヴァレンタインが語ったように他者の洗脳と時間停止などという反則的な能力を持つアーチャーは、一対一の対決ではほぼ無敵に近い。 この聖杯戦争はどんな経過をたどっても、最後の一人が聖杯を手中にするルールだから、最終的には必ず一対一になる。 ならば同盟を組んだマスター達は数的に優位な今の内に強力なサーヴァントを倒しておきたいところだろう。ましてアーチャーは現在マスターと2人のみと推測されるのだから。 「なるほど、それに多くのマスターが動けば、それを暗殺の好機とみて背後から襲うマスターも期待できるな」 「それは我々がやるということか?」 「いや、以前その謀略を使った知人がいてね。既に死んでしまったが」 バックスは思い出す。未来日記のサバイバルゲームで、1st『天野雪輝』、2nd『我妻由乃』が8th『上下かまど』と手を組みバックスを襲おうとして、その実8thを裏切った時のことを。 まだ1週間もたっていないというのに、随分と昔の回想の様に語ったものだ。バックスは自分の言葉にユーモアを感じたのか少し可笑しくなった。 「そんなマスターがいれば、あわよくば狙われたマスターを保護できれば、我々の信頼は高まるというわけだ。 おまけにアーチャーを首尾よく始末できたなら、次はそいつを標的とした同じ作戦が出来ると」 バックスの笑みにつられて、ヴァレンタインの唇の端も吊り上がる。 「そういうことだな」 「次の作戦は私の安全確保だ。今から私は極度の疲労で倒れ、入院することにする。 ただし、実際に入院するのは彼だ」 バックスが指を鳴らすと、一人の男、否、NPCが会釈して、入ってきた。ヴァレンタインは知らないが、彼はバックスが本来いる世界で秘書を務めていた男だ。 秘書のNPCにバックスはバックアップのスパコン「HORON」のサポートで本来居るはずだったNPC「氷室道雪」のパーソナルデータを上書きした。容姿までは改竄できなかったが。 この「氷室道雪」を他のNPCが冬木市市長として認識するよう改竄。さらにバックスの命令に従うよう思考ルーチンを組み上げ、市の業務、危機管理はこの『氷室道雪』に任せるよう部下に指示した。 さらにこれから先警察、消防署より通報された情報はバックスと同時にこの「氷室道雪」にも報告させるように命令した。 「彼が救急車で搬送されると同時に裏口から抜け出し、部下のNPCの運転で隠れ家まで移動する。 場所は新都の南の外れにある通称『幽霊洋館』。ゼフィール達に地図を用意された時、セーフハウスの候補地として目を付けていた」 この場所は市販されている冬木市の地図には記載されていない。バックスは地図を取り寄せその事実に気づいた。事前のハッキングによる正確な地理知識の賜物だ。 「お前が病院についた時点でアサシンの彼を一人付けておく。そのままベッドの上で休んでいろ。マスコミ、部下の対応は任せる」 かしこまりました、と秘書は返答し会釈した。 ところで、とバックスはかねてよりの疑問を聞くことにした。 「お前に改めて尋ねる。お前は聖杯戦争で私の命令にどの程度従える? 例えばマスターと戦うとかは」 「それはできません。NPCは普段通りの生活を営み、戦闘が起これば逃げ、あるいは見物し、後始末も行うが直接聖杯戦争に関わるのを禁じられています。 セラフより聖杯戦争の管理を任されている上級AIなら、ある程度マスターに関わるのを許されていますが」 「では、警察、消防署からの情報を、お前を通じてアサシンに伝えるのも無理か?」 「それなら可能です。寄せられた情報は必ずしも聖杯戦争のそれとは限りませんから。例えそうだとして警察が通報を取り下げても、その情報は伝達できますし、判断はマスターに委ねられます」 「アーチャーを犯罪者として指名手配できるか?」 「可能です。ただし手配や報道は出来ますが、実際の逮捕やそれに類似する行動は出来ません」 「そういえば、部下のNPCがゼフィール達に自動車と衣服を届けに行ったが、あれは聖杯戦争に関わる行動に含まれないのか?」 「いえ、あれは我々が我々NPCに届けるのと同じ行為と判断しました」 バックスは少し考え込み、今までの質問から得られた結論を口に出した。 「つまり、こういうことか? NPCが聖杯戦争に関われないのは『闘争』と『聖杯戦争それ自体の情報』に限られると」 「はい。『直接』とは『戦闘行為』と『自らマスターの生死を左右する行為』、『マスターから聖杯戦争それ自体を探られる行為』と定義され、我々は各自の解釈、判断で行動しています」 あの時、冬木教会の監視を拒否したのは他のどこでもない、監督役がいる冬木教会だったからか、とバックスは納得した。 「じゃあ、こうして聖杯戦争においてお前たちがどこまでやれるのかを聞くのは、『聖杯戦争それ自体を探られる行為』じゃあないのか?」 と、口を挟んだのはヴァレンタイン。 「違います」 「それはどういうことだ? 具体的に言え」 「拒否します」 「『聖杯戦争それ自体を探られる行為』とは例えば『黒幕はいるのか』とか『なぜ役に立たない監督役を置く必要がある』とか質問することか?」 「お答えできません」 以降、何度ヴァレンタインが聖杯戦争に尋ねても、秘書は回答を拒否しつづけた。 「これではっきりしたな、市長。黒幕の実在が」 「そいつはまだ聖杯を完全に掌握できていない事もな」 バックスとヴァレンタインは、互いの顔を見合わせ、頷いた。 バックスが思考ルーチンを改竄したとしても、情報を隠すにしては喋りすぎるし、開示するにしては根本に迫ると曖昧になる。あまりにも中途半端だ。 「そして、黒幕の最終的な目的は分からないが、現在マスターに対し『闘争』を望んでいる」 「半端な支配と、戦わせるためのコントロールが、NPCが曖昧な行動をする原因か」 顧みれば、あの神父は最初に『戦う意思の有無』を問うていた。願いの強さも有無も関係ない。まず『戦い』。これこそが黒幕が最初に臨むものだったのか。 それがたった半日と少しでマスターがほぼ半減する事態を招いたのか。そして現状のチート行為が見過ごされているのも、戦いを邪魔しないどころか促進しているからか。 「待て。じゃあ、病院に行っても治療してもらえないという事か?」 バックスは秘書に顔を向け尋ねた。『自らマスターの生死を左右する行為』が禁止ならそうなる。 「はい、ただし一部の上級AIなら可能です」 「そうか、道理で私が倒れても誰も医者か救急車を呼ばなかったわけだ」 バックスはそう言い、ため息をついた。 「現在生き残っているマスターは私を含め、多くて15人だとする。単独で行動しているアーチャー達と私達を除けば、我々が把握できていないチームは2から4組というところか」 遠坂邸を拠点としたマスターが2人、柳洞寺のマスターは目撃情報から最低3人、アーチャーのマスターが単独として、バックスを入れると計7人。 減ったマスターの人数は死亡者だけと仮定すると、最大8人のマスターがどこかに潜んでいる。 その内単独行動をとるマスターは最早いないと仮定したうえで、チームが出来る組み合わせは6,2。5,3。4,4。3,3,2。2,2,2,2の5通りだ。 「今まで警察に寄せられた通報で、空白地帯なのは冬木港と深山町中部。この近辺に未だ我々が発見できていないマスター達がいるとみていい」 「町から離れたアインツベルン城は?」 と、指摘したのはヴァレンタイン。確かにここに引きこもり、他者が潰しあうのを待つマスターがいる可能性はゼロではない。 「ここはもう私達だけでは探れまい。一番近い柳洞寺のマスター達に指摘し、任せた方が良い」 「それでは……」「待て、待て待て!」 手にしたエッケザックスを自分の体に押し当てようとしたヴァレンタインに、バックスは慌てて止めようとした。 「一人ならともかく、それ以上の召喚は、私の身がもたんぞ!」 「心配するな。現在君の魔力供給は普段より多いし大丈夫だろ。 たぶん」 「いま小さく『多分』ってつけくわえなかったか!? 『たぶん』!?」 「大丈夫だ。連れてくる私の魔力を戦闘できないほど極力減らせば問題ない。 きっと」 「きっとッ!?」 焦りのあまり、バックスは馬鹿みたいに言葉をくりかえす。 「どジャアァァ~~~ん」 バックスの叫びもむなしく、エッケザックスがヴァレンタインに向かって倒れこみ、ヴァレンタインの姿が床に消えていった。 数秒後、いきなりデスクの引き出しが飛び出し中からまるで抱き合うように、否、身体が融合し重なり合った三人のヴァレンタインが現れた。 「確かにさっきよりはましだが、それでもきついぞ……」 バックスは膝に手をかけ、力を込めて立ち上がりながら悪態をついた。 主のいない部屋で、ヴァレンタインのスタンド『D4C』が両手に持ったエッケザックスを一振りし、デスクを両断した。 「先に行ってくれ。わたしはこの剣を手になじませたい」 そう言ってヴァレンタインは残ったのだ。 部屋を出るべく市長室のドアに身体を向けたヴァレンタインはつかつかと歩み、ドアに一歩前のところでデスクに振り返った。 最早使われる事はないであろう市長室で、ヴァレンタインは自身のマスターについて思いを巡らす。 思えばジョン・バックスという人間は、常にあらかじめ敗北の可能性を限りなく低くした上で、勝つための計略を練っている。 未来日記のサバイバルゲームでは「The watcher」という他の未来日記を閲覧できる能力を自身のものとして、中盤以降まで動こうとせず、さらに市長の地位を使って他のプレイヤーを追い詰めた。 この聖杯戦争ではハッキングで冬木市市長の座を手に入れ、NPCをコントロールし、有利な状況を作り出してから参戦している。 そして今、対アーチャーの共同戦線を張る前に、セーフハウスに身を隠そうとしている。 それらは戦略として正しい、とヴァレンタインも認めるが。 「バックス。君は策を練る時、いつも身の安全から図るな。だが戦争の指揮官とは、たとえポーズでも命を懸けてみせないと、誰もついてこないものだぞ」 生前のヴァレンタインが戦った男達、ジャイロ・ツェペリにもジョニィ・ジョースターにも、勝利のためなら僅かな希望でも命を張る覚悟があった。 浅はかな自己犠牲の精神ではない。先にある希望をただ夢見て手を伸ばすのではなく、ゆるぎない自信と理論的な意味ある裏付けを携えて。 それはディエゴ・ブランド―にも。思い返せばあのアーチャーはディエゴ、否、『Dio』とどこか似た面影があった。 ヴァレンタインは後ろ手でドアノブを持ち、壁に寄りかかりドアを引きつけ、壁とドアに身体を挟み込ませた。 壁とドアがぶつかる鈍い音がなり、反動でドアが壁から離れた時、ヴァレンタインは既に消えていた。 誰もいなくなった部屋は、揺れるドアで丁番の擦れる音がわずかに鳴り響いていたが、やがてそれも絶えた。 【新都・冬木センタービル内、冬木市庁舎市長室(最上階)/午後】 【ジョン・バックス@未来日記】 [状態]:疲労(大)・冬木市市長・残令呪使用回数3回 [装備]:「The watcher」 [道具]:なし 基本行動方針:最後の一人になり、ムーンセルを必ず手に入れる。 1.「氷室道雪」が病院へ搬送されるのを確認し、「双子館(東)」に移る。 2.アサシンから送信された映像を「The watcher」で確認。サーヴァントのステータスを読み取る。 ※ムーンセルへのハッキング工作により、冬木市市長の役職を得ています。 また、聖杯戦争に関するある程度詳細な情報を得ています。 ※冬木市市長の名義をNPCの「氷室道雪」に移動しました。 ※警察署、消防署に部下のNPCを配置。情報を入手できます。 ※聖杯戦争の推測:このムーンセルは並行世界の情報処理システムとリンクしたグリッド・コンピューティングでは? そのシステムを構築するためにデウスと接触を図ったのでは? 並行世界を移動できる何者かが黒幕にいる? 黒幕は現在マスター同士の闘争それ自体を目的としている? 【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態](4人目)・魔力消費(中)・気配遮断 [装備]:拳銃 [道具]:携帯電話・エッケザックス@ファイヤーエムブレム 覇者の剣 [思考・状況] 基本行動方針:ムーンセルは誰にも渡さない。わたしが手に入れる。 1.桐柳寺に行き様子を探る。 2.マスターと接触、『Dio』の情報を流し、共闘を持ちかける。 3.未だ消息不明のマスターを深山町中部を中心に探索。マスターを発見したら接触を図り、『Dio』の情報を流して共闘を持ちかける。 【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン 並行世界)@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態](5人目)・魔力消費(極大)・宝具「D4C」無し・気配遮断 [装備]:拳銃 [道具]:携帯電話 [思考・状況] 基本行動方針:ムーンセルは誰にも渡さない。わたしが手に入れる。 1.遠坂邸に居ると思われるマスター達に接触し、『Dio』の情報を流して共闘を持ちかける。 2.その後、未だ消息不明のマスターを、冬木港を中心に探索。マスターを発見したら接触を図り、『Dio』の情報を流し、共闘を持ちかける。 3.同時に『Dio』の動向をチェックする。 【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン 並行世界)@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態](6人目)・魔力消費(極大)・宝具「D4C」無し・気配遮断 [装備]:拳銃 [道具]:携帯電話 [思考・状況] 基本行動方針:ムーンセルは誰にも渡さない。わたしが手に入れる。 1.病院までNPC「氷室道雪」に付き添う。 2.その後、NPC「氷室道雪」のサーヴァントとして振る舞う。 3.同時に『Dio』の動向をチェックする。
https://w.atwiki.jp/yaruo-schop/pages/331.html
サムネイル画像 タイトル 小悪魔は聖杯戦争を開催するようです 南国編 作者名 ◆pOgi2U5jM 原作 Fateシリーズ ジャンル 現代ファンタジー、聖杯戦争系、デスゲーム系 主人公 マルチ主人公 期間 2020/05/18~2020/08/03 掲示板 やる夫板のシェルター タグ あんこ、完結作品、ダイス、長編作品 まとめサイト 様 このやる夫スレ、まとめてもよろしいですか? 様 やる夫ANK 様 スレッド一覧 スレッド名 タグ 備考 開始日時 最終レス 【あんこ】小悪魔は聖杯戦争を開催するようです 6 あんこ、ダイス #4528から「小悪魔は聖杯戦争を開催するようです」シリーズ:南国編:スタート 2020/05/07 2020/05/23 【あんこ】小悪魔は聖杯戦争を開催するようです 7 あんこ、ダイス 2020/05/23 2020/06/06 【あんこ】小悪魔は聖杯戦争を開催するようです 8 あんこ、ダイス 2020/06/06 2020/06/23 【あんこ】小悪魔は聖杯戦争を開催するようです 9 あんこ、ダイス 2020/06/23 2020/07/11 【あんこ】小悪魔は聖杯戦争を開催するようです 10 あんこ、ダイス 2020/07/11 2020/07/24 【あんこ】小悪魔は聖杯戦争を開催するようです 11 あんこ、ダイス 「小悪魔は聖杯戦争を開催するようです」シリーズ:南国編:完結 2020/07/24 2020/08/03 同作者の作品一覧 不幸の催眠 小悪魔は聖杯戦争を開催するようです 小悪魔は聖杯戦争を開催するようです 南国編 小悪魔は聖杯戦争を開催するようです 王国編 純狐は魔術学園を卒業したいようです 小悪魔は聖杯大戦を開催するようです
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/1091.html
920 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/10/14(日) 03 38 39 雑居ビルに突入する。 『自分が同じ立場に立たされたならば』という視点で物事を考れは当然こちら――最初の前提が間違っていたとすればどうしようもないが――になる。 喫茶店も隠れる場所の一つ二つはあろう。 だがビルの中はその比ではなく隠れる場所があるのは確実だ。 退路の確保し易さの面からは喫茶店も考えられる。 だが確保のし易さは同時に遮断のし易さにもなる。 悩んだのはそこまで、あとは己の選択を信じるだけ。 思考を切り替え、随伴する兵に簡単な指示を飛ばす。 「一分隊はここに」 外に残しておくのは万が一判断が間違っていた場合、そしてなにかのミスで逃げられそうになった場合追撃を行わせるための、いわゆる保険だ。 その辺りのことは理解しているのか、是非を問い質すことなく展開し、突入口に銃弾を叩き込み、破壊する。 突入したビル内部は非常灯すら点灯しておらず、真っ暗だ。 「……破壊されている?」 眼球を強化し、天井に視線を走らせた結論がそれだった。 ビル内に照明となるような物はないが、外部から僅かに入り込む光の残滓によってどうにか見ることは出来ていた。 「つまりビンゴ、って事ですわね」 あるいはこれすらも判断を狂わせる策かもしれないが、これだけのことをやるのは手間だろう。 それならばスイッチを破壊するかトラップを仕掛けておけば良いのだから。 ふと思いだしてポケットからワルサーを取り出し、セイフティを解除する。 魔術師としては下策の中の下策だろうが、得意とする魔術を可能な限り悟らせたくはないという思いから、彼女も銃を握る。 もしこちらの素性や名前――フィンランドのエーデルフェルト家はガンドの名手を多く輩出しているという事実と、その多くの例に漏れず彼女もガンドを得意としている――が知られているとすれば無駄だろうが、そうでなければある程度の効果があるはずだ。 少なくともガンドが得意技と言うのを知られているのと知られていないのでは大きく違う。 遠距離攻撃が得意な相手ならばそうでもないかもしれないが、近接戦闘を得意とするマスターならば多少のダメージを覚悟で突撃してくるかもしれない。 それならそれで多少の心得はあるが、出来るならば魔術で決着をつけたい物だ。 「……それも余裕があればの事ですわね」 数歩分先を行く二人の兵士が指で合図を送ってきたのを見て、姿勢を低くする。 その合図が何を意味するのか、大凡の事は理解し、何をするべきかを考え、銃を構えた。 一人が扉を蹴破り、二人目と三人目の兵士が間髪入れずに突入する。 背後で銃を構えて警戒する兵士に援護されて室内に突入する。 セオリーは兵士達がやってくれる、ならば自分のやるべき事は何かを考えれば、通常有り得ぬ場所からの奇襲であると結論できた。 そして地中は警戒がほぼ不可能、ならばと天井を睨み付け、そこで人の形を見た。 「なっ……」 迷わずそこに向けて発砲する。 「……サーヴァント!?」 通常の人間ではないのは何となく分かる。 だが人外のモノかと問われれば即断できる物ではなかった。 確かに天井に張り付き、それどころか銃弾を回避したのは異常に過ぎたが、その姿は英雄にはまるで見えない。 銃弾を回避した勢いのままに床に伏せ、猛禽類のように姿勢を低くし刀を構えたその姿はどちらかと言えば野獣に近い物だ。 とはいえ、放った銃弾を回避したのみならず、兵士達の三点射を回避していると言う事実は、人外の存在、今回の場合サーヴァントであることはほぼ確実だ。 「……え?」 そこまで考えて気付いた事があった。 これで三組目である。 実際に姿を見た者はこの野獣のような少年だけだが、既に二組の存在を認めている。 「だとすればこの作戦の前提が……ッ!」 石礫を投げつけられる。 音速で迫るその礫は、脳や胸部に直撃すれば致命傷とはならずとも戦闘力は確実に奪われる。 考えるのは後回しにせざるを得ない。 床を蹴り一回転して回避する。 だがその反撃で回避を疎かにしたのか、銃弾の一撃が肩を撃ち抜く。 好機と思った直後、体当たりで背後の窓を割り、脱出された。 「ッ……深追いはしないで、それよりも敵マスターを!」 何者かは知る由もないが、あれだけの回避力を全て逃げる事に傾けられればそうそう倒せる物ではないと判断した。 外から射撃音のみならず砲撃音が聞こえてくる。 まだ狙撃手との戦いは終わっていないようだ。 「……クリア!」 「次!」 次々と部屋を掃討しながら様々な可能性を思考していく。 「急がなければ……この戦いに勝って、この可能性を伝えなければ……足下を掬われるかもしれない」 戦闘中に油断するような事はないだろうが、勝利したと確信した瞬間は大小差はあれ誰しも警戒が緩む。 仮にビル内で遭遇したあの敵がこの時点での敗北を認め、仲間を見捨てて最後の逆転を狙う事に作戦を変更したとすれば勝利の可能性は潰える。 かといってこの事を伝えに向かい、その間にこのビルに潜伏しているであろう敵マスターに何らかのアクションを起こされたり、逃げられたりする事は避けねばならない事であった。 つまり彼女は、手早く敵マスターを倒して情報を伝えねばならないと考えていたのであり、その事が彼女に焦りを生ませた。 焦りに利点はまるでなく、その事を自覚していながら、彼女の内心から焦りが消える事はなかった。 墓碑銘:階段にてトラップを発見した 春の祭典:最上階にて敵を発見した ラ・カンパネラ:屋上にて敵を発見した
https://w.atwiki.jp/grailwar/pages/15.html
プレイヤーは、聖杯戦争の参加者(マスター(PL))になって、セッションを進める。 マスター(PL)は戦闘を繰り返し、最後まで勝ち残る事を目指す。 マスター(PL)はセッションの開始前に以下の準備を行う。 監督役(GM)からマスターの職業を受理 監督役(GM)からサーヴァントのクラスを受理 マスターのキャラシートの作成 サーヴァントのキャラシートの作成 ライダーのみ、乗騎のキャラシートの作成 監督役(GM)にキャラシートを提出 監督役(GM)をSkypeのコンタクトに追加 尚、例に挙げている以外のダイスアプリケーションを用いる場合、それをダウンロードする必要が生まれるかも知れない。
https://w.atwiki.jp/ssb4cloudwindow/pages/40.html
キャラ概要 キャラコンセプト ファイターの基本性能等を記載 (強み、弱み、その他特徴等) キャラの主な立ち回り 立ち回り等について記載 (主軸となるコンボ・連携、バースト手段等) クラウド側の対策 クラウド側の立ち回り 上記の立ち回りについて記載したものを参考に対策を記載 その他(データ類) バースト%、ダウン%など コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/lejaycass1s/pages/56.html
メイン武器 サブ武器 特徴 大王 SD 1.4前後 身長 あだ名 でーちゃん