約 2,285,053 件
https://w.atwiki.jp/wrtb/pages/2794.html
フリック 名前:Flik デビュー:『イッツ・タフ・トゥ・ビー・ア・バグ!』(1998年) 概要 アント・アイランド*に住む、発明家のアリの青年。 働き者のアリたちの仕事を効率化させる発明をして役に立ちたいと思っているが、すべてが空回りして逆に迷惑をかけてしまうトラブルメーカー。穀物を収穫する機械や、即席の双眼鏡、ハリボテの鳥などを発明している。 正義感が強く、勝ち目のないバッタのホッパーにも勇敢に立ち向かう。一生懸命なところがあり、サーカス団員など周りの仲間たちから信頼を寄せられるようになる。 アッタ姫に密かに思いを寄せている。ドット姫やブルーベリーズ*と仲が良い。 エピソード バグズ・ライフ アント・アイランド*のみんなの役に立ちたいフリックは仕事を効率化する発明をしては、周りのみんなを困らせていた。フリックの唯一の理解者である幼いドット姫とはお互い励まし合う仲で、フリックは空を上手く飛べないドットに「君はいつか大きな木になる種のようなものだ。」と種に見立てた小石を見せる。 ある日、フリックはバッタたちへの貢ぎ物である食糧を集めるアリたちを助けようとして、誤って食糧をすべて水に落としてしまう。バッタのボス、ホッパーは激怒して「木の葉が全て落ちるまでに食糧を集め直せ」とアッタ姫に命じる。ホッパーの無茶な要求に対し、フリックはバッタと戦える戦士を集めるため町へ行くと主張する。アリたちはフリックがいないほうが仕事が捗ると思い、アッタはそれを快諾する。 町に出たフリックはバーでハエを懲らしめる戦士たち(フランシス、スリム、マニー、ジプシー、ロージー、ディム、ハイムリック、タック、ロール)を見かける。実は彼らは解雇されたばかりのサーカス団員だが、フリックをスカウトマンと勘違いして喜んで誘いに乗る。フリックは彼らをアント・アイランドへ連れていくが、そこでお互いの誤解に気付く。そこへ鳥がドット姫に襲い掛かり、サーカス団員たちが協力して彼女を救ったことで、アリたちに本物の戦士だと思われて引くに引けない状況になる。 アッタ姫はフリックを役立たずだと思ったことを詫び、二匹は良い雰囲気になる。フリックは彼女との会話からホッパーの弱点が鳥であることに気付き、からくりの鳥を作ることを思いつく。アッタ姫の主導のもと、アリたちは協力して鳥を完成させる。鳥の完成を喜んで祭りをするアリたちのもとにサーカス団員たちを解雇した団長のP.T.フリーが現れ、彼らの正体がバレてしまう。アッタ姫はフリックが嘘をついていたことを責め、団員もろとも追放する。 アント・アイランドを出たフリックたちのもとに空を飛べるようになったドットが現れ、アント・アイランドがホッパーに苦しめられていることを告げる。自信を無くしたフリックを団員たちは励まし、ドットは小石を渡して説得した。フリックたちはP.T.フリーを監禁してアント・アイランドへ戻ると、サーカスのショーでホッパーの気を引き、ブルーベリーズ*の力を借りてからくりの鳥を起動させた。バッタたちは慌てふためいたが、事情を知らないP.T.フリーが鳥に放火してしまい、真実を知ったホッパーは激怒する。 ドットが人質にされると、フリックは計画の発案者を名乗り、ホッパーに勇敢に立ち向かう。「アリはバッタのしもべじゃない。バッタがアリを必要としているんだ。僕たちはお前なんか要らない」というフリックの言葉に奮い立ち、アリたちは数でバッタを制し、ホッパーを封じ込める。その時、突然の雨が降り注ぎアリたちはパニックに。フリックはサーカス団員やアッタ姫に助けられ、ホッパーとの空中戦を繰り広げる。フリックを追い詰めるホッパーに背後が鳥が現れるが、これもからくりだと勘違いしたホッパーはそのまま鳥の餌食となってしまう。 春になるとサーカス団員たちはフリックに別れを告げてアント・アイランドを旅立つことになった。団員もアリたちもフリックの勇姿を称えた。フリック、アッタ新女王、ドットは団員たちに別れを告げて手を振った。 その他 『アニマルキングダム ダンス!ダンス!大冒険!!*』では、ガイド役を務めた。 『トイ・ストーリー2』のスタッフロールにハイムリックと共に登場。『バグズ・ライフ2』の撮影と勘違いして現場に来たものの、実際には『トイ・ストーリー2』の撮影で、バズ・ライトイヤーに吹っ飛ばされてしまうという展開だった。『トイ・ストーリー3』にもおもちゃとしてカメオ出演している。 『カーズ』のスタッフロールでは、フォルクスワーゲンのフリックが登場し、戦士たちが実はサーカス団員であったことに気付くシーンが再現されている。 ゲーム ゲーム版『バグズ・ライフ*』では、主人公を務める。 テーマパーク フリックは『バグズ・ライフ』の公開に先駆けて、ディズニー・アニマルキングダムで公開されていた3Dショー「イッツ・タフ・トゥ・ビー・ア・バグ!」で初登場していた。 また、ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーには彼の名を冠した『フリックス・フライヤーズ*』というアトラクションがある。 東京ディズニーランドでは、ショーやパレードに登場していた。 登場作品 1990年代 1998年 イッツ・タフ・トゥ・ビー・ア・バグ! ※ディズニー・アニマルキングダム バグズ・ライフ (ゲーム)* バグズ・ライフ 1999年 アニマルキングダム ダンス!ダンス!大冒険!!* トイ・ストーリー2(カメオ出演) 2000年代 2002年 フリックス・フライヤーズ* ※ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー 2006年 カーズ(カメオ出演) 2010年代 2010年 トイ・ストーリー3(カメオ出演) 2020年代 2022年 Disney Heroes Battle Mode ※ver3.6:2022年1月追加 声 デイヴ・フォーリー(1998年~)ウォーリー・ウィンガート(1999年) 宮本充(1999年~)
https://w.atwiki.jp/shininghearts/pages/64.html
性能 物理攻撃がメインだが、魔法もそれなりに使える。 専用装備が盾であり、精霊を装備できるのでPTキャラではかなり硬い。 Vスラッシュの威力が安定して高く、ボス戦での主力になる技。 精霊を装備する事で能力補正の他にスキルをいくつか増やせるのでステータス以上の能力を発揮できる。 装備と精霊次第でメルティ並の高火力魔法を使う事も可能。 必殺技 名称 習得Lv 消費ハート 使用効果 対象・エリア 属性 黄 青 赤 緑 ダンシングソード 7 - 25 - - マヒ 中距離・敵1体 - バッシュ 9 - 10 - - ノックバック 近距離・敵1体 - Vスラッシュ 14 - - 45 - ---- 遠距離・敵1体 - 総攻撃 16 5 - 5 - 協調行動 近距離・敵1体 - 光剣シャイニング イエローキー入手後 30 30 30 30 ---- 敵全体 光 魔法 名称 習得Lv 消費MP 使用効果 対象・エリア 属性 スパーク 初期 5 ノックフロント 敵1体 風 ディスパーク 12 15 ノックフロント 敵横3マス 風 スパークボルト 20 22 ノックフロント 敵横1列 風 テンダーハート 25 0 MP回復 味方1体 光 リターン 2 0 フィールド移動 味方全体 風 パッシブスキル 名称 習得Lv クリティカル 3 火事場力 参考 各キャラLv50時の能力値 名前 HP MP 攻撃力 防御力 魔力 魔防力 素早さ リック 5499 1887 787 506 628 401 457 ネリス 5064 2200 628 436 715 419 506 アミル エアリィ ラグナス 5186 1851 733 471 733 454 471 ルフィーナ 3754 2759 541 401 768 558 419 ローナ 5134 1816 681 349 750 436 523 ディラン 5762 960 681 488 593 419 488 シャオメイ 5326 1781 628 419 663 436 523 クオン 5675 838 715 454 576 314 506 メルティ 2968 2794 523 314 890 541 488 ハンク 5588 768 785 523 558 296 384 アルヴィン 4103 2724 593 401 785 506 436
https://w.atwiki.jp/wrtb/pages/6211.html
スリック 名前:Slick デビュー:『リロ・アンド・スティッチ ザ・シリーズ』(2005年) 概要 ジャンバ・ジュキーバ博士が作った試作品020号。青紫の鼻に赤紫の身体をしたエイリアン。洒落た帽子をかぶり、赤い蝶ネクタイを身に着けている。セールスの能力に長けており、どんなものでも相手に売ることができる。研究費稼ぎの苦手なジャンバがセールスのために制作した試作品だが、エスカレートすると必要なものも売ってしまう困った一面がある。 セールスでは四つの「し」(商品、喋り、しつこさ、支払い)を大切にしている。 エピソード リロ・アンド・スティッチ ザ・シリーズ 第44話「スリック」に登場。フラダンス教室の寄付金集めのためにチョコレート・バーを売ることになった生徒たち。優勝賞品がかき氷一年分とあり張り切る一同。母親譲りのセールス・トークで成績を伸ばすマートル・エドモンズに対し、悔しさを募らせるリロ・ペレカイとスティッチ。落ち込む二人に試作品020号が声を掛ける。 リロにスリックと名付けられた020号は得意のセールス・テクニックでチョコレート・バーを次々と売り捌いていく。マートルに差をつけて上機嫌のリロだったが、スリックはリロの家の道具を次々と売り出してしまう。リロとスティッチはウェンディ・プリークリーの持っていた売却リストと売上金を持って、すべての道具を買い戻しに行く。スリックの存在を知ったマートルはリロが留守の間に家を訪れ、スリックを3ドルで購入してチョコレート・バーを売り始める。 スリックがいなくなったことに気付いたリロとスティッチはマートルのもとを訪れるが、スリックは既に試作品625号に高値で売却されていた。風邪をひいて寝込んでいたガントゥはスリックが勝手にガントゥの宇宙船を売りに出したと知って大激怒。リロとスティッチはスリックを救出して教室に戻る。 リロとマートルは全く同額を売り上げており、最後の一本を先に売ったほうが勝ちという状況になった、そこへチョコレート・バーを欲しいガントゥがスリックを攫ってしまい、リロは勝利かスリックの安全かの二択を迫られる。スティッチの後押しもありスリックを選んだリロは、スリックを募金のスタッフに任命する。一方、かき氷一年分を手にしたマートルは欲張って食べすぎてしまい、店主のルキに呆れられるのであった。 第48話「プルーツ」では、チームAの作戦失敗後、チームBとしてリロからスカウトを受けるも、多忙のため断った。 第61話「レミー」では、リロの夢の中に登場。プリークリーのコンガダンスの前から7番目で踊っていた。 スティッチはこうして生まれた ジャンバ・ジュキーバ博士の試作品データベースに表示される。 リロイ・アンド・スティッチ リロイによって他の試作品たちとともにアロハ・スタジアムに集められてまとめて始末されそうになる。そこへリロとスティッチたちが現れ、イトコたちとハムスターヴィール博士率いるリロイのクローン軍団の戦いが始まる。当初は善戦するイトコたちだが、圧倒的なパワー差に押されてしまう。リロとスティッチが仲間たちを率いてリロイの弱点である「アロハ・オエ」を演奏し始めるとスタジアムは大熱狂。リロイのクローン軍団とハムスターヴィール博士は刑務所送りとなる。 最後には、リロとスティッチの家族写真に参加した。 登場作品 2000年代 2005年 リロ・アンド・スティッチ ザ・シリーズ スティッチはこうして生まれた(カメオ出演) 2006年 リロイ・アンド・スティッチ 声 ジェフ・ベネット(2005年) 石井隆夫 ?
https://w.atwiki.jp/sousakuhero/pages/102.html
本名:リック・ベンジャミン 性別 男性 年齢:24〜5歳 スタンス ヒーロー 作者 光流 所属組織 無し 概要 不死身の身体を持つ自称ヒーロー 人殺しに何の疑問も抱かず、悪党との戦いで 市民を巻き込んでもごめんね!の一言で済ませる人間。 一応ヒーローを名乗ってはいるものの、ヴィラン扱いされることが多く 本人はそれを気にしているものの、殺人を止めることができない。 友達が欲しいらしいが、仲の良い人間ほど殺害衝動を強く感じるため 1人路地裏で犬を枕に寝ていたりする。 本人の性格は穏やかでアホの子だが… 能力 不死身の肉体と馬鹿力が武器 血液の一滴からでも肉体を再生できるらしいが 具体的にどうやって肉体が回復するのか見た人はいない。 馬鹿力に関しては、素手で人の頭を背骨ごと引き抜いたり 巨木を引っこ抜いて振り回したり、わりと何でもあり 詳しい設定はこちら
https://w.atwiki.jp/wrtb/pages/1196.html
エリック 名前:Prince Eric デビュー:『リトル・マーメイド』(1989年) 概要 アトランティカのすぐ近くにある海辺の城に住むハンサムな王子。 エピソード リトル・マーメイド 海の近くの城に住む王子エリックはなかなか結婚する気配を見せず、執事のグリムズビーをやきもきさせていた。ある日、船上パーティーの最中に嵐に襲われたエリックは海で投げ出されてしまう。エリックは謎の女性に命を助けられるが、彼が覚えていたのは彼女の美しい声のみだった。 その日からエリックは自分を助けた美しい声の女性を必死に探し始めた。ある日、エリックは浜辺で話すことの出来ない女性アリエルを保護して城で住まわせる。エリックは次第にアリエルに心惹かれていく。 ある晩、エリックの前に例の美しい声の女性ヴァネッサが唐突に現れる。彼女の声に惹かれたエリックは結婚を即決する。船上で結婚式が執り行われるが、式は乱入した動物たちが大暴れして台無しに。ヴァネッサの正体は、アリエルから美しい声を奪い、人間に化けていた海の魔女アースラであった。式を台無しにされたアースラは本性を表して巨大化し、二人に襲いかかるが、アリエルの気持ちを理解したエリックの帆船の船首に腹部を貫かれて消滅する。 アースラを倒したものの、エリックとの別れが宿命づけられたアリエルの心は晴れなかった。そんな娘の姿を見たトリトンはアリエルを人間の姿へ変え、エリックとの結婚を認める。こうして陸と海の間に架け橋が出来たのであった。 リトル・マーメイドII Return to The Sea 人間になった人魚姫アリエルと人間の王子エリックの間に待望の長女メロディが生まれる。アリエルの父トリトンは孫娘に特別なロケットを贈る。喜びに沸く王国に突如アリエルたちに倒された海の魔女アースラの妹モルガナが部下のアンダートウ、クローク、ダガーを連れて復讐にやってくる。アリエルとエリックの連携によってその場は凌いだが、モルガナの脅威に備えてメロディを海に近づかせないため、陸と海の境界に大きな城壁を設ける。トリトンは元アリエルのお目付役のセバスチャンにメロディのお目付役を命じる。それから、メロディは自分と海とのつながりを知らないまま12年が過ぎた。 メロディは親の言いつけを破っては城の外の海に出て泳ぎ回っていた。海が大好きなメロディは人間のしきたりに馴染むことが出来ず、周りの子にからかわれることを気に病んでいた。そして舞踏会でついにシェフ・ルイのケーキを台無しにするトラブルを起こしてしまう。ある日、メロディは海の中で見つけたロケットに自分の名前が刻まれていることを見つける。母が自分を海から意図的に遠ざけていたことに不満を持ったメロディはこのロケットの謎を追うため、一人海に出る。 メロディの捜索は困難をきわめた。アリエルも最愛の娘を捜すため、トリトンの力を借りて人魚の姿に戻り、海をさまよう。一方、エリックは陸上からの捜索隊を指揮する。 この一件にモルガナが関わっていることが分かると、アリエルの友人のカモメ、スカットルがモルガナの居場所を知らせにエリックのもとを訪れる。エリックもモルガナとの戦いに参戦、クロークとダガーに海中へ引きずり込まれてしまうが、セバスチャンのアシストによって難を逃れる。メロディはモルガナを撃退し、自分の過ちを正すことに成功する。 家族はモルガナの撃破を機に和解する。トリトンはメロディに陸で暮らすか海で暮らすかの選択肢を与える。メロディは「もっと良い方法があるの」と告げ、トリトンのトライデントを手にすると陸と海の間に設けられた城壁を消し去る。こうして陸と海は再びひとつとなった。 その他 『オラフが贈る物語』ではスヴェンが演じる。 『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』では、偽造版『リトル・マーメイド』で該当する役柄の改造キャラクターが登場する。 『ワンス・アポン・ア・スタジオ 100年の思い出』では、「星に願いを」のアリエルのソロパートに聞き入っていたが、スカットルが調子っぱずれな歌声で乱入したことでうるさそうな表情をしていた。 ゲーム ディズニー ツイステッドワンダーランド 3章のユウの夢の中に登場。エリックが嵐の海に放り出され、アリエルに救い出される姿が映し出されていた。 エリックは下記エピソードに登場する。 EPISODE3 深海の商人3-1 楽勝スタディ! ディズニー ドリームライトバレー ドリームライトバレーが忘却の魔法に見舞われた時以来行方不明となっており、当初は彼の存在を覚えている者もいない状態だった。 主人公が忘却の魔法を逃れて彷徨っていたアリエルを連れ戻したことで、エリックの存在が発覚し、主人公は彼女と共にエリックの痕跡を辿る。エリックは哀れな姿となりアースラのもとにいたことが分かる。 エリックは忘却の魔法からアリエルを守るためアースラと契約し、彼女を忘却の魔法が届かない場所へ避難させる代わりにエリックに魂を売り渡していた。主人公とアースラの交渉の末、エリックは元の姿を取り戻す。 友情クエスト 出現条件 特別報酬 不幸せな王子 アースラの友情クエスト全クリア 彼の世界の一部 Lv.3、マウイ解放、レミー解放 再び海へ Lv.7、ウォーリー解放 神秘のクリスタル Lv.10 ディズニー スピードストーム 2024年2月8日に開始したシーズン6から登場する「リトル・マーメイド」のレーサー。タイプはスピードスターで、レアリティは「コモン」。レーサー名は「エリック王子」。所有スキルは「ブースト」「クローク」「ファイア」「ハック」。そのうち「ブースト」と「ファイア」はレーサーがスターアップすると強化される。 ユニークスキル「セットセイル」の効果は下表の通り。専用クルー「最大」によって強化することができる。 ノーマル エリック王子の船が出現し、一定のスピードで前方に進む。船はエリック王子を守り、ヒットしたライバルをスタンする。ただし、ヒットするたびに耐久性が低下し、ゼロになると壊れてしまう。 チャージ 船がエリック王子を残して、一定速度で前方に帆走する。船の耐久性がゼロになるまで、ライバルを数体スタンできる。 テーマパーク NHK紅白歌合戦出場履歴 第73回(2022年) 君の願いが世界を輝かす* 登場作品 1980年代 1989年 リトル・マーメイド 1990年代 1991年 リトル・マーメイド 人魚姫 1992年 リトル・マーメイドの旅 ※ディズニー・ハリウッド・スタジオ リトル・マーメイド (TV) 1997年 ★Ariel s Story Studio* 2000年代 2000年 リトル・マーメイドII Return to The Sea ★The Little Mermaid II Pinball Frenzy 2001年 ハウス・オブ・マウス ミッキーとディズニーのなかまたち* ミッキーのマジカル・クリスマス 雪の日のゆかいなパーティー 2002年 ★Disney Princess 2005年 キングダム ハーツII 2010年代 2011年 リトル・マーメイド:アリエルのアンダーシー・アドベンチャー ※ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー ★Disney Princess Enchanting Storybooks* 2013年 キングダム ハーツ キー(カードのみ) ディズニー マジックキャッスル マイ・ハッピー・ライフ(カードのみ) 2018年 ディズニー マジックキングダムズ ※ver3.3.0:2018年9月追加 2020年代 2020年 ディズニー ツイステッドワンダーランド ※3章前編 ディズニー ソーサラー・アリーナ ※2020年10月追加 2022年 チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ(改造) ディズニー ドリームライトバレー 2023年 ワンス・アポン・ア・スタジオ 100年の思い出 2024年 ディズニー スピードストーム ※シーズン6(2024年2月) 声 クリストファー・ダニエル・バーンズ(1989年、2006年、2022年)ジェフ・ベネット(1992年、1994年) ロブ・ポールセン(2000年) 井上和彦(1991年~) 実写 『リトル・マーメイド』(2023年)では、ジョナ・ハウアー=キング / 海宝直人が演じる。生まれもっての王子ではなく、幼い頃に難破しセリーナ女王の養子という設定になった。自分の居場所や役割に満足しておらず、外の世界へ目を向けている。旅先で集めた物をコレクションしており、アリエルとの共通点が多いことからエリックが彼女に惹かれる説得力が増している。アニメーション版で歌唱シーンは無かったが、彼の胸の内を歌うソロナンバー「まだ見ぬ世界へ」が追加されている。アリエルを城で保護する役割はエリックから漁師のジョシュアに変更され、人間になったアリエルと初めて出会う場面は新曲「何もかも初めて」の曲中となった。アニメーション版ではアリエルの冒険の目的として印象の薄い王子だったが、彼の境遇や内面が掘り下げられたことにより、ラストシーンも変更されている。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/51523.html
【検索用 えりっく 登録タグ IA VOCALOID え 一筆かもめ 曲 曲あ】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:一筆かもめ 作曲:一筆かもめ 編曲:一筆かもめ イラスト・動画:一筆かもめ 唄:IA 曲紹介 12作目の一筆かもめです。昔バンドでやろうと思ってたら作る前に活動休止になったのでやらなかった曲をいあちゃん用に作りました。 このいあちゃんが持っているギターは私が普段使っているテレキャスまんまです。 バインディング加工なのですが伝わっているでしょうか?いやそんなんどうでもええねん 曲名:『エリック』 一筆かもめ氏の12作目。 BPM=186 歌詞 (youtube概要欄より転載) 邂逅のあの春は君とただじゃれるだけだった 気づけば笑いあって気づけば鬱陶しくなった 君が僕を打(ぶ)ったあの昼休み覚えてるかい? 殴り返さなかったのが今は少しだけ誇らしいんだ エリック 僕は君の心が今でも少しもわからないんだ エリック もしもわかり合えたらどんな春になったかな エリック いつか君の心が少しでもわかる日は来るかな やっぱりそんなんどうでもいいか 延々知らんぷりしよう 解放のあの春は君をただ避けるだけだった 気づけば笑えなくなってケースに鍵をかけた 時間(とき)はエゴイスティックでもう声も忘れかけてるけど 本当の意志を君に話したい語り合いたいんだ そう今の心境で 変われない僕をよそに変わりゆく街の静寂が 混沌の季節にはもう戻れないことを告げている エリック 僕は…… エリック 僕は君の心が今でも少しもわからないんだ エリック もしもわかり合えても同じ春になったかな エリック 僕は君の心が今でも少しもわからないが エリック 君といつか会えたなら絶対ぶん殴ってやるぜ コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/dicetrpg/pages/79.html
名前 リック 元ネタ 東方プロジェクト(リグル・ナイトバグ) 性別 男 年齢 10歳 種族 半魔獣(地属性) 職業 シーフ/ダンサー レベル 10前後 細かな設定 前衛型シーフ やや臆病で悲観的。諦めが早くてネガティブだが、誰よりも家族のことを大切に思っている。 そのため、ギルドのこともよく考えており、財政面などでギルドの世話役となっている。 人間と魔族の『混血』ではあるが、特に影響はない模様。外見はヒューリンに見える。 普段は『変身魔法』を使い人間を装ってはいる。『変身魔法』を解くと触覚が生え、素早い動きができるようになる。 カサカサカサ… ミシェルとのコンビネーションは抜群。ミシェルの支援を受けて前衛で踊って戦える。 鞭が主体。 身長160cm 体重56kg ライトグーリンの髪で緑目。 ちなみに、男の娘である。(何 コネクション 父(まだ明記されていない) レンディス、母 ルイン、兄 ミシェル、姉 チャット、弟
https://w.atwiki.jp/arcanafamigliacolle/pages/185.html
エリック 戻る(歌 ★ファミリー、歌 ★★ファミリー、歌 ★★★ファミリー、アルバム、ア行) エリックレアリティ ★×1 レアリティ ★×2 レアリティ ★×3プロフィール(ネタバレ含むため折りたたみ式) レアリティ ★×1 カード名 エリック★ エリック+★+ 画像 攻撃力(初期/MAX) ?/? ?/? 防御力(初期/MAX) ?/? ?/? コスト 7 8 MAXレベル 25 30 スキル - 効果 - 入手方法 指令、ガチャ →契約 セリフ(ネタバレ含むため折りたたみ式) +... 好感度MAXセリフ ? ? ログイン時セリフ ? ? -セリフ ? ? レアリティ ★×2 カード名 [バレンティーノ]エリック★★ [バレンティーノ]エリック+★★+ 画像 blankimgプラグインエラー:ご指定のファイルがありません。アップロード済みのファイルを指定してください。 blankimgプラグインエラー:ご指定のファイルがありません。アップロード済みのファイルを指定してください。 攻撃力(初期/MAX) ?/? ?/? 防御力(初期/MAX) ?/? ?/? コスト 8 9 MAXレベル 35 45 スキル 新人おネェ 効果 歌タイプの攻撃力が中アップ 入手方法 イベント「バレンティーノ・デュエロ」 →契約 セリフ(ネタバレ含むため折りたたみ式) +... 好感度MAXセリフ ? ? ログイン時セリフ ? ? -セリフ ? ? レアリティ ★×3 カード名 [戦闘準備]エリック★★★ [輝ける場所]エリック+★★★+ 画像 blankimgプラグインエラー:ご指定のファイルがありません。アップロード済みのファイルを指定してください。 blankimgプラグインエラー:ご指定のファイルがありません。アップロード済みのファイルを指定してください。 攻撃力(初期/MAX) ?/? ?/? 防御力(初期/MAX) ?/? ?/? コスト 13 15 MAXレベル 50 65 スキル 役者おネェ魂 効果 歌タイプの攻撃力が大アップ 入手方法 ガチャ →契約 セリフ(ネタバレ含むため折りたたみ式) +... 好感度MAXセリフ ? ? ログイン時セリフ ? ? -セリフ ? ? プロフィール(ネタバレ含むため折りたたみ式) +... 名前 エリック 性別 男 年齢 31歳 誕生日 2月8日 身長 172cm 職業 演劇役者 趣味 自画自賛できる自分であること その他 完璧主義 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/sokulibe/pages/510.html
+幻影の燈火ララノア 「そっちへ行ったぞ!追え!!」 夜蛍の都ミールの郊外にある森の中に帝国兵の声が響く。 人里から離れ、滅多に人が立ち入る事のない黒の森と呼ばれる森の隅にわざわざ足を運んだ理由は、ミールの村人から聞いた噂話にあった。 『森の中には、人に幻影を見せる魔物が住んでいる』 帝国の支配下に置いたミールの村だったが、村人達は帝国に不信感を持っているようだった。 村人の信頼を得る為にその魔物を討伐してきてやると小隊を率いて森の中に入ったは良いが、目的の魔物の情報は少なく、薄暗い森をただ進む事しかできない。 そんな中で見つけた一軒の山小屋。 煙突からは煙が出ており、どうやら人が生活しているようだ。 しかし、この森は地元の人間でも近付く事のない危険な森だという。 そんな森に建造物があり、ましてや人が住んでいるとなると、何か怪しい空気を感じずにはいられない。 一つ喉を鳴らしてから、ドアをノックする。 「すまない。中に誰かいるか?」 数秒後、ドアが開き出てきたのは、小さな少女だった。 「子ども……?」 「おじさんたちはだれ……?何の用……?」 まだ4,5歳と見られる少女は不安そうに見上げている。 「我々は帝国の者だ。この辺りにいると噂の“幻影の魔物”の討伐にきた。何か知っているか?」 少女の顔が曇る。 すると後ろから少女の母親らしき女性が顔を出した。 「ララノア!どいて!!」 少女がドアの前から姿を消したかと思うと、女性は手に持った鍋を投げ付けてきた。 「うおぉあ!!」 とっさにドアを閉めて飛び退いた帝国兵。 ドアに鍋がぶつかる音がしたかと思うと、下の隙間から湯気を出したスープのようなものが流れてくる。 直撃していたら大火傷を負っていただろう。 「なんだってんだ!!」 ドアノブに手を掛けるが、内側から鍵を掛けられたのかドアは開かない。 「くそっ……!お前ら!ドアをぶち破れ!!」 帝国兵は数人でドアに肩をぶつけて激しい音を立てた。 ミシミシと軋むドアは次の一撃で大きな音を立てて壊れ、帝国兵は山小屋の中に雪崩れ込む。 家の中に土足で踏み入るが人影はない。 「帝国を敵に回したくなければ出てこい!!」 聞き耳を立てるが、返事も物音もなく、家の中は静まり返っている。 「隊長!裏口がありました!ここから逃げたと思われます!」 「子どもを連れた女の足だ。そう遠くには行けないだろう」 隊長の命令を受けて、部下達は森の中を捜索する。 薄暗い森の中といえど、2人の足跡を見つけるのはそう難しい事ではなかった。 「いたぞ!あそこだ!!」 十数分後、女性と少女の背中を見つけた兵士は指を指す。 少女の手を引いて必死に走る女性だったが、男達の足に追いつかれるのは時間の問題だった。 「さぁ、鬼ごっこは終わりだ。知ってる事を話して貰おうか」 女性と少女を囲んだ小隊は、剣を突きつける。 明らかに何かを隠している2人に手荒な真似はする気はないが、抵抗するのであればやむを得ない。 「……」 少女を抱えて沈黙を守る女性。 「そんなに話したくないなら、仕方ねぇな!」 そう言うと、隊長は女性を取り押さえて少女をその腕から取り上げる。 「やめてっ!!!」 少女を抱きかかえた帝国兵に手を伸ばす女性に剣を向けた。 「俺達だって話してくれたら危害を加えるつもりはねぇんだ。幻影の魔物の事を何か知っているのだろう?」 「……」 女性は隊長を睨みつけている。 次の瞬間だった。 女性は少女を抱えた隊長に体当たりをして押し倒す。 「何をっ!!」 隊長の手から少女を取り上げると地面に少女を下ろし、隊長の手から離れた剣を拾った。 「ララノア……あなただけでも逃げて……」 女性は手を震わせながら剣を構える。 少女はどうしていいのか分らないのだろうか、おどおどとしている。 「早く!!」 女性の言葉を聞くと、少女は目に涙を浮かべている。 「この女!!ふざけやがって!!」 立ち上がった隊長は、女性を思いっきり殴りつけた。 「きゃぁああ!!」 「調子に乗りやがって!帝国を敵に回すとどうなるか教えてやろうじゃねぇか!」 女性の肩口から胸にかけて長剣を振り抜いた。 飛び散る鮮血。 「おらぁっ!死にたくなければさっさと話せ!!」 「ララ…ノア……早く……逃げて……」 血を流しながらも尚、少女の事を庇うように帝国兵に立ち向かおうとする女性。 「あなた達には……この子を渡さない!!」 絶対に子を守らんとする母の眼。 ビリビリと威圧する女性からは、何か恐怖すら感じる。 「うぉおおおお!!!」 気付けば、剣を振っていた。 (仕方のない事だ!この女が悪いんだ!俺は何度も話せって言ったのに、抵抗ばっかりしてきやがった!この女が悪いんだ!) 血を流し、倒れこむ女性。 もう助かる事もないだろう。 それだけの感触が手にあった。 「おかぁさん!!!!!やめてよ……やめてよ!!!!!!」 少女の悲痛な声が暗い森に響き渡る。 帝国兵の目に入ってきたものは、信じられるものではなかった。 「なんだっ……!?これは……」 巨大な翼を持った魔物……いや、魔獣と言うべきだろうか。 見たこともないその魔獣からは、圧倒的な力の差を感じる。 (この少女が魔物を召喚したとでも言うのか!?なんなんだ!?) 「うわあああああ!!!」 突然足元にドサっと何かが倒れたと思うと、部下が血を流している。 胸には、斬撃の跡がある。 「どうした!?おい!!」 次の瞬間、部下の一人が剣を振り上げて襲いかかってくる。 「化物めぇええええ!!」 「おい!何してるんだ!?」 剣をなんとか弾くが、何が起きているか分らない。 次の瞬間、目の前の部下の後方で魔獣が真っ赤に燃え上がる。 「畜生!!」 すぐに構えて、部下の後ろに回り込むように踏み込むと、魔獣に向けて全力で剣を突き刺す。 「ぐわああああ!!」 目の前から聞こえたのは、部下の叫び声。 魔獣はフッと消えたかと思うと、自分の剣が部下の胸を貫いていた。 「……っ!!!」 力なく倒れていく部下。 (これは……一体……) 辺りを見渡すと、魔獣が1体…2体…3体……。 その奥に、涙を流す少女が見えた。 ある魔獣は、その姿を禍々しい死神に変えていく。 ある魔獣は、凍てつくドラゴンへと変貌した。 そして、一斉に隊長に向かい襲いかかる。 (まさか……このガキが……幻影の……魔物……) 森の中に、少女の泣き声が虚しく響いた。 ――数年後 商業都市イエルに辿り着いた少女。 少女はあの優しかった母をこの世に復活させる為に、旅をしてこの街に辿り着いた。 様々な人種が集まるこの街ならば、母の読んでくれた絵本に出てきた『魔神の心臓』に纏わる情報が手に入るかもしれない。 “幻影の魔物”と呼ばれ、忌み嫌われた自分に、唯一優しさをくれた母。 あの日、母を失った少女は、母を取り戻す事だけを考えていた。 目を閉じれば、今でも鮮明に母との思い出が蘇る。 ――いい?ララノア。あなたは素晴らしい才能を持っているの。あなたの魔法は、傷ついた人を助ける事ができるのよ。決して、悪いことではないの。周りの人達がなんと言っても、絶対に気にしちゃダメよ? 生まれつき高い魔力を有していたララノア。 その治癒能力は非常に高く、一般的な術士が3日かけて治癒するような重体患者でも、半日程で完治させてしまう程の魔法を使いこなしていた。 しかし、強力すぎるその魔法をかけられた者は、副作用として幻覚症状が現れてしまう。 症状が出た者はララノアに怯え、街の人々はララノアの家族を虐げるようになっていった。 “幻影の魔物” いつしかそんな呼ばれ方をするようになる。 母はララノアの安全を考え、街を出て森の中で過ごす事を決め、あの山小屋でララノアとの生活を始めた。 街から離れて不自由はあったものの、母との幸せな生活。 母は毎晩絵本を読んでくれた。 その中の一つに『失った宝石』という絵本があった。 主人公は幼なじみと共に、宝石を探しに仲間と旅へ出る。 しかし、道中で橋が落ちて幼なじみを失ってしまった。 宝石よりも、大切なものを取り戻すために火山に住む魔神から、“魔神の心臓”を手に入れる。 死者を生き返す事のできる“魔神の心臓”で幼なじみを生き返らせ、失った宝石を取り戻すというストーリー。 母を取り戻す為の唯一の手がかり。 絵本の話が本当の事かどうかは分らない。 それでも、母を生き返らせる事ができる可能性がわずかでもあるならば、それに賭けるしかなかった。 ふと、路地の奥から賑やかな声が聞こえてきた。 導かれるように、騒がしい建物へと入ると、そこには小さなテーブルが並び、酒を飲み交わす男達の姿があった。 突然店に現れたこの場に似つかわしくない少女に、酒場の男達の視線が注がれる。 「どうした?迷子かい?」 男の一人が声を掛けてくる。 「違う……。私は、知りたい事があるの……」 「ほぅ、何が知りたいんだ?俺で知ってる事なら答えてやるぜ。おい!席をひとつ空けてくれ。あと、この子にジュースを」 声を掛けてきた男の仲間であろう強面の男性は、酒を飲みながら煙たそうにララノアを見る。 「おい、ヤンギ……。おめぇそうやって何でもかんでも首突っ込むのやめろよ」 「まぁまぁ!かてぇ事言うなよ!困ったときはお互い様だろ」 「んな事言ってもよ!今だってお前が持ち込んだ面倒事の計画を立ててる最中だろうが!“魔物の巣”を叩くなんて……命が危ねぇかもしれねぇんだぞ!」 同じ席に座っている小柄な男が口を挟む。 「まぁまぁ……あんただってヤンギが助けてくれなかったら、あの時魔物に食われてただろう。そういう奴なんだよ。あいつは」 「ちっ……仕方ねぇな……」 男はつまらなそうに天井を見て貧乏揺すりをしている。 用意された席にララノアを案内するヤンギ。 「で、何が聞きたいんだ?」 ララノアは運ばれてきたジュースに目もくれずに口を開く。 「火山に住む魔神がどこにいるのか知りたいの……」 「わははははは!!」 突然男が笑い出す。 「『失った宝石』に出てくる魔神の事か?そりゃまたすげぇもんを探してるな!」 「まぁまぁ、茶化すのはやめようぜ」 酒を飲みながら大笑いをする男をヤンギが止める。 「お嬢ちゃん名前は?」 「……ララノア」 「そうか、良い名だ。ララノアはもしかして、大切な人を亡くしちまったのか?」 「……」 ララノアの頭に母の顔が浮かぶ。 「まぁ、なんだ。あの話は全部が全部作り話じゃねぇって噂を聞いた事があるぞ」 「ほんと…!?」 「確かに……俺も聞いた事がある。イオの魔神だったか……」 「そうそう、それだ。イオの火山には炎の魔神が住んでるっていう話」 酒場の一角に置かれたテーブルでは、他の者が聞いたら笑われるであろう話が続けられる。 「おいおい、お前らマジなのか?まったく……俺はお伽話には興味がねぇ。“ララノアちゃん”の話が終わったら呼んでくれ。俺は明日の作戦の話をしにきたんだ」 そういうと強面の男は席を立って酒場のカウンターの方へと歩いていった。 「でも噂では、魔神の心臓を取りに行こうとした奴は、それができなかったとか……」 「あぁ、魔神は魂のみで生きてるから実体がねぇって話だよな」 「なんでも……人間にその魂を憑依させなきゃいけないとか…」 「その話はホントかどうか怪しいな……。実際に憑依させた成功例はないんだろ?」 「まず魔神を憑依させる為に、具現化してる幻に勝たないといけないらしいが……兵団が滅ぼされたとか聞いた事があるな…魔神に勝てるような人間じゃなきゃ無理だとかなんだとか……」 「そうだそうだ。まぁ、噂話だからどこまで本当かわからねぇけどな」 ララノアは男達の話をジッと聞いていた。 その話が本当かどうか分からなくても、それが本当ならば、母を生き返す事ができる。 他にあてはない……だからこそ、どんなに小さな情報でもララノアにとっては貴重な情報だった。 ヤンギは笑いながらララノアを見る。 「まぁ、なんだ……世の中にはよ、噂話は沢山ある。暗黒組織“夜の鍵”の存在だろ?800年間名前の変わらないマーニルの魔法学校の学長。コルキドに眠る忘れられた三種の神器。血を求め、奪った魂を使用者に宿すヴァンパイアの魔剣。魔の海域デビルズガーデンから出てきた幽霊船なんてのもあったな」 「ははは!どれが本当で、何が嘘かは分らないけどな」 「だが、俺は全部あると信じてるぜ!だってよ!本当にあるって方が夢があるだろ!?」 「そりゃそうだ!!」 ララノアは、ヤンギ達の話を聞き終えると席を立つ。 「……色々ありがとう」 一つ小さなお辞儀をすると、背を向けて酒場を後にする。 「おい、もういっちまうのか?今晩の宿はあるのか?」 少女はその声に反応する事なく酒場の扉を開き、姿を消した。 この数年で除々に魔力の制御を覚えたララノアは、魔力の強弱や質で魔法を掛けた相手に見せる幻影をある程度コントロール出来るようになっていた。 これにより、資金の調達に苦労はない。 幻影を見せて驚かせば、簡単に財布を奪う事ができる。 それが悪である事を知ってはいたが、目的の為には仕方のない事と割り切り、罪悪感を覚えながら幻影を見せて旅を続けた。 ―――おかぁさん…… イエルを出ようとしていた行商人に幻影を見せて馬車を走らせること数日。 遠くに、山頂が赤々と燃え上がる山が見えた。 その火山の麓(ふもと)に、明かりがポツポツと光る光景。 イオの街に辿り着いた事を少女は確信した。 あの火山に、母を取り戻す為の鍵である魔神がいる。 ララノアは灼熱の火山を登っていく。 険しい山道を登るにつれて体感温度は上がり続け、額には汗がにじみ出る。 それでも母の為に、ゴロゴロと岩が転がる道を必死に登り続けた。 辿り着いた火口では、マグマがゴボゴボと音を立てている。 「……魔神は……いない……?」 マグマを見つめるララノアの表情に不安がよぎる。 その時、マグマが揺れたかと思うと、中央に渦が現れた。 ――ゴゴゴゴゴゴ 渦はその大きさを増したかと思うと、中心から何かが現れる。 「魔……神……」 聞いた噂通り、炎を身に纏い、強大な力を持った魔神。 その巨大で圧倒的な姿に恐怖を覚える。 魔神は少女を見下ろすと咆哮する。 ――グォオオオオオオオ!!!! ララノアは走った。 魔神から一刻も早く逃げなければいけない。 ここで命を失えば、今までの努力が水の泡だ。 その表情は使命感で溢れる。 イオの街まで降りてきたララノアは、早くも次の行動に移る。 (魔神の魂に耐えられる強靭な人間でなければいけないとか……) 強靭な人間……つまりは、大柄で強い人間でなければいけない。 もし失敗すればその人間は死んでしまい、“魔神の心臓”を手に入れる事も出来ないだろう。 だからこそ、この人間の選定にミスは許されない。 イオの街に入ると、まずは宿を探す。 宿屋の主人は、見慣れない少女が一人で宿泊する事に多少の疑問を持っているようだった。 「お嬢ちゃん一人かい?パパやママと待ち合わせかい?」 「お父さんはいない……。おかぁさんに会う為に、ここに泊まらなければいけないの……」 何か訳ありだと感じ取った主人は、怪しみながらも宿泊帳簿を少女に渡す。 「ここに名前を書いてくれるかい」 行商人から手に入れた財布から宿代を払いながら、質問をしてみる。 「この街で、一番力持ちで、強い人をおじさんは知ってる?」 宿屋の主人は不思議そうな顔をした後答える。 「力持ちで強い人……ねぇ……。そうだな。そりゃ、ガルさんしかいないだろうな」 「ガルさん?」 「あぁ、鍛冶屋街で5本の指に入る腕の鍛冶師だ。あの人よりも力持ちっていったら、大陸の中に何人もいないんじゃないか?」 「そうなの……ありがとう……」 「なんでそんな事を知りたいんだ?」 「その人に用事があるから……」 ――翌日 ララノアは早速、鍛冶屋街に足を運ぶ。 宿屋の主人が言っていた通りに道を進むと、他の鍛冶屋と比べると少し小汚い工房が見えてきた。 中からはハンマーで鉄を叩く音が響いてくる。 工房を覗き込むと、大きな背中が見えた。 その背中についたゴツゴツとした筋肉は、強靭な人間という言葉がしっくりくる。 大きなハンマーを振り下ろし、鉄の塊の形を整えているようだ。 ララノアは手に魔力を集める。 あの男に幻影を見せて、火山へ連れて行く。 そして魔神をあの男に憑依させれば、魔神の心臓が手に入るだろう。 幻影さえ見せてしまえば、腰に隠したナイフで心臓をえぐり取る事も容易い…… それが、自分に出来るかどうか…… 人の命…… しかし母を取り戻す為には…… 「おや、お嬢ちゃん見ない顔だな。どうしたんだい?」 ふと掛けられた声で我に返った。 工房の中にいた男がこちらを見ている。 何か心配そうな表情で近付いてくるこの男が「ガルさん」に違いない。 この男を……殺せるかどうかだ。 母の為に……死なせる事ができるかどうか…… 「……おじさんはわたしを助けてくれる?」 「なんだ?ママとはぐれちまったのかい?どっから来たんだ?」 「ママは……いない……。だから……会いたい……」 本心が漏れる。 母の顔を浮かべて心を決める。 「お嬢ちゃん、名前は?」 「私はララノア」 手に魔力を込めて男に放出する。 「おじさんは……もう……私の……」 ―――――幻影の中。 男は頭を抱える。 確実に、ララノアの術にハマっている。 何かをつぶやきながら、工房の外に出て行く男。 男の後を追いながら魔法をかけ続け、火山の方面へと誘導する。 「おう!ガルさん!お出かけかい?」 街の人が手をあげて男に話しかけている。 しかし、男にその声は届かない。 「早く……もっと早く歩いて……」 少し強く魔法をかける。 男は辺りを見渡してから走り出す。 街中を抜けて、火山の山道へと入る。 山頂へ向かい、必死に走る男。 (これでいいの……もうすぐ……おかぁさんが……) 山頂の火口に辿り着いた男は、ボソボソと何かを言いながら頭を抱えている。 ララノアは、火口の近くでマグマを見つめる。 「さぁ……おいで……炎の……魔神……」 あの時と同じように、マグマに渦が発生すると魔神がその姿を表した。 男への魔法はもうかけていない。 そろそろ意識を取り戻す筈だ。 「魔神よ……あの人に憑依して……」 魔神に言葉が伝わっているのだろうか。 ララノアを見つめ続ける魔神。 「どうして……早く……」 その時、太い声が飛んでくる。 「ララノア!逃げろ!!!」 振り向くと、意識を取り戻した男がこちらを見ている。 (何故……逃げなければいけないの……) 次の瞬間、男は走り出し、魔神に向かって跳びかかった。 「グォオオオオオオオ!!!!」 怯む魔神。 (何故この人は、魔神と戦おうとしているの……?) 「貴様の好きにはさせない!この街は俺が守る!ララノアにも指一本触れさせはしない!このガルスタークが相手をしてやる!!」 男は鼻息を荒くしながら、魔神を睨みつける。 (なんで……私が……守られるの……?) 魔神と戦い続ける男。 攻撃を繰り返し、魔神と互角に渡り合っている。 (私は……あなたを……利用しようとしているのに……) 「ぐあっ!畜生………なんの…これしき!!」 (私の事なんて……何も知らないのに……) 「させるかぁあああああ!!!」 気がつけば、ララノアに向かっていた魔神の攻撃。 男は、赤々と燃える魔神を素手で殴りつけた。 (どうして……そこまでするの……?) ――あなた達には……この子を渡さない!! 母の声が頭の中に響く。 (なんで……おかぁさんと……同じように……私を……守ってくれるの?) 「これで終わりだ!!あるべき場所に帰れ!!」 魔神の盾を取り上げた男は、渾身の力で魔神を殴りつける。 「グォオオオオオオオ!!!!」 火口に倒れていった魔神は、マグマの中で暴れているようだ。 そして男はその様子を見下ろす。 (なんで……私を守ってくれるの……) 辺りには不気味なマグマの音だけが響き、戦いが終わった事を知らせていた。 こちらに振り向いて駆け寄る男。 「怪我はないか?ララノア…」 息を切らしながら、ララノアの両肩に優しく手を置く。 その手は、魔神と戦った痕跡だろうか…焼けただれてボロボロになっていた。 いつの間にか、ララノアの頬には涙が溢れていた。 自分の事を守ってくれた。 その姿が母と重なった。 (私は……こんなに優しい人を……殺めようと……) 大粒の涙がボタボタと地面に落ちる。 「なんでそこまで……。今…私が…治して…あげるから……」 怪我を治そうと手に魔力を込めた瞬間、辺りが明るくなったような気がした。 (え……?) 目の前の火口から、炎が吹き出したかと思うと、ララノアとガルスタークに向かって襲いかかる。 (なに……これ……) 「危ない!伏せろ!!」 炎に向かい盾を構えてララノアを守る男。 しかし、襲い来る炎を防ぎきる事はできず、盾の裏へ回り込むようにして男の身体を炎が包み込み、そのまま身体の中へと流れ込んだ。 バタリと倒れこむ男。 ララノアは、泣きながら回復魔法をかけ続ける。 男の皮膚は焼け、助かる見込みは少ないかもしれない。 それでも、必死に治癒を続けた。 自分の罪は消えないだろう……だからこそ、この男を救いたい。 半日ほど魔力を注ぎ続け、男の傷はある程度塞ぐことができた。 しかし、男の身体の様子がおかしい。 赤々と燃えるような色の皮膚は人間とは思えない高熱を発している。 (とりあえず、街に戻らないと……) ララノアは、羽織っていたマントを地面に敷くと、男をその上に乗せて引き摺るように下山する。 マントの端を持ち下り坂をズルズルと引きずっているとはいえ、自分の何倍もある大男を運ぶのは想像以上に難しかった。 それでも、この男をなんとか助けようと、必死に進み続ける。 街の近くまで運ぶと、イオの住人がララノアを見つける。 ガルスタークの異変に気が付いた住人は、彼を運ぶのを手伝い、ララノアと一緒に男の工房まで連れてきた。 住人は、人を呼んでくると言って工房を出て行く。 ララノアは、その間も工房の中で寝かされた男が意識を取り戻すように、回復魔法をかけ続けた。 ――数時間後 「ん……んん……」 祈り続けたララノアの願いが届く。 「気がついた……?」 男の目が開いたのを確認して、嬉しさがこみ上げる。 「ララ…ノア…無事……だった…か……」 この状況でも、自分の心配をしているガルスタークに、また涙が溢れる。 「ごめんね……私のせいで……」 「ララノ…アの…せいでは…ない……泣くな…」 男は何も知らない。 「違うの……私が…」 自分が今回の事を引き起こした。 ララノアはこれまでにない罪悪感で押し潰されそうになる。 全てを話そう。 何もかも…… (きっとこの人は怒るよね……それでも、言わなきゃいけない……話さなきゃいけない……) 「私が――」 「貴様ら…誰だ…!」 男の声でララノアの言葉は遮られる。 後ろを振り向くと、数人の兵士だろうか……鎧を着込んだ男達が工房の入り口に立っていた。 「あなた達は……」 その鎧は見覚えがあった。 あの日、森の中の山小屋にやってきた、母を殺した帝国の鎧…。 「こいつだな……。連れて行け」 兵士は少女の事を担ぎ上げる。 「やめて……!!離して……!!」 「大人しくしろ!!」 そのまま工房の外に連れ出されるララノア。 ガルスタークは、まだ苦しそうにしている。 彼を一人でこんな所に置いて行くわけにはいかない……。 (この兵士達に幻影を見せれば……) しかし、ガルスタークに殆ど1日中魔力を注ぎ込んだララノアには、もはや残っている力はなかった。 もう疲労も限界に達し、腕を上げることもままならない。 (今まで私がしてきた……報いなのかな……それでも……彼は悪く無いのに……) 「よく報告してくれたな。下がっていいぞ」 「はい……」 頭を上げると、イオの宿屋の主人がララノアを見ていた。 「確かに……ミールから報告があったガキにそっくりだ。この街にも張り紙をしておいて良かった」 帝国兵の一人の言葉を最後に、ララノアは疲労から意識を失う。 ――数日後 目を覚ましたララノアは、牢の中に入れられていた。 手枷が付けられて、殆ど身動きがとれない。 時々、帝国兵だろうか、声が聞こえてくるものの、その内容は殆ど聞き取れない。 陽も当たらない部屋で、何日も過ごすことになる。 ――さらに数日後 水や僅かな食料は与えられているが、ララノアの精神は限界に達しようとしていた。 手枷のせいで魔法を放つ事も出来ず、ただただ時間が過ぎるのを待つ。 いっその事、舌を噛み切ろうかとも考える…… が、あの男の顔が脳裏に過る。 (こんな所で死ねない……彼を……治さないと……) その思いだけが彼女をこの世に留める。 ――さらに数週間後 どれくらいの時が経ったのか、もう分からなくなった時だった。 牢の鍵が開けられて、数人の兵士が中へと入ってくる。 「ようやくお前の移送先が決まった。本当に幻影の魔物と言われる程危ない存在なのかは知らんが……生きていられるといいな。よし連れて行け」 男がそう言うと、周りの兵士が目隠しをしてから手枷を外し、ララノアを乱暴に運ぶ。 抵抗する事も出来ず、どこかに降ろされた。 「よし、それじゃあ頼んだぞ」 「はっ!」 馬の鳴き声が聞こえた。 身体が揺れる……きっと馬車に乗せられたのだろう。 どこに連れて行かれるのか、ララノアには見当も付かない。 今が朝なのか、夜なのか……それすらも分らない。 ただ、今はジッと耐え凌ぐ事しかできない。 ――馬車に乗せられてから数日が経った 馬車は揺れ続ける。 時々立ち止まると、兵士の声が聞こえ、また揺れる。 この先どうなるのか、考えても分かる訳がない。 それよりも、あの男の事を考えた。 生きているだろうか…… もし死んでいたら……償う事もできない…… もし、彼が生きていて、再会する事ができたら、今度こそ全てを話そう。 そして、彼が許してくれるならば……彼の身体が元に戻る方法を探そう。 きっと……母ならばそれを許してくれる。 あれだけ優しい母なのだ。 自分のする事を信じて見守ってくれるだろう……。 「おい!なんだアイツは!?馬車を止めろ!!」 突然、帝国兵の慌ただしい声が聞こえた。 急停車する馬車。 剣を抜く音。 「貴様何者だ!?何故道を塞ぐ!!」 どうやら誰かが馬車の前に立ちはだかっているようだ。 誰かは分らない…… しかし、次に聞こえてきた言葉で、ララノアの心は晴れ渡る。 「貴様等……ダナ……」 確かに聞こえたその声は、あの男ガルスタークの声だ。 生きていた…… 彼は生きている…… 想いが天に届いたような、そんな気分だった。 「うわあああああああ!!!」 次の瞬間、大きな衝撃が走ったかと思うと、ララノアは馬車の外に放り出された。 地面に投げ出された衝撃で、手枷は外れ、目隠しが取れる。 突然差し込んだ光に目を細めると、真っ赤に燃えるガルスタークの姿が移った。 何か、様子がおかしい。 自分が乗っていたであろう馬車は横に倒れて燃えている 「なんで……燃えてるの……」 その姿は、あの火山で見た魔神を彷彿させる。 (まさか……魔神が……憑依……して……) 嫌な予感がララノアを包み込む。 イエルで聞いたあの噂。 ヤンギという男達の会話を思い出す。 (嘘……うそだよね……) 「見ツケタ…………貴様……」 男は真っ直ぐララノアに向かって歩を進める。 「嫌……いや……ごめんなさい……ごめんなさい!!」 ララノアは手を前に出して魔法を放つ。 どうにかしてこの状況をなんとかしなければ、命はないだろう。 まず、この男に幻影を見せる。 それから何か……次の手を考えれば…… 「ララノア……?」 彼の声に耳を疑った。 それまでとは一転して、優しさに溢れたあの声…… 「ララノア……何を……ここはどこだ?」 「私が……わかるの……?」 男は、胸に手を当てて何かを確かめている。 「魔神から……肉体を取り戻したのか……?」 「ど……どういう事……?」 男は話し始めた。 あの後、工房で意識を失った事。 次に目を覚ました時には炎の魔神に身体を乗っ取られていた事。 魔神が身体を動かしている中、精神のみでもがいていた事。 そして、魔神はララノアを探し、帝国兵を次々と襲っていた事。 「こんな事……信じろと言われても……無理かもしれないが……」 ララノアは彼の言葉を黙って聞いていた。 そんな事があったなんて、自分はどれだけの事をしてしまったのかと、更に自分を責めようとした。 しかし、今は彼が目の前にいる。 ケジメをつけなければいけない。 「全部信じるよ……おじさんの言う事……全部……」 「ララノア……」 「だから、私の言う事も……信じて貰えるかな……?」 今まで自分がしてきた事。 しようとしていた事。 全て……包み隠さず…… きっと彼は怒るだろう。 自分のせいで、そんな身体になってしまったのだ。 怒らない方が不思議だろう。 それでも、言わずにはいられなかった。 少女は涙を流しながら、少しずつ、少しずつ、伝えていく。 「だから……私は……うっ……うっ……おじさんを……」 「もういい……ララノア」 ガルスタークは泣き続ける少女の前に座った。 「今まで、一人でよく頑張ったじゃないか……」 「…………えっ……?」 男は笑っているように見える。 「もういいんだ……」 「私のせいでおじさんはそんな身体になっちゃったんだよ……!?いいわけないよ……」 「鍛冶屋は……廃業かもしれないな。ははは…こんな身体じゃ客がおっかながって逃げちまう」 怒っている様子ではない。 本当に、心の底から、ララノアを励まそうとしているように見える。 「まぁ、こうなったのも俺の運命なんだろう!ガハハ!」 (なぜ……?) 「なぁに悪い事ばかりじゃない!俺の周りは夜だって明るいぞ!」 (どうして……?) 「だからそんな悲しそうな顔するな!なっ?」 (そんなに優しくするの……?) 「ほら、顔をあげてくれ……俺は怒ってなんかいない!」 「なんでそんなに優しくするの!!」 自然と叫んでいた。 「……俺は――」 一つ間をおいて何かを考える男。 「そうだな……俺は、人が悲しんでるのを見るのが嫌いなんだ」 少女に笑いかけるガルスターク。 この時感じた温かさは、彼の身体から出る炎のせいではない。 ララノアの心をそっと包み込んだのは、ガルスタークの純粋な優しさだった。 数週間後―― 「ララノア……あんまり走ると転ぶぞ……」 前を走る少女を心配する炎の男。 「早く“燃え太郎”の身体を元に戻したいの!」 楽しそうにする少女。 「その呼び方はもう揺るがないのだな……」 ある日、“おじさん”と呼ぶのは嫌だと言い出したララノア。 好きに呼んでいいと話すと、何を思ったのかそう言い出した。 元の名前を呼ぶのは、身体が元に戻ってからと言い張り、それ以降この調子だ。 「ほら!燃え太郎も早くきて!あっちに洞窟があるよ!今日はあそこで寝れるかな?」 ガルスタークの見た目では、普通の宿に泊まる事ができない。 ララノアだけでも暖かいベッドで寝て欲しいと打診をしたガルスタークだったが、ララノアは首を縦に振らなかった。 仕方なく、洞窟や廃墟で寝泊まりする生活。 この旅がいつまで続くのかも分らない。 しかし、ララノアに不安はなかった。 「はい、燃え太郎。少しジッとしててね」 洞窟に入ると、手を前に出して魔法を発動するララノア。 ガルスタークの中にいる魔神の精神を抑えこむ。 定期的にこの魔法をかけなければ、ガルスタークの中の魔神の精神はどんどんと大きくなり、やがて身体を乗っ取ってしまう事が分かった。 元の身体にする為の方法を見つけるまでは、一緒に行動をしなければならない。 それはララノアがガルスタークの元を離れてはいけない理由にもなっていた。 「はい、終わったよ!燃え太郎!」 「いつも……すまないな……」 「いいの!今度は私が燃え太郎を守ってあげるんだから!」 ララノアは、明るい笑顔を返す。 その笑顔は母を失って以来、初めて人に見せる笑顔だった。 「やっと…笑えたな……」 ガルスタークも少女に釣られて楽しそうに笑っていた。 +巨亀の巫女ルルーテ 巨大な甲羅を持った亀のような魔物、“アスピドケロン”。 そのあまりに巨大な姿に、魔物だと認知できる者は少ない。 大きな街が甲羅に建設されているのだから無理もないだろう。 外部の人からは、この街が「海獣都市」と言われている事に疑問を持たなければ、その事実にたどり着く事も難しかった。 もちろん、アスピドケロンを操舵するための巫女の存在も、街の住人しか知らない。 その昔から、代々アスピドケロンを操舵し続ける巫女。 強大な水の魔素を身体に宿した巫女は、その生涯を“巫女の間”で過ごす。 巫女の候補として街中から15歳以下の子どもが集められ、体内に宿した水の魔素を測定される。 水の魔素の高い順から、7人の少女が巫女の見習い、“見習い巫女”として選出される。 見習い巫女は、巫女と一部の関係者しか入る事が許されない“巫女の神殿”に通い、更に水の魔素を増強する修行が行われた。 週に一度、修行の成果を見る為に水の魔素の測定が行われ、その度に7人の少女は序列をつけられる。 当代の巫女がいなくなった際に、序列1位の見習い巫女が正式な巫女として任命される。 何故、巫女がいなくなるのか―― 見習い巫女達は知る由もない。 それは幼い少女、ルルーテも同じだった。 「おつかれ様!今回も1位なんてすごいね!わたしなんか全然だめ。なんか憧れちゃうなぁ!」 ルルーテは序列1位の見習い巫女に明るく話しかける。 しかし、返事はいつもと同じように冷たいものだった。 「気安く話しかけないで!…何を狙ってるか知らないけど、私達はライバルなのよ?友達みたいに接するのはやめて」 鋭い目つきでルルーテを睨むと、彼女はそのまま歩いていってしまう。 表情が曇るルルーテの肩にポンポンと手が置かれる。 振り向くと、見習い巫女で唯一仲の良いリナの姿があった。 「ルルーテ、やめときなって。みんなピリピリしてるんだよ。あの子はずっと1位だけど、いつ2位になるか分からないし…それにあんな噂もあるしね……」 あんな噂。 本当かどうか分からない、信じたくもない昔からある噂。 “見習い巫女狩り” 巫女となった少女の家族は、街から莫大な富を与えられ、その後3代は安泰だと言われている。 その為、他の候補の見習い巫女を蹴落とす為に、見習い巫女が殺されることは珍しくないらしい。 見習い巫女は、普段口に出したりはしないが、常に「見習い巫女狩り」の危険に晒されている事になる。 一番危険なのは序列1位だというのは誰でも簡単に想像はついた。 「でも、わたしはみんなとお友達になりたいよ。どうせみんなで修行するなら、楽しいほうがいいもん!」 ルルーテは当たり前のように返す。 その様子にリナはため息を吐く。 「はぁ……あんたに言ったアタシがバカだったわ。まぁ、あんたは万年最下位だし、そんな心配はないんだろうけどさ!」 茶化すように額に手の平をつけながら話すリナに、ルルーテは頬を膨らます。 「むぅ~!リナちゃん!なんかバカにしてない!?」 「あっはっは!大丈夫だよ。ルルーテにはそのまま明るく生きて欲しい!巫女になれなかったとしてもね!」 リナは他の見習い巫女と違いルルーテに笑顔で接してくれる。 ルルーテにとっては見習い巫女の中で唯一の友達。 自分が巫女になることは無理だと諦めていたルルーテだが、どうせならリナに巫女になって欲しいと思っていた。 巫女の神殿での訓練を終えると、ルルーテはいつもお気に入りの場所に向かう。 アスピドケロンの顔に一番近い祭壇で海を眺めながら、アスピドケロンに話しかけるのがルルーテの日課だった。 自分の何百倍もあるアスピドケロンだが、ルルーテからすればペットのような存在なのだ。 「ねぇねぇ!今日ね、リナちゃんが初めて序列2位になったんだよ~!すごいでしょ~!?リナちゃんが巫女になったら、きっとケロンちゃんも楽しいと思うんだよね~。あ、ケロンちゃんは誰に巫女になって欲しいの?」 今日もいつも通りアスピドケロンからの返事はないが、ルルーテはニコニコしながら海を眺める。 水平線に夕日が落ちて、街がオレンジ色に染まる。 祭壇の海に面した柵に座り、足をブラブラさせながら夕日を見つめていた。 「お腹すいてきたな~。あ、ケロンちゃんは何食べるの?ずっと泳いでたら疲れちゃうよね?わたしだったら絶対むりだよー。尊敬しちゃうなー」 その時、どこからか聞いた事のない言葉が響いてくる。 (毎日毎日、頭の上でギャーギャーうるさいんじゃ!!少し静かにしてくれんか!?) 「え!?誰?どこにいるの!?」 ルルーテは辺りを見渡すが、周囲には人の姿はなかった。 「ケロンちゃん…なの?ねぇ、そうなの!?そうだよね!?」 ルルーテは嬉しさでいっぱいになる。 不思議と疑う事を止め、アスピドケロンに話しかけ続ける。 「ねぇ、答えてよ!!もっとお話しようよ!」 さっきよりも大きな声が頭の中に響きわたる。 (誰がケロンちゃんだ!ワシをなんだと思うとる!) 「アスピドケロンだから、ケロンちゃん!かわいいでしょ?」 (かわいい?じゃかぁしいわ!!) ルルーテは頬を膨らませる。 「何よそれ!せっかくお話できたのに!!そんな言い方しなくたっていいじゃん!!」 それ以上何を言っても返事は来なかった。 しかし家までの帰り道のルルーテは、ドキドキと胸を高鳴らせていた。 アスピドケロンと会話をした。 その事がなによりも嬉しかった。 翌日、巫女の神殿でリナと顔を合わせるやいなや、ルルーテは昨日の話をする。 「リナ!聞いて聞いて!ケロンちゃんとお話したんだよ!!」 リナは不思議そうにしている。 「ケロンちゃんって…誰?」 「ケロンちゃんはケロンちゃん!アスピドケロンだよ!」 リナはルルーテの顔を見ずに茶化すように話す。 「え?アスピドケロンと話したの?」 「そうだよ!ケロンちゃんが頭の中に話しかけてくれたの!」 「おお……そうかそうか……そりゃすごいなー!」 「もう!ホントなんだよ!?まだ…仲良くはなってないけど…本当に喋ったんだよ!?」 「あははは!ルルーテ、あんたは本当に面白いね!」 全く信じる様子のないリナは、そのまま話を切り上げてどこかに歩いていってしまった。 ルルーテは絶対に信じさせたい、見返してやろうという思いで燃え上がる。 その日の午後も祭壇へ向かいアスピドケロンへ話しかけ続ける。 「ケロンちゃんは何が好きなの?なんか欲しいものあったら持ってきてあげるから、わたしとお話しようよー!あ、お母さんが焼いたクッキーはすごく美味しいんだよ?食べたい?食べたいでしょ!?」 頭の中にあの声が響いてくる。 (あー!お前はなんでそんなにうるさいのじゃ!!そんなもんいらんわい!) 「あ、喋った!わたしはお前じゃないよ!ルルーテだよ!わたし、ケロンちゃんとお友達になりたいの!」 (友達?わざわざワシじゃなくても、そこらへんにいる人間に頼めば良いじゃろう…。人間の友達も作れないような奴と、どうして友達にならなきゃならんのじゃ) 「わたしはリナちゃんっていうお友達がいるよ!ケロンちゃんはお友達いるの?」 アスピドケロンは少し不機嫌そうに応える。 (友達などいらん…。今までワシと話した人間などおらんしな。こんなにうるさい奴はお前が初めてじゃ) 「お前じゃなくて、わたしはルルーテだってば!!お友達がいないなら、わたしがケロンちゃんのお友達になってあげるよ!」 (はぁ…、物好きにも程があるな…。じゃあ一つだけ頼みを聞いてくれぬか?) 「なぁに?なんでもするよ!何が欲しいの!?」 (ワシの頭の上でバカみたいにでかい声を出さないでくれ。うるさくて敵わん) ルルーテの顔がパァっと晴れ渡る。 「うん!!!わかったよ!!!!ケロンちゃん!!!」 (それをやめろと言っているのじゃ!!) それからも毎日祭壇に足を運び、アスピドケロンと除々に信頼関係を結んでいくルルーテ。 誰に話しても信じて貰えなかったが、今までずっと話しかけていたアスピドケロンと会話が出来るという事に、ルルーテは幸せを感じていた。 「ねぇ、ケロンちゃん!今日は前に話してたリナちゃんを連れてきたよ!」 リナは苦笑いをしながら楽しそうなルルーテを見る。 「あのさ…ルルーテを疑ってる訳じゃないんだけど…なんか…ちょっと…怖い…かも…」 ルルーテは明るくリナの手を握る。 「大丈夫だよ!ケロンちゃんは全然怖くないから!ちょっと口は悪いかもしれないけど、すごく良い子なの!」 握った手の感触に違和感を覚えたルルーテは、手元を確認する。 リナの右手には包帯が巻かれていた。 「あれ?リナ、その手どうしたの?」 一瞬、リナの顔が曇ったように見えたが、すぐに笑顔に戻り、頭を掻きながら照れくさそうに見せる。 「いやぁ、昨日ちょっと転んじゃってさぁ…アタシってドジっ子属性あったんだね~あっはっは~」 ルルーテは包帯の巻かれた手を握りながら、心配そうにもう片方の手で優しく擦る。 「もう、気をつけなきゃダメだよ?リナは巫女になれそうなんだから!」 序列2位となったリナは、その後も水の魔素を増やし続け、1位の少女を抜くのは時間の問題だと言われていた。 ルルーテはリナを誇りに思い、自分の事のように喜んでいる。 「あはは…そんなに心配しなくても大丈夫だって…。あぁ、でもママがちょっと心配しちゃってたから、今日はそろそろ帰るわ!」 「えっ?もう帰っちゃうの?まだ、ケロンちゃんとお話出来てないよ?」 「ごめんごめん、今度また来るからさ!じゃあね!あ、アスピドケロン…じゃなくて…ケロンちゃん??もバイバイー!」 リナは手を振りながら、祭壇から去っていく。 残されたルルーテはポカンとしながら手を振り、リナの影が見えなくなると海の方に向き直る。 「もう!ケロンちゃん!なんでリナちゃんとはお話してくれないの?」 (大事な友達なのだろう?そんな子をいきなり連れてきて…怖がらせるなんて、どういうつもりじゃ……) 「ケロンちゃんがお話してくれたら、リナちゃんだって信じてくれると思ったのに!」 (ワシは人間などと話をする気はない。大体、信じさせた所でどうするのじゃ?) 「わたしと話してるじゃん!ケロンちゃんのお友達が増えればいいなって…わたしの友達を紹介したいって思って何がダメなの!?」 (はぁ…これ以上うるさい奴が増えたら困るわい。お前さんだけでもこんなに疲れるというのに…) 「もう!!ケロンちゃん!お前さんじゃなくて、ルルーテだって何度言ったら分かるの!!!」 また「うるさい」と怒鳴られるかと思い、とっさに口を抑えたルルーテだったが、頭の中に響く声はボソボソと小さいものだった。 (…今の見習い巫女…何を……隠して……) ルルーテは突然の話に驚く。 「ん?なーに?今なんて言ったの??」 (いや……なんでもないわい。日が落ちてしもうたぞ?明日も早いのだろう、さっさと家に帰るのじゃ) ルルーテは薄く月の出た空を見る。 「あれ…ホントだ。明日ちゃんと教えてね!」 ――翌日 いつものように巫女の神殿に向かうルルーテ。 リナにしっかり説明すれば、次こそは3人で話せるのではないかと期待に胸を踊らせていた。 神殿の近くまで辿り着くと、人だかりが出来ている。 何か……胸騒ぎがした。 人をかき分けて、その中心に辿り着くと…… 血溜まりの中にリナがいた。 腹部から大量の血が出ていいて、遠目からでも分かるくらい青白い顔は、とても生きているようには見えない。 横にはリナの母親が涙を流している。 「リナ……どうしたの……?」 ピクリとも動かないリナに近づこうとした時、母親が鬼の形相でこちらを見る。 「お前が……お前がやったのか!!!!?」 あまりの剣幕に、身体が凍りつく。 後ずさりしたルルーテは首を横に振りながら必死に訴えた。 「わたしじゃない……わたしじゃない!!!」 母親は身体を起こして、ルルーテに向かってくる。 「じゃあ誰が…リナをこんな目に合わせたの…?誰が!!」 ルルーテは恐怖で足がうまく動かせずに、尻もちをつく。 それでも向かってくる母親を、近くにいた神官が止める。 「落ち着いて下さい…。この様子では、この子は何も知らないでしょう。今はリナちゃんの側にいてあげてください」 見習い巫女を束ねている神官は、ルルーテから見ると厳しく恐ろしい存在だったが、この時ばかりはとても優しい人間に見えた。 母親は神官にもたれ掛かり、泣き崩れてその場に座り込む。 神官は母親の肩を抑えながらルルーテの方を向く。 「今日の修行は中止にします。家に帰りなさい」 ルルーテはその場に座りこみ、動かないリナを見ていた。 神官は更に続ける。 「聞こえないのですか!?早く帰りなさい!」 ビクっとしたルルーテは、なんとか立ち上がってその場を後にする。 「リナが……リナが……」 気がつくと祭壇で泣いていた。 どれだけ流しても、大粒の涙は止まらない。 昨日、ここで笑顔を見せたリナと、もう話す事もできない。 リナが巫女になる事もない。 「リナァああああああ…リナァああああああ…」 頭の中に、声が響く。 (なんじゃ…今日は一段と騒がしいのぉ…) 「ケロンちゃん…だって…だって…リナがぁあああ…」 地面に膝を付き、祭壇の柵にもたれ掛かったまま、泣き続けるルルーテ。 止まる事のない涙を止めたのは、アスピドケロンの言葉だった。 (人間はいつか死ぬ……遅かれ早かれな。お前さんの友達はそれが少し早かっただけじゃ。…確かにひどい最後となってしまったかもしれぬが、きっと天からお前さんを見ているじゃろう) ルルーテはその言葉に違和感を覚える。 「ケロンちゃん……なんでリナが死んじゃったって知ってるの?」 (っ……!?) 「ケロンちゃん……なんでひどい最後だったって知ってるの?」 (ワシは何も……) 「ケロンちゃん!知ってるなら教えて!リナに何があったの!?」 アスピドケロンは、歯切れ悪く応える。 (お前さんの…様子を見れば…なんじゃ…想像もつくじゃろう……) ルルーテは立ち上がる。 「嘘!!昨日だってなんか変な事言ってた!!知ってること全部教えてよ!お願いだから!!」 沈黙が流れ、やがてアスピドケロンの声が響く。 いつもと比べて、とても重たい声。 (お前さんの友達は、見習い巫女狩りにあったのじゃ…) 「っ……!?」 “見習い巫女狩り” あの噂が現実で起こった事に、ルルーテは動揺を隠せない。 (これが初めてではない。お前さんに助けを求めなかったのは、お前さんを巻き込みたくなかったのであろうな) ルルーテの心臓がドクンと音を立てる。 (あの子は怪我をしていたじゃろう。転んだと言っておったが…以前にも襲われていたようじゃ) 「誰……?誰がそんな事したの!?」 (犯人……。それを知ってどうするのじゃ?) 「わからない!わからないけど、このままにしておけないよ!!」 (………。) アスピドケロンは少し間を置いてから、真実を口にした。 ――翌日 ルルーテはいつもより早く巫女の神殿へと向かう。 リナの事を殺した人間を待ち伏せする為に。 神殿の門を潜り、その人物が現れるのを待った。 その時が訪れる。 「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」 ルルーテは震える手を握りしめる。 「ルルーテ……。こんな朝からなんの用?」 序列1位の少女は、ルルーテの顔を見て不機嫌そうな顔をする。 「リナの事だけど…」 ルルーテが口ずさむと、少女は、口元に笑みをこぼす。 「あぁ、あの子…。良かったわね。ライバルが減って…。あんたも7位から6位に昇格したのよ?もっと喜んだら?まぁ、それでも最下位には変わらないのだけど……」 ルルーテは奥歯を噛みしめる。 こんなに大きな怒りを感じたのは生まれて初めてだった。 「リナを殺しといて…何を言っているの!!?」 彼女はフッと笑って言葉を返す。 「あら?どこにそんな証拠があるの?私が1位なのがそんなに妬ましいの?濡れ衣を着せるにも程があるわね」 ルルーテの目に涙が浮かぶが、溢れるのを必死で我慢する。 「あなたが……リナを階段から突き落としたのも…リナを刺したのも…わたしが知っていても、同じ事が言えるの!?」 「っ――!?」 彼女は明らかに動揺していた。 ルルーテは泣きながらも彼女を睨みつける。 しかし、彼女は笑顔に戻る。 「そう……。見てたの…。それならリナが死ぬ前に私を売っておくべきだったわね」 「何言ってるの!?なんでリナを殺したの!?」 「あの子なんか急に成長してきて…邪魔だったのよね。あの子が1位になる前に殺しちゃえば、1位の私には疑いがかかりにくいでしょ?」 「なにそれ……。抜かれないように頑張ればいいだけじゃん!なんでリナが殺されなきゃいけないの!?」 「はぁ……。まぁ、いいわ。」 そう言うと、鞄から血がついたナイフを取り出した。 少女は厳しい表情になり、ルルーテに向かってくる。 「随分仲も良さそうだったし……同じ場所に連れていってあげるわ!!」 ルルーテは構えるが、自分に向かってくる鋭利なナイフが目の前にきても、自分にこの状況をどうにかできるとは思えなかった。 とっさにギュっと目を閉じ、想像すら出来ないこれから起きる何かに備えると、瞳に溜まっていた涙が零れた。 身体にドンッという衝撃が走る。 足がグラつき、立っている事さえ出来ない。 尻もちをつくと、物凄い音が聞こえる。 何か変だと気が付くまでに時間がかかった。 どこにも痛みは感じず、地面は微かに揺れている。 恐る恐る目を開けると、目の前は石の壁で覆われていた。 少女がいた場所に、身体の何倍もある石の柱が倒れたようだ。 「なにこれ……??」 目の前の光景を理解する事も出来ずに、その場で気を失った。 ルルーテ……ルルーテ―― 目を開けると、どこか寝かされているようだった。 見慣れた天井は、巫女の神殿。 (全部夢だったの?) 周りを見渡すと、神官がルルーテを心配そうに見つめていた。 「神官様……」 ルルーテは起き上がり、頭に手を当てる。 神官は静かに言葉を吐く。 「ルルーテ。平気なようですね。よかった。立て続けに見習い巫女が死ぬと、私も困るのですよ。さぁ、修行の準備をしなさい」 ルルーテには何が起こっているのかわからなかった。 「神官様…えっと…さっき…」 「聞こえなかったのですか?さっさと修行の準備をしなさい!」 怒っているようにも見える神官に、それ以上話を続けるのは難しいと察し、言われた通り準備をして修行場へと向かった。 修行の間には少女がルルーテを含めて5人。 その中に序列1位の少女はいない。 「ねぇ、リナちゃんと、あの1位の子は……」 ルルーテは不安を抱え、他の少女に話しかけるが誰も返事をせずに無視されてしまう。 夢であって欲しいと願い続けた。 その日の修行が終わり、祭壇へ行こうとすると神官に呼び止められる。 横には鎧を着た男が5人並んでいる。 「今日から、お前たち見習い巫女に、私の従者をつける事にしました。この者達と家と神殿の往復をするように」 ルルーテは従者に連れられて神殿を出た。 ふと目に入ったのは、門の横の壊れた柱だった。 夢じゃなかった……。 リナも序列1位だった少女も、もうこの世にはいない。 見習い巫女にこれ以上危険が及ばないように、見習い巫女全員に従者がつけられた事をルルーテは理解する。 アスピドケロンと話がしたかった。 従者に思い切って切り出してみたが、寄り道は許されないと、真っ直ぐに家に帰る事を余儀なくされた。 それからは、退屈な日々が始まった。 あの日から、アスピドケロンと話ができていない。 従者は毎日送り迎えし、ルルーテに自由はなかった。 両親もルルーテには神殿に行く以外の外出を禁止され、毎日ただ修行を続ける日々が続く。 仕方がない事だと自分に言い聞かせたが、頭の片隅ではアスピドケロンの事を考えていた。 ――数日後 見習い巫女が一人いなくなった。 従者と共に神殿から帰っていた見習い巫女が、街の古い桟橋を歩いていたら桟橋が倒壊したらしい。 見習い巫女狩りなのか、それともただの事故なのか確かめる術はなかった。 ――更に数日後 見習い巫女がまた一人いなくなった。 今度は街の中に流れる川が大雨で増水して、流されてしまったと聞いた。 街の中に見習い巫女狩りの噂が立つ。 ルルーテを含む残り3人の見習い巫女が疑われたが、人間に出来る殺し方ではなかった。 街の人達は事故が重なっただけだと判断している中、ルルーテは何か引っかかる。 (人間にできない殺し方……ケロンちゃんなら……それができるの?) しかし、本人に確かめる事も出来なければ、アスピドケロンがそんな事をする動機も思い浮かばず、ルルーテはモヤモヤとした状態で過ごしていた。 ――更に数日後 ルルーテは真面目に修行を行っていたが、相変わらず序列は最下位だった。 ある日、巫女の神殿に向かっていると、神殿の方から大きな音が聞こえた。 神官の従者は警戒し、慎重に神殿へと歩を進める。 神殿に着くと、神殿の門が倒れており、下には人が見えた。 急いで助けようと、回復魔法をかけに行こうとするが、従者に止められる。 見習い巫女はルルーテ一人となった。 門の下敷きになった序列1位と2位の見習い巫女は、助からずに死亡した。 ルルーテは神官から尋問を受けるが、どうやってもルルーテが見習い巫女狩りの犯人だとは思える状況ではなかった。 従者からルルーテは問題を起こしていないと報告もあり、神官は不満そうな顔をしていたが不問とされた。 ただ一人の見習い巫女となったルルーテは、当代の巫女がいなくなった時、巫女となる事が決定した。 ルルーテの心境は複雑だった。 万年最下位だった自分が、何故巫女になるのか。 今までに起こった見習い巫女狩りは、リナの事件以外は犯人も捕まっていない。 それどころか、人が起こす事が不可能。 そんな事が出来るのは、アスピドケロン以外考えられなかった。 ルルーテは意を決する。 両親が寝静まった後、窓から家を抜け出し、祭壇へ向かった。 「ケロンちゃん…久し振り…。お話があるの」 月明かりの下、漆黒の海が広がる。 (こんな時間になんの用じゃ?) ルルーテは真っ直ぐと、海を見つめながら話す。 「リナちゃん以外の見習い巫女狩りをしたのは…あなたなんでしょう?ケロンちゃん」 (……だとしたら、どうするのじゃ?) 「なんでそんな事をしたのか聞きたいの。ケロンちゃんはそんな事をする子じゃないもん!」 頭の中に響いてくる声に彼女は緊張する。 (ルルーテを…守る為だ…) 「どういう事!?」 (最初は、お前さんの友達を殺した見習い巫女。お前さんはもう少しで殺されていた) 「それは…そうかもしれないけど!なにも殺す事はないでしょ!」 感情的にならないようにしようと決めていたルルーテだったが、抑えきる事はできなかった。 (お前さんの友達は一度助かったが、次の日に殺された。お前さんを一度助けた所で、何度でも殺そうとしてきただろう) 「っ……!それは……」 反論できずに言葉を詰まらす。 (その後は連鎖じゃな…。他の見習い巫女は皆、お前さんの事を怖がった。お前さんに殺されるのではないかと、ビクビクしていた。だから、お前さんを殺そうと企んでいたのじゃ…) 「そんな……!嘘だよね!?」 (残念ながら本当の事じゃ) ルルーテの目に涙が浮かぶ。 「もしそうでも、わたしが死ねば良かったじゃん!みんなが死ぬ事なんてなかったでしょ!?」 (………すまない) 沈黙が続いた。 波の音だけが聞こえる。 ルルーテは大粒の涙を流し続ける。 今までに見習い巫女に起こっていた事は、アスピドケロンがルルーテを想うが故の犯行だった。 その事実を受け止めたルルーテは、それ以上アスピドケロンを責める事ができない。 (いつかワシに聞いたな。見習い巫女の中で、誰に巫女になって欲しいかと) 色んな事がありすぎて、随分前の話の気がした。 「言ったかもしれない…」 (ワシは、ルルーテ。お前さんは、先代の巫女の誰よりも巫女に相応しいと思うのだ) 「なんで!?わたしはずっと最下位で…わたしよりも、ずっとずっと巫女に相応しい人が…」 (ワシと意志疎通が出来る人間など、長い歴史の中で、お前さん以外おらんのじゃよ) 空が明るくなりかけ、朝日が登ろうとしていた。 (すまないルルーテ。お前さんを悲しませるつもりはなかったんじゃが) ルルーテは首を横に振る。 「もういいの。わたしみんなの分も巫女頑張るから…」 顔を上げたルルーテは笑顔に戻っていた。 「リナにいつも言われてたの。ルルーテにはそのまま明るく生きて欲しいって!」 涙を拭って、ルルーテは伸びをする。 「まだまだ、見習い巫女だけど、素敵な巫女になれるように修行頑張るから!ケロンちゃんも応援してね!」 (………。) 「ケロンちゃん?」 アスピドケロンの様子がおかしい事に気がつくルルーテ。 何か、不穏な空気を感じる。 直後、地面が揺れ、海が荒れる。 「どうしたのケロンちゃん!!?」 返事は返ってこない。 立っている事も出来ずに、その場で頭を抑える。 『グォオオオオオオオオオ』 耳を裂くような轟音。 「……ケロンちゃんの声なの?どうしたの!?ケロンちゃん!!」 街は巨大な地震が続く。 一部の建物は崩れ、道が割れ、川からは水が溢れだした。 一向に収まる事のない天災の中、一番近くの頑丈な建物である巫女の神殿へと向かった。 神殿に入り、揺れが収まるのをジッと待つ。 数時間後、段々と揺れが小さくなり、やがて収まった。 耳が痛くなる程の静けさの中、外に出ようとすると、いつもルルーテを迎えにきていた従者が声をかけた。 「無事だったか。神官様からお前を連れて来いと命があった」 神官の元まで連れていかれ、話をされる。 「ルルーテ。早かったな。当代の巫女がアスピドケロンの暴走によりいなくなった。今日から、お前が巫女となる。早速だが、巫女の任命式を執り行う。すぐに準備なさい」 ルルーテは神官に詰め寄った。 「神官様!アスピドケロンの暴走ってなに!?」 「それは後に教示する。今は早く準備をしなさい」 神官は冷たく言うと、その場を立ち去った。 ――では今日より、ルルーテをアスピドケロンの巫女とする。 巫女の就任式が終わり、巫女の衣装を身にまとったルルーテは、神殿の最上部にある“巫女の間”に連れてこられた。 巫女の間は外から鍵が掛けられ、勝手に出る事は許されない。 これからの事を考えて深呼吸をする。 巫女の間の中心にある羅針盤に、水の魔素を流し込むとアスピドケロンを自由に動かす事が出来る。 進路は、巫女に仕える神官から指示があり、方向の調整をする事が巫女の勤め。 ふと目に入ったのは、眼下にある祭壇。 アスピドケロンの頭も少しだけ見える。 もしかしたら、ここなら声が届くのではないかと考え、ルルーテは声を出す。 「ケロンちゃん…聞こえるかな?」 祭壇で聞くよりも小さかったが、確かに頭の中にアスピドケロンの声が響く。 (ルルーテ……ワシはどうしたのだ?) 「え?」 あの後の事を話すが、アスピドケロンは暴走の事を何も覚えていなかった。 本当に暴走していたアスピドケロンをルルーテは心配する。 「身体は大丈夫なの?どこかおかしくない?」 (あちこち痛くて、食欲もないが…慣れたもんじゃの!) 「慣れた?前にも同じような事があったの?」 (そうじゃな…数年から数十年に一度、こんな事があるのじゃ) アスピドケロンは今までに何度も暴走している。 ルルーテは暴走の原因を考えるが、想像も出来なかった。 それからルルーテは巫女として、10年間アスピドケロンを操舵し続けた。 巫女の間での生活は、神官以外の人間との接触は出来ずに、今までの巫女はきっと孤独であっただろう。 しかし、ルルーテにはアスピドケロンがいた。 一日中アスピドケロンと会話する生活は、見習い巫女の時よりもずっと楽しい。 両親に会えない事には胸が傷んだが、それでもルルーテは明るく過ごしていた。 ――その日は唐突にやってきた 普段と同じように目覚め、その日の航海予定を神官から聞き終わったルルーテは、朝食を取っていた。 あの日と同じ、何か、不穏な空気を感じ取る。 カタカタと食器がぶつかる音がしたかと思うと、部屋全体が大きく揺れた。 外を見ると海が荒れ、白く濁った波が渦を巻いているように見える。 「ケロンちゃん!!ダメ!!意識をしっかり持って!!」 その祈りも虚しく、あの日が繰り返される。 『グォオオオオオオオオオ』 ルルーテは羅針盤に水の魔素を送り込むが、まったく効果が得られずに、ただ見ている事しかできない。 「あの時は…どうやってこの暴走を止めたの?巫女は確か…いなくなったって言ってた…」 突然、戸の鍵が開けられ、神官が入ってきた。 「巫女!アスピドケロンが暴走している!こちらに来なさい!」 神官に連れられて地面が揺れる中、外へと出た。 幼い頃、アスピドケロンと話をしていた、あの祭壇まで来ると神官が魔法を詠唱する。 祭壇が光り、突如海に向かって光の道が伸びた。 神官と共に、その道を歩いていく。 海に迫り出した光の道の終点は円形になっており、周囲には荒れた海が広がる。 光の円の中心に辿り着くと、神官が声を出す。 「アスピドケロンよ!只今より巫女喰み(みこはみ)の儀を行う!どうか鎮まりたまえ!」 “巫女喰みの儀” 聞いたことのない単語だった。 「神官様…わたしは何をすれば良いの?」 「アスピドケロンが暴走した時、その身を生け贄として捧げるのが、代々巫女の勤めなのだ」 神官はニヤリと笑い、続けた。 「お前達巫女の最後の役目だ。アスピドケロンにその身体を捧げよ!」 神官は魔法を詠唱すると、ルルーテが水の球体に包まれる。 「なにこれ!?出して!出してよ!」 ルルーテの声は神官に届かずに、水の球体は浮き上がる。 「アスピドケロンよ!鎮まりたまえ!」 水の球体は叩いてもビクともせずに、ルルーテを包んだまま荒れる海面に落とされる。 ルルーテは海中で初めてアスピドケロンの巨大な顔を見る。 しかし、ルルーテは不思議と怖いとは思わなかった。 (ケロンちゃん…巫女ってこんな最後なの?今までの巫女達は、みんなケロンちゃんの暴走を止める為に死んでいったの?) ルルーテはこれまでの事を思い返す。 (確かケロンちゃんが前に暴走した直後に、食欲がないって言ってた…。ケロンちゃんは巫女を食べて生きてるの?なんで巫女じゃないとだめなんだろう…。もしかしてケロンちゃんが食べてるのは、人間じゃなくて…水の魔素?) そうだとしたら…。 (ケロンちゃんは、ただお腹が空いてるだけなんだよね?ずっとわたし達巫女に操舵されてるから、お腹が空いても食べ物を探す事も許されなかったのに……そんなの、ひどすぎるよ…) アスピドケロンが口を開けたのを見て、瞳を閉じるルルーテ。 (でも、ケロンちゃんに食べられるなら、わたし、それでも良いのかな…。それでお父さんやお母さん…街の人達が救われるなら…それでも…) 水の球体が消え、自由に動けるようになったルルーテだったが、すぐ目の前までアスピドケロンの口が迫っていた。 (お父さん…お母さん…リナちゃん…ケロンちゃん…ごめんね…) ルルーテがすべてを諦めかけたその時―― 大きな錨が目の前に現れる。 (船の…錨…?) 遠くから声が聞こえた気がした。 「早く掴まってぇええ!」 言われた通り無我夢中で錨を掴むと、すごい速さで引っ張られる。 離してしまいそうになるが、必死でしがみついた。 船の底が見えると、網ですくわれて船の上に放り出される。 「ぷはぁっ…ハァ…ハァ…」 グラグラと揺れる甲板にルルーテは横たわる。 「生きてるー!?生きてたら寝てないで手伝ってー!せっかく助けたんだから!」 船の持ち主である少女は、その大きな狼の耳をピョコピョコさせながら、ルルーテに帆を閉じるのを手伝わせようとしている。 「なんで私の船が横を通ったタイミングでアスピドケロンに暴れられなきゃならないのぉおお!!」 不満そうに文句を言っている狼耳の少女は、太い縄で帆を縛る。 ルルーテはその少女に向かい叫んだ。 「あの!ごめんなさい!助けてくれたんだろうけど…わたしが食べられなきゃ暴走は止まらないの!」 狼耳の少女は、ルルーテを見下ろすと、嫌そうな顔をする。 「ダメダメ!きみは私が助けたんだから、勝手に死んじゃダメ~~!!」 「でも、そうしないとアスピドケロンの暴走を止められないの!」 必死に言うルルーテの元に飛び降りてきた狼耳の少女は、ルルーテの目の前に顔を近付ける。 「お腹空いてるなら他のものあげればいいでしょ!?何食べるのあいつ!?」 荒れる海のグラグラと揺れる船の上で、必死に立ちながらルルーテは答える。 「多分…水の魔素を含んだモノなんだけど…」 狼耳の少女はニタっと笑う。 「じゃあアレでどう!?さっき引き上げたお宝!!水の魔素の塊みたいなものでしょ!?これを、アスピドケロンに食べさせれば、暴れるのやめるんだよね!?」 狼耳の少女が人差し指で指す方向に目をやると、巨大な真珠が船にある生け簀のような場所からはみ出していた。 ルルーテはキョトンとしながら答える。 「多分…それが本当なら大丈夫だと思うけど…」 「わかった!!た・だ・し!!これは、すごーーくレアなお宝なの!だから、きみが今日から私の下で働く事が条件だよ!」 そう言うと狼耳の少女は、木の板を巨大な真珠の下に設置した。 真珠に挟まった木の板は、生簀の淵を支点にして、斜め上に伸びる。 そして、狼耳の少女は巨大な斧で木の板の先端を思いっきり叩いた。 「いっけぇえええええ!!」 真珠はテコの原理で生簀から飛び出し、アスピドケロンに向かって飛んでいく。 アスピドケロンの頭に当たるか当たらないかのギリギリで、アスピドケロンが口を開ける。 瞬間、大波が船を襲い、船は波に飲み込まれた。 ……… …… … バシャっと顔にバケツの水を掛けられてルルーテは目を覚ます。 青い空とドクロマークのついた船の帆、狼耳が映り込んだ。 「おっ!生きてるね!怪我はない?」 ルルーテは身体を起こし辺りを見渡す。 海は穏やかになっており、少し離れた場所にアスピドケロンが見えた。 「ここは……?」 狼耳の少女は元気に答える。 「ここは私の船の上だよ。私は船長レイナだよ!お姉ちゃんと呼びなさい!」 「レイナ…お姉ちゃん……?」 目をパチクリさせながら、ルルーテは何をしていたのか思い出す。 「……そうだ……!!アスピドケロンは!?どうなったの!?」 レイナは頭の上にクエスチョンマークを出しながら首を傾ける。 「ん?あぁ、きみが言った通り、お宝を食べたら大人しくなったよ!作戦大成功だね!」 ルルーテは起き上がり、レイナに近付く。 「街を、アスピドケロンを助けてくれたのね!ありがとう!!」 「変な玉に入っていきなり上から海に落ちてくるんだもん。びっくりしたよ!私が助けなかったら、きみは今頃あの亀のお腹の中だったね!セーフセーフ!」 両手を横に広げて笑うレイナ。 ルルーテはアスピドケロンの事を考える。 「そうだ…ケロンちゃんとお話を…。あの、一つお願いがあるんだけど…」 「ん~?お願い?聞くだけ聞いてもいいよ!聞くだけね!」 「ケロンちゃんの…アスピドケロンの頭の近くに船を近づけて欲しいの!お願い!」 「えぇー大丈夫!?もうあいつ暴れたりしないの!?」 ルルーテはアスピドケロンを眺める。 「大丈夫だと思う。もう暴走は止まってるみたいだし」 「じゃあ条件!まず名前を教える事。それと、私の海賊船で働くこと!きみのせいで大事なお宝がなくなっちゃったんだ。少なくともその分はしっかり働いて貰うよ!」 ルルーテは満面の笑みを浮かべる。 「わたし、ルルーテ!海賊でもなんでもするから、あなたの言う通りにするから、お願い!」 「“あなた”じゃなくて、レイナお姉ちゃん!」 頬を膨らますレイナに、ルルーテは再度笑ってみせる。 「わかった!おねぇちゃんね!」 レイナは満足気な表情をしてから、ルルーテに手を差し伸べる。 「よし!今日からルルーテは、私の海賊団の一員として、しっかり働いて貰うからね!初仕事は、アスピドケロンに向けて船を動かす事!」 「りょうかい!おねぇちゃん!!」 アスピドケロンの頭の前に海賊船が停泊する。 ルルーテはアスピドケロンに、暴走の原因や、自分がどのようにして今の状況になっているか説明した。 「ごめんねアスピドケロン。わたし、新しいお友達のレイナちゃんと約束して、海賊になることにしたの!だから巫女にはもうなれないし、街にもなかなか戻ってこれないと思う。でも、水の魔素を手に入れたら時々持ってくるよ!ケロンちゃん食べたいでしょ?あんまり会えなくなるけど、寂しがっちゃだめだからね!」 ルルーテは巫女喰みの儀の事はアスピドケロンに言わなかった。 きっと今まで巫女を食べていた事を知ったら、アスピドケロンは悲しむだろう。 アスピドケロンは涙を流しているように見えた。 (ルルーテ……すまない。随分と迷惑をかけたようじゃ…) 「気にしないで!わたし生きてるし!たまには会いに来るから!街の人達をよろしくね!」 船は出港し、アスピドケロンの声は聞こえなくなった。 それでもルルーテは笑顔のまま、明るく生きていく事を心に誓った。 +流転の語り部ギルバート 楽都アルモニア― 音楽の都と呼ばれる美しい街。 アルモニアでは様々な楽器から音楽が絶えず鳴り響き、人々は歌をこよなく愛する。 アルモニアの市街地から郊外へ足を伸ばすと、大きな森へとたどり着く。 そこには小鳥のさえずりがオーケストラの如く響き渡る大自然があった。 森はおよそ人の手が入っておらず幻想的な世界を醸し出す。 木々をかき分け、リュートを片手に鼻歌交じりの軽快なリズムで歩む男。 その男の後ろでは、少し荒い息遣いをしながらも、遅れまいと後をついて行く美しい女性の姿があった。 「あなた…本当によかったの?」 「ん?なんでだい?ここは空気も綺麗だし、水も美味しい。何よりも詩を歌い、曲を奏でるには最高の環境だよ。あっ!あれかい?力仕事かい?自信はないけど…キミとボクとの新しい生活の為さ!頑張るよっ!」 男はリュートを片手で携えながらも、ドンっ!と胸を叩き、にっこりと笑顔を見せる。 「ん、んもうっ!照れるじゃない…バカ。私が言いたいのは、ここにはあなたの好きな街娘もいないし、どんなにいい歌でも、聞いてくれる人はいないのよ?それでもいいの?って事!」 少し顔を赤らめながらも、女は決心したかのように言葉を放つ。 男は吟遊詩人であった。 街から街へと渡り歩き、各地を放浪して詩を歌う。 その中でも吟遊詩人の歌う愛の歌は、行く先々で女性達を魅了していた。 軟派師…ナンパリスト…世で見られている吟遊詩人のイメージである。 女の言葉は、そんな吟遊詩人たる男へ覚悟はあるのか?と問い確かめているようであった。 男は怪訝そうに、一拍おいて少し考えながら言った。 「キミが…キミがいるじゃないか?ボクの曲も歌もキミが全部聞いてくれる!」 「あなた…」 そこで二人の会話は終わった。 寄り添いながらも、二人は足早に森へと入って行き、森では小鳥達のさえずりが二人を祝福するかのように鳴り響いていた。 そして数年後―― 森に新たな命が生まれた。 「ほんぎゃぁっ!ふぇええーんっ!!」 静かな森の中では力強く、激しい泣き声が小屋から森中に響き渡る。 あの時の仲睦まじい二人は子供を授かり、小屋の中では赤ん坊の名前を名付ける親の姿があった。 「あなた、この子の名前を…」 「ああ!もう考えてあるさっ!アレク…アレクサンダーなんてどうだい!?ボクの故郷に伝わる英雄の名前をこの子につけようと思うんだ!」 「アレクサンダー…力強くていい名前ね。でも、この子は優しい子に育って欲しいの。わたしも考えたんだけど、ねぇ…ギルバートはどうかしら?」 「ギルバート…かぁ。うん!いいね!キミが考えたのなら最高の名前だよ!よーし、この子は今日からギルバートだ!」 「ふんむぅ……きゃっ!きゃっ!」 森では小鳥達のさえずりが新たな命を祝福するかのように鳴り響いていた。 更に数年後―― 時は経ち、ギルバートは優しい両親の元でのびのびと育つ。 母親譲りの端麗な顔立ち、父親譲りの美しい歌声、吟遊詩人に必要な資質をギルバートは兼ね備えていた。 今日、ギルバートは父と共に森の中へ来ている。 まだ幼いながらも、吟遊詩人としての類まれなる資質を我が子から感じとった父は、リュートの修行をつけようとやってきていた。 「ほら、このリュートはこうやって音をだすんだよ。面白いだろ?今から父さんが曲を奏でながら歌うから、ギルバートも後に続いて歌ってみるんだよ」 「うん!わかった!」 森中に響く音楽と歌声は、心地よくも素敵な空間を生み出す。 父の後に続いて歌っているギルバートは、何のために曲を奏で歌うのか分からなかったが、一度聞いた父親の詩が頭から離れなかった。 ギルバートは父親の美しい演奏、そして詩に憧れ、いつからか父親に追いつくことが目標となり必死に練習をした。 そんなある日、森でリュートの練習をしていたギルバートの元に父がやってきた。 「ギルバート、頑張っているようだね」 「とうさん!うん!ぼくねぇ…このきょくもひけるようになったんだよ!」 「おお!すごいじゃないか!ギルバートはやっぱり才能があるな。そうだ、今日は吟遊詩人の話をしようじゃないか。お前も父さんも吟遊詩人の一族だから、吟遊詩人とはどういうものなのかを知っておかないとね」 それからギルバートの父は懇々と、まだ幼いギルバートが理解しやすいように言葉を選びながら吟遊詩人の一族について語っていった。 吟遊詩人とは何なのか?何のために歌うのか? 父も、そのまた父親からこの詩を受け継いだ事、吟遊詩人の技術が一子相伝で他人には教えてはならない事、継承者の親の死から5年以内に次の継承者を作らねば、共鳴の力が失われ、詩に魔力が宿らなくなることをギルバートに教えていく。 だが、父の話は難しくて、幼いギルバートにはまだ理解ができなかった。 時折、あくびを噛みころしながらそわそわしだす我が子を見て、父は困ったように笑いながら、いつか母さんのようにしっかりしていて、綺麗な“運命の人”を見つけなさいと言う。 「ギルバート。お母さんはな、お父さんの運命の人だったんだよ」 父はそう話すと、思い返しながら自分の昔のことをギルバートに語った。 吟遊詩人として旅をしながら各地をまわっていた頃のこと。 お父さんはとっても人気があって、女の子からモテモテだったこと。 だけど、お母さんを初めて見て、全身にビビッと衝撃が走り、この人だ!って思ったこと。 それ以来、お母さんがお父さんにとって一番の特別であること。 半分は父の自慢話で、もう半分はお母さんの事を大好きな父の話であった。 父は再度、ギルバートもそんな“運命の人”を見つけなさいと言う。 とある日のこと― ギルバートは家族でアルモニアに来ていた。 普段住んでいる静かな森とは違い、音楽と沢山の人に溢れている街にギルバートは感動してきょろきょろと周りを見回したり、ちょこまかと動き回る。 その時、1人の男が慌てて駆け寄ってきた。 男は息を整える時間すら惜しいといった様相で、興奮交じりに話し始める。 「ハァ…ハァ…。なあ、あんたあの有名な吟遊詩人じゃないか!いつアルモニアに来たんだ?なあ、いつまでこの街にいるんだよ?そうだ!一曲弾いてくれよ!俺はあんたの歌が忘れられなくてよう…な!頼むッ!」 まくしたてるようにその男は大声で喋る。 男は息を切らしながらも、一心に自分の伝えたいことを言い放った。 どうやら男の目当ては父だったようだ。 アルモニアでは有名な吟遊詩人の一族である父に男は演奏を懇願する。 その声を聞きつけた周りの人々が集まっていき、なんだなんだとギルバート達を囲むように人だかりが出来ていった。 父は少し困った顔をして男に話す。 「悪いけど、今日はオフ!…吟遊詩人としてアルモニアに来たわけではないんだよ」 「な、なんでだようッ!頼むよ!一曲弾いてくれよ!歌を聞かせてくれよ!次はどこであんたに出会えるかもわからねぇんだ。俺はあんたが歌ってくれるまでここを動かないからな!」 男は腕を組み、口をへの字に曲げながらその場にドカっと座る。 父を見つめる視線は男の固い決意を表すかの如く絶対にあきらめないぞ!と言っているようであった。 父は更に困った表情を見せ、男をどうやって説得しようかと思案している様子だった。 「ねえ、おとうさん。このひとかわいそうだよ。ぼくも、おとうさんのうたがききたいよ。いいでしょ?うたってあげてよ。」 ギルバートは父の袖を引っ張る。 父は、まいったなあ…という顔をしながらチラッと母の顔を覗き込む。 母は苦笑していたがニッコリと片目で父にウィンクを返す。 「息子にまでこうやって頼まれたらしょうがない。今日は家族で来ているんだ。一曲だけだからね?」 「おお!ありがてえ!こっちはあんたの息子か!こりゃお利口そうだ!おじさんの目に狂いはねえっ。坊主!お前は将来、絶対に大物になるぜ!」 人だかりは更に増えていた。 どうなることかと見守っていた人々と、新たに集まってきた野次馬たち。 父が歌うことに決まると一帯はお祭りの様な状況となっていた。 父はリュートに手をかける。 やさしい音色が鳴りはじめ澄み渡る声がアルモニアの街に響く。 ギルバートにとっては聞きなれた父の歌であったが、その歌に聞き入る人々はとても幸せそうな表情をしていた。 曲が終わると、あたりは一瞬の静寂に包まれた。 だれかが手を叩くと同時に巻き起こる拍手と喝采と賞賛の嵐が父に降り注ぐ。 その光景を目にしたギルバートは胸の奥から湧き上がる高揚感を覚え、幼いながらも吟遊詩人が歌う意味を知ったような気がした。 幸せそうな人々の顔をギルバートが見渡していると、1人の少女がその視線に気づく。 少女はギルバートと目が合うとにっこりと微笑みかけるが、ギルバートは慌てて父の後ろへと隠れてしまう。 森で育った為なのか、女の子の前だと恥ずかしがって隠れてしまう我が子を見て父は少し不安を感じていた。 ――それから10年 ギルバートは成長し、父から受け継いだリュートを持ってはアルモニアへ出かけて歌を歌っていた。 「今日こそは…」 あの日見た父の姿…父の弾くリュートはみんなを幸せにしていたんだ。 ボクも吟遊詩人なんだ…やればきっとできるはずだ! 自分に言い聞かせるように心の中でギルバートは繰り返した。 ギルバートがいつもの場所で演奏をはじめると、ぽつりぽつりとどこからか観衆が集まってくる。 しかし、いつも観衆の中に女の子の姿を見かけると演奏を止め、その場を足早に去っていく。 幼い頃、ボクに微笑みかけてくれた女の子…。 ボクが吟遊詩人になってから、アルモニアで演奏を始めた頃にボクのファンだと言ってくれた女の子…。 なぜかは分からないけれど、女の子と話すのはすごく苦手で、恥ずかしくて…うまく話せなくていつも逃げてしまう。 「今日も、ダメだったなあ…父さんになんて言おうか…」 落ち込みながらトボトボと家に帰ると、出迎えてくれた父はギルバートを慰めるように言った。 「誰にだって失敗はある。そして、その失敗から学んでいくんだ。女の子と話すことが恥ずかしいことなんてこれっぽっちもない!父さんなんて…母さんに何度もフラれたんだぞ?いつかきっと、ギルバートにも“運命の人”が現れる。今はその予行練習みたいなものさ」 と父はギルバートを勇気付けてくれる。 優しい父さんは…いつもボクを応援してくれている。 だけど、父さんは昔から“運命の人”がって言うんだ。 ボクは女の子が苦手だし、“運命の人”って何だろう?母さんみたいな人なのかな? ギルバートは頭の中で、父の言葉を自分に問いかけてみる。 翌日もギルバートはアルモニアの街へ出かけ、いつもの場所で演奏をする。 今日こそは…と心に誓うが、女の子の姿を見つけるといつものように逃げ出してしまう。 ギルバートは落ち込みながらトボトボと帰路に着く。 いつもの光景のはずだったが…今日は違った。 突然の強風から木々がざわめき、砂塵が舞う。 まだ日没には早い時間なのに、蝙蝠の大群がギルバートの家の方角へ飛んでいく。 一抹の不安を感じたギルバートは足早に家へと向かった。 そして、家までたどり着いたギルバートは緊張しながらドアノブに手をかける。 いつもはギルバートの帰りを今か今かと待ってくれている父の姿がない。 不安は半ば確信へと変わっていた…。 ―父が倒れた…! ギルバートは持っていたリュートをズルリと床に落とす。 焦燥の色を見せる母は、ギルバートの姿を見つけるやいなや医者を呼びに行くと告げて街へと急ぐ。 父さん…? 父さん…やだよ…。 ベッドに静かに横たわる父は痛々しい姿をしていた。 苦しそうな呼吸と時折激しく咳き込む声は、これが簡単な病ではないことを知らせる。 「ギルバート…ギルバートはいるか?」 「父さん!目が覚めたんだね!良かった……。何か飲む?母さんがスープを作っておいてくれたんだよ。」 「ありがとう…ギルバート。お前は本当に優しい子に育ってくれたね…。父さんは…もうあんまり…長くないのかもしれない…」 「ッ!やめてよ!何言ってるの、父さん!あ、母さんはね、父さんの為に街へお医者さんを呼びに行っているよ。ほら、すぐ良くなるよ!」 今度はボクが父さんを勇気付ける番だ。 あんなに明るくて優しい父さんが、病なんかに負けるわけがないじゃないか! 「聞いておくれ…ギルバート。今からお前に大事な話をする。よく覚えておくんだよ…」 「う、うん…」 今まで見たこともない父の真面目な顔にギルバートは圧倒されていた。 最後の力を振り絞るかのように、苦痛の表情を浮かべて父は話をする……。 ――後日 父さんは闘病生活を続けていたが、母さんの献身も空しく、程なくして亡くなった。 ボクも母さんも…涙が枯れ尽くすまで泣いた。 ――父の言葉 あの日、父さんがボクにしてくれた話が今のボクを動かす。 吟遊詩人の一族のルールの事。 一子相伝の詩の事、吟遊詩人の詩や音色には共鳴の力があり魔力が宿る事。 しかし、継承者の親の死から5年以内に次の継承者を作らねば、共鳴の力が失われ詩に魔力が宿らなくなる事。 父さんは自分の死期を悟って、吟遊詩人の一族の未来をボクに託したんだ。 「ギルバート…運命の人を必ず見つけるんだ…」 うん…わかっているよ。 きっと母さんみたいな人をみつけるからね。 幼い頃から聞かされていた話が、やっと、やっと…理解できた。 ――母との別れ 母さんに旅に出ることを話した。 「そう…決めたのね」 母さんは一言そういうと話をし始めた。 「ギルバート…お母さんはね、お父さんと一緒になってからずっと本当に幸せだったわ。あなたが生まれて…すぐにいつかこの日がくると思っていたの。だって…吟遊詩人だもんね」 母さんはそのまま続けてボクが生まれる前の話をしてくれた。 「吟遊詩人は各地を旅しているでしょう?父さんが私を好きだって言ってくれても、一緒になるなんて考えられなかったわ。でも、父さんはずっとそばに居てくれた。それに、運命の人なんて言われたけど、誰にでも言っているんじゃないの?って思ったりもしていたしね…」 父さんにとっての運命の人は母さん… その後は聞いているこっちのほうが照れるような話を母さんは続けた。 「行っておいで…あなたにはきっといい人がみつかるわ」 ――そして旅立ち タイムリミットは5年!アルモニアの街で父さんが曲を披露した時の皆の幸せそうな顔。 あの光景を守るためには、ボクの運命の人を見つけなければならない。 ギルバートは沢山の人がいる場所を目指してアルモニアからイエルへと足を運ぶ。 初めて見るアルモニア以外の街。 楽器や音楽の音ではなく、商業都市ならではの喧騒にギルバートは驚きを隠せなかった。 しかし、アルモニアとは違う賑わいをみせるイエルのそんな音を心地よく感じていた。 いま見ている風景が詩となり、頭に流れるメロディを思い描きながら街を歩いていると、ギルバートは美しい街娘を見つける。 足を止めて凝視していると、街娘はギルバートに気づいて微笑みかける。 ――緊張で口の中が乾いて行くのを感じる。 それでもギルバートは自分に微笑みかける街娘へと歩んでゆく。 ――今すぐ逃げ出したい気持ちに駆られる。 それでもギルバートは父の事や吟遊詩人の歌を聞いて幸せそうにする街の人々の顔を思い出しその場に踏みとどまる。 街娘の前までつくと乾いた口を開いて話しかける。 「ボクと一緒に来てほしい!」 突然のことに驚いた彼女は困ったような笑顔に変わり、ギルバートはフラれてしまう。 「ダメ、なのか……でも、初めて女の子と会話できた!」 ギルバートは内心で一人喜ぶ。 次に目に入った露店の看板娘にも声をかけるが、店主に睨まれてしまう。 数々の失敗を乗り越えながら徐々にうまく会話のコツを掴んでいく。 「ボクはやればできるじゃないか!今まで何を恐れていたんだろうか。もう、話しかけるのは怖くなくなってきたかな。ボクには時間がないんだ、急がなきゃ」 次に話しかけた女の子からは好感触を得ることができたが、お茶に誘ったところを断られてしまった。 しかし、ギルバートは落ち込む事もめげる事もなかった。 「中々かな?彼女の反応は今までになかったものだね……これは、父さんに少し近づけてきたのかもしれないな」 また、目に留まった女の子をナンパし始める。 今度は名前を聞き出すところまで成功する。 ギルバートは思い切って告白してみるが、いきなりはちょっとゴメンなさいとフラれてしまう。 しかし、ギルバートは自分に確かな手応えを感じていた。 「今回はもっといい感じだったね。そうか、もっと自然に行けばいいんだ!」 グッと拳を握り、小さくガッツポーズをして街で次々にナンパしていく。 ギルバートはイエルの街で着実にナンパの技術を磨き上げていった。 しかし、運命の人は見つからない。 ギルバートはイエルを後にし、獣境の村ヴィレスへと向かう。 獣人であるガルム族のみが住むその村を見たギルバートは感嘆する。 イエルの街にも少なからずいたガルム族が沢山いることに驚いていた。 村に漂うワイルドな雰囲気にギルバートはイエルとは違う感動を覚える。 何より、ワイルドでたくましく美しいガルムの女性達がいた。 ギルバートはイエルで学んだコツを使ってナンパを始めるが、全く相手にされない。 「なるほど…ここではもっと野性的になるのが重要なのかもしれないね」 ギルバートはその村その街に合ったナンパのスタイルがあることを覚える。 いつの間にか沢山の女性ガルムに囲まれるくらい打ち解けることができるようになった。 だが、ここでも運命の人は見つからない。 ギルバートはヴィレスを後にし、花園の街ラキラへと向かった。 大陸に住む女性の憧れとも聞く街ラキラ。 ギルバートは女性に声をかけ名前を聞こうとするが、成人していない女性には名前がないために結局うまくいかなかった。 それでも諦めずに、声をかけてはフラれることを繰り返す。 結局、運命の人は見つからなかった。 仕方がなく、ギルバートが次に向かった街は極寒都市コルキドであった。 年中氷点下の極寒の街コルキド… この街の住人はみな防寒コートを全身に着ており、外見からは性別すら判断がつきにくいが、ギルバートはこれを克服していく。 同性に声をかけて勘違いされることもあった…しかし、諦めずに声をかけ続けることで男性と女性の見分け方、更には相手の反応速度から年齢をも見抜くことが出来るようになり、ギルバートはコルキドでのナンパ術を構築していった。 だがしかし、ここでも運命の人は見つからなかった。 その後、色々な街を旅したギルバートはイエルへと戻ってくる。 そして、偶然最初に声をかけた街娘と再会する。 街娘は、ギルバートの事を覚えており、声をかけるやいなや逃げようとするが、リュートをつま弾いて引き留める。 「お嬢さん……あの時は突然すまなかった、君の可憐さについつい焦ってしまってね…どうかな?あの時のお詫びがしたいのだけど」 最初の頃とはうって変わって紳士的な態度で接する。 数々のナンパ技術を会得したギルバートはデートに誘う事に成功する。 ボクが探しているのは運命の人。 デートの終わり、別れる間際にギルバートは意を決して彼女に言葉をかける。 「君さえ良ければ、ボクの旅についてこないか?君ほど打ち解けた人は初めてさ。君こそがボクの運命の人だ!」 しかし、彼女は悲しそうな表情で言葉を返す。 「ごめんなさい。私には心に決めた人がいるの。あなたにはついて行けないわ……また、どこかで会いましょう」 彼女はそのまま走り去って行ってしまった。 一つの恋は終わり、一人その場に残されたギルバートは彼女が“運命の人”ではなかったのだと気が付いた。 「あぁ一体どこにいるのだろうか!まだ見ぬボクの“運命の人”!君に会うのが待ち遠しい…待っていてくれ!ボクは必ずキミの元にたどり着くからね!」 そう言いながらギルバートはイエルの街を後にし、気の向くまま足の向くまま渓谷を目指す。 遥か彼方に見える黒雲からは、龍の咆哮の様な雷鳴が鳴り響き、青白い光からは幾条にもなる閃光が放たれていた。 いつか…きっと出会うであろう。 しっかりしていて美しい女性…“運命の人”と必ず巡り会うことを胸に誓い、ギルバートは歩き出す。 だが、ギルバートはまだ知らない。 この旅のずっと先に…その“運命の人”が待っていることを… +高潔なる慈愛の光レティシア 商業都市イエル。 今日も旅人や商人が行き交っては物流の拠点としての賑わいを見せている。 商人は道行く人に声をかけては商売に精を出し、その声は街の至る所から聞くことができた。 日が落ち、日没を迎えるとイエルの街は別の雰囲気を醸し出す。 酒場の営業が始まる頃を見計らって、ぽつりぽつりと旅人や傭兵、冒険者などが酒を求めては酒場に集い始める。 旅人は旅の疲れを酒で癒し、ひと仕事を終えた傭兵は酒で喉を潤す。 酒場の奥では冒険者達が卓を囲みカードゲームに興じている。 イエルの街は夜になると、昼間とは違った賑わいを見せていた。 イエル中心から離れた閑静な貴族街。 ここは貴族や豪商などの特権階級や富豪が住居を構えていた。 「そーっと…気づかれないように…」 とある屋敷から闇にまぎれて動く人影があった。 2階のベランダから庭にむけて投げられたロープをつたって、その影は降りていく。 「…よいしょっと」 音をたてないように細心の注意を払いながら庭に降り立ち、きょろきょろとあたりを見渡して人の気配を確認しながら慎重に屋敷の正門を目指して忍び足で歩く。 そして、屋敷に配置されている街灯がほのかにその影を照らし出すと、そこには見事なブロンドの髪の女性の姿があった。 手には羽飾りのついた杖と大きな書物をもち、羽を意匠したきらびやかな服は、紛れもなく貴族の衣装であり、この場には似つかわしくない雰囲気を持つ。 「ふう、もう少しで…」 屋敷の庭はとても広い。 数分をかけて歩き、正門にさしかかったことで安心感ゆえになのか、ほっと小さなため息を吐いた。 音を立てないように門の鍵を開けて扉を開いていく… 「レティシア…こんな時間にどこへ行く?」 「ひゃっ!」 レティシアと呼ばれた女性は、突然自分に向けられた声に驚いては素っ頓狂な声をあげる。 この声は、まさか…いやな予感を感じながらも、レティシアが恐る恐る振り返ると案の定だった。 「お、お父様…」 今日、レティシアは屋敷を抜け出して街を出る手筈だった。 自分と同じ貴族の人間が、街の住民に悪逆非道をしているのを何とかして変えたい…その思いを胸に、レティシアは月の出ない今晩に行動を起こしていた。 「屋敷に…部屋に戻りなさい」 レティシアの父は威厳を込め、有無を言わさずにレティシアを連れ戻そうとする。 「…嫌ですっ!」 レティシアはその言葉に反抗した。 強い決心で、自分で自分の背中を押す。 そして、父に返事を返すと同時にスカートを捲り上げて正門の扉から一気に外へと駆け出した。 「レ、レティシアっ!くっ…追えっ!追うんだ!必ず連れ戻せ!」 傍らにいた数人の兵士が、下された命令を受けてレティシアの後を追う。 「…はぁっ、はぁっ」 レティシアは額に汗を滲ませながら、追っ手をまくためにイエルの街を走り回る。 「…はぁっ、はぁっ、ダメ…もっと急がないと」 タッタッタッタ……レティシアはスラムを目指していた。 スラムは迷路のような細道や雑多な建物が立ち並んでおり、身を隠すには最適な為だ。 わいわいと賑わう街の中心街からは遠く、灯りもまばらで人気のない裏通りを走り抜ける。 「おい!レティシア様の姿が見えたぞ!こっちから回り込め!」 手に剣を持った兵士の一隊がレティシアを追いかける。 「…あっ!」 裏通りを駆け抜け、スラムへたどり着く…だが、兵士の一隊がすでにスラムへの入り口を固めており、レティシアは踵(きびす)を返して元来た道へ引き返そうとする。 「…はぁっ、はぁっ、やっと追いつきましたよ!レティシア様!さぁお屋敷に戻りましょう!」 兵士の1人が息を切らしながら追いつきレティシアに観念を促す。 そして、その兵士の後ろからも兵士が現れてはジリジリと逃げ道を塞ぐようにレティシアの周囲を囲む。 「レティシア様…いい加減に聞き分けてください!さぁお屋敷に」 「嫌です!絶対に戻りません!この街のためなのです!ここは見逃してください!」 レティシアと兵士の間で押し問答がはじまる。 「お父様にはすぐに連れ戻すように命令を受けています…さぁ行きましょう」 1人の兵士がレティシアに声をかけて近寄ろうとした瞬間だった。 レティシアは素早く杖を取り出して兵士の足元へと魔法を放つ。 ボオォンッ!と音を立てて小さな爆発が起こる。 一瞬、兵士達は驚き足を止めるが、剣を抜いてレティシアに少しずつ近寄り始めた。 「レティシア様…あまり手荒な事はしたくありません。先ほどの事は無かったことにしましょう。さぁ早く」 「道を開けて下さいっ!どれだけ貴方達が止めても私はこの街を出ます!!」 「レティシア様!これ以上は!…お父様も心配されてます!どうしてもというなら力ずくでも…」 剣を構える兵士達に臆さず、レティシアは杖を強く握り兵士達へと一歩踏み出す。 「止めると言うなら覚悟してください!貴方達でも容赦しません!私達貴族が街の住民をおとしめるようなこの街を私は変えなきゃいけないんです!」 兵士であるあなた達に罪はないのは分かっているけど、ごめんなさい…私はやらなければ。 レティシアは少しためらいながら、その場で魔法の詠唱を始め、場には緊迫した空気が流れた。 だが突如として現れた1人の男がその空気を破る。 「おいおい。お前ら、エスコートの仕方も知らないのか?」 兵士の背後から男は笑みを浮かべ兵士達に声をかける。 「誰だっ!?」 振り返った兵士達は、男を見るなり驚いた表情で剣を構えた。 「き、貴様!ロイエル!なぜここに!?お前は投獄されたはずじゃ……」 ロイエル?もしかして…レティシアはロイエルという名前を知っている。 レティシアの家と並ぶ3大貴族の一角であるシュレイドにより逆賊として捕まった男の名前だ。 レティシアは兵士達がロイエルに気を取られているのを見て魔法の詠唱を解除し、隙をうかがいながら逃げ出す算段をする。 「悪いがじっとしてられる性分じゃねぇんだ。それじゃ、そのお嬢さんを放してもらうぜ?」 一瞬だった…目にも留まらぬ速さでロイエルの剣は正確に兵士達を捉えていく。 バタリと最後の兵士が倒れ、ロイエルと呼ばれた男はレティシアへ目を向ける。 レティシアは倒れた兵士達を心配そうに見つめていた。 「安心しろ、眠ってるだけだ、そのうち起きるだろ」 気絶させただけだと教えられ、助けてくれたロイエルにレティシアがお礼を言おうと口を開くが、剣を突き付けられてその言葉を遮られてしまう。 「お前、さっき街を変えたいとか言ってたな?貴族様ってのは、自分さえ良ければそれでいいんじゃねぇのか?俺のオヤジは街を変えようと、少しでも良くするために戦ってた。だから、消された。例えお前がどんだけ偉い貴族様の御令嬢でもそんなことしたらただじゃ済まねぇだろ。なぜ変えようと思う。利益のためか?」 利益?違う…私は、私はイエルの…この街の住人が大好きなのです。 ロイエルの問いにレティシアは思考を巡らすが、答えはすでに出ていた。 「貴方が私達貴族にどの様なことをされてきたか想像もつきませんが、それを知らないまま生きていくのは嫌です!知っているのに何もできないのはもっと嫌!私は、私の大好きなこの街の住民を護りたい!それ以外に理由なんていりません!たとえ私の家が地位を失うことになっても……。大好きな人達を護るためなら喜んで私は捨てましょう!」 剣を向けられていることを忘れてしまうくらい興奮している自分に少し恥ずかしさを覚えると同時に、言いたい事を正直にはっきりと言えた事に少しスッキリしていた。 そして、レティシアの言葉を聞いたロイエルは突然笑い出すと剣を降ろした。 「はははははっ!面白れぇ!でも、さっきみたいに囲まれて逃げ出せねぇようじゃ、用心棒が必要なんじゃねぇか?」 レティシアはその言葉を聞いて真剣に悩む。 確かに、まだ街を出ることすらできないのに…ロイエルが助けてくれなかったら私の旅は始まることもままならなかった。 この人にならそのあてがあるのだろうか?と考える。 「あの、ロイエルさんですよね。貴方にはその用心棒のあてがあるんですか?」 素直に尋ねたレティシアに対して胸を張って答えるロイエル。 「おいおい、目の前にいるだろう?お前は今、俺の剣の腕を見たんじゃないのか?」 ロイエルはレティシアに手を差し伸べる。 そして、レティシアは笑顔でその手をとりながら答えた。 「ぜひ!お願いします!ロイエルさん!私はレティシアと呼んでください!」 こうしてレティシアはイエルを変えるためにロイエルと共に行動することとなる。 ―― レティシア達はイエル近郊にある街へと来ていた。 今のイエルを変える足掛かりになる情報を二人で手分けして集める為に。 レティシアは情報収集を終えて酒場へ向かう。 ロイエルとは酒場で落ち合う約束をしており、約束の時間に遅れまいと急いでいた。 路地を進み、酒場までの通りに出たところで1人の傭兵がレティシアに気づき近づいてくる。 何か探している様子の傭兵に、警戒感からレティシアは身を隠す為のローブを深く被った。 「そこのお前!ロイエルという男をこの辺りで見なかったか?黒髪で妙な剣技を使う男だ」 傭兵はレティシアの前に立ちはだかると手配書をみせて尋ねる。 傭兵の言葉にレティシアは息をのみこんだ。 レティシアは深く被ったローブの中で深呼吸をして焦りを抑えてから答える。 「いえ、見たことありませんね」 そっけない返事から顔を見せないレティシアを不審に思った傭兵はフードを深く覗き込んでくる。 まずい、ばれてしまうのではないかと背筋に緊張が走る。 「あの…私急いでいるので」 その場を足早に立ち去ろうとする。 「待て」 傭兵はレティシアの進路を塞ぎ、もう一枚の手配書をみせる。 「最後にこの金髪の御令嬢を見なかったか?先ほどの男が連れ去ったのだ。コイツの身柄も同時に渡せば報酬が2倍になる」 傭兵は勘繰るような表情でレティシアを見つめる。 「見たことはありませんね……お力になれずにすみません」 レティシアはそっけない返事を繰り返し、傭兵の脇から潜りこむようにして前へ進む。 その瞬間だった…傭兵は去ろうとするレティシアのローブを掴んで強引に引っ張る。 「お前、何か隠してやがるだろう!そのフードを外して顔をよくみせてみろ!」 バッ!とフードが剥がされ、鮮やかな金髪の髪がなびく。 急いでフードを被りなおすが、男は手配書とレティシアを見比べわなわなと震えた。 「き、貴様!レティシアだな!やはり、ロイエルもこの近くにいるのか!?おい!あの男はどこにいる!」 掴みかかろうとする傭兵をかわし、レティシアは着ていたローブを投げつける。 傭兵がわずかにひるんだ瞬間を見逃さなかった。 レティシアはその場から駆け出して一目散に酒場を目指す。 「おい!見つけたぞ!こっちだ!逃がすなぁっ!」 傭兵は大声で仲間に向かって叫び、あたりは一気に喧騒に包まれた。 レティシアは町中に自分達を探す傭兵達であふれていた事に気がつく。 傭兵は走る自分の姿を見つけては、その数を増やしながら追いかけてくる。 バァンッ!酒場の扉が勢いよく開かれ、全力で走ったレティシアは肩で息を切らしながら叫んだ。 「ロイエルさん!大変です!すぐにここを出ましょう!!外に傭兵の皆さんが……あっ……えーと……」 言葉の途中で酒場中の人間の注目を自分が集めている事に気がづく。 愛想わらいでごまかそうとしているレティシアに向かってロイエルが声をかける。 「いつまで、そこに突っ立てるんだ?逃げるんだろ?というかローブはどうしたんだ?お前、目立つから着てろって言ったじゃねぇか?」 「動きづらかったので、捨てて来ました!急いで教えたかったので仕方がありません!」 ロイエルに必死に言い訳をするレティシア。 酒場を出た二人の目の前に、沢山の傭兵達が集まっていた。 「ロイエルさん!私も加勢します!」 杖を構えるレティシアの前に出るように剣を構えるロイエル。 「ったく!少しは反省しろよ!……しゃーねぇ!行くぞ!レティシア!」 ロイエルは傭兵達に向かって剣を向ける。 「テメェら!こいつは妙な剣技を使うから気をつけろよ!いいか!一人ずつじゃねぇぞ?束でかかれよっ!」 言うやロイエルを中心に周りを傭兵達が囲む…そして、一気に襲い掛かった。 傭兵達の判断は確かに間違ってはいなかった。 腕の差を冷静に判断して集団戦に持ち込む。 だが誤算は、ロイエルの剣技が傭兵達の予想をはるかに超えていたことだった。 多人数を相手に一歩も引かずに剣を振るうロイエルによって、傭兵達の旗色はどんどん悪くなっていく。 戦いは乱戦になっていき、ロイエルを護る為にレティシアが魔法の詠唱を始めた時だった。 背後からレティシアにとりつき羽交い絞めにする傭兵。 「あっ!レティシア!?」 一瞬、ロイエルはレティシアに気をとられた。 「隙ありだぁっつ!オラァッ!」 ロイエルの側面から剣が振り下ろされる。 ダアァァンッ!間一髪で剣を避け、反動から飛び蹴りを相手に放つ。 「レティシアを放しやがれっ!」 ロイエルの剣閃はレティシアを羽交い絞めにしていた傭兵だけを吹き飛ばす。 「レティシア!大丈夫か?」 「は、はい…それよりもロイエルさん…お怪我を…」 ロイエルの肩からは血が滴っていた。 「ちぃ…避けそこなったか」 「私の不注意で…すみません」 「今にはじまったことじゃねぇだろ?気にすんな。お前が無事ならそれでいい」 レティシア達はその場にいた傭兵達を一掃し、酒場の外へ出る。 応援を呼びに外へ向かった傭兵もおり、このままでは危険だと判断したためだ。 傭兵達があたりを探す中、レティシア達は荷馬車の中に身を隠し息を潜める。 やがて荷馬車が動き出し、傭兵達の声が徐々に遠ざかるのを感じて二人はホッとした。 怪我を治療するレティシアにロイエルは気になっていたことを質問する。 「そういや今更なんだが、なんでわざわざお屋敷を飛び出そうなんて思ったんだ?イエルじゃシュレイドと同じくらいデカい貴族なんだろ?お前のオヤジならどうにかなったんじゃねぇのか?」 レティシアは頭を振って答える。 「残念ですが、それはないです。父は根っからの貴族です。庶民に対して何か酷いことをするわけではないですが、庶民の身に起きていることに興味があるわけでもありません。私が、こうして何かしなきゃ…って思ったのはホントに些細なことからです」 レティシアはロイエルに語り始める。 「私は小さい頃から、ずっと本を読んでいたんです。本に出てくる冒険の話や平和な世界に憧れていました。それで、いつか外の世界を見たいと思うようになっていたんです」 自分の住むお屋敷と貴族街だけしか見たことのないレティシアにとって、外の世界への思いは募っていくばかりだった。 「一度だけ、ほんの出来心だったんですけど…どうしても外の世界が見たくなっちゃって父の目を盗んでお屋敷を抜け出したんです」 衝動を抑えられなかった。 どうしても外の世界を見たい!その気持ちはレティシアに行動を起こさせる。 お屋敷を抜け出し貴族街を駆け抜けてイエルの中心街へ向かう。 閑静な貴族街から中心街に近づくにつれて周りの騒がしさが増してくる。 はぁ…はぁ…と息を切らしながらたどり着くと中心街には市がたっていた。 見たこともないような珍しいものが所狭しと並び、興味をさらっていく。 そこでは貴族の社交界のような固い空気はなく、沢山の人が行き交い笑顔に満ちた世界が広がっていた。 「興奮しました。こんなにも素晴らしい世界があるんだなって思っちゃいました」 その日、レティシアは街中を探検していた。 だが、レティシアにとってはあまりに新鮮で刺激的であった為、夢中になりすぎて気づけば人気のない貧民街にまで来てしまっていた。 「ちょっと怖くなってきたので引き返そうとしたんです。そうしたら、貴族の兵士達がいるのを見つけて…見つからないように咄嗟に隠れました」 物陰に隠れてそっと様子を伺っていると、兵士達は乱暴に民家の扉を叩き始めた。 「住民の方が外に出てくると、兵士達はいきなり乱暴を始めたんです…」 突然の出来事に怖くて何もできなかった。 そして、貴族の兵士は住民の懐から財布を取りだすとそのままどこかに去っていった。 「住民の方は怪我をしていました。それで、私が魔法で治療したんです。ありがとうってお礼を言われて…なんでこんなひどい事をされたのか聞いてみました」 民家の住民は少し考えてから重い口を開き始める…。 「貴族の兵士は…ああやって身に覚えのない税金を取り立てに来るんだ…」 他にも店を荒らしに来る時もあれば、ただただ乱暴しにくるだけの時もある。 貴族に逆らうとどんなひどい目に合うかわからないからじっと堪えているという話を聞く。 「私、我慢できませんでした。自分と同じ貴族がこんなことをして人を苦しめているって初めて知って。急いでお屋敷に戻って、見たこと聞いたことを父に話したんです。そうしたら、庶民のことなんて貴族が気にする必要はないって言われたんです…」 あの日、お屋敷を抜け出したことを怒られた。 あの後も、父に疑問や質問を投げては庶民だからとどうしても取り合ってもらえなかった。 庶民と貴族はそんなに違うの…?それはしょうがない事なの?あの人達を見捨てて自分だけ幸せに暮らすなんて考えられない。 狭いお屋敷の中じゃ何もできない…そう考えてレティシアはお屋敷を飛び出そうとしたと語った。 揺られる馬車の中でロイエルはレティシアの話を聞き、そして口を開いた。 「そっか、今のスラムじゃぁ…レティシアの見た貴族兵の行いなんて日常茶飯事で起きてるしな。正直、俺は貴族なんてそんな奴らばっかだと思ってるぜ?けど、もしレティシアみたいな貴族が実権を握るならイエルも少しはマシになるかもな」 ロイエルは自分にも言い聞かせるように話をした。 二人は揺られる馬車の荷物の影に隠れながら、夜通しで互いの考え、互いの理想の話をする。 ――翌日 日が高く昇る頃、荷馬車はアルモニアの街に着いていた。 荷馬車の主が荷物を降ろそうと幌(ホロ)をはがすと、寝入っているレティシア達を見つける。 「お、おい!あんたら誰だ!?なんでウチの馬車に勝手に乗っているんだ!」 荷馬車の主が驚き大声を上げたことでレティシア達は目が覚める。 「ちぃっ…途中で降りるつもりだったが、俺としたことが…」 バッ!と起き、ロイエルは舌打ちをしてから何とか出し抜いて逃げようと画策する。 「レティシア!俺がひきつけるから…一気に走れ!」 ロイエルはレティシアに向かって指示を出す。 「ダメですっ!」 えっ?とロイエルはレティシアに振り向く。 レティシアは荷馬車の主に向かい申し訳なさそうに話しかける。 「すみません、ご迷惑をおかけしました。ここまで運んでいただいたのですから、少ないですが、こちらを受け取ってください」 レティシアが手渡した袋には金がぎっしりと詰まっていた。 「お、お…本当にいいのか?嬢ちゃん!?」 袋を受け取って中身を覗いた荷馬車の主は、その量に驚いては大はしゃぎで快くレティシア達を許す。 「ほー、あんなに渡して…太っ腹だなぁレティシア」 「はい!全部差し上げました!」 「え…マジかよ」 大はしゃぎをしている荷馬車の主を前にして、返せとも言えずにロイエルは1人頭をうなだれた。 アルモニアはいたって平穏であり、まだこの街では二人の顔は割れていないらしく、顔を出しても充分外を出歩ける様子だった。 イエルの現状を変えたいと飛び出したものの、具体的な行動を何も決めていない二人。 まずは情報を集めて目的を決めようとロイエルが促す。 スラムのボスが顔を利かせていた頃のイエルは平和だったんだ…それが、徐々に変わり始めたのには何か理由があるはずだ。 レティシアは頷いて、ロイエルの案に乗る。 「ロイエルさん、アルモニアは帝国に占領されているんですよね?街のあちこちに怪我をしている人がいたので…あの、私、目の前の傷ついた人たちも放って置けないです!」 アルモニアが帝国に占領されているからか、この街も相当疲弊している様子だった。 「そうだな…それなら情報収集する時間を決めるか。レティシア1人だと不安だしな、昼はレティシアに俺が用心棒として付き添うぜ」 「ロイエルさん…ありがとうございます!」 「夜になったら俺は酒場で情報集めをするか」 「はい!」 二人は相談して案を決め、昼は用心棒も兼ねてレティシアの人助けを手伝い、夜はロイエルが酒場で情報収集をすることになった。 また、路銀が尽きたこともあり、レティシアは治癒魔法で医療院の手伝いをする。 そんな形でしばらくの間、二人のアルモニア生活が始まった。 ――そして月日は経ち 拠点としている宿で今日も二人は集めた情報を報告しあう。 「どうだ?何かめぼしい情報は手に入ったか?」 「えぇと…私が治癒魔法を使って回復させた人なんですけど、今は亡き奴隷商に仕えていた元奴隷の方で…火には気をつけろ!特に赤い竜の炎には気をつけろッ!と言っていました」 「はぁ?なんだ?そのたわ言みたいな情報は…」 「え、えぇと…あ、そういえば、かつてアルモニアが誇っていた音楽隊の隊長なんですけど…その男の人、口紅はピンク色を使っているそうです。なんか男運があがるからとか…」 「おいおい…そんな情報がなんの役にたつんだ?」 「えぇと、すみません……これで全部です」 アルモニアに来てから結構な月日が経つが、イエルの現状を打破するような情報はまったく集まっていなかった。 「くっそ…こんなんじゃ、全然前に進めねぇじゃねえか!」 次第にロイエルは焦りからかイラ立ちが募り始めていく。 「レティシア、いつまでもアルモニアの人に構ってばかりいちゃ、イエルも世界も変えられねぇ。少しは集中して今後の事を考えようぜ?」 ロイエルの話は、人助けをやめて情報収集に専念しようという内容だった。 「そうですか…分かりました。あ、でも、あの…重病だったおじいさんの所には、少しだけでも様子を見に行ってもいいですか…?」 ロイエルの案に了承しつつもレティシアは重病の老人の様子だけは見に行きたいと言う。 レティシアは街で病気や怪我で床に伏せている人を見つけては、治癒魔法で癒してあげている。 癒したあとも数日に一度は様子を伺いに行くようにしていた。 だが、その重病の老人には治癒魔法が効かず、せめて会話だけでもと毎日のように老人の家に通っていたのだった。 「レティシア…」 ロイエルはハッと何かを思い出したかのように、レティシアに向かい申し訳なさそうにする。 「え?どうしたんですか?」 レティシアは驚きながらもロイエルに問い返していた。 別に情報収集をサボっているとかそういう事じゃない。 情報の集まりが悪くてイライラしていただけだ。 イエルを良くしたくて…変えたくて……このアルモニアまで来たのに、目の前の人も助けないで何がイエルも世界も変えられねえ!…だ。 「どうやら頭に血が昇っていたみたいだ。お前のいいところはそういう優しさだったな…情報が集まらないからって、八つ当たりしてすまねぇ。」 「そんな!謝らないでください。私はそんな事気にしていませんから」 「ああ、ありがとな。なんか大事な気持ちを忘れるとこだったぜ。そうだな、まだ当たってないところもあるし…もうちょっと気合入れて情報収集するか!」 「はい!頑張りましょう」 ―― 二人はせっせと情報収集を再開していた。 レティシアだけはあの老人の為に毎日少しの時間を割いては話し相手になっていた。 助けられなくても、せめて力になれることをしたかったのだ。 そんな中、ロイエルは酒場で仕入れた情報から、時勢に詳しい情報屋がアルモニアに帰ってきている事を知る。 「ロイエルさん、やりましたね!」 「ああ、少しは前進できたな。情報屋はここからそんなに遠くないところに宿をとっているらしい。早速でかけるか!」 「はい!いきましょう」 二人の毎日の情報集めが功を奏し、アルトゥーロという情報屋までたどり着くことができた。 そして、二人はひとしきり喜びを分かち合った後に情報屋がいるという宿へ向かう。 ロイエルは宿の店主にアルトゥーロという男が泊まっていないか尋ねてみる。 だが、店主には答えられないと断られてしまう。 「どうすっかな…アルトゥーロが出てくるまで待つか?」 「はい。そうしましょうか」 二人が相談をしていると、パイプを口にした男がロイエルへ近づいていく。 「おい…お前らか?俺の事を探し回っているって奴らは」 「お前、アルトゥーロか?はは、こんなすぐ会えるとはな!俺はロイエルってんだ。早速で悪いんだが情報が欲しくてな…」 ロイエルがみなまで言うより先にアルトゥーロが口を開いた。 「帰れ…」 情報屋のアルトゥーロは、ロイエルを一瞥するなり冷たく言い放つ。 「おい!何でなんだよ!」 「よく俺を見つけたなと褒めてやりたいが…俺は情報屋だぞ?情報を売って金にしているんだ。あんたらは見た感じ、金…持ってないんだろう?」 情報屋は確かにイエルの情報を持っているが、どれだけ二人が食い下がっても金が払えないなら教えられる情報はないと突っぱねられる。 「くっそ、あの野郎…足元見やがって!」 「すみません…私が荷馬車の方に路銀を全て渡してしまったばかりに」 「おいおい、過ぎたことでくよくよしてもしょうがないだろ?」 「ですが…」 「せっかく、ちょっとは前進できたんだ。あんな大金を払うのは癪だが…なんとか金を作ることを考えようぜ?」 「ロイエルさん…はい!わかりました!」 二人は大金を稼ぐ方法を相談するが、なかなかいい案が思い浮かばずにいた。 ―― 次の日、お金を稼ぐ方法を話し合いながら、レティシアは日課のお見舞いにロイエルと二人で重病の老人の家へと来ていた。 「おじいさん、こんにちは!調子はどうですか?今日は桃を持ってきましたよ」 「おお、レティシアちゃん…いつもすまないねえ」 「気にしないでください。こんなことしか力になれないので。」 レティシアは馴れた手つきで皮をむき、桃をきれいに切り分けては小皿に盛り付けていく。 「できましたよ。はい、どうぞ」 レティシアは老人に桃の盛り付けられた小皿を渡す。 「ありがとう。こんな老いぼれに優しくしてくれるなんて、ほんとうにレティシアちゃんは優しい子だよ…」 「そんな…あ、食べたらお薬の時間ですよね?お湯を沸かすので少し待っててください」 パタパタと動き回るレティシア。 ロイエルもレティシアの手伝いの為に、台所へと水差しを取りにいく。 「爺さん、帰ったぞ。…おい!なんだてめえら?」 ガチャっと開かれた扉から姿を現れたのはアルトゥーロだった。 「てめえら、あんときの…!」 アルトゥーロには二人が金策に行き詰った故の行動に見えたのだろう。 老人に薬を飲ませていたレティシアにナイフで襲い掛かる。 「レティシア!あぶねぇッ!」 だが、間一髪ロイエルの剣が間に入りナイフを受けた。 「ちっ…お前ら、ここで何をしている?返答次第じゃ生かして返さねぇぞ」 アルトゥーロが凄みをきかせて二人を睨みつける。 「アル!やめろ!この二人は客人だぞ!物騒なものをしまえ!」 重病人であるはずの老人の怒号が響き渡る。 アルトゥーロは驚いたが、素直に老人のその言葉に従った。 老人はレティシアに命を助けられた事を話し、今も毎日のように話し相手になってくれているとアルトゥーロに説明をした。 「そうか…すまなかった。まさか、お前らが爺さんの恩人だったとはな。ああ、俺は爺さんの孫さ。こうやって情報屋をしながら爺さんの病気のために金を稼いでいるんだ」 レティシア達は老人と情報屋アルトゥーロが祖父と孫の関係であることを知る。 「恩には恩で返す。爺さんの命の恩人なら情報を渡さないわけにはいかないな。よし、なんでも聞いてくれ」 「アルトゥーロさん…ありがとうございます!」 「よかったな。ワシもちょっとはレティシアちゃんに恩が返せたようだよ」 老人は微笑みながらうれしそうに話す。 「おじいさんも…ほんとにありがとう」 レティシアとロイエルは老人とアルトゥーロに感謝し、イエルの情報を求めた。 「イエルの近況について聞きたいんだ、どんなことでもいい。教えてくれ」 「ふむ、イエルか…そうだな。帝国が王都を陥落させたことは知っているよな?そのせいでイエルにも変化が起きている。なんでも…イエルの三大貴族の一つであるシュレイド家が帝国に取り入る為に賄賂を渡しているって話だ。それも莫大な金額を…その金を作るのに結構あくどいことをしているみたいだぞ?シュレイドを筆頭にその一味が勝手に税を取り立てたり、イエルの住民に暴行を働いては財産を奪ったりしているらしい」 シュレイドの名前が出た瞬間、ロイエルの顔が一瞬険しくなる。 その話の内容もスラムでは日常茶飯事に行われている事だった。 レティシアは黙ってアルトゥーロの話を聞いていた。 シュレイドの名前が出てからのロイエルはずっと難しい表情をしている。 レティシアには、その心情を推し量る事しかできなかった。 ―― 二人は老人の家を後にし、自分達の宿へと向かって歩く。 「帝国だったんですね…」 色々と情報を得たことで諸悪の根源は帝国であることを知る。 「ああ、そうだな。スラムがおかしくなったのも…スラムのボスがシュレイドに殺されたのも同じ時期だったな。」 「ロイエルさん、これからどうしましょうか?」 レティシアはロイエルに今後の事を聞いてみる。 アルトゥーロの話でシュレイドという名前が出たときに、ロイエルが見せた険しい表情をレティシアは見逃さなかった。 何か因縁があったのだろうか?レティシアは心境を見せないでいるロイエルを気にしていた。 「レティシア、帝国が全部の悪だってことはわかった。けど、俺はその片棒を担ぐようなことをしているシュレイドも許せねぇんだ…あいつの悪事は帝国に比べたら小さいかもしれねぇけど…」 シュレイドに対する己の心情をロイエルはレティシアに話す。 帝国は許せないが、シュレイドも許しがたい…ロイエルは葛藤をしていた。 「復讐しても仕方ないのは分かっているが、それでもシュレイドは許せねぇんだ!けど、あいつを打ち倒しても、傘下の貴族家が同じ事をするだけで…何も変わらないかもしれねぇけどな」 「ロイエルさん。これまで通り…まずは帝国やシュレイド家の情報を集めませんか?今悩まずに、色々分かってから決めればいいじゃないですか」 「ああ、そうだな…そうするか」 ―― 帝国やシュレイド家の情報を集めはじめて数日が経った頃、遅い晩御飯をとるために二人は酒場に来ていた。 この酒場はロイエルがよく情報収集につかっており、常連客とはすでに顔なじみであった。 酒をなみなみ注いだジョッキを片手にした常連客の男は、ロイエルの姿を見つけては話し相手がいたとばかりにロイエル達のテーブルに寄ってくる。 「よぉ…そういや聞いたかおめぇ?イエルでとんでもねぇ事件があったらしいぞ。なんだか貴族のでかい家に居た全員が、惨殺死体で発見されたと。貴族の名前は、シュ…シュレなんだっけか?」 「シュレイドか!」 ロイエルは声を上げた。 「それだ!そんな名前だったぞ!」 想像以上に食いついてくるロイエルに、おっさんはちょっと待っていろと言い残して酒場のゴミ箱からぐしゃぐしゃになった号外紙を持ってくる。 号外紙にはシュレイド家の中にいた全員が、短刀のようなもので切り刻まれた惨殺死体で発見されたとあり、さらに当主のシュレイドは自室で誰よりもひどい状態で発見されたとのことだった。 「はは…あの野郎…くたばりやがったか…」 ロイエルは少し泣きそうな顔をしながら笑い出す。 「レティシア、すまねぇが…先に宿に戻ってる。悪りぃが少し一人にしておいてくれ」 レティシアが声をかけることを戸惑っているとロイエルは足早に宿へと戻っていく。 背中姿は悲しそうな、そして何かやるせない思いをしているのだとレティシアは感じていた。 ―― 翌日の朝、レティシアはロイエルの部屋の前に来ていた。 昨夜からずっと部屋を締め切りにしているロイエルを心配してのことだった。 「あの…ロイエルさん。朝食をいただきに行きませんか?」 レティシアはコンコンとノックをしてドア越しに声をかける。 「決めたっ!レティシア!」 バンッ!とドアが開かれ、大声をあげながらロイエルが部屋から出てくる。 「きゃっ!ロ、ロイエルさん…?何を決めたんですか?」 「ああ、レティシア。的は一つだ!シュレイドはもういねえし…帝国を討てば全てが終わるはずだ!もう吹っ切れたぜ!相手はシュレイドの比じゃねえが…やってやろうぜ!」 昨日とは打って変わって元気な姿を見せるロイエルにレティシアは驚く。 シュレイドの事は吹っ切れたのだろうか?だが、“こちらのロイエルさん”のほうがいい。 そう思ったレティシアは何も聞かずにロイエルの言葉に全力で同意した。 「はい!そうしましょう!」 しかしここ最近調べた情報では、帝国の勢力はあまりに強く二人で何とかできるような状況ではない。 「帝国は強大だ…俺たちだけだと敵わないからな。まずは、帝国と戦っているっていう反帝国組織にあたってみるか?」 「そうですね。それに、イエルもアルモニアも…私は帝国の支配に苦しむ人たちをみんな解放していきたいです」 「はは、そいつは困難な道のりになりそうだな」 「はい!ずっと何とかしなきゃって思ったことが出来そうです!」 そして、まだ見ぬ帝国の支配に苦しむ人たちを開放すべく二人は反帝国組織に入団する決心を固める。 生まれも境遇も違う二人が…それぞれ思い描き、夢見た平和な世界。 形は違えども、その平和への望みは一緒だった。 帝国は巨大な存在で二人の前に立ちはだかっている。 それでも希望を胸に二人は戦い続けることを選んだ。 そして、夢見た平和な世界の実現へ向けて二人の戦いは新たな幕を開ける。
https://w.atwiki.jp/melonade/pages/26.html
ブリック バーサーカー。 父親と母親は両方とも150cm程度なので、ブリックの大きさはどこからきているのか謎(ゲームマニュアル) 愛犬プリシラの足の骨を首に身に着けている(ゲームマニュアル) 惑星メノイティオス出身(情報源確認中) 惑星パンドラで行方不明になった妹を見つけるためにブリックはパンドラに来た(情報源確認中) 母親はモクシーのアンダードームで特定のラウンドを通過する優秀な戦士だった(情報源確認中) 二匹目の愛犬ダスティはニューヘブンがハイペリオンに襲われたときに失ったらしく、後にニーシャがブリックの前でダスティの首を切り、殺したことがわかる。ブリックはプリシラとダスティの足の骨を身に着ける(確認中) 3匹目の愛犬タホの足の骨を身に着けている(確認中)