約 1,857,948 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/189.html
総括所見:モルディブ(第2~3回・2007年) 第1回(1998年)/第4回・第5回(2016年)OPAC(2009年)/OPSC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/MDV/CO/3(2007年7月13日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2007年5月23日に開かれた第1233回および第1234回会合(CRC/C/SR.1233 and 1234参照)においてモルディブの第2回・第3回統合定期報告書(CRC/C/MDV/3)を検討し、6月8日に開かれた第1255回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の子どもの状況に関する理解をいっそう明確なものとすることを可能にしてくれた、締約国の第2回・第3回統合定期報告書および事前質問事項(CRC/C/MDV/Q/3/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。 3.ハイレベルな代表団の出席により、委員会は、条約の実施を直接担当する人々との率直かつ建設的な対話に携わることができた。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、子どもの権利の実施に積極的な影響を与える、締約国による以下の文書の批准/これへの加入を歓迎する。 (a) 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、ならびに、市民的および政治的権利に関する国際規約およびその選択議定書(2006年9月19日)。 (b) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2006年3月13日)。 (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約(2004年4月20日)およびその選択議定書(2006年2月15日)。 (d) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノ(2002年5月10日)ならびに武力紛争への子どもの関与(2004年12月29日)に関する子どもの権利条約の両選択議定書。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 5.委員会は、締約国(26の環礁に分類される1190のサンゴ島から構成されている)の地形が有する特有の性質、および、多くの場合孤立していてサービス等の提供が困難である環礁に住む子どものために十分なプログラムおよびサービスを実施するうえで締約国が直面している困難を認知する。 6.委員会は、2004年12月26日のインド洋津波が引き起こした例外的な自然災害によって締約国の低海抜の島々が大部分壊滅したため、多くの経済的および社会的困難が生じ、かつ多くの子どもの生活に影響が生じていることを認知する。 D.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.33 and 37)の検討後に行われたさまざまな懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.91)に対して立法措置および政策を通じて対応するため、締約国が行なった努力に留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに締約国の留保、条約の規定および原則を全面的に遵守するための国内法の調和化、障害のある子ども、婚外子および女子に対する差別、性的虐待を含む子どもの不当な取扱いの防止、栄養不良の蔓延、薬物濫用の問題ならびに少年司法の運営に関わるものについては、十分な対応が行なわれていない。 8.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回・第3回統合報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国が子どもの権利に関わる関連のハーグ諸条約および国際労働機関(ILO)諸条約を批准しまたはこれらに加入することも、勧告するものである。 留保 9.委員会は、条約に対して付されている留保を撤回の方向で見直すよう、ジェンダー・家族省から司法省に対して要請が行なわれたことには関心をもって留意しながらも、条約第14条1項に対する締約国の留保が幅広いものであることを遺憾に思う。条約第21条に対する締約国の留保について、委員会は、締約国が留保において表明している懸念は、第21条が「養子縁組の制度を承認および(または)許容している」に明示的に言及していることによって十分に配慮されていることに留意するものである。 10.委員会は、条約第51条2項および前回の勧告(CRC/C/15/Add.91、パラ6および25参照)に照らし、締約国が、世界人権会議(1993年)のウィーン宣言および行動計画にしたがって留保を撤回するために留保の性質を見直すべきである旨を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国が、同様の留保を撤回し、または条約に対していかなる留保も付さなかった他のイスラム教諸国に示唆を求めるよう勧告するものである。 立法 11.委員会は、たとえば委員会が勧告したように(CRC/C/15/Add.91、パラ33)最低婚姻年齢を18歳と定めた家族法の施行(2001年7月)を確保することによって国内法を条約と一致させるために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約に掲げられた規定および原則を全面的に遵守するために子どもの権利保護法(法律第9/91号)を改正する必要があることについての懸念をあらためて表明するものである。 12.委員会は、締約国が、条約を国内法に編入するとともに、子どもに関わるすべての国内法および行政規則が権利を基盤としたものとなり、かつ条約、その選択議定書ならびに他の人権文書および人権基準の規定および原則と一致することを確保するための努力を引き続き再検討しかつ強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が、「イスラム法の観点から見たモルディブ共和国におけるCRCの適用」に関する報告書でも勧告されているように子どもの権利保護法(法律第9/91号)を改正するための即時的措置をとるとともに、この法律ならびに子どもに関わるその他の法律および行政規則をもっとも効果的に実施するため、あらゆる必要な人的資源および財源を利用可能とするよう、勧告するものである。 13.刑事司法手続のあらゆる段階における子どもの被害者および証人の保護について、委員会は、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20)に対して締約国の注意を喚起する。 国家的行動計画 14.委員会は、「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」の採択を歓迎するものの、この行動計画を実施するためにとられた具体的措置およびその採択以降に達成された進展に関する情報がないことを遺憾に思う。 15.委員会は、「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」をあらゆる段階で全面的かつ効果的に実施するために十分な人的資源および財源が提供されるよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、実施プロセスのあらゆる側面において、子どもを含む市民社会の幅広い参加を確保することも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、国家行動計画の実施、成果および評価に関する情報を次回の定期報告書で提供するよう、要請する。 調整 16.条約の実施に関して、委員会は、再編されたジェンダー・家族省に対して調整の主たる任務が委ねられていること、および、さまざまな関係者および利用可能な諸サービス間の調整を強化する目的で子どもの保護に関する多部門型作業部会も設置されたことに、関心をもって留意する。委員会はまた、諸環礁に子ども保護システム/センターを設置する計画があることにも留意するものである。 17.委員会は、締約国が、ジェンダー・家族省の再編を、その機能を強化する目的のみならず、条約の実施に関わるあらゆる活動の調整および評価のための単一かつ部門横断型の機構を設置する目的でも活用するよう、勧告する。このような機関に対しては、調整機関としてのその役割を効果的に遂行するための強力な権限ならびに十分な人的資源および財源が与えられるべきである。委員会は、締約国が、条約の実施の調整および評価に際し、市民社会の構成員、子どもの権利の専門家その他の専門家の関与を得るよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、地方段階における調整を強化する目的で、十分な人的資源および財源を有する子ども保護システム/センターを諸環礁に設置するための努力を加速させるよう、勧告するものである。 独立の監視 18.委員会は、2003年にモルディブ人権委員会が設置されたこと、および、人権委員会法改正(2006年)によりその権限が強化されたことを歓迎する。委員会は、人権委員会が人権侵害の訴えに関する苦情を受理する権限を有していることに、評価の意とともに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、人権委員会が直面している課題(完全に独立した地位の獲得および一部職種の採用に関わる困難を含む)に懸念とともに留意する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) パリ原則(総会決議48/134付属文書)にしたがい、モルディブ人権委員会が、条約の実施を促進しおよび監視しならびに子どもを含む個人からの苦情を受理し、調査しおよびこれに対応するための完全に独立した監視機構となることを確保するための努力を、引き続き行なうこと。 (b) 人権委員会に対して十分な人的資源および財源が提供され、かつ、その関係者を対象とした、委員会の権限に関わる職務を遂行するための定期的な人権研修が行なわれることを確保すること。 (c) 人権委員会、とくに個人を対象としたその苦情申立て機構が子どもにとって容易にアクセスできるものであることを確保すること。 (d) 同委員会がパリ原則にいっそう一致すること、および、同委員会が国内人権機関国際調整委員会による認証を求めることを確保するため、とくに国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の助言および援助を引き続き求めること。 20.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2)を考慮するよう奨励する。 資源配分 21.委員会は、条約第4条に照らし、「利用可能な資源を最大限に用いて」子どものための予算資源の配分を行なうことに対して十分な注意が払われていないことを懸念する。委員会は、保健および福祉ならびに教育部門に対する締約国の最近の配分額が、割合としては減少していていることを遺憾に思うものである。 22.条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および必要な場合には国際協力の枠組みの中で」子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることによって、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう奨励する。委員会は、締約国に対し、子どものための予算配分額を監視し、かつ子どもの実際のニーズの充足に関する効率性の水準を定義する目的で、子どもの権利の視点から、とくに社会部門に関わる予算の包括的再検討を行なうよう奨励するものである。 データ収集 23.委員会は、「モルディブ・インフォ」の設立を歓迎するとともに、国連児童基金(ユニセフ)と連携しながら子どもの状況に関する情報を収集するためにジェンダー・家族省が行なっている努力、および、とくにマレにおけるデータ収集の相当の改善に、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、条約で対象とされているすべての分野に関する全国的案データ収集システムが存在しないことから、とくに孤立した環礁に住む子どもとの関連で、十分な政策およびプログラムを採択し、かつ採択された政策の効果を評価する締約国の能力が制限されていることを、遺憾に思うものである。委員会は、十分な訓練を受けた要員が存在せず、かつ国の当局と児童福祉機関との調整が不十分であるためにデータ収集における進展が阻害されていることに、懸念とともに留意する。 24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約で対象とされているすべての分野についてのデータが収集され、かつ、当該データがたとえば年齢、性別ならびに都市部および遠隔地の別ならびに特別な保護を必要とする子どもの集団(すなわち、十分なサービスが提供されていない地域に住んでいる子ども、障害のある子ども、婚外子、暴力、虐待および搾取の被害を受けた子ども、栄養不良の子ども、有害物質濫用の被害を受けた子ども、法律に抵触した子ども等)ごとに細分化されることを確保するため、子どもに関する全国的な中央データベースを設立し、かつ条約にしたがった指標を開発するための努力を強化すること。 (b) これらの指標および収集されたデータを、条約を実施するための政策およびプログラムの立案を促進する目的で活用すること。 (c) 関連の専門家集団を対象として、データ収集に関する研修を引き続き行なうとともに、国および地方のレベルで子どもの権利に関与するさまざまな政府機関および政府機構間の調整を強化すること。 (d) 現在進められているユニセフの国別協力プログラムに関して、ユニセフに対し、細分化されたデータの収集および管理を向上させるための技術的協力を引き続き求めること。 条約の普及/研修 25.委員会は、条約についての情報を普及するために締約国が行なっている努力(たとえば2005年のラマダーン月にクイズ番組形式で行なわれたもの)を心強く思う。しかしながら委員会は、子どもの市民的権利および自由ならびに国際人権基準一般の普及およびこれらに関する意識啓発を、体系的なかつ対象を明確にしたやり方で図るためにとられた措置が不十分であることを懸念するものである。委員会はさらに、締約国が第1回報告書および(または)委員会の総括所見を公刊せず、公衆一般の間で普及もしていないことを遺憾に思う。 26.委員会は、締約国が、子ども、その親その他の養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団の間で条約に関する情報を体系的に普及するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。委員会は、締約国が、専門家を対象として、条約の規定および原則ならびに国際人権基準一般に関する、対象の明確な定期的研修を行なうよう勧告するものである。委員会はまた、締約国が、メディアに対して子どもの権利についての情報を普及するよう奨励し、このようなやり方で子どもの権利に関する公衆一般の意識を促進することも勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもの市民的権利および自由に注意を払いながら、モルディブのすべての子どもに対して条約を入手可能としかつ周知させるための具体的措置をとるとともに、この点に関してユニセフと引き続き協力するよう、勧告するものである。 非政府組織との協力 27.ジャーニー(薬物依存者の回復を目的としてコミュニティを基盤とするアフターケアおよび再発防止の取り組みを行なう、モルディブで初めてのNGO)に対する金銭的および技術的支援のような、政府機関と非政府組織との連携の例には留意しながらも、委員会は、非政府組織との協力をさらに促進しかつ強化すべきであることに留意する。 28.委員会は、市民的権利および自由との関連も含めて条約の規定を実施する際のパートナーとして市民社会が果たす重要な役割を強調し、非政府組織とのいっそう緊密な協力を奨励する。委員会は、締約国が、市民社会組織の設立を促進するとともに、条約実施のあらゆる段階を通じて、非政府組織(とくに権利を基盤とするもの)ならびに子どもともにおよび子どものために活動する市民社会のその他の部門の関与およびエンパワーメントをいっそう制度的に進めるよう、勧告するものである。 国際協力 29.委員会は、ジェンダー・家族省が家族および子どものために実施しているプログラムおよびプロジェクトの資金が、ほぼ完全にユニセフ、国連人口基金(UNFPA)、国連開発計画(UNDP)ならびにその他の国際的な政府間機関および非政府組織ならびに二国間パートナーによって拠出されていることに、留意する。 30.これとの関連で、委員会は、締約国が、国際的、地域的および二国間協力の枠組みにおける措置を引き続きとる一方、同時に、当該協力を通じ、条約実施のための制度的体制の強化に努めるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもの権利の実施のために充てられる国際支援の金額および割合を年次ごとに明らかにするよう要請するものである。 2.子どもの定義(第1条) 31.締約国が子どもの定義に関する法定年齢および婚姻に関する最低法定年齢を16歳から18歳に引き上げたことには満足感とともに留意しながらも、委員会は、締約国の法律が、とくに刑事責任に関する最低年齢および就業が認められるための最低年齢に関して条約その他の関連の国際基準と全面的には一致していないことを懸念する。 32.委員会は、締約国に対し、子どもに関わるすべての分野について、とくに刑事責任に関する最低年齢および就業が認められるための最低年齢に関わって、明確に定義された最低年齢を法律で定めるよう促す。 3.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 33.委員会は、婚外子が平等な権利を与えられておらず、かつ日常生活で事実上および法律上の差別に直面していることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの子どもが実父に関する情報への法的アクセスを否定されており、かつ、父の名を名乗ることも父方からの相続もできないことに、特段の懸念とともに留意するものである。委員会はまた、現行の命名習慣によって婚外子にさらなるスティグマが付与されていることにも、懸念とともに留意する。 34.第2条にしたがい、委員会は、締約国が、その管轄内にあるすべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受することを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告する。委員会は、とくに実父に関する情報へのアクセス、父親の姓に対する権利および父方からの相続に対する権利との関連で婚外子に対するいかなる差別も解消するため、締約国が法律を改正するよう勧告するものである。加えて委員会は、締約国に対し、婚外子のスティグマに終止符を打つために立法上、政策上および教育上の措置(感受性の強化および意識啓発を含む)を活用するよう奨励する。 35.男女平等の問題に対応するため、「モルディブ・ビジョン2020」等を通じて締約国が行なっている努力にも関わらず、委員会は、女性および男性の役割および責任に関する固定的態度が根強く残っていることにより、女子によるすべての人権および基本的自由の全面的享受がいまなお阻害されていることに、引き続き失望を覚える。とくに委員会は、一部の宗教的集団の間で女子を学校に行かせない傾向が強まっていることに、懸念とともに留意するものである。 36.委員会は、締約国が引き続き、女子が直面している諸問題に対応し、かつ女子および男子の平等に関するキャンペーンおよび住民の意識喚起を進めるよう、勧告する。委員会は、女子に対する差別を防止しおよび解消しならびにこの点についてコミュニティを指導するための努力を支えるうえで、地域の指導者、宗教的指導者その他の指導者がいっそう積極的な役割を果たすよう求めることを、提案するものである。委員会はまた、締約国が、とくに女性差別撤廃委員会から2007年1月に勧告されたように(CEDAW/C/MDV/CO/3、パラ17-18)学校における教科書および教材の開発を図ることによって、社会における女性の包摂的役割を促進することも、勧告する。 37.委員会は、障害のある子どもが直面している事実上の差別について依然として懸念を覚える。委員会は、障害のある子どもによる社会サービスおよび保健ケアサービスへのアクセスが限定されており、かつこのような子どものためのインクルーシブな教育の機会がきわめて少ないことに、懸念とともに留意するものである。加えて委員会は、社会的スティグマが障害のある子どもの取扱いに影響を及ぼし続けており、かつ社会に参加するこのような子どもの能力を制限しているという締約国の懸念を共有する。 38.委員会は、締約国が、障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年、CRC/C/GC/9)を考慮しながら、障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しかつ禁止するとともに、法律第9/91号第5条および国内法のその他の関連規定を実施することによって、障害のある子どもが生活のあらゆる分野に全面的に参加する平等な機会を確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、あらゆる関連の政策立案および国家的計画に障害の諸側面を含めるよう勧告するものである。 39.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が行なった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 40.子どもの権利保護法(法律第9/91号)が条約第3条の精神を体現していることには留意しながらも、委員会は、国内の法律および政策においてこの原則に十分な注意が向けられておらず、かつ、子どもに関わる意思決定(たとえば監護に関する決定)においてこの原則が第一次的に考慮されてないことを、懸念する。委員会はまた、この原則の重要性に関する、政策立案者、立法者ならびに規定、規則および政策を執行する司法職員および行政職員の意識が低いことにも、懸念とともに留意するものである。 41.委員会は、締約国が、子どもに関わるすべての法律および実践に条約第3条を全面的に編入するとともに、子どもの最善の利益の原則の意味および実際の適用に関する意識啓発を図るよう、勧告する。委員会は、条約の主旨、すなわち子どもは自分自身の権利の主体であるという考え方が国内法に十分に反映され、かつ、子どもに関わるすべての意思決定(監護に関する決定を含む)において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するため、締約国が法律を批判的に見直すよう勧告するものである。 生命、生存および発達に対する権利 42.委員会は、婚外妊娠に対する強い社会的非難が不衛生な環境での妊娠中絶および嬰児殺の増加につながっていることを示唆する報告に、懸念とともに留意する。 43.委員会は、締約国が、条約第6条の全面的に実施に努めるとともに、婚外子の母親を支援する等の手段により、嬰児殺の防止および抑止ならびに婚外子である乳児を保護するための措置をとるよう、勧告する。これとの関連で、委員会はさらに、婚外妊娠から生ずるいかなる悪影響も解消し、かつ社会の態度を変革する目的で、教育および意識啓発のプログラムを導入するよう勧告するものである。 子どもの意見の尊重 44.委員会は、少年司法の運営の際の議論に対するすべての当事者、とくに子どもの参加を促進する目的で締約国が家族会議を導入したこと、および、教育法案において、自己の教育に影響を与える決定への子どもの参加が奨励されていることに、評価の意とともに留意する。家族法(法律第4/2000号)において、子どもに対し、自己の権利に影響を及ぼす可能性があるいかなる手続においても意見を聴かれる権利が定められていることには留意しながらも、委員会は、法律と実務との間に乖離があることを懸念するものである。委員会は、司法手続において意見を聴かれる子どもの権利が基本的に監護事件に限られていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、モルディブにおける一般的慣行において子どもの表現の自由が奨励されていないことにも、懸念とともに留意するものである。 45.条約第12条に照らし、かつ、意見を聴かれる子どもの権利に関する一般的討議(2006年9月15日)の際に採択された委員会の勧告に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対し、その権利に影響を及ぼす可能性があるすべての手続、とくに社会福祉機関、裁判所および行政機関がとる行動(地方レベルにおけるものも含む)において意見を聴かれる権利をその子どもの年齢および成熟度にしたがって認める目的で、家族法(法律第4/2000号)の実施を強化するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 子どもの参加権に関する公衆の意識を高め、かつ家庭、学校および社会一般における子どもの意見の尊重を奨励する目的で、子どもとともにおよび子どものために働く専門家(とくに教員およびソーシャルワーカー)ならびに市民社会(コミュニティの指導者、宗教的指導者および非政府組織を含む)の関与を得ながら、体系的なアプローチおよび政策の発展に努めること。 4.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 46.出生登録データベースの設置および親の意識啓発等の手段により出生登録制度を改善しようとする締約国の努力は歓迎しながらも、委員会は、現行の出生登録制度が引き続き困難に遭遇していることに、懸念とともに留意する。 47.条約第7条に照らし、委員会は、締約国が、とくに出生登録の必要性について世論を敏感にしかつ動員するための努力を強化することならびに出生登録データベースおよび出生登録担当者の研修を発展させることによって、出生登録制度を引き続き改善するよう勧告する。当面、出生を登録されていない子どもおよび公式の身分証明書類を持たない子どもに対しては、適正な登録がなされるまでの間、保健および教育のような基礎的サービスへのアクセスが認められるべきである。 宗教の自由 48.委員会は、締約国の憲法およびその他の法律規定が宗教的一体性を基礎としており、イスラム教以外のいかなる宗教の実践も禁じられていることに留意する。宗教の自由に関する特別報告者が2006年8月にモルディブを訪問した際の知見(A/HRC/4/21/Add.3参照)および締約国が条約第14条に付した留保を参照しつつ、委員会は、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利が全面的には尊重されかつ保護されていないことを懸念するものである。 49.条約第2条および第14条に照らし、委員会は、締約国が、宗教または信条を理由とするあらゆる形態の差別を防止しかつ解消するための措置をとり、かつ社会における宗教的寛容および対話を促進することにより、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利を尊重するよう、勧告する。 結社および平和的集会の自由 50.委員会は、結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利が実際には全面的に保障されているわけではないことを懸念する。 51.委員会は、締約国が、条約第15条にしたがい、結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利の全面的実施を確保するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、子どもたちに対し、自らが主導して団体を結成することを奨励するよう、勧告する。 情報へのアクセス 52.委員会は、国内外の多様な情報源からの情報および資料へのアクセスが、締約国の子どもにとって限られていることを懸念する。委員会は、環礁に図書館が設けられていないため、読み物への子どものアクセスがきわめて制約されていることに、特段の懸念とともに留意するものである。 53.委員会は、締約国が、多様な情報源、とくに子どもの社会的、霊的および道徳的福祉ならびに身体的および精神的健康の促進を目的とした情報源からの適切な情報に対する子どものアクセスを向上させるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、オンライン媒体等も通じ、環礁に住んでいる子どもが子ども向けの書物および雑誌にアクセスできるようにすることを、勧告するものである。 54.委員会は、締約国が、メディアに対し、子どもの権利(子どものプライバシー権を含む)を尊重しながらよりよい報道を行ない、かつメディア番組への子どもたち自身の参加を促進する目的でいっそう多くの子ども向け作品を制作することを奨励するよう、勧告する。 拷問および残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 55.委員会は、新刑法案第44条で家庭、学校および施設における子どもの体罰が合法化される旨の情報について懸念を覚える。委員会はまた、条約第37条(a)に反し、締約国の適用可能な法律のもとで、第二次性徴期に達した者は笞打ちの対象とされる可能性があることも、深刻に懸念するものである。 56.新刑法案の検討状況に照らし、委員会は、締約国に対し、18歳未満のときに犯罪を行なった者がいかなる形態の体罰(犯罪に対する刑としての体罰を含む)の対象ともされず、かつ、家庭、代替的養護の現場および少年施設、学校ならびに職場環境における、しつけおよび規律としての体罰が法律で禁止されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会は、子どもが有する、人間の尊厳および身体的不可侵性の尊重に対する平等なかつ不可譲の権利に直接抵触するこの慣行を解消するため、締約国が、積極的な教育プログラムおよび研修プログラムならびに意識啓発キャンペーンなど、他の適切な措置をとるよう勧告するものである。最後に委員会は、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年、CRC/C/GC/8)に対して締約国の注意を喚起する。 5.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 親の責任 57.委員会は、たとえば離婚率の高さによって引き起こされている家庭の不安定さが、効果的な子育てに悪影響を及ぼしてきたことを懸念する。 58.締約国は、条約第18条に照らし、とりわけ、親の指導および父母の共同責任に関する親(とくにひとり親)向けの研修を含む支援の提供を通じ、家庭に関する教育および意識を発展させる努力を強化するよう奨励される。 代替的養護および施設養護 59.委員会は、子どもの養護および保護に責任を負う公私のすべての施設、サービスおよび便益に関する基準を定め、かつ子どもの最善の利益の原則を強調する、「モルディブにおける18歳未満の子どものための施設およびグループホームについての指針」の起草を歓迎する。委員会は、2004年にビリンギリで新たな子どもホームが設立されたこと、および、ジェンダー・家族省がモルディブにおける養子縁組および里親委託(カファラ)について検討する実現可能性評価を実施したことに、留意するものである。委員会は、親および保護者が金銭的扶養を行なえないこと、離婚、別居および再婚によって家族構造が変化しつつあること、ならびに、家庭で子どもの虐待およびネグレクトが生じていることなどを含むいくつかの理由により、代替的養護を必要とする子どもの人数が増えていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、発展中である締約国の代替的養護制度が、これらの子どものニーズに対応するうえで複合的な課題に直面していることにも、懸念とともに留意するものである。 60.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが代替的養護に措置されることを防止するための、学際的アプローチに基づいた包括的政策(適切な法律、家族への金銭的援助および補足的サービス制度を含む)を策定しかつ実施すること。 (b) 代替的養護(里親養護、入所型養護、その他の形態の代替的養護)への子どもの措置が、権限のある学際的専門家集団によって慎重に実施される、子どものニーズおよび最善の利益に関するアセスメントに基づいて行なわれることを確保すること。 (c) 恣意的な措置および裁量に基づく措置を避けるため、子どもを代替的養護に措置する旨の決定が、権限のある公的機関によってかつ法律に基づいて行なわれ、かつ司法審査の対象とされること、および、条約第25条にしたがって措置が定期的再審査の対象とされることを確保すること。 61.委員会は、条約で認められた諸権利(子どもの最善の利益の原則を含む)に特段の注意を払いながら、家族/コミュニティを基盤とする代替的養護のような伝統的里親養護制度を発展させるよう奨励する。最後に委員会は、親のケアを受けていない子どもに関する委員会の一般的討議(2005年9月)の際に採択された勧告(CRC/C/153、パラ636-689)に対して締約国の注意を喚起するものである。 暴力、虐待およびネグレクト、不当な取扱い 62.委員会は、締約国が子どもヘルプライン・サービスの設置を進めている旨の情報を歓迎する。委員会は、締約国における子どもに対する暴力、児童虐待(性的虐待を含む)および子どもの不当な取扱いの深刻な問題に対応するためにとられている措置が不十分であることを、遺憾に思うものである。委員会は、法的枠組みにおいて性的虐待からの全面的保護が提供されておらず、かつ挙証責任も被害者に転嫁されていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、ドメスティックバイオレンスがモルディブ社会で広く容認されていること、および、モルディブ法で家庭における体罰が明示的に禁じられていないことにも、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家が、子どもの虐待および不当な取扱いの事案を発見し、通報しかつ処理するための十分な訓練を受けていないこと、および、メディアが子どもの保護に関わる問題をセンセーショナルに取り上げ、被害者に付与されるスティグマおよび恥辱を悪化させていることに、懸念とともに留意する。 63.条約第19条その他の関連規定に照らし、かつ子どもと暴力に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/100、パラ866およびCRC/C/111、パラ701-745)を考慮に入れながら、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力(家庭における性的虐待を含む)を禁止する目的で、この問題の規模および性質ならびに子どもに対する暴力に対応するための法的措置の効果を評価する、家庭におけるドメスティックバイオレンス、子どもの不当な取扱いおよび児童虐待についての全国的研究を行なうこと。 (b) 「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」の一環として、ドメスティックバイオレンス、子どもの不当な取扱いおよび児童虐待を防止しかつこれに対応するための包括的な国家的戦略を策定するとともに、態度の変革に寄与する十分な措置および政策をさらに採択すること。 (c) 親ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家(教員、法執行官、保健専門家、ソーシャルワーカーおよび裁判官など)を対象として、子どもの虐待および不当な取扱いの発見、通報および処理に関する研修を行なうこと。 (d) 苦情を受理し、監視しおよび調査し(必要なときの介入を含む)、ならびに、虐待された子どもが法的手続で被害を受けず、かつそのプライバシーが保護されることを確保しながら不当な取扱いの事案を訴追するための、効果的な手続および機構を設置すること。 (e) 暴力および虐待の被害を受けたすべての子どもが、十分なケア、カウンセリング、ならびに回復および再統合のためのサービスをともなう援助にアクセスできることを確保すること。 (f) 暴力、虐待および不当な取扱いの被害を受けた子どもの報道にメディアが前向きな形で関与することを奨励しかつ促進するとともに、メディアが子どものプライバシー権を全面的に尊重することを確保すること。 (g) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。 64.子どもに対する暴力に関する国連研究について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 南アジア地域協議(パキスタン、2005年5月19~21日)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の独立専門家報告書(A/61/299)に掲げられた全般的勧告および場面に応じた勧告を実施するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの関与を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (c) ユニセフ、OHCHRおよびWHOの技術的援助を求めることを検討すること。 6.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 65.委員会は、若干の関係者とともに国家障害政策を起草するために締約国が行なっている努力を心強く思う。しかしながら委員会は、障害を発見し、かつ障害のある子どもに早期介入サービスを提供するための努力が締約国では十分でない可能性があることを、懸念するものである。委員会は、十分かつ適切なサービス、財源および訓練を受けた専門の人材が存在しないことが、障害のある子どもがすべての人権および基本的自由を全面的に享受することに関わる重要な障壁であり続けていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、利用可能なほとんどのサービスは標準化されておらず、かつ十分な監視および評価の対象ともされていないことにも、懸念とともに留意するものである。委員会は、普通教育に包摂されている障害児の人数がきわめて限られていることを遺憾に思う。加えて委員会は、回復のためのサービスを提供している市民社会組織が十分な人的資源、技術的資源および財源を有していないことに、懸念とともに留意するものである。 66.委員会は、締約国が、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年、CRC/C/GC/9)を考慮しながら、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに関する十分な統計データを収集するとともに、社会における障害者の機会均等を促進する、障害に関する包括的かつ具体的な国家的政策を策定するにあたってそのような細分化されたデータを活用すること。 (b) 障害のある子どもが、十分なかつ標準化された社会サービスおよび保健サービス(早期介入サービス、心理サービスおよびカウンセリング・サービスを含む)ならびに十分な物理的環境、情報およびコミュニケーションにアクセスできるようにすること。 (c) 障害のある子どものためのサービスの質を監視しかつ評価するとともに、利用可能なすべてのサービスについての意識啓発を図ること。 (d) 公教育政策および学校カリキュラムがそのあらゆる側面において完全参加および平等の原則を反映することを確保するとともに、障害のある子どもを可能なかぎり普通学校制度に包摂し、かつ、必要なときはその特別なニーズに適合した特別教育プログラムを確立すること。 (e) 島のコミュニティが独自のリハビリテーション・プログラムおよび親支援グループを設置することを奨励しかつ援助する目的で、CARE協会その他の市民社会組織と連携しながらコミュニティ・リハビリテーション・プログラム(CBR)を支援しかつ拡大すること。 (f) 医療従事者、準医療従事者および関連要員、教員ならびにソーシャルワーカーのような、障害のある子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家が十分に訓練されることを確保すること。 (g) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書に署名し、かつこれを批准すること。 (h) とくにユニセフおよびWHOとの技術的協力を追求すること。 健康および保健サービス 67.委員会は、拡大予防接種プログラムの成功を歓迎するとともに、5歳未満児死亡率および乳児死亡率の削減に関する締約国の進展に評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、マレと諸環礁間で削減率に相当の差があることに、懸念とともに留意するものである。ユニセフの支援を得てコミュニティ基盤型の栄養教育・発育監視システムが設けられていること、および、締約国が2015年までに低体重児の割合を半減させるというMDG〔ミレニアム開発目標〕を達成できる可能性が高い見込みであることは歓迎しながらも、委員会は、モルディブにおける子どもの栄養不良率が高いことを懸念する。委員会は、締約国が、世界のどこよりも地中海貧血症(遺伝性の血液疾患)の発生率が高い国のひとつとして知られていることに留意する。加えて、妊産婦保健ケアの質および利用可能性、伝統的医療慣行の蔓延、感染症によって引き起こされる脅威、ならびに、多くの小島における必須医薬品の欠乏が、懸念の対象となるところである。 68.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約、とくに第4条、第6条および第24条を全面的に実施する目的で、適当な資源が保健部門に配分されること、ならびに、締約国が子どもの健康状態を向上させるための包括的な政策およびプログラムを策定しかつ実施することを確保すること。 (b) とくに産前産後保健に関わる良質なサービスおよび便益へのアクセスを保障することにより、乳児および5歳未満児の死亡を削減するための措置(助産婦および伝統的産婆の研修プログラムを含む)を引き続きとること。 (c) 健康的な摂食習慣の教育および促進を通じ、子どもの栄養状態を改善するための努力を強化すること。 (d) 国内全域の母子が良質なプライマリーヘルスサービスにいっそうかつ平等にアクセスできることを促進するとともに、とくにより小さな島々に住んでいる子どもが保健ケアおよびカウンセリングならびに必須医薬品にアクセスできることを確保する目的でコミュニティヘルスワーカーのネットワークを確立すること。 (e) 引き続き、地中海貧血症の子どもに十分な治療および保健サービス(移動保健班の活用等によるものも含む)を提供し、かつ、地中海貧血症の治療にかかる高額の負担をまかなえるよう家族その他の養育者に対して金銭的支援を提供すること。 (f) 引き続き、この問題に関してとくにWHOおよびユニセフと協力し、かつその技術的援助を求めること。 思春期の健康 69.全般的に、委員会は、締約国において青少年の性的な発達、行動、関係および態度に関する知識が限定されていることを懸念する。委員会は、望まない妊娠および早すぎる妊娠を防ぐ方法ならびに性感染症(STI)の予防方法に関する情報およびサービスについての知識およびこれへのアクセスが限られていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、親の同意を得ずに法律上および医療上の相談を行なうことができる年齢が18歳であることも遺憾に思う。 70.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する一般的意見4号(2003年、CRC/GC/2003/4)を考慮しながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 青少年の性的な発達、行動、関係および態度も含む包括的な全国的若者研究を実施するとともに、この研究の結果に基づき、青少年に対し、そのプライバシーを尊重しながら、適合を図った、かつ若者に配慮した保健サービスおよびカウンセリングを提供すること。 (b) 学校および青少年が頻繁に訪れる他の適当な場所で青少年の健康を促進する(性教育およびリプロダクティブヘルス教育も含む)とともに、教員が性およびリプロダクティブヘルスに関わる問題について話し合うための十分な訓練を受けていることを確保すること。 HIV/AIDS 71.委員会は、包括的な「国家AIDS統制プログラム」が1987年に開始されたこと、および、「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」において、とくに、乳児および青少年のHIV/AIDS感染件数を削減し、かつ、同世代による、とくに若者に向けたHIV/AIDS情報にアクセスできるようにすることが目指されていることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、HIV/AIDSおよびその予防に関する意識啓発のために締約国がイスラム問題最高評議会と共同で行なっている努力にも、評価の意とともに留意するものである。締約国におけるHIV/AIDS有病率が低いことには留意しながらも、委員会は、移動性の高さ(教育および就労の目的で国外に行くモルディブ人が多い)、薬物濫用の増加、国外観光旅行の成長および観光労働者の増加、ならびに、環礁における保健サービスへのアクセスの制約のような、既存のリスク要因について懸念を覚える。 72.委員会は、締約国が、HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年、CRC/GC/2003/3)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(注1)を考慮しながら、以下のを措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSの罹病および拡散を防止するため、「国家AIDS統制プログラム」を実施するための努力を強化すること。そのための手段としては、たとえば、前述した既存のリスク要因のすべてに対応するため同プログラムを改訂すること、および、青少年に対し、学校および青少年が頻繁に訪れる他の場所において、HIV/AIDS、その感染経路、治療および予防措置に関する正確かつ包括的な情報を提供することなどが挙げられる。 (b) 子どもが十分な社会サービスおよび保健サービスにアクセスできることを確保するとともに、子どもが、要請があるときは子どものプライバシーが全面的に尊重される、子どもに配慮した、かつ秘密が守られるHIV/AIDSカウンセリングにアクセスできることを確保すること。 (c) とくにUNAIDS〔国連エイズ合同計画〕、WHOおよびUNFPA〔国連人口基金〕の技術的援助を求めること。(注1)HR/PUB/06/9, United Nations publication (sales No. E.06.XIV.4)(オンラインで右記からも入手可能:http //www.ohchr.org/english/issues/hiv/docs/consolidated_guidelines.pdf) 生活水準 73.委員会は、モルディブにおける貧困削減のための締約国の努力が功を奏していることを心強く思うとともに、「ビジョン20/20」、第7次国家開発計画および第1次貧困削減戦略文書(PRSP)を含む、住民の生活水準を向上させるための国家的な諸戦略および諸計画が採択されたことを歓迎する。委員会はまた、締約国が、世界銀行と連携しながら、貧困下で暮らしている子どものニーズに対応する社会的セーフティネット・プログラムを策定中であることにも留意するものである。しかしながら委員会は、所得水準の地域格差が大きく、北部環礁が経済的にもっとも不利な立場に置かれた地域であることを懸念する。委員会はまた、子どもの多い世帯が最貧層に属していること、および、多くのセーフティネット・プログラムが、しばしば臨時に実施されかつ戦略枠組みを欠いており、低所得家庭に保護を提供できていないことにも、留意するものである。 74.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに、マレと諸環礁との間にある地域格差および北部環礁と南部環礁との間で増大しつつある格差に対応することにより、効果的な貧困削減措置のために引き続き資源を配分すること。 (b) とくに、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減戦略を実施しかつ監視する能力の増進を図ることにより、貧困下で暮らしている住民の生活水準に対応するための努力を強化すること。 (c) セーフティネット・プログラムに対する年間支出を増加させ、かつもっとも脆弱な立場に置かれた集団を対象とするセーフティネット・プログラムを開発することにより、貧困下で暮らしている子どもおよび家族の支援を目的とした、使途指定による資金および具体的援助を提供するための努力を強化すること。 (d) 貧困下で暮らしている子どもに対し、社会サービス、保健サービス、教育および十分な住居へのアクセスが提供されることを確保すること。 (e) 貧困下で暮らしている子どもに対し、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減プログラムを計画しかつ実施する際に、意見を聴かれかつ意見を表明する機会を提供すること。 7.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 75.委員会は、2004年12月のインド洋津波によってモルディブの数百の学校(学校用家具、校内設備および書籍を含む)が損壊したことを認知する。委員会は、国際社会、国連専門機関(とくにユニセフおよびユネスコ)、ドナー諸国、非政府組織および地方コミュニティと連携しながら、学校の再建および整備のために迅速な措置がとられたことについて、締約国を称賛するものである。 76.委員会は、人が住んでいるすべての島で無償の初等教育が利用可能とされており、かつ初等学校就学率および識字率が高いことに、満足感とともに留意する。締約国が法律で初等教育を義務化しようとしていることには留意しながらも、委員会は、この点に関わる立法プロセスに時間がかかっていることを遺憾に思うものである。委員会は、バウチャー・プログラムが実施されているにも関わらず、教科書および学校用制服の費用が低所得家庭にとって負担となっており、教育に対する子どもの平等なアクセスを危うくしていることに、懸念とともに留意する。中等教育に関して、委員会は、その利用可能性が限られており、かつ就学率がいまなお満足のできる水準に達していないことを懸念するものの、2010年までにすべての子どもが中等学校にアクセスできるようにするために締約国が行なっている努力を心強く思うものである。委員会は、職業教育が国家的優先課題のひとつに位置づけられており、かつ2006年から中等学校の選択科目として導入されたことに留意する。委員会は、学校で不適切な行動をした子どもが最後の手段として退学させられる可能性があることを、懸念するものである。 77.委員会は、学校教科書、カリキュラムおよび学校運営においてジェンダーに関わる先入観および固定観念が見られること、ならびに、適切な衛生設備(男女別のトイレを含む)が設けられていないことにより、教育、とくに中等学校への女子の完全参加が阻害されていることを懸念する。 78.条約第28条に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために十分な財源、人的資源および技術的資源を引き続き配分するよう、勧告する。 (a) 初等教育を義務化する目的で教育法の承認および制定を急ぐとともに、7年間の初等学校の枠を超えて義務教育を拡大することを検討すること。 (b) たとえば追加的費用をまかなうためのバウチャー・プログラムを強化することにより、すべての子どもがいかなる金銭的障害もなく平等に教育にアクセスできることを確保すること。 (c) 学校教科書からジェンダーに関わる先入観および固定観念を取り除き、かつすべての学校で女子用の衛生設備が整備されることを確保するとともに、学校管理者および学校職員を対象としてジェンダー研修も行なうこと。 (d) たとえば寄宿学校の設備を提供することにより、中等教育の利用可能性および中等教育就学率を高め、かつ中等教育へのアクセスを促進するための漸進的措置を引き続きとること。 (e) 中等学校段階における職業訓練の便益を拡大すること。 (f) 教育に対する子どもの権利を確保する目的で、退学以外の手段で子どもを懲戒する方法および手段を見出すこと。 (f)〔ママ〕 教育部門をさらに改善する目的で、とくにユネスコおよびユニセフとの協力を追求すること。 79.委員会は、ユニセフの乳幼児期発達プログラムに留意するとともに、子どもの約半数が初等前教育施設に就学していることに留意する。委員会は、マレと諸環礁との間に初等前教育へのアクセスに関する地域格差があること、初等前教育が非公式なものとして位置づけられていること、および、訓練を受けた教員が欠乏していることに関する締約国の懸念を共有するものである。 80.委員会は、締約国に対し、初等前学校教育の位置づけを公式なものとし、かつすべての子どもが乳幼児期教育にアクセスできるようにするよう、奨励する。委員会は、締約国が、乳幼児期における子どもの権利の実施に関する委員会の一般的意見7号(CRC/C/GC/7)を考慮に入れることにより、就学前教育施設および早期の学習機会に関する親の意識および動機を高めるとともに、乳幼児期教育を促進し、発展させ、かつ調整する(教員の養成および研修を含む)ための全国的機構を設置するよう、勧告するものである。 教育の目的 81.「良質教育プログラム」、および、ユニセフによる教員リソースセンターの設置には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、訓練を受けていない教員の割合が高いために教育の質に深刻な影響が生じていること、および、政府立学校とコミュニティ学校およびマレの学校と諸環礁の学校との間に地域格差があることに、懸念を表明する。委員会はまた、人権教育がカリキュラムの不可欠な一部とされていないことにも、懸念とともに留意するものである。 82.条約第29条に照らし、かつ教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 教員を対象として適切な着任前研修および現職者研修を行なうことを通じ、マレおよびすべての諸環礁の政府立学校およびコミュニティ学校のいずれにおいても教育の質を向上させるための努力を、さらに強化すること。 (b) 教員に対してしかるべき生活賃金を確保するとともに、たとえばメディアを通じて教育職の世評を高めるように努めること。 (c) すべての教育段階の公式カリキュラムに人権教育、とくに子どもの権利に関する人権教育を含めること。 (d) とくにユネスコ、ユニセフおよび非政府組織との技術的協力を引き続き追求すること。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 83.委員会は、子どものスポーツおよび文化的活動を推進するために青少年スポーツ省がとっている措置にも関わらず、子どもの遊び、休息および余暇が締約国において全体的には支持されていないことを懸念する。 84.条約第31条に照らし、委員会は、締約国に対し、休息、余暇および遊びに対する子どもの権利の実施(子どものための遊び場の創設を含む)に対していっそうの注意を払いかつ十分な資源(人的資源および財源の双方)を配分するよう、奨励する。委員会は、締約国が、親その他の養育者を対象として、子どもの遊びの奨励を目的とした、創造的遊びおよび探索的学習の価値に関する研修を行なうよう、勧告するものである。 8.特別な保護措置(条約第22条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条および第30条) 経済的搾取(児童労働を含む) 85.委員会は、モルディブが国際労働機関(ILO)への加盟およびILO諸条約の批准を検討している旨の、締約国から提供された情報に留意する。14歳未満の子どもの雇用が一般的に禁じられている(法律第9/91号)ことに関わりなく、委員会は、児童労働の使用を防止し、かつ経済的搾取、とくに危険な労働から子どもを保護する法的枠組みが存在しないことに、懸念とともに留意するものである。しかしながら委員会は、新たに作成された労働法案が2006年2月に議会に提出されたことに留意する。 86.経済的搾取から子どもを保護する法的枠組みが存在しないことから、委員会は、職を求めてまたは家事労働者として働くために諸環礁からマレへやってくる子どもが多いことを深刻に懸念する。加えて委員会は、マレにおいて中等教育を提供する寄宿学校の数が不十分であることから、子どもが家庭に寄宿し、かつ部屋および食事の対価として家事を行なうことを余儀なくされていることに、懸念とともに留意するものである。 87.条約第32条その他の関連条項にしたがい、委員会は、締約国に対し、ILOに加盟し、かつ就業が認められるための最低年齢(第138号)ならびに最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動(第182号)に関する両ILO条約を批准するとともに、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 労働法の承認および制定を速やかに進めるとともに、労働法の規定が、条約の規定および原則ならびに最低就労年齢および労働条件に関する国際労働基準に全面的に一致することを確保すること。 (b) 新労働法の規定で、この〔児童労働の〕現象がより蔓延しているインフォーマル部門で働く子どもも対象とされることを確保すること。 (c) 子どもが行なう労働が軽易労働であって搾取的なものではないこと、および、子どもによる家事労働および農村労働の慣行を監視しかつ報告する権限が労働監察制度に与えられることを保障する目的で、労働監察制度を改善すること。 (d) 学業中の子どもがマレにおける家庭寄宿の対価として経済的な搾取および虐待の対象とされることを防止するため、子どもが適切かつ良質な寄宿学校および安全なかつ監視の対象とされる家庭寄宿にアクセスできるようにするとともに、マレ以外の他の環礁に寄宿学校施設を建設すること。 (e) ILO/IPEC〔児童労働撤廃国際計画〕の技術的援助を求めること。 麻薬および向精神薬の不法な使用 88.委員会は、モルディブにおいて薬物依存の問題が急速に拡大しつつあることを深刻に懸念する。委員会は、薬物を最初に使用する平均年齢は12歳であるものの、それより幼い子どもでさえ薬物の使用を開始していることがわかっていること、および、とくに、多くの子どもが最初に使用する薬物がヘロインであることに、懸念とともに留意するものである。委員会は、子どもの薬物依存の問題に対し、子どもを被害者ではなく犯罪者として扱うことによって対応しようとする締約国のアプローチを遺憾に思う。委員会はまた、現在のところ、16歳未満の子どもがとくに関わる薬物濫用問題に対応する権限を国家麻薬統制局(NNCB)が有しておらず、かつ、麻薬および向精神薬を使用する子どものための、とくに子どもを対象とした回復・再統合サービスが存在しないことも、遺憾に思うものである。加えて、麻薬を使用する子どものハイリスクな性的行動、および、麻薬に関連した集団的暴力は、深刻な懸念の理由となる。 89.条約第33条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 薬物を誤用する子どもへの、より子どもに配慮した回復志向のアプローチをとる目的で、麻薬および向精神薬に関する国内法を見直しかつ改訂すること。 (b) 麻薬の不法な使用から子どもを保護し、かつこのような物質の不法な取引における子どもの使用を防止するため、あらゆる適当な措置(行政上、社会上および教育上の措置を含む)をとること。 (c) 薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どもに適合した、再統合および回復のための学際的なプログラムを緊急に導入すること。 (d) 子どもに伝えられる情報を強化するために家族およびコミュニティも包摂した、子どもをとくに対象とする防止プログラムを導入すること。 (e) 刑事的措置に限られるのではなく、青少年間の薬物に関連する集団的暴力および犯罪の根本的原因にも対応する包括的な戦略(周縁化された青少年を社会的に包摂するための政策も含む)を採択すること。 (f) とくに国連薬物犯罪事務所(UNODC)、ユニセフおよびWHOの指導および技術的援助を求めること。 性的搾取 90.観光がモルディブにおける主要な収入源であることに照らし、委員会は、子どもが児童買春および児童ポルノを含む性的搾取の被害を受けやすくなる可能性があること、および、性的搾取を防止しかつ犯罪化するための法的枠組みが不十分であることを、懸念する。たとえば委員会は、ひとり暮らしをしている子どもまたはマレを訪問する子どもがさまざまな形態の搾取の被害を受けやすいことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、とくに国外居住労働者が関与している場合に、子どもの性的搾取に関する通報が不十分でありかつ選択的に行なわれていることにも留意する。委員会は、ポルノグラフィーの製造、頒布および所持が一般的に禁じられていることに留意するものの、児童ポルノを禁じた具体的な法規定が存在しないことを遺憾に思うものである。 91.委員会は、警察の家族・子ども保護部(FCPU)が子どもの性的搾取に関わるすべての事件に対応していることに評価の意とともに留意するものの、FCPUが置かれているのがマレに限られていること、および、環礁警察署では子どもの性的搾取、児童買春および児童ポルノの重大事犯を発見しかつこれに対応する資源が限られており、かつそのための訓練も不十分であることに、懸念とともに留意する。 92.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、適切な政策および措置(性的搾取の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進することも含む)を立案しおよび実施し、ならびに、被害を受けた子どもの犯罪化を回避する、より焦点が絞られた方法で子どもの性的搾取を防止しおよびこれと闘う目的で、締約国が、子どもの性的商業的搾取に関する全国的研究を行なうよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、第1回(ストックホルム、1996年)および第2回(横浜、2001年)の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮するよう、奨励するものである。 93.委員会は、締約国が、地域におけるセックス・ツーリズムの増加のような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、旅行および観光における性的商業的搾取からの子どもの保護に関して世界観光機関が定めた行動規範の遵守を向上させる目的で、この点に関するモルディブ観光振興委員会(MTPB)および観光業者と引き続き連携するよう、勧告する。 94.委員会は、締約国が、全環礁の警察に対して十分な資源および訓練を提供することにより、性的搾取の事件を捜査するための努力を強化するよう勧告する。最後に委員会は、締約国に対し、インターネット上の児童ポルノについてのインターネット・サービス・プロバイダの義務に関する特別法の採択を検討するよう、奨励するものである。 搾取目的の子どもの人身取引 95.委員会は、子どもの人身取引はモルディブでは問題となっていないという見解を締約国が根強く維持していること、および、この点に関する防止措置(立法上の措置を含む)がとられていないことを遺憾に思う。 96.委員会は、締約国に対し、モルディブにおける子どもの人身取引の規模、性質および態様変化に関する調査研究を実施し、かつ包括的な統計データを提供するよう、促す。委員会はまた、締約国が、人の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書に定められたあらゆる形態の人身取引を犯罪化する目的で、包括的な人身取引禁止法を制定することも勧告するものである。 少年司法の運営 97.委員会は、締約国が少年司法の運営の改革中である(少年司法法を起草する計画も含む)こと、ならびに、締約国が「家族会議」プログラムを導入したことおよび警察署内に家族・子ども保護部を設置したことに、留意する。委員会はまた、締約国が、ユニセフの支援を得て、アッドゥの少年裁判所および警察署に少年司法の運営に関するデータベースを設置し、さらに、収集されたデータをこれらのデータベース内で分類しかつ細分化していることにも留意するものである。委員会はまた、国家刑事司法行動計画(2004~2008年)にも留意する。 98.これらの前向きな措置がとられたにも関わらず、委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) 少年司法の運営が、依然として、法律に抵触した子どもの更生および再統合のための措置を提供する修復的モデルではなく、処罰および拘禁の原則に基づいて行なわれていること。 (b) 刑事責任に関する最低年齢(10歳)が依然として低すぎること。 (c) 7歳以上の子どもがハッド罪に問われる可能性があり、したがって死刑の対象とされる可能性があること。 (d) 犯罪に対する刑としての体罰および懲戒目的の体罰が合法とされていること。 (e) 家族会議プログラムが導入されたにも関わらず、自由の剥奪に代わる措置および刑の選択肢が用意されていないこと。 (f) 少年裁判所がマレにしか設けられておらず、かつ訓練を受けた少年裁判官がいないこと。 (g) 現行の少年司法規則が、刑事手続の際の子どもの聴聞について規定していないこと。 (h) 家族会議の結果または裁判所の決定に如何に関わらず、学校が、教育省の定めた規則を遵守する必要性から、法律に抵触した子どもを退学させることを余儀なくされていること。 (i) 子どもがドゥーニドゥ拘禁センターにおいてきわめて劣悪な環境で拘禁されていること。 99. 委員会は、締約国が、委員会が新たに採択した少年司法における子どもの権利に関する一般的意見10号(CRC/C/GC/10)を考慮しながら、少年司法に関する国際基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)のような、この分野における他の関連の国際基準の全面的実施を確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。 委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 少年司法法を起草しかつ制定するための努力を加速させるとともに、この法律の規定が条約および少年司法の運営に関する他の国際基準の規定および原則と全面的に一致すること(刑事司法手続の際の子どもの聴聞も含む)を確保すること。 (b) 自由の剥奪が最後の手段としてのみ用いられることを確保するため、地域奉仕命令、家族会議および修復的司法介入のような代替的措置の包括的システムを引き続き発展させかつ実施すること。 (c) 刑事責任に関する最低年齢を少なくとも12歳まで引き上げること。 (d) 18歳未満の者が行なったハッド罪について死刑を廃止すること。 (e) 犯罪に対する刑としての体罰および懲戒目的の体罰の使用を廃止すること。 (f) 十分な訓練を受けた専門家(専門の裁判官、検察官および警察官など)を擁する専門の少年裁判所を可能なかぎり設置するとともに、移動裁判所の設置を検討すること。 (g) 法律に抵触した子どもが教育にアクセスできるようにするため、教育省が定めた規則を見直すこと。 (h) 法律に抵触した子どもを対象とする拘禁施設および行刑施設の環境を改善するための効果的な措置をとるとともに、子どもに対し、成人とは別の拘禁施設を用意すること。 (i) 拘禁環境の独立した監視、および、苦情申立て、調査および執行のための効果的な機構へのアクセスを確保すること。 (j) UNODC、ユニセフ、OHCHRおよび非政府組織も参加する国連・少年司法に関する機関横断パネルの技術的援助を求めること。 9.子どもの権利条約の選択議定書 100.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書が2004年6月以降、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書が2007年1月以降、期限を過ぎても未提出であることを想起するよう求める。委員会は、定期的なかつ時宜を得た報告実践の重要性を強調するものであり、したがって、これらの報告書を速やかに(可能であれば、審査プロセスを容易にするために同時に)提出するよう奨励する。 10.フォローアップおよび普及 フォローアップ 101.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会および国民議会(マジリス)の構成員ならびに適用可能なときはすべての環礁に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 102.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回・第3回統合定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 11.次回報告書 103.委員会は、締約国に対し、2011年9月12日(すなわち第5回定期報告書の提出期限の18か月前)までに第4回・第5回統合定期報告書を提出するよう慫慂する。これは、委員会が毎年多数の報告書を受領することを理由とする例外的措置である。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。 104.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された、国際人権条約上の報告に関する統一指針(HRI/MC/2006/3 and Corr.1)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、コア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年4月20日)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/120.html
総括所見:スウェーデン(第2回・1999年) 第1回(1993年)/第3回(2005年)/第4回(2009年)/第5回(2015年)OPAC(2007年)/OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/65/Add.3(1999年5月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1999年1月22日に開かれた第521回~第522回会合(CRC/C/SR.521-522参照)においてスウェーデンの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.3)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1999年1月29日に開かれた第531回会合において。 A.序 2.委員会は、第2回定期報告書が時宜を得た形で提出されたことを歓迎し、かつ、その間にも委員会に対して自発的に追加的情報を提出したことに関して、締約国を称賛する。委員会は、報告書が包括的なものであることに対する評価の意を表明する一方で、報告書が委員会の指針に完全に従っているわけではないことを遺憾に感ずるものである。そのことは、とくに、報告書が第1回報告書にすでに含まれていた情報を繰り返していること、および、当該報告書の審査後に委員会が公にした総括所見およびその実施に関する言及がきわめて限られていることに、表れている。報告書は立法措置の説明にあまりにも焦点を当てすぎており、子どもの実情に関する統計的その他の情報の記載は限られていた。委員会はまた、事前質問票(CRC/C/Q/SWE/2)に対する文書回答、および対話の過程で提供された追加的情報にも留意する。これにより、委員会はスウェーデンにおける子どもの権利の実施に関する進展を評価することができた。委員会は、締約国の代表との建設的対話を歓迎するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、条約の原則および規定との一致を確保するため現行法を見直す議会委員会が設置されたことを評価する。 4.委員会は、委員会の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ12参照)を実施するための締約国の努力を評価し、かつ、条約、とくに第37条、第39条および第40条ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則のようなこの分野の他の関連の国際基準と少年司法制度との両立を向上させるために法律を見直しかつ適切な措置をとることに関して達成された進展を歓迎する。 5.委員会は、子どもの商業的性的搾取と闘う国際的努力をスウェーデンが支援していることを称賛し、かつ、「子どもの商業的性的搾取撲滅のための国内行動計画」が1997年に採択されたことを歓迎する。 6.委員会は、開発協力プログラムにおける子どもの権利への継続的コミットメントに関して締約国を称賛し、かつ、締約国が、GDPの0.7%を開発援助に充てるという国際連合の目標を満たしかつ超えている数少ない国のひとつであることに、満足感とともに留意する。委員会は、外務省およびスウェーデン国際開発庁で働く職員に対し人権および子どもの権利に関する研修を提供するための締約国の努力を歓迎するものである。 C.主要な懸念事項および委員会の勧告 7.自治体によるサービス提供における地方分権化の積極的側面には留意しながらも、委員会は、地方分権化が、政策における矛盾、および子どもおよび家族へのサービスの提供またはアクセス可能性における格差をもたらしてきたことを懸念する。前回の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ10参照)に沿い、委員会は、条約の実施におけるいかなる差別からも子どもを全面的に保護することを目的とした政府の政策の枠組みを自治体が尊重することを確保するため、締約国がいっそうの努力を行なうよう勧告するものである。 8.委員会の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ10)にしたがって1993年に子どものためのオンブズマンが設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国との対話中に提起された、子どものためのオンブズマンの役割、自律性および構造的立場に関する多くの論点について懸念する。委員会は、1人委員会によって遂行される、オンブズマンの効果についての調査が開始されたことを歓迎し、かつ、締約国に対し、その結果を注意深く検討しかつ子どものためのオンブズマンの役割および自律性について見直しを行なうことを検討するよう、奨励するものである。 9.委員会は、締約国が1991年~1993年に経験した景気後退の影響が予算緊縮措置につながり、それが子どもに影響を与えかつ条約の実施における進展の達成に関して懸念を引き起こしていることに、留意する。特別な支援のニーズを有する子どもたちに対する追加的な資源の利用を優先させるという締約国の決定は歓迎しながらも、委員会は、予算緊縮措置の結果として、一部自治体が提供する教育サービスおよび社会サービスが有償化されかつ縮小されていることを依然として懸念するものである。委員会は、条約第4条にしたがって利用可能な手段を最大限に用いて条約を実施する努力をあらためて行なうため、締約国が予算削減の影響を再検討するよう勧告する。 10.委員会は、他国に居住する子どもまたは他国の国籍を有する子どもの婚姻年齢を低く設定した法律を見直すという締約国の決定を歓迎する。委員会は、締約国に対し、早期婚の有害な影響に対する保護を強化し、かつその管轄内にある子どものあいだでの差別を解消するため、当該法律の改正を検討するよう奨励するものである。 11.条約第2条および委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ7および13参照)に関して、委員会は、不法移民の子ども、いわゆる「隠れた子ども」を対象として差別の禁止の原則が全面的に禁止されていないことに、懸念とともに留意する。委員会は、締約国に対し、不法移民の子どもが利用可能なサービスを緊急保健サービスの提供以外にも拡大するため、政策を見直すよう勧告するものである。 12.委員会は、人種主義および外国人嫌悪の増加が報告されていることに懸念を表明し、かつ、「不法な差別」および「民族グループに敵対する煽動」に関する現行法の効果に関して締約国が抱いている懸念を共有する。委員会は、締約国に対し、当該法律を見直すという決意表明にしたがって行動するよう奨励し、かつ、条約第2条2項で規定されているように子どもがあらゆる形態の差別から保護されることを確保するため、あらゆる適切な措置をとるよう促すものである。 13.国籍を取得する権利に関して、委員会は、無国籍の子どもに関する現行法について懸念する。委員会は、締約国に対し、市民権法の改正を完了させるよう奨励し、かつ、結果として行なわれる改正において条約第7条が全面的に考慮されるよう促すものである。 14.措置の実行および議論が行なわれていることには留意しながらも、委員会は、ポルノグラフィー的題材へのアクセスからの子どもの保護について依然として懸念する。委員会は、締約国に対し、条約第13条、第17条および第18条の規定を念頭に置きながら引き続きあらゆる適切な措置をとるよう奨励するものである。 15.条約第11条との関係で、委員会は、スウェーデンが、子の監護の決定の承認および執行ならびに子の監護の回復に関する欧州条約および国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約の加盟国であることに、満足感とともに留意する。委員会は、締約国に対し、上記の2つの条約に加盟していない国と同趣旨の二国間協定を締結する努力を引き続き行なうこと、監護権に関する外国の決定の承認に関する現行法を見直すこと、および、親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関するハーグ条約(1996年)の批准を検討することを、奨励するものである。 16.一部の自治体が無償で家族カウンセリング・サービスを提供していること、および他の自治体で課されている料金も高すぎはしないように思えることには留意しながらも、委員会は、相当数の家庭にとって、そのような料金が必要な助けおよび援助を求めることをためらわせる要因になっていることを懸念する。委員会は、とくにもっとも傷つきやすい立場に置かれたグループを対象として家族カウンセリング・サービスへのアクセスを容易にするため、締約国がこの点に関する政策を見直すよう勧告するものである。 17.委員会の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ9および11参照)に関して、児童虐待の発生の義務的通報制度について専門家への研修の提供を強化するうえで行なわれた努力は評価しながらも、委員会は、この制度が満足に機能していないことを懸念する。委員会は、条約第19条にしたがってあらゆる形態の虐待からの子どもの保護を向上させるため、締約国が引き続き努力しかつさらなる措置をとるよう勧告するものである。 18.締約国はもっとも広範な公的支援制度を有している国のひとつであるが、自治体間および社会階層間の格差は広がっており、その結果、社会的排除および緊張、ならびに経済的に不利な立場に置かれたグループに供給されるサービスの貧困がもたらされているように思える。委員会は、とくにより貧しい家庭を対象として社会手当に万人がアクセスできることを確保するため、条約第2条、第26条、第27条および第30条にしたがってあらゆる適切な措置をとること、および、この点についての公衆に対する情報提供を強化することを、勧告するものである。 19.1999年の年次学校監査をいじめの問題に集中して行なうという締約国の計画は歓迎しながらも、委員会は、締約国に対し、学校におけるいじめを防止するための努力を継続すること、この現象の規模に関する情報を収集すること、および、とくに、この問題への充分な対応およびその解決に子どもが参加できるようにするための具体的な体制を確立することを、奨励する。 20.委員会は、予算削減が子どもの教育への権利に与える影響について依然として懸念する。委員会は、締約国に対し、補習教育に対するより高い水準の資金拠出を回復し、かつ、特別な援助のニーズを有する子どもたちへと対象を拡大する決定を行なうよう奨励するものである。委員会はまた、条約第2条、第3条、第28条および第31条にしたがって教育および余暇活動に対する子どもの権利を考慮にいれ、とりわけ就学前センターおよび保育センターの教育的役割を向上させようとする現在の努力との関連で、働いていない親の子どもの保育サービスへのアクセスに関する政策を見直すようにも勧告する。 21.前回の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ13)に関して、委員会は、青少年による薬物濫用の件数が増加していることを懸念する。委員会は、薬物濫用、およびとくにそれがより傷つきやすい立場に置かれたグループに与える影響に関するデータ収集および監視を行なうため、締約国が体系的努力を行なうよう勧告するものである。 22.国外犯立法に関する「双方可罰性」の要件を解消するために現在行なわれている国内法の見直しの努力を含め、委員会の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ8および11)にしたがって性的搾取からの子どもの保護を向上させるため締約国が行なってきた法律の見直しその他の措置は評価しながらも、委員会は、とくに15歳以上18歳未満の子どもを対象として性的搾取からの保護を強化させる必要があることを、懸念する。委員会は、締約国に対し、18歳までの子どもを対象とした保護の向上を確保するための努力を継続しかつ強化するよう奨励するものである。 23.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに公衆が広く利用できるようにすることを勧告する。そのような幅広い配布は、とくに政府、関連省庁、議会および非政府組織のあいだで、条約およびその実施状況に関する議論および意識を喚起するようなものであるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年12月7日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/46.html
総括所見:韓国(OPAC・2008年) 第1回(1996年)/第2回(2003年)/第3回・第4回(2011年)/第5回・第6回(2019年)OPSC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/KOR/CO/1(2008年6月27日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2008年5月23日に開かれた第1322回会合(CRC/C/SR.1322)において大韓民国の第1回報告書(CRC/C/OPSC/KOR/1)を検討し、2008年6月6日に開かれた第1342回会合(CRC/C/SR.1342)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、選択議定書で保障された権利に関して大韓民国で適用される立法上、行政上その他の措置に関する追加的情報を提供してくれる、締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/OPSC/KOR/Q/1/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の代表団が、建設的対話のために必要な若干の情報を有していなかったことを遺憾に思うものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回定期報告書に関して2003年1月15日に採択された以前の総括所見(CRC/C/15/Add.197)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して2008年6月6日に採択された総括所見(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.積極的側面 4.委員会は、以下のことに評価の意とともに留意する。 (a) 締約国が選択議定書の批准時に行なった、大韓民国国軍への志願入隊に関する最低年齢は18歳である旨の宣言。 (b) 兵役法第14条第1項の改正(2004年12月)による、軍への志願入営に関する最低年齢の17歳から18歳への引き上げ。 (c) 空軍規則の改正による、18歳未満の者が武力紛争に関与することを認める規定の削除。 (d) 子どもの権利モニタリング・センターの設置(2006年)。 5.委員会は、締約国が以下の文書を批准しまたはこれに加入したことを歓迎する。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(2004年9月)。 (b) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2006年10月)。 (c) 国際刑事裁判所ローマ規程(2002年11月)。 6.さらに委員会は、締約国が国際協力の分野で行なっている活動(武力紛争に関与する子どもを保護するための行動に対する財政支援の提供も含む)に、評価の意とともに留意する。 I.実施に関する一般的措置 普及および研修 7.委員会は、学校カリキュラムにおける人権教育および一般公衆を対象とする人権教育を促進するために大韓民国国家人権委員会(NHRCK)が行なってきたさまざまな取り組みを歓迎しながらも、選択議定書で対象とされている問題についての情報の普及および研修(軍事学校のカリキュラムおよび平和維持要員を対象とする派遣前研修プログラムを含む)に関する情報が締約国から提供されなかったことを遺憾に思う。 8.委員会は、締約国が、第6条2項に照らし、選択議定書の原則および規定が、軍事学校のカリキュラムに含まれ、かつメディアを含む適当な手段により一般公衆および国の職員ならびに軍の要員および平和維持要員に対して広く普及されることを確保するよう、勧告する。 9.委員会はまた、締約国が、保健従事者、ソーシャルワーカー、教職員、弁護士、裁判官および出入国管理官のような、子どもとともにおよび子どものために活動しているすべての関連の専門家集団(武力紛争の影響を受けている国からやってきた子どもの庇護希望者および難民とともに活動している専門家集団を含む)を対象として、議定書の規定に関する意識啓発、教育および研修のための体系的プログラムを発展させるようにも勧告する。 独立の国内人権機関 10.委員会は、NHRCKの独立を維持するという、締約国が2008年2月20日に行なった決定を歓迎するとともに、同委員会が、国の代理人(軍隊を含む)による個別の子どもの権利侵害を監視する権限を有していることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、NHRCK内に、選択議定書の十分な監視および促進を可能にするであろう子どもの権利部局が存在しないことを遺憾に思うものである。 11.委員会は、第2回定期報告書に関する総括所見(CRC/C/15/Add.197、パラ18)で述べたことを繰り返しつつ、締約国が、NHRCKに対し、選択議定書を十分に監視しおよび促進し、ならびに子どもにとっての可視性およびアクセス可能性を高めるための意識啓発措置をとる子どもの権利部局を設置できるような、必要な人的資源および財源が提供されることを確保するよう、勧告する。 II.禁止および関連の事項 立法 12.委員会は、兵役法第14条第1項の改正(2004年12月)により、志願入営に関する最低年齢が17歳から18歳へと修正されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、18歳未満の者を義務的に徴募しまたは敵対行為に参加させることを犯罪とする具体的規定がないことを、依然として懸念するものである。 13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの徴募および敵対行為への子どもの関与に関する選択議定書の規定に違反することを、法律により明示的に禁ずること。 (b) すべての法律が選択議定書の規定と全面的に調和させられることを確保すること。 (c) 軍のすべての規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定および精神にしたがうことを確保すること。 裁判権 14.委員会は、締約国の国内法に、15歳未満の子どもを軍隊または武装集団に徴募することについて域外裁判権を行使できる旨の規定があることを歓迎する。 15.軍隊もしくは武装集団への子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国際的措置をさらに強化するため、委員会は、締約国が、とくに二国間または多国間協定を締結することにより、子どもを徴募する犯罪および子どもを敵対行為に参加させる犯罪についても域外裁判権を設定することを検討するよう、勧告する。 III.保護、回復および再統合 被害者である子どもの権利を保護するためにとられた措置 16.朝鮮民主主義人民共和国からやってきた子どもは庇護希望者である子どもとは見なされず、かつ保護者のいない子どもが締約国に到着した事例は報告されていないという締約国の立場には留意しながらも、委員会は、徴募されまたは敵対行為で使用された可能性がある子どもの庇護希望者および難民を特定するための機構が存在しないことを依然として懸念し、かつ、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための具体的戦略が存在しないことを遺憾に思う。委員会はまた、紛争地域出身である子どもの庇護希望者を対象とするものも含め、締約国による庇護認定率が著しく低いことに、懸念とともに留意するものである。 17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 大韓民国に入国する子どもの難民および庇護希望者のうち国外で徴募されまたは敵対行為において使用された可能性がある者を、可能なかぎり早い段階で体系的に特定できるようにするための機構を導入すること。 (b) このような子どもの状況のアセスメントを慎重に行なうとともに、選択議定書第6条第3項にしたがい、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための、即時的な、文化的に配慮された、かつ分野横断的な援助を提供すること。 (c) 自国の管轄内にある子どもの難民および庇護希望者であって、母国で徴募されまたは敵対行為において使用された可能性がある者に関するデータを体系的に収集すること。 (d) この点に関わってとられた措置に関する情報を次回報告書に記載すること。 18.委員会はさらに、締約国が、徴募されまたは敵対行為において使用された可能性のある朝鮮民主主義共和国出身の子どもの特別な脆弱性を考慮するとともに、選択議定書第6条第3項、および、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮に入れ、このような子どもに特別な保護および援助措置を与えるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、徴募されまたは敵対行為において使用された可能性のある朝鮮民主主義共和国出身の子どもであって締約国の保護を求める者が強制送還されないことを確保するため、あらゆる必要な措置をとるようにも促すものである。 IV.国際的援助および協力 国際協力 19.委員会は、武力紛争に関与した子どもの保護および支援を目的とする多国間および二国間の活動に対する財政支援について、締約国を賞賛する。 20.委員会はまた、締約国に対し、武力紛争における子どもの保護のための行動に対する財政支援の提供を含む、国際協力の分野における活動を継続するよう奨励する。委員会はまた、子ども、およびとくに武力紛争に関与する子どもに関する援助支出の評価および監視を可能にするため、締約国が、韓国国際協力団(KOICA)が提供する援助に関わる財政データの細分化を検討することも勧告するものである。 武器輸出および軍事援助 21.小型武器および弾薬の輸出を統制するための締約国の法律およびプログラムは歓迎しながらも、委員会は、18歳に達していない者が国の軍隊または国の軍隊とは異なる武装集団の構成員として敵対行為に直接参加している国への輸出を禁ずる具体的法律が存在しないことを懸念する。 22.委員会は、締約国が、現在のまたは最近の武力紛争において子どもを参加者として関与させているまたは関与させていた可能性がある国への小型武器および軽兵器の貿易を禁ずる、関連の法律を制定するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、国内法がどのように改正されたか、および、当該改正の実施がこれらの国への小型武器の販売を停止させることにどのように寄与したかについて、次回定期報告書で明らかにするよう勧告するものである。 V.フォローアップおよび普及 23.委員会は、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、国会議員、国務会議、国防部および適用可能なときは第1級行政区画の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 24.加えて、選択議定書第6条第2項に照らし、委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。 25.第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第3回・第4回統合報告書(提出期限・2008年12月19日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年8月18日)。
https://w.atwiki.jp/bwhayashi/pages/49.html
【ドラ息子、ドラ娘症候群】 ●子どもの堪忍度 ++++++++++++++++++ 許容度でもよい。 寛容度でもよい。 許認度でもよい。 わかりやすく言えば、「やさしさ」。 ともかく、相手をそのまま受け入れ、 それを認める度量のことを、「堪忍度」という。 この堪忍度は、相手への「想い」によっても 異なるが、それが広い子どももいれば、 そうでない子どももいる。 そうでない子どものことを、昔は、ドラ息子、 ドラ娘と呼んだ。 ささいなことで、相手を好きになったり、 嫌いになったりする。 とくに(嫌いになる)部分がはげしく、露骨。 それを平気で態度で示したり、言葉で 示したりする。 +++++++++++++++++ ●思春期 Mさんという中学1年生の女子がいた。 私が強制的に退塾を命じた、数少ない生徒の1人だった。 頭は切れ、学校での勉強もよくできた。 市内の進学校に通っていたが、成績はクラスでも1、2番だった。 そのMさんが、ある日、私にこう言った。 「私ね、老人を見ると、生理的な嫌悪感を覚えるのね」と。 「生理的な嫌悪感」という言葉が強く印象に残った。 で、私が「その生理的嫌悪感って、何?」と聞くと、こう話してくれた。 「トイレでもさあ、便器にうんちがついていると、使う気しないでしょ。 あれと同じよ」と。 私はそのとき50歳を過ぎていたのではなかったか。 そろそろ老人組を意識し始めたころである。 で、私が反発して、「君だって、いつかはその老人になるんだよ」と諭すと、こう言い返した。 「私は、老人には、ならない!」と。 自己中心性も、ここまでくると、バカ。 頭の善し悪しではない。 ものの道理がわからないから、バカ。 ●ドラ息子、ドラ娘 このタイプの子どもは、昔(30~40年前)には、少なかった。 いたとしても、裕福な家庭で、わがままいっぱいに育てられた子ども。 そういう子どもを、昔は、ドラ息子、ドラ娘と呼んだ。 が、今は、ごくふつうの、ごく平均的な家庭の子どもでも、そうなる。 事実、そういう子どもは多い。 飽食とぜいたくの中で、自分を見失ってしまった。 好きか嫌いかと言われれば、私はそういう子どもが嫌い。 「こんな子どもに知恵をつけさせたくない」とさえ思う。 またそういう子どもにしないよう、努力している。 Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司 以前書いた原稿を検索してみる。 Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司 ●ドラ息子 ドラ息子、ドラ娘には、つぎのような特徴がある。 もしこれらの項目のいくつかに当てはまるようなら、あなたの子どもはかなりのドラ息子、ドラ娘とみてよい。 今はまだ体も小さく、あなたの保護のもとでおとなしくしているかもしれないが、やがてあなたの手に負えなくなる。 (1)ものの考え方が自己中心的。 自分のことはするが他人のことはしない。他人は自分を喜ばせるためにいると考える。ゲームなどで負けたりすると、泣いたり怒ったりする。自分の思いどおりにならないと、不機嫌になる。あるいは自分より先に行くものを許さない。いつも自分が皆の中心にいないと、気がすまない。 (2)ものの考え方が退行的。 約束やルールが守れない。目標を定めることができず、目標を定めても、それを達成することができない。あれこれ理由をつけては、目標を放棄してしまう。ほしいものにブレーキをかけることができない。生活習慣そのものがだらしなくなる。その場を楽しめばそれでよいという考え方が強くなり、享楽的かつ消費的な行動が多くなる。 (3)ものの考え方が無責任。 他人に対して無礼、無作法になる。依存心が強い割には、自分勝手。わがままな割には、幼児性が残るなどのアンバランスさが目立つ。 (3) バランス感覚が消える。 ものごとを静かに考えて、正しく判断し、その判断に従って行動することができない、など。 こうした症状は、早い子どもで、年中児の中ごろ(四・五歳)前後で表れてくる。 しかし一度この時期にこういう症状が出てくると、それ以後、それをなおすのは容易ではない。 ドラ息子、ドラ娘というのは、その子どもに問題があるというよりは、家庭のあり方そのものに原因があるからである。 また私のようなものがそれを指摘したりすると、家庭のあり方を反省する前に、叱って子どもをなおそうとする。 あるいは私に向かって、「内政干渉しないでほしい」とか言って、それをはねのけてしまう。 そういう姿勢が、子どもをますますドラ息子、ドラ娘にする。 Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司 もう一作、検索で見つかった。 Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司 【ドラ息子、ドラ娘】 ●甘やかしと、きびしさ +++++++++++++ 甘やかしと、きびしさ。一貫性の ない親の育児姿勢が、子どもを ドラ息子、ドラ娘にする。 甘やかしで、規範そのものが 崩れる。一方、アンバランスな きびしさが、子どもを反抗的に する。 わがままで、自分勝手。 思うようにことが運ばないと、 キレる……。 +++++++++++++ 一方で甘やかす。しかしその甘やかしに手を焼き、ときとして、きびしく接する。はじめは、小さなすき間だが、それが繰りかえされるうち、やがてすき間が広がる。(甘やかす)→(ますますきびしく接する)→(甘やかす)の悪循環の中で、親の手に負えなくなる。一貫性のない親の育児姿勢が、子どもをして、ドラ息子、ドラ娘にする。 このタイプの親には、共通点がある。 (1) 溺愛性(生活のすべてが、子ども中心) (2) 育児観の欠落(どういう子どもに育てたいのか、その教育観が希薄) (3) 飽食とぜいたく(どちらかというと、余裕のある裕福な家庭) (4) 視野が狭い(目先のことしか、考えていない) (5) 見栄っ張り(世間体や外見を重んじる) (6) 代償的過保護(子どもを自分の思いどおりにしたい) (7) 親自身も、ドラ息子、ドラ娘的(自分がドラ息子、ドラ娘的であることに気づかない) これらの特徴と併せて、(8)一貫性がない。そのときの気分で、子どもに甘く接したり、きびしく接したりする。A君(6歳、架空の子ども)を例にあげて、考えてみよう。 A君の父親は、もの静かな人だった。一方、母親は派手好き。裕福な家庭で、生まれ育った。ほしいものは、何でも買い与えられた。 A君は、生まれたときから、両親の愛情に恵まれた。近くに祖父母もいて、A君の世話をした。A君は、まさに「蝶よ、花よ」と育てられた。 母親は、A君に楽をさせること、楽しい思いをさせることが、親の愛の証(あかし)と考えていた。A君は、その年齢になっても、家の手伝いは、ほとんどしなかった。いや、するにはしたが、とても手伝いとは言えないような手伝いをしただけで、みなが、おおげさに喜んでみせたり、ほめたりした。「ほら、Aが、クツを並べた!」「ほら、Aが、花に水をやった」と。 が、やがて、A君のわがままが目立つようになった。あと片づけをしない、ほしいものが手に入らないと、怒りを露骨に表現するなど。母親は、そのつど、A君をはげしく叱った。A君は、それに泣いて抗議した。 A君は、幼稚園へ入る前から、バイオリン教室、水泳教室、体操教室に通った。夫の収入だけでは足りなかった。A君の母親は、実家の両親から、毎月、5~8万円程度の援助を受けていた。夫には内緒、ということだった。 A君は、そこそこに伸びたが、しかしそれほど力のある子どもではなかった。そのためA君の母親は、ますますA君の教育にのめりこんでいった。そのころすでにA君は、オーバーヒート気味だったが、母親は、それに気づかなかった。「やればできるはず」式に、A君に、いろいろさせた。 A君がだれの目にもドラ息子とわかるようになったのは、年長児になったころである。好き嫌いがはげしく、先にも書いたように、自分勝手でわがまま。簡単なゲームをさせても、ルールを守らなかった。そのゲームで負けると、大泣きしたり、あるいはまわりの人に乱暴を繰りかえしたりした。 人格の完成度が遅れた。他人の心が理解できない。自己中心的。ほかの子どもたちとの協調性に欠けた。幼稚園の先生が何か仕事を頼んでも、A君は、機嫌のよいときはそれをしたが、そうでないときは、いろいろ口実を並べて、それをしなかった。 小学2、3年生になるころには、母親でも、手に負えなくなった。そのころになると、母親にも乱暴を繰りかえすようになった。母親を蹴る、殴るは、日常茶飯事。ものを投げつけることも重なった。が、A君は、自分では、何もしようとしなかった。学校の宿題をするだけで、精一杯。その宿題すら、母親に、手伝ってしてもらっていた。 ……という例は、多い。今では、10人のうち、何人かがそうであると言ってよいほど、多い。が、何よりも悲劇的なのは、そういう子どもでありながらも、母親が、それに気づくことがないということ。『溺愛は、親を盲目にする』。A君の母親は、ますます献身的に(?)、A君に仕えた。 こういうとき母親がそれに気づき、私のようなものに相談でもあれば、私もそれなりに対処できる。アドバイスもできる。しかしそれに気づいていない親に向かって、「あなたのお子さんには、問題があります」とは、現実には、言えない。言ったところで、そのリズム、つまり子育てのリズムを変えることは、不可能。親にとっても、容易なことではない。そのリズムは、子どもを妊娠したときから、はじまっている。そんなわけで、わかっていても、知らぬフリをする。 が、やがて行き着くところまで、行き着く。親自身が、袋小路に入り、にっちもさっちも行かなくなる。が、そのときでも、子どもに問題があると気づく親は少ない。「うちの子にかぎって……」「そんなはずはない……」と、親は親で、がんばる。 A君のドラ息子性は、さらにはげしくなった。小学5、6年になるころには、まさに王様。食事も、ソファに寝そべって食べるようになった。母親が、そこまで盆にのせて、A君に食事を届けた。母親は、A君のほしがるものを、一度は拒(こば)んではみせるものの、結局は、買い与えていた。「機嫌をそこねたら、塾へも行かなくなる」と。 本来なら、こうした異常な母子関係を調整するのは、父親の役目ということになる。が、A君の父親は、静かで、やさしい人だった。家庭のことには、ほとんど関心を示さなかった。仕事から帰ってくると、自分の部屋で、ひとりでビデオの編集をして時間をつぶしていた。 ……というわけで、子どものドラ息子性、ドラ娘性の問題は、いかに早い段階で、親がそれに気づくか、それが大切。早ければ早いほど、よい。できれば3、4歳ごろには、気づく。(それでも遅いかもしれない。) というのも、この問題は、家庭がもつ(子育てのリズム)に、深く関係している。そのリズムを変えるのは、容易なことではない。1年や2年はかかる。あるいは、もっと、かかる。さらに親自身がもつ、子育て観を変えるのは、ほぼ不可能とみてよい。それこそ行き着くところまで行き、絶望のどん底にたたき落とされないかぎり、親も、それに気づかない。 ある母親は、自分の子ども(中3男子)が、万引き事件を起こしたとき、一晩で、事件そのものを、もみ消してしまった。あちこちを回り、お金で解決してしまった。また別の子ども(高1男子)は、無免許で車を運転し、隣家の塀を壊してしまった。そのときも、母親が、一晩で、事件そのものをもみ消してしまった。 こういうことを繰りかえしながら、親はドン底にたたき落とされる。で、やっとそのころになると、自分の(まちがい)に気づく。それまでは、気づかない。ひょっとしたら、この文章を読んでいるあなた自身も、その1人かもしれない。が、ほとんどの人は、こういう文章を読んでも、「私には関係ない」と、無視する。これは子育てがもつ、宿命のようなもの。 そこで教訓。 あなたの子どもが、わがままで自分勝手なら、子どもを責めても意味はない。責めるべきは、あなた自身。反省すべきは、家庭環境そのもの。あなたの育児姿勢。家庭のリズム。あなたの人生観、それに子育て観。 子どもだけを見て、子どもだけをなおそうと考えても、ぜったいになおらない。なおるはずもない。この問題は、そういう問題である。 +++++++++++++++ ドラ息子、ドラ娘について書いた 原稿を、いくつか添付します。 +++++++++++++++ ●子どもは、使う 子どもをよい子にしたいとき ●どうすれば、うちの子は、いい子になるの? 「どうすれば、うちの子どもを、いい子にすることができるのか。それを一口で言ってくれ。私は、そのとおりにするから」と言ってきた、強引な(?)父親がいた。「あんたの本を、何冊も読む時間など、ない」と。私はしばらく間をおいて、こう言った。「使うことです。使って使って、使いまくることです」と。 そのとおり。子どもは使えば使うほど、よくなる。使うことで、子どもは生活力を身につける。自立心を養う。それだけではない。忍耐力や、さらに根性も、そこから生まれる。この忍耐力や根性が、やがて子どもを伸ばす原動力になる。 ●100%スポイルされている日本の子ども? ところでこんなことを言ったアメリカ人の友人がいた。「日本の子どもたちは、100%、スポイルされている」と。わかりやすく言えば、「ドラ息子、ドラ娘だ」と言うのだ。そこで私が、「君は、日本の子どものどんなところを見て、そう言うのか」と聞くと、彼は、こう教えてくれた。 「ときどきホームステイをさせてやるのだが、料理の手伝いはしない、食事のあと、食器を洗わない。片づけない。シャワーを浴びても、あわを洗い流さない。朝、起きても、ベッドをなおさない」などなど。つまり、「日本の子どもは何もしない」と。反対に夏休みの間、アメリカでホームステイをしてきた高校生が、こう言って驚いていた。「向こうでは、明らかにできそこないと思われるような高校生ですら、家事だけはしっかりと手伝っている」と。ちなみにドラ息子の症状としては、次のようなものがある。 ●ドラ息子症候群 (1) ものの考え方が自己中心的。自分のことはするが他人のことはしない。他人は自分を喜ばせるためにいると考える。ゲームなどで負けたりすると、泣いたり怒ったりする。自分の思いどおりにならないと、不機嫌になる。あるいは自分より先に行くものを許さない。いつも自分が皆の中心にいないと、気がすまない。 (2) ものの考え方が退行的。約束やルールが守れない。目標を定めることができず、目標を定めても、それを達成することができない。あれこれ理由をつけては、目標を放棄してしまう。ほしいものにブレーキをかけることができない。生活習慣そのものがだらしなくなる。その場を楽しめばそれでよいという考え方が強くなり、享楽的かつ消費的な行動が多くなる。 (3) ものの考え方が無責任。他人に対して無礼、無作法になる。依存心が強い割には、自分勝手。わがままな割には、幼児性が残るなどのアンバランスさが目立つ。 (4) バランス感覚が消える。ものごとを静かに考えて、正しく判断し、その判断に従って行動することができない、など。 ●原因は家庭教育に こうした症状は、早い子どもで、年中児の中ごろ(4・5歳)前後で表れてくる。しかし一度この時期にこういう症状が出てくると、それ以後、それをなおすのは容易ではない。 ドラ息子、ドラ娘というのは、その子どもに問題があるというよりは、家庭のあり方そのものに原因があるからである。また私のようなものがそれを指摘したりすると、家庭のあり方を反省する前に、叱って子どもをなおそうとする。あるいは私に向かって、「内政干渉しないでほしい」とか言って、それをはねのけてしまう。あるいは言い方をまちがえると、家庭騒動の原因をつくってしまう。 ●子どもは使えば使うほどよい子に 日本の親は、子どもを使わない。本当に使わない。「子どもに楽な思いをさせるのが、親の愛だ」と誤解しているようなところがある。だから子どもにも生活感がない。「水はどこからくるか」と聞くと、年長児たちは「水道の蛇口」と答える。「ゴミはどうなるか」と聞くと、「どこかのおじさんが捨ててくれる」と。 あるいは「お母さんが病気になると、どんなことで困りますか」と聞くと、「お父さんがいるから、いい」と答えたりする。生活への耐性そのものがなくなることもある。友だちの家からタクシーで、あわてて帰ってきた子ども(小6女児)がいた。話を聞くと、「トイレが汚れていて、そこで用をたすことができなかったからだ」と。そういう子どもにしないためにも、子どもにはどんどん家事を分担させる。子どもが二~四歳のときが勝負で、それ以後になると、このしつけはできなくなる。 ●いやなことをする力、それが忍耐力 で、その忍耐力。よく「うちの子はサッカーだと、一日中しています。そういう力を勉強に向けてくれたらいいのですが……」と言う親がいる。しかしそういうのは忍耐力とは言わない。好きなことをしているだけ。 幼児にとって、忍耐力というのは、「いやなことをする力」のことをいう。たとえば台所の生ゴミを始末できる。寒い日に隣の家へ、回覧板を届けることができる。風呂場の排水口にたまった毛玉を始末できる。そういうことができる力のことを、忍耐力という。 こんな子ども(年中女児)がいた。その子どもの家には、病気がちのおばあさんがいた。そのおばあさんのめんどうをみるのが、その女の子の役目だというのだ。その子どものお母さんは、こう話してくれた。「おばあさんが口から食べ物を吐き出すと、娘がタオルで、口をぬぐってくれるのです」と。こういう子どもは、学習面でも伸びる。なぜか。 ●学習面でも伸びる もともと勉強にはある種の苦痛がともなう。漢字を覚えるにしても、計算ドリルをするにしても、大半の子どもにとっては、じっと座っていること自体が苦痛なのだ。その苦痛を乗り越える力が、ここでいう忍耐力だからである。反対に、その力がないと、(いやだ)→(しない)→(できない)→……の悪循環の中で、子どもは伸び悩む。 ……こう書くと、決まって、こういう親が出てくる。「何をやらせればいいのですか」と。話を聞くと、「掃除は、掃除機でものの10分もあればすんでしまう。買物といっても、食材は、食材屋さんが毎日、届けてくれる。洗濯も今では全自動。料理のときも、キッチンの周囲でうろうろされると、かえってじゃま。テレビでも見ていてくれたほうがいい」と。 ●家庭の緊張感に巻き込む 子どもを使うということは、家庭の緊張感に巻き込むことをいう。親が寝そべってテレビを見ながら、「玄関の掃除をしなさい」は、ない。子どもを使うということは、親がキビキビと動き回り、子どももそれに合わせて、すべきことをすることをいう。たとえば……。 あなた(親)が重い買い物袋をさげて、家の近くまでやってきた。そしてそれをあなたの子どもが見つけたとする。そのときさっと子どもが走ってきて、あなたを助ければ、それでよし。 しかし知らぬ顔で、自分のしたいことをしているようであれば、家庭教育のあり方をかなり反省したほうがよい。やらせることがないのではない。その気になればいくらでもある。食事が終わったら、食器を台所のシンクのところまで持ってこさせる。そこで洗わせる。フキンで拭かせる。さらに食器を食器棚へしまわせる、など。 子どもを使うということは、ここに書いたように、家庭の緊張感に巻き込むことをいう。たとえば親が、何かのことで電話に出られないようなとき、子どものほうからサッと電話に出る。庭の草むしりをしていたら、やはり子どものほうからサッと手伝いにくる。そういう雰囲気で包むことをいう。何をどれだけさせればよいという問題ではない。要はそういう子どもにすること。それが、「いい子にする条件」ということになる。 ●バランスのある生活を大切に ついでに……。子どもをドラ息子、ドラ娘にしないためには、次の点に注意する。(1)生活感のある生活に心がける。ふつうの寝起きをするだけでも、それにはある程度の苦労がともなうことをわからせる。あるいは子どもに「あなたが家事を手伝わなければ、家族のみんなが困るのだ」という意識をもたせる。(2)質素な生活を旨とし、子ども中心の生活を改める。(3)忍耐力をつけさせるため、家事の分担をさせる。(4)生活のルールを守らせる。(5)不自由であることが、生活の基本であることをわからせる。そしてここが重要だが、(6)バランスのある生活に心がける。 ここでいう「バランスのある生活」というのは、きびしさと甘さが、ほどよく調和した生活をいう。ガミガミと子どもにきびしい反面、結局は子どもの言いなりになってしまうような甘い生活。あるいは極端にきびしい父親と、極端に甘い母親が、それぞれ子どもの接し方でチグハグになっている生活は、子どもにとっては、決して好ましい環境とは言えない。チグハグになればなるほど、子どもはバランス感覚をなくす。ものの考え方がかたよったり、極端になったりする。 子どもがドラ息子やドラ娘になればなったで、将来苦労するのは、結局は子ども自身。それを忘れてはならない。 ●子どもの金銭感覚 年長(6歳)から小学2年(8歳)ぐらいの間に、子どもの金銭感覚は完成する。その金銭感覚は、おとなのそれと、ほぼ同じになるとみてよい。が、それだけではない。子どもはこの時期を通して、お金によって物欲を満たす、その満たし方まで覚えてしまう。そしてそれがそれから先、子どものものの考え方に、大きな影響を与える。 この時期の子どものお金は、100倍して考えるとよい。たとえば子どもの100円は、おとなの1万円に相当する。1000円は、10万円に相当する。 親は安易に子どもにものを買い与えるが、それから子どもが得る満足感は、おとなになってからの、1万円、10万円に相当する。「与えられること」に慣れた子どもや、「お金によって欲望を満足すること」に慣れた子どもが、将来どうなるか。もう、言べくもない。 さすがにバブル経済がはじけて、そういう傾向は小さくなったが、それでも「高価なものを買ってあげること」イコール、親の愛と誤解している人は多い。より高価なものを買い与えることで、親は「子どもの心をつかんだはず」と考える。 あるいは「子どもは親に感謝しているはず」と考える。が、これはまったくの誤解。実際には、逆効果。それだけではない。ゆがんだ金銭感覚が、子どもの価値観そのものを狂わす。ある子ども(小2男児)は、こう言った。「明日、新しいゲームソフトが発売になるから、ママに買いに行ってもらう」と。そこで私が、「どんなものか、見てから買ってはどう?」と言うと、「それではおくれてしまう」と。その子どもは、「おくれる」と言うのだ。 最近の子どもたちは、他人よりも、より手に入りにくいものを、より早くもつことによって、自分のステイタス(地位)を守ろうとする。物欲の内容そのものが、昔とは違う。変質している。……というようなことを考えていたら、たまたまテレビにこんなシーンが出てきた。 援助交際をしている女子高校生たちが、「お金がほしいから」と答えていた。「どうしてそういうことをするのか」という質問に対して、である。しかも金銭感覚そのものが、マヒしている。もっているものが、10万円、20万円という、ブランド品ばかり! さて、誕生日。さて、クリスマス。あなたは子どもに、どんなものを買い与えるだろうか。1000円のものだろうか。それとも1万円のものだろうか。お年玉には、いくら与えるだろうか。与えるとしても、それでほしいものを買わせるだろうか。それとも、貯金をさせるだろうか。いや、その前に、それを与えるにふさわしいだけの苦労を、子どもにさせているだろうか。 どちらにせよ、しかしこれだけは覚えておくとよい。5、6歳の子どもに、1万、2万円のプレゼントをホイホイと買い与えていると、子どもが高校生や大学生になったとき、あなたは100万円、200万円のものを買い与えなくてはならなくなる。 つまりそれくらいのことをしないと、子どもは満足しなくなる。あなたにそれだけの財力と度量があれば話は別だが、そうでないなら、子どものために、やめたほうがよい。やがてあなたの子どもは、ドラ息子やドラ娘になり、手がつけられなくなる。そうなればなったで、苦労するのはあなたではなく、結局は子ども自身なのだ。 ●ドラ息子症候群 英語の諺に、『あなたは自分の作ったベッドの上でしか、寝られない』というのがある。要するにものごとには結果があり、その結果の責任はあなたが負うということ。こういう例は、教育の世界には多い。 子どもをさんざん過保護にしておきながら、「うちの子は社会性がなくて困ります」は、ない。あるいはさんざん過干渉で子どもを萎縮させておきながら、「どうしてうちの子はハキハキしないのでしょうか」は、ない。もう少しやっかいなケースでは、ドラ息子というのがいる。M君(小3)は、そんなタイプの子どもだった。 口グセはいつも同じ。「何かナ~イ?」、あるいは「何かほシ~イ」と。何でもよいのだ。その場の自分の欲望を満たせば。しかもそれがうるさいほど、続く。そして自分の意にかなわないと、「つまんナ~イ」「たいくツ~ウ」と。約束は守れないし、ルールなど、彼にとっては、あってないようなもの。他人は皆、自分のために動くべきと考えているようなところがある。 そのM君が高校生になったとき、彼はこう言った。「ホームレスの連中は、人間のゴミだ」と。そこで私が、「誰だって、ほんの少し人生の歯車が狂うと、そうなる」と言うと、「ぼくはならない。バカじゃないから」とか、「自分で自分の生活を守れないヤツは、生きる資格などない」とか。こうも言った。 「うちにはお金がたくさんあるから、生活には困らない」と。M君の家は昔からの地主で、そのときは祖父母の寵愛を一身に集めて育てられていた。 いろいろな生徒に出会うが、こういう生徒に出会うと、自分が情けなくなる。教えることそのものが、むなしくなる。「こういう子どもには知恵をつけさせたくない」とか、「もっとほかに学ぶべきことがある」というところまで、考えてしまう。そうそうこんなこともあった。 受験を控えた中3のときのこと。M君が数人の仲間とともに万引きをして、補導されてしまったのである。悪質な万引きだった。それを知ったM君の母親は、「内申書に影響するから」という理由で、猛烈な裏工作をし、その夜のうちに、事件そのものを、もみ消してしまった。そして彼が高校二2生になったある日、私との間に大事件が起きた。 その日私が、買ったばかりの万年筆を大切そうにもっていると、「ヒロシ(私のことをそう呼んでいた)、その万年筆のペン先を折ってやろうか。折ったら、ヒロシはどうする?」と。 そこで私は、「そんなことをしたら、お前を殴る」と宣言したが、彼は何を思ったか、私からその万年筆を取りあげると、目の前でグイと、そのペン先を本当に折ってしまった! とたん私は彼に飛びかかっていった。結果、彼は目の横を数針も縫う大けがをしたが、M君の母親は、私を狂ったように責めた。(私も全身に打撲を負った。念のため。) 「ああ、これで私の教師生命は断たれた」と、そのときは覚悟した。が、M君の父親が、私を救ってくれた。うなだれて床に正座している私のところへきて、父親はこう言った。「先生、よくやってくれました。ありがとう。心から感謝しています。本当にありがとう」と。 (はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 ドラ息子 ドラ息子症候群 スポイルされる子どもたち) Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司 ●Mさんという中学1年生 そのクラスに、かん黙児(中1)の男子がいた。 教室でもほとんどしゃべらなかった。 だれかが話しかけても、ニンマリと笑うだけ。 私は、その子どもを、それまでに2年間教えていた。 が、時間帯のつごうで、Mさんが、その男子と同じクラスで勉強するようになった。 そのときのこと。 Mさんがこう言って叫んだ。 いっしょに勉強するようになって、数か月目のことだった。 「先生、この子(=緘黙症の男子)、キモイ!」と。 そしてその男の子に向かって、こう言った。 「あんた、何か、しゃべりなよ。黙っていたら、キモイでしょ。 しゃべれよオ~!」と。 私はその場で、Mさんを退室させた。 「お前のようなヤツは出て行け!」と。 ●「出て行け!」 この一件だけではなかった。 そのうち、私に対しても、ズケズケとものを言うようになった。 自分自身が、今で言う、軽いAD・HD児であることにも、気づいていなかった。 指導しているとき、私がお茶を飲むと、すかさずこう言った。 「あんた、先生でしょ。お茶ぐらい、音をたてて飲まないでよ」と。 熱かったので、ズーズーと音を立てて飲んだのが、気に障ったらしい。 ……ということが重なり、ある日、私のほうが、キレた。 「あのね、そんなにぼくのことが嫌いなら、この教室、やめてもいんだよ」と。 その言葉がきいたのか、それからしばらくは、静かだった。 が、そのしばらくが過ぎると、また言い始めた。 ……その内容を書くのが、ここでの目的ではない。 ともかくも、冒頭の会話になったとき、私は爆発した。 「出て行け!」と。 今でもときどき、ワイフとの会話の中に、そのMさんが出てくる。 「あれは、すごい子だったね」「そうね」と。 その後の消息は知らない。 私も聞かない。 勉強だけは抜群にできる子どもだったから、現代という世界では、それなりに成功していることだろう。 が、ワイフはこう言った。 「ああいう子(娘)は、結婚できないと思うわ」と。 もう10年以上も前の話だから、今ごろは、30歳近くになっているはず。 結婚できただろうか。 それとも独身のままだろうか。 私はそのMさんの話になったとき、こう言った。 「お前がああだったら、1か月も無理だろうね」と。 つまり1か月で離婚だろうね、と。 強く印象に残った子どもだが、二度と会いたくない。 (はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司 BW はやし浩司 幼児教室 育児 教育論 Japan はやし浩司 ドラ息子 ドラ娘 許容度 寛容度 忍耐力) Hiroshi Hayashi++++++Oct. 2011++++++はやし浩司・林浩司
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/188.html
総括所見:モルディブ(第1回・1998年) 第2回・第3回(2007年)/第4回・第5回(2016年)OPAC(2009年)/OPSC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.91(1998年6月24日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1998年5月28日および29日に開かれた第468回~第470回会合(CRC/C/SR.468-470)においてモルディブの第1回報告書(CRC/C/8/Add.23 and 37)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1998年6月5日に開かれた第477回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国に対し、第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/MAL.1)に対する文書回答の提出したことに関して謝意を表する。委員会は、締約国の代表団との率直な、自己批判的なかつ建設的な対話に心強い思いを感ずるものである。委員会はまた、条約の実施に直接携わっている高い地位にある代表団が出席したことにより、委員会が締約国における子どもの権利の状況を評価することが可能になったことも認識する。 B.積極的な側面 3.委員会は子どもの権利保護法(法第9/91号)の制定に留意する。これは、この領域におけるさらに包括的な立法の発展の基盤となるものである。 4.委員会は、国内行動計画が設定した目標の監視を担当する「子どもの権利の保護のための国家評議会」が設置されたこと、および、締約国における条約の実施を担当する「子どもの権利部」(URC)が女性問題社会福祉省に設置されたことを、歓迎する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 5.委員会は、締約国が特有の性格を有していること、1190の島々から構成され、かつそのうち約200の島々にしか人が住んでいないという地形であること、人口が比較的少なく、かつそれが多様でありかつ点在する多くの共同体によって構成されていること、および、経済構造が変化しておりかつ人口が急速に増加していることに、留意する。 D.主要な懸念事項 6.委員会は、締約国が条約第14条および第21条に付した留保が、これらの条文で保障された権利の実施に影響を与える可能性があることを懸念する。 7.委員会は、子どもの権利保護法(法第9/91号)その他の国内法を、条約のホリスティックな性格を考慮に入れながら、その原則および規定と全面的に調和させる必要があることに関して、懸念を表明する。 8.既存の調整機構については承知しながらも、委員会は、条約が対象とするすべての領域、とくに施設ケアのもとで暮らす子ども、女子および点在する島々に暮らす子どものようなもっとも傷つきやすい立場に置かれたグループの子どもに関して、体系的かつ包括的な、細分化もなされている量的および質的データの収集が不十分であることを懸念する。 9.委員会は、条約が対象とするあらゆる領域において、かつ都市部および農村部のあらゆるグループの子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた子どもとの関わりで、進展を監視することをとくに目的とした機構が存在しないことを懸念する。 10.条約第4条に関して、委員会は、条約で認められたすべての権利の実施のために利用可能な財源および人的資源が、締約国における子どもの状況の向上に関して十分な進展を確保するためには不十分であることを懸念する。 11.委員会は、子どものための政策およびプログラムの立案および実施において市民社会の参加が欠けていることを懸念する。 12.条約を普及し、かつ子どものためにおよび子どもとともに働く専門家に対して条約の規定および原則に関する養成および研修を行なうために締約国が努力していること、および、条約がモルディブ語(ディベヒ語)に翻訳されたことは認めながらも、委員会は、これらの措置はなお不十分であるとの見解に立つものである。 13.委員会は、16歳以上18歳未満の子どもの地位が不明瞭であることを懸念する。これとの関連で、委員会はとくに、婚姻および刑事責任に関する最低年齢が低いことを懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、その立法、行政上および司法上の決定ならびに子どもに関わる政策およびプログラムにおいて、条約の規定、とくに第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に掲げられた一般原則を全面的に考慮に入れていないように思えることを、懸念する。 15.条約第2条の実施に関して、委員会は、女子および障害児が条約で認められた権利を全面的に享受することを確保するためにとられた措置が不十分であることを懸念する。委員会はまた、婚外子の状況も、とくに相続権との関わりで懸念するものである。さらに、委員会は、首都の置かれているマレ島に暮らす子どもと離島に暮らす子どもとの間に格差があることに懸念を表明する。 16.子どもの不当な取扱いの防止のために締約国が行なっている努力は承知しながらも、委員会は、家庭の内外における性的虐待を含む不当な取扱いおよび虐待に関して意識が不十分でありかつ情報が存在しないこと、法的保護措置が不十分であること、財源および人的資源のいずれも不適切であること、ならびに、このような虐待を防止しかつそれと闘うための十分に訓練された職員が存在しないことを、懸念する。そのような子どものためのリハビリテーションの措置が不十分であること、および、司法に対するそのような子どものアクセスが限られていることも、懸念の対象である。 17.委員会は、締約国において離婚率が高いこと──世界最高に数えられると考えられる──およびそのことが子どもに悪影響を与える可能性があることを、懸念する。委員会はまた、離婚および早期婚が子どもに与える有害な結果についての調査および研究が存在せず、かつ、離婚の有害な影響に関して公衆の意識を喚起するための措置が不十分であることも、懸念するものである。 18.委員会は、家庭環境を奪われた子どもの代替的養護の措置が不十分であることに懸念を表明する。 19.乳児死亡率を削減しかつ子どもの予防接種を増加させるための締約国の努力にも関わらず、委員会は、栄養不良(発育阻害および鉄分の欠乏)が蔓延していること、妊産婦死亡率が高いこと、ならびに、安全な水および十分な衛生設備へのアクセスが限られていることを懸念する。委員会はまた、青少年の健康の問題に関しても、とくに若年妊娠率が高くかつ増加していること、リプロダクティブ・ヘルスに関する教育およびサービスに10代がアクセスできていないこと、ならびに、HIV/AIDSの予防措置が不十分であることを、懸念するものである。さらに委員会は、とくに保健施設において、子どもの母乳育児を促進するための措置が不十分であることに懸念を表明する。 20.障害児の状況に関して、委員会は、保健、教育および社会サービスへの彼らの効果的なアクセスを確保し、かつ社会へのその全面的インクルージョンを促進するために締約国がとった措置が不十分であることに懸念を表明する。委員会はまた、障害児とともにおよび障害児のために働く、十分に訓練された専門家の人数が少ないことも懸念するものである。 21.初等学校への就学の領域における締約国の達成は承知しながらも、委員会は、教育が法律によって義務的とされていないこと、初等学校と中等学校の間における脱落率が高いこと、訓練された教職員が不足していること、中等学校への就学に関してジェンダーによる格差が存在すること、および、首都とその他の島々との間で教育へのアクセスに格差があることを、依然として懸念する。 22.薬物リハビリテーション部を設置する計画があることは承知しながらも、委員会は、締約国の子どもにますます影響を与えている薬物濫用の問題に取り組むためにとられた措置が不十分であることに、懸念を表明する。 23.委員会は、児童労働および性的搾取を含む経済的搾取の台頭を避けるための、法的措置も含めた防止措置が不十分であることに懸念を表明する。委員会はまた、児童買春、児童ポルノならびに子どもの取引および売買に関して、法的措置を含む防止措置がとられていないことも懸念するものである。 24.少年司法の運営が刑法および子どもの権利保護法によって規制されていることには留意しながらも、委員会は、そのような立法が、条約第37条、第40条および第39条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年司法の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のような他の関連の基準と全面的に両立するかどうかについて、懸念する。罪を犯した16歳未満の少年は特別な司法手続を享受することは承知しながらも、委員会は、成人と見なされる16以上18歳未満の者の状況に関してとくに懸念するものである。 E.提案および勧告 25.1993年6月に世界人権会議によって採択され、子どもの権利条約に対する留保の撤回を各国に奨励したウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国に対し、条約に対する留保を撤回の方向で見直すことを検討するよう勧告する。 26.委員会は、締約国に対し、立法が条約の原則および規定と全面的に一致することを確保する目的で、その包括的改正を行なうよう勧告する。 27.委員会は、締約国に対し、市民的および政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約および拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰を禁ずる条約を含む、他のすべての主要な国際人権条約に加入するよう奨励する。これらはすべて子どもの権利に影響を与えるものである。 28.委員会は、締約国が、子ども調整委員会の活動を強化しかつ拡大するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもを含め、条約が対象とするさまざまな領域における子どもの状況に関するあらゆる必要な情報を収集するために、細分化されたデータを収集する包括的システムを発展させるようにも勧告するものである。委員会は、締約国に対し、この目的でとくにユニセフの国際協力を求めるよう奨励する。 29.委員会は、締約国に対し、とくに社会のもっとも脆弱な立場に置かれた集団を対象として条約の実施を全面的に監視するため、独立した機構の設置を検討するよう奨励する。 30.条約第4条の実施に関して、委員会は、締約国に対し、条約に掲げられたすべての権利を実施するための追加的資源について国際協力を求める可能性を検討するよう奨励する。 31.条約の実施における、市民社会のあらゆる層とのパートナーシップを増進させるため、委員会は、締約国に対し、子どもに対応する非政府組織の設置を促進し、かつそのような非政府組織と協力するよう強く奨励する。 32.委員会は、締約国に対し、条約の原則および規定を普及し、かつ子どもとともにおよび子どものために働くあらゆる専門家集団の研修を行なうための努力を継続するよう奨励する。委員会は、締約国が、これとの関連でとくに〔国連〕人権高等弁務官事務所およびユニセフの援助を求めるよう提案するものである。 33.委員会は、締約国が、現行では16歳とされている子どもの定義の法定年齢を引き上げるよう勧告する。これとの関連で、婚姻および刑事責任に関する最低法定年齢が見直されるべきである。 34.条約の一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)が、政策に関する意思決定の指針となるのみならず、いかなる司法上および行政上の手続においても、かつ子どもに影響を与えるあらゆる事業、プログラムおよびサービスの発展および実施においても適切に反映されることを確保するために、さらなる努力が行なわれるべきであるというのが委員会の見解である。 35.委員会は、条約第2条で規定された差別の禁止の原則が全面的に実施されるよう勧告する。女子、障害児、離島に暮らす子どもおよび婚外子に対する差別を解消するため、より積極的なアプローチがとられるべきである。委員会は、締約国に対し、女性に関する国家政策を制定しかつ実施するよう奨励する。このような政策は、女子の地位に積極的な影響を与える可能性がある。 36.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が、家庭における不当な取扱いおよび子どもの性的虐待を防止しかつそれと闘うためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はとくに、公的機関が、あらゆるタイプの児童虐待を防止し、かつ被害を受けた子どものリハビリテーションを行なうための社会プログラムを確立するよう提案するものである。このような犯罪に関して、法律の執行が強化されなければならない。特別な証拠規則および特別調査官またはコミュニティ窓口のような、児童虐待の苦情に対応するための十分な手続および機構が発展させられるべきである。 37.委員会は、締約国が家族法の制定を速めるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、家庭の崩壊が子どもに与える悪影響についての調査および研究を行ない、かつこの問題に関する意識啓発キャンペーンを継続するようにも勧告するものである。さらに委員会は、締約国に対し、親を対象としたカウンセリング・サービスを向上させるよう勧告する。 38.条約第20条3項に照らし、委員会は、締約国が、家庭環境を奪われた子どものためにカファラのような代替的養護の措置を確立することを考慮するよう勧告する。 39.委員会は、締約国が、とくにリプロダクティブ・ヘルスに関する教育およびカウンセリング・サービスを強化し、かつHIV/AIDSと闘うための予防措置を向上させることによって、青少年の健康に関する政策およびプログラムを促進するよう勧告する。委員会はさらに、早期婚の悪影響も含む青少年の健康上の問題現象の規模を理解するため、包括的かつ学際的な研究を行なうよう提案するものである。委員会はまた、青少年の健康上の問題の予防およびケアならびに被害者のリハビリテーションのために、青少年およびその家族を対象としたカウンセリング・サービスの発展のようなさらなる努力を、財政面および人材面のいずれにおいても行なうようにも勧告する。 40.障害者の機会均等化に関する標準規則(総会決議48/96)に照らし、委員会は、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発展させ、障害児の施設措置に代わる措置を実施し、障害児に対する差別を減らすための意識啓発キャンペーンを構想し、特別教育のプログラムおよびセンターを設置し、かつ社会へのそのインクルージョンを奨励するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、障害の原因についての調査を行なうようにも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、障害児とともにおよび障害児のために働く専門職員の研修のために技術的協力を求めるよう勧告する。この目的で、とくにユニセフおよび世界保健機構の国際協力を求めることが可能である。 41.条約第28条に関して、委員会は、締約国に対し、初等教育を義務的なものにし、かつすべての者に対して無償とすること、学校教職員の養成および研修を行なうこと、ならびに、女子および離島に暮らす子どもを含むもっとも脆弱な立場に置かれたグループの子どもの教育へのアクセスを向上させることを、勧告する。委員会は、締約国に対し、とくにユニセフおよびユネスコの国際的援助を求めることを検討するよう勧告するものである。 42.委員会は、条約第32条および他の関連の国際文書の規定を全面的に実施するために、法改正も含む防止措置をとるよう勧告する。 43.条約第34条に照らし、委員会は、ポルノグラフィー、売買春、取引および売買によるものも含む子どもの性的搾取を防止しかつそれと闘うため、法改正も含む防止措置をとるよう勧告する。 44.条約第24条、第33条および第39条に照らし、委員会は、締約国に対し、子どもによる薬物および有害物質の濫用を防止しかつそれと闘うための努力を強化すること、および、学校内外における広報キャンペーンを含むあらゆる適切な措置をとることを勧告する。委員会はまた、締約国に対し、薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どものためのリハビリテーション・プログラムを支援するようにも奨励するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにユニセフおよび世界保健機構の技術的援助を求めることを検討するよう奨励する。 45.少年司法の運営に関して、委員会は、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のようなこの領域における他の関連の国際基準の規定を全面的に統合するため、締約国が、子どものための特別手続の採択を速めるよう勧告する。とりわけ委員会は、現在は成人と見なされている16歳以上18歳未満の子どものための特別手続を設けること、子どものための特別裁判所を設置すること、および、ケア・センターの子どもを対象とした法律相談の提供について再検討を行なうことを、勧告するものである。さらに委員会は、締約国に対し、少年司法に関する調整委員会を通じて、とくに〔国連〕人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、国際少年司法ネットワークおよびユニセフの国際的援助を求めることを検討するよう勧告する。 46.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会がここに採択した総括所見とともに同報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような幅広い配布は、政府、議会および市民社会の間で、条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するようなものであるべきである。 更新履歴:ページ作成(2012年4月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/270.html
総括所見:カンボジア(OPSC・2015年) 第1回(2000年)/第2~3回OPAC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/KHM/CO/1(2015年2月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2015年1月12日に開かれた第1931回会合(CRC/C/SR.1931参照)においてカンボジアの第1回報告書(CRC/C/OPSC/KHM/1)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合(CRC/C/SR.1983参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/KHM/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルな代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2011年8月3日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第2~3回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/KHM/CO/2-3)、および、2015年1月30日に採択された、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/KHM/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、締約国が以下の文書に加入しまたはこれを批准したことに評価の意とともに留意する。 (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2007年7月) (b) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(2007年4月) (c) 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関第182号条約(1999年)(2006年3月) (d) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2005年12月) 5.委員会はまた、以下のものを含む、選択議定書の実施の分野で締約国がとったさまざまな措置および地域的取り組みも歓迎する。 (a) 国家子どもの発達計画(2014~2018年) (b) 人身取引、人の密輸、労働搾取および性的搾取の禁圧に関する国家行動計画(2011~2013年)の採択(2011年)、および、女性および子どもの人身取引、人の密輸、労働搾取および性的搾取の禁圧を主導する国家委員会の設置(2009年創設) (c) 国際養子縁組法(2009年採択) (d) 人身取引および性的搾取禁圧法(2008年採択) (e) 最悪の形態の児童労働の撤廃に関する2008~2012年の国家行動計画 (f) 人身取引対策メコン流域諸国閣僚調整イニシアチブおよびその第2次準地域3か年行動計画(2007年採択)。 III.データ データ収集 6.委員会は、既存のデータベースが主として人身取引に焦点を当てており、かつ、相互のリンクが不十分なうえに州および自治体レベルでアクセス可能とされていないことから、データ収集に関する締約国の努力が断片的なままに留まっていることを懸念する。委員会は、児童買春およびインターネット上の児童ポルノに関する調査研究、情報、および、とくに性別、年齢、国籍および民族的出身、地理的所在ならびに社会経済的地位によって細分化されたデータが存在しないために、選択議定書上のこれらの犯罪を監視し、評価しかつ防止する締約国の能力が著しく制限されていることを、とりわけ懸念するものである。 7.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての分野(児童買春、児童ポルノおよび児童セックス・ツーリズムを含む)に関するデータ収集、分析、監視および影響評価を行なう、包括的な、調整のとれたかつ効果的なシステムを発展させかつ実施するための努力を強化するよう勧告する。データは、選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれがある子どもに特段の注意を払いながら、とくに性別、年齢、国籍および民族的出身、地域ならびに社会経済的地位ごとに細分化されるべきである。 IV.一般的実施措置 国家的行動計画 8.委員会は、子どもの人身取引および性的搾取対策国家行動計画(2011~2013年)が2011年12月7日に採択され、かつ、2014~2018年の期間を対象とする新たな行動計画が採択される予定であることを歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書で対象とされている分野で締約国がとった措置について、新たな行動計画に基づくさらなる戦略の参考とするための十分な評価が行なわれておらず、かつ同行動計画の採択および実施が遅れていることを懸念するものである。 9.条約に基づく総括所見(CRC/C/KHM/CO/2-3、パラ13)を参照しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの人身取引および性的搾取に対抗する新たな行動計画の採択を速やかに進めること。当該行動計画には、選択議定書で対象とされているすべての問題が含まれ、かつ、防止、被害を受けた子どもの保護、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合、ならびに、選択議定書で対象とされている犯罪の捜査および訴追を目的とした措置が掲げられるべきである。 (b) 新たな行動計画を、計画の実施状況を評価するための明確な指標および予定ならびに十分な人的資源、技術的資源および財源を備えた包括的な政策および戦略に編入することを検討すること。 (c) さらなる戦略および政策の策定の参考とするため、とられたすべての措置について定期的な監視および評価を実施すること。 調整 10.委員会は、選択議定書に関連する政策およびプログラムの全般的な調整、監視および実施のためにカンボジア国家子ども評議会が設置されたことに、肯定的措置として留意する。しかしながら委員会は、選択議定書で対象とされている分野においてカンボジア国家子ども評議会と「女性および子どもの人身取引、人の密輸、労働搾取および性的搾取の禁圧を主導する国家委員会」の調整機能が重複しているために、選択議定書を効果的に実施する締約国の能力が阻害されかねないことを懸念するものである。 11.条約に基づく総括所見(CRC/C/KHM/CO/2-3)のパラ11を参照しつつ、委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされている分野における子どもの権利政策の策定および実施に携わる既存の機関間の調整機構を整理することにより、カンボジア国家子ども評議会の権限および調整役割をさらに強化するよう勧告する。 普及および意識啓発 12.人身取引に関する意識啓発を図るための締約国の取り組みには留意しながらも、委員会は、選択議定書の促進および普及が、とくに実施機関、親、教員、法執行要員、子どもおよび公衆一般の間で十分ではないことを懸念する。委員会はまた、選択議定書に関連する問題が子どもを対象とする学校カリキュラムにまだ含まれていないことにも、懸念とともに留意するものである。 13.委員会は、締約国に対し、選択議定書の規定を広く知らせるためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。この目的のため、締約国はとくに以下の措置をとるべきである。 (a) 選択議定書で対象とされているすべての犯罪の防止措置および有害な影響に関する長期的な教育プログラムおよび意識啓発プログラム(援助に関するものおよび子どもが選択議定書上の犯罪の被害者となることを防止するために設置されている通報機構に関するものを含む)を、コミュニティ、市民社会組織および子どもたちと協議しながら発展させかつ実施すること。 (b) 国、州および地区の政府職員の間でならびにあらゆる関連の専門家集団(とくに警察官、裁判官および検察官)に対して、選択議定書を体系的に普及すること。 (c) 選択議定書に関連する問題を初等中等学校のカリキュラムに編入することを検討すること。 研修 14.政府間機関および非政府組織と連携しながら人身取引に関する研修活動が実施されてきたことには留意しながらも、委員会は、選択議定書上のすべての犯罪が研修活動によって十分に取り上げられているわけではなく、とくに遠隔地および農村部において、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が対象とされているわけではなく、かつ、関連の専門家(とくに警察および少年司法の運営に従事する専門家)が選択議定書の規定について十分な研修を受けていないことを懸念する。委員会はさらに、選択議定書で求められている防止活動および保護活動を実行するための、訓練を受けたソーシャルワーカーの人数がコミューンおよび地方のレベルで限られていることを懸念するものである。 15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団ならびに裁判官、警察官および公務員(州および自治体レベルの専門家を含む)を対象として、選択議定書の規定およびその実施についてとくに取り上げる体系的なかつ焦点の明確な研修を確保するため、十分な資源を配分すること。 (b) そのような研修に、コミュニティ、市民社会組織および被害を受けた子どもと協議しながら開発された学際的研修プログラムが含まれることを確保すること。 (c) 被害者の特定および選択議定書で対象とされている犯罪からの子どもの保護を効果的に進める目的で、習得された知識およびスキルが実践で活かされることを確保するため、研修活動の定期的評価を実施すること。 (d) コミューンのレベルでソーシャルワーカーの募集および訓練を進め、かつこれらのソーシャルワーカーがその役割を履行するための十分な資金を配分するための努力を強化すること。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条第1項および第2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 16.選択議定書で対象とされている犯罪を防止するために若干の措置がとられてきたこと(村およびコミューンにおける安全方針の確立ならびに子どもの保護に関する閣僚会議令および行動規範の策定、ならびに、子どもの保護に関する国家委員会の設置を含む)には留意しながらも、委員会は、 選択議定書で禁じられている犯罪についての防止措置が依然として不十分かつ断片的であることを深く遺憾に思う。委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 子どもが選択議定書上の犯罪の被害を受けやすくなることにつながる基本的な根本的原因および助長要因(貧困および失業など)に対し、十分な対応がとられていないこと。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれがとくに高い子ども(とくに路上の状況にある子ども、移住者である子どもおよび保護者のいない子どもならびに親が就労のために移住する際、後に残された子ども)を発見し、特定しかつモニターするための機構が不十分であること。 (c) 締約国における出生登録率が低く、選択議定書上の犯罪の遂行を容易にする要因のひとつとなっていること。 (d) とくに興行施設において子どもの性的搾取が大規模に行なわれており、かつ蔓延していること。 (e) 強制労働、とくに家事労働および危険な労働(製造業、採鉱業、農業およびサービス業にかかるインフォーマルセクターにおける労働など)における子どもの搾取を防止するために締約国がとった措置が限定的であること。 (f) 不法な養子縁組から子どもを保護するためにとられた措置について締約国から情報が提供されなかったこと、および、国際養子縁組法に基づく閣僚会議令の制定が遅れていること。 (g) 情報通信技術を通じてネット上で広く入手可能なポルノグラフィ―に子どもが出演しており、かつ多数の子どもが売春に従事している問題に取り組むための措置が不十分であること。 17.前回の総括所見(CRC/C/KHM/CO/2-3)のうち児童労働(パラ68)あらびに性的搾取および虐待(パラ72)に関する所見を参照しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書上の犯罪に関連する根本的原因およびリスク要因(貧困、失業および季節就労を含む)に対応し、かつもっとも被害を受けやすい状況に置かれた、選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれのある子どもを対象とする、包括的なかつ焦点の明確なアプローチを採用すること。 (b) 委員会の他の総括所見(CRC/C/KHM/CO/2-3、パラ37およびCRC/C/OPAC/KHM/CO/1、パラ14)で勧告されているように、すべての子どもの出生登録を確保するための努力を継続すること。 (c) インフォーマルセクター、危険な労働場所および興行施設で働く子どもを保護する目的で、防止を目的とする現行の法律ならびに行政措置、社会政策および社会プログラムの執行を強化し、かつ労働監察官を増員すること。 (d) 未決案件となっている国際養子縁組法施行令を採択し、不法な養子縁組を防止するためのプログラムを策定しかつ実施し、かつ、斡旋機関の認可および監視ならびに斡旋機関がさまざまなサービスについて請求する料金を規制することにより、養子縁組のすべての事案が選択議定書とならびに国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の原則および規定と全面的に一致する形で行なわれることを確保すること。 (e) 児童ポルノおよび児童買春と闘い、インターネット上の安全に関する教育を子どもに対して提供することによってインターネット関連のリスクに対処し、かつ、性的搾取を目的とする子どもへの需要の問題に取り組むための、焦点の明確なキャンペーンおよび専門教育プログラムを実施すること。 児童セックスツーリズム 18.委員会は、観光業法の採択、子どもにとって安全な観光委員会の設置ならびに子どもにとって安全な観光に関するキャンペーンおよびさまざまな観光業関係者を対象とする研修活動など、児童セックスツーリズムを防止するために締約国が行なっている取り組みを歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国のさまざまな地域、とくに農村部において、旅行および観光を背景とする子どもの性的搾取が継続的に行なわれている旨の報告があること。 (b) いわゆる孤児院観光という現象が増えているように思われること。そこでは、施設および孤児院の子どもが、観光客およびボランティアワーカーのような外国人による性的搾取にさらされている。 19.委員会は、締約国に対し、児童セックスツーリズムおよび孤児院観光を防止し、かつ、規制の枠組みおよび意識啓発措置を強化することによって子どもが被害者とならないようにするための努力を継続するとともに、児童セックスツーリズムおよび孤児院観光のすべての事件が捜査の対象とされることならびに加害者とされる者が訴追されかつしかるべき制裁の対象とされることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、促す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 児童セックスツーリズムの有害な影響について観光業界およびメディアへの働きかけを実施し、旅行代理店および観光業者の間で世界観光機関の世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、これらの代理店および業者に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励すること。 (b) 代替的養護に関する最低基準を維持する目的ですべての代替的養護施設に対する、かつ興行施設に対する、訪問監視および査察の実行を強化すること。 (c) 未決案件となっている代替的養護施設の運営についての閣僚会議令を速やかに採択することによって立法上および規制上の枠組みを強化するとともに、すべての代替的養護施設の義務的登録が引き続き執行されることを確保すること。 (d) 子どもに直接接して働くすべてのスタッフおよび(または)ボランティアの背景確認が組織的に行なわれることを確保すること。 (e) 居住型養護を受けている子どもを対象とする、秘密が守られかつ安全な通報手続を設けること。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条第2項および3項、第5条、第6条ならびに第7条) 現行刑事法令 20.委員会は、法律が選択議定書の規定に一致することを確保するために締約国が行なっている努力に評価の意とともに留意し、かつ、人身取引および性的搾取禁圧法に児童ポルノの包括的定義が編入されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、同法に欠陥が残っており、選択議定書第2条および第3条に定められた諸犯罪の定義が全面的に反映されているわけではないことに、懸念を表明するものである。とくに、委員会は以下のことに留意する。 (a) 子どもの売買罪の諸要素が法律において包括的に定義されておらず、かつ、実力またはその他の形態の威迫の要素(欺罔の使用、権限の濫用、監禁または脅迫など)が必要とされていること。 (b) 児童ポルノ罪の定義が制限的に過ぎること(選択議定書第2条(c)で規定されたすべての要素を十分に包含しておらず、かつ、配布を意図せずに移動ポルノを所持することが犯罪とされていないため)。 21.委員会は、締約国に対し、人身取引および性的搾取禁圧法を改正するとともに、あらゆる形態の子どもの売買および児童ポルノを適正に定義しかつ犯罪化することによって同法を選択議定書第2条および第3条と全面的に一致させるよう、促す。とくに、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 選択議定書第3条(a)にしたがった子どもの売買の包括的定義(これには、性的搾取または不法な養子縁組、子どもを強制労働に従事させることおよび利得を目的とした子どもの臓器移植を目的として子どもを提供し、引き渡しまたは受け取ることが含まれる)の編入によって同法を改正するとともに、同法第12条に掲げられた、あらゆる形態の子どもの売買における実力またはその他の形態の威迫の要素の要件を廃止すること。 (b) 選択議定書第2条(c)および第3条(c)に掲げられた児童ポルノの定義を拡大することにより、あからさまな性的活動に従事している子どもを描いたものではない子どもの思わせぶりな描写も明示的に含め、かつ、児童ポルノを製造し、流通させ、配布し、輸入し、輸出し、提供しまたは販売する行為とともに、児童ポルノを所持し、または情を知ってこれにアクセスしもしくはこれを閲覧する行為を包含すること。 不処罰 22.委員会は、訴追率および有罪判決率の低さに表れているように、締約国の立法上の枠組みの執行が限られていることにより、選択議定書上の犯罪が処罰されない状況が依然として蔓延していることを深く懸念する。とくに委員会は、法執行官によって促進される、被害者と加害者の和解の形態をとった裁判外の解決が広く行なわれていること、および、警察を含む公的職員の間で汚職が高い水準で行なわれていることにより、加害者を捜査しかつ訴追するための締約国の努力が深刻に阻害されていることを懸念するものである。 23.委員会は、締約国に対し、加害者が享受している不処罰と闘い、かつ、選択議定書上の犯罪が捜査されることおよび加害者とされる者が訴追されかつしかるべき制裁の対象とされることを確保するための努力を強化するよう、促す。この目的のため、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) すべての検察官を対象として、事件を積極的に訴追するよう明確な訓令を発するとともに、選択議定書上の犯罪の加害者に対して刑事手続が組織的にとられることを確保すること。 (b) 政府職員による共犯の告発について厳格な捜査を行なうことにより、汚職の問題に優先的課題として対応するとともに、選択議定書で対象とされている犯罪への対応に際して何らの措置もとらずかつ(または)汚職に関与した法執行官および警察官に制裁が科されることを確保すること。 域外裁判権および犯罪人引渡し 24.委員会は、締約国の法律により、人身取引および性的搾取禁圧法に定められた犯罪であって国外で自国の市民が行なったものまたは自国の市民に対して行なわれたものについて域外裁判権を設定しかつ行使することが可能とされていることに、肯定的措置として留意する。犯罪人引渡しの条件として締約国と申請国との間に条約が締結されていなければならないことに留意しつつ、委員会は、そのような取決めが存在しない場合、すべての犯罪人引渡し事案において双方可罰性要件が適用されることを懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされている犯罪が国外で行なわれた場合に、当該犯罪についての犯罪人引渡しに関して双方可罰性要件を廃止し、かつ、選択議定書第5条にしたがい、二国間または多国間の犯罪人引渡し条約が締結されていないときは選択議定書を犯罪人引渡しの法的根拠として用いることを検討するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条第3項および第4項) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 26.委員会は、締約国が、被害を受けた子どもの権利および利益の保護に向けた措置をとってきたこと(「子どもの代替的養護に関する国家政策および最低基準」、「被害を受けた子どもの権利の保護に関する原則」および人身取引・性的搾取被害者の特定および付託に関する指針案の採択など)に留意する。しかしながら委員会は、選択議定書上の犯罪についての理解および意識の水準が低いことにより、売買、買春およびポルノの被害を受けた子どもが自己の権利を主張できなくなっていることを、依然として懸念するものである。委員会は、以下のことをとりわけ懸念する。 (a) 法執行機関および司法機関への信頼感の欠如が広がっているため、選択議定書上の犯罪が過少にしか通報されていないこと。 (b) 苦情申立ておよび通報のための機構へのアクセスが限られていること。 (c) 選択議定書で保護されている子どもの権利の侵害に対応する法執行官の能力が弱いこと。 (d) 選択議定書で禁じられたすべての犯罪について、その被害を受けた子どもを特定するためにとられた措置が不十分であること。 (e) 被害を受けた子どもを十分に保護するための、警察、裁判所職員および政府機関間の調整機構が不十分であること。 (f) 選択議定書第9条第4項にしたがい、法的に責任を負う者から被害賠償を受けられるかどうかについての情報がないこと。 27.選択議定書第9条第3項に照らし、委員会は、締約国が、既存の枠組みの抑止効果を強化する目的で、あらゆる形態の子どもの性的搾取との闘いに対して公的アジェンダにおいて高い優先順位を与えるよう勧告する。その際、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) コミュニティレベルの苦情申立て機構が、選択議定書上の自己の権利を侵害された可能性のある子どもにとって容易にアクセス可能でありかつ利用可能であることを確保すること。 (b) 専門的研修を通じ、地方機関および司法機関を含むあらゆる法執行機関の能力を強化すること。 (c) 法執行機関、関連省庁および社会サービス機関間で情報の共有および協力を図るための機構を増やすこと等を通じ、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの早期発見および特定のための機構および手続を確立すること。 (d) 選択議定書第9条第4項にしたがい、被害を受けたすべての子どもが法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを保障するとともに、加害者から賠償を得られない場合に、被害を受けた子どもに対して補償を行なうための基金を設置すること。 刑事司法制度における保護措置 28.委員会は、すべての州で法廷遮蔽措置がとられていることおよび子どもの証言を記録するビデオリンク試験プロジェクトが進められていることを歓迎する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国が、選択議定書で対象とされている犯罪の被害者および証人である子どもを保護するための公式プログラムを設けておらず、かつ、その結果、これらの子どもが司法制度において適切な保護を提供されていないこと。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもに対し、刑事司法手続の間、無償の法的援助ならびに児童心理学者およびソーシャルワーカーの支援が十分に提供されていないこと。 (c) 2008年に採択された人身取引および性的搾取禁圧法第24条の規定にもかかわらず、買春および人身取引の被害を受けた子どもが法執行官によって時として犯罪者として扱われていること。 29.選択議定書第8条第1項および「子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針」(経済社会理事会決議2005/20付属文書)にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の被害者および(または)証人であるすべての子どもが、捜査および公判の手続全体を通じて刑事司法制度によって子どもに配慮したやり方で扱われ、かつ十分な援助を提供されることを、十分な法律上の規定および規則を通じて確保するよう促す。とくに、締約国は以下の措置をとるよう要請されるところである。 (a) 刑事手続および司法手続のすべての段階でそのような援助を提供することに関する、子どもに配慮した明確な手続および基準を確立すること。 (b) 子どもが法廷遮蔽措置を利用できることを確保し、かつ、ビデオリンク・プロジェクトを締約国のすべての州に拡大すること。 (c) 被害を受けた子どもに対し、無償の法的援助または法的援助のための補助ならびに児童心理学者およびソーシャルワーカーの支援を提供すること。 (d) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもが実務において犯罪者として扱われないこと、および、法執行官がこの点に関する締約国の法律を知らされることを確保すること。 被害者の回復および再統合 30.委員会は、回復および再統合に関する締約国の措置が人身取引被害者に限定されており、かつ、資源が欠乏していることならびに十分な訓練を受けたスタッフおよび官吏の人数が不十分であることを理由として、とくにコミューンのレベルで、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どものニーズを十分に考慮していないことを、懸念する。委員会はまた、国が運営するリハビリテーションおよび再統合のプログラムが存在しないこと、ならびに、社会的再統合および援助が主として非政府組織および国際連合諸機関によって行なわれる業務となっており、警察および社会問題・復員兵・青年省の関与および支援が不十分であることも、遺憾に思うものである。 31.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもに対し、とくにコミューンのレベルで適切な援助(その身体的および心理的回復ならびに全面的な社会的再統合のための援助を含む)が提供されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、国が運営する社会サービスの利用可能性を高め、かつ、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもへの援助を支援しかつ調整する政府機関の能力を強化することにより、このような努力について全面的責任を負うよう求めるものである。締約国はまた、子どもの回復および再統合のための政策およびプログラムの策定において子どもの参加を確保することも求められる。 VIII.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、二国間および地域間の取り決め 32.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするすべての犯罪について防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 国際協力 33.これとの関連で、委員会はまた、締約国が、締約国が、とくに国際連合人権高等弁務官事務所および国際連合児童基金と協力し、かつ両機関の技術的援助を求めることも勧告する。 IX.通報手続に関する選択議定書の批准 34.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 X.フォローアップおよび普及 フォローアップ 35.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、議会、最高裁判所ならびに国および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 総括所見の普及 36.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 XI.次回報告書 37.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2016年2月8日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/227.html
総括所見:スイス(OPAC・2006年) 第1回(2002年)/第2~4回(2015年)OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/CHE/CO/1(2006年3月17日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2006年1月9日に開かれた第1082回会合(CRC/C/SR.1082参照)においてスイスの第1回報告書(CRC/C/OPAC/CHE/1)を検討し、2006年1月27日に開かれた第1120回会合(CRC/C/SR.1120参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、選択議定書で保障されている権利に関してスイスで適用される立法上、行政上、司法上その他の措置に関する詳細な情報を与えてくれた、締約国の第1回報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、締約国代表団との有益かつ双方向的な対話も評価するものである。 B.積極的側面 3.委員会は、スイス連邦法において18歳未満の者の徴兵が明確に禁じられていることに評価の意とともに留意し、かつ、選択議定書の批准のための法令において志願入隊年齢を18歳に引き上げる旨の、全会一致による議会の決定(2002年)を歓迎する。加えて委員会は、締約国において、例外的事情がある場合に義務的徴募または志願入隊に関する年齢を引き下げることが認められていないことを歓迎するものである。 4.委員会は、刑法第129条において18歳未満の者による敵対行為への直接参加が対象とされていること、ならびに、刑法第180条以下において、子どもの意思に反する徴募および武力紛争における子どもの使用が禁じられていることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、刑法第299条および第300条が、国外の武力紛争のためにスイスで子どもを徴集する集団に適用されることにも、留意するものである。 5.委員会は、軍需資材の外国貿易に関する締約国の認可が一定の基準(軍需資材に関する1998年2月25日の政令(2002年3月12日現在))にしたがって行なわれており、かつ、その際、受領国における、兵士としての子どもの使用に特段の注意が払われていることに、評価の意とともに留意する。 6.委員会はまた、武力紛争における子どもの問題に対応するために活動している国連専門機関ならびに多数の国際機関および非政府組織に対する、締約国の財政支援も称賛する。さらに委員会は、締約国の文民平和促進プログラムに子ども兵士に関わる問題が統合されていることに、評価の意とともに留意するものである。 C.主要な懸念領域および勧告 実施措置 7.委員会は、2003年12月23日の軍刑法第9条改正(2004年6月1日施行)に、遺憾の意とともに留意する。これにより、スイスと緊密なつながりを有する者に対して戦争犯罪を行なったとされる者の訴追についての締約国の域外裁判権が制限されるためである。委員会は、締約国の法律で、スイスと緊密なつながりを有する被害者の事案についての裁判権が設定されていないことを、とりわけ遺憾に思う。 8.選択議定書第4条2項および第6条1項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 戦争犯罪(15歳未満の子どもを自国の軍隊に強制的に徴集しもしくは志願に基づいて編入することまたは敵対行為に積極的に参加させるために使用することなど)についての全面的な裁判権を回復する目的で、最近行なわれた軍刑法第9条の改正を見直すこと。 (b) スイスと緊密なつながりを有する被害者の事案についての裁判権を設定すること。 (c) 国外における軍事的活動のためにスイスで15歳、16歳または17歳の子どもを徴募した者の訴追についての国内裁判権を設定すること。 身体的および心理的回復のための援助 9.委員会は、締約国が、戦争で荒廃した国からやってくる子どもの庇護希望者および移民の目的地国であることに留意する。これらの子どもの多くがトラウマ性の経験の被害者である可能性があることに照らし、委員会は、庇護を申請する子どもの事情聴取を行なう公的機関が、軍事的活動および武力紛争の影響を受けた子どもに適切に対応するための特別訓練を受けていないことに、懸念とともに留意するものである。委員会は、武力紛争に関与した18歳未満の庇護希望者に関する体系的なデータ収集が行なわれていないことを遺憾に思う。さらに委員会は、元子ども兵士をとくに対象とした統合プログラムまたは活動が実施されていないことも懸念するものである。 10.委員会は、締約国が、スイスに入国する子どもの庇護希望者、難民および移民であって武力紛争に関与した可能性がある者に特段の注意を払うとともに、これらの子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための、即時的な、文化的配慮のある、かつ学際的な援助を提供するよう、勧告する。委員会はまた、これらの子どもに対し、未成年者のために設けられた特別収容施設が提供されるべきことも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、戦争で荒廃した国からやってくる子どもの庇護希望者および移民のためにおよびこれらの子どもとともに活動する公的機関を対象として体系的な研修を実施するとともに、自国の管轄内にある子どもの難民、庇護希望者および移民であって母国で敵対行為に関与した可能性がある者についてのデータを収集するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(CRC/GC/2005/6)を考慮するよう勧告するものである。 国際的な援助および協力 11.武力紛争における子どもの問題に対応するために活動している国連専門機関ならびに多数の国際機関および非政府組織に対する締約国の財政支援を認知していることに言及しつつ、委員会は、締約国が、二国間および多国間の活動を継続するとともに、より多くの防止プログラムを対象とするためにこのような支援を拡大するよう、勧告する。 研修/選択議定書の普及 12.委員会は、締約国が、関連のすべての専門家集団を対象として、すべての国内言語による、選択議定書の規定に関する継続的かつ体系的な教育および研修を引き続き発展させるよう勧告する。委員会は、締約国が、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じて、すべての国内言語により、選択議定書を公衆一般ならびにとくに子どもおよび親に対して広く知らせるよう勧告するものである。加えて委員会は、16歳になって軍役に服すべきとされる者を対象とした予備的軍役オリエンテーションに、選択議定書の規定に関する規定を含めるよう勧告する。 文書の普及 13.締約国が第1回報告書をフランス語、ドイツ語およびイタリア語で入手可能にしようとしていることには留意しながらも、委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。 次回報告書 14.選択議定書第8条2項にしたがい、委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第2回・第3回統合定期報告書(提出期限・2007年9月25日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2012年12月26日)。
https://w.atwiki.jp/childreninfukushima/pages/84.html
(情報掲載日:2011.05.14) 松本市が福島第1原発事故の計画避難区域を出て避難中の子どもたちを、夏場に同市内に受け入れる準備を進めていることが11日、分かった。チェルノブイリ原発事故の際の各国NPOの対応を参考に、学校や地域の単位で避難させて集団でリフレッシュしてもらう狙いだ。市は、一時的な滞在だけでなく同市への移住も視野に入れている。 チェルノブイリ原発事故の汚染地で医療支援をした菅谷昭市長によると、ドイツやイタリアのNPOの中には汚染地に住み続ける子どもを夏場に1カ月前後受け入れたところがあるといい、今回はこれにヒントを得た。 市の計画では、友達や顔見知りなど互いにつながりのある子ども約20人が対象。受け入れは夏休み中の20日間程度を想定している。松本市が同市奈川の空きペンションを借り、一部の保護者も一緒に生活してもらう。食事代は利用者負担とする予定だ。 自然の中で遊んだり、勉強したりするため、世話をする人が必要になることも想定しており、市は信大や松本大の学生からボランティアを募る計画だ。 市は福島県教委に受け入れについて相談しており、今後は同県の市町村教委と協議する方針。菅谷市長は取材に、「少子化の時代にあって子どもは国の宝。子どもの心身の健康を守ることは大人の義務で、率先して取り組む」と話している。 情報元リンク 信濃毎日新聞 (2011.05.12) http //www.shinmai.co.jp/news/20110512/KT110511FTI090006000022.htm
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/293.html
総括所見:ポーランド(第1回・1995年) 第2回(2002年)/第3回・第4回(2015年)OPAC(2009年)/OPSC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.31(1995年1月15日)/第8会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1995年1月16日および17日に開かれた第192回~第194回会合(CRC/C/SR.192-194)においてポーランドの第1回報告書(CRC/C/8/Add.11 HRI/CORE/1/Add.25)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1995年1月26日に開かれた第208回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国に対し、その報告書に関して、かつハイレベルな代表団を通じて委員会との建設的かつ率直な対話に携わったことに関して、評価の意を表する。委員会は、事前質問票(CRC/C/8/WP.4) への回答としてポーランド政府が提供した、文書による情報を歓迎するものである。その情報は会期前に委員会に届けられた。 B.積極的な側面 3.委員会は、閣僚評議会が報告書を正式に採択したことを歓迎する。 4.委員会はさらに、条約の批准時に行なわれた留保および宣言の内容を、その撤回の可能性を検討する方向で見直す意思を代表団が表明したことを歓迎する。 5.委員会は、条約で規定された権利の実施を阻害するさまざまな問題を特定しかつそれに取り組み、かつ、とくに子どもの保健の領域で適切な解決策を求めることに対して、政府が前向きな姿勢を示していることに心強い思いを感ずる。 6.委員会は、子どもの権利に関する意識を促進するために政府がとった措置を歓迎する。委員会はまた、ユニセフ・ポーランド委員会および子どもの権利保護委員会が条約の条文を刊行したこと、ならびに、いくつかのワークショップおよびセミナーが組織されたことも歓迎するものである。委員会は、条約の権利および原則についての教員の研修に関してとられた措置ならびに裁判官のために行なわれた同様の活動に、心強い思いを感ずる。 7.委員会は、市民的権利コミッショナーが行なった活動、ならびに、子どもの権利も含む人権および基本的自由の保護のために女性家族問題政府全権事務所を再設置するという最近の決定に、満足感とともに留意する。 8.委員会は、ポーランドが、現在の財政的困難にも関わらず、発展途上国の学生の教育の領域におけるものも含めて国際協力活動に参加しようとしていることを評価する。 9.委員会は、同国の危機的な政治的および経済的変化の時期にあって、締約国が、子どものための前向きな変化を導入することおよび子どものニーズを考慮に入れた政策を継続することを重視していることを、認識する。これとの関連で、委員会は、とくに、委員会の総括所見に閣僚評議会の注意を促し、適切な行動を求めることを代表団が保証したことを、歓迎するものである。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 10.委員会は、現在の政治的移行期にあって、かつ社会的変化および経済的危機の雰囲気のなかで、ポーランドが直面している困難に留意する。委員会は、多くの子どもたちの状況が、進行しつつある貧困および増加する失業の影響を受けていることに留意するものである。 12.委員会はまた、条約の一般原則と矛盾する偏見、非寛容および他の社会的態度によって引き起こされてきた困難にも留意する。 D.主要な懸念事項 12.委員会は、同国に広がっている困難な経済状況が子どもたちに与える影響に心を痛める。これとの関連で、委員会は、条約第3条および第4条に照らし、子ども、とくにもっとも被害を受けやすい状況に置かれた集団に属する子どもを保護するために適切な措置がとられているかどうかについて、とくに懸念するものである。 13.委員会は、同国にいまなお広がっている伝統的態度が、とくに第2条(差別の禁止の原則)、第3条(子どもの最善の利益の原則)および第12条(子どもの意見の尊重)を含む条約の一般原則の実現に資していないのではないかと懸念する。 14.委員会は、最低婚姻年齢、家族法および少年司法の領域の場合のように、既存の立法を条約と全面的に一致させるための法改正の枠組みにおいてとられた措置が、条約の一般原則等に照らしても不十分であることを懸念する。 15.委員会は、子どもの権利の促進および保護のための政策を実施するにあたって、さまざまな省庁の間で、かつ中央の公的機関と地域および地方の公的機関との間で十分な調整が行なわれていないことを懸念する。 16.委員会は、子どもの権利の分野で体系的な監視機構が存在しないこと、および、子どもの状況に関するデータ収集のための包括的なシステムが存在しないことに、懸念を表明する。このような状況は、条約の実施において蔓延している経済的および社会的格差を十分に克服することができない結果をもたらしている。 17.委員会は、子どもの権利の分野における国家的戦略がまだ採択されておらず、かつ、被害を受けやすい状況に置かれた子どもの権利の悪化を防止するためにセーフティ・ネットが設けられることを確保することを目的とした、このような子どもを保護するための具体的プログラムが、国内行動計画の採択によるものも含めてまだ確立されていないことを、懸念する。 18.委員会は、条約の原則および規定に関する意識が、市民のさまざまな層の間で不十分であることを懸念する。これとの関連で、委員会は、HIVまたはAIDSに感染した子どもおよびロマの子どものような、とくに被害を受けやすい状況に置かれた子どものニーズおよび状況に、社会が十分に敏感になっていないことも懸念するものである。委員会は、専門家集団、とくにソーシャルワーカー、法執行官および司法職員に対して十分な研修が行なわれていないことを懸念する。 19.委員会は、学校または子どもが措置される可能性のある施設における体罰および子どもの不当な取扱いを効果的に防止しかつそれと闘うために適切な措置がとられていないことを、遺憾に思う。委員会はまた、家庭における子どもの虐待および暴力が大規模に存在すること、および、この点で現行法による保護が不十分であることにも、心を痛めるものである。 20.少年司法の運営に関わる状況、ならびに、とくにそれが条約第37条および第40条ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則のような他の関連の基準と両立するかどうかという点は、委員会にとって懸念の対象である。これとの関連で、委員会は、「少年の堕落」に関する規定が条約と両立しないように思えることを遺憾に思う。 21.委員会は、犯罪活動に子どもがますます利用されかつ関与させられるようになっていること、ならびに、子どもが性的虐待、薬物濫用、アルコール依存ならびに拷問および不当な取扱いにさらされやすくなっていることに、懸念とともに留意する。 E.提案および勧告 22.委員会は、ポーランド政府に対し、条約第12条~第16条に定義された権利の行使に関わって行なわれた留保および宣言を、撤回の方向で見直す可能性を検討するよう奨励する。 23.委員会は、子どもに関する包括的な政策を発展させ、かつ同国における子どもの権利条約の実施の効果的な評価を確保する目的で、締約国が、人権および子どもの権利に携わるさまざまな政府機構間の調整を全国および地方のいずれのレベルでも強化し、かつ、非政府組織とのより緊密な協力を確保するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、市民的権利コミッショナーおよび最近再設置された女性家族問題政府全権事務所が現在有している権限および責任の強化を検討するよう提案するものである。 24.委員会はさらに、締約国が、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた集団に属する子どもとの関わりも含めて、条約が対象としているさまざまな領域における子どもの状況に関するあらゆる必要な情報の収集に着手するよう勧告する。委員会はまた、条約で認められた権利の実現にあたって達成された進展および直面した困難を中央、地域および地方のレベルで評価し、かつ、とくに経済的変化が子どもに与える効果を定期的に監視するために、分野横断的な監視システムを確立するようにも提案するものである。そのような監視システムは、締約国が適切な政策を立案し、かつ蔓延している格差および伝統的偏見と闘うことを可能にしてくれよう。 25.委員会は、ポーランド政府に対し、条約第4条の全面的実施に注意を向け、かつ、中央、地域および地方のレベルで賢明な資源配分を確保するよう奨励する。経済的、社会的および文化的権利の実施のための予算配分は、利用可能な資源を最大限に用いて、かつ子どもの最善の利益に照らして確保されるべきである。 26.委員会はさらに、政府に対し、子どもの権利の分野における国内行動計画の採択を考慮し、かつ、子どもを保護すること、および、経済的移行の流れの中で彼らの権利が悪化することを防止するセーフティネットの確立を確保することを目的として、具体的なプログラムを発展させるよう奨励する。 27.委員会は、条約第42条に照らし、大人および子どもの双方によって条約の規定および原則が広く知られかつ理解されるようにするために、さらなる努力が必要であるという見解に立つものである。 28.条約第2条に照らし、被害を受けやすい状況に置かれた子ども、とくにロマの子どもおよびHIV/AIDSに感染した子どもに対する差別的態度または偏見の増加を防止するためにも、さらなる措置がとられるべきである。 29.委員会は、教員、法執行官および裁判官を含む、子どもとともにまたは子どものために働く専門家集団を対象として子どもの権利に関する定期的研修プログラムを組織し、かつ、人権および子どもの権利をこれらの専門家の養成カリキュラムに含めることを勧告する。 30.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の規定と国内法との全面的一致を確保する目的で法改正を継続し、かつ、差別の禁止、子どもの最善の利益および子どもの意見の尊重を含む条約の一般原則を明確に反映させるよう提案する。これとの関連で、委員会は、1968年家族法を見直すこと、および、国際養子縁組に関して現在設けられている保障措置を向上させることを勧告するものである。これとの関連で、委員会は、ポーランド政府に対し、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の批准を検討するよう奨励する。 31.委員会はさらに、拷問または他の残酷な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の明確な禁止および家庭における体罰の禁止を、国内法に反映させるよう提案する。この分野について、委員会はまた、家庭の内外における不当なまたは残酷な取扱いに関する苦情を監視するための手続および機構を発展させるようにも提案するものである。さらに、あらゆる形態のネグレクト、虐待、搾取、拷問または不当な取扱いの被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を、子どもの健康、自尊心および尊厳を助長するような環境のなかで促進するための特別プログラムが設けられるべきである。 32.委員会は、政府が、法改正の枠組みのなかで、子どもの権利条約の規定および原則に照らし、保護者のいない子どもおよび難民認定を拒否されて送還を待っている子どもの状況への対応を構想するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、UNHCRの技術的援助を求めることを検討するよう奨励するものである。 33.少年司法の運営の分野について、委員会は、包括的な改革を行なうこと、ならびに、当該改革において、子どもの権利条約(とくに第37条、第39条および第40条)ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則のようなこの分野の他の関連の国際基準を指針とすることを、提案する。少年非行の防止、自由を奪われた子どもの権利の保護、および、公的援助という名目のものも含めた少年司法制度のあらゆる側面における基本的権利および法的保障措置への尊重に、とくに注意が向けられるべきである。少年司法制度に携わるすべての専門家、とくに裁判官、法執行官、矯正施設職員およびソーシャルワーカーを対象として、関連の国際基準に関する研修プログラムが組織されるべきである。委員会は、この領域における技術的援助を、人権センターおよび犯罪防止刑事司法局に対して求めるよう勧告する。 34.委員会は、家族教育を提供し、かつ社会における家族の役割および親の平等責任に関する意識を発展させるために、さらなる努力が行なわれるべきであると考える。とくに条約第18条および第27条に照らし、両親が子育ての責任を遂行する際に援助を提供するシステムを強化するため、さらなる措置がとられるべきである。さらに、ひとり親となることの問題に関して研究を行なうこと、および、ひとり親の特別なニーズに対応するため関連のプログラムを確立することが、提案されるところである。 35.委員会は、締約国に対し、施設養護に代わる可能性のある手段を構想しかつ利用できるようにし、かつ施設に措置された子どもの権利の実現を効果的に監視する機構を確立する目的で、施設における子どもの状況に対処するよう奨励する。 36.委員会は、締約国に対し、条約を実施する努力、とくに国内法を条約に調和させ、子どもの権利に関する調整機構および監視機構を発展させ、かつ子どもの権利を明確な優先順位として位置づける包括的な社会政策を採択する努力について、とくに人権センターおよびユニセフの国際的な技術的援助および助言を求めるよう奨励する。 37.最後に委員会は、条約第44条第6項に照らし、政府が提出した報告書を公衆一般が利用できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会がここに採択した総括所見とともに同報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。 更新履歴:ページ作成(2017年2月28日)。
https://w.atwiki.jp/t2pqdis/pages/13.html
子どもと一緒に遊んでいると、大人の目から見るとどうもおかしいと思う場面がよくあります。 例えば、最近何回も書いているお店屋さんごっこについて。子どもたちはごっこを始めようとしたとき、プレイルームにあるおもちゃのカゴに、全てのおもちゃをごちゃ混ぜにして入れるのです。大人の見方からすると、「そのような並べ方するお店はないでしょう」と思いますね。ただここでやり方を否定することはなしです。子どもたちには、ごっこをするにあたって自分たちの世界観があり、彼らはそれに基づいてごっこをしているのだと思うからです。 自分たちはその流れを見守りながら、子どもの視点で遊びに加わっていくことが大事だと思うのです。