約 1,857,943 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/63.html
総括所見:ノルウェー(OPAC・2007年) 第1回(1994年)/第2回(2000年)/第3回(2005年)/第4回(2010年)OPSC(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/NOR/CO/1(2007年7月6日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2007年5月25日に開かれた第1238回会合においてノルウェーの第1回報告書(CRC/C/OPAC/NOR/1)を検討した。この検討は、締約国の代表団が第39会期に採択された委員会の決定第8号にしたがって報告書の技術的審査を選択したため、代表団の出席を得ずに行なわれたものである。委員会は、2007年6月8日に開かれた第1255回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、選択議定書で保障された権利に関してノルウェーで適用される立法上、行政上、司法上その他の措置に関する追加的情報を提供してくれる、締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/OPAC/NOR/Q/1/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。 3. 委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第3回定期報告書に関して2005年6月3日に採択された委員会の前回の総括所見(CRC/C/15/Add.263)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.積極的側面 4.委員会は、締約国が選択議定書の批准時に行なった、ノルウェー軍への志願入隊に関する最低年齢は18歳である旨の宣言を歓迎する。委員会はまた、敵対行為への直接参加、軍隊への義務的徴募ならびに国の軍隊とは異なる武装集団における兵士の徴募および使用に適用される最低年齢要件を締約国が満たすことを確保するために行なわれた、郷土防衛法および軍役義務法の改正(2001年1月19日の法律第3号)ならびに刑法改正(2002年6月18日の法律第54号)も歓迎するものである。 5.委員会は、締約国が世界中の多くの和平プロセスおよび和解プロセスにおいて調整役として積極的役割を果たしており、かつ、紛争時および紛争後の状況ならびに和平プロセスにおいて人権の実現を強化するための努力を行なっていることについて、締約国を賞賛する。この文脈において、委員会は、女性と平和および安全保障に関する安全保障理事会決議1325 (2000)を実施するためのノルウェー政府の行動計画(2006年3月8日)を歓迎するものである。 6.委員会は、南の子どもおよび若者のための締約国の戦略「30億の理由」を歓迎する。これは、武力紛争を防止し、紛争の平和的解決を促進しおよび永続的かつ安定した平和を構築するためにノルウェーがアフリカ、アジアおよびラテンアメリカで行なっている、精力的な経済上、政治上および外交上の努力を強化するものである。委員会はまた、軍隊への子どもの徴募を防止し、かつ、子ども兵士の武装解除、動員解除および地域コミュニティへの再統合ならびに保護およびリハビリテーションを促進することに対する締約国のコミットメントも歓迎する。 7.委員会は、武力紛争における子どもの問題を国連安全保障理事会の議題に掲げ続け、かつその位置づけを強化するために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。 C.主要な懸念領域および勧告 実施に関する一般的措置 立法 8.委員会は、締約国が、国際刑事裁判所ローマ規程第6条、第7条および第8条に列挙された犯罪(とくに、15歳未満の子どもを自国の軍隊に強制的に徴集しもしくは志願に基づいて編入することまたは敵対行為に積極的に参加させるために使用することを戦争犯罪として犯罪化した第8条2項(b)(xxvi))を独立した犯罪として導入することを目的とした刑法改正を進めていることに留意する。とくに委員会は、刑法草案で提案されている第103条1項(e)が、18歳未満の子どもを自国の軍隊に強制的に徴集しもしくは志願に基づいて編入することまたは敵対行為に積極的に参加させるために使用することを戦争犯罪として犯罪化することとしており、したがって国際刑事裁判所ローマ規程よりも高度な基準を導入しようとしていることを、歓迎するものである。 9.委員会は、軍隊または武装集団のための子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置を強化するため、締約国が、刑法改正のために行なっている努力を加速させるよう勧告する。 10.委員会は、18歳に満たない郷土防衛隊青年部隊の志願隊員はノルウェー軍に採用されたものとは見なされえないと締約国が明言していることに留意する。委員会は、18歳未満の志願隊員は動員の対象とされもしくは軍の構成員として編入されることはなく、実践的訓練に参加せず、または他のいかなる形でも戦争類似の活動に参加しないことに留意する。郷土防衛隊法に掲げられたこのような保護措置にもかかわらず、委員会は、子どもにとって「軍事的要素」を有するこれらの種類の活動は、平和および安全な環境が子どもの全面的保護にとって不可欠であることを強調する選択議定書の精神に全面的には一致しないとの見解に立つものである。郷土防衛隊青年部隊の志願隊員は軍事懲戒の対象とされないことに留意しながらも、委員会は、この軍事懲戒権からの除外が慣行および軍事懲戒権法(1988年)の解釈に基づくものであり、〔子どもに対する軍事懲戒が〕法律で明確に禁じられていないことを懸念する。 11.委員会は、締約国に対し、選択議定書の精神を全面的に尊重しかつあらゆる状況において子どもに全面的保護を提供する目的で、郷土防衛隊に入隊する志願隊員の最低年齢を16歳から18歳に引き上げるよう奨励する。委員会はまた、締約国が、18歳に満たない郷土防衛隊青年部隊の志願隊員はいかなる種類の軍事懲戒の対象にもしてはならないことを法律で命じるようにも、勧告するものである。 普及および研修 12.委員会は、子ども兵士の問題に関する意識を高めるために締約国が行なっている努力を心強く思う。たとえば、委員会は、国防大臣の主催で2007年3月26日に開催され、国の行政機関、軍隊、非政府組織(NGO)およびメディアの代表が一堂に会した子ども兵士(選択議定書の適用範囲も含む)に関する全国会議に、評価の意とともに留意するものである。委員会はまた、締約国の軍隊が、セーブ・ザ・チルドレン・ノルウェーと連携しながら、選択議定書および関連の問題に関する研修を行なっていることにも、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、締約国が国レベルで実施している選択議定書関連の普及活動および研修活動が全体として軍隊および軍事訓練に限定されていることを懸念するものである。 13. 委員会は、締約国が、軍隊および国際的作戦に従事する要員に対して引き続き選択議定書に関する研修を行なうとともに、この点に関する市民社会組織との協力を継続するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働くあらゆる関連の専門家集団(保健従事者、ソーシャルワーカー、教員、武力紛争の影響を受けている国からやってきた子どもの庇護希望者および移民とともにおよびこのような子どものために活動する公的機関、弁護士ならびに裁判官など)対象とする、選択議定書の規定に関する体系的な意識啓発、教育および研修プログラムを発展させるようにも勧告するものである。 国際的な援助および協力 被害者の保護 14.委員会は、締約国が、子どものための国家行動計画(主要目標9)に、戦争および紛争を経験した子どもならびに保護者のいない未成年者としてノルウェーに到着した子どもの難民の保護、リハビリテーションおよび統合を含めていることを賞賛する。委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者の過半数は紛争地域からノルウェーにやってきたこと、および、たとえば2004年には審査された申請の60%が却下されたことに留意する。委員会は、締約国が、ノルウェーから母国に送還された子どもの庇護希望者および難民(徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもを含む)をフォローアップするための十分な戦略を定めていないことに、懸念とともに留意するものである。 15.委員会は、締約国が、市民社会を含む関連のパートナーと協力しながら子どものための国家行動計画を実施するための具体的措置を引き続きとり、かつ、同計画を全面的に実施するための十分な予算配分およびフォローアップ機構の整備を行なうよう勧告する。徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもの庇護希望者および難民であってノルウェーから母国に送還された者について、委員会は、締約国が、これらの事案をフォローアップするための措置(適切な二国間の措置を含む)をとるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、実行可能な場合にはこれらの子どもに関する個人的フォローアップ戦略を定めるよう奨励するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)に留意するよう勧告する。 財政援助その他の援助 16.委員会は、戦争の影響を受けた子どものためのプログラムを行なっている多数の国連機関、とくにユニセフに対する目覚ましい財政支援について、締約国を賞賛する。委員会はまた、子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表、ならびに、セーブ・ザ・チルドレン、ノルウェー難民評議会および子ども兵士使用廃絶NGO連合のようなさまざまな国内的および国際的非政府組織に対する締約国の支援も歓迎するものである。委員会はまた、締約国がこの分野で行なっている二国間活動も心強く思う。 17.委員会は、締約国が、防止活動ならびに選択議定書に反する行為の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合にとくに焦点を当てながら、選択議定書の全面的実施に対する財政援助その他の援助(武力紛争に関与した子どもの権利に対応するための多国間および二国間の活動を含む)を引き続き提供するよう、勧告する。 武装解除、動員解除および社会的再統合に関してとられた措置 社会的再統合の措置 18.選択議定書に反する行為の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に関して、委員会は、締約国が一部の受入れセンターにおいて庇護希望者である親に指導を提供していること、および、危機心理学センターによって開発された、難民の子どものトラウマおよびストレス後症候群スクリーニング法が臨床試験の段階に入ったことに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者(徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもを含む)の監督およびこのような子どもに提供されるケアならびに受入れセンターで暮らす子どもに提供される心理的および精神医学的サービスが不十分であるという懸念をあらためて表明する(2005年6月3日に採択された、締約国の第3回定期報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.263)、パラ41-42参照)。委員会は、場合により、保健ケアを必要としているものの在留許可を得ずに締約国に在留している子どもが、適正に登録されていないとの理由で保健サービスへのアクセスを否定される可能性があること、および、そのなかには国外で徴募されまたは敵対行為で使用された子どもも含まれている可能性があることに、特段の懸念とともに留意するものである。委員会は、以下のことを遺憾に思う。 (a) 保護者のいない子どもの庇護希望者および難民のための全国的な後見人制度が設けられていないこと。現行の後見人制度では、後見人の採用および研修の質がすべての自治体で十分とはいえない可能性がある。 (b) 保護者のいない子どもの庇護希望者(徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもを含む)に関する責任が、2007年10月1日より2つの公的機関、すなわちノルウェー移民局(保護者のいない子どもの庇護希望者のうち15~17歳の者)と児童福祉サービス(保護者のいない子どもの庇護希望者のうち15歳未満の者)との間で分担されること。委員会は、保護者のいないすべての子どもの庇護希望者(選択議定書に反する行為の被害を受けた子どもも含む)に対し、できれば同一のサービス担当機関のもとで適切な保護およびサービスが提供されるべきであるという見解に立つものである。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 徴募されまたは敵対行為で使用されたことがあって現在受入れセンターで暮らしている子どもに対し、十分な支援および監督ならびに十分な心理的および精神医学的ケアが提供されることを確保するための措置をとること。 (b) 受入れセンターにおける親指導プログラムの提供を拡大し、かつ、危機心理学センターによって開発された、難民の子ども(徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもを含む)のトラウマおよびストレス後症候群スクリーニング法を早期に実施するための努力を強化するための措置をとること。 (c) 保護者のいない子どもの庇護希望者および難民(徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもを含む)のための、統一された全国的後見人制度の設置を検討すること。 (d) 保護者のいない子どもの庇護希望者全員に平等なサービス提供を保障するため、このような子どもに関する責任を、児童福祉サービスのような子どもの権利志向の単一の公的機関に集中させることを検討すること。 20.委員会はまた、締約国が、その管轄内にある子どもの難民、庇護希望者および移民であって母国において徴募されまたは敵対行為で使用された可能性がある子どもについてのデータを体系的に収集するようにも勧告する。 フォローアップおよび普及 フォローアップ 21.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会、議会(ストーティング)ならびに県および自治体ならびに適用可能なときは子どもオンブズマン、ノルウェー軍および郷土防衛隊に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 22.委員会は、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択したこの総括所見を、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じ、子どもおよびその親が広く入手できるようにすることを勧告する。委員会はまた、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が選択議定書を公衆一般に広く知らせることも勧告するものである。 次回報告書 23.選択議定書第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第4回定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年9月5日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/94.html
総括所見:カンボジア(第1回・2000年) 第2回(2011年)OPAC(2015年)/OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.128(2000年6月28日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2000年5月24日に開かれた第629回および第630回会合(CRC/C/SR.629-630参照)において、2000年5月24日に提出されたカンボジアの第1回報告書(CRC/C/11/Add.16)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)2000年6月2日に開かれた第641回会合において。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがった締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/CAM.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、締約国の代表団との建設的対話を心強く思うとともに、議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する反応を歓迎するものである。委員会はまた、条約の実施に直接関与する高位の代表団が出席してくれたことにより、委員会が締約国における子どもの権利の状況を十全に評価できたことも歓迎する。 B.積極的側面 3.委員会は、カンボジアが、人権保護のための6つの主要国際文書の締約国であることを歓迎する。締約国が、対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約を批准したこと(1999年)も歓迎されるところである。 4.委員会は、締約国が、子どもの権利条約に掲げられた権利の保護を1993年憲法(第48条)に盛りこんだことを歓迎する。 5.カンボジア政府と人権高等弁務官事務所が調印し、人権に関する技術的援助および助言サービスのプログラムを開設した了解覚書(1996年)は、委員会の歓迎するところである。 6.委員会は、ILO最低年齢条約(第138号)の批准(1999年)およびカンボジア政府とILO/IPECによる了解覚書の調印(1997年)のような、児童労働と闘うために締約国がとった措置を歓迎する。 7.委員会は、締約国の第1回報告書の作成および条約の実施に非政府組織が参加していることを歓迎する。 C.条約の実施における進展を阻害する要因および困難 8.委員会は、とくに20年以上に及ぶジェノサイド、武力紛争および政治的不安定ならびに長年にわたる締約国の孤立を理由として、締約国が条約の実施に関して多くの困難に直面していることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、締約国のきわめて困難な社会経済的状況により、子どもを含むもっとも脆弱な立場に置かれた集団に影響が生じており、かつその権利の享受が妨げられていることにも留意するものである。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 立法 9.締約国の立法上の枠組みにおいて条約のいくつかの規定が網羅されており、かつ新法を起草するための努力が行なわれていることは認識しながらも、委員会は、条約を全面的に尊重するためには国内法をなお見直し、かつ新法を制定する必要があることを依然として懸念する。現行法が執行されていないことも懸念の対照である。 10.委員会は、現行法を条約の規定、とくに一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)と一致させる目的で、その見直しを行なうよう勧告する。その際、出生登録、家庭および代替的養護ならびに少年司法の分野に特別な注意を払わなければならない。委員会はさらに、締約国が、現在進行中のおよび今後の法律起草プロセス、とくに民法草案、刑法草案および刑事訴訟法草案に、子どもの権利に関わる問題を盛りこむよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにOHCHRおよびユニセフの技術的援助を求めるよう奨励する。 調整 11.委員会は、条約の実施の調整を担当するカンボジア国家子ども評議会(CNCC)が設置されたことは歓迎するものの、その任務を締約国全域で全面的にかつ効果的に履行する同評議会の能力について懸念を表明する。とくに、評議会が人的資源および財源を欠いていることに対して懸念が表明されるところである。 12.委員会は、締約国が、国、地域および地方のレベルで条約の実施を調整することに関するカンボジア国家子ども評議会(CNCC)の役割を強化するため、国際協力等も通じて効果的な措置をとるよう勧告する。CNCCに対してより実質的な人的資源および財源を提供し、かつ子どもの権利の分野で活動する非政府組織とのより緊密な協力および調整を確立するため、いっそうの努力が行なわれるべきである。 監視 13.委員会は、条約の実施を監視する締約国の能力が限られていること、および、条約に基づく権利の侵害についての子どもからの苦情を登録しかつこれに対応する独立の機構が存在しないことを、懸念する。 14.委員会は、締約国が、条約の実施を監視し、ならびに、自己の権利の侵害に関わる子どもからの苦情に子どもにやさしい方法でかつ迅速に対応し、かつそのような侵害に対して救済を提供する独立の機構(たとえば子どもオンブズパーソン)の設置を検討するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもが当該機構を効果的に活用することを促進するための意識啓発キャンペーンを実施するよう提案するものである。 データ収集 15.委員会は、教育管理情報システムおよび保健情報システムのような、データ収集の分野で締約国がとった措置を歓迎する。にもかかわらず、条約が対象とするすべての分野(子どもの虐待および不当な取扱い、マイノリティ集団に属する子ども、女子、農村部の子どもならびに売買、取引および買春の被害を受けた子どもを含む)についての体系的、包括的かつ細分化された量的および質的データを収集するための機構が存在しないことに、懸念が表明されるところである。 16.委員会は、条約が対象とするあらゆる分野を包摂する目的で、データ収集システムの開発および強化を継続するよう勧告する。当該システムは、子どもの権利の実現に関して達成された進展を評価する基盤として、18歳未満のすべての子どもを含み、かつ脆弱な立場に置かれた子どもをとくに重視するべきであり、かつ、条約の規定の実施を向上させるための政策立案の一助として活用されるべきである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにユニセフの国際援助を求めるよう奨励する。 予算配分 17.数十年間の戦争の結果、締約国のインフラおよび社会サービスのほとんどが破壊されたことは認識しながらも、委員会は、「利用可能な資源を最大限に用いて」予算を配分することに関わる条約第4条の規定に十分な注意が払われていないことに、懸念を表明する。 18.委員会は、締約国が、利用可能な最大限の資源が子どものための保健サービス、教育サービスおよび社会サービスに配分され、かつ、脆弱な立場に置かれたおよび周縁化された集団に属する子どもの保護に特段の注意が払われることを確保することを優先するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにドナーによる「カンボジア協議グループ」の調整枠組みのなかで、国際社会との開かれた協力を継続しかつ醸成するよう奨励するものである。 条約の普及 19.学校カリキュラムに条約を含めることなど、条約の原則および規定に関する広範な意識を促進するためにとられた措置は認識しながらも、委員会は、これらの措置を強化する必要があるという見解に立つ。 20.委員会は、子どもの権利に関する社会の感受性を高めるため、締約国が、条約の原則および規定を普及するための努力を強化するよう勧告する。マイノリティ集団の間ならびに農村部および遠隔地における条約の普及がとくに重視されるべきである。委員会は、締約国に対し、この分野に関してとくにユニセフおよびOHCHRの技術的援助を求めることを検討するよう奨励する。 専門家の研修 21.委員会は、子どもともにおよび子どものために働く専門家を対象とする研修に関して、締約国がOHCHRおよびユニセフと協力しながら行なっている努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、現行プログラムをさらに発展させてすべての専門家集団を対象にしなければならないとの見解に立つものである。 22.委員会は、締約国に対し、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家(とくに議員、裁判官、弁護士、法執行官、公務員、自治体職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員、心理学者を含む保健従事者ならびにソーシャルワーカー)を対象とする、条約の規定に関する体系的な教育プログラムおよび研修プログラムを、引き続き実施するよう奨励する。これとの関連で、とくにOHCHRおよびユニセフの技術的援助を引き続き要請することが考えられる。 2.子どもの定義 23.委員会は、締約国の法律で子どもの法的定義が明確に定められていないことを懸念する。とくに、性的同意および刑事責任に関する法律上の最低年齢が定められていないことに懸念が表明されるところである。 24.条約の原則および規定に照らし、委員会は、締約国が法律に子どもの定義を設けるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、新法の起草過程で、刑事責任および性的同意に関する最低年齢の編入を考慮するよう勧告するものである。さらに、委員会は、締約国が、婚姻の最低年齢に関する法律を執行するよう勧告する。 3.一般原則 25.委員会は、締約国の国内法に条約の一般原則を編入するためにとられた措置が不十分であることを懸念する。 26.委員会は、条約の一般原則(すなわち差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命、生存および発達に対する権利(第6条)ならびに子どもの意見の尊重(第12条)が、子どもに影響を当たるすべての関連の法律に掲げられ、かつ、子どもに関連するすべての行政上および司法上の決定ならびにすべての政策およびプログラムにおいて考慮されるよう、勧告する。子どもを権利の主体ではなく客体としてとらえる伝統的な見方を変革するため、コミュニティの指導者および宗教的指導者を含む公衆一般の意識啓発およびこれらの原則の実施に関する教育プログラムが強化されるべきである。 差別の禁止 27.条約第2条に関して、委員会は、ジェンダー、民族的出身、HIV/AIDSの感染の有無および障害を理由とする差別の様式が存在することに、懸念を表明する。とくに、締約国の憲法がクメール系市民の権利にしか触れていないことに対し、懸念が表明されるところである。 28.委員会は、締約国が、条約に掲げられたすべての権利がいかなる区別もなくすべての子どもによって享受されることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、とくに女子による教育へのアクセスとの関連で、女子差別を解消するための効果的措置をとるよう勧告するものである。路上で生活しかつ(または)働いている子どもおよびマイノリティ集団に属する子ども(とくにベトナム系の子ども)に対する差別を解消するための努力が行なわれなければならない。さらに、委員会は、これに関連して自由権規約委員会(1999年、CCPR/C/79/Add.108、パラ17)および人種差別撤廃委員会(1998年、CERD/C/304/Add.54、パラ11~13)が締約国に対して行なった勧告を支持する。 4.市民的権利および自由 出生登録 29.条約第7条の実施に関して、委員会は、出生登録が義務ではなく、そのためすべての子どもが出生時に登録されているわけではないことに懸念を表明する。 30.委員会は、締約国が、いかなる種類の差別もなくすべての子どもにとって出生登録を義務的なものとする目的で、条約の原則および規定にしたがって国内法を見直すよう勧告する。クメール系ではない市民の子ども(その法的地位は問わない)または難民も、カンボジアで出生したときは、たとえカンボジア国籍を得る権利がない場合でも、出生時に常に登録されるべきである。委員会はさらに、締約国が、とくに出生時に登録されなかった子どもが登録されることを確保するため、住民票(閣僚会議令第73号)および戸籍(同第74号)に関する現行閣僚会議令(いずれも1997年)を執行するための効果的措置をとるよう、勧告する。加えて、委員会は、締約国が、出生時にすべての子どもを登録することを奨励する意識啓発キャンペーンを実施するよう勧告するものである。委員会は、締約国に対し、この目的のためにユニセフその他の国際機関の国際協力を求めることを検討するよう、奨励する。 国籍 31.委員会は、締約国の国籍法(1996年)がクメール系ではない子どもに対する差別につながるおそれがあり、かつ、条約第7条に違反して、マイノリティ集団に属する子どものような、カンボジアで出生した多数の子どもが無国籍のままとなるおそれがあることを懸念する。 32.委員会は、差別となる可能性があるすべての事由を撤廃し、かつ子どもが無国籍となることを防止する目的で、締約国の国籍法を条約に照らして見直すよう勧告する。 子どもの参加権 33.子どもの参加権に関しては、家庭、コミュニティ、学校その他の社会施設における子どもの参加を促進し、かつ、意見、表現および結社の自由を含む子どもの基本的自由の効果的享受を確保するために締約国がとった措置が不十分であることに対し、懸念が表明される。 34.条約第12~17条に照らし、委員会は、家庭、学校その他の社会施設における子どもの参加を促進し、かつ、意見、表現および結社の自由を含む子どもの基本的自由の効果的享受を確保するため、法改正を含むさらなる措置をとるよう勧告する。子どもの参加権に関する公衆の意識が、家庭、コミュニティ、諸施設および学校において高められなければならない。 適切な情報へのアクセス 35.委員会は、子どもの福祉および発達にとって有害な情報および資料から子どもを保護し、かつ適切な情報に対する子どものアクセスを保障するための法律が存在しないことを懸念する。 36.条約第17条に照らし、委員会は、締約国が、有害な情報、とくに残酷な暴力およびポルノグラフィーを含むテレビ番組および映画から子どもを保護し、かつ適切な情報に対する子どものアクセスを保障するための特別法を制定するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもとメディアに関する一般的討議(1996年)の際に行なった委員会の勧告(CRC/C/57)を考慮するよう勧告するものである。 5.家庭環境および代替的養護 家庭環境を奪われた子ども 37.委員会は、子どもが里親に委託されまたは養子とされるよりも児童福祉センターまたは児童ホームに措置される傾向にあること、このようなセンターの運営に関する規則が存在しないこと、ならびに、HIV/AIDSの流行によって両親を失う子どもの数が増えていること、および、この状況に対処するために利用可能な措置が限られていることを、懸念する。 38.委員会は、児童福祉センターへの措置を回避するため、締約国が、相談およびコミュニティを基盤とするプログラムを通じて子どもにとって最善の環境としての家族を促進し、かつ子どもの世話をできるよう親のエンパワーメントを図るために、効果的措置をとるよう勧告する。 39.委員会は、締約国が、子どもの施設その他の形態の代替的養護に関する政策および規則を策定するよう勧告する。より多くの子ども、とくにHIV/AIDSの流行によって両親を失った子どもを対象とすることができるよう、社会サービスを強化しおよび拡大しなければならず、ならびに里親家族のような代替的形態の養護を発展させなければならない。委員会はさらに、これらの目的のために十分な財源および人的資源を配分するよう勧告する。この点に関わる国際的な技術的および財政的援助も勧告されるところである。 養子縁組 40.条約および国際養子縁組についての子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)に一致した新たな国際養子縁組法の起草に関する締約国の努力には留意しながらも、委員会は、国内養子縁組に関する現行法が条約にしたがっていないこと、および、現行の養子縁組手続は尊重されないのが通例であり、かつ汚職および虐待が顕著に見られる旨の報告があることを、依然として懸念する。違法な非公式の養子縁組が蔓延していることに対しても、懸念が表明されるところである。 41.委員会は、締約国に対し、国際養子縁組に関する法律を制定するプロセスを継続し、かつ国内養子縁組に関する現行法の法改正を行なうよう、奨励する。これとの関連で、委員会は、国際養子縁組についての子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)への加入を検討することに対する締約国の前向きな姿勢に留意し、これを奨励するものである。さらに、委員会は、締約国が養子縁組局を強化するよう勧告する。これとの関連で、とくにユニセフの国際的援助を求めることが考えられる。 子どもの虐待および不当な取扱い 42.家庭の内外における子どもの不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)の規模および有害な影響に関する意識が不十分であること、児童虐待を防止しかつこれと闘うための資源が財源および人的資源ともに不十分であること、ならびに、ケアおよびリハビリテーションのための措置(虐待の被害を受けた子どもが利用可能な便益を含む)が不十分であることに対し、懸念が表明される。 43.とくに条約第19条および第39条に照らし、委員会は、締約国が、家庭、学校その他の施設および社会一般における児童虐待および子どもの不当な取扱いを防止しかつこれと闘うための効果的措置(学際的プログラムの設置ならびにケアおよびリハビリテーションのための措置を含む)をとるよう、勧告する。委員会はとくに、このような犯罪に関する法執行が強化されるべきであること、ならびに、子どもが司法に迅速にアクセスできるようにし、かつ犯罪者が処罰されないことを回避するため、児童虐待の苦情に対応する、十分かつ子どもにやさしい手続および機構が設立されるべきであることを、提案するものである。さらに、この問題に関する社会の伝統的態度と闘うための教育プログラムを設置することが求められる。委員会は、締約国に対し、この目的のためユニセフおよび国際的非政府組織の国際協力を求めることを検討するよう、奨励するものである。 6.基礎保健および福祉 生存および発達に対する権利 44.委員会は、とくにポリオに対する全国的な予防接種プログラムを発展させることに関する政府の能力の再構築を目的とした、保健省ならびにいくつかの国連機関(WHO、ユニセフ、UNDPおよびUNFPA)との国際協力イニシアティブである「保健制度の強化」を歓迎する。にもかかわらず、締約国の乳児死亡率および5歳未満児死亡率が依然として地域で最高の部類に入ることについて、懸念が表明されるところである。子どもの栄養不良も懸念される領域である。 45.委員会は、締約国が、現在の小児期疾病の発生態様において非識字、清潔な水が供給されないことおよび食糧事情が不安定であることが果たす重要な役割を認識した部門横断型アプローチをとることにより、小児期の罹病および死亡の問題に対処するよう勧告する。注意深くかつ包括的な調査研究により収集された基準データをもとに、優先領域が特定されなければならない。このような戦略においては、ほとんどの保健ケアが保健施設外でおよび国の統制の及ばないところで行なわれていることを考慮しなければならず、かつ、とくに隔離されたコミュニティのニーズも認識しなければならない。加えて、委員会は、効率的なプライマリーヘルスケア部門を確立するための措置(小児期疾病に関する医師等への相談を奨励するための戦略も含む)を整備するよう勧告する。これの関連で、委員会は、締約国に対し、引き続き国際機関と協力しながら活動するよう奨励するものである。 HIV/AIDSの影響を受けまたはこれに感染した子ども 46.HIV/AIDSの予防および感染者のケアのために締約国がとった措置は認識しながらも、委員会は、締約国におけるHIV/AIDS感染率の増加の度合いが地域最大であり、かつ、とくに母子感染を理由として子どもがもっとも影響を受けている集団のひとつに数えられることに、深い懸念を表明する。 47.委員会は、締約国が、HIV/AIDS予防のための効果的措置(意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを含む)を引き続きとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、HIV/AIDSが存在する世界で暮らす子どもに関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/80)を考慮するよう勧告するものである。これとの関連で、とくにユニセフ、WHOおよびUNAIDSの国際的技術的援助を引き続き要請することが求められる。 障害のある子ども 48.委員会は、長期に及んだ武力紛争の結果、締約国における障害の水準が世界で最高レベルのひとつであることに深い懸念を表明する。これとの関連で、委員会は、障害のある子どものためのサービスのほとんどがNGOによって提供されており、かつ、これらのNGOがケアおよびリハビリテーションのためのサービスの水準を現状どおり高いまま維持するためには相当の資源が必要とされることに、留意するものである。 49.障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69)に照らし、委員会は、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発見させ、障害のある子どもの施設措置に代わる措置を実施し、差別を減少させるための意識啓発キャンペーンを計画しおよび実施し、特別教育のためのプログラムおよびセンターを設置しかつ教育制度および社会への障害児のインクルージョンを奨励し、ならびに、障害のある子どものための私立施設の十分な監視を確立する目的で、この分野で活動しているNGOと緊密に連携し、かつその活動を支援するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、障害児とともにおよび障害児のために働く専門職員の研修について技術的協力を求めるよう勧告するものである。 健康および保健サービスに対する権利 50.とくに、とりわけ農村部において医療従事者および公衆衛生従事者が不足しておりかつプライマリーヘルスセンターの数が不十分であることを理由として、保健サービスへの子どものアクセスが限られていることに対し、懸念が表明される。また、保健ケアおよび医薬品の費用負担が大きいことにより、家族が債務を負いかつさらなる貧困に陥ることに対しても、懸念が表明されるところである。 51.委員会は、貧困家庭および周縁化されたその他の集団に属する子どもによるアクセスを保障するため、保健ケア・サービスおよび医薬品を改善しかつ拡大するよう勧告する。 思春期の健康 52.委員会は、妊産婦死亡率が高く、リプロダクティブヘルスおよびセクシュアルヘルスに関する教育および相談サービス(学校制度外のものを含む)に対する10代のアクセスが限られており、かつ避妊手段の使用水準が低いことに懸念を表明する。また、思春期の精神保健の問題に対して十分な注意が向けられていないことについても、懸念が表明されるところである。 53.委員会は、締約国が、思春期の健康に関する政策を促進し、かつリプロダクティブヘルス教育を強化するための基盤として、思春期の健康問題(精神保健を含む)の規模を判断するための包括的かつ学際的な研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、青少年を対象とする子どもにやさしいカウンセリング・サービスならびにケアおよびリハビリテーションのための便益を発展させるため、さらなる努力を行なうことも勧告するものである。 7.教育、余暇および文化的活動 54.教育制度を改善するため、国際機関と協力しながら締約国が現在進めている努力は歓迎しながらも、委員会は、初等教育が義務とされていないこと、初等学校の就学率は相対的に高いものの、農村部および遠隔地に学校が設けられていないため良質な教育に対する平等なアクセスが確保されていないこと、通学に関してジェンダー格差があること、留年率および中退率が高いこと、ならびに、マイノリティ集団に属する子どもの過半数がいかなる形態の教育にもアクセスできていないことに対し、懸念を表明する。 55.委員会は、初等教育をすべての子どもにとって無償かつ義務的なものとすること、就学率を高めかつ中退率および留年率を減少させること、ならびに、とくに貧しい子ども、女子、マイノリティ集団に属する子どもおよび遠隔地に住んでいる子どもによる学校へのアクセスを向上させることを目的として、締約国が引き続き効果的措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、教育部門に対する予算配分を増額し、教員の能力を向上させるための研修を提供し、学校カリキュラムを子どものニーズにより関連したものとし、職業訓練および非公式教育(就学前および中等段階におけるものも含む)の機会を拡大し、かつ、教育制度の効果測定のための評価システムを確立することにより、教育制度を改善するための措置を引き続きとるよう勧告するものである。 8.特別な保護措置 子どもの難民 56.保護者のいない子ども、子どもの庇護希望者および難民を保護するための法的枠組みが存在しないことについて、懸念が表明される。 57.委員会は、締約国が、関連の国際基準にしたがって子どもの難民の権利を保護するための法律を導入し、かつ、家族から分離された可能性がある子どもの難民を援助するための家族再統合手続を策定するため、必要な措置をとるよう勧告する。この点に関して、UNHCRの技術的援助を求めることが考えられる。 武力紛争の影響を受けている子ども 58.18歳未満の子どもを軍隊に徴募することを禁じた法律の制定、および、軍隊に残っている未成年兵士の動員解除に対する締約国の前向きな姿勢は歓迎しながらも、委員会は、元子ども兵士の社会的再統合および身体的リハビリテーションのための措置が不十分であることに懸念を表明する。また、最近の武力紛争の間に締約国の領域に多数の地雷が埋設され、子どもたちの生命を脅かしていることに対しても、懸念が表明されるところである。 59.委員会は、締約国が、子ども兵士の特定、動員解除および心理的リハビリテーションならびに社会への再統合のための効果的措置をとるとともに、子ども兵士のさらなる徴募を防止するため、軍の職員を対象とする意識啓発キャンペーンを行なうよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、未成年兵士のリハビリテーションおよび再統合のために引き続きユニセフと協力しながら活動するよう勧告するものである。 60.地雷の問題に関して、委員会は、締約国が、紛争後の地域における地雷除去のための予算配分を増額し、かつ、地雷関連の事故を防止するための意識啓発キャンペーンを実施するよう勧告する。さらに、委員会は、締約国が、地雷撤去のために引き続き国際機関と協力しながら活動するよう勧告するものである。 経済的搾取 61.委員会は、インフォーマル部門、農業および家族の文脈におけるものも含む、働く子どもの人数が多いことを懸念する。現行労働法の執行が不十分であることに対しても、懸念が表明されるところである。 62.委員会は、締約国が就労へのアクセスについての最低年齢に関わる労働法の規定を執行し、労働査察官に対して児童労働を監視するための研修および手段を提供し、かつ、違反者に対して適当な制裁を適用するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、危険な形態の労働から子どもを保護する法律を制定するよう勧告するものである。委員会は、締約国が、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する新たなILO条約(第182号、1999年)の批准を検討していることを認知し、批准を奨励する。 性的搾取および人身取引 63.性的搾取と闘うための特別法の制定および子どもの性的搾取に対抗する5か年行動計画(2000~2004年)の採択ならびにこの分野における他の関連の措置は歓迎しながらも、委員会は、児童買春ならびに子どもの売買および取引が広範な現象となっており、これらの問題に関する新法の執行が不十分であり、かつ、被害者にリハビリテーションを提供するための訓練を受けた人材および施設が不足していることに、懸念を表明する。 64.委員会は、締約国が、法律を強化する方向でその見直しを行ない、かつ当面は性的搾取を禁ずる現行法を全面的に執行するとともに、行動計画を全眼的に実施すること、計画の実施のために人的資源および財源の双方を十分に配分すること、性的搾取の被害を受けた子どものリハビリテーションのための社会サービスを強化しおよび拡大すること、違反者を訴追すること、ならびに、とくに近隣諸国との二国間協力を強化しおよび国境管理を増強することを勧告する。委員会は、締約国が、とくにOHCHRおよびユニセフのさらなる技術的援助を求めるよう、提案するものである。 少年司法の運営 65.法律に触れた子どもの状況に関しては、この分野における特別の法律、政策およびプログラムの欠如、子どもが成人とともに収監されている旨の報告、告発されず、かつ弁護士または裁判所にもアクセスできないまま長期にわたって拘禁されている子どもの状況、ならびに、拘禁されている子どもが殴打その他の不当な取扱いを受けている疑いがある旨の報告に対し、懸念が表明される。 66.委員会は、締約国が、条約の原則および規定、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のような、この分野における他の関連の国連基準を考慮に入れながら、少年司法制度を確立するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、自由を奪われた子どもの状況および少年非行の防止にとくに注意を払いながら、法律に触れた子どもの状況に関する包括的な政策およびプログラムを策定するよう、勧告するものである。さらに、委員会は、締約国に対し、とくに少年司法に関する調整パネルを通じてOHCHR、国際犯罪防止センター、ユニセフおよび少年司法国際ネットワークの技術的援助を求めることを検討するよう、勧告する。 報告書の普及 67.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年10月8日)。/表示がおかしくなっていたため再保存(2015年12月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/198.html
総括所見:シリア(第1回・1997年) 第2回(2003年)/第3回・第4回(2011年)OPSC(2006年)/OPAC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.70(1997年1月24日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1997年1月16日および17日に開かれた第360回~第362回会合(CRC/C/SR.360-362)においてシリア・アラブ共和国の第1回報告書(CRC/C/28/Add.2)を検討し、委員会の総括所見を採択した。 (注)1997年1月24日に開かれた第371回会合において。 A.序 2.委員会は、政府代表団との間で交わされた建設的対話に対して評価の意を表明したい。委員会は、シリア・アラブ共和国によって第1回報告書および事前質問票(CRC/C/Q/SYR.1)への文書回答が提出されたことを歓迎しながらも、条約の原則および規定が実際にどのように実施されているかに関する情報が提供されず、同国の子どもの状況に関するより詳細な全体像を得ることができなかったことを、遺憾に思うものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、条約が国内法に全面的に受容されており、かつ、民法および刑事手続法において、その規定がシリアで効力を有する国際条約の規定と矛盾する場合には適用されないと明示的に規定されていることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、条約の原則および規定との一致を確保するために国内法の多くの規定が現在見直されつつあることも歓迎するものである。 4.委員会は、子どもの福祉のための高等委員会を閣僚レベルに設置したこと、シリアにおける条約の実施を監視するために国内子ども委員会を設置したこと、および、1990年代における子どもの生存、保護および発達に関する世界宣言を実施するための国内行動計画を採択したことなど、政府によって行なわれた取り組みを歓迎する。 5.委員会は、教育があらゆる段階で無償であることおよび1981年の義務教育法(第35号)によって初等段階の教育が義務的であることに、評価の意とともに留意する。 6.委員会はさらに、政府が第1回報告書、委員会との議論の議事要録およびここに採択された総括所見を刊行するつもりであることに、評価の意とともに留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、領土の一部が占領されている結果、締約国が全領土に管理権を行使する立場になく、そのため締約国のあらゆる地域で条約の実施を確保することはできないことに留保する。この文脈において、委員会はまた、軍事支出に相当の予算が割り当てられ、かつ社会部門に配分される予算が不十分であるために、条約に基づく権利を子どもが享受することが阻害される可能性があることにも留意するものである。 D.主要な懸念事項 8.委員会は、締約国が条約第14条、第20条および第21条に付した留保が幅広い性質のものであることにより、これらの条項で対象とされている権利を実施することに対する締約国の決意の性質に関して誤解が生じかねないことを懸念する。 9.全国レベルで子どもの福祉の問題を取り扱う権限を有した政府機関が存在することは歓迎しながらも、委員会は、条約の実施に対する包括的なアプローチを発展させるにあたり、こうした機関の間ならびに全国機関および地域機関の間での調整が不十分であることに、懸念を表明する。 10.委員会は、教育、保健、児童労働、難民である子どもおよびマイノリティに属する子ども、女子、少年司法の運用の対象となった子ども、障害児、虐待または不当な取扱いの犠牲となった子どもならびに路上で暮らしかつ/または働いている子どもにとくに力点を置いて、達成された進展を評価しかつ子どもに関わってとられた政策の影響を評価できるように、あらゆる集団の子どもとの関わりで、かつ条約が対象としているすべての領域について、信頼しうる量的および質的データを体系的に収集するためにとられた措置が不十分であることを懸念する。 11.条約の原則および規定に関する意識を促進するために行なわれた取り組みは認めながらも、委員会は、その原則および規定が子ども、親、行政職員ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家に広く知られるようにするための措置が不十分であることを、依然として懸念する。これとの関連で、委員会はとくに、警察の構成員およびその他の法執行官、司法職員、あらゆる教育段階の教員、ソーシャルワーカーならびに医療従事者を対象として子どもの権利の分野で行なわれた研修が不十分でありかつ体系的なものでないことを懸念するものである。委員会はまた、公衆の間で、子どもおよびおとなの双方に向けた形式で、かつその教育レベルにしたがって条約の本文を刊行しかつ普及するための措置がとられていないことも懸念する。 12.委員会は、子どもの最善の利益、差別の禁止ならびに子どもの意見の尊重および家庭、学校および社会生活に参加する子どもの権利が国内法に全面的に反映されておらず、かつ現実に実施されていないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、関連の国内法が条約に基づく子どもの定義と一致していないこと、とくに刑事責任年齢(7歳)および雇用にアクセスできる年齢が低いことを懸念する。 13.委員会は、女子に対する差別的態度(早期婚の慣習を含む)および婚外子に対する差別的態度が依然として残っていることに対し、懸念を表明する。さらに、女子の婚姻年齢が男子のそれより低いことは、条約、とくに第2条との両立性に関して疑問を生ぜしめるものである。 14.条約第4条の実施に関して、委員会は、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を、とくに保健および教育に力点を置いて、締約国が利用可能な手段を最大限に用いて確保するためにとられた措置が不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会はとくに、最も脆弱な立場に置かれた子ども、とりわけ貧困下で暮らしている子ども、女子、障害児、虐待の被害を受けた子ども、マイノリティ集団に属する子どもおよび路上で暮らしかつ/または働いている子どもの権利を保護するための政策、措置およびプログラムが不十分であることを懸念するものである。 15.難民である子どもおよびシリアで生まれたクルド人の子どもの状況は、条約第7条に照らし、委員会の懸念の対象である。これとの関連で、委員会は、シリアで生まれた難民の子どもを登録するための便益が存在しないこと、および、シリアで生まれたクルド人の子どもが、シリア当局によって外国人またはマクトゥーミーン(未登録者)のいずれかと見なされ、かつ、出生時に他の国籍は有していないにも関わらず、シリア国籍を取得する上で行政上および実際上の困難に直面していることに、留意する。 16.教育に関して、委員会は、中等教育段階の中退率がとくに女子の間で高いこと、教員/生徒の割合が高いことならびに十分な学習用および教育用の便益が存在しないことに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、学校カリキュラムでいまなお人権教育および子どもの権利教育のプログラムが掲げられていないことに留意するものである。 17.委員会は、家庭における不当な取扱いおよび虐待を防止しかつそれと闘い、かつそのような不当な取扱いおよび虐待の犠牲になった子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を提供するための適切な措置がとられていないこと、および、この件に関して情報が提供されていないことを懸念する。委員会はまた、体罰は法律で禁じられているにも関わらず、学校における規律の維持のための措置としてしばしば体罰が行なわれていることにも、懸念とともに留意するものである。 18.委員会は、子どもの最低雇用年齢が低すぎること、および、家内制産業で働く子どもが最低雇用年齢、夜業の禁止および有害な職業に関する他の保護措置を含む労働法(1959年第91号法)の関連規定で保護されていないことに、懸念とともに留意する。さらに、委員会は、農業部門で児童労働の搾取が行なわれているという報告があること、および、この現象と闘いかつそれを防止するために利用可能な手段が農村部において存在しないことに、懸念を表明するものである。 19.委員会は、締約国の少年司法の運用の制度が条約第37条および第40条、ならびに、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国連規則といったこの分野における他の関連の国連基準に一致していないことに、懸念を表明する。委員会はとくに、子どもが非常に低い年齢から自由を奪われうること、および、子どもの施設ケアに代わる措置を見つけることにこれまで十分な注意が払われてきていないことに、留意するものである。 E.提案および勧告 20.委員会は、締約国に対し、条約第14条、第20条および第21条に関する留保を再検討するよう奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国が解釈宣言を行なうことにより、これらの特定の権利に関する締約国の立場を明確にする上で望ましい効果が得られる可能性があることを強調するものである。 21.児童福祉高等委員会および全国子ども委員会の設置を歓迎しながらも、委員会は、これらの委員会を通して、子どもの権利の保護ならびにそれに関するさまざまな政策およびプログラムの実施に携わる、中央および地方の行政機関と諸機関との間の縦の調整を増大させかつ組織化するために、さらなる努力を発展させるよう勧告する。 22.委員会は、データ収集システムを改善するとともに、当該システムにより、さらなる行動が必要とされている部門の特定および達成された進展の評価を、条約が対象としているすべての領域において、全国で、かつとくに困難な状況にいる子どもも含めたあらゆる集団の子どもとの関わりで可能にするため、適切かつ具体的な細分化された指標を特定するよう勧告する。 23.委員会はまた、締約国が、条約第42条に照らして、条約の原則および規定に関する公衆の意識を促進する分野でその活動を継続しかつ強化すること、および、子どもとともにおよび子どものために働く行政職員および専門家(警察の構成員およびその他の法執行官、司法職員、あらゆる教育段階の教員、ソーシャルワーカーならびに医療従事者を含む)の継続的な研修のためのプログラムを創設することを、勧告する。委員会はまた、現在進められている学校カリキュラムの見直しのなかで、教育プログラムへの条約の一般原則の導入がとくに重視されるべきことも勧告するものである。 24.委員会は、締約国が、条約の一般原則、とくに子どもの最善の利益、差別の禁止ならびに子どもの権利の尊重および家族、学校および社会生活に参加する子どもの権利に関わる原則を正当に考慮しながら、条約と国内法との全面的一致を確保する目的で努力を継続するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、適切な場合にはいつでもこれらの原則を反映した具体的規定を法律に導入すること、および、女子の最低婚姻年齢、刑事責任年齢ならびに雇用および家内制手工業での仕事にアクセスできる最低年齢に関わる規定を優先課題として見直し、かつ条約の原則と一致させることを勧告するものである。 25.委員会は、広く存在している女子差別を防止しかつそれと闘うための情報キャンペーンを開始するよう勧告する。委員会はまた、婚外子の保護のために適切な積極的是正措置をとるようにも勧告するものである。 26.委員会はまた、条約第4条に照らし、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実現の予算配分に、保健および教育ならびに最も不利な立場に置かれた集団に属する子どもによるこれらの権利の享受をとくに重視しながら、優先順位を与えるようにも勧告する。これとの関連で、委員会は、児童福祉高等委員会および全国子ども委員会の決定が予算に直接かつ即時の影響を与えるようにすることを目的として、全体的な計画および予算配分に責任を持つ省庁がこれらの機関の活動に全面的に関与するよう提案するものである。 27.シリアで生まれた難民である子どもおよびシリアで生まれたクルド人の子どもが条約第7条に基づく権利を享受することに関して、委員会は、登録される権利および国籍を取得する権利は、条約第2条にしたがい、とりわけ子どもまたはその親もしくは法定保護者の人種、宗教または民族的出身に関わりなく、いかなる種類の差別もなしに、シリア・アラブ共和国の管轄下にあるすべての子どもに保障されるべきであることを強調する。委員会はまた、締約国が、1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同条約の議定書ならびに1961年の無国籍の削減に関する条約の批准を検討するようにも勧告するものである。 28.委員会は、当局が、家庭における不当な取扱いおよび虐待ならびに学校における体罰の問題に特段の注意を向けるよう勧告する。これとの関連で、委員会は、家庭または学校におけるあらゆる形態の身体的または精神的罰を防止しかつそれと闘うための情報キャンペーンおよび教育キャンペーンを行なうこと、および、そのような不当な取扱いまたは虐待の被害を受けた子どもが利益を得られるようにすることを目的とした苦情申立ての仕組みを創設することの必要性を強調するものである。委員会はさらに、そのような不当な取扱いおよび虐待の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための仕組みを創設するよう、勧告する。 29.委員会はさらに、労働法(1959年第91号法)のうち雇用に関わる子どもの保護規定を見直し、かつ条約、とくに第32条と一致させるよう勧告する。委員会は、締約国が、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するよう提案するものである。 30.委員会は、締約国が、条約第37条、第39条および第40条ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国連規則といったこの分野における他の国連基準の精神にしたがって少年司法制度の改革を行なうことを構想するよう、勧告する。この目的で、委員会は、締約国が〔国連〕人権高等弁務官/人権センターおよび事務局の犯罪防止刑事司法局の技術援助プログラムを利用するよう提案するものである。委員会はさらに、少年司法の運用の対象となった子どもの苦情を受け付けかつ検討する独立監視機関の設置を、シリア当局がしかるべき形で検討するよう提案する。 31.委員会は、条約の原則および規定の精神にしたがって締約国が行なっている法律の見直しおよび政策の採用を踏まえ、とくに保健および家族計画、教育および人権教育ならびに子どもの虐待(早期婚および家庭における子どもの性的虐待を含む)の分野で、ユニセフならびに国内の非政府組織および国際的非政府組織と緊密に協力しながら研究を行なうよう勧告する。 32.最後に、締約国がその第1回報告ならびに委員会との議論の議事要録およびここに採択された総括所見を刊行する意図があることを想起しながらも、委員会は、条約第44条6項に照らし、政府、議会および関心のある非政府組織を含めた一般公衆の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起することを目的として、そのような刊行物を公衆一般が広く利用できるようにするよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2012年6月25日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/122.html
総括所見:スウェーデン(OPAC・2007年) 第1回(1993年)/第2回(1999年)/第3回(2005年)/第4回(2009年)/第5回(2015年)OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/SWE/CO/1(2007年7月6日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2007年5月25日に開かれた第1238回会合においてスウェーデンの第1回報告書(CRC/C/OPAC/SWE/1)を検討した。この検討は、締約国の代表団が第39会期に採択された委員会の決定第8号にしたがって報告書の技術的審査を選択したため、代表団の出席を得ずに行なわれたものである。委員会は、2007年6月8日に開かれた第1255回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、選択議定書で保障された権利に関してスウェーデンで適用される立法上、行政上、司法上その他の措置に関する追加的情報を提供してくれる、締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/OPAC/SWE/Q/1/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。 3. 委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第3回定期報告書に関して2005年1月28日に採択された委員会の前回の総括所見(CRC/C/15/Add.248)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.積極的側面 4.委員会は、締約国が選択議定書の批准時に行なった、スウェーデン軍への志願入隊に関する最低年齢は18歳である旨の宣言を歓迎する。 5.委員会は、紛争を経験しているまたは紛争後の状況下にある多くの国々で行なわれている、子ども兵士のリハビリテーションおよび再統合のためのプロジェクトへの貢献について締約国を称賛する。 6.委員会は、あらゆる形態の人身取引(国境内における取引を含む)の犯罪化を戦務および強制労働のような他の形態の搾取にも拡大した、人身取引に関する刑法の改正規定(2004年7月1日施行)に、評価の意とともに留意する。 7.委員会は、子どもの権利の促進を目的とした締約国の国家人権行動計画(2006~2009年、政府通告2005/06 95)、および、同行動計画に基づいてスウェーデンにおける人権の全面的尊重を確保する長期的活動を支援するためのスウェーデン人権代表団の設置(ToR 2006 27)を歓迎する。 8.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書草案作業部会において、兵士として18歳未満の子どもを使用することの例外なき禁止を唱道し、かつその後は選択議定書の普遍的批准を促進するうえで締約国が果たしてきた積極的役割に、評価の意とともに留意する。 9.委員会はまた、締約国が、欧州連合総務・対外関係理事会が2003年12月に採択した子どもと武力紛争に関する指針の実施に貢献していることにも、評価の意とともに留意する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 立法 10.委員会は、締約国が、国際刑事裁判所ローマ規程第6条、第7条および第8条に列挙された犯罪(とくに、15歳未満の子どもを自国の軍隊に強制的に徴集しもしくは志願に基づいて編入することまたは敵対行為に積極的に参加させるために使用することを戦争犯罪として犯罪化した第8条2項(b)(xxvi))を独立した犯罪として導入することを目的として、刑法およびいわゆる国際犯罪に関する規定の改正を進めていることに留意する。 11.委員会は、軍隊または武装集団のための子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置を強化するため、締約国が、刑法改正のために行なっている努力を加速させるよう勧告する。 普及および研修 12.委員会は、締約国の国家人権行動計画(2006~2009年)が、教育制度内でも公衆一般の間でも人権に関する知識および情報を増加させることを目的としていることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、締約国の軍が、セーブ・ザ・チルドレン・スウェーデンと連携しながら、選択議定書および関連の問題に関する研修を行なっていることにも、評価の意とともに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、締約国が国レベルで実施している選択議定書関連の普及活動および研修活動が、全体として軍隊および軍事訓練に限定されていることを懸念する。 13.委員会は、締約国が、軍隊および国際的作戦に配備される要員に対し、引き続き選択議定書に関する研修を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働くあらゆる関連の専門家集団(教員、武力紛争の影響を受けている国からやってきた子どもの庇護希望者および移民とともにおよびこのような子どものために活動する公的機関、弁護士ならびに裁判官など)対象とする、選択議定書の規定に関する体系的な意識啓発、教育および研修プログラムを発展させることも、勧告するものである。 2.子どもの徴募 志願による青年の軍事活動 14.委員会は、志願制防衛組織の全体防衛青年活動に参加する18歳未満の志願隊員はスウェーデン軍に採用されたものとは見なされえないと締約国が明言していることに留意する。委員会はまた、18歳未満の志願隊員がこれらの課程に編入する場合、親その他の監護権者の同意が必要であることにも留意するものである。しかしながら委員会は、これらの青年活動に参加する18歳未満の志願隊員が火器の訓練を行なうことに留意する。委員会は、子どもにとって「軍事的要素」を有するこれらの種類の活動は、平和および安全な環境が子どもの全面的保護にとって不可欠であることを強調する選択議定書の精神に全面的には一致しないとの見解に立つものである。 15.委員会は、締約国に対し、選択議定書の精神を全面的に尊重しかつあらゆる状況において子どもに全面的保護を提供する目的で、志願制防衛組織が行なう火器訓練に参加する志願隊員の最低年齢を16歳から18歳に引き上げるよう奨励する。委員会は、締約国が、18歳未満の者に火器訓練および軍隊式訓練を行なうすべての志願制防衛組織に対し、選択議定書および他の関連の国際基準の規定に関する十分な情報提供および研修を行なうよう、勧告するものである。 3.国際的な援助および協力 被害者の保護 16.委員会は、欧州の主要な武器輸出国のひとつである締約国が、武器輸出管理に関わる国際的および地域的協力(武器の責任ある移転を促進するための基準および原則の策定を含む)に積極的に参加し、かつ、軍事支出に関わる透明性の重要性および武器製造に関する国際的な輸出管理誓約を一貫して促進してきたことに、留意する。委員会はまた、締約国が、国レベルで先進的な武器輸出管理を実施していることにも留意するものである。締約国の武器輸出が拡大していることを考慮に入れ、委員会は、スウェーデンの法律および指針において、18歳に満たない者が軍または国の軍隊とは異なる武装集団の構成員として敵対行為に直接参加している国との軍需資材の取引を廃止することを目的とした、武力紛争への子どもの関与に関する明確な言及がないことを遺憾に思う。 17.委員会は、締約国が、武器その他の軍用機器の輸出に関する国内法、指針および実務において、18歳に満たない者が軍または国の軍隊とは異なる武装集団の構成員として敵対行為に直接参加している可能性がある国への武器および軍用機器の直接間接の輸出が明示的に禁じられることを確保するよう、勧告する。 財政援助その他の援助 18.委員会は、武力紛争の影響を受けた子どもの保護および支援を目的とする多国間および二国間の活動への目覚ましい財政支援について締約国を称賛するとともに、とくに、スウェーデン国際開発庁(SIDA)が子どもの権利に明確に焦点を当てていることを歓迎する。委員会は、戦争の影響を受けた子どものためのプログラムを行なっている多数の国連機関、とくにユニセフおよび子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表に対する締約国の年次拠出を歓迎するものである。委員会はまた、さまざまな国内的および国際的非政府組織に対して提供されている財政支援にも、評価の意とともに留意する。 19.委員会は、締約国が、防止活動ならびに選択議定書に反する行為の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合にとくに焦点を当てながら、選択議定書の全面的実施に対する財政支援その他の援助(武力紛争に関与した子どもの権利に対応するための多国間および二国間の活動を含む)を継続しかつ強化するよう、勧告する。 4.武装解除、動員解除および社会的再統合に関してとられた措置 社会的再統合の措置 20.委員会は、スウェーデンで庇護を申請するすべての保護者のいない子どもに代理人(ゴードマン〔後見人〕)を任命すると定めた、保護者のいない子どもの特別代理人法(2005 429)が2005年7月1日に施行されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、代理人の任命に時間がかかる可能性があり、かつ代理人の人数が実際のニーズに応えるには不十分であることに、懸念とともに留意するものである。 21.委員会は、徴募されまたは敵対行為で使用され、かつスウェーデンで庇護を申請しているすべての保護者のいない子どもに対し、スウェーデンへの到着後24時間以内に代理人(ゴードマン)を任命する手続を迅速化する目的で、締約国が、保護者のいない子どもの特別代理人法(2005 429)の改正を検討するよう勧告する。委員会は、締約国が、名簿に掲載されているすべての代理人を対象として、徴募されまたは敵対行為で使用された子どもの心理的ニーズに特段の注意を払いながら十分な研修を行なうよう、勧告するものである。 22.委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者(徴募されまたは敵対行為で使用された保護者のいない子どもを含む)の受け入れに関する責任が、2006年7月に移民庁から市町村に移管されたことに留意する。委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者の受け入れに同意した市町村がわずかしかないこと、および、措置を待つ間、これらの子どもが一時的収容施設に措置されていることに、懸念とともに留意するものである。市町村が広範な自治権を有していることから、委員会は、サービスの提供がすべての市町村で十分とはいえないおそれがあることを懸念する。 23.委員会はさらに、スウェーデン移民庁が武力紛争に関与した子どもの庇護希望者に遭遇したときは、スウェーデンの他の公的機関がこれらの子どもに支援およびケアを提供できるよう、通知を行なわなければならないとされていることに留意する。 24.締約国は、保護者のいない子どもの庇護希望者全員が、受け入れ先の市町村がどこであるかに関わらず、社会サービスおよび保健サービスならびに居住場所を含む十分なサービスにアクセスできることを確保するべきである。委員会は、締約国に対し、武力紛争に関与した子どもの庇護希望者が、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためのあらゆる適切な援助を受けることを確保するよう、促す。 25.委員会はまた、締約国が、その管轄内にある子どもの難民、庇護希望者および移民であって国外で徴募されまたは敵対行為で使用された可能性がある子どもについてのデータを体系的に収集することも勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)に留意するよう勧告するものである。 5.フォローアップおよび普及 フォローアップ 26.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府(レゲーリンゲン)、議会(リクスダーゲン)ならびに県および市町村、ならびに、子どもオンブズマン、スウェーデン軍、スウェーデン戦略商品検査局(ISP)、郷土防衛隊および志願制防衛組織に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 27.委員会は、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択したこの総括所見を、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じ、子どもおよびその親が広く入手できるようにすることを勧告する。委員会はまた、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が選択議定書を公衆一般に広く知らせることも勧告するものである。 6.次回報告書 28.選択議定書第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第4回定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年12月7日)。
https://w.atwiki.jp/wikiwiki2/pages/86.html
無縁社会の正体河合隼雄・長田弘 『子どもの本の森へ』 岩波書店 1998.2 (河合)子どもの本は人間の心の働きをすっぱりと書いているのが魅力。 紹介図書リスト フィリッパ・ピアス Ann Philippa Pearce 1920/1/23 - 2006/12/21 『ハヤ号セイ川をいく』 県立 市民 市立 1955 Minnow on Say 県立 『トムは真夜中の庭で』 県立 市民 市立 1958 Tom's Midnight Garden 県立 幽霊を見た10の話 県立 市民 『まぼろしの小さい犬』 県立 青森 市立 1962 A Dog So Small 県立 バウム オズの魔法使い (河合)アメリカで箱庭療法の最後にオズの魔法使いを置く。 県立(訳、原書) 市民7F児・文学J93ハ 市立IW081イ 石井桃子 ノンちゃん雲に乗る スティーブンソン 宝島 7F録音(カセット) おだんごぱん 県立 7F児・昔話絵本JMEワキ国1 市立JEフ 井伏鱒二 『しびれ池のカモ』 県立 7F児・文学Jイ 市立IW081イ ロフティング ドリトル先生物語全集全12巻 原著8F海外資料W933L 県立 スティーブンソン 自殺クラブ 県立(訳、原著) 市立書庫J933ス カウフマン 赤い月と暑い時(1,2) 市立書庫943カ デフォー ロビンソン・クルーソー (大人の物語) 県立(完訳、原著) 7F児・文学J93テ 市立(原著、書庫) 大学旧(正・続2冊、岩波) スウィフト ガリヴァー旅行記 (大人の物語) 県立 9F 市立(原著、書庫正・続) 大学新908.3Y99.6 マルタン・デュ・ガール チボー家の人々 チボー家のジャック ル=グウィン 『ゲド戦記全4巻』 県立(訳、原書?) 7F児・文学J93ル 市立933ル クローバー (ル=グウィンの母の作) 『イシ 北米最後の野生インディアン』 県立 8F社会科学389.2ク 大学旧935.Kr6 イシ 二つの世界に生きたインディアンの物語 県立 7F書庫 市立書庫J933ク エンデ モモ はてしない物語 モンゴメリー 『赤毛のアン』 県立(訳、原書) 市立(完訳)933モ オールコット 若草物語 県立(訳、原書) 7F児・文学J90コ 市立書庫J933オ ケストナー エミールと探偵たち 飛ぶ教室 『点子ちゃんとアントン』 リンドグレーン 『名探偵カッレくん』 県立(2005) 7F児・文学J94リ(1986) 市立(2005)IIW081イ コルチャック 子どものための美しい国 6F読むY91コ 市立書庫J989コ バリー ピーター・パンとウェンディ (無意識の住人:河合) ローリングズ 子鹿物語全3巻 (ディグニティがテーマ) 県立 7F児・文学J93ロ ザルテン バンビ 県立 市立J943ザ 宮澤賢治 風の又三郎 (モリブデン鉱採掘のためにやってきた) 『銀河鉄道の夜』 (死の送りの物語) アンネ・フランク アンネの日記(完全版) 県立 7F児・文学J94フ 市立949フ 大学旧 トルストイ 人はなんで生きるか 県立(1986) 9F 市立書庫J983ト イワンのばか 県立(2000) 7F児・文学J98ト 市立IW081イ カルヴォーノ みどりの小鳥 県立 7F児・昔話JS97カ 河合隼雄 「明恵 夢を生きる」 県立 8F人文科学140.8カ9(河合隼雄著作集 9) 大学新146.1Ka93 カニグズバーグ Elaine Lobl Konigsburg 1930.2.10 - カニグズバーグ著作集1-9 市民7F児・文学 市立J933カ 県立 クローディの秘密 1967 From the Mixed-up Files of Mrs. Basil E. Frankweler 『魔女ジェニファとわたし』 1967 Jennifer, Hecate, Macbeth, William McKinely, and Me, Elizabeth ロールパン・チームの作戦 1969 About the B'nai Bagels 『ぼくと<ジョージ>』 1970 George ドランゴンをさがせ 1974 The Dragon in the Ghetto Caper マーヒー 足音がやってくる 県立 9F 市立書庫J933マ めざめれば魔女 9F 市立書庫J933マ ホワイト シャーロットのおくりもの 県立 9F 市立(2006)J933マ ノース はるかなるわがラスカル 7F外国文学933ノ 市立書庫J933ノ 河合隼雄 少年動物誌 県立 8F自然科学480.4カ8 市立書庫J480カ グレーアム 『たのしい川べ』 県立 7F書庫岩波世界児童文学集4 市立J908イ4 × ファージョン ムギと王子さま トールキン 指輪物語全9巻 県立(訳、原書) 7F児・文学J93ト 市立書庫J933ト (絵本) レオーニ あおくんときいろちゃん 県立(原著、訳) 7F児・易しいお話JYEレオ 市立書庫JEシ ミルン クマのプーさん 県立 7F児・文学J93ミ 7F児・大きい絵本J93ミ(英語版)市立BM書庫 リンゴグレーン 長くつ下のピッピ 県立 7F児・文学J94リ 市立J943リ カール はらぺこあおむし 県立 7F児・楽しい絵本JEカル 市立りんごコーナーRCEP(原著) バンサン アンジュール:ある犬の物語 県立 7F児・絵本JEハン国4 市立JEブ トミー=アンゲラー 『すてきな三にんぐみ』 県立 7FJEアン 市立JEウ シュルヴィッツ よあけ ウィリアムズ しろいうさぎとくりうさぎ シルヴァスタイン Shel Silverstein 『ぼくを探しに』 県立 6FY76シル 市立 大学 公 The Missing Piece 市立G E H センダック 『かいじゅうたちのいるところ』 バートン ちいさいおうち グリーン 二十一の短篇 センダック まどのそとのそのまたむこう クーニー にぐるまひいて センダック ちいさなちいさな えほんばこ 全4巻 ウェルズ ローアン・オーク邸のゆうれい:フォークナーのゆうれい話 大図解 九龍城 岩波書店 谷川俊太郎 『ことばあそびうた』 県立(2冊) 7FJ91タ国2 市立(2冊) 大学 「絵本 平家物語」 講談社 (安野光雅絵) 県立 6F楽しむY76 市立書庫726ア × 北原白秋訳 まざあ・ぐうず 原民喜のガリヴァー旅行記 9F 長田弘 感受性の領分 × 漫画吾輩は猫である コールズ 子どもの神秘生活:生と死、神・宇宙をめぐる証言 県立 8F社会科学371.4コ 三遊亭円朝作 怪談 牡丹灯籠 7FB913.7サ 大学旧 柳田国男 「明治大正史 世相編」 チェコフスキー 2歳から5歳まで 9F 市立376.1チ マルシャーク 森は生きている 県立 7F児・文学J98マ 市立IW081イ 初版グリム童話集全4巻 白水社 県立 7F外国文学943ク 市立943グ 大学943G86 アーサー・ランサム全集全12巻 県立 7F児・文学J93ラ × ルイス ナルニア国物語全7巻 星の王子さま
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/213.html
総括所見:イタリア(第1回・1995年) 第2回(2003年)/第3回・第4回(2011年)OPAC(2006年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.41(1995年11月27日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1995年10月31日および11月1日に開かれた第235回~第238回会合(CRC/C/SR.235-238)においてイタリアの第1回報告書(CRC/C/8/Add.18)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1995年11月17日に開かれた第259回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国が、ハイレベルかつ学際的な代表団を通じて、委員会とのオープンかつ実りのある対話に携わってくれたことに謝意を表する。委員会は、事前質問事項(CRC/C.10/WP.2)に記載された質問への回答としてイタリア代表団が文書回答を提出したこと、および、対話の途中で統計データが提供されたことを歓迎するものである。この補足的情報のおかげで委員会が締約国との建設的対話に携わることが可能になったことに満足感とともに留意しながらも、委員会は、締約国報告書の作成に関する委員会のガイドラインに政府が従っていないこと、および、事前質問事項で取り上げられているいくつかの問題が未回答のままになっていることに遺憾の意を表する。 B.積極的な側面 3.委員会は、1991年の条約発効以来、子どもの権利を促進しかつ保護するためにイタリア政府がとった立法上および行政上の措置を歓迎する。委員会は、イタリアにおいて条約が自動執行力を有しており、したがってイタリアの裁判所による直接適用が可能でありかつ実際に適用されてきたこと、および、法の抵触がある場合には国内法よりも国際人権基準が優先するという原則をイタリアが採用していることを、評価するものである。委員会はまた、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准を目的とした予備的措置がとられたことも歓迎する。 4.委員会は、イタリアにおいて、子どもの権利の保護および監視のためのさまざまな機関および機構、とくに、議会内に設置された子ども問題特別委員会、首相官邸内に創設された家族・社会問題部、子どもに関するデータ収集を委託されている国家子ども保護センター、および、同国家センターによって収集されたデータを分析し、かつ議会に対する年次報告書を作成する国家未成年問題検討局が設置されたことを歓迎する。 5.委員会は、児童保健および児童福祉の分野で達成された進展(とくに周産期死亡率の顕著な減少を含む)に、満足感とともに留意する。 C.主要な懸念事項 6.委員会は、子どもの権利の促進および保護のための活動を監視する、総合的かつ統合された機構が存在しないことを懸念する。委員会は、さまざまな関係政府機関間のならびに全国レベル、地方レベルおよび自治体レベル間の調整が不十分であること、および、条約のすべての領域を対象とした、かつイタリア国内のすべての集団に属する子どもを考慮に入れた包括的なデータ収集ネットワークが必要であることを、強調するものである。このようなデータ収集ネットワークは、子どもの権利に関する目標設定型の事業を実施し、かつ立法上および行政上の措置の効果を評価する上で必要不可欠である。 7.委員会は、条約の原則および規定が子どもおよび大人の間で同様に広く知られるようにし、かつ、子どもに関わるさまざまな専門家集団を対象として条約の原則および規定に関する十分な研修を行なうための措置が不十分であることを懸念する。 8.条約第4条の実施に関して、委員会は、経済的、社会的および文化的権利が利用可能な資源を最大限に用いることにより実施されることを確保するためにとられた措置が不十分であることを懸念する。委員会にとっては、締約国内においても、かつ国際開発援助の文脈のなかでも、社会部門に対して不十分な支出しか行なわれていないように思える。委員会はまた、子どもに関する問題に対する市民参加が立ち遅れていることも懸念するものである。 9.委員会はまた、条約の基本原則、とくに第2条、第3条および第12条が国内法および政策立案において常に十分に反映されているわけではないことも懸念する。 10.委員会はまた、締約国の北部と南部間に依然として際立った経済的および社会的格差が存在し、そのことが子どもたちの状況に悪影響を与えていることも懸念する。 11.差別の禁止に関わる条約第2条に関して、委員会は、貧困家庭およびひとり親家庭の出身の子ども、外国人およびロマの子どもならびに婚外子といった、脆弱なおよび不利な立場に置かれた集団の子どものニーズを評価しかつこれに対応するためための十分な措置がとられていないことを懸念する。委員会は、このような不利な立場に置かれた集団に属する子どもが、世間の眼によってスティグマを付与され、学校を中退し、非公然労働または非合法活動にさえ従事する(組織犯罪活動で利用されることを含む)可能性がより高いことを懸念するものである。 12.委員会は、身体的および性的虐待ならびに暴力を含む児童虐待が家族内に存在すること、これとの関連で刑法によって与えられる保護が不十分であること、および、そのような虐待の被害を受けた子どもが心理社会的に回復するための十分な措置が欠けていることを見過ごせない。 D.提案および勧告 13.委員会は、政府部局間ならびに中央、地方および自治体の公的機関間等における条約の実施の調整および監視を目的とした、全国的かつ恒久的な機構を発展させるよう勧告する。委員会はまた、政府が、子どもの権利のために活動している非政府組織とのいっそう緊密かつ活発な協力を検討するようにも提案するものである。このような措置は、市民社会との継続的対話、および、子どもの権利の促進および保護の分野における政府の活動の吟味を促進することに貢献できる。 14.委員会は、子どもの権利の分野における十分な政策立案を確保する目的で、子どもに関するデータ体系的データ収集および子どもに関係する問題(家族構造の変化を含む)についての調査研究を行なう勧告する。 15.委員会は、締約国に対し、条約の原則および規定を子どもおよび大人に対して同様に広く知らせるための系統的アプローチをさらに発展させることにより、子どもの権利の促進に関する一般の意識を高め、かつ子どもの権利の促進に対する市民の参加を向上させるよう奨励したい。同様に、子どもとともにまたは子どものために働いている専門家(教員、ソーシャルワーカー、法執行官、司法職員および国連平和部隊のイタリア派兵部隊要員を含む)のカリキュラムに、条約に関する研修が編入されるべきである。 16.締約国は、条約の規定および原則、とくに差別の禁止、子どもの最善の利益および子どもが自由に意見を表明する権利の原則を法律および実務に全面的に反映させるため、努力を継続すべきである。これとの関連で、委員会は、婚内子および婚外子の平等な取扱いを全面的に確保する目的で現行法を修正するよう、勧告する。 17.貧困下で暮らしている子ども、南部の子ども、ロマの子どもおよび外国人の子どものようなとくに脆弱な立場に置かれている子どもに対する差別的な態度および偏見が悪化することを防止するため、さらなる措置がとられるべきである。政府は、このような子どもの取扱いに関して、かつ、このような子どもがイタリア社会に可能なかぎり最大限に統合することに好ましい環境を創り出すための、いっそう積極的な立場および首尾一貫した政策を採用することを検討するべきである。条約第18条および第27条に照らして家族が子どもの養育責任を果たすことを援助する目的で、責任ある子育ておよび困窮家庭に対する支援のために包括的な措置をとることにより、家族の崩壊を制限し、施設に措置される子どもの数を減らし、かつ、施設措置の利用を最後の手段に限定することが求められる。 18.委員会は、イタリア政府に対し、条約の一般原則、とくに子どもの最善の利益に照らし、条約第4条の全面的実施に特段の関心を払うよう奨励する。委員会はまた、依然として存在する経済的および社会的格差を克服する方向に向けて、中央、地方および自治体のレベルで資源を公正に配分する必要があること、および、ひとり親家族を含む、社会で最も不利な立場に置かれている集団に対して特段の関心を払う必要があることも強調するものである。 19.委員会はまた、締約国が、子どものための社会的優先課題をいっそう重視できないかどうか評価することを目的として、条約の原則を、国際開発援助を強化する枠組みとして利用するようにも提案する。 20.委員会はまた、拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の明確な防止および禁止ならびに家庭における体罰の禁止が国内法に反映されるべきことも提案する。 21.委員会は、労働力としての子どもの違法な使用を防止し、かつ少年非行および犯罪活動における子どもの利用を防止するため、不利な立場に置かれている家族への援助を含む措置をとるよう、勧告する。これとの関連で、条約第28条に照らし、職業教育の導入のために学校のカリキュラムの十分な修正を行なうことが、中退率の削減に貢献し、かつ、子どもが違法な労働市場に参入しまたは犯罪活動にさえ関与することを防止する役に立つと思われることも、提案されるところである。 22.委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答、その検討の議事要録ならびに委員会の総括所見を、締約国内で可能なかぎり広く配布し、かつ、議会に送付してさらなる議論およびフォローアップを求めるよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、国家未成年問題検討局が議会に提出する年次報告書を委員会に送付することも要請するとともに、当該年次報告書、および、今後5年間の具体的な目標および時間的枠組みを掲げた行動計画において、イタリアの第1回報告書の検討の際に委員会が特定した優先領域(関連の議事要録に記録されている)を考慮に入れるべきことを提案したい。 更新履歴:ページ作成(2012年11月17日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/116.html
総括所見:バヌアツ(第1回・1999年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.111(1999年11月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1999年9月24日に開かれた第566回~第567回会合(CRC/C/SR.566-567) においてバヌアツの第1回報告書(CRC/C/28/Add.8) を検討し、1999年10月8日に開かれた第586回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書、および委員会の事前質問票(CRC/C/Q/VAN/1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、締約国と行なった建設的かつ開かれた対話に心強い思いを感じ、かつ、議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する積極的な反応を歓迎するものである。委員会は、条約の実施に直接携わる代表が出席したことにより、締約国における子どもの権利の状況をいっそう十分に評価できたことを認める。 B.積極的な側面 3.委員会は、締約国が、権利を侵害された子どもによる苦情を処理する権限を与えられたオンブズマン事務所を設置する取り組みを行なったことを評価する。これとの関連で、委員会は、学校における体罰の使用の禁止を促進し、かつ条約の原則および規定に関する警察の意識の向上を促進するためオンブズマンが行なっている努力に留意するものである。 4.委員会は、条約が英語およびフランス語で入手可能とされたこと、および締約国が条約をビスラマ語に翻訳したことに留意する。 5.委員会は、プライマリーヘルスケアのサービスの分野で締約国が行なった努力により、子どもの生存および発達の機会が向上したことに留意する。 C.条約の実施を妨げる要因および困難 6.委員会は、締約国が直面する社会経済的、地理的および政治的困難により条約の全面的実施が妨げられてきたことを認める。とりわけ、委員会は、孤立しておりかつきわめて連絡困難なものもある分散した島々の地域共同体の子どもを対象として十分なプログラムおよびサービスを実施するうえで、締約国が課題に直面していることに留意するものである。委員会は、締約国がサイクロン、タイフーン、津波および洪水のような天災の被害を受けやすいこと、およびこの点に関して課題に直面していることを認める。委員会はさらに、人的資源の利用可能性が限られていることも条約の全面的実施に悪影響を与えてきたことに留意するものである。 D.主要な懸念事項および委員会の勧告 D.1 実施に関する一般的措置 7.委員会は、国内法および慣習法が条約の原則および規定を全面的に反映していないことに懸念を表明する。委員会は、締約国が、条約の原則および規定との全面的一致を確保する目的で国内法の見直しを行なうよう勧告するものである。委員会はまた、締約国が包括的な子ども法の制定を検討するようにも勧告する。これとの関連で、委員会はさらに、締約国がとくに人権高等弁務官事務所およびユニセフの技術的援助を求めるよう勧告するものである。 8.締約国が子ども事務所および国家子ども委員会の設置提案を作成したことには留意しながらも、委員会は、その提案がまだ実施されていないこと、およびこれらの機関の作業方法が明確に規定されていないことを依然として懸念する。委員会は、当該提案が可能なかぎり早期に実行に移されること、および当該事務所および委員会が効果的に設置されることを確保するため十分な資金が配分されることを確保する目的で、締約国があらゆる必要な措置をとるよう強く勧告するものである。 9.委員会は、締約国が、保健、人口および家族計画、栄養、水の供給および環境衛生、農業、牧畜および漁業ならびに教育に焦点を当てた子どものための国内行動計画(1993~2000年)を作成したことに留意する。しかしながら、委員会は、この計画を実施するための予算が具体的に配分されていないことを懸念するものである。委員会は、締約国に対し、子どものための国内行動計画を実施するためにあらゆる適切な措置をとるよう奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国がとくにユニセフおよび世界保健機関(WHO)の技術的援助を求めるよう勧告するものである。 10.委員会は、達成された進展の監視および評価、ならびに子どもに関わって採択された政策の影響の評価を行なう目的で、条約が対象とするあらゆる領域についてかつあらゆるグループの子どもとの関連で細分化されたデータを体系的かつ包括的に収集することを可能とするデータ収集機構が、締約国に存在しないことを懸念する。委員会は、締約国が、条約に一致した包括的なデータ収集システムを発展させるよう勧告するものである。このシステムは、18歳に達するまでのすべての子どもを対象とし、かつ、障害をもった子ども、虐待または不当な取扱いの被害を受けた子ども、および、離島および都市部の不法占拠地域で生活する子どもを含む、とくに傷つきやすい立場に置かれた子どもを具体的に重視するべきである。 11.委員会は、条約第4条に照らし、子どもにために予算を配分することに対して十分な注意が払われていないことを依然として懸念する。条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、子どもの経済的、社会的および文化的権利が利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要な場合には国際協力の枠組みのなかで実施されることを確保するために予算を優先的に配分することにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう奨励するものである。 12.委員会は、条約に関する情報の普及に関して締約国が行なっている努力に留意し、かつ、とくに人口の82%が離島地域で生活していることに照らして直面している課題を認識する。しかしながら、委員会は、条約およびそこに掲げられた権利中心アプローチに関する一般層の認識が依然として不十分であることを懸念するものである。委員会は、締約国が、絵本およびポスターのような視覚的補助具によるものも含め、条約を促進するためにいっそう創造的な方法を発展させるよう勧告する。加えて、委員会は、条約の原則および規定を促進するにあたって伝統的なコミュニケーション手段を用いるよう勧告するものである。委員会はまた、裁判官、法執行官、教員、学校管理者および保健従事者のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループを対象として十分かつ体系的な訓練および(または)感受性増進を行なうようにも勧告する。委員会はさらに、地域共同体の首長、宗教的指導者、NGOおよびメディアを含む市民社会の子どもの権利に関する感受性を増進し、かつ条約の普及および促進へのその参加を促進するために努力するよう勧告するものである。締約国がとくに人権高等弁務官事務所、ユニセフおよびユネスコの技術的援助を求めることが提案されるところである。 D.2 子どもの定義 13.委員会は、刑事責任年齢(10歳)が低いことに関して懸念を表明する。委員会はまた、男子の法定最低婚姻年齢(18歳)と女子のそれ(16歳)とのあいだに格差があることも懸念するものである。委員会は、締約国が、国内法を条約の規定および原則と全面的に一致させるためその見直しを行なうよう勧告する。 D.3 一般原則 14.委員会は、締約国が、子どもに関わる立法、行政上および司法上の決定ならびに政策およびプログラムにおいて条約の規定、とくに第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に反映された一般原則を全面的に考慮にいれていないように思えることを、懸念する。条約の一般原則が、政策に関する議論および意思決定の指針となるのみならず、あらゆる法改正、司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与える事業、プログラムおよびサービスに適切に統合されることを確保するためにさらなる努力が行なわれなければならないというのが、委員会の見解である。 15.委員会は、伝統的な慣行および態度が条約、とくに第12条の全面的実施をいまなお制限していることを懸念する。委員会は、子どもの参加権に関する公衆の意識を高め、かつ家庭、学校および社会一般における子どもの意見の尊重を奨励するため、締約国が、地域共同体の首長、宗教的指導者および市民社会の関与を得て体系的アプローチを発展させることを追求するよう、勧告するものである。 D.4 市民的権利および自由 16.学校における体罰が法律で禁じられていることは承知しながらも、委員会は、伝統的な社会の態度が家庭、学校、ケア制度および少年司法制度ならびに社会一般における体罰の使用をひきつづき奨励していることを、依然として懸念する。委員会は、締約国が、体罰の悪影響に関する意識を喚起し、かつ、家庭、学校、ケア施設その他の施設において代替的形態の規律の維持およびしつけが子どもの尊厳に一致する方法でかつ条約にしたがって行なわれることを確保するための措置を強化するよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、親、教員および施設で働く専門家を対象として、代替的形態の処罰の使用を奨励するためカウンセリングその他のプログラムを提供するよう勧告する。加えて、委員会は、学校における体罰の禁止の全面的かつ効果的実施を確保するため、あらゆる必要な措置をとることを強く勧告するものである。 D.5 家庭環境および代替的養護 17.子どもの性的虐待を含む家族間暴力を防止しかつそれと闘うためのデータ、適切な措置、機構および資源が存在しないことは、委員会にとって重大な懸念の対象である。条約第19条に照らし、委員会は、これらの慣行の規模および性質を理解し、十分な措置および政策を採択し、かつ態度を変えることに資する目的で、締約国が性的虐待を含む家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待に関する研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、家族間暴力ならびに子どもの不当な取扱いおよび虐待(家庭における性的虐待も含む)の事件が、子どものプライバシーへの権利の保護を正当に考慮しつつ、子どもに優しい司法手続のなかで適切に調査され、かつ加害者に対して制裁が科されるべきことも勧告するものである。法的手続において子どもに支援サービスを提供すること、条約第39条にしたがって強姦、虐待、放任、不当な取扱い、暴力または搾取の被害者が身体的および心理的に回復しかつ社会的に再統合すること、および、被害者が犯罪者扱いされかつスティグマ(烙印)の対象となるのを防止することを確保するための措置も、とらえるべきである。委員会は、締約国がとくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めるよう勧告する。 D.6 基礎保健および福祉 18.委員会は、健康状況全般を向上させるため締約国が行なっている努力に留意する。とりわけ、委員会は、過去10年のあいだに乳児死亡率および5歳未満児死亡率のいずれもが急速に減少したこと、および、予防接種の対象範囲が相当に拡大したことに留意するものである。委員会はまた、締約国が食糧栄養プログラムを実施したことにより、栄養不良の発生件数が減少したことにも留意する。しかしながら、委員会は、マラリア、呼吸器系感染症および下痢性疾患によって締約国の子どもの生存および発達がひきつづき脅かされていることを懸念するものである。委員会はまた、訓練されたヘルスワーカーの人数が不十分であること、保健従事者の分布に地域共同体間で大きな格差があること、一部の島の地域共同体において保健サービスへのアクセスが限られていること、および、とくに遠隔地において衛生状態が悪くかつ安全な飲料水へのアクセスが限られていることも、懸念する。委員会は、子どもの健康状態を改善し、かつプライマリーヘルスサービスへのアクセスの向上を促進するため、締約国が適切な資源を配分し、かつ包括的な政策およびプログラムを発展させるよう勧告するものである。委員会は、締約国が、妊産婦、子どもおよび乳児の死亡件数を減少させ、母乳育児の実践を向上させ、かつ、とくに傷つきやすい立場および不利な立場に置かれたグループの子どもの栄養不良を防止しかつそれと闘うための努力をひきつづき行なうよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、安全な飲料水へのアクセスを高め、かつ衛生状態を改善するために追加的な措置をとるようにも勧告するものである。加えて、委員会は、締約国に対し、プライマリーヘルスケアを向上させるためにユニセフ、WHOその他と行なっている技術的協力プログラムを継続するよう奨励する。 19.障害をもった子どもへの援助およびそのリハビリテーションに関する「バヌアツ障害者協会」の活動には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、障害児の権利を保護するために行なわれてきた努力が不十分であることを依然として懸念する。委員会は、締約国が、障害児のためのプログラムおよび施設に対して必要な資源を配分するよう勧告する。障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および「障害のある子どもの権利」に関する一般的討議の日に採択された委員会の勧告(CRC/C/69)に照らし、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発展させ、障害児のための特別教育プログラムを確立し、かつ障害児の教育制度への統合および社会へのインクルージョンをさらに奨励することも、勧告されるところである。委員会は、締約国が、とくにユニセフおよび世界保健機関に対し、障害児とともにおよび障害児のために働く者の訓練のための技術的協力を求めるよう勧告する。 20.委員会は、事故、自殺、暴力および中絶を含む青少年の健康の分野において、プログラムおよびサービスの利用可能性が限られていることおよび十分なデータが存在しないことに懸念を表明する。委員会は、10代の妊娠および性行為感染症(STD)の発生件数が多くかつ増加していること、および、青少年のあいだでアルコールおよびタバコの使用が蔓延していることをとくに懸念するものである。委員会は、とくに事故、自殺、暴力、アルコール消費およびタバコの使用との関連で、締約国が青少年の健康に関する政策を促進するための努力を増進するよう勧告する。委員会はさらに、若年妊娠およびSTDの悪影響を含む青少年の健康上の問題に関して、包括的かつ学際的な研究を行なうように提案するものである。加えて、子どもの最善の利益にかなう場合は親の同意なしでアクセス可能な子どもに優しいカウンセリング、ケアおよびリハビリテーションの便益を発展させるため、締約国が十分な人的資源および財源の配分を含むさらなる措置をとることも勧告されるところである。締約国は、青少年を対象としたリプロダクティブ・ヘルス教育プログラムを強化し、かつ、リプロダクティブ・ヘルスに関するあらゆる訓練プログラムに男性が含まれることを確保するよう、促される。 D.7 教育、余暇および文化的活動 21.委員会は、とくに離島の地域共同体における伝統的教育の役割の重要性に留意する。委員会は、初等教育がいまなお締約国のすべての子どもを対象として義務的かつ無償のものになっていないことを懸念するものである。さらに、委員会は、教育へのアクセスが限られていること、女子の就学率が低いこと、識字率が低いこと、教育の質が貧弱であること、全体的に関連の教材その他の資源が存在しないこと、および、訓練を受けた/資格のある教員の人数が不十分であることに、重大な懸念を表明する。教育カリキュラムに地方言語を導入するための努力が行なわれていないことも懸念されるところである。教育が子どもの行動に悪影響を与えると依然として考えている親が多い。条約第28条1項(a)に照らし、すべての者を対象とした無償の義務教育を合理的な年数内に漸進的に実施するための詳細な行動計画を締約国が2年以内に作成し、採択し、かつ委員会に提出するよう約束することが、勧告されるところである。委員会はさらに、制度のあらゆる段階における教育へのアクセスを向上させ、女子の就学率をとくに中等段階で高め、追加的な指導手段として地方言語を導入し、かつ教育の全体的質を改善する目的で、締約国が教育制度の研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、教育の重要性を促進し、かつこの点に関する文化的態度に前向きな影響を及ぼすため、公衆教育キャンペーンを行なうようにも勧告するものである。締約国がとくにユニセフおよびユネスコの技術的協力を求めることが勧告されるところである。 D.8 特別な保護措置 22.委員会は、児童労働および子どもの経済的搾取に関するデータが不十分であることを懸念する。中等教育へのアクセスが限られていること、およびその結果として子どもが早期に雇用されていることを踏まえ、委員会は、締約国がとくにインフォーマル部門における児童労働および経済的搾取に関する研究を行なうよう提案するものである。 23.委員会は、少年司法手続を含む司法との関連で締約国が直面している問題について懸念する。委員会は、少年非行を取り扱う伝統的な方法に関して提供された情報を認知し、かつ締約国が以下のことを行なうよう勧告する。 (a) 条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならび少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則のようなこの分野の他の国際連合基準の精神にのっとり、少年司法制度を改革するための措置をとること。 (b) 少年司法制度に携わるすべての専門家を対象とした、関連の国際基準に関する訓練プログラムを導入すること。 (c) 少年司法および警察の訓練の分野において、とくに人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、国際少年司法ネットワーク、ユニセフおよび少年司法技術的助言援助調整委員会の技術的援助を求めることを検討すること。 24.最後に、委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、政府および関心のある非政府組織を含む一般公衆のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、幅広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年11月15日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/302.html
総括所見:モルディブ(第4~5回・2016年) 第1回(1998年)/第2回・第3回OPAC(2009年)/OPSC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/MDV/CO/4-5(2016年3月14日)/第71会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2016年1月19日に開かれた第2077回および第2079回会合(CRC/C/SR.2077 and 2079参照) においてモルディブの第4回・第5回統合定期報告書(CRC/C/MDV/4-5)を検討し、2016年1月29日に開かれた第2104回会合(CRC/C/SR.2104)において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況に関する理解の向上を可能にしくれた、締約国の第4回・第5回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/MDV/Q/4-5/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ部門横断型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の文書について批准または加入が行なわれたことを歓迎する。 (a) 障害のある人の権利に関する条約(2010年4月)。 (b) 国際労働機関の強制労働条約(1930年、第29号)、強制労働廃止条約(1957年、第105号)、最低年齢条約(1973年、第138号)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)(2013年1月)。 (c) 国際刑事裁判所ローマ規程(2011年9月)。 4.委員会は、以下の立法措置がとられたことに評価の意とともに留意する。 (a) セクシュアルハラスメントおよび性的虐待防止法(2014年)。 (b) 性犯罪法(2014年)。 (c) 人身取引防止法(2013年)。 (d) 家族間暴力法(2012年)。 (e) 就学前教育施設法(2012年)。 (f) 障害のある人の保護および金銭援助法(2010年)。 (g) 子どもの性的虐待の加害者に関する特別措置法(2009年)。 5.委員会は、以下の制度上および政策上の措置を歓迎する。 (a) 教育施設に通っている子どもを対象とした子ども保護政策の採択(2015年)。 (b) 「ひとりの子どもも取り残さない政策」の採択(2014年)。 (c) マレ(1か所)および諸環礁(4か所)におけるセーフホームの開設(2014年)。 (d) インクルーシブ教育政策の採択(2012年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6)) 委員会の前回の勧告 6. 委員会は、締約国が、2007年の総括所見(CRC/C/MDV/CO/3)で行なわれた勧告のうちまったくまたは十分に実施されていないもの、とくに留保(パラ10)、立法(パラ12)、包括的な政策および戦略(パラ15)、調整(パラ17)資源配分(パラ22)ならびに全国的データ収集システム(パラ23)に関するものに対応するために必要なあらゆる措置をとるよう勧告する。 留保 7.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ10参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、条約第14条第1項および第21条に付した留保の撤回を検討するよう奨励する。 立法 8.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ12参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、条約との全面的一致(親の共有責任、家族からの子どもの分離、子どもの保護の調整および国外居住者の子どもの権利に関連する分野における一致を含む)を確保しながら、子ども法案を採択するための即時的措置をとるよう勧告する。 包括的な政策および戦略 9.関連の政策(たとえばインクルーシブ教育および教育施設に通っている子どもの保護に関するもの)が最近採択されたことには留意しながらも、委員会は、締約国がまだ子どもに関する包括的政策を策定していないことを懸念する。 10.委員会は、締約国に対し、条約およびその選択議定書で対象とされているすべての分野を包含した、子どもに関する包括的政策を作成するとともに、当該政策に基づき、その適用のための諸要素を備え、かつ十分な人的資源、技術的資源および財源に裏づけられた戦略を策定するよう奨励する。当該戦略においては、子どもの権利に関わる国の諸機関の任務を明らかにし、かつ、監視および評価のための明確な枠組みを定めるべきである。 調整 11.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ17参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、さまざまな部門を横断して、国および地方のレベルで条約の実施に関連するすべての活動を調整するための明確な任務および十分な権限を備えた適切な機関を、高い省庁間レベルに設置するよう促す。締約国は、当該調整機関に対し、その効果的運営のために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するべきである。 資源配分 12.社会部門における資源配分の増加は歓迎しながらも、委員会は、条約上の義務の実施のために配分される具体的な予算科目が設定されていないこと、ならびに、これらの義務を実施するための資源の配分を評価するための監視評価機構が設置されていないことを懸念する。 13.「子どもの権利のための資源配分:国の責任」に関する一般的討議(2007年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの予算上のニーズの包括的評価を実施し、子どもの権利の実施のために十分な予算資源を配分し、かつ、とくに、子どもの権利に関連する指標に基づいて格差に対処すること。 (b) 条約の実施に割り当てられる資源の配分の十分性、効率性および公平性を監視しかつ評価するための機構を設置すること。 データ収集 14.モルディブ子どもの保護データベースが2010年に設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、条約の効果的実施のための政策、プログラムをおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用できる細分化されたデータの収集を可能とする目的としたデータベースの運用に対し、十分な予算資源が配分されていないことを懸念する。 15.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、締約国に対し、データ収集システムを速やかに向上させるよう促す。このようなデータは、すべての子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれている子ども)の状況に関わる分析を促進する目的で、条約の全分野を網羅し、かつ、年齢、性別、障害、地理的所在、民族的出身および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。さらに、委員会は以下のことを勧告する。 (a) データおよび指標が関連省庁間で共有され、かつ、条約の効果的実施のための政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されるべきこと。 (b) 締約国が、統計的情報の定義、収集および普及の際、国際連合人権高等弁務官事務所の報告書「人権指標:測定・実施ガイド」(Human rights indicators a guide to measurement and implementation)に掲げられた概念上および手法上の枠組みを考慮に入れること。 (c) 締約国が、子どもの保護データベースの部門横断的共有および全面的運用に向けて予算資源を配分するとともに、国際連合児童基金(ユニセフ)および他の適切な機関との技術的協力を強化すること。 独立の監視 16.委員会は、子どもの権利侵害の苦情を受理し、監視しかつ調査する目的で、マレに子ども・家族保護サービスが、かつ19の環礁に家族・子どもサービスセンターが、設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、これらのセンターの人員および資金が不足していることを懸念するものである。委員会はさらに、15歳の女子の事案についてモルディブ人権委員会が調査報告書(2014年4月)を発表し、かつ人権理事会の普遍的定期審査手続に報告書が提出された(2014年)のち、モルディブ最高裁判所が、人権委員会が最高裁判所の権限を批判したことに対して職権による手続を開始したことを懸念する。委員会はまた、〔拷問等禁止条約の選択議定書に基づく〕国内防止機関としても行動する人権委員会の2016年予算が相当に削減されたことにより、その機能およびとくに少年拘禁施設を監視する能力に悪影響が生じていることも懸念するものである。 17.子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国に対し、モルディブ人権委員会が国際連合機関と協力したことに対するすべての報復行為を直ちに停止するとともに、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)との全面的一致を確保するため、この監視機構の独立性(資金、任務および免責との関連を含む)を確保するよう促す。後者の点について、委員会は、締約国が、とくに国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)、ユニセフおよび国際連合開発計画の技術的協力を求めるよう勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 18.委員会は、締約国が、子どもの権利の問題に関するいくつかのテレビ番組およびラジオ番組等を通じて条約についての意識を高めるために行なっている努力、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働く者を対象として研修セッションを実施するために行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 条約の公式な翻訳が作成されておらず、かつ締約国報告書を普及するために十分な努力が行なわれてこなかったこと。 (b) 条約についての知識が限られていることもあって、一般公衆の一部およびとくに子どもたちの間に、イスラム教と子どもの権利は「両立しない」という誤解が存在すること。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約を地方言語に公式に翻訳したものおよびそれを子どもにやさしく書き直したものを作成するともに、それらの翻訳ならびに締約国報告書および委員会の総括所見を広く普及すること。 (b) 条約の規定および原則に関する、対象を明確にした定期的な研修を専門家向けに実施するための努力、および、子ども、その親その他の養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団の間で条約についての情報を体系的に普及するための努力を強化すること。 (c) 高等教育段階までの学校カリキュラムに条約についての教育を統合するとともに、ラジオおよびテレビでならびにインターネットを通じて条約の内容を恒常的に放送すること。 (d) イスラム教と子どもの権利が両立しないという点に関する公衆の誤解に対処するため、ユニセフおよび市民社会と協力しながら、対象を明確にした意識啓発プログラム(キャンペーンを含む)を発展させること。 子どもの権利と企業セクター 20.委員会は、観光が締約国の経済の主たる柱となっており、かつ、ビーチ、サファリボートおよびゲストハウスという観光的環境において児童買春が行なわれていると報告されている一方で、締約国が、観光活動から生じる可能性のある子どもの権利侵害(とくに児童セックスツーリズム)から子どもを保護するための措置をまだとっていないことを懸念する。 21.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国の領域で操業しておりまたは締約国の領域から経営されている企業およびその子会社(とくに観光産業関連企業)の法的責任を確保するための立法上(民事法、刑事法および行政法上)の枠組みを検討しかつ採択すること。 (b) 観光産業および公衆一般とともに児童セックスツーリズムに関する意識啓発キャンペーンを実施し、かつ、旅行代理店および他の観光産業関係者の間で観光名誉憲章および世界観光機関の世界観光倫理規範を広く普及すること。 (c) 国境を越える性犯罪者の特定ができるように国際的情報交換協定を執行する等の手段により、児童セックスツーリズムの防止および撤廃のための多国間、地域間および二国間の取決めを通じて、児童セックスツーリズムに反対する取り組みへの国際的レベルでの協力を強化すること。 市民社会との協力 22.委員会は、人権擁護の活動をしている一部の非政府組織(NGO)が国の関係者による脅迫を受けているという報告があることを懸念する。 23.委員会は、締約国に対し、人権擁護者は、その活動が子どもを含むすべての者の人権を促進するためにきわめて重要であるがゆえに特別な保護を受けるのにふさわしい存在であることを想起するよう求めるとともに、したがって締約国が、ジャーナリスト、人権擁護者およびあらゆるNGOが脅迫およびいやがらせを受けることなく表現および意見の自由に対する権利を行使できるようにするための即時的措置をとるよう、強く勧告する。委員会はまた、締約国に対し、対話の際に表明されたように、NGO,人権擁護者および市民社会活動家に対する脅迫およびいやがらせの通報が迅速にかつ独立の立場から調査され、かつそのような人権侵害を行なった者の責任が問われることを確保するようにも促すものである。委員会はさらに、締約国が、子どもに関連する法律、政策およびプログラムの策定、実施、監視および評価に際し、子どもの権利の分野で活動するすべてのNGOの関与を組織的に得るように勧告する。 B.子どもの定義(第1条) 24.委員会は、子どもの権利の保護に関する法律(法律第9/91号)第28条で、子どもが同法に定められたいかなる権利も享受できない3つの例外(婚姻契約を行なった子ども、親になった子どもおよび雇用されている子ども)が規定されていることを懸念する。 25.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の保護に関する法律第28条を廃止するとともに、国内法において、18歳未満のすべての者に対し、いかなる例外もなく全面的かつ平等な保護が与えられることを確保すること。 C.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 26.委員会は以下のことを懸念する。 (a) すべての市民の平等について定めた憲法第20条と、市民はイスラム教徒でなければならないとし、かつイスラム教徒でない者は市民権を取得することができないと定める第9条(b)との間に乖離があること。 (b) 女子に対する差別が法律上も実際上も続けられていること(家族法上、女子は父方の保護者の意思に服するものとされていること、および、相続権が否定されていることを含む)。 (c) 一部の政治家および宗教的指導者が、女子の品位を貶め、かつジェンダーを理由とする差別を助長すると考えられる発言を行なってきたという報告があること。 (d) 婚外子または法廷外婚姻のもとで生まれた子どもに対する差別が続けられていること(実の父親と法的関係を確立する権利および実の父親の姓を名乗る権利が否定されていること、ならびに、相続権が否定されていることを含む)。 (e) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーもしくはインターセックスである子どもまたはそのように見なされる子どもが、社会でスティグマを付与されかつ周縁化されていること。 27.委員会は、締約国に対し、自国の管轄内にあるすべての子どもが、条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受できることを確保するため、いっそうの努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、女子、婚外子または法廷外婚姻のもとで生まれた子ども、および、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーまたはインターセックスである子どもに対するいかなる差別も撤廃するための法改正を行なうことも促すものである。委員会はさらに、締約国に対し、政治家および宗教的指導者が女子の品位を貶め、かつジェンダーを理由とする差別および暴力を助長する発言を行なったすべての事案について、捜査および処罰を行なうよう促す。委員会は、締約国に対し、立法上、政策上および教育上の措置(感受性強化および意識啓発を含む)を活用して、女子、婚外子または法廷外婚姻のもとで生まれた子ども、および、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーまたはインターセックスである子どものスティグマに終止符を打つよう奨励するものである。 子どもの最善の利益 28.委員会は、子どもの最善の利益について、条約に一致しない慣習的および宗教的解釈が締約国で支配的となっており、そのため子どもの権利の深刻な侵害につながっていることを懸念する。委員会は、子どもの性的虐待を通報しないことが、子どものいわゆる「名誉」を守ることであり、したがって子どもの最善の利益にかなっていると考えられていることに、深刻な懸念とともに留意するものである。 29.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が、法律において、条約第3条と一致する形で子どもの最善の利益の原則を明示的に定義しかつ掲げるよう勧告する。これとの関連で、締約国は、公的権限を有するすべての関係者に対し、あらゆる分野で子どもの最善の利益について判断し、かつそれを第一次的考慮事項として正当に重視することに関する指針を提供するための手続および基準を定めるよう奨励されるところである。締約国は、子どもの性的虐待の加害者を処罰しないことが子どもの最善の利益にかなっているという考え方につながる宗教的および慣習的解釈に異議を申し立てる意識啓発キャンペーンを実施するよう求められる。 生命、生存および発達に対する権利 30.委員会は、以下のことについて重大な懸念を覚える。 (a) 少年裁判所が、3つの異なる事件(2013年の1件および2015年の2件)において5人の子どもに死刑を言い渡したこと。 (b) 報告によれば、死刑に直面している子どものほとんどはキサス(同害復讐法)に基づいて刑を言い渡されており、かつ、2015年11月30日の高等法院判決により、被害者の相続人全員がシャリーア法上のキサスに基づく刑罰が科されることを望んでおり、かつ有罪判決を受けた殺害犯に対して死刑を執行することを要求する場合には、大統領はもはや、故意の殺人罪について死刑を終身刑に減刑できないとされていること。 (c) 故殺の捜査および刑の執行に関する規則(2014年)により、7歳という低年齢の子どもに対し、故意の殺人罪について死刑を言い渡すことが認められていること。 (d) 現在、死刑法案として展開されようとしている死刑の実施に関する規則(2014年)により、死刑を言い渡された未成年者に対し、当該未成年者が18歳になれば死刑を執行することが認められていること。 (e) 死刑事件および鞭打ち事件についての自動的上訴を定めた2015年11月の通達が、全体としては肯定的なものである一方で、当該通達の利益を享受できる者の間で十分に普及されておらず、かつ、最高裁判所への上訴期間も60日から30日へと短縮していること。 31.委員会は、締約国に対し、以下の措置を最優先でとるよう促す。 (a) 18歳未満の者の死刑について定めた国内法のすべての規定を廃止すること。 (b) 18歳未満の者または犯罪実行時に18歳未満であった者に対して死刑が執行されないこと(フドゥード法上の犯罪およびキサス法に基づく事件についての刑を含む)を確保し、そのようなすべての死刑についてそれに代わる適切な制裁を科すとともに、殺人被害者遺族に働きかけてキサス法に基づく事件について宥恕を奨励すること。 子どもの意見の尊重 32.委員会は、社会福祉機関、裁判所および行政機関によって子どもの意見が聴かれることがめったになく、かつ、16歳未満の子どもまたは第二次性徴期を迎えていない子どもには裁判所における陳述が認められないことを懸念する。 33.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ45参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、地方レベルでも、かつ裁判所における陳述との関連でも、意見を聴かれる子どもの権利が、その子どもの権利に影響を与える可能性があるすべての手続、とくに社会福祉機関、裁判所および行政機関がとる措置において、その年齢および成熟度にしたがって尊重されることを確保するよう促す。 D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) 思想、良心および宗教の自由 34.委員会は、イスラム教徒でない者および無信仰の者に対する宗教的不寛容についての報告があること、ならびに、宗教的寛容を奨励する成人および子どもに対して暴力を行なった者が一般的に処罰されていないことを深刻に懸念する。委員会はまた、締約国で宗教的過激主義が勢力を増しており、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利に深刻な影響が生じているという報告があることも懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、宗教または信条を理由とするあらゆる形態の差別を防止しかつ解消するための措置をとり、かつ社会における宗教的寛容および対話を促進する等の手段により、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利を尊重するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ48〔49〕参照)を、あらためて繰り返す。締約国は、宗教の名のもとに暴力を行なった者が責任を問われることを確保するべきである。 結社および平和的集会の自由 36.最近、18の学校で人権クラブが設立されたことは歓迎しながらも、委員会は、結社法(1/2003)で、すべての子どもが団体の結成を禁じられていることを懸念する。 37.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ51参照)をあらためて繰り返すとともに、対話の際に表明されたように、締約国が、子どもが団体を結成できるようにするために結社法を改正し、子どもたちに団体の結成を奨励し、かつ、子どもに影響を与える政策および決定の立案に子どもたちが関与するための機会をつくりだすよう勧告する。 適切な情報へのアクセス 38.締約国の14~18歳の子どものほとんどがインターネットにアクセスできており、かつ、締約国が最近、子どもおよびその親を対象としてネットいじめおよびインターネット上の安全に関する意識啓発活動を開始したことには留意しながらも、委員会は、子どもが年齢にふさわしくない情報およびポルノグラフィーならびにネットいじめにさらされないことを確保するうえで、これらの措置が不十分であることを懸念する。 39.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ53-54参照)をあらためて繰り返し、締約国が、多様な情報源、とくに子どもの社会的、霊的および道徳的ウェルビーイングならびに身体的および精神的健康の促進を目的とした情報源からの適切な情報に対する子どものアクセスをさらに向上させるとともに、子どもならびに親および教員を対象とした、インターネット上の安全に関する(かつ、とくにポルノグラフィーおよびネットいじめの問題について扱う)啓発プログラムを強化するよう勧告する。 E.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条) 拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 40.憲法第54条で拷問が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、未成年者が行なった犯罪についての審判の実施、捜査および公正な量刑に関する規則(2014年、第4条および第5条)に基づき、第二次性徴期に達した子どもが、フドゥード法上の特定の犯罪を行なったことを理由として鞭打ちにより処罰される可能性があることを懸念する。委員会は、未成年者が引き続き鞭打ちの刑を執行されておりまたは鞭打ち刑を言い渡されていること、および、この刑罰の適用においてジェンダーの偏りがあること(大多数の事件で、婚姻外の性交を理由として有罪を言い渡された女性および女子しか鞭打ちの刑を言い渡されていない)を、深刻に懸念するものである。委員会はさらに、罪を犯した子どもに対し、同意に基づく同性間の関係を理由として終身刑、追放刑または鞭打ちの刑を言い渡すことも合法とされていることを懸念する。 41.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ56参照)をあらためて繰り返すとともに、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)を参照しながら、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 18歳未満のときに犯罪を行なった者がいかなる形態の拷問(体罰を含む)の対象にもされないこと、ならびに、しつけおよび規律維持の措置としての体罰が家庭、代替的養護環境、司法機関、学校および職場環境において法律で禁止されることを確保するために必要なあらゆる措置をとること。 (b) 未成年者が行なった犯罪についての審判の実施、捜査および公正な量刑に関する規則(2014年)を改正して鞭打ち刑を禁止すること。 (c) 18歳未満の者の終身刑を明示的に禁止すること。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 42.2012年に家族間暴力法が採択されたことおよび同法の規定に関する意識啓発のための活動が実施されていることは歓迎しながらも、委員会は、同法が、子どもの体罰を禁止していると解釈されていないことを懸念する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。 (a) 家庭、学校およびコミュニティにおいて子どもに対する暴力、虐待およびネグレクトが広く行なわれていること。 (b) 家族間暴力の事案の通報水準が低く、かつ、法執行官が、このような暴力はイスラム教において正当化されると考えて、行動をとることおよび家族間暴力の加害者を逮捕することをしばしば躊躇すること。 (c) 2012年法で必置とされているシェルターがまだ設置されていないこと、ならびに、家族・保護サービスセンターおよびセーフハウスが資金不足の状況にあり、かつ利用可能となっていないこと。 (d) とくにマレにおいてギャング関連の暴力がエスカレートしつつある一方で、ギャング関連の暴力および死亡ならびにギャング関連の活動への関与から子どもを保護するためにとられた措置が限られていること。 (e) 子どもたちが、2012年2月7日〔政権交代をめぐる軍事政変〕後に行なわれた抗議の際に暴力にさらされてきたこと。 (f) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーもしくはインターセックスである子どもまたはそのように見なされる子どもが脅迫および公然たる脅しに直面していること。 43.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)および持続可能な開発目標のターゲット16.2(子どもの虐待、搾取、人身取引ならびに子どもに対するあらゆる形態の暴力および拷問の廃絶)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族間暴力法に基づき、体罰が曖昧さを残す余地なく禁じられることを確保すること。 (b) 必置とされているシェルターを設置し、保護サービスセンターおよびセーフハウスに十分な資金を提供し、家庭内で女子に対して行なわれる暴力について法執行官の十分な能力構築を図り、かつ意識啓発のための努力を通じて通報を増加させる等の手段により、2012年家族間暴力法の執行および実施を確保すること。 (c) 子どもに対する家族間暴力のあらゆる事案に関する全国的データベースを設置するとともに、このような暴力の程度、原因および性質についての包括的評価を実施すること。 (d) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表からも2013年5月の訪問時に勧告されたように、子どもの保護に関わる問題を担当するすべての主要な部局および機関が一堂に会し、定期的に会合して、ジェンダー関連の暴力にも焦点を当てながら子どもに対する暴力および子どもの虐待を防止しかつこれと闘うための包括的戦略(具体的な予算をともなう介入策を定めたもの)を立案するための、ハイレベルな討議の場を制度化すること。 (e) 統一された、調整のとれた、かつ包括的な子どもの保護制度を創設すること。 (f) 政治的抗議の際に子どもに対して暴力が振るわれることおよび子どもが暴力にさらされることを防止するために必要なあらゆる措置をとること。 (g) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもに対する脅迫および脅しを防止すること。 性的搾取および性的虐待 44.委員会は、子どもの性的虐待への対応に関する特別措置法が2009年に制定されたこと、その後、有罪判決を受けた性犯罪者の登録簿を法律・ジェンダー省がネット上で公表したこと(2015年11月)、および、子どもの性的虐待の通報が増えていることを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 法律で「性的虐待」の定義が定められていないこと、および、2009年法第14条で、既婚女子に対して夫が行なった性犯罪の事件については免訴が認められていること。 (b) 性的同意に関して法律で定められている最低年齢が低すぎる(13歳)こと。 (c) 子どもの性的虐待(とくに女子に対する虐待)が依然として広く行なわれており、かつその大部分が通報されていないこと、有罪判決率が著しく低いこと、および、加害者がしばしば早期に釈放されてコミュニティに戻っていること。 (d) 2009年法の効果的実施のために必要な二次立法(証拠法案など)の成案がまだ得られていないこと。 (e) 裁判官が、女性、女子およびセクシュアリティについて差別的な見方をしており、子どもの性的虐待の被害者に対して配慮のない態度を示しており、かつ、場合により、自らも過去に性犯罪で有罪判決を受けていた者もいると報告されていること。 (f) 婚外妊娠が、虐待の結果として妊娠した女子の場合も含め、性犯罪法により犯罪とされていること。 (g) 性的虐待を受けた子どもが密通の罪で鞭打ち刑を言い渡される事案が多数生じていること。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 性的同意に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (b) 条約に一致する形で性的虐待を定義すること、および、いかなる形態のものであれ性的搾取を受けたすべての子どもが被害者として扱われ、刑事的制裁の対象とされないようにすることを目的として、法律を改正すること。 (c) すべての形態の性的虐待(婚姻内強姦を含む)が犯罪化され、かつ犯罪の重大性に相応した刑罰によって処罰されることを確保する目的で2009年法第14条を廃止するとともに、証拠法案を完成させかつ制定すること。 (d) 子どもの性的虐待および性的搾取のすべての事案の通報義務を確保するための機構、手続および指針を確立すること。 (e) 女子の性的虐待に関する裁判官の感受性の強化を図ることなども通じ、性的搾取および性的虐待の加害者が効果的に訴追され、かつ相応の制裁を科されることを確保すること。 (f) 性的搾取および性的虐待(近親姦を含む)の被害者に対するスティグマと闘うための意識啓発活動を実施し、かつ、このような人権侵害についての、アクセスしやすく、秘密が守られ、子どもにやさしく、かつ実効的な通報経路を確保すること。 (g) 子どもの商業的性的搾取に反対する一連の世界会議で採択された成果文書にしたがい、防止ならびに被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策(十分なシェルターの提供を含む)の発展を強化すること。 有害慣行 46.委員会は、最低婚姻年齢は18歳であるものの、家族法第4条(b)に基づき、マレの家庭裁判所が、子どもが第二次性徴期に達しており、心身ともに健全であり、かつ生計維持の能力を有していることを条件として、より低い年齢での婚姻を許可できることを懸念する。締約国が、法定年齢に満たない段階での婚姻の影響に関する広報ポスターを配布し、かつ児童婚および女性性器切除の有害な影響に関するその他の意識啓発活動を実施してきたことには留意しながらも、委員会は、締約国で児童婚が増えていると報告されていることを懸念するものである。委員会はさらに、女性性器切除からの保護が法律で明示的に定められていないこと、および、一部の宗教的指導者(フィクフ〔法学〕アカデミーの副学長を含む)が、女性性器切除を「イスラム教の好ましい慣行」として擁護しているとされることを懸念する。 47.有害慣行に関する女性差別撤廃委員会および子どもの権利委員会の合同一般的勧告31号/一般的意見18号(2014年)に照らし、委員会は、締約国に対し、締約国で行なわれている子どもに対する有害慣行に終止符を打つための積極的措置をとるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 家族法第4条(a)で18歳と定められている最低婚姻年齢が遵守されることを確保すること。 (b) 女性性器切除を有害慣行として明示的に禁止する法律を制定するとともに、その有害な影響に関する意識啓発を図ることおよびこの慣行を促進する宗教的指導者の責任を問うこと等を通じてこれと闘うための措置をとること。 (c) 早期婚が女子の身体的および精神的健康ならびにウェルビーイングに及ぼす有害な影響についての意識啓発のためのキャンペーンおよびプログラムを、世帯、地方当局、宗教的指導者、裁判官および検察官を対象として発展させること。 ヘルプライン 48.委員会は、被害者またはその家族が人権侵害事案を通報するために活用できる、法律・ジェンダー省が運用するヘルプライン(フリーダイヤルおよび24時間運用)が2009年に開設されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、このヘルプラインについて多数の苦情(その存在が知られていないこと、アクセスのための接続が脆弱であること、通話に対応するための訓練を受けた職員がいないことおよびフォローアップが行なわれないことに関する苦情を含む)が出されており、いずれもこのヘルプラインへの公衆の信頼を失わせる結果になっていることを懸念するものである。 49.委員会は、締約国が、子どもヘルプラインを運営するための標準業務手続を作成し、通話に対応する職員に対して十分な研修を実施し、かつ、人権侵害が疑われる事案を通報するためのヘルプラインの活用を積極的に奨励するよう勧告する。 F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)~(2)、第20~21条、第25条および第27条(4)) 家庭環境 50.委員会は、対話の際に強調されたように、締約国の離婚率が非常に高く、かつ上昇し続けていることを依然として懸念する。委員会はまた、働く母親が多数存在するにもかかわらず、締約国に保育施設がひとつしかないことも懸念するものである。委員会はさらに、子育て意識啓発プログラムおよびカップル相談サービスがないことを懸念する。 51.委員会は、高い離婚率の背景にある理由についての研究を締約国が実施するよう勧告するとともに、締約国に対し、保育施設を整備するための努力、ならびに、とくに親としての指導および親の共同責任に関する親向けの支援(研修を含む)を提供することを通じて、家族教育および家族についての意識啓発を発展させるための努力を増進させるよう、奨励する。 家庭環境を奪われた子ども 52.委員会は、代替的養護施設で子どもに対して虐待、差別および暴力が行なわれていること、ならびに、2010年以降、子どもに入所養護を提供しまたは被害を受けた子どもに対して必要な治療およびサービスを提供することを任務とせず、そのために設置されたわけでもない施設である「特別なニーズを有する人々のためのホーム」に措置される子どもが着実に増えていることを、深刻に懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 現在のところ、代替的養護における子どもの措置、養護および再統合についても、代替的養護施設の職員の採用および行為の監督についても包括的な法的枠組みが定められておらず、かつ指針も策定されていないこと。 (b) 養護を離脱する子どもまたは青少年のための計画、政策または手続が存在しないこと。 (c) 伝統的な里親養育システム(家族およびコミュニティを基盤とする代替的養護など)を発展させることについて、締約国が十分な考慮を行なっていないこと。 53.委員会は、締約国に対し、「特別なニーズを有する人々のためのホーム」から直ちに子どもを退所させ、同施設への子どもの措置をやめ、かつ、代替的養護施設内で子どもに対して行なわれたすべての虐待、差別および暴力事件を調査するよう促す。委員会はさらに、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ60参照)をあらためて繰り返しながら、締約国が、子どもの代替的養護に関する指針(2009年12月20日)を考慮に入れながら、子どもホームの最低基準に関する規則、国の監護に関する規則および里親養育に関する規則を速やかに採択するとともに、これらの規則を実際に実施するため、職員を対象として関連の研修を実施するよう勧告するものである。委員会はまた、締約国が、養護を離脱する子どもおよび青少年のためのプログラムを緊急に策定するとともに、伝統的な里親養育システム(家族およびコミュニティを基盤とする代替的養護など)を発展させる可能性を、これ以上遅滞することなく模索することも勧告する。 G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23~24条、第26条、第27条(1)~(3)および第33条) 障害のある子ども 54.障害のある人の保護および金銭援助法(2010年)およびインクルーシブ教育政策(2012年)が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、同法が全面的に実施されているわけではないことを懸念する。委員会はまた、障害のある子どもに対してスティグマが付与されていること、障害のある子どもについての細分化されたデータがないこと、および、これらの子どもが保健サービスにアクセスできていないことも依然として懸念するものである。 55. 障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、障害に対して人権基盤型アプローチをとり、細分化された統計データに基づきながら障害のある子どものインクルージョンのための包括的戦略を定め、かつ、以下の措置をとるよう促す。 (a) 障害のある人の保護および金銭援助法の全面的実施のために十分な資源を配分すること。 (b) 障害のあるすべての子どもが障害者登録簿に記載されることを確保するとともに、当該登録を妨げる、現在存在するいかなる金銭的その他の障壁も取り除くこと。 (c) インクルーシブ教育政策を実施し、かつ、インクルーシブ教育が特別施設および特別学級への子どもの措置よりも優先されることを確保するための努力を強化すること。 (d) 障害のある子どもが保健ケア(早期発見および早期介入のためのプログラムを含む)にアクセスできることを確保するための努力を強化すること。 (e) 政府職員、公衆および家族を対象として、障害のある子どもに対するスティグマおよび偏見と闘い、かつこのような子どもの肯定的イメージを促進するための意識啓発キャンペーンを実施すること。 思春期の健康 56.委員会は、思春期の子どもにやさしい保健サービスを提供するための基準が最近策定され、かつ、この問題について、政策立案関係者および宗教的指導者を対象とした感受性強化のための会合が開かれてきたことに留意する。委員会はまた、教育省が、学校において、青少年の子どもを対象とした、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する包括的なライフスキル教育パッケージを実施していること、および、意識のさらなる促進を図るために放送媒体が活用されていることにも留意するものである。委員会はさらに、妊娠した非婚の女子に対し、家族保護部によって支援および医療ケアが提供されていることに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 中絶が、配偶者の同意を要件としており、かつ特定の場合(重症型サラセミア、重症型鎌状赤血球症または多発性先天奇形の場合、母体の生命を救いまたはその身体的健康を保全する目的がある場合、近親者による強姦で妊娠した場合、および、身体的および精神的に妊娠および分娩に適さない子どもが強姦により妊娠した場合)にしか認められないこと。 (b) リプロダクティブヘルスのための保健ケアサービスにすべての者がアクセスできるわけではなく、かつ、婚姻外妊娠が社会的非難の対象であることおよび犯罪とされていることを理由として非婚の女子が種々の困難に直面しているために、不法で安全性を欠いた中絶がますます行なわれるようになっており、思春期の母親の生命および健康に対するリスクが高まっていること。 (c) 2006年に実施された全国規模の研究によれば、締約国の子どもおよび青少年の66%が精神保健関連の問題を抱えており、かつ、2009年の調査によれば、締約国の生徒の22.2%が調査前の12か月間に自殺未遂の計画を立てていたにもかかわらず、これまでのところ、子どもおよび青少年を対象とする専門の精神保健サービスが締約国で確立されていないこと。 57.条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期の子どもを対象とする包括的なセクシュアル/リプロダクティブヘルス政策を採択するとともに、セクシュアル/リプロダクティブヘルス教育が、若年妊娠および性感染症の予防にとくに注意を払いながら、学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ思春期の女子および男子を対象として行なわれることを確保すること。 (b) あらゆる場合の中絶を非犯罪化するとともに、配偶者の同意規定を削除する等の手段により、子どもが安全な中絶および中絶後のケアサービスにアクセスできることを確保する目的で、法律の見直しを行なうこと。また、中絶に関する決定において、妊娠した女子の意見が常に聴かれかつ尊重されることを確保すること。 (c) 妊娠した10代、思春期の母親およびその子どもの権利を保護し、かつこれらの女子および子どもに対する差別と闘うための政策を策定しかつ実施すること。 (d) 男子および男性にとくに注意を払いながら、責任のある親としてのあり方および性的行動についての意識を高め、かつそのようなあり方および行動を促進するための措置をとること。 (e) 子どもおよび青少年を対象として、精神保健のための専門的便益およびサービスを提供すること。 (f) 思春期の子どもの性的行動および精神保健についての微妙な問題に関して、宗教的指導者との内部的対話を促進すること。 薬物および有害物質の濫用 58.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 近年、思春期の子どもの間で薬物の消費が増加しており、一方で薬物を最初に使用した平均年齢が下がりつつあること。 (b) 現在のところ、薬物濫用の被害者である子どもをとくに対象としたサービスが締約国に存在しないこと、および、利用可能なサービスは需要を満たすのに不十分であって依然として有効なものになっていないこと。 (c) 子どもが薬物濫用について専門家による援助を得るためには親または保護者の同意が必要であるが、多くの親はスティグマを恐れて家庭で問題を解決しようとしていること。 (d) 離脱症候群を持って生まれる子どもの人数が増えていること。 59.委員会は、締約国が、とくに子どもおよび青少年に対して有害物質濫用(タバコおよびアルコールの濫用を含む)の防止に関する正確かつ客観的な情報およびライフスキル教育を提供することにより、子どもおよび青少年による薬物の使用の発生に対処する努力を強化するとともに、子どもおよび若者を対象とした、アクセスしやすく若者にやさしい薬物依存治療およびハームリダクション(危害軽減)のサービスを発展させるよう、勧告する。有害物質濫用の被害者のための専門的リハビリテーションサービスの一環としての新生児部、リプロダクティブヘルスサービス部および家族保護部に対し、特段の注意が払われるべきである。 H.教育、余暇および文化的活動(第28条、第29条、第30条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 60.委員会は、2014年に法律第9/91号(子どもの権利保護法)が改正され、モルディブに住むすべての子ども(外国籍の子どもを含む)に対して無償教育を受ける権利が認められたことを歓迎する。委員会は、教育法案において第10学年(15歳)までの義務教育が導入されることになる旨の情報に留意するものの、同法案の可決が遅れていることを依然として懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 締約国が、乳幼児期のケアおよび教育に関する包括的政策を定めていないこと。 (b) 障害法(2010年)の規定にもかかわらず、障害のある子どもが、とくに環礁において実質的に中等教育にまったくアクセスできていないこと、および、普通学校へのインクルージョンの対象とされた子どもが教室内で深刻な差別に直面していること。 (c) 多くの女子が学校に行かなくなっていると報告されていること。 61.委員会は、締約国に対し、教育法案を、これ以上遅滞することなく、かつ条約と一致する形で採択するよう促す。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 乳幼児期のケアおよび教育に関する包括的政策を採択すること。 (b) 障害のある子どもを含むすべての子どもが、他の子どもと同様に教育に対する権利を享受できることを確保すること。 (c) 適切な政策および措置を立案しかつ実施する目的で、女子が学校に行かなくなる理由についての研究を実施すること。 教育の目的 62.対話の際に提供された、授業用資料の見直しが現在進められている旨の情報には留意しながらも、委員会は、第4学年以上を対象とする授業用資料のなかに、性差別的および排外主義的資料ならびに理解、平和および寛容を促進しないその他の要素が含まれているという報告があることを深刻に懸念する。 63.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、軽蔑的な内容ならびに性別および宗教的信条に基づく差別および暴力を呼びかける内容を含んだすべての資料を直ちに撤回するとともに、それに代えて、すべての人民間ならびに民族的、国民的および宗教的集団間の理解、平和、寛容、性の平等および友好の精神を反映し、かつ人権およびすべての文明の尊重の発展を促進する教育資料および教育プログラムを導入するよう、促す。 休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動 64.芸術および音楽は必修教育カリキュラムの一部に位置づけられており、したがって学校にはこれらの科目を中止する選択権はない旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、あらゆる形態の芸術的表現は「ハラム」〔禁止行為〕であるから禁止されているという宗教的宣伝の結果、芸術、音楽および演劇の授業が一部の学校で中止されたという報告があることを深刻に懸念する。 65.委員会は、休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国に対し、中止された芸術、音楽および演劇の授業をすべて再開しかつ保護すること、および、子どもが余暇を享受し、かつ文化的伝統について学習するために設けられている手段を拡大することを促す。 I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)ならびに第38条、第39条および第40条) 経済的搾取(児童労働を含む) 66.委員会は、2008年雇用法において最低就労年齢が16歳とされていることに留意するものの、家族企業で働く子どもについては同法が適用されず、このような子どものための立法上の保障措置が存在しないことを懸念する。委員会はまた、同法において、健康、教育、安全または品行に有害な影響を及ぼす可能性があるいかなる業務においても18歳未満の子どもの雇用が禁じられていることに留意するものの、禁止対象である危険な活動がそれ以上に具体的に定められていないことを懸念するものである。委員会はさらに、同法を執行するために労働関係庁および労働監察制度が設置されたことに留意する。しかしながら委員会は、同庁の人員および資源が不足しており、監察が不十分であり、かつ、児童労働を認識しかつこれに対応することについての具体的訓練が監察官を対象として実施されていないために、執行が十分に行なわれていないことを懸念するものである。 67.委員会は、締約国が、家族企業で働く子どもの保護のための立法上の保障措置をとり、子どもに対して禁止される搾取的業務および危険な業務の包括的リストを採択し、労働監察官を対象として、児童労働を認識しかつこれに対応することについての必修の研修を実施し、かつ、労働監察を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、この点に関してILO・児童労働撤廃国際計画の技術的援助を求めることも勧告するものである。 少年司法の運営 68.委員会は、新たに採択された2014年9月の刑法に基づき、子どもの未成熟性は15歳未満の子どもについては正当な抗弁とみなされる(ただしフドゥード法上の犯罪については例外とされる)こと、および、刑法上の犯罪について有罪と認定された15~17歳の子どもに対する刑の執行は、その子どもが18歳に達するまで延期されるとされていることに留意する。委員会は、刑事責任年齢が低い(10歳)ままであることを深刻に懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 締約国の裁判官が、刑事責任の存在を認定するにあたり、法定最低年齢ではなく身体的第二次性徴期への到達を基準として用いる傾向にあること。 (b) 鞭打ちが、犯罪に対する刑罰として依然として合法とされていること。 (c) 拘禁された子どもおよび青少年が、成人拘禁施設において、別ではあるものの近接した房に収容されていること。 (d) 法律に抵触した子ども、未決拘禁中の子どもおよび収監された子どもが教育に対する権利を否定されていること。 (e) 少年裁判所がマレ以外に設置されておらず、すべての事件がマレに移送されなければならないこと。 69.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約および他の関連の基準に全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 18歳未満の子どもに対し、フドゥード法上の犯罪についての刑罰を適用しないこと。 (b) 刑事責任年齢を国際的に受け入れられる水準にまで引き上げること。 (c) 少年司法法を、その規定が条約の規定および原則ならびに少年司法の運営(刑事手続における子どもの審理を含む)に関する他の国際的基準を全面的に遵守したものとなることを確保しながら、これ以上遅滞することなく採択すること。 (d) 犯罪に対する刑罰としての鞭打ちを廃止すること。 (e) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、調停、カウンセリングまたは地域奉仕のような拘禁に代わる措置を促進するとともに、拘禁が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、拘禁がその取消しを目的として定期的に再審査されることを確保すること。 (f) 拘禁が避けられない場合、子どもが成人とともに拘禁されないこと、および、拘禁環境が国際基準(教育および保健サービスへのアクセスに関するものを含む)を遵守したものとなることを確保すること。この目的のため、委員会は、締約国が、少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成機関(国際連合薬物犯罪事務所、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)によって開発された技術的援助ツールを活用するとともに、同パネルの構成機関に対し、少年司法の分野における技術的援助を求めるよう勧告する。 (g) 十分な人的資源、技術的資源および財源を備えた少年裁判所専用の施設および手続を締約国全域で速やかに確立し、子どもに関する専門の裁判官を指定し、かつ、このような専門の裁判官が適切な教育および研修を受けることを確保すること。 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ 70.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書についての総括所見(2009年1月30日、CRC/C/OPSC/MDV/CO/1)の実施に関する情報がないことを遺憾に思う。委員会は、貧困および農村出身の背景を有する多くの子どもが児童買売春ならびに児童ポルノの製造および配布に従事しているという報告があることをとりわけ懸念するものである。 71.委員会は、締約国に対し、買売春およびポルノのために子どもを使用することを(たとえ加害者と被害者がシャリーア法に基づく婚姻関係にあっても)犯罪化し、たとえ威迫が行なわなれなくとも子どもの性的人身取引を犯罪化し、かつ、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもがシャリーア法に基づく告発(ジナ〔婚外性行為等〕の罪による告発を含む)に直面させられないことを確保する等の手段により、刑法を選択議定書第2条および第3条に全面的に一致させるよう促す。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ 72.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書についての総括所見(2009年1月30日、CRC/C/OPAC/MDV/CO/1)の実施に関する情報がないことを遺憾に思う。複数の夫婦および家族全員が締約国からイラク・レバントのイスラム国(ISIL)の支配領域に渡航したとされている旨の情報に照らし、委員会は、締約国が、急進主義化および狂信的犯罪集団への勧誘を防止するための措置をとっていないことを懸念するものである。 73.委員会は、締約国に対し、子どもを徴募することおよび敵対行為に関与させることに関わる選択議定書の規定の違反を犯罪化するとともに、いっそうの過激主義化、急進主義化および「ジハード」集団への勧誘の問題の高まりに対処するための戦略を策定するよう、促す。 J.通報手続に関する選択議定書の批准 74.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する選択議定書を批准するよう勧告する。 K.国際人権文書の批准 75.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ締約国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書および障害のある人の権利に関する条約の選択議定書、ならびに、死刑の廃止を目的とする市民的および政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書を批准するよう勧告する。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 76.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第4回・第5回統合定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 77.委員会は、締約国に対し、第6回・第7回統合定期報告書を2021年9月12日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 78.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年3月24日)。
https://w.atwiki.jp/streetpoint/pages/129.html
子どものような恋 「あれ、姫条君?」 目の前で驚く小波美奈子に、姫条はむすっとした表情で言った。 「美奈子、これから暇か?」 ここは大学の校門前。 姫条は彼女である美奈子を連絡せずに迎えにきていたのだが、美奈子と一緒に出てきた人物の顔を見て機嫌を損ねていた。 「え、うん。大丈夫だよ」 「美奈子……それじゃ、また明日な」 「あ、うんまたね! 珪君!」 美奈子の横をすり抜けて、葉月珪が姫条を一瞥して去って行った。 姫条はまだムカつきながら、美奈子にヘルメットを投げて寄越した。 「乗りや」 「うん!」 笑顔で答える美奈子は、姫条のバイクの後ろにまたがった。 それを確認して姫条もバイクに乗る。 「どこ行くの?」 「……俺の家」 「お腹空いてるの?」 「何でや?」 「いや、なんか機嫌悪そう?」 姫条の機嫌が悪いのに気付いたらしい美奈子だが、原因は空腹と思っているようだ。 俺はどんだけお子様やねん。 と、心の中で突っ込むが、先ほどから葉月と一緒に歩いていた美奈子に嫉妬しているのだから、空腹で機嫌が悪いのと大差ない。 「ほな行くで。しっかり掴まっときや」 「はあい」 今口を開くと余計なことを言いそうなので、姫条は美奈子が自分の腰を掴んだのを確認するとアクセルを回した。 自宅に着いてから、姫条は無言でコーヒーを入れていた。 不機嫌の原因は葉月だけではない。 「ねえ姫条君。今日晩ご飯、何か作ろうか?」 これだ。 この、姫条君という美奈子の呼ぶ呼び方にもムカついているのだ。 高校の卒業式の日に姫条から告白してOKをもらい、付き合いはじめて2年。 順調な交際を続けていたが、未だに美奈子は姫条の事を名前で呼んでくれない。 葉月の事は珪って呼ぶのに、何でやねん…… そこで姫条は気付いた。 やっぱり葉月が原因だ。 子どもみたいと言われるかもしれないが、それだけ姫条は美奈子に惚れている。 男の嫉妬は醜いなどというが、関係ない。 腹が立つものは仕方ないのだ。 「……なあ、美奈子ーーー」 「ん? なあに?」 可愛らしく首を傾げる美奈子に、姫条は入りたてのコーヒーをカップに注いで手渡しながら尋ねた。 「お前、葉月の事好きなんちゃうんか?」 「ーーーは? え? 珪君? どうして?」 言った後に少し後悔したが、もう後には引けない。 きょとんと姫条を見上げる美奈子に、姫条はまたぎりぎりと胸がかきむしられる。 美奈子の口から珪という単語が出る度、どんどんと深みにはまって行く。 「今日も一緒に帰っとったし、なんか仲良さそうやんか。高校の時もなにかと一緒におったみたいやし」 ほかの聞き方があるはずなのに、どうしても刺のある言葉になってしまう。 美奈子は訳が分からないといった顔で、じっと姫条を見つめていた。 「あいつのこと、もし好きなんやったら、無理して俺と付き合ってくれんでもええんやで?」 「……どうしてそんなこと言うの?」 姫条は我に返った。 美奈子の声が微かに震えている。 「あ、いやっ、ちゃう……」 「もしかして、誰か好きな人でも出来たの?」 「ーーーはあっ?」 姫条は驚いた。 美奈子の言った言葉に目が丸くなる。 「そんな遠回しな言い方しなくてもいいのに……そっか。だから今日なんか機嫌悪かったんだね」 そう言って美奈子はコーヒーをテーブルに置くと立ち上がった。 「ごめんね。私そういうの鈍いから全然気付かなくって……」 「お、お前何言うてんねん!」 慌てて美奈子の腕を掴む。 「他に好きな人が出来たから、別れて欲しいって事でしょ?」 「アホっ! んな訳あるか! ちゃう、俺が言いたいのは……ああ~~~~! もうっ!」 がばっ! と美奈子を抱きしめると、姫条は何度もごめんと謝った。 「ちゃうねん! そうやないねん……俺、葉月と仲良うしとる美奈子見て嫉妬しててん……あいつの事は珪君って呼ぶのに、俺のことはいつまでたっても姫条君やしーーーせやからホンマは俺じゃなくて葉月の事が好きなんちゃうかって……」 もやもやを吐き出した姫条は、少しだけスッキリした。 なんという自己満足。 そんな姫条の気持ちが伝わったのか、美奈子がぎゅっと姫条の背中に腕を回す。 「ーーー姫条君の、馬鹿……」 小柄な美奈子の体は姫条の腕の中にすっぽりと収まる。 女の子特有の柔らかな感触が、姫条の心を落ち着かせて行く。 ああ、こんなにも美奈子は自分の近くにいるというのに、何を一人で勝手に落ち込んで美奈子にまで八つ当たりをして…… 大人になりきれない自分が情けなくなる。 「まどかって呼んで?」 美奈子の髪にキスを落としながら言った。 それに静かに美奈子は答える。 「……まどか」 「もう一回」 「まどか」 「うん」 「まどか…………の、ばかっ!!」 ドンッ! 「わあっ!?」 姫条は突然突き飛ばされ、反動でソファーに倒れた。 驚いた顔のまま見上げると、美奈子が怒った顔で睨んでいる。 「す、すまんっ! 悪気はなかったんや! ただちょっとばっかり素直になれんかっただけやねん!」 「違うもんっ!」 「……は?」 泣きそうな顔で怒る美奈子に、姫条は体を起こしてじっと足下を睨みつづける美奈子の手を遠慮がちに引いた。 美奈子は引かれるまま姫条の隣りに座る。 向かい合うように座ると、美奈子が姫条から視線を逸らしたまま言った。 「高校の時の事、覚えてないの?」 「高校の時? どういうことや?」 「ーーー前に私がなっちんの真似してまどか君って呼んだら、すっごい嫌そうな顔して『その呼び方勘弁して~な』って言ったじゃない」 「……あ」 姫条は背筋が凍った。 確か、まだ美奈子と仲良くなりはじめた頃、奈津実に「まどか」と呼ばれていたのを美奈子が聞いて、まどかと呼んだことがあった。 まどかという名前が嫌いで人に名前で呼ばれるのを嫌がっていた姫条は、美奈子にやめてくれと言ったのだ。 固まって何も言わない姫条に、美奈子はふうとため息を吐いた。 「だからずっとまどかって呼ぶの我慢して姫条君って呼んでたのに、それを珪君の事を持ち出して変なこと言い出すなんて信じられない……私、本当に別れようって遠回しに言われてるのかと思っ……」 そこで美奈子はとうとう涙を零した。 「うわっ、泣かんといてや! 俺が悪かった。今回ばかりはほんまに全面的に俺が悪いっ! あ~もう、俺のアホっ!」 急いで近くにあったティッシュを数枚引き抜いて美奈子に渡す。 美奈子はそれを引ったくるように取ると、ちーんと鼻をかんだ。 「ぐすっーーー私が、まどか以外の男の人を好きになる訳ないじゃない……」 姫条は一瞬言葉を失った。 なんてストレートな言葉だろう。 嫉妬して空回りしていた自分があまりにもちっぽけで、子どもで、くだらなく見える。 こんなに美奈子の事が好きなのだと、改めて気付かされる。 「すまん……せやけど、その言葉。そっくりそのままお前に返すで?」 「まどか……」 「それから、関西人に馬鹿は禁物や。アホって言わな」 「ーーーまどかのアホ」 まだ涙の止まらない美奈子の体を優しく抱きしめ、姫条は心に誓った。 もう、二度と回りくどいことはしない。 ずっと、大切にすると。 END =あとがき= 最後までお読みくださり、ありがとうございました。 なんだろう……なんか自分で書いててイラッとしました。 なんでだろう?(二度言う。笑) というか、もしかして私ってば姫条のSSは初書きじゃない?すげー。 何年前からときメモやってるんだよ。ってぇ話しですよ。それに姫条好きなのに。 お題は「子どものような恋」で突発的に書いたんですが、嫉妬の仕方を子どもっぽくしてみたつもりです。 うん、あくまでつもり。。 そして関西弁はしつこいようですが偽物…以下略♪ 管理人、ときメモやる時相手の名前呼ぶのあんまり変えないんですよね。 面倒というか、忘れるんでw だから、姫条の事も「まどか」って呼んだことなかったんで、今回書けて少し満足です。 しかしまどかって名前素敵ですよね〜。もし子どもがいたら「まどか」とか「かおる」って名前付けたいっすw それでは、また~ お帰りの際は、窓を閉じてくださいv ときメモGSに戻る
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/242.html
総括所見:カナダ(OPSC・2012年) 第1回(1995年)/第2回(2003年)/第3回・第4回(2012年)OPAC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/CAN/CO/1 and Corr.1(20012年12月7日/2013年1月7日)) 原文:英語(平野裕二仮訳) ※日本語訳には正誤表による訂正を反映させた。 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、〔2012年〕9月27日に開かれた第1743回会合においてカナダの第1回報告書を検討し、2012年10月5日に開かれた第1754回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/CAN/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、多部門から構成される締約国代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの権利条約に基づく締約国の第3回・第4回統合定期報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/CAN/CO/3-4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/OPAC/CAN/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。委員会は、締約国報告書の作成が報告ガイドラインにしたがって行なわれなかったことを遺憾に思うものである。 I.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、以下の立法措置が取り組まれたことに積極的対応として留意する。 (a) 人身取引にとくに対応する起訴罪名を創設した、刑法改正法(人身取引)である法案C-49号(2005年11月25日)。 (b) 児童セックス・ツーリズムについての締約国の域外裁判権を強化した法案C-15A号(2002年6月4日)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 (a) 人身取引と闘うための国家行動計画(2012年6月)。 (b) ホームレス対応パートナー戦略(HPS、2007年4月)。 (c) インターネット上の性的搾取から子どもを保護するための国家戦略(2004年5月)。 (d) カナダ子ども保護センターを通じての、インターネット上で起きた子どもの性的搾取に関する全国的通報センター(Cybertip.ca)の設置(2004年5月)。 II.データ 6.インターネットを基盤とする搾取について収集された詳細なデータには積極的側面として留意しながらも、委員会は、選択議定書上の他の犯罪に関するデータが存在しないこと、および、データが自治体の警察記録を通じて収集されていて連邦レベルでは収集されていないことを懸念する。委員会は、締約国が十分な情報に基づいて政策を決定することならびに選択議定書の実施における進展を分析しおよび評価することを可能にする、選択議定書上のすべての犯罪を網羅する包括的なデータ収集システムが存在しないことを懸念するものである。 7. 委員会は、締約国が、選択議定書のすべての分野を網羅したデータを連邦レベルで収集し、分析し、監視しかつその影響評価を実施するための、包括的かつ体系的な機構を設置するよう勧告する。データは、もっとも被害を受けやすい状況または周縁化された状況に置かれた集団の子どもにとりわけ注意を払いながら、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在、先住民族としての地位ならびに社会経済的地位によって細分化されるべきである。犯罪の性質別に細分化された、訴追および有罪判決の件数に関するデータも収集することが求められる。委員会はまた、締約国が、さまざまな州および準州を対象とした、データを収集する際の共通指標システムを確立することも勧告する。 III.実施に関する一般的措置 立法 8.2008年に施行され、かつ児童ポルノ事件における子どもの保護を強化した法案C-2号など、選択議定書との関連で多数の法律が採択されたことについて締約国を称賛しながらも、委員会は、このような努力の焦点が人身取引にほぼ限定されていることを懸念する。委員会はさらに、現行法で、子どもの売買(締約国では犯罪化されていない)など、選択議定書で対象とされているすべての犯罪について明示的に対応されているわけではないことを懸念するものである。委員会はまた、選択議定書のすべての規定を包括的にかつ曖昧さを残すことなく実施する連邦実施法が定められていないため、結果的にそれぞれの州および準州で選択議定書について異なる解釈が行なわれており、そのため矛盾が生じていることにも、特段の懸念をもって留意する。 9.委員会は、締約国に対し、選択議定書が締約国の国内法体系に全面的に編入されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう要請する。委員会は、締約国が、選択議定書に掲げられた売買に関する規定を十分に実施する目的で国内法における子どもの売買の定義(人身取引の定義に似ているものの同一ではない)が修正されること、および、選択議定書上のすべての義務がすべての州および準州で一貫して適用されるよう選択議定書のすべての要素が連邦法で網羅されることを確保するよう、勧告するものである。 国家的行動計画 10.選択議定書に関連するさまざまな行動計画、とくに「子どもにふさわしいカナダ」(2004年)、インターネット上の性的搾取から子どもを保護するための国家戦略(2004年)および人身取引と闘うための国家行動計画(2012年)が存在することは歓迎しながらも、委員会は、にもかかわらず、選択議定書でとくに対象とされているすべての問題に対応する包括的な計画が存在しないことを懸念する。 11.委員会は、締約国が、子どものための国家的行動計画である「子どもにふさわしいカナダ」に、選択議定書で取り上げられているすべての問題をとくに対象とする包括的な行動計画が含まれること、および、その実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するよう、勧告する。この目的のため、締約国は、ストックホルム(1996年)、横浜(2001年)およびリオデジャネイロ(2008年)で開催された第1回・第2回・第3回子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れながら、選択議定書のすべての規定の実施に注意を払うべきである。 調整および評価 12.委員会は、締約国が、選択議定書に関連するさまざまな国家的行動計画を実施するためのタスクフォースおよびセンター(子どもの権利に関する省庁間作業部会、人身取引に関する省庁間作業部会および子どもの搾取に関する全国調整センター等)を設置したことに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国における子どもの売買、児童買春および児童ポルノの事件への介入について、国ならびに州および準州のレベルでさまざまなタスクフォースおよびセンター間の調整が行なわれていないことを懸念するものである。さらに委員会は、締約国に、選択議定書に基づく活動の実施および評価を全般的に調整するための連邦レベルの機構が存在しないことに留意する。 13.条約に基づく総括所見のパラ14および15を参照しつつ、委員会は、締約国が、子どもの権利に関する政策の策定および実施に取り組んでいるさまざまな機関および委員会の調整を図るとともに、条約およびその選択議定書に基づく子どもの権利についての活動の監視および評価に関して、すべての州および準州の間でリーダシップを発揮しかつ効果的な全般的調整を図ることに責任を負う連邦レベルの機構を指定するよう、勧告する。 普及および意識啓発 14.委員会は、さまざまな州および準州の政府が、条約およびその選択議定書の原則および規定についてさまざまなグループを教育する目的で、市民社会組織と提携し、かつこれらの組織に資金を提供していることに、積極的対応として留意する。にもかかわらず、委員会は、このアプローチが広範囲にわたるものではないことを懸念するとともに、締約国が選択議定書の普及に対する体系的かつ包括的なアプローチを欠いていることにより、公衆、子どもたち自身および子どもとともに働く専門家の間における、選択議定書に関する理解および意識の水準の低さが助長されていることを懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、選択議定書の規定を公衆一般に対して広く知らせる(子どもに対して子どもにやさしい方法で、かつその家族およびコミュニティに対しても知らせることを含む)ための努力を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。 (a) 選択議定書に関わる問題を初等中等学校のカリキュラムに体系的に編入すること。 (b) 市民社会組織、メディア、民間セクター、コミュニティおよび子どもたちと緊密に協力しながら、選択議定書で対象とされている問題に関するキャンペーンを含む意識啓発プログラムを発展させること。これらのプログラムは、締約国のすべての言語で、かつ子どもにとってアクセスしやすい形式で利用可能とされるべきである。 (c) 適当なときは、一般住民および子どもたち(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子どもたち)の間で選択議定書の規定に関する中心的なメッセージを普及するためのキャンペーンおよびマスメディアの活用を含む意識啓発プログラムを促進しかつ組織すること。 研修 16.委員会は、締約国が法執行官および司法機関を対象として実施している、人身取引に関する多数の研修活動を評価する。しかしながら委員会は、子どもとともにおよび子どものために働いている専門家を対象として研修を行なう努力が体系的ではなく、かつ選択議定書が対象とするすべての分野を含んでいるわけではないことを懸念するものである。 17.委員会は、締約国に対し、とくにあらゆる行政段階の警察官、裁判官、検察官およびソーシャルワーカーを対象とした、選択議定書に関する学際的研修を強化するよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、このような研修を実施するために必要な資源を使途指定方式で配分するよう促すものである。 資源配分 18.委員会は、とくに犯罪の防止および被害を受けた子どもに対する援助の提供に関わって、選択議定書を実施するためのものとされる活動に割り当てられた予算配分額が明確に特定可能となっていないことを遺憾に思う。 19.委員会は、締約国が、とくに、防止、保護、被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会復帰ならびに選択議定書が対象とする犯罪の捜査および訴追を目的としたプログラムを開発しかつ実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供することにより、選択議定書が対象とするすべての分野の実施のための十分な資源が国全体で公平に配分されることを確保する目的で、あらゆる可能な措置をとるよう勧告する。 IV.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条第1項および第2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 20.委員会は、オンラインの子どもの性的搾取に関する意識啓発および教育のためにとられた措置ならびに再犯防止を目的とした犯罪者追跡機構の設置など、選択議定書に基づく犯罪を防止するために締約国が行なっている取り組みに留意する。しかしながら委員会は、以下の点との関連も含め、議定書上の犯罪を防止するための措置が不十分であることを懸念するものである。 (a) 選択議定書上の犯罪に関して現行法が強力に執行されていないこと。このことは、訴追および有罪判決の件数が少ないこと、ならびに、選択議定書上の犯罪について有罪判決を受けた者に対する刑が不十分であることに明らかである。 (b) とくに、不利な立場に置かれた集団および周縁化の状況にある子どもを対象とするコミュニティ・サービスおよび社会保護サービスのための資金拠出が不十分であること。 (c) 保護者のいない子どもの庇護希望者および子どもの非正規移民の保護が不十分であること。 (d) 法定年齢未満の強制婚を目的として子どもが国外に、またはブリティッシュコロンビア州バウンティフルの一夫多妻制コミュニティなど締約国内の他の宗教的コミュニティに送られること(これは子どもの売買に相当する)を防止するための措置が不十分であること。 21.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の根本的原因に対処し、かつもっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもに焦点を定めた、包括的かつ重点対象型のアプローチを採用するよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 選択議定書上の犯罪についての訴追率および有罪判決率を向上させるため、法執行機関に対してより多くの資源を提供すること。委員会はまた、締約国に対し、選択議定書上の犯罪について有罪判決を受けた者がその犯罪にふさわしい制裁をもって処罰されることを確保するようにも促す。 (b) すべてのコミュニティ(とくに、不利な立場に置かれた集団および周縁化の状況にある子ども)を対象とするコミュニティ・サービスおよび社会保護サービスに対して資金が公平に拠出されることを確保すること。 (c) 保護者のいない子どもの庇護希望者および子どもの非正規移民を対象として十分な保護措置(このような子どもに福祉サービスおよびコミュニティ社会サービスを提供する等の手段によるものも含む)がとられることを確保すること。 (d) 法律に基づく一夫多妻の禁止を執行し、かつ加害者を訴追するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、早期婚を強制された子どもに保護を提供すること。 児童セックス・ツーリズム 22.委員会は、国外で児童セックス・ツーリズムに関与した締約国の市民についてたとえ犯罪遂行地国が訴追を要請しなかった場合でも訴追できるようにした法案C-15A号の成立など、児童セックス・ツーリズムと闘うために締約国が行なっている新たな取り組みを歓迎する。委員会はさらに、児童セックス・ツーリズムの法的帰結に関して締約国が実施している意識啓発教育キャンペーンにも、積極的対応として留意するものである。にもかかわらず、委員会は、児童セックス・ツーリズムが締約国にとって依然として深刻な問題であり、かつ、法律の定めにもかかわらず訴追が強力に進められていないことを懸念する。 23.委員会は、締約国が、すべての加害者の摘発、捜査、訴追および処罰を向上させることを通じ、児童セックス・ツーリズムに関する法律の執行を強化するための措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、児童セックス・ツーリズムの有害な影響について観光業界に働きかけを行ない、旅行代理店および観光業者の間で国連世界観光機関(UNWTO)の世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、これらの代理店および業者に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励するよう、促すものである。 V.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(第2項および第3項)ならびに第5~7条) 現行刑事法令 24.委員会は、児童ポルノおよびインターネット上の子どもの性的搾取の多くの側面が犯罪化されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書の規定の一部が国内法に編入されているにもかかわらず、国内法がまだすべての規定に全面的に一致していないことに、懸念とともに留意するものである。とくに、委員会は以下のことに懸念とともに留意する。 (a) 刑法で選択議定書上のすべての犯罪が網羅されていないこと。 (b) 選択議定書第2条および第3条で定義されているあらゆる形態の子どもの売買が犯罪化されているわけではないこと。 25.委員会は、締約国が、刑法を改正して選択議定書第2条および第3条に全面的に一致させ、かつ刑法が実際に執行されることを確保するよう促す。とくに、締約国は、以下の行為を含む選択議定書上のすべての犯罪が犯罪化されることを確保するべきである。 (a) 性的搾取、営利目的の子どもの臓器移植もしくは強制労働に子どもを従事させることを目的として、いかなる手段によるかは問わず、子どもを提供し、引き渡しまたは受け取ること、または、養子縁組に関する適用可能な法的文書に違反し、仲介者として不適切な形で子どもの養子縁組への同意を引き出すことによる、子どもの売買。 (b) これらのいずれかの行為を奨励する資料の製造および配布。 訴追 26.インターネット上の子どもの性的搾取および児童ポルノの加害者の責任を問うために行なわれている法執行の取り組みは満足感とともに留意しながらも、委員会は、選択議定書上の犯罪に関する捜査、訴追および有罪判決の件数が少ないことを深く懸念する。委員会はまた、選択議定書上の犯罪について有罪判決を受けた者に対する量刑が、もっとも悪質な犯罪についてさえ、法定刑の上限にはるかに及んでいないことも懸念するものである。委員会はさらに、一部の州および準州で、資源が不足しているために法執行が強力に行なわれていないことを懸念する。さらに委員会は、アボリジナルの女子(性売買に関与し、行方不明となり、または殺害された可能性がある女子を含む)が関わる事件について十全な捜査が行なわれず、加害者が処罰されないままとなっていることを深く懸念するものである。 27.委員会は、締約国が、次回の定期報告書で、選択議定書上の犯罪の加害者の捜査、訴追および処罰に関する具体的情報を提供するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、以下のことも促すものである。 (a) 刑罰が犯罪にふさわしいものであることを確保するため、選択議定書上の犯罪について有罪判決を受けた者に十分な刑を科すこと。 (b) 官憲が選択議定書に関連する刑法の条項を全面的に執行できるよう十分な資金を配分し、かつ、これらの官憲が適切な研修を受けることを確保すること。 (c) とくにアボリジナル・コミュニティにおける児童買春事件についての法執行の実務を調整しおよび強化し、ならびに、女子が行方不明となっているすべての事件が法律の及ぶかぎり最大限に捜査されかつ訴追されることを精力的に確保するための行動計画を確立すること。 法人の責任 28.委員会は、締約国の法律において、児童セックス・ツーリズムに関与した企業の、選択議定書で定められた犯罪についての責任が明確に確立されていないことを遺憾に思う。委員会はまた、現行法において、インターネット・サービス・プロバイダ(IPS)に対し、児童ポルノおよび関連のコンテンツを配布する者についての情報を法執行機関に提供することが義務づけられていないことも懸念するものである。 29.選択議定書第3条第4項に照らし、委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪に関する法人(児童セックス・ツーリズムに関与した企業およびツアープロモーターを含む)の責任を確立するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、法律を改正することにより、児童ポルノおよび関連のコンテンツを配布する者についての情報を法執行機関に提供することをインターネット・サービス・プロバイダ(IPS)に要求するようにも勧告するものである。 域外裁判権 30.委員会は、児童セックス・ツーリズムについての締約国の域外裁判権を強化する法案C-15A号の制定を歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書上のすべての犯罪が域外裁判権の対象となっているわけではないことを懸念するものである。 31.委員会は、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪が域外裁判権の対象とされることを確保するよう勧告する。 VI.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条第3項および第4項) 被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 32.委員会は、人身取引の被害を受けた子どもの特定について官憲(入国港職員を含む)を訓練するために締約国が行なっている取り組みに、積極的対応として留意する。委員会はまた、締約国が、更新可能な一時在留許可を認めることにより人身取引被害者の保護を向上させてきたことにも、積極的対応として留意するものである。しかしながら、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 一部の州および準州が、人身取引の被害を受けた子どもを不法移民として収容および退去強制の対象とし、または売春容疑で刑事告発することによって、このような子どもに再被害を与えていること。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもがそれぞれの法域で補償を求められるようにする法律を、すべての州および準州が制定しているわけではないこと。 (c) 一部の州および準州において、被害を受けた子どもが無償で弁護人にアクセスできないこと。 33.委員会は、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益をすべての州および準州で保護するための措置を強化し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引の被害を受けた子どもの権利を保護するための機構および手続を設置するとともに、これらの子どもが、退去強制まで長期間待機させられず、かつ法執行機関および司法機関によって犯罪者ではなく被害者として扱われることを確保すること。 (b) すべての州および準州において、被害を受けた子どもが権利侵害に対する救済措置(補償を含む)を利用できるようにする法律が制定されることを確保すること。 (c) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもに対し、十分なかつ無償の法律扶助ならびに心理的、医療的および社会的支援を提供すること。 被害者の回復および再統合 34.委員会は、短期の一時在留許可を得ている人身取引被害者が連邦保健プログラムに基づく保健ケア給付(トラウマ・カウンセリングを含む)の受給資格を有することに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪の被害者についてその回復および再統合のための措置をとっているわけではないことを懸念するものである。とくに委員会は、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子ども(国外で行なわれたセックス・ツーリズムの被害を受けた子どもであって加害者がカナダ市民である場合を含む)をとくに対象とするリハビリテーション・プログラムが存在しないことを懸念する。 35.委員会は、締約国に対し、選択議定書上のすべての犯罪の被害者に対して適切な援助(このような被害者の全面的な社会的再統合ならびに身体的、心理的および心理社会的回復を含む)を提供するための措置をさらに強化するよう、促す。委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 選択議定書上の犯罪の被害を受けたすべての子ども(国外で行なわれた犯罪の被害者である子どもを含む)がふたたび被害者とならず、かつ再統合のために人生の機会を向上させられることを確保する目的で、これらの子どもにリハビリテーション・サービスおよびカウンセリング・サービスを提供するための、資金的裏付けのあるプログラムを発展させること。 (b) 締約国の領域全体で児童精神保健の専門家にアクセスできるようにする等の手段によるものを含め、被害を受けた子どものための専門的な心理社会的・心理的ケアサービスを引き続き発展させること。 (c) 選択議定書上のいずれかの犯罪の被害者にとくになりやすいアボリジナルの子どもについて、被害を受けた子どもの再統合のための具体的措置をとること。 (d) これらの勧告の実施についてユニセフおよび国際移住機関(IOM)の技術的援助を求めること。 VII.国際的な援助および協力 36.第10条第1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 VIII.フォローアップおよび普及 37.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所ならびに州および準州の公的機関の長に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 総括所見の普及 38.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに採択された関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、コミュニティおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 IX.次回報告書 39.第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2014年4月3日)。