約 1,857,905 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/244.html
総括所見:フィリピン(OPSC・2013年) 第1回(1995年)/第2回(2005年)/第3回・第4回(2009年)OPAC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/PHL/CO/1(20013年6月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2013年1月22日に開かれた第1769回会合(CRC/C/SR.1769)においてフィリピンの第1回報告書(CRC/C/OPSC/PHL/1)を検討し、2013年2月1日に開かれた第1784回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、豊富な情報を記載した締約国の第1回報告書、および、事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/PHL/Q/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、多部門から構成される締約国代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの権利条約に基づく締約国の第3回・第4回統合報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/PHL/CO/3-4、2009年)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/OPAC/PHL/CO/1、2008年)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で締約国がとった以下の立法措置、とくに以下の法令の採択を積極的対応として歓迎する。 (a) 共和国法第9775号(児童ポルノ対策法)(2009年10月13日)。 (b) 共和国法第9231号(最悪の形態の児童労働の撤廃について規定し、かつ働く子どもの保護を強化する法律)(2003年12月19日)。 (c) 共和国法第9208号(2003年人身取引対策法)(2003年5月26日)。 5.委員会は、締約国が以下の文書を批准したことに評価の意とともに留意する。 (a) 家事労働者の適切な仕事に関する2011年の国際労働機関(ILO)第189号条約(2012年9月)。 (b) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2002年5月)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2000年12月)。 (d) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1996年)。 (e) すべての移住労働者およびその家族〔構成員〕の権利の保護に関する国際条約(1995年7月)。 6.委員会はさらに、選択議定書の実施を促進する諸制度の創設ならびに国家的な計画およびプログラムの採択における、以下のものを含む進展を歓迎する。 (a) 児童ポルノ対策省庁間評議会(IACCP)およびこれに付随する3か年(2011~2013年)戦略行動計画。 (b) 「省庁間評議会・委員会代表者会合」(2012年7月)の際に採択された、人身取引対策省庁間評議会(IACAT)および少年司法副評議会(JJWC)による2012~2016年合同戦略計画。 (c) 子どものための開発に関するフィリピン国家戦略枠組みおよび計画(2000~2025年)。 (d) 2011年の大統領令第53号により再開された子ども特別保護委員会(CSPC)。 III.データ収集 7.委員会は、フィリピン国家警察(PNP)、司法省(DOJ)および社会福祉開発省(DSWD)を含むさまざまな機関がデータ収集に関与していることに留意する。しかしながら委員会は、締約国が子どもの売買、児童買春および〔児童〕ポルノの規模および形態を特定できるようにする、選択議定書上のすべての犯罪を網羅した包括的なデータ収集システムが存在しないことを懸念するものである。委員会はさらに、選択議定書上の犯罪の被害者になりやすい特定の集団の子ども(路上の状況にある子ども、学校に行っていない子どもおよび搾取的環境で働いている子ども、貧困化で暮らしている子どもならびにミンダナオで武力紛争の影響を受けている子どもなど)に関する、適切に細分化されたデータおよび調査研究が存在しないことを懸念する。 8. 委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春または〔児童〕ポルノの原因、形態および広がりを正確に判断し、十分な情報に基づいて政策決定を行ない、かつ選択議定書の実施における進展を評価することを可能とする包括的なかつ中央集権化されたデータ収集システムを、パートナーの支援を得ながら設置するよう勧告する。データは定期的に更新されるべきであり、また年齢、性別、地理的所在、民族および社会経済的背景によって細分化されるべきである。加害者の人物像、訴追件数および有罪判決の件数についても、犯罪の性質によって細分化されたデータを収集することが求められる。 IV.実施に関する一般的措置 立法 9.委員会は、性的同意年齢が低く(12歳)、子どもが買春およびポルノの被害をいっそう受けやすくなっていることについての懸念(CRC/C/PHL/CO/3-4、パラ10、2009年)をあらためて表明する。委員会はさらに、子どもに対する性犯罪についての年齢を引き上げようとする法案第681号および第3049号がまだ制定されておらず、かつ子どもの保護に関する諸法律が適正に実施されていないことを懸念するものである。 10.委員会は、前回の勧告(CRC/C/PHL/CO/3-4、パラ10、2009年)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、子どもの保護に関する必要な法律(法案第681号および第3049号を含む)を制定し、かつ性的同意に関する最低年齢を引き上げるよう促す。委員会はさらに、締約国が、州および地方のレベルで子どもの保護に関する法律についての意識を高め、かつ地方政府機関の行動の指針となる詳細なガイドライン、実施要綱および手続を策定する等の手段により、子どもの保護に関する法律が効果的に実施されることを確保するための積極的措置をとるよう、勧告するものである。 国家的行動計画 11.子どものための国家行動計画(2011~2016年)が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、同計画に基づく介入および活動を支えるための十分な資源が配分されていないこと、ならびに、その実施状況および効果を評価するための恒常的監視機構が地方レベルで設けられていないことに、懸念を表明する。 12.委員会は、締約国に対し、予算ニーズの包括的アセスメントを実施し、かつ、国家行動計画の実施のための活動を支える明確な予算配分額を確立するよう促す。委員会はまた、締約国が、同計画の実施における進展および課題を評価する目的で恒常的な監視および評価のための機構(地方およびコミュニティのレベルにおけるものを含む)を設置するよう勧告するものである。 調整および評価 13.委員会は、子ども福祉評議会(CWC)が、子どもの保護に関する政策およびプログラムの実施の調整を担当する省庁間主務機関であることを評価する。しかしながら委員会は、国、広域行政圏、州および地方のレベルで選択議定書に基づく活動を調整しかつ評価するCWCの能力について懸念を覚えるものである。さらに、委員会は、その後の立法を通じ、子どもの保護を実施しかつ監視するための個別の計画および予算を有するさまざまな省庁間機関が設置され、そのため取り組みの重複が生じていることを懸念する。CWCが、さまざまな評議会および委員会間の連携および調整のシステムを立案しかつ採択する目的で2012年7月に「省庁間評議会・委員会代表者会合」を開催したことには積極的対応として留意しながらも、委員会は、省庁横断型の計画の実施および省庁間評議会とCWCとの間の協働関係について体系的な評価が行なわれていないことを懸念するものである。 14.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書に基づく活動の実施および評価を調整する能力および権限を持った国家機関を指定するとともに、当該機関に対し、すべてのレベルでその権限を遂行するために必要なあらゆる人的資源、技術的資源および財源を提供すること。 (b) 子どもの保護に関する既存の省庁委員会およびその実施計画について、主要な成果および得られた教訓を明らかにするための定期的かつ包括的な組織的検討を実施するとともに、選択議定書に基づく政策および活動の実施に取り組んでいるさまざまな機関および委員会間の調整を強化するための共通戦略を策定すること。 (c) 子どもの権利に関連するさまざまな機関の活動を合理化し、かつ、これらの機関に対し、その役割を効率的に遂行するために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供すること。 普及および意識啓発 15.選択議定書に関する情報を普及するための努力を締約国が強化していることは歓迎しながらも、委員会は、公衆および子どもたち自身の間で選択議定書に関する意識水準が低く、かつ子どもに対する犯罪についての公衆の理解が欠けていることにより、とくに子どもの商業的性的搾取が社会的に広く受け入れられており、かつ十分に通報されていないことを懸念する。 16.委員会は、締約国が、適切な意識啓発プログラムを促進しかつ組織するよう勧告する。これには、一般住民、コミュニティおよび子どもたち(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子どもたち)の間で選択議定書の規定ならびに通報手続および苦情申立て手続に関する意識啓発および中心的なメッセージの普及を図るための、マスメディアおよび情報技術を活用したキャンペーンも含まれる。 研修 17.子どもの保護に関する問題について、法執行官、裁判官、特別検察官およびソーシャルワーカー等の関係者に対して研修を実施するために行なわれた努力には留意しながらも、委員会は、ひとつには体系的な計画作成が行なわれていないことを理由として、これらの多くの活動が持続されておらずまたは体系的ではないことを遺憾に思う。委員会はまた、その結果、このような研修の取り組みが、対象とされている、政府のさまざまなレベルのあらゆる集団および機関に及んでいるわけではないことも遺憾に思うものである。 18.委員会は、締約国が、能力構築の取り組み(法執行官、検察官、司法関係者、出入国管理官、労働査察官、ソーシャルワーカーおよびメディア関係者を対象とする研修を含む)が体系的に計画され、持続され、調整され、かつその効果についての評価が行なわれることを確保するよう勧告する。 資源配分 19.委員会は、選択議定書を実施するための予算配分額が十分ではなく、かつ締約国が同意した政策公約および優先課題にも一致していないことを懸念する。委員会は、2009年児童ポルノ対策法に基づいて設置され、かつ同法の実施の調整、監視および監督を委ねられた児童ポルノ対策省庁間評議会(IACCP)が、いかなる予算配分も受けることなく創設されたことをとくに懸念するものである。委員会はまた、締約国における汚職の水準の高さにより、子どものための資金(子どもの売買、児童買春および児童ポルノを防止しかつこれと闘うために利用可能な資源を含む)が減少してきたことも懸念する。 20.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 選択議定書の実施のための明確に特定可能な予算項目を設けて予算配分を増額すること。そのための手段には、あらゆる行政段階で通常予算から使途指定方式により人的資源、技術的資源および財源を割り当てること、ならびに、選択議定書の規定に関連するプログラム(防止、保護および被害を受けた子どもの再統合に関するものを含む)を対象とすることが含まれる。 (b) IACAPの予算ニーズについて包括的評価を実施するとともに、同機関が、その任務を効果的に履行するための十分な人的資源、技術的資源および財源を有することを確保すること。 (c) 汚職の防止およびこれとの闘いを効果的に進め、かつ汚職行為について国および地方の官吏を訴追するための即時的措置をとること。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条第1項および第2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 21.委員会は、締約国が、子どもの人身取引を防止するために地域の国々との協力を強化してきたことを歓迎する。しかしながら委員会は、推定6万~7万5千人の子どもが商業的性産業で搾取されており、かつ児童セックス・ツーリズムが締約国で依然として深刻な問題となっていることに、深い懸念を表明するものである。委員会はさらに以下のことを懸念する。 (a) 現行の政策およびプログラムが、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根底にある根本的原因(とくに貧困、安全性を欠いた移住および女子に対する差別)に対応するうえで十分かつ効果的なものとなっていないこと。 (b) 出生登録率が95%に上昇したとはいえ、登録されていない子どもが(とくにミンダナオにおいて)なおも多数存在し、選択議定書上の犯罪の被害を受けやすいままになっていること。 (c) 国内避難民である子どもおよび路上で生活している子どもの多数が(とくにマニラ市において)売春を余儀なくさせられているにもかかわらず、締約国が、もっとも被害を受けやすい状況にある子どもを対象とする措置に優先的に取り組んでいないこと。 (d) 子どもの性的搾取の犯罪に関する公衆の意識が(親および子どもたち自身も含めて)欠けており、かつ子どもの性的搾取がコミュニティにおいて文化的に容認されているため、このような犯罪の通報および訴追が妨げられていること。 (e) 青少年が、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する情報およびサービス(家族計画および避妊、若年妊娠の危険性、性感染症(STI)およびHIV/AIDSの予防および治療〔に関するもの〕を含む)に対してきわめて限定的にしかアクセスできないこと。 22. 委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の根本的原因に対処し、かつもっとも被害を受けやすい状況に置かれた家族および子どもに焦点を定めた包括的アプローチを採用するよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、貧困削減戦略、ならびに、不利な立場に置かれたおよび周縁化された家族を対象とする支援的な社会的保護措置(子どもに対するケアおよび保護の責任を親がよりよい形で履行できるよう支援するための、子ども中心の早期介入プログラムを含む)を強化するよう、促すものである。委員会はさらに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 危険な状況にある子どもを特定し、問題の規模を評価し、かつ対象が明確な政策およびプログラムを発展させる目的で、子どもの商業的性的搾取ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根本的原因および規模に関する調査研究を行なうこと。これとの関連で、子どもの性的搾取と闘うための積極的措置は、貧困削減のための介入との緊密な連携を図って進められるべきである。 (b) すべての子どもが出生時に登録されることを確保するための措置を継続しかつ強化すること。 (c) もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもに焦点を定めた防止プログラムを発展させるとともに、とくに、国内避難民である子どもおよび路上の状況にある子どもに対して十分かつ安全なシェルター、保健ケア、教育および衣服が提供されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。警察による陵虐、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用からこのような子どもを保護することに、特段の焦点が当てられるべきである。 (d) 児童ポルノを含む子どもの性的搾取についての態度を変革するため、マスメディアおよびコミュニティの参加(コミュニティの指導者、地元の教員、若者グループおよび子どもグループの動員を含む)を通じた集中的な意識啓発活動を実施すること。 (e) すべての教育機関における、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育およびサービス(HIV/AIDSの予防および子どもの性的搾取の危険性に関する意識啓発を含む)を強化すること。 養子縁組 23.委員会は、締約国が、とくに1998年国内養子縁組法(共和国法第8552号)、1995年国際養子縁組法(共和国法第8043号)および家族法第183条~193条の改正(1998年2月)の採択を通じて、養子縁組を規制するための強力な国内法上の枠組みを確立したことに留意する。これにもかかわらず、委員会は、不法な養子縁組を目的とする子どもの売買、および、子どもが実子であると思えるようにするための個人による民事登録簿の改竄(いわゆる「出生偽装」)が締約国でいまだに蔓延していることを、依然として懸念するものである。 24.委員会は、前回の勧告(CRC/C/PHL/CO/3-4、パラ50、2009年)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、すべての養子縁組が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約および子どもの権利条約ならびに他の関連の国際基準の原則および規定に全面的に一致することを確保するため、あらゆる努力を行なうよう求める。委員会はさらに、締約国が、このような慣行に関する意識啓発キャンペーン、合法的な養子縁組の促進およびおよび「出生偽装」の実行犯の訴追等も通じて、「偽装出生」を防止しかつこれと効果的に闘うためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。 児童セックス・ツーリズム 25.児童セックス・ツーリズムと闘うため、国家機関および非政府組織と連携しながら締約国が行なっている努力(.「子どもに目を向けた観光」(Child Wise Tourism)プログラムの実施を含む)は歓迎しながらも、委員会は、締約国で、とくにサバン、プエルトガレラ、セブ市、アンヘレス市およびパサイ市において、多数の子どもが外国人のペドファイルによって性的に搾取されていることを懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) スラム地区で生活している子どもおよび路上の状況にある子どもが、この形態の性的虐待および性的搾取の被害をもっとも受けやすい状態に置かれていること。 (b) 観光客によるものを含む児童ポルノの製造が締約国で増大しつつあること。 (c) 締約国が、児童セックス・ツーリズムを防止しかつこれと闘う目的で、子どもの人身取引および子どもの商業的性的搾取の事件の防止、監視および通報等に関して民間セクター(とくに旅行、宿泊および観光業界)を十分に関与させかつ規制していないこと。 26.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 選択議定書が対象とする犯罪の被害者にとくになりやすい状態に置かれている子ども(路上の状況にある子どもおよび貧困の影響を受けている子どもなど)を特定するための措置をとり、かつ、すでに行なわれている子ども保護プログラムおよび貧困削減戦略とこれらの措置を連携させること。 (b) インターネット上の児童ポルノならびに未登録の旅行者宿泊施設および子どもの性的搾取に関連する非公然活動の監視を強化するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) とくに子どもの人身取引および子どもの商業的性的搾取の事件の防止、監視および通報に関して、民間セクター(とくに観光業界)を規制しかつ関与させること。締約国はまた、観光省が、同省が児童セックス・ツーリズムの禁止および子どもの保護全般に関してホテル、旅行代理店ならびに観光業者およびツアーオペレーターとの間に締結した契約協定について、その遵守状況を効果的に監視することも確保するべきである。 (d) 児童セックス・ツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを強化し、旅行代理店および観光業者の間で世界観光機関(WTO)の世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、これらの代理店および業者に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励すること。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(第2~3項)ならびに第5条、第6条および第7条) 現行刑事法令 27.選択議定書のさまざまな規定を締約国の法律に統合しようとする努力は歓迎しながらも、委員会は、国内法に議定書上のすべての犯罪が全面的に編入されているわけではないことを懸念する。委員会はまた、これらの犯罪が、議定書(とくに第2条~3条)で要求されているように特定の犯罪として定義されかつ犯罪化されるのではなく、人身取引対策の法的枠組みのもとで扱われていることも懸念するものである。 28. 委員会は、締約国に対し、刑法を改正して選択議定書第2条~3条に全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノのあらゆる事件を議定書にしたがって定義しかつ処罰するよう勧告するものである。 訴追および不処罰 29.委員会は、数千人の子どもが、同国から国外への、同国を通じてのおよび国内における、性的搾取および強制労働目的の人身取引の対象とされているにもかかわらず、選択議定書上の犯罪を行なった者の訴追件数および有罪判決数が著しく少なく、加害者が処罰されない事態が生じている旨の懸念(CRC/C/PHL/CO/3-4、パラ78、2009年)をあらためて表明する。委員会は、具体的には以下のことを懸念するものである。 (a) 法執行官、司法官および出入国管理官が人身取引および汚職の共犯となっていることを主たる理由として、児童ポルノおよび人身取引に関連する捜査および訴追との関係で不処罰が依然として広がっていること。 (b) 子どもが外国人ペドファイルによって性的に搾取される事件が多数発生しているにもかかわらず、締約国が、刑事告発を追求することなく外国人ペドファイルを送還し続けていること。 (c) 法執行官および検察官が、選択議定書上の犯罪を捜査しかつ訴追する十分な能力を有しておらず、かつ犯罪の訴追に際して被害を受けた子どもの参加に著しく依存していることから、事件が通報されないこと、告発が取り下げられることおよび陳述が撤回されることがしばしば生じていること。 30.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 政府職員による共犯の告発を厳格に捜査し、かつこのような犯罪について当該職員を訴追することを通じ、汚職および不処罰の問題に関する即時的対応を優先的課題としてとること。 (b) 外国人ペドファイルの特定、捜査および訴追を強化するため、法律上および制度上のあらゆる必要な措置をとること。 (c) 法執行機関が、被害を受けた子どもの陳述だけではなく、書証、証人、専門家ならびにその他の手続および技法から収集した証拠に基づいて事件の捜査および立証を行なうことを確保することにより、被害を受けた子どもの負担を軽減すること。 (d) 国家捜査局およびフィリピン司法アカデミー(PHILJA)の参加を強化すること等も通じた専門的研修により、選択議定書上の犯罪を摘発しかつ訴追する法執行機関および司法機関の能力を強化すること。 法人の責任 31.委員会は、締約国の法律において、選択議定書で定められた犯罪についての法人の刑事責任が明確に確立されていないことを懸念する。 32.委員会は、締約国が、 選択議定書第3条第4項に照らし、選択議定書で定められた犯罪についての法人の刑事責任を明確に確立するよう勧告する。 域外裁判権 33.委員会は、締約国の法律において、選択議定書第4条第2項で挙げられているすべての事件について、とくに罪を犯したとされる者が締約国の国民である場合の域外裁判権が明示的に認められているわけではないことを懸念する。委員会はまた、フィリピン国民が国外で行なった犯罪に対する域外裁判権の適用が双方可罰性の要件に服するとされていることも懸念するものである。 34.委員会は、締約国が、国内法によって、選択議定書上の犯罪について双方可罰性の基準を満たすことなく域外裁判権を設定しかつ行使できることを確保するための措置をとるよう、勧告する。 犯罪人引渡し 35.子どもの人身取引および性的搾取と闘うために地域内諸国との協力を強化することに関する締約国の努力は歓迎しながらも、委員会は、選択議定書が犯罪人引渡しの法的根拠として援用されておらず、かつ、犯罪人引渡しについて締約国と請求国との間に条約が締結されていることが条件とされていることを懸念する。 36.委員会は、締約国が、二国間条約の存在を条件とすることなく、選択議定書が犯罪人引渡しの法的根拠を構成するとみなすよう勧告する。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条および第9条(第3~4項)) 被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 37.子どもの証人尋問規則が制定されたことは歓迎しながらも、委員会は、被害を受けた子どもの権利および利益が刑事司法手続の際に十分に保護されていないことに、懸念とともに留意する。これとの関連で、委員会は、以下のことに懸念とともに留意するものである。 (a) 法執行機関が、子どもに配慮した捜査手続を適用する能力を欠いており、または組織的にそのような手続を適用しているわけではないこと。 (b) 地方レベルで子どもの被害者・証人保護サービスが不十分であり、かつ、刑事司法手続の際に専門家による支援および後見が提供されていないこと。 (c) 国民であるか外国人であるかにかかわらず、証言することに同意した子どもの被害者およびその家族構成員が、容疑者による報復のおそれから十分に保護されていないこと。 (d) 裁判所がすべての州域に設置されていないことにより、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもが関わる事件について専門家による捜査および審理が行なわれない状態になっていること。 (e) 被害を受けた子どものプライバシーおよび安全の保護がメディアおよび刑事司法手続において組織的に確保されておらず、かつ、現行の禁止規定にもかかわらず、とくにテレビ番組における子どもの性的対象化が一般的に行なわれていること。 38.委員会は、締約国に対し、選択議定書で定められているとおり、刑事司法手続のあらゆる段階で被害を受けた子どもの権利および利益を保護するために適切な措置をとるよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 法執行機関、検察官および裁判官が子どもにやさしい手続(子ども向けに設計された事情聴取室、被害を受けた子どものためにひとつの場所で提供される包括的支援サービス、法廷環境の変更および被害を受けた子どもの出廷回数の削減を含む)を適用できるよう、十分な人的資源、技術的資源および財源を提供すること。加えて、捜査、訴追および審理の際に、被害を受けた子どもと容疑者が直接接触しないようにするため、あらゆる措置がとられるべきである。 (b) 被害を受けた子どもに対して児童心理学者による支援を提供するとともに、子どもの最善の利益にかなう恒久的解決策が明らかにされかつ実施されるまで、手続全体を通じて、被害を受けた子どもの手引き役および寄り添い役を務める後見人が任命されることを確保すること。 (c) 子どもの証人・被害者保護プログラムを広域行政圏、州および自治体のレベルまで拡大するとともに、地方政府部局がこのようなプログラムを実施するための十分な財源および技術的資源を有することを確保すること。 (d) 被害を受けた子どもおよびその家族構成員を十分に保護するため、あらゆる必要な法律上および実務上の措置(国外の公的機関との協力も含む)をとること。 (e) すべての州で家庭裁判所の設置および能力を強化すること。当面、家庭裁判所がまだ設けられていない広域裁判所および州裁判所の検察官および裁判官または子どもの証人尋問規則に精通していない検察官および裁判官全員を対象として、研修が実施されるべきである。 (f) 子どものプライバシーがメディアおよび刑事司法手続において尊重されること、ならびに、主流メディアにおける子どもの性的対象化への対応が、メディアによる子どもの取り上げ方および報道の監視の向上、子どもの性的対象化の有害な影響に関する教育および意識啓発を通じてとられることを確保すること。 被害者の回復および再統合 39.委員会は、さまざまな法令で、売買、児童買春および児童ポルノの被害を受けた子どもの回復、リハビリテーションおよび再統合に対する権利が定められていることに、評価の意とともに留意する。加えて、委員会は、社会福祉開発省を通じて被害者のためのサービスおよび支援を強化するために締約国がとった措置に、積極的対応として留意するものである。にもかかわらず、委員会は、回復および再統合のための子どもに特化したサービス(専門的な医学的、心理社会的および心理的ケア、法律サービス、緊急避難シェルターならびに訓練を受けた専門家を含む)が締約国において基本的に不十分なままであり、かつ、予算の制約のためにこれらのサービスの拡大が深刻に制限されていることを懸念する。委員会はさらに、以下のことを懸念するものである。 (a) 買春およびポルノの被害を受けた子どものケアおよび保護(心理社会的ケアの提供、「最善の利益」認定に基づくケア・アセスメントおよび子どもが成年に達するまでのフォローアップを含む)に関する明確な付託の手続および基準が定められていないこと。 (b) 人身取引犯から救出された子どもがふたたび人身取引の対象とされないことを確保するための、監視およびフォローアップの手続が定められていないこと。 (c) 商業的性的搾取の被害を受けた子どもが、子どもの性的搾取を取り巻くスティグマおよび根強い文化的態度のため、支援およびサービスにアクセスするうえで深刻な障害を経験していること。 (d) 人身取引および性的搾取の被害を受けた外国人の子どもの送還および特別な保護に関する手続が定められていないこと。 40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 性的搾取の被害を受けた子どもを対象とする子ども中心のサービス(明確な付託手続ならびに完全に回復するまでの心理社会的なケアおよび支援へのアクセスを含む)へのアクセスを高めるため、十分な人的資源、財源および技術的資源を配分すること。 (b) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けたすべての子どもに対し、差別なく十分な救済が与えられることを確保するとともに、監視およびフォローアップのための強力な機構を設置することにより、これらの子どもが再度の人身取引および性的搾取の対象とされにくいようにすること。 (c) 性的搾取の被害を受けた子どもに対する態度を変革するために幅広い意識啓発およびコミュニティ動員を進めるとともに、子どもおよび家族が、被害を受けた子どものために設けられている援助および支援について知っていることを確保すること。 (d) 人身取引、買春およびポルノの被害を受けた子どもの救出、送還、リハビリテーションおよび再統合の指針となる明確な措置(被害を受けた外国人の子どもについての、「最善の利益」認定に基づく特別な援助および送還ならびにフォローアップのための明確な手続を含む)を採用すること。 VII.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、二国間および地域間の協定 41.選択議定書第10条第1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、2004年の東南アジア諸国連合(ASEAN)「とくに女性および子どもの人身取引に反対する宣言」の実施を強化するよう奨励するものである。 IX.通報手続に関する選択議定書の批准 42.委員会は、締約国が、子どもの権利の履行をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書(OPIC)に署名し、かつこれを批准するよう勧告する。 X.フォローアップおよび普及 43.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、議会ならびに国、州および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 44.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、メディア関係者および子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 XI.次回報告書 45.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって2017年9月19日までに提出される、条約に基づく第5回・第6回統合定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2014年4月11日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/175.html
総括所見:フィンランド(第3回・2005年) 第1回(1993年)/第2回(2000年)/第4回(2011年)OPAC(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.272(2005年10月20日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年9月22日に開かれた第1068回および第1069回会合(CRC/C/SR.1068 and 1069参照)においてフィンランドの第3回定期報告書(CRC/C/129/Add.5)を検討し、2005年9月30日に開かれた第1080回会合(CRC/C/SR.1080参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第3回定期報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/FIN/3)に対する文書回答の提出により、委員会がフィンランドの子どもの状況に関する理解をいっそう明確なものにできたことを歓迎する。委員会は、部門横断型の代表団が出席し、追加的情報を提供してくれたことを評価するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の点に評価の意とともに留意する。 (a) 未成年者の事情聴取に関するガイドラインの採択(2002年3月)。 (b) 子どもオンブズマン職の設置(2005年9月)。 (c) 国家行動計画「子どもにふさわしいフィンランド」の採択(2005年)。 (d) 人身取引対策行動計画の完成(2005年3月31日)。 4.委員会はまた、以下の文書の批准も歓迎する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2002年5月10日)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約(2000年1月17日)。 (c) 国際刑事裁判所ローマ規程(2000年12月29日)。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 5.委員会は、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.3)の検討後に表明されたさまざまな懸念および勧告(CRC/C/15/Add.132参照)への対応が立法上、行政上その他の措置を通じて行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、一部の懸念表明および勧告、とくに子どもに関わる調整のとれた政策、子どもに対する暴力(性的虐待を含む)および民族的マイノリティに属する子どもに関するものについて不十分なまたは部分的な対応しかとられていないことを、遺憾に思うものである。 6.委員会は、締約国に対し、第2回定期報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないものに対応し、かつこの総括所見に掲げられた一連の懸念表明に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 調整/国家的行動計画 7.委員会は、子どもの権利のいっそう全面的な実施を達成しようとするいくつかのプログラムに留意するとともに、子どもに関する総会特別会期(2002年5月)で採択された最終文書「子どもにふさわしい世界」に基づく包括的な国家行動計画「子どもにふさわしいフィンランド」を歓迎するものの、これらの諸計画間の調整が十分ではないことを懸念する。 8.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国家行動計画において、条約に掲げられた子どもの権利に対する志向が明確にされることを確保すること。 (b) その実施のために十分な予算を用意すること。 (c) 子どもの権利の実施に対する縦割り的アプローチを克服するため、他のあらゆる行動計画およびプログラムを国家行動計画の調整下に置くこと。 (d) 新たに設置された子どもオンブズマンに対し、国家行動計画を監視し、かつ達成された進展を評価する権限を与えること。 独立の監視 9.委員会は、2005年9月の段階で子どもオンブズマン職が設置されたこと、および、幅広い専門領域を代表し、かつNGOの代表も参加する諮問委員会が――オンブズマンの活動を支援する目的で――設けられたことを歓迎する。しかしながら委員会は、オンブズマンの権限が主として条約に関する普及促進活動および助言サービスに焦点を当てたものとなっており、個別事案には対応しない(個別事案の調査は依然として議会オンブズマンの権限であるとされる)ことにも留意するものである。 10.委員会は以下のことを勧告する。 (a) 独立した人権機関の役割に関する一般的意見2号(2002年)にしたがって子どもオンブズマンの権限を拡大し、子どもからの苦情を受理しかつ調査する権能も含めること。 (b) 子どもオンブズマン事務所が国内全域で条約の実施を効果的に監視できるよう、締約国が、十分な人的資源および財源をもって同事務所を支援すること。 (c) 子どもオンブズマンの年次報告書は、その勧告を実施するために政府がとろうとしている措置についての情報とともに議会に提出され、かつ議会における討議の対象とされるべきこと。 子どものための資源 11.委員会は、地方当局が広範な自治権限を有していることから、国内全域で子どものための資源の平等性およびサービスの利用可能性を確保するために変革が必要である旨の、締約国の懸念を共有する。 12.委員会は、締約国が、子どものために提供される資源について評価しかつ分析するための研究を行なうとともに、必要に応じ、すべての子どもが、どの自治体に住んでいるかに関わらず、サービスに平等にアクセスできかつサービスを利用できることを確保するための効果的措置を引き続きとるよう、勧告する。 データ収集 13.委員会は、子どもに関する統計の作成において、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子ども(とりわけ障害児、子どもの庇護希望者、法律に抵触した子どもおよびマイノリティ集団に属する子どもなど)との関連で調整および恒常性が欠けていることに、懸念とともに留意する。 14.委員会は、子どもの生活条件およびその権利の実施に関する詳細な分析を可能とする目的で、子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもについてのデータを包括的に収集するためのシステムを発展させる努力を引き続き行なうよう、勧告する。 研修/条約の普及 15.委員会は、条約に関する情報の普及をおおむね市民社会が担当しているままであることに留意するとともに、条約が、マイノリティおよび移民が使用している言語によって容易に入手可能とされていないことを懸念する。さらに委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とした条約に関する研修が依然として不十分であることを、懸念するものである。 16.委員会は、締約国に対し、移民および先住民族マイノリティ、民族的または言語的マイノリティのような脆弱な立場に置かれた集団の間における普及にとくに注意を払いながら、学校カリキュラム等も通じて条約をさらに普及するとともに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を行なうための努力を継続するよう、奨励する。 2.一般原則 差別の禁止 17.2005年2月に反差別法が施行されたことは歓迎しながらも、委員会は、移民およびその他のマイノリティ集団(とくにロマ)との関連で、差別的および排外主義的態度ならびに日常生活における事実上の差別が残っており、かつ若者の間で高まりつつあることを懸念する。 18.条約第2条にしたがい、委員会は、締約国が、子ども(ロマおよび外国人の子どもを含む)に対するあらゆる形態の差別を防止しかつ解消するための努力を継続しかつ強化するとともに、差別的態度に関わる若者の教育にとくに注意を払うよう、勧告する。 19.委員会はまた、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載することも要請する。 子どもの最善の利益 20.子どもの最善の利益が法律でしばしば考慮されていること(たとえば、新外国人法第6条で子どもの特別な状況が明示的に認められていることを含む)には留意しながらも、委員会は、この原則が、子どもに影響を与えるすべての政策領域において、実際上も十分に尊重されかつ実施されているわけではないことを、懸念する。 21.委員会は、締約国が、子どもの最善の利益の一般原則が理解され、すべての法規定ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに直接間接の影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて適切に統合されかつ実施されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。 子どもの意見の尊重 22.委員会は、法的手続、たとえば監護または子どもの保護に関する措置において子どもの意見を聴くための規則に関する情報に留意するものの、裁判官/裁判所によって直接意見を聴取される権利を有しているのは15歳以上の子どものみであることを懸念する。当該年齢に満たない子どもについては、直接意見を聴取するかどうかは裁判官の裁量に委ねられている。直接の意見聴取が行なわれず、子どもの意見が第三者を通じて裁判所に提出される場合、子どもが当該第三者によって直接意見を聴取されていない場合がある。 23.委員会は、条約第12条が全面的に実施されること、とくに、子どもに影響を与える司法上および(または)行政上の手続において決定が行なわれなければならない際、子どもが裁判官に対して直接自己の意見を表明する権利が認められることを確保するため、締約国が立法上その他の措置をとるよう勧告する。 3.市民的権利および自由 適切な情報へのアクセス 24.マスメディアにおける表現の自由の行使に関する法律(第460/2003号)をはじめ、締約国がこの点について行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、とくにインターネットを通じて、子どもが暴力、人種主義およびポルノグラフィーにさらされていることについて懸念を表明する。 25.委員会は、締約国が、移動通信技術、ビデオ映画およびゲームその他のテクノロジー(インターネットを含む)を通じて暴力、人種主義およびポルノグラフィーにさらされることから子どもを効果的に保護するための措置を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、移動通信技術、メディア広告およびインターネットを、子どもの福祉にとって有害となる情報および資料について子どもおよび親双方の意識を高めるための手段として活用するためのプログラムおよび戦略を発展させるよう、勧告するものである。締約国は、メディアの有害な情報にさらされることから子どもを保護し、かつ子ども向けの情報の質を向上させる目的で、ジャーナリストおよびメディアとの取決めおよびプロジェクトを発展させるよう、奨励される。 4.家庭環境および代替的養護 親の責任 26.委員会は、フィンランドにおける監護紛争が非常に長く続き、そのための子どもに悪影響が生じる可能性があることに留意する。 27.委員会は、子どもの監護をめぐる紛争が適当な期間内に解決されるべきこと、および、離婚家族の支援活動に、訓練を受けた専門家による支援サービスが含まれるべきことを勧告する。 代替的養護 28.委員会は、子どもがしばしばその意見を十分に考慮されることなく代替的養護に措置されていることに留意するとともに、公的機関が根本的な親子のきずなの維持を必ずしも十分に支援していないことを懸念する。さらに、新たな「子どもの福祉発展プログラム」には留意しながらも、委員会は、代替的養護に措置される子どもが増えていることについての前回の懸念をあらためて表明するものである。 29.委員会は、締約国が、親に対する十分な支援等も通じ、代替的養護に措置される子どもの人数の増加の根本的原因に対応するよう勧告する。締約国はまた、子どもが施設で育てられるときは、小集団で生活し、かつ個別のケアを受けることも確保するべきである。 30.委員会はまた、締約国が、代替的養護への措置に関わるいかなる決定においても子どもの意見を十分に考慮に入れることも勧告する。さらに委員会は、代替的養護への措置によって親子関係に悪影響が生じるべきではないことを勧告するものである。 暴力、虐待およびネグレクト 31.1997~2002年の暴力防止キャンペーンおよび2004~2007年に予定されている第2回キャンペーンは称賛しながらも、委員会は、子どもに対する暴力および家庭内の性的虐待がフィンランドにおける子どもの権利の全面的実施を妨げるもっとも重大な要因のひとつになっているという、フィンランド議会オンブズマンの懸念を共有する。 32.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる形態の子どもの虐待を防止しかつこれと闘う目的で、子どもの関与を得ながら意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを強化すること。 (b) フリーダイヤルの全国的ヘルプライン「子ども・若者フォン」に対する支援およびこれとの連携を増強すること。 (c) 子どもの虐待の事案の通報を奨励し(代替的養護を受けている子どもにそのための機会を与える等の手段によるものも含む)、かつこれらの行為の加害者を訴追するための措置を強化すること。 (d) 暴力の被害を受けた子どもに対し、ケア、全面的な身体的および心理的回復ならびに再統合を引き続き提供すること。 33.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の継続的かつ詳細な研究および政府に対して送付された関連のアンケートとの関係で、委員会は、当該アンケートに対する締約国の文書回答、および、2005年7月5~7日にスロベニアで開かれたヨーロッパ・中央アジア地域協議への締約国の参加を、評価の意とともに認知する。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的または精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、同地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう、勧告するものである。 5.基礎保健および福祉 健康および保健ケア・サービスへのアクセス 34.委員会は、子どものアルコール消費が増えており、かつ体重過多および肥満の子どもの人数が増加していることに懸念を表明する。 35.委員会は、思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)に照らし、締約国が、子どもおよび青少年の健康、とくに子どものアルコール消費の問題に対応するための措置を強化するとともに、保健プログラム(とくに青少年の間で健康的なライフスタイルを促進することを目的としたものであるべきである)についての活動をさらに進めるよう、勧告する。 36.この点に関する締約国の努力は認知しながらも、委員会は、青少年の自殺率が高いことをいまなお懸念する。 37.委員会は、締約国が、青少年の自殺を防止し、かつ精神保健ケア・サービスを強化するための措置を増強するよう勧告する。 38.委員会はまた、注意欠陥・多動性障害(ADHD)および注意欠陥性障害(ADD)について誤診が行なわれており、そのため、精神刺激薬の有害な作用に関する証拠が増えているにも関わらずこれらの薬が過剰に処方されているという情報があることも懸念する。 39.委員会は、ADHDおよびADDの診断および治療についてさらなる調査研究(子どもの身体的および心理的ウェルビーイングに対する精神刺激薬の悪影響の可能性も含む)を行なうとともに、これらの行動障害への対応に、できるかぎりその他の形態の管理および治療を用いることを勧告する。 生活水準 40.貧困および社会的排除に対抗する国家行動計画(2003~2005年)は歓迎しながらも、委員会は、子どもがいる家族のうち貧困下で暮らす家族の数が増えていること、および、金銭的援助および支援が必ずしも経済成長と軌を一にしていないことを、懸念する。 41.委員会は、締約国が、貧困および社会的排除に対抗する国家行動計画を効果的に実施するとともに、金銭的援助およびそれ以外の援助を提供することにより、貧困が削減され、かつ経済的苦境が子どもの発達に及ぼす悪影響から子どもが保護されることを確保する目的で、経済的苦境下で暮らしている家族のための支援を強化するよう、勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 42.この点に関する締約国の努力には留意しながらも、委員会は、ロマの子どもが高い率で学校から中退しており、かつ教育へのアクセスの面で困難に直面しているため、その発達および将来の雇用へのアクセスに悪影響が生じていることに懸念を表明する。加えて、委員会はまた、ロマ語の教員および就学前教材が存在しないことにも、懸念とともに留意するものである。 43.委員会は、締約国が、条約第28条および第29条が国内全域のすべての子ども(ロマの子どものような、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもも含む)を対象として全面的に実施されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 44.委員会は、初等中等学校の全国カリキュラムに人権教育が統合されたことを歓迎するものの、この科目を含めるかどうかがいまなお最終的には教員の決定次第とされていることから、すべての子どもが人権教育(子どもの権利に関するものも含む)を受けているわけではない可能性があることを、懸念する。 45.委員会は、締約国が、人権教育が学校でどの程度利用可能とされているかについて検討するとともに、すべての子どもが、人権について教えられるのみならず、人権に関する基準および価値観が家庭、学校またはコミュニティのいずれであっても現実に実施されるプロジェクトにも参加することを確保するよう、勧告する。 46.委員会は、学校における暴力およびいじめに取り組むために締約国がとった措置(すべての学校がいじめおよび暴力に反対する行動計画を策定しなければならないとする要件の導入も含む)は歓迎しつつ、これらの行動が、とくに障害のある子どもおよび親が障害者である子どもに対していまなおきわめて一般的に行なわれていることを懸念する。 47.委員会は、締約国が、学校で醸成されている友人関係の質について生徒、職員および親に対する定期的調査を行なう等の手段により、子どもの全面的参加を得ながら、学校におけるいじめおよび暴力の現象と闘うための適当な措置を引き続きとるよう勧告する。障害のある子どもおよび親が障害者である子どもに対するいじめおよび暴力に対し、とくに焦点が当てられるべきである。 7.特別な保護措置 子どもの庇護希望者 48.委員会は、子どもの庇護希望者の地位を向上させ、かつそのニーズに対していっそう注意が払われることを確保する目的で、〔欧州連合〕理事会指令2003/9/ECを編入する、移民の統合および庇護希望者の受け入れに関する法律の改正が、2005年6月に採択されたことに留意する。しかしながら委員会は、現行外国人法に基づいた一部カテゴリーの庇護申請に適用されるいわゆる「迅速手続」が、子どもに悪影響を及ぼす可能性があることを懸念するものである。 49.保護者のいない子どもの申請を処理するために要する期間が相当に短縮されたことは歓迎しながらも、委員会は、家族再統合のために必要な期間が依然として長すぎることをいまなお懸念する。 50.委員会は、締約国が、いわゆる「迅速手続」において庇護希望者のための適正手続および法的保障が尊重されることを確保するよう、勧告する。 51.委員会はまた、締約国が、条約第10条にしたがい、家族再統合を目的とする申請を積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱うことも勧告する。 性的搾取および人身取引 52.フィンランド法に人身取引罪を導入した最近の刑法改正、ならびに、子どもの商業的性的搾取と闘う国家行動計画(2000年)および人身取引対策行動計画(2005年)は歓迎しながらも、委員会は、子どもを含む人が、同国へおよび同国を通過する形で引き続き取引されている旨の情報があることを懸念する。 53.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が、性的目的およびその他の搾取的目的で行なわれる子どもの人身取引を発見し、防止しかつこれと闘うための努力をさらに強化するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 国連・国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書への加盟を検討すること。 (b) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約への加盟を検討すること。 少年司法の運営 54.委員会は以下のことを懸念する。 (a) とくに重大な事情がある場合に子どもが「無条件の収監」刑を言い渡される可能性があること。 (b) 条約第37条(c)の全面的実施を阻害する可能性がある、市民的および政治的権利に関する国際規約第10条2項(b)および3項に対する留保を、締約国が維持していること。 55.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約(とくに37条、第40条および第39条)および少年司法分野における他の国連基準(少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針を含む)ならびに委員会が少年司法に関する一般的討議の際に行なった勧告(CRC/C/46、パラ203-238)と全面的に一致させるよう、勧告する。これとの関連で、委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 18歳未満の子どもの自由の剥奪が最後の手段としてかつもっとも短い期間でのみ行なわれ、かつ、このような子どもが収容中に成人から分離されることを確保するため、引き続きあらゆる必要な措置をとること。 (b) 条約の全面的実施を確保するため、市民的および政治的権利に関する国際規約第10条2項(b)および3項に付した留保の撤回を検討すること。 マイノリティ集団に属する子ども 56.委員会は、フィンランド人の子どもとロマの子どもとの間の格差が引き続き存在し、ロマの子どもによる権利(とくに住居および教育に対する権利)の全面的享受に深刻な影響が生じていることに、懸念を表明する。 57.委員会は、締約国が、ロマの子どもの社会的包摂に向けた措置を引き続きとり、かつロマの子どもの周縁化およびスティグマと引き続き闘うよう、勧告する。さらに、ロマの子どもが条約に掲げられた権利を(とくに教育へのアクセスおよび十分な生活水準との関連で)全面的に享受することを確保するため、追加的措置が必要である。 8.子どもの権利条約の選択議定書 58.委員会は、対話の際に締約国が表明した、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書が間もなく批准される旨の言明を歓迎する。 59.委員会は、締約国が、可能なかぎり早期に子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の加盟国となるよう、勧告する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 60.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府の構成員、議会ならびに適用可能なときは自治体の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 61.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 62.委員会は、締約国の定期的なかつ時宜を得た報告を評価するとともに、締約国に対し、2008年7月19日までに、120ページを超えない範囲で(CRC/C/118参照)第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年3月23日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/304.html
総括所見:ベルギー(OPAC・2006年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)/第3回・第4回(2010年)OPSC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/BEL/CO/1(2006年6月9日)/第42会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2006年5月15日に開かれた第1123回会合(CRC/C/SR.1082参照)において、ベルギーの第1回報告書(CRC/C/OPAC/BEL/1)を、締約国の代表団の出席を得ることなく(締約国は、第39会期に採択された委員会の決定第8号にしたがい、報告書の技術的審査を選択した)検討した。委員会は、2006年6月2日に開かれた第1157回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、選択議定書で保障されている権利に関してベルギーで適用される立法上、行政上、司法上その他の措置に関する詳細な情報を提供してくれた、締約国の第1回報告書の提出および委員会の事前質問事項(CRC/C/OPAC/BEL/Q/1)に対する文書回答の提出を歓迎する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの権利条約に基づく締約国の第2回定期報告書に関して委員会が2002年6月7日に採択した委員会の従前の総括所見(CRC/C/15/Add.178)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.積極的側面 4.委員会は、ベルギー軍への志願入隊に関する最低年齢が18歳を下回ることはなく、かつ、ベルギー法上、18歳未満のいかなる者も、戦時および平時において、あらゆる平和維持活動またはあらゆる種類の武装作戦行動への参加を絶対的に禁じられている旨の、選択議定書の批准時に締約国が行なった宣言を歓迎する。 5.委員会は、2003年の刑法改正(第136条quater第1項第7号)により、15歳未満の子どもを軍隊または武装集団に徴募することおよび15歳未満の子どもを敵対行為に積極的に関与させることが戦争犯罪とされたことを歓迎する。 6.委員会は、締約国の開発協力政策において、武力紛争への子どもの関与の防止が優先課題として位置づけられていることに、評価の意とともに留意する。 7.委員会は、欧州連合の総務・対外関係理事会が2003年12月に採択した子どもと武力紛争に関する指針の実施に対して締約国が貢献していることにも、評価の意とともに留意する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.一般的実施措置 国家的行動計画 8.委員会は、2002年5月に開催された子どもに関する特別会期で総会により採択された成果文書「子どもにふさわしい世界」のフォローアップとして、2005年6月24日に子どものための国家行動計画が採択されたことを歓迎するとともに、武力紛争に関与させられる子どもの問題が同行動計画に含まれていること(第7章)に留意する。 9.委員会は、締約国が、関連するパートナー(市民社会を含む)との協議および協力に基づいて子どものための国家行動計画を実施するための具体的措置をとるとともに、同計画の実施のために具体的な予算配分を行ない、かつ十分なフォローアップ機構を設けるよう勧告する。 立法 10.締約国において徴集が1992年以降停止されていることには留意しながらも、委員会は、兵士の徴集について定めた、まだ廃止されていない法律で、とくに戦時において、対象者が17歳に達する年の1月から民兵として採用することが認められていることを懸念する。 11.委員会は、締約国が、戦時における18歳未満の者の軍隊への採用を認めたすべての法律を廃止するよう勧告する。 12.委員会は、2003年8月5日の法律により、国際人道法の重大な違反の事件に関する域外裁判権が限定されていることを遺憾に思うものの、15歳に満たないときに国の軍隊に徴募された子どもまたは敵対行為への積極的参加のために使用された子どもが、ベルギーと当該犯罪との間に結びつきがある場合にはベルギーの裁判所に直接アクセスできることを歓迎する。しかしながら委員会は、これらの規定で、軍隊または子どもを敵対行為に関与させる集団へのその他の形態の徴募〔から〕の保護について定められていないことを懸念するものである。 13.軍隊または武装集団への子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置を強化するため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの徴募および敵対行為への関与に関する選択議定書の規定に違反することを、法律で明示的に禁止すること。 (b) これらの犯罪について、当該犯罪が締約国の市民である者もしくは締約国と他のつながりを有する者によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合の域外裁判権を設定すること。 (c) 軍の要員は、選択議定書に掲げられた権利を侵害するいかなる行為も、その旨のいかなる軍令の存在にも関わらず行なうべきではない旨を、法律で規定すること。 普及および研修 14.戦争が子どもに与える影響についてユニセフ・ベルギー国内委員会が提供しているユニークなテレビ広告、ならびに、武力紛争に関与させられた子どもの地位および権利についてベルギー赤十字社が実施している研修活動およびキャンペーンには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、選択議定書に関して締約国が行なっている普及活動および研修活動が、全体として軍隊および軍事訓練に限定されていることを懸念する。 15.委員会は、締約国が、軍隊を対象とした選択議定書に関する研修活動を引き続き実施するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団(教員、武力紛争の影響を受けている国出身の子どもの庇護希望者および移住者のためにおよびこれらの子どものために活動している公的機関、裁判官ならびに弁護士など)を対象として、選択議定書の規定に関する、あらゆる国内言語による体系的な意識啓発プログラム、教育プログラムおよび研修プログラムを発展させることも勧告するものである。 2.武装解除、動員解除および社会的再統合に関してとられた措置 社会的再統合の措置 16.委員会は、締約国が、紛争地域からやってくる子どもの庇護希望者および移住者の目的地国であることに留意する。これらの子どもの多くがトラウマ性の経験の被害者である可能性があることに照らし、委員会は、ベルギー赤十字社が、連邦庇護希望者受け入れ庁(Fedasil)と連携しながら、武力紛争から逃れてきた子どもの庇護希望者に心理的および社会的援助を提供していることに、評価の意とともに留意するものである。 17.委員会は、元子ども兵士をとくに対象とする統合プログラムまたは統合活動についての情報がないこと、および、武力紛争に関与させられた18歳未満の庇護希望者について体系的なデータ収集が行なわれていないことを遺憾に思う。保護者のいない未成年の庇護希望者の事情聴取を担当するボランティアが、国外避難中の子どもが経験するトラウマおよび子どもの事情聴取のための特別な技法に関して随時開催される講座に出席していることには留意しながらも、委員会は、武力紛争に関与させられ、かつ即時のケアおよび援助を必要としている子どもを特定するために締約国が配分している資源について懸念を覚えるものである。 18.委員会は、締約国が、以下の努力を強化することにより、ベルギーにいる子どもの庇護希望者、難民および移住者であって武力紛争に関与させられまたは武力紛争の影響を受けた可能性がある子どもに対して特段の注意を払うよう勧告する。 (a) このような子どもを可能なもっとも早い段階で特定すること。 (b) これらの子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための、文化的配慮のなされた学際的援助を提供すること。 (c) 自国の管轄内にある子どもの難民、庇護希望者および移住者であって母国における敵対行為の被害者である可能性がある子どもについて、体系的なデータ収集を行なうこと。 (d) 子どもの庇護希望者および移住者であって母国における敵対行為の被害者である可能性がある子どものためにおよびこのような子どもとともに活動する公的機関を対象として、定期的な研修を実施すること。 19.委員会はまた、締約国が、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての委員会の一般的意見6号(CRC/GC/2005/6)に留意することも勧告する。委員会は、締約国が、社会的再統合プログラムに関する情報を次回の定期報告書で提供するよう要請するものである。 3.国際的な援助および協力 被害者の保護 20.たとえば「子ども兵士が正規軍と連携していることが立証された」国への軍需資材の貿易を(小型武器貿易に関する法律の2003年改正に基づいて)禁ずることにより、子ども兵士が使用可能な軽兵器を国際的レベルで禁止することに向けて締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、この規定が16歳未満の子ども兵士にしか適用されないことを懸念する。小型武器および軽兵器の国際的貿易に関して、委員会は、締約国でこれらの兵器の製造および輸出が行なわれていることに留意するものである。 21.委員会は、18歳に達していない者が軍隊のまたは国の軍隊とは区別される武装集団の構成員として敵対行為に直接参加している国との軍需物資貿易を取りやめる目的で、締約国が、小型武器貿易に関する国内法を見直すよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、小型武器貿易に関する改正法を実施した結果として停止された販売件数を次回の報告書で明らかにするよう、慫慂するものである。 財政援助その他の援助 22.委員会は、武力紛争における子どもの問題への対処に関して締約国が多国間レベルで行なっている協力(国際連合専門機関への財政支援を含む)に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、この分野における締約国の二国間活動も心強く思うものである。 23.委員会は、締約国が、とくに防止のための活動に焦点を当てながら、武力紛争への子どもの関与の問題に対処するための二国間および多国間の活動を継続しかつ強化するよう勧告する。 4.フォローアップおよび普及 フォローアップ 24.委員会は、とくにこれらの勧告を内閣、議会(上院および代議院)ならびに該当するときは州の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 25.委員会は、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じ、締約国で話されているすべての言語で子どもおよび親が入手できるようにすることを勧告する。委員会はまた、締約国が、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、選択議定書を公衆一般に広く周知することも勧告するものである。 D.次回報告書 26.選択議定書第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第3回・第4回統合定期報告書(提出期限・2007年7月15日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年3月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/127.html
総括所見:南アフリカ(第1回・2000年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.122(2000年2月23日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.子どもの権利委員会は、2000年1月25日および26日に開かれた第609回、第610回および第611回会合(CRC/C/SR.609, 610 and 611 参照)において、1997年12月4日に提出された南アフリカの第1回報告書(CRC/C/51/Add.2) を検討し、2000年1月28日に開かれた第615回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、定められたガイドラインにしたがい、かつ子どもの状況の批判的評価を提示した締約国の第1回報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、第1回報告書が期限どおりに提出されることを確保するために締約国が行なった努力も歓迎するものである。委員会は、事前質問票(CRC/C/Q/SAFR.1) に対する文書回答に留意する。委員会は、締約国との建設的な、開かれたかつ率直な対話に心強い思いを感じ、かつ議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎するものである。委員会は、条約の実施に直接携わる高い地位の代表団の出席を得たことにより、締約国における子どもの状況をいっそう全面的に評価できたことを認知する。 B.積極的な側面 3.委員会は、法改正の分野で締約国が行なった努力に評価の意を表明する。これとの関連で、委員会は、新憲法(1996年)、とくに、条約でも規定された多くの具体的権利および自由を子どもに保障した第28条を歓迎するものである。さらに、委員会は、国内法と条約とをいっそう調和させるために制定された追加的法律に評価の意とともに留意する。そのような法律として挙げられるのは、国家青少年法改正法(1996年)、法的扶助法改正法(1996年)、刑事訴訟法改正法(1996年)、映画出版物法(1996年)、国家教育政策法(1996年)、子ども養護法改正法(1996年)、体罰廃止法(1997年)、離婚裁判所法改正法(1997年)、家庭裁判所設置法(1997年)、扶養料法改正法(1997年)、婚外子実父法(1997年)および刑事訴訟法第2次改正法(1997年)などである。 4.委員会は、締約国で国内行動計画(NPA)が実施されていることを歓迎する。これとの関連で、委員会は、計画を特定すること、プログラムを調整および評価すること、ならびにNPAの実施および条約にもとづく義務の遵守に関する進展報告書を内閣に定期的に提出することを担当する国内行動計画運営委員会(NPASC)が設置されたことを歓迎するものである。委員会は、NPASCが、子どもの権利の促進に携わるさまざまな省庁および機関の代表、および、NGOおよび国家子どもの権利委員会を含む市民社会およびユニセフ南アフリカの代表から構成されていることに留意する。 5.委員会は、南アフリカ人権委員会が設置されたこと、および子どもの権利を担当する局長が任命されたことを歓迎する。 6.委員会はまた、人権高等弁務官事務所の支援を得て「人権制度強化プロジェクト」が実施されていることも歓迎する。委員会は、このプロジェクトに、南アフリカ警察が作成した人権研修パッケージを完成させるための助言サービスの提供、人権基準および人権実務に関する警察向けのポケット・ガイドの刊行、南アフリカ人権委員会(SAHRC)に対する助言および援助、裁判官、検察官および司法運営に携わるその他の職員の養成カリキュラムに人権を統合するための司法省司法大学に対する助言および援助、ならびに、一連の人権研修ワークショップの開発および資料センターの設置のためのフォート・ハレ大学への支援が含まれていることに留意するものである。 7.委員会は、子どもプログラムに関わる政府支出についての総合的視点を発展させ、かつ当該支出が子どもの生活に与える影響を検討することを目的として開始される「子ども予算プロジェクト」の設置のために締約国が行なっている努力を歓迎する。 8.委員会は、学校環境における締約国のとりくみを評価する。これとの関連で、委員会は南アフリカ学校法(1996年)が制定されたことを歓迎するものである。同法は、教育制度における子どもの参加権の増進、自己の学習言語を選択する子どもの権利(多言語主義)、および学校における体罰の廃止につながった。委員会はまた、すべての子ども、とくに経済的に不利な立場にある家庭の子どもの就学奨励および通学促進を目的とした、統合的な国家初等学校栄養プログラムが設置されたことにも評価の意とともに留意する。委員会はまた、「カリキュラム2005」のもとで、とくに障害児およびHIV/AIDSに感染した子どもの差別の禁止を奨励しかつそのインクルージョンを促進するためのプログラムを含む、学校環境における追加的なとりくみが構想されていることにも留意するものである。「カリキュラム2005」は、アパルトヘイト時代に設置された教育制度の不平等に対応することも目的としている。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 9.委員会は、ひきつづき子どもの状況に悪影響を及ぼしかつ条約の全面的実施を阻害しているアパルトヘイトの残滓を克服するうえで締約国が直面している課題を認知する。とりわけ、委員会は、社会のさまざまな層のあいだにひきつづき膨大な経済的および社会的格差が存在すること、および、失業および貧困の水準が相対的に高いことが、条約の全面的実施に悪影響を及ぼし、かつ締約国にとって依然として課題となっていることに留意するものである。 D.主要な懸念事項および委員会の勧告 1.実施に関する一般的措置 立法 10.委員会は、法改正を行ない、かつ国内法と条約とのいっそうの一致を確保する措置を導入するために締約国が行なっている努力に留意する。委員会はまた、とくに家族間暴力の防止、学校におけるHIV/AIDS方針、新たな少年司法制度の設置、保育システムの拡大および性的虐待を受けた子どもの保護に関わる追加的な法改正を行なう目的で、南アフリカ法律委員会が現在、法律および慣習法の見直しを進めていることにも留意するものである。しかしながら、委員会は、法律およびとくに慣習法がいまなお条約の原則および規定を全面的に反映していないことを依然として懸念する。委員会は、締約国に対し、法改正の分野でひきつづき努力を行ない、かつ国内法が条約の原則および規定と全面的に一致することを確保するよう奨励するものである。 国際人権文書の批准 11.委員会は、締約国がまだ経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約を批准していないことに留意する。委員会は、この国際文書を批准することにより、その管轄下にあるすべての子どもの権利を保障する義務を満たそうとする締約国の努力が強化されるという見解に立つものである。委員会は、締約国に対し、この文書の批准を完了する努力を強化するよう奨励する。 調整 12.子どもの保護およびケアに関わるプログラムの実施を調整するため国内行動計画運営委員会(NPASC)が設置されたことには留意しながらも、委員会は、地域共同体レベルにおける充分なプログラムの導入を確保するために行なわれた努力が不充分であることを懸念する。これとの関係で、委員会はさらに、条約の促進および実施にあたって地域共同体を基盤とした団体を関与させるために行なわれた努力が不充分であることに懸念を表明するものである。委員会はまた、条約の実施を担当する省庁間で調整が行なわれていないことも懸念する。委員会は、締約国が、NPASCのプログラムおよび活動が農村部および地域共同体レベルで確立されることを確保するために効果的な措置をとるよう勧告する。地域共同体を基盤とした団体の能力構築を促進し、かつ条約の調整、促進および実施へのこのような団体のインクルージョンをさらに促進するために、締約国があらゆる効果的な措置をとることが奨励されるところである。委員会は、締約国が、条約の実施を担当する省庁および部局間でいっそうの調整を確保するための努力を強化するよう勧告する。 独立した監視機構 13.委員会は、締約国が、社会のあらゆるレベルで基本的人権の遵守を促進する権限を持った南アフリカ人権委員会を設置したことを、評価の意とともに歓迎する。委員会は、同委員会が、調査を行ない、召喚状を発し、かつ宣誓証言を行なわせる権限も有していることに留意するものである。しかしながら、委員会は、同委員会がその権限を効果的に遂行できるようにするために配分された資源が不充分であることを懸念する。加えて、委員会は、同委員会の活動が、とくに官僚的形式主義およびさらなる法改正の必要性によってひきつづき妨げられていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、条約にもとづく権利侵害についての子どもからの苦情を登録し、かつそれに対応する明確な手続が存在しないことも懸念する。委員会は、締約国に対し、南アフリカ人権委員会の効果的な職務遂行を確保するために充分な資源(人的資源および財源のいずれも)が配分されることを確保するよう、奨励するものである。委員会は、締約国が、自己の権利の侵害に関わる子どもからの苦情を登録し、かつそれに対応するための明確かつ子どもに優しい手続を確立すること、および、そのような侵害に対する充分な救済を保障することを、勧告する。委員会はさらに、締約国が、そのような機構の子どもによる効果的な利用を促進するための意識啓発キャンペーンを導入するよう提案するものである。 データ収集 14.委員会は、達成された進展の監視および評価ならびに子どもに関して採択された政策の影響の評価を行なうことを目的として、あらゆるグループの子どもとの関連でかつ条約が対象とするあらゆる領域に関して細分化された質的および量的データを体系的かつ包括的に収集するためには、現行のデータ収集機構では不充分であることを懸念する。委員会は、条約が対象とするあらゆる領域を編入することを目的として、データ収集システムの見直しを行なうよう勧告するものである。そのようなシステムは、18歳未満のすべての子どもを対象とし、かつ、女子、障害児、児童労働者、イースタンケープ、クワズルナタールおよび北部地域ならびに不利な立場に置かれたその他の黒人居住地域を含む遠隔地の農村部で生活している子ども、コイコイ人およびサン人のコミュニティに属する子ども、路上で働きかつ(または)生活している子ども、施設で生活している子ども、経済的に不利な立場に置かれた家庭の子どもおよび難民の子どもを含む、とくに傷つきやすい立場に置かれた子どもをとくに重視しなければならない。この分野における、とくにユニセフの技術的援助が奨励されるところである。 予算配分 15.委員会は、とくに財源の点で法律の持続可能性を確保するために新法の「経費見積もり」をする慣行を導入するという締約国のとりくみを歓迎する。委員会は、締約国が現在、少年法案の財政的持続可能性について判断するため同法案を「経費見積もり」していることに留意するものである。委員会は、とくにかつて不利な立場に置かれていたコミュニティのあいだに残っているアパルトヘイトの社会的および経済的残滓に対応するうえで、締約国が直面している課題に留意する。委員会はまた、支出が子どもの政策に及ぼす影響を改善する目的で、子どもプログラムとの関連で政府支出を監視する「子ども予算プロジェクト」を設置するための締約国の努力も歓迎するものである。条約第4条に照らし、委員会は、子どもプログラムおよび子ども活動のために配分される資源の充分な分配を確保するための努力が不充分であることを、依然として懸念する。条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要な場合には国際協力の枠組みのなかで子どもの経済的、社会的および文化的権利が実施されることを確保するための予算の配分および分配を優先することにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう奨励するものである。 普及および意識啓発 16.条約の原則および規定に関する意識を促進しようとする締約国の努力は認めながらも、委員会は、条約およびそこに掲げられた権利中心アプローチに関する専門家グループ、子ども、親および公衆一般の意識が全体として充分ではないことを依然として懸念する。委員会は、条約の規定が農村部および都市部の双方のおとなおよび子どもによって広く知られかつ理解されることを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、条約を地方の言語で入手できるようにし、かつとくに伝統的なコミュニケーション手段の活用を通じてその原則および規定を促進および普及するための努力を強化するよう奨励するものである。委員会はさらに、心理学者を含む保健従事者、ソーシャルワーカー、中央または地方の行政職員および子どものケアのための施設の職員のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループ、および伝統的な地域共同体の指導者を対象とした充分かつ体系的な研修および(または)感受性の増進を強化するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国がとくに人権高等弁務官事務所およびユニセフの技術的援助を求めるよう提案するものである。 2.子どもの定義 刑事責任および性的同意 17.刑事責任に関する法定最低年齢を7歳から10歳に引き上げる法案を締約国が起草したことには留意しながらも、委員会は、10歳という法定最低年齢は刑事責任に関しては相対的に低いものであることを依然として懸念する。委員会はまた、性的同意に関する法定最低年齢が男子(14歳)および女子(12歳)とも低いこと、およびこの問題に関する法律が女子に対して差別的であることも懸念するものである。委員会は、締約国が、刑事責任に関して提案されている法定最低年齢(10歳)を引き上げる目的でこの問題に関する法案を再評価するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、性的同意に関する法定年齢を男女とも引き上げ、かつこの点に関して女子に対する差別の禁止を確保するようにも勧告するものである。 3.一般原則 差別の禁止 18.差別の禁止の原則(第2条)が新憲法および国内法に反映されていることには留意しながらも、委員会は、すべての子どもが教育、保健その他の社会サービスへのアクセスを保障されることを確保するためにとられた措置が不充分であることを、いまなお懸念する。とりわけ懸念されるのは、黒人の子ども、女子、障害をもった子ども、とくに学習障害児、児童労働者、農村部で生活している子ども、路上で生活しかつ(または)働いている子ども、少年司法制度の対象となっている子どもおよび難民の子どもを含む、傷つきやすい立場に置かれた一部のグループの子どもである。委員会は、締約国が、とくに傷つきやすい立場に置かれたグループとの関連で、差別の禁止の原則の実施および条約第2条の全面的遵守を確保するための努力を強化するよう勧告する。 子どもの意見の尊重 19.子どもの意見の尊重を促進しかつ子ども産科を奨励するうえで締約国が行なっている努力は認めながらも、委員会は、とくに州および地方のレベルにおいて、伝統的な慣行および態度により条約第12条の全面的実施がいまなお制約されていることを懸念する。委員会は、締約国に対し、子どもの参加権に関する公衆の意識の促進、および、学校、過程、社会制度ならびにケアのための制度および司法制度における子どもの意見の尊重の奨励を継続するよう奨励するものである。 4.市民的権利および自由 出生登録 20.委員会は、出生死亡法においてすべての子どもの出生時登録が規定されていること、および、とくに農村部において出生登録のプロセスを改善および促進するためのとりくみが最近行なわれていることに、留意する。しかしながら、委員会は、登録されない子どもがいまなお多いことを懸念するものである。条約第7条および第8条に照らし、委員会は、締約国に対し、出生登録が締約国のすべての親にとってアクセスしやすいものとなることを確保するため、とくに移動型のクリニックおよび病院を通じてひきつづき努力するよう奨励する。委員会はまた、すべての子どもが出生時に登録されることを確保するため、政府職員、地域共同体の指導者および親の意識を啓発するための努力を行なうようにも勧告するものである。 拷問または他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いもしくは処罰 21.非拘禁者の処遇および不必要な実力行使の禁止について警察を研修しようとする締約国の努力は認めながらも、委員会は、警察による残酷な行為の発生件数が多いこと、および、子供がその身体的および精神的不可侵性および固有の尊厳を尊重して取り扱われることを確保するための現行法の執行が不充分であることを、懸念する。委員会は、条約第37条(a)および第39条の規定を全面的に実施するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。これとの関連で、委員会はさらに、警察による残酷な行為を防止し、かつ、被害を受けた子どもがその身体的および心理的回復および社会的再統合を促進するための充分な治療を提供されることおよび加害者が制裁を受けることを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告する。 5.家庭環境および代替的養護 親の指導 22.委員会は、ひとり親家庭および子どもを世帯主とする家庭の数の増加、およびそれが子どもに及ぼす(財政的および心理的双方の)影響について懸念する。親の指導および責任の分野の支援および相談が不充分であることも懸念の対象である。締約国は、条約第18条に照らし、とりわけ親、とくにひとり親の訓練を含む支援を提供することを通じて、家庭教育を発展させ、かつ親の指導および親の共同責任に関する意識を発展させるための努力を強化するよう奨励される。委員会は、子どもを世帯主とする世帯の数を減少させかつその増加を防止するとともに、すでに存在する当該世帯を支援するための充分な機構を導入するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、ひとり親家庭、一夫多妻の家庭および子どもを世帯主とする家庭の状況に関する研究を、それが子どもに及ぼす影響を評価する目的で行なうよう勧告する。 扶養料 23.子どもの扶養料の回復について規定した法律が制定されたことには留意しながらも、委員会は、扶養料支払命令の執行を確保するためにとられた措置が不充分であることを懸念する。条約第27条に照らし、委員会は、締約国が、扶養料支払命令の遵守および子どもの扶養料の回復を確保するため効果的な措置をとるよう勧告するものである。 福祉サービス 24.委員会は、経済的にもっとも不利な立場に置かれた家庭の子どもにいっそうの財政支援を行なうことを目的とした子ども支援手当を導入するため締約国が最近行なったとりくみに留意する。委員会は、扶養手当の段階的縮小、および、現在当該プログラムの利益を得ている、経済的に不利な立場に置かれた女性および子どもにそれが及ぼす可能性のある影響について、依然として懸念するものである。委員会は、締約国が、子ども支援手当を拡充しまたはそれに代わるプログラムを発展させることにより、まだ就学している18歳未満の子どもに対する支援も含まれるようにすることを勧告する。委員会は、締約国に対し、経済的に不利な立場に置かれた家庭を対象とした支援プログラムが継続されることを確保するために効果的な措置をとるよう奨励するものである。 代替的養護 25.家庭環境を奪われた子どもの状況に関して、委員会は、かつて不利な立場に置かれていたコミュニティにおいて代替的養護のための施設数が不充分であることに懸念を表明する。措置の監視が不充分であること、およびこの分野において資格のある職員の人数が限られていることに対しても、懸念が表明されるところである。委員会はさらに、里親託置プログラムへの措置の監視および評価が不充分であることに、懸念とともに留意する。委員会は、締約国が、代替的養護を促進するための追加的プログラムを発展させ、ソーシャルワーカーおよび福祉ワーカーに追加的研修を施し、かつ代替的養護のための施設を対象とした苦情申立ておよび監視のための独立した機構を設置するよう勧告するものである。また、締約国が、親を対象とした訓練を含む、子どもの遺棄を抑制するための支援を提供する努力を強化することも勧告されるところである。委員会はさらに、締約国が、里親託置プログラムへの措置が充分にかつ定期的に再審査されることを確保するよう勧告する。 国内および国際養子縁組 26.子ども養護法(1996年)で養子縁組が規制されていることには留意しながらも、委員会は、国内および国際養子縁組のいずれについても監視が行なわれていないこと、および、締約国において非公式養子縁組の慣行が広く行なわれていることを懸念する。委員会はまた、国際養子縁組を規制する法律、政策および制度が不充分であることも懸念するものである。条約第21条に照らし、委員会は、締約国が、国内および国際養子縁組のいずれについても適切な監視手続を確立すること、および伝統的な非公式養子縁組の慣行の濫用を防止するために充分な措置を導入することを、勧告する。加えて、国際養子縁組の効果的規制を確保するために、締約国が立法上および行政上の措置を含むあらゆる必要な措置をとることが勧告されるところである。委員会はさらに、締約国に対し、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の批准を完了させる努力を強化するよう奨励するものである。 家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待 27.委員会は、子どもの保護を強化するために子ども養護法および家族間暴力防止法が制定されたことに留意する。委員会はまた、女性および子どもに対する犯罪に焦点を当てた国家犯罪防止戦略、および、虐待の被害を受けた者、とくに女性および子どものエンパワーメントを促進する被害者エンパワーメント・プログラムが最近導入されたことにも留意する。しかしながら、委員会は、子どもを対象とした家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待(家庭における性的虐待も含む)が多数発生していることに、依然として重大な懸念を覚えるものである。条約第19条に照らし、委員会は、家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待の規模および性質を理解するため、締約国がこのような慣行に関する研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国が、家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待を防止しかつそれと闘うための包括的戦略を正式なものとする努力を強化し、かつ、態度の変化に貢献する充分な措置および政策をさらにとるようにも勧告するものである。委員会はまた、子どもに対する家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待(家庭における性的虐待も含む)の事案を子どもに優しい司法手続において適正に調査し、かつ、子どものプライバシー権の保護を正当に考慮しながら加害者に制裁を科すようにも勧告する。法的手続において子どもに支援サービスが提供されること、条約第39条にしたがって強姦、虐待、放任、不当な取扱い、暴力または搾取の被害者が身体的および心理的に回復しかつ社会的に再統合すること、および、被害者が犯罪者として扱われかつスティグマ(烙印)を押されるのを防止することを確保するためにも、さらなる措置がとられるべきである。委員会は、締約国がとくにユニセフの技術的援助を求めるよう勧告する。 体罰 28.学校、ケアのための施設および少年司法制度における体罰が法律で禁じられていることは承知しながらも、委員会は、体罰が家庭においていまなお認められていること、一部の学校およびケアのための施設ならびに社会一般において体罰が日常的に用いられていることを、依然として懸念する。委員会は、締約国が、ケアのための施設における体罰を法律で禁ずるために効果的な措置をとるよう勧告するものである。委員会はさらに、しつけおよび規律の維持が子どもの尊厳に一致した方法で、かつ条約にしたがって行なわれることを確保する目的で、締約国が、体罰の悪影響に関する意識を高めかつ文化的態度を帰るための措置を強化するよう勧告する。締約国が家庭における体罰の使用を法律で禁止するための効果的措置をとり、かつ、この文脈において、すでに同様の法律を制定した他国の経験を検討することも、勧告されるところである。 6.基礎保健および福祉 プライマリーヘルスケア 29.委員会は、一般的健康状況および子どものための保健サービスを向上させようとする締約国の最近のとりくみに留意する。児童期疾病統合管理(IMCI)イニシアチブの導入、および、6歳未満児ならびに妊婦および授乳期の女性に対する無償の保健ケアの提供などである。しかしながら、委員会は、地区および地方における保健サービスがひきつづき充分な資源(財源および人的資源のいずれも)を欠いていることを依然として懸念する。委員会はまた、締約国における子どもの生存および発達が、急性呼吸器系感染症および下痢のような幼児期疾病によってひきつづき脅かされていることも懸念するものである。委員会はまた、乳幼児死亡率および妊産婦死亡率が高いこと、栄養不良率、ビタミンA欠乏率および発育阻害率が高いこと、衛生状態が貧弱であること、および、とくに農村部地域において安全な飲料水へのアクセスが不充分であることも、懸念する。委員会は、とくに農村部における子どもの健康状況を改善するために適切な資源を配分しかつ包括的な政策およびプログラムを発展させる努力を締約国が強化するよう勧告する。この流れにおいて、委員会は、締約国が、プライマリーヘルスケア・サービスへのアクセスの拡大を促進すること、妊産婦、幼児および乳児の死亡率を削減すること、とりわけ傷つきやすくかつ不利な立場に置かれたグループの子どもの栄養不良を防止しかつそれと闘うこと、および、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスを高めることを勧告するものである。加えて、委員会は、締約国に対し、IMICイニシアチブに関連する技術的協力を継続するとともに、必要な場合には、とくにWHOおよびユニセフとともに、子どもの健康を向上させるための協力および援助の追加的手段を追求するよう奨励する。 環境保健 30.とくに大気汚染との関連で環境悪化が進んでいることに懸念が表明される。委員会は、締約国が、とくに大気汚染との関連で環境悪化を防止するために持続可能な発展プログラムの実施を促進する努力を増進するよう勧告するものである。 青少年の健康 31.委員会は、10代の妊娠、中絶、薬物および有害物質の濫用(アルコールおよびタバコの使用を含む)、事故、暴力および自殺を含む青少年の健康の分野で、プログラムおよびサービスの利用可能性が限られておりかつ充分なデータが存在しないことについて懸念を表明する。委員会は、精神保健上の問題を有する子どもの状況についての統計的データが存在しないこと、および、このような子どものための政策およびプログラムが不充分であることに懸念を表明するものである。委員会は、タバコの供給を規制する強力な立法(1991年)およびその改正法(1999年)を導入することによって締約国がタバコに反対する厳しい姿勢を示した一方で、法定年齢に満たない多くの喫煙者がいまなおタバコ製品を買えることに留意する。HIV/AIDSおよび性行為感染症(STD)とともに生きる人々を対象としたカウンセリング・治療センターの設置をとくに目的とした「HIV/AIDSと闘うパートナーシップ・プログラム」(1998年)を締約国が開始したことには留意しながらも、委員会は、HIV/AIDSおよびSTDの発生率が高くかつ増加していることを依然として懸念するものである。委員会は、とくにタバコ製品の使用との関連で法律が全面的に実施および執行されることを確保するため、締約国が効果的な措置をとるよう勧告する。委員会は、締約国が、とくに事故、自殺、暴力および有害物質濫用との関連で青少年の健康に関する政策を強化するよう勧告するものである。また、締約国が、精神保健上の問題を有する子どもの状況を評価するための研究を行ない、かつこのような子どもに充分なケアおよび保護を保障するプログラムを導入することも勧告される。加えて、青少年を対象として、子どもの最善の利益にかなう場合には親の同意を得ることなくアクセスできる、青少年に優しいカウンセリング、ケアおよびリハビリテーションの便益を発展させるため、締約国が充分な人的資源および財源の配分を含むさらなる措置をとることが勧告されるところである。委員会は、青少年を対象とした、リプロダクティブ・ヘルス、HIV/AIDSおよびSTDに関する訓練プログラムの強化を勧告する。このようなプログラムは、知識の獲得のみならず、青少年の発達に不可欠な能力およびライフスキルの獲得をも基盤とするべきである。委員会はさらに、国、地域および地方のレベルにおけるHIV/AIDS対応戦略の策定に青少年が全面的に参加すべきことを勧告する。HIV/AIDSに対する公衆の態度を変えること、および、HIVに感染した子どもおよび青少年がひきつづき経験している差別に対応する戦略を特定することが、とくに重視されるべきである。 障害のある子ども 32.委員会は、障害、とくに精神障害のある子どものための法的保護、プログラム、便益およびサービスが不充分であることについて懸念を表明する。障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)および委員会が障害児に関する一般的討議の日に採択した勧告(A/53/41, chap.IV, sect.C参照)に照らし、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを強化し、障害児のための特別教育プログラムを確立し、かつ障害児の社会へのインクルージョンをさらに奨励するよう勧告されるところである。委員会は、締約国が、障害児とともにおよび障害児のために働く専門職員の研修を目的としてとくにユニセフおよびWHOの技術的協力を求めるよう勧告する。 伝統的慣行 33.委員会は、男子の割礼が場合によって医学的に安全ではない条件下で行なわれていることを懸念する。委員会はまた、女子の健康を脅かし、自尊感情に影響を与え、かつプライバシーを侵害する処女性検査の伝統的慣行についても懸念するものである。女性器切除(FGM)の慣行およびそれが女子の健康に及ぼす有害な影響も、委員会にとって懸念の対象である。委員会は、男子の割礼を行なうさいに男子の健康を確保し、かつ医学的に安全ではない条件から保護するため、締約国が施術者の研修および意識啓発を含む効果的措置をとるよう勧告する。委員会はまた、処女性検査が女子に及ぼす身体的および心理的影響を評価するため、締約国がこの慣行に関する研究を行なうようにも勧告するものである。これとの関連で、委員会はさらに、条約第16条および第24条3項に照らして伝統的な態度を変え、かつ処女性検査の慣行を抑制するため、締約国が施術者および公衆一般を対象とした感受性強化および意識啓発のプログラムを導入するよう勧告する。委員会は、締約国が、FGMの慣行と闘いかつそれを根絶するための努力、および、伝統的な態度を変えかつ有害な慣行を抑制するために施術者および公衆一般を対象とした感受性強化プログラムを実施する努力を強化するよう勧告するものである。 7.教育、余暇および文化的活動 34.委員会は、学校法(1996年)の制定、統合的な国家初等学校栄養プログラムの導入、および、とくに教育へのアクセスにおける格差の是正を目的とした「カリキュラム2005」の開始を含め、教育の状況を向上させるために締約国が最近行なってきた努力に留意する。法律では7歳~15歳の義務教育が規定されていることには留意しながらも、委員会は、初等教育が無償ではないことを懸念するものである。一部の地域で、とくに黒人の子ども、女子および経済的に不利な立場にある家庭の子どものあいだで教育へのアクセスの不平等が残っていることにも懸念が表明される。このような子どもの多くはいまなお学校に行っていない。委員会は、一部の学校で、とくに異人種共学校で学ぶ黒人の子どもに対してひきつづき差別的慣行が行なわれていることを懸念するものである。教育の一般的状況に関しては、委員会は、一部地域でひどい過密状態が見られること、中退率、非識字率および留年率が高いこと、基礎的な養成教材が存在しないこと、インフラストラクチャーおよび設備の維持が貧弱であること、教科書その他の教材が不足していること、とくに伝統的に黒人が居住しているコミュニティにおいて訓練を受けた教職員の人数が不充分であること、および教職員の志気が低いことに、懸念とともに留意する。委員会は、とくに黒人コミュニティの多くの子どもが余暇、レクリエーションおよび文化的活動への権利を享受していないことに、懸念とともに留意するものである。締約国は、とくにこれまで不利な立場に置かれていた子ども、女子および経済的に不利な立場に置かれた家庭の子どもの通学を促進および助長する努力をひきつづき行なうよう奨励される。条約第28条に照らし、委員会は、初等教育をすべての者が無償で利用できることを確保するため、締約国が効果的措置をとるよう勧告するものである。委員会は、学校環境における差別の禁止を確保するため締約国が追加的措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、教育の質を向上させ、かつ締約国におけるすべての子どもが教育にアクセスできるようにするための効果的措置をとるよう勧告するものである。これとの関連で、締約国が、ユニセフおよびユネスコとのいっそう緊密な協力を通じて教育制度の強化に努めることが勧告される。締約国はさらに、少なくとも義務教育期間中は学校に留まるよう子どもに奨励するために追加的措置を実施するよう促されるところである。第31条に照らし、委員会は、子ども、とくに黒人コミュニティの子どもが余暇、レクリエーションおよび文化的活動への権利を享受することを確保するため、締約国が効果的な措置をとるよう勧告する。 8.特別な保護措置 難民および庇護希望者である子ども 35.難民および庇護申請者の子どもの権利のいっそうの保護を保障した最近の法改正には留意しながらも、委員会は、家族の再統合を確保し、かつ難民の子どもが教育および保健にアクセスする権利を保障する正式な立法上および行政上の措置がとられていないことを依然として懸念する。委員会は、締約国が、家族の再統合を保障および促進する立法上および行政上の枠組みを策定するよう勧告する。加えて、締約国が、難民および死後申請者の子どもに対してあらゆる社会サービスへの充分なアクセスを保障する政策およびプログラムを実施することも勧告されるところである。委員会はさらに、締約国が、難民の地位に関する条約(1951年)および議定書(1967年)の採択を完了する努力を強化するよう勧告する。 武力紛争下の子ども 36.委員会は、アパルトヘイト期に武力紛争の影響を受けた子どものリハビリテーションを促進する充分なプログラムを導入するための努力が不充分であることを懸念する。このような子どもたちの状況は、締約国における暴力および犯罪の現行水準が高いことに反映されているところである。委員会は、武力紛争の影響を受けた子どものリハビリテーションおよび再統合を促進する新たなプログラムを導入し、かつ現行のプログラムを強化するため、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 児童労働 37.委員会は、包括的な全国児童労働統計を作成する目的で国レベルの調査を行なうため、締約国がILOの児童労働撲滅国際計画との了解覚書に調印したことに留意する。国内法を国際労働基準に一致させようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、10~14歳の子どもの20万人以上が労働、主として商業農園労働および家事労働に現在従事していることを懸念するものである。委員会は、締約国に対し、労働法の執行を確保しかつ経済的搾取から子どもを保護するための監視機構を改善するよう奨励する。委員会はまた、締約国が、ILOの最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)を批准する努力を強化するようにも勧告するものである。 薬物および有害物質の濫用 38.委員会は、青少年のあいだで薬物および有害物質の濫用が多数発生しており、かつ増加していること、および、この点に関して利用できる心理社会的および医学的プログラムおよびサービスが限られていることを懸念する。条約第33条に照らし、委員会は、麻薬および向精神薬の不法な使用から子どもを保護し、かつこのような物質の不法な生産および取引に子どもを利用させないために、締約国が教育上の措置を含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。この流れで、さらに、麻薬および向精神薬の有害な影響に関して子どもを教育するためのプログラムを学校環境において強化することが勧告されるところである。委員会はまた、締約国が、国際連合薬物統制計画の指導を得て締約国が国レベルの薬物統制計画を策定するようにも勧告する。委員会はまた、締約国に対し、薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どもに対応するリハビリテーション・プログラムを支援するようにも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、とくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めるよう奨励する。 性的搾取 39.子どもの性的搾取を防止しかつそれと闘うための立法、政策およびプログラムを実施しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、商業的性的搾取が多数発生していることを依然として懸念する。条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、子どもの性的搾取を防止しかつそれと闘うための適切な政策および措置(ケアおよびリハビリテーションを含む)を立案および実施する目的で、締約国が研究を行なうよう勧告するものである。 子どもの売買、取引および誘拐 40.委員会は、国内法において国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約を採択したことも含め、子どもの売買、取引および誘拐の状況に対応するため締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら、委員会は、子ども、とくに女子の売買および取引の発生件数が増加していること、および、立法上の保障を執行し、かつこの現象を防止しかつそれと闘うために充分な措置がとられていないことを、懸念するものである。条約第35条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国が、法執行を強化するために効果的な措置をとり、かつ、子どもの売買、取引および誘拐についての地域の意識を高める努力を強化するよう勧告する。委員会はさらに、子どもの売買、取引および誘拐を防止し、かつそのような子どもの保護および家庭への安全な帰還を促進するため、締約国が近隣諸国との2国間協定の締結を追求するよう勧告するものである。 マイノリティ・グループ 41.委員会は、とくに教育および養子縁組手続との関連で、国内法において子どもの文化的、宗教的および言語的権利が保障されていることに留意する。委員会はさらに、マイノリティに対していっそうの保護を保障する第一歩として締約国が「文化的、宗教的および言語的コミュニティの権利の保護および促進のための委員会」を設置しようとしていることにも留意するものである。しかしながら、委員会は、マイノリティ・グループに属する子どもに保障された権利の全面的実現が、慣習法および伝統的慣行によってひきつづき脅かされていることを懸念する。委員会は、コイコイおよびサンを含むマイノリティ・グループに属する子どもの権利、とくに文化、宗教、言語および情報へのアクセスに関わる権利が保障されることを確保するため、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。 少年司法 42.少年司法を改善するための最近の努力は歓迎しながらも、委員会は、少年司法制度が締約国の全地域を網羅していないことを懸念する。委員会はさらに、以下の点について懸念するものである。 (a) 少年司法が効率的および効果的に運営されていないこと、および、とくに少年司法の運営が条約およびその他の関連の国際連合基準と両立していないこと。 (b) 少年事件の審判が行なわれるまでに長時間かかること、および少年事件に関して守秘義務が存在していないように思われること。 (c) 拘禁が最後の手段として以外にも用いられていること。 (d) 拘禁施設が過密であること。 (e) 未成年者が成人の拘禁施設および刑務所に収容されていること、法律に抵触した子どものための充分な便益が存在しないこと、および、このような子どもとともに働く訓練を受けた職員の人数が限られていること。 (f) 少年司法制度で扱われている子どもの人数に関して信頼のおける統計的データが存在しないこと。 (g) 少年司法制度で扱われているあいだにも子どもが家族との接触を維持することを確保するための規制が不充分であること。 (h) 少年の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための便益およびプログラムが不充分であること。 委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則のようなこの分野における他の国際連合基準にしたがって少年司法制度を実施するため、追加的措置をとること。 (b) 自由の剥奪は最後の手段として、かつもっとも短い可能な期間でのみ用いること、自由を奪われた子どもの権利(プライバシーへの権利を含む)を保護すること、および、少年司法制度で扱われているあいだにも子どもが家族との接触を維持することを確保すること。 (c) 少年司法制度に携わるすべての専門家を対象として、関連の国際基準に関する研修プログラムを導入すること。 (d) 少年司法技術的助言調整委員会を通じ、とくに人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、少年司法国際ネットワークおよびユニセフの技術的援助を求めることを検討すること。 9.委員会の報告書の普及 43.最後に、委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、政府およびNGOを含む公衆一般のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年12月19日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/nightmareofmio/pages/164.html
終末の子ども達 『こら、駄目だぞ一人で危ないところ行っちゃ!』 『リヒの髪は柔らかいねぇ。猫っ毛かい?』 『博士就任おめでとう、今日から君も一人前だ。』 自他共に認める柔らかな髪を、ゆっくりとかきわけ進む指の感触。 わずかだけれどくすぐったい感触。梳くという感触。 他者が自分に触れるという感触。 一秒一秒が柔らかな記憶を呼び起こした。撫でてもらった記憶にはいつも、あの人の笑顔。 『――我々に一矢報いれるとでも思ってました?』 それは突然暗転して違う記憶に切り替わる。髪をひっつかまれ、地べたに押しつけられて。 『ほら、やっぱりそんな目をする。』 『私達の、駒となりなさい。』 『さぁ…御覧なさい。』 生まれた時、生まれた場、生まれた血、生まれた己を、呪う。 貴方ガ罪ヲ犯シタカラ 貴方ノ血族ハ滅ビルノデス 「きみが、すきだから」 場違いに割り入った聞き慣れない言葉。 いやに明瞭に突き刺さった言葉。 意味が、わからない。もう一度言ってほしい。 そう、思った頃に落ちる水音。 そして、転がる身体。 驚くような光景じゃない。のに。 身体がざわついて動けなかった。 「…安っぽい台詞。」 声がした。そちらを向くと瓦礫の上に腰かけた、つまらなそうな少女がいた。 だが目が合った瞬間表情が変わる。艶然と唇をつりあげて、猫のような瞳を悪戯っぽく向けた。 「すき、だなんて笑っちゃう。軽くて作りもので大量生産品。」 覚えてる。樹は少女を凝視した。桃色の髪もエメラルドの瞳も。 「そんな言葉だけ持ってのこのこ来たんだったら、ますます笑っちゃう。」 少女を指し示す単語が、樹の脳裏に浮かんだ。 だがそれは一瞬で形を変えて、一文字の漢字に変わる。 「…桃…。」 「そう呼ばないでって言ったじゃない。」 形のいい唇がつり上がる。 「"レティ"って呼んで?」 どくっ、と心臓が震える。桃は構わずくすくすと笑った。 「おかえりなさい、ジュプトルさん。無事に歯車は集まりました?」 透明なエメラルドがさらに透き通る。人形、じみた綺麗すぎる光を宿す。 「ずっとお待ち、してたんですよ。よかった、ちゃんと帰ってきてくれた。」 「桃…何言って…。」 「それとも、失敗して帰ってきちゃいました?ほんとにもう、ジュプトルさんはしっかりしてるようで抜けてるんだから。」 くすくすくすくすくすくすくす。笑いはどこか空虚だ。 愛らしく壊れた笑い声が、彼女の背景に暗黒の空を描きだす。 「でもね、もういいんです。もういいんですよ。」 笑い声が止んだ。 笑顔から悪戯っぽさも艶めかしさも消えた。彼女は指先を緩やかに持ち上げて、自分でキスをする。 「もう、いい?」 「だって、もう疲れたでしょう?」 キスをした右手を、樹へと差し出す。 露わになった微笑みは、聖女のように慈愛に満ちていた。 「わたしと、終わりましょう。」 呆然とする樹。桃は諭すように優しく説いた。 この手に5秒触れるだけでいいのだと。そうすれば樹も桃も安らかに眠れるのだと。 「貴方のために、今日のためにわたし、ちゃんと準備してきました。ひとりぼっちにはさせません。」 揺れるスカート。その裾についた、赤黒い染み。 「その途中であなたを見つけて、ずっと見てたわ。…もう疲れたでしょう?」 「……。」 「見ていられなかったわ…あなたは自ら、ぼろぼろになっていく。」 一瞬だけ桃は眉根を寄せて、悲しさをその目に映す。 けれどすぐさま瞬きをしてリセットした。再び笑顔が装着される。 「けど仕方ないわよね。わたしたち、そういう運命なの。」 明るい声だった。それこそ作りもののように明るい声だった。 「あの時代に生まれた瞬間からずっとそう。在るものは奪われていく。在るものは亡くしていく。そういう運命なの。信じたいものはみんな、消えてしまうの。」 消えていく。信じたいもの、信じていたもの。 ただいまと言える家、大切な家族、笑い合える友達、尊敬する師。 生きていた時代。生きている今。 光なんて、朝なんて。待っても来ないものは無いと同じ。 わたし達には与えられなかった。ただそれだけのこと。 わたし達には、寝ても覚めても悪夢しかないの。 「…ね?そうでしょう?」 にこっ、と目を細めて微笑む桃。 答えは樹の表情を見れば明白だ。可哀想に、こんなに疲れきって。 浅い眠りでは悪夢を見る。目覚めればもっと悪夢を見る。 だから。わたしはもう何もいらなかった。あなただけ以外の何も何も。 さぁ、わたしの手を取って。深く深く、一緒に眠るために。 「"リヒルト"。」 桃はすぅと目を開いて、艶やかな表面に樹を映しだす。 名前に動じた樹を見て嬉しくなった。この名を知るのはあの女とマイヨール、そしてわたしだけ。 「わたしと、心中してください。」 一世一代の大告白。 樹は誘い込まれるように…そっと手を伸ばした。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/121.html
総括所見:スウェーデン(第3回・2005年) 第1回(1993年)/第2回(1999年)/第4回(2009年)/第5回(2015年)OPAC(2007年)/OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.248(2005年3月30日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年1月11日に開かれた第1001回および第1002回会合(CRC/C/SR.1001 and 1002参照)においてスウェーデンの第3回定期報告書(CRC/C/125/Add.1)を検討し、2005年1月28日に開かれた第1025回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、条約第44条1項(b)に基づいて締約国によって提出される定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58、1996年11月20日)にしたがって、参加型の方法で作成されかつ期限どおりに提出された、締約国の第3回定期報告書の提出を歓迎する。委員会は、事前質問事項(CRC/C/Q/SWE/3)に対する締約国の文書回答により、スウェーデンの子どもの状況についての理解をいっそう明確なものにすることができたことも歓迎するものである。委員会はさらに、省庁横断型の代表団の構成員による率直な対話および提供された回答を歓迎する。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.3)の検討を受けて行なわれた委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.101)を実施するために締約国がとったフォローアップ措置を、高く評価する。これには議会における公開討議の開催も含まれ、その後、委員会の勧告を実施することを目的とするさまざまな立法上、行政上その他の措置がとられたことにより、とくに以下のような成果につながった。 (a) 子どもの権利条約の実施のための国家戦略(1999年)、議会への通告(Comm. 2003/04 47)によるその更新および継続。 (b) 国家障害政策行動計画(2000年)、および、障害のある子どもの権利の実施を向上させるための関連法の改正。 (c) 虐待からの子どもの保護を向上させるための社会保障法改正(2002年)。 (d) 2004年5月1日に施行された法律による、早期婚および強制婚の不承認。 (e) 国際養子縁組に関する改正法(Bill 2003/04 131)の施行(2005年1月1日)。 (f) 性的虐待および搾取からの子どもの保護を向上させるための、さまざまな立法上の措置。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 4.委員会は、締約国の第2回定期報告書の検討を受けて行なわれた委員会の勧告が実施されていることをあらためて歓迎する。しかしながら委員会は、一部の懸念表明および勧告、とくにパラ11(「隠れた子ども」に対する差別)、16(無償の家族カウンセリング・サービスの提供)、18(経済格差)および19(いじめ)に掲げられたものへの対応が不十分であることを遺憾に思うものである。委員会は、これらの懸念および勧告がこの総括所見で繰り返されている場合もあることに留意する。 5.委員会は、締約国に対し、第3回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた懸念に対応するためにあらゆる努力を行なうよう促す。 独立の監視 6.委員会は、子どもオンブズマンの役割を強化する2002年法案の制定を歓迎するとともに、子どもの権利の実施のために子どもオンブズマンが行なった多くの活動に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、さらなる改善が達成可能であるという見解に立つものである。 7.委員会は以下の措置を勧告する。 (a) 締約国が、子どもオンブズマンに対し、個別の苦情申立てを調査する権限を与えることを検討すること。 (b) 子どもオンブズマンの年次報告書を、子どもオンブズマンの勧告を実施するために政府がとろうとしている措置についての情報とともに、議会に提出すること。 実施、調整、評価および国家的計画 8.委員会は、スウェーデンにおける子どもの権利条約の実施のための戦略が1999年に議会によって承認されたこと、および、その後、同戦略の実施に関する調整機関として保健社会問題省が指定されたことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、条約の実施に関わる政策の調整が自治体、県および省庁間においてしばしば弱いことを懸念するものである。 9.委員会は、総括所見を含む条約の実施をすべてのレベルで確保するためにあらゆる主体間の行動を調整する目的で、非政府組織ならびに関連省庁、県および自治体が参加する常設の体制を設置するよう、勧告する。 データ収集 10.委員会は、以下の点に懸念とともに留意する。 (a) 障害のある子どもの総数に関するデータが入手可能とされていないこと。 (b) 虐待の被害を受けた15~18歳の子どもに関するデータが入手可能とされていないこと。 (c) 性的搾取の被害を受けた子どもの総数が精確でないこと。 11.委員会は、締約国が、子どもに関するデータを収集するあらゆる機関間で調整のとれたアプローチを確立するとともに、条約が対象とするすべての分野を編入した包括的なデータ収集システムを導入するよう、勧告する。とくに、委員会は以下のことを勧告するものである。 (a) 障害のある子どもに関するデータを収集し、かつ障害種別に細分化すること。 (b) 虐待の被害を受けた子どもに関するデータを成人に関するデータから分離すること。 (c) 性的搾取の被害を受けた子どもに関するデータをいっそう精確なものとすること。 研修/条約の普及 12.委員会は、条約の普及に関して締約国報告書で提供された情報、ならびに、条約について知らせるために子どもオンブズマン、さまざまなNGOおよび教育庁がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもたち自身ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家によって、とりわけ司法制度内、政治家間および自治体レベルで、条約の精神が十分に知られかつ理解されていない可能性があるという見解に立つものである。 13.委員会は、締約国に対し、子どもならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(とくに法執行官および必要に応じて議員、裁判官、弁護士、保健従事者、教員、学校管理者その他の専門家)を対象として子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を行なうための努力を継続するよう、奨励する。 市民社会との協力 14.委員会は、NGOとのすばらしい協力関係について締約国を称賛する。にもかかわらず、委員会は、この協力関係がしばしばその場限りのものであることに留意するものである。 15.委員会は、NGOとの協力関係を体系的かつ構造的なものとするよう勧告する。 国際開発協力 16.委員会は、国際協力および国際開発援助の分野における締約国の傑出した業績に、評価の意とともに留意する。これとの関連で、委員会は、締約国が国内総生産の相当割合を対外援助に配分しており、かつ、その60%は子どもに対して、または子どもとともに、子どものためにもしくは子どもに代わって活動しもしくは子どもの利益を保護する専門家等に対して支出されていることに、留意するものである。 17.委員会は、締約国が、とくに開発途上国との二国間協力において当該国に関する委員会の総括所見および勧告を考慮し、かつその実施のための支援を提供することによって、子どもに関わる国際開発協力プロジェクトにおける指導的役割を引き続き果たしかつ強化するよう、勧告する。 2.一般原則 差別の禁止 18.委員会は、とくに子どもとの関連で人種主義と闘い、かつ、条約第29条1項にしたがい、子どもの教育が、自己の文明と異なる文明の尊重および諸人民間の友好の発展を目的として行なわれることを確保するために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに学校における人種主義および13歳未満の子どもを勧誘する人種主義的団体についての報告があることを懸念するものである。 19.委員会は、締約国が、人種主義および外国人嫌悪と闘うためにとられる措置(教育分野におけるものを含む)を引き続き強化するよう勧告する。 20.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置のうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 21.委員会は、子どもの最善の利益の原則を編入した新たな立法上の措置およびプログラム、とくに1998年の親法改正、保健福祉庁に与えられた指示、社会サービス法の1998年改正および青少年ケア法を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、庇護希望者および移民である子どもの最善の利益が庇護手続において十分に考慮されていないことを懸念するものである。 22.委員会は、とくにスウェーデン移民庁の指針および手続を改革することにより、子どもが関わる庇護事件において子どもの最善の利益の原則が基盤とされかつ手続および決定の指針となることを確保するため、締約国が適当かつ効果的な措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 23.委員会は、自己に関わるすべての事柄について自由に意見を表明し、かつその意見を正当に考慮される子どもの権利を強化するために締約国が行なった、「影響力フォーラム」および法手続・学校問題について意見を聴かれる子どもの権利のような、さまざまなプログラムおよび法改正を歓迎する。しかしながら委員会は、このような注目すべき取り組みにも関わらず、社会で自己の生活に関わる事柄についての真の影響力を何ら有していないと感じている子どもおよび若者がいることを、依然として懸念するものである。 24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに関連する行政上その他の決定に、子どもの意見がどのように引き出され、子どもの意見がどの程度採択されたかおよびそれはどのような理由によるものかについての情報が記載されることを確保すること。 (b) 監護権および面接交渉権をめぐる、争いの非常に激しい紛争の当事者である子どもへの、適切な援助の提供を検討すること。 3.市民的権利および自由 情報へのアクセス 25.委員会は、子どもがインターネットでアクセス可能な暴力および夕方の早い時間にテレビで放映される暴力の度合いについて懸念を覚える。委員会はさらに、児童ポルノおよび暴力的なコンピューターゲームからの子どもの保護が不十分であることを懸念するものである。 26.委員会は、締約国が、インターネット、テレビおよびコンピューターゲームにおける暴力ならびに児童ポルノの表示から子どもを効果的に保護するためにあらゆる必要な措置(適切な法律の執行、親教育の提供および子どもの意識啓発によるものを含む)をとるよう勧告するとともに、この点に関する国際協力を奨励する。 4.家庭環境および代替的養護 不法な移送および不返還 27.委員会は、不法に移送されまたは返還されない子どもを取り戻す際に個人が負担した費用を補償するための金銭的援助が利用可能であること、および、国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ第28号条約(1980年)の実施状況の検討が進められていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、国際結婚の子どもが関与する事案で係争中のものがいまなお多いことに留意するものである。 28、委員会は、締約国が、子どもの最善の利益を正当に考慮しながら、子どもの不法な移送および不返還を防止し、かつ係争中の事案を解決するための措置を引き続き強化するよう、勧告する。 代替的養護 29.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 里親ホームではなく施設に措置される子どもの人数が増えていること。 (b) 外国の背景を有する子どものうち施設に措置される子どもの割合が、スウェーデン国籍の子どもの割合よりも高いこと。 (c) 施設養護庁が自主規制の役割を担っていること。 30.委員会は以下のことを勧告する。 (a) 子どもの養護措置が必要となる段階まで事態が発展する前に援助を提供できるよう、締約国が、外国の背景を有する家族をとくに対象とする防止措置(社会サービス機関内における、文化的背景および移民としての地位の関連性に関する意識啓発を含む)をとること。 (b) 子どもがその意思に反して養護の対象とされる事案の規制が施設養護庁とは別の組織のもとで行なわれるようにし、かつ当該規制において養護の質も確保されるようにすること。 5.基礎保健および福祉 健康および保健サービス 31.委員会は、母親、乳児および学童の保護に関して締約国報告書に記載された情報を歓迎する。委員会は、保健ケア開発国家行動計画(1999/2000 149)を心強く思うものである。しかしながら委員会は、保健ケアおよび保健サービスのこの側面が県の担当とされていることに留意するとともに、これとの関連で、諸地域間で不平等が生じうることを懸念する。委員会は、とくに、ストレスの影響を感じている生徒の人数が増えていること、自殺、過食症、拒食症、体重過多および肥満の発生件数が増加していること、ならびに、子どもの精神保健に関するプログラムが設けられていないことを懸念するものである。 32.委員会は、締約国が、以下のことのために必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 生徒のストレス水準を低減させ、かつ生徒がストレスの影響に対処するのを援助すること。 (b) 自殺を防止すること。 (c) 過食症および拒食症の問題に対応すること。 (d) 体重過多および肥満の問題に対応すること。 (e) 子どものための精神保健プログラムを、防止プログラムおよび介入プログラムのいずれについても強化すること。 思春期の健康 33.委員会は、学校における性教育、薬物およびタバコの使用ならびにアルコール濫用に関して行なわれている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、10代の妊娠中絶が2002年に急増したこと、ならびに、タバコおよび薬物の使用ならびにアルコール濫用が蔓延していることを依然として懸念するものである。 34.委員会は、締約国が、思春期の健康政策を促進し、かつ学校における健康教育プログラムを強化するための努力を増強するよう勧告する。委員会はさらに、とくにリプロダクティブヘルスに関わる健康教育訓練プログラムの有効性を強化し、かつ、子どもの最善の利益にかなうときは親の同意を得ることなくアクセスできる、若者に配慮した、かつ秘密の守られるカウンセリング、ケアおよびリハビリテーションのための便益を発展させるための措置(十分な人的資源および財源の配分を含む)を勧告するものである。委員会はまた、締約国が、タバコおよび薬物の使用ならびにアルコール濫用を防止しかつこれと闘うための努力を継続することも勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 いじめ 35.委員会は、教育法(Skollagen - 1985 1100)および全国カリキュラムへのいじめ対策規則の編入および「ともに」(Tillsammans)と題された2001~2002年のいじめ反対キャンペーンのような、いじめ根絶のために行なわれている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、当該規則がいまなお全面的に実施されなければならない状態にあり、かつ、障害のある子どもおよび外国系の子どもに対するいじめが引き続き懸念事項となっていることに留意するものである。 36.委員会は、締約国が、いじめを防止しかつこれと闘うための努力において障害のある子どもおよび外国系の子どもに対して特段の注意を払うこと、および、いじめ対策規則が、子どもの関与を得ながらすべての学校その他の施設で全面的に実施されるべきことを、勧告する。 教育 37.委員会は、無償の義務的学校教育を16歳まで(4~5歳のすべての子どもを対象とする無償の就学前教育を含む)提供しようとする締約国の努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 在留許可を受けていない子ども、とくに「隠れた」子どもが教育にアクセスできていないこと。 (b) 諸地域間で成績に相当の偏差があること。 38.委員会は、締約国が、以下のことを確保するための努力を追求するよう勧告する。 (a) 在留許可を受けていない子どもおよび「隠れた子ども」を含むすべての子どもが教育に対する権利を享受すること。 (b) 学校間および地域間の成績偏差および差異が根絶されること。 (c) 職業訓練が利用可能とされ、かつ学校から職業への移行が支援されること。 7.特別な保護措置 保護者のいない子ども 39.委員会は、保護者のいない未成年者が置かれた状況に対応し、かつ子どもの庇護希望者の受け入れおよび事情聴取の質を高めようとする締約国の努力を歓迎する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) スウェーデン移民庁の監護者のいない子ども担当特別部局のもとから行方不明になる、保護者のいない子どもの人数が多いこと。 (b) 庇護申請の処理に非常に時間がかかり、子どもの精神保健に悪影響が生じる可能性があること。 40.委員会は、締約国が、この分野における努力、とくに以下のことを目的とする努力を追求するよう、勧告する。 (a) 情報および統計の収集に対する調整のとれたアプローチを確保し、ニーズに応じた対応がとれるようにすること。 (b) 子どもが失踪したときに効率的にかつ時宜を得たやり方で対応するため、さまざまな主体間、とくに警察、社会サービス機関およびスウェーデン移民庁間の調整を強化すること。 (c) 保護者のいない子どもそれぞれについて到着後24時間以内に一時的後見人を任命することを検討すること。 (d) 子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とする、これらの子どもの権利に関する研修を継続しかつ強化すること。 (e) とくに、子どもの申請を優先し、かつ、難民の地位に関する条約(1951年)に基づく子どもの庇護希望者の申請を評価する際に子ども特有の形態の迫害を考慮することにより、子どもに関する難民認定手続を子どもに配慮したやり方で実施すること。 家族再統合 41.委員会は、認定難民の家族再統合手続に過度の時間がかかることを懸念する。 42.委員会は、締約国が、認定難民の家族再統合手続への対応が積極的、公正、人道的かつ迅速なやり方で行なわれることを確保するためにとられる措置を強化するよう、勧告する。 性的搾取および人身取引 43.委員会は、1996年にストックホルムで開催された第1回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議後、子どもを性的な虐待および不当な取り扱いから保護するための国家行動計画が採択され、かつ、横浜(日本)で開催された第2回世界会議に向けて当該計画が2001年に改訂されたことに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、性犯罪に関して提案されている、採択されれば性的搾取からの子どもの保護の向上につながる刑法改正も歓迎するものである。しかしながら、委員会は以下のことを懸念する。 (a) スウェーデンにおいて、かつスウェーデン市民の手によって国外で、子どもの人身取引、買春および関連の問題が発生していること。 (b) インターネット経由の接触の結果として性的虐待を受ける子どもの事案が報告されていること。 (c) 児童ポルノに関わる刑法上の子どもの定義が主観的かつ不完全であることも理由として、スウェーデン法による保護がほとんど提供されていないこと。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) サービスプロバイダ、親および教員と協働すること等の手段も用いながら、インターネットを利用している子どものための保護措置およびインターネットの否定的側面に関する子どもの意識啓発プログラムを強化すること。 (b) メディア・キャンペーンも含む教育を通じ、子どもの性的虐待および人身取引の問題に関する専門家および一般公衆の感受性を強化すること等の手段も用いながら、性的搾取および人身虐待の発生を削減しかつ防止するための措置を強化すること。 (c) サービスプロバイダによるインターネット上での児童ポルノの表示を禁止し、かつ、児童ポルノに関わる刑法上の子どもの定義を改正して18歳という明確かつ客観的な年齢制限を定めること等の手段により、児童ポルノの所持および製造を禁ずる法律を強化すること。 (d) 保釈金の供託後に釈放された者へのパスポートの再発行を禁ずる等の手段も用いながら、国外で子どもの性的搾取に関与したスウェーデン市民の訴追を認めた法律を強化すること。 (e) 第1回・第2回子どもの商業的性的搾取に反対する会議(それぞれ1996年および2001年に開催)で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れながら、非政府組織との協力を増進させることも含む調整のとれたやり方で、性的搾取および人身取引の被害者に対して提供される保護(防止、証人保護、社会的再統合、保健ケアへのアクセスおよび心理的援助を含む)を増強すること。 少年司法 45.委員会は、犯罪の有害な影響を低減させる目的で、刑法上の犯罪との関連における調停についての法律(2002年)が制定されたこと、ならびに、罪を犯した若者に対する制裁として監護ケア(1999年)および青年地域奉仕活動が導入されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、子どもの問題に対応する専門の検察官および裁判官が存在しないことを懸念するものである。 46.委員会は、締約国が、委員会が1995年に開催した少年司法の運営に関する一般的討議を踏まえながら、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)ならびに第40条2項(b)および(ii)~(iv)および(vii)、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針の全面的実施を確保するため、法律、政策および予算を見直すよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう、とくに勧告するものである。 (a) 子どもの問題に対応する検察官および裁判官全員が適切な訓練を受けることを確保すること。 (b) 懲罰的措置が、適正手続および法的援助をともなう形で司法機関によってのみとられることを確保すること。 (c) 非行および犯罪のような問題につながる社会的条件の解消の一助とするため、家族およびコミュニティの役割を支援することのような防止措置を強化すること。 8.条約の選択議定書 47.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書の、締約国による批准を歓迎する。委員会はさらに、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を早期に批准する意図を締約国が明らかにしたことを歓迎するものである。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を批准すること。 (b) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく第1回報告書を期限どおりに、すなわち2005年3月20日に提出すること。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 49.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、議会ならびに適用可能なときは州の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 50.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 51.委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国による定期的なかつ時宜を得た報告はきわめて重要であり、委員会は、この点に関する締約国の実績を評価する。委員会は、締約国に対し、2007年9月1日までに、120ページを超えない範囲で(CRC/C/118参照)第4回定期報告書を提出するよう慫慂するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年12月7日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/251.html
総括所見:ドイツ(第3回~4回・2014年) 第1回(1995年)/第2回(2004年)OPAC(2008年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/DEU/CO/3-4(2014年2月25日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2014年1月27日および28日に開かれた第1866回および第1867回会合(CRC/C/SR.1866およびCRC/C/SR.1867参照)においてドイツの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/DEU/3-4)を検討し、2014年1月31日に開かれた第1875回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、ドイツの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/DEU/3-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/DEU/Q/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法措置の採択を歓迎する。 (a) 法律上の父ではない生物学上の父の権利を強化する2013年7月4日の法律。 (b) 互いに婚姻していない両親の監護権を改革する2013年4月16日の法律。 (c) 後見監護法を改正する2011年6月29日の法律。 (d) 2011年12月22日の連邦子ども保護法。 (e) 2008年12月16日の子ども支援法。 (f) 子どもの最善の利益に危険が及ぶ場合の家庭裁判所による措置を促進するための2008年7月12日の法律。 (g) 2007年1月1日の連邦親手当および育児休暇法。 (h) 2005年10月1日の子ども・青年福祉発展推進法。 4.委員会はまた、以下の文書の批准にも評価の意とともに留意する。 (a) 通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書(2013年2月)。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2009年7月)。 (c) 強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約(2009年9月)。 (d) 傷害のある人の権利に関する条約(2009年2月)。 (e) 人身取引と闘うための行動に関する欧州評議会条約(2012年12月)。 5.委員会は、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 (a) 「連邦早期介入イニシアティブ」の確立(2012年)。 (b) 子どもの健康を促進する「連邦政府戦略」の策定(2008年)。 (c) 「子どもにやさしいドイツのために」(Fur ein kindergerechtes Deutschland)と題した2005~2010年の国家行動計画。 6.委員会は、締約国が、条約第40条第2項(b)(ii)および(v)に付した留保を撤回したことを歓迎する。 III.主要な懸念領域および勧告 A.一般的実施措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回報告書に関する2004年の総括所見(CRC/C/15/Add.226)を実施するために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、そこに掲げられた勧告の一部について十全な対応がとられていないことに、遺憾の意とともに留意する。 8.委員会は、締約国が、条約に基づく第2回定期報告書についての総括所見の勧告のうち十分に実施されていないもの(とくに調整、独立の監視、庇護を希望している子どもおよび移住の状況にある子どもに関するもの)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 条約の法的地位 9.委員会は、ほとんどの州が州憲法で子どもの権利を明示的に認めていることに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、ハンブルグ州およびヘッセン州の憲法ならびに連邦憲法(基本法)で子どもの権利が明示的に認められていないことを依然として懸念するものである。委員会はさらに、基本法第59条第2項に基づき、条約が普通連邦法の段階に位置づけられていることに留意する。 10.前回の勧告(CRC/C/15/Add.226、パラ10)に照らし、委員会は、締約国に対し、条約が、基本法に編入されることを通じ、または他のいずれかの手続により、連邦法に優越することを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。 包括的な政策および戦略 11.委員会は、2005~2010年の国家行動計画によって子どもの権利に関する幅広い議論が開始されたことに留意する。しかしながら委員会は、同計画を実際に実施するにあたり、地方レベルで市民社会組織その他の主体の関与を得ることが十分に行なわれなかったことを遺憾に思うものである。青少年および若年成人に焦点を当てた新たな若者政策が2011年に開始されたことには留意しながらも、委員会は、子どもの権利に関するすべての問題が同政策で対象とされているわけではないように思えることを、依然として懸念する。 12.委員会は、締約国が、子どもの権利に関する包括的な政策を策定するための措置をとり、プログラムおよびプロジェクトの策定を進めるために必要な人的資源、技術的資源および財源を関連機関に提供し、かつ、これらのプログラムおよびプロジェクトの監視および評価のために、連邦および州のレベルにおける関連機関の役割および責任についてはっきりと明らかにしたシステムを確立するよう、勧告する。 調整 13.委員会は、締約国における条約の実施を連邦、州およびコミュニティのレベルで調整する中央機関が存在しないことにより、包括的かつ首尾一貫した子どもの権利政策の達成が困難になっていることを、依然として懸念する。 14.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.226、パラ12)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、条約の実施を効果的に調整するための十全な能力および権限ならびに十分な人的資源、技術的資源および財源を備えた十分なかつ常設の機関を国レベルで設置しまたは指定するよう、求める。このような調整には、連邦レベルのさまざまな省庁間、連邦と州の間および諸州間で横断的に存在する問題への対応も含まれるべきである。 データ収集 15.委員会は、締約国が包括的なデータ収集システムの設置の重要性を認識していることに留意する。しかしながら委員会は、締約国が、条約が対象とするすべての分野についてのデータを収集するための包括的なシステムを有していないことを懸念するものである。このことは、とりわけ子どもに対する暴力、傷害のある子ども、少年司法および子どもの難民(とくに保護者のいない子どもの難民)の分野において、子どものための政策、プログラムおよびプロジェクトの効果的な計画、監視および評価を行なう際の主要な障壁のひとつとなっている。 16.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)を想起しつつ、委員会は、締約国に対し、すべての州および18歳に至るまでの子ども時代の全期間を網羅した子どもに関するデータを収集するための包括的かつ統合的なシステムを設置し、かつ、これらの権利の実現における進展を分析しかつ評価するために活用できる、子どもの権利に関する指標を導入するよう、促す。子どもの全般的状況に関する評価を容易にし、かつ、条約を効果的に実施するための政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価の指針とする目的で、データは年齢、性別、障害、地理的所在、民族、移住者としての地位および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。 独立の監視 17.委員会は、連邦、州およびコミュニティのレベルにおける条約の実施を監視するための、また子どもの権利侵害の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた独立の中央機関が引き続き存在しないことを、依然として懸念する。 18.前回の勧告(CRC/C/15/Add.226、パラ16)にのっとり、委員会は、締約国が、ドイツ人権研究所に対し、連邦、州および地方のレベルで条約の実施を監視する権限を委任するよう勧告する。委員会はさらに、同研究所に対して十分な人的資源、技術的資源および財源が配分され、かつ、同研究所の権限に、子どもの権利侵害の苦情を子どもにやさしいやり方で受理し、調査しかつこれに効果的に対応できることが含まれるべきことを勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 19.子どもにやさしい方法で条約を普及するために締約国が行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、おとなおよび子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)が子どもの権利に関する情報に不満足な形でしかアクセスできていないことを懸念する。委員会は、締約国が、条約に関する普及、意識啓発および研修のための十分な活動を、とくに学校において、また子どもとともに働く専門家を対象として、体系的かつ対象を明確にするやり方で行なっていない旨の前回の懸念をあらためて表明するものである。 20.これまでの勧告(CRC/C/15/Add.43、パラ26およびCRC/C/15/Add.226、パラ20)にのっとり、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 学校カリキュラムに条約および人権一般に関する必修単位を含めるとともに、庇護希望者、難民および民族的マイノリティ等の被害を受けやすい立場に置かれた集団にこのような情報を提供するための十分な取り組みを発展させること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、公務員、教員、心理学者を含む保健従事者およびソーシャルワーカー等)を対象とした、条約に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 (c) とくにソーシャルメディアの(同時に出版、ラジオ、テレビその他のメディアの)いっそうの活用を通じ、子どもにやさしい方法による条約についての意識啓発にメディアがいっそう取り組むことを奨励するとともに、公的な積極的周知活動への子どもたち自身の積極的関与を奨励すること。 国際協力 21.委員会は、欧州連合政府開発援助目標の枠組みのなかで締約国が示している、対国民総所得比0.7%という国際的に合意された目標を2015年までに達成することについての決意を歓迎する。委員会は、締約国に対し、当該目標を達成するとともに、開発途上国との間で締結される国際協力についての取決めにおいて子どもの権利の実現が最優先課題となることを確保するよう、奨励するものである。委員会は、その際、締約国が、当該援助受領国に関する子どもの権利委員会の総括所見を考慮するよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、関係国における緊縮政策の実施によって子ども政策のための資源配分に悪影響が生じないことを確保するよう欧州連合に求めることを勧告するものである。 子どもの権利と企業セクター 22.委員会は、締約国が発電のために相当量の石炭を用いていることに留意するとともに、石炭からの放出物が子どもの健康に及ぼす悪影響について懸念を覚える。委員会はまた、国外で事業を行なっており、かつ子どもの権利その他の人権を侵害しているとの報告があるドイツ企業に対して締約国が十分な措置をとっていないことも懸念するものである。 23.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)にのっとり、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国で操業する産業を対象とした、その活動が人権に影響を及ぼしまたは環境その他の問題に関する基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を脅かさないことを確保するための明確な規制枠組みを確立すること。 (b) 子どもの権利に影響を及ぼす企業への補助金の配分といった予算措置をとる際、子どもの最善の利益を考慮すること。 (c) 締約国の領域で操業しまたは締約国の領域から経営されている企業およびその子会社が、子どもの権利および人権のいかなる侵害についても法的に責任を問われることを確保する目的で、民法上、刑法上および行政法上の枠組みを検討しかつ修正すること。 (d) 人権理事会が2011年に採択した「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合『保護・尊重・救済』枠組みの実施」にのっとり、企業活動から生じるいかなる悪影響からも地域コミュニティ(とくに子ども)を保護する目的で、ビジネスと人権に関する国際基準および国内基準を遵守すること。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 24.委員会は、締約国がとった反差別のための措置、とくに理解および寛容の文化の促進を目的とした措置を歓迎する。しかしながら委員会は、障害のある子どもおよび移住者としての背景を有する子どもが、とくに教育および保健ケアサービスに関わって、締約国において引き続き差別に直面していることを依然として懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、教育、保健および発達へのアクセスにおける不平等を縮小するためのプログラムおよび政策を通じ、差別(とくに障害のある子どもおよび移住者としての背景を有する子どもへの差別)と闘うための措置を増進させるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、学校および子どものためのその他の空間において差別に関する意識を高め、かつインクルーシブで寛容な環境を醸成するための努力を継続することも勧告するものである。 子どもの最善の利益 26.子どもの福祉が締約国の法体系における指導原則のひとつであり、かつますます適用される原則となっていることには留意しながらも、委員会は、子どもの最善の利益の原則がまだ連邦法に全面的に編入されておらず、かつ、子どもの最善の利益の優先がまだ立法府、行政府および司法府のすべての分野に統合されていないことにも、懸念とともに留意する。とくに、教育面および社会経済的側面で不利な立場に置かれている子ども(子どもの難民および庇護希望者を含む)に関わる事件で、子どもの最善の利益が無視されることが多い。 27.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に対して締約国の注意を喚起する。前回の勧告(CRC/C/15/Add.226、パラ27)にのっとり、委員会は、この権利が、すべての立法上、行政上および司法上の手続、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を、締約国が強化するよう勧告する。これとの関連で、締約国は、すべての分野で子どもの最善の利益について判断することおよび子どもの最善の利益を第一次的考慮事項として正当に重視することについての指針を、権限を有する立場にあるあらゆる関係者に対して示すための手続および基準を策定するよう、奨励されるところである。このような手続および指針は、私立の社会福祉施設、裁判所、行政機関、立法機関および公衆一般に対して普及されるべきである。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条および第13~17条) 出生登録 28.委員会は、国民および外国人であるすべての子ども(難民および庇護希望者を親とする子どもを含む)の出生登録についての締約国における発展を歓迎する。しかしながら委員会は、証明書の発行を担当する登録官が在留資格を確認し、かつその結果を出入国管理機関に通知しなければならないことに鑑み、在留資格が非正規である新生児のための出生証明書の取得に関して実際上の困難が残っていることを懸念するものである。 29.委員会は、締約国に対し、出生登録が、親の法的地位および(または)出身にかかわらず、すべての子どもにとって可能なかぎり早期に利用可能とされることを確保するために適切な措置をとるよう、促す。委員会は、その際、締約国が、教育施設の職員について2011年に行なったように、登録担当官について、出入国管理機関に情報を通知する義務を免除するよう勧告するものである。 アイデンティティに対する権利 30.委員会は、新たな赤ちゃんボックスを設置しない旨の決定が行なわれたことおよび匿名出産の規制が計画されていること、ならびに、遺棄される新生児の人数を減らすことを目的として妊婦および最近出産した女性への支援が提供されていることに留意する。しかしながら委員会は、赤ちゃんボックスが規制されておらず、かつ使用され続けていること(これは、とくに条約第6条~9条および第19条に違反する)を遺憾に思うものである。 31.委員会は、締約国に対し、匿名で子どもを遺棄する慣行を終了させるために必要なあらゆる措置をとり、かつ、可能なかぎり早期に代替的選択肢を強化しかつ促進するよう、強く促す。委員会はまた、締約国に対し、新生児の遺棄の根本的原因を研究し、かつこれに対処するための努力を増進させることも促すものである。このような対応には、家族計画およびリプロダクティブヘルスのためのサービスの提供、計画外の妊娠の場合の十分なカウンセリングおよび社会的支援、高リスク妊娠の防止、困窮している家族への支援、ならびに、最後の手段としての、病院における匿名出産の可能性の導入を含めることが求められる。この点に関して、締約国は、条約のすべての規定を全面的に遵守する義務を考慮し、子どもが将来的にアクセスできる、親に関する秘密の記録を保存しておくべきである。 D.子どもに対する暴力(条約第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条) 体罰 32.委員会は、子どもが暴力を受けない養育に対する制定法上の権利を有していることに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、相当数の子どもが家庭においてさまざまな形態の暴力を経験していることを、依然として懸念するものである。 33.委員会は、締約国が、暴力を受けない養育に対する権利がいっそう効果的に実施されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、体罰に代えて行なう積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育ておよびしつけを促進するために現在実施されている意識啓発プログラムを発展させかつ強化するよう、勧告するものである。 性的搾取および性的虐待 34.委員会は、性的搾取および性的虐待を防止し、かつ性犯罪の被害者に援助および支援を提供するための措置が不十分であることを懸念する。これには以下のことが含まれる。 (a) 学校および子どもが通っているその他の施設における防止措置が不十分であること。 (b) 同国の一部でカウンセリングサービスが不十分であり、かつ性暴力の被害を受けた子どものための治療施設が不十分であることから、とくに東部の州および農村地域において欠落が生じていること。 (c) 専門的サービスに対する資金拠出が不十分であること。 (d) とくに男子、障害のある子どもおよびドイツ語をまったくまたは十分に知らない移住者の子どもにとって、支援およびカウンセリングサービスへのアクセスが不平等であること。 (e) 子どもの性的虐待問題に関する独立コミッショナーに恒久的地位が認められていないこと。 35.委員会は、締約国に対し、以下のことを確保する目的で、すべての保護制度関係者間の調整を強化し、かつあらゆる必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう促す。 (a) 学校および障害のある子どものための施設ならびに青年福祉施設その他の施設(宗教部門、スポーツ部門および文化部門の施設等)における、子どもに対する性暴力の防止。 (b) 性的搾取および性的虐待の被害を受けた子どもを対象とする、十分なカウンセリングサービスおよび治療施設への無制限のアクセス。 (c) 専門的サービスに対する資源配分。 (d) 外国語および手話による通訳の提供を通じた、カウンセリングサービスおよび治療施設へのバリアフリーなアクセス。 (e) 子どもの性的虐待問題に関する独立コミッショナーの恒久的地位。 36.教会職員が行なった児童虐待事件を捜査するために締約国がとった措置には留意しながらも、委員会は、複数の事件について捜査が行なわれていないことを懸念する。 37.委員会は、締約国が、教会職員が行なったとあsれる児童虐待事件の捜査および訴追を速やかに進めるため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 有害慣行 38.委員会は、締約国に住んでいる相当数の女子が、性器切除の影響を受けており、または性器切除が実行されている国へ一時的に送られもしくは締約国内で性器切除の対象とされる危険性にさらされていることを懸念する。委員会はまた、医師、助産師および病院職員が性器切除ならびに防止措置および保護措置について十分な情報を得ていないことが多く、そのため助言および援助ができないことにも、懸念とともに留意するものである。 39.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.226、パラ47)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、女性性器切除を禁止する国家的な政策および戦略を作成し、かつ以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての関連の専門家集団(とくに医師、助産師、病院職員、教員、ソーシャルワーカーおよび子どもヘルプライン相談員)を対象として、女性性器切除の防止およびこれへの対応に関する研修を実施すること。 (b) とくに市民社会およびメディアの関与を得ることにより、この慣行を防止するための情報普及・意識啓発キャンペーンをさらに強化しかつ組織すること。これとの関連で、危険な状況に置かれた女子を対象とする、援助および助言へのアクセスに関する情報を提供するキャンペーンにとくに焦点が当てられるべきである。 (c) とくに、女性性器切除が実行されている国に対する財政的および技術的援助を拡大することにより、国際協力プログラムにおける女性性器切除の撤廃のための措置をさらに強化すること。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 40.委員会は、学校その他の施設において子どもが経験している継続的な暴力(身体的暴力、いじめおよび増加しつつあるネットいじめを含む)について懸念を覚える。さらに委員会は、この問題に対応する十分な資格を有する教員およびスクールソーシャルワーカーが一部の学校で存在せず、かつ他の施設でも資格を有する職員が存在しないことを懸念するものである。 41. 子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)を想起しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対応するための、包括的な国家的戦略を策定すること。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対応するための国家的な調整枠組みを採択すること。 (c) 暴力の発生を認識し、かつこれに効果的に対応できるようにするための学習を目的とした、教員およびソーシャルワーカーを対象とする全国的な意識啓発・研修プログラムを実施すること。 (d) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表および他の関連の国際連合機関と協力すること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第9~11条、第18条第1~2項、第19~21条、第25条および第27条第4項) 42.親の関係の規制について締約国が行なった重要な変更、とくに子どもの共同監護権の確立に向けた大きな流れは歓迎しながらも、委員会は、締約国が、法律において、条約でおよび子どもの権利条約の発効後に採択された国際文書のいくつかで用いられている「親の責任」(parental responsibility)ではなく「監護権」(custody)という用語をいまなお用いていることに留意する。 43.委員会は、締約国が、条約の趣旨および目的にのっとり、「監護権」という用語に代えて「親の責任」を用いる可能性を検討するよう勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 44.委員会は、家族再統合に関する締約国の厳格な規則について懸念を覚える。当該規則では、残された子どもが欧州連合市民ではない場合に締約国で親とともに暮らすことを認められるのは、その子どもが16歳未満であり、かつその生計維持手段が保障されている場合に限ると規定されている。 45.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が、家族再統合に対する外国人の子どもの一般的権利を制定法により18歳まで確保するよう勧告する。 46.親としての義務の履行に関して親を支援するために締約国がとった立法措置は歓迎しながらも、委員会は、以下の問題について懸念を覚える。 (a) 家庭環境を奪われて公的ケアの対象とされる子どもの人数が増えていること。 (b) 危険な状況に置かれた家族を支援するための公的青年福祉サービスに十分な資源が配分されておらず、かつ、親の言語によるサービスまたは通訳を提供している地方当局の数が少ないこと。 (c) 行動障害のある子どもを、適正な監督および評価を行なうことなく、欧州連合の他の国で里親委託する慣行が行なわれていること。 47.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族支援制度を向上させ、かつ、子どもの里親委託が子どもの最善の利益にかなう場合にのみ用いられることを確保すること。 (b) 社会的および経済的困難に直面しているすべての家族(とくに言語の障壁の克服に関して困難を有している移住者家族を含む)が福祉サービスを利用できるようにするため、福祉サービスに十分な人的資源および財源を提供すること。 (c) 子どもを欧州連合の他の国に措置する政策を修正するとともに、十分な監督、フォローアップおよび評価を行なうこと。 48.乳幼児期の教育およびケアを拡大するために締約国が行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、一部の州で、とくに3歳未満の子どもが利用できる乳幼児期の教育およびケアのためのサービスが少ないこと、ならびに、乳幼児期の教育およびケアのための施設の質的基準に関して州の間で格差があることを、依然として懸念する。委員会はまた、脆弱な状況に置かれた家族(とくに移住者家族)にとってそのようなサービスへのアクセスが困難であることも懸念するものである。 49.委員会は、締約国が、欧州2020年成長戦略にしたがって乳幼児期の教育およびケアに関する包括的な国家的政策を採択するとともに、すべての子どもが差別なく質の高い乳幼児期の教育およびケアにアクセスできることを確保するよう、勧告する。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1~3項および第33条) 障害のある子ども 50.委員会は、障害のある子どもの状況を分析しかつ向上させるために締約国が行なっている取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、教育が、とくに中等学校段階でインクルーシブな性質を有していないことを懸念するものである。この文脈において、委員会は以下のことにも懸念とともに留意する。 (a) 教育部門において連邦レベルと州のレベルとの間の協力が不十分であること、および、カリキュラムの適合が図られておらず、または、教育に対するインクルーシブなアプローチについての、すべての教員および学校職員を対象とする体系的な研修が実施されていないこと。 (b) 教育分野における個別支援および合理的配慮の必要性が認識されておらず、かつ、手話に関する規則が州によってさまざまであること。 (c) 一部の州で、初等段階の子どもがその親の意思に反して特別学校に就籍させられていること、障害のある児童の圧倒的多数が特別学校に通っていること、および、障害のある子どもの多数が修了証を得ないまま学校を離れていること。 51.条約第23条および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、障害に対する人権基盤アプローチをとるよう締約国に促すとともに、具体的に、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 全国的なインクルーシブ教育の確立を追求するとともに、特別学校で利用可能な資源を活用すること等も通じ、必要な資源が利用可能となることを確保すること。 (b) インクルーシブ教育に対する権利が障害のある子どもに保障され、かつ、教育分野における個別支援および合理的配慮への権利が当該権利に包含されることを確保するため、あらゆる必要な法改正および構造的改革を行なうこと。 (c) 障害のある子どもおよびその家族が、当該の子どもが特別学校に通うべきか否かについて決定が行なわれる際に発言権を有することを確保すること。 52.委員会は、締約国が実施した最近の研究における、障害のある女子がしばしば性暴力を含む暴力の危険にさらされている旨の知見について懸念を覚える。 53.委員会は、締約国が、障害のある女子の安全に特段の注意を払いながら、障害のある子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止するためにすべての必要な措置をとるよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、暴力の被害者となった障害児を対象とする、保護および苦情申立てのための特別な機構を設けるよう勧告するものである。 54.委員会は、移住者家族の障害児が、情報がないために、または親が必要な書類および申請書になかなかアクセスできず、かつ(もしくは)障害について無知であるもしくは意識を欠いているために、移住者としての背景を有さない他の障害児と同一の支援を得られないことが多いことに、懸念とともに留意する。 55.委員会は、締約国が、移住者としての背景を有する障害児がいる家族に対して支援へのアクセスに関する十分な情報および援助が提供されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 健康および保健サービス 56.委員会は、以下の問題について懸念を覚える。 (a) 愛着障害(これは完全母乳の減少と関連している可能性がある)、ならびに、学校でよい成績を収めなければならないというプレッシャーを理由とする子どもの情緒的問題および行動上の問題と関連した、子どもの新たな不健全状態への対応が不十分であること。 (b) 庇護希望者である子どもおよび非正規移住の状況にある子どもが、急性疾患の治療、予防的保健ケアおよび心理社会療法を含む保健サービスに十分にアクセスできていないこと。 57.委員会は、締約国が、運動ならびに健康的な食習慣およびライフスタイルの重要性を強調しながら、学校および家族を対象とする働きかけおよび意識啓発のプログラムを実施するよう勧告する。締約国はまた、保健上の成果に関して存在している格差に対応するためにもあらゆる必要な措置をとるべきである。脆弱な状況にある子どもおよび若者、とくに社会的に不利な立場に置かれた背景または移住者としての背景を有する子どもおよび若者に、特段の注意を払うことが求められる。さらに委員会は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての委員会の一般的意見15号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、母乳代替品の販売促進を規制し、かつ、新生児と母親との絆の向上を促進するはずである母乳育児を行なうよう締約国内の母親に奨励するため、あらゆる必要な立法上および制度上の措置をとるよう勧告するものである。 精神保健 58.委員会は、子どもに対する精神刺激薬の処方が増加しており、かつ注意欠陥多動性障害(ADHD)および注意欠陥(ADD)の診断が過剰に行なわれていること、ならびに、とくに以下のことを懸念する。 (a) 精神刺激薬であるメチルフェニデートが過度に処方されていること。 (b) ADHDまたはADDであると診断/誤診された子どもが家族から強制的に分離され、かつ、その後、里親委託または精神病院への措置の対象とされていること(精神病院に措置された子どもの多くは向精神薬による治療の対象とされている)。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの里親委託または精神病院への措置が、適正な診断後、最後の手段としてのみ用いられることを確保すること。 (b) 家族が心理カウンセリングおよび情緒的支援にアクセスできるようにすること。 (c) ADHDおよびADDの診断ならびに子どもを対象とする薬物治療の使用に関する、独立の専門家による監視制度を設置すること。 (d) 関連の保健機関が教室における注意欠如の根本的原因について判断し、かつ子どもの精神保健問題の診断を向上させることを確保すること。 (e) 医学的証拠によって確認されていない事案で子どもが「精神医学上の問題を有している」というレッテルを貼る慣行に終止符を打つこと。 思春期の健康 60.青少年の喫煙が減少していることは歓迎しながらも、委員会は、アルコールの消費が相当に増加していることを依然として懸念する。 61.思春期の健康と発達に関する一般的意見4号(2003年)を参照しつつ、委員会は、締約国が、薬物、アルコールおよび有害物質の濫用の悪影響に関する正確な情報が子どもに提供されることを確保するよう、勧告する。締約国は、このような濫用の有害な影響に関する当該情報が学校カリキュラムによりよい形で統合され、もってこのような濫用を防止するためのライフスキルが教えられることを確保するとともに、有害物質濫用を防止するためのメディアによる報道の増加を奨励するべきである。委員会はさらに、締約国が、秘密が守られる依存症のカウンセリングおよび治療に子どもが十分にアクセスできることを確保するよう、勧告する。 母乳育児 62.委員会は、締約国における母乳育児率の低下に留意しつつも、調製粉乳および離乳期用調製粉乳に関する欧州委員会指令(2006年)の採択のような、母乳育児を促進するための取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、生後6か月間の完全母乳育児率を上昇させるために行なわれている努力が十分ではない可能性があることを懸念するものである。 63.委員会は、締約国が、資料にアクセスできるようにし、かつ母乳育児の重要性および調製粉乳の利用のリスクについて公衆の教育および意識啓発を図ることにより、完全母乳育児および母乳育児の継続を促進するための努力を強化するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を厳格に執行するよう促すものである。 生活水準 64.委員会は、子どもの貧困率および貧困リスク率が高く、かつ、ひとり親家族、大家族および民族的マイノリティの背景を有する家族の子どもが(とくに成人が失業しておりまたは不安定な就労状況にある場合に)とりわけ影響を受けていることを懸念する。さらに委員会は、失業扶助と関連する義務の不遵守があった場合に制裁を課すという、制定法により定められた慣行が、家族または失業中の青少年に対して制裁が課された場合には子どもの生活水準に影響を与える可能性があることを懸念するものである。 65.委員会は、締約国が、子どもの貧困の根本的原因に取り組むために必要な資源の配分および追加的努力を行なうとともに、家族がとりわけ貧困に陥りやすい地域の包括的評価を実施し、かつ適切な是正戦略の策定および実施を進めるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、すべての子どもが十分な生活水準を享受することを確保する目的で、経済的に不利な立場に置かれた家族への物質的援助および支援を増強するよう勧告するものである。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条、第30条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 66.委員会は、教育分野についての責任がほぼ完全に州にあることに留意する。しかしながら委員会は、さまざまな制度の調和が図られておらず、重要な分野で州による差異が生じていることを懸念するものである。委員会はまた、ほとんどの州で学校制度が初等学校、中間学校および進学学校に分類されていることにも留意するとともに、選択を非常に低い年齢で行なわれなければならず、かつその後に進路を変更するのは難しい場合があることを懸念する。委員会はまた、民族的マイノリティの背景を有する子どもの学校における成績が他の子どもよりも相当に低いことも遺憾に思うものである。民族的マイノリティの背景を有する子どもは、民族的マイノリティの背景を有しない生徒と比較して、修了資格を得ないまま学校を離れる人数が2倍にのぼる。 67.教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)、および、2006年のドイツ訪問についての報告書(A/HRC/4/29/Add.3)のなかで教育への権利に関する特別報告者が行なった勧告を考慮しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 州の間で生徒が移動することの便宜を図るため、すべての州の間で学校プログラムをいっそう調和させるために必要な措置をとること。 (b) 生徒が非常に早い段階でさまざまな進路に分離させられる現行教育制度の見直しを実施し、かつ教育制度をいっそうインクルーシブなものとすること。 (c) 民族的マイノリティの背景を有する子どもに対して学校施設のなかで追加的支援を提供するための十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)、第38条、第39条および第40条) 子どもの庇護希望者および難民 68.委員会は、条約第22条について締約国が行なった宣言の撤回を歓迎するとともに、締約国が、多くの国からやってきた数千人の子どもの庇護希望者および子どもの難民を受け入れていることに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 庇護手続法において、16歳の子どもは自ら庇護手続を開始する行為能力があると定められていること。その結果、実際には、16歳以上の子どもが、青年福祉サービスによる全面的保護の利益をしばしば享受できず、かつ成人の庇護希望者を収容するために設計されたセンターに措置されていること。 (b) 締約国における年齢鑑別手続で、品位を傷つけるおよび屈辱的な慣行が行なわれる可能性があり、かつ正確な結果が出ていないこと、および、子どもの庇護希望者および難民の相当数が成人と判断されていること。 (c) 子ども兵士または強制徴募を逃れてきた子どもの特定に欠陥があり、かつこのような事案で庇護申請が却下されるために、これらの子どもの保護のニーズに関して十分な評価が行なわれず、かつこれらの子どもに適切な注意が向けられないこと。 (d) 子どもに言い渡された退去強制が実行されるまでの収容が最長18か月まで継続しうること。これは、自己の最善の利益を第一次的に考慮される権利を直接侵害するものである。 69.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 18歳未満のすべての子どもに対し、平等のかつ子どもにやさしい取扱いを確保すること。 (b) 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年)で勧告されているとおり、子どもの庇護希望者および難民に適用される年齢鑑別手続が、科学的に承認された手法を基盤とし、かつ子どもの尊厳を全面的に尊重するものであることを確保すること。 (c) 子ども兵士および徴募される危険がある子どもの保護のニーズの評価を向上させ、かつこれらの子どもが十分な心理的および社会的支援を得られることを確保する目的で、このような子どもの特定を向上させ、かつこれらの子どもに難民資格が付与されることを確保すること。 (d) 子どもの庇護希望者および移住者の収容が、条約第37条(b)にしたがい、常に最後の手段としてかつもっとも短い適当な期間で用いられること、および、当該収容が期間の制限および司法審査に服することを確保すること。 移住の状況にある子ども 70.委員会は、締約国のさまざまなサービス施設が、その知るところとなった者であって在留許可を得ていないすべての者(子どもを含む)について出入国管理機関に通知する、連邦法上の義務を負っていることを懸念する。実際上、これにより、在留資格が非正規な状態にある子どもが、とくに退去強制につながる可能性がある非正規な地位が発覚することを恐れて、サービス事務所への接触をためらうことになっている。 71.委員会は、締約国に対し、すべてのサービス施設に対して課された、非正規移住の状況にあるいかなる子どもについても出入国管理機関に通知する制定法上の義務を廃止するよう促す。 人身取引 72.委員会は、在留法において、子どもを含む人身取引被害者への在留許可の付与について法執行機関への協力が条件とされていることを懸念する。 73.委員会は、締約国が、人身取引の被害を受けた子どもに対する在留許可の付与と結びついたいかなる条件も撤廃するため、在留法を改正するよう勧告する。 少年司法の運営 74.委員会は、拘禁中の子どもを24歳以下の者とともに収容することを禁じた法改正に、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、すべての州が「最後の手段としての自由剥奪」の原則を適用しているわけでないことを遺憾に思うものである。 75.前回の勧告(CRC/C/15/Add.226、パラ61)にのっとり、委員会は、自由の剥奪があらゆる場合に最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間で用いられるべきことを勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、保護観察または地域奉仕命令のような代替的刑の可能性を拡大するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく締約国の第1回報告書に関する総括所見(CRC/C/OPAC/DEU/CO/1)のフォローアップ 76.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に関わる委員会の前回の勧告を実施するために締約国が行なった努力を歓迎する。しかしながら委員会は、以下の問題について懸念を覚えるものである。 (a) 訓練目的での軍への志願入隊に関する最低年齢が17歳であること。さらに、志願入隊した子どもは、試用期間終了後に脱退を決めた場合に訴追の対象とされるおそれがある。 (b) 軍のための広告キャンペーンの一部がとくに子どもを対象としており、かつ、軍の代表が時として学校の場にいて生徒に話をしたり活動を組織したりしていること。 (c) 子どもが徴募されもしくは敵対行為において使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国が最終目的地である場合における武器の販売を明示的に禁止する法律上の規定がないこと。 77.委員会は、前回の勧告(CRC/C/OPAC/DEU/CO/1)をあらためて繰り返すとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 軍への入隊に関する最低年齢を18歳に引き上げること。 (b) 子どもを対象とした、ドイツ軍のためのあらゆる形態の広告キャンペーンを禁止すること。 (c) 武器の移転に関して最大限の透明性を確保するとともに、子どもが徴募されもしくは敵対行為において使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国が最終目的地であるおそれがある場合の武器の販売を法律で明示的に禁止すること。 78.委員会は、締約国刑法第8条に掲げられた戦争犯罪に関する規定、および、15歳未満の子どもが軍隊または武装集団に徴募された場合は域外裁判権を行使できる旨の締約国の発言に、満足感とともに留意する。委員会は、15~17歳の子どもについても裁判権を設定できることには留意しながらも、これが双方可罰性の条件に服することを遺憾に思うものである。 79.委員会は、締約国が、子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用の防止を目的とした国際的措置をさらに強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもを徴募することおよび敵対行為に関与させることに関する犯罪についての域外裁判権を、双方可罰性の条件に服させることなく拡大することを検討することも、勧告するものである。 I.国際人権文書の批准 80.委員会は、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、締約国が、まだ当事国となっていない中核的人権文書、とくに経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書およびすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准するよう、勧告する。 J.地域機関および国際機関との協力 81.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における子どもの権利条約その他の人権文書の実施に向けて、欧州評議会と協力するよう勧告する。 K.フォローアップおよび普及 82.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所ならびに連邦、州および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 83. 委員会はさらに、条約および選択議定書ならびにそれらの実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、第3回・第4回定期報告書、締約国の文書回答およびこの総括所見を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 L.次回報告書 84.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2019年4月4日までに提出し、かつ、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、当該ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。2012年12月20日の総会決議67/167にしたがい、ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 85.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap. I)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2014年5月6日)。/パラ18の「ドイツ人権機関」を「ドイツ人権研究所」に修正(2019年5月14日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/153.html
総括所見:オーストラリア(第1回・1997年) 第2回・第3回(2005年)/第4回(2012年)OPAC(2012年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.79(1997年10月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1997年9月24日および25日に開かれた第403回~第405回会合(CRC/C/SR.403-405)においてオーストラリアの第1回報告書(CRC/C/8/Add.31) を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1997年10月10日に開かれた第426回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国に対し、委員会のガイドラインに全面的にしたがって作成されたきわめて詳細な報告書に関して、かつ事前質問票(CRC/C/Q/AUS/1)に対する文書回答の提出に関して、評価の意を表する。委員会は、締約国の代表団との建設的かつ開かれた対話、および、対話の過程で代表団から受け取った詳細な回答に、満足感とともに留意するものである。委員会はまた、報告書の検討の過程および検討後に代表団から提供された補足的情報にも留意する。しかしながら、委員会は、締約国が、締約国により行政管理されている外部領域に関する情報をその報告書に全面的に記載していなかったことを、遺憾に感ずるものである。委員会は、条約第2条が、その管轄下にある地域において条約の実施を確保するよう締約国に求めており、したがってあらゆる領域において達成された進展について報告する義務も含んでいることに留意する。 B.積極的な側面 3.委員会は、条約で認められている子どもの権利の実施のための措置を採択することに対し、締約国が固い決意を有していることを評価する。委員会は、具体的には、子どもおよびその親のための幅広い福祉サービス、万人を対象とした無償教育の提供、および先進的な保健システムに留意するものである。 4.委員会は、法改正の分野で締約国が行なった努力に留意する。委員会は、1975年家族法および1994年刑法(子どもセックス・ツーリズム)修正法の最近の改正を歓迎するものである。 5.委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准しようという締約国の意思を歓迎する。 6.国際協力の分野で締約国が行なってきた長期間の努力に留意しながらも、委員会は、締約国に対し、発展途上国に対する国際援助をGDPの0.7%にするという目標を達成するよう奨励したい。 C.主要な懸念事項 7.子どもの権利条約が1986年人権平等機会法のもとで関連の国際文書として宣言され、そのことにより人権平等機会委員会は苦情の検討の際に条約に言及することが可能になっているとはいえ、委員会は、このことが、行政上の決定が同文書の要請にしたがって行なわれるという正当な期待を生ぜしめていないことを懸念する。委員会はまた、子どもの権利条約を根拠に地方裁判所に苦情を申し立てる権利が市民にないことも懸念するものである。 8.委員会は、条約第37条(c)に付された締約国の留保に、懸念とともに留意する。委員会は、この留保が条約の全面的実施を阻害するのではないかということに留意するものである。 9.委員会は、連邦レベルで子どものための包括的政策が存在しないことを懸念する。委員会はまた、連邦および地方のレベルで監視機構が存在しないことも懸念する。そのような機構は、子どものための政策およびプログラムの発展の評価および促進にとって不可欠な重要性を有するものである。予算配分も含む各州の立法および運用に格差が存在することは、委員会の懸念するところである。 10.委員会は、権利の概念は知られているとはいえ、条約およびその原則が一般的に公衆に知られていないことに留意する。委員会は、条約の原則およびそのホリスティックかつ相互関連的なアプローチならびに条約が家族の役割を重視していることに関する十分な理解がコミュニティの一部の層の間に欠けているように思えることを、遺憾に感ずるものである。 11.委員会はまた、連邦レベルおよびすべての州における雇用法制が、子どもの雇用が許されない最低年齢を特定していないことに懸念を表明する。法律はまた、まだ義務教育期間中の子どもの雇用も禁じていない。委員会は、刑事責任年齢が、州により7歳から10歳というきわめて低い水準に一般的に設定されていることを深く懸念する。 12.委員会は、条約の一般原則、とくに差別の禁止(第2条)および子どもの意見の尊重(第12条)に関わる原則が全面的に適用されていないことを懸念する。 13.アボリジナルおよびトレス海峡諸島民の健康水準を向上させるための多くのプログラム、および2年間の反人種主義を開始しようという締約国の意思に関して締約国の代表団から提供された情報には留意しながらも、委員会は、それでもなお、同じ生活水準、およびとくに教育および健康に関する同じレベルのサービスの享受に関して、アボリジナルおよびトレス海峡諸島民ならびに英語圏以外の背景を持った子どもがいまだに特別な問題に直面していることを懸念する。 14.委員会は、親のいずれかが市民権を失った状況下で子どもも市民権を奪われる場合があることを懸念する。 15.委員会は、学校、家庭および施設における体罰の使用が、たとえ軽いものであれ、地方の立法によって禁じられていないことに懸念を表明する。委員会の見解では、このことは条約の原則および規定、とくに第3条、第5条、第6条、第19条、第28条2項、第37条(a)および(c)ならびに第39条に違反するものである。委員会はまた、家庭におこる子どもの虐待および暴力が存在することも懸念する。 16.委員会はまた、地方立法により、集合している子どもおよび若者を地方警察が排除することが認められていることも懸念する。これは、集会への権利を含む子どもの市民的権利の侵害である。 17.委員会は、民間部門で働いている女性が母性休暇の権利を制度的に保障されていないことを懸念する。このことは、国の被雇用者およびその他の部門で働いている者の子どもが異なる取扱いを受けることにつながる可能性がある。 18.居住、教育および保健サービスも含めてホームレスの子どもに提供されている支援サービスには留意しながらも、委員会は、若者の間でホームレスの状況が広がっていることを依然として懸念する。委員会は、このことが、売買春、薬物濫用、ポルノグラフィー、またはその他の形態の非行および経済的搾取に関与する危険に子どもをさらすのではないかと不安に感ずるものである。若者の間で自殺が発生していることも、委員会にとってもうひとつの懸念の原因である。 19.委員会は、一部地域で女性性器切除の慣行が続いていること、およびどの州にもそれを禁ずる立法が存在しないことを、懸念する。 20.委員会は、庇護申請者および難民ならびにその子どもの扱いについて、かつ彼らが収容センターに措置されることについて、懸念する。 21.少年司法制度に関わる状況、および自由を奪われた子どもの取扱いは、とくに条約および北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国連規則のような他の関連の基準の原則および規定に照らして、委員会の懸念するところである。 22.委員会はまた、アボリジナルの子どもが、正当化しえない、不相応に高い割合で少年司法制度において扱われていること、および、その保釈申請が通常は拒否される傾向が存在することも、懸念する。委員会はとりわけ、アボリジナルが高い割合で住んでいる2つの州で新しい立法が制定されたことを懸念するものである。この立法は少年の全件収容および懲罰的措置を規定するものであり、したがってアボリジナルの少年が高い割合で収容されることにつながる。 D.提案および勧告 23.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国に対し、条約第37条(c)に付した留保を撤回の方向で見直すよう奨励する。委員会は、第37条(c)が、子どもの最善の利益にかなう場合には、自由を奪われた子どもを成人から分離する必要性を免除することを認めていることを強調するものである。 24.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の実施のためのプログラムおよび政策の立案およびその実施の監視に責任を持つ連邦機関を創設するよう勧告する。委員会は、子どもの権利の分野における、非政府組織およびアボリジナルおよびトレス諸島民のコミュニティと公的機関との間の協力もさらに強化するよう提案するものである。 25.委員会は、締約国に対し、国際協力に関するプログラムおよびスキームにおいて子どもに対して特別財源を配分するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、条約の原則および規定を国際開発援助プログラムの枠組みとして活用するようにも奨励するものである。 26.委員会は、締約国が、私立学校および家庭における体罰を禁止するために、法的なものも含むあらゆる適切な措置をとるよう提案する。委員会はまた、代替的形態のしつけおよび規律の維持が、子どもの人間の尊厳と一致する方法で、かつ条約にしたがって行なわれることを確保するために、意識啓発キャンペーンを行なうようにも提案するものである。委員会はまた、家庭における性的虐待も含む子どもの虐待および不当な取扱いの事案は適切に調査され、加害者に対しては制裁が課され、かつ行なわれた決定は広報されるべきであると信ずる。条約第39条にしたがい、虐待、放任、不当な取扱い、暴力または搾取の犠牲者の身体的および心理的回復および社会的再統合を確保するため、さらなる措置がとられるべきである。 27.委員会は、子どもの権利条約についての意識啓発キャンペーンを、とくにその一般原則および条約における家族の役割の重視に力点を置いて、行なうよう勧告する。委員会は、アボリジナルおよびトレス諸島民ならびに英語圏以外の背景を持った者が用いる言語によっても条約を普及するよう提案するものである。委員会はまた、子どもの権利を学校カリキュラムに編入するようにも提案する。委員会はさらに、法執行官、司法関係者、教員、ソーシャルワーカー、ケアの提供者および医療従事者に対して提供される研修に条約を編入するよう勧告するものである。 28.委員会は、条約第12条にしたがい、参加しかつ意見を表明する子どもの権利についての意識啓発キャンペーンを行なう必要があると考える。委員会は、子どもの参加および親と子の対話の重要性について親を教育するため、特別な努力を行なうよう提案するものである。委員会はまた、専門家、とくにケアを提供する者および少年司法制度に携わっている者の、子どもの意見を引き出しかつ子どもが意見を表明する手助けをする能力を高めるための研修を行なうようにも勧告する。 29.委員会は、あらゆるレベルの政府において、子どもの雇用に関する具体的な最低年齢を設定するよう勧告する。委員会は、最低雇用年齢以上で働いている子どもの最長許容労働時間に関する明確なかつ一貫した規則もすべての州で必要とされていると提案するものである。委員会はまた、締約国に対し、就業の最低年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するようにも奨励する。連邦政府が、刑事責任年齢を調和させかつそれをあらゆる州で10歳に引き上げようと計画していることは認めながらも、委員会は、この年齢はなお低すぎると信じるものである。 30.委員会は、庇護申請者および難民の子どもが迅速な方法でその親と再統合されることを保障されるために、立法および政策の改革を導入するよう勧告する。委員会はまた、いかなる子どもも、その親の地位に関わらず、いかなる根拠によっても市民権を奪われないようにも勧告するものである。 31.委員会は、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則および条約第24条2項に照らして、立法を見直しかつ有給母性休暇をあらゆる部門の雇用者に対して義務づけるよう奨励する。 32.委員会は、締約国に対し、不利な立場に置かれた集団、とくにアボリジナル、トレス諸島民、新移民、および農村部および遠隔地で暮らす子どもの健康および教育の水準を引き上げるためにさらなる措置をとるよう奨励する。委員会はまた、アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもの拘禁率が高い原因に取り組むための措置をとる必要があるという見解に立つものである。委員会はさらに、この不相応に高い割合の原因を特定するための調査を続けるよう提案する。これには、これらの子どもに対する、その民族的出身を理由とする法執行官の態度が助長要因になっている可能性を調査することも含まれる。 33.委員会は、とくに若者および子どもの間でホームレスの状況が広がっている原因を、とりわけ子どもおよびその家族の社会経済的背景も含めて特定し、かつ、性的虐待も含む虐待、児童買春、児童ポルノおよび子どもの取引とホームレスの状況との間に存在するつながりを特定するために、さらなる調査を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、貧困緩和政策をさらに採択し、かつ、ホームレスの子どもに提供する支援サービスをさらに強化するようにも奨励する者である。 34.委員会は、女性性器切除の慣行を禁じ、かつ立法の十分な実施を確保するために具体的な法律を制定するよう勧告する。委員会はまた、この慣行の結果として生ずる危険性および害についてコミュニティを敏感にするために、さまざまなコミュニティと協力してさらなる意識啓発キャンペーンを行なうようにも勧告するものである。 35.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行するよう、勧告する。そのような文書は、政府、国民議会および関心のある非政府組織を含む一般公衆の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2012年1月30日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/209.html
総括所見:ネパール(第1回・1996年) 第2回(2005年)/第3回~第5回(2016年)OPSC(2012年)/OPAC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.57(1996年6月7日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1996年5月29日および30日に開かれた第301回~303回会合(CRC/C/SR.301-303)においてネパールの第1回報告書(CRC/C/3/Add.34)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1996年6月7日に開かれた第314回会合において。 A.序 2.委員会は、ネパール政府に対し、第1回報告書、事前質問事項(CRC/C.12/WP.3)に掲げられた質問への回答としての文書による情報、および、委員会との対話の過程で締約国によって提供された追加的情報の提出に、謝意を表する。対話の過程で、締約国の代表は、政策およびプログラムの方向性のみならず、条約の実施の過程で直面した困難も、自己批判的な形で明らかにしてくれた。 B.積極的な側面 3.委員会は、法改正の領域で政府がとった努力、とくに、子どもの権利を確保するための特別な節を設けた新憲法、および、子どもの権利に関わる多くの領域を対象とする子ども法の採択に、留意する。委員会は、拷問および他の残虐な、非人間的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰の禁止ならびに被害者補償制度に関するものを始めとして、政府が現行法の再検討に前向きな姿勢を見せていることに、満足感とともに留意するものである。委員会はまた、政府が国際労働機関第138号条約の批准に前向きであることを代表団が認めたことも、歓迎する。 4.委員会は、子どもの問題および子どもの権利の問題に対処する機構、とくに中央子ども福祉委員会および郡子ども福祉委員会を設置するための政府の努力を歓迎する。委員会はまた、「女性および子どもの発達のための国家評議会」および国家計画委員会事務局内の「子ども女性開発部」が最近設置されたことに、満足感とともに留意するものである。 5.委員会はまた、差別、児童労働、子どもの取引、子どもの売買および少年司法の運営の領域に関するものを始めとして、子どもの権利に関する条約の規定が全面的に実施されるようにするための国際的助言および技術的援助に関して、締約国が開かれた態度をとっていることにも、評価の意とともに留意する。 6.委員会は、締約国が国家行動計画を採択し、かつ、「1990年代における子どもと開発のための10か年国内行動計画」を策定したことに、満足感とともに留意する。 7.委員会は、締約国が、子どもたちの組織を始めとする非政府組織との協力に前向きであることを歓迎する。このことは、政府報告書の作成過程に、かつ対話の過程で非政府組織の子ども代表が出席した事実に、反映されているものである。 8.委員会は、子どもの権利を促進しかつ保護するために行なわれている国際的な取り組みに関して一般大衆の意識を喚起する手段として、政府が、委員会による第1回報告書の検討に先立ってネパールで記者会見を開くと決定したことを歓迎する。委員会は、ネパールへの帰国にともなってあらためて記者会見を開き、委員会の総括所見を公にすると代表団が述べたことに、さらに心強い思いを感ずるものである。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 9.委員会は、ネパールが、人口の半数以上が絶対的貧困下で暮らしている世界の最貧国のひとつであることから、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に主として影響が生じ、かつ子どもの権利の享受が阻害されていることに留意する。この現実は、対外債務および債務調整措置に加えて、条約に基づく政府の義務の履行の程度に影響する深刻な困難を代表するものである。 D.主要な懸念事項 10.委員会は、国内法が条約の原則および規定に全面的に一致するようにするための措置が十分でないことを懸念する。委員会はとくに、差別の禁止(婚姻、相続および親の財産に関するものを含む)、拷問および体罰に関わる法規定が条約との一致を欠いていることに留意するものである。委員会はまた、現行法とその実際の実施との間に乖離が存在することについても懸念する。 11.委員会は、締約国が、条約の一般原則──第2条(差別の禁止の原則)、第3条(子どもの最善の利益の原則)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)──を、立法および政策立案において全面的には考慮に入れていないことに、懸念を表明する。 12.委員会は、差別の禁止の原則が効果的に実施されるようにするためにとられた措置が不十分であることを、とりわけ懸念する。委員会は、息子優先の風潮が支配的であること、早期婚が根強く残っていること、女子の通学率が男子よりも目立って低いことおよびその中退率が男子よりも高いことに表れているように、女子に対する差別的態度が根強く残っていることに留意するものである。婚姻年齢が女子と男子で異なることも、条約第2条と一致しておらず、懸念される。委員会はさらに、デウキ、クマリおよびデビスといったカーストの制度および伝統について懸念を覚えるものである。委員会はまた、子ども法第7条により、親、家族構成員および教員が「子どもの利益にかなうと思われる場合」に子どもを叩くことが許されていること、および、締約国の報告書が認めるように、子どもの意見が尊重されることがないという事実にも、懸念を表明する。このような伝統的な慣行および態度が根強く残っていることは、子どもの権利の享受を深刻な形で阻害するものである。 13.委員会は、子どもの権利の促進および保護のための政策を実施するに際し、関連省庁間ならびに中央当局と地方当局との間に効率的な調整機構を確立することに関して、締約国の歩みが遅いことを懸念する。 14.委員会は、体系的かつ包括的なデータの収集および適切な指標の確立、ならびに、条約が対象としているすべての領域およびすべての集団の子ども(マイノリティに属する子ども、低層カーストに属する子ども、きわめて貧しい家庭の子ども、農村部の子ども、障害児、施設に措置されている子ども、売買、取引および買春の被害を受けた子どもならびに路上で生活しかつ/または働いている子どもを含む)に関する監視機構の設置に対し、十分な注意が向けられていないことを懸念する。 15.条約第4条の実施に関して、委員会は、利用可能な資源を最大限に用いて子どもの経済的、社会的および文化的権利を実施することに対し、政府が優先順位を与えていないことを懸念する。委員会は、都市部においても農村部においても、もっとも不利な立場に置かれた集団に十分な注意が向けられていないという見解に立つものである。 16.委員会は、とくに遠隔地に住んでいる子どもについて、子どもの出生登録を確保するために十分な措置がとられておらず、かつ、そのためにこのような子どもの基本的権利の享受に悪影響が生じていることを、懸念する。 17.委員会は、学校中退率がとくに農村部に住む女子の間で高いことおよび児童労働が数多く行なわれていることを憂慮する。委員会はまた、保健、社会サービスおよび教育といった基礎的サービスを確保するうえで農村部および遠隔地に住む子どもならびに障害児が困難に直面していることも懸念するものである。 18.第28条に照らし、委員会は、初等教育がすべての子どもにとって義務的となっていないことに、深い懸念を表明したい。委員会はまた、子どもおよび成人の間で非識字率が高いことも懸念する。 19.委員会は、いかなる形態のものであれ、家庭における子どもの不当な取扱いおよび体罰を効果的に防止しかつそれと闘うための適切な措置が、いまなおとられていないことを懸念する。委員会は、条約第39条に照らし、被害を受けた子どもの回復および復帰を確保することを目的とした十分な立法および機構が存在しないことを深刻に憂慮するものである。 20.農村部からの集団移住、極度の貧困ならびに家庭における暴力および虐待のために路上で暮らすことを余儀なくされ、かつ、基本的権利を奪われてさまざまな形態の搾取にさらされる子どもが多数存在し、かつその人数が増加していることは、深い懸念の対象である。 21.委員会は、インフォーマル部門(とくに家事労働、農業および家族内労働)におけるものを含む児童労働に従事する子どもが多数にのぼることを憂慮する。 22.子ども、とくに女子の売買および取引の問題の規模にかんがみ、委員会は、この現象と闘うための具体的な法律および政策が存在しないことを深く懸念する。 23.委員会は、児童買春の現象がますます増加しており、とくに低層カーストに属する子どもに影響を与えていることを、懸念する。委員会は、この現象と闘うための措置がとられていないことおよびリハビリテーションのための措置が欠けていることを憂慮するものである。委員会はまた、薬物依存の子どもの状況に取り組むための措置が十分ではないことも懸念する。 24.少年司法の運営の状況、および、とくに、条約第37条および第40条ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のような他の関連の基準にその状況が一致するかどうかは、委員会にとって懸念の対象である。委員会はとくに、刑事責任年齢が低すぎること、国法典(ムルキアイン)第2号の規定によって精神病の子どもを収監しかつ鎖で拘束することが認められていること、および、拷問の法的定義が条約第37条(a)に一致していないことを、懸念する。 E.提案および勧告 25.委員会は、締約国が、条約のすべての規定と法律との全面的な一致を確保するため、とくに条約の一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)を考慮にいれながら、あらゆる必要な領域で十分な法改正を行なうよう勧告する。 26.根強く残って女子に影響を与えている差別的な態度および好ましくない伝統と効果的に闘うため、委員会は、締約国に対し、社会における、かつ、とくに家庭における子どもの権利を促進することを目的として、包括的かつ統合的な広報キャンペーンを行なうよう奨励する。委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(教員、ソーシャルワーカー、保健従事者、裁判官および法執行官を含む)を対象とした、条約に関する具体的研修を確保することも勧告するものである。この目的のため、とくに〔国連〕人権センターおよび国連児童基金との国際協力を求めることが考えられる。 27.委員会は、条約第12条および第42条に照らし、条約の規定および原則が子どもにも大人にも同様に広く知られかつ理解されることを確保するため、さらなる努力が必要とされているという見解をとるものである。委員会は、締約国に対し、子どもの参加権に関する公衆の意識をさらに高めるとともに、学校カリキュラムに条約を編入することを考慮するよう、奨励する。 28.委員会は、子どもの権利に関わるさまざまな政府機構間の調整を中央レベルにおいても地方レベルにおいても強化し、かつ、非政府組織との密接な協力を確保するために、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 29.委員会はさらに、締約国が、条約が対象とするさまざまな領域について、かつ、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもを含むすべての集団に関して、子どもの状況に関するあらゆる必要な情報を収集するよう勧告する。委員会はまた、経済政策が子どもたちに与える悪影響に特段の注意を払いつつ、条約が認める権利を中央レベルおよび地方レベルで実現するにあたって達成された進展および直面した困難を評価するための、学際的監視システムを確立するよう提案するものである。このような監視システムは、締約国が、適切な政策を策定し、かつ、蔓延する社会的格差および伝統的偏見と闘うことを可能にするはずである。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利の実現を監視し、かつ、これに関する個別の苦情申立てに対処するために、オンブズパーソンまたは人権委員会のような独立の機構の設置を検討するよう奨励する。 30.条約第4条の実施に関して、委員会は、差別の禁止および子どもの最善の利益の原則に照らし、経済的、社会的および文化的権利を実施するための予算配分を、利用可能な資源を最大限に用いることにより確保する必要性に対して特段の注意を向けるよう、勧告する。国際協力に基づく資源は子どもの権利の実現に向けられるべきであり、かつ、対外債務および債務調整が子どもたちに与える悪影響を軽減するための努力が追求されるべきである。 31.すべての子どもが人として認められ、かつその権利を全面的に享受できることを確保するために、子どもの出生登録に優先順位が与えられるべきである。委員会は、移動登録所および学校登録部の設置を含む、子どもの出生登録を確保するためのさらなる措置を奨励する。 32.条約第2条に照らし、委員会は、農村部および都市部における女子の中退率を削減し、女子が児童労働または買春に関与することを防止し、かつ、基礎的サービス(保健、教育および社会的ケア)に対する農村部の子どもおよび全国の障害児のアクセスを強化する目的で、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。政府はとくに、最低層カーストに属する子どもをいかなる形態の搾取からも保護するために、好ましくない態度を変えるための意識向上キャンペーンを含む具体的措置をとるべきである。 33.難民の子どもの保護を促進するため、委員会は、締約国に対し、難民の地位に関する1951年の条約の批准を検討するよう奨励する。 34.条約第19条に照らし、委員会はさらに、家庭におけるものを含むいかなる形態の子どもの不当な取扱いおよび性的虐待とも闘う目的で、政府が、立法上の措置を含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はとくに、この問題の性質および規模に関する理解を深め、かつあらゆる態様の児童虐待およびネグレクトを防止するための社会プログラムを確立する目的で、公的機関が情報を収集し、かつ包括的な研究に着手するよう提案するものである。 35.委員会はさらに、ネパールのすべての子ども(路上で暮らしかつ/または働いている子どもを含む)の生存権を確保するために確固たる措置をとるよう、勧告する。このような措置においては、あらゆる形態の搾取、とくに児童労働、買春、麻薬関連の活動ならびに子どもの取引および売買から子どもを効果的に保護することが目的とされるべきである。 36.児童労働の問題に関して、委員会は、ネパールが、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するとともに、国内法を子どもの権利条約その他の関連の国際基準に一致させる目的で、関連するすべての国内法を見直すよう、提案する。児童労働に関する法律が執行されるべきであり、査察制度が確立されるべきであり、苦情申立てが調査されるべきであり、かつ違反については厳しい処罰が課されるべきである。家事労働を含むインフォーマル部門の労働に従事している子どもの保護に対し、特段の注意を払うことが求められる。委員会は、政府が、この分野に関してILOに協力を求めることを検討するよう、提案する。 37.子どもの国際的取引および売買と効果的に闘うため、委員会は、ネパールが立法上および行政上の措置を含むあらゆる適切な措置をとるよう提案するとともに、締約国に対し、このような現象を防止しかつ解消するために二国間の措置をとることを検討するよう、奨励する。コミュニティ段階における意識啓発キャンペーンを発展させ、かつ、徹底した監視制度を確立するべきである。 38.少年司法の運営の分野において、委員会は、法改正を追求し、かつ、子どもの権利条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則といった他の関連の国際基準を全面的に考慮にいれることを勧告する。その際、刑事責任に関する最低年齢の引き上げ、少年裁判所の設置、現行法の執行、少年非行の防止、自由の剥奪および施設養護に代わる措置、少年司法制度のあらゆる側面における基本的権利および法的保護の尊重、ならびに、少年司法の完全な独立性および公平性に対し、特段の注意が払われるべきである。精神障害を有する子どもを刑務所に措置することを認めた法律は、緊急に見直されなければならない。 39.委員会は、子どもの権利の分野における法改正および子どもとともに働く専門職の研修の分野等において、〔国連〕人権センターとともに技術的援助プログラムを発展させるよう、提案する。その際、とくに裁判官、法執行官、矯正担当官およびソーシャルワーカーを対象とした、関連の国際基準に関する研修プログラムに特段の注意が払われるべきである。子どもの権利条約についての意識啓発キャンペーンおよび情報提供キャンペーンにも注意を向けることが求められる。さらに、子どもの権利に関わる問題がどのぐらい実現されているかを監視するための、人権委員会その他の独立の機構の設置に関して引き続き検討が行なわれるべきである。 40.委員会が懸念を指摘した分野および委員会が行なった勧告に照らし、委員会は、政府が、国際労働機関、国連難民高等弁務官、国連児童基金、世界保健機関を含む関連の国際機関に対して技術的援助を求めることを検討するよう、提案する。条約に規定された権利を促進しかつ保護する目的で、締約国で活動している国際機関のタスクフォースの設置を検討することも考えられる。委員会はまた、国際社会に対し、締約国が現在行なっている努力を援助するよう奨励するものである。 41.委員会は、締約国に対し、第1回報告書、討議の議事要録、および、報告書の検討後に委員会が採択した総括所見を広く普及するよう奨励する。委員会はまた、委員会による提案および勧告のフォローアップを確保する手段として、これらの文書に対して議会の注意を喚起するよう提案したい。 更新履歴:ページ作成(2012年11月1日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/252.html
総括所見:中国(OPAC・2013年) 第1回(1996年)/第2回(2005年、香港・マカオを含む)/第3回・第4回(2013年)英領香港(当時、1996年) OPSC(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/CHN/CO/1(20013年10月29日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2013年9月27日に開かれた第1835回会合(CRC/C/SR.1835参照)において中国の第1回報告書(CRC/C/OPAC/CHN/1)を検討し、2013年10月4日に開かれた第1845回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/CHN/Q/1/Add.1)の提出を歓迎するとともに、多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話を評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、条約に基づく締約国の第3回・第4回統合定期報告書に関して2013年10月4日に採択された総括所見(CRC/C/CHN/CO/3-4)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、中華人民共和国未成年者保護法が2006年12月および2012年10月に改正されたことを歓迎する。 5.委員会はさらに、中国本土を対象とする中国児童発達綱要(2011~2020年)が2011年7月に採択されたことを含む、選択議定書の実施を促進するための国家的計画およびプログラムの採択における進展を歓迎する。 III.実施に関する一般的措置 立法 6.委員会は、中華人民共和国国防法で、18歳に達するまでの子どもの徴募が明示的に犯罪化されていないことを遺憾に思う。 7.委員会は、締約国が、18歳未満の子どもを軍に徴募しかつ軍に関与させることを犯罪化する目的で国防法の改正を検討するよう、勧告する。 独立の監視 8.委員会は、選択議定書上の子どもの権利の充足における進展を恒常的に監視し、かつ子どもからの苦情を受理してこれに対応する、国家機関の地位に関する原則(パリ原則)にしたがった独立の国内人権機関が設置されていないことを懸念する。 9.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号、および、パリ原則にしたがって独立の国内人権機関を設置する必要性について複数の国連人権機関が行なってきた勧告に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書上の権利の充足状況を監視し、かつ権利侵害に関する子どもの苦情に子どもにやさしい方法で迅速に対応するための独立した機構を設置するよう促す。 普及および意識啓発 10.委員会は、締約国が、選択議定書の原則および規定が一般公衆、子どもおよびその家族の間で広く普及されることを確保するよう勧告する。 研修 11.委員会は、軍の構成員および子どもに対応する関連の専門家集団を対象とする研修プログラムにおいて、選択議定書の規定が全面的に取り上げられていないことを遺憾に思う。 12.委員会は、締約国に対し、軍のすべての構成員(とくに子どもに対応する要員)、庇護希望者・難民である子どものためにおよびこれらの子どもとともに活動する公的機関、警察、弁護士、裁判官、軍法会議裁判官、医療専門家、ソーシャルワーカーならびにジャーナリストを対象として選択議定書についての研修を実施するよう、奨励する。 データ 13.委員会は、自国の管轄内にある子どもであって徴募されまたは敵対行為で使用された可能性があるすべての子どもを登録するための中央データ収集システムを締約国――中国本土、中国領香港および中国領マカオ――で設置するためにとられた措置についての情報がないことを遺憾に思う。 14.委員会は、締約国が、自国の管轄内にある子どもであって国外において徴募されもしくは敵対行為で使用され、または拘禁されもしくは回復不可能な障害を負ったすべての子どもを特定しかつ登録するための中央データ収集システムを、中国本土、中国領香港および中国領マカオで設置するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、このような慣行の被害を受けた子どもの難民および庇護希望者についてのデータが適正に収集されることを確保するようにも勧告するものである。すべてのデータは、とくに性別、年齢、国籍、民族的出身および社会経済的背景の別に細分化されるべきである。 IV.防止 志願入隊 15.委員会は、中華人民共和国兵役法で、18歳未満の子どもの志願による現役軍務編入が認められていることに懸念を表明する。委員会は、締約国が志願入隊年齢を18歳に引き上げる意図を有していないことを遺憾に思うものである。加えて、志願入隊に関する締約国の最低年齢は17歳であると報告されている一方、選択議定書についての拘束力のある宣言(加入時)では、ある年の12月31日までに17歳に達していない市民も現役軍務のために入隊させることができる旨の、矛盾する説明が行なわれているように思われる。 16.委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 軍隊に編入される18歳未満の新兵の総数が多いこと。 (b) 18歳未満の子どもが敵対行為への参加に関与させられないことを確保するための政策および実務が存在しないこと。 17.委員会は、全般的により厳格な法的規準を通じて子どもの保護を促進しかつ強化するため、軍隊への志願入隊年齢を再検討して18歳に引き上げるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 軍隊に入隊する18歳未満の新兵がいる場合にはその人数および割合、ならびに、新兵募集における不正について報告された事案、受理された苦情の性質および課された制裁についての情報を次回の定期報告書で提供すること。 (b) 敵対行為に間接的にまたは直接参加するおそれがありうる地域への18歳未満の子どもの配置を明示的に禁止すること。委員会はさらに、そのような政策改革が行なわれるまで、締約国が、武力紛争事態への配備の前に18歳未満の子どものスクリーニングが実効的に行なわれることを確保するための政策を含む効果的保護措置を整備するよう、勧告する。 年齢確認手続 18.締約国が入隊してくる新兵の年齢確認手続を設けていることには留意しながらも、委員会は、締約国で(とくに移住者の子ども)の出生登録水準が低いことから、これらの手続の有効性に影響が生じる可能性があることを依然として懸念する。 19.委員会は、法定年齢に満たない子どもの徴募を防止するための措置としての出生登録の重要性を強調するとともに、締約国が、移住者の子どもを含むすべての子どもを対象とした無償の全国的出生登録システムを確立するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。 軍事訓練 20.委員会は、普通教育カリキュラムに軍事訓練が含まれており、かつ、学校が18歳未満のすべての子どもを対象として義務的な軍事教育および軍事訓練(さまざまな水準で火器の取扱いに触れさせられることを含む)を実施していることを懸念する。 21.委員会は、締約国が、一般教育カリキュラムから軍事訓練を除外するとともに、普通教育のカリキュラムおよび学校において、18歳未満の子どもを対象とした、火器の使用をともなう軍事訓練を禁止するための措置をとるよう勧告する。 軍事学校 22.委員会は、国務院および中央軍事委員会に対し、普通高等学校を卒業する17歳の生徒を志願により入校させることが認められていることに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 若年生徒を軍事学院および軍事学校に編入させることをとくに目的とする編入計画は教育部および人民解放軍総政治部の承認を受けるとはいえ、各軍事学院または軍事学校が独自の教育カリキュラムおよび軍事訓練プログラムを定めていること。 (b) 軍事学校におけるカリキュラムおよび軍事訓練活動についての具体的情報(とくに火器の扱いに関するもの)が提供されていないこと。 (c) 軍事学院および軍事学校の子どもが独立の苦情申立て機構にアクセスできていないこと。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもを対象とする軍隊様式の訓練(火器の使用に関するものを含む)を禁止するとともに、子どもを対象とするいかなる軍事訓練においても人権の原則が考慮されること、ならびに、その教育内容が教育部の承認および定期的監視の対象とされることを確保すること。 (b) 次回の定期報告書で、軍事学院、軍事職業学校および軍事学校に編入された子どもおよびこのような子どもが行なっている活動に関する、性別、年齢、国籍、民族的出身および社会経済的背景の別に細分化されたデータを提供すること。 (c) 軍事学院および軍事学校のプログラムに参加している子どもの福祉を監視し、かつそのような子どもからの苦情を調査する目的で、これらの子どもにとってアクセスしやすい、独立のかつジェンダーに配慮した、苦情申立ておよび調査のための機構を設置すること。 人権教育および平和教育 24.委員会は、人権教育および平和教育ならびに選択議定書に関する知識の学習が、初等中等学校カリキュラムの必須学習事項として、かつ教員養成プログラムにおいて、具体的に編入されていないことを遺憾に思う。 25.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を参照しつつ、委員会は、締約国が、教育改革の文脈において、あらゆる段階の学校カリキュラムに平和教育を含めること(その際、選択議定書が対象としている犯罪にとくに言及すること)を検討するよう勧告する。 V.禁止および関連の事項 現行刑事法令 26.委員会は、中華人民共和国国防法を含む国内法において、国以外の武装集団による18歳未満の子どもの徴募または敵対行為における使用が禁止および犯罪化の対象となっていないことに、懸念を表明する。加えて委員会は、締約国の法律に、戦時であれ平時であれ、国の軍隊で18歳未満の子どもを徴募しかつ使用することを犯罪と定めた明示的規定がないことを遺憾に思うものである。 27.委員会は、締約国から提供された、中国には民間が運営する軍事保安会社は存在しない旨の情報に留意する。にもかかわらず、委員会は、民間保安事業者・会社の刑事責任に関する規定が国内法にないことを懸念するものである。 28.委員会は、締約国が、締約国の軍隊および国以外の武装集団における18歳未満の子どもの徴募または敵対行為における使用を明示的に禁止し、かつ犯罪化するよう勧告する。〔とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。〕 (a) 国以外の武装集団による18歳未満の子どもの徴募および使用を犯罪化するため、国防法を改正すること。 (b) 国の軍隊、国以外の武装集団および保安会社における18歳未満の者の徴募および使用を犯罪化するために速やかに法律を改正する目的で、子どもに影響を与えるすべての法律(刑法を含む)の包括的再検討を行なうこと。 (c) 対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)および国際刑事裁判所ローマ規程を批准すること。 域外裁判権 29.委員会は、締約国から提供された、18歳未満の子どもを徴募しまたは敵対行為に関与させた事件について域外裁判権を設定することは可能である旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、法律で、選択議定書が対象とするすべての犯罪(とくに18歳未満の子どもの徴募または敵対行為における使用)についての域外裁判権が定められているわけではないことを、遺憾に思うものである。 30.委員会は、締約国が、国内法によって、選択議定書が対象とするすべての犯罪(18歳未満の子どもの徴募および敵対行為における使用を含む)について域外裁判権を設定しかつ行使できるようになることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 VI.保護、回復および再統合 被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置 31.委員会は、子どもの庇護希望者および難民(とくに国外において徴募されまたは敵対行為で使用された可能性がある子ども)の逮捕および拘禁施設への拘禁が、とくに中国領香港において引き続き常態となっていることを深く懸念する。委員会はまた、締約国――中国本土、中国領香港および中国領マカオ――における子どもの庇護希望者および難民についての公式な統計およびデータが存在しないこと、ならびに、自国の管轄内にあって他国で徴募されまたは敵対行為で使用された可能性がある子どもを特定するための手続が設けられていないことも、懸念するものである。 32.委員会は、締約国に対し、選択議定書第7条に基づく義務に照らして、その管轄下にあるすべての地域で以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの庇護希望者および難民(国外において徴募されまたは敵対行為で使用された可能性がある子どもを含む)を拘禁する、とくに中国領香港における行政実務を中止すること。 (b) 国外において徴募されもしくは敵対行為で使用された子どもまたはその可能性がある子ども(子どもの庇護希望者および難民を含む)を特定するための機構を設置するとともに、このような特定を担当する職員が子どもの権利、子どもの保護および子どもにやさしい面接スキルについての訓練を受けていることを確保すること。 (c) 武力紛争に関与させられた子どもまたはその可能性がある子どもに対し、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための適切な援助を提供すること。 (d) 自国の管轄下にあるすべての地域で子どもの庇護希望者および難民についてのデータ収集および登録を確保するためのシステムを設置すること。 VII.国際的な援助および協力 武器輸出および軍事援助 33.火器輸出管理条例第5条で締約国による火器の輸出に関する原則が定められていることには留意しながらも、委員会は、締約国が、子どもが徴募されもしくは武力紛争および(もしくは)敵対行為で使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国に対し、小型武器および軽兵器を含む火器を積極的に輸出していることを深く懸念する。委員会は、締約国が、そのような国への武器の販売を制限するいかなる具体的法律も定めていないことを遺憾に思うものである。委員会は、選択議定書の実施を支える安全保障理事会の議論に締約国が積極的に参加していることについての締約国報告書の情報に留意しながらも、締約国が、いっそう一貫したかつ子どもの権利に焦点を当てたやり方でこの役割を果たせるのではないかと考える。 34.委員会は、締約国に対し、子どもが徴募されもしくは武力紛争および(もしくは)敵対行為で使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国への火器(小型武器および軽兵器を含む)の輸出およびあらゆる種類の軍事援助を全面的に禁止する規定を定め、かつ適用するよう促す。委員会はまた、締約国が、安全保障理事会の常任理事国としての立場を、すべての締約国における選択議定書の実施を促進するためにいっそう一貫したかつ子どもの権利に焦点を当てたやり方で活用することも、勧告するものである。 VIII.通報手続に関する選択議定書の批准 35.委員会は、締約国が、子どもの権利の履行をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 IX.フォローアップおよび普及 36.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 37.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を促進する目的で、締約国が提出した第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 38.第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見に掲げられた勧告の実施に関するさらなる情報を、2019年3月31日までに提出されるべき次回の第5回・第6回統合定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2014年7月7日)。