約 1,857,905 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/173.html
総括所見:フィンランド(第1回・1996年) 第2回(2000年)/第3回(2005年)/第4回(2011年)OPAC(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.53(1996年2月13日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1996年1月23日および24日に開かれた第282~284回会合((CRC/C/SR.282-284)においてフィンランドの第1回報告書(CRC/C/8/Add.22)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1996年1月26日に開かれた第287回会合において。 A.序 2.委員会は、フィンランド政府に対し、委員会のガイドラインにしたがって作成された第1回報告書の提出および事前質問事項((CRC/C.11/WP.6)に対する文書回答の提出に関して評価の意を表する。委員会は、代表団が補足的情報を提供してくれたことおよび代表団が条約に関する問題に従事していることにより、委員会が締約国との率直かつ建設的な対話に携わることが可能になったことに、満足感とともに留意する。 B.積極的な側面 3.委員会は、政府が包括的な社会保障制度ならびに子どもおよびその親のための幅広い福祉サービス、とりわけ無料の保健ケア、無償教育、長期の母性休暇および広範な保育制度を提供していることに、満足感とともに留意する。 4.委員会は、条約の規定を全面的に実施し、かつ現在の景気後退が子どもたちに与える影響を最大限に減らすことにより締約国の管轄下にある子どもの権利を保護することを目的として、締約国が議会に国家子ども政策報告書を提出したことを歓迎する。 5.委員会は、法改正の領域で政府が行なっている努力に留意する。委員会は、1995年にフィンランド憲法が改正され、それ以降、人権および子どもの権利の基本原則が盛りこまれるようになったことを歓迎するものである。委員会は、子どもの権利オンブズパーソンの将来の任命に関して現在議会で行なわれている議論を歓迎する。委員会は、また、フィンランド刑法の改正に向けて現在努力が行なわれていることにも留意するものである。最後に、委員会は、環境問題が子どもたちの生活に与える影響に関して政府が最近行なった調査およびそれに関してとられた措置を歓迎する。 6.委員会はまた、政府が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准案件をフィンランド議会に提出したことも歓迎する。 7.委員会は、景気後退のため1990年以降開発援助への予算配分が一時的に減らされているとはいえ、国際協力の領域で締約国が行なってきた長期的努力に留意する。 8.最後に委員会は、委員会の委員との対話の議事要録および委員会の総括所見を議会で回覧したいという締約国の希望に留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 9.委員会は、現在の構造的変化および景気後退の時期にあたってフィンランドが直面している困難に留意する。地方分権化および民営化方針、深刻な失業ならびに国家予算の削減が、フィンランドの子どもたち、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に影響を与えてきていることは疑いない。 D.主要な懸念事項 10.委員会は、締約国に蔓延しており予算削減を生ぜしめている困難な経済状況、ならびに、地方分権化および民営化に向かう現在の傾向が子どもたちに与えている影響について、不安を感ずる。これとの関連で、委員会は、とくに、条約第3条および第4条に照らし、子どもたち、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団にに属する子どもたちを保護するために適切な措置がとられてきたかどうか、懸念するものである。 11.委員会は、子どもの権利の促進および保護のための包括的政策を実施するにあたってさまざまな省庁間ならびに中央当局および地方当局(自治体)との間に効果的な調整機構を確立する必要性について、十分な関心が払われていないことを懸念する。 12.委員会は、統合された監視機構、とくに、社会のもっとも脆弱な立場に置かれた集団、とりわけひとり親家庭および貧困家庭ならびに障害児、難民およびマイノリティの子どもに対し、地方分権化されかつ場合によっては民営化された自治体の社会政策およびサービス(保健、教育および社会ケア)が効果的に提供されているかどうかを監督することができる機構が存在しないことを、懸念する。 13.委員会は、締約国の法律および政策において、条約の一般原則、とくに差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)および子どもの意見の尊重(第12条)がまだ全面的に考慮されていないことに、懸念を表明する。 14.委員会は、締約国において、子どもの権利約の包括的な広報および普及のための戦略が存在しないことを懸念する。委員会はまた、条約がまだ締約国に居住しているマイノリティが話しているすべての言語になっていないことについても不安を感ずるものである。 15.条約第2条および第3条に照らし、委員会は、フィンランド社会において外国人に対する否定的な態度が強化されつつあることを不安に感ずる。 16.委員会は、現在、締約国において、子どもの精神病の治療のための施設が不足していることを、不安に感ずる。この不足のため、精神病治療施設において、子どもが成人から分離されていない状況が生じている可能性がある。委員会はまた、青年の間で自殺が高率で発生していることおよび薬物濫用が増加していることも懸念するものである。 17.委員会は、再研修プログラムを通じてソーシャルワーカーの研修を向上させる必要性があることを懸念する。このような研修は、条約第3条および第12条に照らし、とくに子どもの参加権の全面的実施に関して必要である。委員会はまた、性的虐待およびドメスティックバイオレンスの領域で、発見および防止のための十分な措置がとられていないことも不安に感ずるものである。 18.委員会は、近年、学校中退が増加していることを懸念する。委員会はまた、条約第30条に照らし、マイノリティの子どもたちとともに働くことのできる教員が十分にいないことも不安に感ずるものである。 19.委員会は、児童ポルノの所持および売春を行なう子どもからの性的サービスの購入を禁ずるために、適切な措置、とりわけ法的措置がいまだにとられていないことを、深く懸念する。委員会はまた、子どもが利用可能なセックス・テレホンサービスが存在することも深刻に懸念するものである。 20.委員会は、労働法制が15~18歳の子どもを適切に保護していないことを懸念する。 E.提案および勧告 21.条約第4条に関して、かつ現在の困難な経済状況に関連して、委員会は、条約の諸原則、とくに差別の禁止および子どもの最善の利益に関わる第2条および第3条の原則に照らして、中央レベルおよび地方レベルの双方において、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実現のために最大限可能なかぎり資源を配分することの重要性を強調する。 22.委員会は、締約国が、人権および子どもの権利に携わっているさまざまな政府機構間の調整を中央レベルおよび地方レベルの双方において強化し、かつ、部門ごとの活動および政策を調和させるための調整機関または機構の設置を検討するため、さらなる措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、委員会の勧告の実施に関する協力をはじめとして、非政府組織との協力を強化するようにも勧告するものである。 23.委員会は、すべての自治体のすべての子どもが基礎的社会サービスから等しく利益を受けられるようにするために、統合された監視制度または機構を設置するよう勧告する。たとえば子どものためのオンブズパーソンのような独立した監視機構の設置も、勧告されるところである。 24.委員会は、条約第42条に照らし、条約の規定および原則がおとなにも子どもにも同様に広く知られかつ理解されるようにするためには、さらなる努力が必要とされるという見解に立つものである。委員会は、条約を、締約国に住んでいるマイノリティが話すすべての言語に翻訳するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、条約第12条に照らして、子どもの参加権に関する公衆の意識を高める目的で体系的な取り組みをさらに進めるよう奨励したい。 25.外国人に対する否定的な感情および人種主義の増大を軽減するため、委員会は、締約国が、学校および一般社会における広報キャンペーンを含むあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。保護者のいない子どもであって難民認定を希望する子どもはすべて、フィンランド到着と同時に、どのような権利があるかをその子どもの言語で直ちに知らされるべきである。 26.委員会は、とくにソーシャルワーカーのほか、教員、法執行官および裁判官など、子どもとともにまたは子どものために働いている専門家集団を対象とした、子どもの権利に関する定期的な研修および再研修プログラムを組織するとともに、人権および子どもの権利をその養成カリキュラムに盛りこむよう、勧告する。委員会はまた、性的虐待およびドメスティックバイオレンスの領域において、発見のための措置および防止政策に対してさらに組織的な関心を払うよう勧告するものである。 27.委員会は、精神病を有する子どもが成人と同じ施設に収容されることを防止するため、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、自殺および薬物濫用に関する理解を高め、かつこれらの現象に効果的に対処する適切な措置がとれるようにするため、これらの現象に関する追加的な調査を行なうことも提案するものである。 28.委員会は、締約国に対し、学校中退と闘うためにあらゆる必要な措置をとるよう奨励し、かつ、関連の当局に対し、締約国のあらゆる地域でマイノリティの子どものために十分な教員が確保されるようにするためにあらゆる適切な措置をとるよう奨励する。委員会はまた、人権教育のための国連10年の精神を踏まえ、政府に対し、学校カリキュラムに子どもの権利を盛りこむことを検討するよう奨励するものである。 29.委員会は、刑法改正の過程において、児童ポルノの所持および売春を行なう子どもからの性的サービスの購入を違法とするよう、強く勧告する。委員会はまた、締約国が、セックス・テレホンサービスにアクセスすることから子どもを保護し、かつ、誰にでも利用できるこうしたテレホンサービスを通じてペドファイルによって性的に搾取される危険から子どもを保護するために、あらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。最後に委員会は、性的虐待の事実を関連の当局に通報した専門家を保護するため、十分な措置をとるよう勧告する。 30.委員会は、締約国に対し、関連の国際基準、とくにILO第138号条約およびILO第146号勧告に照らして、15~18歳の子どもに関する労働法制を改正するよう奨励する。 31.委員会は、締約国に対し、締約国報告書、委員会における報告に関する議論の議事要録および報告の検討後に委員会が採択した総括所見を、広く普及するよう奨励する。委員会は、こうした文書に対して議会の関心を促し、かつ、そこに掲げられた行動のための提案および勧告が非政府組織との密接な協力によってフォローアップされるようにするよう、提案したい。 更新履歴:ページ作成(2012年3月23日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/146.html
総括所見:デンマーク(第1回・1995年) 第2回(2001年)/第3回(2005年)/第4回(2011年)OPAC(2005年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.33(1995年2月15日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1995年1月19日および20日に開かれた第199回~第201回会合(CRC/C/SR.199, 200 and 201) においてデンマークの第1回報告書(CRC/C/8/Add.8)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1995年1月26日に開かれた第208回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国に対し、委員会のガイドラインにしたがって作成された報告書に関して、かつ、デンマーク政府が委員会の事前質問票に対する文書回答を提出したことに関して、謝意を表する。委員会は、代表団が補完的な情報を提供したこと、および代表団が条約に関わる問題に関与していることにより、締約国との建設的対話に携わることが可能になったことに、満足感とともに留意するものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、1991年の条約の発効以降、子どもの権利を促進しかつ保護するためにデンマーク政府がとってきた措置を歓迎する。これとの関連で、委員会は、児童ポルノの所持を違法とする法律が採択されたことを歓迎するものである。委員会はまた、共同監護権、訪問権および他の関連の問題に関する規則についての立法の修正が提案されていることも歓迎する。 4.委員会は、政府の子ども委員会、および16省庁の公務員から構成される省庁間子ども委員会が存在することに、心強い思いで留意する。委員会は、子ども委員会が、デンマークにおいて最も弱くかつ最も傷つきやすい立場に置かれたグループの子どもたちが直面している問題に対応するための行動計画を1994年に作成したことを歓迎するものである。さらに、この行動計画が、各自治体における多分野にまたがる協力を通じてこれらの問題に対応するためのプロジェクトの発展を意図していることが、留意されるところである。 5.委員会はまた、1993年6月に作成され、かつ国際開発援助に関わるものである「人権および民主主義」に関する政府の政策文書が、発展途上国における子どもが直面している問題に1章を割いていることに対しても、評価の意を表する。 6.同様に、委員会は、デンマーク政府によって当初3年間の予定で子ども評議会が創設されたことに、評価の意とともに留意する。この評議会は、とくに、条約の規定および原則を実施するためにとられた措置および採択された政策を、子どもの状況の変化に照らして振り返りかつ見直すことになるものである。 7.委員会はまた、1993年6月30日の法律第466号にしたがって設置された民族的平等委員会の委員が選任されたことも歓迎する。委員会はさらに、政府の都市委員会によって、難民および移民である子どものための社会援助および法律情報のシステムを設置しようという提案が行なわれていることに、意を強くするものである。 C.主要な懸念事項 8.委員会は、締約国が条約第40条2項(b)(v)に留保を行なっていることに懸念とともに留意するが、政府がその留保を再検討する可能性があることにも留意する。 9.委員会は、条約の原則および規定を子どもおよび大人に同様に広く知らせることを確保するためにとられた措置が充分かどうかについて、懸念する。 10.委員会はまた、子どもの権利条約の一部の規定および原則、とくに第3条、第12条、第13条および第15条で保障されているものが、国内の立法および政策立案において充分に反映されていないことも懸念する。 11.自己の出自を知る子どもの権利に関して、委員会は、人工授精に関わる締約国の方針と条約の規定との間に矛盾が存在する可能性があることに留意する。 12.委員会は、ひとり親家庭の割合が高いことに懸念を表明し、かつ、そのような家族の子どもに対して必要なケアを提供するための特別なプログラムおよびサービスの必要性があることに留意する。 13.委員会はまた、とくに、保護者のいない未成年者を含む子どもの事情聴取の方法、および、家族の再統合の領域に関する目的による申請が積極的、人道的かつ迅速な方法で対応されることを確保することとの関わりで、庇護を求める子どもに関する法律および政策の適用についても懸念する。 14.委員会は、庇護申請を却下されたが同国に残っているすべての子どもが、法的にではなく事実上のものとして提供される保健および教育への権利しか有していないことに留意する。この状況は、条約第2条および第3条の原則と全面的に両立するものではないというのが委員会の見解である。 15.委員会はまた、子どもの性的搾取および児童労働の問題が生じていることについても懸念を表明したい。 D.提案および勧告 16.委員会は、締約国に対し、条約への留保の撤回の可能性を検討するよう奨励したく思い、かつ、この件に関する進展を知らされたいと思うものである。 17.報告書のパラ14~21に記載されている情報は、子どもの権利条約が、子ども委員会および省庁間子ども委員会の作業の枠組みとしてまだ確立されていないということを示しているように思える。したがって、委員会は、締約国が、この2つの委員会の作業に関して、条約に対してそのような地位を与えることを検討するよう提案したい。 18.委員会はまた、子どもの権利条約を実施するためにとられた政策および措置を調整し、評価しかつフォローアップするために設置された国内機構が、地方の公的機関および自治体との密接な協力に基づいて作業すべきであるということを提案したい。加えて、委員会は、デンマーク政府に対し、子どもの権利に関わる問題に関与している非政府組織との協力を強化することを検討するよう奨励したい。 19.条約第3条および第4条の規定に照らし、委員会は、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施のために、とくに最も傷つきやすい立場に置かれたグループの子どものために最大限可能な範囲で資源が配分されることを確保することの重要性を強調したい。この領域における監視機構は、とくに経済的後退の時期にあっては、子どもに対するサービスの提供、および社会支出の削減が子どもに与える影響との関わりであらゆる地方における平等を確保するために、不可欠である。委員会はまた、とくに障害児および特別な保護を必要とする子どものような傷つきやすい立場に置かれたグループのために、国際協力および国際援助をさらに強化することを検討するようにも提案する。 20.委員会は、締約国に対し、子ども評議会が子どもに関わる問題について独自に研究を行なえるようにするために同評議会に財源を提供する可能性を検討するよう奨励する。 21.委員会は、デンマークにおいて若者の自殺件数が比較的多い理由、および、条約で規定されたあらゆる権利の実施を監視するための社会的およびその他の指標の発展および活用を含めて、議論の過程で提起されたさまざまな問題はさらなる研究に値するのではないかということを提案したい。 22.委員会は、締約国に対し、条約の原則および規定を子どもにも大人にも同様に広く知らせるために、継続的かつ体系的なアプローチを発展させるよう奨励する。加えて、委員会は、条約の原則および目的を、デンマークに暮らすマイノリティ、難民および移民のグループの主要な言語によって広く知らせるよう勧告する。 23.条約に関する意識を高めるために締約国が継続的に行なっている努力との関係で、委員会は、教員、ソーシャルワーカー、法執行官および裁判官のような、子どもとともにおよび子どものために働くさまざまな専門家グループの再研修プログラムおよび養成プログラムに、条約の原則および規定についての教育を体系的に編入するようにも提案したい。 24.委員会は、条約の一般原則、とくに第2条、第3条、第6条および第12条が立法および政策に明確に反映されるべきであるということを強調したい。委員会は、締約国に対し、条約の規定および原則、とくに第3条、第12条、第13条および第15条に関わるものが国内の法律および手続に盛りこまれることを確保するために、立法を見直す可能性を検討するよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、学校および地域におけるものも含めて、自己に影響を与える意思決定過程において子どもが意見を表明し、かつそれを考慮してもらえることを確保するための機構の確立について、さらに検討するよう提案したい。 25.条約第2条の実施との関連で、委員会は、難民および移民である子どもおよびHIVウィルスに感染した子どもまたはエイズにかかっている子どもも含めた、傷つきやすい立場に置かれたグループの子どもに対する差別を防止しかつそれと戦うため、さらなる措置をとるよう提案する。 26.委員会は、とくに条約第18条に照らし、子育てにおける親の平等責任に関する意識を強化するためさらなる措置をとるよう勧告する。また、ひとり親の状況をさらに研究し、かつその特別なニーズを満たすために関連のプログラムを確立することも、提案されるところである。 27.委員会は、政府に対し、デンマークの養親家庭に措置された外国の子どもの状況をより注意深く監視するための措置をとるよう奨励する。加えて、委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の批准の可能性を検討するよう勧告するものである。 28.委員会はまた、家庭におけるものも含む子どもへの暴力を効果的に終わらせるためにさらなる措置をとるよう提案したい。 29.〔国連〕総会が最近、人権教育のための国連10年を宣言する決議46/184を採択したことを踏まえ、委員会は、締約国に対し、この機会を活用して、子どもの権利条約についての教育を学校カリキュラムに盛りこむことを促進するよう奨励する。委員会はまた、子どもの権利および人権を教えるための措置は、人種主義、外国人排斥、反ユダヤ主義および非寛容と闘うための欧州青年キャンペーンおよびそれに対応する北欧キャンペーンの目的をさらに唱道する道具として活用する可能性も提案したい。また、学校において用いられる教授法で条約の精神および哲学ならびに第29条に掲げられた教育の目的が反映されることが同様に重要であるということも、委員会の見解である。 30.難民である子どもおよび庇護を求めている子どもの状況との関連で、委員会は、締約国が、家族の再統合のための申請は積極的、人道的かつ迅速なやり方で対応されるべきであると規定した条約第10条の規定も含めた条約の規定および原則との両立性に関して、外国人法の見直しを検討するよう提案する。同様に、庇護申請の状況にある子どもたちへの健康サービスおよび教育サービスの提供に関して、委員会は、とくに「締約国は、その管轄下にある子ども1人ひとりに対し、……本条約に定められた権利を尊重しかつ確保する」と述べた条約第2条の規定に注意を促したい。 31.委員会は、締約国が、18歳未満の者に対する手続が条約第40条の規定と全面的に両立することを確保するため、少年司法制度の見直しを検討するよう提案する。 32.委員会は、締約国が、経済的および性的搾取の防止、そのような搾取からの子どもの保護、およびそのような子どもの社会復帰および回復に関する条約第32条、第34条および第39条の規定を実施するため、さらなる措置をとるよう勧告する。具体的には、児童労働の問題との関わりで、委員会は、政府に対し、就業の最低年齢に関するILO第138号条約の批准の可能性を検討するよう奨励するものである。 33.最後に、委員会は、デンマークの第1回報告書、同報告書が審査された委員会の会合の議事要録、および同報告書に関する委員会の総括所見を刊行することに対してデンマーク政府が前向きな姿勢を見せていることを評価し、かつ、これらの文書をデンマークにおいてできるだけ広く普及するよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2011年1月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/99.html
総括所見:モンゴル(第2回・2005年) 第1回(1996年)/第3回・第4回(2010年)OPAC(2010年)/OPSC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.264(2005年9月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年5月26日に開かれた第1040回および第1041回会合(CRC/C/SR.1040 and 1041参照)においてモンゴルの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.32)を検討し、2005年6月3日に開かれた第1052回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書を歓迎するものの、その提出が遅かったことおよび当該報告書が報告ガイドラインに全面的にしたがっていないことを遺憾に思う。委員会はまた、有用な統計データその他の詳細な情報が記載され、かつ締約国における子どもの状況についていっそう明確な理解を与えてくれた、委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/MNG/2)に対する文書回答の提出も歓迎するものである。委員会はさらに、率直な対話の過程で追加的情報の提供のためハイレベルな代表団が行なった建設的努力に、評価の意とともに留意する。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下のもののような、子どもの権利の保護および促進を目的とする法律が採択されたことに留意する。 (a) 子どもの特別な保護に関する行動のための法的枠組みを定めた子どもの権利保護法の採択(1996年)。 (b) とくに両親を失って法定後見人のいない子どもおよび障害のある子どものための社会手当の種別および適用範囲について定めた社会福祉法の採択(1998年)。 (c) とくに子どもに対する専門的医療ケアの提供について定めた保健法の採択(1998年)。 (d) とくに未成年者の雇用およびその労働条件について規制する労働法の採択(1999年)。 (e) とくに親の責任ならびに養子縁組、監護および養育費に関する規則について定めた家族法の採択(1999年)。 (f) モンゴル国家人権委員会法の採択(2000年)および同委員会の設置。 (g) 少年が行なった犯罪ならびに子ども、家族および社会に対して行なわれた犯罪について独立の条項を導入した刑事訴訟法改正(2002年)。 (h) ドメスティック・バイオレンスと闘いおよびこれを防止することならびに被害者(被害を受けた子どもを含む)の人権を保護することを目的とする、ドメスティック・バイオレンス禁止法の採択(2004年)。 4.モンゴルにおける子どもの権利および地位に関して、委員会は、数次のテーマ年(1997年の子ども年、1998年の若者年、2000年の子どもの発達年、2001年の障害市民支援年など)を宣言しかつ全国子どもサミット(2004年)を開催することにより、この問題の重要性を強調しようとする締約国の継続的努力に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、子どもの社会サービスのための予算配分を増加させるための締約国の努力にも、満足感とともに留意するものである。 5.委員会はまた、以下の条約が批准されたことも歓迎する。 (a) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ第33号条約(2000年4月)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関するILO第182号条約(1999年)(2001年2月)。 (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2002年1月)。 (d) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2002年3月)。 (e) 就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)(2002年12月)。 (f) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2003年6月)。 (g) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2004年10月)。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 6.委員会は、1991年にモンゴルで始まった経済的移行が相対的に迅速であり、かつモンゴル社会に広範な影響をもたらしてきたことに留意する。経済的不安定、失業および貧困の増加は、家族、とくに子どもが多い家族および遠隔地に住んでいる家族に影響を及ぼしてきた。 委員会は、土地面積が広大であり、かつ人口密度がきわめて低いという、締約国の特有の性質に留意するものである。加えて、委員会は、1999年から2001年にかけての例外的に困難な気候条件(厳しい冬および雪害ならびに夏季の旱魃と冬季の著しい寒さおよび吹雪の組み合わせ)も多くの経済的および社会的困難を発生させてきたことを認知する。これらの要因は締約国の全般的発展に悪影響を及ぼし、とくに最遠隔地の数千人の子どもの生活に影響を与えてきた。 D.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.32)の検討後に行なわれたさまざまな懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.48)について立法措置および政策を通じた対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに農村部における男子の学校中退およびこれらの子どもが児童労働に関与することの防止(パラ23)、農村部の子どもによる基礎的サービス(保健、教育および社会的養護)へのアクセスの強化(パラ23)、障害児による基礎的サービスへのアクセスの国全体での強化(パラ23)、子どもの難民の権利の促進および保護(パラ26)、中央および地方のレベルにおける資源の賢明な配分(パラ27)ならびに法律に触れた子どもの権利(パラ29)に関するものについては、十分な対応が行なわれていない。 8.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告に対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法 9.委員会は、子どもの権利の保護を強化するためにとられたさまざまな立法措置を含む、締約国における包括的な法改正を歓迎する。国内法の分野で締約国がとった積極的措置にも関わらず、委員会は、実施措置の数が不十分であることによって法律と実践が乖離する傾向にあることを懸念するものである。加えて、委員会は、国内法に矛盾する規定が若干ある(たとえば、義務教育〔修了〕年齢が17歳であるのに対し、労働法は14歳および15歳の子どもが週30時間を上限として働くことを認めている)ことから、子どもが十分な保護を受けられないままになっていることを懸念する。 10.委員会は、締約国が、最近採択された法律を含む国内法の効果的実施のため、十分な財源および人的資源の提供を含むあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの保護に関して存在する可能性がある乖離を特定するため、国内法の見直しを行なうことも勧告するものである。 調整および国家的行動計画 11.委員会は、子どもの発達に関する国家行動計画(1990~2000年)の実施において獲得された積極的成果に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、締約国が採択した第2次国家子ども行動計画(2002~2010年)、および、子どもに関する総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」のフォローアップに対する締約国のコミットメントも歓迎するものである。委員会は、2004年9月に採択された国家子ども局の新しい体制および戦略に留意するものの、部門横断型のおよび国以下のレベルにおける調整を促進するための包括的な戦略計画が存在せず、かつ、国家子ども局の新しいアプローチに関する、あらゆるレベルの機関を対象とした研修が限られていることを、懸念する。 12.委員会は、締約国が、第2次国家子ども行動計画(2002~2010年)の全面的および効果的実施のために十分な人的資源、財源および技術的資源を提供し、かつ、同計画の実施のために権利を基盤とする、開かれた、協議に基づく参加型のプロセスを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、条約の実施に関わるあらゆるレベルでの調整を目的とした包括的な戦略計画を策定し、国家子ども局の新しいアプローチに応じた十分な情報提供および研修を行ない、かつ、国家子ども局の調整活動について次回の報告書で委員会に情報を提供するよう、勧告するものである。 独立の監視 13.委員会は、国家人権委員会が2001年に設置されたこと、および、とくに、3名の委員のうち1名に子どもの権利に関する権限を委ねると決定されたことを歓迎する。委員会はまた、現在、別個の子どもオンブズパーソンの設置が検討されていることにも留意するものである。 14.独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国に対し、国家人権委員会が十分な人的資源、財源および技術的資源を提供されること、ならびに、条約の実施における国および地方のレベルでの進展を監視しおよび評価しならびに子どもからの苦情を受理し、調査しおよびこれに対応する便益を有することを確保するよう、促す。委員会は、締約国が、別個の子どもオンブズパーソンの設置の検討に関わって進められている議論を加速させるよう提案するものである。さらに、委員会は、締約国が、グッド・ガバナンスのための戦略を策定しかつ汚職と闘うために適当な措置をとるよう勧告する。 資源配分 15.委員会は、子どもの福祉のための予算策定および国内資源の動員に関する20/20イニシアティブを実施することにより、締約国が、子どもの社会サービス、保健および教育への資源配分を優先させていることを歓迎する。しかしながら委員会は、子どものための予算配分額が、子どもの権利の促進および保護に関する国および地方のニーズに応えるにはいまなお不十分であることに、懸念を表明する。委員会は、子どもに提供されるサービスに関する農村部と都市部間の格差について、とりわけ懸念するものである。 16.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの権利の実現のために配分される予算の割合を増やすとともに、この流れにおいて、権利の享受に関する農村部と都市部間の差別を解消する目的で、農村部の小規模コミュニティおよび遠隔地の子どもにとくに注意を払いながら十分な人的資源の提供(国際協力を通じてのものも含む)を確保し、かつ子ども政策の実施が優先されることを保障すること。 (b) 国際金融機関および国連機関ならびに二国間ドナーと引き続き協力すること。 データ収集 17.委員会は、モンゴルの経済移行期により統計システムの相当な変更が必要となったことを認知する。委員会は、とくに第2次国家子ども行動計画(2002~2010年)のための基準データを提供する「子ども発達調査2000」のような、統計の編纂における締約国の努力に、評価の意とともに留意するものである。締約国がとった積極的措置にも関わらず、委員会は、データ収集が十分に発展しておらず、かつ条約が対象とするすべての分野に関して細分化されたものとなっていないことに、懸念を表明する。 18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とりわけ脆弱な立場に置かれた子ども(障害のある子ども、極度の貧困下で暮らしている子ども、農村部に住んでいる子ども、移住者の子ども、虐待または不当な取扱いの被害を受けた子ども、ストリートチルドレン、法律に触れた子どもおよびマイノリティに属する子どもなど)をとくに重視しながら18歳に達するまでのすべての子どもを対象とし、かつ条約のすべての分野を網羅する目的で、国家的統計システムにおける体系的データ収集を引き続き発展させること。 (b) すべてのデータおよび指標が、条約を効果的に実施するための政策、プログラムおよびプロジェクトを立案し、監視しかつ評価する目的で活用されることを確保すること。 (c) これらの統計を公表し、かつ統計情報を公衆が広く利用できるようにするための革新的方法を追求すること。 (d) この点に関してとくに国連児童基金(ユニセフ)と引き続き連携すること。 条約の普及 19.とくにモンゴル子ども全国フォーラム(1998年および2001年)、子どもの問題に焦点を当てたテーマ年ならびに定期的な研修活動を通じ、条約の原則および規定に関する情報を普及するために行なわれた努力を歓迎しつつ、委員会は、これらの措置が望ましい程度の効果を発揮していないことに懸念を表明する。条約が社会のすべてのレベルで普及されているわけではなく、かつ、とくに農村部においておよびマイノリティの間で地域格差が存在する。 20.委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家の研修および再研修が、国際機関および非政府組織と連携しながら実施されてきたことに留意する。しかしながら委員会は、これらの措置をさらに強化し、かつ継続的、包括的かつ体系的に実施する必要があるとの見解に立つものである。 21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに地方レベルでおよびマイノリティの間でならびにメディアを通じて条約を促進するための、より創造的かつ子どもにやさしい手法を発展させること。 (b) 条約、その原則および規定を学校カリキュラムに含めること。 (c) 子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、保健従事者、教員、学校および施設の管理者ならびにソーシャルワーカーおよびジャーナリストなど)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を実施するための努力を引き続き強化すること。 (d) とくにユニセフ、国連教育科学文化機関(ユネスコ)および国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の技術的援助を引き続き求めること。 2.一般原則 差別の禁止 22.委員会は、モンゴル憲法(1992年)および子どもの権利保護法(1996年)の制定のような、子どもに対する差別の禁止の原則を促進するためにとられた措置を評価する。これらはいずれも、モンゴル法の適用においてすべての子どもが平等の地位にあることを保障するものである。しかしながら委員会は、障害のある子ども、貧困下で暮らしている子ども、法律に触れた子ども、ストリートチルドレン、農村部に住んでいる子どもおよび農村部から移住して公式に登録されることなく首都で生活している子どもが、とくに十分な社会サービスおよび保健サービスならびに教育上の便益のアクセスに関して、根強い事実上の差別に直面していることを懸念するものである。 23.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障した現行法を効果的に実施することにより、第2条にしたがい、自国の管轄内にあるすべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受できることを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告する。委員会は、締約国が、あらゆる事由による、および脆弱な立場に置かれたあらゆる集団の子どもに対する事実上の差別を撤廃するための積極的かつ包括的戦略を採択するとともに、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもを対象とする社会サービス保健サービスならびに平等な教育機会を優先させるよう、勧告するものである。 24.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 25.委員会は、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明しかつ社会に参加する子どもの権利の促進および尊重のために締約国がとった行動に、大いなる評価の意とともに留意する。締約国がそのためにとった手段には、一連のミニ国連会議、ミニ議会およびミニ政府(1998年および1999年)、モンゴルの子ども全国フォーラム(1998年および2001年)ならびに全国子どもサミット(2004年)の開催、ならびに、モンゴルの10代の権利に対応しようとする試みが含まれる。しかしながら委員会は、締約国における伝統的態度により、家庭、学校およびコミュニティ一般で自由に意見を表明する子どもの権利が制約されている可能性があることを、依然として懸念するものである。 26.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が、すべての子ども、とくに女子の意見の尊重を促進するとともに、家庭、学校その他の施設における、自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加の便宜を図るための努力を引き続き強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの意見がどのぐらい考慮されており、かつ政策立案および裁判所の決定ならびにプログラムの実施および子どもたち自身にどのような影響を与えているかについて、定期的検討を行なうことも勧告するものである。 3.市民的権利および自由 出生登録 27.委員会は、出生後直ちに登録される子どもの権利の実施における欠陥についての懸念をあらためて表明する。委員会は、新生児の登録に際して課される手数料が、貧困家庭にとっては金銭的障壁となる場合があり、かつ出生登録を妨げないまでも遅らせる傾向があることに、特段の懸念とともに留意するものである。加えて、出生登録の遅延は追加の手数料の対象となる。 28.委員会は、締約国が、領域内の最遠隔地まで対象とするための移動出生登録班および意識啓発キャンペーンの導入等も通じ、締約国の領域を完全に網羅した、効率的な、かつあらゆる段階で無償の出生登録制度を実施するよう、勧告する。 体罰 29.委員会は、子どもの体罰がモンゴルで依然として社会的に受け入れられており、かつ、家庭において、かつ学校その他の施設のような体罰が公式には禁じられている場所においても、いまなお行なわれていることを懸念する。委員会はさらに、モンゴル法が家庭における体罰を明示的に禁じていないことにも、懸念とともに留意するものである。 30.委員会は、締約国に対し、家庭、学校その他の施設における子どもの体罰の慣行を防止しかつこれと闘うとともに、家庭における体罰を法律で明示的に禁止するよう、促す。委員会は、締約国が、体罰に関する公衆の態度を変革する目的で、体罰に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律に関する公衆教育キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを子どもの関与を得ながら導入するとともに、この点に関する非政府機関との協力を強化するよう、勧告するものである。 4.家庭環境および代替的養護 親の責任 31.委員会は、ひとり親が世帯主である家族の数が増えており、かつこのような家族が社会経済的困難に直面していること、および、一般的に父親は限られた限度でしか親責任を担っていない場合が多いことを懸念する。 32.委員会は、締約国が、ひとり親家族およびとくに困難な状況下で暮らしている家族に注意を払いながら、親および家族に対して可能なかぎり必要な金銭的その他の支援を提供するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。子どもの養育および発達については双方の親が責任を有するという原則に関して、委員会は、共同親責任の考え方を支えかつ促進する法律、政策および教育プログラムを発展させるよう締約国に対して促した、女性差別撤廃委員会が2001年に採択した勧告(A/56/38、パラ269-270)を支持するものである。 家庭環境を奪われた子ども 33.委員会は、自宅を逃げ出して児童養護センターに措置された子どもを含む、施設養護の対象とされる子どもの人数が増えていることを懸念する。家族法第25条9項を参照しつつ、委員会は、措置手続が条約の原則および規定に全面的に一致していないとの見解に立つものである。 34.条約第20条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭環境から子どもを分離することを回避し、かつ施設で暮らす子どもの人数を減らすための防止措置を直ちにとること。 (b) 施設養護への子どもの措置について、権限のある学際的権威者グループによるアセスメントが常に行なわれること、ならびに、当該措置がもっとも短い期間で行なわれかつ司法審査に服すること、および、条約第25条にしたがって当該審査がさらなる再審査の対象とされることを確保すること。 (c) 条約で認められている権利(子どもの最善の利益の原則を含む)に特段の注意を払うことによって伝統的な里親養護制度を発展させ、かつ家族を基盤とするその他の形態の代替的養護を発展させるための努力を強化すること。 (d) 親を対象とする教育、カウンセリングおよびコミュニティ基盤型プログラム等も通じ、親および法定保護者が子どもの養育責任を遂行するにあたって適切な援助および支援サービスを提供すること。 養子縁組 35.委員会は、養子縁組に関する家族法の規定の制定(1999年)、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の批准(2000年)および「モンゴル国籍の子どもを養子縁組のために外国人市民に与えること」に関する規則の採択を含め、国内養子縁組および国際養子縁組の双方を規制するために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。委員会は、里親養護および養子縁組の手続に関する締約国の古くからの伝統、および国際養子縁組の相対的少なさに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、里親養護および養子縁組の手続に関する締約国の国内法がまだ条約の原則および規定に全面的に一致していないことを、依然として懸念する。 36.委員会は、締約国が、里親養護および養子縁組の手続が条約の原則および規定に全面的に一致する形で、かつ資格および権限のある、効率的かつ学際的な人材および機関によって処理されることを確保するよう、勧告する。 虐待およびネグレクト、不当な取扱い、暴力 37.締約国が、子どもに対する虐待および暴力の甚大な規模および否定的影響を認識しており、かつ防止のための措置をとってきたことは認知しながらも、委員会は、この問題が根強く残っていることを依然として懸念する。委員会は、子どもを近親姦から保護するための法的枠組みが存在しないことをとりわけ懸念するものである。 38.家庭および学校における子どもへの暴力(CRC/C/111参照)ならびに子どもに対する国家の暴力(CRC/C/100参照)に関する一般的討議の際に委員会が採択した勧告に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに2004年5月に採択されたドメスティック・バイオレンス禁止法を実施することにより、家庭における家族間暴力(身体的か精神的かは問わず、かつ女性に対する暴力を含む)に対応しおよびこれを予防し、ならびに子どもがこの種の暴力から全面的に保護されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 家族間暴力の現象および社会一般における暴力を防止しかつ減少させる目的で、子どもに対する暴力の問題の根本的原因および規模に関する研究を行なうこと。 (c) 近親姦から子どもを保護するための法的枠組みを確立すること、通報機構に対する子どもおよびおとなのアクセスを向上させること、3ケタの電話番号で24時間開設されているフリーダイヤルの電話ヘルプラインを全面的に支援すること、ならびに、事案の捜査および有責者の訴追の件数を増やすこと等も通じ、子どもの性的虐待を終わらせるための措置をとること。 (d) 被害者、とくに女性および女子の通報を妨げる公衆の態度および伝統を変革することを目的として、家族間暴力の問題に関する公衆の意識啓発を図るとともに、この分野で活動している非政府組織(全国暴力反対センターなど)との協力を強化すること。 (e) 子どもにやさしい司法手続を通じて家族間暴力および性的虐待の事案を捜査するとともに、プライバシーに対する子どもの権利の保障を正当に考慮しながら、加害者に対して制裁が科されることを確保すること。 (f) 子どもに対する性的虐待および暴力の被害を受けた子どもおよび加害者がカウンセリングならびに回復および再統合に関連するその他のサービスに十分にアクセスできるようにするため、児童精神科医、心理学者、ソーシャルワーカーその他の専門家の不足に対応すること。 保育サービス 39.委員会は、保育施設および就学前施設のようなサービスで利用可能な定員が不十分であるように思われ、かつこの点に関して顕著な地域格差があることを懸念する。 40.条約第18条3項に照らし、委員会は、締約国が、地域間の平等に特段の注意を払いながら、保育施設および就学前施設の定員を増加させるために即時的措置をとるよう勧告する。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 41.委員会は、障害のある子どもの状況について重大な懸念を表明するとともに、これらの子どもに対する差別を遺憾に思う。障害のある子どものためのサービスの大多数が都市部に存在することには留意しながらも、委員会は、国の農村部に住んでいる障害児およびこれらの子どもが直面している困難な社会経済的境遇について、とくに懸念を覚えるものである。障害のある人の権利について定めた法律および1999年に採択された障害市民状況改善国家計画には留意しながらも、委員会は、障害のある子どもを支援する効果的な政策、基礎k的サービスおよび調整が存在しないことを懸念する。委員会は、障害のある子どもが物理的環境にアクセスできるようにするための法的枠組みが存在しないことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、社会サービスおよび保健サービスにも教育サービスにも十分にアクセスできていない障害児が多いことにも、懸念とともに留意する。さらに、委員会は、障害のある子どもに関する十分な統計データが存在しないこと、および、障害のある子どもへの偏見が存在することに懸念を表明するものである。 42.委員会は、締約国に対し、障害者の機会均等化に関する基準規則および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)に照らして以下の措置をとるよう促す。 (a) 障害のある子どもに関する包括的な国家的政策を主導しかつ計画するとともに、当該計画を実施するために必要な財源および人的資源を配分すること。 (b) 国の農村部に住んでいる障害児に特段の注意を払いながら、障害のある子どもに関する十分なかつ細分化された統計データを収集するとともに、社会への障害児の平等な参加を促進するための政策およびプログラムを発展させる際に当該データを活用すること。 (c) 障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しおよび禁止し、ならびに生活のあらゆる分野に障害のある子どもが完全に参加するための平等な機会を確保すること。 (d) 障害のある子どもを可能なかぎり主流の学校制度に包摂するためにあらゆる必要な措置とり、かつ、必要なときはその特別なニーズに適合した特別教育プログラムを確立すること。 (e) 障害のある子どもが物理的環境、情報および通信にアクセスできるようにするための措置をとること。 (f) 公衆の否定的態度を変革する目的で、障害のある子ども(その権利、特別なニーズおよび潜在的可能性も含む)に関する、モンゴル社会に深く根づいた障害児に対する偏見を理由とする〔不十分な〕意識を高めること。 健康および保健サービス 43.プライマリーヘルスケアを向上させるための締約国の努力、とくに全国予防接種計画(1993~2000年)の実施が成功した結果としての感染症(はしか、髄膜炎および下痢など)の予防には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、にもかかわらず、保健サービスへのアクセスの面で地域格差があること、妊産婦死亡率および5歳未満児死亡率がともに高く、かつこの点に関して地域的差異があること、ならびに、子どもの間で栄養不良が蔓延している状況があることを懸念する。委員会は、完全母乳育児率が下降していること、および、締約国がまだ「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採択していないことに、懸念とともに留意するものである。医薬品の使用および作用に関する知識が貧弱であり、かつ負担可能な小児薬へのアクセスが限られていることは、若干の深刻な懸念の理由となる。委員会は、同国において衛生状態が劣悪であること、環境汚染の問題が生じていること、および清潔かつ安全な飲料水へのアクセスが限られていることに、懸念を表明するものである。さらに、委員会は、同国の農村部から移住してきて公式に登録されないまま首都で生活している子どもが、保健サービスおよび社会サービスにきわめて限られた形でしかアクセスできていないことを、懸念する。 44.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう強く勧告する。 (a) 同国のすべての地域の子ども(同国の最遠隔地に住んでいる子どもも含む)が良質な保健サービスに平等にアクセスできることを確保するため、保健部門に対して財源および人的資源を優先的に配分すること。 (b) 同国の遠隔地に住んでいる母子に特段の注意を払いながら、産前ケアを改善し、かつ妊産婦死亡率および5歳未満児死亡率を相当に削減するための努力を継続すること。 (c) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採択するとともに、生後6か月間は母乳のみを与え、その後適切な乳児食を加える育児を奨励すること。 (d) 農村部の子どもに特段の注意を払いながら、たとえば学校栄養プログラムを通じて子どもの栄養状態を向上させること。 (e) 子どものさまざまな健康状態の予防および治療に用いられる安全かつ負担可能な薬への平等なアクセスを確保するとともに、医薬品の使用および作用に関する意識を高めること。 (f) 同国のすべての地域で安全かつ清潔な飲料水および衛生設備へのアクセスを確保し、かつ環境汚染の影響から子どもを保護すること。 (g) 同国の農村部から移住してきて公式に登録されないまま首都で生活している子どもが保健サービスおよび社会サービスに平等にアクセスできることを促進するため、これらの子どもの健康状況に注意を払うこと。 思春期の健康 45.委員会は、「生徒と青少年の健康に関する国家リプロダクティブ計画」および「健康推進学校」キャンペーンを実施することにより、学校で思春期の健康および健康教育を促進するために締約国が行なった努力に留意する。しかしながら委員会は、定期的身体検査が行なわれていないことおよび学校の児童生徒の健康に関する統計データが存在しないことを含め、学校保健サービスの数が限られていることを懸念するものである。加えて、委員会は、喫煙、アルコール消費および薬物濫用のような、生活様式の要因に関連した非感染性疾患に関わる思春期の健康に対し、十分な注意が向けられていないことを懸念する。 46.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら思春期の健康に細心の注意を払うとともに、学校におけるセクシュアルヘルス教育およびリプロダクティブヘルス教育等も通じて思春期の健康を促進し、かつ学校保健サービス(若者に配慮し、かつ秘密が守られるカウンセリングおよびケアも含む)を導入する努力を強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が、学校に通っていない青少年に対して健康に関する同一の教育、情報およびサービスが提供されることを確保するよう、勧告するものである。青少年の喫煙、アルコール消費および薬物濫用を減らすため、委員会は、締約国が、とくに青少年のために考案された、健康的行動に関する選択についてのキャンペーンを開始するよう勧告する。 HIV/AIDS 47.委員会は、同国のHIV感染率が相対的に低いことに留意するとともに、とくにHIV/AIDS対応国家戦略、公衆衛生国家政策、国家リプロダクティブヘルス計画、HIV/AIDS予防法および国家感染症計画を実施することにより、HIV/AIDSおよび性感染症(STI)を予防するために締約国が行なった努力を心強く思う。締約国がとった前向きな措置にも関わらず、委員会は、若いセックスワーカーが増えていることのような、これらの若者をHIVに感染しやすくするリスク要因が存在することに、懸念を表明するものである。 48.HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年、CRC/GC/2003/3)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(E/CN.4/1997/37)に照らし、委員会は、締約国が、HIV/AIDSの流行を予防するための努力を強化し、かつ、青少年、とくに脆弱な立場に置かれた集団に属する青少年の間で引き続きHIV/AIDSに関する意識啓発を図るよう、勧告する。 生活水準 49.委員会は、締約国の貧困率が根強く高いままであることを深く懸念する。委員会は、農村部からの移住の増加の結果、貧困がいっそう都市化されつつあり、かつ、このような変化によって、路上で生活する子どものような一連の新たな社会問題が生み出されていることに留意するものである。とくに、最低限の所得しか得ていない家庭で暮らしている子どもと対象とした「希望のお金」手当制度の採択(2004年)、ならびに、貧困削減のための計画、プログラムおよびプロジェクトを実施するための締約国の努力には留意しながらも、委員会は、十分な生活水準(十分な住居その他の基礎的サービスを含む)に対する権利を享受していない子どもが同国の都市部においても農村部においても多いことについての懸念を、あらためて表明する。 50.条約第27条に照らし、委員会は、締約国が、支援および物的援助を必要としている経済的に不利な立場におかれた家族に特段の注意を払いながら、貧困削減のための国家的計画およびプログラムを引き続き優先的課題として実施するとともに、十分な生活水準に対するすべての子どもの権利を保障するよう、勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 教育(職業訓練および職業指導を含む) 51.1995年に採択された改正教育法を実施することにより、教育水準を向上させ、かつ教育へのアクセスを保障しようとする締約国の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、とくに同国の農村部の子どもが教育へのアクセスおよび通学への面で依然として困難に遭遇していることを懸念する。とくに農村部において、初等学校相当年齢の未就学児が多いこと(就学面のジェンダー格差および地域格差も含む)、非識字率が上昇していることおよび学校中退率が高いことは、深刻な懸念の理由となるものである。 52.委員会は、牧民家族に属する子どもおよび農村部に住んでいる男子の間で、学校を中退し、かつ児童労働に従事するようになるおそれがより高いことについての懸念をあらためて表明する。委員会は、学校で徴収される追加費用が多くの子どもにとって金銭的障壁となっており、かつ教育への平等なアクセスの否定につながっていることに、特段の懸念とともに留意するものである。さらに、委員会は、子どもが学校で暴力を受ける事件が報告されていること、および学校の便益に欠陥があること(教室の定員数が不十分であることおよび教科書の質が低いことを含む)を懸念する。委員会は、学校寮を建設しかつ改修しようとする締約国の努力には留意するものの、その環境が劣悪であることおよび子どもの受け入れ能力が限られていることを懸念するものである。 53.委員会は、締約国が、以下の目的で十分な財源および人的資源を配分するための措置を直ちにとるよう勧告する。 (a) 同国全域のすべての子どもが、ジェンダーによるいかなる区別もいかなる金銭的障壁もなく良質な教育に平等にアクセスできることを漸進的に確保するとともに、子どもが教育に容易にアクセスできるようにする目的で、子どもの居住地にある学校の地位を回復させることも検討すること。 (b) 初等中等教育における就学率をいかなる地域格差もなく高めることを目的とした措置を強化し、かつ、すべての子どもが教育を修了する平等な機会を有することを確保すること。 (c) とくに農村部の子どもの学校中退率を低下させるための効果的措置を採択しかつ実施する努力を強化すること。 (d) 非識字率の上昇に対応するための追加的措置をとること。 (e) 中等学校段階における、かつ一度も学校に通ったことのないまたは修了前に中退した青少年を対象とした、職業訓練のための便益を拡大すること。 (f) 教員に対して適切な研修を行なうことにより、教授法の質を高めること。 (g) 学校を新設し、かつ、学校における暖房設備および電気設備、教科書の質および学校寮の環境を改善すること等の手段により、学校の便益を向上させること。 (h) 教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮に入れながら、人権一般およびとくに子どもの権利を引き続き学校カリキュラムに盛りこむとともに、安全かつ非暴力的な学校環境を促進すること。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 54.委員会は、都市に住んでいる子どものためのレクリエーション活動および文化的活動ならびに関連の便益の数が不十分であること、ならびに、子どものために建設された遊び場の多くがこの10年間で解体されたことに、懸念とともに留意する。 55.条約第31条に照らし、委員会は、締約国が、遊びに従事する子どもの権利に注意を払うとともに、都市に住む子供のために安全な遊び場を設計しかつ建設すること等により、この権利の実施のために十分な人的資源および財源を配分することによって、休息、余暇、文化的活動およびレクリエーション活動に対する子どもの権利を促進しかつ保護するための努力を強化するよう、勧告する。 7.特別な保護措置 子どもの難民 56.委員会は、ノン・ルフールマンの原則を尊重し、かつ持続可能な解決策の追求を援助することにより、子どもの難民、とくに朝鮮民主主義人民共和国から来た子どもの難民を保護するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、モンゴルで難民としての地位を求める子どもが、条約上の権利の享受に関して適切な保護および援助を必ずしも受けていないことを、懸念するものである。 57.条約第22条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国が、難民の地位に関する条約(1951年)および同議定書(1967年)に加入し、庇護に関する特別法(これにはとくに子どもの庇護希望者、とりわけ保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの保護および処遇に関する規定が含まれるべきである)を策定し、かつ、無国籍者の地位に関する条約および無国籍の削減に関する条約に加入するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.48、パラ26参照)をあらためて繰り返す。 経済的搾取 58.委員会は、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)を2002年に、かつ最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約(1999年)を2001年に批准したこと、就労の最低年齢を16歳と定めた労働法の規定を採択したこと(1999年)、未成年者の雇用が禁じられる職場の一覧を採択したこと(1999年)、ならびに、ILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)との了解覚書に調印したこと(1999年)およびIPECの活動に参加していることのような、児童労働の搾取から保護される子どもの権利の保障を向上させるために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。 59.締約国がとった積極的措置にも関わらず、委員会は、モンゴルにおいて働く子どもの割合が高いこと、および、児童労働の搾取からさまざまな悪影響(学校中退、および有害かつ危険な労働による健康への悪影響を含む)が生じていることを懸念する。子どもの家事労働者および農村労働者、ならびに、金鉱および炭鉱において非常に有害な条件下で働いている子どもの人数が多いことは、深刻な懸念の理由となるものである。 60.さらに、委員会は、伝統的スポーツから、子どもの虐待および搾取につながる特徴を備えた妙味のあるビジネスへと相当に変貌した伝統的競馬において、有害な状況下における子どもの参加および搾取がますます行なわれるようになっていることを懸念する。とくに、委員会は、ときには8歳という幼さの子どもが参加させられており、かつこのような参加が重傷のみならず死亡にさえつながりうることを懸念するものである。 61.委員会は、締約国が、以下の目的のために即時的かつ効果的な措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの権利条約第32条ならびに締約国が批准したILO第138号条約(1973年)および第182号条約(1999年)を実施し、かつILO第146号勧告および第190号勧告を考慮することにより、有害なまたは危険な労働で子どもを雇用することの禁止および児童労働(児童家事労働および児童農村労働を含む)の効果的防止を含む児童労働関連の規定の全面的実施を確保すること。 (b) 訓練を受けた労働査察官を増員することにより、同国における児童労働の監視を向上させること。 (c) 働く子どもが良質な教育(職業教育および非公式教育を含む)にアクセスでき、かつ、教育ならびに休息、余暇およびレクリエーション活動に対する権利を享受するための十分な休暇および休憩時間を与えられることを確保すること。 (d) 児童労働(児童家事労働および児童農村労働を含む)の搾取から生じるさまざまな種類の悪影響に関する、とくに子ども、親その他の養育者を対象とする意識啓発キャンペーンを行なうことにより、児童労働に関する公衆の態度に影響を及ぼすこと。 (e) 競馬産業における子どもの搾取の性質および規模を評価するための包括的研究を実施し、かつ、労働法に定められた最低年齢にしたがい、これらのレースで16歳未満の子どもを騎手として雇用することを明示的に禁止することによって、伝統的競馬における子ども騎手の問題に対応すること。 (f) ILO/IPECの援助を引き続き求めること。 ストリートチルドレン 62.委員会は、締約国報告書でストリートチルドレンの状況に関する十分な情報が提供されなかったことを遺憾に思う。路上で生活している子どものためのセンターが開設されたことには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、非常に厳しい条件下で生活するストリートチルドレンの人数が増えていること、および、この現象をもたらす原因がしばしば虐待的な家庭状況であることを懸念するものである。1994年7月に採択された「監督者のいない子どもの一時的収用に関する法律」によれば、家出をした子どもは最長1週間収容される可能性がある。委員会は、締約国の国内法がこの点に関して条約の原則および規定に全面的に一致しないままであることを懸念するものである。さらに、委員会は、ストリートチルドレンに対する公衆の否定的態度および偏見がその困難な状況を悪化させていることに、懸念とともに留意する。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ストリートチルドレンの状況に対応するため、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に特段の注意を払いながら包括的な国家的戦略を採択するとともに、これらの子どもに十分な援助(身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用に関わる回復および再統合のためのサービス、ならびにこれらの子どもの全面的発達を支えるための職業訓練およびライフスキル訓練を含む)を提供すること。 (b) 1994年7月に採択された「監督者のいない子どもの一時的収用に関する法律」の実施に関して、家出した子どもの収容は行なわないことを方針とするとともに、条約の規定と全面的に両立する、収容に代わる選択肢を追求すること。 (c) この現象を防止する目的で、この現象の根本的原因および規模ならびにストリートチルドレンの個人的特徴を明らかにするための行動志向型研究を行なうとともに、ストリートチルドレンに対し、そのニーズに適合したサービスを提供し、かつ家族と再統合する機会も提供すること。 (d) 路上で生活している子どもに関する公衆の否定的態度を変革するため、これらの子どもについての意識啓発を図ること。 (e) 締約国のストリートチルドレンとともに活動している非政府組織および子どもたち自身と連携し、かつ、とくにユニセフの技術的援助を求めること。 性的搾取および人身取引 64.委員会は、売春に従事する子どもの人数が増えていることを深く懸念する。モンゴルにおいて子どもの人身取引が比較的新しい人権問題であることには留意しながらも、委員会は、子どもの性的搾取および人身取引を増加させる可能性があるいくつかのリスク要因(根強い貧困、高い失業率、家出につながる困難な家庭事情および観光業の成長を含む)について懸念を覚えるものである。 65.性的その他の搾取を目的とする子どもの人身売買を防止しかつこれと闘うため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの性的搾取および人身取引(子どもをこのような搾取のおそれにさらす根本的原因および要因を含む)を防止しかつこれと闘うための包括的な国家的政策を策定しかつ採択すること。 (b) 人身取引事件を発見しおよび捜査し、人身取引の問題に関する理解を向上させ、ならびに加害者が訴追されることを確保するための努力および法律を強化すること。 (c) それぞれ1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して、援助および再統合のための十分なプログラムを提供すること。 (d) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書に署名し、かつこれを批准すること。 少年司法の運営 66.委員会は、法律に触れた子どもの権利の保障を向上させるために締約国が行なった努力に留意する。これには、「子どもの犯罪および子どもに対する犯罪の防止に関する国家計画」を1999年に採択したこと(刑事警察局子ども課の再編により子ども犯罪防止部を設置したことを含む)、および、18歳未満の者に特別な法的手続を保障する刑法の規定を2002年に採択したことが含まれる。しかしながら委員会は、18歳未満の者を長期間の未決勾留の対象とし、かつ初犯の少年による軽罪に対して収監刑を科すことが実務として確立されていることを、深く懸念するものである。委員会はまた、法律に触れた18歳未満の者に対し、適切な法律扶助および法的援助へのアクセスが提供されていないことも懸念する。18歳未満の者の拘禁および収監の環境を改善するためにとられた若干の積極的措置にも関わらず、委員会は、これらの施設における子どもの生活環境が依然として劣悪であることに、懸念とともに留意する。 67.委員会は、18歳未満の男子がウランバートルに設けられた別個の少年刑務所で刑に服しているのに対し、女子はいまなお成人女性と同じ刑務所で刑に服していることに留意する。委員会は、刑を言い渡されたおよび釈放された18歳未満の者を対象とする社会的再統合のためのサービスが少数であることを懸念するものである。少年司法の運営に関する国内法について、委員会は、保護観察により釈放された18歳未満の者が困難に直面していることに懸念を表明する。さらに、委員会は、裁判所が依然として、子どもに配慮し、かつ条約の規定に敏感となる訓練を十分に受けているとは言えない状態にあることを懸念するものである。 68.少年司法に関する一般的討議の際に委員会が採択した勧告(CRC/C/46、パラ203-238)に照らし、委員会は、締約国が、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のような、この分野における他の関連の国際基準の全面的実施を確保するよう、勧告する。これとの関連で、締約国はとくに以下の措置をとるべきである。 (a) 少年司法の運営に関する包括的な国家的プログラム(同国のすべてのアイマグ(県)を網羅する、適切な訓練を受けた専門職員を擁した少年裁判所の設置を含む)を策定しかつ実施すること。 (b) 18歳未満の者の自由剥奪の期間を法律で制限すること。 (c) 18歳未満の者の未決勾留が真に最後の手段としてもっとも短い期間で用いられるよう、その期間を法律で制限するとともに、その決定が可能なかぎり早期に裁判官によって行なわれ、その結果審査されることを確保すること。 (d) 保護観察、地域奉仕活動または刑の執行猶予のような、18歳未満の者の自由の剥奪に代わる措置の使用を奨励すること。 (e) 自由の剥奪が避けられず、最後の手段として用いられる場合について、逮捕の手続および拘禁の環境を改善すること。 (f) 18歳未満の者が適切な法律扶助および弁護人ならびに独立の、子どもに配慮した効果的な苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。 (g) 少年司法の運営を担当する者に対して関連の国際基準に関する研修を行なうとともに、法律に触れた子どもを援助するため刑務所にソーシャルワーカーの職を設けることを検討すること。 (h) 刑を言い渡されたおよび釈放された18歳未満の者の全面的発達を支えるため、両者に対して教育の機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)ならびに回復および社会的再統合のためのサービスが提供されることを確保すること。 (i) とくにOHCHR、国連薬物犯罪事務所およびユニセフの技術的協力および援助を求めること。 マイノリティに属する子ども 69.委員会は、報告書に情報が存在しなかったことにより、カザフ人およびツァータン人のようなマイノリティに属する子どもに関する、条約第30条で保障されている権利についての締約国の義務の遵守状況を審査することがほとんどできなかったことを遺憾に思う。委員会は、とくに社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関して、このような子どもの人権の享受が制約されていることを懸念するものである。 70.委員会は、条約第2条および第30条に基づく締約国の義務を想起し、締約国が、マイノリティに属する子どもがすべての人権を平等にかつ差別なく全面的に享受できることを確保するよう、勧告する。委員会は、国民的または民族的、宗教的および言語的マイノリティに属する子どもについての条約第30条の実施に関して、締約国が次回の定期報告書で具体的かつ詳細な情報を提供するよう、要請するものである。 8.子どもの権利条約の選択議定書 71.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書が2003年7月に、かつ武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書が2004年10月に批准されたことを歓迎する。 72.委員会は、選択議定書の実施についての審査を可能にするためには、定期的かつ時宜を得た報告の実践が重要であることを強調する。委員会は、締約国が、選択議定書および条約の報告条項に基づく報告義務を全面的に履行するよう勧告するものである。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 73.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、議会ならびに適用可能なときは県の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 74.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 75.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、時宜を得た定期的報告を行なううえで一部の締約国が困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2007年9月1日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年10月14日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/47.html
総括所見:アメリカ(OPAC・2008年) OPAC:第2回(2013年) OPSC:第1回(2008年)/第2回(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/USA/CO/1(2008年6月25日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2008年5月22日に開かれた第1321回会合(CRC/C/SR.1321)においてアメリカ合衆国の第1回報告書(CRC/C/OPAC/USA/1)を検討し、2008年6月6日に開かれた第1342回会合において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国の第1回報告書を歓迎し、かつ事前質問事項に対する文書回答に留意する。委員会は、国防総省の代表も含んだハイレベルな部門横断型代表団との建設的対話を評価するものである。 3. 委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して同日に採択された総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 A.積極的側面 4.委員会は以下のことを歓迎する。 (a) 紛争を経験しているまたは紛争後の状況下にあるいくつかの国々で行なわれている、子ども兵士のリハビリテーションおよび再統合のためのプロジェクトに対する締約国の貢献。 (b) 18歳未満のときに犯罪を行なった者に対する死刑を廃止した2005年の最高裁判決(Roper v. Simons)が軍事裁判制度にも適用される旨の、締約国からの情報。 5.委員会はまた、締約国が以下の文書を批准したことも歓迎する。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2002年12月23日)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(1999年2月12日)。 I.実施に関する一般的措置 留保 6.委員会は、批准時に「了解」として提出された、選択議定書の規定の制限的解釈を遺憾に思う。 7.委員会は、武力紛争の状況にある子どもの保護を向上させるため、締約国が、選択議定書の規定に関する了解を撤回の方向で見直すよう勧告する。 普及および研修 8.委員会は、締約国の軍隊の構成員を対象とする研修で選択議定書の規定が取り上げられていないことを遺憾に思う。 9.委員会は、締約国に対し、軍隊のすべての構成員、とくに国際的作戦に従事する者に対し、選択議定書に関する研修(第6条第3項および第7条の義務に関するものを含む)を行なうよう奨励する。 10.委員会は、子どもに対応する専門家、とくに教職員、移民担当機関、警察、弁護士、裁判官、軍事裁判官、医療専門家、ソーシャルワーカーおよびジャーナリストを対象として、選択議定書の規定に関するさらなる研修が行なわれるべきであることを勧告する。 データ 11.委員会は、軍に在籍する18歳未満の志願兵の人数に関して提供された男女別および民族別の統計に留意する。さらに委員会は、子どもが徴募されまたは敵対行為において使用された可能性がある国からやってきた子どもの難民および庇護希望者に関して提供されたデータに留意するものの、当該統計では保護者のいない子どもしか対象とされていないことを遺憾に思うものである。 12.委員会は、締約国が、18歳未満の志願兵に関する男女別および民族別のデータが利用可能とされることを確保するよう勧告する。さらに委員会は、締約国に対し、その管轄内にあり、かつ徴募されまたは敵対行為において使用された可能性があるすべての子どもを特定しおよび登録するため、中央データ収集システムを設置するよう勧告するものである。とくに委員会は、締約国に対し、そのような慣行の被害を受けた子どもの難民および庇護希望者に関するデータが利用可能とされることを確保するよう、勧告する。 II.防止 武力紛争への参加 13.委員会は、18歳未満の軍隊構成員が敵対行為に直接参加することを回避するために締約国が行なった政策改訂に留意しながらも、締約国が、2003年および2004年に、アフガニスタンおよびイラクに18歳未満の志願兵が配置されることを防げなかったことを懸念する。 14.委員会は、締約国が、兵の配置に関する政策および実務が選択議定書の規定に一致することを確保するよう勧告する。 志願入隊 15.委員会は、志願入隊に関する17歳という年齢が志願者の法定後見人の同意がある場合にのみ有効であることに留意する。委員会は、新兵募集担当者が、民族的および人種的マイノリティに属する子ども、単身女性が筆頭者である世帯の子どもならびに低所得家庭および脆弱な立場に置かれたその他の社会経済的集団の子どもを標的にしていることを示す報告があることを、懸念する。さらに委員会は、新兵募集担当者による違法行為および威迫的措置の使用が報告されていることを懸念するものである。委員会は、新兵を募集する目的で「ひとりの子どもも落ちこぼれさせない法」を用いることが、子どものプライバシーおよび不可侵性の尊重ならびに親または法定後見人の事前同意要件と両立しないことを遺憾に思う。委員会はさらに、親に対し、学校が新兵募集担当者に対して情報を開示しないことおよび新兵募集手続の最終段階では親のみが関与することを要請する権利について、情報が全面的に提供されていないことを懸念するものである。 16.委員会は、締約国に対し、全般的により厳格な法的規準を通じて子どもの保護を促進しおよび強化するため、軍への入隊に関する最低年齢を再検討し、かつ18歳に引き上げるよう奨励する。 17.委員会は、締約国が、新兵の募集が人種的および民族的マイノリティならびに低所得家庭および脆弱な立場に置かれたその他の社会経済的集団の子どもをとくに標的にするようなやり方で行なわれないことを確保するよう、勧告する。委員会は、18歳未満の志願入隊者がその権利(予備入隊制度(DEP)を通じて兵籍を免除される可能性も含む)について十分な情報を提供されることの重要性を強調するものである。 18.委員会はさらに、新兵募集キャンペーンの内容を緊密に監視すること、ならびに、新兵募集担当者による不正または違法行為のいかなる報告についても調査し、かつ必要なときは制裁の対象とすべきことを勧告する。新兵募集担当者による違法行為のおそれを低減させるため、委員会は、締約国に対し、志願入隊者の人数割当が新兵募集担当者の行動に及ぼす影響を注意深く検討するよう勧告するものである。最後に委員会は、締約国に対し、「ひとりの子どもも落ちこぼれさせない法」(20 U.S.C., sect. 7908)が新兵募集のために子どものプライバシー権または親および法定後見人の権利を侵害するような方法で用いられないことを確保するため、同法を改正するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、すべての親が新兵募集手続について十分に情報を提供され、かつ、学校は親の事前の同意を得た場合を除いて新兵募集担当者に情報を開示しないよう要請する権利について承知していることを確保するよう、勧告するものである。 軍事学校および軍事訓練 19.委員会は、高等学校において少年予備役将校訓練部隊(JROTC)が広範に活用されていることに留意するとともに、11歳という若年の子どもが中学校軍事教練隊の訓練に登録できることに懸念とともに留意する。 20.委員会は、締約国が、子どもを対象とするいかなる軍事訓練においても人権の原則が考慮されること、および、その教育内容が連邦教育省によって定期的に監視されることを確保するよう、勧告する。締約国は、若年の子どもを対象とする軍隊様式の訓練が行なわれないように努めるべきである。 III.禁止および関連の事項 立法 21.委員会は、合衆国戦争犯罪法(18 U.S.C., sect. 2441)で一部の戦争犯罪につき域外裁判権が設定されていることには積極的な要素として留意しながらも、選択議定書が対象とする犯罪が刑事法に具体的に掲げられていないことを懸念する。委員会はさらに、合衆国刑法に15歳未満の子どもの徴募を含めようとする2007年子ども兵士責任追及法案にも留意するものである。 22.子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための保護措置を強化するため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもを徴募することおよび子どもを敵対行為に参加させることに関わる選択議定書の規定の違反が、締約国の法律において明示的に犯罪とされることを確保すること。これとの関連で、締約国は、2007年子ども兵士責任追及法案の制定を早期に行なうよう勧告される。 (b) これらの犯罪が締約国の市民権を有する者または締約国とその他のつながりを有する者によってまたはこのような者に対して行なわれた場合にもこれらの犯罪についての裁判権を設定することを考慮すること。 (c) 軍のすべての規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定にしたがうことを確保すること。 23.委員会は、子どもの権利の保護をさらに向上させるため、アメリカ合衆国が続いて子どもの権利条約の締約国となるよう勧告する。 24.さらに委員会は、締約国が、国際社会ですでに広く支持されている以下の国際文書の批准を検討するよう勧告する。 (a) 1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書I)(1977年)。 (b) 1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書II)(1977年)。 (c) 対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)。 25.委員会は、この点に関わる委員会の慣行にしたがい、締約国に対し、国際刑事裁判所ローマ規程(2001年)に関わる自国の立場を再検討するよう慫慂する。 IV.保護、回復および再統合 身体的および心理的回復のための援助 26.委員会は、徴募されまたは敵対行為において使用された可能性がある子どもの難民または庇護希望者を特定するための措置が不十分であることを、遺憾に思う。さらに委員会は、過去に徴募されまたは敵対行為において使用されたことのある子どもの難民または庇護希望者が、特定の社会的集団の構成員であることを理由とする迫害も主張しなければ保護を受ける資格を認められない可能性があることを、懸念するものである。 27.委員会は、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、アメリカ合衆国にやってくる子どもの庇護希望者および難民であって国外で徴募されまたは敵対行為において使用された可能性がある者を保護するよう、勧告する。 (a) 子どもの難民および庇護希望者のうち国外で徴募されまたは敵対行為において使用された可能性がある者を、可能なかぎり早い段階で特定すること。 (b) 子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を、難民資格を付与する事由としての迫害の一形態として認めること。 (c) 国外で徴募されまたは敵対行為において使用された可能性がある子どものための情報へのアクセス(ヘルプラインを含む)を向上させ、これらの子どもが利用可能な法律助言サービスを強化し、かつ、18歳未満のすべての子どもに対して時機を失することなく後見人が任命されることを確保すること。 (d) このような子どもの状況のアセスメントを慎重に行なうとともに、選択議定書第6条第3項にしたがい、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための、即時的な、文化的に配慮された、かつ分野横断的な援助を提供すること。 (e) 移民担当機関内で特別訓練を受けた職員が利用可能とされること、および、このような子どもの送還に関わる意思決定手続において子どもの最善の利益およびノン・ルフールマンの原則が第一次的に考慮されることを確保すること。 (f) この点に関わってとられた措置に関する情報を次回報告書に記載すること。 捕虜とされた子ども兵士 28.委員会は、イラクおよびアフガニスタンで合衆国が運営する拘禁施設に相当数の子どもがいることに留意する。委員会は、イラクで拘禁されている子どものための教育プログラムを設置するためにとられた措置には留意しながらも、拘禁されているすべての子どもが教育にアクセスできているわけではないことを遺憾に思うものである。委員会は、法律助言サービスまたは身体的および心理的回復のための措置に十分にアクセスできないまま、長期間、場合によっては1年またはそれ以上の期間拘禁されている子どもの人数について懸念する。さらに委員会は、拘禁されている子どもに対して残虐な、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いが行なわれているという報告について懸念するものである。 29.委員会は、グアンタナモ米軍基地に子どもが数年間拘禁されており、かつそこに拘禁されている子どもが残虐な、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いを受けている可能性があるという報告を懸念する。さらに委員会は、徴募されまたは武力紛争において使用された子どもが、もっぱら被害者と見なされるのではなく「違法敵性戦闘員」に分類され、かつ、子どもとしての地位を正当に考慮されることなく、戦争犯罪で告発されかつ軍法会議における訴追の対象とされてきたことを、深刻に懸念するものである。 30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの拘禁は最後の手段としてのみ行なうこと、および、拘禁されている子どもの総数が減らされることを確保すること。年齢に関して疑いがあるときは、若年者は子どもと推定されるべきである。 (b) 子どもが、たとえ戦争犯罪を行なった容疑がある場合でも、その年齢および脆弱性にしたがった適切な条件のもとで拘禁されることを保障すること。グアンタナモ米軍基地における子どもの拘禁は防止されるべきである。 (c) 親または近親者に子どもの拘禁場所を通知すること。 (d) すべての子どもに対し、十分な、無償のおよび独立した法的助言の援助を提供すること。 (e) 子どもに対してその拘禁の定期的かつ公平な再審査を保障するとともに、子どもについては当該再審査を成人よりも多い頻度で実施すること。 (f) 拘禁されている子どもが独立した苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。拘禁されている子どもの残虐な、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いに関する報告は、公平なやり方で調査され、かつ当該行為の責任者は裁判にかけられるべきである。 (g) 拘禁されている子どもに対する告発の捜査は、公正な裁判に関する最低限の規則にしたがい、迅速かつ公平に行なうこと。子どもに対する刑事手続を軍事裁判制度のもとで進めることは回避されるべきである。 (h) 身体的および心理的回復のための措置(教育プログラムならびにスポーツおよび余暇の活動を含む)ならびに拘禁されているすべての子どもの社会的再統合のための措置を提供すること。 V.国際的援助および協力 財政援助その他の援助 31.委員会は、武力紛争の影響を受けた子どもを保護しおよび支援するための多国間および二国間の活動に対して相当の財政支援を行なっていることについて、締約国を賞賛する。委員会はまた、子どもを徴募しかつ武力紛争において使用した者の責任追及を促進するうえで重要な役割を果たしてきたシエラレオネ特別法廷に対する締約国の支援にも、積極的要素として留意するものである。 32.委員会は、締約国が、とくに防止措置を促進し、かつ選択議定書に反する行為の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進することを通じ、武力紛争に関与した子どもの権利に対応するための多国間および二国間の活動に対する財政支援を継続しおよび強化するよう、勧告する。 武器輸出および軍事援助 33.委員会は、締約国が世界最大の武器輸出国であることに留意する。武器輸出管理法(22 U.S.C., sect. 2778)で民間の対外武器販売が規制されていることには留意しながらも、委員会は、子どもが徴募されまたは敵対行為で使用されている国への武器の販売が同法でとくに制限されていないことを、遺憾に思うものである。 34.委員会は、締約国に対し、子どもが徴募されもしくは敵対行為で使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国を最終目的地(最終使用地)とする武器の販売について、法律に具体的な禁止規定を設けるよう勧告する。 35.委員会は、国またはその支援を受けた武装集団が子どもを徴募している場合には対外軍事融資(FMF)が提供されない可能性がある旨の、締約国から提供された情報に留意する。しかしながら委員会は、合衆国の国益にとって重要であると判断される場合、一定の状況下でこの制限が免除される可能性があることを遺憾に思うものである。委員会は、採択されれば、国の軍隊または準軍事集団が子ども兵士を徴募しおよび使用していることがわかっている国への軍事援助を制限することにつながる2007年子ども兵士責任追及法案に、積極的要素として留意する。 36.委員会は、子どもが徴募されもしくは敵対行為において使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国が対外軍事援助の最終融資先である場合に、締約国が、免除を行なう余地なく当該融資を廃止するよう勧告する。子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための措置を強化するため、委員会は、締約国が2007年子ども兵士責任追及法案を採択するよう勧告するものである。 VI.フォローアップおよび普及 (a)フォローアップ 37.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府省庁の構成員、連邦議員および州当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 (b)普及 38.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を促進する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。 VII.次回報告書 39.第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、2010年1月23日を提出期限とする次回報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年8月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/278.html
総括所見:インド(OPAC・2014年) 第1回(2000年)/第2回/第3回・第4回(2014年)OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/IND/CO/1(2014年7月7日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2014年6月2日および3日に開かれた第1885回および第1836回会合(CRC/C/SR.1885 and 1886参照)においてインドの第1回報告書(CRC/C/OPAC/IND/1)を検討し、2014年6月13日に開かれた第1901回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答((CRC/C/OPAC/IND/Q/1/Add.1)の提出を歓迎するとともに、締約国の多部門型代表団との間に持たれた建設的対話を評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2014年6月13日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第3回・第4回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/IND/CO/3-4)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/IND/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、締約国が、 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、銃器ならびにその部品および構成部分ならびに弾薬の不正な製造および取引の防止に関する議定書を批准したこと(2011年5月)を歓迎する。 5.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野でとられたさまざまな積極的措置、とくに少年司法(子どものケアおよび保護)改正法(2006年)およびジャンムーカシミール州少年司法(子どものケアおよび保護)改正法(2013年)の採択を歓迎する。 III.実施に関する一般的措置 立法 6.委員会は、締約国の法域における選択議定書の法的地位に関する情報がないことを懸念する。 7.委員会は、締約国が、選択議定書の規定を国内法に編入するためにあらゆる必要な法的措置をとるよう勧告する。 宣言 8.委員会は、選択議定書の批准時に締約国が行なった宣言によれば、「新兵予定者をインド軍(陸軍、空軍および海軍)に採用するための最低年齢は16歳である。入隊および必須訓練期間後、能力を証明された軍隊要員は、18歳に達した後に初めて作戦地域に派遣される」ことに留意する。 9.委員会は、締約国に対し、宣言を撤回し、かつ軍隊への採用に関する最低年齢を18歳と定めるよう促す。 調整 10.女性・子ども発達省が内務省および国防省と協力しながら選択議定書の実施の調整を担当していること、ならびに、その他の関連省庁、州政府機関および非政府組織との間で選択議定書の実施を調整するために国家調整グループが設置されたことには留意しながらも、委員会は、会合の開催頻度が少ないことを懸念する。 11.委員会は、締約国が、議定書の全面的実施を確保するため、女性・子ども発達省およびその他の関連機関の調整を強化するよう勧告する。 資源配分 12.委員会は、締約国も報告書で認めているように子どもの保護のために予定されている予算配分額がきわめて低いこと、および、選択議定書を実施するための活動のためにとくに使途を指定された予算配分が行なわれていないことを懸念する。 13.委員会は、締約国が、国、広域行政圏および地区のレベルで選択議定書のあらゆる分野を効果的に実施するために十分なかつ対象の明確な資源が配分されることを確保するよう勧告する。 普及および意識啓発 14.委員会は、関連の中央政府省庁、州政府および連邦直轄地の行政機関を含むさまざまな機関に対して選択議定書が普及されていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、一般公衆の間で選択議定書に関する意識が低く、かつ、とくに動乱発生地区において、公衆、子どもならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家ならびに地方の公的機関の間で選択議定書の関連規定を普及するための努力が不十分であることを懸念するものである。 15.選択議定書第6条第2項に照らし、委員会は、締約国が、とくに動乱発生地区において、選択議定書の原則および規定が公衆、子ども、教員ならびに中央および地方の関連公的機関の間で広く普及されることを確保するよう勧告する。 研修 16.委員会は、関連の職種の専門家、とくに軍隊、警察および少年司法要員が選択議定書の規定に関する十分な研修を受けていないことを懸念する。 17.委員会は、締約国が、関連のすべての専門家集団、とくに中央準軍事部隊を含む軍、国際平和維持軍の構成員、中央武装警察部隊、州警察部隊(特別警察官および村落防衛委員会を含む)、裁判官、ソーシャルワーカー、教員、メディア専門家および議員を対象とする人権研修を強化するとともに、選択議定書の規定に関する具体的研修を実施するよう勧告する。 データ 18.委員会は、選択議定書が対象とする分野のほとんどについてデータおよび統計が存在しないことに、懸念とともに留意する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書が対象とするすべての分野についてデータ収集、分析、監視および影響評価を行なう包括的なシステムを発展させかつ実施すること。 (b) データが、もっとも被害を受けやすい立場に置かれた集団の子どもに特段の注意を払いながら、性別、年齢、国民的および民族的出身、州または準州、農村部または都市部の居住、先住民族としての地位ならびに社会経済的地位の別に細分化されることを確保すること。 (c) 収集されたデータを分析し、かつ選択議定書を実施するための政策の立案およびその目標に向けて達成された進展の評価の基礎として活用すること。 (d) この点に関して、国際連合児童基金(UNICEF)を含む国際連合の機関および計画の援助を求めること。 IV.防止 年齢確認手続 20.委員会は、軍隊、警察部隊およびその他の準軍事部隊に入隊予定の新隊員の年齢を確認する効果的な機構が設けられていないことを懸念するとともに、締約国における出生登録率の低さによってこの問題が悪化していることに留意する。とくに委員会は、公的出生証明書が存在しないときは、軍隊、警察部隊およびその他の準軍事部隊への採用が、推定の生年月日を記載した在学証明書を根拠に行なわれる場合があることを懸念するものである。 21.委員会は、締約国に対し、軍隊への子どもの採用を効果的に防止する目的で、新隊員の年齢が一貫した形でかつ効果的に確認されることを確保するよう促す。さらに、締約国は、すべての子どもが出生時に登録されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるべきである。 国以外の武装集団による子どもの徴募の防止 22.委員会は、18歳未満の子どもがさまざまな国以外の武装集団によって徴募され、かつ北東部諸州の動乱発生地区、毛派の武装集団が展開している地域およびジャンムーカシミール州において敵対行為で使用されている現象について深く懸念する。委員会はさらに、動乱発生地区において国以外の武装集団が社会の貧困層および周縁化されている層の家族の子どもを強制的に徴募していることを懸念するものである。 23.委員会は、締約国に対し、国以外の武装集団による18歳未満の子どもの徴募および敵対行為における使用を禁止しかつ犯罪化する法律を迅速に制定するよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、動乱発生地区で国以外の武装集団が行なっている、社会の貧困層および周縁化されている層の家族の子どもの強制的徴募を防止し、かつその根本的原因を解消するためにあらゆる必要な措置をとるよう促すものである。これらの措置には、強制的徴募の根本的原因を取り上げた意識啓発プログラムを実施すること、そのような子どもが学校に通えるようにすること、ならびに、子どものいかなる強制的徴募についても親および家族が通報できるようにする監視および通報のためのシステムを設置することが含まれるべきである。 軍事学校 24.委員会は、13歳という年少の子どもが軍事大学および軍事学校に編入されていること、ならびに、これらの子どもが火器の使用をともなう基礎的軍事訓練に参加していることを懸念する。委員会はまた、動員が行なわれた場合または武装抵抗集団との衝突その他の緊急事態におけるこれらの子どもの軍事上の地位、最低服務機関および早期除隊条件に関する情報が提供されなかったことも懸念するものである。委員会はさらに、このような大学および学校に独立のかつ秘密が守られる通報機構が設けられていないことを懸念する。 25.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 軍事学校にいる18歳未満のすべての子どもについて、火器の使用を含む軍隊形式の訓練を禁止するための措置をとること。軍事施設に入所する者は、出生証明書または年齢を確認できるその他の文書を所持しているべきである。 (b) 学校カリキュラムおよび教育担当職員が選択議定書を遵守することを確保するため、軍事学校の定期的監視を確立すること。 (c) 軍事学校で学習する子どもが18歳に達するまで文民とみなされることを確保すること。 (d) 士官学校および高等軍事教育機関に入学する18歳未満の子どもが軍事規律の対象とされないことを確保すること。 (e) 軍事大学および軍事学校に在籍する子どもの福祉を監視し、かつこれらの子どもによる苦情申立てについて調査することを目的として、これらのプログラムに参加する子どもがアクセスできる、独立の、秘密が守られる、かつジェンダーに配慮した苦情申立ておよび調査のための機構を設置すること。 人権教育および平和教育 26.中央中等教育委員会が軍事学校に人権講座を導入するための措置をとったことは歓迎しながらも、委員会は、人権教育および平和教育を学校カリキュラムに体系的に編入するプログラムが存在しないことを遺憾に思う。 27.教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を参照しつつ、委員会は、締約国が、学校カリキュラムに平和教育を含め、かつ学校において平和および寛容の文化を奨励するために効果的措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、教員の養成および研修に人権教育および平和教育を含めることも奨励するものである。 保護対象文民施設への攻撃および(または)その占拠 28.毛派の武装集団が展開している地域で公共のインフラおよびサービスを提供する統合行動計画の採択は歓迎しながらも、委員会は、国以外の武装集団が学校を意図的に攻撃していること、ならびに、インド北東部および毛派の武装集団が展開している地域で国軍が学校を占拠していることを懸念する。 29.委員会は、締約国に対し、国際人道法にしたがい、学校など子どもが相当数存在する場所の占拠および使用ならびにこれらの場所への攻撃を防止するためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、学校が適宜明け渡されることを確保するとともに、学校への不法な攻撃および(または)学校の不法な占拠の事案についての捜査が速やかに行なわれ、かつ加害者が訴追および処罰の対象とされることを確保するための具体的措置をとることも促すものである。 V.禁止および関連の事項 国の警察部隊による子どもの採用および使用 30.委員会は、締約国の州および準州における警察部隊への採用についての最低年齢が統一されておらず、かつ、一部の州/準州が、州警察、警察予備隊および村落防衛委員会に「少年当番兵」として18歳未満の子どもを採用しようとしていることを懸念する。 31.委員会は、締約国に対し、警察または関連の部隊および村落防衛委員会に18歳未満の子どもを採用することを締約国のすべての州および準州で禁止しかつ犯罪化する法律を制定するよう促す。 国以外の武装集団による子どもの徴募および使用 32.委員会は、非合法活動(防止)法(1967年)に掲げられ、またはインド北東部の動乱発生地区ならびに毛派の武装集団が展開している地域およびジャンムーカシミール州の諸地区で活動している国以外のさまざまな武装集団により、女子を含む子どもの徴募、誘拐および使用が継続的に行なわれていることに深い懸念を表明する。委員会は、武器および即席爆発装置の扱いならびに密告者としての活動を含むさまざまな任務のために子どもが使用されていることに、さらなる懸念を表明するものである。 33.委員会は、締約国に対し、子どもが国以外の武装集団によって徴募されないことを確保するためにあらゆる必要な措置をとる、選択議定書上の自国の義務を想起するよう求める。委員会は、子どもの強制的徴募を刑法上の犯罪と定めるよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、行方不明の子どもについて家族構成員が秘密裡に申告できるようにする監視システムを設置するとともに、そのような申告について迅速かつ公平な調査が行なわれることを確保するよう、勧告する。締約国は、とくに国際連合児童基金(UNICEF)の技術的援助を求めることを検討するべきである。 域外裁判権 34.委員会は、選択議定書が対象とするすべての犯罪について域外裁判権を設定することができるかどうかに関する情報を、締約国が報告書で提供しなかったことを遺憾に思う。 35.委員会は、締約国が、国内法によって、選択議定書が対象とするすべての犯罪について、当該犯罪が締約国の市民である者もしくは締約国に常居所を有する者によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合に域外裁判権を設定しかつ行使できるようになることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、国際刑事裁判所ローマ規程の批准を検討することも勧告するものである。 VI.保護、回復および再統合 36.委員会は、締約国の動乱発生地区で武力紛争の影響を受けている子どもに保護を提供する、少年司法(子どものケアおよび保護)改正法(2000年)の採択およびその後の改正(2006年)を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、同法が締約国のすべての動乱発生地区で十分に実施されているわけではないこと、ならびに、同法に定める子ども福祉委員会および少年司法委員会がこれらの地区で設置されていないことを懸念するものである。 37.委員会は、締約国に対し、締約国のすべての動乱発生地区で少年司法(子どものケアおよび保護)法を効果的に実施するための機構の確立に優先的に取り組むとともに、その実施状況を緊密に監視するよう促す。 被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置 38.委員会は、18歳未満の子どもが、公共安全法(1978年)、軍特別権限法(1958年)および動乱発生地区におけるその他の治安関連法に基づく行政拘禁の対象とされていることを懸念する。委員会は、治安関連法上、子どもが成人として扱われ、かつ成人とともに拘禁されていることをとりわけ懸念するものである。 39.委員会は、締約国に対し、18歳未満の子どもに対する刑事上および行政上の手続を禁止し、かつ軍の拘禁施設におけるこれらの子どもの拘禁を禁止する目的で、治安関連法を見直すよう求める。委員会は、18歳未満の子どもはあらゆる状況下で少年司法制度により扱われるべきであること、および、この文脈において年齢確認手続が一貫してかつ効果的に適用されるべきであることを勧告するものである。とくに委員会は、締約国に対し、以下のことを確保するよう促す。 (a) 子どもが、武装集団に所属していることを理由としてまたは脱走等の軍法上の犯罪を理由として、軍事裁判所により恣意的に逮捕され、拘禁されかつ訴追されないこと。 (b) 子どもの拘禁が、最後の手段としてのみ、かつ可能なもっとも短い時間でのみ用いられること。 (c) 敵対行為への関与の結果として自由を奪われた子どもが、人道的に、かつその固有の尊厳を尊重されながら取り扱われること。 (d) 子どもに対して刑事告発が行なわれるときに、審理が、文民裁判所において、かつ少年司法に関する国際基準(子どもの権利条約に掲げられた基準および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)で説明されている基準を含む)を遵守しながら行なわれなければならないこと。 (e) 子どもに対し、家族との再統合および心理社会的回復へのアクセスを含む、リハビリテーションおよび再統合のためのサービスが提供されること。 武装解除、動員解除および再統合 40.委員会は、締約国が、インド北東部、毛派の武装集団が展開している地域およびジャンムーカシミール州の動乱発生地区において、武器を引き渡した者に対して金銭的補償を行なうリハビリテーション付き引き渡し計画を確立し、かつ、武器を引き渡した者を対象とする職業訓練プログラムおよび職業的奨励措置を確立したことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、引き渡しの関連する政策のなかに、子どもの回復および統合に焦点を当てているものがひとつもないことを懸念するものである。とくに委員会は以下のことを懸念する。 (a) 州治安部隊に武器を引き渡した者のなかから元子ども兵士を組織的に特定するための機構が設けられていないこと。 (b) 引き渡しおよびリハビリテーションに関する政策において、武器を引き渡した者に対し、自主的に引き渡しを行なった旨の公の声明をメディアで行なうことが要求されていること。 (c) 武器を引き渡した幹部(子どもを含む)が治安部隊のための密告者として利用されていることから、国以外の武装集団によるその後の報復を含む安全上のリスクに晒されていること。 41.委員会は、締約国に対し、国以外の武装集団によって徴募されまたは敵対行為において使用されたすべての子ども(女子を含む)の特定、解放、回復および家族との再統合を目的とするプログラムを発展させるとともに、これらの子どもが効果的にかつ透明性のあるやり方で動員解除されることを直ちに確保するよう、促す。これとの関連で、家族の所在が判明せずまたは家族が特定できないときは、代替的な保護的収容施設が提供されるべきである。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 武力紛争に関与させられたまたはその可能性がある子どもを対処とする特定機構を確立するとともに、このような特定の担当者が子どもの権利、子どもの保護および子どもにやさしい面接スキルについて訓練されていることを確保すること。 (b) 少年司法(子どものケアおよび保護)改正法(2000年)の2006年改正で構想されているとおり、武器を引き渡した子どもおよび武装反政府集団に加わったときまたは武装反政府集団によって強制的に徴募されたときに未成年であったその他の若者をメディアへの露出およびとくに身元の開示から保護する目的で、リハビリテーション付き引き渡し計画を見直すこと。 (c) 子どもが密告者として利用されないことを確保するとともに、動員解除された子どもが安全上のリスクまたは報復の可能性にさらされないよう、当該子どもから提供された情報の秘密が保全されることを確保すること。 (d) 子どもが諜報目的の尋問を受けた旨の報告について迅速かつ公正な調査を実施するとともに、軍隊の責任者が適正な制裁を科され、かつ当該子どもに被害者・証人支援サービスが提供されることを確保すること。 (e) 子どもの権利条約に基づく次回報告書において、この点についてとられた措置に関するさらなる情報を提供すること。 身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための援助 42.委員会は、徴募されまたは武力紛争で使用された可能性のある子どもを対象とする回復、心理社会的支援、家族との再統合または保護的収容施設への措置との関連でとられた措置に関する情報が締約国から提供されなかったことを遺憾に思う。とくに委員会は、以下の点に関する情報がないことを遺憾に思うものである。 (a) 社会的再統合および家族再統合のために提供されている援助の態様ならびに提供されている身体的および心理的回復〔のための援助〕の態様(予算額を含む)。 (b) そのような援助から利益を受けた子どもの人数。 (c) 徴募の被害を受けた子どもが求めかつ受けた救済措置および賠償。 43.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 特定された子どもの人数および家族と再統合された子どもの人数に関する情報を提供するとともに、家族との再統合が不可能だった子どもについて、保護的収容施設を提供するためにどのような措置がとられたか明らかにすること。 (b) これらの子どもに対し、その身体的および心理的回復のための即時的な、子どもであることおよびジェンダーに配慮した分野横断的援助を提供するとともに、国以外の軍隊または武装集団と関連していた子どもの解放、回復および社会的再統合が優先されることを確保すること。 (c) これらの子どもが学校教育および必要に応じて保健サービスにアクセスでき、かつスティグマを付与されないことを確保するためコミュニティでフォローアップを行なうシステムを確立すること。 武器輸出 44.委員会は、子どもが武力紛争に関与させられているまたは関与させられていたことがわかっている国への武器(小型武器および軽兵器を含む)の販売および輸出を明示的に禁止しかつ犯罪化する立法についての情報がないことを懸念する。委員会はさらに、締約国がクラスター弾に関する2008年の条約を批准していないことを懸念するものである。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが武力紛争に関与させられているまたは関与させられていたことがわかっている国への武器(小型武器および軽兵器を含む)の販売および輸出を明示的に禁止する法律を制定すること。 (b) 小型武器および軽兵器の製造および取引を含む不法な活動が犯罪化され、記録が保管され、かつ火器に識別番号が刻印されることを確保すること。 (c) クラスター弾に関する条約(2008年)の批准を検討すること。 VII.国際的な援助および協力 国際協力 46.委員会は、締約国が、赤十字国際員会および子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表との協力を継続しかつ強化するとともに、選択議定書の実施のためにUNICEFその他の国際連合機関との協力を強化する方法を模索するよう勧告する。 VIII.フォローアップおよび普及 47.委員会は、締約国が、とくにこの総括所見に掲げられた勧告を議会、関連省庁(国防省を含む)、最高裁判所および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 48.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 IX.次回報告書 49.選択議定書第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、議定書およびこの総括所見に掲げられた勧告の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって委員会に提出される次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年1月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/95.html
総括所見:カンボジア(第2~3回・2011年) 第1回(2000年)OPAC(2015年)/OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/KHM/CO/2-3(2011年8月1日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年6月3日に開かれた第1620回および第1621回会合(CRC/C/SR.1620 and 1621)においてカンボジアの第2回・第3回統合報告書(CRC/C/KHM/2-3)を検討し、2011年6月17日に開かれた第1639回会合(CRC/C/SR.1639参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、第2回・第3回統合報告書および事前質問事項(CRC/C/KHM/Q/2/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はまた、ハイレベルのかつ多部門にまたがった代表団との積極的対話により、締約国における子どもの状況についての理解を向上させることができたことも歓迎するものである。 II.締約国がとったフォローアップ措置および達成した進展 3.委員会は、以下の法律等が採択されたことに評価の意とともに留意する。 (a) 国際養子縁組に関する法律(2009年12月)。 (b) 障害のある人の権利の促進および保護に関する法律(2009年7月)。 (c) 人身取引および性的搾取の抑止に関する法律(2008年2月)。 (d) 教育法(2007年12月)。 (e) ドメスティック・バイオレンスの防止および被害者の保護に関する法律(2005年10月)。 (f) 社会保障法(2002年)および社会保護戦略(2010年4月)。 4.委員会はまた、締約国が以下の国際人権条約を批准したことも歓迎する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2004年7月)。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2002年5月)。 (c) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2010年10月)。 (d) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(2007年4月)。 (e) 腐敗の防止に関する国際連合条約(2007年9月)。 (f) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2007年7月)。 (g) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関するILO第182号条約(2006年3月)。 (h) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2005年9月)。 (i) 国際刑事裁判所ローマ規程(2002年4月)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 (a) 人身取引、人の密輸、労働搾取および性的搾取の抑止を主導する国家委員会(2009年創設)。 (b) 教育戦略計画(2009~2013年)。 (c) 両親のいない子ども、HIVの影響を受けている子どもおよび脆弱な立場に置かれたその他の子どものための国家行動計画(2008~2010年)。 (d) 障害児教育政策(2008年)。 (e) 最悪の形態の児童労働の撤廃に関する国家行動計画(2008~2012年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第1回報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.128)を実施するために締約国が行なった努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、委員会の懸念および勧告の一部への対応が不十分にまたは部分的にしか行なわれていないことを遺憾に思うものである。 7.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないまたは十分に実施されていないもの、とくに差別の禁止、障害のある子ども、思春期の健康および少年司法に関わる勧告に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 8.裁判所はカンボジア法の解釈および事件に関する決定の際に条約を考慮しなければならないとする憲法評議会決定第092/003/2007号は歓迎しながらも、委員会は、条約の規定が裁判所および行政機関によって援用されまたは直接執行されるのは稀であることを懸念する。委員会はまた、子どもに関連する法律が多数採択されていること、および、双方向的な対話の際、締約国が包括的な子ども保護法を策定中であることが明らかにされたことにも留意する。しかしながら委員会は、法律を実施するための十分な機構が存在しないために、子ども関連の法律の実施が弱いままであることを懸念するものである。 9.委員会は、締約国に対し、国内法秩序において条約の原則および規定が全面的に適用できることを確保するため、あらゆる適当な措置(国、州および自治体のレベルで子ども関連法を適用するための十分な機構、枠組みおよび制度を設置することも含む)をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、この点に関わる進展および条約に掲げられた権利を実施するために国内裁判所または行政機関が行なった決定について報告することも要請するものである。委員会はさらに、締約国に対し、条約のすべての原則および規定を網羅した包括的な子ども保護法の制定を迅速に進め、かつ、現在起草されている少年司法法がこの法律に全面的に編入されることを確保するよう、促す。 調整 10.委員会は、カンボジア国家子ども評議会(CNCC)が固有の予算を有し、かつ国以下のレベルでも体制の構築を図る旨を定めた王令によってCNCCの地位が強化されたことに、積極的な面として留意する。しかしながら委員会は、条約の実施との関連で調整の役割を果たすために必要な人的資源、技術的資源および財源をCNCCがいまだに有しておらず、かつ、子どもの権利に関わる問題をCNCCに照会しまたは付託する義務がいかなる政府省庁にも課されていないことを懸念するものである。 11.委員会は、CNCCに対してより実質的な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう求めた締約国への勧告(CRC/C/15/Add.128、パラ11)をあらためて繰り返す。締約国はまた、締約国に対し、条約の実施に関する効果的調整を確保し、CNCCと政府省庁との関係を明確化し、かつ州、地区およびコミューンのレベルでCNCCの体制の迅速な構築を図るようにも促すものである。 国家的行動計画 12.委員会は、締約国において子どもに関するさまざまな部門別行動計画が存在することには留意しながらも、条約実施のための包括的な国家的戦略または行動計画が存在しないことを懸念する。 13.委員会は、締約国が、子どもに関する包括的な政策および戦略を策定しかつ実施するとともに、さまざまな部門別行動計画を包含し、かつ条約のすべての分野を網羅した子どものための国家的行動計画、または当該戦略を実施するための他の同様の枠組みを採択するよう、勧告する。委員会はまた、当該戦略を国家戦略開発計画(2009~2013年)および社会的保護戦略と緊密に関連づけ、かつ当該戦略に対して十分な資源を配分することも勧告するものである。委員会は、このような政策および諸計画の立案に際しては、2002年国連総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」およびその中間レビュー(2007年)、ならびに、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2003年)に対して適切な注意を払うよう、勧告する。 独立の監視 14.委員会は、条約の実施を監視することおよび当該実施における進展を評価することならびに自己の権利の侵害に関わる子どもからの苦情を受理しかつこれに対応することを目的とする、パリ原則に一致した独立機構の設置に向けた進展が限られていることを懸念する。 15.委員会は、子ども担当部局を有する国内人権機関の一部としてまたは別個の機構としてパリ原則にしたがった独立の機構を設置するよう締約国に求めた呼びかけ(CRC/C/15/Add.128、パラ14)を、あらためて繰り返す。当該機構は、子どもがアクセスしやすく、子どもの権利の充足状況を監視し、子どもの権利侵害の苦情に子どもにやさしい方法でかつ迅速に対応し、かつそのような侵害に対して救済を提供するようなものであるべきである。委員会は、独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2)に対して締約国の注意を喚起する。 資源配分 16.委員会は、国家戦略開発計画(2009~2013年)に子どもに関する主要な優先事項が掲げられているとはいえ、子どもの保護および社会福祉に対しては限られた人的資源、技術的資源および財源しか充てられておらず、現行サービスのほとんどは開発パートナーの資金によって運営されていることに留意する。委員会はまた、締約国における相当の経済成長にも関わらず、2007年以降、社会部門に充てられる予算は他の分野の半分しか増加しておらず、かつ教育に充てられる予算はGDPの1%にすぎないことも懸念するものである。委員会はさらに、2010年3月に汚職防止法が採択されたにも関わらず、締約国において汚職が依然蔓延しており、子どもの権利の実施の増進につながりうる資源が流用され続けていることに、深刻な懸念とともに留意する。 17.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 条約第4条にしたがい、子どもの権利の実施のために十分な予算資源を配分するとともに、とくに教育を含む(ただしこれに限られない)社会部門に配分される予算を増額すること。 (b) 予算全体における子どものための資源の配分および使用の追跡システムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門における投資が「子どもの最善の利益」にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。 (c) 可能であれば、資源配分の実効性を監視しかつ評価する成果基準予算を開始するべきであるという国連の勧告にしたがうとともに、必要なときはこの目的のため国際協力を求めること。 (d) 予算上のニーズに関する包括的評価を実施し、かつ、子どもの権利に関わる指標の格差に漸進的に対処する分野への明確な配分額を定めること。 (e) とくに子どもとの対話を通じ、かつ地方当局の適正な説明責任の面で、透明かつ参加型の予算策定を確保すること。 (f) 積極的な社会的措置を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子どもに関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。 (g) 汚職と闘い、ならびに汚職を効果的に摘発し、捜査しおよび訴追する制度的能力を強化するための即時的措置をとること。 (h) 「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年)における委員会の勧告を考慮すること。 データ収集 18.委員会は、とくに人身取引の被害を受けた子どもおよび代替的養護環境にある子どもに関するデータベースを発展させるために行なわれた相当の努力について、締約国を称賛する。しかしながら委員会は、条約が対象としている一部の領域、とくに障害のある子どもについて十分な情報が収集されておらず、かつデータ収集機構が依然としてまとまりを欠いていることを懸念するものである。委員会はさらに、条約のすべての領域を網羅する体系的かつ包括的な細分化されたデータベースの設置を確保するための、関連省庁間の調整が不十分であることを懸念する。 19.委員会は、締約国に対し、包括的なデータ収集システムを設置するとともに、子どもの権利の実現に関して達成された進展を評価し、かつ条約実施のための政策およびプログラムの立案に役立てるための基盤として、収集されたデータを分析するよう奨励する。すべての子どもの状況の分析を容易にするため、データは年齢別、性別、居住地別、民族別および社会経済的背景別に細分化されるべきである。委員会は、締約国に対し、ユニセフを含む関連の国際機関の技術的援助を求めるよう奨励する。 普及および意識啓発 20.委員会は、締約国のすべての州の学校長および副校長を対象として行なわれた子どもの権利に関する職業訓練も含め、子どもの権利条約に関する情報を普及するために締約国がとった積極的措置に、評価の意とともに留意する。 21.委員会は、締約国が、全国で条約を普及し、子どもたち自身および親を含む公衆の意識を高め、かつ条約の原則および規定に関する情報を普及する努力を強化するよう、勧告する。 研修 22.子どもとともにおよび子どものために働く一定の職種の専門家を対象として行なわれた研修についての情報には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、このような研修が依然として不十分であり、かつ、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家、ならびに、条約に関する意識が依然として限られている法執行機関を対象としていないことを懸念する。 23.委員会は、締約国が、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、公務員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員、心理学者を含む保健従事者ならびにソーシャルワーカーなど)を対象として、条約の原則および規定に関する体系的かつ良質な教育プログラムおよび研修プログラムを実施する努力を強化するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、とくに人権高等弁務官事務所(OHCHR)およびユニセフの技術的援助を求めるよう奨励するものである。 市民社会との協力 24.委員会は、締約国の人権擁護活動従事者、とくに住居に対する家族および子どもの権利を擁護する人々に対する脅迫、嫌がらせ、物理的攻撃および逮捕について、深い懸念を表明する。委員会はまた、子どもの権利の分野で活動している非政府組織が、意識啓発、子どもの権利の促進ならびに子どもに対するケアおよび保護の提供に関して重要な役割を果たしているのに、子どもに関する政策、法律および戦略の策定からしばしば排除されたままであることにも、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、反対意見を表明した人々に対して名誉毀損および虚偽情報に関する法律が広く利用されていること、および、結社および非政府組織(NGO)法案が採択されれば締約国における人権擁護活動従事者の活動が著しく制限されるであろうことを、懸念するものである。 25.委員会は、締約国に対し、人権擁護活動従事者およびその活動を正当に尊重し、市民社会との信頼および協力の雰囲気を回復させ、かつ、子どもに関わる政策、計画およびプログラムの企画、実施、監視および評価についてコミュニティならびに市民社会組織および子ども団体の組織的関与を得るために、具体的措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、脅迫および嫌がらせの報告事例が迅速に捜査されることを確保するようにも促すものである。委員会はさらに、締約国に対し、この点についてカンボジアの人権状況に関する特別報告者が行なった勧告(A/HRC/15/46、パラ95)を実施するよう促す。 子どもの権利と企業セクター 26.委員会は、経済成長ならびに国内投資および海外投資の増加を背景として、締約国が、衣料産業のような公式経済において企業活動が子どもの権利に与える影響を規制するため、積極的措置をとってきたことに留意する。しかしながら委員会は、国内外の企業の活動が子どもに与える可能性のある悪影響を防止するための、企業の社会的責任および環境面での責任に関する規制枠組みがまだ設けられていないことを懸念するものである。 27.委員会は、締約国が、地元および国外の企業による国内法の遵守状況を領域全体で引き続き注意深く監視するとともに、国連・ビジネスと人権枠組みにしたがい、企業セクターが、とくに子どもの権利との関連で、企業の社会的責任および環境面での責任に関する国内外の基準を遵守することを確保するための規則を策定しかつ実施するよう、勧告する。人権理事会によって2008年に全会一致で採択された国連・ビジネスと人権枠組みは、企業による人権侵害に対する保護を提供する国の義務、人権を尊重する企業の責任、および、人権侵害が生じた際、救済措置にいっそう効果的にアクセスできる必要性について簡潔に述べたものである。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 28.委員会は、農村部に住んでいる子どもの権利の享受に関して不平等および格差の水準が増していることに懸念を表明する。東北諸州の民族的マイノリティに属する子どもおよび南西諸州の子どもは、保健、教育および福祉へのアクセスに関してとくに不利な状況に置かれている。委員会はまた、女性および女子を伝統的役割に縛りつける、ジェンダーに基づくステレオタイプが根強く残っていることも懸念する。これとの関連で、委員会は、社会における女子および女性の役割は劣等であるという見方を正当化するチュバップ・スレイ(女性の行動規範)がいまなお締約国の学校で教えられていることを懸念するものである。 29.委員会は、締約国に対し、子どもによる権利の享受の関して存在している格差を注意深くかつ定期的に評価するとともに、当該評価に基づき、周縁化されたおよび不利な立場に置かれた集団に属する子どもへの差別と闘うために必要な措置をとるよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、女子差別に具体的に終止符を打ち、かつ、社会における女性および女子の劣等な役割を固定化させる、ジェンダーに基づく支配的な態度、慣行および規範を撤廃するようにも促すものである。 子どもの最善の利益 30.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則を国内法に編入する点についての進展を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの最善の利益が締約国の政策およびプログラムにおいてどのように考慮されているかに関する具体的情報がないことを懸念するものである。 31.委員会は、締約国に対し、すべての立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、子どもの最善の利益の原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう促す。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。 生命、生存および発達に対する権利 32.委員会は、溺死が子どもの死因の筆頭であること、および、これに続く死因が子どもの恒久的障害の原因の筆頭でもある交通事故であることに、深い懸念を表明する。委員会はまた、地雷および不発弾によって子どもが殺傷され続けているにも関わらず、地雷意識教育のための資金が相当に減額されたことも深く懸念するものである。 33.委員会は、締約国に対し、子ども、親、教員および公衆一般の安全意識を高めるための公的キャンペーンを行なうことによって溺死および交通事故を防止するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、地雷除去および地雷に関する意識啓発のためのプログラムを継続しかつ強化すること等の手段によって地雷から子どもを保護するため、あらゆる必要な措置をとるようにも促すものである。 子どもの意見の尊重 34.委員会は、締約国報告書の作成および「人身取引および商業的性的搾取に関する国家行動計画(2005~2013年)」の起草の過程で子どもたちとの多数の協議が行なわれたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、自己に影響を与える意思決定手続において意見を表明する子どもの権利を制約する伝統的態度が締約国で根強く残っており、かつ、子どもの参加を促進する政策および支援機構が締約国に存在しないことを懸念するものである。 35.委員会は、締約国に対し、意見を聴かれる子どもの権利を実施するために適当な措置をとる自国の義務を想起するよう求めるとともに、公衆教育プログラム(オピニオンリーダー、家族およびメディアと協力して行なわれるキャンペーンを含む)を通じて、意見を聴かれる子どもの権利の全面的実現を阻害する、子どもに関する否定的な態度および見方と積極的に闘うよう促す。委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年、CRC/C/GC/12)に対して締約国の注意を喚起するものである。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 36.委員会は、民事的地位に関する2000年12月の閣僚会議令第103号によって出生登録が義務的なものとされたこと、および、無償の出生登録を全国的に確保することに関して締約国が相当の成果を達成したことを歓迎する。しかしながら委員会は、非正規移民の子どもには出生を登録される資格がないこと、および、ベトナム系の家族が子どもの出生証明書を取得しようとした際に拒否されることが多いことを懸念するものである。 37.条約第7条に照らし、委員会は、締約国に対し、親の法的地位または出自に関わらず、すべての者に対して無償の出生登録を保障するよう促す。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いおよび処罰 38.委員会は、薬物依存の子どもおよび青少年、精神障害のある子どもおよび路上の状況にある子どもが、広範に行なわれている殴打、鞭打ち、および、これらの子どもの一部が強制的に措置された薬物リハビリテーション・センターおよび青年センターにおける電気ショックを含む拷問および不当な取扱いの対象にされているという訴えについて、深い懸念を表明する。 39.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 薬物治療リハビリテーション・センターであれ、社会的更生センターであれ、または政府が運営する他のいずれかのタイプのセンターであれ、いかなる形態の恣意的拘禁の対象とされている子どもも遅滞なく釈放されることを確保すること。 (b) これらのセンターにおける子どもの不当な取扱いおよび拷問の訴えが迅速に捜査され、かつ加害者が裁判にかけられることを確保すること。 (c) 拷問禁止委員会からすでに勧告されているとおり(CAT/C/KHM/CO/2、パラ20)、法執行官に対する苦情を受理し、かつ被害者に救済を提供する、子どもに配慮した独立機構を設置すること。 体罰 40.締約国が体罰禁止のためのさまざまな法律を採択してきたことには留意しながらも、委員会は、民法第1045条で「親権を有する者が必要な限度で個人的に懲戒を行なう」ことが認められていること、および、ドメスティック・バイオレンスの防止および被害者の保護に関する法律第8条で、しつけを目的とする子どもの体罰が黙示的に認められていることを懸念する。委員会は、体罰が、親および教員によって、文化的に受け入れられたしつけおよび規律のひとつの形態であるとしばしば見なされており、かつ締約国で広く行なわれていることを、懸念するものである。 41.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの体罰を認めている、民法第1045条およびドメスティック・バイオレンスの防止および被害者の保護に関する法律の規定を削除すること。 (b) 家庭を含むあらゆる場面における子どもの体罰を明示的に禁ずる法律を制定すること。 (c) 体罰を禁ずる法律が効果的に実施され、かつ、子どもに対する暴力の責任者に対し、法的手続が組織的に開始されることを確保すること。 (d) 体罰に対する一般的態度を変革する目的で、この慣行の有害な影響に関する公衆教育キャンペーン、意識啓発キャンペーンおよび社会的動員キャンペーンを導入するとともに、体罰に代わる手段として積極的な、非暴力的なかつ参加型の子育ておよび教育を促進すること。 (e) 体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)を参照すること。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 42.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表、ユニセフ、OHCHRおよび世界保健機関(WHO)ならびに他の関連の機関、とくにILO、ユネスコ、UNHCR、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、およびNGOパートナーと協力し、かつその技術的援助を求めること。 D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 43.委員会は、貧困家庭に対するサービス提供プログラムおよび国家家族相談政策委員会の設置を通じ、家族を基盤とするケアに焦点が当てられていることを歓迎する。しかしながら委員会は、親から配慮、注意および温かさを向けられていないと申告する子どもの割合が高いことを懸念するものである。 44.委員会は、締約国が、条約第18条に照らし、国内外の組織と協力しながら既存の親向けの相談サービスを強化するとともに、たとえば乳幼児期のケア、親の指導および親の共同責任に関する親向けの研修を通じて、家族に関する教育および意識をさらに発展させるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもに適切な配慮および注意を向けるために支援措置を必要としている家族をフォローアップするための子ども保護システムを構築することも、勧告するものである。 家庭環境を奪われた子ども 45.子どもの代替的養護政策(2006年)および子どもの代替的養護に関する最低基準(2008年)が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、この政策を実施するためのプラーカス(省令)がまだ採択されていないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、2005年から2008年にかけて締約国の孤児院にいる子どもの人数が65%増加したこと、および、入所型養護が依然として最善の選択肢と見なされていることにも、深刻な懸念を表明するものである。委員会はまた、以下の以下の点についても懸念を覚える。 (a) 施設に措置された子どもの3分の1は、親の一方がまだ存在すること。 (b) 入所型養護施設の登録および監視が依然として不適切であること。 (c) 予算の配分が不十分であり、かつ十分な訓練を受けた児童養護ワーカーが存在しないため、締約国の政策および指針の効果的実施が妨げられていること。 46.委員会は、締約国に対し、子どもの代替的養護政策に関するプラーカスを速やかに採択するとともに、同政策および子どもの代替的養護に関する最低基準の全面的実施のために必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、求める。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。 (a) 児童福祉センターへの措置を回避するため、相談およびコミュニティを基盤とするプログラムを通じて子どもにとって最善の環境としての家族を促進し、かつ子どもの世話をできるよう親のエンパワーメントを図るために、効果的措置をとること。 (b) 家族を強化しかつ支援するための政策等も通じ、養護施設で生活する子どもの人数を減らすための包括的入所基準および戦略を策定するとともに、子どもの施設措置が最後の手段としてのみ用いられることを確保すること。 (c) 施設に措置された子どもが家族に再統合できるようにするための機構を実施すること。 (d) 児童養護ワーカーを追加採用するとともに、これらのワーカーが、家庭型代替的養護措置を監視するための十分な訓練および報酬を受けることを確保すること。 (e) 「子どもの代替的養護に関する国連指針」(国連総会決議A/RES/64/142付属文書)〔PDF〕を考慮すること。 養子縁組 47.委員会は、2009年国際養子縁組法、および国際養子縁組当局の設置を歓迎する。しかしながら委員会は、法律の実施規則がまだ採択されていないこと、および、違法な国際養子縁組が国営施設職員の関与を得ていまなお行なわれているとの報告があり、かつこれらの訴えについて適正な調査がまったく行なわれていないことを懸念するものである。 48委員会はまた〔ママ〕、締約国に対し、国際養子縁組法を実施するためのプラーカスを遅滞なく採択するようにも促す。委員会はまた、締約国に対し、国際養子縁組に関して厳格な透明性およびフォローアップ管理を確保するとともに、違法な養子縁組および養子縁組目的の子どもの売買に関与した者を訴追することも促すものである。 虐待およびネグレクト 49.委員会は、女性および子どもに対するドメスティック・バイオレンス(性暴力を含む)が締約国において依然として深刻な問題であることに、深い懸念を表明する。2005年10月にドメスティック・バイオレンスの防止および被害者の保護に関する法律が採択されたことには留意しながらも、委員会は、コミューンおよび村の官吏に対してドメスティック・バイオレンスの被害者を保護するために行動する権限を付与するプラーカスがまだ発布されていないこと、および、子ども保護システムが締約国に存在しないことを、懸念するものである。委員会はさらに、ドメスティック・バイオレンスおよびジェンダーに基づく暴力が引き続き社会的に受け入れられており、かつ法執行機関によって広く容認されていることを懸念する。 50.委員会は、締約国に対し、ドメスティック・バイオレンスと闘うために即時的および効果的措置をとること、とくに以下の措置をとることを促す。 (a) ドメスティック・バイオレンスの防止および被害者の保護に関する法律の全面的実施のため、コミューンおよび村の官吏に対してドメスティック・バイオレンスの被害者を保護するために行動する権限を付与するプラーカスの速やかな採択を含む、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 児童虐待の通報、そのような通報への対応ならびにさらなる暴力を防止するための支援措置その他の措置の策定のためのシステムを含む子ども保護システムを設置するとともに、特定の地方当局に対して当該システムに関する明確な責任を担わせること。 (c) 子どもの性的虐待を含むドメスティック・バイオレンスについての信頼できるデータを収集し、かつ、子どもに対する暴力の問題の根本的原因および規模に関する研究を行なうこと。 (d) 被害者、とくに女性および女子による通報を妨げる公衆の態度および伝統を変革する目的で、ドメスティック・バイオレンスの問題に関するキャンペーンを含む全国的な意識啓発プログラムの調整を行なうこと。 (e) プライバシーに対する権利を含む子どもの権利の保障を正当に考慮しながら、子どもに配慮した司法手続を通じてドメスティック・バイオレンスの事案を捜査し、かつ加害者に対して制裁が科されることを確保すること。 E.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 51.委員会は、障害のある人の権利の促進および保護に関する法律(2009年7月)および2008年障害児教育政策の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、以下の点を懸念するものである。 (a) 障害のある子どもおよび障害の種別に関する正確なかつ細分化された統計データが存在しないこと。 (b) 締約国が障害の早期スクリーニング、発見、早期介入および予防のためのシステムを有していないこと。 (c) 障害のある子ども、とくに遠隔地(たとえば北東諸州)に住んでいる子どもおよび精神障害のある子どもが、依然として社会で著しく周縁化され、自分自身の家族からも拒絶され、かつ、とくに保健サービスおよび教育サービスへのアクセスの点で非常に差別されていること。 (d) 障害のある子どものためのサービスのほとんどがNGOによって提供されていること。 52.委員会は、締約国に対し、とくに必要な人的資源、技術的資源および財源を配分することによって、障害のある人の権利の促進および保護に関する法律および2008年障害児教育政策の効果的実施を確保するよう、促す。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 年齢、性別、障害の種別、地理的所在、民族および社会経済的背景によって細分化された、障害のある子どもに関する包括的データを収集するとともに、障害の原因を分析し、かつ障害の予防および障害のある子どもの援助のための政策およびプログラムを策定する際に当該データを活用すること。 (b) 障害の早期スクリーニング、発見、早期介入および予防に関する政策を採択すること。 (c) 障害のある子どものための基礎的サービスが国の責任で提供されることを確保すること。 (d) とくに農村部において、より多くの保健専門家を養成し、かつ障害のある子どもに保健サービスを提供する移動診療所を実施すること。 (e) メディア、市民社会組織およびコミュニティの指導者の援助を得ながら、障害のある子どもの権利に関する意識を高め、かつこれらの子どもに対する差別と闘うためのプログラムを実施すること。 (f) 普通教育および特別教育の質を向上させるとともに、さまざまな障害種別に適合した非公式教育プログラムおよび包括的かつ定期的な教員研修をさらに発展させること。 (g) 障害のある人の権利に関する国際条約を批准すること。 (h) 障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮すること。 健康および保健サービス 53.保健制度を発展させるために締約国が行なった努力には留意しながらも、委員会は、とくに遠隔地において保健サービスの利用可能性、アクセス可能性、質および実際の利用が限られていること、熟練の保健従事者が広範に不足していること、ならびに、保健ケアへのアクセスおよびその利用について農村部と都市部の間に根強い不平等が存在することを、懸念する。委員会はまた、以下の点についても特段の懸念を表明するものである。 (a) 乳児、5歳未満児および妊産婦の死亡率が依然として高いこと。 (b) 締約国の5歳未満児の半数が低体重であること。 (c) 下痢および肺炎のような予防可能かつ治療可能な疾病により、締約国で毎日推定100名の子どもが死亡していること。 (d) 路上の状況にある子どもを含む貧しい子どもを対象とする、無償の医療サービスが存在しないこと。 (e) 締約国で子ども向けの精神保健サービスが深刻に不足していること。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての州を通じて無償のプライマリーヘルスケア・サービスへのアクセスを拡大するとともに、都市部および農村部双方の人々の利益となるようなやり方でこれらのサービスを提供するため、十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (b) 産前および分娩時のケアを改善することも含め、新生児および乳幼児ならびに妊婦の死亡率を削減するための努力を強化すること。 (c) 5歳未満児の栄養不良の問題に包括的に対処するために緊急の措置をとること。 (d) 予防可能な子どもの健康問題(ヨウ素欠乏症、マラリア、下痢、急性呼吸器疾患、はしかおよび髄膜炎を含む)に対処するために緊急の行動をとること。 (e) WHOによる中核的勧告のすべての義務的要素(精神保健の促進、カウンセリング、プライマリーヘルスケア、学校およびコミュニティにおける精神保健障害の予防、ならびに、重度の精神保健上の問題を有する子どもおよび青少年を対象とした外来および入院による精神保健サービスを含む)を備えた、包括的かつ全国的な子どもの精神保健政策を策定すること。 (f) この点に関してとくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めること。 思春期の健康 55.委員会は、有害物質濫用の問題(アルコール、タバコおよび薬物を含む)を有する青少年の割合が高いことに、深刻な懸念を表明する。青少年に関するその他の懸念は、職場における事故および負傷、HIV、性感染症およびリプロダクティブヘルスに関する問題に関わるものである。委員会は、これらの問題に対処し、かつ委員会の前回の勧告を実施するためにとられた措置が限られていることを懸念する。委員会はさらに、2009年には自殺が青少年の死因の筆頭であったことを深く懸念するものである。 56.委員会は、思春期の健康に関する政策を促進し、かつリプロダクティブヘルス教育を強化するための基盤として、思春期の健康問題(精神保健を含む)の規模を判断するための包括的かつ学際的な研究を行なうべきである旨の、締約国に対する前回の勧告(CRC/C/15/Add.128、パラ53)をあらためて繰り返す。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 青少年を対象とする、青少年にやさしくかつジェンダーに配慮したカウンセリング・サービスならびにケアおよびリハビリテーションのための便益を発展させる努力を強化すること。 (b) 薬物を使用する子どもの依存脱却、解毒、治療、リハビリテーションおよび再統合のための介入が国際人権基準にしたがって行なわれることを確保するとともに、この目的のため、コミュニティを基盤とする薬物治療リハビリテーション・プログラムを発展させること。 (c) 若者の自殺およびその原因に関する詳細な研究を行なうとともに、この情報を活用して、ソーシャルワーカー、教員、ヘルスワーカーその他の関連の専門家と協力しながら、若者の自殺に関する国家的行動計画を策定しかつ実施すること。 (d) 思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)から指針を得ること。 HIV/AIDS 57.委員会は、締約国でHIV感染率が相当に下降したことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、HIV予防のための努力が、子どもをHIVの危険性にさらす複合的な脆弱性に積極的に対処するためには依然として不十分であることを懸念するものである。委員会はまた、HIV/AIDS関連プログラムのために配分される資源の水準が低下しており、かつ、HIVに関わる年間支出のうち締約国が負担しているのは9%に過ぎないことも懸念する。委員会はさらに、HIVに感染して家族から拒否された子どもに対し、教育の継続、生存、カウンセリング、里親養護ならびに虐待および搾取からの保護のための社会福祉上の支援が十分に提供されていないことを懸念するものである。 58.委員会は、締約国に対し、HIV予防統制国家戦略計画の全面的実施のために必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するとともに、とくに公衆教育キャンペーンを通じ、HIV/AIDSとともに生きている子どもに対するスティグマおよび差別を防止するために必要な措置をとるよう、促す。委員会は、HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針に対して締約国の注意を喚起するものである。 生活水準 59.貧困層および脆弱な立場に置かれた人々の関する国家戦略(NSPS)の採択には留意しながらも、委員会は、この10年間に見られた相当のかつ持続的な経済成長にも関わらず、この成長の利益が公平に配分されていないことを懸念する。人口の3分の1はいまなお貧困線以下の生活を送っており、かつ農村人口の5分の1しか衛生設備にアクセスできていないためである。委員会はまた、現行の社会的セーフティネットの取り組み(たとえば奨学金および労働の対価としての食料)の実施が断片的であり、かつその地理的対象範囲が限定されていることも懸念する。 60.委員会は、締約国に対し、経済的に不利な立場におかれた家族、とくに農村部に住んでいる家族に対して支援および物的援助を提供し、かつ十分な生活水準に対するすべての子どもの権利を保障する努力を強化するよう、促す。 子どもおよび家族の立退き強制 61.土地収用法(2010年2月)および一時的定住に関する通達(2010年5月)が採択されたことには留意しながらも、委員会は、権力の立場にある人々によって行なわれた土地の強奪および立退き強制の結果、数千の家族および子ども、とくに都市部の貧困家族、小規模農家および先住民族コミュニティがその土地を奪われ続けていることに、深い懸念を表明する。 62.委員会は、締約国に対し、土地所有権の合法性に関する決定が行なわれるまで、全国的に立退き強制を一時禁止するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、民間の活動および開発活動を理由とする立退き強制の結果、家族および子どもがホームレスとならないことを確保することも促すものである。委員会はさらに、締約国が、カンボジアの人権状況に関する特別報告者が土地および生計手段へのアクセスに関して行なった勧告(A/HRC/4/36およびA/HRC/7/42)を全面的に実施するよう勧告する。 母親とともに収監されている子ども 63.委員会は、母親とともに収監されている子ども、とくに、子どもの身体的、精神的および情緒的福祉にとって有害な条件のもと、過密状態にあるプノンペンのCC2刑務所ならびにタクマオ、コンポンチャムおよびコンポンチュナンの刑務所で暮らしている子どもについて、深刻な懸念を表明する。委員会は、子どもが食料および安全な飲料水を与えられておらず、母親が自分自身の配給食を子どもと分け合うことが期待されていること、および、子どもが、適切な換気設備のない監房に、著しく暑い環境のもと、結核のような感染症に罹患した者からも必ずしも隔離されないまま収容されていることが多いことを、とりわけ懸念するものである。委員会はまた、母親とともに収監されている子どもによる保健サービスへのアクセスが限られており、かついかなる形態の教育およびレクリエーション活動にもほぼまったくアクセスできていないことも懸念する。委員会はさらに、看守および他の受刑者による子どもの身体的虐待の事案について深刻に懸念するものである。 64.委員会は、締約国に対し、刑務所で暮らしている子どもおよびその母親の権利が尊重されることを確保するよう促す。委員会は、締約国に対し、母親およびその子どもに対して食料および保健サービスが提供され、かつ子どもが教育およびレクリエーション活動にアクセスできることを確保するため即時的措置をとるよう、促すものである。委員会はまた、締約国に対し、あらゆる形態の虐待から子どもを保護し、刑務所職員および他の収容者による子どもの虐待の報告をすべて調査し、かつ子どもに対する虐待の加害者に対して適切な懲戒措置をとるため、あらゆる必要な措置をとることも促す。 F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 65.委員会は、初等中等学校の就学率を高め、国全体で教育への公正なアクセスを確保し、かつジェンダー格差を縮小することに関して締約国が達成した目覚ましい進展に、満足感とともに留意する。委員会はまた、「万人のための教育」イニシアティブの実施に対する締約国のコミットメントも歓迎するものである。しかしながら委員会は、締約国で教育がいまなお義務ではないこと、GDPの1.9%しか教育に支出されていないこと、および、教育支出が2007年以降減少していることに懸念を表明する。委員会はまた、以下の点についても懸念を表明するものである。 (a) 障害のある子ども、民族的マイノリティ出身の子どもおよび先住民族の子どもが教育へのアクセスの面で著しく差別されていること。 (b) マイノリティ人口が多いラタナキリ州およびモンドルキリ州のような一部地域で、就学関連指標がとりわけ低いこと。 (c) 締約国で、とりわけ農村部において、学校インフラ(とくにトイレおよび飲料水のような便益ならびに生徒のための教材等)が不十分であること。 (d) 締約国は、教員に対する追加費用の支払いの問題について対応がとられていることを対話の過程で明らかにしたものの、教員の給与が依然として低いこと。締約国で行なわれている汚職の全般的水準により、試験を受ける生徒を合格させるために教員が金銭を受け取る可能性が生じている。 (e) 中退率、欠席率および留年率が依然として明らかに高くかつ上昇しており、かつ女子が男子よりもはるかにその影響を受けていること。 (f) 教育省による定期的監視を受けずに運営されている私立学校の数が増えていること。 (g) 教育の質、カリキュラムの適切性および遠隔地に対する教育サービスの提供が依然として課題となっていること。 (h) 就学前教育その他の乳幼児期の発達のための機会が、ほとんどの子ども、とくに都市部以外の子どもにとって基本的に手の届かないままであること。 (i) 職業教育に関する情報が締約国報告書に記載されていないこと。 66.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 基礎教育を義務的なものとすること。 (b) 締約国全域で十分な学校施設を拡大し、建設しかつ再建する目的で教育部門に一層の資源を配分するとともに、障害のある子どもおよびすべてのマイノリティ出身の子どもを歓迎する真にインクルーシブな教育制度を創設すること。 (c) 教育制度におけるあらゆる形態の汚職を押しとどめるために必要な措置をとること。 (d) ラタナキリ州およびモンドルキリ州のようなマイノリティ人口が多い地域にとくに注意を払いながら、中退率および留年率に対処するためにいっそうの努力を行なうこと。 (e) 社会的動員キャンペーンを通じて教育に対する女子の権利を促進するために積極的措置をとるとともに、十分な訓練を受けた女性教員の人数を増やし、かつその安全を確保すること。 (f) クメール語の話者ではない者を対象とする二言語教育をさらに拡大すること。 (g) カリキュラムの改訂、双方向的学習手法の活用および訓練を受けた教員の雇用を通じ、教育の質の向上を促進すること。 (h) ホリスティックな乳幼児期発達教育プログラム(コミュニティを基盤とするプログラムを含む)をさらに発展させ、かつ、低所得家庭および農村部に住んでいる家庭の子どももこれらのプログラムにアクセスできることを確保すること。 (i) 青少年および早期に学校を離れた者に対し、職業教育を提供すること。 (j) 教育の目的に関する一般的意見1号(CRC/GC/2001/1)を考慮すること。 G.特別な保護措置(条約第22条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第30条、第32~36条) 経済的搾取(児童労働を含む) 67.最悪の形態の児童労働の撤廃に関する国家行動計画の採択、ならびに、ミレニアム開発目標に基づいて2015年までに働く子どもの人数を8%にまで削減することおよび2016年までに最悪の形態の児童労働に完全に終止符を打つことに対する締約国のコミットメントには留意しながらも、委員会は、締約国で150万人以上の子どもが経済活動を行なっており、かつおよそ25万人の子どもが最悪の形態の児童労働に従事していることに、懸念を表明する。委員会はまた、数千人の子どもが、とくに首都プノンペンにおいて、家事労働者として奴隷類似の条件下で働いていることも深刻に懸念するものである。 68.委員会は、締約国に対し、とくに以下の措置をとることを通じて、児童労働法を全面的に執行しかつ最悪の形態の児童労働の撤廃に関する国家行動計画を実施するよう、促す。 (a) 児童労働を禁ずる国内法を強化すること。 (b) これとの関連で、子どもの家事労働者が置かれた権利を侵害されやすい状況に国際基準にしたがって対処することに優先的に取り組むこと。 (c) 労働査察官を増員し、かつ、不法な児童労働を利用した者に罰金および刑事制裁が科されることを確保すること。 (d) 法執行官、検察官および裁判官を対象とする義務的研修を開催すること。 (e) 働いていた子どもの回復および教育機会へのアクセスをジェンダーに配慮したやり方で促進するため、適当な措置をとること。 路上の状況にある子ども 69.委員会は、路上の状況にある子どもの問題に対処し、かつこれらの子どもに十分な援助を提供するための具体的な機構および資源が存在しないことに、懸念を表明する。委員会は、2008年初頭に行なわれたもののような、警察が実施する「路上一掃」作戦についてとりわけ懸念するものである。これらの作戦の期間中、路上の状況にある多くの子どもが、社会問題省プノンペン局が運営する2か所の更生センター(コー・ロムドールおよびプレイ・スプー)に送致され、不法に監禁され、かつさまざまな虐待を受け、なかには死亡に至った事例(自殺によるものも含む)も存在する。 70.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 路上の状況にある子どもを保護し、これらの子どもが回復および再統合のためのサービスを提供されることを確保し、かつ、これらの子どもを家族と再結合させることを目的とした、家族およびコミュニティを基盤とする介入策を優先的に実施するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 「路上一掃作戦」の実行および路上の状況にある子どもの犯罪者扱いを中止するとともに、これらの子どもの状況に、その権利および尊厳を尊重する方法で対処すること。 (c) コー・ロムドールおよびプレイ・スプーの両センターにおける子どもの拘禁および虐待について独立した立場からの調査を開始し、かつ、これらの調査の成果に関する包括的情報を次回の定期報告書で提供すること。 性的搾取および虐待 71.委員会は、締約国で数千人の子どもが搾取により売春をさせられており、かつ子どもの強姦が締約国で増加していること、ならびに、性的虐待および搾取のほとんどが締約国の国民によって行なわれていることに、深い懸念を表明する。委員会はまた、児童セックス・ツーリズムが近年増加していること、および、憂慮すべき割合の子どもがとくにインターネットを通じて性暴力およびポルノグラフィーにさらされていることも、深刻に懸念するものである。委員会はさらに以下のことを懸念する。 (a) とくに、法執行機関が奨励する、性的虐待事件における示談および賠償の慣行が広く行なわれていることを理由として、子どもの性的虐待および搾取の加害者がめったに訴追されないこと。 (b) 性犯罪者に対して、かつ未成年の女子が性的に搾取されている売春宿その他の性的施設の経営者に対してとられる措置が限られていること。 (c) 性的虐待および搾取の被害を受けた子どものための心理社会的リハビリテーション・サービスおよびシェルターがもっぱら首都に集中しており、かつもっぱら非政府組織によって運営されていること。 72.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもに対して性犯罪を行なった者がしかるべき形で裁判にかけられ、かつ適当な処罰による制裁を受けることを確保する目的で、性的搾取および虐待を犯罪化した法律を実施するための努力を強化すること。 (b) セックス・ツーリズムを可能にし、その便宜を図りまたはこれを悪化させる個人および事業者を非難し、かつこれらの個人および事業者に対して積極的措置をとること。 (c) 性的虐待および搾取の被害を受けた子どものためのシェルターを設置し、かつリハビリテーション、回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。 子どもの売買および人身取引 73.委員会は、子どもの人身取引と闘うために締約国がとった多数の措置、とくに、中央および州のレベルに人身取引対策・少年問題局が設置されたことおよび人身取引警察班が創設されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、多くの女性および子どもが、同国から国外への、同国を通じてのおよび国内における、性的搾取および強制労働目的の人身取引の対象とされ続けていることを懸念するものである。委員会はまた、人身取引を行なった者の訴追件数および有罪判決数が少ないことについて経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会が2009年に表明した懸念(E/C.12/KHM/CO/1、パラ26)も共有する。 74.委員会は、とくに犯罪者を訴追しかつ有罪とし、人身取引を防止するためのプログラムおよび広報キャンペーンを支援し、法執行官、検察官および裁判官を対象として人身取引禁止法制に関する義務的研修を実施し、かつ、被害者を対象とする医学的、心理的および法的支援の提供を増強することにより、締約国が、性的搾取および強制労働を目的とした人(とくに女性および子ども)の売買および取引と闘うための努力を強化するよう、勧告する。 難民および庇護希望者 75.2009年に20名のウイグル人庇護希望者(子ども2名を含む)が中国に強制送還されたことについて、とくに拷問禁止委員会によって表明された懸念(CAT/C/KHM/CO/2、パラ24)を共有しつつ、委員会は、締約国に対し、国際難民法および国際人権法(条約を含む)にしたがってノン・ルフールマンの原則を遵守するよう促す。 少年司法の運営 76.委員会は、新刑事訴訟法(2007年)および刑法(2009年)第1編によって警察による子どもの留置および子どもの審判前勾留に制限が課されたこと、ならびに、刑事責任に関する最低年齢が14歳と定められたことを歓迎する。しかしながら委員会は、子ども裁判所または子どもの権利を専門とする裁判官もしくは検察官が存在しないこと、子どもが裁判所によって成人として刑を言い渡されることが多いこと、および、子どもが一般的に成人刑務所に収容されていることを懸念するものである。委員会は、さらに以下の懸念を表明する。 (a) 重罪事件における加重事由法(2001年)が、2名以上の犯罪者によって行なわれた窃盗について刑を加重することとしており、量刑に関しておとなとこどもを区別していないこと。 (b) 圧倒的多数の子どもが審判開始まで弁護士と接見していないこと。 (c) 近年、拘禁される子どもの人数が憂慮すべき増加を見せており、かつ、法律が選択肢を定めているにも関わらず、拘禁に代わる手段がめったに利用されていないこと。 (d) 刑務所への子どもの収容のおよそ半数が審判前勾留であり、かつ2か月の法定期限を超えている例が多いこと。 (e) 子どもが収容されている拘禁センターで一般的な生活環境が劣悪であり、かつ悪化していること。 (f) 拘禁された子どもが教育または職業訓練にまったくまたはほとんどアクセスできず、かつカウンセリング・サービス(薬物依存およびアルコール依存に関するものも含む)およびレクリエーション活動へのアクセスも限られていること。 (g) 刑務所に収容された子どもの状況の監視が深刻に制限されていること。 (h) 更生プログラムが存在せず、かつ、法律に関わることになった子どもに対応する、特別訓練を受けた職員およびソーシャルワーカーの人数も限られていること。 77.委員会は、締約国が、条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)、刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準に、少年司法制度を全面的に一致させるよう勧告する。とくに、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 国の全域で専門の少年裁判所を設置すること。 (b) いかなる子どもも、法律に関わることになったまたは法律に触れた際、とくに逮捕および捜査の段階において、虐待および拷問の対象とされないことを確保すること。 (c) 被害を受けた子どもおよび罪を問われた子どもの双方に対し、手続の早い段階でかつ法的手続全体を通じて、十分な法的その他の援助を提供すること。 (d) 自由を奪われまたは更生センターもしくは拘禁施設に措置された子どもがけっして成人とともに収容されないこと、これらの子どもに対して安全なかつ子どもに配慮した環境が与えられること、および、これらの子どもが家族と定期的接触を維持し、かつ食料、教育および職業訓練を提供されることを確保すること。 (e) いずれかの形態で自由を奪われた子どもに対し、措置決定の再審査を受ける権利を認めること。 (f) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕または刑の執行猶予のような、拘禁に代わる措置を促進すること。 (g) UNODC〔国連薬物犯罪事務所〕、ユニセフ、OHCHRおよびNGOも参加する「少年司法に関する機関横断パネル」に対し、少年司法および警察の研修の分野でさらなる技術的援助を求めること。 犯罪の証人および被害者の保護 78.委員会は、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するよう、勧告する。 ベトナム系の子ども 79.委員会は、ベトナム系の子どもがいまなお市民として認められていないことにより、このような子どもが、身分証明書類にアクセスできないまま劣悪なかつ隔離された環境で生活しており、かつ人身取引および搾取の被害を非常に受けやすい状況に置かれていることを、懸念する。委員会は、ベトナム系の女子および若い女性の社会経済的地位が低いことにより、その3分の1が売春のために売られているという報告があることを、とくに懸念するものである。 80.委員会は、締約国に対し、ベトナム系の子どもが差別を受けていることを認めるとともに、これらの子どもが置かれた状況に対処し、かつこれらの子どもが出生登録、身分証明書類、公教育および保健ケア・サービスに効果的にアクセスできることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、ベトナム系の子どもに対する差別を終わらせ、かつ当該コミュニティに属する女性および女子の性的搾取および虐待を防止するためにとられた措置に関する情報を、次回の定期報告書で提供するよう促すものである。 H.国際人権文書の批准 81.委員会は、締約国に対し、子どもの権利条約の両選択議定書に関する第1回報告書を速やかに提出するよう求める。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、障害のある人の権利に関する条約、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を含むすべての中核的人権文書に加入することも、奨励するものである。 I.地域機関および国際機関との協力 82.委員会は、締約国が、締約国および他の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施に向けて、ASEAN女性・子ども委員会と協力するよう勧告する。 J.フォローアップおよび普及 83.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府、議会および州評議会の構成員ならびに適用可能なときは他の地方政府に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 84.委員会はさらに、条約およびその実施に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 K.次回報告書 85.委員会は、締約国に対し、次回の第4回~第6回統合報告書を2018年5月13日までに提出するよう慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 更新履歴:ページ作成(2011年10月8日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/314.html
国連・子どもの権利委員会:日本の第4回・第5回統合定期報告書に関連する質問事項 CRC/C/JPN/Q/4-5 配布:一般 2018年7月3日 原文:英語・フランス語・スペイン語のみ 日本語仮訳:子どもの権利条約NGOレポート連絡会議 ※当初、日本の本審査は第79会期(2018年9月17日~10月5日)に予定されていましたが、2018年2月の会期前作業部会終了後、第80会期に延期されました。 ※7月3日付で公表された正式版に基づき、日本語訳を一部修正しました。主な修正点はページの一番下の更新履歴を参照。 子どもの権利に関する委員会 第80会期 2019年1月14日~2月1日 暫定的議題 議事項目4 締約国報告書の検討 日本の第4回・第5回統合定期報告書に関連する質問事項 締約国は、追加の最新情報を、書面(10,700語以内)により、可能であれば2018年10月15日までに提出するよう要請されます。委員会は、締約国との対話の際、条約に掲げられた子どもの権利のあらゆる側面を取り上げる可能性があります。 第1部 1.子どもの権利に関する包括的な法律を採択する計画があれば、当該計画に関する情報を提供してください。改正児童福祉法が子どもの権利に及ぼした影響について説明してください。また、子供・若者育成支援推進大綱(2016年)からどのような教訓が得られ、かつ締約国がその成果に基づいてどのような措置の実施を計画しているのかについても、情報を提供してください。 2.人権擁護法案の状況、および、条約の実施を監視しかつ子どもの権利侵害についての苦情を受理できる国家人権委員会の設置に関する最新情報を提供してください。 3.女子、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである子ども、非婚の親から生まれた子ども、民族的マイノリティに属する子どもならびに日本人以外の出自を有する子どもに対する差別およびヘイトスピーチを解消するためにとられた、狙いが明確な(targeted)措置に関する情報を提供してください。また、包括的な反差別法を採択する計画があれば、当該計画に関する情報も提供してください。 4.あらゆる場面における体罰を、いかに軽いものであっても、法律によって明示的に禁止しかつ解消するためにとられた措置に関する情報を提供してください。また、暴力および子どもの虐待(とくに性的虐待)の防止、ならびに、被害を受けた子どもに提供される支援サービスおよびリハビリテーションサービスの種別に関する情報も提供してください。 5.子どもが家族から分離されまたは家族によって遺棄されることを防止し、子どもの脱施設化を加速し、かつ里親または養親による代替的養護を促進するためにとられた具体的な措置に関する情報を委員会に提供してください。児童相談所が運営する子どもの一時保護所の評価システムに関する最新情報を提供してください。離婚後に子どもが双方の親との関係を維持する権利がどのように確保されているか、説明してください。 6.改正学校教育法にしたがった、障害のある子どものためのインクルーシブ教育の発展における進展についての情報を提供するとともに、「特別支援教育」が何を意味するかについて説明してください。学童保育の民営化および規制緩和を踏まえ、障害のある子どものための学童保育の最低基準を改定するためにどのような措置がとられてきたか、説明してください。 7.高い低体重出生率を削減するためにとられた措置に関する情報を委員会に提供してください。また、2011年の福島原発事故以降、被曝した子どもに提供されている医療支援に関する情報も、委員会に提供してください。 8.日本が現在とっている気候変動緩和政策が、国内外の子どもの権利(とくに健康、食料および十分な生活水準に対する権利)を保護する日本の義務とどのように両立しているかについて説明してください。 9.増加しつつある子どもの貧困およびそれが子ども関連の社会的保護に及ぼす悪影響に対処するためにとられている措置についての情報を提供してください。また、社会的移転が子どもの貧困率の削減に及ぼす効果の低さの原因、および、社会的移転をより効率的なものとするために締約国がとることを計画している実際的措置についても説明してください。 10.乳幼児ケア施設を提供し、かつ乳幼児期教育の質を確保するためにとられている具体的措置(利用可能とされている資源を含む)についての情報を委員会に提供してください。子どもをいじめから保護するための措置に関する情報を提供してください。極度に競争的な学校環境の悪影響を緩和するためにとられている措置についての情報を委員会に提供してください。 11.子どもの庇護希望者の収容および親からの分離を防止するための法的枠組みを用意するためにとられた措置があれば、当該措置に関する情報を委員会に提供してください。また、子どもの庇護希望者が社会サービスにアクセスできるのであれば、当該アクセスについての情報も委員会に提供してください。 12.少年司法制度における条約の全面的実施を保障するためにどのような具体的措置がとられてきたかを明らかにするとともに、法律に抵触した子ども、被害を受けた子どもおよび子どもの証人に対し、再統合のためのおよび心理社会的な支援およびサービスとしてどのようなものが利用可能とされているか、詳細に説明してください。子どもの予防拘禁を根絶するために何らかの措置がとられているのであれば、それに関する情報を提供してください。また、少年非行の根本的原因に関する研究が実施されており、かつ何らかの防止措置がとられているのであれば、それらに関する情報も委員会に提供してください。 13.子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づいて委員会が前回行なった勧告(CRC/C/OPSC/JPN/CO/1)を実施するためにとられた措置に関する情報を提供してください。 14.武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づいて委員会が前回行なった勧告(CRC/C/OPAC/JPN/CO/1)を実施するためにとられた措置に関する情報(とくに、自衛隊の構成員を対象として、とりわけこれらの者が国連平和維持活動に参加する際に選択議定書の規定に関する研修を実施する計画があれば、当該計画に関する情報)を提供してください。 第2部 15.委員会は、締約国に対し、締約国報告書に記載されている情報のうち以下に関するものについての簡潔な最新情報(3ページ以内)を提供するよう求めます。 (a) 新たな法案または法律およびそれぞれに関する規則 (b) 新たな制度(およびその任務)または制度改革 (c) 最近導入された政策、プログラムおよび行動計画ならびにその適用範囲および資金調達 (d) 最近行なった人権文書の批准 第3部 データ、統計その他の情報(利用可能な場合) 16.過去3年間の予算についての整理された情報を、子どもおよび社会セクターに関連する予算項目ならびにさまざまな省庁の予算項目に関して、かつ国家予算総額、国民総生産および地域別配分額に占める各予算項目の割合を明らかにしながら、提供してください。 17.以下の子ども(農村部および山間部に住んでいる子どもを含む)の人数に関する過去3年間の最新データを、年齢、性別、社会経済的背景、国民的出身、民族的出身および地理的所在ごとに細分化した形で提供してください。 (a) 暴力の被害を受けた子ども(犯罪の種別ごとに) (b) 親から分離された子ども (c) 孤児である子ども (d) 施設および里親家庭に措置された子ども (e) 国内でまたは国際養子縁組を通じて養子となった子ども (f) 児童手当制度の受益者となった子ども 18.以下の点に関する過去3年間の最新データを、年齢、性別、社会経済的背景、国民的出身、民族的出身および地理的所在ごとに細分化した形で提供してください。 (a) プライマリーヘルスケア制度への資源配分 (b) 乳児および子どもの死亡率 (c) 低体重出生児 (d) 肥満 (e) 10代の妊娠、ならびに、妊娠出産に関する医療サービスおよび専門家によるサービスを受けている女子 (f) 中絶 (g) 自殺 (h) 薬物濫用 (i) HIV/AIDSを含む性感染症およびAIDSとともに生きている子ども 19.締約国全域の障害のある子どものうち以下の子どもの人数に関する過去3年間のデータを、年齢、性別、障害の種別、民族的出身および地理的所在ごとに細分化した形で提供してください。 (a) 家族と暮らしている子ども (b) 施設で暮らしている子ども (c) 乳幼児期教育を受けている子ども (d) 普通初等学校に通っている子ども (e) 普通中等学校に通っている子ども (f) 特別学校に通っている子ども (g) 就学していない子ども (h) 家族によって遺棄された子ども 20.以下の子どもの人数に関する過去3年間のデータを、年齢、性別、所在地および犯罪の種別ごとに細分化した形で提供してください。 (a) 少年司法制度からのダイバージョンの対象とされた子ども (b) 未決拘禁の対象とされている子ども (c) 予防拘禁の対象とされている子ども (d) 刑を言い渡されて服役している子ども(および刑の種別) 21.報告書に記載されているデータのうち、より最近になって収集されたデータまたはその他の新たな進展のために古くなってしまった可能性があるものがあれば、最新のデータを委員会に提供してください。 22.加えて、締約国として、子どもに影響を与えている諸分野のうち条約実施との関連で優先分野であると考えるものを列挙することも考えられます。 更新履歴:ページ作成(2018年3月2日)。/日本の本審査が第80会期に延期された旨を冒頭に記載し、第79会期に実施されるという前提で付していた訳注等を削除(3月9日)。/正式版の発表にあわせて日本語訳を修正。先行未編集版(advanced unedited version)からの主な修正点は次のとおり(7月18日)。差別に関する質問(パラグラフ3)で、「LGBTIである子ども」とされていた箇所を「ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである子ども」に修正。 教育に関する質問(パラグラフ10)で、「乳幼児ケア施設のためおよび乳幼児期教育の質の確保のためにとられている具体的措置」(the concrete measures ... for the early childhood care facilities and quality of early childhood education)を「乳幼児ケア施設を提供し、かつ乳幼児期教育の質を確保するためにとられている具体的措置」(the concrete measures taken ... to provide early childhood care facilities and to ensure the quality of early childhood education)に修正。 少年司法に関する質問(パラグラフ12)に、「子どもの予防拘禁を根絶するために何らかの措置がとられているのであれば、それに関する情報を提供してください。」の1文を追加。(先行未編集版にもあったが訳し漏らしていたもの) パラグラフ18(i)に「およびAIDSとともに生きている子ども」を追加。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/117.html
総括所見:韓国(第3~4回・2011年) 第1回(1996年)/第2回(2003年)/第5回・第6回(2019年)OPAC(2008年)/OPSC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/KOR/CO/3-4(2011年10月6日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページを参照。 1.委員会は、2011年9月21日に開かれた第1644回および第1645回会合(CRC/C/SR.1644およびCRC/C/SR.1645参照)において大韓民国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/KOR/3-4)を検討し、2011年10月7日に開かれた第1668回会合(CRC/C/SR.1668参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、委員会の報告ガイドラインにしたがって提出された締約国の第3回・第4回統合報告書、および事前質問事項(CRC/C/KOR/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、報告書の分析的および自己批判的性質を評価するものである。委員会はさらに、締約国の部門横断型代表団との建設的対話を評価する。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法措置がとられたことを歓迎する。 (a) 養子縁組特例法の改正(2011年8月)。 (b) 民法の改正(2011年9月)。 (c) 初等中等教育法施行令の改正(2011年3月施行)。 (d) 自殺防止および生命尊重文化の創造に関する法律の制定(2011年)。 (e) 家事訴訟法の改正(2010年3月)。 (f) 障害児福祉支援法の制定(2011年)。 (g) 児童福祉法の改正(2011年)。 (h) 多文化家族支援法の改正(2011年)。 4.委員会はまた、以下の文書の批准またはこれへの加入も歓迎する。 (a) 障害のある人の権利に関する条約(CRPD)(2008年12月11日)。 (b) 女性に対するあらゆる形態の差別に関する条約の選択議定書(2006年10月18日)。 5.委員会はまた、以下の制度的および政策的措置も歓迎する。 (a) 第2次学校暴力防止・対策5か年計画の策定(2010年)。〔(b)以降が存在しないのは原文ママ〕 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第2回報告書(CRC/C/70/Add.14)の検討後に行なわれた懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.197)ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1)の第1回報告書に関する懸念表明および勧告の一部に対応するために締約国が行なった努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、委員会の懸念表明および勧告に、不十分にしかまたはまったく対応されていないものがあることを遺憾に思うものである。 7.委員会は、締約国に対し、第2回報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないもの、とくに、韓国国家人権委員会内に子どもの権利に関する小委員会を設けること、体罰を包括的に禁止すること、および、教育政策が子どもに与えている高水準のストレスを軽減する目的で当該政策を見直すことに関わる勧告に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 留保 8.委員会は、条約第9条3項に付した留保を政府が2008年10月に撤回したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、条約第21条(a)(養子縁組が、最高の考慮事項としての子どもの最善の利益を正当に顧慮しながら権限のある機関による審査の対象とされることの確保)および第40条2項(b)(v)(締約国の刑法に違反したとして申し立てられまたは罪を問われたすべての子どもが、当該決定について、法律に基づき、上級の、権限のある、独立のかつ公平な機関または司法機関によって再審理される権利を有することの確保)に対する留保を維持していることを遺憾に思うものである。 9.委員会は、締約国が、条約の全面的実施の妨げとなっている、第21条(a)および第40条2項(b)(v)に対する留保の撤回を検討するよう、勧告する。 立法 10.委員会は、締約国の憲法で、国内法における条約の直接適用可能性が認められていることを歓迎する。しかしながら委員会は、条約の一般的規定を実施するための国内規則が不十分であること、および、締約国の裁判所による条約の直接適用がきわめて稀にしか行なわれないことを懸念するものである。委員会はさらに、法律による妊娠中絶の禁止(狭く定められた例外的状況の場合を除く)において妊娠した青少年の最善の利益が十分に考慮されておらず、妊娠した青少年が直面する困難を悪化させる状況が生じかねないことを懸念する。このような困難には、危険をともなう違法な中絶を利用し、ならびに(または)学業の中断を余儀なくされおよび(もしくは)子どもを養子縁組のために手放さざるを得なくなるおそれにさらされることが含まれる。 11.委員会は、締約国が、自国の司法決定において条約のすべての規定が十分に適用されることを確保するための措置(さらなる関連の立法を検討することも含む)よう勧告する。委員会はさらに、締約国が、妊娠中絶に関する法律において、思春期のシングルマザーが安全な妊娠中絶へのアクセスを認められ、かつ違法な中絶および子どもの養子縁組の強制から十分に保護されることを確保する等の手段によって子どもの最善の利益の原則が全面的に遵守されることを確保する目的で、当該法律を見直すことも勧告するものである。 調整 12.委員会は、とくに締約国の子ども政策調整委員会(CPCC)が2008年以降機能しておらず、かつ子どもおよび若者に関する締約国の政策が個別の省庁(それぞれ保健福祉部および女性家族部)によって実施されていて政策の断片化が生じていることにより、締約国による条約の実施における調整が後退していることを懸念する。青少年政策政府間評議会が設置されたことには留意しながらも、委員会は、青少年政策の調整を向上させる必要があることを依然として懸念するものである。 13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) CPCCを再建しおよび強化し、または、より好ましい方策として、必要な権限ならびに十分な人的資源、技術的資源および財源を有する適当な機関を設置すること。 (b) さまざまな省庁(保健福祉部および女性家族部を含む)間ならびに関連の国家機関、広域行政圏機関および自治体機関間において子どもの権利に関わる職務および関係が明確にされることを確保するとともに、その際、条約実施のために締約国が行なっているすべての活動を効果的に調整すること。 国家的行動計画 14.委員会は、2007年5月に国家人権政策基本計画(2007~2011年)が採択されたことに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、条約のすべての分野を網羅した、包括的な、かつ権利を基盤とする子どものための国家的行動計画が存在しないことを、依然として懸念するものである。さらに委員会は、現行計画の期間満了後にその後継計画となる国家行動計画が策定されていないことを懸念する。 15.委員会は、締約国が、関連のパートナーとの協議および協力に基づき、条約のすべての分野を網羅した、かつ十分な人的資源、技術的資源および財源の提供ならびに監視機構の設置を可能にする、子どものための国家的行動計画を採択しかつ実施するよう勧告する。これに加え、委員会は、締約国に対し、2011年後の期間に関する後継国家行動計画の作成作業を、市民社会および子どもたちと透明かつ徹底的な協議を行ないながら速やかに開始するよう、促すものである。委員会は、締約国がその際、子どもに関する総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」およびその中間レビューを考慮するよう勧告する。 独立の監視 16.委員会は、韓国子どもの権利モニタリング・センター(KMCCR)およびそれに付随して現場で活動する子どもの権利オンブズパーソンが設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下の点も含め、同制度が、国レベルで条約の実施を監視するための独立した機能的機構を有していないことを懸念するものである。 (a) KMCCRが法律上の地位を有しておらず、かつ保健福祉部の統制下にある予算科目の対象とされていること。 (b) KMCCRおよび子どもの権利オンブズパーソン制度に対し、子どもの権利侵害を能動的に監視しまたは調査し、かつ苦情を受理する権限が認められていないこと。 (c) KMCCRの権限が締約国による年次業績評価の結果次第とされており、そのためその独立性および継続性に影響が生じる可能性があること。 委員会はさらに、国家人権委員会の規模が2009年3月に21%縮小されたこと、および、委員会のこれまでの勧告にも関わらず、依然として子どもの権利に関する専門部署が設けられていないことを懸念する。 17.委員会は、締約国が、KMCCRに明確な権限を与える目的でその法律上の地位をはっきり定めるとともに、条約違反を効果的に監視しかつ調査するセンターおよびオンブズパーソン双方の効果的運営を確保する目的で、十分な、かつ独立した人的資源、技術的資源および財源を提供するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国に対し、独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮に入れながら、韓国国家人権委員会の独立性および継続性ならびに子どもの権利に関する専門化のための適当な条件を整備するよう、促すものである。 資源配分 18.委員会は、社会部門の実施のために配分される財源の増加(2008年より16.5%増)を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の進んだ経済発展状況を踏まえれば、現行の財源配分額が利用可能な資源に占める割合は依然として低いことに、深い懸念とともに留意するものである。2009年の経済開発協力機構(OECD)家族データベースによれば、大韓民国は加盟国26か国のなかで最下位に位置している。委員会はさらに、条約実施のためにさまざまな自治体当局が利用可能な資源の水準に相当の格差があることを懸念するものである。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 進んだ経済発展状況にあわせて、かつOECDの水準との関連で財源配分水準をいっそう緊密に調整する目的で、条約実施のために配分される財源の水準を再検討しかつ高めること。 (b) 子どもの権利の十分な実現を確保し、かつ居住する自治体および(または)地域が異なる子どもの間の格差を防止する目的で、中央および自治体のレベルにおける財源配分額を子どもの権利の視点から評価すること。この目的のため、部門別および自治体別の予算ニーズに関する包括的アセスメントを実施するとともに、子どもの権利に関わる指標の格差に漸進的に対応する分野に対し、安定した配分が行なわれるようにすること。 (c) 予算全体における子どものための資源の配分および使用の追跡システムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門における投資が「子どもの最善の利益」にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。 (d) 可能であれば、資源配分の実効性を監視しかつ評価する成果基準予算を開始するべきであるという国連の勧告にしたがうこと。 (e) とくに子どもたちとの公的な対話を通じ、透明な、かつ参加型の予算策定を確保すること。 (f) 積極的な社会的措置を必要とする可能性がある、不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(たとえば難民または移住労働者の子ども)に関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。 (g) 「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年)における委員会の勧告を考慮すること。 データ収集 20.委員会は、締約国において、データ収集の取り組みが方法論的に一貫しておらず、かつ条約が対象とする諸分野についての細分化されたデータが存在しないことを懸念する。委員会はまた、子どもの相対的貧困および極度の貧困を削減しようとするさまざまな政策およびプログラムにも関わらず、締約国において貧困下で生活している子どもについてのデータが存在せず、かつ、貧困削減を支援する地方政府の予算および能力についての格差を縮小するための措置がとられていないことも、懸念するものである。 21.委員会は、締約国に対し、条約のすべての分野を網羅し、かつ、とくに民族、ジェンダー、年齢、地理的所在および社会経済的背景を考慮した細分化されたデータを包括的に収集するための一貫したシステムを確立するよう、強く奨励する。委員会はさらに、締約国が、データで判断可能な諸傾向に関する学際的研究を実施するよう勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 22.人権に関する内容が締約国の学校シラバスに部分的に含まれたことには積極的側面として留意しながらも、委員会は、子ども、一般公衆および子どもとともにまたは子どものために働く専門家の間で条約に関する意識の水準が低いことを依然として懸念する。 23.委員会は、締約国が、とくに以下の手段によって意識を向上させるための追加的措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの権利および人権に関する教育を学校カリキュラムにさらに含めること。 (b) 子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家集団を対象として、条約に関する十分な研修が行なわれることを確保すること。 (c) 一般公衆の間で条約に関する意識を高めるための措置を強化すること。 国際協力 24.締約国が国際援助への拠出額を徐々に増やしてきたことは認めながらも、委員会は、国際援助に対する締約国の配分額が国民総生産(GNP)に占める割合はおよそ0.13%に留まっており、締約国が2015年までに達成することを誓約した、対GNP比0.7%という国際合意目標よりも相当に低いことに留意する。 25.委員会は、締約国に対し、2015年までに対GNP比0.7%という国際合意目標を達成し、かつ可能であればこれを超えるよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、開発途上国との間で締結する国際協力の取り決めにおいて子どもの権利の実現が最優先課題となることを確保するようにも奨励するものである。委員会は、締約国が、その際、当該供与相手国に関する子どもの権利委員会の総括所見を考慮するよう提案する。 子どもの権利と企業セクター 26.委員会は、世界でもっとも活力ある経済国のひとつである締約国の企業セクターが、企業の社会的責任(現在のところ、もっぱら環境問題に焦点を当てているように思われる)への関心を高めていることを歓迎する。締約国の法律の諸側面においてとくに労働基準および最低賃金への対応が行なわれていることには留意しながらも、委員会は、企業活動が人権に及ぼす悪影響の防止および緩和について定める包括的な立法上の枠組みが、締約国の領域における企業活動についても国外における企業活動についても存在しないことに、留意するものである。委員会はさらに、とくに以下の点に懸念とともに留意する。 (a) 締約国が、子どもの強制労働を用いているという報告があることを理由に国際労働機関(ILO)(および欧州議会)の調査対象とされている国々から製品を輸入しており、したがって重大な子どもの権利侵害に加担していること。 (b) 締約国出身の企業が、さまざまな国で、とくに水および居住に対する権利に悪影響を及ぼす可能性がある土地賃借契約を締結しまたは締結しようとしているという報告があること。 (c) 締約国が締結したまたは締結の承認を待っている自由貿易協定の交渉に先立ち、何らの人権影響評価も行なわれていないように思われること。 27.「保護・尊重・救済」枠組み報告書を採択した2008年の人権理事会決議8/7および新たな作業部会に対してこの問題のフォローアップを要請した2011年6月11日の同決議17/4(いずれの決議も、ビジネスと人権との関係を模索する際に子どもの権利が含められるべきことに留意している)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 韓国に本社を置く企業に対して、国内および国外におけるその活動(当該企業のサプライチェーンまたは関連業者のいずれによって行なわれるものかは問わない)から生じる人権への悪影響を防止しかつ緩和するための措置をとるよう求める立法上の枠組みを定めることにより、効果的な企業責任モデルの採用をさらに促進すること。子どもの権利に関わる指標および変数を報告に含めることが促進されるべきであり、かつ、事業が子どもの権利に及ぼす影響の具体的アセスメントが要求されるべきである。 (b) 子どもの強制労働を用いて製造された製品の輸入を防止する目的で製品の搬入を監視するとともに、自国の市場に持ちこまれる製品が児童労働と無縁であることを要件とする目的で貿易協定および国内法を活用すること。 (c) 自国の企業が国外事業を行なう際に子どもの権利を尊重することを確保するための措置をとるとともに、先住民族に影響を及ぼす事業について、自由なかつ十分な情報に基づく事前の同意を得るプロセス、または人権/子どもの権利に関する影響評価を実施している外国政府と協力すること。 (d) 自由貿易協定の交渉および締結に先立ち、子どもの権利を含む人権についての評価が実施され、かつ人権侵害を防止するための措置がとられることを確保すること。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 28.委員会は、締約国の反差別法案が国会で検討されることなく2007年10月に廃案となったこと、および、立法上の差別の定義に、性的指向および国籍に基づく差別の明示的禁止が掲げられていないことを遺憾に思う。さらに委員会は、締約国で根強く残り続けている複合的形態の差別について懸念するものである。このような差別には、多文化的背景もしくは移住者としての背景を有する子どもまたは朝鮮民主主義人民共和国出身の子ども、子どもの難民、障害のある子ども、および、シングルマザー、とくに思春期のシングルマザー(国による支援措置からの除外に関するものも含む)に対する差別が含まれる。 29.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 条約第2条に全面的に一致する法律を採択する目的で、反差別法を速やかに制定すること。 (b) 脆弱な状況またはマイノリティの状況に置かれた子どもに対する差別的態度を根絶しかつ防止するため、意識啓発キャンペーンおよび公衆教育キャンペーンを含むあらゆる必要な措置をとること。 (c) 思春期のシングルマザーを含むシングルマザーに対し、十分な支援を提供すること。 生命、生存および発達に対する権利 30.委員会は、自殺防止基本計画(2004年)等を通じ、若者および子どもの自殺に対応するために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、大韓民国における自殺率が深刻なほど高いことを、依然として深く懸念するものである。 31.委員会は、締約国に対し、調査研究の結果を具体的な政策、制度的措置および行政措置を実施する際の指針として活用する目的で、関係する子どもの家庭および教育制度の双方における子どもの自殺リスク要因についての調査研究を実施するよう、促す。委員会はさらに、このような政策および措置には十分な防止措置およびフォローアップ手続の整備が含まれるべきであり、かつ、これらの措置および手続を支えるため、ソーシャルワーカー、および、関係するすべての子どもを対象とする心理相談サービスが十分に提供されるべきであることを、勧告するものである。 子どもの最善の利益 32.委員会は、子どもに関わる締約国の法律で子どもの最善の利益の原則に対する明示的言及が見られず、かつ、司法上および行政上の決定ならびに子どもに関わる政策およびプログラムにおいてこの原則が頻繁に適用されていないことを、懸念する。 33.委員会は、締約国に対し、すべての立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、子どもの最善の利益の原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、促す。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。 子どもの意見の尊重 34.子どもおよび若者の意見表明のために締約国が組織する会議が設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国の法的手続においても社会的態度の文脈においても、子どもに影響を与える決定についての子ども(とくに15歳未満の子ども)の意見が考慮されていないことを依然として懸念するものである。 35.委員会は、子どもが自己に影響を与えるあらゆる決定において意見を表明し、かつその意見を考慮される権利を有することを確保するための法改正を検討するよう勧告するとともに、条約第12条にしたがって締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。 (a) 自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明する子どもの権利を含めるために児童福祉法が改正されることを確保するとともに、裁判所および行政機関(学校および教育制度の懲戒手続も含む)において、子どもに影響を与えるすべての事柄に関して子どもの意見の尊重を促進し、かつ意見を聴かれる子どもの権利の便宜を図るために、立法等も通じて効果的措置をとること。 (b) 子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ意見を聴かれる子どもの権利について、とくに親、教育者、政府の行政職員、司法関係者および社会一般に対し、教育的情報を提供すること。 (c) 子どもの意見がどのぐらい考慮されているか、またそれが政策、プログラムおよび子どもたち自身にどのような影響をあたえているかについて、定期的検討を行なうこと。 (d) 意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)を考慮すること。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 36.委員会は、締約国における現行の法律および実務が、実親による子どもの完全出生登録をあらゆる状況下で保障するには不十分であることを懸念する。とくに委員会は、出生登録を養親または公的権限を有する者が行なえるため、思春期のシングルマザーが関わる状況等において、適切な司法的監督のないまま事実上の養子縁組が行なわれる結果につながっていることを懸念するものである。委員会はさらに、難民、庇護希望者または非正規移民の状況にある者にとって、出生登録が実際上または一貫した形では利用可能となっていないことを懸念する。 37.条約第7条にしたがい、委員会は、締約国に対し、親の法的地位および(または)出自に関わらず、すべての子どもに対して出生登録が利用可能とされることを確保するための措置をとるよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、その際、登録において子どもの実親が正確に記載されていることを確保しかつ確認するよう促すものである。 思想、良心および宗教の自由 38.締約国が学校における義務的宗教教育を禁じたことには積極的側面として留意しながらも、委員会は、実際には、宗教機関が運営する私立学校において生徒(当該学校に自発的に入学したわけではない可能性がある生徒を含む)の宗教の自由が引き続き制限されていることを懸念する。委員会はまた、現行の取り組みにおいて、宗教的多様性に資する雰囲気が十分に促進されておらず、または特定宗教の子どもが有する具体的なニーズもしくは制約(食事面の要件に関わるものを含む)が十分に考慮されていないことも懸念するものである。 39.委員会は、条約第14条3項にしたがい、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利が実際上およびあらゆる場面で全面的に尊重されることを確保するため、締約国がさらなる措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、このような措置が、特定の宗教の具体的な要件または制約(食事面の要件に関わるものを含む)に対して正当な考慮および配慮が払われる、宗教的多様性の認識に資する雰囲気を促進する目的でとられるべきことを、勧告するものである。 表現、結社および平和的集会の自由 40.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.197、パラ37)にも関わらず、学校が生徒の政治的活動を引き続き禁止していることに懸念を表明する。さらに委員会は、学校運営委員会が生徒の参加を除外しており、かつ、学校に行っていない都市部および農村部の子どもにとって表現および結社の自由に対する権利を行使する機会が制限されていることを懸念するものである。 41.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、条約第12~17条に照らし、締約国に対して、学校内外の意思決定プロセスおよび政治的活動への子どもの積極的参加を促進し、かつすべての子どもが結社および表現の自由を全面的に享受することを確保する目的で、法律、教育部が発する指針および校則を改正するよう求める。これには、生徒が (i) 学校環境におけるものも含む政治的活動に参加しまたはこれを行ない、かつ、(ii) 学校運営委員会に意味のある形で参加できるようにすることに関連した措置も含まれる。 体罰 42.委員会は、家庭、学校および代替的養護の状況において体罰が引き続き蔓延していることについての前回の懸念(CRC/C/15/Add.197、パラ38)をあらためて表明する。 43.委員会は、以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。 (a) 関連の法律および規則を改正し、家庭、学校その他のあらゆる施設における体罰を明示的に禁止すべきであるという、国家人権委員会の勧告を実施すること。 (b) 体罰に関する態度を変革するため、子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施するとともに、学校および家庭において積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけ(学校における体罰に代わる手段としての試験的グリーン・マイレージ制度を含む)を促進すること。 (c) 体罰の被害を受けた子どもが当該事件を通報できるようにするための機構を確立すること。 子どもに対する暴力(虐待およびネグレクトを含む) 44.委員会は、締約国において子どもの身体的および心理的虐待ならびにネグレクトの発生件数が増加していること、および、このような虐待を通報する法的義務が狭く定められていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、学校におけるいじめの発生率および深刻さが増していることも懸念するものである。さらに、地方の子ども保護機関が設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、その数が依然として限られており、かつ財源および人的資源が不十分であることを懸念する。委員会はまた、このような虐待および(または)ネグレクトの被害者に対する、トラウマ後の対応およびリハビリテーションのための支援の提供が不十分であることにも、懸念とともに留意するものである。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童虐待およびネグレクト(学校におけるいじめに関わるものも含む)を通報する法的義務について、通報者の安全およびプライバシーを正当に考慮しながらこのような通報が行なわれるようにするための十分な機構を整備することにより、当該義務を強化しかつ拡大すること。 (b) 地方レベルも含めて保護機関を増設するとともに、これらの機関に対し、その効果的職務遂行(虐待および(または)ネグレクトの被害者に対し、トラウマ後の対応およびリハビリテーションのための十分な支援を提供することも含む)を保障するために必要な、十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されるようにすること。 (c) あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する子どもの権利委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮すること。 46.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表、国連児童基金(ユニセフ)、人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)ならびに他の関連の機関、とくにILO、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)およびNGOパートナーと協力し、かつその技術的援助を求めること。 D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境を奪われた子ども 47.委員会は、養護を必要としている子どもに家庭的養護を提供するための努力を締約国が行なっていること、および、そのような養護を提供するための追加的施設が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、そのような代替的養護施設の評価において当該施設の運営管理しか対象とされず、養護の質、専門家の技能および訓練ならびに提供される処遇については評価されないことに、懸念とともに留意するものである。さらに委員会は、そのような施設における虐待またはネグレクトの事例に対応するための苦情申立て機構に関する情報が存在しないことを懸念する。委員会はまた、親との接触を失った子供を追跡するシステムが設置されていないことも懸念するものである。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第25条にしたがい、代替的養護を提供する官民の施設における養護の質、関連の専門家の定期的研修(子どもの権利に関する研修を含む)および子どもに提供される処遇の態様についての体系的な定期的審査を確保すること。 (b) 代替的養護の現場における児童虐待についての苦情の受理、捜査および訴追のための機構を確保するとともに、虐待の被害者が苦情申立て手続、カウンセリング、医療ケアおよび回復のための他の適当な援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 代替的養護を受けている子どもに対し、親との接触を確立しかつ(または)維持するための十分な支援を提供すること。 (d) 2009年11月20日に採択され、総会決議64/142に掲げられた「子どもの代替的養護に関する指針」〔PDF〕を全面的に考慮すること。 養子縁組 49.締約国が養子縁組特例法および民法を改正したことにより、当該改正の施行とともに、養子縁組について家庭裁判所の承認決定が求められるようになることには積極的側面として留意しながらも、委員会は、当該法が施行されるまでの暫定期間中の子どもの養子縁組について懸念を覚える。委員会はまた、以下の点も依然として懸念するものである。 (a) 養子縁組についての規制の監督を行なう明確な権限を与えられた中央当局が設置されておらず、かつ、締約国の権限ある機関が国際養子縁組手続に介入する義務を成文化した法律が定められていないこと。 (b) 養子となる子どもが13歳未満の場合には子どもの意見が聴かれないこと。 (c) 思春期のシングルマザーのもとに生まれた子どもの圧倒的多数が養子縁組のために手放されていること、および、思春期のシングルマザーの親または法定保護者に対し、当該シングルマザーの同意なく子どもを養子縁組のために解放する権限が認められていること。 (d) 養子縁組後に利用可能なサービス、とくに国際養子縁組の対象とされた子どものためのサービスがほとんど存在しないこと(このような養子が自己の生物学的出自に関する情報を求める場合に直面する言語上の困難への対応に関するサービスも含む)。 (e) 締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約に依然として加盟していないこと。 50.委員会は、前掲法の施行前に行なわれる養子縁組について同等の十分な保護が提供されることを確保するために必要な措置を、締約国が迅速にとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、法律を子どもの権利条約の原則および規定、とくに第21条に全面的に一致させるべく法改正を行なう目的で国際養子縁組制度のさらなる見直しを行なうとともに、具体的には以下の措置をとるようにも促すものである。 (a) 韓国中央養子縁組資料本部がハーグ条約第6条にしたがってその役割および職務を効果的に遂行できるようにするための明確な権限(養子縁組後のサービスの提供に関わるものも含む)を定めるとともに、そのための十分な人的資源、技術的資源および財源を提供すること。養子縁組後のサービスの提供にあたっては、国際養子縁組の対象とされ、かつ韓国語に堪能ではない可能性がある者が当該便益に実際的にアクセスできることの確保に対し、正当な考慮を払うことが求められる。 (b) 養子縁組手続において、子どもの意見がその年齢および成熟度を顧慮しながら正当に重視され、かつ子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされることを確保すること。 (c) 養子縁組のために子どもを解放することについて思春期のシングルマザーの同意を義務づけるとともに、これらのシングルマザーに対し、当該同意が事実上のまたは現実の強迫により得られることのないことを保障する環境が提供されることを確保すること。 (d) すべての養子縁組(国際的文脈で行なわれるものを含む)が、明確な権限を与えられ、かつ司法的監督および規制を行なう十分な能力を有する中央当局による認可の対象とされることを確保するための措置を実施すること。 (e) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の批准を検討すること。 E.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 51.委員会は、障害児福祉支援法、同法に基づく障害児リハビリテーション・プログラム、および障害児家庭子育て支援プログラムを歓迎する。しかしながら委員会は、障害のある子どものための政府の援助が低所得世帯にしか提供されず、かつ理学療法および職業訓練は対象としていないことを懸念するものである。委員会はさらに、教育を受けるにあたって障害のある子ども(とくに女子)が困難に直面していること、特別教育の教員および監督者の利用可能性が限られていること、ならびに、障害のある子どもの大多数は、障害のない子どもから隔離された特別学校または特別教室で教育を受けていることを、懸念する。 52.委員会は、締約国に対し、2006年に採択された障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(CRC/C/GC/9)を考慮するとともに、以下の措置をとるよう促す。 (a) 障害のあるすべての子どもに対して適当な援助を提供すること。 (b) 障害のある子どもがその教育上のニーズについて十全な対応を受けられることを確保する目的で、障害のある子どもによる教育へのアクセスを促進するとともに、特別教育教員を増員するための措置をとり、かつ、教員および学校監督者に対して十分な研修を行なう措置をさらに強化すること。 (c) とくに十分な予算および人員による裏づけを図ることにより、障害者等に対する特殊教育法案〔ママ〕をより効果的に実施すること。 (d) 可能なときは常に、障害のある子どもに対してインクルーシブ教育が提供されることを確保すること。 健康および保健サービス 53.委員会は、締約国の保健予算が増額されたこと、および、健康保険の整備のために特別予算が配分されたことを歓迎する。委員会はまた、低所得世帯を対象とする医療扶助プログラム、喫煙に反対する公的キャンペーン、ならびに乳幼児の集団検診および予防接種を強化するための努力も歓迎するものである。しかしながら委員会は、このような増額にも関わらず、締約国の保健予算が総予算に占める割合が低いままであることを依然として懸念する。さらに委員会は、大規模な医療センターとそれよりも小さな地方病院との間で、小児保健および緊急ケアの利用可能性および質に格差があることを懸念する。 54.委員会は、保健に配分される資金を相当水準まで増加させるとともに、低所得家庭が費用負担なしに保健制度にアクセスできるよう公的ケア施設制度を確立するべきである旨の、締約国に対する前回の勧告(CRC/C/15/Add.197、パラ49(a))をあらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国が、小規模および中規模の地方病院に提供される、領域全体で小児医療ケアおよび緊急ケアを提供するための財源、技術的資源および人的資源を増加させる措置をとるよう勧告するものである。 精神保健 55.委員会は、とくに精神保健サービス・センターを全国32か所に設置することによって子どもの精神保健を向上させようとしている締約国の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国における子どもの精神保健の状況が全般的に悪化しており、かつ、子ども(とくに女子)の抑うつ発生率および自殺率が上昇していることを懸念するものである。委員会はまた、自殺の早期発見・予防を促進するための診断ツールが実施されていることにも留意しながらも、当該診断ツールがプライバシーに対する子どもの権利に悪影響を及ぼす可能性があることを懸念する。 56.委員会は、締約国が、子どもの抑うつおよび自殺の根本的原因に関する詳細な研究に基づいた子どもの精神保健ケア政策を策定するための措置をとるとともに、とくに女子の自殺行動の効果的防止を確保する目的で、包括的なサービス・システム(精神保健の促進および予防活動ならびに外来および入院による精神保健サービスを含む)の開発に投資するよう、勧告する。その際、委員会は締約国に対し、このような状況に置かれた子どもの施設措置を可能なかぎり最大限に回避するよう奨励するものである。さらに、自殺の発見および防止のための診断ツールの応用について、委員会は、締約国が、プライバシーに対する子どもの権利および子どもが十分な協議の対象とされる権利を十分に尊重するようなやり方で当該診断ツールが応用されることを確保するための十分な保護措置を確立するよう、勧告する。これらの勧告の実施について、委員会はまた、精神保健アプローチに加え、または適切なときは精神保健アプローチに代わるアプローチとして、自殺に関連する社会的および家族的要因を検討することの重要性も強調するものである。 思春期の健康 57.委員会は、子ども向け菓子等の製造、加工、輸入、頒布または販売を行なっている企業が子ども向けテレビ番組の放送中に高カロリー・低栄養の食品のコマーシャルを流すことを、韓国食品医薬品安全庁長が禁止できることに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、小児肥満、および不健康な栄養摂取から生じるその他の健康問題を有する子どもが多いことを懸念するものである。委員会はさらに、韓国における子どもおよび青少年の喫煙率および飲酒率が上昇し続けており、かつインターネット依存症が深刻な問題となっていることを懸念する。 58.さらに委員会は、必修の性教育プログラムを行なおうとする取り組みにも関わらず、実際には、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する体系的かつ正確な教育が依然として学校で行なわれていないことに、懸念とともに留意する。このような文脈において、委員会はまた、青少年の無計画妊娠率が高いこと、および、そのような状況に置かれた青少年の中絶率がこれに対応して高いことも、深く懸念するものである。 59.委員会は、締約国に対し、マスメディアの関与等も得ながら、タバコ、アルコールおよびインターネット依存症の健康上のリスクに関する意識を高めるための広報教育キャンペーンを強化するよう、促す。その際、締約国は、そのようなキャンペーンが、青少年が置かれている具体的状況を考慮しおよびこれに対応し、ならびに、健康的なライフスタイルを送りおよびバランスのとれた消費パターンを実践する青少年の能力構築に寄与することを確保するとともに、子どもの健康に悪影響を及ぼす不健康な食品の販売促進を規制するために追加的措置をとるよう、奨励されるところである。委員会はまた、締約国が、学校カリキュラムにおける性教育プログラムが体系的かつ信頼のできるやり方で実施されることを確保するための措置をとるようにも勧告する。 社会保障および生活水準 60.委員会は、憲法第34条3項、4項および5項にしたがって女性、高齢者および若者の福祉を向上させるための締約国の取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、憲法が子どもの福祉を向上させる義務について定めていないことを懸念するものである。 61.委員会は、締約国に対し、子どもの福祉に対して十分な水準の資金を具体的にかつ義務的に配分することについての規定を置くために法改正を検討するよう、促す。締約国は、貧困を削減し、かつすべての子どもの生活水準を向上させるためのプログラムにおいて平等性および公平性を確保するべきである。 F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 62.生徒のストレスを軽減するために締約国が行なっている努力、および、子どもが遊び、かつレクリエーション活動および文化的活動を行なえることを確保するためのプログラムの採用にも関わらず、委員会は、締約国の教育制度において、深刻なほど競争的な状況がいまなお蔓延していることを懸念する。委員会はまた、課外で行なわれる民間の追加的指導を子どもが広く受けている結果、子どもが深刻かつ不相応なストレスを受けており、かつその身体的および精神的健康に悪影響が生じていることも懸念するものである。さらに委員会は、このような民間の指導の金銭的負担のためにすでに存在する社会経済的非対称性が悪化していること、および、これによって余暇および文化的活動に対する子どもの権利の十分な充足が阻害されていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、とくに外国系の子どもに対するいじめの深刻さおよび頻度が増しており、かつ、そのようないじめの実行に携帯電話およびインターネットが利用されていることも懸念するものである。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 第29条、および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を正当に考慮しながら、現行教育制度および関連の試験についての評価を行なうこと。 (b) 民間の課外教育に対する幅広い依存の根本的原因およびその結果として生ずる高等教育へのアクセスの不平等に対応する目的で、公教育制度を強化するための努力を倍加すること。 (c) 条約第31条にしたがい、十分な余暇、文化的活動およびレクリエーション活動を享受する子どもの権利を確保すること。 (d) 学校へのアクセスの平等の達成に関わる具体的成果についての情報を体系的に収集し、かつ締約国の次回定期報告書に当該情報を記載すること。 (e) 外国系の子どもにとくに注意を払いながら、いじめと闘うためにとられる措置を強化するとともに、いじめを削減するための取り組みへの子どもの参加を確保すること。このような措置においては、教室または校庭の外で行なわれる新たな形態のいじめおよびいやがらせ(携帯電話によるものおよびバーチャルな会合場所におけるものを含む)への対応も行なわれるべきである。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 64.委員会は、締約国の法律が、同国の領域で生まれた子どもの難民および庇護希望者の民事上の地位の証明書類について定めていないこと、および、庇護希望者および人道上の理由による在留資格保有者の子どもが置かれているこのような脆弱な状況が、その親が労働市場へのアクセスを制限されており、かつ生計手段の援助を受けられないために悪化していることを、懸念する。委員会はまた、難民の社会的統合を援助するプログラムが存在しないこと(学校への受け入れが親の出入国管理法上の地位を条件としているため、難民および庇護希望者の子どもの教育へのアクセスが制限されていることを含む)も懸念するものである。委員会はさらに、難民または庇護希望者と直接接する職員に対して提供される、難民の権利に関する教育プログラムまたは研修の機会が設けられていないことを懸念する。 65.委員会は、締約国に対し、自国の領域内で生まれたすべての子ども(難民および庇護希望者の子どもを含む)の登録を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、庇護希望者および人道上の理由による在留資格保有者の家族に対して十分な金銭的および社会的援助を提供するとともに、そのような状況にある子どもが締約国の国民と同様に教育にアクセスできることを確保するよう、奨励するものである。 さらに委員会は、締約国に対し、公務員、とくに難民または庇護希望者と接する公務員に対して難民の権利に関する特別研修を行なうよう促す。 66.さらに委員会は、子どもの難民および庇護希望者ならびに保護者のいない子どもが、締約国の出入国管理法に基づいて収容される可能性があることを深く懸念する。委員会はさらに、そのような収容が行なわれる場合は子どもにとって不適切な施設で行なわれ、かつ、当該収容(送還命令の執行待機中の場合については法定期間制限が定められていない)の定期的かつ時宜を得た再審査を確保する規定が存在しないことにも、懸念とともに留意するものである。 67.委員会は、締約国に対し、難民、庇護を希望中または保護者のいない状況にある子どもの収容を行なわないよう促す。送還が行なわれる場合、委員会は、締約国に対し、そのような状況に置かれた子どもが、可能なかぎり最大限にこのような子どもの権利に配慮しかつそれを尊重する施設に収容され、かつ時宜を得た定期的再審査および明確に定められた期間制限の対象とされることを確保するよう、促すものである。 移民の状況にある子ども 68.委員会は、韓国における生活への外国人の統合を促進する在韓外国人〔処遇基本〕法(2007年)、および、不法移民の子どもの入学および転校を認める初等中等教育法施行令の改正(2008年)が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、移住者の子どもの学校出席率がいまなお低いことを依然として懸念するものである。委員会はさらに、子どもが小学校および中学校に出席することを確保するよう親に要求する締約国の法律が、同国の国民でない親に対しては適用されないことを懸念する。 69.委員会は、締約国が、移住者の子ども(不法移民の子どもも含む)が教育にアクセスしかつ実際に教育を受けることを確保するための政策および戦略を策定しかつ採択するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する〔国際〕条約を批准し、かつ国内法をその規定に一致させることも奨励するものである。 経済的搾取(児童労働を含む) 70.委員会は、子どもを搾取から保護するための未成年労働者保護総合対策(2005年)が確立されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下の点について懸念を覚えるものである。 (a) 働く子どもの人数が増えていること。 (b) 子どもを雇用している雇用主が、労働基準法で定められた未成年労働者のための基準をしばしば満たしていないこと(夜間労働および最低賃金以下の労働に従事させられている15歳以上の子どもとの関連も含む)。 (c) 賃金の支払われない待機時間のような不正規な労働慣行を規制する法規定が不十分であること。 (d) 労働監察が不十分であること。 (e) 言葉によるおよび性的な虐待および暴力が広く発生していることにより、働く子どもの問題がさらに悪化していること。 (f) 興行従事者および性の対象として雇われる子どもの人数が増えていること。 71.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが働くことにつながる根底的な社会経済的要因に対処するための措置をとること。 (b) 18歳未満の者の労働条件に関して定められた基準が、夜間労働の禁止の効果的執行および最低賃金の支払いとの関連も含めて厳格に執行されることを確保すること。 (c) 不正規な労働慣行を規制する追加的な法規定を制定すること。 (d) 労働監察を改善することにより、労働環境のあらゆる側面が包括的に監視されることを確保すること。 (e) 労働環境における暴力およびセクシュアルハラスメントに対応しかつこれを防止するための効果的措置をとり、かつ、このような問題が発生した場合に責任の追及およびリハビリテーションの保障を行なうための効果的機構が利用できるようにすること。 性的搾取 72.委員会は、性的搾取からの青少年の保護に関する法律が2008年に改正されたことにより、子どもの性的搾取に関するデータの定期的収集が定められ、かつ、被害者に対し、一時的および緊急の生活支援、法律上および医療上の援助ならびに職業訓練を提供するとされたことを歓迎する。委員会はまた、虐待の被害者を対象とし、かつ性的搾取の被害を受けた子どもにカウンセリング、保護および治療を提供する「ひまわり児童センター」および「ワンストップ・サポートセンター」が設置されたことも歓迎するものである。しかしながら委員会は、以下の点について依然として懸念を覚える。 (a) 締約国において子どもに対する性暴力が劇的に増加しており、かつポルノの消費率が高いこと。 (b) 子どもの性的搾取の訴追率が低いこと。 (c) 男性および男子のためのまたは外国語による被害者リハビリテーション・サービスが存在しないこと。 (d) このような虐待の発生率が高まっているにも関わらず、防止および被害者支援に対する予算配分額が削減されていること。 73.委員会は、締約国が、国内法を条約第35条ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書第2条および第3条と一致させるために必要なあらゆる措置をとるよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもに対する性暴力を防止するために適当な措置をとること。 (b) いかなる手段によるかを問わず、子どもを性的搾取の目的で提供し、引き渡しまたは受け取ることを構成するすべての行為を犯罪化する等の手段により、子どもの性的搾取を効果的に訴追するためにさらなる努力を行なうこと。 (c) 子どもを対象とする性犯罪の加害者に対する制裁が、犯罪の重大性にふさわしいものとなり、かつ刑事司法制度において行なわれることを確保すること。 (d) いかなる形でも刑事責任を免除することなく、性犯罪者を行なった者を更生させるための努力を継続すること。 (e) 人身取引および性的搾取の被害者の出身国としてもっとも一般的な国々を考慮に入れながら、多言語方式によるものも含むリハビリテーション・サービスを、女子のみならず男子に対しても提供すること。 人身取引 74.委員会は、性売買防止総合計画の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の法律であらゆる形態の人身取引が処罰の対象とされているにも関わらず、多くの女性および子どもが、同国から国外への、同国を通じてのおよび国内における、性的搾取および強制労働を目的とした人身取引の対象とされ続けていることを懸念するものである。委員会は、人身取引を行なった者の訴追率および有罪判決率が低いことをとりわけ懸念する。 75.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、取引および誘拐の加害者に対して自己の犯罪の責任をとらせるための十分な措置がとられることを確保するよう、促す。さらに委員会は、締約国が、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書の批准を検討するよう、勧告するものである。 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書 76.委員会は、議定書第2条および第3条に掲げられたすべての犯罪が締約国の立法で十分に網羅されていない旨の懸念(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1、パラ30)をあらためて表明する。さらに委員会は、前掲(パラ35)のとおり第三者による子どもの出生登録を防止するための措置がとられていないことにより、これらの子どもが売買の対象とされる結果が生じうることを懸念するものである。委員会はまた、議定書第3条1項に掲げられた犯罪について、当該犯罪が自国の国民もしくは自国の領域に常居所を有する者によって国外で行なわれる場合または被害者が大韓民国の国民である場合に裁判権を設定するためにとられた措置に関して、締約国から何らの情報も提供されなかった旨の懸念(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1、パラ38)もあらためて表明する。 77.委員会は、以下の措置をとるよう求めた勧告をあらためて繰り返す。 (a) 国内法が選択議定書第2条および第3条と全面的に一致することを確保するために必要な措置をとること。 (b) 選択議定書第4条2項に照らし、選択議定書に掲げられた犯罪について、当該犯罪が自国の国民もしくは自国の領域に常居所を有する者によって国外で行なわれる場合または被害者が大韓民国の国民である場合に域外裁判権を設定するため、必要な立法措置をとること(CRC/C/OPSC/KOR/CO/1、パラ39)。 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書 78.委員会は、18歳未満の者を義務的に徴募しまたは敵対行為に参加させることを犯罪とする具体的規定がない旨の懸念をあらためて表明する(CRC/C/OPAC/KOR/CO/1、パラ12)。 79.委員会は、締約国に対して以下の措置をとるよう求めた勧告をあらためて繰り返す。 (a) 子どもの徴募および敵対行為への子どもの関与に関する選択議定書の規定に違反することを、法律により明示的に禁ずること。 (b) すべての法律が選択議定書の規定と全面的に調和させられることを確保すること(CRC/C/OPAC/KOR/CO/1、パラ13)。 (c) 軍のすべての規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定および精神にしたがうことを確保すること(CRC/C/OPAC/KOR/CO/1、パラ13)。 少年司法の運営 80.委員会は、締約国において非行率が引き続き上昇しており、かつ少年犯罪率が高いこと(このような犯罪者の再犯率が高いことも含む)を懸念する。委員会はまた、このような変化に対する政府の対策が、子どもがこのような状況に置かれる根本的原因に対応するのではなく、主として懲罰的措置の強化に焦点を当てるようなやり方(罪を犯した子どもの社会への再統合を目的とした効果的措置をとるのではなく、成人が収容されている拘禁施設にこのような子どもを措置することも含む)でしか行なわれていないことにも、懸念とともに留意するものである。さらに、少年担当検察官が任命されたことには積極的側面として留意しながらも、委員会は、少年司法に関する専門性を効果的に高められるような状況が提供されていないため、これらの検察官がこの役割を十分に果たせていないことを懸念する。 81.委員会は、締約国に対し、少年犯罪および高い再犯率に効果的に対抗するための十分な措置をとるよう求める。したがって委員会は、締約国が、条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)、刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準に、少年司法制度を全面的に一致させるよう勧告するものである。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 締約国全域で、十分な人的資源、技術的資源および財源を有する専門の少年裁判所を設置すること。 (b) 刑法に違反したとして申し立てられた子どもに対し、手続の早い段階でかつ法的手続全体を通じて、十分な法的その他の援助を提供すること。 (c) 自由を奪われまたは更生センターもしくは拘禁施設に措置された子どもがけっして成人とともに収容されないこと、これらの子どもに対して安全なかつ子どもに配慮した環境が与えられること、および、これらの子どもが家族と定期的接触を維持し、かつ食料、教育および職業訓練を提供されることを確保すること。 (d) 自由を奪われた子どもが措置に関する決定について定期的再審査を受ける権利を確保すること。 (e) 拘禁が最後の手段として用いられることを確保するとともに、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕または刑の執行猶予のような、自由の剥奪に代わる措置を促進すること。 (f) 国連・少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成組織(UNODC〔国連薬物犯罪事務所〕、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを利用するとともに、同パネルの構成組織に対し、少年司法の分野における技術的援助を求めること。 犯罪の証人および被害者の保護 82. 売春防止および被害者保護等に関する法律において、16歳未満の子どもの被害者または証人に対してビデオ録画による陳述が認められているにも関わらず、性犯罪の被害を受けた子どもに関する事情聴取手続および法的手続は、以下の理由から依然として不十分である。 (a) 職員が録画に習熟していないため、被害者および証人が証言を繰り返さなければならないことが多い。 (b) 裁判所がビデオの有効性を認めないことが多い。 (c) 被害者および証人が、十分な配慮がなされているとはいえない条件下で反対尋問を受けなければならないことが多い。 (d) 被害者の同意を得ることなく、犯罪者との和解が要請される場合がある。 (e) 被害者のプライバシーを保護するための十分な措置がとられていない。 (f) 被害者が、警察官および医療従事者のような職員から真剣に受けとめられないことが多い。 (g) 被害者に対応する医師または法執行官による、被害者に対する言葉の虐待の例が報告されている。 83. 委員会は、締約国が、子どもにやさしい手続規則をさらに発展させ、かつ、被害を受けた子どもが、そのプライバシーおよび尊厳をいっそう尊重されながら取り扱われることを確保するよう勧告するとともに、締約国に対し、十分な法律上の規定および規則を通じて、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されること、および、締約国が、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮することを確保するよう、勧告する。 H.国際人権文書の批准 84.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を含むすべての中核的人権文書に加入するよう、奨励する。 I.地域機関および国際機関との協力 85.委員会は、締約国が、締約国および他の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施に向けて、東南アジア諸国連合・女性および子どもの権利の促進および保護に関する委員会と協力するよう勧告する。 J.フォローアップおよび普及 86.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府、議会、広域行政圏機関および適用可能なときは他の地方政府に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 87.委員会はさらに、条約およびその実施に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 K.次回報告書 88.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2017年6月19日までに提出し、かつこの総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 更新履歴:ページ作成(2011年11月25日)。/国連の正式文書を参照しつつ、先行未編集版に基づく訳を修正(2012年5月7日)。パラ50(c)で養子縁組に関するシングルマザーの同意が「必須」から「義務的」とされた点、パラ61で「公平性および公正性」が「平等および公平性」とされた点以外は基本的に技術的修正のみ。/前編・後編を統合(10月20日)。/表示がおかしくなっていたため再保存(2015年12月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/202.html
総括所見:シリア(第3~4回・2011年) 第1回(1997年)/第2回(2003年)OPSC(2006年)/OPAC(2007年) 国連のプレスリリース〈UNITED NATIONS CHILD RIGHTS COMMITTEE APPALLED AT DELIBERATE TARGETING OF CHILDREN IN SYRIA〉(2012年5月31日付)も参照。 CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/SYR/CO/3-4(2012年2月8日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年9月22日に開かれた第1646回および第1647回会合(CRC/C/SR.1646 and 1647参照)においてシリア・アラブ共和国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/SYR/3-4)を検討し、2011年10月7日に開かれた第1668回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国における子どもの状況についての理解の向上を可能とする、第3回・第4回統合定期報告書ならびに事前質問事項(CRC/C/SYR/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答および締約国報告書に関する追加情報(CRC/C/SYR/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、同国で最近起きた事件にも関わらず予定通りに報告書を発表するために締約国が行なった努力を評価するものである。委員会はまた、ハイレベルなかつ部門横断型の締約国代表団との間にもたれた、建設的かつ双方向的な対話も評価する。 II.締約国によるフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の法令が採択されたことに留意する。 (a) 非常事態を解除する2011年4月21日の立法令第161号。 (b) シリア憲法および国際条約で保障された人権および基本的自由としての平和的デモ行進の組織に関する、2011年4月21日の立法令第54号。 (c) シリア国民たるクルド人の地位について定める2011年4月7日の立法令第49号。 (d) 強姦犯が被害者と婚姻したときはいかなる刑も免除すると定めていた刑法第508条を改正する、2011年1月3日の立法令第1号。 (e) 人身取引の禁止に関する2010年1月の立法令第3号。 (f) 民間部門における労働関係について定める2010年の法律第17号。 (g) 名誉犯罪を行なった者の刑の免除規定を削除する、2009年7月1日の立法令第37号。 (h) 締約国が条約第20条および第21条に付した留保を撤回する、2007年2月の立法令第12号。 (i) 特別なニーズを有する人に関する2004年7月の法律第34号。 4.委員会はまた、締約国が以下の国際人権条約を批准したことも歓迎する。 (a) 障害のある人の権利に関する条約(2009年)およびその選択議定書(2009年)。 (b) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2009年)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2009年)。 (d) 傭兵の募集、使用、資金供与および訓練を禁止する条約(2008年)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 (a) 国家子ども保護計画(2005~2007年)。 (b) 2004年6月2日の首相令第2896号による国際人道法国家委員会の創設。 (c) 法律第42/2003号によるシリア家族問題委員会の創設。 III.条約の実施を阻害する要因および困難 6.委員会は、締約国で2011年3月以降に生じ――そしていまなお生じ続け――、かつシリアの人民、とくに子どもたちに影響を与えている特異な事件が、条約で定められた、子どもが有するすべての権利の実施を妨げる主要な要因であるとの見解に立つものである。これとの関連で、委員会は、2011年3月の反乱開始以来行なわれてきた子どもの権利の重大な侵害(恣意的な逮捕および拘禁、デモの際の子どもの殺害、拷問ならびに不当な取扱いを含む)に関する、信頼でき、裏づけがありかつ一貫した報告をめぐって、最大限の懸念を表明する。委員会は、締約国に対し、国際人権法上の義務は継続していること、および、条約上の権利はいかなるときにもすべての子どもに適用されることを想起するよう、求めるものである。委員会はまた、締約国に対し、締約国は自国の住民を保護する第一次的責任を負っており、したがって、民間人に対する過度のおよび致死的な力の行使を停止し、かつ子どもに対するさらなる暴力(殺傷を含む)を防止するための即時的措置をとるべきであることを想起するようにも求める。 7.委員会は、占領下にあって子どもの権利が侵害されているシリア領ゴラン高原においてシリア人の子どもの権利を確保する際の困難に関する、締約国の重大な懸念を共有する。 IV.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 8.委員会は、締約国の第2回定期報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.212)を実施するために締約国が行なった努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、委員会の懸念表明および勧告に、不十分にしかまたはまったく対応されていないものがあることを遺憾に思うものである。 9.委員会は、締約国に対し、第2回報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないものまたは十分に実施されていないもの、とくに、留保、立法、データ収集、市民社会との協力、差別の禁止、婚姻に関する法定最低年齢、ドメスティックバイオレンスおよび少年司法に関わる勧告に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、この総括所見に掲げられた勧告を十分にフォローアップすることも促すものである。 留保 10.締約国が条約第20条および第21条に付した留保を撤回する根拠となる2007年2月の〔立法〕令第12号の採択は称賛しながらも、委員会は、締約国が、条約に対する一般的留保および第14条に対する留保を維持していることに、懸念とともに留意する。これらの留保は、条約の趣旨および目的と両立しない。 11.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.212、パラ8)を繰り返し、締約国に対し、条約に対する一般的留保および条約第14条に対する留保の撤回を検討するよう奨励する。 立法 12.子どもの権利法案に条約のすべての規定が統合される旨の締約国の説明には積極的側面として留意しながらも、委員会は、同法案が2006年以来採択待ちの状態であることに懸念を表明する。委員会はまた、法源が異なる法律、とくに制定法、慣習法および身分関係法が適用されていることにより、自国の法律を条約の原則および規定と調和させようとする締約国の努力が損なわれる可能性があることについての懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ9)も、あらためて表明するものである。委員会は、条約のすべての原則および規定がまだ国内法に編入されておらず、かつ、条約に反する法律、とくに女子および婚外子を差別する法律が依然として効力を有しているという、さらなる懸念を表明する。 13.委員会は、締約国に対し、子どもの権利法案を速やかに法律として成立させるとともに、当該法案が、条約のすべての原則および規定を編入し、かつ締約国の領域で暮らしているすべての子どもに適用されることを確保するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、現行国内法の枠組み(慣習法または身分関係法を含む)が条約と一致することを確保することも促すものである。この目的のため、委員会は、子ども法案が成立した際には条約と一致しないすべての法律より優位に立つものとされること、および、とくに女子および婚外子の権利に影響を与えている差別的規定が廃止されるべきことを勧告する。 調整 14.委員会は、条約の実施を調整する公的機関として2003年にシリア家族問題委員会が設置されたことを歓迎するとともに、設置以降、同委員会が実施してきた多数の研究および活動を称賛する。しかしながら委員会は、同委員会の権限および省庁および政府機関との関係について定めた明確な規定がないことを懸念するものである。委員会はまた、シリア家族問題委員会が他の14県にいかなる支所も有していないことも懸念する。 15.委員会は、締約国が、諸部門間および諸県間の調整を担当する上級機関としてのシリア家族問題委員会の権限をいっそう明確に定めることにより、同委員会を強化するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、すべての県にシリア家族問題委員会の支所を設置するとともに、同委員会に対し、調整、監視および評価の役割を履行するための十分な人的資源、財源および技術的資源を提供するよう、勧告するものである。 国家的行動計画 16.委員会は、国家子ども保護計画(2005~2007年)以後、条約に関する包括的な実施戦略が2007年以来存在しないことを懸念する。委員会はまた、2005~2007年の計画の主要な活動の一部(国レベルで家族保護部局を設置することならびに子ども保護シェルターおよび子どもヘルプラインを創設することなど)がまだ実行されていないことも懸念するものである。 17.委員会は、締約国が、子どもに関する包括的な政策および戦略を策定しかつ実施するとともに、子どもに関する関連の国家的行動計画、または、条約のあらゆる側面を網羅した、子どもの権利の実施のためのその他の同様の枠組みを採択するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、国家子ども保護計画(2005~2007年)のうち未実施のままとなっている行動を完了させ、かつ家族保護部局、子ども保護シェルターおよび子どもヘルプラインを設置するためにあらゆる必要な措置をとるよう、奨励するものである。 独立の監視 18.委員会は、条約上の権利の充足における進展を恒常的に監視することを任務とし、かつ子どもからの苦情を受理しおよびこれに対応する権限を与えられた独立の機構の設置に向けた重要な進展が見られないことについての懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ15)をあらためて表明する。 19.委員会は、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に照らし、締約国に対して、子ども担当部局を備えた国内人権機関の一部として、またはより望ましい形としては別個の機構(たとえば子どもオンブズパーソン)として、条約上の権利の充足を監視することおよび自己の権利の侵害に関する子どもの苦情に子どもにやさしくかつ迅速なやり方で対応することを目的とした、適正な資源を与えられ、かつ領域全体で活動することのできる独立の機構を設置するよう、促す。 資源配分 20.委員会は、社会部門への資源配分の水準が低いこと、子どもに対する配分額についてほとんど情報が提供されなかったこと、および、資源の配分および効果を子どもの権利の視点から監視する能力が欠如していることを、依然として懸念する。委員会はまた、汚職を禁ずる立法規定および2010年に実施された全国的な汚職反対キャンペーンにも関わらず、汚職が締約国で依然として蔓延しており、かつ子どもの権利の実施の増進につながりうる資源が流用され続けていることも懸念するものである。 21.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 予算全体における子どものための資源の配分および使用の追跡システムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門における投資が子どもの最善の利益にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。 (b) 予算上のニーズに関する包括的評価を実施し、かつ、子どもの権利に関わる指標の格差に漸進的に対処する分野への明確な配分額を定めること。 (c) 条約第4条にしたがい、子どもの権利の実施のために十分な予算資源を配分するとともに、とくに社会部門に配分される予算を増額すること。 (d) 積極的な社会的措置を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(とくに2011年3月以降の動乱の被害者)に関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。 (e) 汚職と闘い、ならびに汚職を効果的に摘発し、捜査しおよび訴追する制度的能力を強化するための即時的措置をとること。 (f) 「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年を受けた委員会の勧告を考慮すること。 データ収集 22.委員会は、シリア家族問題委員会との協力のもと、中央統計局が2008年に子どもデータ部を創設したことに留意する。しかしながら委員会は、このデータ収集システムが全面的に稼働しているわけではなく、かつ、子どもに関する、信頼できかつ時宜を得た統計データが締約国で利用可能とされていないことを遺憾に思うものである。このことは、首尾一貫し、かつ証拠に基づいた子ども政策の策定に悪影響を及ぼす。 23.委員会は、締約国に対し、子どもデータ部が全面的に稼働し、かつ、子どもの権利の実現に関して達成された進展の分析を促進することおよび条約実施のための政策およびプログラムの立案に役立てることを目的とした、条約の全領域に関するデータ(とくに年齢別、性別、民族別、地理的所在別および社会経済的背景別に細分化されたもの)を収集することを確保するため、必要な措置をとるよう促す。締約国は、収集される情報に、脆弱な状況に置かれた子ども(女子、障害のある子ども、貧困下にある子どもおよび路上の状況にある子どもを含む)に関する最新のデータが含まれることを確保するべきである。委員会はさらに、締約国に対し、国のあらゆるデータベースに登録された子どものプライバシーを保護するための政策を策定しかつ実施するよう、促す。 普及および意識啓発 24.委員会は、条約を普及し、かつすべての段階の学校カリキュラムに条約の原則および規定を漸進的に含めるために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに子どもとともにおよび子どものために働く専門家、メディア、親ならびに子どもたち自身の間で、条約に関する知識が依然として限られていることを懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、公衆一般ならびにとくに子どもとともにおよび子どものために働く専門家、メディアならびに子どもたち自身の間で組織的に条約を普及しかつ促進するための努力を強化するよう、勧告する。 研修 26.子どもとともにおよび子どものために働く一部職種の専門家を対象として研修が行なわれていることおよび子どもの保護に関する高等教育学位が大学から付与されていることには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、このような養成教育および研修が依然として不十分であり、かつ、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家ならびに法執行機関、ならびに、条約に関する意識が限られたままである軍隊および治安部隊ならびにジャーナリストが対象とされていないことを、懸念する。 27.委員会は、締約国が、条約の原則および規定に基づいた教育および研修プログラムの質を向上させるための努力を強化するよう、勧告する。このような取り組みは、裁判官、弁護士、法執行官、軍隊および治安部隊、ジャーナリスト、公務員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教員、保健ケア従事者(心理学者を含む)ならびにソーシャルワーカーなど、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団を対象として行なわれるべきである。委員会は、締約国に対し、とくに国連人権高等弁務官事務所および国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めるよう、奨励する。 市民社会との協力 28.委員会は、締約国が、とくに人権団体(子どもの権利について監視している団体を含む)の登録および認可を拒否することにより、その活動を引き続き制限していることに深い懸念を表明する。委員会は、人権活動を行なっている非政府組織の構成員が一貫して脅迫、いやがらせ、身体的攻撃および逮捕の対象とされていること、および、2011年3月の抗議行動勃発以降、多くの人権擁護者が拘禁されまたは失踪していることを、とりわけ懸念するものである。 29.委員会は、締約国に対し、正当かつ平和的な人権擁護活動との関連で拘禁されているすべての人を即時釈放し、かつ、どのような状況に置かれているのか不明なままのすべての人権擁護者の所在を確認するよう、強く促す。委員会はまた、締約国に対し、人権擁護者(子どもの権利侵害を報告して締約国による適切な行動を求める人々を含む)およびその活動を促進しおよび正当に認知し、ならびに、非政府組織(NGO)が民主的社会の諸原則に一致する方法で安全にその役割を果たせることを確保するための具体的措置をとることも、促すものである。 B.子どもの定義(条約第1条) 30.委員会は、1957年身分関係法で定められた、男子の最低婚姻年齢(18歳)と女子のそれ(17歳)との格差に関する懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ23)をあらためて表明する。委員会はまた、身分関係法がさらに低い年齢の婚姻さえ認めていることも、深刻に懸念する。同法は、当事者である子どもが婚姻について前向きであり、「身体的に成熟」しており、かつ父または祖父の同意があるときは、裁判官に対し、男子の婚姻年齢を15歳まで、かつ女子の婚姻年齢を13歳まで、引き下げることを認めているためである。 31.委員会は、締約国に対し、女子の最低婚姻年齢を男子のそれまで引き上げて18歳とすることによって男女間の最低婚姻年齢の格差を是正するとともに、早期婚を容認する身分関係法の規定を廃止するよう、促す。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 32.委員会は、締約国において女子に対する法的および社会的差別が根強く残っていることに懸念を表明する。とくに委員会は、女子の相続権に関わる規定など、身分関係諸法に掲げられた差別的規定について懸念を覚えるものである。委員会はまた、差別的な態度およびジェンダー役割の定型的固定化を変革するために締約国がとってきた措置が不十分であることも懸念する。 33.委員会はまた、クルド人の子ども(とくに女子)、遠隔地に住んでいる子ども、施設養護を受けている子ども、婚外子および路上の状況にある子どもの差別についても懸念を表明する。 34.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 女子を差別する法規定を廃止するとともに、女性差別撤廃委員会の勧告(CEDAW/C/SYR/CO/1、パラ28および34)にしたがってジェンダー役割の定型的固定化と闘うための公衆教育プログラム(オピニオンリーダー、家族およびメディアと協力しながら組織されるキャンペーンを含む)を通じ、社会的差別を撤廃するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 婚外子を差別するすべての法規定を改正すること。 (c) 差別にさらされている子ども(とくに不利な立場に置かれた前掲集団に属する子ども)の状況を注意深く監視するとともに、この監視の結果に基づき、これらの子どもに対するあらゆる形態の差別の撤廃を目的とする、具体的かつ対象の明確な措置(差別是正のための積極的社会措置を含む)を掲げた包括的な戦略を策定すること。 子どもの最善の利益 35.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則が、子どもに関わるすべての法律に編入されているわけではなく、したがって立法上、行政上および司法上のすべての手続または子どもに関わる政策およびプログラムにおいて適用されているわけではない旨の懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ28)をあらためて表明する。 36.委員会は、締約国に対し、すべての立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、子どもの最善の利益の原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう促す。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。 生命、生存および発達に対する権利 37.委員会は、同国で2011年3月に始まった抗議行動との関係で100名以上の子どもが殺害され、これよりもさらに多くの子どもが怪我をし、かつ、これらの子どもの死亡については締約国が(軍隊を通じて)直接かつもっぱら責任を負っている旨の、信頼でき、裏づけがありかつ一貫した情報について、最大限の懸念を表明する。委員会はまた、拷問の結果として拘禁中に死亡した子どもの事案が多数報告されていることも、深く懸念するものである。委員会は、抗議行動開始以降に行なわれた人権侵害を調査するため、検事総長を委員長とする特別司法委員会が設置されたことに留意する。しかしながら委員会は、この司法委員会がその任務を客観的に、公正にかつ透明なやり方で遂行するために必要な独立性を欠いていること、および、その調査結果がまだ公表されていないことに、懸念を表明するものである。 38.委員会は、締約国に対し、子どもの殺傷を防止するためのあらゆる必要な措置(軍隊および治安部隊に対する明確な命令を含む)を最優先課題としてとるよう、強く促す。委員会はまた、人権高等弁務官および事務総長の見解と軌を一にして、2011年3月以降行なわれた人権侵害に関する速やかな、独立した、効果的かつ透明な調査を求めるものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、人権理事会が2011年8月22日の決議S-17/1によって設置した国際調査委員会に全面的に協力し、かつ無制限のアクセス権を同委員会に対して与えるよう、促す。 子どもの意見の尊重 39.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利を実施するためにさまざまな取り組みが行なわれていること、ならびに、とくに、締約国報告書の起草過程に子どもが包摂されたことおよびデリゾール県でパイロット事業として子ども議会が設置されたことを、歓迎する。しかしながら委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、とくに家庭および学校において子どもの意見の尊重が引き続き制約されており、かつ、子どもが自己に影響を与える司法上および行政上の手続において意見を聴かれることを確保するために締約国がとった措置が不十分であるという懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ30)を、あらためて表明するものである。 40.一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国に対し、意見を聴かれる子どもの権利を全面的に実施するために適当な措置をとる自国の義務を想起するよう求める。委員会は、司法上および行政上のあらゆる手続においてこの権利が尊重されおよび実施することを確保し、ならびに、意見を聴かれる子どもの権利の価値に関する理解を子どもが出席するすべての施設および社会のあらゆるレベル(とくに家庭、コミュニティおよび学校のレベル)で増進する目的で、締約国が、おとなおよび子どもを対象とする意識啓発活動および研修を含む効果的措置をとるよう、勧告するものである。 D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 国籍 41.委員会は、シリア国民たるクルド人の地位について定める2011年4月7日の立法令第49号を歓迎する。しかしながら委員会は、この立法令の利益を得られるのは「外国人」(アジャーニブ)として登録されているクルド人のみであり、「マクトゥーミーン」として知られる無国籍のクルド人は利益を得られない可能性があることを懸念するものである。委員会はまた、外国人と婚姻したシリア人の子に対してシリア国籍の取得権を否定するシリア国籍法(1969年法律第276号)第3条の改正がいまなお議会による承認待ちの状態であることも、懸念する。 42.委員会は、締約国には、条約第2条および第7条にしたがい、締約国の領域内にあるすべての子どもが、子どもまたはその親もしくは法定保護者の性別、人種、宗教または民族、社会的出身もしくは地位に関わらず登録されかつ国籍を取得する権利を有することを確保する責任があることを、想起する。したがって委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) シリアで出生したクルド人親のすべての子(マクトゥーミーンとして知られる無国籍のクルド人の子どもを含む)が速やかにシリア国籍を取得し、かつその権利を差別なく享受することを保障するため、即時的措置をとること。 (b) 外国人と婚姻したシリア人母の子が母の国籍を取得できるようにするため、国籍法の改正を進めること。 (c) 無国籍者の地位に関する条約(1954年)および無国籍の削減に関する条約(1961年)を批准すること。 出生登録 43.委員会は、すべての子どもが出生時に登録されることを確保するために締約国が行なった努力、とくに出生登録を義務化した2007年の身分関係法(1957年法律第376号)改正に、積極的側面として留意する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 身分関係法によれば、イスラム教徒の女性とイスラム教徒ではない男性との婚姻は効力を有しないものとされ、したがってこのような婚姻関係のもとで生まれた子の認知および登録が常に行なわれるわけではないこと。 (b) 婚外子は父との関係を確立することができず、このような状況が子の遺棄およびその後の施設措置にしばしばつながっていること。 (c) 強姦もしくは近親婚によって生まれた子または婚外子を登録したいと希望する母親は、子の懐胎の事情に関する調査を開始するため、警察による報告書を申請しなければならないとされていること。 (d) 遠隔地で生まれた子どもの出生登録に関して依然として問題が生じていること。 44.委員会は、締約国に対し、締約国で生まれたすべての子どもの効果的登録を、その出身に関わりなく、かついかなる差別もなく確保するための努力を強化するよう、促す。この目的のため、委員会は、締約国に対し、身分関係法を改正し、宗教等が異なる夫婦間のすべての婚姻を全面的に承認し、かつ、婚外子および遠隔地の子どもの保護および適正な登録を目的としたあらゆる必要な措置をとるよう、促すものである。 思想、良心および宗教の自由 45.委員会は、締約国が、ウィーン宣言および行動計画にしたがい、かつ自由権規約委員会の一般的意見22号(1993年)を考慮し、条約第14条に関する留保を撤回の方向で、かつ子どもの思想、良心および宗教の自由のあらゆる形態の侵害を撤廃する目的で精査するべきである旨の勧告(CRC/C/15/Add.212、パラ8)を、あらためて繰り返す。 表現ならびに結社および平和的集会の自由 46.委員会は、表現の自由ならびに結社及び平和的集会の自由に対する子どもの権利が実際には尊重されていないこと、および、締約国が、デモ中の子どもの保護を親に依拠していることに懸念を表明する。委員会は、南部の街であるダルアで、校舎の壁にペンキで反政府的な落書きを行なったとして罪に問われた8~15歳の児童生徒の集団が2011年3月に逮捕されかつ隔離拘禁の対象とされたことを、とりわけ懸念するものである。 47.委員会は、締約国に対し、条約第13条および第15条にしたがい、表現ならびに結社および平和的集会に対する自由の、すべての者(親、教員および治安部隊を含む)による全面的かつ効果的実施を確保するために、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 適切な情報へのアクセス 48.委員会は、子どもが利用可能な書籍および新聞の欠乏により、適切な情報への子どもによるアクセスがしばしば制約されていることに懸念を表明する。メディアおよびインターネットを通じて伝えられる、暴力およびポルノグラフィー関連の有害な情報にさらされることから子どもを保護するために締約国が行なっている努力には積極的側面として留意しながらも、委員会は、メディアならびに文学作品および芸術作品に対して行なわれている政府の検閲が、適切な情報にアクセスする子どもの権利の制限を助長していることを懸念するものである。 49.委員会は、締約国が、とくに新聞、図書館、ラジオおよびテレビへのアクセスを増強することによって子どもの情報へのアクセスを向上させ、かつ子どもが有害な情報から保護されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもが、国境に関わりなく、口頭、手書きもしくは印刷、芸術の形態または子どもが選択する他のあらゆる方法により、あらゆる種類の情報および考えを求め、受けかつ伝える権利を有することを確保するようにも促すものである。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰 50.委員会は、抗議行動に関連して拘禁されている際に受けた拷問および四肢切断の結果、多くの子どもが死亡したと報告されていることに、深い懸念を表明する。委員会はまた、子どもがいまなお拘禁され、かつ拷問の危険にさらされていると報告されていることも懸念するものである。委員会は、司法の独立の欠如に関して拷問禁止委員会が表明した懸念(CAT/C/SYR/CO/1、パラ12)を共有するとともに、職務中に行なわれた人権侵害について責任を有する治安機関および情報機関を訴追から免除する立法令第14/1969号および第69/2008号が、やはり独立の調査を阻害し、かつ子どもの拘禁および拷問を継続させる助長要因となる可能性があることに、懸念とともに留意する。 51.委員会はまた、一部の学校が締約国の保安隊によって拘禁施設として使われているという一貫した報告があることにも、重大な懸念を表明する。 52.委員会は、締約国に対し、抗議行動に関連して2011年3月以降に恣意的な逮捕および拘禁の対象とされたすべての子どもを即時にかつ無条件で釈放し、学校を拘禁施設として用いるのをやめ、かつ、人道法および区別の原則の遵守を厳格に確保するよう、強く促す。委員会はまた、締約国に対し、立法令第14/1969号および第69/2008号を廃止し、子どもの恣意的拘禁および拷問の事案を透明、客観的かつ公正なやり方で調査し、かつ、これらの人権侵害の責任者を裁判にかけることも、促すものである。委員会はまた、締約国に対し、拷問の被害を受けた子どもに対してケア、心理社会的回復、再統合および補償のための対応を行なうことも促す。 体罰 53.学校における身体的暴力および言葉の暴力の使用を禁じた教育省通達は歓迎しながらも、委員会は、教員および親による体罰が、刑法および身分関係法第170条によって明示的に認められており、かつ家庭、学校および代替的養護の現場で広く用いられていることを、依然として懸念する。委員会はまた、代替的養護の現場および刑事施設における懲戒措置としての体罰が明示的に禁じられていないことも、懸念するものである。 54.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)に照らし、委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.212、パラ37)を想起するとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 体罰を認めている身分関係法第170条および刑法の諸規定を廃止すること。 (b) 家庭、学校および代替的養護の現場ならびに刑事施設における体罰を、法律により、かつこれ以上遅延することなく、明解に禁止すること。 (c) 体罰を禁ずる法律が効果的に実施され、かつ、子どもの不当な取扱いに責任を負う者に対し、法的手続が組織的に開始されることを確保すること。 (d) 体罰に対する一般的態度を変革する目的で、この慣行の有害な影響(身体的および心理的影響の双方)に関する持続的な公衆教育キャンペーン、意識啓発キャンペーンおよび社会的動員キャンペーンを、子ども、家族、コミュニティおよび宗教的指導者の関与を得ながら導入するとともに、体罰に代わる手段として積極的な、非暴力的なかつ参加型の子育ておよび規律を促進すること。 (e) 暴力および他の形態の虐待に対する防止戦略の立案および実施において、子どもたちを含む社会全体の関与および参加を確保すること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 55.委員会は、子どもの権利法案が採択されれば男女の子どもの監護年齢が18歳に定められる旨の、締約国の説明を歓迎する。しかしながら委員会は、2003年に改正された身分関係法にしたがい、離婚の際に母が監護権を保持できるのは、息子について13歳までかつ娘について15歳までにすぎないことを懸念するものである。委員会はまた、妻には扶養と引き換えに夫にしたがう義務があること、および、子を連れて国外に渡航したいと考える母は、子の父、または父がいない場合には子の父方の親族の承認を求めなければならないことも、懸念する。 56.委員会は、締約国に対し、母および父が子について平等を基礎とする責任を共有すること、および、女子に対する責任と男子に対する責任との間になんらの差異もないことを確保するために必要なあらゆる措置をとるよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、身分関係法の規定を改正して、女性が子の父または子の父方の親族の事前の承認を得ることなく子を連れて国外に移動する自由を認めるよう、促すものである。 家庭環境を奪われた子ども 57.委員会は、現在進められている、代替的養護のためのサービスおよび施設に関する評価を歓迎する。しかしながら委員会は、コミュニティを基盤とする選択肢が依然として著しく限られており、したがって施設措置が頻繁に活用されていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、代替的養護施設が十分な訓練を受けた職員を欠いており、かつ労働社会問題省による監視も不十分であることも懸念する。さらに委員会は、親のわかっている孤児と親のわからない孤児が別々の養護施設に隔離されていること、および、孤児院に措置された子どもが養育懈怠、隔離その他の形態の不当な取扱いを受けている事案があることを、深刻に懸念するものである。 58.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに農村部において、コミュニティを基盤とする代替的養護を発展させること。 (b) すべての代替的養護施設が登録され、かつ独立機関により監視されることを確保すること。 (c) 代替的養護の現場で働くすべての職員が十分な訓練を受けることを確保すること。 (d) 親のわかっている孤児と親のわからない孤児が別々の養護施設に隔離される状態を解消すること。 (e) 代替的養護施設への子どもの措置を定期的に再審査し、かつ子どもを自己の措置の再審査に全面的に参加させること。 (f) 施設措置された子どもが虐待または不当な取扱いを受けたすべての事案を調査すること。 (g) 婚外子の遺棄およびその後の施設措置を防止するため、婚外子に適用される法律を見直すこと。 (h) 子どもの代替的養護に関する指針(2009年12月18日の総会決議64/142付属文書)を考慮すること。 子どもに対する暴力(虐待およびネグレクトを含む) 59.締約国がドメスティックバイオレンスに関する全国的監視機関および家族保護部を設置しようとしていることには留意しながらも、委員会は、国内法にいまなおドメスティックバイオレンスを犯罪とする具体的規定が設けられていないこと、および、家庭内で広く行なわれている虐待およびネグレクトと闘うための具体的措置が限定的であることを、懸念する。 60.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する一般的意見13号(2011年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) ヨーロッパ・中央アジア地域協議(リュブリャナ(スロベニア)、2005年7月5~7日)の成果および勧告を考慮し、ジェンダーに特段の注意を払いながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)の実施を確保する等の手段により、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止(ドメスティックバイオレンスの明示的禁止を含む)を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 障害のある子ども 61.委員会は、特別なニーズを有する人に関する法律第34号(2004年)の公布、障害と闘うための国家計画(2008年)の採択、および、障害のある子どもの状況を向上させるために行なわれた多数の取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、障害のある子どものケアおよびリハビリテーションのためのサービスを提供しているのが主として市民社会組織であること、および、障害のある子どものためのプログラムおよび計画に対して締約国が配分している資源が不十分であることを、懸念するものである。 62.障害のある子どもの権利に関する一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、障害のある子どもが条約上のすべての権利を享受することを確保するとともに、この目的のため、障害のある子どものためのプログラムおよび計画を全面的かつ効果的に実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、促す。委員会は、締約国が、いインクルーシブ教育の質の向上をとくに重視するとともに、非公式な教育プログラム、および、さまざまな障害種別に応じた包括的かつ定期的な教員研修をさらに発展させるよう、勧告するものである。 健康および保健サービス 63.委員会は、乳幼児死亡率および妊産婦死亡率の削減における締約国の目覚ましい成果、および、母子保健ケア・サービスにすべての人がアクセスできるようにするために締約国が行なっている継続的努力を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことについて懸念を表明するものである。 (a) 保健サービスへのアクセスに関していまなお地理的格差が存在し、子どもの居住地域によってその健康状態に相当の偏差が生じていて、遠隔地に住んでいる子どもがとくに不利な立場に置かれていること。 (b) 国民総生産に占める保健支出の割合が3.2%を超えておらず、かつ保健に投じられるひとりあたり総支出が減少していること。 (c) 子ども専門病院の数が不十分であること。 (d) 重度の発育阻害状態にある子どもの割合が高いこと。 (e) 母乳育児率がきわめて低い水準にあること。 64.委員会は、締約国が、以下のことを目的とする努力を強化するよう勧告する。 (a) 遠隔地に住んでいる子どもを含むすべての子どもが良質な保健サービスに平等にアクセスできることを確保する目的で、とくにプライマリーヘルスケアを重視しながら、保健部門に配分される財源および人的資源を増加させること。 (b) 子ども専門のサービスを提供する病院を増設すること。 (c) 栄養に関わる教育および相談サービスの質を向上させるとともに、優先的介入の対象となる特定の地域、地区および子ども集団を決定すること。 (d) 国家的な母乳育児委員会を設置し、かつ母乳育児の実践に関するデータを体系的に収集するとともに、同時に、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」が執行され、赤ちゃんにやさしい病院が推進され、かつ看護師の養成および研修に母乳育児が含まれることを確保すること。 (e) 引き続き、ユニセフおよび世界保健機関(WHO)の技術的協力を求めること。 思春期の健康 65.委員会は、青少年の健康状態を向上させるために締約国が行なっている取り組み(とくに、青少年とともに働く保健従事者を対象として保健省が行なっている研修プログラム、および、デリズールにおける思春期保健センターの設立)を歓迎する。しかしながら委員会は、若者にやさしいリプロダクティブヘルス・サービスの利用可能性が限定されており、かつ、リプロダクティブヘルス、HIV/AIDSを含む性感染症ならびにタバコ、アルコールおよび薬物を消費することによる健康上の影響に関する青少年の知識が不十分であること、および、締約国における青少年の状況に関する情報および統計データが欠乏していることを、懸念するものである。 66.委員会は、締約国に対し、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を参照するよう求めるとともに、秘密が守られ、かつ若者にやさしい保健サービスの利用可能性を国全域で高め、リプロダクティブヘルス・サービスの利用可能性を増進させ、かつ、思春期の女子および男子を対象とした性教育およびリプロダクティブヘルス教育を促進するよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、青少年の薬物濫用、アルコール依存症およびタバコの使用を防止するための努力を強化するよう、求めるものである。 有害慣行 67.委員会は、2009年7月1日の立法令第37号により、女性および女子に対して名誉犯罪を行なった者の刑の免除規定が削除されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、早期婚および強制婚が多数行なわれており、かつこの現象を抑制するための適切な措置がとられていないことを懸念するものである。 68.委員会は、締約国に対し、以下のことを目的とする即時的措置をとるよう促す。 (a) 名誉犯罪の加害者に対し、これらの犯罪の重大性にふさわしい制裁が与えられることを確保すること。 (b) 早期婚および強制婚を禁止するとともに、裁判官に対し、男子の婚姻年齢を15歳まで、かつ女子の婚姻年齢を13歳まで引き下げることを認めた身分関係法の規定を廃止すること。 (c) 早期婚および強制婚の有害な影響に関するすべての関係者(コミュニティの指導者および宗教的指導者を含む)の感受性および識見を高めることにつながる意識啓発プログラムおよび教育プログラムを立ち上げ、かつ、ジェンダーに配慮した同様の指導用資料および教科書を開発すること。 (d) 早期婚および強制婚を解消するための具体的措置ならびに名誉犯罪の加害者に対して宣告された制裁についての包括的情報を、次回の定期報告書において提供すること。 生活水準 69.委員会は、もっとも不利な立場に置かれたおよび周縁化された家族を保護するために国家社会扶助基金が設置されたことには留意しながらも、貧困の構造的決定要因に対応するためのより持続的な戦略が採択されていないことを依然として懸念する。委員会はまた、天然資源の劣悪な管理および劣化により、農村部から都市部への絶え間ない移住が生じ、かつ、相当の経済成長率にも関わらず締約国における貧困発生率の増加が助長されてきたことも、懸念するものである。委員会は、生活水準の地域格差とともに、乾燥地帯および亜乾燥地帯に住んでいる子どもおよび家族、遊牧民の子ども、ならびに、劣悪な質の空気および汚染された飲料水にさらされているスラム居住の子どもの貧困状況について、特段の懸念を覚える。 70.委員会は、締約国に対し、もっとも不利な立場に置かれたおよび周縁化された子どもの状況ならびに子どもの生活水準の地域格差の縮減に引き続き焦点を当てながら、貧困および周縁化の構造的決定要因に対応するよう、奨励する。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利を確保する目的で、天然資源(とくに水資源)の管理を向上させるために必要なあらゆる能力構築措置をとることも、促すものである。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 71.委員会は、就学、識字および初等教育におけるジェンダー格差解消の分野で多年にわたり達成されてきた相当の進展について、締約国を称賛する。委員会はまた、遠隔地で働く教員に対する奨励金、遠隔地および砂漠地帯の子どもにサービスを提供するための移動学校の導入、ならびに、難民である多数の子どもが教育にアクセスできるようにするための措置およびこれらの子どもを対象とした職業訓練も、歓迎するものである。しかしながら委員会は、以下のことを懸念する。 (a) 高校の中退率および留年率が高く、かつ、とくに早期婚および強制婚ならびに家事労働への女子の参加を理由として、女子のほうが男子よりもはるかに学校を中退する可能性が高いこと。 (b) 学校カリキュラムの質が低く、かつ子どもの生活および将来等との関連性も薄いこと。 (c) 無国籍であるクルド人の子どもが中等学校および大学への就学に際して困難に直面しており、かつ障害を有している場合にインクルーシブ教育を受けられないこと。 (d) 体罰および心理的暴力がいまなお子ども時代のしつけの手段とみなされており、かつ、教員および管理者が代替的形態のしつけおよび規律維持の手段の活用について十分な訓練を受けていないこと。 72.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに、女子に影響を与えている不平等および学校への資源の配分との関連で、教育へのアクセスおよび教育に対する権利の全面的享受に関わる諸県間および諸地区間の格差を縮減するための努力を強化すること。 (b) 教育の質を向上させるとともに、学校における留年および未修了を助長する要因に対応するための具体的措置をとることにより、子どもが学校教育を修了することを確保すること。 (c) 中退者、とくに女子および遠隔地の子どもを対象とする適当な職業教育またはセカンドチャンス教育の体制を向上させること。 (d) クルド人の子どもが、障害、ジェンダーその他のいかなる事由に基づく差別もなく、インクルーシブ教育を含む教育に対する権利を効果的に享受できることを確保すること。 (e) 学校における体罰を解消するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、適切な公衆教育および専門家の研修を通じ、積極的な、参加型のかつ非暴力的な形態の規律維持を確保すること。 (f) 学校で子どもにやさしいアプローチを発展させるとともに、子ども、親およびコミュニティによる、意思決定および学校運営への効果的参加を確保すること。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)および第32~36条) 庇護希望者および難民である子ども 73.委員会は、難民である子どもが子どもにやさしいセンター、プライマリーヘルスケアおよび教育にアクセスできることを確保するために行なわれている継続的努力について、締約国を称賛する。しかしながら委員会は、少なくとも7000名のパレスチナ難民(子どもを含む)が、治安部隊が2011年8月に行なったキャンプおよび周辺地域への激しい砲撃により、ラタキアのエルラメル地区に位置するキャンプから避難せざるを得ず、かつこれらの軍事作戦中に数名の難民が殺害された旨の、一貫したかつ裏づけのある報告について深い懸念を覚えるものである。 74.委員会はまた、庇護希望者および難民に関わる法律上および制度上の枠組みがいまなお設けられていないこと、および、難民である子どもおよびその家族が身分証明書類の入手に際して困難に遭遇しているために、場合により、これらの子どもおよびその家族が無国籍となりかつ(または)出身国に強制送還されていることも、懸念する。委員会は、加えて、難民である子どもが送還手続中に家族から分離された事案が報告されていることを懸念するものである。 75.委員会は、締約国に対し、難民キャンプ内外における軍事作戦を中止し、かつ人道機関が難民に全面的にアクセスできるようにするよう、強く促す。委員会はまた、締約国に対し、難民および庇護希望者のための国内法の採択手続を加速させることも促すものである。委員会は、締約国に対し、以下の措置をとることも促す。 (a) 難民である子どもおよびその家族が、その登録および身分証明書類の迅速な処理を保障されることを確保すること。 (b) 子どもまたはその家族構成員を国外追放その他の手段により出身国に強制送還することによって、外国人の子どもをその家族から分離しないようにすること。 (c) 1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同議定書の批准を検討すること。 (d) 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との協力を継続しかつ強化するとともに、子どもの庇護に関する2009年のUNHCR指針を参考にすること。 経済的搾取(児童労働を含む) 76.ディーセントワーク・パイロットプログラムおよびあらゆる形態の児童労働の撤廃のための国家的プログラムの存在には留意しながらも、委員会は、児童労働の現象がとくに農村部で増加していること、および、労働活動に従事するために学校を中退する子どもが増えていることに、深い懸念を表明する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。 (a) 児童労働の発生状況に関する情報および最新の、細分化されたかつジェンダー別の統計データが利用可能とされていないこと。このことは、この現象に対応する締約国の能力に影響を与えている。 (b) 使用人として子どもを採用することを禁じた法律があるにも関わらず、シリア人の女子ならびに東南アジアおよび東アフリカ出身の女子が、ときには奴隷類似の条件下で家事使用人として働いており、かつ性暴力を含むあらゆる形態の搾取にさらされていること。 (c) 15歳以上の子どもについては危険な労働を行なうことが認められていること。 (d) 法律を執行し、かつ労働法の尊重状況を効果的に監視する労働監察官の能力が弱いままであること。 (e) 家業および農業部門で働く子どもが労働法制による保護の対象とされておらず、そのため搾取および教育に対する権利の否定にさらされることが多いこと。 77.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの経済的搾取を防止するためにいっそう積極的な措置をとること。そのための手段として、とくに、児童労働の力学を理解し、かつ児童労働の根本的原因および危険に全国的に対応する勧告の裏づけとする目的で、信頼のできる有効なデータを収集すること。 (b) 家事労働者として働く子どもが置かれた状況に遅滞なく対応するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、これらの子どもを搾取しかつ虐待する者を訴追すること。 (c) あらゆる部門における労働搾取から子どもを十分に保護し、かつ子どもが危険な労働を行なうことが認められないことを確保する目的で、労働法を改正すること。 (d) フォーマル部門およびインフォーマル部門の双方における児童労働法の実施を効果的に監視する労働監察官の能力を強化すること。 (e) 児童労働を撤廃するためのあらゆる努力に、子どもたちおよび子ども団体代表を含めること。 (f) 家族の生存のために働かなければならない子どもに対し、教育の機会を提供すること。 (g) 公衆教育プログラム(オピニオンリーダー、家族およびメディアと協力しながら組織されるキャンペーンを含む)を通じて、児童労働の悪影響に関する意識啓発を図ること。 路上の状況にある子ども 78.委員会は、路上の状況にある多数の子どもが複合的形態の虐待および差別にさらされており、かつ、これらの子どもの状況に対応するための適当な、十分なかつ緊急の措置がとられていないことを、懸念する。 79.したがって委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 根本的原因について正確な理解を得る目的で、路上の状況にある子どもの境遇について体系的評価を行なうとともに、次回の報告書で委員会に対して情報を提供すること。 (b) この現象の発生を防止しかつ削減するため、当事者である子どもたちの積極的関与を得ながら包括的政策(そこでは根本的原因への対応が行なわれるべきである)を策定しかつ実施すること。 (c) NGOとの調整を図りながら、路上の状況にある子どもたちに対し、必要な保護、十分な保健ケア・サービス、教育その他の社会サービスを提供すること。 (d) 子どもたちに対し、自分の身を守る方法および搾取する者を告発する方法に関する十分な情報を提供すること。 (e) 家族との再統合が子どもの最善の利益にかなうときは、そのためのプログラムを支援すること。 性的搾取および虐待 80.委員会は、子どもの性的搾取について重い刑罰(刑法で定められた12年以上の収監刑を含む)が規定されていること、および、強姦犯が被害者と婚姻したときはいかなる刑も免除すると定めていた刑法第508条が2011年1月3日の立法令第1号によって廃止されたことに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国に在留するイラク人女子で売春を強要される者の人数が増えていること、締約国がますます子どもセックスツーリズムの目的地国と成りつつあること、および、売買春に関与した子どもがしばしば犯罪者として扱われていることを、懸念するものである。 81.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 包括的な戦略を通じて性的虐待および搾取を防止しかつ終わらせるため、あらゆる必要な措置をとること。そのための手段として、とくに、加害者の訴追ならびに公開討論会の開催および公衆教育プログラム(オピニオンリーダー、家族およびメディアと協力しながら組織されるキャンペーンを含む)の実施を進めること。 (b) 性的虐待および搾取の被害者が犯罪者として扱われず、かつ回復および再統合のための適切なプログラムおよびサービスにアクセスできることを確保すること。 (c) とくにWHOおよびユニセフの援助を求めること。 売買および取引 82.委員会は、国連国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書が批准され(2009年)、人身取引の禁止に関する立法令第3号が公布され(2010年)、かつ、人身取引被害者のための2つのシェルターがダマスカスおよびアレッポに設置されたことを、歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づいた委員会の勧告(CRC/C/OPSC/SYR/CO/1)の実施について締約国が達成した進展が限定的であることを懸念するものである。委員会はさらに以下のことを懸念する。 (a) 新法で人身取引の明確な定義が定められておらず、かつ、人身取引の被害を受けた子どもの発見、事情聴取および付託に関する明確な手続が設けられていないこと。 (b) 選択議定書の規定にしたがって子どもの売買および児童ポルノを犯罪化する具体的規定が国内法に存在しないこと。 (c) 一時婚の慣行が根強く残っており、12歳という低年齢の女子までが金銭と引き換えに婚姻のために差し出されていること。 (d) 人身取引関連犯罪を捜査しおよび処罰し、人身取引が行なわれていることについて公衆に情報を提供し、ならびに法執行官を対象として人身取引対策研修を行なうために締約国が行なっている努力が限定的であること。 (e) 人身取引の被害を受けた子どもが売春容疑で告発され、かつ少年拘禁施設に送致されまたは人身取引元の国に送還される事案があること。 83.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づいた委員会の勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとるよう、求める。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。 (a) 人身取引対策法を改正して人身取引の定義および付託手続について明確な定めを置くとともに、法執行官を対象として、人身取引対策法に関する研修を体系的に行なうこと。 (b) 以前に勧告されたとおり(CRC/C/OPSC/SYR/CO/1、パラ15(a))、選択議定書で対象とされているすべての犯罪を明示的に定義しかつ犯罪化する目的で刑法を改正すること。 (c) 一時婚が女子の身体的および精神的健康ならびに全般的ウェルビーイングに与える悪影響に関する子ども、家族およびコミュニティの意識を高める等の手段によって一時婚の問題に対応するとともに、このような婚姻を組織した者に対して法的手続がとられることを確保すること。 (d) 人身取引を防止するための、とくに情報交換を通じた、国際協力、地域間協力ならびに出身国、通過国および目的地国との二国間協力に関する努力を増強すること。 (e) 子どもの人身取引を行なった者を積極的に訴追しおよび処罰し、人身取引の被害を受けた子どもを保護し、ならびに、人身取引の被害を受けた子どもが今後は刑務所または非行少年を対象とする矯正センターに送致されないことを確保すること。 (f) 搾取および人身取引の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を確保するための努力を強化すること。 (g) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての者を対象として、知識を高め、かつ子どもの人身取引の防止に役立ちうる研修および意識啓発プログラムが行なわれることを確保すること。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づいたフォローアップ 84.委員会は、子どもの徴募および敵対行為への参加に関連した武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の違反を法律で明示的に禁止し、かつ国際刑事裁判所ローマ規程を批准するべきであるという委員会の勧告(CRC/C/OPAC/SYR/CO/1、パラ9(a)および(d))をあらためて繰り返す。 少年司法の運営 85.委員会は、締約国と国連開発計画との間で、少年司法制度の増進を目的とした「少年司法事業文書」が調印されたこと(2010年2月)に、積極的措置として留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 2003年の立法令第52号によって7歳から10歳に引き上げられた刑事責任年齢が、依然として国際的に受け入れられる水準よりもはるかに低い水準に留まっていること。 (b) 少年法(1974年法律第18号)の適用対象が15歳未満の子どものみであること。 (c) 警察から不当な取扱いを受けた子ども、および、更生施設における収容中に強姦その他の形態の性的虐待にさらされた子ども(とくにバブムサラ少年更生施設に収容されている女子)の事例が一般的に報告されていること。 (d) 拘禁施設における子どもと成人との分離が必ずしも保障されていないこと。 (e) 条約の規定に関する法執行官および少年司法制度関係者の知識が依然として限られたままであること。 86.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約の規定(とくに第37条、第39条および第40条)、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針を含む他の関連の国際基準および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)に全面的にしたがったものとするべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.212、パラ53)をあらためて繰り返す。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢はいかなる場合でも12歳未満と定められるべきではないことを考慮しながら、刑事責任に関する法定年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (b) 少年法(法律第18号)の保護をすべての子どもに拡大すること。 (c) いかなる子どもも、法律に関わることになりまたは法律に抵触した際に虐待および拷問の対象とされないことを、とくに逮捕および捜査の段階において確保すること。 (d) 子どもの拘禁が最後の手段としてのみかつ可能なかぎり短い期間で行なわれること、および、拘禁が法律を遵守して行なわれることを確保すること。 (e) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕または刑の執行猶予のような、拘禁に代わる措置を促進すること。 (f) 子どもがけっして成人とともに収容されないこと、これらの子どもに対して安全なかつ子どもに配慮した環境が与えられること、および、これらの子どもが家族と定期的接触を維持し、かつ食料、教育および職業訓練を提供されることを確保すること。 (g) いずれかの形態で自由を奪われた子どもに対し、措置決定の再審査を受ける権利を認めること。 (h) 専門の少年裁判所を国全域に拡大し、少年司法裁判官を養成し、かつ、警察隊、裁判官およびソーシャルワーカーを対象とする、少年司法制度および拘禁に代わる措置に関する技術的能力および知識を強化することを目的とした包括的な研修プログラムを発展させるための努力を強化すること。 (i) 少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成組織(国連薬物犯罪事務所、ユニセフ、国連人権高等弁務官事務所およびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを利用するとともに、同パネルの構成組織に対し、少年司法の分野における技術的援助を求めること。 犯罪の証人および被害者の保護 87.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人。このような犯罪には、2011年3月の抗議行動以降に国および国以外の主体によって行なわれたものも含まれる)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するよう、勧告する。 I.国際的および地域的人権文書の批准 88.委員会は、締約国に対し、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、ならびに、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、市民的および政治的権利に関する国際規約、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約および拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の各選択議定書を含む、すべての中核的人権文書に加入するよう奨励する。 J.フォローアップおよび普及 89.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 90.委員会はさらに、条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 K.次回報告書 91.委員会は、締約国に対し、第5回定期報告書を2015年8月13日までに提出し、かつこの総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 92. 委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、一体となって、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を構成するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年6月25日)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/81.html
総括所見:フィリピン(OPAC・2008年) 第1回(1995年)/第2回(2005年)/第3回・第4回(2009年)OPSC(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/PHL/CO/1(2008年7月15日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2008年5月30日に開かれた第1333回会合(CRC/C/SR.1333) においてフィリピンの第1回報告書(CRC/C/OPAC/PHL/1)を検討し、2008年6月6日に開かれた第1342回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、選択議定書で保障された権利に関して締約国で適用される立法上、行政上、司法上その他の措置に関する実質的情報を提供してくれる、締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/OPAC/PHL/Q/1 and Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はまた、ハイレベルな部門横断型の代表団との対話も歓迎するものである。 3. 委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回定期報告書に関して2005年9月21日に採択された以前の総括所見(CRC/C/15/Add.259)、とくに「武力紛争下の子ども」の項のパラ75~78とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.積極的側面 4.委員会は、いくつかの法律に、子どもが軍隊または他の武装集団に義務的に徴募されることおよび敵対行為に直接参加することを防止する規定が掲げられているという情報を歓迎する。委員会は、とくに以下の法律に、評価の意とともに留意するものである。 共和国法第7610号(子どもの虐待、搾取および差別からの特別保護法) 共和国法第9208号(人身取引防止法) 共和国法第8371号(先住民族権利法) 共和国法第9231号(児童労働撤廃) 5.委員会は、締約国が、最近になって、安全保障理事会1612(2005年)にしたがった監視報告機構のイニシアティブへの参加に合意したことを歓迎する。 6.委員会は以下のことも歓迎する。 (a) 「武力紛争下の子どもに関する包括的プログラム機関間委員会」の活動。 (b) 武力紛争に関与した子どものリハビリテーションおよび再統合について定めた、これらの子どもの処遇および扱いに関する了解覚書。 (c) 「武力紛争下の子どもに関する包括的プログラム枠組み」。 (d) 武力紛争および避難に焦点を当てながら子どもの福祉を促進することを任務とする、子ども福祉評議会・武力紛争および避難の影響を受けている子どもに関する小委員会(SC CAACD)の創設(2006年2月)。 7.委員会はさらに、締約国が以下の文書を批准したことを歓迎する。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2001年12月20日)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(1999年)(2000年11月28日)。 C.議定書の実施に影響を与える要因および困難 8.委員会は、同国に特有の地理的形態(7100以上の島々)が、とくに反政府武装集団の存在によって引き起こされる継続的不安定さとあいまって、選択議定書の実施に関して客観的な困難および課題を生ぜしめていることを認知する。 1.実施に関する一般的措置 データ収集 9.委員会は、フィリピン人権委員会および社会福祉開発省が武力紛争下の子どもに関するデータを収集してきたことを歓迎するものの、これらのデータが、子どもを徴募している武装集団の一部に限られており、かつ、武装集団による子どもの徴募または使用が行なわれたとされる事案のうち、もっぱら子どもが逮捕されかつ社会福祉開発省に送致されてきた事案に関わるものであることを、遺憾に思う。 10.委員会は、社会福祉開発省およびフィリピン人権委員会のデータ収集システムを増進させるためにさらなる人的資源、財源および技術的資源を提供すること等により、締約国が、データ収集、監視および報告のための機構を拡大しかつ強化するよう勧告する。 資源配分 11.委員会は、選択議定書の実施のために配分される資源がいまなお不十分であることを懸念する。 12.委員会は、締約国が、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議(2007年9月21日)の結果として採択された勧告も考慮に入れながら、選択議定書の全面的実施のために十分な人的資源、財源および技術的資源を提供するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 普及および研修 13.委員会は、警察研修施設である公共安全専門学校のカリキュラムに人権および子どもの保護に関する国内法の科目がいくつか統合されたことに評価の意とともに留意するものの、この研修が体系的なものでなく、かつ選択議定書に関する具体的科目がいまのところ提供されていないことを遺憾に思う。 14.委員会は、締約国が、あらゆる関連の専門家集団、とくに軍の要員が選択議定書の規定に関する体系的研修を受けることを確保するよう、勧告する。加えて、第6条2項に照らし、委員会は、締約国が、適当な手段により、選択議定書の規定をおとなに対しても子どもに対しても同様に広く周知しかつ促進するよう勧告するものである。 独立の監視 15.委員会は、フィリピン人権委員会および国軍担当オンブズマン補佐官の双方が、軍隊による人権侵害について訴えを受理しかつ調査を行なえることを歓迎する。しかしながら委員会は、子どもに関わる事案はこれらの機関にほとんど通報されていないことに留意するものである。 16.委員会は、締約国が、締約国による選択議定書の遵守状況(子どもが収容されている施設との関連も含む)をフィリピン人権委員会およびオンブズマン補佐官事務所が積極的に監視できるようにし、かつ、子どもが苦情申立てのためにこれらの機関に容易にアクセスできることを確保するため、必要な人的および技術的資源を提供するよう勧告する。 2.防止 志願入隊 17.委員会は、志願入隊の最低年齢が18歳であること(ただし訓練目的の場合を除く)に留意する。しかしながら委員会は、遠隔地でおよび一部のマイノリティ集団(先住民族集団を含む)の間で十分な出生登録を確保することが困難であるために、子どもが18歳未満で入隊する可能性があることを依然として懸念するものである。 18.選択議定書第3条に基づいて締約国が行なった宣言が実効的に尊重されることを保障するため、委員会は、締約国が、出生証明書および学校の卒業証書のような客観的要素に基づいて、かつ書類が存在しないときは子どもの正確な年齢を決定するための医師による検査に基づいて志願者の年齢を確認するための保護措置を確立し、かつ系統的に実施するよう勧告する。 19.委員会はさらに、先住民族の子どもが軍または武装集団(自警集団を含む)によって徴募されないことを確保するため、締約国が先住民族権利法の規定を執行するよう勧告する。 国の軍隊とは異なる武装集団による徴募の防止 20.委員会は、国軍以外の武装集団が、子どもを保護する旨の決意をさまざまな文言で表明しており、かつ、最低年齢要件に関する意識が、コミュニティにおいて、おとな、若者のみならず子どもの間においてさえ全般的には存在するように思われることに、留意する。しかしながら委員会は、主として貧困、教化、操作、ネグレクトまたは機会の欠如を理由として、子どもが引き続き武装集団(政府とつながりがある準軍事集団および国軍以外の他の反政府武装集団の双方)に加わっていることに、懸念とともに留意するものである。 21.委員会は以下のことを勧告する。 (a) 選択議定書第4条に照らし、締約国が、国の軍隊とは異なる武装集団による子どもの徴募および使用の根本的原因を解消し、かつこれを防止するために、あらゆる実行可能な措置をとること。 (b) 締約国が、武装集団と交渉および対話を行なう際、とくに防止、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合の分野で、徴募されまたは敵対行為で使用された子どもに特別かつ十分な注意が払われることを確保すること。 (c) 停戦交渉および和平交渉において、すべての当事者が、和平協定の不可欠な一部とされるべき選択議定書上の義務について認識するべきであること。 学校および平和教育 22.委員会は、通常は15歳または16歳の高校生が依然として、卒業のための必修科目として少なくとも1年間の「市民性増進訓練」(CAT、かつての「市民軍事訓練」)を受けなければならない旨の情報に留意する。委員会は、CATが軍国的精神を促進するものであり、締約国が行なっている平和構築教育および選択議定書の精神に反していることを懸念するものである。 23.委員会は、締約国が、平和および安全の条件下で子どもの状況ならびにその発達および教育を継続的に向上させていく目的で、CATプログラムを修正し、かつその軍事的内容の廃止を検討するよう勧告する。 24.委員会はさらに、締約国が、市民社会組織と連携しながら、平和の価値および人権の尊重を促進するための研修プログラムおよびキャンペーンを開発しかつ実施するとともに、平和教育および人権の科目を教育制度に基本科目として導入するよう勧告する。 3.禁止 立法 25.委員会は、いくつかの法律で、子どもの徴募および敵対行為における使用が禁じられており、かつ最高20年の収監刑による処罰対象とされていることに留意する。しかしながら、このような重要な立法上の枠組みにも関わらず、委員会は、とくに紛争地域においてそれが効果的に実施されていないこと、および、いまのところ子どもの徴募または武力紛争における使用について1件の起訴も行なわれていないことを懸念するものである。さらに、委員会は、フィリピンが国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の追加議定書(第1議定書)および国際刑事裁判所ローマ規程を批准していないことを懸念する。 26.軍隊または武装集団による子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置を強化するため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの徴募および敵対行為への関与を禁止しかつ犯罪化した現行法を効果的に実施すること。 (b) 子どもの徴募または武力紛争における使用を理由とする訴追件数に関して、次回の報告書で情報を提供すること。 (c) 犯罪人引渡しに関する多国間および二国間の協定を締結すること等により、これらの犯罪が締約国の市民である者もしくは締約国と他のつながりを有する者によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合の域外裁判権を確保しかつ執行すること。 (d) 軍の規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定にしたがうことを確保すること。 (e) 国際刑事裁判所ローマ規程、および、国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の追加議定書(第1議定書)を批准すること。 4.保護、回復および再統合 27.委員会は、武装解除、動員解除、リハビリテーションおよび再統合(DDRR)に関する2004年の行動計画を含め、締約国が実施している武装解除、動員解除、リハビリテーションおよび再統合のためのプログラムについての情報を歓迎する。これらのプログラムに参加した子どもの秘密保持および保護を確保するためにとられた措置には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、子どもがプライバシーに対する権利を侵害される形で宣伝目的で利用された事案についての情報に懸念を覚えるものである。 28.委員会は、締約国が、選択議定書に反する行為の被害者の動員解除、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための措置を、これらのサービスおよびとくにDDRRプログラムの開発および効果的運用のためにさらなる財源を提供すること等により、継続しかつ強化するよう勧告する。締約国はまた、とくに回復および再統合のためのプログラムの枠組みにおける、子どものプライバシーへの恣意的干渉となるすべての活動も禁止するべきである。 29.委員会は、武力紛争に関与した子どもについてその訴追ではなくリハビリテーションおよび再統合について定めた、これらの子どもの処遇および扱いに関する了解覚書に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、共和国法第7610号が、第10条において、武力紛争関連の理由による子どもの逮捕および訴追について定めていること(ただし、有罪判決の場合にも刑の執行は猶予される)を懸念するものである。委員会はさらに、このような子どもの逮捕の際および(または)自由の剥奪の期間中に不当な取り扱いが行なわれているとの報告があることを懸念する。 30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 徴募されまたは敵対行為で使用されたことを理由として子どもが犯罪者とされないことを確保するため、共和国法第7610号を改正すること。 (b) 武力紛争下の子どもが犯罪を行なったとして逮捕されかつ訴追されるときは、審判は、少年司法に関する国際基準に掲げられた保障および手続に厳格にしたがって行なわれなければならない。 (c) 敵対行為に関与した結果として自由を奪われた子どもが、人道的にかつその固有の尊厳を尊重して取り扱われることを確保すること。 (d) 反政府武装集団との和平交渉において元子ども兵士の被害を正当に考慮すること。 (e) 真実、正義および被害者に対する償いの基本原則に特別な注意を払いながら、和平交渉の法的枠組みに人権に関する最低基準および子どもの権利の視点を統合する方法について、国連人権高等弁務官事務所および国連児童基金(ユニセフ)の法的助言を求めること。 31.委員会は、地雷の問題はフィリピンでは大きな問題になっていないという締約国の発言に留意しながらも、国軍以外の武装集団が被害者の接触によって起動する対人地雷を使用し続けており、かつ、地雷その他の爆発装置の使用、強奪および奪還に関わる事件が起こり続けている旨の情報があることを懸念する。 32.委員会は、国際協力(国連機関によるものも含む)の枠組みのなかで必要な技術的および金銭的支援を求めること等も通じ、地雷・不発弾(UXO)除去プログラムおよび危険性教育活動を発展させるためにとられた措置について、締約国が次回の報告書でいっそうの情報を提供するよう勧告する。 武器輸出の統制 33.委員会は、小型武器および弾薬の販売、所持および輸出を統制するために締約国が設けたさまざまな措置を歓迎する。しかしながら、小型武器が子どもに所有されるに至ること、または子どもに対してもしくは最終使用者が子どもを徴募している可能性がある主体に対して販売されることを防止するうえでこれらの措置が十分であるかどうか、委員会にとっては明確でない。 34.委員会は、小型武器が最終的に子ども兵士の手に渡ることがないよう、その販売および輸出を規制する法律が十分に強力なものとされかつ執行されるべきことを勧告する。 ヘルプライン 35.委員会は、子ども向けヘルプライン「バンタイ・バータ〔子どもの味方〕」にアクセスできるのが締約国の17地域のうち5地域のみであることに留意する。 36.委員会は、既存の子ども向けヘルプラインをすべての地域に拡大するとともに、番号を3ケタとし、ヘルプライン側も通話者側も費用を負担する必要がないものとし、かつ24時間利用可能とすることを勧告する。 5.国際的な援助および協力 37.委員会は、締約国が、国際社会に対し、選択議定書の実施のためのさらなる技術的協力および財政的援助を求めるよう勧告する。 6.フォローアップおよび普及 38.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国防省、議会および内閣ならびに適用可能なときは州当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 39.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。締約国はまた、 議定書第4条にしたがい、国の軍隊とは異なる武装集団に対し、継続中の対話の枠組みのなかでこの総括所見および勧告を知らせることも検討するべきである。 7.次回報告書 40.第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第3回・第4回統合報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年9月23日)。